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バトルオブフラワーズ⑪〜懸崖のゼピュロス

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー #夕狩こあら

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「皆、お疲れ様! 皆が頑張ってくれたお陰で、怪人軍団の幹部も残すところあと一体……私達は確実に大首領『ドン・フリーダム』に近付いているわ」
 キマイラフューチャーを脅かす怪人軍団、其を束ねるオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』。
 其の正体は未だ謎に包まれているが、彼の者を覆うベール、その裾に手が届きつつあると、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は自信を持って言う。
 これまでの戦いで、猟兵の優れた機知と純然たる強さを知った彼女は、最後に立ちはだかる幹部とも十分に渡り合えると信じており、三幹部が全員やっつけられたとなれば、首魁も猟兵を放ってはいないだろうと思っている。
 故に最後の幹部戦は重要な戦いになると、ニコリネはその紫瞳に鋭さを増して言った。
「第三の関門は、風を自在に操るスピード怪人『ウインドゼファー』が守ってる」
 バイクの様な装甲に躯体を覆った怪人、ウインドゼファー。
 外見の硬質が示す通り、彼女にエイプモンキーやラビットバニーの様なノリはない。
 そして彼女は、これまで戦った幹部らが持っていた特殊な能力は有せず、単純に素直に『風を操る能力』で戦う。
 純戦闘となるか――猟兵によって戦い方は様々だろうが、いずれにせよ死闘となる事は間違いない。
 ニコリネは最後の門番たる彼女を制すには相応の代償――つまり負傷と損耗を覚悟すべきだと注意した上で言を足し、
「彼女も他の幹部と同じで、同時に一体しか存在しないけど、何度でも骸の海から蘇るわ。短期間に許容値を超える回数を以て倒せば、復活出来なくなるのも同じね」
 一人一人の力が結ばれ、積み重なって、道を切り開く。
 ニコリネは負うた創痍と損耗の分だけ未来が拓かれると信じ、猟兵を血の花叢へと送り出す――その責に丹花の唇を引き結ぶ。
 幾許の沈黙で覚悟を決めた彼女は、花型のグリモアを召喚し、
「キマイラフューチャーにテレポートします。怪人軍団の大幹部、最後の一体をやっつけに行きましょう!」
 準備はいい? と白磁の繊手を差し伸べた。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 こちらは、『バトルオブフラワーズ』における第十一の戦場、怪人軍団の幹部のひとり『ウインドゼファー』と戦うボス戦シナリオ(第一章のみで完結)となります。

●戦場の情報
 全自動物資供給機構『システム・フラワーズ』内部。
 その空間は花々が咲き乱れており、集まった花弁が足場を形成しています。

●敵の情報
 キマイラフューチャーを脅かす怪人軍団の大幹部の一体、スピード怪人『ウインドゼファー』。
 彼女(女性です)は他幹部のような特殊能力を有さず、普通に素直な『風を操る能力』で戦います。

 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

●戦争のルール捕捉
 戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 グループでのご参加は【グループ名】をご記載願います。
 プレイングが届いた順ではなく、より戦争に有利に動いたプレイングを優先して採用し、リプレイが完成した方から随時お返し致します。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

荒谷・つかさ
風を操る敵……そしてそのボディは金属
なら、これで如何かしら?

持ち込んだ金属製の壁と扉、大剣を全て守りに使い初撃を防御(地形の利用、盾受け、武器受け、オーラ防御)
凌ぎきったなら【五行同期・精霊降臨術】を発動
火行に特化して攻撃力強化し、風迅刀の風の属性攻撃と併せ「灼熱竜巻の剣」と化す

五行において風は木行、火行はこれを受けると強化される(木生火)
金属は金行、火行はこれを溶融し破壊する(火剋金)
故に、お前の弱点は炎のはずよ

以後敵の攻撃は「灼熱竜巻の剣」で受けてより強化しつつ
周辺に属性攻撃の応用で「炎の竜巻」を放って地形ごと攻撃
花の足場も燃やす事で攻撃に転用、私自身は火行強化の余波と火炎耐性で耐えるわ



 スピード怪人『ウインドゼファー』の役儀は慥かに門番であった。
 然し条件に適う者は通すのが門番であるのに対し、全ての者を篩い落して通さぬなら其は墻壁であろうと――荒れ狂う暴風を前にした荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)は、冴え渡る時の狭間で冷静にも皮肉を過らせていた。
『刹那にこれだけの大防禦をやってのけるとは、中々に賢しい』
「誉める訳じゃないけど。相応の対応をしたまでよ」
『――実に刻み甲斐のある』
 凝縮した時の中で言を交す。
 つかさは間もなく襲い掛かる狂風を炯眼に射るや、道中で適当に引っ剝がしてきた金属製の『壁』と『扉』、そして自身が持つ剣の中で特に頑強に秀でた『刃噛剣』を盾にし、致命傷を避けると同時、敵の特性を見極める。
「風を操る敵……そしてそのボディは金属」
 なればと足元に描いたのは【五行同期・精霊降臨術】(エレメンタル・ポゼッション)――火の精霊を降ろして自身を強化した彼女は、風の精霊を宿す不可視の刃『風迅刀』と併せて「灼熱竜巻の剣」を創り上げる。
 佳声は静かに相生と相剋を語って、
「五行に於いて風は木行、火行は之を受けると強化される。金属は金行、火行は之を溶融し破壊する」
 木生火。
 火剋金。
 草鞋に踏む花叢をも炎に呑み、赫々と白皙を照らしたつかさは、鋭刃と迫る陣風に灼熱の剣鋩を噛み合せた。
「お前の弱点は炎の筈よ」
 角逐――ッ!
 熱気帯びた猛風が渦を巻き、両者を中心に吹き荒ぶ。
 苛烈な炎に熔解する筈のウインドゼファーは、然し仮面の下で怜悧に囁いた。
『――五行に従えば、或いはそうだったでしょう』
 鋼鉄の装甲は灼熱に素顔を暴くか――否。
 刻下、ウインドゼファーは全身から気焔を噴いてつかさを押し込み、
『万物の摂理でなく、ドン・フリーダムに従う私は、欲望(リビドー)こそ全てに勝ると信じている。誰よりも速くなりたいという欲望が、自然の理に勝って私の戦闘力を増強させる――ッ!』
「ッ、ッッ!」
 つかさが纏う竜巻のエネルギーも欲さんと、強欲な颶風が華奢を飲み込む。
 蓋しつかさとて、彼女の、引いてはドン・フリーダムが敷く摂理に従う謂れはなかろう、
「理と理の戦いは、力と力の戦いと同じよ」
 畢竟、強い方が克つ。
 己が闘志を熱風と迸らせた佳人は、荒れ狂う暴風を押し返し、その波動に舞い上がる百花の精彩に炎を灯して躍らせる。
『――成る程、一理ある』
 つかさの凛然を前に、玲瓏の聲が小気味よい嗤笑を含んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
先までの二人とは随分と雰囲気が違いますね……
それだけ追い詰めているのか、何か事情を抱えているのか……

