【SSW】『ゆりかご』の残滓 / 2
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年3月23日
メーデー、メーデー。
星の海の彼方より、宇宙の何処かにいるあなたへ。
こちら■■■星雲第七植民宇宙船『ゆりかご』居住区ユニット。
メーデー、メーデー。
聞こえていますか。
―――――
■■■星雲第七植民宇宙船『ゆりかご』。
収容人数389人。
とあるスペースシップワールドの富裕層が道楽で作らせた宇宙船。
銀河帝国が支配する危機下にあっても
恵まれた人々は、時に享楽に生きることを選ぶ。
彼らの行く末はといえば。
『ゆりかご』は、既に過去の存在。
数年前、座標――・――・――にて信号をロスト。
銀河帝国により襲撃を受け、拿捕、ないし撃沈されたと思われる。
真実はどうあれ。
切り離された居住ユニットD-3地区だけが、どういうわけか帝国の追跡を振り切り。
今も、銀河の果てを彷徨っている。
その事実を知る者は、少ない。
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◆世界
スペースシップワールド
◆景色
三階建ての居住区ユニット。
濃紺を中心とした清潔感あふれる塗装。鏡面仕上げの床。
所々に、星の海を臨む窓。
静音と共に、あちこちを行き来するロボット達。
1Fは各種管理設備が集中。小型宇宙船発着場あり。
2Fは居住区。廊下に、各部屋へと繋がる自動扉。
廊下の最奥に、「特別保管室」のプレートが貼られた扉。
寝室は潔癖なほどの純白。ベッドと各種インテリア。資料閲覧用のモニター。
3Fは全て、ガーデニング用ロボットが管理する植物園。
バリエーションの乏しい緑と、僅かな花、菜園に彩られる。
◆棲息
船内掃除用大型ロボット:1体
同小型ロボット(壁・天井掃除用):2体
ガーデニング用ロボット:1体
汎用型給仕用ロボット:2体
医療用ロボット:1体
船外作業適用型修理用ロボット:2体
クリスタリアンの少女:1名
【スタートフック】
三階植物園より開始で固定。
船内探索により、あなたは以下の情報を得ていて良い。
・上記に記載された「棲息」以外の設定
・本宇宙船の宇宙における座標が特定不可であり、外部からの救援は望めない状態にある
・現在3F植物園に、本船で唯一の生体反応がある
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ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年3月23日
(無機質に囲まれた星の海での旅路において、決まって、人々は土や緑、自然なるものの香りを恋しがるようになる)(故郷の土が悠久のものとなった世界においても、それは同様)(『ゆりかご』も例外ではなく、D-3地区の3Fは一区画全面が植物園として使用されていた)(幾つかの星の植生を綯交ぜに、四方に広がる緑の中、おりおり紫色をした小さな花ばかりが差し色となる、いささか淋しい園は)(それでも、見も知らぬ〝自然〟への郷愁を癒すに足るものだったのだろう)(通路の導くままアーチを潜っていった先には、かつては茶会に使用されていた、大理石を思わせる作りのガゼボが建つ)
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年3月23日
――……(屋根の下、円形の机を取り囲むように配された椅子に腰掛け)(風に揺れることもない紫の花を眺める、少女の姿があった)(豊かで味気ない緑に包まれた空間にあって、古き時代を思わせる綺羅を纏い、オパールの光輝をその髪にやどす少女は……そこに視線があったならば、ひどく目を引くことだろう)
四葩・イカヅチ 2019年4月5日
(さて。)(そんな彼女を、)(周囲の緑色に混ざって、色とりどり纏った派手なオンナが、)(アーチの影から、興味津々に見ている。)
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年4月5日
……?(この空間にあろうはずもない色を、彩を見つければ、目を引かれるのは少女の方と相成った)(小首を傾げ、知識としてすら持ち合わせない装いに身を包んだ誰かへ、じいっと視線を注ぐ
)…………だあれ?
