●
かつて街があった。
しかし、今ここにあるのはただの廃墟。
建物は崩れ、焼け、瓦礫と化し。
犬猫の一匹すら残すこと無く狩られた命。
魔の軍勢は何処からともなく現れ、蹂躙し。
それだけを済ませると、また何処かへ消えていった。
一体、誰が信じる事ができよう。
たったの三日前まで、この『灰の街』に人々が暮らしていたという事実を。
●
「その、すいません。予知……です」
グリモア猟兵、クロア・アフターグロウ(ネクローシス・f08673)が申し訳無さそうに、顔を俯けながら予知の内容を伝える。
予知のあった場所はアックス&ウィザードに存在する都市、『緑の街』ヴィルザリア。
芸術や工芸が発展し、近隣の異種族との交流も多く様々な文化の交わる景観の美しい街で、近隣には遺跡なども存在することから冒険者も多い。
そんな街が、魔物の軍勢によって滅ぼされてしまう。
予知で見た魔物――オブリビオンは、『レッサーデーモン』と呼ばれる個体。
個々の強さもさる事ながら、問題となるのはその『数』だ。
「正確に、どれだけの居るかは分かりません。ただ、『空を埋め尽くす程』の数が存在しているのは確か、です」
しかも予知で視たのが敵の全戦力とも限らない。
少なく見積もっても数千。多くて数万。
まさに『軍勢』と呼ぶに相応しい数が、街を蹂躙する。
――否。蹂躙は、既に始まっている。
「そう、なんです。既に街は魔物によって襲われていて――急な襲撃だった事もあり、対処も後手に回っていて、死者や怪我人も既に多く。ですので、急ぎ駆けつけなければ、その……」
もっと多くの人間が死ぬ。
つまり猟兵たちには、これより死地へと赴き、戦況を覆して貰わなければならない。
「今は街の人達が、魔物の襲撃に対し懸命に持ち堪えています。皆さんの力添えで、大勢を持ち直す事ができれば……自警団や冒険者の方々の力で、自衛であったり反撃を行なうチャンスも出てくる、はず……です」
先述の通り、ヴィルザリアには冒険者も多く存在する。
きちんと備える事さえできれば、魔物の軍勢に対してでもある程度持ち堪える事ができる。
だが当然、持ち堪えるだけで事態は好転しない。
「敵のリーダーを、倒す必要があります。魔物の群れの一番奥に、一際強い気配を感じました。この事件の元凶というか、何かそんな……厭な、感じです」
魔物の群れを突破し、リーダーを討ち果たせば……恐らく魔物の群れは去る。
それが叶わずとも、統率くらいは乱せるだろうと期待できる。
魔物が散り散りになってしまえば、後は冒険者や猟兵たちによる掃討も容易になるはずだ。
「この街、ヴィルザリア以外にも……周囲には沢山の村や街があって。その全てを救うのはもちろん難しい事なんですが、上手く連携できれば、魔物への対処も少しは楽になる……のかも知れません」
こればかりは、不確定要素が多過ぎて何とも言えない。
周辺地域への救援に力を割きすぎてヴィルザリアが早々に滅べば魔物の数の暴力によって猟兵たちもジリ貧となるだろうし、救援したところで彼らが魔物討伐に力を貸してくれる保証もない。
猟兵たちの行動によって、戦況は大きく変化する。
これはそういった戦いとなるだろう。
「とても、とても大変なお仕事だと思います。わたしには、送り出すことしか、できませんが」
軽率にお願いして良いことではないだろう。
それでも、叶うことなら――とクロアは続ける。
「街を、救ってあげてください。みなさんなら、きっとそれが出来ると……思うので」
そう言って、クロアは猟兵たちを戦場へと送り出した。
まさひこ
まさひこです。
選択肢の多い依頼かと思いますが、よろしくお願いします。
●成功条件:魔物の軍勢を退ける
一般人の生死は問わず、成功度は成功条件に近付くかどうかで判定します。
よって戦力に関わらない村々の人命救助など、戦況に大きく関わらない行動は苦戦・失敗として判定します。
●1章
基本は『緑の街』ヴィルザリアの救援となります。
救護を主軸に、やれそうな事なら何をしていただいても構いません。
ヴィルザリアが滅ぼされた場合、反撃の糸口を掴めずシナリオは失敗となります。
プレイングで指定する事で周辺の村や街の救援を行なう事も可能です。
予知によると、猟兵が全く介入しなかった場合はすべての村や街が滅びます。
【ラクシュ村】保持戦力☆☆☆
小さな農村。ヴィルザリアよりも前線に近く、村人の避難も終わっていない。
助けても得られる利益は少ないだろうが、何処よりも滅びに瀕している。
【チコリの里】保持戦力★☆☆
フェアリーの集落。
隠れ里なので運が良ければ魔物もスルーしてくれるが、運が悪いと見つかってしまう。
人間に対してやや警戒心が強い。
【魔霧の森】保持戦力★★☆
エルフの集落が存在する。
現時点では魔物にも対処できているが、森の結界や自分たちの力を過信している。
プライドが高く、やや閉鎖的。
【山岳都市グラース】保持戦力★★☆
ドワーフの街。
堅牢で戦力も高いが、立地の関係で魔物による被害は今のところゼロ。
まず自分たちの身を固めている為、他の街の被害は見えていても自主的に救援を出してくれるような気配はない。
人間との交流もそれなりにあるが、仲良しと言うほどの信頼関係は築けていない。
●2章『レッサーデーモン』
対軍戦闘です。
敵の数が多いので、ひとりあたり数百~数千を倒すつもりで立ち回ってください。
それが難しければ通常通りの戦闘でも、戦場の1コマとして描写します。
冒険者などの戦力を率いる事も可能です。後方支援も構いません。
その他、立ち回れそうな事であれば何でもどうぞ。
●3章『???』
ボス戦です。詳細は不明。
●その他
各章の冒頭に追加描写を挟む予定なので、プレイングの投稿はその後にお願いします。
プレイングはできる限り採用したいものの、のんびりペースの執筆なので流してしまうことも多いです。
再送は大歓迎ですのでよろしくお願いします。
第1章 冒険
『命の最前線』
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POW : 大量の物資や負傷者の輸送、長時間の看護など
SPD : 緊急性の高い患者への対応、医療技術の活用など
WIZ : 回復魔法や薬物の知識活用、より良い救助計画の立案など
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「ねぇママ~、見てあれ! お空が真っ黒~!」
「あら、そうね。雨でも降るのかしら……お洗濯物を取り込まないと」
しかし『それ』は、決して雲などではない。
空を埋め尽くし、太陽を覆い隠す程の魔物の軍勢。
何の前触れもなく押し寄せてくる、実体を伴った死の運命。
「なっ……! なんだ、あれ……あんなの、見たことないぞ……」
「敵襲! 敵襲だ!! 空飛ぶ魔物の群れだァーー!! 戦える奴は今すぐ準備を、ギルドへの連絡も急げ! 女子供、年寄りから先に避難を!!」
街に鳴り響く警鐘。飛び交う叫び声。
慌てて自宅へと走り、家族の安否を確認する者。
神へと祈りを捧げ、救いを求める者。
状況が掴めず、ただ泣き喚き右往左往する者。
現実を受け止めきれず、ぽかんと口を開けたまま呆ける者。
「逃げろつったって、どこに逃げればいいんだよ……」
若者が絶望を吐露する。
その言葉の通り逃げ場など何処にもありはしない。
されど死の運命は容赦なく、街へと近付きつつあった。
人々は内心、絶望しながらも。その過酷な運命に抗うべく、覚悟を決めた。
四葉・蛍輝
%
少しでも多くの人を助けられるように動くよ
まずはヴィルザリアの怪我をしている人たちから優先的に【医術】【救護活動】の知識を駆使して応急手当てをしていくね
怪我の重症度が高い人、前線で戦っている冒険者等には【産まれながらの光】を使用でできるだけ早い治療を
可能であれば手当をしながら近隣の避難できそうな場所(洞窟等隠れられる場所)があるか等の話も聞きながら地形情報等防衛に活かせそうな情報が入手できればと
特に、ラクシュ村近くの情報が入手できるようであれば村へ向かえる方がいれば情報共有できれば
「できることは限られているかもだけど、最善を尽くそう……!」
●ヴィルザリア:大聖堂
住民たちの一時的な避難場所として、街の中央にある大聖堂が利用されていた。襲撃が急だった事もあり、大聖堂の入り口は大勢の避難民によってごった返している。
そんな中、四葉・蛍輝(蛍火・f17592)はあくまで淡々とした表情のまま、避難民の誘導と怪我人の治療を行なっていた。
「年寄りや子供、怪我人を優先して。怪我人は向こうで治療してるから、自分で歩ける人たちは何とかそっちへ。重症の人と、治したらまだ戦えるって人は俺のところに……!」
声を張り上げるのはどうにも慣れない――が、文句を言っていられる状況でもない。
なるべく通るような声量で、且つ、あまり威圧的になり過ぎぬよう。特に最初のほう、避難誘導をしたつもりの迷子の子供に泣かれてしまったのが、地味に蛍輝の心に響いていた。
『すまねぇ、怪我人だ! ちょっと通してくれ!!』
担ぎ込まれてきた怪我人。どうやら建物の崩落に巻き込まれたらしく、片足がエグい具合に潰れ真っ赤に染まっている。
『こっちもだ! 魔物の攻撃で……』
怪我人がひとり担ぎ込まれたと思えば、同時にもうひとり。今度は魔物の放った魔法を直接受け、全身を焼かれた冒険者と思しき男が運び込まれてくる。
「ふたりとも、そこに寝かせて。俺が治療する」
そう言って蛍輝は一度深呼吸をすると、怪我人ふたりにそれぞれ手を翳し癒やしの光を放つ。潰れた足が、灼き爛れた肌がみるみる間に癒えてゆき、それぞれ怪我人の表情も穏やかなものへと変わっていく。
『あぁ……癒やしの聖者さま! 本当にありがとう!』
その様子を見ていた周囲にも、どよめきが起こり、皆が口々に蛍輝を讃え、感謝の言葉を述べる。
「っ、はぁ……ッ、いえ、どういたし、まして……」
どっと押し寄せた疲れによって、蛍輝は思わずその場に座り込んだ。
聖なる光による治療は相応に術者の体力を奪う。無尽蔵に怪我人を癒やしていけるほど便利な能力ではない。よって、緊急性の有無によって使用を見極める必要がある。
『兄ちゃん、アンタも少し休みな。顔色、良くないぜ』
街の男が蛍輝に水を差し出す。「ありがとう」とそれを受け取ると、蛍輝は一口にそれを飲み干した。
「でも、もう大丈夫。できることは限られているかもだけど、最善を尽くしたいから……!」
よし、と気合いを入れて立ち上がり、蛍輝は再び避難誘導を始める。
と同時に。他の猟兵たちに情報を共有できないかと、街の人間に近隣の情報についても尋ねてみた。
「そうだ。この辺りで何処か避難できそうな洞窟とか、隠れられそうな場所って無いの?」
『んー、遺跡や洞窟の類は無い事も無いが、大概は魔物が住み着いてやがるからな。それにこの状況で、大人数で避難するのは危険過ぎる。何処が安全かって言えば、むしろこの街が一番安全……かも知んねぇなぁ』
或いは『魔霧の森』のエルフの集落か、ドワーフの治める『山岳都市グラース』。
蛍輝の気に掛ける『ラクシュ村』の近辺で言えば、やはりこの『緑の街ヴィルザリア』が最も近く、最も安全と言えるだろう。
「そっか、ありがとう。参考になる」
――で、あれば。
やはりこの街の状況を、もう少し立て直さなければならない。
今の状況では、仮にラクシュ村の人々が避難してきたとしても、それを受け入れるだけの余裕がない。
そうなると、自分が今すべき事は唯一つ。
「慌てずに。ゆっくりと地下に避難して。怪我人は向こうへ、大怪我をした人は俺のところに……!」
ひとつずつ、積み重ねて。
少しでも多くの人を助けられるように。
成功
🔵🔵🔴
リンタロウ・ホネハミ
あー、久々の苦戦必至な匂いっすね、こりゃキツ過ぎっすわ……
……はぁ
仕方ねぇ、いっちょやってやりますか!!
街の有力者に掛け合って村への馬車を手配してもらうっす
救援を出す?否、増援を呼ぶんすよ
何も剣を振り矢を撃つだけが戦争じゃあないっす
それをスムーズにやれるように、折れた剣の替えや尽きた矢を補給し
怪我人を後方へと搬送するのも立派な戦争要員っすよ
これで有力者を説得するっす!(礼儀作法・言いくるめ)
そうして村人を街へ送るだけの馬車と人員を連れて、最大速度で村へ!
蝙蝠の骨を食ってUCを発動し、傭兵の経験(戦闘知識)と合わせて
敵を迂回しながら村人達を街へと送るっす!
さぁ、生き残る為にバリバリ働くっすよ!
ギュンター・マウ
俺のサイズじゃ手助けするのは中々厳しいだろうからなぁ
とりあえず伝達・誘導役として唯一の武器である声を張り上げようと思うぜ
周りの猟兵の動きや負傷者の状況把握の為に
用途は違うが【孤獨の詩】で複数の仲間を召喚しようと思う
此奴らの聴覚・視覚は俺の持つオーブで共有する事ができるから便利なんだわ
蜈蚣は怖がられるかも知らんが、この際文句は言ってられんだろうさ
いざとなれば蜈蚣は敵への攻撃手段になるからよ
周りの状況をオーブで把握しながら、避難経路へ村人を誘導しつつ
負傷者は治療班がいればそちらに誘導しようか
普段は黄泉の導き手だが、今回は最後まで多くの命がこの地に留まっていられる所を、どうか見届けられますように
●ヴィルザリア:冒険者ギルド
「だーかーらー、馬車出して欲しいんすよ、馬車!」
「状況はもちろん把握している。その上で馬車と、何名かの人手をお願いしたい」
『そうは言うがなぁ、こっちだって人も馬も全然足りてねぇんだよ!』
リンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)とギュンター・マウ(淀む滂沱・f14608)のふたりは、ヴィルザリアの冒険者ギルドを訪れていた。
その目的は、ラクシュ村の救援に向かい人を運ぶ為の馬車と人手を借り受ける事である。
その為に、忙しいのを承知の上でふたりはギルドマスターに対して交渉を持ち掛けていた。
『だいいち、ラクシュ村は……この街ですら、この有様だぞ? 悪いが、もう……』
ギルドマスターの推察は恐らく正しい。本来であれば、何者の介入も無かったとすれば、今頃ラクシュ村は魔物たちによって完全に攻め滅ぼされている筈だ。未来を見通し、襲撃現場へと瞬時に駆けつけれるような、そんな都合のいい味方が存在しない限りは。
「(その辺はぶっちゃけ確認した訳じゃないっすけど)大丈夫っす! (多分)仲間が今頃、村で戦ってる(はずな)んで!」
リンタロウは平然と口から出まかせを言う。否、出まかせではない。結果さえついてくれば、紛うことなき真実である。時に方便は何よりも大事なものなのだ。
「頼む。最悪、馬だけでもいい。あんたらだって村の連中を見捨てたいって訳じゃねえだろ? こう見えて俺らは腕利きだ。護衛は要らない。魔物共は自力で蹴散らす。だから、この通りだ」
ギュンターもギルドマスターに対し真摯に頭を下げた。
当然、ギルド側の立場も分かる。迂闊に人員を割いた結果、街の防衛や救護に回す人員を削る事になる訳だし、村の救援に向かってそのまま魔物の餌食になってしまう可能性だって大いにある。むしろ並の冒険者であれば、魔物の群れに突っ込んで行くような行為だ。今や大勢の命を預かる立場の人間としては仕方のない葛藤だ。
「それに救援を出す? 否、増援を呼ぶんすよ。何も剣を振り矢を撃つだけが戦争じゃあないっす!」
皆が戦いやすいよう、折れた剣の替えや尽きた矢を補給し、怪我人を後方へと搬送する。それも立派な戦争要員というのがリンタロウの弁。
しかし、ラクシュ村の村人たちに訓練もなくそれが務まるかどうか。
ギルドマスターにとって、それは詭弁のようにも感じられた。が、少なくとも、目の前のリンタロウの目は冗談で言っているような目ではない。
本気で、自分ならばそれが可能だと。村人たちを、『避難民』ではなく『増援』に変えて見せると言っているように感じられた。
『マスター、俺からも頼む。ラクシュ村の連中には何度か世話になっている。助けられるものなら、助けたい』
そう申し出たのは、話を聞いていたギルドに所属する何名かの冒険者たちだ。
『俺はこいつらに賭けたい。確かに若けぇのとちっこいののふたりで頼りなくも見えるが、只者じゃない事はマスターだって何となく分かるだろ? 少なくとも俺たちを騙そうとして言ってる訳じゃない。本気で、この街を、村を、救いたいと思ってる。こんなお人好し共、今時そうそう居ないぜ』
『……分かった。馬車と人員、最低限だが手配しよう』
「っしゃあ! 話が分かるゥ!」
「……感謝する」
こうしてふたりは、馬車数台と冒険者数名の人員を借り受ける事に成功した。
●ヴィルザリア:東門
「おい、リンタロウ。こいつを連れてけ」
そう言ってギュンターは、何か黒いモノを放り投げる。
「ほいっ、と。何スかこれ……ってうおわ!? 蜈蚣(ムカデ)ぇ!?」
リンタロウは受け取った蜈蚣を慌てて放り投げそうになりながらも、何とか理性で以って踏み留まる。
「そいつは俺のユーベルコード――召喚生物だ。本来の用途は毒殺だが、此奴らの聴覚・視覚は俺の持つオーブで共有する事ができるから便利なんだわ」
「ほへぇ……便利なもんっすねぇ」
「あんまり可愛いもんじゃ無いかも知れんが、いざとなれば敵への攻撃手段にもなる。我慢してやってくれ」
「あざっす! いや、助かるっすわ。……んで、ギュンターの旦那は一緒には来ないんすか?」
「あぁ、俺はこのまま留まって伝達・誘導に専念しようと思う。お前もこっちの状況が多少なり分かったほうが助かるだろ?」
「確かに。んじゃ、村の方はオレっちに任せてくださいっす!」
「おう、頼んだぜ!」
――普段は『黄泉の導き手』だが、今回ばかりは最後まで多くの命がこの地に留まっていられる所を、どうか見届けられますように。
ギュンターに見送られながら、リンタロウの馬車を先頭に何台かの馬車が連なって、ラクシュ村を目指し出発した。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
※※※
上記、リンタロウ・ホネハミ 及び ギュンター・マウ 両名のリプレイの成功度は【苦戦】として判定しましたが、今後のシナリオの展開において『ラクシュ村の人員が戦力として役に立ちそうな場合』や『ギュンターの伝達・誘導が仲間の補助として役立った場合』の判定にボーナスを加えるものとして扱います。
※※※
リリヤ・ベル
%
【ユーゴさま(f10891)】と
マントの裾を掴んで、はぐれないように。
託して頂いたのです。
いまからでも、できることをしなくては。
素直に背中をお借りして、
移動のさなかには代わりに街の様子をよく見ましょう。
ひとのながれ、ひとの多い場所、被害の大きいところを憶えるよう。
ユーゴさまの意図をよく聞いて。
そばに居ても、できることがないのであれば。
はい、だいじょうぶです。おまかせください。
わたくしだって、ちいさくとも猟兵なのです。
足手纏いにはなりません。
道すがら憶えた被害の大きい方へ。
必要なら魔物の排除を。
安全を確保しながら救護するように。
託して頂いて、任せて頂いたのです。
だいじょうぶ。
ちゃんとできます。
ユーゴ・アッシュフィールド
%
【リリヤ(f10892)】と
まったく、いつかの再現だな
あの時は俺が不在だったが、今回は上手くやらせてもらうぞ
そこのお前、この街で一番デカい戦力を保有している場所を教えてくれ
ありがとう、そこに行くにはどちらに向かえばいい?
リリヤ、来い。おぶってやる
お前の身長じゃ逃げ惑う大人に蹴り飛ばされてしまうだろう
ここの長だな、単刀直入に用件を言うぞ
まず、お前たちが街の戦力を纏め上げて戦いの指揮をしてくれ
次に、俺に街の防衛配備の手伝いをさせろ
騎士団を率いていた事がある。少しは役に立つはずだ
リリヤ、俺はしばらくここから動けない
この周辺の救護や、魔物が入り込んだ際の駆除を頼めるか?
頼んだぞ、お前なら大丈夫だ
●ヴィルザリア:路地
「まったく、いつかの再現だな」
逃げ惑う民衆の姿を見て、ユーゴ・アッシュフィールド(灰の腕・f10891)は小さく溜息を吐く。あの時も街は、こんな様子だったのだろうか。
だが、同じ結末など辿らせはしない。
(――あの時は俺が不在だったが、今回は上手くやらせてもらうぞ)
ユーゴは胸中に決意を秘め、静かに闘志を燃やしていた。
「そこのお前、この街で一番デカい戦力を保有している場所を教えてくれ」
『えっと、それなら冒険者ギルドか自警団の詰所だ! もしかして、アンタも戦ってくれるのか!?』
「そんなところだ。ここから近いのはどちらの方だ?」
『それなら、自警団だ。この道を真っ直ぐ進んでって、突き当りに見えるでかい建物だ! 行けばすぐ分かる!』
「ありがとう」
ユーゴは街の男に軽く会釈をすると、その足で自警団の詰所を目指し歩き始めた。
そんなユーゴの背後。彼のマントの裾をしっかりと掴み、はぐれないよう後ろを付いていく少女の姿。
ユーゴは少女へと振り返り、声を掛ける。
「リリヤ、来い。おぶってやる」
お前の身長じゃ逃げ惑う大人に蹴り飛ばされてしまうだろう、とユーゴはその場に屈んで、少女にその背中を差し出した。
「わかりました。背中をお借りします」
そう言ってユーゴの背中におぶさった少女、リリヤ・ベル(祝福の鐘・f10892)。彼女はユーゴにとっての――恋人でも無ければ召使いでも無く――この場合は、そう。パートナーとでも称するのが相応しいだろうか。
(託して頂いたのです。いまからでも、できることをしなくては)
ユーゴの背におぶられる事も、平時であれば子供扱いだと、いちにんまえのレディなのだと頬を丸めて憤ったかも知れない。
だがリリヤは齢8歳でありながら。然りと『仕事』として、『人々の命を救うため』という自覚を持って、この場に居た。
大きな背中に身を預け、考える事の多いあのひと(ユーゴさま)の分も、リリヤは街の様子をよく観察した。
人の流れ、人の多い場所、被害の大きいところを憶えるように。
●ヴィルザリア:自警団
ユーゴは自警団の詰所を訪れると、話を纏めるべくその団長に面会を求めた。
詰所ではあちこちで罵声が飛び交い、人が目まぐるしく入れ替わり、切迫した状況に瀕していた。
ユーゴは団長を目にするや否や、相手の反応を待つこともなく一方的に言葉を投げ掛ける。
「お前がここの長だな、単刀直入に用件を言うぞ」
互いに時間もないだろう。下手に追い返される前に、ユーゴは本題を切り出した。
「まず、お前たちが街の戦力を纏め上げて戦いの指揮をしてくれ」
『そんな事、言われなくてもやっている! 見て分からんのか!!』
恐らく普段であればもう少し柔らかい対応もできただろうが、如何せんこの状況で余裕が無かったのか。ユーゴの言葉に自警団の団長は苛立った様子で応えた。
「そうか、それは済まなかった。では次に、俺に街の防衛配備の手伝いをさせろ」
『なっ……!』
ユーゴの申し出に団長は思わず言葉を失う。
『そんな事、出来る訳無いだろうが! 何処の馬の骨とも知れん男が、急に出てきて、好き勝手やらせろだと!?』
冒険者ギルドでのリンタロウやギュンターと同じだ。彼とて多くの命を預かる身。確かに猫の手でも借りたい状況だが、見ず知らずの他人に急にそんな重要な仕事を任せる訳には行かなかった。
だが当然ユーゴも冗談で言っている訳ではなかったし、自警団側がそういった反応を返してくるだろう事も折り込み済みだ。
「俺は騎士団を率いていた事がある。少しは役に立つはずだ。この街の様子、大規模な魔物の侵攻への対処に慣れている訳ではないだろう?」
『そ、それは……』
図星だった。
本当であれば、彼とて全てを投げ出し逃げてしまいたいような重圧に晒されていた。
自警団の仕事は街の中のパトロールが中心で、魔物の被害などちらほらあったとしても、大規模なものであれば冒険者ギルドに討伐依頼を出すだけの話。こんな戦争じみた、大規模な戦闘など経験した事がなかったのだ。
『騎士団って……何処の騎士団だよ。アンタが騎士団を率いていただなんて、証拠でもあるのか!?』
その言葉に、ユーゴは静かに首を横に振る。
「生憎、亡国の騎士だ。それに遠い小国、名を言っても通じぬだろう。だが――」
ユーゴは団長の目を真っ直ぐに見つめ、
「俺はこの街を守りたい。あの日と同じ過ちを、二度と繰り返さない為に」
その碧い瞳の奥には、確かな火が灯っていた。この時ばかりは過去に囚われるでなく、未来を見据えていた。
手の届く範囲しか救えない。ならば今度こそ、何としても手を届かせてみせるのだと。
「指揮権を寄越せ、などと言う気はない。ただ助言をさせて欲しい。納得がいかなければ、不適格だと判断すれば提案を却下してくれていい。だが、魔物の群れへの対処も、防衛戦も、ある程度の心得はある。だから頼む、手伝わせて欲しい」
『…………』
ユーゴの言葉を聞いて、自警団の団長は押し黙る。
何かを考え、決断するかのように。
『……分かった。アンタの提案を受けよう』
「ありがとう、俺も全力を尽く――」
『ただし! ただしひとつだけ条件がある!』
団長はユーゴの言葉を遮るように、ひとつの条件を提示した。
『“手伝う”じゃなく。アンタが防衛の指揮を執ってくれ』
「……いいのか?」
『情けない話だが、俺じゃこの街を救えねぇ……俺はアンタの言葉に、嘘がないって信じる。信じたい。無責任かも知れねえが、俺がどうこうするより、アンタに賭けた方がこの街が助かる可能性は高まる。だから頼む、お願いだ! この街を……救ってくれ……!』
団長も、藁にも縋るような思いだった。
自分には荷の勝ちすぎる状況だと、誰より自分で分かっていた。
それでいて余所者に全てを押し付けるなんて、虫が良いと、無責任過ぎると言う事も分かっていた。
それでも、目の前の男に賭けたいと思ったのだ。
ユーゴ・アッシュフィールドに。この街の命運を。
「……その信頼に、必ず応えよう。この『緑の街』を――『灰の街』になど、させはしない」
ユーゴはそう告げて、自警団の団長に感謝の意を示した。
「リリヤ、俺はしばらくここから動けない。この周辺の救護や、魔物が入り込んだ際の駆除を頼めるか?」
「はい、だいじょうぶです。おまかせください。わたくしだって、ちいさくとも猟兵なのです。足手纏いにはなりません」
リリヤはニコリと笑って胸を張る。
「頼んだぞ、お前なら大丈夫だ」
そう言ってユーゴもまた、リリヤを笑顔で送り出した。
彼女はもう、出逢った頃の震える子犬のような少女ではない。
彼女であればこの状況でも的確に立ち回り人々の救いになると、信じて、託す。
だから彼女は、パートナーと称するのが相応しい。
ひとりでは届かぬこの手でも。
ふたりでなら、きっと届かせることができるだろう。
●ヴィルザリア:市街
リリヤはヴィルザリアの街を走った。
あくまで慌てず、人とぶつかったりせず、転ばぬように気を付けて。
あのひとが託してくれたのだから。
あのひとが任せてくれたのだから。
あのひとが頼ってくれたのだから。
この信頼を裏切ってなるものか。
あの日の『ありがとう』も『ごめんなさい』も、未だ言えてはいないのだから。
「だいじょうぶ。ちゃんとできます」
自分に言い聞かせるように、落ち着いて深呼吸。
道すがら憶えた被害の大きい場所へ。
そこには一匹の魔物と、それに対処する自警団と冒険者たちの姿。
「みなさま、助太刀いたします!」
掛け声と共に。
リリヤの指先から、眩きひかりが放たれた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
冴木・蜜
%
他の猟兵が他の地域に向かったのなら
いずれ避難民が追加でやってくる筈
ならば受け入れられるだけの地盤を固めねば
緑の街にて
医療知識を活用し救護活動を行い
後方支援の地盤を固めます
重傷者、冒険者を優先して応急手当
命の危険が差し迫っている者は『冒涜』で引き戻します
私の前で死なせはしない
たとえこの身を削ってでも
また、避難民の中で
比較的軽傷で身動きが出来る者・医学の心得がある者がいれば
手伝って頂きましょう
添木となりそうな木材・薬剤を運んだり
重傷者と軽傷者の選別を行うだけでも構いません
適宜指示を飛ばし
手分けして怪我人の手当てを
後方に控える者達が無力だとは言わせません
我々は我々のやり方で
前線を支えてみせましょう
ヌル・リリファ
◆アドリブ、連携など歓迎です
◆簡単な言葉は平仮名、難しめの言葉は漢字でお願いします
なら、わたしは怪我人の治療をするよ。
なおったらたたかえそうなひとをメインに。余裕があればたたかえなくてもこのままだとしにそうなひともたすけるけど、そんな余裕はなさそうだしね。
まけたら滅ぶなら、いまはそのほうがいいとおもうから。
(人形は他人の生死に興味はあまりないので、効率を優先する)
UCを起動。(詠唱はなくても使えます)
これは治療と戦力の強化をどうじにおこなえるから。これをできるかぎりくりかえす。
ほのおの加護は、攻撃に【属性攻撃】のちからをのせて、身体能力とかも強化するの。
もちこたえる確立、たかくなるとおもう。
●ヴィルザリア:大聖堂
冴木・蜜(天賦の薬・f15222)とヌル・リリファ(出来損ないの魔造人形・f05378)のふたりは、ヴィルザリアにて怪我人の救護を手伝うことを選んだ。
(他の猟兵が他の地域に向かったのなら、いずれ避難民が追加でやってくる筈。ならば受け入れられるだけの地盤を固めねば……)
仲間の猟兵の動きや戦況を鑑みて、冷静に導き出した蜜なりの結論。
いくら広いと言っても大聖堂にも収容人数に限界はある。あまり多くの怪我人を寝かせておく程の余裕は無かった。
「冒険者のひとはこっちに。治療とどうじに、強化もできるから」
ヌルは治したら戦えそうな人間を中心に治療を行なっていた。
余裕があれば全員助けたって構わない。が、今の自分たちにそんな余裕はない。戦力以外は切り捨て、努力目標。どうせこの戦いに負ければ全員死んでしまうのだ。であれば、戦力外の人間が何名か死ぬ程度であれば必要経費――という考えがあっての事だ。
ヌル・リリファは『人形』。他人の生死になど、あまり興味を持たぬが故に。
一方で、蜜の対応は真逆だった。
冒険者をある程度優先する、という点ではヌルと同様。
だが彼は、決して命を見捨てようとはしなかった。
ユーベルコード『冒涜(エリクシール)』。
自身を構成する毒蜜を原料とした万能薬の精製。
「私の前で死なせはしない。たとえこの身を削ってでも」
垂らした薬の一滴が、大怪我を負った老人の四肢を、傷をみるみるうちに癒やしていく。
文字通り、『身を削る』行為。
救った怪我人の感謝の言葉にも、蜜は不器用に視線を背ける。
身体を襲う極度の疲労。次々に運ばれてきて、増える一方の怪我人の数。
「…………」
それでも、黙って蜜は治療を続けた。
誰ひとりとして救える命をこの手から取り零しはすまいという、彼なりの矜持でもって。
そんな蜜の様子を見て、ヌルは疑問を覚えた。
興味を持った、と言い換えてもいい。
「どうしてそこまでして、ひとを救おうとするの?」
「どうして、とは……」
「あなたが治療をつづけて、もしあなたが倒れでもしたら、そのぶんだけ戦力は減る。戦線をささえるだけの戦力を癒やしきれないかもしれないし、わたしたち自身、たたかわなきゃいけない場面もでてくるかもしれない」
あなたひとりじゃ、ここにいる全員を癒やしきることはできない。
だったら、選ばなきゃいけないはずだ。
なのにどうして、そんな。
あきらかに無理をしてまで、ひとを救おうとするのか。
「わたしたちは、猟兵としてこの場にいる。あなたがたおれてしまっては、元も子もない」
ヌルは淡々と、そう告げる。
咎めているわけではない。『何故そうしないのか』――純粋な疑問として、蜜に言葉を投げ掛けた。
「それは……確かに。そうですね、キミの言う通りです」
蜜は思わず苦笑した。
でも――、とそのまま言葉を続ける。
「何故と問われれば難しい。『ただ、救いたい』、言葉にするならばそんな、理屈にもならないこと。こんな私の手でも、誰かを救える……私は私自身の、この想いに正直でありたい。ただの我儘で、申し訳ありませんが」
そう言ってまた一滴、怪我人に『冒涜』の薬液を与え傷を癒やしていく。
「猟兵としては、失格でしょう。そのせいでこの戦いに負けてしまったら、それは確かに私の責任でもあります。ですが、頼らせてください。私は、私の目の前にある命を、見捨てる事はできないから」
蜜の決意は変わらない。
例えここで気を失い、力のすべてを使い尽くす事になろうとも。
持てる力のすべてをもって、できるだけ多くの命を救う。
ある種の呪いとも言える程の、救わねばならぬという強迫観念。
「そう……」
ヌルは黙ってそれを聞いていた。
否定するでもなく、肯定するでもなく。
ただ彼の価値観を、意志を。『そういうものなのか』と言葉通りに捉えて。
そしてヌルは。
ただの怪我人に対して、冒険者でも何でも無い、戦力にもなりそうにない重傷者に対して、癒やしの聖炎を放った。
「……良かったのですか?」
ヌルの行為に対し、効率的では無かったのでは、と蜜は疑問を口にする。
「あなたに無理して倒れられてもこまるし、このほうが効率的だと判断した。あなたは自分の考えを変えそうになかったし。しかたない」
「……ありがとうございます。付き合わせてしまい、申し訳ありません」
「きにしなくて、いい。わたしもひとを殺したいわけではないし、あなたの能力に頼りたいから、こうするだけ」
淡々と言葉を交わしながら、怪我人の治療を続けていくふたり。
『あの……私たちにも何か手伝えることはありませんか?』
『俺も、何か出来ることがあるなら……!』
ふたりばかりに任せていてはならない、と街の住人たちがふたりに手伝いを申し出る。
「ありがとうございます、助かります」
そう言って蜜は、手伝いを申し出てくれた住人たちに物資の運搬や怪我人の振り分けなどを指示し始めた。
「外では今、冒険者や自警団の方々が我々を守る為に懸命に戦い、持ち堪えています。ですが、戦う力だけが全てではありません。我々は我々のやり方で、前線を支えてみせましょう」
蜜の呼び掛けに、住人たちが応える。
ヌルはそんな人々の様子を見て、特に深い感動を覚えるわけでも何でも無かったが。
別に嫌な気持ちには、ならなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レン・オブシディアン
%【結社:ヴィルザリア】
他の街に向かった皆様も無事だと良いのですが…
いえ、初陣の僕に心配されるような人たちではないですよね。まずは僕も僕の出来る事を精一杯進めていきましょう。
ヴィルザリアではセレナリーゼ様と協力して街の防衛強化に務めますよ。
現地の冒険者にも協力を依頼し、セレナリーゼ様の指示に従って資材を運び込み家々を補強して回ります。
【拠点防御】の知識で脆い部分を重点的に補強し、時間の許す限りで魔物に備えた防御陣地を構築して行きましょう。
敵襲があればモトの大鎌を手に、前衛として応戦します。
時間を稼げばきっと事態は好転する、そう信じて戦いましょう。
行きます、刻器身撃――!!
