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【縁香】ふたいろ淡く深く、夢結び

雨糸・咲 2019年5月26日


扉の前に立つ人影に、
夏の気配を含んだ強い陽が当たっていた。

眩しい陽射しに浮かぶ白は柔らかく
表の緑を眺める黒は静か
凛として、でも温かい

その立ち姿に気付き、
店主は嬉し気に破顔して駆け寄る。

「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。」

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ウェイティングリストでご指名下さったお客様との1:1RPです。
他の方の書き込みはご遠慮下さい。




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雨糸・咲 2019年5月26日
(こちらへ、と、少し奥へ入ったところのテーブルへ案内して、)えぇと、確か…寝つきが良くない、というお話でしたよね?どういうアイテムにするかは後にして、まずは香りの種類を見ていただくのが良いでしょうか。(カウンター奥の棚から綿の入った小瓶を幾つか取り出し、客人の前へ並べていく。)お花の香りとか木の香りとか、大まかな分類はあるんですけど…寝つきに効果のあるものは、柑橘系が多いのですよね。お好みや苦手な香りの系統ってありますか?
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玖・珂 2019年5月26日
(瑞々しい緑に注がれていた視線は、馴染ある声に呼ばれ室内へと移る。店主である娘に促されるまま席へ着き)そうだな。寝付き……と眠りが浅いというのだろうか。直ぐに目が覚めてしまう。(目が覚めるのは訓練の賜物でもあるのだがと独り言ち、棚から運ばれて来た小瓶を物珍しそうに眺める)これ一つ一つ香りが異なるのか?色々あるのだな。ふむ……花の香りは好きだ。柑橘系や木の香りも好ましい。苦手を挙げるなら、強すぎる香り、だろうか。甘すぎるものなどは短時間で十分だ。
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雨糸・咲 2019年5月28日
不測の事態にも素早く対応できるように、ですね。危険を伴うお仕事の際には必要な技能なのだと思いますが…普段からすぐに起きてしまうようだと疲れが取れにくいでしょう。(強すぎる、甘すぎる香りは苦手との言葉に頷き、幾つかの小瓶を横へ避ける。そこではたと手を止め、)…そう言えば、寝つきの悪いのには心当たりがあるようなことをおっしゃっていませんでしたか?…いえ、あの、(気安く立ち入るのも礼儀に欠ける気がして、おずおずと。)根本的な解決はできないにしても、何か鍵になるようなものがあれば取り入れられないかしら、と思ったので。
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玖・珂 2019年6月3日
(不測の事態、に首肯し)あぁ、咲の言う通りだ。此れが深い眠りであれば短時間でも回復具合が異なるのだが……私はまだ会得出来ていないようだ。(苦手と告げた香りを除外しているのだろうか、陳列から外れていく小瓶を追っていた視線は、掛けられた問いを合図にぴたりと停止する)よく、覚えているな。(気遣ってくれているのだと分かる咲の様子に表情を緩め)……解決するには、行方を晦ました師父を掴まえねばならぬだろうな。(そこで言葉を区切り、伝え忘れていたと苦手な香りを追加する)木の香りだが、候補に樟脳があれば外して欲しい。咲に問われて思い出した。ありがとう。
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雨糸・咲 2019年6月5日
(礼の声に「いいえ」と返して、)樟脳…あれも強い香りですね。承知しました。刺激の強いものなので、今回は使わずにおきましょう。(少し思案しつつ残った小瓶から3本ほど選んで、他をまた脇へ寄せる。)何か…心に引っ掛かっていることがおありなのかしらって、少し気になっていたので。(柔らかくなった表情に安堵を浮かべるけれど。)先生が……。(師父、と言うからには大切な相手なのでは。行き方知れずではさぞ気懸りだろうと僅かに顔を曇らせたが、すぐにふわと微笑む。)玖珂さんのお師匠様なら、きっと強い方なのでしょうね。…一緒に過ごされた時のことで、何か思い出に残っているような出来事はありますか?
