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帝都櫻大戰④〜黄泉路に謡うノクターン

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第一戦線

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#サクラミラージュ
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#帝都櫻大戰
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#第一戦線


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●るるるるる
 爽やかによく晴れた日だ。盛夏よりわずかに色彩を和らげてなお青い空の下、夕暮れ前の帝都の一角、休日の昼下がりを楽しんでいた人々は幸か不幸か未だ開戦を知らず居た。結論としては不幸も不幸、何の心構えもないところへと戦禍の方がやって来る。
 石畳の四つ辻が突如、崩れて溶け落ちた。
 泥沼めいたその地から無数に這い出る異形のものどもは手に手にシャベルを携えて、生ある者たちを瞳に映す。
 二足で立ち歩いている。少女くらいの背丈をしている。ヒトらしい名残と言えばそれくらいだ。脚は白骨、シャベルを持つ手も腕も、細い肩に乗る顔も朽ち崩れ、さながら黄泉醜女と言ったこの風情。
「るーるるーるるーるるー」
「るーるるるーるる」
 まだ陽は沈んで居なかったのに、気付けば辺りに夜の帳が下りて来る。瓦斯灯に火は点かず、家々の窓の灯も未だなく、俄かに訪れた夜は帝都の常の夜より暗かった。
 黄泉、来たり。
 悲鳴を上げて散り散りに逃げてゆく人々は振り向かぬ。黄泉の国では振り向いてはならぬ。尤も、既に悍ましき姿を目にした以上、どう足掻いても追われるさだめを逃れ得ず、救いたり得る桃の木に上手く辿り着けるあてもない。
「るるるるるるる」
 歌か、鳴き声か、奇妙な音を垂れ流しながら、少女の姿をしていた化け物、『ルールー』の群れは各々シャベルを引き摺りながら、暗い帝都に溢れ出てゆく。

●黄泉、来たり
「戦だ。——早く行け」
 グリモアベースに集まった猟兵たちに、ルキフェル・ドレンテは不機嫌に告げた。傍らに様々な紙袋が積み上げられている様子からすると、休日を楽しんで居たところを開戦に妨げられたものらしい。
「サクラミラージュの逢魔が辻を貴様らは知っているな。影朧とやらが湧き出す場所だ。……あれが暴走して影朧が帝都に溢れて収拾がつかぬ。早く行け」
 死霊の姫君がぺたぺたとひとつの箱を触って確かめている姿を横目に、グリモアを起動しながら、ルキフェルはふと首を傾げる。
「そう言えば影朧どもは、『黄泉変異』だのと言われる変異を起こして、その身が腐敗しているようだ。痛みも恐れも知らずに向かって来るがゆえ、多少の対策はしておくが良い。元々自我のない類の影朧のようではあるが……」
 グリモアが昏く蒼い光を投げた。
 猟兵たちが転送された先の帝都は夕暮れ時の筈なのに、今は常夜の闇の中。


lulu
luluです。ごきげんよう。
名前に何だか親近感。

こちらのシナリオは1章完結の戦争シナリオです。
OP公開後から受付開始。

=============================
プレイングボーナス……影朧の『黄泉変異』に対処する/元の街の地形を利用する。
=============================

いずれかでも両方でも。
当シナリオに於いては地形に関しては「私、帝都に詳しいんで!」的な自称やそれっぽい口プロレスでも可とします。
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第1章 集団戦 『ルールー』

POW   :    るーるるーるるーるるー
単純で重い【シャベル】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    るーるるるーるる
【死者の国の王の力】を籠めた【シャベル】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【猟兵としての在り方】のみを攻撃する。
WIZ   :    るるるるるるる
戦場全体に、【骸骨】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:nori

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

空桐・清導
SPD
アドリブ連携歓迎

「『黄泉変異』か。仰々しい名前だな。
だが、やることは変わらない!」
戦場に転移して帳の仲に光の権化たる清導が現われる
早速UCを発動して空高く飛翔する
「街の構造はいまいちだが、オレの炎は敵を自動で狙い撃つ!
そして敵は倒れるまで動き続けるならば、
炎を叩き込んで継続してダメージを与え続ける!
さあ行くぜ!超必殺!
ワールド・エンド・ブレイカー!!」
天高くに帳すら遍く照らす白銀の太陽が現われ、
そこから無数の白焔がルールー達を捉える

彼女達のシャベルが届かない高度にいるが、
投げつけてくるなら[オーラ防御]

猟兵としての在り方を攻撃?
シャベルで崩せると?舐めるな!
「ブレイザインは!砕けない!」


仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…時は来たれり!
この世界を救う為に…さぁ行くぞ!私は…処刑人だッ!

