メイドちゃんアイドル★ラッシュ
●【メイ♥めいど】オーディション
豪勢な洋室を模したステージに向け溢れかえる歓声。
『わぁああ、こんなに沢山のご主人くんとお嬢ちゃまが来てくれて、とっても嬉しいでーす☆』
ステージで手を振るのは、既に【メイ♥めいど】の正規メンバーとしてデビューが決まった3人のメイドアイドルである。
『今日はぁ、ラブ達のメイド仲間が増えるんだって』
『いっぱいキラキラ候補生ちゃんが来てるのー、みんなぁ、応援してあげてね』
『まずはオープニング! アゲてくよー!』
ピコピコ音なオープニングに、くるくると踊り歌う彼女達。途中、まだ歌う子がいないパートがあって、マイクは観客席に。
『♪ご主人くんにー』
“♪ご・ほ・う・し”
そんな盛り上がりの中で、グッと拳を握りしめ俯く人物がいた。
「……やっぱり、アイたんだ。なんで! Vアイドルをやめて三次元してんだよぉお」
センターメイドのラブが指で♥を作ったその時に、胸の暗い海が波打って息ができなくなる。その人物は目に涙を浮かべグッとステージを睨みつける。
「助けてくれよ“アイたん”」
●グリモアベースにて
「みんなー、今日はー、ひゃんたんのゲリラライブ……じゃなくて! 予知に来てくれてありがとひゃん★」
おててふりふり多環和・ひゃんたん(ひゃんひゃんひゃんひゃん・f44628)はメイド服でみんなを出迎える。
「いっつもアイドルがなんかやってる『アイドル☆フロンティア』で『メイドちゃんアイドル★ラッシュ』ってイベントが開催されるひゃーん」
エプロンドレスをふりふりしつつ、ひゃんたんは説明を続ける。
このイベントは『メイドとアイドルを融合させたグループ【メイ♥めいど】のオーディション』を兼ねている。アイドルになりたい子が挑戦に心を燃やしているのだ。
「ひゃんたんもエントリーしてたんだけどぉ、予知っちゃったから辞退するひゃん(´д`) でね、話はここからひゃーん」
観客の中の誰かが心に抱えた骸の海に飲まれてオブリビオン化する。巻き起こる悲劇を止めるのが猟兵達のミッションだ。
「【メイ♥めいど】のオーディションは飛び入りOKひゃん。だからアイドル候補生になりきって潜入して欲しいひゃん。あ、男の子アイドルもOKひゃん☆ 執事アイドルも男の娘もどんとこいひゃん★」
なんにしてもハードル高ッ!
そんな空気にひゃんたんはチッチッチッと指を揺らす。
「だったらぁ【メイ♥めいど】に参加してる候補生にー、駆け出しプロデューサーっぽく関わって|輝かせて《・・・・》あげてもいいひゃん」
キミの即席プロデュースで輝くアイドル候補生。
要はアイドルステージを呼び込めばいい、こんな手段もありだあり。
「宴もたけなわで、骸の海がぁ、ばーってなるひゃん。メイドアイドルちゃん達も一時的にオブリビオン化しちゃうから、これもなんとかするひゃん」
メイドちゃんアイドルを鎮めたら、事の発端の人物が思いの丈を叫びながらわぁああってなるので、それを受け止めて収めてあげよう。
「みんなはぁ、このネガティブイベントにバーン! しちゃって、全部まるっと救ってきて欲しいひゃん♥」
指バーンでお見送り、がんばれ猟兵。
一縷野望
「アイドル☆フロンティア」へようこそ
>1章目
1.自分がアイドルになる
お好きにプレイングをどうぞ
2.アイドル候補生をプロデュース
アイドルの性格、喋り方、外見、他、イメージしている内容を記載願います。版権はダメです!
候補生になんて声をかけるか、他やりたいこともお願いします
それらを踏まえてステージに立ちます。PCは黒子的に色々サポート
※マスターお任せ多めのリプレイになります
2章目以降は、戦闘・その他の手段どちらでもクリアできるようにする予定です
全体的にゆるいです。お好きなムーブでどうぞ
ご縁がありましたらよろしくお願いします
第1章 日常
『トキメキ☆ファンサービス!』
|
POW : カッコよく!
SPD : クールに!
WIZ : セクシーに!
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
【マスターコメントの追記です】
>グループ参加について
・チーム最大人数は4名まで
・冒頭に【チーム名】
・それぞれをなんと呼ぶか、必要なら関係性
チーム内でアイドル候補生とプロデューサーに別れたり、全員がアイドルやプロデューサー、なんでもOKです
(アイドル対戦をして順位をつけるのはチーム内に限り描写可能です)
>2章目以降
通りすがりのプロデューサー氏は、引き続きアイドル候補生と関わる行動が可能です
詳細は断章にて説明します
キール・グラナドロップ
2
アイドルの特徴:
立派なヒーリングアイドルになりたいけど人見知り
……フードを深く被りそうになるのを我慢して、アイドルさんのところにいくよ。
あ、あのね、ボクも今、とっても緊張してるんだ。でもサポート頑張るね!
……ボクね、怖いことがあってから影くん以外が怖かったの。でもね、友達を作ったり、他の人と話してみたら楽しいこともあったんだ。お菓子の森を探検したり、キャンプしたり。
えっとね、だから、君も踏み出してみたら、怖いのはすぐには消えないと思うけど、楽しいこともあると思うんだ。たのしい、を考えて、頑張ろ?
1人だと怖いよね。大丈夫。ボクがいるよ。誰かがいると心強いでしょ?
よ、寄り添えた、かな……?
●
『ありがとうございましたぁ! めちゃカワだったねぇ!』
『パフォーマンスもキレッキレ、モエも負けてらんないゾ』
『るん、お腹すいたぁ……わぁ! お坊ちゃまたちありがとぉ!』
ステージへの投げスイーツに、るんが瞳をきゅるり、ドッと湧いた。
MCである【メイ♥めいど】の3人のトークが長い。いままでテンポ良くアイドル候補生が出て来たのに。実はバックヤードでは、次の参加者が来ていないとひそひそ。
「……あのこ、かな? だいじょうぶ?」
キール・グラナドロップ(影に縋る者・f14289)は、メイド服のスカート握って過呼吸気味に陥る少女にか細い声をかけた。
「! ご、ごめんな、さい。私、あの、棄権、した方が……」
「あ、あのね、大丈夫だよ。探してくるって言ってあるから」
ちっちゃな闇羽フェアリーは、リナの頬まで近づいて困り眉を下げる。
「あ、あぁ、ごめんなさいー……」
申し訳なさが伝染してきてパーカーを被りかけるキールはグッと堪えた。
この状態だと、短絡的に責められてると考えがち。周囲がなにもしてこなくたって、一度でも恐い経験があったら勝手に重なってしまうのだ。
「……ボクね、怖いことがあってから影くん以外が怖かったの」
宿す彼だけが信頼出来た。
この女の子、リナはどうだろうか?
「でもね、友達を作ったり、他の人と話してみたら楽しいこともあったんだ。お菓子の森を探検したり、キャンプしたり」
リナは睫に縁取られた瞳をぱちりと瞬かせる。瞳の下の♥マークはヒーリングのおまじない。
『キールさんは、すごいんですね。私、無理……かも。あの、足が竦んで……動かなくて……』
「ありがとう。あのね……今の「すごい」で、ボクの緊張が、なくなったよ」
キールはパーカーから指を外すと、頑張って口元を笑顔にしてみた。ちょっとひきつっているし、瞳はキョロキョロ挙動不審。それでも最高の笑顔にみせるんだ。
「君もすごいんだよ。だって、この会場までは来たんだから。あとはもう一歩踏み出してみたら、怖いのはすぐには消えないと思うけど、楽しいこともあると思うんだ。たのしい、を考えて、頑張ろ?」
リナは、小さなキールを瞳いっぱいに映して問いかけてくる。
「……キールさん、恐い、なくなったの、本当ですか?」
「うん」
殺気だったバックヤードに怒鳴られてぴゃああってなっていたのは内緒。だけど、勇気はもらったんだよともう一度繰り返す。
「それでも、1人だと怖いよね。大丈夫。ボクがいるよ。誰かがいると心強いでしょ?」
「はい……キールさん、一緒に、お願いします」
*****
ステージにあがる所で転びそうになった。自己紹介は噛み噛みだ。
夢中すぎてなにもわからないけれど……おめめぐるぐるしながらも、がんばれって言うちっちゃな声があたしを勇気づけてくれる。
『どり・どりーむ♪ おつかれ みんなもあまくやさしく おやすみなしゃーい』
やっぱり歌詞を噛んじゃったけどそのまま歌いきったなら、会場のサイリウムがキラキラと海のように輝いていた。
「みんなのしんどいに、らぶ♥」
勇気を出して送った♥はみんなに届いたかな。
……もしアイドルになれなくても、後ろのキールくんが笑顔で手を振ってくれたから。ヒーリングアイドルを目指してまた挑戦するんだ!
大成功
🔵🔵🔵
クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【POW判定】
強調したい時は「★」を、それ以外の時は「♪」を語尾につけるよ♪
2.アイドル候補生をプロデュースするよ★
声をかける候補生は明るく元気なボクっ子ちゃんだね♪
緊張してるのか、普段より元気が無い感じかな?
【コミュ力/言いくるめ/鼓舞/優しさ/元気】で候補生ちゃんと会話して元気づけるよ♪
必要なら【おしゃれ/メイク】で身だしなみやメイクを整えたりもしようかな♪
アナタはアナタの良いところを存分に見せればいいんだよ♪
大丈夫!クローネちゃんがついてるからね★
UCは『クローネちゃんの愛用品★』
【コミュ力】を100レベルにするよ♪
●
『噛み噛みが寧ろイイ!』
観客の大声援は、後の出番のハードルがガンあげするもの。
だが次のグループは、テーマカラーで合せたメイクを武器に舞台へ飛び出して行く。
「どうしよう……ボク、こんなテキトーな感じできちゃったのダメだったかもー……」
歌うの大好き。だから募集記事を見かけて即応募。衣装はディスカウント店、メイクは百均リップだけはつけてきてはみたが、別世界ぶりにナツキはすっかり臆している。
「こんにちは、次の出番のヒトだよね♪」
箱形鞄のメイクセットを肩かけに、クローネ・マックローネ(|闇《ダークネス》と|神《デウスエクス》を従える者・f05148)はおててひらひら。
ポップな太ブチメガネと春色メイク、ファストファッションでいやみなく纏めて却ってセンスの良さが際立つ。
「はい……」
元気が取り柄なのにすっかり意気消沈。クローネはそっと手を取った。
「クローネちゃんね、流しのメイクアドバイザーなんだよ。ね、ね、アナタの良いところを、更にパワーアップしたいな★」
こっち来てと連れ込んだメイク室。出番までは20分、時間はあるよとまずは安心させる。そして前髪をあげて、シートでクリーンにしてから化粧水パタパタ。
「へぇ、即チャレンジって飛び込めるのってすごいね★歌の練習もいっぱいしたんだね★」
「友達とのカラオケですけど」
「うんうん、いいと思うな★」
ファンデの肌にラメを散らし、血色オレンジレッドの頬紅と口紅をオン。太い眉はチャームポイント、切って整えるのはほんの少しでOK――クローネはわかりやすく解説しててナツキをメイクアップ。
「ナツキちゃん、笑ってくれるかな?」
鏡には、キラッキラ元気なヘルシーアイドルが現れる。
仕上げはブラックスライムちゃんの力を借りたおっきなリボン。サテンオレンジに重ねた黒いレース部分が秘密兵器。
「ほらっ超カワイイ★ 元気いっぱい飛び込めるのがアナタの良いところ♪そこがみんなを元気にするんだよ★大丈夫! クローネちゃんがついてるからね★」
「うん! ボク、がんばってくるよ!」
*****
キィンとマイクがハウリング、それぐらい元気に自己紹介。手を振る度にしゃらしゃら揺れるリボン飾りがカワイイ。
『ボクの歌、聞いてね! ♪元気! ハイ! ハイ! いっしょにー!』
“ゲンキ! ゲンキ!”
