●未来への筋道
ヤマシマのおやっさんのもとで働き始めて2年が経った。
妹たちも随分大きくなって、今は家庭教師の下で勉強を教わってる。
気付けばあたしよりも物知りになっていたもんだから、驚いちまう。
あいつらなら、もうあたしみたいな稼ぎ方はしなくて大丈夫だろう。あたしの貯金も大分貯まってきたし、そろそろヤマさんともお別れだ。
薄暗い部屋の中で化粧を直しながら、あたしは次の客を待つ。
ぎぃとドアが開き、客が来たかと身構える。だが、そこに居たのは同い年くらいの女だった。
「我らが神の元から去った哀れなあなたを、迎えに上がりました」
「え……?」
●連続少女失踪事件
「親父、またでさ」
ヤマカワ組の組長室。組長のヤマシマの前でに並ぶ男達の中で、頬骨の張った男が苦虫を噛み潰したような顔で告げる。
その報を聞いた組長は表情を変えず、革張りのソファにどっしりと深く腰掛けながら、葉巻の煙を長く吐いた。
「ここんとこ、これで6件目です。どいつもこいつもウチのシマで稼がせてた女共だ。あいつらまるで煙みたいに消えちまいやがる」
そんな男の報告に、強面の男が忌々し気に続けた。
「中にゃあのエミもいやがる。親父の恩も忘れやがって。探して落とし前を……」
「シベカワだ」
組長が静かに、しかしドスの効いた声で遮った。
「どういうことでさ?」
「シベカワの奴らの企業都市が、女どもをさらってるってぇ情報がある」
「しかし親父、それとこれとは……」
頬骨が戸惑うように聞く。まるでエミに肩入れでもしてるような……。
「馬鹿野郎。消えた女の名簿をよく見やがれ。どいつもこいつもシベカワが勢力を伸ばしてきたとこから逃げてきた連中だ」
ヤクザたちが顔を見合わせる。確かに、ここ一、二年でシベカワが勢力を増したせいで住む場所を追われたりした女ばかりが消えている。つまり、女たちはシベカワの企業都市に連れ去られた、ということか。
「奴らの企業都市は怪しげな宗教をでっちあげてガキどもを洗脳し、使い潰す」
組長は怒りを滲ませた声で、部下たちに告げる。
「シマのもんを奪った挙句、壊そうたぁいい度胸だ。そんな奴らがどうなるかわからせてやる」
ギロリと部下を睨みつける。
「戦争だ」
●そして猟兵は動き出す
「皆様、サイバーザナドゥの企業都市というのをご存じかしら?」
集まった猟兵達に向かって、エリル・メアリアル(|孤城の女王《クイーン・オブ・ロストキャッスル》・f03064)が尋ねる。
企業都市とは、ある特定のメガコーポの影響力が強く、実質的に一企業の支配下に置かれた都市のことを指す。
警察組織や政府などの全てが一社の都合の良いように出来ているので、他のメガコーポも簡単には手を出せない地域と化してしまう。
「そんな企業都市のうちの一つ……シベカワ商会が牛耳っているサンズ・シティというところにヤクザ組織が襲撃するのを予知しましたのよ!」
襲撃するのはヤマシマ組というヤクザ組織だ。どうやらヤマシマ組が囲っていた女たちをシベカワに奪われたらしく、それを取り戻そうとしているのだ。
「ヤマシマ組のやろうとしていることはともかく、これはシベカワの企業都市の力を弱めるチャンスですわ!」
エリルはそう言って力強く笑う。
「皆様もヤマシマ組の襲撃隙をついて、このサンズ・シティを攻撃してくださいまし!」
作戦は単純だ。ヤマシマ組の襲撃に合わせて猟兵も企業都市に乗り込み、都市内部のオブリビオンを可能な限り叩く、というもの。
「この企業都市は、この都市独自に確立させた宗教によって市民を統率していますの。おそらく迎撃に出てくるのは、そうやって洗脳された超能力者達ですわ。一人一人の力は強いとは言えないけれど、数が多いのが厄介ですわね」
この戦いでは、ヤマシマ組のヤクザ達も大暴れしている。おそらく乱戦状態になるだろう。
「その分、ある程度数を減らせれば、この企業都市の中枢に潜り込んで、そこを叩くことも可能ですの!」
そうすれば、企業都市に広がっている宗教――洗脳そのものの原因を断つことも出来るだろう。それが出来たならば、この企業都市、ひいてはシベカワが大幅に弱体化するはずだ。
「あとの細かなところは、皆様の判断にお任せいたしますわ。ヤマシマ組もヤクザ組織。この襲撃を利用してそちらの弱体化を狙っても構いませんわよ」
エリルはそう言うと、グリモアを輝かせた。
「皆様の力を、お貸しくださいませ!」
G.Y.
こんにちは。G.Y.です。
今回はサイバーザナドゥでの事件をお届けします。
今回のシナリオは過去の自分のシナリオでも登場している『シベカワ商会』と『ヤマシマ組』が登場します。
また、冒頭のキャラクターはシナリオ『路端の花の女達』で登場しているキャラクターと同一人物ですが、基本的に前回のシナリオを知らなくてもご参加可能となっております。
第1章は集団戦です。
戦場はヤマシマ組も参戦しており、乱戦状態となっています。
大暴れして中枢への道を開きましょう。
第2章はボス戦です。
この企業都市のボスとの対決になります。
このボスさえ倒せば、この地域のシベカワ一強状態は解消されるでしょう。
第3章は再び集団戦です。
残存するシベカワの配下を倒すことで、シベカワのこの町での力の大部分を失わせることが可能です。
また、ヤマシマ組は未だ戦っている状況ですので、この機に乗じてヤマシマ組の勢力を削ぐことも可能です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『サイキック少女隊』
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POW : サイキックソード
任意の部位から最大レベル枚の【サイコエネルギーの剣】を生やして攻撃する。枚数を増やすと攻撃対象数、減らすと威力が増加。
SPD : サイキックアロー
【指先】から無限に供給される【サイコエネルギーの矢】を、レベル分間射撃し続ける。足を止めて撃つと攻撃速度3倍。
WIZ : ヒュプノサイキック
【催眠サイキック光線】を飛ばし、命中した対象をめろめろにする。対象の傷を治してもよい。
イラスト:透人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
高層ビルの立ち並ぶサンズ・シティ。そのビルの足元で爆音が響く。
「やっちまえ!」
「うおおーー!!」
鬨の声とともに雪崩れこんでくるのは、ヤマシマ組のヤクザ達。
そのド派手な襲撃に駆けつけたのは、まだ年端もいかないような少女達であった。
「まったく……我が神の膝下でこのような狼藉をなさるとは……」
「我らの神の名のもとに、排除いたします」
そう口々に神を称えながら、少女達は傷も厭わずに前進してくる。
おそらく洗脳され、戦力として投入されているのだろう。
中にはヤマシマ組の縄張りから連れ去られた少女の姿もあるようだった。
「我らが神の威光を、とくと見なさい!」
ヴィリー・フランツ
