エクソダスは連なる、エースの熾火
●賭け
勝った、と小国家『プラナスリー』の国家元首に収まった女性『ノイン』は確信した。
賭けに勝ったのだ。
彼女は笑む。
計画の歯車は狂ったが、今にして思えば誤差のようなものだ。
『タイプG』の少年たちがプラント暴走の光によって後天的なアンサーヒューマンへと変貌したことは布石でしかなかった。
いや、捨て石であると言ってもよかったし、また同時にブラフであったとも言える。
「キャバリア操縦適正……『エイル因子』に依存しない、突然変異体……! 漸く、漸く、私の手に……!」
彼女の背後にあるのは、奇しくも『首無しのキャバリア』であった。
『あの時』とは、真逆。
いや、むしろ運命と言える。
「……この機体に、乗ればいいんだな?」
緑色の瞳をした青年は『ノイン』と彼女の背後に立つキャバリアを睨めつけた。
敵意。
怒り。
どれもが刺すような鋭さだった。
だが、『ノイン』は笑って、その鋭さを受け止めた。
「ええ。それであなたの望みは叶うでしょう。『クリノ・クロア』」
「もう一度聞く……彼女は無事なんだな?」
「彼女?」
「とぼけるな。『ツェーン』だ!」
激昂した『クリノ・クロア』の声に『ノイン』は肩をすくめた。
「そう怒らないで」
「巫山戯るからだ。もしも」
「無事ですよ。五体満足。私は何もしていません。あくまで彼女の自由意志を尊重しましたよ?」
「……何を言っている?」
『クリノ・クロア』にはわからなかった。
彼は小国家『フルーⅦ』から誘拐された『ツェーン』を単身追って、『プラナスリー』にたどり着いていた。
だから、自由意志、というのはおかしいと思ったのだ。
そもそも自由意志を尊重するというのならば、誘拐することなどない。
「麗しいですね、愛とは。互いを思い合うこと。相思相愛。それは尊ばれるべきものです。ですが、運命とは残酷なものです。いつだってすれ違ってばかりです。すれ違うのならば、摩擦が生まれるでしょう。摩擦が生まれるのなら、傷も生まれる」
「人を煙に巻くような物言い!」
「話は最後まで聞くべきでは?」
彼女の背後で、さらにもう一騎のキャバリアが起動する。
それは赤熱するような光を機体の各所から放つ機体……それを『クリノ・クロア』は知っていた。
よく知っていた。
彼の緑の瞳が嘗て、捉えたことあったのだ。
あの動乱の日々。
すでに滅亡した小国家『フィアレーゲン』。
強さだけが全ての象徴たる機体――『アークレイズ・ディナ』。
そう、『ツェーン』が駆った機体である。
「なんで、それがここにあるッ! まさかっ!」
「ええ、そのまさかです。『ツェーン』はあなたを解放する代わりに、この機体に乗ることを承知しました。そして」
彼女の笑みと共に『首無しのキャバリア』が、あるべき頭部の代わりに『光輪』を輝かせ、その手を『クリノ・クロア』へと伸ばした。
「私の本当の狙いは、あなたです」
求めるは『エース・カウンター』。
自然発生した突然変異体。
それが『クリノ・クロア』だった。
『ノイン』が求めた最後の1ピース。
「天の認むる在り方よ。
ああ、君は征くか。
慈悲と慈愛の在り方示す君よ。
ああ、君はそれでも」
『ノイン』は歌うように言葉を紡ぐ。
「讃えよ、『ケルビム』
謳えよ、『セラフィム』
天地に『生命讃歌』よ響け。
幸あれ、幸あれ、道行く者に幸あれ」
そして、『首無しのキャバリア』は『クリノ・クロア』を己がコクピットに収める。
「幸を共して生きよう。
渦中の喜望よ――」
●クロムキャバリア
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア世界……これまで多くの侵略事件が阻止された結果なのか、オブリビオンマシン軍団による侵略行為も規模を増しつつあるようです」
そして、とナイアルテは今回の事件が、恐らく彼女が見た予知の中においても最大規模の軍勢によるケースであると語った。
「オブリビオンマシンの軍勢による侵略……標的となったのは、小国家『フルーⅦ』です。最悪なことに、この軍勢を率いているのは、小国家『グリプ5』から派遣されていた『ツェーン』と呼ばれる女性と『クリノ・クロア』と呼ばれる男性です」
その名に聞き覚えがある猟兵もいたかもしれない。
彼女たちが何故、と思う者もいたかもしれない。
彼らは戦乱続くクロムキャバリアで、混乱の中、離れ離れになってしまったようである。
そして、それぞれの解放を望み、オブリビオンマシン軍団を手繰る黒幕の手管によってオブリビオンマシンに搭乗してしまったのだ。
そうなれば、当然彼らの思想は狂気に染まってしまう。
「そして、オブリビオンマシン『ケルビム・ミルトス』を引き連れ『フルーⅦ』へと侵略を開始したのです。『グリプ5』から派遣されている彼らが友好国である『フルーⅦ』を攻めればどうなるか……」
言うまでもない。
だが、猟兵達にはそこまで関与することではないだろう。
ただ、オブリビオンマシンのもたらす破壊行為を食い止めるだけなのだ。
「それ以前に彼らは『エース』と呼んで差支えのないほどのパイロットたちです。彼らを止める手段は、多くはないでしょう。オブリビオンマシンを破壊せねば、この侵略作戦は止まりません」
ナイアルテは、そう告げて猟兵達を送り出す。
オブリビオンの蠢動は、遥かに激化している。
それを証明するかのような事件。
過去から連なる今。
だが、総決算にはまだ遠い。
それでも、猟兵達の底力が試されようとしていた――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリア、奸計に堕ちた二人の『エース』が引き起こす大規模侵略作戦を食い止めるシナリオになります。
侵略の嚆矢が放たれたのは、小国家『フルーⅦ』です。
これまでにないほどのオブリビオンマシンの大群と共に迫る彼らを止め、元凶たるオブリビオンマシンを打倒しましょう。
●第一章
集団戦です。
謎のユーベルコードに寄ってオブリビオンマシン化した『ケルビム・ミルトス』の大群であり、侵略軍の第一波です。
パイロットは例外なく正気を失っています。
ですが、マシンだけを破壊することができれば、彼らは正気に戻ることでしょう。
この『ケルビム・ミルトス』を操るパイロットたちは、クロムキャバリアの多くの小国家から行方不明や生死不明となっていた者たちばかりのようです。
故に所属がバラバラです。
●第二章
ボス戦です。
侵略軍第二はを率いる『アークレイズ・ディナ』との戦いになります。
パイロットは『ツェーン』です。
嘗て、最強のキャバリアパイロットとしての技量を誇っていた彼女の力量はシュミレーションと言えど『悪魔』、『救世主』とさえあだ名された『フュンフ・エイル』を撃破するほどのものです。
さらに、この周辺には『ケルビム・ミルトス』が展開しています。
これを無力化しつつ、彼女と戦わねばならない厳しい戦いとなるでしょう。
●第三章
ボス戦です。
この侵略軍を率いる『首無しのキャバリア』との戦いになります。
パイロットは『クリノ・クロア』です。
もしも、前章にて『ツェーン』を死亡していた場合、彼はオブリビオンマシンの狂気に呑まれてパワーアップして狂気を増幅させて手が付けられない強さを誇ります。
ですが、前章で彼女を救出できていたのならば、パワーアップも起こらないでしょう。
それでは過去から今に絶えず時は運び、再び熾火のごとく狂気が再燃しました。これを前にして立ち向かう皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『ケルビム・ミルトス』
|
POW : エアレイドショット
【飛翔】し【機関銃】で射撃している間、射程範囲内の味方全員の行動成功率を若干増やし、敵全員の成功率を若干減らす。
SPD : プラズマフォーメーション
自身の【腕】を【プラズマナックル】化して攻撃し、ダメージと【仲間との連携】による【撹乱と感電】の状態異常を与える。
WIZ : オーバーチュア
【赤熱するコア】から【共鳴音】と【衝撃波】を放ち、レベルm半径内の敵全員を攻撃する。発動前の【エネルギーチャージ】時間に応じて威力アップ。
イラスト:mosu
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
小国家『フルーⅦ』に迫る無数の熾火。
それは揺らめくようにして輝く『ケルビム・ミルトス』のアイセンサーの光だった。
「……」
これを駆るパイロットたちの瞳は虚ろだった。
正気は何処にもない。あるのは狂気であった。
激情にかられるでもなく、さりとて憎悪に燃えるでもなく。
彼らは、ただひたすらに歩を進めるようにして、『フルーⅦ』を侵略せんと迫っていた。
率いるは二騎のオブリビオンマシン。
一騎は『アークレイズ・ディナ』。
嘗ての最強の象徴。
そして、もう一騎は『首無しのキャバリア』であった。
「ダメだよ、『クリノ・クロア』……理由無き憎悪に目を奪われては、だめだよ!」
その姿を認め、『フュンフ』と呼ばれたクローンの少年は叫んだ。
しかし、その声が届くことはない。
彼はあまりにも幼い。
キャバリアに乗ることもできない。
だから、叫ぶことしかできなかった。
「『クリノ・クロア』が見ているのは、『まだ』訪れていない未来なんだよ。そうなると決まったわけじゃない……だったら、みんなで変えていけるはずだよ、未来は!」
彼の言葉は戦禍にかき消されるだろう。
それを為すのが天使の行軍――『ケルビム・ミルトス』である。
その赤いアイセンサーが剣呑に輝き、破滅の炎を宿すかのように『フルーⅦ』を焼き尽くさんと荒野を疾駆した――。
村崎・ゆかり
来たか、『プラナスリー』。
悪辣の策なんて叩き潰す。
『セラフィム』に『ケルビム』ね。となると、簡易量産型は『ガルガリン』かしら。
さあ、始めよう。機甲式『GPD-311 |迦利《カーリー》』に乗って、戦いに臨む。
「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「天候操作」「結界術」で紅水陣。
波のキャバリアには装甲の継ぎ目があるものよ。あたしの陣は、雨となって、霧となって、キャバリアの内部に染み入り、あるいはカメラのレンズを解かし、機体の正常な稼働を妨げていく。
後は『迦利』の「レーザー射撃」でとどめを刺していくわ。
コクピットは狙わない。パイロットはどうか外に飛び出さないで欲しいわね。
前座は下がりなさい!
天使の行軍は、炎の波のように小国家『フルーⅦ』に迫っていた。
赤いアイセンサーが妖しく光を放つ。
それは陽炎。
大軍と呼んで差し支えない大戦力。
一糸乱れぬ行軍の姿は、ある種のおぞましさを感じさせるものであった。
「来たか、『プラナスリー』」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は生身単身でもって、天使の行軍の如きオブリビオンマシン『ケルビム・ミルトス』を前にした。
悪辣の策。
それがどのようになされたかなど、猟兵である彼女には知る由もない。
だが、確実に言えることがある。
「叩き潰す」
そう、オブリビオンマシンが関与しているというのならば、これを叩き潰す。
その結果、小国家に如何なる問題が降りかかるのだとしても、それは小国家に生きる人々が如何にかしなければならない問題だ。
猟兵ができることはオブリビオンマシンを破壊することだけなのだ。
故に彼女は己が機甲式『GPD-311 迦利』を呼び寄せ、その逆三角形型の機体の上に立つ。
「さあ、始めよう」
その言葉に呼応するように『ケルビム・ミルトス』の胸部コアが共鳴する。
振動。
赤熱。
二つの力が入りじまった瞬間、ゆかりに向けて放たれるのは、共鳴音と衝撃波であった。
強烈なユーベルコードの一撃が一斉に『ケルビム・ミルトス』たちから放たれる。
こちらが生身であろうと関係ないのだ。
『GPD-311 迦利』が飛翔する。
結界術は容易く砕けた。敵の攻撃は飽和攻撃、荒ぶような衝撃波に、ゆかりの身が軋む。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
紅水陣(コウスイジン)が展開される。
あらゆるものを蝕む強酸性の雨。
降りしきる真紅の雨が『ケルビム・ミルトス』の装甲を腐食させていく。
「並のキャバリアには装甲のつなぎ目があるものよ。あたしの陣は、天となって、霧となって染み入る!」
「……」
『ケルビム・ミルトス』のパイロットたちは虚ろな瞳のまま、胸部のコアを赤熱させ続ける。
そこに意味などない。
彼らはただ破壊を齎すだけだ。
何処から来たのかも、どうして己の心が狂気に支配されているのかも。
その理由さえもわからぬままに、誰かの借り物の狂気に支配されながら、破壊を齎すことだけを目的としている。
「パイロットは外に出ない!」
ゆかりは、軋む『ケルビム・ミルトス』の関節へとレーザーを放つ。
動きを止めれば、あとは強酸性の雨が機体を腐食させえていくだろう。
赤い靄が戦場に広がっていく。
これだけの大軍である。
僅かでも足止めができれば、足並みは崩れるはずだ。
「前座は下がりなさい!」
ゆかりは、鉄の骸を踏み込めるようにして迫る天使の行軍を前に、数の暴威というものを理解させられるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
竜眼号搭乗中
またこここ…クリノとかツェーンとかどっちも名前に覚えありまくりなんたが…
「懐かしいよね☆処でご主人サマー☆敵が沢山いるぞ☆しかも中の人は助けないといけないぞ☆それならもうあれだね♥」
うっがぁぁぁ!!
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵軍の陣形と機体の構造
搭乗者の位置を正確に把握
地獄のUC発動
10師団は竜眼号護衛
【属性攻撃・迷彩】
竜眼号と護衛幼女軍団に光水属性付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源や音を隠蔽
【念動力・集団戦術・弾幕】
600師団
飛び回り念動光弾を叩き込みまず動きを止めて
【二回攻撃・切断・盗み・盗み攻撃】
残り軍団
直接群がってバラバラにして人は救出
金目の物は根こそぎ強奪!
不殺徹底
見下ろす戦場にあるのは、天使の行軍。
炎と共に征くは戦禍。
であれば、オブリビオンマシン『ケルビム・ミルトス』の行く先は、ただ一つ。
炎の破滅である。
滅ぼさねばならない。
滅びねばならない。
狂気に取り憑かれたパイロットたちの瞳は虚ろであり、ただひたすらに破滅願望だけが満たされていた。
「……」
物言わぬ破壊の徒と成り果てた彼らと共に『ケルビム・ミルトス』は歌うように胸部の赤熱するコアから衝撃波と共鳴音を響かせていた。
「『クリノ・クロア』に『ツェーン』とか、どっちも名前に覚えがありまくりなんだが……」
「懐かしいよね☆」
「言ってる場合じゃあないがな!」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、『竜眼号』に座して呻いた。
『ケルビム・ミルトス』の数は大軍である。
大規模侵略軍と銘打ったとしても、なんら不思議はない。
「ところで、ご主人サマー☆ 敵がたくさんいるぞ☆ しかも中の人は助けないといけないぞ☆」
「わーってるわ!」
カシムは呻くままに頭を抱えた。
理性ではわかっているが、本能が拒否している。
ユーベルコード。
このような大軍に対処するためには、数が必要だ。それはわかっている。
だが。
「もうあれだね❤」
『メルシー』の言葉にカシムは腹から喚いた。
「うっがぁぁぁ!!」
「じゃ、依代お願い☆」
ユーベルコードの輝きと共に『幼女メルシー』たちが飛び出す。
戦場に荒ぶような『ケルビム・ミルトス』の放つ共鳴音と衝撃波の中を彼女たちは疾駆する。
光学迷彩で身を纏うのだとしても、放たれる衝撃波は全方位に向かって放たれている。
隠蔽しようとしても、狙いをつけることなく……それこそ間断なく衝撃波が襲ってくるのだ。
しかし、カシムの生み出した幼女メルシーたちは『竜眼号』の直掩として残す師団以外は、全て『ケルビム・ミルトス』に走らせた。
物量で迫る敵に対して物療で対抗する。
飛び回り、念動光弾の乱舞と共に『ケルビム・ミルトス』の足を止める。
「ひゃっはー☆」
生身であったとしても、彼女たち一体一体がカシムと同等の戦闘力を有する。
そのためにカシムは動けず、攻撃を受ければ全てが解除されるリスキーなユーベルコード。
「それでも数は力だ! 金目のものは根こそぎ強奪! パイロットは殺すなよ!」
「もっちろーん☆」
幼女メルシーたちはカシムの言葉に頷き、『ケルビム・ミルトス』たちとの戦いを繰り広げ、大軍を押し留めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シャナ・コリガン
こちらもこちらで、騒々しいですね…。
ですが、悪辣な策は…ここで止めてみせます!
あのキャバリア…つまりはこの世界基準で出来てますね。
ならばろ【蒼雷麒麟】です!
どれだけ感電を齎そうとしても…私自身が稲妻になってしまえば問題はない。
その拳自体、通電物質ですからね。通り抜けます!
壊すのは外側の『ケルビム・ミルトス』だけ。内部のパイロットたちには手を出さないように。
…そう、やることは足並みを崩すこと。それこそ、侵略を止めるための行動ですからね!
人と人とは惹かれ合う。
それは引力のようなものであった。
例え、人が己のパーソナルスペースを持ち得ていたのだとしても、惹かれ合う。己に欠けたるものを認めたのならば、尚更のことだ。
争いは、全てを引き裂く。
炎でもって、焼き滅ぼす。
それが文明の灯りだったとしてもだ。
「こちらもこちらで、騒々しいですね……」
天使の行軍の如き軍勢。
オブリビオンマシン『ケルビム・ミルトス』が闊歩する戦場をシャナ・コリガン(どこまでも白く・f44820)は見ただろう。
煌めくアイセンサーの赤は、どこまでも悪意に染まる。
一歩、一歩と着実に小国家『フルーⅦ』へと迫るように、大地を踏み鳴らす。
「……」
しかし、それらを駆るパイロットたちは皆、虚ろな瞳をしていた。
何も見ていない。
あるのは狂気だけだった。
目に映る全てを破壊する。
それだけに囚われた狂気のままに、彼らは『ケルビム・ミルトス』の両腕をプラズマの輝きに満たした。
「狂気に満たされ、翻弄され、自分が何をしているのかもわからぬままであっても……これが悪辣な策に踊らされているのだとしても……ここで止めて見せます!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
その身が蒼雷へと変貌する。
雷鳴が轟き、蒼き麒麟へと変じた彼女は、一瞬で『ケルビム・ミルトス』の両腕のプラズマナックルへと飛び込む。
「……」
振るわれる一撃は確かに蒼雷の麒麟を打ち据えるだろう。
だがしかし、彼女の体は砕け散ることはなかった。
そもそも彼女の体は雷へと変貌しているのだ。
轟く雷鳴と共に彼女の体が弾けるようにして飛び、『ケルビム・ミルトス』の群れを縫うようにして駆け抜けた。
それは正しく縫う、という言葉がしっくり来る疾駆であった。
何故なら、間隙を縫うものではなかったからだ。
彼女は蒼雷となりて、『ケルビム・ミルトス』の駆体の中を駆け抜け、また別の『ケルビム・ミルトス』へと飛び込み、また同じように操作系統の電装を焼き切って通り抜けたのだ。
「壊すのは機体だけです。内部のパイロットの方々にはピリっとしてもらうだけです」
シャナは蒼雷となった身で、また戦場を駆け抜けていく。
迫る『ケルビム・ミルトス』の連携は見事と言う他ない。
此方の意図を察したように、それをさせぬと複数の機体で取り囲むのだ。
どれだけ雷撃が速いのだとしても、一瞬で複数体を相手取ることはできない。だからこそ、プラズマナックルを振り上げた。
物理的攻撃が通用しないのならば、同じ電撃で打ちのめす。
狂気に呑まれていながら十分に戦える。
それが『ケルビム・ミルトス』の性能だというのならば、恐るべきことだった。
けれど、彼女は構わない。
何故なら。
「足並みを崩す……侵略とは、足並みを揃えてこそ。なら、その足並みが揃わないのならば、侵略は遅々として進まない。そういうものですからね!」
己を標的にするのならば、するがいい。
そう言うようにシャナは蒼雷となった身でもって戦場を駆け抜け、『ケルビム・ミルトス』の足並みを崩し続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
まーた飛ぶ敵ですか!この世界で!このボクを差し置いて!
