バトルオブフラワーズ⑪〜何もかもを振り切って
バトル・オブ・フラワーズ。
キマイラフューチャーを舞台にした大規模戦争。
オブリビオン・フォーミュラを目指す戦いは、いよいよ終局にさしかかっていた。
「幹部級怪人3体目、スピード怪人のウィンドゼファーが我々を待ち構えておる」
グリモア猟兵――少年めいた賢者、ムルヘルベル・アーキロギアは端的に言った。
ここを乗り越えれば、いよいよオブリビオンフォーミュラへの路が開く。
正しくは、大首領ドン・フリーダムと謎の男ドラゴンテイマーへの、だが。
「この先どちらから叩くにせよ、ウィンドゼファーの撃破なくして突破は不可能である。
……そして彼奴もまた、通常のオブリビオンとは一線を画する能力を持っている」
それが風。Wind-Zephyrという名前にふさわしいシンプルな能力だ。
「はっきり言えば、エイプモンキーやラビットバニーの能力ほどに出鱈目ではない。
裏を返せば、これを踏まえればよいという弱点も存在しないのであるが」
当然、対処法なくして戦うことは即座の戦闘不能を意味する。
絶対先制は、戦力差ゆえの覆し得ぬアドバンテージ。それを越えて初めて五分だ。
「彼奴の"速くなりたい"という欲望と暴風にどう抗うか、それはオヌシらに委ねよう」
けして弱敵ではない。気を抜けば狩られるのはこちらだろう。
「……ところで、彼奴の予兆を目の当たりにした者も居るのであろうが。
どうやら怪人は、やはり旧時代の人類の成れの果て……だったようであるな」
ドン・フリーダムが滅亡をもたらした。"無限大の欲望"による不可逆の変異によって。
これまで猟兵が戦った怪人たちも、おそらくそれぞれの欲望を持っていたのだろう。
「ウィンドゼファー……彼奴の欲望は、先程も言ったが"速さ"に集約されておる。
スピードに関しては黙っていられない、という者も、少なからず居るであろう?」
ちらりと猟兵たちのほうを見やりつつ、賢者はぱたんと本を閉じた。
「最速を追い求めた老人は、"夢を追わない人間は野菜と同じだ"などと言ったらしい。
その疾さでもって、何かを追い求める正しい姿を見せてやれ。オヌシらの健闘を祈る」
唐揚げ
女性だったんですね!? ステーキです。
簡単にですがまとめいってみましょう。
●まとめ
目的:スピード怪人『ウィンドゼファー』の撃破。
ただし、目標は撃破しても即座に別地点に復活する。
以下はウィンドゼファー戦における注意事項。
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
以上です。シンプル・イズ・ベスト、油断なさいませぬよう。
なおこの戦場の戦力は40ですが、仮にマイナスになっても無駄ではなりません。
戦力を越えたシナリオ成功数の半分だけ、⑬『ドン・フリーダム』の戦力が削れます。
奮ってご参加頂ければ幸いです。戦争なので不採用がちょいちょい出るかもですが。
では前置きはこのあたりにして。
皆さん、スピードの世界の彼方でお待ちしています。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●システム・フラワーズ内部
かつての彼女は"人類"だった。だが、今の"己"はオブリビオン。
過去の化身。未来の破壊者。誰よりも疾き風の力を得たスピード怪人。
「ドン・フリーダム。私はあなたを信じています」
仮面の下の素顔は定かならず。そもそも、"素顔"が存在しているのかどうか。
祈るように呟くその声音は、意外にも淑やかな女のものだった。
疾さ。風のような速さ――いいや、風すらも置き去りにするほどの速さ。
オブリビオンとなったいま、ウィンドゼファーの裡には暴風が吹き荒んでいる。
疾く。もっと疾く。誰よりも何よりも、光よりも疾く、ひたすらに疾く!
"無限大の欲望(リビドー)"。人類滅亡の罪業……罪業? 何を莫迦な。
「さあ、来なさい猟兵(てんてき)たちよ。ここは決して通さない」
戦意を心の炉に焚べ、殺戮の車輪に点火(イグニッション)する。
「私は誰よりも疾い。ゆえに、ここは誰にも通させませんッ!」
すべては、すべてを貪り尽くすために。とっくに彼女は壊れていた。
庚・鞠緒
誰よりも速く、か
助かるぜ
「Needled 24/7」使ってもお前しか狙わねェってことだもんなァ!
先制攻撃は【第六感】で【見切り】【激痛耐性】で耐える
とにかく致命傷だけは避けるように動く
追いかけっこで勝てるわけねェんだし狙うなら【カウンター】だな
「虫みてーに飛んでるだけで終わりか?ご立派なタイヤが泣いてるぜ」
とか挑発してこっち殴ってくるように仕向ける
動いたらユーベルコード発動だ
誰が敵かわからなくなっても関係ねェ
速いヤツが敵だ!
攻撃のタイミングを狙って【怪力】と強化された攻撃力でブッた斬る
多少のダメージは覚悟の上でやるぞ、耐久力だって上がってンだ
お返しに鉤爪どころか腕までねじ込ンでやるよ
●RAP1:V.S.庚・鞠緒
システム・フラワーズの内部は広大である。
ゆえに大抵のユーベルコードはシステムに影響を及ぼさない、暴れ放題だ。
……しかしそれでも、鞠緒は"その術式"を使うことは躊躇していた。
だから概要を聞いたとき、彼女は鮫のごとく笑ったという。
転移が終わり、赤い仮面を持つ強敵と相対する。
両者の距離はおよそ五十メートル弱。近接戦闘には遠すぎる距離だ。しかし。
「よォ! アンタさ、誰よりも疾くなりたいんだって?」
『……それが何か? 自分のほうが疾い、とでも?』
怜悧な女の声に隠された怒りと敵愾心に、鞠緒はぎらりと目を輝かせる。
「いいや、ウチはあいにくそこまですばしっこかねェんでな。
けど助かるぜ。"お前が誰より疾ェなら、お前だけ狙うってこと"だもんな」
『……?』
怪訝そうに小首をかしげるウィンドゼファー。鞠緒が重圧を吹き出す。
「249秒だ」
ぎちぎちと肉が、骨が――鞠緒の全身が悲鳴を上げていた。
内側に流れる邪神の血が、彼女に人を越えた恐るべき力を与える。
代わりに奪われるものは人としての理性。コード、"Needled 24/7"。
『なるほど――いいでしょう。私の裡に荒れ狂う暴風を見せてあげます!』
呼応するかのように暴風が吹き荒れた。その中心はウィンドゼファー。
鞠緒が失われていく正気のなかで、風の彼方を見据えようとしたとき……。
彼女は、"すでに己が風の中に取り込まれていること"を認識した。
(――疾ェ)
これほどか。これが"風の能力"というシンプルな力の答えか!
能力発動は視えた。だがそこまで、すでに自分は"取り込まれていた"。
ごうごうと吹き荒れる暴風に呑まれた鞠緒は、あっさりと空中に囚われた。
守りなど固めようがない。そして風の奥から猛然たる殺意の鋼!
『遅いッッ!!』
拳――だろう。おそらくはそのはずだ。衝撃が鳩尾に叩き込まれる。
次いで脚。側頭部を蹴られた。ぐるぐると三回転し地面に叩きつけられる。
転げ回った先に敵がいた。頭部めがけた致死的ストンピング――しかし!
『何』
受け止めていた。鞠緒の、血管が浮かぶ両腕が。怪人の脚を。
「虫みてーに飛んだだけで終わりか? ご立派なタイヤが……泣いてるぜ!!」
言葉尻はもはや咆哮。そこで血の呪いが鞠緒の意識を刈り取った。
ごう、と風が荒れる。ごう、と獣が吠える。風と狂戦士がぶつかり合う。
249秒。このユーベルコードがもたらす、人を超えた状態の維持時間である。
カウンターを狙った打撃は、しかし三度に一度しか叩き込めない。
それほどまでにウィンドゼファーは疾いのだ。一撃一撃に対処するなど不可能。
だが幸運なことに、いまの鞠緒はタフネスに優れていた。
たとえ重火器で全身の重量を二倍にしたとて、いまの鞠緒は止まるまい。
「ごぉおおああぁああアアアッ!!」
『まだ斃れないか……ッ!』
神話的闘争である。邪神の血を沸騰させ荒ぶる、獣じみた女。
かたや暴風を纏いて相対するは、鋼の異形に堕ちた疾風の女。
意地と信念がぶつかりあい、鋼と牙が交錯し、刃と爪が打ち合う。
普段の鞠緒ならば三度は死んでいるレベルの重傷。今の彼女は意に介さない。
蹴り、蹴り、斬撃――ここだ。怪物は本能的に判断し爪を振り下ろした。
『ぐうっ!!』
「腕までねじ込んでやるよ……ッ!!」
血走った瞳がウィンドゼファーを睨めつける。だが彼女も幹部級である。
『ほざけ、獣風情が……!!』
「欲望に従っといてよく云うぜ、人でなしがァ!!」
血の飛沫はもはやどちらのかもわからず、両者が流血している。
溢れたそれらは風に散らされクォークに。血風が両者を包んでいた。
「おぉおラアァア!!」
『おおおおおおッ!』
疾さと耐久力。暴風と暴威。相反する、しかし同ベクトルの欲望!
249秒――鞠緒は最後まで立ち続け、暴風に挑み続けた。
与えた傷は幾筋も。だがその五倍以上のダメージを鞠緒は負う。
食いちぎってやる。引き裂いてバラバラにしてやる。
尽きることなき殺意は、その身が物理的に停止してようやく終わった。
短絡的に見れば敗北。しかしウィンドゼファーも相応の負傷である。
大局的に見れば勝利。――後に続く者たちが、それを叶えるはずだ。
成功
🔵🔵🔴
天道・あや
どんな暴風だろうと竜巻だろうと…あたしの、皆の夢や未来への道を止めることは出来ない!だってあたしが風なんて吹っ飛ばすから!
相手が暴風を纏って攻撃したり猛スピードで移動するならあたしの対抗策は一つ…【カウンター】!
敵の攻撃や動きを【レガリアス】で【ダッシュ】しながら相手を追いかける、【レガリアス】は大気を圧縮して動力に出来る!これなら抜くのは無理でも追い付けるだけのスピードは出る筈!
そして攻撃や動きをを見極めて【見切り】…ここだっ!って瞬間にあたしの想いを【あたしの歌と想い!世界に響け!!】ぶつける!!
あたしに吹く風は一つだけ!未来へとあたしの背中を押す追い風のみ!向かい風はおよび…じゃないっ!
●LAP2:V.S.天道・あや
鞠緒が活動を停止するしたとして、ウィンドゼファーを包む暴風は消えない。
いやむしろ、斃れた獲物を刈り取らんと風が収束し剃刀めいて鋭さを増す!
「そうはさせないよっ!」
『む――!』
そこへ待ったをかけたのが、あやだ。
両足に装備したレガリアスから圧縮空気を噴射し、ウィンドゼファーへ接近!
「あたしの前で、誰かを傷つけさせたりなんてしないっ!」
『小癪な』
ウィンドゼファーは即座に思考を切り替え、狙いをあやに変更する。
収束しかけた風が再び吹き荒れ、あやの全身を叩いた。
だが、あやは怯まない。敵がこちらをめがけてチャージしようとも!
(なんて勢いと疾さなの……やっぱり、速度で勝つなんて夢のまた夢だ)
最初からうぬぼれてはいなかったが、相対して改めて敵の強大さを理解した。
もしも迂闊にスピード勝負など挑んでいたらどうなっていたか。
(けど、だからって臆したりしない。あたしは――!)
動体視力に全神経を注ぎ、迫り来る暴風の目にいる敵を見据える。
その死線の行き先、わずかな動き、戦いに有利な手がかりを視て感じ、
必殺の一撃をカウンターするために。己の命をチップに勝負を挑むのだ!
『自ら身を晒した蛮勇は見事。その代価を支払って死ね!』
極度集中のためか、風の奥からの処刑宣告はいやにはっきりと聞こえる。
死んでたまるものか。進むべき道は彼奴の背後。倒すべき敵はその先に。
いいや、何よりも! あやは決意を新たにした!
現実においては、5秒にも満たないわずかな時間であった。
あやめがけロケットスタートを切ったウィンドゼファーと、
その嵐を取り込み最大速度に達したレガリアス。
二つのベクトルは真っ向からぶつかり合う。当然ながら機先を制したのは敵!
『もらった!』
ギロチンめいた車輪剣が振るわれる! あやは大きく身をかがめた!
髪が一房切られて舞い、かすめた刃と風圧が全身を切り裂く……だが健在!
「……ここだっ!!」
双眸を見開く。どんな暴風だろうと、竜巻であろうと、立ちはだかるものを前にあやが立ち止まることはない。
夢を、未来を目指す足を止めることは。決して不可能なのだ!
風の中で、あやは何かを叫んだ。それは裂帛の気合か、あるいは歌か。
言語化出来ぬそれは風を切り裂いてウィンドゼファーに届く。さらに、足!
『ぐっ!?』
入った。蹴撃とともに叩き込まれた"想い"が、ウィンドゼファーを揺るがす。
交錯が終わる。暴風は……止まない。健在だ。ではあやは!?
「ぐぅう……っ!!」
当然、無事ではない。ごろごろと地面を転がり受け身を取る。
全身には細かな擦過傷と切り傷がおびただしく刻まれすさまじい有り様。
直撃は避けた。それで、ここまでなのだ。正面から渡り合うなど危険すぎる。
「あなたが風を操るなら、あたしにもひとつだけ味方してくれる風がある」
『何?』
全身の痛みをこらえて立ち上がり、あやは決然と言った。
「未来へと私の背中を押す追い風。あなたみたいな向かい風はお呼びじゃないっ!」
少女は倒れるまで想いを叫ぶと覚悟した。人らしく、気高く。
成功
🔵🔵🔴
ユーリ・ヴォルフ
奴の動きに翻弄されるな
攻撃に耐え、ダメージを与える
それだけに集中するのだ
動きを敢えて目で追わず
自身の周囲を『属性攻撃』炎で覆い
『聞き耳』で炎の揺らぎを察知したら
『盾受け』からの『シールドバッシュ』で受け流す
速さへの強固な願望は認めよう
だが我が炎の闘志を貴様如きに打ち破られてなるものか!
キマFという世界が無くなる
チコルの帰る場所が消えてしまう
最悪家族が殺され…天涯孤独となるやもしれない
私と同じ辛さを味あわせてなるものか!
その速さは逃げ回るための力なのか?臆病者め!
『おびき寄せ』で挑発し【絶影】で応戦
攻撃察知後『怪力』で真っ向から剣を振るい
逃げ場を無くすべく火球を『一斉発射』
断られようと圧し通る!
●LAP3:V.S.ユーリ・ヴォルフ
ウィンドゼファーはずっと苛立っていた。何故か?
彼女はすでに二度、獲物を見逃さざるを得なくなったからだ。
はじめはあの小娘のせいで。そして今は、この忌々しい騎士のせいで!
『私の邪魔をするな、猟兵』
「それはこちらの台詞だ。厭ならばどいてもらおう」
ごうごう、ぱちぱちと燃え爆ぜる火の粉の音の奥から、凛とした声。
いまのユーリは全身が炎で覆われた、さながら人型の薪めいた有り様である。 しかし竜の炎を操る守護者を、彼自身の炎が害することはない。
これは言わば、鎧であり嵐の先触れを識るための風見鶏でもあるのだ。
炎は風を食らって燃える。
ゆえに嵐が吹き荒べば、ユーリの生み出した炎がまずそれに反応する。
視覚に頼らず、炎を頼りに敵の動きを読み、反応する。これがユーリの策。
実際、それは正解だったと言えよう。ユーリの片眉がぴくりと揺れる。
ウィンドゼファーによる、強烈な飛び蹴り! 風の盾がこれを受け止めた!
「ぐっ!!」
ざりざりざり! 花々を散らしながら大きく後退するユーリ!
『邪魔だ……!!』
敵の追撃。だが炎はこれを報せてくれる。ユーリは痺れた四肢に喝を入れ、
視覚では追うことの出来ない強烈な連撃を防ぎ、かろうじて受け流す。
がいんっ!! という衝撃音が大気をたわませ、再び両者は飛び離れる。
「……あなたの、疾さへの強烈な願望は認めよう。だが!
我が炎の闘志をあなたに……いや、貴様ごときに打ち破られてなるものか!」
これは意地である。守護者としての信念の問題だ。
「キマイラフューチャーという世界がなくなれば、チコルの帰る場所が消える。
貴様らは欲望を貪るためならば、無辜の人々を容赦なく犠牲にするだろう」
そうすれば、ユーリにとって大事な人の家族も死ぬ。少女は天涯孤独となる。
それは、それだけは我慢ならない。無論、その他大勢の世界の人々もだ。
「私以外の誰かに、私と同じ辛さを味わわせるわけにはいかん!」
『そんな挟持で、私たちの道を阻めると思うな……!!』
欲望と信念。相対するふたつが吹き荒れ、燃え上がる。
意志の力と欲望に担保された力のぶつかり合いは、歴然たる差を示した。
疾さではあちらが上。しかして、防御力においてはユーリが上だ。
盾防御に注力した判断もあって、ユーリはすでに十度の交錯を耐えている。
『おのれ!』
「どうした。その疾さと欲望とやら、ちょこまかと動き回るための力なのか?」
ウィンドゼファーは苛立った。あきらかな挑発! だが見過ごせぬ。
「臆病者め。私の頸を刈り取ってみせるがいい!」
『ほざけぇっ!!』
来る。ユーリはここであえて、盾を下ろし魔剣レーヴァティンを構えた。
彼方が影しか捉えられぬ速度で来るならば、此方はその影を断ち、絶つ。
ゆえにその名を絶影。闘気が陽炎をどよもし――激突!
「がはっ!!」
『ぬう……!』
両者は互いに呻き、吹き飛んだ。ユーリの剣は敵の脇腹を裂いていた。
だが逃げ場を奪わんと放った火球は、暴風に飲まれて消えていく。
(そうそう追い詰めることは叶わないか、ならば!)
『消えろ、猟兵め!』
「こちらの台詞だと言った。たとえ断られようと、押し通る!」
仰向けに斃れかけた体を意地で支え、ユーリは地を蹴った。
倒れるならば前のめりに。守ることはただ踏みとどまるだけではないのだ!
成功
🔵🔵🔴
アルトリウス・セレスタイト
さて。帝国の時よりは芸を増やしたがどこまで通じるものか
試金石だな
交戦状態になれば自動起動する真理と、消失での攻撃吸収・自動反撃
自身が何もせず機能するこれらにも先制が発生するか確認しつつ交戦
ひとまず先制されると仮定して向かう
先制は第六感なども無視せず目標や周囲の変化から情報収集して動きを見切り回避
躱せずとも致命は避ける為に動く
消失が機能すれば儲けもの
最初を凌いだら真理の盾を纏っているはず
以後守りは任せて攻撃に
魔力を溜め体内に破天の魔弾を生成・装填
爆ぜる魔弾を周囲に無差別に解放しての面制圧飽和攻撃
高速詠唱と2回攻撃で間隔を限りなく無にし、全力魔法と鎧無視攻撃で損害を最大化
爆撃機の如く撃ち続ける
●LAP4:V.S.アルトリウス・セレスタイト
"真理"。
敵性存在との交戦時、アルトリウス自身を覆い守る、矛にして鎧たる盾。
"消失"。
攻撃を被弾した時、それを無効化・吸収し敵対者へと還す原理干渉。
あらゆる法則を超越したユーベルコードに相応しい、ふたつの守りと強化。
かつての銀河帝国攻略戦では未だ編み出せなかった術式が、今の彼にはある。
では、それで敵の攻撃を凌げるか? 凌駕できるだろうか。
否である。誰よりもアルトリウス自身がそう仮定し、思考している。
ならばアルトリウスはなぜ、恐れることなく敵へ挑んだのだろうか。
実証するため、だ。すべては"原理"によって編まれた事象を観測するために。
たとえ強敵が相手であろうと、己の命を代償に仮定を実践する。
そこに躊躇などない。アルトリウスは、そんな無謀をさらりとこなすのだ。
なぜならば、彼はヒトのカタチをした駆動する残骸に過ぎないのだから。
死の原理を孕み、敵対者の存在根源を直接的に粉砕する魔弾、"破天"。
天を破るというその名に相応しく、蒼き輝きは瀑布めいて敵に降り注いだ。
(間隔は皆無。回避点も存在しない。が――"この程度では通じないか"
魔力が爆ぜて花々を虚無めいて飲み込むさまを見ながら、アルトリウスは黙考。
然り。降り注ぐそれらは、嘲笑うかのような耳障りな竜巻が飲み込み、
粉砕し、その竜巻はアルトリウス自身をも切り刻もうとなおうねり暴れる。
『死ぬことが怖くないのですか? あなたは!』
「答える義理はない」
敵の囀りをひそやかだがよく通る声ではっきりと一蹴し、回避行動を取る。
致命傷は避けた。だが盾を纏い無効化の術式によって己を帳めいて覆おうと、
あくまで術者のアルトリウスは人間。神ならぬ、物理に縛られた定命存在。
否応なく守りを突き抜けた暴風が肌を切り裂き、肉を抉る。
(被弾の無効化率は36%――想定よりは上々か)
機能しているだけでも儲け物だ。アルトリウスは端的に結論づけた。
己の身は試金石に過ぎず、原理の有用性を以て探究することこそ我が使命。
敵の欲望とやらも、未来も過去も、その前には等しく無価値だ。
……いや。
(価値を見出す必要など、俺には感じられない)
そう思っていた。
……そう思っていた、はずだ。だが。
絶え間ない爆撃と己の身を切り裂く暴風、竜巻、刃の中にあって、
アルトリウスはまるで他人事のように思索を続けていた。
気がつけばずいぶんと、俗人めいたことに触れて慣れている己の姿。
そんな己をヒトとして扱い、交友する人々。原理の前には無価値な事象。
価値はない。そもそも価値を見出すことなどしなかったのだから。
……本当にそうか? その疑問が、彼の術式を揺らがせたか、否か。
いずれにしても、防御はやがて敵の猛威に破られ、彼は地に堕ちた。
「……ここまでか」
『欲望すらもなき者よ。それでは私たちを阻むことは出来ない』
彼方から死神が来る。だがアルトリウスは運命に殉じるつもりはない。
「お前の理屈や、お前らの思想、使命に興味はない。俺は、いや――」
僅かな逡巡はなぜか。
「――オレは、死ぬつもりは、ない」
残留する魔力を収束させ魔力として放つ。影が風を纏って意識の外へ消えた。
倒れるまでにあとどれほど続けられる。一分? はたまた数秒か?
(死ぬつもりは、ない)
仮定でも結論でもない。それはアルトリウス自身の意思である。
死なない。生き延びてみせるという、生物の根源的な欲求。意識。
それは、がらんどうであるはずの男には、ずいぶんと不似合いな我欲だった。
苦戦
🔵🔴🔴
鎧坂・灯理
●SPD
人間にとって、欲望と意志は切り離せない物だ。
かくいう私も我欲の塊だからな。
だからこそ、欲のぶつかり合いで負けはしない。
私が私でいられない世をもたらす、貴様らオブリビオンを、私は断じて認めん!
私の欲、私の意志。
止めてみせるがいい、止められるものならばッ!(UC発動)
相棒にまたがり空中へ。宇宙空間でなくとも短時間ならば問題ない。
相手の攻撃に合わせて可変式銃器をランチャーに変え、敵と私の間の地を爆破し、風の勢いを殺しつつ相手の視界を奪う。
気合いとUCで強化された念動力で風を切り開き、敵を足止めして突貫する。
覚悟など最初から決めている。
行くぞ、相棒。
鎧坂灯理を舐めるなよ、怪人。
押し通る!
●LAP5:V.S.鎧坂・灯理
ふと。両手に車輪剣を持ったまま、ウィンドゼファーは歩みを止めた。
声をかけられたわけでも、殺意を放射されたわけでもない。
たしかにそいつは気配を隠すことなく、無造作に、堂々と歩いていた。
しかしウィンドゼファーを立ち止まらせたのは、それが理由ではない。
「人間にとって、欲望と意志は切り離せないものだ」
美しい花々を顧みることなく踏みつけながら、鋭い眼の麗人が練り歩く。
「かくいう私も、我欲の塊だからな」
『……どうやら、そのようですね』
然り。ウィンドゼファーが感じたのは、灯理の強烈なエゴと我欲であった。
欲望を貪りそのために変質した怪人をして、驚嘆させるほどの自我。
灯理は足を止める。両者の間で闘志がぶつかり合い、空間を捻じ曲げた。
そう錯視するほどの威圧感。灯理の眼が剃刀じみて鈍く輝く。
「世界をも喰らい尽くすほどの欲望、実に結構。だが存在は認められん。
私が私でいられない世界など、以ての外。ゆえに私は貴様らを滅ぼすのだ」
猟兵とオブリビオン。相容れぬ天敵。未来と過去。
もはや言葉はなく、対峙する両者の間にびゅう、と風が吹いた。
なぜ動かないのか――すでに、射程距離だからである。
それを知っていて灯理は近づいた。時として強烈なエゴと欲望は、
さながら見えない帳のように相手を圧倒し、その動きを強制的に抑え込む。
ウィンドゼファーが気圧されたわけではない。だが灯理の流儀には応じた。
「私の欲、私の意志。止めてみせるがいい」
『言われずとも』
「……止められるものならば、なッ!!」
均衡が破られた。まず灯理が、相棒たる愛機の改造単車を召喚する。
即座に飛び乗り、銃器をランチャー形態へ。狙いは敵ではなく両者の狭間。
吹きすさぶ暴風の勢いを、爆風によって相殺する狙いだ。
(待て)
しかして照準を合わせた瞬間、ふと灯理は訝しんだ。何かがおかしい。
想定どおりに動いている。それが彼女のユーベルコードなのだから。
だとしても、スムーズすぎる。敵の先制攻撃はどうしたというのか?
ウィンドゼファーは不動。先んじられたから? 否。断じて、否。
『バラバラに砕けて、消えるがいい』
いまこの瞬間に動いたとしても、先んじることが出来るからだ!
瞬間、花の足場が、地面が砕けて舞った。まるで天変地異のように。
事実それは天変地異である。風が、天も地も別け隔てなく砕き吹き飛ばした。
「嘗めるな……!!」
スローモーションじみて、暴風がドーム状に膨れ上がるのが見える。
灯理は止まらない。正しくは止まれない。これは脳が錯視した過去の映像だ。
走馬灯の原理は、死の間際に起きた脳内麻薬の極度集中にあるという。
同じだ。これは灯理が一瞬の間に知覚した風景があとから再生されている。
仮にそうであったとしても、灯理は止まらない。止まるつもりなどない。
"意志の怪物(インセイン)"。狂気に等しい意思が今の彼女を突き動かす。
……主観視点が、現実に追いついた。暴風の中で爆風が生まれて、燃えた。
その時には灯理は、愛機のアクセルをフルスロットルにして突っ込んでいた。
正気の沙汰ではない。だがそれが逆に功を奏したか。
レヴォリューション・ストーム。その発動は術者の不動を前提とする。
膨れ上がった暴風の中心部。そこに敵がいるなら見えなくとも構わないのだ!
しかして無謀には、代償がついて回るものだ。
音が事象に追いつき、風がはたと消えたとき、両者の結果は歴然としていた。
ウィンドゼファー、健在。灯理……愛機とともに、地に伏している。
パッチワークめいて切り刻まれた地面に、麗人は土を浴びて斃れていた。
『……狂人め』
銃撃によって爆ぜた装甲の破損部を見下ろし、ウィンドゼファーは吐き捨てた。
応じるかのように、斃れたはずの灯理がよろけて立ち上がる。
『まだ立つというのか』
「当然だ」
満身創痍。しかして双眸に揺らぐ意志はむしろ強まっている。
「鎧坂・灯理を舐めるなよ、怪人。私はけして諦めない」
『愚かな』
「なんとでも言え。私は、決して、絶対に、断じて! 諦めはしない!!」
何が彼女をそうさせる。意地か。矜持か。あるいは。
「押し通る。貴様を倒してなァ!」
『ならば死になさい、その屍を私は乗り越えようッ!』
無謀には代償がつきものだ。しかし全ての物事はよかれ悪しかれ結果を生む。
灯理の行動は、後に続く猟兵にとっての大きな一歩となった。
成功
🔵🔵🔴
皐月・灯
速さへの欲望、な。
……オレは取り立てて速いってわけじゃねー。
できねーことも多い。
……けどな。
【見切り】だ。
避けられるほど甘い相手じゃねーだろうが……
目的は回避じゃねー、急所を外して致命傷を避けることだ。
……そうさ、オレは目がいいんだよ。
仕留め損ねたとなりゃ、止めを刺しに来るだろ。
オレは、その刹那に賭ける。
【全力魔法】を拳に込めて、待つ。
一撃。ただ一撃を。
ギリギリまで引き付け、
【カウンター】の《猛ル一角》をブチ込む!
……てめーらが目的を達したら、関係ねー連中はどうなる。
怪人に変えられちまうんじゃねーのかよ。
オレにはこの世界は合わねーけどな……。
……てめーの欲望(はやさ)は、オレが止める!
壥・灰色
壊鍵による高速機動は、空を蹴るなり地面を蹴るなりして己を『射出』せねば成せない
敵のような、風を操り曲線的な軌道で高速移動する敵とは、瞬間速度で拮抗できても小回りで劣るだろう
ならばどうするか
地を蹴り、空を蹴り、対抗するフリだけをする
事実、敵の攻撃に翻弄されるだろう
襲いかかる敵の攻撃をひたすらにガード、ガード、ガード
その撃力を全て、第七二番魔術数理を用いて魔力に変換する
ラビットバニーの時には全て逸失した魔力だが
今度は、何処でも良い
四本のうち、無事なものに籠める
不意を打てればそれで良い
やられっ放しだと思うなよ
敵の攻撃を一度で良い、見切り
不意打ちめいて、ロスレスで変換した『衝撃』を敵に叩き込む
●LAP6:V.S.皐月・灯&壥・灰色
かたや魔剣。かたや多重人格者。
かたや無表情。かたや無愛想。
ふたりは似ているようで決定的に違い、かと思えば似通っていた。
戦闘法。原理。思考。行動――いわばスタイルの問題だ。
彼らはけして示し合わせたわけでも狙ってそうしたわけでもないが、
気付けば自然と、肩を並べてともに抗っていた。
その姿は、とても即座の連携とは思えないほどに、息の合ったものだった。
『消えろッ!!』
暴風が吹き荒れた。その音は、まるで嘲笑うかのように耳障りである。
ギャリギャリと唸り回転するタイヤの音は、グラインダーめいて甲高い!
