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【説話】緑風

ヴァルダ・イシルドゥア 2022年4月7日


南東から吹く風が明るさを増していく。
眠りの淵を揺蕩う種が、目覚め、芽吹きの時を迎える頃。
沈み行く月が、白んで溶けた。

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1:1RP:お招きした方と
場所:月の塔。その御許
時刻:鶏鳴
30レス程度、或いは2週間程度途切れたら閉幕
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年4月7日
(秋の終わりに蒔いた種。雪解けを土の下で待ち続けた、母からの『贈り物』は。今や若芽をぐんぐんと伸ばし、日毎に背丈を競い合っているようだった。毎年のこと。それが、むすめが心待ちにした春の風景のひとつだった)

よかった。今年も、元気な花を咲かせてくれそうで。

(如雨露で水を撒きながら、しののめの空が染まりゆく眩さに柔く目を細めて)

……あら?

(ふと。坂道を登るひとのかたちをみとめ、むすめは一度水やりの手を止めた。麓の村で、困りごとがあったろうか?如雨露を井戸のそばに置いてから、自分からも数歩歩み寄り)

おはようございます。どうかなさいましたか?

(その人物が自分を怖がらないように。控えめに声を掛け)
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ディフ・クライン 2022年4月10日
(春とはいえ、早朝の空気は冷たさを覚えている。深く呼吸をすれば濃密なマナが冴えた空気と共に体を満たし、人形は心地よさげに目を細めた。坂道を上っていくと、人影を宝石眼に留める。次いでかけられた声に人形も努めて笑みを描く)
おはよう。この辺りで薬草採取をしていたんだけどね。そうしたらこの塔が見えたものだから、興味本位で。……仕事の邪魔をしてしまったかな。
(肩から提げた鞄を開けば、幾つかの植物が種類ごとに束ねてある。どれもまだ新しく、採取したばかりのものだ。ただそれだけでは不審者と思われても仕方ないと思ったか、人形は胸に手を当てて軽く礼をする)
オレはディフ。ディフ・クラインと言う、猟兵の端くれだよ。貴女は、ここの住人さんかな。
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年4月11日
(返答に、ヒトガタが『こころ』を持つものであることを理解する。会話をするに差し支えない程度まで坂を下り)

朝摘みの花や根は、良き薬になりますものね。火喰い鳥には見つかりませんでしたか?

(曰く。少し離れた森には、怒りん坊の火喰い鳥の縄張りがあって――立ち入ろうとすると『いじわる』をしてくるのだとか!)(あなたが全くの無傷であるならば、杞憂であったと微笑み浮かべ)

いいえ、邪魔なことなんてなにひとつ。
私は花に水をやっていたところだったんです。
朝いちばんでないと、ごきげんを損ねてしまうので。

(気まぐれな子たちなんですよ、なんて。あなたが自らを明かすなら、陽色の瞳を見開いて)

まあ。まあ!そうだったんですか。てっきり、薬師の方かと……!

(つくりものめいたうつくしいかんばせを仰いで。胸に手を当て礼をひとつ)

私はヴァルダ。竜を駆り、空を翔ける猟兵のひとり。
……うふふ、ですから。あなたの、同朋でもあります。
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ディフ・クライン 2022年4月12日
(近づいてくれたことに、歩み寄ることを許されたと知る。ゆえに己もまた、ゆっくりと一歩、二歩、歩を進め)
火喰い鳥か、昨晩見たかも。ただ、ほら。この通り見目が真っ黒だから、宵闇と森の暗さで上手く隠れられたのかも。先刻、無事森を抜けられたよ。
(そういえばと思い起こすこと数時間前。ほらと指し示す己の服は上から下まで喪服のように真っ黒で、だからかなと人形はそっと笑う)
ああ、よかった。手入れが上手なんだね。随分元気に育っているように見える。何の花だい?
(ちらり、視線をそっと彼女の向こうに移す。朝露が煌くその花に、人形は見覚えが無かった)
薬師は半分正解かな。魔法薬学を学んでいてね。まだまだ薬師を名乗ることは出来ないけれど、いずれそうなれたらと思う半人前さ。
そう、ヴァルダと言うんだね。改めてよろしく、ヴァルダ。旅した先で同朋に会えるとは思ってなかった。嬉しい偶然だ。
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年4月18日
春めいて来て、彼らも気が立っているものですから。
あなたがご無事でよかった。森の歩き方を、よくご存知なんですね。

(冗談粧して微笑むあなたに、むすめもまた笑みを返した。夜の森を進めると云うことは、恐らく腕にある程度自信があるのだろう。その予想は、あなたが自信を猟兵だと明かすことで確信に変わった)

