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梅の頃にて

#アヤカシエンパイア

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#アヤカシエンパイア


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 冬もそろそろ終わる気配が見えてきて、雪に覆われた山からも緑が顔を出す。
 その合間に咲き誇るのは梅の花。
 白、薄紅、紅色の花々は、村の人々にとっても嬉しい知らせ。
 やっと暖かくなるね。畑の準備をしないとな。
 そんなことを話しながら、彼らが開くのは賑やかな市。
 一足早く春を祝いつつ、穏やかな時が過ぎていく。

 そんなささやかな、けれど確かな喜びを引き裂くよう、村外れに大きな裂け目が開く。
 大きな妖がその裂け目に気付き、悪霊の群れと共に顔を出す。
 彼らはいずれ梅を踏み荒らし、村へ下り、全てを壊していくだろう。
 春の訪れより早い、悲劇の訪れ。
 それを防げるのは、猟兵達だけだ。


「皆様、アヤカシエンパイアにて事件が発生しました」
 ぺこりと頭を下げて、九島・萌黄(萌黄色の働き者・f42848)は言葉を紡ぐ。
「とある村の外れに平安結界の破損、『妖の裂け目』が発生したのです。既に現地の陰陽師達が周囲を方忌みにて隔離しているため、村人がこちらに近付くことはありません。ですが、いずれ裂け目からは妖の群れが侵入してくるでしょう。皆様にはこの妖の対処をお願いしたいのです」
 アヤカシエンパイアは平安結界に守られた世界であり、結界の外は多くの妖、つまりオブリビオンが潜んでいる。
 彼らは妖の裂け目を利用し、結界内部に入り込む機会を窺っている。今回の事件はまさにその好機という訳だ。
「結界の修復は陰陽師達でも行なえます。なので皆様には妖の退治の方に集中して頂ければと」
 萌黄はグリモアを起動し、戦場となる村外れを映し出す。
 山に近い場所のようで、少々道は険しいが戦場としては問題ない場所のようだ。
 映像の中央、禍々しく開いた『妖の裂け目』からは邪悪な気配が漂ってきている。

「説明を続けますね。裂け目からは、まず尖兵として低級の妖が入り込んできます。彼らを倒し続け、大将を引きずり出すのが最初の目標です」
 映像が切り替わり、映し出されたのは鬼面の群れ。
 彼らはあまり強くない悪霊の群れだが、巻き起こす鬼火は時に火災を引き起こす。
 村や自然を守るためにも、彼らのことは放っておけないだろう。
 萌黄は一呼吸置き、更に映像を切り替える。今度は巨大な妖が映し出された。
「大将は鵺という危険な妖です。無限進化ユーベルコードが具現化したもの、と言われているようですが……戦うほど力を増す性質を持った妖です、ここで必ず倒しましょう」
 妖の謂れに謎は多いが、やるべきことは変わらない。とにかく敵と戦って倒す、それが一番。
 この巨大な妖を倒せば、裂け目を安全に閉じることは出来るようになるはずだ。

「無事に妖を退治した後は、周囲の警戒も兼ねて村へ向かって下さい。村は市の真っ最中ですので、皆様が遊びに来れば村の方々も喜ぶかと思います」
 市に並べられているのは、野菜や川魚といった食べ物が中心だ。
 新たに訪れることになった世界の文化に触れるのも、良い経験になるだろう。
「村の周囲では、ちょうど梅の花も咲いています。花を愛でながらのんびり過ごすのも良いかと思います」
 そう言って微笑み、萌黄は改めてグリモアを掲げる。
「説明はこのくらいでしょうか。そろそろ出発の準備をしますね」
 ぺこりと頭を下げて、送り出す用意を。ゲートが開かれれば、向こうから漂うのは梅の香りだ。
「それではお気をつけて。良い報告を待っております」


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 そろそろ春、来てほしいですね。

●一章『鬼面の群れ』
 裂け目から現れた低級の悪霊の群れです。
 まずはこれを退治しましょう。

●二章『鵺』
 裂け目から現れた妖の大将です。
 これを退治すれば、安全に裂け目が修復できます。

●三章『賑やかな市』
 念のための警備も兼ねて、村の市を訪れましょう。
 売られているのは野菜や川魚といった食べ物が中心です。もしかすると掘り出しものもあるかもしれません。
 村の周囲には梅の花も咲いています。花を眺めながらのんびりするのも良いかと思われます。


 どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
 進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。
 締め切りの告知もそちらで行っているので確認していただけると幸いです。

 それでは今回もよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『鬼面の群れ』

POW   :    爆裂鬼火
着弾点からレベルm半径内を爆破する【鬼火】を放つ。着弾後、範囲内に【恨みの炎】が現れ継続ダメージを与える。
SPD   :    鬼火翔け
【鬼面状の体】から【鬼火】を噴出しながら、レベル×5km/hで直進突撃する。2回まで方向転換可能。
WIZ   :    鬼火雨
レベル×5km/hで飛翔しながら、【降り注ぐ鬼火】で「🔵取得数+2回」攻撃する。

イラスト:佐々木なの

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 戦場となる村外れは、既に禍々しい気配に満ち溢れていた。
 周囲を飛び交うのは鬼火を纏った悪霊の群れ。彼らは猟兵に気付けば、すぐに襲いかかってくるだろう。
 この悪霊を退けなければ大将である鵺も引きずり出せない。まずはこれを退治するのが最優先だ。

 戦場から少し先、雪解け始めた山には梅の花が咲いている。
 穏やかな春の訪れを守るためにも、戦わなくては。
ゴズ・ノウズ
ほう、今日は妖連中が随分と賑やかだ
ははは、殊勝なことだ!
私に滅してくれと、そう言っているのだな!

よし、一匹残らず屠ってやろう
それこそが私が為すべき正義だからな!

鬼火の雨とは派手な歓迎じゃないか
退魔円匙を回転させるように振り回し
降りかかる火の粉を払おう

人の子への興味は薄いが…奴らは結界の中に生きる者
火事などで死なれるのは私の正義に反する
延焼はせぬよう
気を配っておくぞ

身を守る間に
敵のおおよその数と地上からの距離を確認

ふむ、指を数本といったところか
食らえ【微塵爆砕符】!

