●オレンジデーなんて知らない
かつては戦乱に揺れていたスペースシップワールド世界も銀河皇帝が猟兵によって滅ぼされ、その後継者を名乗ったオウガ・フォーミュラもまた敗れ、まだまだ問題は山積してはいるものの、人々はかつてに比べればまだ平穏と呼べる日々を過ごしていると言えよう。
そんなスペースシップワールドを漂う宇宙船に近づく影がひとつ。
『この宇宙も久しいな』
この男が最後に登場したのが約1年5か月前だ。
『よもや今頃になって世界に呼ばれるとは思わなかった、だがそれもまた道理というものだ』
目指す宇宙船に潜入しつつ、影はつぶやく。
『4月14日……ブラックデーというらしい』
誰に気付かれる事もなく侵入を果たすと、そのまま宇宙船の中枢へと進んでいく。
『すなわちこの我、ミニスター・ブラックの日という事である』
そこにあるのは……。
「違うわボケぇ!!」
グリモアベースにて不破・静武(人間の非モテの味方・f37639)は激怒していた。
「ブラックデーとは!独り身が黒い物を食べて正義(独り身的な意味での)を示し、かつ悪(=オブリビオンとリア充)への復讐を誓うための聖なる祭日!決してオブリビオンが暴れるための日ではないのだ!!」
静武の説明はかなりバイアスがかかったものではあったが、一応実在する記念日ではあるようだ。4月14日に独り身が黒い服着て黒い物(チャジャンミョンなる料理が多いようだ)を食べるらしいね。ちなみに同日にリア充向けの祭りとしてオレンジ色のものを送りあうオレンジデーなる日があるとかどうとか。
「そんな日は知らん!ともあれ!この勘違い野郎の暴虐を止めてくれ!!」
元猟書家ミニスター・ブラックは、かつては|宇宙の騎士《フォースナイト》候補生を狙い、彼ら彼女らを殺して部下のオブリビオンを増やそうとしていた。今やオウガ・フォーミュラも滅び、その目的自体は既に失われたが、それでもなお殺戮の意思そのものは消えていないようだ。今回はもっと大々的に、宇宙船の命であるコアマシンを破壊し、宇宙船をまるごと潰してしまおうというのだ。そんな事になったら犠牲者の数は多いなんてものではない。
「そんな事をしたら非リアまで死んじゃうじゃないか!どうせならリア充だけを殺してくれればいい物を!」
静武の戯言はさておき、宇宙船が破壊されて乗組員が全て死してオブリビオンと化すと考えたら、あまりに恐ろしい事と言わざるを得ないだろう。なんとしても止めなければならない。幸いにも今から宇宙船に急行すれば、ミニスター・ブラックがコアマシンに到達する前に迎撃する事ができるだろう。
「非リアを殺すなんて、このミニスター・ブラックとやらはリア充に違いねえ!なんとしてもこいつを殺してくれ!!」
いやミニスター・ブラックがリア充かは知らんが、まあ倒さねばならない事に変わりはない。
「おっとついでに」
早速スペースシップワールドに向かおうとした猟兵達を静武が呼び止めた。
「今回の宇宙船はリゾート船らしいから、戦いが終わったらブラックデーを楽しんでくるのはどうかな。リア充を殺しに行くわけだから、君たちもボクの同志なんだろ?なら当然楽しむべきはブラックデーだろう!!」
……こいつに内緒でオレンジデーを楽しんでもいいよ。猟兵たちはどこからともなくそんな言葉を聞いたような気がした。ともあれ今度こそスペースシップワールドに向かうのであった。
らあめそまそ
らあめそまそです。ブラックデーシナリオをお送りいたします。
第1章がボス戦、第2章が日常となっております。まずはミニスター・ブラックを倒し、しかる後にブラックデーを楽しんでいただければ幸いです……よもやオレンジデー側の人はいないよね?いやいてもいいですけど。
それでは改めまして皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『ミニスター・ブラック』
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POW : マジックブロウ
【魔力を籠めた拳】で攻撃する。[魔力を籠めた拳]に施された【魔力制御】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
SPD : 追加装甲
自身に【漆黒の機械装甲】をまとい、高速移動と【自律行動するビット】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : ボミングレイド
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【着弾地点で爆発する魔法弾】で包囲攻撃する。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ムルヘルベル・アーキロギア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●第1章にはプレイングボーナスが存在します
間一髪、ミニスター・ブラックが宇宙船のコアマシンが存在する区画に侵入する前に先回りに成功した猟兵たち。
『ほう、我の先を取るとはな』
だがブラックに動じる気配はない。策略家であると同時に強力なオブリビオンであるブラックは、このような事態も当然予想して動いていたのだ。
『運がなかったな猟兵ども。今日はブラックデー、すなわちこの我の日だ。その日に我が負けるはずがあるまい』
ミニスター・ブラックはその巨体を持ちながらその本質は魔術師だ。肉弾戦主体と敵に誤認させるためにそのごつい肉体を作り上げたのだから恐れ入る。むろん猟兵はその情報を知っているからアドバンテージにはならないが、それを差し引いても元猟書家の実力は折り紙付きだ。そのユーベルコードは以下の3種類だ。
【マジックブロウ】は魔力を籠めた拳による攻撃だ。魔術師なら肉弾戦が弱いだろうというゲーム脳を破壊するまさかの肉弾戦である。幹部猟書家としての膨大な魔力が込められた拳はただでさえ凄まじい威力を誇る上に、魔力制御の解除によってその威力は天井知らずだという。寿命を削るデメリットも短期決戦では問題にならないだろう。
【追加装甲】は高速移動とビット攻撃を行うものだ。小型のビットは不規則に動きながらビームを発射し、この大軍によるオールレンジ攻撃は質量ともに強力だ。これらに対応しつつ高速移動で逃げる本体を追うのは至難の業だろう。寿命を削るデメリットも短期決戦では問題にならないだろう(2回目)。
【ボミングレイド】は大量の魔法弾による攻撃だ。幹部猟書家としての膨大な魔力による魔法弾は数が多く、軌道も不規則であり、きわめて回避が困難な上に威力も凄まじい事が予想される。射程内の全ての相手に攻撃を仕掛けられるという点も驚異であろう。
以上、きわめて強力な敵がきわめて強力なユーベルコードを使ってくるとあってはまともに戦っては苦戦は免れない。しかもこの日はブラックの日らしいのでその魔力も最高潮だ……ならば、この日をブラックから奪ってしまえば勝ち目はあるかもしれない。具体的には……
【プレイングにブラックデーあるいはオレンジデーに相応しい行動を取り入れる】
……というのはいかがだろうか。ともあれ、その、なんだ。こいつをなんとかしてください。
ヴィリー・フランツ
心情:ブラックデー?オレンジデーも全く聞いたことないが、だが数万規模の住民や観光客が詰めてるリゾート船を破壊させる訳にはいかんな。
手段:「イースト系住民が麺を食いながらぶつくさ文句タレてた日があったが、それの事か」
中枢区画の為、外殻からは遠いが戦闘の余波による有害物質の曝露や酸素循環システムの異常に備え装甲気密服を着用する。
戦闘は一旦遮蔽物に隠れながら行う、BR-2100 エンデュミオンはスマートライフル、ゴーグル型HADとアイリンクさせ銃弾の誘導機能を有効化、完全被甲弾を奴の腕部にしこたま食らわせる!
腕を損傷したら例のマジックブロウも威力半減だろ、弱ったらヒートアクスによる袈裟斬りを喰らえ!
●わりと一般的な反応に近いような気はした
「……ブラックデー?」
グリモア猟兵からその単語を聞いたヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵・f27848)の反応は、おそらく猟兵が見せた反応としては多数派なものであっただろう。それもそのはず、ブラックデーはアース世界、それも極東の一部でのみ行われている祭典である。スペースシップワールド出身のヴィリーが本来知るはずもないものであった。
「オレンジデーも全く聞いたことないが……」
同じく、極東の違う国で作られたオレンジデーも当然圧倒的な者にとっては初耳なものだっただろう。だがそんな事とは全く関係なくヴィリーには戦場に赴く理由があった。
「だが数万規模の住民や観光客が詰めてるリゾート船を破壊させる訳にはいかんな」
スペースシップワールドの出身であるヴィリーは宇宙船の破壊という事の重大さを誰よりも把握していた。この世界において宇宙船とはいわば世界そのものであり、その破壊はアース世界で例えるなら一都市の滅亡に等しいのだ。そんな事を許すわけにはいかなかった。
そして話は宇宙船内に飛ぶ。船内なので本来なら酸素は十分に供給されていたが、万が一戦闘の余波をくって有害物質が発生したり酸素循環システムが異常をきたしたりという非常事態に備えてヴィリーは装甲気密服を着用していた。むろん戦闘においても役立ってくれる事だろう。
『我に先回る機転はなかなかのものだが、残念だがお前達に勝ち目はない』
目指すコアマシンへの到達を果たす前にヴィリーらに妨げられたミニスター・ブラックだったが、全く焦る様子もなく豪語した。
『なぜなら今日はブラックデー、すなわちこの我の日だ。それがゆえに我が魔力も最高潮だ』
お前は何を言ってるんだと思った猟兵もいるだろうが、だが時として無理やりな理屈が常識を覆す事もなくはない。事実、ブラックのコンディションは過去最高級に高まっていると言って過言ではなかった。まずはこの自信を崩すところから始めねばなるまい。
「ブラックデーってのは」
その日について全く知識のないヴィリーだったが、さすがに事前に調べてはきたようだ。
「イースト系住民が麺を食いながらぶつくさ文句タレてた日があったが、それの事か」
『何?』
ヴィリーの言葉は簡潔にして的を得たものであった。アース世界の韓国人ではなくイースト系住民というあたり、実はスペースシップワールドでもごく一部でそういう風習が伝わってたりするのだろうか。次章の事を考えるとそういう事なのかもしれない。それならブラックが(意味を取り違えていたとはいえ)ブラックデーの事を知っているのもまあわからんでもないと。
『すなわち我の日ではないというのか!?』
さすがは策略家として知られたブラックである。実に理解が早い。まあ、強い思い込みで自己強化をしている以上、そう簡単にそれを崩すわけにもいかないが、それでもその強靭な信仰には確実にひびが入った事だろう。戦うなら相手の精神が弱まった今こそが好機だ。決断したらヴィリーの行動は早かった。愛用のスマートアサルトライフル『BR-2100エンデュミオン』を構え、戦闘態勢に入った。
『ふん、来るか猟兵』
ブラックもまた拳に魔力を籠め、迎撃の姿勢をとる……が、ヴィリーは来ない。むしろブラックから距離を取ると、物陰に隠れた。ライフル銃と拳では明らかにリーチに差はあるが、それでも強烈な一撃を持つ相手と真正面からやりたくないとヴィリーが考えるのも当然といえた。
『賢明な策だが、お前達が戦う意志を見せなければ、我はコアマシンを破壊し尽くすだけだ』
「誰が戦う意思がないって?」
ヴィリーはゴーグル型HADとエンデュミオンをリンクさせた。これによりエンデュミオンの銃弾は誘導機能を持つのだ。そして撃ち込まれる弾丸は【|完全被甲《フルメタルジャケット》弾】……実際はフルメタルジャケット弾の貫通力とホローポイント弾の破壊力を兼ね備えた特別性のものであった。
「くらいな!」
弾丸は狙い過たずブラックの腕をとらえた。実はヴィリーはブラックとの戦いは二度目であり、先の戦いでもとった戦法だった。ブラックにあの時の記憶が残っていればヴィリーの狙いを読んだかもしれないが、残念ながら同一人物でありながら別個体であったのだ。そこにヒートアクスを構えたヴィリーが突っ込んできた。あの時は4人がかりだったが今回は単独でやらなければならない。
『ぐっ、小癪な!』
「これで例のマジックブロウも威力半減だろ、こいつを喰らえ!」
『生意気な!この程度で我を止める事ができると思うなッッッ』
ダメージによる威力減衰を補うべく、ブラックは魔力制御の封印をひとつ解除した。そしてヴィリーのヒートアクスによる袈裟斬りと、ブラックのストレートパンチがまともに正面からぶつかり合うと、大きくはじけた。
「……ちっ」
『くっ……!』
ヴィリーもブラックもそれぞれのやり方で、必殺の一撃を放ちながら相手を仕留められない事への悔しさを示した。だがヴィリーはブラックにダメージを与え、精神的にも揺るがせる事ができた。一番手としては上々の戦果と言えただろう。
大成功
🔵🔵🔵
高崎・カント
オレンジの花言葉は「花嫁の喜び」
今回はカント君のお嫁さんの俺!