『ありがとぉー! ……らら、太陽いっぱーい♪』
ナツキはステージ所狭しと走り回ってコール&レスポンス。クローネは、ブラックスライム製のペンライトを振ってガンガン盛り上げる。
最後は♥ポーズで決めっ! 汗一杯で観客のみんなにサイッコーの笑顔だ。
『ありがとお、ございました!!』
大成功
🔵🔵🔵
柄倉・清春(サポート)
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
『あの子、ずっと睨んでくるぅ』
『やだ恐いー。あ、出番きたよ』
ピンクと蒼のシュガーテイストメイド服の2人は、そんな事を言いながらも舞台へと出ていった。
「……」
恐いと言われた眼帯メイドは項垂れ、意を決したようにステージに背を向けた。
「おっと、どうしたんだ、次が出番だろ?」
立ちふさがる柄倉・清春(悪食子爵・f33749)のネクタイ白スーツの威圧感は凄まじい。
「折角来たのに腕試しもせずに帰るのかよ」
ギロリと三白眼気味に見下ろされ、メイサは身を竦めた。
「こっわっ」
「あぁ、悪いな。愛想笑いも難しいもんだ」
口端をぴくりとさせる浅黒い風貌に男に対し、メイサは吹きだした。
「あんた笑ってたの」
「精一杯の営業スマイルだ」
「……そっか。ごめん。励まそうとしてくれたんだね。私ってばサイテー、同じ悩みじゃん!」
頭をぽこぽことしだしたので、ヘアセットが崩れると清春は慌てて止めた。
「いいって、慣れてる。怪しまれないようにってきちんとした恰好したらこうだよ」
インテリヤクザ扱いされたと肩を窄めた。
「かといって崩してもなぁ、ポケットからメガネを取ろうとしただけでチャカを出すんじゃって逃げられるし……」
「やだ、ウケる。いっそそれを売りにすればいいじゃん」
にまっと笑うメイサへは、同じ顔でこう返す。
「ああ、俺もそうする。だからメイサもそうすりゃいい」
*****
清春の話に思うところあったのか、メイサはステージから逃げるのを止めた。
トークは敢えてナシ。
いきなり曲を流してもらい、アンニュイラップをぶちかます。
(「へぇ、やるじゃねえか」)
スタイリッシュクールさに観客が骸骨色のペンライトをふりだす中、清春は心でエールを送る。
成功
🔵🔵🔴
川村・育代(サポート)
バーチャルキャラクターの悪霊×ゴーストキャプテン、15歳の女です。
普段の口調は「 年相応の少女口調(あたし、~くん、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、偉い人には 慣れない敬語(あたし、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)」です。
普段は明るく元気な性格で年相応の考え方、行動をします。
戦闘では自分から積極的に攻撃するよりは呪詛で自爆させたり、同士討ちさせるなど、相手をおちょくるような戦い方を好みます。(Sっ気があるようです)
ユーベルコードは状況に応じて使用します。
エキストラ感覚であらゆる状況で使い倒して頂いて大丈夫です。
描写に関するタブーは一切ありません。
●
「あきゅー! やっぱり帰るー!!」
段ボールを被ったメイドさんアイドル(候補生)は、先ほどから大騒ぎだ!
「どうしてどうしてー? ここまで来たのにもったいないよー」
川村・育代(模範的児童・f28016)がてりゃっと段ボールを外したら、前髪でメカクレのお嬢さんが現れた。
「ぶるぶる、ガタガタ」
「あれ? あたし、いじめちゃってる?」
「天真爛漫な顔が恐い! あっしみたいな引きこもりがこんなとこきちゃいけなかったんすよー! けどけどお兄ちゃんが勝手に応募してあきゅー!」
家族が勝手に応募しては、エピソードとして申し分ない。
育代はさらりとおかっぱをゆらし、ね、と覗き込む。
「あきゅーって、なに?」
「え、ええ、これは……あきゅーは、その、キャラ付け……で」
「なんだ、余裕あるね。いけるよ、いける。えっとー……名前は?」
*****
名乗ったら、育代にステージまでぶん投げられた。
「ようじょこわい」
ガチンとマイクに当たって出た台詞にあわせて、育代ちゃんがおててひらひら。
「今日はー、ミサキおねーちゃんと一緒に来ましたー! 育代はメイドさんできないから、審査? はミサキえおねーちゃんだけですー」
「え、あ、はい?」
「ミサキおねーちゃん、あきゅー」
「あきゅー!」
ドサクサで流れるメロディをおずおずしながら歌ったら、なんだかニッチなファンがついたようだ。
“あきゅー、あきゅー! あっきゅっきゅー★”
オリジナルコールまでもらえて嬉しい。
「……人とつながるって嬉しいな。て、育代ちゃん?」
育代はお外に出られないお友達の手助けをするバーチャルキャラです。こんなにも眩しい舞台で跳んで跳ねてできるミサキおねーちゃんは、もう大丈夫。育代が太鼓判を押すよ!
成功
🔵🔵🔴
納花・ピンチン(サポート)
ブギーモンスターの勇者×殺人鬼
布を被ってから11年が経ちましたわ
普段はお嬢様口調で、時々関西弁がちょこっと
……って、勉強中なんですわ!
あくまでお仕置きをしに来ているから
あまり殺伐とした戦い方はしませんわ
武器も直前で刃を返して叩いたり
その光景はギャグになることが多いですわ
商人街出身、お話しや交渉なんかも好きです
小さなスイーツや飴ちゃんを渡して一緒に食べると
色々話してくれるんですわ
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功の為でも
公序良俗に反する行動はしません
あとはおまかせ
ほないっちょ、よろしくおねがいします
●
スマートフォンを握りしめてガタガタと震えているアイドル候補生に、ひょこょひょことした足取りで近づいてくるのは納花・ピンチン(ブギーモンスターの勇者・f31878)だ。
「あらあらあら、お嬢さん、どうしましたの? はい、飴ちゃん、甘くてほっとしますわ」
大阪のオバチャンめいた押しの強さで飴ちゃんを押しつけて、ほっぺたでもごもごさせるアイドル候補生の頭をぽふぽふっとする。
手縫いのメイド服で気合いの入った彼女は『スズ』と名札がついていた。
『……うう、本番前にこんなの見ちゃってー』
“三次元滅びろ! Vから鞍替え裏切り者一覧!”
“【メイ♥めいど】のアイ=Vアイドル『ラブ』”
他にもつらつらと画像入りで晒されているのを、ピンチンは「ははぁ」と布越しの瞳を瞬かせた。
「恐いわねぇ。煌びやかな世界は、どうしても強い感情を集めてしまうものねえ」
『あたし、実はVアイドルもやってます……つっても、ラブちゃんみたいなんじゃなくて、隅っこ個人勢ですけど。名前もそのまま一緒できちゃったんだけど……』
うんうんと頷く布お化けは、表情が見えない分傾聴してくれてると思えた。
『今回、Vとリアルどっちもやってみたいなぁって応募したんですけどぉ……やめた方がいい?』
「そんなわけないわ。やりたいことを諦めるなんて、ナンセンス! 大丈夫! こわーいことが起きたって、このピンチンにお任せあばせ! ちょちょいのちょいでお片付けしますわ!」
*****
『♪リアル、アルアル、らぶあるー』
スズは、Vアイドルで唯一の持ち歌を歌う。作詞も作曲も自分で手がけた。ずっと曲の提供をしていたけれど、はじめてVアイドルの自分の為に書いた。
会場で気がついたファンもいたようだ。
『スズは、スズだよー! 画面の向こうもこちら側でも、応援よろしくりん♪』
♥ではなく鈴の形でウインク! 会場からは『スッズちゃーん!』とぱらりぱらりとコールがあがった。
『…………』
それを見て、センターのアイがグッと拳を握る。スズはVアイドルも捨てずに挑んできているのだ。
舞台袖から|ω・) と見ていたピンチンは、MCのアイと会場に渦巻くネガティブオーラを見出して、こくりと頷き警戒を強める。
成功
🔵🔵🔴
レーヴクム・エニュプニオン
1
いやー、種族違えど同じダークネスだからって興味惹かれて話聞いてたけど…。
オーディション会場が悲劇に見舞われるってのは、『歓喜』に属するものとしては放っておけないんだよね。
あそこ、新たなる『歓喜』が生まれる場所だろう?
さて、オーディションに合わせて、格好はクラシックメイド服にしたよ。男の娘メイド★男の娘は、いつものことだしね★
ボクちゃん、とーじょー★
ボクちゃんはレーヴクム・エニュプニオン。レーヴとお呼びくださいませ、ご主人様。
オーディションなら…スカートふんわりさせつつ、歌を歌おうね!
指で♥を作るのも忘れずに!メイドのサービス!
ボクちゃんは、皆の夢を守るのが生きがいだからね!
●
ダークネス。
それは闇墜ちにより本来から入れ替わった人格。嘗ては世界の敵として、人類との攻防戦を繰り広げていた。
今は、悪しきオブリビオンとして蘇ったかどうかが線引きのひとつ。猟兵と覚醒したダークネス達は、様々な有り様で人の世で暮らす術を心得ている。
人の精神世界の守護を身上とするレーヴクム・エニュプニオン(|悪夢喰い人《ナイトメアイーター》・f44161)は、種族違えどダークネス淫魔が予知をすると聞いて、興味津々でやってきた。
(「オーディション会場が悲劇に見舞われるってのは、『歓喜』に属するものとしては放っておけないんだよね」)
新たなる『歓喜』の生まれる場所を庇護する為に尽力しようではないか。
――直後、レーヴクムはアイドル★フロンティアのある会場に降り立っていた。
『尖った子ばっかでいいね。何人受かるんだっけ?』
『もう全員でもいいんじゃね?』
メイド候補生が奮戦したパフォーマンスで、会場は様々な『歓喜』に充ち満ちている。
「実に、いい」
この世界の人々は心に『骸の海』を抱えているという。精神世界の護り手としては、ダイブして全てを救いたいと疼くが、ここは世界のお作法に従うとしよう。
そんな訳で。
新たなる『歓喜』を重ねる為に、レーヴクムは麗しきロングドレスのクラッシックメイド服を身に纏う。茜色の髪はふんわりと巻いた。髪色に合わせたリップが12歳の見目を大人びて飾る。
「ふむ、ちょーっと遊びがないかな?」
エプロンはゴージャスなレース使い、スポットライトが映えるようにキラキラのラメ入りだ。よし、男の娘メイド★完璧★
*****
ポップな音楽と共に静々とステージへ。観客が固唾を呑んだところで、大きく手を振って愛嬌たっぷりスマイル!
「ボクちゃん、とーじょー★」
――ボクっこだ!
目利きの観客は男の娘だと見抜き「だがそれがいい!」とサイリウムを大きく振りだした。
“お名前はー?”