セレナリーゼ・レギンレイヴ
%【結社:ヴィルザリア】
他へ向かった方々もどうかご無事で
広域攻撃は私の本領ですが、被害を、出すわけにはいきません
レン様どうかお力添えをお願いいたします
共に防備を固めましょう
レン様と共に町の防衛強化を試みます
動ける方は避難所の壁や窓の補強、防護への備えを
常備薬が家にある方は持って来てください
救護の手が足りなければ私も手当てに回ります
少しでも多くの人が最善を尽くせるよう【鼓舞】を
私一人ではできないことでも力を合わせればきっと
その為に、それぞれが最善を尽くせるようサポートするのが私の使命
敵襲が激しくなれば応戦
書に【祈る】のは力なきものを守るための力
どうか、
――この手から零れ落ちる命がありませんように
●ヴィルザリア:市街
「他の街に向かった皆様も無事だと良いのですが……」
「そうですね。無事を祈りましょう」
他の地域への救援や、支援要請に向かった仲間の安否を心配するレン・オブシディアン(短針のⅪ・f17345)とセレナリーゼ・レギンレイヴ(Ⅵ度目の星月夜・f16525)のふたり。
セレナリーゼはその場に膝を付き、遠き仲間に祈りを捧げる。
「とはいえ、初陣の僕に心配されるような人たちではないですよね」
自嘲するレンに対し、まぁ、と声を上げるセレナリーゼ。
「そんな謙遜をなさらず。広域攻撃は私の本領ですが、被害を、出すわけにはいきません。ですからレン様、どうかお力添えをお願いいたします」
にこ、と笑う聖女。そんな彼女に、気を遣わせてしまっただろうかとレンはますます申し訳無さが募り。
「ありがとうございます、セレナリーゼ様。まずは僕も、僕の出来る事を精一杯進めて参ります」
「ええ。共に街の防備を固めましょう」
和やかに笑いあい。
ふたりは自分たちの仕事――街の防衛の強化へと取り掛かった。
●ヴィルザリア:外縁
防衛の強化は、セレナリーゼの指示によって行なわれていた。
冒険者ギルドや自警団とも掛け合い、戦闘力は持たずとも力仕事程度はできる人員を何名か借り受け。
避難所の壁や窓の補強、防護への備え。
各家庭から常備薬などの徴収。
そこまで長期の戦いにはならないと予想されても、最低限の水や食料なども入り用だ。
「皆様、少しの辛抱です。耐え抜けば冒険者の方々が、仲間が、きっと魔物たちを一掃してくれるでしょう。ですから、我々も我々に出来る最善を。我々ひとりひとりではできないことでも、力を合わせればきっとできます」
まさに聖女らしき立ち振舞い。
セレナリーゼが街の人々を鼓舞する姿を見て、レンはただただ感心していた。
(戦うだけでなく、刻器の力に頼るでもなく、人々をあんなに勇気付けて。それに引き換え、僕は――)
レンが自分の力を痛感していると、それに気付いたセレナリーゼがレンに声を掛ける。
「レン様、どうか致しましたか?」
「い、いえっ! 何でもありません!」
まるで自分の考えを見透かされたかのように錯覚し、レンはビクッと身体を跳ねさせる。
そうだ。自分が未熟なのは仕方のないこと。
悩んだところで足りない実力を補える訳ではない。
自分は、自分に出来ることを。
気持ちを取り直し、レンは荷物を手に外壁の補強を再開した。
拠点防衛の知識をフル活用し、脆い部分を重点的に補強する。
それに自分の『石』としての性質。
石壁をじっと見るだけで、脆そうな部分は何となく分かる。
「大丈夫、キミもまだやれますよ」
お互い頑張ろう、と励ますように。
レンはその石壁を添え木とロープで補強した。
●
『おい、そっちに魔物が行ったぞ!!』
数体の魔物が防衛ラインを抜け、街へと襲撃を仕掛ける。
「レン様、行けますか?」
「ええ、勿論。参りましょう、セレナリーゼ様」
セレナリーゼとレン。互いの手には互いの刻器、『ミトロンの書』と『モトの大鎌』を握り締め。
「書よ、どうか力を貸してください。どうか、――【この手から零れ落ちる命がありませんように】」
セレナリーゼと『ミトロンの書』の間に【契約】が交わされる。
使い手の祈りに応え、その願いを叶えるだけの力を譲渡するのがセレナリーゼの刻器、ナンバーⅥ『ミトロンの書』が持つ特性。
「――刻器神撃、『長針のⅥ(ミニットハンド・シックス)』!」
天から降り注ぐ光が、正確に魔物だけを射抜く。
セレナリーゼの本領は、無差別の広域攻撃。故にこれは『全力で力を制御し』『威力を抑えて』、対象を絞った一撃。
それでも魔物の一群にダメージを与えるには十分な威力。
(これが『刻器神撃』、長針と短針が合わさった究極の一撃……)
同じ『結社』の構成員(ナンバーズ)であるレンとて、その一撃を間近で見る機会はそう多いものではない。
ましてやレンは、バディを持たぬ半端者。
持ち手の居ない武器。刻器のナンバーⅪ、『モトの大鎌』のヤドリガミこそが、レンの本質である。
「だけど僕は、僕の未熟さを嘆くのは止めた」
今はまだ届かぬ、その高み。
けどいつか、“本物”になる。
その頂きを目指して、今はその身を刃へと転ずる。
「行きます、刻器身撃――!!」
『干魃』の特性により赤熱化した大鎌。
その出力は『ミトロンの書』に比べて小なれど、魔物一体を斬り捨てるにはちょうど良い。
制御を気にせずに振るえる分、今この場に於いて魔物たちを制圧するには、セレナリーゼの『神撃』より効率的とさえ言えた。
「時間を稼げばきっと事態は好転する、そう信じて戦いましょう」
街の人々を鼓舞するよう、レンが呼び掛ける。
セレナリーゼほどのカリスマは無くとも、それでも彼の懸命な呼び掛けは街の人々の勇気を奮い立たせるには十分なもの。
「ええ、レン様。皆様が戻られるまで、この街は我々の手で守りきりましょう」
セレナリーゼのその言葉には、レンを未熟者と、単身と蔑むような響きは何処にも感じられなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジェイクス・ライアー
%
街の防衛優先
少数の犠牲よりも多くの命を救うことを念頭に行動
伝達係から被害・避難状況等、広範的に情報を仕入れ、柔軟に立ち位置を変える
●行動
基本は避難誘導を行うが、誘導の人員が充足している場合には避難場所の防衛に主眼を置く
●避難誘導
怪我が少なく動ける者を優先して避難場所へ誘導。老人怪我人は後に回し、余裕があれば救護
●避難場所防衛
避難場所の周囲に鋼糸を張り巡らせ、敵の接近を知る手掛かりとし、糸が揺れた方向を割り出し遠距離射撃で撃墜
敵が逃げた場合は深追いはせず役割の全うに専念。この後の戦闘に向け体力温存・怪我のリスクは避けていく
各街に猟兵たちが向かっている。
これからが正念場だ。…持ち堪えるぞ。
●ヴィルザリア:大聖堂周辺
「……そうか。分かった」
セレナリーゼとレンのふたりが魔物を迎撃したとの報告を受け、ジェイクス・ライアー(驟雨・f00584)は伝令の蜈蚣に対して応答する。
魔物が街へと侵入した事は分かっていた。
だが、ジェイクスは敢えてそれを見逃した。救援には向かわなかった。
何故なら自分には、この場を、避難場所を防衛するという役目があるから。
少数の犠牲よりも多くの命を救うことを念頭に。
あの場には他の猟兵も居た。であれば遅かれ対処できる、できた。
他の仲間たちの動きも、立ち位置も、防衛にあたる冒険者の状況、避難状況、難民の受け入れ情報など、逐一耳に入れて。
なるべく広域を、バランスよくカバーできるようその立ち位置を変えている。
「こっちだ。大聖堂の地下で避難民を受け入れている。怪我人もそこで診てもらえ。済まないが私は手を貸せない。どうしても動けぬ者は動ける者に手を貸してもらえ」
冷たく、突き放すように。
けれどそれは仕方のない事だった。自分が頼られる訳にはいかない。
人々の救護は街の者にもできる仕事だが、魔物の――オブリビオンへの対処は、自分でなければ務まらない。
「――来たか」
張り巡らせた鋼糸の『網』に、獲物が掛かる。
それは魔物の襲来を告げる合図。ジェイクスは糸の揺れた方向を割り出し、屋根を伝いながら現場へと駆ける。
そこには住民を襲う魔物の姿があった。
「――――」
ジェイクスは魔物を視認するなり、手に持つ黒傘――正確には黒傘に仕込まれた散弾銃によって、魔物を撃つ。
『グ、ガァァァ!』
その一撃によって魔物は住民を襲うのを諦め、何処かへ飛び去っていく。
ジェイクスは続けて魔物を撃ち落とそうと銃を撃ち続けるが、もともと距離が離れていた事もあってすぐに有効射程の圏外へと逃げられてしまった。
だが、深追いはしない。
仕留めるのに掛かる時間、怪我のリスク、体力の温存を考えて、最初から逃げられる想定だったのだから。
『あ、ありがとう……』
助けた住民がジェイクスに礼を述べる。
その腕からは、魔物に斬り裂かれたのかそれなりの量の血が流れていた。
「気にするな。早く避難し、診てもらえ」
『あっ……』
端的にそれだけ告げると、ジェイクスは自分の持ち場へと戻った。
あの程度の怪我であれば、命に別状はないと判断した為だ。
目的の達成を目指す為に、冷徹な取捨選択を下す――それがジェイクスの覚悟であり、意志だった。
尤も、効率だけで言えば先程の住民の命を見捨て、もっと距離を詰めた上で魔物の頭を確実に吹き飛ばせば良かったのかも知れないが。
ジェイクスは兵士ではあっても外道ではない。必要に応じて命は見捨てても、不必要なまでに軽視はしない。そういう事だ。
各街に猟兵たちが向かっている。
これからが正念場だ。
「……持ち堪えるぞ」
誰に告げるでもなく、ジェイクスは静かに決意を固めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
相模・恭弥
【山岳都市グラース】へ
とりま「商人」と「冒険者」から当たってみるかね。
適度に目利きした店に入って
ヴィルザリアの騒動の事と戦争特需を語り
その辺を買い物ついでの世間話しながら数件渡ろうか。
あと、酒場でも。
商人は金、冒険者は功を求める生きもんだからな、ドワーフだろうがそこは変わねぇだろ。
わざわざ死地に赴く気合入った奴が居るかはさておきな。
人が流れりゃ話も流れる。ここの領主の耳にでも入りゃ上々だな。
信頼無くても利がありゃ動く。恩売ってヴィルザリアにマウント取れる機会だもんなぁ。
それもここの堅牢さ。自己の安全あってのもんだがな。
さてどう転ぶやら。
当たるも八卦当たらぬも八卦。
ま、成る様に為るだろ。
●山岳都市グラース:雑貨店
「んじゃ、この薬と、食糧と……あ、いや。薬を追加でこれだけ頼むわ」
『あいよ。兄ちゃん、随分と買い込むなぁ』
相模・恭弥(レッツエンジョイ・f18126)はグラースに着くなり、適度に目利きした雑貨店に立ち寄って買い物を始めた。
ヴィルザリアの騒動について戦争特需を語り、噂を流すためだ。
「いやまぁ、つーわけで薬やら資材は貯め込んどいた方がいいぜ。俺は別に商人じゃねえし、自分の分さえ確保できりゃ売って歩こうなんてつもりもねえけどよ。ヴィルザリアに売りつけるにしろ何にしろ、物価は高騰するんだろうなぁ」
『むむ……そんな話、聞いたこと無いが。本当かね?』
ヴィルザリアとグラースの距離は、さほど離れては居ない。
街から街を直接見下ろす事はできないにしても、少し歩いた峠からならばヴィルザリアの様子を一望できる。
グリモアの予知によって事件を知り、転移してきた自分たちよりも先に情報が出回っているという事はないが、それでも早かれヴィルザリアの情報はこの街にも届くはずだ。
「グラースと言えば、鍛冶の街だろ? 不謹慎かも知れねえが、武器とかも沢山売れるんだろうなぁ。いや、この街が戦場になったら儲けるどころの話じゃねぇか」
『この街が戦場、ってのはどういう……』
「ん? 魔物の軍勢だよ。ありゃやべえぜ。このまま行きゃ数日保たずに街なんか壊滅だよ。俺もさっさとトンズラこくつもりだが、帝竜が甦ったとか言う話……ありゃマジかも知れねえな。この世の終わりかと思ったわ」
『そんなに……』
嘘を吹聴しているようにも見えない恭弥の言葉に、店主は狼狽し始める。
「おっちゃんは店もあるし、ここを離れるのも厳しいかも知んねーが……残るなら覚悟決めといたほうがいいぜ。この街は堅牢そうだが、それもどうなるか」
『お、おう……』
それじゃあな、と手を振って。
恭弥は店を後にした。
●山岳都市グラース:酒場
続いて恭弥は、酒場でも同様の噂を流した。
「マジマジ、ホントやべーって。嘘だと思うなら金でも賭けようか? そこの峠まで走ってこいよ、魔物が虫みてぇにうじゃうじゃ居んだ」
ただ話すだけならホラ吹き野郎と罵られても仕方ないだろうが、現金なものだ。
『金を賭ける』などと具体的なリスクを負ってみせれば、確認に走るまでもなくこちらの言を信用する。
普段は嘘で人を煽る事を嗜む恭弥だ。『真実』で人を操る事など、造作もない。
「今ならヴィルザリアも金払い良いだろうし、稼ぎ時かも知んねえな。いや、命あっての物種だけどよ。ちまちまダンジョンに篭って魔物の素材を集めるよか、一攫千金。報奨金だけで数カ月は遊んで暮らせるんじゃねえか?」
ヴィルザリアは産業も栄え、言ってしまえばそれなりに『金を持っている』。
その事は当然、冒険者たちも把握している。
それに加えて魔物の素材は高く売れるのだ。この状況、自分たちで狩った獲物の素材をどれだけ持ち帰ろうと、文句を言う人間は居ないだろう。
ヴィルザリアはもちろん、グラースや森のエルフたちにだって素材の需要はある。何なら隣国まで売りに歩いても良い。
「俺はどうすっかなぁ。金を稼いでも良い、けど俺じゃ弱っちぃからなぁ。こんな時、実力の無さが恨めしいぜ……」
恭弥は憂鬱そうに溜息を吐く。
嘘だ。そんな事は微塵も思っていない。
ざわつく冒険者たちの様子を見て、内心ほくそ笑む恭弥。
人が流れれば話も流れる。ここの領主の耳にでも入れば上々。
信頼が無くても利があれば動く。
恩を売ってヴィルザリアにマウント取れる絶好の機会。
それもここの堅牢さ、自己の安全あっての代物だが。
「さてどう転ぶやら。当たるも八卦当たらぬも八卦。ま、成る様に為るだろ」
『お客さん、今なんか言いました?』
「いや、なんでもねぇよ」
恭弥はミルクの入ったグラスをカラン、と鳴らし。その中身を一気に呷った。
成功
🔵🔵🔴
ヴィクティム・ウィンターミュート
% グラースへ
よっし、防衛線戦だな?任せてくれ
救援を出せないか打診してみる
「…ヴィルザリアがヤベーのは知ってるな?」
「ここの戦力をそっちの救援に回して貰いたい」
「勿論、タダでとは言わないし、抜けた戦力の穴も埋める」
「メリットだってあるぜ?ここで恩を売れば、この先何かあっても助けてくれる。俺がそう口添えもする」
「──もしもここでヴィルザリアが落ちたら、詰みになる」
「ここは恐らく、最後に回されてるんだろう」
「周辺が落ちて、総攻撃貰えば…四面楚歌だぜ」
「頼む。未来の為に、力を貸してくれ」
戦力を回して貰えたら、UCの戦術指揮で効率的な陣を築いて、防衛能力を強化しておく
大丈夫だ、必ずここは死守する
パーム・アンテルシオ
私は、ドワーフの街に協力を頼みに行くよ。
あの街が滅びたら、次はこっちが狙われる。
その話をするのは、もちろん必要だと思うけど…
それだけじゃ、ダメだと思う。
これは、個人間のお願いじゃない。
集団と集団の話。損得勘定が強く出る。
持っていくのは…ヴィルザリアが保有する、素材類。
交流があるなら、特産品は知ってるはず。だから、材料のほう。
鍛冶だって、全部金属で作るわけじゃない。
革。布。植物とか水だって、魅力的に映る物があるかも。
あの街を助ければ。恩を売っておけば。こういうものが、この先、手に入る。
そう考えて、自主的に動いて貰う。
それができれば…戦が終わった後の事を考えても、一番だと思うから。
【アドリブ歓迎】
●山岳都市グラース:商業ギルド
グラースは鍛冶や金属細工によって栄える職人の街。
その街で一番の権力者といえば、この商業ギルドのマスターである。
ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)とパーム・アンテルシオ(写し世・f06758)のふたりはグラースの商館を訪れ、ギルドマスターとの面会を求めた。
門前払いされるかと思えば、そんな事は無かった。『ヴィルザリアが窮地に陥っている』――その情報をこの時点で持つ者は、ごく限られていた為である。
案内された応接間。そこには立派な髭を結わえた厳しそうな男が、秘書らしき男性と共にふたりを待ち構えていた。
『では、話を伺おう』
「……単刀直入に行かせてもらう。ヴィルザリアがヤベーのは知ってるな?」
『存じている。貴殿は何処でその情報を?』
「んな事どうだっていいだろ。こっちも色々訳アリなんだ、説明している時間が惜しい」
ヴィクテムは敢えて詳しい説明を省いた。
アックス&ウィザードにおいて、猟兵の存在はいち冒険者としてしか認知されていない。予知だのなんだの説明したところで、簡単に理解を得れるとは思わなかった為だ。
「ともかく、俺らはヴィルザリアの状況を何とかしたい。……ここまで言えば、後は分かんだろ。――グラースの戦力を、ヴィルザリアの救援に回して貰いたい」
『……それは出来んな』
「即答かよ!」
『ヴィルザリアを見捨てたい、という訳ではない。しかし魔物どもがいつこの街を攻めてくるかも分からぬ。戦力を分けて各個撃破でもされてみろ、それこそ失策だろう。ヴィルザリアには済まないが、彼らは彼らの力で以って事態に対処して貰うより他ない』
「……っ!」
ヴィクテムもそう簡単に戦力を貸してくれるとは思っていなかった。が、ここまで頑なに要請を拒まれる事態も、可能性としては考慮していても、予測はしていなかった。
「勿論、タダでとは言わないし、抜けた戦力の穴も埋める」
『ふむ。具体的には?』
「……口で説明するよか、見せた方が早えか」
ヴィクテムは宙空に指を奔らせ、プログラムを起動する。
可視化される電脳演算。
ギルドマスターとふたりの間、テーブルの上に3Dでマッピングされた周辺の地図が浮かび上がる。
この商館の見取り図、そしてその内部に存在するマーキングされた人物のテクスチャ。
「こう見えて俺は凄腕の電脳――いや、まぁ魔術師でな。俺が指揮すりゃ、指揮系統の伝達や戦況把握、向こう数百年分くらいは先取りしてナビしてやるぜ。戦場における情報の重要さ、分からねぇほど耄碌しちゃ居ないだろ?」
『なるほど、便利な力だ』
ギルドマスターはあくまで表情を崩さず、冷静にヴィクテムの出した映像を眺める。
『しかし、それだけで戦力の穴を埋められるのであれば、最初から援軍など必要ないのではないか?』
「ぐっ、それは……」
痛いところを突かれた。
そう、どんなに戦力の運用が効率的になったとしても。冒険者ひとりの力で、魔物一体を打倒できるようになる訳ではない。元手となる戦力が、圧倒的に不足しているのだ。
グラースから援軍を貰ったとして、この騒動が終わるまでの間くらい、グラースが魔物の侵攻から持ち堪えれるよう戦力の補填を出来る自信はある。
だが、グラースにとってリスクが無いとは言い切れない。街にも多少なり被害が及ぶ事は避けられないだろう。
だが――、
「メリットだってあるぜ? ここで恩を売れば、この先何かあっても助けてくれる。俺がそう口添えもする」
『我々に相応のリスクもある。恩を売っても、共倒れになってしまえば話にならない』
「けど! ──もしもここでヴィルザリアが落ちたら、詰みになる」
『…………』
「ここは恐らく、最後に回されてるんだろう。周辺が落ちて、総攻撃貰えば……四面楚歌だぜ」
『確かに、その通りだろう。だからこそ、我々も救援に力を割く余裕が無いのだ』
「逆だろ! 今、力を合わせて叩くしかねえんだ! 頼む。未来の為に、力を貸してくれ……!」
『…………』
ギルドマスターは目を閉じ、押し黙っていた。
恐らく、彼の中で天秤に賭けているのだろう。
今、ヴィクテムの進言の通りにヴィルザリアに救援を送り、共に魔物を叩くべきか。
初志貫徹で、街の防備を固めるべきか。
話が膠着したところで動いたのは、今まで黙ってふたりの話し合いを聞いていたパームだった。
「ねえ、おじ様。これを見て貰ってもいいかな」
『お、おじ様……?』
目を白黒させるギルドマスターを余所に、構わずテーブルに品物を並べていくパーム。
それはヴィルザリアが保有する素材類。
近隣の森から採れる木の実やキノコ、動物の皮。
魔力の宿る宝石や、質の高い革細工や木工細工。
ヴィルザリアは、いわば周辺地域の文化の交流点となっていた。
特に交友は少ないながらも、エルフやフェアリーから齎される魔力付与された材料の数々。
それは金物細工を得意とするドワーフたちにとっても喉から手が出るほど欲しい品。
されどグラースと他種族の接点は薄く、ヴィルザリアの仲介を無くしては決して手に入らぬ品々でもあった。
「彼も――ヴィクテムも言ってたけど、ヴィルザリアを助ければ。恩を売っておけば、この先も良い商売相手になってくれる」
――けど、滅びてしまったら?
グラースの鍛冶製品も、大きく質が落ちるだろう。
この先の、10年、20年。
長期的に見た場合のリスクとメリット。
パームが言外に告げたのは、そういった広い視野での話だった。
「おじ様が街を大事に思う気持ちも分かるし、損得を考えるのも当然の事だと思う。だから無理強いはできない。でも、私は――」
ただの小娘が、赤の他人が、街の未来についてまで口出しするのは出過ぎた事だとは思うけど。それでも。
「いま、ヴィルザリアと手を取り合う事が。戦が終わった後の事を考えても、一番だと思うから」
それはお土産にあげるね、と素材の類はギルドマスターに押し付けて。
『…………』
ギルドマスターは黙したまま、唸る。
『貴殿らの申し出は分かった。検討しよう』
「なっ、――」
そんな悠長な時間はねぇ、と反論しそうになったヴィクテムを、パームが制する。
これはこの街の人たちの問題でもあるのだから。
無理強いしてはいけない、自主的に動いて貰うべきだと。
パームの言葉にヴィクテムは渋々と引き下がり、ふたりは応接間を後にした。
『未来の為、か――』
ギルドマスターはパームが残していった宝石細工を手に取り、独りごちる。
窓の外を眺めれば、そこに広がるのは栄えた街並み。
この街の未来にとって、どの選択が正しいのか。
彼は最後の決断を下した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ビリウット・ヒューテンリヒ
%【結社:魔霧の森】
よし、それじゃぁ行こうか?
同族だからね、交渉役は任せたまえ
空中は任せてもいいかな?
さぁバロウズ、今回は小食で頼むよ
固定重機関銃に変化させて、魔物を薙ぎ払う
ペルが危なそうならカバーするのも忘れない
敵を処理して落ち着けそうなら、交渉してみる
「話を聞いて欲しい。ヴィルザリアが今危ない」
「ここの守りは請け負う。浮いた戦力を回して欲しいんだ」
頭を深く下げてお願いするよ
難色を示すなら
「そうか…ではヴィルザリアが落ちて、そこから2倍、3倍と膨れるであろう攻勢を見過ごす、と」
「果たして、貴方たちと結界は耐えられるだろうか?」
「耐えられると思うなら話は終わりだ」
「私たちは、ここを見捨てる」
ペル・エンフィールド
【結社:魔霧の森】
誇りを持つのは結構なのです
でもでも、慢心が隙きを生むのは自然の摂理なのですよ
種の存続のために本当に必要なこと…よく考えてほしいのです
えぇ、空の敵となればペルの出番なのです
あんな奴らに遅れは取らないですけど…背中はお任せするですね
ビリウットも油断しちゃ駄目なんのですよ?
さぁお待たせしましたですよ魔物達
ビリウットが交渉を成功させるまでの間、ペルが軽く遊んでやるです
ユーベルコードで残像を出して撹乱するように飛び回るです
もちろんビリウットの射線には入らないようにするですし、狙いやすいように誘導なんかもしちゃうのです!
ついでに、鷲の目で空中から戦場を見回しボスのような存在を探すですよ
カタラ・プレケス
%
魔霧の森に救援と支援要請
ああいう長命種は誇りに命をかけるから焚きつけた方が早いね〜
里までの道中はカストールとポルックスを人に擬態させて敵を蹴散らしながら運んでもらう
里に着いたら御子としての貌を全面に出して説得
「誇り高き森の隣人よ、どうか我が声に耳を傾けて給え
我夜謳う烏なり、我ら先見の輩見るは悪に喰われし未来なり!
しかして我御子なれど未だ未熟なり
故に我は森の隣人らに願う
風が腐り水は淀む
土が乾き火は衰える
その様な先があってはならぬと
救ってくれと願われた!
……だから……どうかそのお力をお貸しくだされ
永き貴い森の隣人よ!」
●魔霧の森
森の結界の影響からか、エルフの集落への直接転移は出来なかった。
よって、ビリウット・ヒューテンリヒ(Ⅳ番目のレコード・キーパー・f16513)、ペル・エンフィールド(長針のⅨ・f16250)、カタラ・プレケス(呪い謡て夜招く祈りの烏・f07768)の3名はそれぞれ徒歩で集落を目指す。
「よし、それじゃぁ行こうか? 同族だからね、交渉役は任せたまえ」
「はいです! 頼りにしてるですよ、ビリウット!」
ぱたぱたと羽ばたいて周囲を飛び回るペル。
「ああいう長命種は誇りに命をかけるから焚きつけた方が早いね〜」
「誇りを持つのは結構なのです。でもでも、慢心が隙を生むのは自然の摂理なのですよ。種の存続のために本当に必要なこと……よく考えてほしいのです」
呆れ半分にエルフ批判を始めるカタラとペルのふたり。
その話を間近で聞くピリウットも、そのエルフの一員ではあるのだが。
「やれやれ、耳が痛い。だが確かにそれは事実だろう。誇り高くあるのは大事なことだ、誇りを失えば人は魔物と同じになる。だが、誇りに縛られ傲慢になるのもいけない。ままならないものだね」
苦笑しながら話していると、前方に何匹か魔物の姿を発見する。
どうやら魔物もエルフの集落を探しているようだが、結界が上手く働いて未だに集落は発見できていないようだ。
「どうやら、思った以上に猶予は残されていないようだ。ペル、空中は任せてもいいかな?」
「えぇ、空の敵となればペルの出番なのです! あんな奴らに遅れは取らないですけど……背中はお任せするですね。ビリウットも油断しちゃ駄目なのですよ?」
「ああ、心得ているよ」
ビリウットとペルのふたりは互いの刻器を構え、臨戦態勢をとる。
「ぼくも忘れてもらっちゃ困るな」
――『開くは星の十二が一つ。前へ進めやカストール、敵打ち倒すはポルックス。汝ら双児の偉業をも我らは語り紡ごうぞ』
カタラは呪文の詠唱と共に『カストール』と『ポルックス』、双児の戦士を召喚した。
「さぁバロウズ、今回は小食で頼むよ」
ビリウットは自身の刻器、ナンバーⅣ『バロウズの魔銃』に手持ちの宝石を喰わせる。
ムシャムシャと、宝石を取り込み咀嚼した魔銃は蠢きながらその形態を変化させる。
ただのリボルバーに見えたそれは、巨大な固定重機関銃へと姿を変えてビリウットの前へ。
「いいね、相棒。それじゃ派手に行こうか!」
そう言ってビリウットは、目の前の魔物目掛けて無数の銃弾を叩き込む。
バロウズの魔銃に、通常の弾丸を込める事は『できない』。
バロウズの特性は『記憶再現』。バロウズを製作する上で用いられた数多の銃のパーツが持つ記憶、或いは取り込んだ無機物が持つ記憶を参照し、魔法の銃弾を生み出す能力。
それに加えて、バロウズはビリウットにとっての魔杖でもある。
ビリウットの得意とする魔術は『追蹤魔術』。世界の記憶から現象を再現する魔術、それを補佐する役割を持つ。
――よって。
今、バロウズの魔銃――固定重機関銃から放たれる弾丸は、その一発一発が魔力を込められた宝石の魔弾。
魔物に命中、炸裂すれば込められた魔術が解放される。
再現する現象は『炎上』。
一撃、また一撃と魔弾が命中する度にその炎は勢いを増して、瞬く間に魔物を灼き尽くす。
「こっち、魔力の綻びを感じる」
カタラが呼び掛け、双児を先行させ魔物を蹴散らしながらカタラとビリウットのふたりはエルフの集落を目指す。
「バロウズ、ペルのサポートをお願い。ペルも、何かあったらバロウズのこと連れてきてね!」
「分かったのです、ビリウット!」
固定砲台モードのままのバロウズを単身残し、ビリウットは森の奥へと消えていった。
バロウズ――刻器は元より武器そのものが意志を持つ。
よって持ち手、長針が居らずとも独立した行動が可能だった。
(尤も、その性能は持ち手が存在する場合と比べ数段劣ってしまうのだが)
カタラとビリウットの後を追おうとする魔物たちを前に、これ以上先に進ませはしまいと立ち塞がるペル。
「さぁお待たせしましたですよ魔物たち。ビリウットが交渉を成功させるまでの間、ペルが軽く遊んでやるです!」
ひゅんひゅんと飛び回るペルは次第にその速度を増し、それは無数の残像を生み出す。
『ハーピィ達の狩り場』。実体さえも伴ったその残像が獲物の前で交差し、その肉体を幾重にも渡って斬り刻んだ。
「ほらほら、こっちですよ! お間抜けさん!」
あっかんべー、と魔物を挑発しながら敢えて速度に緩急を付けながら攻撃を誘う。
まんまと釣られて魔物が近付いてきたところへ、バロウズから放たれる援護射撃。ペルは立ち位置をうまく調整し、固定砲台となっているバロウズをうまく利用した。
「ふっふーん、楽勝なのです! これなら時間稼ぎと言わず、私とバロウズのふたりで魔物を全滅させられそうなのです!」
――しかし、慢心が隙を生むのは自然の摂理。
ペルはまだこの時、気付いていなかった。
先程戦った魔物のおよそ10倍の数が、今この場へと迫っている事に。
●魔霧の森:エルフの集落
魔力の綻びを辿ることで結界の隙を見つけ、エルフの集落へと辿り着いたカタラとビリウット。
エルフたちは予期せぬ来客に対し、あからさまに顔をしかめた。
『外には結界を施していた筈だが……何用かな、招かれざる客人よ』
ふたりを出迎えたのは威厳ある風格を持つエルフの男性。
どうやら彼がこの集落の代表、族長であるようだ。
ビリウットは突然の来訪の非礼を詫びて、話を切り出す。
「どうか話を聞いて欲しい。ヴィルザリアが今危ない。ここの守りは請け負う。浮いた戦力を回して欲しいんだ」
ビリウットは深く頭を下げ、族長へと乞い願う。
『状況はある程度、把握している。しかし我らは外界への過度な干渉は断っている。人間たちとの交流はあれど、同胞の身を危険に晒してまで助けに行く義理はない』
難色を見せるエルフたちに対しカタラもまた膝を付き、カタラの里現頭領――八代目御子としての言葉を述べる。
「誇り高き森の隣人よ、どうか我が声に耳を傾けて給え。我夜謳う烏なり、我ら先見の輩見るは悪に喰われし未来なり!」
このままヴィルザリアを放置すれば、魔霧の森を含む周囲一帯は灰と化し、何も残らない。
エルフたちが真に賢人であれば、それを分からぬ筈はない。
「しかして我御子なれど未だ未熟なり。故に我は森の隣人らに願う。風が腐り水は淀む。土が乾き火は衰える。その様な先があってはならぬと。救ってくれと願われた!」
如何に外界との交流を控えていると言えど、森が侵されていく様を黙って見過ごして良いのか。
そのような未来を許すことがあってはならぬ。
「だから……どうかそのお力をお貸しくだされ。永き貴い森の隣人よ!」
カタラは真摯に願った。
エルフの長命種としての誇りを傷付けぬよう、敬い。決して馬鹿にするではなく、相手を尊重し、どうか手を貸して欲しいと。
ダメ押しとばかりに、ビリウットが続ける。
「ヴィルザリアが落ちれば、魔物の軍勢はそこから2倍、3倍と膨れるだろう。我々はここに来るまでの間、既に魔物と遭遇している。オブリビオンの力が日増しに膨れ上がっているのは、あなた方も承知の事だろう。隠蔽と結界、この集落の戦力。それだけで本当に、あの大群に対し持ち堪えれるとお思いか」
『…………』
「よく、考えてみて欲しい。人々の未来……いや、この森の未来の為に」
族長は押し黙り、ふたりの言葉を検討する。
そしてその重い口を開き、族長としての方針を告げた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灰炭・炎火
%【結社:チコリの里】
こーんにーちはー! あーしでーす!
