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傷ついたシャチ達を守れ

作者：寅杜柳

●病院の形もそれぞれ
　グリモアベース。
「シャングリラ☆クライシスお疲れ様。早速だけど、また獣人戦線で幻朧帝国の破壊工作の予知が見えたから力を貸してほしい」
　今にも漁に出そうな装いのシャチのキマイラ、ヴィクトル・サリヴァン（星見の術士・f06661）は集まった猟兵達にそう呼びかける。

「今回狙われてるのはフランス南東部、マルセイユの近くにある地中海に面した海辺の町にある病院だ。町の住人は大半がシャチ獣人で、最近超大国の攻撃を受けて怪我をしたシャチの兵士達が入院しているけど、そこを狙って逢魔弾道弾を仕掛けにエージェントがやってくるみたいだ」
　そうヴィクトルは言って、予知の詳細について説明を移す。

「怪我人のシャチの兵士達はすぐに死ぬとかそんな重傷の患者はいないみたい。ただ珍しい事に自然階梯や妖精階梯……要するに普通の6メートルとかあるシャチ獣人も怪我獣人としているみたいで、海の一部を仕切って作られた巨大な薬用プールとかで傷を癒してるんだ。怪我人が多くて一部は野戦病院になってて、かつ海棲獣人の病院とか普通の病院とちょっと構造とか勝手が違うかもだけど、壊れた病院の壁の修復とか医療活動、物資調達とかの事務作業とか色々手伝えることあるからエージェントが来るまでこの病院のお手伝いをお願いできたらと思う」
　上手くいけば後のエージェントとの戦いでもシャチの兵士が協力してくれるかも、とヴィクトルは説明して次に破壊工作を仕掛けてくるオブリビオンの説明へと移る。

「今回やってくる幻朧帝国のエージェントは『空軍大尉・戸波鈴仙』、ライフルを得物とするカラス獣人だね。獣呪術や魔眼を利用した様々な弾丸で狙撃してきたりするみたいで空を飛び回りながら銃弾の雨を降らせるのが基本戦術。上手く建物の屋根とかを障壁に利用したりして戦えるといいかもしれないね。空中戦が得意なら近づいて叩き落すのもいいかも」
　そう説明したヴィクトルは首にかけたグリモアである鍵を手にして、転送の準備を開始する。

「未だ猟兵に覚醒した者がいないシャチ獣人だけど、多くの事件を解決していけばそのうち去年の今頃のサメみたいに猟兵に覚醒する者が現れるかもしれない。まだ当分先になるかもしれないけど、少なくとも今は猟兵として戦える者のいない彼らを守るために、どうかよろしくね」
　そうヴィクトルは話を締め括ると、猟兵を地中海に面したシャチの町へと転送したのだった。

第1章 日常 『野戦病院』

POW   :    建設や修理などの力仕事 SPD   :    物資調達などの事務作業 WIZ   :    傷病者の治療など医療活動 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

●傷ついた兵士にやすらぎを
　南フランス、地中海に面したシャチの街。
　獣人世界大戦を越えて勢いは衰えたといえども、超大国の侵略はこの世界の獣人達を容赦なく害していく。
　数日前に海から攻めてきたゾルダートグラードの機械化兵士たちに対抗するためにシャチの兵士たちは勇敢に戦いこれを退けたけれども、無傷というわけには行かずそれなりに多くの兵が海辺の病院に患者として送られてしまっていた。
　命に別状はなくとも傷は痛み、戦えない不安は兵士たちを苛んでいく――更に悪いことに、この街が幻朧帝国の破壊工作の標的になっているのだから、猟兵が介入しなければ大変なことになるだろう。
　悲劇を阻止すべくこの地に転移してきた猟兵の一人、ディル・ウェッジウイッター（人間のティーソムリエ・f37834）はティーソムリエとして負傷兵達に安らぎの一時を提供していた。
　フランスでは紅茶よりもコーヒーの方が多く飲まれているけれども、彼の淹れる特製のフレーバーティーはこの地のシャチ達にも人気で、荒んだ彼らの心も傷の痛みも和らげてくれる。
　そしてもう一つ。
『いい紅茶だ。……しかしお兄さん、なんかこう……闇に憑りつかれたりしてないかい？』
「そういう訳ではないですけどもね。まあ、仕様のようなものです」
　苦笑するディルが起動しているユーベルコードは【バトラーズ・ブラック】、具現化されている闇はシャチ達も少々気になる様子だ。
　病院の医者から手伝いを要請、命令してそれを承諾する形で発動条件を満たしたこの力によりあらゆる技能――救護活動や医術、その他負傷者への励ましなどを効果的に行えるようになっている。
　こまごましたお手伝いは多く、やらねばならぬことに圧し潰されてしまいそうな程。しかしそれを完璧にこなす青年は、まさしく特級執事のようでもあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

