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新弟子育成を阻止せよ

#アリスラビリンス #戦後 #チャンピオン・スマッシャー

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#アリスラビリンス
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#戦後
#チャンピオン・スマッシャー


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●これまでのあらすじ
 かつて【猟書家】と呼ばれた者たちが世界中で暴れ回った事があった。だが猟兵たちの活躍で彼らの野望はことごとく阻まれた。頂点にあった書架の王【ブックドミネーター】も倒れ、彼らの正体が第三猟兵と呼ばれる存在である事実が明らかになった時には既に壊滅状態になっていたという有様であった。
 そんな猟書家のひとりに【チャンピオン・スマッシャー】がいた。彼は【オウガ・オリジン】亡き後でオウガ・フォーミュラとしてアリスラビリンスに君臨した猟書家【鉤爪の男】の部下として働き、永遠の闘争を求める鉤爪の男のために兵隊を集めていたのだが、鉤爪の男の戦死に伴いその役割も自然消滅することになった。
 そんなチャンピオン・スマッシャーの現在の目的は、アスリートアースに渡ってプロレス・フォーミュラを倒し自らが新たなプロレス・フォーミュラになる事であった。そのためにアスリートアースに渡る手段を探しているのだが、そう簡単に見つかるはずもなく、骸の海から復活して何やら企んではそのたびごとに猟兵たちに阻止されて再度骸の海に送り返される、というのが定番であった。

 で、少し触れた【オウガ・オリジン】。
 もともと猟書家が世界中に移動するために使っていた現実改変ユーベルコードはオウガ・オリジンのものであった。それをどういう手段を使ってか、猟書家が奪い取ったのである。そして猟書家によって幽閉されたオウガ・オリジンが脱出に成功し、それがアリスラビリンスを揺るがす【迷宮災厄戦】のきっかけとなった。オウガ・オリジンは力を取り戻しかけるも結局は猟兵によって倒される事となったと。ただ以降、アリスラビリンスのオウガたちの中に、その現実改変ユーベルコードに不完全ながら目覚めたものが出てくるらしいのだ。

●その結果
「うおおなんだこの力は!」
 チャンピオン・スマッシャーは絶叫した。
「これだけの力があればあるいは私の念願が果たせるかもしれん……が!」
 ぐうううううう。猛烈な腹の音。
「……それにしても……腹が……減った……」

「ということで今回のチャンピオン・スマッシャーくんはその限定版現実改変ユーベルコードを使えるらしいのだ」
 大豪傑・麗刃(27歳児・f01156)はさらりととんでもない事を言った。
「幸いにもそこまで強い力じゃないらしいし、チャンピオンくんもたぶん使いこなせないから、オウガ・フォーミュラになった猟書家のように世界間移動はたぶん無理ぽいのだ……が、得た力でなんとか異世界移動をしようといろいろやってるらしいのだ」
 むろん、オブリビオンがダークリーガーという形でなんかうまいこと世界と共存めいた事になっているアスリートアースに他世界のオブリビオンを流入させるわけにはいかないし、そうでなくてもあやしげな力を手に入れて好き勝手やろうとしているオブリビオンを放置していたらアリスラビリンスが大変な事になってしまうだろう。
「ということでなんとかしてほしいのだ!ただ強大な力には反動もあるもので、チャンピオンくんにもそういうのがなんかあるらしいんだけど……」
 麗刃、小考……のち。
「わかったら改めて連絡するのだ!!」
 ずこッッッ。猟兵たちのずっこけた音はグリモアベース中に響き渡ったそうな。この後麗刃をボコるかどうかは皆に任せるとして、とりあえずアリスラビリンスに向かうのであった。


らあめそまそ
 らあめそまそです。
 待っていた方は大変お待たせいたしました。そうでない方はようこそ。チャンピオンスマッシャーシナリオをお送りいたします。今回はいつも以上に変化球で、第1章・第2章とに断章にプレイングボーナスめいた物を書く事になりますので、そちらをよくお読みいただいたうえでご参加いただければ幸いです。
 それでは皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『チャンピオン・スマッシャー』

POW   :    グローリーチャンピオンベルト
自身の【チャンピオンベルト】が輝く間、【自身】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    キス・マイ・グローリー
【プロレス技】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
WIZ   :    アイ・アム・チャンピオン
自身の【攻撃を回避しないチャンピオンとしての信念】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。

イラスト:草間たかと

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●はらぺこレスラー
『腹が減ったぞー!!』
 不完全ではあるが強大な力を手に入れたチャンピオン・スマッシャー。その代償は強大な飢えであった。
『やはりプロレスラーたるもの食が資本!早速何か食わねば!!』
 とりあえずチャンピオンは近隣の村を襲い、適当な料理人を脅して料理を作らせる事にしたらしい……付け入るスキはここにありそうだ。
『腹ごしらえを済ませたら、まずは新弟子の育成だ!今の私なら異世界転移できるような強い弟子を育てる事もできる!そうなったら一気にプロレス・フォーミュラとやらのクビをとってやるぞ!』
 いやそんなに強い弟子だったらあなたじゃなくて弟子に戦わせた方が良いのでは?
『馬鹿な!師匠より優れた弟子など存在しない!私の方が強いに決まってるのだ!』
 ……まあいいか。

 ということで改めてグリモア猟兵からの追加情報が入った。
「現実改変ユーベルコードの影響で飢えているチャンピオンくんはプロレスラーが食べそうなものならなんでも食べるらしいのだ」
 なるほど。ならばプロレスラーが食べそうな料理を作り、そこに毒を盛るとかどうだろう?
「なんとそれはむしろ逆効果なのだ。この状態にあるオウガは、むしろ毒入りとか、刃物が仕込んであるとか、そういうデンジャラスな料理を喰う事でパワーアップするらしいのだ」
 なんてこった。ではどうすれば?
「逆に普通においしい料理を食わせればいいらしいのだ。そうするとどういうわけか料理に対してむちゃくちゃ感動した挙句になぜかダメージを受けるらしいのだ」
 どういうこっちゃ?ともあれそういうことらしい。

 なお上記の料理を戦闘の代わりにしても良いが、通常に戦闘するつもりならチャンピオン・スマッシャーの能力は以下の通りだ。
【グローリーチャンピオンベルト】は攻撃回数の上昇だ。ただでさえ強いチャンピオンは、不完全とはいえ現実改変ユーベルコードの効果でさらに強化されている。それが攻撃回数9倍とあってはたまったものではないだろう。寿命が縮むデメリットも短期決戦ではたいした問題にならないと思われる。
【キス・マイ・グローリー】はプロレス技を受けた相手に逃走を選ぶか追加ダメージを受けるか選択させるものだ。むろん逃走を選んでしまったら赤丸優先は免れまい。だがただでさえ強いチャンピオンは、不完全とはいえ現実改変ユーベルコードの効果でさらに強化されている(2回目)ので追加ダメージもバカにならないだろう。
【アイ・アム・チャンピオン】は相手の攻撃を回避しない事で能力を上げるプロレスラーらしい技だ。ただでさえ強いチャンピオンは、不完全とはいえ現実改変ユーベルコードの効果でさらに強化されている(3回目)ので、身体強化も凄まじいものが予想され、本当に手が付けられなくなる恐れがある。

 以上、とにかく今回のチャンピオンは強いので、料理に自信があるならそちらで挑んだ方が無難かもしれない。むろんそれでもあえて普通に戦うという命知らずな挑戦もいいだろう。ともあれ、その、なんだ。なんとかしてください。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
難儀なことになっておりますねぇ。
とは言え、何とかしてみましょう。

『FLS』から『FTS』を召喚、機材や食材をご用意しまして。
この方には時折力士と思われておりましたので、「ちゃんこ鍋」を作りましょうかぁ。
鶏ガラスープをベースに、鶏もも肉や野菜を大きめに切って投入、醤油と砂糖を中心に甘めの味にととのええますねぇ。
相当空腹の様ですし、量の食べられる鍋物は丁度良いかとぉ。

上手く弱ってくれましたら、ダメージを受けたところに[追撃]を。
【僓戠】を発動し『神符』を召喚、『攻撃中の一時無敵化』でチャンピオンさんの9回攻撃を遮断しつつ『女神紋』を暴走させて、『万象崩壊印』で叩きますねぇ。



●プロレスラーに相応しい料理といえばこれか
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はチャンピオン・スマッシャーとは何度も戦ってきた。今回で5回目だ。だが、かのオウガ・オリジンが使っていた現実改変ユーベルコードを不完全ながら得た個体とは今回が初対決となる。
「難儀なことになっておりますねぇ」
 それでもるこるの口調はいつもと変わらない。むろんそれは敵の脅威をまるきり意識していないがためではないだろう。それを表面上に出さぬ強さはたしかにあるようだ。そして次の言葉は自信の現われか、それとも強敵相手であっても任務を遂行する決意の表明か。いずれにせよその言葉は中身の強さとはまったく無縁なように、あまりになにげなく放たれる事になった。
「とは言え、何とかしてみましょう」

『うおおー!腹減ったぞー!』
 そんなるこるの耳にも早速チャンピオン・スマッシャーの叫び声が入って来た。事前情報の通りかなりの空腹なようだ。このままだと早速近くの村を襲い、てきとーな愉快な仲間あたりに無理やり料理を作らせる事であろう。ということでるこるはグリモア猟兵のアドバイスに従い、祭器で機材や食材を用意して料理を開始した。大きな鍋に鶏がらスープを入れ、タンパク質豊富な鶏もも肉、そして野菜を切って大量投入。味付けは醤油ベースに砂糖という定番の味。これぞまさに、相撲から始まり、相撲出身レスラーを経てプロレスに持ち込まれた『ちゃんこ鍋』だ。そも『ちゃんこ』とは相撲部屋の料理担当である『ちゃんこ番』が作った料理全てを指すのだが、いろいろあって鍋だけが有名になって現在に至るそうな。
「相当空腹の様ですし、量の食べられる鍋物は丁度良いかとぉ」
 なるほど。たしかに理にかなっている。何よりプロレスラーの食べるものとしてはこれ以上ないと言っても過言ではないだろう。だがそれだけでもないようで。
「この方には時折力士と思われておりましたのでねぇ」
 それが単に事実を述べただけなのか、それともちょっと根に持っていたのか。その口調から推し量るのはちょっと難しかった。