優一がお送りしまーす♪
カント君、オレンジデーだよ♪(もきゅ?)
今日はね、恋人同士がオレンジのものを贈り合う日なんだよ(きゅー)
愛媛県のみかん農家さんの提案なんだって(もきゅもきゅ)
なので、デコポンを持ってきました〜♪(もっきゅ!)
剥いてあげるから待っててね〜(もきゅー!)
はい、あ〜ん♪(もきゅーん!)
おいしい?(もきゅ! きゅぴぴぴきゅい!)
カント君、いつもいっぱい食べてくれるから嬉しいなあ(きゅぴぴぃ)
カント君大好き♪(きゅっぴ! きゅぴぴもきゅーん)
この後はディナーを予約してるんだ
お仕事早く終わらせて、いっぱい遊ぼうね~♪
●グリモア猟兵が見たら憤死する事間違いなし
ところでブラックデーの起源ははっきりしていないらしい。なんでも1990年代頃から韓国でその時期に独り身が黒い肉みそをのせたチャジャンミョンなる麺類を食べる風習が自然発生的に起きるようになり、いつしかそこにブラックデーという日が冠されたのだとか。
『……いや、この日はあくまで我の日だ』
それでもミニスター・ブラックはそう言い張るわけだが。ではもうひとつのオレンジデーの方は?
「それは俺が説明するよ!」
現れたのは高崎・優一(真モーラットの花嫁・b24417)。
『……誰だお前は?』
「オレンジの花言葉は『花嫁の喜び』!今回はカント君のお嫁さんの俺!優一がお送りしまーす♪」
「もきゅー!!」
念のため書いておくと、シルバーレイン由来のジョブにフランケンシュタインの花嫁がある。文字通り、当時は使役ゴーストであり現在は猟兵の種族になっているフランケンシュタインを強化する力を行使するジョブだった。これは実際にはフランケンシュタインのみならず全ての使役ゴーストを対象とできるものだった……そしてその中にはモーラットも含まれていたのだ。ちなみに優一は猟兵ではなく、本来ならスペースシップワールドに来られるはずのない人物だ。実は高崎・カント(夢見るモーラット・f42195)がユーベルコード【はなよめさんといっしょ】で呼び出した幻影であった。むろん優一がカントの『花嫁』である事は言うまでもないだろう。
「カント君、オレンジデーだよ♪」
「もきゅ?」
そんなわけでどうやら優一がカント(と読者の皆様)に対してオレンジデーの解説をしてくださるらしい。これは実にありがたい事である。筆者がいろいろと調べてなんかの合間に書く必要を省いてくれるわけだ。
「今日はね、恋人同士がオレンジのものを贈り合う日なんだよ」
「きゅー」
この贈り『合う』というのが重要らしい。例えばバレンタインデーでは一般的には女性から男性に、逆にホワイトデーでは男性から女性に物を贈るのが従来における形である。オレンジデーは恋人同士が相互に贈り合う日なのだ。
「愛媛県のみかん農家さんの提案なんだって」
「もきゅもきゅ」
調べてみたら1994年の事らしい。日本記念日協会に登録されたのはもう少し後、2009年の事になる。さらに言うならオレンジデーに至るまでの半年前から月1回柑橘類を贈りあおうみたいなキャンペーンをやってるようで、ちょっと商魂たくましいなとか思ってしまった。ちなみにブラックデーを作った韓国にもオレンジデーがあり、こっちは11/14だそうな。
「なので、デコポンを持ってきました〜♪」
「もっきゅ!」
デコポンはシラヌヒという品種の中で特に甘いものを指すものらしい。旬は3月らしいが1か月ぐらい熟成した方が酸味が抜けて甘みが強くなるらしいので今がちょうど食べごろであろう。ちなみにデコポンの日は3月1日らしい。
「剥いてあげるから待っててね〜」
「もきゅー!」
『……何をしているのだこいつらは?』
眼前の敵を放置していちゃつくふたりに、ミニスター・ブラックはすっかり困惑していた。なんか毒気も抜かれてしまったようで、魔法弾を撃ち込む事も、ふたりを放置してコアマシンに向かう事も忘れてしまったらしい。
ともあれデコポンの厚い皮は取り払われ、オレンジ色の果実がおさらに乗せられた。
「はい、あ〜ん♪」「もきゅーん!」
優一が手ずから差し出すデコポンのひとふさにカントは勢いよくパクついた。たちまち強い甘みと程良い酸味が口の中いっぱいに広がる。
「おいしい?」
「もきゅ! きゅぴぴぴきゅい!」
デコポンのおいしさと、それを優一が持ってきてくれたという事への幸せを、カントは顔いっぱいに示した。それを見て優一もまた満面の笑顔になる。
「カント君、いつもいっぱい食べてくれるから嬉しいなあ」
「きゅぴぴぃ」
「カント君大好き♪」
「きゅっぴ! きゅぴぴもきゅーん」
『……本当に何をやっておるのだ』
完全に蚊帳の外に置かれたブラック。一応第1章は純戦なはずなのに、なんで自分の方が異物感があるのだろう。戦術においては優秀な策略家なブラックであっても、それを理解する事はできなかった。というより誰にもわかるまいて。
やがてカントはデコポンを食べ終わる。
「この後はディナーを予約してるんだ」
「きゅっぴ!」
「お仕事早く終わらせて、いっぱい遊ぼうね~♪」
「もきゅ!もきゅきゅぴー!!」
そして優一の幻影は消え、カントはそれに向けていっぱい手を振るのだった。別れはさびしいが、全部終わったらシルバーレインで本物の優一が待っているのだ。それを思えば今一瞬のさびしさにも耐えられるというものだ。
『……結局のところ、本当になんだったのだ、今のは』
いや意味はおおいにある。少なくとも、4月14日という日がミニスター・ブラックのための日ではない事を、これ以上ない形で提示したのは確かな事なのだ。この事は、この後ブラックと戦う猟兵たちのおおいなる助けになるはずだ。そういう意味では大戦果と言えた……本人がそれを意図していたか否かはまた別としても。
大成功
🔵🔵🔵
桐藤・紫詠
※猟兵でなくその巨神メインのプレイングとなります
……成程な
同じ範囲内に対して攻撃を行うUCか
紫詠の前に出るは、同じ和装を身に纏いながらも長い御髪は金色に輝く少女……紫詠の巨神、勾陳だ
我も大地無き世界で戦えなければ、示しがつかぬという者だろう……調伏者よ
瞬間、ミニスターブラックとそのUCのみが作用する幻……惑星の原初の記憶――マグマオーシャン
それが元猟書家とそのUCのみを焼き尽くす様に展開していく
無論、この宇宙船とその搭乗員には作用はせんぞ
紫詠『成程、こういった指定した対象にのみ作用する広範囲攻撃もありなのですね』
まぁこの位はな?
そう言って指を鳴らし、猟書家を焼き尽くしていく――
●やはり猟書家の日ではなかった
「ここは実に面妖な地ですね」
桐藤・紫詠(黄泉詩の皇族・f42817)は称号が示す通り、つい先日『発見』されたばかりのアヤカシエンパイアの皇族だ。その血液自体に妖を滅する効果があるらしく、それがゆえに皇族はまつりごとの舞台からは離される事になった。それでもなお皇族の血がゆえか、その全身から発散される雰囲気の前に人々はひれ伏せざるを得ないと言われている。その紫詠がスペースシップワールドを訪れたのは、アヤカシエンパイアと違う世界なら人目につくかもしれないが必要以上の敬意を受ける事がなくて気楽かもしれない、というのもあったかもしれないが、そういう些事とは別にれっきとした理由はちゃんと別にあったようだ。ともあれ、何から何までアヤカシエンパイアと違う環境を見物するような余裕は与えられず、早速既に戦いの最中にあったミニスター・ブラックと邂逅を果たす事になった。
『ふむ、これまで我が見た事のない力の持ち主のようだな』
さすがにミニスター・ブラックは策略家らしく、紫詠のただならぬ雰囲気や、何やら危険なものを秘めている事にすぐに気が付いた。むろんそこらの庶民のようにすぐさま平伏したりするような事はない。
『だが別に特別な事など必要あるまい』
ブラックにとっても初めて遭遇するアヤカシエンパイアなる世界から来た者であっても、ことわり自体が大きく変わるわけではあるまい。いかなる者であっても強力な攻撃を受ければ死ぬし、死すればオブリビオンと化す事もある。ならば行うべき事は大量の魔法弾による|苛烈な爆撃《bombing raids》をくらわせることだ。敵が戦闘態勢に入るのを見て、対する紫詠も動いた。
「合力をお願いいたします」
(……ふむ)
呼びかけに応じて現れたのは紫詠と似たような和装に身を纏った、黄金の髪の少女……名を『金蛇地神「勾陳」といった。その正体はオブリビオンマシンであり、紫詠の血によって調伏されて従っているとのことだ。どうやら皇族の血は外界の悪しき者に対しても有効らしい。
(このような場に呼び出したということは……我を試しておるということか)
「そのように解釈頂いて構いません」
(正直な事よ)
紫詠の言葉に勾陳は薄く笑った。まさしく紫詠は勾陳の力を試していたのだ。地上と同様に戦える宇宙船の中とはいえ、スペースシップワールドは上下もない宇宙空間そのものである。アヤカシエンパイアとあまりに違い過ぎる環境の中でも戦う事ができるか。それを見せてもらいたいと言っているのである。
(我も大地無き世界で戦えなければ、示しがつかぬという者だろう……調伏者よ)
あとは言葉ではなく行動で示すと言わんばかりに勾陳はミニスター・ブラックの方を向いた。既に魔法弾の準備は完了しているようだ。
(……成程な、同じ範囲内に対して攻撃を行うUCか)
『我の攻撃、耐えられるものなら耐えてみよ!』
だがブラックの放った魔法弾はすぐさま消滅した。同時にその周囲を灼熱のマグマが覆い尽くす。
『こ、これは……!』
何が起きたかわからないブラック。おそらくは自らを焼き焦がさんとするこのマグマが魔法弾にも何らかの影響を及ぼし消滅させたのだろう。それは理解した。だが宇宙船の中でこのような大規模な破壊行動を行えば……
「成程、こういった指定した対象にのみ作用する広範囲攻撃もありなのですね」
(まぁこの位はな?)
