9
弄ばれた者の狂気

#UDCアース

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース


0




「さぁ語ろうか。舞台はUDCアース、今までの時間を弄ばれた男の狂気と悲しみの連鎖を断ち切った英雄の物語を……」

●優しくない世界
「裁かれるものが裁かれないことは珍しくない。それでも、止めなければならないものがある……猟兵ってのは因果な商売だよ」
 グリモアベースに疲れたような女の声が響いた。
 青白い四枚翼はへたり、悩まし気に溜息を吐き頭を抱えるグリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは、集まって来た猟兵達を見回すと手帳を取り出し、周囲にグリモアを力なく輝かせ始めた。

「さぁ語ろうか……舞台はUDCアース、邪神と狂気の渦巻く世界だ。君達には狂気が狂気を呼ぶ空間に赴き、とある邪神を討って貰いたい」

 デビルズナンバーなる謎の不可思議オブジェクトが、とある男子高校生を唆し完全復活を遂げようとしているらしい。
 その男子高校生は、とある女子高生に手酷く振られ、酷い仕打ちを受けて傷心の所をデビルズナンバーに付け込まれたらしい。
「……端的にいうとSNSイジメさ。その女子高生が何とも酷い女でね……ちょっとでも気に入らないことがあればSNSを利用して徹底的に攻撃して追いやるクイーンビーだったのさ」
 性質の悪いことに、周りの味方の付け方が矢鱈と上手く、男の方が正当性をいくら主張しても「可哀想な女子高生に酷いことをした男」のレッテルを張られ、周囲の学生や大人達からも見放されてしまったらしい。
 ちなみに攻撃された原因は一緒に歩くときに車道側を歩かなかったからで、男の方に悪意は何も無かったらしいと補足し。

「そこに何の因果か……ある教団が残したノートが彼の手に渡ってしまったらしくてね」
 その教団とはかつて恋人達の宿を爆破し、その爆破のエネルギーと命を生贄に邪神を召喚しようとしていた教団であり、猟兵の活躍によって壊滅はしたが。
 理由は不明だが残されたノートに記されたデビルズナンバー「かしまし」の召喚方法を実践しようとしているらしい。
「その『かしまし』というのは、縁斬りの邪神さ。その力であらゆる人間の不仲を招き自分と同じように孤立させ破滅させようとしている」
 元々自殺は時間の問題だったが、ノートを見た瞬間にその力で復讐を決意したそうだ。
 だが相手は邪悪なオブリビオン――儀式を始めた瞬間、狂気に乗っ取られ今では無差別に不和と不仲を招き人間を破滅に導こうとするようになってしまったそうだ。
 現在はとある倉庫の中にある結界から続く、魔力に依る不思議空間の中で儀式を続けているそうだ。

「だから君達には、その不思議空間まで乗り込んで貰いたいのだけれど……倉庫の中にある結界は、足を踏み入れた者に……っ!!」
 と、詳細を語ろうとした瞬間、急激に顔面に大量に汗を浮かばせ、青ざめた唇を震わせてテーブルに突っ伏して。
 心配する猟兵を手で制しながら水を一口して息を吐いて語りを続ける。
「取り乱して失礼。あの結界は……見せつけられるのさ。奪われたくない、壊されたくないものが奪われ壊されて失っていく様を」
 親しい人に裏切られるだけではない。
 金持ちが突如その金を失ったら。
 力自慢の人がその力を失ったら。
 そうした失いたくない自分の大事なものを失う様を見せつけ、狂気を誘う。
「予知で少し見ただけの私ですらこの様だ。直接赴こうものなら狂気に捕らわれるのは間違いないだろうね」
 だが猟兵の強靭な精神力ならば、廃人になる前にどうにか耐えきることはできるだろうとも語り。
「きついだろうが、それを乗り越えなければ儀式場所には辿り着けない。どうか自分を見失わないで乗り越えていって欲しい」
 強靭な自我か、冷静な精神か、術か知恵か。
 いずれにせよ結界の齎す効果を乗り越えれば、儀式会場である異空間には自動で転送されるという。
 然る後、デビルズナンバーを打倒して欲しいと語り終え。

「……元を辿れば色々な意味で被害者だが、それでも、やろうとしていることは放っておいて良いものじゃない――ならなくても良い不和なんて、真っ平だろう?」
 一頻り語り、残った水を飲み干してからまた一息吐いてぽつぽつと語りを続け。
 物憂げな瞳で猟兵を見回すと、立ち上がり頭を下げ、グリモアの結界を作り出して彼女は最後に告げた。
「色々と大変な仕事にはなると思うけど……これ以上の過ちを犯す前に、どうか止めてあげて欲しい……頼んだよ」


裏山薬草
 どうも裏山薬草です。
 リア充爆破教団に関しては過去作「ロマンスと激情の恍惚なる塔」を参考にしてください。
 今回のシナリオには殆ど関係がないので見なくても構いません。

 今回はですね、狂気の結界を乗り越えてデビルズナンバーと二連戦を行うシナリオとなります。
 第一章では、儀式会場まで狂気の結界を潜り抜けていく冒険となります。
 狂気に陥らせられる理由はOPに描いた通りですが、肝心の発狂内容は皆様の自由です。
 どのような感じに発狂するのか、そしてそれをどう凌ぐかを書いてください。
 あまり難しいことは考えず発狂ロールを楽しみたい、ぐらいの気持ちで来てください。

 第二章では狂気空間を潜り抜けた先にある護衛のデビルズナンバーとの戦いを。
 第三章ではボスとして控えるデビルズナンバーとの決戦となります。
 尚、男について気に掛ける必要はありません。戦闘が始まればどこかに弾き出されたのをUDC組織が保護しますのでご心配なく。

 それでは皆様のプレイングを心からお待ちしております。
 裏山薬草でした。
149




第1章 冒険 『狂気空間へようこそ』

POW   :    自我を見失いながらも、強靭な精神力を全力で発揮することで狂気を振り払う

SPD   :    正気を損ないながらも、現実を感知し冷静さを取り戻すことで狂気から抜け出す

WIZ   :    理性を削られながらも、自らの術や智慧を駆使することで狂気を拭い去る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●女王蜂の毒針
『ねぇ知ってる?』
『聞いた聞いた、酷いよねー』
『それぐらいのことができないなんてサイッテー』
『――ちゃん、かわいそー』
『うわ、来たよ。何であんなのと付き合っちゃったんだろーねー』
 ……女なんて。

『なぁ知ってるか?』
『でもよ、それってマジ?』
『マジに決まってんだろ。だって――の言うことだぜ?』
『――も可哀想だよなー』
 ……同じ男だろ。

『聞いたぞ。お前――ちゃんを傷つけたんだって?』
『男なら言い訳するな!!』
『デリカシーない子に育てた覚えは無いわよ』
『ネットいじめ? そんなのほっときなさい』
 ……父さん、母さん。

『あ、クズ男さんw』
『彼女さん身代わりにしたんだって?』
『ありえねーw ヘタレーw』
『』
 ……ハンドルネームを変えたって、結局特定される。

『はぁ? 車道側歩いたのはホントじゃん』
『それぐらいのこともできないとか……はぁ、あの人はしてくれたのになー』
『被害者ぶらないでよね。ついてけない』
『悪口なんて言ってないじゃん。自分で挽回すれば?』
 ――お前が、こんな奴だと知ってれば。

 クスクス。
 ニヤニヤ。
 ウゲェー……。
 ガミガミ。
 
 気付いたら、もうどこにも居場所はなかった。
 どうしてここまで追いやられなきゃならないんだ。
 もう、……死に、たい……いやだ、何もかも信じられない、嫌だいやだイヤだ、IYAだ……でも。
 その前に、俺が死ぬ前に。

 お 前 た ち に も 教 え て や る
霧島・クロト
【SPD】
――その言葉には覚えがあった。
『できそこない』の癖に『成功作』に目をかけられてる。
ああ、どうせ何も感じていないんだから、何言ったって平気だと。
何度も何度も、研究者達は俺から『兄貴』を引き剥がそうとした。
そうすれば『価値の無いお前には用はない』のだと。

ああ、そっか、これは俺の『昔』じゃ、ねェか
違う、今の俺は、そんな『からっぽ』でも、『できそこない』でもない。
……だから、違うって、言ってんだろォ!!!!
幻影を振り払うかのように、氷の魔力を込めて、ぶん殴る、叩き潰す。

