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帝都櫻大戰⑪〜その時であった、🤖✨が発動したのは

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第二戦線 #護国鉄神零號 #5thKING『勇者リリリリ』

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#5thKING『勇者リリリリ』


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●あっちょんぶりけ
 移ろう世界の風景を映し続ける場所。時節柄、今日も今日とてあわただしいグリモアベースにて。

「あ……あっちょんぶりけー……!」
「!?」

 ――きこえますか……きこえますね?

(ッ!! コイツ……頭の中に直接!?)

 突然、グリモア猟兵が依頼を……その説明を、テレパシーで頭の中に流し込んできました。ちょっとくらいバグったり故障していても、こうして工夫すれば、まだつかえるの……です。そんな感じです。どうせ伝えるべき情報量だって、そんなに多くないですしね。ほかのオープニングを見てれば、だいたい要領は分かってると思いますし。
 要は、デビルキングワールドでは『黄金大迷宮』――ビームスプリッターさんが建設した超危険なトラップも超高価なお宝も満載の総黄金造りの迷宮――から大量の幻朧桜が溢れ出し、住民の悪魔たちをサクラミラージュに引きずり出そうとしている危機的な状況。
 そこに追い打ちをかけるようにエンシェント・レヰス『護国鉄神零號』さんもこの地に現れ、けれど突如として始まったそんなアバンギャルドな超展開に、悪魔さんたちは大盛り上がりしているみたいです。

 つまりは、悪魔さんたちが居て、超巨大鉄神『護国鉄神零號』さんが居て、そこに宿る八億の魂が居て。更にはキャンピーくんに連れて来てもらったリリリリさんが居て、皆さんもそこに向かうことになるのです。
 何だかよくわからないまま、お祭り感覚でわっしょい盛り上がる者たち。与えられた使命を捻じ禍げられ、今まさに望まぬ『敵』を打ち砕かんとする鉄の神。むかしあり、そうして既に滅んだ世界に生きて、喪われた……八億もの魂。かつてこの場所で生まれ、やがて勇者と呼ばれ、王として生きた……そんな故郷へと帰ってきた堕天使が居て――やっぱり、意外と語ることがあるモノですね。

「あっちょんぶりけ……」

 三者三様な意志と思惑が交じり合う、混迷した戦場で。
 あなたは、何を求め、どんな音を響かせるのでしょうね。


常闇ノ海月
 ご無沙汰しております。
 カッコイイリリリリを、書いてアゲタカッタ……常闇ノ海月です。

●プレイングボーナス
 隙や反動を顧みず、全力の攻撃を叩き込む/勇者リリリリに守ってもらいながら戦う。

●プレイング受付
 断章公開後の、9月15日(月)15:00頃~を予定。
 今回はオーバーロード非推奨です。駄目ではないけど、比較したときにちょっと採用率が落ちる……かも。

 戦闘シナリオ、攻撃メインの構成っぽいですが、力や技以上に魂の乗っかったプレイング歓迎です。
 ではでは、皆さんのご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『護国鉄神零號』

POW   :    零式噴進飛翔拳
かつて喰らった「【鋼鉄共栄圏の人々】」の魂を纏い、2倍ダメージ・2回攻撃・自動反撃を有した【ロケットパンチ】を装備する。
SPD   :    八岐大蛇機関砲
【自在に射角調整が可能な蛇型四連機関砲】を最大レベル秒間連射し続け、攻撃範囲にダメージと制圧効果(脱出・侵入を困難にする)を与える。
WIZ   :    護国熱血破壊砲
装備武器から【護国英霊波導砲】を発射する。自身の【放熱装置】削減量に応じ、威力・速度・発射数が増加する。

イラスト:柿坂八鹿

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●VS超巨大鉄神
「ぼくらだって、長い目で見ればロリやショタと同じなのですぞ。まだ十分に生きちゃいないのですぞー!!」

 デビルキングワールドでは、一部の悪魔――魔界学園きっての優等生さんたちが『護国鉄神零號』さんへと決死の抵抗を挑んでいました。それは高いインテリジェンスを持ち、想像を絶する厳しい修行の果てに『魔法使い』となった豚の悪魔さんたちです。
 彼らは全員が30歳を超えていましたが、だからこそ、きっとまだ未練もたくさんあるのでしょう。カオスの力で変形合体する巨大なバイク戦艦に乗り込み、その艦首の回転衝角でもって『護国鉄神零號』さんへと攻撃を仕掛けます。

「ばぁぶぅー!!」
「強き者達、抵抗もするのか。それも当然であろうな。だが、悲しいかな……」

 回転衝角――ドリルは『護国鉄神零號』さんのボディを貫くことは、できませんでした。
 逆に『護国鉄神零號』さんから軽く小突かれただけで艦体は真ん中からぽっきり折れてしまい、戦闘能力を失って崩壊し始めた戦艦の内外で爆発が連鎖していきます。

「!! ば、馬鹿な。ボクは、まだナニもヤっちゃいないのですぞ……」
「こんな……、こんな甲斐のないイき方なんぞ、ボクは認めないのですぞー!」

 まぶしい閃光と爆音の中を、🐷だけになった悪魔さんたちがぶっ🐷でいくのが見えました。これがもし頑丈さに定評のある悪魔じゃなかったら、確実に死んでいたところでしょう。それだけは不幸中の幸いでした。でも……、

「も、もう、ダメなのですぞ……オシマイですぞ」

 魔界上位のインテリジェンスが導き出した未来予測は、24時間も経たぬうちのデビルキングワールド崩壊と滅亡を示唆していました。かしこい優等生さんたちには、この後の展開が読めていたのです。

「その時だった、|🤖✨《超展開》が怒ったのは……ってなるのですぞ」
「我ら、くわしいのですぞ」
「ひぃん、ぶひぃん……❤」

 宇宙規模のとんでもない破滅的・破壊的な結末が、優等生さんたちの脳裏を駆け抜けていきます。
 それは因果地平まで吹き飛ばされたり、魂が裸になってイチャイチャしたりする、んにゃぴ……よくわかりません……なそんな感じの、こんなときどういう顔をしていいかわからない結末予想図でした。

「や、やめたまえ! 8億の魂がその気になってしまうー!」
「かくなるうえは、我らの恨みと怒りと悲しみを、鋼鉄共栄圏人共にぶつけさせてもらうのですぞ……!」

 もっとモテモテだったらという悔しみ、|BSS《ぼくが先に好きだったのに》がイケメーンやチャラ王に寝取られた悔しみ……。こ……このブヒィのくやしみを、だれが分かってくれるのですぞー!