心情:OKOK、乱戦ならこっちの土俵だ、うちの会社のハクを付けるには持って来いの依頼だ。
手段:「|海兵隊、出撃!降下、降下!《sally forth Marines!Jump!Jump!》」
【宇宙海兵強襲部隊】を飛行型揚陸艇共々召喚、開けた場所へ降下し海兵隊を小隊単位で展開、都市中枢へ一気に突っ込む!揚陸艇は兵員降下後は上空より援護射撃、進撃の支援だ。
俺はブルパップ小銃での射撃、海兵隊もレーザーライフルでの射撃や近接武器で攻撃してもらうが⋯問題は攫われた女もいるんだよな、精神汚染の度合いが低く、まだ回復可能ならパラライズガンで無力化する、駄目ならひと思いにだな、主よ、罪深き我を赦し給え。
高層ビルの立ち並ぶサンズ・シティ。骸の雨が降り注ぐその空に、黒い影が現れた。
「OKOK、乱戦ならこっちの土俵だ」
現れたのは、飛行型揚陸艇、そのデッキに立って笑い声を上げるのは、ヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵であり民間軍事請負会社のCEO・f27848)である。
揚陸艇の中には、ヴィリーの呼び出した海兵隊の幽霊達が並んでおり、それぞれがレーザーライフルや近接武器を装備していた。
「うちの会社のハクを付けるにはもってこいの依頼だな」
そう言うと、ヴィリーもメットを被って息を吸った。
「|海兵隊、出撃《sally forth Marines!》!」
叫ぶと同時に、デッキに立つ海兵隊の仲間達が身構える。
「|降下、降下!《Jump!Jump!》」
その号令に合わせ、ヴィリー達は一斉に企業都市へと降下していった。
落下傘がぱ、ぱ、と開く。中央広場に降下したヴィリー率いる海兵隊達はみな手際よくベルトを外すと、そのまま乱戦状態の戦場へと突っ込んでゆく。
「|行け行け行け!!《GoGoGo!!》」
ヴィリーはブルパップ小銃を構えて海兵隊を促すと、海兵隊達はレーザーライフルの銃口をサイキッカー達に向けながら走る。
「あれは、新たな異教徒ですね」
「我らが神の意志を知れば、きっと改宗もされましょう」
サイキッカー達がそう言って念じ始めると、戦場に念動波が発生する。それは精神に影響を与え、彼女達の信奉する神を崇めるよう仕向ける波動であった。
「これが精神汚染か!」
ヴィリーはそれに耐えながら、サイキック少女たちの瞳を見る。
「抗っているな」
少女は攻撃を続けながらも、苦しそうな表情をしていた。この少女はおそらく、話に聞く攫われた女なのだろう。だが、まだこの街に連れられて日も浅く、洗脳も完璧ではないように見えた。
それならば、と、ヴィリーは手にしていた小銃を一度下げて、もう一方の銃……パラライズガンを構える。
「眠っていろ」
「あぁあああっ!?」
放たれた光線は少女の身体を貫き、全身を麻痺させた。
「あぁ、哀れな」
「信仰が足りないのです」
麻痺し、倒れた少女を嘲笑う少女達。彼女達の瞳からはおよそ正気というものは失われているようだった。もはや、彼女らは救えまい。
「撃て」
小銃を構え、トリガーを弾きながらヴィリーは海兵たちに言う。直後、銃弾の雨が少女たちを貫いた。
「あぁ……神よ……」
倒れ、骸の海へと帰ってゆく少女達。その姿を見届けながら、ヴィリーは呟いた。
「主よ、罪深き我を赦し給え」
それは彼女達のそれとは違う、ただの呟きでしかない。
だがそれでも、彼にとってはそれで十分だった。
大成功
🔵🔵🔵
フィデル・マルカ
神?どうせ自称しているだけの勘違い野郎だろう。
僕の前でお前達の神を語るな。不愉快だ。
信者に対してこんなことを言えば宣戦布告になるだろうね。
続いて導者のマントをリーダー格のような者がいればそれに投擲して、戦いの火蓋を切る。
マントが無くなればより動きやすい、身軽になった状態で翔空を使い確実に2回攻撃を打ちこんでいくよ。
敵からの攻撃は導者の剣で受ける。受けた反動くらいなら平気、そんなもので僕は止まらない。
人を洗脳しなければ信仰が得られない存在が神を騙るなんてね。
どこまで図々しいんだろう。
それに比べてヤマシマ組の考え方は嫌いじゃない。
悪事に手を染めてるかもしれないけど、人助けしてた事実は事実。
「我らの神の怒りに触れた罰を」
「罰を」
少女達のうちの一人が口にした言葉に反応し、少女達は一斉に同じ言葉を口にした。
「我らの神を信じぬものに制裁を」
「制裁を」
号令を出しているのはリーダー格なのだろう。その少女の言葉に合わせて声を上げる少女達の様子は、悍ましさを滲ませる。
そして、その言葉にフィデル・マルカ(静かな伝承者・f29494)は不快感を露わにしていた。
「神?」
フィデルはマントを外しながら問う。彼女たちの信仰する神とは、所詮洗脳の為に存在する道具でしかないだろう。だというのに、少女達をここまで心酔させることも許し難い。
だから、外したマントを投げつけて言ってやる。
「どうせ自称しているだけの勘違い野郎だろう」
マントが、ばさりとリーダー格の少女に被さった。
「僕の前でお前達の神を語るな。不愉快だ」
頭からかぶったマントを、リーダー格の少女が取り去る。
その下からは、怒りに打ち震えた少女の表情が覗いていた。
「我らが神を愚弄したものに……死を!!」
叫び、少女が指先をフィデルに向ける。その後を追うように、周囲の少女達も次々とフィデルに指先を向けてゆく。
「挑発に乗りやすいね」
戦いの火蓋が切られたと同時に、激しいサイキックアローの雨がフィデルを襲う。
だが、マントを外して身軽になったフィデルは風の魔法を駆使して空へと舞い上がり、手にした二振りの剣を構える。
「上です!」
リーダーの号令に、少女達が指先を空に向ける。だが、その攻撃もフィデルは想定済み。手にした剣を振って超能力の矢を弾き返す。
「そんなもので僕は止まらない」
そう言い、フィデルが一気に少女に肉薄すると、ひゅんと剣で風を切って、少女達を次々と切り裂いてゆく。
「人を洗脳しなければ信仰が得られない存在が神を騙るなんてね」
二本の剣で少女達を斬り伏せながら、フィデルはため息をつく。
「どこまで図々しいんだろう」
「あ……あぁっ……!」
倒れた少女達を前にして、リーダー格の少女は後ずさる。
「それに比べてヤマシマ組の考え方は嫌いじゃない」
ひゅん、一陣の風が吹いた。リーダー格の少女が崩れ落ちる。
静かになった戦場から、フィデルは遠くの乱闘騒ぎを眺める。ヤマシマ組と少女達が戦っているのだ。
彼らは悪人。それは間違いない。だが、その過程で人助けをしていた事実も、事実として存在しているのだ。
「さぁ、行こう」
ヤマシマ組のおかげで、中枢への道は手薄となった。
この都市を支配する偽物の神を屠るため、フィデルは駆ける。
大成功
🔵🔵🔵
マキナリ・ウドウ
まずヤクザ側と接触しようか。兵隊として雇ってもらえれば小遣い稼ぎになるし、話しを通しておかないと後ろから撃たれかねないからねえ
敵は若くて美人揃いで、もったいないけど仕方ないかあ。……なんだい、ヤクザの兄さん知り合いでもいるのかい?