【トリニティ・エンハンス】の炎と風の魔力で自身を覆って防御力を強化し、炎の竜巻と化す
爆発的な熱風により大気を掻き乱し、ゼファーの風の支配力を削ぐ
炎よ、風よ、我が身を護り給え……!

【怪力】で聖槍を【なぎ払い】、周囲に熱風の【衝撃波】を起こし、風を意のままに操らせない
素早さで劣っている分、【衝撃波】による範囲攻撃で攻める
金属で身体が構成されているが、槍が当たればそれごと焼き斬り粉砕する(鎧砕き)
【ダッシュ】【ジャンプ】を活用し、【空中戦】にも対応する
主導権を握られて一方的に攻められないように



 口跡は敏く理智的に、忠誠は固く主情的に。
 百花斉放の花叢に屹立し、堂々、猟兵を迎えたスピード怪人『ウインドゼファー』の鏖殺の気に触れたオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、嘗てない速さで早鐘を打つ心臓に尋常ならぬ警戒を受け取っていた。
「先までの二人とは随分と雰囲気が違いますね……」
 それだけ追い詰めたか、或いは何か事情を抱えているのか――。
 とまれ彼女を倒せば、三幹部を失った大首領が動くと分かっているだけに、如何なる事情があろうとも足を止める事は出来ない。
 芙蓉の修道女は、暴風を纏って飛来する邪に【トリニティ・エンハンス】を展開し、
「炎よ、風よ、我が身を護り給え……!」
『――炎の竜巻、ですか』
 炎と風を錬成して爆発的な熱風を呼べば、花弁の乱舞が示す通りの乱気流がウインドゼファーの勢いを削ぎに掛かる。
 然し邪風は烈風の中を矢弾の如く突き抜け、
『コンバージェンス。熱量と流速の異なる風は衝突して放射状に拡散し、粘性によって渦を成し、軈て混じり合う――其が摂理なら、私はドン・フリーダムが敷く条理によって超越するッ!』
「――ッッ!!」
 ぶわり風を纏った身ごと車輪剣を突き出し、オリヴィアの肩口を朱に塗り込めた。
(「ッ、ッッ……速い……!」)
 蓋し痛みには耐えられる。
 だが今の攻撃が『無限大の欲望(リビドー)』に根差したものだというなら――看過出来ない。
 白皙の麗人は、足元の花叢に血斑を染ませながらも踏み留まり、血に滑る聖槍を強く握り込め、立つ。
「その風、そのスピードは、この世界に決して在ってはならないもの」
 我が紡ぎし炎と風は未だ生きている――なればと怪力にて振りかぶった槍は一閃、花咲き乱れる空間を熱風の衝撃波に満たし、ウインドゼファーに風の支配を許さない。
『速さでは敵わぬと、フィールドの掌握を図るとは姑息な』
「この世界で平穏に暮らす者の為なら、幾らでも」
 幾らでも怜悧に狡猾になれる、と弾指の間に視線を交えるオリヴィア。
 誰よりも何よりも速くと邪風が鋭角に迫れば、迎え撃つ彼女は更に一足、敢えて踏み込んでインパクトをずらし、流血淋漓を代償に敵の大腿を貫穿した。
「焼き斬り、粉砕する――!」
 主導権を握らせてはならない。
 一方的に攻め込まれぬよう、先ずは機動の要を削ぐ――!
『――ッ、ず痛ッッ!!』
 瞬刻あって。
 凄艶は血花を散らし、邪の鉄塊は破片を落とす。
「その創痍(きず)はもう塞がらない」
『――其は貴女も』
 間際で短く言を交した両者は、ザッと放射状に衝撃を疾らせ、美し花叢を波立たせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

白斑・物九郎
●POW



●対先制
・タイヤの意匠の回転速及び角度
・左二の腕の排気塔の滾り
・纏う風の巻き方
敵を注視し【情報収集】、襲来方角の察知に【野生の勘】を傾注

無手と見せ掛け【クイックドロウ】の要領で「心を抉る鍵(大)」を「モザイク状の空間」から突如引き抜き、メイスを使い潰す覚悟で敵攻撃と己の間に得物を割り込ませる


●以降の攻撃は【喧嘩極意(命中率重視)】としてブースト
メイスを頼みの得物として操る猟兵と見せ掛け、毀損したメイスを敵武装のシャフトへ噛ませるように突っ込む(だまし討ち)