四葩・イカヅチ 2019年4月7日
お!良かったァ。あんまりキレイなもんで、置物かと(ひょいと出てきて、薄汚れたエレキギターを引きずりながらそちらへと。)安心してくださいな、怪しいもんじゃねェですから。
四葩・イカヅチ 2019年4月7日
怪しくねェからちゃんと名乗れもしますよゥ。四葩のイカヅチ!(どや、とばかりに胸張って)そんで、あんたさんはだあれです?
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年4月8日
おきもの? ……ううん、もしかしたら、それでも合っているかも。(笑うでもなく悲しむでもなく、ごく自然な表情で受け答えつつも)(少女は興味津々という目の色を隠さず、あなたへ向け続ける)ヨヒラノ、イカヅチ。わたし……わたしは、ヴィアットニア。……ヨヒラノ、イカヅチは。どこから来たの?
四葩・イカヅチ 2019年4月9日
おやまあ。生きた置物たぁ…親近感ってやつですねィ、今ンところは(からから笑って、ガゼボの柱に寄り掛かる。)び、ヴィ、ヴィアットニア。
四葩・イカヅチ 2019年4月9日
あは、全部の名前で呼んでくれる方ァ珍しい。嬉しいですねィ(間に挟まった「の」がそのままなことも気にしない、大雑把な性格だった。) 来たのは(刺青と指輪に飾られた手で、どこともなく指して)ずぅっと遠くから。 きっとあんたさんに会いに来たんですよゥ、ヴィアットニアのネェさん。
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年4月9日
全部の名前。じゃあ。イカヅチ、ね?(あなたの言葉から、きっと苗字と名前のことなのだと理解して、少女は名前と思われる方を呼ぶことに決めた)(まなざしは、自然、あなたの肌を物珍しげに追う)わたしに。あなたは、『ゆりかご』を知っているの?(額面通りに言葉を受け取り、首を傾げる)(仕草も反応も、どこか童子を思わせるものがあるだろうか)あなたは。はだに、絵が描かれているのね。不思議だわ。
四葩・イカヅチ 2019年4月10日
おンや?ええ、そうですよゥ。筆でもありゃ書き方も教えて差し上げたンですが。揺り籠ってェのは…(小さな子供のような仕草を真似して、こちらも首をかしげ)ここはそう呼ばれてんで? (そして、刺青を自慢するように腕を組んだ)いかしてんでしょ。不思議ったらネェさんの方こそ!どこもかしこもキラッキラしてて。
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年4月10日
ええ。植民宇宙船『ゆりかご』、D-3地区ユニット。それが、ここ(一字一句違わず、幼少から慣れ親しんできた名を、少女が口にする)(対して〝刺青〟とはその名も知らず、やはり爛々と瞳を輝かせ、見入るばかり)いかして? きれいという意味かしら。そうね、そうだわ。自分の肌をカンヴァスにするなんて、はじめて見るもの。(自身の輝きについては、小首を傾げることさえなかった)わたしは。宝石の、からだだもの。
四葩・イカヅチ 2019年4月11日
ああ、なるほど!よく眠れそうな名前の船ですねィ(確かこういうのはマイナスイオンとかいうんでしたっけ、と周囲を改めて見回して。) ははァ…宝石人間たァ、通りでキレイな訳ですや!そんでもって、そんなキレイさんに褒められんのも光栄で。こいつらも喜んでますよゥ(なァ、と呼び掛けた肩の一匹、牛鬼がぞろりと手足を動かした。)
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年4月11日
よく。そうね。よく、眠れるわ。わたしはいつも、そうしているもの。(キレイとか美しいとか、そういった言葉に、少女は喜ぶでも照れるでもなく、ただただ首肯を返すばかり)(そして)……あなたの、からだの絵は。うごくの?(きょとんと見開いた瞳が、右へ左へ)(名も知らぬ〝牛鬼〟を映し、好奇心に煌めきを増す) 魔法の絵本のようだわ。
四葩・イカヅチ 2019年4月15日