「さあお召し上がりくださいませぇ」
『おお!』
 るこるが運んできた鍋にチャンピオンは歓声を上げた。あまりの空腹に、まったく疑うことなく鍋の中身を小皿に取り分ける。
『ちゃんこ鍋とは実に分かっている!だが私は鍋にはちょっとうるさいぞ!そう簡単には』
 それでも威厳を保つべく悪態をつきつつ箸を取り、適当なものを口に運ぶ……瞬間。
『!!!!』
 マンガやアニメだったら集中線付きで見開かれた目がアップになっていたことだろう。それくらいの驚きようだった。
『これは……これは!』
 そう簡単にいったようだ。何やら感激のあまりいろいろと細かいところに至るまで大げさに褒めちぎるチャンピオン。
『うーまーいーぞおおおおおおお』
 そして絶叫ののち爆発四散した。なるほどこうやってダメージを与えれば良いらしい……が。るこるはこれで終わらせなかった。
「それでは追撃といきましょうねぇ。大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『摧破の加護』をお与え下さいませ」
 ユーベルコードの名は【僓戠】といった。僓は壊れる事、戠は印。読みの『ケッカイノヒョウショウ』は『決壊の標章』であろう。そして神符を召喚、女神紋を暴走させてチャンピオンの9回攻撃を防ぎつつ万象崩壊印で叩く……つもりだったが、チャンピオンが攻撃してくる様子もなかったので普通に超高威力の攻撃を叩きつける結果となった。
『いっいったい何をしてくるとらばッッッ』
 むろんチャンピオンにこれを回避できるはずもなく、初手から大ダメージを受ける結果となったのだった。料理にくわえてこれほどの猛攻、るこるの徹底ぶりなのか、やっぱりちょっと根に持っていたのか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

熊ヶ谷・咲幸
「お料理の力で相手を倒す……なんかデリシャス☆アイドルみたいで憧れちゃいます! で、どうやって倒すんでしたっけ?」
あまり依頼内容を聞いていない粗忽者アイドル
「とにかく、コーデ☆チェンジです!」
UCでエプロン姿に変身して料理技能を上げます
「今日のコーデはデリシャス☆エプロン!エプロンのパンご飯麺類のアップリケがチャームポイントです!」
作る料理は暗殺者のパスタ!名前的に殺傷力が高そうなので
「さあ、これを食べて無事でいられますか!?」
本人は食べた相手を暗殺できると思っているが、ただニンニクのパンチの効いた辛旨いトマトベースのパスタである
こんな感じで微妙に趣旨を勘違いしつつもダメージ与える感じで



●実際に作ろうとすると料理後の掃除が大変らしいね
 熊ヶ谷・咲幸(チアフル☆クレッシェンド・f45195)はアイドルである。先日まで戦争していたアイドル☆フロンティアでもそのアイドル力を存分に発揮して大活躍していた。そんなわけで違う世界でもアイドルとして活動する事に変わりはないわけで。
「お料理の力で相手を倒す……なんかデリシャス☆アイドルみたいで憧れちゃいます!」
 ということでアリスラビリンスで料理を使って強化されたオブリビオンをどうにかするという説明を受け、アイドルはアイドルでもお騒がせ☆アイドルである咲幸も今回はデリシャス☆アイドルのごとく戦う事を決意した……が。
「……で、どうやって倒すでしたっけ?」
 ずこっ。遠いグリモアベースでグリモア猟兵が大げさな仕草で倒れる音がした。そもさっき自分が言ったじゃないですか、料理の力で倒すって。そうするとだいたいわかるでしょ?
「えっと、お料理を作って、それを相手の頭に、そおい!!って」
 もったいないおばけが出るような事はやめなさい。
「あ、そうそう!食べてもらうんですよね!では早速!マイチケをレジェンドパクトにセット!」
 熊ヶ谷咲幸はわずか0.05秒で【コーデ☆チェンジ】を完了する。ではその原理を説明しよう。お騒がせ☆アイドル咲幸はレジェンドパクトにマイアイドルチケットをセットしてわずか0.05秒でコーデ☆チェンジを完了するのだ!
「今日のコーデはデリシャス☆エプロン!エプロンのパンご飯麺類のアップリケがチャームポイントです!」
 要するに実に料理向けの服装といえよう。このコーデをちゃんとああでこうでと説明するのも必要なプロセスなのだ。
「なるほどコーデをこうでというわけですね!」
 ともあれ早速咲幸は料理にかかった。お騒がせ☆アイドルに料理ができるのか?という周囲(?)の不安はあっただろうが、それぽいエプロンは咲幸にちゃんと料理の腕前をエンチャントしてくれたようであった。

「ではどうぞ!」
『おお?スパゲッティか!』
 ということでちゃんとチャンピオン・スマッシャーに皿に盛られた料理を提供できた咲幸。
『トマトのスパゲッティのようだが、ずいぶんと焦がしてあるようだな』
「さあ、これを食べて無事でいられますか?」
『まあパスタならGI値も低いから健康的と言えるかもしれんが問題は味だ、私はそう簡単には』
 言いつつ一口……瞬間、チャンピオンの目がかっと見開かれた。マンガやアニメだったら集中線付きで見開かれた目がアップになっていたことだろう。それくらいの驚きようだった。
『!!こ、これは……一般のイタリア風スパゲッティにはない独特のカリカリ感!日本のナポリタンとも違う、この食感!だがこれは実にやみつきになるッッッ』
「やった!」
 チャンピオンの反応に咲幸は指を鳴らした。狙いが見事に的中したのだ……だがその狙いというのは。
「さすがは暗殺者のパスタ!」
 ……暗殺者のパスタ。通常スパゲッティはソースと麺を別々に調理して後で合わせるのだが、これはフライパンでパスタをゆでながらそこにソースを注ぎ足す形で作られ、それが独特の食感を生み出す事になる。なおこの物騒な名前の由来は、焦がしたトマトソースが血のように見えたからとか、殺人的なうまさだからとか、唐辛子の辛さが殺人級だったとか、いろいろ言われているが。
「やっぱり暗殺にはもってこいでした!!」
 少なくとも食った人が死ぬからという理由ではないはずだ……普通は。ただし結果的に今回に限って言えば。
『う、う、うまい、うーまーいーぞおおおおおおお』
 感動したチャンピオンは目と鼻と耳と口から真っ赤な光線を放ちながら爆発四散!!したので文字通りの暗殺者のパスタになったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

豊川・真奈美
アドリブ/連携可

「『新生F.O.N.』はMr.ホームランや武蔵様みたいに他世界出身のオブリビオンいるし、今更1人来たところで問題なさげじゃね?」
色々言いつつ炭火で大量の秋刀魚を焼く。
「今年はサンマが豊漁で安いからな、炊き立てご飯に大根おろしもあるぞ!」
ついでにその辺にいた愉快な仲間たちにも秋刀魚を振る舞う。
「よし!たらふく食ったし戦うか!」
そして愉快な仲間たちを観客に普通のプロレス開始。9回の攻撃を激痛耐性で耐えたり回避したりしつつ、残虐ファイトやグラップルで打撃戦に持ち込んだり、時にパフォーマンスで挑発したりと盛り上げ、うまい事隙を突いてUC発動。
「収穫の時間だああああああ!!!」



●でもそれだとたぶん勝てない気もする
 アスリートアースに他世界のオブリビオンを流入させたら何が起こるかわかったものじゃない。絶対阻止しなければならない。そう主張するグリモア猟兵の意見には、豊川・真奈美(|緑の手の怪物《グリーン・ハンド・モンスター》・f41316)は懐疑的であった。
「『新生F.O.N.』はMr.ホームランや武蔵様みたいに他世界出身のオブリビオンいるし、今更1人来たところで問題なさげじゃね?」
 言われてみれば。そういやあのグリモア猟兵はサムライエンパイア出身の剣士として宮本武蔵は尊敬していたらしく、それが剣を捨てて異世界でテニスやっていた事にはたいそうショックだったそうな。その武蔵は死後転移である可能性があるとまだ言い訳できる。Mr.ホームランはかつてアポカリプスヘルでバリバリに幹部級オブリビオンとして活動していたという前科があるらしいから言い逃れのしようもない。それなのにアスリートアースでは大人しく(?)野球やってるわけだから、仮にチャンピオン・スマッシャーがアスリートアースに赴いたとしても、普通にアスリートアースの秩序的な何かによってごく普通のダークリーガーになる可能性はたしかにあるかもしれない。まあそれはそれとしてアリスラビリンスでいろいろやられると迷惑極まりないので倒さなきゃならないのもまたたしかではあるが。
「今年はサンマが豊漁で安いからな、炊き立てご飯に大根おろしもあるぞ!」
『む!サンマだとぉ!?』
 真奈美が炭火で焼いたサンマの塩焼きである。まさに今が旬真っただ中。そして形も良くサイズも十分。ここに大根おろしに醤油でもかければこれは間違いあるまい。
『たしかにタンパク質豊富で炭水化物が少なくまたオメガ脂肪酸も多いのでアスリートと言えるがそれだけに私は味にはこだわるぞ、そう簡単に認めると思ったら』
 言いつつ一口……瞬間、チャンピオンの目がかっと見開かれた。マンガやアニメだったら集中線付きで見開かれた目がアップになっていたことだろう。それくらいの驚きようだった。
『!!こ、これは……焼き加減塩加減ともに絶妙、またサンマの新鮮なこと、脂の乗り具合、まさにこれは旬のサンマ!サンマはやはり目黒に限るぞおおおおおッッッ』
「よーしみんなこーい、いっぱいあるからみんなで食おうぜー」
 感動するチャンピオンを放置して真奈美はそこらにいた愉快な仲間を誘い、サンマパーティが始まっていた。みんなでサンマに舌鼓を打ち、そしてチャンピオンは例のごとくに全身から光線を放って既に死んでいた。
「……たらふく食ったし腹ごなしの運動だな!」
 そして真奈美は立ち上がる。視線の先には無残なチャンピオンの姿。
「よし!戦うか!」
『……え?』
 既に死んでいたチャンピオンだがこの言葉には驚愕。
『ちょっと待って私今この有様だしさすがに』
「何言ってやがんだ?プロレスラーならいつ何時誰の挑戦でも受ける、だろ?」
『それを言われると……だがなあ』
「ごちゃごちゃいわないチャンピオンのくせに!」
 さすがにらしくないチャンピオンの言葉を真奈美が許すはずもない。無理矢理リングに上げると早速戦いが始まった。チャンピオンもさすがにリングに上がればレスラーとして動きはするが、さすがにコンディションが悪すぎた。腰のベルトを光らせ9回攻撃を仕掛けるも真奈美の根性に耐えきられる。勢いに乗った真奈美は完全に試合の主導権を握り、パフォーマンスでも完全にチャンピオンを圧倒する。
「収穫の時間だああああああ!!!どっこいしょッッッ」
 最後は見事な大根抜きスープレックスでチャンピオンからあっさり3カウントを奪い、真奈美は愉快な仲間たちから大歓声を浴びたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコリネ・ユーリカ
きたわね!!(えがお
お腹が空いてるなら私が作ってあげる
村を襲って、料理人を脅して、無理矢理作らせる料理より美味しい筈よ

黒く濃いアイシャドーに縦のヒビ割れを足したワルめのメイクを施し
「将軍ニコリネ」となって登場!
悪の料理長としてビールジョッキに入れた生卵をガブ飲みに……しない!!
ちゃきちゃきっと菜箸で混ぜて『切干大根の玉子焼き』を作りまぁす

切干大根は栄養満点な万能食!
ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な食材に
タンパク質と脂質に優れた卵を掛け合せた料理は完・全・無・欠!
仕上げにエディブルフラワーのニコローズを添えて可愛くしましょ

最高の栄養パワーを胃袋にブチ込んであげる
空腹がこれで収まると良いわね!



