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陰りの森の小さな火種

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●陰りの森
 人里から少し離れたところにやや翳りの強い森があった。ときには獣が出没するこの森には人が訪れ、立ち入ることは稀なのだが……秋から初冬にかけては少し別の事情から賑わいをみせることがある。そして、今日も村から来たと思われる村人が2人。
「おお、あっだぞ。今日もだくさん見つけられそうだなぁ、きのこ」
 ――そう、ここはきのこの群生地になっているのだ。翳る環境が合うのだろう。
「だけどあまりこの森には入らないように長老様から言われてるだよ?(むしりむしり)」
 といいながらも、きのこを集める手は緩めない。そうして最後のキノコに手をかけた、そのとき――、

 ――ガサガサ、ジャリ。

 自分たち以外の音に気付いてその方向を見れば、視界に入り込んできたのは黒い面を被った侍。
「なん(ふがふが)……」
 声を上げそうになるも、気付けば青ざめた顔で口を手で塞ぐ相方がいた。そして、2人は顔を合わせて頷くと急いで森を離れるのだった。

●グリモアベース
「わわわ、大変なのですよー」
 そう言いながら、とてとてと白衣の小袖に緋袴の――巫女の少女が駆けてくる。彼女が通ったあと、グリモアベースにはその姿に似つかわしいサムライエンパイアの情景が浮かんでいた。
「こほん。みなさまはじめまして、わたしはちとせと申します」
 六宮・ちとせ(伊勢神宮のいつきのひめみこ・f03055)はにこやかに挨拶すると、すーはーと息を落ち着け、居住まいを正すと、落ち着いた声音で、ゆっくりと猟兵たちに語りかける。
「実はサムライエンパイアで困ったことがおきましてー、ある人里から少し離れたところにきのこが群生する森があるのですが、そこに野武士のような集団が住み着いたそうなのです」
 エンパイアでは戦乱は収まったものの、その暮らしに馴染めないものもまだ多く、それらがならず者になって人々に迷惑をかける……そういうことは、まだかなり起きていた。今回もその1つなのだろう。
「そこで、みなさまのお力で彼らを追い払って人々を安心させて頂きたいのですー」

 しかし、ちとせは「ですが……」と続ける。
「その野武士たちは人里に危害を加えることもないそうですけど、きのこを採取に来たようにも見えないそうで……、率直に言って怪しいです。ですから、ただ追い払うだけでは終わらないかもしれません。みなさまもお気を付けください」
 みなを見渡し、でもみなさまでしたらわたしも安心です。と笑顔で告げ、頭を垂れる。

「みなさま、よろしくお願いいたします」


千石まつり
 第六猟兵はじまりましたね。
 世界を渡る新しい物語に、わくわくしますね。
 ご挨拶遅れました。はじめまして、千石まつりです。

 まずは最初ということでサムライエンパイアのシナリオをお届けします。
 人里近くの森の小さな火種がどうなるかは皆様次第です、好きにプレイングして頂いて、サムライエンパイアの世界を自由に楽しんでください。

 それでは、皆さまのプレイングを楽しみにお待ちしております。

 がんばって参りましょう!

●余談
「きのこですよー。きのこですよー。大切なことなので2回言いました! 楽しみですねー」
 ちとせは尻尾をぱたぱたさせてとても楽しそうに語りかける。
「ちとせさん?このシナリオにはお祭りフラグメントはありませんよ?」
 通りかかった、プルミエール・ラヴィンス(はじまりは・f04513)が冷静に指摘する。
「えーーー? そうなのですかー」
 す、少しだけなら……ダメです。がっかりとちとせは落ち込んだ。
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第1章 冒険 『魑魅魍魎の森』

POW   :    危機的状況での食いしばり、体力を問われるモノ等

SPD   :    連続戦闘や森への迅速な侵入、他速度を問われる行動

WIZ   :    多数の敵を避ける、罠を仕掛けて防備を厚くする等

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

秋津洲・瑞穂
追い払うって言ったって……。
悪事を働く気配はないんでしょ? まず確かめなきゃ。

納刀したまま近づいて話し掛けてみるよ。
むこうから手を出してきたら悪人決定。
つまり私は、相手を試す試薬ということ。

【誘惑2】があるから話しかけやすいし、
【残像2】【オーラ防御2】で初太刀もいなしやすい。
【勇気2】で粘って、相手の意図を訊こうと努めるの。
……ま、一太刀くらいは受けてもいいや。

悪人でないとなれば、里の人が不安がるよと説くだけ。
悪人だと確定したら、戦闘技能を全部打って戦うだけ。
勝てそうになきゃ逃げる。【ダッシュ2】もあるしね。

「こんにちはー。お話してもいいですかー」
「住みつくに至った事情を教えてくれない?」


ミモザ・クルセイル
きのこの森に怪しい野武士…亡霊とかでもなさそうですが、
危険は避けるに越した事は有りません。
私は「レプリカクラフト」で仕掛け罠を作ろうと思います。
技能の「礼儀作法」を使い丁寧な態度で
地元の住民に森の中の穴場ポイントや獣道等、怪しい感じの場所を聞き出し
その近くに罠を設置しましょう。
余所者なので腕の立つ地元民に監視目的でついて来て頂くのも勿論構いませんし
必要ならばその場で簡易的な罠の作り方も教えられるかもしれません。
…くれぐれも行き倒れないように、気を付けます。
時間があるなら村の入り口や死角に仕掛けるのも良さそう、ですね?



●手探り

 ――きのこの森に怪しい野武士……亡霊とかでもなさそうですが、危険は避けるに越した事は有りません。

 そのために仕掛け罠を作ろうと、サムライエンパイアの村を訪れたのは、やや緑かかった白の髪に緑色の瞳の妖精のような見るからに可愛らしいオラトリオの少女、ミモザ・クルセイル(南十字・f00333)。もちろん、村を訪れたのは、より効果的な罠を張るための情報収集にである。罠とは通りやすそうなところや意外なところに仕掛けるものなのだから。
 村に入ってみると穏やかで、それなりに活気もあるようだ。普通の村の情景だろう。
 少し気を楽にして、近くの人に、
「村はずれの森について少し教えてほしいのですが……」
 と礼儀正しく丁寧に聞けば、何でこんなかわいい子が? と少し驚かれながらも、快く教えてくれる。そして、最近怪しい野武士が住み着いたから立ち寄るのはやめた方がいいと気遣ってもくれる親切ぶりだ。ただ、その声音はやや震えていて、よく見ると、その顔にも少し影がさしているように見えた。
 ――思ったよりも村人を不安にさせているのでしょうか。
 丁寧にお礼を言って、ミモザは森へと向かった。少しでも安心させたいその一心で。

 一方、その頃――。
 森の中で、金髪に紫の瞳のぴょこんと狐耳を立てた少女、秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)が周りを窺っていた。
 ――追い払うって言ったって……。悪事を働く気配はないんでしょ? まず確かめなきゃ。
 そう心で呟いて、野武士を探していると、それは簡単に見つかる。黒い面が特徴的な侍だ。その歪な雰囲気に違和感を覚えたが、でも、私は相手を試す試薬ということ――見極めに来たのだと納刀したまま一歩踏み出し、声を掛ける。
「こんにちはー。お話してもいいですかー」
 侍たちが一斉に彼女の方を向く。しかしその表情は面に隠されてわからない。
「住みつくに至った事情を教えてくれない?」
 再び問いかけて、そして、もう一歩踏み出そうとしたとき、誰が射たか、斜めから矢が飛来する。

 一太刀くらいは受けてもいいやとは思っていたけど……。矢が、彼女を貫き、とすっと地面に突き刺さる。気付けば瑞穂の姿はそこにはなく、すでに刀を抜刀して侍に迫っていた。
『剣刃一閃』
 素早く刀を振るう。しかし侍も抜刀一閃、がきんっと刀を合わせ弾きあう。
 それを見て形勢の不利を覚った瑞穂は、その反動を利用して飛び退るとそのまま駆けだした。

