獣人世界大戦⑮〜パッセンジャー・ソング
●理由
ある男は一つのベンチに腰を下ろして落としていた視線を上げた。
それは視線を向けた、というよりも仕方ないから持ち上げた、というのが正しいのだろう。
翡翠の瞳が問いかけの主へと向く。
「何故、欺瞞に満ちた世界を護る?」
全てが偽物だ。
欺瞞というのならば、その通りなのだろう。
理解は得られず。
魂の根底にあるのは邪悪そのものであり、支配は人知れず蔓延っている。
「人の心には憎しみ、妬み、焦燥という負の感情がある。変えようのないことだ。それが悲劇をもたらし続ける。それは『理不尽な悲劇』なのではないか?」
問いかけの主の言葉に男は頭を振るでもなく、首肯するでもなく、その翡翠の瞳で見上げていた。
決して腰掛けたベンチから腰をあげることなく、なんの感情も浮かばない瞳で見上げていた。
「『理不尽な悲劇』にさらされるくらいならば、いっそ世界への絶望と憎しみにまかせてしまってはどうだ。その方がすっきりする」
「理由になってない」
きっぱりとした言葉だった。
ただ否定する言葉だった。
『理不尽な悲劇』があるのだとして、逃れ得ぬような憎しみに妬み、焦燥が我が身を闇に追い落とすのだとしても、それでも翡翠の瞳を持つ男は艷やかな黒髪を揺らして応えた。
「悲劇は喜劇の一部だからだ」
「喜劇?」
「そうだ。喜劇だ。数多の悲劇の集合体が喜劇だ。元来、人生は喜びに満ち溢れているはずだ。そうであるはずだと誰もが知っている。だが、人は己の人生を俯瞰して見ることはできない。その都度、その都度、迫りくる事象に手一杯だからこそ、それを悲劇だと思いこんでしまう」
「そんな事があっていいはずがない。悲劇であることを肯定しろと、認めろと、受け入れろというのか」
「悲劇は変わらない。ならば、喜劇であることも変わらない。どれだけ泣こうが喚こうが。時は平等に人の背中を推していく」
なら、と艷やかな黒髪の男は、その翡翠を燦然と輝かせた。
それは造られた虹の輝きなれど、荒野に咲く花のように美しかった。
「あんたの心の中で『己の闇を恐れよ』と言う声があるだろう。だが、それ以上に、『されど恐れるな、その力』と叫ぶ声があるはずだ」
誰が最初に発した言葉なのかはわからない。
けれど、幾度も目にした言葉だった。
それは祈りであり、希望であり、絶望でもあった。
幸せへの希求が人を人たらしめるのならば。
「『理不尽な悲劇』に屈することは、その魂が闇に堕ちることは」
「理由になってない――」
●|悪魔《ダイモン》『ブエル』
「ふむ、黯党首魁『本田・英和』は討たれたか。ならば、このまま引き下がるのは得策ではない。これは古き知識を得るためではない」
新しき知識を得るために戦うのだと言うように悪魔『ブエル』は本来のロシア戦線を指揮する首魁の代わりを務めるようにして絶つ。
周囲からは無数の影朧たちが立ち上がっている。
口々にまくしたてるのは、様々な怨嗟と悲嘆に満ちていた。
それは一つになって呪いへと変貌していた。
「古い。まったくもって古い。これでは新たな知識を得るに値しない」
『ブエル』は溜息を吐くように頭を垂れる。
「『はじまりの猟兵』。古くはない情報であったが、新たなる情報を得るためには動かねばならないが、しかし、猟兵が迫っている。これはよい情報ではない」
ならば、とこれまで彼が得てきた『理不尽な悲劇』という情報を呪いへと変じた『悲劇の幻影』へと加えていくのだ。
呪いの勢いが増すようにして、怨嗟は慟哭へと変化していく。
「何故、欺瞞に満ちた世界を護る?」
『悲劇の幻影』は猟兵すら飲み込むだろう。
この幻影への答えがない限り、猟兵達は『ブエル』へと攻撃を届かせることなどできない。
「まったくもってつまらん。問いかけに対する新たなる答えなどない。ならば、この私を猟兵が打倒することなどできようはずがない――」
●獣人世界大戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。ついに獣人世界大戦も第二戦線へといたり、さらには黯党の首魁『本田・英和』を打倒されたことで勢いが付きましたね」
彼女の言葉に猟兵達は頷く。
これでロシア戦線はどうにかなりそうだと思ったのも束の間、『本田・英和』が契約していた|悪魔《ダイモン》『ブエル』が、その戦線を引き継ぐようにして現れたのだ。
「『ブエル』は無数の影朧の悲劇に嘆く声が束ねられた『悲劇の幻影』にさらなる情報を加えています。これにより、『悲劇の幻影』が発露する『世界への憎しみ』に対して答えを叩きつけない限り、『ブエル』に攻撃を届かせることができません」
『悲劇の幻影』は例外なく猟兵たちを飲み込む。
そこには理不尽かつ、覆しようのない悲劇の幻が満ちている。
猟兵たちが思う理不尽な悲劇が次々と襲い来るだろう。
「『何故、欺瞞に満ちた世界を守る?』という問いかけは、絶望と憎しみ、妬み、焦燥にまみれている事は言うまでも有りません。この幻影を振り切り、皆さん自身の答えで乗り越えるしかないのです」
誰かが助けてくれるわけではない。
これもまた理不尽なる世界の理の一つであろう。
ナイアルテは、しかし、その瞳を爛々と輝かせていた。
彼女は知っている。
理不尽も、悲劇も、絶望も、過去も。
猟兵達はこれまでも全て乗り越えてきて、此処にいるのだから――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『獣人世界大戦』の戦争シナリオとなります。
ロシア戦線に在りし黯党首魁『本田・英和』は打倒されましたが、それを引き継ぐようにして現れたのは|悪魔《ダイモン》『ブエル』でした。
彼は『理不尽な悲劇』に嘆く影朧たちを呪いへと昇華させ、『悲劇の幻影』でもって皆さんを取り込みます。
この『悲劇の幻影』を振り払うには、『何故、欺瞞に満ちた世界を守る?』という問いかけに対して己が答えを叩きつけ、振り払うしかありません。
それをしないことには『ブエル』に攻撃がまるで届かないのです。
みなさんが歩んできた、これまでの道程。そこに答えがあるでしょう。新たなる答えを見つけることもできるでしょう。
プレイングボーナス……悲劇の幻がもたらす「世界への憎しみ」に打ち勝つ。
それでは、超大国をも巻き込んだ獣人世界大戦にて多くを救うために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『悪魔「ブエル」』
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POW : 存在否定呪文
レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1m以内の全てを消滅させる【魔力弾】を放つ。発動後は中止不能。
SPD : 生命否定空間
戦場全体に【生命否定空間】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【戦場全体の敵から奪った生命力】による攻撃力と防御力の強化を与える。
WIZ : 損傷否定詠唱
自身が愛する【即時治癒魔法の詠唱】を止まる事なく使役もしくは使用し続けている限り、決して死ぬ事はない。
イラスト:キリタチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
戒道・蔵乃祐
中々に想定外の事態ではないでしょうか?
しかしながら、彼の将校が因縁を以て1人の猟兵に討たれた事象は
厳然たる事実であったとしても実りある知識に類することではありませんからね…
貴方にも宿敵と呼べる存在は何処か、ここではない世界に存在するのかもしれません
なのでこの戦場で、ソロモンの悪魔を滅ぼし得る可能性は低いのかもしれない
然らばこの戦線での経験を糧とし、何れ起こり得る『ソロモンの鍵』に至る戦いのきざはしにするまで
無駄なことなんて何一つありません。ただ進み続けて、その先が見たい
それだけです
◆大獄殿
ガチデビルの欠片で存在否定呪文をジャストガード
武器受けしたまま切り込み+重量攻撃
全力のグラップルで殴り抜く
「中々に想定外の事態ではないでしょうか?」
|悪魔《ダイモン》『ブエル』にそう問いかけた戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)に彼は否定の言葉を紡ぐ。
いや、否定しかないのだろう。
どんな言葉に対しても全て否定する。
それが情報を代価として求める|悪魔《ダイモン》『ブエル』という存在のあり方だったのかもしれない。
「いいや。何一つ想定外などない」
「しかしながら、彼の将校が因縁を以て一人の猟兵に討たれた事象は厳然たる事実であったとしても、実りある知識に類することではありませんからね……」
否定の言葉を蔵乃祐は肯定する。
迫るは『悲劇の幻影』。
否応なく取り込まれる。
襲いかかる幻影は、蔵乃祐に如何なる悲劇を見せるだろうか。
「貴方にも宿敵と呼べる存在は、何処か此処ではない世界に存在するのかもしれません」
「対話は有意義ではない」
蔵乃祐は『悲劇の幻影』の向こう側に立つ『ブエル』を見やる。
届かない。
この悲劇を如何にしてか踏破しなければ、攻撃すら届かない。
対して、この幻影は『ブエル』にとって猟兵を追い詰める要素でしかない。
猟兵という存在を否定する呪文。
魔弾が蔵乃祐に迫る。
「貴方を『ソロモンの悪魔』を滅ぼし得る可能性は此度は低いのかも知れない」
彼の瞳がユーベルコードに輝く。
己自身に1stKING『魔王ガチデビル』の欠片を憑依させる。
皮膚が裂け、出血する。
迸る血潮。
鍛え上げられた体躯から突如として溢れた血潮は、『ブエル』の存在否定呪文による裂傷によるものではなかった。
これこそが、大獄殿(ダイゴクデン)。
蔵乃祐のユーベルコードである。
欠片とは言え、オブリビオンフォーミュラたる『ガチデビル』の欠片を憑依させているのである。その代償は毎秒血液を失うことである。
消費された血液は徒に流れるものか。
答えは否である。
己が体躯を動かす血液。
その血は熱である。即ち、体躯駆動せしめる燃料そのもの。
故に彼の体躯は跳ねる。魔弾を拳で受け止め、弾きながら『悲劇の幻影』をひた走る。
「然らば、この戦線での経験を糧とし、何れ起こり得る『ソロモンの鍵』に至る戦いの階にするまで」
無駄ではないかと幻影たちが言う。
何れ死に至る定めがあるというのならば、生きること自体が悲劇であり、意味のないことの連続ではないか。
無駄ばかりを積み重ねた人生ではないのか、と。
されど、蔵乃祐は否定する。
世界を憎む言葉に惑わされることはない。
「無駄なことなんて何一つありません。ただ、進み続けて、その先が見たい」
例え、行き着く先が死という終焉であろうとも。
「それだけです」
彼は『悲劇の幻影』を振りほどく。
飛び出し、『ブエル』へと踏み込む。
「正気ではない。無駄を無駄ではないと否定することは、まともではない」
「いいえ、まとも、まともではないという論議こそが無意味!」
全力の力を握りしめた拳の一撃が『ブエル』の体を捉え、その体躯をカチあげるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
儀水・芽亜
渦巻く悲憤、溢れかえる憎悪。その感情、「歌詠み」によって芸術へ昇華して差し上げましょう。あなた方の最期、心揺さぶる悲劇として必ずや世界の人々に伝えます。
|欺瞞《フィクション》に満ちた世界を守る理由ですか? この世界は全て誰かが定義した|虚構《フィクション》。骸の海という舞台で演じられる愛憎劇です。そして、|ショウを止めるわけにはいかない《The Show Must Go On》。
さあ、いきますよ、私の分身達。
「全力魔法」「呪詛」「魔力吸収」で蝶霊跋蠱。悪魔の魔力弾を無数の黒揚羽で受け止め、空いた穴は即座に残りの蝶で補充。
黒揚羽の渦でブエルの意識を奪いましょう。そしてアリスランスで一撃を。
眼の前に広がるのは『悲劇の幻影』であった。
取り囲むようにして広がるそれは、内包する猟兵たちの意識に入り込むような黒き靄めいたもの。
