邪神降臨 ~根を枯らす風~
「来てくれてありがとう。オブリビオンが現れるわ」
猟兵達の拠点「グリモアベース」
そこに集った猟兵たちに、ボーリャ・コータス(極光の17番・f02027)は紫の瞳を向けた。
「場所はUDCアース。そう、邪神が蘇ろうとしているわ」
UDCアースで格闘大会で優勝するような著名な格闘家が惨殺される事件が続いている。この事件が、覚醒しようとしている邪神が自らの復活を完全なものにしようと起こしているものだと予知された。
次の被害者と目されるのは、1000年以上の歴史を持つとされる古武術、陸奥第三砲塔爆発流の継承者、陸奥吾郎。アームロックが得意技らしい。どうにか吾郎を守ってほしい。
「転移できるのは、彼が試合で優勝した直後になるわ。UDCの協力でお付きのボデイーガードとして接触してもいいし、気づかれないよう陰から護衛してもいい。だけど……」
口を濁してからボーリャは続ける。
「今回は人命優先で、予知が不十分な状態で送り出すことになるわ。つまり情報が足りない。彼を守るだけじゃなく、邪神にたどりつく手がかりも一緒に調査して欲しいの」
調査の方法は猟兵に一任される。が、吾郎を囮にするような方法だと万一の時に手がかりが完全に切れてしまうだろう。
あるいは護衛に徹する中で、なんらかの情報を得られるかもしれない。
「現在わかっているのは、犠牲者が出た時には近くで不自然な突風が報告されたことくらい。あと、犠牲者はなぜか、殺される前に比べて髪の毛が薄くなっていたわ」
ボーリャは猟兵たちに頭を下げた。
「現場までは、私が責任を持って貴方たちを送り届けるわ。
転移の維持のために、現地での行動は貴方たちにすべて頼ってしまうことになる。
でも、予知じゃなくてただの勘だけど、この邪神を完全に復活させてしまうと、きっと多くの人が不幸になるわ。
……お願い。どうか、悲劇を止めて」
斑鴉
ご無沙汰いたしております。斑鴉です。
前回からちょっと時間が開いてしまいましたが、また皆様のストーリーを彩ることができたらと思います。
皆様のプレイング、お待ちしております。
第1章 冒険
『格闘家連続惨殺事件』
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POW : 「大会に飛び入りで参加し自分が優勝して見せる」など強さをアピールした行動
SPD : 「影ながら追跡しつつ護衛をする」など技量を問われる行動
WIZ : 「今までの事件の情報などから襲われる日時を予想する」など知恵を働かせる行動
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
波狼・拓哉
格闘家ばかり狙われる・・・んー屈強な体が必要とかか・・・?まあ、そのうち分かるだろ。今は現状を理解し、最善を目指すだけだね。
さて、それじゃあちょっと強い格闘家であるという点以外の襲われた時間や場所、その時の風の向きとかに共通性がないか、情報収集してみよう。ネットや新聞紙辺りの一般的な奴でいいか・・・下手に広げると終わらんし。
何かわかり次第他猟兵に連絡。特に何も分からなかったという事もあるかもしれないけど、それはそれで無差別なのは分かるだろしね。少しでも守れるように自分も現場に急行しないとねー
(アドリブ絡み歓迎)
「格闘家ばかり狙われる……んー、屈強な体が必要とかか……?」
つぶやきながら、会場の一室にUDCが用意した情報端末を起動させているのは
波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)だ。
「まあ、そのうち分かるだろ。今は現状を理解し、最善を目指すだけだね」
無論、ただ無駄口を叩いているわけではない。言葉にすることで脳内の思考の流れをコントロールし、無駄を省き、最適な行動に移すための前準備。
まず拓哉はネットと新聞で情報をかき集める。
サポートするUDCも無能ではない。効率よく調査できるよう資料はうまく整理してある。
それらの資料から、また必要な情報は独自に調査し、整理していく。
主なターゲットは格闘家たちが襲われた場所と、異常な風が観測された場所の整合性。
「……ん?」
根気よくデータにあたること数時間。
その違和感に気づいたのも、探偵の家系に生まれたがゆえか。
異常な風の観測件数に比べて、被害者が明らかに少ない。
そして、別の件の話だろうと見向きもされなかった、格闘家たちの失踪事件。
この2つを重ねると、数字がぴたりと一致する。
さらに深く掘り下げると見つかった、風の後の目撃証言。
「……これは、格闘家惨殺事件じゃない」
言葉が拓哉の口をついてでた。
「死体が残されていたのは、たまたまはずみで死亡してしまったか、何らかの不適格があって殺されて放置されたケースに過ぎない。これは……」
発見した情報を共有すべく、猟兵たちに連絡の準備を始める。
「……これは、格闘家拉致事件だ」
大成功
🔵🔵🔵
タフィ・バーストハート
アタシはシンプルにやらしてもらいましょうか。
”表”の連中には残念な事になるだろうけど本命到着までの前菜って所ね。
ショウビジネスじゃない”本物”で会場を盛り上げてやろうかしらね。
リングに入ったら《the slider》で攻撃を捌きつつ本命到着までの時間稼ぎ。
格闘家や警備員の動きを見つつ相手には適当に退場願うとするわ。
しょっぱい塩試合には観客も飽きてるでしょうしねぇ?