「こうなったらもう、みんな星になってしまえー! ですぞー!!」
(なんか、やれそうな気がしてきた……みんな、お星さまになってしまえーーー!!!)
「ヤ、ヤメロォォォー!!!」

 かくして、恨みと怒りと悲しみ×8億を纏ったロケットパンチ、『零式噴進飛翔拳』が🐷になって飛んでいくブヒィさんたちにとどめを刺そうとした――その時でした。
 黒い稲妻の如く天から降ってきた何者かが、『護国鉄神零號』さんのパンチを空中で受け止めたのです。

「……貴方たち、ふざけすぎなんじゃないの~?」
「!? ゲッ、ゲェエエエ……!」
「リ、リリリリですぞー……?!」
「ヤバいですぞ。我ら、この期に及んで勇者にまでしばかれ、痛めつけられちゃうのですぞ!?」
「ブ、ブヒィィン……❤」

 そう、それは左手に持った盾『堕天シールド』を中心に、無数の小型盾を展開し、最強種族として名高い魔界でも屈指の強靭な防御結界を形成する、かつての5thKINGリリリリさんでした。

「馬鹿な、我の拳の直撃を受けて、無傷だと……!?」
「すごくいた〜い。でも勇者なのでほれこのように元気です(ぶんぶん)」
「あっ、リリリリの左肩を見るのですぞ!」

 これには、流石の『護国鉄神零號』さんも驚愕を隠せません。
 一方のリリリリさんは、一見して本当に痛いのかどうか疑わしい態度ですが、痛くないはずがありません。それでも勇者だからと元気に5thKINGブレイドを振り回して、🐷だけになったブヒィさんたちを千本ノックの要領で避難させていました。アスリートアースでベースボールを特訓し、なぜかバットの扱いにも相当長けているリリリリさんは、一試合で4打数6安打くらいの打率を誇りますから、これくらいは当然のようにこなしてみせるのでした。

「いや、その理屈はおかしいが……」
「わかるけど、そっとしておいてあげましょう」
「ブヒッ!? あ、あれはっ!?」

 その輝かしい勇者の姿に一縷の望みを抱いて、『護国鉄神零號』さんは自らの望みを語ります。

「強き者よ。……心ある者達よ、命ある者達よ、どうか我を倒し、八億の魂に平穏を与えてくれ……」
「いいでしょう。あなたがどれだけ望もうとも、ひとりではそれができないのなら。もはや正しく生きることが難しいのなら。だれかのための願いが、他ならぬあなたにとっての願いでもあるというのなら」
「!? ガ、ガチデビルですぞ……?」

 ――勇者は、リリリリは、力を貸しましょう。

「……感謝する」
「には、まだ早いんじゃないの~?」
「!! こいつら……さては」

 期待と安堵、故に抱く恐怖と葛藤。
 その胸中で吹き荒れ、戸惑う感情を映すかのように『護国鉄神零號』さんの無機質な瞳が瞬いていました。

「そうだ。たしかに類を見ぬほど強き力……だが、八億の魂を搭載した我は「世界そのもの」。本当に、倒す事ができるのか……!?」
「勇者とは、勇ある者のことを言うのです。そして、勇気とは――ただの向こう見ずとも違うのですよ」
「こいつら……|悪魔憑依《あくまぴょい》したのですぞ! KING合体したのですぞ!! あ゛~~~~っ!!」

 色々あって、とうとう脳までが破壊された🐷さんたちの悲しみ、悔しみを背負って、リリリリさんはきりっとした凛々しいお顔で『護国鉄神零號』さんに対峙します。

「ん~……でも剣は刺さりそうにないな〜。盾パワーをレンタルするから、だれかかわりに攻撃して〜?」

 ……そう、今この時代に、現在はまだ存在しない未来を、道なき道を切り開くというのならば。きっとそれには本質的には過去の残滓でしかない彼女よりも、相応しいひとたちが居るのでしょう。
 歴史の変遷、どこまでも堆く積み上げられていく、あるいは沈みゆく過去、不可逆な相転移。
 かつて未来と呼ばれた、過去と、現在……繋がり、消費されてゆく、|質量《重み》を持った『時間』の連鎖の中で。

 あなたは、今日、ここにどんな|未来《過去》を描くのでしょうか。
 
アルテミシア・アガメムノン
ほほほ、よろしい。わたくしが代わりに攻撃いたしましょう!

と登場してリリリリさんにご挨拶。

リリリリさんはお久し振りです! お元気そうで何よりですわね。
まあ、お話は護国鉄神零號さんを倒した後にお茶でもしながらいたしましょう。
防御の方は宜しくお願いしますわよ!

とリリリリに防御を完全に任せて自身は攻撃に全集中。
『魔王の肉体』に秘めた無限の魔力を極限まで高めて、【虚無への追放】を発射!
零號さんをぶっ飛ばしてあげましょう!

護国鉄神零號さんも幻朧帝さんのせいで色々大変みたいですけれど、安らかに眠れると良いですわねえ。


朱鷺透・小枝子
よくは分かりませんがやる事は決まっています!
リリリリ殿!御力添えお願いいたします!!

夜剣大蛇【操縦】『破壊侵撃』発動!
神殺兵装たる頭部長身ドリルに己が【闘争心】と
【呪詛毒使い】神殺呪毒液を注ぎ込み変形!
より破壊に特化した巨大なドリルへと変じさせ、
更にリリリリ殿の盾のオーラを付与して頂き強度増強!

回れ、回せ!神を屠るは貴様の存在意義だ!!
今こそそれを果たす時!穿ち込めぇえええええ!!!

リリリリ殿がロケットパンチを防御してくださった瞬間、
【早業】メガスラスター【推力移動】最大推力で突撃【貫通攻撃】
『護国鉄神零號』へドリルを叩きつける!!
装甲を突き破り抉り込み毒液で更に壊し機能停止へと追い込む!!!


エドゥアルト・ルーデル
力が欲しいか
力が欲しいだろう

世界の危機に何もできない悔しみ
可愛い子を見て脳を破壊される悔しみ
それをぶつけられる力が欲しいか

ならくれてやる!
という訳で【架空兵器】を|創造《つく》って遊ぼ!護国鉄神に対抗できる|伝説魔神《凸》でござる
🐷共の目はまだ死んじゃいない!拙者がそう判断した
なのでAメカBメカCメカに🐷共を乗せて護国鉄神とどつきあい宇宙して貰うでござるよ!これぞ拙者ヒゲの導きにて
鉄神と8億人に向けて雄叫びをあげながら必殺の技を放て!だいたい拳だと思うがなんか出たらその時はその時で

リリリリ氏は見守っている拙者を守ってくれよな
実質UCを渡しちゃったようなもんだからノーガードでな…


リリエル・エルヴィータ
わ~い♪リリリリなんだよ~♪
白い翼(普段は邪魔なので消している)を羽搏かせて飛び込み、リリリリの背後から抱き着くんだよ♪
リリ仲間としてフレンド登録したのにそれっきり会えないから心配してたかな♪かな♪

あ、取り敢えずご……こくてつ……じ……ぜろご?
国鉄さん?を止めないとデビキンが滅茶苦茶になっちゃうから我も一緒に戦うんだよ♪
攻撃は任せてほしいんだよ♪

リリリリに守ってもらいながら国鉄さんに接近してUC【力強い愛の女神】を発動✨
パ~ンチなんだよ♪えいえ~い♪国鉄さんは大きいから当て易いんだよ♪更にキ~ック♪
(ぽかぽかぺしッ!なんて擬音が聞こえてきそうな女の子パンチ&キックが超破壊的威力で次々に炸裂!)