「チッ!」
灯は舌打ちし、ごろごろと地面を転がり竜巻に飲まれることを回避する。
しかし完全回避は叶わない。片腕の肉が抉れて思い出したように血が迸った。
当然ウィンドゼファーもこの機を逃さぬ。跳躍し断頭斬撃を振り下ろす!
「させない」
KRAAASH!! ほぼ直角ベクトルで跳んだ灰色の拳が車輪剣に激突!
ガリガリガリガリ! 鋸じみた刃が肉を抉る。灰色は無表情で一歩踏み込む!
『邪魔をするなッ!』
ウィンドゼファーが、もう片方の車輪剣で灰色の頸を絶ちにかかる。
そこに灯のインタラプト。ネックスプリングからの飛び蹴りだ。
斜め上方、敵脇腹めがけた対空ドロップキック! 入ったか、だが浅い!
ざざざ! と地を削り、敵が5メートル吹き飛ぶ。灰色と灯はアイコンタクト。
互いに言葉をかわす間もなく戦いは続く。ウィンドゼファーが跳んだ。
そこで上空に渦巻く竜巻が蛇めいてうねり、旋回し、降り注いできた!
「灰色!」
灯が叫んだ。灰色にとってはそれで十分。両者は左右に素早く跳躍。
直後、二人がいた場所に竜巻が着弾! ZZZZMMMM……! 地面が砕ける!
(目くらましか)
灰色は瞬時に状況判断し、あえて動かずピーカブースタイルめいた防御姿勢。
これが功を奏した。噴煙の中から車輪剣がせり出て横薙ぎに振るわれる!
「あっちばっか狙いやがって……!」
灯にはそれが見えている。彼は"眼がいい"のだ。土煙など問題にならない。
灰色の狙いはわかっている。致命傷を避ける難行に煩わされないのは僥倖、
だがそういう問題ではない。彼は眼の前で知っている人間が切り刻まれて、
はいそうですかとあぐらをかけるような手合いではないのだ!
「なろぉッ!」
地を蹴って拳を構える。全体重をかけた鋭いジャンプパンチ!
『迂闊だな――』
ウィンドゼファーが振り向く。然り、敵はこのために灰色を集中攻撃した。
右手剣で灰色を抑え込みながら、半身を返しざま左手剣を逆袈裟に切り上げる。
灯の脇腹が裂かれた。空中で姿勢を崩す……致命的な隙だ!
瞬間、ウィンドゼファーは己の右頬を鋼ごと砕かれるさまを幻視した。
否応なく視線が灰色に吸い込まれる。死人じみた無表情、だが瞳には殺気。
(私を誘うとは、命知らずな)
灰色が迸らせた戦意が、今のような錯視をウィンドゼファーにもたらした。
コンマ数秒あれば現実がそれに従うだろう。怪人はそれをよしとしない。
『削れて引きちぎれるがいい……!!』
ヴィイイイン……ギャルギャルギャルギャルッ!!
「……!」
車輪剣が高速回転し、肉がそげて骨に到達する。響く激痛はどれほどのものか。
常人なら一秒に二度は気絶しているであろう地獄の中、少年はやはり無表情。
ダッキングで乱暴に車輪剣の拘束から逃れ、血を這うほどに身を屈め懐へ。
両足のバネで上体を持ち上げながらのボディブロー……届かない。敵が消失。
「後ろ、だッ!」
血を吐きながら灯が喝破した。灰色は反射的にクロスガード姿勢へ。
怪人がそこにいた。なんたる曲芸的、かつ高速機動によるミスディレクション!
ギャルギャルギャルッ!! 再び無慈悲な刃が魔剣を削り貪る!
「させるかッ!」
灯が灰色の脇を矢のように駆け妨害にかかる。トーキックが迎え撃った。
「が……ッ」
肋骨がイッたか。勢いそのままに灯は地面を転がりうつ伏せに倒れた。
『貴様もだ』
灰色は何かを言おうとした。車輪剣の唸りがそれを飲み込み圧倒する。
強制的に地面に叩き伏せられ、サッカーボールめいて蹴り飛ばされた。
圧倒的。灰色と灯は何一つ有効打を打てないまま翻弄されている。
一方のウィンドゼファー。あちこちに傷を負っているが、いまだ健在。
『そのタフネスと反射神経は称賛しましょう。悲鳴一つあげない根気も見事』
ギャルルルル……獲物が未だ死なないことに双凶刃が不満げに唸る。
『ですが私には敵わない。このソード・オヴ・ダイヤモードには』
ぐるるる。かすかな竜巻が生まれ、猟兵をあざ笑い再び散った。
「……サツキ、いける?」
「誰に、聞いてんだよ……」
灰色は灯の負傷程度を見て取る。肋骨の負傷もだが脇腹の裂傷が重いか。
そんな少年の視線に、灯は不快げに眉根を顰めた。
「ヒトのケガ見てる場合じゃねーだろ」
「おれはこれでいい」
灰色の有り様は凄絶である。無事な部分を数えたほうが早いだろう。
そもそも灰色の己を"射出"するスタイルと、風を操る敵の相性は最悪。
防戦に回らざるを得ず、そして彼は鉄壁の守護など持ち合わせていない。
結果として、全身を抉られ灰髪すらもまだらめいて赤く染まっていた。
だが、それでいいと云う。その点を灯が皮肉ることもない。
……事実だからだ。彼にはそれがわかる。"眼がいい"のもあるが、しかし。
『一つ聞いておきましょう。なぜそこまで食い下がるのです?』
出し抜けに敵が問うた。
「疾さへの欲望なんてもんオレにはねーし、取り立てて速いわけでもねー」
灯が、敵を睨みつけながら答える。
「できねーことも多い。けどてめーらが目的を達したら、この世界はどうなる」
敵は無言。答えるまでもない。
「アホやって平和に暮らしてる、関係ねー連中はどうなる。
……てめーらみたいに、怪人に変えられちまうんじゃねーのかよ」
然り。それがオブリビオンフォーミュラというものなのだ。
「壊鍵(おれ)の戦い方は相性が悪い。非効率的だ」
灰色は両手を握り、開きながら言った。右腕は腱が絶たれているか。
両足はどうか――確認し、頷く。再び敵を見据え、魔力が噴き出した。
「けど、特にやめる理由がない。ならおれは敵(おまえたち)を砕き、滅ぼす」
それが魔剣の―ー灰色と名乗る男の仕事。役目。シンプルな理屈である。
痛みはある。防戦に徹することへの屈辱もあるだろう。だが表情は変わらない。
ただ、双眸だけが金色に変わり、揺らぐことなく敵を睨んでいた。
ここを、押し通る。それが目的であり、敵の撃破は過程に過ぎないのだ。
『……なるほど。どうやら猪に理屈を問うのは無駄骨でしたね』
問答は無用か。ウィンドゼファーの車輪剣が再び不吉に唸りをあげる。
灰色と灯は視線を合わせることすらしない。互いの目的はわかっているのだ。
「……オレにはこの世界はあわねーよ」
ふと、灯が呟いた。それは迫る死を前にした最期の土産か。
「それでも、てめーの欲望(はやさ)は、オレが止める」
「おれのこと、忘れてない?」
傍らに立つ少年の言葉に、きょとんと灯の目が見開かれた。
「"おれたち"、でいい」
「…………ふん」
言葉はそれだけ。灯の全身から魔力が噴き出し、フードがはだけた。
ぴしりと地面がひび割れる。それを合図にウィンドゼファーが疾駆する!
もはや目障りだ。この猟兵どもを同時に、どちらも轢き潰し殺す。
これまでの打ち合いで彼奴らの程度は知れた。全速力の踏み込みと斬撃に、
ふたりは抗いようがない。防ぎようもない。竜巻はその無力さを嘲笑う。
『――死ね!!』
ゆえにウィンドゼファーは刃を振り上げた。竜巻が獲物の逃げ道を奪う。
だがその時、意外にも怪人は鈍化した主観時間のなかにいた。
(なんだこれは)
己の、敵の動きがスローに見える。奪命の刃がぎゃりぎゃりと耳障りだ。
竜巻が嘲笑う。忌々しげに、愉快げに――誰を? 誰を嘲笑っている?
(なんだ、これは)
ウィンドゼファーは訝しんだ。己の剣は速い。敵を引き裂く、はずだ。
だが。灯と灰色は、まるで示し合わせたかのように拳を握り構えていた。
それはチャンバーに装填された弾丸のように、粛々と、だが殺意を込めて。
(なぜ私がこんなものを見る?)
竜巻が嘲笑う。ふたりの裡で膨れ上がる魔力は、嗤笑よりもなお甲高い。
ウィンドゼファーは知るまい。灯と灰色は一度とて術式を見せなかったのだ。
ふたりは決定的に異なるが、しかし多くの部分で似通っていた。
戦闘法。五体に刻み込まれた魔力回路の励起による、身体能力の強化。
以ての撃力。原理も動作も銘も異なれど、その"魔術"は"体術"に通ず。
すなわち。自らの体をサーキットとして駆動させた、魔力の発奮である。
(なんだ、これは)
ウィンドゼファーは訝しんだ。刃が。刃が狂おしいまでに遅い。
対手はどうだ。――疾い。ねじれたゴムが解き放たれるかのように。
この一瞬のため。この一撃のために二人は、全ての力を貯めていた。
威力が解き放たれる。かたや幻釈顕理、アザレア・プロトコルの一。
撃力が解き放たれる。かたや魔術数理、第七十二番(アルイーズ)。
原理も動作も術理も異なる、しかしてもたらされる結果は同じ。
――術式、全力展開。《猛ル一角(ユニコーン・ドライブ)》、発現。
――壊鍵(ギガース)起動。浸透到達率、九十九.九九九九九九九九%。
もたらされる結果は同じく。すなわち。
「やられっ放しだと思うなよ」
「この一撃をブチ込んでやる」
すなわち――避けようのない、破滅である。
KRAAAAAAAAAAAAAAAASHッ!!
魔力が穿たれた。パイルバンカーめいて炸裂した衝撃が、威力が爆ぜた!
ウィンドゼファーの背中を突き抜け、全身を砕いた魔力が波めいて迸る!
青い輝きが空間を眩く照らし、風を飲み込み……そして、消えていく。
『なんだ、これは!!』
「てめーの負けだ」
「おれ達の、勝ちだ」
少年たちは言った。怪人は何かを吠えた。おそらくそれは断末魔だった。
――そして、静寂がやってきた。勝利の静寂が!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●
ゴールテープを切ったのは猟兵たち。だがデッドレースはまだ続く。
敵は即座にサーキットに舞い戻る。そして風を従えて立ちはだかる。
ならば打ち砕く。それが彼らの共通目的である。
メイスン・ドットハック
【SPD】
何とも派手でシンプルな能力じゃのー
じゃけー、僕とも相性は悪いけどやるしかないようじゃのー
ユーベルコード「星の海を制覇せし船」で大型宇宙戦艦を召喚
転移で船内に移動して、足場をバラバラにする暴風からとりあえず逃げる
そして動きを制限する暴風に対しては、できるならワープドライブエンジンで別方向に逃げるか、それができないほどなら装甲で耐えきる
嵐を食らっている間は電脳魔術でリペアしながら何とか耐え凌ぐ
先制攻撃をしのいだら、搭載兵器による一斉掃射を行う
ビーム機銃、レーザー砲、広範囲破壊ミサイルで回避しきれないほどの弾幕でダメージを狙う(一斉射撃、誘導弾)
いざとなれば戦艦で突撃をかまして自爆、離脱
●LAP7:V.S.メイスン・ドットハック
ユーベルコードは奇跡そのもの。あらゆる法則を超える神めいた力だ。
だからといって、いくらなんでもこれは馬鹿げていた。怪人すら言葉を喪うほどに。
『船、だと……!?』
然り。システム・フラワーズの巨大な空間を占有しかねないほどの、
大型宇宙戦艦『暁』が召喚されていた。電脳魔術で築かれた宙駆ける要塞だ。
『ええい、その程度で私の風は遮れないッ!』
花々の足場に蜘蛛の巣じみた亀裂が無数の走る。ドーム状に膨れ上がる暴風。
そう、此方が用いるのがユーベルコードなら、彼方もまた同様。
メイスンとてそれは重々承知のつもりでいた……が、それでも仰天した。
「ぬおー、暁の装甲が保たんじゃとー!」
そもそも、銀河帝国攻略戦で、猟兵たちは宇宙艦隊を粉砕してきたのだ。
であれば、ここにいる強敵が魔術製の戦艦を砕けぬ道理はないのである!
メイスンは装甲で耐えきり、その間に一斉掃射を行うつもりだった。
読みが甘かったと言うべきか、それはメイスンにとってあまりに残酷だろう。
リペアが追いつかない速度の破壊、単独による戦艦破壊など予測不可能だ!
「ええい、でたらめな戦闘能力しおってからにー!」
ビーム機銃、レーザー砲、広範囲破壊ミサイルによる弾幕を発射!
その半分以上が暴風に飲まれて無力化される。メイスンは歯噛みしない。
そんなヒマがないのだ。彼女は即座に操舵レバーを前へと押し込む!
『自爆する気か……!?』
「これだけの大質量なら、早かろうが避けきれんじゃろー!」
無茶苦茶である。敵の破壊もそうだが、メイスンの理論も滅茶苦茶だ。
彼女は電脳の速度でブリッジを離脱、緊急脱出カプセルにイン。スイッチON!
「オブリビオンと心中なんて御免じゃけー!」
パシュウウウ……脱出するメイスンを敵は見送らざるを……否。
「んおっ!?」
暴風はなおも膨れ上がる……戦艦を飲み込み、さらに! カプセルすら!
これが幹部級オブリビオン――直後、KRAAASH! KRA-TOOOOOOM!!
戦艦が地面に激突し、盛大に爆発してきのこ雲を生み出した。
衝撃が花々を散らす。がしゃん!! とカプセルが落下した。
「げほっ、けほ……うー、計算外にもほどがあるのー」
敵はどうだ。仕留められたか――否、生体反応はいまだ健在。
だが無傷ではあるまい。いまのメイスンがそうであるように。
「ボクの役目はここまでじゃけー、さっさと離脱じゃのー」
メイスンは即座に戦線を撤退した。あとには、ただ破滅だけが残る。
成功
🔵🔵🔴
秋山・軍犬
転移前にアイテムの軍犬フルコースを全て食べ
現時点での最大強化版フルコースゴールデン発動
転移後の先制攻撃は
黄金のオーラによるオーラ防御と激痛耐性+気合で受ける
あんたは確かに強い…が自分も
白騎士・エイプモンキー・ラビットバニーとの
戦いを潜り抜けた来た…必ず攻撃に耐え反撃の糸口を
掴んで見せるっす!
攻撃に耐えたら音速、自身に出せる最大速度で
弾丸の如く体当たり(自身の体を拳に見立てた圧力拳)
自分も音速で行動可能だが
速度の領域で相手に勝てるとは思わんっす…
故にこの一撃(捨て身の一撃+野生の勘+スナイパー)
に全てを賭ける!
この一撃だけ、誰よりも速くなりたいという欲望を
自分のフードファイターの矜持で上回る!
●LAP8:V.S.秋山・軍犬
もうもうと爆炎立ち込めるシステム・フラワーズに、新たな転移者。
もぐもぐと最後の一口を咀嚼した軍犬は、焼け野原となった彼方を見やる。
「一体何が起きたっつーんすか……」
よもや、宇宙戦艦が召喚されて自爆特攻しましたなどとは思うまい。
……ましてや、炎の中から、揺らめく敵影が現れたとあっては!
ウィンドゼファーは、猟兵のことを嘗めていたと自戒した。
敵もまたユーベルコードの使い手なのだ。天地を揺るがし法則を書き換える。
であれば、油断や慢心など以ての外だと己を省みたのである。
『私は負けない。絶対にここは通さない』
花々を薪に燃え上がる炎を背景に、幽鬼じみてぶつぶつと繰り返す。
見据える先にはキマイラがひとり。黄金のオーラの圧は彼女に比肩するか。
いいだろう。来るというのなら迎え撃つまで。意思に呼応して暴風が吹き荒れた。
炎を、灰燼を吹き飛ばし、荒れ狂う暴威となったウィンドゼファーが走る!
(伊達じゃねえっすね)
一方の軍犬は、オーラを前方に集中させながら内心で舌を巻いた。
銀河帝国攻略戦での、白騎士ディアブロとの戦い。
この世界――バトルオブフラワーズでの、エイプモンキーやラビットバニー。
強敵との戦いが彼を鍛え上げた。傷が、痛みが、勝利がここに辿り着かせた。
無傷ではない。だが無為でもない。得たものを礎に抗うまでだ!
「うおおおおおおっ!!」
吠えた。暴風と、金色のオーラがぶつかり合い、嵐に変わる!
風が肌を裂く。ぬうっ、とオーラを穿いた車輪剣が目の前にせり出た。
軍犬はあえて一歩踏み込む。激痛は己の気合で耐える覚悟だ。
これが吉と出た。車輪剣のリーチをかいくぐって懐に入り込めた!
『小癪なッ!』
激甚たる膝蹴りがその身を迎撃する。しかし耐える……耐えた! 耐えたのだ!
「反撃の緒、掴んでみせるっすよ!」
軍犬はわずかに身を屈め、オーラを自らの裡に収束させた。
車輪剣が引き戻され、ギロチンじみた処刑刃が背後から迫りくる。
だから、前に出る。己の拳を見立て、圧力を敵へと叩き込む。
(この一撃に、全てを賭ける!!)
『な――』
KRAAAAAASH!!
ウィンドゼファーは強敵。軍犬ひとりでは比肩は不可能だ。
彼奴の欲望は暴風をもたらすほどに底なしであるのだから。
しかし。軍犬の矜持は、その意志の力は。
「……たっぷり喰うっすよ、自分からの奢りっす!!」
「がは……!?」
一時、そのインパクトの瞬間。
たしかに、怪人の欲望を――上回った!
成功
🔵🔵🔴
夏目・晴夜
参りましたね、風なんて防ぎ切れません
なのでニッキーくん、今日は私の為に死んで下さい
暴風は人形の巨体と【第六感】で防御を
この身を完全に守ろうとは思っていません
地を蹴り敵へ喰らいつく為の足を一本、これだけは集中して守ります
人形遣いとして手や指も守りたい所ですが、まあ今回は特別にくれてやりますよ
腕が千切れてなければ身動ぎで操れますし、妖刀は咥えれば良し
そして生きてさえいればいずれ治りますからね
「喰う幸福」の高速移動で一気に距離を詰めて斬りつけ、
斬撃時の衝撃波でその傷を重篤化
ニッキーくんがまだ動けて、私の腕が千切れてないなら
死角から【力溜め】【怪力】で殴らせます
どれほど壊れても必ず直しますのでご安心を
●LAP9:V.S.夏目・晴夜
かくして、フードファイターの捨て身の一撃をウィンドゼファーは真っ向から食らった。
当人も無事ではない一撃、ならば受けた側の怪人も無事でないのは道理である。
『ぐっ!!』
地面を弾丸めいて弾み転がるうち、その身を包んでいた暴風は消えて失せた。
がりがりと車輪剣で地面に噛みつき、勢いを減速、よろけながらも立ち上がる。
「いまですニッキーくん、出番ですよ!」
鋭い声に、ウィンドゼファーは反射的に顔を上げる。人形遣い!
狐めいて細められた目は獰猛――しかしてその身は人狼。戦意に飢える。
はたして晴夜より三歩前、巨体を屈め突進してくるのはからくり人形だ。
あれでチャージを仕掛けると。ふざけた話だ、切り裂いてやる。
ウィンドゼファーは刃での迎撃でなく、暴風による圧殺を選んだ。
革命の嵐。主も従も関係なく飲み込み、地もろとも砕く暴風である。
「そうです、それでいい」
晴夜は笑った。糸で繋がれた人形はぐぐっと跳躍姿勢に足をたわめる。
暴風を穿いて人形を突っ込ませるというのか? 正気ではない。
……そう、正気ではない。ウィンドゼファーは続く言葉を疑った。
普通、人形遣いは半身たる人形を相棒めいて愛でる。
共に立つ仲間として、荒々しくも常に慮って運用するものだ。
だが。晴夜は。笑みに口元を歪めたまま、当然のように言ったのだ。
「――暴風なんて防げませんから、今日は私のために死んでください」
ごうん、と人形が軋んだ。それは了解の意を示しているらしかった。
わけても狂気的といえたのは、誰であろう晴夜自身もまたその後を追ったこと。
当然のようにふたり――正しくは一人と一体――は暴風に飲まれ、裂かれた。
ニッキーくんがその身を盾とする。筋肉が抉れて引きちぎれる。
晴夜は意に介さない。ただ敵を見据え、屈辱と憤懣と決意に目を開く。
両手がずたずたに裂ける。今回は特別だ、くれてやろうではないか。
がっきと口に咥えるのは鍔。然り、抜身の妖刀である。
(生きてさえいればそれでいいんですよ)
ゆえに飛び込む。死地へ。矛盾した論理、だが確かな判断でもあった。
晴夜は己を至高と嘯く。ゆえにこんな捨て身はめったに仕掛けるわけではない。
ましてや己の輝ける寿命、未来を妖刀にくれてやるなど業腹もいいところ。
だが彼は躊躇なくそうした。怨念がそれに応えて晴夜の身を覆った。
悪食。これなる妖刀の名、全ては幸福を喰らうその性ゆえに。
ウィンドゼファーに一撃をくれてやるつもりはない。"逆"だ。
喰うのは、己だ。生命を、精髄を、傷を穿って喰らうのは、晴夜である!
(残さず食べてさしあげます――!)
距離を詰める。狗めいた姿勢で飛びかかり、妖刀の一撃を見舞う。
入った。剣戟から呪詛が染み出し、傷口を膿ませて体内に蔓延っていく!
『が……!?』
(ニッキーくんは――残念、動けませんか)
己の腕よりも先に、人形を見やり晴夜は判断した。
彼は意に介さない。なぜか? 相棒たる人形に愛着などないと?
"逆"だ。
(ごめんなさいねニッキーくん。まあ、壊れたら必ず直しますよ)
道具だからこそ、その決意のもとに捨て身を敢行させたのだ。
怨念を浴び、紫の瞳が剣呑に輝く。――まだ食い足りない。まだまだ食おう。
残さず、最期まで、この敵(ごちそう)の身体を食ってやる!
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「欲望ってのは抑えとかないとねぇ。…簡単に自分が壊れちゃうよ?」
気をつけないと僕もあんな風になるのかな。
敵さんの暴風は、血を与えて動けるようになったマントさんに身体を包んでもらってから、悪魔の見えざる手で【武器受け】。
吹っ飛んだ時は足場代わりに悪魔の見えざる手を踏んづけて、下に落ちないようにしよう。
攻撃はUCで召喚した腐蝕竜さんを暴れさせる。
僕は彼の攻撃で隙が出来ればLadyで狙撃。僕の攻撃で隙が出来たら腐蝕竜さんの出番って事で。
体長40m近い腐蝕竜さんを盾やら足場やらにしながら攻撃していこう。
「欲望を抑え続けるのも案外良いもんだよ?」
解放する時めっちゃ楽しいしね。オレが保証する。
●LAP10:V.S.須藤・莉亜
爆風が吹き荒れ、炎が燃えて、金色のオーラと怨念が渦巻いた。
それらも全て消えた。猟兵による波状攻撃に僅かな間が生まれたのだ。
『はあ、はぁっ、はぁ……っ!!』
おびただしい傷と膿んだそれらを抑えながら、ウィンドゼファーはよろける。
なるほど猟兵は強敵。見くびっていたわけではない、だが想定以上か。
構わない。仮に滅びたとしても骸の海から即座に立ち返るまで。
足止めは続ける。けして大首領の元へと生かせはしない。
欲望のために。欲望を貪る欲望のために。決して。断じて、絶対に。
「"そういう"の、ちゃんと抑えとかないとねぇ。ろくなことにならないよ?」
ざしゃり。よろめくウィンドゼファーの前に、男が立ちはだかった。
気怠げな瞳。紫煙を纏う、厭世家めいた雰囲気をまとう痩せた男である。
「欲望自体は悪いもんじゃないけどさあ……簡単に自分が壊れちゃうし」
『何を、賢しらな……』
傷を受けながらも構えるウィンドゼファーと、底なしの欲望を感じ、莉亜は思う。
いまの言葉は、敵に向けたものであり己自身にかけたものでもある。
まるでウィンドゼファーの姿は、己の未来の鏡像めいていたからだ。
だが思索は破られる。暴風が地を砕き、ほとばしり、莉亜へ襲いかかったからだ。
避けるか? そんなことは、莉亜は最初から想定していない。
不可視の悪魔の手と血を啜った外套を盾に、身を屈めて暴風に耐える。
踏みとどまった足場すらも砕けて宙に舞う――舌打ち、悪魔の手を踏む。
――GRRRRRWWWWWWWLLLL!!
暴風のなかで耐える莉亜と、ウィンドゼファーの肌を咆哮が震わせた。
然り、咆哮である。莉亜の背後にそびえるは40メートル近い腐触の龍。
『ドラゴンを召喚しただと!』
「いててて……ま、そーゆーわけなんで。全部食べちゃって?」
――GRRWLLL!!
暴威が爪を振るった。砕けた地がこそげ抉られる!
敵が回避のため飛び退く。好機! 莉亜は対物ライフルを構え、トリガを引く!
BLLLAAAAWWWMMM! 強烈な衝撃はダンピールの膂力でねじ伏せる!
龍の暴威と白き対物ライフルによる狙撃、もはや暴風は吹かせぬ!
「こういうとアレだけど、その気持ちちょっとわかるんだよねえ!」
BLAM!!
「けどさあ、欲望を押さえるのも悪くないよ? 開放するときめっちゃ楽しいしね!」
『戯言をッ!』
車輪剣が襲いかかる。龍が片腕を犠牲にこれを防いだ。BLAM!!
「そうでもないよ、オレが保証する」
『ほざけッ!』
ギャルギャル……ギャリリリ! 鱗を抉り迫る車輪剣! 対物ライフルで防御!
「だったら比べてみる? オレとそっち、お互いの欲望を」
半血は鮫のように笑った。底なしの欲望を讃えた昏い瞳で敵を睨めつけて。
成功
🔵🔵🔴
クロエ・ウィンタース
【イ・ラプセル】
速さの極致か。面白い
俺の剣が何処まで戦えるか、いざ
>行動
【SPD】アレンジ歓迎
リアの護衛でバイクの後部座席
相手の先制攻撃は足場を無くされることにち、と不満の舌打ち
【見切り】で安全な方向を指す
「リア!あっちだ!」
その後は暫く接近したら斬り、
敵の攻撃は【見切り】【カウンター】で叩き落し
(少し思案顔。ふむ、と頷き)
「リア、少し揺れる。そして(ふ、と笑い)…あとは任せた」
タンデム席からUC【黒】を使用
脚に妖気を溜め、解放。踏み込みから突撃
視線等最短の【フェイント】と【2回攻撃】
突撃の結果がどうでも妖気を再チャージ。
足場の破片、イルダーナの車体、アンカーを足場に
再度踏み込み突撃を繰り返す
リア・ファル
【イ・ラプセル】
共闘アドリブ歓迎
速さか…、そう言われたら黙ってる訳にも行かないよね、
イルダーナ!
周辺を「ハッキング」「情報収集」「視力」でスキャン、
「早業」高速解析!
足場の状況、次の位置、風向き、敵機動その全てを掌握
ジャンプ移動「操縦」しつつ、アンカーも使って
「地形の利用」「ロープワーク」で
アクロバティックに攪乱接敵
「クロエさん!」
大気圏でのスピードなら確かにキミが上かも知れない
イルダーナの機動性能、見せてあげるよ
崩れる足場ならボクを止められると思ったかい?
UC【幻影舞踏】使用
「オッケー任された!(サムズアップ)」
最後はクロエさんに合せて剣銃鎖符連続攻撃
今を生きる人々の為に、止まってもらうよ
●LAP11:V.S.クロエ・ウィンタース&リア・ファル
システム・フラワーズの天井すれすれを、滑るように翔ぶ機影あり。
制宙高速戦闘機『イルダーナ』、それに乗るのはふたりの少女である。
眼下にはすさまじい破壊の痕跡が見える。なお堅牢なこの場所は一体なんだ?
猟兵やこの世界の住民に"コンコンコン"とも呼ばれるシステム・フラワーズ。
なぜここまで堅牢なのか。なんのために人類はこのシステムを築いたのか。
無為な思索である。なぜならいま、旧人類は異形の敵として立ちはだかる。
眼下――退いた猟兵の追撃を諦め、ふたりを睨めつける鋼の女のように!
「突っ込むよ!」
「望むところだ」
操縦者であるリアの言葉にクロエは脊髄反射的に頷いた。イルダーナが加速。
上空から流星めいた速度で、ほぼ垂直に地面を目指す。レミングスめいた自殺行為?
否。高所を得たところで大したアドバンテージにはならないとわかっている。
そもそもクロエの得手は白兵戦闘。下手に距離を取って敵に不意を打たれれば、
元も子もない。状況俯瞰のための上昇でしかないのだ。
ゆえにリアとクロエは、ウィンドゼファーめがけて落ち行くことを恐れない。
がたんっ!! バイクめいた躯体が地面に落着し、ふたりの身体を揺らす。
ウィンドゼファーは何処に? ……いない? いつのまに!
「これがご自慢の疾さってわけ? 黙ってるわけにはいかないけどね!」
リアは即座にイルダーナを通じ、周辺空間を高速でハック&スキャン。
敵影は八時後方。イルダーナが高速でバックターンを決めチャージする!
『まとめて吹き飛べ……!!』
「ち……」
暴風がドーム状に膨れる前兆に、クロエは不満げに舌打ちした。
地を蹴り敵を切り裂くイメージを破棄し、次に取るべき手を高速思考する。
「リア、あっちだ!」
「了解、クロエさん!」
バシュウ! イルダーナの機体からアンカーが射出された。
風によって砕かれ巻き上がった足場めがけ、錨じみた鋭角が迸る。
ZANK! 着弾、暴風に呑まれるのを恐れず即座にウィンチが巻き上げを開始!