そりゃあ結構。こんなキレイな場所だと、夢ってのもキレイだったりするんですかねィ。どなたが名付けられたんで?(視線巡らせ、想像巡らせ、素敵な夢に、夢を見て。)動きますとも、ええ、生きてますから。 魔法の絵本だとよゥ。良かったなァ(ぞわぞわ蠢く刺青たちに、そう声をかけた。)
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年4月16日
『ゆりかご』の名は……そう。あるじさまが、名付けられたのだと、聞いているわ。……最近は。あまり、夢を見ないけれど。(すっかり見慣れてしまったデザイン済みの緑を背景に、見慣れない存在が在る)(刺青の蠢く様に、資料で閲覧するばかりだった、母性の自然に無数の生がひしめいていた様を想い、少女は目を細めた)……あなたの中に、他のいのちがあるのね。まるで。あなた自身が、一つのゆりかごであるみたい。
四葩・イカヅチ 2019年4月17日
おやまあ、いつも見れないってェのは勿体無い…、あるじ…主?(思い出す。ここを探検しているときに知ったこと)へェ。そんな素敵な方にャ、一度お会いしてみたかったモンです。……あっは!こいつらァ赤ン坊扱いするとは、ネェさんも面白いお人だ!(可笑しそうに声をあげて、)あんたさんは好きなんですねィ、いのち、ってやつ。
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年4月18日
でも。誰かとお話した夜は、よく夢を見るのよ。だから今夜も、見るかもしれないわ。魔法の絵本の、夢を。(語らいの最中、静音駆動と共に汎用型給仕用ロボットがガゼボへ接近)(『お茶が入りました』と、〝感情豊かで無機質な〟合成音声と共に、湯気立つ紅茶を注いでゆく)……ありがとう、ベロニカ。(少女の礼を聞き届け、ベロニカと呼ばれたロボットが下がってゆく)……ごめんなさい。身分登録していないお客さんを、認識していなくて。(足音もなく去ってゆく機械の背中を、見送る)そう。いのちは、好きよ。……もうずっと、いのちでないかれらと、生きてきたから。(湯気立つ紅茶の香りに、身を煌めかす)だから……生のゆりかごである、あなたは。とても、〝きれい〟ね。
四葩・イカヅチ 2019年4月18日
そりゃあ良い。人様の夢にお邪魔できるなんて光栄…っと?(近寄ってきたモノをきょとんと見て。不必要に楽しそうな音に、瞬く。)べろにか。(去っていくのをじーっと見て、それから視線を戻して。きらめきへと) いえいえ、お気になさらず…しっかし、生きてるもんが好きなのに生きてるのが自分だけってェのは…勿体ねェなァ(きれい、には。お礼代わりに、ただ笑みを返した。)ベロニカ達がそんなに大事です?
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年4月19日
ええ。小さい頃から、ずっと、わたしの世話をしてくれたのだもの。それに……(少しの時を遡った頃、さる大樹の内で出会った女性の姿を思い返す)ヤドリガミ。という存在が、あるそうなの。いのちでないものが、いのちを得た存在。……それなら。いつか、かれらがいのちを持つ可能性も、あるでしょう?(それこそお伽話のような夢想を、少女はそれこそ絵本を現実と信じる幼子のような、曇りなき瞳で語るのだった)
四葩・イカヅチ 2019年4月22日
(不純物の無さそうな目を、じぃっと、どこか生気に欠けた赤が見つめて)…そォですか!(にっこりと笑う。)えェ、えェ。大事に大事にしてやれば――きっと、そうなる日が来ますとも(足元に置いていたエレキギターを、こつんと爪先で蹴って)イテ。気の長い話になるかもしれませんがね。どうか飽きずに…愛してやってくださいな。
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年4月27日
ええ、ええ。いつか。……かれらは、わたしにとって「家族」のようなものだもの。(細めた瞳は、どこか懐かしげに過去の記憶を追想するように)(と、自然に聴覚と視覚は、あなたが蹴ったものへと吸い寄せられる)……それは。楽器……ギター、ね?(見慣れない形状ではあるが)(資料で目にしたことは、あった)あなたは、音楽家なの?