 罠を避け、森を抜け、後ろを振り返る。侍は見当たらない。どうやら、追ってくることはなさそうだ。
 ほっと一息ついて、道を見れば、妖精のような少女が倒れていた。
「な、何か食べ物をください……」
 あわてて持っていた木の実を食べさせる。少し落ち着いた彼女――ミモザから事情を聞くと、用心のために罠を仕掛けに来たらしい。そういえば森を抜けるときに危なそうな罠があったのを思い出す。そして、彼女が来たように、その他の猟兵たちも来ているのだろうか? 2人は情報を伝えるために村に戻るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

川内・岬
「野武士が怖い?そんなんじゃこの先生きのこれないわね!お姉ちゃんにお任せ!」
※言いたかっただけ

まずは調査……というか、様子見?
相手の規模、装備、目的、配置、行動範囲・パターンなどなど。
多数の敵をよけつつ、なるべく身を隠しつつ。
「まぁ、猟兵に話が回ってくるって事はつまりそうなんだろうケド……」

お土産にきのこ持って帰れるようなら少しだけ取っとこうかしら。
ちとせちゃんのお姉ちゃん(※自称)としてデキる姉力(おねえちゃんちから)をアピールしておかないと!


もし敵とエンカウントしたら誘惑で穏便に済むといいナァ……。


ムイナ・ドラベルシア
なるほどね。ならず者の集団を追い払えと……ふふ、良いわね。どんな手合がいるのか楽しみだわ。

危害を加える様子はないと言っても、邪魔なのは変わらないもの。ここは一つ、力で追い払わせてもらいましょうか。
攻撃されたら【見切り】【残像】で消耗を最小限に抑えつつ、【怪力】や【なぎ払い】で痛い目を見てもらいましょう。
流石にとどめをさすわけにはいかないけれど、痛い目見てまだ向かってくる手合には、尖鋭之太刀で腕の一本や二本は覚悟してもらわないといけないわね。

……さて。後ろに誰かいるとして、何を目的にしているのかしらね。



●野武士の正体
「なるほどね。ならず者の集団を追い払えと……ふふ、良いわね。どんな手合がいるのか楽しみだわ」
 嬉々として歩みを進めるのは、全身を黒で統一し、漆黒の髪をしたまさに黒という姿のムイナ・ドラベルシア(狂乱の刀・f08528)。その不敵に輝く瞳は金色に光っていた。

 ザッ―ー。
 森に無造作に踏み込むムイナ。しばらく進むと黒の面をした侍を見つけるが、その歩みは止まらない。
「さて、危害を加える様子はないと言っても、邪魔なのは変わらないもの。ここは一つ、力で追い払わせてもらいましょうか!」
 ザッ、ザッ、ザッ――キン。抜刀して、さらに一歩踏み込む。
 それを見た侍が抜刀して動こうとした、その瞬間――
「遅せぇ!」
 素早くそして鋭く侍に斬りかかり、ざんっという確かな手応えと音が響く。しかし、侍はそれを意に介さないかのように、無言で斬撃を繰り出してくる。
「……」
 侍の斬撃を見切り、そして、残像を残して避けるムイナ。だが、避けきれなかったのか一筋の血がこぼれる。
「捨て身ってわけか? そういうのは嫌いじゃねぇよ」
 さらに攻撃を繰り出そうとした、そのとき――光が満ちムイナの傷が癒える。

「野武士が怖い? そんなんじゃこの先生きのこれないわね! お姉ちゃんにお任せ!」
 とセリフを言って現れ、ごめん、言いたかっただけなの。と茶目っ気に『生まれながらの光』で辺りを満たすのは、黒髪に黒瞳のメイドのような姿をした、川内・岬(妖狐の戦巫女・f07682)だった。

「いいところなんだ、邪魔するな!」
 ムイナは闖入者の岬を制しようとするが、
「よく見て! 斬られたのにおかしくない? 猟兵に話が回ってくるって事はつまりそうなんだろうケド……」
 侍をよく見れば斬られたらしい場所は血も出ておらず、やや瘴気に似た黒い靄が漏れていた。
「オブリビオンか!」「やっぱりオブリビオンなのね」

「じゃあ、もう遠慮はいらねぇな!」
 合点がいったと、気合を入れなおすムイナ。
 それを見た岬は、侍は彼女に任せて、ちとせちゃんのお姉ちゃん(※自称)としてデキる姉力(おねえちゃんちから)をアピールしておかないと!と、お土産にきのこ持って帰れるようなら少しだけ取っとこうかしら。と周囲を見渡す……が、きのこは見当たらない。きのこってどんなところに生えてるんだっけ?

「終わりだ!」
 岬が焦っている間に、ムイナのなぎ払いが侍を捉える。どさりっと崩れ落ち、黒い靄となり消える侍。
「敵もわかったことだし、一度戻った方がいいかしらね?」
 ムイナが問うと、岬も頷き、2人は情報を携え村に引き返す。

 ――さて。後ろに誰かいるとして、何を目的にしているのかしらね。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒崎・颯也
うーん…茸、美味しいですよね…
炙って醤油を垂らすと酒のアテに最高…ってそうじゃなかった。

森に入って茸の群生地に向かい、周囲の状況を確認。
事前に村人達に茸の群生地や避けるべき場所を尋ねてから
向かう。
勿論タダでとはいわず、報酬を支払う。

お礼にと言っては何ですが…(三合瓶の酒を差し出す)

「追跡」「視力」を用いて、連れ去られた人や不穏な集団の行き先、
怪しい人影、最近人が通った痕跡などを探索。

追跡の必要が生じた場合は「忍び足」「地形の利用」を用いて
極力隠密を心がける。

移動時は『絶影』を用いて段差などはショートカットする。

野武士と戦闘になった時は逃げずに迎撃するが
やりすぎて殺してしまわないよう注意する。


リィン・エンペリウス
きのこの群生地・・・天然物のきのこの美味しさは病みつきだからね。これは是非ともいってみないと!

まずは獣奏器の【楽器演奏】で周囲の動物を呼んでみようか。
【動物と話す】を使って野武士を見かけたことがないかどうか聞いてみようか。もし知っているならその場所まで案内してもらうよ。

知らなかった場合は鼻の利く肉食獣に森の中には無い鎧等の鉄の匂いを探ってもらって、案内してもらおうかな。

ボクは現地までライオンライドのSPD自慢のライオンくんに【騎乗】して移動するよ。途中的がいた場合はライオンくんとボクとの【2回攻撃】で敵を撃破して進んでいこうか。
ライオンくん、敵に敵意が無かったら攻撃しちゃだめだよ。


アイン・ローレンス
行動:WIZ

里を襲わずキノコも採らず…
目的がハッキリとしないのはなんとも気持ち悪いですね。
先ずは情報収集といきましょうか。

「友の証」でぽんず(たぬき)とみりん(きつね)を呼び出す。
森となればあなた達の力がきっと役に立ちます。
よろしくお願いしますね?