……ほら、友達友達! あーしもフェアリー!
魔物がきそうになってるから、安全な所に避難して欲しいんやけど……
今、もう人間の村は大変なことになっとうし、ここも無事じゃすまへんの!
ちょっとまっといてくれたら、あーし達が魔物やっつけたるから!
だから、お願い、逃げて!
…………あー、嘘、もうそこまで来てるの!? うぇーとうぇーと……
あー、ばっちゃ! ばっちゃ助けて! 皆を守ってあげて!
あーしはちょっと、こっちに来てる魔物をぶっ飛ばしてくるから!
刻器神撃! 手加減無しよ!
伴場・戈子
【結社:チコリの里】
アタシは人間じゃなく神……とは言っても、警戒はされるだろうねぇ。
炎火と一緒なことで多少は受け入れてもらえたらいいんだがね。
さて、あの子の言った通り魔物が来てる!この里ならうまくやり過ごせるかもしれないが……
「見つからない」だけに里一つを賭けるのはアタシゃオススメしないよ。
他種族を怖がるのもわかるが、よかったらアタシらと一緒に来ちゃもらえないかねぇ。
よし!そうと決まれば避難さね!シャキシャキ動きな!時間はそこまで余ってないよ!
何かあった時はアタシが護ってやるから安心おし!
(【鼓舞】の要領で指示出し)
他都市への支援物資なんかも出してもらえると助かるけど……無理は言えないかねぇ。
五百雀・斗真
魔物はかなりの数なんだよね…
フェアリーの集落は隠れ里らしいし見つかりにくそうだけど…
何かあったら大変だし急いでチコリの里へ行ってみる
…こんな状況だし凄く警戒してるよね
あ…仔竜のソルとルアはA&Wで育った子達だから
集落とか見つけやすいかもしれないね
魔物に見つからないよう身を潜ませつつ
二匹に捜索をお願いしてみよう
里が見つかっても身を隠して周囲を警戒
急に僕が訪れて、それが原因で魔物に里が見つかる事態は避けたいしね…
でももし魔物が里に気づいて襲おうとしていたら助けに入る
フェアリーと話ができそうなら自分が何者なのか伝えて
念の為に別の場所に避難した方が良い事と
可能なら魔物を弱らせる等の術があるか尋ねたい
%
●妖精の森
「フェアリーの集落は隠れ里らしいし見つかりにくそうだけど……何かあったら大変だもんね」
五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)は心配そうに、フェアリーたちの身を案じていた。
同行する伴場・戈子(Ⅲつめは“愛”・f16647)も森の中ではバイクを諦めしぶしぶ歩き、灰炭・炎火(“Ⅱの闘争”・f16481)は周囲の様子を伺いながらぴょこぴょこと忙しなく辺りを飛び回っていた。
「里がすぐ見つかれば良いんだけど……炎火ちゃん、だっけ。きみにはその、フェアリーの里の場所とか、見当付いたりする?」
「わからへん!!」
斗真の問いに、炎火が即答する。
「全ッ然、わからへん。なぁなぁ、ばっちゃは里がどのへんにあんのかわかる?」
「残念だけどアタシもこの辺に来るのは初めてだからねぇ。隠れ里って言うくらいだし、そこそこ苦労はするだろうさ」
とは言え、ここで途方に暮れていても仕方がない。
もう少し里に近付けば多少なり魔力を感知できるだろう、という戈子の推測に従って、三人はひとまず森の深部を目指し歩き始めた。
ラクシュ村を挟み魔霧の森とは反対方向にある、妖精たちの棲まう森。
普段は比較的平和な森で、村人たちにとっても良い薬草などの採取場所であったが、今は魔物たちが活性化し、森そのものがざわついている様子が感じられる。
「なーんか、ピリピリしよるん。やなかんじー」
「うん……もしかして街を襲った魔物も、この森まで来ていたりするのかな……」
不安げな様子の主人を見上げる、斗真の伴竜ソルとルア。斗真は二匹に「大丈夫だよ」と微笑みかけて、森の奥へと歩みを進める。
そんな折、転機は唐突に訪れた。
『ひゃぁわああああ!!』
森に響く悲鳴。
声の大きさからして、此処からそう離れてはいない筈。
「ばっちゃ!!」
「ああ、助けに入るよ!」
三人はすぐさま悲鳴の聞こえてきた方へと駆け付ける。
そこでは、ひとりのフェアリーが魔物によって追い回されていた。
「こらー! 弱い者いじめはいけないん!!」
炎火はすぐさま刻器『ニャメの重斧』をその手に持って振るおうとするが、それを見た戈子に慌てて静止される。
「お待ち!! 炎火、アンタ助ける相手ごと丸ごとミンチにする気かい!?」
「うぇぇ、あーしは急に止まれないんーーー!!」
戈子の静止も虚しく、そのまま振り下ろされた大斧。
辺りに響く轟音。
その圧倒的な質量から繰り出される一撃は、大地を大きく抉り巨大なクレーターを生み出した。
「そんな……あーし、そんなつもりやなかったん……」
土煙が晴れて、そこに薄っすらと残る血と肉片の跡。これではもはや、何処から何処までが魔物の肉で、何処からが妖精の肉かも分からない。
「いつかやらかすんじゃないかとは思ってたけど、……気にするなとは言えない。けど、きちんとアンタを制しきれなかったアタシの責任でもある。きちんとアダムルスにも話して、罪を――」
炎火と戈子が完全にお通夜ムードを出していると、「こほっ、こほっ……」と咳き込む声。
それはクレーターのすぐ真横、『大田さん』の触手によって間一髪でフェアリーを(炎火から)救った斗真のものだった。
「いや、すごい威力だね……危なかった……」
「わぁああああ、よかったん!!」
同胞の生存を喜ぶ炎火。戈子は安堵の息を吐き、助けたフェアリーは泡を吹いて気絶していた。
「え、と……大丈夫?」
斗真はフェアリーに目立った外傷が無いことを確認すると、優しく声を掛ける。
『う、ううん……死ぬ前にもっとお腹いっぱいごはんを食べたかった……』
「いや、傷一つ負っちゃないしピンピンさね」
『あれ、ホントだ!!』
戈子に指摘され、フェアリーはむくりと身を起こす。
起き上がったフェアリーを見て、炎火が嬉しそうに挨拶をした。
「お、起きたん! おはよー!」
『あ、えっと……おはよう! キミは……?』
「あーし? あーしはあーし!」
『あーし……』
「そう、あーし!」
「ああもう、ややこしいからアンタは暫く黙ってな!」
会話が成り立っているようで成り立っていないふたりを見兼ねて戈子が助け舟を出した。
戈子は自分たちの事やヴィルザリアの状況、魔物たちの話などをある程度の方便も交えつつフェアリーに説明する。
するとフェアリーは、戈子の話を聞くうちに「そうだった!」と思い立ち、
『そうだよ、魔物! あんな魔物、たくさん来られたら大変だよ! 急いで皆に知らせなきゃ!』
「良かったらその、僕たちも付いていって平気かな?」
『うん、もちろん! キミたちはボクの恩人だしね。こっちだよ、付いて来て!』
そう告げて、フェアリーは三人を里へと案内した。
●妖精の森:チコリの里
チコリの里へと辿り着くなり、フェアリーは三人を里の長老の元へと案内してくれた。
『長老、たいへんだよ! いちだいじ~!!』
『おや客人とは……一体何事ですかな?』
「アンタがこの里の長だね。アタシは伴場・戈子、アンタたちに話があって来たよ」
そう言って戈子は、先程のフェアリーに話したのと同様に長老に対しても事情の説明を始めた。
『ふうむ、なるほど。話は大体飲み込めましたじゃ……』
「“見つからない”だけに里一つを賭けるのはアタシゃオススメしないよ。現に既に魔物もある程度ココを嗅ぎ付けて来てるからね。他種族を怖がるのもわかるが、よかったらアタシらと一緒に来ちゃもらえないかねぇ」
「そうよ! 今、もう人間の村は大変なことになっとうし、ここも無事じゃすまへんの! ちょっとまっといてくれたら、あーし達が魔物やっつけたるから! だから、お願い、逃げて!」
ふたりの真摯な願いに、瞑目する長老。里の者の命を救ってくれた恩義もある。
長老の心は、既に決まっていた。
『……そうですな。里へは事が済んだ後で戻れば良い話、状況を鑑みるに戈子殿の仰るよう一度ヴィルザリアへと赴き、共闘した方が良さそうですな』
「ありがとー、じっちゃん!」
「話が早くて助かるよ。よし! そうと決まれば避難さね!」
炎火が長老へと抱きつき、戈子は両手をパン、と叩く。
こうして戈子と長老の指揮の下、妖精たちの移動準備が始まった。
●
「あの、すいません。ちょっと良いですか?」
『どうしましたかの、客人』
準備の合間に、斗真が長老に尋ねる。
「あの魔物について、長老さまは何かご存知ないですか? 例えば、こう……弱らせる方法とか、そういうの」
斗真の質問を受けて、長老は暫し考え込む。
『そうですな……正直なところ、魔物の正体やら何やらについては、殆ど見当も付かぬのですじゃ。申し訳ない』
「そう、ですか……」
『しかし、我らもフェアリー族の端くれ。力では劣ろうとも魔力には自信があります故、いざ戦いとなれば全力で支援いたしますぞ』
「……! それは、助かります。ありがとうございます」
さきほど力自慢のフェアリーを目の当たりにしたばかりであったが、それはそれ。
斗真は長老に礼を述べると、フェアリーたちの出立準備を手伝った。
●チコリの里:広場
「よし、これで準備は整ったみたいだね!」
里の広場には装備や荷物を整えたフェアリーたちがずらりと勢揃い。
だがそれと同時に、外を警戒したフェアリーが慌てた様子で広場へと翔び込んできた。
『魔物が! それも群れをなして、すぐそこまで!』
「嘘、もうそこまで来てるの!? うぇーとうぇーと……ばっちゃ……」
先程の失態を気にしているのか、炎火は上目遣いで戈子の様子を伺っている。
その様子を見て、戈子は優しい、祖母のような笑顔を浮かべた。
「行ってきな。今度は周りのことなんて気にしなくていい。派手にぶっ飛ばしておやり!」
「……うん!」
戈子の激励に、炎火は『ニャメの大斧』を構えて、力いっぱい頷いた。
「僕はどうしますか?」
「そうさね、斗真はアタシと一緒にフェアリーたちの誘導を頼めるかい?」
魔物の主力は炎火の側だろうが、行く道で魔物に出くわさないとも限らない。それに街に向かえばどのみち魔物とはかち合うだろう。
前と後ろ、双方に戦える人間を置く必要があった。
「分かりました、それでは僕が先導を。みんな、付いて来て!」
斗真はマスクを口に当て、その手に『かりそめスプレー』を握る。
そして駆け出すと同時にそのスプレーを散布すると、空中が虹色に塗られて、フェアリーたちの進むべき道を描き出した。
「ヒュゥ、やるじゃないさ。ほらアンタたち、斗真に続きな! ボサとしてる時間は無いよ!」
戈子はフェアリーたちを鼓舞し、殿となって広場を後にした。
●
チコリの里から炎火以外の人影が消える。
そして遅れてやって来る、魔物の群れ。
派手にやって良いとは言われたものの、あまり里を壊したくはない。
なのでなるべく地面は殴らず、空中で。
炎火の妖精の羽――炎の羽が、より一層の炎を噴き出し燃え盛る。
「刻器神撃! 手加減無しよ!」
刻器ナンバーⅡ『ニャメの大斧』。その特性は『質量増加』。
何を隠そう、炎火はこの『ニャメの大斧』の能力を未だ“引き出す”ことは出来ていない。
炎火に出来るのは『ニャメの大斧』を手に持ち、振るうだけ。
本来の特性などまるで生かせず、ただの重い斧として扱っている。
だから全然、大したことはない。
如何に『結社』が誇る“完成品”(クロノスウェポン)とて、使い手が未熟ならば宝の持ち腐れ。
彼女にできることなんて、たかが知れている。
装備を含め総重量数十トンにも及ぶ鎖鉄球付きの大斧が。
炎を纏い、回転しながら。
音速を超える速度を以って。
魔物の群れへと、突貫した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎
ラクシュ村が気になりますね。
もし他の猟兵が向かっているようでしたらお任せをしましょう。
どこにいても人々を守るだけです。
先ずは人々の避難ため『時間稼ぎ』をし『かばう』ように立ち回ります。
一人ではこの数の人々を守る事も救助する事も敵いません。
三々五々している冒険者や傭兵に呼び掛けて、組織的に人々を安全地帯へ、敵の手が届いていない場所まで逃がして行きます。
もし呼びかけに集まらないようであれば、ホワイトペーパーを駆使して近隣の貴族の騎士団長と騙ります。
可能であれば家々に魔力で氷の壁や天井を精製し、防壁として敵からの攻撃を防いでいきましょう
今は逃げの一手です。一人でも多く救いたい、救います!
●ラクシュ村
現段階において、数ある戦場の中で尤も窮地へと立たされているのは間違いなく、このラクシュ村であったろう。
村を飲み込まんという勢いで押し寄せる、魔物、魔物、魔物。魔物の群れ。
そんな中、誰よりも早くこの戦場へと駆け付け、ひとりでも多くを救わんと剣を振るうひとりの騎士の姿があった、
「動けるものは私の後ろに! 戦えるものは密集陣形を! 一時凌ぎでも構いません、少しでも安全な場所へ避難を。きっと救援は駆け付けます。もう少しだけ、耐えてください!」
アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は、大きく声を張り上げて村人たちを誘導し、少数ながらこの場に居た冒険者や心得のある村人たちに防戦の指示をする。
アリムは必要とあらば偽造の書類で身分さえ偽り、人々を救わんとする覚悟があった。しかしこれは嬉しい誤算なのか、身体を張ってまで村の窮地を救いに来てくれたアリウムの言葉に反発する村人など、誰ひとりとして居ない。
アリウムは一匹、また一匹と魔物を斬り捨てていく。しかし、魔物の勢いは一向に衰える様子がない。逃げ惑う村人たちを守り、庇いながら戦っていることもあって、その身体は既に傷だらけとなっていた。
村の住民を取り囲むように精製した氷のドーム。一時的な処置とは言え、それによって簡易的な避難場所を作り出し、死角からの村人に対する攻撃に対処をしていたが、同時にそのドームの維持にも魔力を注ぐ必要があり、アリウムの技量をもってしても攻撃面を疎かにせざるを得ない。
明らかな劣勢。
しかし、それはアリウムも覚悟の上のこと。一人でこの数の人々を守る事も救助する事も、始めから出来るとは考えていなかった。
仲間や救援が駆け付けるまでの間だけでも場を繋ぐ。時間を稼ぐ。それがアリウムに課せられた使命。
「今は逃げの一手です。一人でも多く救いたい……、救います!」
騎士としての誓約を己に課し、心を奮い立たせた。
自分ひとりの命ではない。今この剣には、自分の背中に控える数多くの村人たちの命を乗せて、戦っている。
「オオオオオッ!」
なけなしの魔力、その最後の一滴までをも絞り尽くし。剣に氷の魔力を込めて横一線。
氷の魔剣が、魔物の一群を切り払った。
苦戦
🔵🔴🔴
●
「が、は……くっ!」
魔力も体力も尽き、その場へと膝を付くアリウム。
氷のドームの維持にも限界が訪れ、その氷壁はカキン、と音を立ててその場へと崩れ去る。
肩で大きく息をし、魔物の群れを見据える。
その目は未だ死んでいない。
たとえ気を失ったとしても、誰ひとりとして自分の後ろには通さないと。
人々を傷付けさせはずまいという、覚悟を持って。
『――見事なり、人の子よ』
村一帯に、何処からともなく声が聞こえてくる。
それはまさしく『天の声』とでも呼ぶに相応しい、心に響くような荘厳な声色。
『よくぞここまで戦った。よくぞここまで人々を守り通した。汝はまさしく英雄、この村の救世主である。誇られよ』
アリウムと魔物たちの中間、天より差し込める光の柱。
人々は、ひいては魔物たちまでも、天を仰ぎ見る。
そこには今まさに、『神』の一柱が降臨しようとしていた。
ハゼル・ワタナベ
%【結社:ラクシュ】
俺はアダムのおっさんと同様に陽動に向かう
村人達には「今のうちに逃げろ!」と避難を促し
クロックアップ・スピードで反応速度を上昇させる
いち早く動きながらウロボロスの毒牙を振るって魔物を弱らせ、トドメを刺しやすいよう支援するぜ
身体を蝕まれ悶え苦しむ姿を見せつけ、魔物共に【恐怖を与える】ことができりゃあ御の字だ
【毒使い】の神経毒を侮るんじゃあねェぞ
(…俺もおっさんみたく見得でも切ってみるか?)
この毒蛇に触れりゃあじわじわ苦しんでお陀仏だぜ
蛇の道はHeavy、ってな!(どや!)
…な、なンだよ!もっとおっさんみたくビビれよ!
クソっ、もっとカッケー決めゼリフ考えてやっからな…!
アダムルス・アダマンティン
%【結社:ラクシュ】
人の子らが滅びに瀕している、と?
……成程。それほどの大軍であれば我らの刻器へ刻む経験としては申し分なかろう
俺は陽動を請け負う
我が纏うは漆黒、即ちダーク・ヴェンジャンス
村よりも前の場所で存在感を発し、先遣となる魔物共の相手をする
ここを通りたくば我が首を掻き切り、見事この腹から臓腑を刳り出すことに成功してから行くが良い!
これは神の試練。我が試練なくしてここを通らんとする者に破滅あれ!
大音声で宣言し、通過しようとする者どもをソールの大槌で叩き潰す
激痛など物の数ではない。負傷は漆黒によって我が力となり、叩き潰す貴様らの生命力を糧とせん
さあ、命惜しくない者よりかかって来るが良いだろう
有栖川・灰治
%
絶望の足音が近づいてくる
美しい美しい、破滅の音色
手を抜いたりはしないよ
だって手を尽くすからこそ最期が輝くんだから
街への避難を開始する前に、村の中で避難に適した場所(堅牢な建物、地下等)に誘導
その後負傷者の避難場所での応急手当てに専念、馬車が到着し次第街への移動を開始するよ
街は村人に戦力を期待してるんだね?
それなら馬車の中で[真似事]を使用し村人の回復を
操羅の触手で傷口を縫合。傷跡は黒くなっちゃうんだけど害はないよ
で、動けるだけじゃ戦力にならないのは皆んな分かってるわけだよね。
街に着くまでの間に出来る限りの村人を動ける状態にすることが僕の役目
街で村人がちゃんと働けるように、誰か何か策はない?
●ラクシュ村
天より降臨せし神の御姿。
黒一色の衣装に身を包み、手には燃え盛る大鎚を構えた男。
その神の名を、アダムルス・アダマンティン(Ⅰの“原初”・f16418)という。
「遅くなり済まなかった。これより先は我らが引き継ごう。安心されよ、貴殿が守り通した命――誰ひとりとして欠けさせはせぬ」
仲間の到着に安堵するように、アリウムは張り詰めていた糸が切れてその場で意識を失った。
とうに限界など超え、気力のみで意識を保っていたのだろう。アダムルスがアリウムの身体を支えていると、横合いからひょい、と手を差し出される。
「彼は僕が預かるよ。戦ってくるんでしょ? 村人の避難とか誘導は僕が担当するからさ。キミらは派手に暴れてきて大丈夫だよ」
そう言って申し出たのは有栖川・灰治(操羅・f04282)。
この村に救援の馬車が向かっている情報はグリモアベースで把握済み。
だったら話は早い。敵の殲滅の傍らで仲間の到着まで何処かに隠れて、やり過ごせば良い。
そして一方で、魔物の群れの中。
灰治がキミら、と称したもう片割れ。
『ゴ、グアァァァァ!!』
轟く魔物の叫び声。魔物の肉体を次々に切り裂き、敵陣で“8”の字を描くように蛇行する一振りの刃。
「そおらッ、よっ!!」
魔物の群れから空高く飛び跳ね、蛇腹剣の刃を引き絞るようにその手に収める。
ズザザ、と土煙を上げながら猟兵たちの元へと着地した青年、ハゼル・ワタナベ(“∞”のⅧ・f17036)。
彼もまた猟兵であり、アダムルスの同僚でもあった。
「なぁなぁ、ちょっと。おっさん、ちょっと」
「どうした、ハゼル」
「おっさん! ちょっと目立ちすぎじゃねえ!?」
「? 何を言っているのだ、お前は」
「え、なに? 無自覚でやってんの? かーっ、出たよ。これだから神ってヤツはさぁ……」
アダムルスの派手過ぎる登場に嫉妬し、苦言を呈するハゼルと、ハゼルの発言の意図を掴めずに首を傾げるアダムルス。
そんなふたりのやり取りを眺めながらも、にこにこと表情を崩さない灰治。
「それじゃ、魔物はよろしくね。さて、誰か村の建物とか周辺の地理に詳しい人、誰かひとり手伝ってくれるかな。避難先の相談をしよう」
そう言って灰治は村人たちの輪へと入っていき、避難誘導を開始した。
「では、我らも我らの責務を果たすとしよう」
「あ、ちょ、おっさん! まだ話は終わってねーんだけど!」
大槌を手に魔物たちの前へと歩み出るアダムルスに、慌てて付いていくハゼル。
想定では魔物の手が村に届く前に、この村ごと守ってやりたかったが、ここまで切迫した事態と村に被害が出てしまうのも致し方ないだろう。
これ以上村人たちの元へ、一歩たりとも進ませはしない。アダムルスは魔物たちを睨み、威圧する。
「ここを通りたくば我が首を掻き切り、見事この腹から臓腑を刳り出すことに成功してから行くが良い! これは神の試練。我が試練なくしてここを通らんとする者に破滅あれ!」
アダムルスが大槌の柄で大地を叩くと、大地は鳴動する。
圧倒的なプレッシャーに魔物たちも気圧され、僅かに怯んだ。
そして、アダムルスの口上を見て密かに歯噛みをするハゼル。
(悔しいけど、かっけぇ……俺もおっさんみたく見得でも切ってみるか?)
ハゼルは手に持つ蛇腹剣をヒュンヒュンと振り回した後で直剣へと戻し、魔物の群れに向かって突き付ける。
「この毒蛇に触れりゃあじわじわ苦しんでお陀仏だぜ。 ――蛇の道はHeavy、ってな!」
ニイッ、と決めるドヤ顔。
特にノーリアクションな魔物の群れ。
「……な、なンだよ! もっとおっさんみたくビビれよ! クソっ、もっとカッケー決めゼリフ考えてやっからな……!」
ぐぅ~と唸り、ハゼルは奥歯を噛んだ。
●
「おらおら、邪魔だ邪魔だ邪魔だーーーーッ!!」
『クロックアップスピード』によって更に速度を上昇し、敵陣を掻き乱し斬り刻むハゼル。ハゼルが手に持つのは刻器ナンバーⅣ『ウロボロスの毒牙』――を、擬似生成したものだ。
本来の力には及ばぬものの、その刃が持つ神経毒の効果は凄まじい。魔物を一撃で屠るには至らぬものの、苦しめ、動きを鈍らせるには十分だった。
「むんっ……!」
そしてハゼルが切り込み動きを鈍らせた相手を、アダムルスが『ソールの大槌』を振るい、叩き潰す。
刻器ナンバーⅠ『ソールの大槌』。数少ない完成品“クロノスウェポン”の一振りであるが、周辺に与える影響や力の温存も考慮し、今回はその力を全解放はしなかった。
この程度であれば己の膂力と身に纏う“漆黒”――『ダーク・ヴェンジャンス』のみで事足りる。
「激痛など物の数ではない。負傷は漆黒によって我が力となり、叩き潰す貴様らの生命力を糧とせん。さあ、命惜しくない者よりかかって来るが良いだろう」
アダムルスが大槌を振るう度、魔物の肉体は潰され肉片へと成り果てた。
●ラクシュ村:臨時避難所
灰治は人の破滅を愛していた。
有終の美。その瞬間にこそ、人は最も輝くのだと。
絶望の足音が近づいてくる。
美しい美しい、破滅の音色。
だけど、手を抜いたりはしない。
何故ならば。
手を尽くすからこそ、最期が輝くのだから。
『どう、されました……?』
「いや、なんでもないよ。少し考え事をね」
心配そうに問い掛ける村人に対し、灰治はにこりと微笑みながら言葉を返した。
村の建物の地下倉庫。
ヴィルザリアの大聖堂もそうだったが、この状況において“地下”というだけでも空や周囲からの驚異に警戒しなくて済む分、随分と心が落ち着けられた。
「さて、怪我をしている人は居ないかい? 僕は医者じゃないけれど、その“真似事”くらいなら出来るから。遠慮なく申し出てね」
幸い、アリウムの尽力もあって怪我人は驚くほど少なかった。アリウムが到着した以後はゼロと言ってもいい。
怪我をしている村人の殆どは猟兵が現場へと辿り着く前に怪我をした者たちだった。
灰治は程度の重い村人から優先し、ユーベルコード『真似事』―――UDC『操羅(くらら)』の触手によって傷口を縫合する。
「傷跡は黒くなっちゃうんだけど、害はないから安心してね」
平時であれば得体の知れない力と気味悪がられたかも知れないが、この状況下では村人も文句は言ってられない。藁にもすがる思い、訪れた救世主。村人たちは猟兵の献身に感謝こそすれ、疑おうという気持ちは持ち合わせていなかった。
「あと、は……」
誰かがヴィルザリアとの交渉のテーブルで、村人たちを戦力にすると約束していたような気がする。
できればこの場で村人たちにあれこれレクチャーできれば良かったのだが、生憎と灰治にはその手の専門知識が無い。
「ま、それは道中に言い出しっぺの彼にでもお願いすればいいかな」
現在、リンタロウと冒険者たちを乗せた救援の馬車が全速力でこの村に向かっている。
伝令によれば、それは間もなくこの場へと到着するはずだ。
そして噂をすれば。
バン! と倉庫の扉が開け放たれる。
『お待たせしゃーした! ヴィルザリア行きの馬車、只今到着っすよー!』
おお、とどよめく村人たち。
「それじゃ皆、行こうか。まだ絶望は終わらない。もうひと踏ん張り、頑張っていこう」
避難所を後にし。灰治と村人たちは馬車に乗り込んで、一路ヴィルザリアを目指し出発した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ダンド・スフィダンテ
%
指針:村の避難誘導。街の後方支援/防衛。
●【かばう】【誘き寄せる】で一般人へ向かう攻撃は全て此方に引き寄せ、集まってきたデーモンはUCの殲滅や【なぎ払う】辺りで蹴散らしていこう。負傷?まぁするよな!はっはっはっ!いけるいける!
●共に街へ辿り着けたなら、【鼓舞】【拠点防御】【戦略知識】を使って必要な後方支援の指揮を。
疲労している人間には、UCで体力の回復と心の治療を試みよう!
『モンスターに蹂躙なんてされてたまるか!震える足でも構わない!自分に出来る戦い方で良い!明日を迎える為に、力を合わせるんだ!』さて、共感は得られたろうか?
言葉は変えて、全体を動かして行きたいが……果たして上手く行くかなぁ!
●
人々を乗せた馬車はヴィルザリアを目指し全速力で駆け抜ける。
辺りを飛び回る魔物の群れ。
道中には当然、防壁も無ければ迎撃に十分な人手も足りない。
魔物たちの攻撃をなんとか防ぎながら、馬車は懸命にヴィルザリアを目指す。
攻撃はヴィルザリアに近付けば近付くほど、激化していった。
魔物たちの主力はヴィルザリアに対して襲撃を行なっていた為、当然とも言えた。
そして馬車の進む先。ヴィルザリアの門まであと一歩というところで進路を塞ぐ魔物。
ここで応戦する訳にはいかない。歩みを止めた瞬間、馬車は魔物たちによる集中砲火を浴びてしまう。
――その時。
「そおおおおっりゃああああああ!!」
魔物を、大地を貫く衝撃。
立ち上がる土煙の中から、真紅の槍を携え白銀の甲冑に身を包んだ男が歩み出る。
「待ってたぜ! さぁ、この場は俺に任せて馬車を早く中へ!」
そう叫ぶのは、この状況を見越して馬車を出迎えにやって来たダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)。
彼は相棒の竜槍『アンブロジウス』を手に構えると、その一突きで縦横無尽に魔物たちを仕留めていく。
「さぁ魔物ども! 俺様はここに居るぞ! 馬車なんて放っておいて、この俺様と遊ぼうぜ!」
挑発に応じるように、四方八方から魔物の攻撃がダンドを襲う。
その間に馬車はこの場を切り抜け門の中へと入っていったが、身代わりとなったダンドは満身創痍。
「負傷? まぁするよな! はっはっはっ! いけるいける!」
鎧の中で、ダラダラと血を流しながらも苦しさは一切感じさせず、再び槍を構える。
馬車が無事に街へと辿り着いたならば、ここに長居をする理由はない。
ダンドは周囲の魔物たちを薙ぎ払い、自身もヴィルザリアに向けて退却を始めた。
●ヴィルザリア:東門
ダンドはヴィルザリアに戻るなり、仲間から軽い傷の手当を受けた。
「こんなにたくさんお怪我をなされて……だいじょうぶですか?」
「大丈夫ですよ。ありがとう、可愛らしい女神様(ミューズ)。この程度の怪我、心配には及ばない。――それよりも、」
ダンドはその場に立ち上がり、街の人々や避難民に向けて言葉を届ける。
「なぁ皆、このまま街が魔物たちに蹂躙されて、滅ぶ様を黙って見過ごすなんてできるのか?」
街の住人、ひとりひとりの顔を見つめながら。ダンドは言葉を紡ぐ。
「この街に、思い出だってあるだろう。守りたい家族や恋人だって、居るだろう。それ好き勝手、蹂躙なんてされてたまるか!」
ダンドは拳を握り、熱弁する。
「腕に覚えなんて、無くていい! 震える足でも構わない! 自分に出来る戦い方で良い! 明日を迎える為に、力を合わせるんだ!」
真紅の槍を天に掲げ、住民たちに問う。
――この街を守る覚悟はあるのかと。
――戦う意志はあるのかと。
ダンドの呼び掛けに、住民たちは鬨でもって応える。
ユーベルコード『治癒』。
ダンドの呼び掛けに共感したものは、その身体と心の傷を癒やしていく。
この街を守るのは、猟兵だけの仕事ではない。
自分たちの住まう街を、世界を、自分たちの手で守る。
人々の意志はひとつにまとまり、来るべき決戦へと備えた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『レッサーデーモン』
|
POW : 悪魔の三叉槍
【手にした三叉槍】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 金縛りの呪言
【手で複雑な印を結んで】から【呪いの言葉】を放ち、【相手を金縛り状態にさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 呪いの鎖
【投げつけた三叉槍】が命中した対象を爆破し、更に互いを【呪われた漆黒の鎖】で繋ぐ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
ヴィルザリアの街に、魔物の軍勢と相対する為の戦力が集いつつあった。
山岳都市グラースよりドワーフの戦士部隊その数およそ3000。
彼らは他にも、ヴィルザリアに多くの武器や資材を提供してくれた。
もちろん無償ではなく売り付けた形となるが、この状況下では何よりありがたい。
魔霧の森のエルフ部隊。その数およそ300。
人数こそ少ないものの、それぞれが手練の弓兵や魔術師で構成されており、空を飛ぶ魔物との戦闘には相性が良い。
チコリの里のフェアリーたち。その数およそ100。
直接的な戦闘よりも、支援能力に長けている。それとかわいい。
彼らはマスコット的存在……もといサポート要員として、各部隊に組み込まれる。
そしてヴィルザリアの冒険者部隊。防衛に残す戦力を差し引いて、その数およそ5000。
ここには各地の義勇兵や冒険者なども含まれている。
対する魔物の軍勢。その数およそ――5万。
正面からぶつかり合えば当然勝ち目はない。
だがつけ入る隙はいくつかあった。
まずひとつは、統率。
魔物たちは知能を備え、組織だって行動しているものの、統率はまばら。
一応、軍団長のような個体が何体か存在し指示を与えているようだが、軍隊としての練度も士気も低く、各々がある程度好き勝手に行動している。
陣形や戦術もあったものではない。
(無論、魔物が戦術的に動きでもしたら、ヴィルザリアはとっくに陥落していただろう)
もうひとつは、戦力の分散。
主力はヴィルザリアを襲撃しているものの、グラースや魔霧の森など各地に戦力が散っている。
各都市ともに、何日も何週間も持ち堪えろと言われれば厳しいかも知れないが、1日2日耐えるくらいなら何とかなるだろう。
最後に、魔物たちの『王』の存在。
どうやらあの魔物『レッサーデーモン』たちには、それを召喚した『王』なるものが存在するらしい。
つまり事態を引き起こした張本人と言えるのだが、これさえ討ち取れば魔物たちの大幅な弱体化、ないし全消滅さえ望めるかも知れない。
故に我々が取る作戦は、短期決戦の一点突破。
8000の軍勢をもって魔物の軍勢に穴を穿ち、『王』の元へと進軍する。
辿り着いてしまえば後は簡単だ。猟兵の手によって、その『王』を討ち取れば良い。
激動の一日から一夜が明けて、翌朝。
人々は武器や防具を手に取り決戦へと備える。
人と魔物の生き残りを賭けた戦いが、今まさに始まろうとしていた。
=====
●補足
2章では戦場や戦い方など、自由に選ぶ事ができます。
基本は個人で軍勢の一員として加わり魔物たちと戦う事となります。
敵の数は多いので、普通の戦闘はもちろん、数千の敵を纏めて倒すような対軍プレイングも構いません。
どの部隊に属するか指定する、ひとりで戦う、特定の部隊を率いて戦う、オリジナルの部隊を編成する、各地で防衛戦を行なう、後方支援に徹する、空中戦、地上戦、など……この戦況において思い付く範囲で何をして頂いても構いません。
採用できる範囲で、シナリオが破綻しない範囲で採用します。
各々が思い描く、自由な発想でこの戦局を打破してください。
健闘を祈ります。
水鏡・龍眼
%
◆戦力分散の維持
敵は分かれているのだろう?