必要数の指を落とし
上空に投げて起爆
爆破に巻き込み
敵を一掃するぞ

指は隙を見て、予備の護符で修繕
討たねばならぬ妖は、未だ残っているからな




 戦場には鬼火が揺らめき、妖が打ち鳴らす音がする。
 その賑やかさに身を投じ、ゴズ・ノウズ(神のみぞ知る・f42841)は牛骨の頭を楽しげに震わせた。
「ははは、殊勝なことだ! 私に滅してくれと、そう言っているのだな!」
 ゴズの声に気付いた妖達は、鋭い殺気を纏って殺到してくる。相手もやる気だというのなら、それは喜ばしいことだ。
「よし、一匹残らず屠ってやろう。それこそが私が為すべき正義だからな!」
 そう言って退魔円匙を構えたゴズに放たれるのは、雨のように降り注ぐ鬼火だ。
 妖達は自在に空を舞い、次々に鬼火を降らし続ける。それに対し、ゴズは円匙を構えたまましっかりと地に足をつけていた。
「鬼火の雨とは派手な歓迎じゃないか。延焼はせぬよう気を配っておかねばな」
 次の瞬間、ごう、と大きな音が響く。
 ゴズは凄まじい勢いで円匙を回転させ、その勢いで迫りくる鬼火を払い出したのだ。
 払う方向は出来るだけ空中、あるいは地面に向けて。ここは山の近くだ、下手に炎を払えば植物へと燃え移ってしまうだろう。
 山火事が起きれば、村人達に危険が及ぶ。彼らは結界の中に生きる者、炎に飲まれて死ぬような事態は防ぎたい。
 ゴズがそう思うのは、一般的な倫理観や正義感によるものではなかった。
 彼の内側にあるのは、自分が為すべきだと思う正義のみ。ただそれに従い、妖を屠り、人の子を守る。
 しかしその正義こそが確かな道標。それで十分だ。

 ゴスは迷うことなく炎を退けつつ、眼窩で冷静に敵を見据えていた。
(距離はそれほど離れていないか。数は多いが、纏まって動いているな)
 敵はずっと飛び回っているようだが、常に最大火力を放っている訳でもないようだ。
 鬼火が弱るタイミングを見極め、ゴズは左手を前へと突き出す。
「ふむ、指を数本といったところか。今度は私の番だな――食らえ、微塵爆砕符!」」
 右手で円匙を振るって、狙うは己の左手。叩き切られた指が1本、2本と落ちて、護符の形に戻っていく。
 残った指で護符を掴んで、投げつけるのは妖の方角。直後、護符は凄まじい熱を帯び――妖諸共爆発して、消えていった。
 ゴズは巻き上がる煙の中に身を隠し、素早く予備の護符を取り出す。そのまま左手に添えれば、護符は再びゴズの指を修復してくれた。
 これで最初の相手は倒せたが、邪悪な気配は消え去っていない。
(討たねばならぬ妖は、未だ残っているからな。残らず滅していかなくては)
 そう考えるゴズの牛骨頭は、再び震える。それは武者震いか、或いは愉悦か。
 どちらにせよ、彼の為すべき戦いはまだ続く。

成功 🔵​🔵​🔴​

杓原・潤
ここがアヤカシエンパイア……うるうの知ってる歴史で言えば、平安時代って感じだったかな?
何だか不思議な雰囲気や力をいっぽい感じるけど、うるうだって魔法使い。
悪い妖怪なんて、ぱぱーっとやっつけてやるんだから!

うーん、あのお面めっちゃ速いなぁ……箒の空中機動で鬼火を避けるのにも限度があるし、まずは水の属性攻撃を込めた泡をたくさん出して時間稼ぎしよう。
泡に突っ込んでくれても良し、避ける為に速度を落としてくれても良し。
魔法の水なら鬼火も弱めてくれそうだしね。
敵を集めたらユーベルコードで仕上げ!
ミゼリコルディア・スパーダの包囲攻撃でお返しをしてやるもんね!
魔法使いだって陰陽師に負けないって所、見せてやる!




「ここがアヤカシエンパイア……」
 杓原・潤(鮫海の魔法使い・f28476)は転移先の光景を、紫の瞳にしっかり映す。
 麓に見える村は質素で、歴史の教科書で似たような絵を見たことがある。確か平安時代の様子だ。
 そんな質素で古めかしい光景に対し、感じるのは不思議な気配。
 この世界を覆っている結界によるものだろう。或いは『妖の裂け目』修復に備えた陰陽師達だろうか?
 同時に邪悪な気配も感じるが、そちらは分かりやすい。潤の到着に気付き、向かってきている妖のものだろう。
 しかし潤は妖なんて恐れない。彼女の内にあるのは、確かな自信だけだ。
「不思議な力がある世界ってすごいけど、うるうだって魔法使いだもん。悪い妖怪なんて、ぱぱーっとやっつけてやるんだから!」
 胸を張り、バブルワンドを構えて。潤は堂々と、妖達と対峙した。

 妖達は凄まじいスピードで飛びながら、鬼火を放ちつつ潤へ接近している様子。
 けれど彼らの攻撃は遠距離攻撃が主体のようだ。必要以上に近付いてはこないだろう。
(うーん、あのお面めっちゃ速いなぁ……箒を使うのは止めたほうがいいかも)
 空中戦を仕掛けるにしても分が悪い。それならこちらも地上から、遠距離攻撃を放ってやろう。
 潤はバブルワンドをぎゅっと握って、水の魔力を流し込む。
「そっちが炎なら、こっちは水だよー!」
 そのまま大きく杖を振り上げれば、溢れるのはたくさんの水の泡。
 泡はふよふよと浮遊しつつ、戦場一帯に散らばっていく。
 鬼火とぶつかった泡はそのまま消えてしまうが、しっかり鬼火も飲み込んでくれて安心だ。
 妖達は潤の魔力を警戒しているようで、泡を回避するように飛び回る。その分飛行のスピードも落ちており、先程よりは捕まえやすいだろう。
 鬼火は無力化できたし、敵の動きも鈍っている。今こそ攻撃のチャンスだ。
「今度はもっと凄い魔法、いっちゃうよ! 魔法使いだって陰陽師に負けないからね!」
 潤は再びバブルワンドに魔力を流すが、今度のものには属性を帯びさせていたい。籠めるのは――単純な破壊力!
「ひっさーつ、ミゼリコルディア・スパーダ!」
 次の瞬間、光が弾けた。その光は幾何学模様を描きつつ、鋭い魔法剣へと姿を変える。
 魔法剣は次々に妖達を切り裂いて、彼らを骸の海へと叩き込んでいく。
 その様子に、ひっそりと待機していた陰陽師達も感動し、思わず潤に称賛と畏怖の眼差しを向ける。
「大成功だね! この調子で頑張っちゃうよ!」
 陰陽師の気配を受け取って、潤は満足そうに微笑むのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

冴島・類
新しい世へ扉が開かれたと聞いて
結界に、裂け目から来たる妖達
識る為にも…
まずは、災いを祓ってからと

数が多く、飛んでいる分
機動力はあちらに利があるかな
動き、飛翔の速度を注視
糸から離し手繰る瓜江と自身で駆け
突撃は、残像によるフェイントを用いて狙いをずらし
直撃は避けたい