「――俺は、『人間』になったんだ。ちゃんと、なァ」
「『兄貴』に守られてばかりの、『できそこない』でも、もう無い」
※アドリブ可



●ピノッキオ
『ねぇ知ってるかしら? 知ってるかしら?』
『聞いたわよ。聞いたわよ。“成功作”の子に可愛がってもらえてるんですって』
『生意気ね。生意気よ。失敗作のくせに』
『失敗作のくせに』
『失敗作のくせに』
 ……ああ、その言葉には覚えがあった。
 霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)は何処からかともなく姦しき娘達の囁きに思い出すのは、かつての過去。
 同じ実験体であった兄弟――成功作と呼ばれた存在に、可愛がられた記憶。
 そして、それを引き剥がそうとする存在――それがそれであるために必要な情愛を意にも介さない、どちらが機械と呼べるだろうか。
 どちらが人と呼べるだろうか。
「価値のないお前に用はない」
 連れていくな。
 俺から引き剥がすな、兄貴、あにき、アニキ、
『あら、あら、あら。泣いてる? 泣いてる?』
『漏れてるだけよ。だって』
『この子は何も、感じない……くすくす』
 ――ああ、そうか。
 これは自分の昔ではないか……不要な過去なんて、凍らせて捨てるだけと思っていたが。
 姦しい声の嘲りはなおも続く。
『からっぽ』
 もう空虚な存在じゃない。
『できそこない』
 出来損ないなんかでもない。
「……だから」
 こんなことだって、出来る!!
 手を握り、組み込まれた回路から猛吹雪を生み出して。
 概念すらも凍てつかせる絶対零度の術法が、狂気の幻影を砕き塵に帰す――今度こそ、こんな過去は凍らせて捨てるだけだ。
「違うって、言ってんだろォ!!」
 凍てつき塵に帰らない嘲笑の顔を殴りつけ完全に打ち壊し。
 物理と精神を氷河の中、火照りを冷ましながら呟く。
「――俺は、『人間』になったんだ。ちゃんと、なァ」
 その言葉を、誰も疑うモノはいない。
 そして、何よりも彼自身が確かに自覚しているのだから。
「『兄貴』に守られてばかりの、『できそこない』でも、もう無い」
 こんな悪意で狂わされてるばかりにはいかないさァ。
 だって。
「――『兄弟』は助けねぇとなぁ」

成功 🔵​🔵​🔴​

タールダール・ダルタン
(たるです)
(よろしくおねがいします)
(たるはいます)

(においがへんです)
(なにかあります?)
(けっかいがありました)
(なにかみせられるです?)
(たるはたるにはいります)(ぴょこん)(たるです)(たるはいます)
(なにがみえるです?)(わくわく)(たるです)

(………………?)
(なにもみえません)(はなしがちがいます)(たるです)
(なんでなにもみせてくれないんですか?)
(たるにはみせるようなものがありませんか)

──大切なものは?
たるです。
──守りたい物は?
ありません。
──守りたい場所は?
ありません。
──守りたい人は?
いません。

以上で面接は終わりです。

おつかれさまでした。



●ゲシュ『タル』ト
『変な子、変な子』
 たるです。
『キモーイ、キモーイ』
 よろしくおねがいします。
『シカトしよー? ねー?』
 たるはいます。
 ……それはあまりにも異様な光景というのも、あまりにも異様な光景であった。
 ただそれ以上に異様な光景であると言い現わすこともできない。
 黒い液体の詰められた樽――タールダール・ダルタン(樽詰めタルタルソースタール風味・f13756)へ囁く狂気の姦しき囁きも意味はなさず。
(なにかみえるです?)
 液体の身体の胸を躍らせ、喪失と狂気の渦巻く中に樽の中から身を乗り出す。
 なにも答えない。
 かしましき声のいざないは何も届かない、即ちシカトに徹し。
 たるには、何も見えない。
 たるには、何も見せてくれない。
(はなしがちがうです)
 ――なんでですか。
 たるには、何も見せてくれないのですか。
 樽に見せるに足るものはいずこに在りや、或いは見せるに足る存在でなきか。
 いかにしてその境地にいたるか、樽はたるはタルはTARUHA……タル、タル、タルのゲシュ「タル」トが音を立てて崩れてく。
 あれ? タルに音は感じる?
 タルに何が見える、何が聞こえる、タルは何に足る、足る……。
 ただ許されたのは、姦しき狂い声の響きだけ。
『きもーい』
『うっざーい』
『……が許されるのは小学生までだよねー』
『『『キャハハハハハハ』』』
 なにもみえません、はなしがちがいます。
 エリ・エリ・レマ・サバ「タル」ニ、たるは何処にどうあれば?
 ――面接を開始します。
 はい。
 ──大切なものは?
 たるです。
 ──守りたい物は?
 ありません。
 ──守りたい場所は?
 ありません。
 ──守りたい人は?
 いません。
 ――以上で面接は終わりです。おつかれさまでした。
『はぁっ……もうダメ』
『マジ無理……何なのアレ』
『降参だわ……うぅ』
 かしましき狂声にすら理解の及ばぬモノがこの世にあったのか。
 ゴロンと、摩訶不思議な空間にタルが一つ転がった。

成功 🔵​🔵​🔴​

七那原・望
えくるん(f07720)と一緒に行くのです。

えくるんの姿を見失い、仲のいい人達が現れます。
その人達は口々に私の事を人殺し、汚らわしい、死ね、と罵倒します。
そこに私と同じ姿の子供が何人も現れ、次々にその人達を殺してしまいます。

仲のいい人に罵倒された上に、その人達を自分が殺した事でショックを受けていると、えくるんが現れます。
えくるんならと微かな希望を抱きますが、同じ結末を辿る事で絶望してしまったのです。

もう死んでしまおうか……
鎌で自害しようとしたけど、この手の感触は……
【第六感】でそれがえくるんの物だと理解します。

これが狂気、なの……?
存在を確かめるように、えくるんの腕に縋り付きながら進みます。


七那原・エクル
七那原・望と一緒に参加するよ

誰かのためになればと、必要とされたくて頑張ってきたのに見向きもされず無意味だと切り捨てられ、信頼していた仲間たちからお前は必要に足らない存在だと罵しられ。大切な存在だった望に棄てられて、自分の存在意義を見失う狂気に呑まれます

ずっとボクの一番そばで共に戦い時には励ましてくれたもう一人の自分がそんなことはないよと。貴方は必要な存在だと肯定してくれて、この闇のなかから引き上げてくれる

そうだボクには守りたいひとがいた

共に狂気に苦しむ望の手を握って必死に声をかけるよ。ボクはここにいるよって。 



●手繋ぎゴール
 七那原・望(封印されし果実・f04836)は大切な人である七那原・エクル(ダブルキャスト・f07720)の姿を見失い、宛もなく何もない空間を彷徨っていた。
 歩いても歩いても、終わりの見えない無限ループ、0と1の間にある無限の小数点――視ることを遮られた身に、頼るべきモノもなく。
 ただ歩いているという動きだけがこの正気を保つ――その中にて、漸く寄る辺とすべき「音」の祝福が耳に入った。
 仲の良い友達の声――だが安らぎの福音は、直ぐに絶望の怨響と変わる。
『人殺し』
 ……なんで。
『汚らわしい』
 どうして、そんなことをいうの。
『死ね』
 よくよく注意深く聴けばその声が、真に大事な友の声でなく姦しき縁斬りの邪の、嘲笑と悪意の入り混じる狂気に誘う囁きと声。
 尤も気付け、という方が難しい状況下、誰が彼女を責められようか――
 責められないならば、自分で自分を責めるしかない。
 私は穢れし人殺し、生きる資格なんてない――まことに姦しき親しき友からの、決して言われる筈のない罵倒。
 絶え間なく浴びせられる見限りの声と、悪意の別離が齎す心への衝撃が胸を締め付け脳幹を鈍く響かせて――そこに現れたのは、望と同じ姿の子供達が何人も。
 気配に気づいた時にはもう遅く――伸ばした手に降りかかる、生暖かい血と、打ちひしがれる耳に浴びせられる罵倒。
 ――お前が殺した、ばーか。
 力なく震える彼女に、漸く目の前に現れたのは大事なエクルの姿。
 彼ならば、きっとこの絶望から救い出してくれる筈――伸ばされた手に、またもや降りかかるのは。
『死ねばいいのに』
 ――変わらない、絶望と生暖かな鮮血の感触だった。
 あああ……死 に た い い い い

『いつ頼んだの?』
『勝手にやったことでしょ?』
『頼んでないのにやられてもねぇ……』
 その当のエクル本人は。
 姦しき邪なる神の声真似が囁く声に打ちひしがれ、地面のようなのか床のようなのかも分からない場所に爪を立て、信じた仲間からの一方的な別離を与えられていた。
「誰かのためになればいいって」
『なってないよ』
『意味ないね』
『無駄な努力』
 震える声で絞り出した、過去から現在に至る積み重ね、確かな努力を賽の河原の塔の如く無慈悲に――大事な友の罵倒と嘲笑の中に崩される。
 必要が無い――必要とされたくて必死で努力し、実を結ばせてきた者に告げられる枯葉剤の如く。
 でも、彼女だけは――違う、違うんだ……大切な彼女である望だけは絶対にそんなこと言わない筈なんだ。
 ……喪失と別離の苦しみが生み出す狂気が、その儚き望みを潰さないはずもなく。
『邪魔』
「ああああああああああ」
 違う、違う、違う違う違う。
 彼女だけは彼女だけは違う違う、ボクの存在意義、戦う理由今までの努力積み重ね築いた縁なんでどうして無意味、意味、無く。
 もう――いやだ……
『しょーじきウザかったよねぇ』
『必死こいて頑張っちゃってさ』
『見られないぃ~♪』
 ――そうか。
 もう、僕は必要のない存在なんだ……なら、いっそのこと。
(違う)
 始末をつけようとしたエクルの頭に響く、もう一つの声。
 姦しき邪とも違う、もう一つの真実――それは。
「ヒメ……?」
 一番近くにいて、時に支え時に共に戦ってきた魂の半身。
 その彼女が語る――そんなことはないよ、と。貴方は必要な存在なのだと……そして、今こそ守りたいものを思い出せと。
「そうだ、ボクには守りたい人がいた」
 狂気に侵され、目の前で自らの首を締め上げ死と生のジレンマで悶える少女の手をそっと取る。
「ボクは、ここにいるよ!!」
「えくるん……?」
 その確かな温かさに漸く、首を締め上げる手を緩め。
 握られる手にお互いの存在と確かな正気を心にしっかりと改めて。
 縋りつく少女の身体を少年は、どこまでも力強く支えて。
 二人は狂気の闇の中を潜り抜けていくのだった――

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アスカ・ユークレース
目の前の的
その周りに刺さる私が射った矢

的には一本も刺さっていない

……どうしましょう。

私スランプみたいです、射っても射っても当たりません…
私には射撃しかないというのに…
それすらも失くしてしまったら私は何も出来ない役立たず
もう消えるしか……

自身の頭にボウガンを突きつけようとしたそのとき

『鍛練は一日にして成らず』
という言葉を思い出す

それは座右の銘

自分の頬を勢いよく叩く

そうでした…今までだってこういう時はあったでしょう?

