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6F:孤室

黒江・イサカ 2019年4月26日


元オフィスビル≪天原ビルヂング≫

6F。ラジオが鳴っている――――…



→ 黒江・イサカ




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黒江・イサカ 2019年4月28日
「勘違いするなよ、絶対に。あれはただの人殺しなんだ。しかも、たぶん受精した瞬間からの。」
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黒江・イサカ 2019年5月6日
(ノイズばかりがはしる)
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黒江・イサカ 2019年5月6日
「やっぱり、子供≪ガキ≫の頃に殺しておくべきだった」【1/5】
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黒江・イサカ 2019年5月6日
「仏野は上手くやったよ。アレ、田舎者≪ヨソモノ≫だろ?よく抱え込んだモンだな。だからこそか?じゃなきゃおっかないだろ、親殺しを手許に置くなんてな」【2/5】
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黒江・イサカ 2019年5月6日
「どうしてそんな嘘を吐くの、いーちゃん。救うなんて、そんな、嘘を…。怒らないから、このババにはどうか嘘を吐かないでおくれ。大丈夫、あなたには才能がある。神様からの特別なプレゼントだわ。だから、そんな嘘を吐く必要なんてないの。叶わない期待は毒でしかないのよ。そんなひどいことを、しては駄目。」【1/4】
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黒江・イサカ 2019年5月8日
「しかしお陰でまたあの野郎≪ガキ≫、手が出せねェ。…勘違いすんな、数掛けりゃ殺≪ト≫れるよ。ただ、そう、準備がいる。それと覚悟。ツまらねェな。メンドくせェよ」【3/5】
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黒江・イサカ 2019年5月12日
(ラジオから音がしたので、そうと耳を寄せた)
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黒江・イサカ 2019年5月12日
(ガラス瓶に一粒、ガーネット)(窓際に飾り)
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黒江・イサカ 2019年6月5日
「嗚呼、嗚呼、神よ、どうして。どうしてあの子ばかりがあんな目に。かわいそう。あの子が可哀想だわ。どうしてなの。どうして神はあの子を愛してくださらなかったのですか。あんなに善い子なんです。嗚呼、どうか。どうか、お願い。お願いします。どうして、あの子だけを」【2/4】
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黒江・イサカ 2019年6月11日
「1日目。どうしてもと懇願され、私は一人の少年と逢うことになった。専門ではないと何度も断ったのだが、あのエハウィに頼られては仕方がない。少年の名は黒江イサカ。今日は自己紹介くらいで終えたが、何とも不気味な少年だった。笑顔も言葉も何もかもがアンバランスで、あんな不快な人間に逢ったことがなかった。あれを可愛いという。エハウィだけはまともだと思っていたが、やっぱり頭がおかしかった。私はもう逢いたくない」【1/9】
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黒江・イサカ 2019年6月14日
「2日目。とっととあんなガキ始末しろ。と、私は思うのだが、仕事となれば是非もない。私はこの街に基盤がない。エハウィの後ろ盾が得られるなら付き合う価値はあるだろう。…しかし、よりによって殺人欲求のガキだ。サイコパス、サイコキラー、何とでも言いようはあるがそれはこれからで構わない。生で見たのは初めてだった。奴め、妄言の最中も私から少しも目を離さない。当の妄言も長い。最悪だ」【2/9】
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黒江・イサカ 2019年6月16日
「……ねえ、イーサカ。本当に?」「本当にあなたは、私を、彼の処に連れていってくれるの」【3/4】
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黒江・イサカ 2019年6月18日
(カラクリを逆回転させたような、ラジオの悲鳴!)
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黒江・イサカ 2019年7月11日
「―――――やだ!絶対にヤダ!なんで僕がそんなのしなきゃいけないの!ぜーったいやだからね!仏野さんが行けばいいじゃん!そういうの興味ないんだってマジで…」