「ボクちゃんはレーヴクム・エニュプニオン。レーヴとお呼びくださいませ、ご主人様」
スカートを摘まんで観客席にお辞儀。そうして【メイ♥めいど】の3人へもしずしずお辞儀だ。
『わお、ギャップ萌えきゅん。るん、一緒に踊りたぁい』
『ワカルー、ラブもだもん。レーヴちゃん、ミュージックスタートしちゃうよ』
「はい、畏まりました。聞いて下さいませ――『歓喜のアンソロジー』」
『♪だれもが、喜び満ちあふれる、それは生きる者の勤め~』
オーケストラのゴージャスな伴奏、だが今風メロディと調和し古くささはない。伸びやかな歌声、情動溢れる仕草で腕を差し伸べて。くるりとまわるレーヴクムのスカートが、スポットライトを跳ね返し煌めいた。
「皆の夢、守っちゃうんだからね! らぶらぶ♥」
オレンジ色のペンライトの海を抱きしめるように両手を広げてからの指♥
歓声をくれるひとりひとりの夢を守る。これから骸の海を溢れさせるであろう誰かも含めて、哀しい想いはバイバイだ。
大成功
🔵🔵🔵
ユウ・リバーサイド
【朱玄】
18歳変身してから執事服を纏い
弟分のアイドルを目指してることに
化術でもうちょっと幼くなって男の娘メイドでも良かったんだけど
海莉が執事推しだったからなぁ(勢いに負けた)
「今日はよろしくね、ねぇさんっ」
肉体年齢としては逆転してるからね
設定としては元気で人懐っこいマイペースわんこ系でバランスを取ろうか
18歳男子なのも勢いで誤魔化す作戦で
海莉にフォローを任せつつ
オーディションでは溌剌とした受け答え
「ご主人さま、お嬢さまに精いっぱいご奉仕するよっ」
テンポが早めのダンスを完コピして歌うよ
特技アピールでは会話を弾ませつつも
執事らしくお茶を淹れる所作を綺麗に魅せるよ
「どうぞお嬢さまっ」
アドリブ歓迎
南雲・海莉
【朱玄】
クラシカルなメイド服に身を包んで参加するわ
義兄さん、一人でメイドアイドルする気だったみたいだけど
昔、義兄さんを探してる頃にうっかり
『ロボでフレンチメイド服な男の娘』をしてる並行世界の映像を一瞬、見ちゃったのよ(遠い目
義兄が役者なのは理解してる、けど
全力でアレだけは阻止っ
「こちらこそ、ユウ」
スイッチが入ってるなら
こちらも全力で“姉として”素直クールなメイドを演じるわ
義兄さんが周りの目を惹くのを会話のきっかけに
事前に調べたメンバー情報を元に
周りの候補生と会話しつつ情報を集めておくわ
ダンスもメイドの所作もそつなくこなし
特技ではリュートの弾き語り
時に情熱的に
通常とのギャップを出すわ
アドリブ歓迎
●
「男の娘のメイドアイドルをやるとしたら、体格できあがってない14歳ぐらいが良いと思うんだけど、どう?」
――やっぱ考えることが同じ人だ。
南雲・海莉(With júː・f00345)は、瞳を輝かせて作戦を口にする義兄ユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)を前にして頭を抱える。
平行世界の記憶に問答無用でお邪魔しますされた際、まさに思春期世代の“同一存在”が、胸元ダイターンなフレンチメイド服でキラッきゃわっ★なメイドさんを演っていた、しかもロボメイドである。機械である証明の為の肌見せとディテールは徹底していた。
(「14歳フレンチメイドはダメよ! 私、見てしまったけど、あれは解き放ってはいけないものだわ!」)
むしろ似合ってしまっていたから業が深い。若返ればユウは同一存在の彼と良く似た顔立ちになるだろうか、だとしたら当然似合ってしまう。
「不許可、だめよ、だめ!」
「やっぱり女装が痛々しいってこと? 30歳で女給長でそこにアイドル属性は流石に属性過積載だと思ってるよ。半分の年齢と二次成長ギリギリ前の体型ならなんとかなるかなぁって」
そこじゃない。
更に言うと、この役者馬鹿は「いや、敢えて実年齢メイドでの不可能に挑んでみるのもありかな?」とか言い出している。
「もしそれでやるなら、化術なしでどこまで体型を誤魔化せるかに賭けたいところ。後々の芝居の肥やしにもなりそうだしね。さて、女装用の洋服店はー……宴会用は流石に安っぽいなぁ」
スマホをぽちぽちしだした義兄に対し、海莉は貼り付けたような笑顔でにゅっとスマホとユウの間に頭をさし込んだ。
「時代は執事よ」
「え? 執事もいいとは聞いているけれど、女子グループの中に男性執事がいるとスキャンダルの元にならないかな?」
この男、受かる気満々である。
「義兄さん、まさかずっと【メイ♥めいど】に所属し続けるつもりなの?」
「あ」
ほっと胸を撫で下ろす海莉の目の前でユウは手帳を捲り始めたぞ。
「やはりサクミラとアルダワが最優先だし……流石にここでの芸能活動は時間的にも無理か、いい加減なことはしたくないしね」
時間的余裕があればぶっこむつもりだったのか。もうやだこの役者バカ。
海莉は深呼吸の後に『別冊:執事コレクション』という雑誌をずびしっと見せつける。
「わかったわ。そちらの希望も加味しましょう。化術を使って私より年下になって、18歳ぐらいがいいわね」
「18歳は殆ど大人だね」
「けれど私より年下よ」
海莉が開いて見せたのは『わんこ系執事の魅力とは?』のコラムページだ。
「弟のように甘えん坊。だけどお嬢様を誇りに賭けて守る忠義の厚さにキュンキュン」
「うぅ、音読はちょっとぉ……」
「ごめんね。声を出した方が頭に入るから」
ぺらりと捲る指はマイペースだ。
確かに、以前のように自己を責め続け今にも消えそうだったユウに比べれば、芝居という打ち込めるものができたのは海莉としても嬉しい話だ。
嬉しい、が。
(「義兄さんって、どうしてこうも極端なのよー!!」)
【選択肢】
最初に戻って頭を抱える。
→弟執事と姉メイドのプランを立てる
悩んだってしょうがない。なにごとも|諦めが肝心《ポジティブシンキング》だ。
●
ステージにテーブルとソファが運び込まれた。
『おりょ? 何が始まるのカナ?』
MCの3人は首を傾げながら腰掛けた。そこに粛然と背筋を伸ばしたメイドが現れる、夜会巻きに銀色の留め具を光らせたお姉様メイドは海莉さんである。
「ラブお嬢様、モエお嬢様、るんお嬢様。司会進行大変お疲れ様で御座います。喉を潤す紅茶をどうぞ」
クラッシックなロングスカートに手を合せてお辞儀をすると紅茶を淹れ始める。美味しい蒸らし時間と注ぎ方は愛しい人より。
「失礼します! お嬢様方」
弾む足取りでスコーンをトレイにのせて現れたのは、18歳のユウ@わんこ系執事。此方もクラシカルな執事服をきちりと着こなしている。
「お嬢様方、僕も美味しくなぁれの魔法を姉様と一緒にかけても宜しいでしょうか?」
『わぁああ、ダブル魔法ぅ? るん嬉しいー』
足をパタパタさせるツインテールの子を、真ん中の飴色カラーのストレートロングのラブの手が抑えた。
『ええ、もちろん! あなたたちの実力を見せてネ』
ラブの台詞を合図にオーケストラ風味の前奏が流れ出す。
「ご主人さま、お嬢さまに精いっぱいご奉仕するよっ」
「サポートはお任せくださいませ」
ダブルチェキ★
「愛しのご主人さま」
“はーい!”
『はーい』
「お嬢さまぁ」
“はーい!”
『はーい』
会場と【メイ♥めいど】の3人からのコールに、海莉とユウはそっくり動作で手をひらひら。
「♪い、つだって、隣のご主人様」“ご主人さまぁ”
「♪ボクの、大好き、お嬢様」“お嬢さまぁ”
歌いながらティポットを手に取り、会場のみんなに向けての注ぎ込み。片脚バランスで高い所から注ぐユウ。バレリーナのようにくるんとまわる。ティポットは海莉がキャッチ。
「♪ほら、零れちゃうわよ」
「♪ラブリーサポート」
「♪もお、あなたは執事でしょ!」
むむっと膨れるのも可愛いウインクで飾る。その影ではユウがスコーンを投げて宙返り。お皿にのせるとMC3人に差し出した。
「♪猫舌のお嬢様のため~」“ちゃんと冷ましましたよ!”
受け取るラブは「る、ら、る、ら」とハミングしながらご機嫌だ。
会場がユウのパフォーマンスに目を奪われる中で、海莉はリュートの生伴奏を奏でながら、じっと会場に目を凝らす。
(「リーダーのラブさんは、先日引退したVアイドルと同一人物だって言われている。今回溢れ出す骸の海は、Vアイドルアイさんのリスナーの涙……」)
だから敢えてVアイドル『アイ』の持ち歌を選んだ。それがどんぴしゃだ!
ハッと海莉は目を見張る。
ただひとり、グッと歯をむき出すようにして肩を震わせている男を見つけてしまったのだ。
“『ルンラン★メイ執事』は、アイたんが一人二役で歌った曲ぅぅ。ハミングも同じだ! やっぱりやっぱりラブがアイたんなんだなぁ……!”
――この後、予知通りに会場は骸の海に包まれる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『アイアンメイデン』
|
POW : それが私のメイド道!
【全てのメイドの頂点に立ちたい】という願いを【ライブステージやその配信を見ている観客】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
SPD : メイドは一日にして成らず
1日8時間以上【ライブステージやファンサービス】を行うと、次の日の[ライブステージやファンサービス]の成功率・効率・芸術性が3倍になる。
WIZ : メイド冥利に尽きる
【自身のコラボ商品(主に飲食物)】を給仕している間、戦場にいる自身のコラボ商品(主に飲食物)を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
イラスト:川上らいと
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「『ルンラン★メイ執事』は、アイたんが一人二役で歌った曲ぅぅ。ハミングも同じだ! やっぱりやっぱりラブがアイたんなんだなぁ……!」
ある男の血を吐くような叫びが会場を打った。
刹那、どろりと負の感情を煽る骸の海がステージを中心とした会場に溢れかえる!
観客は呆然とし、メイド候補生達は為す術もなく呑み込まれていった。
『……私、癒やしたい。のに……こんな黒い感情、やだ、やだぁ。助けて、キールさん……ッ!』
『ボクなんて、どうせボクなんてッ、下手くそだよね? みんなへったくそ! ……うぅ、クローネちゃん……ッ助けてぇ』
信じた猟兵に最後の望みを託し手を伸ばすアイドル候補生達。
眼帯のメイサも、段ボールを被って震えるミサキも、Vアイドル兼任スズも、他の候補生達も次々と骸の海に飲まれ、負の感情に染まっていく。
――ステージでは、センター兼リーダー兼リードボーカルの『アイ』に、『モエ』と『るん』が掴みかかっている。
「だいたいー、アイってえ、るんちゃみたいな天然じゃなくって整形してやーっとアニメ皮外せたブスでしょお? なんであんたがリーダーなわけえ?」
ツインテールのるんは、咥えていたたロリポップキャンディをアイに投げつける。
「歌だって加工で誤魔化してるダケ、生歌ライブなんて演れんの? なんで私がコーラスにまわらないといけねーんだよ!」
銀髪メイドのモエはギターでアイに殴り掛かる。
「事務所が大きいからっていい気にならないでよね、どーせ枕やったんでしょお?!」
「何一つ楽器弾けないくせにアーティスト気取んなよ!」
「……ッ」
アイは頭を庇って震えている。
(「どれもこれも反論できないや。さすがに枕はやっていないけど……」)
Vアイドルの太客が、実は芸能プロダクションの関係者だった。スカウトされてそこからあれよあれよの内に話が進んで今に到る。
アイは有名になりたかった。大きな舞台で、顔を出して芸能活動したいと憧れてきた。
だから、大人の言うがままに、Vアイドルを引退してグループの花形役もガンバルと決めた。
(「でも、確かにるんちゃんの方が可愛いし子役のキャリアもある。歌はモエが断然上手いし、なによりカリスマがある――」)
――なんで、あたしなんかがセンターで、リーダーで、リードボーカルなんだろう?
――Vアイドルの『ラブ』の頃は、確かに全部そうだった。けどそれは『ラブ』はひとりグループだったから。加工で七色の声にしてひとりで沢山のパートを歌った。
ラブはもうお墓に入れてしまったから戻れないんだ……。
だけどこんなに嫌われてて、リアル芸能人なんてやっていいのかな……。
*****
【マスターより】
骸の海の影響を受けてオブリビオン化した『メイドアイドル候補生』や【めい♥メイド】のるんとモエを止めてください
メイドアイドル達を落ち着かせたら、骸の海を溢れさせた本人への介入ができるようになります
>止め方
概ねなんでもOKです、やりたいようにどうぞ。サンプルは以下の2つです
『アイドルとして対決を挑む』
『アイドル候補生や【めい♥メイド】のモエとるんを説得する』
※プレイングボーナスは『アイドル的行動をとる』『プロデュース、お助けマスコット的行動をとる』です
>オブリビオン化している子たち
1章目で出て来たアイドル候補生(サポートリプレイ含む)とモブ候補生(2章より詳細指定可)【めい♥メイド】のるんとモエは、誰でも介入が可能です
1章目でプロデュースを選び個別対応した子は、その方のみ介入可能です
介入するNPCが重なっても良いので遠慮せずお好きな子に言って下さい
2章目がクリアできたらリプレイにでなかったメイド候補生も助かりますのでご安心ください
>しめきり
この時点から、26日(土)いっぱいまで受付けます
よろしければご参加お待ちしております
ユウ・リバーサイド
【朱玄】
「待って待って!
るん様は元子役なんですね
確かに芸能を経験してきたのは強みだと思うんですが
そのほかの経験がそれに劣る
ということは無いのでは」
だって(目配せしつつ小型拡声器構え)
♪真っ直ぐな貴方へのご奉仕
ドキドキだけど
嬉しいって叫びたい
海莉の即興に合わせて歌いダンスを
元気なわんこ系らしくいっぱい走って跳んで
片手側転からの連続バク転も
でも海莉と要所はバッチリ合わせてく
一人で表現できることは有限
だって1人分の人生から汲み上げるんだよ
でも全く違う誰かと重ねる関係性は
もっと深く自分達を皆に理解させる
歩いてきた道は等価だと思い知らされる
そうすれば君は
誰かを想う声は
もっと遠くまで届くんだ
アドリブ歓迎
南雲・海莉
【朱玄】
「モエ様、それはギターが可哀想ですわ
アイドルのセンターやメインボーカルが
本人やファンにとって重要なことは存じております
ですが歌唱力や音楽性だけが、アイドルソングではないでしょう?」
(目配せ返しリュート構え)でしょう?
