獣人世界大戦⑳〜はじまりの果て
●はじまりの彼女
闇が世界に溢れ出すその中で、安堵にも似た喜びの声を上げた少女がいた。
「……六番目の猟兵!! 待っていました。ずっと、待っていました!」
『はじまりの場所』の結界が消えるこの時を、皆さんがここへ到達するその時を。
「本当は、今すぐ皆さんに全てを伝えたいけれど……」
そうもいかない理由があるのだと少女は語る、そして願うはただ一つ。
「どうか私と戦ってください!」
そうすれば、きっと真実を語る事ができるはずだから――。
●グリモアベースにて
「第三戦線が解放されて、はじまりの場所の結界が消えたのは皆も知っている所だと思うんだが、そこからはじまりの猟兵が姿を見せたよ」
獣人戦線での戦争もいよいよ終盤だね、と深山・鴇(黒花鳥・f22925)が集まった猟兵達に向けて頷く。
「はじまりの猟兵たる彼女が持っている情報は『二番目から五番目の猟兵について』だ。何としても六番目の猟兵である皆に話をしたいらしいんだが……一つ問題があってね」
猟兵達の前に立つはじまりの彼女は既に死んだ身、|世界の敵《オブリビオン》と化した状態。どんなに真摯に真実を告げようとしても、嘘の情報を渡してしまう可能性があるのだという。
「これは彼女がオブリビオンという存在になってしまった弊害なのだろう。ただ、簡単には復活できない程に叩きのめされれば、その最後に少しだけ真実を語ることができるらしい」
叩きのめす方法は様々あるだろうけれど、できれば穏便に済ませたいと思う猟兵だっているだろう。
「そこでなんだが……彼女はわりと、その……少しばかりポンコツなところがあるみたいで」
ポンコツ。ポンコツ? なんて? という顔で猟兵達が鴇を見る。
「まず、自分の事は弱いと宣言している。これはね、はじまりというだけあって、最初期の猟兵……つまり最新の能力や戦術は持ち合わせていないからなんだ。だけど戦闘に関する技能は高レベルで習得しているし、自身のユーベルコードと組み合わせて『戦場の戦い方』で挑んでくる」
別にポンコツではないのでは? 寧ろ侮れないシンプルな強さを持っているのでは?
「なんだがね……本人は真実を語る為に『いっそ紙芝居にすれば……?』とか考えるくらいでね」
人が良いんだろうね、と鴇が笑う。
「そんな彼女だ、戦闘……勝負の方法は恐らく皆に合わせてくるだろう」
つまり、だ。料理勝負を挑めば料理勝負で、ガチの真剣勝負には真剣勝負で、トンチキにはトンチキで――そういうことである。
「どんな方法であっても、彼女を負かせばその分ダメージは蓄積するよ」
そうすれば、彼女は末期に少しだけ『二番目から五番目の猟兵について』の情報を語ることができるだろう。
「戦い方はお前さん方に任すよ」
そう言って、鴇は手の中に煙のようなグリモアを喚び出す。
「どんな戦い方であっても、勝つ自信はあるだろうからね。それじゃ、気を付けて行っておいで」
信じているよ、と言外に告げてゲートを開いたのであった。
波多蜜花
閲覧ありがとうございます、波多蜜花です。
第三戦線が開始されましたね! 戦争依頼四本目、こちらはどちらかといえばトンチキ向けではありますが、シリアスでもトンチキでも皆様の思うようにプレイングをおかけくださいませ。
●プレイングボーナス
「戦場の戦い方」に対抗する/圧倒的な力や最新戦術で叩き潰す。
●プレイング受付期間について
公開されてからすぐの受付となります。〆切は特に設けず完結成功数+書けるだけの採用になりますが、プレイングが送れる間は送ってくださって大丈夫です。
全採用できるかはわかりません。頑張りたいとは思いますが、その点だけご了承くださいませ。
●同行者について
同行者が三人以上の場合は【共通のグループ名か旅団名+人数】でお願いします。
例:【はじまり3】
プレイングの失効日を統一してください、失効日が同じであれば送信時刻は問いません。朝8:31~翌朝8:29迄は失効日が同じになります(プレイング受付締切日はこの限りではありません、受付時間内に送信してください)
未成年者の飲酒喫煙、公序良俗に反するプレイングなどは一律不採用となりますのでご理解よろしくお願いいたします。
●その他
この戦闘中に彼女が『二番目から五番目の猟兵について』の情報を語ることはありません、戦争終了時点で⑳を制圧していれば、戦争終了後に初めて語ることが出来るでしょう。
このシナリオに限り、皆様の戦い方に合わせて攻撃してきます。それが料理勝負でもトンチキ勝負でも、純粋な戦闘でも、です。皆様の得意分野でも大丈夫です。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております!
第1章 ボス戦
『はじまりの猟兵』
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POW : ストライク・イェーガー
レベルm半径内の対象全員を、装備した【ライフル】で自動的に攻撃し続ける。装備部位を他の目的に使うと解除。
SPD : プログラムド・ジェノサイド
【予め脳にプログラムしていた連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : キューソネコカミ
【ライフル】が命中した敵を一定確率で即死させる。即死率は、負傷や射程等で自身が不利な状況にある程上昇する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エミリィ・ジゼル
かじできないのホームランダービー!
はじまりの猟兵ことはじまりちゃんにバッティング勝負を挑みます
ルールは簡単
ピッチャーとバッターに分かれ、先にボールをかっ飛ばした方が勝者です
ルールは決めましたので先手はお譲りします
●ピッチャー
ただ速いだけでは打ち取られそうなので
【投擲】技能を生かした速い変化球、いわゆるカットボールで勝負します
ボール一つ分だけ想定からずれる。この変化は見極めが難しいはず
●バッター
世界樹のバットを構え、【弾道計算】でボールを【見切り】、渾身のフルスイングで【吹き飛ばし】
アスアスで勝利をもぎ取った4番打者のじつりきでかっ飛ばします
UCなんて必要ねえ
わたくしの野球ぢからを見せてやるぜ!
●ホームランをぶちかませ
「なるほど、ではここに『かじできないのホームランダービー』を開催します!」
『えっ、誰です? かじできないさん??』
はじまりの猟兵が戸惑いながらも問い掛けた言葉に、かじできないさんことエミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)が笑顔で頷く。のっけからシリアスは死んだ、いいね?