やめといた方がいいぞ。サイキッカーなんて何してくるか分からないからねえ。……親父の方がこわい? あー、なるべく生かして捕まえるよう努力するか
UC【サイバーリンクシステム】。義体の両腕の精度を上げる。格闘戦で相手のサイキックの刃に触れないよう攻撃を捌き、力を加減しながら殴りつけて昏倒させる事を試みる。相手が洗脳されただけのシロウトならいけるかもな
傷とか残ったらゴメンねえ
企業都市『サンズ・シティ』に攻め込んだヤマシマ組と、防衛に出てきたサイキック少女達との戦いは熾烈を極めていた。
都市のところどころで爆発が巻き起こり、叫び声がこだまする。
そんな中、ふらりと男が現れた。よれよれのジャケットを羽織った、どこか軽薄そうな中年男性はまるで居酒屋に入る時のような態度でヤマシマ組の人間に接触する。
「よっ、ここの責任者さんはあんたかな?」
その男の名はマキナリ・ウドウ(首輪付き・f45204)。猟兵としての活動以前から、傭兵家業を営んでいる男である。
「俺を兵隊として雇っちゃもらえませんかねぇ?」
マキナリが頭を下げると、ヤクザは怪訝そうな顔をする。
こんな場所で得体のしれない男など信用できるのか……。だが、オブリビオンを相手にしているヤマシマ組は、やや劣勢を強いられていた。
「はっ、なら報酬は出来高払いだ。死んだら報酬無し、見舞金もねぇ」
「それでいいですよ、後ろから撃たないってんならね」
にやりと笑ったマキナリは、敵群へと振り返る。
「にしても、敵は若くて美人揃いで、もったいないけど仕方ないかぁ」
少女達はオブリビオンとなり、さらに洗脳まで施されている。倒すほかは無いのだろう。が、そのマキナリの言葉にヤクザの男が制止する。
「こいつらは殺すな」
ピッと写真を投げ渡すと、マキナリはその写真を眺めながら聞く。
「なんだい、ヤクザの兄さん知り合いでもいるのかい」
渡された写真に写されていたのは、まだ年端もいかないような少女達であった。目の前のサイキック少女達と同年代の者もいれば、少し年下のように見える者まで。
写真の中の女たちは、皆笑っていた。が、マキナリは真剣な口調でヤクザに忠告する。
「やめといた方がいいぞ。サイキッカーなんて何してくるか分からないからねぇ」
「だが、親父は連れ帰れってんだ」
その表情は、恐怖と崇拝が混ざっていた。なるほど、親父の方が怖いか。そう内心で笑いながらも、マキナリは気怠そうに言う。
「あー、なるべく生かして捕まえるよう努力するか」
コートから露出した鋼の拳を握り、マキナリは周囲を見渡した。
「神……にっ……従わないもの、には……!」
少女達がヤクザ達に迫る。彼女達はまだ洗脳の効果が十分ではないのだろう。口では神を称賛しつつも、苦しそうな表情を浮かべていた。
「死を……!」
手からサイコエネルギーの剣を生み出して、振り上げる。そんな中。
懐に入り込む影があった。マキナリである。
サイキッカー達は戦闘で機械を使わない。そのため、有線接続できるような設備はいくらでもあった。そんな設備と接続され、腕から伸びたコードを振り回し、制度を上げたマキナリの拳が少女の腕を軽く打つ。
「うぅっ!?」
思わずサイコエネルギーの剣が消えてしまう。
「スポンサーの意向だからねぇ」
やれやれといった口調でマキナリは笑いながらも、瞳はしっかりと少女を見据えている。
そして、マキナリは拳を少女へと打ちつけた。
「うっ……!!」
小さく呻き、少女が倒れこんだ。
「傷とか残ったらゴメンねぇ」
息があることを確認し、マキナリは手を合わせる。サイバーリンクシステムによって精度の上がった拳は、少女にしっかりと手加減を加えていたのだ。
「……よくやった。生きて帰ったなら報酬に色をつけてやるよ」
昏倒した少女を抱きかかえながら、ヤクザは言う。
「へへ、いい小遣い稼ぎさせてもらいますよ」
笑いながら、マキナリは残る少女達へと対峙するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
うーん、これは大乱戦だね……好都合だし利用させて貰うか
…心理隠密術式【シュレディンガー】を起動…乱戦にこっそり紛れ込むとしよう…
…そしてヤマシマ組と交戦しているサイキック少女に対して【慈悲深き死神の手】で急所を攻撃…一撃で仕留めるとしよう…
周囲をまとめ上げてるリーダー格の少女がいればそれを優先して仕留めることでヤマシマ組を間接的に援護…楽をさせて貰うとしようか
…攫った少女達を洗脳して兵士に仕立て上げるとはね……ヤマシマ組が怒るのも無理はない…
…この調子で隠密行動をしながら中枢まで攻め込むよ…
サンズ・シティに雪崩れ込むヤクザ達と、それを迎え撃つ少女達。
企業都市の各所で巻き起こる戦いは、いつしか町全体を炎で包んでしまうようであった。
「うーん、これは大乱戦だね……」
そんな街にこっそりと忍び込んでいたメンカル・プルモーサ(星導の魔女・f08301)は、物陰に隠れて眺めた光景に、小さく息を漏らした。
それにしても、とメンカルは思う。
「攫った少女達を洗脳して兵士に仕立て上げるとはね……ヤマシマ組が怒るのも無理はない……」
少女達は皆、喜び勇んで死地へと向かっている。その様子は、傍から見て異常としか言う他は無かった。
この異常な街を破壊するには、街の中枢部に向かうしかない。その為には少女達の数を減らす必要がある。
「好都合だし、利用させて貰うか」
メンカルはそう言うと、手をかざした。
「空なる孔よ、開け、閉じよ」
その詠唱とともに、サイキック少女のいる空間に歪みが生まれた。
「汝は切削、汝は虚現」
まだ少女は気付いていない。その少女を射程に収めたメンカルは、詠唱を続ける。
「魔女が望むは世界切り取る虚空の手」
すると、ばつん、と少女の胸のぽっかりと穴が開いた。まるでその空間には何も無かったかのように、空間ごと、少女の身体が削り取られたのだ。
「……っ」
少女は言葉を発することもなく、その場で倒れ伏す。
「え、何?」
隣に立っていた少女が振り向いた次の瞬間、同様に身体が吹き飛んでいた。
次々と少女達が消えてゆく。ヤクザ達は一瞬戸惑いを見せたが、この状況を好機と見て、一気に攻勢をかける。
その中でメンカルは一人、最後列に立つ少女に目を止めた。
「あれが、リーダー格か……」
再びメンカルは手をかざす。
「楽をさせて貰うとしようか」