♪お人好しのキミにお仕え
ハラハラばかり
楽しいって気づいたの
即興の作詞作曲で歌い出すわ
義兄のダンスに合わせてステップも踏み
縦横無尽の動きにも冷静についていくわ
リュートの演奏技術も私1人じゃ敵わない
でも義兄のダンス、漣のような声質を合わせれば
表現できる幅はぐっと広がるもの
どこか互いを思わせる歌詞に
信頼と希望が寄り添うように
楽曲だけで届かない先にグループで届けましょう
アドリブ歓迎
●
骸の海が観客席を席巻し、ステージに立つ者の膝に絡みつく。
『お坊ちゃまぁ、うちのセンター様がぁ枕でとってきた栄養ドリンクは如何ですかぁ?』
舞台に進みでたるんは、タイアップメーカーの缶飲料をプシュッと開けてグラスに注ぐ。ピンク色した液体を掲げ耳障りな声で笑った。
『たーいへん失礼しましたぁ♥みんなのアイドルが実はなぁんてゲロマズで飲めませんよね……ん?』
「ご奉仕感謝です。後輩執事の俺ですが、喜んでいただきまーす!」
「僭越ながら、わたしくしも頂戴いたしますわ」
ユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)と南雲・海莉(With júː・f00345)は、ほぼ同時に手を伸ばすとトレイのグラスをとった。そうしてチンッと乾杯すると躊躇いなく飲み干す。
「んー! すっごく美味しい! なんだか元気もでてくるね!」
「キュートなピンクからは想像もつかないスパイシーなオレンジ味がテイスティーですわっ」
きらっきらの笑顔で栄養ドリンクをバッチリアイドルアピール! これでスポンサーもにっこりで、ついでに動きも阻害されないぞ。
鼻白むるんはユウに任せて、海莉はモエが振り上げたギターに手を伸ばす。
「モエ様、それはギターが可哀想ですわ」
『……ッるさい! もうなんだかバカらしい! こいつを殺してアタシも社会的に死んでやる』
だが台詞と裏腹に、ギターを引っ込め傷がないか確認しだす。話はできそうだ。
「アイドルのセンターやメインボーカルが本人やファンにとって重要なことは存じております」
『そだよぅ。ファンはセンターに吸い寄せられるの! アイってエライ人のお気に入りでさーあ、ダンスもなにもかもこいつ中心なの、るん納得いかないぃ!』
地団駄を踏むるんへ、ユウがことりと首を傾げた。
「失礼、るん様。今のは演技なのでしょうか?」
『へ?』
「るん様は元子役なんですね。俺は全てをチェックできませんでしたが、普通の演出ならば泣く所を、淡々と日常の作業に没頭し悲しみを示すシーンは出色で、演技の勉強になりました」
そういえば食い入るようにリサーチしていたなぁと、海莉は内心で頷く。
「モエ様の覆面歌手動画、確かに心を震わせる歌声でございました。わたくしつい鬼リピートに入りかけてしまいましたわ」
これも本当の話だ。
「ですが歌唱力や音楽性だけが、アイドルソングではないでしょう?」
「そうですよ。確かに芸能を経験してきたのは強みだと思うんですが、そのほかの経験がそれに劣るということは無いのでは」
彼女達は眉を吊り上げると、後ろで震えるアイを指さした。
「「なによ! こいつが! モエ/るんちゃん、に勝る所があるって言いたい訳?!」」
海莉は答える代わりにリュートの弦に指を添える。爽やかな弦のメロディに合わせて、ひゅんっとユウが片手側転から高く飛び、二人の視線を奪い取った。
ヒラヒラ、蝶のように翻る銀のトレイをキャッチすれば、それは小型の拡声器に早変わり。リュートのメロディも、心躍るようにテンポアップ。
♪真っ直ぐな貴方へのご奉仕
晴れやかな歌声にウインク。会場で骸の海の飲まれかけていた観客のお嬢さま方が「きゃあぁ」と黄色い悲鳴をあげてステージ傍に駆け込んできた。
ユウはチェキ&ウインクのファンサでGO! そして海莉の口元に拡声器を宛がう。
♪お人好しのキミにお仕え
サイドステップで楽しげに身体を揺らせば、骸の海から逃れたお坊ちゃま方が手を振った。海莉は手を振って演奏を続ける。
そんな様子を前に、ハッと目を見張るのは震えていたアイだ。
(「ファンのみんながあんなに幸せそうにしてる、懐かしいな……」)
Vアイドルを始めたばかりの頃、ファンが少なかったからこそ濃密に会話ができた。人気が出たのは嬉しい、けれどファンとの距離が遠くなったから寂しくて……。
(「リアルで逢いたくなったんだ……」)
♪ドキドキだけど
嬉しいって叫びたい
ステージ狭しと縦横無尽、三回ひねりのジャンプのユウに、リュートを奏でながらステップと言うには激しい移動で海莉はついていく。
♪ハラハラばかり
楽しいって気づいたの
ウルトラCを難なくこなし愛嬌振りまく義兄。彼にはハラハラさせられる、けれど海莉は満面の笑顔だ。
「ねえ、聞いて。リュートの演奏技術も私一人じゃ敵わない。でも義兄さんのダンス、漣のような声質を合わせれば、表現できる幅はぐっと広がるもの」
「一人で表現できることは有限、だって一人分の人生から汲み上げるんだよ」
どうしても限りがあると、ユウはモエとるんに差し伸べた掌を萎れさせた。ああ、と二人が手を差し伸べたならしめたもの。
「でも全く違う誰かと重ねる関係性は、もっと深く自分達を皆に理解させる。歩いてきた道は等価だと思い知らされる」
言葉にしようとしたユウだけど、ふとアドリブに突き動かされてメロディを求めた。目配せを察知し海莉はサビのアレンジで応える。
♪そうすれば君は
誰かを想う声は
もっと遠くまで届くんだ
一番の拍手をしたのは果たしてアイである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大宝寺・朱毘
連携歓迎。
公序良俗に反する行動、利敵行為、過剰に性的な描写はNG。
アイドルでありロッカー。
ロック(漢気があるとほぼ同義)な様を好み、「ロックだ」と感じれば味方はもちろん敵でも賞賛することがある。
民間人への被害を嫌い、救助活動などには全力を尽くす。
使用武器は黒いボディに炎の模様が入ったギター『スコーチャー』
演奏によって音の爆弾や衝撃波を生み出してぶつけるという戦法を好む。
必要なら演奏を続けつつ蹴りなども行う。
冒険では、魔力任せに障害を吹き飛ばすといった行動が得意。ただし地頭が悪いわけでもないので、搦め手が必要ならその都度考える。
台詞例
「いいね、ロックじゃん」
「こっちゃ世界の命運背負ってんだよ!」
●
舞台にあがる直前の緊張は、何度経験したって慣れるものではない。豪放磊落な女流ロッカーと一目置かれる大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)とて、それは同じ事。
いやむしろ、極度の気にしい。なので、幾らでも順番を後ろ倒しできるのをいいことに、ずーっと出番待ちをしていたのだ。
だが、骸の海が溢れ出たのなら話は別だ。被害は止める、誰ひとりとして悲しみの涙を零させない!
「あたしと対バンだ! 拒否権はねーぜッ!」
ギャーン! 耳を劈くファーストメロディを叩きつけ、愛器『スコーチャー』と共にステージの中央へ。
『スッ、スズたんから離れろっ』
観客席では、段ボールを被り震えるアイドル候補生のスズと、へっぴり腰ながらもそれを庇う数名の男達。
『召しませ、ハイパードリンク骸の海味』
『飲まれてしまえばつよつよですの』
対峙するのは、骸の海を詰め込んだグラスを飲ませようと迫る元アイドル候補生、今はすっかり無個性で均一のメイド服に身を包む、集団名は『アイアンメイデン』だ。
じりじりと詰めるメイドオブリビオンへ、スズは蚊の泣くような声で「逃げて……」と囁いた。
『ファンのみんながひどいめに遭うなんて、やだよぅ』
「その心意気、あたしが買ったぜ! さぁ勝負だ」
スズファンの前にて、ギンガムチェックの鮮やかなレースが翻る。ギターと瞳にお揃いの熱き闘志を猛らせて、朱毘は対バン開始。
「~♪」
溢れるのは、一度も聞いたことのない前衛的でいて心に訴えかけるような歌声だ。
「無理矢理じゃねえと売り込めねえなんて、アイドル失格だ。けどお前らはそんなんじゃねえはずだよな?」
片目を閉じて激しいメロディは弾き語りに転調する。
――彼女達は『夢』を見てステージにあがった。ならば本来持っていた心を引き出すのだ。
『……え?』
『わ、わたし達一体……』
骸の海にて没個性に貶められていた姿が、剥がれ落ちる。現れたのは、それぞれ今日のために懸命に己を磨き上げたアイドルの原石達だ。
「ここは危険だ、ついてこいよー!」
朱毘の呼びかけには拳を突き上げオー! スズとファン、オブリビオンから無事戻った候補生らは、無事戦場から撤退できた。
大成功
🔵🔵🔵
レーヴクム・エニュプニオン
わあ、この世界にダークネスがいないことの方が不思議なくらいだね★
でも…ここは『歓喜』の場所だからね、ボクちゃんは全力だ!
るんさんもモエさんも、暴力はダメダメ!
それこそ、メイド★アイドル道に反するんじゃないかなあ?
あと、それって悔しさから来る叫びかな。それさえあれば…うん、きっと上に行ける!
さっき聞こえた叫びからして…アイさんって、今までは自分一人でやってきたんでしょ?
てことは、足りないところを客観的に見られることもある。それは、リーダーに必要だよ。
そんな三人が組んだらさ、きっと素敵なグループになると思うんだよね★
ボクちゃんは、歓喜の守護者だ。
歓喜はここに
ステージの上に
皆の夢は、メイドとともに★
●
骸の海は、熱狂に彩られた歓喜を忽ちに憤怒や嫉妬に塗りつぶす。
おやおやと、レーヴクム・エニュプニオン(|悪夢喰い人《ナイトメアイーター》・f44161)は、飄々とした赤い眼を瞬かせた。
「わあ、この世界にダークネスがいないことの方が不思議なくらいだね★」
負の感情の暴走は、魂を裏返すトリガーになりがちだ。もしダークネスという概念があったのならば到る所で集団闇堕ちが発生しそうだ。
「でも、ここは『歓喜』の場所だからね、ボクちゃんは全力だ!」
未だ怒りが色濃い二人に比べ、アイは瞳に光が戻りつつある――ああこれは、闇に抗いし人の子の魅せる輝き。
レーヴクムはぷくっと頬を膨らませて三人の間に割り入った。
「るんさんもモエさんも、暴力はダメダメ! それこそ、メイド★アイドル道に反するんじゃないかなあ?」
男の娘メイドの指摘と共に指で♥を作ってみせる。メイド★アイドルたるもの、人々に癒やしを振りまくべし。
「なっ……」
「るんちゃん、だって悔しいもん」
モエを遮るるんに、レーヴクムは冷静と優しさを感じ取った。
(「モエが言いかけたのは『好きでメイド★アイドルやってる訳じゃない』辺りかな。確かにそれを言っちゃあ元も子もないもんね」)
成程、未だチームワークは残っているのだ。その上で|大人の都合《・・・・・》で順位づけを押しつけられたのが腹立たしいのだろう。
「悔しさはね、より上へ飛翔する武器だよ! 悔しさがより自分を磨くんだってモチベーションになるからね★」
追い越しちゃえばいいんだよ、と、るんとモエに悪戯っぽく笑った。
「だけど卑怯なのはノンノン! 周囲の大人の卑怯さを感じて、今こうなってる訳でしょ?」
そんなのは『歓喜』じゃない。
「さっき聞こえた叫びからして……アイさんって、今までは自分一人でやってきたんでしょ?」
アイはこくりと頷いた。刺々しい視線がモエとるんから向いたのに、ギュッと身を竦める。
「ご、ごめんなさい。私なんかが……」
「謝らなくていいんだよ、上の采配が全て間違いって訳じゃない。アイさんは足りないところを客観的に見られることもある。それは、リーダーに必要だよ」
歓喜の守護者はステージにてくるり。
ふんわりまぁるく翻るスカートの先、黄金に歓喜の彩りを流し込んだフラダリダイヤが百合香をふりまいた。するとどうだ、汚れた水に洗剤が一滴たらされたかの如く、骸の海が三人から退けられたではないか!