疾走速度がそのままに斜め上方ベクトルへ向きを変え、二人を誘う。
神がかり的な高速解析も相まって、暴風の負傷はほぼ最小限になった形だ。
とはいえ、敵陣に突っ込んで無事でいられるわけもない。
「ぐう……!」
「……リア、こらえろ!」
ゴウウウ……かまいたちじみた暴風が、イルダーナとふたりを傷つけ揺らす。
ゆえのアンカーだ。ここでハンドル制御をしていたら横転していただろう。
ピンボールめいて足場に着地、さらにジャックナイフでそこから飛ぶ。
ギャルルルルルッ!! 次の足場に着地したときには処刑刃が背後にあった!
一瞬でも判断をミスっていれば、車輪剣がイルダーナを両断していたか!
「疾い……!」
「俺の剣がどこまで戦えるか、楽しみになってきた」
リアは慄き、クロエは鮫めいて笑う。まさに刃狼めいて。
『捉えたぞ!』
ウィンドゼファーが来る。足場破片を蹴り今度こそイルダーナへ!
リアは判断を迫られる。離脱すべきか。反転して近づくべきか?
だがそこで、思索を破ったのはクロエのほうであった。
「リア」
「え?」
「少し揺れる。――後は任せた」
浮かべた笑みは凄絶ならぬ、年よりややあどけなく優しげな微笑。
見れば、腰に佩いた妖刀"黒"が、かたかたと高揚するように揺れている。
「行くぞ、"黒"」
かたん! 爆発的な妖気が吹き出す! クロエがイルダーナを蹴った!
そして下方からきたウィンドゼファーと激突! 剣閃はフェイントも含めふたつ!
『ぬうっ!』
敵は双刃でこれを受けた。処刑刃がギャリギャリと妖刀を喰らおうとする。
クロエは鍔迫り合いを拒み、脚に貯めた妖気をロケットめいて噴射し反転。
即座にイルダーナのタンデム席に戻り、敵を睨めつけながら妖気を装填する。
「うわわっと!」
「まだ揺れるぞ」
「オッケー、任された!」
こうなればもはや言葉は不要。クロエは再びイルダーナを蹴って……いや!
『させないッ!』
敵が疾い。リアめがけて剣が振り下ろされ――がきん!
「それはこちらの台詞だ」
クロエが受けた。リアは彼女の意思を汲みイルダーナのハンドルを切る!
「大気圏内のスピードならキミのほうが上かもしれないけどねっ!」
『なっ!?』
時空間制御による、物理法則から解き放たれたかの如き急制動。
さながら夜闇を舞う魔法使いめいた"幻影舞踏"。イルダーナが縦横無尽に機動し、ウィンドゼファーの体幹を崩す。
クロエは当然のようにこれに対応し、ウィンドゼファーをぐいと押し出した!
「疾さの極致、たしかに見せてもらった」
翔んだ先は眼下に貼られたアンカーワイヤー。さながら綱渡りだ。
ぐん、とたわむワイヤーを踏みしめ、空中の無防備な敵をねめあげる。
「だが、ここまでだ。――行くぞ、"黒"」
「いまを生きる人々のために!」
頭上からはリアが銃を構える。逃れる先はない。
「止まって! もらうよ!」
トリガ――BLAM! 真下からはクロエの鋭い斬撃!
『こんな、莫迦な……!!』
絶叫は断末魔に変わった。その身を弾丸が穿ち、妖刀が切り裂いた。
残骸が暴風に呑まれ、微塵に切り裂かれて滅んでいく。
「……哀れなものだな」
「え?」
「疾さを極めたがゆえ、消え去るとは」
「……そうだね。もともとはああじゃなかったろうに」
無限の欲望がもたらした果て。
亡びた過去の残骸を前に、ふたりはしばし押し黙った。
それは、鎮魂の祈りにも似ていたという。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●
地獄の追いかけっこは終わらない。風は尽きぬゆえに。
国包・梅花
確かに速うこと風の如し…風をも越えしとは
されば最早2本の脚では追いつけぬでしょう
…腹は決まりました、後は剣が決めること
先制攻撃に対して
いくら速くともあらゆる「早業」にも事の起こりがありましょう
それを私の知る限りの「先制攻撃」についての「戦闘知識」を以て
「見切り」、回避か負傷を最低限にしようと試みます
そしてその後はあらゆる攻撃に後の先を取るこの奥義「輪瞳」にて対抗いたします
もはや目で追うこともやめ「殺気」を頼りに後の先…「カウンター」を仕掛けまする
勝負とは速さのみにあらず
刀として生きはや100年、この身に修めた技に全てを賭けまする…
マックス・アーキボルト
…やっぱり怪人の人たちは人間だったんだね。その願いもかつてのやり直し―。負けられない理由が、また一つできた。
【全力魔法】で【加速魔法式:防性】を行動全体に渡って発動。まずは【見切り】で、避けることに専念しよう!
…長時間の発動は自分の体に焦熱を伴う。けれど【激痛・火炎耐性】で耐える!無傷で勝てる相手じゃないんだ、これくらい!
【ジャンプ、ダッシュ】で崩れた花と花を駆け抜けて、【クイックドロウ、空中戦、雷属性攻撃】で応戦しよう!
貴女の真っ直ぐな欲望はとても眩しく見える―。
けど、フラワーズは『今』のこの世界に必要な物なんだ。
何も残らない欲望に、世界を任せるわけにはいかない!
ここが、貴女の止まる場所だ!
ヴロス・ヴァルカー
私では、彼女のスピードに追い付くことは出来ないでしょうね。
…だから小細工させてもらいます。
触手から蒸気を噴射し、壊れた足場を飛び回りながら【空中戦】へ。
私への攻撃は【歌唱】により生み出した盾で【かばう】ことで軽減します。
頭部を集中的に守り、多少の被害は受けましょう。
触手が減れば軽くなります。
上手く凌げたら【叛逆者の火刑薪】を。
同じ用にかばいつつ、今度は相手を囲うように体液と触手をばらまき、毒が周辺に充満するまで気づかれぬよう【時間稼ぎ】します。
私の身体だけでなく、ちぎれた触手や体液からも噴き出す蒸気。
いくら吹き飛ばしてもまた新たに満ちるだけです。
…彼女はここから逃げませんよ、門番なのですから。
銀座・みよし
誰より速くと願う心を否定するつもりは、わたくしにはありません
が、それに隼のホルスさんが待ったをかけておりまして…あの、真っ向勝負を希望です!
ホルスさん曰く「風は味方につけ、荒れ狂う風こそ乗りこなせ。【空中戦】とはそうしたもの」だそうです
わたくしがやるべきは風によって生まれる【地形の利用】を行い、彼の補佐としてルートの提案を
【視力】にて障害物が少ないルートを【情報収集】して精査し、
【世界知識】が齎してくれるこの世界の風がどんな性質かを彼に伝えましょう
それさえ分かればこの暴風であろうと、ホルスさんはそれに負けず自由に飛べます
相手へ攻撃可能な時は視界を同期し攻撃力をあげて相手に吶喊にございます!
数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】
よう、邪魔するよ。
なーんかさ、アンタにゃ同類(おなかま)の臭いを感じるんだわ。
アンタがどう思ってるかは分かんないけど、ね。
で、アンタの事さ。次に言う事も解ってるだろ。
「四の五の抜かさず、ぶっ飛ばす」!
偶然かどうなのか分かんねーけど、
カブには『空中戦』機能が付いてやがったしな!
そのまま『騎乗』『操縦』で暴風に乗り、距離を取る。
風が緩やかな場所まで退いて【人機一体】を発動させたら、
真正面からスピード勝負だオラ!
疾風を往なし、時には乗って、とにかく加速する。
風を超え、光を超え、時を超え……られはしないだろうが、
刹那の間に那由他を駆けろ!
その一瞬こそ、【黄昏砕く脚】が届く時だ!
●LAP12:V.S.芋煮艇の面々
風よあれ、と怪人は願った。すると破滅と暴風がそこに生まれた。
地は砕けて巻き上がり、天も何もかもを逆転させたかのように刃が切り裂く。
然り、刃である。疾風はそれ自体が肌を切り裂き肉を裂く恐るべき暴威だ。
《なんという暴風……これが、欲望の力だというのですか!》
異形の躯体――すなわち、ヴロス・ヴァルカーは戦いた。
いまなお敬虔な機神の信奉者たる彼にとって、この暴威はまさに天変地異。
蒸気吹き出す触手を延ばし、砕け飛び散った足場を必死に渡る。
次へ、さらに次へ――だが疾風が、命綱めいた触手を、おお、切り裂いた!
「ヴロスさん、危ない!」
「マックス様、僭越ながらわたくしめがお手伝いいたします!」
ミレナリィドールの少年、マックス・アーキボルトは声の主を振り返った。
そして頷いた。視線を受け同じように首肯するのはシャーマンズゴースト。
給仕服に身を包んだ銀座・みよしは、暴風の行き先をマックスに教え導く。
どう進めば、より被害を受けることなくヴロスを救いに行けるか。
みよしにはそれがわかる。マックスには手を届かせるだけの能力がある。
ならば彼女と彼はそうする。そして鋼の躯体を、人形の手がしっかり掴んだ。
「そちらもご無事なようですね、なによりです」
「気ィ抜くんじゃないよ、奴さんが――そらきた!」
言いながら、愛機を駆るスターライダー、数宮・多喜がハンドルを切る。
後部座席にタンデム――否、またがるのではなく席の上に立ち、
風の中で凛と敵を見据えるのはヤドリガミの国包・梅花である。
多喜の警告の通り、風の向こうからさらなる暴威が現れた。竜巻じみた死が。
梅花がこれを迎え撃つ。己の本体たる妖刀"国包景光"を抜きうちした!
ガキンッ! 車輪剣と魔剣が撃ち合い、互いに反発する!
梅花には敵の接近は見えていなかった。勘に頼った居合での迎撃である。
ともあれ機先を潰したのは事実。しかして風はなおも吹き荒れる!
当然、この状況をもたらしたのはウィンドゼファーである。
レヴォリューション・ストームによる大破壊。これが誰よりも速く起きた。
五人は否応なく空中に吹き飛ばされ、切り裂かれ、散り散りになった。
そしてかろうじて五体満足で凌いだ。誰も彼もが負傷を帯びていたが無事だ。
「よう、ずいぶんとお冠じゃねーか! 同類(おなかま)さん!」
多喜が挑発めいた言葉をあびせる。ウィンドゼファーが睨め返した。
『徒党を組もうが私には無益な行いです。全員引き裂き風で飲み込むまで』
「かつては人間だったでしょうに、そうまでしてすべてをやり直したいと!?」
マックスの言葉は、問いかけというよりも批難じみていた。
彼には理解できぬ。世界を飲み込んでまで破滅をやり直そうとする考えが。
オブリビオンと猟兵は天敵同士、当然ではある。ゆえにこそやるせないのだ。
決して負けられない。風の中、人形の躯体に焦熱がじりじりと灯る。
『そうとも。今度こそ、私たちは無限の欲望を貪り尽くしてみせる』
瞑想的な言葉に、みよしの肩に留まる猛禽が一声鳴く。
それを切り裂く車輪剣の唸り、梅花やヴロスが敵の攻撃を防ぎ、いなす。
「誰よりも速くと願うあなたを、わたくしは否定いたしません。ですが……」
申し訳なさそうに、桃色の体を持つシャーマンズゴーストが目を伏せた。
彼女の意思に因らず、神話の大隼はその意思と欲望を試さんとしているのだ。
すなわち真っ向勝負。どれだけ危険であろうがここは退けない!
数多うごめく触手を犠牲に、車輪剣の猛然たる切り込みを防ぐヴロス。
頭部へのダメージは絶対に避けねばならない。しかし仲間を傷つけられるのは、同じぐらいに我慢ならないことだ。ゆえに、その身を盾に立ちはだかる。
《それほどの覚悟と妄執で得た力、私ごときでは決して追いつけないでしょう》
「右に同じく――疾うこと風の如し。されど私の腹は決まりました」
がぎんっ!! 神業的な居合を振るい、決然たる面持ちで梅花が言い放つ。
妖刀が鈍く輝き、その波紋に百年を閲した女の幻体を映し出す。双眸は鋭く。
『ちょこざいな……ならば全員まとめてバラバラに引き裂いてくれるッ!』
苛立つウィンドゼファーの怒声は、決して大言壮語や捨て身のものではない。
彼奴にはそれが出来る。五人を相手取ってなお圧倒するほどの戦闘能力がある。
ならば退くか? 否である。それを提案する者すらこの中にはいない。
越えねばならぬ壁だ。
倒さねばならぬ敵だ。
ならば倒す。ならば越える。どれほど傷を追おうと、命を駆けてでも!
では全員が全員、この鋼に堕ちた女を憎んでいるのかと言えば、否である。
たとえばマックス。彼はやるせなさとともに、密かな憧憬を感じていた。
底なしの欲望の、おぞましくもなんと眩きことか。人形たる己に比べて。
音楽を愛し心の情動をこそ尊重する少年にとって、それは届かぬ綺羅星のよう。
(しかし、だからといって、その欲望を認めることは絶対に出来ない)
ゆえにマックスは、眦を決して風の中敵を見据える。
再び吹き荒れる暴威のなか、無限の魔力を与える炉心に蹴りを入れ、
断続的な加速魔法式発動によって、体感的に周囲時間を鈍化させ空中を走る。
じりじりと胸の奥で熱が高まり、その身を焦がす。苦しいがやめはしない。
それはまるで、けして届かぬ想いに恋焦がす年頃の少年めいていた。
一方で、理解を示す者もいる。"同類"という語彙を用いた多喜がそうだ。
無論、ウィンドゼファーのほうがどう考えているかは知らない。
どうでもいい。敵と和合しようなどと、腑抜けたことを考えるわけではない。
ただ、確信がある――相対した時に、そして今も感じる"臭い"は正しいと。
(なら、アンタもさ。アタシらに必要なもんが何か、わかってるだろ)
――四の五の言わずにぶっ飛ばす。どちらが上かを決めてやる。
くだらない、児戯じみた、しかし疾さに魂を売った者には不可避の死合。
子供の喧嘩のような意地の張り合い。それを臨んでいるのがはっきりわかる。
多喜自身もそれを願う。だから戦う。愛機を走らせ風に乗る。
過去と未来。方向性は違えど、互いに抱いた欲望(ゆめ)は同じなのだ。
神話めいた大隼は、声なき声でみよしに呼びかける。
"風を味方につけ、荒れ狂う風をこそ乗りこなせ。空中戦とはそうしたもの"。
みよしは、あいにく仲間たちほど身軽ではない。そもそもメイドゆえに。
では萎縮するのか、と言えば否。敵に無慈悲に相対するかといえば、これも否。
憐憫と同情、しかし決して譲らぬ決意と戦意を込めて、風を詠む。
風はどこへ行く。その有り様が自由かつ奔放とて始まりと終わりがある。
この世界、花々の咲き誇る大地に吹く風の性質、有り様、向かうべき行き先。
太陽の眼を持ちし大隼はこれを受け入れ、そのように羽ばたく。導き手を運ぶ。
仲間もまた同様。かくして彼女は、空中を自由に飛び敵を誘う。
ではヴロスはどうか。彼は疾さに血道をあげることも、欲望を是とすることもない。
禁欲的な修行僧であるヴロスにとって、欲望は大敵である。
なぜならかつて、彼が奉じていた偽りの神こそが欲望の化身なのだから。
(いたずらに救いを求めてはならない。ただ厳かに、在らねばならない。
しかし私はあなたのその力、疾さに敬意を表します。ゆえにこそ――)
ゆえにこそ、搦め手を用いる。正面では挑めぬがゆえに毒を使う。
蒸気が吹き出し、また一本新たに触手が断たれる。風が鋼を裂いて罅割る。
どろどろと煮えたぎるマグマめいた黒い体液が、さながら血のように溢れ出す。
熱血は風の中でもけして冷めることなく、悪しき蒸気を吹き出す。
少しずつ、少しずつ暴威を冒し、暴風を死の旋風に変えて敵を責め苛む。
彼は逃げない。見出すべき神があり、背負いし罪から逃れはしない。
だからわかる。欲望に殉じる女もまた、けして役目から逃れはしないと。
ならば毒で呑み込む。殉教者がこぼす黒血は、涙めいて罅を伝う。
そして梅花。彼女は一切の雑念、妄執、そういったものを棄てていた。
剣客剣豪が到達を夢見てやまぬ明鏡止水の境地、百年の月日は余りある礎。
ゆえに彼女はただ、刃を振るい、迫る敵の攻撃を防ぐ、傷を最小限に押さえる。
一瞬だ。呪われた我が身(けん)を以て敵を斬るには、ただ一瞬あればいい。
いかに疾かろうが、激しかろうが、欲望に身を焦がしていようが、
敵ならば殺意がある。行動には起こりがあり、どこかに隙がある。
ならば、取れる。後の先、どんな達人ですら埋められぬ間隙に刃をねじ込める。
そして、殺《ト》れる。輪瞳(リンドウ)は確定された結末を見据える。
敵の猛攻と欲望の先、あるべき勝敗を、決着をただ見つめる。
(刀として生き、今日ここへ至った我が身の修めた業。全て見せましょうぞ)
無念無双。風が吹きすさべば吹きすさぶほど、その心は澄んでいく。
なぜか。――己の命を担保にして預けるに値する、仲間たちがいるからだ。
『ぬうっ!?』
ウィンドゼファーが揺らいだ。呻きと共に攻め手がわずかに緩む。
《いまさら気づきましたか。残念ですが、もはやあなたは"詰み"です』
ぎらりと、深い虚(うろ)のごとき闇の奥で、ヴロスの単眼が赤く瞬いた。
叛逆者の火刑薪(トレイターズ・パイア)。熱血を以て毒を送る呪いの術式。
己の命を糧に燃え上がる沸血。躊躇はない、道を切り開ければそれでいい。
身を裂かれようと穿たれようと結構。あとは仲間が決めてくれる。
「ホルスさん、いまです! どうかその太陽と月の瞳をわたくしに!」
みよしの声に、大隼が高く鳴いた。双眸が術者とリンクした。
いまやみよしの視界はホルスのものであり、その意思も同様。
そして猛禽は羽ばたき、滑空する。速度は毒を切り裂き、爪が獲物を抉る。
くちばしが鋼を砕く。入った。V字を描く軌跡はまさに狩猟者の如く。
「此処(フラワーズ)は、"今"のこの世界に必要なものなんだ」
生まれた間隙、瞬撃の虚空を人形が見据えていた。声は不思議とよく通る。
「なにもない欲望に、世界を任せるにはいかない――だから!」
ここが、あなたの止まる場所だと、マックスは叫んだ。
叫びは雷鳴となり、迸る雷撃は穿たれた傷を貫き鋼を内側から灼いた。
焦熱にこらえきれず、全身が圧縮空気を吹き出す。主観時間の極度鈍化……!
ウィンドゼファーは混乱した。死に物狂いで刃を振るおうとした。
がっき、と。完全に寸法された歯車同士が噛み合うかのように、刃が止めた。
妖刀"国包景光"。半壊した鋼を、金色の輪瞳が水鏡めいて映し出す。
「勝負とは、疾さのみにあらず――」
一瞬。この一瞬を制したものが生を得る。それこそが正。
いかなる攻撃があろうと、梅花は迎え撃っただろう。咲き誇るその名のように。
決着のときが来たのだ。それを教えるのは、言葉ではなく妖しの一太刀。
そして見よ。彼方を見よ。風に乗り、加速して彼方に翔んだ女の姿を見よ。
あれこそが汝の死である。風を越え、光を越え、時すらも越える意思である。
古きを砕き未来を掴む女。名を多喜という。その身は人機一体なり。
「エンジン、サイキック、全開――刹那の間に、那由多を駆けるぜ」
同類は唸るように笑った。鋼は苦悶し、けれど最期を受け入れた。
(私の黄昏が、終わるのか)
(そうさ。――眠りな、今一時だけは)
視線が言葉に代わる。そして黄昏を砕く一撃が――流星めいて輝く!
「てぇいやぁあああああああっ!!」
KRAAAAAAAASH!! 斬撃によって生まれた傷を、多喜の蹴りが貫通!
鋼の五体を四散させ、彼方へ飛んでいき、風をも吹き消す!
あとには何も遺らない。残るのは五人の勝利者たちのみなのだから。
戦いは終わった。少なくとも此度の戦いは。傷を遺して、けれど終わった。
猟兵は止まらない。何度だろうと、どこまででも、届かせてみせるのだ。
その手を。その意思を。絆を結んで、共に駆け抜けて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
何度でも、何度でも。
花の咲き誇る観客なき走路を、風は駆け抜ける。
ロシュ・トトロッカ
とにかくまずは一撃、どうにかやり過ごさなきゃなんだよね?
ちょっぴり賭けにはなるけど、思い切って暴風に突っ込むよ!
攻撃するなら間合いからは逃げられない
できるだけ素早く、ダッシュでこっちからも向かっていけば
より早く暴風を抜けてダメージも抑えられるかも…!
野生の勘で暴風の強弱がもし分かるなら
より弱い方を目指してジャンプ、またはスライディングっ!
上手く切り抜けれたらスカイステッパーで限界まで高く飛ぶ
速さには速さを
ぼくにできる一番は、きっとこれだから!
限界の高さから体重を乗せて加速、全速の一撃を狙うよ!
足先をガチキマイラで変化させて牙を少しでも深く喰らいつかせる
一撃でいい、ぼくの力でも届く、なら…っ!
●LAP13:V.S.ロシュ・トトロッカ
敵は最速。暴風を従え意思のままに操る強敵。
では威力は? 当然、上。
ならば判断力。おそらく上。
知識。
危機感知。
第六感。
感知能。
跳躍力。
白兵戦――。
上。上。上。
何もかも上、無策の真正面からでは勝ち目のない敵。
(なら、賭けに出るしかないよね)
圧倒的不利のなか、ロシュがひとつの恐れもなかったかと言えば嘘になる。
命を賭けた戦いなのだ。故郷がどうにかなろうという鉄火場なのだ。
怪人といえばいまいち憎みきれない連中ばかりだが、今回は話が違う。
では臆するか。怯えて、格上の猟兵たちに任せて己は下がるか?
(それは、厭だ)
そうとも、イヤだ。ロシュはそんな情けない、後ろ向きな判断はしない。
だからいまここにいる。だからかつて、あの宇宙で彼は名乗りを上げた。
無邪気な獣の願いは、結果として昏い宙(そら)を自在に翔ぶ力を猟兵に与えた。
あのときもそう。であれば今回もそう。挑み、勝つ。
己が勝てなくとも、その道筋を切り開く。そのためならば。
(怖くない。ぼくは――決して、怖くなんか、ない)
ゆえに少年は、己を克服するかのように足を踏み出した。
しかして、相対してみればはじめてわかるものもある。
それはたとえば、彼方と此方の戦力差。埋めがたい実力差というもの。
『……子供ではないですか』
ウィンドゼファーの殺意が、わずかに。ほんの僅かに翳ったのがわかる。
天青石の色をした瞳が見開かれ、強いて眦を決して相手を睨みつけた。
「だからって甘く見ないでよね。ぼくは戦いに来たんだ!」
『……そうですか』
ならば、殺す。言外の殺意がロシュを打ち、そう伝えた。
足が震える。ロシュはこれを噛み殺し、ティンホイッスルをぐっと握りしめる。
旋律など奏でたところで無駄、暴風は全てを吹き飛ばすだろう。ならば。
『――何』
ウィンドゼファーは瞠目した。ロシュは……あの子供は。
あろうことか、自らに向かって地を蹴り、まっすぐに進むのだ!
レガリアスシューズが、大気を吸い込み噴射する。決然たる瞳!
愚かな。心の裡でのつぶやきは、蝶の羽ばたきめいて暴風を呼ばわった。
地が砕け、浮き上がる。ドーム状に膨れ上がる真空波の渦。
触れるだけで肌が、肉が削がれてミンチめいて轢き潰す必殺の攻撃。
ロシュは。飛び込む……暴風を奪い、飲み込み、噴き出し、なおも地を蹴って!
(どうせやり過ごさなきゃいけないなら、ぼくは逃げない。逃げたくない!)
だから走る。疾さには速さを。己に出来るすべてを賭ける。
ヒレがぴくりと跳ねた。皮膚感覚による直感を信じロシュは翔ぶ。
これが彼の命を救った。見えない風の"合間"にするりと入り込んだのだ。
「ぼくにできる一番は、きっとこれだから!!」
翔ぶ。足場から足場を飛び、風に乗り、頭上を――取った!
「は、ぁああああああっ!!」
片足を変貌させ、体重と重力を込めた最大速による飛び蹴りを叩き込む!
一撃でもいい。牙を届かせる。絶対に! そこへ暴風が生まれ――!
……ZZZZZZZZMMMMMM!! CRAAASH!!
「がうっ!!」
どすんっ!! と、ロシュが背中をしたたかに打った。
がらがらと、浮かび上がった足場が堕ちて彼の姿を土の煙の中に覆い隠す。
ウィンドゼファーは、どうか。……胸部中央、抉らえた牙の跡。
『見事な、ものですね……っ』
崩折れかかる体に鞭をくれ、己を強いて立つ。あの子供、やる。
一撃は通った。甚大なダメージを彼にも与えたが、たしかに、通った。
無限大の欲望を求める女は思う。なぜ己の暴風を、二重の守りを牙は越えたのかと。
わかろうはずもない。なぜならばオブリビオンは過去の化身。
未来ある少年が、己の命をチップに賭けた、その決意と覚悟のほどなど……!
成功
🔵🔵🔴
久遠寺・遥翔
疾さを極めた風の怪人か
面白れぇ
真っ向勝負と行こうじゃねえか
疾さでは相手に分がある
必ず相手の攻撃は先に届く
それだけわかってるなら十分だ
こちらもユーベルコードで対抗
天の焔を纏い得た空を翔ける能力と【空中戦】で飛行という相手のアドバンテージを潰し
【第六感】【見切り】である程度攻撃を予測して【盾受け】で防御
受けきれないものも【オーラ防御】【激痛耐性】で耐えつつ【力溜め】
一気に反撃に転じるぜ
風は焔を煽り昂らせる
お前の風で力を増した焔の【属性攻撃】を【カウンター】で叩き込む
ユーベルコードで光と闇の焔を纏い突撃、熱光剣で断ち切るぜ
●LAP14:V.S.久遠寺・遥翔
恐れながらもそれを克服して、命を賭けて挑んだ少年がいたとすれば。
そのあとにウィンドゼファーの前に現れたのは、真逆の男であった。
すなわち。
「疾さを極めた風の怪人、か。――面白ぇ」
薄く笑う。恐れなどなく、炯々と赤い瞳に揺らぐは言葉通りの愉悦。
そして殺意と戦意。闘志。どちらが上かを決めんとする飽くなき欲求。
「真っ向勝負と行こうじゃねえか。なあ? ウィンドゼファー」
遥翔のその身が焔黒転身(フレアライズ)し、異界の黒焔の鎧に覆われた。
風に対して焔。属性としてみれば相生の関係にあるモノである。
風は焔を猛らせる。燃え上がる焔は新たな風を生む。そういうモノだ。
『……名を、問うておきましょうか』
ぴくりと、遥翔の片眉が揺れた。
「おいおい、まるで騎士サマみたいなことするじゃねえか。
あんたの能力にかけるわけじゃねえが、どういう風の吹き回しだ」
『私の能力に、速度で勝てないと分かっていながら真っ向勝負を挑む。
その気概、多少なりと応えておかねば、風を操る我が身の不足ですので』
そう嘯くウィンドゼファーの言葉に、遥翔はくくっと笑った。
笑い声の奥底、ふつふつと煮えるのは義憤か、あるいは。
「ならこう名乗っとくぜ――焔黒騎士フレアライザー、ってな」
遥翔もまた気障ったらしく言えば、がしゃりと鎧を鳴らして構えを取る。
焔黒剣レーヴァテインが、じわりと熱を持ち重く彼の掌に馴染んだ。
……静寂。張り詰めた糸めいた、破綻寸前の緊張が周囲を圧する。
遥翔は動かない。下手に仕掛けたところで先手を打たれるからだ。
敵の攻撃を、第六感によって読む――完全には出来ないだろうが。
そして盾で受ける。ゆえに全神経を、矢のように尖らせ敵の動きを待った。
ふわりとそよ風が吹いた。実際のところ、それは烈風の兆しである。
極限の緊張により、風が生じたその瞬間の凶兆を遥翔が感じ取った形だ。
直後、わっと帳めいた暴風がウィンドゼファーの裡から溢れ、暴威となった。
竜巻じみた威容が、飛ぶ。上方からの攻撃。セオリーに則った初撃と言えよう。
だが。
「あいにくそいつぁ俺にも出来るのさ――天焔解放(オーバーフロウ)!!」
然り。魔剣に選ばれた適合者たる遥翔もまた、漆黒と黄金の焔を纏う。
その身は音の壁を越えて対手同様空へ。これで地の利は潰された。
それで決着するかと言えば、無論否。敵の速度は遥翔の二倍、いや三倍近いか。
(――来るな)
ほとんど勘に近い危険感知に従い、"熱閃光壁"を展開しこれを受ける。
轟音、そしてすさまじい衝撃。猛津波に呑まれたかのような錯覚!
(まだ来るか!?)
ひとつ、ふたつ、みっつ。遥翔が数えた攻撃は、その間に二回が挟まっている。
すなわちカウントに対し、実際の連撃は三倍。黒金の焔が吹き消される!
「まだだッ!!」
吠えた。応じるかのように魔剣が震え、さらなる焔を噴き上がらせる!
『堕ちろ……!』
「そうはいかねえなあ!」
そして張り詰めた弓弦が解き放たれる。遥翔の反撃だ!
「風は焔を猛らせる――お前の風が、俺の力を増してくれたぜ!
振るうはレーヴァテイン? 否、その銘を"熱光剣(ヒートキャリバー)"!
「フレアライザー・ヘヴンッ!!」
『ぐうっ!?』
袈裟懸け一閃! 燃え上がる斬撃が鋼を切り裂いた!
焔が爆発的に燃え上がり、敵を吹き飛ばす。追いすがるような黒金の焔!
『嘗めるなッ!!』
「くっ!!」
車輪剣が鎧を削る! 一筋縄ではいかぬか、それでこそ!