リーダー格の少女の急所が消し飛び、がくりと崩れ落ちた。
その姿に混乱する少女達に、勢いに乗るヤクザ達。形勢は完全にヤクザに傾き、烏合の衆と化した少女達など、もはや敵ではなかった。
「さて……」
防衛する少女達もまばらになった中枢へと、メンカルは目を向けた。
この先に、彼女達を洗脳する何かがある。メンカルは静かに、中枢へと攻め入るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『プセウドテイ』
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POW : 積まれし祈念、今ぞ裁きと化す
偽物の【祈りが生む空間の歪み】を創造し、戦場上空に浮かべることで、【骸の雨】による連続攻撃能力と超再生能力を得る。
SPD : 信じるほどに、滅びは深まる
自身の【これまで集めた信仰心】を代償に、1〜12体の【オブリビオン】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ : 我が与えるは、福音か災厄か
【全身から電脳波】を放ちダメージを与える。命中すると【相手の生命力と正気】を獲得し、自身が触れた対象の治癒or洗脳に使用できる。
イラスト:須田デジタル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠薄翅・静漓」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『祈るがよい』
『信じるがよい』
『我こそは裁きを下すもの』
『我こそは意思』
『我こそが』
『神である』
サンズ・シティ中枢。一等高いビルの最上階に、その『顔』はあった。
鉄とコードを組み合わせ、人の顔を模した機械。それこそがこの街の『神』の正体だったのだ。
その顔、プセウドテイから強い精神干渉波が発せられている。この力で、プセウドテイは少女達を洗脳し、死をも厭わぬ兵士へと作り上げていたのだろう。
『祈るがよい』
『信じるがよい』
『我が慈悲を授けよう』
『滅びを与えよう』
プセウドテイが再び、強い電脳波を放とうとしていた。街で戦うヤクザ達や、猟兵達をも洗脳しようというのだろうか。
もはや交わす言葉もない。今こそ、偽りの神が滅びる時だ。
ヴィリー・フランツ
※共闘ご自由に
心情:文字通りデカい顔しやがって、世迷言を言うお前なんぞこうしてやる。
手段:「┃デウスエクスマキナ《機械仕掛けの神》ってか?0と1しか分からん存在がバカ言いやがる!」
【指向性EMP発振弾頭】を装填、これを叩き込んで機能不全を起こす!
奴が動きを止めたら通常弾を装填、掃射開始、プラズマグレネードも投擲する、弾が切れたら予備弾薬から適合弾薬を再装填する。
敵の攻撃は個人携帯型磁場展開式偏向フィールドを展開して防ぐ、奴の降らせる汚染雨も同様だ、と言うか奴も修復されるから攻撃を絶やさない様にするのが肝要たな、その辺は他の猟兵と協調する事で修復以上のダメージを与えられる様に調整しよう。
マキナリ・ウドウ
ビルを地上から眺めながらタバコに火を付ける。
やれやれ。図々しくて押しつけがましいねえ。
俺が信じるのは幸運の女神様だけだ。いつもお祈りを欠かせない。戦場で流れ弾に当たりませんように、だけどギャンブルは当たりますようにってな。
UC【機巧の守護者】。出番だ。電脳を介して待機させていた戦車を呼び、『Pi』と戦車のAIが返事をする。
地上からビルの最上階を砲やミサイルで攻撃させる。
周囲への被害? ここはシベカワの都市だ。ちょっとくらい良いだろ。
あ、でも撃ちすぎるなよ? 弾代で赤字はカンベンだ。『Pi?』
俺は武器を抜いて召喚されたヤツらの相手だ。戦車のガトリングが空いているから援護射撃させる。
プセウドテイが強い精神波を放つ。
その力は光を放ち、厚く覆ったサイバーザナドゥの雲を撫でるように広がってゆく。
「……やれやれ」
マキナリはその光をビルの真下から眺めながら煙草に火をつけた。
「図々しくて押しつけがましいねえ」
ふぅ……と煙を吐いて、空を仰ぐ。彼の見上げたビルの上では、今まさにこの街の未来を左右する戦いが始まろうとしていた。
『我を崇めよ。我を信じよ』
プセウドテイの声が最上階に響く。その言葉そのものが精神波になっているのだろう。
そんな声に煩そうな顔をしたヴィリーが、皮肉たっぷりに吐き捨てた。
「文字通りデカい顔しやがって」
ヴィリーはまっすぐにプセウドテイを見て続ける。
「|デウスエクスマキナ《機械仕掛けの神》ってか? 0と1しか分からん存在がバカ言いやがる!」
そう言いながら自身の銃に弾頭を装填すると、その銃口を真っ直ぐに突き付けた。
「世迷言を言うお前なんぞこうしてやる!」
放たれたのは【指向性EMP発振弾頭】。機械に機能障害を引き起こすEMP発生機がプセウドテイの眉間に突き刺さった。
『……が、ガが』
「よし、効いたか!」
ヴィリーはそれを確認するや、すぐさま通常弾を装填する。
『ツ、ツツツマレし祈念……ッヴヴ……』
「……むっ」
ヴィリーが嫌な気配を感じで手を止めた。ビルの最上階、プセウドテイが鎮座するだけの殺風景の部屋が歪み始めたのだ。
天井のあるはずの部屋に、骸の雨が降り注ぐ。その雨粒一滴一滴が酸のように身体を傷つけ、代わりにプセウドテイは傷を癒してゆく。
「機能不全を回復させる気か!」
ヴィリーは個人携帯型磁場展開式偏向フィールドを展開して骸の雨を退けながら、銃弾を放つ。銃弾はプセウドテイの装甲を深く穿つが、直後に骸の雨が滴って、そのへこみを修復していってしまう。
だが、EMPの効果は出ているようだ。骸の雨の力は弱く、回復力もそれほどではない。
「攻撃を絶やさないようにしないとな」
ヴィリーはそう判断し、銃弾を浴びせてゆく。間もなく銃弾が切れる。予備弾薬を準備しようとしたその時だった。
『シンじるほどに、滅びはハハハ、深マ、ママル』
その歪んだ空間に、オブリビオンが現れた。プセウドテイの洗脳した少女達を模した人形だ。
「ちっ、攻撃を集中させない気か!」
オブリビオン達が盾になり、ヴィリーの銃撃を受け止めてしまう。
このままではプセウドテイの傷は完全に修復され、折角機能不全を起こさせたEMPさえも破壊してしまうだろう。
その時であった。
どぉん――!