こういう時こそ焦ってはいけません

落ち着いて深呼吸を一つ

ゆっくりと目の前の的に照準を合わせ、
引き金を……!


アドリブ歓迎



●Jack Pot
 ――また外れた。
 何もない場所――ただ、自分から少し離れた程度の場所に、大きめの的だけがある。
 その的の周囲に、何本も突き立てられた矢――また一つ弦が弾かれ風を切る音が響けば、矢の一本が的を外れて外れ矢の林にまた一本増える。
 アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)は手を震わせながら、次こそは、次こそはと呪詛のように呟きながら矢を番え。
 今度こそはと狙いを外さないように照準を定め。
 唯一の存在意義を保つために敢ての多少の不正も行おう……千里の道も一歩から、もっと基準を緩めて、一歩踏み出し引き金をひく。
 それでも、放たれた矢は的に小さく目立つ赤の中点どころか、外縁を掠ることもなく、外れ矢をまた一本増やすだけであった。
「……どうしましょう」
 スランプなんてレベルじゃない。
 誰よりも何よりも、誇れて弛まぬ鍛錬を続けて来た射撃。
 良心の僅かに悼む反則ギリギリの行為を行って尚、外れ矢を増やすだけの射的に終わる。
「私には射撃しかないというのに……」 
 失ったならばどうすればいい。
 当てたくても当たらない、当たってくれない。
 当てる、当てる……ああ、そうだ。
 至近距離なら、絶対に外さない。
「もう消えるしか……」
 諦めたように矢をボウガンに番え、その矢を頭部に宛がう。
 電子の海に消えてしまうのが相応しい末路。
 これだけ近ければ、もう外れない――引き金に指を掛けた瞬間。
『鍛練は一日にして成らず』
 唯一、裏切ってはいけない言葉を思い出す。
 そこでハッと我に返り頬を叩き思い直す――そうでした、今までだって今までだってこういう時はあったでしょう?
 焦らずに深呼吸一つ、照準に狙い定め矢を突き付けて、引き金に指をかけ。
 狙いは自分の命じゃない――勿論、的の中点でもない。
 それは――裏切らない自分の誇りを疑った、己の弱さ。
「大当たり、ですね」
 ――狂気を乗り越えた矢は、紅の中点の更にその中心の中心を射抜いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】

……兄貴。
……親父。
……お袋まで。
なんでさ、なんでアタシを罵るんだよ!
なんで、準を探しちゃいけないんだよ!
なんで、それがバカな事だって決めつけるんだよ!!
(視線を振り切るように走り出す)

ハァ、ハァ……。
ようやく、ようやく見つけた。
準、準なんだろ……!

……えっ。なんだよ
なんだよ、その目はよ。
そんな……そんな赤の他人を見るような目で。
なんで、アタシを見るんだよ!

そうだよ、それでも!
アイツが、どんな姿になっても。
どんな事になってても。
探し出すって、決めたんだ!

家族の反応なんて過去の焼き直しだ。
憐れみと罵倒がすり替わっただけだ。
なんだ。

アタシのやる事、やりたい事は変わってない!


ソラ・ツキノ
【POW】
――武器がない。
アタシを守る武器がない。
血肉が弾け、理不尽な力が荒れ狂う最低の戦場だというのに。
武器は力だ。身を守る鎧だ、道を切り開く刃だ。力がなければ、やがては死ぬ……絶対的な死が訪れる。
死ぬのは嫌だ。死ぬのが嫌だから、アタシは体を機械に変えてきた――ん、アタシ?
違う。
アタシは儂……力無く震える童ではない。たとえ武器がなかろうと、儂には消せぬ物がある。
経験だ。
既に70近い儂が積み重ねてきた経験は、決して軽いものではない……何度も死地を駆けずり回り死にかけた。
だが儂は生きている……生きているぞ!

生きようとする意思は、それこそが力……狂気に捕らわれる暇などない!!

※アドリブ大歓迎!


フロッシュ・フェローチェス
【SPD】
何この光景。
見渡す限り人人人。感じる敵意敵意敵意。
待て、そんな眼で見るな!
アタシは化物じゃない!
人間姿のキマイラだって普通にいる!

―でも中身はグチャグチャじゃないか―

目の前が、根底が揺らぐ。
孤独に耐えられない。
ただのキマイラじゃない事は分かっていただからこそ一人で良いと思っていた。
深い繋がりなんて要らないと断じた。
けど――現実を突きつけられた。
縁を欲しない強がりの裏、誰かとの絆に手を伸ばしたい、その弱さを。
故郷に馴染めなかった孤独と、拒絶されたくない心を。
薄々感じ取っているルーツの闇を。

ならやる事は1つ。
駆け抜けよう……皆の元に帰りたいから。
強がらず、会いたいって一心で。
※アドリブ可



●クエスター
『馬鹿なの? 死ぬの? くくく……』
 兄の嘲笑。
『諦めろ。愚かなお前では出来はしない……無駄、無駄、無駄』
 父の失望。
『馬鹿なあなたに出来る訳ないでしょう。それぐらいのことも分からない?』
 最後の砦である母からも。
 数宮・多喜(疾走サイキックライダー・f03004)は信じる家族に取り囲まれ、己の為すべき道を口々に否定され、罵倒の声を浴びせられていた。
 突如として失った友を探すことの何がいけないのか。
 何が愚かで無駄な死を選ぶだけの馬鹿な行動――かしましき邪の真似た声が、絶え間なく響き続ける。
 ――なんで、探しちゃいけないんだよ。
『探したって見つからないから』
 ――なんで、それがバカな事だって決めつけるんだよ!!
『だって実際バカなことでしょう?』
 ――うるさい!! うるさい!! うるさい!!
 もう顔も見たくない……いや、どんな顔だったっけ……家族の顔すらもう分からない、もう脳裏に浮かんでしまうのは嘲笑の影しかない。
 姦しき邪の嘲笑を背に、腕で涙を堪えながら場を逃げるように駆け出す。
 でももう大人なんだ、自分一人で決めて探しにいけばいい――あんな家族より大事な友がいるんだ。ああ、いる、いた。ほら見ろ、やっぱり無駄じゃなかった。
「ハァ、ハァ……準!! ようやく、見つけた……準なんだろ!?」
『……誰?』
 告げられたのは拒絶と大事な親友が己の存在をなかったもののように見る視線。
 なんでそんな目でアタシを見るんだ。
 準、準に間違いないのに、なんでオマエ、ハ……お前、は……、
「で、も……」
 それでも!! それでもだ。
 アタシはアイツを、どんな姿にだって、どんなことになってたって探し出す!! 例え、その先にあるモノが悲劇でも喜劇でも。
 なんだ、家族の反応だってただの焼き直しじゃないか……憐みこそすれあんな罵倒なんてなかったよ。
「アタシのやる事、やりたい事は変わってない!!」
 ――例え、今の結果が現実になろうとも、絶対に。

●一匹の老練
 目の前に映るのは鉄と血が情交し、雷と炎が盛り狂う凄惨な戦場の光景だった。
 目の前に転がった一人の命が、理不尽な暴虐の力で血漿と骨肉を爆ぜさせ生の温もりを消し死人の嫌な冷たい空気だけを残す。
 次に辿るのは自分――やらなければ、やられる純粋なまでの暴力の摂理。
 数多の死神がその鎌を向ける中、ソラ・ツキノ(天駆ける機兵・f13196)は何も持たず無様に逃げ惑うばかりだった。
 ――武器が無い、アタシを守る武器がない。
 武器とは力、身を守る鎧、道を切り開く刃。
 力がなければ、やがては死ぬ……絶対的な死が、目の前で転がった死体と同じ未来が訪れる。
 否応なしに、自分の身体がそうなる未来が見えてしまう。
 死にたくない、死にたくない、死にたくない――!!
 死ぬのが嫌だからこそ、アタシはこの身体を機械に変えて来た、なのに今はその武器がない――なんで、どうして、無いの?
 ああ、死ぬ、死ぬんだ。
 戦場の死神が鎌を振り上げるように、自分にはない武器を突き付ける――血肉と臓物を撒き散らし命を終えるか、はたまた陰惨な拷問の末に終えるか。
 武器の無いアタシの行く末なんて、こんな――アタシ?
 違う。
「アタシは儂……力無く震える童ではない」
 怯える少女の姿は、見た目こそ変わらないが放つ闘気にも似た気迫は練達の戦士そのもの。
 武器が無かろうと、消せぬモノがある。
「経験だ!! 70近い儂には、死地を這いずり駆け抜け生き延びた経験という強い武器がある!!」
『ババアじゃない』
『老害』
『年寄りの自慢話とか』
 ――儂は生きている、軽くない経験で生きている!!
 姦しき邪の嘲りと狂気の囁きを力強く一笑に伏して。
「生きようとする意思は、それこそが力……狂気に捕らわれる暇などない!!」
 ――どちらが死神だったのか、などと問うまでもないだろう。
 老練の境地から繰り出される鳩尾目掛けたボディブローが、姦しき邪のペンギンを圧し折った。