「そんな三人が組んだらさ、きっと素敵なグループになると思うんだよね★」
ウインクとチェキを振りまいて、バックヤードに流れ込む禍々しい海へ更なる百合香を注ぐ。
怯えしりもちをついていたのは彼女らのプロデューサーだ。ゴリ推しの招いたトラブルに打ちひしがれている彼へもラブ♥
「大丈夫。彼女達はちゃあんと己の道を思い出してくれるよ。その『歓喜』を仕掛けた手腕にほんの少しの心を足せばいいだけだよ」
骸の海を闇に変えレーヴクムは制御下に置く、そうして彼方へと退けてから灼き払う。
「ボクちゃんは、歓喜の守護者だ」
歓喜はここに、
ステージの上に、
「皆の夢は、メイドとともに★」
大成功
🔵🔵🔵
星川・玲蘭
連・アド〇
姿:https://tw6.jp/gallery/?id=206379
アイドル候補生として潜入するか迷ったんだけれど、衣装決まってなかったから出られなかったんだよね~(メタ)
乱入になるけれど、皆の心を骸の海と言う絶望に覆わせない為、いざ出陣!
周囲のオーケストラ☆デバイスを起動
UC+楽器演奏+歌唱+でるんちゃん、もえちゃんの注目を引きつけて
ゲリラアイドル対決だ!
パフォーマンスとダンスと歌唱と足業で翻弄しつつ流星群で骸の海を【浄化】する
上手く浄化出来たらこう言うよ
―ねえ、るんちゃん、もえちゃん。三本の矢の話、知ってる?
―本来、1人、1人の力って、とっても弱いの
―でも、理由はどうあれあなた達は、3人でアイドルユニット【めい♥メイド】になれた
―3人の力を1つに合わせることが出来たからね
―だからもっと仲良くなれば3人でもっと凄い事が出来て、更に沢山の人達を幸せに出来る様になる
だから、先ずはアイちゃんと言う1人の女の子と友達になろうよ
そうやって絆を深めてこその…グループなんじゃないのかな?
●
人はそれぞれ夢を抱いている、けれど同時に闇もある。
星川・玲蘭(人間のフレッシュ☆アイドル・f45163)は幼い頃からずっと、テレビでキラキラと踊り歌うアイドルに憧れていた。
やがて自分も|あちら側《・・・・》で夢と希望を与えたいって焦がれは止まらなくなる。玲蘭は難関のアイドル養成高校に入学した。そこからがまた茨の道。
(「オーディションって緊張するよね。それまでも目一杯に練習して挑んで、けれど100%以上を出せる人なんて一握り」)
そこからアイドルになれる人はさらに拳の隙間から落ちていく。実は玲蘭は何度も落ちた側だ、闇に取り込まれた経験すらある。
(「むしろ、るんちゃんとモエちゃんは先に夢を叶えた大先輩。けれど大成功してるなぁって見えても、闇は傍らにあるんだね」)
そしてアイは……Vアイドルのラブとしてがんばってきた彼女は、闇に囚われていない。すごいなぁっと思う。
メイドの衣装はピンとこず先ほどまでは観客に混じり、いざとなったらの避難誘導って考えてた。だけど、こうなったら話が違う、この手で皆の心を骸の海から救い出さないと!
「よしっと! いざ出陣!」
腰のキラッキラフリルの縁がスポットライトを浴びてと綺羅を零す。
アイと2人の間に飛び込んで指をパチンと鳴らしたならば、まるで魔法のように舞台のオーケストラデバイスからメロディが溢れ出した。
きらきらきらきらきら~★
魔法少女のオープニングエフェクトっぽい効果音にあわせて指バーン。
「るんちゃん、モエちゃん、ゲリラアイドル対決だよっ!」
♪や! やっ! や~ぁ?
可愛い「いやだ」も、気合いの「やぁ!」も、そして「矢」と、1文字なのに様々な意味を醸し出す。
『音程外れまくりだろーがよ!』
指摘にもめげずにスマイルスマイル(^_^)
「うんっ! ボイトレもっとがんばるよお!」
モエのギターはするりと足技返し。ギターを傷つけないように細心の注意を払ってしりもちをつかせる。
くるりんとフリルを翻して一回転、翡翠の瞳でウインク一つ。もちろんお星様もサービスで。
♪みんな だれもがちがう 感じ方プレシャス
『歌うと笑顔崩れてんじゃーん』
イジワルなツッコミのるんには、イーッと愛嬌たっぷりでしてみせる。そうして手首を取ってふわりと前のめりに崩した。
「大好きって気持ちは目一杯に!」
会場から『めいっぱーい!』とコールが返り、玲蘭は大きく手を振った。
「みんなー、玲蘭のラブを受け取ってくれてありがとお♪ じゃあーお礼の特大流れ星。倖せキラキラ、みんなにもー、いっくよー! わん、つー、さんし!! ごー!」
燦然と輝く流星群が、骸の海を打ち消していく。昼なのに満天の星空。その星は大きく輝いて、誰もが幼い頃に見たことのあるアニメにあったきらり星だ。
『? アタシたち何を……』
『はぁ、はぁ、はぁ、るんちゃんもおだめぇ』
未だ星が流れ続ける舞台にて、しりもちをつくモエとるん。正気には戻っているが色々と吐き出した記憶もまたあるのだろう。どちらもアイと目を合せようとしない。
『……2人とも、あの』
さっき、橙の髪の人が「謝らなくていい」と言ってくれた。それは今いる玲蘭もそうなのだろう。励ますようにぐっと手を握ってくれた。
『……もう、無理だ』
モエが吐き捨てたのに、アイは『だよね』と震える声で項垂れる。
「本当に終わっちゃうの? たった1回の失敗でぐらいで?」
玲蘭はきょとんと首を首を傾げた。
『うっざー……1回失敗したら追い抜かれるギョーカイなのぉ』
ハッと肩を竦めるモエは舞台に寝っ転がる。
『あーもう! るんのキャリアぶっ壊れ! アイドルなんて止めときゃ良かった!』
ビクッと首を竦めるアイの背を撫でて、玲蘭はるんと視線を合わせた。
「けど、アイドルやりたかったんだよね? だから話にのったんじゃない?」
『そぉだけどー』
唇を尖らせるるん。
「――ねえ、るんちゃん、モエちゃん。三本の矢の話、知ってる?」
ひとりひとりの力は弱いけど、三本なら折れない矢になるというあの話だ。
「カリスマと歌唱力のモエちゃん、芸歴と演技力のるんちゃん、そして……」
玲蘭はアイの背中をぽんっと押すと前に出す。
「三人の中で、アイドルのことを一番知ってて、ひとりでVアイドルをプロデュースしてきたアイちゃん――あなた達は、この三人でアイドルユニット【めい♥メイド】になれたんだよ」
すまない、と、男性の声がした。深々と頭を下げたのはプロデューサーだ。
『モエさん、るんさん、あなた達を軽んじたと思わせたのは僕のせいです。既に一流のプレイヤーであるあなた達ならアイちゃんと高みに行けると夢見て……』
玲蘭はびしっと人差し指をたてる。くるりまわる流星を弾いてにっこりと笑った。
「プロデューサーさんも間違ってなかったとわたしは思うな。けれど、これからはちゃんとモエちゃんとるんちゃんにも声をかけてあげてね、贔屓はなしだよ!」
そう告げてから改めて三人の手を取って、玲蘭はまとめて包み込んだ。
「喧嘩ができてよかったと思う。だって、みんなの本音がわかったんだもん。さらにもっとも~っと仲良くなれば三人でもっと凄い事が出来て、更に沢山の人達を幸せに出来る様になるはずだよ」
――もう一度ちゃんとお互いに友達になろうよ。
――そうやって絆を深めてこその……グループなんじゃないのかな?
輝くような“アイドル”の笑顔に、三人は気恥ずかしそうに視線を交わす。
「……ごめん。悔しかった」
「……るんちゃんも、アイちゃんに負けそうで嫌で」
アイはふるふると首を振る。
「私ね、歌も演技も二人には叶わないよ。未だに舞台で素顔を晒すのが恐いぐらいなの。二人がキラキラしてるから、それに隠れてられると思ってたぐらい――ああ、違う。こんな時は『また頑張りたい』だよね?」
それが言えるのがリーダーである証だ。
玲蘭は雨降って地固まるの三人を腕組み満足げに見守るのである。
大成功
🔵🔵🔵
クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【SPD判定】
真剣口調で話すよ
誰が下手人か、どういう理由かは知らないけれど
よくもあの子の笑顔を奪ってくれたね
後で覚悟してもらおうか
ワタシがプロデュースしたアイドル候補生のナツキちゃんを説得するよ
下手くそですって?
当然でしょう?アナタはまだ候補生なんだから
歌やダンスの技量を先輩達と同レベルにするなんて、一朝一夕でできる事じゃあないよ
…すぐに上手くなれなんて言わないから
焦らず、時間をかけていっぱい練習していけばいいんだよ
大丈夫
さっきも言ったでしょ?クローネちゃんがついてるって
それに…元気いっぱい飛び込めるのが、ナツキちゃんの良いところでしょう?
UCは『クローネちゃんの淫魔アイドル力★』
【淫魔アイドル力】と【鼓舞/優しさ/元気/励まし】で説得を行うよ
ナツキちゃんの心にワタシの【声を届かせる】ね
●
中央ステージの骸の海が引いた。誰しもがこの殺伐とした事件は収束したと思ったその時――。
『うわぁああああ!』
血を吐くような叫びで中央ステージに突進するアイドル候補生がひとり。
頭でゆれる大きなオレンジのリボンが目を惹く、先ほどステージで元気いっぱいのパフォーマンスを魅せたナツキだ。
『歌がそんなに上手くなくてもいいんじゃん! それでボクらはふみ台ってわけ!?』
罵詈雑言を叩きつけるその姿は大団円を壊す無法者。けれど、頭から外したリボンをぎゅうっと抱きしめ必死に堪えてるようにも見える。
――!
『うおおぉぉぉぉお!!』
会場の何処かで悪意が膨張する。呼応するようにナツキは天を向いて吼え猛った。
『どおせ、ボクは下手くそだよ!』
骸の海に付与された脚力にてナツキは地を蹴った。だが更に素早い漆黒が彼女を空中で捉えた。
「下手くそですって? 当然でしょう? アナタはまだ候補生なんだから」
抱き取って着地しナツキと向き合うのは、クローネ・マックローネ(|闇《ダークネス》と|神《デウスエクス》を従える者・f05148)だ。
クローネは怒りに燃えている。ナツキに対してではない。この会場に潜む諸悪の根源に対してだ。
最後の足掻きでナツキをステージに差し向けたのは明らかだ。そのお陰でクローネは下手人の大凡の位置を把握できた。向かえばすぐに対処できもした。
けれど、この子をナツキを放っておけるものか!