アレンジや絡みその他諸々は歓迎、お任せよ。
優勝者が決まり、まだ熱気冷めやらぬ格闘技大会の会場。
その中央に設置されたリングに、一つの影がひらりと飛び込む。
「アタシはシンプルにやらしてもらいましょうか」
タフィ・バーストハート(一撃絶命・f14140)だ。
ただ目立とうとしたわけではない。
彼女の狙いはシンプルだ。大会の優勝者である陸奥吾郎よりも腕が立つことをアピールし、注目を集めることで敵の狙いを自分に引きつけようとしているのである。
「おい、あんた誰だ、勝手にリングに上がるんじゃ……」
引き下ろそうとしてきた事情を知らない警備員を当身からの投げ技で簡単に黙らせる。彼女が異形と融合した力で磨き上げたマーシャルアーツの一端だ。
突然の凶行に会場の空気が熱くなる。
「ショウビジネスじゃない"本物"で会場を盛り上げてやろうかしらね」
惜しくも先程までの大会で破れた格闘家たちが、本気でタフィをリングからつまみ出そうと押し寄せてくる。
が、誰一人として彼女の体を掴むことができない。
ユーベルコード:《the slider》(ツブテスベリ)
様々な方向から伸ばされる手を予想し、まるですり抜けるように回避する。
「しょっぱい塩試合には観客も飽きてるでしょうしねぇ?」
そして倒れた格闘家の一人に向けるタフィの目が危険な色を帯びた。
殺しはしない。殺しはしないが、責任をとるつもりはない。
そんな覚悟と手刀を固めた彼女の腕を、誰かがつかんだ。
「すまないが、そこまでにしてやってくれないか」
白い道着に身を包んだ優勝者にして護衛対象、陸奥吾郎だ。
さすがに彼の手を振り払うわけにはいかなかったか、タフィは手刀を収める。
……視界の端で、リングの上で転がされているのとは明らかに格が違う、禿頭の格闘家らしき人物がすっと離れていくのを、タフィはもちろん見逃していなかった。
すぐに仲間から送られてきた、誘拐された格闘家のリストの中にその人物はいた。ただしハゲてはいないようだったが。
成功
🔵🔵🔴
ジニア・ドグダラ
風……何かしら、大気を操る存在が、いることを想定した方が、良いかもですね。
ひとまず、もう一人のワタシを呼び出して行動します。
私自身「ジニア」は護衛対象の数m程度で護衛し、敵対している相手に分かる程度に敢えて【存在感】を醸し出して行動しておきます。
もう一人のワタシこと『ヒャッカ』は、護衛対象と私が視界に入る【地形を利用】し【目立たない】よう潜伏し、ジニアの存在に気取られた存在が【おびき寄せ】られていないか監視します。その上で、対象を害しそうな行動をした者に対して死霊拳銃による【スナイパー】での狙撃を行って無力化していきます。可能なら、その存在から情報を入手したいですね
※アドリブ・他者との協力歓迎
リングの騒ぎから10分程度。
ジニア・ドグダラ(朝焼けの背を追う者・f01191)は
控室に戻る陸奥吾郎を護衛しながら長い廊下を歩いていた。
「風……何かしら、大気を操る存在が、いることを想定した方が、良いかもですね」
情報はすべて共有されている。
さらわれ、洗脳されたと思しき有力な格闘家たちが拉致の実行犯として暗躍する動きを見せている。
彼らを洗脳したのは誰なのか。どのような手段を使ったのか。そして、その目的とは。
それを炙り出すため、ジニアはあえて己の存在感を吹き出してみせる。
少し後ろを歩いていた陸奥吾郎がその強さに思わず足を止める。
その裏で、廊下の景色に溶け込むように身を潜める、ジニアとよく似た女性の姿。
ユーベルコード:オルタナティブ・ダブル
ヒャッカ、ユーベルコードによって仮初めの肉体を得たジニアの別人格だ。
ジニアの存在感に誘拐者の目を引きつけ、隙をついてヒャッカが確保、情報を得ようという作戦だ。
敵は猟兵の護衛に気がついている。この廊下を逃せば、控室に籠もられるともう手が出せない。そんな焦りは簡単に分かる。
果たして、敵は動いた。おそらくレスリング系の格闘家だろう体格の男が禿げ上がった頭部を輝かせながら、護衛を無視して吾郎にタックルをかけにいく。
その足元を、ヒャッカが冷静に拳銃で撃ち抜く。
死霊の呪詛に塗れた改造拳銃。意識していない方向から足元を正確に狙撃され、誘拐者は派手に倒れ込む。
「さて……いろいろ教えてもらいますよ」