全てが世界を憎む怨嗟。
どうにもならない理不尽さ。
悲劇の連続を受け入れられない悲しみが渦巻いていた。
「渦巻く悲憤、あふれかえる憎悪」
その感情を儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『夢可有郷』・f35644)は見つめる。
片時も目を離してはならなかった。
逸らしてもいけない。
まっすぐに見据えなければならない。
今から己が行うことは、その感情を歌にすること。
どんな悲しみも憎しみも詠み上げることで芸術へと昇華せしめんとする行為であったからこそ、目をそらしてはならない。
「あなた方の最期、心揺さぶる悲劇として必ずや世界の人々に伝えます」
「それこそが欺瞞とは思わないのか」
問いかける言葉に芽亜は頭を振る。
この世界は欺瞞に満ちている。
それでもなお猟兵は世界を守らなければならない。結果的に人を守ることになるだけであって、世界を守るという至上命題を猟兵は抱えている。
「この世界は誰かが定義した|虚構《フィクション》。骸の海という舞台で演じられる愛憎劇です。そして、|ショウを止めるわけにはいかない《The show Must Go On》」
ただそれだけだと芽亜は言う。
世界は舞台。
現象は舞台装置。
生命は演者。
数多の感情があって、それが渦を巻く。
黒と白とに分かれて混ざり合わぬ灰に届かぬ永遠の中にあるというのならば、彼女はせめて、これを芸術に昇華せねばならないのだ。
世界への憎しみを振り払って、芽亜は踏み出す。
舞台の中に満ちる嘆きも、苦しみも、悲しみも、全てが一時のものでしかない。
「さあ、いきますよ、私の分身達」
芽亜の瞳がユーベルコードに輝く。
背には黒揚羽の翅。
彼女の真の姿は少女。
周囲に渦巻くは、黒揚羽の群れ。
それが|悪魔《ダイモン》『ブエル』へと迫るのだ。
「意味がない。その情報にはまるで意味がない」
『ブエル』は否定する。
眼の前の猟兵が存在することを否定する魔力の弾丸を呪文に乗せて解き放つ。
身を打ち据える魔弾に黒揚羽の群れが霧散させられていく。
だが、芽亜の姿が代わりゆく。
常に変化し続けている。蝶霊跋蠱(チョウリョウバッコ)たるユーベルコードは、魔弾受ける度に彼女の姿を変貌させていくのだ。
「どれだけ変化しようと、その情報には意味がない。旨味がない。猟兵は千差万別。大本がかわらない、というのならば、私の求める情報ではない」
全てが否定の言葉。
されど、芽亜は構わなかった。
魔弾によって穿たれた孔を補填するように黒揚羽の群れを生み出し、その渦巻くようにして飛ぶ力によって『ブエル』の意識を奪わんとする。
生み出されたのは空白。
意識しろばむ僅かな時間。
そこに芽亜は飛び込み、己が手にしたアリスランスの一撃を『ブエル』に叩き込む。
「だったらなんだというのです。世に満つる、罪に染まりし汚れた生魄どもを喰らい尽くし、栄光なる清浄な世界へと導かんことを――!」
大成功
🔵🔵🔵
朱酉・逢真
心情)お前さん悪魔にしちゃ視界が狭い。己の経験だけで断定するとは。真実と欺瞞に差などない。すべては常に塵芥となる可能性を持つ、知識さえも。この世の全ては無意味な虚偽であり、同様に有意義な真実だ。ああ、返答だったか。いまの"俺"はヒトに寄り添うための機構、世界を維持するための道具。すなわち『神』として象られた。だから"そう"しているのさ。
行動)俺は生きていない病毒の塊。故に生命を否定されても動ける。お前さんには用がないンだ、あるのは後ろの子らさ。さァさ、吹き溜まった魂らよ。おいで、俺と行こう。憎悪も悲嘆も俺が聞き、俺が受け止め、慈しもう。マ・この子ら連れてきゃ他のおヒトらの助けにもなるだろ。
|悪魔《ダイモン》『ブエル』は全てを否定でもって断定する。
眼の前の情報全てが古いと言い放ち、その鮮度を否定する。
そう、否定ばかりなのである。つまりそれは、肯定という両極に位置する視野というものを見ないもの。
故に朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は『ブエル』を視野狭窄と断じる。
「己の経験だけで断定するとは」
「私は間違えない。何も違えない」
「真実と欺瞞に差などない。全ては常に塵芥となる可能性を持つ、知識さえも」
「故に私は間違えない」
逢真は頭を振る。
やはり、わかっていないのだ。
己に迫る『悲劇の幻影』が周囲を取り囲む。
黒い靄のような気配。
響くは怨嗟。
世界を憎む声ばかりが逢真の耳朶を打つ。
「この欺瞞に満ちた世界を守る意味などあるのか?」
「悲劇ばかりが満ちる世界などなくても構わないではないか」
そう叫ぶ声が耳に響く。
確かに、と思う。
この世の全ては無意味な虚偽である。
だが、同様に有意義な真実でもあるのだ。
故に生きている。何処まででも、何処でも生きていく事ができる。
故に逢真は応える。
「いまの“俺”はヒトに寄り添うための機構、世界を維持するための道具。即ち『神』として象られた。だから」
踏み込む。
迫る『悲劇の幻影』が己に何かをできるものではない。
これは結局のところ言葉でしかない。
ただの言葉は感じるものがなければ、やはりただの言葉でしかないのだ。故に今の逢真にはやはり『悲劇の幻影』は力たり得ない。
靄はまとわりつくようであったが、しかし、それを振り払って逢真は踏み出す。
外に存在する『ブエル』を打倒しなければならない。
「有意義ではない。それはまったくもって意味がない」
「そうか? 俺はお前さんには用がないンだ」
「ならば、ことさら私に立ち向かう理由などない」
『ブエル』の言葉に逢真は薄く笑む。
そう、自身に『ブエル』に対するものは必要ない。
だが、己の背後にある者たちは違う。
そう、周囲に満ちるには『悲劇の幻影』。即ち、『理不尽な悲劇』に見舞われた影朧たちである。
彼はそれすらも喰らう神威。
ユーベルコード、十六の一番(ビーダブリューブイ・イチロクイチ)。
呪縛を解き、輪廻に戻す。
その力こそ、慨嘆に慈しみを覚える。
それこそが己が病毒の塊たる存在意義。
「生命否定空間で存在できる生命など存在しない」
「ああ、だからだろうよ。此処に居るのは全て生命ではない。さァさ、吹き溜まった魂らよ。おいで、俺と行こう」
全ての理不尽を。
全ての嘆きを。
全ての怨嗟を。
逢真は引き連れるようにして、その瞳に輝くユーベルコードを標にして踏み出す。
「憎悪も悲嘆も俺が聞き、俺が受け止め、慈しもう」
「知らない。それは知らない情報だ。何故、そんなことができるということを私は知らない?」
「さあな、だが、この子らも根底ではわかっているんだろうよ。他のヒトの助けになるのではないかという淡い淡い……いや、甘くなった思いがあるんだろうさ」
だから、と逢真は『悲劇の幻影』が嘗て献じられた『まつろわぬ民の刃』を手にし、その白熱した刃を『ブエル』へと叩き込む姿を薄い笑みと共に見やり、その凶星の如き赤い瞳を輝かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
隣・人
反吐が出る
いや、わかってる
私が『世界をそれほど好いていない』事くらい、私自身が理解している。けれど、世界は私にとっての『餌場』であり、これを維持しなければ私はそれこそ死んでしまう
絶望結構――悲劇結構――何故なら、それが存在するという事は『人間』がたくさん存在しているという事。否定しようが肯定しようが世界は人間に支配されている
なら――私は殺人鬼として、獣の数字の番外として、アンタを殺してやるんだから
簡単に言ってしまえば、憎まれる側だと言うのに、どうして打ち勝つ必要がある。だって私は『勝っている』んだもの
オーバーロード
女子高生風
六六六人衆
まあ、私の場合は『バーチャルキャラクター』としての設定みたいなもんだけどね。空間を発生させるよりも先に『体勢を崩す』して『暴力』よ。この腕にかかればアンタなんて
死んでいるも同然なんだから
世界は斯くも残酷までに美しい。
絶えず時は運び、土に還る。
そういうものだ。
だからこそ、隣・人(22章39節・f13161)は『世界をそれほど好いていない』のだ。
それくらい、自分自身が一番ン理解している。
けれど、世界は己にとっての『餌場』だ。
なくてはならないものだ。
得られなければ己という存在は保てない。
維持しなければならない。
堅持しなければならない。
保持しなければならない。
「私はそれこそ死んでしまう」
彼女は反吐が出る思いだった。
眼の前に迫るのは無数の『悲劇の幻影』である。
その全てが黒い靄となって彼女を取り囲み、取り込んでいた。
「そもそも君は生きていない。死んでいないだけではない。故に、そこの意味はない」
|悪魔《ダイモン》『ブエル』は存在否定の呪文を唱え、生命を拒絶する。
やかましいほどの鼓動を立てる生命。
情報を求める彼にとって、生命とは情報の源そのものであっただろう。だが、同時に生命がなんであるのかを知るからこそ否定もまた容易である。
肯定はしない。
あるのは否定だけだ。
故に生命を否定し続ける。
「絶望が満ちる世界があるのならば、これを憎むべきだ」
「悲劇があるのならば、これを正さねばならない」
「世界は残酷で美しいからこそ、醜くも平和であるべきだ」
声が聞こえる。
しかし、人は頭振ることなく、その見開かれた瞳を以て世界を、否、『悲劇の幻影』を見やる。
「絶望結構――」
吐息の色は何色だっただろうか。
「悲劇結構――」
その体躯に流れる血潮は何色だっただろうか。
「なぜなら、それが存在するということは『人間』がたくさん存在しているというコト。否定しようが、肯定しようが、世界は人間に支配されている」
どこまでいっても人がいる。
人こそが世界の支配者であるというのならば、人は番外たる数字を抱く。
「なら――私は殺人鬼として、アンタを殺してやるんだから」
そう、殺人鬼は人がいなければ、殺せない。
人であれば殺す。
殺せるから人なのだ。
故に人は、己が『理不尽な悲劇』そのものであると語る。
己は憎まれるべき存在である。
ならば、打ち勝つ必要なんて居ない。
端から、彼女は『勝っている』。この『悲劇の幻影』たちにとっての不倶戴天の敵。故に、そこに悲劇がある限り、彼女は勝利している。
それは即ち、数多の殺意である。
殺意が膨れ上がっていく。
それは腫瘍である。
人という枠組みの中で、その枠自体を破壊する腫瘍である。
故に彼女の殺意は、身に宿り、血潮の一滴にさえ染み渡り、骨片を補強していく。
超克の輝きが瞳にある。
真の姿を晒す。
一見すれば、ただの女子高生。
されど、見るものにとっては、それは『理不尽な悲劇』そのもの。
すれ違い様に人が死なぬなど誰が決めた。
人はすれ違うだけで殺す理由になると言わんばかりに腕(カイナ)を振るう。
「意味がない。そんなことに今更、知識があるわけがない。そんなことは必要ない」
『ブエル』の言葉を無視した。
聞くに耐えない。
聞く必要なんてない。
なぜなら、彼女のユーベルコードが殺意にきらめいていた。
もう。
「殺したくて」
クラクラと視界が揺れる。
倒れ込むようにして人は『ブエル』へと踏み込んでいた。
超強化されたただの腕。
振るうは絶死の煌き。
「めまいがする。でも、アンタなんて、死んでいるも同然なんだから」
光の明滅と共に『ブエル』は知るだろう。
己の心臓を抉るようにして振るわれた腕は、間違いなく躯体へと殺意の爪痕を残したのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ミツバ・カナメ
欺瞞に満ちた世界、か。
そりゃあ、|あたしの故郷《サイバーザナドゥ》は寧ろ欺瞞しかないってぐらい悪い人だらけの世界だけれど。
でも、だからといって滅ぼしていい理由にはならない。そんな中でも正しい心をもって生きてる人はいるのだし、その影朧さん達だって生きてた頃はそういう人達だったんだろうし。
そんな人達の力になるために、あたしは|生まれた《造られた》んだもの。
どんなに欺瞞塗れだろうと、あたしは全力で世界を、そこに生きてる人達を守るよ!
