【■の涯】
ジン・エラー 2022年10月17日
──────聖者は、夢を見ない。
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ジン・エラー 2022年10月17日
とうの昔に、見ることを止めたからだ。
夢は叶えるものならば、叶えてばかりきた人生だからだ。
夢を見て、夢に憧れて、夢に生きて、夢に死ぬ。
そんな“当たり前”は、この聖者には存在しないからだ。
ジン・エラー 2022年10月17日
──────だというのに、まったく。
これは一体どういうことなのだろうか。
ジン・エラー 2022年10月17日
「…………どォ~~~いうこった」
己は何処かに立っていた。
白い世界の“外側”。白と、白でない何かの狭間に聖者は立っていた。
ジン・エラー 2022年10月17日
──────否、立っていたは語弊がある。
もっと単純に言うなれば、夢特有の“アレ”と呼ぶのが簡単だ。
ジン・エラー 2022年10月17日
何もない白の光に包まれた世界で、己のよく知る桜の大樹が咲き誇っている。
・・・・・・・
聖者の目の前で。
つまり、“己でないはずの誰かの視界”と、“それを見ている自分の視界”が共存していた。
ジン・エラー 2022年10月18日
「─────────は?」
今なんつった?
ガキの声。
横から聞こえた声。
お前。
夢は夢でも。
悪夢とでも言うつもりか。
ジン・エラー 2022年10月18日
そうして呼ばれることが───────とても、自然なことのように思えてしまったのだ。
ジン・エラー 2022年10月18日
「やめろ」
見てはいけない。
「やめろ」
振り向いてはいけない。
「やめろ────!」
問うては、いけない──────!
ジン・エラー 2022年10月18日
─────────ほら、言わんこっちゃない。
ジン・エラー 2022年10月18日
「ぶは、だっひゃっひひぇっへっひゃっひゃっひゃ
!!!!!!!」
ジン・エラー 2022年10月18日
「っぶへ、でっひぇひゃられへへ、うっひゃひひひひ
!!!!」
ジン・エラー 2022年10月18日
「ぎゃはははっはあぼぅっほっひぇっふうっへっひゃららら
!!!!!」
ジン・エラー 2022年10月18日
「は──────────────────」
ジン・エラー 2022年10月18日
「─────────────────────────────────────────────」
ジン・エラー 2022年10月18日
「──────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────」
ジン・エラー 2022年10月18日
ああ、そうか。
それなら、もう。いい。
ジン・エラー 2022年10月18日
いい。そのまま。
そのまま。近づいてくれ。
ジン・エラー 2022年10月18日
わざわざ触れてくれるなよ。
とも、思うが。
諦めた。
ジン・エラー 2022年10月18日
夢越しだというのに、その手の感触は。
厭らしいほどに、愛する女に似ていて。
ジン・エラー 2022年10月18日
見つめてくるその視線すら、釘付けにされてしまうほどで。
ジン・エラー 2022年10月18日
─────────そっくりじゃねェか。
と、思わざるを得なかった。
ジン・エラー 2022年10月18日
手を離し、翻って。
歩んでいく。己が、邪道とも呼べる聖道を歩むように。
確かな足取りを以って。
ジン・エラー 2022年10月18日
聞こえてるよ。
聞こえてる。
でもなァ────応えちゃいけねェンだよ。これは。
ジン・エラー 2022年10月18日
────────“心苦しい”?
────────オレが?
────────奇妙なことも、あるモンだ。
ジン・エラー 2022年10月18日
…………ンだよ。クソ。
寝覚めの悪ィ。
ジン・エラー 2022年10月18日
(遠くから、声)
(「ジンさ~ん!?どこに行きましたの~~!?」)
ジン・エラー 2022年10月18日
(聞き馴染みしかないはずの声に、僅かばかりの懐かしさすら感じて)
(桜の木の下。起き上がった)
ジン・エラー 2022年10月18日
(いつもなら、呼び声なんて無視して、遊び惚けるところだが────────)
ジン・エラー 2022年10月18日
こォ~~~~こにいンよォ~~~~~~~!
エェ~~~リシャァ~~~~~~~~~!!
(応えてやるのだ。今一度)
ジン・エラー 2022年10月18日
(それから──────そう)
(あの時の感情は誤りだ)
ジン・エラー 2022年10月18日
(“心苦しい”だァ?)
(お前が勝手に決めつけんな)
ジン・エラー 2022年10月18日
────────元気でやれよ、“ガキ共”。
(アイツらは、あんなに強ェだろうが)