君色ホーカス・ポーカス
#アルダワ魔法学園
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●にじいろと迷妄の影
――アルダワ地下迷宮。
そこは剣呑な気配の渦巻くところ、災魔たちの敵意に満ちる封印の地――である筈なのだが。
「ぷう、ぷぷぅー」
「ぷっぷ、ぷぷ……」
「ぷぷー?」
緊張感のない声を上げながら、にじにじ、ぴょこぴょこ、とろんとろんと。螺旋階段を上ってくる、不思議な生きものたちの群れがあった。
つぶらなひとみ。やわらかなからだ。やさしいいろ。災いなすものからは最も遠そうな、しかし歴とした災魔である。
よいしょよいしょと、懸命に。『ひろってください』と書かれた箱を引きずりながら、上へ上へと。目を合わせれば人の心に訴えるそのまなざしは、今は少し焦っているように見え――なくもなかった。
「ぷ!」
「ぷっぷうー……」
「ぷぷー? ぷぷぷーぅ……」
やがてある階層へ辿り着いた虹色の生きものたちは、安心しきった様子で床へとろりと体を蕩かせた。
――けれど、その背後から迫る貪欲な気配。
その彩りも長閑さももろともに、アルダワ魔法学園の全てを蹂躙しようとする簒奪の魔物が、攻め上ってこようとしていた。
●夢見るようにさよならを
集まる猟兵たちに一礼し、ジナ・ラクスパー(空色・f13458)はさも残念そうに、その不思議な生きものたちの顛末を語り聞かせた。
「恐らく、フロアボスに追われて迷宮を上ってきたのだと思います。本当にかわいらしい子たちなのです。予知の中ではありますけれど、私、あのつぶらな目をつい見てしまって……」
はあ、と溜息をひとつ。けれどそれではいけないのだとふるり首を振り、きっぱりと言い切った。
「でも、災魔なのです。今は確かに害意は見られませんけれど、放っておけば学園の皆様に危険を招くものです。ですから、倒さなければ」
命からがら(?)あるフロアに辿り着いたその生きもの――『にじいろとろりん』たちは、目下の危機を脱し、今はのんびりしているようだ。淋しがり屋な彼らと目を合わせたが最後、ひろってと訴えかけるその眼差しから逃れることは難しいだろう。
むしろ下手に視線を逸らそうとすれば、『ひろってあたっく』の餌食になりかねない。――威力はごく小さいものではあるのだが、心には深刻なダメージを負ってしまうかもしれない。
「ですから、一度拾ってあげてくださいませ。拾ってもらえた、という事実に満足すれば、強く抵抗はしてこないと思います。決して強い災魔ではありませんから」
心満ちたその後ならば、軽い攻撃ひとつで穏やかに還ることができるだろう。
むしろその後を追ってくるものに気をつけて、とジナは言う。
それもまた、不定形の災魔。しかしながら、血肉を喰らうことで相手の経験や姿を奪うその在り方は、とろりん達のそれとは対極のもの。
「ただ、相手が『自分』であれば、誰よりその弱点を知っているのも自分です。或いは戦いの中で、自身の弱点を知ることもできるかもしれませんね」
それでも、ただ経験とするには強敵だ。気をつけてくださいませ、と神妙に告げた少女は、不意にぱちんと手を打った。
「そうです! 皆様が戻って来られる頃に、人気の仕立て屋さん方が魔法学園にいらっしゃるそうなのです。ご存知ですか?」
その名は『ホーカス・ポーカス』。魔法の呪文を屋号に掲げるその仕立て屋たちは、魔法学園の卒業生であるらしい。
蒸気機関と魔法を駆使し、望みどおりの服を仕立ててくれると学生達に定評がある。――あまりの人気ゆえ、学園の片隅に出張店舗を許されるほどに。
「臨時のお店ですから、今回お願いできるのは制服だけなのだそうです。アルダワにはこうと決まった制服はありませんけれど、色々なアレンジをして、世界にひとつだけの制服を作ってくださるそうですよ」
新しい制服にあれこれと迷うのは、消耗した心を浮き立たせるのにぴったりかもしれない。楽しげなざわめきににっこり笑って、ジナはグリモアの淡い光を掌に喚んだ。
「心の準備のできた方からご案内いたしますね。それでは――皆様にご武運がありますように」
まずは揺蕩う虹色のもとへ。ふたつの災魔を乗り越えたなら、学園での楽しいひとときが待っている。
五月町
五月町です。
お目に留まりましたらよろしくお願いします。
●第1章:集団戦(にじいろとろりん)
倒し方はジナのお伝えした通りです。とろりんとのひとときを存分にお楽しみください!
●第2章:ボス戦(???)
姿を模倣する敵です。こちらは純戦風。
●第3章:オーダーメイド学園服を作ろう
魔法学園風の制服をあつらえることができます。
好きな布地を選んだり、仕立て屋たちとデザインの相談をしたり、作ってもらったものを着てみたり。コートやアクセサリー等も購入できそうです。
詳細は冒頭追加をお待ちください。
この章のみ、お呼びがあればジナがご一緒します。
●プレイング受付について
第1章は公開後からプレイングを受付します。
第1章のプレイング締切及び第2章以降のプレイング受付期間は、マスターページとTwitter(@satsuki_tw6)で都度お伝えしますので、お手数ですがプレイング送信前に、締切のお報せがないかの確認をお願いします。
なお、第3章については、最初に送信いただいたプレイングの失効直前までは受け付けたいと思っています。(※描写確約という意味ではありません!)
お連れ様がいらっしゃる場合は、名前/ID、もしくはグループ名の記載をお願いします。グループは5名様くらいまでは頑張りたい気持ちですが、おすすめは2〜3名様です。
また、できるだけプレイングの送信時間を合わせて頂けると、こちらの採用のタイミングが合わずにプレイングをお返しする、といったことも少なく済むと思います。特にグループ参加のお客様はご協力いただけると助かります。
それでは、どなたにも好い道行きを。
第1章 集団戦
『にじいろとろりん』
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POW : とろりんは、ひろってほしそうに、きみをみている。
【ひろってほしそうなまなざし】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ひろってあたっく】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : とろりんは、うったえている。
【拾ってほしい気持ちを訴える鳴き声】を聞いて共感した対象全てを治療する。
WIZ : とろりんは、りらっくすしている。
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【体の一部】から排出する。失敗すると被害は2倍。
イラスト:Miyu
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●さみしさにこたえて
「ぷっぷぷー」
「ぷう……ぷしゅうー」
「ぷぷ、ぷうー♪」
ひとときの安堵を得て、とろりんたちはご機嫌だ。
隣同士ぴったりと身を寄せ合って。ピンク色っぽいもの、青みがかったもの、淡い黄色のもの――淡い虹色はくっついた部分から移りゆき、絶え間なく変化していく。
敵意のかけらもない、長閑な様子ではあるけれど、やがてとろりんたちは哀切な声で鳴き始める。
――なにかものたりない気がする。
「ぷぅ……」
「ぷぷ、ぷうーっ」
「ぷっぷぷーぅ……?」
たりない。まだたりない。さみしい。さみしい。さみしい――。
そんな淋しさは、きっと誰にもあるものだから――いじらしくていたいけな生きものが、追いかけてくるあの黒いものに叩き潰されてしまう前に、自分たちが。
幸せな記憶とともに、さよならをしよう。
依世・凪波
アドリブ歓迎
へへっ、学校ってはじめてだっ!
お前がとろりんか~?
箱前にしゃがみ込み尻尾ゆらゆら
ぷー?ぷぷー?ぷっぷ~♪
『動物と話す』ように鳴き声を真似て一緒に歌う
ツンツンつついて虹色に手を伸ばし
とろとろでやわらかいんだなーっ
箱を持ち上げて拾って
お前らさみしいのか?
このまま一緒に連れて帰ってやりたい、けど…
ダメ、なんだよな…
でもしばらくは俺と一緒に遊ぼーなっ
邪魔にならない場所に移動して
とろりんと積み上げて色を横から『盗み』とってくっつけ
混ぜたり伸ばしたり
とろりんの災いってなんなんだろーなー?
ばいばい…
素早くダガーの一瞬でお別れ
またどこかで一緒に遊べたらいいなっ
さみしさを胸にしゅんと耳と尻尾が下がる
フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓千織ちゃん(f02428)と
アドリブ等歓迎
千織ちゃん、学校だよ!制服をつくるんだ!
ボク、制服って初めてでね、わくわくするんだぁ
どんなのが似合うかなー。デザイン考えてるんだ、ボク!アーティストだからね!
一緒にがんばろね!
笑顔でぴょんと跳ねて迷宮へ
あ、みて千織ちゃん
可愛いのがいるよー
拾っていいのかな、いいよね!
とろとろでかわいいー!ひんやりだよ、ほらほら触ってみて
ふにふに、もにもに
不思議な感触を楽しむ
拾っていいなら館に持って帰りたいくらいだけど、持って帰った途端斬られる未来がみえる!
だからここでお別れ
静かに浮かべる、【女王陛下は赤が好き】
全力魔法にのせて、大きな薔薇を描こう
ぷにっと癒されたね!
橙樹・千織
フレズローゼさん(f01174)と
アドリブ歓迎です
あらあら、そうなのですね
制服なんて何年前に着たでしょう?…なんて考えるのはやめておきましょう
ふふ、今からできあがりが楽しみですねぇ
小さなアーティストさんが微笑ましくてほわほわ
あらほんと、災魔とは思えないほど可愛らしいですねぇ
えぇ、この迷宮内でしたら大丈夫でしょう
このひんやり具合…暑い時期にいいでしょうに……と、ふにふに
館には…持ち帰らない方がいいでしょうねぇ
苦笑しつつ予測した未来に同意する
薔薇に添えるように【剣舞・櫻雨】による破魔の花弁を降らせて
花に囲まれてお逝きなさいな
ふふ、ぷにぷにはいいものですねぇ
●
「へへっ、学校ってはじめてだっ!」
ここがアルダワの地下迷宮か――と、依世・凪波(元気溌剌子狐・f14773)は琥珀色の瞳を輝かせる。
薄暗いフロアの先にきらきらした目を凝らせば、負けじときらきらするものが目に入る。にじいろの光を見つけた瞬間、少年はあっ、と一声上げて駆け出した。
「見つけた! お前がとろりんか~?」
「ぷ……!」
「あっはは、本当にぷーぷー鳴いてる! ぷー? ぷぷー? ぷっぷ~♪」
動物に語りかけるとき、そうするように。機嫌よくゆらゆら尻尾を揺らし、声を合わせれば、とろりんたちも声を合わせてくる。
「ぷっぷ~」
「ぷぷぅー?」
「ぷー、ぷぷ~♪」
「あはは、ちょっとは通じてるのかな!」
何言ってるかはさっぱり分かんないけど――と大らかに笑い、凪波はつんつんとそのからだをつついてみる。
「ぷ!」
「わー、とろとろでやわらかいんだなーっ。あ、色ついた」
指先を染めるやわらかな橙色。あったかい色だと目を細め、よいしょと拾い上げる。
「このまま一緒に連れて帰ってやりたい、けど……ダメ、なんだよな」
だからせめて、しばらくは一緒に遊ぼうと凪波は笑いかける。一匹、二匹、崩れるそばからもう一匹、ととろりん達を積み上げて、一匹のいろを盗ってはもう一匹へ返し、また盗っては別の一匹へ返し――混ぜてみたり、伸ばしてみたり。ひと色で寂しくないように、にじいろに染め上げながら、
「とろりんの災いってなんなんだろーなー?」
悪意のかけらも見えない姿に、そう思わずにはいられない。けれどきっと、戦う力を持たない一般人には、こんな弱い魔物すら脅威になるのだろう。
「ぷぷうー……♪」
「ん! もう満足したよな。……またどこかで、一緒に遊べたらいいなっ」
『ぷー!』
掠めた一閃に、とろりんたちが消えていく。
しょんぼり下がりかける凪波の耳と尻尾を、ほんの少しだけ上向かせようとするように。元気に揃った満足げな鳴き声は、いつまでも耳の奥で余韻を響かせていた。
「あ、みて千織ちゃん、可愛いのがいるよー」
兎耳隠した苺ミルク色の髪をぴょこりと揺らし、フレズローゼ・クォレクロニカ(夜明けの国のクォレジーナ・f01174)はぴょん、とにじいろの前に跳び込んだ。
「あらほんと、災魔とは思えないほど可愛らしいですねぇ」
好ましげにツシマヤマネコの耳を揺らして、橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)はふんわりと微笑む。
「ぷぷぅ」
「聞いた? ぷぷぅ、だって! 拾っていいのかな、いいよね!」
「えぇ、この迷宮内でしたら大丈夫でしょう」
掬い上げればひんやり、とろとろ。おぼつかない輪郭も定まらない顔も、なんとも愛しくて。
「かわいー! ひんやりだよ、ほらほら触ってみて!」
「このひんやり具合……暑い時期にいいでしょうに……。もし連れて帰れたなら、重宝しそうですけれど」
「ほんとだよね、ひやひや!」
ふにふにもにもに、容赦なく触るふたりの手を、とろりん達はどうやら喜んでいる様子。
館に持って帰りたいなあ――フレスローゼの脳裏にはついそんな思いも過るけれど、災魔ゆえにそれは叶わぬこと。それに、
「持って帰った途端斬られる未来がみえる!」
「……ええ、持ち帰らない方がいいでしょうねぇ」
口許を抑え可笑しげに、少し困った笑みを浮かべる千織。思い浮かべた光景は、どうやら同じだったようだ。
「仕方ないよね。さ、ここでお別れ――枯れ木に花を咲かせるように、君たちとは違う《赤》の世界を描きだしてみようか!」
「ええ。共に散らさん、汝が魂……花に囲まれてお逝きなさいな」
フレスローゼが花束模した絵筆を振れば、描き出される大きな大きな赤の薔薇。自分たちの持つやわらかな色とは対照的な、鮮やかな赤ひと色が空を飾るのを、とろりんたちは珍しそうに見上げている。
そして重なる、山吹と八重の櫻。千織の手に舞い踊る『藍焔華』が散らしたふたいろが、とろりんたちを覆い尽くし、
「ぷぷうー……!」
楽しげな鳴き声が、花嵐に包まれ消えていく。辺りに集まる数匹を無事に還した二人の頬には、達成感が浮かんでいた。
「ふふ、ぷにぷにはいいものですねぇ」
「ぷにっと癒されたね! うーん、早く制服をつくりたいなあ!」
アーティストだから、デザインは色々考えてるんだ――と、逸るフレスローゼの心は声に溢れて止まらない。
「ボク、制服って初めてでね、わくわくするんだぁ」
「あらあら、そうなのですね。ふふ、今からできあがりが楽しみですねぇ」
何年前に着ただろう――と考えるのはやめることにして、千織は小さなアーティストを微笑ましく見守りつつ、一言。
「ですが、その前に」
「うん、もうひと仕事! 千織ちゃん、一緒にがんばろね!」
そう、この後に訪れるという黒い影を忘れてはいない。
怖い災魔をしっかり倒して憂いなく、心ゆくまで流行りの仕立てを堪能するのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
都槻・綾
f01982/咲さん
――おいで、
穏やかな笑みで
片膝ついて両手を広げ
寂し気な眼差しで見上げてくるとろりん達を抱き上げる
水飴のような
花蜜のような
雨上がりの雫のような
透き通る七色は優しい彩りに煌いて、
……ですが、
如何に愛らしくとも
連れて帰ることは叶わぬ過去の影
ゆるり首を振り
小さく落とす吐息
傍らの咲さんは
もっと悲しい顔をしているかもしれないと
視線を向ければ目が合って
柔らかに微笑み交わす
斯様に綺麗な姿ですから
嘗ては素敵な夢を見た生きもの達だったのかもしれませんね
腕の中で
たぷたぷ眠たげに幸せそうに揺れる彼らを
そっと撫でるのは
花の香りに満ちた馨遙
再び眠りに就く海で
春風に包まれる如く温かな夢が見られますように
雨糸・咲
綾さん/f01786
箱に書かれた文字を見て
綺麗な虹色にちょこんと付いた瞳を見て
こちらまで何となく、
寂しい気持ちになってしまいます
綾さんの腕の中
少し安心した様子のとろりんさんの
小さな手を握って
ご主人様がいたら
寂しくなくてすみますものね…
つぶらな瞳に向けた笑みは、そのまま綾さんへ
ひとつ頷き、
もしかしたら昔は
優しいひとの元で暮らしていたのかも知れませんね
痛い思いはしないよう
送り届けてあげましょう
辿り着いた遠い海でも心晴れやかでいられることを祈って
柔らかな動作で杖振り
優しい花の香に乗せるのは、菜の花の雨
明るい黄色に包まれて
少しでも彼らの寂しさが紛れるように
真宮・響
【真宮家】で参加。
おやおや、色とりどりのとろとろした子達がたくさん。寂しいのかい。
瞬を拾った身としては拾って欲しい視線にはとても弱いんだよね。
しっかり向き合って、送ろうか。
とろとろしてるから、汚れる事確定だけど、そんな事関係ない。今ここに寂しがっている子達がいるんだ。しっかり拾って、抱きしめて、頭を撫でてあげようかね。
そして充分に可愛がってあげたら、お別れの時間だ。痛みが長く続かないよう、【竜牙】でひと思いで薙ぎ払うよ。
真宮・奏
【真宮家】で参加。
ああ、虹色で可愛い子達が縋るような視線を向けてきますっ・・・寂しいんですね。視線をそらさず、対応しますね。
とろりんが視線を向けてきたら、間髪入れず抱き上げます。べとべとして服が汚れますけど、そんなの気にしません。寂しい気持ちが癒されるなら何だってしますとも。
寂しい気持ちが癒されたようなら、名残惜しいですけど、お別れです。【信念の一撃】で一瞬で終わらせますね。痛い時間が短く済むように。
神城・瞬
【真宮家】で参加。
うう、1人取り残されていた所を拾われた身としては、拾って欲しいという感情は良く分るんですね・・・災魔とはいえ、僕と同じ感情を持っている子がいるとなるととても放って置けない。何とかしましょう。
とろりんの縋るような視線を見て昔の僕はこんな視線を向けたのだろうかと思いながら、丁寧に抱き上げます。寂しかったんですね。もう大丈夫ですよ。と存分に撫でてあげます。服の汚れなど気にしません。
存分に撫でたら、【氷の槍】で骸の海に送ってあげます。せめてとろりんが安らかな想いで逝けることを祈ります。
●
「おやおや、色とりどりのとろとろした子達がたくさん」
寂しいのかい、と口にするより早く、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は高い高いでもするように、軽々ととろりんを抱き上げていた。
淡い色のシャツがにじいろに染まろうと、欠片も気に留めることはない。笑みを浮かべ、ぷぷっ、と喜びの声を上げるとろりんをしっかりと抱き締める。
拾って、と訴える子が――寂しがっている子が今ここにいる。抱き上げ、抱き締め、撫でてやる理由など、響にはそれ以外に何も要らない。――いつか息子にそうしたように。
そんな母親の姿ばかりでなく、心根までも映したように、真宮・奏(絢爛の星・f03210)の手も迷いはしなかった。
「ぷー……ぷぷぅ……?」
「ああ、虹色で可愛い子達が縋るような視線を向けてきますっ……寂しいんですね」
ぺとり、と服の上に張り付く感触も気にならない。響と揃いの紫の瞳は、とろりんたちを慈しむように見つめ、微笑んだ。
「大丈夫です。寂しい気持ちが癒されるなら、私、なんだってしますから」
そんな二人の姿は、神城・瞬(清光の月・f06558)の光だ。命の気配の耐えた里にひとり、取り残された自分を拾ってくれた人たち。
「……拾って欲しいという感情は良く分かります」
とろりんが自分たちへ向け来る眼差し。幼い頃の自分は、このとろりんのように縋りつく眼差しをあの二人へ向けていたのだろうか。瞬は小さなとろりんに手を伸ばし、とろりと流れ落ちそうになるからだを丁寧に、几帳面に抱き寄せた。
悲しくて、心細くて。かつての自分と同じ感情を持っている者を、放ってはおけない。それがたとえ、災魔であってもだ。
「寂しかったんですね。……もう大丈夫ですよ」
その振舞いが、心が、既に彼の光に溶け込んでいることを彼はまだ気づいていない。優しい青年のものへと成長した瞬の手を、響は穏やかに見守っていた。
「……優しい子に育ったね」
「えっ?」
「いいや、何でもないよ。さ、そろそろこの子たちも満足した頃だ。どうするべきか、分かってるね?」
奏と瞬は顔を見合わせる。――それは勿論、
「寂しい気持ちが癒されたなら……お別れ、しなければいけませんね」
「ええ……せめて、とろりんが安らかな想いで逝けるように」
そして叶うなら、痛みを感じる時は短い方がいい。心を合わせ、兄妹は抱き上げたとろりん達へ切っ先を振り下ろす。触れたかどうか、その感触が微かに感じられたと思ったときには、
「ぷぅー……♪」
満ち足りた声の余韻を残して、二匹のとろりん達は消えていた。
心を痛めながらも、正しいことを選び取れるように成長した子どもたちを眩しそうに見守って、
「ぷ? ぷぷう……」
「そうだね、アンタもさよならの時間だ」
響はもう一度、ぎゅっと強くとろりんを抱く。
いつもなら燃え盛る心のまま猛る剣も、今日は凪いでいる。けれど迷えば、痛みを生むだろう。それが長く続かないようにと、響は躊躇いなく刃を振り抜いた。
――悪意なきものを還すには、その一閃で充分だった。
『ひろってください』――。
やわらかな色で箱に書かれたその文字は、雨糸・咲(希旻・f01982)の心をきゅっと締め付けた。
「……何となく、寂しい気持ちになってしまいますね」
物言わず、ただ凪いだ笑みと頷きで共感が示される。傍らの男は言葉ならざるものでそれを示した。
「――おいで」
「……ぷぷう?」
咲の傍ら、膝をつく都槻・綾(夜宵の森・f01786)の面には穏やかな笑みがある。広げた手に誘われて、とろりん達はぴょこぴょこと遠慮がちに、しかし幸せそうにその胸の中へやってきた。
祭りに見かける色に染まった水飴か、花々の上に結んだ露か――はたまた雨上がりの虹を映した雫とでも言おうか。透き通る七つの彩りに、綾はさまざま連想を働かせる。そして同時に、知ってもいる。
色宿しはすれど、染まりきることはない優しげなもの。その姿はいかにも愛らしいけれど、連れ帰ることは決して叶わないのだと。
秘めた思いを零すのは吐息のひとつに留め、より深い悲しみの中にあるのではないかと傍らを見遣れば、自分へと伸ばされるとろりんの手――と思しきもの――をそっと握り返してやる咲の顔は、思いのほか気丈なものだった。
「拾ってくれるご主人様がいたら、寂しくなくてすみますものね……愛情を求めて、手を伸ばしてしまうのもわかります」
つぶらな目を見つめ返す胡桃色の瞳は優しく和いで、深い共感から逃げることなく向き合っている。
「斯様に綺麗な姿ですから、嘗ては素敵な夢を見た生きもの達だったのかもしれませんね」
「ええ。もしかしたら昔は、優しいひとの元で暮らしていたのかも」
小さく頷いた咲の視線の先、たぷり、とぷりと、腕の中に微睡むとろりん達を綾の指先が撫でる。そこに招く夢路の香は、花。――過去の海に再び沈み、深い眠りに就くのなら、その夢こそは温かに春の風で彩られるようにと。そう告げる男に、
「そうですね。痛い思いはしないよう、送り届けてあげましょう。辿り着いた遠い海でも、心晴れやかでいられることを祈って」
咲はましろの杖をふわりと振り動かした。同じ思いに添わせる術は、菜の花の雨。春のきいろ――彼らの纏う柔い彩りに溶け込みそうなその色は、少しだけ寂しく辿りゆかねばならない旅路を、きっと明るく、朗らかなものに染めてくれる。
「ぷぷ……ぷすぅ……」
――それは小さな笑いのような、やすらかな寝息のような。
最後に受け止めた幸せを証す声を残して、とろりんは長い旅に出る。
ふたりは穏やかに眼差しを並べ、その旅路を見送っていた。――綾の胸を、咲のゆびさきを染めた優しい色、それ以外のすべての彩りが、地下迷宮から消え失せるまで。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ディフェス・トロイエ
フロアボスが
不定形の災魔で血肉を喰らって
相手の経験や姿を奪う……か
まさか、にじいろとろりんが
寂しがり屋の度を超えてとかで
フロアボスになってしまうから
その前に………ってことはないか
考えすぎだな
にじいろとろりんを拾った後
抱っこにしろおんぶにしろ
少し揺すってあげたら落ち着くだろうか?
抱っこの時は少し心苦しくなるが
ダガーでひと思いに…
おんぶの時は流石にできないので
誰かに手伝ってもらってもいいだろうか?
御縁・弥永
ほんまに拾ってまいたいわ…。
いや、あかへんのやけど!連れて帰らへんけど!
ほんでもまぁ、一緒に過ごしとるときくらい幸せになってほしいな。
_
みつけたで。
はじめまして、とろりんはん。
…かわええこやねぇ。
なぁ、あんさん。うちに拾われてくれへん?
拾ったら、少しの間遊んであげよう。
その終わりには抱きしめて、「ありがとう」を。
幸せな気持ちのまま還れるように、一瞬で倒そう。
○アドリブ歓迎
雲烟・叶
おやおや、何ですかねコレ
君たち、スライムとか言うののお仲間です?
とりあえず、拾えば良いんでしたっけ
……何とも言い難い手触りですね
とろとろもにもにした、何かこう、……やっぱりスライムじゃねぇんですか君たち
抱き上げて、摘んだり撫でたり伸ばしたり
気が付いたら足元にも集られているが、もにもにもにもに
手触りが気に入った
まだまださびしがりのために管狐たちを喚んでおく
あるかなしかの滑らかな手触りの、小さな煙の狐たちが飛び遊び回る
……自分の手段の中に、苦しませずにさよならするものが殆どねぇんですよね
無抵抗な生き物相手にじわじわ行くのもあれなんで
【呪詛、誘惑】で深い眠りにつかせ、管狐の呪炎が一気に燃やし尽くす
●
「おやおや、何ですかねコレ」
値踏みするように目を眇めれば、目端に刷いた朱はよく映えた。雲烟・叶(呪物・f07442)はまじまじと、足許を埋め尽くすにじいろを見遣る。――そして、見つめ返される。
「ぷぷー?」
「ぷぷっぷ、ぷしゅうー」
「君たち、スライムとか言うののお仲間です?」
「ぷぷ?」
答えが返る訳もなく、別に期待もしていない。無造作に抱き上げて、白い指先でもにもに――もにもに。
摘んでも撫でても伸ばしても、されるがまま。ひんやりとろとろしたその生きものは、なんだかひどく幸せそうに鳴いている。
「ぷぷー……♪」
「……やっぱりスライムじゃねぇんですか君たち」
何でもいいけれど、この手触りは気に入った。気づけばブーツに纏わりついているそれらのもとへ、叶はしゃがみ込む。もにもに待ちの列に、艶麗な衣装もどんどん汚されていくけれど――別段気に留めることもない。
「洗えば落ちるでしょ。……あーこらこら、順番待てねぇんですか君たちは」
背中がひんやりすると思ったら、外套を這い上られていた。気を悪くした訳ではないが、むにっとその一匹の頬らしき場所を引っ張ってやった。――幸せそうな鳴き声が返る。どうも仕置きにはならなさそうだ。
「この執着はそう簡単に晴れそうにないですかねぇ……」
寂しさか、と目を伏せて、叶は煙管に薄い唇を添え、離した。ふうと細くくゆらせた紫煙に、数多の管狐たちが躍る。
叶が採れる手の中に、苦しませずに別れを告げられるものは殆どない。『曰くつき』の身ゆえと受け容れてはいる、けれど無抵抗の――少しばかり気に入った生きものの首をじわりと真綿で締めるのは、なんとも居心地が悪い。
「せめて眠りからってことで、御容赦くださいな。落ちる間際まで存分に遊んでいくといいですよ」
「ぷ……ぷぷぅ……」
管たちとの『遊び』は深い眠りへの誘い。叶の持つものの中ではまだ柔いその呪詛に、落ちたところを狐火で還す。
「さよならですよ。いい夢を」
――ぷぅ……、と零れて消えた鳴き声は、幸いを含んでいた。気づかれぬほどの一瞬、口の端をごく微か吊り上げて、男は振る指先で管たちを掻き消した。
「血肉を喰らって相手の経験や姿を奪う、不定形の災魔……か」
ディフェス・トロイエ(まっくろくろすけ・f10983)の青い瞳が憂いを帯びる。
迫る危険はまだ先のことと聞いてはいるものの、思考は備えに動こうとする。――というのも、目の前を過るにじいろが、あまりに危機感が薄いせいかもしれない。
「……まさか、にじいろとろりんが寂しがり屋の度を越して、フロアボスになってしまう……とかじゃないだろうな」
いやそれはない、考え過ぎだと首を振りつつ、ディフェスは何気なく足許に寄ってきた一匹を拾い上げる。――グリモア猟兵も『追われてきたのだろう』と言っていたではないか。
「ぷぷうー……♪」
その割には緊張感の薄いその生きものは、ディフェスの腕に素直に収まり、幸せそうに瞳を蕩かせている。まるで人の子どものように優しく揺すられ、拾ってもらえた安堵の中にとろとろと微睡む様子を間近に見れば、
(「……心苦しいものだな」)
苦さが胸を上ってくる。けれど、このままにしておく訳にはいかないのだ。
「疑って悪かったな。お前はいい子だ。……悪く思わないでくれ」
「ぷう……?」
せめて一瞬で終われるように。殺気を帯びることさえなく、素早く迫った切っ先が触れたとたん、
「ぷぷっ、ぷー……!」
とろりんはくすぐったそうに身を震わせ、ぱちん――と弾けて消えていく。儚くも幸せそうなその終わりを見送ったディフェスの背に、御縁・弥永(ただのお狐さん・f09539)は仕方ないんよねえ、と思いを寄せる。
「幸せそうだったんよ。……そうやね、せめてうちも、一緒に過ごしとるときくらい幸せになってほしいな」
銀の毛並みをゆるり流して、弥永は少年のような腕をそっと床の方へと伸べる。
「ぷぷぅー?」
「みつけたで。はじめまして、とろりんはん」
呼びかけた途端、その眼差しがぎゅっと弥永を惹き付けて離さない。
(「ああ、ほんまに拾ってまいたいわ……いや、あかへんのやけど! 連れて帰らへんけど……!」)
理性を維持するのに大変な気力を使いながら、弥永はにっこり笑いかける。
「なぁ、あんさん。うちに拾われてくれへん?」
「ぷ……!」
それは刹那のことではあるけれど。ぷるぷると震えるからだを伸ばし、とろりんは弥永の手に触れた。ひんやりとした感触を掬い上げ、その眼前にひょこっと尻尾を振ってみる。
「ぷ?」
今度は逆に、ひょこっと。
「ぷぷ……!」
弥永の左右を出たり消えたりするふさふさに、哀しげな鳴き声はいつしか楽しげなそれに変わる。かわええこやねぇ、と目を細め、弥永は最後にぎゅっと抱きしめてやった。帯びるにじいろに、着物が染まるのも構わずに。
「ありがとなあ。楽しかった?」
「ぷぷ!」
「そうかそうか。……幸せな気持ちのまま、お還りな」
「ぷう……♪」
身に帯びた焔のいろの中、満足そうな吐息を残し、とろりんはふわりと溶けていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
終夜・凛是
……来るつもりなかったんだけど
話きいちゃったから……仕方ない
にじいろとろりん……ちょっとまぬけな顔してる
目に付いたとろりんの傍に寄って話しかける
話ができるかはわかんないけど、なんとなく…言いたいことはわかりそう
ご機嫌? さみしい?