●入院生活は退屈で
　そして海岸に築かれた生け簀のような広い海の領域には大型のシャチ獣人――具体的には自然階梯や妖精階梯、通常のシャチそのままのサイズの彼らは浸かり傷を癒やしていた。
　体の大きさから屋内で治療するのは難しく、ある程度の治療を行ったうえで自然治癒を待つばかりの彼ら。広さは十分あっても傷の痛みや自由に跳ねたりできないこの環境は少々フラストレーションも溜まってしまうというもの。
　そんなシャチ獣人達の負傷兵の下に百地・モユル（ももも・f03218）というサイボーグがやって来て。
「こんにちは！　シャチの兵士さんなんだよね！」
『おう！　そうだぜ！　元気な坊主だな！』
　明るく挨拶するモユルに豪快に返すシャチの兵士――多分それなりの年なのだろう。
「お手伝いに来たんだけど、どこか痛い所とかある？」
『そうだな……ちょいと背びれが痛むから、包帯変えて貰っていいか？』
　水面で体を横倒しにして水際のモユルに背びれを近づける兵士。少々血がにじんで汚れてしまっているそれを丁寧に取り外し交換していくモユル。
　獣人だけども自然階梯や妖精階梯の彼らは外見上はUDCアース等の普通のシャチと大きな違いはなく、これ程間近で見る機会もないから彼の眼は興味深々に輝いているけれども、同時に心配の色も濃い。
　今でこそ元気な天真爛漫な少年のモユルだけれども、難病に冒されていたから退屈な病室暮らしをよく知っている。
　不安や退屈に襲われている彼らの心を癒すべく、モユルは治療のお手伝いをしながら優しく語り掛けて、シャチ獣人の兵士達の退屈を慰めていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

●空を飛ぶ銀蝶
　そしてもう一人、鈴乃宮・影華（暗がりにて咲く影の華・f35699）という元能力者の猟兵は、これまでの二人とは別の形でこの病院に力を貸そうとしていた。
「場所は北西……地図ではこの辺りの町ですね」
　シャチの医者に尋ねる影華、彼女が確認しているのは近隣にある物資を多く保管しているらしい近隣の町の位置だ。
　直接向かうには超大国の伏兵や残党に襲撃される危険があり中々向かえない場所と医者は悩んでいるようだが、影華にそれは問題にはならない。
「彼の力を以て世界へ翔ぶ――是、我が友情の形也」
　彼女が起動したユーベルコードは【黒燐幻想劇弾・飛空銀蝶】、彼女を変身させるように無数の黒燐蟲が包み込み、全長で28メートル程もある赤眼の銀蝶を模した飛空艇が形成されていく。
　影華の意志通りに動くそれは高速飛翔と28人を搭乗させることができて、必要ならユーベルコードによる攻撃も可能で敵の襲撃を迎撃する事もできるという、輸送にはうってつけの力だ。
　危険がどこに転がっているか分からない地上と低空を高空を一気に飛翔する事で回避し、そして地図で確認していた平穏な町へと無事に到着して物資の救援を要請する。
　同じく超大国に抗う同胞である仲間の要請にその町の住人は二つ返事で了承し、医療用の資材と人員を必要だけ飛空艇に乗せてくれた。
　そしてそのまま特にトラブルもなく空の旅で病院へと帰還する影華、物資や人員を乗せて帰ってきた彼女を医者や看護師のシャチ達は大喜びで迎え入れたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