黄泉…常闇か…所詮は帳…焼き尽してやる!

葬送の炎を身に纏い霊剣と鉄塊剣を抜き振るい戦場を行こう
黄泉変異による暗闇には葬送の炎による破邪の力で闇を焼き、光源を得て視界を確保
迫る敵群と戦おう

鉄塊剣による鉄壁の如き武器受けで吹き飛ばされぬように耐えて防御
鉄塊剣と霊剣による【剣刃一閃】で攻撃
霊剣による斬り付けで破魔の力で浄化し鉄塊剣の重量攻撃で鎧砕きで敵群を吹き飛ばし
振り向かずに前進してゆこう…!

…ここで止まる訳には行くまいぞ!
…私は…処刑人だッ!!!



●昏い黄泉路を照らすもの
「ヒーロー参上!」
「私は……処刑人だッ!仇死原・アンナ、推して参る!」
 戦を始める時は正々堂々、まず名乗ってやるのが正義の味方のお作法だ。黄泉の帳の下りた帝都に降り立ったのは、空桐・清導(ブレイザイン・f28542)と仇死原・アンナ(処刑人、獄炎の花嫁、焔の魔女、恐怖の騎士・f09978)であった。光の権化たる熱血ヒーローと、獄炎司る処刑人は、各々眩いばかりの白銀の光輝と燃え盛る炎とを引き連れて闇を晴らしつ、この混沌の地を踏みしめる。
「『黄泉変異』か。仰々しい名前だな。だが、俺がやることはいつだって変わらない!」
「あぁ。常闇とて所詮は帳、我が炎にて焼き尽くそうぞ……!」
 地を蹴って飛翔した清導と、地を踏みしめて、低く霊剣を構えるアンナ。天地から照らされ、炙られた黄泉の闇はこの二人の周辺だけは退いていた。
「るーるるるーるる」
「るーるるーるるーるるー」
 だが、明らかに闇に住まう身でありながら、影朧たちはもはや光にすらも慄くことはないらしい。得体の知れぬ音と、爛れた肉から滲み出た体液とをその唇から垂れ流しつつ、吶喊と言うにはおよそ気迫の足りぬ行進、ふらふらと覚束ぬ足取りで襲い来る様は実に夏らしいホラーと言えた。
 とは言え相手が悪かった。その一事こそが何処までもルール―たちの悲運であろう。
 上空から帝都を睥睨した清導の黒曜の瞳はその一瞬で獲物の位置を捕捉し、距離を測って、記憶している。
「見えたぜ、そこだ!ワールド・エンド・ブレイカー!!!」
 今は昼だったか、夜であったか。後者であれば白夜だろうか。
 いずれにしてもこの今、高き天へと昇る白銀の太陽は、尋常な太陽のそれよりも眩い光輝に満ちていた。
 天からの裁きとばかりに降り注いで来た白銀の光焔はその太陽からの天恵だ。朽ちた身を焼いて焦がして灰燼と化して天へと返すその光焔、いっそ天からの救済めいて神々しい。何が襲ったか、何が起きたか解らぬままに、否、解ってもルールーたちの反応は変わらぬだろうし、変わったところで結果は同じ。どこまでも追いかけてくる焔を相手に今更彼女らが何をか為さん。