「燃えてくるぜ!」
『吹き消してやる、そのふざけた命を!』
「出来るかよ? なら、せいぜい踊ろうぜ!」
空に焔と風が舞う。互いを猛らせ、そして相食むふたつの影が。
それは、流星が交錯するかのような、あまりにも速く熱すぎる軌跡を描いた。
成功
🔵🔵🔴
夕凪・悠那
シンプルに強いボス、門番ねぇ
いいね、墜とし甲斐がある
敵の先制攻撃は[第六感]で[見切り]、ダメージを最小限に抑える
足場を崩されても[空中戦]のノウハウで体勢を立て直して【英雄転身】
機動力特化のキャラ(E:双剣)に転身
同時に『ES』を併せてシステム・フラワーズに[早業]で[ハッキング]
完全に掌握はできなくても、ゼファーの足下を不安定にしたり簡易的な足場を創るくらいはできるはず
さあ、ここからだ!
仕込みを活用しつつ高速戦闘
花を蹴って空中戦の要領で接近
敵の攻撃を見切って[カウンター]
暴風みたいに見切り難い攻撃は第六感で全力回避
双剣に雷の[属性攻撃]を乗せて[衝撃波]放射しながら連撃を叩き込む
―とかね!
●LAP15:V.S.夕凪・悠那
空に燃える焔と荒れ狂う風があり、それらは互いに相食むように争った。
輝きを見上げる少女がいた。金色の瞳を愉快げに細ませて、笑う。
「シンプルに強いボス、門番ねぇ。いいね、堕とし甲斐がある」
焔と風が共にぶつかり合い、そして飛び放たれた。
そのとき、悠那はすでに風の行先に向けて駆け出していた。
(猟兵か)
手負いのウィンドゼファーは、こちらに近づく気配に我を取り戻した。
沈思黙考。いましがた争っていた相手を追うのは荷が勝つか。
(行かせはしない。私が必ず殺すッ!)
ゆえに風の主、鋼の異形を得た女、ウィンドゼファーは自ら地へ翔んだ。
悠那がそれを見返す。着弾点は――己の立つ場所にほかならない!
「おっと!」
KRAAAAAASH!!
隕石じみて墜落――着地?――したウィンドゼファーがぎらりと悠那を睨む。
そして彼女を包んでいた暴風が、一瞬の裡に収束した。爆裂の予兆!
「"ES"! 仕込みよろしく!」
超高度コンピュータを内蔵した電脳ゴーグルに宿る、人工電子精霊が答える。
思考速度でもたらされた応答に薄く笑い、悠那は即座に別プログラムを起動した。
「電脳接続、記録参照、対象選択――」
『滅び去れッ!!』
「……転身開始(インストール)!」
暴風が爆ぜ、天も地も飲み込んだのと、悠那が"英雄転身"したのはほぼ同時。
だが結果は圧倒的に敵が疾い。足場が砕け浮かび上がり悠那をさらう!
「こちとらアクションゲーは大得意なんだよね!」
機動力に特化したゲームキャラの衣装を"ロールプレイ"し、悠那が笑う。
双剣を振るって邪魔な土塊を切り裂き、足場から足場へ。だが敵も疾い!
「追いついてきた!?」
眼前にウィンドゼファー。車輪剣がごうっと風を切り裂き振るわれる。
二刀を二刀で受ける。危険だ! 明らかに膂力が比ではない!
「こなくそ……っ!」
両者は大きな足場に着地。ここでESによる"仕込み"が功を奏する。
瞬間的なハッキングにより、着地したばかりの足場が傾(かし)いだのだ!
『!?』
「もらった!」
踏み込む。懐に潜り込んでの、威力よりも速度を高めた斬撃!
双剣を振るうたびに衝撃波が生まれる。すでに刻まれた傷をなぞるように、
雷撃がばちばちと爆ぜてウィンドゼファーを責め苛んだ。疾い、そして重い。
『がはっ!』
「さあ、ここからだ! コンボスタートってね!」
ひとつふたつみっつよっつ。刃を振るうさまはダンスのステップめいて。
しかしたたらを踏みつつ、ウィンドゼファーが処刑刃を……振るった!
「ぐっ!?」
食らった。悠那の脇腹がばっさりと裂かれて血が飛沫を上げる。
しかして無為ではない。その間に二刀が胸部の牙の傷を抉ったのだ!
「お生憎様、このジョブ慣れてるんだよね……!」
『おのれ……!』
互いに新たな傷を受けながら、足場を飛び渡り切り結ぶ双剣士たち。
退くまであと何度いける。悠那は高速思考しながらリスクマネジメントする。
最終的にボスを倒せばいい。協力プレイとはそういうものだ!
成功
🔵🔵🔴
穂結・神楽耶
…怖い、ですね。
えてして覚悟を決めた敵手こそが最も手強い相手なのです。
けれど負けるわけにはいきません。
この世界をまだ満喫し終えていませんもの。
『オーラ防御』を纏いましょう。
炎熱の幕にて風と刃を軽減します。
あなたは風。けれど全身がそうと化した訳ではない。
だからわたくしを倒すにはこの炎を抜ける必要が──
──ええ、それでも来るでしょう。
だからこちらからも炎と刃を返します。
あなたの風を抜けて、血へ肉へ届かせる。
さあ、勝負ですウィンドゼファー。
正々堂々真っ向から──この炎、吹き消せるものならやってご覧なさい!
●LAP16:V.S.穂結・神楽耶
この世界が好きだ。
キマイラフューチャー。やってきたのはこの動乱が初めてだったか。
テレビウム・ロックと呼ばれた騒乱で、彼らを守るために剣を振るった。
そしてザ・ステージ。なんとも奇矯なルールの数々を楽し……もとい、苦戦した。
筋肉だの楽譜(ラップ)だの構ってちゃんだの、
いまいち気の抜ける相手が多いが、あいにく神楽耶はヤドリガミであり、
まあそのへんはあんまり気にしていなかった。いや、むしろ。
(この世界をまだ満喫し終えていない。わたくしは下がれない)
怖くないと言えば嘘になる。得てして、覚悟を決めた敵こそがもっとも手強い。
追い詰められた獣が時には格上の肉食獣すら食い殺してしまうように、
背水の陣を決めた戦士は万軍を退かせてみせるのだ。
ましてや相手はオブリビオン。死は彼奴らにとって真の終焉に非ず。
(けれど、負けるわけにはいきません)
ゆえに神楽耶はまっすぐと前を向き、グリモアの転移に身を委ねた。
そして戦場に立った時、まさにその前に手負いの獣がうずくまっていた。
「……哀れなものですね」
『何?』
ウィンドゼファーを前にして、口をついて出た言葉を後悔はしない。
心からそう思う。あれほどの傷を受けて、なお死を前提に戦うさまは、あまりに。
「欲望を貪り尽くすなど、手段と目的を混同した愚かな選択でございましょう。
それほどの痛みを受けてなお、考えを改めることは出来ないのですね」
それがオブリビオンだ。過去の化身。未来の破壊者。猟兵の仇敵。
「我が身は未だ、神ならぬ物霊に在れど……いえ、それゆえに」
ちゃきり、と。朱の柄糸を吊るした、直刃が鈍く清廉な輝きを放った。
「亡びてなお妄執に駆られたあなたの欲望(いのち)、断ち切りましょう」
『……ならば、私は』
ゆらりと立ち上がる鋼。ぎゃりぎゃりと唸りを上げる剣呑なる処刑刃。
ふたつの車輪剣が、嘲笑うかのような耳障りな刃音を立てる。
『その憐憫もろとも、貴様を喰らいつくしてあげましょう』
「やってみなさい、ウィンドゼファー。いざ、正々堂々の勝負です」
じわり。結ノ太刀の輝きが、やがて灼けるような焔となって刃から柄へ。
柄を伝い神楽耶の指先を、手首を、腕を肩をついには体を飲み込んでいく。
朱殷再燃(しゅあんさいねん)。かつて届かなかった悔恨の焔の再来。
いまなお神楽耶の心を燃やし続ける、悔やんでも悔やみきれぬ願いの果て。
「この悔悟(ほのお)、吹き消せるものならやってご覧なさいッ!!」
風は焔を生む。だがその竜巻は、ただの風などではなかった。
嘲笑うような竜巻は、処刑刃がぎゃりぎゃり軋むたびに生まれ、うねる。
蛇めいた竜巻は螺旋めいてねじれ、狂おしいまでに神楽耶の五体を切り裂く。
焔を、吹き消す。だが神楽耶の内側から、焔はごうごうと燃え上がる。
痛みなどない。この焔幕は、いつでも己を灼いているのだから。
恐れはない。零してしまった祈りに比べれば、この程度。噫。
『私は諦めない。必ず、今度こそ、今度こそ!!』
(――やはり、あなたは哀れですね)
炎に灼かれながら、神楽耶は欲望に呑まれた哀れな怪人に同情した。
今度こそ。いつか必ず。次こそは。悔恨と苦悶に突き動かされる空虚な生。
まるで鏡写しのよう。それは神楽耶自身の対称でもあり――。
「だから、わたくしはあなたを燃やします!」
炎を飛ばす。太刀がぎらりと走り、処刑刃を弾き、拮抗する。
鋼を融かすほどの炎がちろちろとその身を苛む。竜巻が、車輪刃が、
満たされることなき欲望への欲望が神楽耶を切り裂く。だが、ああ、だが!
「負けません!」
『ここは通さない』
「わたくしは、必ず、届かせてみせる!」
『私は、今度こそ、貪り尽くすのだ!』
哀れな敗残者たちの戦いは、極限の飢えに苛まれた餓狼の共食いに似る。
炎と竜巻がふたりを包み込む。どちらかが倒れるその時まで。
成功
🔵🔵🔴
ソナタ・アーティライエ
その欲望に、『皆を守りたい』という思いで抗ってみせます
力や速さではかなう事は無いでしょう
でも思いの強さでまで負けるつもりはありません
その暴風にあっては、わたしなど枯葉も同然でしょう
なら耐えもしのぎもせず、ただ覚悟を決めて臨み
皆様の礎となる事だけを完遂してみせます
暴風をくらい翻弄されながらも【幻想神楽第九十四首『護法天願祝詞』】による祈りにのみ専心
この身がどうなろうと皆様が少しでも無事であることだけを願い、ここに倒れます
どうか……どうか、この声をお聞き届けください
皆様……後はよろしくお願い致します
アドリブ大歓迎です
アヤネ・ラグランジェ
速度では到底敵わない
距離を取って狙撃がベストだけど
それすら許してもらえそうもないネ
それなら答えは簡単で明瞭だ
一発もらって立っていれば僕の勝ち
対UDCライフルを持つ
敵の最初の攻撃はこれで受け流す
UCを同時展開
触手で防御する
間に合わない可能性は考慮済
一発は受け流し
もう一発来るならギリギリ躱す
結果はどうだろう
生きてるなら僕の勝ちだ
身体が動かない部分は触手で補い
【気合い】で立ち上がる
拘束せよウロボロス
重量級ライフルの一撃をお見舞いするよ!
●LAP17:V.S.ソナタ・アーティライエ&アヤネ・ラグランジェ
速度では到底敵わない。白兵戦に関しては言わずもがな。
となれば遠距離からの狙撃はどうか――不可能だ。敵の感知能は未知数。
仮に成功したとして、超長距離狙撃が暴風に防がれない保証はない。
そしておそらく、敵は瞬き一つの間に超長距離を飛び越えてくるだろう。
(圧倒的すぎるネ。でも、おかげで答えは簡単で明瞭だ)
アヤネの明晰な頭脳がはじき出した答えは、思った通りシンプルなもの。
しかし、それは頭脳労働者の導き出した結論としては、あまりにも、
(―― 一発もらって立ってれば、僕の勝ち)
あまりにも、前のめりで捨て身すぎた。
ごうごうと燃えていた炎が消えたとき、満身創痍のウィンドゼファーがいた。
穿たれ、切り裂かれ、融け、焼け焦げ、しかし敵は健在。いまだ活力を残す。
「厄介だネ、ああいう手合いが一番何をするかわからない」
『…………』
ぎこん、と錆びたロボットじみて、無機質にウィンドゼファーが見据える。
アヤネはやや気圧された。虚(うろ)のごとき欲望への渇望に呑まれかけた。
(――いけないいけない、らしくないな)
思考を切り替える。自信がありそうに、対UDCライフルを構えてみせた。
「そのダメージじゃ、ろくに高速移動は出来ないだろう? おいでよ」
あえての白兵戦を誘い込む。極めて不利だが、その分リターンも大きい。
一撃だ。一撃をしのぎさえすれば、勝算はある。そのための切り札がある。
二手三手の攻撃も考慮済み――我が身を削られる覚悟はどうか。
アヤネは自信満々といった笑みで、一歩また一歩と近づく敵を見据えた。
ごう、ごう。嘲笑うような竜巻が耳障りだ。アヤネを脅かすような竜巻。
(大丈夫さ、勝てるとも。だって僕にはそのための力がある)
アヤネは自信家だが、そのこころの裡の呟きは言い聞かせるようでもある。
たしかに彼女の計算は正しい。一撃さえ入れられればそれで勝ち。だが。
誤算は一つ。
彼女のそんな孤立奮闘を、見ていられぬ少女がいたことだ。
「待ってください」
「えっ」
出し抜けな声に、ウィンドゼファーより先にアヤネが反応した。
振り返る。そこには見知った小柄な少女の姿。
「ソナタ!?」
「ダメです。アヤネ様、あなたが傷つくのは、見たくありません」
だからソナタは飛び出した。そのひたむきな想いを胸に抱いて。
『…………ならば、もろともに、死ね』
怪人が刃を振り上げる――竜巻が、荒れる。渦を巻いて膨れ上がる。
内爆的な圧力。アヤネは地を砕くカタストロフを幻視した!
「ソナタ、逃げるたほうがいいよ。これ、かなりヤバい気がするからネ」
「嫌です……っ。わたしは、アヤネ様を、いいえ」
たとえこの身がどうなろうと。献身的な祈りは、旋律となって溢れる。
「"皆"を守りたいのです。だからわたしも抗います。あらがわせてください」
「ソナタ――」
……暴風が膨れ上がる。地を砕き、ドーム状に爆裂した!
「この身を捧げ願い奉ります。どうか、どうかこの声をお聞き届けください!」
八百万の神々、天地万物にありしモノたちへと呼びかける歌。
幻想神楽第九十四首『護法天願祝詞』。歌声はソナタをも害する呪い。だが。
(いける)
アヤネは振り向いた。歌声が、不可視の障壁が、暴風を……防いだ!
アヤネは頭脳明晰だ。だから彼女はすぐさま勝利条件を切り替えた。
一撃受けても、生きているならこちらの勝ち。そうではない。
「僕らがふたりで生きて帰る、そうでないと満点とは言えないネ!」
がしゃり! ライフルが迫り来る敵をマウントする!
そして影法師がぐんぐんと伸び、蛇めいた異界の触手が立ち上がった!
「拘束せよウロボロス!」
『ぬ……!』
もはや逃れられぬ。二重螺旋の蛇は、いま獲物を捉えた。
竜巻が触手を切り裂こうとする。ひたむきな歌が、響き渡る!
「どうか……!」
「大丈夫だよソナタ。――君の願いは、僕が叶える」
BLAMN! BLAMBLAMBLAMN!!
邪神抹殺用の弾頭が、鋼の虚を穿いた。風が、出し抜けに収まる。
響くのは旋律だけ。やがてそれも絶えた時――敵は、崩折れ、滅んだ。
「ソナタ!」
慌ててアヤネは仲間の様子を見て取る。大事ないようだ。
「アヤネ様……」
「まったく……計算外にもほどがあるネ、これは」
苦笑した少女は、しかし小首を傾げて言った。
「"皆"の中には、君もいなくちゃダメなんじゃないかな?」
と。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●
まだだ。
まだ。
欲望は尽きない。
霑国・永一
速さを求める欲望、いいねぇそういう欲する心は。
で、あれば俺も欲をぶつけるとしよう。シーフらしく、欲しいものは奪うのさ
狂気の速刃を発動。
【ダッシュ・逃げ足】で花の足場から可能な範囲で距離を取り、相手の暴風を【見切り】、なるべく暴風の風速を狂気の速刃で盗み続ける。【盗み・盗み攻撃】
十分な速度を得られたら、相手の攻撃が止むと共に盗んだ速度で高速接近し斬りかかり、刻み続ける。
攻めてる間も相手の速度は盗み続ける
「盗んだバイクじゃなく、速度で走り出すというやつだ。素の速度じゃなくて悪いけどねぇ」
余裕あれば攻撃の最中に盗み攻撃で車輪剣も奪って破壊or遠くへ捨てる
拾いに行くようなら追撃も辞さない
●LAP18:V.S.霑国・永一
欲望。何かを欲する心。実に"いい"。好ましいとすら思う。
特に疾さを求める、というのがいい。だから彼に恐れだとかはなかった。
あるのは、そう――どう盗むか、どう奪うか。ただそれだけだ。
対峙から攻防は即座に始まり、ウィンドゼファーの訝しみはそこから起きた。
(なんだ?)
復活したばかりの己は五体満足。何のダメージもありはしない。
敵は機動力が高く、爆裂した暴風のなか、足場を飛び渡っている。身軽だ。
だが暴風はそれ自体が荒れ狂う剃刀じみた刃である。無傷ではいられない。
――はずだ。避けようとしたところで風は音よりも疾いのだ。
それが彼女の権能。ウィンドゼファーを幹部級たらしめる能力。
だのに、なぜだ。何かがおかしい。"なぜあの男は無傷なのだ"。
『何をした。何をしている!』
問われて、永一は薄く笑った。ごくごく平凡な――否、狂った笑みを。
「"盗んでる"のさ」
声はあとから届いた。永一の姿はウィンドゼファーの感知能ぎりぎり。
否、越えた。ならばと彼女は、さらに暴風を生み出し荒れ狂わせる。
地が裂け、砕け、爆裂して何もかもが宙に浮かび上がった。
逃れようなどない死の牢獄。しかし永一は。無事だ。なぜだ!?
『何をしている!!』
「だから言ったじゃないか」
声は正面――否、背後。永一は鋼の耳であろう場所に口を近づける。
囁く声は、まるで死神、あるいは亡霊じみてひそやかに、恐ろしく。
「盗んでるのさ。お前の、その疾さをな」
疾さを、盗む。
彼の用いるユーベルコード、"盗み斬る狂気の速刃(スチールスピード)"が、
その概念的な行為を可能にする。
荒れ狂う風。音よりも疾き刃。永一は初撃こそかすらせてしまったが、
(当然彼はこの傷を巧妙に隠している。精神的優位に立つためだ)、あとは慣れたもの。
風の速度を"盗み"、それを己に載せて走る。盗む。走る。盗む……。
いまや永一はウィンドゼファーと同じく、否、ともすればそれ以上にすら!
「盗んだバイクじゃなく、速度で走り出すというやつだ。素じゃなくて悪いけどねぇ」
『ほざけッ!!』
ギャルルルル!! 処刑ギロチンじみた車輪刃が唸る!
「おっと!」
永一は避けた。剣を盗み、遠くに遺棄し武器を奪うプロセスをイメージする。
……相当に難い。こなすには命を別途する必要があるだろう。
(リスクマネジメントは大事、ってねぇ)
己の幻影をタバコの煙めいて握りつぶし、刃物を振るう。
速度は力だ。鋼をバターめいて切り裂く。切り裂く、切り裂く、切り裂く!
『ぐううっ!!』
「一方的で悪いね? 俺もだいぶ欲深いからさぁ」
『貴様ッ!!』
永一は怒りを浴びてなおも笑う。それすらも心地良いとばかりに。
青年は、どこかたしかに狂っていた。
大成功
🔵🔵🔵
アロンソ・ピノ
速さ、最速な。
オレは剣士だし、速さについてはプライドはねえが…そうだな。斬れねえほど速いってんなら、それを無視して斬るだけだ。
ユーベルコードは冬唄にする。
こいつは形は普通の刀だ。ただ、「刀で斬れないものが斬れるようになる。」呪詛がびっちり刀身に入ってる。代わりに刀で斬れるものは斬れないし、この刀握ってるだけで全身痛えんだが。あと使う時に詠唱も要る。
んで、敵の先制攻撃の「風」をこの冬唄でぶった斬る。その後は風を操り高速移動するなら、その風をまた斬る。敵本体が斬れなかろうが、高速移動中にその力を邪魔してやればダメージは入れられるだろうしな。
――春夏秋冬流、参る。
(アドリブ、絡みなど歓迎)
ルフトゥ・カメリア
速さを競ったことなんざねぇが、まあどうにかなんだろ。
やるだけやってやるさ。
やらなきゃ滅びるんだ。
先制攻撃は【かばう、武器受け、オーラ防御、第六感、激痛耐性】で急所を外しつつ、避けられなきゃそのまま耐える。
足場がどうなろうが、Nova.で其処らに【ロープワーク】で縄掛けるなり、自前の翼と【空中戦】でどうにかするなりやりようはある。
接近してくれるなら逆に多少の怪我は覚悟でNova.で絡め取りながら胸倉掴んで、【カウンター、怪力、2回攻撃、鎧砕き、祈り、破魔】で溢れる炎ごと叩き込んでやる。徒手空拳も嫌いじゃねぇよ、育ちの悪ぃ喧嘩殺法だけどな。
俺が怪我すりゃした分だけ炎は溢れる、そのまま燃えちまえ。
月宮・ユイ
連携アドリブ◎
”学習力で早業”の様に常時行動最適化
”第六感”含め感覚強化、圧や流れ等を感じ取り捉え難き風を”見切り”僅かずつでも”情報収集”
風に火は相性良いけれど、
火災旋風……その程度取り込めると嗤うかしら。
呑み込まれ上空まで吹き飛ばされても良い、その火は私を癒し敵の力喰らう
それでも傷は深くこれが最後の一撃
上空より”念動力”で強化”投擲、誘導弾”
[ステラ+ケイオス]槍剣核に広がった炎さえ纏め上げ巨大な<不死鳥>とし敵に向け飛ばす
無限大の欲望、ね。
全ての者がそれ程の欲を持ったのなら、
オブリビオンだとしても、いえだからこそ、行きつく果ては妥協なき互いの欲のぶつかり合いによる終末ではないのかしら。
非在・究子
な、何よりも、速さを、求める怪人、か……ちょ、ちょっと、共感してしまう、な。
……だ、だからこそ、負けられないって、やつだ。
は、花の足場を、バラバラに、する、暴風での、無差別攻撃、よ、避けにくいし、威力も、高い、厄介な、攻撃、だ。
……だけど、『花の足場』を、どうにか出来るのは、そっちだけじゃ、無いんだ、ぞ?
ら、ラビットバニーとの、戦いで、花の足場を制御する為の、コードは、掴ませて、貰った。(技能:ハッキング、学習力)
……あ、相手のUCの発動前に、ごく僅かだけ、足場を動かして、刹那の一瞬、敵までの無風の、通路を、つくる。
い、一瞬あれば、敵に攻撃を届かせるのには、十分過ぎる、時間、だ。
夷洞・みさき
目には目、回転には回転かな。
【WIZ】
回転の制限を狙って戦場を海水で覆う。
海水には【呪詛】を込め、敵のタイヤや車輪剣が生み出す竜巻に巻き込ませる。
回避は絶望的であっても、自身の要素を多分に含ませた攻撃にする事でダメージの軽減を狙う。【呪詛耐性】【激痛耐性】で強がる。
攻撃に耐えればあとは逃がさない様に【罪業縛りの錨】を【ロープワーク】【敵を盾にする】応用で互いを鎖でつないで接近戦を挑む。
あちらは二輪、こちらは一輪、でも大きさと頑丈さなら負けるつもりはない。
水場に立つ僕はちょっと強くなるからね。
嘗ての君達ならその業は咎じゃないんだろうね。
でも、もう、そうじゃない。
だから、僕は僕の業で君達を禊潰そう
●LAP19:V.S,剣士、熾火、兵器、禊、オタク
ぎしり、ぎしり――ぎい、ぎい、ぎい。
軋み音とともに、人の身で扱うには馬鹿げた大きさの大車輪が転がる。
然り、車輪である。七咎潰しの大車輪。手繰る女の名を夷洞・みさきと云う。
ぎしり、ぎしり――ぎい、ぎい、ぎい。
軋む。軋む。軋むたびに、じゃぷり、ぴちょん、と水音が響いた。
……水である。みさきと大車輪の足元から、水が、滲み出している。
「彼方より響け、此方へと至れ、光差さぬ水底に揺蕩う幽かな呪いよ」
ぎしり、ぎしり――ぎい、ぎい、ぎい。
揺蕩うような声音に輪唱するかのように、車輪が軋む。
水が、染み出す。"浸食領海・潮騒は鳴り響く"。呪われた海水をもたらす術式。
「我は祭祀と成りて、その咎を禊落とそう。――嘗ての君たちならともかく。
いまのその業は、咎だ。だから僕は、僕の業で君たちを禊、潰す」
ウィンドゼファーが、ユーベルコードの発動を黙ってみているだろうか?
否である。ゆえに嘲笑うような、耳障りな竜巻が吹き荒れた。
大車輪の軋みをも喰らい尽くすほどの、ギャルギャルという車輪剣の唸り!
『させん!』
「そりゃこっちの台詞だぜ」
ウィンドゼファーは風よりも疾く走り、みさきを切り裂こうとした。
それには追いつけずとも、もう一陣の風は、翼は燃えるほどに速かった。
そして処刑刃とダガーとが撃ち合い、己の身をも犠牲にこれを弾く。
ギャリリリリ……ガギンッ!! 立ちはだかったのは赤い瞳の青年!
「おや」
みさきは片眉を吊り上げた。ルフトゥ・カメリアの背中を見て。
「急所を外してりゃ、このぐらいは耐えられる……ってな」
すさまじい激痛にやや顔を顰めつつ、ルフトゥは後ろを振り仰ぎ笑った。
よく通る澄んだアルトの声には、些かの弱気もない。彼は強がりなきらいがある。
「カウンターとまではいかねえけど? ま、ここは通さねえよ」
『――ならば、飲み込んでくれる!』
「まあそうくるよなぁ!」
ルフトゥは笑った。ウィンドゼファーの次の攻撃は予測済みだからだ!
いかにも彼女はすさまじい暴風をその身に帯びて、音をも越える力を得た。
さらに、渦を巻いた風は収束し、爆裂して全てを飲み込もうとする!
海水もろとも地が砕け舞い上がるほどの強烈な暴風! 無差別攻撃だ!
……無差別攻撃、であるはず、だった。
『何?』
たしかに暴風は吹き荒れた。ドーム状に、全てを飲もうとした。
だがドーム状というのはいささか正しくない。それは完全な円形ではない。
一部。すなわち猟兵たちに対する正面方角だけが抉れているのだ。
いわば切り分けられ、一部だけ召し上げられたホールケーキめいた有り様。
「――疾さ、"最速"な。まあ、そうだな」
かちん、と。鍔鳴りの音をさせながら、桃色の髪の男が顔を上げた。
「オレは剣士だし、お前のその疾さに関するこだりだのプライドはわかんねえ。
けどよ、あいにくオレはありとあらゆるモンを斬るのさ――剣士だから、な」
アロンソ・ピノ。腰に佩いた奇剣、その銘を"瞬化襲刀"。
そして彼が振るう、奇怪なる変幻自在の剣術流派をこう呼ばう。
「春夏秋冬(ひととせ)流・冬の型。弐の太刀・冬唄ってえんだ。
悪鬼羅刹に魑魅魍魎、妖怪変化に怨霊怪異――視えぬもんも叩き斬る」
いわんや、いかに疾かろうとたかが暴風をや。かの呪詛、調伏出来ぬ筈なし。
ゆえに斬った。出来ぬと常人は云う。だが、やる。それが剣士である。
決めたならばそうする。斬るべきものを斬る。それが剣士である。
「まあめちゃくちゃ全身痛えんだがよ。真冬みてえに心胆冷えただろう?」
薄い笑み。ざんばらに、荒れ狂う風の残滓が桃の髪を吹き散らした。
「春夏秋冬流、参る。こっから先は、オレ相手になるぜ」
しかしてアロンソは触れなかったが、この剣、実はひとつだけ弱点がある。
目に見えぬもの、風であろうが悪鬼羅刹であろうが何もかもを叩き斬るが、
反面"刀で斬れるものは斬れない"のだ。いわば術理反転、虚実転換法である。
ウィンドゼファーはけして敵を侮らず、そして見逃すつもりなかった。
故にいま一度、双刃によって猟兵たちを引き裂こうとした。これがまずい。
――故に、新たな影が二つ、迫る魔刃の前に立った。
アロンソによって向かってくる風は切り裂かれるとは言え、他方は別。
別であるはず、だ。だが見よ、風の中に、道が……足場が! 道を!!
「舞え、"不死鳥(フェニックス)"ッ!」
『何ッ!?』
思考の速度で降ってきた、礫の如き炎がウィンドゼファーをインタラプトした。
当然処刑刃はギャルギャルとこれを呑み込む。竜巻を向けんとする。
振り仰いだ先、虚空に生まれた道を飛び渡るのは一人の少女!
「そう、私を切り裂くというならやればいい! この身を燃やしてでも!」
月宮・ユイは次なる概念武装を生み出し、炎を噴き出しながら道を駆ける。
ウィンドゼファーは訝しんだ。新たな猟兵の到来は実に業腹だが、
何より不可解なのはあの道だ。なぜ風が、足場が、操られている?
風の一部を切り取ったとて、暴風の吹きすさぶなかはこれすなわち彼女の領域。
風はいい。おそらくユイが、その身を犠牲に炎で飲んで道を開いたか。
では足場は! 浮かび上がった大地の破片はなぜ彼女を導いているのだ!
「ちょ、ちょっと。共感してたり、するんだよ、な」
どもりのひどいあどけない声が、アロンソたちの背後から響いた。
いつからそこにいたのか。陰キャたるもの気配遮断はA+++クラスである。
「な、何よりも疾さを求める、とか、ま、まあアタシは疾さじゃないけど……。
だ、だから、その、無差別攻撃、ち、チートだろって、思うけど」
非在・究子は、やや気味の悪い笑みを浮かべながらデバイスを見せる。
ゲームの中から生まれたバーチャルキャラクター。電脳魔術士。
現実(クソゲー)を冒しハッキングする少女にとって、それはたやすい。
なぜなら。
「ら、ラビットバニーとの戦いで、あ、足場の制御プログラムコードを、
つ、掴ませてもらったから、な。だから、そ、そっちだけじゃ、ないんだ」
『バニーのハッキングを……貴様!』
然り。究子が、ユイが進むための足場をなして道としたのである。
ウィンドゼファーは憤った。だがそれはこの極限にあって致命的な隙だ!
