おすすめ本紹介するところ
柳・依月 9月2日09時
民俗学・オカルト・妖怪関係のおすすめ本を紹介するスレ。
団長がやりたいので立てましたが、勿論誰でも使って貰って構いません。
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柳・依月 9月2日20時
あ、書き忘れてたが小説とか漫画とか映画とかでもOKだぞ。
柳・依月 9月2日20時
さてと、最初に紹介するのはやっぱりこれだな。
朝里樹『日本現代怪異事典』笠間書院、2018年。
ここに来るようなら知ってるやつも多いかもな?
トイレの花子さん、カシマさん、口裂け女といった“現代怪異”についての事典だ。
巻末索引も豊富で、五十音順は勿論、地域別とか類似怪異・出没場所・使用凶器別なんてのもある。
単純に読み物としても面白いし、参考文献や引用元が結構しっかり書かれてるから研究にもきちんと使えるんだ。
ちなみに翌2019年には挿絵も入れて色々深掘りした論とかも載ってる『日本現代怪異事典 副読本』。
2023年には新しく、無印版には入り切らなかった色々な怪異をまとめた『続 日本現代怪異事典』が出てるぞ。
創作勢にも研究者にも是非おすすめしたい一冊だ。
ちなみにだが、背後曰く俺の名前はこの人から取ったらしい。
柳・依月 9月3日20時
今日紹介する本はこれ。
小松和彦編著『妖怪学の基礎知識』角川学芸出版、2011年。
基礎知識ってある通り、妖怪について深く知りたい!って時にまず読んでほしい一冊だな。
妖怪全体の思想史がまず最初に来てるが、鬼とか天狗とか特定の妖怪についてとか、妖怪画について、江戸時代の娯楽としての妖怪とか、色んな方向から妖怪研究の概要が簡単にまとめられてるぞ。
各章の執筆者は名だたる妖怪研究者達だ。
最後には妖怪研究ブックガイド……つまり、もっと詳しく知りたかったらこんな本を読め、っていうリストが載ってるぞ。
ただこれ自体の刊行が13年前なんで、そこだけ注意かな。昨日紹介した『日本現代怪異事典』とか、その後に出された重要な本も当然色々あるからな。
とはいえまだまだ有用な一冊だ。
研究寄りの本ではあるが、まあ気を張らずに読んでみるといい。そんなに難しい本ではないはずだ。
グラン・ボーン 9月3日20時
妖怪小説なら、背後が高校の時に読んではまった「姑獲鳥の夏」かな
30年くらい前の小説で、分厚いが、そこがいい
学生時代は夏休みとかに一日かけて小説読んでたぜ
柳・依月 9月4日21時
『姑獲鳥の夏』か。やっぱり京極夏彦氏は凄いよなあ。文章力だけでなく知識量も研究者並だ。
折角だから今日は京極氏の関連で紹介しよう。
『後狩詞記』と並んで日本民俗学始まりの一冊だと言える、『遠野物語』ってのがある。
著者は日本民俗学の父、柳田國男。
岩手県遠野市に関する色んな奇談が載っている。
“マヨイガ”や“座敷わらし”といった、今漫画やゲームに取り入れられているようなものも載っていて、妖怪界隈にも影響力は強いな。まあ妖怪や怪談だけの本ではないが。
初出が1910年なんで、青空文庫にも入ってるぞ。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/52504_49667.html
書籍だと、この『遠野物語』に『遠野物語拾遺』を付けて、丁寧な索引と柳田國男の年譜なんかもついてる、角川ソフィア文庫版の『新版 遠野物語 付・遠野物語拾遺』がおすすめだ。安いしな。
柳・依月 9月4日21時
でもな。とりあえず青空文庫版を見てみればわかるが、『遠野物語』をそのまま読むには1つ問題がある。
そうだ。現代語の範疇とはいえ100年以上前の文章……結構な人が、文章が古すぎて面食らうんだ。
「遠野物語」を検索したらすぐに「現代語訳」がサジェストで出てくるくらいにはな。
なので現代語訳もちゃんと出ている。
講談社学術文庫からも『遠野物語 全訳注』が出ていて悪くはないんだが、ここで紹介したいのはこれだ。
さっきのと同じ角川ソフィア文庫から出てる、『遠野物語 remix 付・遠野物語』!