大町・詩乃
この世界を護り、護国鉄神零號さんと鋼鉄共栄圏の8億の皆さんをお救いする為、私にリリリリさんのお力をお貸し下さい♪
と彼女に笑顔を向けてお願いします。

今の私はちょおシリアスモード!頑張って行きますよ~(むん)。

武器巨大化した天耀鏡による盾受けとオーラ防御展開で最低限の防御態勢は敷きますが、それ以上はリリリリさんにお任せ。

8億の皆さん一人一人のお姿を脳裏に思い浮かべ、響月を楽器演奏して《帰幽奉告》発動。

妙なる音の属性攻撃・破魔・浄化を上乗せし、護国鉄神零號さんと8億の皆さんのご冥福をお祈りしつつ、対峙する全ての魂に響月の楽曲を届けます。
「イティハーサは私達が斃します。どうか安らかにお眠りください。」


蒼乃・昴
リリリリがあの日を最後に姿を消して以来、ずっと考えていた。
俺には何が出来ただろう。あの日、あの時、どんなふうに声を掛ければ良かっただろう。
結果として君を傷付けてしまった事がずっと胸に引っ掛かっていた。

だからもし…もし君にもう一度会えたなら、ずっとこう伝えたかった。

『勇者』として『5thKING』として――誰に恐れられようと世界の為に戦って守って来た君をとても格好良いと思っている。
君の輝きは失われたりはしない。

零號を見据えてUC使用。
回避力は低下してしまうがリリリリの力を借りながら突破する。
【リミッター解除】し【限界突破】で機械剣で薙ぎ払って住民の悪魔が居ない方へと【吹き飛ばし】。


カタリナ・エスペランサ
久しいねリリリリ! 悪魔たちも……まぁ、元気そうで何よりだ
ガチデビルの残骸的なのはどうでもいいか
勇者様に護って貰える役得、しっかり活かすとしよう

相手の動きは《心眼》で先読み、守り易い立ち回りを心がけるよ
《歌唱+多重詠唱+魔力溜め+リミットブレイク》→
【即興奥義】に組み込む三技能は《ハッキング+浄化+情報伝達》
Exスキル《Requiem for Billion》ってところかな
オブリビオン化で歪められた八億の魂に対し
加速度的に侵蝕・拡散するワクチンプログラムを打ち込み鎮める形だね


――神であれと願われた護国の器
役目を終えた者は精々安らかに眠っていなさい
貴方達のバトンは、確かに未来へと繋がれたのだから


ロニ・グィー
アドリブ・連携・辛み歓迎!

んもー
ガチデビルくんさー
キミすっかり強化パーツみたいなポジションに落ち着いてない?
もっとワルいとこ見せてかないとそのうち
「後ろだ!小娘リリリリ!」
「勘違いするなお前が死ねば俺も死んでしまうからだ!力を貸すぞ!」
とか言うようになっちゃうよ?

●八億総ツッコミ
つまり防御は任せて思いっきりぶっ飛ばせばいいんだね!
オーケィ!そっちが8億ならこっちは無限だよ!
無限っていうのはね…なんかすっごく多いんだよ!
さぁみんな!歯を食いしばって!
元気でねー!!
とUC『神パンチ』で全員に元気が伝わるよう8億+1回ドーーーンッ!!
鉄人くんも、まあ後はボクらがなんとかするから任せてよ!



●勇者との再会
 デビルキングワールド。エキセントリックでアヴァンギャルドで、よい子だけれどちょびっとアレなところのある、悪魔さんたちの暮らす世界。そのいつか見上げた空を、生まれ落ちた故郷の空を、赤の混ざる黒翼を羽ばたかせ自在に駆ける堕天使の姿がありました。
 ――勇者リリリリ。在りし日に、滅びゆく悪魔たちの起死回生の一手となったデビルキング法にさえ逆らい、愛と勇気を振りかざして魔界中の悪魔たちを震え上がらせた勇者であり、5thKINGにも選ばれた魔界屈指の実力者です。
 ですが、そんなリリリリさんがいかに護りの力に優れていようとも、一つの世界の現身ともいえる超巨大鉄神『護国鉄神零號』さんは、いまの彼女が刃を立てるにはむずかしい相手でした。

「む~り~……。だれかかわりに攻撃して〜?」
「ほほほ、よろしい。わたくしが代わりに攻撃いたしましょう!」
「!? いったのに……同志には、オブリビオンにつくのはダメだって、ゆったのにぃ……ッ!!」

 そして今、そんな声にお応えしてやって来たのが、デビルキングワールドの栄えあるデビルキング――最新の魔王7thKINGでもあるもう一人の堕天使、アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)さんでした。

「リリリリさんはお久し振りです! お元気そうで何よりですわね」
「それはもう。勇者なので。勇者ですから。お久しぶり〜」
「さては魔王と勇者、猟兵さんとオブリビオンは、実ははじめからグルだったんですぞ。我らを欺き、もてあそんだのですぞッ! ヒィンヒィン……ブヒィィィン……❤」

 挨拶を交わし、再会を喜ぶアルテミシアさんとリリリリさん。
 今まさに侵攻され蹂躙されつつある魔界で、やり取りはどこか余裕すら感じさせますが、お二人にはちゃんと分かっていたのです。どうせ悪魔たちはちょっとやそっとじゃ死にやしないし……いつになく盛り上がってるみたいだから、ちょっとぐらい放置してたって構わないのだと。あとで直せる物なら、壊されてしまったって構いやしないのだと。
 圧倒的強者たる悪魔たちにとっては、こんな危機的状況も一種のおまつりみたいなものなのだと。

「わ~い♪ リリリリなんだよ~♪」
「おっと。おお……貴方は、我が友リリエルではありませんか」
「……あら^〜……ブヒィン♪」

 赤光を纏い闇の軌跡を空中に描くリリリリさん。その背中へ真白い翼を羽ばたかせて飛び込み彼女に背後から抱き着いたのは、リリエル・エルヴィータ(記憶喪失の彷徨う謎神・f32841)さんでした。
 その姿は一見すると天使のようにも見えますが、白翼は普段は邪魔なので消しているという謎の……ちょっぴり不器用な神さまのようです。

「リリ仲間としてフレンド登録したのにそれっきり会えないから心配してたかな♪ かな♪」
「ごめんなさい。でも……憑依されても洗脳されても、失踪してても心配ご無用。リリリリは、勇者なのですから。ほれほれ、元気元気!(ぶんぶん)」
「……こういうのでいい。こういうのがいいのですぞ。あぁ^〜心がぴょんぴょんするんですぞ^〜♪」

 心配かけてしまったリリエルさんへ、その壮健っぷりをアピールするリリリリさん。その姿は以前とも特に変わりなく……滅びたハズのガチデビルさん頭部も相変わらず左肩に載ってましたが、抜け殻みたいなものでしょうか。

「それも、心配しなくて大丈夫よ。危うくうっかりリリエルにガチ恋しそうになっていたガッチーの恋心も……今はもう、まったく気配を感じ取れませんので」
「Σ ……我の|ユーベルコード《心変わりを誘う愛の女神》、実はそんなに効いてたのかな!? かな!?」
「ええ。そのための、追加攻撃ですから」
「ブヒィィ……。我らにも……良い子になぁれ♥ って、シテほしいのですぞ……」

 およそ8か月越しの、衝撃の事実でした。キリッとした真顔で宣言するリリリリさんに、でも、そういえばなんか最後の方はあんがい素直に我の言うこと聞いてくれてたかも……かも、と。
 この世界出身だった『諸悪の根源』さんのことを不意に思い出してしまうリリエルさんでした。

「久しいねリリリリ! 悪魔たちも……まぁ、元気そうで何よりだ」
「お久しぶりです。悪魔は、だいたいいつ見ても元気なんだよね~」
「デュフフフ……もっと元気にシても良いのですぞ♥ シてほしいのですぞ〜♪」

 光とともに移ろい、千変万化に表情を変える空の彩を映したかのような、美しい翼。
 人狼でありながらオラトリオのような翼を持ったカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手・f21100)さんもまた、そうしてリリリリさんとの再会を喜ぶ一人でした。
 
「何かさっきから得体のしれない気持ち悪さを感じるけど……気のせいだね、きっと。元気なのは良いことだよ。うん。そしてそのガチデビルの残骸的なのは……どうでもいいか」
「コレ、まだ憑いたままなんだけど??? だれかとってください。引き取ってください」
「まだ右肩が空いてるのですぞ。我らも、我らだって、合体したいのですぞ……(羨み)」