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玖・珂 2019年6月11日
樟脳は虫除けに良いらしいのだがな。(はて、私も虫であったかと軽口を叩き)些細な事に気が付けるのは、香りという目に見えぬものを扱っているからだろうか。(すごいなと滑り出た言葉には感心の色が滲む)師父は強かったな。口惜しい事に終ぞ勝てた覚えが無い。思い出、思い出か……修練、修練、修練……(一拍間を置き、困ったような笑みを刷く)……聞いて楽しいものでもない。猟兵として、斯うして咲や皆と過ごす今の方が思い出は多いくらいだ。(店主の所作に合わせて揺れる白菊の花飾りに目を細め)色々な花も見られるしな。(先ほど選別された3本の小瓶のうち1本を指し示し)此れはどういった香りなのだ?
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雨糸・咲 2019年6月17日
まぁ。玖珂さんが虫でしたら、子供たちに追いかけられてしまいますよ?(こんなに綺麗ですもの、と笑った。)些細…でしょうか?(小さく首を傾げ、零れた賛辞には緩く首を振る。)元々、周りの方の心の動きに影響を受けやすい性質なのです。特に、良い感情よりも愁い事の方が気になってしまって。袖を引かれるような感覚、と言いましょうか。(修練。繰り返される言葉にほんの少し口元を緩めた。)厳しい日々だったご様子で。容易に勝てない方に鍛えられたからこそ、今の強さがある、とも言えるのかも知れませんが。――お花がお好きなのですね。(しなやかな指の問う1本を手に取り、蓋を開けて客人の鼻先へ近付けた。)これは、ラベンダーです。(シソ科の爽やかさと、地に根を張る草の強さを感じさせる香り。)痛みを和らげたり、心を落ち着かせて眠りを誘う効果があります。紫色の可愛いお花ですよ。
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玖・珂 2019年6月23日
(綺麗? 何の事だろうかと思考した結果、当該対象は装束であると結論付けた。ゆるり持ち上げた白い袖が揺れる。)少々、目立つ格好ではあるか。戯れるくらいなら構わぬが、子らは無垢ゆえに残酷だ。囚われる前に逃げ果せなくてはならぬな。(私の袖が翅ならば香り纏う咲は花だろうか、と笑みを返す。)あぁ、些細だ。深く考えずとも大丈夫だぞ。(ヤドリガミの特性か、咲が持つ能力か羅刹たる己には判断出来ぬが、共鳴力が高いのだろうと感じた。だからこそ、目の前でやわらかに笑む娘へ瑣末事であると重ねて伝える。他者の愁いに引っ張られる事は無いのだと。)咲は心に添いたいと想っているのだな。其れはとても尊いことだ。……だが、無理はせぬようにな。
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玖・珂 2019年6月23日
(厳しい日々、に深く頷いてみせ)私は落ち零れだったからな。今もまだまだ弱いが、強いと言うてくれる者がおるならそうありたいと思う。そういえば咲にも師が、調香の指南役などがおるのだろうか?(顔先にある香りをより明確にするため、掌で香りを掬い寄せる。)此れは、過去に嗅いだことがある……気がするぞ。何処であっただろうか。(花の知識は書物によるところが多く、香りは知らないものが大半だ。ラベンダーの香りも生花ではなく細工物だったかもしれない。)誘眠だけでなく痛みも和らげるのか。まるで薬のようだな。
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雨糸・咲 2019年6月26日
(何だか話が食い違っているような?小首を傾げて、)お洋服も素敵ですが、玖珂さんご自身も綺麗だと思いますよ?(彼女から感じる凛々しさや潔さ、その中にある柔らかい雰囲気。それらを総じて「綺麗」と表現したつもりだった。)無垢ゆえに残酷…そうですね。知らなかった、思い至らなかった、で許されても、傷を負った側の痛みが無くなるわけではないのに。(零した小さな呟きを払うように、すぐに穏やかな笑みを浮かべて)私がお花なら、路傍の小さな花でしょうね。きっと、だから気になるのです。通り過ぎる人たちの顔が哀しみに曇っていないか。寂しさに泣いていないか。……俯いている人の方がこちらに気付いてくれるから、なのかも知れません。(それは恐らく、自分のためでもあるのだと。)
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雨糸・咲 2019年6月26日
