Stray Night Walker
ユア・アラマート 2019年4月13日
場所にもよるが、UDCアースという世界は夜でも賑やかなことが多い。
遅くまで営業している店もあれば24時間開きっぱなしのコンビニも珍しくなく、都心に近ければ街灯の配備も行き届いて暗い場所が無い。
だから、いざ暗い場所を探そうとすると案外難しい。その上人気がない場所となれば、必然的に建物と建物の間や裏手になる。
「はー」
見上げた空に星はない。この季節はまだ少し肌寒い。
痛む体は座り込んだ傍から冷えていくが、まだ立ち上がる気力がない。
もう少しこのままでいようと膝を抱えると、狭い隙間を風抜けていった。
淡い、花の香と血の匂いが表通りに転がる。
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皐月・灯 2019年7月1日
……。(彼女をみつけたのは、街中を歩いているときにこの香りを感じたからだ。それは、灯が深夜のUDCアースを徘徊していたということを意味する。)
皐月・灯 2019年7月1日
(徘徊。あてもなく歩き回ること――そう、特に目的があって移動中、というわけではなかった。)……今日の昼間、空鞠堂にいなかったろ、お前。(言ってしまえば、それだけの話なのだ。それが、魔術工房へ帰るまで、わざわざ遠回りしていた理由)
ユア・アラマート 2019年7月12日
(触れられた手首はまだ少し冷たいが、それでも先程よりはよほど赤みを帯びている。腰を抱かれるとより支えがしっかりする代わり、当然ながら密着率は高くなる。体温と言うよりは、見知った誰かの存在が傍にあることにほっとする。だからつい、よりかかる重みを更にかけてしまう。もっともこれは無意識なのだけれど)
ユア・アラマート 2019年7月12日
……あー。 (今日はこの仕事の下準備のため、臨時休業として店を閉めていた。思えば、毎日ではないとはいえ度々店に遊びに来てくれる彼のことだ。今日もきっと、『そう』だったんだろうと思うと) ……待たせちゃったな。 (クローズの看板が下がった扉の前にいる姿を想像して、少し申し訳ない気分になったし、妙に擽ったくもなる) 見つけてくれてありがとう。明日は、ちゃんと朝から開けるよ。
皐月・灯 2019年7月26日
……、おう。(体にかかる重みが増した。たぶんうまく歩けないのだろう、頭の隅でそう考えながら、ゆっくり歩き出す。負荷を掛けないように、ふたり分の重心に気をつかいながら。服越しに感じる彼女の身体は、想像していたよりもずっと細くて、ずっと華奢で、ずっと柔らかかった。それを意識するのはなんだか気恥ずかしくて、ついそっぽを向く)
皐月・灯 2019年7月26日
(目を向けた先、シャッターが閉まった店に目が留まった。脳内で、連鎖的にいくつかの風景が思い出される)……でもな、ユア。(クローズドの看板と、冷えた空気と、さっきの血まみれの彼女)明日は休んで怪我を治せ。……お前がどうしてるかわかってりゃ、いい。(まっすぐ行く道を見据えて、静かに、しかしはっきり言った)無事なら、いくらでも待っててやる。
ユア・アラマート 2019年8月4日
……けっこう、……。 (しっかりした体をしていると思って、急に照れくさくなった。年下の、まだ少年と呼んで差し支えない相手に思う感想としては少し似つかわしくない気がして。思わずそれを口にしかけた口を閉じる。夜闇に顔色が紛れるのが本当に幸いだったが、なんとなく心拍は上がった気がした)
ユア・アラマート 2019年8月4日
(その上で盗み見した横顔が、真っ直ぐ先を見据えて。力強い視線が、自分に向いているわけでもないのに少しどきりとした) ……ふふっ、たしかに……しっかり怪我を治さないとまたお前に怒られてしまうな。 (照れくささを忘れるように、いつもの調子で応える。それから、彼の顔を横から軽く覗き込んで) けど、待っててくれるくらいなら、見舞いくらい来てくれてもいいんじゃないか?