そっか…だっこ
だっこ、してほしい?
俺、上手にだっこできないけどいい?
ん、と手を広げ、本当に抱っこしてほしそうなそぶりなら抱き上げる
満足できるなら、まぁいいか…きっと、これでいい
このあと、倒しちゃうけど
お前のさみしいの、埋まるかなぁ…
満足したら、攻撃してさよなら
俺もちょっとさみしい
会いたい人に会えなくて
…今も会えて、ないけど
俺の心の、空虚さは、ちょっと減った…と、思う
メーリ・フルメヴァーラ
にじいろとろりん!初めて見た、すごい!
しゃがんで頬杖ついて見つめてしまう
アルダワの迷宮はいろんな生き物がいるよね
全然飽きなくて面白いの
色がいろいろ混ざってるねえ、すごい
拾って欲しいの?
鳴き声が聞こえたらそうかと首肯
じゃあメーリが拾ってあげる!
どうしよう何して遊ぶ?
この階層はもういっぱい歩いた?
まだだったら一緒にお散歩しよ
箱を抱えて鼻歌交じりに歩き出す
ここ分かれ道だ!ねえどっちがいい?
意見聞いてじゃあそっち行こうと進んだり
橋みたい!通路細い!
ちょっとした冒険気分で踵が弾む
でもさよならするのさみしいね…
他の強いやつに痛い思いさせられるの悲しいし
メーリともばいばいしよ
今度会えたら本当に友達になろうね
●
(「……来るつもりなかったんだけど」)
地下迷宮に溜息が落ちる。気のない尻尾をゆらり、垂らして、終夜・凛是(無二・f10319)は進まない足を進める。話を聞いてしまったからにはもう、仕方なかったのだ。そう自分を宥めながら。
「ぷ、ぷぷー?」
虹色の、とろんと床に広がるからだ。二つの小さな小さな目。初めて見るにじいろとろりんは、
(「……ちょっとまぬけな顔してる」)
それでいてもの言いたげな眼差しから目を逸らさずに、凛是は視線の合ったその一匹の傍に片膝をつく。
「ご機嫌? さみしい?」
「ぷぅ……」
どことなく、人がそうするのを真似るように。柔いからだを広げ、求めるように伸ばしてくる。ふるふると震える視線に、そっか……だっこ、と小さく呟き落として、
「だっこ、してほしい? 俺、上手にだっこできないけどいい?」
「ぷ!」
ん、とただ広げた凛是の手のかたちはぎこちなくて――けれど、とろりんは黒い瞳を輝かせる。ぴょこぴょこ、とろん、と腕の中に収まったそれはひんやりと冷たかったけれど、
「ぷうー……」
暖かく蕩ける鳴き声に、指先や胸元が七色に染まるのも構わず、ぽん、ぽん、とからだを叩いてやる。
「これでいい? ほんとに? お前のさみしいの、埋まるかなぁ……」
「ぷぷぅ!」
「そっか。……なら、これでいい」
凛是はとろりんを抱く手の一方に、じゃら、と暖かな――少し寂しげな花色の数珠を握り込んだ。
凛是も同じ。少しさみしいのだ。会いたい人には会えなくて、今だって会えないままで。
けれど、たくさんのささやかな出会いで少しだけ広がった世界が、隙間を埋めていく感覚がある。心の空虚さは、ほんの少し減ったような気がする。そんなふうに、
「……お前のさみしいのも、埋まれば……いいな」
ぎゅっと、抱き締める続きのように力込めた拳に、
「ぷぅぅー……♪」
残された、さも幸せそうな声は答え。受け止めて、うっすらとかすかに笑った凛是の前で、にじいろは淡く弾けて消えていった。
「にじいろとろりん! 初めて見た、すごい!」
「ぷぷぅ?」
輝石めいた瞳を好奇心できらきらと輝かせ、メーリ・フルメヴァーラ(人間のガジェッティア・f01264)はにじいろたちの前にしゃがみ込む。
アルダワの迷宮の生き物たちはさまざまで、メーリを飽きさせない。災魔だということはちゃんと分かっているけれど――ちょん、とその鼻先をつついた指先は、ピンクに染まった。
「色がいろいろ混ざってるねえ、すごい! ね、拾ってほしいの?」
「ぷぷ……ぷぅー……」
ふるふると震えるからだ、哀切な声。ひろってあたっくが来る前に、そうかと頼もしく頷いて、
「じゃあメーリが拾ってあげる! どうしよう何して遊ぶ?」
「ぷ……!」
『ひろってください』と書かれた箱ごととろりんを抱え上げ、メーリは笑う。
「この階層はもういっぱい歩いた? まだだったら一緒にお散歩しよ」
あちらこちらへ伸びる通路を進めば、ささやかな探検気分。ふんふふん、と零れる鼻歌に、いつしかぷーぷぷぅ、とご機嫌な鳴き声が合唱して、思わず綻んでしまう。
「ここ分かれ道だ! ねえどっちがいい?」
「ぷぷっ!」
「こっち? じゃあそっち行こう、って通路細い! わわ、暴れないで落としちゃうー!」
橋のように細い通路をふたり進んで、冒険気分。鼻先に重なるリズムに、躍るこころのように踵も弾む。
けれど、ちゃんと知っている。これは限りある旅なのだ。楽しかったその分だけ、さよならはさみしい。けれど何もしなければ、追ってくるという影が、楽しそうで幸せそうなこの子のことも蹴散らしてしまうだろう。
この子が痛い思いをさせられるのは、いやだ。額を寄せ、よし、と心を決める。きっと目の前のとろりんの色が移ってしまったのだ――少しだけせつない青に瞳を染めて、それでもメーリは笑う。
「メーリともばいばいしよ」
「ぷ……」
「ね、今度会えたら、本当に友達になろうね!」
「! ぷぷー……!」
溢れ出す魔力の星の輝きに、朗らかな約束に、とろりんはきらきら笑って消えていく。――メーリの額にひとつ、約束の青を残して。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
東風・春奈
【二羽】
『トリノさん』(f14208)と一緒に、とろりんを倒しましょうー
心を鬼にしましょうねー
「まあ、本当。とってもかわいいですねー」
と両手を合わせましてー
「ふふー、仲良くなれたら嬉しいのですが、どうでしょうかー」
と、とろりんを見つめましょうー
「とろりんと仲良くなるコツなどありますかー」
とトリノさんにうかがいますー
普段動物とはなかなか仲良くなれないのですがー、とろりんとは仲良くなれたら嬉しいですねー
集まったとろりんを次々に撫でてあげましてー
最後は一緒に「さようなら」ですー
皆さんを虐めた悪い災魔は、きっとこらしめてあげますからねー
口調;句や節の末尾を「ー」で伸ばしますー
台詞アレンジご自由に
色採・トリノ
【二羽】ハルちゃん(f05906)と
あらあら、逃げてきちゃったの
そう、そう、さびしかったわね
とろりんちゃんをだっこして、あやしてあげる、わ
めいっぱい、甘やかしてあげちゃう
ハルちゃん、見て見て
この子たち、カラフルでとってもかわいい
にっこり笑って抱っこした子を見せるの
ハルちゃんは、とろりんちゃんと仲良しかしら?
仲良くなるには、そう、ね
驚かさないよう優しく、こっちも気持ちを柔らかくしたらいい、かしら?
集まったとろりんちゃんは、順にだっこしてあげて
でも、残念だけれど「さようなら」しなくちゃいけないのよ、ね
生まれながらの光で痛くないようにして、そっとさようなら
さて、さて、悪い子のところに行きましょう、ね
月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と
アルダワの迷宮は本当に色んな生き物が…(しみじみ)
なんかラナさんの作るお薬みたいな綺麗な色ですね
…色だけですよ、中身はちゃんと違うってわかってますから
…あ(目が合った)
拾ってあげれば満足するって言ってたけど…本当かな?
目が合ったやつにそっと手を伸ばし、撫でる
大丈夫そうなら両手でそっと持ち上げて…抱っこ?
ちょっとひやっとするけど、確かにこれは可愛い、かも
ラナさんが抱っこしてる子も可愛いです
本当、災魔じゃなければ連れて帰りたい生き物が一杯ですね
暫く抱っこして撫でて
少し名残惜しい気もするけど、頃合いを見計らって攻撃
躯の海に帰る前に少しでも
あったかい気持ちをあげられていればと
ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と
わ、可愛い
一目見て思わず笑顔に
ふふ、私のお薬あんな綺麗な色してますか?
でもとろりんさんのほうが可愛いし、不思議な魅力がありますよ
目が合ったら思わずきゅんとして
どうしましょう蒼汰さん、可愛いです!
本当に拾い上げるだけで良いんですか?
少しひんやりするのが、今の時期に気持ち良いですね
ふふ、一瞬と言わずこのままお家に連れて帰りたい
蒼汰さんが優しくとろりんさんと戯れている姿に微笑みつつ
蒼汰さんの抱いてる子も、ちょっと違う色合いで可愛いですよね
皆ちょっとずつ違うのも不思議
ちゃんと覚悟は決めています
最後にはきちんと攻撃を
ひと時でも、幸せをあげられていたら嬉しいですね
●
「まあ、とってもかわいいですねー」
ぱちりと掌を合わせ、東風・春奈(小さくたって・f05906)はそっと、話に聞いた見慣れぬ生きものたちの前に膝をついた。
「ぷ?」
「ふふー、仲良くなれたら嬉しいのですが、どうでしょうかー」
「ぷぷーん!」
にこにこと優しい眼差し、向けられる掌。ぷるぷると身を震わせて、とろりんは喜んでいるようだ。ひんやりと触れてくるやわらかな感触に、春奈は思わず笑ってしまう。
「あらあら、そう、逃げてきちゃったの」
その隣に、同じく膝ついて。色採・トリノ(光に溢れ・f14208)は七色躍る乳白色の瞳を和らげ、その指先を差し出した。
ひろってと手を伸ばすとろりんたちの淡く賑やかな彩りに、無垢な純白の装いが染まることさえ楽しむように。多くの色を心に持つトリノは、寂しがり屋たちを躊躇いなく胸に抱きあやす。
「ぷう、ぷぷぅー」
「そう、そう――さびしかったわね」
よしよしと甘やかす手に、たちまち蕩けるとろりんたちの眼差し。
「ハルちゃん、見て見て。この子たち、カラフルでとってもかわいい」
「本当ですねー、もうすっかり仲良しですー。……トリノさん、とろりんと仲良くなるコツなどありますかー」
なにしろ普段、動物とはなかなか仲良くなれない春奈なのだ。誰かに拾って欲しいと訴える、動物よりはおそらく強いだろう――たぶん、きっと――とろりんなら、打ち解けることもできるかもしれない。
問いかける春奈の瞳に、もう仲良しに見えるけれどとにっこりしつつ、そうねと心に浮かべたことは、
「驚かさないよう優しく、こっちも気持ちを柔らかくしたらいい、かしら?」
「気持ちを柔らかく……ふむふむ、なるほどですー」
「ぷぅ?」
もにもにと撫でる手と眼差しにほんの少し、柔らかさを加えてみれば、とろりんたちは不思議そうに、けれどやはり嬉しそうに春奈に縋りついてくる。
「たくさん遊びましたから、そろそろ、『さようなら』ですねー」
「そう、ね。残念だけれど『さようなら』しなくちゃいけないのよ、ね」
最後は寂しくないように、みんな一緒に。春奈はコンソールへ回す電力を僅かに指先へ集める。現れたエフェクトにくすぐられ、ぱちん、ぱちんと弾けて消えてゆくとろりんたち。
癒しの光でその終わりを見送りながら、トリノは魔力を奏で、残るとろりんたちをその音色で安らぎへと還していく。
「さて、さて――悪い子のところに行きましょう、ね」
「はい、皆さんを虐めた悪い災魔は、きっとこらしめてあげますからねー」
ふと見遣る彼方。猟兵たちの意識にはまだ届かないその足音は、もう聞こえてきそうな距離まで迫りつつあった。
「わ、可愛い」
煌めく瞳を綻ばせ、ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)はにじいろのもとへ歩み寄る。その後ろに続きながら、月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)は金の瞳をゆっくりと瞬かせ、しみじみと。
「アルダワの迷宮は、本当に色んな生き物が……。なんかラナさんの作るお薬みたいな綺麗な色ですね」
「ふふ、私のお薬あんな綺麗な色してますか? でもとろりんさんのほうが可愛いし、不思議な魅力がありますよ」
「……色だけですよ、中身はちゃんと違うってわかってますから」
蒼汰の答えににこっと笑い、ふわり広がる外套を慣れた風に捌き、膝を折った。燈火のような杖に照らされたにじいろは、眩しそうに瞬いてラナを見上げ、
「……ぷぅ?」
「ぷぷ……?」
「……あ」
目が合った。きゅん、と今、二人の心が鳴いた。
「……! どうしましょう蒼汰さん、可愛いです!」
「ど、どうしましょうか。拾ってあげれば満足するって言ってたけど……本当かな?」
「本当に拾い上げるだけでいいんですか?」
「ぷぷーぅ……♪」
躊躇いなく手を伸ばすラナに、とろりんは嬉しそうに身を擦り寄せる。抱き上げて頬擦りすれば、触れられた白肌を橙色が微かに染めた。
「ラナさん、色が……」
「ふふ、大丈夫です。わあ、少しひんやり。今の時期に気持ち良いですね」
つめたさと可愛らしさと――できることなら一瞬と言わず、連れて帰ってしまいたいほど。望みが素直に浮かぶ娘に眼差しを和らげ、蒼汰は自分もそっと手を伸ばし、撫でてみる。
「……抱っこ? 本当だ、ちょっとひやっとする……」
大きな掌に、手、と思しきものを添えてくるとろりん。柔らかな紅色の移った掌でそっと持ち上げると、
「……確かにこれは可愛い、かも」
「蒼汰さんの抱いてる子も、ちょっと違う色合いですね。可愛いです」
「ラナさんが抱っこしてる子も可愛いですよ」
見れば辺りにぴょこぴょことろとろ動き回る子たちも、それぞれに抱く彩りが違って。互いに色を受け渡したり、混ざったり、それでも濁らない様子に瞳輝かせたラナは、ふと――傍らを見てくすり、笑う。
ふさふさの尻尾が、はた、はた、と。表情よりももう少し分かり易く揺れていた。
「本当、災魔じゃなければ連れて帰りたい生き物が一杯ですね」」
「そうですね。でも、はい。ちゃんと覚悟は決めています」
「ぷぅー……♪」
星と翼に彩られた杖から放たれる魔力が、とろりんをくすぐりながら還していく。それを横目に、蒼汰も抱く一方の手をうさぎへ変えた。
――ぱくり、手人形で戯れるようにとろりんに触れた前歯に、にじいろは楽しそうにぷるりと震え、頼りなく弾けて消える。惜しむように少しだけ、金色の瞳が切ない色を帯びた。
「たったひと時でも、ちゃんと幸せをあげられていたでしょうか」
「ええ、帰る前に少しでも、あったかい気持ちをあげられていれば」
そう思う優しさに、蒼汰は自分では気づいていないだろう。傍らにそれを知る苺色の瞳は、そうなら嬉しいと心を並べてふわり、笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴァルダ・イシルドゥア
多くの驚異に晒される土地を、人々を見てきた
何れも、恐怖を、畏怖を植え付けるものばかりだった
此度もきっと、そのような……
……そのよう、……な……?
槍に変じていたアナリオンを竜の姿に戻す
武器を向けるに不釣り合いな気がしたから
ええと……、……ジナさまのお話では、確か……
恐る恐る屈み込み、つぶらな瞳と視線を交わす
『さみしい』と、胸に訴えかける感情の波が
酷く、私の胸を揺さぶった
森から離れ、心細いと感じる夜も少なくはない
だからだろうか
胸が痛くて、とても、痛くて
……もう、ひとりではありませんよ
とろけたにじいろを抱き上げる
そうして、生まれながらの光で包んだなら
きっと、彼らを優しく眠らせることが出来ると思うから
静海・終
あぁぁっ、ダメでございます私には強すぎる攻撃でございます
さみしいと思う貴方達の気持ちもまた、悲劇
悲劇は優しい記憶に変えてしまいましょう
か、かわいらし…はっ
油断すれば堕ちそうな気をしっかりと持ち本来の目的を果たす
手近なとろりんと目が合えば膝をつき手招き
おいで、と両腕を広げて待ち構える
何匹来ようと受け止める所存です
腕の中に来れば抱きしめて恐らく頭だろうと言う所を撫でる
貴方を拾います
今日から貴方は私と一緒でございます、共にいきましょう
出来るだけの甘言を与え満足したのを感じ取れば
痛みのないようぱくりと、獅子で喰らう
取り込んだ貴方が私の糧となり、共に
可愛い…と若干めそめそしながらとろりんを愛でてさよなら
アルジャンテ・レラ
"災"とは程遠いように見えますが……。
災魔も様々ですね。
フロアボスに追われなどしなければ私達の手にかかる事もなかったでしょうし、
少々可哀想な気もしますが。
……ジナさんのお言葉通りに、拾ってみます。
失礼しますよ。
なかなか興味深い触感ですね。
面白いとも言えるでしょうか。
……?
流石に災魔の言語は理解出来ませんが、何かしらの感情が強く浮かんでいる事は察しがつきます。
恐ろしい災魔に追われた恐怖心か、それとも。
……柄にもないとは思いますが、少しだけ……
この災魔を撫でてみようかと。
浮かぶ感情に変化が見えた気もしましたが、確信は持てず。
そのまま矢で軽く刺し、還します。
どうぞ、安らかに。
●
渡る世界にはあらゆる脅威が満ちていて、そのどれもが、ヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)に怖れを抱かせるものだった。だからきっと、此度もきっと、そのような――、
「……そのよう、……な……?」
戻って、アナリオン――と掛かる主の声に、獣の姿に戻った竜槍アナリオンは不思議そうに首を傾げた。武装の解除にも等しいそれは、普段戦場で告げられることはあまりない。
そう、戦場。その言葉が似つかわしくない生きものが、目の前にとろとろと蠢いていた。
「ぷ、ぷぷーう?」
「ええと……、……ジナさまのお話では、確か……」
刃を向けるのは躊躇われる姿ではあるけれど、と懸命に思い出す。放っておけば害なすものだと言っていた。屈み込み、恐る恐る視線を合わせてみれば、
「……ぷ、ぷぷぅ……?」
「――あなたがたは」
『さみしい』、と。ヴァルダを揺らしたのは敵の攻撃ではなく、強く訴えかける感情の波。
「……もう、ひとりではありませんよ」
自分も誰かに、そう言って欲しかったのかもしれない。懐かしい森からひとり離れて、心細いと感じる夜も少なくはなかったから。
ひりつく胸ににじいろを抱き上げた。ぷぅー、と懐に満ち足りた吐息が零れれば、痛みは少しだけ、癒されていくようで。
最後まで、怖い思いをせずに済むように。内側から溢れ出す癒しの光でとろりんを染めながら、ヴァルダはそっと仔竜へ目配せをする。煌めく瞳で意を汲んだアナリオンは、じゃれつくように甘噛みの牙を立てた。
まるで手応えなくぷるん、と、幸せの中にとろりんは弾けて。ぺしゃんと掌に収まり瞬く仔竜を、ヴァルダはそっと撫でてやる。優しく還った筈のにじいろに、おやすみなさいを囁いて。
――攻撃を仕掛けるまでもなく、拾ってくれるものたちがやってきた!
期待にきらきらと輝くつぶらなひとみ。理解したとろりんたちに害意はもちろんなく、『ひろってあたっく』を紡ぎもしてはいないのだけれど、
「か、かわいらし……はっ」
――違う意味で大ダメージを受けている男がひとり。
いけないいけない、と己を戒め、静海・終(剥れた鱗・f00289)は地に膝をついた。視線の合った手近な一匹を手招きし、両腕を広げ、
「おいで」
「……ぷぅー……!」
「あっこれはいけません」
幸せそうに膝にすり寄るとろりんにあっさりと陥落。けれどさしたる問題はなかった。めろめろになって愛することが、とろりんたちの満足に繋がるのだから。
「ぷうー……ぷぷー?」
「ぷっぷー♪」
「あぁぁっ、ダメでございます私には強すぎる攻撃でございます! ……いえしかし、ええ、何匹来ようと受け止める所存……!」
ぺたぺたととろりん色に染められつつ、終もまた幸せの渦中に。目の位置から頭と思しき場所を見出し撫でてやれば、ひんやりした感触が掌に残った。
「ええ、貴方を拾いましたよ。今日から貴方は私と一緒でございます、共にいきましょう」
「ぷぷぅー……♪」
その言葉に嘘はない。叶う限りの愛情がとろりんたちを癒したのを察すれば、その手を獅子の頭部に変えて――ぱくり、ごくり。
「ぷぷー!」
――まるで、アトラクションを楽しむように。おかしげな笑い声が、手の中で弾けて消えるのを、糧として己に溶けゆくのを、ほんの少しめそりとしつつ男は受け容れる。
「さみしいと思う貴方達の気持ちもまだ、悲劇でございますねぇ……」
今日ばかりは壊すのではなく、優しい記憶へ塗り替えて。ひとしずくの涙を飲み込み、終はそっと胸に手を置いた。
「……『災』とは程遠いように見えますが……」
人に愛着を与え、別れを惜しませすらする。こんな災魔もあるのだと、アルジャンテ・レラ(風耀・f00799)は興味深げに目の前のとろりんを見直した。
フロアボスの不興を買わなければ、倒されることもなかったのだろうか――否、災魔である以上、いつかはその日が来ただろうけれど。
「少し可哀想な気もしますね。……ジナさんのお言葉通りに、拾ってみましょう。失礼しますよ」
「ぷ!」
持ち上げた指先に伝い来る弾力。流れ落ちるほど柔くなく、アルジャンテの腕に、胸にと伸びる手――のようなものはしっかりとかたちを保っている。
「なかなか興味深い触感ですね。面白いとも……、……?」
「ぷぷー……?」
ひろって、くれるの? と言ったかどうかは、流石に理解できなかったけれど。つぶらな瞳に強く浮かび、訴えかける感情には察しがついた。
恐ろしい災魔に追われた恐怖か、心細さか。それとも、
(「……柄にもないとは思いますが、少しだけ……」)
湧く泉のようにふつふつと、微かに心を押し上げる衝動のまま、アルジャンテはそっと腕の中のとろりんと撫でてみる。ぷうー、と零れた吐息、緩んだ瞳――そのどちらにも、先刻まではなかった感情の顕れを見た気がした。
(「確信は……持てませんが。でも、満足したのでしょうか」)
少しだけ和らいだ唇に気づかぬまま、アルジャンテはそっと矢を手に取った。つん、と軽くつついてやるだけで、にじいろはぱちんと弾けて還る。――残るのは掌を染めた彩りと、幸せそうな溜息の余韻だけ。
「……どうぞ、安らかに」
告げる言葉はそれしか持たなかったけれど、宙に浮かんだその声は、どこか暖かく棚引いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ブク・リョウ
はじめまして。おれはブク。
『ひろってください』と書かれた箱ごと持ち上げて
とろりんたちと目線を合わせる。
ユーたちとってもきれいなボディだね!
一緒にいたら、素敵なアイデアが浮かんできそう!
ねえ、おれが拾ってもいいかい?
鞄からペンとノートを取り出して
とろりんをスケッチしたりアイデアを纏めたり、
おれ的にはかなり有意義な時間。
でも暫くしてはたと気付く。
そうだ。おれ、この子たちを倒さなきゃだった。
ごめんよ。
このまま連れて帰ってあげたいけど
そうもいかなくて。だから、えっと。
……(とろりんの頭をなでる)
ばいばい。ありがとね。
バラックスクラップで
とろりんの頭をぽすんと叩いた。
(そのあと少しの間しょんぼりした)
火狸・さつま
ぱちっと視線が合い
暫し、じ…っと
つぶらなおめめと見つめ合う
飼い主、欲し、の?
家族。欲し…よ、ね
昔々、うっかりくぐった神隠し
己にも、覚えの有る感情
転々と渡り歩く中
ゆく先々で、拾ってと…家族を求めた
深く深くしみついてしまった思いは
故郷へと戻れる身になっても
今でも、変わらず…求めてしまう
そう、今の主の元へも…君たちと同じように
獣姿で段ボールと共に押し掛けた
…少しの間だけでも、俺のとこ、くる?
手を差し伸べ
腕の中へと招き入れる
明るい色が煌く君は…あさひ
黄色が綺麗な、たんぽぽ
深い青が優しいね、うみ
後は…
順に名前をプレゼント
ゆるりと好きに遊ばせ
満足して眠くなる頃には
お別れの時間
ゆっくり『おやすみ』【安息を】
尭海・有珠
可愛い生き物はこの辺りではよく見る気もするな
…なんだ、見るなよ
目があったらちょっとたじろいでしまう
ちゃんと拾うよ
両手で優しく掬うように。
少し持ち上げて、色んな角度から色や可愛さ等つい眺めて堪能してしまう
折角逃げてきたのに可哀想な気もするが
危険を呼ぶものと分かっていながら放置もできん
少しでも優しく倒せないかと僅かに逡巡し
あたたかな雨を属性として溶かすように、剥片の戯を降らせる
倒さなきゃいけないが
痛い目に合わせたり辛い思いをさせたいわけじゃないからな
捨てられた小動物のような目で心にくるものがある
自分もこんな目をしてたことあったのかなと思うと苦笑してしまう
そんなのもう所詮過去の話でしかないんだけどな
●
「ぷっぷ、ぷぅー?」
「……なんだ、見るなよ」
とろとろ、にじにじと。近づいてくる生きものの真直ぐな眼差しに、尭海・有珠(殲蒼・f06286)は思わず一歩、後退る。
「ぷうー……」
「ああ、そんな声を出すな。ちゃんと拾うよ」
は、と小さく呼吸を落として屈み込む。しゅんと項垂れたとろりんを両手で掬い上げれば、内に秘めた色が輝くように強くなる。持ち上げて光に透かし、愛らしいその姿を瞳に焼き付けた。
ふるふると震えながら、ひたむきに思いを伝え来る小さな目は、まるで捨てられた小動物のよう。漣立つ心は、有珠の内側へ響いていく。
自分の来し方を覚えているのはある時期までではあるけれど、どこかに置き去りにした幼い自分も、こんな目をしていたことがあっただろうか。――そう思うとつい、苦笑いが零れた。
「……辛い思いをさせたいわけじゃないからな。これでも、少しでも優しくしてやりたいと思っているんだ」
「ぷぅ……」
すり、と掌に身を寄せる小さなものに微笑んで、有珠は魔力の薄片に雨の気配を宿す。
脅威からからがら逃れてきたのだろう、可哀想なこの子たちもまぎれもない災魔。大小に関わらず、いつか危険を招くものを放置することはできない――倒さなければ、ならないのなら。
雨のひとひらはきっと優しく、彼らを還してくれるだろう。逸らすことなく終わりを見守る優しい瞳の前で、
「ぷぷーぅ……♪」
幸せな響きを残してぱちん、弾けたにじいろが、穏やかな雨に溶ける。
「……君も、飼い主、欲し、の?」
ぱちり、視線が重なった。期待と不安に震えるつぶらな瞳と見つめ合い、火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)はこくりと頷く。
「家族。欲し……よ、ね」
「ぷうー……」
切なげな鳴き声に、心の底からこぽこぽと浮かび上がってくるさやかな記憶。
昔々、うっかりくぐった神隠しから、あちらこちらを渡り歩く日々。誰かひろって、家族になって――深く濃く、とろりんたちの帯びるこの色のように、さつまの心にも沁みついてしまった『さみしさ』は、今でも時折心を不安に駆り立てるのだ。
「……おんなじ……ね。……少しの間だけでも、俺のとこ、くる?」
「ぷ……」
差し伸べた手にそろり、感触が添った。嬉しそうに腕の中に飛び込んでくる生きものたちは冷たいはずなのに、心は不思議と温かい。
「君は……あさひ」
光り輝くような、明るい色をたたえているから。ならばきれいな黄色の君はたんぽぽで、優しく深い青色は、うみ。
おとなしく抱かれている子、楽しそうにさつまの体をよじ登ろうとする子。それぞれに名前を贈って、その名で呼んで――さみしい震えが消えたころ、さつまはそっと炎を迎える。
満たされたならいい。あたたかな気持ちを持ったまま、還っていけばいい。名前を与えた『家族』たちを見守って、静かに囁いた。
「――ゆっくり、おやすみ」
「ぷっぷー……♪」
手向ける心のように、白く優しい浄化の炎がにじいろを淡く包んでいく。蕩けたとろりんたちは、幸せの吐息を残して消えていった。
「はじめまして。おれはブク」
「ぷ! ぷぷーう、ぷぷ?」
ブク・リョウ(廃品回収者・f08681)の箱ごとの高いたかいに、とろりんたちの帯びる色がゆらゆらと鮮やかに揺れた。
「ユーたちとってもきれいなボディだね!」
「ぷ……!」
「一緒にいたら、素敵なアイデアが浮かんできそう! ねえ、おれが拾ってもいいかい?」
褒められたのがわかったのか、とろりんたちはこくこくと首を縦に振る。フロアの隅へ連れ出して、鞄から取り出したのはペンとノート。纏わりつくとろりんたちを自由にさせて、ブクはさらさらとペンを走らせる。
「ほら、どうだい? ユーたちのおかげでいい作品が作れそう!」
「ぷぷっ!」
スケッチを見せてやれば、嬉しそうににじいろの手を伸ばし、ぺたり、ぺたりと仕上げの色つけをしてくれる。その色もいいねと空色の目を輝かせたブクは、はたと気が付いた。
(「そうだ。おれ、この子たちを倒さなきゃだった」)
こんなに楽しそうだけど、こんなにいい子たちだけど。――その無邪気さが、いつか誰かを傷つけることがないように。
「ごめんよ。このまま連れて帰ってあげたいけど、そうもいかなくて。だから、えっと」
失くしてしまった続きの言葉の代わりに、ブクはそっと褐色のゆびさきでとろりんを撫でた。すりすりと身を寄せる子たちの頭を、いつもは鋭いブクの得物も少しだけ優しく、慈しむようにぽん、と叩く。
「ぷぷー……♪」
「うん、ばいばい。ありがとね」
その気持ちはきっと、痛みを与えはしなかっただろう。幸せそうに身を震わせて淡く弾けたとろりんは、ノートの片隅に色を残す。一緒に過ごしたしるしのように。
ゆびさきに残ったお返しの色はきれいで、楽しげで。――少しだけしょんぼりと肩を落としたブクを、やさしく慰めたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
…これを拾えって?