感心した顔の紫詠に対し、当然と言わんばかりの返答をする勾陳。その正体はむろんユーベルコードであった。名を【勾陳地質煉獄編・天地を満たす原初の溶熱】というそれは、惑星のはじまりの姿とされる|全球融解《マグマオーシャン》の具現化であった。しかも効果範囲をブラックと魔法弾に絞るというなかなかの器用な芸当を行ったのだ。当然、宇宙船やその搭乗員にはまったく被害を及ぼさない。勾陳は無事、紫詠の試験をクリアした……と、言いたい所だが。
『……ふん、この我と知恵比べをしようというか』
実はこのユーベルコード、『術者より知恵の低い者には破壊されない』という特徴があった。逆に言えばブラックの知恵が勾陳、あるいは使役する紫詠を上回れば、破れる可能性が出てくるのだ。むろん元猟書家にして策略家の魔術師であるブラックの知恵が低いはずはない。一方の勾陳は神の名を冠するぐらいだからむろん知恵だってあるだろう。紫詠にしても皇族である事はともかくとして陰陽師に歌人は知恵なければできる事ではあるまい。
『相手の力すら読めぬその過信が命とりになる事を存分に学んで骸の海への土産とするがよい』
さていずれの知恵が上回るか……。
『ぬおおおおおお』
結論を言えば、ブラックは幻を破る事はできなかった。
今日、ブラックデーが本当にミニスター・ブラックの日という事で押し通す事ができたならば、あるいはブラックの知恵が勾陳を上回っていてもおかしくはなかったかもしれない。だが、今日はブラックの日ではなかった。これまでの猟兵とのやりとりで、ブラックとしてもその事をさすがに認識せざるを得なかったのだろう。加えて言うなら、つい先刻あったあれやこれやが、ブラックの知恵を低下させるに十分すぎたという事もあったかもしれない。
(さて我の力は調伏者のお目に叶ったかな)
「此度はこれで十分といたしましょう」
まあ理屈はどうでも良い。ブラックに与えたダメージは多大であり、勾陳の戦果は紫詠を満足させるものであった。ひとまずはそれで御の字だろう。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
死後も骸の海から駆り出されるなら、オブリビオン側は「ブラック企業デー」と言っても当て嵌りそうな気も?
それでは、同じ意匠で全身黒系ベースの衣装に着替えて参りますぅ。
『FAS』の翼も黒色にして飛行、『FLS』で|全『祭器』《未装備含》を召喚し【拖玺】を発動しますねぇ。
ミニスターさんの【ブロウ】は『拳』、動作自体を強化した『FPS』で調べ、飛行と『FIS』の転移で近接距離から外れ続ければ対処可能ですぅ。
また『祭器』による攻撃が命中すれば、強化を吸収し、解除した上で此方の強化に変換可能、『飛ぶ拳』等も『FMS』のバリアで迎撃すれば同様ですので、そのまま各『祭器』で叩きましょう。
●はるかな眠りの旅を捧げよう
ブラックの前に立った夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の服装はブラックデーに相応しい漆黒の衣装だ。いつものFASによる光の翼すら漆黒という徹底ぶりである。
『なんだその恰好は』
るこるの姿にブラックは訝し気な目をした。
『お前もブラックデーを我から奪おうというのか』
事ここに至り、いまだにブラックはブラックデーをあきらめていないようだ。まあ、むろんるこるの服装はそのあたりの事を前提にしたものではあるはずだが、情報によれば、それはあくまでブラックデーに合わせたというだけのようであり、るこる本人がブラック(あるいはオレンジ)デー側かどうかは明らかになっていない。まあそれはここで気にする事でもあるまい。
「ミニスターさんの日ではないと思いますが……いえ、あながちそうでもないかもですねえ」
少し思案をして、るこるは口を開いた。
「死後も骸の海から駆り出されるなら、オブリビオン側は『ブラック企業デー』と言っても当て嵌りそうな気も?」
なかなかうまい事を言う。確かに過労死してもなおこき使えるのであれば、ブラック企業としてはこれ以上ない人材であろう。資本家の夢は給料のいらない従業員とは誰の言葉だっただろうか。しかも常に士気は最高だ。ただまあ、かつてのブラックならオウガ・フォーミュラという雇用主がいたわけだが、今では完全にフリーターと化している状態だ。それなのに死してなお企業戦士をやめられないとあっては、とんだワーカホリックだと言わざるをえまい。るこるはなにげにミニスター・ブラックと2回戦っている。なものだから、死んでも死んでもまた出てきていまだ完全に滅びる気配も見せないブラックについて思うところもあっただろう。
「そろそろ長めのお休みが欲しくないですかあ」
『つまらん言葉遊びを弄するのはやめよ』
「仕方ないですねえ」
両の拳に魔力を籠めながら言葉に怒気をはらませたブラックに対し、るこるも戦闘態勢を整えた。持てる『祭器』を全て召喚し、力ある言葉を唱えた。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『聖紋の加護』をお与え下さいませ」
そのユーベルコードの名は【拖玺】といった。拖は引きずる事、玺は皇帝の印章である。読みの『コウリャクノヒョウゴウ』は……『攻略の表号』であろうか。これはちょっと自信がない。ともあれ祭器に『豊姫』のルーンが施された。
『お前も魔術を使うのか』
るこるの『祭器』の効果はわからないが、ユーベルコードにより付与されたルーンを見るに、おそらく自分が拳を強化したのと同系の魔術であるとブラックは判断したようだ。それならむしろわかりやすいというものである。
『ならば魔力の勝負ということになるな』
それなら話は早い。より魔力が強い方が勝つ。いかなる効果を持つ神器であっても、自身の強大な魔力で強化した拳で破壊してしまおう。そう判断したブラックは両の拳を輝かせ、るこるに真っ向から突っ込んでいった。
「搦め手で来ると思いきや、ずいぶん素直に来るのですねえ」
むろん、るこるとしては真っ向からぶつかる気はない。まず強化されたFPSでブラックの情報を探知した。いかに強くても分類はあくまで拳である。ならば漆黒の翼で飛行すれば届きづらい(スペースシップワールドの宇宙船は実質一個の都市のようなものなので空中戦をやるぐらいのスペースはある)。それでも追いすがるならFISで瞬間移動を行えば良い。
『小癪な!』
対するブラックは魔力制御の解放で対抗する。これで威力を上げるのみならずいろいろな事ができるらしい。例えば拳を飛ばすとか……
「それは読み筋ですねえ」
るこるはFMSでバリアを張って対抗した。さすがに強大な魔力に制御解放の上乗せで強化された拳は強力だったが、るこるの神器もまた強化されていたため、これに耐えた。
「今度はこちらから行きますよお」
そしてるこるの攻撃用の神器が火を噴いた。嵐のように襲い来る弾幕の嵐をブラックは両の拳で殴り防ぐが……。
『我の魔力を吸収しているというのか?』
これこそ豊姫のルーンの力であった。相手の攻撃やユーベルコードを吸収し、それを神器の強化に回してしまう恐るべき力であった。さらに相手の強化を解除する力もあるという。ブラックにとっては天敵のような効果といえよう。ブラックの魔力は強大だが有限であり、時間が経てば経つほど不利になるだろう。
『ならばとるべき手段はひとつか』
寿命が削れる事も厭わず、ブラックは魔力制御をもう一段階開放した。そしてるこるに突っ込んでいく。るこるは瞬間移動でそれを回避する……が。
『そこだ!』
ブラックが狙ったのはるこるの転移先だった。わずかな空間や魔力の揺らぎでブラックはるこるの出現先を読み、そこを攻撃したのである。必殺の拳が現れたるこるを捉える前にFMSのバリアがそれを阻む。ブラックはバリアごと肉体を貫かんとさらに力を込めた……。
『ぐわああああああ』
結局、ブラックの拳はバリアを貫く事ができなかった。そこに神器の一斉放火を受けたのである。火力ダメージと魔力減衰の両者をいっぺんに食らい、さしもの猟書家も大ダメージを負ったのであった。あるいは本当にこの日がブラックの日であったならば、るこるが貫かれていたかもしれない……が、そうはならなかったのである。そろそろブラックもブラックデーが自身となんら関係ない事を認めても良いのではないだろうか。
大成功
🔵🔵🔵
フェリチェ・リーリエ
(ブラックデーらしく全身黒コーデで)
おいこらそこの勘違いオブリビオン!全然なってねえわ!!黒けりゃいいってもんじゃねえべ…そこに嫉妬はあるべか?リア充への嫉妬はあるんだべか!?
嫉妬戦士のおらが正しいブラックデーのやり方をその身に叩きこんでやるべ!
【武器に魔法を纏う】、魔法の炎を中華鍋に纒わせ【早業】でチャジャンミョンを作りスーパーブーストピッキーヌをトッピング。
特製激辛チャジャンミョンでみなぎる嫉妬パワー!
炎を纏った上に【武器巨大化】した中華鍋で拳攻撃を防ぎつつ、ブーストした戦闘力をもって殴る!拳には拳で語ってやらぁ、歯ぁくいしばれ!