暴風に負けじと敵へ【手をつなぎ】に行き【グラップル】
腕関節を獲りに行きざま、敵機動方向を【野生の勘】で見越して体を捌き、極めに行く



 スピード怪人『ウインドゼファー』が風を操る能力に長けた強者なら、彼女を極上の獲物と捉えた白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は風を読む洞察に優れていたろう。
「風そのものは見えなくても、力を及ぼしている側は視えますからよ」
 左上膊の排気塔の滾りから初動を気取った彼は、車輪剣の意匠の回転数から速度を、次いで角度から進攻の軌道を導き、敵の先制を予覚する。
 周囲を漂う万紫千紅も地の利と取り込んだか、黄金に耀く炯眼は、獲物が纏う風の巻き方も可視化し、間もなく迫る剣呑に白斑の尻尾を蹴立てた。
『――私のスピードを捕えようとしているのですか』
 時を加速させた世界で冷然が囁(つつや)く。
 その聲は圧倒的自信に満ちて、
『然し遅い。弾指にも満たぬ時の間では何も出来ないッ!』
 誰よりも何よりも速くあれ、と欲望(リビドー)を溢流させたウインドゼファーは、無手にて屹立する物九郎を颶風に呑まんと肉薄すれば、刻下、野性の勘に鋭く感応した左腕が「白い虎縞模様の刻印」を励起させ、ニュッと――モザイク空間より『心を抉る鍵(大)』を引き抜いた。
『鍵――ッ』
「俺めの代わりにくれてやりまさ」
 使い潰す覚悟で割り込ませたガチ鈍器が、超速旋回する車輪剣と噛み合う。
 ギャンッと金属が削れる音が両者を間に響いた瞬間、ぶわり爆ぜた疾風が、今の凄まじい衝撃を放射状に運び、足元の花叢を波打たせた。
『ッ、見れば狩りの本能――生命の根源的欲望が眸に精彩を宿している。貴方も骸の海を潜れば、無限大の欲望を喰らい尽せるものを』
「ああ、そうですかよ」
 零距離で囁かれた言を無愛想に掃って、【喧嘩極意】(モノクロアーツ)を叩き込む。
 初撃で毀損した巨大な鍵を得物に、なんでもアリの喧嘩殺法を繰り出す物九郎は然し大振りな訳でなく、速さを誇る相手に精確な打突を積み重ねた。
 それも風を読んだ上での精緻だったか、焦燥したウインドゼファーは暴風の威力を増して迫る。
『与えられた平和に満足した種族の者よ、滅びの刻は今と知れッ!』
 然し身ごと繰り出した車輪剣が捕えたのは『鍵』。
 毀損した得物をシャフト部へ噛ませるように突っ込んだ物九郎は、今のだまし討ちに楔打たれたウインドゼファーの「時」を盗みに往く。
 スピードを誇り、速さを求める彼女に突き付けた言は小気味よく、
「欠伸が出ますわ」
『ック、ッ――!』
 ウインドゼファーは直ぐにも颶風を纏って彼を拒むが、無数の風刃に肌膚を刻みながら掴み掛かった腕は、そのまま手首を内捻して肘関節に絡み、脇めがけて手刀を滑らせるや肩を極めた――!
『ズァアアアッッッ!!』
 血で滑りそうになる関節技を、腰を落して更に掛ける。
 物九郎は冴ゆるほどローテンションに、裂帛の叫喚ごと花叢に押し付けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
剣は如何に先を奪うかに死生を賭すもの。
故に極まった速さは如何なる術理や得物より怖ろしい。

しかし進退の速度で遅れるなら、此方はただ切り結ぶ瞬間の一歩を制するのみ。

◆対策
颶風の迅さで飛翔する一撃なら、警戒すべきは上方。
且つ圧倒的な速度と、暴風で身動きが制限される事を考え、敢えて頭上に隙を作り、そこに狙いを誘って最短最小の動作で初撃を禦ぐ事に傾注。

風圧で構えが崩れぬよう重心を落とし、【第六感】を研ぎ澄まして、来ると思った瞬間に躱すか、失敗したらその時点で【無明剣】の無我状態に入り、刀での受けと超耐久力で堪える。