●複合体
『何、あの子。あれじゃまるで』
『化け物』
『信じらない、こわーい』
 フロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)の周りを取り囲むのは見渡す限りの人の姿だった。
 響く声は三種類――いずれも姦しき邪の悪意の籠った嘲りの囀り。
 晒されるのは好奇の視線、そして母星生まれの外星人を見るような、自らの種とよく似て非なる存在を嘲り見下し、それにより生まれる連帯を愉しむ悪意。
 共通の否定的関心を以て団結し合う負の悦びの犠牲――
「待て、そんな眼で見るな!!」
『そんな眼ってどんな眼ー?』
 こぉんな眼ー? それともこんな眼ぇー?
 どんな眼か言えないのー? 言ってみなよー、言え、言え、いえぇーっ!!
「アタシは化物じゃない!!」
『化物じゃん。認められないの?』
 見苦しい。
 自分がそうじゃないって何で言えるの? マジで違わないって思ってる。
 そんなわけないのにねー。ねー。
「人間姿のキマイラだって普通にいる!!」
『普通って何? みっともなーい』
 でも中身はぐちゃぐちゃじゃない。
 普通じゃないのは、分かってるくせになんて無様なのかしら。
『みっともない』
『みっともなーい』
『み・っ・と・も・な・あ・い』
 嘲笑と悪意と敵意、全てを嘲り自らを世界から突き放す深い孤独と絶望が、フロッシュの視界を揺らめかせる。
 ただのキマイラじゃない――そんなの、誰より自分が良く分かっている。
 独りなら独りでいいと思ってた――でも、現実を突き付けられた。
 薄々感じてた闇の根底と、孤独にはやはり耐えられない弱い心と、認めるのが怖い、拒絶されるのが怖い心を。
 でも――やられたら、もういっそのこと開き直れる。
 今なら、求める絆に手を伸ばせる――行こう、誰よりも疾く。
「――帰りたい」
 皆の元へ、強がる必要のない、みんなの場所へ。
 ……会いたいから。
 まずはその為に、この邪な姦しいモノを倒す為――彼女は誰よりも疾く駆けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『六一一『デビルズナンバーはくし』』

POW   :    悪魔の紙花(デビルペーパーフラワー)
自身の装備武器を無数の【白い紙製】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    悪魔の紙飛行機(デビルペーパープレーン)
【超スピードで飛ぶ紙飛行機】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    悪魔の白紙(デビルホワイトペーパー)
【紙吹雪】から【大量の白紙】を放ち、【相手の全身に張り付くこと】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:FMI

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●リセットボタン
 挽回できるものなら、自分で挽回したい。
 真実と事実を訴えたい。
 でも無駄だった――どんなに叫んだって、周りは彼女の味方。
 女王蜂の毒針は、全てを奪った。
 周囲の友情も、信頼も、何もかもを壊した。
 したくても、周りは決して認めようとしないのに――みんなお前が悪いと罵られる。
 何処へ行ったって、何を訴えたって、最初から聞いてもくれない。
 自分で挽回すればいい?
 ふざけるな、お前が、それすらも奪ったくせにのうのうと生きている――
 もういやだ、なにもかも、はくしにしたい……

 狂気を齎す空間を乗り越えた先にあったのは何もない空間だった。
 何もかもが真っ白な空間の中で、遠目に輝く魔法陣、その中央に座り何かを呟いているような少年がいる。
 早く儀式を止めようと駆け出した猟兵達の目の前に現れたのは邪神の眷属だった。
 触れれば全てを切り裂かれそうな鋭い身体と、触れれば崩れてしまいそうな脆さを併せ持つモノ。
 それこそはデビルズナンバーが一柱「はくし」――それは、男子学生の心からの叫びなのだろうか。
 全てを白紙に戻したいと。
 理由が何にせよ、まずはこのデビルズナンバーを倒さなければならないようだ……
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

ハァ、ハァ、ハァ……
覚悟はしてたけど、なんなんだよさっきの空間は。
心が折れなかったのが不思議なくらいだよ……。

訳分かんない空間は続いてるようだね。
この真っ白な中に白い紙、見えにくいったらありゃしない。
ここは【サイキックブラスト】を周囲に放射して『援護射撃』し、
紙吹雪を迎撃する。
そうして他の味方が本体を叩きやすくできればいいね。
『気合い』『属性攻撃』『念動力』と、
乗せられそうな技能は全部乗せで行くよ。

全てを無かったことにする。
そいつは無理な相談さ。
どっかの過去を白紙にしても、
別から過去がにじみ出す。
安心しな、アンタをまだ詰ませはしない……!
だから、もう少し待ってくれ!


ソラ・ツキノ
あー全く……あんな体験はもう勘弁願いたいものじゃ。冷や汗が残っとるわい。
っと、気分を変えていこう。
確かに儂……っと、アタシもああやっていやぁ~な体験したわけで。他の猟兵さん達もそうだし。あの高校生君もそうなんだろうけどさ。
それはそれ、これはこれ。
痛みに共感しないって言えば嘘になるけど、儀式は止めないとね!

【POW】
人の苦しみに乗っかるUDCめー! 覚悟ー!
儀式の邪魔の邪魔をするなー! アタシ達は儀式を止めるー!

って事でアームドフォートをドカーン!
出来ることがこれしかなーい!
隙があったり、他の猟兵さんたちとタイミングを合わせられたら、選択したUCを使うよ!

【アドリブとか大歓迎だよ!】



●Ash to Ash
「ハァ、ハァ、ハァ……覚悟はしてたけど、なんなんだよさっきの空間は」
「ああ全く。あんな体験はもう勘弁願いたいものじゃ……冷や汗が残っとるわい」
 多喜とソラは額に大量の汗を浮かべながら荒く息を吐き、潜り抜けて来た狂気の結界のことを思い返した。
 事前の話から覚悟はしていたが、改めて決して失いたくないものの喪失がどれだけの狂気を齎すか――それは、この真っ白な空間の中に微かに響く想念からも伺える。
「っと、気分を変えていこう」
「そうだね……」
 この不思議な空間がどこまで続くかは分からないが、休んでも居られない。
 ソラの声に頷く多喜、そして彼女らの周囲にひらひらと舞いながら現れる邪神の眷属達の姿があった。
「この真っ白な中に白い紙、見えにくいったらありゃしない!!」
 ぺらぺらと、薄紙が風に舞い奏でられる音が響き大量の紙吹雪が舞う。
 激しい勢いを以て叩きつけられんとする白い紙を、それこそまさに紙一重で躱しながら多喜は愚痴を零した。
 この邪神の眷属――デビルズナンバー「はくし」が纏う仄暗い闇のオーラや、滴る濁った血の如きオーラが彼等の存在を明瞭にしてはいるが、それでもベースが白紙だけあって中々見え辛いものがある。
「人の苦しみに乗っかるUDCめー!! 覚悟ー!! 儀式の邪魔の邪魔をするなー!! アタシ達は儀式を止めるー!! でも出来ることはこれしかなーい!!」
 ソラの嘆きにも似た叫びが響き渡ると同時、彼女の背負う大砲から放たれた砲弾が爆ぜ、はくし達の放った髪を爆炎の中で塵に変える。
 出来ること――背負った大砲(アームドフォート)から砲撃をすることだけだが、いっそのことこれしかできないなら逆に行動に躊躇いはなくていいかもしれない。
 はくし達から放たれる無数の紙吹雪、触れれば鉄すらも切り裂きかねない鋭さを持った紙吹雪が二人を埋め尽くす前に、迎撃として放たれた砲がそれを一瞬で焼き尽くす。
 攻撃力だけはやたらと鋭いが、やはり耐久性は脆いか――ソラの放った大砲の爆炎に攻撃として放った紙吹雪は愚か、頼りない紙の身体が爆風に舞い上げられ、風の中に孕む熱が一瞬で白紙の身体に着火し、一気に炎上させる。
 ここぞというチャンスタイムと相成ったのか、爆炎に焼かれ、爆風に舞い上げられていくはくし達に、多喜は掌を向けて高圧の電流を放つ。
 思いつく限りの力――姿が見え辛くても広範囲に渡って纏めて仕留めるという気合、雷に親和性が高く白紙に有効な炎の属性を乗せ、少しでもひらひら舞って捉えどころのない動きを捉える念力。
 三つの力を上乗せした、激しい電熱を乗せた高圧電流がはくし達の身体を捉え、刃としては限りなく鋭くも耐える身としては限りなく脆い身体を燃やし、電圧の衝撃が薄っぺらい身体を千々に引き裂いていく。
「全てを無かったことにする。そいつは無理な相談さ。どっかの過去を白紙にしても、別から過去がにじみ出す」
 放たれた高圧電流の熱と衝撃の難を逃れ、それでも身体を痺れさせ硬直するはくし達を念力で操り一点に集め、多喜はぽつぽつと語り出し。
 アームドフォートを構えるソラに今だ、と目配せをすれば。
「アンタもアタシもああやっていやぁ~な体験したわけで。あの高校生君もそうなんだろうけどさ」
 それはそれ、これはこれ。
 ガジェットとアームドフォート、ソラの持つ全ての武装の力を開放し、エネルギーを高め。
 動きを止め一点に集まったはくし達に狙いをゆっくりと定めれば。
「共感しないって言えば嘘になるけど、儀式は止めないとね!!」
 引き金一つ。
 放たれた大量の砲撃の雨霰が、はくし達を次々と灰燼に帰し紙の燃えた黒い灰が真っ白な空間に散っていく。
 その中で、多喜は改めて暗く儀式を続ける男子高生に己が決意を固めた。
「安心しな、アンタをまだ詰ませはしない……!!」
 ――だから、もう少し待ってくれ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霧島・クロト
てめぇが抉り出したんだろ。人が捨ててきた筈の過去をよ。
白紙に戻すんじゃねェよ、人間に出来んのは『上書き』だけだ。

