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バトルオブフラワーズ⑤〜Dead or Run

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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 この街は既に亡者によって覆いつくされてしまった。
 軍の救出部隊も感染者の群れに飲み込まれ、もはや生者はここにいる幾ばくかの人間だけだ。
 救助の見込みもなくなった今、一刻も早くこの死に溢れた街から逃げ出さなければならない。
 だが、地上は亡者共によって制圧されている。
 ならば、この屋根の上を行くしかないだろう。
 走れ、生き残るために。



「さて、それじゃあみんな、事の経緯を説明するね」

 開口一番、そう口にしたのはグリモア猟兵のミーナ・ペンドルトン(f00297)だ。
 テレビウム・ロックに端を発する一連の事件は、キマイラフューチャーの中枢【システム・フラワーズ】からの救援要請であった。
 猟兵達はシステム・フラワーズへと続くメンテナンスルートを開放したわけだが……見ての通り、物の見事に真っ二つになったというわけだ。
 空気の心配はしなくていいよと気軽に言うミーナは、やって貰いたいことを告げる。
 システム・フラワーズはオブリビオン・フォーミュラ【「ドン・フリーダム】によって既に占領されており奪還する必要がある。
 それにはまず、システム・フラワーズの周囲を守る6つの【ザ・ステージ】をオブリビオン達の手から取り戻さなくてはならない。
 だが、ザ・ステージは各々が特殊なルールによって支配されており、普通に戦うだけでは勝てないのだという。

「そして今回、みんなに向かってもらう場所はザ・ゲームステージ。 ゲームの世界……えーっと、電脳空間とか空想の世界の中で戦ってもらうことになるんだ」

 猟兵達はゲームのキャラクターとして、オブリビオンの妨害を潜り抜けゲームをクリアしなくてはならない。
 たとえオブリビオンを倒したとしても、ゲームの敗北条件を満たすと強制的に敗北するそうだ。
 ゲームと言えども、中に入るのだから怪我をしたら当然痛いのでご注意を。
 そして舞台となるゲームは、とミーナが取り出したゲームパッケージは……。

「ゾンビゲーだよ! ……あ、違う。 脱出ゲーム? だよ」

 パンデミックによって外界と隔離されたUDCアースの都会風の街を舞台に、感染者から逃げて街を囲む外壁から脱出するゲームであった。
 今回選ばれたステージは、地上は感染者で溢れているため屋根や塀の上を駆け、壁を登り、脱出地点まで移動するものだ。
 聴いた限りでは街から脱出するだけの簡単なもののように聞こえるが、そうは問屋が卸さない。
 キャラクター達の後を追いかけ襲い掛かる突然変異の感染者。 Stalker(追跡者)と呼ばれる敵がいるのだ。
 Stalkerは走破力に優れた不死の怪物であり、一時的な足止めはできても倒すことは不可能なクソゲーなのだという。

「要するに、パルクールで敵から逃げて脱出地点に向かうゲームってことだね。 当然だけどゲームの性質的に空を飛んだ地ワープしたりはできないから注意してね。 うっかり飛ぼうとして地上に落ちたら……悲惨だよ?」

 地上は亡者の群れで溢れているのだから、と。


神坂あずり

 勝利条件:脱出地点である外壁への到達。
 敗北条件:脱出地点へ到達する前にプレイヤー側の全滅。

 ・いかなる方法を用いても構いませんので、脱出地点へと到達してください。
  ただし、飛行やワープ類はシステム的に使用できません。
 ・地図は猟兵達に配布されています。
  街は大まかに分けて工業エリア、ビル街、住宅街があります。
 ・家屋やビルの間には、先達が残したワイヤーやロープ、縄梯子などが張られていたりします。
  家屋の中に入ることも可能であり、内部には武器弾薬や食料などもあります。
 ・なお、ここまで『感染者』と呼んでいましたが、これらすべては模倣怪人ノッペロイドと言うオブリビオンが役柄になりきった姿です。
  役柄になりきり過ぎて【倒錯のマスク】以外は使用しません。
  その代わり全力で追いかけて襲い掛かってきます。
  ヤバイです。


 戦争依頼です、パルクールです、神坂あずりです。
 プレイングお待ちしております。
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第1章 集団戦 『模倣怪人ノッペロイド』

POW   :    倒錯のマスク
自身の【なりきっている役柄にふさわしい振る舞い】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    対策のマスク
いま戦っている対象に有効な【役になりきれる絵柄の仮面】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    贋作のマスク
対象のユーベルコードを防御すると、それを【使い手の猟兵の顔が描かれた仮面に変換して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:傘魚

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

待宵・アルメ
つまりは障害物競争と鬼ごっこが合わさったみたいなゲームだね?
オッケー!そういうの得意だよ。

【ダッシュ】【ジャンプ】【地形の利用】【逃げ足】【クライミング】を駆使して走り抜けるよ。
UCでガオナにも出てきてもらって一緒に走るよ。
うっかり足滑らせて落ちかけた時とか【手をつなぐ】と【怪力】で引き上げてくれるから!

そのままじゃ通れない大きな穴や建物の隙間はスクラップを召喚して簡単な橋や階段を作る。
穴は越えたら追手が乗ってる時に消せば落とし穴のように足止めできそうだね。

ガオナに【怪力】任せに忍者みたいに跳ね上げて貰えば高い壁も越えられそう。
『俺はジャンプ台代わりかよ……』
ガオナ、文句言わない!




 住宅街の屋根の上をたったか走るのは一人の少年。
 屋根から下を覗き込めば、低い唸り声をあげる感染者達が道路を彷徨う姿が視界に映ることだろう。
 だが、その少年――雨が降っているわけでもないのにレインコートを纏っている少年――は、下から聞こえる怨嗟の声を気にすることなく前だけを向いて進んでいた。
 恐れ知らずにもその足に迷いはない。
 だからだろう、うっかり雨樋に足を引っ掛けて屋根から飛び移るのに失敗するのも当然のことであった。
 投げ出された身体をふわりとした浮遊感が包み込む。
 視線の先には路地にたむろする亡者の群れ。
 あ、これはまずい……そう思った待宵・アルメ(路地裏のミュルクリエイター・f04388)の身体を重力が引き寄せ、地面に落下し始めたその瞬間。

「っぶねぇ!?」

 ガッとアメルの腕を掴み引き留めた者の姿があった。
 アメルと瓜二つの姿を持ちながらも赤いレインコートをその身に纏う彼の名は、ガオナ。 アメルの内に住まう人格の一人だ。
 片手で掴んだアメルを、ひょいっと軽々と屋根上へと引き上げたガオナは嘆息する。