山が近いとのことだ
樹々に鬼火が燃え移らぬよう
気を引き、こちらへ向かってくるよう気をつけるが
念の為、炎耐性の結界を僅かでも張り

相手が攻撃外し
こちら探し、方向変えようとする瞬間狙い
破魔の力込めた薙ぎ払いで、面を斬れたなら

しかし一度滅びた地、とは思えぬな
平安結界というのは凄いものだ
生きる人々の生活を護り、戦う
この地の陰陽師さん達の助力になれば




 新しい世界への到達は、いつもワクワクするもの。
 それは冴島・類(公孫樹・f13398)にとってもで、開いたゲートを進む足取りは軽やかだ。
(結界に、裂け目から来たる妖達……)
 初めて訪れる世界の、独自の文化や歴史。それらをきちんと識る為には、自分の目で確かめるのが最善だろう。
 そしてゆっくりと世界を巡るためには、迫りくる災いを祓わなければ。
 ゲートを潜り抜けた類は、すぐさま迫りくる妖を視認した。敵の数は多く、飛び交う速度もなかなかのもの。
 轟々と燃える鬼火を前に、類は冷静に敵の姿を見定める。
(直撃は避けたい。それに……)
 視覚から一拍遅れて、嗅覚が周囲の様子を伝えてくれる。あまり手つかずの自然から、広がるのは濃い緑の香り。
 周囲の草木に鬼火が引火してしまったら大変だろう。出来る限り敵は引き付けるつもりだが、念には念を入れようか。
 類は片手で炎避けの結界を展開しつつ、反対の手で赤糸を手繰る。それに合わせて立ち上がったのは、頼もしい相棒の瓜江だ。
「瓜江、まずは敵の数を減らそう。其方は頼むよ」
 ぱっと赤糸を離して、代わりに繋ぐのは縁の糸。これで瓜江は自在に動くことが出来る。
 二人で一緒に地面を蹴って、目指すは妖の元。走る類と瓜江に向け、妖達は鋭い視線を向けてきていた。

 妖達の攻撃は分かりやすく、だからこそ脅威だった。
 彼らはただ鬼火を纏い、凄まじいスピードで類達の元へ迫ってきている。おまけに途中で方向転換も出来るようで、中途半端な回避では追いつかれてしまうだろう。
 しかし類も歴戦の猟兵だ。しっかりと相手の速度を計算し、自身が取るべき行動を判断している。
 再び地面を力強く蹴って、今度は上空へ。瓜江もタイミングをずらし、大きく飛び上がる。
 直後妖達は混乱した。猟兵達の動きはあまりに素早く、残った残像も本人達だと誤解したからだ。
 思わずきょろりと周囲を見回す妖達。今この瞬間だけは隙だらけだ。
「――こちらだ」
 生じた隙を見逃さないよう、類は短刀を構え一気に敵の懐へと飛び込む。
 刃に破魔の力を乗せて、一閃。鋭い斬撃は次々に妖を斬り伏せ、骸の海へと叩き落していった。

 再び敵が現れるまでの間に、類は改めて周囲を見遣る。
 結界によって守られた植物達には傷ひとつないようだ。その美しい光景に、気持ちが少し穏やかになる。
「……確かにこの地では、人々の生活が、陰陽師さん達の力が息づいているのだな」
 一度滅びた地とは聞いていたが、それでも人々は生きて、力ある者は世界を護ろうとしている。
 少しでも、そんな彼らの力となれたら。類は心からそう思うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

夕月・那由多
興味深い世界じゃの
さて、わらわも力になるとしよう
戦闘なら得意じゃからな

●戦闘
遠方の敵には【誘導弾】の『オオカムヅミ(仮称)』を【投擲】して気絶を狙いつつ、中距離は【怪力】で『八千之矛』を振り回して【なぎ払い】するなりして相手の攻撃をなるべく妨害じゃ
ダメージは敵の生命力を【生命力吸収】して回復しようと思う

そんで合間にほいっと触れて、【催眠術】も組み合わせつつUCで影を流し込もうぞ
影を流し込めば動きは悪くなるじゃろうからそのまま爆破
うまく操れたらそのまま同士討ちさせた後に爆破じゃ
鬼面ってほぼ1パーツじゃし、良い感じに効くじゃろ
影を流すのは一体に留まらず、隙あらば次々と触って効率よくいきたいのう




 深い緑の香りに、不可思議な力の気配。
 夕月・那由多(誰ソ彼の夕闇・f21742)にとってアヤカシエンパイアは初めて訪れる世界だが、その空気感は興味深いものだった。
「ここはこんな感じの世界なのじゃな。困っているヒトの子もおるようじゃ、わらわも力になるとしよう」
 那由多にとって誰かの助けになることは、力と信仰を取り戻すためのきっかけとなる。
 そうでなくてもヒトの子が困っているなら手を差し伸べたい。それが自分の得意な戦闘で為せるのなら、更に喜ばしいことだ。
 那由多は軽やかに戦場に躍り出て、恨みの炎を纏う妖達を見定める。
 妖としてはかなり低級の存在なのだろう、彼らの行動原理は分かりやすい。
「とにかくわらわを攻撃したい、という感じじゃな。だったらこっちも……」
 挨拶代わりに攻撃してやろう。那由多は懐から桃に似た物体を取り出し、しっかりと握りしめる。
 そのまま構えて、まずは投擲!
 那由多が投げたのはオオカムヅミと呼んでいる食べ物だ。見た目は丸っこく美味しそうだが――妖の元へと飛んでいったオオカムヅミは、彼らを巻き込むように勢いよく爆発する。
 その衝撃は凄まじく、数体の妖は気絶して地面へ落ちていった。那由多は素早く落下した妖に触れ、自らの力を流し込む。
「ほいっと。出だしは好調じゃな。まだまだ行くぞ」
 那由多は先程触れた妖が目を覚ましても、気にする素振りを見せなかった。むしろ彼女の興味は、まだ触れていない妖達へと向けられている。
 と同時に、八千之矛の穂先もしっかり向けて。舞い踊るような動きと共に、那由多の戦いは続く。

「そら、こっちじゃ!」
 那由多は華奢な見た目と裏腹に、凄まじい怪力を誇っている。
 彼女が勢いよく矛を振るえば、妖達も回避に集中せざるを得ない。そうなれば、鬼火を放つ余裕もないだろう。
 怖気づいた妖にはしれっと近づき、ちょいと指先で突いてやって。そこから流し込まれるのは、夕闇の色を帯びた影だ。
「くふふ、思った通り。鬼面相手なら効果は覿面じゃな」
 那由多の楽しげな笑みに気を取られた妖は、次の瞬間信じがたい光景を見た。自らの鬼火に、仲間が焼かれているではないか。
 一体何が――その理由を理解することなく、妖の身体は勢いよく爆ぜて砕ける。
 那由多の流し込んでいた闇が、あっという間に妖を操り、その身体を破壊したのだ。
 気付いた時にはもう遅い。那由多に触れられていた妖達は次々に仲間を攻撃し、そのまま破壊されていく。
「うむ、効率良くいけたのぅ」
 自らの力を存分に振るい、那由多は満足げに微笑む。彼女の力は、確かに初めての世界に示されるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