これは、ともしびの花。病める宵にも、健やかなる暁にも、淡くみちゆきを照らすもの。
私の故郷で守り続けた花です。……ふふ、じつは。『ひとりじめするのは勿体無いのではないか』と思って……こうして旅先で種をおすそ分けしているんです。

(仄かに甘い香りを纏う花。今はまだ、蕾のほうが多いようだ)
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年4月18日
素晴らしい志をお持ちなんですね。
足りないもの、見つからなかったものはありますか?お手伝いできるかもしれません。
……その、私も。まだまだ未熟ではありますが……幼い頃から医術に従事する母の手伝いをして居りました。

(多少心得がある。何か手助けになれるかもしれないと、気恥ずかしげに目を細め)

ええ、ほんとうに!
今や私たちを繋ぐ世界のえにしは両の指でも足りぬほど。そんな中で同胞の方と出会えることは、とても幸運なことだと思います。
夜通しの旅でお疲れでしょう。朝食はお済みですか?

(よければ。塔の中で少し休んで行かないかと控えめに告げて)
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ディフ・クライン 2022年4月25日
気遣ってくれてありがとう。そうだね、自分で材料を採りに行くのが好きなものだから。森も山も歩き慣れてはいるかも。行き当たりばったりも多いけどもね。
(猟兵であるが故と、人形という体の特性があるから出来る夜通しの森歩き。知識と腕で経験をカバーする歩き方なので、熟達のそれには少々遠いか)
ともしびの花。そうか、それでほんのり光って見えるんだね。見たことがないわけだ。貴女の故郷で大切にされてきた花なんだね。
(ふわと漂う香りを感じ取って、心地よさげに目を細める。花咲く時を待つ蕾の数を見れば、彼女がどれだけ大切に扱ってきたかが知れる)
綺麗な花だね。けれど、いいのかい? 故郷で護り続けた花の種を分けたりすること。門外不出……というわけではないのかな?
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ディフ・クライン 2022年4月26日
ふふ、ありがとうね。ヒトや友の為に出来ることを探したら、薬学に辿り着いただけさ。多分志というのなら、小さな時分から母君のお手伝いをしていた貴女の方が余程。優しいのだね。
(優しい心根の持ち主なのだろうなと、人形は印象を結論付けた。気恥ずかしげにする彼女に、「また同じだね」と頷いて)
実は、いくつか採取出来なかったものがあるんだ。春宵に実をつける木の実と、傷薬に使うニガヨモギ。それから荊カズラ。夜通し歩いたんだけど、全然見つけられなくって。これら、ヴァルダは聞いたことある?
(鞄の中を改めて確認して頷く。この辺りにあるらしいと聞いたはいいものの、初めて歩いた森だから見つけられなかったのだと肩を竦め)

いや、まだだよ。沢の水を飲んだだけ。じゃあ……お言葉に甘えてもいいかな。代わりに、オレが採取したものでヴァルダが欲しいものがあったらお裾分けするよ。実はいくつか食べられる木の実も採ったんだ。
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年4月28日
うふふ!そうだったんですか。
足の向くまま、気の向くまま。自然に触れながら歩くだけでも、いろいろなしがらみから解かれたような心地になりますから……私も、たまに『いきあたりばったり』をすることがあります。

(おそろいです、と微笑んで。ああ、でも。お転婆な娘だと、呆れられてしまわないかしら?)

はい。もともと、熱病に利く薬になる花なんですよ。
けれど、育て方を知るひとは。もう、母さまだけになってしまって……。
『たくさんの人に知ってほしい』と。それが、父と母のねがいでもあったんです。
ですから、こうして。自分の周りで育てて……色々な場所で、お医者さまをたずねて。そうして、『役立て方』と『育て方』と一緒に、種をお譲りしながら旅をしているんです。

(地味な売り込みでしょう。気恥ずかしそうに目を細めながら)
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年4月28日
いいえ。いいえ。誰かのために、と。手を伸ばすことには、きっととても勇気が要ると思います。
ですから……私の方が、なんて……、あっ。

(また。自分を卑下するような言い回しになってしまった。これはいけない)

……では、そうです。『私たちは、頑張っているのだ』と。認め合うことにする、のは。

(だいぶ恥ずかしいことを言ってしまっている気がする。今度は間違えてないかしら、と。あなたの顔を伺って)

まあ。乾燥させたものでもよろしいでしょうか?冬越えのニガヨモギに、崖の合間に蔦を絡ませた荊葛。どちらも、この子が見つけてくれたんですよ。

(告げて、仔竜に視線を落とした。『まぁね』とばかりに、ちいさな鳴き声が返ってきた)