「よそ見は禁物よ、無限大の欲望に呑まれた哀れな残骸よ!」
『!!』
不死鳥が来る。
風に切り裂かれその傷を即座に癒やしながら、道を駆け抜けたユイが。
己自身を、不死鳥めいて燃える炎に取り込ませた少女が、鏃めいて翔んでくる!
『おのれ――』
「おっと、ルフトゥ君の次は僕の番だな」
ギャルルル――がぎん!! ぎい、ぎい、ぎ、ぎ、ぎぎぎぎ……!!
振るおうとした処刑刃を、大車輪ががっきと噛み合い防いでいた。
みさき。あまりにも疾い。そして力強すぎる。尋常ではない。
然り。滲み出した呪詛の水気は、彼女自身を強める呼び水でもあるのだ。
「ほら、ご覧の通り、僕は水場(こっち)のほうが調子がいいからね」
『貴様ァ……!!』
瞬発的な怒りが新たな暴風を生む! 冬唄の刃が後の先を取り切り裂いた!
「オレの刃はお前自身は斬れねえ。だがお前の風は斬れるぜ。何度でもな。
何度吹きすさばせようが同じだ。何度でも、何度でも切り裂いてやる」
それは、冬に降り積もった雪が軋むような、靜ながら迫力ある声音。
暴風を生む。刃が斬る。斬る。斬る! なおもウィンドゼファーは暴風を生む!
――がくんと。ウィンドゼファーの立つ足場が、ふと、揺れた。
些細な揺れ。彼女が冷静で、集中していたなら決して見落とさぬギミック。
だが究子は知っている。意地の悪いアクションゲームはそういうところに罠を仕込む。
プレイヤーの隙を突いたトラップで、あっさり残機を減らしてしまう。
「げ、ゲーム、も、もっとやりこんだほうが、いいぞ」
陰キャがにたりと笑った。死神めいて。
「こ、こんなクソゲー、シラフじゃクリアできない、もんな」
この一瞬があればいい。風の残滓が己を切り裂こうと気にしない。
ルフトゥは迷わずつっこみ、ウィンドゼファーの襟首を掴んだ。
地獄の炎が溢れる。掴んだ場所から鋼を飲み込み焦がしていく。
「育ちの悪い喧嘩殺法だけどよォ――そのまま、燃えちまえ」
瑠璃唐草の熾火(ネモフィラ・フランメ)。燃え上がるさまはトーチめいて。
そして不死鳥の炎が、その勢いをさらに猛々しく燃え上がらせる!
『ば、か、なぁああああああっ!!』
それは断末魔だった。かくて、敵は幾度目かの滅びを迎えたのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
欲望を喰らい尽くす。そのための欲望を。もっと疾く。疾く、疾く!
遠藤・兎卯飛
ヒャッフゥー
知ってるかい?速い奴は死ぬのも早いんだよ?
バトルキャラクターズでLvを割り振ったカートに乗った赤と緑の帽子ブラザーズを召喚
大丈夫カートもバトルゲーム!
数珠繋ぎのバナナの皮をカートの後ろで引き摺り
走り回る緑
誘導弾な前を狙う赤い甲羅とトップを狙う棘付き甲羅で攻撃しまくる赤
スリップすれば早くても止まるよね?
属性範囲攻撃雷アイテムを追加召喚した黄が使用
敵さんが切り掛る瞬間にブラザーズが一事的無敵の星で轢き逃げクロスアタック
バラバラになる足場やバトルキャラクターズを蹴り地形の利用しながらフルバーニアで飛び回り射撃
竜巻には一事的無敵の星ブラザーズをぶつけて自分は脱兎&( 厂˙ω˙ )厂うぇーい
●LAP19:V.S,.遠藤・兎卯飛
「ヒャッフゥー!」
骸の海から蘇生したウィンドゼファーの前に、ザコがいた。
いや、ただのザコではない。なにせオブリビオンは一目で"それ"とわかる。
猟兵。世界の加護を受けし者。過去の化身を倒す、オブリビオンの天敵。
……なのだが、見た目は明らかにザコ戦闘員だ。そして緩いシャウト。
「ヒャーッフゥー!」
『……私に合わせろと言っているんですか? それは』
だもんで、ウィンドゼファーも毒気を抜かれて思わず問い返した。
「あいや、そういうわけじゃないんだけどね」
ヘルメットの中から聞こえてきたのは、なんとも軽薄そうな男の声。
こんなんでも立派なアームドヒーロー! それが兎卯飛という男なのだ。
ラビットバニーやエイプモンキーと違ってウィンドゼファーは割と真面目だ。
いや、あいつらがけしてふざけていたわけではないのだが。
『……私を油断させよう、というつもりなら見込みは薄いと言っておきますが』
「手厳しいなぁ。オッサン肩凝っちゃうんだよねそういうの」
兎卯飛は相変わらず真面目なのか気が抜けているのかわからない声で言うと、
しかし鉄仮面のまま小首をかしげ、変わらぬ声音でポツリと言ってみせる。
「知ってるかい? 疾いやつは死ぬのも早いんだよ?」
『…………』
じわり。ウィンドゼファーの放つプレッシャーが強まり周囲を満たした。
兎卯飛が腰を落とし、重心を深くどっしりと構える。戦闘の気配……!
「まあそういうわけだからさ、オッサンとゲームでもしようよ!」
ペコリン! と、ゲームチックな効果音と共に召喚されたのは!
……なにやら、赤と緑のカリカチュアライズされた衣装に身を包むキャラたち。
これまたカートゥーンめいたレースマシンにまたがるバトルキャラクターだ!
『なんですかこれは』
「ヒアーウィーゴー!」
ペレレレ! 勝手にスタートサインを切ると共に、キャラクターたちが一斉にスタートを切る!
なにやら走行妨害アイテムの狙いを定めながらあちこちを右往左往するのだ。
あと剣呑そうな棘付きのお邪魔アイテムなどもマウントしていた。コワイ!
『胡乱な……』
「じゃ、オッサンはあとはラクさせてもらおうかな!」
狡猾! ウィンドゼファーが呆れた隙を見計らい空に翔ぶ兎卯飛!
だがその瞬間には暴風が全てを飲み込んだ。そう簡単に逃れられるはずもなし!
「ホワワワワァ~!?」
『付き合いきれません、まとめて轢き潰れてしまいなさい!』
「うぇーい! そうはいかないよオッサン疲れ気味だからさぁ~!」
BRATATATATA! 射撃とバトルキャラクターたちによる応戦を試みるが、
飛び交う足場が擬似的な盾となり、さらにウィンドゼファー自身が迫る!
弾丸を喰らいながら車輪剣を振り回し、全てを切り刻むのだ!
「いててて! いやこいつはまいったなぁ、オッサン鉄火場得意じゃないんだって」
『挑んできておいてよく言ったものですね!』
ウィンドゼファーは強敵。相手がおっさんだろうと手は抜かないのだ!
苦戦
🔵🔴🔴
アポロダスト・ディラマティウス
【アドリブ歓迎】
オー、風を操れるだなんて相当に強そうデース!
でもでもでも風ぐらいに負けるようなダンスはワタシしてまセーン!!
ユーの風とワタシのダンス、どちらが強いか楽しみデース!!
【SPD】
オーイェ…流石のスピードと風デース!もはやハリケーンって感じデース!!
花びらもボロボロで足場がありまセーン!!
しかし、ワタシにはまだ空がありマース!!
『スカイステッパー』で空を駆けることで足場がなくてもダンスを踊れマース!!
荒れ狂う風もワタシの追い風にしてみせマース!!
●LAP21:V.S.アポロダスト・ディラマティウス
暴風が吹き荒れ、花々咲き乱れる足場を砕いて空へと舞い上げる。
だが! そんな状況を悠々と舞うように……いや、実際舞ってる影がいた!
上からボンッ、ボンッ、ボンッという団子みたいなシルエット! あれは!?
「オーイェ、さすがのスピードと風デース! ワタシのアフロも揺れてマース!」
言葉通り特大アフロを風になびかせ……揺らせ? ている、アポロダスト!
ダンスの神を標榜するラテン系ゴッドは、空を飛ぶときもリズムを忘れない!
『次から次へと胡乱な猟兵ばかり!』
「ウロン? ノー、ワタシはヌードルではありマセーン!」
『そのふざけた口、さっさと切り裂いて閉ざしてやりましょう……!』
ふたたびドーム状の風が収束し爆裂、足場の残骸を砕いて吹き荒れる!
「ワオ! アメイジング……! こいつはハードな風デース!」
アフロが揺れる! 褐色の肌が風に切り裂かれる! グラサンを押さえる!
それはそれとしてリズムを刻んで踊るアポロダスト! なんだそのこだわりは!
しかし、相手のペースに呑まれず我を貫くというのは重要なことだ。
戦いとはイニシアチブの取り合い、テンションが勝敗を左右するものである。
その点において、アポロダストはある意味ウィンドゼファーを圧倒していた。
ある意味、だが。なにせ空を飛んで踊っているだけなので。
『目障りな……!』
ご覧のように、ウィンドゼファーは苛立ちを隠しきれていない。
ラビットバニーやエイプモンキーと違って――いや彼らも決してふざけていたわけではないのだが――真面目なウィンドゼファーは、アポロダストのようなマイペース猟兵と極めて相性が悪い。
なので風を生みまくる。アポロダストは荒れ狂う風を追い風に踊る!
「イッツショーターイム!」
『だからなぜ踊るのですか! せめて攻撃してきなさい!』
「なんと熱烈なお誘いなのでショーウ、言われずともありまセーン!」
然り。アポロダストの戦闘法はダンスと武闘が一体化した独自のスタイル。
胡乱にブレイクダンスを披露していたかと思えばその動きが変幻自在の足技に!
『くっ!?』
「テンポアップデース! ゴウゴウゴウ!」
どこからともなく響き渡るBGM! アポロダストのダンスコンボが叩き込まれる!
『好き勝手はさせません……!』
「アウチッ!」
反撃がアポロダストを捉えた! 全身とアフロがずたずたに切り裂かれる!
さしもの神もここまでか? いや! 踊っている、むしろさらにテンポアップ!
『何故ですか!?』
「どんなときでもレッツダンス! それがワタシのソウルデース!」
相手が強敵だろうとなんだろうと、踊ればだいたいのことは片がつく。
まさに神らしい超然とした、ちょっとイッてる理屈である。
ウィンドゼファーは困惑する。何なのだこの敵は、と!
成功
🔵🔵🔴
柊・明日真
【アドリブ歓迎】
速さが信条ってんなら、ごちゃごちゃ話すこともないだろう?
さっさと掛かって来な。
先制攻撃は【武器受け、激痛耐性】で凌ぐ。
速さにある程度慣れるまでは防御に専念、なんとか反応できるようになったら攻撃を食らう瞬間を狙って奴をとっ捕まえる。
捕まえたら振り落とされないよう【怪力】でしがみついて【属性攻撃】《紅炎の刻印》を発動、直接燃やされりゃあ避けようがねえだろ!
こっちも無傷じゃ済まねえが…俺が落ちるか、お前が落ちるか、試させてもらうぜ!
●LAP22:V.S.柊・明日真
ウィンドゼファーは疲れていた。
二連続で名状しがたい猟兵のマイペースの相手をしたからだ。
『こんなことではいけない、私は負けるわけにはいかない……』
元来真面目な基質のウィンドゼファーは、頭を振って意識を切り替えた。
「なんだ、始める前からもう弱ってやがんのか?」
そこへ颯爽と現れた明日真。緋焔の剛剣を肩に担ぎ頭をかく。
ウィンドゼファーは、少しだけ……ほんの少しだけ安堵した。
明日真はシンプルな猟兵だと一目でわかったからだ。彼女は意識をスイッチする!
『……何をバカげたことを。私はこの通り健在です』
「そうかい。そりゃなによりだ」
不敵に笑う明日真。びゅう、とどこからか風が一陣吹きすさぶ。
「ま、別にごちゃごちゃとあんたと話したいわけでもない。
疾さが信条の怪人だってんなら、そっちだってそのつもりだろ」
そうとも。互いにこの場には、相手を滅殺するつもりで存在しているのだから。
音もなく不可視のプレッシャーが放射され、両者を圧倒する……!
「さっさとかかってきな!」
『それはこちらの台詞ですよ、猟兵!』
ウィンドゼファーを中心に、嵐じみた強烈な暴風が吹き荒れた!
明日真は、ウィンドゼファーを決して軽く見てはいなかった。
風を操り、疾さに耽溺した怪人。しかも、幹部級のオブリビオンである。
根本的な戦闘能力が桁違いである以上、同じ土俵で戦うのは骨だ。
ゆえに彼は自らのタフネスを信じた。ここまでついてきた己の体と武器を。
(なんて重さの攻撃だ!!)
しかしそれでもなお、実際に相対し、食らってみて舌を巻いた。
視えないとか感知できない、というレベルではない。
意識の外から、光の瞬きのように襲い来るすさまじい攻撃。
その鋭さ、重さ! 何もかもが明日真の想像を越えていたのだ。
「けど、だからこそぶちのめす甲斐があるってもんだぜ!!」
『減らず口はそこまでですよ、このままバラバラに引き裂いてあげましょう!』
「あいにく頑丈さが取り柄でね――そこだッ!」
明日真は、それまで硬く絞っていたガードをあえて解いた。
ミキサーじみた暴風にこちらから手を突っ込む。筋肉が切り裂かれる。
激痛と鮮血に奥歯が砕けそうなほど噛み締めながらあ一歩踏み込む……そして!
『何!?』
「掴んだぜ……!」
掴んだ。明日真の手は、ウィンドゼファーのボディをたしかに掴んだ!
その直後、もう一方の肩に車輪剣が刳りこまれる。ギャルギャルギャル!
「ぐおおおおおっ!!」
肉と骨が混ざるすさまじい地獄のなか、明日真は絶叫しながら放さない。
空を舞う暴風、そして男と女。明日真の橙色の双眸に炎が灯る!
「俺が落ちるかお前が落ちるか――試させてもらうぜ」
『貴様……!』
「爆炎充填完了だ、派手に行くぜ! 紅炎の刻印(プロミネンスクレスト)ォ!!」
ごうっ!! 砕けた足場から吹き上がる、マグマめいた火炎の柱!
強制的にコースを変更させられたウィンドゼファーと、そして明日真は!
『死ぬ気か!?』
「それを試そうって言ってんのさ……!」
あろうことか、その只中へ! 風とともに突っ込んでしまった!
炎が燃え上がる! おお、明日真よ、なんたるタフネス、そして覚悟か!
その炎、ウィンドゼファーの鋼を焦がしやつに大きな痛手を与えただろう……!
成功
🔵🔵🔴
トルメンタ・アンゲルス
へぇ、貴女も速さを貴びますか。
奇遇ですねぇ、俺もなんですよ。
ただ――
――過去に立ち止まった貴女が、俺に追い付けますかね?
(何よりも、こんなところで立ち止まるわけにいかないんですよ)
最初からトップスピードで行きます!
相手が暴風を放つと同時にその規模を第六感で見切り、残像を残すほどの早業ダッシュとジャンプで回避。
空中ではスマッシュ・エアを使用し、出鱈目な軌道で撹乱!
さぁ、勝負だ!
ArmsExtend始動!
『Buildup――Thorhammer』
両足をそれぞれ「蹴り」に特化した強化装甲に変異!
そして、全開――!
HyperDrive!
『FullThrottle――』
光の速さで、十重二十重に蹴り砕く!
●LAP22:V.S.トルメンタ・アンゲルス
ごぉう――っ!!
マグマめいて噴き出した火柱が、猛烈な風によって消えた。
ウィンドゼファーのものか? 否である。だがそれに近いほどの颶風。
「まったく無茶をしますね……!」
変身状態のトルメンタだ。ザシュッ! と花びらを散らしながら着地。
先の火柱は、明日真が己を道連れにウィンドゼファーを飲み込んだもの。
彼女はそれを察知し、火柱をかき消すことで明日真の捨て身を救ったのだ。
当人はウィンドゼファーに組み付いていたゆえ、脱出は本人次第だが……。
「……まだ健在ですか。ええ、そうでなくては困ります」
立ち上がったトルメンタの前に、がしゃん! と着地する鋼の躯体。
いかにもそれはウィンドゼファーであった。
全身は焼け焦げ、あちこちに裂傷を負っているが健在だ。
「あなたも疾さを尊ぶのでしょう? 奇遇ですねぇ、俺もなんですよ」
『……まさか、この私と正面からスピード勝負を挑むとでも?』
「ははっ、とんでもない。そんなこと、俺はしませんよ」
気取った仕草で両手を広げ、肩をすくめてみせるトルメンタ。
だがその直後、ぎらりとカメラアイが瞬いてウィンドゼファーを見据える。
「そんなことは"する必要がない"。なぜなら、俺は未来を見ている。
だがあなたはオブリビオンだ。……意味、わかりますかね?」
ウィンドゼファーは無言。プレッシャーが苛立ちと嫌悪を伝えてくる。
トルメンタはマスクの下で、一笑に付した。そして改めて云う!
「――過去に立ち止まったあなたが、俺に追いつけますかね?」
不敵な挑発。風が……収束する。爆裂の瞬間に向けて駆け上るように!
こんなところで立ち止まるわけにはいかない。ゆえにトルメンタは挑戦する。
風を従えるもの、恐るべき疾さの化身、在り得た己のバッドエンドに――!
そして風が爆裂した瞬間、吹き上がった足場の狭間をピンボールが飛び交った。
そうとしか形容できない。トルメンタの回避軌道はおよそ物理法則を凌駕していたからだ。
ジグザグに、かとおもえば曲芸的に上下左右を自在に飛び回り、
目に見えない風のレールを乗り、あるいは捌いて走る。奔る、疾走する!
「俺に乗れない風はないッ!! さぁ、勝負だ!」
トルメンタには視えている。鏡像めいて風の上を奔る鋼の敵が!
《Buildup――Thorhammer》
両足がキックに特化した強化装甲にチェンジ。がりがりと大気を焦がす!
ガガガガガガ! 飛び交いながら原子めいてぶつかりあう両者!
『その大言壮語の報いは命で支払ってもらいましょう!』
「キレがない罵倒ですねぇ、疾さだけじゃなく舌鋒も俺が上ですか!」
『ほざけ……ッ!!』
ガギ、ガ、ガギンッ!! 車輪剣とレッグパーツが火花を散らす!
負傷程度はどうだ。ほぼ互角! だがトルメンタの意気はなお軒昂である!
《FullThrottle――HyperDrive》
「そしてこれが全力全開です! コアマシンリミッターカットッ!!」
緑の流星が生まれた。内なる輝きをほうき星めいて引きながら戦士が翔ぶ。
その瞬間、トルメンタは音の壁を、いやさ、光の壁を越えて輝きとなった。
「十重二十重に蹴り砕く! ウオオオオオオオォオオッ!!」
『これは……そんな、莫迦な』
ウィンドゼファーは気圧された。あろうことか疾さというステージで。
この女の覚悟、決意、信念。よもや、己の欲望よりも上だと――激突!
KRAAAAAAAAAASHッ!!
ズズゥンッ!!
地面に叩きつけられたのはひとり。かろやかに着地した者もひとり。
土煙がもうもうと立ち込める。膝立ち姿勢から立ち上がったのは……。
「……あなたのことは他人とは思えませんよ」
トルメンタである。生体センサは敵の生存と撤退を確認していた。
仕留め損ねた。しかし、トルメンタの意地と疾さは、たしかに。
「だからこそ俺は、あなたには負けられない。止まれないんです」
背負うものがある。まっすぐに駆け抜けると決めたその理由が。
仲間たちの命を胸に秘める限り、底なしの欲望だろうと彼女は追い抜く。
揺らめく緑の輝きは、生命の力強さに瞬いた。
大成功
🔵🔵🔵
オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と
疾さ特化だなんて親近感すら湧いちゃうなぁ
……落ち着きがなんだって?
まぁいいや、聞かなかったことにしてあげよう
っ、来る!
ただの暴風じゃないのは受ける前からわかる
無傷じゃ済まなくても【武器受け】で受傷は最低限に
地形の影響を受けないようにそのまま空中に留まろう
暴風が一旦止んだら、今度は私が疾風に乗る番
疾さで負けたくなんか、ない……!
見切られないように疾く、迷いなく、真っ直ぐに
防御はかなぐり捨てて【捨て身の一撃】で【鎧砕き】
その仮面の下で瞬きすらさせないよ
防御力を削げたのなら私の役目はここまで
事前に示し合わせたわけじゃない
でも、ヨハンなら絶対に繋いでくれる
そう信じてる!
ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と
一つを極めるというのは、
嫌いではないのですけどね
疾さだなんだというのは、
落ち着きがなくて好きでもないですけど
……いや別にあなたの事を言ってる訳では、ないんですけど……
『凍鳴蒼』を使用し<全力魔法>
暴風へは氷の壁を作り防御に徹する
崩れる足場も直ぐに凍らせ、
最低限の立てる場所は確保しよう
車輪剣とやらの回転は、
こちらも凍らせて対処する
何度削られようとも、何度でも凍らせよう
それぞれの出来る事に注力する
彼女の事は彼女に信を置くからこそ、
手を割かない
凌ぎきれた場合は、後は時間は掛けない
【降り注ぐ黒闇】の黒刃を展開
逃げ場をなくすよう八方から全て同時に放つ
●LAP24:V.S.オルハ・オランシュ&ヨハン・グレイン
慢心があったと、そう認めざるを得まい。
ウィンドゼファーは、全身がひび割れた状態で、無言で自戒した。
猟兵は強い。疑うべくもない、否定したところで見苦しいだけだ。
……もっとも、それを揶揄する者もいない。幹部怪人はもはや彼女だけ。
(それでも負けられない。私は、私は……!!)
こびりついた妄執は、安寧に包まれた眠りを彼女に許さない。
たちこめる土煙の中を、幽鬼じみた足取り歩くウィンドゼファー。
……そこへ、ふたりの猟兵がやってきた。
少女は思う。風を友とし三叉矛を振るうスタイル、生業で磨いた暗殺技術。
威力よりも身軽さと速度に重きを置いた体捌きは、ある意味で怪人と同じ。
だからオルハは、敵ながらウィンドゼファーに親近感を抱いていた。
もっとも言葉ほどに穏やかなものではなく、敵として討つ覚悟は決めていたが。
少年は思う。一つを極めるということは、彼の信条にも通ずると。
疾さ、などというバロメータは魔術師たる己には不似合いだが、それはそれ。
けして己に向かぬベクトルであるからこそ、一種のリスペクトも生まれよう。
己の非才を凡夫と噛み締めながら、あがき続けるヨハンならば、なおのこと。
「……で、落ち着きがなんだって?」
「いや、別にあなたのことを言ってるわけでは」
「ふうん。まあいいや、そういうことにしといてあげる」
「はぁ。なぜ俺は微妙に責められているのでしょうか……」
ふたりの軽口も、粉煙の向こうからおのれらに向けられた重圧に、途絶えた。
敵が、来る。ヨハンとオルハは即座に身構え、もはや堂に入った連携姿勢。
きらり、と、ヨハンが指に嵌める凍てつくような蒼石の銀指輪が煌めく。
それが合図になったかのように、煙を裂いて暴風が吹き荒れた!
「来る!」
「俺が止めます。前へ」
「わかった!」
ぱきぱきと音を立てて、周囲の大気が極度低温化し凍りついていく。
ヨハンの魔力がもたらした氷の魔法。花々は霜を張り永遠の美に閉ざされる。
それはまるで、過去に滅びしるべなき欲望を求める怪人のようでもある。
『私は負けない、何があろうと必ず勝ってみせるッ!!』
そして妄執が現れた。ギャルギャルと、耳障りな回転音をあげる処刑刃ふたつ。
生まれた竜巻のいななきは、立ち向かう少年少女を嘲笑うかのよう。
「その意気込みと執念、わからなくもないのですが……っ」
ヨハンは藍色の瞳で車輪剣を睨み、氷の魔力をそこへと収束させた。
冷気は氷の壁でウィンドゼファーを取り囲み、さらに車輪を封じようとする。
パキパキパキ――ギャル、ル、ギャギ、ギャギギギギギギッ!!
凍らせたはしから、猛烈な回転がシャーベット状に氷を吐き出す。
なんたる獰猛さ。ヨハンの眼から、極度集中により血の涙が一筋溢れる。
拭うことも忘れ集中する。動かない、それが己の役目だからだ!
一方のオルハは、ウェイカトリアイナを絹布めいて風の膜で包み、走った。
敵が処刑刃を振るい、風を解き放つ。オルハもまた同じように風を解き放つ。
暴風と烈風がぶつかり合う。比べるまでもない規模の多寡。拮抗は一瞬!
(傷を負うことは怖くない、私はっ!)
白い肌を真空じみた風の刃で切り裂かれながら、オルハは羽ばたく。
ヨハンの生み出した氷の壁が砕けて舞い散り、ダイヤモンドダストとなる。
きらめく大気のなかを跳躍しはばたくさまは、朝の海を舞う白鳥めいた。
「あなたの強さは疑わないよ、けど疾さで負けたくなんか、ないっ!!」
だからオルハは、凍りついた足場をたん、たんと蹴り渡り、飛ぶ。
暴風が止む気配はない。ウィンドゼファーはヨハンめがけ突き進む!
「させないっ!!」
負けん気が彼女の背中を押し、危険の只中へと飛び込ませた。
怪人の双眸が鋼越しに見返す。全身が総毛立ち、死のヴィジョンが脳裏に。
(ヨハンがいる、だから大丈夫)
オルハは幻視を振り払い、己を鼓舞するかのように大きく羽ばたいた。
防御の選択肢はハナから捨てている。捨て身の一撃、滑空による強襲だ!
『地に、落としてくれます……ッ!!』
優雅に空を飛ぶ傷ついた乙女の姿は、革命の聖女の胸をかき乱したか。
嘲笑う竜巻をしもべに従え、なべてを挑発する双車輪がオルハを迎え撃つ。
ミキサーじみた、あるいは洗車機めいた死の戸口。オルハはそこへ……否!
『!?』
ウィンドゼファーは瞠目した。双眸は視えないがそれは間違いない。
オルハは衝突寸前で、唐突に上方へ滑った。そう、滑ったのだ。
見よ。大気の水分を凍らせ生まれた氷のスライダー。ヨハンの妙手!
『小癪な――』
「私たちの連携、見切れるなんて思わないでよね!!」
打ち合わせのない、ぶっつけ本番の搦め手である。オルハは背後。
全身の傷を苛む勢いで体をよじらせ、反転しながらトリアイナを振るう。
なぎ払い。巻き上げ、そして刺突三連。入った。敵がたたらを踏む!
「ヨハン!」
「――穿て」
待ち構えていたかのように、そこに無数の黒刃があった。
およそ150をゆうに越える闇の刃が狙う先はひとつ。集約点は敵の心臓部。
(この程度の敵に、私が負けるのか。私は――)
ウィンドゼファーは、彼方に少女と少年の姿を見た。
己に劣りながらも、互いの力を合わせて命を預けあったふたりを。
(……ああ、そうか)
過去の化身は理解した。己らもそうするべきであったのだと。
オブリビオンは本質的に邪悪である。ゆえに協調は根本的に不可能。
強烈な自我ゆえに、同種であれ――だからこそ――信頼など置けない。
だから彼らはそうした。ラビットバニー。エイプモンキー。そして。
(私が、求めるべきだったのは――)
それは彼女が自身を否定するレミングス。死と滅びを約束された者の自嘲。
骸の海に融ければそれは遺らない。過去の化身は強大だが哀れで脆い。
(……仲間、だったのですね)
闇が聖女を穿いた。それが、彼女の見た最期の風景と痛みだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
無限大の欲望。貪り尽くしてみせる。
必ず。何があろうとも、今度こそは。
たとえ、世界を滅ぼそうとも。
フランチェスカ・ヴァレンタイン
さて、それではドッグファイトと参りましょうか
マニューバを駆使した超高速機動で攻撃を見切り斧槍と蹴りでカウンターを見舞う、割と白熱した空中戦を
風は五行ですと木属性、相剋は金属性でしたかしら? 属性攻撃での付加なども
徐々に競り負ける様に装い、仕留めに掛かる相手を直線上の軌道へおびき寄せます
「どうぞ、召しあがれ…! グラビトン――ブラスタァーッ!!」
背面で噴射に見せ掛けて急速展開した仮想砲身を先制攻撃・早業で構え、UCの重力砲を損傷を厭わぬ超過駆動で真っ向からお見舞いして差し上げましょう…!
その速度でスラスターもなしに急な方向転換ができますかしら?
ええ、横に避けても射線でなぎ払いますのであしからず?
●LAP24:V.S.フランチェスカ・ヴァレンタイン
暴風を纏ったとき、ウィンドゼファーの速度はたやすく音を越える。
ユーベルコードを扱うという点では猟兵も同じ、それを可能とする者も多い。
フランチェスカもそのひとりだ。しかしその上で、なお敵は疾く、強大。
「ここまで歯ごたえのあるドッグファイトは初めてですわね!」
広大なシステム・フラワーズの天井近くを、ふたつの光が駆け抜けた。
ジグザグあるいは曲線的軌道を刻みつけたそれらは時にぶつかり合い、
DNA螺旋めいて互いの位置を入れ替えながら再び交錯する。火花が散る。
では肝心の攻防はどうか。歯噛みするフランチェスカは高速で思案する。
(被弾程度ではこちらが上、ですわね――)
ウィンドゼファーも無傷ではない。だがフランチェスカのダメージたるや。
一撃ごとに車輪剣と強烈な暴風が彼女の装備にエラーをもたらし、
肉はおろか骨を刻んで砕くような処刑刃が無慈悲に振るわれるのだ。
それでもなお継戦出来ていたことこそ、フランチェスカの技術の賜物である。
女の蹴りがしなやかな鞭めいて、ウィンドゼファーの後頭部を狙う。
『甘い』
「くっ!?」
振り返りざま、竜巻じみたなぎ払い。フランチェスカは体勢を崩す!
危険だ。ウィンドゼファーがこの隙を逃すはずはない。射線軌道も空いている。
だがフランチェスカは薄く笑っていた。これこそが布石である。
ウィンドゼファーは、あらかじめ用意された直線軌道に飛び込む。好機!
「かかりましたわね。さあ、どうぞめしあがれ!」
背面バーニアと思われたそれは、急速展開された仮想重力子砲砲身。
「虚空を拉ぎ 圧し砕くもの(アウトレイジ・グラビトンブラスター)――!!」
黒く輝く危険な重力子を収束させた、対艦級砲撃がウィンドゼファーを迎え撃つ!