「お前なぁ、ちったぁ足元にも気をつけろよ」
「ごめーん。 全然鬼がでてこないからつい。 やっぱりちゃんと橋とか作っていこう」

 マイペースに振る舞いながらもスクラップを召喚して簡単な橋を作るアメルだったが、本人も気付かぬうちに背筋に一筋冷や汗が流れ落ちる。
 順調に外壁に向けて進む彼らが鬼ごっこの鬼ことStalkerに遭遇するのは、その数分後のことであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

浅葱・シアラ
【メア・ソゥムヌュクススと】
メア、見つけた……よかった……!
シアはあんまり大丈夫じゃない……飛べないの辛い……!
(そっとメアに肩に乗せてもらって)

メアが大丈夫そうなら、よかった……!
えへ、メアが守ってくれるから……シアも、メアを守る……!
だから、絶対にここから脱出しよ……!
(後ろを向いてメアの肩に座って、後ろから迫ってくる敵がよく見えるような体勢をとって)
大丈夫、落とされないように頑張る……!
だから、メアは前だけ見て走って……シアが、背中を絶対護る……!
ユーベルコード「地獄蝶」で、後ろから迫ってくる敵の攻撃を、地獄の炎で作られた蝶々で相殺して守るから……!


メア・ソゥムヌュクスス
【浅葱・シアラちゃんと】
はふぅ…、シアラちゃん、大丈夫?

(屋内から外の様子を眺めつつ、目に見える範囲を「学習力」で把握し、外壁までのルートを計算します)

うんー、私は、大丈夫だよー。なんたって、機械人形、だからねー。
ふふ、大丈夫、心配しないでー。私が、守ってあげるからーね?

(ぐっと「覚悟」を決めて走り出します)
しっかり捕まっててねー。振り落とされちゃうかもーだから。
(襲ってくる感染者にUCを使って催眠し、眠らせてくぐり抜けていきます)

シアラちゃん、後ろの子は任せていいかなー?
私、運動そこまで得意じゃないからー、後ろ向くと転んじゃうかもー。(後方の敵はシアラに任せ、前方の敵に集中しゴールを目指す)




「メア、見つけた……よかった……!」
「はふぅ……シアラちゃん、大丈夫?」

 そしてある住宅の一室では無事の再開を喜ぶ者達がいた。
 互いのスポーン地点がわずかにずれており、ゲーム開始早々から離ればなれになっていたのだ。
 幸いにも互いの距離はさほど離れてはいなかったのだが、人間にとっては目と鼻の先という程度の距離であっても、フェアリーである浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)の小さな体躯では状況も相まって死活問題であった。
 優しい手付きで抱き上げられたシアラは、メアの肩に居を移す。

「シアはあんまり大丈夫じゃない……飛べないの辛い……! でも、メアが大丈夫そうなら、よかった……!」
「うんー、私は、大丈夫だよー。なんたって、機械人形、だからねー」

 シアラの言う通り、このゲームには飛行ができないという制約がある。
 滑空であれば多少はできるのだが、一定以上の距離を進むと突然に浮力も揚力も速力も失い墜落することになるのだ。
 当然ながらその制約はフェアリーにも適用される。
 なぜならば、このゲームは一般的な人型のキャラクターを想定して作られた物だからだ。 妖精型のアバターは想定されていなかったのである。
 さて、と窓の外を眺めていたメアが小さくつぶやくと、意を決して窓から身を乗り出して屋根の上に足を踏み出す。
 そこまで運動が得意ではない彼女は不安定な足場にわずかにたじろぐが、今は肩の上に小さな友人が居るのだ。 臆している場合ではない。

「ふふ、大丈夫、心配しないでー。 私が、守ってあげるからーね?」
「えへ、メアが守ってくれるから……シアも、メアを守る……! だから、絶対にここから脱出しよ……!」

 不安になっている暇もなく、ふたりは進みだす。
 その速度は決して速いものではない。 シアラが振り落とされないように気を使っているのもあるが、単純に慣れない足場が原因であった。
 それでも屋根伝いに隣の民家に渡るのを何軒か繰り返すうちに、徐々に速度が上がっていく。
 少しずつではあるが、順調に進んでいる……と、思った時だ。 角を曲がり、ぬっと身を現したStalkerとばったり遭遇してしまった。
 口から小さく悲鳴が漏れるが、相手にとっても不意の遭遇だったのか一瞬双方の時間が止まる。

「メア、走って……!」

 最も早く思考の停止から復帰したのはシアラだ。
 咄嗟に地獄の炎から作り出した無数の黄金蝶を放ちStalkerの目をくらませると、肩を叩くことでメアを促す。
 はっとした彼女は、一頭だけ異なる赤紫の羽を持つ蝶に導かれるように走り出した。
 Stalkerとすれ違いざまに魔眼を合わせたが、ふらりとよろめいただけで効果は薄そうだ。 遅かれ早かれ追いかけてくるだろう。

「シアラちゃん、後ろの子は任せていいかなー?」
「任せて……! メアは前だけ見て走って……シアが、背中を絶対護る……!」

 少女達はまた走り出す。
 今はまだ遠い、ゴールを目指して。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
【アドリブ・共闘歓迎】

ゲームはあんまりやらないけれど、走って跳んでなら得意だし、なんとかやってみようか。

【倍増変異】で出糸突起の性能を上げたら、蜘蛛の糸の強度と出せる量を増やそうか。
壁に張り付けて登ったり、ロープ代わりに橋を架けたり、落ちた人の救助にも使えるかな。
理想は目立たないように忍び足で見つからずクリアなんだけど、そうもいかないよねえ。
Stalkerも足止めは出来るんなら、蜘蛛の巣を使った罠を仕掛ければ、少しは足止めになるんじゃないかなあ。

敗北条件がプレイヤーの全滅なら、体の丈夫さを生かして「ここは任せて先に行け」ってのもプレイとしては有効そうだけど、痛そうだし出来ればやりたくないねえ。


マリン・ラピス
なんだか色々と凄い事になっているようですね…。
なんだか妙な縛りもあるようですし。
ですが猟兵であるからにはどんな状況でも事件を解決しなければ。
倒せなくとも足止めができるなら私にはそれで十分です。
【咎力封じ】で【時間稼ぎ】をしながら走ります。
できる限り前を向いたまま敵の位置は【聞き耳】をたてて音で判断します。
危ない時は鎖の先端を壁や屋根に【投擲】で打ち付けて引き寄せる事で回避をします。
余裕がある時であれば他の方が危ない時に鎖で引き寄せるように準備しておきます。
何があろうと絶対に落ちたくないですね…。
頑張りましょう。


アイ・エイド
ゴールまでのルートを頭に叩き込んでレガリアスシューズ装備で屋根の上を滑ってくぜ!
感染者が目の前に現れたら、悪霊退散ッ!ってUDC用痺れ毒撒いてから、敵が動けない内にそんままトウッ!と軽くジャンプして顔面狙いでキック!
よし、何事もなかったかのように引いて走り去ってくぜェ!
避けられてもしらね、ゴールまでは全力で走り続けるぞ!