ええ、もちろんです。……まあ。ほんとうに?
実はいま、竃でパンを焼いていたところだったんです。

(お口に合えば良いのですけれど、と。塔の扉へ足を向けながら)
(仄かに。風に乗って、小麦の焼ける匂いがする)
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ディフ・クライン 2022年5月5日
ふふ、おそろいだ。目的がある散策もいいけれど、目的無く歩くのも楽しいよねえ。逆に思いがけない発見や出会いがあったりしてさ。ヴァルダとは話が合いそうだ。
(相手のありのままを受け入れる人形だ。活動的である様子は好ましいし、散策や薬草の話だけでも会話が弾みそうだと思った)
薬草の一種だったのかい。ふむ……役立て方と育て方と一緒に種を……。
(彼女の話を聞いて一思案。顎に手を当ててやや考えた後、人形は再び穏やかな笑みを浮かべた)
その花の種、オレにも分けてもらえないかな。オレも育ててみたいんだ。うまく育てられたら、薬も作れるしヒトの為に役立てられると思う。
今会ったばかりの人形ではあるけれど……どうだろう、ヴァルダ。
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ディフ・クライン 2022年5月5日
うん、そうだね。その方がいい。頑張っているのはオレだけじゃない。ヴァルダだってそうなのだから、自分の頑張りも認めてあげるといいよ。
オレたち頑張ってる。そう言ったら……なんだか、同志のようで嬉しくならない?
(オレはなるんだけど、なんて悪戯に笑うのは、恥ずかし気にする貴女が笑ってくれるといいなと思ったから。恥ずかしいことなんてないのだと)
勿論。乾燥しているなら大歓迎だ、すぐに使える。
……おや。相棒が居たのだね。はじめまして、探し物が得意な貴方。頼もしいね。
(彼女の足元へと視線を移せば、賢しそうな仔竜。目礼をしてから、ゆるり彼女の後を追う。風が伝える香ばしい香りに目を細めて)
ああ、いい香りだ。なんだか急に食欲が湧いてきた気がする。今日貴女に会えたのは幸運だったかも。
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年5月8日
ええ。とっても!
何も考えず、胸の中をからっぽにして歩いていると。
悩み事も、悲しいことも。ひととき、忘れることが出来るんです。
何も目指していないからこそ見つけられるものもありますから。
それが楽しくて、つい。ふふ、やめられないんです。

(おそろい。返ってくる言葉が嬉しくて、娘は嬉しそうに目を細めた)

はい。昔はよく、ふるさとは人里とも交流を持っていたそうなのですが。
天災に見舞われてしまって……今は密やかに、母さまが花の命を繋いでいたんです。

(思わぬ提案が齎されたなら、娘の陽色のひとみがまあるく見開かれ)

まあ。まあ!ほんとうに?

(人形。自らをそう称することばに、あなたが意思を持つそれであることを理解した。けれど、)

もちろん。もちろん!喜んで、お裾分けさせていただきます。
育て方のこつも。『ご機嫌伺い』のお作法も!
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年5月8日
よかった。
その、私は自分にあまり自信がなくて……今のように、つい卑屈な言葉を口にしてしまうんです。
いま、それを少しずつ直そうとしているところで……そうですね、こちらのほうが嬉しいです。

(擽ったくて。ちょっぴりだけ誇らしくって。照れ臭そうに、娘も笑った)

ええ。あとは煎じてもいいですし、磨り潰しても。あとで小分けにしてお包み致します。

(ちいさな竜は喉を鳴らしてあなたに応じて翼を広げた。『ついてくれば』と言いたいのだろうか)

ふふ、ほんとうに。あなたが森の中で、お腹をすかせて倒れてしまわなくてよかった。
手洗い場はそちらに。地下水を引いてありますから、すこし冷たいですよ。

(告げながら、どうぞと椅子を引いて。自分は厨へと歩を進めた)
(朝摘みのサラダ菜を軽く洗って千切る。ぱり、とした音が心地良い)
(竃のパンはいい塩梅だ。小麦色に焼けたそれを、木皿の上に盛り付けながら)

