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バトルオブフラワーズ⑥〜舞い踊れ猟兵たちよ

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #コミカル #パヴェル

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●グリモアベースにて
「いや、だから、なんで~ボクに~……」
 キマイラフューチャーの背景広がる一区画。そこで頭を抱えているカボチャはグリモア猟兵の神無月・孔雀(へたれ正義のカボチャマスク・f13104)だ。フルフェイスタイプのカボチャマスクを被った彼……否、そのカボチャマスクが本体であるのだが、それは今は結構どうでもいい。そばに浮かんでいるグリモアまで透け気味のカボチャなんてこだわりが……も今は意外とどうでもいいこと。
「キマフュ、キマフュがピンチなのはわかってるんだよ~! でもなんでボクにぃ~……」
 と言いつつも、今回も渋々立ち上がる。彼は見てしまった危機を見逃すことなど出来ないのだ。
「キマイラフューチャーが大変なことになっているのは、多分みんな知っていると思うんだよぅ……。ボクがみんなに行ってほしいのは、6つのステージの中でも『ザ・ダンスステージ』ってところなんだ。
 6つのステージの全てを取り戻さなければ、『システム・フラワーズ』にはたどり着けない。ならば、ステージを攻略するのが第一段階であることは猟兵たちにもわかる。
「そのダンスステージで、華麗にダンスをしながら、敵と戦ってほしいんだ~」
 孔雀曰く、どうやらこのステージには特殊ルールがあるという。それは、『ダンシングフィーバー』というらしい。
「えっとね~、このステージはこないだ助けたテレビウムのパヴェル君の画面を通じてキマイラフューチャー中に中継されるよ。で、戦闘中の立ち回りにダンスパフォーマンスを絡めることで、視聴者を沸かせる必要があるんだ~」
 そのダンスパフォーマンスで視聴者を感動させることができれば、『フィーバー』が発生して、その攻撃力は最大5倍ほどまで増加するという。逆にフィーバーが発生しなかった攻撃は、効果が半減以下になってしまうのだ。
「だからね、ダンスパフォーマンスを絡めながら敵を攻撃してほしいんだ~。今回の敵も、ダンスには自信があるみたいだから、気をつけてねぇ」
 緊張感のない喋りだが、キマイラフューチャーの危機であることには変わりない。
「ボクは現地に行かずにここから猟兵のみんなを送るから!」
 ……だからなぜ、それを言うときだけ力強い口調になるのか。


篁みゆ
 こんにちは、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
 はじめましての方も、すでにお世話になった方も、どうぞよろしくお願いいたします。

 このシナリオの最大の目的は、「オブリビオンの討伐」です。

 ステージの特殊ルールについては上記の通り。
 ダンスに自信のある方も、ないけど頑張ってみたい方も歓迎です。

●中継テレビウム
 パヴェル(10歳)
 藤色のテレビウムの少年。
 先日のテレビウム・ロック依頼で救出されました。

 現地まではグリモア猟兵の孔雀がグリモアベースより、猟兵のみなさまをお送りする形となります。

 孔雀は怪我をしたり撤退する猟兵のみなさまを送り帰したり、新たにいらっしゃる猟兵の皆さまを導いたりと、後方で活動しており、冒険自体には参加いたしません。

●執筆速度
 戦争シナリオのため、当社比早めに執筆していく予定です。

●プレイング再送について
 プレイングを失効でお返ししてしまう場合は、殆どがこちらのスケジュールの都合です。ご再送は大歓迎でございます(マスターページにも記載がございますので、宜しければご覧くださいませ)

●お願い
 単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください(今回に限っては速度重視のため、お相手とプレイング送信時間が大幅にずれた場合、プレイング締切になってしまう場合もあるかもしれません)
 また、ご希望されていない方も、他の方と一緒に描写される場合もございます。

 皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『アンマリス・リアルハート』

POW   :    歌は自信があるぞ、聞いていけ!
【わりと壊滅的な歌声】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    ダンスは教養、出来て当然だ!
【躍りながら振り回す剣】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    私はちゃんとできてる!間違ってるのはそっちだ!
【現実をみないだだっ子モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。

イラスト:さとみ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アンノット・リアルハートです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「私の敵はお前たちか!」
 そのステージで敵として立ちはだかったのは、黒いドレスの女性だ。長い銀の髪に細身の長剣を持った彼女、佇まいはお嬢様然としてはいるが、ただのお嬢様ではあるまい。
「私もダンスには自信がある。この勝負、もらうぞ!」
 あくまで自己申告であるからして彼女のダンスの技量はこの時点では推し量れぬが、ダンスパフォーマンスを絡めた戦いをしなければならないという条件は、あちらもこちらも同じである。
御狐・稲見之守
ジャララララララランンッッ

何処からともなく現れる濃ゆい髭面に恰幅の良いおっさん達。その一人が抱くフラメンコギターから奏でられる切なくも強く鮮やかなラテンの旋律。打ち鳴らされる手拍子におっさん達のうねるような歌声。

――ツカカカカカカッカッカッッ
紅い薔薇を咥えフラメンコ姿で我の登場だ。

鮮やかで荒々しく泣くギターの音色。さあ変拍子に乗せて足を踏み鳴らし、カスタネットを高らかに。激しく、切なく、力強く。

情熱と哀愁の躍動に狐火を纏い、燃えるように赤いスカートを翻せば狐火もまた躍る。彼奴の攻撃を律動に乗せ華麗に躱し、我が熱情その身に刻んでやろう。薔薇を投げてやりキメッ。

ああ、おっさん達は我が幻術で作った。


明智・珠稀
ふふ、またパヴェルさんとお会い出来て嬉しい私です…!
華麗にダンスしながらの戦闘…それは美しい光景となりましょう…!
視聴者の方を満足させられるよう、この明智舞い咲き誇ります、ふふ!