皐月・灯 2019年8月12日
……?(彼女が何か言いかけたような気がして、ちらりと横目で見た。心なしか、低かった体温が少しだけ上がったような。……あるいは、自分の温もりが伝わったのかもしれない。視界に入った表情は、いつもと変わらない――どここかこちらを惑わすような微笑みだった)
皐月・灯 2019年8月12日
――当たり前だろ。(頬に血が集まるのがわかった。なにせ、近い。どうにも落ち着かない感覚が、みぞおちのあたりから疼くように沸き起こり、鼓動が速まった。こいつ何かの感染性の毒でも使われてねーだろうな――そんな思考を振り払うように、一度深く息を吐いて)何言ってんだよ。大体お前、ほとぼりが冷めるまで病院とか行けねーだろ。……治るまでは面倒みてやるよ。
ユア・アラマート 2019年8月12日
……灯、お前。なんか……私に甘い。 (彼の言う通り暫く病院には行けそうにないが、自宅に帰れば治療手段はいくらでもある。それでも不便は出るだろうから、たまに様子を見に来てくれれば心強い。……そんな期待を込めての言葉だったが、返ってきたのは思っていた以上の言葉で) あんまり甘やかすと図にのりそうなんだが。 (く、っと肩に引っ掛けた腕に力を込めてみる。自分から密着を少し深めてしまえば、視線に映る横顔も当然近づく) けど、言ったからには約束だぞ?
皐月・灯 2019年9月2日
んなこと……(ねーよ、とは言えなかった。実際自分でも、甘いとは思う。手当さえきちんとすれば、体力のある彼女なら平気だろうに、とも
。)…………お前いかにも大人の女っぽく振る舞ってるけど、変なトコで全然ちげーからな。(言ったからには、本当にそうするつもりだった。傷が塞がるのを見るまでは……いや、元通り動けるまでは。そう決意した胸の奥も、柔らかい重みを感じればざわめいた。深く呼吸しても、体温の上昇は止められない。)……できねーことは言わねーよ、オレは。(それなら……この熱で冷えた彼女の体が温まれば、いい。そんなことを考えて、支える腕に力を込めた)
ユア・アラマート 2019年9月3日
そ、それは……そういう時は、気が抜けてるだけだと思う。 (油断をすることもあるのだと、その言い訳が既に大人さを欠いているのは気づいていない。と、今も感じている調子が狂う感覚の理由になんとなく合点がいった) ……どうも、お前がいると気が抜けるみたいだ。 (ただでさえ弱ってるせいで、取り繕う事を無意識に拒否していたらしい) そっか。……ふふ。不謹慎だが、ちょっと楽しみだ。 (整ってるなあ、なんて横顔を見つめて思う。触れ合った部分の熱が心地よく、無意識に熱源を探していたら軽く頬が擦れあった) ……暖かいな。
皐月・灯 2019年9月3日
…………。(僅かな沈黙は、虚を突かれたせいだった。返そうと思っていたことが、彼女の続けた言葉の前に霧散する。さっきまで多少なりともあった、揶揄うような雰囲気が、そのときはなかった気がして)……そうか。(辛うじてそれだけ言った。耳に届いたセリフを頭の中で反芻して)……オレがいると、か。(その声は、自分のものとは思えないほど柔らかかった。思わず片手を唇に伸ばしたほどに。……けれど、指先が触れるより先に、頬と頬が触れ合った)……お前は冷たいな。さっさと温かくなれってんだ。(やや早口に言って、歩みを進める)
ユア・アラマート 2019年9月8日
なんでだろうな。頼りがいはあると思っているが。戦場にいても、お前がいるなら大丈夫だなと思ってしまう。 (任される方は大変だろうが、つい彼が横にいると自分も好きにしていいかと思ってしまう。他の仲間の目があるとそういうわけにもいかないが、二人なら全力で気が抜ける) さすがに出血が多かったからな。少し時間はかかるが、すぐに温まるよ。そうだ、面倒を見てくれるなら。髪の手入れを任せてもいいか? 何なら少し切ってもいい。 (自分の髪を度々研究材料として提供している。どうせなら、それをお礼にすればスムーズなのではと考えたのだ)
皐月・灯 2019年9月12日
……オレも、だ。……お前がいりゃ、大抵なんとかなると思ってる。(誰の目もない深夜行。そう口を滑らせたのは、こちらも気が抜けていたからか。或いは、怪我人を運ぶことに意識が向きすぎていて、心の鍵が緩んだからか。どちらにしても、この少年にしては珍しかった)……あのなあ。確かにオレはお前の髪を貰っちゃいるが、そんな礼はいらねーよ。オレの髪とはわけが違うだろ。(少し強めの口調で、呆れ気味に付け足す)もっと大事にしろよ。