●アスリートもちゃんと黄身まで食べた方がいいらしい
「きたわね!」
 チャンピオン・スマッシャー復活の知らせにニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)は満面の笑顔。なにせあのチャンピオンとは10回目の戦いになるのだ。これまでのチャンピオンとの戦いは毎回一応プロレスの範疇と言える形式だったが、今回はプロレスですらない。それでも。
「ほーっほほほ!なので私も来てあげたわよ!」
 気合の入ったコスチュームで。黒く濃いアイシャドーでヒールっぽさをアピールし、くわえて縦のヒビ割れというとやはり思い出すのは女帝と呼ばれた女子プロレスラーであろう。
「この『将軍ニコリネ』が!」
『むう!貴様も私と戦いに来たのか!』
「ちょっと待った!」
 見慣れた顔の登場に身構えたチャンピオンをニコリネは制止した。
「お腹が空いてるんでしょ?それじゃ戦うのは無理よね?この悪の料理長である私が作ってあげる!」
『何?』
「村を襲って、料理人を脅して、無理矢理作らせる料理より美味しい筈よ」
『むむう』
 確かに今のチャンピオンは空腹だ。結構食べたはずだが、それらは今のチャンピオンにとっては栄養どころか全部ダメージになっているのでまったく腹は満たせていない。どっちが美味しいかは別にしても、少なくともニコリネと戦う以前に村を襲う事すら億劫になるほど空腹なのは確かなのだ。
『いいだろう、で、何を作るのだ?』
「これよ!」
『??』
 ニコリネが出してきたものを見てチャンピオンは顔をしかめた。それは……ビールジョッキに入った生卵。
「これをガブ飲みに」
『おいッッッ』
 さすがにチャンピオンもツッコミを入れた。ボクシングの映画で有名になったシーンではあるし、確かに卵ならタンパク質の塊ではあるが、あれはあくまで貧乏な主人公の苦肉の策であり、主演俳優もあのシーンは嫌で仕方なかったという。ただいかにTKG大好きな日本人とて味付けもされていない生卵はあまり食べたいものではあるまい。実際海外の生卵は衛生面とかで生食はちょっとまずいらしく、そんなものをくわせたら危険なもので強化されるチャンピオンが本当に万全状態になってしまうかもしれないのでまあ。さすがにニコリネもそのあたりはわかっていた。
「……しなぁい!!」
『あ、ちゃんと料理してくれるのな』
 安堵したようなチャンピオンを尻目にさっそくニコリネは料理を始めた。卵を菜箸でよーくかき混ぜ、そこに混ぜるは切干大根。この組み合わせ、台湾では定番で菜脯蛋と呼ぶそうな。現地では菜脯と呼ばれる干し大根の塩漬けを使うようだが、日本で作るなら切り干し大根で良いだろう。
「切干大根は栄養満点な万能食!ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な食材にタンパク質と脂質に優れた卵を掛け合せた料理は完・全・無・欠!最高の栄養パワーを胃袋にブチ込んであげる!」
 そう。あくまで抵抗があるのは生卵であり卵自体は実にアスリート向けなのだ。そして大根は1日2本食べていた者が襲撃を受けた時に大根の化身によって助けられたというエピソードが『徒然草』に載っているぐらいに健康に良いとされている。これが体に良くないはずがあろうかいやない。日本の卵焼きは四角い玉子焼き鍋で作るが、今回は台湾の菜脯蛋のように円形の卵焼きが完成した。
「さあどうぞ!」
『ふん!見てくれや栄養はいいかもしれないが問題は味だ!私はそう簡単には』
 言いつつ一口……瞬間、チャンピオンの目がかっと見開かれた。マンガやアニメだったら集中線付きで見開かれた目がアップになっていたことだろう。それくらいの驚きようだった。
『!!こ、これは……新鮮な平飼いの卵の豊かな味!そして切り干し大根の風味!これらをまとめ上げる出汁の味も実に見事ッッッ』
 歓声をあげ全身からビームを吹き出しながら玉子焼きをかきこむチャンピオンの食べっぷりにはニコリネも思わず笑顔。
「空腹がこれで収まると良いわね!」
『うーまーいーぞおおおおおおお』
 むろん、栄養以上の大ダメージを負ったチャンピオンの空腹はより強くなるだけだったのは言うまでもないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルデ・ローゼ
懲りないわねチャンピオン!……何か変なものでも食べた?
割と本気で心配する。
レスラーが好きなものと言えばやはり焼肉よね!サムギョプサルを焼くわね!
おいし~!サンチュで厚切り肉を巻いてむしゃむしゃ食べるわ!
何でお前も食べてるのかって?みんなで美味しい、美味しいって言い合いながら食べる方が一人で食べるよりずっと美味しいでしょ?

食べてるうちに体が火照って汗が出てくるわ。辛い物は体を温めるのよね!何で辛くしたのかって?もちろん、辛味は痛みだからよ!
肉を浸けたタレは深紅の激辛ダレ!脳天まで突き抜ける辛さが後を引くわ!



●中毒性は高いよね
 ヴィルデ・ローゼ(苦痛の巫女・f36020)もチャンピオンと幾度となく戦ってきた猟兵のひとりであった。今回で8回目だ。
「懲りないわねチャンピオン!」
 と言いつつ、いつもと違うチャンピオンの様子はさすがに気になったようで。
『うう……腹が……減った……』
 いつものようなふはははは笑いもなければリング設営している様子もない。それどころか空腹に必死で耐えているチャンピオン。こんな弱気なチャンピオンはさすがにヴィルデも見た事がない。負けた時でさえ次は絶対に勝つとあくまで強気な男が、だ。
「……何か変なものでも食べた?」
『いや食べてないからこんなに空腹……あれ?』
 むしろ食べるのはむちゃくちゃ食べた。それなのに満腹感どころかなぜかダメージを受けている始末。これでは空腹感はより増大する一方だ。なぜだ。現実改変ユーベルコードのもととなったオウガ・オリジンの嗜好がたぶん影響しているんだろうけど、チャンピオンにはそんなことはわからない。
「お腹空いてるのね?えっと、レスラーが好きなものといえば……やはり焼肉よね!」
 やはりアスリートにはタンパク質。タンパク質といえば肉だ。あるいはヴィルデの頭には、アスリートアースのダークレスラーと猟兵との戦いが終わった後にノーサイドとしてともに焼肉パーティーを行っていた事もあったのかもしれない。ということでヴィルデが焼き始めたのはスライスされた豚バラ肉。これを日本の焼肉よりも厚めに切り、表面がカリッとなる程度まで焼き、さまざまな調味料や野菜と一緒に食べる、いわゆるサムギョプサルだ。ちなみにハングルのサムギョプサルを直訳すると「3層の肉」となり、日本で言うところの三枚肉と同じ言葉になるが、生肉を指す事はなくあくまで三枚肉の焼肉だけを指す言葉らしい。そして焼きあがった焼肉をヴィルデは。
「おいしー!」
『おい、私が食べるためのものじゃないのか?』
 サンチュで巻いて早速自分で食べ始めたので空腹のチャンピオンはツッコミ。これはまさか極限の空腹に追い込まれた者を前に焼肉を食べてみせるという雅な拷問ヤキニク・トーチャリングを仕掛けているというのか?と思いきや。
「だってみんなで美味しい、美味しいって言い合いながら食べる方が一人で食べるよりずっと美味しいでしょ?」
『何?』
「ほら、ちゃんとあなたの分はあるから」
『なんだ驚かせおって』
 改めて自分の分の肉を用意され、チャンピオンはさっそくかぶりつく……前に一応悪態は忘れない。
『たしかに豚肉ならタンパク質は言うに及ばずビタミンBも豊富で体力回復効果もありプロレスラーには相応しいかもしれん、だが問題は味だ!私はそう簡単には』
 言いつつ一口……瞬間、チャンピオンの目がかっと見開かれた。マンガやアニメだったら集中線付きで見開かれた目がアップになっていたことだろう。それくらいの驚きようだった。
『!!こ、これは……韓国風というだけあって激辛を予想していたが、なんのなんのちょっとピリ辛程度で普通に食える実に奥深い』
「そう思う?そのうちにわかるわよ」
『!!??こ、これは……』
 ヴィルデが肉を浸けたのは深紅の激辛ダレであった。本当に辛いのは後から来るのだ。たちまち脳天まで突き抜ける獄辛がチャンピオンを襲い、全身から汗が滝のように流れ落ちた。辛さとは痛覚だという。苦痛の女神の巫女であるヴィルデがこれを採用しないはずはなかった。むろんただの獄辛ならば危険物と判断されてむしろチャンピオンの体力を回復させてしまう恐れがあった……が。
『か、辛い辛いかーらーいーだがどういうわけか食べる手が、と、止まらんッッッ』
 ただ辛いだけではない。激辛と旨味の高レベルの融合。それは時として人を魅了するものとなる。そして。
『う、う、うううまあああいいいいぞおおおおッッッ』
 今のチャンピオンにとっては最も効果的な攻撃になりうるものであった。一方その横では。
「ああっ、辛くて痛くて……おいしいっ」
 ヴィルデもまた獄辛に悶絶していたが別にダメージを受けていたわけではなかったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

遠藤・修司
カント(f42195)と

(スポーツの気配を感じた修司は引っ込み、康治が出ている)
まずい! 筋肥大に空腹は厳禁!
筋肉が分解される前に、PFCバランスを考えた食事を出さなくては!

まずは基本の鶏胸肉に卵!
そして増量期には炭水化物も重要!
それらを効率よく食べるなら、そう親子丼だよ!
鶏皮は取り除き脂質は控えめ
ご飯は玄米で食物繊維とビタミンも取ろう

他にブロッコリーの胡麻和えなど副菜も用意するよ
目標は消費カロリー+5000kcal
しっかり食べて身体を作ろうね

休んだら運動だ
ダークリーガーの特訓は素手で猛獣と戦うから
元気な動物(カント)を連れてきたよ

じゃあ僕は運動後のプロテインを用意するから
二人とも頑張ってね


高崎・カント
康治さん(f42930)と

きゅー! またまたまたチャンピオンさんなのです!
目標に向かって努力を続けているのです
すごいのです! 立派なのです!
カントもお手伝いするのです!

新生F.O.N.さん達くらい強ければ自力で世界を渡れるのです
ならば特訓あるのみなのです!

康治さんが筋トレご飯を作っているのです
もきゅ? カントも食べていいのです?
わーいなのです! たっぷり食べるのです!

よく噛んでいっぱい食べるのです!
もきゅーん! おいしいのです!
早く特訓したいのですー!!(元気になりすぎてグルグル回り出す)

もきゅー! カントなのです!!
筋肉に強い負荷をかけるのです!!
さあ! カントの突撃を受け止めるのです!!!