 まともに理性のある敵ならばこの時点にて士気を削がれて総崩れ、壊走するのが妥当なところ。しかし果たして幸か不幸か、恐れも絶望も知らぬがゆえに、彼女らが退くことはない。焔に追われながらでも、その身を焼かれながらでも、シャベルを持つ手がある限り揮い続けて来るのに違いない。半身を半ば炭としながらですらも開戦と変わらぬ調子で襲い来るルールーたちへと、速やかな慈悲を賜うのはアンナの霊剣の閃きだ。腕と首とを断ち切れば、生ける屍の如き亡者とて流石に元の屍に還る。
 だが如何せん数だけならば圧倒的に敵が優勢、故に横合いから、後ろから、振り下ろされる無数のシャベル。アンナは振り向きもせぬままに鉄塊剣で一絡げにして薙ぎ払い、吹き飛ばす。漸く視線を向けたのは地へと沈んだそれらがあちこち欠損しているその身を起こさんとして足掻く局面だ。
「罪人に罰を与えてその咎を清算することこそが我が責務——ひとたび|罰を受けた《生を終えた》ものが蘇ることは即ち、神聖なる刑罰と、それを受けた者への冒涜に他ならぬ……!」
 ——故に、次は過たず此処で死ね。
 苛烈な獄炎を重ねてやりつ、一気呵成に叩き伏せる様な剣戟を重ね、亡者めいた影朧どもを端から肉塊へ変えてゆく。彼女らが悪足掻きの如く寄越したシャベルもまた随分重く、煉瓦造りの建物を揺らし壊す程の衝撃を地へと齎せど、たとえ紙一重であろうとも当たらぬ限りは別にどうと言うこともない。
「加勢するぜ!」
 降った声と同時、視界を横切る深紅の影は清導か。返す返す、ルールーたちは此度は、まこと、相手が悪かった。本来窮地に現れるべきヒーローを、よもや残党狩りの手伝いが如きこの局面で登場させることにまでなろうとは。
「おっと、相手と狙いを間違えてるんじゃないか」
 せめて一矢を報いんとばかりにシャベルを投げて、振り下ろし、清導へい襲い掛かるルールーたちに清導はまるで慌てた風もない。
「舐めてもらっちゃ困るぜ」
 そうして、強いて避けない。この時点までで把握した情報によるならば、あれは猟兵としての在り方を狙い、打ち壊す異能であろう。
 であるならば、相手も狙いも、全く、誤算しかないのではないか。
「ブレイザインは!砕けない!」
 |清導《ヒーロー》が|ヒーロー《清導》たるこの在り方を、何人たりとも砕ける筈がありはせぬ。
 返しとばかりに裂帛の気合と共に放たれた光焔が、ルールーたちを飲み込んでゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
あれは……しるばーれいんの世界で、似たようなのを見たかな。
確か、生と死を分かつもの、と一緒だったか。
このような、彼岸と此岸が混じりかけている場所に現れるのは。道理かもしれないが。