■戦闘
UC【どちらがお好みですか?】で女明智を召喚し。
「さぁ、愛の社交ダンスをご覧いただきましょう、ふふ!」
武器は男女ともにレガリアスシューズ。
アイススケートの男女ペアのような装いで現れ
主に足技で攻撃を。
敵攻撃&UCには【武器受け】【カウンター】
【吹き飛ばし】で距離を保ちつつ【ジャンプ】&【踏みつけ】など
優雅さとアクロバティックさを併せ持った攻撃を仕掛ける
「良い運動になりますね、ふふ!」

※アドリブ&絡み&ネタ大歓迎♡



『めちゃくちゃすごいヒーローさんたち頑張ってー!!』

 聞こえてくる応援の声は、このステージの中継をしてくれているテレビウムの少年、パヴェルのもの。
「ふふ、またパヴェルさんとお会い出来て嬉しい私です……!」
 その声に、自身を抱きしめるようにして打ち震えているのは、先日彼の救出に携わった明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)である。
「華麗にダンスしながらの戦闘……それは美しい光景となりましょう……!」
 彼が応援してくれるなら――自身を抱きしめたまま身体をくねくねさせて、瞼の裏に浮かぶ想像光景の美しさにうっとりとして。

「視聴者の方を満足させられるよう、この明智舞い咲き誇ります、ふふ!」
「私とて、負けるつもりはない!」

 ねっとりと宣言した珠稀に対し、アンマリスも負けじと叫ぶ。
「ならば、勝負です!」
 告げるやいなや珠稀の傍らに出現したのは、もうひとりの珠稀だ。いや、それにしてはなんだか様子が違う。
 もうひとりの珠稀は黒を基調に紫の差し色のある、ひらりとした短めの裾のやや露出高めのドレスを纏っていて、なんと――胸がある。よく見れば骨格も、実はしっかりと男性らしく筋肉のついている珠稀と違い、女性のそれである。
「こちらは本日のパートナー、女体化した私です!」
 いつの間にやら早着替えした珠稀が得意げに告げる。ちなみに彼はシャツとベストと黒いズボン――だがよく見ると激しい動きや足さばきの邪魔にならないような形をしたそれ――を着ている。動きの激しいアイススケートやアイスダンスのペアのような着衣――ふたりの足元を見れば、レガリアスシューズが履かれていた。

「さぁ、愛の社交ダンスをご覧いただきましょう、ふふ!」

 ふたりが手を取り合ってポーズをとると、何処からか流れてきたのはねっとりとしたなんだかちょっと淫靡なメロディー。ふたりが絡み合うようなセクシーな動きをすると、突然音楽が変わった。先ほどとは打って変わって、アップテンポの陽気な音楽。
 珠稀たちは、ふたり揃ったキレのある動きで次々とステップを踏んでいく。珠稀(女)が珠稀(男)に支えられながら、ぶんっとその長い脚を、半円を描くように高い位置で振る。振り付けのひとつとして組み込まれたその動きだが、彼女の足に装着されたシューズの車輪がさり気なくアンマリスを蹴りつけた。

「むっ……やるな! なら私も行くぞ!」

 サルサの素早いリズムは不思議な高揚感を与える。画面向こうから珠稀たちの動きに合わせた手拍子が聞こえてくる中、アンマリスも剣を手に、足を踏み出した。

「これでどうだ! 優雅だろう!」

 確かに音を消してアンマリスの動きだけ見れば、優雅にドレスの裾を翻して踊っているように見えなくもない。だが、音とともに見ている観客達はこう思ったことだろう。

 ――曲だけでなく手拍子もあるというのに、こんなにもリズムに乗れないものなのか――?

 そう、アンマリスはサルサの速いリズムに乗れていないのだ!
 裾を翻して剣を振るうさまは、剣舞に見えなくもない。だが珠稀たちのキレのある素早い動きと比べれば、違和感というかぶっちゃけ下手というか……踊っているように見えないのだ。

「えいっ! ほらっ!」

 リズムに乗れないのか乗るつもりがないのか、あくまでマイペースに剣を振るうアンマリス。救いがあるとすれば、本人が『自分はうまく出来ている』と思い込んでいることだろうか。
 その、曲と手拍子に乗らぬ動きは、常ならば予測しがたいものに見えただろう。だが観客の手拍子と歓声を受けながら息ぴったりの動きを見せる珠稀たちの力は、明らかに増している。めちゃくちゃに振るわれるように見える剣を易易と避けて、揃いの足さばきでアンマリスに蹴撃を加えられるほどに。
「良い運動になりますね、ふふ!」
 腰を使ったラテンダンスを情熱的に踊り上げた珠稀たちがフィニッシュを迎える――パヴェルの画面を通じてステージを見ている住民たちから、割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こった。


 ――ジャララララララランンッッ!!

 数拍置いて聞こえてきたのは、弦楽器の音。ギターだろうか。何処からともなくステージに現れたのは、髭を蓄えた濃い顔の、恰幅の良いおっさんたちだ。その中の一人が抱くのはフラメンコギター。奏でられる切なくも鮮やかなラテンの旋律に、カンタオールのおっさんたちは手拍子を打ち鳴らしながら、うねるような歌声を重ねていく。
 そして。

 ――ツカカカカカカッカッカッッ!

 颯爽とおっさんたちの前へと躍り出たのは、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)。彼女の纏う情熱的な赤いドレスは、裾にたっぷりとした特徴的なフリルを蓄えている。その両手にはパリージョと呼ばれるカスタネット。高音と低音の出るカスタネットを巧みに操りながら、赤い薔薇を咥えて彼女は舞い踊る。
 彼女の幻術で作り上げられたおっさんたちは、鮮やかで荒々しく泣くギターの音色に合わせて歌う。
 稲見之守は見事にフラメンコ特有の変拍子に乗って足を踏み鳴らし、カスタネットを高らかに打ち鳴らす。フラメンコの命ともいわれる手の動きを完全にマスターしているのだろう、激しさと切なさと力強さが、伝わってくる。

『わぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 その心を、魂を揺さぶるような踊りに住民たちから歓声が湧く。

「私にもわかるぞ! お前のダンスも情熱的だな!」

 対抗心に更に火がついたのだろうか、アンマリスは嬉々とした表情で稲見之守を真似るようにステップを踏――んでいるつもりなのだろう。だがリズムが早く、特徴的な拍子のフラメンコ曲に、先程のサルサのリズムに乗れなかった彼女が乗れるわけがなく。

「……!! なぜだ! なぜ当たらないのだ……!?」

 優雅な剣舞(だと本人は思っている)から繰り出されるアンマリスの刃を、稲見之守はフラメンコの動きを交えて軽々と避けた。そして彼女が纏うのは、狐火。情熱と哀愁の躍動に燃えるように赤いスカートを翻せば、狐火もまた踊る。

