獣人世界大戦⑱〜サードアゲイン・ソング
●再孵化
三度目。
一度あることは二度ある。
二度あることは三度ある。そして、恐らくこれからも起こり得ることであったことだろう。可能性はいくらでもある。
(何度でも【再孵化】せよ。死ぬ事は赦さぬ)
響く言葉があった。
その言葉の主を知る猟兵もいたことだろう。だが、それを正しく知る者はいない。
未だ正体不明たる存在。
渾沌氏『鴻鈞道人』。
その名を持つ存在こそがコンキスタドール『有頂天道人』の言うところの『師父』である。
「師父よ、この俺にさらなる力を与えてくださるのか! カカッ、|機械化義体《サイバーザナドゥ》をも塗り替える、凄まじい力が湧いてくる……!」
『有頂天道人』は我が身を覆う色濃い『渾沌化』による力を感じ、高揚を隠せなかった。
それはまさしく|『渾沌の諸相』《undefined》であった。
白濁した不定形にして不定義。
その力をさらに強めた彼は、師父たる渾沌氏『鴻鈞道人』の言葉に耳を傾ける。
(必ずや私の元に『はじまりの猟兵』を連れてくるのだ)
その言葉は『有頂天道人』の目的が依然変わりない事を示していた。
(あの者達の為した「赦されざる罪」の結末を)
赦されざる罪。
その言葉と共に吐き出される感情はなかった。
あるのはただ一つの望み。
(炎の破滅と共に曝け出してくれよう)
「カカッ、師父よ、お任せあれ。この様な力を得れば、例え六番目の猟兵とて。いや何、油断、慢心はいかんな。この俺としたことが、授かった力に浮かれているのか? いやはや、いかん。いかんな」
己の舌がよく回るようになったことに『有頂天道人』は頭を振る。
「三度目の正直という言葉もある。師父よ、朗報を待つがよい。死ぬこと許されぬのは、我がサイバー渾沌拳が未だ猟兵に通じるという証左。ならばこそ、此度は――」
●獣人世界大戦
ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は、第三戦線に姿を表したオブリビオンの一人……コンキスタドール『有頂天道人』の姿を認め、うめいた。
それは彼の身に纏う『渾沌の諸相』を知るからである。
彼女もまた一度は『渾沌の諸相』によって我が身を乗っ取られたことがあるからだ。
その苦々しい記憶が蘇ったからかもしれない。
「コンキスタドール『有頂天道人』……その姿は……!」
「何を驚くことがある。我が身は過去の化身、オブリビオンぞ。なれば、一度ならず二度、二度ならずとも三度でも貴様たちの眼の前に現れようというもの」
構えるはサイバー渾沌拳。
『有頂天道人』は、その身に宿した『渾沌化』色濃き力、『渾沌の諸相』を持って猟兵たちを退けんとしている。
目的は言うまでもない。
『はじまりの猟兵』である。
終始、彼は『はじまりの猟兵』を求めていた。
脇目も振らなかったと言って良い。
それほどまでに彼にとって、いや、彼の言うところの『師父』にとって『はじまりの猟兵』は重要な存在であるのだろう。
「さあ、舞台を整えようか。カカッ! 刮目せよ! これぞ!」
降り注ぐは『骸の海』。
戦場はまるで『骸の海』が雨として降り注ぐサイバーザナドゥの如き光景へと様変わりする。
大気は汚れ、大地は侵食される。
草木は枯れ果て、生きとし生けるものは死に絶える。
その光景を前にしてナイアルテは、立つ。転移を維持しなければならない。
フラスコチャイルドである彼女をして、この『骸の海』の汚染は脅威であったのだ。
「この『骸の海』は凍ることのなき雨、蒸発することのない雨……! 生きているのならば、今を生きているのならば否応なしに蝕むもの……!」
理解できる。
これを如何にすることなどできようもない、と。
だが、一つだけ対抗することができるものがある。
それは『有頂天道人』がそうであるように機械化義体に体躯を置き換える者。
もしくは、それに抗う術持つ者のみ。
「カカッ! 加えて言わせてもらうのならば! 今や、この俺は全身を渾沌化している! 骸の海を浴びれば浴びるほどに、己の力と為すことができる! 止められるか、六番目の猟兵! いいや、止められはせぬだろうな! 貴様たち尽くを打ち倒し、『はじまりの猟兵』は頂いていく!」
漲る力と共に『有頂天道人』は迫る猟兵たちを蹴散らさんと、その強靭なる構えを持って肉薄するのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『獣人世界大戦』の戦争シナリオとなります。
一度あることは二度あるし、二度あることは三度ある。三度目以降も当然似たようなことは起こり得るのでしょう。
得てしてそういうものだと言わんばかりに三度現れたのは、コンキスタドール『有頂天道人』です。
彼は二度目の対決より更に強化された『渾沌の諸相』でもって強化されているばかりか、戦場を凍ることのない雨『骸の海』でもって汚染し、さらに時が経てば経つほどに強化されていきます。
彼を放置すれば、『はじまりの猟兵』は拉致されてしまうでしょう。
これを防ぐためにも三度目の決戦を制さねばなりません。
戦場は前述の通り、『骸の海』が絶え間なく降り注ぎ汚染されています。戦場に立っているだけで、肉体を蝕むことでしょう。
これに対抗する術は機械化義体に肉体が置き換えられた者か、もしくは別の対抗手段を持つ者だけでしょう。
この逆境をはねのけ、『有頂天道人』に一撃を見舞いましょう。
また『有頂天道人』のユーベルコードにある【undefined】は、放たれるまで如何なる変化を見せるかわからない正体不明にして不定義にして不定形たるサイバー渾沌拳の一撃です。
プレイングボーナス……骸の海による肉体汚染に対処する/骸の海による有頂天道人の強化に対処する。
それでは、超大国をも巻き込んだ獣人世界大戦にて多くを救うために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『渾沌氏「有頂天道人」undefined』
|
POW : 渾沌孤拳 undefined nackle
全身に【undefined】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【undefined】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。
SPD : 渾沌奇脚 undefined asault
【undefined】姿勢のまま、レベルkm/hで移動できる。移動中は、攻擊が命中した敵に【undefined】の状態異常を与える。
WIZ : 渾沌妖血 undefined blood
術者の血液に触れたあらゆる対象は、血液が除去されるまで、全ての知覚が【undefined】で埋め尽くされる。
イラスト:松宗ヨウ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:四天霊障
再孵化は厄介ではあるが…うむ。此度のわしにとってはな!願ってもないことよ!
何故かといえば、まあ『武人の性』とでも。
骸の海の雨に対抗も兼ねてのUCである。肉体を強制的に汚染、変化させるというは『攻撃』であろうからな!
つまり!有頂天道人とほぼ同じことやっとる感じになる!
万一、知覚が何かで埋め尽くされようと、四天霊障の行く先は変わらんしな!
まあ、それまでは…殴り合いといこう。四天霊障をグローブ代わりに、拳と拳の殴り合いをな。
オブリビオンに向く恨みは変わらず。されど、武人同士の戦いでもあろうからな!