第2章 ボス戦 『空軍大尉・戸波鈴仙』

POW   :    黄泉路への魔弾 【標的に合わせて調整した腐食の獣呪術】を宿した【装甲や防護魔術を侵食するライフル弾】を射出する。［装甲や防護魔術を侵食するライフル弾］は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。 SPD   :    九死呪弾 【魔眼に惑乱の呪力を集中させること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【九発の異なる回避困難な軌道で放たれる呪弾】で攻撃する。 WIZ   :    地に栄える者に停滞を 【高速飛行を行いながら、装備したライフル】から、着弾地点で爆発する【獣呪術の力を籠めた散弾】を連射する。爆発は敵にダメージを、地形には【停止の呪力汚染】効果を与える。 イラスト：十姉妹 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●冷徹な鴉は病院を狙う
『……面倒だな』
　海辺の病院に降下していく飛空艇を狙撃銃のスコープ越しに眺めている一羽のカラス獣人がいた。
　彼こそがこのシャチ達の街――その中心でもある病院を狙い逢魔弾道弾を起爆する為にやってきた幻朧帝国のエージェント『空軍大尉・戸波鈴仙』である。
　負傷者が多く一方的に空から狙撃し呪術弾で汚染していけば邪魔者は速攻で排除できて、そこから任務達成も容易だと考えていたらしき彼。しかし猟兵がいるとなると作戦変更をする必要があるかもしれない。
　ただし、今猟兵が持ち込んできた救援物資は改めて出直すという選択肢を封じている。十分な物資があるなら時間が経過する程に状態を立て直してくるのだろうから。
『やむを得ん。仕掛けるしかない』
　今ならばまだ勝ちの目はある――そう判断した黒鳥は翼を広げライフルを両足の爪で掴むと、病院の上空へと飛び立った。

　――青空に黒い鳥影が映る。
　警戒していた猟兵達は敵襲をいち早く察知し負傷者を屋内へと避難させ、海で療養しているシャチ獣人達は狙撃を避けるために海底近くへと潜水、すぐに彼らが撃たれてしまうことは避けられただろう。
　しかし逢魔弾道弾が起爆してしまえば彼らのいる場所も間違いなく逢魔が辻へと取り込まれ、殺戮されてしまう事は避けられない。
　悲劇の未来を阻止する為、猟兵達は空の狙撃手に向かいユーベルコードを起動し迎撃を開始するのだった。