カガリが、|泉門《よみど》だ。|境《さか》の彼方へ、我が隔つ。

闇の帳に光を。
【泉門変生】で、輝く城壁の内にるーるーを閉じ込めよう(結界術、封印術、拠点防御、地形耐性)
シャベルの攻撃は痛いだろうが、カガリも境界の門だ。激痛耐性、『不落の傷跡』で耐えつつ、城壁の内を炎で満たそう(属性攻撃、全力魔法)
焼き尽くせば、その体の腐敗も。等しく灰となるだろうから。


霧島・絶奈
◆心情
痛みとは肉体や心の危険信号です
そして其れは生者の特権なれば、成る程確かに貴女方は屍者であるのでしょうね

◆行動
地形を活かして敵を誘導しつつ、自身は空中浮遊にて地形を無視して立ち回ります

罠使いの技を活かし「魔法で敵を識別する指向性散弾」を複数設置
痛みを感じない以上、四肢を捥がれた程度では止まりはしないでしょうけれど…
移動手段が限られれば進軍は遅れます

更に範囲攻撃するマヒ攻撃の衝撃波で二回攻撃し、動きを止めていきましょう

さて…
そろそろ幕引きと致しましょう
『涅槃寂静』にて「浄化」属性の「火炎旋風」を行使し範囲攻撃
腐敗した身は焼き清めるに限ります

負傷は各種耐性とオーラ防御で軽減し、生命力吸収で回復



●黄泉たるこの地へ煉獄招致
「るーるるーるるー」
「るーるるるー」
 少女らしいソプラノは抑揚も無く感情もなく、歌とも呼べぬ不気味な何かを繰り返す。これと似た様な存在を出水宮・カガリ(死都の城門・f04556)は知っている。銀の雨の降る世界、生と死を分かつものと共にあった、と、朧げながらに記憶している。であるならば、斯様な場所——彼岸と此岸の入り混じる様なこの場所にこれらが現れるのは妥当と思われた。故に、黄泉返ったかの様な悍ましい影朧らの姿を映す紫の瞳がやけに冷めているのは、単にその姿への嫌悪のみならず。
「屍者がお好きではないと見えますね」
 痛い程に滲み出ている闘気に思うところでもあったか、上から声を掛けたのは、奇しくも日頃は屍者の軍勢を率いる女神。泥濘などは神たる身が踏むに相応しくないと言うことか、中空に身を浮かべた霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は飄々と宣う。その傍らで、彼女が仕掛けておいた罠はルールーたちを狙い澄まして、且つ豪快に散弾で蜂の巣にしていた。
 だが、肉を穿たれ骨を砕かれようと、影朧たちの行き足は鈍らない。何処に待ち構えるかも解らぬ罠に恐れをなした風もなく、先までと同じ歩調を乱さずに、ただ、敵と定めたカガリと絶奈へふらふらと引き寄せられる様に歩みを向ける。
「痛みとは肉体や心の危険信号、そしてそれは生者の特権なれば——成る程、確かに彼女らは屍者であるのでしょう」
「で、あるならば、あれは益々此方側に出て来てはならないものだ」
「と、言いますと?」
「カガリが、|泉門《よみど》だ」
 両手で握った鉄門扉の盾、泥濘む地へと突き立てる様に構えつつ、かつての黄金都市の城門の化身は声高に告げた。
「|境《さか》の彼方へ、我が隔つ」
 それこそが、かの都市を築いた黄泉の女神が己に与えた役割なればこそ。
 刹那、辺りを満たすのはただひたすらの金色だ。眩いばかりの黄金が照り返して寄越す煌めきだ。光の収まる頃には辺り一帯、黄金の城壁に囲われている。
 出口を塞ぐは、歴戦の傷を刻んだ鉄門扉。
「嗚呼、成る程」
 口の端を吊り上げつ、絶奈は訳知り顔で頷いた。同時、同朋の犠牲の上に無数の罠を抜けて来た影朧のいくつかが、|城門《カガリ》へ、朽ちた両手でシャベルを振り上げ、振り下ろす。
「これしきの攻撃……!」
 地形をも破壊し尽くす威力の打撃を四方から受けながら、その身を砕かんばかりの激痛にカガリは耐える。それは城門としての務めだ。矜持だ。己が落ちれば都が滅ぶ。あの時と同じ轍は二度とは踏まぬと——泉門として、守護者としての責務を今度こそ全うするのだと、己を鼓舞し、奮い立たせて、あらゆる攻め手を跳ね除ける。
 而して、カガリが耐えて稼ぐ時間は、絶奈の詠唱を完成させる。
「其は始原にして終焉。永遠不変と千変万化。万物が内包する奇蹟にして、森羅万象が齎す福音と災禍也」
 訪れたのは炎と風と、果たしていずれが先であったか。影朧どもが炎に巻かれて燃え上がるのと、熱気に巻き上げられるのと、どちらが先であっただろうか。帝都に最近建ったハイカラな百貨店より遥かに高く聳えた炎の竜巻は、現代で言うところの火炎旋風。影朧たちを宙に攫って、中空にて焼き焦がす。
 加えて、垂直に立った火柱と対照、水平に、泥濘の地をあたり一面焼き尽くし焦がし尽くさんと炎が舐めた。ぬかるみさえも干上がらせながら、地を這う炎は燃え広がる。
「奇遇だな。カガリも、こうして火を使おうとしていたところだ」
「気が合いますね。腐敗した身は焼き清めるに限ります」
「一字一句に、同意する」
 影朧どもがたとえ痛みを持たずとも、たとえ恐れを知るまいと、猟兵たちに近寄るまでの距離を炎が埋めている。燃え尽きる前にたどり着こうと駆けたところで、炎の竜巻に攫われて、巻き上げられては最早抗う術もない。
 煉獄だ。逢魔が辻は確かに黄泉を連れてきた。だがその黄泉すらも飲み込んで、今、黄金の城壁に囲まれたこの地は正しく煉獄と化していた。
「さて、残りを片付けましょうか」
「勿論だ。鼠一匹この城壁からは逃さない」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