 冗談なのか本気なのか、表情の分かりにくいリリリリさん。カタリナさんは一瞬、何故かその肩に🐷さんのなまくb……頭部までとりついた姿を幻視して、ちょっぴりゾッとしてしまうのでした。
 一方で、やっぱりこの暑が夏すぎたせいでしょうか。ガッツリと夢幻の世界に旅立っているっぽい猟兵さんもいました。ボクが見てみたいから! とかそんな理由でまれにしばしば……いやけっこう割と別の世界線にまでお散歩に出かけたりして、神さまに怒られて帰ってくることのある神さま、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)さんです。

「んもー。ガチデビルくんさー。キミすっかり強化パーツみたいなポジションに落ち着いてない?」
「??? ガチデビルは、もういません。これ、形はガッチーだけど……中にだれもいませんよ」
「えー、だってさぁ……もっとワルいとこ見せてかないと~」

 死んだはずのガチデビルさんとナチュラルに会話(?)しはじめるロニさん。そのふざけた幻想を否定するリリリリさんを無視して、クスクス笑いながら引き続き見えない誰かさんとのやり取りで盛り上がっています。神さまはきっと、リリリリさんのそのふざけた幻想を、ぶち壊し返したのです。

「えっ? ……いませんよねっ。ガチデビル、こっそり残ってたり、しないよね……?????」
「ほぉらぁ~、そういうとこだよ? そのうち、「後ろだ! |小娘《リリリリ》!」とか、「勘違いするなお前が死ねば俺も死んでしまうからだ! 力を貸すぞ!」とか言うようになっちゃうよ?」
「!! いるんですか??? 後ろに、来てるんですか……ッ!?」

 あわてて自分の後方をかくにん……ヨシ! するリリリリさんですが、見えないモノを見ようとしても自分のしっぽを追いかけるわんこのようにくるくる回るだけで、あのおかしなガチデビルさんを見つけることはできませんでした。

「ふ。わかってないな。ほんとうに大事なことはね、心で見るんだよ……」

 そんな風にうそぶくロニさんでしたが、ところで……どうしてボクの時は🐷くんたちのコメントないの? と思ったかもしれません。でも、それも無理はないちゃんとした事情がありました。魔法使いさんたちはああ見えて実は純情ですし、うっかり魔法が使えなくされてしまいそうなタイプのひとには極力近づかないようにしているのです。
 仲良く……万事仲良く……でも、ちょっと、仲が良すぎるのは魔法使い的にはNGだったのです。

「我ら、えっちな妄想はしても、現実のショタやロリにはノータッチな紳士ですからな(キリッ)」

 そしてそのころ、そんな微妙に汚いやり取りからは離れた場所で、蒼乃・昴(夜明けの|六連星《プレアデス》・f40152)さんは深く考え込んでいました。……そう、リリリリさんがあの日、とあるかなしい事件を境に姿を消してしまって以来、ずっと考え続けていたのです。

(俺には……俺には何が出来ただろう)

 あの日、あの時、どんなふうに声を掛ければ良かっただろう……と。
 ……さて、ここで、あの日、あの時とは何のことかわからない人のために説明しておくと、ガチデビルさんの最期の陰謀によってリリリリさんはボストン港の代わりにティーポットにされt

「!? ス、ストーップ!! や、やめてください。もう、終わったことだから〜……ッ!!」
「だが、俺は……結果として君を傷付けてしまった事が、ずっと胸に引っ掛かっていた……」
「なんと。我が拳の直撃を受けても無傷だったこの者を、その気さえないのに傷つけたというのか!?」
「へ、変な興味を、しめさないで〜」

 すまなそうにする昴さんに、リリリリさんが本気であわあわと動揺しています。っていうか、その件についてはもう掘り下げないで、触れないで~~! とか口には出さずとも思っていました。ですが、昴さんはテレパスでもなければ当然さとり妖怪でもありませんし、こう、根は滅茶苦茶やさしい感じの人なのだけど、如何せん人生経験はまだそれほどなさげなタイプのレプリカントさんでしたから、そんなことでは止まりませんでした。

「!! ひょっとして告白……かな? かな?」

 そんな二人に何事かと興味を持った野次馬のヤジリリエルさんも、ばっちり耳をそばだてています。
 リリリリさんは、あうあうあうと唸りながら目を泳がせまくっていました。そしてどうにかして昴さんの記憶をぶっ飛ばす方法がないかを真剣に検討しはじめていましたが、

「だからもし……もし君にもう一度会えたなら、ずっとこう伝えたかった」

 息を吸い込んで、真剣なまなざしでリリリリさんを見る昴さん。リリリリさんはそんな彼の真摯な態度にまた気圧されてしまい、ひたすらあうううと呻くばかりでした。勇者のくせに……なさけない、リリリリさんです。それでも世界で最も邪悪な一族の末裔ですか! ……まだ壊れてるのね。早すぎたんじゃないの~? リリリリさんは、コーヒーをのみ過ぎたんですよね。そして限界に気付くのが遅すぎてもr――やめやめて。やめてください。ゆるして。もうゆるして……、

「む? 何だか、ほっこりするような気配と不穏な気配が……八億の魂も、少々困惑しているようだ」
「何でもありません。勇者なので」
「何でもないって顔ではないぞ……。我の本気パンチを受けたときよりも、辛そうではないか……?」

 お互い、ちょおシリアスな戦闘中……のはず……にもかかわらず、別の意味で追い込まれていくリリリリさんを、護国鉄神零號さんも何だか心配そうに見ています。いけません。人に心配をかけては、いけません!

「………」
「そう、『勇者』として『5thKING』として――誰に恐れられようと世界の為に戦って守って来た君をとても格好良いと思っている。あんなことで、君の輝きは失われたりはしない」
「うむ。確かに、なんだかよく分からないが、汝は立派だと我も思っているぞ」
「もう……もう、知らな~い……ッ!!」

 恐れられるのはともかくとして、こんな風に直球で褒められることにはそんなに慣れていないのか、リリリリさんはしっぽを巻いて昴さんの前から逃亡していきました。
 何でしょう、このなさけない姿は。
 勇者の姿でしょうか? これが……、

「リリリリ……」

 ですが、それでも昴さんは自らの思いを伝えたことを後悔してはいませんでした。あの日あの時の異変は、いつか笑える日が来るさ、で済むようなことだったかもしれませんが……いつかこの世界が『最終的な解決』を望むのなら。それぞれが思う危険なモノを排除して『真の平和』を得ることを望むのならば。
 いつかは世界に仇為す可能性のある彼女もまた、この世界の余所者として消し去られる時がやって来るのかもしれません。そうでなくとも、こうして共に過ごせる時間が何時までも当たり前にあるとは限らないのですから。

「まあ、積もるお話は護国鉄神零號さんを倒した後にお茶でもしながらいたしましょう」
「あ、そうだった。取り敢えずご……こくてつ……じ……ぜろご? 国鉄さん? を止めないとデビキンが滅茶苦茶になっちゃうんだよ💦 だから我も一緒に戦うんだよ♪」
「護国鉄神零號だ。覚えなくてもいいし、勿論『国鉄』と呼んでもらっても構わない、頑張ってくれ」
「おー! 攻撃は任せてほしいんだよ♪」
「さて……ではリリリリさん、防御の方は宜しくお願いしますわよ!」
「は~い!」

 最後にアルテミシアさんがそう促すと、元気よくお返事したリリリリさんはその背の黒翼をばさりと広げて、いまは自らが守るべき世界――愛しき故郷の空へと、自由な鳥のように羽ばたいたのでした。

●幕間の悪魔たち
「!? いったのに……同志には、オブリビオンにつくのはダメだって、ゆったのにぃ……ッ!!」
「さては魔王と勇者、猟兵さんとオブリビオンは、実ははじめからグルだったんですぞ。我らを欺き、もてあそんだのですぞッ! ヒィンヒィン……ブヒィィィン……❤」

 猟兵さんたちがご挨拶を交わす間、また別の場所では🐷だけになった🐷さんたちがその様子をカオス魔法「遍在するボクら」で察知しながら、言いたい放題コメントして盛り上がっていました。勝手に相手の参加シナリオまで参照して答えにくいツッコミを入れたりしていました。
 それから、可愛い女の子同士で抱き着いたりするシーンでは思わず心がぴょんぴょん♪ したりしていました。

「でも……ボクら、死ぬかもしれないのに……なんで萌えてるんですぞ……」

 ――力が欲しいか?