それでブエルの姿が見えたら、其処に暴徒鎮圧用放水銃を浴びせて詠唱を止めさせつつ【ダッシュ】で接近。
ハード・ノッカーの【零距離射撃】で一気にダメージを与えるよ!
「何故、こんな欺瞞に満ちた世界を守る必要がある」
「誰もが悲劇に見舞われている」
「悲しみと苦しみが絶望を呼ぶような世界など必要ない」
『悲劇の幻影』に取り込まれたミツバ・カナメ(みんなを守るお巡りさん・f36522)は、確かにそうかもしれないと思った。
欺瞞に満ちた世界。
世界を守るために戦う選ばれた戦士であるミツバにとって、それは日常だった。
普段と変わらないことだった。
なぜなら、彼女の故郷であるサイバーザナドゥは、むしろ欺瞞しかない。
悪事を働く者しかいないと言っても過言ではない。
骸の海が雨として降り注ぐ、緩やかな滅びへと向かう世界に生きるには人の善性はむしろ足かせだった。
「確かにろくでもない世界だって、あたしも思うよ。でも、だからって滅ぼしていい理由にならない。そんな中でも正しい心を以て生きている人はいるのだし、君たちだって生きていた頃は、そういう人達だったんでしょ」
ミツバは思う。
人の善性を思う。
確かにどうしようもない悪事を起こすのもまた人だ。けれど、それは善性の裏返しだ。
どうしようもない世界が、それを誘引するのかもしれない。
でも、確かにあったのだ。
『悲劇の幻影』を生み出した影朧たちだってそうだ。
幸せな記憶があるから、不幸な記憶だけが浮き彫りになってしまう。
不幸が際立つのならば、それはきっと幸福な記憶があまりにも満ち足りていたからだ。
「落差が、そうやって誰かを傷つけるものになるっていうのなら」
ミツバは踏み出す。
どれだけ欺瞞に満ちた世界であっても、彼女が|生まれた《造られた》理由を思い出す。
人の善性を信じる。
善性を持って生きる人々を助けるために生まれたのだ。
「そのための力だもん! どんなに欺瞞塗れだろうと、あたしは全力で世界を、そこに生きている人達を守るよ!」
ミツバは幻影の黒い靄の中を迷いなく進む。
振りほどくことはしなかった。
だって、それは必要ないことだった。
彼女が人の善性を信じるのならば、自ずと路は開けるものだと知っていたからだ。
「|悪魔《ダイモン》『ブエル』! あなたがどんなにこの人達を煽っても、それでも負けないのが人の善性だって知りなさい!」
「意味がない。その言葉には全く持って整合性がない。人の善性など悪性を前にして役立つことなどない」
「そんなことない! その知恵熱に茹だった頭を冷やしなさーい!」
『ブエル』が詠唱するよりも速くミツバのユーベルコードが迸る。
何処からともなく持ち出してきた暴徒鎮圧用放水銃(ライオット・バスター)から高圧水流が放たれ、水圧を持って『ブエル』の体を押し戻すのだ。
いける。
他の猟兵たちのユーベルコードが『ブエル』の力を減じているのだ。
放水でもって動きを止めた『ブエル』へとミツバは走る。
手にした大型ショットガンの銃口を『ブエル』へと突きつけ、引き金を引く。
ゼロ距離の散々の一撃は『ブエル』に叩きつけられ、高圧水流と共に、その体躯を吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
貴方は痛みを識るべきでは無いでしょうか
【真の姿】解放
理外の理たる猟兵の本質
金丹仙薬を服用してドーピング
血と肉と生命力を操作し限界突破させ続けることでテロメアを伸長
生命否定空間の法則性を力業で捩じ伏せる
そう…識るべきだ
傷つき虐げられた者達の「過去」を
『悲劇の幻影』を情報と作用としか理解し得ない悪魔は、生者への怨嗟と呪いとして影朧を定義しているが本当はそうじゃない
共に征こう
世界は嘘と欺瞞に満ちていて、愛や信念や希望が蟷螂の斧だとしても
この世に悪の栄えた試しは無い
そうでなければ、面白くないでしょう?
◆クロム・クルアハ
クイックドロウ+早業の乱れ撃ち
滅多矢鱈斬り
そう。面白くない
俄然楽しくなってきましたね
否定の言葉が紡がれる。
世界にあるのは『理不尽な悲劇』である。
それは傍観者にとっては、ただの事象でしかないだろう。
スポットライト浴びる悲劇の主たちは、己たちの境遇を語るだろう。
どれだけ理不尽が己たちに降り掛かっているのかを。
けれど、それは他者から見れば、喜劇の一部でしかないのだ。人の生きる道に希望と絶望とが同じくして転がっている。
人は希望しか見たくないと言う。
絶望など見たくないと言う。
それは尤もであろう。故に人は痛みを覚えるのだ。
耐え難い苦痛の先にこそ、喜びや楽しさを見出す。そういうものだ。
人は生きるがゆえに苦しみを得るのではない。
喜びを得るために苦しみをまず得るのだ。
その痛みは、悲劇の主にしか知り得ぬものである。
「貴方は痛みを識るべきではないでしょうか」
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は|悪魔《ダイモン》『ブエル』へと告げる。
だが、彼は頭を振る。否定をする。
「意味などない。その痛みという情報はすでに知り得ているがゆえに、今一度学びなおす必要などない。不要であるし、そこに意義はない。古い古い、情報であるがゆえに、再考の余地などない」
『ブエル』の否定の言葉に蔵乃祐は踏み出す。
痛みなど必要ないと言った。
『ブエル』はすでに知っていると言った。古い情報だと。なるほど、確かにそうかもしれない。
痛みは原初の感覚であろう。
人が、生命が、得る痛みという感覚は、自然に生きる上では危機に対するセンサーである。
ならばこそ、危うきに近づかぬようにと識る。
「痛みなどただの神経電流の見せる瞬きそのものでしかない。反応でしかない。ならば、必要のない」
「いえ、やはり識るべきだ。傷つき虐げられた者たちの『過去』を」
蔵乃祐は思う。
『悲劇の幻影』を『ブエル』はただの情報と作用としか理解しえていない。
本質を理解していない。
故に生者への怨嗟と呪いとを影朧の定義としている。
だが、違うのだ。
眼の前に迫る『悲劇の幻影』から目をそらさない。
「共に征こう」
世界は欺瞞に満ちている。
愛と信念、希望といったものが蟷螂の斧のごとく無意味に思えるのだとしても、それでもこの世に悪ばかりが栄えた試しはない。
どんな生命体にとっても、どんな歴史の中にあっても、繰り返される螺旋のように、陰陽のように、悪性と善性とは巡るものなのだ。
故に『己の闇を恐れよ』――『されど恐れるな、その力』と叫ぶのだ。
「そうでなければ、面白くはないでしょう!」
ユーベルコードに彼の瞳が煌めく。
己が心臓を喰らい、殺戮の権能を呼び起こす。
クロム・クルアハ。
英雄幻妄。
災魔の邪気を取り込み続けた妖刀を握りしめた蔵乃祐が『ブエル』へと迫る。
振るうは乱れ打つような剣閃。
それだけでいい。
見えざる狂気が開放され、己が体躯を削り取るようであった。
生命が失われていくかもしれない。
けれど、構わなかった。
「意義がない。その行為に必要性を見いだせない」
「そうでしょうね。面白くない、面白いということすら理解できぬ悪魔には! 僕はね、逆に俄然楽しくなってきましたね!」
振るわれる斬撃は滅多矢鱈に『ブエル』へと刻まれる――。
大成功
🔵🔵🔵
シャムロック・ダンタリオン
ふむ、何やら聞き覚えのある名の者が現れたと聞いてな――まあ、オブリビオンとして現れた以上、僕のことは覚えてはおらぬようだが。
(で、幻に対し)黙れ、幻影風情が(【威厳・威圧・恐怖を与える・傷口をえぐる・悪のカリスマ】)。貴様らが悲劇に巻き込まれたのは偶然でしかない。そのせいで世界を呪うなど、お門違いもいいところだ。それに僕が戦う理由は世界を救うためではない。例えるなら「害虫駆除」だな。
で、即時回復するというなら、それを上回る勢いで「滅び」の「雷」を食らわせるまでよ(【先制攻撃・全力魔法・属性攻撃】)。
※アドリブ・連携歓迎
|悪魔《ダイモン》『ブエル』。
それは稀代の悪魔召喚士『本田・英和』が契約していた悪魔の名である。
しかし、シャムロック・ダンタリオン(図書館の悪魔・f28206)は、その名に何処か聞き覚えがあったのかもしれない。
「――まあ、オブリビオンとして現れた以上、僕のことは覚えておらぬようだが」
対峙して理解する。
『ブエル』はシャムロックを見ても、特に何かを言うつもりはないようだった。
「古い情報は必要ない。有益ではない。この戦いには意味がない」
否定の言葉が紡がれる。
彼の言葉は全てが否定で終わる。
他者を情報、知識としてしか認識していない。
『理不尽な悲劇』に見舞われた影朧たちの記憶すらも、ただの情報でしかないのだ。だから、『悲劇の幻影』にすら良心の呵責というものを覚えなかった。
それはシャムロックにとっても同様であっただろう。
「欺瞞に満ちた世界を守る意味があるのか」
「黙れ」
シャムロックは一喝すらしなかった。
ただ呟いただけだった。
そこにあるのは威厳であったし、威圧であった。
恐怖すら覚えさせる声色は、眼の前の悲劇の主たちたる幻影を前にしても変わることはなかった。
傷口を抉るかのような立ち振舞い。
そこに一切の遠慮というものはなかったし、容赦などなかったのだ。
「貴様らが悲劇に巻き込まれたのは偶然でしかない」
「何故、偶然と片付けられる。必然ではないのか。この悲しみも苦しみも、誰が分かつことができようか」
「無駄なことを言う。世界を乗ろうなど、お門違いもいいところだ」
彼は踏み出す。
幻影と語らうことなど時間の無駄であった。
なぜなら、シャムロックの戦う理由は世界を救うことではなかった。
例えるなら『害虫駆除』であった。
己の住処に、書架にたかる害虫を駆除する。
それが彼の理由だった。
それ以外ない。故に幻影に構うことなく踏み出す。
世界を憎む悲劇の主など歯牙に掛けず、シャムロックは『ブエル』と対峙する。
「有意義ではない。時間を有効活用できていない」
「お前も害虫だ」
シャムロックの瞳がユーベルコードに輝く。
オブリビオンである以上、過去からにじみ出たものでしかない。
下すは、滅びの雷。
エレメンタル・ファンタジアによって合成された現象。
属性を付与された雷は『ブエル』を打ち据える。
だが、すぐさまに『ブエル』の体躯は治癒されていく。
「ほう、即時回復か」
ならば、とシャムロックは笑む。
常時、治癒魔法を詠唱しているというのならば、好都合である。それは『ブエル』の足が止まるということだ。
「ならば、その治癒を上回るまで勢いを増して雷を食らわせるまでよ」
振るうユーベルコードの輝きが天雷となって降り注ぐ。
その光景を見やり、シャムロックは己が世界という書架から害虫を駆除するための光を振り落とし続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒沼・藍亜
本田氏にも似た事言ったわけっすけどね
世界が欺瞞で満ちてようが関係ない。ボクは、ボクの大事なものを、それを脅かそうとする|全て《・・》から護るだけっすよ
さて。それじゃあ異世界からの来訪者さん?ボクの大事なものに手を出される前に、ここで潰させてもらうっすよ?(敵意と殺意)
UCで幻影を召喚。自己治療はされるけど、そもそもこれは「見たものにとって心を抉る」姿で映る。
まあボクにもそう見えるんすけど、お陰で悲劇の光景も耐性がある