これは何を隠そう、京極夏彦氏が遠野物語をリライトしたものだ。
おまけに“付・遠野物語”とある通り、原文もセットになっててお得だぞ。
「これ原文では何て書いてあるんだろ?」て思った時もこれ一冊で解決だ。
その後、同じように『遠野物語拾遺 retold 付・遠野物語拾遺』も出てるぞ。
柳・依月 9月7日23時
今日はこの本を紹介しようかね。
香川雅信『江戸の妖怪革命』。
元は2005年に河出書房新社から単行本で、2013年に角川ソフィア文庫から文庫版が出ている。
何年か前に大学のセンター試験(もう共通テストだったか?)の問題になってて話題になったな。
著者は前紹介した『妖怪学の基礎知識』の執筆者の1人で、今なお第一線を走る妖怪研究者の1人だ。
内容としてはタイトルの如く、江戸時代には妖怪文化に革命が起こったんだ。その結果、この時代は妖怪ものの作品がこぞって作られるようになると。まあ読んでみてくれ。
妖怪学の世界でもエポックメイキング的な研究だな。
1つ注意なんだが。
単行本版は全6章あるんだが……文庫本は4章しかないんだよ。
内容的にも2章分まるまるオミットしてるんだ。
まあ全体の論旨には大きく関わらないからオミットしてるわけで文庫版だけ読んでも問題はないんだが、最終的には両方読んでみることを勧めたいな。
柳・依月 9月8日21時
今日は少し変わったところから。
鳥山奏春『付喪神の日本史 『伊勢物語』から『刀剣乱舞』まで』私家版、2023年(データの初出は2019年)。
所謂同人誌。ただし、以下の受注生産サイトにて買えるから、本人がデータを引っ込めるまでは在庫の心配をする必要はなさそうだ。
https://www.seichoku.com/item/DS2004587/
さて……つくもがみ、って聞くと皆はどんなものを想像するかね?
「物が百年を経ると宿る精霊みたいなもの」そういう風に昔から言われてきた、というイメージがあるんじゃないか?
しかし、このイメージは決して室町の昔からずっと変わらぬ概念というわけではない。
つくもがみという概念に関する説明はその言葉だけはそのままに、絶えず変化を重ねてきた。
この本は間違いなく付喪神研究に一石を投じたものだ。
付喪神を詳しく知りたければぜひ読んでほしい一冊だな。
柳・依月 9月12日21時
今日の本紹介はこれ。
京極夏彦『妖怪の理 妖怪の檻』
角川書店より、単行本版は2007年、文庫版は2011年。
これは論文にもよく引用される、立派な研究書だ。それどころか妖怪研究の中でもかなり重要なものだと言っていい。
本編は大きく分けて3章。
まず「妖怪という言葉について」。先行研究というか、妖怪研究史も兼ねて、どのように妖怪という言葉が使われてきたか、て感じ。
このパートのお陰でそんなに詳しくない人でも話が分かりやすくなっているな。
「妖怪のなりたちについて」。水木しげる氏が鬼太郎に登場する妖怪たちをどのように創って来たのか、様々な資料を用いて分析している。水木氏の博識さと巧みな戦略が見て取れるな。
「妖怪の形について」はそれに続いて、特にその造形について分析してる感じだな。
巻末には妖怪に関する年表もある。
京極氏が書いた妖怪研究史解説書として見るもよし、水木氏や鬼太郎が好きな人にもおすすめだ。
柳・依月 9月14日16時
今日の紹介はこれ。
伊藤龍平『何かが後をついてくる 妖怪と身体感覚』青弓社、2018年。
この著者は有名な現役の民俗学者であり妖怪研究者だ。強いて言えば口承よりも説話寄りか。
アカデミアの妖怪研究者の中でも沢山一般書籍を出している人だから、名前を覚えておくといいかもな。
さて、内容について。
現代人にとっちゃ、妖怪と聞くと割と「妖怪の姿」、見た目が想像されるんじゃないか?
