「港が制圧される予知を見た」
と端的に藤間・英(縦横無尽の語り部・f13788)は言った。
「港に屯するオブリビオンをやっつけて平和を取り戻してほしい――。以上だ」
そんな手短すぎる言葉で許されるわけもない。集まった猟兵たちが無言で藤間を眺める。
藤間は頬をかいて、「……やっぱだめか」と呟いて詳細を語り始めた。
「兆候は少し前からあったらしい。今も現地じゃ、魚が殆ど取れていない。沖の魚を取って振舞うのが名物の港でそれなりに栄えてもいたんだが、魚が取れないんでぱったりと人足が遠のいた。どいつもこいつも困ったと頭を抱えていたんだが、ふたを開けてみればどうってことない。海に流れる川の上流に、オブリビオンが根城を作って戦の支度をしていたんだ。水質が変わったせいで、魚が寄り付かなくなったんだと。それで港が手薄になった頃合いを見計らって、オブリビオンが山から一気に下りてきて、港を取っちまった」
藤間はいつも通りに一枚の絵を広げて見せる。
筆致は荒々しい。墨だけで書かれた、カモシカの絵だった。
「川の上流にいるのはこいつだ。山の藤を操って雷を放つ。動きもはしっこいから、下手を打つと大けがしかねない。地元の人間の手に負えるもんじゃねぇのはわかるな?」
頭目は何者なのかと、質問が上がる。
「あぁ、これも一筋じゃ行かねぇよ」
と、藤間は肩をすくめた。
「正体まではまだ分からない。だが銃の腕がすさまじく良い傭兵だ。どこからでも狙撃してくるし、寸分の狂いもない。飛ぶ鳥の目まで、綺麗に撃ち抜く腕前だ」
ぱん、と藤間は手を叩く。
「それでだ。諸君らにはまず山頂のオブリビオンを討伐してほしい。それが完了したら、港に向かって漁港を取り戻す」
幸いなことに、と藤間は続ける。
「今回はご厚意でな。無事港が取り戻せた暁には、酒と魚で祝いが開かれるそうだ。まぁ、そいつを楽しみに頑張ってくれ」
千歳アキラ
こんにちは。千歳アキラです。
「しでんほうかせんらんのさかな」とよみます。
サムライエンパイアのレトロ感が好きだなぁと思う今日この頃です。
今回は集団戦→ボス戦→日常の流れです。
森の中から港へ、山と海をめぐる自然豊かな物語……かな? というところでしょうか。
日常ではお寿司のふるまいがありますよ!
どうぞ楽しんでご参加いただければ幸いです。
第1章 集団戦
『荒ぶるカマシシ』
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POW : アオの寒立ち
全身を【覆う和毛を硬質の毛皮】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 神鳴り
自身に【紫電】をまとい、高速移動と【電撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 影より出づる藤波
【自身の影】から【召喚した藤の花】を放ち、【絡みつく蔓】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:笠見諒
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神楽火・銀月
神楽火・天花(f03853)と行動
生活の糧を奪われるというのは、さぞ苦しいことだろうね。そういう姑息な手は気に食わない。引きずり出して叩き潰してやる。
天花が前衛?
「……そういうことか。構わないけれど、大丈夫かい? 中々狂暴そうな奴らだけど」
まあ、君が怖じけることは無いか。なら、任せるよ。
天花が囮をやってくれている内に、手早く準備を済ませよう。
ドラゴン形態のベルズフィーネに指輪を通じて生命力を吸収させ、封印を解く。
十メートル超の姿に戻った彼女が放つ液体金属のブレスを上方から叩きつけ、防御ごと押し潰すか溺れさせるのが狙いだ。
ブレスに続いて、僕自身も灰葬竜のランスを使った鎧砕きの一撃で追撃をかける。
神楽火・天花
神楽火・銀月(f01924)さんと行動
おすしは楽しみだけど、オブリビオンを倒すまでいつもの天花はお休み。今はアタシの番よ。
敵は電撃を使う……アタシと同属性ってことか。それなら属性攻撃は封印ね。
「大丈夫。接近戦の心得もちゃんとあるわ」
巫覡載霊の舞を使って、なぎなたで攻撃。素早い突きの二回攻撃を軸にして、できるだけ自分のほうに敵が集まって来るように立ち回る。
敵が召喚した藤の蔦は、なぎなたから放つ衝撃波でなぎ払いふっ飛ばして対処。
十分な数の敵が集まって(無理はせずにほどほどでもいいけれど)きたら、銀にいさんの範囲攻撃でまとめて叩いてもらう。
「……そろそろいいかしら。銀にいさん、後はお願い」