◆攻撃
凌げれば即反撃。
欲からその暴風が生まれるなら、私は無心で斬ろう。
石火之機、ご覧あれ。



 想像する全てを創造した『エイプモンキー』、絶対無敵バリアで全ての攻撃を防いだ『ラビットバニー』――特殊能力を有した他の幹部に比べ、純然と風を操るスピード怪人『ウインドゼファー』は一籌を輸したか。
 答えは否。
 如何に先を奪うかに死生を賭す剣の髄を識る鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)は、際涯まで極められた敏捷(はや)さは千の術理や万の得物より怖ろしい、と冷艶の脣を引き結ぶ。
 蓋し彼が総毛立つのは、凛冽極まる己が殺気の故に。
 雪白の手の甲に浮かぶ竜胆紋は、血場に立つ鞍馬の一族の者に羅刹の力を解放し、景正を蒼瞑の剣鬼と成らしめた。
「進退の速度で遅れるなら、此方はただ切り結ぶ瞬間の一歩を制するのみ」
『――面白い』
 彼と対峙したウインドゼファーは、我が鋼鉄の躰が闘争の気にヒリつく感覚を妙々と受け取ると、踵部のタイヤを旋回して気焔を吐き、万紫千紅の空間に飛翔した。
『オブリビオンとして蘇った私のスピードを捉えるなど、天馬とて無理な話』
 荒れ狂う暴風に覆われた彼女を須臾に瑠璃色の瞳が追う。
 何故追えたか――其は颶風の迅さで飛来する一撃なら、上方を警戒すべきと睫を持ち上げた景正の読みの鋭さに他ならぬ。
 音速を超える驚異のスピードに加え、己が挙措が暴風で制限される事を考えた彼は、敢えて頭上に隙を作る事で、そこに狙いを誘う。
 畢竟、全き戦上手であった。
『私達はドン・フリーダムの翼下で無限大の欲望(リビドー)を喰らい尽くす。スピードを、全てを掴む為に――猟兵、貴方達には此処で消えてもらうッ!』
 フルスロットル――ッ!!
 百花繚乱を連れた颶風は宛ら色彩の大海嘯であったろう。重たい空気の壁が景正の濡烏の髪を梳り、翻る花弁が白皙を切り裂く。
(「躱すか。凌ぐか」)
 風圧で構えが崩れぬよう重心を落とした彼は迷わない。
 極限まで研ぎ澄ました第六感が『濤景一文字』の霊気を疾らせると、最短最小の動作で刀鋩を前に――膨張する大気の膜を貫き、視界の端に烈風を追いやった。
「欲からその暴風が生まれるなら、私は無心で斬ろう」
『ッッ、私の風が、最速を求める欲望が視えると――?』
 莫迦な、と吃驚を嚥下したウインドゼファーに、次なる脅威を咽喉に押し込む時は許されぬ。
「石火之機、ご覧あれ」
 馨香を帯びた聲は猛風に攫われ、荒れ狂う花叢にひとり剣豪を立たせる。
 間合に入ったもの全てを斬る無我状態に意識を静めた景正は、間もなく迫る車輪剣に『濤景一文字』を突合せ、
「我空、人空、剣空――右三空一心観。無明にて断つ」
『! 私の超スピードが、斬れる――ッッ!』
 霹靂閃電。
 超速旋回する鋼鉄、車輪剣を主の右腕から切り離した。

成功 🔵​🔵​🔴​

アノルルイ・ブラエニオン
敵のユーベルコードは風……
ここは広い場所だ
吹き飛ばされて何かにぶつかるということはない筈
であれば、風の向きを見切り
逆らわずに飛ばされよう
風に舞う木の葉は風で傷つくことはない
足場がなくなったら
あらかじめ矢を結わえたロープを自分の体にくくりつけておき、落下しながら射る
無事な足場か、なければゼファー本体に
矢に引っ張られて移動が可能な筈
矢が刺さるかロープを絡めることができたらたぐり寄せて上陸だ

そして凌いだら
問いかける──賢者の影だ
「エイプモンキーとラビットバニーが負けたのはどうしてだと思う」
猟兵の発想力、数の暴力、色々あるだろうが一番の理由は
「我々猟兵を敵に回したからだ……!」



 大首領『ドン・フリーダム』に至る道に立ち塞がる最後の門番、スピード怪人『ウインドゼファー』。
 最後の幹部たる彼女は、猟兵の殺気を気取るや踵部の車輪を超速旋回、噴き上がる気焔と共に跳躍し、万紫千紅の空間を自在に翔る。
 排除すべき敵を眼下に敷いた邪風は、冷然と聲を降らせて、
『重力に繋がれた者達。次世代の種族達と共に此処で滅びるがいい』
 レボリューション・ストーム――ッ!
 まるで爆ぜる様に暴風を膨張させ、花咲き乱れる足場を削り出した。
「風を操るユーベルコード、か」
 猛然と迫る颶風に馨るテノールを置いたのは、アノルルイ・ブラエニオン(変なエルフの吟遊詩人・f05107)。
 白金の艶髪を梳られた麗人は、鼻梁を掠める欲望(リビドー)の渦に身構えるより、その透徹たる青の瞳を周囲に巡らせ、
「この空間は広い。吹き飛ばされて何かにぶつかるということはない筈だ」
 であれば逆らわずに飛ばされよう、と大胆にも猛風に身を任せる。
 蓋し彼が大胆になれるのは、十分な思慮があるからに他ならず、
「風に舞う木の葉は風で傷つくことはないのだから」
 とは全き至当。
 その理は今なら花弁の乱舞が示そうか、戦場に満つ精彩は吹き荒れる陣風に揉まれるも、風そのものにダメージを負う訳ではない。
 然れば彼も悠々と、
「何処へでも運べばいい」
 抵抗すれば、その部位に負荷を掛ける。
 初撃の損耗を最小限に抑えるに、脱力が最良と読んだアノルルイは、木の葉で言えば秋色に染まった紅葉だろうか――派手なエルフクロースに身を包んだ彼は、疾風の中で花の足場がバラけていく様を見届ける。
「唯、あまり離れるのも佳くない」
 戦場を、か――いや、空間にも増して有限なのは、予め我が身に括りつけておいたロープの長さだ。
 逆端には矢が結わえられており、
「失礼する」
『ッ、!?』
 イチイの弓を張った瞬刻、ウインドゼファー本体に射掛けた矢は、彼女の右腕にロープを絡げて主の離脱を阻んだ。
『なんと、大胆な……ッ!』
 邪風が痛恨を噛み締めたのは、風に身を任せるも風の中で矢を射るも、風を読み切らねば凡そ叶わぬ玄人の業だったからだろう。
 焦燥を滲ませるウインドゼファーに、再び戦場に降り立った尖耳の玲瓏は口を開いて、
「エイプモンキーとラビットバニーが負けたのはどうしてだと思う」
『……ッ!!』
 猟兵を侮った故にか。或いは己が能力を過信したか。
 それとも勝利の女神の気紛れか、星の巡りが悪かったか。
 同胞の敗因を語らせるとは、ウインドゼファーには屈辱であったろうが、その沈黙に忍び寄る【賢者の影】は、彼女が真実を告ぐまで苦しめる。
『……ッ……ッッ!!』
 鋼鉄の躯体を包む白のコートに漸う朱が染み出したのは、魔力に編まれた黒影が彼女を絞ったからか――アノルルイは血斑を見ながら答えを言い渡し、
「我々猟兵を敵に回したからだ……!」
 と、膝折る邪に揺ぎ無い事実を突き付けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

未不二・蛟羽
スピード勝負なら負けられない!足場なんて、スカイダンサーにはカンケーないっす!