「かじできないさんとはわたくしのこと、でも呼ぶには長いでしょうからエミリィで結構です」
『は、はい、エミリィさん』
「ではあなたのことははじまりの猟兵と呼ぶには長いのではじまりちゃんと呼びます」
『はじまりちゃん……なんだか可愛らしくていいですね!』
はじまりの彼女がとても乗り気なので、彼女のことははじまりちゃんと呼ぶことに決定である。
「では早速ですがバッティング勝負です」
『ばってぃんぐ……』
「ルールは簡単です、ピッチャーとバッターに分かれ、先にボールをかっ飛ばした方が勝者です」
この棒のようなものがバット、こちらがボール、とエミリィがテキパキと説明を続けていく。
『なるほど……わかりやすいですね! 一回勝負なのですか?』
「その予定ですが、何か問題でもありますか?」
『ないです、あの、でも……一回だけなのは勿体ないなって思っちゃったんです』
「はじまりちゃんは妹属性的なものをお持ちです?」
これがポンコツ可愛い……? そういうことなのでしょうか……? と考えはしたが勝負は勝負、とエミリィが心を鬼にしてこくりと頷く。
「勝負ですから。ルールは決めましたので先手はお譲りします。はじまりちゃんがバッターです」
『わかりました!』
バットを手にし、いい感じにぐるんぐるんと回しながら指定した位置にはじまりの猟兵が立つ。
「よろしいですか?」
『はいっ!』
軽く素振りをして感覚を掴んでいる彼女に頷き、エミリィがボールを手にして構えた。
ただ速いだけの球では見切られて打ち取られる、相対した彼女からはそういう気配がしている――ならば、わたくしの技能を活かした速い変化球で勝負だと、エミリィが大きく振りかぶり、ボールを投げる。
『わ、わわっ』
はじまりの猟兵が慌てながらもタイミングを合わせるようにバットを振り――空振りを見せた。
『あ、あれっ!? 捉えたと思ったのですが……!』
「中々に良い勘をしています」
やはり、ただのストレートボールにしなくてよかったとエミリィは思う。ボール一つ分だけ想定からずれるカットボールを選んだのは正解だったのだ。
『じゃあ、次は私が投げる番ですね!』
「はい、思い切りどうぞ。あ、このゾーン内でお願いしますね」
このゾーン、とストライクゾーンを大まかに示してエミリィが世界樹のバットを構える。はじまりの猟兵のボールを持つ手の動き、そして視線の先などをつぶさに観察しつつ、いつでもどうぞと声を掛けた。
「わたくしの野球ぢからを見せてやるぜ!」
『いきますっ!』
はじまりの猟兵の声は弾んでいて、どこか楽し気。エミリィを真似ているのか、フォームは似ている。けれど、その腕の振り抜きから放たれたボールは剛速球そのもの。即座に弾道計算すると共に、ボールがストライクゾーンに入るタイミングを見切り――。
「ユーベルコードなんて必要ねえ、かっっっ飛ばしますっっ!!」
渾身のフルスイング、それはアスリートアースでも勝利をもぎ取った、四番打者の実力、いや、じつりき!
『わ、わぁ……!!! すごい、すごいです! ホームランですねっ!』
わぁわぁと、負けたのにも関わらず大喜びの彼女から、闇がするりと抜けていくのが見えた。
『あの、わたしの負けですけれど、もう少しやりませんか?』
だめですか? と問う声はなんだか捨てられた子犬を思わせて。
「少しだけならいいですよ」
つい、エミリィはそう答えていたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
御形・菘
はっはっは、己の弱さを自覚した上で積み上げた研鑽はどこまでも尊い!
ならば妾も、妾なりの真剣で己の至上を見せつけよう!
右手を上げ、指を鳴らし、スクリーン! カモン!
はーっはっはっは! 今日も元気かのう皆の衆よ!
此度のバトルの相手は、妾の配信史上最高の超VIP!
だが! 皆の声援が後押ししてくれたら、妾が負ける道理などない!
これこそが妾の最高究極奥義だ
さあはじまりの猟兵よ、妾とお相手願おうか!
信者たる視聴者の歓喜歓声喝采を背負い、限界までアガってパワーアップした妾に匹敵できる者など存在せん!
この一撃、耐えられたらお主の勝ちで構わんよ
だが邪神の左腕にブッ飛ばされ、なおも立ち上がれるなど思わんことだ!!
●コラボ配信……ってコト!?
はじまりの猟兵、その実力や如何にと思っていた御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は、彼女の潔いまでの弱いです宣言に唇の端をニヤリと持ち上げた。
「くっくっく……はっはっは、はーっはっは! 己の弱さを自覚した上で積み上げた研鑽はどこまでも尊い!」
『いえ、あの、私は本当に弱くてですね』
「よい! お主が弱いと思うその力は、恐らくそう弱いものではない! ならば妾も、妾なりの真剣で己の至上を見せつけよう!」
実際、基礎能力はかなりのものだろうし、戦場の戦い方というものも心得ているはず。更には勝つ為であれば卑怯と呼ばれようと構わないと思うだけの心の強さもある――なればこそ、全力で相手をしなければ礼を失するというものだと菘は高く右腕を上げた。
「スクリーン! カモン!」
パチン! と菘の指が鳴ると、現れたのは無数の空中ディスプレイ。そこには無数の生配信を視聴する人々の姿が見えた。
『こ、これは……!?』
「ふ……っ、妾は配信者というやつでな……はーっはっはっは! 今日も元気かのう皆の衆よ!」
菘の呼び掛けに、視聴者が声援と共に書き込みを行えば、ディスプレイに白い文字が怒涛のように流れていく。
「此度のバトルの相手は、妾の配信史上最高の超VIP! だが! 皆の声援が後押ししてくれたら、妾が負ける道理などない!」
『なるほど……私知ってますっ! これ、コラボ配信というやつですね!』
「ん……? んん、まぁそうなるな」
ディスプレイを見上げ、はじまりの猟兵が手を振ったりしている。
「こやつ……素質があるな……?」
立派な配信者になりそうだなとは思うけれど、今はそんな場合ではない。
「さあ、はじまりの猟兵よ! 妾とお相手願おうか!」
『わかりました! いざ、勝負ですっ!』
鎖につながれた黒いライフルを手にし、はじまりの猟兵が構える。その動きには隙がなく、勝負の行方は分からないかのようにも見えた。
「さすが、はじまりの猟兵というわけか……だが、これこそが妾の最高究極奥義だ! 信者たる視聴者の歓喜歓声喝采を背負い、限界までアガってパワーアップした妾に匹敵できる者など存在せん!」
『視聴者の声援を得た者が力を得る……! これが、六番目の猟兵が手にした力のひとつなのですね』
私が暗闇の中で待ち続けた者たち、と骨面の奥ではじまりの猟兵が笑みを浮かべ、菘が左拳を握るのを見つめる。
「この一撃、耐えられたらお主の勝ちで構わんよ」
『はいっ!』
「だが邪神の左腕にブッ飛ばされ、なおも立ち上がれるなど思わんことだ!!」
異形の竜のような左腕がギチリと唸る、鋭い爪が煌いて。
「妾は最強無敵よ!」
はじまりの猟兵を、闇ごと地面へと叩きつける――!
『ふふ、やっぱり、強いですね……っ』
避けるつもりだったのに、菘の覇気に、視聴者の歓声に、一瞬でも飲まれてしまったと彼女は笑って白旗を上げるように倒れ込んだまま手を振ったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
なるほどー、どのような勝負でも。
では…裁縫勝負しましょう。ええ、裁縫。
作るのは…『クラゲのぬいぐるみ』ですー。
見本は陰海月が用意してくれましたー。あと布と糸も。
馴染の手芸店で商品切り替えで安くなってたのを、爆買いしたとかなんとか。
というわけで、好きな布と糸選んでくださいねー。私は薄青のを。
そして、ひたすら縫いまして。ミズクラゲの模様は、刺繍でやりましてー。
足パーツも作って…綿を詰めて。
これ、自立しますからねー。いやはや、かわいいですー。
※
陰海月「ぷきゅ♪」
見本のぬいぐるみを大量に出す。ぼくが作ったよ!
●裁縫勝負!