敵の目的が分かれば1番良いですが、とりあえず戦力だけでも把握しておきましょう。

ぽんずとみりんは足跡や匂いに注意して索敵。
私は敵に見つからないよう細心の注意を払いつつ、動物のあとに続いて木の上を移動。
高い位置から敵の位置や規模を確認。

途中猟兵に遭遇したら確認した事を伝えておきたいですね。


空・ミナイ
ちとせさんのお話を聞き頷きながら思考する。
「落ち着いて安全に採取も出来ないなんて困ったものですね。」

現状を見てみないと分からない事が沢山あると思うので
僕は斥候として細心の注意を払いながら現場のキノコの森へ偵察に行き
およその敵の数や地形を把握して書き纏めたいと思います。

もし敵に見つかったら逃げ足と木登りは得意と思うので一目散に後退して隠れて気付かれない様に心掛ける。


伽羅・雷蔵
相手の目的を知らないことにはどうにもならないわけだし
まずは先に森へ入り観察してみたいな。襲うのは後でも良いだろう
理想としては野武士達が私を見つける前にこちらから声をかけることかな
「ここいらにはキノコ狩りへ来たのかな? 村の人たちが君たちを怖がっていてね。出来れば目的を聞かせてくれないか」

ただのキノコ狩りであれば村の人と一緒に話し合いでもしたら良し
別な目的があるなら後をつけて存分に探らねばなるまい。
とにかく、大事なのはキノコだ。なにしろキノコは美味しい。
もし村とキノコの敵ならば灰燼拳で殴り飛ばす。森にはイノシシよりも怖い私がいると知るがいい。
どうか平和的な人たちであって欲しいね。



●静かな足音
「うーん……茸、美味しいですよね……炙って醤油を垂らすと酒のアテに最高……」
 男は呟き、ってそうじゃなかった。とやや頭を振り、するべきことを思い起こそうとしようとした――が、不意に声がかかる。
「いや、まさしくそのとおり。大事なのはキノコだ。なにしろキノコは美味しい」
「だね。天然物のきのこの美味しさは病みつきだからね」
 振り向くと、2人ともニカッと心地よい笑顔を返してくる。それは、のほほんとした黒髪の羅刹の伽羅・雷蔵(羅刹の妖剣士・f05614)とマーブルフォックスの妖狐の白い髪をしたリィン・エンペリウス(もふもふ大好きグルメ妖狐・f01308)であった。
「これは……恥ずかしいところを聞かれてしまいましたね」
 少し照れた様子で、長身で黒髪のすらっとした軽快な身なりの男――黒崎・颯也(酔生夢死・f04766)は、さわやかな笑顔を見せる。その整った顔を見て、雷蔵はほうと目を細め、リィンは目を輝かせた。

「じゃあ、早速きのこの群生地に行ってみる?」
「そうだな。相手の目的を知らないことにはどうにもならないわけだし」
 リィンが問い、雷蔵が同意する。そして、2人は颯也を見る。それに気付き、
「ええ。実は村人達に茸の群生地のことを教えてもらいました。様子を窺うのに良い場所もです」
 きっと役に立つでしょう。と告げる颯也は、驚く2人に見つめられ、勿論お礼はしましたよ、笑みを浮かべながら手酌の仕草でおどけて見せる。それを見た雷蔵が我が意を得たりと、相づちを打ち、いい趣味だと称賛していた。そして、陽気に3人は村を出て森へと向かった。

 ――それから一刻。
 森に少し近づいたところ、道半ばに差し掛かったところで、リィンは、ちょっとごめんね。と皆に断って、獣奏器の演奏を始める。周囲の動物から情報を集めようというのである。楽しそうな音色が流れ、寄って来たのは小さなきつね。コンっ! と可愛く鳴いているのを見て、眷属だからか嬉しそうに抱き上げてリィンが尋ねる。
「ねぇ? 野武士を見かけたことがないかな? もし知っているならその場所まで案内してほしいんだけど……」
 だが、それを聞くやきつねは驚いたように身体を跳ね上げて震わせ、こん! とおびえたようにリィンに身を寄せる。その小さな身体からは、怖い、という感情だけでなく、危ないから近づかない方がいいよ、そんな想いも伝わってきた気がした。

 リィンが小さなきつねを帰したあと、
「なんでも、森の野武士はオブリビオンだったみたいですよ」
 颯也がさらり話し、動物がおびえるのも無理ないですね、と付け加える。雷蔵とリィンの2人はまた驚いて、じーっと彼を見る。その視線に気づいて、村人から聞いたことを素直に伝えて謝る颯也。2人は怒っていないようだった。が、
「これ大事なことだね」
「他に話してないことはないのかな?」
 と詰め寄られ、洗いざらい――黒い面を被っているだとか、何かを護るように立ち塞がるだとか、その他、聞いたことすべて話すことになった。
 聞かれて困ることは何もないわけですが、これは面映ゆいですね……とは、颯也の感想であった。

 ――そして、さらに一刻。
 3人は森の入口に立っていた。まだ野武士らしい姿は見えない。

●決壊の声
「まずは先に森へ入り観察してみたいな。襲うのは後でも良いだろう」
 雷蔵の提案に頷いて、慎重に気配を消しながら、3人は村人から聞いた場所に身を潜めた。
そして、しばらく様子を窺うと、怪しい人影が視覚を強化した颯也の視界に微かに映る。同時に、
「何か来るよ、それもいっぱい」
 リィンが耳をぴくんと跳ねさせながら、やや声を震わせながら小声で伝えてくる。颯也の視界にも、奥からゆっくりと多くの黒い面をした侍が木々を掻き分け整然と歩いてくるのが視えた。それは同時に、嫌な予感を呼び起こす。なぜなら、村人から聞いたのは――この森で何かを護っている侍。しかし、今見ている侍は明らかにこちらに歩み向かって来ている。それは、今までとは違うと訴えていた。

「もしあの野武士達が村の敵なら――」
 そう呟いたあと、こちら側が【村】の方向だと気付いて、ぞくりと悪寒が走る。
 そこから、導かれる答えは――。

「ボ、ボクに任せてくれないかな? スピード自慢のライオンくんがいるから早く着けるよ」
 そのとき、先に反応したのはリィンだった。2人はすぐに頷き、伝言を託す。リィンは素早く『ライオンライド』で黄金のライオンを呼び出して、ライオンくんに騎乗して駆けていった。少しでも早くと飛ばしたのだろう、それはあっという間に見えなくなった。

「ここは私達も退いたほうがいいかな?」「そうですね」
 2人は頷くが、しかし、黒い面の侍の動きが思っていたよりも早い。それを見て2人が覚悟を決めようとしたそのとき、
「まだ大丈夫だと思います。わたしも協力させてくださいね」
 ふわりと空から舞い降りてきたのは、銀髪に碧眼の美しいエルフのアイン・ローレンス(気の向くままに・f01107)だった。木の上から様子を窺っていたそうで、他の猟兵と会えてよかったと微笑む。そして、友の証(トモノアカシ)で、ぽんず(たぬき)とみりん(きつね)を呼び出した。
「ぽんず、みりん、森となればあなた達の力がきっと役に立ちます。よろしくお願いしますね?」

『紹介しましょう、ぽんずとみりんです』

 紹介された、ぽっちゃりたぬきとすらっときつね、ぽんずとみりんの2匹はアインに頷き、任せてと言わんばかりに胸を張る、愛嬌いっぱいだ。早速、ぽんずとみりんが走り始めると、アインは先導してくれるみたいですね、着いて行きましょうとみんなに声を掛け、森を駆けた。

 そして、森の出口付近まできたとき、不意に声がかかる。

「……こちらへ」
 そっと手招きするのは、空・ミナイ(求める物・f01988)。灰色の瞳が印象的な気弱そうな中性的な顔立ちをした黒髪の人物であった。
「落ち着いて安全に採取も出来ないなんて困ったものですね」
 と呟き、手に持つのは紙の束。ふと、その紙に目を落とせば、細かく地形や侍の様子が書き込まれていた。地形の調査は、無駄になりそうだけど……ね、とぽつりと漏らしながら。
「帰りましょうか……」
 その場を離れたあと、少し進むと後ろで大きな音がする。
「誰が置いたか知りません……が、せっかくなので使わせて、もらい……ました」
 少しは足止めできるでしょう、と。確かに、こちらへ向かってきていた侍の姿は今は見えない。

 そして一行は無事森を抜ける。ふと、振り返れば、多くの黒い面を被った侍がゆっくりと森を出てこちらの方へ向かって来ているのが見えた。皆は確信を深め、村へと急ぐのだった。


 そして、黄金のライオンに騎乗したリィンはひと足早く村に着くと、危険が迫っていることを告げた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『防衛戦に備えて』