そのまま倒した方が早いんじゃ…
言いながらアレスを見れば早速囲まれだしていて
アレスに目をつけるとは
中々わかるやつらみたいだな
うんうんと頷いて診ていたのは最初だけ
埋もれる程に甘えられてる姿をみてたら…なんか…腹立つな
【青星の盟約】で力を底上げ
アレスを抱き上げ救出する
俺が拾った…からもうお前らにやらねえぞ
とろりんを睨んで威嚇
下ろして減ってないか確認してたら怒られて
…せっかく助けてやったのに
むくれてとろりんを拾ってはアレスに投げ付け八つ当たり
…なんだよ
ツンとそっぽを向くけど
頭を撫でられたらずっと怒ってもられなくて
別に拗ねてねえよ
一旦いーっとして見せてからカラッと笑う
アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
これで還ってくれるなら気が済むまで構ってあげようか
籠手を外して手を差し伸べる
おいで
寄ってきた1体を抱き上げて撫でる
よしよし、いい子だね
他にも足元に寄ってきたり肩に登ってくる子達を構い
構い…ん?多いな…う、わあぁ(とろりんに埋もれる)
あ、はは…これは動けないな……うわ!?
僕を抱えるとは…ありがとうセリオス
…でも、威嚇は駄目だ
窘めたら不機嫌になった彼に苦笑してると
痛っ!?こら、投げるな!
…友がごめんよ
お詫びにまた遊んであげるから
とろりんが満足したら剣の柄で軽く叩く
不機嫌なセリオスには君のお陰で助かったと頭を撫でる
…機嫌、直った?
小首を傾げ、微笑みながら問う
そうか。…なら、よかった
ユキ・スノーバー
仕立て屋さんに制服頼む前のお仕事、頑張るぞーっ♪(ぐっ)
鳴き声の聞こえる方向へ急行っ!
とろりんは拾うと良いってお姉さん言ってたけど、ぼく箱の中で両手広げてカモーン!って誘い込みたい位な気持ち。
寂しい時は、手を握るのが安心出来て良いみたいなんだけど
ぎゅーって抱きしめてあげるのが良いのかな?
触れたら、不思議な感覚なのかな?あったかい?ひんやり?
お話通じてそうなら、箱の中って心地良いよねって思わず同意したり
余裕が有るなら、よしよしって頭(みたいな所)撫でたりして
なるべく怖くないように努めるよーっ。
でも、さよならしなくちゃいけないから
魔法使いみたいに吹雪でくるりくるりらと包んで
おやすみなさい、良い夢を
ユニ・エクスマキナ
とろりん!
えーっと……拾ってあげるんだっけ?
それじゃ抱っこしてあげようかな、よいしょっと
なんか不思議な手触り……
これが、とろりん……!(ごくり)
さびしがりやさんなんだってね
こんなにお友達がいっぱいいるのに
ダメなの?(ツンツン、ぶにぶに)
うーん……ひとりじゃないなら寂しくないと
思うんだけどなぁ
どうしたら寂しくないのか
わかればユニたちも協力してあげられるかもしれないのにね
わかる?(首傾げ)
って……うわぁぁ、ダメダメ、暴れないで!
落っこちちゃうのねー!(わたわたおろおろ)
きゃー!ダメ!無理!!
わぁ、落ちたー!とろりんちゃん、ごめんなのねー!!
……今の衝撃で、もしや、消えた?(がーん)
「……これを拾えって?」
「ぷぅ!」
瞳輝かせるにじいろの鼻先(?)を、膝を抱えしゃがみこんだセリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)はぴん、と指先で弾いてみせた。
「ったく、そのまま倒した方が早いんじゃねえの?」
――実際のところ、その疑問は正しかったろう。目の前のこれは見目ばかりは愛らしくとも、オブリビオンなのだ。
けれど敵意のないものを、ただ倒すのは心痛い――そんな猟兵たちの優しさを周囲に垣間見れば、気のいい青年はまあ仕方ねーか、と唇を緩める。
「……ん?」
「おいで。……よしよし、いい子だね」
これで還ってくれるなら、気が済むまで構ってあげよう。籠手を外した掌を惜しまず差し出すセリオスの親友、アレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)は、全てを迎え入れる微笑みで、たちまちとろりんたちの人気を博している。
「アレスに目をつけるとは、中々わかるやつらみたいだな」
うんうん、見所があるじゃねえか――と、始まりは誇らしく眺めていられたセリオスだったのだが。
「ぷぷー♪」
「……うわ、冷たい。くすぐったいな、はは」
すきすき、と。足に縋り、肩に登りと、甘え放題のとろりん達を見るにつけ、
「……なんか……腹立つな」
「――ん? 多い、な……う、わあぁ」
にじいろに埋もれてゆく凛々しい姿も、指先も白銀の鎧もぺたぺたと、とろりんの色に染められ放題なのも気に食わない。
「あ、はは……これは動けないな」
胸に迸る衝動に鳥は囀る。輝ける星に捧ぐ歌、願うちからは何のために? ――それはもちろん、
「さあ歌声に応えろ、力を貸せ! ムカつく虹色共から我が親友を取り戻す為に!」
「……うわ!? セリオス!?」
「よーし俺が拾った! ……からもうお前らにやらねえぞ!」
「ぷぷーう……」
「ぷうぷう」
「はん、縋りついたってダメなもんはダメだからな!」
とろりんたちの手の届かないところへ下ろし、減ってないな? と検める。ついでについた色も拭き取ってやろうとしたのだが、
「セリオス。……威嚇は駄目だ」
可哀想だろうと窘めて、翻るマント。
この生きものたちを、幸福のもとに還してやろうと手を伸ばす。それはセリオスの好きな彼らしい、優しさと誠実さの表れではあったけれど。
「……なんだよアレスのやつ、せっかく助けてやったのに」
「ぷうー!?」
べし!
手荒く拾われた(?)そばからアレクシスへ投げつけられ、楽しげな声を上げたとろりんたちがぺしゃん、ぺしゃんと消えていく。
「痛っ……こ、こら! 投げるな!」
「知るか、アレスのバ――カ!」
ふんっと背を向けたセリオスに苦笑して、アレクシスは満ち足りた様子のとろりんたちにそっと剣を近づける。
「満足したかい? ……さ、おやすみ」
ぽん、ぽん、と。叩く柄にぷるぷると身を震わせて、にじいろは最後まで楽しげに弾けていった。
「終わったよ、セリオス」
髪を撫でる親友の手になんだよ、と唇を尖らせれば、いつもの微笑みが視線を追いかけてくる。
「さっきは僕を助けてくれたんだろう? ありがとう、君のお陰で助かった。……機嫌、直った?」
「別に、拗ねてねえよ」
この手はいつだって、誓いのもとに自分のところへ帰ってくる。掌の熱が頭に移れば、不機嫌もお終い。
いーっと歯を剥く憎まれ顔は、たちまちいたずらな笑顔に変わる。
気づけばもう、にじいろたちはかなり数を減らしている。フロアに僅かに残る鳴き声に耳を澄ませ、
「仕立て屋さんに制服頼む前のお仕事、頑張るぞーっ♪」
ユキ・スノーバー(しろくま・f06201)はばびゅん、とその在処に急行した。
「とろりんは拾うと良いってお姉さん言ってたけど、こんなのはどうかなっ。カモーン!」
「ぷ……!?」
そのあたりで見つけてきた空箱に飛び込んで、大きく両手を広げるユキ。ぱちりと目が合った一匹のとろりんが身を震わせ――その瞬間、ふたりは種族を超えて通じ合った(多分)!
「わあ、君ひんやりなんだねーっ! ねえねえ、箱の中って心地良いよね」
「ぷっぷっぷー……!」
言葉の壁などなんのその。狭い箱の中にみっちり詰まってほっこりと親交を深めつつ、ユキは伸ばされる手(のようなもの)をそっと握り返した。寂しい時は、手を握るのが安心できて良いのだと。
「ぎゅーって抱きしめてほしい?」
「ぷ!」
「うん、よしよし。じゃあこっちにおいでーっ」
ぴょん、と飛び込んでくるとろりんの色に染まっても、気にしない。ぎゅーっとしつつ、頭(みたいな所)を撫でたりしつつ――それでもユキはちゃんとわかっている。最後には、お別れが待っているのだ。
「だいじょうぶ、怖くしないからねーっ。おやすみなさい、良い夢を」
「ぷぷー……!」
いつもは厳しく吹き荒れる吹雪は、今日は空に白い花咲かせる魔法のように。くるりくるりら、包み込む優しい雪に楽しそうに瞳を輝かせたとろりんは、ぷるるんと身を震わせて消えていった。
「とろりん! 見つけたのねーっ!」
「ぷう?」
振り返る生きものたちのもとへ、ユニ・エクスマキナ(ハローワールド・f04544)はぱたたっと駆け寄った。
「えーっと……拾ってあげるんだっけ?」
「ぷ……!」
「それじゃ抱っこしてあげようかな、よいしょっと……、……!」
ひんやりしてむにっとしてぷにっとして、
「なんか不思議な手触り……これが、とろりん……!」
新たな感動を覚えつつ、小さなとろりんたちを次々に抱き上げてやれば、肩から背へ、背から腕へと、意外に器用に伝っていく。くっついては互いの色を写し合う姿は仲が良さそうで、
「こんなにお友達がいっぱいいるのに、ダメなの?」
「ぷうー!」
つんつん、ぷにぷに。つつかれたとろりんたちは、ひしっとユニにしがみつく。
「うーん、ほんとにさびしがりやさん……ひとりじゃないなら寂しくないと思うんだけどなぁ」
けれど、ユニに身を委ねるその眼差しは幸せそのもの。『仲間』ではない『誰か』に愛されたかったのかな、と首傾げたそのとき、
「ぷうぅぅー……!!」
「うわぁぁ、ダメダメ、暴れないで! 落っこちちゃうのねー!」
ユニの腕に凭れていた一匹が、とろんと大きく身を投げ出した!
「どうしてちょっと楽しそうなのー!? あっ、待って待って他の子までマネしないでー!!」
わたわたおろおろ、必死に止めるユニの様子が面白かったのかもしれない。とろん、とろろん、とさらに続いて、
「きゃー! ダメ! 無理!」
「ぷうー!」
「ぷっぷぷー…!」
「わぁ、落ちたー! とろりんちゃん、ごめんなのねー!!」
楽しい遊びの果てに、床にぽよん、と落下して。にじいろたちは弾けて消える。
「……えっ、えっ? 今の衝撃で、もしや、消えた?」
がーん、とショックを受けるユニ。いや、決して彼女のせいではないのだけれど。
その耳にぷぷぷーっと届いたのは、ごめんねか、ありがとうか。あぶくのようなささやかな笑い声が、全てのにじいろが還ったフロアに響いた――そんな気がした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『シェイプシフター』
|
POW : 思考の簒奪
【自身を対象の姿へと変化させ思考を読み取り】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD : 血肉の簒奪
戦闘中に食べた【対象の血肉】の量と質に応じて【捕食した対象の姿と戦闘経験を簒奪し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ : 秘技の簒奪
対象のユーベルコードを防御すると、それを【強化し体内へ取り込み】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
イラスト:FMI
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠茲乃摘・七曜」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●簒奪の影
いくつもの優しい手によって、寂しさを拭われた虹色たちが還ったあと。
少しだけしんみりと――けれど穏やかな温もりに満ちたそのフロアを、突如、殺伐とした気配が侵す。
それは悪夢のような生きものたちだった。影と血の入り混じる、不定形のからだ。あらゆるものの溶け合う、混沌の気配。
災魔の名に相応しいその群体は、互いすら喰らいかねない貪欲さを露わに、地下迷宮を駆け上ってくる。
相対すれば、それは相手の全てを奪いにかかってくるだろう。姿を真似ては思考を奪い、肉を喰らって経験を奪う。技を受ければその技を奪い、より大きな一撃として翻す。
けれど、それが『自分』を映すというのなら。それはきっと、研鑽を続ける者たちには越えられるものだ。掠め取るだけの災魔などに、上を見続ける者たちは敗れはしない。
戦意を帯びた眼差しを並べ、猟兵たちは影の群れを迎え撃つ。
月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と
いつもの俺なら、自分と戦うなんて面倒くさいって思ってるけど…
でも、…格好悪い所は見せられないし
何より、災魔にくれてやるものなんかない
破魔の力を込めた水と雷の属性魔法で攻撃しつつ
杖で殴ったり足で蹴ったりとか、接近戦も織り交ぜて
普段はあんまりしない戦い方を敢えて選ぶのも読み取られるかな
機を見て狙いを定め、願い星の憧憬を全力で
…自分をコピーされるなんて気持ち悪い
けど、自分で良かったとも思う
知っている誰かだったら、倒すことを躊躇ってしまいそうだから
怪我してるのを見られてしまうのは少し、恥ずかしいけど
ラナさんの魔法はやっぱりあたたかくてほっとする
…ラナさんが、無事で良かったです
ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と
とろりんさんをいじめていたのはあなたですね
弱いものいじめはダメですよ
私の経験なんて、大した事無くて
あなたに映されたところで、あんまり意味は無いと思います
魔法をいくら学んでも、元々そんなに才能は無いですから
でも好きって想いで頑張っているんです!
だから気持ちを込めたウィザード・ミサイルで、しっかり狙います
魔法は知識と経験も大事ですけど、何より心だって私は信じています
友達じゃなくて、自分自身なら迷いはしません
無事に終わったからか、蒼汰さんの姿を見たらほっとして
…あ、蒼汰さん大丈夫ですか?
怪我とかしてませんか?すぐに治しますね!
やっぱり私は、人の為に魔法を使うほうが好きみたい
●
――醜悪な闇が雪崩れ込んでくる。
血のにおいの風に身を竦めた次の瞬間、誰もが目の前に立つ不定形の影、一つ眼の災魔によって、共に立つ仲間たちから分断されていた。
「! ラナさん」
「私は大丈夫です! ――とろりんさんをいじめていたのはあなたですね」
弱いものいじめはダメですよ――と、子どもを叱るようなラナの声はいつも通りの朗らかさで。蒼汰はほっと一息つき、目の前の影と相対する。
信頼は語るまでもない。彼女の心の強さも知っている。ならば、立ち塞がるものを早々に退けるだけだ。
襲い掛かる影を蒼汰の杖が突いた。肩口に食らいつく痛みに声を上げることはせず、影の中で編み上げる水と雷。冷ややかに澄んだ気配に爆ぜる光が絡みつき、敵を内から引き裂いた。
(「いつもの俺ならきっと、自分と戦うなんて面倒くさいって思ってる。だけど今は……」)
気づけば巨大な一つ眼があったところには、自分の顔がある。必死な視線までも映されて、ああ、今の自分はこんな顔をしているのかと思う。
この影ひとつ阻んだ向こうに、ラナがいる。それだけで、無様なところは見せられない、と変わる覚悟は何故だろう。
「――何より、災魔にくれてやるものなんかない」
水と雷の魔力が撃ち返される。影色の自分が繰り出す蹴りは大味で――受け止めた杖で跳ね返しながら、蒼汰は心の裡でふと笑う。
「それが俺? ……違うよ、似ても似つかない」
相手の喰らったその戦い方は、常の蒼汰からは遠いもの。熟練の一撃を得たつもりが、写し得たのは不慣れな技ひとつ。
影色の自分の困惑の気配に、うっすらと眉を顰めた。
「見た目を真似ただけのらしくない振舞いでも、自分をコピーされるなんて気持ち悪いな。……けど、自分で良かった」
反撃の飛沫と電光がぴりぴりと身を苛む。臆することなく突き抜けて、指先をその眼前に突きつけた。自分に似た、けれど自分のものではない眼差しの前に。
「……倒すことを躊躇ってしまいそうな誰かじゃなくて、良かった」
近い囁きに微かに瞠った敵の瞳を、彼方から集い来る願い星の輝きが染める。
眩い魔力を写す間など与えない。灼き切られ、千切れて消えた影の向こうに、蒼汰はひとつの姿を探す。
「私の経験なんて、大したこと無くて――あなたに映されたところで、あんまり意味は無いと思います」
淡い姿とは裏腹に、心は強く据わっていた。掲げる杖に頂く灯り星、そこからふわりふわりと躍り出た炎が、撚り上げられて矢を象る。間隙を貫き飛んだ熱を受け止めた瞬間、影はラナのかたちを取った。けれど――強くこちらを見据える視線は、どこか虚っぽで。
「そうですよね。だって、私の心までは映せないでしょう?」
魔法をいくら学んでも、元々そんなに才能はない。けれど好きだから――その想いひとつで頑張れる、そんな根幹が目の前の影にはない。形骸をまね、ただ力を奪おうとするだけの生きものだ。
紡ぎ返される炎の矢に穿たれても、ラナは動じない。――痛みに少しくらい顔を顰めはしたかもしれない、けれど『心』が翳ることはない。
「あなたが奪えたものは、私の魔法の一部だけです。知識と経験も大事ですけど、何よりも心だって信じているから」
それだけは、影の自分の持てぬもの。誰のために紡ぎ、何のために編むのか。全てが自分のためである相手に、その最大の要素で負ける気はかけらもしなかった。
――だから、ラナは微笑む。掲げる杖に、その思いで大きく育てた炎を花ひらかせて。
「友達じゃなくて、自分自身なら――迷いはしません」
爆ぜる炎花のひとひらひとひらが、瞬間、鋭く縒り合わされる。百を数える熱に穿たれ、照らされて、影は千切れるように消え去った。
その向こうに安堵に和らぐ金色の眼差しを見つけて、ラナもほっと同じこころを零した。
「蒼汰さん、大丈夫ですか? 怪我とか……してますね、すぐに治しますね!」
「……すみません」
「ふふ、謝らないで下さい」
ふわり揺らした杖の先から溢れる七色。喚ばれた薬瓶から零れる雫は、たちどころに傷を塞いでいった。
身を任せる蒼汰に、もう一つ安堵を重ねてラナは笑う。
「やっぱり私は、人の為に魔法を使うほうが好きみたい」
あたたかいのは術だけじゃない。燈のような微笑みに、ゆるりと胸に融けるものを、蒼汰は思わずぽつりと零した。
「……ラナさんが、無事で良かったです」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
真宮・響
【真宮家】で参加。
とろりんを怖い目に遭わせたのはアンタだね?悪意の無い存在を追い詰める底意地の悪さと共に、混沌そのものの姿は災害そのものだね。
アタシの技を真似するなら、【目立たない】【忍び足】で敵の視線から逃れつつ、背後に回り込んで不意打ちかねえ。でも、予め背後に回ることが分かっていたらどうなるのかね?背後の気配に素早く振り向いて【武器受け】【カウンター】で奥の手で動きを封じてから、【串刺し】で貫き通してやるか。気配消しは相手に知られないところで仕掛けるのに意味がある。いつもは奏と瞬にサポートされてるからこそ成功している戦法だしね。1人であるアンタでは成り立たない戦法だ。残念だったね。
真宮・奏
【真宮家】で参加。
とろりんさんをいじめた悪い奴は貴方ですね!!仕出かした事の報いを受けて貰いましょう!!
私の技を奪って真似してくるなら、まずは防御を固めて、攻撃の被害を減らしながら正面から来るはずですね。なら、逆に防御を捨てて、刹那の見切りで攻撃を返しながら、【衝撃波】【二回攻撃】で遠距離から攻撃して近づけないようにしたらいかがでしょう?お得意の近距離の斬撃が出来ませんよね?もし接近したらシールドバッシュで吹き飛ばします。得意の正面突破は出足を挫かれると思うように機能しません。いつもは奏母さんと瞬兄さんの援護あってこその正面突撃ですし。1人で突撃は的になるだけですよ~。
神城・瞬
【真宮家】で参加。
この不気味な姿、とろりん達が怯えて逃げ出すのも分かりますね・・・・。僕を真似するのは厄介ですが、秘策がありますので。
意表をついて使用するのは【祈り】を込めてサウンド・オブ・パワーで自分の身体能力の強化。【高速詠唱】で魔法を撃つと見せかけて、挑むのは接近戦。僕が後方から魔法攻撃出来るのは、響母さんと奏のサポートあってこそ。盾もいない状況で接近戦は弱いはずです。杖を棍のように使って、【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【武器落とし】をフルに使って、敵の身体を打ち据えます。不意を打てるはず。
●
「響母さん、瞬兄さん!」
「奏! 大丈夫ですか……!?」
油断なく身を寄せ合った家族すら、至った影は分断してみせた。届くは声と気配だけ――その声は互いを思い遣りつつ、互いの姿が見えない不安に僅かに染まっている。
「大丈夫」
年若い子どもたちの動揺を、響の一声が一瞬で鎮めた。
「話には聞いていただろう? アンタ達なら大丈夫さ」
「……、はい!」
「響母さんも気をつけて……!」
「ああ、さっさと片付けてやろうじゃないか」
姿がなくとも、その頼もしく不敵な声が子どもたちの背を支える。
三者三様の戦いが幕を開けた。
「――この不気味な姿、とろりん達が怯えて逃げ出すのも分かりますね……」
混沌と渦巻く欲望を体現したかのような姿。自ら光放つような金の髪、輝石のようなふたいろの瞳を持つ瞬とは、姿からして対極のもの。
技を喰らわんとする敵の意表を衝いたのは、歌声。低く深く、戦場に広がりゆくその声の魔力は、瞬の内側にも巡り、反響して力を増幅させていく。
(「どうか、響母さんと奏に加護がありますよう」)
込める祈りは、早々とこの一戦を終わらせるため――大切な家族の許へ一瞬でも早く駆けつけるため。朗々と歌い上げたその声は、今度は舌先に高速の詠唱を紡ぐ。
「……ッ、魔法だと――思いましたか」
掴みかかる影が瞬の姿を、技を写し取りにかかる。喰らわれる感覚に身を震わせて耐え、瞬は気丈に微笑んだ。
次の瞬間、影の自分の懐を衝いたのは――打撃。
「意外でしたか? 真似されるのは厄介ですが、本来の僕の力が発揮されるのは……あの二人がある場所だから」
後方で魔法攻撃に専心できるのは、前に立ち果敢に戦うふたりあってこそ。ただ庇われている訳ではない、後ろにあってこそ真価を発揮できる――そして、二人を助けることも叶う。
影裂くように杖を振り抜き、跳び退く。杖から伝う衝撃には違和感を感じながらも、次の一手に迷いはしない。敵の瞳を杖で突き、よろりと揺らいだ一瞬に手にする杖を叩き落とす。
「二つの光と共に在る僕の方が、喰らい甲斐があったかもしれませんね」
その思考を奪われる前に、振り落ちる杖の一閃が影の命を刈り取った。
「――ひとりだって負けはしません! とろりんさんをいじめた悪い奴は貴方ですね!!」
あんな可愛い子たちを、と影を睨みつける奏。威勢の良い声がびりりと空気を震わせれば、寧ろ好ましげに影が手を伸ばす。
「……!! っ、私の技を奪って、真似してくるなら……きっと」
喰われた『経験』が、影の輪郭を奏に変えていく。きつく奏を見据える影の自分は、三つ色の魔力で守りを固め、真正面から挑みかかってくる。自分のことは自分が一番知っている――やっぱり、と微かに微笑んだ。
「――それなら!!」
一切の守りを捨てた無防備な姿に、影の自分の眼差しに惑いが浮かぶ。けれど、振り下ろされた一閃は即座に跳ね返った。
「見切りました、倍にしてお返しします!!」
飛び退いた敵に、衝撃波が襲い掛かる。一つが斬れば、すかさず追随する第二波。近づかせないよう距離を取り、接近を許せば白銀の盾で突き離す。その戦い方は、常の奏とは異なるもの。
「どうです? いつもは奏母さんと瞬兄さんの援護あってこその正面突撃ですし――ひとりで突撃は的になるだけですよ」
ひとりの弱さを知っているから、写されることなど怖くない。
「終わりです。しでかしたことの報いを受けて貰いましょう!!」
見えざる斬撃に切り刻まれて、影はざらりと崩れ去った。
「さて……とろりんを怖い目に遭わせたのはアンタだね?」
悪意なき存在を追い詰める底意地の悪さ――そしてあらゆる血と気配の混ざりあった混沌そのものの姿。
「アンタの在り様は災害そのものだ。災魔とはよく言ったもんだね」
終わらせよう、と囁く響に影が迫る。不快な気配を斬り払うも、災魔はその一瞬で響の姿を写し取る。――無論、その経験までも。
「さて、どこまで喰われたものか。アタシの技を真似するなら……ああ、なるほどね」
瞬きの間に視界から消えた敵の在処には、察しがついた。気配なく背後に迫る炎剣を、それよりもひときわ赤々と燃え輝く剣で受け、響は笑った。
「アンタがアタシなら、その手が通用する筈がないだろう?」
背後に回られることが、予め分かっている。予測がつく『自分』を相手に、その思考が通る筈もない。がちりと組み合った剣の下、放つ奥の手のトラップは好んでは使わないもの。ゆえに意識には浅く、喰われることもなかった思考だ。
「いざという時には必要なのさ――今みたいに、傍にあの子たちがいないような場面にはことさらにね!」
影の自分が一瞬、怯む。翻した剣が鮮やかに燃える。
――串刺しの一突きに驚く顔が、刃の帯びる熱に焼き切られて消えていく。
「「響母さん!!」」
声を重ねて駆け寄るふたりに、響はふ、と眉を下げて笑う。
「なんだい、アンタたち。小さい子どもに戻ったようじゃないか」
「だって……!」
「うん、わかってるよ。よくやったね、二人とも」
交わす眼差しで三人は知る。
それぞれの戦いの中でも、共に在ったことを――互いの存在が勝機を誘ったことを。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雲烟・叶
……さて、と
こういう方がやりやすくて分かりやすくて好きですね
だって似合わねぇでしょう、呪詛の塊にあんな無力で愛らしい生き物
全く、着物も随分と色とりどりにしてくれちまって
あの子らを追い立ててたのはあんたですね
化け物同士の縄張り争いは御免被りてぇもんです
管狐に呪炎を散らさせ燃やしましょうか
……写し取る?これを?
面白いことしますねぇ
あのね、教えてあげますよ
この子らの呪いより、自分の呪いの方が遥かに強ぇんですよ
敵の攻撃に合わせて【カウンター、誘惑】で【呪詛、恐怖を与える、生命力吸収】
写し取った程度じゃどうにもならねぇもんを与えてあげましょう
侵される覚悟もねぇ癖に、呪いになんざ手を出すもんじゃねぇですよ
●
「……さて、と。こういう方がやりやすくて分かりやすくて好きですね」
織りも華やかな衣装を翻し、叶は朱を刷いた眼差しをすっと持ち上げる。
目の前に立ち塞がる影は重く、暗く――災魔の名に相応しき生きもので。孤独に駆られるまま身を擦り寄せてきた、あの警戒心なく人懐っこいにじいろたちとはまるでかけ離れている。
「だって似合わねぇでしょう、呪詛の塊にあんな無力で愛らしい生き物。――全く、着物も随分と色とりどりにしてくれちまって」
けれどその言葉ほど、発した音は辛くはなかった。微かに柔さが滲んだ唇に、おや、と自身で目を瞠る。
「らしくねぇですね。あの子らも化け物らしく、心惑わす術くらいは持ってたって訳ですか」
凪いだ声音に構いせず、飛び込んでくる影をつと見据える。至近に見る醜悪な眼にも、取り縋り喰らいつかれる影の気味悪さにも――目の前に現れる自分のかたちにも、叶は睫ひとつ動かしはしなかった。
「……へえ、写し取る? これを?」
ふうと吐いた紫煙がゆらり、狐めいた姿をなして影の自分に絡みつく。感情ひとつ浮かべずにそれを受け止め、跳ね返してくる――そこまでは確かに、叶らしい振る舞いと言えたかも、しれない。
「はあ、面白いことしますねぇ……ですが、所詮は上っ面。――あのね、教えてあげますよ」
影色の呪詛の十や二十、増えたところで変わりはない。何ら動きを阻まれることなく、叶は一瞬で距離を詰めた。覗き見る影の自分の眼には、その裡で澱むものの気配がない。さもあらんと唇をひらく。
「――この子らの呪いより、自分の呪いの方が遥かに強ぇんですよ」
相手の腕を攫った手首を軽く返せば、長煙管から触れたその身へ、くゆりと流れゆく強い呪詛の気配。強められる管狐たちの戒めなど話にならないほどの暗い気配が、一瞬で相手に雪崩れ込んでいく。
「……おや、平気の顔で耐えますか。――いや、自分を写した以上はその顔しかできないんでしょうねぇ、気の毒に」
抜殻の同情を突きつけ、打ち込む掌が、肘が、全てが痛苦を与えていく。『自分』を模したゆえに声すら上げない、上げることを許されない災魔を一瞥し、とん、とその肩に長煙管を打ちつけた。
「――侵される覚悟もねぇ癖に、呪いになんざ手を出すもんじゃねぇですよ」
輪郭が崩壊する。影が溶かされる。分かつ呪詛のひとかけに殺された呪詛の気配に、叶はふう、と細く煙を吐いた。
大成功
🔵🔵🔵
火狸・さつま
あの仔等を…
君、が、追い立てて、怖がらせたんだ、ね…?