「なるほどー、はじまりの猟兵さんはどのような勝負でもお受けになると」
『はいっ! 受けて立ちますので、どうぞ私をこてんぱんにしてくださいっ!』
そう、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)が問えば、八百長無しの真剣勝負だけれど、それでも六番目の猟兵であればきっと自分を倒してくれるだろうという信頼に満ちた声ではじまりの猟兵が答えた。
「ふむふむ……では……」
どんな勝負を挑まれるのだろうか、落ち着いた物腰の優しそうな……けれど武人とも感じられる方だけれど、とはじまりの猟兵が考えていると義透がにこっと微笑んで口を開く。
「裁縫勝負をしましょう」
『さいほうしょうぶ』
「ええ、裁縫」
『針と糸で縫物をする、お裁縫……?』
「はい、そちらです。作るのは……『クラゲのぬいぐるみ』ですー。陰海月、お願いします」
名を呼ばれ、どこからともなく大きなミズクラゲが現れると、その触手を器用に動かして見本となるクラゲのぬいぐるみをまずはひとつ、ポンッと置いてくれた。
『……大きいですね?』
「陰海月がですかー?」
『いえ、そちらもですけどぬいぐるみが』
抱き枕にできそうな大きさである、しかも可愛らしい。
「あ、こちらは布と糸、あと中綿ですねー」
『手厚いです!』
「これはですねー、陰海月が馴染みの手芸店で買って来たんですよー。商品切り替えで安くなってたのを、爆買いしたとかなんとかで」
『賢い子なんですね、陰海月さん』
「わかりますかー? とってもいい子なんですよー」
陰海月を褒めてくれるとは、はじまりの猟兵さんもいい子なんですねえ、と義透がこっそりと笑みを浮かべてクラゲのぬいぐるみを抱き締めている彼女を見遣った。
「では、好きな布と糸を選んでくださいねー。私は薄青のにしましょうかねー」
『ええと……では、私はピンク色にします!』
型紙を使い布を切り、お手本通りに後はひたすら縫うばかり。チクチクと縫っては、これでいいかと確かめる。
「ミズクラゲの模様は刺繍でやりましてー」
『刺繍……! 本格的です!』
すごい、とはじまりの猟兵が言うと陰海月が見て~~♪ ぼくが作ったよ! とばかりに自分が作った見本のぬいぐるみを大量に出し、その刺繍がひとつひとつ違うことに胸を張る。
「ぷきゅ♪」
『すごいですね、可愛いです!』
褒められてご機嫌な陰海月を可愛いですねえと義透が撫で、再び刺繍を再開するとはじまりの猟兵もちくちくと針を動かした。
「足パーツも作って……綿を詰めて……完成です」
『私も完成です!』
「これ、自立しますからねー。いやはや、かわいいですー」
『えっ』
「え?」
自立? とはじまりの猟兵が首を傾げる。
「はい、このようにー」
『……!!! 私の、自立しません!』
「ああー、なるほどー。足の先をこう……立つようにしなかったんですねー」
『盲点でした!! でも可愛いので問題なしです!』
「そうですねー、あなたのもかわいらしいですねー」
えへえへと笑うはじまりの猟兵だったが、勝負は勝負。自立しない時点で自分の負けだと、クラゲのぬいぐるみを抱き締めて負けを認めたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
カモンステーッジ!
呼び出すのは藍ちゃんくんカラオケステージなのでっす!
ダンススペースもありまっすし、楽器もあるのでっす!
なんとなんと注文すれば藍ちゃんくんのスタッフさんが料理もお届けしてくれるのでっす!
つまりでっすねー、おねえさん!
|一緒に楽しみましょう《ライブバトル》なのでっす!
はじまりである以上、長く一人で戦い続けたでしょうし。
死んだ後もずっと一人で藍ちゃんくん達を待ち続けてくださっていたおねえさんに!
一人で無い時間を!
おねえさんとデュエットしたり、歌に曲をつけたり、踊ったり!
くたくたになるまで楽しんじゃうのでっす!
そんな戦いがあってもいいのではないでっしょうかー!
●カラオケライブバトル!
「藍ちゃんくんでっすよー!」
『はじまりの猟兵ですっ!』
こんな風に自己紹介を終わると、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)はにこっと微笑み、両腕を高く天へと向けて。
「これからでっすねー、おねえさんを参加型ステージにご招待なのでっすよー!」
『参加型ステージ……!?』
「カモンステーッジ!」
藍の掛け声と共に現れたのは藍ちゃんくん特製カラオケステージ、なんとダンススペースもあればタンバリンやマラカスから本格的なドラムやギターなどの楽器まで完備されている。
『わあ……っすごいですっ!』
「なんとなんとー、注文すれば藍ちゃんくんのスタッフさんが料理もお届けしてくれるのでっす!」
『お料理まで!? 至れり尽くせりじゃないですか……っ!』
これは閉鎖された空間で娯楽もなく過ごしていたはじまりの猟兵からすれば、興味津々というやつである。
「つまりでっすねー、おねえさん!」
『はいっ!』
「|一緒に楽しみましょう《ライブバトル》なのでっす!」
『はい、喜んでー!』
どっかの居酒屋みたいな返事になったが、元気のいいお返事に藍もにっこりだ。
「では何を歌いまっしょうかー! もしもお歌が苦手でっしたらー、音楽に合わせて踊ったりもできるのでっす!」
液晶タッチパネルの電子目次本をちょんちょん、とつつくはじまりの猟兵が何とも楽しそうで藍があれこれと世話を焼く様に動く。何せ彼女ははじまりである以上、きっと長く一人で戦い続けてきたのだろうし、死んだ後もずっと一人で六番目の猟兵達を待ち続けてきたのだから。
「ひとつでも、報われるべきだと藍ちゃんくんは思うのでっすよー!」
『何がです?』
「こちらの話なのでっす! 藍ちゃんくん達を待ち続けてくださっていたおねえさんに! 藍ちゃんくんは! 一人で無い時間を共に過ごしたいのでっす!」
藍の言葉に、はじまりの猟兵がぽかんとしたように動きを止めて、それから獣の頭蓋の上から頬を抑える。
『いいのでしょうか、そんな贅沢なことをしても……!』
「いいのでっす! 駄目だという人がいたら、藍ちゃんくんのステージパワーでご理解いただいちゃうのでっす!」
だから、と藍は笑う。
「藍ちゃんくんと、くたくたになるまで楽しんじゃうのでっす!」
『……はいっ! くたくたになって、動けなくなるまで遊んじゃいますっ!』
まずはカラオケバトル、それから作詞作曲、更にはダンスの振り付けなんかも二人でしたりなんかして。
言葉通り、くたくたになるまで遊んだはじまりの猟兵から闇が薄れていることに気が付いて、藍はこんな戦いもありなのでっすよー! とウィンクをひとつ飛ばしたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ビスマス・テルマール
えぇ……ここの始まりの猟兵さんは、実戦以外の勝負方法にも応えてくれるのですよね?
戦い以外で、偉大な先輩に挑める
もとい、なめろう布教できるのは嬉しい限り……と言う事で、料理勝負受けてくれますか?