もちろん最後は爆破スイッチでの【爆破】で締めるのがお約束。
●本物が、来た。
「おいそこの勘違いオブリビオン!」
激怒していたのはフェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうきゅうさい・f39205)であった。称号が示すとおり、バリバリブラックデー側の人間だ。これまであんまりブラックデーぽい人が来ていなかったので、ひょっとしてこのまま最後まで行ってしまうのではないか?とちょっと危惧していたかもしれないグリモア猟兵も安堵している事だろう。
「全然なってねえわ!!」
『何がだ』
よもや目の前の猟兵がまさしくブラックデーを体現しているとは思ってもみないミニスター・ブラックなものだから、フェリチェの剣幕に対して何やらいぶかしげな顔をしていた。そんな事をまったく気にしないかのようにフェリチェは続けた。
「黒けりゃいいってもんじゃねえべ……そこに嫉妬はあるべか?リア充への嫉妬はあるんだべか!?」
どっかの消費者金融会社のCMみたいな問い詰め方をするフェリチェ。嫉妬が一番シットフル。だが言ってる事自体はブラックデー的な観点からすれば正しい。リアルなブラックデーはリア充への怒りよりも独り身の悲しみの方に重点置かれているような気がするのはひとまず置いといて。
『嫉妬だと?そのような感情は冷静な目を曇らせ勝利を遠ざける不純物に他ならぬ、我には不要の長物だ。そもりあじゅうとは何だ?』
実に策略家らしい見解をブラックは示した。確かにまあ、熱くなった方が負けるというのは一理あるかもしれない。その精神はまさに夜の闇のような冷静沈着そのものであり、ブラックの名と色を背負うのは伊達ではないようだ。
「ここまで言ってもまだわからねえべか!」
一方、黒い服こそ背負っていても、その精神は燃えたぎるマグマのごとくの情熱にあふれまくっているフェリチェ。
「嫉妬戦士のおらが正しいブラックデーのやり方をその身に叩きこんでやるべ!」
『馬鹿め!ブラックデーが我の日ではないというなら今ここで奪い返してくれるわ!』
かなりのダメージを負ってはいたが、それでもまだまだ士気軒昂なブラックは両の拳に魔力を籠めた。
「奪い返すも何も最初からお前の日じゃないだべ!」
対抗すべくフェリチェが取り出したのは中華鍋。それは既に魔法の炎によって赤熱していた。これを武器代わりに使うのか……と思われたが。
「よっしゃできあがりだべ!」
『……なんだそれは?』
いつの間にか、フェリチェの超早業で鍋の中には黒い肉みそができあがっていた。チャジャンソースと呼ばれるそれを皿に盛られた麺にかけてやれば韓国では国民食とも呼ばれる|炸醤麺《チャジャンミョン》のできあがりだ。そう、ブラックデーでよく食べられるという、あれだ。
「さらにここにこいつをトッピングするべ!」
フェリチェがとどめとばかりに上に乗せたのは大型の青唐辛子。それはエンドブレイカーの自由農夫のスキル、ブーストピッキーヌを猟兵仕様に仕立て上げた、いわば【スーパーブーストピッキーヌ】とでも呼ぶべきものだ。本来チャジャンミョンは、その元となった中国料理のジャージャー麺が辛口なのに対して甘口に仕上げられるものだ。だが強烈な唐辛子が乗った事により、たちまちその味は火を噴くような激辛に変わるのである。そしてフェリチェはそれを……一気にかきこんだ!!
「ぎにゃー辛辛辛辛辛べー!!」
『……何をしているというのだ?それがお前の言う正しいブラックデーのやり方とやらか?』
策略家として相手の動きを見定めるためか、それともただ唖然としているだけなのか。激辛に悶絶するフェリチェをただただ見守るブラック。だが結果的にそれは悪手であった。
「……おおおおおお燃えてきたべー!!」
スーパーブーストピッキーヌはフェリチェ用に調整されており、その身体能力を大幅に上昇させる効果がある。さらにそこに嫉妬パワーを上乗せすれば1+1=2ではなく410だ。10倍だぞ10倍。さらに料理に使ったばかりの中華鍋を炎熱させた上に巨大化させてさらにそのパワーは数倍だ。
『ぬう、我としたことが!』
ブラックデーのせいか、相手の強化をみすみす許してしまった事にようやっと気が付いたブラックは今度こそフェリチェに殴りかかった。だが普段からよく使いこまれて育てられた上に超絶強化を受けた中華鍋は、魔力を帯びた拳を受けてもびくともしない。
「拳には拳で語ってやらぁ、歯ぁくいしばれ!」
『くうっ!お、おのれ!』
逆にフェリチェの拳をまともに受けてブラックは一度下がるが、魔術制御を開放してさらに襲ってくる。だが、追加強化を受けた拳がフェリチェをとらえる前に、突然の爆発がブラックを襲った。
『ぬう!な、なんだ!?』
「やっぱり嫉妬戦士ならリア充は爆破がお約束だべな!」
勝ち誇るフェリチェの手には爆破スイッチが握られていた。
『ま、待ったそも我がそのりあじゅうというのはなんの根拠あっての話なのだ、いやそれより、最初にも聞いたがりあじゅうというのはいったい』
「そんな事も分からないでブラックデーを語るのは410億年早いべ!」
怒りのフェリチェはさらに追撃の拳をブラックに叩きつけ、ダメ押しの再爆破までくらわせるのであった。まあブラックはたぶんリア充だったんだろう。殺戮やらかす時とか楽しそうだったしね。
大成功
🔵🔵🔵
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「ブラックデー…自分の生誕日を自分で祝わなくてはならない寂しい輩なのだな…骸の海で静かに安らかにな(目の端に涙)違うなんて事実は言えぬ」
『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を起動してファンネルビット/リフレクタービット/シールドビットを創造して展開し1分先の未来を見ながら敵の攻撃をテレポートで回避しつつ敵にリニアロングボウとレーザービームで攻撃を仕掛けます。
サイコミュ・ドローンも創造して展開し敵の先手を奪いながら乱反射と収束反射を利用して反撃と攻撃をします。
透明化し視聴嗅覚を阻害しながら攻撃の機会も作ります。
他の猟兵もいるならタイミングも合わせます。
●ひとり軍隊
ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)は9歳ということでブラックにオレンジのいずれも関係ないと考えるのが一般的かもしれない。ただ本当に関係ないかどうかは別にして、今回の敵はブラックデーとの結びつきが強いと主張しており、その結びつきをなんとかして解除しない事には苦戦は必死だ。
『まだ来るか猟兵』
そんなものだから、重賞を負ってはいるがなお意気軒昂なミニスター・ブラックの前に立ったティティス。巨漢なブラックの前に立てばその体格差はまさに大人と子供……いや本当に子供なのだが。
「ブラックデー……」
さてティティスはいかなる方針でブラックをやりこめるのかと思っていたら。
「自分の生誕日を自分で祝わなくてはならない寂しい輩なのだな」
『何!?』
なるほどそう来た。仮にブラックデーがミニスター・ブラックの日というならば、確かにブラックの誕生日だと考えるのは自然なことだろう。で、それを誰もその事実を知らないで自分ひとりで主張しなければならないというのであれば、これほど悲しい事はないだろう。クリスマス会を開いたのに誰も来なくてひとりで発狂するしかなかった星飛雄馬の比ではあるまい。
「……骸の海で静かに安らかにな、うっうっう」
本気かウソ泣きか、涙まで流して悲しがる(フリをする)ティティス。むろんブラックの頭にはブラックデーがブラックの誕生日だという発想はなく、どういう理屈で4月14日がブラックデーと名付けられているかはわかってはおるまい。ただこの日がブラックデーという名という事実が先にあり、その名と自身と根拠もなく結びつけただけであった……謀略家と呼ばれる魔術師にしてはあまりにおそまつさんな思考ではあるが、まあ骸の海から戻ってくるようなやつはそれくらいの思い込みの力が必要な事もあるのかもしれない。なものだから、ティティスは相手の思い込みを訂正するのではなく、あえてそれを認めた上でやりこめる道を選んだのであった。なるほどこういう手もあるか。
『誰が安らかにだ!お前を骸の海に送ってくれる!』
さすがに馬鹿にされている事ぐらいは理解したブラックは今回初の追加装甲を発動した。漆黒の体に漆黒の装甲が施され、無数のビットが宙に舞い始めた。
「幽魔月精は機械身体、幽魔月精の機械魂魄」
一方のティティスは【アストラル・エレメント・トランスフォーメーション】を発動する。そして自らの一部を使って想像したのはビット群。ブラックにティティス、大量の小型砲台を周囲に浮かべ、戦闘態勢は整った。奇しくも同じ戦術だ。ならば勝負は純粋に実力で決まるだろう。
「行け!」
『行け!』
同時に全く同じ指示が飛び、空母から艦載機が飛び立つがごとくにビットが宙を舞い飛び交い、敵艦に致命の一撃を与えるべく突撃を開始した。その過程でビット同士がぶつかり合うは当然であり、たちまち激しい空中戦が展開された。それはまさに猟兵とオブリビオンの1対1でありながら、軍隊同士の戦いと言っても良いものであった。ビットと一口に言ったが、ブラックのビットが攻撃用一本に対し、ティティスのビットは通常のレーザー攻撃用のファンネルビットの他に、敵の攻撃を反射するための盾として運用したり他のビットやティティス本人のレーザーを反射する事でオールレンジ攻撃を行ったりするリフレクタービット、純粋な動く盾として機能するシールドビットを混ぜていた。このあたりの両者の思想の違いはおもしろい。純粋な力押し攻撃一辺倒のブラックと、攻撃に変化をつけたり防御を考えたりするティティスの違いは、敗死しても骸の海から復活できるオブリビオンと、そも敗北が許されない猟兵の差であろうか。
『ふむ、互角といったところだな』
熱くなりながらもブラックは冷静に戦況を把握していた。ビット同士のドッグファイトはほぼ互角であり、互いに激戦を抜けてブラック、あるいはティティスの所に到達するビットも出てきた。
「だが、それは読み筋だ」
ティティスは未来を先読みし、テレポートでビットの攻撃を回避する。一方のブラックは追加装甲による高速移動でレーザー光線を回避していった。兵力は互角、回避力も互角か。戦いはいつ終わるともわからない泥沼と化していった。ティティスはさらにサイコミュドローンを戦線に投入するが、それでもなお戦況をひっくり返すには足りないようだ。
『あと一押し……』
「何かあれば……」
その思いは両者に共通するものであったが、その一押しを掴むのはどちらか。それが勝敗を分けるだろう。
……突然、ティティスの姿が掻き消えた。アストラルエレメントエネルギーの力で透明化したのだ……てさらりか書いたけど、そもティティスは【|幽魔月精《アストラルエレメント》】とやららしいけど、それについてもうちょっと詳しく聞かせてもらいたいが、まあまたの機会でいいか。
『目くらましか、そのようなものが通じるはずがない』
視聴嗅覚は阻害されたが、なお魔力のわずかな動きでティティスの場所を察知したブラックはそこに的確にビットを送り込んだ。テレポートで回避するならやはり魔力の動きで転移場所を察知するのみ。それこそがブラックの『一押し』、残された魔力をそこに注ぎ込み決着をつける算段だった……が。
「逃げ隠れするためではない」
『!?』
「これを隠したかったのだ」
現れたティティスの手にはリニアロングボウが握られていた。そこから発せられた矢がブラックの腹部に突き刺さっていたのだ。ティティスの『一押し』がブラックを上回った瞬間であった。
『くっ、我とした事が』
「誕生日に死ねるのであれば本望だろう」
戦いはここに完全にティティスに傾いた。ブラックはティティスの猛爆をただただ耐えるしか道はなかった。
大成功
🔵🔵🔵
遠藤・修司
なんだかすごいところに来ちゃったね
宇宙船を破壊されたら大変だし、オブリビオンは放ってはおけないな
黒い物を食べる日らしいので、缶入りのブラックコーヒーを飲みつつ
「参考までに聞くけど、“僕”達の中で恋人または配偶者がいる人?」
『…………』
……そっか
僕は戦闘が得意な方じゃないので、直接ぶつかるのは避けるよ
【UC使用】で運動エネルギーを下げて敵のスピードを鈍らせる