我はそいつらが合流する前に倒そうと思う
もし応援が必要な戦いを見つけたらそちらに行ってもいい
◆月水竜の咆哮
無差別故、これを実践で使えたことはないのだが…
この状況なら大丈夫だな
今こそ訓練の成果を見せるとき
「さあ、行くぞ父上。母上はサポートを頼む」
ミニドラゴンと精霊に声をかけ、
本体である眼鏡にドラゴンの力を集中
『これが我が父上より賜りし竜の力なり!!』
眼鏡からドラゴンブレスが放たれる
すなわち【月水竜の咆哮】の使用である
◆連発するかは状況判断
まだ大量にいるようなら連発するが
残った敵が逃げていくような
(これはやりすぎた…)
な状況になったら各個撃破に切り替えます
四葉・蛍輝
魔術メインの部隊と一緒に。
【地形の利用】【戦闘知識】広範囲の敵を一気に殲滅できるよう見渡しの良い場所を陣取れれば。詠唱時間もあるから集団で攻撃の手を休めないよう入れ替わり立ち代わり魔法の雨を降らせよう。
「相手の数は多いかもだけど、有利を取れる点でどんどん攻めていこう」
部隊の皆を鼓舞するよう先陣を切れれば。
「さぁ、始めよう。『解錠(コール)、レイン』」
鍵が杖の形状に変化して杖先のランタンに光の精霊が宿る。
エレメンタル・ファンタジアに【全力魔法】【範囲攻撃】【破魔】の力を乗せて広範囲に光の雨を降らせる。
【高速詠唱】も駆使して短時間で連射できるよう努める。
アドリブ、連携歓迎です
●小高い丘:エルフの魔術部隊
多くの敵の姿を一望できる、見晴らしの良い丘。
そこに陣取るのはエルフの魔術部隊だ。
広範囲の一挙殲滅。それを行なうのであれば歩兵を巻き込まずに済む一手目として撃ち込むのが効率的だ。
戦力分散の隙を突きたい、という事もある。他の地域に散り散りになっている魔物たちの軍勢が、劣勢を見るや『王』の防衛に踵を返さないとも限らない。そうなれば挟撃、疲弊した戦力は多勢に無勢で押し潰されてしまう事は明白。
「相手の数は多いかもだけど、有利を取れる点でどんどん攻めていこう」
蛍輝は部隊の仲間に声を掛け、その士気を高める。
詠唱時間も考慮し、攻撃の手を休めないよう入れ替わり立ち代わり魔法の雨を降らせる――無計画に魔法を放てば魔物たちとて優先的にこちらを叩くに違いない。そうさせぬ為にも、攻撃の手が緩まる隙を与える訳にはいかなかった。
そして――、
「さぁ、始めよう。『解錠(コール)、レイン』」
蛍輝も口だけの男ではない。戦場において、無能な人間の言葉など周囲の耳に届きはしないのだから。
蛍輝の手に持つ鍵が、杖の形状へと変化する。杖先のランタンに宿るのは、光の精霊の加護。
「――光の雨よ、魔物たちの悪しき魂を濯げ!」
エレメンタル・ファンタジアによって生み出させる、光属性の雨。無数の光弾。
それは天高くから、飛行する魔物も地を行く魔物もお構いなしに広範囲の敵を灼き尽くした。
●
蛍輝の魔術行使を見て、背後からパチ、パチ、パチと手を叩く音が聞こえてくる。
「見事なお手前だ」
「ど、どうも……」
振り返るとそこには、長身の男が立っていた。何処と無く東洋を感じさせるその出で立ちから、恐らくはエルフの集落の人間ではなく――猟兵。
「申し遅れた。我が名は龍眼、水鏡・龍眼(水面に浮かぶ月・f01423)と言う。そしてこちらが父上で、こちらが母上。我ら親子も、この戦、助太刀しよう」
紹介されたミニドラゴン(父)と月の精霊(母)が「あんぎゃ」と鳴いたりお辞儀をしたりで蛍輝へと挨拶。蛍輝も若干ペースに飲まれながら、挨拶を返した。
「と、失礼した。今は戦いの真っ只中、あまりゆっくりもしていられまい。さあ、行くぞ父上。母上はサポートを頼む」
龍眼は丘の先端へと進み、敵軍を『視る』。そして龍眼の頭上に降り立ち、翼を広げ鎮座する父竜。その姿、さながらトーテムポール。
そして龍眼は父の――ドラゴンの力を、ヤドリガミたる自身の本体『眼鏡』へと集中させていった。軋むフレーム。眼鏡は青白い光によって包まれ、眩い輝きを放つ。
「――『これが我が父上より賜りし竜の力なり!!』」
ユーベルコード『月水竜の咆哮』、またの名を『メガネキャノン』。
眼鏡に収束され放たれるドラゴンブレス。二筋の光はまさにレーザーキャノンと呼ぶに相応しい威力で敵軍を薙ぎ払い殲滅した。
――しかし。
「ぐっ、ガハァ……ッ!」
再び眼鏡のフレームが軋み、血を吐く龍眼。
眼鏡は龍眼の本体、ライフラインと言って良い。その眼鏡に多大な負荷を掛けるこの技は、即ち龍眼自身に多大な負荷を掛けると言い換える事ができる。
そして、めちゃめちゃ眩しい。目が痛くなり、敵を視認しにくい。ブレスの反動により首も痛くなるし、細かい照準も難しい。
威力は申し分ない、しかし制御に関して未だ課題の多い技だと言えた。
「くっ、未だ訓練が足りぬか……」
その場に膝を付く龍眼。しかし、本来の用途――中距離の対象に無差別攻撃する分には、全く以て差し支えないだろう。
「え、っと……大丈夫ですか?」
蛍輝が龍眼に肩を貸す。
「あぁ、ありがとう青年。えっと……」
「蛍輝。四葉・蛍輝です」
「そうか。ありがとう……蛍輝」
素直に蛍輝の肩を借ると、龍眼はその身を起こす。
「未だ戦は始まったばかり。共に参ろうか。父上、母上――それに蛍輝」
「ええ、頑張りましょう。よろしくお願いします、龍眼さん」
ふたり(+2匹)は未だその数の衰えぬ魔物の軍勢を見下ろしながら、再び呪文の詠唱を開始した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
パーム・アンテルシオ
…こんなにたくさん、来てくれたんだ。
決断してくれた、おじさまにも。
それに、ここに来てくれた…きっと同意してくれた人たちにも。
きちんと、感謝しないとね。
そして…これが、彼らの選択だとしても。
提案した、お願いした以上は。サポートするのが、私の役目。
ユーベルコード…月歌美人。
個の力より、群の力。
私が単身がんばるより、この方が、絶対、力になれる。
こんなにたくさんの人がいる。
そんな状況で…歌わないのは、少し惜しいけど。
ドワーフさん達は、軽い歌はタイプじゃなさそうだから。
流す音楽は、重厚に。軍団の行進曲のように。
この行進に、歌はいらない。
奏でる旋律と歌うのは、鋼が地を鳴らす音。
なんて、ね。
【アドリブ歓迎】
●平原:ドワーフ戦士部隊
パームは自身が交渉に赴いた縁もあって、ドワーフの部隊に従軍していた。
自慢の鎧に身を包み、剣や斧を構えるドワーフの勇士たち。それがパームの周囲、見渡す限りに控えていた。
「……こんなにたくさん、来てくれたんだ」
それは損得勘定でしか無いのかも知れないけど。それでも身を張って、魔物たちと戦う決断をしてくれた事に変わりなく。
「決断してくれた、おじさまにも。それに、ここに来てくれた……きっと同意してくれた人たちにも。きちんと、感謝しないとね」
これが、彼らの選択だとしても。
提案した、お願いした以上は。サポートするのが、私の役目。
パームはふわりと空を舞い。
桜色の光に包まれながら、狭間へと祈りを捧げる。
示す言葉ははかない美。
創り出す世界は、歌い終えれば崩れ去る。
そのひとときを。
「――『陽の下、月の下、幻想を創りだそう』」
ユーベルコード『月歌美人』。
こんなにたくさんの人がいる。
そんな状況で……歌わないのは、少し惜しいけど。
ドワーフさん達は、軽い歌はタイプじゃなさそうだから。
流す音楽は、重厚に。軍団の行進曲のように。
この行進に、歌はいらない。
奏でる旋律と歌うのは、鋼が地を鳴らす音。
それはさながら、十字軍を率いる戦乙女のように。
パームがにこりと微笑みながら、ドワーフたちの姿を伺えば――、
『いいぞ~、嬢ちゃ~~ん!!』
「ひゃっ……!」
『ヒューー♪ 最っ高だぁ~~! 俺んトコの嫁に来てくれ~~!!』
「あ、わ、えと……ごめんなさい」
ドワーフたちはさながらアイドルのライブ会場かのように熱狂し、パームに熱い声援を送っていた。
「……これで良かったのかな?」
これならいっそ、わざわざ行進曲など選ばずとも、軽い歌(アイドルソング)でも歌ったほうがウケが良かったかも知れない。
「ま、いいかな。いいよね、うん。……みんな、頑張ろうね」
『おおーーーーッ!!』
ドワーフたちのテンションに圧され、少し苦笑いをするパーム。
個の力より、群の力。
私が単身がんばるより、この方が、絶対、力になれる。
パームの支援によって力を増したドワーフの戦士たちの戦闘能力はユーベルコードを用いない猟兵の戦力にも匹敵する。
最大限に士気を高めたドワーフの精鋭たちが、雄叫びを上げながら魔物の群れと激突した。
大成功
🔵🔵🔵
ダンド・スフィダンテ
%
UCの【鼓舞】と【治癒】を使用して、冒険者の部隊を率いる方針。
【情報収集】【戦闘知識】で敵の陣が薄い場所へ攻め入って【殲滅】【なぎ払い】で穴を空ける。部隊で行うのは、他も空けている穴の拡大と、維持。
『我らは弱者か、否! 否!!たかが悪魔の群れ!この程度、負ける訳には行かないな!』
王手の礎を築き上げろ。
『進め!我らが力は一人の物に在らず!故に百を超え、数千を取って余り有る!』
戦闘の指揮を執り、先陣を切る。
【かばう】【おびき寄せ】で大きなやつらは引き受けよう。
戦力の維持が最大の戦功だ。
『我らは盾、我らは剣!隣人を護り、敵を穿つ者として!奮え!揮え!!誰も殺させはしない!』
『生きて!帰るぞ!!』
●前線:ダンド部隊
「さて、と。俺様もひと踏ん張りしなきゃかなぁ……」
んーー、と大きく伸びをして、ダンドは気合いを入れ直す。
冒険者たちの部隊はいくつかの小隊に分けられ、それぞれを猟兵が率いる手筈となった。
そのうちのひとつ。最も多くの人数を抱えるのが、この『ダンド部隊』だ。
ダンドは仲間からの伝令を元に、敵陣の層の薄い部分に狙いを付ける。
そして、すぅ……と大きく息を吸い込むと、仲間に向けて檄を飛ばした。
「我らは弱者か、否! 否!! たかが悪魔の群れ! この程度、負ける訳には行かないな!」
『おお――――ッ!!』
この一撃で王手に届くほど、魔物の層は薄くない。
故に、我らが目指すのは『王手の礎』。
王手の礎を、築き上げろ。
「進め! 我らが力は一人の物に在らず! 故に百を超え、数千を取って余り有る!」
ダンドは声を張り上げ仲間を鼓舞しながら先陣を切る。
なるべく多くの敵を自分へと引き付けながら、仲間の消耗を極力抑えながら戦線を維持する。
何せ敵の『王』までの道のりはまだ遠い。戦力の維持こそが最大の戦功だ。
「我らは盾、我らは剣! 隣人を護り、敵を穿つ者として! 奮え! 揮え!! 誰も殺させはしない!」
街を守る。友人や家族を、己の住む場所を守る。
多くの冒険者は、ヴィルザリアを拠点とし生活をしていた。
ヴィルザリアで生まれ育ったという者は、少ない。
それでも、守るべき街には変わりない。
あの街には沢山の思い出がある。懇意にしてくれた人々が居る。
故に戦うのだ。戦い、護って。その後は。
いつもの酒場で祝杯をあげよう。
それはまるで、伝承(サーガ)に登場する勇者のように。
ダンドの呼び掛けに応じるように、冒険者たちの意志はひとつに纏っていく。
「――生きて! 帰るぞ!!」
『おおおおおおッ!!』
真紅の竜槍を掲げて叫ぶダンドに呼応する冒険者たち。
彼らは大きな鬨を上げながら、ダンドを先頭に魔物の軍勢へと突貫していった。
大成功
🔵🔵🔵
リンタロウ・ホネハミ
%
ラクシュ村の増援を連れてこれてよかったっすわ
彼らに救助や補給の要点をかいつまんでレクチャーしたらオレっちも戦場へと向かうっす!
だぁいじょうぶ、オレっちこれでもそれなりに強いんで!
つっても、オレっちの主武器はこの骨剣
だけどあいつら空飛んでるんすよねぇ……
………
仕方ねぇっす、ちょいとオレっちを投石機か魔法でヤツラのところまでぶっ飛ばしてもらえるっすか?
ヒョウの骨を食って【〇八三番之韋駄天】を発動しながら頼むっす
いやいや、伊達や酔狂じゃないっすよ
中からかき回して進軍を滞らせる役は必要っしょ?
今のオレっちの敏捷性なら奴らを足場に飛び移ってブッた斬るのも出来るっすから
そんじゃ、いってきまあぁぁぁ……!
●ヴィルザリア:外縁部
「ま、オレっちにレクチャーできんのはこんなトコっすかね」
リンタロウはラクシュ村の人々や街の有志に救助や補給に関するレクチャーを、要点のみにかいつまんで行なった。
取り敢えずこの戦いの間だけ、最低限の仕事をこなせるようになって貰えば良い。他に多くは望まない。即席の救援部隊、補給部隊ではあるものの、仕上がりとしてはまぁ悪くない部類だろう。
「そんじゃ、オレっちも戦場に向かうっすわ!」
行ってきまーす、と農作業にでも向かうようなノリで告げるリンタロウに、村人たちの表情は晴れない。
自分たちは後ろに控え、リンタロウ自身は単身で前線に向かおうとしている。魔物の驚異は見せつけられたばかりだし、気楽に送り出す気持ちよりは心配する気持ちが勝っていた。
「だぁいじょうぶ、オレっちこれでもそれなりに強いんで!」
リンタロウは、へへへ、と笑う。
それは村人たちを安心させる為の笑顔でもあったが、同時にリンタロウにとって戦場など慣れ親しんだ場。手を抜くつもりも侮るつもりも毛頭ないが、そこに気負いは全く無かった。
「つっても、どうしたもんすかねぇ……」
村人にレクチャーをしていた分、戦闘には若干出遅れてしまった。一度グリモアベースへと戻り最前線まで転送をして貰うのも一つの手だが、それはそれでひと手間掛かってしまう。
そして、敵の多くが飛行している。対する自分の主武器は骨剣な為、あまり相性がよろしくない。
すべての敵が飛行している訳ではないし、素直に『韋駄天』で駆け抜けて戦えそうな場所を探すのが無難だろうか、などと思考を巡らせていたところで。リンタロウの視界の端にちょうど良いものが映った。
「アレ、いいっすね。使えそうっすわ」
にいっ、と悪童のような笑みを浮かべて、リンタロウは目当ての“ブツ”へと近付いていく。
「すいませーん。オレっちも、“これ”使ってヤツラのところまでぶっ飛ばしてもらえるっすか?」
『……はぁ??』
パキ、とヒョウの骨を齧りながらリンタロウが声を掛けたのは、外縁部で敵に対して投石機で攻撃を行なっていた、防衛部隊の隊員。
リンタロウはその巨大な投石機で、石ではなく自分を投げ飛ばして欲しいと、そう告げたのだ。
『にいちゃん、この戦いで頭でもおかしくなったか? 馬鹿言ってんじゃねえ、良いからさっさと避難するか前線にでも行ってきな』
「いやいや、伊達や酔狂じゃないっすよ。中からかき回して進軍を滞らせる役は必要っしょ?」
今のオレっちの敏捷性なら奴らを足場に飛び移ってブッた斬るのも出来るっすから、とけらけら笑って告げるリンタロウに、防衛部隊の人は「ええー」とげんなりした表情を浮かべる。
だが同時に、ひとつ思い当たった事があるらしい。
『……にいちゃん。もしかしてあんた、“猟兵”ってやつかい?』
「そうっすけど……、よく知ってるっすねぇ猟兵なんて」
アックス&ウィザードの世界で、猟兵の認知度なんて無かった筈だ、とリンタロウは記憶している。故に、町の人間の口から『猟兵』なんて言葉が出てくるとは思っていなかった。
『いや。冒険者の中で、その“猟兵”とかいう連中に関しては援護は要らねーから好きにさせとけ、みたいなお達しがあったんだよ。……んじゃま、いいか。死んでも恨むなよ、にいちゃん』
「はいはい、大丈夫っすよ。死なねえっすから!」
投石機にリンタロウがセットされる。なるべく綺麗に収まるよう、まぁるく身体を屈めて。
『それじゃ、飛ばすぞ!! ……3、2、1!』
ガゴン、と大きな音を立てて駆動する投石機。
「いってきまあぁぁぁ……!」
クルクルと回転しながら、声の残響を残してリンタロウは空の彼方、空飛ぶ魔物の群れへと飛んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
ギュンター・マウ
%
こういう光景を見る度に思うんだ
つくづく自分は小さくて、取るに足りない存在だと
…だが、誰よりも前へ
他の皆が仕留めやすいように、大漁の敵陣をある程度足止め出来ればと思う
なるべく敵の頭上を陣取るように飛翔して
広く声が通る様に、【歌唱】の為に深呼吸を一つ
そしてありったけの【呪詛】と、内に秘めた嫉妬を少しばかり込めて
低く、強く、響くように【悋気の詩】を歌う
あぁ、小さい俺は非力だろう
声だけが、歌だけが俺の武器だ
こんな俺が獲物を振り回したどころで、埒が明かないだろう?
だから、俺は声を張り上げるんだ
攻撃が此方に向かってくる場合できる限り回避はするが
俺は傷を負う事を厭わない
盾には成れずとも、的には成れるから
●前線
ギュンターはぽつんとひとり空に浮かびながら、静かに敵の群れを見下ろしていた。
こういった光景を見る度に、思うのだ。
つくづく自分は小さくて、取るに足りない存在だと。
こうして佇んでいるのに、魔物たちは一向に自分の存在に気付く様子がない。
戦場に飛ぶ1匹の羽虫の存在など、視界にも入らぬと言うように。
……だが、今はそれでいい。
だからこそ俺は、誰よりも前へ。
ギュンターは大きく息を吸い込み、歌った。
その詩にはありったけの呪詛と、内に秘めた嫉妬を少しばかり込めて。
低く、強く、響くように。
『――♪ ――♫』
呪いの旋律が周囲に響く。
ギュンターの歌を聴いた魔物たちはその場で悶え苦しみ、ある者は目から耳から血を流しながらその場で絶命していく。
ユーベルコード『悋気の詩』。
魔物たちの苦悶の声をバックコーラスに、ギュンターは声を張り上げ歌い続けた。
(あぁ、小さい俺は非力だろう。声だけが、歌だけが俺の武器だ)
中には腕力に覚えのあるフェアリーも存在はするだろう。だが、自分はそうではない。
ただ小さく、か弱き者。正面から立ち向かえば、魔物は愚か普通の人間にだって敵わない。
(こんな俺が得物を振り回したどころで、埒が明かないだろう?)
羨ましい。純然たる力が欲しい。
だが、願ったところでそれが手に入るわけでもない。
(――だから、俺は声を張り上げるんだ)
歌に込められた呪詛と嫉妬は、さながら魂の慟哭。
それは魔物たちの魂を掻き回す毒牙となって、辺りを蹂躙した。
●
当然と言えば当然の話だが。
今までギュンターに見向きもしなかった、存在にすら気付いて居なかった魔物たちも、今となってはギュンターひとりを見上げ、強烈な殺意を向けていた。
戦う事で、はじめてその存在を認識される。
ギュンターにとって、それは皮肉な話かも知れないが。
しかし、元より敵の的となるのは覚悟の上。
ギュンター自身、己の歌で敵を全滅させるつもりなど毛頭なかった。あくまでも敵の弱体と足止めが目的だ。
全ての攻撃を受け止めるような、誰かを庇うような盾には成れない。
しかし時間稼ぎの囮であれば、攻撃の的であれば俺にでも成れる。
「来いよ魔物ども。俺は案外しぶといぜ」
俺は傷を負う事を厭わない。
か弱きこの身で戦うからには、相応の覚悟はできている。
大成功
🔵🔵🔵
五百雀・斗真
前回一緒にフェアリーの避難誘導と殿をして下さった人達と
支援をしてくれるフェアリーたちの無事を祈った後
部隊編成を確認し、どこか人手が足りない部隊があったらそこに入る
戦闘では前衛に立ち、敵が放つ呪いの鎖を【コードキャンセル】で相殺し
部隊の人達に被害がいかないように戦う
攻撃は、かりそめスプレーでマヒ込みの範囲攻撃を噴きかけ
それに怯んだ敵をUDCの大田さんの触手でなぎ払ってもらう
…倒しても、倒しても
敵の大軍はどんどん迫ってくるだろうね
だけど、ここで退いたら…たくさんの命が消えてしまう
そんなの…絶対にダメだ…
どんなに傷を負っても、手を休めず
大田さんにも魔力を送り続け、強化した触手を振るってもらう
%
リリヤ・ベル
%
わたくしは支援を。
身の置き場所は、前線に。
皆様が受けた傷を癒やすよう、うたを紡ぎましょう。
しあわせな朝。
みちたりた昼。
おだやかな夜。
誰の元にも届く鐘の音。
わたくしたちの戦いは、あたりまえの日常を取り戻すために。
声の届かないひとへは、直接行って応急手当。
同じくらい負傷している方々と、期を見て下がって頂きましょう。
だいじょうぶです。いきていれば、できることはあるのです。
猟兵の皆様・冒険者の皆様とも協力し合って、誰も欠けることがないように。
傷つかないこと、いのちを落とさないことが、難しくとも。
……でも、それでも。
それを覆すために、わたくしたちは来たのです。
離れていても、きっと、おまもりいたします。
●前線:冒険者部隊
(戈子さん、炎火ちゃん、それにフェアリーのみんな……どうか、無事で)
斗真は瞑目し、静かに仲間の無事を祈っていた。
さきほどチコリの里にて行動を共にした、みんな。
特別、縁が深かったわけじゃないけれど。それでも、見知った顔に不幸があってはいけないから。
そんな斗真の様子を見て、リリヤが声を掛ける。
「何をなされているのですか?」
「えっと、お祈りを少し。みんなが無事でありますように、ってね」
「なるほど」
その答えにリリヤも合点がいったようで、にこりと笑って返す。
「でしたらわたくしも、ご一緒においのりさせて頂いてもよろしいでしょうか」
「うん、もちろん」
それでは、とリリヤは胸の前で両手を組んで静かに祈りを捧げた。
(だれも傷つきませんように。いのちを落としませんように)
それが難しい事だと、リリヤは理解していた。
(……でも、それでも。それを覆すために、わたくしたちは来たのです)
顔を上げて。リリヤの右手が無意識にブレスレットへと触れる。
「――離れていても、きっと、おまもりいたします」
近いようで遠い、ヴィルザリアの街に想いを馳せて。
あのひとはあのひとの為すべき事を。
ならばわたくしも、わたくしの為すべき事を。
少しだけ、ほんの少しだけ、心細い。
そんなリリヤに、突然、薄墨色の触手がリリヤの頭をにゅるんと伸びた。
「ぴゃっ……!」
「ちょっ、急に何やってるの大田さん!!」
斗真の宿すUDCの触手、大田さんがリリヤの頭を優しく撫でる。
(もしかして、元気づけてくれているのでしょうか?)
ぐにぐにと撫でられながら、リリヤは目をぱちくりとさせて大田さんの様子を伺っていた。
「ごめんね、急に。大田さんも悪気はないと思うんだけど、どうしちゃったんだろ……」
ダメだよ大田さん、と蠢く触手を宥める斗真。
そんなふたりのやり取りを見て、リリヤはくす、と笑い。
「オオタさま、とおっしゃるのですね。だいじょうぶです。とてもやさしい方なのですね」
「え、ええ? うん、ありがとう……」
確かに大田さんは優しいと思うけど、今の大田さんに優しい要素があったのだろうか……と、戸惑う斗真。
見ているだけで人の良さが伝わってくるふたりを前に、リリヤの心細さも、戦いへの不安もいつの間にか随分と和らいでいた。
「それでは、まいりましょう」
「うん。誰も傷つかないように、僕らの手でみんなを守るんだ……!」
ふたりは互いに頷きあい、魔物の群れへと相対した。
●
斗真が前衛となり、ユーベルコード『コードキャンセル』によって魔物の槍を、黒鎖を模倣しぶつけ合い、相殺している間に。
リリヤは傷ついた仲間を癒す為の、うたを紡いだ。
カンパニュラの音が、りぃん、とやさしく鳴り響く。
しあわせな朝。
みちたりた昼。
おだやかな夜。
誰の元にも届く鐘の音。
戦いは、あたりまえの日常を取り戻すために。
「お怪我のひどいかたは、どうか後ろに下がってください。だいじょうぶです。いきていれば、できることはあるのです」
日常を取り戻す為の戦いで、命を取り零すような事があってはいけない。
これは未来の為の戦いなのだから。
人が死んだら、きっと誰かが悲しむのだから。
「それ以上は、させない……っ!」
リリヤと負傷した仲間たちを襲おうとした魔物に対し、斗真はかりそめスプレーを噴き付けて目眩ましをした後で、怯んだ魔物を大田さんの触手によって薙ぎ払う。
「大丈夫? 怪我はない?」
「はい、わたくしはへいきです」
リリヤの返事に斗真は胸を撫で下ろした。
倒しても倒しても、キリがない。
敵の大軍は今も勢力を増し、こちらの都合などお構いなしにどんどん迫ってくる。
だけど、ここで退いたら……たくさんの命が消えてしまう。
「そんなの、絶対にダメだ……!」
こんなに小さな女の子でも頑張ってるのに。
大の大人が踏ん張れなくて、どうするんだ。
斗真は身体中の全魔力、全体力――持てる力のすべてを、大田さんへと注ぎ込む。
「ぐっ、っ……、行くよ……っ、大田さん!!」
斗真は心臓が抉られるような痛みに耐えながら、尚も大田さんへと力を注ぎ続ける。
従来の十倍、数十倍へと膨れ上がった大田さんの触手。
それは天を衝くように聳え立ち、圧倒的な膂力によって魔物の群れを一斉に薙ぎ払った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴木・蜜
%
成程
多少の知性は備えているようですが
統率が取れていないのなら
どうとでもしようはありますね
軍勢とは離れひとりで
皆さんとは離れていた方が巻き込まずに済むでしょう
行軍前に注射器で『偽薬』を使用
己の死毒を強化しておきます
軍勢と接敵したら
体を液状化し地面を這う形で
魔物達の脚に毒蜜を塗り込みながら突き進みましょう
武器で攻撃されれば
得物を伝い上がりその腕に触れてやります
ああ、良いのですか?
あまり雑に攻撃しては毒が飛び散りますよ
私の毒蜜は触れるものを融かし命を侵す
鎧さえも融かしてみせましょう
…私はただ、触れるだけで良い
能力に頼りたい
そう、言われましたから
私は喜んで 他を救うために死毒となりましょう
カタラ・プレケス
%
……思ったよりすごい数だね~
まあ、対集団は呪術師の十八番だし
とりあえず一番敵の多いところを呪いに行こうか~
UC発動
『感染開始 出力限界より5割過剰で運用 対象限定:悪魔
症状:五感異常・魔力系暴走を指定
呪詛:敵味方誤認・狂乱・肉体強度低下を付与
感染率致死性進行速度を最上に』
まあこんなところだね~
一応保険もかけようか
『病影招来:影を鼠から蝗に変状し飛行能力付与
招来総数約1000及び対象の生命力吸収による自己増殖を追加』
っと大きさも小さいしこのぐらい呼んだけど足りるかな?
……まあ足りなかったら足せばいいし
さあ、殲滅開始だね~。
●前線
仲間の部隊が押し上げていった戦線を、猟兵が『個』の力によって歪にこじ開けていく。
こじ開けられた戦力の隙間に再び部隊が流れ込み、それを基盤に再び猟兵が突破口を切り拓く。
数の上では大きく劣る味方の部隊が、強引に、胃袋を喰い破るかの如く魔物の群れを蹂躙していく。
此処でもまたひとつ。『個』の力による魔物の掃討が行なわれていた。
●
「……思ったよりすごい数だね~」
話に聞くのと実際に見るのとでは受ける印象も違ってくる。
カタラとてこれだけ多くの魔物を目の前で見る機会はそうそう無く。まさしく軍勢と呼ぶに相応しいその数は、なるほど真っ向から立ち向かえば如何な猟兵とて一溜まりもないだろう。
「けどまあ、対集団は呪術師の十八番だし。とりあえず一番敵の多いところを呪いに行こうか~」
あくまでゆるく、行楽にでも赴くかのように。
エルフの森で御子としての貌は使い果たしてしまったのか、カタラはのんびりとした口調でそう告げた。
とは言え、仕事はきっちりと。
「――『西方の風邪、八千滅す黒き死、蛇に喰われし疱瘡神。太陽隠し世界を蔽え。我が身に宿り災禍為せ』」
祝詞の詠唱と共に、カタラは悪神をその身に降ろした。
『病神流布・大鼠』。それは自身を病を振りまく悪神と変化させる秘術。
「『感染開始。出力限界より5割過剰で運用。
対象限定:悪魔。
症状:五感異常・魔力系暴走を指定。
呪詛:敵味方誤認・狂乱・肉体強度低下を付与。
感染率・致死性・進行速度を最上に』」
調整としてはこんなところだろう。
付け加える事の、保険。
「『病影招来:影を鼠から蝗に変状し飛行能力付与
招来総数約1000及び対象の生命力吸収による自己増殖を追加』」
悪神を宿したカタラは、その場で召喚術式を組み換え行使する。
疫病を、呪詛を撒き散らす無数の病影を召喚し、解き放った。
その影は、蝗の形をしていた。
農作物を食い荒らすかの如く、影の蝗は一斉に空を舞い魔物の群れへと殺到する。
呪詛の抵抗に失敗した魔物はその場で狂い、叫び、目を真っ赤に腫れ上がらせて。敵味方の区別も付かず、その場で同士討ちを始めた。
●
空に狂気が蔓延するのとほぼ同時に。
地上でも同じように、地獄絵図が広がろうとしていた。
魔物の軍勢を前に、ひとりぽつんと佇む蜜。
彼は軍勢と接敵すると同時に人型としての擬態を解いて、ブラックタールたる本来の姿――真っ黒な液体となって、地面を這った。
事前に注射した『偽薬』によって、その毒性は極限にまで高めてある。
周囲に味方の姿は無し。巻き込む心配もない。
今の蜜は、ただ地面を這うだけで道すがら魔物たちの足を毒蜜で侵し、溶解させる事すら可能。
魔物たちが抵抗しようと大地に槍を突き刺しても逆効果。毒液が周囲へと撒き散らされて、跳ねた毒液を起点として魔物の肉体を融かし、広がり。鎧の上からでもお構いなしに、全てを融かし飲み込んで行く。
ただ触れるだけで、命を蕩かす死毒。それが蜜の本性。
もちろん、蜜とて無敵ではない。
敵がきちんと統率の取れた軍隊であれば、いくらか対処する手段もあっただろう。
しかし相手は烏合の衆。
であれば、毒の染み入る隙などいくらでもあるのだ。
(能力に頼りたい。そう、言われましたから)
毒の手で救えるものがあるのなら。
私は喜んで、他を救うために死毒となりましょう。
人の命を奪う、死毒たるこの身を呪わなかった日は無い。
昏い罪悪感はいつだって私の心を締め付け、支配していた。
だが今だけは、呪わしきこの毒の身にも感謝を捧げたい。
毒なればこそ救える命がある。だとすれば私は、私の使命を全うしよう。
「道を開けてください。私たちはまだ、先へと進まねばなりませんので」
黒の死毒は真っ直ぐに目的地を目指す。
魔物の発生源、まだ見ぬ『王』たる者の棲まう根城へ。
天の病毒、地の死毒。
ふたつの毒は多くの魔物を骸へと還し、仲間が進むべき血路を切り拓いていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
宮落・ライア
いざやゆかん!