お茶は、甘い方がお好きですか?
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ディフ・クライン 2022年5月14日
ふふ、わかるよ。
多少危険もあるけれど、夜の森を歩くのもオレは好きだ。木々の隙間から見える星や、生き物の息遣いや鳴き声を聞いていると、酷く心が静かになるんだ。……流石に、レディーに勧めることではないんだけれど。
(静かに、けれど悪戯のように目を細めて笑う。危険なことを勧めるわけではないけれど、森の民と言われるエルフならば――或いはそういうことも慣れているだろうか)
天災。そうか、それは大変だったんだね。ならばヴァルダの母君には感謝しないと。危うく絶えてしまうところだったんだね、この花は。
(命の恩人だ、なんて。花の蕾に指先だけで触れて)
ああ。オレは医師ではないけれど、こうして採取に歩みゆく先で薬として分けていくことも出来る。折角繋いだ花だ。広める手伝いをさせて。
……とはいえ、育て方があんまり難しくないと助かるんだけど。
(なんて、やや不器用のきらいがある人形は少しだけ眉を下げて)
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ディフ・クライン 2022年5月14日
言霊というものだね。良い言葉も悪い言葉も口にした瞬間に力を持って、自分にも他人にも影響してしまう。
そうだね、どうせ影響するなら良い言葉の方がいいさ。貴女がそんな風に笑えるように。
(温かな笑みだと目を細め、人形は彼女と竜の後を歩む)
はは、オレは大気中のマナさえあれば、食事はしなくても倒れることはないよ。そういう風に作られたミレナリィドールだからね。でも人と食事をすることに楽しみを見出してからは、時々お腹がすくんだ。
うん、ありがとう。じゃあお借りするよ。何か手伝えることがあれば言ってね。
(現金だろうなんて冗談めかしてから、冷えた水で手を洗う。ついでに描いた魔法陣で極力森歩きでついた汚れを落とし、人形は鞄から採取した果物をテーブルに置いていく。木苺と金柑だ)
特に好みはないかな。良ければ貴女と同じものを頂けたら。
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年6月17日
真昼の木漏れ日もあたたかく、いとおしいけれど……。
月夜の森の静けさが、私もとても好きです。
不安な気持ちも。寂しく思う心も。木々の囁きや風の歌に耳を傾けているといつの間にか和らいでいて。
ふふ、ご心配は要りませんよ。私にはいつだって、『きょうだい』がそばにいてくれますから。

(キュウ、と短い鳴き声。仔竜の応じる声だ)

はい。何を失っても、奪われても。
せめてこの花だけは守り抜くんだと、母さまは必死に戦ったのだと聞きました。
父さまは植物の声を聞くのがとても上手で、今ではふるさとはともしびの花でいっぱいなんですよ。

(自分が景色を切り取ることのできる端末を手にしていたら、見せて差し上げられたのに!なんて、少し残念そうに)

ありがとうございます。その御心が、何より得難く、そして嬉しいです。
大丈夫ですよ、薔薇の花より気難し屋ではありません。
ああ、でも。でも。『はやおき』の習慣が身につくかもしれませんね。うふふ!
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年6月17日
はい。迷信ではないような気がして。幼いのころの私は、俯いてばかりの子どもでしたから。
胸を張って人々を助けられるようになりたくて、……ふふ、今は修行中です。

(食卓に飾られた花もまた、ともしびの花だった)
(台所から響く微かな音。生活音は、あなたにとって厭わしいものではないだろうか)

まあ。まあ、そうだったんですね。
あなたがこころを持つ存在だからこそ。他者のそれと共鳴して、おなかがすくのかもしれません。

(誰かと食事を囲むことは、楽しいことだから。それをきっと、知るひとなのだろう)
(かりかりに焼いた厚切りの薫製肉に目玉焼き。雫を切ったサラダ菜、昨晩からゆっくり火を入れたトマトのスープ。焼きたてのパンを添えれば、ちょっとした『ごちそう』の完成だ)(……とはいえ人にあまり振る舞う機会はなかった。口に合うだろうか?)

どうぞ、お茶はこちらに。蜂蜜を溶かしましたから、すこし甘いですよ。
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ディフ・クライン 2022年6月27日
森が好きなんだね、ヴァルダ。森と共にずっと生きてきたのかい?
(柔らかに目を細める。彼女の言葉からは森への信頼が伝わってくる。昼も、夜も、森を慈しんできたのだろう)
なるほど、頼もしい『きょうだい』が傍に居るのなら安心だ。……そういえば、彼、名前は?

ふふ、ならばいつか貴女の故郷をこの目で見る時までの楽しみに。まだ花を見る事ができたわけではないけれど……きっと、綺麗なのだろうと想像は出来るよ。
(蕾に触れた指先をそっと離した。それほどまでに大切にされている花だ。きっと美しく咲き誇る。そう確信できた)

ああ、よかった。早起きならば問題ないよ。もともとほとんど眠らないからね。
望む時間に水をあげることならば、オレでも出来そうだ。
(茶目っ気を出した彼女に、にこりと綺麗に笑んでみせる。人差し指を唇にあてて、悪戯に)
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ディフ・クライン 2022年6月27日
その気持ちを忘れないのなら、望む貴女になれるさ。
時折俯いたってまた前を向けばいい。多分、貴女はできるよ。
(大丈夫。そう言い添えて)

(食卓を飾る花に目が留まる。先程外で見た花と同じ葉。ならばこれが、咲いた花か)
(席について目を閉じると、よく音が聞こえる。己だけの生活の中にはない音。それがどこか新鮮で)