『笹鉄』の鉤爪を敵に引っ掛けて、ワイヤーの【ロープワーク】で飛ばされないようにしつつ【空中戦】で相手との距離を詰め

【野生の勘】で風の切れ目を狙ってワイヤーを手繰り、【逆シマ疾風】を発動。【早業】で空を駆け
風には風、っす!
相手の頭上へ急降下して、至近距離から【風属性攻撃】を叩き込むっす
一歩間違えたら危ない、【捨て身の一撃】っすけど、だからこそ迷っていられないっす!

ここから先は、俺の風!俺の領域!
キマイラヒューチャーはきらきらの場所っす!
欲望って、よくわからないけど…少なくともアンタにあげられるものはここにはないっす!



 大首領ドン・フリーダムのみを信奉し、最速を求む欲望にのみ従う――。
 最後の幹部にして掉尾の門番たるスピード怪人『ウインドゼファー』は、超速で飛躍するや重力の鎖を断ち、万紫千紅の空間を自在に翔るが、天空を舞台に駆け巡るスカイダンサーも空戦は譲れまい。
「足場なんて、俺にはカンケーないっす!」
 凄まじい暴風が花叢を駆逐していく景を、遥か上空より見届けた未不二・蛟羽(花散らで・f04322)は、猛禽の双翼の力強い羽搏きに風を掴むと、花弁の乱舞を颯爽と抜ける。
 狂濤の如き颶風が厚い空気の壁で圧すも、彼は『笹鉄』を投げるや赤い鉤爪を敵の躯体に引っ掛け、巧みなロープワークで飛ばされぬようワイヤーを手繰りつつ、己が得意とする距離を保つ。
「風の切れ目を狙うっす!」
『――視えない風を読むと』
 温度変化、気圧傾度力、摩擦力、転向力……様々な流体の変化が風を生むと経験として識る蛟羽は、野生の勘に鋭く反応する無垢の翼を駆り、高く高く、敵の頭上を目指す。
『空戦は有利な情勢を確保する事が重要。高度を取って降下攻撃を仕掛けるつもりでしょう』
 至近距離から攻撃するのも空戦の原則と、敵も高速飛翔を得意とするが故に読んでいるようだが、だからと言って最良の手を迷う蛟羽ではない。
「スピード勝負は負けられないっす!」
 ロー・ヨー・ヨー。優速を得るウインドゼファーに対し、足りぬ速度を一度降下して補った彼は、そこから急上昇――再び高度を得て追随する。
 遥か高い穹を映した藍瞳に敵影を聢と捉えた蛟羽は、【逆シマ疾風】(サカシマハヤテ)――風圧の弾丸を一気呵成に叩き込む!
「風には風、っす!」
『ッ! 真正面から圧し返してみせる――ッ!!』
 正と邪、点と面。
 声も目線も鋭く交わる至近距離で、性質の異なる風が角逐する。
 衝突した風弾と猛風は、コンバージェンス――放射状に拡散し、粘性によって渦を成すより早く両者を衝撃に押し込み、或いは風刃に刻んで、花舞う空間に血飛沫を躍らせた。
『ッ、ッッ……捨て身の一撃にも迷いは、ない、と……ッ!』
 痛撃に声を絞るウインドゼファー。
 彼女に睨められた蛟羽もまた『FLYING CHIMERA』に血斑を染ませるが、蓋しその顔貌には相剋を制した咲みが挿して、
「ここから先は、俺の風! 俺の領域!」
 両手を広げる。双翼を広げる。
 猛禽の翼は力強い羽撃きで墜下を拒み、空中で蹈鞴を踏むウインドゼファーに凛然を突き付ける。
 澱みないテノールは猛風に攫われる事なく届いて、
「キマイラフューチャーはきらきらの場所っす! 欲望って、よくわからないけど……少なくともアンタにあげられるものはここにはないっす!」
 旧世代の者に、厳然たる訣別を置いた――。

成功 🔵​🔵​🔴​

リダン・ムグルエギ
竜巻は事前に足場に服飾師の糸を通しておき
巻きこまれたら糸を手繰り離脱を試みるわ

車輪の軌道は円と直線の組合せ
アートの要領で刃を見切り
防具改造で催眠模様と共に服に仕込んだ鉄板で防御よ

あの刃、手元の内側への攻撃が難しい形ね
隙を見て手をつなぐように抑えて内側へ潜り込み…
ツーショット写真撮影を狙うわ

アタシの戦争のサブ目標
それは全幹部と写真を撮る事だったの
これで実績達成よ

この刹那的でミーハーな行動や考えはお嫌い?
いいじゃない
アタシの欲望は無限大じゃない
飽きもするし満足もする
だからこそ…今この瞬間を面白おかしく生きるために全力を尽くせるの