戦場こそが居場所!
【自己証明】【破壊衝動】
軍団長狙いの一騎駆け。
【野生の感】で居場所にあたりをつけ
【ダッシュ・ジャンプ】を駆使し一直線に吶喊していく。
邪魔する奴らは【怪力・グラップル・二回攻撃・カウンター】などで【薙ぎ払って】突き進む。
もしも呪縛などで行動に制限を受けたなら【止まる事無かれ】を
使用し復帰。
意識を失いかければ【未到再起】で無理やり覚醒させ酷使。
例え名ばかりであろうと、指示を出す立場。言ってしまえば少しは上位の存在。それを真正面から、目の前にあったお仲間の壁を食い破られて殺された気分はどう?
十全に恐怖しろ。
英雄が、屍山血河が出来ようと蹂躙してやる。
●前線
カタラと蜜が生み出した『毒の道』。
積み重なる魔物の死骸を物ともせずに“踏み砕き”、ただ真っ直ぐに駆ける、駆ける、駆ける。
「いざやゆかん! 戦場こそが居場所!」
宮落・ライア(ノゾム者・f05053)はただひとつ、敵の『軍団長』の首を求めて戦場を単身で駆けていた。
情報など何もなく、ただ野生の勘だけを頼りに。
だが、彼女の『勘』は言わば嗅覚とも言えるもの。培った経験の為せる技か、或いは天運を手繰り寄せる宿命か。
敵の『軍団長』の位置を始めから理解しているかのように、迷うこと無く真っ直ぐにその居場所を目指した。
飛んで、跳ねて、斬って、捨てて、殴って、蹴って、薙ぎ払って。
魔物の槍が己の肉体を貫こうとも怯むことはない。
――『止まる事無かれ』。
止まることは、“許されていない”。
魔物による金縛りを強引に振り解き、代償に身体中のあらゆる部位から夥しい量の血を垂れ流しながら、ライアは尚も駆けた。
「はぁ……っ、はぁ……、が、ぐ……ゲホ、おええ……!」
今もまた、大量の血を吐き出して。
意識を失いそうになりながらも、『侵食加速:未到再起』――ユーベルコードの力によって無理矢理覚醒する。
何が彼女をそこまで突き動かすのか。
無理な突貫とユーベルコードの連続使用によってライアの肉体は内側も外側もボロボロに削られていく。
腕や足に刺さった槍を引き抜きながら、1歩、また1歩と歩みを進め、
そしてようやく、辿り着いた。
「見ぃつけたぁ……♪」
ライアの顔が歓喜に染まる。
――『軍団長』。
周りの魔物より一回りも二回りも大きく、そして力を持つ個体。
『ここまで単身で辿り着けたのは見事と褒めておこう。しかし、同時に愚かしくもある。それほどまでに傷つき、我の元へと辿り着き……それでどうしようと言うのだ。まさか我を討ち取ろうとでも言うつもりか? それほど傷付き、満足に立つことすら叶わぬ状態で?』
「そうだよ」
軍団長の問いに、ぴしゃりとただそれだけを答えて、ライアは骨肉の剣を振るう。
――横一閃、ただのひと薙。
そのひと薙で軍団長の首から上は消失し、首を失った接合部からは噴水のように血が噴き出した。
まだ温かさの残る軍団長の血をシャワーのように浴びながら、ライアは愉悦の表情を浮かべ、彼に問う。
「例え名ばかりであろうと、指示を出す立場。言ってしまえば少しは上位の存在。それを真正面から、目の前にあったお仲間の壁を食い破られて殺された気分はどう? ねぇ、どんな気持ち??」
当然ながら、答えはない。軍団長の首はたった今ライアによって刎ねられ、絶命したばかりなのだから。
「答えたくても首が無きゃ答えられないか。それは仕方ないね」
興が削がれたかのようにライアはぴた、と笑うのを止め、周囲の魔物を冷たい瞳で睨んだ。
血塗れの英雄は再び剣を構え直すと、周囲の魔物に対し告げる。
「十全に恐怖しろ。英雄が、屍山血河が出来ようと蹂躙してやる」
力を使い果たし、後から駆け付けた仲間に拾われる、その時まで。
ライアの一方的とも言える殺戮が止むことはなかった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
%【ヌルと】
ヌル、お前対複数を相手取れる手段ある?
オーケー、それなら任せてくれ
「人を使う」のは得意分野だ
そんじゃ、軍には軍をぶつけようぜ
グラースの戦士部隊、魔霧の森のエルフ部隊、チコリの里のフェアリーに、ヴィルザリアの冒険者部隊
そいつらから選出した即席部隊で戦うぜ
俺のUCはこういう時こそ輝く
散逸してるリソースを束ねて、効率良く、隙間なく攻めるべし
ん?やれることも人種もバラバラの連中でいいのかって?
俺が『調律』してりゃ、この部隊は最高クラスの精鋭になるのさ
さぁ、殲滅だ
力を組み合わせて、ぶっ潰せ
ヌル!お前がこの部隊の鬼札だ!
俺の言う通りにぶちかませ!
スリー、ツー、ワン!
フューミゲイション!!
ヌル・リリファ
%
◆ヴィムさんと
わたしはどんな状況でもたたかえるよう苦手をつぶしてできた人形だから。
複数相手だからたたかえないなんてことはないよ。
……了解。指揮はまかせる。(個として完成された人形は。一人で戦うのが得意でも彼ほど指揮を得意とはしない。適材適所。)
シールドを展開。あぶないところをかばいつつ、ヴィムさんにしたがう。
(思考を割く場所を変えられる。普段は敵や味方の位置の把握に使う部分を、相手に集中させられる。
視界がいつもよりクリアだった。)
さすがだね。じゃ、ヴィムさんのいうとおりに。いくよ!
UC起動。【属性攻撃】で強化したひかりの武器をうみだす。いつもは演算装置にしたがうけど、今回は彼の指示どおりに。
●前線:ヴィクテム・ヌル『殲滅』部隊
「なぁ、ヌル。お前、対複数を相手取れる手段ある?」
「わたしはどんな状況でもたたかえるよう苦手をつぶしてできた人形だから。複数相手だからたたかえないなんてことはないよ」
「オーケー、それなら任せてくれ。『人を使う』のは得意分野だ」
「……了解。指揮はまかせる」
いくつかの確認事項。それだけを済ませるとふたりはそれぞれの定位置に収まる。
ヴィクテムは後方から指揮を。ヌルは前線にて戦闘を。
互いの実力を信頼しているからこそ、交わす言葉は少なくていい。
「さぁ準備はいいか、チューマ。お前らは超一流の端役が選りすぐ目った、超一流の主役共だ。有象無象の魔物どもなんてお呼びじゃねえ。この街は、世界は、俺たちの居場所なんだと奴らに教えてやれ!」
グラースの戦士
魔霧の森のエルフ
チコリの里のフェアリー
ヴィルザリアの冒険者
それらが混成された即席の部隊。
名を「チーム・フューミゲイション」と呼ぶ。
各種族、各部隊から選りすぐりを集めた精鋭――そう言えば聞こえは良いが、部隊での戦いは隊員同士の連携が物を言う。多種多様を極める能力があろうとも、それらを効率よく運用できないのでは宝の持ち腐れだ。
しかし、ヴィクテムにはその問題をクリアできるだけの自信が、用意があった。
「俺のユーベルコードはこういう時こそ輝く。散逸してるリソースを束ねて、効率良く、隙間なく攻めるべし」
いくつも並行して奔らせる、情報分析のプログラム。
他チームの戦況、魔物の分析データ、戦力配置、味方ひとりひとりのフィジカルにメンタル、保有スキルに性格や得意分野。
ありとあらゆるデータの統合、把握。これらを組み立て、『調律』し。
最効率で運用するのが指揮官たるヴィクテムの役割。
「さぁ、殲滅だ! 力を組み合わせて、ぶっ潰せ!!」
ヴィクテムの号令と共に、部隊は進撃する。
敵との距離が約50メートルへと迫ったところで解き放たれる、エルフの魔術師による広域殲滅呪文。
それと同時にフェアリーたちの支援魔法が詠唱を終え、ドワーフの戦士と冒険者たちに加護を与える。
殲滅呪文を目眩ましに一気に距離を詰め、ドワーフの戦士が斧を持って襲い掛かる。
冒険者たちは適材適所、臨機応変に動きながら魔物の動きを止めたり、ドワーフと共に殲滅を担当したり。
戦力が拮抗し始めたところでサッと後ろに後退し、追い掛けてきたところに再び刺さる殲滅呪文。
中でも、ヌルの活躍はめざましかった。
ヌルは個として完成された人形であり、ヴィクテムほどの指揮能力は持ち合わせていない。
だが代わりとして、一騎当千と呼ぶに相応しい高い戦闘能力を有している。
『ヌル。左斜め上方、ポイントα、β、γ……シールド展開頼む』
「了解」
ヴィクテムに指示されるがまま、無駄な思考は挟まずノーウェイでシールドを展開。
展開された魔法の障壁は、仲間に向けて投られた魔物の槍を難なく弾き返した。
「さすがだね」
『そっちこそ、ナイス反応だ』
広域の戦況は敢えて『見ない』。
敵の位置、味方の位置はヴィクテムが全て伝えてくれる。
そのデータを受け入れる。
通常であればこんなのは、目隠しをしながら戦うようなもの。
ヴィクテムの送る指示やデータが早く、的確だからこそ為せる技。
結果として、ヌルに課せられたタスクはシンプルだ。
目の前の敵を殲滅する、ただそれだけに集中できる。
――視界が、いつもよりクリアだった。
●
魔物たちの出鼻を挫き、敵が怯んだその瞬間。
今こそが、ヴィクテムの待ち構えていた『好機』。
『ヌル! お前がこの部隊の鬼札だ! 俺の言う通りにぶちかませ!』
「了解、ユーベルコード起動。データ、転送開始。――ヴィムさん、上手く使ってね」
『おう、任せとけ!』
――『死斬光雨』。
ヌルの全魔力によって生み出される、無数のひかりの刃。
ヌルはその刃の形成と維持に全力を注ぎ、具体的な操作とそれに伴う演算はヴィクテムの手に委ねられた。
ふたりの声が、重なる。
『スリー、ツー、ワン!』
「 3、 2、 1、」
『フューミゲイション!!』
「殲滅、開始」
絶望を払うは無数の輝き。
ヌルから放たれたひかりの刃は、戦場のありとあらゆる魔を切り払った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
奇鳥・カイト
%
森にいる奴等を迎え撃つ形を取る
連携は…やれそうならやる、くらいかね
【地形の利用】【罠使い】【騙し討ち】【カウンター】
森の木々、草むらの影、罠を仕掛けていく
基本は糸を使った作動式の罠をベースにしつつ、落とし穴に弓矢などを仕掛けていく
また捕縛糸に斬糸、草を結んだもの、等も色々組み合わせていく
罠で仕留めきれなくても可
罠にかかれば足止めになるし、かかったところを遠距離か強い奴らが撃破していけばいい
そこで自分は罠を作りつつ、各個撃破をやれれば行っていく
近接で糸を使うのが難しければ、ラフファイトで殴る蹴るの戦い方
ま、メンドクセーけど引き受けたモンはしゃーないな
やるしかねぇか
●ヴィルザリア近郊の森
「なぁんで俺は、こんなメンドクセー仕事を引き受けちまったんかね」
ボヤきながら、奇鳥・カイト(燻る血潮・f03912)は粛々と森に罠を張り巡らせる。
カイトが罠を仕掛けているのは、ヴィルザリア近郊の森。
敵の多くは空から直接強襲してくるが、森をひっそりと通過して背面を突かれるのも困る。
そんな訳で、多数の戦力は割けないが見張り半分に森に罠を仕掛け、仮に魔物が押し寄せるようであれば可能な範囲で撃退。撃退が難しければ撤退し報告を寄越せ、というのがカイトに課せられた任務である。
「まぁぶっちゃけ連携とかあんま好きじゃねえし。良かったっちゃ良かったけど」
人助けなんてガラじゃない。こんな街、見捨てたって良かった。
落とし穴を掘りながらそんな事を思っていると、首元の十字架がカチャリと揺れた。
「……分かってる。引き受けた仕事は最後までこなすさ」
カイトは深く溜息を吐いて、罠の設置を再開した。
●
『グルルル……』
唸り声と共に森を訪れる魔物たち。
その数は決して多くはないが、無視できるほど少なくもない。
カイトは魔物の侵入に、張り巡らせた『糸』によっていち早く気付いてはいたが、即座に迎撃することはしなかった。
もっと深く獲物を誘き寄せ、『罠』から逃さぬようにする為である。
「面倒くせえ事には違いねぇけど、来てくれて良かったわ。仕掛けた罠が無駄にならなくて済むもんな」
尤も、罠が足りなくなるような満員御礼も困りものだが。幸いにも想定の範囲内、十分に『殺し切れる』数のお客様だ。
「んじゃ、丁重にお出迎えといきますか」
そう言って、カイトは指先から伸びる糸を、くん、と引く。
すると罠のひとつが発動して、魔物の横っ面を糸に括られた丸太が豪快に横殴りにした。
『グルオオオオオ……!!』
続いてあちこちで同じように罠が発動し、魔物たちへと襲い掛かる。
罠と罠とが連動し、吹き飛ばされた先、或いは誘導された先に仕掛けられる落とし穴やトラバサミ、毒矢などのトラップが次々に発動し、魔物の動きを封じ込める。
「んじゃ、やっちゃって」
続いてカイトの指示で放たれる、エルフや冒険者たちによる遠距離からの弓矢による狙撃。
罠による攻撃とは違い、こちらは的確に魔物の急所を目掛け、その命を刈り取る為に放たれる必殺の一撃。
罠と遠距離狙撃、そのふたつの組み合わせに魔物たちは次々に倒れる。
空へ逃れようとした魔物も、蜘蛛の巣の如く張り巡らせたカイトの『糸』の結界によって、外に逃れる事すら叶わない。
「残念だったな、悪魔ども。こういう場所での戦いは、俺の得意分野なんだ」
カイトは蜘蛛の巣に絡んで大地へと堕ちた魔物の姿をちらりと見下ろし、されどすぐに興味を失ったように踵を返した。
歩きながら、カイトは右手の糸を引き絞り握る。
それと連動するように、魔物の身体は木々の間へと吊り上げられ。
血飛沫を撒き散らしながら、バラバラの肉片へとその姿を変えた。
大成功
🔵🔵🔵
ユーゴ・アッシュフィールド
%
では、始めようか
聞いたばかりの情報でしかお前達を知らない俺の指揮だ
お前達の気になる事や思う事があれば遠慮せず言ってくれ
ここにいるのは、この街を守る為に集まった仲間だ
対等な立場で対策を練ろう
まずは手伝いを申し出た冒険者を見かけたら
『お前は猟兵か?』と聞け
そいつが猟兵だと答えたら、その周辺に援護はいらん
あの程度の魔物なら何匹いようが単独で倒しきれる
そうして守るべき区画を絞り
手薄な所にこの街の戦力を分配していくぞ
心配するな、危ない場合は俺が出る
そうだな、100匹ぐらいは任せてもらっていい
少し前の俺なら、俺には関係無いと去っていた状況なんだがな
……鐘の音が聞こえた気がする
無事でいてくれればいいのだが
有栖川・灰治
%
地上部隊
村人と冒険者で編成される部隊に同行。救った命だもの最期まで見届けたいじゃない?
住宅が立ち並ぶ通りとかで戦おうか
空を飛ぶ敵相手なら、あんまり好き勝手動かれない場所の方が戦いやすいと思うんだよね
ここなら、ある程度敵の動きは予測できる
とはいえ無策で真っ向勝負したら僕らなんてけちょんけちょんにされちゃうよ
適当に言いくるめて、村人たちに囮になってもらうっていうのはどうかな?
で、村人を狙いにきたところを操羅でバビュンと捕まえちゃってさ!
あとは好きに袋叩きにしちゃおうよ
恨みつらみ、晴らすのは楽しいでしょ?
ただ、敵はまだまだたくさん。
少しの戦果にいい気になってると、あっという間にお陀仏かもよ。
●ヴィルザリア:臨時作戦本部
「では、始めようか。聞いたばかりの情報でしかお前達を知らない俺の指揮だ、お前達の気になる事や思う事があれば遠慮せず言ってくれ」
ヴィルザリアの自警団詰所に設置された作戦本部。
そこではヴィルザリア防衛を一任されたユーゴによって、軍議が行なわれていた。
「ここにいるのは、この街を守る為に集まった仲間だ。対等な立場で対策を練ろう」
ユーゴはあくまで自分が外様の人間である事を、多くの人間が自分を誰とも知らぬことを念頭に置いた上で慎重に言葉を選んだ。
上に立つ人間を信頼できなければ、兵の士気は揺らぐもの。
この状況で無用の衝突は避けたい。
ユーゴはあくまで軍事的なアドバイザーとしての立場から防衛に関する提案を行なった。
まずはじめにユーゴが行なったのは、『猟兵』と呼ばれる存在の周知。
「手伝いを申し出た冒険者を見かけたら、『お前は猟兵か?』と聞け。そいつが猟兵だと答えたら、その周辺に援護はいらん。あの程度の魔物なら何匹いようが単独で倒しきれる」
ごく限られた伝説級の、トップクラスの冒険者であればそのような事もあるかも知れない。
通常であれば、単騎で魔物の群れに挑もうなどただの無謀。頭のネジが外れているとでも思われかねない行為だ。
しかし猟兵はそれを可能とする。人類の埒外たる力の持ち主――それが猟兵と呼ばれる存在の基本である。
無論、冒険者と連携しながら力を発揮できる猟兵も中には居るだろう。だが事実として、時に周囲の一般人が『邪魔』となる、攻撃範囲に巻き込んでしまう・守りきれないなどの事情で単独行動を望むものも多い筈だ。
「既に近郊の森には仲間がひとり向かっている。数名、弓兵も伴っているようだが――あのまま任せてしまって問題ない。代わりに浮いた戦力を手薄な区域に分配する」
守るべき区域を限定。
残念ながら街にまったく魔物を寄せ付けない程の迎撃能力も無ければ、全域をくまなく守り通せる程の戦力も無い。
よって、ある程度の魔物の侵入は考慮に入れながら、最終的に大聖堂だけは死守する。
防衛ラインが食い破られそうな場合も、その都度攻められてる箇所に戦力を派遣する。
「心配するな、危ない場合は俺が出る。そうだな、100匹ぐらいは任せてもらっていい」
おお、とどよめく団員たち。
真っ向から斬り結んで100匹を同時に捌くのは厳しいかも知れないが、上手く立ち回ればその程度、ユーゴにとっては現実的な数値だ。
(少し前の俺なら、俺には関係無いと去っていた状況なんだがな)
軍議を眺めながら、ユーゴは胸中で呟いた。
他人が生きようが死のうが構わない。
過去が覆る訳でもない。自分に全人類の命を救える訳でもない。
そんな自分が、手の届く範囲だけでも救いたいと、守ろうという気持ちになったのは何故だろうか?
――そんなのは、分かりきった話だ。
過去に囚われるだけだった自分が、たったひとり――彼女の存在によって変えられてしまった。
ここには居ない彼女を想い、苦笑する。
窓の外、何処からか鐘の音が聞こえた気がする。
どうか無事でいてくれればいいのだが。
●
その後も避難状況、物資、援軍、避難民の受け入れなど必要な話し合いが進められた。
ようやく粗方の議題を消化し、軍議を終えて自分も動ける――そう思った矢先に、ユーゴの元へ新たな伝令が入った。
「どうした、何があった?」
『はぁ……はぁ、いえ、その……苦情と言いますか……」
「苦情……?」
『はい。その、“猟兵”の方が――』
『魔物を退治するために、ラクシュの村人を囮に……』
●ヴィルザリア:市街
「よし、じゃあこの辺で戦おうか」
『え、えっと……』
件の“猟兵”こと灰治は、自分の救ったラクシュの村人を連れてヴィルザリアの住宅地を歩いていた。
「空を飛ぶ敵相手なら、あんまり好き勝手動かれない場所の方が戦いやすいと思うんだよね。ここなら、ある程度敵の動きは予測できるし、良いロケーションだと思わない?」
『は、はぁ……』
灰治に唆されるがまま、武器を手に灰治に付いてきた村人たち。
彼らは未だに自分たちが何をさせられるのか理解できぬまま、「大丈夫大丈夫」と根拠のない励ましによってここまで連れてこられたのだった。
『えっと、灰治さん……我々は一体、何をどうすれば……』
「そうだね、そろそろ作戦の説明もしなくっちゃ!」
ニコニコと笑いながら。
灰治は両手を広げ、くるぅり踊るようにターンして、村人たちに作戦を提示した。
「まずはそうだねぇ、そこのキミ。キミはさぁ、あの建物の屋根まで登ってくれるかな? 登りにくい? だったら僕が連れて行ってあげる! そうしたらさぁ、ほらあそこ。見えるかな? 魔物が飛んでるでしょ? 彼もこっちに気付くと思うんだよねぇ。彼がキミを狙ってパタパタとこっちまで飛んで来たところを、僕と操羅が……」
灰治は言葉を溜めながら村人の目の前に近付いて。
「バビュン!! って、捕まえちゃってさ! どう? いい案でしょ?」
『ひっ……!』
灰治の言葉に村人が硬直する。
その作戦内容に驚いた訳ではない。それ以前に、そんな作戦を嬉々として語る灰治の異様さに、その狂気に対し防衛本能が働いたのだ。
『え、と……それはつまり、囮になれ……という事ですか?』
「いやいやいや。だってさぁ、無策で真っ向勝負したら僕らなんてけちょんけちょんにされちゃうよぉ? 大丈夫だよ、ちゃんと僕が守るからさ。キミらだってこの街に来るまでの道中で見ただろう? 操羅の抱擁を。心配ないって」
――囮にしないとは一言も言わずに。
村人を操羅の触手で巻き取り、魔物から目が付きやすいよう、なるべく高い建物の屋根に設置する。
言わば、釣り堀。
恐怖に怯える村人を余所に、今か今かと魔物が喰らい付くのを待ち構える灰治。
「あ、来た……!」
『ひ、ひいいいいっ!!』
魔物が空から飛来し、村人目掛け槍を振り上げる。
――そして次の瞬間。
村人の窮地を救ったのは魔物を絡め取る操羅の『抱擁』ではなく。
風の精霊の加護を纏いこの場へと跳躍した、ユーゴによる『絶風』だった。
●
『グルォオオオオオオ!!』
胸元から血を噴き上げ、その場に絶命する魔物。
ユーゴは村人の身体をその手に抱えると、ふわりと路地へと跳躍する。
「おや、これは防衛隊長さん。こんな場所までお疲れ様です」
「…………」
まるで悪びれる様子もなく、灰治はユーゴに労いの声を掛ける。
ユーゴは灰治をひと睨みすると溜息を吐くと、その場で村人たちに他の防衛部隊と合流するよう指示を出し、解散させた。
「おや、不服でしたか?」
「……いや、これは単なる俺の我儘だ。猟兵に上も下も無い。よって俺には、アンタのやり方にとやかく言うような権利はない」
灰治とて、伊達であんな作戦を取ったわけではない。きちんと街を守る為に、魔物を確実に仕留めるために取った作戦だ。
しかし、そこに自分の趣味が――酔狂が混じっていた事は否定できない。
よって、叱りを受けるような覚悟はしていた。自覚はあった。
だがユーゴは、灰治を頭ごなしに叱りつけるような真似はしなかった。
「囮なら俺がこなす。だからアンタにはそのサポートをして欲しい。頼めるか?」
「……なるほど。ええ、ええ。わかりました。不肖、有栖川・灰治。全力で防衛隊長殿のサポートを務めましょう」
ユーゴの提案に灰治は嫌な顔ひとつせず、二つ返事で付き従った。
灰治は何より、ユーゴ本人に興味を惹かれた。
深い絶望の中に燻る、微かな残り火。彼の碧色の瞳の奥に、そんな情動を見出して。
ニコニコと笑顔を崩さぬままに、灰治はユーゴの後ろを腰巾着のように付いていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灰炭・炎火
%【結社】(だけどソロ)
よーし、こういう時こそあーしの出番!
適当にぶっ飛ばすから、後よろしくねー!
……もう二度と、チコリの里のような犠牲(※でてない)は出さん!
後ありがとう太田さん!!!
ってことで、空に向かって急上昇! からの急降下!
全速力で、敵の集団に向かってどっかーん! って突っ込んで、クレーターを作るよ!
そんでそのまま地面の中に突っ込んで、適当な所で上に向かってドーンって出て、【怪力】で地盤をひっくり返してみーんなやっつけたるの!
……あれ、ちょっとやりすぎちゃったかな?
でもおっちゃんも確か『好きにやれ』って言ってた気がするし、いいよね?(※言ってない)
●『居城』付近
一方で猟兵、及び冒険者たちの進軍は今なお続いている。
最初は殆ど見当も付いていなかった魔物たちの『王』の居座る拠点だが、それもどうやらこの先にある旧時代の遺跡(元は砦だったらしい)がそうではないか、と推測されていた。
ようやく目視も可能な距離。
しかし同時に、立ち塞がる魔物の軍勢の密度も今までの比ではない。
「よーし、こういう時こそあーしの出番!」
元気いっぱい花丸印、炎の翅を羽ばたかせながら登場したのは、『結社』ナンバーⅡ炎火。
「適当にぶっ飛ばすから、後よろしくねー!」
炎火はここまで同行してくれた冒険者の皆様に手を振りながら戦場へと飛び立つ。
みんな若干炎火の(果敢過ぎる)(ちょっと身の危険を感じる)(正直魔物より警戒した)戦いぶりに引き気味になりながらも、「がんばれー!」という声援と共に炎火を送り出した。
(……もう二度と、チコリの里のような犠牲は出さん! 後、ありがとう大田さん!!!)
散っていった(かも知れない)命に誓いを乗せて。
今の炎火はひとりじゃない。
心の奥にみんなの魂が、大田さんの優しさが詰まっている。
「ふぅぅぅうぉおおおおおお!」
炎の翅を最大限に噴かしながら、全速力で高高度まで急上昇。
からの、敵陣目掛けての急降下。
その手に握りしめるのは当然、『ニャメの重斧』。
炎に包まれ大地目掛けて降り注ぐその様は、まさしく隕石。
『ホノカ……メテオ・ストライク!!』
ズゴォオオオオオ! と巨大な爆音、そして爆発の余波を撒き散らし大地を鳴動させる。
その余波だけで周囲の植物は折れ、吹き飛び、発火する。
飛礫すら凶器となり、運の悪い魔物は握りこぶしほどの飛礫が掠めただけで頭部や半身を失う事となった。
「か、ら、のぉ~~~~」
大地の奥底。
遥か遠く、本来届かない筈の炎火の声が、魔物たちの耳へ確かに響き渡る。
『ホノカ……ちゃぶ台返し!!』
爆心地から少し離れた場所の、大地が割れる。
空中庭園さながらに、無作為に抉り取られた大地。
それは炎火ひとりの力によって“持ち上げられ”、そのまま別の敵集団へと投げつけられた。
「……あれ、ちょっとやりすぎちゃったかな?」
そこに残るのは混ぜ返された魔物たちの遺骸と、破壊され尽くした自然体系。
翼を広げた蝶のような形をした爆発跡。
「でもおっちゃんも確か『好きにやれ』って言ってた気がするし、いいよね?」
後に『ホノカ・バタフライ』と名付けられた爆発跡。
その後数十年もの間、作物ひとつ実らず生命も寄り付かない『死の大地』として人々に恐れられる事となった。
大成功
🔵🔵🔵
セレナリーゼ・レギンレイヴ
%【結社A】
皆さまお疲れ様です、もうひと頑張りといたしましょう
広範囲攻撃は私の本領
お任せくださいね
はい、ビリウット様、特大の一撃を振らせましょう
眼を閉じ祈りますが、見えずとも平気
だって、伴場様の守りが突破されるはずはありませんし
前にはペル様もアダム様もいらっしゃるのですから
合わせます、ビリウット様
天から降り注ぐのは光の雨
私の【祈り】を聞き遂げて、魔を祓う力を与え給え
今度こそ制御は不要
敵側に斜めに降るように威力特化で落とします
暗雲の如き敵を一匹残らず焼き切るまで、何度でも祈りましょう
数だけ並べたところで、私たちは止められません
勝ち抜いて全員無事に、平和を取り戻しましょう、と味方を【鼓舞】します
ビリウット・ヒューテンリヒ
%【結社A】
さて、骨を折った甲斐あって…立派な軍勢になったじゃないか
せっかくだし、景気づけの一発を撃ち込みたいところだねえ
薙ぎ払えば士気が高揚するしね?
セレナ、準備をよろしく
戈子殿は守りを頼んだ…自動銃座にしたバロウズも添えておく
では……記憶参照開始
この場にお誂え向きなのは…あった
記憶複製
再現範囲決定
よし、いくよセレナ!同時だ!
かつて遠くの地で起きた「黒鉄の雨」
悪しき者が生み出した漆黒の槍が降り注ぎ、多くを串刺しにした記憶
それが今は悪魔を落とすことになるとは…皮肉だね
リボルバーに戻したバロウズを空に向けて発砲
追蹤魔術起動
本日この地は大雨となるでしょう
お出かけの際は……
──今際の言葉を忘れずに
伴場・戈子
【結社A】
やれやれ、いくさ場に駆り出されるなんてどれくらいぶりだろうねぇ。
ビリウット、セレナ、思う存分やってやりな!
大規模魔術を行使する2人の護衛につくよ。
己の半身である武器、アンチノミーの矛を手に寄ってくる敵を都度蹴散らそうねぇ。
呪法を使うようだけどね、実体のないものだろうと受け止めてみせるよ、アタシの矛はねェ。
基本的には守勢に回って時間稼ぎに徹するが、相手の隙を見つけたらカウンターを入れて数を減らすのも忘れずに行くとしようか。
こちらに集まる敵が増えてきたら、魔力網で文字通りの一網打尽さね。
……さて、2人の準備もようやく完了かね。
遅いよ2人とも!ババアをさっさと休ませとくれ、まったく!