コンキスタドール『有頂天道人』は三度現れる。
その姿は、一度目、二度目と重ねる事に重圧をましているようにも思えた。
それは間違いではない。
三度目の対決と相成った戦場にて猟兵達は知るだろう。
『有頂天道人』が身に纏うは『渾沌の諸相』。
白く濁る不定形にして不定義。
如何なる一撃が繰り出されるのかさえも一瞬のあとにさえもわからぬ。それが『有頂天道人』の放つ一撃にしてサイバー渾沌拳である。
「カカッ! 猟兵よ。俺は何度でもお前たちと戦おう。我が師父は『はじまりの猟兵』を望まれている。ならば、それをお届けすることこそ、俺が役目よ」
故に、と戦場が『骸の海』に染まってなお、『有頂天道人』は笑っていたのだ。
厄介そのものである。
何度も何度も打倒しても、再孵化によって『有頂天道人』は舞い戻ってくる。
それも強化されて、だ。
だが、しかし。
それでもなお、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『侵す者』は笑った。
願ってもないことだ、と。
何故ならば、己もまた武人である。
『有頂天道人』が武を極めんとして到達したのが『渾沌化』と『機械化義体』であるというのならば、己は五体を以て武の頂きへと到達せんとしたもの。
故に、その瞳はユーベルコードに輝く。
「因果はめぐりて回るものよな。どこまでも」
「武に頂きあれど、終わりはないのだ。カカッ、それを理解するか、猟兵! 武というものに手を伸ばした時点で、終わり無き永劫輪廻に囚われると知れ!」
『骸の海』が雨降る戦場にあってなお、『侵す者』は己が体を再構築し続ける。
呪詛でもって多い、振るわれるサイバー渾沌拳の一撃を受け止める。
「カカッ、似たようなことをしておるな!」
「左様であるな。結局、これは!」
綱引きでもなく、押し付け合いでもなく。
ただの陣取り合戦に過ぎない。
己が纏う呪詛か、それとも渾沌たる『骸の海』か。
そのいずれかが多く戦場を埋め尽くした方が勝つ。だがしかし、『侵す者』は己が体躯のみにて呪詛を纏い続ける。
そう、戦場すべてを覆う必要はない。
変わり続けること。
それこそが不定義にして不定形たる渾沌に抗するものである。
霊障纏う拳と『有頂天道人』の拳が激突する。
ひしゃげ、砕け、それでもなお、互いの拳が打ち付け合う。
火花が散る。血潮が散る。
「恨みの籠もった拳であるな、愉快だ! カカッ!」
「であろうな。されど、これは!」
「武と武よ。結局のところ!」
互いに据えた一つは変わらず。己が求める武を以て、敵を打倒する。
その一念によって放たれた拳の一打が互いの頬を打ち付け、凄まじい衝撃と共に戦場に降り注ぐ『骸の海』の雨すら吹き飛ばしながら、その苛烈なる殴打の応酬を繰り広げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳴上・冬季
「何度蘇ろうが邪仙の弟子相手に退く道などありません」
嗤う
「何度でも消えなさい…合一・真黄巾力士」
追加UC
仙術・万病回春
3mの黄巾力士に融合
鋼の身体に仙術とオーラ防御纏い更に雨防ぐ
|渾沌の諸相《undefined》の制限・異常は追加UCで解除
敵の攻撃は
仙術+功夫の縮地(短距離転移)
空中戦・空中機動+功夫の軽身功
で羽のように回避
空中から
金磚の誘導弾に雷属性乗せ制圧射撃
行動阻害しながら義体にダメージ重ね
同時に砲頭から徹甲炸裂焼夷弾連射
鎧無視・無差別攻撃で渾沌の諸相削る
攻撃パターンある程度読んだら縮地し接敵
攻撃を軽身功や縮地で掻い潜り貫手
体内に直接雷撃叩き込む
「貴方の無限は有限で弱点も変わらない」
嗤う
獣人世界大戦において三度現れたるは、コンキスタドール『有頂天道人』であった。
その姿、見忘れるわけもなければ、見紛うこともない。
渾沌化とサイバー化。
二つの力を平行に励起させながら、渾然一体たる拳、サイバー渾沌拳を振るう烈士にして武人である。
「カカッ! 流石に見飽きた、という面構えではないか、猟兵よ?」
『骸の海』が降り注ぐ戦場において、『有頂天道人』の力は増していくばかりである。
身に纏う『渾沌の諸相』によって彼は時が経てば経つほどに強化されていくのだ。
その力を持って振るう拳は、猟兵に取っては脅威以外のなにものでもなかったのだ。
だが、そんな『有頂天道人』を前にして一歩も退かぬのもまた猟兵である。
「何度蘇ろうが、邪仙の弟子相手に退く道などありません」
嗤うは、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)であった。
「何度でも現れるのならば、何度でも消えなさい……合一・真黄巾力士(ゴウイツ・シンコウキンリキシ)」
ユーベルコードに輝き、巨躯たる『黄巾力士』と合体した冬季は『有頂天道人』と相対する。
「鋼の駆体をまとうかよ、猟兵! カカッ! 余程、骸の海の雨が恐ろしいと見える。清濁併せ呑む、これ即ち、陰陽合一。鋼の駆体と如何に合一しようともなぁ!!」
迫るはサイバー渾沌拳。
振るわれる一打は、繰り出され、冬季が合一果たした『黄巾力士』にふれるまで確定されぬ不定形。
恐るべき一撃である。
躱すことも受けることも許さぬ変幻自在たる拳。
その一撃を冬季は受け止める。
否、己が仙術と功夫による縮地たる軽身功によって羽が風に踊るように躱すのだ。
されど、不定形たる拳は、その軽業の如き動きにさえ追従する。
「カカッ! 如何に足運びで翻弄しようともなァ!!」
迫るは拳。
それは必中にして必殺たる拳であった。
受ければ、その一撃を以て絶命せしめると言わんばかりの圧力を冬季は感じただろう。
されど、彼は嗤ったのだ。
功夫ではない。
その力は他者から後付された程度の力ではない。
己が力としていないのならば、功夫ならず。故に、と金磚の連射を解き放ち雷撃を迸らせる。
「軽身功……極めれば、こういうことも可能になるのです」
ふわりと、羽は『有頂天道人』の拳の上へと降り立つ。
否、『黄巾力士』と合一せしめた冬季の足裏が『有頂天道人』の拳の上に立っていた。重さを感じさせていない。
如何なるからくりかは知れぬ。
されど、これが現実。
眼の前に立つ冬季は、跳ねるようにして翻り、大地へと立つ。
「逃すか!」
迫る『有頂天道人』。
己に速度は必要なく。
我が身は羽の如き重さしかなく。
ならば、放たれる拳が以下に不定形、不定義を象るのだとしても、風舞う羽を捉えがたきものであるというのならば、その一打は永遠に己に届かぬのだ。
「貴方の無限は有限で弱点も変わらない」
如何に蘇ろうとも。
その駆体は機械化されているのだ。故に、と放たれる貫手の一撃は軽くも鋭く、その一点を穿ち、機械化義体へと電撃を流し込むのだ。
「故に無駄」
嗤う。
結果は何度でも変わらぬと。変わらぬ身である過去の化身であるからこそ、己が一打は、必滅に『有頂天道人』を追いやるのだと、彼は嗤ったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
神酒坂・恭二郎
さて、ここらで決着と行こうかね
世界を汚染する骸の海に対し、風桜子を籠めて刀を大地に突き刺し、地脈を通じて世界の悲鳴を聞く【竜脈使い、優しさ】
「ったく、ろくでもない物を持ち込みやがって」
汚染を受けながら、奴の攻撃の起こりに合せ、【undefined】もろとも天まで裂けよと極大の風桜子の斬撃波で切り上げる。世界の悲鳴とその修正力を乗せた高次元の風桜子で、奴ごと「骸の海」を断とう【見切り、カウンタ、覇気、武器の巨大化、衝撃波、切断】
ま、一時凌ぎだがこれで十分
骸の海の影響が切れている内に、高次元の風桜子を纏った刀で片手一本突きで追撃を狙う【二回攻撃、切込み、急所突き】
「ここの空はこんな色なんだな」
迸る雷撃の一撃がコンキスタドール『有頂天道人』の体躯を駆け巡り、黒煙を上げさせる。
機械化義体に叩き込まれた雷撃は、容易く体内を焼き尽くすだろう。
しかし、彼が纏うは『渾沌の諸相』である。
不定形にして不定義。
それ故に彼は、色濃く白濁した体躯と共に一歩を踏み出す。
「カカッ……! 流石はと言っておこう。幾度も俺を退けたことだけはある! だが!」
構えるはサイバー渾沌拳。
未だ滅びず。
彼の目的、即ち師父と呼ばれる者へと『はじまりの猟兵』を得て届けること。これは何一つ変わっていないものであった。
初志貫徹とでも言うべきか。
ただそれだけのために彼は己が拳を振るうのだ。
「さりとて、ここらで決着と行こうかね」
そんな『有頂天道人』を前にふらりと現れるのは、神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)であった。
「応、スペース剣豪。それは俺も望む所よ」
カカ、と笑う敵を前にして卿治郎は辟易していた。
戦場に満ちるようにして降り注ぐは『骸の海』の雨である。
絶え間なく注ぐ汚染物質。
機械化義体に身を置き換えていぬ者であれば、身を苛む汚染物質によって生命を削られていく。
大地は汎ゆるものを腐食させられ、ただれているようにさえおもえたのだ。
「ったく、ろくでもない物を持ち込みやがって」
「これは異なことを言う。これはお前たちが踏みつけてきた過去ではないか。それをろくでもないというのは、己が道程を否定することであるぞ」
「これのどこがだよ」
己が手にした刀を大地に突き立てる。
地脈を通じて世界の悲鳴が聞こえるようだった。故に、恭二郎は怒りを覚えたのかも知れない。
例え、これが過去であったとしても、それでも世界を汚染する理由にはなっていない。
己達は過去を踏みつけて前に進むしかないのだ。 故に、恭二郎は骸の海の雨を受けながらしかし、踏み込む。
恐れはなかった。
己が聞いた世界の悲鳴に比べれば、我が身を苛む汚染など大したことではないとさえ思えたのかも知れない。
「カカッ、正面から来るかよ!」
「……柄じゃあないんだがね」
ユーベルコードに恭二郎の瞳が見開かれる。
輝きを宿した瞳が見据えるは『有頂天道人』であった。