POW   :    防衛設備の材料集め/建設

SPD   :    村人の避難誘導を行う

WIZ   :    敵の不意をつけるような罠や隠し通路を考える

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●襲い来るものと護るもの

 ――オブリビオンが村に向かって来ている。

 猟兵から伝えれた急報に、村は騒然となっていた。
 集まった村人は不安そうに顔に影を落としながら、どうしたら良いのか分からず戸惑い、あるものは、森に手を出したからだとか、またあるものは、放っておけばよかったなど言いたい放題……しかし、その顔には怒りではなく、ただ恐れの感情だけが貼り付いていた。

「みなのもの、静まるのじゃ」
 威厳ある声で皆を鎮めて、年を召した翁が奥より現れる。
「彼の侍がオブリビオンじゃったのなら、残念じゃが、遅かれ早かれこうなっておったじゃろう……」
 皆を見渡し、幾人かが顔を伏せるのを見て、翁は猟兵に向き直る。
「私は……この村の長を務めておる者です。この度は、森に居ついた侍がオブリビオンであることを調査して頂き、その襲撃を伝えてくれたこと感謝致します。それで、あとどれくらいの時間がありますでしょうか?」
 教えてほしいと、無言で訴えてくる……。村人もその答えが知りたいのか、しんと静まる。

 ――二刻ほどかな。

 それを聞いた村人から微かな悲鳴があがり、どよめく。それだけの時間で何ができるのだろうか? と。
 しかし、まだ諦めない者も、またここにいた。すなわち、猟兵だ。
秋津洲・瑞穂
「ありゃー……襲いに来るって?」

あとは腕自慢の人が倒しに行けばいいやと思って、
村でのんびりして(こほん)後詰めに備えてたのにな。

柵やら堀やら造ってるヒマはないよね。
長老様という人に何をするか話し、協力が得られたら
モノ運びの人数を借りる。得られなきゃ勝手にやるわ。

村の外に樹があれば【剣刃一閃】で叩き切って回る。
見通しを良くするためと、敵正面の両側に障害物を積んで
横に回り込みにくくするための材料よ。

樹が間に合わなければ、当面の生活に響かないと思われる
建物やら何やらを叩き壊して使わせてもらう。
え、苦情が出る? 呑気なこと言ってる場合じゃないのっ!

散開されるのも回り込まれるのもお断り! えんやこらっ!


黒崎・颯也
集団を防ぐのに備えは必要ですよね…逆茂木とか土塁とか。

他の猟兵のかたでそういうの考えるの得意そうな人が居れば協力を申し出、指示に従います。

特に穴掘りとか土嚢や資材の運搬のような力仕事は「怪力」「早業」を使用して積極的かつ迅速に行いますので何なりと申しつけてください。

逆茂木用の木材加工が必要なら 「早業」+『鋼断ち』で迅速に行います。

「地形の利用」もありますので防衛に効果的な地点の選定に関しては力仕事以外でもお役にたてますかと。


リィン・エンペリウス
うん、村に戻ってきたことだし、ボクは防衛設備の材料集めと建設を行おうかな。

まずは人員・・・ん?獣員?を増やすために強めに【楽器演奏】をして周囲の動物を多めに呼び寄せてみようか。

【動物と話す】ことでみんなに指示を出すよ。
力持ちの子は重い荷物の運搬や材料調達、素早い子は森に行って材料調達、器用な子は細かい作業や建設中に小さな怪我をした人の治療をお願いしようか。
他にこんな得意なことがあるよ~って動物にはその得意な作業をしてもらおう。
どんな設備を作るかは現場にいる村人や同じく依頼に同行した仲間の指示に従うよ。



●村を護るために
「――二刻ほどかな?」
 オブリビオンが襲来するまでの時間を告げたのは、リィン・エンペリウス(もふもふ大好きグルメ妖狐・f01308)だった。あまりにも短い猶予に、村人たちは騒めく。そして、それはそれを聞いていた、秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)も同じだった。
「ありゃー……襲いに来るって?」
 ただし瑞穂が驚いたのは猶予時間よりも、オブリビオンが村を襲ってくるということにであったが。
 ――あとは腕自慢の人が倒しに行けばいいや。
 そう思って、わたしは村でのんびりして……こほん。後詰めに備えるつもり――だったのだから。でも、襲われるのを黙って見ているわけにはいかない、と素早く切り替えて思考を巡らせ始める。

「うん、村に戻ってきたことだし、ボクは防衛設備の材料集めと建設を行おうかな」
 村を護るための防衛設備を作るのはどうか、とリィンが提案する。
「柵やら堀やら造ってるヒマはないよね……」
 作るものによっては時間がかかる。瑞穂は同意しつつ何がいいのかと考えていると、
「そうですね、時間も無いですし……逆茂木とか土塁とか、簡単で効果的なものが良いでしょう」
 確かに、集団を防ぐのに備えは必要ですよね。と協力しますよ、と申し出るのは、すらりとした軽快な佇まいの黒崎・颯也(酔生夢死・f04766)、彼もこの事態を何とかしたいと思っていたのだった。

「あとは……モノ運びの人数かな」
「人員……ん? 獣員? だったらボクが呼び寄せてみるよ」
 瑞穂の呟きに反応したリィンが、期待しててよ、と言って場を離れてゆく。呼びに行ったのだろう。
 そして、村人にも協力してもらえるように長老様と話してみようと、残った2人で話をしにゆくと、もちろんですと快諾してくれる。
 村の若い衆を好きに使ってくれて構いません、と若い男どもも引き合わせてもくれた。

 ここまで約半刻。
 3人はすばやく方針を決め、人手を確保すると、早速作業に取り掛かった。

「よし! できるような気がしてきた。さあやるよ!」

 瑞穂は意気込むのだった。

●材料集め
 村の外を見渡せば、疎らではあるものの幾つかの木が立っていた。
「この木がいいかな――」
 村人の案内で適当な木を見つけると、瑞穂が『剣刃一閃』素早く刀を薙ぐと、ぐらりと木が切断され倒れる。
「やりますね。では、こちらは俺がやりましょう」
 それを見た、颯也は
『破ッ……!』
 気合と共に繰り出される、鋼すら断つという『鋼断ち』で高速に木を切断する。
 瑞穂もやるね。と、いい笑顔を返す。
 そして、2人は何か通じるものがあったのか、清々しい自信にあふれた笑顔で見合うと、それからしばらく、張り合うように木を伐り続けた。村人は2人の見たこともない技に圧倒され、ただ、呆然と見ていた。

 しばらくして、十分すぎる材料が集まったころ、2人は一息ついて、村人に切り出された木々を運んでもらえるように頼んだ。村人は正気に戻ったように急いで木を手に取り、運ぼうとした……が、木が急に上に引き上げられ、奪われる。村人が驚いて見上げると、そこに居たのは大きな熊だった。
「うわっ? なんんでこんなところに熊が?」
「驚かせてごめんね、ボクが呼んだんだ。力持ちの子だから、木を運搬するよ」
 驚く村人にリィンが任せてと言って、木が運ばれてゆくのを、村人はやはり呆然と見上げ、見送るだけだった。

 しかし、普段接点のない猟兵を見た、村人にとってその印象は大きかったようで、もしかしたら、とその表情には少し希望が戻っていた。

 ――そして、一刻が過ぎようとしていた。まだオブリビオンの姿は見えない。

●防衛設備の建設
 村に戻ってきた3人と村人たち。
 すばやく準備をすると防衛設備の建設に取り掛かる。
「見通しを良くするためと、横に回り込みにくくするために、正面の両側に積んで――」
 瑞穂は指示を飛ばす。
「そうですね。こういうのはどうでしょう?」
 周り見た颯也が、地形を利用した配置を提案する。それを聞いた瑞穂と村人もなるほどと頷いてる。

「散開されるのも回り込まれるのもお断り! えんやこらっ!」

 瑞穂は気合を入れて、木々を配置していた。
 そして、予定していた逆茂木を配置し終えたころ、およそ一刻半が過ぎていた。

 ふと横を見ると、土が盛ってあった。リィンが熊に掘ってもらったらしい。

 ――着々と準備は整ってきていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイン・ローレンス
【SPD】他猟兵と協力して行動

今まで人里に手を出さなかったのは準備が整っていなかったから、
今は既に整っているということでしょうか…。
何にせよ罪のない人たちを傷付けさせるわけにはいきません。
森とは逆の方向へと避難して貰った方がいいでしょうか。

皆さんお話はもう聞いていますね?
大丈夫、あなたたちを護るために私たちが来たのです!
落ち着いて避難をお願いします。
あ、足の悪い方や小さいお子さんはどうぞこちらへ。
メロ(灰色狼)に乗っていって下さい。
暴れたり噛みついたりは絶対しません。優しい子なのでご安心下さいね。

お年寄りに手を貸しつつ、声掛けなども続けて少しでも安心して貰えるよう努めます。



●少し離れて

 ――今まで人里に手を出さなかったのは準備が整っていなかったから?