『甘いと、言いましたよ!』
「……!?」
ウィンドゼファーが、消えた。否、ミスディレクションか!
「薙ぎ払ってさしあげます!」
『遅い……!!』
砲撃の刀身じみた光条がしなり、ウィンドゼファーをめがけ薙ぎ払われる。
だが疾い。当然だ、ウィンドゼファーの速度はあらゆる法則から解き放たれている。
それがユーベルコード、軌跡の力。
いかにフランチェスカの装備が精強無比かつ精密だとしても、これは……!
「ただでは終わりませんわ!!」
フランチェスカは即座に覚悟を込め、あえて砲撃をリミッター解除!
すなわち自爆である! 仮想砲身が出力に耐えきれずひび割れ白熱、圧壊!
「スラスターもなしにその急制動、見事なものですわね」
『何……!?』
「ですが――鎧装騎兵を、どうかお嘗めくださいませ?」
空に、黒々とした爆炎が吹き荒れ、ふたりを飲み込んだ。
己をも厭わぬ過剰出力による零距離砲撃。女の意地が怪人を穿ったのだ。
苦戦
🔵🔴🔴
ツーユウ・ナン
まさに砲弾の如き速さよ…
だが、速さは諸刃の剣じゃ。
音速で突撃するというのは、音速で衝突するという事。
つまり、奴の突撃を正面から受け、わしが”砕けなければ”その威力はそのまま奴に跳ね返る…!
敵も用心するはず、冷静さを失わせる鍵は速さへの欲望か?
●敵UCを凌ぎ”欲望”をかき立てる
・馬歩站椿にて氣を練り【オーラ防御】、軌道を読んで【見切り】鋭い反応反射【野生の勘】による防御で耐える【激痛耐性】
→車輪剣にはオーラ化勁による受け捌き【グラップル】【武器受け】
「速い…、だが見える!」
●ふと防御姿勢を解いて突撃を誘う
「もっと速くなれるか?」【挑発】
全力突撃を引き付け【カウンター】で『UC』⇒頂肘
哼フン!
●LAP26:V.S.ツーユウ・ナン
――ズシン!!
空から着陸した暴風の威容を見、ツーユウはぞくりと体を震わせた。
恐怖? 否、武者震いである。あの速度、それによってもたらされる破壊力。
まさに砲弾のごとし。否、天より降り来たさまはさながら流星か。
(だが、そこに付け入る隙がある。それが諸刃の剣というものよ)
女武人はにやりと不敵な笑みを浮かべ、風の中心部へと一歩を踏み出した。
ずしゃり。花々を踏みしめるさま、死地へと赴く修羅のそれである。
『……新手ですか』
「御免。不意打ちは好かぬタチゆえな」
気配を隠すことなく、土煙の向こうから姿を見せたツーユウ。
ウィンドゼファーの負傷は……戦闘を阻害するほどではないらしい。
であれば単純な趨勢は彼方にある。だからといって臆しはしない。
「聞けばおぬし、疾さにいたくご執心らしいのう?」
ツーユウは重心を落としつつ、両足を肩より大きく広げて身構えた。
立禅、あるいは站椿(たんとう)と呼ばれる、集気功のひとつである。
ツーユウの筋肉がぶるぶると緊張して引き締められ、両肩から湯気が立ち上る。
その五体に満ちる気力、いかばかりか。大気が陽炎めいて揺らいだ。
『……カウンターでも狙いますか。私の疾さの前では妥当でしょう』
「然りよ。いかに鍛えど、この身はおぬしのような凄絶な疾さには届かぬ」
女は端的に認め、しかし口端を歪めたまま相手を見据えている。
「だが、疾さだけが武功ではあるまい? ましてやおぬしは欲に駆られし者。
一度は亡びた身を前にむざむざと敗けるほど、やわな鍛え方はしておらぬわ」
『大口を叩くものですね。なるほど、度胸は相応と見ました』
ギャル、ル……ギャル、ギャギギギギギ……。
双車輪がいびつな刃音を立てる。大気がうねり渦を巻いて女を包んだ。
ツーユウのこめかみを冷や汗がこぼれ落ちる。だが口元には微笑。
これだ。この緊張。張り詰めた弓弦のごとき一触即発、刹那に生死を置く今。
これこそが鉄火場であり、修羅の求めるところ。こうでなくては!
――ふと、ウィンドゼファーが眼前に居た。
「……は」
ツーユウは笑った。出鱈目のような瞬歩、いや武功ではない。
起こりすら見せぬほどの加速。思い出したように暴風が爆ぜた!
「だが見えるッ!」
ギャルルルッ!! 大気を焦がして振るわれる車輪剣をいなす!
揺らめく気功を帳めいて纏う両腕が、掌が丁寧に刃を受け、捌くのだ!
「どうした、もっと疾くなれぬのか?」
『嘗めた口を――!!』
斬撃。ツーユウはこれを受けきれぬと見て硬気功を素早く練った。
この判断は正解。鋼めいた筋肉がずたずたに裂かれるが腸には届かない。
「かはッ」
『轢き潰してあげましょう――!!』
一瞬にして距離をとったウィンドゼファーが、弾丸じみてツーユウに直進!
ツーユウは鮫じみて笑う。思い描いた軌道と敵のそれが一致した!
「哼(フン)ッ!!」
『ぐ……ッ!?』
KRAAAAAASH!! トレーラーが激突したかの如き轟音と衝撃波!
大地が砕け噴煙が巻き上がる。吹き飛んだのはウィンドゼファーだ!
ではツーユウは? 両足で大地を踏みしめいまだ健在……しかし!
「ッッ……フゥウウウ……!」
全身からおびただしい脂汗を噴き出しながら、ツーユウは調息を怠らない。
打ち出した右頂肘に対し、左半身はもはや血塗れの有り様であった。
敵の撃力を肩から胸部にかけてで受けたのだ。骨が砕け肉と混ざり合っている。
しかしそれをアイソメトリック緊張でかりそめに繋ぎ合わせ、野太く息を吐く。
常人ならばショック死しかねぬ激痛、耐え抜いたのはひとえに武功ゆえか。
「……我が身体に堅固不動なる心を宿せ……南無本師釈迦牟尼佛……」
迫りくる猛威に対し、あえてその身を盾として反撃の一撃を突き刺す。
これぞ龍氣金剛功。ただならぬ功夫と己の業と五体への信頼があらばこそ!
「おぬしの疾さ、見事。だが音速で突撃すれば、己が音速で衝突するということ」
己が砕けさえしなければ、手の打ちようはある――あった。
「その身にしかと刻むがいい、龍女の拳をな……!!」
霞む視界の先、敵を睨めつけ、恐るべき龍は唸った!
成功
🔵🔵🔴
ゼイル・パックルード
やっと正統派……つーか、まともに戦えるヤツが来たっつーか。
今までの奴はいまいちどうすればいいか掴みきれなかったが、その分楽しませてもらうぜ。
速さで勝てそうにない……が、【残像】を発生させて相手を惑わしつつ、隠れられる箇所を転々と移動する。
最悪直撃は避けるために、鉄塊剣は今回は盾替わりだな。
尋常じゃない速さだが、相手の速度に目を慣れさせ【見切り】をする意味もある。真正面からくるのか、トリッキーに後ろに回ってくるのかも確認する。
ある程度目が慣れた、もしくはこれ以上攻撃を避けられそうになければ高く【ジャンプ】する。
後は自分の見切りと【第六感】を頼りに邪刃一閃を叩き込む。
刀を抜く速さなら俺も負けねぇよ
●LAP27:V.S.ゼイル・パックルード
強敵を前にした時、猟兵が見せる反応はおおまか二つ。奮起か不敵かだ。
ゼイルの浮かべた笑みは後者に近いが、しかしその本質はより昏く不遜なもの。
(ようやく、命を賭けて殺りあう敵が出てきてくれたじゃねえか)
殺るか、殺られるか。それを前提とした、羅刹じみた狂笑である。
地獄の炎に魂まで焦がされたような男は、ただ戦闘の高揚を渇望していた。
それは、欲望を貪らんとする怪人と、似て非なるモノだと言えよう。
ごひょうっ!!
強烈なカウンターにより吹き飛ばされたウィンドゼファーは、風を解き放った。
荒れ狂う暴威が土を花を吹き散らし、新たな刺客の姿を現す。
『次は貴様か――!?』
そして、彼女は驚愕した。敵……つまり猟兵は、あちらから挑んできたからだ。
不意打ち搦め手の類を、卑怯とそしるつもりはない。彼女は武人ではない。
ゆえに不意を突かれたことにではなく、その男の決然たる攻めに驚いたのだ。
捨て身? 否、こちらが放った風を彼奴は鉄塊剣で防ぎきった。
自暴自棄ではない。だが前のめりに過ぎ、沈着と呼ぶにはあまりに凶暴。
飢えた狼の蛮性と泰然自若たる賢者の如き怜悧、それが混在する男。
「伊達じゃねえな、疾さじゃ勝ち目がなさそうだ」
その男、つまりゼイルは愉しげに嗤笑しながら地を蹴った。
一瞬遅れて風が吹き荒び、続く不可視の刃がゼイルを真っ二つ――否、残像。
『どこだ!!』
またしても像。ゼイルは笑みを浮かべたまま飛び石めいてあちらへ、こちらへ。
時折本体が直撃の憂き目に合うが、それを鉄塊剣が防ぎ、弾く。
とはいえその威力を全て削げるものではない。肌は裂け血が飛沫いた。
(ああ、いいぜ。そうでなきゃ面白くないんだ)
じりじりとした熱を、灼けた鉄めいて裡に孕みながら、ゼイルは跳ぶ。
己を裂くこの傷の痛みすらも心地よい。しかして意識はじっと敵の挙動へ。
尋常ならざる速度だ。音を超えるたび、爆ぜた大気が鼓膜を苛む。
あるいはとうに破けているか。構わない。眼を慣れさせられればそれでいい。
ただ殺すために。ただ滅ぼすために。痛みも傷もそのための代価。
激突の瞬間へと近づくほど、ゼイルの熱は燻り彼の心身を焦がすのだ。
カタストロフが近い。両者が言葉をかわすことなくそれを察していた。
徐々にゼイルの回避が追いつかなくなり、傷が増えつつある。
ならば、殺す。風ではなくこの車輪剣で敵を切り裂くと女は決めた。
ゼイルはどうか。敵が己の動きに慣れるのは、当然ながら織り込み済み。
こちらも相手の動きに慣れるため、幻惑的軌道で攻撃を誘ったのだから。
「そろそろ仕上げと行くか――なあ?」
溢れた呟きはごうごうと唸る風の中に消える。返答は求めていない。
それはいわば、揺らめく炎が散らした火の粉の音のようなもの。
敵は必ずその手で命を取りに来ると確信していた。
なぜならば彼もそうする。遠間の攻撃で終わらせては甲斐がない。確証がない。
共に満たされぬ虚を抱え、当て所もなく吹き荒れ/燃え盛るモノ同士。
(理解(ワカ)るんだよ、あんたの考えは)
喉を鳴らすさまは獣じみて。目が細まった瞬間、死が炎を裂いて現れた。
――ガギンッ!!
「が、はッ!!」
『ぐ、ぅうう……!!』
双閃、ともに身を切り裂く。強烈な威力にざりざりと地を削り、両者後退。
ゼイル、腹部から胸部、肩に抜けるような逆袈裟の剣閃が肉を抉っている。
熱血が溢れたはしから燃え上がり、仮初に傷を灼いて塞いだ。凄絶。
ウィンドゼファーもまたすさまじい有り様だ。腹部を断ち割る真一文字の傷。
彼女が異形の怪人でなければ、暴風を纏っていなければ。
間違いなくその太刀は、脊髄もろとも体を両断していただろう。
『な、ぜだ……私の疾さを、凌駕した、とでも……ッ』
「いや。あいにくあんたの疾さは視えちゃいねえさ。捉えたのは兆しだけだ」
血の混じった唾を吐き捨て、昏い炎を双眸に揺らめかす男が嗤う。
「だが、刀を抜く疾さなら――俺も負けねぇよ」
邪刃一閃。獲物の命を断つことだけを見据えた死の一撃はしかと届いた。
本懐は遂げられず。だがそれもよしとゼイルは嗤う。
そのぶんだけ、楽しみが増えたということなのだから。
成功
🔵🔵🔴
黒城・魅夜
鎖を広範囲に撃ちこみ、アンカーとして暴風に対応します。
もちろんその足場もろとも崩されます、しかし一瞬だけでいい、耐えることができれば……
止めた時の中では崩れる足場も荒れる風も無意味と化します。
……もちろん私も永続的に時を止められるわけではありません。
能力が切れてしまえば無為に攻撃を受けてしまうでしょう。
時が止まっているうちにどこまで間合いを詰め一撃を入れられるか。
それが勝負です。
遠い距離を無策で駆け抜ける?……いいえ。
先ほど撃ちこんでおいた鎖は、そのまま、攻撃手段の布石。
いわば鎖を腕とし、「投擲」と「スナイパー」をもって、「私自身を」相手に向かって投げつけるのです。
己をただ一本の矢として。
●LAP28:V.S.黒城・魅夜
時を止める。
まさに神の御業――ユーベルコードは、それをすら可能にする。
だが、奇跡の力は敵の武器であり守りでもある。そして全能でもない。
ゆえに、彼女はその力に全幅の信頼を置かない。あくまで手段のひとつとする。
あとはいかに通じるか。試すことへの恐れは――ない。
がきん。最後の鎖が穿たれ、これにて結界は完成した。
「――ようこそおいでくださいました、ウィンドゼファーさん?」
鎖の森の中央に佇む恐るべき死神は、満身創痍の女に慇懃に礼をしてみせる。
ウィンドゼファーの負傷たるや、戦闘を継続するのが不思議なほどだった。
逆説的に、それは彼女がいかに死に物狂いであるかを証明している。
負傷によるぶんを意気でカヴァーする。それを可能にする重圧が満ちていた。
『……そんな鎖を地に突き刺した程度で、私は捉えられませんよ』
「ええ、そうでしょうね」
動転するふうもなく、魅夜はうっそりと頷いてみせた。
"それは目的ではない"。だがいちいち、敵に手の内を明かすつもりもない。
「あなたの疾さはそれほどのものですから。自認なさっているのでしょう?
であれば、御託を並べずに参られてはいかがですか。それとも――」
『十分です』
ぴしゃりと、無表情な女の挑発をウィンドゼファーが遮った。
ただ靜かな、煮えたぎるような殺意と怒りが魅夜の全身を叩く。
『その大口もろとも、何もかもを吹き飛ばし、切り裂きましょう』
魅夜の表情は不動。まるで感情というものが抜け落ちたかのように。
こと敵を相手にした時、彼女は無慈悲にして容赦なき死神となる。
それが咎人殺したる、悪夢の滴の正しい有り様なのだから。
さながら西部劇のクライマックスめいた緊張が、その場を包んだ。
魅夜の黒髪がそよ風に揺れる。明らかな、破滅を生む暴風の先触れ。
「疾さを極め、際限なき世界を滅ぼす欲望に耽溺する。ああ、実に」
底冷えするような双眸が、ぎろりと怪人を睨めおろした。
「――愚かなことですね」
ドウッ!! 爆弾が破裂したかのようなすさまじい衝撃と音が響いた!
暴風が一瞬にして収束し広がった結果である。地が砕け舞い上がる。魅夜は!
……魅夜は、地を蹴った。その瞬間、何もかもが静止していた。
(時よ)
口訣は心の裡にて。肉感的な唇の狭間に牙が覗く。
(脈打つ血を流せ――汝は、無敵無傷にあらぬもの)
我が白き牙に喘ぎ悶えよ時の花嫁(ザイン・ウント・ツアイト)。
"時"の精髄を啜り、以てこれを支配する超常の業。世界を跪かせる御業。
されど時流をも手管に巻くのは一瞬のこと。じきに全ては元に戻ろう。
攻撃から逃れることは出来ない。そもそも魅夜はそのために使ったわけではない。
地を蹴った。その先はウィンドゼファー? ……否。否である。
彼女は背後、すなわち鎖の結界へ躊躇せずに飛び込んだ。
何もかもが彫像めいて静止した中、彼女に触れた鎖が鳴り姫を受け止めた。
たわむ。張り詰める。引き絞られた様は剛弓の弦めいて。
「この身は無事ではないでしょう。あなたを仕留められるかも怪しい」
残り、体感時間コンマ5秒。魅夜は敵を見据えて云う。
「――ならば、我が身を矢としてあなたを貫くまで」
魅夜の表情は不動。覚悟は初めから決めている。
そして時が動いた。一条の矢が、虚空を切り裂いた。
『が……ッ!?』
がらがらと崩れ行く足場のなか、それは――否、その人は、敵を穿いた。
己を矢として、鎖の弓弦で放つ一撃。時を止めたその一撃は自棄であり決死。
避けることなど考えない。ただ一瞬が己に得られればそれでよかった。
その覚悟が結果をもたらした。ウィンドゼファーが血を吐き、血を嘗める!
……かくて己自らを矢として放った女がどうなったか、言うまでもない。
見よ。砕けた地の狭間、滂沱の血を流し倒れるあれが女の成れの果てだ。
では死んでいたか。否。心折れていたか。それも否。
やがて悪夢は立ち上がる。求めるべき時へたどり着くために。
成功
🔵🔵🔴
シオン・ミウル
疾いのがいいってのは分からなくもない、かなあ
風を操るってのはちょっと親近感湧くしね
ともあれ、気を抜ける相手じゃないよね
『全力魔法』で風を繰っていこう
・SPD選択への先制攻撃対策
足場を崩されたら飛んで避ける
暴風には身の周りの風の流れだけでも変えて、
平時と変わらずいられるようにしよう
幽子おねーさんの方にも風を送れたら同じように
・WIZ選択への先制攻撃対策
竜巻に風をぶつける、掻き消すまではいかなくとも攻撃を逸らしてみせる
車輪が止められるまで、風が足りなければ身の守りを捨ててもいい
『激痛耐性』で耐えられるところまで
先制攻撃を凌げたらTaktを振り【奏風】
どう動こうと逃がさないつもりだよ
絢辻・幽子
シオンくん(f09324)と
油断したら、バラバラにされそ
それにしても速いのがいいなんて、
生き急いでいらっしゃいますねぇ……?
WIZ選択への先制攻撃には
車輪剣へ『蜘蛛の糸』を巻き込ませてみる
『時間稼ぎ』くらいはできるでしょう?
できなければ、絡繰り人形と『オーラ防御』での防御を
お人形さん痛いでしょうけど、頑張ってね?なぁんて。
狐火はこんこんと、ぐるぐると、囲って
消しても出現させるまでです
ふふ、火でおしくらまんじゅうしてあげますね。
SPD選択への攻撃には
『ロープワーク』『地形の利用』で足場の確保を
シオンくんが飛ばされそうなら
『おびき寄せ』で糸を結んであげましょうか
あらぁ、風船みたいねぇ
●LAP29:V.S.シオン・ミウル&絢辻・幽子
「ああ、ああ。油断したらバラバラにされそ」
「疾いのがいい、ってのは。わからなくもない……かなぁ」
「あら、そうなのかしら?」
「風を操るってのは、ちょっと親近感湧くしね」
「なるほど。――あぁ、それにしても」
かつん、こつん、ヒールの音を鳴らし、痩身の女は揺らめくように笑った。
「疾いのがいいなんて、生き急いでいらっしゃいますねぇ……?」
生から解き放たれた過去の化身に、その言葉はいかにも酷である。
シオンと幽子。ふたりはそんな軽口を叩き合いながら戦場へやってきた。
そして見た。あちこちに生まれた崩壊の有り様、そして敵のざまを。
ボロボロ、という一語で表現するには凄まじく、しかしそうとしか言えない。
「あれでもまだ、立ち上がるんだね」
「怖い、怖い」
かたやゆるりと、かたや囁くように。しかして両者に油断や慢心はない。
そんな気軽な面持ちでいられるほど、敵が放つ殺気は易いものではなかった。
「翔んで避けるわけにもいかないか」
「ここは彼処(あそこ)みたいに、星は見えないものね」
「うん。目をそらすことも、出来なさそうだからね」
然り。シオンの言葉通り、陽炎をどよもす敵の威圧感は強烈に尽きる。
それはプレッシャーの錯視であり、揺蕩う暴風の先触れでもあった。
「なら、私が糸で結んで、あなたを繋いであげましょうか」
「あはは。それもいいかも」
ゆるりと風に舞う"蜘蛛の糸"が、ふたりの周囲を包み込む。
その時、一瞬の静けさが訪れ――そして、暴風が全てを吹き飛ばした。
ごおおうっ!! ギャル、ル……ギャル、ギャルギャルギャルギャルッ!!
『ここは通さない。誰もです。猟兵、天敵ども、全て殺してみせますッ!!』
すさまじい執念と妄念であった。無限じみた欲望への渇望があった。
まずシオンは翼をはためかせ、荒れ狂う風を避けるように足場へ翔んだ。
指揮棒を振るうたびに彼の全身を揺らめく風の膜が包み込み、つかの間守る。
「だめだな、保たないか」
即座に破砕を判断したシオンは、風の守りを収束させ竜巻めがけ送る。
タクトが向けられた先――すなわち双車輪めがけ、風の塊が唸りを上げた!
『邪魔だ……!!』
竜巻が蛇めいてとぐろを巻いて、このいじましき風を一瞬で呑み込む。
それでいい。幽子への直撃は避けられた。であれば手はある。
「お人形さん、痛いでしょうけど頑張ってね?」
がしゃりがらがら、虚を見つめる球体関節の"ひとのこ"が無機質に動く。
ヒトの姿をしていながら、四肢で飛び渡るさまはまるで獣めいて。
嘲笑うように軋む車輪がこれを飲み込み砕いてバラバラに轢き潰した。
破片はしかし吐き出されることなく、糸と共に絡まり刃をせき止める。
「怖い、怖い。そんな危ないおもちゃはダメよぉ?」
『時間稼ぎのつもりですか、この程度の糸などッ!!』
ぎちり、ぎち、ぎぎぎぎ……ぶち、ぶちぶちぶち……!
蜘蛛の糸を乱暴に引きちぎりながら、不満めいた唸りをあげて車輪が軋む。
暴風はなおもドーム状に花々を散らして地を砕き二人を飲み込んだ。
ふわりと、舞い散る花々のように幽子が跳ぶ。その髪を、肌を風が裂く。
「痛っ」
「幽子おねーさん、大丈夫?」
「まずいかもしれないわねぇ……っ」
シオンは風の守りを幽子へ送り込むが、これも数秒で爆ぜるだろう。
指揮棒を構え、全魔力を己の指先へ。己を守っていた風が損なわれ、
暴風が彼を切り裂く。おびただしい裂傷、飛沫をあげる鮮血!
「……ッッ」
「大丈夫よ、シオンくん」
風の中で、幽子の声はいやにはっきりと聞こえた。
にこりと笑う女。ゆらゆらと廻り燃えるは狐火の輝き。
「締めて、燃やして。終わらせてあげましょう?」
「――そうだね」
そして炎が逆巻いて、後を追うように指揮棒の導きで風の螺旋が敵をめがけた。
処刑刃が戒めから解き放たれた瞬間、新たな戒めが女を襲った。
糸よりもか細く、されど不可視ゆえに解き放てぬ奏風の拘束が。
『やめろ、私を縛るな! 私は、私はッ!!』
「だめよぉ」
狐が艶やかに微笑み、そしてすっと目を開く。
「疾さがお好きなら――最期もするっと、手早く。終わらせなきゃ。ね?」
ウィンドゼファーは何かを叫ぼうとした。おそらくは罵詈雑言を。
狐火はそれを許さぬかのように殺到し、縛られたその身を燃え上がらせる。
トーチめいて燃え上がる鋼は、やがて風が消え失せた時燃えて崩れた。
「……哀れなものだね」
「あら。同情しちゃった?」
からかうような声音に、シオンは頭を振る。
「ううん。俺と彼女とじゃ、似てるようで全然違ったから」
少年は縛られない。我欲にすら。どこまでも自由に在る、それゆえに。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●
思えば、なぜこうして欲望を求めるようになったのだろうか。
――それすらも忘れるほどに、ただ。ただ、この身と心は焦がされる。
神酒坂・恭二郎
「俺の名は神酒坂恭二朗。一手お相手願おうか、ウィンドゼファー」
一瞬後には吹き飛ばされるが死にはしない。
【暴風】に逆らわず跳べば、致命傷だけは避けられるからだ。
【おびき寄せ、見切り】
「そいつはお前さんの“最速”じゃないな」
血塗れで指摘する。
フルスロットル・ゼファー。攻防備えた恐ろしい技だ。
しかし真の最速ならば、身に纏う暴風すらも置き去りになる筈だ。
それは速度への欲望と矛盾している。
「“最速”で来いよ、姐さん」
刀の峰に片手を添えて斜構え。
野球で言えばバントだ。
添えて斬るが故に【暴風】を越える力は無い。
悪くはない。
奴が“最速”に至らねば俺が死ぬだけだ。
結末は彼女の心次第だ。
【覚悟、優しさ、礼儀作法】
●LAP30:V.S.神酒坂・恭二郎
「一手お相手願おうか、ウィンドゼファー」
骸の海から立ち返ったその時には、すでに着流しの男が目の前にいた。
あるかなしかの笑みを浮かべ、きらめくような力強い眼で彼女を見据える。
不敵である。だが不思議と、吹き抜ける風のように気持ちのいい男だ。
『あいにく私は、武人ではないのですが』
「構わんさ。これはいわば俺のひとりよがりだ」
恭二郎はそう嘯いて、腰を落とした居合の姿勢を作ってみせる。
ウィンドゼファーは敵手の程度を見て取った。業前はなるほど剣豪らしい。
だが、天敵を相手に、挑まれて感服するような好みは彼女にない。
『ではお望み通り――吹き飛ばし、切り裂き、バラバラにしましょう』
その身を竜巻のような暴風が包んだ。恭二郎の目では、そこまでが限界。
次の瞬間には、彼は紙くずのように吹き飛ばされ宙を漂っていた。
ぐしゃんっ!! と、哀れな武人が無様に地に落下する。
終わった。ウィンドゼファーに感慨や憐憫のたぐいは当然ない。
踵を返しその場を去ろうと――して、一歩を踏み出しかけ、立ち止まった。
『……なぜ生きているのです?』
「聞きたいのはこっちだぜ」
よろけながら、男が立ち上がった。そう、恭二郎は生きている。
なぜ? ……訝しんだウィンドゼファーは、しかし理屈がわかった。
彼はウィンドゼファーの速度を捉えることは出来なかった。
だが極限集中のなか、その"起こり"は見えた。剣豪の勘が捉えた。
ゆえに、翔んだ。迎え撃つも抗うもせず、暴風に己を任せたのだ。
そして風に揉まれて切り裂かれ、空をくるくると転がされ、堕ちた。
無傷ではない。いまの恭二郎は全身が血まみれで傷だらけである。
ましてや、あえて敵の攻撃、ああも無様に受けてみせるなど。
誇り高き剣客ならば、矜持が許さぬであろうに。彼はあえてそうした。
『……何を聞きたいと』
男の覚悟と意地に内心舌を巻きながら、ウィンドゼファーは問い返す。
恭二郎はなおも不敵に笑う。言わずもがなそれは強がり、だが貫けば真実だ。
「そいつは、お前さんの"最速"じゃないな」
ぴしり。
足場に音もなくヒビが走った。花々がひとりでに舞い散った。
気である。ウィンドゼファーの全身から放たれる殺気がゆえ。
それを前にして恭二郎は、しかし淡々と指摘する。
「お前さんのユーベルコード、攻防を備えた恐ろしい業だ。
もしもいま俺が抜刀していたとして、暴風の守りは切り裂けなかったろう」
『…………』
「しかしだ」
目が細まる。
「真の最速ならば、"身に纏う暴風すらも置き去りになる"はずだ」
……然り。ウィンドゼファーは欲望によって暴風を纏う。
欲望が高まる限り、その力は累乗倍に膨れ上がり敵を圧倒する。
だが何よりも疾く在るというなら。風"ごとき"はあとに引くのが当然。
「それは、お前さんの欲望とやらと矛盾しちゃいないかい」
『…………』
ウィンドゼファーは無言。恭二郎はおもむろに刃を抜いて、奇妙な構え。
刀の峰に片手を添えた、野球で言うバントのような姿勢である。
「"最速"で来いよ、姐さん」
『…………』
いっそ優しい声音であった。それが却ってウィンドゼファーを逆撫でした。
"我慢するな"と、大人が子供に言い聞かせるような声音だったからだ。
己が。己が我慢をしている? 辛抱をしていると? 欲望を求める我が?
不敵である。不遜である。だが……あの構え。明らかな罠。
最速へ至れば彼奴の刃は己を切り裂こう。
だが言葉を踏みにじるなら、それはすなわち彼奴の言葉を肯定すること。
欲望が己を生み出した。今の己は欲望がゆえにある。ならば。
『……いいでしょう』
暴風が生まれた。それは剃刀じみて収束し、ゆらめく靄となった。
『その見え透いた罠もろとも、吹き飛ばしてあげます』
にやりと恭二郎が笑った。ウィンドゼファーは。
『…………死、ねッ!!』
絞り出すように、強いて悪辣な語彙で吐き捨てて、消えた。
最速に至った。避け得ぬ矜持をつついた見事な挑発であった。
だがそれゆえに、烈風が全てを切り裂いたあと、ウィンドゼファーも深手を負った。
風はない。およそ3分、いまの彼女のユーベルコードは使えない。
だから恭二郎は命を拾った。両腕をあべこべにへし折られ、倒れる男。
『……忌々しい』
なぜそんなに清々しい顔をしている。どうして己を見つめる。
剣豪のまっすぐな面持ちを、ウィンドゼファーはもう見れなかった。
……よろめきながら去る後ろ姿は、少女のように頼りない。
大成功
🔵🔵🔵
リーオ・ヘクスマキナ
ウッワ、速!?
……けど、このままじゃこの世界のキレイなものが失われちゃう
それはちょぉっと容認出来ないんだよねェ
初撃は俺自身で受けようか(【激痛耐性+オーラ防御】)
偽装ギターケースを盾にしつつ、【第六感+野生の勘】で程々にクリーンヒットは避けたい所だねぇ
実は、この攻撃で俺があんまり戦えなくなっても問題は無いんだ
何せ俺は一人じゃないしね? カモン、赤頭巾さん!