距離遠いとこ跳ぶ場合は
事前に用意したウイルスをレガリアスシューズに流し込み、さらに加速!その勢いで一気に跳んでみせる!
もし勢いが足んなそうなら、壁走りだ!

無理ゲーだろ!?って思うような事があったら【召喚魔法】!!オレはその状況と戦ってっから、打開アイテム来い!!

アドリブお任せ




 恐竜の如き大きな鉤爪を備えた異形の脚が、力強く踏みしめた屋根の建材を破壊し脱落させていく。
 それを追跡をする脚もまた、人とは言い難い崩れて変異した人でなき者の脚であった。
 足音はそれだけではない。
 先の二者とは異なり、ごく普通の足音もあれば摩擦によってガガッと削れる音も聞こえてくる。
 住宅街の屋根の上では、3人の猟兵と多数のStalkerによる追走劇が展開されていた。

「あたしはもっとこっそり目立たず、見つからずにクリアしたかったんだけどねえ……」
「仕方ありませんよ、どうも彼らも感知能力に優れているようですし」

 前方に蜘蛛糸で橋を架けながらペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(蛮族キマイラ・f07620)がぼやく。
 それに答えたのは、背後から接近した音に気が付き、素早く足元を掬うように拘束ロープを後方に投げたマリン・ラピス(禁忌に生み出されし姉妹・f08555)だ。
 彼女達は最初から共に行動したわけではなかったし、こうやって追われているのも敵の感知能力のせいだけではないことは重々承知ではあったが、言わないだけの理性もあった。
 一番の原因は……。

「はああっ、トウッ! 悪 霊 退 散 !」

 レガリアシューズのローラーで屋根を削りながら跳び上がり、感染者の顔面を足蹴にして更に高みへと昇り周囲に痺れ毒を散布している騒がしい男のせいだろう。
 とても目立つのだ。 だが、きっちり敵を捌いている辺り有能であることも間違いない。
 そのため、一概にストップも掛けられない。
 かつては機械的なアサシン。 今や見る影もないその男の名は、アイ・エイド(腐れ人狼・f10621)。
 拘束や痺れ薬によって一時的にStalkerが行動不能に陥っている間に蜘蛛糸の橋を渡り、3人はどんどんと外へ向かって進んでいく。
 だが、亡者共は互いに連携でもしているかのように、どんどんと後から後から姿を現しては追ってくる。
 このままでは大きく距離を取らなければいずれは追いつめられるだろう。
 楽しく戦っていたアイエイドも違和感を覚えたのか首を捻る。

「なーんか妙に敵が多くねェかコレ。 密集しすぎじないかァ?」
「いえ、それは…………」
「そうだねえ。 これだけ暴れてたら敵も寄ってくるだろうねえ」
「アレ? もしかしてオレのせい? え、マジで?」

 そうしている間も歩みが止まることはない。
 囮のように動き回るアイエイド目掛け、不死の怪物が鋭い爪の生えた腕を振り上げ襲い掛かる。
 だが、軽快な音を立てながら滑るレガリアシューズを巧みに操り爪を躱すと、ついでとばかりに蹴り飛ばした。
 そしてペトニアロトゥシカは転がってきた敵を足蹴にしつつ前方にある高い看板に右手を伸ばし、噴出させた蜘蛛糸を絡みつかせると背後に向けて左手を伸ばす。

「あたしの手に掴まりねえ。 手筈通りにおねがいするよー」
「はい、大丈夫です、よろしくお願いします」

 瑠璃色の鎖を手にしたラピスの手が重なると同時に、屋根を蹴り中空へと躍り出る。
 目指す先は30メートルはある大通りを挟んだ向かいの民家だ。
 看板を支点に蜘蛛糸を手に振り子のように路上の感染者の頭上を通り抜け、頂点に至り……しかしこのままでは距離が足りない。
 だが、問題はない。
 ラピスが手の中の鎖を大きく振るう。 その先端を打ち付ける先は道路の向かいの電柱だ。
 ガシャリと音を鳴らし足場ボルトに鎖が絡みつくのを見て取ると、ペトニアロトゥシカは瞬時に出糸突起の糸を切除する。
 新たな支点を得て、さらなる勢いを得たふたりは大きく跳び上がり、鎖を手放し向かいにあった民家の屋根に強かに身体を打ち付けながらも無事に渡ることに成功するのだった。
 ならば次は彼の番だ。

「ははっ、全力でいくぜェ!」

 回るように舞うように、華麗にStalkerの攻撃を回避しながらアイエルドは加速していく。
 更にレガリアシューズに仕込まれたウイルスによって暴力的な力が加わる。
 圧倒的な速度によって屋根から引き合がされたスレートが吹き飛ぶ。
 大通りを飛び越えるのに十分な加速を得たアイエルドは、屋根の傾斜を利用して天高く跳び上がる。
 青年は今、飛翔する!

「俺様最高ォォォゥ! ……アレ?」
「あっ」
「あーあー」

 跳躍時の速度であれば、本来ならば彼は余裕で大通りの対岸に辿り着けただろう。
 だが、その身体は対岸を目前としたところで突如急激に重力の枷に捕らわれ失速する。
 思い出して頂こう。 このゲームは飛行禁止である。
 大通りの幅はおおよそ30メートルほどといったところだろうか。
 システム的には30メートルもの跳躍は飛行と判定されたらしく、アイエルドの身体は浮力も揚力も速力も失い失速したのだ。
 身体を強かに打ち付けたことで、依然として屋根の上に転がったままだったペトニアロトゥシカとラピスが見守る前で、アイエルドが地上へと落下していく。

「嘘ォ!? ちょ、まっ、あっ、打開アイテム来い!! 召喚!!!」

 アイエルドは咄嗟に膨大な魔力に物を言わせた不完全な召喚魔法を行使した。
 彼の意に応え、瞬時に歪に変形した物質が召喚される。
 その手に現れたものは……。

 ――【🔴🔴🔴 折れ曲がった物干し竿】 

 アイエルドの運命や如何に!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゾンビーナ・メロロディア
ぎゃああああ!ゾンビだああああ!
……ッテ、オレもゾンビなんだケド。
いやでもやっぱムリ!オレ全年齢向け出身だシ!決定的に住んでる世界が違う気がすル!どうみてもR17以上な見た目してるしナアレ!

というわけで逃げるんだヨ!
武器弾薬もあれば拾うケド、固執しすぎると良くなイ、外壁へ向かうことを優先するゼ。

狭くて感染者も少なそうだカラ、路地をメインに通っていくゾ!
デ、たぶんお約束の背の高い金網とカ、塀とカ、どっかで詰まったりショートカットできそうな場所に遭遇する時があると思うんだヨ。
そういう時にお役立チ!C`mon!Boys!
人数が居れば押し上げたり引っ張り上げたりで越えられるだロ?
道なき道を行こうゼ!