ジェイクス・ライアー
%
近づく敵は私が排除する
集中して、あなた方の役割を全うしてくれ
●指針
屋外で魔法攻撃等、広域攻撃に優れた部隊(猟兵・エルフ混合等)の護衛
●行動
空を飛ぶ相手との相性は決してよくはない。これだけの戦力差だ。この戦いの要となる戦力が削られることのないよう立ち回る
処理スピード優先
暗殺技術を用い効率的に排除していく
具体的な行動として、
・索敵を行い、遠距離の敵は[援護射撃]で撃墜
・近場に鋼糸で足場を組み行動範囲を広げ、可能な限りカバーできる領域を広げる
・神速を活かして急接近し、視認させるよりも早く首をはねる(死角をつく[暗殺・忍び足]はお手の物)
等。
多少無理をしてでも護るべき者達だ
骨の一本や二本くれてやる
●『居城』付近
「骨を折った甲斐あって……立派な軍勢になったじゃないか。せっかくだし、景気づけの一発を撃ち込みたいところだねえ」
「やれやれ、いくさ場に駆り出されるなんてどれくらいぶりだろうねぇ」
「皆さまお疲れ様です、もうひと頑張りといたしましょう」
炎火の引き起こした惨状には誰ひとりとして触れる事無く、眼前の敵群へと意識を向けるビリウット、戈子、セレナリーゼの三人。
「さて、まとめて薙ぎ払うとしようじゃないか。そうすればみんなの士気も高揚するしね?」
セレナ、準備をよろしく――とビリウットは隣に立つセレナリーゼに目配せ。
「はい、ビリウット様。広範囲攻撃は私の本領、お任せくださいね。特大の一撃を振らせましょう」
ビリウットの言葉に、セレナリーゼは「ぐっ」と両手の拳を握って見せた。
「ビリウット、セレナ。護衛はアタシに任せて、思う存分やってやりな!」
戈子は己の半身たる刻器『アンチノミーの矛』をその手に構え、ふたりを庇うようにしてその前に立つ。
「戈子殿、守りは頼んだ。自動銃座にしたバロウズも添えておく」
「伴場様の守りがあれば安心です。前にはペル様もアダム様もいらっしゃいますしね」
ふふ、と微笑むセレナリーゼの言葉に、何処ぞの蛇が「あれ、俺は……!?」とショックを受ける声が聞こえたような気もしたが、恐らくそれは幻聴であろう。
ビリウットは記憶の参照を開始し、セレナリーゼは静かに眼を閉じ祈りを捧げ始めた。
●
大規模魔術の準備。
明らかに異常な魔力の高まりに魔物たちも危機感を覚えたのか、光に吸い寄せられる蛾の如く、三人を狙って多くの魔物たちが飛来する。
「ハッ、呪法を使うようだけどね。実体のないものだろうと受け止めてみせるよ、アタシの矛はねェ」
戈子の振るった矛が、魔物の放つ『思念』を断ち切る。
呪法は勿論の事、投擲される槍も的確に打ち払いながら、間合いに入った魔物には容赦なくカウンターの一撃。
だが、それだけではない。
『アンチノミーの矛』が持つ特性は『矛盾の許容』と『因果の逆転』。
敵の攻撃が苛烈な程にその守りは硬くなり、敵の攻撃を逆転させる事で攻勢に転じる事も可能。
殊、守勢の戦いにおいて戈子は『結社』でも絶大な信頼を誇る。
だからこそビリウットやアストリーゼも彼女に身を任せ、魔術の行使に専念できる……のだが。
(こいつは……流石に数が多いねぇ)
魔術の準備が整うまで、あと2~3分といったところだろうか。
秒数にしておよそ150秒。その150秒が、長い。
戈子にはまだ、反撃が一手は残されている。
――魔力網。
敵の攻撃エネルギーを変換した魔力によって編み込まれた拘束術式。
これを使えば敵の動きを封じることが可能。
しかし、それだけで全ての敵を封じることができるかと問われれば、否。
網に掛からなかった他の魔物が戈子ないしビリウットやセレナリーゼに襲いかかれば詰む。
今はまだ反撃を続け、もっと多くの魔物を誘い込むか魔物そのものの数を削る必要があった。
その逡巡、僅かな隙を突いて。
魔物が戈子の死角から強襲し、槍を放つ。
「ちぃっ!!」
これだから歳は取るもんじゃない、と戈子は内心毒づく。
油断――、ではない。
そもそもがこれ程の数の魔物を相手取り、一瞬たりとも隙を見せないというのが無理な話なのだ。
――槍が肉体を貫き、鮮血をぶち撒ける。
しかし、貫かれたのは戈子の肉体ではない。
「遅れて申し訳ない、レディ。怪我はなかっただろうか?」
ジェイクス・ライアー。
紳士たる男が、差し出した肩口を貫かれながら戈子に恭しく礼をした。
●
「――――、」
言葉もなく、奔らせた鋼糸によってジェイクスは魔物の首を断つ。
僅かに表情を曇らせながら肩に突き刺さる槍を引き抜き捨て去れば、己が身に鋼糸をきつく巻き付け応急の止血を。
「やれやれ、助かったよアンタ。しかし、どうせ来るならもう少し早く来てババアを楽させてくれりゃ良かったのに」
戈子は窮地を救ってくれたジェイクスに礼を述べながらも、冗談交じりに悪態をついた。
「これは失敬。しかし貴女が要所を護ってくれていたおかげで、私の仕事も捗った」
見ると、周囲に集まっていた魔物のおよそ半数はジェイクスの手によって斬首、或いは蜂の巣にされていた。
「サボってた訳じゃないなら仕方ないねぇ。それで? ここからはババアと肩を並べて戦ってくれるってのかい?」
「勿論、喜んで。近づく敵は排除する。あなた方が、その役割を全うできるように」
「いいね。話の通じるオトコは嫌いじゃないよ!」
戈子が吠えるのとほぼ同時に、魔物の群れがふたりへと襲い掛かった。
ジェイクスはすぐさま魔物の攻撃を回避。同時に鋼糸を魔物の首へと回し、その首を断ち切る。
そのまま流れるように魔物を足場にし、複数の魔物と魔物の死骸を鋼糸で結んだ。
ジェイクスの戦闘方法と空を飛ぶ相手との相性は、決してよくはない。
だが相性が悪いからと言って戦いを放棄するようでは二流。
多少、演芸じみていたとしても。この状況下でマシに戦えるよう立ち回らねばならない。
ジェイクスは魔物と魔物を結んだ鋼糸を足場にし、空を駆ける。
時に散弾銃の反動を利用し、時に魔物の背を蹴って、縦横無尽に。されど、無駄はなく。
戈子に背中を預ける事ができたジェイクスは、心置きなく攻撃に専念することができた。
――そして。
「十分だ。下がりな、小僧!!」
「了解した」
魔物の背を蹴り、戈子の隣へと着地するジェイクス。
「アンタらの魔力、まとめて返してやるよ!」
そう言って戈子が放ったのは、特大の魔力の網。
殺傷能力は皆無。
ただ相手の力を封じ、動きを止めるだけ。
「文字通りの一網打尽って奴さね。――遅いよふたりとも! ババアをさっさと休ませとくれ、まったく!」
やれやれ、と悪態をつきながら戈子はその場に座り込む。
ババアはお役御免。
此処から始まるのは、ただ一方的な殲滅のみ。
●
ビリウットは瞑目し、深い闇の中でアカシック・レコード――世界の記憶へと干渉していた。
(記憶参照、閲覧――この場にお誂え向きなのは……、あった)
記憶複製。
再現範囲決定。
追蹤、準備完了。
「準備はいいかい? セレナ」
「はい、勿論です。ビリウット様」
ビリウットの問いにセレナリーゼが答える。
セレナリーゼ。
彼女もまた瞑目し、『ミトロンの書』を手に祈りを捧げていた。
(魔の軍勢を打ち払う力を。街の人々を、この世界の人々を守り救えるだけの力を、どうか――)
その祈りとは即ち、セレナリーゼと『ミトロンの書』の間に交わされる『契約』を意味する。
『ミトロンの書』は、その祈りを果たせるだけの力をセレナリーゼへと授ける。
「よし、いくよセレナ! 同時だ!」
「合わせます、ビリウット様」
――戻っておいで、バロウズ。
自動銃座と化していた『バロウズの魔銃』はリボルバーへと形状を戻し、ビリウットの手の中へすっぽりと収まる。
「追蹤魔術、起動」
そう告げてビリウットは『装填した弾丸』を、『世界の記憶』を空へと放つ。
「『本日この地は大雨となるでしょう。お出かけの際は……』」
天空より飛来する、“何か”の影。
「『──今際の言葉を忘れずに』」
詠唱らしからぬ詠唱と共に。
大地に大雨となって降り注いだ“それ”は、“漆黒の槍”。
かつて遠くの地で起きたという、『黒鉄の雨』の再現。
悪しき者が生み出した漆黒の槍が降り注ぎ、多くを串刺しにしたという惨劇の記憶。
悪しき槍が、今は悪魔を刺し穿つ事になろうとは、なんたる皮肉か。
――同時に。
「『天から降り注ぐのは光の雨。私の祈りを聞き遂げて、魔を祓う力を与え給え』」
ミトロンの書が眩く輝き、その光はセレナリーゼの内へと注がれる。
守るべき者が近くに在った、市街地での使用とは異なる。
今度こそ制御は不要。
魔物を塵すら残さぬよう、出しうる限りの最大限の出力で。
「暗雲の如き敵を一匹残らず焼き切るまで、何度でも祈りましょう。――『力を、貸してください。立ちふさがるものを撃ち払う為に』」
それはビリウットの放った『黒鉄の雨』と、まったくの同時に。
天から降り注ぐのは無数の光条と、それを標とした浄化の光。
大雨、などという生ぬるいものではない。
漆黒の槍が、光条が、更には極大の光の柱が。
魔物の一群を貫き、呑み込み、灼き尽くす。
聖魔混合の破滅の嵐は『居城』周辺すべての魔物を滅ぼして、文字通り塵ひとつとして残すことはなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ハゼル・ワタナベ
%【結社A】
やっべ、こんなデッケー戦い初めてだぜ…!
緊張すっけどよ、俺らが居りゃあ無双状態で終わらせてやるって!
俺はペルが支援してくれた爆撃を受けて弱った敵を中心に仕留めるぜ
ウロボロスの毒牙の刃を伸ばし、蛇骨で複数の敵を捕縛し、UCでトドメを刺す
毒使いの蛇毒を喰らいやがれ
俺ら結社は何処までも貪欲だからな
目的だけじゃなく、仕事の遂行も、だ
毒で死ぬか痛みで死ぬか、さあどっちだろーな?
――刻器、身撃!!
なーんつってな!
あっ、カッコよかった?カッコよかったよなさっきの!
やーおっさんの雷も迫力ヤバかったけどよ、なあペル!
アダムルス・アダマンティン
%
【結社A】
懐かしいな。このような戦はさて、何世紀ぶりだったか
昔取った杵柄などと言うつもりは無い。戦神ではないが、全力で叩き潰すまでよ
数は力だ、などと人は言う
だが、陣構えも整っておらぬ烏合の衆など物の数ではない
我々は敵軍団長を直撃した後に擾乱する
命の惜しくない者、我こそはと腕に覚えのある者は我が背に続け!
封印を解き、ソールの大槌をトールの創槌へと形態変化させる
俺が道を拓く。付いて来い!
刻器、真撃――!
ペル・エンフィールド
【結社A】
森の皆も協力してくれたですね!良かったのです!
ささ、それじゃペル達もお役目を果たすとするのですよ
と言ってもペルはいつも通りに遊撃役なのです
鷹の目【視力】で戦場を見回して、結社のメンバーが動きやすいように死角からの【暗殺】での不意打ちやユーベルコードでの爆撃なんかをするですよ
アダムルス、張り切るのは良いですけどペルにまで雷落としたら四六時中周りを飛び回ってやるですからね!
格好良いかはさておきハゼルも流石のお手前なのですよ!
この調子で他で暴れてる面子に負けないよう暴れるです!
●最前線
「うおおおおおお、やっべえええええ!!」
眼前にて繰り広げられる破壊の嵐に、ハゼルは目を剥き感嘆の声を上げた。
「すっげえ迫力、これじゃもう俺らの仕事残ってねえじゃん」
「ほわぁ……見事なものなのです。流石はビリウットにセレナリーゼ、といったところなのです!」
徐々に晴れていく土煙。
死骸すら残すこと無く一掃された魔物の群れ。
もはや彼らの出る幕はなく、魔物の掃討も完了した……かに思えたが。
「――否。まだだ。まだ終わっていない」
アダムルスは低い声で、ふたりに告げる。
確かに『居城』周辺の魔物は、塵ひとつ残さず消滅していた。
しかし、肝心の『居城』はどうだ。
無傷。
『居城』を包み込むように結界が張られ、あれほどの破壊の雨を浴びせられながらも『居城』そのものには傷一つ付けられていなかった。
それだけではない。
『居城』の内部から一掃した筈の魔物が、一匹、また一匹と湧き出してくる。
その数はあれよあれよと増えていき、気付けば『居城』周辺を軍団長クラスが100、雑兵が5000にも及ぶ規模が取り囲んでいた。
「マ、ジかよ……なんだよアレ、無限湧き??」
「ずっるーいのです! せっかく皆が倒したのに!」
たじろぐハゼルと、憤慨するペル。
戦場を共にしている冒険者たちの間にも、動揺が走る。
しかしそんな中、彼らを従えるアダムルスの表情は一切揺らぐ事がなかった。
「無限の軍勢など、ありはしない。
数は力だ、などと人は言う。
だが、陣構えも整っておらぬ烏合の衆など物の数ではない。
我らはこれより、敵の『居城』を。奴らを率いる『王』を叩く。
此処から先に退路は無い。
我らが『王』を打倒するのが先か。
奴らの軍勢が我らを、或いは守るべき民たちを押し潰すのが先か。
故に覚悟のない者は、止めはしない。今のうちに引き返すがいい」
瞑目。そして訪れる、僅かな沈黙。
ここまで来て、引き返すものなど誰も居ない。
アダムルスはその目を見開き、天高くに『ソールの大槌』を掲げる。
「――命の惜しくない者、我こそはと腕に覚えのある者は我が背に続け!!」
『オオオオオオオオオオオオ――ッ!!』
アダムルスの号令に、全力で応える命知らずの猛者たち。
彼らは既にここまでアダムルスやハゼル、ペルと共に数多の魔物たちと戦ってきた、言わば戦友。
彼らの力は遠く猟兵には及ばねど、共に英雄と肩を並べて戦えるのは彼らにとっての誉れであったし、そして何より。
自分たちの街の、自分たちの住まう世界の運命を。例え猟兵と言えど丸っきり誰かに押し付けて自分たちは高みの見物をしようなどという無責任な人間は、この場には誰ひとりとして居なかった。
●
「うっおおおお! こんなデッケー戦い初めてで、緊張すっけどよ、俺らが居りゃあ無双状態で終わらせてやるって!」
「そんなこと言って……ぷるぷる震えてるですよ、ハゼル」
「っっげーーよ、こりゃ武者震いってやつだっての!」
ぷすすー、とハゼルを笑いながら、ペルはひらりと空を舞う。
「ささ、それじゃペル達もお役目を果たすとするのですよ。ハゼル、あんまり遅かったら置いてくですよ!」
「言われなくても分かってんよ、さぁ行くぜ! 全軍まとめて、刻器進撃――ってなァ!」
ペルとハゼルを先頭に、部隊は『居城』に向けて進撃を始める。
「さぁ、出し惜しみはしませんですよぉ!」
ペルの灼熱の脚を覆う鋼の鉤爪、それこそが刻器ナンバーⅨ『ストラスの大爪』。
その特性は『圧力の操作』。
それは普段ただ燃えて垂れ流されているだけのペルの地獄の炎を高密度に『圧縮』し、そして指向性を持たせる事ができる。
すると、何が出来るのか。
普段から速く鋭いペルの飛翔は『ストラスの大爪』から噴出する炎によって更なる速度を得る事ができる。
そんな高速移動の制御を可能とするのは、ひとえにペルの『眼』の良さや反射神経によるものだろう。
ペルは高速飛翔によって先行。魔物の群れへと一瞬で到着し、縦横無尽に飛び回ることで戦場を掻き乱す。
無害に飛び回るだけが脳ではない。
ピタリと空中に静止し、より高密度に、地獄の炎を『圧縮』する。
「喰らうがいいです! 刻器、神撃――ッ!」
ペルの脚から蹴り出された爆炎珠は魔物の群れへと炸裂し、大爆発を起こした。
音速を超える小型爆撃機。
それはもう、敵からしてみれば悪夢以外の何物でもないだろう。
「よっしゃ、俺も続くぜッ!!」
ペルにようやく追いついたハゼルが、戦場へと飛び込む。
その手に握るのは自らの半身、刻器ナンバーⅧ『ウロボロスの毒牙』。
特性は『循環』。蛇腹剣である『ウロボロスの毒牙』から分泌される神経毒は、『循環』の力によって代謝をループさせ相手に永劫の苦しみを与える。
鞭形態となった『ウロボロスの牙』はまるで意志でも持つかのように魔物と魔物の間をすり抜ける。
すり抜けた刃と刃を繋ぐワイヤーが魔物を雁字搦めに巻き取って、ハゼルは魔物の群れを一網打尽に捕縛した。
「さァて。毒で死ぬか痛みで死ぬか、さあどっちだろーな?」
ハゼルは満足気に笑い、吠える。
「喰らいやがれッ、――刻器、身撃!!」
ハゼルは一瞬にして、捕縛した魔物から刃を『引き抜いた』。
魔物の群れを捕縛していた『ウロボロスの牙』は、『鞭形態』からハゼルの手中、『剣形態』へと姿を戻す。その収縮によって、戻る刃が捕縛した魔物全てを切り裂き、同時に蛇毒を行き渡らせる。
「毒使いの蛇毒の味はどうだ? 俺ら『結社』は何処までも貪欲だからな。目的だけじゃなく、仕事の遂行も完璧に、だ」
ハゼルは剣を振り、刃に付着した魔物の血を払う。
空を見上げれば、そこにはハゼルを見下ろすペルの姿があった。
フ、と微笑みを浮かべるハゼルの顔が次第に破顔し、微笑みを通り越してニヤケ面と化し。
「なーんつってな! なぁペル、カッコよかった? カッコよかったよなさっきの!」
「格好良いかはさておき、ハゼルも流石のお手前なのですよ!」
「だろー?」
格好良いかはさて置かれた事に気付かず、調子に乗るハゼル。
ふたりに続くように冒険者たちも戦列に加わり、遂に戦線は『居城』へと到達した。
「んじゃ、後は頼んだぜ。おっさん!」
「アダムルス、しっかりと決めなきゃ四六時中周りを飛び回ってやるですからね!」
「……任せておけ」
ふたりの鼓舞を受け、アダムルスは静かに前進する。
目の前には『居城』の門。
しかしアダムルスが手を伸ばすとそこには、来る者を拒む結界――見えない壁が存在した。
●
このような戦はさて、何世紀ぶりだったか。
久方ぶりの戦場の空気に、懐かしさすら感じる。
だが、その戦も此処で終わらせる。
昔取った杵柄などと言うつもりは無い。
戦神ではないが、全力で叩き潰すまでのこと。
アダムルスは刻器ナンバーⅠ『ソールの大槌』の封印を解いた。
『ソールの大槌』は転じて、『トールの創槌』と変ずる。
それは刻器が持つ真の姿、PM形態。
通称『夜の間』とも呼ばれる第二形態にして暴走形態を意味していた。
『トールの創槌』、その特性は『電磁気力の操作』から『原子・分子の操作』へと拡張。
「俺が道を拓く。付いて来い!」
創造と破壊を司るとさえ言われるその力が、今、振るわれる。
『 刻 器 、 真 撃 ――!』
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『アークデーモン』
|
POW : 妖星招来
【宙に描かれた巨大な魔法陣から放たれる隕石】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【が大規模に変動する程の破壊が余派で発生し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 魔神の軍勢
【無数の生贄を捧げ、悪魔の軍勢を召喚する。】【その上で邪悪な神々に祈りを捧げ、】【悪魔の軍勢にそれぞれ邪神の加護】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : 攻性魔法・多重発動
レベル分の1秒で【詠唱も動作も無しに、呪縛や破壊の中級魔法】を発射できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アルル・アークライト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
アダムルスの放った『真撃』は極光を伴い、『居城』の結界はもちろんのこと、その内部――『居城』そのものを跡形も無く破壊した。
吹き飛ばされた瓦礫の中に浮かぶ、影。
それこそが此度の騒動の元凶、魔物たちを生み出した『王』たる存在。
その名を『アークデーモン』。
悪魔を束ねし上位存在。
個にして全、全にして個。
かの『オブリビオン・フォーミュラ』と同様に、魔物の群れとは即ちこのアークデーモン単独の個体を指している。
オブリビオンを倒し続けようとも、彼らが骸の海より無限に湧き出るのと同様に。
この『アークデーモン』を打倒し得なければ、魔物の軍勢は無限に湧き続けるのだ。
「『猟兵』――。我が覇道を阻むのであれば、何人たりとも容赦はせん」
四葉・蛍輝
%
あれが、魔物達の王…圧が違う。
脅威を感じるけれども俺たちの後ろには守らなきゃいけない人達がいる。ここで必ず倒すよ。
WIZ
精霊鍵を使っての【属性攻撃】【破魔】の力を使った光属性攻撃は相手の動きを把握するための手段。
【地形の利用】【戦闘知識】【学習力】をフル活用、相手の行動パターンを叩き込んでいく。
【激痛耐性】で多少の怪我は気にしない、今は敵にだけ集中して。
タイミングを見計らって、その時に備えて。
(人形(オレ)の本領発揮だ)
相手の動きに合わせて「行動把握(カウントダウン)、3、2、1」
詠唱が早かろうが合わせてみせる
「0」のカウントと共にUCを使用
●
堂々たる風格で猟兵たちを睨むアークデーモンを前に、蛍輝は思わず息を呑んだ。
「あれが、魔物達の王……、圧が違う」
それは今まで見てきた魔物とは、明らかに異質だった。
自分よりも格上の存在。向こうの気紛れひとつで、自分なんて捻り潰されてしまう――そんな、圧倒的な驚異。
生命として、己が身に組み込まれた防衛本能が全力で警鐘を鳴らした。
今すぐここから立ち去るべきだと。
奴に歯向かうのは危険だと。
それでも、蛍輝が退くことは無かった。
「俺たちの後ろには守らなきゃいけない人達がいる。だから――ここで必ず倒すよ」
蛍輝は手に持つ精霊鍵を強く握りしめる。
そんな蛍輝の姿を見ても、アークデーモンはあくまで矮小なる者の足掻きとしか捉えずに嘲笑う。
「その振るえる声で、言うに事欠いて我を『倒す』と……ふ、はは。よく吠えたものだ。ならばやって見せるがいい、小童」
アークデーモンが腕を振るうだけで顕れる、無数の魔法陣。そこからは幾重もの魔法――炎に氷、暴風に落雷と属性も混ぜこぜな中規模の魔法が蛍輝に向かって放たれる。その1撃1撃が必殺。恐らく、ひとつひとつが蛍輝の全力で放つ魔法の威力を悠に上回る。
「ぐっ……!」
反撃に放った蛍輝の光属性の魔法はアークデーモンの魔法を相殺するのも叶わず、その矛先を僅かに逸らすのみ。
既に瓦礫すら残らぬこの地に利用できる地形も殆ど見い出せずに、ただひたすらにアークデーモンの放つ魔法の嵐を蛍輝は懸命に掻い潜り続けた。
「どうした、逃げ回るだけでは我を倒すことはおろか、傷一つ付ける事も叶わぬぞ」
「そのくらい、わかってる……!」
明らかな劣勢。
であっても、蛍輝の目は死んでいない。
何とか魔法の直撃だけは避けているものの、魔法のダメージは着実に蛍輝の身体を蝕んでいる。スタミナだって無限に続くわけではない。
だが蛍輝はきちんと敵の攻撃を『見て』、『学習』していた。
「終わりだ、小童。まずは一人目――」
アークデーモンの周囲に浮かぶ魔法陣。
再び多重に発動する魔法の嵐が蛍輝を襲う。
「舐めるなよ、魔物の王。ここからが、人形(オレ)の本領発揮だ……!」
行動把握(カウントダウン)、3、2、1――
蛍輝は魔法の軌道を読み、紙一重のところでそれを避け、アークデーモンの懐へと飛び込んだ。
――『ミレナリオ・リフレクション』。
対象のユーベルコードに合わせて正確に全く同じユーベルコードを放つことで、相殺する技。
蛍輝はそのタイミングを、意図的に『外した』。
「オレの力じゃ、悔しいけどお前には届かない。だったら、お前自身の力ならどうだ!」
蛍輝の周囲に浮かぶ十の魔法陣、その姿は“生命の樹”(セフィロト)の如く。
そこに込められし魔力はすべて光の呪文。めいいっぱいに増幅し、あらん限りの破魔の力を上乗せして。
「解錠(コール)、『ミレナリオ・リフレクション』――!」
十条の光が向かう先は蛍輝が精霊鍵にて指し示す先、即ちアークデーモン。
幾重にも交わる光の柱が、アークデーモンの肉体を灼き払った。
成功
🔵🔵🔴
冴木・蜜
そもそも私は軍勢相手の戦闘は向いてない
そんなことは理解しています
ああ、だからお手上げという訳ではありません
ならば私の中の「彼女」の手を借りればよい
…お嬢さん 食事の時間です
体内毒を濃縮しつつ、自身に栄養剤を投与
私に根差すUDCを活性化し『萌芽』
届く範囲内の悪魔諸共、悪魔の王を貪らせます
悪魔ならば知性を持ちえる筈
ならば等しく彼女の養分となる
――さあ、思うがままに芽吹き喰らいなさい
私に攻撃が向くことがあれば
体を液状化し蔓や蔦を伝う等して躱し
悪魔どもの傷や素肌に触れてやりましょう
…忘れましたか?
それとも、見ていませんでしたか?
私は死に到る毒
ゆえに…私は、ただ触れるだけで良いのです
●
「ぐ、ぬぅぅぅぅ! 小癪な真似を……!」
浄化の光に灼かれながら、アークデーモンは蛍輝に対しその拳を振り上げる。
だが、その拳が振り下ろされる事はなかった。
アークデーモンの腕には、見慣れぬ植物の蔓が絡まっている。
「そもそも私は軍勢相手の戦闘は向いてない。そんなことは理解しています」
ずる、ずると半分液体と化した下半身を引き摺るように前に出てきたのは、蜜。
アークデーモンの腕に絡まる植物の蔓は蜜から――正確には蜜の腹から生えるUDCの植物から生えている。
「だからお手上げという訳ではありません。ならば私の中の『彼女』の手を借りればよい。……お嬢さん、食事の時間です」
そう告げて蜜は、自身の首筋に特性の『栄養剤』を注射する。
それは蜜自身の力を引き上げる為の薬剤ではなく、自身に根差すUDCの力を活性化させる為のもの。
ユーベルコード『萌芽』。普段はその凶暴性から鎮静剤を使ってまで抑えつけている怪物。それをアークデーモンに対して解き放った。
「悪魔ならば知性を持ちえる筈。ならば等しく彼女の養分となる。――さあ、思うがままに芽吹き喰らいなさい」
蜜の言葉に応えるように、“彼女”は爆発的な成長を遂げてアークデーモンへと枝葉を伸ばし、覆い尽くさんとする。
しかし、アークデーモンはその絡み来る蔓を六本の腕で掴み取ると、そのまま引き千切らんばかりに力を込めて、抵抗を試みた。
「異界の植物……面妖な。しかし植物であれば根を断てば良い、それだけの事!」
次の瞬間、アークデーモンは植物を抑えたまま自身の影だけを伸ばし、その影で蜜の周囲を取り囲む。
影から這い出てくるのは、無数の魔物たち。
『グルオオオオオオ……!』
魔物たちが吠え、蜜に対して一斉にその槍を突き出した。
が、しかし。
「……忘れましたか? それとも、見ていませんでしたか?」
つぷん、と魔物たちの槍は蜜の身体を手応え無く貫く。
液化した蜜の身体は、槍を伝って、瞬く間に魔物の肉体を包み込んだ。
『ゴ、が……グポ……』
しゅゅううう、と白い煙を上げながら灼け溶けていく魔物たちの肉体。
「私は死に到る毒。ゆえに……私は、ただ触れるだけで良いのです」
あっさりと返り討ちにあった魔物たちの姿を見て、アークデーモンは思わず舌打ちをする。
「植物も面妖なら、その苗床も奇妙な輩よ」
アークデーモンはふん、と力を込めると植物の蔓を引き千切り、蜜に向かって投げ捨てた。
まだまだ知性を喰らい足りない様子の“彼女”は、蜜の傍らで獲物を求めうぞうぞと蠢き続けている。
「スライム風情が……たかだか液化できる程度で、毒の身というだけで、よもや無敵とは思っておるまいな?」
「まさか。そのような事はこれっぽっちも思っていません。ただこの身で為せる事を為す――それだけの話です」
蜜はあくまで淡々と、表情ひとつ揺らさずに。
少しでも敵の体力を削るべく、再びアークデーモンに向けて“彼女”をけしかけた。
成功
🔵🔵🔴
宮落・ライア
ああ……あのくらいで倒れるなんてまだまだだ…。
まだ、英雄を証明できない…。
……。
まだなだけだ。
何処まででも進み続けて証明するんだ。
ボクの価値を。
だからお前は……お前の道はボクの証明に潰されろ。
【自己証明】【森羅万象断】
【自己証明】で自身強化。
【力溜め・気合い・覚悟・怪力】で力を溜め
【捨て身の一撃・衝撃波・薙ぎ払い・森羅万象断】で
自身の体が壊れるのも厭わぬ限界を超えた一撃を放つ。
(有効射程:1521m)
目標はアークデーモンでその間の軍勢も纏めて。
●
仲間に拾われた時には瀕死の重傷だったという。
血の池の真ん中に佇む肉塊。
されど手に握る骨肉の剣だけは決して手放さずに。
流れる血すら毒。
救護も常人の手によっては務まらず。
何とか慎重に処置を施し、輸血をして、ようやく目覚めるや否や。
「ああ……そうか」
ボクはあの場で倒れてしまったのか。
あのくらいで倒れるなんて、まだまだだ……。
まだ、英雄を証明できない……。
……。
「まだ、なだけだ」
むくり、と起き上がり。
周囲の声に耳を傾ける事もなく、彼女は再び戦場を目指す。
「何処まででも進み続けて証明するんだ」
ボクの価値を。
英雄たる資質を。
●
「だからお前は――」
剣を握り、『自己証明』による強化・加速。
瞬間、ライアの姿はその場から掻き消えてアークデーモンの真上へ。
「お前の道は、ボクの証明に潰されろ」
全力で振り下ろす骨肉剣、しかしそれはアークデーモンの掌によって受け止められ、アークデーモンはそのまま刀身を握るとライアの肉体を剣ごと地面へと投げつけた。
ライアの肉体は衝撃で大地を砕くと、そのままボールのように跳ねて地面を転がっていく。
「正面からの馬鹿正直な一撃、くだらぬな。そこで寝ていろ、矮小なる者」
「矮小……だと? ボクが……?」
「そうだ。たかが人間一匹、そのようなボロボロの肉体で何ができる」
ライアはこの戦いで、『ひとりでの勝利』に拘った。
己が身を犠牲にしてまでの無理な突貫。
誰ひとりとして犠牲は出さぬという強い決意。
それは確かに誰の死なせないという正義の行ないであった。
が、その真意は人の命を救う為に非ず。
自らが『英雄であるため』に他ならない。
確かに彼女の上げた戦果は凄まじいものだった。
それによって救われた命も沢山ある。
しかし、彼女は本来負わずとも良い負傷を進んでその身に受けた。
捨て身である必要のない場面であっても、常に前のめりで、常に命を削り続けた。
故に孤独。
一騎当千の力は備えて居ても、ひとりの英雄がすべてを背負う事などできない。
否。
英雄を志せばこそ、英雄であらねばならぬというその傲慢さが枷となる。
「貴様如き、この場には役不足だったという事だ。消え失せるがいい」
アークデーモンの言葉と共にライアへと群がる魔物の群れ。
その数の暴威によって押し潰されて、ライアの肉体は数多の槍によって刺し貫かれた。
身体中を刺し穿つ痛み。
ただ、それすらも他人事のように。
朽ちていく自分の身体。
流れ出る血がただ熱く、自身の存在が大地へと溶けていくような感覚。
――『どうか、負けないで』
そうだ、わたしはこんなところで負けられない。
――『あなたなら、いつかきっと英雄にだってなれる』
だから止まってなんて居られない。
――『お願い、どうか……■■■』
溶けゆく屍泥。そうだ、元からボクは“こう”だった。
託されたんだから。
選ばれたんだから。
流れ出した血は、再び元の器へと収まって。
宮落・ライア。ノゾム者は静かに立ち上がる。
「『まだ』……だ」
両手に剣を構え、狙いを定める。
「ボクはまだ、証明できていない。証明しなきゃいけない――選ばれた者として、必ず――ッ!!」
「『届ッッけええええええ――――ッッ!!』」
ライアの振り下ろした斬撃、それは立ち塞がる魔物の群れすら厭わずに。
アークデーモンの肩口から下腹部に掛けてを一切の容赦も無く両断した。
成功
🔵🔵🔴
●
「ぐぬ、がああああ――ッ!!」
ライアの文字通り命を削った渾身の斬撃によって、胴体から左側の三本腕、及び左足が切り離されたアークデーモン。
その断面からは黒々とした血が溢れ、さしものアークデーモンも苦悶に表情を歪める。
「死に損ないが、よくもやってくれたな……」
アークデーモンは右腕を天高く掲げる。
そこに集うのは、遠く山岳都市グラースを強襲していた魔物たち、およそ3000匹分の魂。
アークデーモンがそれを飲み干すと同時にその肉体から新たな肉の芽が隆起し、新たな四肢へと生え変わった。
「希少な魂を浪費させおって……まぁ良い。この分は貴様らの魂を喰らうことで埋め合わせをしてやる。此れより先、誰ひとりとして生かしては帰さぬぞ」
五百雀・斗真
%
リリヤ・ベル(f10892)と同行
引き続きリリヤさんと一緒に戦えるのはとても心強いね、大田さん
リリヤさん、こちらこそよろしくね
(触手でえいえいおーをする大田さん
戦い方は攻守分担で
僕は王の技を相殺で防ぎ
リリヤさんが攻撃し易くなるよう立ち回る
王の方が攻撃が早く、相殺が難しい場合
潜んでくれてるリリヤさんを巻き込まないよう気を付けつつ
黒雫で強化した大田さんの触手で守りを固める
呪縛は呪詛耐性で防ぎ
技を見定める為に意識を研ぎ澄ます
見定めができたら
リリヤさんが降らす光が王まで届くように
【コードキャンセル】で王の技を相殺
他の攻撃がきても盾受けとオーラ防御でリリヤさんを守り抜き
隙があれば触手で王をぶっ飛ばそう
リリヤ・ベル
%
トウマさま(f15207)と
トウマさま、オオタさま。
もうすこしだけ、いっしょにがんばらせてくださいましね。
はい、こちらこそ。えいえい、おー。
おふたりが、いのちをまもるひとだと。
まもろうと力をつくしてくださるひとたちだと、わかっています。
そのおこころに報いるように。
ご負担にならぬよう、息をひそめて。
よく見て期をうかがうのです。
わたくしだけでは、きっと、届きません。
でも、ここにいるのは、わたくしだけではないのです。
トウマさまが魔法を打ち消した、その刹那。
真上からひかりを降らせましょう。
だいじょうぶ。怪我をしても、なおせます。
だから今は攻勢に。オオタさまも。
わるい王様を、ぶっとばしてやるのですよ。
●
「そんな、あれだけの傷が一瞬で再生するなんて……」
如何にオブリビオンであろうとも、その出鱈目な回復力に思わず斗真も息を飲んだ。
アークデーモンから放たれる圧。
自分たちの攻撃なんてまるで通用しないんじゃないかという不安。
もしこの場に立っているのが自分ひとりだったら、とうに心など折れて逃げ出していたかも知れない。
だが、自分の背中には小さく可愛らしい――けれど頼りになる、心強い味方がいる。
「トウマさま、オオタさま。もうすこしだけ、いっしょにがんばらせてくださいましね」
斗真の背後。リリヤはその瞳に強い意志を湛えて斗真の姿を見上げていた。
不思議と勇気が湧いてくる。
彼女の真っ直ぐな瞳を前に、情けないところは見せたくない。
彼女の信頼に応えたい。裏切りたくない。
ある意味で魔性の女とでも言えば良いのだろうか。
どうしても皆、彼女の前では『見栄』を張りたくなってしまう。
それは斗真に限らず、ここまで共に戦ってきた冒険者全員が同じ気持ちだった。
「リリヤさん、こちらこそよろしくね」
斗真とリリヤ、そして大田さんの三人(?)で、「えいえい、おー」と気合いを入れた。
●
「さぁ、今度は僕が相手だ!」
斗真がアークデーモンの注意を引くように戦場へと躍り出る。
斗真と大田さんが前衛としてアークデーモンの攻撃を引き付け、リリヤが身を隠しながら隙を伺い攻撃を放つ――それが三人の執った作戦だ。
「次から次へと鬱陶しい虫ケラどもめ、未だ実力差すら理解できぬとは!」
アークデーモンは煩わしそうに叫びながら、斗真へと多重詠唱の魔弾を放った。
「ぐっ、……!」
斗真は最大限に強化した大田さんで何とか魔弾の軌道を逸らしながら、懸命に攻撃を耐える。
確かにアークデーモンの言葉は正しい。
アークデーモンと猟兵の実力には大きな隔たりがあり、アークデーモンにとって猟兵など取るに足らない存在に違いなかった。
しかし、猟兵はひとりではない。
どんなに傷付き、力を尽くし、その上で与えた一太刀であっても。
それを積み重ね、繋ぐことでどんな強敵でも倒し得る――それが猟兵の『強さ』。
「どうした、耐えているだけではどうにもならぬぞ!」
「がっ、……げはっ! っ……!」
アークデーモンの呪詛が斗真の身体を蝕み、毒のように巡る。
魔法に物理攻撃、あらゆる手段で斗真の肉体は削られ、斗真はおろか大田さんに至るまでが満身創痍。
(まだだ、もっと大きな隙を――そこに最大限の、一撃を……!)