勝負内容は、海産物を使った『料理』で
わたしからは、先ずは
わたしの原点である
鮪、バナナ、アボカド、オリーブ油、醤油、レモン果汁を叩き混ぜた【ハワイアンなめろう】
鮪の旨味をバナナが引き出し、アボカドがクリーミーさを出した甘いなめろうは、パンと良く合うので
ハワイアンなめろうのサンドイッチに
他にも色々作ってご馳走したい所ですが、始まりの猟兵さんのお手並みも拝見と頂きつつ、勝敗を決めましょう
※アドリブ絡み大歓迎
●海産物を使った料理勝負と見せかけたなめろう布教
どんな勝負でも受けて立つ――そう聞いて、このはじまりの場所にやってきたのはビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)である。
「えぇ……はじまりの猟兵さんは、実戦以外の勝負方法にも応えてくれるのですよね?」
『はいっ! どんな勝負も受けて立ちますっ!』
元気のいい返事に、ビスマスがこれはチャンスだと表情を明るくして頷く。
「戦い以外で、偉大な先輩に挑める……もとい、なめろう布教できるのは嬉しい限りです」
『なめろう布教』
「はい、という事で、料理勝負……受けてくれますか?」
『あの、なめろう布教って聞こえたんですが』
「|料理勝負《なめろう布教》です」
どう聞いてもなめろう布教にしか聞こえないのだが、料理勝負ではある。何せ、なめろうとは新鮮な魚をおろして味噌と香味野菜で作る料理なのだから。
『はいっ、二言はありません! 受けて立ちますっ!』
「さすがはじまりの猟兵さんです。では、勝負内容は海産物を使った『料理』で」
そう言うと、ビスマスはどこからともなく現れた料理ステージに立つ。いや、本当にどこから現れたの??
「先ずはわたしから参ります」
ビスマスが手にしたのは鮪にバナナ、アボカドという、一見どういう組み合わせだ!? となるチョイス。これにははじまりの猟兵も興味津々でビスマスの手元を覗き込んでいる。
「鮪はこのように叩いて、口当たりを滑らかにしていきます」
料理勝負を持ち出すだけあり、ビスマスの料理の腕前は中々のもの。鮪とアボカドとバナナをしっかりと包丁で叩き、オリーブオイルと醤油、レモン果汁を混ぜて――。
「ハワイアンなめろうです」
『ハワイアンなめろう……!!』
ごくり、とはじまりの猟兵が息を飲む。
「これだけでも充分に美味しいのですが、このなめろうはパンが合います」
ビスマスの手元には耳を切り落とした薄切りの食パンがあり、そこへ惜しみなくハワイアンなめろうを盛って挟んでいく。
「ハワイアンなめろうサンドイッチの完成です。どうぞ、食べてみてください」
『いただきます!』
獣の頭蓋をちょいっとずらし、はじまりの猟兵がハワイアンなめろうサンドイッチを口にする。
『こ、これは……っ! 鮪の旨味をバナナが引き出し、アボカドがクリーミーさを出して……! 更に甘いなめろうがパンに良く合って……美味しいですっ!』
「完璧な食レポです、わたしが伝えたかった事を全部言ってくださるなんて」
なめろうの可能性を感じて貰えたようで何よりだと、ビスマスが満足気に頷く。
「他にも作ってご馳走したい所ですが、はじまりの猟兵さんのお手並みも拝見です」
『はい、私も頑張りますっ!』
ぐっと力こぶを作って見せたはじまりの猟兵が作り出したものを見て、ビスマスが目を瞠る。
「それは……」
『はいっ、なめろうです! 私が知っているのはオーソドックスなものなのですけど』
基本に忠実と言うべきなのだろうか、鯵を叩いたものにみじん切りにした生姜と刻んだ薬味ネギと味噌を混ぜ合わせると、再び包丁で叩き粘りが出た辺りで完成だ。
『どうぞ!』
「いただきます」
はじまりの猟兵が作り出したなめろうは、実にオーソドックスなものながら美味しいと感じさせるもの。
「とても美味しいです」
『ありがとうございます!』
これは引き分けだろうか、とビスマスが思っているとはじまりの猟兵から闇がするんと抜けていくのが見えた。
『やっぱり六番目の猟兵はすごいです、私にはこんなアレンジ思いつかなかったですから!』
「はじまりの猟兵さん……」
偉大なる先輩の言葉を噛みしめ、ビスマスは今後もより一層美味しいなめろうを研究していこうと心に決めたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と
よし、料理対決と行くか
……別に、倒してしまって構わんのだろう?
(自信ありげ)(自覚無し長料理下手)
晴夜お兄さんに気絶するぐらい美味しいもの作れた方が勝ちね
…
……何
不満なの。いいじゃないか。美味しいご飯食べられるなら
じゃあ身長対決ね
勿論その耳はおろすんだよ。ほら(無理に倒す
次はダーツ投げ対決しようか
射撃系の遊びは負ける気がしな……って、危な
お兄さん前見て前
それからあっちむいてほいで……
何。なんか文句あるの?あなた(はじまりの猟兵に)
一緒に遊ぶんでしょう?ほら入って
次は人形操り対決だって。人形持ってる?
俺はないから、銃を上手に操ってみる。あなたはどうする?
的はあの狼ね
夏目・晴夜
◎
リュカさんf02586と
成る程、つまり手加減なしで勝ってしまっても良いのですね?
しかし料理対決は却下です
何故このハレルヤが審判役に回らねばならんのですか
私だって選手の一人として対決に参加したいです!
よし、ではまずは身長対決からいきますか
はいオッケー、私の勝ちでフィニッシュです!(狼耳をバシッと立てて)
お次はダーツ対決でしたか…こんなのハレルヤには余裕の極みですよ
ほらね(明後日の方へと飛んでいくダーツ矢)
次はあっち向いてホイ対決ですか〜勝てるかわからなあっち向いてホイ!はい勝ち!(じゃんけん省略して不意打ちではじまりの猟兵へ)
次の対決は、そうですねえ…
からくり人形うまく操り対決とか良いのでは?
●猟兵あれこれ十番勝負
はじまりの場所にて待つ、はじまりの猟兵。今回に限りどんな勝負でも受けて立つのだと聞き、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は口元に手をやり、ふむと考える。
「成る程、つまり手加減なしで勝ってしまっても良いのですね?」
「そういうことだと思うよ、お兄さん」
『いえ、手加減してもらえるならしてもらえると嬉しいです!』
「正直すぎない?」
だって、何かすごく不穏な気配がして……と、はじまりの猟兵はリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)にごにょごにょと言うけれど、既にリュカは聞いていなかった。
「よし、料理対決と行くか」
『あっ、料理対決なら大丈夫です! 頑張ります!』
「……別に、倒してしまって構わんのだろう?」
自信ありげに言うリュカに、はじまりの猟兵がさぞかし名のある料理家なのですね……! と息を飲んだ。
「リュカさん、それほどでもみたいな顔しないでください。はじまりの猟兵さんも、無責任に煽らないでください」
晴夜が二人の間に入るようにし、勝手に進んでいきそうな話をぶった切る。
「晴夜お兄さんに気絶するぐらい美味しいもの作れた方が勝ちね」
『わかりました!』
「あなた達、人の話聞いてました??? それはそれとして、料理対決は却下です」
両腕で大きなバツ印を作って、晴夜が断固拒否だと首を横に振った、はじまりの猟兵の料理はともかく晴夜は命が惜しいので。
「……」
「無言で拒否しないでください、リュカさん!」
「……何」
「そもそもです、何故このハレルヤが審判役に回らねばならんのですか」
「だって料理対決だよ、審判役が必要だと思う」
『そうですね……私が審判役になるわけにはいきませんし……』
正論パンチだ! でも今はいらないんですよ、と晴夜が再度ふるふると首を横に振る。
「不満なの。いいじゃないか。美味しいご飯食べられるなら」
「私だって選手の一人として対決に参加したいです!」
『……! 仲間外れはいけない、そういうことですね、六番目の猟兵!』
全然違うが、まあそういう事にしておこうかなって顔で晴夜が頷けば、リュカが仕方ないなと溜息をついた。
「わかったよ、じゃあお兄さんが案を出して」
「わかっていただけて何よりです! よし、ではまずは身長対決からいきますか」
「身長対決ね」
はーい並んでー、と横一列に並ぶ。順に、はじまりの猟兵、リュカ、晴夜である。
『負けません! 身長なら私が角分有利ですっ』
「はいオッケー、私の勝ちでフィニッシュです!」
はじまりの猟兵が胸を張り、晴夜が狼耳をバシッと立て高らかに勝利宣言をした辺りでリュカが二人の頭に手を伸ばした。
「勿論、その角と耳はおろすんだよ。ほら」
「イタイイタイイタイ」
『折れ、折れま、きゃーー!』
勝者、リュカ!