●黒翼を墜とせ
　高速飛行で病院上空目掛け飛翔してくるカラスのエージェント『空軍大尉・戸波鈴仙』。
　彼がライフルに装填している散弾には獣呪術の力が籠められており、着弾地点で爆発し多くの敵にダメージを与えるのみならずその地形に停止の呪力汚染を与えてくる。
　それがこの怪我人が多くいる病院に連続で撃ち込まれれば大変なことになるだろう。しかし、
「そうはさせないよ★」
　一般人の避難誘導を速やかに行っていたクローネ・マックローネ（｜闇《ダークネス》と｜神《デウスエクス》を従える者・f05148）が病院前の拓けた場所に飛び出して、空のカラスに告げた。
　わざわざエージェントの視界に見える位置に出てきたのは一般人への攻撃を優先されない為、その挑発に乗ったカラスは照準をブラックタールへと定め直し引鉄を引こうとする。
　しかしその前にクローネは長らく愛用している彼女のネクロオーブを手にユーベルコード【ワタシのヴァルキュリアちゃん】を起動する。
「ヴァルキュリアちゃん！　格好よく決めちゃって！」
　召喚されるのは漆黒の肌持つヴァルキュリアの女性の霊。色っぽい彼女は手にしたゲシュタルトグレイブを構え空へと飛翔、カラスが放ってきた散弾に光翼から光の粒子を弾丸にして放ち迎撃する。
　空中で炸裂する呪術の散弾、一部撃ち漏らした弾丸も地上のクローネは結界を展開し直撃を避ける。
　そしてその間にヴァルキュリアの霊は高速飛行する鈴仙へと突進してグレイブを一閃、脇腹を深く切りつけエージェントは空中でバランスを崩して大きく高度を落とした。
　丁度そのタイミングで、クリスタリアンの夜鳥・藍（宙の瞳・f32891）が仕掛けていく。
「響け！」
　病院の屋上へと飛び出した彼女は即座に神器【雷鳴】のユーベルコードを起動、神器である刃渡30センチ程の黒い三鈷剣『鳴神』が165個複製され、ばらばらに操作して落下してくる鴉へと放つ。
『くっ……』
　対する鈴仙は崩れたバランスでは飛行で回避する事は困難と即座に判断、自身の魔眼に惑乱の呪力を集中して向かってくる複製された鳴神の群れに瞬時に狙いを定めて九つの呪弾を発砲して迎撃せんとする。
　回避困難な複雑な軌道で飛来する呪弾が藍の複製神器を撃墜していく――しかし165個すべてを九つの弾丸で撃ち墜とす事は叶わず、迎撃を免れた十数個の三鈷剣がカラスの翼を貫いた。
　羽根が切られ空中でのバランスが崩れた状態では即座に射撃で反撃する事も難しい。
　追撃に襲い掛かる光翼の霊と黒き三鈷剣の群れをエージェントは必死で躱しつつ、状況の仕切り直しに集中せざるを得ないのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●キャバリアとシーツおばけと
『しつこい……！』
　襲い掛かって来る二人の猟兵の霊と神器をどうにか凌ぎ病院前の広場の方へ逃れつつ、ライフルに新たな弾丸を籠めるカラスのエージェント。
　羽根を切られ崩れたバランスにもどうにか適応して一気に高空へと飛翔しようとするオブリビオンだったが、それを妨害するように一機のサイキックキャバリアが急接近してくる。
「また破壊工作やろうってのかい！」
　亜空間より召喚されたカスタマイズドキャバリア　"JD-Overed"に搭乗しているのは数宮・多喜（撃走サイキックライダー・f03004）、宇宙カブと似た操縦系統のそれを巧みに操る彼女がリフターユニットを作動させて空中のカラスへと追い縋る。
『それが任務だからな』
　意図を確認する多喜の言葉にカラスの狙撃手は短く返し、キャバリア用に調整した腐食の呪弾を発射する。
　鋭角的に軌道変更しながら高速で飛来するライフル弾、まともに当たれば金属装甲すら腐食し貫通してしまうだろうが、サイキックリフターを上手く操りつつライフル弾を躱しながら多喜は【基本戦術駆動】のユーベルコードを起動する。
「戦術選択、モードは……コイツでっ！」
　キャバリアが手にしているのはマルチプルブラスター、｜重力波《グラビティガン》のモードを選択し命中率重視でカラス目掛け発射。
　放たれた重力波は黒翼に命中し、途端に重力に囚われ動きを縛られてしまう
『身動きが……』
　呻くカラス、だが攻撃はそこで終わりではない。
　着地したキャバリアの後方から小柄な幽霊のような影――可愛らしい知恵の布を被ったブギーモンスターの納花・ピンチン（ブギーモンスターの勇者・f31878）が走り寄って来て、キャバリアの足と肩を足場にジャンプ、空のカラスへと軽やかに距離を詰めて、
「いい声で鳴いてな～！」
　手にした勇者の剣を返しながら彼女が起動するのは【めっさ・こちょばい】のユーベルコード。