足止めをしていれば、後は荒事が得意な人がなんとかしてくれるだろう
足元にフック付きワイヤーとか空き缶を高速で飛ばしてやったら引っかかってくれないかな
「ちなみに、“僕”達の中で恋人や配偶者が欲しい人はいる?」
『…………』
……まあそうだよね
●それぞれの戦い方
「……なんだかすごいところに来ちゃったね」
遠藤・修司(ヒヤデスの窓・f42930)がつぶやいた、その脳裏にあったものは、グリモアベースにおけるあのグリモア猟兵のわけのわからない剣幕と情熱か。はたまた今まさに目前にしているオブリビオン、ミニスター・ブラックの深手を負いながらもなお自らの目的を果たすべく荒れ狂う姿か。いずれにせよ、修司のやる事は決まっていた。
「まあ宇宙船を破壊されたら大変だし、オブリビオンは放ってはおけないな」
なりゆきとアクシデントで猟兵になってしまい、日常的にはどことなくアンニュイな雰囲気を漂わせている修司だったが、それでも眼前の敵が実現させようとしていることの重大さと、それを止めて大惨事を未然に防がんとする意思は持っていた。
「……ところで」
その前に、修司は数多くの『修司』、ヒヤデスの窓なるものに触れたためにコンタクトができるようになってしまった並行世界の自分に問うた。ヒヤデス(ヒュアデスとも)はギリシャ神話におけるニンフの姉妹の事であろうか。おうし座のヒヤ(ア)デス星団の名の由来である。唯一の男兄弟が死んだ時に悲しみから自殺して星になったというのと、主神ゼウスの私生児を育てるように命令されたが本妻であるヘラの怒りを恐れて逃亡したためにゼウスの怒りを買って星にされたというのと2種類の話があってよくわからない事になっている。ともあれ数多くの自我に触れて廃人になりかけた修司だったが猟兵への覚醒により辛くも精神崩壊を免れたということがあったようで。
「参考までに聞くけど、“僕”達の中で恋人または配偶者がいる人?」
『…………』
返事は、無。それが意味する事は明らかだった。
「……そっか」
なぜなら全員、別人格ではあるが自分に他ならないから。ため息をつきながら修司はブラックコーヒーを口にした。これは実際のブラックデーでもよく飲まれるものらしい。一応この日の該当者ではあるがそこまでの情熱に欠けていた修司にとって、ブラックデーをミニスター・ブラックから奪い返すためにできる精一杯がこれであった。
『おのれ猟兵、なかなかやる』
さて修司が戦場に到達した時、既にミニスター・ブラックは他の猟兵と交戦していた。その全身は速度を上昇させるという追加装甲が施され、数多くの|浮遊砲台《ビット》を操り、おそらく猟兵が使用していると思われる小型砲台群に対して猛攻を加えていた。
「……さて、どうしたものかな」
幸いにもブラックはまだ修司に気が付いていないようだ。戦場に来ておいて手をこまねいて見ているだけはさすがにあり得まい。ブラックが他の猟兵に気を取られている今、直接攻撃を加えるならチャンスと言えた。しかし。
「僕は戦闘が得意な方じゃないので、直接ぶつかるのは避けたいかな」
まあ、苦手な事を無理に行わなければならない時もなくはないが、幸いにも眼前で繰り広げられる猟兵とブラックの戦いは拮抗しているようだ。直接ブラック本人を叩かなければならない状況でもあるまい。それに直接火力だけが支援ではあるまい。
「なら、これかな」
修司が選んだのは魔弾術士のユーベルコード【魔弾の射手】であった。ウェーバーのオペラが元と思われるこれは魔法陣を設置し、そこを通過した物の運動エネルギーを上昇あるいは低下させる。すなわち弾丸を早くしたり逆に目標を遅くしたり等さまざまな応用がききそうなものであった。魔法陣の半径がレベルcm、修司でいうなら1.33mしかないのが欠点といえば欠点だろうか。なので仕掛けるタイミングが重要だ。修司はその時を待った。そしてブラックが全力の攻撃を仕掛けようとした、まさにその時。
「……今だ」
ブラックが飛ばしたビットの軌道上に魔法陣を仕掛けたのだ。魔法陣の上を通過したビット群の動きは覿面に低下し、敵猟兵への攻撃が止まった。そこを付き、猟兵の反撃が見事に決まったのである。戦況は完全に猟兵に傾いたと言ってもいいだろう。
『……お前の仕業か!』
「おっと、ついにばれたか」
ここに至ってようやっとブラックは修司に気が付いたようだ。怒りに燃えるブラックは修司にもビット群を飛ばすが、さすがに修司はブラックの戦術をじっくり観察する時間が与えられていただけの事はあり、冷静に魔法陣を設置した。戦闘が得意ではないと自負する修司であったが、それは猟兵としての実力が低い事は意味しない。遅くなったビットの攻撃ぐらいなら回避するぐらいの力はあるのだ。
『お、おのれ猟兵!!』
そうしているうちにブラックは他の猟兵からの総攻撃を受けたようだ。もはや修司に攻撃を仕掛ける余裕もないだろう。
「ちなみに」
自らの仕事を果たし、ひといきついた所で再度、修司は数多くの自分に問いかけた。
「“僕”達の中で恋人や配偶者が欲しい人はいる?」
『…………』
「……まあそうだよね」
それはあまりに予想された反応であった。別人格ではあるが、彼らは紛れもない、修司なのだから。
大成功
🔵🔵🔵
デイジー・クゼ
あの人、このブラックデーを自分の日と勘違いして調子に乗った挙げ句に、宇宙船で大量虐殺までするんニャ?
わたしも、一応某旅団の一員でもあるんニャし、リア充でそんニャことまでするんやったら、ブラックデー漬けにして
自分の日やニャい事を思い知らせんとニャ
《ゼージッテン・キャリバー》を【操縦】しニャながら【悪路走破】で駆け
【第六感】で【見切り&残像】回避しながら
UC【早業】発動させて、影業【弾幕&誘導弾&影縛り】を【スナイパー&属性攻撃(ジャージャー麺)】を込めてお見舞いしたり、ジャージャー麺っぽい影で縛り上げるニャんよ!
ブラックデーの名物のお味はどうニャ?
こう言う黒い料理を食べるお祭りであって、貴方を調子づかせる祭りやニャいんよ(と言いつつ事前に【料理】したイカスミを生地に入れた黒い明石焼きを見せつける様に食べながら、撹乱し)
敵の攻撃やUCが当たりそうニャったら
【早業】で即座に【オーラ防御&結界術】込めた《シャッテン・リュストゥング》を切り離し身代わりにするんニャよ
[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]
●結局ブラックデーとは
猟兵の猛攻を受け、もはやミニスター・ブラックの命運はもはや風前の灯火といっても過言ではあるまい。だが大ダメージを受けながらもなおその戦意は衰えず、戦闘能力はいまだに猟兵にとって、宇宙船にとって脅威であり続けている。何よりも。
『わ、我はブラックデーだからこそこの宇宙に戻ってきたというのだ』
その妄想というか勘違いというかを猟兵たちにさんざん訂正され、事実を突きつけられてきたというのに、いまだにその妄執にとらわれているようだ。まあ、これがブラックが骸の海より戻ってきてしまった大本の根拠なれば、そう簡単に手放すわけにもいかないようだ。
『ならばコアマシンを破壊せしめ、宇宙にブラックありと知らしめてくれよう。そしてこの日が来たら思い出すのだ、この我、ブラックの名を』
「あの人、このブラックデーを自分の日と勘違いして調子に乗った挙げ句に、宇宙船で大量虐殺までするんニャ?」
愛車である武装オートバイのゼーシャッテン・キャリバーを駆りながら、あきれたようにデイジー・クゼ(シーアクオン弐號と書いてニャゴウ・f27662)は言った。だが、それだけの能力をいまだ有しているのもまた確かなのである。ならば、そろそろやつにとどめを刺して骸の海に強制送還するのが猟兵としての役割だろう。
「わたしも、一応某旅団の一員でもあるんニャし」
某とはなんだ某とはちゃんと旅団名を言ってくれ!とグリモア猟兵が聞いていたなら嘆いたかもしれないが、まあおおっぴらに口に出すのがはばかられる気持ちもわからんでもない。仕方ないね。
「リア充でそんニャことまでするんやったら……」
繰り返すがブラックが本当にリア充かどうかはわからない。でもまあ、なんか楽しそうだし、グリモア猟兵がやつの事リア充だって言ってるわけだし、だったらリア充呼ばわりしたってなにも問題はないだろう。なにより某旅団の一員としては敵がリア充であってくれた方が戦いやすいというものだ。そうこうしているうちにバイクは快調に宇宙船内を飛ばす。戦闘で荒れた地形もなんのそのだ。気が付いた時には既に倒すべきブラックは目と鼻の先だ。
「ブラックデー漬けにして、自分の日やニャい事を思い知らせんとニャ」
『くっ、新手の猟兵か!』
大ダメージを受けていたブラックだったが、さすがにバイクが近づく音には反応した。深手を負った体に鞭打って両の拳に魔力を籠め、突っ込んでくるデイジーに相対する。
「こいつをくらうニャ!」
デイジーは早速ユーベルコード【|海の影の騎乗者《ゼーシャッテン・ファーラー》】を発動させた。これは自身より体高の大きい敵に対してゼーシャッテン・キャリバー搭載兵器の威力を上げるものである。ケットシーであるデイジーの身長は35.9cm。バイクに乗ってもなお、巨漢であるブラックの背の方が高い。まさに自らの体格を最大限に利用したユーベルコードであった。そして早速バイクに搭載された影業がブラックめがけて連射された。影業っていうのは……申し訳ございませんTW4は筆者は実はノータッチなのだがそこ固有の武器に同名のものがあるようで。関係あるかは不明だがまあ似たような物だと考えていいだろう。まあ影が形を持った武器であるらしいよと。
『飛び道具か、妥当な手ではあるが』
飛んできた影業をブラックは魔力を籠めた両腕で叩き落した。瀕死のダメージを負った者とは思えぬ動きだ。このあたりはいかに勘違い野郎とはいえさすがに元猟書家だ。
「ニャかニャかやるニャ、ニャらこんニャのはどうかにゃ?」
影業はもとが影なゆえに決まった形を持たない。今度はロープ状の形をとった影業がブラックの拳を回避しながらその体に巻き付き拘束していった。
『こ、これは!?』
「ブラックデーの名物のお味はどうニャ?」
そう。デイジーが放った影業は、ブラックデーで独り身が食べるジャージャー麺を意識したものだったのだ。さらにデイジーの猛攻はこれに留まらない。取り出したるものは……明石焼き。たこ焼きに似ているが材料の違いでたこ焼きよりも柔らかいらしい。本来は鶏卵を使うため(このため玉子焼とも呼ばれる)黄色みを帯びているらしいが、今回はイカスミを生地に入れて黒くなったブラックデー特製のものだ。。ちなみにデイジーはヒーローズアースの明石市在住で明石焼き屋の店員だ。
「こう言う黒い料理を食べるお祭りであって、貴方を調子づかせる祭りやニャいんよ!」
拘束されたブラックに見せつけるように食べるデイジー。これにはさすがにブラックも黙っているわけにはいかない。
『お、おのれ猟兵ども!どこまれ我をコケにすれば気がすむのだ!』
ブラックは魔術回路を開放し、無理やり影業のロープをぶち切った。そして残りの魔力を全て使い切るつもりで一気にデイジーに突撃すると、バイクもろとも一気に撃ち抜いた……
『む!?』
「おっと、惜しかったニャ」
だがデイジーは素早くゼーシャッテン・キャリバーの追加装甲であるシャッテン・リュストゥングを切り離し、デコイとして使用したのだ。ブラックが撃ち抜いたのはそちらだったのである。
『こ、この我がッッッ』
「今ニャ!覚悟するニャよ!」
そしてこの機を逃すまいとデイジーはすぐさま反撃に出た。全弾撃ち尽くさんばかりの影業の弾丸にはブラックデー特効のジャージャー麺属性が込められている。さらにユーベルコードの効果で威力倍増だ。魔力を使い果たしたブラックに、これを防ぐ術はさすがに残っていなかった。
(……我とした事が……だがこれで終わりだと思うな猟兵ども……)
「ふう……」
倒れ伏したミニスター・ブラックの姿が掻き消えていくのを見つつ、デイジーはつぶやく。
「今度戻って来る時はちゃんと黒い料理を食べるんニャよ!」
まあ、ブラックデーに来るかどうかはさだかではないのだが。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『楽しくパーティー』
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POW : 思い切り騒ぐ!
