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[ 春よ黄昏と ]

ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日


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ふと仄かに漂う香りに辺りを見回すと、小さな白い花が無数に咲いていました。
ひとつひとつは小さく星の形をした花が、まるで花束のように群れを作って咲いているのです。
それはわたくしの国では見かけない花でしたが、なんと芳しく香るのでしょう。

道傍に植えられたその花を眺めているうちに、すっかり日が落ちかけていることに気付いたのは、その時でした。

(春近くの夕暮れ UDCワールドにて)
(1:1。30分程度で返信を心がけるリアルタイムスレッドです)




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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
まあ。(その人に声をかけられて、はじめてわたくしは自分がしばらくその場にいたことに気が付きました。顔を上げると、案外鮮やかな橙色に、思わず目を細めました)……ごきげんよう。いつからご覧になっていたのです?
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小日向・いすゞ 2019年3月19日
どうも、センセ。(日が落ちれば、春先でも冷えてくる空気。茜を背負った少女は両手を隠すようにポケットに手を納めたまま、狐の尾をふかふかと揺らす。一歩彼女に歩めば、コンとぽっくり下駄が音を立てた)そうっスね。少し、少し前から。随分と真剣に見てるものっスから。(開いているのかすら怪しい細い細い漆黒の瞳、狐めいたと言う形容がぴいたりの顔で少女は笑う)センセこそ、何時から見てたンスか?
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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
そう、ですわね……(問いに考えるフリをしながら、わたくしが考えていたのは彼女のやわらかく揺れる耳や尾のことです。夕焼けを背負い笑う彼女はそれらが示すように、まるで逢魔が時の、人ではないモノのように映るのでした)あまり、覚えていませんが、まだ陽は落ちる前のはずですの。……わたくしのこと、怪しく思って、声を?(まだこの世界に溶け込めていないことは、自分でもよくわかっているのです)
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小日向・いすゞ 2019年3月19日
いいえ、いいえ。(そっと閉じる瞳。ゆるゆると左右に首を振れば、獣の耳が揺れる)この世界には、頭に花が生えた人はいないものっスから。ああ、猟兵がえらく長い間立っているなぁ、と声をかけただけっスよ。(あっしもこうっスから、なんて。尾を揺らして、揺らして。この世界には、こんな耳と尾を生やした人など居ない。居るとすれば別の世界から来た猟兵か、若しくはUDCに寄生されたモノだ)別に職務質問とかじゃ無いっスから安心してほしいっスよ。鞄の中身を見せてほしい、なんて言わないっスから。
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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
あら、まあ……あなた様は名探偵でいらっしゃいますのね。羽も花もわたくしにとってはあって当たり前のものでしたから、それのおかげで正体がバレてしまうなんて、思いもしませんでしたわ(この世界のことをわたくしはよく知りませんが、言われてみればなるほど、獣の特徴を持つ者もまたこの世界では異質なのでしょう。猟兵、と口の中で転がしながら、揺れる耳と尾を見ていました)フフ、あなた様が警察の方でなくて、よかったです。わたくし、以前も少し声を掛けられたものですから……(その時のことを思い出して、少しゾッとしました。長い間狭い部屋に閉じ込められたのです)……お仲間の、あなた様はどうして、こちらに?
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小日向・いすゞ 2019年3月19日
へえ、へえ、あっしはこう見えて目敏いと良く言われるンスよ。(世界の加護の下であれば、見目はそこまで違和感を抱かせるものでは無いだろうから。ぼうっと花でも眺め続けていて通報されたのだろうか。目の前の女に抱く印象はおっとりとしたモノで。そしてそれは危うさにも見えた。ただの第一印象だ。口にはしない人を値踏みする思考。小さく肩を竦めて視線を擡げれば彼女の瞳を見る)あっしはよくお散歩に来るンスよ、ここはご飯が美味しいっスからねェ。(く、と掌を掲げれば小さく光を点すグリモア。珍しいものでも無い。予知をさせられるオマケのついた旅行券みたいなモノだと思うようにしている。)
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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
まあ、では他の秘密はもっと上手に隠さなくてはなりませんわね。(交わった黒々とした瞳には夕焼けの光が混じって、どこか不思議な気配を忍ばせています。語り口こそ軽やかなものの、その目が見るものは確かなのでしょう)……ご飯。(ふと現れた光に、言葉を切りました。彼女が掲げたものを“猟兵”たるわたくしはよく知っています)まあ、なるほど。グリモアをお持ちでしたのね。それは、お散歩が楽しいことでしょう。この辺りでは良いお店はございましたか?
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小日向・いすゞ 2019年3月19日
なにの因果か持ち合わせているンスよね。ま、ま、ま、お散歩が楽しくなったのは事実っスよう。近くに美味しいお店があるのも事実っス。――ではでは、その前に少しあっしが推理してみせるっスよ。(琥珀色は茜に燃え。逆光を照り返すグリモアを掌の中で掻き消すと、ポケットから手を出した。考えこむように一度顎を傾け。コン、と音を立てるぽっくり下駄。)センセは、そう、今、少しお腹が空いているのでは無いっスか?
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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