おちこぼれ…(意外な単語に目を丸くし、)要求されるレベルがものすごく高かったんでしょうか?でも、投げ出さず前へ進もうとする人はそれだけで価値があると思います。そうありたい、というのはそういうことでは?(残り2本の蓋も開け、素焼きの小石に一滴ずつ垂らす。)いえ、私は独学で。強いて言えば、花の香りに思い入れがあって。(伏せた瞳に懐かしむ色が一瞬滲んで、消えた。)ラベンダーはよく使われる部類ですし、知らずに触れる機会もありそうですね。後の2つは、スイートオレンジの果皮と、ビターオレンジの葉と枝から採取されたものです。……どうでしょう?(差し出す欠片で混ざった香りは、先程の花に柑橘の果実の甘酸っぱさと、少し苦みのある樹木の深み、そしてラベンダーとは違う優雅で凛とした花の存在が僅かに漂う。甘過ぎず、爽やかな印象。)えぇ。色々と効能のある香りもありますね。治療に使われるお医者様もおられるとか。
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玖・珂 2019年6月30日
……私が、か?(目を瞬かせる。綺麗とは、眩い、華やか、可憐などの形容が似合う、そう丁度いま対峙している咲のような者の事を指すのではないだろうか。装束ならまだしも己には不釣合いだ、とは思えど……向けられた瞳に偽りの色は見えない。ならば言葉は素直に受け取るものだろう。)ありがとう。人には事も無く伝えられるのだが、自分が言われてみると気恥ずかしいものだな。(一瞬差した翳には気付かぬ振りで)痛みに気が付けた時、人は他者にやさしくなれるのだろう。視座を合わせて初めて見えるもののなんと多いことか。せめて視野は広く持っておきたいものだな。でなければ、小さな花を見落としてしまう。(行き交う人々を見上げ、路傍で揺れる様子を思い描き口元が綻ぶ。これは健気と言うのだったか。)花が寂しくないよう、虫は翅休めがてら様子を見に行こう。塞ぎ俯いておらずとも、その路傍の花は見つけられるのだろう?
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玖・珂 2019年6月30日
郷より外の基準が判らぬ故、求められたレベルは何とも言い難いな……。(武器である爪をカチリと鳴らし)私には此れしか能が無い。投げ出す事が出来なかった、が正しいだろう。(調香は独学と聴き本日二度目、感心の念が湧く。)師があれば否応無く修練は進むが、独学は己一人だ。店を持つまでに技を磨き、律する事が出来るのは素晴らしい才能だな。思入れがあるという花の香りが咲を此処まで連れてたのだろうか。(その香り、花の名を訊ねても?と軽く首を傾げる。)(ラベンダーと二つのオレンジ、小石の上で混ざり膨らむ香りにほうと息が零れた。)香りが、変わったな。……先ほどのラベンダー、実は少し香りが強いと思っていたのだ。だから覚えていたというのもあるだろう。3つが合わさった此れは爽やかさに覗く花の香が程よい。好ましい香りだ。
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雨糸・咲 2019年7月4日
(気恥ずかしいとの言い分に、微笑んで頷く。)わかります。ちょっと照れちゃうのですよね。自分のことはつい、良くない部分の方が目に付いたりするからかしら、なんて。(零した苦さに見ないふりをしてくれる気遣いも、寂しさに揺れる小さな花に心をかけてくれる優しさもまた、紛れもなく彼女の美しさの一片。胡桃色の瞳が嬉しげに輝いた。)はい、もちろん。いつも、足元に咲いているのです。ただそこに目を遣る、気持ちひとつあれば。
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雨糸・咲 2019年7月4日
(金属の小さな音に、客人の手元を見る。それは確かに敵を屠るための武器なのだろうけれど、――精緻な作りは美しく、目を惹いた。)選べないと思うか、迷わずに済むと思うか、…それでもやっぱり、目の前の道をちゃんと進んでいる人は尊敬します。自由に選んだのでないなら、尚更。(問いには緩く首を振り、)季節によって色々と。……私の最後の主が、よくお花を飾ってくれたので。(あれに、と部屋の片隅にある木のスツールに置かれた籠を指す。山葡萄の蔓で編まれたその古い手提げ籠が自身の本体だと。)幸い時間はたくさんありましたから。本で得た知識と魔法の素養で何とか。(穏やかな笑みは、ブレンドした香りへの好意的な感想に一層綻ぶ。)それは良かったです。では次は、どういうものにするか決めましょうか。香袋にして枕元に置いても良いですし、手や首元用のクリームとか…あ、アイピローも良いかも知れません。どういうのが使いやすそうですか?