こころ、か。
……そうだといいな。そうだと嬉しい。
独りでは食事をする気にならないのだけれど、友となら何度だってと思う。それが『こころ』ゆえだと言うのなら……とても嬉しい。
(そう言って、人形は胸に手を当てた。そこにあるかどうかもわからないものを、感じ取ってみたくて)
(そうしているうちに次々と並ぶご馳走に開いた目を丸くする)
ああ、ありがとう。……こんなにたくさん。いいのかい?
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年7月2日
はい、とても。
多くを森の中で過ごし、時折両親に手を引かれて旅をしながら育ちました。
幼い頃の私は、今よりもっと臆病で……森の外の人々と言葉を交わすことは、あまり出来ませんでした。
(気恥ずかしげに微笑みながら)

この子はアナリオン。太陽に近しいものの名を冠しています。
ちょっぴり気まぐれなところもあるのですけれど……ふふ、とっても頼りになる私の兄です。

ええ、ええ。
いつか。いずれ。お見せできたら幸いです。
外の人を招くには、些か足が不便な場所ですが……長閑で、とても過ごしやすいところですよ。

(木漏れ日はあたたかく、生命に満ち溢れた場所)
(ちいさくて、何もないけれど。花にあふれた、美しい場所なのだと目を細め)

まあ。では、夢に揺られることもあまり?
うふふ!それだけ守れたなら、きっと綺麗に花を咲かせてくれますよ。
すぐに仲良くなれると思います。
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年7月2日
……、(何気なく齎されたそれは。自分を卑下する癖のある娘にとって、得難いものであった。少しの間を置いた後、嬉しそうに顔を綻ばせ)
ありがとうございます。その信頼に、私はきちんと応えなければなりませんね。

(がんばります、なんて。ぐっと両のこぶしを握って見せ)

(花開かせたそれは、淡い光と甘やかな香りを控えめに湛えていた)
(規則的な包丁の音。薪が爆ぜる音。地下水の流れる音。食を本来必要としないあなたには、物珍しい音の数々なのかも、しれない)

ええ。さっき、私を励ましてくださったように。
こころなき命は、ひとにこころを分け与えることも出来ないのではないか……と、私は思っています。
ですから、ディフさんは。きちんとできていますよ。私は、そう感じました。

(卓に着く。あなたと、食事を囲むために)

もちろん!ふふふ、すこし。すこしだけ背伸びして、張り切ってしまいました。
おなかと、こころが。満たされますようにと。
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ディフ・クライン 2022年7月13日
まさしく森の人、か。人見知りは子の性でもあるだろう。あまり気にすることはないさ。
そうか、なるほど。
(彼女に添う竜へと目を向ける。聡明そうな眸に静かな笑み向けて)
改めてよろしく、アナリオン。太陽に近しい、眩しい貴方。

夢は……そうだね。夢を見るのが、少し怖くて。
ああでも。以前、友と一緒に眠った時に見た夢だけは、楽しかったな。
(憂い混じるような、懐かしむような。なにともつかぬ色をベニトアイトの瞳に宿しながら、人形は少しだけ曖昧に笑み返し)
ふふ、ならオレでもちゃんと咲かせられそうだ。咲いたら一番に貴女に見せに来るよ。
(ちゃんと咲かせられたよ、なんていいながら見せるのは、子供じみているだろうか)
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ディフ・クライン 2022年7月13日
うん、頑張って。でも、頑張りすぎずに。貴女らしさを忘れないようにね。
(気負い過ぎて手にしたものは付け焼刃に似る。己らしさのままに得た願いこそ、自信になるだろうから。そう言い添えた)

……オレは貴女に、こころを分け与えられている?
ふふ、なんだかこそばゆいような心地。ありがとう、ヴァルダ。
(卓についた貴女と、向かいあうような形になる。それを嬉しく感じて目を細めるのは、友と囲む食卓を知っているが故だろうか)

心遣いをありがとう。
でもこれじゃあオレのお礼が足りないね。あとで何か貴女の手伝いをするよ。食器の片づけや、必要なら力仕事でも。
でも今は、せっかくの心遣いが冷めてしまう前に……いただきます、ヴァルダ。
(行儀よく、両手を合わせて軽く首を垂れた)
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年7月21日
そう、でしょうか。……幼い頃の私は、父と母の後ろに隠れてばかりだったんです。
長耳以外を知らず、それ以外の種の人々が自分を恐れるのではないか。そんな、『かもしれない』ことにばかり怯えていたんです。

(おかしな子どもでしょう、と困ったように眉を下げ)
(よろしく、と名を呼ばれたなら。くるる、と喉を鳴らして仔竜が応じた。あなたの言葉を、きちんと理解しているようだ)

夢は泡沫。ありもしないことがうつつのことのように浮かびますから。
怖い夢を見たりすると、私もどうしようもなく心細くなります。このまま覚めなかったらどうしよう、なんて。
まあ!素敵ですね、お話を聞いただけでも楽しそうです。
眠たくなるまでおしゃべりをして、いつしか夢に落ちていく。そんな瞬間なら、……不安も薄らぐのではないでしょうか。(どうかしら、なんて)