高次元にまで練り上げられた『風桜子』を込めた己が刃。
神酒坂風桜子一刀流は何のためにあるのか。言うまでもなく、剣豪であるからは斬るためである。
ならばこそ、己が斬るのは敵の五体。
されど、この境地。
己が聞いた世界の悲鳴を以て、世界の敵を滅ぼさんとする一撃は肉体を斬るのではなく。
「誠心一刀、万象を祓う。これを以て、霊妙剣・滝祭(タキマツリ)という」
振るわれる斬撃が『有頂天道人』の放った拳、その渾沌化の不定形たる一打を真っ向から切り裂く。
不定形である、ということは形が定まっていない、ということである。
即ち、切り裂かれている用に見えて、真は変化しているだけに過ぎないのかも知れない。だが、関係ないことだ。
己が斬撃は『骸の海』を切り裂くもの。
故に、その一閃は如何なる変化さえも許さぬ超常の斬撃。
「お前さんもまた骸の海そのもの力を手繰るというのならば、その連なる力を断つ。本当に柄じゃあないんだがね」
これもまた己の役目だと、と恭二郎は踏み込む。
突き出した刺突たる一撃が『有頂天道人』の真芯を捉えた。
「ガカッ!? これは……!」
「知るがいいさ。骸の海振る世界ではなく、この世界の空の色を」
見上げる。
己が斬撃は風を運び、雲を断つ。
切り裂かれた先にある空の色を見上げ、卿治郎は、己が一念こそが敵を穿つのだと知ったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
レン・ランフォード
随分と長く戦場にいるなと思いましたが
「再孵化でリスポンしてたんだね…」
「種は割れた。結局は諦めるまでぶち殺し続けるだけさ」
まずは雨に耐えるため霊的防護を施した大典太弐式に騎乗
奇妙な攻撃は第六感と機体の高性能を駆使して見切り装備した武器で受け流します
戦場にいる限り力が増すなら、ここから切り離すまで
UCを発動し、敵ごと異空間の隔離結界に転移する事で雨を遮断
戦場に鳴り響く神曲が先程と逆に敵を弱め此方を強くします
更にダメ押し、此方の機体と敵を蝕む混沌化を悪性と判断
強制浄化の対象とし、それを解かします
後は装備武器と技能を駆使し仕留めます
色々剥がしても強敵…油断せずに詰めましょう
獣人世界大戦。
その第一戦線から第三戦線における全てにおいてコンキスタドール『有頂天道人』は姿を現していた。
しつこいにも程があると思ったことだろう。
倒しても倒しても、幾度となく姿を現し続ける。
そのからくりをレン・ランフォード(近接忍術師・f00762)は遂に知る。
『再孵化』である。
この力によって『有頂天道人』は死ぬことなく、何度でも蘇り猟兵達に迫る。いや、迫るのではない。彼が求めるのは『はじまりの猟兵』である。
これをなんとしても手中に収めんとしているのだ。
「随分と」
「ええ、『再孵化』でリスポンしていたんだね……」
「でも、種は割れた。結局は」
レンの三つの人格は理解する。
そう、結局は、と呟く言葉に彼女たちは頷いた。
コンキスタドール『有頂天道人』が何度でも迫るというのならば、諦めるまで!
「ぶち殺し続けるだけさ」
「意気やよし! カカッ! だが、それができるか、猟兵! この『骸の海』が雨として降りしきる戦場で!」
迫るは『有頂天道人』である。
しかし、その体躯は不定形にして不定義であった。
ぼやけているような、濁っているような。
「『渾沌の諸相』……!」
レンは目を見開く。
『有頂天道人』は、その身に宿した渾沌化によってさらなる力を得ているようだった。
「『大典太弐式』!」
その声と共にレンは己がキャバリアのコクピットへと飛び込む。
次の瞬間、己が機体を傾がせるのは『有頂天道人』の一打であった。鋼鉄の装甲を持ち得るキャバリアでさえ、傾がせるほどの一撃。
だが、これでレンは『骸の海』が雨降る戦場に対応することができる。
問題はこれだけではない。
『骸の海』は降りしきり続け『有頂天道人』の力をましていくのだ。
「まだ力が足りぬか。次は、穿ち、その内にある貴様の臓腑を引きずり出すまでよ!」
「させはしない。この戦場にいる限り力が増すなら、ここから切り離すまで!」
レンの瞳がユーベルコードに輝く。
それは瞬時に『有頂天道人』ごと強制転移する力であった。
隔離結界・浄土「響征陣」(キリングフィールド「キョウセイジン」)たる結界の内側に引きずり込む。
ここならば『骸の海』とは隔絶される。
『有頂天道人』を強化する力は及ばないのだ。
そして、神曲が結界内部に響き渡る。
「カカッ! 状況を逆転させるかよ、猟兵!」
「その通り。あの戦場に置いて貴方は強化され続ける。けれど、此処でなら、私達が強化される!」
「ならばやってみせるがいい! そのような瑣末事! この『有頂天道人』がサイバー渾沌拳が砕いてくれる!」
構え、迫る『有頂天道人』の拳。
弱体化されてなお、その一撃は凄まじい重さを持つものであった。
だが、レンは油断していなかったのだ。
どれだけ立場を変えようと、この状況に引きずり込もうと敵は『有頂天道人』。
渾沌化とサイバー化。
その二つを手繰る敵。
ならば、それは世界の敵だ。
「悪性認定! 強制浄化執行!」
レンの瞳がユーベルコードに輝く。『有頂天道人』の身に宿る渾沌化を悪性と判断して放たれる強制浄化の力が迸る。
「だがな、俺は!」
「残すは機械化義体の膂力のみ!」
振るう一撃が火花を散らし、レンは己がキャバリアの一撃を『有頂天道人』にたたきこむのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
また来たの、あなた。|迷惑来訪者《ナイトノッカー》は速やかにお引き取りいただくわ。
頭上に機甲式『GPD-331|迦利《カーリー》』を顕現。「レーザー射撃」をあれに打ち込みながら、あたしの傘になっててちょうだい。
有頂天道人は、あたしが潰す。
道人が『迦利』への対処に意識を割いた隙に(ついでにこちらを侮ってくれたら、後が楽なんだけどな)、「全力魔法」炎の「属性攻撃」「範囲攻撃」「竜脈使い」「衝撃波」「呪詛」「仙術」で烈焔陣を展開。
この一帯の大地を砕き、呪詛帯びた溶岩を噴き上げる。
敵の足場は徹底的に崩す。そのまま溶岩の泉に落ちて燃え尽きなさいな。
渾沌氏『鴻鈞道人』か。殺せないなら封ずるしかないけれど。
猟兵の一撃がコンキスタドール『有頂天道人』の体躯を打ち据える。
だが、その一撃は確かに届けども渾沌化たる力、『渾沌の諸相』によって覆われていく。
彼の恐るべきところは、その不定形にして不定義たる力である。
誰もが知り得ない。
いや、知ろうとすること自体が無意味であったのかもしれない。
それほどまでに『有頂天道人』の体躯は渾沌化とサイバー化という二つを渾然一体として猟兵達に迫るのだ。
「カカッ! あくまで俺の前に立ちふさがるというわけだな、猟兵よ」
「また来たの、あなた」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)はため息交じりに戦場に転移する。
敵を見た。
この戦場は『骸の海』が雨として降り注ぐ。
『骸の海』は生命を汚染する。故にこの場に耐えうるのは戦闘化義体に身を置き換えたものか、もしくは何らかの対抗手段を持つものだけである。
加えて『有頂天道人』は、この場に置いて強化され続けていく。
如何に猟兵が隔絶させても、ユーベルコードの効果が失われれば、再び強化されていくのだ。
「本当に厄介。|迷惑来訪者《ナイトノッカー》は速やかにお引き取りいただくわ」
「カカッ、無論よ。『はじまりの猟兵』さえ手に入るのならばな!」
「それはさせないって言ってんでしょう!」
機甲式『GPD-331迦利』がゆかりの頭上を飛び、レーザーを『有頂天道人』へと叩き込む。
だが、この程度では『渾沌の諸相』纏う『有頂天道人』を如何にすることもできないだろう。
だが、それ以上にゆかりを助けるのは傘としての役割だった。
「カカッ! なんとも大仰な傘であるな!」
「雨が降れば傘を差す、雨具を纏う、当然のことでしょう!」
「であるか! だが知るがいい。雨に濡れてなお、笑う者もまたいるのだとな!」
踏み込まれた、と思った瞬間、放たれるは不定形なる殴打の一撃であった。
迷っている暇などなかった。
ゆかは一瞬で己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。汚濁に染まりし三昧真火よ。天帝の赦しを持って封印より解き放たれ、地上を劫火の海と為せ。疾!」
砕かれるは大地。
地表を割り砕き、噴出するは無数の火柱であった。
その一撃が『有頂天道人』を捉える。
烈焔陣(レツエンジン)の一撃は、怨念に満ちた呪詛の炎となって『有頂天道人』の体躯を焼く。
呪詛帯びる火柱は苛烈なる勢いで持って『有頂天道人』を打ち上げる。
「足場は潰させてもらうわよ。そのサイバー渾沌拳が如何に不定形であろうとも、足場は必要でしょう!」
ゆかりは、敵が機械化義体を纏っているのならばこそ、己が一撃が有効であると判断したのだ。
だが、それを覆うは渾沌化。
如何なるものをも内包し、如何なる形にも変容する恐るべき力が火柱を受け止めている。
「カカッ、やるではないか!」
「鬱陶しいことを!『再孵化』、その力を手繰る、渾沌氏『鴻鈞道人』……!」
歯噛みする。
そう、敵は第一戦線から連なる第二戦線、第三戦線とすべて現れたオブリビオン。
復活するといっても限度がある。
だが、それすら無意味とあざ笑うかのように『有頂天道人』は迫るのだ。
「殺せないなら、封ずる!」
己が放つユーベルコードの火柱で圧し続けると言わんばかりに、ゆかりは己が絶陣より噴出する炎でもって『有頂天道人』を焼き続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
ディスポーザブル01操縦
サイキックシールド展開、骸の海から自身を【オーラ防御】
そして『異説悪鬼』発動。オブリビオン化した亡国の戦塵は召喚即、
超能力:瞬間移動、破壊の刀剣群を引き連れ有頂天道人へ肉薄【切断】攻撃!