なんか色々あるのは知ってるですけど、今はそこが一番ムカつくんですよ!
でもボクも色々学んでるんです。
この世界でもコイツらみたいに低空を短時間飛ぶくれーなら、あの忌々しい衛星に捕捉されねーみてーだって事とか。
とゆー事で行くですよ、ROCKET DIVE!
ボクのサイズは大きめのミサイルくれーのモンです、撃ち落とすのは簡単じゃねーはずです。
機銃掃射を掻い潜って、機体にぶち当たってやるですよ!
特にあの細え腰とか折りやすそうですね、パイロットもいなさそうですし。
とにかく全員無事に助けるですよ、同じ国のヤツとかいたら寝覚めがわりーですしね!
小国家『フルーⅦ』に迫る天使の行軍の如き軍勢、『ケルビム・ミルトス』たちは、赤々と輝くアイセンサーを灯しながら地平線を埋めるかのような数を暴威に変えて迫っていた。
天使の翼が羽撃くように背部ユニットが展開し、地面をスレスレに飛ぶ『ケルビム・ミルトス』たちは、いずれもが破壊を目的としていた。
それが最も人々の心に打撃を与えると知っていたからだ。
人はパンのみにて生きるものではない。
例え、食が満たされても、住まう場所、纏う衣がなければ人は人たり得ない。
人は多くを得すぎた。
豊かさの代償は、喪失の際の虚の大きさを示す。
だからこそ、徹底的に破壊する。
機銃の掃射が『フルーⅦ』の市街地を守る防壁を砕く。
散る破片。
舞うさなかに飛び出す小さな影があった。
等身大。
生身単身。
それは少女の姿をしていた。
「まーた飛ぶ敵ですか! この世界で! このボクを差し置いて!」
ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)だった。
彼女は怒りをあらわにしていた。
諸々の事情があることは察している。だが、彼女が今一番腹に据えかねている事実はたった一つのことだった。
そう、この空に蓋をされた世界において飛翔する。
オブリビオンマシンといえど、暴走衛生『殲禍炎剣』の標的になる。
だからこそ、地面スレスレを『ケルビム・ミルトス』は飛翔して迫っている。
ファルコは、この世界に生まれ落ちた最も不要なる能力を主として備えるレプリカントだ。
それが飛翔。
本来ならば航空戦力として空を自由に、征する者であった。
だが、それができない。
なのに、とファルコは自分よりも早く戦場の空を飛ぶ『ケルビム・ミルトス』に苛立つ。
「行くですよ、ROCKET DIVE!」
彼女の瞳がユーベルコードに煌めく。
それは戦場を包む炎を切り裂く星のように輝き、彼女の体を砲弾のように打ち出した。
「……」
『ケルビム・ミルトス』のパイロットたちは、その虚ろな瞳が見るモニターにアラートが表示されるのを見ただろう。
だが、それよりも早く、ファルコの体が『ケルビム・ミルトス』へと己が身体を正しく砲弾に変えて、その腰部をぶち抜いた。
体当たり。
吶喊じみた彼女の身はユーベルコードの輝きと共に『ケルビム・ミルトス』の体躯をへし折った。
「機銃掃射なんて無駄ぁ! 今のボクに当たるわきゃねーでしょーが!」
ファルコは地面を蹴った。
跳ねるボールのように鋭角な角度で飛び回り、『ケルビム・ミルトス』を翻弄しながら、再び体当たりを敢行するのだ。
「とにかく全員助けてやりますよ、まるっとね!『レンブラント・ラダー』の行方不明者だろーと、そうじゃなかろーと! 目覚めがわりーですからね!」
だから、と彼女は鋼鉄の拳を振りかぶり、『ケルビム・ミルトス』の駆体をひしゃげさせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
クレイドル『やぁやぁ皆さま本日は私達のライブによく来て切れたね!
目一杯聴いてもらうから目ぇ覚ましなよ!!』
……めちゃくちゃにしてやる!!|呪え《唄え》|揺籃の子守唄《クレイドル・ララバイ》!!!
デモニック・ララバイ【楽器演奏】UCで無数のドロモス・コロスを召喚、脳に響く鮮烈な目覚ましポップミュージックを奏で、敵機の中の|搭乗者《味方》の正気を可能な限り叩き出し、敵機連携を乱す!!
『現を抜かしてないで、早よ起きなさーい!!』
起きようが起きまいがどっちでも壊す!!!
延々召喚されるドロモスの壁に連携乱しと衝撃波で動きを封じ、メガスラスター【空中機動】攻撃を躱して斬撃波で機体達だけを断ち壊していく!!
転移した駆体が地面に土煙を立ち上らせる。
揺れる地面。
粉塵の奥に輝くはアイセンサー。
対するは炎が生み出す陽炎を切り裂く赤い輝き。
それは『ケルビム・ミルトス』の群れであったが、大地を揺らした『デモニック・ララバイ』は全身に配された棘の如き殺戮音叉を震わせながら、対峙した。
敵の数は圧倒的だ。
天使の行軍と呼んで差支えのないほどの大軍。
これをもって小国家『フルーⅦ』を滅ぼそうというのだろう。
しかも、これらを駆るパイロットは単一の小国家に所属している者ばかりではない。
いずれもが複数の小国家において生死不明であったり、行方不明となったパイロットたちばかりであった。
それがどうしてこのように一堂に介するのか。
わからない。
わからない、が。
彼らは虚ろな瞳で『ケルビム・ミルトス』を駆る。
それが現実であった。
『やぁやぁ皆様、本日は私達のライブによく来てくれたね! 目一杯聴いてもらうから、目ぇ覚ましなよ!!』
『クレイドル・ララバイ』の声が響きのとは裏腹に朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、その瞳に意志を宿す。
そう、彼女ができることは一つ。
「……めちゃくちゃに壊してやる!!」
壊すことだけ。
彼らがオブリビオンマシンによる洗脳を受けているのだとしても、狂気の思想に染まっているのだとしても。
「|呪え《唄え》、揺籃の子守唄(クレイドル・ララバイ)!!!」
ユーベルコードの輝きと共に召喚された無数の『ドロモス・コロス』たち。
響くは、軽快にして鮮烈な音色だった。
脳に響くようなポップミュージック。
場違いなほどに明るく、気が狂う程にアップテンポ。
軽やか過ぎるがゆえに、音は何処までも広がっていく。
魔法の斬撃とかした音は、一瞬で『ケルビム・ミルトス』の駆体へと走った。
振るわれるプラズマナックルと激突した斬撃波が火花を散らす。
「……」
「敵機連携を乱す!!」
小枝子は踏み出し、さらに召喚された『ドロモス・コロス』たちが音を響かせ続ける。
音は、全周囲に放たれる。
どこまでも広がっていく音は、遮ることなどできはしない。
例え、オブリビオンマシンのコクピットの中にいるのだとしても、この魔法の楽曲は妨げることはできない。遮断などできないのだ。
故に小枝子は、ユーベルコードの光を瞳に宿しながら、『デモニック・ララバイ』の全身から音を響かせ、『ドロモス・コロス』をアンプにして戦場にポップミュージックを奏で続けるのだ。
『現を抜かしてないで、早よ起きなさーい!!』
「起きようが起きまいがどっちでも壊す!!!」
小枝子は構わなかった。
破壊を齎すのは、誰か。
己だ。
他の誰も破壊をもたらさせない。
そういうように『デモニック・ララバイ』は天使の行軍たる『ケルビム・ミルトス』の群れへと飛び込み、斬撃波の如き旋律と共に、その駆体を断ち壊していくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ああ……またしりあす(とおいめ
このシリアスはステラさんのやべー雄叫びでも振り払えない重さがありますね……。
などと!
アレルギってる場合ではありませんね!
ステラさんの情緒が不安定なのは、いまさらですし、
今回はわたしも100年に1度のシリアス対応バージョンでいきますよ!
『ノイン』さんは見事な悪役ムーブではありますが、
勇者の前でこういう企みは成功しないって決まっているんです!
心を利用した悪事は、心によって潰えるんですよ!
『ツェーン』さんと『クリノ・クロア』さんの愛(?)のためにも……。
え? 幼い『フュンフ』さんの願いのほう優先でした?
な、なにはともあれここはどーんと突破していかないとですね!
女の子に色恋話はエネルギー!
ということで、今日は恋愛パワーも上乗せしていきますよ♪
かもん!【ソナーレ】!
【PA-Acoustics】最大出力!
今!渾身の!【月の光】を響かせましょうー!
【ケルビム】も【セラフィム】もありません!
人の恋路を邪魔する人は、月の光にお仕置きされてください!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
あの性悪女!!
フュンフ・エイル様に会いたいが為に此処までしますか!?
私『達』の願いは他人様に迷惑をかけて叶えるものではないでしょうに!!
いえ、他人の願いを叶え続けて歪んだ存在ならば
全てを歪めてでも『自分の願い』を叶えようとしますか……
戦いに際しては心に平和を、と謳うならば
平和に際しては心に戦いを、と言わねばならない
『フュンフ・エイルが熾盛に乗る』
会うために、それを叶える気ですか?
……あ、ルクス様がシリアスで死にかけてますね
では叫んでおきましょう
|エイル様《主人様》の香りがしまぁぁぁぁぁぁすっ!!(はーと)
誰がやべーメイドですか
情緒の温度差で風邪ひくとか言わないでください正常です
さてルクス様
幼いフュンフ様のお願いを叶えないといけません
ええ、クリノ・クロア様とツェーン様を助けますよ
1対多の戦闘は得意
ケルビムにしては私がイレギュラーですが
ルクス様の力があれば、完璧です
先に突撃しますね
ケルーベイム!【クーストース】!
フェリーレとムラサメ・ブレードで敵機の機動力だけを奪いましょう!
小国家『フルーⅦ』を襲った天使の行軍。
オブリビオンマシン『ケルビム・ミルトス』を駆るのは、単一の小国家のパイロットたちではなかった。
いずれもが所属がバラバラ。
それも生死不明や行方不明となった者たちばかりであった。
まるで誘拐してきたように、彼らは集められ、『フルーⅦ』への侵略軍へと仕立て上げられていたのだ。
その瞳は虚ろ。
正気などなかった。
理由もない。
ただ、破壊を齎すためだけに彼らは『ケルビム・ミルトス』を駆り、破壊をもたらさんとしていた。
赤熱する胸部のコアが凄まじい衝撃波を生み出し、共鳴音を響かせている。
揺れる炎が生み出す陽炎の中で、その赤いアイセンサーだけが悪意に染まるようだった。
「あの性悪女!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は怒りを滲ませていた。
「『フュンフエ・エイル』様に会いたいが為に此処までしますか!?」
彼女とてそうである。
あの光の向こう側に消えた主と定めた少年『エイル』は、彼女にとってまごうことなく『主人様』であった。
そして、あの大空の世界からたどり着いたのが、この戦乱だけの世界であったというのならば、『フュンフ・エイル』は、イコールで結ばれるものであった。
「私『達』の願いは、他人様に迷惑をかけて叶えるものではないでしょうに!!」
もしも、その言葉を『ノイン』が聴いていたのならば、鼻で嘲笑しただろう。
「いえ、他人の願いを叶え続けて歪んだ存在ならば、全てを歪めてでも『自分の願い』を叶えようとしますか……」
彼女の行動はすべてが自分のためだった。
故にステラは、それが度し難いことのように思えてならなかった。
「『戦いに際しては心に平和』を、と謳うのならば、平和に際しては心に戦いを、と言わねばならない」
『ノイン』が求めるものとステラが求めるものが同じであっても、アプローチが違いすぎる。
だからこそ、ステラには『ノイン』のやろうとしていることが理解できない。
彼女が求めているのは『熾盛』を駆る『フュンフ・エイル』だというのならば、尚更である。
「ただ会うためだけに、他の全てを破滅に追いやっても良いと言うのなら……あ」
ステラは、己の隣で死にかけているルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)を認めた。
遠い目をしていた。
いや、死んだ目をしていた。
「またしりあす……」
彼女はげんなりしている様子だった。
何故なら、重度のシリアスアレルギーであるからだ。
シリアスアレルギーって何。
そう思われるかもしれないが、そういうアレルギーがあるのだ。アレルギー何だから仕方ない。
ルクスはギャグでシリアスを中和さえできればよいと思っていたし、そのギャグ時空をステラに期待していたが、今回のステラは雄叫ばない。
どこまでも静かに怒りを湛えていた。
だから、ルクスはシリアスアレルギーの影響を多く受けていた。
「このシリアスはステラさんのやべーでもどうしようもないほどの重さがありますね……などとアレルギってる場合ではありませんね!」
「お、おう……でも、叫んでおきましょう。|『エイル』様《主人様》の香りがしまぁぁぁぁぁすっ!!」
「やべーのは頭だけにしてくださいよ」
「誰がやべーメイドですか」
「風邪引いちゃいますよ、温度差で。それにステラさんの情緒の乱高下なんて、今更なんですよ」
「正常のつもりなんですが」
「そういうところですよ! ですが、あえて言わせて頂きましょう!」
ルクスは胸を張った。
そう、『ノイン』の悪辣な策は確かに見事な悪役ムーブであった。
立ち回りが見事であるとしかいいようがない。
が!
此処には勇者がいる! 立っている! ならば!」
「こういう企みは成功しないって決まっているんです! 悪が栄えた試しなし! 心を利用した悪事は、心に寄って潰えるんですよ!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
爛々と輝くのは、恋バナに興味津々な年頃故に。
「『ツェーン』さんと『クリノ・クロア』さんの愛のために!」
「ルクス様、まずは幼い『フュンフ』様のお願いを叶えないといけません」
「えっ、そっちのが優先でした?」
「まずは、お二人を止める! それからです、色恋沙汰というのは!」
「そうですね! かもん!『ソナーレ』!」
その言葉と共にルクスの背後に現れるは『ソナーレ』。
機体自身をアンプにして、奏でるは、月まで届かんほどの大音響。
「今! 渾身の! 月の光(ツキノヒカリ)は輝くのです!」
ルクスの姿が月光を浴びて煌めくようにして衣を変貌させていく。
空より響くは、月光の如き音色。
その光は『ケルビム・ミルトス』たちの動きを止める。
軋むようにしながら、前に進もうとする駆体を押さえつけながら、ルクスは叫ぶ。
「『ケルビム』も『セラフィム』もありません! 人の恋路を邪魔する人は、月の光にお仕置きされてください!!」
「主は御座にありて……何人たりとも先には行かせません!! クーストース!」
フローリスに内蔵された兵装が展開し、ステラは『ケルーベイム』と共に『ケルビム・ミルトス』に踏み込む。
手にしたムラサメ・ブレードとフェリーレとが、『ケルビム・ミルトス』の頭部を刎ね飛ばす。
「『ケルーベイム』は、『ケルビム』の中において、イレギュラー……であるのならば、天使の行軍の列に加わることなどありえません。故に、立ちふさがりましょう」
衝撃波を躱し、プラズマナックルと真っ向から打ち合う。
動きの鈍った『ケルビム・ミルトス』が如何に数を頼みにするのだとしもて、『ケルーベイム』は、そのスカート形状の装甲を翻しながら、彼らを圧倒する。
「パイロットの生命は奪わない。その機動力だけ奪わさせていただきます!」
振るわれた剣閃がほとばしり、『ケルビム・ミルトス』は、その場に擱座するしかなかったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
薄翅・静漓
みんな、魂を失ったような様子をしているのね
一体、何をされたというの……?
静かに息を整え、『天人結界』を展開
空を舞いながら、流れを読み、相手の軌道を見切りながら飛翔する
彼らの攻撃をかわし、避けきれなければ結界で受け止めるわ
苦しい戦いなる、それでもその苦しみも、全部この力に変えて
狙うのは、パイロットではなく機体
光の矢でキャバリアの装甲を貫いて動きを止めるわ
殺してはいけない……
この人たちは、本当はこんなところにいるべきじゃない
あなた達もよ――『ツェーン』、『クリノ・クロア』……
「一体、何をされたというの……?」
小国家『フルーⅦ』を襲う侵略軍。
天使の行軍の如き『ケルビム・ミルトス』を操るパイロットたちの瞳は虚ろであった。
その虚にあるのは狂気だけだった。
破壊を齎すためだけの器。
それが彼らだった。
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は、その様子に眉根を寄せた。
普段変わらぬ表情が変わるほどの様相。
戦場が陽炎のように揺らめいているのは、それだけ『ケルビム・ミルトス』が齎す破壊の炎が膨大であるからだ。
赤いアイセンサーが煌めく。
ゆらめきさえ切り裂くような鮮烈な赤。
悪意に染まった空虚なる心は、他者を徒に傷つけ続けるだけの刃と化している。
魂を失ったような、押し込められているような、そんな『ケルビム・ミルトス』のパイロットたちの姿に静漓は心を痛めただろう。
だからこそ、息を静かに吸い込む。
心を落ち着けなければならない。
救わねばならない。
一刻も早く。
それが彼女の望みだった。
心から思う。だからこそ、彼女は見開いた瞳をユーベルコードの輝きに満たした。
迫るは機銃の掃射。
光の翼を羽撃かせるようにして加速した駆体が己に迫っている。
「……」
何の感情もない。
ただ狂気の刃が己に迫っているのがわかる。
だからこそ、彼女は軽やかに空を舞う。
今の彼女にキャバリアはない。すでに託しているからだ。
「……」
振るわれるプラズマナックル。
生身単身に向けていい兵装ではない。だが、障壁決壊で静漓は一撃を受け止めた。
苛烈なる一撃。
さらに四方八方から『ケルビム・ミルトス』たちが迫り、障壁を砕かんとしているではないか。軋む障壁。
静漓の頬が歪む。
強烈過ぎる打撃に障壁が砕けた。
瞬間、彼女の体は宙を駆け抜けた。
プラズマナックルの一撃が身に打ち据えられる前に、恐るべき速さで逃れていたのだ。
「苦しい……けれど、この苦しみも、全部、この力に変えて」
光の矢を引き絞る。
狙うのは、『ケルビム・ミルトス』のアイセンサー。
パイロットを殺してはいけない。
だからこそ、彼女の光の矢は『ケルビム・ミルトス』の頭部を打ち貫き粉砕する。
「この人達は、本当はこんなところにいるべきじゃない」
そう、彼らはクロムキャバリアのあらゆる小国家から拉致されてきている。
自分の居場所を決めることができるのが人間の強さだ。
だからこそ、静漓は嘗ては鋼鉄の咎に塗れた人造竜騎が己が居場所を定めたように、他の誰もがそれができるのだと信じたいのだ。
「あなた達もよ――『ツェーン』、『クリノ・クロア』……」
それは願いだったのかもしれない。
その瞳は、天使の行軍の奥にある二騎を見据えた――。
大成功
🔵🔵🔵
皇・銀静
機神搭乗
ふん…エースとやらと戦えると聞いたんだが…
「でもこの数は凄いよ☆此処は幼女祭りで」
誰がするか!