最後の最後でおまもりのリボンを握りしめて堪えてくれた。ずっとついてるよって約束を信じてくれたこの子の心を救うことに優先するものなどなにもない。
(「誰も傷つけたくないって強い気持ち、それでこそこの世界アイドルだっていっぱい褒めてあげたいよ。けれどまずは正気に戻さないとね」)
ステージにいる仲間に目配せ。安全確保は任せたと託し、クローネは暴れるナツキを抱きしめる力を強める。
「聞いて」
『……ッ』
駄々っ子めいた腕の振り回しで頬を打たれても、クローネは構わず続ける。
「歌やダンスの技量を先輩達と同レベルにするなんて、一朝一夕でできる事じゃあないよ」
思い立ってエントリーしたナツキが全てに置いて足りないのは当たり前だ。ましてや【メイ♥めいど】メンバーは何年も訓練し第一線にいた者ばかり。現時点で技能を判断基準にされたら勝ち目は0だ。
『じゃあ、ボクなんて勝てない。はじめたばかりのボクなんて……』
もうダメだとの絶望を、クローネの優しさと励ましの籠もる声が包み込む。
「今は勝てないかもしれない。けれど|はじめたこと《・・・・・・》がまず大切だよ。ナツキちゃんは、今日から無限の未来を使ってどんどんどんどん練習していけるんだから」
未だリボンを抱きしめてくれている手の甲を撫でさする。
「ありがとう。ワタシを信じてくれて」
『……くろーね、ちゃん。きてくれ……た』
しゃくりあげるナツキの瞳は涙でキラキラ。メイクは落ちてしまっても、輝きはさっきよりも強くなっている。
「うん、さっきも言ったでしょ? クローネちゃんがついてるって」
険の落ちたほっぺたをむにっとして、クローネもにへっと愛らしく笑った。
「クローネちゃんを信じるのと同じだけ、ナツキちゃん自分も信じて欲しいな。歌も踊りも……すぐに上手くなれなんて言わないから。焦らず、時間をかけていっぱい練習していけばいいんだよ」
暴れていたのがまだ記憶にあるのだろう、しゅんと太い眉を下げて戸惑うナツキ。
『ボクに、できるのかな……練習で、うまくなれる……かな。みんなもっともっと上手だったし……』
「大丈夫」
ほっぺたを優しくぺちぺち。クローネは抱きしめると耳元でそっと囁きを落とす。
「ステージに襲いかかるのを堪えることができたナツキちゃんは、もう、この会場の誰よりもすごいアイドルだよ。ワタシはそう思う」
誰かの心の一番星になれたなら、それはもうアイドルなんだ。あとは自分が誇れるように切磋琢磨し走り続けるだけ――そんな風に、折れそうな心を「もうアイドルだよ」と鼓舞する。
ナツキは握りしめていたリボンを見つめてほんの少しだけ口元を崩した。
『クローネちゃん……リボンね、心強かったんだよ。ずっとずっとおかしくなったボクを呼んでくれてるようだったの……ッ、クローネちゃああん!』
しがみついて大泣きのナツキの背中をうんうんとさする。
「今は思いっきり泣いていいよ。だけど、涙はバイバイできたら頑張ろうね……元気いっぱい飛び込めるのが、ナツキちゃんの良いところでしょう?」
『! うんっ! うんっ!! ボク、もっともっとがんばってみるよ!』
――良かった、これから輝く綺羅星を潰えさせずに済んだ。
優しさをナツキに注ぎながら、クローネの赤い双眸はスゥッと窄まり鋭さを増す。
視界には、悔しげに拳を握る小太りの男が肩を震わせている。彼はナツキを見ていない。既に脅威の力で退避したアイを……Vアイドルラブを探すことに執心しているのだ。
(「お前が下手人か、どういう理由かは知らないけれど、よくもこの子の笑顔を奪ってくれたね――後で覚悟してもらおうか」)
報いは必ずや受けてもらう。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『かつてお前らと呼ばれた者』
|
POW : 憎しみ★オーバーロード
【かつての推しへの憎しみ】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : トラウマ★ハート
【自身の心の傷】に映し出された【深い闇】を見た対象全てに【自責の念】を与え、行動を阻害する。
WIZ : 君は★アイドルだった
【完璧な振り付け】を披露しながら視界内の対象1体に【憎悪の感情】を向けている間、対象は本人と使用者以外を認識できない。
イラスト:すずや
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠幻武・極」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです
百地・モユル(サポート)
熱血で好奇心旺盛
本が好きな小学生
正義感が強く困っている人は見過ごせない
UCは業火の一撃、灼熱の束縛などを使っていきたい
攻撃には怪力、属性攻撃、2回攻撃、グラップルなどの技能をのせる
逆に敵の攻撃をからみんなをかばう、耐えるために
武器受け、挑発、おびき寄せ、時間稼ぎ、激痛耐性なども使用
敵に一撃入れられそうなら咄嗟の一撃や捨て身の一撃、カウンター
こいつがボスか…
みんな大丈夫?助けにきたよ!
そんなの許せない、ボクの炎で焼き払ってやる!
技能の勇気、覚悟、気合いは常に発動状態
アドリブ絡み歓迎
説得できる場合は説得したい
同情の余地がある敵には情を漏らすことも
ほかの技能も状況に合わせて使うよ
●
倒れひしゃげたパイプ椅子、ペンライトは踏みしめられプラスティックの脆い欠片を散らす――既に洗脳されたアイドル候補生達との戦いで、観客席は散々たる状態である。
『うがぁああああーーー!!! ラブを捨てた|肉次元の女《アイ》のクセにぃぃ!!』
クローネの尖る双眸が見据える先では、小太りな男が頭を抱え喚き立てる。彼の周囲には被害がなかった、だから今だ逃げそびれた観客がいるのだ。
「! いけません、危険な兆候です」
刹那、鈴を転がすような声と共に羽ばたきが耳を打った。滑るように駆け込む響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)は立ち尽くす逃げ遅れを背中に庇う。
『ジャマ、ジャマジャマァァァ……どけぇ』
小太りな男は、はちまきからはみ出した髪の毛をブチブチと千切る。異様な光景に飲まれる息に、リズは振り返り口角をあげた。
「大丈夫です、皆さんは私がお守りします」
男の唸り声が獣めく。二の腕は茶色い剛毛に覆われていき明らかに人外へと変じているではないか!
「どうか落ち着いて少しずつさがってください」
リズは背中の羽根を大きく広げ極力見せぬように視界を遮ると、予め確保した退路を後ろ手に示す。
『ぐおおお!!』
「たぁ!」
リズを飛び越え登場した百地・モユル(ももも・f03218)は、黒く変じた鼻先に真っ赤なガントレットを叩きつけた。
ノックバックし悲鳴をあげる男――もこもこのクマのぬいぐるみめいた姿に変じたのでクマと称す――へ、モユルは更なるラッシュをかけつつリズへ目配せする。
「皆さん、こちらです! 振り返らず前を見て、落ち着いて移動してください」
その場はモユルに任せリズは観客達を押して避難を開始。モユルは頷くと、ひときわ輝く宝玉で獣毛を焦す。熱さに思わずギュッと目をつぶるクマへと語りかける。
「なぁ、何がジャマなんだよ? 言いたいことがあるんなら聞くぜ」
『ラブたんを返せええ! 画面の中の彼女だからこそ、オデは癒やされたんだァァ』
憤怒の叫び、それと共に巨大化していくクマ。モユルは椅子を蹴飛ばし瓦礫を燃やしバトルフィールドを誂える。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
レーヴクム・エニュプニオン
強烈★
やっぱり、世界違うと法則違うのがよくわかる★ダークネスへ直行級だよ★
キミが癒しを貰ってたのは事実だし、推しがいなくなって傷ついたのも本当だ。
でもさ、それでここで暴れて…|彼女《ラブ》が復活したとして…それは本当に元の|彼女《ラブ》だと思う?
どっかで引っかかるんだよね、双方ともに。
で、真面目な話はここまで★
ボクちゃんは歓喜の守護者。精神世界に分身がお邪魔しまーす★
あ、現実世界のボクちゃん止めても無駄だからね★
精神世界のボクちゃんは見た。わあ、荒れてる!これは治療を最優先だね★
一度キミは|彼女《ラブ》から離れた方が良い。そうして…ゆっくり時間をかけて心の療養をした方がいいよ★
●
『アァァア゛!ォアウェェ……』
ふかふかの巨腕が痙攣したかと思うと風船から空気が抜けるように身体が萎んでいく。
『ラブたぁああん……深夜ラジヲで『ずっとみーんなのハートと一緒だヨ』って言ったじゃないがぁぁ!』
アイの瞳から光が奪われる。
「確かに|ラブフレ《ファン》を裏切っちゃった私がアイドルなんてやる資格ない、よね……」
棒を飲まされたように佇むアイへ、2メートル半程までに縮んだクマはニヤリと口端を歪めた。
『そうだよぉお! ラブを殺した三次元にゃあ生きる資格なんざねぇんだよォオオ』
広げた腕をブゥンと回しジャンプ! 奴め一気に舞台に乗り込むつもりだ!!
「強烈★」
むぎゅッ★
レーヴクム・エニュプニオン(悪夢喰い人ナイトメアイーター・f44161)のおみ足が転んでジタバタするクマを踏みしめる。ダイヤ飾りがキラリ、アイに光をもたらす。
「わ、私……?」
「アイさん、キミは引きずられたのだよ★こやつめの夥しい闇にね★」
サイキックハーツならばダークネスへ直行級だがここでは処置可能。数多の世界に溢れる人間の器は然程変らぬだろう、だから世界法則で様変わり。
『むぎゅう~★』
「案外可愛らしく鳴くね★」
ぽんっぽんっと遊ぶように跳ねたレーヴクムは短く息を吐く。さて、ここからの話は舞台のアイには聞かせたくない。
少年は深紅のマントを舞台に向けてクマの傍らにしゃがむ。そうして耳をくいっとひっぱりあげた。
「キミが癒しを貰ってたのは事実だし、推しがいなくなって傷ついたのも本当だ」
『だったらお前も一緒に三次元の金と欲に塗れたあいつを潰してラブたんにー……』
「でもさ」
ぴしゃりと切る。
「それでここで暴れて……彼女ラブが復活したとして……それは本当に元の彼女ラブだと思う?」
『!』
核心を突かれたか、つぶらな瞳が皿のように見開かれた。
「どっかで引っかかるんだよね、双方ともに」
ラブという二次元の存在は既に変質している、夢は醒めてしまったのだ。
『~~~!』
ブルブルと震えるクマの肌がじっとり。だが構わずに脂汗ごとレーヴクムは撫でる。
「で、真面目な話はここまで★ボクちゃんは歓喜の守護者。精神世界に分身がお邪魔しまーす★あ、現実世界のボクちゃん止めても無駄だからね★」
『んなっ!』
シャドウペルソナは瞬く間にクマの深層世界に到達する。だが現実世界では相変わらず朱色の王子様がクマさんのほっぺたむにむに。
――。
画面に齧り付く小太りな男は、ラブの歌に倖せそうに身体を揺らしている。刹那、画面が解けて悪辣なるアイがメロディに乗せて罵詈雑言吐き出した。
『やだよぉ……オデを捨てないでぐでぇ……』
「……わあ、荒れてる!これは治療を最優先だね★」
こしこしと汗で張り付く獣毛に、レーヴクムは瞳を眇める。
「一度キミは|彼女《ラブ》から離れた方が良い。そうして…ゆっくり時間をかけて心の療養をした方がいいよ★」
その為にはまずはこの姿から脱却させねば。
大成功
🔵🔵🔵
南雲・海莉
【朱玄】
流れ星に願いを
メイド服をアレンジしたドレス衣装に
UC使用
歌魔法に存在感を込めて
リュートで切なくも煌めく旋律を
♪ずっとあなたを探していた
突然の別れが抱えた煌めきを砕いたから
ダンスの要領で回避
蹴り技に風の属性を纏わせ攻撃し
時に剣で周囲を庇いつつも
歌は止めない
紡ぐのはR&B
舞台仕込みの声量で力強く
♪この痛みが諦めなどを選ばせない
祈るように願うように糸を手繰る
悲しみも苦しさも相手の代わりに
強く世界へと響かせ訴えるように
こちらへと意識を移させ振り付けを乱すわ
♪不意の再会
君の真意が見えずに戸惑う
伸ばす手に君は怯えるのだろうか
その怒りも悲しみも
求める気持ちの裏返し
気づくまで精一杯受け止めてあげる
分かるわよ
私だって喪失の痛みを知っているもの
世界で一番の、彼の強火担だもの
彼の芝居もお茶も優しさも
本気で推してるの
だから本気でどこまでも探して探して探し出したんだから!