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黒江・イサカ 2019年8月11日
(カラコロと、ガーネットの入った瓶を振って)
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黒江・イサカ 2019年8月18日
「え?……それ、マジすか?」「マジだよ」「黒江は知って?」「知らねえよ、知ってるヤツのやり口じゃねえだろ」「……なんで、兄貴はそんなことを」「本人が知らないだけで周りは知ってることってあるだろ、ウケるよな」「はあ」「笑えよ」「……」「…まあ、それはそれで正解か。所謂、センシティブな問題。そういうことだろ?若いな」「……はあ」【1/5】
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黒江・イサカ 2019年8月25日
「ごめんなさい、ごめんなさいイーサカ。全て私が悪いの。あなたを生き永らえてしまった私が悪いの。どうかこのババを恨んで、ババだけを恨んで、一緒に死にましょう。ババが一緒にいてあげますから、お願い、死んで、死んで、死ね、死ね!死ね!死になさい!あなたは生きていてはいけないの!お願い!お願いよ!死ね、し、死ぬの、死んで、お願い、お願い、死ね、善い子に、愛してる、愛してる、イーサカ―――――……、………あ」「ああ… あ、  、…あ」「イーサカ」「私」「家に帰りたい」【4/4】
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黒江・イサカ 2019年10月6日
「あの腹立たしい男を殺さずにやるためには、どっかで留飲を下げなきゃならない。たったこの事実だけで見逃せるかって言ったらそりゃ無理だよ。無理だけど、アイツはNPCなんだ。この街のな。NPCに中途半端にキレたって無駄でしかない。話なんて通じるわけない。だから、アイツを滑稽な野郎にし続けるのさ」「でも、……可哀想じゃないすか?」「同情か?」「いえ…」「お前、アブねえなあ。女がいたっけ?殺らせるか?」「……すみません、勘弁してください」「フン…」【2/5】
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黒江・イサカ 2019年12月17日
「………………おい、カラコロカラコロ煩ェ。サイコロばっかり振りやがって気でも狂ったのか。…なんだ、それ?全部5?また妙なもんを…。絶妙に気になるんだよその転がす音。……イイ音ねえ。わからなくもないが、煩ェことに変わりもないな。お前絶対これから一日振り続けるだろ、削れて球体になるぞ。…何笑ってんだ気持ち悪い。星になるわけないだろバカ」
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黒江・イサカ 2020年1月7日
「9日目。彼はマインドセットを受けている。いや、している、と表現しよう。彼は言葉を巧みに操るが、その本質は殺人衝動のみに他ならない。他の全てを差し置いて、彼は殺人衝動だけを持って生まれてきた。勿論、その度し難きを自分で理解できたのは物心がついてからのことなのだろう。そしてそのとき、彼の人間としての生存本能はその衝動が、人間の生命として相応しくないと判断した。幼い生命が全てを殺したい、殺さなければ、なんて、それは自死願望と変わらないものだったからだ。彼の脳は冷静に、しかし本能に従って判断した。自分の手は神様からの贈りもので、その生命を望むところに送ることが出来る。その思い込みは、何よりも彼の生命を守ったのだ。人は善行を大慌てに行わない。少なくとも我武者羅に、見境なく全てを殺さねばならないという欲求に歯止めを掛けることが出来た。…とりあえず、今は。気味の悪い話だが」【3/9】
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黒江・イサカ 2020年3月10日
「上手くやったって言っただろ?ヤツめ、アチコチにちゃんと納税《ミカジメ》してるらしい。其処に手を出したら、別ン所と角が立つ。様子を窺うって言うのはな、ショボくれた手に即反応出来るってことだ。そう言う立場《ビル》を作ったのさ、あの男《プロレスラー》は。…実際、腕っ節が強ェかどうかは知らねえな。言ったろ?上手くやってるって」【4/5】
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黒江・イサカ 2021年2月20日
「14日目。こんな仕事を引き受けるんじゃなかった、と云うのが正直なところだ。この碌でもない人生の中でも五指には入るおぞましい経験をしている。全く、ついていない。ついてなさだって十指には入る。聞くとこのガキ、あのカザンを殺した張本人らしい。頭がおかしい。歯止めを掛けていると思っていたのだが、自分でこうと決めた欲求には逆らえないらしい。「僕が殺さないといけないと思った」と、彼は言った。無意識下の歯止めがあってもそれを越えてくる思想を伴った欲求がしっかりとある。機能の狂った奴の特徴だ。人間は精密に出来ているからこそ壊れたものが時折出来る。それを憐れみ、庇護することが高尚な人間様のすることなのだろうか?私には理解不能だ。」【4/9】
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