藤堂・こずゑ(サポート)
あまり見た目妖狐っぽくないけど、妖狐なの

右目を何とか見せない、見ない様に生きてるわ
妖狐な部分は出したくないから…

依頼に拘りは無いわ
誰とでも連携し、どんなのでも遂行してみせるわよ
日常パートはアンニュイな感じでクールに過ごすわ
一応喜怒哀楽はあるつもり

戦闘パートは古流剣術で挑むけど…
流派は忘れちゃった
マイナーだから廃れちゃったみたい

振るう刀は宵桜(ヨイザクラ)ね
可愛いでしょ

大気の流れを読んで攻撃したり避けたり、後の先を得意とするわ

UCはどれでも使用し、攻撃するUCばかりだけど…
他の猟兵との連携などで避けて敵を引き付ける必要がある時は『流水の動き』を使ってね

後はマスター様にお任せするわ
宜しくね




 初めて訪れたアヤカシエンパイアは、一見どこか長閑な雰囲気を感じられた。
 それは濃い自然があるからか、山の麓に見える村の作りが質素だからか。
 しかしその長閑さの一方で、不可思議な気配も多く感じる。この国全土を覆う結界や、現れた妖によるものだろう。
(名前はサムライエンパイアに似ているけど、雰囲気は結構違うのね)
 先祖の故郷を思い出しつつ、藤堂・こずゑ(一閃・f23510)は周囲の様子をざっと確認する。
 既に戦闘は始まっており、戦場には妖――鬼面の群れが飛び交っている。彼らもこずゑの存在に気がつくと、分かりやすく殺意を向けてきたようだ。
 彼らを倒さなければ、大将は引きずり出せない。まずはあの鬼面達を倒さなくては。

「最初の戦いね。頑張るわよ、宵桜」
 こずゑは愛刀を引き抜き、構える。退魔刀である宵桜なら、この手の妖怪変化達とも相性は良いだろう。
 さて、相手はどう出るか。こずゑと妖は、暫し互いに睨み合う。
 ――先に動いたのは妖の方だ。彼らは鬼火を噴出しつつ、凄まじい速度でこずゑの元へと向かってくる。
(かなり素早いみたいね)
 相手の動きを観察し、まずは回避に専念。
 鬼火によって熱された空気の流れを感じ取りつつ、こずゑは軽やかに戦場を駆け回る。
 相手の動きは直線的だが、時折方向転換もしている様子。
 集中していれば回避自体は難しくない程度だ。しかし、反撃を叩き込むには工夫が必要だろう。
 そのための手段はあまり使いたくはない。しかし、戦いが長引けば裂け目がより大きくなるかもしれない。鬼火が山火事を起こすかもしれない。
 それはこずゑにとっても好ましくないことだ。だから今は、意を決して。
 こずゑは前髪に触れ、右目を一瞬だけ露出させる。
 そのまま敵を睨み、意識を集中して。
「……喰らいなっ……」
 水色の秘石眼に見つめられた妖達は、ピタリと動きを止める。強烈な力に抑え込まれたのか、それともその輝きに認められたのか。その理由は分からず仕舞いだろう。
 なぜなら彼らの思考が動き出すより早く、宵桜を構えたこずゑが飛び込んできたのだから。
「――はッ!」
 流れるような、しかし凄まじい速度の斬撃は、一瞬で妖達を斬り伏せる。
 彼らが消滅したのを確認しながら、こずゑは前髪を丁寧に整え直した。
(うまく行ってよかった。あまり使いたくない手段だものね)
 戦いはまだ続くが、今はほっと胸を撫で下ろして。
 改めて呼吸を整え、こずゑは次の敵の元へと向かっていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳳獣寺・棗子
民の慎ましき暮らしを壊さんとする妖の群れ。
只の一匹とて、村へ入れさせる訳には参りません。

【式神使い】の業にて戦って参ります。
思業式神「剣王牙狼」を召喚、携えた刀からの【斬撃波】で飛翔する鬼面を撃ち落とさせます。
牙狼を逃れて村へ向かう経路には式符を用いた【結界術】で進行経路を限定、必ず通らねばならぬ経路の途上に妖魔浄滅符を貼り、これを視認した敵を浄化の炎で焼き払います。
適宜式符から追加の式神を召喚(【式神使い】)、牙狼の隙を狙おうとする敵を攻撃させたりといった援護行動を行わせます。

低級の妖はこのような処ですかしら。
油断なく参りませんとね。




 裂け目から飛び出した妖達は、今は周囲を浮遊して回っている様子。
 しかし、いずれ彼らも移動を開始するだろう。山に入れば木々を燃やすだろうし、村まで下りてしまえば悲劇を巻き起こしてしまう。
 そんなことはさせてなるものか。鳳獣寺・棗子(獣鬼の陰陽師・f42827)は妖達の前に姿を現し、堂々と立ち塞がる。
「民の慎ましき暮らしを壊さんとする妖の群れ。只の一匹とて、村へ入れさせる訳には参りません」
 棗子の宣戦布告を理解してか、妖達の視線は一気に彼女の元へと降り注がれた。
 恐ろしい光景だが、棗子は決してたじろいだりしない。棗子はまだ幼い少女ながら、立派な式神使いなのだから。
「出よ、剣王牙狼」
 棗子が鋭く声をかければ、呼び出されるのは狼獣人の姿をした思業式神だ。
 剣王牙狼は刀を構え、勢いよく敵の元へと飛び込む。そこから始まるのは激しい戦いだ。
 妖達は高速で飛び回りつつ、鬼火を降らし始める。それに対し、剣王牙狼は刀の一振りで鬼火を打ち払い、構わず接近しているようだ。
 妖の攻撃は激しいが、それ以上に棗子の思念を受け取った剣王は強い。そちらは任せておいて大丈夫だろう。
 一方、棗子は周囲の様子をしっかりと観察し、何かに警戒している様子。彼女の視線は山の麓、村へと続く道へ向けられていた。
(剣王の方は順調そうですが、やはり敵の数が多いですわね)
 棗子は力を宿した術符を取り出し、道の上に貼り付ける。
 自分もその側に立ち塞がって、更に敵を観察して。そうしていると――数体の妖が剣王との戦いから離脱し、道の方へと向かってきた。