一瞬、リリヤと目が合う。
心配そうにこちらを見つめる彼女。
そんな彼女に対し、斗真はにこりと笑って見せる。
「どうしたのさ、へなちょこオブリビオン。僕ら相手に手間取ってるようじゃ、到底みんなには勝てないよ……!」
あっかんべー、をしながら斗真なりの精一杯の挑発。
だが、そのぎこちない挑発が却って功を奏したらしく。
「……よかろう。その安い挑発、乗ってやる。魂もろとも消え去るが良い」
アークデーモンの周囲に、特大の魔法陣が浮かび上がった。
●
(トウマさま、オオタさま……)
懸命に戦うふたりの姿を、リリヤはジッと見守る。
本来であればその傷を、すぐにでも治癒したい。
だが、ふたりが命を守る人だと。
守ろうと力を尽くしてくれる人たちだと、分かっている。
だからこそ、その心に報いるように。
余計な負担にならぬよう、息を潜めて機を伺う。
(わたくしだけでは、きっと、届きません。でも、ここにいるのは、わたくしだけではないのです)
離れていても、繋がっている。同じ場所にいる。
届かぬ一撃を、届かせるために。その礎となるために。
そして、アークデーモンの周囲に浮かぶ特大の魔法陣。
相手に最大の隙が生まれる瞬間――それは、相手が勝利を確信した時。
「その力、打ち消させてもらう……ッ、『コード・キャンセル』!!」
アークデーモンの魔法陣にピタリと重なる、斗真の魔法陣。
それは今まで何度も見て、分析し。ただこの瞬間の為に練り続けた斗真の渾身のユーベルコード。
「今だ……ッ、リリヤさん……!」
「はい、オオタさま!」
アークデーモンの虚を突く、そのタイミングで放たれるリリヤの『ジャッジメント・クルセイド』。
「ひかりよ、裁きのひかりよ。――ひとびとの未来に平穏を。この争いに終止符を!」
「ぐぅぅううううッッ、おおおおッ!!」
降り注ぐ光の雨に膝を折るアークデーモン。
と、同時に。リリヤはふらつく斗真の元へと駆け寄り、肩を貸す。
「トウマさま、オオタさま。まだ動けますか?」
「うん、ありがとう。大丈夫……だけど、」
どうしたの、と斗真が問おうとした時、リリヤの瞳は真っ直ぐにアークデーモンを見据えて。
「トウマさま、オオタさま……共に、わるい王様をぶっとばしてやりましょう!」
その、彼女には似つかわしくない言葉遣いに斗真は一瞬面を食らい、一瞬吹き出した後ですぐに頷く。
「そうだね、最後のもうひと踏ん張り……行こう。リリヤさん、大田さん!」
斗真が握った拳に大田さんが絡まって、巨大な握り拳を作る。
三人の拳が、ひかりが。ダメ押しでアークデーモンの顔面へと突き刺さった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●
「ご、がぁ……ッ!」
その一撃により、文字通り『ぶっとばされる』アークデーモン。
だが、当然ながらアークデーモンもただ一方的にやられる訳ではない。
「こ、の……調子にのるなよ、人間!!」
「ぐうっ……!」
「きゃあっ……!」
アークデーモンの尾が鞭のようにしなり、大田さんのシールドもお構いなしに三人を薙ぎ払い、昏倒させた。
カタラ・プレケス
%
……ここまで濃い呪詛は珍しいね~
ああ、だからこそ喰らう価値がある
UC発動
『夜とは全てに寄り添うもの、よって汝避けること敵わず
招きし腕は汝の悪意、罪なる心に抱かれ潰れよ』
これは呪詛返しの一種でねぇ~
本来は悪意敵意に反応するだけど
キミは僕に呪いを向けた
だからさこれで全部返せるんだよ
よって『自業自得の終わりで消えよ』
……あれだけ派手に殲滅してこれだけだと思ったかい
攻撃ではあったけど全部これを叩き込むための前座だよ
「呪槍蒐監」起動
この槍はねぇ~全ての呪いを喰らい溜め込むんだ
だからね、呪いでできたキミにはとっても効くと思うよ~
さあ、『終わらぬ呪いに溺れて消えよ、悪なるもの』
●
「……ここまで濃い呪詛は珍しいね~」
カタラはアークデーモンの様子を観察しながらそんな感想を漏らす。
――ああ、だからこそ喰らう価値がある。
呪詛そのもの、魂そのものに近しい在り方を示す魔物の王を相手に御子は強い興味を示した。
「ほらほら、休んでる暇なんてあるのかな~? 今度はぼくの相手をして貰うよ~」
カタラは黒い翼を羽ばたかせて宙へと浮かぶ。
そして開始されるのは、呪言の詠唱だ。
――夜とは全てに寄り添うもの、よって汝避けること敵わず
――招きし腕は汝の悪意、罪なる心に抱かれ潰れよ
カタラは『音』を媒介として呪いを行使する。
よって、その言の葉ひとつひとつに強い意味が、呪力が込られていた。
――呪うは祈り、祈りは救い、やがて救いは絶望に
――騙りませ、願いませ。全ては等しくこの夜に
――満たされ閉じるは最後の詩なり。
周囲が突然、『夜』によって包まれる。
アークデーモンの足元、そこから生えるのは無数の『腕』だ。
「これは呪詛返しの一種でねぇ~。本来は悪意敵意に反応するだけど……」
キミは僕に呪いを向けた。だからさ、これで全部返せるんだよ。
「よって――『自業自得の終わりで消えよ』」
ミチチ、と音を立てて。『夜の腕』はアークデーモンの四肢や首を蛇のように纏わり付いて締め上げた。丸太でも簡単に折ってしまうような強烈な膂力。
しかし、当のアークデーモンは「くく……」と笑いを漏らすのみだった。
「『呪詛返し』――とは、呪術士がどの口が抜かすか」
アークデーモンは大きく口を開くと、『夜の腕』をそのまま噛みちぎる。
腕を締め付ける夜の腕も、「ふん!」と気合いを入れると同時に引きちぎってしまった。
「我に、我らに散々呪詛を喰らわせたのはどちらだったか。教えてやろう、呪詛返しとは『格上』が『格下』に対して行なって初めて意味を為すもの。身の程を弁えよ、人間」
アークデーモンがそう告げると同時に今度はカタラを無数の夜の腕が取り囲む。
夜の腕はカタラの肉体を繭のように包み込むと、そのまま内包するカタラを圧搾した。
●
「はぁ……あまり舐めないで欲しいな~」
繭の中から相変わらず呑気なカタラの声が聞こえてくる。
「ほう、その状態でまだ何かやれると?」
「……あれだけ派手に殲滅してこれだけだと思ったかい? 確かに今のは攻撃ではあったけど、全部これを叩き込むための前座だよ」
そう告げた繭の、カタラの目の前に召喚されたのは黒い鳥籠。
――『呪槍蒐監』起動。
その言葉に応えるように鳥籠は影のように解け、一振りの槍へと姿を変えた。
「この槍はねぇ~、全ての呪いを喰らい溜め込むんだ。だからね、呪いでできたキミにはとっても効くと思うよ~」
「ふ、それがどうしたというのだ。その状態で勇ましく槍を振るえば、この我の心臓を貫けるとでも?」
「鈍いなぁ~、まだ分かんないの?」
カタラは言った。
『夜謳う御子の祈りと呪い』――夜の腕は、あくまでこの本命を叩き込む為の前座だと。
カタラとアークデーモン。ふたりは現在、呪詛返しによって経路が繋がれている状態。
アークデーモンの受けた呪詛はカタラへと返り、カタラの受けた呪詛はアークデーモンへと返る。
つまり――、
「貴様、まさか……いや、そんな事をして貴様自身が無事で済むと思っているのか?」
「ぼくとキミの違い、教えてあげようか? ぼくは人間で、キミは呪詛の塊。そして呪詛特攻のこの槍が、果たしてどちらにより深刻な影響を及ぼすか。ちょっと考えてみれば分かるんじゃないかな~」
「貴様ァーーーッ!!」
呪槍蒐監はゆっくりと矛先を繭へと向けて、空中に静止する。
「それじゃ、答え合わせといこうか~」
――さあ、『終わらぬ呪いに溺れて消えよ、悪なるもの』
呪い喰らう呪槍が、繭を――カタラの肉体を貫いた。
大成功
🔵🔵🔵
リンタロウ・ホネハミ
%
覇道?知ったこっちゃないっすね
村や街を焼き無辜の民を殺すというなら、どんな大義名分を掲げようがぶった斬る!
それが騎士っつーもんでしょうが!
空飛ぶ悪魔共を足場に戦い続け、辿り着いた先はアークデーモンの直上
ここまで来れば、やることは一つしかないっすよね
足場だった悪魔共は今度は逆に発射台となるっす
悪魔共を蹴りつけ、地面へと加速、加速!
邪魔な悪魔は避け、避けきれない奴はぶった斬り
落下の勢いと自らの足の加速によって得た埒外のスピードをもって
アークデーモンに超超高速の斬撃をぶちかましてやりまさぁ!
ここがお前の覇道の終わりだ、小悪魔め!!
●
繭ごとカタラを貫いた呪槍は、そのまま鏡写しのようにアークデーモンの腹をも貫いていた。
槍はその役目を終えると、夜の腕と共に空気へと溶けるように消失する。
「が、グハァ……ッ、ぐうううっ!」
アークデーモンは多量の黒血を吐き散らしてよろめく。
「小僧ォ……。認めよう、呪術士としてのその力量。呪い比べでは貴様の勝ちだ。だが所詮はただの人間。残念だがこれにて終幕よ!」
アークデーモンはその翼で飛翔し、地面に倒れ伏すカタラにトドメの一撃を振るおうとした、その時。
「させねえっすよぉおおおおおお!!」
空高くから男の声が響く。
彗星の如き勢いで、すれ違いざまにアークデーモンの身体を斬り刻んだ。
――リンタロウ・ホネハミ。
彼は電光石火の如く、ジグザグに動き回りながら返す刃でアークデーモンの肉体を幾重にも渡って斬りつけた。
「ったく、無茶するもんすねぇ……」
リンタロウは、ついでと言わんばかりに腹に大穴を開けたカタラの身体を拾い上げると後方の仲間の元へと届ける。
「そんじゃ、よろしく頼んだっすわ」
そう告げるとほぼ同時、後ろ向きに跳ねたと思えば既にその身はアークデーモンの後方に。
振り下ろした骨剣。しかし今度の一撃はアークデーモンにも見切られており、その腕によって弾かれる。
「ちょこまかと煩い奴だ。一体どこから湧いて出た」
「そりゃ、空からっすけど」
リンタロウはヴィルザリアから戦場まで、グリモアによる転移には一切頼らずひたすら空を飛ぶ魔物の背を斬り付け、乗り継ぎながらここまでやって来た。偶然この場まで敵の姿が途切れなかったのは、ある種の幸運とさえ言えるかも知れない。
その身体は返り血によって黒々しく染まり、しかしそれでもまだ体力には余裕を見せてアークデーモンと対峙している。
「どいつもこいつも……無関係な人間どもを守る為に身体を張って何になる。何を望み、何が目的で我が覇道を阻むと言うのだ!」
「覇道? 知ったこっちゃないっすね」
リンタロウは小指で耳の穴をほじりながら、アークデーモンの言葉を鼻で笑う。
「村や街を焼き無辜の民を殺すというなら、どんな大義名分を掲げようがぶった斬る! それが騎士っつーもんでしょうが!」
新たに取り出した骨を齧り、リンタロウは剣を掲げながら意気揚々とそう告げた。
アークデーモンはリンタロウの返答に暫し言葉を失うと、やがて堪え切れずに笑いを漏らす。
「ふはっ、騎士だと? そんな薄汚れた身なりで騎士を語るとは面白い冗談だ。盗賊や山賊の方がよっぽどお似合いではないか?」
「るっせえっすよ。騎士っつーのは志(こころざし)、オレっちの生き様を悪魔風情にとやかく言われる筋合いは――ねえっす!」
再び高速で繰り出されるリンタロウの斬撃。
その一撃一撃は確かに軽い。そして何撃かは防がれ、しかし少しずつ、アークデーモンの肉体を削っていく。
「まだまだ終わりじゃないっすよ。オレっちの限界速度、見せつけてやるっす!」
『〇八三番之韋駄天』――なけなしの豹の骨を追加で齧り、その脚に蓄えられる俊足の加護。
「ここがお前の覇道の終わりだ、小悪魔め!!」
その声が相手の耳に届くよりも早く。
リンタロウの刃はアークデーモンの三対の腕を切り落とした。
大成功
🔵🔵🔵
有栖川・灰治
%
【ユーゴ(f10891)と】
流石、防衛隊長さんともなるとカッコいいなー。
ね、ユーゴさん。ついて行ってもいいかな?
僕って弱いんですよ。一人じゃ死んじゃう!
あっは、監視ってヒドいこと言うなぁ!じゃ、よろしくね!
早速ボスのお出ましですね
わ、強敵って感じ!こわーい!
僕なんて近づいただけで潰されちゃいそうだから…
え?なに操羅?彼と遊びたいの?
もう、妬けちゃうな
●行動
操羅を口から放出、触手が寄り集まりユーゴを飲み込む
編み上がるは彼の体に密着する黒い生物鎧
意思ある鎧、これほど強力な味方もいないでしょ
ま、操羅が離れたとこに行っちゃうと僕自身は動けなくなっちゃうんだけど
物陰で鼓舞してよう。隊長ファイトー!
ユーゴ・アッシュフィールド
%
【有栖川・灰治(f04282)と】
付いてくると言うのなら、別に構わない
お前は少々危うい匂いがする
監視の意味でも丁度いいだろう
あれが元凶で間違いなさそうだな
随分と強そうじゃないか、お互い死なない程度に頑張ろうか
あれだけの相手となると、小細工は無駄だろう
俺は剣で近距離戦を仕掛けるつもりだが
ハイジ、お前はどうする?
なるほど、サポートが得意だと言っていたな
でもいいのか?見た所、この……
……?(なんだこれは)
俺の知識では分からないが
この子はお前の大事な人(?)ではないのか
そうか、では遠慮なく力を貸して貰おう
これならば、あの悪魔を相手にしても引けを取らないだろう
さぁ、気合を入れて挑もうか
●
――ユーゴさま。見ていてくださいましたか?
「ああ、見ていた。良くやった。だが、無茶はするなと言わなかったか?」
――ええ、たしかに。少し、無茶をいたしました。けれど、
「けれど?」
――わたくしは死んでおりません。どこにもゆきません。
「ああ」
――ずっとユーゴさまのお傍に、ついてまいります。
「ああ」
――ですから、どうか。…………。
「ああ。後は任せておけ」
眠りについた少女の身柄を仲間に預け、灰殻は自らの戦場へと向かい歩みだした。
●
戦線に復帰するユーゴを待ち構える男がひとり。
ヴィルザリアの防衛でも行動を共にしていた、有栖川・灰治である。
灰治はニコニコと戦場に似つかわしくない笑顔でユーゴへと歩み寄る。
「ね、ユーゴさん。ついて行ってもいいかな?」
灰治は「僕って弱いんですよ。一人じゃ死んじゃう!」とか弱さをアピール。
その様子を見て、ユーゴは軽く溜息を吐いた。
確かに灰治の言葉に偽りは無いだろう。しかし、真実でもない。
灰治の身体能力は猟兵の中でも決して高い方ではない。彼ひとりの力であればアークデーモンはおろか、その配下にすら太刀打ちできるかどうか分からない。
だが彼は『一人』ではない。
『操羅』と呼ばれるUDCを体内に宿し、その力を行使する。或いは行使されると言うべきか。
ユーゴはヴィルザリアでの共闘において、その事を知っている。
「付いてくると言うのなら、別に構わない。……お前は少々危うい匂いがする。監視の意味でも丁度いいだろう」
「あっは、監視ってヒドいこと言うなぁ! じゃ、よろしくね!」
食えない男だとは思う。
しかし、彼自身に悪意……は多大に感じるものの、仲間に対する害意は無い。
少なくとも目の前の悪魔を倒すにあたって、頼れる仲間である事には違いない。
そうしてふたりの前に現れる、アークデーモンの姿。
リンタロウの交戦により、その6本の両腕が切り落とされ地面へと転がっている。
「あれが今回の元凶だ」
「へぇ~、あれが今回のボス……でも、両腕モゲてない? 思いの外、楽勝だったり?」
「だったら話は楽なんだが」
そう話している間に。
アークデーモンは以前見せたように配下の魂を掻き集めて再び新しい腕を生やした。
「わ、あれじゃどれだけ攻撃しても敵わないんじゃないの? さすが強敵って感じ! こわーい!」
「かなりの強敵には違いないだろう。お互い死なない程度に頑張ろうか」
「死なない程度に、って割には随分とやる気に見えるけど。それこそ『刺し違えてでも』……みたいな?」
灰治が興味深そうにユーゴの顔を覗き込む。
「気のせいだ。無論、是が非でもアイツは殺す。だが、刺し違えるつもりはない」
「流石、防衛隊長さんともなると言う事がカッコいいなー」
茶化すように笑う灰治に、ユーゴは「ふん」と鼻を鳴らすのみ。
「あれだけの相手となると、小細工は無駄だろう。俺は剣で近距離戦を仕掛けるつもりだが……ハイジ、お前はどうする?」
「どうしよっかなぁー。僕なんて近づいただけで潰されちゃいそうだから……」
灰治が戦術に関して決めあぐねていると。それに答えるかのように、灰治の手を食い破り操羅がにゅぐにゅぐと顔を出した。
操羅はその顔(?)を灰治の耳元に寄せると、口をパクパクとさせて何かを囁く(※)。
※:実際に囁いている訳ではないが、灰治には何となくそれが伝わってくる。
「え? なに操羅? 彼と遊びたいの? もう、妬けちゃうなぁ」
「……? どういう事だ?」
「ええっとね。操羅が防衛隊長の鎧になって、その身を守りたいんだって」
「なるほど、サポートが得意だと言っていたな。でもいいのか? 見た所、この……」
言い掛けて、ユーゴは言葉に詰まった。
スライム、でも無ければ幽霊とも少し異なる。ユーゴの知識にはおよそ存在しない未知の生物。生物かどうかすら定かではない存在。
「俺の知識では分からないが……ともかく、この子はお前の大事な人(?)ではないのか?」
「あぁ、勿論。とっても大事さ」
灰治は即答する。理解してくれて嬉しい、とでも言わんばかりに歓喜に震え。
「でも大丈夫。操羅は僕と違って強い子だから。それにね、なるべくこの子の望みはそのまま叶えてあげたいんだ」
だって僕は兄だから。妹に尽くすのは当然だろう?
「そうか、では遠慮なく力を貸して貰おう」
「うん。そうして貰えると嬉しい。それじゃ操羅、いってらっしゃい」
操羅がしゅるると灰治の手の裂け目に戻っていくと、そのまま灰治の体内を通って今度は口からその姿を現す。
無数の紐状の触手の集合体、その全容。
操羅は灰治の元を離れると、今度はユーゴの身体を呑み込むように包んだ。
蠢く触手はユーゴの身体に吸い付くように密着し、黒い生物鎧と化す。
全身鎧でありながら軽く、身体の動きを阻害せず、それどころか操羅自身の筋力によって装着者の身体能力を向上させる。
「意思ある鎧、これほど強力な味方もいないでしょ?」
操羅の抜けた灰治はふにゃりとタコのようにその場に崩れ落ちながら、操羅の鎧を自慢げに誇る。
ユーゴは手の関節部、腰回りなどの動作を確認し。
「これならば、あの悪魔を相手にしても引けを取らないだろう。……が、ハイジ。お前は大丈夫なのか?」
ユーゴは関節が苦しそうな方向に曲がっていた灰治の身体を持ち上げ、その場に横たわらせる。
「はは、操羅が離れたとこに行っちゃうと僕自身は動けなくなっちゃうんだよね。だから後は物陰で応援してるよ」
「すまない、ハイジ。では、この子と共に気合を入れて挑んでくるとしよう」
「うん。隊長ファイトー! 操羅も頑張るんだよー!」
灰治の声援を背に、ユーゴはアークデーモンとの決戦に挑む。
●
「行くぞ、悪魔」
大地を蹴り、アークデーモンへと迫るユーゴ。
普段より強化されている脚力。急な操羅のアシストにも戸惑う事無くユーゴが順応できたのは、その力の運用が何処と無く精霊の加護を得て戦うのに通じる部分があったからだろう。
「どいつもこいつも、次から次へと鬱陶しい! 無駄な足掻きを続けおって、猟兵とは死にたがりの集まりのようだな!」
「……無駄な足掻きかどうかは、俺たちを倒してから言え」
アークデーモンの腕を、魔法を掻い潜り剣戟を振るうユーゴ。
魔法の余波が身を掠めるが、その程度であれば操羅の防御で十分に対応できる。
(速度も守りも十分。だったら俺は――力のすべてをこの剣に)
剣に込めたるは精霊の加護。
無駄なく、静かに。その力を研ぎ澄ませ。
「――絶ち斬る」
絶風一閃。
ユーゴは一陣の風と化し、アークデーモンの脇腹を斬り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
%【ヌルと(f05378)】
──来たか
よう、ワックド・フリークス
そろそろ茶番にも飽きてきただろ?
互いの存在を賭けて勝負といこうじゃねえか
ヌルを前線で戦わせながら、軍勢を指揮して木っ端の魔物を相手させる
俺も魔物を相手にするが、ヌルが動きやすいようにカバーを重視
奴がユーベルコードを発動した時が、勝負だ
一挙手一投足を注視し、発動を予知
被せるように俺のユーベルコード発動
反転が起動する!
生贄?違うね
お前の手下たる魔物の死骸から!
「お前を打ち倒す天使の軍勢」が召喚されるのさ!
さぁ祈れ、光の神々に
天使に加護を載せて、テメェの首を絞めろ
──運命はひっくり返った
行こうぜ、ヌル
ここからは俺たちの描く「予定調和」だ
ヌル・リリファ
%
◆ヴィムさん(f01172)と
結構つよそうだね?
まあ、でも。どんな相手でもやることはかわらないから。いこっか。
じゃあ、わたしはまえできをひくから。
シールドを展開、敵の攻撃は【盾受け】で対処。流石にいきなりシールドでくぎった空間のなかに攻撃はできないとおもうから。
UCを起動。相手が周囲にきをむける余裕がないよう、攻撃しつづける。
空中に待機させるひかりの武器は、【属性攻撃】でひかりをつよくして、うしろに注意がいかないようにするよ。
流石だね。ふふ、周囲にきをくばることの必要性はもううすそう。(全く気を配らないわけではないが。先ほどまでとは使える領域が格段に違う。)
……うん。あとは、まかせて。
●
「おのれ……おのれ猟兵ども!」
個々の力では敵わぬ癖に、一太刀入れるのがやっとの癖に。
倒しても倒しても、次から次へと挑んでくる猟兵相手にアークデーモンの苛立ちはピークに達していた。
「もう、いい加減――」
「いい加減、茶番にも飽きてきただろ? ワックド・フリークス」
アークデーモンが振り向くと、そこにはヴィクティムが不敵な笑みを浮かべながら立っていた。
「そろそろ無限ループも終わりだ。互いの存在を賭けて勝負といこうじゃねえか」
「抜かせ、貴様ら猟兵はどいつもこいつも……!」
アークデーモンが激昂と共に、ヴィクテムに向けて魔弾を放つ。
しかしその魔弾はヴィクテムへと届くこと無く、強固な魔法障壁によって阻まれた。
「結構つよそうだね? まあ、でも。どんな相手でもやることはかわらないから」
ヴィクテムの傍らにひょっこりとヌルが顔を出した。
「じゃあ、わたしはまえできをひくね」
「おう、任せた!」
ヌルが前衛でヴィクテムが後衛。
――ヴィクテムには『仕込み』がある。
それが完成されるまでヴィクテムを守り、そして敵から『最後の鍵』を引き出すのがヌルの役割。
ヴィクテムは光学迷彩を自身に施し、その姿を隠す。
それだけで完全に敵の目を眩ませる事はできないだろう。しかし、逆に目を凝らさない限り簡単に発見される事もない。
「我を相手に時間稼ぎか。何を企んでいるのかは知らぬが、無謀な事よ」
「時間稼ぎ……うん、たしかにそのとおりだけど」
ヌルの周囲に浮かぶ、ユーベルコード製のひかりの武器。それらは強く輝いてアークデーモンの索敵を拒む。
「時間を稼ぐだけじゃないよ。舐めてかかるなら、ヴィムさんが出るまでもなくわたしがあなたを殲滅してあげる」
その言葉と共に、ひかりの武器の半数がアークデーモンに向かって放たれた。
「ふんっ!!」
アークデーモンは三本腕でヌルの攻撃を防御し、その反対の腕から反撃の魔弾を放つ。
魔弾は炸裂する前に、ヌルの生み出したシールドによって防御された。
「こっちばかりみていて平気?」
「ぬうっ……!」
今度はもう半分の武器をアークデーモンの背後から突き刺すようコントロール。
四方八方から絶え間なく、半数を打てばもう半数を補填。時には違うパターンも織り交ぜながら、アークデーモンに休む隙を、ヴィクテムを狙う隙を与えない。
ヌルは戦闘用に造られた機巧。その演算能力を以ってすれば、武器の緻密なコントロールや先を読まれにくい戦術パターンの組み立てなどはお手の物だ。
「小娘が、猪口才な真似を……だがその武器も、盾も、作れる数には限りがあろう。無数の魔物に飲まれて消えよ!」
アークデーモンは今まで殺してきた【人間の魂を生贄に】、【悪魔の軍勢を召喚】した。
【邪悪な神々に捧げられし祈り】は、【悪魔の軍勢にそれぞれ邪神の加護】を与える。
「そいつを待ってたぜ!」
パチン、と響く指を鳴らす音。
ヴィクテムは光学迷彩を解くと、同時に仕込んでおいたユーベルコードを発動する。
「――『反転』(Reverse)!」
掛け声と共にアークデーモンの呼び出した悪魔たち、そのおよそ半数にノイズのようなものが走り、その姿が掻き消えていく。
そして代わりに喚び出されたのは、なんと『天使の軍勢』。
「貴様、一体何をした……!」
「言ったろ、『反転』だ。お前のユーベルコードにウィルスを打ち込んでやったのさ。【お前の手下たる魔物の死骸】から! 【お前を打ち倒す天使の軍勢】が召喚されるようにな!」
悪魔の軍勢と天使の軍勢は互いに削り合い、共に倒れていく。
「粋がるなよ、小僧ォ……! たかだかユーベルコードひとつを相殺せしめたくらいで、勝った気になるな!」
「だよなぁ、俺もこれだけじゃ盛り上がりに欠けると思ってたところだぜ」
コピー&ペースト。
効果範囲を限界まで拡大。
ユーベルコードの対象を『すべての戦場』に。
「貴様、まさか……」
「今更気付いたって遅えよ。お前の有り金(チップ)、根こそぎ奪い取ってやる!」
眼の前のアークデーモンは、無数の悪魔たちの魂を束ねた存在。
いくら死力を尽くしてその体力を削ろうとも、その体力を無数の悪魔の魂によってすぐに補ってしまう。言わば、不死身の怪物。
だが、周囲の悪魔たち――その全てを殲滅してしまえばどうだ。
猟兵たちの敵となるのは、目の前の悪魔ただひとり。
「良くて相殺。けどなぁ、お前はひとり。そして俺らの戦力(リソース)は猟兵だけじゃない、他の人間たちだって沢山居る」
天使の軍勢、加える事の冒険者を始めとした人間たちの連合軍。
文字通り、戦力が『反転』したのだ。
「言ったろ、フリークス。『互いの存在を賭けて勝負といこうじゃねえか』! ――さぁ祈れ、光の神々に。天使に加護を載せて、テメェの首を絞めろ」
「小僧ォ……ッ!!」
――運命はひっくり返った。
ニイッ、と笑いを浮かべながらヴィクテムはその場に膝を付きそうになる。その身体を、ヌルが静かに支えていた。
ユーベルコードを過負荷で連続使用した代償。
もはや指一本動かす体力すらまともに残ってはいない。
「行こうぜ、ヌル。ここからは俺たちの描く『予定調和』だ」
「……うん。あとは、まかせて」
もう時間を稼ぐ必要もなければ、ヴィクテムの安全に気を使う必要もない。
ヌルは気を失ったヴィクテムの身体を支えたまま、浮かぶひかりの武器ひとつひとつに残る力のすべてを、演算領域のすべてを、この一撃に。
「『かけゆく閃光は暗翳をけしさり、乱立するひかりはうせたのぞみをてらす』」
――これがわたしたちの描いた、『予定調和』。
ヌルの放った無数のひかりが、アークデーモンの肉体を刺し貫いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ビリウット・ヒューテンリヒ
%【結社】
あれが大将首、というやつかな?
あはは、覇道だってさ
「既に過去になった奴が随分と吠える」
記憶以外に価値無き骸よ、速く帰りたまえ
バロウズ、お食べ
形態変化『ストレイフ・ダブル』
2丁拳銃にしたバロウズで機動力重視の戦闘
──来たね、隕石
オブリビオンとは、「過去」
即ち「記憶」そのものだ
であれば、アカシックレコードにもその記憶は刻まれている
ほうら、あった
お返しだ
君の隕石と私の「再現」、どっちが強いかな?
へぇ、やり過ごしたか…流石だけど…
誰が
"一発だけだと言った?"
銃口が2つ。ならば「弾丸は」2発
単純な話だろう?
私に刻まれたⅣの重み
記憶の恐ろしさ、尊さを
その身で知るがいいよ、『過去に囚われし者』
パーム・アンテルシオ
%
あの光、まともに受けてたように見えたけど…
さすが、あれだけの軍勢を生み出す敵、って所かな。
私も、あの戦いに加勢するべき?