「これだけで勝敗が決まるのもつまらないでしょう、次はダーツ投げ対決しようか」
「耳が折れて治らないんですが」
「すぐ治るよ、はい、ダーツ」
「はい……ええ……」
『角が折れ、折れて』
「くっつけとけば直るから。はい、ダーツ」
『直ります……? あ、ありがとうございます』
耳と角を気にする二人をさておき、リュカは正直射撃系の遊びは負ける気がしないんだよね、と思いながらダーツを手にする。
「ダーツ対決……こんなのハレルヤには余裕の極みですよ」
何事にも格好いいハレルヤお兄さんにはね! と身長対決をなかったことにした顔で晴夜がダーツを投げる。
「ほらね」
「……って、危な」
明後日の方向へ飛んで行ったダーツに目を細め、リュカが晴夜に前を見て投げてと言いながら、見本を見せるようにダーツを的の中央へと投げた。
『なるほど、前を向いて投げ……えいっ』
真似をするように、はじまりの猟兵もダーツを投げる。
「……っぶないですね!? もう少しで晴夜の眉間に穴が開くところでしたが!?」
「いい腕をしてるね」
「リュカさん???」
勝者、リュカ!
「勝ち続けるのも面白くないね。じゃあ次はあっちむいてほいで……何。なんか文句あるの? あなた」
『いえっ! 文句はないです、ないですけど』
「ないならはい、こっちきて。一緒に遊ぶんでしょう? ほら入って」
文句はないですけど、遊んでていいんでしょうか? 勝負じゃなかったのでしょうか? という気持ちを込めて、はじまりの猟兵が晴夜を見た。
「次はあっち向いてホイ対決ですか~勝てるかわからなあっち向いてホイ!」
『ホイッ!?』
「はい勝ち!」
じゃんけんを省略した不意打ちホイ、完全に油断していたはじまりの猟兵は晴夜が指を向けた方を向いていた。
「じゃ、次は俺とお兄さんだよ」
「負けませんよ!」
あっち向いてホイ! ホイホイホイ! という掛け声と共に、段々高速化していく動きにはじまりの猟兵はただ黙って見ているしかなかったのである。
「まさか引き分けに終わるなんてね……お兄さん、腕を上げたね」
「ふふっ、リュカさんこそ。次も負けませんよ」
『次』
まだやるのかなって顔を頭蓋の面の中でしつつ、はじまりの猟兵が二人を見ている。それは呆れながらも、どこか楽しそうで。
「次の対決はそうですねえ……からくり人形上手く操り対決とか良いのでは?」
自分に得意な分野を仕掛ける、それが晴夜である。
「次は人形操り対決だって。人形持ってる?」
リュカに問われ、はじまりの猟兵が首を横に振る。自分が持っているのなんて、このライフルくらいだ。
「俺はないから、銃を上手に操ってみる。あなたはどうする?」
『あ、それでいいんです? でしたら、私はこのライフルで』
「いいね、すごくいいと思う。的はあの狼ね」
リュカの視線はブレることなく、晴夜へと向かっている。
『わかりました! 私、ライフルの扱いならちょっとしたものなのですっ!』
「言ったね? 負けないよ」
銃器の扱いであればリュカだって負けてはいない、寧ろ負けている場合ではない。
「あの、ハレルやは人形って言いましたよね??」
「うん、人形のように踊りなよ」
ジャキ、と音がして二人がライフルを構える姿を見て、晴夜は迷うことなくニッキーくんを何処からともなく取り出し、応戦の構えを見せるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱酉・逢真
【夜桜】
心情)意図せぬトコで、意に反したコトしちまうッてかィ。大変だねェ。うん? どしたね坊。ふぅン…? ほうほう。なるほどねェ、うんうんソレなら任しときなよォ。ホレ、(影からふんわりまるっこいポメラニアンが出てくる) コイツでどォだい? よしよし…おや、相手さんも。それ、タヌ…あ、うん。犬な、うんうん。さて、そンじゃア坊、がんばっておいでェ。ンー? そりゃマ・ずるはダメだろィ? 噛みも吠えもせん、懐っこい仔だからねェ。頑張って信頼築くか、上手いこと誘導しなァ、ひ、ひ…。
行動)雲珠坊が頑張るさま・敵の嬢ちゃんがタヌキに翻弄されるさまを、どっかり座ってにこにこ眺める。愛いねェ。
雨野・雲珠
【夜桜】
荒事でなくてよいのなら、なにか平和的な…
みんなも笑顔になるような…あ!
かみさまかみさま
俺ね、このあいだ『あじりてぃ』なる競技を見まして。
犬と人で障害物競争に挑むんです
信頼ありきの競技ですが、もちろん勝算あってのこと
かみさまのとこの犬くんならば、
俺より賢い子がきてくれるのではと…!
…あんまり怖くない子でお願いします!
あ!お相手も。闇が凝って…
……
…狸!
よーし、行きましょう!
まずはあの棒を飛び越え…あっだめです競走中…あー!
(ものすごくじゃれつかれてる)
か、かみさまー!
全然言うこと聞いてくれません!
(最終的に必死に障害物走をする桜をポメが追いかける形でゴール)
ぜあ…はあ…
しょ、勝敗は!?
●わんわん障害物勝負!