ほんとうですか?嬉しい、きっとですよ。
季節が巡り、芽吹き、ほころぶ時を。私も楽しみにしています。
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年7月21日
はい。……ふふ!そんな風に誰かにみちゆきを示して貰ったのはいつぶりのことでしょう。
大丈夫ですよ。迷い、悩むことはたくさんありましょうが……見失うことはしますまいと、お約束致します。

(それに。行き詰まった時はこんな風に、話を聞いてもらえばいいのだから)

ええ。ええ。もちろんです!
今は、『うれしい』という気持ちです。うふふ、伝わっていますか?

(きちんと口にすること。それは己を知ってもらうことと同義だ)
(その大切さも娘は学んで来たつもりでいる。あなたと、少しでも分かち合うことが叶うだろうか)

まあ。ほんとうに?
朝食を取ったら陰干ししていた香草や薬草を瓶詰めにしようかと思っていたんです。
……あとで、お手伝いをお願いしてもいいですか?

(遠慮をしすぎるのも良くない。相手の好意は素直に受け取るつもりでいるのか、控えめに提案をして)
(いただきます、と声を揃えて。ややあって、照れ臭そうに。『めしあがれ』と続け)
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ディフ・クライン 2022年8月19日
怯えは期待の裏返しだと、何かの本で読んだことがあるよ。「こうであってほしい」と願うけれど、確信が持てないから不安になって怯えるんだ。
なにもおかしいとは思わないな。子どもが世界を広げていく時は、親の背に隠れながら少しずつ広げていくと聞いたよ。その時の貴女は知らないことに怯えていただけで、今はそうでもないんだろう?
(知らないものを怖いと思う感情におかしなところは何もないと。人形はなんでもないことのように言う。知性高き様子を見せる仔竜に目を細め、お茶に手を伸ばした)

オレの夢はね、記憶なんだ。
ありもしないことを夢に見られたらいいんだけどね。人形だから難しいのかな。
うん、そういう瞬間なら……きっと。ヴァルダだったら、眠るのが不安になった時どうするの? アナリオンと共に眠ったり、友と夜を明かしたりするのかな。
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ディフ・クライン 2022年8月19日
ふふ、要らぬお節介だったかな。貴女はもうちゃんと、自分の中に芯がある。強く育ったんだね。オレが心配することはなさそうだ。
(不安に揺れても顔を上げる強さがあると、そう感じたから。その強さを眩しく思う。月のようで、太陽のようで)

うん、ちゃんと伝わっている。オレにも少し、心が生まれたんだな……。ヴァルダの嬉しいは、ちゃんと、わかるよ。
(どこかしみじみと、己の胸に手を当ててみながら小さく笑った。そこに何かの新芽があるかのように、そっと)

お安い御用。そういった作業ならオレも手慣れている。役立てると思うよ。
(パンに一口大に切ったサラダ菜と燻製肉をのせ、口に運ぶ。広がる芳醇な味わいをよく味わいながら、その提案に頷いて)
うん、おいしい。
……そういえば、ヴァルダ。
聞いていいのかわからないんだけど、ヴァルダはどうしてここに1人で?
(麓に村があると言っていた。そこで暮らしたりはしないのだろうかと首傾げ)
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年9月3日
(ありもしない『もしも』。得体の知れない恐怖は、物知らぬ幼さを蝕んでいた)
(けれど、父も母も。その度に優しく抱き締めてくれた)
(今もはっきりとその温かさを思い出せるから)

私が怖かったのは。ディフさんの仰るように、未知への恐怖だったのかもしれません。
今はそう感じても、大丈夫と言い聞かせられるようになったから。
すこしは成長出来ているといいのですが。

(ちょっぴり自信がない。まだまだ、未熟だと痛感する事の方が多いから)

記憶。……もしかしたら。
『想像の余地』を、ディフさんは夢に運ぶことに慣れていらっしゃらないのかもしれませんね。
眠る回数が少なかったなら、尚のこと。

私は。アナリオンと、それから……もうひとり。アナリオンの母君と共に、宵の空を翔るんです。
頭が空っぽになるくらい、遠く、高く……澄んだ夜の風を受けて、月を、星を仰ぐんです。
そうすると、不思議と気持ちも和らいで。まっさらな自分になれるんです。
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年9月3日
(あなたの様子に、気恥ずかしそうにはにかんだ)
(誰かにこうして認めてもらうこと。それが、こんなにも面映ゆく。嬉しいことだったなんて!)