♪求めるのは昨日でなく
明日の君の輝きだと
彼女が紡ぐ明日に胸高鳴らせ続けて
同じ時間を生きて
今度こそほんの数十年ぐらい応援し続けてみなさいよ
ユウ・リバーサイド
【朱玄】
…ずっと、好きだったんですね
忘れられずに探していたんですね
流れ星に願い
碧い輝きを纏い
笑顔の魔法と共に執事服をアイドル風にアレンジ
♪ずっと心細かった
たった1人に戻ること
自分が選んだのだと言い聞かせて
感傷的に
だけど海莉の歌に負けないだけの想いを乗せて
ソウルフルに歌い返す
♪一度、放した手を握り返す事はとても怖くて
視線でアイさんに問う
♪それでも
この心は失われていないと
新しい舞台へ進む自分を
君は見てくれるだろうか
アイさん
自分をもう一度見つけ出してくれるファンがいること
誇りに思っていいんですよ
アイさんにマイクを渡し
どうかあなたの本当の気持ちを歌にしてください
笑顔の魔法で勇気を鼓舞して
ラブは彼にとって明日を生きる理由だった
だから今度は「アイ」さんがそうならなきゃ
ここからはアンサンブルで歌を支える
剣舞とダンスで魅せる動きを意識し
心眼で急所を見抜いて貫く
僕も見つけて貰った
世界で一番の強火担の彼女に
だからここに居られるんです
だから今度は僕達が
誰かの明日を生きる理由になる番です
それがアイドルでしょう
●
“カルト的人気のVアイドル“ラブ”が消えた! さよならもなしで”
――クマの心を蝕む闇は深い。
その闇の起点は確かにラブの突然の引退である。だがアイにはどうしようもできなかった。
両親との関係も悪く学校にも馴染めずの引きこもり、それが|千羽・亜以《せんば・あい》17歳という少女の実像だ。ラブという仮面は人からの悪意を全て遮断してくれた。
|ラブフレ《ファン》はみんな優しい――『このままでいたい』と『実生活もちゃんとしなくちゃ』の間で常に悩み苦悩していた。
そんな時に二次元を伝いリアルに現れたのがプロデューサーという|大人《・・》だ。彼はリアルで生きていく正解を示してくれた。
『言う通りにしたら真人間になれる』そう信じたアイはプロデューサーの言う通りにラブを捨てて【メイ♥めいど】のリーダー“アイ”になったのだ。
●
頭を抱え呻いていたクマの体躯が縮みすっくと立ち上がる。手にはラブのイメージカラーであるシュガーピンクのペンライトがある。
『♪らーぶ、らぶらぶ! こっこにいるよ ボクがいるよ キミはひとりぼっちチガウ~』
腹からの歌声が会場に叩きつけられた。メロディもなく獣の吠え声めいたそれは不思議と優しさに溢れている。
「消えたラブをずっと探していたのよね……」
「やっと見つけた、か」
南雲・海莉(Pray to júː・f00345)の呟きに、ユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)は、ほんの少しの綾を口端に滲ませた。
『♪夜 さみしいなら スマホにタッチ~ 逢いに来てくれてアリガト。だから~』
渾身の想いを籠めたヲタ芸ダンスは舞台のアイにのみ向けられている。アイは昔の自分が“歌って踊ってみた”ダンスをまんじりともせず見据えた。
このままクマの心が浄化されるのならば、しばし見守ることも吝かではない。暴走した際にはすぐに止められるようにだけ構える二人だが、サビに至り息を飲む。
クマの歌に溢れる優しさはラブから|彼《・》が受け取ったモノ。それが尊ければ尊いほど、今はアイへの憎しみと化す。
「いけない!」
クマがペンライトを扇に広げ振り回しだした時点で海莉が飛び出す。流れ星の後を追うのはユウだ。煌めき纏う夜が溢れアイのいる舞台とクマを分断する。
『あぁ?! ジャマすンなよォォ』
クマの怒号はユーロビートのダンサンブルなメロディが塗りつぶす。縦揺れにのって海莉の金銀飾りがアイの目を奪い悪夢から救い出す。
「♪ずっとあなたを探していた
突然の別れが抱えた煌めきを砕いたから」
床を踏む音でリズムを刻む海莉にあわせユウの歌声が被さる。どこか競うようなのがあの時代を感じさせた。
「♪ずっと心細かった
たった1人に戻ること
自分が選んだのだと言い聞かせて」
クマ以外の全員が低音リズムと情緒的なメロディに心を奪われた。ある者は歌詞に自らを重ねて聞き入り、ある者はノリノリでゆれる。
『お前らバラッバラじゃネーか!! なんだそりゃ! 完璧ヲタダンスを侮辱すンナァ!』
扇ライトをぶん回す『憎悪』が闖入者達に向いた。それこそが狙いだ。アイコンタクトを交わし海莉とユウは左右に別れる。
「♪この痛みが諦めなどを選ばせない
祈るように願うように糸を手繰る」
「♪――あぁ」
海莉が力強く伸ばした腕に縋る目を向けるユウは己を抱きしめ煩悶する。それを前にして、海莉はフラットな面差しに全てを押し込みグッと堪えた。真に迫るパフォーマンスは然もありなん、二人は役者でありこれは経験を華咲かせたメソッド演技法がベースだ。
アイもまた経験から生じたはみ出し者の寂しさを歌や交流に昇華した。だからクマの内側で嘆く孤独な者の心に刺さったのだ。この二人は歌いあげる中身こそ違えども、過日のアイを表現している。
「♪不意の再会
君の真意が見えずに戸惑う
伸ばす手に君は怯えるのだろうか」
「♪一度、放した手を握り返す事はとても怖くて」
手はつながれずにすれ違っていく二人は、巧みにクマの憎悪のオーラを躱す。
(「ああ、伝わってくる。大切だったから、理由も告げずに姿を消した怒りが。そして見えている部分だけだと、まさしくラブを捨て華やかな世界に行ったとしか思えないものね」)
それは裏切りだとは、思う。
だけど、
人は自身が倖せになる為に生きねばならない。他者を倖せにする為の自己犠牲も過ぎれば相手への毒になってしまう。
ふらりと伸びたユウの腕を海莉がガシリとつかみ取る。アイドルのパフォーマンスの中でひときわ無骨な振る舞いにユウは破顔した。演技じゃない、しまったなと役者根性が心でつむじを曲げる。そんな兄へ、今度は海莉が晴れやかに笑った。何処かしてやったりといった容。
「――ねぇ、聞いて」
リュートで作る間奏の音量を絞り、海莉はクマの双眸を捉え画然と語り出す。
「分かるわよ、私だって喪失の痛みを知っているもの」
だから、探して探して探し歩いて捕まえた。
「そして今は、世界で一番の、彼の強火担だもの」
真っ向から言われて照れを滲ませて、すぐにユウはウインクする。そう、ファンサはいつだってハートフルサービス。
「彼の芝居もお茶も優しさも本気で推してるの。だから本気でどこまでも探して探して探し出したんだから!」
『お前はいいヨなァ……そやってさぁ推しが一緒に歌って踊ってくれてよォ』
「それはッ」
海莉の唇にたてた人差し指を宛がいユウはつないだ指を解いた。眦には常にアイの姿を留めていたが、今、まっすぐに向かう。大丈夫、クマは海莉が宥め押さえてくれる――そう信じられるから。
「♪それでも……」
これから紡ぐ歌は既にアンサーをもらっている。
「♪この心は失われていないと
新しい舞台へ進む自分を君は見てくれるだろうか」
本気で推してくれていると真っ向から言われた、眩しい流星に。
「アイさん。ファンは綺羅星だと俺は思います。アイさんはどうですか?」
『逆だよォオ! アイドルがキラキラで俺達はァアその辺の石ダッツーの!』
大音量のクマの声は、澄んだメゾソプラノでいともあっさりと遮られた。
「――はい。私は|ラブトモ《ファン》のみんなから光をもらっていました」
はじめてアイは醜いクマを真っ直ぐ見た。そうしてぎこちなく手を揺らす。ラグを連れた向こう側、画面の二次元のラブがそうしたように。
「……ッ」
声はでてこない。なにを言えば良いのか、彼がこんなになるまで裏切ってしまったのに。そう俯きかけたアイの元へアクターは駆けつける。
「アイさん、自分をもう一度見つけ出してくれるファンは超特大の綺羅星ですね。誇りに思っていいんですよ。そんな彼に伝えてあげてください。そう……♪ららら~、等身大の心を、いまー」
役者はアイドルを演ずる。だから萎縮を振り払い鼓舞するのは歌声である。
「僕も見つけて貰った、世界で一番の強火担の彼女に。だからここに居られるんです」
「!」
「ラブは彼にとって明日を生きる理由だった。だから今度は「アイ」さんがそうならなきゃ」
「私が、彼の生きる意味…………」
差し出されたマイクに指が辺りゴゥンと無骨な音が響く。アイは今度こそめいっぱいの笑顔で手を大きく振った。
「ねえ、あなたの名前を教えてくれるかな!」
ほら、と海莉はクマの肩を握りしめて振り向かせた。
「あなたにだけのファンサよ。こんなチャンス滅多とないわ。ねえ、名前は?」
『うぅぅ……』
クマはつぶらな瞳から涙をぽろり。ぬいぐるみの口元をぷるりと綻ばせる。
『|桜井桜太《さくらい・おうた》』
「……ああ! サクラさん、だよね? いつも応援メッセージアリガト! あなたがさっき踊ってくれたラブの初めてのオリジナル曲、聞いてくださいね」
アイはぐっとマイクを握りしめるとアカペラで歌い出した。
「♪らーぶ、らぶらぶ! こっこにいるよ キミがいるよ ボクはひとりぼっちチガウ~」
文字だけの拍手、賞賛、それが支えだった。キミが、キミ達ラブトモがいてくれた、だから|ラブ《アイ》はひとりじゃなかった。もう一度、外に出ようと勇気がでたんだ。
歌い出したアイにあわせてユウと海莉も間奏にハーモニーを寄せる。
「♪求めるのは昨日でなく明日の君の輝きだと――」
「♪あなたが意味をくれた だから僕も生きる――」
ぎゅっとクマを後ろから抱きしめて、海莉は届けと祈る。
「過去じゃない、明日を見て。彼女が紡ぐ明日に胸高鳴らせ続けて、同じ時間を生きて。桜太さん、あなたもアイさんも……ラブさんもちゃんとここにいる」
『おぉおおおおお!!!』
歌声の中で顔を覆いクマの巨体が前へと傾ぐ。
『アイちゃん、けどラブちゃんは過去……イヤダ、イヤダヨゥ……! ラブちゃん帰ってきてくれよぅ……! だけどだけどーー……傷つけたくない、イヤダ、歌を聞いていたい……ッ!! ラブちゃんノォ、うだ、がぁああーーー!』
大いなる葛藤に沈む桜太を闇はまだ手放してくれない。クマの身体が再び膨張していく。
「桜太さん! 桜太さん!! ダメよ、アイさんを傷つけるのだけはダメ!」
がっしりとしがみつき海莉はクマを押さえこむ、ビリビリとアイドルドレスを破り皮膚が裂けていく痛みの中で、ユウがアイを庇うのを見てほっと胸を撫で下ろす。
「折角追いついたんだから、今度こそほんの数十年ぐらい応援し続けてみなさいよ!!」
激励には涙で撓む黒い瞳が応えてくれた。大丈夫だ、希望はつながっている――。
【使用ユーベルコード】
サウンド・オブ・パワー
【歌声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
星川・玲蘭
連・アド可
…あー、成程
ネットアイドルとしてのアイちゃん…ラブちゃんに恋をしちゃった系か…
…気持ちは、分からないでもないけれどね
…でもさ
仮に本当にあなたがアイちゃんの心からのファンならば
リアルに今を生きて、頑張って外を向いて生きていこうとしているアイちゃんを否定するのは違うんじゃないかな
そんな、ラブちゃんであり、アイちゃんでもあるあの子を応援する事
そっちの方が余程、ラブたんもアイちゃんも嬉しいと思うよ
だから…ミュージック、スタート☆
アイドル姿でオーケストラ☆デバイスを起動
希望の力+煌めきを纏うで自らを輝かせながらUCを歌唱
…これはね
ある世界でアイドルを目指したけれども
とある事情で全くそれが一般に伝播されなかった存在が歌った歌のカバーソング
そんな逆境の中でも頑張り続けていた…異世界のとあるアイドルを目指した人の歌
…この歌を皆で歌ったから彼女は嘗て失った絆を取り戻せた
その歌で…わたしがあなたの心を揺さぶってあげる
仮令、その人の在り方が変わっても
その人の歌で繋がる事が出来ると言う想いを籠めてね
クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【POW判定】
真剣口調で話すよ
推しがいなくなって辛かった…うん、その気持ちはわかるよ
|Vアイドルの世界《ラブ》を捨てた|現実の女《アイ》が憎いと、そう感じるのも理解できる
…けどね
アナタにはアナタの|人生《げんじつ》があるように、推しには推しの|人生《げんじつ》があるんだ
|一ファン《アナタ》の都合で推しの人生を縛るなんて…そんな事、やっていいわけがないんだよ
そもそもの話…
推しにも推し以外にも、人に迷惑かけちゃあ駄目でしょうが!
皆を苦しめ…|彼女《ナツキちゃん》を泣かせた…
その|憎しみ《オブリビオン》、ここで打ち倒す!