「ということは、今は既に整っているということでしょうか……」
 陰りの森の方を見て、オブリビオンの思惑に思いを馳せるのは、アイン・ローレンス(気の向くままに・f01107)。しかし、いまその答えはわからない。
「何にせよ罪のない人たちを傷付けさせるわけにはいきません」
 村に防衛設備ができたとしても、村人の皆さんには、避難して貰った方がいいでしょうか。アインは考える。なぜなら、襲来するオブリビオンは1人ではないのだから……。

「みなさん、お話は聞いていますね? 早速ですが、避難をお願いします」
 簡易ではあるものの、防衛設備が整って、少し明るくなった表情の村人たちにアインは話しかける。そして、村から避難するように促すと、あんたたち――猟兵なら大丈夫なんじゃないか? と、少し不満をのぞかせる。主に猟兵の活躍を目の当たりにした村人たちだ。
「はい、だからこそです。大丈夫、あなたたちを護るために私たちが来たのです!」
 だから、ここは私たちに任せて、避難してほしいと。備えはあるに越したことははないが、万が一ということはあるから、と訴える。村に籠っても、隙間はどこにでもある。どこからオブリビオンが入ってくるかわからないのだから。

「皆、猟兵様の言うことを聞くのじゃ。ここに残っても儂らは足手まといなのじゃ……」
 長老だけではない、アインの訴えに村人も自分たちを慮ったゆえの気遣いであると気付いて頷く。
「先導を、お願いしてもよろしいでしょうか?」
「はい、ご安心下さい。どうぞこちらへ」
 長老がアインに問うと、当然のことですから、とほっとして請け負うアインであった。

 そして、アインは村人をやや村から離れた場所へと導く。お年寄りには大丈夫ですか? と手を貸しつつ、声掛けしながら。

 ――そして、避難を始めて少し、陽が陰り始めたとき、

「あ、あれは――オブリビオンじゃないか!?」
 誰かが叫ぶ。それを聞いて、陰りの森の方を皆が見る。遠目では、それが何かは分からなかったが、禍々しい黒の波動が黄昏を浸食しようとしているかに見えた。

 それを見て、アインと村人は足を速める。が、それに付いてゆけない者たち――子供たちなどが当然でてくる。アインはわかっていましたと、一瞬苦い顔をするも、笑顔でその子供たちを灰色狼のメロに乗せる、
「大丈夫。優しい子なのでご安心下さいね」
 そう言って、不安を取り除きながら。そして、ひしひしと感じる嫌な予感を振り払いながら、道を急ぐ。
 そのあと何事もなく避難を終え、一息つくアインであった。が、まだ終わりではない。

「しばらくこのまま隠れていて下さいね。あとは、私たちに――」
 任せてくださいと、村人にそう言って、村への道をアインは戻って行った。

 ――そして、戦いが始まろうとしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『美形な山賊頭領』

POW   :    行けっ!
【従わせた部下の山賊達】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    死ねっ!
【両手の鉄爪】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    皆殺しだっ!
【我を忘れる程の怒りに満ちた状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●奪うもの

「は、これがあの集落か? こんなところに俺が奪うにふさわしいお宝があるのかねぇ!?」

 黒の波の後ろに金。目立つところに立つ金髪の盗賊風の男が一人、村を見下ろして問う。
 もちろん、それに応える者はいない。が、それは、男が一番良く知っていた。ニヤリと笑い、美貌を邪に歪めると、下知を飛ばす。
「まあ、それは奪ってからのお楽しみだな――行けっ!」
秋津洲・瑞穂
「どれほど粗末な石ころも、あなたには相応しくないよ」

せっかく見えたのだから、謹んで祓ってあげましょう。
……って、まだ山賊いるのね。技扱いになってて不憫……。

「じゃ、私は右半分を」

正面右側に陣取り、フォックスファイアを使って、
防衛設備と一緒に側面を塞ごう。
【残像5】【オーラ防御5】【勇気5】【時間稼ぎ7】もある。
棟梁の山賊技(技って……)も範囲が判らないし、
壁を作って中央に押し込めないと。

「こっちは通行止めっ!」

刀の方が楽なんだけどと言いつつ、今回は薙ぎ槍。
本格的な戦いには、槍でないと間に合わないの。
【なぎ払い5】【鎧無視攻撃5】【2回攻撃5】を適宜乗せて
巫覡載霊の舞で砲台GO。

さて結末や如何。


黒崎・颯也
これが操られてる一般人ならばともかく
部下達もまとめて元・山賊のオブリビオンならば
情けなど無用ですね

お宝捜索の名目で村の中で暴れられても困るので
防衛設備として設営した逆茂木や土塁よりちょっと手前で迎撃を

いったん高いところ(逆茂木の上あたり)で全体の様子を把握して
一番人口密度の高いあたりに飛び降りて戦闘開始


「早業」+「先制攻撃」+「なぎ払い」+『剣舞』
いわゆる居合抜きからくるりと体を一回転させる動きですが
剣の間合いよりかなり遠くまでを鎌鼬が薙ぎ払います

動きだけ見ていると軽く振っているように見えますが
「怪力」も載った攻撃なので
鎌鼬じゃなくて直接刀で斬られた相手はちょっと大変なことになるかもですね


アイン・ローレンス
【SPD】
まあなんてイケメンさん。
しかしイケメンさんだからって何をしても許されると思わない事です。
あなたに渡すお宝はありません!

目には目を、歯には歯を、そして爪には爪を。
「友の絆」でメロ(灰色狼)と共に戦います。
狙うは頭領のみ…と言いたいですが、取り巻きが邪魔ですね。
メロ、敵の間を縫うように全速力で駆けてください。
敵からの攻撃の方向は私が見極めます。
攻撃が来たら後ろに飛んで避けたり、近くの山賊をぶん投げて盾にしたりしてみましょうか。

さあ敵の喉元に噛み付いてやりましょう!



●はじまり
 陰りの森の方向、空を茜に染めて沈んでゆく太陽を背景に、その陰りから黒く染み出るように近づいてくる波――オブリビオンの侍たち。
「これが操られている一般人ならばともかく――」
 村から少し出たところ、防衛設備として設営した逆茂木の上に立ちながら、黒崎・颯也(酔生夢死・f04766)は、それを静かに見ていた。部下達もまとめてオブリビオンならば――情けなど無用ですね。と、意志を固めるのだった。

 ――近づいて、次第に侍の姿が明らかになる。
 それは、確かに森で見た黒い面を被った侍だった。颯也がその姿をしかと捉えたころ、侍たちは、村の前の逆茂木に気付き、波を左右に分けようとしていた。
「じゃ、私は右半分を」
「では、左は俺が行きましょう」

 それを見て、右側に飛び出したのは、秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)。
 颯也の返答に、瑞穂は一瞬笑みを浮かべるも、お礼は後でと振り返らず、すぐに真剣な表情をして手招く。すると、一つ二つ三つと、防衛設備の側から外に向かって、見えないかがり火に順に火を灯してゆくかのように、横一列に点々と炎が浮かび上がる。全部で十四の狐火――『フォックスファイア』だ。
「こっちは通行止めっ!」
 黄昏の陽に照らされ、陽炎のように淡く輝く炎で道を塞ぎ、侍の行く手を遮って、瑞穂が踊り出ると、黒い面を被った侍たちは歩みを止め、刀を抜く。それを見た瑞穂は、時間稼ぎはできそうだと、少し顔を綻ばせて、それから、気合を入れて薙ぎ槍を構えた。