抑え込もうとする吾郎を止めて、ジニアは倒れた誘拐者が暴れないよう取り押さえる。
そしてヒャッカが仲間に連絡を取ろうとした時、禿頭の男が叫んだ。
「神よ! 我らが神よ! 風と煽る者よ! この者に洗礼を!」
突如、屋内だというのに謎の気持ち悪い風がジニアに吹き付ける。
『かみを……ささげよ……それはいつかなくなるもの……かみをささげよ……そしてえいえんを……』
人外の呪詛がジニアの心を鷲掴みにする。もしここが屋外で、まともに風を浴びていたら耐えきれなかったかもしれない。
長い一瞬が過ぎ去り、ジニアはほっと息をついた。
後ろには心配そうに見つめる吾郎、そして足元には力を振り絞って神を呼んだ代償に命を失った誘拐者がいた。
大成功
🔵🔵🔵
竜禅寺・巌
行動:POW
格闘家のくせに弱ぇのか、邪神が強すぎるのか・・・まあ、強い邪神なら捻りつぶし甲斐があるってもんよ。
とりあえず俺ぁ暴れさせて貰うぜ。護衛は二の次だな・・・俺ら猟兵に矛先向きゃ護衛したようなモンだしな。
1000年以上の歴史を持つとされる古武術の使い手と聞きゃ手合わせして頂きてぇモンだぜ。
相手にとっても不足はねぇしな。
「おう、チャンピオン様、てめぇの実力はその程度か?今からこの俺と一勝負しねぇか?無論、チャンピオンの座をかけてなぁ!!」
籠城は可能だ。
だが、またもし洗脳された狂信者が自爆突撃をしてくるならば……
誰が言い出したわけでもないが、陸奥吾郎と護衛の猟兵たちは誰が言い出したともなく踵を返し、試合会場に戻っていった。
その彼を、リングで待ち構えている男がいた。
竜禅寺・巌(ドラゴニアンの破戒僧・f13262)だ。
好き勝手にやらせてもらう。その信念が巌を突き動かしている。
「おう、チャンピオン様、てめぇの実力はどんなもんだ? 今からこの俺と一勝負しねぇか?」
「な……っ」
その言葉に周囲のUDCスタッフや格闘家、大会関係者たちが気色ばむ。
生命の埒外にある存在、猟兵。
それが通常の生命体を相手に戦って、一体どんな意味があるのか。近くの猟兵たちも彼にそんな目を向ける。
だが、面白ければいいのだ。
相手は1000年の歴史を持つ古武術の使い手ともなればなおさら。
「無論、チャンピオンの座をかけてなぁ!!」
「いい加減にしろ!」
さすがにリングの周囲から怒号が飛ぶ。
先程もリングの上で誰ともわからない自称護衛にさんざんにやられているので皆スルーしようとしていたが、さすがに黙っていられなくなったようだ。
「吾郎さんはさっきまで決勝戦で戦ってたんだぞ!? 怪我の治療もできていなければスタミナだって回復していない。そんな相手と戦ってなんの意味が……!」
「いや、いい」
その言葉を制したのは、白い道着の青年、陸奥吾郎。
「陸奥第三砲塔爆発流は、いついかなる時でも最強。オレはそれを証明するだけだ」
試合の直後、しかも先程の異様な騒動の後だというのに、疲れも感じさせない動きで吾郎はリングにあがる。
ゴングなどいらない。ドラゴニアンにしてバーバリアン。鍛え抜いた肉体を軸にする我流の闘法で無防備な吾郎に殴りかかる。
そんな暴風雨のような連撃を、ユーベルコードじみた動きで紙一重で見切り、かわしていくチャンピオン。
「てめえ……!」
業を煮やした巌がフェイントから一気に距離を詰め、30cm、至近距離からの打撃を放つ。
ユーベルコード:灰燼拳
さすがにやりすぎだ! と周囲の猟兵たちが目を剥く。
天井に届くほど高く垂直に吹き飛ばされる吾郎。
しかし白い影は、空中で身を翻して着地ざま終わったなと背を向けていた巌の腕を取って投げ落とし、落下する頭にローキックの追撃を放つ。
陸奥第三砲塔爆発流:電(ぷらずま)
猟兵は生命の埒外の存在だ。だが通常の生物の姿を取り、多少なりとも制約を受けている以上、相手が通常の存在だろうと思わぬ不覚をとることもあるかもしれない。
「面白くなってきやがった!」
巌が飛び起きて振り返ると、吾郎は大の字で倒れたまま動こうともしない。
達人が全力で力を殺そうとしても、通常の手段でユーベルコードを防ぎ切ることなどできない。
「不思議だな、あんたたちは」
頭に手を当てて落胆の仕草をする巌に、倒れたまま吾郎が声を掛ける。
「人間のはずなのに、戦ってみると人間を相手にしてる気がしない。万全の体調でも勝てないなこれは」