「ぶひっ!?」

 その時、悩める悪魔さんたちに囁く声が聞こえました。それは創作でよくある展開……窮地にある、意志はあれど力無き人たちの前に、悪魔の手が差し伸べられているような感じの、アレでした。

 ――力が欲しいだろう(断言)。

 世界の危機に何もできない悔しみ。
 可愛い子を見て脳を破壊される悔しみ。
 それをぶつけられる力が欲しいか……?

「ならくれてやる!(押し売り)」
「!? お、お返事を聞く前に……ですとぉ!」
「ブヒィ……こ、こころの準備がぁ……❤」
「ご、ごういんすぎりゅのぉ……❤ ですぞ……ッ❤❤❤」

 ですが、畜生……傍生? 的な立場の、その他大勢扱いされる悪魔さんたちにとって、ソレは確かに魅力的な提案でした。欲すれど叶わない願い。救うべく差し伸べられた手。それは果たして神か、悪魔か……それとも――

(――髭……ですかな)

 そう。ヒゲでした。
 真っ黒なおひげがチャーミングなおじさま、エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)さんでした。

「ヒャッハー! 悪魔共よ、いま契約は成った! ので、さっそくオモチャにしてやるでござる!!」

 そう……エドゥアルトさんはこの戦場で、面白そうなオモチャを見つけてしまっていたのです。

 ………。
 ええと……あの、……う~ん……?

「|ヒゲ《HIGE》の力が、イきたいって願っているのですぞ!」
「善き力によってHIGEは輝く……伝説の言い伝えは、本当だったのですな!!!」

 ……悪魔さんたちも、何だかんだ楽しそうだから良い……のでしょうか? そうだよ(便乗)。それに、これにはHIGEの導きがあったのでござる。本当でござる。すごく本当でござる。すごく本当なのでほら、アイスでもお食べ......。それに🐷共の目はまだ死んじゃいない! 拙者がそう判断した。

「やれるな……ユニコーンども!!」
「「「ブヒィ! ブヒィ! ブヒィ!」」」

 絵面的にはかなりの大惨事でしたが、それでもHIGE? の判断はケガをおしての試合続行でした。
 🐷さんたちの全身……全身? が赤く発光して、デストロイモードになっていきます。通常、ヲークさんたちはそのヲーク的本能にリミッターがかけられているのですが、この状態のときには欲望が解放され、身体性能も格段に向上するのです。……体、もうないですけどね。

「うむ……いい面構えになったな! という訳で【架空兵器】を|創造《つく》って遊ぼ! そしてさっそくご用意しましたのはコチラ……護国鉄神に対抗できる伝説魔神でござる!!」
「「「ブヒィ♪ ブヒィ♪ ブヒィ♪」」」

 そうして、エドゥアルトさんが起動したのは|例のアレがこの世界に現れたようです《クロスオーバートカカイニュウトカソウイウヤツ》の権能でした。
 無敵の【架空兵器】を想像から創造し、戦闘に利用できるそれは、強力だけれどその能力に疑念を感じると大幅に弱体化するユーベルコードで。

 ――|HIーGEOーーN《ヒーゲオーーン↑↑》!!

 そんな効果音、謎のアイキャッチと共に地面を割って現れたのは(凸)みたいな頭部をした、全長100mくらいの巨大ロボットでした。そして、それには黒いおひげまでついていました。

「ホゥ……これは」

 この時点ではエドゥアルトさん自身も想像だにしていなかった、HIGEの力――それは今回のラスボスさんとも因縁のありそうな、過去の文明を葬り去って黒歴史的なナニカに変えてしまう力さえ持っていそうな、超兵器でした。

「みんな、のりこめーですぞー!!」

 🐖🐖🐖🐖🐖🐖🐖🐖🐖=З

 そんな危険があぶなそうな機体に意気揚々、飲み込まれるように続々と搭乗してゆく悪魔さんたち……本当に、だいじょうぶなのでしょうか? しんぱいです。あと、アイスはつめたくて、あまくて、おいしかったです!(小並感)

●VS 八億
「……よくは分かりませんがやる事は決まっています!」

 キャバリアに搭乗したアンサーヒューマンの少女、朱鷺透・小枝子(|亡国の戦塵《ジカクナキアクリョウ》・f29924)さんはといえば、こんな状況よく分からない勢でした。彼女は普段からしてそもそも分からないことが多いのです。
 もしも……もしも知恵の実というモノが本当にあるとすれば、きっと彼女もまた未だにそれを呑み込むことが出来ずにいるのかもしれません。理屈にあっていないこと、おかしな現実。
 いったい何故? どうして? 疑問ばかりが、たしかな答えもないまま、宙ぶらりんになったままです。
 それでもわかったこと、わかること。その一つを実行するそのために自分はいるのだ。自分は兵士なのだから、と。小枝子さんの心はそんな風にも感じているようでした。

「でも……最近は、ずいぶん可愛い恰好でおしらせページにも載ってたんじゃないの~?」
「!! そうだったのであります。おかげさまで、成長限界がLV158に到達! したのであります!」

 でも、時には別の意味でお目目をぐるぐるさせたりしながらも、意外とエンジョイしているようです。そんな小枝子さんもキャバリアを駆って護国鉄神零號さんとの戦列、その最前線に加わります。

「この世界を護り、護国鉄神零號さんと鋼鉄共栄圏の八億の皆さんをお救いする為、私にリリリリさんのお力をお貸し下さい♪」
「リリリリの、勇者の本気、お見せしましょう(ふんすふんす)」

 今回ばかりはちょおシリアスモード! な大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)さんが笑顔を向けてそうお願いすれば、気合十分に応えるリリリリさん。これは期待できそうです。

「来るか!! 心ある者達よ、命ある者達よ、我を倒し……どうか、どうか――!!」

 護国鉄神零號さんのそんな言葉とは裏腹に、荒ぶる魂たちの防衛本能、機体の防衛・撃滅機構が作動して猟兵さんたちを迎え撃とうと『零式噴進飛翔拳』を発射。八億もの魂から供給されるエネルギーを推進剤代わりに、理論的には無限に稼働可能なロケットモーターがうなりを上げて飛翔を開始します。膨大な質量、無骨な鋼鉄の塊は無理やりに空気の壁を叩いて壊し、高性能爆弾の爆発と紛う程の衝撃波をまき散らしながら超音速まで加速し――空に浮かぶ小さな黒い影と、衝突。

「……~〜〜ッ!!!」

 その場で二つの巨大な力がせめぎ合い、空間から飽和したエネルギーが音と光の波になって溢れだします。そうして無軌道に暴れまわり破壊の限りを尽くすかと思えたエネルギーの奔流は、けれどその大半は上空に流れて雲に大穴を開けただけに留まりました。その光の中心に包まれたちっぽけな影ひとつ――リリリリさんが力のベクトルをずらし、悪魔さんたちの暮らす地上ではなく虚空へと逃がすように自らの肉体をぶつけて見せたのでした。