結界が消え、闇が溢れ出す『はじまりの場所』で、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)はいつもより随分と調子よさげにして、はじまりの猟兵に相槌を打っていた。
「意図せぬトコで、意に反したコトしちまうッてかィ」
『そうなんです……今もちょっとくらいいけるかなって思って、二番目から五番目の猟兵の話をしようとしたんですけど』
「してみたのかィ?」
『頭の中がラーメンでいっぱいになってしまって……』
「大変だねェ」
人生相談でしょうか……? と思いながら逢真の横で聞いていた雨野・雲珠(慚愧・f22865)が、それは確かに大変ですねとはじまりの猟兵へ頷く。
「あの、荒事でなくてよいのなら、なにか平和的な……そういう勝負でも構わないのでしょうか?」
『はいっ! どんな勝負でも受けて立ちますっ!』
「なら……皆も笑顔になるような……」
むむ、と考え込んだ雲珠を逢真が楽し気に眺め、はじまりの猟兵が期待に満ちたような眼差しを向ける。そんな二人の視線には気が付かず、うんうんと唸っていた雲珠が何かを思いついた様に声を上げた。
「あ! かみさま、かみさま」
「うん? どしたね坊」
弾んだ声と僅かに頬を上気させた姿に、何か名案でも浮かんだかいと優しく問う。
「俺ね、このあいだ『あじりてぃ』なる競技を見まして」
「ふぅン……? あじりてぃ、どンな競技なんだィ」
「犬と人で障害物競走に挑むんです! こう……人と犬が息をピッタリ合わせて、コースの上に置かれた障害物をクリアしていくんですよ」
ハードルやトンネル、急勾配のフレームなどなど、その障害物には色々とある。
「ほうほう。なるほどねェ」
「これは信頼ありきの競技ですが、俺には勝算があります!」
「坊が言うなら、やってご覧なァ」
その結果がどうであっても、きっといい結果になるに違いないと逢真がにこにこと笑う。
「はい! つきましては、かみさまのとこの犬くんを貸していただければ……きっと、俺より賢い子がきてくれるのではと……!」
犬の性能頼みである、勿論雲珠も精一杯頑張る気概はあるのだが。
「あ、あと、できれば……あんまり怖くない子でお願いします!」
「うんうん、ソレなら任しときなよォ。ホレ、コイツでどォだい?」
逢真の影からぴょいーんっと飛び出たのは丸っこいポメラニアン、ふわふわ、もふもふ、真っ白な可愛い仔である。
「か……」
『か……』
「『かわいいですっ!』」
雲珠とはじまりの猟兵の声が重なって、そうだろうそうだろうと逢真が頷く。
『ここは私も可愛い仔を!』
ぐぐっと闇が凝って、何やら動物の姿を取り出す。
「あ! お相手も何やら闇が凝って……」
「おや、相手さんも」
どんな犬が、と雲珠が期待に満ちた瞳で見れば、闇がきゅっと固まって、すぐに丸っこいフォルムの犬が――。
「……あの、この子」
『犬です!』
「いや、それ、タヌ……」
『犬です!』
「……狸!」
『犬です!!』
「……あ、うん。犬な、うんうん」
犬と言い張るはじまりの猟兵に、あ、この人そういえばポンコツの気があるって言われてたなって雲珠が思い出す。逢真も口にはしないが、なるほどポンコツと笑みを浮かべていた。
『私はこう見えても獣人……獣との意思疎通であれば負けませんっ!』
「はっ! そう言えば……!」
余裕がありそうなはじまりの猟兵の声に、雲珠がどうしましょう、もしかして俺は自分に不利な勝負を持ちかけてしまったのではないかと不安になって逢真を見る。
「大丈夫だと思うがねェ」
だってほら、な? 何とは言わないけど、案内してくれた旦那が言ってただろ、と逢真は思う。
「案ずるより産むが易しってなァ、コースは俺が用意しよう、そら」
ハードルにトンネル、坂道に輪っか潜りなどのコースが影から浮かび上がり、設置されていく。協力は逢真の眷属達である。
「さ、準備はできたかい? そンじゃア坊、がんばっておいでェ」
「はい! よーし、行きましょう!」
キャン! と元気よく鳴いたポメラニアンを連れ、意気揚々と雲珠がコースへと向かう。
「まずはあの棒を飛び越え……あっだめです競走中……あー!!」
ハードルを指さし、行きますよとした途端にポメラニアンが雲珠にじゃれついて止まらない。遊んでモードである。
「か、かみさまー! 全然言うこと聞いてくれません!」
「ンー? そりゃマ、ずるはダメだろィ?」
「そうですけどーー!」
「噛みも吠えもせん、懐っこい仔だからねェ。頑張って信頼築くか、上手いこと誘導しなァ、ひ、ひ……」
そう言いながら、逢真は眷属の|大きな仔猫《ちびすけ》にどっかりと座って、煙管を取り出してにこにこと手を振った。
『これは私の勝ち確定というやつですね! 行きますよっ!』
ポメラニアンにじゃれられて進まない雲珠を見て、はじまりの猟兵がタヌ……いや、犬? に号令をかけてハードルに向かい――。
『あっだめですよっ! 競技中、あ、あーー!』
そこには、もっふもふな丸みのある尻尾でベチベチと叩かれているはじまりの猟兵の姿が……!
「うぅ、こうなったらあれです、先にゴールした方が勝ちです!」
理想的な形とは程遠いながらも、雲珠がお手本を見せるべく障害物を越えていく。すると、ポメラニアンは追いかけっこだ! と目を輝かせてついて来て、結果オーライみたいな形になっていた。
「ひ、ひ……うまいうまい」
片やはじまりの猟兵はと言えば、タヌ……犬に尻尾でベチベチされながら、雲珠と同じように犬を先行する形で走っている。
「こっちはこっちで立場が逆になってンな」
ヒィヒィ言いながら、二人が障害物走をしている+後から犬が追い掛けているという光景を、逢真はそれはもう楽しく眺めていた。そうこうしているうちに、雲珠がポメラニアンと共にゴールを切ると、へとへとになりながらも顔を上げる。
「ぜえ……はあ……しょ、勝敗は!? はじまりの猟兵さんは……」
どこに、と後ろを向けば、タヌ……もう狸でいいか、狸の尻尾をもふっていた。
「あ、あの……?」
『うっ、聞いてくださいっ! ずっと尻尾で叩かれていたんですけれど、やっと私を認めてくれたのか尻尾をもふらせてくれるように……!』
「あっなんと! お、おめでとうございます……?」
『ありがとうございますっ!』
「それはそれとして、先にゴールしたのは坊だからなァ。坊の勝利だなィ」
「! やりました、やりましたよポメラニアンさん!」
やったー! と無邪気に喜ぶ雲珠と狸の尻尾を無心にもふるはじまりの猟兵を見て、かみさまは愛いねェとご機嫌で微笑むのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
馬飼家・ヤング
※アドリブトンチキ大歓迎!
ええんやな? ホンマにわいが勝負形式選んでええんやな?
ほなアレや。わいもナニワのくいだおれ王
「大食いフードファイト」で勝負や!
でもせっかくやから「スイーツ食い放題勝負」にしたろ
女の子は甘いもので幸せになる言うからの
ちょ、ま、食うてる間にも容赦なくライフルで撃ってくるん!?
ああああ、このままやとクリームパイが顔にベチャーってなってまう!
せやけどナニワ男子たるもの、どんな妨害があろうとも
あくなき食への探求心は捨てたらアカン!なめたらアカン!!
いくで、フルパワーモード!!
\食 神 降 臨/ (謎オーラがぺかー)
神の領域に達した大食いパワーの前では
ホールケーキも飲み物なんや!
●大食いスイーツファイト!
はじまりの猟兵を前にして、馬飼家・ヤング(テレビウムのちっさいおっちゃん・f12992)は腕を組んで――組み切れていないとかそういうのは置いといて――ヤングにしては珍しく、重々しい声で語り掛けた。
「ええんやな? ホンマにわいが勝負形式選んでええんやな?」
『はいっ! 私は六番目の猟兵が選んだ方法で勝負しますっ!』
元気いっぱいなはじまりの猟兵の返事に、ヤングがその覚悟やよしとばかりに頷く。
「ほなアレや。わいもナニワのくいだおれ王」
『食い倒れ王……!』
「せや、ここは『大食いフードファイト』で勝負や!」
たくさん食べた方が勝ちというとてもシンプルなルールが故に、ズルもできない勝負である!