「私の、優雅な、剣舞、をっ!!」

 それは剣舞と呼べるのだろうか。フラメンコのリズムとそれに乗った稲見之守の動きを目にしている住人たちからみれば、ただ闇雲に剣を振り回しているだけのよう。
 反対に、アンマリスの攻撃を律動に乗せて華麗に躱す稲見之守の動き。アンマリスのその動きは、稲見之守の踊りを意図せず引き立てている。

(「我が情熱、その身に刻んでやろう」)

 ラストに向けて激しくなるステップ。稲見之守は咥えていた薔薇を手にし、狐火を宿したそれを投擲し――ギターのフィニシュとともにポーズを決めた。

『わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 住人たちの歓声が響く。誰も炎の薔薇を受けたアンマリスの事を見てはいない。
「愛と情熱のフラメンコ……ですか。今度は私たちも、青い薔薇でフラメンコを踊ってみましょうか」
 その光景を妄そ……想像しつつ、珠稀はうっとりと恍惚の表情を浮かべていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユーン・オルタンシア
【Folklore】皆様と
アドリブ・連携歓迎
「さぁ、踊りましょうか」
敵攻撃を【見切り】回避しつつ見遣れば
お二方は心配そうに萎縮されていますが、お二方が踊れないとは思えないのです
私など【礼儀作法】で社交ダンスの振り付けを覚えている程度
ですが始めの一歩にはなるでしょう
リンセとサヴァーの手を取り足でまずは易しいステップを刻みます
「その後は身体が音楽に寄り添うままに動けば、それが私達だけの舞踊の形となります
サヴァー、リンセ、楽の音をお願いします」
楽しげに片目を瞑ってみせましょう

ほら二人とも踊れています
三人手を取り環になって…これが私達の力ですよ
機を見て手を放しては指先ひらめかせユーベルコードで敵を攻撃


サヴァー・リェス
【Folklore】の皆で
アドリブ・連携歓迎

敵の攻撃を【第六感】も使い読む事で何とか躱し
「舞踊は…まだ、余り、わからない」
ユーンが自信たっぷりに私達と踊ろうと言うのがわからない
でも信頼に応えたい…【歌唱】は、得意
だから…寄せられる心に応える歌、猟兵の皆を讃える歌…弱いものが生きることの強さを
音とリズムに乗せて身体を通し唇から世界に放っていく
三人で手を取り環になって…まるで妖精みたい、ね
歌とリンセ、ユーンの刻むリズムに導かれるまま手足と翼をひらめかせ
自由に揺蕩う心でユーベルコードを使用していく
【第六感】も使い敵の攻撃に合わせそれを相殺する為に
間に合わなければ【オーラ防御】も使って皆を護る…絶対に


リンセ・ノーチェ
【Folklore】の皆で
アドリブ・連携歓迎

「ダンス…小さい頃、村のお祭りで踊ったくらいです…」
敵攻撃は【見切り】回避するけどダンスしながら戦うなんて
でもユーンさんは僕達を信頼してくれて
茶目っ気まで利かせてウィンクしてくれる
僕のパンフルートは咥えれば演奏可能だから踊れる
…うん、後退ってる場合じゃない
【勇気】出し音楽響かせサヴァーさんの歌に合わせる
音に合わせて身体を動かすのは楽しい
負けないよって心で三人手を繋ぎ環になって踊りながら
僕はユーベルコード使用
この場にいなくとも心繋ぐ皆とも一緒に踊る
絶対負けないよ
精霊銃とエレメンタルロッドで【フェイント】交え【二回攻撃】
本命の攻撃に力籠めて【全力攻撃】だ



「なぜ、だ……? 私のダンスは完璧なはずなのに!?」

 なぜか住人たちの声援は、猟兵達へのものばかりだ。アンマリスとしては、その理由がまったくもって理解できない。だがしかし、バトルはまだ始まったばかり。まだまだ諦めるのは早い。アンマリスは次に出てきた猟兵たちへと視線を投げた。

「さぁ、踊りましょうか」
 穏やかな表情で仲間であるふたりへと視線を投げるユーン・オルタンシア(森の声を聴く・f09146)だが。
「ダンス……小さい頃、村のお祭りで踊ったくらいです……」
 小さな身体に草色と菫色の瞳を宿したリンセ・ノーチェ(野原と詩と・f01331)は、自信なさげに呟いた。
「舞踊は……まだ、余り、わからない」
 銀の髪に銀の瞳をいだくサヴァー・リェス(揺蕩ウ月梟・f02271)は、髪に咲く蒼を揺らして小さく首を傾げる。
 ユーンが自信たっぷりに自分たちと踊ろうという気持ちも意図も、自信の出処もわからない。
(「ダンスしながら戦うなんて……」)
 リンセもまた、心中に浮かぶのが不安ばかりで、文字通り二の足を踏んでいる。

「今度は私から行こう!!」

 戸惑いで足を踏み出せぬ三人を見たアンマリスが、自信たっぷりに先に動いた。
 いち、に……さん! いち……に、さん! いちに……、……さんっ!!
 たぶん、恐らく、おおかたワルツのリズム――三拍子に乗って剣を振るっているつもりなのだろう。でも全く規則的でないそれは、三拍子とは言えない。けれども基礎となるリズムを周知する曲がないことが有利に働いた。