『自分が為す事は、変わらない。敵を壊す事だ』
【エネルギー充填】戦塵が【念動力】を以て周囲一帯の躯の海を吸収し続け【異常継戦能力】発揮!骸の海によって増幅された無数の刀剣群による【範囲攻撃】undefinedを破壊の【呪詛】を以て破壊し続け!有頂天道人を刀剣群で覆い尽くし、骸の海から切り離す!!
『そいつの敵は自分だ!自分が敵だ!貴様も敵だ!ならば諸共壊れてしまえ!!有頂天道人!!!』
朱鷺透小枝子に対する|【闘争心】《破壊衝動》が戦塵の行動を縛る。
01メガスラスター【推力移動】RX騎兵刀から破壊呪詛物質を放出しながら刀剣群の中を【鉄壁】装甲で突っ切り、有頂天道人と悪鬼を纏めて【なぎ払い】戦塵も刀剣群を束ね【超怪力】を発揮、振るい、小枝子ごと有頂天道人を【重量攻撃】双方から攻め立てる!!
『骸の海』が雨として振る戦場に疾駆するは一騎のキャバリアであった。
鋼鉄の巨人『ディスポーザブル01』を駆るは、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)であった。
言うまでもなく『骸の海』は汚染物質だ。
生身の人間が耐えられるものではない。
生きているのならば、すべて腐食侵食し、死に導く。
そういうものなのだ。
故に小枝子は『ディスポーザブル01』を駆り、この『骸の海』から己を護るのだ。
だが、守ってばかりではコンキスタドール『有頂天道人』には勝利できない。
護るばかりで得られるのは、猶予のみ。
ならば、小枝子は己が為すことが変わらないと知る。
そう、即ち、壊すことである。
幾度となく現れた『有頂天道人』であろうと関係ないのだ。変わらず壊す。壊し続ける。敵を壊すことこそが己の存在意義。
「壊せ」
小さく呟いた言葉と共にユーベルコードが発露する。
「カカッ! オブリビオン化か!」
異説悪鬼(レヴナント)と化した鋼鉄の巨人が召喚され、疾駆する。
破壊の刀剣が汚染物質に塗れた大地に突き立てられる。
まるで剣の木々の中にあるかのようであった。
「自分が為すことは、変わらない。敵を壊すことだ」
そう、それだけだ。
踏み出す。
亡国の戦塵と化した存在が疾駆する。
追従するつもりはない。並び立つつもりもない。
共通しているのは意志のみ。
壊す。
敵を壊す。ただそれだけだと言うように満ちるエネルギーと共に『有頂天道人』を周囲一帯ごと念動力で持ってまとめ上げ、さらに吸い上げるようにして『骸の海』そのものを取り込んでいくのだ。
「カカッ、おもしろい。不倶戴天の敵を呼び寄せるか!」
「関係ない。壊す。お前を、壊すだけだ!!」
無数の刀剣群が膨れ上がった力と共に『有頂天道人』へと叩き込まれる。
迫る刀剣を尽く『有頂天道人』はサイバー渾沌拳によって叩き落としていく。なんたる技量であろうか。
砕けた刀剣の破片が舞う。
拳の軌道が見えない。それどころか、今、一体何をしたのかさえ小枝子には見えなかった。
だが、構わなかった。
亡国の戦塵が『有頂天道人』に組み付く。
そして、手繰る刀剣群によって降りしきる『骸の雨』から『有頂天道人』を覆い囲う。
遮断する。
この雨が力の源であるというのならば、切り離すのだ。
「何をする。貴様、コイツを……」
『有頂天道人』の言葉は尤もであっただろう。刀剣群によって囲ったのは『有頂天道人』のみならず、亡国の戦塵もだったのだ。何故、と思うのが当然であった。
小枝子の答えはシンプルだった。
「そいつの敵は自分だ! 自分が敵だ! 貴様も敵だ!」
そう、オブリビオンであるというのならば壊すべき敵なのだ。
故に諸共壊す。
そうなのだ。故に小枝子は闘争心をもやし、破壊衝動を以て『有頂天道人』と亡国の戦塵』の動きを縛り付ける。
踏み込む。
メガスラスターの噴射による鋼鉄の巨人が飛ぶようにして刀剣軍に囲われたニ体のオブリビオンへと迫る。
振るう騎兵刀の一撃は破壊呪詛物質を放出しながら刀剣群すら蹴散らしながら『有頂天道人』に組み付く亡国の戦塵ごと叩き伏せるのだ。
「壊す! どんな姿をしていようとも! どんな過去があるのだとしても!」
自分が壊す。
ただその一念と共に小枝子は振り抜いた騎兵刀がへし折れてもなお、その鋼鉄の拳を持って『有頂天道人』ごと、異説たる己自身を砕くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シエル・アストライト
止まない雨がないように
ここでお前も終わりです
UC【聖光&神化】使用
敵をも包み込む広さでフィールドバリアを展開&維持
骸の海の雨除けとします
これでお互い移動もできませんが
「正々堂々、斬り結ぶには丁度いい」
星光双剣【双剣使い】を構えます
相手の筋肉や関節の動きから
続く動作を【集中力&戦闘知識&見切り】で先読み
相手の攻撃を【先制攻撃&フェイント/受け流し】で制し
続けざまに【カウンター/連続コンボ】
激しく打ち合います
「分からないから分かる事もある」
見切れない動き、それはundefinedの兆し【窮地での閃き】
【武器受け】の構え、星戦聖衣のバリア【鉄壁&硬化】
【落ち着き&各種耐性】等で正体不明の技に備えます
雨が、降っている。
戦場においては珍しいことではないのかもしれない。
けれど、その雨は生命を殺す猛毒である。
『骸の海』と呼ばれる雨。
それは過去の堆積による汚染物質である。
その戦場にて猟兵と対峙しながら、打ちのめされたコンキスタドール『有頂天道人』は立ち上がる。
体躯は不定形にして不定義。
白濁のごとき靄を纏うは『渾沌の諸相』。
何れもが正体不明であり、どのように定義していいかわからない変化を続ける異形。
「カカッ! 無駄だ。どれだけ俺を打ち倒そうとしても、『再孵化』は止められぬよ。死すら許されておらぬのだ。ならば」
この戦いは、消耗戦でしかない。
『有頂天道人』は猟兵の消耗を待っているようでもあった。
だが、シエル・アストライト(Sleeping Beauty・f43373)は頭を振る。
「止まない雨がないように、ここでお前も終わりです」
煌めくは赤い瞳。
ユーベルコードの輝きは、聖光(セイクリッド・ルミナス)となって戦場を切り裂く。
「セイクリッド・ルミナス・神化(ディヴァイン・フォーム)」
温かな聖なる光が放たれ、光の加護を得た彼女は、守護剣姫へと姿を変貌させる。
戦場を包み込むは、フィールドバリア。
謂わば、雨よけであった。
敵が『骸の海』という雨で己が体躯を強化していくというのならば、これを持って強化を防ぐ。
「カカッ、その場しのぎに過ぎないことを大仰にやるものだな!」
『有頂天道人』は、しかし、今でも十分にシエルを打ち倒すことができると言わんばかりに踏み込んでくる。
だが、彼女を包み込むフィールドバリアを前に『有頂天道人』は己が必殺の拳が止められるのを知る。
「……なんだ、これは?」
「理解が遅いようですね」
シエルは己がフィールドバリアによって『骸の海』の雨を隔絶するだけでなく、『有頂天道人』の攻撃を100分の1にまで減退させるのだ。
このフィールドバリアが彼女の身を包む限り、『有頂天道人』の一撃は大きく減ぜられているのだ。
どれだけ強化を重ねても、それは焼け石に水でしかない。
故にシエルは踏み込む。
手にするは星光双剣。
手数で、というのならば『有頂天道人』も負けては居ないだろう。
だが、それでも一撃が軽いのだ。