「超大型で強力な……いた〜い」

 ブレーキをかけるように翼を大きく広げた堕天使が、完全には殺しきれなかった勢いのまま空中ではげしく回転し、高層ビルを貫いてその向こう側に消えていくのが見えました。その、一見すれば存外平気そうな感想を漏らす勇者へと、間髪おかずに再び轟音を撒いて加速し始めた一対の拳と、四体の蛇の形をした機関砲から吐き出された鋼鉄の雨が殺到していくのが、視界の端に見えました。

「……ッ!! リリリリ……ッ!!」

 体が重い……そんなもどかしさに駆られながらも昴さんは護国鉄神零號さんを見据え、その近接戦距離まで到達し、自らの背丈ほどもある――けれど、超巨大鉄神と比べればあまりにもちっぽけな機械剣を振るいます。《ザナドゥの死神》の権能を以って、漆黒の闇に覆われ強化された出力。八億分の一。たった一つの魂の願いに応え、リミッターを解除し限界を超えて稼働する炉心。闇の中、尽きることなく湧き出る青白い燐光――纏いながら薙ぎ払うように叩きつけた刃は、それでも長大にして重厚なボディを持つ護国鉄神零號さんを吹き飛ばすには至りませんでしたが。

「!! なるほど……そういうこと……なのかな? かな?」

 白翼の少女――リリエルさんが、昴さんの攻撃の意図を察すると、俄かに硬直した鋼鉄の巨人のその頭部側面に取りつき、|力強い愛の女神《ウェヌス・フォルテース》を発動させました。

「パ~ンチなんだよ♪ えいえ~い♪」

 ――ぽかぽかぺしッ! そんな、可愛らしいオノマトペと共に繰り出される腰の入っていない女の子パンチは、一見して単にじゃれついているだけのようにも見えましたが……その実はこの不器用な神さまを不器用たらしめている『怪力』によって『攻撃力と吹き飛ばし力が無限に上昇する』という、恐るべき超破壊的威力を秘めた権能による打撃攻撃でした。

「ぐ、おお……これが、“脳がバグる”ということか……危険度評価と現実が、一致しない……!」
「すまない。ありがとう……ありがとう!」
「どういたしまして♪ 国鉄さんは大きいから当て易いんだよ♪ 更にキ~ック♪」

 それからも鈍く重い音が連続し、足元と頭部を同時に揺さぶられた護国鉄神零號さんがたたらを踏んで、その進路を変えました。魔界の文物、そして人々が密集する町の中心から、住民の悪魔が居ない方角へと。
 ――そう、昴さんは戦闘による被害を抑えるため、少しでもマシな地点へ戦場を移そうとしていたのです。そしてそれは、いま冷静さを欠き荒ぶる魂たちに、少しでも悲しい思いをさせないためでもあったのかもしれません。



§



「超大型で非常に強力な……いた〜い」
「すまない……すまない……ッ!!」

 稲妻のような一瞬の光が溢れ、空が割れるような轟音が鳴る度、ハエたたきで叩き落とされる羽虫のように吹き飛んでいく堕天使の姿が、見えました。
 かつての悲劇の犠牲者たちは、今や明確な加害者となって、だれかの大切な|世界《モノ》を踏み躙ろうとしていました。

「でもだいじょうぶ! 勇者なので!」

 負傷らしい負傷をした様子もなく、すぐさま次の攻撃への盾となるべく復帰し、一対の巨拳と空中戦を繰り広げるリリリリさん。それでも、このまま長期戦となってしまえばいずれ限界を迎えるだろうことを、猟兵さんたちは肌で感じていました。その攻撃の余波でさえ、ここが魔界でなければ大惨事を引き起こしていたでしょう。故に、勇者リリリリがその身を挺して作り出した好機に、猟兵さんたちは隙や反動を顧みない『渾身の一撃』を放つ必要があったのです。

「リリリリさん……では、私も頑張って行きますよ~」

 むん、と一息気合を入れて、詩乃さんは『響月』――神代に存在した不死の怪物の骨で作られた龍笛に唇を添え、そっと息を吹き込みます。びりびりと激しく震え悲鳴をあげ続ける空気の中にあって、一対の大きな鏡と自らのオーラに包まれ守られた、一握りの聖域の中で。心を静かに落ち着け、精神を集中させていきます。

(この曲は貴方達の葬送の奏で。音に包まれて――)

 |帰幽奉告《キユウホウコク》、産土神の地へと報せる弔鐘の音色。安らかに眠れるように、と祈りを込めて。
 ……けれど紡がれる旋律は、この世界そのものがぶつかり合うような戦闘の激しさの中にあっては、幽かな響きでしかありませんでした。詩乃さんは目を閉じ、まぶたの裏に届けるべき人たちの姿を思い浮かべます。八億――たった二文字の圧縮された情報、単なる数値を表す記号にまでそぎ落とされてしまった魂たち。その在りし日の姿は、もう想像することくらいしかできません。

(一つの世界……世界そのものだと、零號さんは言っていましたね)

 それでも、たしかに聴こえてくるものはあって。戦場には彼ら彼女らが味わったのだろう苦しみと恐怖の音色がどこまでも激しく鳴り響いていて、それはまるで彼ら彼女らの断末魔の叫びのようでした。
 怒号のような感情が渦巻く中、訳も分からずに怯え、泣きじゃくる声は、まだ生まれて間もない幼いだれかの命がけのSOSだったのかもしれません。怖くて、怖くて、悲しくて……、けれどどうしてあげることもできないそんな悲鳴たちが、それを耳にした者たちの行き場のない怒りを更に燃え上がらせていくのです。
 ――地獄。そこでは言の葉は獣と犬との間にあって、もはや誰の声も言葉も届かない、心を通わせることのない世界。癒されることのない傷がまた傷を生み、苦しみが苦しみをいや増してゆく、無限の苦痛に満ちた苦界でした。

「む? 音……音楽か」

 口ずさむ歌に詠唱を乗せて、自らの魔力を限界を超えて蓄え続けていたカタリナさんが、その音色に気付いて戦場を見渡します。彼女もまた、オブリビオン化で歪められた八億の魂に対し、“鎮める”というアプローチを採ろうとしていたのです。けれど八億の、その全てではないにせよ大半を占めるだろう最も大きな感情は、その楽の音をかき消してしまっていました。ならば、と。

「勇者様に護って貰える役得、しっかり活かすとしようか」

 カタリナさんは|百戦錬磨の即興奥義《ストライク・フィニッシュアーツ》を起動し独自の技能《Requiem for Billion》を編み出すと、その膨大な魔力を、封印解除された権能を、薬剤によるドーピングと持ち前の応用力を、自らの持ちうるリソースを総動員して護国鉄神零號さんへハッキングを仕掛けました。
 かの鉄神の動力源たる荒ぶる魂へと干渉し、彼らを苛む骸の海を浄化し、鎮める。加速度的に侵蝕・拡散するワクチンプログラムが実行されていきます。すると八岐大蛇が首をもたげ、機関砲から吐き出された砲弾の雨が空気を切り裂いて殺到しはじめ――その射線上に矢のように飛来した影が、荒れ狂う力を受け止めていました。
 翼を広げて、積層の結界が壊れる度にまた張り直し。その防護を突破し掠めそうになった砲弾さえも、いつの間にか飛んできていた小型の盾――堕天シールドが漏らすことなく護ってくれます。それを見たカタリナさんは思いました。どうでもいいなんて言ってごめんね。
 ……小型盾には相変わらずガチデビルさんのお顔が張り付いていて、砲弾の直撃を浴びるとものすごい形相の顔芸をして、閃光の中で消滅していきました。