●この三ツ葉を忘れないでもらいたいね
『は、腹が減って死にそうだッッッ』
 ただでさえ空腹の上に猟兵による連続攻撃を受けてさすがのチャンピオン・スマッシャーももはや虫の息だ。そこに新たに現れたふたり組がいた。
「きゅー!またまたまたチャンピオンさんなのです!」
 高崎・カント(夢見るモーラット・f42195)はチャンピオンとは4度目の戦いだ。そして。
「目標に向かって努力を続けているのです!すごいのです!立派なのです!カントもお手伝いするのです!」
 アスリートアースに渡ろうとしているチャンピオンの執念については素直に称賛しているようで、チャンピオンに協力する気満々であった。一方の遠藤・修司(ヒヤデスの窓・f42930)……となっているが、実は修司はいろいろと複雑な経緯を経て多重人格者のようになっているらしく、今出ているのはアスリートアース出身でスポーツに精通している遠坂康治という人格らしい。ともあれ修司もだが康治もまたチャンピオンとは初対面だ。だが今のチャンピオンの様子を見て思った事があった。
「まずい!」
「なにがまずいんです康治さん?」
 カントと修司は幾度か共闘しているが、修司が基本的に名を名乗る事がなく、中身が康治の時に名乗っているので、カントは修司の事を康治の名で覚えているそうな。まあ結果的に今回は正解だったから良いのだが。
「筋肥大に空腹は厳禁なんだ!」
「もきゅ?」
 要するにだ。人間、空腹になるとまず筋肉から分解を始めるもので、脂肪が分解されるのは本当に最後の最後なのだ。そのためマッチョがその筋肉を保つためには1日の食事回数を通常の3食ではなく5~6食に増やす事で空腹状態を作らないようにする事が重要であるらしい。今のチャンピオンはまさにボディビルダー並みの筋肉が減少してしまう危機の真っただ中なのだ。
「筋肉が分解される前に、PFCバランスを考えた食事を出さなくては!」
「もきゅ?ぴーえふしー?」
 |タンパク質《Protein》、|脂質《Fat》、|炭水化物《Carbohydrate》の頭文字をとってPFC。マッチョを目指すなら理想はP:F:C=30%:20~30%:40~50%とか。タンパク質は筋肉の材料として、炭水化物はエネルギー源として重要、脂質も重要ではあるけど必要最低限に抑える、という考え方だそうな。
「ということでトレーニングするなら食後少し休んでからだね、カント君も食べてから動いた方がいいだろうね」
「もきゅ?カントも食べていいのです?わーいなのです!」
 ということで康治が【スポーツDr.の完璧な栄養管理】を使い10秒で作った料理は、卵の黄色に三つ葉の緑が色鮮やかなどんぶり飯。
「まずは基本の鶏胸肉に卵!そして増量期には炭水化物も重要!それらを効率よく食べるなら、そう!親子丼だよ!」
 鶏は脂質をおさえるために皮を外し、血糖値が上がりやすい白米ではなく食物繊維やビタミンも豊富な玄米で作ったあたりはさすがのこだわりようである。くわえて抗酸化作用にすぐれたブロッコリーを、これまた栄養豊富なゴマを使って胡麻和えに仕上げて副菜として用意していた。そしてなにより目を見張るのはその量。
「もきゅ?こんなに食べていいのです?」
「当然だよ、目標は消費カロリー+5000kcal、しっかり食べて身体を作ろうね」
 思わず聞いたカントに、あっさりと康治は答えた。実際プロレスラーはそれくらい食べているのだから確かにプロレスラーは常人ではない。
「わーいなのです!たっぷり食べるのです!」
 チャンピオンより先に親子丼に手をつけたカント。鶏肉や卵の絶妙な味付けは実に見事であり、おこめとの組み合わせでさらに増幅される。よーく噛んで食べなければならない玄米を使っている事など問題にならなかった。
「もきゅーん!おいしいのです!早く特訓したいのですー!!」
「あわてないで、もうちょっと食べてからね」
 親子丼のうまさにパワーをもらったのか元気になりすぎてグルグル回り出すカントをたしなめつつ、改めて康治は肝心のチャンピオンの方を見た。
『ふん、たしかに栄養バランスは考えているようだが、問題なのは味だ!わたしはそこのモーラットのように甘くは』
 言いつつ一口……瞬間、チャンピオンの目がかっと見開かれた。マンガやアニメだったら集中線付きで見開かれた目がアップになっていたことだろう。それくらいの驚きようだった。
『!!こ、これは……』
 まあだいたい先刻上で説明されたような事を改めて述べつつ、例によってチャンピオンは感嘆し親子丼をかっこみながら全身から光を放っていく。これは死んだ。
『うううまあああいいいいぞおおおお』

「さて休んだら運動だ」
 既に死にかけているチャンピオンに、容赦なく康治は告げた。
「ダークリーガーの特訓は素手で猛獣と戦うから元気な動物を連れてきたよ」
「もきゅー!カントなのです!!」
『……え?』
「筋肉に強い負荷をかけるのです!!」
『い、いや、負荷つーか、なんか食ってるはずなのになぜか負荷ばっかりかかりまくってる状況なんだけど』
 おいしい食べ物をおなかいっぱい食べて元気いっぱい幸せいっぱいのカントと、おいしい食べ物をおなかいっぱい食べたはずなのになぜか脱力いっぱい空腹いっぱいのチャンピオン。なんだかちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、チャンピオンがかわいそうになってきた感もあるけど、ここは容赦しちゃいけない場面なのだ。
「じゃあ僕は運動後のプロテインを用意するから二人とも頑張ってね」
「さあ!カントの突撃を受け止めるのです!!!」
『ま、ま、待っへぼばあッッッ』

 ……むろん運動後のプロテインをチャンピオンが飲む事ができなかったのは言うまでもないであろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『愉快な仲間のナッシングヘッド・ビル』

POW   :    きれいだなあほしいなあ。おうちもってかえるどぉ。
レベル×1tまでの対象の【美しい部位を唾液塗れの手で撫で回し、そこ】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    おいしいんだどこれ。おめえもほしいどかぁ?くえ!
【べたべたと不潔に汚れたおぞましい謎の肉】を給仕している間、戦場にいるべたべたと不潔に汚れたおぞましい謎の肉を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    そのおかしなじゅつやめるど!いうこときくど!
戦場全体に、【純粋な筋力以外が力を失う法則と、毒のお花】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:草間たかと

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠甘甘・ききんです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●腐ってやがる 早すぎたんだ
『お、お、おのれ猟兵どもめ』
 空腹はおさまらず、ダメージは多大。ならばとチャンピオン・スマッシャーは最後の手段に出た。
『万全ではないが仕方がない!こうなったら我が力で弟子を呼び出してくれるわ!出でよ!』
 最後の力を振り絞り、時空を超える力を持った弟子を呼び出して猟兵を排除し、そしてその弟子の力を借りてアスリートアースに移動する。そして呼び出された弟子は……

『し、ししょう、およびれすかぁ』
『……』
 チャンピオンは絶句した。たしかに体躯だけ見ればプロレスラーっぽい感じではある。あるのだが……やはり不完全な状態で不完全な力を発動させるのは無理があったようだ。ちょっとチャンピオンの理想とはほど遠い感じのものが現れてしまったようだ。
『ま、まあ来てしまったものは仕方がない!とりあえず猟兵どもを排除するのだ!』
『お、おで、がんばるど』

 ということで現れたチャンピオン・スマッシャーの弟子(?)【愉快な仲間のナッシングヘッド・ビル】はちょっと頭は悪いようだが、そこは曲がりなりにも現実改変能力の産物であり、非常に強力な存在となっているらしい。以下に挙げる3つの能力もそれ相応の力を持つだろう。
【きれいだなあほしいなあ。おうちもってかえるどぉ。】は相手を掴んで振り回す技だ。これはプロレスラーぽい。単純な技だが、巨躯からくる怪力でこれをやられたら大変な事になりかねない。現実改変能力がその威力をさらに強大なものにしていることだろう。
【おいしいんだどこれ。おめえもほしいどかぁ?くえ!】はなにやら汚いものを食わせるものだ。これまでチャンピオンがいろいろ食わされてダメージを負った意趣返しだろうか。これを拒否すると行動速度が大幅に減少し、怒りに燃える弟子の攻撃を回避する事が難しくなるだろう。
【そのおかしなじゅつやめるど!いうこときくど!】は法則を捻じ曲げ、純粋な筋力の行使以外が無効化されてしまう空間を作るものだ。筋力以外による攻撃やバフデバフ等の搦め手が行使できない状況では、弟子の巨躯から来る純粋な暴力の効果は何倍にも増幅されてしまうことだろう。

 以上、頭は悪いが純粋なパワーだけでも十二分な脅威であり、それが現実改変能力で強化されているとあっては手もつけられない……と思いきや、ここでグリモア猟兵から追加情報が入った。
「体調が万全でない状態でチャンピオンくんが能力を使った影響で、そこらいったいが現実改変能力の影響を受けているらしいのだ」
 ほうほう。つまり?
「きみらも現実改変能力を一部行使できるのだ」
 なんと!具体的にはどんな感じ?
「えっと、『ぼくが考えるさいきょうのそんざい』とやらに変身できるらしいのだ」
 ……はい?最強の存在?
「そう。なんでも先の戦争にそういうギミックがあったらしくて……ともあれ、変身したものが、これはたしかにさいきょうだ!って認められたら弟子くんにも勝てるパワーが湧いて来るとからしいのだ」
 ……誰が認めるんだろう。
「ともあれ、その、なんだ。弟子くんをなんとかすれば既にダメージが蓄積されまくったチャンピオンくんは勝手に骸の海に戻るはずなのだ。なので弟子くんをなんとかしてほしいのだ!!」
 ……だ、そうです。よろしくお願いいたします。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
そういうことでしたら、やってみましょうかぁ。

『最強の存在』でしたら、嘗て『女神様の従者』に存在したという『魔鏡界渡航』の性質を得た状態になり、『魔鏡界』へ移動しましょう。
どれ程の力が有っても「攻撃や到達が可能な範囲に存在する」なら、事故や他能力の作用で斃されることは有り得るわけで。
マジックミラーの様な「交戦相手には認識も干渉も不可能な位置から一方的に干渉可能な空間に入り、そこから攻撃を行う」という戦い方が可能な存在が『最強』ではないかとぉ。
後は【斂抛】を発動、この空間から『FPS』で一方的に敵方の情報を把握、大質量を付与した『FRS』『FSS』の[砲撃]で叩きますねぇ。