どうしようもないことだった。しかし、その速度は圧倒的だった。
シエルは双剣で受け流しながら、カウンターの一撃を叩き込む。激しい打ち合いが続く。
火花が散るような斬撃と打撃の応酬。
「俺のサイバー渾沌拳を見切るかよ」
「いいえ、見切れはしません。見事な拳であると言えるでしょう。ですが」
シエルは知る。
如何に不定形にして不定義たる一撃であろうと変化の起こりは存在しているのだ。ならば、それを見定める。
見きれぬのならば、窮地にて閃きを得る。
躱せないのならば、受け止めればいい。
受け止めた瞬間に受け流せば良い。
ただそれだけなのだ。
「しゃらくさいな!」
「いいえ、これでいいのです。これが」
己が賭けたものだ。
強引にフィールドバリアが押し込まれる。けれど、己が星戦聖衣に『有頂天道人』の拳が触れた瞬間、彼女は瞳を見開く。
刹那である。
その刹那に彼女は身を翻すようにして体躯をひねりながら双剣の一撃を『有頂天道人』に叩き込む。
土壇場にして、一発勝負。
賭けにも似た一撃と共にシエルは、その閃きを信じて渾身を振り抜いたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
紅月・スズ
んー、その雨、僵尸にも効くアルかねー?
では早速、【護業転身・金剛震態】アル!
これで今のワタシは全身(謎の)金属の塊のメタルスズアルよー!
どんな攻撃だろうと殴り合いの距離以外は全て激減するアル!
移動を邪魔されようと気にせず、とにかく至近距離の『金剛剛腕』といつもの護業天象拳での殴り合いを狙うネ!
どの道向こうも遠距離攻撃は決定打にならないネ、その上で攻撃は見切って対応を試みるヨ
ほらほらさあさあ、いざ殴り合いアルよ!
天地万象は流転する、お互いひとときの姿形の変化は関係ないネ。でもワタシはワタシでアナタはアナタ、それだけは変えられないアルよ。
ならもう後は互いの拳と意地と技を以て、ただ打ち合うだけネ!
「んー」
紅月・スズ(路上格闘僵尸娘・f32726)は『骸の海』が雨として降りしきる戦場で一つ伸びをした。
生身であるのならば、あらゆるものを侵食していく雨。
故に『骸の海』が雨として降り注ぐ世界、サイバーザナドゥに生きる人々は皆、生身の肉体を機械化義体に置き換えて生きることを余儀なくされていた。
そうしなければ生きていけない。
呼吸器を義体化できなければ、生きることさえできない。
そんな世界と同じ環境に『有頂天道人』は変えてしまったのだ。
恐るべきことに『有頂天道人』は、この戦場の環境をこそ取り込む。『骸の海』が降りしきり、それ自体を取り込んでいくのだ。
「カカッ、貴様、僵尸か」
「そうアル。とは言え、肉体そのものを腐食させるのは厄介あるね」
「そうであろうよ。生命奪う汚染。それこそが『骸の海』。例え、死せる駆体であろうと、その肉があるというのならば、腐り落ちるは必定よ」
『有頂天道人』は構える。
眼の前のスズを警戒していると言ってもいいのだろう。
『再孵化』によって記憶は混濁しているか、もしくは欠損しているはずだ。なのにスズを警戒しているのは、彼女が護業天象拳伝承者であるからだろう。
内気を制御し、気を介して天地を巡る気さえも同様に制御せしめる拳。
天地万物すら己の体の延長線上であるというのならば、警戒せずには入れない。
「そうアルか。ならば、この鋼の如き体! そのサイバー渾沌拳で砕けぬと知るがいいアル!」
スズの瞳がユーベルコードに輝き、全身を謎の金属へと覆われた姿へと変貌せしめるのだ。
否、覆われているのではない。
その駆体、その五体。
すべてが金属へと変貌しているのだ。
まさしく金剛玉体とでも言うべき姿へと変貌しスズは構える。
「メタルスズ、これにて登場アル!」
踏み込むスズに『有頂天道人』も踏み込む。
こと、此処に至っては単純なことである。
そう、これは結局殴り合いなのだ。如何に『有頂天道人』が不定形にして不定義たる『渾沌の諸相』を身に纏うのだとしてもスズには関係のないことであった。
「カカッ! 真っ向勝負というわけか!」
「そうアル! 邪魔されようとも、スズの拳は!」
互いの拳が激突する。
変容するようにして形を変える『有頂天道人』の拳にスズは己が鋼鉄の拳でもって打ち砕くようにして振るう。
「殴り合いのためアルよ!」
天地万象は流転する。
それは真理である。
故に、スズの手繰る護業天象拳は、護業転身・金剛震態(スゴイカタイスズアル)を得て、さらなる頑強さを誇るのだ。
そして、何よりも。
対応し始めている。
スズは不定形にして不定義たる渾沌の一打を見切り始めていた。
ありえないことである。
『有頂天道人』は呻くしかなかった。そのはずである。彼にとっても『渾沌の諸相』の変化はすべて把握できるものではなかったのだ。
最適たる打撃の道程にある変化など知る理由もない。だが、スズの瞳は、それを見ていた。
「ワタシはワタシでアナタはアナタ、それだけは変えられないアルよ」
「貴様、何が見えている!」
「天地万象流転せしめて、世界に映るは互いの一時の陰。姿形の変化は関係ないネ」
だから、変えられなのだ。
本質というものは。
故にスズの金剛の如き拳の一撃が『有頂天道人』の拳を躱しながら、彼に理解できぬ理でもって、その胴を穿つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シルキー・アマミヤ
はいはーい★ナイアルテさん、お仕事承ったよー★
骸の海だけど、不本意だけど今のシルキーちゃん、体は全部作り物だからね★あーとーは―……確実に殺さなきゃいけないみたいだし、ちょっと本気で行くよー★
――領域展開、UC【滅殺機構・抹消領域】――
これで「有頂天道人殺害の為の全行動」が強化され、「それ以外の全ての行動」は弱体化するよ★勿論、どれだけ姿を変えようと同じ。あなたが「有頂天道人」である限りはね★
相手の攻撃に対してはホログラムでの欺瞞工作とロボットビーストをぶつける事で対抗し、攻撃時にはパルスブレイド、スプレッドダガーによる射撃・投擲攻撃と高出力ホロブレイドで傷口ごと「焼く」事で止血を試みるね★
シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は今回の戦場こそ、己向きであると思った。
彼女は頭脳戦車である。
電脳にあるAI、アーティフィシャル・インテリジェンスは、己が駆体がすべて義体と同じものであると知る。
戦車の形を取っているだけ。
故に、その駆体に生身の部分は何一つない。
如何に『骸の海』が雨として降る戦場にあっても、彼女に影響を及ぼすことはない。
思考は冴えわたる。
計算していく。
コンキスタドール『有頂天道人』は、第一戦線から必ず猟兵たちの前に立ちふさがる。
だが今回は違う。
今回は己たちが『有頂天道人』の前に立ちふさがっているのだ。
そう、彼の目的は『はじまりの猟兵』の確保である。この先に彼の求めるものがあるというのならば、シルキーはこれを止める。
なんとしても……いや、確実に殺さなければならない。
「ちょっと本気でいくよー★」
彼女はいつもの思考回路のままに笑うような声を出した。
「カカッ! ならば受けて立とう! 貴様らすべてを打倒する。師父にとっては余計なこと、瑣末事であるやもしれぬが! なに『はじまりの猟兵』さえ手に入れれば、師父も納得してくださるだろう」