そんな爆音とともに、歪んだ空間に爆炎が広がった。なんと、プセウドテイ目掛け、一発のミサイルが突っ込んできたのだ。
「これは……!」
ヴィリーが爆炎の中、ミサイルが撃たれたであろう方向を見る。
それは地上から放たれていた。そこにはミサイルや砲塔で武装した一台の電脳戦車が構えていたのだ。
戦車は続けてミサイルを乱射し、戦場を爆炎で包んでゆく。
「おいおい、撃ちすぎるなよ? 弾代で赤字はカンベンだ」
黒く煙る戦場の中から現れたのは、マキナリであった。
『Pi?』
戦車が首(?)を捻った。
マキナリは戦闘前、自身の電脳戦車『ヤタ』を呼び出すと、戦場めがけて砲撃するよう、指示をしていたのである。
『Pi』
「周囲への被害? ここはシベカワの都市だ。ちょっとくらい良いだろ」
そう無責任気味に笑ってから、マキナリは最上階へと向かったのであった。
「俺が信じるのは幸運の女神様だけだ。いつもお祈りを欠かせない」
戦場に到着したマキナリは、プセウドテイを見ながら告げる。
「だけどギャンブルは当たりますように……ってな」
わざとらしく手を合わせて、マキナリは挑発するような仕草をする。
プセウドテイはもうもうと煙を上げながらマキナリをギロリと睨むと、マキナリもまたヒート・ノコギリを抜いた。
「室内だってのに雨が降ってやがんなぁ」
ヒート・ノコギリに落ちた骸の雨が『じゅう』と蒸発するのを見て呟く。それを聞いたヴィリーが口を開いた。
「この雨は敵の傷を修復してしまう」
ヴィリーが説明を始めると同時に、オブリビオン達が飛び掛かってきた。
「絶え間ない攻撃が肝要だが……」
間髪入れずにプラズマグレネードを放つと、強い青色の閃光が爆発し、オブリビオン達を吹き飛ばした。しかし、まだ続々とオブリビオンは現れてくる。このオブリビオンの相手までするとなれば、厄介だ。
「よし、なら俺はこいつらの相手だ」
マキナリがそう言うと、戦車に指示を出す。
「ミサイルと砲の攻撃は継続。空いてるガトリングで援護しろ」
『Pi』
直後、地上から無数の弾丸が放たれ始めた。弾丸降りしきるなかでマキナリが強く踏み込むと、ヒート・ノコギリを振ってオブリビオンを真っ二つにする。
「よし、任せる!」
マキナリがオブリビオン達の相手をしているその隙間を縫って、ヴィリーがプセウドテイへと駆ける。
その間にもミサイルや砲弾はプセウドテイへと放たれ続け、骸の雨の回復能力はほぼ無意味となっていた。もう一押しで致命的なダメージを与えられるであろう。
「よぉし、ならこいつも持っていけ!」
ヴィリーが無反動砲を構え、プセウドテイに照準を合わせる。
「喰らえ!」
『…………!!!!』
ロケット弾が放たれた。それはプセウドテイの空洞に入り込み、内側で大爆発を起こしたのである。
『が、ガガガ、ガ……』
ところどころで爆発音が響き、部品がスパークする。
偽りの神は、二人の猟兵による怒涛の攻撃によって大きな損傷を負うことになるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
精神波で干渉しないと信仰されない自称神か…もうちょっと頑張った方が良かったんじゃないかな
…まあそうプログラムされただけの存在なんだろうけど…と
【起動:応用術式『星符』】により【我が身転ずる電子の精】を発動…目と腕を粒子化するよ…
あの洗脳波が電磁波でありプセウドテイが神を自称しても機械である以上これで直接干渉できる…
…電磁波を兆候を読み取って黎明剣【アウローラ】で切り払いながらプセウドテイに接近…
…粒子化した腕をプセウドテイの電子頭脳に干渉…電磁波発射機能を麻痺させて…そのまま可能なら動作停止を狙うとしようか…
『信仰せよ。祈りを捧げよ』
機械的な音声が鳴り響く。その音は無機質でいてどこか心地が良く、聞くものの頭を痺れさせるような感覚に陥らせた。
その音声と共に発せられる精神波の波長を確認しながら、メンカルは呆れたように呟いた。
「精神波で干渉しないと信仰されない自称神か……もうちょっと頑張った方が良かったんじゃないかな」
そう評し、さらに付け加える。
「……まあそうプログラムされただけの存在なんだろうけど……」
きっと洗脳の都合が良いように『神』という役割を与えられただけなのだ。まるでがらんどうの神。それこそが、目の前のプセウドテイなのだろう。
「あの洗脳波が電磁波であり、あれが神を自称しても機械である以上……」
取り出したのは一枚のカード。それを掲げ、メンカルは呟いた。
「我が身転ずる電子の精……」
直後、メンカルの眼と腕の輪郭がぼやけはじめた。カードに込めたユーベルコードの力によって、メンカルの身体の部位が粒子化したのだ。
「これで干渉できる……」
そうしてメンカルは粒子化した瞳でプセウドテイを見る。
すると、空間に僅かな『波』がさざ波のように収束するのを感じ取った。
「来るね……」
夜の闇の色を刀身にたたえた剣を抜いて、メンカルが構える。
『我を信仰せよ。我の裁きを受けよ』
直後、プセウドテイから精神波が放たれた。
だが、既に身構えていたメンカルは、それをやすやすと斬り払い、プセウドテイへと近付いてゆく。
二度、三度。何度となく精神波がメンカルを侵そうとしても、メンカルはそれをことごとく切り裂いていた。
灰の魔女として、それは実に容易いことであったろう。
メンカルはそのままプセウドテイへと肉薄する。
「……あれか」
メンカルの瞳が、電磁波の発生源と、それを司る電子頭脳を見つめると、おもむろに手を伸ばす。
メンカルの腕はずるりとプセウドテイの装甲をすり抜けて、内部へと侵入してゆく。
「それを、麻痺させる……」
メンカルの指が電子頭脳にそっと触れた。
『し、シシし、死、を……!』
電子部品がスパークする。電子頭脳が電磁波を放つための回路をショートさせ、ぷすぷすと煙が上がり始めた。
『が、がが……!!』
精神波が止まる。もはや『神の言葉』は満足に発することも出来ないだろう。
所詮は機械。神を名乗ることなど烏滸がましいのだと、証明するようであった。
大成功
🔵🔵🔵
フィデル・マルカ
…なるほど、巨大な機械。
この世界にはぴったりの神かもしれない。
僕の中で納得できたから苛立ちは収まった。
冷静にこれを破壊しよう。
先程の少女達のために。ヤマシマ組の者達のために。
ユーベルコード霖雨を発動、機械を切り刻む。