 劣勢を感じ取った妖達は、本能的に力を得られそうな方向、村への道を進んだのだろう。
 しかし彼らがそれ以上進むことはなかった。そこに立っていた棗子と彼女が貼り付けた術符を目にした瞬間、浄化の炎に焼き尽くされたのだから。
「やはり……! 警戒しておいて何よりでしたわ」
 敵を村へと逃さずに済んだことに、棗子は安堵の息を零す。
 しかし剣王も戦い続け、少しずつ消耗しているだろう。このままではまた別の敵が村へ逃げ出すかもしれない。
 そこで棗子は新たな符を取り出し、そこに思念を籠める。
「胡我羅摩曽彦、援護を」
 符から現れたのは獣神の分霊だ。この分霊もまた戦場へと飛び出し、剣王と共に次々敵を圧倒しだす。勝敗はほぼ分かったようなものだ。
「低級の妖はこのような処ですかしら。油断なく参りませんとね」
 次なる戦いへ意識を向け、棗子は呼吸を整える。
 妖達の大将を倒し、結界を修復するまでが自分達の仕事なのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『鵺』

POW   :    無限進化体
【巨大な異形の獣の肉体】に【無限進化ユーベルコードのエネルギー】を注ぎ込み変形させる。変形後の[巨大な異形の獣の肉体]による攻撃は、【弱体化】の状態異常を追加で与える。
SPD   :    怨嗟響鳴
全身を【無限進化ユーベルコードのエネルギー】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃の威力】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ   :    鵺の雷撃
【トラツグミの如き叫び声】を放ち、命中した敵を【雷撃】に包み継続ダメージを与える。自身が【敵に触れて力を奪取】していると威力アップ。

イラスト:カツハシ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達が低級の妖を倒したことで、戦場に一瞬の静寂が訪れる。
 しかしその静寂は、裂け目からの咆哮によって掻き消された。
 ビリビリと、まるで絹でも割くように裂け目ははっきりと広がって。
 その奥から現れたのは巨大な妖――鵺だった。

「……奴らは失敗したか」
 鵺は周囲の様子を一瞥し、状況を把握したようだ。
 彼の視線は既に猟兵へと向けられ、その身からは凄まじい妖気が立ち上っている。
「邪魔者は排除させてもらおう。覚悟せよ」
 そう重々しい声で告げる鵺。彼を倒さなければ、結界の修復は不可能だ。

 平安の世を守るため、人々を守るため。
 決戦の時だ。
ゴズ・ノウズ
邪魔者?
貴様、自分の立場を理解しておらんようだな

貴様こそ世に不要な存在!
討伐されるべきモノ!
塵芥と化して消えるが良いわ!

退魔円匙を用いての接近戦を行うぞ
ただでさえ巨躯の獣だ
攻撃を当てること自体は容易かろう

問題は有効打を叩き込めるか
私自身が敵の攻撃をまともに食らわんことも大事だな
打ち合いつつ隙を伺い、機を待とう

よし、狙うべきは…口だ!
巨躯を駆け上がり、頭を狙う素振りを見せ
敵が牙を剥いたところを柄で『武器受け』
【後ノ先牙抜】に繋げるぞ

敵の身体を蹴り付けつつ
『怪力』で武器を強引に引き抜いて敵の牙を折り
さらに無防備になった口の中を狙い追撃
刃を差し込んでやるわ!

さあ鵺よ、退け退け!
裂け目の修復の邪魔だ!




 鵺の姿を見上げつつ、ゴズ・ノウズは小さく首を傾げる。
「邪魔者? 私がか? 笑わせてくれるではないか。貴様、自分の立場を理解しておらんようだな」
 堂々と紡がれるゴズの言葉に、鵺は思わず視線を向ける。
 睨んだものを竦ませる恐ろしい妖の目。それに射抜かれようと、ゴズは決して恐れない。
「貴様こそ世に不要な存在! 討伐されるべきモノ! 塵芥と化して消えるが良いわ!」
「言わせておけば……! 消えるのは貴様の方だ」
 鵺は身体に妖力を溜め込みつつ、ゴズの元へと飛び込んでくる。
 相手が接近戦を挑んでくるなら好都合だ。ゴズも負けじと退魔円匙を構え、敵の懐目がけて駆け出した。

 鵺は巨躯の割には俊敏で、かつ不可思議な力も纏っている。
 その様子をしっかりと観察し、ゴズは瞬時に作戦を考える。
(攻撃を当てること自体は容易かろう。気を付けるべきは相手の攻撃だな、まともに食らわんようにしなければ)
 鵺の身体そのものが何かしらの呪詛のようなものを帯びている。攻撃は出来る限り回避するか、武器で受けるのが良さそうだ。
 振るわれる脚や尾に気をつけつつ、ゴズは機敏に敵の周囲を駆け回り続けた。
 時にこちらも円匙を振るうが、脚を打っても相手はなかなか動じない。体勢を崩すのは難しいだろう。
 ならば狙うべきは――。
「……そこだッ!」
 一瞬の隙を見極め、ゴズが足をかけたのは鵺の巨躯。そのままの勢いで相手の身体を駆け上がり、目指すは頭だ。
 そのまま堂々と円匙を掲げれば、相手は当然顔を殴られると思うだろう。
「させぬ!」
 鵺は悍ましい形相で牙を剥き、ゴズの身体へ食らいつこうとしてくる。しかし、それこそが狙いであった。
 ゴズは円匙を振るわず、迫る噛み付きを受け流す一手と変える。思わぬ衝撃に鵺の動きは一瞬止まり、しかしさらなる衝撃が彼の脳を揺さぶった。
 ゴズが勢いよく、鵺の身体を蹴りつけたのだ。その勢いで鵺の牙はボキリと折れて、凄まじい叫びが戦場を揺らす。
「これで終わりとは思うなよ? さあ鵺よ、退け退け! 裂け目の修復の邪魔だ!」
 鵺の叫びに負けない勢いで紡がれるゴズの声。それに乗るように突き立てられた円匙の一撃が、鵺の口内を思い切り突き刺した。
 牙を割かれ、喉を貫かれ、鵺は衝撃の前に巨躯を地面に叩きつける。
 その姿を見下ろしつつ、ゴズは円匙の汚れを振り落とした。
「これで理解出来たか? これが貴様の立場、行く末だ!」
 ゴズと鵺の戦いは、互いがやり通したいと思ったことのぶつかり合い。
 それらが分かりやすくぶつかり合ったからこそ――勝者と敗者も、またはっきりと示されたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳獣寺・棗子
鵺とは大物が現れ出た事ですね…。
然し恐れてはおられませぬ、私達の手で討たねば平安の大きな危機。
鳳獣寺の家名にかけ、此処は押し返してみせましょう。

敵のユーベルコードの前に生半な機動は無為。
式符による【破魔】の術式を以て、纏わりつく雷撃を退け、傷を抑えていきます。

攻撃は、剣王牙狼にUCを行使し剣神牙狼と化さしめた上で行って貰います。
天地無双剣による攻防一体の攻勢にて、鵺へと刃を打ち込ませましょう。
私も術を込めた式符を飛ばし【爆破】する攻撃にて牙狼が対応しきれぬ攻撃を潰したり押し留めたりすることにて援護を。