今回の敵について詳しく聞いた神楽火・銀月(翼なき渡り鴉・f01924)は眉を寄せた。
「生活の糧を奪われるというのは、さぞ苦しいことだろうね。そういう姑息な手は気に食わない。引きずり出して叩き潰してやる」
敵意を現す銀月に対し、神楽火・天花(マジカルガールクインテット・f03853)は少し考える様子を見せる。
その目は鋭く、普段の穏やかな天花の様子とは一変している。
「オブリビオンを倒すまで、いつもの天花はお休み。――今は、アタシの番よ」
UDCと戦うための、冷酷な人格が顔をのぞかせていた。
銀月は驚く風もなく、その変化を受け入れる。
「雷なら、アタシと同じ属性攻撃か」
天花は得物を眺めた。
「アタシが前衛をやる」
「天花が?」
銀月は訝し気な顔をしたが、すぐ彼女の意図を汲んだ。
「そういうことか。……構わないけど、大丈夫かい? なかなか狂暴そうなやつらだけど」
そう心配するものの、妹が決して怯えて引くことがないのを銀月は知っていた。
「大丈夫」
天花は頷いて見せる。
「接近戦の心得だって、ちゃんとあるんだから」
現地に赴いた二人は、作戦通り二手に分かれた。
別れて時期に、天花がオブリビオンを発見する。
それは、実に見事な氈鹿(カマシシ)だった。
カマシシ、すなわちカモシカである。
だがその体長はゆうに六尺(2メートル28センチ)に及んだ。
「大きいわね」
天花はそうつぶやいたが、顔色を変えることは無い。
やることは、決まっている。
「巫覡載霊の舞……!」
カマシシの群れが集まるのを、薙刀でけん制しつつも数を集める。
敵と思しき存在に、カマシシはあらぶった。
一頭が高くいななき、頭を振った。
次の瞬間、地面から現れたフジのツタが天花の足を絡めとる。
「くっ」
バランスを崩しかけると、すぐに別のカマシシが、天花の隙を狙うように横から現れた。
「舐めないで!」
衝撃波で足元のツタを薙ぎ払い、突っ込んできた一匹の眉間を薙刀の柄でしたたかに打つ。
そして声を張り上げた。
「兄さん!」
声に応えるように、銀月は深くうなずいた。
すでに彼は支度を済ませていた。
灰白色の、液体金属の身体を持つドラゴン、ベルズフィーネ。
彼女に指輪を通じて生命力を吸収させ、封印を解く。
たちまち、ベルズフィーネは元の姿を取り戻した。
カマシシが驚いて、逃げようと駆けだす。
だが、ベルズフィーネは一匹たりとも逃がさない。
「天花、避けて!」
銀月が叫んだ次の瞬間、ベルズフィーネが放つ液体金属のブレスが一気にカマシシを吹き飛ばした。
防御に成功したカマシシもいたが、それもすぐ大量の液体金属の中で溺れていく。
わずかな生き残りに、すぐ銀月が追い打ちをかけた。
灰葬竜のランスで鎧砕きを仕掛け、一匹、また一匹と殺してゆく。
やがて、声もやみ、辺りは静かになった。
「お疲れ、天花」
「兄さんも」
兄妹は互いの無事を確認し、表情を和らげる。
「前衛なんて驚いたけど、ケガはないみたいで良かった」
「ベルズフィーネの攻撃を間近で見てるのよ。カマシシのツタ程度じゃ驚かないわ」
「はは、褒め言葉としてもらっておくよ」
まだ残党はいるかもしれない。だが今日は、二人の勝利だ。
どちらともなく連れ立って、二人は帰路に就いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
※トミーウォーカーからのお知らせ
ここからはトミーウォーカーの「猫目みなも」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
テラ・ウィンディア(サポート)
「我が武を以て挑ませて貰うぞ!」
一人称
おれ
二人称
あんた(敵でも尊敬できる人
お前(敵
貴様(激怒した時
エルフの女の子だが突撃志向で戦闘を好む
基本戦術
【戦闘知識】で敵の動きや陣形等の捕捉と把握
闘いながら敵の性質や心の在り方の把握に努める
その後は敵陣に突撃して暴れまわる
【空中戦】を好んで空間全てを利用した闘い方を好む
敵の攻撃に対しては
【見切り・第六感・残像】を駆使して回避
ユベコで主に使うのは
グラビティブラスト(敵が多数の時
【一斉放射】で破壊力増強
メテオブラスト(敵が単体の時
【踏み付け】で破壊力増強
基本フォローが目的なんだろうが
おれはやっぱり之が一番得意だからな
全霊を以て暴れまわるぞーーーー!!!
キリエ・ニール(サポート)
スペースノイドシャーマン × 聖者
15歳 男 168.9cm 赤い瞳 白い髪 色白の肌
特徴 実験室生まれ、天涯孤独の風来坊 魔眼と魔の腕
口調 好奇心の旅人
僕、キミ、だね、だよ、だよね、なのかな?