という訳で「トラウマで囲んで袋叩き(精神攻撃とか恐怖を与える)」っすね
肉体が傷つかない?なら、人格でも記憶でも思想信条でも、圧し折り嬲り犯しズタズタにしてやればいいだけっす
不世出の悪魔召喚士『本田・英和』は言っていた。
『何故、欺瞞に満ちた世界を守る?』
そう言っていたのだ。
そして、今まさに目の前に迫る『悲劇の幻影』たちも、また同じ言葉を紡ぐ。
黒沼・藍亜(に■げ■のUDCエージェント・f26067)にとって、それは二度目の問いかけだった。
心持ちは変わっていない。
「似たようなことを言ったわけっすけどね」
だったら、揺れる必要はない。
ブレることなんてない。
彼女の眼の前には道がある。たとえ、『悲劇の幻影』が立ちふさがるようにして、黒い靄を生み出しているのだとしても、己を取り込もうとしているのだとしても。
立ち止まる必要なんてないのだ。
すでに答えはある。
「世界が欺瞞に満ちていようが関係ない。ボクは、ボウの大事なものを、それを脅かそうとする|全て《・・》から護るだけっすよ」
それが正しいのか正しくないのかなんて、誰が判断できる。
神ならぬ身に断じることなどできようか。
故に、藍亜が断じるのだ。
己が決めて、己が実行する。全ての責任は己にある。例え、全てが己の守りたいものに迫るのだとしても、関係ない。
己が護るのだ。
踏み出した一歩は驚くほどに軽かった。
幻影をそよ風のように躱しながら藍亜は|悪魔《ダイモン》『ブエル』を見据える。
「さて。それじゃあ、異世界からの来訪者さん? ボクの大事なものに手を出される前に、ここで潰させてもらうっすよ?」
その瞳には敵意と殺意が満ちていた。
「その情報は新しくない。だが、嘘偽りでもない。誰かの大事なものであろうとなかろうと私には関係ない。全ては等しく私の知識のためであるし、必要のない情報を蓄積することはない」
「そうですかよ!」
やはり、こいつは、きらいきらいだいきらい(イチバンキライナノハダアレ)だと藍亜は思っただろう。
嫌悪を感じる。
こいつは情報を代価として召喚されていると言った。
だが、そんなこと関係ない。
嫌悪だけが藍亜の中にあった。
こいつは此処で倒す。
「アンタには……何が見えるっすか?」
彼女のユーベルコードが生み出した心抉る何かの姿をした幻影。
藍亜にとっては、トラウマを抉るものであった。
悲劇ばかりがあった。
数え切れない悲劇があった。
故に藍亜は『悲劇の幻影』を見ても、耐えることができたのだ。
「心などどうとでもない。肉体を傷つけぬ攻撃など、なんの意味もない」
「そうっすか? でもね、肉体はこころの器なんすよ。人格も記憶も、思想も、信条も。全部いれる器なんすよ。確かに肉体は傷つかないかもしれないっす」
でも、と藍亜は笑う。
心はへし折ることができる。
「平気そうな顔をしておいて、なんすか。その顔。意味ないなんて言いながら、しっかり嫌悪しちゃってるじゃあないっすか!」
藍亜の言葉を『ブエル』は聞いていなかった。
彼の瞳に映るのは、彼のトラウマそのものであったことだろう。
「これは新しい情報ではない。これは私の好むところの情報ではない。何一つ、新しさがない!!」
「アハハハッ! そのままトラウマに心をえぐられて、圧し折って嬲り、犯し、ずたずたになればいいんすよ――!」
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
藍ちゃんくん、思うのでっすがー。
欺瞞というのは何でもかんでも悪いことなのでっしょうかー?
いえ、良し悪しで語るのは好みではないのでっすが、それはそれ。
例えば藍ドルに馴染み深い、おしのびや演技も誤魔化したり騙すこととも言えまっすし、化粧やファッションも覆い隠す・化かすと言えなくもないのでっす!
欺瞞がない世界というのは謂わばすっぴんなのでっしてー。
メイクもできない世界など、なんとも夢がないと思いませんかー?
というわけで否定空間による強化の対象を藍ちゃんくんに!
奪われた生命力で藍ちゃんくんをメイクしちゃうのでっす!
戦えば戦うほど藍ちゃんくんが強化され一方的に有利になるのでっす!
黒い靄のような『悲劇の幻影』が紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)を取り囲む。
ファンミーティングの開始を告げた覚えはない。
けれど、藍は思う。
これもまた藍ちゃんくんの魅力に『悲劇の幻影』となった影朧たちが引き寄せられた結果なのではないか、と。
なら、予定していなかったファンミもやってやろうじゃん、というものである。
「藍ちゃんくんでっすよー!」
いつもの掛け声であった。
コール、と言うものであった。
いつもどおりだった。変わらなかった。どんなに悲劇を悲しむ声があろうと、世界を憎む声があろうとも、藍は藍のままであった。
変わらなかった。
それは真芯が大地に根ざしているから、とも言えたかもしれない。
「藍ちゃんくん、思うのでっすがー。欺瞞というのは何でもかんでも悪いことなのでっしょうかー?」
藍には疑問だったのだ。
確かに『悲劇の幻影』たちは嘆き、世界を憎んでいる。
どうしたって悲劇は世界に満ちている。
けれど、欺瞞とは本当に悪いことなのか。人を欺いてることに代わりはないだろう。
「いえ、そもそも良し悪しで語るのは好みではないのでっすが、それはそれ」
「世界は悲劇に満ちている。これは変えようないことだ」
「ですねい。でも考えてみてくださいっですよ。藍ドルに馴染み深い、おしのびや演技もごまkしたり騙すことともいえまっす」
加えて、取り出したるは藍が普段遣いにしているコスメティック。
これも、と藍は手元に示す。
「化粧やファッションも覆い隠す、化かす、とも言えなくもないのでっす!」
だが、それも含めて己の魅力であると藍は思うのだ。
欺瞞が化粧だというのならば、欺瞞無き世界はすっぴんである。
「気合いれるためにメイクはするものでっす! メイクアップして盛れると嬉しいでっす。でも、それもダメ、あれもダメ、これも! なんて、そんなのなんとも夢がないとは思いませんかー?」
「夢など意味がない。脳の信号が記憶を手繰る寄せて結合するだけの無為なる現象など、遥かに意味がない」
|悪魔《ダイモン》『ブエル』は黒い靄の外から告げ、そのユーベルコードを発露する。
生命否定の空間。
藍を取り囲む空間は生命を否定し続ける。
奪われた生命力をものともせずに、藍は瞳をユーベルコードに輝かせる。
どんな悲劇だって、藍を前にしては意味がない。
なぜなら、藍は盲目(アイキャッチ)だから。
全てにおいて、藍が優先される。
よそ見なんて許さない。
どんな悲劇が眼の前に迫るのだとしても、それでも余所見厳禁。
悲劇はやり過ごせば良いのだ。
「皆々様! 藍ちゃんくんだけを見てくださいなのでっすよー!」
ファンミという最高のパフォーマンスから、溢れるは熱狂の渦。
「存在しているはずのない感情の渦が、熱狂となって遠ざからない。何故、こんな事が必要なのか理解できない」
「できませんっかー! なら、わかるまで見ていてくださいでっすよー!」
藍は笑う。
どんな悲劇にだって、最期は笑い顔が似合うと思うのだ。
苦しく、辛く、悲しい出来事があっても。
それでも最後に笑顔になって欲しい。
だから、見ていて欲しいのだ――!
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
ですがね、それでも…私はその世界を守りたいと思うのですー。
悲劇も憎悪もあるでしょう。ですが、世界はそれだけでは回っていないのですしー。そう、欺瞞だけではないのです。
私は、『私たち』は…誰かが懸命に生きる世界を守る者なれば。
ブエルも出てきましたか…やることは簡単です。
『悪霊』という生命終わりし者である『私』ですが…ええ、この漆黒風をUC付きで投げるのみ。
生命終わりし後も、『私たち』は戦い続けますよ。怨嗟も何もかも、受け入れてね。
『悲劇の幻影』は言う。
欺瞞に満ちた世界を護る意味はあるのかと。
全てが無意味ではないかと。
人生全てが悲劇であるというのならば、己たちが死した結果に意味はあるのかと。
世界を存続させるために、悲劇の連続を許して良いのか。
どうしようもない悲しみだけがあふれかえるのが世界ではないのか。
責め立てるような言葉が『悲劇の幻影』に取り込まれた馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の身に降り注ぐようだった。
言い訳のしようがない。
言い返す言葉がない。
それは正しいのだ。どうあっても世界に悲劇は満ちている。一体誰が、この理を決めたのかと問いただしたくなるほどに悲劇は繰り返される。
どうしようもないことだと項垂れることもできただろう。
けれど、前を向いて『疾き者』は告げる。
「ですがね、それでも……私はその世界を守りたいと思うのですー」
悲劇も憎悪も当然あるべき感情だ。
だが、世界はそれだけで回っていない。
悲劇ばかりで満たされていないのと同じように。
「そう、欺瞞だけではないのです。そこには真実もあるのです。見てきたのです。この眼で。多くの世界を、人を、生命を」
懸命に生きる人々に悲劇は認識できるか。
いや、できるだろう。
悲劇見る者が懸命に生きていないということではない。
「悲劇を前にして立ちすくむことだって、今を生きているということ。私は、『私達』は、誰かが懸命に生きる、生きようとしている世界を護る者なれば」
踏み出す黒い靄の中。
手足を掴む靄があった。
未練、と呼ぶのかも知れないもの。けれど、『疾き者』は黒い靄に掴まれながらも、幻影の外に歩みだす。
「護ることに意味などない。抵抗する必要などない。滅びを受けれない、ということ自体が歓迎すべきことではない」
|悪魔《ダイモン》『ブエル』は、その手に生命否定の空間を生み出す。
「生きている者ではない。悪霊という存在に成り果ててなお、その力に道はない。その先など何処にもない。あると思っているだけで、それ以上は、ない」
否定の言葉が降り注ぐ。
けれど、『疾き者』は頭を振る。
確かに己達は悪霊である。
生命が終わった者たちだ。
だが、それでも、と『疾き者』は棒手裏剣を『ブエル』へと投げ放つ。
これもまた懸命である、ということだ。
否定されようと、謗られようと、それでも戦い続ける。
そうあるべきであると己たちが規定したからだ。
「怨嗟も、何もかも受け入れて戦うのですよー」
投げ放つ棒手裏剣は、風を纏って走る。
ユーベルコードが明滅している。罪深き刃。されど、それはきっと残酷なまでに美しい世界を護るためにあるのだ。
決して世界の破滅を見せるための輝きなどであるはずがない。
そう思うからこそ、己たちを束ねる霊障は、オブリビオンを憎む呪詛と共に、その力を発露させるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
メリー・スペルティナ
ふふん、愚問ですわね。だからこそ、ですわよ。
英雄も勇者も、貴方達を救えなかった。だからせめて
その|想い《呪い》に魂を引き摺られ、この世に縛り付けられることが無いようにと、もう居ない者達の為に、わたくしは此処に居るのですわよ
こちらもUCを使い、斬りかかっていきますわ!