平安の世を侵すこと、罷りなりませぬ。
疾く、退かれませ。




「鵺とは大物が現れ出た事ですね……」
 現れた敵の姿を確認し、鳳獣寺・棗子は密かに息を呑む。
 鵺。この世界においては時折名前を聞く存在。しかしその巨躯を目の当たりにすれば、確かな恐怖が実感として伝わってくる。
 それでも棗子は臆することなく、堂々と敵に立ち向かう。自分達がこの妖を討たなければ、平安の世は失われてしまうのだから。
「鳳獣寺の家名にかけ、此処は押し返してみせましょう」
「言ったな、幼子よ。ならその実力、示してみせよ!」
 鵺は凄まじい声で吠え猛り、周囲に雷を生み出し始める。雷はあっという間に戦場中に広がり、棗子の行く手を遮った。
(生半な機動は無為でしょうね。でしたら少しでも、身を守る方が有効でしょう)
 棗子は式符を展開すると、すぐさま破魔の術式を展開していく。
 術式は結界へと変わり、棗子の身を守ってくれるだろう。それに多少の傷なら治すことだって出来る、戦いに集中しやすくなるはずだ。
 そのまま別の式符を取り出し、棗子はユーベルコードを発揮していく。
「剣王よ、今此処に剣神へと至りて、汝が真の力を示すべし!」
 式符から呼び出されたのは剣王牙狼だ。ユーベルコードの力を与えられた式神はより力を帯びた姿――獣神形態へと変身し、鵺の前に立ち塞がる。
 その名は剣神牙狼。自我を得てユーベルコードすら会得した、棗子の頼もしい仲間だ。
「剣神、私と共に妖を討ちましょう!」
『応!』
 牙狼は棗子の言葉に頷き、剣を構えて突き進む。
 そんな彼を迎え撃つかのように、鵺は再び咆哮していた。

 鵺の攻撃は変わらず雷撃と、巨躯を使った単純な打撃だ。
 分かりやすいからこそ、その攻撃は恐ろしい。一撃でも食らってしまえば致命傷は避けられないだろう。
 しかし牙狼は恐れずに敵の元へと飛び込み、刃を振るい続けていた。何故なら彼は、後ろに控える棗子のことを信頼しているからだ。
「護りは私にお任せを!」
 棗子は式符を用いて、牙狼を援護し続けている。彼女の放つ爆破の術式は、時に敵の目を晦まし、敵の動きを阻んでくれる。
 そんな頼もしい援護があるのなら、敵の攻撃を食らう心配はないのだから。牙狼はただ棗子の刃として、ひたすらに敵を狙い続ける。
『はぁッ!』
 棗子が作り出した隙に合わせるよう、牙狼が放つは神速の突き。それで相手が怯んだのなら、返し刀での追撃を。
 二人の一糸乱れぬ連携は、どんどん鵺の身体を削っていって。その度に、邪悪な気配は薄れていく。
「平安の世を侵すこと、罷りなりませぬ。疾く、退かれませ」
 忌々しそうに此方を睨む鵺に対し、棗子が返すは凛とした言葉と視線だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杓原・潤
鵺かぁ……聞いた事あるけど、こんなにでっかかったんだ。
とりあえず鳴き声には気を付けようかな、鵺の鳴く夜は恐ろしいらしいからね。
でも怖くはないよ、うるうにだって大きな味方がいるからね!
ここは陰陽師気分で……招来、テルビューチェ!きゅーきゅーにょりつりょー!
キャバリアに乗った上にこの子の回復力とうるうのオーラ防御があれば、雷撃ですぐにやられちゃうって事は無いはず。
びりびりはするけど我慢我慢。
力を奪いに来るなら逆に組み付いて引き裂いてやるもんね!
ついでにうるうの魔法も付けちゃうよ。
弾けるシャボン玉で攻撃して、更にその衝撃で麻痺もさせたらこっちのもん。
後はテルビューチェの暴力的な一撃でフィニッシュだ!




 猟兵達に着実に削られつつも、鵺の巨躯や存在感は未だ健在。
 巨大な敵の姿を見上げつつ、杓原・潤は思わず感心していた。
「鵺かぁ……聞いた事あるけど、こんなにでっかかったんだ」
 妖怪変化の存在なら異世界でも見聞きしてきたが、この世界の鵺というのはとても大きいらしい。
 潤の視線に気付いてか、鵺もじろりと彼女を睨む。
「怖気づいたか? 逃がしはせんがな」
「確かに鵺の鳴く夜は恐ろしい、とか聞いたことはあるね。でもうるうは全然怖くないよ!」
 ぐっと拳を掲げる潤の表情は、言葉通り明るいものだ。相手がいかに恐ろしい存在でも――自分には強い味方がいるのだから。
 せっかくなら世界に合わせ、陰陽師らしく呼んでみようか。潤の頭に浮かんだのは、漫画とかで聞いたことのあるフレーズだ。
「招来、テルビューチェ! きゅーきゅーにょりつりょー!」
 次の瞬間、潤の前に降り立つのは魔法のキャバリア・テルビューチェ。潤は早速相棒に乗り込み、オーラの防御を展開していく。
 一方鵺の方も、巨大なキャバリアに警戒している様子。少しだけ距離を取ると、すぐさま咆哮を放ってきた。
 鵺の咆哮は雷撃へと変わり、戦場全体を包み込む。テルビューチェも巻き込まれることにはなるが、刻まれた傷はすぐに修復出来た。
「うう、やっぱりびりびりする……でも我慢我慢」
 多少の傷みは感じるけれど、戦いに支障が出るほどではない。潤は歯を食いしばり、戦いの姿勢を取った。

 鵺も雷撃ではテルビューチェを落とせないことに気付いているようだ。そうすれば、必ず次の手を打ち始める。
「なかなか厄介なようだな……だが、これはどうだ!」
 見た目と裏腹な俊敏な動きで、鵺はあっという間にテルビューチェへと肉薄していく。
 そのまま鵺はテルビューチェへと組み付くと、ニヤリと厭な笑みを浮かべた。彼は少しずつテルビューチェの魔力を食らうつもりらしい。
「このまま貴様らの力を奪ってやろう!」
「ううん、負けるのはそっちだよ!」
 力を奪われてしまうなら、それより早く相手を倒せばいい。テルビューチェは力を振り絞り、鵺の身体にヌイ・ロア・レイ・オ・マノを突き立てる。
 その一撃で相手が怯めば、今度は潤の番だ。
「いっくよー! Bubble Splash!」
 潤は一気に魔力を集中させ、周囲にシャボン玉を展開していく。それらを鵺にぶつけてやれば、相手の動きは更に鈍った。
「何、動けぬ……!」
「さあテルビューチェ、思いっきりやっちゃって!」
 テルビューチェが勢いよく武器を動かせば、鵺の身体は一気に引き裂かれていく。
 相手を決して恐れずに、出来ることを全力でやる――そんな潤とテルビューチェの戦い方が、邪悪な妖の力を大きく削ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
纏う妖気に、この体躯
一筋縄ではいくまいて