よかった。これが私の『うれしい』です。……うふふ!
ディフさんもいま。『うれしい』お顔をなさっていますよ。

(あなたが食事を口にする様子を、どこか緊張した面持ちで見つめていた)
(味覚に合うだろうか。ひとに振る舞う機会はあまりなかったから)

ふふ、ほっとしました。お口にあってよかった。
沢山召し上がってくださいね。

(問いかけに、すこしの間を挟んだ)(負の感情では、ない)

先ほどお話した、アナリオンの母君のことです。
その、彼女はアナリオンよりもうんと大きくて……、……村の人たちが怖がってしまうかもしれなくて。
『村の安全を守るから、この塔に住まわせてはくれないか』と。私からお願いしたんです。

(幸い快く受け入れてもらえたのだと微笑み)
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ディフ・クライン 2022年9月8日
不安を自分でコントロールできるようになったってことじゃないか。それってちゃんと成長だと思うよ。
(己では己の歩みの程はわからぬもの。けれどもその外に立っている人形にとっては、小さな歩みに見えるかもしれぬ一歩とて歩んでいることには変わりなく見えるから)
(今日何度目かの、「大丈夫」を贈るのだ)

……想像の余地を、夢に運ぶ?
どういうこと?
(こてりと首を傾げる。人形にとっては聞き慣れぬ言葉であったから。そして、考えもしなかったことであるから)

眠るのが不安になったら、宵の空を翔ける、か。
成程。……いいね、とても気持ちよさそうだ。まっさらな自分か。
(一度手を置いて、目を閉じて想像してみる。貴女が言うように、宵の空を翔けて、風を受けて、空を仰いで――)
そうか。そうしてみたらよかったのかな。そうしたら、少しは――。
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ディフ・クライン 2022年9月8日
(嬉しそうな笑みを眩しく思う。これが「うれしい」ならば、やはり「うれしい」とは太陽や光なのだと知る。そしてそれが己の顔にも浮かんでいるという事実に、少しだけ不思議そうに己の顔に触れ)

本当? 良かった。そんな顔も出来るようになったんだな、オレ。
(よく味わい、飲み込み。今度はトマトのスープを口に運ぶ。どれも温かくて、優しい味わいで。人形の中に味と共に温かさが染み込んでゆくようだ)
(間を置いた貴女のかんばせを、そっと見つめ)

互いの距離を気遣ったのか。
ヴァルダは優しいね。多少の不便もあるだろうに……誰も傷つかない道を探ったのか。

(会話の端々から思っていたことがある。彼女は優しい。本当に。繊細で、優しく、そして一生懸命だ。器用であり不器用で、だからこそ己のような人形にも温かく声をかけたのだろうと判る程に)
(付け焼刃の己など足元にも及ばない。これが、心ある人が持つ本物の優しさか)

……あたたかいなあ。
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年9月10日
そうですね、自分一人だと『なったつもり』でいる事が難しくて。
不安になることも多かったのですが……こうして自分以外のひとに大丈夫だよと言って頂けるだけで、ひとつ成長できたんだなと実感が湧いてきました。

(ありがとうございます、と謝辞を重ねてはにかんだ)

うふふ!すごく抽象的な像ですよね。
例えば、日常に。『こうだったらいいな』とか、『こんなことができたらな』とか。
今の自分には成せないような、ちょっとだけ手の届かないこと。
そんな、目標には満たない『あったらうれしいこと』を想像しながら目を閉じるんです。
そうすると……夢の中に、『その想像の続き』が出てきてくれることがあるんですよ。

……今からでも遅いことはありませんよ。
してみようかな、と思った時が始めどきです!

(ほんの少し。憂いか、自嘲か。諦めにも近い色があなたに浮かぶなら。代わりに自分が笑って見せて)
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年9月10日
ディフさんはほんとうに、ひととの親和性が高くいらっしゃるんですね。
こうしておはなししていても、なんの違和感も感じませんもの。

(つまりはあなたに魂や心に類似した、或いは同等のものがきちんと備わっていると言うことだ)
(あなたはそれを不思議に思っているのかもしれないけれど。娘はそれを好ましく思った)

まあ!そんなことはありませんよ。
私はただ、私の愛する家族が恐れられてしまうことが怖かったんです。
多少の不便はありますが、今はもう夜の見回りもすっかり慣れました。

(そして。麓の人々は次第に、空舞う飛竜を受け入れてくれるようになったのだと続け)
(香ばしく焼けたパンを齧る。不意に溢れたあなたの呟きに、数度目を瞬かせ)

時間を掛けていけば。誠意を示し続ければ。
ひとは分かり合えるのだと、信じたくて……ふふ。
私は一生懸命頑張ることだけが取り柄なので、いつも体当たりなんです。

(格好悪いですね、なんて。照れ臭そうに)
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ディフ・クライン 2022年9月11日
それはわかる。『なったつもり』でいるのもなんだか腑に落ちないしね。
(なったつもりでいられたら、生きていくことを悩まないかもしれないけれど。そう思っておくことで取りこぼすものもあろうから。人形はそれでいいと思う。生きることとは『ままならないもの』だ)