おーおー、おっかねぇ。
逢魔が時に四つ角を歩くなとはよく言ったもんだ、子供の頃の黄昏時を思い出すよ。
こっちの世界でも逢魔が辻は健在らしいねぇ?遊びに誘われたが最期、常世へ連れてかれそうだ……いや、桜の下へかな?
さあさあ確りいざなっとくれ、もっともアタシもそのままやられるつもりはないさ。
身に纏うのはサイキックの『オーラ防御』、神鳴る『電撃』として周りを威しながらゆっくり歩む。
こんな気味悪い迷路、骸骨に加えて黄泉帰りの腐肉まであるんじゃぞっとしない。
丁寧に『浄化』のいかづちで滅しながら進むよ。
さて、振り向くのも億劫だ。
迷路に重ねた【超感覚領域】で退いとくれ、影朧さんがた。



●黄泉路とて道なら駆けて抜けるのみ
 逢魔が時に四つ角を歩いてはならぬ。口酸っぱくそう言い聞かせられて居たがゆえに家路を急いだ、いつか昔の夕暮れを数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は思い出す。
 おおかた子どもらが早く家路に着く様に仕向ける為に大人が考えた作り話であったと今の多喜にはよく解る。だが、他方で、今目の前の光景は幼い日に漠然と恐れた『何か』を体現しているかの様で、懐かしく思い起こした童心にぞくりとしたものを齎した。
「おーおー、おっかねぇ」
 故に強いて声に出して肩を竦めてみるのに、不思議なまでに妙に実感が伴った。だが、徒歩で急いだ当時と違い、今は心強い相方の宇宙カブもある。無意識にエンジンを空蒸かしして、その音に、意図せず仄かな安心を得る。
「るーるるる」
「るるるるる」
 少女もどきの怪異どもの鳴き声は、音だけ聴けば楽しげなくせ、厭に淡々と不気味に響いている。ルールーたちはシャベルを手にしてふらふらと多喜へと歩みを向けて来る。嗚呼、大人気ではないか。まるでクラスの人気者が如くではないか。
「遊ぼうってか? あんまお友だちになりたくねぇタイプだが……」
 あんなに高々シャベルを振り上げて何の遊びだ、埋葬ごっこがせいぜいだ。
 振り上げられた無数のシャベルをオーラの護りが弾き、払った。弾かれて跳ね上げられたシャベルを宛ら避雷針の如くに雷撃が襲い、腐った身を貫いて焼き焦がす。
「さあさあ、黄泉路にいざないたいんならもっと本気で来ると良い。こっちも大人しく桜の下に埋まってやる気はないんだよ」
 いかづちに射抜かれた怪異らが動けぬのは単に麻痺によるのみならず、その雷撃が浄化の力を帯びていた為だ。
「るるるるるるる」
 更に雷撃を重ねる多喜を、怪異の見開いた瞳が映す。
 同時、微かに揺らいだ景色を、多喜の視界を、骸骨の壁が塗り潰した。怪異の異能により成る迷路はその高さにも、渦巻く様に続いた距離にもおよそ果てが知れぬ。
「追いかけっこでもしようって? いや、かくれんぼか?」
 で、あるならば、いずれにしても多喜が鬼だ。アクセルを捻って、宇宙カブを駆る。酷く悪趣味なジムカーナもあるものだ。薄気味悪い骸骨迷路、あちらこちらに落ちた|腐肉《ルールー》を掃除しながら抜けねばならぬ。アクセル全開、ルールーどもとすれ違いざまに、追い抜きざまに、浄化の雷で滅してゆく。仕留めたか否かを確かめる必要すらもない。確実に殺せるだけの高圧、高電力。
「余所見運転は厳禁だからね」
 黄泉であろうがなかろうが、何時だって、振り向く気などはさらさらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
これは……まさに黄泉比良坂といった風情だな
あまり長時間見ていたい光景でもないし、手早く片付けてしまうとしよう

利剣を構えて敵と相対。敵がシャベルを振りかぶってきた所に此方から踏み込んで、素早く壱の型【飛燕:重】で攻撃
足を斬って体勢を崩すか、腕を斬ってシャベルを落としてやるかすれば良いだろう
相手が痛みや恐れを感じず襲ってくるとしても、物理的に動けなくなれば脅威ではなくなるだろう