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玖・珂 2019年7月10日
そうだな。他者を誤魔化せたとしても、自分自身は偽れぬからな。それ故か己に無いものを持った者、――例えば調香もそうだ、私には殊更美しくみえる。足元の花も然り。(「覚えておこう」と、煌めく胡桃色の瞳に目を細めた。)迷えるほどの路を知らぬだけとも言うぞ。(そんな大層なものではないと軽い声で応える。それよりも、)咲は迷い路を歩いて来た、あるいは今も歩いておるのだろうか?(大なり小なり迷わぬ者などおらぬと承知しているが、気になった。)
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玖・珂 2019年7月10日
(白皙のしなやかな指が示す先に顔を向ける。本体だと告げられた手提げ籠は幾星霜を経て此処に在るのか自分には見当も付かない。だが間違いなく、此れも己には無いものだ。)そうか。仕立ての好い籠だな。花は穏やかに、美しく映えよう。……主が代われど、咲は大切にされてきたのだな。花の香りに思い入れがあるというのも得心した。(魔法の素養という言葉に、やはりそうだなと頷きつつ)異なる香りを混ぜ合わせて新しき香りを作り上げる、魔法のようだと思ったのだ。(次々と挙げられる品目を思い浮かべ検討する。しかし其の中に一つ、聞き慣れぬ物があった。)……アイピローとは、どのような物であろうか?猟兵として様々な世界へ赴き新しい知識も増えたが、此れは想像もつかぬ……。
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雨糸・咲 2019年7月14日
他の道を知らない…のは、――…。(口を噤んだ。自分がその感覚を知らないからか、言葉が出てこない。その代わり、僅かに頷いて笑った。力の無い、曖昧な笑み。)私には、道が見えないのです。ずっと真っ暗で、足元に道があるかどうかもわからなくて。迷っていると言うか……もしかしたら最初から、進んですらいないのかも知れません。(もう一度だけ、ちらと依り代に目を遣って、)そうですね、大事にしていただいていたと思います。その方は、私を通して大切なひとを見ていらしたので……献花、のようなものだったのでしょう。(静かに瞼を伏せた。)
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雨糸・咲 2019年7月14日
(魔法のよう、との感想には再び口元を綻ばせ、)ふふ。調香自体は、魔法ではなく単純に職人の仕事ですよ。魔法は、より扱いやすい道具を作るために少し細工をするのに使うのです。あ、アイピローはですね、(UDCアースに行った折に知ったものだと、嬉しそうに語る。)眠る時に、目の上に置くもので、えぇと、――(喋りながらごそごそと棚の引き出しを漁る。やがて片手に乗る大きさの、豆を横に引き伸ばしたような形の布袋を取り出した。)これですね。中に乾かしたサクランボの種が入っているのですが、香りを付けて温めて使います。必然的に視界が塞がれるので、寝つきの悪い方にはシンプルですが意外と効果があります。
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玖・珂 2019年7月18日
(途切れた言葉の先、それを推察するには知らない事が多過ぎる。次いで紡がれた淡い笑みを見て思考を切り替えた。)真っ暗か。それは随分と難儀な場所におるのだな。道がなければ拓けばよい、は些か乱暴か。……咲は今、灯りが燈るまで休息をとっておるのやも知れぬな。(人の身を得る前、手提げ籠であった時の話だろう。追想する声音には幾つかの情感が潜んでいるように感じた。だから自身を炉端の花と例えたのだろうか。花が生けられる度に手提げ籠は、――見上げていたのかもしれない。)その想いを受け取り編み上げて、咲は今ここに居るのだな。
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玖・珂 2019年7月18日
調香に魔法は使わぬのか。其れは失礼した。(道具に使用するのだと聞けば「成程」と唸る。)高い技術があっても道具が悪ければ充分な効果は発揮できぬ、様々なところに気を配っておるのだな。アイピローはUDCアースの物か。あそこには不可思議な物(主に機械のことを指す)が多いな。(棚から出てきた布袋の形状と咲の説明を興味深く聴き)温湿布のようなものだな。だが、此れならタオルよりも手軽に使えそうだ。中身がサクランボの種というのも面白い。……しかし(少し眉根が寄る)視界を塞いでしまうのか……。初動が遅れてしまうのは避けたいな。(寄っていた眉が下がる)すまない。良いものを提案してくれたのだが、他の物でも構わぬだろうか。香りがより持続するものはどれであろう?咲に調香して貰うのだから、長く大切に使いたい。