前衛は彼女に任せて、後方から隠れつつ確実に弾丸を当てることに集中するよー(【スナイパー+援護射撃+暗殺】)
霊体である事を駆使した赤頭巾さんの変幻自在の攻撃と、俺の射撃の合わせ技。この赤信号、そう簡単には進ませるつもりはないよ!
●LAP30:V.S.リーオ・ヘクスマキナ
ギャルギャルギャル!! ギャリリリリ、ガリガリガリッ!!
「ウッワ、疾っ!?」
嘲笑うような竜巻が吹き荒れる。そして唸る車輪剣の恐ろしさたるや!
リーオは臆しかけながらもしかし退かない。退けばこの世界は終わる。
"キレイなもの"が失われる。それは、少しばかり、看過できなかった。
ゆえに少年は、自ら飛び込むようにしてギターケースを盾めいて構えた。
ギャルルルル……ガリガリ、ガギギギギギバリバリバリッ!!
重機じみた破砕音を立てて、偽装ギターケースがたやすく食い破られる!
「ヤバッ」
『その程度の守りなど! 私の前にはッ!!』
何が苛立つのか、負傷を受けた状態のウィンドゼファーは猛々しく叫ぶ。
リーオはその理由を知らない。むべなるかな、それは他の猟兵の話だ。
だがいま、その暴威を向けられるのは少年である。うかうかはしてられない!
「ああ、ああ、ヤバいね。けどさぁ! このままにゃしてられないって!」
『では死ね、死んで、轢き潰れて、粉々になれェッ!』
叫びをも呑み込む嗤笑が、暴威が、ついにリーオを……おお、おお!
「げっほ、がはっ」
片腕を抉った見るも無惨な傷を抑えながら、リーオは血を吐く。
片腕。片腕は守りきった。愛銃、SLG-8マークスマンライフルも同様。
ならば十分。無事な片手で帽子を抑えながら、リーオは笑う。
「カモン、赤頭巾さん!」
『何……!?』
……それは、たしかに赤頭巾のような姿をしていた。
が、明らかにこの世のもの、否、この宇宙のものではなかった。
おそらくはUDC。その正体はリーオにすら判然としない。
いずれにしてもそれは錆びたナタのような大鋏をやおら振り上げ襲いかかる。
ウィンドゼファーはこれを迎え撃つ。鋼と鋼が撃ち合い火花を散らした!
「ほら、隙だらけだ!」
BLAMN!! 即座に飛び退いたリーオによる援護射撃!
『がっ!』
脇腹を穿つ。ウィンドゼファーはあえてこれを受け赤頭巾を吹き飛ばした。
では赤頭巾はどうするか。彼方もまた地獄じみた散弾銃を抜いたのだ。BBLLAMMN!!
『ええい!』
燃え上がる散弾を弾き、砕く。リーオが照準を――ギャルルルルルッ!!
「おわっと! おっかないなあ!」
竜巻が蛇めいてうねり、リーオもろとも地を削り取る。
アウトレンジだからといって油断は出来ない。コンビネーションを切らせば、
すなわちそれが終わりだ。即座にリロードをしトリガを引く、BLAMN!
『鬱陶しい真似を!』
「実に結構、悪いけどこの赤信号、そう簡単に進ませるつもりはないよ!」
おそらく先の苦悶を遥かに超える痛みと絶望が少年を襲うだろう。
それでもいい。ここは守り抜く。そして、その先へ進む。
キレイなものを護るために。少年は全てを利用し戦う覚悟を決めた!
苦戦
🔵🔴🔴
千桜・エリシャ
あら、疾さ自慢ですの
そう…ならば、鬼ごっこは如何かしら?
鬼はもちろんこの私
さあ、遊びましょう?
随分と強い風ですこと
花時雨を開いてオーラ防御、そしてカウンター
あなたの足場も崩してあげる
崩れる足場は見切りと空中戦で回避
では、今度は私の番ですわね
桜花葬送――高速移動で鬼ごっこの開始ですわ
逃げても無駄
吹き荒れる桜の花弁が、あなたの軌道を可視化して教えてくれる
動きの予測を付けたならば、そこへ生命力吸収と呪詛を載せた斬撃を2回攻撃で飛ばして
その疾さを蝕んで差し上げましょう
私だって止まらない
己の寿命を炉に焚べて
走って、疾走って、奔って
追い詰めたならば、
――捕まえた
愉しい鬼ごっこに感謝を
御首をいただきますわね
●LAP30:V.S.千桜・エリシャ
鬼がいた。
リーオが我が身を犠牲にしてまで稼いだ時間を継いだ形である。
蛇めいた凶暴な竜巻を、桜と胡蝶を纏う刃が切り裂き、かき消す。
「リーオさん、もう十分ですわ。あとは私が」
満身創痍の顔なじみに微笑みかけ、艶やかな羅刹が敵手を見据えた。
「疾さ自慢の怪人さん。今度は私と鬼ごっこなどいかがかしら?」
鬼である。見た目の問題ではない、その有り様の話だ。
"ごっこ"などでは済まない。エリシャの抱えた昏い欲求は、まさに。
「鬼はもちろん、この私――さぁ、遊びましょう?」
眼の前の怪人に届きかねぬほどに、狂的な熱を孕んでいるのだから。
『次から次へと、忌々しいことですね……!!』
リーオへのトドメを断念したウィンドゼファーは、エリシャの挑発に従う。
数度の交錯。双車輪による斬撃は、エリシャの太刀によって凌がれた。
ではこれはどうだ。地を砕く暴風が渦を巻く。エリシャは目を細める。
(やはりそれで来ますか)
だからこそ声で注意を引いて、他に巻き込む者のいない戦場に誘ったのだ。
ばさりと和傘を広げる。花時雨。胡蝶たちがのんきに羽ばたいた。
ごおう――ごひょう、ごおおうっ!!
耳をつんざくような烈風が、地を切り裂き花を飲み込み吹き荒れる。
桜色のオーラがエリシャと彼女の武器を包み込み、その身を護る。
荒れ狂う暴威の前には、所詮肌が一枚二枚増えた程度のいじましき守りだ。
だがそれでいい。エリシャはいちいち負傷を怖れるほど気弱ではない。
むしろ傲然であると言ってもいい。薄く微笑みながら、あえて飛び込む!
「あなたの足場も崩してあげるッ!」
ZANK! 剃刀じみた一太刀が地をバターめいてスライスした!
『く……ッ』
無差別攻撃ゆえ、ウィンドゼファーにも精妙なコントロールは不可能。
切り込みからめりめりと地が抉れ、足場もろとも両者は宙を舞った。
そして、暴風でも吹き散らせぬほどの、おびただしい怨念がエリシャを包む。
ゆらめく青黒いオーラの向こうで、不気味な桜色の双眸が細められる。
「さあ、鬼ごっこを始めましょう? 逃げても無駄ですけれど」
エリシャの姿が消えた。命をくれてやるがゆえの高速移動である。
あとには桜の花弁が吹き荒れる。一瞬にして五の斬撃。鋼が受け止める!
『戯言を……その程度の疾さなら、私には十分捉えられますよ!』
双車輪が嘲笑うようにいなないた。然り、斬撃はそう簡単に届かない。
だがエリシャはぐるぐると、縦横無尽にあちこちを飛び斬撃を刻む。
桜が狂ったように舞い散る。もはや桜花の結界と言ってすら。
『目障りです、消えてしまいなさい!!』
応じるかのように、ウィンドゼファーもまた凄まじい高速移動へ。
エリシャの動体視力をもってしても捉えられぬ――はず。で、あった。
「そこですわね」
『な……!?』
振り向かぬままの太刀。剣閃がウィンドゼファーを捉える。なぜだ!?
『なぜ!』
「ええ、あなたの疾さは視えていませんわ」
即座に死角を取ったウィンドゼファーを、エリシャの視線が見返した。
「けれど桜の花弁は、あなたの軌道を私に見せてくれますの」
このためだ。
桜花をあえて散らし、結界としたのはすべてそのため。
可視化された風の道を、ただ追って刃を置く。鬼の業。
命を尽きぬ炉にくべて、走り奔ってたどり着いた先。
ついに女は捉えられた。鬼が捉えた。鬼は笑った。
「楽しかったですわ。感謝いたします」
そして刃が奔る。
「さあ、頸を頂きましょうね」
ウィンドゼファーは死に物狂いでこれを、傷を受けつつ防いだ。
それは、鬼に睨まれた、蛙の如き無様なあがきだったという。
大成功
🔵🔵🔵
斬崎・霞架
※アドリブ歓迎
【POW】
指を鳴らし手甲を解放
【オーラ防御】を展開しつつ、動きを【見切り】【武器受け】で防ぎましょう
その後も【殺気】を放ち注意を引きつつ、防ぎ続けましょう
完全に見切るのは無理かも知れません。致命傷を受けなければいい
…ええ、それで良いのです
貴女、僕よりも速いと思っているでしょう
既に、自分の方が速いと思っているでしょう
…“誰よりも速くなりたいという欲望”は、強いままですか?
一瞬でもいい、この隙を待っていたのです
【早業】で『ネクロシス』を引き抜き、【極光】を放ちます
相手を崩せれば良し、直撃出来れば尚良し、ですね
誰よりも速く、ですか
なるほど。どうぞご自由に
…ですが、勝つのは僕たちです
●LAP32:V.S.斬崎・霞架
パチン、というフィンガースナップの音が響いた。
その瞬間、彼の嵌めた手甲からぞわっとおぞましい触腕が生え、のたうつ。
"黒触(エンクローチ)"。その名に相応しき、禍々しい有り様だ。
事実呪われたこの黒き侵蝕の鋼を、霞架はいささかも恐れずに運用する。
ぞわり、と、手甲を中心に揺らめく黒紫色のオーラが立ち上った。
そして不可視の殺気が、ゼラチンめいて空気を凝らせるほどに放射される。
気配を隠すようなことはしない。敵を誘い、注意を惹くことが目的だ。
「こんにちは、哀れな人。どうぞこちらへいらっしゃい」
穏やかでひそやかな、敵からしてみれば忌々しい声音が手負いの獣を誘う。
斬首の恐怖に屈して死に物狂いにならざるをえなかった鋼は、抗えない。
(殺す)
ただ決断的な殺意を振りまき、猛然たる暴風を纏って霞架に襲いかかるのだ。
しかしその何もかもを吹き飛ばすような殺意と風を前にしても、
霞架の緩やかな笑みは変わらない。変えようがないというべきか。
まるで貼り付けたような笑み。これがウィンドゼファーをなお苛立たせる。
『どきなさい猟兵! これ以上、私を遮ることは許さないッ!!』
「おや? 僕らを足止めするのがあなたの目的だったのでは?」
空言を返しながら敵の殺意に己のそれを織り交ぜ、動きを見切る。
濃密なオーラが車輪剣の暴威をわずかに反らし、凶刃の直撃を避けた。
風圧が肌を掠めて切り裂く。裂傷は避けられないが一つ一つは小さい。
「そもそもあなたは、誰よりも疾さを追い求めたのでしょう?
ならばそれを発揮すればいいじゃないですか。そして僕を轢き殺せばいい」
『……ッ!!』
暴威が圧を増した。避けきれない刃が霞架の左肩を抉り、血が飛沫をあげる。 構わない。重傷ではあるが命は繋いだ。であれば、それでいい。
霞架の弧を描くように細まった金色の瞳が、ウィンドゼファーを見やる。
何もかもを見透かすように。裡に黒々とした殺意をたたえて。
「あなた、僕よりも疾いと思っているでしょう」
『黙りなさい』
「すでに、自分のほうが疾いと思っているでしょう」
『黙れ』
口の端がきゅう、とつり上がる。――嘲りの気配。
「実際のところ、どうですか? いまのあなたは。まだ疾いと云えますか?
――あなたの"誰よりも疾くなりたい"という欲望は、そんなものですか」
欲望とは、己にないもの、満たされぬがゆえに生まれる渇望である。
そもそもウィンドゼファーが誰よりも速度を得たというなら、
よほど常軌を逸した思考回路をしていなければ欲望は生じない。
オブリビオンである、というだけでその規矩を凌駕するには余りあるが、
現実にウィンドゼファーは消耗している。重傷を負っている。
まるで、彼女が抱えた欲望が、現実を凌駕するには足りないかのように。
『――黙れェエエエエエッ!!』
ぷつん、と、ウィンドゼファーの何かが切れる音がした。
激昂。処刑刃を大きく振り上げ、敵をずたずたに切り裂くヴィジョンを描く。
そして現実にそれを起こそうとする。大振りな斬撃。隙だらけの構え。
「ああ、残念」
呪われた手甲の触腕が、忌々しき鉄の銃と接続されていた。
ネクロシス。弾倉に装填されたのは、銃弾ではなくより恐るべきもの。
すなわち、呪詛。込められたそれはオーロラめいて極光に揺らめく。
「"自由に欲望を貪る"という教えを体現できないのは、お辛いでしょうね」
極光が煌めいた。空間をつんざくような、どこか寒々しいバーストレイ。
トリガを引いた瞬間に溢れた輝きは、敵を貫き吹き飛ばし飲み込んだ。
バックファイアが手甲とオーラの守りを越えて霞架自身をも害する。
だがいい。霞架の笑みは消えない。敵手の怒りと苦悶の絶叫を聞いたからだ。
「どうぞ足掻かれるといいでしょう。それでも勝つのは、僕たちですから」
仕留め損ねたことすらも笑うかのように、表情は変わらず。
彼奴が斃れないならば、まだ味わわせるべき苦痛を振るえるということなのだから。
成功
🔵🔵🔴
マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と
速さと飛翔能力に加え、攻撃を寄せ付けぬ風が厄介だな
だがカガリの強固な城壁ならば暴風にさえ動かぬだろう
ならば俺がするべきことは一つ
この身を囮とし、カガリがUCを発動する時間を稼ぐ
【黒華軍靴】のダッシュとジャンプ、【金月藤門】のフェイクで速度と敏捷性で勝負を挑んでいると見せて刺激して狙わせる
俺は友の力を信じているし、友のために傷つくことも死ぬことも厭わない
カガリが敵のUCを封じたら俺も【真紅血鎖】を成就
受けた攻撃による血を鎖に変え、吹き荒ぶ風を捕らえる
この鎖は如何なる暴風にも解けない、俺を振り切れると思うなよ
さあ、反撃だ
嵐の中をも貫く【魔槍雷帝】の雷の力を受けてみろ
出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と
誰にも通させないという、強く固い意志
そして極めてなお留まらない、止められない欲望を満たさんとするのもまた、意志だ
それほどの、わかりやすい「強い意志」の持ち主…カガリは「見逃さない」
この身はあらゆる自由を認めぬ、抑圧の化生なれば
空間に入った瞬間からオーラ防御
【化生の魔眼】を常時発動
視認さえも困難な速さだが…カガリの囮となるまるを害する、その一瞬は僅かに速度が落ちる
そこに合わせて【死都之塞】を
見逃さぬよう目を凝らす(視力)
暴風で立っていられないなら、【不落の傷跡】で強化した【籠絡の鉄柵】で囲って風避けに
カガリの壁とは、目に見えるものだけでない
友の覚悟を、守るものだ
●LAP32:V.S.マレーク・グランシャール&出水宮・カガリ
敵は孤影。であれば数の利を得るのは、そう難しいことではない。
編隊を組んで敵を包囲あるいは足止めし、これを圧殺する。
戦術的に見てもこれが最適解だ。だが猟兵の多くは単独で挑んでいた。
散発的な攻撃を繰り返し、徐々に負傷を与えて敵を討つ。
常識に鑑みれば不合理な選択である。しかし"そうせざるを得ない"のが実情だ。
なぜならば敵は強い。そしてユーベルコードとは奇跡の力。
あらゆる物理法則から解き放たれた、世界の加護/害意そのもの。
ゆえにあえての一対一こそが功を奏することも多いのである。
しかして、カガリとマレークはコンビを組んで出撃した。……なぜか?
問うまでもない。戦略がどうとか、そういう話ではない。
それが、互いの振るう力を相乗させるから。
そしてふたりそれぞれが、己と相手の力に揺るぎなき信頼を抱くからである。
あるいはそれは、誓約でもあった。
「あれか」
崩壊寸前の敵影を目の当たりにした時、マレークの柳眉が僅かに顰まる。
彼をよく知る人間でなければ見分けられないほどの、小さな変化だった。
もともと表情の変化に乏しい男だが、それをして渋面を浮かべる理由。
他ならぬウィンドゼファーが纏う、風圧と追い詰められた獣の如き殺意だ。
「なるほど。たしかにすさまじく強く固い意思だ。むせ返るようだな」
「ああ」
びりびりと肌を震わせるプレッシャーを前に、男たちはしかし慄かない。
臆することはない。敵は強大だが、"ゆえにこそ"やりやすいのだ。
「これならば、カガリが"見逃す"ことはありえまい」
「ならば手はず通り、俺が前に出よう。任せるぞ、カガリ」
「もちろんだとも。この身はあらゆる自由を認めぬ、抑圧の化生なれば」
城壁の化身は頼もしげに頷いた。剛槍を振るいし男も首肯する。
そこへ嵐が到達した。そして、地は砕け乱れて何もかもが舞い上がった。
暴風である。ウィンドゼファーを空へと舞い上げ音の壁を貫くそれを前に、
大地が耐えきれるはずもなく当然のように足場が舞い上がった。
崩れ行く足場をしかし確かに踏みしめ、カガリは全神経を張り詰めさせる。
抑圧の魔力を秘めた双眸が、兆しを捉えるのも難き敵を視界に囚え続ける。
「まる!」
「請け負った」
マレークが風の中を疾駆する。烈風がその肌と肉をメスめいて鋭く抉る。
意に介さず、軍靴でもって大気を蹴り、致命傷を避けるようにして地から地へ。
まさに飛竜のごとき跳躍。これをウィンドゼファーは逃さない。
『死になさい、猟兵ッ!!』
「断る。俺たちはお前を倒し、首魁を討つ」
がぎん!! 処刑刃じみた車輪剣と魔槍雷帝が激突し大気を震わせた!
轟く音は遠雷めいて。マレークはあえて挑発し、敵の攻撃を惹きつける。
カガリは後ろだ。本来の彼の仕事からすれば、この立ち位置は到底逆。
城壁の化身たるヤドリガミは、その身を以て仲間を護ることこそが本懐ゆえ。
ではなぜマレークは囮を買って出たのか。無論、すべては戦術の裡。
槍を振るい、巧妙なフェイクで敵の対抗心をそれとなくくすぐる。
これ見よがしに彼方から此方を飛び回り、機動力をアピールする。
どうだ、俺は貴様よりも疾く身軽だ。追いついてこられるか。
そう、不敵にも疾さの化身に挑みかかろうとしているかのように。
……言うまでもなく、マレークにそんな不利を好む不埒さはない。
堅物そのもののこの男のらしからぬ振る舞いは、猛獣を釣り出す餌。
もはや後がないウィンドゼファーは、冷静さを失いこれに食いついた。
『私を相手に! 疾さで! 挑むというのですか!! 不遜な!!』
(――哀れな)
傷を穿たれ苦痛をねじ伏せながら、マレークは淡々と思う。
満たされぬ欲望に突き動かされる、この女の有り様のなんとみじめなことか。
怪人。かつて亡びた人類の残滓、無限大の欲望を貪る残骸ども。
憐憫がある。ではそれが慈悲に繋がるか――無論、否。
(ゆえにここで討とう。俺たちは勝つ。お前にないものが俺にはある)
心の裡で断定的に言い、マレークはあえて守りを開いた。
ウィンドゼファーの車輪剣が肩から胸部にかけてに食い込み、抉る。
「……ッ」
『そのまま、轢き潰れて死ね……!!』
「そんなことはさせない」
ごうごうと唸る風の中、たしかに届いた声はカガリのもの。
然り。この攻撃は甚大なダメージと、マレークの命の危機をもたらした。
しかしそれは裏返せば、ウィンドゼファーの速度が止まるということでもある。
「カガリの目はお前を囚えた。ならばもはやお前は我が内に在る」
然り。化生の魔眼がその魔力でもって、過去の残骸を縛り、封じる。
欲望が途切れた。ウィンドゼファーは究極的孤独を味わった。
『なんだこれは』
何もかもが失せたような錯覚――いや、自覚だ。
そもそもウィンドゼファーにはなにもない。
矜持も信念も、並ぶべき仲間も何も。だからこそ彼女は欲望を求めた。
疾さという絶対的指標にすがり、駆け回り暴威を振るった。
『私は』
「もういい」
ばちばちと青い稲妻を伴い、抉られたままのマレークが囁く。
「俺と友がお前を終わらせる。だから、もういい」
血が。
流れ出した血が超自然的により集まり、強靭な鎖となって互いを繋ぐ。
逃れられない。二重の拘束がかつて聖女であった怪人を縛り付ける。
「これなるはいかなる暴威にも屈さぬ鎖。もはや俺を振り切れると思うな」
「カガリの壁は、目に見えるものだけではない。友の覚悟を護るものだ」
ふたりは言った。語彙はことなれどそれは信頼の証だった。
ウィンドゼファーはふと理解した。これが己が滅び続ける理由なのだと。
「嵐の中をも貫く我が雷撃――その身で受け、滅びろ」
そして槍が過去の残骸を貫く。天をもつんざく雷鳴が木霊する。
断末魔をあげて、哀れなる鋼の異形は、幾度目かの滅びを迎えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
私は。疾さを求め続ける。
求め続けなければならない。
それこそが。私の――。
ヘリム・フラム
ショート金髪の小学生のような姿
仮面同士お互いにシンパシーを感じるよねっ☆
ミーはそこまで速いわけでないからねっ☆速さでは負けると思うよぉ。ただ、格下の相手に負けた時どんな顔をするのかなぁ♪気になるよ
挑発して時間を稼ぎ、相手UCに対して反応出来るように、?ボックスを抱える。
暴風に対してこっちも風を起こして対抗すればいいんじゃないかなっ☆多少防げなくても、我慢が大事だねっ♪
本日のお助けアイテムは何かなぁっ?
【ガジェットショータイム】を使用し、超特大扇風機を?ボックスから取り出す。
大量のナイフを投げながら、扇風機の風に乗って近づき空爪で攻撃。
技能︰パフォーマンス、催眠術、見切り、恐怖を与える、激痛耐性
●LAP34:V.S.ヘリム・フラム
道化師とは、おどけて愛嬌と無様を晒し客を笑わせるものだ。
厄介なことに、半面を覆う道化は、それゆえに純粋な道化師ではない。
つまりヘリムは、笑わせるのではなく嘲笑う側のピエロであった。
「仮面同士仲良くしようよ☆ねえねえいいでしょ?」
『…………』
骸の海から復活を果たしたウィンドゼファーは、ブラックタールの言葉を訝しむ。
明らかに腹の底の見えない手合いである。見た目で侮る彼女ではない。
「それにミーはそこまで疾いわけじゃないし? 疾さ"では"敗けると思うよ☆」
『……何が言いたいのです?』
したたるようないらだち混じりの声に、ヘリムは仮面と同じような笑みを浮かべた。
「だからさぁ、気になるんだ?」
『……』
「格下の相手に負けた時、どんな顔をするのかなぁって♪」
その瞬間、収束した暴風が炸薬のごとく爆ぜて大地を砕いた。
「おやおやぁ、こいつは盛大だね☆」
ヘリムは相変わらずの嘲りめいた声音のまま、飛んで跳ねて暴威を避ける。
しかし誤算だったのは、その勢いと足場が砕けて舞い散るということだ。
幾度目かに踏みしめた足場が、風に煽られて巻き上がる!
「おわわっ! 今日のお助けアイテム、カモーン♪」
ミキサーじみた暴風の中でも愛用のボックスをけして放さないヘリム。
すると箱の中から、サイズ的に明らかに不自然な超大型扇風機!
「風には風で対抗、ってね☆」
ゴオウウウ……ガジェットが唸りを上げてファンを回し、新たな風を生む!
暴風と強風がぶつかり合う。規模の多寡は歴然である。
だがこの一瞬の拮抗があればよい。ヘリムは風に乗って跳躍した!
『目障りな』
「それ、ピエロには褒め言葉だよっ☆」
カカカカカッ! 放たれたナイフをウィンドゼファーは乱雑に払う。
しかしこれは牽制。ヘリムの空爪が、ざくりと鋼を切り裂いた!
『く……っ』
「さあさあ次はどんな出し物でいこうかぁ? まだまだ色々あるからねっ☆」
『あいにく戯れに付き合うような性質ではありませんので!!』
強烈な車輪剣の斬撃。空中で受けきれぬヘリムはこれをまともに受けた。
されど少年の見た目をした何かはなおも嘲笑う。愉しげに。
この生死の狭間こそが、己の居場所だとでも云うかのように。
苦戦
🔵🔴🔴
ルエリラ・ルエラ
今回の敵は今までと違うね。
真面目にしっかり倒させてもらうよ。
相手が足場をバラバラにする暴風を放ってきたら、[メカ・シャーク]に乗るよ。シャークは浮かんでるから足場の対策はこれでバッチリのはず。
そして暴風には、[私の戦闘服]に魔力をしっかり込めて障壁を展開。全力で防御するね。
暴風が弱まってきたり、少し距離をとれたら反撃開始。【アインス】を相手近くの地面に放って土煙で視界を悪くするね。そこに[メカ・シャーク]を突っ込ませて、気を逸らす。
私は突っ込ませる前に[メカ・シャーク]から[私のブーツ]に魔力を込めてジャンプ。気をとられたところを【アインス】で風ごと貫かせてもらうね。
さぁ、勝負だよ。
●LAP35:V.S.ルエリラ・ルエラ
荒れ狂う暴風を前にして、これまでの幹部戦と同じ気持ちではいられない。
……逆に、今までは真面目に対策していなかったということなのだろうか。
いずれにせよ、ルエリラの決意と襟を正した今を揶揄できる者は居まい。
彼女は、それほどまでに真剣にこの場に臨んでいる。
それにもし仮に気が緩んでいたとして、どのみち彼女は意識を引き締めたことだろう。
ウィンドゼファーを前にした時、それだけの重圧に晒されたのだから。
両者は無言のうちに対峙していた。緊張がきりきりと張り詰める。
ルエリラの鋭き瞳は、恐るべき鋼の聖女を臆することなくまっすぐに捉える。
「……それだけの力を持っているのに、どうしてまだ疾さを求めるんだい?」
『欲望に限りなどありません。私は誰よりも、どこまでも疾くありたい。
たとえ世界を滅ぼそうとも、何を犠牲にしようとも、私は止まらないのです』
ルエリラは眉根を顰める。あまりにもタガの外れた狂った論理に。
これがオブリビオン。何度相対しても、答えを得ても、慣れないものだ。
「いうまでもないけど、わたしがそれを許すわけにはいかない」
『私はそれを許さない。この先へは、誰も、何者も、進ませません』
当然の平行線。ルエリラも言葉で押し通るような、生中な気持ちではない。
それでも問うて宣誓したのは、言わば一種の自己満足と云えた。
戦いとはエゴのぶつかり合いだ。だからこそ、"わがまま"が雌雄を決する。
己の欲求に正直に敵を討つと定めるのは、ある意味で彼女のそれと似るか。
「――ならもう言うことはない。さあ、勝負といこうか」
風が応えた。ルエリラは砕けゆく地を蹴る!
はたして彼女が召喚したのは、自作のやや奇矯な乗り物である。
名付けてメカ・シャーク号。読んで字の如く、鮫を模した機械仕掛けの器。
尾びれが大気を力強く叩き、反重力がその身を浮かばせる。
まずこれが砕けゆく足場から解き放たれるひとつ目の鍵となった。
かといって、荒れ狂う暴風は、それ自体が不可視のメスでありミキサーだ。
ルエリラは自らの魔力を戦闘服に込め、守りとすることでこれに対抗した。
暴風が収まるまでの間、余計なカウンターなどは考慮しない。
それをもってしてもなお烈風は彼女の障壁を切り裂き肌を裂いたが、
策もなしに飛び込むような愚を犯すのに比べれば万倍マシといえる。
『そのようなかそけき努力など、まとめて吹き払ってあげましょう!』
「そう簡単に消し飛ばせると思ったら、大間違いだよ」
ごううう……!! 鼓膜を切り裂くような風圧がルエリラを苦しめる。
だが彼女は強いて意識を保ち、鋼の鮫を駆って致命的烈風をことごとく回避した。
鷹の目じみた双眸が、好機を伏して待ち続ける。それは狩人の眼差しだ。
ただ辛抱強く。肌の傷が肉に達そうと、ただ待ち続ける……!
そして、狩人の待ち続けた瞬間が、わずかにだが訪れた。
常人であれば見逃すほどの、刹那。ルエリラは決して逃さない。
「いまだ」
主の声に応え、鋼の鮫が捨て身じみた突進を仕掛ける。
ウィンドゼファーがこれを迎え撃つ――ルエリラは目を細めた!
「――そう真正面から、飛び込むわけがないだろう?」
『!!』
跳んだ。収束させた魔力を脚に込めて、鋼の躯体から軽やかに!
ウィンドゼファーは虚を突かれた。ルエリラはすでに弓弦を引いている!
勝負だ。カードは配られた、いよいよディールの時。
「――貫かせてもらう」
指が弓弦を解き放つ。魔力の鏃は風を、音を切り裂き一条つんざいた。
ルエリラは己の持ち得る全てをチップとして卓に賭けた。
配当は敵の苦悶と重い負傷。そして勝利の手応えと高揚である。
『おのれ……!!』
「言ってなかったかな。わたしは、真剣にやらせてもらうと」
わずかに、狩人はあるかなしかの笑み。
「狙った獲物は、絶対に逃さないよ」
成功
🔵🔵🔴
レトロ・ブラウン
暴風。なんとも回避し難く、ボクの手札では防ぐのも難しい。
では、走ってみよう。具体的には時速9700kmで。
その速度に耐えられるこの身体ならば、或いは風にも負けず一蹴りならば入れられるやも知れない。
必要なのは【勇気】だけです。
位置について。
スピードスターを名乗るならば。
よーい。
せめて此の位の速度をー
ドン!
超エて魅せテ下さイ!