それとも。
…うん。滅ぼすために動くだけが、戦いじゃない。
私は、私にできることを。
ドワーフさんに、冒険者達…協力してくれてる皆は。
あれには近づかないように、お願いしておかないとね。
九ツ不思議…天狗。
戦場を俯瞰するなら…空から見るのが、一番。
…あれは…岩?空から放つ、魔法?
止めないと。皆を守らないと。
攻撃を防ぐのなら…
…ダメ。悠長にしてる時間はない。
この力なら。このスピードなら。
落ちる隕石に、横から突っ込んで…
軌道を、変える…!
守るから。信じてくれた人を。皆を。
だから…応えて。
灰炭・炎火
【結社】%
あの隕石――避けたほうがまずい気がする!
しゃーない、あれはあーしが壊してくるから、後よろしくね!
いざいざ、我が選びし以下省略!
刻器――――神撃ー!!
隕石に飛び込むあーし……!
全力で突っ込んで、ぶち砕く――その上にある魔法陣を壊すまでは、絶対に止まらへん!
さすがのあーしも、隕石は相手にしたことないもん!
勝てへんかも……でも、でも……負けられへんの!
――――あーしは、隕石を破壊して……爆発の中に消える(確定ロール)
……で、後半いい感じになったところで空から、今度は自分が隕石みたいに振ってきてアークデーモンの頭を狙います。
熱かったぁー! そいで痛かったぁー!
けど! あーしを舐めへんでよっ!
●
これまでの戦いで多くの手駒を失い、自身も多大な消耗を強いられたアークデーモン。
「認めよう、『猟兵』。貴様らが我が覇道を阻む大きな障害である事を」
はじめは「取るに足らない相手」としか認識していなかった猟兵を、アークデーモンはここに来て初めて、『脅威』であると。取り除かねばならぬ『障害』であると認識した。
そんなアークデーモンの言葉を聞き、ビリウットが笑う。
「あはは、覇道だってさ。『既に過去になった奴が随分と吠える』」
手には『バロウズの魔銃』。無機物を存分に喰らわせ、『ストレイフ・ダブル』――機動力を重視した二挺拳銃の形状へと変化させる。
「記憶以外に価値無き骸よ、速く帰りたまえ」
「好きに吠えるが良い」
ビリウットの挑発にも応えること無く、アークデーモンは両腕を天へと掲げる。
「失った魂を補填……などと生温い事は言わぬ。その魂ごと、すべて燃え尽きよ」
その言葉と共に天に浮かび上がるのは、巨大な魔法陣。
これこそがアークデーモンの持つ最大級の攻撃魔法、『妖星招来』。
魔法陣の数は三つ。
それぞれから炎を纏う巨大な隕石が召喚され、それらは大地を押し潰さんとゆっくりと落下を開始した。
「リっちゃん、あの隕石――避けたほうがまずい気がする!」
召喚された隕石を見て、炎火が叫ぶ。
隕石が纏う嫌な感じのオーラ。
直撃を避ける事自体は容易いだろう。しかしそれによって巻き起こされる破壊と、それだけじゃない嫌な予感――言葉にはできぬ何かを、炎火は感じ取った。
「同感だな。ひとつは私が担当しよう。もう1個の方は炎火にお願いする。あとの1個は――」
「あっちには別の子がおったから、多分任せてもだいじょーぶっ!」
「心得た。ではそのように」
ふたりはそれぞれ担当する隕石の元へと散開した。
●ひとつめの隕石:パーム
その頃、パームは周囲の冒険者たちの支援にあたっていた。
敵を滅ぼすために動くだけが、戦いじゃない。
自分は自分に出来ることを――、そう思っての行動であった。
突如現れた天使の軍勢、そのおかげもあって戦線の維持は随分と楽になった。
しかし、妙な胸騒ぎがする。
パームは戦場を俯瞰する為にユーベルコード『九ツ不思議・天狗』によって空を舞う。
その時、恐るべきものを目にした。
「あれは……岩? 空から放つ、魔法?」
別に魔法の性質を、ユーベルコードの効果全てを理解していた訳ではない。
だが、ひと目見ただけで理解できた。
あれが良くないものであると。
あれが大地へと落ちれば、この場の人間すべての命が失われてしまうと。
「止めないと。皆を守らないと」
攻撃を防ぐのなら、どんな能力で立ち向かうのが相応しいか。
自分の力だけで本当に防ぐ事ができるのか。
隕石はひとつだけじゃない。他の隕石にはどう対処すればいいのか。
「……ダメ。悠長にしてる時間は、ない」
そう思った時には、既に身体が動いていた。
全身を業風――地獄の黒風によって覆い、高速で飛翔。隕石のひとつを押し返さんと、両手をつく。
手が、全身が、爛れるように熱い。身に纏う衣服が端が少しずつ灼き焦げる。
無理もない。隕石の表面は炎によって覆われているのだ。この程度の被害で済んでいるのも、身に纏う業風が炎を吹き飛ばしているからこそである。
流石に無謀だったろうか。
隕石に取り付いたところで、何処に押し返して良いかも分からない。
軌道を変えたとしても、何処に落とせば安全なのかも分からない。
――それでも。
「……守るから」
信じてくれた人を。皆を。
それが『約束』だった。
とってもものしりだったあのひととの。
みんなをきびしくみちびいてくれた、あのひととの『約束』。
「だから……応えて!」
瞬間、パームの纏う業風がその勢いを増した。
黒い風の珠。
それは隕石とは及びも付かない程ちいさな珠。
「――あ、あああ、あああぁッ!!」
黒風の中でパームの瞳がより一層、赤く光る。
勢いを増した小さな業風の塊は、徐々に隕石を押し上げていき。
やがて勢いを増し上昇を始める隕石は、元の召喚された魔法陣を打ち砕き、次元の裂け目を通って彼方へと消失していった。
●ふたつめの隕石:炎火
「しゃーない、あれはあーしが壊してくるから、後よろしくね!」
よろしくってお前、どうする気だよ! という仲間のツッコミを余所に、炎火は『ニャメの重斧』を手に飛翔する。
「いざいざ、我が選びし以下省略! 刻器――――神撃ー!!」
瞬きをする間に炎火は隕石へと到着、振るう重斧が隕石を捉える。
無論、炎火と言えど一撃で打ち返せる訳でも、隕石そのものを砕けるわけでもない。
だからこそ、
「てええええええっ!!」
翅から噴射する炎を片側に絞ると、重斧の先端を基点とし炎火の身体は凄まじい速度で『回転』を始めた。
ズガガガ、と大きな音を立てながら炎火は隕石の表面を削り、中心部に向けて掘り進んでいく。
そこに細かい理屈だとか、根拠だとかは存在しない。
『こうやったら掘れそう』――炎火はただただ、本能で以って突き進む。
(さすがのあーしも、隕石は相手にしたことないもん!)
未知の敵を相手に、若干の不安はよぎる。
(勝てへんかも……でも、でも……負けられへんの!)
チコリの里のフェアリーたちと、オオタさんと、約束した。
みんなの命を守ると。
大切な命を二度と散らしてはならないと。
「うおおお、もっかい言ったるの! 刻器――神撃ーーッッ!!」
隕石の中心部。
そこで炎火は己の持てる怪力(ちから)のすべてを解き放つ。
ぴしり、ぴしりと隕石に走る亀裂。
凄まじい負荷に耐えきれず、隕石は爆裂四散!
破壊された隕石。
だがそこに、灰炭・炎火の姿はなかった。
消息不明 ●●●
●みっつめの隕石:ビリウット
「炎火……立派な最期だったよ」
仲間に小さく黙祷を捧げ終えると、ビリウットは最後の隕石に向けて照準を合わせる。
「──来たね、隕石」
巨大な隕石を前に、ビリウットは余裕の表情を崩さない。
オブリビオンとは、「過去」。即ち「記憶」そのものだ。
であれば、アカシックレコード(世界の記憶)にもその記憶は刻まれている。
記憶参照――ほうら、あった。
「お返しだ。君の隕石と私の『再現』、どっちが強いかな?」
空に向けて放たれるバロウズの魔弾。
天から墜ちる隕石に対して、天へと昇る『再現』された隕石。
巨大なふたつの隕石はまるで鏡写しのようにぶつかり合い、そして凄まじい衝撃波を撒き散らしながら互いに砕け散った。
●
「とまぁ、こんな感じだよ。せっかくの奥の手だったみたいなのに、残念だったね?」
「こ、の……っ、ぐぅうううっ!」
呼び寄せた隕石、その尽くが破壊され歯噛みするアークデーモン。
何故こうも上手くいかないのか。
人間など、自分よりよっぽど下等な生物では無かったのか。
「それじゃ、引導を渡すとしよう」
「なに……?」
バロウズの“もう一丁”の照準をアークデーモンに合わせ、撃鉄をビリウット。
「誰が“一発だけだと言った?” 銃口がふたつ。ならば『弾丸は』2発。単純な話だろう?」
私に刻まれたⅣの重み。
記憶の恐ろしさ、尊さを。
その身で知るがいいよ、『過去に囚われし者』。
アークデーモンの頭上に、バロウズによって『再現』された5つ目の隕石が墜とされた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アダムルス・アダマンティン
%【結社】
他のナンバーズが派手にやっている
隕石の破片が飛んで来るだろう
俺は絨毯ほどの鉄鎖網を頭上に展開し、他の猟兵共を保護してやる
我が胸に刻まれし数字は“Ⅰ”
我が創めるは“原初”
我が担う刻器は“破壊と創造”を冠せし“ソールの大槌”
――長針の“Ⅰ”、アダムルス・アダマンティン
覇道、などと
武器に選ばれぬ身でよくも吼えたものだ
なれば、俺が測ってやろう。貴様が覇道に値する器か否か
刻器、真撃ッ!
ペル・エンフィールド
ひゃぁ!?すごい数なのです!
此れ全部倒せれば文字通り一騎当千って奴ですね!!
ま、そんなことしないですけど
だってこの軍勢は所詮は呼び出された者共、倒し続けたところで対局に影響なしなのです
ですから、狙うは大将の首のみ…なのですよ
流石にこの軍勢相手にはステルスは無理ですけどそんなことで止まるペルじゃないのですよ
隠れられないのなら掻い潜るまで
ポンチョを脱ぎ捨てユーベルコードを発動、飛行速度を向上させ
視力で軍勢の隙間を見定め【残像】に【目立たない】【暗殺】を組み合わせミスディレクションを行い最短最速でグレートデーモンに一撃を見舞ってやるのです
ハゼル・ワタナベ
%【結社】
おっと、ボスのお出ましってか!
さっそく大物を狙いにいくか――って、邪魔なんだよテメェら!
アイツに辿り着くにはこの群れを抜けなきゃいけねェワケか
…いいぜ、やってやるよ
容赦はしない、だァ? 俺ら結社を相手にンなことを抜かすとはな
後悔させてやるよ
俺はダーク・ヴェンジャンスで自身を強化
刻器身撃で悪魔の軍勢を捕縛して払い除け、アークデーモンへと突撃してやるぜ
代償を受けてるってンなら、俺の蛇毒を受けりゃあさらに負荷が掛かるだろ?
剣形態のウロボロスの毒牙を振るい、肉薄
その身に深々と、毒を孕んだ刃を突き刺す!
セレナリーゼ・レギンレイヴ
%【結社A】
軍勢を揃えて統率がとれぬ街を攻める
良い手段ではありますが、指揮もなくてはとれるものもとれません
尤も……
私たちが相手をするのです、そうさせるつもりはありません
平穏の為、過去は過去に
このまま塵に返しましょう
書にかける【祈り】は安寧と平定
今日の私は一人ではありません
結社の皆がいますから
だから、私も全力でまいりましょう
身に降ろした御使いの力で振らせるのは光の雨
【範囲攻撃】で取り巻くものを打ち払いつつ
悪魔を光の剣で射抜きましょう
大丈夫
大丈夫
大丈夫
今の私は制御機構
私情など挟みません
ただ目の前の敵を滅し、味方を【鼓舞】し
勝利を私たちに近づけましょう
世に平穏のあらんことを
そして、悪しき者に報いを
●
「……はあっ!」
「ふん」
空から飛来する無数の隕石の破片をセレナリーゼの光剣が射抜き、或いはアダムルスの鉄鎖網が受け止める。
すべてを受け止める事は叶わない。しかし手の届く範囲は、人々に直接的な被害を齎しそうな最低限の破片は的確に処理していく。
そして目の前に立つのは『再現』された隕石によってその身を灼かれたアークデーモン。
肌は爛れ、抉られた周囲の大地が焼け焦げて一部は溶岩と化している。
「テメェ……仲間を、炎火をよくもやってくれたな……」
ハゼルは隠しもしない殺意で以ってアークデーモンを睨みつける。
「ハゼル、あの……」
「許せねぇ。テメェだけは、絶対に!!」
「あう……」
炎火は多分死んでないのですよ、と伝えるに伝えられずに居るペル。
他の仲間たちも同様に、炎火の生存に関して誰ひとりとして心配していない。先程黙祷を捧げていたビリウットでさえ、まぁ冗談で言っていただけ。
ハゼルただひとりが『炎火はあの爆発に飲まれ死んでしまった』と信じ込んでいた。
「まぁ、やる気があるのは良いことなのです!」
その言葉と共に、ペルは身に纏うポンチョを脱ぎ捨てた。
自分の出し得る最速で以って相手を倒す。その為には僅かな布の重さや空気抵抗すら惜しい。
「わ、ちょ……お前、どうして急に脱いで……」
一方で、隣に立つハゼルは状況を理解できていない。
何故急に脱ぎだしたのか。
顕となったペルの柔肌や「特徴:スタイルが良い」に狼狽し、健全な男子として思わず赤面してしまう。
「なっ……! 何を急に顔を赤くしてるですかハゼル! 戦う為に身軽になっただけですよ、さっきまでシリアスは何処に行ったですか!」
このスケベ、とハゼルの背中を蹴飛ばすペル。
そんなやり取りをしている間に、猟兵たちとアークデーモンの間には無数の魔物が召喚されていた。
「ひゃぁ!? すごい数なのです! 此れ全部倒せれば文字通り一騎当千って奴ですね!!」
ま、そんなことしないですけど。とペルは小さく舌を出す。
何故ならこの軍勢は所詮は呼び出されただけの存在。ただのユーベルコード。
倒し続けたところで大局に影響はしないのだから。
「ですから、狙うは大将の首のみ……なのですよ!」
瞬間、ペルの姿が掻き消える。
持ち前の視力で以って軍勢の隙間を見定め、時折動きに緩急をつける事で敢えて自分の残像を晒しながら、その隙を誘う。
――『魔鳥の死を誘う踊り』。
圧縮された空気による高速機動、そして圧縮された地獄の炎による『炎の爪』。
その爪はすれ違いざまにアークデーモンの胸部を斬り裂いた。
●
「――邪魔なんだよテメェら!」
一方で、ペルほどの速力を持たないハゼルは魔物の軍勢を相手に苦戦を強いられていた。
「アイツに辿り着くにはこの群れを抜けなきゃいけねェワケか……いいぜ、やってやるよ!」
その言葉と共に、ハゼルは全身の漆黒を纏う。
青い瞳のみを覗かせるその姿は、黒蛇と呼ぶに相応しく。
「容赦はしない、だァ? それはこっちのセリフだぜ、クソ野郎!」
叫びと共に、『ウロボロスの毒牙』が畝る。
「仲間に手ェ出したこと、後悔させてやるよ!」
ハゼルは敵群へと潜り込み、立ち塞がるすべての敵を斬り刻む。
自身が傷付く事など厭わない。
短期決戦、ただの一撃だけでいい。この牙を敵へと突き立てろ。
「死にやがれ、クソ悪魔!!」
ペルの斬り裂いたばかりの胸元の裂傷、ただ一点を狙い。
ハゼルは深々と、『己の毒牙』をその身に突き立てた。
●
「が、は……っ!」
胸元を突き刺され、全身を毒に冒され、血を吐くアークデーモン。
残る力でペルやハゼルを振り払い、大きく肩で息をする。
受けたダメージにより集中が乱れたせいか、召喚された魔物の群れは一旦その場から姿を消していた。
「何故だ、何故人間どもに、このような力が……」
「それが分からぬから、貴様は一度滅びたのだ」
アークデーモンの問いに答えるアダムルス。そしてその傍らにセレナリーゼ。
「人は誰かを想い戦う時、思わぬ力を発揮する。私はこの目で幾度となく見てきた。人々が誰かの為に、神をも凌駕する力を発揮する――その姿を」
アダムルスはセレナリーゼへと目配せをし、彼女もそれに頷く。
セレナリーゼは『ミトロンの書』を手に契約を開始した。
平穏の為、過去は過去に。
目の前の敵を塵へと返す為に。
●
――『軍勢を揃えて統率がとれぬ街を攻める』。
良い手段ではあった。
が、指揮もなくそれだけで人間を討ち滅ぼせると思うのは強者故の奢りだろう。
尤も……気付いたところでもう遅い。
『結社(私たち)』が相手をするのだから。
人々の未来を魔物の好きにさせるつもりは無い。
書にかける【祈り】は安寧と平定。
今日の私は一人ではありません。
結社の皆がいますから。
だから、私も全力でまいりましょう。
脳裏を過るのは“あの日”の記憶。
――力の暴発。
ミトロンの書は『契約』を履行するに足るだけの力を術者に分け与える存在。
故に制御をしくじれば、行き場を失くした力は暴走し周囲に破壊を撒き散らすだろう。
(大丈夫、大丈夫、大丈夫)
静かに自分に言い聞かせ、呼吸を整える。
その身に降ろすのは御使い――『契約』を司る天使の力。
その喚び声に応え天から降臨せしめるのは、ずらりと並び立つ数多の『光剣』。
(今の私は制御機構、私情など挟みません。ただ目の前の敵を滅し、味方を鼓舞し。勝利を私たちに近づけましょう)
静かに瞳を開け、真っ直ぐに見据える敵の姿。
「『力を、貸してください。力なきこの身が、災いを齎す者を浄化し討ち滅ぼす為に』」
セレナリーゼはその指先で眼前の敵を指し示し、
「『世に平穏のあらんことを。そして、悪しき者に報いを』」
――刻器、神撃。
その号令と共に、無数の光剣がアークデーモンの身体を刺し貫いた。
●
「が、ふ……っ! はぁ……ッ、はぁ……」
全身を光剣によって貫かれ、灼かれ。
満身創痍の姿を晒すアークデーモン。
「無様だな、魔物の王よ」
アダムルスは仇敵に対し、静かに声を掛けた。
「覇道、などと。武器に選ばれぬ身でよくも吼えたものだ」
アダムルスは『武器』に対して敬意を払う。
それ故、武器を持たぬオブリビオンに対して苛烈な態度を取る傾向にあった。
我が胸に刻まれし数字は“Ⅰ”
我が創めるは“原初”
我が担う刻器は“破壊と創造”を冠せし“ソールの大槌”
――長針の“Ⅰ”、アダムルス・アダマンティン。
「なれば、俺が測ってやろう。貴様が覇道に値する器か否か」
ソールの大槌は再びその身を転じ、トールの創槌へと姿を変える。
「刻器、真撃ッ!」
アダムルスはその巨体をアークデーモンの懐へと潜らせると、創槌から発生する莫大なエネルギーで以って、アークデーモンの肉体を『打ち上げた』。
「ぐうううっ、おおおおおおッ!!」
身体がバラバラになりそうな衝撃に耐えながら、天高く弾き飛ばされるアークデーモン。
「……で、後半いい感じになったところで空から!」
空高くから、アークデーモン目掛けて飛来する『隕石のような何か』。
「刻器信撃っ! えーっと、えーっと……『背骨ストライク(仮称)』!!」
打ち上げられたアークデーモンの背に、炎火の渾身の一撃が叩きつけられた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ダンド・スフィダンテ
%
【Call by】
ジェイクス殿、来てたんだな。回復いるか?ふはっ、そうか。死ぬなよ。
●行動
【怪力】【串刺し】を使って敵の心臓を狙い、UCで強化された槍を思いっきりぶん投げる!
悪魔にだって恨みは無い。
けれど、ここは、蹂躙されて良い場所じゃない。
故に光を、太陽を。
明日を願う、全身全霊の一撃を。
「ジェイクス!!」
避けろ、と言葉を続ける必要は無く、それよりも速く、槍は到達する。
引き千切る風穴を空けろ。
雲を穿つ天から落ちる杭さながらに。
地を抉る星ごと貫け。
近くに降りてきた紳士に礼を言いながら、小竜の帰りを待つ。
いやぁ、ジェイクス殿が居なかったら、槍が叩き落とされてた!はっはっはっ!ありがとな!!
ジェイクス・ライアー
%
【Call by】
お前も来ていたのか
回復は後だ、動くのに支障はない
死の濃い臭い
恐怖を感じないでいられるほど人は強くない
だが、問い続けろ 何のためにここへ来たのか
何のためにこの腕を振るうのか!
[遠距離射撃]敵の注意を引く斉射
[飛燕]撹乱、他の者から注意を逸らせる。同時に敵の関節へ鋼糸を巡らせ拘束を試みるが…小手先だ
数少ない手持ちのカード
持ち得る手を尽くしても届かない
どうしたら捩伏せられる?
どうしたら奴の膝を砕ける!
数多重ねてきた経験の走馬灯
刹那、耳に届く光の号令
脳で理解するより早く身体が動く
それは霧を晴らす 確信
私がここにいる意味を与える太陽の一撃
飛び退る
全く、下手をすれば串刺しだったぞ…
ギュンター・マウ
%
王たるもの、貫禄は本物だなァ
だが、お前の王政は此処までだ
この地を、この世界を、退いてもらおうか
俺は召喚された軍勢を主に狙う
小さくとも、この声が届く範囲が俺のフィールドだ
見渡せるくらいに高く飛翔し軍勢の数を視認する
【歌唱】の為に深呼吸をして
敵へのありったけの【呪詛】を込めて【孤獨の歌】を歌い蜈蚣を広範囲に召喚する
手数が多けりゃ、足止めになるだろう
毒が回れば、足手まといになるだろう
小さいからと、見誤るなよ
うちの子達(蜈蚣)は容赦はしないさ
此方に攻撃が飛んでくる事があれば
飛びながら回避するよう努める
トドメがさせればいいが、まぁそこは他の奴らが頑張ってくれるだろう?
奇鳥・カイト
%
弱ェのばっかなら楽だったんだが…まあいるよな、大物
けっ、メンドっちぃぜホント
誰かとヤれりゃ、まだ楽なんだがな
なるようにしかならねェ、ってやつか
ラフファイト。殴る蹴る、その辺にあるもんは何でも使うぜ
糸はまあ…使えたら使うか
泥臭かろうがやるしかねぇ
動き回って逃げ回ってヒット&ウェイってやつで、戦う
戦いながら糸の結界を張り、罠を仕込んでいく。コッソリと、あくまでそれを主目的とせずにする
捕縛出来なくたっていい、一瞬でも身動きを止められりゃ──それが隙になる。なけりゃ作ればいいんだよ
悪ィな、【騙し討ち】させて貰うぜ
●
凄まじい勢いで大地へと叩きつけられたアークデーモン。
土煙を上げ、小さなクレーターを作りその中に肉体が埋没している。
「く、くく……はは……」
笑い声を上げ、大地から這い出てくるアークデーモン。
身体のあちこちが裂け、血を流し。
されどその瞳は真っ赤に染まり、口元は狂気に歪む。
見た目こそズタボロなれど、その殺気は圧倒的な高まりを見せている。
「認めよう。我の認識が甘かった。貴様たちは強い。ここで全身全霊を賭け、打ち破らねばならぬ『強敵』だ」
取るに足らぬ相手、などという認識で勝とうというのが間違いだった。
始めから油断せずに全力で、ひとりひとり確実に殺すべきだった。
不意を打とうが人質を取ろうが、どんな手段を以ってしても倒すべき敵だった。
「確かにもう、我の覇道は潰えたやも知れぬ。帝竜すら打ち倒し、この世界に君臨する我が野望……今生では叶わぬ事やも知れぬ。だが――」
アークデーモンは猟兵たちの姿を睨みつけ。
「ひとりでも多く、この手で葬り去る。我が生涯の怨敵を。今生で叶わぬならば、来世の我が野望を成し得る為に。その障害を今ここで取り除く」
アークデーモンは地を蹴り、手近な猟兵へとその腕を振り下ろす。
狙われた猟兵――ダンド・スフィダンテはその腕を避けて大きく飛び退くと、その横に偶然在った見知った顔に声を掛けた。
「よう、ジェイクス殿。来てたんだな。回復いるか?」
見ればジェイクスの姿は敵顔負けの満身創痍。応急処置などは施してあるものの、特に肩口の傷などは外から見て取れる程に血液が滲んでおり、放っておけば腕が腐り落ちるのではないかと思う程。
「……回復は後だ、動くのに支障はない」
「ふはっ、そうか。死ぬなよ」
あまりにも『らしい』強がりに笑いを漏らすダンド。
だったら敢えて何も言うまい、とダンドは槍を強く握り直し。
仕返しとばかりにアークデーモンに対して打って出た。
「悪魔にだって恨みは無い。けれど、ここは、蹂躙されて良い場所じゃない!」
ダンドの放った渾身の突き。
だがそれはアークデーモンによって見切られ、槍を掴まれるとそのままダンドは投げ飛ばされた。
「うおおおっ!?」
投げられ宙を舞うダンドの肉体。それをキャッチしたのはジェイクスの編んだ鋼糸の網。
「ナイスキャッチ、ジェイクス殿」
「軽口を叩くな。集中しろ」
少し照れくさそうに笑うダンドの言葉を、ジェイクスは冷たく一蹴した。
●
「もはや王……っつーよりは、手負いの獣か」
ギュンターは空からアークデーモンの姿を見下ろしながら呟く。
「ま、王でも獣でも構いやしねぇ。お前の時代は此処までだ。この地を、この世界を、退いてもらおうか!」
仲間が優秀で助かった。
おかげでコイツひとりに専念できる。
ギュンターは大きく深呼吸をし、『孤獨の歌』を歌う。
ありったけの呪詛を込め、大地から這い出てくる無数の蜈蚣。
「手数が多けりゃ、足止めになるだろう。毒が回れば、その動きだって鈍るだろう。小さいからと、見誤るなよ。うちの子達は容赦はしないさ」
「ぬううっ、鬱陶しい!」
足元に纏わりつく蜈蚣をいくら踏み潰そうにも、次から次へと這い出てくる蜈蚣。
致死的なダメージを与えてくるわけではない。
然しその痛みは、毒は、確実にアークデーモンの動きを、集中力を鈍らせる。
「おのれ、羽虫が!」
「羽虫で結構。ンなもん自分で分かってんだよ」
近頃では自分を羽虫だと侮ってくる人間も減った気がするが。
嘗ては飽きるほど言われ続けた。嗤って、見下ろされてきた。
「トドメがさせればいいが、まぁそこは他の奴らが頑張ってくれるだろう?」
誰とも知れずに問い掛ける。
返事を期待した訳ではない。
だがギュンターのその問いに、応える者が居た。
「そーだな。任せとけよ、オッサン」
赤い瞳をした少年がアークデーモンに向かって駆け出した。
●
(弱ェのばっかなら楽だったんだが……まあいるよな、大物)
カイトは本日何度目か分からぬ程の溜息を吐く。
面倒くさい事この上ない。
自分ひとりでこの敵を相手取る事を考えれば、今の状況は幾分マシに思えるが。
敵は満身創痍。味方も大体は力を使い果たしてる。
今立ってる味方も……まぁそれなりにボロボロ。
下手したら自分が一番元気な可能性すらある。
ただし、無策。
物理的な罠はよく使うものの、策士タイプとは相容れない。
殴る蹴るのラフファイト。脳筋スタイル。それが本来の自分の在り方だ。
「なるようにしかならねェ、ってやつか」
カイトは指先に鋼糸を纏わせて、アークデーモンとの距離を詰める。
「今ここに契約を交わす。血の誓いよ、悉くを討ち滅ぼせ──『昏き血の刃(クリムゾンテンペスト)』!」
詠唱と共に周囲に転がっていた『居城』の瓦礫が、瞬時に黒血の刃と化して四方八方から襲い掛かる。
その刃に紛れるようにカイトは空高く跳ね、アークデーモンの脳天目掛けて本命の拳を振り下ろそうとした。
これまで同様、アークデーモンが猟兵を見くびっていたなら……カイトの一撃はアークデーモンの脳天へと届いただろう。
しかし、アークデーモンは既に窮地。捨て身の覚悟。
アークデーモンはカイトの放った黒血の刃を『敢えて受けながら』、それでもカイトの動きを決して見逃さずにその一撃を受け止める事に専念したのだ。
アークデーモンはカイトの拳を掴むと、そのまま地面へと叩きつける。
「か、はっ……!」
血反吐を漏らすカイト。
「言ったであろう。ひとりでも多く、この手で葬り去ると。もはや貴様らを葬る為に、我が命すら惜しまぬ」
最後の悪足掻き。
追い詰められし悪魔は、全身全霊の殺意で以って猟兵たちを迎え撃つ。
●
敵から放たれる尋常ならざる殺気。死の濃い臭い。
それに恐怖を感じないでいられるほど、人は強くない。
――だが、問い続けろ。
何のためにここへ来たのか。
何のためにこの腕を振るうのか!
ジェイクスは己を奮い立たせ、アークデーモンへと立ち向かった。
遠距離からの一斉射撃。
ユーベルコード『飛燕』、高速の空中機動による撹乱。
鋼糸を敵関節部に巡らせての拘束。
全てが小手先。
自分は他の猟兵に比べても、決定打に欠ける。
特別な異能を持つわけでも無ければ、身体能力も平凡。
勿論、普段から傭兵として身体は鍛えている。技術も磨いている。
だが、自分より戦闘能力に優れた猟兵などごまんと見てきた。
故に感じてしまうのだ。己の限界を。
数少ない手持ちのカード。
持ち得る手を尽くしても届かない。
どうしたら捩伏せられる?
どうしたら奴の膝を砕ける!
数多重ねてきた経験の走馬灯。
経験。それが唯一の、ジェイクスをジェイクスたらしめるもの。
諦めるな。
繋げ。――その『最後の一撃』に至るまで。
「いいぜオッサン、ナイスアシストだ!」
地面に叩きつけられ、瓦礫に埋もれたままのカイトが叫ぶ。
あちこちの骨が折れ、もうまともには戦えない。
だが、まだ心臓は動いている。
この手には糸が繋がっている。
――血の誓いを、契約を此処に。
カイトが、ジェイクスが幾重にも結んだ鋼の糸が、黒血を纏いて血の刃と化す。
「ぐおおおおおッ!!」
今まで肌に食い込むだけで、僅かに動きを鈍らせる程度の働きしかしていなかった筈の鋼糸が。
強烈な切れ味で以ってアークデーモンの肉体を斬り刻んだ。
「へっ、こいつは……俺もサボっちゃ居られねえなァ!」
ギュンターが叫ぶ。
既にありったけの魔力を出し尽くした出涸らしのような状態。
だが、それでもまだ。魂を削って歌を歌う。
それはもはや歌とも呼べぬ、呪詛の叫び。
だが、ギュンターの喚び声に応えるように。潰された蜈蚣たちは再び蠢きだし、黒血糸によって刻まれた傷口を抉り、咬み付いた。
「ぐおおおっ、おのれえええっ!!」
全身に走る痛みと、毒によって苦しむアークデーモン。
まだ止まってはならない。『最後の一撃』には至らない。
「――――」
ジェイクスは無言で銃を構えると、至近距離でその顔面に鉛玉を撃ち込む。
その弾丸はアークデーモンの頭部を派手に揺らすが、それでも未だ致命傷には至らない。
まだだ。
まだ止まってはならない。
ジェイクスは弾の切れた傘を投げ捨てると、今度は隠し持っていた短剣を両手に構え、その頭部へと突き立てた。
「ジェイクス!!」
刹那、耳に届く光の号令。
ジェイクスは脳で理解するより早く、身体が動いていた。
それは霧を晴らすような、確信。
これまで自分がここにいた意味。
ただ『この一撃』の為に、ここまで繋いできた。
――引き千切る風穴を空けろ。
――雲を穿つ天から落ちる杭さながらに。
光を、太陽を。
明日を願う、全身全霊の一撃。
ダンドの放った『天杭』――渾身の投槍が、アークデーモンの心臓を貫く。
「馬鹿、な……我が滅ぶというのか……誰ひとりとして怨敵を殺せぬまま、敗れ去ると……」
怨嗟の声を残しながら。
心臓を貫かれたアークデーモンの肉体はそのまま塵と化し、風へと溶けた。
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エピローグ
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こうして、猟兵たちの活躍によってヴィルザリア一帯を取り巻く暗雲は晴れた。
この土地が負った被害は決して少ないものではない。
最小限に抑えたとは言え人的被害も少なくなく、街や荒れ果てた土地の復興にもある程度の時間を要するだろう。
だが、この土地に住まう者たちも無力ではない。
猟兵たちが取り持ってくれたこの縁を無駄にはせず、各種族が手を取り合ってこの世界を守る為に一致団結していく――それは猟兵たちが帝竜を討ち取るのと同じように、この世界にとって必要なことなのだろう。
戦を終えて、ヴィルザリアの街では小さな祝賀会が催された。
何処からともなく現れ、力を貸してくれた流れの英雄たち――
この場に居合わせた吟遊詩人たちは、こぞってその題材を歌にし、各地へと伝承を語り継いだという。
大成功
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