『お? 新しい剣舞か?』
『曲聞こえないけど、音声設備の故障とか?』
『独創的な剣舞だねぇ……』

 観客達はアンマリスのその動きを、変拍子の剣舞だとでも受け取ったのだろう。評価は悪くない。
 一定のリズムでない故に読みづらい彼女の剣先を、なんとか躱した三人だが、このままでは次も躱せるとは限らない。
(「……お二方は心配そうに萎縮されていますが、お二方が踊れないとは思えないのです」)
 ユーンがちらりとふたりを見れば、やはり踏み出す勇気とタイミングを持てぬよう。ユーンとて礼儀作法の一環として社交ダンスの振り付けを覚えている程度なのだ。音楽に親しむふたりが音楽に乗せて身体を動かせぬはずはないと思う。
「こちらも、始めの一歩といきましょう」
 リンセとサヴァーの手を取って、ユーンはその場で軽く優しいステップを踏んで見せる。数度同じステップを繰り返せば、そのステップが求めるリズムはふたりに伝わったはずだ。
「この後は身体が音楽に寄り添うままに動けば、それが私達だけの舞踊の形となります」
 優しい光を宿したユーンの紫水晶の瞳を見つめるリンセとサヴァー。
「サヴァー、リンセ、楽の音をお願いします」
 ユーンがあまりにも楽しげに片目を瞑ってみせるものだから、ふたりの心に湧きいでるのは――。
(「ユーンさんは僕達を信頼してくれて、茶目っ気まで利かせてウィンクしてくれる」)
 リンセは綺麗な織り紐で首にかけた『Voce Gentile』を手にとって。
(「……うん、後退ってる場合じゃない」)
 彼のパンフルートは小ぶりであり、咥えれば演奏することができる。だから、演奏しながら踊れるのだ。
(「信頼に応えたい……歌うのは、得意」)
 サヴァーの心に湧いたその感情――寄せられる心に応えたい気持ちが、猟兵の皆を讃える気持ちが、弱いものが生きることの強さを示したい気持ちが、自然と旋律を伴った歌詞となり、その整った唇から紡ぎ出される。
 彼女の勇気を耳にして、リンセも即興で旋律を紡ぐ。サヴァーの歌にリンセの旋律が寄り添い、次はリンセの旋律にサヴァーの歌が寄り添う。そして両の手でふたりを繋ぐユーンが、歌と旋律に合わせて先導するようにステップを踏んでいく。
 あとはもう、誰からともなく自然と動き始めていた。歌と演奏に合わせて、身体が自然に動くのだ。

「ほら、二人とも踊れています」

 サヴァーとリンセが手を繋げば、三人輪になって。

「……これが私達の力ですよ」

(「音に合わせて身体を動かすのって楽しい!」)
 その楽しさが旋律とステップに、そして自然と表情にも現れる。リンセは演奏と踊りを止めずに、大切な友達たちを喚び出した。
 三人の輪の周りを、幻影の猫たちも共に舞い踊る。この場にいなくとも、彼らとは心が繋がっている――だから、絶対負けない。
(「三人で手を取り環になって……まるで妖精みたい、ね」)
 音とリズムはサヴァーの身体を通し、喉を上がってゆく。唇でそれを紡いで発せば、この場限りの歌が、世界へと広がってゆく。
 自身の歌とふたりの刻むリズムに導かれるまま、手足を動かし梟の翼をひらめさせて。

『楽しそうだなー』
『俺、うずうずしてきた!』
『わたしも踊りたいわ!』

 そんな視聴者の声は言葉としては三人に届いていないけれど、自らの身に湧いてくる力が視聴者たちの心を動かした証左であることを、三人は理解している。

「――っ!?」

 ダンスの一環といっても違和感のないタイミングで、ユーンがアンマリスへと指先を向けると、降り注いだ光が彼女を打った。

「くっ……私の踊りだって素晴らしいぞ! なあ、皆の者!!」

 アンマリスが流れる曲のリズムとは外れた剣舞(自称)で三人に接近する――が。

「なにっ!?」

 彼女の刃は、サヴァーの放った銀色に揺らぐ蜃気楼によって相殺されてしまった。
 そして今こそがアンマリスの隙だと本能的に識ったリンセが、演奏を続けながら二人から手を離す。流れるように手にとった『Aurora』と『Lonely Fortune Moonbow』から放たれるそれは、ダンスのフィニッシュを知らせる全力籠めた一撃だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

セシル・バーナード
やあ、久しぶりだね、アンマリス・リアルハート。改めて、ぼくと踊ってくれるかな?

「パフォーマンス」を基本技能にレッツ・ダンス!
このオブリビオンは歌声で周囲を壊滅させるやつだから、歌う余裕のないダンスバトルで挑んでくれてありがたいよ。

さあ、フォックスファイアの出番だ。最初はぼくの演出らしく使って、徐々にアンマリスに延焼させていく。
ダンスが激しくなるにつれて、身振り手振りで直接狐火を飛ばしていくね。

ああ、駄々っ子モードになって自爆しないかな?
敵失を望んでる時点でまだまだか。

ミュージック、スピードアップ!
ぼくもそろそろきつくなってきたけど、アンマリスはどうかな?
ラスト!
燃え上がれ、フォックスファイア!


栗花落・澪
左二の腕にある花のブレスレット状の聖痕が露出された
ズボンタイプの踊り子衣装で参加
あ、男だよ?

UC発動で技能強化
BGMに合わせた即興【歌唱】による【誘惑催眠】

風の【全力魔法】を★Venti Alaに宿し跳躍力上昇
敵の攻撃は華麗なステップに合わせたバク宙や
飛行技能による【空中戦】で回避

更に着地位置で★どこにでもある花畑を解放
バトン状にした★Staff of Mariaを回転させつつ
足元に生成された【破魔】の花畑の花弁を風の【全力魔法】で巻き上げ
【ダンス】を彩る花吹雪の【パフォーマンス】兼斬撃として使用

蝶のように舞い蜂のように刺す、だっけ
植物使いとしてもシンフォニアとしても
優雅さは負けたくないよね


トリテレイア・ゼロナイン
たとえ星が二つに割れようと騎士としてやるべきことは変わりません
システム・フラワーズを開放し、キマイラFに安寧を再び齎すため戦うまでです

特殊なルールにも見事適応してみせましょう
鋼の騎士は戦場も手段も選びません
一緒に踊って頂けますか、アンマリス様?

●礼儀作法の知識の中には社交ダンスの作法もあります。それをもとに優雅に踊るように動きつつ、アンマリス様の剣を●武器受け●盾受けで受け流します
UCの妖精ロボも自動●操縦で一緒に躍らせ舞踏会のように演出

受け流しを続け焦れて動きが乱れた隙を●見切り、●手をつないで引き寄せ●怪力で空に放り上げ横抱きでキャッチしてダンスを締め
そしてフィーバーが乗った優雅な攻撃を


佐渡・随喜
世界に興味は無いが、戯れに手を貸してやろう。
このところ、遊び耽って身体が鈍っておる(レベルが初期レベル)からのう。

ククク、ダークセイヴァーとは言え上流階級出身の余だ。
ダンスなど、出来て当然よ。

それにしても佳い女よな。ここは挑発を交えてワルツに誘うとするか。
「同じダンスを踊ってこそ、優劣がはっきりするのではないか?
自信が無いなら逃げても構わぬが、その場合、余の不戦勝よのう」