【戦闘知識】
敵の陣形を見据え
機体構造から搭乗者の位置と機体を確実に停止できる部位を解析
「フュンフ君もクリノ君も未来が見えるんだ☆グリムちゃんも見えていたよ☆でも…今見える未来は揺らいで…変動してる…つまり…未来は変えられるよ☆」(だから私は主を待っていたんだ☆
【リミットブレイク・念動力・弾幕・切断・功夫】
槍の神
UC同時発動
必中の百連攻撃を無数の敵に叩き込む
搭乗者は傷つけず機体のみを確実に破壊する
之だけは評価してやるぞグリム
「わーい褒められた☆」
まだ続けるぞ
そして連撃で機体のみを破壊していく…!
皇・銀静(陰月・f43999)は、天使の行軍の如き軍勢を前にして鼻を鳴らした。
「ふん……『エース』とやらと戦えると聞いたんだが……」
『でもこの数はすごいよ☆ 此処は幼女祭りで』
「誰がするか!」
グリムの言葉に銀静は吐き捨てた。
そう、敵の数は膨大である。
数に対抗できるのは、数だけだ。
故に、単身で戦うことに厭うつもりはないが、それでは意味がないと言わんばかりに彼は、オブリビオンマシン『ケルビム・ミルトス』を見据えた。
正しく天使の行軍。
揺らめくような陽炎の向こうに赤いアイセンサーが剣呑に輝いている。
それだけで、威容のように人々の心を切り裂くだろう。
「だからこそ、だ。雑に数で押しつぶせると慢心している連中を叩きのめしてこそ、絶望顔を塗り替えることができる」
『『フュンフ』君は未来が見えているのかな? 『クリノ・クロア』君が見せられているのは、あり得るかもしれない未来だからなのかな? それは現実にしか思えないんだろうね。わかるよ。でも、今見える未来はいつだって揺らいで変動してる……つまり、未来はどっちにだって転ぶかわからない☆ だったら、未来は変えられるよ☆」
邪気を纏った風が戦場に吹き荒れ、銀静の駆る『グリームニル』に集約されていく。
集っていく。
それはユーベルコードの輝きと共に集まった力だった。
「白虎門……反転」
裏白虎門開門(ウラビャッコモン)。
集約された風は『グリームニル』の拳に集約され、迫る『ケルビム・ミルトス』を捉えた。
瞬時に叩き込まれたのは百の拳。
粉砕されるように『ケルビム・ミルトス』の駆体の四肢が砕けて散った。
コクピットブロック以外の全てが砕けているのだ。
「……」
「之だけは評価してやるぞグリム」
『わーい褒められた☆』
邪気を纏った風が刃となって『ケルビム・ミルトス』を粉砕するが、それをただ黙って見ているだけの敵ではない。
さらに続けざまに迫る『ケルビム・ミルトス』を銀静は、静かに見定め、拳を振るう。
「まだ続けるぞ」
迫りくる敵の群れ。
数に対抗できるのは数。
だが、数を圧倒する個があるのもまた事実。
それを証明するように『グリームニル』に集った邪気纏う風が嵐のように天使の行軍をかき乱していく。
粉砕された装甲の破片が雨のように大地に注ぐ。
その先頭を征くのは、銀静の放つユーベルコードの輝き。
炎に呑まれた戦場であったとしても、それを止めることはできない。
風は何時だって生み出される。
何処からでも。何処へでも行ける。
振るう拳が『ケルビム・ミルトス』を粉砕する音がだけが、戦場に響きつけた――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
●聖竜騎士団
お天使がたくさんですわ~!
お天使の中には人がいらっしゃいますの?
しかも頭をおかしくされてしまってるんですの?
お不憫ですわ~!
わたくしが正気に戻してさしあげますわよ~!
本日のヴリちゃんはクロムジェノサイダーですわ~!
いきなりお兄様が辺り一面火の海にしてしまいましたわ~!
これでは丸焼きになってしまいますわよ~!
そんなに脆くない?あらそうですの?
元気にぶん殴ってきましたわ!
シールドでおガード!
ビリビリするし動き回られてイライラしますわ!むきー!
そんな時はベルセルクシャウト!
皆様まとめてぶっ飛ばしますわよ~!
わたくしが怖いでしょう?わたくし、とっても怖いのですのよ?
降参なさって?
ジェラルド・エルネイジェ
●聖竜騎士団
これだけの手勢をよく揃えたものだ
しかしパイロットの闘気が薄いな
思考支配の類を使ったか?
ノインの思惑に乗せられても面白くはなるまい
起こしてやるとしよう
行くぞ、サラマンダー
こうも大群で来られては焼き払いたくもなる
戦場に滾る炎を我が身に集め、炎竜焼滅波を放つ
熱暴走に至ればそれで終わりだ
そう楽に済むとも思えんがな
問題はパイロットを活かして帰す方法だ
ここはメサイアに倣うべきだろう
盾で殴りつけ、爪で引き裂き、牙で噛み砕く
暴力的だが、破壊するべき箇所を正確に破壊できるだろう
手足を失えば戦う術もあるまい
うるさい機関銃は取るに足らない手傷だ
炎の化身となったサラマンダーならば瞬時に癒える程度のな
侵略において単一の力は、さしあたっては脅威ではない。
脅威なのは数だ。
クロムキャバリアの過去において、『憂国学徒兵』たちが世界中の戦争に介入した時、侵略者として脅威ではなかったのと同じだ。
強大な単一な個は、確かに数では止められなかっただろう。
だが、数を征することはできなかった。
それは歴史が証明するところである。
故に、侵略において何をおいても必要なのは、数なのだ。
「これだけの手勢をよく揃えたものだ」
ジェラルド・エルネイジェ(炎竜皇子・f42257)は、それを理解していた。
「お天使がたくさんですわ~! でも、お天使の中には人がいらっしゃいますの? なんだか頭がおかしくなってしまっているんですのね~! あら~! お不憫ですわ~!」
ジェラルドは頷く。
『サラマンダー』のコクピットに己の末妹であるメサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)の声が響いた。
「パイロットの闘気が薄い……いや、ない、というのが正しいか。思考支配の類を使ったか?」
とは言え、猟兵として彼らを撃破することは容易くともパイロットを殺すことは、この絵図を描いた『ノイン』の思惑に乗せられることを意味していた。
何故なら、このオブリビオンマシン『ケルビム・ミルトス』のパイロットたちの中には、小国家『エルネイジェ王国』にて戦場にて行方不明になった者や、生死不明と認定された者たちもまたいたからだ。
それは『エルネイジェ王国』に限った話ではない。
クロムキャバリアの小国家、そのあらゆる場所から集められてきているのだ。
となれば、当然『バーラント機械教国連合』のパイロットたちもいるだろう。
パイロットの死は、それだけ多くの軋轢を生み出すだろう。
『ノイン』はそこまで策謀を広げている。
「奸計に長ける者と聞いたが、面白くはない。起こしてやるとしよう」
「お兄様もばちこんとやるおつもりでしたのね~! わたくしも正気に戻して差し上げますわよ~!」
「行くぞ、メサイア。『サラマンダー』」
ジェラルドの眼前には無数の『ケルビム・ミルトス』。
光の翼を羽撃かせ、地面スレスレを飛翔し、機銃の掃射まで加えてくるのだ。
苛烈なる攻勢。
正しく侵略すること火の如しというにほかならない。
だが、ジェラルドは冷静であった。
敵が数で圧するというのならば、それはこのクロムキャバリア世界においては面制圧の真価が問われることと同義であったからだ。
「全ての炎よ、我が身に集え……そして眼前の全てを焼却せよ!」
戦場に満ちた炎が、『サラマンダー』の駆体に集約されていく。
装甲に吸収された炎は、『サラマンダー』をその名の通り、炎の化身へと変貌させ、熱波を解き放つ。
「炎竜焼滅波(サラマンダーウェイブ)……例え、オブリビオンマシンと言えど、マシンに代わりはない。であれば、熱暴走は免れまい」
『ケルビム・ミルトス』の駆体を包み込む炎は、一気にその動きを鈍らせる。
膨大な熱量を逃す術を持たない機体は、即座に動きを止めてしまうのだ。
だが、問題は一つではない。
「パイロットを活かさねばならない」
「わたくしとヴリちゃんにお任せですわ~! クロムジェノサイダーなのですわ~!」
その言葉と共に漆黒の暴竜が戦場に飛び込む。
「お兄様、いきなり辺り一面火の海にしてしまうなんて、乱暴者が過ぎるとおもうのですわ~! お姉様に絶対後で叱られるやつですわ~!」
「果たしてそうかな。あれは、あれで友好な手段だと認めるやもしれんぞ?」
「そんな~!? わたくしの時と態度が、えれぇ違いですわ~! 丸焼きになる前に、わたくしがぶん殴って正気に戻して差し上げますわ~! 機械はとにかくぶっ叩けば治る、そう伝え聞いておりましてよ~!」
『ヴリトラ』の携えたシールドが『ケルビム・ミルトス』の頭部をひしゃげさせる勢いで持って叩き潰し、蹴飛ばす。
その戦いぶりは正しく嵐のようであった。
だが、『ケルビム・ミルトス』もまた数を誇るように連携し『ヴリトラ』を包囲するのだ。
打ち込まれるプラズマナックルをシールドで受け止めてはいるが、それでも電撃が駆体を走り抜け、コクピットにいるメサイアを痺れさせるのだ。
「ピリピリするのですわ~! イライラですわ~! 激オコですわ~! むっきー!」
「メサイア」
ジェラルドは末妹の心配はしていなかった。
彼女に習うように盾で『ケルビム・ミルトス』を叩き伏せながら、敵の武装を適切に破壊し、ジェラルドは黙々と作業的に敵機を撃破する。
加勢に向かうこともできたかもしれないが、無用であると彼は理解していた。
何故ならば。
「皆様まとめてぶっ飛ばしますわよ~!」
狂竜咆哮(ベルセルクシャウト)。
それはユーベルコードの輝きと共に周囲を吹き飛ばす一撃。
「わたくしが怖いでしょう? わたくし、とっても怖いのですのよ? 降参なさって?」
メサイアは『ヴリトラ』の放つ咆哮と共に一歩、また一歩と踏み込む。
だが、それで敵が退くはずがない。
例え、答えようのない恐怖が彼らを襲うのだとしても、全ては虚ろなる瞳に吸い込まれていくだけなのだ。
故にメサイアはやはり、と頷く。
「では、暴力なのですわ~!」
そう、全ては暴力で解決できる。
そう言わんばかりの無法者と化したメサイアはジェラルドと共に天使の行軍を食い破るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『アークレイズ・ディナ』
|
POW : 孔壊処刑
【ドリルソードランス】が命中した対象に対し、高威力高命中の【防御を無視或いは破壊する掘削攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ガンホリック
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【デュアルアサルトライフルとテールアンカー】から【実体弾の速射とプラズマキャノン】を放つ。
WIZ : パワーオブザ・シール
命中した【テールアンカー又は両肩部のアンカークロー】の【刃】が【生命力やエネルギーを吸収し続けるスパイク】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
イラスト:タタラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リジューム・レコーズ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
天使の行軍は食い破られた。
第一波とも言うべき、その侵略軍の攻勢であったが、しかし、すぐさまに第二波が迫りくる。
率いるは赤熱するかのような輝きを放つ駆体。
オブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』である。
それは嘗て、強さだけが絶対たる小国家『フィアレーゲン』を象徴する機体であった。
最強。
それこそが求められるものであった。
そして、それを見事に体現していたのが彼女――『ツェーン』だった。
嘗て敵対する者には『悪魔』と呼ばれ、味方には『救世主』とも呼ばれた圧倒的存在、『フュンフ・エイル』。
そのデータをもとにしたシュミレーションデータを唯一撃破したパイロット。
それが『ツェーン』である。
その彼女が今、過去を再現するように『アークレイズ・ディナ』を駆り、迫っている。
「あの人がいないの」
彼女は虚ろな瞳で猟兵達を見やる。
「どこにもいないの」
何を、と思っただろう。
彼女は虚ろな瞳に狂気を宿していた。
「あの人がいないと、私、私は……生きていていい、理由なんてないの!」
『アークレイズ・ディナ』の周囲には直掩のように『ケルビム・ミルトス』が展開している。
これを撃破しなければならない。
数と最強の個。
それらが組み合わさったオブリビオンマシンの第二波を前に猟兵達は、果たして彼女を殺さずに止めることができるだろうか。
僅かでも気を緩めれば、一瞬で喉元をかき斬られるかのような重圧。
それだけの力が彼女にはある。
虚ろな瞳に宿る狂気が、彼女自身を許さぬとばかりに、力を発露する。
赤熱した『アークレイズ・ディナ』は、嘗ての最強の称号を示すように戦場に燦然と輝いた。
「クロア、私、生きてちゃダメなんだよ。結局、どこまで行っても、キャバリアは私を逃がしてくれない――」
村崎・ゆかり
来たわね、『ツェーン』。まずはあなたから助け出す。
技師の真似事してるより、キャバリアに乗る方がずっといいでしょ。そうして、『彼』の隣で戦えばいい。
「全力魔法」衝撃の「属性攻撃」「範囲攻撃」「竜脈使い」で地烈陣。
初見殺しよ。あなたにはまだ見せたことのない術式。
そしてこの地のキャバリアの多くは、殲禍炎剣のために飛行を最初から捨てている。それなら、大規模地表破壊に巻き込める。
『アークレイズ・ディナ』も今の飛び立つ前なら巻き込めるはず。
あたしは『迦利』に乗って、かつての『最強』と相対しよう。一度は降した相手となめることはしない。
「レーザー射撃」の「弾幕」を張りながら交代。相手を味方の領域まで誘い込む。
身を斬りつけるような重圧を感じた。
それは近くにあるものすべてを切りつけなければ気がすまないような、そんな鋭さを持っていた。
オブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』。
嘗ては、小国家『フィアレーゲン』最強の象徴。
赤熱するような駆体と共に『ケルビム・ミルトス』が直掩のように展開する。
「来たわね、『ツェーン』」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、そのオブリビオンマシンを認める。
「技師の真似事をしているより、キャバリアに乗る方がずっといいでしょ」
「私には逃げ場がない。どうやっても、どう辿っても、結局ここに到達してしまう。だから」
『アークレイズ・ディナ』のドリルソードランスが剣呑な輝きを放つ。
加速した機体は、ゆかりをめがけて飛ぶ。
生身だからとか、そんなことは関係ない。
眼の前に迫るものは全て敵。
それが狂気に彩られた彼女の瞳であり、また同時に過去の彼女の瞳そのものだった。
最強でなければならない。
強くなければ生きられない。
そんな世界にただ一人生きてきた彼女にとって、戦いの場というのは生きる場であり、また同時に逃げ出したい場所でもあったのだ。
故に、ゆかりの言葉は彼女の心を徒に傷つけるものであったことだろう。
「『彼』と一緒に、隣で戦えばいい」
「戦いたくない。私だって、あの人だって、戦いたくなんてない。好き好んで戦いの場になんて来たわけじゃない!」
「それでも戦いの場はあなたたちに迫ってくるわよ」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。竜脈宿せし大地よ。永劫の微睡みから目覚め、汝を忘れ去った者共に相応の報いを与えよ。疾!」
地烈陣(チレツジン)によって大地が砕ける。
地表に亀裂が走り、凄まじい勢いで隆起した大地が槍のように『アークレイズ・ディナ』を襲う。
その苛烈なる一撃を『ツェーン』は類稀なる操縦技術でもって躱し、隆起した地面を足場にして飛び、ゆかりへとドリルソードランスを振りかぶる。
『ケルビム・ミルトス』は、彼女のユーベルコードに寄って飲み込まれる。
初見殺しだった。
だが、それでも『ツェーン』は即応していた。
眼の前の障害が咄嗟のものであれ、初見であれ、対応出来なくて何が最強か。
『アークレイズ・ディナ』は、そう言うかのように、ゆかりのユーベルーコード、広域を巻き込む力を前にして飛び込み、ドリルソードランスの一撃を叩き込む。
盾のように翻った機甲式『GPD-331迦カーリー利』の装甲が削られひしゃげ、大地に叩き落される。
失墜した機体の衝角の切っ先がゆかりに迫る『アークレイズ・ディナ』へと向けられ、レーザー射撃の弾幕を解き放つ。
「一度は降した相手とは言え……舐めてはないけれど!」
「こんなものッ!」
振るうドリルソードランスがレーザーを弾き、さらにゆかりに迫る。
彼女は身を翻す。
敵が第二波であるというのならば、『ケルビム・ミルトス』から引き離すことで敵を孤立させることができるはずだ。
ゆかりは、迫る『アークレイズ・ディナ』を仲間である猟兵達の元に引きずり出すように駆け出し、追いすがる『ツェーン』と共に後退するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
さっきから黙って聞いてりゃごちゃごちゃごちゃうるせーんですよ!
生きてていいとか悪いとか浸りやがって、ぶん殴って正気に戻してからこのやり取りを思い出させてやるですよ!
とは言ったものの、こいつはハードな戦場です。
空中戦を挑めば、低空でも多少ボクに有利に事を運ぶ事は出来るかもですね。
取り巻き共だけでなくあのドリルソードランスとか言う欲張りセットな武器も厄介です、なるべく射程外から仕掛けるか……となると、これです!
空中で取り巻きの相手をしながら様子を見て、良いタイミングで突撃の貫通攻撃!
