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バレンタイン殺人未遂事件

柊・はとり 2022年2月15日


●アポカリプスヘルにお洒落チョコやキラキラしたプレゼントがあると思うか?
 ない。
 多少平和になったとはいえ、ここにあるのは基本、崩壊した文明と果てなき荒野である。
「贈り物がしたい? なら、まずゾンビやヒャッハーがひしめく今にも崩れそうなショッピングモール廃墟に向かって、危険を潜り抜けて素材を調達するところからだな」
 柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は当たり前のようにそう発言すると、いつもやってますよって感じで武装を整え始めた。無情。

 ここアポカリプスヘルでは、世界情勢ゆえの過酷な環境から、乏しい素材を使ってハンドメイドのプレゼントを作り、贈りあう事がバレンタインらしい行事とされている。
 荒野に咲いた花や、落ちている石を加工したアクセサリー等が一般的なようだが、あえて危険な場所に飛びこめば、もうちょっといい素材が見つかるかもしれない。
 ……というのは建前である。
「吊り橋効果ってやつがあるだろ。危険を共にした二人は、何やかんやあって互いを意識しあうようになるとかいうあれ。実際、殺人事件に巻き込まれて生き残った人間の中から、カップルが誕生する率は結構高いぞ」
 猟奇的な探偵の方がそう言うなら、たぶんそうなんでしょうね……そうかな?

「いや別に一人で行ってもいいと思うけどな。死ななければ」
 そう、アポカリプスヘルでは、ただただ強い奴がモテる。無慈悲。
 強い奴がモテるからして、意中の人物から相手にされてない奴が、一発逆転の望みを賭けて死地に突入しちゃったりもするわけで。
 はとりはそんな愚……尊い一般人達の援護に向かうらしい。この荒野で強く生きる一般人達の恋のキューピッドになるのも、また猟兵らしくて良いのではないだろうか。

「まあそんな感じで。準備整った奴から転送するぞ」
 命知らずの世紀末カップル達よ、いざ冒険へ向かうべし。
 死地を乗り越えた先にこそ真実の愛がある、そう信じて――!




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柊・はとり 2022年2月15日
通る自信がなかった。
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