ユア・アラマート 2019年9月18日
……なら、よかった。 (なにがいいんだろうか。いや、悪くないからいいんだろうか。自分で考えていて少しわからなくなってきた。ただやたらと照れくさい) そうか? お前が喜んでくれるなら、私は別に構わないんだが。 (生えてくるし、と不思議そうにな顔をするも。言い聞かせるような声に大人しく頷くしか無かった) ……ああ、お風呂は自分でなんとかするからそこは安心してほしい。
皐月・灯 2019年9月26日
(自分が口にしたことというより、彼女の反応を見て。ようやくその意味合いをうっすらと感じた。介抱しているはずなのに、こちらの鼓動もおかしくなりそうだ。咳払いをして、それ以上の思考を無理やり断ち切る。)
……霊薬の材料になるから、確かに助かるのは違いねーけどよ。お前の髪は、今くらいがちょうどいいんだよ。
(生えてこようが、丁度いいバランスを無理に崩すのは……そう、勿体ない。そんな気がした)
へーへー。じゃあ風呂は自分でや
…………。
皐月・灯 2019年9月26日
…………っっっっっっっったりめーだろお前、オレだってそのつもりだ。ちゃんと措置すりゃすぐ苦労せずにそれくらいできるだろ。大体そーゆーのは、いや。(無言の間と、溜め。それと饒舌さをもってまくし立てた)
ユア・アラマート 2019年9月30日
そうか。……髪、これくらいが好きなのか。 (なんとなく気に留めておこうと、心に誓う。片手で自分の前髪を軽く掴んで指先に絡め) なら、いつもどおりお前が欲しい時に切るよ。……そういえば霊薬って、何を作っているんだ? (一口に霊薬と言っても色々あるだろうと首かしげ)
ユア・アラマート 2019年9月30日
っふふ、ふふふ、そうだな、それはそうだ……。 (ちょっとした停止状態から急にまくしたてる様がつい面白くて笑ってしまう。からかったわけじゃないんだ、と前置きして) 前にシャルが怪我をしてうちに軟禁してる間、一緒に入っていたのを思い出してな。
皐月・灯 2019年10月6日
……おう。
(彼女と初めて会った時の銀髪の煌めきがとても印象深い。だからだろうか。もっと見ていたいと思う。――短い髪でも、それはそれで似合うのかもしれないが。)
皐月・灯 2019年10月6日
ん、ああ……浄化薬だ。
(歩きながら、彼女を支えていないほうの手をひらひらと振ってみせる。黒手袋の奥、うっすらと赤い光が漏れた)
オレの魔術刻印回路(サーキット)は後付けで刻みつけたもんだ。……コイツがオレの魔力特性に合ってねーから、時々魔力の澱みが起きるんだよ。
そーゆーときに、回路の焼け付きを抑えるための薬だ。
皐月・灯 2019年10月6日
んだよ! 笑うなよ!
(楽しげな笑い声が妙に耳にくすぐったい。おかしな想像をした気まずさを振り払うように、多少大きな声を出した)
……ああ、あのときか……ちょっと過保護じゃねーかって気がしたな。
(まあ、それも今思えば――である。命に関わる怪我か否かの違いはあれど、今や自分も似たようなことをしている。正直に言えば、出会った怪我人の手当はしても、自分の工房まで連れて行くほど世話を焼くのは異例だった。)
それにしたって、風呂はねーだろ。……わかってんのか、オレは男だぞ。
ユア・アラマート 2019年10月15日
浄化薬か……なるほど。ストックを切らすとまずそうなのは分かった。とはいえ厄介な話だな? あんまり無理はするなよ……と言っても難しい話か。 (頭を横に傾けて、こつんとこめかみ同士をぶつけにかかる。魔術、ひいては魔力は自分にも無くてはならないもの。それ故に、彼の言う話から面倒な事になっているのは理解できる。かといって、いざという時に自らの身を鑑みることが少ないというのも、同時に分かってしまっているので複雑そうに)
ユア・アラマート 2019年10月15日
っはは、すまない。ちょっと誂ってみただけだ。 (大声が軽く狐耳に響いて、笑いを収めようとしながら謝る) ああいう相手には、ちゃんと自分を心配する存在がいるんだってことを多少無理矢理にでも教えてやらないとな。変に頑固で困る。 (最近は大分大人しくなってきたので、逆に自分のおもちゃになっている時があることも自覚しているが。多分やめられないし、やめる気もない。笑っていたが、隣から聞こえる声にピタリと止まり) あ、いや……別にそういう気が薄いからそういったわけでもなくては、その。