守田・緋姫子
 電脳世界でゾンビが相手とはな......懐かしい、というべきか。
 入り組んだ地形の方が私の戦術は実行しやすい。住宅街エリアを起点としよう。
 他の連中には言いたくないが、ゲームの世界なら私の土俵だ。私のユーベルコードでマップの構造を書き換えてヌルゲーにしてやる。
 偽物の壁を増設して感染者の進路を塞ぎつつ、踏み台や階段を増設して直線的に外壁を目指す。可能なら壁やオブジェクトで囲んでオブリビオンを捕獲してしまおう。他の連中が進みやすいようにな。
 サンドボックスゲーム式の攻略法だがワープでも飛行でもないからシステムのセキュリティには引っかからないはず。完全にチートだが悪く思うな。

※連携、アドリブ歓迎




 そこかしこが破損し瓦礫にまみれた街並みの中、低い唸り声を上げながらゆらゆらと彷徨う。
 それは獲物を求めた歩みか、それともただ本能に従ったものなのかは分からない。
 ぷらぷらと電線に引っ掛かった奇妙な物干し竿の下を通り過ぎ、路地へと進んでいく。
 正直言うと内心ドッキドキである。
 白昼堂々と地上を歩いているにも関わらず、感染者は襲い掛かってくる様子がない。
 グリモア猟兵の説明でも地上に落ちたら悲惨だと言っていたが、別に即死するとは言っていなかったからそんなものなのだろう。
 しかし無視を決め込まれるのは別問題な気もする。 なぜかは分からない――いや、分かってはいる――が、不思議なこともあったものである。
 襲われないとはいえ、レーティングで引っ掛かりそうな見た目をしたやつらが視界を横切っていくのである。 なかなかに心臓に悪い。
 そうしてゆらゆらとした歩みで路地裏を進む。 どうにも大移動でもしたのか、ここには"普通"の感染者が少ないようであった。
 えぐいものを見なくて済む分には助かるなどと考えながら路地の十字路に入り込むと、突然目の前に木製の壁が現れた。

「は……?」

 ゾンビーナ・メロロディア(ネクロダンサー・f15802)は、思わず口から呆けた声を漏らした。
 訳が分からない。 つい今の今までそんなものはなかったはずだ。
 理解が及ばないと思考を停止させていると、十字路の半ばを遮る形で現れた木製の壁の手前側から、土気色の肌をした長い黒髪の女の子が姿を晒す。
 身体に損傷や腐敗は見られないが、その服には多量の血が付着している。
 つまりこれは……。

「ぎゃああああ! お化けだああああ!」
「フランケンシュタインに言われたくはないな」
「ゾンビだヨ!」

 お化けこと守田・緋姫子(電子の海より彷徨い出でし怨霊・f15154)のいう通り、ゾンビーナの継ぎ接ぎの身体と首の六角ボルト風のヘッドホンはどことなくフランケンシュタインを連想させなくもなかった。
 実際には、彼女はリズムゲームのナビゲートキャラクターのゾンビを基にしたバーチャルキャラクターなのだが。
 対する緋姫子もフリーのホラーゲームのキャラクターが実体化した存在であった……本人の口からそれが語られることはないが。

 ――閑話休題

 さて、突然現れた壁とは一体なんだったのか。 緋姫子は一体なにをしていたのか。
 答えは単純だ。 チート行為である。
 ユーベルコードを用いて小学校の壁を作り出して通路を作り、マップ構造を変更していたのだ。
 脱出ゲームに、サンドボックス系のゲームシステムを持ち込んだようなものだ。
 猟兵達の装備が持ち込めている以上、このゲームに外部から何かを持ち込んではいけないというルールは存在していない。
 つまり、これはルール的には問題ないということになる。 安全確実な攻略方法であろう。
 惜しむらくは、慎重を期せば通常より圧倒的に時間が掛かることだろうか。
 それでもふたりは確実に進んでいく。
 ショートカットできそうな金網を小学校の壁でぶち抜き、小学校の階段で越えられない壁を乗り越え、道なき道に道を生み出し侵攻する。
 亀の歩みであったとしても、彼女達は堅実に攻略を行うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シール・スカッドウィル
移動系はほぼ全滅とみていいか。
こちらとしては厄介な話だが、しかし、
「詰まるところ、それ以外のものは普通に使えるわけだ」
であれば、俺にはそれほど問題にならない。
俺の使う足止めは、あまり身体能力の影響を受けるものではないからな。

【最適化】による、接触部の空間断裂。
外せば空間修復の余波で多少体勢を崩す程度だろうが、直当てはそうはいかない。
力尽くでは、それなりの拘束時間になるぞ。
【残響】によって四肢を飛ばしながら、抜けてきたやつを【最適化】で拘束しつつ突破する。

後は緊急脱出手段。
繋に<全力魔法>を込めて地面にぶっぱなして吹っ飛ぶ。
ただの反動だから、使いたくはないが……背に腹は、だな。

アドリブ、連携歓迎




 工業エリアの屋根の上を無数の人影がひた走る。
 先頭を行くのは黒いアサルトスーツに身を包んだ黒髪の青年だ。
 その後を追うのは無数の人型をした異相の怪物Stalkerだった。
 黒髪の青年、シール・スカッドウィル(ディバイダー・f11249)は、走りながらも背後から迫る感染者の気配を確認する。
 後ろから追ってくる敵の数は1、2……4体か。
 屋根を踏みしめる度に波型スレート――工場や倉庫特有の屋根――がひび割れた音を立てる。
 転移や飛行などの移動系の能力が使えないのは、なかなかに厄介な制約だ。

「だが、詰まるところ、それ以外のものなら普通に使えるわけだ」

 であれば、シールにはさほど問題にはならない。
 彼は足を止めないように振り向きながら跳び退り、空間を一閃する!
 しかし何かが起こったわけでもなく、シールは再び敵に背を向けて走り出す。
 そんな彼の背後で盛大な音と共に、Stalkerの一体が屋根を転がり地面目掛けて落ちていく。
 先ほど【最適化】によって裂き分断された空間に引っかかり転倒したのだ。
 これで残りは3体。
 この程度であればまだ最終手段を使うには早い段階であろう。
 迫るStalkerの爪を避けたシールは、遮蔽物を利用して一体ずつ足止め処理をするため、一先ず隣接する工場の窓へと飛び込むのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステア・ウェインライト
電脳空間、空想の世界……。
ゲーム……プレイするのは初めてですけど
要するに、感染者――不死の怪物の群れから逃げ切ればいいんですね、大丈夫です。
逃げ足には自慢があります、いえ、自慢出来るようなものではないですが……。

私は住宅街を選択します。
どうせ空想の世界なら住人に気を遣う必要もありませんし、ああでも怒られたら……いえ、大丈夫ですよね?

