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【小話】泡と消えない恋物語

待鳥・鎬 2023年7月23日


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15歳になった人魚の娘さん
海の中から顔を出した

そこはまるで別世界
輝く砂浜、煉瓦の街並み、遠くに聞こえる鐘の音

初めて見る地上の世界は、全てが眩しく感じられた
実際、深海に住んでいた人魚にとっては直射日光はかなり強烈であり、明順応が追い付かないくらいの……
……え、そういうのは要らない?

さておき

そこで人魚は恋をした


待っていてね、愛しいキミ
魔女の秘薬で二本の足を手に入れたなら
さぁ、いざ陸へと旅立とう


ミニ向日葵にブーゲンビリア、カラーに桔梗にガーデニア
色とりどりの愛らしい花達を抱きしめて

キミはなんて素敵なの!

花に恋した人魚の娘
世界中の植物に出会う旅をしながら、いつまでも幸せに暮らしましたとさ



「めでたしめでたし」
「何だか、知っていた話とちょっと違うの」
「野々さん、物語というのは語り手ごとに生まれるものなんですよ」
尾びれのようなパレオを揺らし、しれっと答える店主であった。

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