●言ってる事はわかる
 現実改変能力。明らかにチートな響きのある力である。そして猟兵たちの前に立ちはだかったチャンピオン・スマッシャーの弟子……なのかどうか実際はわからないが、まあ便宜上『弟子』と表記しよう。そいつはああ見えてそのチート能力の産物であり、おそらくは超絶強いことだろう。だが猟兵もそのチート能力を扱える状態らしい。そんな説明をグリモア猟兵から聞かれて、夢ヶ枝・るこるはいつもと同じ様子で答えた。
「そういうことでしたら、やってみましょうかぁ」
『おめえ、きれいだなあ』
 どうやら弟子はるこるの姿を見て、そこに彼なりの美を見出し持ち帰る事にしたらしい。ただ持ち帰ろうとして触れた時にその制御不能の怪力で破壊してしまう可能性は非常に高いのだが、そんな事を気にする様子はない。
『おで、おめえ、おうちもってかえるどぉ』
『……おい、曲がりなりにも私の弟子を名乗るなら試合らしい展開にしてくれ』
 師匠である(?)チャンピオン・スマッシャーの叱責も果たして耳に入っているのやらどうやら。ともあれ弟子は汚い手でるこるを捕まえるべく一歩を踏み出した。対するるこるは信じる女神に祈りをささげた。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『収縮の加護』をお与え下さいませ」
 ユーベルコードの名は【斂抛】といった。斂は引き締める事。抛は投げる事だ。読みの『ギョウシュウセシウチカタ』は『凝集せし撃ち方』であろう。早速るこるは砲撃用の祭器を召喚して弟子に集中砲火をくわえた。これはただの砲撃ではなく、『律』なるものによって超高質量の物質が圧縮されているのである。こんなものをくらったらひとたまりもない……普通なら。
『なんだこれは?ぷろれすらしくないどぉ!』
 ちょっとだけチャンピオンの弟子ぽい発言が出た。ともあれ飛んできた砲撃を弟子は腕を振って弾き飛ばし、あるいは我が身で受け止めつつそのまま前身を続けた。これにはさすがのるこるも舌を巻いた。
「あらら、たしかに現実改変能力というのはすごい力のようですねえ」
 このまま近接を許してしまっては強制的にプロレス(?)をさせられる羽目になるだろう。あるいは撃ち込み続ければそうなる前に倒せるかもしれないが、その可能性にかけるよりはるこるはグリモア猟兵のアドバイスに従い『最強の存在』になる事を試みる事にした。
「私の考える最強の存在……嘗て『女神様の従者』にこんな力の持ち主がいらっしゃったそうですねえ」
 自ら考える最強の存在を思い浮かべた事でるこるの中に現実改変能力が発生し……そしてその姿が消えた。
『あれ?どこいったど?』
『むう!敵前逃亡か!20カウント以内に戻ってこられなければ赤丸3つだぞ!』
 困惑する弟子に激怒するチャンピオン。その姿をるこるはしっかりと見ていた。
「まさか私にも『魔鏡界渡航』が使えるようになるとは思ってみませんでしたねえ」
 るこるは魔鏡界なる空間にいた。空間についての詳細はちょっとわからないが、ただ言えるのは外界にいる者は魔鏡界の存在を把握できず、逆に魔鏡界からは外界の様子がまるわかりになるそうな。いわばマジックミラーのようなものであるらしいと。
「相手が認識も干渉も不可能な位置から一方的に攻撃を行うという戦い方が可能な存在が『最強』ではないかとぉ」
 いや、言ってる事自体は間違ってはいない。いないんだけどね。
「どれ程の力が有っても『攻撃や到達が可能な範囲に存在する』なら、事故や他能力の作用で斃されることは有り得ますからねぇ」
 今回の場合、超絶的な怪力とタフネスの持ち主ではあるがそれ以外の能力がないため、超高速で逃げつつロングレンジからの攻撃を徹底すれば完封できると考えるのがまあ普通だ。それでもなお完全にゼロではない。ほんのわずかな目すら潰す事のできる戦法こそ最強……これ悪役がやって勝ち誇り笑いしているのをどう破るかとか、そういう状況で使われるものじゃないの普通?とちょっと思わないでもないのだが、それでもなお最強と言われれば説得力は非常に高く、弟子にはこれを破るどころか、相手がどこにいるかすら把握できてないわけだから、これは認めざるを得ないでしょさすがに。
「さて、リングアウトと呼ばれるのも何ですので、さっそく叩きますねぇ」
 改めてるこるは斂抛により圧縮された大質量を魔鏡界から弟子に一方的に撃ち込んだ。
『な、なんだこれはどっからくるだどこれ、おかしなわざはやめるどいうこときくど』
『おのれ猟兵!!なんちゅう手を使ってくるのだ!?』
 間違いなく最強の存在、というより最強の戦術と呼ぶべきか。その理想を体現した攻撃にはさすがの弟子もなすすべもなくボロ雑巾のように一方的にズタボロにされるしかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

豊川・真奈美
アドリブ/連携可

いきなり迷路に閉じ込められる。
「この迷路の出口知らない?うん、あっち?ありがとう、お礼にお水あげるわ。」
毒の花と会話して出口までのルートを聞きだす。教えてもらったらお礼に如雨露で水やりする優しさを忘れない。

無事に出てきて一言。
「アタシの知ってる『最強の存在』なんてこの方しかいない!」
デスリング総統の姿へと変化。
「来いよチャンピオン、弟子ごと潰してやんよ!」
挑発パフォーマンスをぶちかまし、UC発動。
攻撃そのものは激痛耐性で耐え、グラップルと残虐ファイトでダメージを与えたらジャイアントスイングで吹き飛ばす。
「骸の海まで……とはいかねぇけど、扉の向こうまでぶっ飛べ!」



●こんなところで初遭遇
「な、なんだこりゃあ?」
 豊川・真奈美は困惑した。目の前に現れた不気味な男、チャンピオンの弟子とやらが突然『おかしなじゅつやめるど!』とか言い出し、別に自分は術など使わずプロレスだけで正々堂々勝負するつもりだと言い返そうとしたその時、突然謎の植物に周囲を覆われたのであった。そんな能力の説明グリモア猟兵から受けていない。だがなにげに植物好きでヤドリギ使いの技もおさめていた真奈美には植物の正体はわかった。名前は知らないがどうやらその花は有毒らしい。どうやら植物の壁は迷路のようになっており、壁を破壊して進むなどという行為を妨害するための毒であろう。あるいは時間切れによりこちらを毒でKOしようという意図もあったかもしれない。
「たく、曲がりなりにもプロレスラーの弟子が、ずいぶんセコい真似してくれるねえ」
 文句を言いつつ真奈美の表情は余裕めいたものであった。
「でも今回に限っては相手が悪かったな」
 ヤドリギ使いの力は植物の助けを借りる事。さっそく真奈美はヤドリギ使いが使う如雨露を携え、壁に咲く毒の花に語り掛けた。
「この迷路の出口知らない?」
 返事はない……いや、あった。その声を我々読者が聞き取ることがはできない。だが、真奈美は確かに植物の言葉を聞き取った。|緑の手の怪物《GREEN HAND MONSTER》の名は伊達ではないのだ。
「うん、あっち?ありがとう、お礼にお水あげるわ」
 如雨露で水をやると、花の表面の水滴が日の光を浴びてキラキラ光る。まるで喜んでいるようだと真奈美には思えた。
「いやいや礼を言うのはこっちだからさ、じゃ、もう行くわ」
 かくして花に見送られるように走り出し、迷うことなく真由美はゴールに到達した……が。
『出られたと思ったか?』
 ゴールを抜けた先には毒の花の壁で囲まれた空間。その中心でチャンピオンと弟子が待っていた。
『おで、おめえ、にがさねえど』
 なるほど、どうやらここを出るためにはあのふたりをどうにかしないといけないらしい。すでに死にかけているはずのチャンピオンはともかくとして、弟子はなんとかしないといけないだろう。
「上等だよ、探しに行く手間が省けたってもんだぜ」
 真奈美は指をポキポキ鳴らすと、先刻まで植物に向けていた笑顔とはうってかわって獰猛な笑みを弟子に向けた。それを受けて弟子が一歩前に進み出る。
『ひきょうなまねはさせないんだど!』
 たちまち戦場の空気が変わった。これは事前に説明を受けていた方の技だ。純粋な筋力以外がまったく意味をなさなくなる空間とやらであろう。さて純粋な筋力とやらがどこまでの範疇なのか。例えば筋力増強の術などはかなり怪しいだろうが、プロレスラーならパワーと同じくらいにレスリング技術を要求されるわけで、そういう技術的なものも使えなくなるのだろうか。微妙なところであるが、使えないと考えた方が妥当は妥当かもしれない。真奈美とてアスリートアースのプロレスラーとしてパワーに自信はあったが、それでも弟子の巨躯と比べるとどうだろう。
「なら、なっちまえばいいじゃねえか、それだけのパワーのある存在によ」
『何?』
「アタシの知ってる『最強の存在』なんてこの方しかいない!」
 真奈美の姿が変わっていく。チャンピオンをも上回る巨体。4本の腕。そしてあまりに禍々しい覆面。
『な、なんだこりゃあ!!』
 驚愕したチャンピオンだが、その正体にすぐに気が付いた。それはアスリートアースのプロレスラーにとっては敵ではあったが間違いなく最強の存在。実際に見た事こそないが、チャンピオンが是非会いたいと強く追い求めた存在。すなわち。
『プロレス・フォーミュラのデスリング総統とやらだな!』
「来いよチャンピオン、弟子ごと潰してやんよ!」
 真奈美はチャンピオンを挑発すると【世界樹の構え】と呼ばれる構えをとり、独特の呼吸法で心身を整えつつ敵を迎え撃つ。
『くっ、こんな時に万全でないのが惜しまれるが、プロレス・フォーミュラの登場とあっては!』
『まつどししょう、ここはまずでしのおでがやるど』
 それらしい事を言いつつ、弟子はチャンピオンを下げると前に出た。
『おめえごとき、おででじゅうぶんだで』
 純粋な筋力による暴力が真奈美に襲い掛かる。真奈美はそれを真正面から受け止めた。身体能力を上昇させる構えは純粋な筋力と認められず排除されかねないものであったが、最強の存在であるがゆえに、デスリング総統の巨体をある程度強化させる効果があったようだ。くわえて真奈美にはプロレスラーとして激痛に耐えてきた実績もあった。
「今度はこっちの番だな!」
『ていこうはやめるど!おでのいうこときくど!』
 真奈美は暴力的な打撃で逆襲に転じた。巨体同士のぶつかり合いはギャラリーがいない事が惜しまれるド迫力ファイトであったが、それでも尊敬する最強の存在になった身として負けるわけにはいかない。いや、負けるはずがない。やがて真奈美は弟子を殴り倒すと、その両足を抱えると回転を始めた。かのデスリング総統も得意としたジャイアントスイングだ。
『な、なにするどやめるどッッッ』
「骸の海まで……とはいかねぇけど、扉の向こうまでぶっ飛べ!」
 遠心力が最大になった所で手を放し、弟子の巨体が飛んだ先にはチャンピオン。師弟ともどもなぎ倒し、これは最強の存在に恥じぬ戦いができたと真奈美も満足するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコリネ・ユーリカ
現実改変能力で、私が考える最強の存在に変身!
即ち、
お店が大繁盛して大富豪!
お花の農場も拡大して大地主!
潤沢な財力によって(エステとかで)美人度UP!
なんやかんやで恋人もできました! な、「リア充☆将軍ニコリネ」が相手よ!