塀を飛び越え、ドアを蹴破り、窓ガラスを割って屋根伝いに駆けましょう。

あとはそうですね。ロープを括り付けたナイフを木や電柱に放って危険なときは離脱します。
もし、逃げ遅れている方がいたら私が囮になります。
私なんかよりも、その人たちが逃げるほうが大事ですから。




 盛大な破砕音を立て戸建て住宅の窓を突き破られる。
 明かりの絶えた薄暗い部屋の中に黒い人影がりごろごろと転がり込み、窓の対面の壁に身体を強かに打ち付けたことでようやく止まる。
 砕けたガラス片と舞い上がる埃が、窓から差し込む光によってきらきらと輝きながら落ちてゆく。
 そんな中、黒いマントを纏った人影がのっそりと立ち上がると、マントからガラス片と埃を払い落としながら室内を見渡した。
 どうやら無人のようだ。
 それもそうだろう、ここはゲームの中である。
 それでなくともこの街は感染によって生まれた不死の怪物が席巻しているのだ。 生存者など居ようはずもなかった。
 だが律儀な彼女、ステア・ウェインライト(ダブルクロス・f11846)は確認せずにはおれなかったのだ。
 壊れた窓の外に視線を向け追跡者の姿を確認するが、そこでは街路樹から垂れ下がったロープ――巻き付いた先端にナイフが結ばれている物――が揺れているばかりだった。
 一先ずは安心だろうか……?
 兎に角、今はまず使い切ってしまった武器の補充をしなくてはならない。
 ステアは室内を物色していく……だが、勝手に持って行ってしまっていいのだろうか?

「……どうせ空想の世界なら住人に気を遣う必要もありませんし、ああでも怒られたら……いえ、大丈夫ですよね?」

 寝室のサイドチェストを開くと拳銃と弾薬、コンバットナイフが出てくる。
 だが、必要なのはナイフだけだ。
 使い慣れない拳銃などどうせ当たらない。 それどころか反動で転んでしまう可能性だってある。
 ならば他のものは荷物になるだけだから不要なのだ。 そう考えながら戸棚を開く。
 そこには1つの薄く四角い黄色の箱が鎮座していた。
 このフルーツ味と書かれたパッケージには見覚えがあった。 エナジーバーだ
 ――あ、これ絶対美味しいやつだ。
 少女のお腹が小さく音を立てた。

成功 🔵​🔵​🔴​

四季乃・瑠璃
【チェイン】で分身

緋瑪「これだけゾンビがいると圧巻だねー」
瑠璃「でも、倒せないのはやっぱり辛いなぁ」
緋瑪「物資漁ってるとやっぱりゲームって感じするね」
瑠璃「そうだねー。あ、弾とカロリーメイト」

ビル街を移動。
見つからない様に【見切り、第六感】で警戒しながら、屋上やビル間をロープとフックワイヤーを利用し【ダッシュ】で移動。
敵に見つかったら、囲まれない様に逃げつつ敵の性質調査(足止め可能とは一時的には倒せるのか、傷つけられるのか、耐久性や仕様等)。

判明した性質を逃走に利用していくよ(倒せるなら接触ボムで吹き飛ばす、視界があるなら閃光仕様ボムで逃げる、遠隔式ボムでゾンビを引き付ける等)

※アドリブ等歓迎




 さくりとしながらもしっとりとした食感のエナジーバーを口に含む。
 舌に広がる甘味が疲れを癒し、お腹を満たしていく。

「こういうのってゲーム的には回復アイテムなのかな?」
「そうじゃないかな。 なんだかほっとして癒された気もするしね」

 ビル街の一角にある高層マンションの一室でそう語り合うのは、四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)とその副人格の緋瑪だ。
 彼女達は物資補給するために家探しを行っている最中であった。
 今のところは近くに敵の気配はなく、注意しながらも素早く探索をしていく。
 ガチャリと音を立てて洗面台の鏡裏の収納を開けると、ラベルの貼られた黄色いピルケースが並んでいる。
 恐らくはこれも回復アイテムなのだろうが……ちらりとすぐ側の窓の外に目を向ける。
 近くにあるのは国籍の判別できないビル群だが、遠目に見える街並みは一般的な日本家屋だ。

「……すっごくアメリカっぽい」
「海外ドラマとかでよく見るよねー、洗面台の黄色いピルケース」

 苦笑して笑い合い彼女達の耳に、そう遠くない場所からガラスの割れる音が飛び込んできた。
 即座に口を閉ざし耳を澄ませる。 続けて聞こえてくる足音は……明らかに不規則だ。
 既にこちらのことを感知しているのか、はたまた最初から狙って近くに飛び込んできたのか足音はこちらに向かってきているようだ。
 ベランダのパーテーションがメキリと悲鳴を上げている。
 目配せをし、退路は……入口の扉が無難だろうと素早く行動を開始する。
 だが、扉を開けた先にもStalkerが待機していた。
 近くに飛び込んできたのは一体だけではなかったようだ、Stalkerの名に相応しい潜みっぷりである。
 咄嗟に蹴り飛ばすことで距離を取り、接触ボムを敵の足元に転がす。
 既にその性質は分かっている。 一時的とはいえ、足を吹き飛ばせば現実と同じく動けなくなるということを。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャオ・フィルナート
【蒼天】で参加

【暗殺】技術を活かした素早い走りと
多少非力でも跳躍等の身体能力を活かしたアクロバットな動きで移動

建物間のロープ等は有効活動
武器入手までの間足止めを担当

なるべく…一定以上の距離は、保ちたいよね…

★死星眼を発動
★雹燕で背後に氷の鎌鼬の【援護射撃】で牽制しつつ
同時に振り返り視線を合わせる事で【催眠+生命力吸収】
足元を疎かにさせての墜落狙い

高跳び時は可能であれば★氷の翼で風受けを調整し距離を稼ぐ
難しい場合零さんに捕まりワイヤー移動

建物間の移動後は一度振り返り
翼から氷の弾丸の【一斉発射】で狙撃したり
UCの氷の津波で時間稼ぎ

武器回収後は閃光弾に合わせ敵の足元を凍結
墜落を狙いつつゴールを目指す


天星・零
【蒼天】で参加
呼び方→シャオさん

地図や指定UCで敵の特徴や現在の状況、地形を読み取り最適なルートを見つけつつ、敵の特徴や地形、建物などのオブジェクトを利用して敵を撒いたりする

なるべく止まらず武器マフェッドスレッドを利用しどこかに引っ掛けて、また糸を巻くことで引っ掛けたところに移動を繰り返し高いところに移動したり、高速に移動

余裕があれば建物内に入り爆弾や食料などを携帯
閃光弾や音爆弾(高周波の音で敵を鈍らせる爆弾)などがあればそれを持ち投げつけて敵の動きを制限
また、敵の特徴が音に反応して襲ってくる特徴があるのであれば逃げる方向と真逆の方向に後者の爆弾を投げて逃走