どのパイロットも殺さず攻撃出来る瞬間を狙うです、ここは瞬間思考力の見せ所ですね。
まとめて切断して、道を開くですよ!
浸っている。
ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)には、そう思えてならなかった。
『ツェーン』と呼ばれる少女は、オブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』の齎す狂気に侵されている。
だからこそ、その心の内側にあった負の側面を増幅させられているのだろう。
それが良いこととは思えない。
けれど、人には誰しも負の側面を持ち得るものだ。
光と影があるように、陰陽のように。
時として、負の側面は人に心地よさを与えるものだ。
現実を見なくて済むように。
負を肯定すれば、それだけで心が慰められるからだ。
だからこそ、ファルコは叫んだ。
「さっきから黙って聞いてりゃ、ごちゃごちゃごちゃ、うるっせーんですよ!」
ファルコは一直線に飛んだ。
背部パルスプラズマ・スラスターが光を放つ。
ユーベルコードの光に彼女の体は、等身大でありながら圧倒的な加速で持って炎の戦場を切り裂く剣のように一気に奔った。
その加速に『アークレイズ・ディナ』は即応していた。
ハードな戦場になることは言うまでもなかった。
だが、ファルコは苛立っていた。
『ツェーン』の言葉が、どうにもファルコには赦せなかった。
生きていていいとか。
生きていてはいけないとか。
「そんなもん、誰が決めたっつーんですか! 否定されても生きることをやめられないのが生命でしょう! どんなに役立たずと言われても! どんなに存在価値がないなんて言われても!」
ファルコは飛ぶ。
そう、飛ぶのだ。
この空に蓋をされた世界にあって、己の存在はあまりにも無意味だった。
だが、居場所なんて言うものは自分で見つけるものだ。
であれば、生きる理由だってそうなのだ。
誰かに言われたから生きているのではない。
自分で決めたから、生きているのだ。
例え、オブリビオンマシンによって負の側面が増幅させられているのだとしても、それでもファルコは、生きることにかけて、生きることに理由を見出そうとする輩にたいして、怒りを燃え上がらせるのだ。
「だって、強くなければ生きてちゃいけないんでしょ! そうじゃなくちゃあ、生きる理由も、意味も! ない! そんなふうに世界は!」
「なっているのだとしても!」
ファルコの瞳が輝く。
煌めく光の軌跡が描くのは、鋭き剣閃。
そう、彼女のユーベルコードは己を剣にすることだった。
「スラスター、モード・スパーダ!」
Gゴッドレイ・スパーダ(ジーゴッドレイ・スパーダ)。
それは彼女の所属する部隊名を関した力。
彼らのようにまっすぐに生きたい。
例え、愚連隊と言われても、それでもまっすぐに己の意志を貫き通す力がほしい。だからこそ、ファルコは、スラスターの噴射でもって遷音速に至る。
目にも止まらぬ速度で突撃した一撃は『アークレイズ・ディナ』のドリルソードランスと交錯し、火花を散らす。
弾かれたドリルソードランスが跳ね上がり、『アークレイズ・ディナ』が体勢を崩す。
「速い……! 私の反応を超えて! でも!」
「遅っせーんですよ! 今ならぁ!!」
ファルコは戦場を遷音速で横断した。
そう、狙いは『アークレイズ・ディナ』だけではない。
周囲に展開した『ケルビム・ミルトス』たち。
パイロットは殺さず、彼らの武装の尽くを縫うようにしてファルコは駆け抜け、切断したのだ。
瞬間思考によるルート算出。
それによってファルコは最強たる『アークレイズ・ディナ』の一瞬の隙をついて取り巻きである『ケルビム・ミルトス』たちの武装を破壊し、纏めて切断して見せたのだ。
「生きる理由なんてーのは、自分を慰めるためにあるんじゃねーんですよ! 自分で見つけて、自分で進むしかねーんですよ! だったら!」
ファルコは拳を振り上げる。
そう、嘗て彼女がそうだったように。
己が手で切り拓く。
誰もがそうしてよいのだと示すように彼女のユーベルコードの輝きが、炎の戦場を両断したのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シャナ・コリガン
来ましたね、本命の片方。救出対象…!
『聳孤』は竜騎用象形拳〜麒麟〜によって、自動的に動くように。
その竜騎用双剣で、パイロットを傷つけず、武装と『オブリビオンによる思考汚染』を斬っていってください!
そして、私は『ツェーン』さんこと『アークレイズ・ディナ』と相対…【妖精獣騎の帰還・火】!
そのスパイクに捕まらないように急旋回や間合い取りをして…攻撃は火の精霊に任せます!
私は、あの『アークレイズ・ディナ』をさらに孤立させるように悪路走破、さらに火の精霊による閃光で目眩まし、音で勘付かせて引き寄せます!
戦場を支配するのは何か。
言うまでもなく数である。
炎の戦場を道行くのは『ケルビム・ミルトス』。
そして、これらを率いるのは第二波のオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』。
赤熱する駆体を携えて機動する様は、正しく悪夢のようであった。
「来ましたね、本命の片方」
シャナ・コリガン(どこまでも白く・f44820)は、自身のキャバリア『聳弧』を駆り、『アークレイズ・ディナ』と打ち合った。
ドリルソードランスが手にした双剣の刀身に刃毀れを刻み込むようにして回転し、事実、火花と共に双剣の刃が砕けていく。
「救出対象がこれとは……!」
「邪魔をしないで。私は逃げられない。だからっ、もう!」
双剣が弾かれる。
手数は此方が上だというのに『アークレイズ・ディナ』を駆る『ツェーン』の技量が高すぎる。
それ故にシャナは剣戟で圧倒される。
取り回しが悪いはずのドリルソードランスであっても、自在に双剣の軌道を先読みしたように打ち払い、さらには打ち込んでくるのだ。
さらには『ケルビム・ミルトス』の妨害である。
衝撃波と機銃が『聳弧』を取り囲み、『ツェーン』は、その攻撃の嵐の中を舞うようにして追い込んでくるのだ。
「オブリビオンマシンによる狂気の汚染……だけじゃない。あなたは何を見ているのですか」
シャナは『ツェーン』の強さは、彼女自身の技量によるものだと理解していた。
だが、彼女の気迫のようなものは、技量を超えるものであった。
なら、何が彼女をそこまでさせるのか。
「あの人がいない。私の前からあの人がいなくなった。私が最も大切だったのは……!」
「誰かを失う未来を見た……それを今と認識している……!」
それがオブリビオンマシンの齎す狂気に寄って見えているのだ。
だから、彼女は戦うのだ。
本来ならば乗ることのなかったキャバリアに。
もう二度と乗るはずのなかったオブリビオンマシンに。
「あの人がいない未来なんて、いらない!」
『アークレイズ・ディナ』からテールアンカーと肩部からスパイクアンカーが飛び出す。
凄まじい速度。
自在に宙を動き回るアンカーが『聳弧』に襲いかかる。
加えて『ケルビム・ミルトス』の飽和攻撃である。
「妖精獣騎の帰還・火(ファータバルバ・リトルノ・アレ・オリージニ)!」
機体から奔るのは、火の精霊。
「滅びればいい!!」
スパイクアンカーが火の精霊を貫き、その精霊の生命力を吸い上げる。
「目眩まし!」
「……!」
火の精霊が爆ぜるようにして光を放つ。
それは視界を白く染め上げる。
シャナは『聳弧』と共に機銃の斉射をかいくぐり双剣を『アークレイズ・ディナ』へと叩き込む。
ドリルソードランスで受け止められながら、機体が傾ぐのを押し込むようにしてシャナは『アークレイズ・ディナ』を『ケルビム・ミルトス』から引き離すようにして体当たりで吹き飛ばす。
「思考汚染が斬れない……のなら!」
『ケルビム・ミルトス』の支援をさせない。
孤立させる、とシャナは切り替えて『アークレイズ・ディナ』を更に『ケルビム・ミルトス』の群れから距離を離すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イクシア・レイブラント
自身を[護衛]させる形でシールドビット展開。
ドリルソードランスを[盾受け]して[時間稼ぎ]し
その隙に[空中機動]で距離をとって被弾を避ける。
反撃に【融合切除】でパイロットにとりついたマシンの狂気を排除しつつ
[情報伝達]で会話を試みる。
戦いの中、こんなことを聞くのは野暮だとは思うけれど、
あなたのいうあの人ってどんな人かしら?
戦闘用に作られた私たちを戦場が求めているのは確かだけど、
私たちは生きていていいし、恋をしてもいいの。
私だって大切な人と会えなくなってしまえば
あなたのように我を忘れてしまうかもしれない。
だけど、この戦いが終わればあなたはきっと彼に会える予感がする。
まずはあなたを無力化するよ。
オブリビオンマシン『ケルビム・ミルトス』という取り巻きを持つ『アークレイズ・ディナ』を攻めあぐねるのは当然の帰結であった。
しかし、猟兵達は『ケルビム・ミルトス』から『アークレイズ・ディナ』を引き剥がすように行動していた。
第一波、第二波と大軍を持つ侵略。
けれど、戦線が伸びれば伸びるほどにオブリビオンマシンにまとまった行動はできなくなる。
即ち、連携が取れなくなる。
足並みが崩れれば、敵はそれだけ侵略速度を遅らせるだけなのだ。
だからこそ、イクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)は『アークレイズ・ディナ』から多くの『ケルビム・ミルトス』が離れた瞬間を逃さなかった。
シールドビットと共に彼女は『アークレイズ・ディナ』へ突進した。
「戦いの中、こんなことを聞くのは野暮だと思うけれど、あなたのいう『あの人』ってどんな人かしら?」
「あの人は私の救い。私の存在意義。私が私でいていい理由!」
ドリルソードランスが唸りを上げて振るわれる。
イクシアが生身単身であっても関係ないと言わんばかりの輝き。
放たれた一撃は、標的が如何に小さかろうが過つことなくイクシアへと奔る。
回転による衝撃波。
巻き込むようにして放たれた一撃にイクシアを守っていたシールドビットが砕けて散る。
破片が周囲に舞い、地面に落ちる。
イクシアは、空中を機動し『アークレイズ・ディナ』の懐へと飛び込む。
「理由……」
「戦うことを宿命付けられたのが私。最強であることを求められて、最強でなければ不要と言われるような、こんな世界にあって、そうじゃなくてもいいって言ってくれた人……! なら、あの人がいない世界なんて!」
唸りを上げるジェネレーターの音は『アークレイズ・ディナ』を駆る『ツェーン』の激情に後押しされるようだった。
更に出力を上げたドリルソードランスの一撃にイクシアは身を翻すのがやっとだった。
衝撃波が身を打ち据える。
「戦闘用に造られた私達を戦場が求めているのは確かだけど、私達は生きていていいし、恋をしてもいいの。生きる理由なんて、そんなものに振り回されては!」
「そうでなければ、私の意味なんてもうどこにもないじゃない!」
「私だって」
大切な人にあえなくなれば。
イクシアは思う。
自分も彼女のように狂気に心を奪われてしまうかもしれない。
けれど、そうなっていない。
彼女はまだ、そうなっていないのだ。
ならば、とイクシアの瞳がユーベルコードに輝く。
「……だけど、この戦いが終われば、あなたはきっと彼に会える。そんな予感がする。だから、まずは!」
融合切除(フュージョンブレイカー)によって、彼女の狂気を心から切り離す。
放たれた一撃が因果事象の修復力と共に放たれる。
肉体は傷つけない。
オブリビオンマシンが彼女の心を狂気に蝕むというのならば、その力を切り裂く。
砕けたシールドビットが飛び出し、イクシアの眼前でドリルソードランスを受け止めて、完全に砕けた。
だが、イクシアの一撃は確かに『アークレイズ・ディナ』と『ツェーン』の繋がりを切りつけたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ふふん♪
たまにはシリアスに耐えられることもあるんです!
……恋バナへの興味がシリアスを上回ったともいいますが。
さて!
『ツェーン』さん『クロノ』さん、
お二人のためにも、ここは前に出させてもらいますよ!
のろけ上等!ばっちこい!
倒すなんて論外です!
ここはしっかりくっついてもらって、恋バナをたーっぷり聞かせてもらうんですからね!
『ツェーン』さん、あなたはパイロットとしては超一流でも、
心は『エイル』さんのように強くないんですね。
そこを『ノイン』さんにつけ込まれましたか……。
しかし安心してください。
奏魔術の勇者は、心のケアもできるんです!
わたしの新曲【献呈】で、あなたの心をブーストアップです♪
ステラ・タタリクス
【ステルク】
第一波を凌ぎましたか
というか、ルクス様がシリアスに耐えた!?
さて、あの性悪女はまだ
では恋をすくうとしましょう
ちょっと突っ込みますのでフォローとトドメお願いします
あ、倒しちゃダメですよルクス様
ケルーベイム!
【カナフ】で突撃&接近してアークレイズ・ディナの動きを止めます!
ツェーン様!
まだクロア様は生きています!
破滅の思考に囚われないで!
いつだって未来は!その目で見た時に確定するもの!
世界を越えて恋を繋げている人だっているのです!
狂気に惑わされてどうしますか!
貴女様の人生はまだ決まっていない!
どこまでも付いて回る狂気であっても
必ずや引き剥がしてみせましょう!
他の人を、私たちを頼りなさい!
オブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』は『ケルビム・ミルトス』から引き剥がされて尚、健在であった。
猟兵達の攻勢を前にして未ださしたる損傷なく立ち回れているのはパイロットである『ツェーン』の能力が抜きん出ているからであろう。
それをステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は理解していた。
『フュンフ・エイル』のシュミレーションデータとは言え、これを撃破した能力は一戦から退いても陰ることはなかったのだ。
「第一波は凌ぎましたか……ですが」
強敵である。
まごうこと無き『エース』である。
これを如何に殺さず退けるか。
猟兵達に無理難題は幾度となく突きつけられるが、これほどまでに困難な状況はそう多くはないだろう。
「というか、ルクス様がシリアスに耐えられた……!?」
「ふふん♪」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は誇らしげに胸を張った。
そう、彼女はアレルギー反応を出すことなく、このシリアス満ち溢れる戦場にいたのだ。
「たまにはシリアスに耐えられることもあるんです!」
「本当に?」
「……恋バナへの興味がシリアスを上回ったといいますか」
「ならば、恋を救うとしましょう」
「はい! お二人のためにも!」
『ソナーレ』と共にルクスは前進する。
けれど、これをステラは『ケルーベイム』でもって制する。
「私が突っ込みますので、フォローを。あ、倒しちゃダメですよルクス様」
「倒すなんて論外です!」
ルクスの言葉が終わるやいなや、『アークレイズ・ディナ』が踏み込んできていた。
いや、違う。
機体の肩部と腰部に備わったアンカーが一気に『ソナーレ』と『ケルーベイム』に迫っていたのだ。
四方八方から迫るアンカー。
触れれば、生命力を奪われる。
「『ツェーン』様!」
「あの人が居ない世界なんて、いらない! 私はッ! 私の存在意義がなければ!」
「まだ『クリノ・クロア』様は生きています! 破滅の思考に囚われては!」
「だって、どこにもいないもの!」
「いいえ、生きています! いつだって未来は! その目で見た時に確定するもの!」
アンカーを『ケルーベイム』が躱す。
超加速と極超音速の突撃によって、『アークレイズ・ディナ』の攻撃を躱し続けている。
アインセンサーが光を放つ。
残光が戦場に刻まれるほどの機動。
ステラの身には加速度Gがすさまじい圧力で持ってのしかかっている。
骨身が、肺が、軋むように潰れていく。
だが、そこまでしなければ『ツェーン』の攻撃を躱すことなどできない。
故にステラは血反吐を飲みこらえた。
「世界を越えて恋をつなげている人たちだっているのです! 狂気に惑わされてどうしますか!」
「なら、私のあの人を助けてよ!!」
彼女がどのような未来を見たのかをステラは知らない。
けれど、強い狂気は深い絶望によって生み出されるもの。
だから、彼女は涙をこぼしながら『アークレイズ・ディナ』を操る。
「『ツェーン』さん、あなたはパイロットとしては超一流でも、心までは強くないんですね。どこにでもいる女の子……」
だから、そこを狂気につかれた。
ルクスはそう思った。
ユーベルコードの輝きを身に湛えながら、『ソナーレ』を制御しているグランドピアノの鍵盤に指を下ろす。
解放された機能が光を放つ。
「だったら、恋バナしましょう! のろけ上等! ばっちこいですよ!」
「あの人の手に振れたい。あの人の温かさを、あの人の優しさを感じたい。ただそれだけなのに!」
世界のどこにもいないという未来が見せる狂気が、彼女をどこまでも狂わせていく。
「貴女様の人生あhまだ決まっていない! どこまでもついて回る狂気であっても、必ずや引き剥がしてみせましょう!」
ステラはこらえた血反吐を撒き散らしながら『ケルーベイム』と共にアンカーを切り払った。
瞬間、ルクスと共に『ソナーレ』がユーベルコードの輝きを放つ。
献呈(ケンテイ)するは、奏魔法。
「安心してください。心のケアだってできるんです! わたしの新曲で、あなたの心をブーストアップです♪」
膨れ上がれ、想い。
人を生かすのは、きっとそうした温かな気持ち。
誰からかが与えるものではない。
自らの心から湧き上がる温かさこそが、狂気という凍てつく感情を溶かし尽くすのだ。
ルクスはそう告げるように、鍵盤を弾いた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
皇・銀静
銀盗
機神搭乗
UC発動中
助平クズ小僧…ああ…判ってる…あの|阿婆擦れ《オリジナルテレサ》の機体だろ
確かに…奴を捕らえるなら…この戦い…避けられないな
【戦闘知識】
周囲の敵の状況と敵の動きの癖
カシムが得た情報も共有
また周囲の敵の機体の構造と人の位置を把握
ギガスゴライア出撃発動
サリア…中には人がいる
極力死なせない様に立ち回れ
「Grrraaaaa!」(銀静お兄さん任せてー!ぼくがんばる
という訳でサリアは周りのOマシン群を牽制
ビームは使わず手足を踏んだり食いちぎったりして無力化して乗り手を保護
不殺徹底
【念動力・属性攻撃・弾幕・空中戦】
勝利の神
槍の神発動
超高速で飛び回りながら念動光弾を展開して周囲の軍団も牽制
皆でやり合うのは好みではあるが…目的もあるんでな
後で相手してやる
【二回攻撃・切断・串刺し】
カシムと連携して猛攻を仕掛ける
槍による刺突から斬撃へと繋げた猛攻の後
裏白虎門発動
必中効果が付与された超連続斬撃蹴撃拳打を叩き込み一気に追い込んでカシムのわたぬきを使いやすい状況へと追い込
サポートは不本意だがな
カシム・ディーン
銀盗
機神搭乗
UC発動中
よぉ陰キャ野郎…此奴…この機体…|奴《Oテレサ》と同じだ
「でもJDSは積んでないみたいだぞ☆」
だが…奴はエース…サクール帝国の連中と並ぶ怪物だ
死なせず…生かし…とっ捕まえる
「周りにまだ一杯Oマシンもいるね☆難易度ルナティックだぞ☆」
最強だぁ?