まあ、羨ましい話ですわ。グリモアがあればさまざまな世界を自在に渡れるのでしょう? わたくしにも有れば、きっと上手にこの世界に紛れて、警察には捕まらなかった筈ですもの(さまざまな世界を気ままに巡れたらなんと面白いことでしょう。猟兵になってからはしばしばお世話になった身ですから、それは彼女が何気なく言う以上に羨ましく思えるのでした)――まあ、(消えるグリモアの光を追っていると、彼女がまるで本物の探偵のようにそう言ってのけるのですから、つい、笑ってしまいました。彼女に指摘されると、確かにお腹が空いてきたように思えるのですから)本当。名探偵さんの言う通りですわ。わたくし、お腹が空いているみたい。
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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
それでは、わたくしも推理をお返しいたしますけれど、――あなた様は、わたくしに、その近くのおいしいお店をご紹介くださるのではなくて?
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小日向・いすゞ 2019年3月19日
自在に渡れるっスけれど、――……(多分、彼女がグリモアを持っていたとしてもこの危うさでは、結局捕まっていた気もしたので、言葉をそのまま飲み込んだ、その代わりに人差し指を伸ばして。彼女の唇の前へと差し出す秘密の指。それ以上は内緒、と言うみたいに。そして瞳を眇めれば、)おや、おや、そう申し出ると思っていましたよ、――センセ。(くくく、と笑った。ああ、なんて茶番だろうか)お魚は、好きっスか?
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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
――、(まあ。と声にならないだけのため息が溢れました。しろい指先がすっと立てられる様は芝居がかって大げさに思えましたが、なるほど、きっとグリモアを持つ猟兵の方にはその方なりの言えない秘密というものがあるのでしょう)(だからわたくしも了解の意味を込めて頷きを返しました)……ウフフ。わたくしも名探偵様に並べましたか?(小さく笑う彼女に釣られて、わたくしもつい顔が綻びます)まあ、そこも名推理でお当てになったの? 何を隠そう、お魚は獣肉と並んで好きです。どんな食べ方でも美味しいですものね。
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小日向・いすゞ 2019年3月19日
ええ、センセの推理もなかなかっスねェ。――勿論、立ち振る舞いから好物を割り出すのは、あっしにとっては簡単な事っス。センセは立っている時にどちらかと言えば右足に重心を預け、そしてなによりも、耳の位置がソレを言葉よりも深く語っているンス。さあさ、すぐそこに美味しい海鮮丼の店があるンスよ。厚切りの鮭が出てくるンスよぅ。(嘯く言葉。そんな事わかり得ないけれど、茶番を続けるのも悪くはない。くうるり振り向く前、小さくかんばせを傾げ。)あっしは、小日向のいすゞっス。
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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
なるほど……(お披露目される推理は少々早口で、わたくしには理解ができませんでしたが、名探偵の彼女が言うのですからきっとすごい論拠なのでしょう)わたくしには分からなかったところで気がつくのですから、やっぱり名探偵様ですわね。――まあ、海鮮丼。それにサケ。わたくし、どちらも食べたことがありますが、その二つが一緒になったものは初めてです。前はマグロでしたの(濃厚な味わいの刺身は大変美味でしたが、サケが刺身になったらどのような味になるのでしょうか)……あ、(わたくしはサケにすっかり思考が飛んでいたので、唐突な彼女の名乗りに、不意を突かれて、固まってしまいました)
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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
(あるいはその時、夕日を背負う彼女の姿が――はじめに見たように、妖しく美しかったからかもしれません。小柄な体躯から伸びる黒々とした影を見ないよう、顔を上げて、その瞳を見つめました)……失礼いたしました。すっかり申し遅れておりましたわ。わたくしはガジャ。ガジャ・マールーシャと申します、いすゞ様。……不思議なお名前、ですわね?(けれど目の前の彼女には、よく似合ったものに思えました)
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小日向・いすゞ 2019年3月19日
マグロも乗っている丼もあるっスよ。それに、イカだって、うにだって。(黒と翠の視線を交わし。狐は尾を揺らし、振り返る事なく茜へ向かい歩み出す。)――あっしの世界では、他の国と言うものが無いっス、だから。あっしからすればまーるーしゃセンセのお名前のほうが不思議な響きっスよ。(背を震わせて、くくく、と響く声音は笑ったのであろう。きっと狐みたいな表情で。ぽっくり下駄がこーんこん。さあ、行きましょうか、異国のお姫様)
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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
まあ、海鮮丼の中にはそんな贅沢なものもあるのですね。楽しみですわ(ウニ、イカ――聞き覚えのない食べ物ですが、マグロと並べられるのならきっと美味しいに違いありません。新たな出会いの予感に頬が緩みます)……そうでしょうか? わたくしにしてみれば、物心ついた時から隣にあった名前ですけれど――(でもそれは、いすゞ様にとっても同じことなのでしょう。わたくしはゆらり先を行く彼女に並ぶよう、一歩を踏み出しました)せっかくですから、お互いにこの出会いの間にたくさんお名前を呼んで、慣れることとしましょう。案内をよろしくお願いしますわね、いすゞ様。
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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
(そうして、わたくしは黄昏が夜に変わるまで、不思議な出会いからはじまった晩餐を楽しんだのでした)
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ガジャ・マールーシャ 2019年3月19日
(〆)
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