『憧れの……フードファイト……!』
「あんた、フードファイトに憧れあったん? ほな、せっかくやから『スイーツ食い放題勝負』にしたろか」
『スイーツ食べ放題!? 夢のような勝負ではないですか!?』
「せやろせやろ、女の子は甘いもので幸せになる言うからの」
会場セッティングもわいがしたろ! と、ヤングが何処からともなくテーブルと椅子、そしてどこのホテルのビュッフェ会場かと見紛うばかりのスイーツの数々を用意していく。たこ焼きに見せかけたフェイクスイーツがあるのはご愛敬だ。
「さーー食うでー!」
『いただきますっ!』
生クリームとカスタードたっぷりのたこ焼きに見せかけたシュークリーム、様々な種類のプチケーキ、ムースに一粒チョコレートの盛り合わせ、クロテッドクリームにジャムたっぷりのスコーン、女の子の可愛いと夢が詰まったようなスイーツの数々。
「ん~~、やっぱスイーツもええな! このクリームパイも絶品でな」
『美味しい……っ美味しすぎて、私、私……っ感激ですっ!』
美味しい嬉しい! という感情が高ぶり過ぎたのか、はじまりの猟兵の周囲に浮いていたライフルがジャキンッと音を立ててヤングにその銃口を向ける。
「なんで???? あっちょっ、ま、食うてる間にも容赦なくライフルで撃ってくるん!?」
『すみませんすみませんっ! 不可抗力なんですっ!』
「不可抗力で許されたら警察いらんやろがい、ああああ、このままやとクリームパイが顔にベチャーってなってまう!」
食いもんを粗末に!? そらアカン!! ヤングのナニワ魂が燃え上がる――!
「ナニワの男子たるもの、どんな妨害があろうとも! あくなき食への探求心は捨てたらアカン! なめたらアカン! お残しもアカン! 勿体ないお化けがでるやろ!!」
ライフルの攻撃にも負けないヤングのマシンガントークに、はじまりの猟兵がはいっ!! と返事をしつつも不可抗力は止まらない。
「いくで、フルパワーモード!! \食 神 降 臨/」
ヤングから謎のオーラがぺかーーーっと放たれ、特に姿が変わったりするわけではないが、なんかいい感じに……いい感じにヤングがなっていく!
「神の領域に達した大食いパワーの前ではホールケーキも飲み物なんや!」
『ケーキは飲み物……!』
間違ったような、間違っていないような知識を植え付けられつつ、はじまりの猟兵はブラックホールのように吸い込みつつもしっかりと味わうという妙技を見せたヤングに、自身の敗北を感じ取るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
重松・八雲
【童】◎
ふむ、どんな勝負でも良いとは懐が広いのう!
それに紙芝居とは実に懐かしい!
――はっ、伊織よ!閃いたぞ!
実に良い平和的解決法を!
(それはもう無邪気すぎる満面の笑みで)
紙芝居といえば幼少の楽しみ!
そして五月といえば端午の節句!
これはもう!全力で童心に返って挑むしかあるまい!
絵双六!貝独楽!歌留多!泥面子!
隠れんぼや鬼ごっこも良いのう!
あっあと菖蒲でちゃんばら勝負でもするかのう!
さぁ何から致そう!儂は何でもいけるぞ!
童心忘れず七十三年――極みに極めた遊戯の数々で引けを取る訳にはゆかぬ(きりっ)
伊織も早う加わると良い!
今は全力で遊ぶことこそ勝利への一歩!
ほうれ、楽しいぞー!
(平和的大暴れしつつ)
呉羽・伊織
【童】◎
ああ、純粋な戦闘だけに限らないってんなら有難いな
少しでも平和的にケリつけられる手段があるなら、ソレに越したことは――
(と、不意の言葉に顔を見遣れば――)
いやまって、その顔は待って!?
確かに爺サンにしては意外と悪くない!
悪くはない――ケド、その勢いでポンコツとトンチキをぶつけあうのは待つんだ!
なんかもうとんでもないカオスに至る予感しかしない!
体力と!ツッコミが!追いつかない!!
俺の一人負けみたいになるヤツじゃん!?
いやなにもう全部やるの確定!?
なにそこできりっとしてんだ〜!
嗚呼…キミが力尽きるまで遊ぶのをやめないってか…くっ…!
分かったから|味方《俺》ごと無双しかけるのはやめるんだ〜!!
●遊べや遊べ
はじまりの猟兵と戦い、徹底的に叩きのめさねば『二番目から五番目の猟兵について』の情報は手に入らない、それについては致し方ないところだと重松・八雲(児爺・f14006)と呉羽・伊織(翳・f03578)も重々承知していたのだが。
「ふむ、どんな勝負でも良いとは懐が広いのう!」
「ああ、純粋な戦闘だけに限らないってんなら有難いな」
どんな勝負でもいいと言うのなら、荒事以外でもいいと言うこと。そんな話をしつつ、はじまりの猟兵がいる場所に向かって進む。
「うむ、それに紙芝居とは実に懐かしい! やはり手描きで準備しようとしたのかのう!」
「そう……なるんじゃないか?」
想像するとちょっと可愛いなとは思うが、やはりこう……滲み出るポンコツさがあるな、と伊織は思う。しかし、それくらい人の好い相手でよかったのだろうとも。
「少しでも平和的にケリつけられる手段があるなら、ソレに越したことは――」
「――はっ、伊織よ! 閃いたぞ!」
越したことはない、という言葉を最後まで言う事無く八雲が被せてきた言葉に何事か、と伊織が見遣る。
「実に良い平和的解決方法を!」
キラッキラの、それはもう無邪気なまでの満面の笑み。しかし伊織は知っている、八雲がそういう顔をした時は大抵禄でもない目に合うのだ。誰が? もちろん伊織が!
「いやまって、その顔は待って!?」
待てと言われて止まるような八雲ではない、寧ろ伊織の言葉はもう聞こえていないに等しい。
「うむうむ、どのような平和的解決方法か伊織も気になるところだろう? わかるぞ!」
「言ってないけど!?」
「先ず、紙芝居といえば幼少の楽しみ!」
「あっこれもう聞いてないやつ~~!」
もう駄目だ、という絶望感に包まれつつも僅かな望みに賭けて伊織は八雲の話の続きを聞くことにした。
「そして五月といえば端午の節句!」
「もう終わったけどな」
「これはもう! 全力で童心に返って挑むしかあるまい!」
あれ、意外にまともでは? と伊織がまじまじと八雲を見る。
「絵双六! 貝独楽! 歌留多! 泥面子!」
『なんでしょう! すごく楽しそうな気配がします!』
「話が纏まる前に来た!?」
呼ばれてないけどジャジャジャジャン、はじまりの猟兵が六番目の猟兵の気配を察知してやってきたぞ!
「うむうむ、楽しいぞ! 隠れんぼや鬼ごっこも良いのう!」
「確かに爺サンにしては意外と悪くない! 悪くはない――ケド、その勢いでポンコツとトンチキをぶつけあうのは待つんだ!」
今ここで止めなければ大変なことになる、主に伊織が!