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雨糸・咲 2019年7月21日
灯りが燈るまで……それだったら、素敵です。(いつか、ランプのような温かい光が現れて行くべき道を示してくれるだろうか。瞼の裏にその光景を思い浮かべると、少し穏やかな気持ちになれた。)今、こうしているのは……確かにそうです。(見上げた花の更に上から降る哀しい瞳と声を思い出す。それ故の、この姿なのに。)でも、私は結局は無駄になってしまったので。だから、というのもおかしな話ですが。玖珂さんの心配事が、ちゃんと解けて消えれば良いなって思って。
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雨糸・咲 2019年7月21日
いえいえ、失礼なことは何も!道具や装置を自前で用意できないことが結構あって……場所とか、お財布の都合で。そういう時、代わりに魔法でこう…ぱぱっとやってしまえるので便利で、捗るのですよね。(アイピローはもう少し落ち着いた色柄でも…とか何とか考えていると、初動が遅れる、との声が聞こえてはっとした。)あ、そうですよね!すみません、うっかりしてました……。(額を押さえる。いけないいけない。)長続きするわけではありませんが、香りの付いた水なら必要な時に都度使うということもできます。寝る前に枕に吹きかけたりとか――(言いかけて、仕舞おうと持ち上げたアイピローに視線を落とす。あ、と、呟きが漏れた。)視界が塞がれなければ良いのなら、これと同じ感じので首の下に敷くという手もありますが。それでも使いづらそうですか?
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玖・珂 2019年7月27日
(落ちていた影が微か和らいだ気がした。「希うなら、いづれ」燈るだろうと強く頷き返す。)(容作った基因に対しての言葉と分かってはいた。だが、)無駄など。咲の声を聴き、姿を見て話している今はとても有意義で、私は楽しいぞ。仮令心配事など無くとも此処を訪ねただろう。斯様に好奇心が湧く場所を見逃すわけもない。(棚や並ぶ小瓶、素焼きの小石へと順に視線が移り、アイピローで止まる。)またひとつ、新しい物も覚えた。
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玖・珂 2019年7月27日
場所もだが、資金は如何ともし難いな。有限だ。(決して潤沢ではない己の懐を思い出し同意する。)香を混ぜるだけでなく、色々とする事があるのだな。……もしや、(瓶に詰められた中身を示し)此れも自分で作っているのか?(額を押えた様子に、いやいやと慌てて手を振る。)私が我が儘なのだ。より効能が高くなる物をと考えてくれてありがとう。水か。必要な時だけというのは良いな。(使用例に耳を傾けて思案していると、不意に呟きが落ちてきた。何事かと店主へ顔を向け、新たな提案に目を見張る。本当に良く気遣ってくれている。)そのような物もあるのか。首の下、というと枕とは異なるのだな。(暫し想定し)……ふむ。恐らく阻害せぬな。使えると思う。
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雨糸・咲 2019年7月29日
(話していて楽しいと言われ、解けるように喜色を浮かべた。姿も声も借り物でも、言葉は自分のもののはずだから。)知らないものを知るのは嬉しいことですね。世界が広がったみたいに感じます。(小瓶の方へ眼をやって、)今日お出ししたものは買って来たものですが、この辺りで採れる材料から自分で作ることもありますよ。例えば、お客様の「思い出の香り」を再現したい時とかは、流通しているものだけでは足りないこともあるので。
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雨糸・咲 2019年7月30日
よその職人さんに作ってもらおうとすると、それこそお財布の問題は深刻なのです。(真面目な顔で重々しく頷く。)(たまたま閃いたことだったけれど。使えそうと聞いて嬉しげに微笑んだ。)はい、枕より少し下でしょうか。ちょうどこの、――(自分の後ろ髪を手で掴んで持ち上げ、首の後ろにぺしぺしと手を当て、)首に当たるように置くんです。首には神経が集まっているので、温めて血流を良くすればコリもほぐれて、リラックスできるそうですよ。つくりは同じなのでこちらで少しやってみますね。(手元のアイピローを片手に乗せ、もう片方の手で上から少し強めにぱたぱたと数回叩く。)魔法をかけてあるので、これで温かくなります。(差し出した布袋はじんわり温かく、温泉ほどの温度。)良かったら少し首に当ててみて下さい。サンプルなので、香りは付けてませんが…いかがですか?