……相手も速度なら速度で対応するしかねェな。
【氷戒装法『貪狼の狩人』】を【高速詠唱】。
紙飛行機が飛来する前に氷の波動(+【属性攻撃】&【マヒ攻撃】)で
凍結させて潰していくかァ。無論【フェイント】かけて確実性もだ。
一応切断される可能性もあっが、俺自身が切断されるよりはマシだァ。
防御は【オーラ防御】に【属性攻撃】乗せの氷の壁で行くぜェ。

「『人間』じゃなかった俺に言わせんな。人を呪うのは自由だ」
「だがなァ。それでてめえが変われるかって言われたら違ェ」
「何も進んでいないから他人を呪うのさァ」



●凍葬逃走
 白紙にしたい――切なる嘆きにクロトは肩を竦めながらも不敵に笑って切り捨てた。
「はっ、てめぇが抉り出したんだろ。人が捨ててきた筈の過去をよ」
 飛来してくる紙飛行機の刃を掌から放つ氷の波動で凍結させ、そしてその紙飛行機が飛来してきた時にも劣らぬ速度で距離を詰め手刀の一撃で砕き散らす。
 速度に優れた相手なら速度――寿命を削る覚悟を決めて、北天に座す貪狼の加護を宿したクロトは、あらゆるモノを切断するであろう紙飛行機の速度と、何一つ遜色のない速度で動き回っていた。
「白紙に戻すんじゃねェよ、人間に出来んのは『上書き』だけだ」
 何をどうしようと、過去は変えられないし戻せない。
 嘆いたところで、感情を失った兄弟達が失う前に戻ることはない――出来るのは、元に戻してやること。
 再び飛来する紙飛行機を魔術で高めたオーラを纏わせた分厚い氷の壁で阻む――流石の鋭さ、紙一重と薄氷。
 紙飛行機は正に紙一重、分厚い氷の壁を後一歩で貫くまでに刺さったがクロトの生み出した氷壁は見事に防ぎ切り。
「『人間』じゃなかった俺に言わせんな。人を呪うのは自由だ」
 続いて左の掌からカウンターのように氷の波動を放つと見せかけて。
 慌てて一歩を退かせたはくし達に入れ替わる様に右手を突き出し、氷の波動を放って次々と凍てつかせながら。
 先に控える男子高校生にぽつりと告げるように言って、氷結したはくし達の間を駆け抜けていく。
「だがなァ。それでてめえが変われるかって言われたら違ェ」
 光すらも置き去りにするほどの速さで翔け抜いた後には、氷塵となって空間に舞うはくしであったモノの残骸が残り。
 氷塵が舞い何もない空間に極低温がもたらされる中、トドメの一言を力強く告げた。
「何も進んでいないから他人を呪うのさァ」
 ――果たして、その忠言が少年の元に届いたか。
 僅かに儀式の遅れのようなものが見られた――かもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

タールダール・ダルタン
(まっしろ?)
(まっくろ)
(たーるはまっくろがすきです)

(たるです)
(よろしくおねがいします)
(たるはいます)

(はくし?)
(まっしろにしても、またかきたされます)
(すみにおちたはくしはまっくろです)(ひらひら)

(まだまっしろ?)
(たーるをぬります)
(ほらまっくろ)

(しろいかみ、じゃまです)
(くろくしちゃいます)
(たーるをぶつけます)
(びしゃびしゃです)(もうとびません)

(ところでこれは)
(たべられますか?)
(かみはおいしくありません)
(かみさまはおいしいです)

(くろくぬりつぶしたかみをむしゃむしゃします)(むしゃむしゃ)
(そのままほんたいもたべます)
(いただきまぁす)

(ごちそうさまでした)



●『万色混ぜれば黒になりまする』
 ゴロンと転がった樽の中から這い出た名状しがたき黒い液体があった。
 白一色の空間の中に於いて一際目立つ這いずる黒に、デビルズナンバー達は逆にその異様さに押されているのか徐々に、徐々にと距離を取り始める。
 ――たるはいます。よろしくおねがいします。たるはいます。
 ふと無謀なはくしの一体がタールダールのもと目掛けて勢いよく紙の一枚を射出した。
 岩をも砕く勢いで放たれたはずのそれは、黒一色の液体の中にべしゃりと埋もれ、はくし達の間にいたたまれない気まずい沈黙が流れる。
 心なしか薄っぺらい紙の身体をひらひら震わせながら、混沌の如きタールダールの身体を白に染めんと幾度も、幾度も白紙の群れを放つ。
 しかし。
 黒液の身体に張り付けば張り付くほどに、白紙は黒を吸い上げ染まり溶け落ちて。
 ――まだまっしろ? くろくしちゃいます。じゃまです。
 無邪気に揺れる黒液の身体。
 熟達した画家のペン捌きの如く、飛散っていくタールの一部が破れかぶれに放たれた白紙達に付着すれば、ただの一滴が一瞬で大判の白紙達を一瞬で染め上げ地面に堕としていく。
 墨のたっぷりと染みついた紙を勢いよく落としたように、周囲に染み込んだタールを白の空間にまき散らし。
 這いずるタールダールは黒く染まって落ちた紙を、犬が匂いを確かめるように身体の一部を伸ばし微かに揺れて。
 ――かみはおいしくありません。かみさまはおいしいです。
 落ちたる神の紙を液状の身体を伸ばして、吸収していくように捕食して。
 黒の飛沫が染み、動く気力を奪われ腰を抜かすはくし達にそのまま這い寄ると、猛獣の顎の如く身体を大きく広げ、そして。

 い た だ き ま ぁ す。

 やめてかみはおいしくないかみのかみはまずいいまのかみはからだによくないものがたくさんあるやめてたべないでくださいおいしくない。
 ――ぐしゃり。
 紙の嘆き諸共に全てを飲み込んだタールは静かに樽の中は戻っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フロッシュ・フェローチェス
彼の感じた悪意を知った。その連鎖を知った。
――目を逸らし続けていた孤独の恐怖を、アタシは思い知った。
無視して逃げろ何てそんな事言える訳がない。
その結果が先の恐慌一歩手前だから。
けど味方を見つける事は出来ると思うよ?今までずっと世界に馴染めなかった、アタシみたいに。

攻撃は広範囲系で行こう。
刻天炉は殲銃形態に、碧穿炉は刃を伸ばしたまま、衝角炉は衝撃波を飛ばせる様に。
残像のフェイントや、前方ジャンプも混ぜるダッシュではくしを惑わせつつ、その動きを早業の二回攻撃――各武装の連発で封じて行こう。

超スピード?
ならアタシはそれを、上回ろう。
【迅速貫槍】25本の援護も受けて、残り五本で穿つんだ。

※アドリブOK



●封臨華斬
 ――目を逸らし続けていた孤独の恐怖を、アタシは思い知った。
 フロッシュは彼の感じた悪意と、その連鎖を感じつつも、目を逸らし続けた恐怖とそれが齎す狂気を思い返した。
 逃げ続けろ、ということは出来ない、それが先の狂気を齎す、しかし。
 それでも――
「味方を見つける事は出来ると思うよ? 今までずっと世界に馴染めなかった、アタシみたいに」
 ぽつりと呟きながら、周囲をひらひらと舞うはくし達を油断なき目で睨みつけながら、右手の機構銃(ガジェット)は広範囲を滅する形になるようチップを装填し。
 左手に構えた匕首は刀身を伸ばし、その足に纏うブーツからは衝撃波を放てるように――彼女が出来得る、広範囲に対応する形だ。
 やがて睨み合いを続けていると、はくしの一体が痺れを切らしたかのように、高速で紙飛行機を投げつける。
 薄さに於いてはほぼ理想的な紙でできた刃と、それに名刀もかくやの切れ味を乗せる超スピードと、発生した衝撃波がフロッシュの髪を僅かに舞い上げた。
 尤も直撃を避けたのは彼女がそれすら上回る超スピードの持ち主だったから――紙飛行機を飛ばした個体が次の弾丸を飛ばす前に。
 蹴りから放たれた衝撃波がその個体を撃墜――それを皮切りに、次々に襲い掛かってくる紙飛行機が彼女の身体を貫く。
 しかしそれは残像――前方への跳躍による翻弄も織り交ぜた、超速で翔けながら広域殲滅の銃を遠距離に、すれ違う個体に長ドスの刃を滑らせ切り刻み。
 それでも尚、超速の紙飛行機で来るならば――それを上回ろう。
「ComeOn、ジャベリン――」
 はくし達の間を翔けながら、その周囲に生み出すは、三十に及ぶ槍型の機械生命体。
 自律の槍が二十五、彼女の周囲を守る様に円陣を組み旋回しつつすれ違うはくしを微塵に変え。
「降り注ぎ、一点に集い……貫け!!」
 残る五本の槍が、前方に壁となる様に進軍を阻まんとしていたはくし達を残さず貫いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アスカ・ユークレース
全て白紙に……?本当になにもかも白紙になったら……どれだけ虚しいか……!!