俺の姿を、真似るのか
其れは…一番、戦い易い
躊躇する必要が、ない
炎纏わせた『属性攻撃』<彩霞>で『先制攻撃』
奪った思考により躱すのだろ?
ならば、躱し方も癖も…俺自身のもの
『野生の勘』も働かせ、其の行動を『見切り』躱す先へと
逃げ場を与えぬよう『早業・範囲攻撃』<雷火>を落とす
攻撃『見切り』躱すそぶりで『フェイント』かけ
『オーラ防御』纏わせた<彩霞>で受け止めれば
『だまし討ち』の『カウンター・気絶攻撃』【封殺】
『第六感・野生の勘』で補いつつ、行動・攻撃を『見切り』
躱すか『オーラ防御』で受け流し
『早業・カウンター』攻撃
『激痛耐性・火炎耐性』にて凌ぐ
●
「あの仔等を……君、が、追い立てて、怖がらせたんだ、ね……?」
フードに深く沈むさつまの表情、その意図を、なんとか読もうとしたものか。ぐにゃりと身を撓ませて姿をなぞろうとするものの懐へ、さつまはその隙を許さず踏み込んでいく。
躍る蛮刀『彩霞』が炎を連れた一閃を刻みつける。奪った思考で躱される筈の刃が、影の自分に傷を刻み付けたのは――自分ならばこう躱すだろうという予測の先に、切っ先を向けたから。
「本当に思考を奪うのだな。……ならば、分かり易い」
次はきっと、切っ先から遠い左後方へ大きく跳ぶことだろう。逃れるために、『彩霞』の一閃を叩きつけて。先読みの通りに事は運び、自分の強さを得たはずの影は次々と、紋様浮かべた尾から放たれる黒雷に貫かれていく。
やられるばかりではないのだと、相手もフードに眼差しを潜め、見たばかりの一撃をこれ見よがしに模倣する。絶え間なく流れ落ちる黒雷を躱しながら、さつまはいつのまにかフロアの壁際に追い込まれている――そう、敵は思い込んでいるけれど。
躱せる筈の一撃を敢えて受けた、その事実に影の自分が揺らいだその瞬間、さつまは一転、身を翻す。避雷針のように黒雷を吸い込んだ蛮刀を、鋭い跳躍で敵の懐に呑み込ませる。
「俺の姿を、真似たから。其れは……一番、戦い易い。躊躇する必要が、ない」
乱雑に外したフードの下で、影の自分の唇を血が割っていた。けれど、溢れるそれは明らかに、生きたヒトの肌に流れるものではない。あらゆる命の気配が混沌と混じり合った、悲しきいのちの成れの果て。――青い瞳が僅かに悲しみを帯びるけれど、それは一瞬のこと。
「猿真似は、終わり。……還れ」
胸に留まったままの刃をいっそう深く突き込めば、不意に感触が消える。さつまの姿を手放した影は、口惜しそうにどろりと溶け、跡形もなく消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
ブク・リョウ
うわわ!しょんぼりしてる場合じゃないのさ!
いこう、相棒!
[鉄屑の舞踏]で攻撃を仕掛ける。
当然相手は防御して……
アッ!!それっておれの技!!
真似っこはやめてほしいのさ!
ッ!??
あぁああぁぁ…!
おれの技で相棒が傷だらけに…!
ぬぬぅぅぅ~っ!!
戦闘中にも関わらず
思い切り地団駄を踏んでしまった。
相棒のことになるとムキになるの、おれの悪い癖。
そういえば、昔マザーにも言われたことあったな…。
なんてことを思い出したら落ち着いてきた。
一度、深呼吸。
敵の、おれの技を改めて観察する。
……む?踊る花びらの位置が結構バラバラ…?
そっか!花びらの薄いところから攻め込めば
もしかしたらいけるかもなのさ!
●
仲間たちの目の前に、突き刺さるように降りる影。それは肩を落としたままのブクのもとにも例外なく飛来した。
「うわわ!? しょんぼりしてる場合じゃないのさ!」
災魔はブクの傷心になど構いはしない。色濃い影は鬣を掠め、ブクに喰らいつき、『何か』を奪っていく。
「いててて、ふ、不意打ちは卑怯なのさ! いこう、相棒! ……って、おれがいる!?」
大切な『元』くるみ割り人形と共に向き合った影は、自分のかたち。丸い目をさらに丸くしながらも、ブクはバラックスクラップを敵の眼前に突きつける。
「じ、自分に似てたって敵は敵なのさ! さあ、咲いた、裂いた!」
ひとひらひとひら、剥がれるように。無骨に、けれど愛着をもって組み上げた鉄屑たちが空に舞う。鋭く駆け抜けたそれを、影の自分は当然のように防御する――そして、
「アッ!! それっておれの技!!」
鋭くも褪せた鉄屑の乱舞が返る。映し鏡のような反撃に、真似っこはやめてほしいのさ、と非難は当然、
「ッ!?? あぁああぁぁ……! おれの技で相棒が傷だらけに……! ぬぬぅぅぅ~っ!!」
まるでブクを庇うように、その一身に躍る鉄の花弁を受け止めた相棒を見て――湧き上がる感情にだんだんっ、と地団太を踏んでしまう。
(「……はっ、だめだだめだ。相棒のことになるとムキになるの、おれの悪い癖」)
自分を拾ってくれたマザーの言葉を思い出す。愛着が理性を奪い去ってしまうのは、これが初めてではなかったのだ。
(「よーく見るんだ、敵はおれ……おれの技の、弱点は……」)
深呼吸の間にゴーグルを装着、硝子の分だけ翳った世界はブクに平静を取り戻してくれる。絶え間なく繰り出される花弁をよくよく見れば――ただ一点、勝機を見出し飛び出すブク。
「見えた、そこっ! ――相棒の受けた傷、そっくりそのまま受け取るといいのさ!」
踊る花弁の密度が薄い場所。切り刻まれることも厭わず踏み込めば、『Babel』は意思持つように踊り出す。高密度の尖鋭なる花吹雪が、敵を縦横無尽に斬り裂いていく。
「なんとかなった……! 大丈夫、傷はちゃんと直してあげるのさ」
やれやれ、ぺたりとその場に座り込んで、ブクは腕の中の相棒の傷だらけのボディをそっと労ってやった。
大成功
🔵🔵🔵
リヒト・レーゼル
自分……これが自分…。
今から自分と戦わなくちゃいけない……。
俺にできる?できるのかな。
でもやらなくちゃ。
錬成カミヤドリ、使うのはこの技。
自分と戦うなら方法はこれしかないから……。
本当は、たとえ自分でも戦いたくない。
もう一人の自分もそうなのかな。
……もう一人の自分、君も戦いたくない?
話し合いで解決はできないのだろうね。
オーラ防御で攻撃を防ぎながら戦うよ。
さっきまで自分じゃなかったのにこうも姿を変えられると
とても、とても……やりずらい。
みんなはこれを受け入れて戦っているのかな。
●
「――ッ!」
喰らいつかれた肩が痛む。リヒト・レーゼル(まちあかり・f01903)は顔を顰め、じわりと血の滲むマントをぎゅっと抑えた。
見据える影のかたちが変わる。赤黒い闇がゆらりと揺れたかと思うと、威圧的な体躯はたちまち少年の背格好へと収束し、細部まで整っていく。巧みに映し出された『自分』に、リヒトは不安げな眼差しを浮かべた。
(「自分……これが自分……」)
これから戦わなければいけない相手。呑まれそうな心を奮い立たせ、違う、と心に呟いた。
「――できるか、じゃない……やらなくちゃ」
生み出されるはリヒトの『本体』、映し身である燈たち。魔力を帯びた光は戦場を意のままに駆け巡り、その熱と眩さを以て影の自分を翻弄する。
そして、示したその技は模倣される。影の自分が繰り出すのもまた、数多に錬成された燈の乱舞。身の内に巡る魔力を防御のオーラとして顕現させ、その苛烈な威力を僅かに和らげながら、リヒトは眉を寄せる。
オブリビオンは倒すべき敵だ。けれど、戦いを好まない少年の心は、どうしても平和的な解決を探してしまう。貪欲に力を求め、迷宮の上層へと駆け来るものは、もう言葉で止められる刻限を疾うに超えてしまっている。それでも、
「……もう一人の自分、君も戦いたくない?」
そう問いかけてしまう。奪われたリヒトの姿は、同じ感情を醸し出しているように見える。けれど、その内側に渦巻く悪意は、リヒトを――その先にいるアルダワの人々を、決して逃しはしないだろう。
「……倒さなきゃ、いけないんだね」
躍る燈が熱を増し、放たれた光条が影の自分の胸を射た。それにすら心痛めて、リヒトはそっと目を閉じる。――なんてやりづらい敵だったのだろう。
「みんなは、これを……受け入れて戦っているのかな」
その答えは、辺りに満ちる仲間たちの覚悟に示されている。
大成功
🔵🔵🔵
尭海・有珠
先のにじいろとろりん達のように可愛げでもあれば
手心加えてやったんだが
私はそんな情けない、泣きそうな顔してるんだな
鏡を覗いたときよりも余程、情けなくて…無駄に勇ましい
少しだけそのやる気に満ちてる姿は羨ましい
私は打たれ弱く、回避出来る程素早くもないが
戦闘経験も技量もそれなりだ
命中率を重視で来ることぐらい予想できるだろう
相手と思考が同じと思うと面白くて思わず笑ってしまうな
私でもそうするさ、命中率重視の炎の【憂戚の楔】で攻撃だ
ついで敵の懐に飛び込み剣を一閃
遊びがない、思考に奔放さがない、堅実と言えば聞こえはいいが
私は、博打が怖いだけなのさ
トドメは炎を降らせて燃やしてやる
もうそんな顔見せられないようにな
●
「……私はそんな情けない、泣きそうな顔してるんだな」
先制の一撃で奪われた姿は、映し鏡のよう。少しだけ影の翳りを帯びた水面のような瞳には、痛々しいほどの勇ましさ。
本物の鏡を目にした時より余程、と有珠は苦笑する。――ただひとつ、災魔らしい戦意に満ちていることだけが自分とは違っていて、その貪欲さは少しだけ羨ましくも思えた。
「さあ、奪い取った経験でどうしてみせる? ――私のこれまでから弾き出される正解は、何だ」
打たれ弱いと思っている。回避できるほど素早くもない。しかし、それを補える程度の戦闘経験と技量は、身に着いている。それなら、
「――! やはりな」
影の自分の齎す答えは、命中率重視。虚空より零れ落ちる魔力の雫は、氷柱をなしたかと思うとたちまち燃え上がり、炎の杭と化す。
「本当に同じ思考をなぞるのか……面白いな」
くす、と思わず零れる笑み。その通り、と海を戴く仕込み杖を前に、穿つ熱になど構いもせずに有珠は告げる。
「ああ、私でもそうするさ」
目の前に紡がれたそれよりも、もっと苛烈に、鮮やかに。零れ流れる魔力はより尖鋭な氷柱の杭を紡ぎ上げると、うねる炎をその身に纏う。
「だが――今日ばかりは少し遊びも必要らしい」
炎熱が影の自分を絡め取る。光のゆらめきが歪めた空間に、有珠は迷いなく飛び込んだ。熱の壁を超えて突き来る刃に、敵が惑う。その表情にまたひとつ苦く笑って、横一線に斬り裂いてやる。
遊びがない、思考に奔放さがない――そこに表される性質は、堅実。
「私はただ博打が怖いだけなのさ。わかるだろう?」
経験を喰らったというお前なら。皮肉な微笑みを相手が映し出すよりも早く、たんと踏んだ足音ひとつで次なる炎柱を喚び出した。
「先のにじいろとろりん達のように可愛げでもあれば、手心加えてやったんだが。燃やしてやろう――もうそんな顔、見せられないようにな」
ひときわ華やかにフロアを照らす、熱の色。それが尽きたとき、有珠の厭った敵の姿は、灰も残さず焼き消えていた。
大成功
🔵🔵🔵
雨糸・咲
綾さん/f01786
虹色の子たちを見送った後で良かったと
目の前の歪な姿を見て思う
攻撃を躱し躱されしている内に焦りが出て
踏み込んだ拍子に食い千切られ
痛みに歯を食いしばる
姿を変えたそれに瞠目したのは僅か一瞬
あれは彼女ではない
自分だと知れたから
思考も感情も置き去りに
本能で更に踏み込み
焔噴く杖で刃の如く突きかかる
許さない
許せない
その姿は、彼女のもの
――冒涜、だわ
低い呻きは敵へか己へか
至近距離から放つ業火の竜巻
その肌も、髪一筋さえ残らないよう
焼き尽くしてしまいたい
戦いの後暫く呆然としていたけれど
傷を癒してくれる温かい手に少しずつ落ち着きを取り戻し、短く礼を
見上げた顔は、ちゃんと笑えているかしら…?
都槻・綾
f01982/咲さん
高速詠唱での、花筐
符が無数の花弁に変わって直ぐ
災魔から齎されし極寒の猛吹雪
目を瞠ったのは
嵐に霞む向こうに
悲し気な眼差しを見たから
香炉を手にした主の最後の記憶
地に落とした瞬間の、其の、眼差し
肌を刻む花弁
痛みは有る
有るからこそ、現を知れる
扇状に開いた符で
衝撃波を放ちカウンター
死者を悼む技も
違えれば斯様な刃になるのだと教わった心地で
皮肉さに淡い自嘲を浮かべる
きっと
私に足りぬもの――「憎む」という心
骸の闇を知るも尚、世界は眩く思える
だって吹雪は
穢れなく真っ白だったから
終の海へ還りなさい
二回攻撃で畳み掛ける花筐
清浄な白に染まって、還り逝け
後
咲さんを医術で治癒
多くは聞かず
微笑んで労いを
●
(「――よかった、虹色の子たちを見送った後で」)
同じ災魔であるとは思えない、醜悪で歪な姿。このフロアで追いつかれ、蹴散らされていたら、心満ちることなく命を落とすことになっていただろう。
そんな安堵は一瞬、共に在った綾と自身を隔てるように降り立った影は、話に聞いた通りの貪欲さで、咲の力を喰らいに来る。精霊の力を借りて躍らせる魔力の火焔を、薄気味悪い動きで躱した影が、同じように紡ぎ返す。明るい夜に染まる髪を掠めた熱に、少し焦りが生まれたのかもしれない。
「焔よ、躍れ……、――っ!」
歯を食いしばる。杖ごと叩きつける心算の焔の渦、その強い踏み込みが一瞬、回避を遅らせた。がぶり、と肉を喰らった影はたちまちに姿を変えて、あの巨大な眼球よりは余程見慣れた筈の姿で咲を見つめる。
――視線を重ねたのは、一瞬。
思考が消えた。感情が失せた。いつもは穏やかに朗らかに、くるくると心を映す咲の瞳は、今ばかりは凍り付き、本能に躍らされるままになっている。そしてそれは、体も同じく。
あれは『彼女』ではない、『自分』だと。そう知れなかったら動けなかっただろう手足は、俊敏に、迷いのひとつも映さず地を蹴り、躍動する。杖に燈された焔の渦は勢いを増し、こころの制御を失った術はいっそう荒れ狂う。けれど、それで構わなかった。
「許さない、許せない……それは、その姿は」
奪われたのは、自分。けれどその姿は、純然たる自分のものではない――『彼女』のものだ。
「――冒涜、だわ」
低く洩れた声は無論、敵へ。そして咲の心深くへも一滴、重たく零れ落ちる。
揺らぐ心が纏めきれない渦は、ごうと燃え盛る竜巻と化す。血の匂いと闇を纏うものに、奪われていいものではない、真似させていいものではないのだ――咲にとっては。偽物のその肌も、熱に輝く美しい髪の一筋も、余さず残さず焼き尽くす。
「……許せない……!」
叩きつけた熱の裡に影が呑み込まれる。その姿が目の前から消えて漸く、咲は詰めていた息を解いた。は、と吸い込んだ息に、足の力が抜ける。
「いつか見た――未だ見ぬ花景の柩に眠れ」
舌に上る詠唱は風の速さ。放つ符はたちまち花弁へ変じ、風と共に眼前の影へと突き刺さる。
けれど。影へ傷ひとつ刻むことなく呑まれたその攻撃は、次の瞬間水鏡の反射のように綾へと翻った。
話には聞いていた。故に、動じない自負もあった。それでも目を瞠ったのは、霞む花嵐の向こうに姿を視たからだ。
ヒトを喰らい、その力を奪うという影の災魔ではない。それに写し取られた自身でもない。綾自身である香炉――けれど綾とは違い、傷ひとつないそれを手にした『主』の悲しげな瞳。手放し、落とし、今の綾を作り出した瞬間の、眼差し。
花霞の幻惑から立ち戻らせたのは、皮肉にも自身を傷つける自身の技だった。消えるまぼろしの向こう、自分の顔で微笑む影を同じ微笑みで見返して、綾は素早く符を引き出す。
扇の如く咲かせたそれをひとたび仰げば、見えざる波が敵に斬りかかる。不意の一閃を皮切りに、再び招く花の嵐はより絢爛に、より辛辣に敵を斬り刻む。
「――死者を悼む技も、違えれば斯様な刃になるのですね」
皮肉に歪めた唇は、されど影に心を脅かされることはない。憎むということを知らない心、人らしからぬ清廉さが、穢れなき白い花をそこに招く。世界を眩く塗り替える。
「――終の海へ還りなさい」
敵意ある影は綾の清白に掻き消され、還り逝く。その道を指し示す符の扇の、閉じてしまわぬうちに。
「咲さん、――怪我を」
ぼんやりと虚ろを彷徨うような咲の眼差しは珍しく、綾は地に座り込んだままの咲の前へ膝をついた。喰らわれた腕の傷を見るや、そっと手を取り手当てを始める。
「……ええ、ありがとうございます」
少しだけ小さくなった声も。笑うつもりの唇がうまく動かなかったことも。冷え切った手に少しだけ震えが残っていたことも、自分では気づけぬままに。
それでも気丈に咲いてみせる花に、何を問うこともなく。綾はただその微笑みと、あたたかな手で受け止めていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
終夜・凛是
俺……?
どんな姿、しても。俺には――成れないよ
俺の何を、奪うのか
俺の気持ちも、何もかも
俺だけのもの
ひとかけらだってやらない
俺は俺には負けない
お前がにぃちゃんだったら……わかんなかった、けど
拳と拳の殴り合い
どっちが倒れるか、やってみる?
真似事のお前なんかに、負けてやるつもりはない
拳なら、負けない
……狐火はちょっと自信がないから、使わない
それまで真似られて、俺より上手にされたらいやだし
俺の攻撃が、俺に響かなきゃまずそれって、弱いってことでしょ
俺は、今俺が、俺が扱えるってもので戦う
けど、食らってみて俺の拳が今どのくらいの重さなのか、わかる、かな
それに、しても
俺、そんな楽しそうな顔で、戦ってる?
●
目の前に拳が迫る。
身を捩って躱す一瞬、こちらから繰り出した一打も僅かに逸れた。伸びる影の模倣に熱色の瞳をじっと向け、凛是は口を開く。
「……俺の何を、奪ったつもり」
見返す眼差しは、表情は、確かにそっくりで。繰り出す拳の軌道も癖も、自分ならそうするだろう、というそれをなぞっていた。満ち足りぬ淡き色、けれど誠実を映した色の連珠を絡めた拳は、何度でも眼前の影の自分へ向かっていく。
「どっちが倒れるか、やってみる?」
凛是にとって、これは『力試し』でしかない。繰り出される拳を潜り躱し、掬い上げるように放った一撃は、咄嗟に跳び退いた影を僅かに揺らす。効いているようだ。
「俺の攻撃が、俺に響かなきゃまずそれって、弱いってことでしょ」
眼前に迫った影の自分が、獣の眼で笑う。敢えて躱さず受け止めた一撃に、凛是もうっすらと口の端を上げる。
「……ん、悪くは、ない。……けど」
自分の力を写したというのなら、受けた重みで自分の強さが量れるかもしれない。体の芯に響く一撃は、決して弱いものではない。けれど――もっとと、心はさらに上を見ている。自分などではなく、
(「お前がにぃちゃんだったら……勝てるかわかんなかった、けど。……――にぃちゃん」)
美しく強い狐火に、心が熱をもった記憶。あれに勝る炎はまだ生み出せない。自信がない。
けれど寂しい眼差しは、同じ熱量でいつかは、と願うのだ。――いつかは上手くできるようになって。あの炎に並び立つ。
だから今は、
「拳なら、負けない」
ひゅ、と風を切った拳の速さが影の虚を突いた。今扱えるもの。確信を持って言えるもので戦い、勝ってみせる。焦がれる炎に抱いた憧れも、強く在りたくて重ねてきた経験も、易く奪わせるようなものは何一つ、凛是にはなかった。
「どんな姿、しても。俺には――成れないよ。俺の気持ちも、何もかも、俺だけのもの。ひとかけらだってやらない。だから……お前のそれは、ただの真似事」
そして、そんなものに負けてやるつもりはないのだと。口許にぶつかる拳に勢いを止めることなく、自分のそれを強く、強く相手の芯へと衝き込めば、影はそこから灰燼へ帰していく。
「……それに、しても」
帯びた戦意を解き、口の端を汚した赤を無造作に拭いながら、凛是は消えゆくものへ小さく首を傾げる。
「俺、そんな楽しそうな顔で、戦ってる?」
――始まりから終わりまで、燻るような戦熱を薄い笑みに代えていたその顔は、その問いに答えることなく。ただ静かに目を閉じ、還っていった。
大成功
🔵🔵🔵
ディフェス・トロイエ
あの子に本当に悪い事したな
グリモア猟兵の話も信じずに
いくら考えすぎだとあの時思ったって
思う事自体間違えだったのに
…っ、気持ち切り替えないと
自分自身が敵とか
なんかすごく気持ち悪いな
違和感しかない
敵の攻撃は【残像】と【武器受け】で
できるだけ回避を試みる
【Capella】で攻撃しつつ、
少し余裕があれば
【Rigil(マント風万能ポンチョ)】から取り出した
【ぴこハン(正式名称:ぴこんとハンマー)】でスタンも狙いたい
多分無理だろうけども…
スタンになってもならなくても
【Rigil】を敵の顔辺りを狙って投げ
【怪力】【2回攻撃】の上で、
ユーベルコード使用、敵の後ろに回って攻撃
…できれば、もう自分とは戦いたくない
●
(「――あの子に本当に悪い事したな」)
手の中で消えていったにじいろを思い、ディフェスは悔やむ。心からディフェスの手を恃み、甘え、満ち足りて消えていった『あの子』は、最後まで純真な生きものだった。
それだけに、僅かばかり疑ったことが心を苛む。戦ううちに姿を変える、そんな敵もどこかの世界では耳にしたことがある。けれど、あの子がそんなものと同列なんて――、
(「考えすぎだと思ったけれど、思うこと自体間違いだったのに」)
そう悔やまずにはいられないほど、無垢な生きものだったのだ。胸に去来する苦さを振り切るように、ディフェスは前を見据える。
(「……っ、そうだ。気持ち切り替えないと」)
既にディフェスのかたちを写した目の前の影は、探るようにこちらを見つめている。自分の後悔までも映し出すその顔は、違和感だらけで――鏡を見ているようで気持ちが悪い。
「……頼むな、『Capella』」
ユーベルコードは奪わせない。いつからと思い出すことも叶わないほど自分と時を共にした黒剣を構えた瞬間、影の自分がそこに斬り込んでくる。押し込む剣戟の強さに眉を顰めつつ、ディフェスはひたすらにそれを受ける。余裕はあまり、ない。
「くっ……!」
剣握る片腕に力を込め、全力で敵を突き放す。掻き乱すように解いた外套でばさり、不安を誘う影の自分の顔を――その上体を絡め取る。藻掻く相手の傍らを風のようにすり抜け、加速の一閃を無防備な背に振り下ろす。
「これで終わりにしよう。……できれば、もう自分とは戦いたくない」
耳許にぽつりと零れた意思ある声に、影の自分が目を閉じる。その内側の混沌の気配ごと、ゆらりと揺れて消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴァルダ・イシルドゥア
血を纏った影がいのちを喰らわんと迫り来る
その禍々しさに、息が、槍の穂先が震える
いちばんの敵は、そう――私自身の『畏れ』なのでしょう
流星槍を主軸に影と交戦する
槍を突き出す、そうすることでしかこの影を祓えないと盲信して
けれど、ひとつ傷を負えば畏れは増して
散るあかいろが私の命を削り行く
父さま、母さま……!
どうか……どうか、みなを、ヴァルダをお守りください
ふと、囁く声が耳を擽った
それは迷宮の壁面に僅かに息衝く翠から
私を叱咤するように熱を持つ竜槍
ああ――そうだ、私は、
叫ぶ
片割れの竜の名を
私に寄り添う、隣人の名を
臥籠守で影を拘束したならドラゴニック・エンドで貫く
そう、私はずっと、ひとりではなかったのだから
●
深い影の中に、血の気配が禍々しく躍っている。
幾つもの気配がどろりと溶け合う姿は、あまりに恐ろしくて――震える穂先を、吐息を、ヴァルダは努めて整えようとする。判断も槍技も鈍らせるその畏怖こそが、最たる敵だと知っているから。
「……参ります! 我が身、ひかりの導となりて……!」
澄光を帯びる穂が影を突き破る。闇を照らすその一衝きでしかこの迷妄は祓えないと、痛ましいほどの決意を帯びて。
けれど、影の――いつしか自分のかたちをとったものの翻す一閃もまた、光。
「……っ!」
穿たれる。刻まれた痛みに身が震える。傷口から零れ落ちる赤の分だけ命が削がれていくのだと思えば、怖れに喘ぐ声は思わず呼んでいた。――父様、母様、と。
「どうか……どうか、みなを、ヴァルダをお守りください……!」
そのとき、ふと。
忘れていはしないかと主張するように。或いは、そんな弱気でどうするのだと叱り励ますように。傍らをゆるりと行き過ぎる青い気配と、柄をとる掌にじん、と伝い来る熱と意思とが、ヴァルダを震わせる。けれどその心地は悪くない。
「ああ――そうだ、私は、私は……ひとりではなかった。ずっとあなたたちがいてくれましたね」
委縮した心が緑の香に解き放たれる。
「木々よ、慈しみ深きものたちよ――迷妄なる影を捕らえ給え!」
揺れなく告げる一声に、鮮やかな翡翠緑が奔り出す。薄暗いフロアを這い繁る蔓は、影を戒めるには至らない、けれど確かに追い詰めはする。
その術すらも奪われる前に。影の反撃に穿たれようとも、ヴァルダはもう畏れはしなかった。
「アナリオン――!」
穂先が敵を縫い留めた瞬間、槍の輪郭がゆらりと揺れた。槍から竜へと立ち戻ったヴァルダの友は、鋭利な牙と爪をもって、友の姿をなぞるものを引き裂いていく。
「……ごめんなさい。もう二度と、あなたたちを忘れはしないから」
消え失せた剣呑の気に、舞い戻ったふたりの『友』が身を擦り寄せてくる。そっと頬寄せたヴァルダの瞳は、柔い笑みに染まっている。
心を苛む畏怖は消え失せていた。――掻き消えた影と、道行きを共にして。
大成功
🔵🔵🔵
メーリ・フルメヴァーラ
出来る限り血肉は奪われないように留意するけど
特段感慨もなく相手を見つめる
正直言うとね
…別に自分がコピーされたってあまり嫌悪とかない
それは誇りがないからじゃなくて
自分ひとりじゃちっぽけな存在だって知ってるから
でもだからこそみんなのこと信じられるし
一緒に頑張りたいと思うんだよ
私だけじゃ太刀打ち出来っこないよ、お生憎様!
バトルキャラクターズでRPGのキャラをいっぱい呼ぶ
勇者、戦士、騎士、魔法使い、召喚士…
それぞれ違ってみんないい
経験は奪われても知恵は奪えないでしょ
だから行っけー!