キャラ口調ステシ
UC口調は秘密の設定




 不死の怪物の足元から、激しい閃光と共に甲高い爆音が響き渡る。
 光と音の爆発。 スタングレネードが炸裂したのだ。
 視界を焼く明滅と耳朶を突く音響によって感覚器官を揺さぶるその非殺傷兵器は、ただの人間でれば一撃でしばらくの間は行動不能に陥るだろう。
 だが、相手は不死の怪物であるStalkerだ。 一時的な足止めにはなるだろうが、そう長くは持たない。
 感覚を揺さぶられるのは猟兵とて同じなのだが、事前に来ると分かっていれば対処のしようもあるものだし、今はそんなことに構っている暇もなかった。
 周囲からは他の感染者も集まりだしているようだ。
 広げられた氷の翼から放つ氷の弾丸も多勢に無勢、遅かれ早かれこの場も敵に飲み込まれるだろう。
 天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)が放ったワイヤーの結ばれた鉤爪が近くの雑居ビルのひさしに喰い込む。

「シャオさん、離脱します。 この数の相手は厳しいです」
「この状況じゃ、仕方ないよね……お願いします……零さん」

 人とあまり距離を詰めたくはないシャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・f00507)であったが、今は周囲の状況がそれを許してはくれない。
 周囲は敵に囲まれ、逃げ道は数少なく、足止めした敵もすぐに再び動き出すことだろう。
 意を決して差し出された零の腕に掴まる。
 即座に鉤爪に接続されたワイヤーが巻き上げられ、氷の翼の浮力を受け少し離れた雑居ビルの渡り廊下へと滑り込む。
 空を飛べこそしないが、多少の滑空程度ならばルールの対象外なようである。
 このビルも安全とは限らない。
 むしろ、どこからか這いずる音が聞こえる辺り、まず安全ではないのだろう。
 音の出どころから遠ざかるように進路を変更し、廊下に積まれた箱を倒して障害物を作りながら先へと進んでいく。
 最適なルートからはまださほど外れてはいない。 修正可能な範囲だ。
 廊下の角から姿を現したStalker目掛けて、シャオの背の翼から無数の氷弾が放たれ、廊下を凍てつかせた。
 足を滑らせ転倒する不死の怪物を傍目に駆ける。

「そのまま……少し、そこで転がってて……」
「こっちです、シャオさん。 この部屋を突っ切ると外壁に近付く最短ルートにいけます」

 零によって開け放たれた扉をの中へと、ふたりは迷わず飛び込んでいく。
 この逃走劇はまだまだ続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミコトメモリ・メイクメモリア
シズカ(f02382)と

おや、失礼だね。こう見えて、ボクは結構おてんばなお姫様だったんだ――――いや、待てよ。

……うん、そうだね。
あまり機敏に動けそうにないね、ああ、困った困った。

頼りになる騎士様のエスコートがないと、とても逃げ切れそうにないよ……守ってくれるかい? ――なんてね?

とはいえ、本気でゾンビに迫られたら、甘えてるわけにも行かない。シズカの後を、遅れないようについていこう――――うん、やっぱり走りづらいねこれ! 仕方ない、ドレスを太ももの辺りまで破いてしまえ!

さあ、絶対に逃げ切ろう!


零井戸・寂
◆メメ(f00040)と

サバイバル脱出……
いや、まあゲームなら。どうとでもしてやるさ。

しかしメメ、その服で早く動けそう?……うん、厳し――待って待てよって言わなかった?

あー、まぁ分かった、それじゃ付いてきて。エスコートはする。
……騎士って柄じゃ……あー、いや。うん。頼りない"騎士"かもだけど、頑張るよ。
【手を繋ぐ】

UC:【弱き獣の智慧】。
敵への攻撃が一時凌ぎにしかならないなら逃げるのみだ。
【逃げ足】で素早く、【忍び足】で気付かれない様。
【地形の利用】で必要なら段差を飛び越えたり、ロープを登ったり。
地図に従って進んでいこう。

えっいやメメ!す、スカート――ああもう!

ああ、何が何でも逃げるぞ!




 スポーン地点に降り立ち、ビルの窓から周囲の様子を確認していた零井戸・寂(PLAYER・f02382)は、背後を振り向きながら口を開いた。

「しかしメメ、その服で早く動けそう?」
「おや、失礼だね。 こう見えて、ボクは結構おてんばなお姫様だったんだ――いや、待てよ……」
「……うん、厳し――」
「うん、そうだね。 あまり機敏に動けそうにないね、ああ、困った困った」

 わざとらしい口調でそう告げたのは、ミコトメモリ・メイクメモリア(メメントメモリ・f00040)だ。
 彼女が身に纏う布地たっぷりのゆったりとしたドレスは、お姫様としては相応しいが走り回るような戦場ではあまり適しているとは言えないだろう。
 だが、生まれてこの方ずっとこのような服装をしてきたのだ。 上手く走る方法だって熟知している。
 しかしそこはそれ、彼女とて女の子である。 甘やかな誘惑には勝てないのだ。

「待って、待てよって言わなかった?」
「頼りになる騎士様のエスコートがないと、とても逃げ切れそうにないよ……守ってくれるかい?」

 ――なんてね?
 冗談めかして少女が口遊む。
 騎士なんて柄ではない。 そんなことは自分でもよく分かっている。
 だけど、それでも――彼女にそう呼ばれるのは、結構好きだ。
 ……まぁ、面と向かってそんなことは言えやしないけれど。

「あー、まぁ分かった、それじゃ付いてきて。 エスコートはする。 頼りない"騎士"かもだけど、頑張るよ」

 少年は少女に向かって手を差し出す。 少女が少年の手を握る。
 手に手を取り合い駆け出していくその姿は、さながら古い映画のワンシーンのようであった。
 だが悲しいかな、ここは終末世界だ。 多数の感染者の目をごまかし続けるのは難しい。
 スポーン地点から出てほどなくして感染者に発見されたふたりは、ビルの屋上を駆ける。
 最初の頃こそスカートの裾をつまみ形振り構った走り方をしていたミコトメモリであったが、今では走りづらいと大胆にもドレスを太ももまで引き裂いていた。
 室外機や物干し竿などの障害物を利用して、感染者の足止めをする寂だったが、徐々に距離が縮まってくる。
 そして何よりの問題は行く先の崖……いや、隣のビルとの高低差が激しく、間隔が広いのだ。
 だが、右も左も行く手に感染者の姿が見え隠れしている。 そして迷う時間はそうはない。
 そんな時、少女の愛らしい声が耳を打つ。

