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帝都櫻大戰㉓〜叫びの果てに、怒る第六は示す

作者：黒代朝希

「エンシェント・レヰス『護国鉄神零號』よ、儂と融合し三十六世界を無に帰すのだ」
「貴様……イティハーサ！　我と融合しこの歪なる世界を作り上げたか」
　――『諸悪の根源』である『幻朧帝イティハーサ』の能力はシンプルで、それと同時にどうしようもないもの。
　即ち……
「儂はイティハーサ……『世界を創造するもの』。望むものあらば、これまでの｜歴史《イティハーサ》から、如何なる世界も創り上げるだけの存在」
「……我が『鋼鉄共栄圏』も、然りだとでもいうのか……！？」
「……そう、最早世界を創るのに、新たな『未来』など必要ない――新世界は、これまで形作られた『過去の断片』を組み合わせるだけで、容易に作り出せる」
「……貴様、何を言っているのか分かっているのか？」
「分かろうとしているのは汝であろう？」
　震えるエンシェント・レヰス『護国鉄神零號』の声……自身の脳裏に浮かんだ『最悪にも程がある真実』を前に、流石の鉄神も声を震わせるしかない。
　其れを断言せず、かの『｜歴史《イティハーサ》』は悪趣味に歪んだ世界……『殲機鋼鉄共栄圏』を創造。
　その有様は『太平洋戦争期にも似た戦乱の世界が『幻朧帝の号令』により他世界の侵略に乗り出そうとしている』のだ。
「ああ、伝えておこうか。この新世界の国民には、汝に搭載された8億の魂が使用されている」
　絶叫――最早、血涙を流す勢い、凄まじい冒涜に『護国鉄神零號』は叫ぶ事しかできない。
「そろそろ認めてはどうだ。汝らに、最早生命は不要である。そろそろ、六番目の猟兵……『第六猟兵』に縋るのを諦めてはどうだ。すべての生命はやがて冷めゆき……そのすべてがオブリビオンとなるのだから」
　傲慢で醜悪な『｜歴史《イティハーサ》』は、そう言って六番目の猟兵『第六猟兵』を待つのであった。

「……これが、幻朧帝イティハーサ……『諸悪の根源』というだけはある……真正の邪悪ですね」
　険しい顔をして帝都の地下に舞台を移した『帝都櫻大戰』の第三戦線。
　再び帝都に戻った六番目の猟兵に対し灼滅者のグリモア猟兵、七草・聖理（光の弓矢は闇無き世界で始まる・f43834）は依頼を紹介――そう、サクラミラージュの『諸悪の根源』である『幻朧帝イティハーサ』との最終決戦だ。
「今回舞台となるのは……『殲機鋼鉄共栄圏』、エンシェント・レヰス『護国鉄神零號』が守ろうとしていた『鋼鉄共栄圏』を『世界の創造』という恐るべきユーベルコードで『侵略新世界』にした世界です」
　幻朧帝は「骸の海そのもの」ともいえる凄まじい強敵……だが、勝機が無いわけではない。
　侵略新世界の素材とされた『鋼鉄共栄圏』にて、かつて幻朧帝と戦った8億の魂……それを六番目の猟兵――『第六猟兵』が聞き届ければ、イティハーサとの戦いに勝機が生じる。
「鉄人形に組み込まれた魂達が怨嗟の叫びを上げる度に、イティハーサはより強大な力を得て攻撃を放ってきます――八億の魂達の叫びは、衝撃波と強い怨みの念によって聞く者の行動を封じてしまいますが……」
　もしも六番目の猟兵が何らかの手段で彼らの叫びを聞き届け、その怨嗟を少しでも和らげてあげることができれば、その分だけ叫びによる悪影響は弱まるとの事。
　その上で……もしも魂達が六番目の猟兵に完全に同調するまでに心を開かせることができれば、彼らの叫びは逆に六番目の猟兵――『第六猟兵』に力を与えてくれるようになる。
「故に、彼らに『怒り』を示して下さい……こんなものを黙って見過ごせるか、と」
　其れは灼滅者が持つ、かつて世界を支配し闇落ちを促進していたダークネスへの怒り……それに近しいものであろう。
「怒りを示せば、より魂達は私達との同調を深めるでしょう……だからこそ、怒って下さい」
　と、頭を下げて……灼滅者のグリモア猟兵は『諸悪の根源』である『幻朧帝イティハーサ』との戦いの場を六番目の猟兵に示すのであった。