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玖・珂 2019年8月3日
新しいものに触れると世界が広がり、そこから更に興味惹かれるものが増える。飽く暇がないな。(忙しなくも愉快であると笑い、香りを再現すると耳にすれば、先ほどの言葉を証明するように新たな関心ごとが増えた。)思い出となれば、当事者の記憶を頼りに調香する、という事か。繊細な仕事となりそうだな。出来合いの品から手製までとは、香りの世界も広大なようだ。(手振りを混ぜて説明する店主の首後部を窺う為、姿勢をずらし首を傾げる。ぺしぺしと打たれる部分をふむふむと確かめ、悪戯めいた笑顔を返す。)首、頸椎は急所の一つだからな。成程、神経を温め睡眠を促すのか。(アイピローを受け取った掌が温かい。手解きに倣い布袋を首の後ろに当てると、サクランボの種が首筋に沿って動いた。)湯に、浸かっているような温かさがあるな。寒い時季は一段と心地良いだろう。
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雨糸・咲 2019年8月12日
忙しい方が、案外気が紛れて良いかも知れませんね。(話しながら卓の上に調香の材料や道具を準備し始める。)再現は確かに難しいです。でも、香りの情報は記憶と密接な繋がりがあると言いますし、何か大切なものを手にするためのお手伝いができるなら、誇らしいなって。(首に袋を当てる様子と心地良いとの声にふわと微笑み、急所の話になるほどと頷いた。)急所って、普段の生活でも大事にしないといけないところなのでしょうね。元気に動ける身体だとつい忘れがちになってしまいますけれど。…こうして、知っていても忘れがちなこともありますから、お話伺うのが楽しくて店をやっている部分もあるのです。(硝子ボウルの中でサクランボの種に香り付けの精油を垂らしたり、ドライハーブを混ぜたり。先に素焼きの小石で試した香りに近付けていく。)……あ、そうだ。外袋を洗い替えも込みで2~3枚お渡ししようと思うのですけど…お好きな色や柄はありますか?
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玖・珂 2019年8月16日
時間に余裕があり過ぎると要らぬ事まで考えてしまうからな。じっくり勘案するには良いのだが。(調香が始まるのだろう、手際良く整えられていく様子を見守る。)香りが記憶を連れてくる、という事もあるな。何やら香が尊いものに思えてきたぞ。(いや、其れを成そうとする咲が、か……と深い感心を零し、材料を指差す。)少なくとも私は此の香りで今日の事を想い出すだろう。咲は会話を引き出すのが上手い。話し好きでなければ斯うはゆかぬ。(私は元来口下手なのだと首から下した袋を渡しつつ、元気に動ける身体にふと疑問が湧く。)ヤドリガミは依り代が無事であれば再生できると聞いたが……痛いものは痛いのだろうな。(調薬や調理にも似た手順は面白く、店主が材料を加える度に変化する香りはやはり魔法のようだと感じた。)色か?特段好みはないが……奇抜で無い色合い、汚れの目立たぬ色が良いな。
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雨糸・咲 2019年8月22日
記憶を連れてくる…素敵な言い方です。(尊い、には少しばかり驚いて目を瞠り、)香りも私も、あまり表に出るものではない、という点では似ているかも知れませんが……その、えぇと…良いものだと思っていただけるのなら、嬉しいです。(幾らか照れた様子で少々俯き、ボウルの中身をぐるぐる混ぜる。ぐるぐるぐる。)――口下手、ですか?玖珂さんが?(手を止めてサンプルを受け取り、首を傾げた。)ご自分から色々お話するのは苦手なのかも知れませんけれど、とても綺麗な言葉をたくさんお持ちだと思いますよ?そこには丁寧な優しい心が詰まっていて、受け取った人はきっとみんな、温かい気持ちになります。(今の自分がそうだから、と。中身を詰めた白い布袋の口を閉じながら、嬉しそうに笑った。)
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雨糸・咲 2019年8月22日
まぁ、痛いのは痛いんですが。(斬られたり噛まれたり、色々したなぁ…なんて思い出しつつ。)治る傷は、なんてことないですから。遠慮無く使い倒せる身体で結構便利ですよ。(道具のことを話すような口調で言った後、そのままの調子で壁際のローチェストから抜いた引き出しをテーブルに置き、)落ち着いた色で、汚れの目立たない……(抜き出して客人の前へ並べたのは3枚。宵闇のような青みがかった墨色の無地、木槿を亜麻色の濃淡で密やかにあしらった花柄、草木を思わせる緑系の柔らかなモザイク柄。)この辺りでいかがでしょうか?