『隠れんぼや鬼ごっこは私もわかります! 子ども達に混じって遊ぶと、だいたい私が鬼になって終わるのです!』
「ぽ、ポンコツだ~~」
こんなポンコツの見本みたいな子、中々いないのではないか。
「あっあと菖蒲でちゃんばら勝負でもするかのう!」
そして、こんな力技のトンチキ爺も。
「……混ぜるな危険じゃないか? 絶対に体力と! ツッコミが! 追いつかない!! 俺の一人負けみたいになるヤツじゃん!?」
なんかもうとんでもないカオスに至る予感しかしない! と、伊織が楽しそうにしている八雲とはじまりの猟兵を見て顔を青くしていく。
「さぁ何から致そう! 儂は何でもいけるぞ!」
『どれも魅力的ですね! 私も何でもいけます! どんとこいです!』
「俺はどれもいけませんけど!?」
思わず敬語になってしまったが、どれも普通に遊ぶ分にはいい、普通に遊ぶ分には、と伊織が胃を押さえた。
「ふむ、ならば片っ端から勝負するとしようか!」
『わかりました! 全部ですね!』
「いやなにもう全部やるの確定!?」
嘘だろ、という顔をして伊織が二人を交互に見遣るが、二人共やる気満々である。
「童心忘れず七十三年――この八雲、極みに極めた遊戯の数々で引けを取る訳にはゆかぬ」
『猟兵としては弱い私ですが――負ける気はしませんっ!』
「なにそこできりっとしてんだ〜! キミも根拠のない自信を出してこないで~!」
ほんと人の話聞いて~! と伊織が顔を覆う間に、八雲とはじまりの猟兵は早速絵双六を始めていた。
「む、おぬし筋がいいのう!」
『そうですか!? 嬉しいです!』
「賽子を振る手付きが良い!」
「賽子を振る手付きって何????」
何言ってんだこの爺、と思いつつはじまりの猟兵が賽子を振るのを見て、キレがいいな……と何処か遠いところへ視線を向ける。何もしていないのに、既に疲れているのだ。
「伊織も早う加わると良い!」
『そうです! 一人より二人、二人より三人ですっ!』
遊ぶのは人数が多ければ多いほど良いと、八雲とはじまりの猟兵が笑っている。
「今は全力で遊ぶことこそ勝利への一歩! 力の限り遊ばんか!」
「嗚呼……キミが力尽きるまで遊ぶのをやめないってか……くっ……!」
多分、力尽きてもやめないのだろうけれど。
「ほうれ、楽しいぞー!」
「分かったから|味方《俺ごと》無双しかけるのはやめるんだ~!!」
わっはっは! という八雲の楽しそうな笑い声に、はじまりの猟兵がはしゃぐ声。
トンチキとポンコツの平和的大暴れはまだまだこれから、伊織は諦めたように――そして、仕方がないなと少し楽しそうに口元を緩めて、全力の遊戯に参加する為二人が待つ方へと歩き出したのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鵜飼・章
◎
なるほど
つまり何となく使い所が決まらないUCで遊んでいいんだね(難聴
ぽんこつでもいいじゃない
ぽんこつだって立派な個性だもの
けれど僕の考案した最新の技能
【平凡力】では決して僕に勝てないだろう
生命の埒外的平凡さを知らしめてあげるよ
そうだな…学力テストをしよう
国語数学理科社会英語の五教科で勝負だ
僕は全教科で完璧な50点を取ってみせる
これは100点や0点を取るより難しい
部分点の配分まで考えて
適度に誤答し適度に正解しなければならない
全教科合計で丁度250点…きみに取れるかな
こんな事ができて何の意味があるのかって
そこなんだ
特に意味はない
僕の相手をして無駄に疲れただろう
情報を話す方が簡単な筈さ
がんばれ(雑
●意味がない事にこそ意味があったりなかったり
「つまり何となく使い所が決まらないユーベルコードで遊んでいいんだね」
そんなことは一言も言っていないのだが、案内を聞いていた鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は確かにそう聞いていた。うーんこれは難聴。もとい、長く猟兵をしていれば思い付いて取得してはみたが、これいつ使うんだ? みたいなユーベルコードを持つ者も多いだろう。この場においては完全に章のことである。
そうと決まれば章の行動は早かった。早速はじまりの場所へと向かい、はじまりの猟兵と相対し、紙芝居を今からでも作るべきでしょうか? とクレヨンを片手に持つ彼女を前にして、なるほど……と頷いた。
「ぽんこつでもいいじゃない、ぽんこつだって立派な個性だもの」
『わ、私のことですか!? 私はぽんこつじゃないですよ、ちょっと弱いだけで……!』
この受け答えが既にぽんこつである、これには章もにっこりだ。
「きみがぽんこつでも、そうじゃなくても、僕の考案した最新の技能『平凡力』では決して僕に勝てないだろう」
預言者のように厳かに、章が言い放つ。
『……平凡力? ですか? 平凡……?』
「そう、平凡力。生命の埒外的平凡さを知らしめてあげるよ」
生命の埒外的平凡さってなんでしょう……? という戸惑いを見せるはじまりの猟兵にも構わず、章は平凡力を見せつけるべく提案を進めていく。
「そうだな……学力テストをしよう」
『がくりょくてすと』
今この場において、一番そぐわない言葉ではないだろうか。
『戦闘能力テストではなく……?』
「学力だよ。国語数学理科社会英語の五教科で勝負だ」
『わ、わぁ……』
泣いてはいないが泣きそうな気分になりつつ、はじまりの猟兵がわかりましたと頷く。
「このテストで僕は全教科で完璧な五十点を取ってみせる」
『ごじゅってん』
なんで? どうして? これどういう勝負? とはじまりの猟兵が口にするよりも早く、章がたたみ掛ける。
「いいかい、これは百点や零点を取るより難しい」
『ええと、はい。百点は勉強すれば取れなくはないですし、零点はそもそも回答を書かなければ取れますし……』
「そうだ。それを踏まえて……五十点と言う数字は部分点の配分まで考えて適度に誤答し、適度に正解しなければならない」
そう言われると、途端に五十点と言う数字が難しいものに思えてきて、はじまりの猟兵が唸った。
『奥が……深い……!』
「全教科合計で丁度二百五十点……きみに取れるかな」
いつの間にか用意された机と椅子、そして五教科のテスト用紙、シャーペンに消しゴムを前にして、後には引けないとはじまりの猟兵が椅子に座る。
「このタイマーが鳴るまで……始め!」
テスト用紙を捲る音、そしてシャーペンが紙の上を走る音が響く。時折、はじまりの猟兵の呻き声なんかも聞こえていた。そしてタイマーが鳴り響くと、涼しい顔をした章とぐったりしたはじまりの猟兵が回答用紙を交換しあって添削を行う。
『ほんとに全教科五十点です……』
こわ……と小さく聞こえた気がしたが、章は気にせず添削を終えた回答用紙を彼女に渡す。
「基本的に五十点を下回ってたね」
『ううう……あのっ、それよりもですねっ! これに意味ってあるんでしょうかっ!』
「こんな事ができて何の意味があるのかって?」
こくこくと頷くはじまりの猟兵に、良い所に気が付いたねと章が頷いた。
「そこなんだ。特に意味はない」
『とくに……いみは……』
「ない」
きっぱりと断言した章に、はじまりの猟兵がぺたりと座り込んで力なく肩を落とす。
「僕の相手をして無駄に疲れただろう」
『ええ……まあ……はい……』
「これに比べたら、情報を話す方が簡単な筈さ」
『言われてみれば……!?』
「ほら、がんばれ」
頑張って情報を寄越すといい、と章が言い放つ。
『うう……二番目の猟兵はラーメンが好きで……』
「もう一回平凡力で勝負しようか」
『うわーん!』
もうテストいやですー! と叫んだはじまりの猟兵の周囲からは闇がしゅるしゅると抜けるように離れていき、力なく地面へと倒れ伏したのであった。
大成功
🔵🔵🔵