第1章 ボス戦 『イティハーサ・零號』

POW   :    天矢『殲機鋼鉄共栄圏』 【命令と共に飛来する殲滅機械矢（ミサイル）】に乗り、レベル×5km/hで飛翔する。飛翔突撃も可能。 SPD   :    神鷹『殲機鋼鉄共栄圏』 【飛翔する神鷹の真下の大地】から【無数の生命殲滅鉄人形】を召喚する。［無数の生命殲滅鉄人形］はレベル×5km/hで飛翔し敵を攻撃する。使用者はこれに騎乗可能。 WIZ   :    骸眼『殲機鋼鉄共栄圏』 【骸眼の蠢き】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【足止め用の対猟兵鉄人形軍団】で囲まれた内部に【『殲機鋼鉄共栄圏』の爆弾の雨】を落とし、極大ダメージを与える。 イラスト：炭水化物 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「敵に、怨敵に、使われる！　意に従わぬ隷属が、どれほどの哀しみか！！――『鋼鉄共栄圏』よ！　その苦しみを！　自分に貸せッッ！！！」
　朱鷺透・小枝子（｜亡国の戦塵《ジカクナキアクリョウ》・f29924）は憤怒の表情を浮かべながら……八億の魂、彼らの怨嗟と繋がり、その苦しみに理解を示していく。
　望まぬ隷属に怒りを示し魂たちと同調、イティハーサへの憎悪を燃やし……ユーベルコードを発動。
「壊し撲れ――『｜霊障鉄拳《グレイブ・ナックル》』ッッッ！！」
　｜抗うその意志《敗北の危機》をその拳に宿すと同時、召喚装着したブラストナックル型抗体兵器に劫火・雷霆・豪風・津波・絶対零度の霊障を宿していく小枝子。
　用いるは雷霆霊障――『イティハーサ・零號』のユーベルコード『天矢『殲機鋼鉄共栄圏』』によって射出される『｜殲滅機械矢《ミサイル》』を撃墜するべく、メガスラスターでイティハーサ目掛けて小枝子は突撃していく――
「世界の創造者たる儂に――」
「唯世界を創造しただけの貴様に！　誰が！！　従うものかああああああアアアアアアア！！！！！」
　雷霆と共に裂帛の勢いでブラストナックル型抗体兵器を振りかぶり、イティハーサだけを小枝子は殴り倒す。
　劫火の霊障を纏う抗体兵器のユーベルコードに匹敵する呪詛……そこから供給される怪力を用いて――イティハーサを殴る！
「イティハーサッ！　貴様がッ！　泣き叫びながらッ！　許しを請いッ！　絶望に叩き込まれた後ッ！　死ぬまでッ！――殴り続ける！」
「ゴッ、ガァッ……！？」
　怒りと共に殴り続け、焦熱させるべく小枝子は炎のブラストナックルを振るっていくのであった……

