修練日和
アルバ・アルフライラ 2019年6月2日
霧深き地において、見事な花咲く自慢の庭園前。
研鑽には御誂え向けな煉瓦敷きの広場。
設けられた椅子に座した蒼玉はと云えば――
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ジャハル・アルムリフ 2019年6月2日
…………。つまり……で――弟子との鍛錬に、飽きたと申すか。
アルバ・アルフライラ 2019年6月2日
………は?(目の前、大男の言葉を理解するのに一拍必要だった)否待て、何故そうなる。私が飽いたのは業であってお前のことでは――って聞いておるか、ジジ?
ジャハル・アルムリフ 2019年6月2日
む……そ……そうか。(無の宿りかけた視線が、すんと戻る。一度だけ深呼吸を挟み)業に飽いたとあらば…術を捨てる心算であろうか。
アルバ・アルフライラ 2019年6月3日
?(思わず首を傾げる)折角この私が長年の歳月をかけて、じっくりと編み出してきた魔術だぞ? そう易々と捨てる訳がなかろう。
ジャハル・アルムリフ 2019年6月3日
(ほとんど解らぬ程に小さく息を吐き)…なら良いのだが、よもや前で剣を振るう気かと。……つまりは、新鮮な魔術を編みたいという話か?
アルバ・アルフライラ 2019年6月3日
ふむ、剣。剣か――(目から鱗と言わんばかりに)成程、それも悪くないな?(冗句の様で、僅かに本気の滲んだ言葉だった)
ジャハル・アルムリフ 2019年6月3日
…………。(眉間にきつく皺を寄せ)確かに、剣は元々は御身から教わったものだが。…今は俺が盾を担える故。(声には抗議の意志が篭る)
アルバ・アルフライラ 2019年6月7日
ああお前ならばそう言うだろうと思っていたさ(ざくざく刺さる視線で、今ならば宝石の身が砕けかねない自信がある)……それ故、お前が先刻言った様に新たな魔術を編み出そうと思ってな(軽やかに手の内で回された仕込み杖。かつんと石突で煉瓦を叩き、腰を上げる)――お前も付き合うだろう、ジジ?
ジャハル・アルムリフ 2019年6月7日
無論だ。(相も変わらず言葉は短く、顎を引き)…それに、俺も新たな業のひとつも編んでおきたい。師が研鑽を続けているというのに、弟子がそうせぬ道理は無い故。
アルバ・アルフライラ 2019年6月11日
うむ、その意気込みや良し(尊大に、いつものように満足気に唇が弧を描いたならば)さあて、そうなると新たな業を編み出す為に、今の我々の弱点を挙げねばならんか(そうでなければ研鑽の意味がない)
ジャハル・アルムリフ 2019年6月11日
(何度かあった遣り取りだった。師の口にしたそれをなぞり声にする)…主観と客観、だったか。自身では……広範囲、長距離の攻撃を行うモノ、搦め手多く捉え難いモノが不得手だと感じている。逃げ道を封じる師の魔術を毎度当てにするわけにもゆかぬ故。……(言葉を切り、師の見解を、答え合わせを待つ)
アルバ・アルフライラ 2019年6月15日
そうさなぁ…何より、お前の剣術には目を瞠る物があるが如何せん愚直が過ぎる。対照的に私は近接され、力技で圧されたならば、協力する者が折らぬ限り四肢の一本でも折ること覚悟で挑まねば対応し難い。なれば――(かつん。石突を再び鳴らす)互いの弱点を、互いの長所を参考に補強すべきか。
ジャハル・アルムリフ 2019年6月15日
(小さく首肯するも眉間には峡谷。腕を折るという言葉を無意識に聞き咎め)うむ。…口にするは易いが難しいものだな。…力、防御、範囲…(思案の重みに耐えかね、口許に添えた手へと沈む。これもまた克服遠き弱点だった
)……!(はっと面を上げ)
ジャハル・アルムリフ 2019年6月15日
――師父が絶対防御を纏い、俺がそれを撃ち出すのは如何か。(天啓でも得たかの如く)
アルバ・アルフライラ 2019年6月17日
お前は主を何だと思っておる。というかそれでは私が動けんではないか。
ジャハル・アルムリフ 2019年6月17日
師父の防御力も確保し、俺も射程を得られると思ったのだが…(再度、はっと面を上げ)…否、これでは御身と遠く離れてしまう故、確かに得策とは言えぬな。攻防一体…(眉間に皺が刻まれ)……(助けを求めるように師を見た)
アルバ・アルフライラ 2019年6月18日
そのような目で主を見るでない(いたたまれず僅かに視線を逸らし)ううむ……(暫しの逡巡)…我が魔術をお前の剣に纏わせ、それを放つ、とか?