「さて、シズカ。 左右は挟まれ前は崖、後ろからは追跡者だ。 このままではまずいことになるね」

 こんな状況にあっても彼女の声音はどこか楽しげだ。
 屋上の縁まではあと数歩。
 それでもなお彼女は足を止めるどころか、速度を増していく。

「――任せてもいいかい、ナイト様」
「えっいやメメ! ――ああもう!」

 屋上の縁から勢いよく飛び出したお姫様が中空へと身を躍らせる。
 後を追う騎士がその身を抱きかかえた。
 少年の身体に力が満ちる。
 果たしてそれはユーベルコードの力か、それとも……

「さあ、絶対に逃げ切ろう!」
「ああ、何が何でも逃げるぞ!」

 ふたりの逃避行は続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
【アサルト】
◆アドリブOK

ゲーム……はどうでもいいけど
こいつら倒すのに必要なんだろ?
ならまあ、付き合ってやるさ

追手に捕捉される前に武器弾薬を幾つか確保したいな
え? 銃種? ある程度近距離でも取り回せりゃなんでもいい
得物は選ばない主義なんだ
ネグルも持っておけよ
ヴィクティムは……進路の選定に集中してていいぜ

目と耳で分かる限りの周囲状況を把握
逐次共有しながら進んでいく

逃走経路はヴィクティムの先導に従うよ
足場の不安定な場所もあるだろうし
踏み外さないようにだけ注意はするかな

後方を主に警戒しておき
足場が安定している時は積極的に牽制射撃を交える
足を直接狙うか、効果が薄ければ足場を崩して進路妨害だな


ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】

へぇ、パルクールか。いいねぇ、そうと決まれば俺の出番だぜ
こちとらストリートで長いこと…この足で生きてきたのさ
効率の良いルートの選定も、身のこなしも…超一流だぜ?
そんじゃ、先導するから上手くついてこいよ?チューマ

ユーベルコードを起動
機動力を限界まで高めて、ラン!ラン!
これがゲームなら【ハッキング】で武器がある家を見つけられるはずだ
後方のネグルと匡から貰った情報から、追跡を振り切れるルートを選定しつつ向かい、家の中へ
食糧がありゃ気を引けないか投げて試してみよう
そういう機能が無くても、そう『書き換えればいい』
あくまでルールの範疇で、ちょろっと攻略を簡単にするだけさ
俺は公明正大だからな?


ネグル・ギュネス
【アサルト】で参戦

ゲームならば得意だ
理不尽?無理ゲー?
そんなもの、ノーコンテニューで、クリアしてやる!

手筈通りにいく
スリーマンセルの中段から、前方のクリアリングを務める
ユーベルコード【勝利導く黄金の眼】で、ゾンビの来る動きを読みながら、仲間に伝達しながら、遮蔽物が多い場所を駆けッ飛んで行く

【ダッシュ】で駆け抜け、家屋の扉は素早く【鍵開け】して、武器を手に取って味方に投げ渡しながら、敵の気配がないか、警戒は切らさない
食料も【肉類】を取っておく

武器はフルオートの銃を主体に持って、敵が見えたら、肉類を投げつけ気を引き、弾丸をばら撒いてぶち抜いてやる!

悪いが、独りなら兎も角コンビネーションでは敵は無い


御先狐・燐花
信楽・黒鴉(f14026)と合同

【誘惑】でゾンビ供をおびき寄せて援護に回ろう!数値が高い故に誘き寄せ過ぎやしないかちと心配じゃが、ゲームじゃから他者が生き残り勝ちを拾えれば良しとしよう!取り囲まれたらまぁその時はその時じゃ!

獲物の刀とは別に銃器を利用してな、上手く狙えるかは不安じゃがゾンビどもを蹴散らしてやる!


「痴れ者め!ゾンビを相手に立ち回るにおいては近接武器は不利じゃ!……取り囲まれる前に遠距離から頭を狙って仕留める!これに尽きる!」
「死人相手にまともに立ち会っても時間の無駄というものじゃ、適当に数を減らして退路を確保したら即退散じゃ!……あ!ゾンビどもめこっちに来るでないーーー!!」


信楽・黒鴉
御先狐・燐花(f00160)と合同

彼女のカバーに入りつつ、敵の【殺気】を【見切り】、【カウンター】で腕や脚を斬り落として追跡者を足止め。
其処から俊足を活かした【ダッシュ】に【残像】を織り交ぜる事でオブリビオンを撹乱しつつ逃げ切る。

「ぐあー! 斬っても斬っても全ッ然死なねェってどーゆー事ですかねこれァ!!」
「燐花さん燐花さん、僕ァピコピコの事ァよく分かんねェですけどね、ゾンビってのは普通首斬り飛ばすか脳天潰せば死ぬモンじゃねーんですかァー!」
「剣術も所詮は対人技って事ですかね。こりゃ、真面目に相手すンのは損ってモンだ」
「ま、近付く奴は僕が何とかしますよ。殺せなかろうと手足は斬れるでしょ……!」




 一軒の住宅屋根の上に腰を下ろし、ガーゴイルよろしく周辺の様子をじっと眺める青年が一人。
 彼の視界の隅、遠く見えるビルの屋上から助走をつけて跳ぶ男女の姿と、それを追いかけるも跳躍が足りずに奈落の底に落ちていく亡者の姿が微かに見える。
 その様子は、さながらレイトショーで野外上映されていたモノクロ映画のような光景だ。
 男女二人組は上手く逃げ切ったようで、既に視界にはいない……がどうにも気になる。
 遠目に一瞬ちらりと見えただけだったが、どこか見覚えがあったような……?
 先ほどの映像を脳裏に呼び出そうとしたヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)に、階下から声が掛かる。

「ヴィクティム、そっちの様子はどうだ。 外壁まで上手いこと辿り着けるルートはありそうか?」
「おっと……そうだな、幾つか候補はあるが、インジャン・カントリーのど真ん中だから絶対に安全なルートはないぜ?」
「その言い方は、ちょっと他のことに意識取られてたってところかな。 こっちはもう準備できたぜ」

 天窓から屋根の上へと身を乗り出したのは、ザックを背負い武装したネグル・ギュネス(ロスト・オブ・パストデイズ・f00099)と鳴宮・匡(凪の海・f01612)の二人だった。
 ヴィクティムを除く二人の普段の武装は、近接武器、実弾兵器か消耗品の類であり、持ち込んだ弾薬は無制限ではない。
 ならば現地調達した方が効率的だと考えた彼らは、ヴィクティムが進路の選定をしている間に家の中を探索して装備を整えていたのだ。
 各々の手に持つのはサブマシンガンだ。
 得物を選ばない主義の匡としては近距離でも取りまわせるなら何でもよかったのだが、こうなったのはゲームが得意なネグルの言い分である。
 「雑魚ならばヘッドショットで一撃だ。 強敵であっても、弾幕を張れば足を止められる点で汎用性に優れている」と。
 これであれば、最悪地上に落ちたとしても、押し通ることも不可能ではないだろう……。
 そして彼らは動き出す。