攻撃せず撤収するわ
言葉と写真という作品が実質の攻撃よ
彼女の矜持への、ね



 凡そ強者らしい特殊能力を持たず、純然と風を操って戦うスピード怪人『ウインドゼファー』は、事前の周到なる用意と斬新な籌策に長けるリダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)には与し難い相手だったろうか。
 ――結論から言えば。
 彼女との相性は意外なほど良く、逆にウインドゼファーにとってリダンは最悪の相手だった。
『――抗おうとも往なそうともしないとは』
 沈着の聲に吃驚が挿したのは、旋回方向を違えた「嗤う竜巻」がリダンに迫った時。
 足元の花叢に『服飾師の糸』を潜らせていた彼女は、鋭い疾風が艶髪を巻き上げるや繊指に糸を手繰り、離脱する――「戦わない」という選択肢のないウインドゼファーにとって、その回避行動は密かに胸奥を騒めかせた。
『然し風は躱せても、この車輪剣は如何でしょう』
 ギャンッと超速回転した車輪が、間もなく魚の尾鰭を追う。
 最速を欲する邪なれば、直ぐにも影を捕えるが、然し振り下ろした旋回刃は急所を屠るつもりが半身もずれ、柔肉を断つ以上の手応えに更に逆撫でられる。
「車輪の軌道は円と直線の組合せ。アートの要領で見切れるわ」
『何――ッ』
「……威力は、想定以上だったけど」
 リダンが柳葉の眉を顰めたのは、斬撃にではなく鈍重な衝撃に対して。
 暗示を模様と織り込んだマイブランド『GOATia』は、此度鉄板を仕込んでおり、厚みある金属に刃撃を代わらせたリダンは、肉迫する車輪剣の形状を半眼に閉じた眸に捉えた。
「これ、手元の内側への攻撃が難しい形ね」
『ッ、な……ッ』
 胸騒ぎがハッキリと警鐘に変わったのは、蠱惑の馨が仮面越しにも匂った時。
 腕部の硬質な黒鉄に玉臂を滑らせたリダンは、可動域を抑えつつ懐に滑り込み――、
「目線ちょうだい」
『っっ!!』
 てろりん♪ と軽やかな電子音が連れた閃光が、ウインドゼファーの刹那を切り取った。
『ッ、これは……!』
「ツーショットフォト。アタシの今回のサブ目標は、幹部全員と写真を撮る事だったの」
 これで実績を達成した、と画像を確認すれば、全くブレずに超速の怪人がカメラ目線を寄越す――ミラクルショット。
 突然の写真撮影に戦慄いたウインドゼファーに、リダンは飄然と言を紡いで、
「この刹那的でミーハーな行動や考えはお嫌い? いいじゃない。アタシの欲望は無限大じゃない」
 飽きもするし、満足もする。
 其はドン・フリーダムの『無限大の欲望(リビドー)』に対する、リダンの、ひいては次世代の種族の主張だったかもしれない。
 長い睫に影を落としたリダンは、今の極上の1ショットを邪に突き付け、
「だからこそ……今この瞬間を面白おかしく生きるために全力を尽くせるの」
 ――全力。
 ウインドゼファーには徒爾にも思われる行動が、速さに於いても、欲望に於いても揺ぎ無い矜持を砕いていく。
『ッ、……ッッ……!!』
 攻撃はせず、端末をポケットにしまったリダンは、膝折るウインドゼファーを残し、その儘静かに花叢を後にした。

成功 🔵​🔵​🔴​

戒道・蔵乃祐
オーラ防御で竜巻を相殺
車輪剣の初撃を大連珠で武器受け

威力が殺しきれなかった場合。数珠は砕かれ、両腕が切り裂かれる

想定内です
激痛耐性で負傷を堪え
流血に濡れた数珠紐を剣に絡ませて追撃を封じ

咄嗟の一撃、早業で鎖分銅を全身タイヤに投擲
ドライブシャフトに異物を巻き込ませ、高速回転を停止させてカウンター

破戒僧捕物帖で捕縛したゼファーを気合い、怪力、グラップルで掲げ
ジャンプからの垂直落下で地面に叩き付ける
鎧砕きのDDT!