数と多彩さで勝負だよ
敵を囲んでフルボッコしちゃえ
ぼこぼこな私みっともないなあ
なんて笑って
目を逸らさずに詠唱銃で魔法弾を放つ
●
「自分、かあ――」
目の前で水のように流れる淡い髪が、少し翳っている。自分に詠唱銃を向ける影の自分に動揺は見えず、時折放たれる魔力の銃弾をひらひらと躱しながら、そうだよね、とメーリは思った。
思考を奪うというだけあって、きっと今の自分も同じ顔をしているだろう。目の前に自分を模したものが現れたからといって、別段の嫌悪はメーリにはない。そのことに、敵の気配だけが惑っているようで、メーリは笑った。
「誇りがないから、じゃないよ。自分ひとりじゃちっぽけな存在だって知ってるから」
だから、喚ぶのだ。支え合える仲間を、大事なひとたちを。
「――みんな、お願い!」
地に叩きつける銃弾がたちまち人のかたちをなす。剣を携えし勇者、勇ましい戦士。凛と背筋を伸ばした騎士に、可愛いフードの魔法使い。小さな竜を連れた召喚士、電子を操る電脳魔術師――。
デフォルメされた小さなRPGの『仲間』たちは、なんだかメーリには覚えのある顔ばかり。
信じ合い戦った、一緒に頑張った。共に笑って過ごした。そんなメーリの経験から生まれた彼らは、今は傍にいない友達の代わりに力を貸してくれる。
「私だけじゃ太刀打ちできっこないよ、お生憎様! あなたが『メーリ』をコピーするなら、そこのとこ、ちゃんと分かってなくちゃ!」
だから、行っけー! ――きらきらと輝くメーリの眼差しは、個性的な仲間たちの大活躍に注がれる。
放たれる魔法と電子の奔流が影の自分の視界を奪えば、それを突き破るように飛び込んでくる勇者に戦士。馬上の人の槍が薙ぎ払った影へ、召喚士のけしかけた竜が飛び掛かる。
「あなたも仲間と一緒だったら、私ももっと苦戦してたかな?」
首を傾げつつ、メーリは笑った。ううん、きっとそんなことない。
(「隣にいなくてもこうして一緒にいてくれる大事な記憶が、私にはあるもん」)
ただ怖いほど純粋に、貪欲に、相手の強さを取り込み『個』が強くなることだけを求める影と、自分とはそこが違う。叩きのめされる影の自分がその仲間たちまで写してしまう前に――迷うことなく詠唱銃を向けて、
「ぼこぼこな私、みっともないなあ。――ね、最後にお星さまをあげる。ぜんぶ呑み込んで、連れていってね!」
駆け出す星の奔流が、影に眩しい風穴を穿つ。
光に千切り取られるように、気づけば人影は消え失せていた。
大成功
🔵🔵🔵
静海・終
あぁ…愛らしい子たちでございました…
余韻に浸る間もなく訪れたそれは殺すべき悲劇
あの子たちに貰った糧を十全に生かし、悲劇を壊しましょう
おやぁ、私がもうひとり
本物はどちらにございましょう
えぇ、えぇ、それは生き残った方でございます
喰らいあいましょう、思う存分に
鋼糸で離れられぬよう絡めとり
再び腕を獅子に変え怯む事無く喰らいあう
悲劇を殺す事を壊す事を決して止めてはいけない
止まればきっと弱い自分に戻ってしまうから
目を逸らさずに私はいきます
私の怯えはここで貴方と共に殺して、壊しましょう
私は弱さを山の様に抱えているでしょうが、まずはそれを乗り越える
●
「あぁ……愛らしい子たちでございました……。余韻に浸る間も与えてくださらないとは、無情なあなた方は間違いなく殺すべき悲劇」
目端を濡らす熱いものをハンカチで拭い、終はさて――と影に対峙する。柔い感情は消え失せ、静かなる酷薄が赤い瞳に宿っていた。
「おやぁ、私がもうひとり。本物はどちらにございましょうねぇ、涙」
肩にしがみつく仔竜に答えはなくも、伝う意識にえぇと頷く。
「えぇ、その通りですとも――生き残った方でございます」
翼を、嘴を、絡め取るべき鋼の紡糸。風を裂き飛んだ一端は、今日は薄い笑みを浮かべる影の自分を絡め取る。逃れる距離は許さずに、しかし自分にも同じだけを許さぬそれを、終は甘んじて受け入れた。
空の片腕を彩る獅子の咆哮が、敵を威圧する。無論それに怯まぬ自分であると、終は知っている。
「えぇ、えぇ――私であればそうでなくては。なれば喰らい合いましょう、思う存分に」
あの愛らしいにじいろに染められた衣服が、互いの血に塗れても。獰猛な牙が、容赦なく互いの肉を噛み取ろうとも。悲劇を殺すこと、壊すことを、決して止めてはならないと身の内で何かが叫んでいる。
「貴方はこの衝動すら写せますかねぇ」
軽口と笑みは飄然と、けれど攻める牙は休みなく、影の自分を壊していく。抱え込んだ数多の弱さ、自分ですらはかれずにいるものもあろうと思う。けれど、それから目を逸らすことだけは、絶対に。止まればきっと、弱い自分に戻ってしまう。
「越えねばならぬものでしたら、越えてみせましょう。私の怯えはここで、貴方と共に殺して――壊します」
その誓いに、獣の王が呼応する。ぶわりと鬣を戦がせて、顔じゅうに皺を刻んで剥く牙は、敵の体の芯に喰らいついた。
満身創痍とはこのことだ。消えゆく影を睨みつつ、そわそわと気遣わしげに周囲を飛び回る小さな竜を、終は柔い笑みであやしてやる。
「ええ、大丈夫ですよ、涙。……恐ろしい悲劇は殺しましたからね」
――そう、この足が己の弱さに止まるという悲劇を。
大成功
🔵🔵🔵
色採・トリノ
【二羽】ハルちゃんと
リノ、攻撃は得意じゃないのだけれど…
敵が姿を映す前に、人格を別の子(戦闘が得意でない子)に切替ておくわ
敵がその子の写し取ったら、人格をリノに戻し
あなたが本当にリノを写し取ったというのなら…あなたはもう、リノの許可なしに指一本も動かせないはず
そうよね? 〇〇ちゃん
怖い想いをさせてごめんね
後でいっぱい慰めてあげるから
それじゃあ、ライオンちゃん
〇〇ちゃんをひと思いにお願いね
戦闘後、ハルちゃんのご無事を確かめるわ
ハルちゃんも自分と戦ったの?
そう、大丈夫なら、本当によかった…
リノ? リノは、映し身でもお友達を倒したのだもの…心が痛い、わ
とっても
(人格名(色名)・性格お任せします)
東風・春奈
【二羽】『トリノさん』f14208と一緒
さあて、悪い災魔さんと戦闘ですねー
ふふー、張り切っちゃいますよー。えいえいおー、ですー!
思考を奪い、姿を奪い、力を奪い、実に厄介な敵さんですねー
なんとしかも群体ですかー。大変ですねー
私はか弱いのでー、食べられちゃったら大変ですー
ユーベルコードで捕食を回避しつつ、砲撃を加えましょうー
砲弾は血肉ではありませんからねー
駄目ですかねー?
仮に大砲を真似されたとしたらー、敵に先回りする間を与えない先制攻撃の一斉射撃で仕留めますー
戦闘後、辛そうなトリノさんを慰めましょうー
それでも、頑張ったトリノさんは偉いですー
よく頑張りましたねー
●備考
口調;一章同様
プレアレンジOK
●
隔てる影の向こうの友達、トリノを案じはしても、春奈は眼前の悪意そのものを恐れてはいなかった。飾りの兎耳を揺らし、さあて、と瞳を輝かせたら、
「ふふー、張り切っちゃいますよー。えいえいおー、ですー!」
飛び掛かった影は、小柄な姿を見失う。グリモアの力で短距離の転移を連ね、影の死角を突いてはまた空間を繋げ逃れる春奈。災魔は禍々しい不定形のまま、少女の血肉を喰らえずにいる――けれど。
喰らって映すのみではない。巨大な目の端に一瞬捉えた春奈の姿を、影は模倣する。――かたちばかりか思考までもなぞり、次の狙いを読み取ると、
「! 思考を奪われましたかー、実に厄介な敵さんですねー」
現れた先で砲撃を受け止める。好戦的に輝く眼差しを写し鏡のように向けてくる相手へ、春奈はぷるりと首を振る。
「私はか弱いのでー、食べられちゃったら大変ですー。一応言っておきますがー、きっとおいしくはないですよー?」
緩い笑みで挑発した少女は、翻る砲弾にも屈しない。身を穿つ熱を最小に留め、
「死角を突く戦法が読まれるのならー、ここからは小細工はなし、ですー」
たん、と力強く地を蹴った瞬間、小さなからだは影の自分の眼前にある。本当に似てますねー、と緊張感なく呟く背で、自慢の鎧装の砲口が一斉に敵へ傾く。
「先回りの暇も守る暇もありませんよー」
瞳を眇めた一瞬、駆け抜ける光線が一斉に影の自分を貫いた。風穴から溢れた闇が、光に散らされ虚空に流れていく。
「ふう、終わりましたかー……いえ、群体なのですよねー。皆さんご無事ならいいのですけれどー。トリノさんは――」
一緒に居たのに引き離された大事な友達。続く戦いの気配に、春奈は振り返る。
「リノ、攻撃は得意じゃないのだけれど……」
そんな自分よりももっと、戦いを好まぬ『自分』が自分の中に在る。眼前に迫る影をゆっくりの瞬きで視界から消して、トリノは呼んだ。――さあ、『薄花』ちゃん、いらっしゃい?
「私とて戦いは好かぬのだが……まあ、貴女の望みなら拒みようもない」
溜息と共に目覚めた『右目』には、淡い青。ウスハナ、と呼ばれた人格は、防御には間に合わない間合いにある影の一撃を迷わず、受けた。
いや、受けるしかなかったと言うべきだろう。目の前に躍る獰猛な戦意に対して、ウスハナは驚く程に抗う術を持たなかった。
ゆらりと揺らぐ輪郭、少女の姿を写し取った影は、しっかりと開いた薄青の瞳を惑うように瞠っている。そう、とにこり微笑んだトリノの右目は閉じられて、一瞬だけ発現したその人格は既に身の奥に鳴りを潜めていた。
「あなたが本当にリノを写し取ったというのなら……あなたはもう、リノの許可なしに指一本も動かせないはず。そうよね? 薄花ちゃん」
ただひとつを除き、この身にある全ての人格はトリノの支配下にある。そのルールまでも『経験』として写し取った影の自分は、ぎしりと身を軋ませて立ち尽くしている。
長くは続かないだろう。フロアボスを担うほどの災魔となれば、自身の能力の解除が叶わぬ筈もない。けれど、身を強張らせたその一瞬で充分だった。
トリノの纏う淡い遊色を毛並みに纏い、百獣の王が駆ける。騎乗するトリノが溶かした力は力強い前脚に宿り、
「それじゃあ、ライオンちゃん――薄花ちゃんをひと思いにお願いね」
荒々しい咆哮とともに叩きつけられる。獣の下で掻き消えゆく邪悪の気配にはもう気を向けず、トリノはそっと胸許に触れた。――奥の方で拗ねる気配がある。
「ああ、怒っているの? 薄花ちゃん……怖い想いをさせてごめんね、後でいっぱい慰めてあげるから」
小さな子どもをあやすように微笑んで、トリノはふう、と小さな吐息を零した。
「トリノさんー! 無事でよかったのですー」
「ハルちゃんも自分と戦ったの?」
無傷とはいかなくも、無事の姿に少女たちは抱き合った。
「ああ、大丈夫なら、本当によかった……」
「トリノさんはー……ちょっと、落ち込んでますー?」
「リノ? リノは……」
言い当てられるまま、トリノはそっと胸を押さえた。『薄花』の抗議は止んでいたけれど、
「心が痛い、わ。とっても」
映し身でも『友達』を倒したのだから。淋しげに左目を伏せるトリノの頭を、春奈は背伸びでぽんぽん、と撫でる。
「それでも、頑張ったトリノさんは偉いですー」
「ふふ、ありがとう、ハルちゃん」
闇の気配の希薄になったフロアに、花咲くようなささやかな笑み声がくすくす、転がっていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユニ・エクスマキナ
……ユニだ
ユニの前にユニがいる
あれ?(右手あげて)
うーん?(左手あげて)
いやいやいや、おかしいでしょ!
だってユニはここにいるんだから、なんでユニがもう一人いるの!?
あなた、ニセモノなのね!
ユニは騙されたりしないんだからー!!
さぁ、どっからでもかかってきなさいなのね!
ユニの得意技で返り討ちにしてあげるんだから……っ!
(相手が攻撃してくるのを待つ)
……あれ?
(ずっと待ってる)
……あれれ?
(でも、攻撃がこない)
くぅぅ、ユニの攻撃の弱点を知ってるとは、なかなかやるのね
ニセモノさんのくせにっ!
こんなときは!(すちゃっとマニュアル取り出して)
実力行使で!ユニは!いきます!!
えーい!ユニ負けないんだから!
●
――とんとん。
「……今ね、ユニまだ衝撃から立ち直れてないのね。もうちょっとひとりにしておいて……」
膝を抱えるユニの肩を、もう一度、とんとん。見放さないだれかの手にわあっ、と反転、
「ううん嘘やっぱり誰かに聞いてほしいのねー! ……って」
そこでにっこり笑ってみせたのは、仲間ではなかった。――ある意味最も見知った相手ではあるけれど。
「……ユニだ」
瞬く瞳の色も、仕草も同じ。少女はじいっ、と前のめりに大きな瞳を近づける。
「あれ?」
右手を挙げれば写したように左の手を、
「うーん?」
左手を挙げればやはり、右の手を。
「……いやいやいや、おかしいでしょ! だってユニはここにいるんだから、なんでユニがもう一人いるの!?」
はっ、と息を呑む。相手もはっ、と同じ動作。
「あなた、ニセモノなのね! ユニは騙されたりしないんだからー!!」
深い悲しみの中にあるというのに、からかうように写し鏡の動作を続ける影の自分。ユニはぷしゅーっと湯気を出し、人差し指を突きつけた。
「さぁ、どっからでもかかってきなさいなのね! ユニの得意技で返り討ちにしてあげるんだから……っ!」
……。
「……あれ?」
……。
「……あれれ?」
攻撃が来ない。影の自分も心なしか落ち着かない様子を見せている。
そう、ユニの得意技は相手のユーベルコードを『録って再生する』技。相手の技を見ないことには始まらない――。
「くぅぅ、ユニの攻撃の弱点を知ってるとは、なかなかやるのね……ニセモノさんのくせにっ!」
埒が開かないと敵が模倣を解く、その前に。自棄っぱちのように怒りを振り撒くユニ、すちゃっと高々掲げ上げたのは、旧式の分厚い取り扱いマニュアル!
「こんなときは! 実力行使で! ユニは! いきます!!」
白い翼をふわり靡かせ、ユニは跳んだ。ばしん、ばしん、叩きつけるマニュアルは重さ厚さ的にも充分武器に値するけれど、
「えーい! ユニ負けないんだから……! わーん、ごめんねとろりーん!」
真骨頂はその角にある。――ごんっ、と垂直落下した本の角は、痛い。かなり痛い。
くるくると目を回して、くるりくるりとふらついて。苺色の砂糖菓子のような少女の影は、どこかすっきりした顔のユニの傍ら、ふんわりと消えていった。
――この子を写したのは失敗だった……と思ったかどうかは、もはや骸の海の泡。
大成功
🔵🔵🔵
ユキ・スノーバー
うー…こんなの追いかけてきたら確かに逃げるっ!
食べるにしても、ぼく美味しくないと思うんだよ
真似っこ、最近の流行りかな?
他の世界でも、似た嫌がらせしてくるの居たし…
でも!
真似するだけじゃ、工夫して動く所までは無理だよー?
吹雪は慣れてないと、確かに目眩ましになるけど
懐に飛び込むまでの動きを含めて普通に動くと、もれなく転んじゃうんだよね。
つるつるになる地面の足遣いは身体が憶えてる経験だし
感覚的な勘での方向把握は、本人に依存するものだと思うし
…自分がされたら嫌な嫌がらせは(目をきらーん)
足元に金平糖撒いてから、吹雪の中から顔画面フラーッシュ!
場所判らせて誘導、かーらーのー転ばせて脳天にフィニーッシュ!
●
「うー……こんなの追いかけてきたら確かに逃げるっ!」
すたこらさっさー! ボール箱を頭にかぶり、ユキは戦場をちょこまかと駆け巡る。
「食べるにしても、ぼく美味しくないと思うんだよ! ……って、聞いてないーっ!」
箱ごと払い飛ばされ、転がった先。いてて、と立ち上がった目の前に、ほんわり笑ったような顔の自分が立っている。
「あっ、ぼくの姿なら怖くないや。……けど、真似っこ、最近の流行りかな?」
他の世界でもそんないやがらせをしてくる相手に会ったのだ。くるりと回ったりアイスピックをぶんぶんしてみたり――まねっこ度合いを確かめつつ、
「でも! 真似するだけじゃ、工夫して動く所までは無理だよー? 雪国の知恵と工夫、お見舞いしちゃうぞーっ!」
フロアを真っ白に染める華吹雪を放てば、影の自分もすかさず同じ技を繰り出してくる。重なり合う雪の密度に視界をとられ、ユキも思わず目をしぱしぱさせる――けれど。
「吹雪は慣れてないと、確かに目眩ましになるけど……ねえ、ぼくのところまでちゃんと来れるかなー?」
そう、視界を奪うだけでは何ともならない。ホワイトアウトの中、敵の位置を的確に察し、その懐に飛び込む――それは雪の世界に慣れたユキだからこそ叶うこと。
滑らかに凍った地面での足遣いは体で憶えること、視力に頼らない方向感覚は本人のセンスにも依存すること。
すてーん! と転んだ気配に、ほらほら、普通に動くともれなく転んじゃうんだよね、とピックを振って。ユキはさてと首を傾げる。
「いっぱい追いかけ回されたからねー。……この雪の中で、自分がされたら嫌な嫌がらせは(きらーん)」
輝く瞳。ポケットから取り出したる小瓶には、とろりんのようななないろの金平糖。
「ちょっともったいないけどね。さっさっさー、っと」
自分の足許にその、可愛いけれどトゲトゲしたお菓子を撒いて。
「ほらほら、こっちだよー。顔画面フラーッシュ!」
ぴかー! 雪をさらに真白く染める輝きに、苦戦する敵もおおよその方角を掴んだ様子。鬼さんこちらーっ、と叩く手も加えれば、よたよたと目の前に現れた影の自分。
その足が、金平糖を踏む――バランスを崩す――容赦のないアイスピックが足首を掬う!
すてーん! 転んだ影はついでに飛び上がった。もこもこの服を介しても、思いきり転んだお尻に金平糖のトゲトゲはちょっぴり痛かった。そこへ、
「かーらーのー脳天にフィニーッシュ! 真似っこさんはさよならなんだよーっ!」
元気よく勇ましく、振り下ろすアイスピックが影の自分を叩き壊す。
まるで名残の雪のように、ふわっと溶けてなくなる白と影。残された金平糖たちを、ユキはつん、と指先でつつく。
「うーん、なんだかあの子たちが助けてくれたみたいなんだよ」
ころり、ころころ、転がるなないろは――消えていったとろりんたちの色。
大成功
🔵🔵🔵
依世・凪波
とろりんとは違うヤなヤツ…
先程とも違う覚悟で「イクシオン」を構え敵を見据え
悪意あるぎょろりとしたあの視線は苦手だけれど
とろりん達とまた会った時に胸を張れるように
これまでの経験も怖かった事だって乗り越えられるように
逃げてちゃダメなんだ
掠める攻撃に血を流し経験を奪われたとしても
俺が全部盗み返してやる
あの時の気持ちも結果も全部俺のなんだから!
それに俺から奪った経験も逆にアイツの弱点に
なるかもしれないよなっ
怖い思い出を見て躊躇したり足が竦んだり
そんな気持ちなんて知らなかっただろ!
俺もまだ全然ダメだけど…それでも!ちゃんと前に進んでいきたい
だから頑張る
野生の勘に従い【シーブズ・ギャンビット】でダガー投擲
●
(「あの視線……苦手だな」)
巨大な眼は、全てを見通すようで、盗もうとしているようで。けれどそれから目を逸らすことは、しない。凪波は十字の短剣を構え、油断なく影に向き合った。
いつかは自分も過去になる。そうしてあのとろりん達とまた会った時、この怖さを乗り越えたと胸を張れるように。
「逃げてちゃ、ダメなんだ!」
未だかたちの定まらない影へ突進する。実直な一閃は影の腕に掴み止められ、その瞬間、間近に見る影が姿を変える。必死に、懸命に自分と対峙しようとする、『自分』――奪われたものに歯噛みするけれど、
「大丈夫だ。俺が全部盗み返してやる! 奪われた経験もあの時の気持ちも、全部俺のなんだから!」
奪ったならわかるはずだと凪波は叫ぶ。これまでの戦いで得た恐怖。――それはきっと、自分が破れるなどと露ほども思っていない災魔にはない感情だ。
「どうだっ、そんな気持ちなんて知らなかっただろ! ……だけど、俺はもう乗り越えてる!」
僅かに下がった耳と尻尾を目に、そうだ、と一瞬で距離を詰める。獣めいた跳躍に相手もひとたび退がろうとしたものの、僅かに遅い。勇気に背を押され、躊躇いなく振う凪波の一閃が先手を取った。
まだまだ足りていないと思うのだ。怖い思いをすれば躊躇する、足だって竦む。けれど、それでも。前に進んでいきたいと思う。
「……ただ奪って自分のものにするだけじゃ、心は強くならないんだ!」
投げつけたダガーが、影の自分に突き刺さる。肖った雷と雨の神の名に恥じぬ威力で、凪波のかたちを剥がしていく。
ゆらりと消え失せた影の後に、投擲したダガーが落ちる。汚れを払って拾い上げると、その柄をぎゅっと握り締めた。
「……とろりん、俺、頑張るからな。お前たちみたいに、助けてやれるものを増やしたいんだ」
ぷうぷうと笑う声がまだ、しゃんと立った狐耳の奥に残っている。
大成功
🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
おいおい、誰がそんな悪どい表情したよ
真似が下手なんじゃねぇかぁ?
歌で身体強化して先制攻撃
はッ…!流石にこれはついてこれるってぇ?
それならもっとスピードをあげればいい
何時もならそう動くとこだが…
アレスの気配を感じて足をとめる
お前が俺だっつーなら
攻略の正解がそこにいる
下手に動き回らずしっかりと構え
相手をよく見て動きを予測
まるで10秒先の未来を見て来たかのようにってな
最小限の動きで見切り受け流すと同時にカウンター
どれだけ姿を真似ようがお前は俺じゃねぇんだ
あの日の誓いは、お前の元にはない
【君との約束】で現れた光の剣で敵を貫く
戦闘後アレスを見て笑う
…守られてんなぁ
なんだよ何か言ったか?
アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
貴様が本命か
自分の姿なら遠慮も手加減もいらないな
覚悟してもらおう
…っなるほど
剣を交えて分かった
防御重視の戦法にカウンター
確かに『僕』だな
…というか、こんなにもしぶといのか
…少し試してみるか
【君との約束】を攻撃重視に発動
…まるで傍にいるみたいだな
君の力を借りるよ、セリオス
盾を全力で「投擲」
盾に注意が向いてる隙に一気に距離を詰め
炎「属性攻撃」で斬り、避けられても動きを予測して「2回攻撃」
盾を拾うと「シールドバッシュ」を全力で叩き込む
考えるよりも速く
斬って殴って攻めまくるセリオスの戦法
…こういうのも偶には悪くないね
戦闘が終わり
彼の姿を見て破顔する
君は本当に頼もしいな
いや、こっちの話
●
歌い上げる柔らかなアルトが地下迷宮に反響する。少年の甘さを僅かに残した声は、しかし戦いの場に相応しい芯を持ち、熱を持ってセリオスの帯びる力をいや増しにする。
相棒と分かたれようが、星の歌声に帯びる自信は揺らがない。それが映し出された敵の顔に、セリオスは思わず苦笑いした。
「おいおい、誰がそんな悪どい表情したよ。真似が下手なんじゃねぇかぁ?」
返るのは不敵な笑み、そして冴え渡る声。セリオスの歌を上塗りし、邪な魔力で籠めようとする影の自分の歌を、不思議な心地で聴く。
(「俺ってこんな声してんのか……別人みてぇだ」)
発する声は、自分ではありのままには捉えられないと聞く。ならばこの声も、影の向こう側で戦っている筈の相棒には自分のもののように届くだろうか――、
「いや、愚問だったな」
あいつなら、俺の声を聴き分けられる。絶対に。揺らがぬ信頼に好戦の笑みを深め、セリオスはふたいろの純白を敵前に突きつける。闇色の髪を散らして躱す影に、流石は俺と自画自賛して、
「――なんてな。さて、お前が読めたのはそれだけか?」
気づけば周囲に漂う守護の気配が、光の剣を紡いでいく。ここにない姿の代わりに添い立ち、守り立つそれらにひととき笑みを和らげて、セリオスは宣言する。
「どれだけ姿を真似ようが、お前は俺じゃねぇんだ。あの日の誓いは、お前の元にはない――あいつの心が揺らがねぇ限りはな!」
そしてその日は、永遠に訪れない。
眼差しは影の自分から逸れることはない。いつもの自分のように速度を上げて懐に踏み込んでくる相手を、いつもの自分に背いて待つ。十秒先の自身の太刀筋を未来から躱しに動き、跳ね飛ばされた斬撃に相手が怯んだ隙に、光の剣を掴み取った。
ざくり――ひといきに息の根を止めた感触は、すぐに立ち消える。光に攫われ消えた影に、青年はふん、と人の悪い笑みを浮かべた。
「……貴様が本命か」
自分の姿であれば、遠慮も手加減も無用のもの。騎士然とした佇まいを模倣する影に正対し、アレクシスは胸の内だけに密やかな吐息を落とした。――あれが相棒であったなら、或いは。
攻め立てる剣戟を往なしながら、アレクシスはいや、と薄い笑みを浮かべる。相棒の姿を騙るというならなおのこと、その罪悪を許す理由は自分にはない。
「……っなるほど。確かに『僕』だな」
打ち込まれる光剣の攻めは幾分か行儀良く、けれどそれだけ隙が少ない。踏み込まれれば即座に弾き返し、僅かな隙を突きに来る守りの戦法。確かに覚えのあるそれは、敵とすれば随分としぶとく、思考を共有されているようなやり難さがある。
(「……こんなにもしぶといのか。褒めるべき、かな。けれど……」)
盾としての在り方には充分。だが、この一戦を決するにはこの拮抗を破らなければ。
き――と、押し合う刃がわなないたその時、耳に届いた歌声に意識が冴えた。
「……歌」
白く細い喉が紡ぐ星の声を、誰よりも知っている。無粋にも重なり来る歌声はよく似ていながら厭わしく、けれど塗り潰されようとする歌声の澄明は損なわれることなく響いた。
「少し、試してみるか……!」
――からり、ころり。
囁く小鳥、春喚ぶ祝祭に主を得た木鈴の音が、起点となる。
湧き起こる根源の魔力はたちまち星の煌めきを集め、アレクシスへと渡らせる。光を強めた『赤星』に、敵の刃はきりきりと押されていく。
思考はしない。とうとう叩き返した剣が翻る前に、その胸に盾を叩きつける。跳ね返されるその下を共に潜り抜けた剣は、暁の光に染まった。燃え上がる炎の一閃に、影の自分が目を瞠る――その隙にもう一閃を叩き込む。斬って、殴って、直向きに攻める在り方は、自分のものではなく。浮かんだ顔に、つい笑う。
「――……こういうのも偶には悪くないね」
夜明けの光が影の自分を――闇を拭い去っていく。失われていく敵意を背に振り向けば、そこには。
「……守られてんなぁ」
自分も相手も冷やかすように。にやりと笑ったセリオスに、アレクシスは破顔する。
「……君は本当に頼もしいな」
「なんだよ、何か言ったか?」
「いや、こっちの話。さあ、行こうか」
見渡せば、フロアに満ちていた影はもう跡形もない。薄暗い敵意の侵攻を食い止めた安堵に、仲間たちの頬にも笑みが浮かんでいる。
上層へ戻っていく猟兵たちに続きながら、二人はぱちり、高く強く手を叩き合わせた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『オーダーメイド学園服を作ろう』
|
POW : 採寸や材料選びに勤しむ
SPD : 自分で縫製するなどして、お手伝いをする
WIZ : 自由にして良いの部分のデザインを練る
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●君を彩る魔法の装い
無事に戻った猟兵たちを安堵の笑顔で労って、ジナが案内した先は――熱を増しゆく初夏の陽射しが差し込む、アルダワ魔法学園のテラスだった。
「いらっしゃいませ! 生徒さん方、制服のお仕立てはいかがです? 可愛いタイやアクセもお作りしますよ!」
――仕立て屋『ホーカス・ポーカス』。夢と魔法に満ちた仕立てをしてくれる彼らのことは、日頃から魔法に親しむアルダワの学生たちの中でも噂となっていた。
その出張店舗と言うだけあって、爽やかな五月の風吹く広々としたテラスは、それこそ夢か魔法のように、彼らの『店舗』に変身してしまっている。
テラスを歩くガジェットマネキンたちの纏う制服は、あくまで基本のスタイル。
ブレザーにセーラー、ベストにカーディガンにローブ。それからスカートにパンツにキュロット――などなど、『魔法学園の生徒』らしい組み合わせのサンプルになっている。
もちろんそのままでもお洒落で可愛いデザインになっているけれど――既製品では物足りない、『ホーカス・ポーカス』はそんな生徒たちの望みを叶えるお店。
布地のサンプルは実に百種を超えている。好きな色で、好きな肌触りで、好きな柄で作ってもらう。それだけでも充分に、自分だけの一点が作り出せるはずだ。
「はーい、採寸はこっちに並んでね! 一瞬で済ましちゃうから!」
店子たちの杖からするりと伸びゆく魔法の光で、手早く採寸を済ませたら、登場するのは映し身のようにサイズを再現してくれる、伸縮自在のガジェットトルソー。
そこに衣装を着せかけて、あるいは生地を纏わせて。デザイナーとの相談は尽きない。こだわりを語り尽くせば、興味津々のデザイナーたちは素早くデザインを描き留めていく。その線はたちまちふわりと浮き上がり、ノートの上に立つ立体となって、仕上がりを見せてくれるのだ。
迷う人にはもちろん、デザイナーたちがわくわくするような提案をしてくれるはず。他の世界に寄せたデザインだって、興味津々の彼らはきっと楽しそうに考えてくれるだろう。
それが決まれば、今度はテラスに居並ぶ機械たちの出番。からからくるくると歯車がまわれば、布地は裁たれ、縫い合わされて、あっという間にかたちになる。この作業の速さも『ホーカス・ポーカス』の売りのひとつであるらしい。
仕上がった世界にひとつだけの制服を纏ったら、もちろん個性的なアクセサリーに目が行くはず。
リボンにタイ、ブローチ、スカーフなどは基本中の基本。帽子や靴、懐中時計やブレスレットなどのアクセサリーも品揃えよく、小物を専門とする店子たちが、制服同様あっという間に誂えてくれる。
「これね、いつもはこのくらいするんだけど。今日は生徒さん達がお相手だから、特別サービスしちゃう。このくらい……ね、どう?」
魔法の掛かったビーズや鉱石、魔法文字の編み込まれたリボンにレース。今日は学生の懐にも優しいお値段で揃えてくれている、らしい。
全てをひと巡りする頃には、『魔法学校生』かくやという装いに包まれているはずだ。
――さあ、ここからは楽しい楽しい着せ替えの時間。
明日からの学園生活をほんの少し楽しくする『君色』を、どうぞ、『ホーカス・ポーカス』で!