「そんじゃ、先導するから上手くついてこいよ? チューマ」

 ヴィクティムの言葉と共に各々がユーベルコードを起動し、屋根の上から飛び降り一気に加速を開始する!
 家を囲む塀の上へと降り立つと、道路を埋め尽くす亡者の群れが新鮮な肉に喰らい付こうと腕を伸ばすが、この塀の高さであれば問題はないと無視して歩みを止めることはない。
 まずはStalkerの目を少しでも誤魔化すために、亡者が波打つ道路の対岸の路地に入り込まなければいけない。
 加速をつけて塀から跳びだすと信号機の柱を三角跳びの要領で足蹴にし、ランプのひさしに手をかけて反動をつけて対岸の塀の上へと飛び移る。
 連続で蹴られグラグラと揺れる信号機に、ワンテンポ遅れて動き出したゾンビ達が群がり、3人の後方でへし折れ亡者の海に沈んでいくのだった。



 同時刻。
 外壁にほど近い住宅街の一角にて戦端が開かれていた。
 多数のStalkerを相手取りながらも上手く立ち回ることで難をしのいでいるのは男女ふたりの剣豪だ。
 双方共に東洋風の装束を纏い刀を得物としているが、その得物を抜いているのは男性の方だけである。
 女性の方はと言うと、アサルトライフルを器用に操り権勢を行っていた。

「ぐあー! 斬っても斬っても全ッ然死なねェってどーゆー事ですかねこれァ!!」

 また一体接近してきたStalkerの首を男性が斬りつけるが、わずかに怯んだだけで倒れることはない。
 斬っても斬ってもきりがないことに音を上げそうになる信楽・黒鴉(刀賊鴉・f14026)は、細い眦を下げて憤慨する。
 それはそうだろう、相手は不死者である。 斬られた程度ではどうと言うことはない。
 斬ろうが死なないから不死の怪物。 ゲームの設定で不死属性がついているのだからどうしようもないことなのだ。
 アサルトライフルをぶっ放していた女性、御先狐・燐花(刀の社の狐巫女・f00160)が叱責の声を上げた。

「痴れ者め! ゾンビを相手に立ち回るにおいては近接武器は不利じゃ!」
「燐花さん燐花さん、僕ァピコピコの事ァよく分かんねェですけどね、ゾンビってのは普通首斬り飛ばすか脳天潰せば死ぬモンじゃねーんですかァー!」
「死人相手にまともに立ち会っても時間の無駄というものじゃ、適当に数を減らして退路を確保したら即退散じゃ!」
「剣術も所詮は対人技って事ですかね。こりゃ、真面目に相手すンのは損ってモンだ」

 そう結論付けてふたりは後退を開始するのだったが……。



 高い外壁がすぐそばまで見えてきていた。
 外周部に近付いたためか、Stalkerもどんどん数を増している。 倒しても起き上がって追跡してくるのだ。
 Stalkerの名に恥じぬ働きと言えるが、このゲームは本当に攻略させる気があるのだろうか? という疑問がわかないでもない。
 敵は多いがこのルートには間違いはないだろう。 なんといってもヴィクティムが選定したルートだ。 信頼しない理由がなかった。

「気をつけろ、左から12秒後に団体様がお越しだ」
「あいよ、ルートを再設定するぜ」
「……いや、ちょっと待て。 人間が混ざっているようだ。 匡、頼めるか?」
「ああ、走りながらでいいよ」

 未来予測によって遮蔽物越しにクリアリングを行うネグルの言葉に進行方向を変えようとしたヴィクティムだったが、再度待ったの声が掛かる。
 ルートを変更すれば会敵しなくて済むが、現在のルートより外壁へ辿り着くまでの時間は長くなるだろう。
 だが、ここで敵を即座に殲滅できるのであればルートを変更する必要はない上に、戦力も確保できる。
 そしてこの場には「銃を抜かれたら勝てる気がしない」とふたりに言わせしめる人物がいるのだ。 突っ切らない手はないだろう。
 そうして……ばっ、と袂を揺らしながら和装の二人組が飛び出し、続いて4体のStalkerが姿を現すと同時につんのめり、地面を転がり壁に叩きつけられた。
 匡によって足の関節を的確に撃ち抜かれ、バランスを崩して転がったStalkerは動かない。 復帰するまでにはしばらく掛かるだろうと捨て置き走る。

「後ろからも団体様が来るぜ。 走れ走れ!」
「……ひぇ! ゾンビどもめこっちに来るでないーーー!!」
「あの数に巻き込まれるのは勘弁願いたいですねェ!」

 人数を増やして猟兵達はひた走る。
 だが、Stalker達とてこれで終わらせる気はない。
 外壁まであとわずかだが、前方にはStalkerの群れが見える。
 これは覚悟を決め、足を止めた戦いをしなければいけないだろう。
 チームの柱でありタンクであるネグルが前に出る。 追従するは二人の侍だ。

「道は俺が切り開く。 ノーコンテニューでクリアしてやれ!」
「おびき寄せるならわしの出番じゃな。 任せるがいい」
「近付く奴は僕が何とかしますよ。 殺せなかろうと手足は斬れるでしょ……!」

 燐花の誘惑によって多数のStalkerが釣りだされる。
 サブマシンガンとアサルトライフルによって弾幕を張り牽制を行い、接近した者の手足が振り下ろされると同時に斬り飛ばされた。
 無理やり抉じ開けた隙間を、ヴィクティムと匡が押し込むように無理やり進んでいく。
 あと少し。

「突っ切れチューマ! 餌の時間だ、ワックドスクィッシーども!」

 ヴィクティムは開いたザックから生肉をぶちまけると共に、ゲームそのものにウイルスを流し込みStalker達のデータを書き換えていく。
 好物を人肉から肉全般へと変更するだけのちょっとした細工だ。 だがそれは、この状況においては劇的な変化を齎した。
 Stalker達は先を争うかのように抵抗しない肉へと喰らい付きだしたのだ。
 外壁はもう目と鼻の先だ。 そこにあるのはこじんまりとしたひとつの門。
 匡は門の脇に備え付けられた開閉ボタンを叩くように押し込んだ。

 ――mission complete survivorの勝利。

 きらきらとしたチープなエフェクトが猟兵達の眼前で輝くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月05日


挿絵イラスト