敵がワルツに応じたら、途中までは奇を衒わず優雅に踊るが
隙を見てこっそりとサイキックブラストを浴びせるぞ。
ダンスの最中に両掌からの電撃は、避けられまい!
「如何した? これ以上踊れぬのであれば、この勝負は余の勝利であるな!」


マキアヴォクス・アルダ
あら。その口ぶり、どうやらアナタも踊れるひとなの?
ウフフ♡それだったらお相手お願いしちゃおうかなあ。
アタシの武器はこの身一つ。羽を開いて、踊り始めるわ。

1、2、3、4。音楽のリズムに身を委ねて、間合いをはかるの。
あなたの燃え上がる心拍が聞こえるわ、その剣は次の踏み込みで来るはず…ほうら!
大きなターンステップを「逃げ足」と言えるのかは分からないけど。ひらりひらりと躱して見せちゃう。

次はこっちのパフォーマンスでお返しよ。1、2、3、4……踊りながら空を蹴り、翼で滑空してはるか上方へ。
限界まで高さを稼いだら、最後のワンステップは……アナタの真上♡
ちょっとはしたないけれど、キックをお見舞いしちゃう。


マレーク・グランシャール
俺には踊りの心得はないが歌と演奏ならば
猟兵達のダンスを熱く盛り上げる一助として歌と演奏でサポートしよう

キマイラの発達したテクノロジーが生み出すデジタルサウンドは素晴らしい
だが生の歌と演奏は踊り手と奏者とを一体とさせ、一人では為し得ないハイパフォーマンスを叩き出すこともある
【竜哭風琴】(バンドネオンやアコーディオンの類)でジャズっぽく粋で小洒落た演奏から、ポップでリズミカルなのまで踊り手に合わせて
敵の音痴攻撃などのダメージは【竜聲嫋嫋】で回復させる
ステージにはタフさも必要、歌には歌で対抗だ

生歌・生演奏の力を嘗めるな
ステージは裏方とも力を合わせて作り上げるものだ

※裏方として連携希望


御形・菘
世界の危機とは大きく仕掛けてきたのう怪人ども!
きっちり上下関係を示してやらんといかんな!

にしても、妾たちのダンス勝負を、ただ中継されるだけでは足りんな~
右腕を高く掲げ、指を鳴らし、さあスクリーン! カモン!
喜べ! 皆の衆の歓声をBGMにしようではないか!
さあ、そして妾に手拍子をくれ!

ハイスピードな手拍子に合わせて、身体を激しく動かし情熱的に踊るぞ!
そして邪神オーラと左腕でラッシュラッシュ! おまけに尻尾ビンタ!
どうだ皆の衆? 見るだけで身体が熱くなってこんか?
ならば画面の向こうの皆も踊れ踊れ! 皆で楽しもうではないか!
はーっはっはっは! 怪人よ、お主の踊りはこれほど皆の心を突き動かせるかのう?


高鷲・諒一朗
ダンスなら任せてくれよお、ってなあ!
うなれ俺のこの長い脚!
スカイダンサーの真髄を見せてやらあ!

視聴者のウケも考えたら、ブレイクダンスあたりだと沸かせやすいかねえ?
ちゃんとヘルメットも被ってなあ
安全第一に踊りまくろうぜえ!
長い四肢を使って腕の振りや体のひねりも加え演出しつつ
危ないところは「スライディング」で咄嗟に踏みつつ
とにかく楽しく! 見栄えも考えて! しっかり最後まで踊りきるぜえ
ここぞというときに攻撃できたうなら
『スカイステッパー』で蹴り上げるぜえ!


未不二・蛟羽
スカイダンサーっすもん、ダンスなら負けられないすっ!
大事な地元の為にも頑張るっす!

パヴェルさーん、見てるっすー!?
俺、カッコいいとこ見せるっすよー!

得意なのはヒップホップとか、ブレイクダンスっすから、初っ端から大技決めて注目を奪いたいところっすね!
【スカイステッパー】で敵の攻撃を避けつつ、アクロバティックな【パフォーマンス】で、【ダンス】を披露。バトルだから、よりも純粋にダンスを全力で楽しんで

まだまだ、イけるっすよね!盛り上げてあげていくっすー!

空中に跳んで避けて、ついでに敵を足場にしてまた空中へ。技を披露する時以外はほぼ【空中戦】っす

一番の盛り上がり所は尻尾の蛇ちゃんと一緒に決めポーズっす!



「……、……」
 猟兵たちの動きと戦況の推移を、マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は静かに見据えていた。
(「キマイラの発達したテクノロジーが生み出すデジタルサウンドは素晴らしい」)
 それは彼とて認めるところではある。
(「だが生の歌と演奏は踊り手と奏者とを一体とさせ、一人では為し得ないハイパフォーマンスを叩き出すこともある」)
 今、まさに目の前でそれを見せられたところだった。自分の考えが正しいことを改めて確認したマレークは、『竜哭風琴』を手に取る。踊りの心得のないマレークがこのステージに居る理由は――。
「俺には踊りの心得はないが歌と演奏ならば。猟兵達のダンスを熱く盛り上げる一助として歌と演奏でサポートしよう」
 そう、最近覚えて修練を重ねた歌と演奏で、裏方として他の猟兵たちを支えるためである。
「助かるっす!」
「ハイスピードなのいけるか?」
「ああ」
 早速名乗りを上げてマレークへと演奏を依頼しに来たのは、未不二・蛟羽(花散らで・f04322)と高鷲・諒一朗(ミルザム・f17861)。彼らの問いに短く応え、『竜哭風琴』の調子を確かめるマレーク。
「にしても、妾たちのダンス勝負を、ただ中継されるだけでは足りんな~」
 呟いたのは御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が、そのまま流れるように右腕を高く掲げて。

「さあスクリーン! カモン!」

 パチンッ! 呼び声と鳴らされた指の音に導かれるようにして現れたのは、無数の空中ディスプレイだ。このステージを囲むように浮かび上がるそれに映し出されているのは――。

『おい、あっちの画面に俺たち映ってるぞ!』
『まじ!?』

 そう、パヴェルを介した中継を見ている視聴者たちだ。菘はその無数のディスプレイを背にして両手を広げ、声を張り上げる。

「喜べ! 皆の衆の歓声をBGMにしようではないか!」
『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 彼女の声に沸く視聴者たち。このスクリーンに映し出された彼らの歓声や応援により、菘の力は増していく。その上こうして視聴者たちの反応が視覚情報として大々的に入ってくれば、猟兵たちの士気にも関わるというもの。