人の世の良き未来を信じ、その未来への可能性を見つけ守る
試験管生まれの人造聖者にして銀河を旅する風来坊
どこにでもふらっと現れる
人造の聖者であり、戦闘特化すぎて聖者らしい事ができない、向いてない事をひっそり気にしている
【第六感】【学習力】【見切り】でなんとなく状況とやるべき事を察知し理解
【衝撃波】【念動力】で障害を吹き飛ばし
無数の刀剣による【二回攻撃】で斬って捨てる
基本避けて斬る…ただ斬って、破壊する
「立派な藤の花だね。これが平和な花見なら、さぞ楽しめたんだろうけど」
ふらりと現れたキリエ・ニールが、せせらぎの周囲を飾る淡紫色にそう呟く。甘い香りを含んだ風を深く吸い込んで、テラ・ウィンディアも頷いた。
「オブリビオンの悪行を見過ごす訳にはいかないものな! 我が武を以て挑ませて貰うぞ!」
掌にすぱんと拳を打ち付けるなり、テラは地を蹴って走り出す。紫電を放つカマシシの一頭に肉薄し、叩きつけた一撃は、けれど鋼の如き硬さに変じた毛皮に弾かれた。即座に飛び退って距離を開け、毛皮の硬化を解いて飛び掛かって来るカマシシの反撃を回避しながら、テラはどこか楽しげにも見える表情を浮かべる。
「こいつら、思ったよりは賢いみたいだ!」
「なるほど、それなら……」
勢いよく駆けてくるカマシシの蹄を掻い潜り、キリエは携えた無数の剣の中から二振りの刃を抜き取った。そして振り抜いた二重の斬撃は、オブリビオンの毛皮が鎧と化すより早くその肉に達して。
舞い散る血の匂いを受けてかいよいよ荒々しく目を光らせるカマシシたちを前に、そうでなくてはとテラが得物を構える。腰を落として敵の群れを見据えていた少女は、次の瞬間しなやかな脚で高々と跳躍し、その身を宙へ舞い上げた。カマシシの頭を踏み台にし、或いは近くの樹の幹を蹴って、そうして彼女はひらりと敵の死角へ飛び込んでいく。
「いくら視界が広くても……ここからなら、見えない、だろっ!」
空中からの叩き落とすような一撃がオブリビオンの後頭部を貫き、どうと地面に突き倒す。得物に付いた血を払うなり次の敵へ向かっていく彼女に負けじと、キリエもまた刃を閃かせた。慣れた手つきから繰り出される鋭い斬撃が、獣の群れを一体、また一体、確実に屠っていく。こうして剣を握って戦うことばかり得意な自分に、何も思う所がないキリエではない。けれど、今は。
(「港の人たちの未来を、こんな所で閉ざしてしまうのは間違ってるよね」)
人の世は、その未来は、オブリビオンなどによって食い殺されるべきではない。あるべき未来を見据えるように煌いた両の目に、新たな敵が映り込み――そして次の瞬間、少女の槍と少年の剣が左右からそれを貫いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
真宮・響
【真宮家】で参加。
港を乗っ取るとはあくどい奴もいたものだね。港は人の営みに欠かせない。まずはこの化け物鹿を蹴散らしてからだね。
さて、素直に敵の攻撃範囲に入る気はない。炎の戦乙女を発動して正面からの抑えを任せ、【目立たない】【忍び足】で敵の背後を取る。背後を取れたら、【先制攻撃】【二回攻撃】【串刺し】【範囲攻撃】で攻撃。敵の攻撃がアタシの方に攻撃が来る場合は【見切り】【オーラ防御】【残像】で対処。
真宮・奏
【真宮家】で参加。
港を抑えられると多くの人達の生活が滞ってしまいます!!即急に取り返しましょう!!強そうな鹿さんですが、突破させて頂きます!!
私は防御役に徹します。【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【電撃耐性】を使った上で足を踏ん張って信念の盾を発動。敵の攻撃を全て受け止める勢いで【かばう】。攻撃は響母さんと瞬兄さんに一任します。攻撃は引き受けます。その間に仕留めてください!!
神城・瞬
【真宮家】で参加。
港を占拠ですか・・・港は生活の基盤です。多くの人達が路頭に迷うので必ず取り返しましょう。まずはこのカマシシの群れですね。
最初から全力で行きます。【高速詠唱】【全力魔法】【二回攻撃】で【範囲攻撃】を併せた氷晶の矢で攻撃します。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【部位破壊】【目潰し】も乗せます。絡みついてくる蔓は【誘導弾】で切るか、藤の花の時点で【誘導弾】【吹き飛ばし】で吹き飛ばしを試みます。僕の方に攻撃が来る場合は【オーラ防御】でダメージを軽減します。余裕があれば【戦闘知識】で敵の動きを味方に知らせますね。
川の上流を押さえるカマシシの群れは、ここまでの猟兵たちの猛攻によってかなりの数が倒れていた。それでもなお退かずに土を蹴立てる生き残りに対して、神城・瞬は即座に自身の魔力を練り上げた。
「まずはこのカマシシの群れですね」
高速詠唱によって制御できうる最大限まで威力を高めた氷晶の矢が、驟雨の如く降り注ぐ。貫かれた毛皮に滲む赤よりまだ赤くその目を光らせる獣の群れを前に、真宮・響は魔力を溜め込んだ宝石を己の指で握り割った。瞬間紅蓮の炎が巻き起こり、その中から神々しい乙女の輪郭が花咲くように現れる。赤熱した槍を携え駆ける戦乙女に正面を任せて、響はカマシシたちの背後を取るべく弧を描くようにして駆け出した、が。