チャンピオンも私達の料理を食べたんだもの
ライバルとして彼をリスペクトし、彼に倣い、
差し出されるものは何でも食べるわ!かかってこーい!
謎肉なんて3分ラーメンに入ってるアレと思えば、全然……

ん゛ん゛ん゛ん゛!
えぅぅぅうう!(涙目)

私には保育園の給食でピーマンをゴックンできた栄光がある
過去と現在のリア充パワーで肉を飲み込み
何とか維持した行動速度を活かして関節技を仕掛けるわ
おりゃー!!



●最強だから我慢できたけど
 今回は現実改変能力を使って最強の存在に変身できるという。ということでニコリネ・ユーリカも早速変身する事にした。その姿は……。
「そう!これこそ私の理想の姿!」
 それはチャンピオン・スマッシャーと戦う時に見せた『将軍ニコリネ』と似たような感じだった……が、なんというか。全身からかもし出す雰囲気が明らかに違う。なんというか、精神的な余裕めいたものが感じられるのだ。
『な、なんだ!明らかに今までとは違うぞ!』
『あん?なんかわからんけど、きれいだなあ』
 幾度も戦っているチャンピオンはおろか、それほど賢くない弟子から見てもその雰囲気は明らかにすごいものだったらしい。
「当たり前よ!今の私は最強だもの!」
 そもニコリネは称号が示す通りの花屋だ。中古の移動販売車で生花を取り扱っているが、販路も収入も乏しく、かなりいっぱいいっぱいの状況らしい。四輪車に乗っているのに自転車操業とか冗談にもなっていない。それでも農場を買うぐらいの蓄えはできたようで、まだまだ発展途上ではあるが夢に向かって突き進んでいる最中……すなわち最強の姿とは、まさにその夢かなった状況ということだ。
「今の私はお店が大繁盛して大富豪!お花の農場も拡大して大地主!潤沢な財力によって美人度UP!なんやかんやで恋人もできました!」
『むう!それはたしかに最強かもしれん!』
 夢がかなった状況。チャンピオンとて彼なりの夢があり、それを成し遂げた時には間違いなく最強を名乗るだろう。まあチャンピオンの夢は自分がフォーミュラになる事だから比喩的な意味じゃない最強なので、ニコリネの最強とはまた方向性がまるで違う訳ではあるが、それでもまあ今のニコリネが最強であるのはよーくわかった。
「そんなわけで!この『リア充☆将軍ニコリネ』が相手よ!」
『りあじゅう……ってのはよくわかんねえが、おめえ、きれいだなあ』
 美しい物に目のない弟子は臆する事なくニコリネに歩み寄ると、何やら差し出した。
『おいしいんだどこれ、おめえもほしいどかぁ?』
 一応弟子なりの好意の現われのようだが、差し出されたそれは……肉、なんだろう。だが明らかに怪しい肉だ。種類が何なのかもわからないし、第一非常に汚い。べたべたしたそれはもしかしたら腐っているのかもしれない。筆者も正直このあたり書きながら吐き気がしている。
「……え?何、これは?」
 さすがの最強なニコリネもこれにはちょっと絶句した。だがグリモア猟兵の説明を思い出した。これを拒否したら行動速度が激減してしまうという。いかに最強の姿とはいえ、このペナルティを受けてしまっては危ういかもしれない。それに、それにだ。
「……そうね、チャンピオンも私達の料理を食べたんだもの!」
 ニコリネの視線の先にはチャンピオン・スマッシャー。傲然と立ってはいるが、つい先刻まで猟兵たちの料理をたらふく食ったせいで本来なら退場級のダメージを負っているのは間違いない。ならばチャンピオンと幾度となく戦ってきたニコリネとしてはここで逃げるわけにはいかない。チャンピオンがうまそうな物を好き好んで食べて自爆したのと、自分が明らかにデンジャラスなものを今から食べるのとでは多少状況に違いがあるような気もしないでもないが、まあささいな事だ。
「差し出されるものは何でも食べるわ!かかってこーい!」
『おー。うまいど、くえ!』
 そして差し出された謎肉をニコリネは手に取ると、気合を込めた。
「謎肉なんて3分ラーメンに入ってるアレと思えば、全然……」
 あとは考えない。そして一気に……食べた。
「ん゛ん゛ん゛ん゛!」
 たちまちニコリネの顔が歪み、その目に涙がたまる。
「えぅぅぅうう!」
 そしてえづく。わかる、わかるぞ。それでもなお。
「……わ、私には保育園の給食でピーマンをゴックンできた栄光がある!!」
 すごい。筆者はトマトをゴックンできるようになった時には既に成人になっていた。この時の栄光、そして現在のリア充パワーに支えられ、どうにかニコリネはヤヴァすぎる謎肉をゴックンした。なんか食べはしたけど、あまり楽しんではない気もするが、そこは最強の存在なのでOKが出たようだ。
『おー、いいくいっぷりだべ、おかわりもあるで』
「もう結構!!おりゃー!!」
 行動速度は……落ちていない。ニコリネは気合を入れると一気に弟子の巨体に組み付き、複雑な関節技をしかけた。必殺の【サブミッション・スペシャル】だ。
『な、なんだこれは!はなれるど!』
「無駄よ!ただのパワーだけでほどけるものじゃないわ!」
 それでも弟子の超パワーなら関節技を仕掛けるニコリネを無理やり持ち上げて叩きつけるという事もできたかもしれないが、だが今のニコリネは最強の存在なのだ。弟子がどんなに動いても暴れても、技が解ける事は決してない。そして。
『ぐがあッッッ』
 クリティカル!弟子が崩れ落ちるのを見てニコリネは技を解いた。完全な勝利だ。
「やったー!」
『むう!パワーだけでなくてグラウンドもできなければいかんか!』
 教える時間もなかったので仕方なくはあったのだが、ヤヴァいものを食べた甲斐があったと喜ぶニコリネとは対照的に悔しがるチャンピオンであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高崎・カント
もっきゅ! 食べて運動して元気いっぱいなのです(プロテインを飲みながら)
そしてカントは理想の筋肉を手に入れたのです!

この剣呑な山脈のように聳える上腕二頭筋!(モリモリ!)
もふもふに覆われていてもわかる大胸筋!(バリバリ!)
そして丸太のような尻尾筋!(ムキムキ!)
めっちゃマッチョモーラットなのです!(バイーン!)

これはゆーいっちゃんも惚れ直すこと間違いなしなのです!

もきゅ! 敵はこの美しい筋肉を狙ってくるのです
計画通りなのです! がっぷり組んで力比べをするのです
もきゅきゅ、力は互角
でもカントの筋肉は腕だけじゃないのです!
組み合ってる相手の腕を尻尾で叩くのです
怯んだところを投げ飛ばすのですー!!



●筋肉モリモリマッチョマン
 高崎・カントはいまや絶好調であった。なにせ。
「もっきゅ! 食べて運動して元気いっぱいなのです!」
 本人も言っている通り。まずはおいしい料理をおなかいっぱい食べた。それもただの料理ではない。アスリートアースのスポーツドクターが考案した、アスリート向けに栄養バランスが十分に考慮された、いわば完全食と言える親子丼。しかも食べる事も仕事であるアスリートのために、食べ飽きないように味も非常に考慮されている。それを食べた後はチャンピオン・スマッシャー相手に十分に体を動かした。その過程でチャンピオンはボロ雑巾のようになってしまったが、まあささいな事だ。おかげで食べた分のカロリーも糖分も消費でき、眠くなる事もないだろう。
「これもおいしいのです!」
 そして運動後には用意されたプロテイン。2人分あるようだが、ひとりはちょっと飲めそうにないのでカントが両方おいしくいただいた。運動した後の体にはよーくプロテインが染みわたり、筋肉の肥大を助けてくれるだろう。そして。
「カントは理想の筋肉を手に入れたのです!」
『え、ちょっと待て』
 この言葉には死にかけながらもチャンピオンのツッコミ。
『たしかにかなり食っていたし運動もしたようだが、たった1回で理想のボディが手に入るとかお前運動なめとんのか』
「もきゅー!嘘だと思ったら見てみるのです!」
 そしてカントはポーズをとる。まずは水平にした両腕の肘を上方に曲げたダブルバイセップス。ガッツポーズと言う方が通りが良いかもしれない。
「この剣呑な山脈のように聳える上腕二頭筋!」(モリモリ!)
 次に前傾姿勢になって両腕をアーチのように曲げて体の前にもってくるポーズ。モストマスキュラーという呼び方で正しいのだろうか。
「もふもふに覆われていてもわかる大胸筋!」(バリバリ!)
 さらに背中を向けて再びガッツポーズ。バックダブルバイセップスだが、見せたいのは背筋ではないようで。
「そして丸太のような尻尾筋!」(ムキムキ!)
 尻尾筋とはじつにモーラットだ。ちなみに尻尾のない人間における骨盤底筋群に相当するらしい。そして最後に。
「めっちゃマッチョモーラットなのです!」(バイーン!)
『むむう!』
 チャンピオンが唸り声をあげた。どうもマッチョなチャンピオンから見てもその筋肉は見事なものであったらしい。常人には見えている腕の部分はともかく、もふもふで覆われている大胸筋についてはよくわからないかもしれない。そういえばシルバーレインにはモーラットの顔で人間のマッチョボディってなオブリビオンもいるらしいね。そんな感じだったらちょっと嫌だなあと思いつつ、まあたぶん違うのだろう、たぶん。
「これはゆーいっちゃんも惚れ直すこと間違いなしなのです!」
 むろんたった1回の食事、たった1回のトレーニングでこんなになるわけもなく、これはあくまで現実改変能力の産物であった。なので、たぶんこの闘いが終わったら元に戻ってしまうだろうから、今のカントの姿をゆーいっちゃんに見せられないのは残念な事であった。
『おめえ、きれいだなあ』
 そんなカントの姿を見て弟子が前に出た。それを見てカントもほくそ笑む。
「もきゅ!計画通りなのです!敵はこの美しい筋肉を狙ってくると思っていたのです!」
 果たして弟子はカントの言うように筋肉を見て狙ってきたのか。もしかしたらモーラット特有ののもふもふの方だったかもしれない。それでも弟子がやる気になったのは間違いないし、それはカントとしても望むところで、最初から迎え撃つ気は満々であった。
「力比べをするのです!」
『それほしいなあ、おうちもってかえるどぉ』
 体格には圧倒的な差。それでもカントが宙に浮く事でがっぷり四つに組んだ。もしかしたら弟子が両手でカントを握りつぶそうとしているのをカントが必死に耐えている絵に見えるかもしれない。が。
『ていこうはむだだど、おでのいうこときくど』
「もきゅきゅ!力は互角なのです!」
 カントは互角と言っているし、弟子も割と余裕ない感じなので互角なのだろう。かたや現実改変能力で得たカントの筋肉から生み出されるパワー、かたやチャンピオンの現実改変能力で生み出された弟子の巨体から来るパワー。互角なのは理屈の上ではわかる。が、わかりたくない者もいた。
『何をしておる弟子よ!スーパーヘビー級がクルーザー級に筋力負けなど許さんぞ!』
『わ、わかったどししょう』
 チャンピオンの叱咤を受けて弟子はさらに力を籠める。対するカントは。
「もっきゅ、本気出してきたのです!でもカントにはこれがあるのです!」
 ばっしん、と弟子の腕に大きな音が鳴り響いた。鍛えられた尻尾筋による尻尾で弟子の腕をしたたかに打ち据えたのだ。
『ぐっ!ずるいど!おでもそれほしいど!』
「これはカントのだからあげられないのです!」
 尻尾による打撃で弟子のクラッチがゆるむ。そこを見逃さず、カントは一気に弟子に組み付くと、一気に引っこ抜いた。
「もっきゅんもっきゅん!ちからこそパワーなのです!!」
『な、なんだどこれは!?やめるどッッッ』
『ぬう!我が弟子の巨体をその体で持ち上げるとは!!』
 チャンピオンが驚愕する前でカントは弟子を何度も何度も振り回しては地面に叩きつけたのであった。返す返すも今のカントのマッチョぶりをゆーいっちゃんに見てもらえないのは大変残念であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