「さあ、そして妾に手拍子をくれ!」

 完全に視聴者たちを乗せた菘。その状況をアンマリスはどう受け止めるだろうか。

「なんとこのステージに相応しき演出だ! 私の素晴らしい剣舞に酔いしれる未来の臣下の反応がよく見えるというもの! 祖国を復興し統治者となる私は、臣民の心に気を配らなれけばならぬ!!」

 思いの外……というより諸手を挙げて喜んでいる。そういえばあった、亡国のお姫様という自称設定。祖国の復興のために臣下という名のファンを増やそうとしているんだった、この人。
 ならばこの場で菘の演出を拒否しない理由も理解できる――が、たぶん……いや、八割方、アンマリスはそこまで深くは考えていないだろう。
 菘が腕を振り上げて観客達を煽る。煽られた観客達の手拍子は、徐々に早くなっていって。マレークはその早い手拍子に合わせるように『竜哭風琴』の蛇腹を繰りながら、アップテンポでハイスピードな、ストリートダンサーたちがノリやすいような旋律を紡いでいく。
「世界の危機とは大きく仕掛けてきたのう怪人ども! きっちり上下関係を示してやらんといかんな!」
「ダンスなら任せてくれよお、ってなあ! うなれ俺のこの長い脚! スカイダンサーの真髄を見せてやらあ!」
「スカイダンサーっすもん、ダンスなら負けられないすっ! 大事な地元の為にも頑張るっす!」
 菘に諒一朗、蛟羽が気合を入れながらステージ真ん中へと歩み出る。
「パヴェルさーん、見てるっすー!? 俺、カッコいいとこ見せるっすよー!」
『僕を助けてくれた、めちゃくちゃすごいヒーローのお兄さん! がんばってー!!』
 中継しているパヴェルに呼びかければ、聞き覚えのある声で応援の言葉が紡がれて、蛟羽のやる気が更に増していく。
 菘が中心となり、音楽と手拍子に合わせて身体を激しく動かす。キレがあり、動きのパターンを素早く入れ替えるそのさまは、不思議と情熱的だ。
 その横で安全第一、としっかりヘルメットを被った諒一朗は、長い手足を更に長く見えるような大きな動きでステップを踏む。身体全体を使い、時には捻りを加えてステージを広く使う彼のダンスは、とてもダイナミックだ。動きに合わせて揺れる金の髪が、ライトをキラリと反射させて眩しく光る。
 ふたりのやや後方に位置取った蛟羽も負けてはいない。宙を蹴ってふたりより高い位置に出た彼は、その場でもう一度踏み切って、身体を浮かせる。そしてただそのまま身体をひねるのではなく、宙で身体を真横にした状態で捻ったのだ。

『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
『わぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 初っ端からの大技――ブレイクダンスでいうところのコークスクリュー――で一気に視聴者を沸かせる。

「な、なんだ、あれは……!?」

 アンマリスが驚くのも無理はない。今、視聴者たちは誰ひとり、彼女を見ていないのだから。

「わ、私とてあのくらい……!!」

 絶対無理だからやめたほうがいい――と忠告してくれる相手すら、彼女にはいない。
 足を上げて、床に着いた頭を軸にくるくるくるくる回るヘッドスピンを披露中の諒一朗に向かい、アンマリスは駆け出す。おそらく三人のように、手や足を大きく使うヒップホップやブレイクダンスを真似しようとしているのだろう。
 だが。
 ……だが。
 これまでリズムに乗れていない彼女が、いきなり真似をするというのは無茶というもの。

「あっ――!」

 案の定、ヒールのある靴がまず枷となり、彼女はびたーんっとステージにうつ伏せに倒れ込んだ。だが、彼女は相当運がいいのかもしれない。ころんだ時に手から離れた剣が、真っ直ぐに諒一朗へと飛んでいく!
「ほいっ!!」
 しかし諒一朗は、あからさまに飛来する剣を避けようとはしなかった。あくまでも楽しく、ダンスとしての見栄えも考えて、宙を蹴って飛び上がったのちにタイミングよく床へと降りる――と同時に剣を踏みつけることで押さえたのである。そしてそれを蹴って床の上を滑らせると、上半身を捻りながら下半身で宙を蹴り上げるような回転――スワイプス――を繰り出した。

『すげぇぇぇぇぇぇぇっ!!』

 その一連の動きに、視聴者たちが更に沸く。
「まだまだ、イけるっすよね! 盛り上げてあげていくっすー!」
 バトルだからというよりも、全力で純粋にダンスを楽しんでいる蛟羽の掛け声に、スクリーンが揺れるように見えたのは気のせいか。
「くっ……」
 滑り来た剣の柄を掴んだアンマリスが完全に立ち上がる前に、ステップを踏みながら彼女との距離を詰めた菘は『八元八凱門』と左腕でラッシュラッシュ! そして流れるように尻尾からの強烈なビンタを繰り出した。

「どうだ皆の衆? 見るだけで身体が熱くなってこんか?」
『おぉぉぉぉぉ!!』
「ならば画面の向こうの皆も踊れ踊れ! 皆で楽しもうではないか!」

 歓声がステージの空気を震わせる。まるでこの場に大勢の観客がいるようだ。
 蛟羽と諒一朗は宙を蹴り、そしてバク宙などの技を繰り出しながら、アンマリスへと近づく。

「はーっはっはっは! 怪人よ、お主の踊りはこれほど皆の心を突き動かせるかのう?」
「私とてっ……」

 悔しげな彼女が全てを告げる前に、空中を滑るように降りてきた蛟羽と諒一朗の蹴撃がアンマリスを襲う。
 ステージ端までアンマリスを吹き飛ばしたふたり(と蛟羽の尻尾の蛇)、そして菘はビシッとポーズを決めた。


 * * * * * * * * *


「あら。アナタの口ぶりからして、踊れるひとだと思っていたのだけれど?」
「私の何処が踊れていないと!!」

 剣を手によろよろと立ち上がったアンマリスを見て、ステージに上ったマキアヴォクス・アルダ(絢爛極楽鳥・f13881)は「ウフフ♡」と笑う。
「それだったらお相手お願いしちゃおうかなあ」
 彼女の言葉を合図として流れてくるのは、マレークの演奏。ジャズ風の音楽と歌声に乗せて、踊り子であるマキアヴォクスは羽根を開く。彼女の武器はその身体ひとつ。豪奢な孔雀の羽根が、彼女の動きを引き立てるのだ。
 1、2、3、4――音楽のリズムに身を委ね、身体のパーツそれぞれを舞わせながら間合いをはかるマキアヴォクス。