力強い一撃も咆哮も
直撃は避けないと…厄介だな
とは言え近づかねば、有効打にはならない、か

先んじて風の全力魔法で速度上げた瓜江を駆け
攻撃を仕掛け
相手の挙動見切り、口を開く所作見えたなら
フェイント用いた回避で咆哮の直撃は避けたい

そちらで気を引いた隙に
戦場に喚んだ鏡片を撒き
放つ光で…視界を乱し、ずらし
自身や味方の位置を誤認させるよう撹乱し
とらえられぬ、触れさせぬように策を講じ

それに相手が慣れてしまう前に、一気に踏み込み…
破魔の力込めた枯れ尾花で
喉元を狙い、斬る

雷を使う咆哮を、封じれたら
一手、潰すことが叶えばと

平穏の為の結界を
日々を、破らせたりはしない
通しませんよ




 鵺は自らの力を削り、傷を修復しているようだ。
 聳えるような巨躯は未だ健在。危険な妖気も漂い続けている。
(これは……一筋縄ではいくまいて)
 冴島・類は瓜江を側に呼び寄せつつ、敵の姿をじっと見つめる。
 あの巨躯から放たれる一撃は危険だろう。それに加え、妖力や咆哮――どの攻撃も直撃すればただでは済まない。
 かといって遠くから戦っていても、あの山のような身体を削りきれるかは怪しいだろう。有効打を叩き込むためには、近付かなければいけない。
「瓜江、頼む」
 類は赤糸に風の魔力を流し、瓜江に早駆けの術を施す。その支えを受け取った瓜江は、軽やかに戦場を駆け出した。
「何をするつもりだ? 鬱陶しい……!」
 鵺は忌々しそうに瓜江を睨み、彼の元へと接近していく。そのまま振るわれるのは、巨大な脚による叩きつけだ。
 その動きは見た目よりも俊敏だったが、速度なら瓜江の方が上だ。軽やかに地を蹴り、飛び上がり、瓜江は軽やかに攻撃を回避していく。
 瓜江が敵の攻撃を回避し続け、気を引き付けている間に類もまた動き出す。掌からこっそりと零すのは、煌めく鏡片だ。
(なるべく敵の周囲を囲めるようにしたい。そうすると、少し時間がかかるが……)
 それでも瓜江なら大丈夫。そう信じて、類は静かに、けれど着実に準備を進めていた。

 鵺と瓜江の攻防は暫く続いたが、鵺の方はしびれを切らしたようだ。
「いい加減止まれ!!」
 肉弾戦では埒が明かないと判断したのだろう。鵺は大きく口を開き、息を吸い込む。雷鳴を呼ぶ咆哮を放とうとしているようだ。
 この攻撃こそ類達が待ち望んでいたもの。瓜江は一気に身を翻し、鵺の顎を強かに打ち据える。
 その一打で鵺の動きは鈍り、巨躯が揺らいだ。それに合わせ、類は鏡片に力を注いだ。
「其の両眼、拝借を」
 次の瞬間、戦場に眩い光が走り抜ける。鏡片が光を放ち、その輝きで鵺の目を眩ませたのだ。
「ぐ、ぅう……!」
 光の中、聞こえてくるのは悔しそうなうめき声。咆哮を阻まれ、視界を奪われ、鵺の動きは更に緩慢になっていく。
 その隙に滑り込むよう、類は枯れ尾花を構え鵺の懐へと飛び込んだ。
「平穏の為の結界を、日々を、破らせたりはしない――通しませんよ」
 鋭い声と共に放つのは、真っ直ぐな、けれど確かな一撃。
 類の放った斬撃は鵺の喉元に深い傷を刻みつけ、雷を呼ぶ声を潰す。
 これ以上、平安の世を乱させない。そんな類の意思を示すかのような一撃が、鵺の力を奪うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夕月・那由多
鵺か
どこか別の世界にもいた気がするが、ソレと同じとも限らんし、慎重にいくとしよう
ふむ、妙にこちらに触れたがるのは力でも奪うためかの?

●戦闘
知性と意志があるなら行動は【読心術】で予想できるはず
あと『ナユタの瞳』で情報を見通せば相手の動きはよりわかるじゃろう
そこに『体を纏う蜃気楼』で生み出した幻影も加えれば【幻影使い】の技能で敵を翻弄出来るハズ
なるべく触れられないよう距離をとってチクチク攻撃じゃ
叫び声や雷撃は【霊的防護】で耐えたい所じゃが、慢心はせず長期戦は避けたい

UCは有効そうな状況で使用
急で大きな変化を目にしたら大抵の者は一瞬動きを止めるもの
相手が状況を把握する前に『八千之矛』で潰してくれよう




 巨大な妖は残る力を振り絞り、猟兵達を殺そうと立ち上がる。
 その姿を見上げつつ、夕月・那由多は記憶の糸を辿っていた。
「鵺か。どこか別の世界にもいた気がするが、別物のようじゃの」
 鵺と呼ばれる妖怪変化は他の世界にも存在している。しかしこの世界の鵺は少々独特の成り立ちをしているようだ。
 大きな身体や知性などは勿論、異質なのは纏う妖気。触れれば危険、そんな気配を強く感じるのだ。
 那由多は目を細め、相手の姿をしっかりと観察していく。ナユタの瞳と読心術による観察の結果――相手はこちらを組み敷こうとしているようだ。
 あの巨躯で吹き飛ばせば済むところを、わざわざ組み敷こうとしている。それには理由があるはずだ。
(ふむ、妙にこちらに触れたがるのは力でも奪うためかの?)
 相手はこれまでの戦いで、大きく力を削がれている。それを補うためにも、力の吸収を狙うのは自然だろう。
 ならその性質を利用してやればいい。那由多は自身の周囲に蜃気楼を生み出し、その姿をぼやけさせていく。
「ふふ、わらわを捕まえられるのなら、捕まえてみるといいのじゃ」
「言われずともそのつもりだ……!」
 鵺は勢いよく前へと駆け出し、此方の方へと飛び込んでくる。
 那由多は瞬時に重力を弱め、ふわりと空へ舞い上がる。そのまま相手の頭上を通り過ぎ、後方へ。
「遅いのぅ」
 相手の背中を狙うよう、突き刺すのは八千之矛の一撃。攻撃としては軽めだが、相手を翻弄するには十分だろう。
「さ、今度はどう出る?」
「貴様……!」
 鵺は怒りの形相を浮かべつつ、後方の那由多を睨む。しかし次の瞬間、鵺のは顔は驚きの色へ染まった。
 何故ならそこに立っていたのは可憐な狐の娘ではなく――巨大な夕闇の塊だったからだ。