大成功 🔵​🔵​🔵​

「貴方はどこまで……８億魂の皆さんを、零號さんを都合のいい様に利用すれば気が済むんですか、幻朧帝！」
　幻朧帝イティハーサは『諸悪の根源』……それは六番目の猟兵『第六猟兵』も知識としては認識していた。
　しかし、相対した幻朧帝イティハーサは……想像を遥かに凌駕する真正の邪悪であった。
「それだけじゃない、こんな……歪んだ世界を創造して尊厳を踏みにじって……絶対に許せません！」
　自分の意思こそが至高、それ以外は塵芥――『世界の創造』というユーベルコードの使い方で、幻朧帝イティハーサの思考はすぐさま理解できた。
　故に怒りと共にツォーナ・ロチェアーダ（世界を渡る大海の剣・f01913）は怒りを示す。
「貴方が皆さんの怒りを、嘆きを利用するつもりなら……ボクはその皆さん皆さんの力を借して頂きます！」
　声とは、叫びとは、音とはいわば……空気の振動。
　ユーベルコード『｜剣風・竜巻《ヴェントディスパーダ・トルナード》』という能力の範囲内だ。
「ならば――その空気ごと皆さんの怒りを竜巻で巻き取り巨大化させ、爆弾すらも吹き飛ばし幻朧帝にぶつけてやります！」
　螺旋状の魔力を纏わせた『自身の本体』である剣……『ロチェアーダ』から爆音を伴う竜巻状の衝撃波を放射していくツォーナ。
　その竜巻に伴うのは……八億の魂の叫び。
「この八億の怒りを受けるべきはボク達猟兵でもなければ他の世界でもない……貴方たった一人だけだ、幻朧帝！」
「儂に逆らうというのか……！」
　驚愕の表情を浮かべ、幻朧帝イティハーサは竜巻に飲み込まれ八億の叫びに蝕まれていくのであった――