上等だおらぁ!こっちは最強無敵のカシムさんだ!
「最強の神機のメルシーだぞ☆」
つー訳で倒した上で逮捕してやる!
【情報収集・視力・戦闘知識】
ツェーンの能力と機体の構造…彼女のいる位置を正確に把握
【念動力・属性攻撃・弾幕・スナイパー・空中戦・見切り】
速足で駆ける者発動
超絶速度で飛び回り念動光弾と共に闇属性の弾丸で意識を削り気絶を狙う
敵のアンカークローの動きを見切り闇の分身を作り幻惑
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
銀静と連携して鎌剣による超連続攻撃を叩き込み手足を切り裂き武装も破壊や強奪を狙い
わたぬき発動
敵機の臓腑…即ちツェーンを強奪し保護!念動力で彼女の身を保護し衝撃のダメージから護る!
生きていいかどうかに理由なんぞねーよ!
戦場で結ばれた縁は、戦場でしかほどけない。
それが生と死を分かつのだとしてもだ。
「よぉ陰キャ野郎……」
「助平クズ小僧……」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)と皇・銀静(陰月・f43999)は、炎の戦場で相まみえた。いや、隣にあった、というのが正しいだろう。
「此奴……この機体、わかっているな?」
「ああ……判っている……」
眼の前にはオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』。
赤熱する機体からほとばしるエネルギーは、これまで猟兵達との戦いで奪った生命力で溢れていた。
パイロットである『ツェーン』はまごうことなき『エース』。
それもトップ・オブ・トップと呼ぶに相応しい技量を持ち得た存在だった。
「死なせず……生かし……とっ捕まえる」
『周りにまだいっぱいオブリビオンマシンもいるしね☆ 難易度ルナティックだぞ☆』
『メルシー』の言葉にカシムは頷く。
「そういうことだ」
「確かに……やつを捕らえるなら……この戦い……避けられないな」
互いに機神に搭乗し、二人は迫る重圧に呻いたかもしれない。
彼らが思う以上に『ツェーン』が駆る『アークレイズ・ディナ』は、凄まじい重圧を放っている。
肩部と腰部から放たれたアンカーが宙を舞う。
二対一。
ともすれば、他の猟兵達との連戦を経て来て尚、この重圧なのだ。数の優位など瞬く間に覆してくることがわかるだろう。
故に最強。
「最強を証明したのが、私……だから、私の前に立つということは」
敗北を意味する。
それが象徴としての最強。
だが、カシムは鼻で笑った。
「最強だぁ? 上等だおらぁ! こっちは最強無敵のカシムさんだ!」
『最強の神機のメルシーだぞ☆』
「つーわけだ。倒した上で逮捕してやる!」
「助平クズ小僧が息巻く……」
「気合で負けてられっかってんだよ!」
宙を舞うアンカーが二騎に奔る。
その速度は凄まじいものだった。弾丸よりも速いとさえ思えるほどの速度。
有線によるタイムラグを極力に削ぎ落とした全方位攻撃。
二騎の眼前に飛び出したのは『ギガスゴライア』であった。
かばうようにして重装甲でアンカーを受け止めて尚、振り回すように巨体が暴れまわる。
「サリア……中には人がいる。極力死なせないように立ち回れ」
「Grrraaaa!」
咆哮と共に『ギガスゴライア』はアンカーを引き剥がしながら、迫る『ケルビム・ミルトス』を相手取る。
牽制と攻勢。
重装甲を盾にするようにして『ギガスゴライア』は無数の『ケルビム・ミルトス』と戦いっを繰り広げる。
「不殺は徹底させる……グリム……お前の力を解放しろ」
ユーベルコードが銀静の瞳に輝く。
そして、カシムもまた同様だった。
「神機解放機構『絶対神機』(グリームニルフルバースト)」
「神機解放機構『界導神機』(メルクリウスフルバースト)」
言葉が重なる瞬間、二騎の神機より放たれるユーベルコードの輝が『アークレイズ・ディナ』へと奔る。
「どれだけ速いのだとしても、動いているのなら!」
アンカーが宙を翻る。
圧倒的な超高速機動。
二騎を相手にして『ツェーン』は焦ることをしなかった。
超高速機動は、その速さ故に直線的な動きになりがちである。例え、曲線を描くのだとしても、その動きは物理法則に準拠する。
であればこそ、その挙動がどのようなものになるのかを彼女は理解していた。
それが瞬間思考によって導き出されたものではなく、視覚を通して得た情報を瞬時に体の反応に反映させることのできる身体能力によるものだった。
動物じみた動き。
二騎の神機『メルクリウス』と『グリームニル』を相手取って『アークレイズ・ディナ』は連携攻撃をいなす。
「躱すかよ!」
「やるようだが……」
挟撃の一撃を『アークレイズ・ディナ』はドリルソードランスを振るって受け止める。
火花が散り、力の奔流が周囲に破壊を齎す。
光が明滅する戦場。
そのさなかに三騎のマシンが乱舞する。
アンカーテイルが『メルクリウス』の装甲に突き立てられ、生命力を吸い上げる。
「チッ!」
鎌剣が振るわれ、アンカーテイルを切り裂き、突き立てられたアンカーを投げ放つ。
「『メルシー』、追いつかれてんぞ!」
『わきゃー☆ 生命力ごっそり持ってかれちゃってるよー☆』
「こらえろ!」
『グリームニル』の槍の刺突と斬撃を長物であるドリルソードランスを巧みに操って『アークレイズ・ディナ』は切り返し、その装甲を切り裂く。
「裏白虎門……!」
必中の一撃さえも、ドリルソードランスが受け流し、その回転によって逆に『グリームニル』の武装が削られていく。
「いなすだけではなく、カウンターを随時叩き込んでくる……か」
「陰キャ野郎はもうちっと気張れや!」
「うるさい……」
「滅ぼす。あの人のいない、世界なんて、いらない! 私は、私の存在意義のない世界なんて、必要としない! 生きていい理由のない世界ならァ!!!」
「生きていいかどうかに理由なんぞねーよ!」
加速する戦い。
鎌剣が翻り、『メルクリウス』が『アークレイズ・ディナ』に迫る。
『グリームニル』が、カシムのために『ツェーン』の隙を作り出していた。
放たれたユーベルコード。
伸ばされた腕部。
放たれるアンカーの全てが『メルクリウス』の腕部を砕いた。
弾かれるようにして『ツェーン』と『アークレイズ・ディナ』を繋ぐ狂気が吹き飛ぶ。
だが、それでもだ。
「まだ足りねーか! だがよ!」
「ああ、あのパイロット自体が消耗してきている……なら」
勝利は引き寄せることができる。
どんなに『ツェーン』がパイロットとして強大だとしても。
どんなに『アークレイズ・ディナ』がマシンとして圧倒的であったとしても。
勝利条件がオブリビオンマシンと猟兵都では違うのだ。
故に二騎は傷つきながらも、『ツェーン』の中に染み込んだ狂気を払うように果敢に戦い続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
薄翅・静漓
戦場に結界領域を展開、攻撃を封じるわ
周辺のパイロットたちを眠らせて、傷を癒やすためのこの術でも
『ツェーン』の力をどこまで抑え込めるかわからない
それでも
ほんの一瞬でも、『ツェーン』に声が届くように術を維持するわ
『ツェーン』
あなたの心は、あなたのものよ
あなたの想いを、誰かに利用されるなんて、あってはならない
この声が届くなら、どうか憎しみの中で泣かないで
気づいて、あなたはまだ愛する人を失ってはいない
あなたは未来を変える力を持っているわ
過酷な運命があなた達を翻弄するのだとしても
戦いを望まないあなたの想いが、彼を、そしてあなた自身を救うはずよ
どうか生きて、やさしい子
「どうか」
呟いた言葉は、戦場に在りしものたち全ての心に響くものだった。
いきて(イキテ)ほしい。
その願いにも似たユーベルコードの輝きは、戦場に満ちる汎ゆる攻撃衝動を封じる力だった。
結界が領域として薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)の身を中心にして広がっていく。
大軍のオブリビオンマシン『ケルビム・ミルトス』の全ての攻撃を封じることはできないだろう。
だが、彼女の周囲に迫る『ケルビム・ミルトス』たちの攻撃を全て封じる。
パイロットたちは虚ろなる狂気に侵されている。
なら、それを癒やしたいと静漓は思ったのだ。
「『ツェーン』」
静漓は呟くようにオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』を見上げた。
赤熱するような機体。
猟兵達との連戦に継ぐ連戦であったとしても、その機体は健全だった。
目立った損傷はない。
「私の名前を呼ぶあなたは、だれ……! そんなふうに私を呼ばないで……!」
彼女は静漓のことを知っている。
けれど、今は空虚なる狂気に侵されて、見えなくなっているのだろう。
嘗て彼女と共に過ごした日を静漓は覚えている。
だからこそ、彼女を傷つけたくはなかった。
虚ろなる狂気が彼女を走らせているのならば、その肩に手を伸ばす。そうするように彼女は『ツェーン』にとまってほしかったのだ。
己のユーベルコードの力がどこまで彼女に作用するのかわからない。
あのオブリビオンマシンが齎す狂気が『ツェーン』を捕らえ続けている限り、この戦いは終わらない。
そして、殺させたくはないと思っていた。
「あなたの心は、あなたのものよ」
「私の心なんて、もう誰も見てくれない。私を一番に理解してくれたあの人がもういないのに! 誰が私の心を!」
「それがあなたの想い。それを誰かに利用されるなんて、あってはならないの」
「うるさい!!」
拒絶。
その鋭さに静漓は胸を痛めただろう。
傷つく痛みに呻いたかもしれない。
けれど、静漓は一歩を前に踏み出した。
声が届いている。
例え、憎しみと怒りと哀しみとが綯い交ぜになった中だとしても。
「泣かないで」
「泣いてなんか、いないわ。私は……!」
「気づいて。あなたはまだ愛する人を失っていない」
翻るようにして『アークレイズ・ディナ』からアンカーが飛び出す。剣呑な切っ先が静漓を頭上から襲い来る。
だが、それらは彼女に届くことはなかった。
周囲の地面に突き立てられるようにして、力なく落ちるばかりだった。
「あなたは未来を買える力を持っているわ。過酷な運命があなた達を翻弄するのだとしても。戦いを望まないあなたの想いが、彼を、そしてあなた自身を救うはずよ」
自分たちが救うのではない。
自ら救われるのだ。
誰かを思うことは大切なことだ。尊ばれるべきものだ。
だからこそ、それを利用されてはならない。
どんなに空虚な狂気が見せる未来があるのだとしても。
まだ、その胸には鼓動が打ち鳴らされているのだから。
「どうか、いきて。やさしい子」
それが静漓の願い。
戦うばかりが人ではないと、静漓は知りたかった。
悪意があれど、善意が宿るからこそ、人は立ち止まることができるのだと――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
おツェーン様が人生に悩んでおりますわ!
考えても仕方ないのですわ~!
おいしいご飯においしいお酒があれば人は生きていけるのですわ~!
わたくし人生エンジョイしておりますわ~!
わたくしはお天使を大人しくさせますわ
エルネイジェの皆様~!
わたくしが目を覚まさせて差し上げますわよ~!
その他の皆様もついでにお助け致しますわ~!
さっきのでお天使の攻撃はシールドでおガードできる事が判明したのですわ!
あっちこっちから撃たれても安心ですわ~!
今度はこちらの番でしてよ~!
アンカークローをおシュート!
おキャッチ!
そしてぐるんぐるんぶん回すのですわ!
チカライズパワー!
ぶっ飛んで伸びてしまえばよろしいのですわ~!
ジェラルド・エルネイジェ
そうだな
この世界の誰もが縛られているのだろう
決して逃れられない、戦いの呪縛に
だがツェーン、お前は生きる事からも逃げられない
お前が戦い続ける限りな
俺はツェーンに仕掛けよう
メサイア、天使の軍勢は任せる
全員を連れて帰るぞ
しかしバーラントにも手を出すとはな
これは事になるぞ、ノインよ
距離を詰める
盾諸共に機体をぶつけるぞ
弾雨に臆する理由はない
超接近戦で喰らい付くぞ
ソードランスはスマッシャーテイルで打ち返す
あれだけの得物だ
予備動作を注視していれば見切れん道理もあるまい
それよりも警戒するべきは二種類のアンカークローだな
突き立てられた瞬間に炎竜爆砕破を放つ
この爆風は悪夢を払うのにも良いだろう
起きろ、ツェーン!
「あの人がいないこの世界なんて、いらない! 戦いが、私から全てを奪っていくのに、私は戦いから何も奪えない。奪い返すこともできない。どこまでも、私を追いかけてくる……こんな、こんな世界なんていらない! 奪うばかりで与えてくれない。与えるのも、奪うためだけのことなら!」
最初からいらない、とオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』を駆る『ツェーン』は叫んだ。
涙が溢れて止まらない。
今までなら、溢れた涙を拭ってくれる者がいた。
不器用だけど、まっすぐに見てくれる瞳があった。
緑の瞳が。
けれど、今は、それがない。
だから、『ツェーン』は空虚なる狂気に付け込まれたのだ。
「そうだな。この世界の誰もが縛られているのだろう。決して逃れられない、戦いの呪縛に」
ジェラルド・エルネイジェ(炎竜皇子・f42257)は瞳を伏した。
そう、誰もが戦いからは逃れられない。
生きている限り、どうしたって戦いは迫ってくる。
それがこの世界だ。
どんなに平和を望んだとしても、誰かの不都合が、誰かの平穏を壊す。
そういうものだ。
認めざるを得ない事実だ。愚かなシーソーゲームに興じるしかないのだろう。
ジェラルドは、しかして伏した瞳を見開き、ユーベルコードの輝きを灯した。
「だが、『ツェーン』、お前は生きることからも逃げられない。お前が戦い続ける限りな。世界の破滅を望んだのならば、尚更戦い続けなければならないのだ。お前が逃げようとした戦場にこそ、お前は自らで足を踏み込んだ――メサイア」
「わかりましたわ~!」
メサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)は兄の言葉に短く答えた。
珍しく物わかりがいい。
いや、本当はわかっていないのかもしれない。
『ヴリトラ』のアイセンサーが剣呑に輝く。
そこにあるのは暴力の気配だけだった。
そう、メサイアからすれば『ツェーン』の懊悩を解決する術など自分にも誰にもないのだという理解しかない。
考えてもしかたない。
人生というのは悩みに塗れているものだ。
誰だってそうだ。
己だって、兄だって、姉たちだって。
だからこそ、考えてもしかたない。
生きて、生きて、生きるのならば。
「おいしいご飯も、おいしいお酒も、生きていればこそなのですわ~! これさえあれば人はいきていけるのですわ~!」
メサイアの言葉にジェラルドは、呼気を漏らすように笑った。
そのとおりだな、と。
「わたくしをご覧になって~! わたくし人生をエンジョイしておりますわ~!」
炎上イしているとも言えるが。
「全員連れて帰るぞ」
「エルネイジェの皆様~! わたくしが目を覚まさせて差し上げますわよ~!」
瞬間、『アークレイズ・ディナ』から奔るアンカー。
無数のアンカーがジェラルドの駆る『サラマンダー』へと飛翔し、ドリルソードランスを構えた機体が『ヴリトラ』を狙って疾駆する。
だが、『サラマンダー』が迫るアンカーを追い抜くような加速と機体から放った爆炎と共に『アークレイズ・ディナ』へと肉薄する。
距離を詰めたのだ。
ドリルソードランスは確かに強力な武装である。
だが、長物なのだ。
メサイアの『ヴリトラ』を狙うのならば、なおのこと距離を詰められては標的に攻撃することはできない。
振るわれたドリルソードランスの一撃を『サラマンダー』は装甲で受け止める。
砕ける破片が炎煮溶けて消えゆき、再び吸収されて装甲を形作る間に二撃目が奔る。
スマッシャーテイルが翻り、ドリルソードランスと打ち合って、また火花を激しく散らす。
「エルネイジェの皆様以外もついでにお助け致しますわ~! あそれ! アンカークローをおシュート!」
メサイアは『ヴリトラ』のシールドでもって『ケルビム・ミルトス』の攻撃を受け止め、銃撃を弾きながら一気に肉薄する。
「あっちこっちから撃たれたところで、平気ですわ~! そぉい!」
揺るぎなき暴力(チカライズパワー)は全てを解決する。
メサイアは『ケルビム・ミルトス』を掴み上げて、身を回転させて『ヴリトラ』の膂力を最大限に活用するように振り回すのだ。
「チカライズパワー! 吹っ飛んで伸びてしまえばよろしいのですわ~!」
力技である。
だが、『ケルビム・ミルトス』の軍勢は、『ヴリトラ』とメサイアの圧倒的暴力によって退けられていくのだ。
「見きれぬ道理はないが……」
ジェラルドはドリルソードランスが『サラマンダー』のスマッシャーテイルを寸断した様を見ただろう。
あれだけの得物である。
その予備動作を見ていれば、見切れるはずだった。
だが、軌道が直前で変わるようにして振るわれているのだ。まるで此方の意図を理解したように。
先読みの先読み。
ジェエラルドと『ツェーン』は己の脳内で幾度……否、幾千、幾万もの打ち合いを演じていた。
刹那の内に互いが最適解と思える一撃を放ち、それでもなおジェラルドが打ち負けている。
だが、ジェラルドが真に警戒していたのは。
「そこを退いてよ!!」
「空虚なる狂気が見せる破滅のまどろみに浸るか、『ツェーン』!」
飛来するアンカー。
ドリルソードランスを攻略しきれていない中の四方からの攻撃に『サラマンダー』は対応できない。
装甲に突き立てられたアンカーが生命力を吸い上げようとした瞬間、ジェラルドは、その瞳のユーベルコードの輝きを最大限に引き出した。
「我が炎で爆ぜよ! これは盛大なる鐘の音! 起きろ、『ツェーン』!」
破滅のまどろみが見せるのは、悪夢。
ならばこそ、ジェラルドは己が乗騎が放つ爆炎こそが、その悪夢を振り払うのだと確信していたのだ。
炎竜爆砕破(エクスプロージョン)。
爆発炎上する戦場に『アークレイズ・ディナ』の装甲が焼けただれ、傾ぐようにしてドリルソードランスを杖とするさまを、ジェラルドは見ただろう――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
誰にでも結局いつか別れが来る。
『なるほど心が疲れてるね!なら悲しみに眠っても良いさ。子守唄をうたってあげよう。でもその前に!奏者!』マシンは安息の邪魔だ!!