(「流石に全く気付かれず、って訳にはいかないか」)
個々の視界が広い上、複数個体が残っているカマシシの群れ全体の目を掻い潜るのは難しい。踏み込ませまいと突進してきたカマシシを迎え撃つべく構えた響の正面に、真宮・奏が割って入った。重い一撃を全て受け止めるべく腰を落とし、彼女は正面の敵を見据えたまま叫ぶ。
「ここは私が! 母さんは鹿さんを!」
「……任せたよ!」
僅か一瞬の逡巡の後、響は娘の背後を飛び出して更に駆けた。熱を持って輝く槍の穂先が唸りを上げ、横合いからカマシシの脇腹を薙ぎ払う。どうと倒れた獣の骸を越えて彼女に飛び掛かろうとしたもう一頭のカマシシを、飛来した無数の氷矢が撃ち貫いた。矢の主、即ち瞬目掛けて己の影から藤蔦を伸ばそうとする敵の姿を認めた奏が、即座に防御状態を解いて身を翻し、義兄に代わってそのユーベルコードを受け止める。しなやかな蔦に四肢を締め上げられながら、それでも彼女は気丈に前だけを見つめて。
(「確かに決して弱くはない相手……ですが!」)
だからとて退く訳にはいかない。彼女は、彼女たちは、猟兵だ。港の人々の生活を取り返す為にも――今は一刻も早く、この獣を討たねばならない。
「にしても、港を乗っ取るとはあくどい奴もいたものだね」
獣を討てば、次はその頭目だ。まだ見ぬ射手のことをちらと考え、即座に響は眼前の戦いに意識を戻す。カマシシが攻撃態勢に移るべく氷まみれの毛皮の硬化を解いた瞬間を狙い澄まして、一突き。眉間を穿たれたカマシシは、槍の穂を引き抜かれると同時に地に崩れた。ひゅんと得物を振るって付着した血を払い落とせば、花の香を微かに含んだ風が鉄の匂いを払うように吹き抜けた。
「……これで全部でしたか」
まだどこかに増援が潜んでいるかもしれない。そう考えてしばし息を殺し、周囲を警戒していた瞬もややあって肩の力を抜く。川の上流は、今や静かなせせらぎの音だけが支配する清涼な空間となっていた。義兄同様に軽く息をついた奏が、ぐっと両腕を伸ばす。
「この場は何とかなったかな……?」
呟きに、響がしかと頷いた。ひとまず、川の水を汚す元凶は断てたと考えていいだろう。ならば、次にすべきことは――そう。
人々から海の恵みを、そして港を奪ったオブリビオンを討つことだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第2章 ボス戦
『鈴木『孫一』重秀』
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POW : 八丁念仏
【斬られた事に気付かせぬ切味の名刀八丁念仏】が命中した対象を切断する。
SPD : 血華繚乱
【敵に肉薄した状態で拳銃】から【敵の傷口に銃弾を複数、霊距離】を放ち、【体内に銃弾を放たれた痛みと流血】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 八咫烏の加護ぞあらん
【拳銃が狙撃銃】に変形し、自身の【移動速度と近接戦闘能力】を代償に、自身の【命中率と射程距離】を強化する。
イラスト:たがみ千
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠水貝・雁之助」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ジャスティス・ボトムズ
民間人を苦しめる悪がこいつか。わかりやすいほどに俺の敵だぜ。
正義を執行して敵を叩き潰す。
民間人のために戦えるなんてヒーローとしては嬉しすぎるぜ。
正義を執行するという強い意志を持ってUCでフルパワーになって戦う。
相手は武装してんのか。なら俺も武器で戦うぜ。
俺の怪力と鎧砕きの威力は結構効くぜ。
場所を陣取るにしてもよ、こんなに食生活に密着したところを選ばなくてもいいじゃねえかよ。
魚が食えないと日々の食卓がかなり悲しいことになんだぞ。
少しは考えろよこのポンコツ野郎が。
戦の支度だなんだって知らねえよ。
俺は民間人の食卓に魚を取り戻すために正義を執行するぜ。
銃だ刀だと武装してやがるが、正義のパンチをくらえ!
「民間人を苦しめる悪がこいつか。わかりやすいほどに俺の敵だぜ」
港に陣取るオブリビオンを前に、ジャスティス・ボトムズは軽く笑って拳を固めた。己の信条を人を救うために存分に活かせるのなら、それはヒーローたる彼にとっては本懐だ。
正義を執行し、敵を叩き潰す――いっそ分かりやすいほどに単純なその心の強さに比する形で、黄金に輝くオーラがジャスティスの全身を包み込む。孫一が銃口を彼に向けたのと、ジャスティスが敵目掛けて弾丸のように駆け出したのは、ほぼ同時だった。
「陣取るにしてもよ、こんなに食生活に密着したところを選ばなくてもいいじゃねえかよ。少しは考えろよこのポンコツ野郎が」
放たれる銃弾をオーラで弾き飛ばし、或いは踏み込みでかわしながら、ジャスティスはまっすぐな怒りを口にする。知ったことかと再び引き金を引くオブリビオンの姿は、どこまでも腹立たしい。お前の戦支度など知ったことか――ヒーローとして今すべきことは、人々の豊かな食卓を取り戻すことだ!