◆作戦
紙ならば話は早い。
【選択UC】で燃やし尽くします
この場合は……軽くて射ちやすいフェイルノートの方が向いているでしょう
【クイックドロウ】【スナイパー】【誘導弾】
で確実に叩き込みます

もう疑わない……自分の力を信じて射つ、仲間の為に、ただ……それだけ!

アドリブ歓迎



●蠍の業火
(全て白紙に……?)
 狂気結界を潜り抜けた先で聞いた嘆きの声に、アスカは顔を青ざめさせた。
「本当になにもかも白紙になったら……どれだけ虚しいか……!!」
 ――彼女が誇るのは、無窮の鍛錬で得た名狙撃手も真っ青の射的の腕。
 裏を返せば、それしかないという劣等感――その虚無を思い知ったが故か、嘆きの声とそれを象徴するかのような悪魔の紙兵が舞う中で、それが実現されてしまった時の恐ろしさを感じてしまう。
 だからこそ、止めなければならない――相手が紙ならば、正に自分の持てるこの技こそが相応しい。
 喪失の狂気を乗り越えた、冷徹な狙撃手が構えるのは無駄なしの弓(フェイルノート)、癖がなく軽く撃ちやすい片手撃ちのクロスボウなら、このひらひら舞う相手に適しているだろう。
 暗いオーラを纏いながらアスカの周囲を舞いつつ、はくし達は大岩をも貫く勢いの紙吹雪を射出する。
 威力そのものよりも力を封印する効果が恐ろしい――それを見切り最低限の動きで躱し、時に矢を以て撃ち落とす――狙いは、完璧だ。
 これなら外さない、後はこの技を以て纏めて堕とすだけ。
「赤く輝け、蠍の炎、その御霊燃やして我に道を示せ」
 身を翻しながら引鉄を引き、赤く輝く天蠍宮の心臓が如く燃え盛る炎を解き放つ。
 紙に対しての炎――何と、お誂え向きなことか。
 遍く死を齎すが如き蠍の毒を思わせる激しい業火が、アスカの導きに依って逃げ惑うはくしに追いすがっては一瞬で薄っぺらい身体を灰に変えていく。
「もう疑わない……自分の力を信じて射つ」
 アンタレスの業火に呑まれ、その存在を白紙どころか無に変えていくはくし達。
 逃げ惑い残った紙飛行機の頭部だけを刺し違えるつもりで放とうとした個体にクロスボウを静かに向け。
「仲間の為に、ただ……それだけ!!」
 全てはここにいる戦友達の為に。
 そして邪に依って齎される混乱を防ぐために。
 放たれた矢が、最後に残った紙飛行機を貫き完全にはくしを滅ぼすのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『五八七『デビルズナンバーかしまし』』

POW   :    悪魔の人鳥(デビルペンギン)
【ペンギンマペット】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    悪魔の悪口(デビルディス)
【悪口】【罵倒】【罵詈雑言】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    悪魔の中傷(デビルスランダー)
【悪口によって怒り】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【ペンギンのマペットが四方八方】から、高命中力の【くちばしドリル】を飛ばす。

イラスト:猫家式ぱな子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は六六六・たかしです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●悪魔の数字、齎すは『こどくし』
 ――でも、白紙にする前に……俺と同じ目に遭って貰わないと、不公平だ。

 配下の眷属を破り散らし、遂に儀式の場所へ辿り着いた猟兵達が見たのは、魔法陣の中央に朧げな姿で立つ邪神の姿だった。
 頭部と両手にペンギンを模したような被り物と、首に刻まれた587の刻印を除けば、ただの女子高生にも見える。
 駆け付けて来た猟兵達に、その降臨儀式を続けて来た男子高生が、ふと諦めたように微笑んだ。
「……っ」
 猟兵達の剣幕に、思わず儀式の手順と呪文を一時中断する。
 その隙に儀式を潰そうとしたが、あと一歩のところで間に合うことはなく――朧げに半透明の姿だった邪神は降臨し、はっきりとその実像を映し出した。
 それこそはデビルズナンバー「かしまし」――縁切りと望まぬ不和を司る邪悪なオブジェクトだ。
 尤も、猟兵が駆け付けたことで儀式が不完全に終わったのか、完全な力は取り戻していないようだったが。
「……頼むよ。世界中みんな、俺と同じ目にあわせてやってくれ」
 涙を流し、降臨したかしましに縋りつき、こうするしかなかった願いを訴える。
 だがそれを冷たい空気で見下ろすと、何かが爆ぜたようにかしましは笑い出した。
「――願いは聞き入れたわ。でも」
『最後まで出来ないとかサイテー』
『こんなだからフラれるんじゃないのー?』
 ――キャハハハハ!!
 これだけは信じたかったモノにすら突き放された絶望――眼に消えた光を糧に力を膨れ上がらせ、かしましは男子高生を光の中に消す。
 手を伸ばそうとしたが間に合わず、歯噛みする猟兵の端末に、UDC組織からの連絡が入る。
 どうやら飛ばされた男子高生は近くの浜辺で保護し、とりあえず命に別状はないとのこと。
 安堵する猟兵達を後目に、降臨したかしましは手袋らしきものと一人劇を続けていた。
「あーまじチョーウケるー」
『アイツウゼーけどー、でも願いごとは面白そうだよねー』
『ねー、ここ出たら悪口ばら撒きいこー』
 ……どうやら、望まぬ不和を齎し罪なき民に疑心と孤独を押し付けに行く目的だけは確かなようだ。
 疑心と喪失の恐怖が支配する混乱の世にしない為に――デビルズナンバーとの最終決戦が始まった。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

まずはよかった。
攻撃の余波とか考えなくていいのはありがたいよ。

しっかしまぁアンタも不完全なのか知らないけどさ、
わりかし律儀なのなー。
力を搾り取った相手消さずに放りだすだけとか、
邪神らしくないんじゃねーの?
と『コミュ力』全開で舌戦開始さ。
ちょっとは押されるかもしれないけど、
やり返すくらいはできるだろ?

ちょっとの間でも反論に窮させることができたら、
そこがチャンスと決め打ちするよ!
さっきまでのサイキックの残滓をかき集めて、
【黄泉送る檻】を発動させてかしましを拘束する。
トリなら鳥らしく、籠の中にでも入ってな!

残るは少年のフォローかな。
手を回して名誉を挽回させたいもんだねぇ。



●デビル裁判
「しっかしまぁアンタも不完全なのか知らないけどさ、わりかし律儀なのなー」
「は?」
 降臨したかしましに、目の端に涙を浮かべて噴き出しながら多喜は自分の感想のようなものを言い放った。
 一先ずの少年の無事に安堵しながらも、そのことについて言及するようであった。
「力を搾り取った相手消さずに放りだすだけとか、邪神らしくないんじゃねーの?」
 邪神の降臨に際して命を奪われたりする事例は珍しいものではない。
 それにも関わらず、このかしましは少年を放り出した――舌の戦いを挑みむように悪口と縁切りの邪神を煽って見せた。
「だって殺しちゃつまんないじゃん」
『ねー、苦しんで自殺するまでがマジウケルよねー』
『一番楽しいのが分からないってガチで馬鹿じゃねー?』
 ――キャハハハハハ!!
 どうやら、邪神としては最後の寄る辺に裏切られて後悔の末に苦しみ自殺するまでを楽しみたいようであり。
 同時に何処までも悪辣な腹話術の煽りに怒りと呆れを併せ、言葉に詰まりながらも多喜は更に続けた。
「でも願いは一応叶えようとしてくれんだろ? 意外とツンデレかい?」
「んなっ……」
 それが許される願いかは別として、その一点に言及すればかしましは自分が面白そうだと反論するだけだが、ツンデレという煽りを自ら肯定しているようで。
 完全にドツボに嵌ったとみて唇を釣り上げると、先の戦いで十分に集まったサイキックの残滓を束ね。
「Ashes to Ashes, Dust to Dust, Past to Past……収束せよ、サイキネティック・プリズン!!」
 かしましが気付いた時にはもう遅く、聖句の祈りと共に広げられた高電圧の檻が邪悪を封ずる鳥籠のように邪神を捉え。
 灰は灰に、鳥は鳥籠に――願わくば二度と出てこないことを祈りつつ。
 終わったら少年に何かしらのフォローをしなくては、それこそかしましの言う破滅になると思いつつ、邪な鳥を閉じ込めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フロッシュ・フェローチェス
・アスカと連携
速さこそ一番削がれたくない物だと思ってたけど……違ったみたいだね。
だからこそより速さを求めるよ――全てを知って、一緒に居たいからこそ。
故にかしまし、潰れて消えてろ。