四葩・イカヅチ 2019年5月8日
(なんとなく、何故だか、その瞳から目が離せなくて。)……うン?そォです、ギター。イカしてんでしょ(音楽家、の問いには、ゆっくりと首を振った)…「いつか」が形になったモンですよ。ヤドリガミ、実物見るのは初めてですかね。
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年5月8日
いかしてるわ。(「きれい」の意味でその単語を捉えた少女は、なるほど美しいフォルムに肯定を返した) 前に、一度だけ会ったわ。彼女は、確か、そう……「キセル」の、ヤドリガミだった。……じゃあ。あなたは本当に長い間、音を奏でてきたのね。わたしでは、想像もつかないぐらい。たくさん……きっと、この星の海にもない〝音〟を。
四葩・イカヅチ 2019年5月9日
あっは! なァんだ、ふたつめでしたか(かたかた笑って、またコツンと本体を蹴る。イテ。)今こうしてるってこた、そうなんでしょうねィ。さっぱり覚えちゃいませんが…「そういうモノ」だからですかね、歌は好きですよゥ。 そうなると…(そして、「ベロニカ」が去って行った方をもう一度見て)あいつらァ、いったい何が好きになるんでしょうかねィ。
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年5月10日
かれらの行いならば。ひとの手伝い。紅茶の用意。お料理。そんなものが、好きになるのかしら……。(目を細めた奥に浮かぶのは、かれらと過ごした日々)(無機質であれど、かれらはもっとも多くの時間を共有した存在だから。眼前のヤドリガミという存在には、どこか希望らしきものも見出される)……そういえば、わたし。歌を歌うひとには、初めて会ったかもしれないわ。音楽なんて、データベースでしか。
四葩・イカヅチ 2019年5月15日
どうなんでしょうねィ。案外思ってもみないものが好きだったり、想像通りだったりするかもしれません(答え合わせを楽しみに、と。)おや!そんなら、是非とも一曲ご披露、…と言えりゃいいんですけども。生憎アタシは楽器としちゃ落第生もイイトコですんで(地面に立てたギターを、ネックを軸にゆらりゆらりと)歌えるもんっつったら童謡だの子守歌だの、そんなようなもんですよ。
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年5月17日
……子守唄。すてきね。(うすい眼は閉じられ、まぶたの裏に遠くて近い昔が浮かぶ)むかし、一度だけあるじさまが口ずさんでいるのを、聞いたことがあるわ。とても優しくて、温かで、なつかしくて。どこか哀しい、そんな音。……ひとの口から紡がれる子守唄は、データベースのそれとは、全然違うのよ。(今も鮮明に浮かぶメロディに合わせて体を揺らすたび、まとわる髪が輝きを帯びてゆく)だから。わたし、あなたの歌も、この身に響かせてみたい。
四葩・イカヅチ 2019年5月24日
(目を閉じるあなたを、じ、と見つめて)…(わらう)そうですか。アタシでよければ、喜んで。そんじゃ…ちょっと失礼して。(許されるなら隣、そうでなければ、近くに腰を下ろし。) あァ、目ェは瞑ったままでお願いしますよ!子守歌ってのは、そういうもんだそうですから。
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年5月25日
……目を。わかったわ。(誰かに触れるという刺激は、どうしてもこの身を苛むけれど)(誰かが隣にいる心地良さは、あたたかな彩を与えてくれる)だってここは、『ゆりかご』だものね。……きっと、綺麗なまどろみになるわ。とても。とても……。
四葩・イカヅチ 2019年6月4日
(なんだか自分の色が移りこむようで、暫し見惚れて。)…っとォ。 そんじゃ…あぁ、ぴったりのがありますよ、へたくそだなんて笑っちゃいやですからね――(彼女の言う「あるじさま」に想いを馳せる。それから揺り籠をまもる機械たちにも、隣にきらめくひとにも。)(揺り籠を揺らす母の気持ちは、わからずとも。隣のうつくしいひとの為、出来るだけ柔らかく届くよう。)――…(少し掠れて口ずさむのは)(ゆりかごのうた。)
ヴィアットニア・フェリキタシア 2019年6月4日
(目を閉じる)(遠い記憶にある「子守唄」とはまったく違っているけれど)(それでもどこか懐かしくて、胸の奥にあたたかな彩を宿すような)(唇から漏れる吐息が、自然と律動をなぞりそうになる)(心地よく、まどろみの底にも似た音が)(しばし、ゆりかごを揺らしていた――)