ジャハル・アルムリフ 2019年6月19日
防御面が解決しておらぬ様にも思えるが…ふむ、俺が増幅器・砲台として魔術の不得手を解消、師の身は俺が守護する、ということか。……其れも悪くないな。(かすかに愉しげなものを滲ませて)
アルバ・アルフライラ 2019年6月23日
む?(首を傾げた)圧倒的な火力にて捻じ伏せられれば防御も補えるだろう?(あまりにも当たり前のように)ふふん、そうだろうそうだろう。合わせ業は浪漫故な。となれば如何様な魔術をお前に纏わせようか。
ジャハル・アルムリフ 2019年6月23日
……師父は俺を脳筋などと呼ぶが…(御身の影響では、と言いかけるも必然と気付けば一人納得した)うむ、俺は魔力を練るのが非常に不得手故…目の前に在るものならば描き易い。師父の――宝石を模る魔術ならば如何であろう。
アルバ・アルフライラ 2019年6月25日
何か言ったか?(満面の笑みの後)ほう。宝石か(懐より取り出したのは、触媒として申し分ない――美しいそれ等を眺め、視線は同じ輝きを湛える従者の双眸へ)…ふふん。確かにお前好みの魔術であろうな。
ジャハル・アルムリフ 2019年6月29日
……。(首を横に振れば灰の一つ星も揺らめいた)師父が術を生成、注がれた俺が放出。師父が制御を誤れば俺が氷ならぬ宝石漬けになるか、俺が仕損じればそこら中串刺しになりそうだな。……(暫しの黙考、しかし)うむ、まずは実践であるな。
アルバ・アルフライラ 2019年7月4日
ふふん、私を誰だと思っておる。ジジを宝石漬けにするような愚行を私が冒す訳もあるまい。私とお前であれば何とかなろう(さも当たり前のように無理難題を押し付けて)うむ、先ずは実践あるのみ。腕が鳴るわ(そう、自信満々に杖を振るのだった)
ジャハル・アルムリフ 2019年7月5日
……然り。よし、いつでも構わぬぞ。(組み上げられる術式を待つ。自信の準備といえば抜剣したのみであるが――虚空に軌跡を描く杖へと不思議そうな視線を寄せて、呟く)……魔術の感覚。俺にも図抜けた素養があれば、師の研究の助けにもなれたのだがな。
アルバ・アルフライラ 2019年7月8日
何、気に病む必要はない。私ほどの力を得ようなぞ身体が幾つあっても足りんだろうよ(さも当たり前のように笑うばかり)それよりも…ほれ、気を散らしていては魔力が飛散してしまうぞ?(従者の身体に馴染むよう、魔術を編む。それは微小ながら、徐々に強く)…体調に変化はないか、ジジ。
ジャハル・アルムリフ 2019年7月11日
……それ故に、だ。(小さく、反論らしきものはそれきり。自然体に提げた剣を中心に、見えぬ風糸が纏わる様な感覚。凍てゆく水のそれにも似た微かな響き)……問題ない。(余計な情報を遮断するよう瞼を伏せた。流れを、その渦を。只、受け容れる)
アルバ・アルフライラ 2019年7月11日
っはは、そうか(屈強な戦士へ成長を遂げた弟子――然し、其処から滲む「青さ」に笑みが毀れるばかり)――宜しい。それでこそ我が弟子だ(剣へ石の輝きを纏わせるよう、頭の中で形成する。ぱき、ぱきり――)……さて。此処からはイメージの問題だ。お前ならば、如何様な煌きを生み出す?(戯れのように、師は目を細めた)
ジャハル・アルムリフ 2019年7月15日
(笑う響きには眉間の皺で返答。――得手なのは目の前のものを追う事ばかり、見えぬものを描くのは不得手だった。それ故の魔術適性の無さ。だが)……もとより、ひとつしか識らぬ。(唯一思い描ける色。黎明の青。水より空より、どこまでも透明な星のそれ)(…だった筈が。見ひらいた眸のなかで、彩は灰の色へと変じてゆく)
アルバ・アルフライラ 2019年7月15日