●LAP36:V.S.レトロ・ブラウン
ざり、ざりざりざり、ざりざりざりざり……。
普段は笑顔で固定されたテレビウムの頭部は、いまやノイズに覆われていた。
砂嵐。背丈は六倍近くに伸び、体を支える両足は剃刀めいて鋭い。
『怪人? いや、違う。お前は一体……?』
大きな矢傷を負ったウィンドゼファーは、訝しげな声を漏らした。
彼女からすれば、いまのレトロの有り様は同類にしか見えない。
だがオブリビオンなるその身は、見ただけで"それ"を本能的に理解する。
怪人めいた見た目と気配を持つ、しかし天敵たる猟兵であると。
「ええ、ソうです。ボクは怪人(あなたたち)とは違いマす」
普段とは異なる冷ややかな、しかしいつかの暴走とは異なり意思を秘めた声。
レトロは、己の意思によって、謎めいた真の姿を解き放っているのだ。
とはいえそれは破裂寸前の火薬庫に似る。正気を保つのは今が精一杯。
だとしても、この姿で、敵と相対せねばならぬ理由があった。
「ボクは、アナタたちのことが許せまセン」
『…………』
「ボクたち今のキマイラフューチャーの住人を、アナタたちは不要だト云う。
……それハ、それだケは、ボクには……絶対に。認められまセン!!」
レトロは多くの仲間を失った。
時代に取り残され、懐旧の安寧と忘却の残酷を悲しんだ仲間たちを。
今でも脳裏に蘇る。ああ、そうとも。悪夢の光景はいまだこびりついて離れない。
壊れた彼のウィンドウが、笑顔だけを映して止まってしまったように。
「だカラ、ボクはアナタと戦いマす。この世界を守リ、これからを生きるタメに。
古びたボクでも、生きてイくと決めたかラこそ、アナタを倒すのでス」
『……置き去りにされた者よ。あなたも骸の海を否定するというのですか』
当然だ。去っていった仲間たちの想いが、いまのレトロを立たせているのだから。
忘れられ、過去の残骸になることなど認めない。だからこそ戦わねばならない。
この姿で、この力で。かつての人類を越えなければ意味はないのだ!
……そしてレトロは、おもむろに片膝をつき、ぐっと腰を上げた。
クラウチングスタート姿勢。ウィンドゼファーは気圧されたように言葉を喪う。
……あるいはそれは、意図を察して苛立ったがゆえの無言か。
「アナタが疾さを求めるト云うノなラ」
挑むようにレトロが云う。ノイズが強まる。
「"せめてコのくらいノ速度を、超えて『魅せ』テくださイ"」
――キマイラフューチャーの住人は、誰もがイカしたものをこよなく愛する。
素敵で、綺麗で、ファンタスティックなものを愛する。
自分はどうだろうか。壊れかけた時代遅れのテレビウムは。問うまでもない。
であれば、"そんなもの"に負ける相手など、何の価値もないというのだ。
『……後悔しますよ』
「怖いンでスか?」
『…………』
暴風が収束する。炸裂の瞬間に向けてきりきりと研ぎ澄まされていく。
ノイズが強まる。正気が喪われていく。構わない。今この一瞬だけなら。
己は独り。巻き込むような人は誰もいない。ただ疾く駆け抜ければいいだけ。
時速9700km。秒速2.7km――物理法則から解き放たれた、ただ一瞬の閃光。
己の体をも自壊させる破滅の疾走。飛び越えるのは胸に宿した勇気の輝き。
「疾き者(スピードスター)を名乗るナラば――!」
暴風が、爆ぜる。遅い。あまりにも遅い。今のレトロは!
「――ボクにぐラい、勝てるのデしょウ?」
過去からも未来からも、世界そのものからすら解き放たれた。
今の彼は自由だ。誰よりも、何よりも。
ノイズ混じりの一条の閃光は、まっすぐに風を切り裂き鋼を貫いた。
誰もそれを止められない。ウィンドゼファーは一筋の走馬灯を目の当たりにした。
大成功
🔵🔵🔵
ヘスティア・イクテュス
ティターニア点火(イグニッション)
ビームセイバーを左手に
右手にタロスをもってバリアを展開、盾代わりに【オーラ防御】
近接戦闘で竜巻を使う隙を与えないわ
一緒に舞い、踊ってくださるかしら?と車輪剣と正面から打ち合させて頂こうかしら?
と、まぁ自身を囮に
装備を透明化できるUCでフェアリーを透明化
背後からタイヤのない場所を狙って攻撃よ!
疾さを求め過ぎて余裕なくしてるんじゃないかしら?
そんな疾いだけの風じゃあ読めてしまうわ、もっと緩急を付けないとね
あっ、もし可能なら他に誰か一人UCの対象にして補助するわ
フェルト・フィルファーデン
あの速さにわたしは付いていけないし、こんな小さな妖精の身では、風に飛ばされ切り刻まれるでしょう。
ええ、とっても相性は悪いわね?……それなら、これしかないわ。
盾受けで防御を固めつつ先制攻撃でUCを使い、わたしの体に強化を加えましょう。
守りをほぼ捨て、カウンターで捨て身の一撃を狙う。ええ、その一撃に全てを賭ける。
痛みを激痛耐性で耐え、傷を癒し力に変えて、その力を限界まで溜めて時間を稼ぐの。
さあ、どうしたの?まだわたしは生きているわよ!、と挑発して
最後は、騎士の一撃で葬り去る……!
ねえ、1つ聞いてもいい?アナタは何のために世界を壊すの?オブリビオンだから?怪人だから?
それは、アナタの望んだ欲望なの?
天御鏡・百々
この世界を守るため
貴殿を倒し、中枢へと進ませてもらおうぞ
「ソード・オブ・ダイアモード」で変身した敵に対し
「真実を映す神鏡」を使用する
我は真実と未来を映す神鏡なり
我が本体は貴殿の真実の姿を映し出す
そしてあらゆる変身は元へと戻るのだ
鏡に敵の姿を映すよりも敵の行動が速ければ
神通力(武器)による障壁(オーラ防御53)で攻撃を防ぐ
また、変身解除後の戦闘でも同様に防御を行おう
変身が解除できればすかさず追撃だ
真朱神楽(武器:薙刀)で防御の隙間を狙ってなぎ払うぞ
(なぎ払い20、鎧無視攻撃5)
エイプモンキーは像が映るよりも速く動く絡繰りを創造したが、
それに比べれば貴殿の能力は尋常の範疇だな
●アドリブ連携歓迎
●LAP36:V.S.三乙女
がぎんっ!! ギャリリリリ、ギャルルルルギギギギギギッ!!
グラインダーで削られる金属のような、すさまじい音と火花。衝撃。
双刃の車輪剣が触れれば全てを切り裂き抉り砕くほどに高速回転し、
振るうことで生まれた剣風は嘲笑うかの如き耳障りな竜巻へと変じる。
ソード・オヴ・ダイアモード。禍々しき魔剣変身。ウィンドゼファーの境地。
「ティターニア、点火(イグニッション)……っ!!」
これに敢然と立ち向かう破滅を阻止するのは、ジェットパックを背負う妖精。
否、妖精めいた軌跡を炎によって描きつつ、空を舞う乙女である。
ヘスティア・イクテュス。自由なる無重力の軌道は美しく変幻自在だ。
ビームセイバーとドローン発生バリアは、凶刃による破砕を紙一重で防いでいた。
「光栄ね、こうして一緒に舞い踊ってくださるだなんて!」
『いつまで叩けますか、その軽口。物理的に引き裂かれてもまだほざけるなら!』
ギャル、ル、ガリリリリリ!! 凶刃がさらに唸りを上げる!
竜巻を防ぐことなど不可能、これ以上進ませぬために立ち回るのが精一杯だ。
なぜならばヘスティアは所詮スペースノイドでしかない。
いかに優れたテクノロジーによって高き空を舞おうと限界はある。
偽りの妖精。機械仕掛けの神めいたがらんどう。であれば真に高きものに指が届くはずもなし。
――と、渦巻く竜巻はヘスティアを嘲笑う。汝、無為なる者よ、と。
ヘスティアはそれを振り払うかのごとく、なおも勇ましく挑みかかるのだ。
「あいにく黙りはしないわ、あなたが倒れるまではねっ!」
『小娘が……!!』
ばちぃ! ビームセイバーが刃を弾く、だが懐へ抉りこむもう一方の車輪!
「そうはさせぬわ! 我が神鏡の輝きを知れ、偽りなる者よ!」
『く……っ!?』
さながら天より刺さる神々しき後光めいて、鋭き声と輝きがもたらされた。
なべてを照らし出すは御鏡の力。それを生み出すは天御鏡・百々に他ならぬ!
「いかに虚飾を纏おうと、万物の本質はそう簡単に変えられはせぬ。
欲望を貪る浅ましき者に、我らが退くと思うてか。恥を知るがいい!」
されどその輝きをもってしても、なお嘲笑う暴風を吹き払うことは出来ぬ。
だが間隙は生まれた。ヘスティアは自慢の高機動で刃の悪あがきを躱す。
ひとりで挑んではけして彼奴は倒せぬ。業腹だが百々は、改めてそれを認めた。
神として崇められ意思を得た器物の少女は、かの怪人どもをけして許さない。
ヒトを、世界を代償に五欲を貪る! なんたる堕落したヒトの悪性か。
「我らが在る限り、貴殿のその欲望が満たされることなどけしてあり得ん。
ここが滅びの場ぞ。いわんや、我らの仲間を傷つけさせるなど……!」
『小賢しい……私は何も偽ってなどはいない、誰にも止められはしない!』
狂乱したかのごとく叫び、ウィンドゼファーは百々を切り裂こうとする。
「させないっ!」
ヘスティアはそれを許さぬ。果敢にも光の刃にてこれを阻むのだ。
『私は、私たちは! 今度こそ、今こそ、次こそ! 全てを貪り尽くす!』
「なんたる妄執、そして浅ましさか……!」
『天敵どもよ、身の程を知るのはお前たちのほうです。退きなさい!』
ウィンドゼファーは手負い。それゆえに彼奴そのものが荒ぶった。
ヘスティアの妨害も限界か? いや待て、戦う者は彼女らだけではない!
ヘスティアのそのさまが鋼の力によって空を舞う妖精だとすれば、
新たにやってきたのは、まさに妖精そのものの少女であった。
しかして双眸に燃える戦意は、まさに戦士のそれ。猛々しく気高く。
白金の髪をなびかせて、フェルト・フィルファーデンが前線へ躍り出る!
「行く先も定まらずに吹き荒れるだけの風では、わたしたちは払えないわ!」
謳うように言いながら、己の身を顧みることなく暴威へと立ち向かう。
ギャルギャルと唸る車輪が触れずとも、その剣風ですら致命的だ。
彼女は小さき者。体躯の差は五倍を超える、あまりにも無謀!
……だが。たとえその身が小さかろうと、フェルトは気高き姫である。
絶望の過去を否定し、未来にありえる希望を求めて突き進む乙女である。
ゆえにあらゆる痛みをねじ伏せ、切り裂かれながらもフェルトは力を解き放った。
風がその身を切り裂き引きちぎろうというのならば、電脳の魔術を以てこれを巻き戻そう。
刃が己を轢き潰して砕いてしまうならば、それを癒やして再び舞おう。
電子の糸は、フェルトが諦めぬ限り何度でもその身を再生し奮い立たせる。
いわば意志力の戦いだ。なんと無惨な、だが神々しくすらあるさま……!
「さあ、どうしたの? まだわたしは生きているわよ!」
『羽虫め、忌々しい!』
「結構なお言葉ね、その虫風情に敗けるのがアナタには似合いよ!!」
果敢なる姫に呼応し、操り糸で繋がる騎士たちが雄叫びを上げた。
盾を持って無理矢理に凶刃をとどめ、竜巻を恐れず槍を振るって突き進む。
そして砕け散る。がらがらと砕けたそれらもまた再生していく。
「止めてご覧なさい、そこまで吠えるなら。さあ、どうしたの!」
『おのれ……!』
「無限大の欲望だなんて、わたしにとってはよそ風のようなものね!」
苛烈に過ぎる意思と舌鋒が、ウィンドゼファーをなお追い詰め憤らせる。
刃の切れが鈍っていく。趨勢は再び猟兵たちへと傾き始めた!
「なんと勇ましき姿か。我も発奮せねばならぬな」
「囮役はわたしの仕事だしね、あんな痛々しい姿は見てられないもの!」
百々とヘスティアは視線を交わし頷きあい、ふたりも戦線に復帰する。
フェルトを襲った凶刃を、諦めることなきビームセイバーが迎え撃った。
「そんな、わたしは守ってもらわなくても」
「いまはいいっこなしよ! 一緒に戦う仲間でしょう?」
フェルトは一瞬だけ瞠目した。ヘスティアはにこりと可憐に微笑む。
もはやそれ以上の言葉はいらない。鋼と白金の妖精乙女がふたり並び舞う!
「あざ笑いし者よ。今度こそ、その偽りを白日の元へ晒せ!」
『うう……っ!?』
百々の御鏡が白く灼けるほどの閃光を放ち、ウィンドゼファーを照らした。
歪み堕落した怪人としての体は、本来の人類としてのものではない。
いわんや、暴威に任せたなべてをあざ笑い轢き潰す変身状態をや。
何もかもを、輝きは白日の下に晒す。聖女であった残骸は叫んだ!
『やめろ! やめなさい! 私は、私は……ッ!!』
「何をさえずろうと、貴殿自身が誰よりわかっておるはずだ。
いまの貴殿の姿が、嘗ての理想からいかに程遠くネジ曲がった姿か!」
『…………!!』
風が、途切れる。百々の目がぎらりと剣呑な輝きを帯びた。
彼女自身もまた神楽を舞うかのように前へ出て、薙刀で敵を切り裂く。
『私は……止まらない! 何があろうと、絶対に!!』
「そう。その決意とひたむきさ、わたしは正直尊敬するわ」
撃ち合っていたヘスティアが、ぽつりと呟いた。
……並んでいたはずのフェルトは、どこだ。ウィンドゼファーは訝しむ。
「けれどね、そんな疾い"だけ"の風では、どこへもたどり着けない」
星の海を征く海賊の少女だからこそ、その言葉には含蓄がある。
船とは風によって運ばれるもの。風には行先があるものなのだ。
「だからあなたには"見えない"のよ――そうでしょう!」
『!!』
背後! ユーベルコードによる透明化だ!
ウィンドゼファーは振り向こうとする。機械仕掛けの妖精と、
真なる妖精――そして従えられた騎士たちは、それを許さぬ。
「ひとつだけ聞きたいの」
フェルトは言った。その時、すでに騎士たちは波濤となって敵を貫いていた。
「アナタは何のために世界を壊すの。オブリビオンだから? 怪人だから?」
『…………』
「――それは、アナタの求めた欲望なの?」
『私、は……』
ウィンドゼファーは何かを言おうとした。滅びがそれを許さない。
過去の残骸は、在り得たはずの女の言葉を紡ぐことを許さない。
なぜならばそれはオブリビオン。過去の化身。未来の破壊者。
『私は――』
忘却の名を冠するモノは、大切なはずのそれを忘れてしまったのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
●
私は。
――何のために、走っていたのだったっけ?
鳴宮・匡
◆アサルト
◆アドリブOK
足場を崩す暴風はヴィクティムが対処するだろう
風の間を渡る相手の動きを眼、耳、肌で捉え
突撃してくる一瞬を妨害するように牽制射撃
唯の一発でも十分だ
受け止められるだろ、勿論
……信用してるぜ、
なあ、相棒!
ああ、全く
こうしてると黒騎士の時を思い出すな
本当、正気の沙汰じゃなかったぜ
そんじゃ、反撃だな
行くぜヴィクティム、上手く使えよ
UC【涯の腥嵐】を起動
ヴィクティムの反射と合わせ
全方位を隈なく撫ぜる鉄の嵐で迎え撃つ
縦横無尽に「線」で動くなら「面」で捉えるだけだ
お前の速度が速ければ速いほど、通るダメージも大きくなる
……おっと、突撃は拙いんじゃないか
もう一人いるのを、忘れちゃいないよな?
ネグル・ギュネス
【アサルト】
【アドリブOK】
恐怖は、ある
あの暴風と後に、私は───だが、決めたのだ
守 る !
───変、身!
ガーディアン・トリガー!
敵の先制攻撃を受け止める
ほんの僅かでも敵の動きを止めにかかり、にんまり笑って挑発
また仲間に攻撃が向きそうになったら、【ダッシュ】でガーディアントリガー発動で庇う
間に合わなければ?
左半身で止めにかかるさ
機械の身体だ、死にはすまい
今度は、私が命を燃やす
そして私から気を抜いたならば、其処がチャンス
向かう先は予想済み
アイツの演算と、アイツの読みが外れるわけがあるまいよ
その方向に向かって飛び込み、その首ならぬ、脚を切り払ってやる!
意地でも貴様を縫い止める
黄泉路への案内、仕る!
ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】
──行くぜ
真っ向勝負だ
先制攻撃はネグルの後ろに隠れて受けてもらう
間に合うなら【早業】でUCの障壁も展開するが…『反射』はまだ見せない
匡への攻撃は障壁の割り込みを試してみるが、いかんせん風そのもの
『反射』に期待はできない
勢いくらいなら弱められるかもしれねえ
避けられる【時間稼ぎ】をして、新しい足場には障壁を用意する
こっからが本番
障壁大量展開
匡の攻撃は無差別範囲攻撃
放たれる飛び道具を全て『反射』で拾い、弾道を計算、調整
軌道を変えた飛び道具を四方から殺到させて逃げ場を断ち、奇襲攻撃!
…弾道を全て調整できるかだって?
やるんだよ
死力を尽くして
ニューロンを振り絞って
限界ギリギリの超演算をなぁ!
ロク・ザイオン
……古い、人間。
お前がか。
お前みたいなものが、か。
(【地形利用】し「轟赫」で周囲を燃やす。
強い風は、強く森を焼く。燃え広がる檻となる。
竜巻が炎を呑むのなら。それはもう、おれの炎だ。
おれが操れる。
あの病が生み出した分だけの竜巻で圧し潰そう。
決定打に足りないなら、炎の光で目が眩んだところに【ダッシュ、早業】で迫り
回るタイヤを【鎧砕き】
【傷口を刳り】焼き潰す)
それが。お前の、わがままか。
(それとも。
もはや病に堕ちたが故の、妄執なのか)
●SUICIDE LAP:V.S.ASSAULT+1
あろうことか、三人は一切搦め手を用意することなく、まっすぐに。
――堂々と、再生を果たした女の前に、並んで姿を現した。
『……お前たちのことは知っています。ラビット、そしてモンキーを滅ぼした者ら』
「そりゃ光栄だね。こうしてガラにもねえことをしたかいがある」
ヴィクティム・ウィンターミュートは、いつもの通りおどけていってみせた。
搦め手・騙し討ち・不意打ちを好む、ストリートハッカーらしからぬ行動。
それも彼の策か。然り、そうではある。だがすべてが策ではない。
「……であれば、私たちの手管も見切っているのだろう」
ヴィクティムの隣、一歩前に踏み出したネグル・ギュネスが言った。
彼は普段から、幻霊たる半身を駆ってすべてを追い抜く風となるのを好む。
だからこそ誰よりもわかっていた。"己ではこの暴風に追いつけない"と。
……ゆえに、前にいる。駆け抜けるのでもなく、挑むためにここに立つのだ。
「もう慣れっこさ。いまさら、ああだこうだ言ったりしないさ」
あろうことか、その隣に立つ鳴宮・匡までらしからぬことを云う。
けれども、そのギャップに浮かぶべき困惑は、いまの彼にはない。
そう、慣れたものだ。いい加減に、己が己を疑って迷ってはいられない。
そうさせてくれない奴らが隣りにいる。だから彼はここに立っている。
ウィンドゼファーは、なんらかの敵の搦め手を警戒した。
ラビットバニー、そしてエイプモンキー。
共に幹部級怪人として君臨したそれらを滅ぼした、アサルトを名乗る猟兵たち。
知らぬはずはない、ゆえに彼らの言葉通りその手段も僅かながら把握している。
それに照らし合わせて考えれば、真っ向勝負などあり得ぬ話である。
何かの策があるのか。あるいは己を誘い出すための挑発、囮か何かか?
……三人の振る舞い、表情、視線、僅かな仕草、何もかもを鑑みても、ありえない。
彼らは心の底から、本気で、自分とまっすぐ戦うつもりでここにいると。
ウィンドゼファーは驚愕したことだろう。だが彼女はひとりではない。
そう。三人のらしからぬ振る舞いに、もうひとり驚きを見せた者がいた。
……ゆえに"彼女"は、そんな三人のやり方に倣うことにした。
見様見真似である。だが、他の誰かを真似するよりはよほどやりやすい。
なぜなら、これはいつかの別世界、星の海で邂逅した死闘のときと同じゆえに。
「……オイオイ」
ヴィクティムが肩をすくめた。ネグルは眉根を顰め、そしてふっと笑う。
匡はそんな二人を見て、頬をかいてから、何か得心したように頷きひとつ。
「心強い援軍だな」
「本当、あの時を思い出すな。正気の沙汰じゃなかった……いまも同じか」
風が一陣吹き抜けた。赤髪の獣――否、女の獣耳が、揺れる。
双眸は刃めいて鋭い。滾る戦意に応えて、たてがみじみた髪が燃える。
「旧い人間」
ざりざりとした声。罅割れたノイズめいたそれを三人はよく知る。
……ロク・ザイオン、狩人、森番、炎獣……は、憤っていた。
「お前がか」
彼女にとって、この世界の"人間"とは、他と大きく異なる意味を持つ。
怪人どもがそう"かもしれない"と言われていたことは、当然知っている。
だがいまこうして、それが明らかになった上で、なお変わらぬ者を前にして。
「お前みたいなものが――か」
ロクは、己でもわからぬほどに憤っていた。
これがか。
これが、人間だと。
いと高き父がおっしゃっておられた人間だと。お前は云うのかと。
ならば己は何のために戦ってきた。何を目指していた。何を――否。
ロクは頭を振った。ただ、髪がばちばちと燃えあがるのみ。
「おれは、ひとりじゃない。お前は、ひとりだ」
だから狩る。敗ける理由がない、なにせあの男たちがそこにいる。
ロクと三人の視線が交錯した。言葉なく、彼らは互いに頷きあった。
目を惹きつけるのでも、それを怒りを以て救うのでもない。
今度こそ、共に並び立って戦うために。
彼らは、己らの命を勝負台の上にチップとして放り投げたのだ。
ギャル、ル――ギャル、ギャルギャルギャル! ガルガルガルガルッ!!
それはいびつな獣の咆哮めいた、耳に障る悲鳴、否、駆動音。
始めは緩やかに、やがておぞましいほどに激しく、烈しく、車輪は回る。
風を切るのは刃。生み出されるのは竜巻。木霊するのはげらげらとした嗤笑。
敵をあざ笑い、その悪性をはらわたもろとも引きずりださんとする凶刃。
ソード・オヴ・ダイアモード。禍々しき名を持ちし処刑刃である。
『何を企んでいるのかは知りませんが――私は止まらない』
「そうかい。だったら走り続けて、燃え尽き(バーンナウト)しちまえよ」
不敵な少年が嘯く。
「たとえお前がどれだけ疾かろうと、私は決めた。その誓いは違えない」
勇ましき守護者が決然と応える。
「試してみればいいんじゃないか。お前が、"俺"から逃れられるかどうか」
殺意を装填した愛銃を手に、らしからぬ不敵な台詞を傭兵が吐く。
「それが、お前の、わがままか」
ロクの言葉は断定的だった。問いかけるようであり責めるようでもあり。
歪んだ欲望を前にして、四人がおののき退くことなど決してありえない。
それだけは確かだ。
『――では、何もかも吹き飛ばし、轢き潰し、切り裂いてくれるまでッ!!』
殺意が、暴風が! 引き絞られた矢のごとくに解き放たれ、天地を覆った!
ウィンドゼファーを包み込む凄まじき風、いまや鋼の女は音をも超える!
地を砕いてドーム状に膨れ上がる暴風! 逃れることなど絶対に不可能!
そして走り回転する双車輪! 触れずとも竜巻は全てを切り崩し嘲笑う!
どう挑むというのか、どうかいくぐるというのか!
森番よ! 強襲する三人の戦士よ、勇ましき四人の猟兵よ!
汝らは如何に? この疾く恐るべき暴風と暴威をまえにいかにするか!?
「行くぜお前ら」
「ああ」
「応」
「任せろ」
皆が頷いた。誰かが言った。
「――真っ向勝負だ!!」
そして、四人はそれぞれに、一縷の狂いなくズレもなく。
言葉通りに、真正面から風を迎え撃ち、挑みかかった。
まず地が砕けた。ロクは獣めいたしなやかな両足で跳躍し飛び渡る。
ヴィクティムが思考の速度で電脳の魔術を走らせ、無敵の障壁を無数に生み出す。
風がこれを砕いて混ぜ合わせる。まるで不可視のミキサーだ。
「そらそうなるよなァ! けどお見通しだぜ!」
元々持ち得る"反射"の特性には一切期待せず、ただ障壁を敷く。
砕けて舞い散った足場と足場を、硝子めいた仮初の力場が繋ぎ合わせた。
そんな彼を護るのは何か? 障壁では砕け散って話にならない。
匡もまたヴィクティムと肩を並べて狙いを定めるのみ。ならば前に出るのは。
「言ったはずだ」
恐怖はある。暴風と暴威を前にして、訪れるであろう事象に対する恐怖が。
だが決めたのだ。そう言葉にした。そして背中には仲間が、否。
「受け止められるだろ、勿論」
声がした。
「……信用してるぜ」
「ああ、俺もさ」
少年が同調した。
「「なあ、相棒!」」
ネグルは笑う。そして両目を見開く。金色の光が瞬いた。
「――私は護る。相棒を、仲間を! この身を以て!!」
走った! あろうことか、ネグルは! 足場へ飛び渡るのではなく!
砕け散る大地をひた走り、竜巻を従えた聖女めがけて!
『痴れ狂ったか!』
「いいや――私は決めた。ならば為すべきを為す。それだけだ」
烈風が鋼の体を切り裂く。友の身代わりになって倒れるというのか!?
「ネグル!」
ロクが叫んだ。心配だから? いや、違う。
「それが、キミの力なのか」
「そうとも」
その身を覆う、蒼き鋼の姿を目の当たりにしたからだ。
《Access! Type:Full-Metal-Gurdian!!》
「――変、身……!!」
見よ。その決意と誓い、信念を形にしたかの如きネグルの姿を!
暴風など何するものぞ。守護者としての引き金を引いた彼は、もはや!
『何だと!』
「私は止まらない。退きもしない。仲間を、相棒を! 護るだけだッ!!」
いかなる悪意にも刃にも臆することなく、完全と立ち向かうのだ!
それがガーディアン・トリガー。信頼を背負って立ち向かう男の力の名!
ウィンドゼファーは。慄いた。
……何に? 言葉にするには、あまりにも要因が多すぎる。
迫りくる青鋼の威風に慄いた。風を乗せた凶刃でこれを砕こうとする。
疾い。だが彼らと彼女にとってはあまりにも"遅い"・
反射装甲ががぎんと刃をはねのけた時、すでにすべては整っていた。
「俺がいる限り、お前の刃は何も引き裂けやしねぇ」
見よ。足場と足場を繋いだ障壁は、いまやウィンドゼファーを囲んでいる。
その道筋は燃え盛る森番の進むべき標となり、足場となり、壁となり。
「んじゃ、行くぜ」
「ああ、やっちまえ。――やれるかどうかなんて聞くんじゃねえぜ?」
ちらりとヴィクティムは匡を見やる。凪の海は無言。
そんなことは云いはしない。少年は皮肉げに笑って言葉を続ける。
「"やるだけだから"よ」
「ああ。信じてるさ」
照準は定められた。音の壁を超えて動く風は、匡の全神経を以てしても、
なるほど確かに疾風に過ぎるだろう。完全に囚えきることはできないだろう。
「それとも、俺に突っ込んでくるか」
挑発。ウィンドゼファーはそれに引き寄せられかけた。
ぬっと突き出た蒼鋼の拳、そして燃え上がる炎がこれを阻む。
「させるか」
「これは、おれの炎だ」
守り手と狩人がともに囁いた。それがウィンドゼファーの動きを止めた。
「――なら、遠慮はなしだ」
"涯の腥嵐(カーム・カーニッジ)"。
匡が持ちうる全ての火器を、躊躇なく一気に全弾放出(フルファイア)する。
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM! BRATATATATATATATATATA!!
なんたる暴威、なんたる破滅! まさにそれは鉄と砲火の嵐である!
しかしそれはいくらなんでも、たとえどれほど破滅的威力だとて!
高速で機動し全てを吹き払う敵にとっては、むしろ格好の餌食ではないか!?
風はそれらを砕き、飲み込み、吹き散らして己の刃に変えるだろう!
――それが、ただの弾雨であるならば。ただの嵐であるならばそうだろう。
「やってやるよ」
ヴィクティムは両目を見開いた。脳細胞がスパークし、ニューロンが加熱する。
眼から、鼻から血が吹き出す。当然だ。今の彼は全てを見ている。
音を超えて飛び交う弾丸を。その行き先を。何もかもを演算し導いている。
無数の障壁ひとつひとつの角度を、ミリ単位ナノセコンド単位で管理制御。
あまりにも人外じみた演算。かかる負荷は暴威など比にならぬ!
「やってやるよ!!」
死力を尽くし、己の全てを振り絞り、限界を超えて生死の狭間に立つ。
奈落じみた闇に己の身を飛び込ませ、静寂すらなき無に魂を捧げるかの如き。
無謀である。だが不可能ではない! なぜならば!!
「俺たちは、アサルトだからなァ!!」
守り、穿ち、燃え盛る仲間がいるのだから。
「燃やしてやる」
そして弾雨に晒された敵を、なおも恐ろしき炎が責めさいなむ。
穿たれた傷から炎は忍び込み、その身を内側から融かしていくのだ。
「お前は人じゃない。おれは人間だ。おれは、お前を、認めない」
風は炎を生む。そして炎は獣のものである。ゆえに敵を責めさいなむ。
病もろとも。何もかもを灼き尽くすと少女は云う。
『やめろ』
「いやだ。灼けろ、何も残さず、灼けろ!!」
そして。
「私はこのためにここに来たのだ」
鋼を纏いし鋼が、全てを振り切り、何もかもをあとに引いて跳んだ。
「黄泉路への案内、仕る――!!」
死神じみた蹴り足。狙いは首。敵には抗いようがない。
『――私は』
聖女は何かを言おうとした。最後の一撃が、その首を刎ねる。
弾雨が貫き、炎が燃やし、滅びへと叩き込む。
――それが、彼らの連携。彼らの力なのだから。
大成功
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