「銃だ刀だと武装してやがるが、正義のパンチをくらえ!」
詰め寄る速度に乗せて繰り出した拳が、流星の如く金の尾を引く。鋼の鎧をも打ち砕く全身全霊の一撃が孫一の顔面を確かに捉え、その細身の体躯を宙へと打ち上げた。
大成功
🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
敵は魚や港のヒトのことなんて眼中になかっただろうな
戦の準備をして海に出ようとしたら丁度いい立地の港が丁度よく寂れていたってところだろう
無関係な奴の事情なんて関係ないもんね
俺も敵の事情はどうでもいいからさっさと倒すよ
敵を視認したららすぐUC解放・夜陰を発動
多数の水晶を正面から勢いよく直進させて威力とスピードで攻めるものと
上空や背後に回り込んで死角を狙うものに配分して攻撃
敵がUCを発動したらダッシュして敵の懐に入る
狙撃能力が高いらしいから最初から避けることは諦めて
オーラ防御で負傷そのもの、激痛耐性で痛みを軽減させて敵がUCを解除する前に距離を詰めたい
接敵したら暗夜の剣で斬り、傷口に水晶を撃ちこもう
「魚や港のヒトのことなんて眼中になかっただろうな」
戦支度をして海に出るため、たまたま都合のいいところにあった港を占領した。それだけなのだろうと、サンディ・ノックスは淡々と思う。敵が人々の事情を気にかけていないのと同じ程度には、こちらも敵の事情などどうでもいいとも。優男じみた外見のオブリビオンを視界に捉えるなり、サンディは一度ゆるりと目を閉じた。声なき呼びかけに応えて空中に滲み出た黒き水晶の群れが無数の矢となり、孫一に殺到する!
「ッ、と」
拳銃を狙撃銃へと変化させる敵は、とうにこの水晶の矢全てを撃ち落とす選択肢は切り捨てたらしい。使役主ひとり撃ち抜いてしまえば終いとばかりに向けられた銃口を前に、サンディは逃げも隠れもしない。逃がしてくれる相手とも思っていない。前のめりに駆け出せば、一瞬虚を衝かれたような顔をした射手が、それでも正確にこちらの急所へと照準を定めてきた。
放たれた弾丸の軌道と衝撃を纏うオーラの力でずらし、なおも肉を抉り骨に響く痛みは耐性でごまかして、サンディはなおも走る。その胸元で、銀の台に緑石を飾ったアミュレットが跳ねるように揺れた。未だ狙撃銃を下ろせずにいる敵に肉薄し、サンディは暗夜の剣を振りかぶる。
そしてしぶいた赤の中に、漆黒に煌く水晶が待ちわびたように深々と突き刺さった。
大成功
🔵🔵🔵
仲佐・衣吹
へー、銃も使うし刀も使うんだね
でも、負けないよ
僕ことベストが
痺毒属性を宿したルーンソードでお相手するよ
距離をとって来るならダガーに同じく痺毒を纏わせて属性攻撃
動きが鈍ったところを斬りかるよ
撃たれてもまぁ、仕方ないかな
後は頼んだよ
物陰に隠れていたオレこと、本体のサーベルが
分身に気を取られている隙を狙って更に斬りかかる
悪党に卑怯と言われる筋合いはないな
だまし討ち上等
これがオレらの戦い方よ
「へー、銃も使うし刀も使うんだね。でも、負けないよ」
敵の腰にある刀をちらと見やって、仲佐・衣吹はルーンソードを鞘から引き抜いた。痺毒を纏った刃を携え、前へ、前へ。恐れなど欠片も見せることなく駆け来る猟兵の姿に、孫一は近付かせはすまいと再び狙撃銃から弾丸を放つけれど。
「んー、そんなもの?」
外套を目くらましにして射撃を己の身から逸らし、踏み込んで一閃。呪いじみて輝く痺毒の剣が、確かに孫一の腕を捉えて裂いた。痛みと痺れに片眼を細めつつ、だがこの距離ならかわせまいと銃口を向けてくる敵に、青年はどことなく不敵に笑んだ。
「後は頼んだよ」
囁くような声に、銃声が重なる。腹を撃ち抜かれ、仰向けに倒れ行く青年を見下ろす孫一の表情が、瞬間凍った。
「――な、」
「先に言っておくが、悪党に卑怯と言われる筋合いはないな」
その背後で血に濡れた刃を担ぎ上げるのは、今しがた撃たれて倒れた彼と瓜二つの、それこそ『分身』とでも呼べるような――否。
初めから、孫一の前にいたのは『分身』だった。種を明かせばなんのことはない、オルタナティブ・ダブルによって呼び出した『ベスト』に陽動を任せた『サーベル』が、それまで潜んでいた物陰を飛び出して隙だらけの背中を斬りつけたのだ。
だまし討ち上等、と悪く笑って、まだまだ楽しめると言わんばかりに多重人格者の青年は得物を深く構えた。
大成功
🔵🔵🔵
紗咲・亜闇
元がどんな人物だったのかなんて歴史の評価Cマイナスの私には分かりゃしないけどオブリビオンであるって言うんなら元が総理大臣でも大統領でも関係ない!ぶっ潰す!
狙撃銃で私を狙うってことは殺意を持って私のことを見るってことだよな?