……お?(弟子の中で息衝く青が、彩を変えた)――ジジ?(ほんの少し、意識が逸れただけだった。それだけでも、緻密に編み上げた魔術は綻びを生じる)っ、……っち!(急いで魔力を彼から煉瓦敷きの庭へ移した――刹那、灰色の鉱石が針山の如く煉瓦を破壊していく)
ジャハル・アルムリフ 2019年7月17日
(崩壊した魔術の余波も、頭に肩に降る土埃も見えていないように、七彩は手元へのみ注がれ)……俺の色は此方ということ、か。(声には落胆を帯び、剣へと纏われた灰の結晶から視線を上げた)…済まぬ、俺の所為で気を散らしてしまったな。
アルバ・アルフライラ 2019年7月25日
やれ、落ち込むでないわ。それともお前はこの色を嫌と申すか(手を伸ばす――やや粗い手つきでがしがしと黒髪を掻き雑ぜ)…ううむ然し、他者へ向ける魔力の扱いがこうも難しいとは、私ももっと修行が足りぬ。もっと遣り様と考えねば…(ぶつぶつ。ぐるぐると針山の周りを回り始めた)
ジャハル・アルムリフ 2019年7月27日
色など無……(強引に揺すられる頭に反論も途切れた。研究家形態となり回り始めた師は暫くはあのままだろう。魔力が途切れ剥がれ落ち始めた結晶剣を手に、頭でも冷やすべく水桶の前へ)……む。(そこで――気付いた。素早く踵を返し、大股で師の許へ)
ジャハル・アルムリフ 2019年7月27日
師父、…師父。…俺が思うに、今のは成功である。(身を屈め、星屑が揺る耳のすぐ横で声を張る)――水鏡に映るまで気付かなかった、此の角と同じ色であったのだな。
アルバ・アルフライラ 2019年8月4日
(耳を打つ、声。はっと我に返ったならば)……はーーー?(遊色の眸を更に輝かせる従者を前に、開いた口が塞がらなかった)…お前、お前。まさか今頃になって気付いたのか? ――否、確かにそうそう見えるものではないが。私は、この色以上にお前に合うものはないと思っておったのだぞ(それ故に、気落ちした声は想定外で)
ジャハル・アルムリフ 2019年8月9日
じ――自分の頭は常には見えぬ故に遅れたまでだ。それに、……師父の色を、創ろうとしていた。(あまり無い事だが決まりの悪さに視線を彷徨わせ)…似合う、か。(剥離した灰の欠片を拾い、石の針山となった石畳と見比べ)…師父よ、このまま使えまいか。地に立てれば地より、宙を薙げば宙より出ずる石の刃だ。――安定さえすれば。
アルバ・アルフライラ 2019年8月13日
戯け。私の色は私の物だ。お前に私の色を創ろうなぞ百年早いわ(何ともこそばゆい気分だが、自尊心の為にも口にしないことにする)……む。つい先刻、その石で串刺しになりかけた男が良く言ったものよな(長い足を杖の先で小突きながら)――まあ然し、その向上心は褒めてやろう。私とてお前の願いを聞くのは吝かではない。
ジャハル・アルムリフ 2019年8月16日
む……。(眉間の皺を深めて黙すしかないが、止めたその足も小突き回され抗議の唸り声)…この術を研究してくれるのか? 俺とて、何度串刺しにされようと練習致す所存故。頑丈さなら良く知っておられよう。(風向き良く聞こえた声に、もう一押しとばかり)
アルバ・アルフライラ 2019年8月21日
幾ら頑丈でも程度があるわ阿呆(ぴしゃり、一蹴)やれ、手間の焼ける。――先ずは力が暴走せぬよう少しずつ、少しずつだ。塵も積れば山となるとか云う諺が他の世界にはあろう?(皺の刻まれた眉間を杖で圧しては、有無を言わさぬ声色で)
ジャハル・アルムリフ 2019年8月24日
(では耐え続ければ平気になるのではないか――とでもいうような懲りぬ反論を双眸にだけ浮かべ。そのまま皺の怯まぬ眉間で、杖をじわりと押し返す)……ならば俺は精神統一修養を行えば良いだろうか。普段から取り入れてはあるが、増やす事にしよう。師父は……(先程の出来事を思い返して)――もしや俺の如何なる言動にも驚かぬような修練が必要、ということか?