帝都住まいなもので、この辺の地理はある程度把握しているし、知らない場所でも予想もできる
連中が隠れて機を窺うなんて事はない……と思うが念の為
襲いかかってくる敵に対処しながら、路地裏などを探し回る事にしよう


エリー・マイヤー
急な戦争で台無しの日曜日。
サクラミラージュの方にとっては、不幸なことこの上ないですね。
できるだけ早く平和を取り戻してあげたいところです。

とりあえず、【念動サーチ】で周辺の地形を探りつつ状況を把握。
敵の座標を捕捉します。
人と違って、下半身が骨だからわかりやすいですね。
そのまま敵に見つからなさそうな場所に移動。
陰からこそこそと、念動力で攻撃して数を減らしていきましょう。
相手は痛みも恐れも知らない腐敗した屍でしたっけ…
まぁ、|四肢を折って首を捥げば《ゾンビと同じ対処で》、無力化できるでしょう。
残骸は後で燃やすなりして、確実に処理したいところですね。
念動力で移動させて、一か所にまとめときますか。



●不死者殺しの定石は
「これは……まさに黄泉比良坂と言った風情だな」
「全く、ひどい日曜日もあったものですね」
 夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)とエリー・マイヤー(被造物・f29376)は呆れ半分、同情半分に言葉を交わし合う。
 先刻までは平和な日曜日の昼下がりをしていた筈の帝都、今は常世だか常夜だか、異質なまでの昏い夜だ。腐臭を撒き散らし、腐肉と化した身体を引き摺る様にルールーたちが闇の中を闊歩している様は控えめに言って悍ましい。奇遇にもこの二人、互いに災禍によって故郷を失くした身であった。故に一刻も早く戦争を終えてこの地に平和な日常を取り戻してやることこそが、猟兵としての急務であると心得ていた。
「あまり長く見ていたい光景でもない。手早く片付けてしまうとしよう」
 言いながら、下段からの利剣【清祓】の一閃にて、一体のルールーの右腕を付け根から斬り飛ばす鏡介である。そこに至るまでの一瞬、敵がシャベルを振りかぶった瞬間に踏み込み、懐へと飛び込んで鞘を払った一連は、強いてこうして描写でもせねば常人の目には留まるまい。斬られたルールー本人も、何が起きたか解せぬ様子で——彼方に落ちた己の腕が手にしたままのシャベルを拾い上げるべく向かって行った。
 その反応を目にして、頷き交わすエリーと鏡介。
「あぁ、そういう感じの敵ですか」
「成る程、話に聞いた通りだな」
 互い、新手からの追撃を刀と念動力でいなしつつ、一つの可能性を思い至る。
「ところで、こういういかにもゾンビ系の敵って」
「あぁ、おそらく同じことを考えている」
「話が早くて何よりです」
 エリーは迷わず踵を返す。
「前衛は苦手なので失礼しますね」
「任せてくれて構わない」
 エリーに追い縋ろうとしたルールーの背後よりその脚を斬って無力化しつつ、鏡介は頷いた。地に伏したルールーがシャベルを掲げれども、ほんの数歩の距離を稼げばもはや届かず、全く脅威たり得ぬだろう。油断をせぬと言う意味で首を落としてみたものの、究極、それは後回しでも良い作業だと理解してもいる。故に、返す刃で別の個体の両腕を一刀の下に斬り落とした後、トドメを刺すより先にまた別の一体の腕を仕留める。ひとたび無力化さえしておけば殺すのは後回しでも構うまい。
 同じ結論に至ったエリーもまた、路地裏に雑多に詰まれた木箱の影に身を潜めつつ煙草に火を点けた。紫煙を深く吸い込みながら、今、不可視の念動力の波を遍くこの戦場へと放つ。皮肉にも標的どもにとってはそれは凪である。何が起きているかも知らぬまま、派手に立ち回ってみせる鏡介に気を取られおびき寄せられてゆく内に、エリーからその座標を把握されている。それも恐ろしく正確に、だ。
 この怪異らが痛みも恐怖も知らぬのは、おそらく、彼女らにとって幸いだ。並び立つ朋輩が突然に見えぬ力に四肢を圧し折られて頽れて、それを眺める己の腕もあらぬ方向に曲がってゆくこの地獄絵図、まともなヒトとしての感覚が、否、まともな生物としての本能を欠片でも備えていたなら発狂モノの沙汰である。
「るー……る゛るる……」
「るる……る……」
 命乞いならず断末魔ならず、やはりただの鳴き声であるのだろう。四肢を折られて尚怪異どもは不気味な歌めいて鳴き続ける。その首を鏡介の刃が落とし、或いはエリーの念動力が捩じ切ってゆく。一通りの無力化を済ませるまでが戦いだった。その後はこうしてただ淡々とトドメを刺すだけの蹂躙戦、あまりにも一方的なそれは或いは、単なる作業にも等しい。
「残骸の処理だけが面倒ですね」
「確かに、こんな腐乱死体に|帝都《ご近所》の景観を汚されたくはないな」
「後で燃やすものとして、一か所にまとめておきますか」
「賛成だ。確かあちらの路地にも何体か居たような……」
 戦いの定石を押さえた二人を前に、黄泉変異とやらを備えたところで、怪異など恐るるに足らず。ごみ処理の方法を相談する気楽さで言葉を交わしつ、二人は着実に敵の残党を討ち減らしてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルナ・フィネル
『黄泉平坂って、要は冥府って事よね』
所変われば言葉も変わるが、指し示す場所は一緒だ。闇の中に輝く白銀の毛皮と無垢金の帯をひらめかせ、片手に草薙を携えて女神はふむ、と考える。
「我も冥府の女王なれば。不遜にも冥府の王を名乗りし者の力を神罰にて滅してくれよう」
普段の口調とは違う三叉路の女神は、神格を覗かせて湧き出る影朧どもに神罰を下す。