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玖・珂 2019年8月30日
(ボウルの中を見る。材料がぐるぐる混ざっている、ぐるぐると。)だ、大丈夫か?混ぜ過ぎという事は……(素人ながら心配になり店主へ一声掛ける。)あぁ、香りも咲も好いものだと思ったぞ。とは言え、咲については此処を訪れる前から知っておったがな。香りはある儘にただ吸い込んでいたが、此度は知識を深める事が出来た。ありがとう。(薄い布だったものが立体となった。一手一手、命を吹き込まれているようで物が出来上がる様は面白い。)無礼な物言いになっていないなら良かった。言葉は頭から捻り出しておる故、そう評して貰えるのは嬉しい。(声には喜色と安堵が滲んでいる。)温かい気持ちになるのは、きっと返報というやつだな。私が咲から受けた気持ちを返しているのだ。
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玖・珂 2019年8月30日
使い倒せる。なんと豪気な……いや、これは無頓着の部類か?(可憐な姿から発せられた言葉に面を喰らい、一寸止まった瞳は直後、憂慮に揺れた。)私も人に説けるような戦い方はしておらぬ故、止めはせぬが……治るとはいえ負傷による心労の蓄積もある。無茶をし過ぎぬようにな。(店主が選んだ3色の布はどれも自身の要望に沿っていた。有難く1枚ずつ順に手に取り、質感、色味、模様を丁寧に確認する。)どれも良い物だな。(再び3枚を一同に並べて見比べた後、1色の前に指を置いた。)此の、緑のものを願えるだろうか。植物の色合いに似て香りのリラックス効果と相乗しそうだ。
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雨糸・咲 2019年9月4日
お礼を言われるほどのことでは。興味を持っていただけるのは嬉しいことですし。(念の為、口を閉じた袋にこそっと鼻を近付ける。……大丈夫。いつもより多めに混ぜてしまったけれど、香りは飛んでいない。ホッとした。)お返しは、わかります。私も、大事に言葉を選んで下さる方にはできるだけ同じように返したいですし。(そんなに上手ではないけれど。それでも差し出された言葉は偽りないものと信じられたから、素直な喜びが口元に浮かぶ。)最初の印象も大事ですけど…ボールを打ち合う遊びみたいなもので。上手く打ち返せなくても、なるべく途切れないように、手の届くところへ返そうとして下さる方は、どんどん素敵に見えてきちゃいます。
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雨糸・咲 2019年9月5日
(慮る声に数度瞬き、首を傾げた。身体の傷で気疲れを感じたことが無く、――寧ろ、余計なことを考えずに済むから楽だと思っているのだけれど。目の前のひとの黒い瞳がこちらを案じてくれているのは解った。これは「良くない」こと。)えぇと…気を付けます。はい。(言い聞かせる風にこくこく頷く。)(柔らかなぼかしを示す指先を眼で追い、にこりと微笑む。)承知しました。ではこちらを3枚ご用意しますね。……ふふ、私も緑色好きなのです。寝具には青色が落ち着くって聞いたことがありますが、緑もホッとする感じがして、気持ちが和らぎますよね。(1枚に種の入った白い袋を入れ、残りの2枚と共に蝋引き紙に包んだ。この紙もまた、若草のような明るいグリーン。)お待たせしました。こちらで……あ、手提げか何かあった方が良さそうです?
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玖・珂 2019年9月12日
(工程は滞りなく進んでいるようだ。杞憂であったかと作業を眺める。)ボールの打ち合いか。思わぬ処へ飛んだボールを捕球して驚かせるのも一興だが、此ればかりでは長く続けられまいな。咲のボールは良い場所に返ってくる故、打ち返すのが楽しいぞ。(瞬いた胡桃色の瞳を見る。まるで知らない言葉を聴いたかのような反応に、ヤドリガミとは皆斯うなのだろうか……と疑問が湧く。傷の深さを気にせず戦えるのは羨ましい。)あぁ、記憶の隅にでも。咲の戦い方もあろうしな。
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玖・珂 2019年9月12日
(緑色が好きだと聞こえれば、気が合うなと笑みを返す。)そういえば、店の屋根は緑であったな。赤などの暖色は温もりや昂奮を、青などの寒色は冷えや鎮静を覚えさせるのだったか。与える印象に作用するところは香に似ておるな。(葉が重なっているようだと芽ぐんだ包装に双眸を細める。)他に手荷物は無い、此の大きさなら手提げに入れずとも問題ないだろう。気遣いをありがとう。して、お代は如何程だろうか?