「むぅ? ……八億の魂が、これは……興味、純粋な好奇心……か?」

 砲弾の雨がやんで、零式噴進飛翔拳も再チャージのためか再び本体に戻った、わずかな時間。
 戦場には魂に染み入るような、さやかな音色が鳴り響いていきます。妙なる音の発信源に注がれる視線。一時、恐怖を忘れた単純で幼い|感情《こころ》へと、詩乃さんは努めて平静に、安心させるように微笑んで。

(もう大丈夫。私が、ここにいますからね……)

 だから、それを……微笑みかける世界をその瞳に映した魂たちもまた、釣られるようにして、声をあげてきゃらきゃらと笑っていました。やさしく心に寄り添ってくるような楽の音に、その瞬間だけは確かに苦しみを忘れて。
 無邪気に、ただ、笑っていたのでした。



§



「人のえっt……叡智が生み出したものなら……ですぞぉぉぉぉオオオ!!!」
「我とて、我とて、そうであればと……ッ!!」

 護国の為に創造された鉄神と、そこに宿る八億の魂に向けて雄叫びをあげながら、巨大なヒゲ(凸)さんが拳を振りぬきました。『護国英霊波導砲』――破滅的な威力を秘めた破壊光線が、至近距離でその巨体を撃ちぬこうとしていましたが、ヒゲ(凸)さんの背部ユニットから放出された虹色の翼――ナノマシンの奔流がそれを中和し、必殺のパンチが炸裂します。
 そしてヒゲ(凸)さんはさらにそのまま体勢を崩した護国鉄神零號さんの『八岐大蛇機関砲』に掴みかかると、虹色の光でそれを包み分解してしまったのです。……です? ええぇ……???

「く、我の出力があがらないとはいえ……意味不明なほどに、強い! だが、これならば……ッ!!」
「ふ、これぞ|拙者《ヒゲ》の導きにて……」
「見てくれましたかな、リリリリー!!」
「ぼくらですぞー!!」
「ぼくら、ぼくらの……」
「が、ががが合体してくれー!!!!」
「……あたま、おかしいんじゃないの~?」

 その規格外のそのまた規格外の、通常ギャグシナリオでしか認められないような権能の発露に希望を見る護国鉄神零號さんでした。が……次の瞬間には、護国鉄神零號さんの放ったロケットパンチが隙を晒すヒゲ(凸)さんの股間を強打していました。その股座にロケットパァァァンチッ!! が炸裂してしまったのです。

「「「う、うぎゃーぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーッ!!!!!!!!」」」
「あ、あれは死ぬでござるな……(納得)」

 永遠に続くようなひどい断末魔をあげて、ヒゲ(凸)さんは爆発四散しました。
 リリリリさんは、そんなヒゲ(凸)さんのことを守ってはいませんでした。リリリリ氏は見守っている拙者を守ってくれよな。実質UCを渡しちゃったようなもんだからノーガードでな……のリクエストにお応えして、エドゥアルトさんの方をしっかりとお守りしていたのです。
 四方八方へと散っていく爆炎の中、🐷どころかもう🐽だけになってしまった🐽さんたちは、願いました。

(――ぼくの|🌎《タマ》をまもって❤ ですぞー)
「もう……しょうがないにゃあ~」

 リリリリさんはまた千本ノックの要領で、悪魔さんたちを腐海へお帰り……させていきました。
 ――けれど、そうしている間にも零式噴進飛翔拳はリリリリさんを幾度となく襲い、その一見鉄壁と思える防御にも着実に深いダメージを蓄積させていっていたのです。

「超大型で猛烈な……とてもいたい~」

 そんな少々お疲れ気味なリリリリさんを尻目に、

「つまり防御は任せて思いっきりぶっ飛ばせばいいんだね! オーケィ! そっちが8億なら――」

 こっちは無限だよ! と、ロニさんはその可愛らしいおててで|神パンチ《カミパンチ》を放ちます。それは0秒で打ち込まれる無限回のパンチを実現するという、神の権能による攻撃でした。
 0、ゼロ、零――|壱《いち》に至れなかった、何を掛けたとしてもゼロにしかならない、なれない数字。相反する、もはやそれ以上に減ったり増えたりすることのない“無限”という概念を同居させた、矛盾する権能。

「無限っていうのはね……なんかすっごく多いんだよ!」

 瞬間、須臾ですらない無の時間。
 物理的には観測不可能で、在るのか無いのかさえ不確かなその世界で、神さまは固く拳を握りしめて。

「さぁみんな! 歯を食いしばって!」

 無限の中から切り出したおよそ八億回の神の拳が、超巨大鉄神の装甲とその奥に隠れた八億の魂へ降り注ぎます。この元気が伝わるようにと、一つ一つを重ねて、気が遠くなるほど繰り返し繰り返し叩き続けて――。

「……ッ!? 今のは、夢? いや、幻覚、ではないというのか……?」
「どっちだろーね? 元気でねー!!」

 それは悪夢か、それとも……。だけれども、と、造られた鉄の神は自らの過去に想いを馳せました。果たして、夢でない現(うつつ)などあったでしょうか。護るべき世界が……滅びし時に目覚め、喪われた全ての魂をこの身に搭載して、敵を倒す。そうして役目を終えたその後も不死の“|敵《帝》”を封印するために永い眠りにつき、けれど今はこうしてその走狗と成り果てて、また望まぬ戦いにこの身を駆り立てられている。
 それでも、それが……この悪夢がようやく終わる時が、終われる時が来たというのなら――、

「鉄人くんも、まあ……後はボクらがなんとかするから任せてよ!」
「ああ……」

 ――ドーーーンッ!! と。

 見えているのか見えていないのかも定かではないその姿が、視界にひときわ大きく映りこみます。そして頭部が激しい衝撃によって揺らされ――この世界を映す視界の半分が暗闇に閉ざされたのを、護国鉄神零號さんは味わったことのない不思議な感覚と共に感じていました。……まるで、現実感のない夢でも見ているかのように。



§



「観測史上最大の……とても……いたぃぃ」
「もうよろしくてよ! 一旦お下がりくださいまし!」

 アルテミシアさんはリリリリさんに防御を完全に任せ、攻撃のために全集中していましたが、ついに満を持してその練りに練り上げた魔力を解放します。いくらかつてのデビルキングと言えど、さすがに世界そのものを相手取ってその猛攻に耐え続けるのは、消耗が激しかったのでしょう。リリリリさんの飛翔もやや不安定で精彩を欠き始めていることに、アルテミシアさんは気づいていたのです。

「零號さん、いまぶっ飛ばしてあげますわ!」

 汲めども尽きぬ無限の魔力といえど、それを操るのがデビルキングといえど、現象として世界に現界可能なのはごく一部に過ぎません。たとえ理論上は未制御のソレをぶち撒けることが出来たとしても、実際にやってしまえばどうなるかは明らかでした。その時であった、🤖✨……ってことになってしまいかねないのです。故に、アルテミシアさんは自らの『魔王の肉体』に秘めた無限の魔力を引き出し、極限まで高め、練り上げて。

「さあ……もう、お行きなさいな」

 その掌から、極大威力の極大魔力波が放たれます。それは触れた存在全てを消滅せしめ、因果地平の彼方へと吹き飛ばすような、【|虚無への追放《カオス・カズム》】の権能でした。……ですが、ああ、それがかつて生命であった魂たちの防衛本能だとでもいうのでしょうか。宙を舞う零式噴進飛翔拳のうち左腕が、本体を庇うようにして射線上に割り込み虚無への追放を受け止めたのです。
 無骨な鋼の拳が虚無へと解け、纏っていた数億もの魂が喪われても、護国の鉄神はいまもなお健在でした。