「そういうのが、役割に徹しきれていないって証明だよね★ そんなんだから、三回も出ずっぱりなんだぞ★」
シルキーは、そのカメラアイをユーベルコードに輝かせる。
「さあ★ あなたの為だけの特別ステージだぞ★ 満足するまで堪能していってね★」
展開されるのは、滅殺機構・抹消領域(エリミネートデバイス・シュレッドステージ)であった。
ノイズに塗れた電脳と現実の入り交じる廃墟。
それが『有頂天道人』を取り囲んでいく。
敵味方関係なく取り込む領域。
それは、世界の理を書き換えるユーベルコードであった。
「対象は、『有頂天道人』★」
対象を殺害するまでの行動すべてが強化され、それ以外のすべての行動が弱体化される法則。
これを付与された戦場は如何に『骸の海』が降り注ぎ、『渾沌の諸相』を得るのだとしても、弱体化からは逃れられないのだ。
「如何に『渾沌の諸相』で姿形を変えられるのだとしても、あなたが『有頂天道人』であることは変えられない」
「カカッ、考えたな。この戦場の環境を如何にするかと思えば、そのまま入れ替えるか!」
だが、と踏み込む『有頂天道人』の拳がシルキーへと迫る。
その一撃をロボットビーストが受け止める。
本来であれば、一撃で爆散するはずだ。けれど、彼女のユーベルコードで弱体化された拳は、ロボットビーストでも受け止められるのだ。
パルスブレイドとスプレッドダガーが乱舞する。
強化された爆発と電磁場が『有頂天道人』を襲いかかる。
「まったく、ここまで弱体化されているのに★」
「カカッ! タダではやられぬよ!」
打ち付けられる拳をシルキーは受け止めながら、高出力のホロブレイドの一閃でもって『有頂天道人』の体躯を切り裂く。
血が焼ける音がする。
「これでそのやっかいな血は止めたぞ★」
「しゃらくさい! この程度で我がサイバー渾沌拳が止まるものかよ!」
「止められなくっても、弱体化捺せ続けることはできるぞ★」
シルキーは己が放つスプレッドダガーの炸裂と共に『有頂天道人』を縫い止め、その弱体化を助けるように……いや、確実に打倒できるようにと、己が領域の中に『有頂天道人』を囲い続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
何度復活しようと、同じだけ倒すだけという気概は持ち合わせているが、しかし
お前だけに構っていられない――いい加減、本当に決着をつけようか
神刀の封印を解除。壱の秘剣【銀流閃】を発動して斬り込む
味方には体力の回復と状態異常の無効化を、敵には継続攻撃を与える――尤も、汚染を完全に遮断はできないし、回復も追いつかない
だが、敵の血液による知覚妨害は抵抗できそうだ
とはいえ相手は強化も受けているし、押し込むにはもう一手が必要。ここは賭けにでる
数秒のみ【銀流閃】の味方に有頂天道人を含める。そう認識する
奴の身体に宿る「渾沌」。異物であるソレは一種の状態異常であるが故に一時的に効果が弱まる
そこで全力の一撃を与えよう
猟兵たちのユーベルコードが戦場に明滅している。
彼らの力は、コンキスタドール『有頂天道人』が得た『骸の海』が雨として降り注ぐことによる強化を無きものとするものであった。
誰だって一人では戦い続けられない。
だからこそ、紡ぐように戦うのだ。
己もその一人だ。
「何度復活しようと、同じだけ、倒すだけという気概は持ち合わせている」
「カカッ、ならば、幾千と付き合ってもらおうか!」
『有頂天道人』の言葉に夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は頭を振る。
「お前だけに構っていられない」
鏡介の言葉は正しい。
そう、猟兵たちが対するのは『有頂天道人』だけではない。
超大国のオブリビオンたち。
その指導者であったり、司令官であったり、そもそもこの世界の外側から来訪したものもいる。
構っていられない。
ならば、なんとするか。
「――いい加減、本当に決着をつけようか」
「そのつもりである。俺が『はじまりの猟兵』を師父に差し出せばな!」
互いのユーベルコードが明滅する。
鏡介は神刀の封印を解き、神気を開放する。
対する『有頂天道人』は『渾沌の諸相』を持って鏡介へと迫る。
迸るは血潮。
『有頂天道人』はこれまで得た傷跡から流出する血を鏡介へと放つ。
鏡介の視界は埋め尽くされる。
何に、と表現することができない。
それである、と理解した瞬間、それとは違うものが目の前にある。理解した、知覚したという瞬間こそが誤りのはじまりであるというように鏡介の視界は不定形にして不定義たるものに埋め尽くされてしまうのだ。
だが、鏡介の瞳は見開かれる。
月白色の神気が発露し、己が加護とするのだ。
あらゆる異常を遮断する力。
それによって鏡介の視界は開かれ、迫る『有頂天道人』を見据えた。
これは賭けだ。
「神刀解放。邪を絶ち、善を守護せん――壱の秘剣【銀流閃】(イチノヒケン・ギンリュウセン)」
放つは邪悪を断ち切る白銀の神気。
それは斬撃へと昇華し『有頂天道人』へと迫る。
だが、その斬撃は『有頂天道人』を切り裂くためではない。
彼を味方として認識し、その内部にあるであろう『渾沌の諸相』をこそ異物として問えられたのだ。
渾然一体たる2つの力。
励起したそれを離すことはできなかった。
「賭けには負けたか、猟兵!」
「ああ、だが」
けれど、それでも鏡介は見ただろう。
これまで紡いできた猟兵たちの一撃、一撃が、『有頂天道人』の強化をほどいてきたのを。故に、彼の斬撃は『有頂天道人』へと叩き込まれる。
「これが全力だ」
振るう斬撃にためらいはなく。
一閃は『有頂天道人』へときざみこまれるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
かゆいかゆいかゆいですー!?
もういろんなところがかゆいです。
可愛くて乙女な勇者にあるまじきところまでかゆいです!
なにって練乳が切れちゃったんですよ!
明日にならないと届かないんです!
そんなときに、あんなドシリアスキャラなんていじめですか!?
ステラさんの雄叫びだけじゃシリアスが解消されないんですよー!
ステラさん、短期決戦でいきますよ!
このままじゃわたしのイメージだだ下がりですから、
いろいろバレる前に決着つけないと!
骸の海からの守りはわたしがなんとかしますので、
あの二足歩行のネコ科生物、なんとかしてくださーいっ!
さ、ステラさん、おんぶしてください。
両手が使えないと演奏できないですからね!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
渾沌化……!
鴻鈞道人もなかなか強引な手段を取ってきましたね
しかも赦されざる罪とは……
鴻鈞道人がユーベルコードを『罪深き刃』と呼んだことと関係があるのでしょうか?
ともあれ……ルクス様ー?
なんかもうアレルギーで本音がだだ洩れしているルクス様ー?
あるまじきはルクス様の言動だと思うのですが……
誰がやべーメイドですか
あと、ルクス様のイメージは、その、えっと、うん
バレてると思うのですが……
意外とやる気なルクス様に続いて
『ニゲル・プラティヌム』を構え
スクロペ……はい?おんぶ?
ええい、高機動戦には邪魔過ぎるじゃないですか!!
せめて肩車で!
ということで改めて
【スクロペトゥム・フォルマ】で仕掛けます!