英比良・與儀
はしゃぐヒメ(f17071)と
…やっぱ気まぐれに誘わなけりゃよかったな
うるせェ、おちつけ(蹴)
この前のご褒美に服を作るって、揃いかよ…
まァ、いいが
生地は、艶やかなのが良い
白…ヒメちょっとあわせ…イマイチ
…ウゼェ。お前の選ぶのやめた
折角来たし俺の作るか
ヒメは好きにしろよ
黒の軍服
上着は首元締めるやつ
ズボンはタイトな感じでブーツはニーハイブーツにする
それから、マントは右肩から流す感じで、裏地は紅
はは、あっという間に出来上がりだな
魔法はスゲェ
俺も物作りは好きだから、仕立て屋達の姿を見るのも楽しい
おい、ヒメ
結局お前は…あー? お揃い?
はァ?
自分で考えて作れよ、バカ
ったく…ホントに仕方ねェなァ、お前は
姫城・京杜
與儀(f16671)と!
え、この前のご褒美!?まじで!!
(超テンション上がりまくる)
んー生地とかよくわかんねーから、與儀にお任せだぞ!
(一緒にお出かけというだけで嬉しい)
軍服はいつも着慣れてるけど黒ばっかだから、白は新鮮だなー…って、イマイチ!?
そんなバカな、俺はイケメンだから何でも着こなせるはずだぞ!?(しかし謎の七五三感
えっ、え、あれ、ご褒美は!?
じゃあ、えっとな…あ、俺もそれがいいー!(完成した與儀の軍服みて
俺もー! 與儀と全部同じやつ!
ん?別にいいじゃねェか、考える手間も時間も省けるし!
それにお揃いだしな!(にこにこ
洗い換えも頼んどこ!
たまにはこんなお出掛けも楽しいな、與儀!(超笑顔
●
仕事をこなした猟兵たちが戻る頃には既に、テラスの仮店舗は学園の生徒たちや噂を聞いた人々で賑わっていた。
「え、この前のご褒美!? まじで!!」
「うるせェ、おちつけ。……あァ、やっぱ気まぐれに誘わなけりゃよかったな」
「やったーさっすが與儀! って、蹴るなってぶつかるだろ……!」
はー、と大袈裟な溜息を吐きつつ、流れるように青年を蹴り飛ばした少年――然とした姿の神様、英比良・與儀(ラディカロジカ・f16671)。蹴られた側の姫城・京杜(紅い焔神・f17071)、通称ヒメは、種族こそ違えば盛大に揺れる尻尾が見られるだろうという喜びっぷりで與儀に追随する。
「んー、生地とかよくわかんねーから、與儀にお任せだぞ!」
「はァ? ……まァ、いいが」
生地は艶やかなものがいい。肌触りを試す指先は次々と布を浚って、お、と手を止めたのはきりりと締まった織りも美しい、滑らかな布地だった。その色は、
「白……ヒメちょっとお前あわせ」
「わー、軍服はいつも着慣れてるけど黒ばっかだから、白は新せ」
「イマイチ、却下」
「ひどくねえ!?」
碌に合わせる暇もなく生地の束を取り上げて、眇めた眼差しを辺りに向ける少年に、青年は取り縋る。
「そんなバカな、俺はイケメンだから何でも着こなせるはずだぞ!? ほら見ろって、似合ってるだろ與儀!」
試しにとマネキンの着ていたものを纏ってみる京杜。素直すぎる根が幼さとして現れているのか、それとも別の理由によるものか――謎の七五三感、気づかぬは本人ばかりである。
「うっせェ鏡見ろ鏡。……あーウゼェ、お前の選ぶのやめた。折角来たし俺の作るか――」
よほど真面目に楽しげに、自分用という布地を選びにかかる與儀に、取り残された青年はそれでも健気についてゆく。素知らぬ顔でデザイナーと話を始める與儀の、
「なァ、制服ってのは学生用に限らねェだろ? 特注ってやつ、頼めるか?」
にやり笑いに、デザイナーは面白そうに笑みで応えた。
「お望みとあらば如何様にも。それで、どんな燃えるオーダーかな?」
低く咲き響く声で、少年が滑らかに語るそれは、あっという間に仕立て屋の手でかたちになっていく。首許をきちりと締める立て襟に施されたベルトがストイックな上着、合わせるズボンは細い脚のラインを拾うタイトなもの。膝上まで深く履き込むブーツ。
艶めく黒の出で立ちを引き立てるのは、右肩から流したマントの裏地。目の覚めるような――けれど品の良い紅で、
「仕立ての良さが窺えるだろ?」
「はは、手前で言えるのは一流の証だ。魔法はスゲェ、あっという間に出来上がりだな」
蒸気のひと息にも断ちあがり縫い上がっていくその様を見る瞳、袖を通し仕上がりに笑む顔は、少しばかり年相応に少年めいて。そういえば、と振り返る。
「おい、ヒメ。結局お前は……」
「……はっ」
見惚れていた、と言って差支えないのだろう。ぼんやりとその姿を見つめていた青年は、我に返るなり満面の笑みで、
「俺もそれがいいー! 仕立て屋の兄ちゃん、俺も與儀と全部同じやつー!」
「はァ? 揃いってお前な、自分で考えて作れよ、バカ」
「別にいいじゃねェか、考える手間も時間も省けるし! ばっ、だから蹴るなって! 新品なのに汚れるだろー!」
何より與儀とお揃いだしな、と笑う青年は、貶されようと蹴られようと嬉しげだ。――この前向きさで、長い時を待っていたのだろうか。
洗い換えも頼んでやるからな! と訴える青年を見下ろして。呆れ果てた與儀の喉がくっ、と不意に音を立てる。
「ったく……ホントに仕方ねェなァ、お前は」
欠片ほどの愛しさの滲む声と笑み零し、もう一度その背を蹴り飛ばしてやった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リヒト・レーゼル
採寸?制服?どれも知らない言葉ばかりだ……。
何をすれば良い?
あ、ここに行けば良いのか。なるほど。
特に拘りは無いんだけどいつもこの灯りと一緒だから
この灯りが下げれるようになれば良いな、って思っているよ。
魔法使いじゃないけど……灯りが苦手な人もいるみたいだから
灯りを隠せるようにもしてほしいかな。
これはここの世界の文字かな。なんて書いてあるんだろう。
魔法文字?へぇ、そんなものもあるのか。不思議だなー。
好きな色かー……。特に無いけど、灯りみたいなオレンジは親近感が沸くんだ。
出来た?……これが制服。
こういうの初めてだ……。軽くて動きやすい。凄いね。
ディフェス・トロイエ
おぉ
さすが有名仕立て屋の臨時出張
すごい賑わいだな
(周りの大体の外見年齢を見て)
若い子がいっぱいだな
元気なのは良いことだと思う
っと、行列の邪魔しちゃ悪いから
少し離れた所で考えるかな
制服というのはあの子達が
着ているようなのの事なんだろう……
(かなりのアレンジが入っている制服を
自分が着ているのを想像する)
……無理がある感じがするので却下
せめて最低でも10歳は若くないと…
アルダワの先生方が
着ている服の…とも考えたけど
柄じゃない感がある…気が
折角の有名の仕立て屋さんの
貴重な機会だけど、
服はやめて小物を見よう
普段は何ともない別の要素の小物が
ちょっとした動作でランタンみたいに
照らせる系なのとかあるだろうか?
●
「おぉ、さすが有名仕立て屋の臨時出張……」
テラスに溢れんばかりの人。すごい賑わいだと瞬いて、ディフェスはそろりと人の少ない方を目指す。
壁に背を預け見渡せば、圧倒的に多いのは若者たちだ。しかし、現役であるうちは生涯生徒と認められるこのアルダワには、歳嵩の者も決して少なくない。――それでも。
(「制服というのは、あの子たちが着ているようなものの事なんだろう……」)
大きなリボン、飾りや刺繍で彩ったボタン。ひらひらふわふわの襟に、敢えて短く仕立てたスカート――等々。若々しいアレンジの数々はやけに目について、ディフェスは無理、と首を振る。静かに。
(「……無理がある感じがするので却下」)
せめて最低でも十歳は若くないと、と戒める厳しさは、デザイナーたちの舌にかかれば即座に否定されただろう。とはいえ、教師風というのも柄ではなく。――自分の心が信じることを、自分で覆すのは難しい。
「……貴重な機械だからな。せめて小物でも見てみよう」
壁に預けた体を引き取り、ディフェスは年経た店子に訊ねてみる。少し変わった灯りが欲しいのだ、と。
「普段は灯りとは無縁そうな、別の要素の小物なんだ。それが、ちょっとした動作でランタンみたいに照らせるようになる、とか……」
「――へえ、面白そうですね」
その提案が、職人魂に静かな火をつける。
例えばこの、懐中時計なんてどうだろうかと。銀の文字盤に魔力を帯びた鉱石の欠片を埋め込みながら、店子は語る。
「これは陽の魔力を蓄積する鉱石で、小さな欠片じゃあるけれど、ため込んだ光を百倍にして返すんだ」
作業の合間に語られるそんな物語が、たちまち女を取り込んでいく――その傍らで。
「……ここで、何をすれば良い?」
採寸に、制服。知らぬ言葉ばかりの場所に首を傾げるリヒトに、採寸係の店子はそこでじっとしててくれればいいよ、と朗らかに笑った。向けられる杖に一瞬構えはしたけれど、放たれる光の柔らかさに、恐れはいらないものだとすぐに知れる。
「光で測れるなんて……すごいな」
採寸を済ませ、流れるように促された先には、柔和な笑みを浮かべたデザイナーが待っていた。リヒトの身の丈を正確に写し取ったトルソーに、幾つかの布地を纏わせながら、
「何かご希望はあります?」
「うーん……特に拘りは無いんだけど、そうだな」
いつもこの灯りと一緒だから、と差し出したのは、自分の本体である燈ひとつ。
「この灯りが下げられるようになれば良いな。……それと、僕は魔法使いじゃないけど……灯りが苦手な人のために、隠せるようにもしてほしい」
ひとつひとつに頷いて、デザイナーは小物担当の店子を手招きする。
「燈については彼女に任せてくださいませ。きっと良いようにしてくれます。制服は私にお任せいただけます?」
数ある布地のサンプルから、リヒトが好きだと言った灯りのいろ。暖かなオレンジ色は、ポイントとして。貴方にはこんな色も似合う筈、と差し出された制服のズボンは、深い緑色。ミルクティーのような淡い褐色の髪に、確かによく映えている。
「見て見てー、君が気にしてた文字をあしらってみたの!」
着替えが済んだ頃、駆け戻ってきた小物担当の店子が示したのは、遮光プレートで光度の調整を可能にした小さな燈。硝子に写し取られた魔法文字の羅列は、硝子の外へ零れる熱を封じているのだという。
「これでベルトや鞄に吊っても熱くないからね!」
「総じて――いかがでしょうか、私達の制服は?」
にこりと微笑む二人の店子の前で、くるりと回ってみせたリヒト。表情の希薄な頬に、微かな笑みが浮かぶ。
「……うん、こういうの初めてだ……。軽くて動きやすい」
凄いね、とぽつり。零れた小さな賞賛が、少年には何よりの賛辞だ。僅かの間に理解した仕立て屋たちは、ふふっと誇らしげに唇を緩めた。
大成功
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真宮・響
【真宮家】で参加。
本当に手がかかる敵だったよ。全く。奏、瞬、大丈夫だったかい?仕立て屋さんが無事に開店されるようでなによりだ。制服って年齢じゃないけど、改まった一張羅を作って貰えるって考えればいいのかね。
アタシは茶色のジャケットにボルドーのベスト。茶色のアスコットタイにボルドーの千鳥格子のパンツ。帽子を作れる余裕があるなら黒いベレー帽。
作成過程を見て感心。良く出来てるなあ。いつもご苦労様。いいの作ってくれてありがとう。感謝するよ。
真宮・奏
【真宮家】で参加。
凄く怖かったけど、何とかなりました!!二度と戦いたくないです。学生の制服、憧れだったんです!!とっておきをお願いしますね!!
えっと、紺のチェックのワンピース。袖はバブ・スリーブで。揃いの紺のボレロをお願いできますか?胸に付けるのは紺のリボン。帽子も紺のベレー帽で!!
大盛況ですね。響母さんも瞬兄さんもお似合いです!!たまにはこういう時間もいいですね。
神城・瞬
騒動は何とか収まりました。仕立て屋さんですか。一張羅は持ってますので、術士らしく・・・ローブをお願いしますかね。
色は蒼、形はジュストコール・・・アビとも呼ばれますね.襟にラフという襞状の飾り襟、腰の辺りでボタンで留めて、ボタンには飾り紐。
注文が細かいですが、何とかなりますでしょうか・・・首には青のスカーフですかね。
響母さんと奏も見違えるようです。こういう楽しい時を護れて、満足です。
●
「……やれやれ、本当に手がかかる敵だったよ、全く」
大丈夫だったかいと響が訊ねれば、奏はふるりと身を震わせた。
「凄く怖かったけど、何とかなりました!! 二度と戦いたくないです」
それでも果敢に戦う子だと知っている。瞬は、と巡らせた眼差しに、穏やかな二色の瞳は何とか収まりました、と吐息を零す。よくやったねと労って、母は二人を送り出した。
「ほら、行っておいで。折角なんだ、何か誂えてくればいいさ」
「はい!! ふふ、学生の制服、憧れだったんです!!」
「僕は着るものに困っては……」
「上着くらい頼めるだろう? 勿体ないよ」
「……そうですね。では」
娘と息子の感覚の差違に苦笑しつつ送り出してやれば、朗らかな娘はさっそく相談相手を捕まえたようだ。
「デザイナーさん、とっておきをお願いしますね!!」
「ふふ、あたしたちの仕事は毎回とっておきですよ、お嬢さん」
にやり笑ってさてご要望は、と訊ねる仕立て屋に、奏は指折りながら希望を伝えていく。
紺色のチェックの布地で作ったワンピースは、袖をふんわり膨らませて。纏うボレロには同色の無地の素材を、胸には共布のリボンを添えて。
「帽子も紺色がいいですね、ベレー帽で!!」
「ふふ、シックな色がお好みなんだねお嬢さん。デザインのし甲斐がありますねえ」
かくして品よく纏まった制服を着こなして、くるりと回る奏。その笑顔にひとつ笑み零し、瞬はさて、と客を送り出したデザイナーに声を掛ける。
「術士らしく……ローブをお願いできますか? ――こう、腰の辺りをボタンで留めて……そうですね、そのボタンには飾り紐を」
蒼のジュストコールに、フリルのように襞をとった飾り襟。話し出せば拘りも出てくるものだと、少年は自分でも驚いていた。
「首には青のスカーフを。……注文が細かくてすみません、何とかなりますでしょうか?」
「何とかするのが僕らの仕事なんですよ、お兄さん。待っててください、瞬きする間に仕上がりますからね」
にっこり笑った仕立て屋の、その言葉に偽りはなかった。蒸気を吹かす機械をいくつか潜り抜けるうちに、頭に描いたままの制服がたちまちかたちになっていく。
子どもたちは楽しげに、噂の臨時店舗を満喫しているようだ。
安堵の笑みを心地好い初夏の風に溶かし、響は人の溢れるテラスをぐるりと見渡した。
地下迷宮での災厄は、この店舗とは直接関わりがない。けれど、討伐の失敗を重ねていれば、いずれはこういった娯楽の類も楽しむことができなくなってくるだろう。だからこそ、自分たちのしていることには意味がある。
無事の開店を何よりと心から喜んで、響はのんびり人波に混ざってみる。
「制服って年齢じゃないけど、改まった一張羅を作って貰えるって考えればいいのかね」
「おや、お姉さんの歳くらいの学生なんて普通ですよ。この学校じゃ、引退するまで学生だからさ。戦力にならなくなって初めて卒業だからね」
あたしは生憎この歳でそうなっちゃったんだけど、と笑う店子は、恐らく自分と同じ年の頃だろう。けれどその表情に悲壮はなく、寧ろ楽しげに仕事に励んでいる。
「さてお姉さん、何か見繕わせてもらいましょうか?」
「ふふ、光栄だね。じゃあ……そうだなぁ」
シンプルなブラウスにしっくりとこなれた茶色のジャケット、同色のアスコットタイ。合わせるベストとパンツには、ボルドーで彩りを添える。ベストには無地を、パンツには千鳥格子で軽やかさを加えた自分の姿は、いかにも凛と強かに見えた。
「どうでしょう? ふふ、その装いでまだまだ現役で頑張って頂戴ね、お姉さん」
「はは、ありがとう。……それにしても良く出来てるなあ」
良いものを作って貰ったと綻ぶ響のもとへ、着替えた子どもたちが手を振りながら帰ってくる。
「ふふ、大盛況ですね。響母さんも瞬兄さんもお似合いです!!」
「本当に。二人とも、見違えるようですね」
妹の笑顔に、瞬はようやく笑みを浮かべた。
血は繋がらずとも、こうして過ごす楽しい一時を守れたことに、何よりも満ち足りて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
終夜・凛是
帰る
そう思ってたけど、賑やかだとちょっと覗いて
お節介のジナの姿を見つけてしまった
見つかる前に帰…もう無理そう
制服、作るの?
ふーん…
服飾は、あんま興味ない
動けたら、それでいい
…作った方がいい?
着るか、わかんないけど
服…こうして作る? とか、初めて
…よくわかんないからお節介に任せる
……任せてからちょっと不安になる
シンプル、シンプルな感じ
お節介の注文は話半分くらいにきいて仕立て屋に任せる
たぶん、それが一番いい
マント…
布がひらひらするの好き
追いかけていたい
布、その星空みたいなの、好き
あとはアクセ?
…これなに? ネクタイ?
俺、したことない
これどうやるの?
……これこそ魔法みたい
俺もできるようになろ
セラフィム・ヴェリヨン
魔法って、すごいのね
楽しそうに作ってるのを
見ているだけでも飽きないわ
ああでも今日はお洋服を頼まなきゃ
デザイナーさまに相談を
最近戦う事が増えたけど
鎧は使い熟せそうになくて
守りのルーンを刻んだローブなどは出来るかしら?
生地は夜の色で
裏地には瞬く星空の幻を
けどどれも素敵で
留め具が決まらないわ
《ジナさま、もし宜しければ見立てをお願いしても?》
許可が頂けたらご一緒に
最後は杖に手を伸ばし
真珠の杖に藍色の石
でも触れる直前でふわりと消え
…あら、エレメンタルロッドなのね
燐光の美しい蝶々が本来の姿?
ねぇ、私があなたを手に取っても構わない?と
そっと指を差し出して
乗ってくれたら連れて行くわ
(喋れないので筆談で会話)
●
(「帰るって、思ってたのに……」)
諦め顔の凛是は何故か賑わいの中にいる。
溜息を落とす少年とは裏腹に、『何故』の理由は凛是をぐいぐいテラスの中へ引き込んで、せっかくですから凛是様も作りましょうなどと瞳を輝かせている。逃げるのは、一瞬遅かった。
「制服、作るの? 俺、服飾は、あんま興味ないんだけど」
訊ね人をする足と、戦いに手向ける拳が動けたなら、それでいい。こともなげにそう零しても、学園内では今よりもっと身軽になれるかも、などとジナは笑って、
「とにかく、着てみないと分からないのです!」
「……着るか、わかんないけど。……一から作る? とか初めてだし、よくわかんないからお節介に任せる」
拒む方がめんどうそうだ。やむなく、仕方なく、はあ、と溜息で受け入れた途端、凛是はちょっと不安になった。眼前の少女の輝く瞳は危険な気がする。
喉許を緩めやすいシャツに、身軽に動きたいならジャケットは重ねずにふんわり軽いローブかマント。話は無難に進むようでいて、
「色はええと、これとかこれとか。あっ、ポイントにこんな柄は――」
隙あらば変わったものを選ぼうとする気配。
「シンプル、シンプルな感じ。……こっちが言ってるのは気にしないで」
気が気でなく思わずそう口出せば、仕立て屋はにっこり微笑んだ。
「……でも、マントは、いいかも。……布がひらひらするの、好き」
その一言に広げられた布は、どれも深みあるひと色のシンプルなもの。けれどその裏地に広がるものは、
「……あ、布、その星空みたいなの、好き」
「わあ、きれい! 星空ですね!」
――思わず声が揃って、思わず口を噤む凛是。どうして不満そうなんですか、と非難がましい少女の声に、比喩でなく澄んだ音色が笑ったようで、凛是は顔を上げた。
「セラ」
「≪こんにちは。凛是さま、ジナさま≫」
――手間暇かけた手縫いの品も素敵だけれど、こうも楽しげな魔法の仕立てを見れば、セラフィム・ヴェリヨン(Trisagion・f12222)の心は躍り、瞳は飽くことを知らない。電子端末に挨拶を浮かべ、僅かに柔い表情を浮かべた銀の瞳にも、瞬く星の織り込まれたその布地は好ましく映っていた。
「セラフィム様も気に入られたのなら、外套、一緒に作っていただきませんか?」
「≪お許し頂けるのでしたら。鎧は使い熟せそうになくて、加護を施したローブなどを作りたいと思っておりましたの≫」
戦いの日々に身を置いても、時折壊れそうで不安になる自身を軽やかに、柔く守ってくれるものが欲しくて。守りのルーンを刻んで、少しでも長く立てるように――と願い出れば、デザイナーはこんなふうに、と魔法のデッサンで示してくれる。
「≪まあ、素敵だわ。そちらでお願いいたします≫」
「留め具はどうしましょうね。金銀の翼に鎖、鍵と錠なんてのもあるけれど、お嬢さんにはビジューもお勧めしたいなあ」
「≪どれも素敵で決まらないわ……ジナさま、もし宜しければ見立てをお願いしても?≫」
「えっ、私でいいのですか……!?」
――と言いつつ嬉しそうな娘に、セラフィムは大人びた瞳を和らげる。あれもこれもと悩んだ末に、深浅の水の髪持つセラフィムの為にジナが選び取ったのは――仕立て屋が深海の輝石と呼んだ、虹の煌めきが遊ぶ水色のビジュー。しんと落ち着いた夜色のローブに、その輝きは髪とともに、静かな煌めきを添えている。
選んでしまえば、仕上がりまではあっという間。新しい装いに身を包んだ凛是は、落ち着かなさげにそわりと尻尾を震わせる。――全く同じではないとはいえ、誰かと揃いの誂えなど、初めてのこと。
「……これなに? ネクタイ? 俺、したことない。これどうやるの?」
「え、私も初めてなのです。セラフィム様、ご存知ですか?」
きらきらとかそけき音色を喉から零した少女に、年上のふたりは素直に教えを乞う。こうしてこう――と滑らかに動く指先に、素直な感嘆が並んだ。
「……セラ、すごい。これこそ魔法みたい。俺もできるようになろ……」
「セラフィム様、魔法のゆびさきなのです……!」
白磁のような頬をほんのりと染め、賛辞からそっと逃れたセラフィムは、かたすみに飾られた杖に射抜かれた。
真珠の光沢の杖に、深い藍の石を戴いて。触れようと伸ばした『魔法のゆびさき』は、けれど空を切る。代わりにふつと鼻先を過ったものは――青く醒めた燐光を零して舞う、美しい蝶。
(「あら、エレメンタルロッドなのね――ねぇ、私があなたを手に取っても構わない?」)
物語の使い魔のように、この手に誓い、これからを共にしてくれるだろうか。
饒舌な銀の眼差しに、物思うように漂った蝶はそっと、その指先に宿る。新たな服に新たな友を得て、少女はふわり、いとけない唇を綻ばせた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と
どんなものだろうって思ってたけど、凄いですね
魔法みたい…いや魔法なんだけど…
自分だけの制服、楽しみだな
一瞬で終わる採寸と出来上がったトルソーに目を輝かせ
学校の制服なら、ワイシャツにネクタイ、ベストとか?
女の子だとリボンかな、ローブは確かに魔法使いっぽい
お店の人にも聞きながら試行錯誤
デザイナーさんの描く線の動きや立体映像に感嘆の声
色は…確かにラナさんは春っぽいイメージ
冒険なら青とか紫とか、緑とか?
俺は、白ですか?
あんまり着ない色だけど、俺も冒険してみようかな…?
ラナさんは本物の魔法使いみたいで素敵です、可愛い
とても良く似合ってますよ
…俺も似合ってますか?ふふ、嬉しいです
ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と
魔法の服だなんて、すごく素敵ですね!
現れたトルソーや魔法の品々に瞳を輝かせ
蒼汰さんが魔法に興味を持ってくれて嬉しいです
私、学校って行ったこと無いのでどうすれば良いか…
へえ、皆さんそういう服を着るんですね
あ、このローブとか魔法使いっぽくないですか?
お店の人のアドバイスを聞きながら悩んじゃいます
ちょっと冒険して、普段とは違う色を…青に紫、素敵ですね
あ、この深緑色綺麗
赤色とも合わせやすそうです
蒼汰さんは、今回は白いのはどうですか?
ベストにスカート、胸元にリボンにローブ
ふふ、憧れの魔法使いっぽいですか?
ありがとうございます!
蒼汰さんもよくお似合いです、カッコイイですよ!
●
――話に聞いただけでは、どんなものだろうと思っていたのだけれど。
会釈をして目の前を行き過ぎるマネキンに、杖から放たれた光を纏って自在にかたちを変えるトルソー。白煙を吐いては布を服へと変えていく魔法のミシン、魔法のアイロン。
好奇心に輝く瞳を、傍らでもっと輝くラナの瞳へ向けて、蒼汰ははあ、と溜息を零した。
「凄いですね、魔法みたい……いや、魔法なんだけど……」
「ふふ、蒼汰さんが魔法に興味を持ってくれて嬉しいです!」
魔法をこよなく愛する少女は、夢見るようにテラスを見渡して――不意に、ほんの少しの不安を覗かせる。
「私、学校って行ったこと無いので、どうすれば良いか……」
「そうですね、学校の制服なら、定番は……ワイシャツにネクタイ、ベストとか? 女の子だとリボンかな」
ほら、と指し示す指の先、客の視線を集めて行き交うマネキンたちは、個性を示しつつも模範的なデザインを身に纏っている。
「へえ、皆さんそういう服を着るんですね」
店子に手招かれるまま魔法の採寸を済ませれば、傍らのトルソーがふたりの背格好を形作る。背比べをしてみる蒼汰に笑いながら、ラナはあっ、と彼方を通り過ぎたマネキンを指さした。
「あのローブとか、魔法使いっぽくないですか?」
「確かに。ラナさん、羽織ってみます?」
自分が、と止める暇もなく、駆け出した青年はマネキンからその羽織りを受け取ると、ラナの肩へ着せかける。軽くて涼しい布地を使っているんですよ、と店子は言ったけれど――触れた肩に籠もる熱は気のせいだろうか?
「魔法学校、ですからね。ここにいる間だけでも、ミステリアスな色に身を包むのも悪くないと思いますよ、お嬢さん」
「ミステリアス……普段とは違う色で冒険してみるとか、でしょうか?」
デザイナーのアドバイスに耳傾ける少女の姿に、蒼汰はことりと首を傾けた。
纏う服は温もりの色、それから瞳の苺色。あたたかな春の彩りに包まれる彼女が冒険するというのなら、
「青とか紫とか、……この緑とか?」
「青に紫……あ、本当です、この深緑色綺麗。素敵ですね、赤色とも合わせやすそうです」
その彩りは言葉通り、ラナの服にそのまま重ね合わせてもよく映えて。それならとベストとスカートを似合いの紅の系統で揃えてみせながら、
「私ばかりじゃなくて、蒼汰さんも選ばないと」
「……うーん、考えてはいるんですけど」
装いを一から組み立てた経験はない。試行錯誤、苦戦する蒼汰に、デザイナーは曇り顔ひとつなく新たな色遣いを提案していく。
「お兄さんも格好いいから勧め甲斐がありますね。今と違う色なら、貴方も少し明るい色をお試しになる?」
「わあ、素敵ですね! 蒼汰さん、今回は白いのはどうですか?」
「えっ、白ですか?」
あまり着ない色だけど――と躊躇う心を、目の前の笑顔が優しく強く押し出して。虚を衝かれたようにふっと笑みが零れる。
「蒼汰さん?」
「……いえ、なんでも。あんまり着ない色だけど、俺も冒険してみようかな……?」
前に出るには不足のないように。すらりと身に添う白いコートの裾は幾つものスリットで動き易く、けれど小物や覗く裏地はシックな灰緑で纏めてある。魔法も使える騎士様みたい、と綻ぶラナに、
「ラナさんは本物の魔法使いみたいで素敵です。――可愛い」
素直に、思うままに零れた賛辞の意味に、蒼汰は気づかない。ラナもまた、ただ嬉しく受け取って、少しだけ曲がったリボンを直す手を受け容れる。
「とても良く似合ってますよ」
「ふふ、ありがとうございます。蒼汰さんもよくお似合いです」
カッコイイですよ! と朗らかな笑みを見せれば、少しはにかむその顔を見上げてラナは思う。
この服を着て少しでも、傍で助けになれたなら――それだけで。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雨糸・咲
綾さん/f01786
マネキンの纏う制服たちに娘らしく瞳を輝かせ
わ、可愛いです…!
伺うようにそわそわ見上げた綾さんの笑みに背を押され
仕立てのお願いに
大体の色や雰囲気の希望を伝えてお任せ
白い丸襟シャツに森の緑のベルベットリボン
紺のフード付コート
――そこまでは良かったけれど
え、ちょっと待って!?