UCは『クローネちゃんの心癒す歌★』
【歌唱】による【音響攻撃】で、男の心に【癒し】の歌【声を届かせる】よ
敵の攻撃は【結界術/オーラ防御/霊的防護/硬化/鉄壁/激痛耐性】による防御結界で防ぐね
●
『ガァァアア! ラブぅ、ラブラブラブぅぅ! また毎晩オレタチとおしゃべりしてクデよぉうー!』
桜井・桜太という青年の心で闇と理性がせめぎ合う。
でたらめに振り回される腕が灰色の壁にめり込み、コンクリートが砕け散った。尖った欠片が己に降り注ぐのも気に留めやしない。
「あぶない!」
黒く細いリボンが鮮烈な三日月を描いた。鮮やかな回し蹴りで瓦礫を打ち払った星川・玲蘭(人間のフレッシュ☆アイドル・f45163)は、クマ……いいや、桜太へ気遣いの眼差しを注ぐ。
『なんで、オデを庇ったンダァ……?』
「だってこんな瓦礫が当たったらとっても痛いよ」
戦わず収めることは無理だと玲蘭はわかっている。だがそれとこれとは別だ。
「……観客席の避難は完了。あとはステージか」
裏方にまわることも多々あるクローネ・マックローネ(闇ダークネスと神デウスエクスを従える者・f05148)は今回も手際良く皆を逃がした。そうして未だアイ達が残るステージへ赤瞳を引き絞る。
「……」
歌の途中で暴走した桜太を前に棒立ちするしかないアイの腕をモエが掴んだ。
『ほら、アイ逃げんぞっ』
「え、まだ桜太さんへの歌の途中……」
『バカ! あんなバケモンに対してなに寝ぼけたこと言ってんだよ』
『そぉだよ、ムリムリムリぃー! 歌なんて聞ける理性ないって!』
るんも、ぷるぷるとツインテールを揺らし怯える。
「そんなこと……」
切なげ俯くアイは舞台裾に退避したプロデューサーと誰かがもみ合う声を聞く。
『おい、どこに行くんだ。ステージは危ないぞッ』
「ゴメン! ちょっとどいて!」
ダダダッと舞台を踏みしめ駆け込んできたのは、なんとナツキである。
「クローネちゃーん!!!」
大きく腕を振り回しナツキは一番信じている人の名を叫んだ。
「ナツキちゃん?」
クローネは素早くクマと舞台の間に回り込む。距離はある、が、今なおクマの身体は膨らみ続けている。巨腕がステージに届いてしまう危険はあるのだ。
「クローネちゃん! お願いだよッ! アイちゃんに歌わせてあげてよ! ボクを助けてくれたみたいにッ!」
お願いお願い! 手を合せてそう叫ぶナツキに対し、クローネの頬が緩み警戒で吊り上がっていた眉が下がる。
――誰かの願いに寄り添って勇気を与える。やっぱりナツキはこの場の誰よりも輝くアイドルの原石だ。それがクローネには嬉しくてしょうがない。
「猟兵なら逃げろって言うべきなんだろうけど……ふふ、アイドルとして頑張るナツキちゃんを無碍にはできないね」
視線を向けられた玲蘭は大きく頷いた。
「絶対に桜太さんを舞台には行かせないよ、ここで決める! そして二人を守ろう。守って、力を借りるよ」
背後からユウとカイリ、レーヴクム、その他残っていた猟兵達が駆けだしていった。舞台に残るアイとナツキの安全確保は任せろと言わんばかりに。
「OK、その流れね」
クローネは改めて舞台へ向き直ると声をはりあげる。
「ナツキちゃん、いーい? ワタシが『逃げろ』って言ったらそっちにいった猟兵に従って逃げるコト!」
「わかったよー! クローネちゃーん! ありがとー!」
ニッカリと白い歯が離れていてもわかる、満開のアイドルスマイルは満点突破の120点!
「アイちゃん、歌ってよ。クマさんはアイちゃんの大ファンなんだよね?!」
「私じゃなくてラブ、だけど……」
「アイちゃんはラブちゃんなんでしょ?」
ステージでナツキはアイを励ますようにグッと腕を握った。
「……わかっ……った、私、歌う、よ。じゃあ、2曲目はこれだよ、サクラさん、聞いて!! ラブの作詞でエンディング曲に使ってたの」
『♪真っ暗画面を越えて、キミにおでこごっつん~。それぐらいチカクに心はいたいナ』
『ウオォオオオオ!! 違うぅぅー!!!! 戻らないクセにぃ!!』
二次元ラブの見目ではないアイが歌うのを、瓦礫を掴むクマは咆吼でかき消そうと喚き出す。滑るようにシューティングスター、玲蘭がクマの鼻っ面を蹴飛ばして吹き飛ばす。
(「今はまだわたしの出番じゃないもんね」)
それでも、玲蘭のしなやかな回し蹴りはまるでダンスだ。
(「アイちゃんの歌にあわせてっと!」)
けれどバックダンサーになるつもりはない。キレのあるダンスはナツキの視線を釘付けにする、それぐらいは、ね?
『オデの推しの歌を、お前からは聞ギたくないィ』
塞ぐのは片耳だけ。だがもんどり打ち床を粉々にする駄々っ子ぶりにクローネはグッと拳を握り解いたかと思うと撓らせた。
ぺしっ!
紫苑に輝く掌が膨れあがったクマの顔を押さえ込む。そうしてクローネは息を整え口火を切った。
「……推しがいなくなって辛かった……うん、その気持ちはわかるよ」
わかるわけないと喚かれる前に睨みつけ続けた。
「|Vアイドルの世界《ラブ》を捨てた|現実の女《アイ》が憎いと、そう感じるのも理解できる」
「そうだね。わたしも気持ちは分からないでもないけれどね。ネットアイドルとしてのアイちゃん……ラブちゃんに恋をしちゃったんだものね。いなくなる原因がアイちゃんだって、桜太さんからは見えてるんだよね」
よいしょっとクマの後ろ頭を支えるそぶりでやはり動きを封じる玲蘭。
『うぅぅ、うううッ! ラブとボクタチの楽園を……あの女がァ……』
――ステージからの歌声が止む。
「……やっぱり、私はひどいことをしちゃった」
「アイちゃん……」
「アイドル失格だ。ラブトモをこんなにも傷つけて、ごめんなさいもできてない……」
アイが心を折りかけたその時、二人の猟兵が声をあげる。
「ごめんなさいは違うわ」
「そうだよ、アイちゃんは悪くないんだから」
クローネは嘆息をもらす。
「やっぱり優しいだけじゃあダメか。その顔、根性たたき直すしかないわね」
憤怒にも似た感情が宿るのは、泣いていたクマの左半分が邪悪に歪笑したからだ。
「憎しみを盾に被害者面して人を殴る前にちゃあんと聞きなさい。これから本当に当たり前のことを言うわ」
止めてくれと訴える右半分を避けドスソードで左耳の獣毛を掠め切る。これでよく聞こえるようになっただろう。
「アナタにはアナタの|人生《げんじつ》があるように、推しには推しの|人生《げんじつ》があるんだ」
「そうだよ。仮に本当にあなたがアイちゃんの心からのファンならば、リアルに今を生きて、頑張って外を向いて生きていこうとしているアイちゃんを否定するのは違うんじゃないかな」
対する玲蘭はファンサの如き対応で右腕を抱えて握手。
「アナタの推しは外の世界で頑張ることを選んだんだ」
アイがラブとして日陰の『おまえら』に寄り添えたのは自分も引きこもりがちだったから。
「そのまま閉ざされたお城にいることだってできた。叩かれたりもしないだろうラクな道、だけど彼女はそこから飛びだそうって勇気を出したんだよ」
「そうだよ。ラブちゃんはいなくなってない。アイちゃんはラブちゃんでもある」
『お為ごかしはイインだよお!』
「「「莫迦ッ!」」」
クローネと玲蘭、そして舞台上のナツキの台詞が揃った。
「ラブちゃんだから、桜太さんに心を込めた歌が歌えたんだよ?! わたしはわかる。だってアイドルだもの。そんなアイちゃんを応援してあげようよ。そっちの方が余程、ラブたんもアイちゃんも……」
玲蘭は既に暴れたことを後悔している右側の頬ょを撫でて囁く。
「そして|あなた《・・・》だって嬉しいと思うよ」
闇が、消える。
――そう、なると安堵もつかの間。
『オデは認めてねええええ!』
クローネと玲蘭を振り払い瓦礫を掴みあげるクマへ、ステージのアイが絶望に震える。
「やめてーっ! その人達にひどいことしないでー!」
「クローネちゃんッ! クローネちゃーん!!」
虚空で錐揉みする漆黒の肢体にナツキが肩を震わせる。
「……ッ、往生際がッ、悪いわね」
クローネは、釣り鐘型の街灯を蹴飛ばして宙返りで体勢を立て直す。口元にはラブの奏でた歌がある。
「|一ファン《アナタ》の都合で推しの人生を縛るなんて……そんな事、やっていいわけがないんだよ」
アイを歌えなくしたのはお前だと紫苑のオーラで輝く掌を叩きつけた。
「ミュージック、スタート☆」
怯えるステージにウインクを投げて、玲蘭は煌めきを纏い瓦礫の上で軽やかなステップを踏みしめる。
「アイちゃんがまた歌えるまでの幕間? ううん、目一杯だよ! 私のファンにしちゃうぞ! なぁんて……♪」
オーケストラの重厚な音の重なりを乗りこなし、玲蘭は喉を震わせる。
――これは、ある世界でアイドルを目指したけれども、とある事情で全くそれが一般に伝播されなかった存在が歌った歌のカバーソング。
「みんな、聞いて。どんな逆境の中でも頑張り続けたこの人は嘗て失った絆を取戻したんだよ――仮令、その人の在り方が変わっても、その人の歌で繋がる事が出来るんだから!」
クローネの𠮟咤を切っ掛けに、玲蘭の歌声が桜太の心を満たす。するとどうだ、どす黒い獣毛が白く純粋な色へと変じていくではないか!
『おぉ……もお、やめよお、オデはぁ……僕は……ラブたんは、アイちゃんだって……わかっ……たんだぁ。あの歌はラブたん……』
ステージのナツキがパッと瞳を輝かせて、アイの肩をつかんで揺さぶった。
「アイちゃん! 今ならクマさんに届くよッ、だから歌ってよ!」
「ナツキちゃん、ありがとう」
『とっ、どくかぁああ! 三次元の肉の歌なんてッ! 聞きたくなぁーーい! チビブスも余計なこと言うなよナ!』
ぶちん。
ナツキへの八つ当たりに、なにかがキれる音がした。
ほぼ白くなったクマのシミの部分にギッと爪が立つ。
「そもそもの話……」
クローネである。
ここ一番の怒りのオーラを滾らせて悪あがきの黒い染みをつねりあげる。
「推しにも推し以外にも、人に迷惑かけちゃあ駄目でしょうが! 皆を苦しめ……|彼女《ナツキちゃん》を泣かせた……」
さっきも、そして今もだ。もう赦さない!
「その|憎しみ《オブリビオン》、ここで打ち倒す!」
ぶぢり!
つねり取られた頬肉に玲蘭があちゃーっと片目を閉じる。これはとても痛そうだ。この技がトドメとなり、クマは風船が弾けるように爆散、後には白目を剥いた桜井桜太が転がっている。
肩で息をする猟兵らは今度こそ確信する――戦いは終わったのだ、と。
●後日談
【メイ♥めいど】オーディションは“なんだか大変だったんだよね”という曖昧模糊な話でもって締めくくられた。猟兵らが降臨し、闇に堕ちかけた青年を救ったのは、アイとナツキ、そして救われた青年だけが憶えている――。
そんな波乱含みな【メイ♥めいど】だが、この後『モエ』『るん』をそれぞれリーダーとしたチーム対戦アイドルとして世間を沸かせることとなる。
『アイ』はというと、方向性の違いを理由に【メイ♥めいど】からは脱退した。
商業的にゴリゴリ上に行きたい“るん”や、自分の歌にプライドを賭けて成功したい“モエ”とは明らかに違うと、アイは気がついたのだ。
事務所はそのまま。揉めた訳ではないと彼女はマイペースに活動を再開した。
“こんばんらーぶ♥2.5次元アイラブりんと今夜も遊ぼうね!”
“今日はね『修行アイドル・ナツキたん』とコラボってきましたぁ”
週の半分は、アイはラブだ。
ナツキは別の事務所のプッシュを受けて活動を始めた。下手くそをウリにはしたくないと日々努力し続けている。
アイもナツキも煌びやかなスターダムからはちょっと外れている。けれど、自分が心から納得するアイドルとして存在している。
“じゃーあ、今日のエンディングは生歌で。聞いてね『越えちゃえ次元の壁~はぴはぴトゥギャザー~』”
中身がわかって離れたファンも多い。けれどラブの再誕を喜んでくれたラブトモもたっくさんいる。
そのひとりである|桜井・桜太《サクラ》は、今日もコメントを残す。
“サクラ🌸『ラブたんのアカペラ最の高だし。アイたんのライブもすっごく楽しみナリ』”
〆
大成功
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