『あ゛?何見てんだゴルァ?』
UCスケバン・ガントバシで嘗めた視線くれた敵を闇【属性攻撃】の魔力弾に【呪詛】を込めてぶっ飛ばすぞ。もしそれよりも速く銃弾を撃たれていたらその銃弾は【激痛耐性】で耐える。呪詛には視界を闇で覆い隠す【目潰し】の呪いを込めて二撃目以降の狙撃を封じる。
後は近づいて木刀で刀も銃も【武器落とし】!
さて、これでもうお前の手札はゼロだ……ボコボコにしてやる!!
「オブリビオンであるって言うんなら元が総理大臣でも大統領でも関係ない! ぶっ潰す!」
息巻く紗咲・亜闇の双眸が、オブリビオンを捉えてぎらりと光った。高名な狙撃手だか何だか知らないが、人々を苦しめるオブリビオンを許してやる理由などどこにもない。向けられた視線と銃口に一層表情を険しくして、彼女は威圧するように目を剥いた。
「あ゛? 何見てんだゴルァ?」
武器を向けてくる以上、相手はこちらに対して殺意という名の負の感情を抱いている。亜闇のその読みは正しかった。『ナメた視線』に叩き返す形でガンを飛ばし返した更に先で、ぐにゃりと空間が冒涜的な形に歪んだ。そしてそこから吐き出された呪詛の闇が、回避を許さぬ形で孫一に襲い掛かる!
一瞬遅れて飛来した銃弾は、亜闇の身体を掠めかけて地に落ちた。先ほどまであれほど正確に猟兵たちを狙っていた弾丸が、だ。
つまりは先ほど他の猟兵が刻んだ毒も、亜闇の呪詛も確かに効いている。小さく頷き、亜闇は走り出す。音と気配を頼りに放たれたのだろう射撃をかわして、彼女は木刀に手をかけた。走り続ける勢いは殺さず、かち上げるように放った一撃がオブリビオンの手首を鮮やかに捉え――そして、その銃が地に落ちる!
「さて、これでもうお前の手札はゼロだ……ボコボコにしてやる!!」
孫一が抜いた刀をも返す刀で叩き落として吼えた彼女は、ほどなくして宣言通りにオブリビオンを叩きのめして勝鬨を上げるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『おスシ食べろ!!』
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POW : 好きな寿司ネタを腹がはち切れるほど食べる
SPD : 好きな寿司ネタをバランス良く味わう
WIZ : ふふ、玉子から食べるのが「通」ってやつですよ
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちの活躍により、漁港はオブリビオンの魔の手から取り戻された。
これを祝わずしてどうしようかと笑う人々の表情には、猟兵への感謝がありありと現れている。
港町に伝わる祝いの魚料理と、大人にはこれまた魚によく合うとっておきの酒も並べて、既に宴席の準備は整っている。
戦いも終わった今、港の人々の厚意に甘えるのもいいだろう。
紗咲・亜闇
私最後に美味しいとこ貰っただけなんだけど……寿しは好きだから食べる!
えっ!?今日は何食べてもいいのか!?じゃあね!じゃあね!私大トロとアワビと…!
とにかく自分の好きなネタも港の人たちに勧められたネタも好き嫌いなく食べる!あっ、ごめん。お酒は飲めないんだ。未成年ってやつでして…。
食べてばっかりじゃ悪いからヨーヨー【パフォーマンス】で一発芸をやる。まあ、普通のヨーヨー競技みたいな技を見せられてもこの世界じゃよく分からないだろうから、山から人間大の岩をヨーヨーでひきづってくる。そしてヨーヨーでその岩を【アート】技能を使って砕いて大きな『鯛』の彫刻を作るよ。受ければいんだけど…。
サンディ・ノックス
すぐに魚が戻ってくるわけではないのに大丈夫なの?
なんてね、ご厚意は受け取るものだってわかってるよ
サムライエンパイアの文化が好きでスシも何度か食べたことあるんだ
新鮮な魚だとショウユやワサビは僅かでいいんだよね
好き嫌いもないしお勧めされた料理はなんでもいただこう
食べる前には指を組んで「いただきます」と挨拶
もともと料理が美味しいんだろうけど、皆が嬉しそうにしているから極上の味に感じるな
港のヒトたちと話したいけれど忙しそうかな
俺からの話題はないんだけどね、いつから漁に出られるとか久しぶりに慣れ親しんだ料理を作ったとか今日からゆっくり眠れるとか、そんな話を聞いて彼らが日常を取り戻したことを実感したいなあ
ビスマス・テルマール
●SPD
魚料理でお祝いとお寿司を扱うと聞いて、わたしも『なめろう』のお寿司を『料理』して握って皆さん、依頼に参加した方々や港の皆さんにも振る舞いましょうかね。
魚介類を『パフォーマンス』しながら『早業』で捌いて、白味噌、赤味噌、トマト味噌、ハワイアン(バナナ、醤油、アボカド、オリーブオイル、因みにコレはマグロで)で軍艦巻きを中心に、なめろう寿司のネタを作って配膳を
ついでに、箸休めに鶏のササミのなめろうを温泉卵に絡めて、軍艦巻きにしたモノも、握っておきましょうか。
因みにハワイアンに関して、突っ込まれたら、マグロとバナナの組み合わせは意外に合う事も説明して置きましょうか。
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
東山・歩
お寿司を!食べに!来ました!!(どどん)
いやぁ、私は何もしてないけど……たまにはそういうのといいよね!