援護を阻害しない為に、ダッシュは超単距離に限定。
残像は攪乱以外に、アスカの矢を隠すスクリーンとしても使う。敢えて貫かせ命中率を上げよう。
敵が焦れたら早業の連撃……手に持った碧穿炉の斬撃と、拳の打撃の超速コラボだ。
アタシを追えば体勢崩したフリのフェイントで、援護利用のだまし討ち。

ハ、嘲りたいなら何とでも言え。
……薄っぺらの罵倒で今更止まる程、もう目を逸らしちゃいない。
小煩い戯言ごと【断砲】で断ち斬ってやる。
※アドリブ可


アスカ・ユークレース
フロッシュと連携

かしまし… 確かに貴方の言うとおりかもしれない……
私の本質なんて、私が良く分かってる
でも、だからこそ……私は私に出来ることをやる
なんとでも言えばいいですよ
どんな非難も中傷も、私が止まる理由にはなりませんから。

後方から【千里眼射ち】【クイックドロウ】で援護射撃しつつ 隙を見て情報収集
得た情報は共有する
命中率重視で動く

フロッシュの高速移動を妨げないように

地形を利用してうまく死角から攻撃できるよう立ち回る

敵UCは呪詛耐性で耐えたり
クイックドロウで届く前に撃ち落とす

アドリブ歓迎



●デビルスピード&デビルアロー
 消耗しながらも鳥籠の中から何とか脱出しながらも、次いで目の前に立ちはだかったフロッシュとアスカを見やりつつ、かしましは箸が転げてもおかしい年頃女のように悪辣に煽り始めた。
「あー、ぼっちちゃんとー、射的下手じゃん」
『トモダチになったげるよー、あははウッソー』
『こんなに近くにいるよー、ほらほら撃ってみー』
 下品な笑いと共に腹話術で狂気空間で煽ったが如く彼女達を煽りどうしようもない孤独を再び齎さんとするが。
 しかし――狂気を振り切った彼女達に、その手の煽りは通じるわけもなく。
「ハ、嘲りたいなら何とでも言え。……薄っぺらの罵倒で今更止まる程、もう目を逸らしちゃいない」
「なんとでも言えばいいですよ。どんな非難も中傷も、私が止まる理由にはなりませんから」
 返す言葉は誰よりも速く邪神に届き。
 返す言葉は何よりも正確に邪神を射抜き。
 次の瞬間には光すらも置き去りにするフロッシュの高速移動がかしましの目の前に迫り――匕首で悪魔の刻印を切り裂かんとし。
 それをギリギリで躱しても、今度はアスカの神業的な――避ける動きすらも予測し、そこに置いておくようなボウガンの射的が放たれる。
 それを手の持つパペットからの罵詈雑言の音波で何とか落とすも、次の瞬間にはまたフロッシュの速度を乗せたが故の何より重い拳の一撃が叩き込まれんとし。
 クロスカウンターのように手の傀儡で殴り返さんとするも、それがフロッシュの置き去りにした光であり。
 そして彼女の遺した残影を貫いて、かしましの肩に突き刺さるのはその影を目くらましに放たれていたアスカの矢だった。
「いったぁぁ!? がっ!?」
 苦悶の叫びをあげるかしましの後頭部に重い衝撃が走る――それは、その時既に邪神の後ろへ回り込んでいたフロッシュの拳の一撃だった。
 ここぞと言わんばかりに、匕首と拳に依る音をも超えた速度の猛連打がかしましに幾度となく突き刺さり。
 それだけの高速連撃を邪魔せず、寧ろ神技の如く拳と匕首の隙間を縫って放たれた矢がまたかしましに突き刺さる。
 破れかぶれに足払いをしかければ、遂にはフロッシュがよろめくが、それは彼女の狙い通りの囮――油断して距離を取ろうとした瞬間の浮足を狙い、アスカの放たれた矢が腿を貫いた。
「が、は……ハッ……マジ、ウケルんです、けど……!!」
『速さ自慢とか、射撃自慢とか今どきダッセー』
『それ抜いたらなーんにも無いくせに』
 ボロボロになりながら、負け惜しみのようにかしましは彼女達を無駄とも分からずに煽り始める。
 それを哀れに思いながらも、アスカは静かに返した。
「確かに貴方の言うとおりかもしれない」
 私の本質なんて、私が良く分かってる。
 射撃を抜いたら電子の海で埋もれるだけ、でも射撃の腕はまだここにある。
「でも、だからこそ……私は私に出来ることをやる」
 それしかないなら、それで出来ること――この射撃の腕で、仲間を助けることをする。
 千里の道を一瞬で詰めて貫くが如き、大型のレーザーボウからの高威力の“矢”がかしましの心臓を貫き。
「アタシだってそうだ」
 速さこそ一番削がれたくない物だと思ってたけど違った。
 だからこそより速さを求めるよ――全てを知って、一緒に居たいからこそ。
「故にかしまし、潰れて消えてろ」
 返す言葉と共に溜めは終え。
 小煩い戯言ごと断ち切る様に――火焔の大鎌を持つ死神(キャロライナリーパー)の如き足刀が強かに、かしましの胴を薙いだ。
 心臓を射抜かれ、胴を薙ぎ払われても生き永らえるは邪神といったところだが、肉体以上の心を追い詰めるように。
 ――それに。
 誰より何よりも速く正確に邪神の本質を射抜く言葉が重なった。
「「取柄が一つしかないのは、お前(あなた)も同じだ(です)」」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ソラ・ツキノ
他の猟兵さんの言葉、結構心に響くなあ。
アタシは力でなんとかするってばかり。
だから『儀式を止める』事しか考えてなかったんだけど……これが終わったら、高校生くんには良い道を見つけて欲しいな。

【POW】
で、アンタが主犯の奴かぁ。その声、幻覚の中で聞いた覚えがあるよ。
嫌だなー、純然たる悪意って感じで気が滅入るなー。
でもだからこそ、アタシ達はアンタを倒さなきゃいけないわけ。
あんな幻覚を見せた分は仕返ししてやるからね!
じゃあ行くよ、レッツゴー!

やることはただ一つ、アームドフォートをぶっ放す!
これしかできる事がないからね!
隙があれば選択したUCも叩き込むよ!

【アドリブや絡みなど大歓迎だよ!!】



●デビル砲火
 これだけの攻撃を受けて、それでも戦闘を続けられるのはかしましが何だかんだで人知を超えた存在であるからか。
(他の猟兵さんの言葉、結構心に響くなあ。アタシは力でなんとかするってばかり)
 今までの戦闘の経緯と、他の猟兵に敬意を払いながらも。
 儀式を止めることしか考えなかった――尤も、全然恥じることでも何でもないが。
 終わったら少年に良い道を見つけて欲しいとも思いつつ、よろめくかしましにソラは声を掛けた。
「で、アンタが主犯の奴かぁ。その声、幻覚の中で聞いた覚えがあるよ」
「誰かと思ったら、ああ……死にたくなーいって逃げてた子じゃん」
『死にたくなーい、死にたくなーい……とかっ』
『チョーウケたー!!』
 ――純然たる悪意の塊って感じで気が滅入るなーと思いつつ、でも倒さなければならない……それは、変わらないし。
「あんな幻覚を見せた分は仕返ししてやるからね!! じゃあ行くよ、レッツゴー!!」
 お礼は爆炎と衝撃で釣りは要らない程に叩き込む。
 ソラの背負う大砲から、幻覚の鬱憤と純然たる悪意の嘲笑を焼き尽くす勢いで引鉄を引き、何度も何度も砲撃を放ちかしましを空に舞い上げていく。
「馬鹿の一つ覚えーっ!!」
「うん、これしか出来ること無いからね!!」
 その手の煽りがもう利かないことも信じられないかしましへ、途轍もない良い笑顔でソラは残弾を撃ち尽くし。
 爆風が晴れた先には、制服とパペットをボロボロにしながら、それでもかしましは罵詈雑言を叩き込むが。
「ババアの一つ自慢話とか……こりごり、だっての」
 ――その言葉に、ソラの中で何かが切れた。
「誰がババアじゃー!! 生きて帰さんぞ小娘がぁぁっ!!」
 一つ自慢もだし、年齢を考えればかしまし自体の方がずっと古いであろう特大のブーメラン。
 乙女の歳に触れた代償は、弾を撃ち尽くした大砲の砲身で容赦のない殴打が続いていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧島・クロト
ああ、空っぽか。
……そうだったなァ。俺は『何も感じないこと』ぐらい得意だったなァ。
けれどさ、それは昔のただの『失敗作』だ。
力を貸してくれるか、『兄貴(カイト)』

瞑目してから【氷戒装法『破軍の執行者』】を【高速詠唱】。
目を見開くと深い藍色の目に変わる。
一片でも感情を持たない保証はねェから軽減効果と【オーラ防御】を活かす。
動揺はしない。こいつに縁切りして貰うのは過去の自分だ。
【属性攻撃】【マヒ攻撃】【全力魔法】で悪口も言えないぐらいに凍らせてやる。