SPD : 会場運営を手伝う!
WIZ : 皆を盛り上げる!
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
猟兵たちから事の顛末を知らされた宇宙船の関係者たちは感謝する事ひとしきりであった。むろん戦いのダメージはすぐさま修復されたのである。
「そういや今日はブラックデーだっけ?」
「いやオレンジデーとかいう日だったような気も」
「椅子の日ですよ」
あれ?どっかでスペースシップワールドにはそういう習慣ないとか、いや一部では伝わってたとか、なんか不確定情報が錯そうしていたような気がしたけど、どうやらこの宇宙船では通じるようだ。さすがはリゾート船である。
「いずれにせよ!せっかくうちに来たんだ!ゆっくりしてってくれ!」
さて皆様はブラックデーを楽しんでもいいしオレンジデー側に回ってもいい。なんなら他の事をやってもいいんじゃないかな。その、なんだ。楽しんでってください。
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「会場運営の設営と支援、必要な状況を随時に判断しつつ行動する」
『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を起動してファンネルビットを創造して展開し必要な要請される可能性を考慮した変型を行ないつつ解除設営と準備を取り行ないながらライティングや照明も使いながら不必要な状況では透明化して邪魔や阻害を防ぎます。
ティティス本人も必要なら場面に合わせたドレスなどに変形させて会場に居ながら対処と対応に応じます。
給仕やアシスタントなどの服装などに対応しながら「要請と希望を聞きます、お気軽にお申し付けください」と丁寧に対応しながら応対します。
笑顔での対応は忘れずに柔らかく対応
●縁の下の
ティティス・ティファーナはその非常に良いスタイルや大人びて見える顔に反してまだ9歳だ。なので……かどうかは知らないが、ブラックデーにオレンジデー、いずれにも与さない道を選んだようだ。
「……会場運営の設営と支援、必要な状況を随時に判断しつつ行動する……」
機械的な表情と口調で、自らのすべきことを口に出して反芻し、再度確認した。そう、ティティスは観客側としてバカ騒ぎをするのではなく、運営側に回る事を選んだのだ。たしかにそういう方に回る人は必要であり、運営側の人がいるからこそ参加する人たちも楽しめるというものだ。そしてバカ騒ぎよりもそういう裏方の方が好きな人も少なくないかもしれない。特に猟兵として動こうという人には。
「お、手伝ってくれるのか?」
むろんこういうパーティー専門の宇宙船において仕事はいくらでもあり、人手はいくらあっても多すぎるという事はない。他の従業員に歓迎されたティティスは早速会場へと送られた。戦いの最前線が終わったばかりなのに次の戦いの最前線に放り込まれたようなものだ。だがティティスはあくまで冷静だった。
「……幽魔月精は機械身体、幽魔月精の機械魂魄……」
先刻の戦いで使ったユーベルコード【アストラル・エレメント・トランスフォーメーション】を、今回はパーティーのために使うというのだ。まさにどんなものであっても使いようで武器にもなれば平和的な目的のためにも使えるという、よい見本となったと言っても過言ではないだろう。
「行け、ビットたち」
そして作り出したのはやはり先の戦いと同様のファンネルビット群だった。むろんレーザー砲を撃つのに使うわけではない。様々な形に変形させて、会場の設営や物品の配置等に使用するのだ。先刻はひとり軍隊をやったが今回はいわばひとり設営だ……まあひとりではないが。ともあれ数の力はすばらしく、あっという間にパーティーの準備は完了した。
「おお!こいつぁすげえ!さすが猟兵だ!」
「恐れ入ります」
称賛の声にもあくまでクールに応じるティティスだった……が、これで仕事が終わったわけではない。ごついアンちゃんたちと違い、見た目美しいティティスには別の仕事が待っていた。
「ようこそいらっしゃいました、どうぞ存分にお楽しみください」
自ら創造したドレスを着てティティスは接客に回ったのだ。ひっきりなしに祭り会場に入れ代わり立ち代わり訪れる大量の客を前にティティスは八面六臂の活躍を見せる。給仕にアシスタント、コンパニオンなどなど。その状況に応じて服装も変る力の入れようである。
「要請と希望を聞きます、お気軽にお申し付けください」
営業スマイルも完璧だ。事務的でいて、それでいて柔らかく温かみすら感じられる。これには来た人たちの満足度も高い事だろう。
ティティスの奮闘は4月14日の日付が変わる頃まで続けられるのであった。
さて、果たしてどのような個性豊かな観客が会場を訪れるのだろうか。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
さて、折角ですからゆっくりさせて頂きましょう、と思ったのですが。
4月14日と言えば、確か「映画化もされた有名豪華客船の沈没事故が有った日」では?
そして、今いるのが「リゾートシップ」というあたり、色々と符合し過ぎていて、何やら嫌な予感がするのですが。
取り敢えず、必要に応じて色々と調整の利く【揔甄】を準備、緊急時の救助や避難に備えつつ、「ブラックデー」の「チャジャンミョン」や「ブラックチョコレート」、「オレンジデー」の「オレンジジュース」や「オランジェット」等を中心に、食べ歩きに出かけましょう。
何か、沈没事故に繋がりそうな事件やフラグに遭遇した場合は、全力でへし折る方針で。
●まいはーとうぃるごーおん
「さて、折角ですからゆっくりさせて頂きましょう……と思ったのですが」
どうやらブラックもオレンジも関係ないらしい夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は純粋にパーティーを楽しむつもりだったが、何やら懸念すべき事があったようだ。
「……『コウリャクノヒョウゴウ』は正しくは『寇掠の表号』……じゃなくて」
ご本人からご指摘いただいた事ではあるが、別に懸念はそれではなかったらしい。4月14日という日、ブラックオレンジ以外に例えば『良い椅子』で椅子の日でもあるらしいが、もっと重大な日があったようなのだ。
「確か、映画化もされた有名豪華客船の沈没事故が有った日……では?」
本当だった。正確には氷山にぶつかったのが14日、で沈んだのは翌15日だったらしい。
「そして、今いるのが『リゾートシップ』というあたり、色々と符合し過ぎていて、何やら嫌な予感がするのですが」
そういう意味ではブラックが4月14日に復活して宇宙船を破壊しようとしたというのは偶然にしてはあまりにできすぎといえた。確かに仮にブラックがコアマシンを破壊して大量殺戮を成し遂げていたならば、間違いなくこの日は例の客船沈没とも絡めてブラックの日と呼ばれていたかもしれないのだ……まあスペースシップワールドにアース世界の豪華客船沈没事件が伝わっているかどうかはまた別の話として。
「これはなんとかしないといけないかもですねえ」
猟兵として、るこるは決意を固めるのであった。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その造化の理をここに」
何が起こるかわからないため、汎用性の高いユーベルコード【揔甄】を発動した。揔は総、甄は作る事だ。すなわち読みの『ソウベツナルサンセイ』は『総別なる産生』であろうか。どうやら状況に応じたユーベルコードを作れるものらしい……まあ役に立たない事を願ってはいるが。
それはそれとして。
「わー、いっぱいありますねえ」
何か起きるまでは精一杯楽しむ事にしたらしい。なにせるこるは体格の通りの大食漢だ。さらに言うならブラックオレンジいずれも関係ないわけだから、両方とも平等に食べる。チャジャンミョンにジャージャー麵にブラックチョコレートにブラックコーヒー。オレンジジュースにオランジェットにマーマレードティーにオレンジケーキ。それらを次々に胃の中に入れていく。その健啖ぶりには嫌がおうに周囲の目を引く……と、そんな時。
「あいむふらーいん!」
その方向には、ちょうど船首にあたる部分で船の窓をのぞく向きに立っている、両腕を広げた女性を後方から支える男。海の船ではない宇宙船であってもリア充はこういう事をやりたくなるもので。るこるはすばやくそこに駆け寄ると、あくまでアクシデントを装ってふたりに体当たりをかました。
「あら、ごめんなさいねぇ」
恋人たちの邪魔をするのは不本意ではあるが、それよりもフラグぽい事はへし折るに限る。これが猟兵の仕事なのだ。るこるの行動が宇宙船に乗った大勢の人の命を救ったかは……定かではない。
大成功
🔵🔵🔵
高崎・カント
オレンジデーはプレゼントを贈り合うのです
カントもゆーいっちゃんに何かあげたいのです!
カントは猟兵なので、一人でお買い物もできるのです!
お土産物屋さんでプレゼントを探すのです
もきゅ、ピカピカのオランジェットがあるのです
とってもおいしそうなのです
でも……
おいしそうなのです(ついついつまみ食い)
おいしかったのです(ぺろりと完食)
きゅう、絶対そうなっちゃうのです……
食べ物は駄目なのです
もきゅー? お買い物は難しいのですー
何かいいものないですか?
お花! お花ならゆーいっちゃんも喜ぶのです
スペースシップワールドのお花を花束にして贈るのです!
わーいなのです
早く帰ってゆーいっちゃんにあげるのですー!
●そういやオレンジデー側唯一の参加者か
高崎・カントは猟兵ではあるが普通の言葉を話せないモーラットだ。なので普段は「もきゅー」「きゅぴー」とかしか言わないわけだが、猟兵やオブリビオンに対してはちゃんと通じているらしい。
「もきゅー!」(オレンジデーはプレゼントを贈り合うのです!)
ともあれ、先刻愛するゆーいっちゃん(の幻影)からデコポンもらった上に帰ったらディナーの予約があるという事で。
「もきゅきゅきゅいー!」(カントもゆーいっちゃんに何かあげたいのです!)
こうなるのは当然の流れだと言えよう。早速ブースを物色する事にしたカント。
「もきゅ!もきゅもきゅきゅぴー!」(カントは猟兵なので、一人でお買い物もできるのです!)
確かに、本来のシルバーレイン世界ではただのいちモーラットとして、お買い物とかは全部ゆーいっちゃんに任せていたものだから、こういうのはカントにとっては新鮮な経験だろう。なお猟兵の特性としてスペースシップワールドに存在しないモーラットであっても現地住民に違和感を感じさせないというものがあるが、スペースオペラワールドが発見されてさまざまな宇宙人が見つかった現在、存外そういう能力がなくてもモーラットの姿は普通に受け入れられる事もあるかもしれない。
「おう、お嬢ちゃんいらっしゃい!なんかお探しかい?」
「もきゅきゅ!」(オレンジデーのプレゼントなのです!)