ユア・アラマート 2019年10月15日
……ちゃ、ちゃんと男としては見てるから。安心してほしい。 (何の安心なのか、自分でもよくわからなくなってきた)
皐月・灯 2019年11月6日
……まあ、もう体に刻み込んじまったもんだからな。一度刺青を入れたら消せねーっていうだろ? それと似たようなもんだ。引っぺがしたら死ぬし、な。
(こめかみ同士が触れ合って、黒髪と銀髪が暫し混ざり合う。そのくすぐったさに載せて、重要なことをさらりと告げた。あくまで軽く言ったのは、ずっと前に終わったことだからだ。今、殊更に気に病んでいるわけでもない)
皐月・灯 2019年11月6日
…………。
皐月・灯 2019年11月6日
(言葉を続けようとしていたはずなのだが。何を言おうとしたのか、その全てが頭から綺麗さっぱり消えていた。いつものようにかわされるのかと思っていた分、ある意味で予想外の反応で、しかもそれが)
――そうか。なら……。それなら、いい。
(それまで何を話していたんだろうか、靄がかかったように思い出せないけれど。思い出す代わりに、支える手に気持ち、力をこめた)
ユア・アラマート 2019年11月12日
……お前も面倒な生き方選んでいるな。人のことは言えないが。 (はあっと大きく息を吐きだす。目的のためなら多少手段を選ばないタイプだとは思っていたが、予想以上だった) まあ、寿命が減るとかじゃないだけまだマシかもしれないな。とはいえ無理は禁物だぞ。 (ごりごり。猫が挨拶してくるときのようにこめかみを強めに押し付けて擦る)
ユア・アラマート 2019年11月12日
……あー、えー……と。 (それならいいと言われてしまうと余計になんと返したらいいかわからなくなる。元はと言えば自分のせいだが、この妙な気恥ずかしさは一体何なのだろうか。あまり経験したものではないから、とにかく対処に困るが) ――嬉しい、か? (かといって無言はもっと気まずくて。なにか言おうと思って出たのがこれだった)
皐月・灯 2019年11月24日
オレはちょっと脳味噌が特別ってだけで、ただの人間だからな。魔力は人並みだし、大層な武器やアイテムの使い手ってわけでもねー。それなりの代償は要るさ。(とはいえ、彼女にそう言われるのは仕方がないとも思う。自分は気にしないとしても、まともな所業でない自覚はあった)無理もなにも――お前も人の事言えねーぜ、ほんとにな。今やべーの、お前の方だからな?
(擦りつけられるまま頭が揺れた。黒髪が視界の中でちらちらと揺れる)
皐月・灯 2019年11月24日
(つい、「そう」言ったけれど。この胸の奥に燻るように溢れる感覚が不思議だった。心臓の鼓動とは別に何かが揺れているような、その揺れの度に見えないなにかが衝き動かされるような。いや、――知っている。これが何なのか、きっと自分は知っていた。ずっと昔に置いてきてしまって、名前は思い出せないけれど)
……おう。
(だから、ありのまま答えるしかなかった。妙に顔が熱い。人気のない道を選んでいるのに、夜風は人肌の生ぬるさを保っていて、頬を冷やしてはくれなかった)
ユア・アラマート 2019年11月29日
私はお前の戦い方もよく見ているからな。あれを繰り出すための代償となれば、そう軽いものじゃないとは分かっているが。まったく、危なっかしくて心配になるぞ。……今の私が言えたものじゃないとはいえ。 (今現在進行系で心配をかけている身から出るには、説得力が薄い自覚はある) 別に死ぬような怪我じゃないぞ。私は元々、魔力を根源とした体を持っているから。生命維持に必要な魔力まで枯渇すると死ぬんだが、その代わり外傷の治りは早い方だし安心していい。
ユア・アラマート 2019年11月29日
……そうか。 (人を、中でも異性を喜ばせる言動はよく知っている。照れているのは分かるから、それを誂うなりすればいいというのも分かっている。だというのに、うまくいかない。今こうして自分の身を案じてくれている彼だって異性で、相手取るのは慣れているはずで。けれどここまで思うようにできないのは、どういうことなのか。他のたくさんと彼一人の間に違いがあるのだろうか。あるならそれは一体何なのか) ……灯。 (よりかかりが深くなる) 疲れた。 (脳が)
皐月・灯 2019年12月7日
言えてるぜ、怪我人。(彼女を支えていなければ、きっと肩を竦めていただろう)……まあ、オレだって死にたいわけじゃねーし、そうそう無茶はやらねーよ。アザレア・プロトコルだって、短期間に何度も撃たなきゃどうってこたあねーからな。……。