これ、動くのだろうか。動かないなら切り放題だ。
でもあまり時間をかけたくない。この声がたまらなく不快になる前に終わらせよう。
特に額のセンサーを狙う。根拠は無いが洗脳の発信源はこれな気がするから。
召喚によって敵の数が増えたら…どうしよう。
少し悩むが取り巻きから片付ける。
機械を攻撃している間に召喚物から攻撃されるのに耐えきれる自信がないからだ。
身を翻して攻撃を受け流しつつ敵を撃破しよう。
サンズ・シティを支配するプセウドテイを見上げて、フィデルは納得がいったかというような声を上げた。
「……なるほど、巨大な機械」
摩天楼の頂きで炎が上がる。それでもなお少女達を精神支配しようとする神に皮肉を込めて、フィデルは言う。
「この世界にはぴったりの神かもしれない」
これまでの苛立ちは収まり、静まった心でプセウドテイを見つめる。
こんな機械に狂わされた少女達を救うべく……そして、ここを攻め込んでいるヤマシマ組のために。
導者の剣を抜いて身構える。そして。
「……行くよ」
フィデルは軽やかに床を蹴った。
二振りの剣で舞うように剣を振れば、厚い装甲は切り裂かれ、内部の機械が砕かれる。
巨大な図体をしたこのプセウドテイは、動くことが出来ない。フィデルはこれ幸いにと、怒涛の連続攻撃を仕掛けていた。
『……オォォォォ』
「……っ」
プセウドテイから発せられる機械音は、思わず耳を塞ぎたくなってしまう。
精神干渉波の混ざり合った音声はフィデルにとって不快であった。そして。
「……敵が増えたね」
その声は、オブリビオン達を呼び寄せるのだ。
少女を模した機械人形がフィデルの周囲を取り巻いていた。
「仕方ない」
フィデルは僅かな逡巡の後に、導者の剣を周囲の人形達へと振るった。自身の耐久力に対し、無視するには多すぎると思えたのだ。
身を翻し、攻撃を人形たちの攻撃を避けフィデル。だがその分プセウドテイへの攻撃が滞る。
『信ジルほどに……滅び、滅ビ……』
その間にもプセウドテイは新たな人形を呼び出してしまう。これではジリ貧だ。
『滅びを与えよ……』
声が何重にも重なるように戦場に響き、フィデルを囲うようにオブリビオンが現れる。
『その者に、滅ビを』
プセウドテイの言葉に従い、人形達がフィデルを狙い、一斉に駆ける。もはや逃げ場はない。
――その次の瞬間。
たんっ、とまるで空気のように軽やかにフィデルが宙に舞った。
『が、あ……!』
攻撃対象を見失った人形達は、その勢いのままに同士討ちをしてしまったのだ。
それを眼下に見下ろした後、フィデルは巨大な顔へと目を向けた。
未だ、プセウドテイは耳障りな音をまき散らしている。フィデルは顔をしかめながら、剣の切っ先をプセウドテイに向けた。
「不快だよ」
ずん、と剣が額を割った。
その一撃は額に装着されたセンサーらしきものを貫き、内部の電脳部品までもを砕いたのであった。
『ウ、が、ガガガガ……!!』
まさにそれこそが精神干渉波の発信源。力を失ったプセウドテイの内部で、爆発が巻き起こり、それは周囲のパーツを巻き込み、巨大な炎となってゆく。
『ワ、レ、ハ……ガァァアア……!!』
炎と爆音に飲まれ、消えてゆくプセウドテイ。
これが、偽りの神の最後の姿となった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『刺青スレイブ・量産型A』
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POW : ラブリンポーズ
【煽情的なポーズからサイキックエナジー】を放ち、命中した敵を【刺青に由来する属性】に包み継続ダメージを与える。自身が【刺青を露出】していると威力アップ。
SPD : タトゥーディーヴァ
【刺青】から、戦場全体に「敵味方を識別する【洗脳歌曲】」を放ち、ダメージと【興奮】の状態異常を与える。
WIZ : 刺青アイドル
【刺青】に封印した【淫魔の薔薇】を解放し、戦場の敵全員の【心】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
イラスト:遊慧
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「……? なんだ?」
ヤクザが空を見上げた。
サンズ・シティの中でも一番高いビルから炎が上がったのだ。
「あ、あたし、これまで何を……?」
そして、今ヤクザの目の前で戦っていた少女が、戸惑うように武器を落とす。
プセウドテイが倒され、街を覆っていた精神干渉波が消えたことで、少女達が正気を取り戻し始めたのだ。
それは戦争の終わりを告げているかのようであった。
「おっと」
ヤクザはよろけた少女を支える。見覚えのない少女だ。おそらくシベカワはかなり広範囲から少女を攫ってきていたらしい。
「……アニキ、こいつらどうすんでさ」
下っ端のヤクザがリーダーらしき男に尋ねる。
「連れて行け。ウチのシマのもんを奪ったシベカワからは奪い返せとお達しだ」
その命に従い、ヤクザは少女を担ぎ上げる。だがそんな時。
「その娘を離しなさい」
またも、女の声がした。
「それはシベカワの、この街の物。勝手に連れ出すことは許しません」
そう言った女は、胸に薔薇の刺青をしていた。これまでの少女達とはまた様子が違っている。どうやら彼女らは洗脳されてこの場にいるわけではない様子であった。おそらく、このような事態を見越して用意された戦闘部隊なのだろう。
この街の強固なシステムは崩れた。だがそれでもシベカワの這わせた根は深いようである。
いま再び、猟兵達の力が求められていた。
マキナリ・ウドウ
こりゃあ、シベカワも体勢を立て直してきたか。
ヤクザの兄さんがた、引き時だ。その娘を抱えてたら戦えないでしょう?
今回のお客でもあるから、なるべく守る方向で立ち回るさ。
もちろんボーナスも期待しているけどねえ。
それにしてもシベカワって美人が好きなのかねえ? ま、俺も好きだけどさ。
手袋を脱いで機械化義体の腕を露わにする。
UC【機巧銃拳道】。ヤクザ達を庇うようにバリアを張った右拳で敵の攻撃を弾き、左手に握ったチャカで反撃。そして銃撃で怯ませて拳撃で止めを刺す。
全員倒す必要はない。ヤクザや娘達が撤退する時間を稼げれば上々だろう。
シベカワのお嬢さん方も、適当なところで諦めてくれないかなあ?