「私のダンスを見るがいい!」

 ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ! アンマリスの振るう剣は、きちんと四拍子を刻んでいる……が、下半身が四拍子に乗れていない。ここまでくると、彼女はとても器用なのではないかと錯覚しそうだ。
「アナタの燃え上がる心拍が聞こえるわ……ほうら!」
 それでもマキアヴォクスの方がうわてだ。大きなターンステップでひらりひらりとアンマリスの剣先を躱してゆく。
 アンマリスの動きがリズムに乗っていない分、読みにくさはあるだろう。だが踊りの経験値の差は大きい。純粋な戦闘ではなく『踊り』として見れば、マキアヴォクスにとってアンマリスの動きは読みやすく、咄嗟に対処としてのステップを選択することもできる。

『踊ってるだけで避けちまうなんてすげえな!』
『だよな、セクシーなねーちゃんがんばれー!!』

 観客(主に男性)たちは、スタイルの良いマキアヴォクスのセクシーなダンスに釘付けのようだ。アンマリスが必死になって剣を振るっている分、彼女の余裕さが際立っているのだ。
「次はこっちのパフォーマンスでお返しよ」
 1、2、3、4……マキアヴォクスは踊りながら宙を蹴り、高度を上げていく。観客(主に男性)たちの歓声が増えてゆく。ダメです、踊り子さんのスカートの中は見えません!!
 そんな下心が含まれた歓声でも、マキアヴォクスは力が増すのを感じている。翼を利用して限界まで飛び上がり、そして――。

「なぁっ……!?」

 最後のワンステップとして、アンマリスに蹴撃を加えるべく、マキアヴォクスは彼女の真上から、勢いを殺さずに降りたのだった。


 * * * * * * * * *


 予め、特定の技能を強化した状態で、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はステージへと上がった。
 ズボンタイプの踊り子衣装を身に纏った澪は、見た目は少女に見えるかもしれないが、れっきとした少年である。顕にした腕――左腕の二の腕には、まるで花のブレスレットのような聖痕が宿っていた。
 彼はマレークの奏でるリズミカルな旋律に合わせて、即興で歌詞を紡ぎながら足に履いた『Venti Ala』へと風の魔力を乗せる。その魔力により靴に翼が生え、空中歩行が可能になり、澪はリズムに合わせてステップを踏んでいく。

「くっ……剣舞だけでは分が悪いか……?」

 ようやくそこに思い至ったと思しきアンマリスであるが。

「なんだ……? この歌……思考が、鈍く……」

 片手で頭を押さえるアンマリス。そう、澪の歌には誘惑の力と催眠の力が籠められているのだ。
 だが、さすがにここで意識を持っていかれるわけにはいかない。アンマリスは唇を噛み締めながら、ふらつく足に力を入れて澪へ向かって駆け出す。途中でふらついたのをくるりと回転して誤魔化したのは偶然か、あるいはこのステージで学んだ対処だろうか。しかし彼女が振り上げた剣を、澪はバク宙でくるりと躱してしまう。

「蝶のように舞い蜂のように刺す、だっけ」

 ぽつり、呟いて。澪は着地に合わせて『everywhere garden』に魔力を込めて聖痕をかざした。すると。
 ふわわわわわ……広がるのは不思議な花園。その幻想的な光景に、視聴者たちから感嘆の声が上がる。
 更に澪はバトン状にした『Staff of Maria』を、バトントワリングのコンタクト・マテリアルのように回転させながら、足元に広がる花園の花弁を風の魔法で巻き上げてゆく。
 空中に広がる花弁たちは、まるでバトンの回転が招いているかのように見える。澪はバトンを手以外の身体の部分で回転させるロールをダンスに組み込みながら、巻き上げられた花弁を風の斬撃へと乗せた。

「植物使いとしてもシンフォニアとしても、優雅さは負けたくないよね」

 風に乗せられた花弁たちは、花吹雪となってアンマリスを包み込む。視聴者たちには目くらましのための花弁に見えたかもしれないが、その花弁一枚一枚すべてがカミソリのような鋭さをもって、アンマリスを切り裂いていた。


 * * * * * * * * *


(「たとえ星が二つに割れようと騎士としてやるべきことは変わりません」)
 鎧に身を包んだトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の強き思い。
(「システム・フラワーズを開放し、キマイラフューチャーに安寧を再び齎すため戦うまでです」)
 騎士として己を律する彼にとっては、弱者の危機を救うのは当たり前のこと。しかしその鎧兜姿からは、ダンスをしている姿は想像しにくいが。
「特殊なルールにも見事適応してみせましょう。鋼の騎士は戦場も手段も選びません」
 なるほど、何事にも柔軟に対応してみせるのが真の騎士ということか。

「世界に興味は無いが、戯れに手を貸してやろう。このところ、遊び耽って身体が鈍っておるからのう」
 長い金の髪に明らかに貴族然とした彼の名は、佐渡・随喜(世界を渡る高等遊民・f16185)。
「ククク、ダークセイヴァーとは言え上流階級出身の余だ。ダンスなど、出来て当然よ」
 以前は別の名で、ダークセイヴァーの上流階級として暮らしてきたという彼だ。ダンスには自信があるのだろう。

「やあ、久しぶりだね、アンマリス・リアルハート」
 もはやドレスもその白い肌も細かい切り傷だらけになってしまっているアンマリスに無邪気に声をかけたのは、セシル・バーナード(セイレーン・f01207)だ。
「私を知っているのか」
「知っているよ」
 以前、アイドルのリアルイベントへ乱入してきた彼女と対峙したことがあるセシル。だがあの時のアンマリスは倒れ、このアンマリスはあの時の彼女ではない。けれどもセシルにとっては、紛うこと無く『久しぶり』であるからして。