土産物屋のおやじと会話をかわすカント。あくまでモーラット語であるが、猟兵の特性で普通に通じるようだ。このあたりは非常に便利である。
「そいつぁいい心がけだ。彼氏にかい?」
「きゅぴ!」(花嫁さんなのです!)
「じゃ、こんなのはどうだ?」
すすめられたのは砂糖漬けのオレンジピールをチョコレートでコーティングしたお菓子。オレンジピールであった。
「もきゅ!もきゅきゅぴ!」(ピカピカなのです!とってもおいしそうなのです!)
早速買おうとしたカント。だが……
「……きゅぴ……」(おいしそうなのです)
だが本当においしいかどうかは実際食べてみないとわかるまい。万が一まずいものを渡してしまってはお婿さん失格だ。ならば確認する方法はひとつ。味見だ。
「……きゅ……きゅぴ!」(こ、これは……おいしいのです!)
だが1枚ではわからない。まだまだ確かめなければ、と味見を繰り返し。
「もきゅー」(おいしかったのです!)
気がつけばオランジェットはただの一枚も残さずカントのおなかの中に。
「……きゅう……」(絶対そうなっちゃうのです……)
食べ物はダメだ。未練を断ち切るかのように首をぶんぶんと振るカント。
「……もきゅきゅい?」(他に何かいいものないですか?)
「他にか……ならベタだがこんなのはどうだ?」
「……きゅ!」(お花!)
スペースシップワールドの珍しい花なら間違いなくゆーいっちゃんに喜んでもらえるだろう。早速カントは花束にしてもらった。
「きゅぴー!もきゅもきゅきゅぴぴー!」(わーいなのです!早く帰ってゆーいっちゃんにあげるのですー!)
大喜びなカントは幸せいっぱいだったが、そんな彼女に向けられた視線が……。
大成功
🔵🔵🔵
フェリチェ・リーリエ
誘えるなら静武(f37639)も誘って、ここからがブラックデー本番だべ!
チャジャンミョンはもう食ったけども黒い食い物ならなんでもいいべな!
指定UCで黒カレーや黒スープのラーメン、イカスミパスタや海苔巻きから黒ごまプリン、ぼた餅、ビターチョコケーキといったスイーツ系まで黒い料理を続々作って振る舞う。宇宙船にいる独り身集まれー!ブラックデー宴会始めるべ!
まさかオレンジデー側の人間はいねえっぺよな?
ブラックデーだから黒ビールで乾杯!あ、未成年とか酒飲めんやつはコーラか黒烏龍茶な!食後のコーヒーもあるべ。
あとおらとっくに成人してるんで!念のため!(見た目だけなら10代に見えないこともない実年齢以下略)
ヴィリー・フランツ
※下世話な話もあるのでアドリブ改変も大歓迎です
心情:さて、これからはオフタイムだが、どうしたもんか。…一人じゃつまらんからあの不破とか言うグリモア猟兵でも誘って飯でも食うか?
手段:たまには俺が奢っちゃる!先ずは焼き肉、ビールでも上カルビでも上ロースでも好きなだけ飲み食いしろ、クロムの方で良い感じの|パトロン《上客》が付いたんでな。
「一人者でも良いじゃねぇか、ちゃんと働いて税金収めりゃ国民の義務を果たせんだ、不貞腐れる事はねぇ」
飯食ったら何処に行くかって?そりゃ行楽地なら歓楽街の一つや二つあるだろ、キャバクラのハシゴをするぞ!その次はストリップ劇場だ、ガッハッハ!
●大人だってたまには弾けたい
「むー、あれはどう見てもオレンジデー側……」
フェリチェ・リーリエの視線の先には買い物中のモーラット。オレンジ色の花束を買う姿は紛れもないむこう側だ。とはいえ相手の姿は見当たらないし、何よりモーラットはかわいいしもふもふだしで、いかに嫉妬戦士だろうと即爆破は躊躇われた……いーやおらなら即攻撃してたべ!とかいうことでしたら申し訳ございません。
「おのれリア充!だがここからがブラックデー本番だべ!」
フェリチェはリア充への怒りを全て発散させるつもりで叫んだ。
「宇宙船にいる独り身集まれー!」
「呼んだ?」
集まった独り身たちの中にグリモア猟兵である不破・静武の姿も。どうやら他のグリモア猟兵に送ってもらったようだ。
「おー来たか静武!せっかくだし楽しむべ!」
早速フェリチェは瞬時の料理を作るユーベルコード【ウォー・アイ・満漢全席!】を発動させた。これでみんなに料理をふるまおうというのだ。
「チャジャンミョンはもう食ったけども黒い食い物ならなんでもいいべな!」
「おー、いたか静武、だっけ?」
と、そこに来たのはヴィリー・フランツ。どうやら彼も静武を探していたようだ。
「あ、君はたしか……」
「せっかくだから付きあえ!たまには俺が奢っちゃる!ビールでも上カルビでも上ロースでも好きなだけな」
どうやら最近ヴィリーはクロムキャバリアで立てた戦功によりかなり太いパトロンがついたようなのだ。そのためにサイフの紐もかなりゆるくなっているようだ。一時期かなり経済的に苦しい事もあったようだが、その心配もなくなったようで何よりである。
「ちょっと待った!勝手に連れてってもらっちゃ困るべ!」
だがフェリチェがストップをかけた。静武は紛れもないブラックデー側の人間、しかも嫉妬旅団の団長なれば、フェリチェとしては自分がメシを食わせないわけにはいかない。料理人として!そしてヴィリーとしても要はせっかくのオフタイムにひとりで飲むのもつまらないから静武を探していただけであり、むしろこれだけ人がいるならそれに越した事はなかった。
「じゃ、せっかくだしフェリチェ……だっけ?カネは出すからうまい肉でも焼いてくれや」
「おうよ!焼き肉だけじゃなくて、黒いモンのフルコースをごちそうしてやるべ!」
そしてフェリチェの料理が次々に並べられた。黒カレーや黒スープのラーメン、イカスミパスタや海苔巻きといった料理の数々に加え、黒ごまプリン、ぼた餅、ビターチョコケーキといったスイーツ系まで。それはまさしくブラックデーに相応しいメニューであった。なおさすがに焼肉を黒くしてしまうのはもったいないのでこれは普通に焼いたようだ。
「さあ!みんな黒ビールは行き渡ったべか?あ、未成年とか酒飲めんやつはコーラか黒烏龍茶な!」
当然フェリチェの手にも黒ビールのジョッキ。こう見えて成年である。そして全員立ち上がり、同じ言葉を唱和する。
「乾杯!」
そして独り身たちは存分に飲み食いし、騒ぎ、楽しんだ。猟兵も一般人も。まさしく彼らは世界中でもっともブラックデーを楽しんでいた者たちであったと言っても過言ではあるまい。
「くっそう、なんでボクは独り身なんだ……」
「一人者でも良いじゃねぇか」
むちゃくちゃ飲み食いして、アルコールも入ってくだを巻きまくる静武の方をヴィリーは叩いた。
「ちゃんと働いて税金収めりゃ国民の義務を果たせんだ、不貞腐れる事はねぇ」
その通りである。確かに独り身はいろいろと社会的なアレやコレや問題が出てくるかもしれない。だがまあそっちの方をいろいろ言っていると文字数いくらあっても語り切れる事じゃないし、何よりそういう趣旨でもあるまい。別の方でちゃんと立派にやっていれば一応は立派な社会人なのだ。
「お、ええ事言うでないか!」
独り身ではあるが料理人としてエンドブレイカー世界で立派に働いているフェリチェは笑った。だが一方で。
「……そ、それは……」
つい最近までガチのニートで国民の義務を全く果たしていなかった静武は口ごもる。だがヴィリーはさらに肩を叩いた。
「昔は昔だ!今はちゃんと仕事してるんだろ?」
「……ま、まあ、それは……」
確かに静武はつい最近まではニートだったかもしれない。だが今や猟兵としていろいろな世界で戦っているし、そうなれば給料だっていろいろな世界でもらっている事だろう。ならばまあ、これからだっていくらでも取り戻せるじゃないだろうか。
「そだそだ!立派に嫉妬戦士してるべ静武は!」
「う、うん……ありがとう」
ヴィリーとフェリチェに激励され、思わず静武は涙ぐんだ……で終われば良かったのだが。
「よし!じゃあ、腹いっぱい食った事だし、次行くか!」
「次?」
「決まってるだろ」
ヴィリーはにやりと笑った。
「そりゃ行楽地なら歓楽街の一つや二つあるだろ、キャバクラのハシゴをするぞ!」
「……え?」
「け、け、けがわらしいべー!」
アドリブ改変などする気もなくブッ込んだヴィリーの言葉に静武は困惑し、男嫌いなフェリチェは激怒した。
「ボ、ボク、そういうトコ行った事は……」
非リアにありがちな妙なところで潔癖な所を見せた静武だったが、ヴィリーはさらに豪快な笑顔を見せた。
「おー、そいつぁ何より。こいつも社会勉強だ!何歳になっても学ぶ事があるなんていい事じゃねえか!その次はストリップ劇場だ、ガッハッハ!じゃあ静武は借りてくぜ!」
かくして男ふたりは連れだっておねえちゃんたちがいっぱいいるお店の方に向かっていった。
「……こ、これだから男ってやつはー!!」
そしてフェリチェはリア充を見た時と同じくらいに激怒しまくったのであった。なおこの後ブラックデー側の一角で爆発があったらしいが、それがフェリチェの起こしたものかどうかは定かではない。
大成功
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遠藤・修司
『そういえば4月14日はSOSの日だよ。タイタニック号が沈没した日にちなんだらしい』
「シチュエーションが今回と似てるね」
『オブリビオンがこちらでやる気になっていたら、否定できなかったね』
蘊蓄を披露してくる“僕”に適当に相槌を打ちながらリゾート……
こんな場所は初めてだから、どう過ごしていいか……
形から入ろうとそれっぽい飲み物を貰ってデッキにいるけど
なんだか場違いな気がしてきた
『待ってたらショーの方から来るよ』
『何もしないで休むのも楽しみ方さ』
“僕”の癖にリゾートに慣れてそうなのがいるな
まあ折角だからのんびりしようかな
あ、ブラックデーを楽しむ?集団だ
なんか爆発してるけど、あれもショーなのかな……
●男は狼なのよ
「こんな場所は初めてだから、どう過ごしていいか……」
遠藤・修司はどうやらインドア派なのだろうか。スペースシップワールドのリゾート船はただでさえ人が集まる場所だ。その上今日はリア充の祭典と非リアの祭典とそれ以外がいろいろと入り混じっている上に、猟兵がオブリビオンを倒して宇宙船を守ったという事もあり、盛り上がり具合は倍率ドンさらに倍といった具合である。本来なら修司も宇宙船を守ったひとりとしておおいに歓待を受けてもいい身分ではあったが、それでもなお。
「なんだか場違いな気がしてきた……」
居心地の悪さがどうも否めない。とりあえず場の雰囲気に合わせるべくおしゃれなカクテルなど手にしてみたが、それだけで溶け込めるような空間でもないようで、どうにも修司は困り果てていた。
『そういえば』
そんな修司の脳内に声が。無数の並行世界の修司のものだ。
『4月14日はSOSの日だよ。タイタニック号が沈没した日にちなんだらしい』