興味は失せたとリングから降りようとする巌。その背中に続く言葉がぼそりと届いた。
「だが、決して届かない背中ではない」
その言葉に巌が口元を歪める。
「大変です! 聞いてください」
ざわめく試合会場に、若いスタッフが駆け込んでくる。
「さっきの不審者、廊下で倒れてた……」
「ザンギエルだろ。こないだMMLSで優勝した直後に行方不明になってた。髪はすっかりなくなってたが」
吾郎の言葉にスタッフが応える。
「そうなんです! 死んだって連絡受けて向かったんですが、ザンギエルさん、息を吹き返したんです!」
「――!」
居合わせた猟兵たちの視線が一斉にスタッフに突き刺さる。
「半狂乱になって暴れた末に、"御髪抜毛村"とだけ言い残して、また意識を失いました。でも生きてます! 今は救急車で病院に搬送してます」
胸をなでおろす者。情報を共有して調査に急ぐ者。我関せずと無関心を貫く者。
さまざまな者を巻き込みながら、事態は確実に進んでいる。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『村に伝わる伝説を暴け!』
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POW : 瓦礫を掘り起こし埋まっている手がかりを見つける
SPD : 村人から伝説を聞き出し手がかりを見つける
WIZ : 魔術的なアプローチで手がかりを見つける
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
"御髪抜毛村"
地図には載っていない名前だったが、すぐり割り出すことはできた。
最低限の護衛を残して猟兵たちはその失われた村へと急行した。
波狼・拓哉
例え当て字だとしても間違っても村に付ける漢字じゃねぇ!…え?何?髪抜いてカツラにでもすんの?羅生門?(錯乱)
さて、ちょっと落ち着いてから調査開始といくか。しかしあれだな。村人…いるのか?いるんだったらコミュ力発揮して情報を聞き出そう。伝わってる伝説とか見たことない人いなかったとかその辺かな。
後はまあ痕跡探しか。ミミックを龍に化けさせて瓦礫避けてみたり邪魔なら爆破したりで痕跡という失せ物探しに洒落込むか。色々探してれば第六感で怪しそうなものとか見つかったりもするだろうしね?
(アドリブ絡み歓迎)
流観・小夜
殺人事件でなく、拉致事件……風に消えていく頭髪に、神という言葉。いったい何が起きているかは不明ですが、この村の方々に何か事情を知っている方がいらっしゃるか、伺ってみましょう。
手始めに、この村の生き字引とも言われそうな御年配の方々、色々な話が飛び交っている奥様方、噂話に敏感な子供たちなど、お話しできる方がたくさんいらっしゃいますからね。
ある程度情報を入手できたのなら、怪しそうなところを捜索していきます。【鍵開け】への知識を応用して建造物に侵入、今回の事件に関連がありそうな物品を入手できないか、見ていきましょう。もちろんそうした場所には敵の手があるはず、警戒は怠らずに行きましょう。
"御髪抜毛村"の名がなぜ地図に載っていないかといえば、
明治時代には消えていた廃村だからだ。
都会から少し車を飛ばし先にある、「都市部の近くなのにこんな自然が残ってるんだ」と言われるような不便極まる山の麓。ネット地図で調べると野ざらしの瓦礫や廃材が散乱する無人の廃墟だ。
「例え当て字だとしても、間違っても村に付ける漢字じゃねぇ!」
字面のインパクトに混乱した様子を見せるのは
波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)。
「……え? 何? 髪抜いてカツラにでもすんの? 羅生門?」
とはぼやきつつも情報収集の手際は確かだ。手早く近隣の村を洗い出し、かつては御髪抜毛村と関係があった村をピックアップする。
「殺人事件でなく、拉致事件……風に消えていく頭髪に、神という言葉」
昨夜からの事件の流れをまとめようとしているのは
流観・小夜(駆動体α・f15851)だ。
「いったい何が起きているかは不明ですが、この村の方々に何か事情を知っている方がいらっしゃるか、伺ってみましょう」
小夜も拓哉に同行し、付き合いのあった近隣の村で聞き込みを開始する。
