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one night curse

ユア・アラマート 2019年3月12日


From:Your
To:Ruine
件名:午前四時

「面白いものが手に入った。
 今夜は仕事もないし、店を開けておくんで見に来て欲しい。
 何時も通り、人に見られないように」


手慣れた文面で送りつけたメールの返信は、それこそ何時も通り。
あくびを噛み殺す深夜の店は、どこもかしこも静まり返っていた。




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ユア・アラマート 2019年3月12日
(元々、シャッター街になっている商店街だ。昼でさえ静かだというのに、深夜ともなれば尚更。時折肝試しに若者がやってくるが、大体この店に明かりが付いてるのを見て気味悪そうに帰っていく) ……ふあ。 (店先の電気は消しているが、鍵は開けてある。レジ周りだけを明るくして、ぽつんと置かれた桐の箱を横目にしながら欠伸を噛み殺して人を待つ)
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ルイーネ・フェアドラク 2019年3月12日
(指定の時間、夜の隙間を縫うよう人目を避けた男の気配が、するりと店のドアをくぐった。慣れた様子で音を立てぬよう扉を閉め、ただひとつ灯る照明のもと、人待ち顔の女へと歩み寄る)――ユア。お待たせしましたか?
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ユア・アラマート 2019年3月19日
(ぴくんと耳が動いて来客の気配を感じ取る。ほどなく姿を見せた男に、ふわりと笑って) いらっしゃい。いや、大丈夫だよ。もうすぐ来ると思っていたから。それに、いつも来てもらってばかりだしな。お前の所に持っていってもいいんだが、他に人がいると面倒だ。
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ルイーネ・フェアドラク 2019年3月22日
君がお望みならばいつ何なりと、とはいきませんが……職業上、時間に都合はつけやすい身ですからね。お構いなく。――それで。『面白い物』とは?(レジの傍らに凭れかかるよう片腕を預け、桐の箱へ目をやる。不用意に触れはせず、彼女の説明を待った)
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ユア・アラマート 2019年3月25日
甘やかすとつけあがるぞ? まあ、”これ”を見られると気まずいのはお互い様だからな。 (指先が桐の箱に触れ、蓋を開けていく。立ち上がって中を覗けば、まず紫色の天鵞絨布が覗き。それも丁寧に退け) 今見せる。……ところで、お前は涙瓶というものを知っているか?
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ルイーネ・フェアドラク 2019年3月26日
そんな可愛げがありましたか、君。(低く笑う。箱が開けられれば瞳を眇め、それを静かに見守った)――古代の副葬品のアレですか。知識としてなら、多少は知っていますよ。……転じて呪具とされる例も、話には聞いたことがありますね。お目にかかったことはありませんが。(もしや、という問いを含んだ眼差しを、銀の狐へ向ける。すぐに視線は興味深げに箱の中身へと注がれた)
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ユア・アラマート 2019年4月8日
失礼な。こんなに可愛い女中々いないぞ。 (肩を揺らして笑ってから、箱の中に手を入れた。天鵞絨布ごと持ち上げ、箱の横に広げると卵のような丸いフォルムの蓋付き瓶が姿を現し。ころりと転げる) 故人を偲んで涙を流すと言っても、その涙にはいくつも種類がある。悲嘆に暮れたもの、寂しさを感じながらも天珠を全うした故人を称えるもの。それに。 (瓶の中には、液体が入っている。不透明な磨りガラス越しでも、それが赤く染まっているのが見て取れた) 憎しみに正気を奪われ、増悪を含める涙。確か、この世界では血涙なんて言葉もあるな。
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