デモニック・ララバイ操縦。[超重力演奏会場]超重力で戦場の敵機を纏めてその場に圧し留めに掛かりつつ|クレイドル《エレキギター》【楽器演奏】
己が【闘争心】を乗せた強烈な魔音ロックミュージックで敵機共が齎す狂気を攻撃!同時に魔音衝撃波で射撃を弾きアークレイズ・ディナを追う!
『元気になったら過去を、思い出を積み上げる事も、未来に何かを遺す事だってまだできる。だから一旦、お眠りなさい。』
騎兵刀で敵機【解体】
|魔音【催眠術】《睡眠BGM》で安眠に誘う
爆炎の中をオブリビオンマシン『アークレイズ・ディナ』が切り裂くようにして飛ぶ。
「私は……! ひとりきり……っ、誰も、私を……!」
必要としていない。
最強とは孤独なものだ。
誰も隣りに立つことを許さない。
何故なら、象徴は二つもいらないからだ。
燦然と輝くただ一つ。
それが求められている。
彼女は、いつだってそうだった。
一人きりだった。
けれど、その彼女を一人きりにしなかった者がいた。
あの緑の瞳。
あの瞳が、『ツェーン』を一人にしなかった。
けれど、その瞳が失われる未来を見た。
「だから、もうこの世界はいらない!」
『なるほど心が疲れているね! 自棄になっているし、捨鉢になっている。なら、哀しみに眠っても良いさ。子守唄をうたってあげよう!』
『クレイドル・ララバイ』は泣いている彼女を捨て置けなかった。
だからこそ。
『でもその前に! 奏者!』
「マシンは安息の邪魔だ!! そのマシンは破壊するッ!!!」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、爆炎を切り裂いて現れた『アークレイズ・ディナ』を見据えた。
『デモニック・ララバイ』からほとばしる音が、全身の殺戮音叉よりあふれる。
音が超重力に代わり、『ケルビム・ミルトス』たちを押さえつけ『アークレイズ・ディナ』の戦闘機動を鈍らせる。
『もうここは、私達の超重力演奏会場(グラビトン・ライブステージ)さ! 自由に動けると思わないことだね、オブリビオンマシン!』
「壊すッ!!! マシンが見せる悪夢を壊してやる!!!」
小枝子は己が闘争心を伸ばした指に込める。
掲げた掌が、指先が、エレキギターへと変貌した『クレイドル・ララバイ』の弦をかき鳴らした。
強烈なる旋律。
空気を斬りつけるような、凶暴さと共に放たれた音は、魔音となって『アークレイズ・ディナ』の焼けただれた装甲を切り裂く。
「クッ……! 邪魔、をぉ!!!」
「邪魔をしているのは、貴殿ではない! マシンだ! そのマシンが、貴殿に悪夢を見せている! それを赦せないと思うのではない! 自分は! 壊す!! 人の心を苛む狂気を!!」
実体弾とプラズマキャノンの砲撃が『デモニック・ララバイ』を襲う。
魔音衝撃波でも撃ち落とせないほどの衝撃が駆体に奔る。
装甲が砕け、ひび割れ、殺戮音叉が折れて。
それでも小枝子は一心不乱に弦をかき鳴らした。
「私は世界を壊す!」
「その前に自分がマシンを壊す!!」
一歩も譲らぬ砲撃とかき鳴らす旋律。
弾けるように互いの距離が開かれた瞬間、『デモニック・ララバイ』が飛ぶ。
『元気になったら過去を、思い出を積み上げることも、未来に何かを遺すことだってまだできる』
騎兵刀を携えた『デモニック・ララバイ』は『アークレイズ・ディナ』のアサルトライフルを切り払う。
寸断された銃身が宙を舞い、爆発する。
さらに返す刃が『アークレイズ・ディナ』の四肢を分断する。
『だから一旦、お眠りなさい』
「貴殿の悪夢は、自分たちが壊す! それだけだああああああああああっ!!!」
小枝子の咆哮と共に『アークレイズ・ディナ』の頭部に突き立てられる騎兵刀。
コクピットブロックは、無事だ。
小枝子は、己が機体の損傷状況を告げるアラートを聞きながら、壊した悪夢の残滓を見下ろし、そして迫る新たなる重圧に振り返るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『エクストラ』
|
POW : ソウル・イモレーション
【揺らめく光の翼】から【熱線】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。
SPD : レッド・エンフェーブル
【サイキックエナジー】を籠めた【両腕の短槍】で近接攻撃し、与えたダメージに比例して対象の防御力と状態異常耐性も削減する。
WIZ : ブルー・リベレイター
【剣のような短槍】による素早い一撃を放つ。また、【背面のエネルギー噴射】等で身軽になれば、更に加速する。
イラスト:仁吉
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠薄翅・静漓」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
望む未来は何処にあるのか。
見果てぬ夢は、夢のままでいいのか。
望むのならば、走り出さなければならない。
見果てることなく終わりを告げるのは、諦観が故だ。
納得したのならばいい。
けれど、納得できないというのならば――。
●熾火
「本当は」
『首無しキャバリア』の、あるべき頭部の代わりに輝く光輪が明滅するように光を増していく。
そのコクピットに座した『クリノ・クロア』は呟いた。
本当は、怖かった。
かつて小国家『フィアレーゲン』は、力こそが絶対だった。
最強であることが求められた。
戦う力のないものは、虐げられるばかりだった。奪われるばかりだった。
それが常であったし、正しかった。
けれど、それがどうしても正しいことに思えなかった。
最強とは、力とは。
そんなにも求められるものなのか。そんなものがなくても、隣にいる誰かと繋ぐ手さえあればよいのではないかと思ったのだ。人が一人でできることなんてたかが知れている。
自分一人で戦うだけではなくて、誰かと共に手を取って進めることが正しいのではないかと思っていた。
「ただ、俺は君に笑っていてほしかっただけなんだ。そんな怖い顔をしなくていいよって。笑った顔が可愛いよって。それだけだったはずなんだ」
失って初めてわかる。
人は強くなければ生きてはいけない。
優しくなければ生きる資格すらない――なんて、言えるのは力がある者の戯言に過ぎない。
無力な者は奪われ続けるだけだ。
それでも手をつなごうなどと、言えるわけがない。
奪われた者は、奪われ続ける運命を受け入れなければならないのか。
「ふざけるな! 俺は望む……!」
奪われるだけではいられない。
「力を……!」
『首無しのキャバリア』は応えるように、光輪を輝かせ、歪な光の翼を負う。
頭部無き異形の機体は『エクストラ』。
『エース・カウンター』、『クリノ・クロア』の望みに応えるように、『エクストラ』は異物な光の翼を羽撃かせた。
力なき者が持ち得る最後の力を持って、世界に歪んだ破滅を齎すために。
その手には、破滅を齎す|赤《悪性》と|青《善性》の槍。
必ずや、それは望みを叶える。
たとえ、空虚なる狂気が見せる偽りの未来に絶望した結果なのだとしても、だ。
猟兵達は知るだろう。
得体の知れぬ力が、己達の前にあるのだと。
圧倒的な技量を誇る『エース』でもない。『エース』を殺すために存在する『カウンター』としての力だった――。
イクシア・レイブラント
クリノ・クロア。
あなたの本当の「願い」は彼女と再開して愛しあうことではないの?
離れた手はまた繋げばいい、何度でも。
敵の近接攻撃を[瞬間思考力、戦闘演算]で把握し[空中機動]で回避、
反撃で狙うのはその|赤の槍《レッド・エンフェーブル》。
【決戦武装、解放】。
大型フォースブレイドを[武器巨大化]させ、コクピットを避けるように[なぎ払い]。
ツェーンは無事よ。
その機体から降りたらデートに誘ってあげなさい。
その望みは、本当に『クリノ・クロア』の望みなのか。
イクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)は、疑問だった。
何故なら、彼ら……『ツェーン』と『クリノ・クロア』は、互いに求め合っていた。互いの存在があるからこそ、と思っていた。
それが共にほのかに感じることのできる淡いものであったとしても、だ。
すれ違うばかりの要因となったのがオブリビオンマシンであっただけだ。
マシンが見せる虚構の未来。
もたらされた狂気には、真実はないのだ。
だから、とイクシアは告げた。
「あなたの本当の『願い』は、彼女と再会して愛し合うことではないの?」
「もういない彼女のことを語るな」
「そんなことはない。『ツェーン』は無事よ。その機体は」
彼の望みを叶えるつもりなどない、と語るイクシアにサイキックエナジーのほとばしりが、残光となって奔った。
両手にした赤と青の槍。
その鋭い連撃がイクシアに襲いかかる。
圧倒的な速度。
瞬間思考と戦闘演算で計算しても、有りえぬ速度の踏み込み。
振るわれた槍は短い。
だからこそ、そのリーチは短いというのに、それでも補って有り余るほどの速度で振るわれているのだ。
あまりにも速いために、槍の穂先が大気を切り裂き、雷鳴のごとき轟音を遅れて響かせるほどだった。
ほとばしるようにしてイクシアの身に十字が刻まれる。
痛みが走る。
だが、その痛みを無視してイクシアは、その瞳をユーベルコードの輝きに満たす。
「……リミッター解除。決戦武装、ファイナル・モード」
己が手にした大型フォースブレイドのリミッターを解除する。
溢れるサイキックエナジーが強大な光刃を形成させる。
そして、イクシアの胸に刻まれた十字傷からもサイキックエナジーが吹き荒れ、その光を戦場に満たした。
軋む腕。
「俺は、彼女のいない世界を滅ぼす。彼女がいないなんて、耐えられない。ただ、笑っていてほしかっただけの彼女が、ただ傷つくだけの人生だったなんて、赦せない! だから、滅ぼして!」
「終わりにしたいっていうの? 離れてしまった手は、また繋げばいい、何度でも」
「その彼女がいないんだよ!」
イクシアは、なら、簡単な話だ、と笑む。
そう、簡単な話だ。
彼がオブリビオンマシンに見せられたのは、有り得たかもいれない未来だ。
『クリノ・クロア』が『ツェーン』を失った未来。
だが、それはまだ起こっていない未来だ。
だから、イクシアは痛む胸の痛みを推して、フォースブレイドが形成した長大な光刃を振りかぶる。
「『ツェーン』は生きている。なら、その機体から降りて、すぐさまデートに誘ってあげなさいよ。男の子でしょう」
振り抜いたフォースブレイドが交差された赤と青の槍に激突する。
エネルギーが周囲に破壊を齎す。
奔流が舞い、周囲の瓦礫が吹き飛ぶ。
それほどの衝撃を生み出しながら、イクシアはオブリビオンマシン『エクストラ』の駆体を軋ませたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
まだ保ってよ、『迦利』。最後の仕上げが残ってる。
止まりなさい、『クリノ・クロア』! 『ツェーン』はあたしたちが助け出した。その『首無しキャバリア』を降りて確認にいらっしゃい!
って言っても、声は届かないんでしょうね。無理矢理降ろすしかない。
「全力魔法」衝撃の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」「天候操作」「貫通攻撃」で風吼陣。
竜巻で機体の動きを封じ、熱線も飛び回る刀剣が散らす。無数の刀剣は、装甲は傷つけられなくても、幾らかは関節部に突き刺さるわ。
生憎とあたしは『エース』なんてものじゃなくてね。ただの陰陽師。
術式を繰って、あなたを止める。
陣を破ってでてきたら、「レーザー射撃」の「弾幕」で足止めする。
大地に失墜した機甲式『GPD-331迦利』が軋むように動く。
装甲はひしゃげ、内部のフレームや機構に損傷があるのが見受けられるだろう。傷一つ追わずに終わる戦いがないように、『アークレイズ・ディナ』との戦いは苛烈なものだったのだ。
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、そんな己がキャバリアが再び浮かび上がろうとするのを見やる。
「まだ保ってよ、『迦利』。最後の仕上げが残ってるんだから!」
ゆかりが見やるのは、オブリビオンマシン『エクストラ』。
それは奇妙なキャバリアだった。
あるはずの頭部の存在しない『首無しのキャバリア』。
キャバリアとしては未完成もいいところであろう。
だが、あふれる重圧は、未完成とは思えぬほどのものであった。首のない状態が完全であるというような、存在感を放つ機体は、ゆっくりと、頭部の代わりに浮かぶ光輪を明滅させた。
「止まりなさい、『クリノ・クロア』!」
「止まらない。俺は、この世界を滅ぼす。彼女のいない世界なんて、なくなればいい!」
「言ったでしょう!『ツェーン』は、あたしたちが助けた! その『首無しキャバリア」を降りて確認にいらっしゃい! そうしたらわかるでしょう!」
その言葉に揺らめく光の翼から熱線が容赦なく放たれる。
大地に穿たれた一撃は、爆発を巻き起こし、ゆかりと『迦利』を吹き飛ばす。
「『迦利』……! けど、宙に浮かんだのなら!」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
『クリノ・クロア』は止まらない。
彼が見た未来は、まだ起こってもない事象だ。
これから起こるかもしれない未来かもしれないが、それは変えられるのだ。確定していない未来に絶望する理由なんて、どこにもないのだ。
だからこそ、ゆかりは『首無しのキャバリア』――『エクストラ』から『クリノ・クロア』を引きずり下ろすしかないと判断していた。
「そのためには、まず機体の動きを止める!」
呼気が漏れる。
結ぶ印。
輝くユーベルコードの光と共に生み出されるのは暴風。
『エクストラ』を取り囲む暴風は、それ自体に無数の刀剣を含み、中心に据えた『エクストラ』へと無数の斬撃を叩き込むのだ。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。天上までも響き渡る破壊の風よ。その身に宿せし無限の剣刃により触れるもの悉くを裁断せよ。疾!」
それが風吼陣(フウコウジン)である。
襲いかかる刀剣に対して『エクストラ』が放つのは、苛烈なる熱線。
ほとばしる圧倒的な火力は、暴風を切り裂き、刀剣を吹き飛ばすのだ。
「なんて出力よ……! でも、装甲のつなぎ目……関節部は!」
ゆかりの言葉どおり、刀剣が暴風に煽られるようにして切っ先を『エクストラ』の関節部へと飛ぶ。
それを二本の赤と青の槍が弾く。
暴風を切り裂くようにして、ゆかりへと迫る『エクストラ』。
「関節を狙えばどうにかなると思っているのなら、甘い! 止まるものか! すべて壊すまでは!!」
「このっ……わからず屋! 止まりなさいよ!」
「キャバリアでもなんでもないのなら、引っ込んでくれよ!」
振るわれる槍。
だが、その槍は『迦利』の放ったレーザーの一撃に弾かれる。
「『迦利』! いいこと、生憎と、あたしは『エース』なんてものじゃなくてね。ただの陰陽師。術式を操って」
「だったらなんだっていうんだよ!」
再度振り上げられた槍を襲うのは、暴風と刀剣。
火花を散らしながら、ゆかりの眼前で『エクストラ』の槍ごと、その駆体が弾かれる。
「あなたを倒すのではなく、止めるのよ!」
その言葉通り、ゆかりは『エクストラ』を己が眼前から退け、暴風と共に押し返すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シャナ・コリガン
うーん、恐ろしきはオブリビオンマシンの洗脳…!
それが切り裂けないなら、装甲を破壊して動けなくするまで!
『聳孤』、耐えてください…!
短槍と双剣なら…恐らく間合いが同じくらいになるはず。
なら、こちらは超高速による【回転斬り】!
たとえこちらの防御力などが落ちたとして、それは軽量化にも通ずる!
ならば、さらに双剣で斬っていくだけ!
ツェーンさんは無事なんですから、ここでクリノ・クロアさんも助け出す!そのためにも、これから来る猟兵の攻撃に繋ぐために!装甲をできるだけ削るんです!