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雨糸・咲 2019年9月17日
うっかり変なところへ飛ばしたのをちゃんと打ち返してもらえたら、それも嬉しくなってしまいますね。(やり取りを楽しいと言われて自然と綻ぶ。何かしらの良いものが提供できたのなら嬉しくて。)
玖珂さんも、無理しないでくださいね。お師匠様と再会される時まで、元気でいないと。(会えるなら、可能性がまだあるなら叶って欲しいと願わずにいられない。)
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雨糸・咲 2019年9月17日
(穏やかな笑みにつられて微笑む。)屋根は私が塗ったわけではなくて、元々なのですけれどね。……あ、それで余計に緑好きなのかも知れません。この家には、大切なひとたちの思い出が詰まっているので。(幸せなことも、辛いことも、たくさん。)
本当、似てますね。色と香りの組み合わせを考えるというのも楽しいです。
――あ、えぇと。(品物を手渡しながら、気付く。代金のことをまた考えていなかった。)カバーが3枚あるので、そうですね……銀貨2枚くらいで。
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玖・珂 2019年9月22日
あぁ、視付けたら礼のひとつでも撃ち込んでやらねばならぬからな。限界点を押し上げる為、修練に励もう。(もし願いが叶ったなら、その後の事はまた考えればいい。)此処は主の家であったか。森に湖、景色に馴染んだ緑屋根は趣きがあって良い。咲のように此の家も大切にされていた、いるのだろうな。(今の家主であろう咲の言葉、振る舞いに覚えた感想を伝える。)2枚だな。承知した。(腰に着けた早道から銀貨を取り出しテーブルに置いたところで、一抹の不安が過る。代金を告げる前に空いた間は、収益は大丈夫なのだろうか。しかし相場が分からない。)……確認なのだが、銀貨2枚には店主の調香、技術料も含まれておるのだな?
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雨糸・咲 2019年9月28日
(撃ち込む、に一瞬目を丸くしたものの。その言葉も声も、前向きな意思の表れのように思えて微笑みと共に頷いた。)(住処への感想に嬉しそうに礼を述べ、)はい、大事な形見なのです。(銀貨の出てきた道具を興味深げに見ていた視線が卓の上の銀貨へ。手に取ったところで投げかけられた問いへは、えへへと緩く笑った。)入っていますよ、一応。…と言うか、生計を立てるのは猟兵としてのお給金で間に合っているので。赤字にならなければ良いかな、ぐらいののんびりした商いなのです。ご心配ありがとうございます。
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玖・珂 2019年9月29日
(形見か、と言葉をなぞり)帰る際も、粗相の無いよう気を付けよう。(早道――小銭入れに向かった視線に気が付き、笑いながら頬を掻く。)数枚の硬貨なら此れが便利なのだ。それに、持ち歩ける大金もないしな。調香料が入っているなら良いのだ。私は店主が磨き重ねた技に対価を払っておるのだから。さて、居心地が好いに甘えて随分と長居をしてしまった。頂戴した品は今晩早速試してみよう。ありがとう、咲。では、また逢う時まで。(若草色の包装を手に席を立つ。礼を告げたなら、来た時に通った道を辿り店を後にした。)
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雨糸・咲 2019年10月15日
うふふ、大丈夫ですよ。訪ねて、ゆっくりして下さる方がいらっしゃるだけで、きっと喜んでもらえるでしょうから。(便利だと言う小銭入れを再度見やり、頷いた。便利そうだし、小さくて可愛らしい。)ありがとうございます。お代をいただくのですから、これからまだまだ腕を磨かないとですね。拙い品ですが、お役に立ちますように。
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雨糸・咲 2019年10月15日
(帰路に着くお客様の背を、再度の謝辞と深いお辞儀で見送った。)――店に、でなくとも。お客様がいらして下さるのは嬉しいですね。ねぇ、……(もう随分と古びた緑屋根を見上げて呟き、腕を伸ばして軽く伸びをして。今日はもう誰の返事も返らない屋根の下へ、軽やかな足取りで戻って行った。)
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雨糸・咲 2019年10月15日
―〆―
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