　斬るではなく剣の峰で叩くようにして脳天をぶっ叩かれたカラスは、その衝撃に耐えられず地面へと墜落する。
『……何だこの点線は？』
　自身の身体を確認した鈴仙が手足と首の付け根に生じた異変に気付き、訝しむように呟く。
　そして次の瞬間、その点線を目掛けて周囲のあらゆる物――木々やキャバリア、果てはそれが纏っていた電撃までもがカラスの点線目掛け伸長、或いは飛来してくる。
　それらは点線をくすぐりに来るという、ピンチンのユーベルコードによる追加攻撃である。
　あくまでくすぐりだからそれ自体によるダメージは然程でもないかもしれないが、戦場でくすぐられて身動きが取れなくなれば当然危険。
『かくなる上は……！』
　慌てた鈴仙は翼を広げ一気に飛翔し真下に向かって散弾を発射、地形を停止の呪力で汚染して襲い掛かる追加攻撃を停止させながら一気に高度を上げていく。
　有効範囲から離脱してどうにかくすぐり地獄から脱出する事に成功するエージェント、しかし二人の猟兵によりペースを崩され刻まれたダメージも大きく、息を荒げる姿はこの戦いも終盤に差し掛かっている事を示していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●忍者は捕らえ蛮族は叩きつける
「ふーん、やっと、エージェントのお出ましか……」
　色黒な肌の妖狐の化身忍者、政木・朱鞠（狐龍の姫忍・f00521）は空の軍服のカラス『空軍大尉・戸波鈴仙』を見上げ呟いた。
　先のサイキッカーからの問いで、あのエージェントの狙いは任務達成――このシャチ達の街を逢魔弾道弾の惨禍で破壊する事だと既に分かっている。
　恨みがある訳でもなくただ任務で人々を危険に晒そうとするこのオブリビオンの咎は決して清算せずして骸の海に還す訳にはいかないだろう。
　一度地へと叩き落されたカラスは慎重に、羽の損傷であまり高い位置には飛び続けられないようだが可能な限りの高さを維持しつつ地上へと弾丸を放ち続けている。
「厄介ね」
　イネス・オルティス（隠れ里の女戦士・f06902）というバーバリアンの女は忌々し気にそう呟きつつ、愛用の巨獣槍にオーラを纏わせ空からの銃弾を受け流し回避していた。
　スタイルの良い身体をビキニアーマーで包むイネスが得意とするのは見た目と得物通り接近戦、ただ敵は狙撃手でありさらにこれまでの戦いの流れから空からの狙撃に集中しており、中々距離を詰めて攻勢に出るチャンスが見えない。
　その上で呪いが籠められた鈴仙の呪弾は何度も軌道変更し、猟兵を撃ち抜かんとしつこく襲い掛かって来る。
　多少強引にでも距離を詰める必要があるだろう――そう判断して朱鞠は建物の陰から飛び出し化身忍者の速度で駆け屋根を目掛け壁を駆け上がっていく。
　滑り難いシノビブーツと忍者としての技術で為せる業、銃弾を置き去りにしつつ壁を一気に駆け上がった彼女は屋根の縁を思い切り蹴って空のオブリビオン目掛け跳躍、距離を詰めながら愛用の拷問具『荊野鎖』を構え【忍法・咎狐落とし】のユーベルコードを起動する。　
「咎に巣食いし悪狐の縁……焼き清め奉る！」
　浄化の炎がスパイクを生やした蔓薔薇の鎖に燃え上がると、朱鞠は鈴仙目掛け全力で振るい拷問具はカラス目掛け一直線に伸びていく。
　そこで軌道変更してきた呪弾が鎖を逸らそうと鎖の先端目掛け真下から飛び込んでくる。しかし纏う浄化の炎は弾丸の呪いを焼き切って、勢いはそのままにカラスの胴に巻き付いて拘束する。
　その鎖は肉体を傷つける事はない。ただ、その咎人としての魂を容赦なく焼いて、火あぶりにされた悲鳴がカラスの口から溢れ出す。
　苦痛と高速に羽ばたく事も出来ず落下していく鈴仙、そこにダッシュで飛び込んでくるのは巨獣槍を携えたイネス。
「獣の一撃、くらいなさいっ！」
　ここぞというタイミングで彼女が起動するのは【巨獣撃】、槍を巨獣のオーラが覆い、真上から振り下ろす形でカラスのオブリビオンへと叩きつけられる。
　空を翔けるカラスだが、そんなシンプルな重い一撃に耐えられるような力はない。拘束する荊野鎖で繋がった朱鞠を引っ張るように高速で落下、地面に叩きつけられそのまま消滅したのだった。

　かくして負傷兵のシャチ獣人達の病院は幻朧帝国の悪しき工作から無事守られた。
　その内彼らの傷も治り、再び超大国に抗う兵士として戦場に向かうのだろうが、それでも彼らの無事を祈りながら猟兵達はグリモアベースへと帰還したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2025年10月05日