オブリビオンマシンが齎す狂気。
それはどんな清廉潔白なる人物をも狂気に染るものである。
狂わされた思想は、必ずや破滅に人を導く。
故にクロムキャバリア世界は常に戦乱の火種にくすぶっている。今ある平穏も、明日には吹き飛ぶかもしれない。
その恐怖が疑心暗鬼を生み出し、人々の間に拭えぬ不和を齎す。
そうやって人々は百年続く戦乱の中を生きてきたのだ。
滅亡と隆盛。
この繰り返しなのだ。
「恐ろしきはオブリビオンマシンの洗脳……!」
例え、狂気が切り裂くことができたとて、オブリビオンマシンに乗る以上、もたらされる狂気は拭えない。
「切り裂けないのなら、装甲を破壊して動けなくするまで!」
シャナ・コリガン(どこまでも白く・f44820)は己が乗騎、『聳弧』の損傷を知る。
こちらの間合いは、双剣の刀身が届く限りであるが、対するオブリビオンマシン『エクストラ』は、その手にした二つの短槍の間合いだ。
僅かに槍の間合いが広いか。
だが、ほぼ同じだと言ってもいいとシャナは判断し、飛び込む。
「――雑念はなく」
回転斬り(カイテンギリ)の斬撃が『エクストラ』を襲う。
だが、互いに双剣と双槍。
赤と青の槍がひらめき、超高速回転による斬撃を全ていなす。
「いなした……!?」
「回転の速度と合わせれば、いなすことはできる。回転とは即ち、軸足があればこそ……なら、その軸足である駆体を止めれば、回転も止まる!」
サイキックエナジーがほとばしり、赤と青の槍が放たれる。
回転する双剣を弾き、刀身に亀裂が走る。
吹き荒れるサイキックエナジーは、『聳弧』を圧倒するものだった。
「『聳弧』、耐えてください……!」
アイセンサーが煌き、振るう斬撃の速度が上昇していく。
だが、それすらも『エクストラ』を駆る『クリノ・クロア』は切り払い、その駆体を吹き飛ばす。
軋むフレーム。
キャバリアの背骨とも言うべきフレームがひしゃげ、動きが鈍る。
それだけではない。
溢れるサイキックエナジーが『聳弧』の装甲を引き剥がすように削っているのだ。
打ち合うだけで此方の装甲が削れていく。
だが、シャナは構わなかった。
防御力が落ちたとて、どのみち一撃を貰えば終いなのだ。それに装甲が削れたのならば、軽量化にも通じるのだと意識を切り替えて、さらに双剣を振るう。
「それはもう見た」
振るわれる赤と青の槍。
弾かれる双剣が、装甲が、砕けて散る。
回転斬りの速度はましたとしても、動きが一辺倒であるのならば、それに対する『クリノ・クロア』の挙動は、確実にそれを上回るのだ。
振るわれた斬撃に『聳弧』の装甲が切り裂かれ、機体が揺れる。
「『ツェーン』さんは無事なんですから、あなたを助け出さなければ、意味がありません!」
それに、とシャナは諦めずに双剣を振るう。
彼がいなければ、『ツェーン』が見る未来は現実のものになってしまう。
だからこそ、シャナは自分ができることをしなければならないと『エクストラ』の装甲を削るために双剣が砕け散るその時まで、振るい続けたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
皇・銀静
エース…エースの次はエースのカウンターか
上等だ
何方も須らく叩き潰してやろう
「主ー☆乗ってる人は駄目だよ☆」
解ってるに決まってるだろうが
【戦闘知識】
敵機の動きと能力を正確に把握
その技と戦い方の癖を分析
【属性攻撃・念動力】
凍結属性を込めた念動障壁展開
ダメージの軽減を狙う
【蹂躙・功夫・串刺し・二回攻撃・切断・空中戦】
UC発動
超高速で飛び距離を詰め槍による猛攻から魔剣による連続斬撃
そして…鉄山靠で吹っ飛ばして地面へと叩き落とし
大地に降りれば震脚から飛び蹴り
拳を叩き込んでの連続攻撃と共に殴り合ってる間常にエネルギーを強奪して無力化を狙う
パイロットの位置は狙わず確実に機体だけの破壊を徹底
『エース』――それはクロムキャバリアにおける象徴である。
キャバリアが戦場の花形である以上、撃墜数こそが力の証明でもあるのだ。故に『エース』は恐れと共に戦意を鼓舞する存在でもあった。
逆に言えば、『エース』が生まれるような戦場は正しく超弩級の闘争そのものといえるだろう。
「『エース』……『エース』の次は『エース・カウンター』か」
そう、撃墜王が生まれるのならば、それを殺す存在もまた戦場には存在する。
殺し、殺される。
それだけが戦場の理。
「上等だ」
皇・銀静(陰月・f43999)は、首無しのキャバリア『エクストラ』を見定める。
「何方も須らく叩き潰してやろう」
『主ー☆ 乗ってる人は駄目だよ☆』
「解ってるに決まってるだろうが」
ほんとかなー、と『グリームニル』は首を傾げたようだったが、そんな暇はなかった。
歪んだ光の翼から放たれる熱線。
その苛烈なる爆発が『グリームニル』の機体の周囲に巻き起こる。
凄まじい爆発。
爆炎の最中を『グリームニル』は疾駆する。
「苛烈そのものだな……」
戦いの癖を見極めようとするが、しかしパイロットである『クリノ・クロア』の操縦技術の系統は銀静からすれば、めちゃくちゃだった。
癖だらけだ。
なのに、その癖を矯正する形で別の癖が覆いかぶさっている。
カバーするように、一見するとめちゃくちゃな動きが、全て合理につながっていくという不条理。
「念動障壁展開……」
「邪魔を、するな!」
「そのつもりはないがな……だが、四門開門・凶(シキョウモンカイモン)!」
銀静の瞳がユーベルコードに輝くのと同時に、『グリームニル』のアイセンサーが光を灯す。
周囲のエネルギーを奪う邪気が機体の周囲に溢れ、銀静の闘争心が胸の奥からせり上がってくる。
「その動き……誰に教わった」
「いろんな人に、だ。俺は、一人では何もできない。だから、他の人達の技術を見て、覚えるしかない。何もかもが足りないから、全部に手を伸ばす。そうやって!」
だからか、と銀静は理解しただろう。
超高速の突撃にすら、『エクストラ』の赤と青の槍は反応し、こちらの魔剣の斬撃をいなすのだ。
たとえ、生命力やエネルギーを奪うのだとしても、それでも意に介した様子もなく『エクストラ』は斬撃を叩き込んでくる。
超接近戦をも得物の不利をまるで感じさせない。
踏み込んだ『グリームニル』が背からぶつかる体当たりの一撃を翻るようにして躱し、槍の一撃が叩き込まれる。
装甲が切り裂かれ、破片が舞う。
大地を穿つ一撃の後にさえ、銀静は踏み込んだ。
「やるようだが……全てが猿真似だというのならば……」
踏み込んだ脚部が振動を巻き起こす。
衝撃と共に『エクストラ』より高く飛んだ『グリームニル』の脚部が『エクストラ』の光輪を切り裂くように放たれ、衝撃を撒き散らした。
「その動きの接合を狙うまで……これもお前は学習するのかもしれないがな」
「次は!」
「だろうな、ならば凌いで見せろ……叩き潰される前にな」
熾烈なる戦い。
銀静は『クリノ・クロア』が空虚な狂気に囚われて尚、その動きを鮮烈無者に変えていく姿に込み上げる闘争心に心躍らせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
機神搭乗
…カウンター…エースカウンター…
エースを殺す…エースに抗う力か
「ご主人サマ…?」
メルシー…さっきまでの僕らを超えてやるぞ
「…!うん!」
【情報収集・視力・戦闘知識・見切り】
クロアの技能…技…エースカウンターとしての力を見極める!それは…僕らにも必要なもんだ…盗賊らしく…奪ってやる…!
【念動力・属性攻撃・空中戦・切断・二回攻撃・電撃】
念動障壁を己自身と機体に展開
反重力属性を機体に付与
電撃を己に付与
反応力を極大化
UC発動
超絶速度かつ慣性等の物理法則を完全無視したカクカク機動による連続斬撃!
猟兵ってのは埒外の存在らしいからな
それなら…一つ埒外らしくいってやろうじゃねぇかぁ!
観察…見稽古も続け
「マジかよ」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、オブリビオンマシン『エクストラ』を駆る『クリノ・クロア』のパイロットとしての技量を見ただろう。
彼は『エース・カウンター』と呼ばれていた。
何をもって、そうだというのか。
その所以をカシムは知っただろう。
機体性能は伯仲している。
神機や、その他のワンオフ機体を相手にしても引けを取らぬのが『エクストラ』である。
であれば、勝負を分つのは、パイロットの技量。
だが、『クリノ・クロア』の動きは一見すれば凡庸とも言える動きでしかなかった。
なのに、何故、こうも猟兵達の攻勢が凌がれているのか。
しかも反撃にすら転じている。
その理不尽さは、圧倒的技量の齎す理不尽さとは異質なものであった。
「『エース』を殺す……『エース』に抗う力か」
『ご主人サマ……?』
『メルクリウス』のコクピットでカシムは呟く。
「『メルシー』……さっきまでの僕らを超えてやるぞ」
『……! うん!』
その言葉と共に神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)が発動する。
超高速の飛翔。
踏み込みの速度で言うのならば、それは三倍にまで引き上げられている。
性能差は簡単には埋まらない。
振るわれる鎌剣の超高速機動攻撃。
それは空中で尋常ならざる挙動をもって惑わし、フェイントを織り交ぜ、『メルクリウス』の動きを『エクストラ』に感知させぬものであった。
「速い……けど!」
慣性を無視したような挙動を見せる『メルクリウス』の動きに『クリノ・クロア』は反応していた。
僅かな挙動のブレ。
それは『クリノ・クロア』が未熟であるがゆえに生まれた戦場のゆらぎ。
セオリーを僅かに、それた『エクストラ』の動きだった。
カシムたちが優れていれば、優れているほどに彼の挙動は『当然そうするであろう』という予測から外れる。
振るわれた斬撃を『エクストラ』が槍でもって受け流す。
「これを凌ぐのかよ!」
運ではない。
意識しているわけでもない。
無意識に、『こうするのが正しい』と理解したかのような『クリノ・クロア』の動きにカシムは呻いた。
だが、己とて猟兵。
生命の埒外。
であればこそ、だ。
カシムは理解した。『クリノ・クロア』を相手にして見稽古は意味がない。相手の癖を見極めようとしても、彼がこれまで得てきた雑多雑種、数多のパイロットたちの癖が綯い交ぜになっているせいで、何一つ予測が立てられない混沌の如き動きを魅せているのだ。
であれば。
「一つ、埒外らしくいってやろうじゃねぇかぁ!」
加速する『メルクリウス』と共にカシムは鎌剣を振るい、『エクストラ』を突き崩すために、その装甲へと斬撃を叩き込むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ふっ……『ツェーン』さんは無事救出できました。
次は『クロノ』さん、あなたです!
えっ。あっ。はい。助けましたよ?
もちろんじゃないですか、わたしは『勇者』ですからね!
シリアス?
そんなのお二人のコイバナの前ではちょっとした前菜にしかなりませんよ!
さぁ『クロノ』さん、『ツェーン』さんも無事だったんですから、あなたもはやく戻ってきてください。
そして2人の濃厚なコイバナを語って聞かせてもらいますよ!
いえ真面目な話ですよ。
コイバナ、それは愛です!
どんな世界でも理不尽を打ち砕くのは人の心! つまりは愛!
戦いに際しては心に平和を。
そんな言葉を信じろなんて言いません。
あなたは、あなたが『ツェーン』さんを愛する心、『ツェーン』さんがあなたを愛する心を信じてください!
あなたたちは、お互いを想ってオブリビオンマシンに乗ることを決めました。
ならばその逆もできるはずです!
『ツェーン』さんは生きている。ですからあなたも生きるんです!
二人のお互いへの想いの強さを、わたしたちに見せて聞かせてくださいね!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
ツェーン様はご無事の様子
まずは安心ですね
後は……クリノ・クロア様を止めなければ!
ルクス様、まだシリアスが続きますけど大丈夫ですか?
コイバナはすぐそこです
ケルーベイム!もう少しだけ!
高速で攻撃を回避しつつ近接しますよ!
エースを殺す、エースカウンター
この世界は今、エースによって保たれている
そのエースを倒せば……世界はまた戦火に包まれる
あの性悪女が求めそうな力です
ですが、その力はツェーン様を殺しますよクリノ・クロア様?
戦いに際しては心に平和を、なんて
貴方さまには嘘にしかならない
ならば、
抱いてください、戦いに際しては心に祈りを
理不尽に抗う力は得ても
破滅に向かって力を使わないで
今はその力を押し留めます!
ケルーベイム!【ヘレヴ】!
コクピットは避けて
いけっ!コール!プロメテウスバーン!
エースカウンター、クリノ・クロア様
きっと貴方様の『セラフィム』がその機体なのでしょう
そのまま振るえば破滅でしかない、でも希望を絆ぐ機体
|赤《悪性》と|青《善性》の間を揺れる良心を持つ者だけが扱える
「ふ……『ツェーン』さんは無事救出できました。次は、『クロア』さん、あなたです!」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、猟兵と苛烈なる戦いを続ける『クリノ・クロア』の駆るオブリビオンマシン『エクストラ』を認め、指を突き出すようにして示した。
助けるのは当然のことだった。
何故なら、自分は勇者だからだ。
勇者は誰かを助けるもの。
「ええ、『クリノ・クロア』様を止めなければ! ルクス様、まだシリアスが続きますけど大丈夫ですか?」
「シリアス? そんなのお二人の恋バナの前ではちょっとした前菜にしかなりませんよ!」
「恋バナはすごそこです……いえ、というかシリアスアレルギーは恋バナで中和できるものなんですか!?」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は思った。
そういう理屈なのだろうか?
あ、甘い惚気話を聞けば糖分を取ったのと同じような意味合いになる……とか、そういうことなのだろうか?
「わたしが今無事ってことはそういうことですよ! さぁ『クロア』さん、『ツェーン』さんも無事だったんですから、あなたも早く戻ってきてください。そして、二人の濃厚な恋バナを語って聞かせてもらいますよ!」
「面白がって……!」
「いえ、真面目な話ですよ」
『エクストラ』の揺らめく光の翼から放たれる熱線が『ソナーレ』と『ケルーベイム』を襲う。
爆風が吹き荒れ、爆炎が舞い上がる。
戦場は炎に包まれ、周囲には破壊が満ちている。
確かに、ルクスの言葉はあまりにも緊張感がなかった。
けれど、ルクスは退かなかった。一歩も退かなかったのだ。
「恋バナ、それは愛です! どんな世界でも理不尽を打ち砕くのは人の心! つまりは愛!」
「それがなければどうする。失われてしまったのなら! それはもうただの傷じゃないか! 失うばかりの世界なんて、あってもなくてもいい! こんなつらい思いをするなら!」
最初からなければいい。
『エクストラ』が戦場を駆ける。
踏み込むだけでも神速。
振るわれる二振りの槍が赤と青の閃光を生み出し、ステラの駆る『ケルーベイム』へと叩き込まれる。
受け止めた機体が軋む。
「『ケルーベイム』! もう少しだけ!」
いなすように機体が跳ね上がり、『ケルーベイム』が宙に舞う。
だが、そこに熱線の一撃が叩き込まれ、木の葉が舞うように『ケルーベイム』の機体が爆風に煽られて、さらに装甲を溶解させていく。
「くっ……これが『エース』を殺す、『エース・カウンター』……!」
動きが読めない。
経験に基づく予測を引っ掻き回すような、不意なる挙動。
定石を外れたような無軌道さ。
かと思えば、正確無比なる攻撃。
何もかもが予測できない。
一体どのような技術があれば、そのようなことができるのかステラにはわからなかった。
『クリノ・クロア』の操縦技術は凡庸そのものだ。
なのにどうしてか、ここまで猟兵達は、その動きについていけなかった。
「こちらの技量が高ければ高いほど……認識をずらされて、いる……? 運が良いとか、そんなレベルではない。これではまるで……!」
不意なる一撃。
機体が軋み、装甲がはね飛ぶ。
「この世界は今、『エース』によって保たれている。その『エース』を倒せば……世界はまた戦禍に包まれる……あの性悪女が求めそうな力です」
「肝心な時に役に立たない力なんて、いらないんだよ!」
「そうですか。ですが、その力は『ツェーン』様を殺しますよ、『クリノ・クロア』様?」
「彼女のことを口にするな!」
振るわれる槍の一撃が『ケルーベイム』の胸部装甲を切り裂く。
コクピットブロックのハッチの装甲が十字に切りつけられ、ステラは、モニターではなく目視で『エクストラ』を見ただろう。
「戦いに際しては心に平和を、など……貴方様には嘘にしかならない。ならば、抱いてください、戦いに際しては心に祈りを! 理不尽に抗う力は得ても、破滅に向かって力を使わないで!」
「そうです。言葉でしかないんです、それは」
かつての『フュンフ・エイル』が告げた言葉。
それはルクスの語る通り、ただの言葉でしかない。
信じることを強要するものでもない。
だが、心の内から信じることができたのならば、それは見えぬ力だ。
「あなたは、あなたが『ツェーン』さんを愛する心、『ツェーン』さんがあなたを愛する心を信じてください!」
ルクスは思う。
彼がオブリビオンマシンに乗る切欠になったのは、いずれもが互いのことを思っていたからだ。
互いを慮り、互いのことを案じたからこそ、彼らは破滅的狂気を前にしても恐れることなくオブリビオンマシンに乗ったのだ。
その想いまで否定などされてはならない。
「『ツェーン』さんは生きている。ですから、あなたも生きるんです!」
献呈(ケンテイ)は、心の内にあるもの。
捧げるだけではだめなのだ。
受け取るものがいなければならないのだ。
故に、ルクスは叫んだ。
「二人のお互いへの想いの強さを、わたしたちに見せて聞かせてください!」
「希望なんてどもにもない! 想いが誰かを救うなんて馬鹿げたことは!」
「ですが、想いは希望に成り得るでしょう。『絆ぐ者』……貴方様にとって、『それ』が、その機体なのでしょう。惹きつけてしまう。結びつけてしまう。あなたにもあるのです。良心……|赤《悪性》と|青《善性》とに揺れる心が!」
ルクスの放つユーベルコードの光に押されて、『ケルーベイム』が『エクストラ』へと飛び込む。
「コール! プロメテウス・バーン!」
振るわれる二振りの槍をこじ開けるようにして『ケルーベイム』が胸部砲口を展開させる。
放つは熱線の一撃。
『クリノ・クロア』と『ツェーン』。
彼らが行き着く先がどんなものになるのかなんて、今はわからない。
けれど、心に祈りがある。
彼らに幸いありますように、と。
その想いが集約した熱線の一撃は、ルクスのユーベルコードの輝きと共に『エクストラ』の揺らめく光の翼を吹き飛ばすように、空を切り裂いた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
おツェーン様ならご無事ですわよ~?
全然聞いておりませんわねぇ…
ぶん殴って大人しくさせますわ~!
お兄様に合わせろと言われましたわ~!
よく分かりませんわ~!
とりあえず殴りましてよ~!
変なおビームを撃ってきましたわ!
アッチッチですわ~!
シールドおガードで突撃ですわ~!
ちっちゃい槍はブレードエッジでがきぃぃん!
シールドおパンチ!ギロチンシザー!
ヴリちゃん尻尾!ヴリちゃん噛み付き!
手数は正義ですわ~!おるぁぁん!
攻撃が激しい時はおガードを固めるのですわ!
サラ(マンダー)ちゃんに狙いが移ったらヴリちゃんクロー!
ラースオブザパワー!わっしょい!
お兄様~!お手々とあんよをぶった切ってくださいまし~!
ジェラルド・エルネイジェ
ツェーンがいないのではない
見えていないのだ
今のお前では無理からぬ事だがな
殴って目覚めさせてやる他にあるまい
メサイアのやり方も馬鹿にできんな
接近戦で叩くぞ
メサイア、合わせろ
短槍はストライクバックラーで受ける
防御の脆弱化は装甲の再生力で補おう
首無しの興味を引いている間は守りに徹する
逆に首無しがヴリトラを構うのであれば、それが仕掛けるタイミングだ
バーニングバスターで炙るのと同時に視界を奪う
ヒートエッジファングで四肢に食らいつくぞ
さらにブレイズディスチャージャーの爆風を浴びせる
この距離で躱せるなら率直に感嘆するな
これで怯めばメサイアが捕まえるだろう
炎竜絶刃
手足を切り落とす
ノインよ、思惑通りに進んだか?