大成功 🔵​🔵​🔵​

「――お前はオレを本気で怒らせた」
　ユーベルコード『｜大灼怒『義焔咆哮 』《ラース・オブ・ブレイザイン》』の発動が確認される。
　燃え滾る灼熱の焔の如く。
　絶対零度を超える凍気の如く。
　在るするだけで世界を砕くほどの激情を――際限なく撒き散らす憤怒。
　空桐・清導（ブレイザイン・f28542）にとって幻朧帝イティハーサは許しがたい邪悪であり、巨悪であった。
「怨嗟を聞こう。その上で手を貸してくれ……アイツの顔面に、一発食らわせてやろうじゃないか」
　八億の叫びを受け止め、真摯に言葉を投げかける清導。
　――歩く度に望まれぬ世界が浄滅する。
「この今オレが纏っている『能力を爆発的に上げる紅いオーラ』はな……無敵化を施すだけじゃなくて、『共に戦う仲間全員』が受けた『怒りや悲しみ、痛みや苦しみ』に比例して戦闘能力を強化するんだ」
　つまり、八億の叫び……その分だけ、ブレイザインは強化されていく。
　其れはつまり……
　あらゆる攻撃を一切受け付けず、ゆっくりと進みながら駆け出せば……回避ならば”距離”を砕いて引き寄せる程に。
「今からテメエをぶん殴る――八億の魂と零號！　そしてオレの八億二発だ！　キッチリ受け取れ！」
　瞬間、光の速さすら大幅に超越して凄まじい速度で殴り抜く清導。
　数秒の間に八億二発のラッシュを幻朧帝イティハーサに叩き込んだ結果は、時を止めている間に殴られ続けた果てに時間停止を解除されたかの如く。
「ごっはぁ……！？」
「決着だイティハーサ――お前の世界は此処までだ！」
　一発一発ごとに[限界突破]していき、――『諸悪の根源』の全身を殴り抜くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「生命が不要とか、銀誓館学園の人間からしたら絶許案件なんだよ」
　かの『諸悪の根源』が唱える思想は、銀誓館学園が敵対した『異形』が唱えたものと全く同一。
「つまり、異形とは……そういう事でしょうかね」
　ユーベルコード『生命讃える銀翼』によって『対象に生命賛歌の効果を与える詠唱銀の翼』を生やした穂村・耶子（甘党残念剣士・f35497）は『異形』のルーツの推測をしながら飛翔。
　味方を鼓舞するだけでなく、飛翔しながら八億の魂に語りかける耶子の姿。
　詠唱銀の翼を広げ、生命賛歌の効果を任意に与えるそのユーベルコードも合わさり……八億の魂達は希望を与えられていく。
「生命賛歌の効果も併用すれば、怨嗟の叫びの効果は最大限にまで弱められるはず……どう？　これが不可能を可能にする生命の力だよ」
「無駄な足掻きを……」
「――そう、だからこそ……それを否定する者を僕達は許さない！」
　あの2012年7月22日にて、生命としての正義を『二つの三日月』を撃破する事で証明した様に。
「そうやって、僕達は自分達の世界を何度も守ってきたんだから！」
　生命賛歌で強化された肉体を活かし、真っ向から『幻朧帝イティハーサ』を斬り裂く耶子。
　その斬撃痕を抑えて『幻朧帝イティハーサ』は顔を歪める。
「もしかすると、君のようなやつが『異形』の根源だったのかもね……だったら、僕はその根源を断つ！――『ディアボロスランサー』と共に宇宙に旅立った先輩達のためにも！」
　あの日の別れに誓い、それらを以て『｜銀の雨の降る時代《シルバーレイン》』を完遂した者の一人は二の太刀を振るって『幻朧帝イティハーサ』の片腕を切り飛ばすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「殴るだけでは満ち足らん！　怒れ！　怒りを燃やせ！！――イティサーハごと、この歪んだ世界を燃やし尽くすほどに！！！」
「怨嗟が晴れれば意思は変わる……いえ、最初から何一つ変わっていないのでしょう。何故八億の魂の皆さんがこれほどの怨嗟を抱くか、その根源……」
　最後に……朱鷺透・小枝子（｜亡国の戦塵《ジカクナキアクリョウ》・f29924）とツォーナ・ロチェアーダ（世界を渡る大海の剣・f01913）は再びこの戦場へとやってきた。
　総ては『イティハーサ・零號』……『幻朧帝イティハーサ』へと確実にトドメを刺す為に。
「｜燃えろ《壊れろ》、｜燃えろ《壊れろ》！！！！――其処が我らの｜禍戦場《ゲヘナ》だ！！！」
　小枝子は先に同調させた8億の魂の怒りを――闘争心を、その怨念を己へ注ぎ……エネルギーを充填。
　ユーベルコード『｜禍戦・劫焔納《デッドオーバー・マグナゲヘナ》』による『黒焔の劫火そのもの』へと変貌させ……大炎熱異空間を展開。
「ミサイルも、イティサーハも、魂縛る鉄人形も！……纏めて一帯を焼き払うッ！」
　その様子を見て、ツォーナは『幻朧帝イティハーサ』に語り掛けていく。
「それはきっと未来を望む意思を踏みにじられ滅ぼされたから――幻朧帝、貴方は未来など必要ない、現に彼らはそれを滅ぼされた……そういうかもしれません」
　だからこそ、ツォーナは『幻朧帝イティハーサ』……『諸悪の根源』の答えを聞かずに己の答えを告げる。
「ですが未来はここにあります！」
　ユーベルコード『｜大海剣《ロチェアーダ》』……自身の真の姿である『刀身が大海と化したロチェアーダ』を展開するツォーナ。
「皆さんの怒りを、怨みを受け止めたボク達猟兵のこの手に！――ならばその未来を望む意思を刃に変え、未来を切り開きます！」
「ならば怒りは……鉄人形に縛られている8億の魂を開放し、強まる彼らの思いを背負う！」
　イティサーハとこの世界を大炎熱異空間で燃やし尽くしていく小枝子に対応しながら、『真の姿』を展開したツォーナは『未来を切り開く』べく言葉を紡ぐ。
「貴方を滅ぼすのは猟兵の力ではありません、未来を望む意思……いえ、未来そのもの！――だから自分勝手な持論で世界を滅ぼし創造した彼にはあえて口悪くこの言葉を送ります！」
　――『幻朧帝イティサーハ』を中心に異空間を圧縮し、内包する熱量を上げて『イティハーサ・零號』を『諸悪の根源』諸共溶かしていく小枝子。
　そこに振るわれた『刀身が大海と化したロチェアーダ』……『幻朧帝イティハーサ』の首を刎ねた一閃は、次の言葉を残す。
「永遠に過去で隠居してろ老害じじい！」
「未来等……儂は……不滅……歴史を滅ぼす事等……」
「静かに」
　刎ねられた首が妄言を口遊むのを、焔を放って黙らせていく小枝子。
　やがて侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』諸共、奇しくも『｜炎の破滅《カタストロフ》』ならぬ『炎の浄化』によって『諸悪の根源』は消え去るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年09月22日