あまり外部と交流のない、閉鎖的な村だ。
最初は突然現れて根掘り葉掘り訪ねようとするよそ者を警戒していたが、粘り強くコミュニケーションをとっていくうちに、一人の老婆に行き着いた。
「ああ、抜毛村なぁ。あの村はな、悪い神様を崇めておったんじゃよ」
おそらく、昔話に興味を持ってくれるような村人は少ないのだろう。老婆は嬉しそうに語り始めた。
「風と煽る者、とか呼ばれておった。もっと別の本当の名前もあったようじゃが、誰も恐ろしくてその名前を口にすることはなかったようじゃ」
古めかしい風情ある茶菓子を口にしながら老婆は続ける。
「なんでも、髪の毛を毟り取る風を吹かせて、恐ろしい幻覚を見せ、ハゲてしまった者は正気を失ってその神様を崇めるようになったそうじゃ。そんな感じで津々浦々から髪がない屈強な男が集まっていた。わしの爺様も大層恐れておったなぁ」
おそろしいおそろしい、と呟きながら老婆は湯呑に口をつける。
「都から軍隊が来て、抜毛村を討伐してくださったのじゃ。まだわしが10にもならぬ頃じゃったのう」
ん……? と、話を聞く二人の頭上に疑問符が浮く。このお婆さん何歳だ?
しかし、聞きたいことは概ね聞けた。裏取りをする余裕はないが、行動指針としては充分だろう。
礼を言って立ち去ろうとする二人を、老婆が呼び止めた。
「本当は死ぬまで黙っている気じゃったが、あんたらいい目をしとる。あの村の真ん中にあった建物の地下に、その神様を祀った祭殿が隠されてたということじゃ。なにをする気かは知らんが、命だけは大切にな」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジニア・ドグダラ
地図に無い村……廃村、とかでしょうか?
でしたら、人伝いに聞くのも良いですが、直接向かって確認するのも、手ですね。
村近辺で奇霊を招集し、捜索していきます。
相手は、神と思われるオブリビオン。姿が歪み、何らかの呪詛を放っているかもしれません。呪いに対する耐性を、死霊術によるとある呪文を詠唱することで高めつつ、放たれた呪詛を逆手にとり追跡していきましょう。
特に日本において、祟り神も祀られていることがあるはずです、であるならば、神社や仏閣などが怪しいと思われます。その点を重点に、相手に気付かれないようにしながら行動していきたいですね。
※アドリブ・他者との協力歓迎
竜禅寺・巌
行動:POW
邪神の居場所は掴めたみてぇだが、こいつはまた頭皮が寂しくなるような名前だなぁ・・・
次は村の伝説でも探せばいいんだな?
調査は得意じゃねぇんだが、力仕事なら任せな!
伝説と言うならまぁ、遺跡や墓の跡地辺りかねぇ。
こういった所は壁画や遺品なんかがあったりするんだ。そいつが手がかりになったりする筈だぜ。
まぁ、同行が居るんならそいつらの手がかり優先で瓦礫撤去の場所決めさせてもらうぜ。
隣村での調査と時を同じく。
"御髪抜毛村"を直接調査に来ていた二人の姿があった。
一人はジニア・ドグダラ(朝焼けの背を追う者・f01191)。
背後には黒い影状のなにか――奇霊を従えてる。
ユーベルコード:奇霊招集(ストークスペクター)
「相手は、神と思われるオブリビオン。姿が歪み、何らかの呪詛を放っているかもしれません」
五感を共有する死霊を操り、呪詛に対する耐性を高めつつ、呪詛をたどって発生源を突き止めようとしている。
もう一人は竜禅寺・巌(ドラゴニアンの破戒僧・f13262)。
「邪神の居場所は掴めたみてぇだが、こいつはまた頭皮が寂しくなるような名前だなぁ……」
ぼやきながらも調査の手は止めない。
天性に恵まれ、それに奢らず日々鍛え上げ続けている肉体を使い、廃村中にちらばる瓦礫の山を目につくところから撤去していく。
壁画や遺品の類が見つかれば……と目星をつけているが、今の所そういったものは見つかっていない。
逆になんともいえない違和感を感じる。村であるのに軍隊の施設や修行僧の行場のように生活感はあるが新しい命を育むような施設の痕跡がない。
まったく対称的な二人であるが、調査方法が重ならず干渉することがないため、即席のチームとしては逆に相性は悪くない。
しかしこの場には、二人の他にも人の気配がある。
恐らくは洗脳された格闘家たち。まだ数人。少なくとも今は。