そういえばさっきも似たような事を言ってた猟兵がいたっけ。モールス信号の細かい事は知らなくてもツツツ・ツーツーツー・ツツツといえばSOSだというのは多くの者が知っているだろう。なおタイタニック号が世界初のSOSを出したというのは実は誤解らしく、その1週間前のオンタリオ号が世界初らしいとか。なおSOSは1999年にその役割を終え、現在のアース世界ではGMDSSなる遭難信号が使われているそうな。
「シチュエーションが今回と似てるね」
『オブリビオンがこちらでやる気になっていたら、否定できなかったね』
これは本当に幸運な事と言えた。今日はSOSの日だからそれにちなんで宇宙船を破壊するとか言われたら、猟兵としてもそれを論破するのはなかなか大変だった事だろう。筆者的にはちょっと残念な事ではあったが。
『あとピンクレディーって女性デュオがSOSって歌をヒットさせたんだけど冒頭のモールス信号のせいで放送禁止に』
次々に蘊蓄を披露する“修司”たちに適当に相槌を打ちつつなんとかリゾートを楽しもうとする修司だったが、なかなかうまい事いかない。
『待ってたらショーの方から来るよ』
『何もしないで休むのも楽しみ方さ』
「……“僕”の癖にリゾートに慣れてそうなのがいるな」
まあ、並行世界ならそういう“修司”がいたっていいだろう。ただまあ、何もせずにのんびりしているというのは性に合っているような気はした。せっかくなので日付が変わるまではのんびりとした休暇を楽しもう、と思ったその時であった。
「……え?」
突然の爆発。その方向を見ると。
「……あ、ブラックデーを楽しむ集団……でいいのかな?」
何がどうしてどうなったかは分からないが、何やらあった事だけは間違いない。慌てる人々にむしろ楽しむ人々に、それぞれがそれぞれの動き方をしている光景を、修司はぼんやりと遠くから見ていた。
「あれもショーなのかな……」
少なくとも自分が動くべき状況ではないだろう。そんな事を思いつつ手にしたカクテルを口にした。それは甘く、少しだけ苦かった。その甘味と、思いの外強いアルコール分が、修司の脳を休ませてくれるような、そんな感覚を覚えたのであった。
大成功
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桐藤・紫詠
さて、鋭敏な味覚を持って料理を楽しむとしますか
勾陳と共にパーティー料理を…和食は、比較的再現されている上で寿司は寧ろ洗練されていますね
モンゴリアンデスワーム…はさておき宇宙マグロのヅケ丼に銀河鮎の塩焼き、その他宇宙魚介とやらを堪能していきます
〆は鯛茶漬け…出汁が効いて美味しいです
そう言って一息ついた後、緑茶を使ったらノンアルコールカクテルをもらって星の海を見学
…アヤカシエンパイアも、いつかは平安結界の外を超え…星の海に辿り着けるのでしょうか
猟書家等にも思いを馳せ、緑茶の風味香るノンアルコールカクテルを嚥下していくーー
●地上から宇宙までは100kmらしい
アース世界の平安時代においては食文化の中心は間違いなく貴族社会であった。むろんそれは中央が富を一手に集中させていたからに他ならないわけだが。おそらくアヤカシエンパイアでもそれほど事情は変わりはないのだろう。むろんアヤカシエンパイアの場合はそうしなければならない事情が存在するわけではあるが。
そんなわけで。
「さて、料理を楽しむとしますか」
皇族である桐藤・紫詠もまたかなり食に関しては一家言あるようだ。五感を強化するユーベルコードで味覚を鋭敏にしてまで食を楽しむというのだからなかなかのものである。
「行きましょう、勾陳」
『やれやれ、調伏者は随分と楽しそうだな』
「何を言っているのです、これはあなたへの労いも兼ねているのですよ」
そんなわけで紫詠は先刻の戦いで活躍した勾陳を伴い、パーティー会場へと向かった。とはいえどうやら紫詠はブラックとオレンジいずれの側にも与する気はないようで、目指していたのは。
「和食もちゃんと用意されているのですね、比較的再現されている上で寿司は寧ろ洗練されていますね」
どうやらスペースシップワールドの宇宙魚介のようであった。ちなみにアース世界の平安時代において寿司といえば『|熟《な》れ寿司』のことである。おそらくアヤカシエンパイアでも似たようなものであろうか。
「モンゴリアンデスワームの切り身とかないでしょうか」
『それは宇宙生物ではないような気がするぞ調伏者よ』
確かにいるとしたらアース世界かもしれない。ともあれ、紫詠はさまざなな美食珍味を楽しんだ。さすがはリゾートに特化した船だけのことはある。強化された鋭敏な味覚をも満足させるものがそろっていた。宇宙マグロのヅケ丼に銀河鮎の塩焼きなどなど……。
「堪能いたしました」
〆に出汁の効いた鯛茶漬けをいただきつつ、満足気に紫詠はつぶやいた。
『うむ、我も十分頂いた。特に明石焼きとかいう物が美味であった』
「ああ、ケットシーの方が屋台を出してましたね、あれは宇宙魚介ではなかったようですが」
食欲を満足させたところで、緑茶にライムとミントにシロップを加えたモヒート風のノンアルコールカクテルを手に、紫詠は宇宙船の窓際へと進んだ。窓の外に広がるのは無限に広がる大宇宙。
『何を考えるか、調伏者』
「……アヤカシエンパイアも、いつかは平安結界の外を超え…星の海に辿り着けるのでしょうか」
『そのような日が来れば良いな』
そんな未来に、そしてこれまでアヤカシエンパイアで戦ったオブリビオンたちや先刻倒したばかりのミニスター・ブラックの事に思いを馳せつつ、紫詠はカクテルに口をつけた。甘味と苦味、そして爽快感。それは紫詠のこれまでの人生を、そして今後の行く末を暗示しているように感じられたのであった。
大成功
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デイジー・クゼ
取り敢えず、一件落着した訳ニャんけど、折角ブラックデーなんニャし
さっきも事前に作ったブラック明石焼きの屋台でもUC【早業】発動して【メカニック】で屋台を作って出そうかニャ
明石焼きには銅板は必要不可欠やから、屋台に取り付けて、イカスミ仕込んだ生地と具の素材は予め、この事件に関与する時に作って来たんニャよね
具は穴子、タコ、タコわさ、タコうめ……かニャ、生地を流して木箸でクルクル回して【料理】して、とかしてる内にお客様が来たニャんよ、いらっしゃい
何か、ブラックデーの由来からニャのか、独特な雰囲気と言うか(ある意味悲壮感感じるんニャけど)……ニャけど、
良く来たニャんよ、メニューはそこに書いてあるけど、今日くらいはブラックデーとは言え、この味に癒されて欲しいニャんよ
付ける出汁は熱いの冷たいの両方あるし、たこ焼きみたいにソースをつけるのも乙ニャね、ある地方(神戸や姫路)やと出汁に付けて
その上からソースをかけて食べるのもあるけど、これもオススメニャんよ
[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]
●戦いの果てに
「取り敢えず、一件落着した訳ニャんけど」
繰り返すがデイジー・クゼは明石焼き屋だ。それがゆえに。
「折角ブラックデーなんニャし!」
やるべき事は当然決まっていた。明石焼き屋の仕事は明石焼きを焼く事に他ならない。なればこそ焼くのだ。先ほどの戦いで作ったブラック明石焼き。それを改めて皆にふるまおうというのである。
「つーことでまず準備すべきはこれニャ!」
早速ユーベルコード【ハイスピード・オーバーメカニック】を発動させたデイジー。明石焼き屋以前に科学者であるデイジーはあっという間に明石焼き屋の屋台を完成させた。セットされた明石焼きの『鍋』はタコ焼き器に似ているがそれよりくぼみが浅い。また銅製と鉄製があるようだが、銅の方が熱伝導率が高く、そのため短時間で量を作る事ができ、かつふっくらしたおいしい明石焼きを作る事ができるという。ただ銅製はその分焼く者のテクニックが必要とされ、要は素人は鉄製、熟練者やプロは銅製を使うと考えて差し支えあるまい。むろんデイジーが使うのは銅製だ。
そしてデイジーはさっそく調理にとりかかる。玉子と小麦粉にじん粉と呼ばれる小麦粉のでんぷんを生成したものを混ぜて生地とし、今回はブラックデー特製のためイカスミを混ぜ、銅板に注ぎ込んで具材を入れて形を整えひっくり返しながら焼けば完成だ。具材は定番のタコの他に、タコわさにタコうめ、そしてこれまた明石名物のアナゴである。生地や具材はスペースシップワールドで調達したものではなく、あらかじめ持ち込んだものだ。ちなみにたこ焼きに似ているがこっちの方が先発で、もともとは他の物を入れてラジオ焼きなどと呼ばれていた大阪の料理が明石焼きに倣ってたこを入れたのがたこ焼きの始まりだとか。
「いらっしゃい」
デイジーの屋台に早速人が集まってきた。最初に買っていったのは明らかにスペースシップワールド住民ではなさそうな二人組であった。
「良く来たニャんよ、メニューはそこに書いてあるけどニャ」
どうやらこの二人組はブラックデーともオレンジデーともあまり関わりはなさそうだ。それでもまあ客には変わりない。
『これはどう食べればよいのだ』
「出汁につけるのが基本ニャ。出汁は熱いの冷たいの両方あるニャ。たこ焼きみたいにソースをつけるのも乙ニャね、ある地方ニャと出汁に付けてその上からソースをかけて食べるのもあるけど、これもオススメニャんよ」
『成程……ふむ、これはなかなか』
ふたりはおそらく初体験である明石焼きに満足した様子であった。手ごたえを感じたデイジーのところにはさらに次々と客が訪れる。みなスペースシップワールド住人のように見え、時期が時期だけにブラックデー絡みの人が多いようだ。むろんそうでない人もいたが。
「これは……独特な雰囲気と言うか、ある意味悲壮感感じるんニャけど」
いずれにせよ共通して言えるのは、やはりこの世界の住民にとって明石焼きは初体験のようであった。デイジーはひたすらに明石焼きを焼き、それらは集まった者たちに次々と行きわたっていく。そして人々は熱がりながらもそれを口に放り込んでいく。
「今日くらいはブラックデーとは言え、この味に癒されて欲しいニャんよ」
どうやら明石焼きの味はスペースシップワールドの住人たちに受け入れられたようだ。彼らの笑顔にデイジーはそれを確信し、安堵した。ブラックデーを意識した黒い明石焼きでありながら、少なくともこの場に広がっていたのはブラックもオレンジもない世界と言えたかもしれない。かくしてデイジーの4月14日は戦いに始まり戦いに終わったが、そこにあったのは疲労感と同じくらいの、満足感であった。
リア充に非リアに、4月14日をいかに過ごしたかに関わらず、誰の頭上にも平等に4月15日はやってくる。
全ての者に明るい未来があらんことを。
大成功
🔵🔵🔵