(――だからなんでもない、と。努めてそのように振る舞おうとしている自分に気付いて、少しの間口を噤んだ。どうしてそうしようと思ったのか。まるで「だから心配ない」とでも――心のうちに生まれた疑問は、胸の裡から沸き起こるような言葉で霧散した)
……お前が怪我してるってのに、何をどう安心しろってんだよ。
皐月・灯 2019年12月7日
――ったく。(呆れ気味に言ったが次の瞬間、寄りかかられた傍からすり抜けるように身を捻った。支えを失くした彼女が崩れ落ちるより早く、脇の下と膝裏に腕を回して。殆ど瞬きひとつの間に、ふわり、と)
だったらこのまま運んでやる。痛かったら言え。
(口調は素っ気なく。だが、腕にはしっかりと力を込めて、細い体を抱き上げた)
ユア・アラマート 2019年12月9日
ぐうの音も出ないな。 (偉そうに口を聞くには、些か今は分が悪い。軽く見上げれば、路地裏の狭い空に僅かな星の瞬きが見える。都会とは言え、あの世界では見ることのできなかった空だ) けど……そうだな。お前一人じゃやりすぎてしまうような戦場でも、誰かがいれば負担も減る。私とかな。 (だから、やきもきとしているくらいなら万が一が無いよう自分が動けばいいだけの話だと結論づける) 今日はほら……少し例外的な日だったんだ。普段はそう簡単にはこうならない。
ユア・アラマート 2019年12月9日
――えっ……? (寄りかかっていた支えが急に消えて、体がぐらりと傾いだ。受け身を考えるよりも早く、今度は視界がぐるんと大きく変化して。気づけば隣にあった顔を、違った角度で横から見つめる位置になっている。抱え上げられたのだと、脳が認識すると同時に気恥ずかしさが湧き上がってきて) …あ、ああっ。うん……わかった。 (こくりと一つ頷くと、大人しく身を預けた)
皐月・灯 2019年12月9日
(両腕に確かな重みと柔らかさと、幾分か戻った体温の熱を感じる。鼻腔を擽り続ける花の芳香は一段と強くなった。普段と違う拍動は、自分のものだろうか――だが、呆けている暇はない。)
ああ。だから、困んだよ。勝手にどっかでいなくなられるとな。
(見上げるのは、星空。あの世界では見えなかった空なのに、憧憬の気持ちはどこかに消えている。靴に仕込んだ風の魔術式を起動し、一時的に重力の軛を緩める。脚の筋肉に力を籠めて、跳んだ)
皐月・灯 2019年12月9日
――ここからは一直線だ。(声が耳に届くころには、視界は繁華街の人通りから、ビル群の屋上へと変化している。貯水タンクの上を蹴り、空に浮かぶ月に向かうように、更に跳ぶ。)
心配すんな、ぜってー落としたりしねー。けど、しっかり掴まってろ。
(ちら、と彼女を横目で見て、囁くようにそう言った)
ユア・アラマート 2019年12月11日
……お前が困るなら、いなくならないよ。だからお前も、勝手に消えるなよ? (寄りかかっている時から分かっていたものの、こうして全体重を預けてもびくともしないのが本当に意外に思う。横よりも顔が見やすいので、色違いの双眸も覗き込みやすい。少しすればあまりまじまじと見るのも悪いかとも気づいたが、つい見てしまう)
ユア・アラマート 2019年12月11日
――ん。 (風鳴りの音と風圧に一瞬目を閉じ、開けば暗く細い路地裏の光景はどこにもなかった。軽々と飛ぶ彼の肩越しにも、朧な星空が見えた) そこは心配してないが……そうだな。気をつける。 (両腕を伸ばし、首に回して緩く抱きつく。漸く視線を他所へ向ければ、眼下に街明かりが見えた) はやく、帰ろうか。
皐月・灯 2019年12月14日
(決して離すまいというように、力を籠め直す。まったくおかしな話だが、こうしているのが当たり前のように、妙にしっくり腕に馴染んだ。速度を緩めることなく、地上と天上、ふたつの光の狭間を行く。)
――おう。
(短く答えて。自身もまた、彼女の花の香りを引きながら、駆けた)
ユア・アラマート 2019年12月14日
(都会の夜に、空を見上げる人がどれほどいただろうか。いたとしても、きっそそれは一瞬視界に入ったくらいだろう)(星ほど高くなく、けれど地上では手が届かない。どちらからも不可侵を守る境界線を行く人影は、瞬く間に夜に紛れて消えてしまう)
ユア・アラマート 2019年12月14日
(残されたのは、漸く定位置を取り戻した野良猫の、満足げな鳴き声だけで)