アルバ・アルフライラ 2019年9月6日
ジジ――よもや結晶漬けにされようといずれ平気になるなぞ考えておるまいな(目の前にあるかんばせ。滲む感情はどう考えても異議のそれである)お前はその脳筋発想を何とかせよ。お前の言いたいことは嫌でも分かるわ阿呆(当たり前だ。一体幾年の時を共に過ごしたと思っている)ぐ、――……其処は、まあ善処する(とはいえ彼奴の指摘はいつも的を射ているのだから反論出来ず)
ジャハル・アルムリフ 2019年9月9日
……。(なおも微妙な圧し合いを続けながらも一瞬、息を詰めた。『最初』から全て見てきた主には、未熟者の内心など手に取るが如しなのだろう)……分かり易いことは認めよう。だが無茶でも阿呆な手でも、近付けるのならば選ぶぞ。より師父の盾として、剣としての形に。(結晶が剥離しきった剣を鞘へと収めれば、中庭に澄んだ音が響いた)……それに、偶には――ほんの偶には、驚いて貰わねば面白くない。
アルバ・アルフライラ 2019年9月16日
(真直ぐした、曇りのない眼差し。やれと、溜息を吐いた)……全くとんだ石頭よな、お前は。私の剣となりたくば、もう少し己を大切にしてみせよ――然すれば私も安心してお前に背中を預けられよう(ぐ、と皺寄る眉間を指先で押して)…まあ、私はその時に備えて耐性を付けねばなるまいな。さもなければ、私はお前の成長に驚いてばかりだ(等と、戯けるように)
ジャハル・アルムリフ 2019年9月28日
頭が石なのは師父だが……。…大切に、……難しい話だな。(理想を望み近付く程に、師の課題からは遠ざかるよう。杖に代わり薔薇の指先、押されど眉間は再び懊悩を刻む)うむ…では早速明日から驚き慣れて貰えるよう――もう一通り鍛錬して参る故、心しておいてくれ。(すっと表情を引き締めると、一礼。傾き始めた陽のなかへと駆けてゆく)(夕餉には戻る、と声がした)
アルバ・アルフライラ 2019年10月6日
そういう直接的な意味ではないわ、阿呆(ぽこん。杖で軽く頭を小突いた)っは、何も難しいことなぞありはしないだろうに。矢張りお前は石頭よな(然れど、そういったところが愛おしいと思うのだから)
お、おう…決して遠くには行くでないぞ?(駆け出した従者の背をただ見詰める。――彼奴の突拍子のなさにも慣れねばならぬやも知れぬ)
ジャハル・アルムリフ 2019年10月10日
?(――駆けながら胡乱げな顔をする。読みは苦手な性分である。それにしてもよく小突かれる日だなどと考えながら)……つくづく、心配性なのか不遜なのか。(ほんの一周だ。師の腹の虫が鳴く頃には戻れるだろう)……。師父の石と、俺の、……早く完成させねばな。(独り言ちたそれは風に流れた)
アルバ・アルフライラ 2019年10月24日
(もはや米粒――否、黒胡麻の粒と云われても信じられるほど従者が去った後には静寂のみが残る
)………(大きく大きく)……はああ(溜息を吐いた。彼奴め、本当に分かっているのだろうか。恐らく私の言葉の真意すら半分も解していないに違いない)――莫迦な子ほど可愛いとは言うが、考え物だな(ついつい愚痴が多くなってしまうのは愛おしさ故か。再び吐息を零すと、男は己が書斎へと姿を消すのだった)