手を出しても敵わないことはわかっているのだろう。直接的な妨害はせず様子を伺うだけに留めているし、猟兵側から倒そうとすると地の利を生かされ捕まえられない。
だが邪神も自分の喉元に手がかかっているのは分かっているだろう。
時間をかければかけるほど、散らばった信者たちがこの場に集まってくるのは想像に難くない。
焦る中、ジニアの呪詛探知がおおよその範囲を絞る。これ以上は逆に呪詛が濃すぎて絞り込めないし、自身に耐性をつけてあるぶん分解能が低くなっているのは否定できない。
だが耐性なしで前に浴びた呪いの風を直接浴びれば今度こそただでは済まない。正しい判断と言えるだろう。
物音が聞こえる。また一人、格闘家の信者が包囲に帰還したようだ。
名だたる大会のチャンピオンとはいえ、陸奥吾郎ほどの使い手はいないように見える。殴り合いならば負けない。
だがまた命を賭して邪神の力を呼び寄せるような自爆攻撃を繰り返されたら……焦りが募る。
そこに、近くの村で調査をしていたチームからの連絡がはいる。
要点は、村の中央の建物の地下。ジニアが絞った範囲とも合致する。
「力仕事なら任せな!」
迷いはなかった。巌は宙に飛び上がり、数珠で強化した己の拳を瓦礫が散乱する地面に叩きつける。
ユーベルコード:グラウンドクラッシャー
拳の一撃が瓦礫を吹き飛ばし、床材を抉り抜いて、禍々しい地下室をあらわにする。
格闘家信者の一人が飛び出してくる。
「神よ……! 風と煽る者よ、この不遜な者に祝福を……!」
叫びながら抱きつこうとする。が、ジニアがその進路を遮り、呪われた風を一身に受ける。
すでに一度経験したこともあっただろう。あるいは今度はヒャッカが自らの中にいたこともあったのかもしれないし、奇霊が呪いをやわらげたのかも知れない。
ジニアは呪いの風を耐えきった。
格闘家信者たちに動揺が走る。
しかし漣は一瞬。詠唱の声が唱和する。
「我らすでに捧げる毛根は残らずとも、この生命を永遠を捧げる……いあ、いあ! 御覚醒を! 風と煽る者よ! 毛根全部枯れロイガーよ!」
大成功
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第3章 ボス戦
『風と煽る者『毛根全部枯れロイガー』』
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POW : 毛根を枯らす風
予め【あまり効果のない育毛剤を使用しておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : ハゲロニアン・ブラスト
【自身の頭部】から【ハゲロニアンビーム】を放ち、【髪を失う幻】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : ハゲロニアン・チェイン
【ハゲロニアンビーム】が命中した対象を爆破し、更に互いを【将来薄くなる者たちの絆】で繋ぐ。
イラスト:井渡
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠クリーク・クリークフリークス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ばたばたと倒れる信者たちから流れ出た不可視のなにかが、地下室に流れ込んでいく。
そして不完全ながら目覚める邪神。
廃村高く浮き上がるそれが、猟兵たちを睥睨する。
倒さなければ、災いは世界を揺るがすだろう。
ジニア・ドグダラ
もう……こん……?『ふざけ過ぎた名前、だな……』
困惑しつつも、【先制攻撃】が行えるよう、【高速詠唱】で死霊騎士と死霊蛇竜を召喚し攻撃させ、私自身は攻撃を喰らわないよう【逃げ足】で【目立たない】【地形を利用】して隠れながら死霊たちに指示を発令します。
死霊蛇竜には細い体を生かした【フェイント】の動作を交えつつ、牙や夫による一撃を叩きこましていきましょう。
死霊騎士は、相手の攻撃を【おびき寄せ】るかのように大盾を構えさせて敵の攻撃に備え、味方の猟兵たちに攻撃が飛ばないように盾による防御行動をさせます。……ふと思いましたが、そもそも、過去の存在である死霊騎士は今更禿げる事に何か思ったりするのでしょうか?