慌てふためきつつ試着室を出ると
リボンと同色のプリーツスカートは膝上丈
普段脛より短い服を着ない身には恥ずかし過ぎて…
隠れるように綾さんの後ろにそそっと移動
優しく包む外套をくれたひとの装いに漸く気付き
わぁ…とっても素敵!
綾先生、ですね
瞬きも忘れ
再度目を輝かせたのも束の間
意地悪な囁きに耳まで赤くしフードを目深に被る
都槻・綾
f01982/咲さん
彩り溢れる空間に
玩具箱を覗くみたいな華やいだ心地
歓声へと微笑みを向け
耀う瞳と目が合えば
きっと御似合いですよ、と頷いて
仕立て処へ共に向かう
試着室へ向かう彼女の背を見送った後
勧められるままに己も注文
宵空色のフード付きローブ
それと
教師風の上下スーツ
似合いそうな物をお任せで
日頃袖を通さぬ洋装も
煌きの魔法も
新鮮で楽しい
再びまみえた咲さんは何故か慌てた風
然れど
纏う衣装や眩く白い脚に、
――誠、愛らしい
眼福眼福と
極々自然に零れる賛辞
気恥ずかしげな様子に小さく笑って
自身が購入した長い外套で彼女を包む
此れなら他のひとに見られないで済むでしょう?
でも、
私には見せて下さいね?
とは、耳元で囁く内緒話
「わ、可愛いです……!」
上がる声に足を止めたガジェットマネキンの、礼儀正しいカーテシーにくすり笑って、一礼を返して。咲はすっかり華やかに様変わりしたテラスに足を踏み入れる。
「――ふふ、まるで玩具箱を覗くようですね」
「ええ、本当に! 見てください、可愛い制服……でも」
行き交う人形たちの纏う衣服も、もちろんとても可愛いのだけれど。自分のためには少しだけ……そう、もう少しだけ慎ましい制服が欲しくて。
そのためにはデザイナーを捕まえなければならないのだが――オーダーメイドを売りにする仕立て屋だけに、あちらもこちらも相談中。
一歩を踏み出し声上げるには、少しだけ心許ない気持ち。戦いでなら強く在れるのに、と心細く迷った瞳は、けれど望みの熱に煌めいてもいる。
あと一押し、軽く背を押す力を要する娘のもとへ、綾は大人びた笑みを向けてやる。
「――行ってらっしゃい。きっとお似合いですよ」
「は、はい……! ……あのっ!」
その声は高らかに響き、客たちと共に振り返ったデザイナーのひとりが大きく手を振った。――こっちこっち、いらっしゃいませお客様!
白い丸襟のシャツに、リボンは森の緑を織ったベルベット。フード付きのコートは落ち着いた紺色で――そんな咲の控えめなオーダーに、デザイナーはにっこりと(含みありげに)微笑んで。
「え、……え、ちょっと待って!?」
あっという間の仕上がりに、心弾むまま飛び込んだ試着室で、鏡の中の自分の姿に瞬いた。
リボンと揃いの森の緑のプリーツスカート、問題はその丈だ。試着室を出てみれば、膝がすっかり見える長さは決して珍しいものではない――周囲を見ても、それは確かにそうなのだけれど。
(「……こ、こんなに短いなんて」)
咲にとっては勇気を振り絞った装いなのだ。人目に触れないように連れの背中を探し、その影に隠れれば――ふわり、と宵空色の長いローブが恥じる足許を隠す。
「! あ、ありがとうございます……、! わぁ……、とっても素敵!」
綾先生ですね、と綻んだその瞳に映る男の出で立ちは、常の和装とはかけ離れたもの。身に添うスーツは深い藍、銀鼠のベストにタイでぴしりと隙なく彩った綾は、確かにそのまま魔法学校の教壇に立てそうだ。
「――誠、愛らしい」
ふくふくと笑みも賛辞も零れるままに、咲の装いに頷く男。
「此れなら他のひとに見られないで済むでしょう? ……でも」
恥じらう様を覆い隠したのは、他ならない自分だけれど。折角似合いの制服姿が、ずっと外套の影に秘められているのは惜しまれるから。
「私には見せて下さいね?」
「――もう、綾さん、揶揄わないでください……!」
耳まで花色に染まった咲は、綾の思惑とは裏腹に、深く深くフードの中に身を潜める。
そうしているのは、初夏の熱綻ぶテラスでは少し暑くはあるのだけれど。
真直ぐ見上げることなんて、できそうもない。――空の光よりもっと熱ある眼差しが、触れにきてしまうから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
色採・トリノ
【二羽】ハルちゃんと
制服を考えるの
難しいけれど、楽しいわね
大賛成
色はおそろいにしましょう?
白い色
そのデザインもすごくすてき
リノはスカートにするけれど、ハルちゃんはキュロット?
いつもと違うイメージでとってもかわいいわ
それに、これからの季節にぴったり
それから、リボンと腕章は翼のデザインやマークで…腕章は左右で白黒に
リノの制服だけれど、他の子の制服でもあるんだものね
後は、腰の部分に、このドレスみたいにリボンつけてくださる?
オマケに、鳥笛さんにも同じリボンを結んで…完成、ね?
試着して見せっ子しましょう?
ハルちゃん、水兵さんみたい。とってもかわいいわ?
リノはどうかしら? 似合う?
ありがとう、うれしい
東風・春奈
【二羽】トリノさんと
お待ちかね。制服を選びましょうー
可愛いのがいいですねー
ふふー、悩んでしまいますー
まあ、見てくださいー
このダブルスーツのボタン飾りとっても可愛いですよー
制服デザイン、これにしちゃいましょうー
ええ、色はお揃いがいいですねー
白色のー、このキュロットは可愛いですねー
ふふー、夏コーデですー
私は兎さんの意匠にしましょうかー
仕立屋さんに、色はお任せしちゃいますー
ふふー、トリノさんのリボン、とってもとっても可愛いですー
私はこのエプロンドレスの、リボンタイ留めと蝶のブローチ意匠を試しましょうー
もちろん、お似合いですよー
普段綺麗な服装ですのでー、ギャップでくらくら。可愛いですー
アドリブ歓迎
●
まるでパズルのようだとトリノは思う。
スカートにキュロット、パンツ。ベストにジャケット、羽織るのはコートにガウン、ローブ、ケープ。ブラウスの襟なら丸いもの四角いもの、レースタイの付いたもの。
それに彩りまでもが加われば、同じものなど生まれようもなくて。考えるのは難しいけれど、とても楽しい。
「お待ちかね。制服を選びましょうー」
春奈はぐっと拳を突き上げ、行き交うマネキンたちに輝く瞳を向ける。大人びたタイトなスカートに、定番のプリーツスカート。バルーンのように膨らんだショートパンツもなかなかだ。
「可愛いのがいいですねー」
「大賛成。色はおそろいにしましょう?」
「ええ、そうしましょうー! ふふー。悩んでしまいますー……あっ、あれなんてどうでしょうー」
ぎゅっと抱きつきマネキンを掴まえる。ガジェットの纏う水兵服には、コットンパールを花のように縫い合わせた二列の飾りボタン。白く軽やかな布地の裾にぐるりと縫われた細いリボンは、大きなセーラーカラーと同じ淡いグリーン。春めく少女の姿に、柔らかく爽やかな彩りを添えることだろう。
すてきと微笑んで、トリノはふと気づく。
「リノはスカートにするけれど、それじゃ、ハルちゃんはキュロットなのね?」
「ふふー、夏コーデですー」
マネキンが穿くのは動き易そうなキュロット。巨大な鎧装を背に、ふんわりとしたスカートとフリルが愛らしい姿で佇む少女をよく知るトリノには、少し眩しい。
「いつもと違うイメージでとってもかわいいわ」
動き回るにも不都合がないし、これからの季節にもぴったりだ。軽やかな若草色のケープをひらり、マネキンから受け取ると、このフードに兎の耳をつけてほしいのですー、なんて願い出てみる。
「リノの制服には、リボンと腕章に翼のデザインやマークをお願いしたいのだけど」
「なるほどなるほど? 刺繍……もいいけど、そうね。こんなのはどう?」
デザイナーが描いてみせたリボンタイの端は、花弁のように踊るカットと縫い付けた魔法石のビーズで今にも羽戦きそう。素敵と笑ったトリノは、左右の腕章にも同じ飾りを求めた。左には白、右には黒、重なり合わない心のように。
そして腰を彩るリボンだけは、いつも纏うそれに倣って。彩りも質感も似通うものを、仕立て屋はあっという間に布地の山から見つけ出してみせる。――グリモア宿る鳥笛にもささやかに、同じリボンをお裾分け。
「ふふー、トリノさんのリボン、とってもとっても可愛いですー」
「ハルちゃんはエプロンドレスのブローチを使ったのね?」
「トレードマークですからねー」
胸彩るリボンを留めるはいつもの空色蝶。――良いデザインだからとデザイナーが生かしてくれたのだ。
「完成、ね? ハルちゃん、水兵さんみたい。とってもかわいいわ?」
「トリノさんももちろん、お似合いですよー」
普段の清楚な衣装とは異なる、少女めいた雰囲気なのだ。――ギャップでくらくらしてしまいそう。
「似合う? ありがとう、うれしい」
真新しい制服に身を包み、ふたりは店を出た。兎と翼の意匠を連れたその足取りで、弾むように、翔けるように――楽しそうに。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルジャンテ・レラ
制服か……。学園とは縁がありませんし、制服とも言わずもがなですが。
何故でしょう。
皆さんの表情を見ていると私も少し便乗したくなり。
あの、ジナさん。
お付き合いいただけませんか?
こういった機会が初めてなもので、ご指南をお願いできればと。
お礼にはいずれ甘い物を差し上げます。いかがでしょうか。
動きやすさ重視の制服を……はい?
そういう問題ではないのですか。奥が深いですね……。
ジナさんとデザイナーの方に意見を伺わせていただきます。
一つこだわるとしたら、ローブを羽織りたいという点でしょうか。
ありがとうございます。
ジナさんも制服を拵えたようでしたら、お似合いです、と言い添えて。
少し、くすぐったい……気がします。
雲烟・叶
……学生って柄でも年齢でもねぇんですが。
さて、これはどうしたもんか。
まあ、見てるだけで良いですかねぇ。
折角ですし、グリモア猟兵のお嬢さんとお話してみましょうか。
確か……ジナのお嬢さん、でしたっけ。
あんたくらいの年齢なら、制服を着ても可笑しくねぇんでしょうけれどね。
流石にこの歳で学生服なんてのはどうにもこうにも。
お嬢さんはお可愛らしいんですし、折角の機会ですから飾って貰うと良いですよ。
嗚呼ほら、店員さん方も張り切ってらっしゃるご様子。
自分です?
まぁ、似合いもしねぇですし、年齢的にどうかと思うんで、大人しく虹色のまんま帰りますよ。
洗えば落ちるでしょうしね。
結構可愛らしかったですよ、あの子たち。
●
学園にも制服にも、これまで縁はなかった。
けれど、噂を聞いてふと訪れてみると、その喧噪よりも賑わいよりも、集う人々の表情の鮮やかさがアルジャンテ・レラ(風耀・f00799)の心を打った。――少しだけ、あの輪の中に混ざってみたいと思ったのだ。
「あの、ジナさん。お付き合いいただけませんか?」
「アルジャンテ様?」
「こういった機会が初めてなもので、ご指南をお願いできればと」
お礼にはいずれ甘いものを、と神妙に申し出た少年に、ジナはふふっと楽しそうに笑う。
「習うより楽しめ、なのです、アルジャンテ様!」
「そうですよ、坊ちゃん」
ひょい、とジナの頭上から、朱を刷いた眼差しを流したのは叶。
「それから確か……ジナのお嬢さん、でしたっけ」
その呼ばれ方は初めてだと笑う少女にふと笑って、叶は二人を促した。
「あんた方くらいの年齢なら、制服を着ても可笑しくねぇ……というか、さぞお似合いでしょうから。折角の機会だ、ぞろっと誂えて貰うがいいですよ。嗚呼ほら、店員さん方も張り切ってらっしゃるご様子」
「叶様もいかがですか? ほら、アルダワ魔法学園は大人の学生さんだっていらっしゃるそうですし」
「お気持ちだけどうも。ふふ、これでも見た目以上に歳経たもんなんですよ、自分。学生って柄れもねぇですし」
ヤドリガミとはいえ、まさか百に近い年を重ねるものだとは、少女は思いもしないだろう。ふんわりと柔らかな辞退に曇る暇もなく、坊ちゃんはどんな制服を? と問いを向ければ、
「ええと……動きやすさ重視の制服を」
真っ先にそれを申し出たアルジャンテと、わかります、と力強く頷いた弾丸娘に、デザイナーも思わず苦笑いする。
「真っ先に出るのがそれなんですねえ、ふふ。お客さんたち、面白いなあ」
「はい? そういうものではないのですか。奥が深いですね……」
素直に感心するアルジャンテの傍ら、でも地下迷宮の戦いにも挑む訳ですし……などとなおも主張する少女の傍ら、少年はそうだと言い添える。
「一つこだわるとしたら、ローブを羽織りたいですね」
「もちろん。お兄さんだとこれとか、こっちとか。少し冴えた色も似合うと思うんですよねー僕」
アルジャンテのふたいろの瞳を覗き込み、デザイナーが推したのは、左目の淡い菫色の濃淡の色遣い。色濃ければ神秘的に、淡ければ軽妙に――そのグラデーションで構成されるいくつものデッサンがふわりと目の前に立ち上がれば、少年は助けを求めるようにジナを見る。
これがいいと思うのです、と少女が指さしたのは、藍に近いごく深い菫色。ならば代わりに合わせるズボンやタイは、もう少し淡い青紫のチェックで――と、デザイナーはどんどん描き足していく。
傍らで翻った衣の気配に振り向いたジナは、叶の背に慌てて声を掛けた。振り返り、男はゆるりと目を細める。
「おや、見つかっちまいましたか。眺めてるのも存外楽しかったですよ」
デザイナーたちも羨んだ男の纏う幾つもの美しい織りをよくよく見れば、ところどころを染めるにじいろに気づいただろう。身に宿るものゆえに、容易く触れるを他人に許さぬ――許せぬ男に、思いがけない愛情を示した小さな、儚い生きものたちのいろ。
「お嬢さんはお可愛らしいんですし、もっと飾って貰うと良いですよ。自分は……うん、大人しく虹色のまんま帰りますよ。洗えば落ちるでしょうしね」
「ふふっ、確かにきれいな色なのです。とろりんさんたちと楽しく遊んでくださったのですね」
ありがとうございます、と頭を下げた少女にひらりと手を振って、叶は息吐くように柔く口にした。
「――結構可愛らしかったですよ、あの子たち」
手を振り返し見送ったジナの背に、名を呼ぶ声。振り返った少女は、わあ、と歓声を上げた。仕上がった菫の彩りを基調とした制服に身を包んだアルジャンテは、とってもお似合いです、と手を叩くジナへ、声にする機を迷っていた鸚鵡返しを口にした。
「ジナさんも、お似合いです」
周囲に飛び交う当たり前のことばも、自分の身に至ればなんだかくすぐったい。頬を掻いた少年に笑って、ジナはもう一度、ありがとうを口にした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リンダ・アーカシャ
へぇ…!
オーダーメイドなの?すごいわ!
うーん、そうね
ブレザーにカーディガンにローブ…
カーディガンは明るい乳白色で、ブレザーは濃い紺色
ローブは黒がいいかな
タイは藤色がいいかな〜
生地は春っぽいのでお任せ
さらりとした肌触りがいいかな?
あっ!
ローブの裾にちょっとだけアーガイルの柄があるといいかな?透かしみたいな感じで
タイにこう…魔法石のおまけなんかつけてくれると嬉しい!
刺繍の編み込みでもいい!
(出来上がったのを見)
わ!わー…かわいい!
他の世界のこと知ってから、制服に憧れてたの!
採寸もぴったり!肌触りも最高〜!
タイのデザインとローブのデザインがいい。我ながら!
へへ
これを着て少し歩きたい
ありがとう!
レテ・ラピエサージュ
※デザイナーさんからの提案希望、アドリブ歓迎
「装備選びというと味気ないですが、キャッシュアクセであなただけのコーデを…」(慌てて止める
実は入学するか悩み中です
機械とファンタジーが混ざる世界はゲーム…あ、最初にいた所に似ていて懐かしいのと制服可愛いなぁって
*オーダー
頭にいる愛らしいひよこさんは先程の初仕事でゲットしました。この子が引き立つデザインがいいです!
あと背中のつけ羽根に似合って…
あ、髪の毛が長いのでまとめる髪留めアクセが、普段は制服飾りとしてじゃらーってなってると嬉しいてす
あとは『鍵』がキーアイテムです、洒落じゃないですよ?!(;゜ロ゜)
(自分の言葉での主張って慣れないなぁって、ぽつり)
●
「へぇ……! 全部オーダーメイドなの? すごいわ!」
華やかに目の前に広げられた生地の数々、傍らを行き過ぎては客たちに会釈をしていくマネキンたちの纏う服。瞬きのうちに生み出されていく装いに、リンダ・アーカシャ(檻の華鳥・f17449)は鮮やかな金色の瞳を丸くする。
「さて、お嬢さんはどんなお仕立てがお望みでしょう?」
「うーん、そうね……」
これから迎える暑い季節にも負けないように、さらりとした肌触りのもの。着替えがきくよう、上着はカーディガンとブレザーの二枚――カーディガンは明るい乳白色のサマーニット、反対にブレザーは夜で染めたような濃い紺色で。
「魔法学校の制服だものね、やっぱりローブも必要?」
「作られる方は多いですよ」
「それならそれもお願い! やっぱり黒がいいかな。あっ、裾にちょっとだけアーガイルの透かしなんて……できる?」
「ええ、お任せください!」
藤色のタイには魔術鉱石のタイピンをあしらって。裾はもう少し長く――いや、もう少し短く!
年頃の娘らしい細やかなオーダーにも、仕立て屋たちはにこにこと楽しげにデザインを修正していく。
そして仕上がりを見てみれば。
「わ! わー……かわいい!」
試着室を出たリンダは鏡の前でくるりと踊る。リンダの体に合わせ、ぴったりと作られた制服はすんなり肌に馴染んだ。袖通りもよく動き易いニットに、羽織ったローブに頬を寄せれば最高の肌触り。もちろん、拘り抜いた裾のデザインもつい自賛する出来栄えだ。
「他の世界のこと知ってから、制服に憧れてたの。へへ、これを着て少し歩きたくなっちゃった」
ダークセイヴァーを故郷とするリンダには、長らくこんな楽しみはなかったのだ。光射す世界のかけらは、この店にもある。
ありがとうと弾む声が、重厚なつくりの廊下を駆け抜けていった。
「制服のオーダーメイド……つまり、装備選びということですよね」
自ら描き出した自身の姿を見下ろして、レテ・ラピエサージュ(忘却ノスタルジア・f18606)はいえ、と首を傾げる。
「『装備選びというと味気ないですが、キャッシュアクセであなただけのコーデを……』――って、い、いけないいけない!」
電子の海で、ナビの役割を担っていた頃。自らの『知』を持たず、必要な言葉だけを告げるべくあった頃。その癖がつい零れてしまうのだ。こほんと呼吸を整えて、レテはいざ、とデザイナーの前に進み出る。
「わあ、かわいいひよこさん!」
「先程の初仕事でゲットしました。この子が引き立つデザインがいいです!」
琥珀色の髪にぴよ! と声を上げる小さな子に、デザイナーの少女はきらきらと目を輝かせた。
「じゃあ帽子は必須だねっ。色は……グリーンなんてどうかなー? ひよこさんにも髪にも合いそう!」
フェズに似た魔術帽の端は折り上げてブリムに。少女が描き、立体化させたその帽子は、小さな生きものの定位置にはぴったりだ。
「わあ、それでお願いします! ええと、背中のつけ羽根にも似合うようにできますか?」
「つけ羽根と同じ素材の羽飾りでもつけてみよっか。他に要望はある、おねーさん?」
「ええとええと……あ、髪の毛が長いので、必要な時にまとめる髪留めアクセが欲しいです! 普段は制服飾りになるような、こう、じゃらーっと!」
「なにそれ面白い! そうだなぁ、じゃあ普段はブローチピンにして……じゃらっと硝子ビーズを下げるでしょ? その後ろにバレッタの金具を隠してさ、……ね、作れるよね!」
目一杯いい笑顔を向けられて、小物担当の仕立て屋が無茶ばっかりーと苦笑いをする。けれどいざ仕上がってみれば――瞳と同じ紅のビーズがしゃらりと歌うそのブローチは、陽の光に柘榴のように輝き揺れる。
纏うローブは帽子に合わせたダークグリーン。ゆとりのある袖口に縫いつけた金リボンもお揃いだ。『鍵』がキーアイテムだと申し伝えれば、それは即座に反映される。――ローブの襟に施された金糸の刺繍や、アースカラーのベストの下、ブラウスの胸元に隠れた『心の錠』のマークなど。
仕立て上がった自分に満足げに手を振るふたりの店子たち。振り返す手で応えながら、レテはふう、と息を吐く。
(「まだまだ自分の言葉での主張って慣れないなぁ」)
与えられたものだけを語り続ければよかった頃と、この胸の錠の奥から自ら紡ぎ出さなければいけない今とは、違う。けれど、
(「心躍るものがあれば、こうやって――旅の中で紡いでいける。取り戻していけるのね」)
帽子の上で、ぴよ、とひよこが鳴いた。レテのこれからを励ますように一声、朗らかに。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓千織ちゃん(f02428)と
アドリブ等歓迎
やったー!ついに制服作りだよ!(ハイタッチ
気合入れてこ!
わあわあみてみて、千織ちゃん、可愛いのがたくさん
この歯車のバングルは千織ちゃんに似合いそう!
僕 ボクはいつも着てる袴と、学園のスチパン要素を組み合わせた和洋折衷スチパン制服をつくるんだ!
フリルにレースもたっぷりで乙女度あっぷ!さらに帯留めには歯車をあしらって、懐中時計は外せないね。
蒸気でふわふわ歩けるブーツを履こう
どうだい?似合うでしょ!
ドヤ顔えへん、その後千織ちゃんの姿に瞳をキラリ
かわいいーー!綺麗!
似合うよ!すごく可愛い!
こんな制服なら毎日だって着て
千織ちゃんの横で勉強だってできちゃうね!
橙樹・千織
フレズローゼさん(f01174)と
アドリブ歓迎
ふふ、遂にお楽しみの時間ですねぇ
準備はばっちりですか?
フレズローゼさんに微笑み
様々なアクセサリーを見てふわほわ微笑む
この懐中時計綺麗ですねぇ
あら、このバングルも素敵
ふふ、よく似合っていて可愛らしいですよ
流石、あーてぃすとさんですねぇ
帰ったらみなさんにお披露目しなきゃですねぇ
自分が着るとなるとアワアワ耳と尻尾もソワソワ
ぇ…あらあら、えぇと
わ、私がこんな素敵なお洋服を着てしまっていいのでしょうか?
もっと可愛らしい方のほうが似合うと思うのですが…
制服
ワンピース
スカート部分は数枚の布を重ねて、アシンメトリーなフレアスカート
シフォン生地の鉱石付きリボンタイ
●
「やったー! ついに制服作りだよ!」
「ふふ、遂にお楽しみの時間ですねぇ。準備はばっちりですか?」
ぱちん、と高らかに手を打ち付けて、彩りの海へ突き進むフレズローゼ。千織はにっこりと、楽しそうなその航海を見守っている。
「わあわあみてみて、千織ちゃん、可愛いのがたくさん! ねえ、この歯車のバングルなんてどう? 千織ちゃんに似合いそう!」
「あら、素敵。まあまあ、こんなアクセサリーも……この懐中時計、綺麗ですねぇ」
きらきら並ぶふたつの眼差しは、宝物を見つけるのも上手な様子。互いを彩る宝を見出したなら、今度は自分の番だとフレズローゼは張り切っている。
――いざ、戦いの中にも熟考を重ねた構想を披露するとき!
「ボクは和洋折衷スチパン制服をつくるんだ!」
いつもの袴を軽やかな膝丈にリメイクすれば、プリーツスカートのよう。帯や襟に咲かせたフリルにレースで乙女度を上げたら、帯締めの歯車モチーフできりりと印象を引き締めて。帯から覗く懐中時計も、パンクな装いに一役買っている。
敢えて辛めのデザインを選んだブーツは、迸る蒸気で足を軽くしてくれるもの。
「えへん、どうだい! 似合うでしょ?」
「ふふ、よく似合っていて可愛らしいですよ。流石、あーてぃすとさんですねぇ」
帰ったら皆にお披露目しなければ。そう撫でる手に、フレズローゼは首を傾げる。
「千織ちゃんは?」
「ぇ……あらあら、えぇと」
視線を泳がせる暇もなく、お待たせしましたと店子の笑み声。手渡す衣装とともに試着室へ突っ込まれた千織は、
「……わ、私がこんな素敵なお洋服を着てしまっていいのでしょうか? もっと可愛らしい方の方が似合うと思うのですが……」
「! わぁ、千織ちゃんかわいい――! 綺麗!」
新しい靴でふわふわ跳ねて、お似合いコールのフレスローゼ。
デザイナーにお任せした千歳の装いは和服から一転。白のブラウス地から膝に向かってふんわりと、透け感のある同系色の生地を花弁のように重ねたフレアスカートのワンピース。
魔法鉱石でまとめたシフォンのリボンタイは、動く度にふわりと戦ぐ。そしてやわらかな色を引き締める夜空の色のタイトなコートが、きりっと大人びた印象を作り出している。
「ね、こんな制服なら毎日だって着たい。千織ちゃんの隣で勉強だってできちゃうね!」
無邪気なフレズローゼに、恥ずかしそうにそわそわしていた千織も思わず笑み零れずにはいられない。
姉妹のように机を並べ、ふたりで授業に潜り込む――そんな思いもしなかったあしたが、二人の前に広がっている。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ブク・リョウ
マネキンたちが着る基本のスタイルを観察
制服って着たことないから迷うけど、
キッチリしてるのより、
ユッタリしてるのがいいなぁおれ。
あの、すみません
店員さんの手が空いてたらでいいんだけど、
相棒(からくり人形)の制服も作ってもらえないかなぁ…?
魔法で採寸されつつ、相棒を動かしてご紹介。
あ!もちろんお代は2人分払いますのさ。
えっとねえっとね、
おれのは生地の肌ざわりが良くて動きやすくて、
派手過ぎなくて、でもオシャレ心は忘れてない。
相棒のはクールにかっこよく!
……って感じなんだけど、大丈夫ですかデザイナーさん。
(制服詳細おまかせします)
制服ができたら、相棒とお揃いのスカーフ付けて
スマホで記念撮影しよう!
尭海・有珠
色々ありすぎて目移りするが…
周りの楽しそうな様子を見るだけでも、来た甲斐あったというもの
深い海色を思わせるベストとスカートを選んでしまうのは、
海に執着があるせいかもしれない
白と青のバイカラーのスカートは白波も連想させるし、
艶消しした金のボタンはきっと可愛いと思うんだ。
スカートの裾の方に、小さなカイヤナイトを縫い付けていくのもありだな
お揃いの石でブレスレットも…などあれこれ欲張ってしまう
生地は、軽くて動き易くて、でもしっかりしたものが良いだなんて
我侭が過ぎるだろうか
出来上がったら早速着てみたい
くるりとまわってスカートをふわりとさせたら、
きっと満足のいくものが出来てる筈だものな
●
「ふむふむ。あれが基本のスタイルか……」
行き交うマネキンたちにもブクの興味は尽きないけれど、今日はそれより興味を惹くものがある。
サマーニットのベストにズボン、薄手のローブ。喉許をきっちり締めるタイ――男性用の制服は、概ねそれをベースにアレンジを加えているようだ。しかし、
「うーん、制服って着たことないから迷うけど、キッチリしてるのより、ユッタリしてるのがいいなぁおれ」
どうだい相棒、と首を傾げれば、ブクの手で応急処置を施された絡繰人形もぎしり、と首を傾け返す。
「そうだよな。よーし、あの、すみません。おれもだけど、相棒の制服も作ってもらえないかなぁ……? もちろんお代は二人分払いますのさ」
おずおずと問いかければ、採寸係はにっこりと。
「ええ、もちろん! ドールや使い魔とお揃いコーデをご希望される生徒さんも多いのですよ」
杖から奔る光が、速やかに二人分の寸法を測り取る。ほっと安堵のブクはさっそく、デザイナーへ拘りをご披露。
生地の肌ざわり良く動きやすく、派手過ぎないけれどオシャレ心は忘れずに。相棒の分はさらにクールに、格好よく!
「……って感じなんだけど、大丈夫ですかデザイナーさん」
「腕が鳴るオーダーですね……! ええ、勿論。そうね、そのご希望なら例えば――」
描き出されたのは、被って着られるスモックタイプのシャツワンピース。きっちりとしたネクタイの代わりに、ブクにはゴーグルをそのまま生かし、相棒にはアルダワらしい歯車の留め具がお洒落なループタイ。
お揃いのコートは身幅もフードもたっぷりと、ブク用の丈は身軽に腰まで、相棒にはロング丈だ。
チェック柄のホルダーやポケットは工具や筆記具をしっかり収納できるように。ブク用は身軽な腰まで丈、相棒には膝まで丈。しんと落ち着いた深いカーキ色は、上手に派手な印象を遠ざけている。
「このままだとちょっと地味かもしれませんから、最後にこれを。……さあ、いかがでしょう!」
瞳と同じ空色のスカーフを、二人それぞれに付け添えて、デザイナーはにこりと笑う。
「とっても着心地がいいのさ! ありがとう店員さん、ついでにもう一つお願いしてもいいかなぁ?」
二つ返事の笑顔にスマホを手渡して――カシャッ!