・UC『月は無慈悲な冥界の女王』を駆使して影朧共に神罰を下します。
・「猟兵としての在り方」を攻撃されたら「そは我が女神であると同意義である。
それ故に呼ばれたのだからな」と笑います。

「さて、殲滅が終われば浄化をせねばなるまいよ」
UCを使いながら後のことを独り言ちた。



●怪異が喧嘩を売った相手は
 黄泉平坂。それは己が『冥府』として理解しているものであろうと、ルナ・フィネル(三叉路の紅い月・f44133)は考える。
 所変われば名称も変わる。たとえ所が同一であれ、信ずるものが変わるなら当てる名称はやはり異なる。例えば、死後の世界と言う概念で彼岸を示す名称やその解釈は浮世に無数に存在をする。それでも、名前を違えてすらも人の子らがある程度一定の同じ真理に辿り着くのは、彼らが賢しいと言うよりは真理たる側、それを創りし神たる側が普遍であるからとも言えよう。
 で、あれば。たとえその名を変えて在ろうと、この不遜は見過ごし難い。
「汝らの主は不遜にも冥府の王を名乗ると聞かれる」
 常闇に白銀の毛皮が波打つ様に煌めいた。細い腰に目立つのは、無垢金で織る金襴緞子、それすら霞む眩さで金絲の如き髪が靡く。雷雲を呼ぶ倭刀片手に怪異どもを睥睨するルナの纏う空気は、先までのものとは一転、痛いほどの威厳を伴う、女神のそれへと変じていた。
 人の子らに紛れて生きるのに都合の良い常の人格とは別の、神格と呼ぶべきこれこそ彼女の本質と言うべきか。
「我こそが冥府の女王なれば、王を騙る不逞の輩にかける慈悲は無し、尚且つ紛い物に付き従う汝らもまた同罪である——神罰にて滅してくれよう」
 滔々と語る言葉と傲岸不遜な流し目、共に向けてやる指の先まで唯我独尊。その身より溢れて辺りに満ち満ちた月の魔力は、泥濘む地より突き上がる細い光柱を連れて来た。この夜に月が出ずとも、無明であろうと、月の女神は此処にあり。だが不逞の者どもへと注いだ神罰が天からでなくまるで地の底より出ずるのは、この女神が黄泉をこそ司るがゆえか。
 反撃として怪異らが——ルールーたちが用いる異能は、だが、ルナ・フィネルには通らない。
「随分軽いな。何かしたか?」
 光柱に貫かれて足元をよろめかせた怪異の一体が捨て鉢に振り回したシャベルは、本来ならばルナの猟兵としての在り方のみを狙い澄まして攻撃をする恐ろしい一撃となる筈だった。だがルナは何処までも何処吹く風で涼しい顔だ。
 彼女が猟兵であること即ち、女神であることと同義である。
 故に在り方だ等と言う玉虫色の自認他認の有無を問わずに、そも、それ自体が絶対に揺るがぬこの世の理に他ならぬ。
「さて、駆除が終われば浄化をせねばなるまい」
 今はもう物言わぬ屍と化した腐肉が無数に地面を埋めてゆく。戦いの趨勢でなくその事後処理に、ルナは微かに頭を痛めて呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
ああもう、平和な市街地になんてことしてくれるんだ
こりゃのんびりしてられないな
女の子相手に悪いが、全力で行く