寿命を削る直接攻撃
貴女の鎧う全身武装
それは自らの非力を補うためのもの

貴女が細身のモデル体型である事実に於いて
筋力に勝機を見出だした


しかし
男児が女性にこの手段を用いた不甲斐無さ

ごめんなさい…。



『――私は、ドン・フリーダムがシステム・フラワーズを奪還するまでの時を創る』
 猟兵の前に立ちはだかった掉尾の門番、スピード怪人『ウインドゼファー』は最後の幹部として力を奮う中、我が主が全てを手に入れる瞬間を待っていた。
 既に花叢には血斑が染み、自身も多くの損耗を負ってはいたが、未だスピードは衰えず。
 裂傷を疾らせた仮面は佳声をくぐもらせつつ、間もなく訪れる終焉を告げた。
『世代を継ぎながら変わらぬ者達。与えられた平和に満足しながら、滅びるが佳い』
 剽疾剛悍、【ソード・オブ・ダイアモード】――ッ!
 躯体の全車輪を高速回転したウインドゼファーは、疾風と駆るや双対の車輪剣より竜巻を繰り出し、血場に立つ戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)目掛けて飛び掛かる。
「旋回方向を違えた二筋の竜巻……なれば」
 炯眼を絞って風を見極めた蔵乃祐は、オーラを纏った怪腕を突き出すや中心の渦を握り潰し、風刃と解ける其を肌膚に刻む傍ら、須臾に襲い掛かる車輪剣を『大連珠』に受け止める。
『私の超速を捉えるとは見事な』
「収斂の先が分かれば、或る程度は」
『然しこの威力、受け止められよう筈もなく――』
 言の途中で数珠が解ける。
 衝撃は霊珠を砕いただけでは足らぬか、蔵乃祐の両腕を鋭く切り裂き、万紫千紅の空間に血汐を踊らせる。
 蓋し初撃の負傷は想定内。
 眉根を歪めつつも塞き敢うた彼は、流血に濡れた数珠紐を車輪剣に絡ませ、瞬刻を駆る敵の時を奪った。
『――ッ』
 何を――と息を呑む間もない。
 鮮血淋漓も甚だしい腕は咄嗟に仕込み籠手から鎖分銅を投げ、鎖が彼女のタイヤを紮げると同時、分銅はドライブシャフトに食い込んで、間もなく『全タイヤ高速回転モード』を停止させる。
『ッ、最初からこの瞬間を――ッ!!』
 語らぬが何より答えを寄越そう。
 細工は流流、【破戒僧捕物帖】は一縷の挙措も許さぬ強さでウインドゼファーを捕縄し、裂帛の気合で鐵塊と化した彼女を掴み、高く掲げる。
 刻下、足半を踏み込むや百花繚乱の穹へ跳躍した蔵乃祐は、垂直に降下しながら鐵の躯体を叩き付けた。
『ズぁあ嗚呼嗚呼アアアァァァッッ!!』
 大地を穿たんばかりの衝撃が花叢を衝き上げ、胸が潰れる程の波動を放射状に広げる――其は鎧砕きのDDT!
 琥珀色の瞳の中央に拉げた敵を、視界の端に花の乱舞を見送った蔵乃祐は、「やはり」と今の手応えを反芻して、
「寿命を削る直接攻撃、貴女の鎧う全身武装――それらは全て自らの非力を補う為のもの」
『ッッ、視えていたと』
「貴女が細身のモデル体型である事実を鑒み、筋力に勝機を見出だしました」
 結果が眼下の光景だと、覆らぬ優勢を鮮血の腕に捥ぎ取った蔵乃祐だが、未だ眉根は顰められ、勝者としては苦しげ。
 彼は戦場に在るとは思えぬ声音を唇より滑らせ、
「男児が女性にこの手段を用いた不甲斐無さは――」
『――』
 鐵の装甲に躯体を覆ったウインドゼファーを「女性」と言い、疾風を駆る彼女を男の力でねじ伏せた、我が悪手を悔やむ。
 すれば言は自ずと擦り抜け、
「ごめんなさい……」
『ッ、ッッ』
 この時。
 頭部を強打して仮面に罅を入れたウインドゼファーは、精彩が差し込むと同時、春告ぐ西風に撫でられた気になる。
『殺伐の戦場にあってその様な――!』
 邪は。女性(おんな)は。
 此処に心身の完全なる敗北を受け取って花叢に沈んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

パウル・ブラフマン
【SPD】
▼先制攻撃対策
愛機Glanzに【騎乗】したままFaustを展開。
【野生の勘】を駆使し
崩れる足場を自慢の【運転】テクで疾走していくよ!
移動範囲は
ウインドゼファーさんから離れ過ぎないよう、弧を描くように。
暴風による被弾は出来る限り【見切り】を試みるね。

▼反転攻勢
ただ逃げ回っていたように見せかけて
フィールドのあちこちに
Saugerから連なるタコさんカラビナを転がしておいたんだ。
ワイヤーは視認し辛くすべく事前に光沢を落としてあるよ♪

ゼファーさんがこの罠に接近したら
テグスを引くようにして、ワイヤーを絡めたい。
動きが鈍ったら
【ダッシュ】で急接近して【零距離射撃】をお見舞いするね♪

※アドリブ歓迎!



 白銀の宇宙鉄騎『Glanz』を駆るパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)なれば、大気の温度変化、気圧傾度力、摩擦力、転向力……様々な流体の変化によって生じる風は友でこそあれ、敵ではなかったろう。
「バイク乗りが風を疎んじゃダメでしょ」
 抗うでない、逃げるでもない――乗らなくてはならない。
 轟、と迫る風の狂濤、その厚みの異なる大気の層に颯爽と身を滑らせたパウルは、颶風によって削られる足場を巧みな運転で疾走する。
「いくよ、Glanz!」
 後輪に花弁を巻き上げつつ、距離は常に射程を離れぬよう弧を描く蒼の閃光。
 愛機のハンドルを握るパウルは時に『Faust』を掲げ、執拗に追い立てる「嗤う竜巻」を妙々凌ぎ、
『片手で操舵を、片手で防禦をこなすとは器用な。サーカスの者か』
「それ、褒め言葉として受け取っていいやつかな?」
 衝突に解けた風刃を肌膚の皮一枚に遣り過ごした彼は、頬に走る創痍を手の甲に拭いつつ、青の双眸は常に敵を射る。
 その無邪気で挑戦的な視線を堂々と受け止めた敵――スピード怪人『ウインドゼファー』は、仮面の下で瞳を細めたろうか。
『バイクとは気が合う……私が求めて止まぬ超速が其処にある』
 パウルの『Glanz』を中々のマシンと認めた彼女は、然し最速を名乗るは我一人のみと、躯ごと暴風と化して彼の影を追った。
『鬼ごっこはお仕舞いにしましょう』
 誰よりも何よりも速くありたいという欲望(リビドー)を速度に乗算すれば、高速旋回した車輪剣は間もなく彼を切り刻む筈だった。
 然し神速の機動に違和感を覚えた彼女は、踵部の車輪に絡む異物に蹈鞴を踏んで、
『?? これは……タコ……?』
「ただ逃げ回るように見せかけて、フィールドのあちこちにカラビナを転がしておいたんだ」
『ッな、に――!!』
「光沢を落としておいたから、分からなかったよね」
 気付いた時には遅かろう。
 タコさんを連ねたカラビナ付きワイヤー『Sauger』は既に足に食い込んで、驚愕したウインドゼファーが目を凝らしてテグスを辿れば、その先にはパウルの悪戯な微笑がある。
 聲は小気味よく先の科白を借りて、
「ゼファーさんの言う通り、鬼ごっこはお仕舞い」
『ッ、ッッ!』
 ハンドルを切り返したパウルが、ここに時を殺す。
 鉄騎『Glanz』は武骨なフォルムを艶やかに、万紫千紅の空間に蒼き閃光を疾らせた。
(『疾い――ッ!!』)
 ウインドゼファーが息を呑んだ弾指、パウルは触手より『Krake』を構え、銃爪を引く。
「――チェックメイト」
 鐵筒の銃口は零距離で脳天に。
 火花を弾くや仮面を貫いた鉛弾は、そのまま鋼の躯体を花叢に沈めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