ごちそうになりまーす!
私はなんでも好きだけどー、ここは一つ、食べる順番を意識しつついってみよー!
鯛とかヒラメとかその辺りから始めて、段々味の濃いものにするんだったよね。
うん、とってもおいしいんじゃないかな!やっぱり港が近くて新鮮だからかな……ハムさんも食べる?
うん、一通り食べたかな。じゃ、もう一周行こうっと!まだまだ食べるぞー!
真宮・響
【真宮家】で参加。
港は取り返したんだね。良かった。奏がはらぺこですでにお腹がぐーぐーなってるようだから宴に参加してもいいかい。これは豪勢な料理だね。
港町だからお寿司が名物か。まずはまぐろを頂こうかね。はまち、しめさば、えんがわ・・・ああ、どれも美味しいよ。作った人の情熱が感じられるよ。子供たちも美味しそうに食べているね。こういう何気ない日常を護ることが猟兵の役目だ。今はこの時を存分に満喫するよ。
真宮・奏
【真宮家】で参加。
港は取り返されましたか。良かった。美味しい魚料理にすでに涎が出てお腹ぐーぐーです!!一杯食べますよ~。
お寿司を目の前にして目がキラキラ。いか、サーモン、あなご、まぐろ・・ああ、一杯ネタがあって食べたいものがありすぎます!!もちろん、全部いただきます!!(口にごはんが付いて瞬に取って貰う)はわわ、ありがとうございます!!瞬兄さんも何気に一杯食べてませんか?はい、満足するまでお寿司を満喫しましょう!!こういう時間は貴重ですし。
神城・瞬
【真宮家】で参加。
港も悪の手から解放されて、港町の皆さんも元の生活に戻れますね。良かった。すでに待ちきれない人がいるようなので、遠慮なく用意されたのを頂きますね。
まずは玉子を頂いてから、選り取り見取りな寿司ネタを頂きます。これでも食べ盛りですから一杯食べれますよ。(奏の口に付いたご飯を取ってあげながら)はい、貴重な時間、大切に過ごしましょう。僕も奏の笑顔を見ていたいですからね。(奏の頭を撫でる)
「お寿司を! 食べに! 来ました!!」
元気いっぱい胸を張り、東山・歩は屈託なく宣言する。何もしてないけど……と付け足して軽く頭を掻く彼女の背を、港の漁師らしき男が『宴会は人が多いほどいいもんだ』と力強く叩いた。
「すぐに魚が戻ってくるわけではないのに大丈夫なの? ……なんてね」
人々のこの厚意、受け取らないのは失礼というものだ。それを分かっているからこそ、サンディ・ノックスの表情もあくまで明るい。行儀よく指を組んで挨拶を述べ、早速彼は勧められるまま白身魚の握り寿司に手を伸ばした。
「……ああ、一杯ネタがあって食べたいものがありすぎます!!」
涎を零さんばかりに叫ぶ真宮・奏の表情に、母親である真宮・響は愛おしげに笑う。
「私も早速頂こうかね。まずはまぐろから……」
脂の少ない赤身は透き通った紅色で、口に入れると爽やかな歯ごたえと共に小気味よく噛み切れる。固すぎず水っぽすぎず絶妙な加減の酢飯との調和を楽しみながら、響は神城・瞬にも目を向ける。
「アンタも遠慮せず、好きなものを頂いていいんだよ」
「勿論、そのつもりでいますよ。折角港が悪の手から解放されたお祝いですしね」
そう言う彼が口へ運ぼうとしているのは、黄金色に輝く卵焼きの握り。ふわふわの焼き加減とよく効いた、しかし決して主張はしすぎず卵の存在感を引き立てる出汁の旨味が絶妙だと呟けば、既に何貫目かの寿司を頬張った奏がそれも気になると言わんばかりにまた目を輝かせた。
そんな彼女に負けず劣らず目をキラキラさせているのが、紗咲・亜闇だ。港の戦いを人々に労われることにはやや照れつつも、何でも好きなものを食べてくれと言われれば亜闇は素直にそれに飛びついて。
「えっ!? 今日は何食べてもいいのか!? じゃあね! じゃあね! 私大トロとアワビと……!」
美味しさの確約された高級ネタに、地元民お勧めのネタ、それに周りの猟兵たちが食べているのが美味しそうに見えたネタ……あらゆる寿司を取り皿いっぱいに盛り付ける亜闇の幸せそうな顔に小さく笑って、サンディがヒラメの握りにほんの少しだけ醤油を付けた。魚が新鮮なら、調味料や薬味はごく僅かでいい――そんなことを己の舌で実感しつつ、彼は楽しげに宴席を見渡す。
「もともと料理が美味しいんだろうけど、皆が嬉しそうにしているから極上の味に感じるな」
笑顔いっぱいの食卓に勝る調味料はない、ということかもしれない。それでは何かお代わりを、と更に視線を巡らせたところで、おや、と彼は瞬いた。港の人々に混じって寿司を握っている猟兵がいる。髪、肌、瞳、おおよそ全身に蒼い煌きを纏った少女――ビスマス・テルマールだ。