 そのころ、左側では既に戦いが始まっていた。
 分かれて歩みを進めていた侍たちは、上から飛び降りてきた颯也に阻まれていた。それは、一瞬の出来事だった。颯也は着地するとその勢いのまま素早く体を回転させ、刀を抜刀し薙ぐと、一陣の風が吹いた。
『……。』
 颯也の身体が一回転して止まり、キンと納刀した音が響くと、周囲の侍たちがドサリと倒れ伏し、黒い靄となって消えてゆく。颯也が立ち上がったとき、後続の侍たちが抜刀して向って来ていたが、再び『剣舞』を振えば、それらも消えてゆく。
 しかし、その更に後続の侍が向ってくるのが見え、その姿に嫌な予感がした。

●転機
 予感は当たる。数が多すぎるのだ。
 颯也が何度目かの『剣舞』で侍たちを倒したころ、右側では瑞穂が押されていた。

「刀の方が楽なんだけど……本格的な戦いには、槍でないと間に合わないの!」
 薙ぎ槍をなぎ払い、侍と幾度となく渡り合う。そして、
『巫覡載霊の舞』
 心霊体で侍からの斬撃を軽減しながら、衝撃波を放ち打つ。衝撃波を受けた侍が崩れ落ちて消えてゆく。しかし、そのあとも次々とやって来る侍が瑞穂の心と体力を削る。

「このままでは――」「なんとかしなきゃ」

 侍を抑えながら増援を何とかする方法を2人が考えていると、とても大きなものが逆茂木を越えて、飛び出してきた。見ると、それは大きな灰色狼だった。そして、その狼には、アイン・ローレンス(気の向くままに・f01107)が乗っていた。
『メロ、いきますよ』
 灰色狼を撫で、メロ、敵の間を縫うように全速力で駆けてください。と願う。狙うは頭領のみ……と言いたいですが、取り巻きが邪魔ですから。と。メロは小さく鳴くと、駆けだした。

 そして、颯也と瑞穂は、アインたちが中央――後続の侍たちに向かって駆けるのを見て、今が好機と、気合を入れなおし、侍を打ち倒しながら、前へと戦線を押し上げるのであった。

●爪には爪を
 アインとメロは侍の間を駆け抜けると、その侍は刀を抜いて歩みを止めた。アインたちを敵と判断したのだろう、後続の侍も刀を抜いて、近づけば刀を振り下ろしてくる。
「メロ、右です!」
 アインの言葉に、メロは軽やかなステップで刀を避けると、侍に噛み付いて強引に投げつける。侍が転げ、その隙をついて、また駆けだす。アインたちは、そうして奥へと駆けてゆく。

 ――そのとき、素早く近づくものがいた。
「邪魔なんだよ!」
「メロ、後ろに跳んで――」
 言い放つと、黒光が一閃し、黒い爪がアインたちのいた地面を抉る。間一髪それを避けたアインとメロ。そして、跳び退った反動を使って、飛びかかり爪で薙ぐ。目には目を、歯には歯を、そして――。爪と爪がぶつかり弾き合い、やや距離が離れる。

 見れば、金髪の盗賊風の男……この男が頭なのだろう。
 まあなんてイケメンさん。しかしイケメンさんだからって何をしても許されると思わない事です。
「あなたに渡すお宝はありません!」
 アインは告げた。

 しかし、男は愉快そうに笑って言う。
「くくっ。そりゃそうだ。盗賊が来て、お宝を差し出す奴なんていねぇからな。だから、奪いに来たんじゃねえか! さあ始めようか」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ムイナ・ドラベルシア
あら、いつの間にやら変な連中が来ているわね。それにしても……手下を先行させるだなんて、自ら自分は弱いですって言ってるようなものじゃないかしら? ま、どうでもいいけれど。
――じゃ、こっちもやることやらせてもらうとするか。

手下がいくら多かろうとオレには関係ねぇ。【ダッシュ】で集団に突っ込んで、【力溜め】【なぎ払い】【範囲攻撃】で手下どもを吹き飛ばす。
ある程度数が減ったら、【ジャンプ】【踏みつけ】で手下どもの頭を踏み越えて、本命に【薄刃陽炎】で斬りかかるぜ。
妨害されようが、【残像】【見切り】で回避だ。逃げられても【追跡】でどこまでも追いかけるぜ。

――さぁ、存分にオレと死合おうじゃねぇか!



●殲滅
「あら、いつの間にやら変な連中が来ているわね」
 村からふらりと出て、群がる侍たちを見るのは、ムイナ・ドラベルシア(狂乱の刀・f08528)。
「それにしても……手下を先行させるだなんて、自ら自分は弱いですって言ってるようなものじゃないかしら?」
 それを見て、少し呆れるように呟くも、ま、どうでもいいけれど――。とすぐにその思考を放棄する。そのようなことは、実際に戦ってみればわかるのだから。そして、よく見れば、すでに侍と戦っている他の猟兵も見え、少し遅れたけど、いいタイミングかしらね。と侍たちを睥睨して、

 ――じゃ、こっちもやることやらせてもらうとするか。
 ムイナが気合を込めてスイッチを入れた。すると、何か――突風のような圧力が一帯を通り抜け、その一瞬で周囲の空気を変える。少し遠くにいた侍さえもがムイナの方を見るほどに。そして、同時に、

 ザッ、ザザッ、ザザザザッ。

 ムイナは歩み出し、そして、走り出していた。
 その徐々に足を早めながらその速さのまま、集団に突っ込み、力を乗せた刀で薙ぎ払う。侍は刀で受けようとして――受けたが、その力に吹き飛ばされ、他の侍を巻き込んで倒れる。その中には、そのまま力尽きて黒い靄となり消えゆくものもいた。
「手下がいくら多かろうとオレには関係ねぇ! どきやがれ!」
 ムイナはそれらを省みず、速度を緩めず、更に徐々に足を速めながら、奥へと突き進む。

 侍たちを吹き飛ばしながら、破竹の勢いで突き進むムイナは、しばらくして、盗賊風の金髪の男が狼を連れた猟兵と対峙しているのを見つける。それを見て、ムイナは目を少し細める。
「へぇ、いいもの持ってるじゃねぇか!」
 粗雑に見えて繊細、些細な違和感も見逃さない……戦闘においては。狙うはそれだと、ムイナは、目の前の侍を踏み台にして、大きく飛び上がる。
『堅固な鎧、不動の防御、大いに結構。その分オレも、斬りごたえがあるってもんさ!』
 ムイナの尖鋭之太刀が伸びる、薄刃陽炎だ。そして、――チン、と小さく音が響く。
「手応えあったぜ!」
 ポトリ。落ちたのは、男が持っていた円環。そして、それは落ちると黒い靄となって消えた。

●追撃
「ちっ、新手か!」
 盗賊風の金髪の男がムイナを見る。
「もう侍も出せねぇだろ? さぁ、存分にオレと死合おうじゃねぇか!」
 ビリッと空気が震える。あの円環から、侍と同じ違和感を感じたぜ。そうだろ? と、男に視線で問う。それを感じて分が悪いと判断したのだろうか、盗賊風の金髪の男が踵を返す。
「逃がすかよ! どこまでも追いかけるぜ!」
 ムイナは追いかける。程なくして、男は止まり振り返る。
「ははっ。猟兵っていうのは、侍並みに猪か?」
 ムイナを見て、にやりと笑う。
「確かに、侍はもう出せねぇ……が、もともとあれは借り物。所詮、侍は知恵の回らない使い走りの役立たずだからなあ!」
 男が指笛を鳴らすと、山賊風の男達が回りに姿を見せた。

「――行けっ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

リィン・エンペリウス
あれがオブリビオンの親玉なんだね・・・みんな、村を守ろうね!