波狼・拓哉
名前ー!取り敢えず名前ー!如何してそうなった!というか誰が名付けた!確かに災い降り注ぎそうですけど!?なぜ崇拝したし。
取り敢えず骸の海に沈んで貰うか。いつも通りお願いしますねミミックさんと。化け撃ちな。目を狙って乱射しつつ、高速飛行で翻弄しな。・・・いやほら頭部にあたる部分だと、弾きそうですし。
自分は地形を利用して目立たないようにしつつ、衝撃波込めた弾で撃って意識を逸らしたりして味方のサポート。幻見てる味方の気付けとかもやったりしようかな。
(アドリブ絡み歓迎)
邪神が降臨した瞬間、周囲にパニックの波が走り抜けた。
「もう……こん……?」
『ふざけ過ぎた名前、だな……』
呆然と見上げる口から2つの言葉が漏れたのは
ジニア・ドグダラ(朝焼けの背を追う者・f01191)。第二人格のヒャッカの言葉も脳内にとどまらず声となって風に乗る。
「名前ー! 取り敢えず名前ー!」
ツッコミが止まらなくなる瞬間的な狂気に陥ったのは
波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)だ。
「如何してそうなった! というか誰が名付けた! 確かに災い降り注ぎそうですけど!? なぜ崇拝したし」
隣村から"御髪抜毛村"まではほんの数キロ。猟兵の足ならば一瞬だ。だから邪神降臨の瞬間に間に合った。間に合ってしまった。
「ハァァァァァァァァ、ゲェェェェェェェェェ、ルォォォォォォォォォ!」
邪神の咆哮が周囲に響き渡り、黄色の単眼が取り乱す二人を捉える。
本能が、生命の危機が二人の猟兵を自然と動かす。
出会いざまの先制攻撃は叶わなかったが、後の先を取ったジニアが複雑な詠唱をヒャッカと分担しながら唱える。
一つの口で多重の詠唱が共鳴する。
そして現れる、死霊の騎士と死霊の蛇竜。
ユーベルコード:リザレクト・オブリビオン
拓哉も同時に動いている。
ミミックという箱型生命体を召喚し、そのミミックをさらに巨大な宇宙船へと変異させる。
その形状は様々な創作物や宇宙世界で実際に見た宇宙戦艦たちのハイブリッド。
ユーベルコード:偽正・械滅光線(バトルシップ・ドーン)
「ハァァァァァァァァ、ゲェェェェェェェェェ、ルォォォォォォォォォ!」
邪神の視線が召喚されたものに向く。
期せずして、二人の猟兵は地形を利用し近くの物陰に遮蔽を取り、身を隠す。
リザレクト・オブリビオンで召喚された死霊は本体がダメージを受けると制御できなくなることに加え、二人とも自身が矢面に立つことで逆に召喚物の足を引っ張るような事態を恐れての判断だろう。
たぶん決してハゲロニアンビームとか絶対に喰らいたくないとか、そういった理由ではないと思われる。
「ハァァァァァァァァ、ゲェェェェェェェェェ、ルォォォォォォォォォ!」
そして毛根全部枯れロイガーの頭部から乱射されるハゲロニアンビーム。
無数の光条を華麗にかわす召喚物たちを見て、ふとジニアは疑問に思う。
(過去の存在である死霊騎士は今更禿げる事に何か思ったりするのでしょうか?)
すべての死霊騎士がそうであるとは限らない。しかし少なくとも今ジニアが呼び出した騎士は、なんか嫌そうな顔をしていた。
「ヌゥゥゥゥゥゥゥゥ、ケェェェェェェェェェ、ルォォォォォォォォォ!」
嫌な顔をされて気に触ったか、死霊騎士にハゲロニアンビームが集中し始める。回避をやめて盾による防御に専念し始める騎士を背に死霊蛇竜が飛び上がり、触手や皮膚に食らいつく。
だが、浅い。
拓哉のミミック宇宙船もビームを放つが、輝く頭部に反射されて有効打を与えられない。
「ミミックさん、目を狙って!」
拓哉の声に、宇宙戦艦のビーム砲塔の仰角が下がり、ちょうど地面と水平になる。ゼロ距離射撃モード。
「ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ、ザァァァァァァァァァァ、イィィィィィィィィィ!」
何発もの光条を目に受けて、最初は眩しくてイラっとする程度の反応だった邪神に明らかにダメージが重なっていく。
高速機動で緊急回避を行おうとする動作を死霊の蛇竜がうまく封じて、次第に高く飛び上がっていた邪神の高度が落ちていく。
巨大な敵だが、けっして倒せない相手ではない。
大成功
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流観・小夜
神……神とは、そういう意味の髪だったのですね……
しかし、この廃村高く浮き上がっているのなら、的としては狙いやすいでしょうね。
自身は廃村内の瓦礫に身を潜めつつ、ドローンを召喚して邪神の行動を観測します。ドローンのカメラと自身の眼球と視覚を接続し、狙撃しやすいようにしましょう。対象の行動を観察し、攻撃の隙や味方の攻撃に合わせ、一番目立つ眼球部に対して狙撃していきましょう。
狙撃が成功したのならそのまま狙撃を実行し傷を抉っていきましょう。失敗した際は、敵の攻撃に警戒しながら移動し、再度狙撃が可能になるまで待機しておきましょう。しかし、味方が危機に陥りそうな場合は、手持ちの弓で連射して気を引きましょう。
竜禅寺・巌
行動:POW
格闘家を襲ってハゲにした邪神サマのお出ましだなぁ!