ああ、なるほど。そういうことか。ヴァルダの説明はわかりやすいね。
そういうものを想像することならできるよ。それなら、眠ることが少し、楽しみになりそうな気がするね。
オレにとって眠ることとは怖ろしいことで、出来ることならただ意識を沈め、目覚めと同時に何も夢見ず覚醒できればと思うものだ。
その認識から変えていったら……。

(貴女の笑みに、そっと息を吐く。詰めた息をほどいてもらったように)

まだ、遅くないのなら。
すぐに眠ることは出来ないかもしれないけれど。
でも想像してみるよ、今日からでも。

(簡単に変わることは出来ないかもしれないが。踏み出してみようと思えたから)
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ディフ・クライン 2022年9月11日
そう? ふふ、出来るだけヒトの中に身を置いていた甲斐があった
かなあ。はじめは表情どころか会話や態度をどうすればいいかわからなくてね。たくさん勉強したんだよ。
(そう言って、人形は柔らかに目を細めた。今でこそ笑みを浮かべて会話をすることもできるが、少し前までは人形は自分が浮かべるべき表情もわからなかったと)

夜の見回りまでしているのかい? まさか夜通しで?
……ああほら、ヴァルダ。
そう何度も自分の頑張りを卑下しなくてもいいんだよ。
体当たりでいいじゃないか。それは貴女の勇気だ。

(一口、甘やかなお茶で口を潤してカップを置く)

誠意を示し続けることは簡単じゃない。それをやってのけて、麓の人々の信頼を勝ち得たことは胸を張ったっていい。
オレは貴女のそういうところをとても好ましく思うよ。

(臆面もなくそう言って、人形はカップを置いた。目の前の皿はすっかり綺麗に空だ)

ご馳走様、ヴァルダ。とても美味しかったよ。
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年9月12日
そうなんです、ひとりだと『本当にこれでいいのか』と、迷いが生まれてしまって……しょ、精進いたします!

浮かびましたか?よかったです。
なんでも良いんですよ。『空飛ぶ靴があったらいいな』とか、『冬の夜空が恋しいなあ』とか……、……わ、私がいつもそういうことを考えているわけでは、ないのですが!

(言い訳混じり。慌てた様子で繕うけれど、ちっとも上手に出来やしなかった)

……そう。そう、だったんですね。
時に眠りはひとを傷つけ、不安をかたちにして見せることもありますから。

(無理に語らずとも構わない。ほんの少しだけ。痛みを教えてくれたあなたへ、深くは踏み込まずに微笑み返し)

もちろんです。なにかをはじめるとき、遅かったなんてことはありませんよ。
それでももし、怖い夢を見てしまったりしたときは……。
ふふ。こうして、ひとに話してしまうのがいちばんですよ。

(一番簡単な魔法のひとつ。指でくるりと円を描いて見せながら)
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年9月12日
まあ!凄いことです、誰にでも出来ることではありませんよ。
ひともまた、そうして学んで。間違えながらも他者との接し方を学んでいくのですから。
あなたが思っているより、ずっとディフさんはひとらしいことをなさっているのではないかしら、と思いました。……もちろん、ヴァルダの想像です!

はい、夜も。日付が変わる頃には戻ってくるんですが、ときどきは眠たくて、……?
あっ。は、はい!そうですね、……うふふ、そうでした。
もうすこし自分のことも褒めてあげなくてはなりませんね。

(続く言の葉に目を丸くして。視線を泳がせ、赤くなったり俯いたりを繰り返したのち。声を絞って、)

あ、ありがとうございます。
自分の行いをこんなに褒めていただけるなんて、とても面映く……、……。
……でも。とても、誇らしい気分です。

(きれいに食べて貰えたこと。ごちそうさまと告げてくれること)
(なんでもないこと。だのに、舞い上がりそうなくらい嬉しかった)
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年9月12日
(おそまつさまでした、と微笑んで)
(簡単に後片付けをしたなら、娘はあなたを別室の薬草棚へと案内するだろう)
(鬼芥子の種、泣き根の若芽、糖蜜橙の皮、火牡丹の花粉。遮光瓶や戸棚に入ったそれらには、丁寧にメモ書きが貼られていた)

(夜歩きの成果と共に齎されたささやかなあなたの謝礼は、娘をたいそう喜ばせたことだろう)

(陽はいずれ高くなりゆく)
(別れ際。『また、いらしてください』と、娘は笑ってあなたに手を振った)

(託した花の種をよすがに。再会を願った)
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ヴァルダ・イシルドゥア 2022年9月12日
【Linnam.】
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