遠藤・修司
『今、最強の存在って言った?(GGOの中二病な子供の人格)』
「まあ言ったけど……どうしたの“僕”?」
『ねえ、身体貸して。やりたいことあるんだ』
「いいけど……」【人格交代】

僕のGGOのゲームキャラ、『†天雷のコウ†』に変身するよ
神も悪魔も滅ぼす最強の魔剣『黒天雷神剣』に選ばれたクールな魔剣士なんだよ
レベル上げ頑張ったし、最強だし!

わ! ホントに変身できた!
“|僕《オジサン》”の姿だと、黒天雷神剣使ってもカッコよくないし
やっぱりこの姿で戦いたいよね

必殺技で瞬殺!
黄昏降りし刻、冥き星の光は満ち……(長ーい詠唱)
喰らえ! |神魔滅殺星光瞬覇斬《スターライトゴッドブレイカー》!!
やったね! 僕って最強!



●グラットンすごいですね
 スポーツの段階は終わったとしてアスリートアース出身者の人格は一度奥に引っ込み、遠藤・修司本来の人格が戻っていた。戻ったはいいのだが。
「……最強の存在、か」
 思いつかない。眼前の、チャンピオン・スマッシャーの弟子に対抗するのに最強の存在とやらにならなければいけないのは重々承知している。ただそれがどのようなものなのか、修司にはまったくイメージがわいてこないのだ。
「そも最強っていうのは何をもってそう呼ぶのか、そういう話だよね」
 根本的な問題。例えば目の前の弟子は筋力だけ見れば間違いなくものすごいだろう。あるいはそれを根拠に最強を名乗っても良いかもしれない。だがそれを上回る筋力の持ち主が現れれば最強ではなくなる。ならば仮に無限大の筋力を持つ者が存在するならばその者は最強と呼べるのか?おそらく答えは否。では筋力を敗れる技を持っていれば最強なのか……考えれば考えるほどに次々と分岐点が生まれ、ハッキリ言ってまったくきりがない。
「どうしたものかな……うーん、最強の存在か」
 改めて悩む修司。その時。
『ねえねえ、今、最強の存在って言った?』
「まあ言ったけど……」
 修司に呼びかけてきたのは先刻のとはまた別の人格。ゴッドゲームオンライン在住の16歳の少年、コウタ・トオマであった。
「どうしたの“僕”?」
『ねえ、身体貸して。やりたいことあるんだ』
 別人格が自ら登場を希望する事は珍しい事ではない。ましてや修司に良いアイディアが思い浮かばなない現状。おそらくコウタにはそれがあるのだろう。ならば任せてみるのも一興かと考えた修司。
「いいけど……」
「やったー!」
 その声の主は修司ではなく、コウタであった。人格交代したのだ。そして早速。
「最強の存在といえば、やっぱりアレしかないよね!」
 そしてチャンピオンと弟子の前に現れた最強の姿、それは。
「わ!ホントに変身できた!」
 ゴッドゲームオンライン世界の|統制機構《コントロール》の住人の多くは同名のオンラインゲームのキャラクターを持っている。そしてコウタが変身したものこそ。
『むう!なんだそれは!』
「僕は『†天雷のコウ†』!魔剣士だ!」
『魔剣士だと!?』
「そう!神も悪魔も滅ぼす最強の魔剣『黒天雷神剣』に選ばれたクールな魔剣士なんだよ!」
 魔剣士。現時点でゴッドゲームオンラインのジョブに魔剣士は存在しない。いや、聖剣士の説明にて他のDPS(火力要員)職の存在がほのめかされているから、そういうジョブのひとつなのかもしれない。ならばだ。
「レベル上げ頑張ったし、最強だし!」
 聖剣士以外の火力職はひとまとめに産廃と呼ばれながら、そんなジョブをここまで胸を張れるほどにやりこんだコウタにとっては間違いなく僕の考えた最強の存在であろう。しかも、おそらく黒天雷神剣というのは苦労の末手に入れたレア武器なのであろう……あるいはコウタの想像の中でのみ存在する武器である可能性もなくはないが。いずれにせよ最強なのは間違いあるまい!
「“|僕《オジサン》”の姿だと、黒天雷神剣使ってもカッコよくないし、やっぱりこの姿で戦いたいよね」
『……はあ……まあいいですけど』
 オジサンと呼ばれて修司はため息をついた。そんなのに気付く様子もなくコウタ、いやコウは
「†天雷のコウ†!ちゃんと『天雷の』をつけて!」
 失礼。†天雷のコウ†は黒天雷神剣を構えた。
「さあ、必殺技で瞬殺しちゃうよ!」
『そのけんきれいだなあ、おでがもらってやるど』
 弟子は†天雷のコウ†の前に進み出ると、例の腐った謎肉を差し出した。
『かわりにこれやるど、うまいど、くえ』
「何それ?鮫トレってレベルじゃないぞ!」
 †天雷のコウ†は謎肉を払い落とした。当然の対応ではあるが今回に限っては悪手だった。これを楽しめないと速度が極限まで減少してしまう。どうなる†天雷のコウ†!
「黄昏降りし刻、冥き星の光は満ち……」
 そんな事はお構いなしとばかりに†天雷のコウ†は長々と詠唱。敵の真ん前で、である。だがなぜか攻撃は来ない。
『何をしておる弟子よ!とっとと攻撃せんか!』
『だ、だって、どういうわけか、おかしなこといってるあいだはこうげきしちゃいけないきがしてきたど』
 どうやら知性が足りない分『お約束』に対する抵抗力が低かったようだ。ともあれ、これを見ればわかる通り、†天雷のコウ†は実にノリノリだ。そりゃそうだ、自分の大好きなゲームキャラになれたんだもの。この状況を全力で楽しんでいる。それが謎肉を楽しめなかった事の代償行為になっていたのだ。最強の存在はそれでも許されたらしい。
『そ、そんな卑怯なッッッ』
 チャンピオンの抗議も虚しく、そうこうしているうちに詠唱は完成してしまった。そして炸裂するは。
「喰らえ!|神魔滅殺星光瞬覇斬《スターライトゴッドブレイカー》!!」
『ぐ、ぐわあああああああ』
 天より降り注ぎ全てを滅ぼす冥き星の光によって弟子は見事なぎ倒されたのであった。
「やったぁ! 僕って最強……じゃなくて、この†天雷のコウ†にかかればどうという事はない!」
『……若いなあ』
 無邪気に喜ぶ†天雷のコウ†の姿に、修司は思わずトヲイメをするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルデ・ローゼ
あらまぁ、『さいきょうのそんざい』とはね。私に対してそれを問うなど、まさに愚の骨頂というもの。この世全ての苦痛と、夜の恐怖と静寂を司る『苦痛と夜の女神』様。その一柱以外ありえないということよ。

女神様を降ろしても姿形は変わらず、しかし口元に笑みを浮かべ薄く開いた赤い瞳、夜の冷気のような静けさを纏う様は深淵を感じさせる。

苦痛を与えるのも享受するのも自由自在、それが女神様のお力よ。あなたがどんな力を持っていようが全て受け止めてあげるから、いくらでもやってご覧なさい。
彼の攻撃を受け身すら取らずに受け続ける。攻め疲れて動きが止まったところでもう終わりなの?と尋ねて、ストームブレイカーで落とすわ。