「しぶとい……! しからばリリリリ殿! 御力添えお願いいたします!!」
「はいな~」

 右目、左腕を失い、背面の機関砲も根こそぎ破壊されていて。それでも止まらない――止まることのできない機械仕掛けの神へと、小枝子さんは|まつろわぬ大魔《パンツァーキャバリア》 |『夜剣大蛇』《やつるぎのおろち》のコクピット内で闘争心を燃やしていました。神と神に類するものへの憎悪を以て造られた、意思持つ兵器――対神大蛇型キャバリア。
 呪いと毒を生み出し神を屠ることこそ、ソレに“与えられた役目”だったのでしょう。

「回れ、回せ! 神を屠るは貴様の存在意義だ!!」

 神殺兵装たる頭部長身ドリルにその闘争心と神をも殺す呪毒液を注ぎ込み、機体はより破壊に特化した巨大なドリル形態へと変形していきます。|破壊侵撃《キャバリア・デストラクション》の権能の発露によって禍々しい姿へと変わり果てたソレは竜が如き唸りをあげて、神の中心たる腹部ユニット――碧の宝珠のような部分へと吶喊を開始しました。

「ドリルならば、先ほども追い返したが……ッ!」

 最大推力で突撃する神殺しの中で、流れ過ぎていく景色の中で、その姿を恐れるように、迎え撃つように超音速で飛来する鉄の拳が見えました。勇者たる堕天使が、巨大な鉄神と比べればあまりにもちっぽけな躰でそれを受け止めて――けれど、遂に限界を迎えたのか力無く堕ちていく様子も、見えました。巨きな力の衝突はやはり巨きな余波を生んで破壊を撒き散らしましたが、それでも順回転を続ける機体には何の影響も及ぼしていません。
 彼女は、盾は盾たる者の役目を全うしていたのです。
 ならば――、と。

「貴様の、我らの存在意義、今こそそれを果たす時! まつろわぬ大魔よッ!」

 勢いのままに接触、護国鉄神零號さんの中心へほとんど叩きつけるようにしてドリルを突き立て、

「穿ち込めぇえええええ!!!」

 死霊の叫びが轟いて、耳をつんざくような不快な響きと共に、その先端が巨神の体内へと埋まっていきます。自覚なき悪霊に遺された狂気、一点に収束する螺旋の力が八億の死者宿せし鋼鉄の巨神を穿ち、削られ剝ぎ取られた機体の断片を撒きながら装甲を突き破り抉り込み深々と貫いて。

「お、おぉぉおおおぉぉ……ッ!」

 莫大な摩擦熱と呪詛毒によって融解した機体の内部へ、蛇の形をしたキャバリアはありったけの憎悪と呪詛――その具現たる毒液を注ぎ込んでいきました。中枢を破壊され、内部からも蝕まれズタズタにされた巨大な躰は、片側がつぶれた目をチカチカと点滅させながらうわ言のように呟いて、

「ああ……だが、負けて、死にたくは……いや……」

 それ以上はもう戦闘行動をとることもなく。その最期には存外にゆっくりとした動作で膝をついて、残った腕とで機体を支え安定した姿勢をとりながら、その全ての機能を停止していきました。
 水を打ったような静寂が訪れ、それでもしばらく警戒を続けていた小枝子さんがようやく残心を解いて。

「……死んだ。壊れた」

 狂心冷頭の兵士。おそれを知らない戦士が、ぽつりと呟きました。
 八億の魂を内包する守護者。
 神として護国を請われ、けれどついには壱號と呼ばれることは無かった兵器。護るべき国の民、故郷たる世界『鋼鉄共栄圏』――その悉くが滅び去った後で起動する、壱になれなかった|存在《モノ》。

 けれど、こうしてぜんぶぜんぶが壊れ果てたのなら。

「……ありゃ? あっ、あっ、あ……あぁ~……! ……んもー。イティハーサくんさぁ……そういうことされるとさぁ、せっかくお別れ言ってあげたの、気まずくなっちゃうじゃん~!!」
「ヘイト……スピーチ!? いやぁ、でもこれはヘイトの買い方を良くわかってるクチでござろうなぁ……」

 これで終わったのです。きっと、ようやく終われるのです。
 ――……少なくとも、そう、あるべきハズだったのです。

●ゼロ~祈りの唄
「リリリリ殿、大丈夫そう……でありますか?」
「う~ん……。ちょっとだけ、つかれたかも〜」
「ああ……ならゆっくりと休め。格好良かったぞ」

 ひとつの世界そのもの。
 滅びた世界のその嘆きを、恐怖を、怒りを、憎しみを――それが生み出した理不尽でいわれなき暴力でさえ最後まで受け止めて見せた勇者は、まっすぐな言葉で褒められて、認められて、はにかむように微笑んでいました。

(……ここから先は、きっと、貴方たちの物語)

 相変わらず飄々としていますが、泣くこともあり、死ぬことだってある――あった、儚き命の残骸。
 たとえ怪我をしていても血で汚れていたとしても、見つかりにくいだろう黒と赤の装束を纏う勇者。
 恐れられる存在でありながら心やさしき魔界の堕天使はじっと猟兵さんたちを見渡し、しばらくその顔を見つめていましたが、やがて何かに納得したように……安心した表情で微笑んで。

「あ、お昼寝かな? かな? 我も一緒に寝るー♪」
「……うん。おやす……みぃ……」

 それから、目を閉じた数秒後にはもう、スヤスヤと規則正しい寝息を立て始めたのでした。

(イティハーサは私達が斃します。どうか安らかにお眠りください……)

 ――神であれと願われた護国の器。そして八億の魂の冥福を祈りながら、詩乃さんは未だ葬送の曲を奏で続けていました。心地よい揺らぎをはらむ笛の音は、染みわたるような旋律を響かせていました。
 十分には生きられなかった命。あるいはそんな死者たちにとってのホスピス――死に怯える魂へ与えられるなぐさめの役割を果たしたのかもしれない|櫻の楽園《サクラエリュシオン》も、すでに喪われているのです。彼ら彼女らには、もう本当の意味での救いなんて残されてはいないのかもしれません。

(ですが、楽園はもうないけれど。死は覆せないけれど……)

 その一人一人の生きざまに、死に、人としての尊厳を与えてあげることはできるのかもしれません。
 そうして、たとえ誰かがそのささやかな生を貶し、無意味なモノだとなじってみせるのだとしても、

「護国鉄神零號さんも幻朧帝さんのせいで色々大変みたいですけれど」

 与えられた条件の中で、たとえ力及ばず、願いは叶わなかったとしても。

「安らかに眠れると良いですわねえ……」
「ええ……役目を終えた者は、精々安らかに眠っていなさい」

 目指すべき場所へ、進み続ける意志を持ったひとたちがいました。そうして精一杯に頑張った人に与えられるべきは、せめて安らかな眠りであることを、わたしたちはずっと遠い昔から知っていたのかもしれません。

 そして、彼らは自らの世界が滅びた後にも、休むことなくあの鋼鉄の躰の中で戦い続けていたのです。
 望むと望まざるに関わらず、本来与えられる以上、果たすべき以上の義務を、果たしたのです。

 一番守りたかった者は護れなかったけれど。
 自分たちは負けて、滅びてしまったけれど。

「貴方達のバトンは、確かに未来へと繋がれたのだから」

 ――それでも彼らは、決して負けなかったのですから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月23日


挿絵イラスト