愛久山・清綱
誉れ高き兵を相手に、この技を使わねばならんとはな。
誠に不本意だが、やむを得ん。


■闘
あの速さから放たれる技は、俺如きでは避けられまい。
先制攻撃を【野生の勘】でいつ来るか予測しつつ身構え、
【オーラ防御】を纏い【武器受け】。
痛みは【激痛耐性】で和らげる。

攻撃を耐えたら恥も外聞も忘れ【鬼獣】形態に突入。
発動後は常時【怪力】を込めて引っかき・殴打・【グラップル】で
固定しつつの噛みつきといった獣の猛攻を仕掛ける。

UC発動時は他の「速く動く物」が目に入らないよう、
『ウインドゼファー殿を直視』して行う。

其方が「誰よりも速き戦士」なら、
俺は「速き存在だけを喰らう獣」に堕ちるまで。

※UC発動後は咆哮しか発せません



 大首領ドン・フリーダム麾下の幹部の最後の一体にして、掉尾の門番たるスピード怪人『ウインドゼファー』は、純然と風を操って戦い、純粋に猟兵と角逐する好敵手だった。
 奸知術数を弄する相手なら、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は如何なる斬奸も躊躇わなかったろうが、彼女を「誉れ高き兵」と認めた彼は、未だ道半ばと戒めつつ、己が求む「兵」の姿を以て相対せんと構える。
『主への忠誠、最速への渇仰。私を構成する要素は、モンキーやバニーが持つ能力に一籌を輸す事はありません』
 剽疾剛悍、【フルスロットル・ゼファー】――ッ!
 鋼の躯体に颶風を纏ったウインドゼファーは、超スピードを求めて疾く速く、風を刃の如くして驀進する。
 両手には車輪剣。
 高速旋回する刃が凄まじい速度で迫る時の間際、躱すか、往なすか――蓋し清綱は迷わなかった。
「あの速さから放たれる技は、俺如きでは避けられまい」
 獣性に根差した戦闘勘は、進入角度からインパクトの瞬間までを鋭く感知し、鬼神のオーラを巡らせた『大なぎなた』を盾に廻旋刃を受け止める。
『成る程、魁偉と怪力……私にはない力で対抗した様ですが、私の速さは、衝撃は、如何なる者にも引けを取らない!』
「ッ、ッッ……!」
 激痛を耐え凌ぐのは、彼女を兵(つわもの)と認めたから。
 清綱は花叢に血斑を染ませながら初撃を受け切ると、恥も外聞も棄てて獣の殺意を解放し、【鬼獣】(キジュウ)――理性を代償に超攻撃力と超耐久力を備えた鬼獣と変わりゆく。
「其方が『誰よりも速き戦士』なら、俺は『速き存在だけを喰らう獣』に堕ちるまで」
『速きを、喰らう……獣……』
 ウインドゼファーを「貴方」と丁寧に呼び、声を交したのは今が最後。
 年齢より幾許も落ち着いた声と語調で紡いだ言は漸う失し、鏖殺の気を溢流させた獣の咆哮が、殺伐たる猛風を駆けた。
「グォオヲヲ嗚嗚ッッ!!」
『な、んという……気迫……ッ!』
 ――誠に不本意だが、やむを得ん。
 ヒトの意識を手離す間際、清綱は唇を引き結んだ様だが、「速く動く物を無差別攻撃し続ける」今の彼は、超速を求めるウインドゼファーと頗る相性が佳い。
 彼は他の「速く動く物」が目に入らないよう、ウインドゼファーだけを直視しながら、須臾に伸ばした怪腕で鋼の躯を掴み、爪を立てて固めるや力強く噛み付く――凄まじい獣の猛攻に掛かる。
『ズァアア嗚呼ッッ!!』
 苛烈にして凄惨。
 堕ちた獣は非情にて、猛爪が装甲を切り裂くや鋭牙に黒鐵を砕き、万紫千紅の空間に鈍い音を沈めていく。
「ォォォオオォォ嗚嗚――ッッッ!!」
 今際の叫びすら屠るか。
 鬼獣はウインドゼファーが一切の「速さ」を手放すまで、美し花叢に鐵塊を散らした。

『ッッ、ッァ……ッ――』
 勢いを失った車輪が転がり、鋼の躯体が足場に沈む。
 多くの猟兵の血を染ませた白い外套が花の精彩に飲まれ、速さ――いや全ての動きを失った鉄塊が一陣の風に撫でられた。
「――終わった」
 花弁の乱舞を連れる風に髪を梳られた猟兵が嘆声を零す。
 創痍は深く流血は甚だしく、積み重なった疲労は愈々足を重くさせるが、然し止まる訳にはいかない。
 何より爪先はこの先にある強大巨大な邪に逸って――。
 猟兵は体内を巡る血が愈々沸き立つ感覚を抑えつつ、花の道が導く先へと向かうのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月22日


挿絵イラスト