生命力が奪われるなら補填すればよいのですわよ!
そしてどの道相手との交戦で血を流すのなら上等ですわ!流れた血を以て周辺の嘆きも怒りも呪いも、
全部呑み込み拭い去ってしまいますわ!……そして、相手が浴びればこの血に内包される負の想い、溜め込み、淀み、濃縮され無差別な呪詛と化した「それ」で蝕んでやりますのよ!
「ふふん、愚問ですわね」
迫る『悲劇の幻影』を前にしてメリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は胸を張るようであった。
どれだけの悲劇が目の前に現れ、世界への怨嗟を叫ぶのだとしても、彼女は揺らがなかった。
確かに世界に悲劇は満ちている。
悲しいことばかりが溢れている。
「だからこそ、ですわよ」
眼の前の悲劇の主たち、その影朧の元となった魂を英雄も勇者も救えなかったというのならば、それはもはや呪いでしかない。
強い想いは呪いへと成り果てる。
魂は、その重さに耐えられない。
引きずられながらも過去の堆積の中に歪み果てるしかないのだ。
故に、昇華しなければならない。
「その魂、この世に縛り付けられることがないようにと、もう居ない者たちの為に、わたくしは此処に居るのですわよ」
それがメリーの答えだった。
確かに悲劇の主たちは救えないのかも知れない。
それは他の誰にもできないことであったのかもしれない。他者を救うことができるのは、その悲劇の主本人のみである。
故にメリーは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
冥想血界:果てなき永劫の戦(ヴェルトート・ヴァルハラ)。
終わり無き戦を征くは、メリー・スペルティナである。
降り注ぐは紅い雨。
「そんなものに意味はない。あるのは喜劇ではない。故に、猟兵、お前たちの戦いは全てにおいて意味がない。どんなものも骸の海へといたり、土に帰らぬものなどない」
|悪魔《ダイモン》『ブエル』の声が響く。
『悲劇の幻影』の向こう側からメリーに届いているのだ。
「ふふん! なら見せてやりますわよ! 今を生きる者の強さ、その想いを」
「その言葉に意味はない」
「そうでしょうかしらね!」
メリーを襲うのは生命否定の空間。
命が存在できぬ空間を生み出す呪文を唱える『ブエル』を前にメリーは、己の体躯から生命力が奪われていくのを感じただろう。
「なら、補填すればよいのですわ!」
生命あるがゆえに奪われるというのならば、死さえ克服して見せる。
ユーベルコードに輝くメリーの体躯は不死化していた。
生命力を活性化させることで奪われる端から、その体躯には生命力を溢れさせているのだ。
「どうせ奪われるのなら上等ですわ!」
紅い鎖が『ブエル』へと迫る。
それは一瞬で、その体躯を縛り上げ、大地へと組み伏せる。
「流れた血を以て、嘆きも怒りも呪いも」
飲み込む。
全て飲み込んで拭い去る。救えぬというのならば、拭うまでだ。
流れる涙は涙のままに。
なかったことになんてならない。
メリーは踏み出す。
己が抱える想いは他者の想い。それが紅き鎖。握りしめたそれを彼女は『ブエル』へと叩き込む。
死せる者たちの想いを弄び、己が力とする。
『ブエル』のそれは、ただの情報と作用としてしか見ていないものだった。
目をそらしているに過ぎないことだ。
だからこそ、メリーは紅き鎖を鞭のようにしならせ、その体躯を打ち据えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
サタニア・ダイモーン
『何故、欺瞞に満ちた世界を守る?』だと?
莫迦め。
世界はただあるもの。そこに真実も欺瞞も喜劇も悲劇もないわ。
欺瞞に満ちた世界とは貴様の主観、空想の産物に過ぎない。
それに『悲劇の幻影』か?
ぬるいぞ。これは『理不尽な悲劇』などではない。
悲劇に終わったのは貴様等の力不足だ。
嘆いている暇があるのなら転生でもして精進するのだな。
さあ、ブエル。そろそろ私の世界が届くぞ。
(【魔神術式Ⅵ】を発動)
生命否定空間とサタニアの世界の押し付け合いです。
問いかける声がある。
世界は欺瞞に満ちている。
欺瞞しかないと言っても良い。そんな世界を何故護るのか、と。
世界を護るために戦う猟兵にとって、その問いかけは己たちの存在意義を証明するものであったことだろう。
否定できないことである。
世に欺瞞、偽善、義憤は満ちている。
いずれもが偽物で、偽りで、何かの複製品でしかないのかもしれない。
真など何処にもないのかもしれない。
「莫迦め」
だが、そんな問いかけにサタニア・ダイモーン(暗黒竜・f39306)は一言で切って捨てた。
影朧たちは悲劇の主である。
それを手繰る者がいた。悲劇を見て、悲劇を悲劇のままにして己が力とした者たち。
ただ、操られるだけだったものたちを憐れとは言えない。
「世界はただあるもの。そこに真実も欺瞞も喜劇も悲劇もないわ」
迫る『悲劇の幻影』の黒い靄がサタニアを取り囲む。
取り込むつもりなのだ。このどうしようもない悲劇の中に彼女を沈めようとしているのだ。
けれど、サタニアは、ぬるい、と思っただろう。
「欺瞞に満ちた世界とは貴様の主観、空想の産物に過ぎない」
そう、眼の前の事象は、悲劇の主にしか理解しえぬものである。
他者にとっては取るに足らない問題でしかないのだ
結局、何処まで言っても他者は理解しきれぬ事象。故に、人は理解しようと務めるのだ。分かり合おうと思うのだ。
そこに尊きものがある。
決して相互理解などできないのかもしれない。
「これは『理不尽な悲劇』などではない。悲劇を悲劇のままに終わらせたのは、貴様らの力不足だ。嘆いている暇があるのならば」
笑い飛ばせ、とサタニアは言う。
どんな悲劇だって、笑い飛ばせば喜劇となる。
次なる悲劇が迫るのだとしても、立ち向かわねばならない。人の歩みというのはそういうものである。
「ましてや、転生という道がまだ貴様らにはある。精進しろ。悲劇を悲劇のままに終わらせるな。どんなものにだろうと」
サタニアの瞳がユーベルコードに輝く。
戦場に魔力が広がっていく。
結界が生み出され、その場にいた者たち全てを飲み込んでいく。
「さあ、|悪魔《ダイモン》『ブエル』。そろそろ私の世界が届くぞ」
魔神術式 Ⅵ(マジンノセカイ)により、サタニアは『悲劇の幻影』ごと、『ブエル』を飲み込んでいく。
「古くはない。その情報は真新しいものではないが、しかし、古くはない。故に、これは悲劇を滅ぼすものではない」
「生命否定空間を広げるか。その呪文の詠唱は、私との押し付け合いを消耗と見た」
サタニアは笑いもしない。
迫る生命否定空間を真っ向からサタニアはユーベルコードの輝きと共に神槍を構えた。
無限に生み出さし続ける槍を投げ放ち、空間を穿つ。
楔のように打ち込み続けるサタニアの攻撃は生命否定空間をも砕く。
「この私を抑え込むために呪文を詠唱し続けるが良い。ここに悲劇はない。『ブエル』、貴様が敗北するのは悲劇であるがためではない」
「そこに真はない」
「いいや、あるさ。これは最後には喜劇に変わる」
そのために己達がいるのだというように神槍の一撃が生命否定空間を砕いた――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
この身は|はじめから欺瞞そのもの《誰かの影法師未満》で
そして、欺瞞であるだとか、悲劇だとか、そんな事はどうでもいい。
自分は壊す。唯敵を壊す!!唯それが為に走るだけだ!!!
『だから、壊れてしまえ』
己が敵への【闘争心】を以て世界への憎しみをねじ伏せ、
メガスラスター【推力移動】悪魔に跳び掛かり騎兵刀を突き立て、その身体を掴んで『破傷戦』発動。
これまでにこの悪魔が負った傷を、その部位の崩壊を与え続ける!
その末に何かを守れたならそれは、意想外でしかない!
自分には、過ぎたる喜びだ!!
ありったけの【呪詛】を以て、ブエルがこれまでに負った傷と、その身の崩壊を一気に与える事で治癒魔法の詠唱を止め、壊し切る!!!