●相手の技は全て受けきるッ
 ヴィルデ・ローゼの前に立ちはだかるはいつもの通りのチャンピオンではない。チャンピオンは前章にてほぼ半死半生となっており、現在のヴィルデの相手は。
『おめえ、きれいだなあ』
 体格こそチャンピオンと変わらないものの、その雰囲気はおおいに異なるチャンピオンの弟子。その弟子はヴィルデを見るなり舌なめずりなんかしながら欲望に満ちた視線を向けた。
『おうちもってかえるどお、おとなしくするだど』
「あらまぁ」
 あるいはこの弟子ならこれまでヴィルデがチャンピオンに与えられたような苦痛を与えてくれるかもしれない。ただでさえ巨体から来る怪力がチャンピオンの行使した現実改変能力とやらで超絶強化されている上に、おそらく欲望のまま振るわれるその力は加減などまるで知らないものであろう。とはいえ、欲望のまま襲い掛かる弟子に大人しくお持ち帰りされるわけにもいかない。ヴィルデはグリモア猟兵から言われた事を思い出した。
「『さいきょうのそんざい』とはね」
 ヴィルデは『苦痛と夜の女神』の巫女であるそうな。そういえば先刻、とある宗教団体に所属している猟兵が戦っていたような。立場的にはヴィルデと似ているその猟兵が選んだ最強の姿は、その宗教にかつて存在していた最強の能力者であったわけだが、ではヴィルデが選んだのは?
「私に対してそれを問うなど、まさに愚の骨頂というもの」
 現実改変能力が発動し、そこに現れたヴィルデの姿は確かに『ぼくのかんがえたさいきょうのそんざい』になったはず。だが見た目は変わったように見えない。やはり先刻の宗教者のように、最強の存在ではなく最強の戦術を使える存在になったということか?あるいはそんな感じの事を、何も考える事がない弟子に代わってチャンピオンは考えたかもしれない。結論から言えばそれは半分正しく半分間違っていた。
「最強の存在なんて、この世全ての苦痛と、夜の恐怖と静寂を司る『苦痛と夜の女神』様。その一柱以外ありえないということよ」
『女神だとぉ!?』
 さすがにその言葉にはチャンピオンは驚愕した。どこかの世界には文字通りの神が種族として存在するという。ひょっとしてエルフとばかり思っていたヴィルデはその神とやらだったのか?それも何か違うような気がする。とりあえず言えるのは、神を降ろしたヴィルデは前述した通り見た目は全く変わっておらず、きわどい衣装を着たエルフ女性そのものであった。ただ、その表情や雰囲気はたしかに違っていたようで。口元に笑みを浮かべ薄く開いた赤い瞳、夜の冷気のような静けさを纏う様が現していたものは、吸い込まれるような深い闇、深淵。まさしくそれは夜の静寂の具現化であった。
「苦痛を与えるのも享受するのも自由自在、それが女神様のお力よ」
 ヴィルデは静かに口を開いた。その言葉からも夜の闇が感じられた。
「あなたがどんな力を持っていようが全て受け止めてあげるから、いくらでもやってご覧なさい」
『むむう!だがプロレスラーの神はただひとりのみ!弟子よ、それを見せつけてやれ!』
 ヴィルデの変化に気付いてしまったチャンピオンはそれでも自らを叱咤するように気合を入れた。一方、ヴィルデの変化にも気付かなければ、チャンピオンの言う|プロレスの神《Karl Gotch》もわからない弟子は。
『なんだかわかんねえが、おとなしくするだど』
 真っ向からヴィルデに突っ込んでいくと巨大な両手でつかみかかった。ヴィルデは微動だにせずそれを受け止める。欲望のまま弟子はきれいなものを愛でようとして破壊してしまう……はずなのに、無抵抗のヴィルデを壊すどころか、傷ひとつすらつけることができない。
『むう!確かにいつもと違うようだ!』
『なんだぁ?へんなやつだな、きにいらねえ!』
 いつもなら猛攻に対してに喘ぎ声あげまくるはずのヴィルデが微動だにしない。幾度も戦っているチャンピオンはさすがに異変に気付き、一方の弟子も状況が理解できないなりに眼前の相手が尋常ではない事ぐらいは把握できたようだ。ただそれでも別に何ら策を講じる事もなくひたすら力任せの攻撃に専念したわけだから、それでは最強の存在を打ち崩す事はできない。やがて無限のスタミナを誇った弟子にも、その猛攻が止まる時が来た。
「あら?もう終わりなの?」
『おめえ、つまんねえ、おで、もうあきたど』
「あらぁ、そんなこと言わないで頂戴、これからが本番なのにねえ」
 ヴィルデは弟子に組み付くと、なんと体格差のある弟子の巨体をリバースフルネルソンにとらえ、そのまま持ち上げたのだ。必死で抵抗する弟子だが、どうしても振りほどけない。ヴィルデが得意とする、苦痛を受ければ受ける程強化される【苦痛回路】の効果が女神級に強化されればこうもなるというものである。
『な、なにするどやめるど!』
「とびきりの苦痛を味合わせてあげる」
 そしてヴィルデは弟子の巨体を回転させると自らの膝に落とした。必殺のストームブレイカーが炸裂し、弟子はこの苦痛に耐えられず地を這い悶絶したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

熊ヶ谷・咲幸
「あたしの考える最強の存在……やっぱり神格者さん達でしょうか。どの人もあたしの憧れる理想のアイドルに近いというか」
誰をイメージしようか迷っていると、スマッシャーあたりからプロレス・フォーミュラの単語が聞こえて
「そういえば、デスリング総統は今頃何をしているんでしょうか?……あれ?」
ふとした疑問から嫌な予感がする光に包まれ
「ちょっと、待ってください!やり直し!やり直しを要求します!」
コンパクトの鏡で確認すると、そこには女子レスラーっぽいレオタードに総統っぽいマスク姿
「うわーん!最悪じゃないですかー!」
とは言いつつも強化された【怪力】で迷路をぶち破りつつ敵さんに迫る
「強いですけど、強いんですけども!」
納得いかないながらも、パワーとプロレス技、3、4本目の腕のように動いてくれるプリティリボンで相手の巨体に渡り合う
「今ならあの技が使えるかもしれないです」
この前の戦争で最後のヴァラケウス戦で使った技を仕掛ける。相手の両足を掴んで飛び上がり、パワーボム!
「|骸の海《おうち》に帰って反省してください!」



●フォーミュラふたたび
「あたしの考える最強の存在……」
 熊ヶ谷・咲幸はお騒がせ☆アイドルである。お騒がせとはいえアイドルなので、やはり最強の存在といえば思い浮かべるのは自分と同じアイドル、それももっと高みにそびえるようなアイドルであろう。とすると、つい最近ちょうどその手本となるべき存在を目の当たりにしたばかりではないか。
「やっぱり神格者さん達でしょうか。どの人もあたしの憧れる理想のアイドルに近いというか」
 アイドルとして目の前のものすべてを愛そうとしたレッドライオン。アイドルとして目の前のものすべてと友達になろうとしたイエロータイガー。そしてその記憶力をもってもっとも完璧なアイドルとなったクオリア・シンフォナー。
「どの人もあたしの憧れる理想のアイドルに近いというか」
 そのいずれとも咲幸は先の戦争で相対し、どうにか打ち破りはしたが、それでもなお|神格者《アイドル》としてはるか高みにある存在である事に変わりはない。
「さて、あの人たちの中の誰にしましょうか」
 その中の誰かに姿を変え、眼前のチャンピオンの弟子と戦うのだ。変身先は慎重に選ばねばなるまい。やはり最も理想に近いクオリア・シンフォナーパワーが良いだろうか。いやいや純粋なパワーだけならレッドライオンやイエロータイガーもかなりのものだろうし、もしかしたらそっちの方が咲幸の戦い方とも合っているかもしれない。でもやはり総合力で考えるべきかもしれないし……なかなか結論は出ない。
『どうした?決まらんのか!』
 既に死に体なチャンピオン・スマッシャーだが、それでも気丈にも咲幸を挑発にかかった。
『どうせならさっきのプロレス・フォーミュラみたいな巨体にでもなってみたらどうだ!まあただ図体がでかいだけでは我が弟子にも勝てやしないだろうがな!』
『お、おで、あのでかぶつよりは、いまのままのがきれいだなとおもうど』
「プロレス・フォーミュラ……」
 神格者の誰かを思い浮かべていたはずが、チャンピオンの言葉に、咲幸の心に雑念が入ってしまったようだ。
「そういえば、デスリング総統は今頃何をしているんでしょうか?アスリートアースには戻ったはずですが」
 総統と同じ新生フィールド・オブ・ナインの中でも一部は敵として現れるらしいけど、総統を含めた残りは現時点では見当たらないようで。とはいえプロレスによる世界征服を企んでいるらしいデスリング総統がこのまま大人しくしているとはとても思えず、そのうちまた出てきて活動を始めるのかもしれない、いや始めてほしいなとは思ってはいるのだが。
「あたしも総統に稽古つけてもらった事があるから、またがんばって欲しいですね!いやダークレスラーだから本当はあんまりがんばっちゃいけないのかもしれませんが……あれ?」
 少なくとも言えるのは、これは今考えるべき事ではなかった。咲幸の体が光り出したのだ。これはもしや現実改変能力とやらが発動してしまったのか。
「ちょっと、待ってください!やり直し!やり直しを要求します!」
 光はおさまった。もしかして抗議の声が届いて変身は中断されたのか?そんな事を期待しつつ、コンパクトの鏡で姿を確認すると。
「うわーん!最悪じゃないですかー!」
 その姿はまさに女子プロレスラー。カラフルなレオタードはアイドルっぽい感じなのでそれはまだ許せる。ただ問題は顔、というより顔を覆う覆面で、それはまさにデスリング総統がかぶっていたものと同じような感じであった。禍々しく力強く悪の親玉としてはふさわしいかもしれないが、女子プロレスラーがかぶるべきものではちょっと問題があると言わざるをえまい。ましてやアイドルならねえ。
『むう!なかなか気合の入った格好ではないか!だがやはり筋肉が足りんな!』
『なんだおめえ、きれいじゃねえな』
 それに対してチャンピオンとその弟子は対照的な反応を返した。
「むー!たしかにあんまりかわいくないかもしれませんがストレートにきれいじゃないはさすがに傷つきます!!」
『きれいじゃねえもんはちかよんな!』
「わ!なんですかこれは!」
 試合権利のある弟子の方は変身した咲幸が気に入らなかったようで、たちまち咲幸の周囲を毒の花の迷宮が覆った。脱出が遅くなればいずれ毒にやられるだろう。
「なりたくてこんなになったわけじゃないですのにー!!」
 怒りに任せて咲幸は迷路の壁を思い切り殴った。堅牢で破壊困難なはずの壁は超絶強化された咲幸の拳であっさり破壊される。毒花の猛毒すらも気にする様子もなく、咲幸は最短距離で迷宮を突破した。
「強いですけど!強いんですけども!」
『なんだぁ?もうでてきただか?おとなしくするだど!』
 あっさりと迷宮を突破した咲幸を見て、弟子は巨体を震わせて襲い掛かって来た。既に戦場は弟子の力で純粋な筋力以外のみが物を言う世界と化している。咲幸は天性の力持ちではあったが、さすがに弟子の巨体には勝てない、と思いきや。
「あーもう、もっとアイドルらしく戦いたかったのにぃ!!」
 今の咲幸にはデスリング総統の力を宿している。さらに咲幸の2本のリボンが、さながらデスリング総統の4本腕のように自由に動いてくれる。疑似4本腕によって咲幸は弟子のパワーと互角に渡り合っていた。
『何をしておるか!スーパーヘビー級がクルーザー級にパワーで後れを取るなど許さんぞ!』
『で、でも、ひらひらがうごくのはやりにくいし、きれいじゃないど』
「また言ったー!やりたくてやってんじゃないですよぅ!!」
 怒りにブーストされた咲幸のパワーはついに弟子を完全に上回った。咲幸は弟子を無理やり前傾姿勢にすると、前方から覆いかぶさる。
「今ならあの技が使えるかもしれないです!」
 両腕とリボンで思い切り持ち上げた。その眼前にドラゴン界が現れる。それは先の戦争であのヴァラケウス相手に決まった大技だ。あの時はドラゴンウォリアーの力で、そして今は現実改変能力で使用可能になった、相手を強制的に骸の海に叩き込む技。チアフル☆リーインカーネーション。
「|骸の海《おうち》に帰って反省してくださーい!」
『な、なんだどばらッッッ』
 強烈なパワーボムでドラゴン界に沈められ、弟子はそのまま戻ってくる事がなかった。そして。
『ば、馬鹿な、わ、私の野望がッごふッッッ』
 限界をとうに超えており、精神力だけで立っていたチャンピオンも弟子の敗北でついに緊張の糸が切れたのだろう。ばったりと倒れ、その姿が掻き消えていった。

(……だ、だが、私はまだあきらめたわけではないぞ、いつか必ず……)

「……戻ってきてしまうのでしょうか?まあ、その時はまたその時!」
 アイドルは折れないのであった。

 かくしてチャンピオン・スマッシャーの野望はまたも打ち砕かれた。
 果たして次があるのかは定かではないが、おそらくその時も猟兵たちがどうにかしてくれるだろう。
 なのでその時はまたよろしくお願いいたします。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年10月26日


挿絵イラスト