しかし、柳田國男の集めた『妖怪名彙』(角川ソフィア文庫の『新訂 妖怪談義』がおすすめだ)なんかを見ると音や触覚だけの妖怪はままある。ぬりかべなんか、この中だと土壁でもなんでもなく何故か先に進めない、触覚だけの妖怪であったことが知られている。
見た目が決まってる妖怪にしても、視覚以外の感覚的特徴もまた重要なわけだ。
この本は妖怪の音、匂い、感触、気配なんかに注目した本だ。
著者が台湾の大学にいたことがあるんで、そちらの妖怪も取り上げてるぞ。
柳・依月 9月26日00時
今日の本はこれ。
伊藤慎吾・氷厘亭氷泉編『列伝体 妖怪学前史』勉誠出版、2021年。
伊藤氏は妖怪中心に、中世あたりの説話研究者。氷厘亭氏はイラストレーターで、妖怪関係の論説系同人誌をよく出してる人だ。
この人達を中心に、伊藤氏以外はほぼ在野の研究者の分担執筆によって成り立ってる本だ。
で、内容な。
これまで、妖怪のアカデミック的な研究史の載ってる本ってのは結構紹介してきたよな。
この本は「妖怪学」の「前史」。
つまり、妖怪が学問としてまともに研究の遡上に上がる、それ以前に、妖怪がどのように研究されて来たのか?……ってのがコンセプトだ。
在野の研究者が中心だからかね。
一般的な民俗学者があまり触れないような、創作的な人も多く取り上げている。
巻末には「妖怪学参考年表(1870-1996)」。
これまた研究関連だけでなく、小説・漫画・映画等も取り上げてるのが特徴的だな。
柳・依月 11月30日21時
放置してて悪い!
今回の一冊はこれ。
廣田龍平『ネット怪談の民俗学』ハヤカワ新書、2024年。
俺といえばネットロア、ネットロアといえば俺!是非ともこれは紹介しなきゃあな。
こないだ出たばっかりの、ネットロアについての新書だ。
めちゃくちゃ大人気でネットでも話題だから、知ってるやつもまあいるかね?
ま、タイトル通りネット上に広まる怪談を色々と民俗学的に研究した一冊だ。
きさらぎ駅からBackroomsまで、多彩な
同胞達が取り上げられているな。
新書とは言っても列記とした研究書。
初学者向けに民俗学そのものの説明もしっかりしつつも、研究史上の位置づけや定義づけもしっかりやってるぞ。
重厚な注や参考文献もあるぜ。
興味はあるけどネットロアに詳しくない?
そんな人も心配ご無用。
それぞれのネタについて初見でも分かりやすい説明がついてるぞ。
巻末には「怪談索引」もついてるし、辞書的にも使えるかもな。
柳・依月 11月30日21時
ネットロアについての研究書は前に紹介した伊藤龍平氏による『ネットロア』(青弓社、2016)ならあったが、絶版な上にそれくらいしか有力な本がなくてな。勿論論文とかならちょくちょくあるが……。
ともかく、ネットロアやネット上の怪談について最新の知見も取り込んだ待望の新しい研究書だ。ネットロアについて詳しいことを知りたいなら、是非とも抑えておくべきだろう。
伊藤氏『ネットロア』との大きな違いを1つ述べておくと、実のところ伊藤氏は当事者ではないというか、ネットロアには疎い方でな。門外漢だからこそできることってのもあるんだが、その点廣田氏はがっつりオカルト板に入り浸ってたタイプだ。民俗学は内省の学、という言い方があってな。身近にあるものを突き詰める、ってのは民俗学らしい研究のあり方なわけだ。
ついでにだが、伊藤龍平氏は「りょうへい」、廣田龍平氏は「りゅうへい」だ。ややこしいな。
ヴァン・スピネルバトン 1月18日11時
『霊能動物館』 加門七海
それぞれの動物に関する「どうしてその動物が崇められるに至ったか」などを調査しに行った作者の所感とか、動物の信仰について詳しく知れる本だぜ。
ちなみに、背後はこの作者がホラー作家でもあることをあとから知った。熱心に実地に行って観察してるもんだから研究者だと普通に思ったらしいぞ。
とにかく読み物としても普通に面白いし、動物の信仰関係で何か知りたい時には読んでみたらいいんじゃねーかな。
ちなみに中の人はこの話を読んでしばらく経った後に「自宅から狼の頭部の骨が見つかった」系のニュースを見て「見たやつだ!」ってなったそうな。