はじめから欺瞞そのものである体躯を前にして、欺瞞に溢れた世界を護ることの是非を問われても、詮無きことであったのかもしれない。
誰かの影法師未満。
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)はそう思う。
身を包むのは倦怠感であったかもしれない。
欺瞞だけでできた己の心にあるのは、確かに偽りであったし、イミテーションだったのかもしれない。
己の上げる咆哮さえも、いつかの誰かのものであったのかもしれない。
そんな思考を小枝子は破壊した。
関係ない。
そう、関係ないのである。
欺瞞であるとか、悲劇であるとか、理不尽さであるとか。
そんなものは小枝子に届かない。
「自分は壊す。唯敵を壊す!! 唯それが為に走るだけだ!!!」
纏わりつく『悲劇の幻影』を小枝子は振り切った。
踏み出す。
黒い靄が足を取る。手を取る。
行かせないと、お前だけが何故前に進めるのだという声が聞こえたような気がした。気がしただけだ。
気に留める理由なんてどこにもない。
己の心にあるのは哀れみや同情や、憐憫ではない。
あるのは破壊しなければという意志と闘争心のみ。
故に。
「だから、壊れてしまえ」
破傷戦(ハショウセン)は此処から始まる。
人工魔眼が燃え、ユーベルコードの輝きを宿す。
黒い靄を吹き飛ばすようにメガスラスターから噴射する光を背に小枝子は|悪魔《ダイモン》『ブエル』へと迫る。
手にした騎兵刀を叩きつける。
いや、突き立てる。
これは楔だ。
「過去の残滓が、知識の集約たる私を傷つけるものではない。その意味を知らぬというのならば、貴様の存在は意味がない」
亡霊が、と古きものを侮蔑するような視線をもって『ブエル』は小枝子を睨めつける。
「だからなんだ! 意味がないとして、その言葉に何の力がある!」
治癒呪文を詠唱しつづけ、即時回復していく『ブエル』。
されど、小枝子はこれまで他の猟兵たちが『ブエル』に叩き込んだ傷跡に手を伸ばす。
崩壊するようにしてひび割れていく『ブエル』の体躯。
即時に回復される。
だが、またひび割れる。
その繰り返しだった。
「意味がない」
「いいや、意味など関係ない! 自分は壊す! 壊し続ける! その末に何かを護れたのなら、それは意想外でしかない! 自分には!」
小枝子は咆哮する。
己を蝕む力があれど、それでも構わない。
己の中にあるの呪詛だ。呪詛が体だ。だからこそ、これが何かを護れるというのならば、きっとそれは本来ならば持ち得ぬものであったのだろう。
そんなもの端から求めていない。
だからこそ、思いの外、護れたものは多いと感じるのだ。
「過ぎたる喜びだ!!」
ありったけの呪詛を叩き込む。これまで『ブエル』が猟兵たちに叩き込まれた傷を再現……いや、再び崩壊させるユーベルコードは、容赦なく『ブエル』を蝕み小枝子は燃える瞳のままに否定の悪魔を壊し続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
世界を守るのはじっとしていられないからよ
悲劇を知っているのに何もしないなんてしたくないの
理不尽を許さず、抗っていたい
その想いが私を突き動かすのよ
悲劇の幻影をフィールドで塗り替えて駆け抜けるわ
胸に抱く強い想いが私を加速させるなら
きっと誰にも私は止められない
『ブエル』の否定も跳ね除けて突き進む
『魔力弾』を加速と軽業で躱して接敵
浄化の力を込めた水精の剣で斬りつけるわ
問いかける声がある。
「どんな世界にだって欺瞞は満ちている。悲劇は起こり得るし、あらゆるものを台無しにしていく。悲しみだけが広がっていく。喜びなどない。苦しみしかない。怒りがこみ上げてくるとは思わないのか」
その問いかけに薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は頭を振り、その瞳を伏せた。
目を瞑れば思い浮かぶいくつもの顔があった。
多くを知った。
知らないことを知った。
故に、世界は常に危機にさらされている。
護るのは、きっと自分がじっとしていられないからだ。理由なんて、そんなものだ。
「悲劇を知っているのに、何もしないなんてしたくないの」
眼の前に理不尽が迫る。
手を伸ばすことができるか、できないかは自分が決める。
届かないかもしれない。変えられないかも知れない。
それでも、理不尽に膝を折ることはしたくない。屈したくない。
「抗っていたいの」
いつだって逆境が人を試す。
どんな心が強い者だって、一度は折れるだろう。一度も心折れぬ者などいない。けれど、心折れても、其れでも立ち上がって笑顔で走る者の顔を静漓は知っている。
きっとそうなりたいと自分も思ったのかも知れない。
「その想いが私を突き動かすのよ」
黒い靄のような『悲劇の幻影』を結界領域(ケッカイリョウイキ)が塗り替えていく。
「勝負をしましょう、|悪魔《ダイモン》『ブエル』」
「その提案は受け入れられない。なぜなら、意味などないからだ。必要ない」
「いいえ、この領域の中にあっては、あなたの存在否定も私にとっては真剣勝負そのもの。
あなたが否定するのならば、私は肯定しましょう。そんな否定で――」
止まる己ではない。
迫る魔力弾を静漓は戦場を走り抜けるようにして躱す。
捉えられない。
何よりも疾い。
『閃光』のように彼女は『ブエル』へと踏み込んでいた。
否定されたくないと思ったのではない。
否定されても突っぱねるだけの強さと笑顔を彼女はもう知っている。
誰にも彼女を止められない。
ここは真剣勝負の場なのだ。いつだって彼女は見てきた。
笑って勝負に挑む者たちの顔を。
何度も、何度も思い起こす。
その想いが、彼女の背を押すのだ。
「理解できない。その情報は新しくない。古いものであるはずなのに、何故捉えることができない?」
『ブエル』は混乱しているようだった。
静漓の動きは直線的であった。
如何に疾いのだとしても、それでも捉えられないはずがないのだ。
存在を否定する魔力弾は彼女を捉え、消し飛ばしていたはずだ。その結果はもう知っているはずだった。
なのに、どうしてか静漓は今も存在している。
『悲劇の幻影』すら振り切る速さでもって、魔力弾の一つにも掠ることなく踏み込んでくるのだ。
手にしていたのは浄化の力を込めた水精の剣。
「常に成長し続けているから。この想いは、どんどん私の中から溢れてくる。私が知り得なかったものを、私は教えてもらったから。知ったから」
そう、ただ疾いだけではないのだ。
勝負の駆け引きによる自在なる加速と減速によって彼女は魔力弾を躱していたのだ。
謀られた、と『ブエル』は理解した瞬間、彼女の振るう剣閃の一撃が叩き込まれる。
「この勝負は、私が勝つの――」
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…『何故、欺瞞に満ちた世界を守る?』ね…
…世界が欺瞞に満ちていようが…その中から新しい知識を拾う…
…理不尽な悲劇も何もかも歩みを止める理由にはならない…
…だから私は私のために世界を守る…
…さて…その世界を守るためにお前を倒そうか…
…重奏強化術式【エコー】で多重強化した【空より降りたる静謐の魔剣】を発動…
…周囲に呼び出した氷の魔剣を斉射してブエルへと攻撃をしよう…
…ブエルが治癒魔法の詠唱を始めたら操音作寂術式【メレテー】を発動…
…ブエルの発する音を消して詠唱の邪魔をしようか…
治癒が止まったら巨大な氷の魔剣を振り下ろす起動でブエルを袈裟懸けに切り裂こう…
『悲劇の幻影』は問いかける。
世界には欺瞞が満ちていて、悲劇が繰り返される。
それを見なかったことにするかのようにときは進んでいく。
どうしようもないと嘆くことしか許されないこと自体が間違っているのではないか、と。
その問いかけにメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は一つ頷いた。
その瞳は覚めているようであった。
わかっている。
どうしようもない悲劇なんて、そこらに転がっている。
数多くの悲しみの涙が海となって干上がることはないことも。
だからこそ、メンカルは悲劇を悲劇と認識していながら。
「……その中から新しい知識を拾う……理不尽な悲劇も何もかも歩みを止める理由にはならない……」
そう、メンカルにとって悲劇は事象であり、繰り返さぬための方策を見出すための経験の一つでしかない。
前に進むために必要なものを拾う。
悲しみは何も生まないか?
否である。
悲しみは喜びを生み出す。
その次を生み出す。
生きている限り、悲劇の連続だという者がいたとしても、それでも、その悲劇を見なかったことにしない。
その先へと進むための歩み。
故に彼女は言うのだ。
「……だから、私は私のために世界を護る……」
「例え、それが欺瞞であると言われても、意味がないことだと知りながらも、それでも前に進むことのためだけに、それをなそうというのならば、それこそ真ではない」
|悪魔《ダイモン》『ブエル』の言葉にメンカルは頭を振る。
それこそ意味のない言葉であると断じるように瞳を向ける。
ユーベルコードの輝きが満ちていた。
今まで猟兵たちが叩き込んできたユーベルコードに寄る傷跡が修復されている。けれど、それでも彼女は見出していた。
他の猟兵がそうであったように、刻まれた傷はなかったことにはならない。
傷跡が見えずとも、確かにそこに傷が刻まれたという事実がある。
「戦いは意味がない」
「……そうでもないよ。この世界を護るためにお前を倒す。その方策は、すでにある」
周囲に呼び出された氷の剣を打ち出す。
斉射の如きユーベルコードは、空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)である。
放たれた一撃を『ブエル』は受け止める。
かわさない。
そう、必要がないからだ。
彼には即時回復呪文がある。それを唱えれば、どんな傷だって回復されてしまう。
だからこそ、メンカルは術式を手繰る。
「――」
声が響かない。
そう、呪文を詠唱しなければ、世界を書き換えられない。
故に、音を殺す。
「……ほら、どんなことにも積み重ねがある。そうやって人は進んできたんだよ……」
呪文を術式によって阻止された『ブエル』が何事か叫んでいる。
だが、届かない。
メンカルにとって、それは無意味であった。
降り注ぐは魔剣。
静謐の魔剣は、その名の通り『ブエル』の体躯を氷漬けにし、踏み込んできたメンカルの手にした一閃を受け止めるしかなかった。
袈裟懸けに切り裂かれた一撃は、確かに『ブエル』を捉えたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
何故世界を守るのか……ね。別に御大層な理由がある訳じゃないが
少なくとも「気に入らないことがあるなら滅んでしまって構わない」とは思わないというだけだ
世界に理不尽はある。欺瞞はある
だが、それだけが世界の全てじゃない。人ならざる悪魔には分からん事かもしれないがね
神刀の封印を解除して、神気によって身体能力を強化
魔力弾を躱す為にやや迂回しながらブエルへと接近
弾の速度はともかく、弾数は毎秒1回だから手数差で押されるような心配はまずない
ブエルが新たに魔力弾を放った瞬間。ソレを紙一重で掠めて躱すようなステップで踏み込んで、廻・伍の秘剣【灰桜閃】
攻撃の衝撃によって魔力弾の発射方向をずらしながらの3連撃を叩き込む
「何故、世界を守るのか……ね」
それは世界を守る戦士である猟兵にとって、ただの命題でしかなかった。
確かに言葉は大層なものである。
世界というスケールの大きな物を護るという行為は、それだけで壮大なものを感じさせることであっただろう。
けれど、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は思う。
そこに己は大層な理由を持ちえていない。
世界を滅ぼすのは過去の化身オブリビオンである。
「少なくとも『気に入らないことがあるなら滅んでしまって構わない』と思わないというだけだ」
あるがままでいい。
世界に対して人は真摯であることを求められる。
ならば、あるがままでいいのだ。
どんな言葉も、虚飾でしかない。どんな言葉だって偽りになってしまう。欺瞞に世界が満ちているというのならば、きっとそういうことなのだろう。
「世界に理不尽はある。欺瞞もある。だが、それだけが世界の全てじゃあない」
「真であることを求める心自体が、そもそも過ち」