まな板の上を踊るように、ビスマスの握った包丁が小気味よく魚肉を叩いていく。彼女手ずから捌いた魚はやがてペースト状に細かく柔らかく刻み尽くされ、軍艦巻きの上に盛られ、並べられていく。白味噌、赤味噌、トマト味噌――彩りもさまざまなそのなめろうの味付けを、ビスマスはひとつひとつ熱を込めて語った。
「あと、こちらはハワイアンなめろう寿司です。鰺ではなく鮪を使ったもので、バナナとアボカドに醤油とオリーブオイルを合わせたものですよ」
「バナナ!?」
びっくり顔でハワイアンなめろうをしげしげ見つめる歩に、ここぞとばかりにビスマスは軍艦巻きを差し出してみせる。目の高さまで持ち上げたそれを自分でも見つめつつ、彼女は言葉を続けた。
「驚かれるかも知れませんが、鮪とバナナは意外によく合う組み合わせなんです。おひとついかがですか?」
「えっ、言われると気になってきた……! そろそろこってり系も色々食べたかったし、ひとつ欲しいな!」
「ええ、是非どうぞ。箸休めにササミのなめろうと温泉卵の軍艦も作ってみましたので、こちらも良ければ」
「何それそっちも美味しそうー!」
鯛やヒラメなどの淡白な白身から始めて、徐々に脂の乗った味の強いネタへ――よく聞く寿司を美味しく食べ尽くす順番に従ってネタを選んでいた歩にとっても、丁度絶好のタイミングだったと言えよう。せっかくだからと全色のなめろう軍艦を制覇しにかかる歩の方(正確には彼女の手にしている皿だろうか)を時折ちらちら気にしている義妹の口元に、瞬は小さく笑って指を伸ばした。
「あれ? 兄さん、どうかしまし……はわわ!」
指先で掬い取った米粒を無言で見せられ、奏はさっと赤くなる。がばりと頭を下げてお礼を言った後、彼女は何かを切り替えるように義兄に向き直った。
「瞬兄さんも何気に一杯食べてませんか?」
「これでも食べ盛りですから」
それに、こうしてゆっくり食事を楽しむ時間は貴重なものだ。目一杯楽しもうと笑う彼に、奏は大きく頷いた。
こういう何気ない日常を護ることが猟兵の役目だ、とそれを眺めつつ響は思う。そして皆で護り抜いたこの日常を、今は存分に楽しもうとも。
いよいよ宴もたけなわ、あちこちで語らう人々の声が存分に大きくなってきた頃、いつからか席を外していた亜闇がふらりと戻ってきた。見れば彼女は、手にしたヨーヨーの紐で大人の身長ほどもありそうな岩を引きずっている。思わず調理の手を止めたビスマスが、目を丸くして問いかけた。
「それは?」
「食べてばっかりじゃ悪いと思ってさ。私も一発芸やるよ!」
も、と付いたのは、問うたビスマスが先ほど華麗な包丁使いでショーのように魚を捌いていたことにかかっているのだろう。お手並み拝見と集まる視線にひとつ咳払いして、亜闇はやや彼らから距離を取るように大岩を立てた。手の中に握ったヨーヨーが、彼女の気合に応えるようにほのかに光を増す。
「……それっ!」
光のヨーヨーが、閃く。高速で四方八方から叩きつけられたヨーヨーはまるで職人の鑿のように岩を穿ち、削り、見る間にその輪郭を変えていく。観衆のどよめきの中、やがて姿を現したのは身を躍らせる巨大な鯛の石像だった。沸き起こる拍手喝采に内心でちょっぴり安心しつつ、亜闇はヨーヨーをしまって再び寿司に手を伸ばす。艶やかな白色の下にシソの緑が透けるイカの握りに、先ほど誰かが食べているのがとても美味しそうに見えた卵焼き。さっぱりしたものが欲しくなればかっぱ巻きやお新香巻きをつまんで口直しもしたいし、それに最初に食べた大トロの美味しさだって忘れられない! ごくりと飲み下した唾の音は、あちこちで上がる笑い声の中に紛れて消えた。
同じく色とりどりの寿司を更にお代わりしつつお勧めを聞いてみたのを皮切りにする形で、サンディは港の人々との会話を楽しんでいた。魚のことや港のこと、久方ぶりに作られた寿司のこと、それに何より港を取り戻してくれた猟兵たちへの感謝を口々に言葉にしてかけてくる彼らの声音に、ああ、とサンディは安堵したように微笑む。――彼らは、確かに日常を取り戻せたのだ。
「うん、一通り食べたかな」
並んだ寿司やあちこちの卓をざっと見渡して、歩はそう独りごちる。やはり、新鮮な魚を使った寿司というのはどれもこれも美味しい。それこそ、まだまだご馳走様なんて言えないくらいに、だ。
「じゃ、もう一周行こうっと!まだまだ食べるぞー!」
おー! と元気よく返したのは、誰だったか。いくつも重なるその声ににっと笑って、歩は元気よく拳を突き上げてみせるのだった。
大成功
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