「こりゃあ、シベカワも体勢を立て直してきたか……」
地上に戻ったマキナリは、新たに現れた刺青スレイブを見て、戦況が大きく変化したことを実感する。
救うべき少女達は助けられただろう、だがシベカワは未だにこの企業都市での覇権を握ろうとしている。
対するヤクザ達もまだ血気盛んな状態であった。
「ちょい待ち」
そんな彼らに、マキナリがひょいと現れた。
「ヤクザのお兄さんがた、引き時だ」
「あぁ?」
正面に立ったヤクザがマキナリに凄む。だがマキナリはへらっと笑ってそれをいなして、ヤクザの奥、リーダー格の男に目を向けた。
「その娘を抱えてたら戦えないでしょう?」
リーダーは無言でマキナリの言葉を聞き、そして告げた。
「引くぞ。おい、その女逃がすんじゃねぇぞ」
リーダー格が背を向けると、慌ててヤクザ達はその後を追う。
「逃がしません」
だが、それを制止しようと刺青スレイブ達が動く。ぐっと胸元を見せつけると、その刺青に描かれた薔薇の如く、茨状のサイキックエナジーが放出される。
「おっと」
そこにマキナリが割り込む。そして、おもむろに手袋に指をかけた。
「ボーナスは期待してるよ」
マキナリはそう言うと、その拳を曝け出す。
「どきなさい!!」
刺青スレイブが叫ぶ。直後、その瞳が街灯の明かりに鈍く照り返すもの――マキナリの機械化拳でいっぱいになった。
「それにしてもシベカワって美人が好きなのかねえ?」
ごっ、と鈍い音とともに刺青スレイブが吹き飛んだ。
「……ま、俺も好きだけどさ」
マキナリの拳が白い煙を吹いているように見えた。
倒されたのは少女達のたった一人。残る刺青スレイブ達は、若干怯みながらもマキナリへ向けて茨を放つ。するとマキナリは右拳を掲げバリアを放出。茨を弾き返す。
「オジサンと踊ってくれるかい?」
銀色の弾丸が刺青スレイブの肩を抉る。正確無比、そして早業の射撃がマキナリの左腕に構えられていた拳銃から放たれたのだ。
「うっ……!?」
その隙を、マキナリは見逃さない。一気に踏み込むと、バリアを一点に集中して振り抜いた。
その強烈な一撃が、もう一人の刺青スレイブを叩きのめす。その姿を認めたマキナリは、ふぅと一息ついて、チラリとヤクザ達の方を見る。
既に背中はかなり小さくなっている。もう大丈夫だろう。
「シベカワのお嬢さん方も、適当なところで諦めてくれないかなあ?」
そうは言ってみたものの、刺青スレイブ達はまだ戦いをやめようという気配を見せなかった。
「仕方ないねえ」
軽く首を振り、再びマキナリは拳を握るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィリー・フランツ
心情:掃討戦だな、楽に終わると良いんだが。
手段:「各部隊、状況を報告せよ!」
【宇宙海兵強襲部隊】は市内に展開、シベカワの残敵を掃討せよ。
ヤクザはどうするかって?向こうからの攻撃を確認したら反撃して始末しろ、それ以外なら無視して構わん、最終的には現場の判断で良いとグリモア猟兵も言ってたしな。
良く考えればヤクザ如きが|パラミリタリー《準軍事組織》に喧嘩売るわきゃないか。
俺はゴーグル型HMDに部隊位置を投影し、指揮に専念するが、一応武装はしたが戦闘は任せても大丈夫だろう。
確保したサイキッカーの女は素直にヤクザに引き渡すか、使えそうなら連中に身請け金払ってウチの警備会社で雇うか、ヤクザの出方次第だな。
「いくぞ野郎ども! シベカワの残敵を掃討せよ!」
各所で未だ戦闘が続く企業都市の高台で、ヴィリーは叫んだ。
それに呼応するように、呼び出された宇宙海兵強襲部隊は一気に散開する。
ここからは掃討戦。洗脳された少女達ではない、シベカワに雇われたオブリビオン達が相手となる。
「楽に終わるといいんだが」
そうぼやきつつも、ヴィリーはゴーグル型HMDに表示された無数の点の動きを凝視していた。
ディスプレイ内には様々な情報が表示されている。海兵強襲部隊はもちろん、レーダーの分析から割り出した敵オブリビオン、そしてヤクザまで。それぞれ色分けされた光点がこの企業都市のマップの上で細かく動き回っていた。
部隊が刺青スレイブ達の部隊とぶつかり合う様子を確認すると、ヴィリーはつぶさに指示を出す。
「10時方向、構えろ」
今回、ヴィリーは指揮に徹することにしていた。自分自身も武装はしているが、呼び出した部隊の戦力だけで十分だろう、という判断でもあった。
「ヤクザはどうするかって? 向こうからの攻撃を確認したら反撃して始末しろ。それ以外なら無視しても構わん」
その言葉を放った直後、ヤクザらしき光点が消えた。
「……む?」
ヴィリーは意外そうな声を上げる。ヤクザへの対応は最終的には現場判断で構わないと言われていたので、光点が消えたことへの動揺はない。
だが、ヴィリーは『ヤクザ如きが|パラミリタリー《準軍事組織》に喧嘩を売るわきゃない』と思っていた。抵抗することが意外だったのだ。
嫌な予感がして、ヴィリーが叫ぶ。
「……各部隊、状況を報告せよ!」
その報告を聞いて、ヴィリーは目を見開く。
ヤクザ達の一部が敵についたのだ。
「さぁ、私達に従いなさい」
刺青スレイブが、ヤクザの胸板を撫でる。
「う、あ。ああ……」
ヤクザが海兵部隊を前にして、ドスを煌めかせる。
刺青スレイブは刺青の力でヤクザの心を奪ってしまったのだ。
「ふん、こんなところでも洗脳か」
ヴィリーは忌々し気に呟く。だが、やることは変わらない。
「全員攻撃」
その言指示を受けた海兵部隊がレーザーライフルを構えた。
不幸なヤクザに慈悲は無い。だが一つ、ヴィリーは命令を付け加えた。
「各部隊、洗脳されたヤクザ共の代わりに少女を確保せよ」
しばらくの後、その場にはヤマシマ組のヤクザともども、刺青スレイブが重なるように倒れていた。
「ちっ、コロッと靡きやがって」
生き残ったヤクザが、死んだヤクザを蹴って転がす。その死に顔を一瞥してから、手を合わせた。
そして、海兵隊と、現場に現れたヴィリーに告げる。
「テメェらを恨んじゃいねぇ。奴らにやられたこいつらが悪い」
その言葉と態度に、ヴィリーは確保した少女を預けることにする。
「お前まで洗脳されては厄介だ。早くその娘を連れて下がれ」
ヴィリーはそう言うと、再びHMDを被る。残る敵を掃討するために。
大成功
🔵🔵🔵
フィデル・マルカ
ヤマシマ組が操られていた女性達を保護してめでたしめでたしかな。