鏡介の言葉に|悪魔《ダイモン》『ブエル』は告げる。
『悲劇の幻影』から歩みだした鏡介を迎えた彼は言う。
「情報というもの以外に真実はない。欺瞞だけではない、という言葉自体がそもそもの誤り」
「そうかな。俺はそうは思わない」
鏡介はきっぱりと言い放つ。
神刀の封印を解除し、神機によって身体能力を強化する。
己を否定する魔力弾が乱舞するようにして鏡介に迫る。『ブエル』には即時回復呪文がある。だが、それを唱えるだけの余裕が無くなってきている。
だからこそ、此方を実力で排除し、否定しようとしているのだ。
追い詰めている。
そう実感し、鏡介は魔力弾を躱すために一直線ではなく迂回するようにして走る。
「たかが毎秒打ち出される魔力弾程度で!」
鏡介は踏み込む。
おそれはない。魔力弾は此方の存在を否定するものだ。
けれど、構わない。
おそれなく踏み出す事ができるというのならば、何の問題にもならない。障害にすらならないのだ。
「神刀解放。咲き乱れろ、灰の桜花――廻・伍の秘剣【灰桜閃】(カイ・ゴノヒケン・カイオウセン)」
高速で踏み込んだ。
手にした神刀が閃く。
それは一瞬の内に三連。
狙うは、『ブエル』にこれまで刻まれてきた他の猟兵たちのユーベルコードの跡。
如何に即時回復呪文があるとはいえ、傷が刻まれたことは事実。
故に鏡介は、その軌跡をなぞるようにして三連撃を叩き込んだのだ。
「世界は理不尽と欺瞞に満ちて入れう。だが、それだけじゃない」
「いいや、それだけのことしかない」
「人ならざる悪魔にはわからんことかもしれないがね」
鏡介は知っている。
欺瞞にまみれても、偽りに惑わされても、それでも懸命に前に進むことを決めた悲劇の主達を。
その強さを持つのが人だ。
悪魔ではない。
故に、咲き誇るは灰色の桜。
浄化の神機が満ち溢れ、三連撃が点を結ぶ。
それは一点。
『ブエル』の心臓にて交錯する剣閃は、まさしく彼の存在を否定するように燦然と輝くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
スキアファール・イリャルギ
……かつてサクラミラージュでも似た質問をされました
"貴公らはこの欺瞞を棄ておくのか"とね
彼は確か黯党の将校でしたか
私は|黯《くらがり》の体験者
|黯党《彼ら》の思想に染まっても可笑しくはなかった
影人間には華やかな世界は眩しすぎる――
だからといって
私を救ってくれた人たちの想いを無下にはできない
今も昔も、その想いは変わっていません
私は、私を救ってくれた人の為に
影人間として力を振るう
帝都や桜學府の全てを信頼はできないが
私は故郷のことすら満足に知っていない
だから知る為にも戦う
|黯《くらがり》も、光も
全て知った後で私は判断を下します
UCで詠唱の邪魔をしてやりましょう
そして呪瘡包帯で縛り呪詛を流し込んでやる
『貴公らはこの欺瞞を棄ておくのか』
その問いかけは不定形の影たる怪奇人間、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)に如何なるものとして打ち込まれたものであっただろうか。
楔か。
はたまた鎹か。
いずれにしても、彼は言う。
「私は|黯《くらがり》の体現者」
いくつもの悲劇を見れば、感覚は失われるだろう。
指先に残る僅かな残滓も、全てが欺瞞と言われれば、それで終いだろう。
どんなに指先に幸せの感覚があれど、全てが無意味であると嘲る言葉の一吹きで消えてしまうような儚いものであった。
それほどまでの彼らの――『黯党』の思想は甘やかなものであった。
沈むことができたのならば、スキアファールもまた染まってしまっても可笑しくはなかったのだ。
影人間である己にとって華やかなる喜劇の舞台は、その世界は眩しすぎた。
己の体躯が影でできているというのならば、それはきっと己の中にある闇を色濃くするだけのものでしかなかったのだ。
「だからといって、私を救ってくれた人達の想いを無碍にはできない」
そう、指先に残る僅かな幸せの感触。
これが今も自分を怪奇人間でありながら、影でありながら、黯に在りてなお、己を形作っている。
世界は舞台ではない。
己を形作る輪郭。
故に、影でありながら己は人の形をしている。
影人間でありながら、力を振るうことができる。
「私は、私を救ってくれた人の為に、影人間として生きる」
「意味がない。その闇には恐れがない。そんな闇に意味などない」
|悪魔《ダイモン》『ブエル』の言葉にスキアファールは頷く。
そうだろう。
そうだろうとも。
今も己は帝都や桜學府の全ては信頼できない。人のすべてを信頼できない。
けれど、その全てを己は知っているだろうか。
他者には事情というものが有り、境遇も違えば、生きてきた環境も道程も違う。
満足に知れていない。
なら、知る為に戦うのだ。
「私が情報を得るために生きているのと同質であると認められない」
「構いません。全てを知った後で、例えそれが欺瞞であったとしても、知る為に戦うのです。|黯《くらがり》も、光も。私が、私を形作る世界という他者の輪郭でもって判断を下します」
ユーベルコードに輝く瞳が『ブエル』を見据える。
それは声。
error code:(yotta)(ディスターブ)
そう、即時回復呪文をもって猟兵たちから受けたユーベルコードの傷を癒やさんとする『ブエル』のユーベルコードを狂わす歌声である。
汎ゆる行動を未遂にし、無効とする。
それこそが彼のユーベルコード。
「その傷は癒やさせはしません」
放たれる呪瘡包帯が『ブエル』の体躯を包むようにして捉え、呪詛を流し込む。
響くは歌声。
どんな否定の言葉をも塗りつぶす世界の歌声。
世界と己との境界線すらあやふやな影に人の形を作り出す、たった一つの方策。
その歌を以てスキアファールは『ブエル』を追い詰める一手となって、楔を打ち込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
って、なんです?
『何故守る?』、ですか……って。
あ、はい。
ステラさんの答えはもちろん解ってましたよ。
エイル粒子の微妙な味、香り、コク、違いのわかるヤバさですから。
え? わたし?
そんなの勇者だからに決まってるじゃないですか!
アイデンティティですよ!
勇者は世界を守るものなんです。
世界を守らない勇者とか、聞いたことないですよね?
そして勇者は、|理不尽な悲劇《シリアス》を打ち壊すものでもありますよ!
いきますよ、|悪魔《ダイモン》『ブエル』!
ステラさん、耳栓の貯蔵は十分ですか?
わたしの練乳の貯蔵は十分です!
チューブを三本くらいいっき飲みしたら、
息の続く限り、バグパイプで思いっきり演奏です!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁぁすっ!!!
はいっ、これが自己紹介と同時に問いかけに対する答えです!!!
そこ!光の勇者!『うわぁっ……』って顔しない!
誰がやべーメイドですか
皆様完全にお分かりかと思いますが
一応翻訳しますと
エイル様がこの世界にいるからです!!(きりっ
ともあれ
そのような問いかけは私たちには無意味!
猟兵でありながら猟兵ではない拠り所があるのですから!
『ニゲル・プラティヌム』を手に
【スクロペトゥム・フォルマ】で仕掛けます!
シリアスに答えるなら
いかに正義とてそれが他人を巻き込む理由にはならない
荒野とて、そこに咲く花のように
|希望《虹》を諦める理由にはならないのです!
欺瞞に満ちた世界を護る意味などあるのか。
そう問いかける『悲劇の幻影』を前にして、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は困惑していた。
己たちを取り込んだ影。
黒い靄のようであり、纏わりつくそれは、彼女の問いかけに対する答えを待つまでもなく、心までも闇に捉えようとするように迫っていた。
「な、なんです? 何故護る、ですか……?」
問いかけに答えなければならない。
わかっている。
己の心はもう決まっている。
だが、響く声があった。
この『理不尽な悲劇』に対する怨嗟と憎しみの声満ちる中にあって、凄まじい声量で迸る声があったのだ。
言うまでもないことであるが、一応明記しておこう。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の雄叫びであった。
「|『エイル』様《主人様》の! 御子息の隣にちゃっかりポジションを得て当然みたいな顔をしている男から伝わる移り香の!! ほんのりした残り香がしまぁぁぁぁぁすっ!!!!」
これである。
もう問いかける言葉や憎しみ、怨嗟などなんのそのである。
「これが自己紹介兼答えです!!」
うわ、とルクスは思った。
というか、もうわかっていた。ステラの答えがどんなものか。
『エイル粒子』の微妙な味? 香り? コク? 違いのわかるやべーメイド。
世界に迸る自己紹介としては、なんていうか、その最悪の部類に入るであろう雄叫びにルクスはシリアスがぶち壊されているのを感じた。
ほら、『悲劇の幻影』もなんか、え、っと、その、ぉ……みたいな感じになっている。
これが計算だったというのならば、とんでもねーことである。
「誰がやべーメイドですか」
「いえ、別にそれは言ってません。言わずともわかるっていうか」
「皆様完全におわかりかと想いますが、一応、わかるようにお伝え致しますね?」
「聞いてない……」
「そう、欺瞞に満ちた世界を護る理由などただ一つ! そう!『エイル』様がこの世界にいるからですっ!!!」
キリッとした顔をしているが、やべーことには変わりない。
「あ、わたしは、そんなの勇者だからに決まってますよ。やべーメイドと違って、至極真っ当に。アイデンティティだからですよ! 勇者は世界を護るものなんです。世界を守らない勇者とか聞いたことないですよね?」
昨今の逆張り作風を鑑みれば、案外滅ぼす側に回る勇者もいないことはないのではないだろうか。
まあ、それは今のところどうでもいいことである。
だが、この勇者は違う。
そう、世界を守るために|理不尽な悲劇《シリアス》をぶち壊す勇者である。
「この勇者はともあれ、そのような問いかけ無意味! 猟兵でありながら猟兵ではない拠り所があるのです!」
問いかけた先が悪い。
この二人に対して、そんなことを問いかけても返って来る言葉は、猟兵としての命題に訴えるものではないのだ。
そういう意味において、この二人はこの戦場におけるワイルドカードであったかもしれない。
「いきますよ、|悪魔《ダイモン》『ブエル』!」
「ええ!」
二人のユーベルコードが輝く。
黒い靄のような『悲劇の幻影』が切り裂かれるようにして霧散し、彼女たちは『ブエル』を見据える。
「無意味にして、無意義なことを言うのは、私の性に合うものではない。お前たちの言う言葉は、いずれもが意味がない」
「そうでしょうね。ですが、私達はすでに知っているのです。荒野とて、そこに咲く花のように! |希望《虹》を諦める理由にはならないのです!」
「そうですよ! ステラさん、耳栓の貯蔵は十分ですか?」
「遂に自ら耳栓を勧めるに至りましたか……」
「わたしの練乳の貯蔵は十分です!」
「って、チューブ三本一気は流石に……!」
「エネルギー充填完了です! シリアスなんてぶっ飛ばします!」
ルクスは投げ棄てた練乳チューブの空を回収してから、パグパイプを構える。
そう、思いっきりである。
思いっきり吹き鳴らすのだ。
演目は、フラワー・オブ・スコットランド。思いっきり演奏して、思いっきりぶっ飛ばす!
それがルクスのやり方。
シリアスをぶち壊すかのような衝撃に存在を否定する魔力弾すら吹き飛ばし、そのさなかをステラは踏み込む。
二丁拳銃を構え、銃弾を逆に『ブエル』へと叩き込んでいくのだ。
「そう、理由になっていないのです!」
希望はいつだって絶望の傍らにある。
それを知るからこそ、恐れるな、といつかの誰かが言ったのだ――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
そんな…お菓子も無い、誰もいない…
そんな世界なんて…
また一から作り直せばいいって?そんなの嫌に決まってるじゃん!めんどくさい!
●嘘も重ねれば
欺瞞欺瞞って言うけど、それは君たちがそう感じてるだけじゃない?
いやー分かる分かる
信用できないよねー
そう人は己の経験と他人の行動しか信じられないものかもね
だからボクは動くのさ!