敵の数が多そうだし、【楽器演奏】で村の周囲にいる動物達と作業を手伝ってくれた動物も集めて、仲間と協力して敵を迎え撃つよ。
『ライオットアニマル』を使って、敵の攻撃「行けっ!」に対応した攻撃を動物達で行うよ。
攻撃力には力の強い動物で、命中率なら獲物を獲るのが得意な動物で、攻撃回数なら大量の小動物で攻撃を相殺して、他の仲間のみんなが敵への攻撃に集中出来るように隙を作るね。

仲間の攻撃で敵がひるんで、攻撃出来るタイミングが出来たら動物達で一斉攻撃するよ!



●罠
 ……やや寂れた山道、……小さな木陰、
 どこに隠れていたのか、山賊風の男達が得物を構えて、見下ろしながら豪快な笑みを浮かべていた。
 盗賊風の金髪の男も、してやったりとニヤリと笑い、勝ち誇ったように、周りに姿を見せた現れた男達に指示を出す。すると、男達は、威勢よく声を上げ、獲物――刀を持った猟兵に向かって殺到していった。
「りゃあああああええ!」
「おおおおお!」

 ドン、(ごろごろ)ドサリッ。

「うぉおおおおお……お?」

 しかしそのとき、迫りくる山賊の後ろの方から落ちてきて、転がり止まる。何かが……。
 山賊たちは、何があったのかと、一時……声を止め、しかし、余裕ある感じでそれに目を泳がせる。こんな良いところで、仲間の誰かが粗相をしたのかと、軽い気持ちだったのかもしれない。
「ひぃ――」
 だがそれは、それに反して、血まみれになった山賊の男だった。

 何かあるぞと、山賊たちは急いで後ろを振り返る。
 そこには……大小さまざまな動物たちがゆっくりと近づいて来ていた。
「く、熊?」「おい、狼もいるぞ!?」
「なに!?」
 山賊たちは口々に声を上げ、盗賊風の金髪の男も驚きの表情で見上げる。

「あれがオブリビオンの親玉なんだね……」
 ひときわ大きな熊から、ぴょこんと顔を出して眺めるように手をかざすのは、リィン・エンペリウス(もふもふ大好きグルメ妖狐・f01308)。よく見ると、熊の爪から赤いものが滴っていた。

 リィンはひとしきり周りを眺めると、
 ――他の仲間のみんなが敵への攻撃に集中出来るように隙を作ろうかな。
 と、呼び出しに応じてくれた動物たちにライオットアニマルで号令をかける。

『よ~し、みんな!敵を攻撃だ~!』

 動物たちが威嚇の声を上げて、素早い機動で、山賊たちへ襲い掛かる。
「グルゥ」「ガウウ」「クワゥ」
 熊がのしのしと近づき、素早く横殴ると、山賊はあっけなく血しぶきをあげてゆっくりと倒れた。それを見た山賊が、ひっと小さく悲鳴を上げ後ろに下がろうとして、何かにぶつかり振り返ると、そこに居たのは……別の熊だった、絶叫が響く。狼がとんとんと軽快に近づけば、噛み付かれた山賊の苦悶の声が。そこは、阿鼻叫喚の坩堝と化していた。ある山賊は熊に、ある山賊は狼に、またある山賊は狐に倒され、地面を赤く染め、徐々に数を減らしていく。

 盗賊風の金髪の男は、それをただ呆然と見ているだけだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

秋津洲・瑞穂
親玉が出てきたら、飛び道具はもう捨ててもいいよね。
抜刀して突撃するよー。

真の姿を開放、尻尾を九本に増やし(それだけ)、
【勇気7】【ダッシュ7】で突っ込みまする。

「私がいるのを忘れてるんじゃないのっ!?」

【鎧無視攻撃7】【2回攻撃6】【残像7】【オーラ防御7】
を使って剣刃一閃、真っ向勝負を挑みます。

そもそも気に入らない。
こんな村にどれほどの宝があると思っているの。
はした金をコソ泥する程度なら真面目に働きなさい。
いえ大金なら盗んでいいってことじゃないけど。

「志が小さすぎるでしょう! それでも男かっ!」 
「帰れバカモノーっ!」

もう連携も要らない。なにがなんでも張り倒すっ!



●向かう先には
「お頭! 助けて――」「頭領っ!」

「くそっ、なんだこれは!」
 倒れてゆく部下の山賊たちを目にして、信じられないと立ち尽くしていた盗賊風の金髪の男――山賊の頭領は、状況を理解して苦渋の表情で悪態を付く。

 しかし、すぐにニィと口角を釣り上げて、
「はっ。仕方ねぇな! もうここに用はないからなぁ」
 と言うや否や、
「おい! ここは退くぞ!」
 と大きな声で宣言して山賊の頭領は走り出した。そして、山賊たちもそれに続く。
 動き出した山賊たちの動きは早かった、あっという間に駆け抜けてゆく。動物、そして、猟兵も、追いかけていたが、少しずつ離れてゆく。

 山賊の頭領は、走りながら振り返り、笑みをこぼす。
「ははっ。予定は狂ったが、俺たちのやることは変わらねぇ。奪え! お前ら一気に行くぞ!」
「おー」「任せてくだせぇ」
 頭領が号令をかけた、そのとき――山賊たちの前を駆け抜けるものがいた。

「私がいるのを忘れてるんじゃないのっ!?」

 駆け抜けざまに振ったのは刀――『剣刃一閃』。
 剣に触れた山賊が倒れ、四肢が断ち切れる。ぎゃぁーという悲鳴が木霊する。駆け抜けたのは、秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)。そして、尻尾を九本ふっさふっさと揺らしながら、残った山賊たちを見ると、刀を持ってその方へと歩みゆく。少し据わった目で山賊たちを見て、
「もう連携も要らない。なにがなんでも張り倒すっ!」
 宣言すると、一気に山賊たちの群れに突っ込んでは、刀を斬り下ろし、薙ぎ払い、跳ね上げ、突きとがむしゃらに振り回す。
「(えい!)そもそも気に入らない」
「(とりゃー!)こんな村にどれほどの宝があると思っているの」
「(うりゃー!)はした金をコソ泥する程度なら真面目に働きなさい」
 ――いえ大金なら盗んでいいってことじゃないけど。
「(どりゃー!)帰れバカモノーっ!」
 刀を一閃させ山賊たちを叩き切ると、肩で息をしながら、頭領に向き直り、刀で指して告げた。

「志が小さすぎるでしょう! それでも男かっ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

黒崎・颯也
配下をかいくぐって無事に頭領に相対できた方が居ましたか。

ならば微力ながら援護しましょう。
頭領を中心に「早業」+「カウンター」+「二回攻撃」+「なぎ払い」+『錬成カミヤドリ』で攻撃。

頭領が攻撃を放とうとしたタイミングで、
颯也の本体の無名刀を複製し、それら全てを使って頭領を集中攻撃します。
(本来の姿が若干現れ、血のように赤い文様が刀身に浮き出ています。)

10本以上の刀剣に同時に狙われては流石にこちらの相手をせざるを得ないでしょう。
この隙にどうか乗じてください。



●仕合
「なぜ!? こんなところに」
 待ち伏せか? と、山賊の頭領は狼狽える。村からおびき出した猟兵を振り切って駆けてきたはずだ、と。そう、山賊たちが向かったのは村のはずだった。それなのに、道半ばで足止めされるとは、考えていなかったのだ。

 しかし、驚いたのは黒崎・颯也(酔生夢死・f04766)も同じだった。
 ――俺が遠くに見たのは、配下をかいくぐって無事に頭領に相対できた方が居たことだけです。
 ならば微力ながら援護しましょう、と向かっていましたが、まさかその途中でその頭領と遭遇するとは、思っていませんでしたね。ですが、話に乗ってみるのもいいでしょう。