空を切り裂く熱線がほとばしる。
強烈な光。
揺らめく光の翼を切り裂いた一撃は、しかしオブリビオンマシン『エクストラ』を僅かに追い詰めるばかりであった。
咄嗟の防御。
それは強大なエネルギーを持つ一撃を前にしては受けてならぬものであった。
セオリーではない。
だが、『クリノ・クロア』は『エース・カウンター』。
定石破りこそが、本質。
彼がこれまで見てきた数多のキャバリアパイロットたちの動き、操縦技術、戦術、その全てを彼は吸収し、その内に混沌の如き技能を溜め込んでいた。
完全に再現はできない。
それには彼の資質はあまりにも凡庸であったからだ。
だが、彼が手繰るのは『エース・カウンター』。
敵対者が優れていれば優れているほどに、彼はその定石を僅かにずらし、まるでそれが『正解』であるかのように事象を手繰り寄せる。
だからこそ、これまで彼は猟兵達の攻勢を受けてなお、無事であったどころか圧倒していたのだ。
「彼女がいない……世界に、それだけなのに。それだけで俺は……! 世界を滅ぼす理由になる……!」
『クリノ・クロア』の言葉にメサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)は首を傾げた。
「お『ツェーン』様ならご無事ですわよ~? ほら、あすこにおわすのは、お『ツェーン』様でございましょ~?」
だが、『エクストラ』は止まらない。
揺らめく光の翼は出力を減退させていたとしても、放たれる熱線の一撃は強烈無比であった。
『ヴリトラ』の周囲で巻き起こる爆風。
爆炎が、黒い装甲を容易く溶解させていく。
「ぜんっぜん聞いておりませんわねぇ……」
「『ツェーン』がいないのではない。見えていないのだ、メサイア」
ジェラルド・エルネイジェ(炎竜皇子・f42257)は、苛烈なる猛攻を前にして冷静だった。
『クリノ・クロア』が正気であったのならば。
恐らく勝負は決したのは、確かに『エース・カウンター』としての資質であったのだろう。
だが、ジェラルドには解っていた。
技量に優れたるパイロットを相対者とするのならば、あの資質はさらなる力の呼び水。
僅差で必ず勝利を収める力。
だが、今はそうではない。
戦場のゆらぎの体現者たる『クリノ・クリア』は、戦場の絶対者にならんとしている。絶対を求めた時点で、あの資質は曇るのだ。
「彼女がどこにもいない……! こんな世界なんて!!」
「今のお前では無理なからぬことだ。見えていないのは。ならば」
「ぶん殴って大人しくさせますわ~!」
メサイアの言葉にジェラエルドは、一瞬であったが口をつぐんだ。
それは彼女がなそうとしていたことと同じだったからだ。
「……メサイアのやり方も馬鹿にはできんな」
「わたくし、賢い子ですわ~!」
「合わせろ、メサイア」
接近戦だ、という言葉をメサイアはすぐさま理解していた。
戦いに際して、彼女の順応性はあまりにも高い。
言葉のコミュニケーションなしに、ジェラルドの意志を汲み取ったのだ。
『ヴリトラ』と『サラマンダー』が交差するように大地を疾駆し、『エクストラ』へと肉薄する。
「あのアッチッチなビームはめんどくせぇのですわ~! おシールド……でも、あっついのですわ~!?」
シールドに炸裂する熱線は、容易くシールドを貫通し、『ヴリトラ』のサブアームを吹き飛ばす。
「退けよっ!」
『ヴリトラ』を踏み出しにして『サラマンダー』へと迫る『エクストラ」。
振るわれる二振りの槍の一撃をジェラルドはストライクバックラーで受け止めたが、装甲は容易く切り裂かれる。
寸断された装甲から炎が噴出し、さらに翻るように槍が振るわれ、『サラマンダー』に傷を刻む。
「……定石通りに動かない、か。流石は定石破り……いや、ブレイク・スルーとでもいうべきか。だが」
『サラマンダー』のバーニングバスターの一撃が炎で『クリノ・クロア』の視界を塗りつぶす。
「シールドおパンチですわ! ギロチンシザーですわ!」
吹き荒れる炎の中から『ヴリトラ」が飛び込み、残されたラージシールドからギロチンシザーを展開し、『エクストラ』へと叩き込まれる。
だが、その一撃を槍が弾く。
「さらにヴリちゃん尻尾! ヴリちゃん噛みつき!」
それは暴風の如き手数であった。
圧倒的な『ヴリトラ」の攻撃であっても、『エクストラ』はいなしていた。
「おるぁぁん! って、またわたくしを踏み台にしたのですわ~! むきー!!」
鈍い音を立てて『エクストラ』が『サラマンダー』へと躍りかかる。
だが、その脚部を『ヴリトラ』の顎が噛み付き、掴む。
「憤怒の剛力(ラースオブザパワー)、全力全開ですわ~! わっしょい!」
振るうように『エクストラ』が大地に叩きつけられ、そしてまた持ち上げられる。
「お兄様~! お手々とあんよをぶった切ってくださいまし~!」
「焼き尽くし、そして断ち切る――炎竜絶刃(ブレイズエッジ)」
「くっ……やられる、か!!」
炎の斬撃が『サラマンダー』よりほとばしる。
ブレイズディスチャージャーの爆風と共に放たれた斬撃は、しかし『エクストラ」が足を掴まれたまま身をかがめるようにして回転していなされた。
「感嘆に値するな、『クリノ・クロア』……だが、メサイアが捕まえた足はどうにもなるまい。その足一本は頂く」
「ぐっ、クソッ!」
「手足全てを頂くつもりだった、がな」
返す刃で振るわれた炎の刃は、ついに『エクストラ』の片足を寸断する。
「『ノイン』よ、どこまでがお前の思惑通りかは知らぬ。だが」
全てが彼女の思い通りにはならなかったであろうことをジェラルドは確信する。
それは『クリノ・クロア』の技量を間近で体感したからこそ、であった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
けっ、生き死にの次は力のあるなしですか。
誰でも思うような事をここまで大事にしちまうたぁとんでもなく迷惑ですね、オブリビオンマシンってのは。
上等です、そっちがその気ならこっちも同じ土俵に乗ってやろーじゃねーですか。
そう、こっちの願う結末を力で奪い取るまでです!
もう暫くは空中戦も続けられそうですし、ここは熱線を回避しながら少し気を引いてやってから突然の突撃です!
1発や2発熱線を当てたからって油断はしねーでしょうけど、爆発炎上に紛れてぶつかってやるです!
これがボクなりのクロスカウンターってヤツですよ!
後は力の限り体当たりを仕掛け続けるだけです。
狂気に飲まれながら惚気てる、その根性は褒めてやるですよ!
今しかない、とファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)は、瞬時に理解した。
彼女が見た戦場。
オブリビオンマシン『エクストラ』の挙動は凄まじいものだった。
これまで多くの猟兵達が攻勢に出て、奪えたのは『エクストラ』の片足だけだった。
目立った損壊は他にはない。
それは異常な自体であった。
この場に集った猟兵達は、多くが強力な存在ばかりであった。
だというのに、ここまで消耗していない事自体が異例だったのだ。
何故、とファルコは問うことはしない。
何故なら、それは意味がないからだ。
戦場にゆらぎはつきもの。
であるのならば、憶測も推察も、今は必要ない。
ただ、彼女の瞳が捉えたのは、初めて『エストラ』が損壊らしい部位を得た瞬間であった。
「けっ」
吐き捨てるように呼気を漏らした。
オブリビオンマシンは人を狂気に堕とす。
生き死にに、力のあるなし。
本来あった正しさを歪めていく。
だが、それは誰しもが思うことだった。ファルコだって同じだ。
役割が、力が。
これまで彼女が何度も懊悩してきたことだ。そして、その都度乗り越えてきたのだ。それをオブリビオンマシンはほじくり返し、増幅させて歪める。
「はた迷惑なんですよ、オブリビオンマシン! ですが、上等だってんです!」
「クッ……体勢を……!」
整えなければ、と『クリノ・クロア』は定石を踏む。
だが、それは僅かにずれる。
ファルコには理解できた。
あれは『ミス』だ。
だが、『ミス』のままにしない。『ミス』をチャンスに変えるのが『クリノ・クロア』というパイロットの資質である。
ミスは、定石破りにさえ成り代わる可能性を秘めている。
それはファルコという存在においても同じだった。
「そっちがそうくるってんなら! ボクだって、てめーと同じ土俵に『すでに』もう乗ってるってんですよ!」
思うに、とファルコは自身が出した結論を置き去りにするようにして、その瞳をユーベルコードに輝かせた。
『エクストラ』は体勢を整えようとして、失った脚部のために安定しない機体のままよろめいた。
その機体が向いた先がファルコだった。
偶然だ。
だが、ファルコは拳を握りしめた。
「こっちの願う結末を力で奪い取るまでです!」
「……人、女の子!?」
生身単身では、オブリビオンマシンには敵わない。
その定石を破る。
クロムキャバリアでは航空戦力は意味がない。
その定石を壊す。
ファルコは己が拳を掲げ、光り輝く小型戦闘機へと変身し、放たれた熱線とすれ違う。
機体を覆ったバリアが熱線を捻じ曲げた。
ファルコは飛ぶ。
地面スレスレを。
滑るように、切り裂くように。
全ての戦場のセオリーをぶち抜くように。
「シールド全開……最大戦速ぅ! Gディフレクターアタック(ジーディフレクターアタック)!!」
交差する熱線とファルコ。
火花を散らすまでもなく、それを置き去りにしてファルコは『エクストラ』へと突撃する。
「狂気に飲まれながら惚気てる、その根性は褒めてやるですよ! だから、歯ぁ食いしばれぇぇぇぇ!!!」
ファルコはバリアが消失しながらも、その拳でもって『エクストラ』の胸部装甲をひしゃげさせ、押し倒すようにして巨体を地面沈めた。
そして、ひしゃげた胸部装甲……コクピットハッチを引き剥がして放り捨てたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
『奏者?まだやれる?向こうは多分殲滅戦の気分なんだろうけど、私達は違う。
こっちはずーっと演奏会気分さ!!なら彼にも聴いてもらおうか!!』
デモニック・ララバイ操縦。殺戮音叉発射牽制射撃。
クレイドル・ララバイをインカムマイクに変形させ[世界を繋ぐ歌]を【歌唱】デモニック・ララバイで声を突如拡声させ【オーラ防御】
敵戦闘行為の成功率を10分の1にまで落とし、短槍の一撃をBXサイキックシールドで受け止め──
いいえ……これは救助活動です。
これまでの演奏行為に、今の歌唱とクレイドルの【|催眠術《優しさ》】で、
現在の自己行動を戦闘行為ではなく救助活動と定義、成功率低下を防ぎながら|真の姿化《オーバーロード》!!
損傷した機体の【継戦能力】を補強し【早業】
両腕からサイキックシールドのブレード強化と斬撃波を帯びた|殺戮音叉《超振動ブレード》を生やしカウンター【解体】敵機だけを壊す!!
『世界はそんな優しくはないけれど、案外何かは残っていくものさ!
せっかく強くなるなら、奪う事以外もしっかり考えようね!!』
機体の状況は良い、とは言えない。
けれど、『クレイドル・ララバイ』は、片足を喪い、胸部装甲を引き剥がされたオブリビオンマシン『エクストラ』を見た。
『奏者? まだやれる?』
立ち上がってくる。
猟兵達が漸くにして見出した勝機。
これを逃す手はない。
だが、『エクストラ』は、その背面から噴射する光の翼を広げていた。
脚部を失ったとしても、コクピットを覆う胸部装甲を失おうとも、未だ。
『殲滅戦気分なんだろうね。けど、私達は違うよね』
「滅ぼす……! 彼女の存在を否定した、この世界を……!!」
『クリノ・クロア』の緑の瞳が剥き身となったコクピットから見える。
ああ、と『クレイドル・ララバイ』は思っただろう。
これは思いがけず良いチャンスなんじゃあないか、と。
「こっちはずーっと、演奏会気分なんだ!! なら、彼にも聴いてもらおうか!!』
殺戮音叉がひび割れながらも、躯体から射出され、光を翼のように揺らめかせながら迫る『エクストラ』へと放つ。
だが、その手にした槍が苦も無く牽制射撃を切り払う。
時間稼ぎにもならない。
けれど、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は面を上げた。
「演奏……いいえ、これは」
『クレイドル・ララバイ』がインカムマイクに変形し、彼女の側頭部に収まる。
「救助活動です」
振るわれる槍の一撃がサイキックシールドを切り裂いた。
一瞬。
まるで飴でも切り裂くようにシールドが霧散する。
防御ですらないというように『エクストラ』は槍を振りかぶった。
守りを失った『デモニック・ララバイ』に攻撃を防ぐ手段はない。
だが、小枝子の瞳はユーベルコードに輝いていた。
「これは、戦闘行為ではなく、救助活動……! そう、この歌は! 世界を繋ぐ歌!」
放たれた槍が機体を切り裂く。
装甲が砕け、引き裂かれる。
だが、『クリノ・クロア』は小枝子の生命を奪うことができなかった。
何故なら、歌が響いているからだ。
その歌は、汎ゆる戦闘行為の成功率を極端に下げる。
つまりは。
「如何に戦場のゆらぎを引き寄せる『エース・カウンター』とて……限りなくゼロになった『正解』を引き寄せることは、至難!」
『それでも可能性はあるってことを忘れちゃあ駄目だよ、奏者!』
「ですが、賭けには勝ちました。であれば……!!」
超克。
オーバーロードと共に『デモニック・ララバイ』の躯体が補強されていく。
装甲は放たれた殺戮音叉でもって繋ぎ止めるように楔として打ちきこまれ、躯体の形を保つ。
「オブリビオンマシンに囚われた要救助者を、切除するであります!」
振り抜かれた槍。
その軌跡をなそるようにして小枝子は『デモニック・ララバイ』の両腕から発生したサイキックエナジーを噴射させながらブレードへと変貌させ、『エクストラ』の赤と青の槍を両断した。
「その槍は、壊す!!」
「彼女以外何もいらなかったのに……どうして、俺は!」
「世界は、そこまで優しくはないのであります。失って、失って、喪い続けても、それでも生きていかねばならないのが生命なのであります」
『世界は、そんなに優しくはないけれどさ。案外何かは残っていくものさ。それに、君はまだ何も失っちゃいない。失ったように思えているだけさ。それにね』
響く歌。
『折角強くなるなら、奪うこと以外もしっかり考えようね!!』
「奪わないなら、どうすればッ!」
「簡単なことであります。貴殿はそれをもうこれまでに何度も行ってきたであります。オブリビオンマシンに狂わされてもなお、それを貴殿はやってきたであります。何のために己が立ったのか。どうして、立ち上がることができたのか、その理由を」
思い出せ、と小枝子は救助活動の妨げになると定義した両断された二振りの槍を『エクストラ』から奪うように弾き飛ばした――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
『ツェーン』の保護へ向かうわ
攻撃には結界術の壁を張り、距離を取って回避し掻い潜り
瓦礫の影を『ダッシュ/早業』で素早く移動
上手く『ツェーン』に接触できたら、ユーベルコードで彼女の意識に直接呼びかける
彼女の心がどれほど傷ついているか、まだわからない
けれど彼らなら互いの精神を癒しあえると思うから
『ツェーン』――聞こえる?
『むげん』のユーベルコードを媒介に、あなたを導くわ
愛も、恐れも、願いも、あなたの想いを彼に伝えられるように
がんばって、『ツェーン』
あなた達には、まだ無限の可能性がある
彼を救いたいなら、迷わないで
……このままでは、他の人(ノイン)に彼を取られてしまうわよ
両断された赤と青の槍が宙を舞い、大地に突き立てられる。
オブリビオンマシン『エクストラ』は片足を喪い、コクピットハッチの胸部装甲を引き剥がされながらも、武装を求めるように光の翼を揺らめかせた。
歪な形。
それは相対する者たちに恐怖を与えるものであったし、またおぞましい形であった。
光の翼は、まるで恐ろしげな般若面の如き二つの眼のように形作っていく。
戦場にありし猟兵達全てを睨めつけ、退けんとするような、そんな意志を発露していた。
それがパイロットである『クリノ・クロア』の歪められた狂気を元にしていることは、言うまでもなかった。
「俺は……! どうして、戦ったんだ。どうして、あの時……立ち上がることができたんだ」
思い出す。
『君は生きろ。君だけは幸せになるべきだ』
あの日、どうして自分は、誰かのことを思えたのか。
『誰もが喪うばかりなんてことがあるわけない。喪ったかわりに手に入れたものがあるはずだ。それが分かる時まで君は生きるべきだ』
喪って初めてわかった。
『生きてくれ。どんなに挫けそうであっても、生きてくれ』
そう願えたことの幸いを、自分は知っていたはずなのに。
また喪って見失ってしまっていた。
「今、わかっても……『ツェーン』は」
いない。
己の瞳に映らない。
猟兵の一人が言った。
『見えていないだけだ』
あの未来は、確かに『ツェーン』を失うものだった。
その悲しさが涙を呼ぶ。
そして、涙は悲哀へと代わり、他者を傷つける凍える刃へと変貌する。
「……寒い」
『クリノ・クロア』はコクピットの中で肩を抱いた。
風が吹き込む。
コクピットハッチはもう意味をなさない。
『エクストラ』の首無しの躯体が、反応した。けれど、それよりも速く、何よりも速く飛び込む影があった。
『『クロア』」
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は、見上げた『クリノ・クロア』の頬を手で振れた。
ひやりとした感触。
けれど、流れ込むものがあった。
「『ツェーン』――聞こえて? 解って? 凍えたこの子が、見えて?」
静漓の瞳がユーベルコードに輝やいている。
彼女は『ツェーン』に触れていた。
救助された彼女の意識は戻っていなかった。けれど、そのユーベルコードは声を発することなく会話することができる力。
ユーベルコードでつながった静漓は『ツェーン』の意識を抱えるようにして『クリノ・クロア』の元へと走った。
『エクストラ』の躯体が震える。
『クリノ・クロア』が何かをするでもなく、『エクストラ』は機体を震わせ、静漓を振り落とそうとした。
だが、静漓はこらえた。
自分を仲介して、『ツェーン』の意識を導いたのだ。
「愛も、恐れも、願いも」
思う。
人はどこまで行っても一人だ。
一人で生まれて、一人で生きて行く。
それは嘘だと思う。
生まれる時ですら、人は一人ではない。一人で生きているように見えて誰かと関わりを持たざるを得ない。一人きりになんて、本当はなれないのだ。
けれど、死だけは違う。
死の間際に、隣に誰かが居てほしいと願う。
それが人なのだ。
だからこそ、静漓は思う。
自分にできることは、手を差し伸べることだけだ。
孤独に震え、寂しさに凍えそうになっている心に手を光より速く差し伸べる。
そうやって、人は狂気さえも乗り越えていける。
「あなたの想いを彼に伝えられるように」
『――』
静漓は瞳を伏せた。
暴れるようにして揺れる『エクストラ』の躯体に負けじと、『クリノ・クロア』の頬に手を触れ続ける。
「がんばて、『ツェーン』」
まだ、彼らには無限の可能性がある。
これから先なんて、いくらでもある。
彼を救いたいという想いが、静漓は己を介して流れ込んでいくのを感じる。
「彼を脅かす者がいる。彼を奪おうという者がいる。そんなのって、嫌でしょう」
人に必要なのは『エース』を殺す『エース・カウンター』でもなければ、キャバリアでもない。
ましてや『エース』のような力量でもない。
必要なのは。
「誰かを思う優しさ。誰かの隣に、そっと立つことのできる何気ない衝動。だから、『ノイン』、彼の隣はもう『ツェーン』だけじゃない。他の多くの皆で埋まっているのよ」
静漓の言葉と共に『エクストラ』の躯体が震え、寸断された二振りの槍が突き立てられた大地を這いずるようにして進む。
だが、伸ばした手は、槍に触れることはなかった。
光の翼が消失する。
揺らめいた翼は、融けるように消えたのだ。
「……がんばったわね」
『ツェーン』、『クリノ・クロア』、と静漓は完全に機能を停止し、朽ち果てるように倒れ伏した『エクストラ』のコクピットから『クリノ・クロア』を抱えて立ち上がるのだっ――。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2025年10月31日
宿敵
『エクストラ』
を撃破!
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