 場に流れ出すのは、マレークの奏でる三拍子。ワルツの音楽だ。旋律を耳にしたアンマリスの顔色が変わる。

「これはワルツだな! ワルツなら任せておけ!」

 自称亡国の姫である彼女だ。他のどのダンスよりもワルツに自信があるのは理解できる――実力は置いておくとして。
「一緒に踊っていただけますか、アンマリス様?」
 最初に彼女を誘ったのは、トリテレイアだ。礼儀作法の中に含まれる社交ダンスの知識を引っ張り出して、恭しく手を差し出す。
「ああ、受けて立とう!」
 彼女は自信満々にその手を取った。トリテレイアの喚び出した妖精型ロボも自動操縦でふたりの周囲を舞う。まるで騎士物語の中の、舞踏会のワンシーンのよう。

『なんだ、あの怪人、踊れるじゃん!』
『今までのへっぽこっぷりはフリか!?』

 観客は気づいていないようだが、社交ダンスに造形の深い者ならばわかるだろう。今、アンマリスがうまくリズムに乗ってステップを踏めているのは、トリテレイアのリードがあってこそなのだと。
 そしてこれは、普通の舞踏会ではない。トリテレイアのリードで優雅に踊っているアンマリスは、隙を見て剣を繰り出してくる。それも一度や二度ではない。だがトリテレイアはそれをすべて武器や盾で受け流してしまうため、ヒュッ……カッ、ヒュッ……カッ、ヒュッ……カッ、とマレークの『竜哭風琴』以外の音が混ざる。
 ワルツを優雅に踊りながら攻撃するのは、当たり前だが動きが制限される。しかもホールドしている男性は猟兵だ。踊りに絡めてはいるが、彼女が必要以上に動きやすい体勢にしてやる義理はない。
「っ……くっ……当たらんっ……!」
 彼女が小声でそう吐き捨てたのが焦れた合図。いくら刃を繰り出しても受け流されてしまうことに苛立ちを隠せないのだ。その隙をトリテレイアは見逃さなかった。
 ぐいっ! 彼女の手を思い切り引いてその身体を引き寄せ、そしてその腕力に任せて空中へと放り投げる!!

「っ……!?」

 ガシッ!!
 アンマリスはそのまま落下すると思ったことだろう。だが、トリテレイアは彼女を横抱きでキャッチすることでダンスを締めると同時に。

『わぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『おぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 視聴者たちの大歓声を受けたのだ。敵すら自身のパフォーマンスに利用したトリテレイアは、彼女を床に下ろすと同時に攻撃を撃ち込んだ。

「がっ……!?」

 その衝撃で吹き飛ばされたアンマリスの身体を背後から受け止めたのは、随喜だ。
「余とも踊ってくれぬか?」
「同じ、手には……」
「同じダンスを踊ってこそ、優劣がはっきりするのではないか?」
 今度は同じ手には乗るまいと、拒否しようとした彼女の言葉を遮る随喜。
「自信が無いなら逃げても構わぬが、その場合、余の不戦勝よのう」
 もともとの口調もあいまって、アンマリスへの挑発効果は抜群だ!
「受けて、立とう……!」
 先ほどとは違うワルツの旋律をマレークが奏で始めると、随喜は優雅な動作でステージ中央までアンマリスをエスコートした。そしてホールドからのスムーズなリード。随喜の長い金の髪とアンマリスの長い銀の髪が、ふたりの動きに合わせてさらさらと舞う。
 しばらくはそのまま、何事もないワルツが続いた。視聴者すら、これは舞踏会だったのかと錯覚するほどに。
 だがそれは、視聴者たちが焦れ始める頃に起こった。

「っ!? ああぁっ!?」

 ビクビク、とアンマリスが身体を震わせて目を見開いたのだ。まるで痙攣しているかのようにピクピクと小刻みに震える彼女。
「如何した? これ以上踊れぬのであれば、この勝負は余の勝利であるな!」
 そう、「もしかしてこれ、普通に踊るだけ?」と思い始めるだろう頃に随喜が放ったのは、高圧電流。ダンスの最中、至近距離からの高圧電流を、アンマリスはまともに受けたのだ。本来ならば足元から崩れ落ちてもおかしくない。だが随喜のホールドが、無理矢理アンマリスを立たせているのだ。

「次はぼくの番でいいかな? 改めて、ぼくと踊ってくれるかな?」

 すっと歩み出たセシルの問いに、感電中のアンマリスは答えられない。沈黙を諾と取って――もし何かいわれても踊りに持ち込むつもりではあったが――セシルは随喜からアンマリスの身体を受け取る。
 三曲目のワルツが始まる。周囲に青い狐火を浮かべたセシルは、まだ動きの鈍いアンマリスをリードする。狐火の演出もあってか、幽幻な雰囲気に飲まれた視聴者たちは、アンマリスが半ば引きずられているというような細かいことはあまり気にならなくなっているようである。
(「このオブリビオンは歌声で周囲を壊滅させるやつだから、歌う余裕のないダンスバトルで挑んでくれてありがたいよ」)
 心の底からそう思いながら、セシルは徐々に狐火をアンマリスへと近づけて、彼女に燃え移らせる。

「あつっ……!!」

 だが、さすがに彼女も自分についた火に気づかないほど鈍くはない。セシルを振り払うようにして距離をとったアンマリスだが、いくら振っても叩いてもその炎は消えやしない。

「ミュージック、スピードアップ!」

 セシルの掛け声を合図に、それまでのゆったりとしたワルツから、心急かすようなテンポの曲へと演奏を変化させるマレーク。曲に合わせて、それまでのワルツとは打って変わった素早い動きで踊るセシル。その身振り手振りに合わせて、狐火を彼女へと向かわせる。
(「ああ、駄々っ子モードになって自爆しないかな?」)
 一瞬浮かんだ考えを、自身で打ち消す。
(「敵失を望んでる時点でまだまだか」)
 ならば、攻めて攻めて攻め立てるまで。
 青き炎に全身を舐められながらも、アンマリスは剣を杖代わりにしてまだ辛うじて立っている。

「ぼくもそろそろきつくなってきたけど、アンマリスはどうかな?」
「……、……」

 だが言葉を紡ぐだけの力は残っていないようだ。ならば、やることはひとつ。

「ラスト! 燃え上がれ、フォックスファイア!」

 合体した大きな狐火が、アンマリスを包み込む。その威力は視聴者の歓声によって通常の何倍にも膨れ上がり――。



 ――青き炎が消えたあと、そこに彼女の姿はなく。
 ステージを包むのは、視聴者の歓声と割れんばかりの拍手だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月05日
宿敵 『アンマリス・リアルハート』 を撃破!


挿絵イラスト