「そうです。付き合ってもらいましょうか」
 さも当然であったかのように、さらりと流し、颯也は自然に刀――本体の無名刀を抜く。そして、手始めにと斬り下ろした。
「ちっ、仕方ねぇ」
 それを頭領はひらりと躱し、ここに至っては、と両手の鉄爪を構える。
「だが、俺もただ頭領はやってねぇ。頭も切れるが、腕もたつ。強いぜ?」
 そう言うと、近づき爪を伸ばしてくる。
「死ねっ!」

 颯也は爪を掻い潜り、薙ぎ払う。そして――、
『錬成カミヤドリ』――複製されるのは、本体の無名刀。それは、重ねての薙ぎ払いの二連撃。洗練された早業だった。

「くっ、危ねぇな」
 頭領は体を捻り、何とか躱す。すべては躱せなかったようだが一筋の傷に留める。致命傷には程遠い。
「だけどなぁ、分かれば怖くねえ!」
「これでもでしょうか?」
もう見切ったとニヤリと笑い、今度は俺の番だと、頭領が鉄爪で攻撃しようと踏み出す。しかし、颯也が複製できるのは十七本。攻撃の瞬間を狙って、ずらりと並ぶ無名刀が、頭領を襲う。
「なに!?」
 これには頭領も危険を感じたのか、咄嗟に鉄爪を引き戻し防御に回るが、十本以上の刀剣に同時に狙われては流石に防ぎきれず、傷が増えてゆく。
「ぐ、調子にのるなよ! ――死ねっ!」

 ――ガキン。

 何かが壊れる嫌な音が鳴る。
 残念だったなと、笑みを浮かべる頭領。
 ガチャリ。しかし、落ちたのは、黒い鉄の爪。

「――勝負ありましたね」
 周りに浮かぶ十七本の無名刀は無傷で、その刀身には血のように赤い文様が浮き出ていた。

 足止めはできました。あとは――この機にどうか乗じてください。

大成功 🔵​🔵​🔵​

吉瀬・煙之助
きのこが採取出来ないのは困るね~、この時期鍋に入れるととっても美味しいからね。
というわけで、及ばすながら加勢させてもらうよ。
こっそり【忍び足】で近づいて突然現れて奇襲させてもらうよ、山賊に遠慮なんかいらないよね♪
鎖付き仕込み煙管で【気絶攻撃】で殴りにいくよ。
「いくらイケメンでも山賊は許されないんじゃないかな?」
両手の鉄爪が怖いから、ヒットアンドアウェイで殴ったら下がって投げ銭や仕込みの鎖で味方の【援護射撃】しつつ遠距離攻撃するよ~。
鎖で動きを封じられたら、【錬成カミヤドリ】で強い一撃をお見舞いするよ。
終わったら是非キノコ分けてもらいたいね~、天ぷらにするのも良さそう。



●機を逃さずに
「きのこが採取出来ないのは困るね~、この時期鍋に入れるととっても美味しいからね」
 そう呟く、風流な姿のおじさんが、ぷかっと煙管を吹かして村から出てくる。言葉とは裏腹に困った感じはまったく感じさせず、むしろ鍋に入れたきのこに想いを馳せてなのか――顔を綻ばせて、ぶらりと歩みを進める吉瀬・煙之助(煙管忍者・f10765)であった。
「というわけで、及ばずながら加勢させてもらうよ」

 煙之助は、目立たないようにこっそりと音を忍ばせてゆっくりと近づいてゆく。
 しばらく行くと、ほどなくして山賊の頭領を見つける。しかし、よく見るとその片腕の鉄爪は半壊していて、勝負がついたと他の猟兵も言ってるみたいだし――。
(あれ、これは終わってたってやつかい?)
 煙之助は、それならいいんだけどね~と、期待しながら注意深く観察する。しかし、山賊の頭領の目がギラリとまだ死んでいないのを見て、これはまだだね、とすぐに察した。
 ――まぁ、そうだよね~。
 なんにせよ、追い詰めてるっていうのは本当みたいだし、この状況は利用させて貰うかね。そう言って、煙之助は姿を消した。

●決着
「ははっ、猟兵か……」
 山賊の頭領は、カラカラと笑う。
「ここまでとは思ってなかったぜ! だがなあ、俺も山賊の頭領だ。簡単に倒れるわけにはいかねえんだよっ!!!」
 そう言うや否や、美貌を歪めて……獣のような唸りを上げる。
『うぐぅるぁあああああああ!』
 そして、怒りが満ちた強烈な視線でギンと睨むと、ただ怒りに任せて襲い掛かってきた。

 しかし――、
 そのとき、その間を分かつように、鎖が割り込む。そして――、
「隙だらけだね~。いくらイケメンでも山賊は許されないんじゃないかな?」
 それに気を取られて動きの鈍った頭領に、いつの間にか忍び寄っていた煙之助が煙管を振り下ろす。
『ぐうぅッ』
「まぁ、さすがに気は失ってくれないね~」
 ベコンっと嫌な音がなり、身体が揺らぐが、頭領はそのまま強引に鉄爪を薙ぐ。
『――死ねっ!』

「おっと、鉄爪は怖いねぇ。だけど、そろそろ終わりにさせてもらうよ」
 少し下がって頭領の鉄爪を避けた煙之助は、火種を落とすように煙管で軽くトントンと叩くと、秘めた力を解放する。
『錬成カミヤドリ』――煙之助が複製するのは煙管。仕込み鎖の煙管だ。
 複製されたのは全部で十二。そこから仕込み鎖が一斉に伸び、頭領の手足に絡みついてゆく。頭領は逃れようともがくが鎖は徐々に強く締め付けてきた。そして、動きの止まった頭領に、煙之助は力いっぱい煙管を振り下ろすのだった。すると――頭領は崩れ落ち、
『ち、ちくしょう』
 と悔しそうに呟くと、霧散していった。
 これが、オブリビオンとなった美形な山賊頭領の最後だった。

●かくして
「終わったね~」
 ちょっと大変だったけどね~と、煙之助は村を歩む。
 避難していた村人には、すでに連絡が行っていたようで、活気も徐々に戻って来ていた。
「猟兵さん、ありがとね」「すまなかっだな」「すごかっだな、助かっただよ」
 村人はみな笑顔で、煙之助とその他の猟兵に口々に感謝を述べる。

 こういうのも悪くないよね~、と煙之助が周りを見れば――、
 村人たちがたくさんのきのこを火で炙ったり焼いたりして、みなに配っていた。
「――どうぞ」
「目移りしてしまうな、どれも美味しそうだ」
「あら? わたしにもくれるの?」「これは、酒が欲しくなりますね」
 とてもいい匂いが漂ってくる。

「きのこも……まあ、いいですね」「きのこの森って言ってたなぁー」
「きのこですか?」「お土産に持って帰っていいのよね?」
「もちろんだよ、いっぱい持っておゆき」
 きのこを貰って喜ぶものがいたり、

「ありがとうございます」「天然物のきのこの美味しさは病みつきだね」
 貰ったきのこを、連れ添った動物と分けたりしていたりと様々だが、皆一様に明るく嬉しそうだ。
 もちろん、大人も子供たちも大喜びである。

「是非キノコ分けてもらいたいね~」
「ちょっとまっててね」
 煙之助がふと漏らした呟きを聞き逃さなかった村人が、まだもらってなかったの? と、笑顔でキノコをたくさん押し付けて渡してくれる。煙之助は、みなの笑顔を見てたら貰うのを忘れてたんだよね、と飄々と告げながら、手にいっぱいのキノコを見て、これは天ぷらにするのも良さそうだと想像して顔を綻ばせるのだった。
 夜が更けてゆく。しかし、この日は村に陽気な声が絶えることはなかった。

 こうして、人里から少し離れたところの森で起こった小さな火種は猟兵たちによって消し止められた。
 猟兵たちの活躍により、村と村人、そして、きのこは守られたのだった。

 了

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月11日


挿絵イラスト