記念写真のふたつの顔は、なんだかとっても満足げ。
そんな微笑ましいふたりの制服も目移りのひとつに捉え、有珠は真新しい制服で行き交う生徒たちに目を細める。絶え間ない笑い声、満足そうな笑顔。それだけでも来た甲斐があったというものだ。
「……そうだな、色々ありすぎて目移りするが……」
数多の布地が詰まれる中で、どうしても目についてしまう色がある。藍、紺、縹――誘われるように触れてしまうのは、執着ある深い海を想起させるからかもしれない。
白と青のバイカラーのスカートは、色を違えて寄せ来る波のよう。これでは淡すぎるだろうか、こちらはあまりに暗すぎる――と、選び出すひとときに瞳は輝く。
腰の留め具と少し深みある藍のベストのボタンには、硝子に輝石、金に銀、骨に貝とさまざまな素材が示される。宝箱のようなそれから有珠が選び出したのは、弧を描く小さな魚が彫刻された艶消しの金ボタン。ベストの布に載せてみれば、よく映えて可愛らしい。思わず満足の吐息が零れる。
スカートの裾には藍晶石の粒を飛沫のようにあしらって、少し大きいビーズがあれば、お揃いのブレスレットもいいかもしれない。ひとつふたつは真珠に代えて、それから――。
気づけばつい欲張りな全身コーディネイトに、白い頬がふと熱くなるのを、次々と描き留めたデザイナーは嬉しそうに見つめていた。
「――……これは、すごいな」
彼方を過るマネキンに目を向ける間にも仕上がってきたその衣装は、纏えば軽く、動き易くて、けれど縫製もしっかりと。有珠の腕に作りたての腕輪を嵌めながら、我侭を叶えるのは当然なのだと店子が胸を張る。
「なにせ魔法の仕立て屋ですからね!」
「ふふ、そうか。――いいな、早速このまま歩いてみたい」
くるりと身を翻せば、ふわりと揺れるフレア。重なるふたいろに目を細め、有珠はありがとう、と微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
静海・終
是清/f00473と
ふふ、お外で元気いっぱい遊んでしまいましたよ
虹色と己の血でいい感じになっているのを抵抗なく拭われる
素敵なお洋服を仕上げていただけるのですから問題ありません、えぇ
ほらほら是清も選んでもらいましょうねえ、学生服
えぇ~是清もここでは転校生でございますよ~
私は涙とお揃いのものをつけた制服が良いのですが
オススメなどございます?デザイナーさんに薦めてもらう
…おやぁ?是清はずいぶん迷ってますねえ、こんなのどうです?
アイドルが着そうな雰囲気のをぐいぐい
この市松模様などお似合いですよ!!
すっかり着こなした是清に満足
留年何年目かは数えてはいけません!
素敵な制服で学園生活を謳歌いたしましょう!!
伍島・是清
【静海f00289】と
……御前、でろでろだな……。
せめて顔だけでも真面にと裾でぐしぐし拭ってみせて
まァ、服仕立てて貰えるンだっけ
そンなら善いか──うん?は?制服?
聞いてねェぞ静海ィッ!
…否、店の前で嫌がるというのもあまりに失礼…だが、然し
うーん、うーんと悩んでいる間にぐいぐいされて
──何それ、いや選んで貰っても着ねェけど。
市松模様は可愛いけど、着ねェ、ああ、ああああ。
くそ、せめて懐中時計を付けろッ!
静海のお揃いは、まァ、可愛いンじゃねェの。
明日から楽しくなる学園生活…(28歳)
満足気な静海を眺めながら
まァ御前が愉しいなら善いよ、それで。
謳歌…そうだね、もう十分過ぎンだけどね。
●
「……御前、でろでろだな……」
怪我をものともせずに辺りを闊歩する勇ましい猟兵たちは、この世界では珍しいものではない。けれど――この今は平和な魔法学園の、『仕立て屋』と化した一角においては、にじいろと血に染まった終の姿は少々――いや、かなり異質な様相をなしていた。
「ふふ、お外で元気いっぱい遊んでしまいましたよ」
「……せめて顔だけでも真面にしろ」
行き交う生徒や店子たちの遠巻きな眼差しをものともせず、からりと笑う終に、伍島・是清(骸の主・f00473)は呆れきった左目を隠しもせず、袖でぐしぐし拭ってやる。
「まァ、服仕立てて貰えるンだっけ。そンなら善いか」
「えぇ、えぇ、素敵なお洋服を仕上げていただけるのですから問題ありません」
にこりと笑う終の傍ら、涙が遠くを見つめたのは気のせいか――。
「ほらほら是清も選んでもらいましょうねえ、学生服」
「――うん? は? 制服?」
「えぇ、学生服」
――にっこり。
「聞いてねェぞ静海ィッ!」
「えぇ~是清もここでは転校生でございますよ~」
今度は是清が視線を集める番だった。けらけらと笑う終と周囲を見比べて、思わず胸倉を掴んだ手をそっ、と放す。
(「制服……制服だと? 二十八歳の野郎に制服とは……否、店まで来て嫌がるというのもあまりに失礼……だが、然し」)
葛藤は深い。――が、終は気にも留めやしない。奔る光は勝手に採寸を済ませ、是清の意識の及ばぬところで、オススメなどございます? 等々と、何やらさくさく話を進めているようだ。
「ふふ、そうですよねえこれほどの品揃えであれば目移りして選べませんよねえ。こんなのどうです?」
「は……?」
ずい、と強引に受け取らされた制服には、大柄な模様が覗いている。色こそ落ち着いてはいるものの、印象は派手には違いなく。
「アイドルみたいで素敵ではありませんか、ねえ」
「――何それ、いや選んで貰っても着ねェけど」
「これはこの市松模様がポイントでしてね、えぇ、えぇ、お似合いですよ!!」
「いや、市松模様は可愛いけど、だから俺は」
「それとももっと派手な方が宜しいでしょうかねえ、いっそこちらの色鮮やかな和風の生地を合わせて……」
「――ああ、ああああ」
聞きやしねェ。
「くそ、せめて懐中時計を付けろッ!」
――ノリが良いのか押しに弱いのか。とうとう折れた男が試着室に引っ込めば、終はにこにことその仕上がりを待つ。
「着替えたぞ、文句があるかッ!」
深い藍色地のジャケットに、ラペルとパンツは白と藍との市松模様。ベストは柳緑という派手さでありながら、
「ううん、流石ですねぇ……とてもよくお似合いですよ、是清」
「……全く、御前ときたら」
銀鎖に繋がれた時計をポケットに押し込みながら、はあ、と荒い溜息を吐く。明日から楽しくなる学園生活(二十八歳)に思い馳せれば、眼差しもつい遠くを望んでしまう。ええ、期待していますとも。
「……って、御前と涙も着替えたのか」
「ええ、如何でございましょう!」
二十五歳学生の制服姿もやけに似合っていた。黒いシャツに深紅のネクタイ、その強烈な印象を和らげるグレーのベストと同色のローブ。髪を撚って作ったような細い金鎖のラペルピンには、青い雫が提がっている。涙の首に掛かった鎖と同じものだ。
「涙とお揃いなのですよ」
「まァ、可愛いンじゃねェの」
是清よりも恥じらいがない分、馴染んで見えたかもしれない。はァ、と包まない嘆息を零し、是清は頭を掻いた。
「……まァ御前が愉しいなら善いよ、それで」
ふと零れる苦笑いは、単なる諦念と呼ぶにはあまりに優しい色を帯びる。ごく微かではあるけれど。
「留年何年目かは数えてはいけません! 素敵な制服で学園生活を謳歌いたしましょう!!」
気安く肩を抱く手に、是清はふと唇の端を上げた。
「謳歌……そうだね、もう十分過ぎンだけどね」
身に過ぎたるものと言いたげな緑の眼差しに、終の笑みが映る。そんなものではまだまだ足りぬと言わんばかりに。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴァルダ・イシルドゥア
戦いの痕跡の残る身体が、少し恥ずかしかったけれど
彼方此方から聞こえる魔法の呪文
高鳴る胸の鼓動を隠すことなんて――とても、とても!
うつくしい宵の海の彩を持つあなたへ
上擦る声を隠すよう、恐る恐る視線を合わせ乍ら
じ、ジナさま、……えと、ご、ごきげんよう
その……、……わ、私、
学び舎というものに馴染みがなくて
こんなふうにお洋服を見繕って頂くのも、はじめてで……
それで、その……もしご迷惑でなければ
私の色を探す、お手伝いをして下さいませんか?
その、ふ、ふたりで探せたら……
もっと、うれしい気持ちで満たされる気がして……!
勇気を出して踏み出せた願いがかたちになったなら
それはきっと、かけがえのない宝物になるはずで
ユニ・エクスマキナ
わぁ、ステキな制服がいっぱい!
ユニは制服って着たことないからなぁ
わーい、ここで世界に一つだけのユニオリジナルの制服を作っちゃおうっと!
しかし、どれもみんな可愛くて迷っちゃうのね…
あ、ジナちゃーん!ユニ、どれがいいかなぁ?
目移りしちゃってユニには決められません!
(かわりに選んでって顔
え?小物やアクセサリーもつけられるの??
すごいすごいすごーい!!
カスタマイズもし放題!
…ということは。
ふぇーん、ユニには決められないよ~
全部カワイイから全部欲しい!!
むむ、欲張りは可愛くない?
確かに…
ねぇ、ジナちゃんはどれにするの??
ユニはねぇ…(デザイナーさんにお任せ
どうかな?
これでユニも立派な魔法学校生!(エヘン
●
「わぁ、ステキな制服がいっぱい!」
ユニの瞳にさざなみだつ、好奇心の光。
旧式のころも、アップデートされた今も、制服なんて着たことがなかった。わくわくと心弾むまま、世界にひとつだけのオリジナルの制服を作っちゃお――と意気込むものの、
「しかし、どれもみんな可愛くて迷っちゃうのね……」
目移りもまたお仕立ての楽しみ。けれど真新しい制服に身を包んで行き交う人や、あちらこちらでひらめく布地を目にすれば、ステキと思ったあれそれが次々と塗り替わって。
むむむ、と迷いのループに踏み込んだ少女は、彼方に解決策を発見する。
「ジナちゃーん! ユニ、どれがいいかなぁ?」
「ユニ様! ふふ、お悩みですか?」
「もう、目移りしちゃってユニには決められません! あっ、ジナちゃんのも新しい制服だ! それも可愛い!」
言うそばからの目移りにジナは笑って、お任せくださいと胸を張る。
デザイナーが真っ白なシャツに合わせたプリーツスカートは、トレードマークの苺色。はっきりと濃く明るい色合いのタータンチェックの裾には、たっぷりフリルをあしらって。
白いシャツにはぴたりと身に添うベスト。褐色系の素材で引き締めて、並べるボタンは紅色の魔術鉱石を。
そこに、いつもの姿がネクタイなので――とジナがあてがったのは、スカートと共布の華やかなリボン。ふんわり大きく結んだら、ピーコックグリーンのショートローブを纏わせて、あっという間に着せ替えは完了――、
「いいえ、これで完成ではないのです、ユニ様。小物も見にいきましょう!」
「えっ、アクセサリーもある……? すごいすごいすごーい!」
そして決められない! 嬉しい悲鳴に、一緒に選びますからとジナは笑って、少女たちは小物の並ぶ棚の方へ。
「わあ、金平糖のブローチです! ほら、甘くて可愛い感じで、ユニ様にぴったりですよ」
「わああ可愛い……! ねぇ、ジナちゃんはどれにするの?」
エナメルの靴にソックスに――あれこれ欲張るのも少女の可愛らしさ。
誘惑に溺れて迷ったその後には――愛らしい苺色の魔法学校生のできあがり!
「じ、ジナさま、……えと、ご、ごきげんよう」
「ヴァルダ様? わあ、お疲れさまでした……!」
戦いの痕跡が残るヴァルダの姿を、呼ばれた少女は慌てて喚ぶ森の囁きで癒す。おどおどと感謝を告げたヴァルダは、なけなしの勇気を奮い、震える視線をジナのそれへ合わせた。
森の中、家族とともに在った身には、学び舎は馴染みがないもの。それどころか、こうして服を見繕うことも、仕立てることも初めてで。
「それで、その……もしご迷惑でなければ、私の色を探す、お手伝いをして下さいませんか?」
「ふふ、もちろんなのです!」
行きましょう! と背を押す声に、ヴァルダは人波の中へ。物腰柔らかなデザイナーを捕まえたなら、星の数ほどの目くるめく提案に、瞳を輝かせていればいい。――そんな時間もきっと、ヴァルダにとっては大切な経験だ。
「た、たくさんありすぎて、どうすればいいか……」
「着てみたいものはありませんか? 私、ヴァルダ様にはこんな色も似合うと思うのですけれど」
優しいクリーム色のサマーベストに、真っ白なシャツ。幾重にもフリルを重ねたタイは、瞳と同じ橙色の魔法鉱石のブローチで留めて。
深い森の緑を基調にしたチェックのスカートは、橙のラインがポイントになっている。風を受けてひらりと閃く軽やかさのサマーコートは、自分で選んだ。
友人の手を借りながら、少しずつ自分の思いで、自分のこころで。探す道程は僅かずつでも、ヴァルダを嬉しくする。幸せにする。
「これで完成、ですね! ふふ、とってもお似合いなのです!」
「……あ、ありがとうございます、ジナさま……!」
仕上がった装いこそが願いのかたち。その宝物を、ほんのりと頬染めたヴァルダはそっと、指先でなぞった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メーリ・フルメヴァーラ
ジナー!!
目当ての友達を見つけて駆け寄ろう
ねえねえ制服だって
一緒に見たい、見てもいい?
なんていいよって言ってもらえる前提の誘い
私の着てるこの制服ね
アルダワ魔法学園の基準服?なんだって
入学した時に用意してもらったこれも愛着あるけど
どうせなら新しいの欲しいな
これ可愛い!
ガジェットトルソーが着てるセーラー服
色味は今着てるのと似たアースカラー
後襟の角に小さな星が描いてあるの
スカートは短めが走りやすいな
これなら靴下は白いやつがいいかも
スカーフ留めも星だ!
わわ、スカーフいろいろあるね、悩む…
ちらりとジナのほうを見遣り
あのね私この金色がいいな
ジナのきれいな瞳の色だよ
今日案内してくれた記念
なんて、いいかなあ?
依世・凪波
詳細デザイン諸々お任せ
※デザイナーやジナさんの意見も聞きたいです
俺のせーふく作り!
わぁーいと嬉そうに仕立て屋に駆け寄り
沢山の生地に触れ気持ちいーと撫で回す
きちっとしたのは苦しいしきゅーくつなのはイヤだから
軽くて動きやすいのがいいなぁ
あとここ!と尻尾振り主張
でもローブってのもちょっと格好よさそうかなぁ
むむと悩み
魔法だ!と採寸の様子に目を輝かせ
キラキラの光を掴もうと手を伸ばす
沢山のアクセサリーに視線さ迷わせ
キラキラいっぱいで悩むなー
あのせーふくにはどんなのあわせたらいいんだろ
ジナはどーいうのが好き?
出来たぁー!俺だけのせーふく
完成した物を早速着て嬉しさに尻尾を振り駆け回り
制服姿を誰かに自慢してみる
●
「わぁーい、俺のせーふく作り!」
生地の山にふかっと飛び込みたい――衝動はなんとか堪え、凪波はすりすりと寄せる指先で、布の手触りを存分に味わった。
「ふふ、まずは採寸いたしましょうか坊ちゃん。素敵な尻尾の位置もしっかり計っておきませんとね」
「! さすが分かってるなっ! って、うわぁ、魔法だ!」
体の上を駆け抜ける光の帯に、琥珀の瞳がきらきらと輝く。掴めない光を追いかけるうちにも採寸は終わり、それではとデザイナーが腰を据える。
「きちっとしたのは苦しいし、きゅーくつなのはイヤだから、軽くて動きやすいのがいいなぁ」
「ふむふむ、なるほど……では」
喉許締めたブラウスよりはと、選ばれたのはセーラーカラー。三本ラインを施した爽やかな藍色の大襟に、小さな飾りネクタイで可愛くもぴしりと印象を引き締めて。
動き易さを重視したショートパンツは襟とお揃いに。ほっそりしたサスペンダーには、優しく爽やかな空色を選んだ。
「……うーん、ローブってのもちょっと格好よさそうだけど、尻尾が隠れちゃうかなぁ」
自慢の尻尾が窮屈なのはいただけない。むむ、と悩む少年に、デザイナーの提案はショート丈のコート。腰までの丈に小さくスリットまで入ったそれは、ふさふさと喜びを表現する尻尾を全く邪魔しないつくり。――満足のいくものになったようだ。
「アクセサリーもキラキラいっぱいで迷うなー! どんなのあわせたらいいんだろ」
ジナはどーいうのが好き? 問われた少女は首を傾げ、小さく笑う。
「私はお花や鉱石のモチーフが好きなのですけれど……凪波様、こちらはどうでしょう?」
それは木製の木の葉のブローチ。刻まれた葉脈を小さくひと粒彩る魔術鉱石は、露のようにきらきらと輝いている。
「わあ、ありがとな! ――よし。出来たぁー! 俺だけのせーふく!」
喜びのまま人波を駆け抜けては、どう、似合う!? と自慢げな少年に、店子たちはくすくす笑いながらもちろん! と太鼓判。
にこにこと見送るジナのもとへ、覚えのある声が舞い込んだ。
「ジナー! ねえねえ制服、一緒に見たい、見てもいい?」
「もちろんなのです! メーリ様が普段着ているのも制服なのですよね」
「うん、これね」
くるりと回ってみせたメーリの服は、猟兵たちには最もよく知れた学園生の装い。アルダワ魔法学園の基準服? なんだって――と語るかたわら、卒業生である仕立て屋たちが懐かしそうに頷いている。
「入学した時に用意してもらったこれも愛着あるけど、どうせなら新しいの欲しいな。――あっ、あれ可愛い!」
「えっ、どれ? どれですか?」
身を寄せて背伸びし合う少女たち。人波の向こうを行くガジェットの着ているそれは、大きな襟が可愛いセーラー服。
左右からえいっと両腕を確保。デザイナーのもとへ連れていったら、細やかな希望を伝えるのも忘れずに。
「ええとね、色味は今着てるのと似たアースカラーがいいな。後襟の角に小さな星が描いてあるの」
爽やかな白地にブラウンの襟は優しく、施す星は刺繍か石か、それもまだまだ迷えるところ。スカートは襟に合わせ、落ち着いたチェックを選んでみる。
「スカートは短めが走りやすいな。これなら靴下は白いやつがいいかも」
「走りやすいのもいいですね……! わあ、もう一枚欲しくなってしまうのです」
「ふふ、ジナも作っちゃえ! ね、お揃いにしようよ」
真新しい制服に身を包みつつ迷うジナは、その魅力的なひとことに瞳を輝かせる。
沢山揃ったスカーフ留めから、選び取ったモチーフは星。――そして肝心のスカーフは、
「わわ、いろいろあるね、悩む……」
濃淡を染め分けたもの、きりりと一色染め抜いたもの――まさににじいろの誘惑だ。さよならした子たちをふと脳裏に浮かべつつ、メーリはちらりとジナに視線を寄せた。
「? メーリ様?」
「あのね、私この金色がいいな」
するりと抜き取った夏の花のような彩りを纏って、メーリは唇を綻ばせた。
――ジナのきれいな瞳の色だよ。
くすりと囁く声に、少しだけ頬を熱くしてジナは笑う。
「なんだか照れてしまうのです。……でも、じゃあ私も、メーリ様の色、貰いますね!」
水晶のような淡いみずいろを選び取れば、見合わせたふたいろが可笑しげに揺れる。
纏い咲かすは君の色。そして少女たちの笑い声も、まだまだ華やかに咲き続くのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユキ・スノーバー
じぃじ(f05393)と一緒に制服頼むーっ!
職人さん達、凄いすごーい!
魔法ってやっぱりドキドキわくわくするねっ(じーっと見つめ)
じぃじなら、先生風にするのもアリだよね!(笑ったの見て)…そうかな?
無しというよりも、いつもの装備を入れ替える感じで考えてみるとか!
新しい物にそわーってするのは学生さんあるある!
気になるもの?(首傾け)ふむふむスニーカー…行動派のじぃじにピッタリで良いねっ。
なら、踏み込みでしっかり踏ん張れる様なのをお願いしてみようよ!
ぼくはね…如何にもなとんがり帽子と、ふわっとローブで魔法使いに全力で寄せてくー!
出来たら杖も欲しいんだけど、欲張りかな?ちょっと職人さんに相談してみるっ
カーニンヒェン・ボーゲン
ユキどの(f06201)に誘われて。
職人技は、作業からして芸術的ですね。
(一緒に作業を眺める)
学生服とはジジイめには遠い響き…いえ、普段から正装でしたな。
教師は向きませんよ(笑って)
変更は無しで…ふむ、新しい持ち物!
一新するとはこう、面映ゆくなりますな。
この歳にして学生の機微を知るとは…。
テーラードジャケットのボタン三つはいつも通り。
ユキどの、実は気になるものが。
スニーカーを選びたいです(ジジイが思う若者らしさ)
ユキどのはどんな学生服にしますか?
セーラーデザインは斬新ですし、
薄手のパーカーも良いですし、ローブなどは如何にも!
魔法といえば杖ですね、
大小もいろいろ、合わせましょう
(着せ替えたい!)
●
「職人さん達、凄いすごーい!」
しゅるしゅると描かれる線がたちまち目の前に起き上がる。くるり躍れば色に染まって、デザインタッチで描かれた小さなユキが、掌の上でぺこりとお辞儀をした。
「ね、じぃじ見た? 魔法ってやっぱりドキドキわくわくするねっ」
「ええ、職人技は、作業からして芸術的ですね。ほら、ユキどの、あちらも中々」
カーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)がほうと溜息ついたのは、小物作家の手許で仕上げられていく小さなブローチ。繊細な磨ぎを迷いない手つきで進めていく様子には、誰しも感じ入らずにはいられない。
「しかし、学生服とはジジイめには遠い響き……いえ、普段から正装でしたな」
「じぃじなら、先生風にするのもアリだよね!」
「おやおや、光栄ですが。ジジイには教師は向きませんよ」
小さな笑みにそう? と首を傾げつつ、ユキははっと拳を振り上げる。
「じゃあ、いつもの装備を入れ替える感じで考えてみるとか!」
新しいものにそわっとするのは、流行りに敏感な学生あるあるだ!
「……ふむ、新しい持ち物!」
その提案は、好奇心に満ちた若々しい心を持つ老紳士の心も動かした。夏らしく涼やかな素材のテーラードジャケット、やはりボタンは三つで――ならば色は、素材は――と、案外楽しく選べるものだ。
「一新するとはこう、面映ゆくなりますな。……しかしユキどの、それなら実は気になるものが」
「なになに?」
そわそわと興味津々。身を寄せる小さなユキに口許寄せて、
「……スニーカーを選びたいです」
自身の思う精一杯の若者らしさを、思い切って伝えてみれば。
「ふむふむスニーカー……なら、踏み込みでしっかり踏ん張れるようなのをお願いしてみようよ!」
行動派のじぃじにピッタリだとにこにこ笑って、ユキはすみませーんと店子に声をかける。差し出されたのは今の装いにもぴったりの、シックかつ若々しいレザースニーカー。
柔らかくなめした革は上々。靴裏に施された滑り止めの鉱石片も、しっかりと足取りを支えてくれそうだ。
「ほう、これは……中々履き心地もよろしいですな、これにいたしましょう。して、ユキどのはどんな学生服にしますか?」
「ぼくはね……如何にもなとんがり帽子と、ふわっとローブで魔法使いに全力で寄せてくー!」
とんがり帽子に結んだリボン、ふわっと躍るローブ。しゅるりと奔る光が身の丈を計ったら――テレビウムサイズだってたちまちのうちに出来上がり。
「ローブなどは如何にも! ふうむ、よくお似合いです」
「えへへっ、出来たら杖も欲しいんだけど、欲張りかな?」
「そんな事はございませんよ。杖だけと言わず、二着でも三着でも、心ゆくまで試して参りましょう、ユキどの」
「あわわ、えっ、これも着るの? これもーっ?」
いつになく熱いカーニンヒェンのお勧めに、ユキはくるくると着せ替えられるまま。ちょっと斬新なセーラーデザインも、スモックタイプの魔術服も、大小さまざま、色とりどりに。お爺ちゃんが楽しそうで何よりです。
店のかたすみのファッションショーは、
「もうこれに決めたーっ! ねっ、じぃじ、杖を見にいこうよっ」
――そうユキが叫ぶまで、続いたという。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
制服:お任せでお願いします!
またずいぶん固いこと考えてんなぁ
気楽に考えればいいんだよ
まあ大体なんでも着れるだろ
…ってことで、選んでくれる?
デザイナーに小首傾げてお願い
暗めの色の方が好きではあるな
靴はこれはいときたいから合いそうなヤツで
靴の爪先で地面を軽くノックして
っと…あとさ
外套っつーかマント…
できれば青系統だな
ってあったりするか?
俺じゃなくてアイツの服に合いそうなヤツ
アレスをひっそり指差して
いくつか候補を見せてもらって
決めるのは自分で
ただの学生服より、騎士様ってカンジがするじゃん
着てるアイツがみたいそれだけ
だから内緒な?
これ…お前が選んだの?
だってセンスちげぇし
…大切にする
アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
制服:お任せしたいです!
年齢的には先生だけど…
まあ、学ぶ事に年齢は関係ないよね
…実の所、服についてはそんなに詳しくなくてね
だから、デザイナーさんと相談したい
学生らしい組み合わせに…あ、脚鎧はありかな?
帯剣もして…
…真面目すぎ?そ、そうかい?
上着は…どれにしようかな
セリオスに聞こえないようにこっそりと
制服と別に相談したい事がありまして…
魔法鉱石の中に星が瞬く夜空のような色の物はありませんか
装身具が欲しくて
…ああ、これは僕のではなくて
セリオスに…友に贈りたい
…内緒でお願いします
笑いながら人差し指を唇に当てる
セリオス、これ
うん、僕が選んだ。…君に似合うと思って
受け取ってくれるかい
●
「年齢的には先生だけど……まあ、学ぶ事に年齢は関係ないよね」
これはどうかな、とセリオスの肩から着せかける布地は、しっとりと控えめな艶を浮かべる黒のサテン。いい色だな、と応じつつ、セリオスは苦笑いでアレクシスを見上げた。
「またずいぶん固いこと考えてんなぁ。言われてたろ、ここじゃ役に立つ限りは生涯学生だって」
まあそれがなくとも、もっと万事を自分と共に、気楽に楽しめばいいのだと。セリオスはにやりと笑い、目についた布地のひと巻きを幼馴染みの胸に押しつけた。――彼に重ねるはいつも蒼穹の色、けれど偶にはと、いつもよりはごく淡い、遊びある色で。
「ってことで、選んでくれる?」
「わあ、飾り甲斐ある美人さんだやったー!」
きゃっきゃっと少女のようにはしゃぎつつも、デザイナーの仕事は確かなものだ。黒のサテンはブラウスに、敢えてのシンプルな黒襟に、三重に重ねた共布のフリルのタイ。その裾には細やかな銀のビーズで星屑を――赤と青、ふた色の星をひとつずつ添えて。
丈を七分に詰めたワイドパンツは細めのシルエット。色は深いブルーグレイではあるけれど、シャツと合わせれば軽やかだ。それを銀のサスペンダーで吊り、仕立てが良いと褒められたブーツとマントはそのままに。
「へえ、割と印象変わるもんだなー。……なあおねーさん、あとさ……外套っつーかマント……って頼めるか? 俺じゃなくて」
――アイツの服に合いそうなヤツ、とちらり視線を運ぶ先、
「……服についてはそんなに詳しくないんだ。学生らしい組み合わせに……ええと、脚鎧は合わせられるかな?」
「もちろん、ご希望に沿いますよ。白銀の鎧であれば、そうですねえ」
セリオスの選んだ生地は爽やかなシャツに仕立て、シンプルな首回りにはループタイ。胸鎧の代わりには、魔法文字の銀刺繍と紋章刻んだ金ボタンで守りの加護を付したベストを。
白みの強い品良いグレーでパンツも揃えたら、胸当ても脚鎧も籠手も違和感なく身に馴染んで。嬉しそうに眼差しを緩める――そんなアレクシスの姿。
「ほら、あの通りクソ真面目でさ。ただの学生服より、騎士様ってカンジがするじゃん。……俺が着てるアイツがみたいだけだから、内緒な?」
「ふふ、もっちろん。プレゼントですね、余計気合い入っちゃいます!」
向けた背中を目隠しに、さらさらと走らせるペンが描き出したのはいくつかの外套。フード付きのデザインは魔法学校感を高めたけれど、セリオスが選んだのはやはり――……。
「ほら、これ」
「! セリオス?」
ばさり、背に掛かる軽やかな外套に、青年は青い瞳を瞬いた。
フードを排し、銀リボンで縁取った立て襟持つ外套は、目の覚めるような青。白銀の装備と淡い色で纏めた制服によく似合った。
「僕に……?」
「他に誰がいるんだよ。受け取っとけ」
悪戯っぽく笑うセリオスに破顔して、では、とその喉に手を伸ばす。
「……これも受け取ってくれるかい?」
フリルタイに重ね留める大きな魔法鉱石は、星秘める鮮やかな藍。籠る魔力を最もよく反射する美しいカットの石を、星の光彩を描いた銀のブローチ台に嵌め込んである。
「これ……お前が選んだの?」
「うん、僕が選んだ。……君に似合うと思って」
星瞬く夜空のような、深くも美しい彩を持つ石を、友のために。密やかな求めに、デザイナーはにっこりと応じてくれた。――数多の煌めきの中からただひとつを選び取ったのは、アレクシスだ。
「なんか、意外……センスちげぇし。……けど、ふぅん」
指先で撫でれば、胸に満ちるものがある。溢れ出る笑みを隠さずに、セリオスは微かにはにかんだ。笑えばいっそう、幼い頃を想起させる幼さで。
「ありがとな。……大切にする」
交わした品もまた、互いを守る礎のひとつとなるのだろう。
満ちては彩る君の色。
人の数だけ咲く魔法が、アルダワに溢れる『これから』を色とりどりに染めていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