『渾沌の諸相』。
それは不定形にして不定義たる力の発露である。
白濁の如き色、されど、それが本当に白色であるのかさえ定かではない。
翼であったり、殺戮の刃であったり、はたまた蠢く触手であったりと不定形。
瞬くの間にも変わりゆき、その姿を示すものは何一つない。
故に渾沌化。
さらなる力を得たコンキスタドール『有頂天道人』は、その『渾沌の諸相』を持って猟兵達に対峙する。
得るべきは『はじまりの猟兵』ただ一つ。
これを得るためだけに彼は三度『再孵化』によって猟兵たちの前に立ちふさがるのだ。
「カカッ! 力が漲る! 俺はまだ負けてはいない。どれだけ猟兵が俺を打倒線とユーベルコードを振るうのだとしてもだ!」
その姿にステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は呻く。
「渾沌化……! 鴻鈞道人もなかなか強引な手段を取ってきましたね。しかも赦されざる罪とは……」
ユーベルコードのことをかつて、渾沌氏『鴻鈞道人』は『罪深き刃』と行った。
そして、赦されざる罪を暴き立てるとも。
世界の破滅によってさらけ出される真実があるというのだとしても、それでもステラは『有頂天道人』を『はじまりの猟兵』の元へと近づけさせるつもりはなかった。
「なんであれ……あなたは三度私達に倒されるのです」
「カカッ、意気やよし! されど、できるかな! この『渾沌の諸相』を得た俺を!」
「やらねばならぬのです。世界を破滅に導かせぬためには……!」
漂う緊迫した空気。
されど、ステラは今の今まで一言も発しないルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)を見やる。
敵は手練れにして強敵。さらに強化されている。
此処は気を引き締めなければならないとシリアスな目を彼女に向けたのだ。
「かゆかゆかゆいですーかゆかゆのかゆですー!?」
だが、そんなシリアスは彼女のアレルゲンである。
不憫なことである。
「もういろんなところがかゆいです。可愛くて乙女な勇者にあるまじきところまでかゆいです!」
どこ? そこ? ここ?
あいや、これはただの表現をする際に必要な確認なので。
「……なんかもうアレルギーで本音がただれもしているルクス様ー? あるまじきはルクス様の言動そのものだと思うのですが」
「そんなの関係ないです! だってもう練乳切れちゃったんですよ! 明日に成らないと届かないんですよ! 明日届いてもまたシリアスな雰囲気が連続しそうなんですけど! そしたらもう足らなくなりませんか!? あんなドシリアスキャラの前に連れてくるなんて! いじめじゃないですか!?」
ルクスは喚いた。
とっても喚いた。
それはもうシリアスな空気がどこに行ったのかと思うほどの叫びだった。
「ステラさんの雄叫びだけじゃシリアスが解消されないんですよー!」
そう、ルクスは叫んでいた。
そうしなければ、いろんなところが痒くて仕方がないのだ。
アレルギーもそこまで行くともうなんていうか、一度ゴッドハンドに見てもらった方がいいのではないだろうか。
ツボでどうにかならんだろうか。
この場合のツボっていうのは、経絡とかそういうやつのツボであって、怪しげな商法の壺ではないことは明記しておこう。
「誰がやべーメイドですか」
「行ってませんよ! わたしのイメージがくださがりです! 色々バレる前に決着を付けないと!」
「えっと、うん、その」
言うまでもなくバレている。
勇者っていう言葉だけが残っているだけで、後の形容詞やらはもう好き勝手にイメージダウンしているものばかりである。
「『骸の海』からの守りはわたしがなんとかしますので、あの二足歩行のネコ科生物、なんとかしてくださーいっ!」
「ネコ科生物とは俺のことか?」
「あなた以外居ます!? そんな変な格好ばかりして!」
「意外とやる気ですね、ルクス様……って何、えっ?」
ステラが二丁拳銃を構えた瞬間、その背におぶさるのはルクスであった。
戦いに在って何をふざけているのかとステラは憤慨しかけたが、ルクスが耳元でささやく。
「両手が使えないと演奏できないんです」
「それは、つまり?」
「耳元で演奏聞かせてあげます、はーと」
「はーとじゃないですけど!?」
やばい、とステラはおぶさったルクスを少しでも遠ざけようと体を持ち上げ、肩に足を乗せさせる。
そう、肩車である。
なんかこう、どこかの国の映画で見たような感じになっている。
映画『JJJ』みたいなやつ。
分かる人だけわかっていただきたい。
「あっ、皇帝讃歌(コウテイサンカ)でいきますね!」
「ええい、これが友情の力というものです!『有頂天道人』!」
「カカッ! 愉快! だが!」
互いに激突するユーベルコード。
なんかこうもう、絵面が違うっていうか、画風が違うっていうか、シリアスもギャグも全部ひっくるめた渾沌めいた戦いは更に続き、ステラはルクスを肩車したまま器用に二丁拳銃を手繰り、凄まじき攻防を繰り広げたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
ついに約束を果たすときが来たようだね!
一人目二人目のキミはこう言ったんだよ
「三度…もし三度、私を倒すことができたらそのときはマスター・道人とミスター・カルロスの秘密、その全てをお話しましょう…!」ってね!
(言ってない)
●雨の日には傘!
特大の[白昼の霊球]くん(骸の海遮断設定)で結界の様に戦場を包んでオッケーオッケー!
【undefined】は波長がちょっと読みづらいけど…そこはボクの長年の経験と|勘《【第六感】》で霊球くんの遮断設定を変更していって一瞬でも耐えて押し退けられれば十分だよ!
なんで一瞬で十分かっていうのは…こういうことー!
UC『神撃』でドーーーーーンッ!!
猟兵とコンキスタドール『有頂天道人』の戦いは佳境に至る。
ユーベルコードの激突が明滅し、戦場に降り注ぐ『骸の海』の雨すらも吹き飛ばしていく。
汚染された大地は、もはや死の大地と行って差し支えないほどにただれていた。
その大地に一人断つのは、巨大な球体を傘にしたロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)であった。
「ついに約束を果たす時が来たようだね!」
彼は大仰に言い放つ。
何のことだ、と『有頂天道人』は訝しむ。
約束。
思い返そうとしても『再孵化』によって記憶は断片的にしか持ち越せない。
そういうものなのだ。
故に、『有頂天道人』は約束というものがなんであるのか理解できずに、その動きを止めた。
「なんぞ、そのような約定をしたのか?」
「覚えていないのかい! 一人目二人目のキミはこう言ったんだよ!」
ロニは憤慨していた。
とっても憤慨していた。
約束を破られたことに、ではない。
約束覚えていなかったことに、だ。
「『三度……もし三度、私を倒すことができたら、その時はマスター・道人とミスター・カルロスの秘密、その全てをお話しましょう……!』って!」
そんなこと言ったか?
『有頂天道人』は暫し考えた。
いや、考えるまでもない。
してない。そんな約束してない。言葉遣いもおかしいし、そんな約束をするとは思えなかったのだ。
まあ、事実してないので。
「でもまあ、オッケーオッケー! 約束を忘れていたって、ボクが一方的に覚えていたって、約束は約束だもんね!」
「いや、意味がわからんのだが」
「そっか! でもいいよ! どの道!」
ロニは笑って飛び込む。
『骸の海』が降り注ぐ戦場にあって、『有頂天道人』は時間と共に強化されていく。
そのために猟兵達はユーベルコードでもって『有頂天道人』を消耗させ、その強化を剥ぎ取ってきたのだ。
ロニはそれを知るからこそ、迫るサイバー渾沌拳の一撃に、そこまでの技の冴えを見ることがなかった。
不定形にして不定義。
されど、その拳にキレなくば、己が勘であれば躱すことができずとも致命打を受けることはない。
「ボクの長年の経験と勘を侮らないことだね!」
迫る不定形の拳。
それは遮断設定をしていてもなお、防ぎようのない一打であった。
ロニの額に叩き込まれる拳。
だが、その衝撃が彼に伝わり切る瞬間にロニの首が曲がり、ぐるりとその場で一回転する。
「一瞬で十分なんだよね!」
ロニの瞳がユーベルコードに輝く。
一瞬。そう、一瞬でよかったのだ。
己が放つ一撃は、一瞬で全てを破壊する。
「つまり、こういうことだよ! ド――ンッ!!」
振るうは、神撃(ゴッドブロー)。
ただの拳の一撃。
されど、それは汎ゆるものに神々しさを感じさせるユーベルコードの輝きと共に『有頂天道人』を叩き伏せるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヌグエン・トラングタン
なるほどな、相手にだけバフがかかる状態ってわけだ。
なら…致し方ない。
オーバーロードによる封印解除。青白い凍れる炎を纏った黒いドラゴン。それが俺様の本来だ。
同時にデスペラティオ・ヴァニタスなんだけどな…ああ、忌々しい。忌々しいが…UC使用。俺様に戻れ、凍炎不死鳥。
この状態、一部のUCしか使えねぇからな…。
たとえ、汚染を受け続けてもな。俺様は怯まねぇし、退却もしねぇ!
それが、『|大厄災の竜《アドウェルサ・ドラコー》』ってもんだ。
雨に異物混じってても、これは避けようがないだろ。啜った分は、俺様に還元される。
知覚全てを覆っても関係ねぇぜ。光線矢は自動追尾だし、全て尻尾での薙ぎ払いも加えてるからな!