「中傷ならさんざ受けた。今更それがどうした。お前ごとその『過去』は捨てさせて貰う」
※アドリブ・連携可



●デビルフリーズ
「誰かと思えば空っぽの子」
『できそこないの人間モドキ』
『兄弟ガーとかこいつヤバくね?』
 身体を幾度となく追い詰められても、その身に備わった性質は変わらないのか。
 果たしてかしましが馬鹿にすること悉くが、ブーメランとなって跳ね返っていることに気付いていない――これも、哀れというか。
 クロトは苦笑しながらかしましの罵倒を目を閉じながら聞き、凍結した過去をふと揺り起こして。
 ――ああ、空っぽか。
「……そうだったなァ。俺は『何も感じないこと』ぐらい得意だったなァ」
 けれど、それは昔のただの『失敗作』のことだし、今は違うと狂気を乗り越えた時に確かにしたことだ。
 今、戦うことに何の影響があるものか――刹那の速度で唇を動かし、術法を紡ぎ守護者の防御をその身に宿す。
「力を貸してくれるか、『兄貴(カイト)』」
 ――我が身に北天に座す『破軍』の裁きの理を。
 目を見開き、バイザー越しに深い藍色の瞳を輝かせ、真っ白な空間に溶け込みながらも存在感を放つ白髪は、戦に舞い散った塵を凍てつかせ弾けさせるような冷たい威容を放っていた。
「お兄ちゃん助けてーって? キャハハ、笑えるぅー」
 ――僅かでもその中傷に怒りを覚えないわけではない。
 その証拠に四方八方から襲い掛かる嘴の穿孔を守護者の防御と、纏うオーラの壁で防ぎながらクロトは静かに掌を向けた。
「中傷ならさんざ受けた。今更それがどうした。お前ごとその『過去』は捨てさせて貰う」
 蒼き炎は赤い炎よりも温度が高いとは誰が言うたか、バイザー越しの藍色は何処までも冷たく。
 宿し放つは氷の力――縁切りを願うのは、凍結させて捨てるべき過去の自分だけで十分だ。
 向けた掌から放たれた絶対零度の青白い波動が、壁に阻まれたペンギンのドリルを一斉に凍てつかせ砕き、その先のかしまし本体をも呑み込み青白い氷の中に閉じ込めさせて。
 凍った過去を無理矢理開いた邪はその口を凍てつかせられるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

タールダール・ダルタン
(たるです)
(よろしくおねがいします)
(たるはいます)

(たるはおこっています)
(なにもみせてくれませんでした)
(とってもざんねんです)
(たるはかなしいです)

(ところで、たるはまだしょうがっこうにはいっていません)
(がっこうっておいしいですか?)
(しょうがくせいはたべられますか?)

(そういえば)
(なんでひとりでさんかいしゃべっているのです?)
(つかれませんか?)

(たるはかんがえごとをしたらおなかがすきました)
(かしましさんはたべられますか?)
(おぶりびおんはとってもおいしいですよ)

(こわがりました?)
(くものすのでばんです)
(つかまえました)
(いただきまぁす)

(ごちそうさまでした)
(たーるっ♪)



●デビルタール
 ――たるです。よろしくお願いします。
「ひ、ひえっ!?」
 漸くのこと、凍てついた壁の中から抜け出て消耗しきったかしましの目の前に転がったのは一つの樽であった。
(たるはおこっています)
 ――やめてまじむりたるがこわい。
(なにもみせてくれませんでした)
 ――なにをみせりゃいいのわからなかったなにがあったのそも。
(とってもざんねんです)
 ――ないほうがいいぜったいないほうがいいわかるでしょ。
(たるはかなしいです)
 仮面とパペットをぶんぶんと振り乱し、かしましは彼女ですら得体のしれない存在を全力で拒絶して。
 慌てふためく彼女に樽から這い出たタールダールは無邪気な疑問を呈した。
 ――ところで、たるはまだしょうがっこうにはいっていません。がっこうっておいしいですか? しょうがくせいはたべられますか?
「っ……ぷっ、えー義務教育すらないってヤバくね?」
『キモーイ』
『――が許されるのは幼稚園までだよねー』
 好機が来たと思えば罵詈雑言を放ってしまうのは、かしましの本能なのか。
 しかし樽は一切に動じずに、とある言葉を言うのだ。
(そういえば。なんでひとりでさんかいしゃべっているのです? つかれませんか?)
 ……気まずい沈黙がかしましと樽の間に流れて。
 考えても考えても答えの出ない疑問に黒い粘体の身体を蠢かせて、樽は悍ましくも無邪気な声で語り出した。
(たるはかんがえごとをしたらおなかがすきました)
 ――かしましさんはたべられますか?
 やめてたべないでぺんぎんはまずいたべものじゃないわたしはとりにくじゃ。
 ――おぶりびおんはとってもおいしいですよ。
 たべものじゃないたべたらおなかこわすあれたるにおなかたる、たる、たる……
 ……一瞬で正気を失ったかしましにかぶせられたのは異様な樽から放たれた蜘蛛の巣で。
 それが絡まりもがき狂う邪にタールダールは粘体の身体を大きく広げて。

 い た だ き ま あ す。

 ――ごちそうさまでした。たーるっ♪

成功 🔵​🔵​🔴​

タマコ・ヴェストドルフ
わたしには切られるような縁がありません
わたしにはオブリビオンと戦う(食べる)ことしかありません
目の前には傷ついたオブリビオン
あなたが誰かはわからないけど
とてもとてもおいしそうで
わたしはとてもとてもおなかが空いていて
ごめんなさい
がまんすることはできません
いただきます
黒いの(黒牙剣)達にわたしの血を与えて
もぐもぐとそしゃく(ブラッド・ガイストで斬ったり刺したり)します
黒いのが捕食した部分を【生命力吸収】で食べます
首筋の数字が気になって
歯を立てて【吸血】したくなります
【捨て身の一撃】で飛びついて首筋に噛み付きます
もっともっとあなたの命をください
ごちそうさまをするまでちゃんとちゃんと味わいますから



●デビル捕食
 闇の中から這い出て抜け出したかしましは、制服をボロボロにしマスクをひしゃげさせながら膝をつく。
 そのかしましの前に、タマコ・ヴェストドルフ(Raubtier・f15219)はピンクの瞳をどこか艶美に、そして餓えた輝きを宿し立っていた。
「あなたが誰かはわからないけど」
 美味しそう、ああ、美味しそう――とてもとてもおなかが空いていて、がまんなんてできるわけがない。
 人鳥のマペットで殴りつけてくる腕を軽く黒い剣で制しながら、それ以外にも無数に携えた黒い刃たちにタマコは自らの血を与えた。
「いただきます」
 捕食衝動を解き放った無数の剣が、かしましの身体に突き刺さる――否、喰らい付く。
 喰らい付いた刃が、邪の身体に流れる血のような名状しがたきエキスを吸い上げ生命力を啜り上げれば、主のタマコは陶酔した顔で頬に手を当てゆっくりとかしましに近づく。
「かえ、れ……じゃ、ないと……SNSっ……に、悪口、ばらまく……よ」
「大丈夫。わたしには切られるような縁はありません」
 ――あるのは、きずついておいしそうなあなたを食べたいと思う食欲だけ。
「わたしにはオブリビオンと戦うことしかありません」
 戦うことこそ、食べること……だって、何より誰よりあなたは美味しそうたまらない、良い匂いがするの。
 蕩けた眼が悪魔の刻印を映せば、喚き暴れるマペットを捨て身の勢いで飛び込みながら、かしましを押し倒すと粘着質な音を立て顎を開き。
「もっともっとあなたの命をください」
 ――突き立てるのは、吸血鬼の牙。
 悪魔の刻印を食い破り、力の源たる声帯を破損させ邪なる生命力を流す鉄臭い液体をきつく、強く吸い上げ飲み下す。
 ……ああ!! おいしい!! もっと!! もっともっともっと!!
「ごちそうさまをするまでちゃんとちゃんと味わいますから」
 ――罵詈雑言と縁切りの神が、喉笛を壊され人の血肉となる末路は何と甘美なものか。

●喪失の恐怖を超えて
 ――かくして、一つの狂気から始まった戦いは終わった。
 悪辣な罵詈雑言の末に、誰もが誰も味わわなくていい別離と狂気に苦しむ世界は遂には訪れることはなくなったのだ。
 保護した少年については可能な限り、後日UDC組織の情報操作で名誉を回復して貰えることとなり。
 完全には名誉回復は難しいかもしれないが、少なくとも望めば新しい生き方は提供してくれるようで。
 あとは彼が自力で立ち直ることを祈るばかりだろう。
 クイーンビーについても真実の姿がネットに出回り、今現在は彼女自身と彼女の取り巻きによる『火消し』で大忙しだそうな。
 近いうち、かのクイーンビーにも然るべき報いは受ける日も近くはないだろう。
 だが、狂気空間を乗り越えた猟兵はふと思う。

 ――今、そこにあって当然のものは、突如として消えないという保証がどこにあるのか。その時、自分は何が出来るのか。

 だが心配は要らないだろう――彼らは、その恐怖と狂気を乗り越えてこの場に立ち勝利を掴んだのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月23日
宿敵 『五八七『デビルズナンバーかしまし』』 を撃破!


挿絵イラスト