坊主頭ならガキん頃に強制的にやらされてたから抵抗ねぇし、今のご時世、医療用のヅラやらあるらしいが、ハゲになるのはなぁ・・・男として色々と困る。それに、そろそろ手ごたえのある奴と暴れたかったんでな。絶対に倒してやんぜ!
育毛剤を使ってる隙を狙って【灰燼拳】を【怪力】【力溜め】【気合い】【捨て身の一撃】込みで殴りにかかるぜっ!!!
命を懸けてでも俺の男としてのステイタスを守り切ってやらぁ!!!
まだこの年でハゲたくねぇんでなぁ!!喰らいやがれぇぇぇ!!!
邪神の降臨は、その場にいた他の猟兵たちにも衝撃を与えていた。
「神……神とは、そういう意味の髪だったのですね……」
太古から連綿と続く神秘に気づいてしまった
流観・小夜(駆動体α・f15851)が恐ろしさに身を震わせる。
「格闘家を襲ってハゲにした邪神サマのお出ましだなぁ!」
と自らに気合を入れる竜禅寺・巌(ドラゴニアンの破戒僧・f13262)も
(坊主頭ならガキん頃に強制的にやらされてたから抵抗ねぇが……ハゲになるのはなぁ)
と微妙に腰が引けてたりする。
悪い妖精でも居合わせたのか、やはり剃っているだけと言いはるのも大変なんだろうなと囁く声が聞こえた気がした。
そんな声など聞こえなかったと、巌はもう一度気合を入れ直す。
「そろそろ手ごたえのある奴と暴れたかったんでな。絶対に倒してやんぜ!」
先の猟兵たちの攻撃で、邪神にはダメージが積み重なっている。
かなり高度も落ちてきた……だが邪神を潰すような威力の攻撃を放つにはまだ高い。
小夜も周囲の瓦礫に身を潜めつつ、ドローンを空に放つ。
ユーベルコード:観測行動・飛空物体展開(モクヒョウ・タイショウノハッケン)
ドローンから送られてくるカメラの映像を機械化した自身のサイバーアイと同期させ、強化現実化した視界で俗に「人間に向けて撃つようなものじゃないよ」と言われる対物狙撃銃を構える。
「カァァァァァァ、ガァァァァァァ、ヤァァァァァ、ケェェェェェェ!」
仲間たちの攻撃で生まれた弱点。そこに視界に映るポインタが重なり、引き金を引く。一連の動作はサイボーグボディの機械が電気信号に従って行う。だが本当に引き金を引くのは現在と未来を守るという意思だ。
銃声と同時に邪神の体が大きくのけぞる。
しかしまだ倒せていない。
「ハァァァァァァァァ、ゲェェェェェェェェ、ロォォォォォォォォ!」
毛根全部枯れロイガーが狙撃ポイントにハゲロニアンビームを降らせ、さらに自身もその触手を振るおうと急降下していく。
そこに待ち構えていたのは巌だ。
本当は、邪神が育毛剤を使っている隙を狙うつもりだった。
しかし彼は知らない。邪神もかつては他人の毛根を枯らすより、自らがフサフサになろうとしていたことを。そのために、長きに渡って育毛剤を使い続けていたことを。
人間の尺度にあわせると、およそ数十万年といったところか。
だがこの好機を逃す手はない。
「命を懸けてでも俺の男としてのステイタスを守り切ってやらぁ!!!」
後のことなど一切考えない。持てる力をすべての一撃に。
全力で飛び込んで拳を放つ。
ユーベルコード:灰燼拳
「まだこの年でハゲたくねぇんでなぁ!! 喰らいやがれぇぇぇ!!!」
可聴域から外れた邪神の絶叫が周囲の瓦礫を吹き飛ばす。
渾身の一撃を放って動けない巌の前に、満身創痍の毛根全部枯れロイガーがゆらりと浮き上がる。
もうほとんど力は残っていない。が、力を振り絞ったあとの猟兵一人殺すくらいはできるのだろう。
二人の目があい……邪神の黄色い瞳に、矢が突き刺さる。
小夜がコンパウンドボウから放ったものだ。
今度は悲鳴も上げず、邪神は倒れた。
この世界と自らの毛根を守れたことに安堵しながら、猟兵たちはUDCに事後処理を依頼する。洗脳された格闘家たちも、病院でしかるべき手当を受ければ意識と正気を取り戻すかもしれない。
彼らの髪が蘇るか……それは神のみぞ知ることである。
大成功
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