今は動く神さまの時代だからね!
見えない神さまより目に見える分かりやすい奇跡を叩きつけて信じさせてやるのさ!
透明状態の[白昼の霊球]くんたちで相手の弾を受け止めながら【第六感】ダッーーシュッ!!
からのUC『神撃』でドーーーンッ!
さあ!ボクの奇跡を味わって!!
真っ暗な暗闇が広がっている。
それはきっと『悲劇の幻影』であったことだろう。
何処をみても闇ばかり。
「そんな……お菓子もない、誰も居ない……」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は幻影の中で項垂れる。
こんな寂しいことはない。
満ちているのは怨嗟と憎しみの声ばかりだ。
世界をはかなむのではない。ただ、憎悪ばかりが満ちている。
『悲劇の幻影』は何れもが影朧たちを元にしている。彼らが経験してきた悲劇が、このような暗闇の世界を生み出しているのだろうと理解できる。
「そんな世界なんて……」
だから、なにもないのだ。
広がる闇の中でロニは、うなだれたまま掌を地面につく。
ガバ、と顔を上げる。
「また一から作りなおせばよいってみんな言うけどさ。そんなのいやに決まってんじゃん! めんどうくさい!」
神ならぬ言葉である。
本気である。
本当に面倒くさいと思っているのである。
一週間一生懸命働いて、最後の一日位は休んでもいいよねってレベルじゃあない。
「欺瞞欺瞞っていうけど、それは君たちがそう感じているだけじゃない? いやーわかるわかる。信用できないよねー」
他人って、とロニは頷く。
そう、人は己の経験と他人の行動とを照らし合わせて物事を図ることしかできない。
それが信じるということであり、信用する、ということなのかもしれない。
だからこそ、ロニは立ち上がる。
「座して見守ってるだけの神様なんて古い古い! 今は動く神様の時代だからね! ロニ。動きます! みたいな! 見えない神様より目に見えるわかりやすい奇跡も必要な時代なんだよ!」
なんて即物的! とロニはケタケタ笑いながら、『悲劇の幻影』を突っ切って|悪魔《ダイモン》『ブエル』へと一直線に走る。
他の猟兵たちのユーベルコードによって傾ぐ体。
今しかない。
そう思ったのだ。
「……私を前にして、なんの情報をも齎さない。古き神の体制など今更興味などない」
『ブエル』は迫るロニへと存在否定の魔弾を放つ。
砲火のように迫る魔力弾にロニは球体で受け止め、さらに球体自体を蹴って飛ぶ。
眼下にあるのは『ブエル』。
その顔が己を見上げている。
うん、やっぱり見下ろしているっていうのは気分がいいいことである。
「なんだかんだ言いながら、こっちを品定めしてるってことはわかるよ。でもね、ボクは最新最先鋭の神様なんだから! それって不敬? じゃあ、はい、ド――ンッ!!」
これが己が齎す奇跡であると言うようにロニは神撃(ゴッドブロー)の一撃を『ブエル』へと叩き込む。
それは容赦のない破壊の一撃。
どんな敵だって打ち砕けば倒せる。
それが今どきの神様のやり方である。なんか光ってその時不思議なことが起こった! なんてテロップ一つで済ませることなんてしない。
単純に物理でぶち壊す。
これが即物的で、丸わかりで、簡単なお手軽インスタントミラクル!
そういうようにロニは『ブエル』を打ち据え、破壊された大地にて立ち、笑うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヌグエン・トラングタン
まあ、かつてそれに準ずる名前持ってた俺様だけどな。
何で守るかは、明白なんだよ。それでも前に進む奴ら(プレイヤー)を見てきたからな!
俺様は、それを後押しする『欲望竜』だ!
俺様は知識としてしか知らねぇが、『ソロモンの悪魔』たぁ、また大物だな?契約に律儀なのも悪魔らしさってか。
だがな、俺様はこの生命が否定されようと、戦う意思は果てねぇぞ。
かつて、その名をもってプレイヤーと戦っていた俺様が…諦めるわけねぇんだ!
UCで燃えて凍れ。かつての都のように。
世界には欺瞞が満ちている。
虚偽にも満ちているし、偽善ばかりが蔓延っている。
そんなものだ、と言えたのならば簡単であっただろう。割り切れたのならばよかったのだろう。
だが、それは全て己が悲劇の当事者ではないからだ。
他者として悲劇の舞台を見やる観客であるからこそ、己に置き換える必要のない悲劇を娯楽として消費することができる。
そんなものだ。
結局のところ。
だからこそ、悲劇の主たち影朧たちは世界を怨嗟でもって糾弾する。
このような世界を守る理由などない、と。
「まあ、な。なんで護るかなんて明白なんだよ」
ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は思う。
いつだって彼は見てきたのだ。
己という強大なドラゴンプロトコルを前にして臆することなく立ち向かってくるゲームプレイヤーたちを見ていた。
その瞳に映るのは、憎しみや怒りではなかった。
当然と言えば当然だろう。
だって、それはゲームの世界だから。
命のやり取りなどない。
痛みも苦しみも、縁遠いものであるし、例え、それがあるのだとしても、結局ゲームプレイヤーたちはそれを娯楽として捉える。
灰色の世界で生きる彼らにとって、その刺激すらも楽しさに変わるものであったのだ。
そんな彼らはどんな困難を前にしたって進む。
障害?
どうしようもないボスエネミー?
えげつないギミック?
そんなもの踏破できて当然。歩みを止める理由になんてならない、と言わんばかりに瞳を輝かせていたのだ。
だから。
「だからな、俺様はそれを後押しする『欲望竜』だ!」
『悲劇の幻影』など恐れるにたりない。
ヌグエンは黒い靄の先へと踏み出し、|悪魔《ダイモン》『ブエル』へと突き進む。
「ハッ!『ソロモンの悪魔』たぁ、また大物だな?」
「否定はしない」
「契約に律儀なのも悪魔らしさってか」
「肯定しない。どれだけ言葉を重ねようが、猟兵、君等と私とでは得ている情報が違いすぎる故に、相容れない」
「だろうな! だからなんだってんだよ!」
存在否定する空間が生み出される。
けれど、如何に生命を否定されようともヌグエンは止まらない。
「戦う意志があんだろうが! 生命を否定されても、存在を否定されても、この俺様がお前をブッ飛ばすと決めた意志は、消えやしねぇんだよ!」
「否定を否定する材料など何処にもない」
「否定ばっかり繰り返しやがって! その程度で俺様が……諦めるわけねぇんだよ!」
指先から放たれる凍れる炎の弾を打ち出す。
それはまるで厄災のような(ヤクサイノイチ)のような力であった。
吹き荒れるは炎。
だが、同時に凍りつくものでもあった。
燃えて凍る。
「嘗ての京のようにな。これが!」
己の力だと示すようにヌグエンは『ブエル』を決して消えることのない凍れる炎に包み込みながら、己を否定する空間をこそ否定するように凍りついた空間そのものを砕きながら、『ブエル』を睨めつけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
欺瞞に満ちた世界を守るかって?
ソロモンの悪魔ともあろう者が、随分と青臭い問いかけをするじゃない
何故かと聞かれれば、答えよう
それが、楽しいからさ
正しい事を追い続けていれば、必ず報われる…なんて思ってるのかな?
悪魔ともあろう者が、そんな考えだとしたら…ちょっと笑っちゃうね
使命感、正義感、そういうもので戦う猟兵も確かに居る
けれども、残念だけど私はそうじゃあない
私は傲岸不遜に、私が正しい…って敵に叩き付けるのが楽しいからやってんの
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【Code:F.F】起動
高速移動しつつ、ブエルに接近
ダメージは無視、零距離から斬撃とエネルギー球を叩き込む!
怨嗟が聞こえる。
それは叫んでいるようにも思えたし、怒り狂っているようにも思えた。
だが、それ以上に『悲劇の幻影』が見せる理不尽な悲劇は共感を求める者のように思えてならなかった。
欺瞞満ちる世界。
確かに虚飾に塗れているだろう。真実を覆い隠しているように思えるだろう。
真は全ての悲劇仕組む者が独占しているようにさえ思えたことだろう。
「……」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、問いかける言葉に鼻を鳴らす。
「『ソロモンの悪魔』ともあろう者が、随分と青臭い問いかけをするじゃない」
|悪魔《ダイモン》『ブエル』。
稀代の悪魔召喚士『本田・英和』との契約によって、この場に存在する恐るべき敵である。
「肯定しない。その問いかけ自体はもはや摩耗しきった意味のない言葉であるがゆえに、意味がない。答えても得る物は何一つない」
全ての言葉に対して否定しか『ブエル』はしない。
故に、玲は鼻で笑ったのだ。
無意味、無意義。
そういうのならば、逆を行こう。
「何故かと聞かれれば、答えようかな。否定ばっかりの|悪魔《ダイモン》」
玲は首を傾げてまた笑った。
「それが、楽しい辛さ。正しいことを置い続けていれば、必ず報われる……なんて思ってるのかな?」
「否定しない。なぜなら、真の情報こそが偽りを否定しつづけ、他を排斥し、真理への到達を阻まない」
「|悪魔《ダイモン》ともあろう者が、そんな考えだから、笑ってんでしょ!」
玲は笑い飛ばした。
否定ばかりの言葉をたった一息で笑い飛ばしたのだ。
そう、確かに使命感、正義感。
そうしたもので戦う猟兵がいるのも否定はしない。確かにいるのだ。
混じりっけなしの真の善意と正義とを使命として戦う者が。
けれど、玲はそうではない。
たった一つのことだ。
彼女が猟兵という存在としてオブリビオンを打倒し続けるのは、たった一つの事柄があるからこそ、戦い続けることができる。
「肯定しない。その嘲笑は――」
「嘲笑だって自覚はあるんならさ、わかるでしょ! 私は傲岸不遜に、私が正しい……私は何も間違えない。私が全て正しくて、オブリビオンが全て正しくない。そういうあるがままを敵に叩きつけるのが楽しいからやってんの」
抜刀された模造神器の刀身が励起するように輝く。
『悲劇の幻影』など己が関与するところではない。
どんなに世界への憎しみが溢れていたとしても、玲はそれをないものとする。まともに取り合う理屈なんてない。
自分が正しい。
自分が楽しい。
それだけが、彼女の正義。
故に、彼女の最終公式が起動する。
「Code:F.F(コード・ダブルエフ)、全てを零に!」
那由他は刹那を超えて、零に至る。
抜き払った模造神器の全ての力を纏い、一気に『ブエル』へと迫る。
抵抗は許さない。
これまで刻まれてきた猟兵たちのユーベルコード。
その総決算が此処にある。
生命を否定する空間が形勢されるよりも速く、玲は纏うエネルギーと共に模造神器の刀身を掲げる。
蒼き刀身が一閃振り下ろされた。
それはゼロ距離からの躱しようのない斬撃であり、またエネルギーの集約。
「楽しさだけが理由などあっていいはずがないのだ、それは全くもって見解の相違以上の解釈が噛み合わない」
「だろうね。否定の|悪魔《ダイモン》。君が求めている情報なんてものは、結局その程度だよ」
玲は己の背後にて崩れ去る『ブエル』に一瞥すらくれることなく、模造神器を収め、己が正しいと信じる道へと今一度歩みを勧めるのだった――。
大成功
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