僕はヤマシマ組の撤退を援護するためにシベカワ商会の手の者を減らそう。
ヤマシマ組の戦力を削る選択をする猟兵がいても邪魔はしない。
ドラゴンランスのラーリスをUCで黒金の竜に変化させて共に戦おう。
…やけに刺青を見せつけてくるな、力の源だったりするのだろうか。
ならばそれを狙ってみよう。
両手に持つ剣で斬りつけてみる。
きっと相手は庇ったり躱したり、僕が刺青を狙っていることを利用して攻撃してきたりするだろうから、突如狙いを脚に切り替えて機動力を奪うなどして消耗させていこう。
戦っているのは僕ひとりじゃない。
この場の猟兵全員で敵を殲滅すればいいんだ。
洗脳がとけた少女を抱えて離れてゆくヤクザ達の背中を見送って、フィデルは軽く一息ついた。
「これでめでたしめでたしかな」
「そうはいきません」
そう言って立ちはだかる刺青スレイブ達に、フィデルは目を向けた。
「我らの資源を返しなさい」
「資源、ね」
フィデルはため息交じりで呟くと、ドラゴンランスを掲げる。
「ラーリス、行くよ。ヤマシマ組の撤退援護だ」
その瞬間、ドラゴンランスが黒金の竜へと変化してゆく。黒竜は唸り声を上げると、フィデルとともに刺青スレイブへと向かってゆく。
「数が増えたところで……」
刺青スレイブが胸元の薔薇を見せつける。するとサイキックエナジーが茨のように伸びて、フィデルへと襲い掛かった。
「ふぅん」
フィデルはその茨を両手に握った剣でいなすと、刺青スレイブを注視する。
「やけに刺青を見せつけてくるな。力の源だったりするのだろうか」
ならばとフィデルは身体を屈ませると、バネのように身体をしならせて、一気に刺青スレイブに飛び掛かる。
「……っ!」
刃の切っ先が薔薇の刺青へと向いている。刺青スレイブは思わずその刺青を守るように手をかざす。
「やっぱりね」
フィデルは自身の推測が正しかったことを確認すると、くるりと手にした剣の軌跡を変える。
ひゅん、と風を切ったのは刺青スレイブの足元。
「し、しまったっ!?」
足から血が噴き出し、うずくまる刺青スレイブ。これではまともに動くことも出来なくなるだろう。
そこに、ラーリスが続けて爪を振るう。
「まず一体」
倒れた刺青スレイブには目もくれず、フィデル次の標的へと目を向けた。
「まだまだ数は多いな……」
ラーリスとともにあるとはいえ、多勢に無勢といえただろう。しかし、フィデルに恐れはなかった。
直後、遠くの路地で爆音が響いた。近くの通りで銃声が聞こえる。
そう。この戦場にいるのはフィデル一人ではない。
「猟兵全員で、敵を殲滅すればいいんだ」
フィデルは再び敵へと向かって駆けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
さーて……もう機械仕掛けの神は壊れたのだからシベカワに勝ち目はないだろうに…
…いや敗戦処理のための部隊か…だとすれば随分と手際が良いな…
…ともあれ、こちらも犠牲を出さないことを優先した方しよう…
【新世界の呼び声】を発動……戦場一帯を私の支配下に置くよ
…そして「今すぐ全力でなるべく怪我しないように帰宅せよ」と操音作寂術式【メレテー】を使って戦場全域にはっきりと言葉に出して命令しよう…
ヤクザと娘さん達には帰宅して貰って…帰宅せずに阻止しようとする刺青スレイブがいれば片っ端から打ち倒していくとしようか…
…行動成功率は大幅に下がってるから洗脳も上手く行かないだろうけど…それでも阻害されたら面倒だしね…
「もう機械仕掛けの神は壊れたのだから、シベカワに勝ち目はないだろうに……」
プセウドテイを失っても未だ騒がしい企業都市をビルの上から見下ろして、メンカルは眠たげな瞳で呟いた。
もはやこの都市にシベカワの誇っていた優位性は失われた。間もなく他のメガコーポの介入が起こり、シベカワ一強体制は崩壊するであろう。そうありながら未だシベカワが戦うということは……メンカルは戦況を分析し、一つの答えを出す。
「……いや、敗戦処理のための部隊か。……だとすれば随分と手際が良いな……」
一強が崩れようとも、被害は最小限にし、戦力の低下を抑えれば再起にかかるコストは落ちる。何重にもされた対策、権力への執着。その貪欲さにはある種の関心すら覚えてしまう。
「……ともあれ」
メンカルは眼鏡を通して得られた情報を元に、戦場を把握する。
「こちらも犠牲を出さないことを優先しよう……」
そして、紡ぐ。
「新たなる世界よ、換われ、染めろ」
言葉とともに世界がズレ、ブレ、重なり、そして、入れ替わる。
「汝は構築、汝は創世。魔女が望むは万物統べる星の声」
それはメンカルの意思が絶対上位となる世界。だが、そう置き換わった世界に立っていることも知らないまま、刺青スレイブ達もヤクザ達も、争いを続けていた。
「その娘を離しなさい」
「ざけんじゃねぇ!」
そんな怒号が響く中、何よりも深く、強く響く声があった。
『今すぐ全力で帰宅せよ』
「……!?」
その声に、ヤクザも刺青スレイブも手を止めた。
『今すぐ全力で、なるべく怪我しないように帰宅せよ』
再び響く声。それはメンカルの声であった。
周囲の音を操る術式によって、メンカルの声だけがどこまでも透き通って、戦場全体に響き渡る。
「……帰るか」
「あぁ」
ヤクザが隣で戦っていた仲間とともに背を向けた。その様子に刺青スレイブはチャンスとばかりに笑う。
「馬鹿ね、戦場で背を向けるなんて……」
『帰宅せよ』
再び響く声に、刺青スレイブは沈黙し、呆然と立ち尽くした。そして、呆然とした表情のまま踵を返す。
「……帰りましょう、か」
この場で戦っていた者達。全てが静かに元の場所へと戻ってゆく。
何かを壊す音も、爆発音も次第に消えて、静かに、戦いは終結したのであった。
この戦いを境にして、サンズ・シティは企業都市と呼ばれることはなくなった。
結果としてプセウドテイを失った後の敗戦処理も十分とはならず、シベカワは勢力の大半を失ってしまった。
対して、ヤマシマ組は無事攫われた少女達の保護に成功していた。それどころか、どこから攫われたのかすら定かではない、身元不明の少女達までもが彼らの庇護下に入ったのである。
この結果がどれほど情勢に変化をもたらすかはわからない。だが、少なくとも。
少女達が再び笑顔を取り戻したのは確かである。
大成功
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