…あとで連絡しねぇとなぁ…。
「なるほどな」
ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は理解する。
『骸の海』が雨として降りしきる戦場。
これは唯の雨ではないことは言うまでもなかった。
ゲームの世界、ゴッドゲームオンラインで言うところのデバフというものだとヌグエンは理解したのだ。
ただ戦場にあるだけで己達はバッドステータスを得るデバフ状態。
そして、コンキスタドール『有頂天道人』にとっては常時バフが掛かっている状態なのだ。
『骸の海』は言うまでもなく汚染物質である。
生身の存在は生命を維持することすらできぬほど。
故にサイバーザナドゥと呼ばれる世界は生身を機械化義体に置き換え、かろうじて生きながらえることができるのだ。
その状況を、この獣人戦線の世界にて塗りつぶすようにして展開しているのが『有頂天道人』なのだ。
これが『渾沌の諸相』。
常に不定形にして不定義。
今、己が目にしている『有頂天道人』の姿は、一瞬の間に千差万別に変わりゆく。
恐るべきことである。
「なら……致し方ない」
これまで他の猟兵たちが『有頂天道人』の強化を剥ぎ取ってきてはいたが、それでもなお、彼は立ち上がっていた。
消耗している。
畳み掛けるのならば今しかない。
ためらいがないのかと言われたら、それはあるのだろう。
けれど、忌々しいことに今のヌグエンでは『有頂天道人』を滅ぼすことはできないだろう。
故に、彼は超克の輝きと共に真の姿を晒す。
「俺様にもどれ、凍炎不死鳥」
一度だけだ。
ただの一度だけ。
その瞬間にヌグエンは全てを賭ける他なかった。
語ることはない。
何一つ語らない。
あるのは結果のみ。因果が全てに報いとなって応じるのならば、覚悟だけが己の足を立たせるのだ。
「これが俺様の本来の姿だ」
真の姿。
それは猟兵にとっても千差万別。
青白い凍れる炎を纏った黒き竜。
それがヌグエンの姿、『デスペラティオ・ヴァニタス』。
「カカッ! やはり猟兵とは面白いものだな。猟兵という分類にあるだけで、その中身は『渾沌の諸相』と変わりないではないか!」
故に、と『有頂天道人』は拳を構える。
この場に置いて優勢たるは『有頂天道人』である。
『骸の海』による汚染。これによって猟兵は生身であるがゆえに、その体躯を蝕まれてしまう。
ヌグエンにしてもそうだ。
汚染は止められない。
己が身が過去そのもの、『骸の海』に侵食されていく。
「だからなんだってんだよ。俺様は怯まねぇし、退却もしねぇ!」
それこそが己の。
|『大厄災の竜』《アドウェルサ・ドラコー》なのだ。
ユーベルコードが輝く。
生命啜る凍れる炎雨が戦場に降り注ぐ。
それは如何に不定形たる姿を持つ『有頂天道人』であろうと関係なく注ぐのだ。
ここに生命はない。
あるのは過去の化身のみ。
『骸の海』は命ある物を全て侵す。大地も、草木も、人も。関係なく汚染していく。
そういうものなのだ。
これは滅びそのもの。
故に、すすれる生命はなく。されど、凍れる炎の矢がヌグエンより迸る。
「カカッ! そうか! だが!」
狙いは付けられないはずだと『有頂天道人』が言う。
事実であった。今のヌグエンの視界は、不定形たる渾沌に塗りつぶされている。
けれど、構わなかった。
己には何も見えていない。けれど、己が放つ凍れる炎の光線矢は、『有頂天道人』を自動追尾している。
見えずとも、敵がいるという時点で放たれたユーベルコードは『有頂天道人』を狙っているのだ。
「見えないからって撃てないわけじゃあないだろうが!」
咆哮と共に放たれる矢が『有頂天道人』を貫く。
身を苛む渾沌。
災厄を塗りつぶすかのような力を受けてなお、咆哮する。
己の真の姿をさらし、それでもなお退却はないと、凍れる炎の矢は『有頂天道人』を狙い、その身を穿ち続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィンデ・ノインテザルグ
Fireflyに搭乗して前線へ。
雨の直撃はこれで避けられるが
いつ機体に影響が及ぶかは分からない、早期決着に挑むとしよう。
速度勝負ならば望む処だ。
十字を切った指を打ち鳴らし、超加速して距離を詰めよう。
相手の回避を見越して弾道計算を行い
敵側面と背面に回り込ませるようにしてSatanで追尾。
Leviathanによる斬撃とブーストキックで近接格闘を行いたい。
重めの一撃に敢えて腰をつくように倒れ
攻め入ってきた処を
Asmodeusによる溜め撃ちで反撃してみせよう。
串刺しに出来ずとも
爆煙の中で覆い被さるような体制を取り
敵の肉体に雨が注がれぬように留意したい。
異教徒の言だが
『仏』の顔は三度までだそうだ。散れ。
『骸の海』の雨が降る戦場を疾駆するのは、いびつな下半身を持つ鋼鉄の巨人だった。
鋼鉄の巨人、即ちキャバリアである。
高速機動特化型キャバリア『Firefly』は逆関節型のアンダーフレームでもって跳ねるようにして戦場を疾駆する。
駆るはヴィンデ・ノインテザルグ(Glühwurm・f41646)である。
彼の視界にあるのはコンキスタドール『有頂天道人』。
されど、その姿かたちは不定形。
センサーの類を用いても、不定義。
それこそが『渾沌の諸相』であると知る。如何様にも変化し、如何なる姿も定まらない。
恐るべき敵である。
しかし、ヴィンデは速度を選ぶ。
己は機体のコクピットに在るがゆえに『骸の海』の影響を今は防いでいるが、しかし、それがいつまで保つかの確証がなかった。
加えて言うのならば、『有頂天道人』との戦いで機体に損傷がでれば、そこから汚染される可能性だってあったのだ。
「即ち、立ち止まっている時間はない」
早期決着。
それこそが彼の求めるところであり、また同時に望むところであった。
十字を切った指を揺らす。
ユーベルコードの輝きに機体のアイセンサーが煌めく。
「――……好い朝だ。戦うには、すこぶる好い」
機体の高速戦闘モードによって疾駆する。
目まぐるしく変わる戦況。
猟兵たちのユーベルコードの明滅をヴィンデは見た。夜明けの星のような輝きだと思った。
だからこそ、今は朝なのだ。
どんな夜だって明けるという。
けれど、ヴィンでは未だ『夜』の中にいる。
星の輝のようなユーベルコードを標にして疾駆する。
「カカッ! 鋼鉄の巨人の殻の中に籠もって、何を見るかよ、猟兵!」
対するは、サイバー渾沌拳。
『有頂天道人』は、不意をついた背面からのブーストキックの一撃を受け止めていた。
『渾沌の諸相』は、如何様にも形を変える。
白濁の翼を持って一撃を受け止めた『有頂天道人』にすかさず、ホーミングレーザーを叩き込む。
翼から飛び出した羽がこれを受け止め、弾くのだ。
なんという反応速度だろうか。
ヴィンデもまた己が機体をクロックアップ・スピードでもって加速させているというのに、動きについてこられている。
凄まじいの一言である。
「防ぐか、これを」
「当然よ! カカッ! 三度目とは言え、ここで敗北を喫しては師父に申し訳が立たぬ!」
まるで体格差を意に介さないかのように『有頂天道人』はヴィンデの操る機体を吹き飛ばす。
迫りくるは、宙に飛ぶ『有頂天道人』の飛び蹴り。
あの一撃は受けられない。
故にヴィンデは決断する。
蹴撃を受け止め、装甲が砕ける。ひしゃげる腕部。しかし、その腕部ごと『有頂天道人』を押し倒すようにして大地に叩きつける。
「カカッ、この程度で組み敷いたつもりか!」
「いいや。これでいい。この体制ならば、『骸の海』は浴びれまい。そして」
振りかぶるはパイルバンカーを装備した腕部。
炸薬が爆発する音が響く。
打ち出されるは鉄杭。
「異教徒の言だが。『仏』の顔は三度までだそうだ。散れ」
即ち、これが終幕であるというようにヴィンデは鉄杭でもって『有頂天道人』の体躯を穿ち、貫く。
終わりに導く一撃。
その一撃はいつだって、斯様なものである。
穿たれたパイルバンカーは墓標のように『有頂天道人』を大地に縫い止め、三度目の滅びを与えたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