……この場所の地形
身体が腐敗し、四肢の崩れた少女たちが這い歩き回った、黄泉変異の逢魔が辻
さぞ『血』で汚れていることだろう
使わせてもらうよ

仲間外れは誰なのか
ルールーたちが流した血を取り込んで、泥濘に巨大な|内臓を抜かれた牛の真実《ミステリーサークル》を展開
半径100mちょっと、呪詛の炎でまとめて焼却する!
……とはいっても、逃げ遅れた一般人がいるかもしれないからね
今回は敵味方の区別はちゃんと付けるよ

……猟兵としての在り方、ね
使える手ならなんでも使う夏報さんに、そんなものあるのかよくわかんないや



●黒い羊は誰なのか
「ああもう、平和な市街地になんてことしてくれるんだ」
 確かに平和な街だった。元より平和、平穏を希い、夢見続けて来た世界こそサクラミラージュたるこの世界。
 一度や二度とは言わず臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)も訪れたことのある街だ。あの角に見える看板はたしか純喫茶のものだった。であれば向かいは花屋だったか? 建物はそのままに、しかしハイカラだった石畳は泥濘と化し、得体の知れない怪異どもが腐った身体で歩き回って這い回る。凄惨な光景に最早慣れ切ってしまった夏報から見てもこの場は十分に地獄の類、であればのんびりしている時間はあるまい。何より、地獄を見慣れた職業柄か、嫌に頭が冷えてゆくのを自覚している。
「女の子相手に悪いが……」
 冷めた藍の瞳は既にあの怪異どもを血と肉としてしか見てないくせに、よくぞ宣うものである。少女らしい造形の名残はおろか朽ちた亡者の如き見目の悍ましさにすら無関心、あれらが流した血を取り込んで『使う』ことしか頭にない。
「全力で行く。それともう一つ。――悪いね、借りたら返せない」
 返す気などはないくせに、返す返すこの嘘吐きめ。拝借などとは到底呼べぬ強奪、ルールーたちの血を吸い上げて泥濘に広がるは|内臓を抜かれた牛の真実《ミステリーサークル》だ。 オカルトじみた存在どもにとびきりのオカルトをぶつけてやるこの意趣返し、直径300メートルにも届かんとする幾何学模様を呪詛の炎が舐めた。但し、燃えるのは怪異のみ。これでもエージェントとしては歴戦の夏報、万が一逃げ遅れた一般人が居た場合のことも考えてこの獄炎を操っている。
 即ち腐肉ばかりを焼き焦がしての最悪なバーベキュー。剰え肉が焼けながら歩いて来るのだからなんと悪夢か。
「る……るる……る」
 炭化しかけた手が振り下ろしたシャベルは夏報が手繰ったワイヤーにあっさりと絡め取られて何の威力も持たなかったが、他の猟兵相手なら少しは何かの脅威たり得たか。
「ん? なんて?」
 引き絞られたワイヤーに、焼けた肉と化した怪異はボロボロと崩れ落ちる。
 猟兵としての在り方だのを真面に心得た輩がこの戦いを、この地獄を|演《や》る筈がないのだ、相手が悪いと言わざるを得ぬ。
 足元で、彼方此方で燃え続ける怪異どもを眺めて夏報は頭を搔いた。
「あー、これ消火するまで見届けないとダメなやつかなぁ」
 やがて炎が鎮まる頃には元の帝都の景色がそこにある。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月05日


挿絵イラスト