「我が作るは山と川。神の力の一端、いまこそ見よ! これがおぬしの相対していた者だ!」
 夕闇の姿のまま、那由多は朗々と言葉を紡ぐ。
 いくら強大な妖といえど、相手が夕闇そのものとなれば驚くしかないだろう。そこから先程と変わらぬ少女の声がするのなら、混乱も一際大きいものへと変わる。
 鵺は思わず一歩退き、夕闇を見つける。既に喉は傷つき、闇を払う雷撃も放つことは難しいのだろう。
 相手はまだまだ混乱している。しかしいつ気を取り直し、此方に殴りかかるか分からない。
 ならばその前に――終わらせてしまえばいい。
「妖といえど夕闇そのものには敵うまい。これで終わりじゃ」
 引導を渡すのは、八千之矛による一撃で。那由多は一気に矛を振るい、鵺の身体を深々と貫く。
 そのまま相手の身体は消滅し、妖の気配は消え去った。
 猟兵達が、無事に勝利を掴み取った瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『賑やかな市』

POW   :    おすすめの商品を聞き、買い込む

SPD   :    交渉で安く品物を手に入れる

WIZ   :    冒険で得た品を売りに出す

イラスト:十姉妹

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達の手により、妖は無事に退治された。
 その後すぐさま陰陽師達が駆けつけて、結界の修復を始めていく。
「妖退治、本当にありがとうございました。実はもう一つ、頼みがありまして……」
 陰陽師達は猟兵に感謝を述べつつ、もう一つ簡単な依頼を頼む。
 それは山の麓の村を見回り、逃げ出した妖がいないかを確認して欲しいというもの。
 猟兵達の戦いは万全で、妖が逃げ出した可能性は全くない。
 けれど念の為頼みたい、とのことであった。

 村の周囲は梅の花が咲いており、長閑な雰囲気に包まれている。
 ちょうど市の真っ最中のようで、賑いはそこそこといったところだろうか。
 市に並べられているのは、野菜や川魚といった食べ物が中心だ。
 冬を越すために干したものや加工したものもあり、この世界独自の文化も垣間見える。

 陰陽師の依頼は村の見回りだが、どう過ごすかは自由だ。
 市を回ってもいいし、梅を見てもいい。
 村の人々は猟兵が来れば歓迎するし、雑談に興じることもあるだろう。
 今はただ、守り抜いた平穏を味わう時だ。
夕月・那由多
旅の庶民っぽい姿に変身してきあら村の中を散策じゃ
猟兵だから外見で違和感を与える事はないが、こういうのは気分じゃな

こうして市井に溶け込むのを好むのは、距離が縮まる気がするからかはたまた昼と夜が溶けあう夕闇としての性質か
なんにせよこれはわらわの趣味じゃ
なので喋り方も周りを真似てみようかの

村の中を散策しつつ、生活の話や噂を立ち聞きしたりちょっとした困りごとを手伝ったりして過ごすのじゃ
そして親切にされたなどの縁があれば、何らかの術や【破魔】を込めたわらわ特性の御守りも渡そう
ささやかながら不幸を遠ざけてくれるはず
それに、御守りを大事にしてもらう事はちょっとだけわらわへの信仰パワーの上昇にも繋がるしの




 戦いは無事に終わり、戦場だった場所は長閑な空気に包まれている。
 夕月・那由多もそれに溶け込むように、化術によって姿を変える。身に纏うのは小袖と呼ばれる、この世界における庶民の着物だ。
 猟兵である那由多なら、普段着でいても人々に訝しがられることはない。それでも服装を合わせるのは、気分的な理由が大きかった。
 普通の少女のような姿で村の中に踏み入れば、足取りも周囲の人々に合わせて。
 この村はあまり裕福ではないようだが、暮らす人々の顔は明るい。
(こうしていると、やっぱり楽しいのぅ)
 市井に溶け込むのは好きだ。そうしているとヒトの子らとの距離が縮まる気がするからか、或いは自身が昼と夜が溶けあう夕闇であるからか。
 どちらにせよ、楽しいと思うこの気持ちは間違いない。せっかくだから、立ち振舞も真似てみようか。
 那由多が目をつけたのは市に立つ若い娘だ。背中には赤子を背負っているが、弟か妹だろうか。
 彼女は両親と共に農作物を売っているようだが、現在は一人で店番をしているらしい。
(ふむ、忙しそうじゃな?)
 困っているヒトの子がいるのなら自分の出番だ。那由多は自然な足取りで、娘の方へ歩み寄っていく。

「カブを頂いてもいいですか?」
「はーい、今用意しますね」
 那由多は普通の客のように娘に接する。彼女は明るい笑顔で対応してくれたが、赤子をあやしながらで少々大変そうだ。
 そんな姿を見かねたかのように、那由多は少し眉を落とす。
「大丈夫ですか? 何かお手伝いしましょうか?」
「お客さんに頼み事なんて。でも、ちょっとだけ店番をお願いしてもいい? この子を寝かせてくるから」
「分かりました。ゆっくり行ってきて下さい」
 娘は那由多に感謝を告げると、近くの家へと入る。それから少し時間が経って、戻って来るのは娘一人。
「ありがとう、助かったわ。あの子も暫く寝ていると思うし……」
「いえいえ、こちらこそ。カブもありがとうございます」
 那由多は娘からカブを受け取って、お礼に銅銭と小さな何かを握らせる。それは夕闇色のお守りだ。
「私、旅をしていまして。これは旅先で手に入れたお守りです。ささやかながら不幸を遠ざけてくれるはずですよ。もしよろしければ、あなたとあの子に」
「わぁ、不思議な色……旅人さん、色々とありがとう」
 娘はお守りを眺めつつ、嬉しそうに目を細める。
 彼女から伝わる縁は那由多にしっかり繋がって、信仰パワーを授けてくれるだろう。
 それと同じくらい――ヒトの子と関われたことが楽しい。そんな気分だ。
 今日の縁は一期一会のか細いもの。けれどこういった積み重ねこそが、那由多を支えてくれるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゴズ・ノウズ
…まあいい
万が一にも妖どもが
忍び込んでいては困るからな

確か、猟兵とやらに成ったゆえに
民には外見で違和感を与えないのだったか
どれ、堂々と市に繰り出してみるか

おい、店主よ。旬の干魚をくれ
ついでに酒を売っている店は近くにあるか?

ふむ、確かにどの住民からも
ごく普通の対応をされるな
私の外見にまるで動じないとは驚いた
別の世界に渡れるようになったとも聴いているし
これは今後、それなりに楽しめそうだな

干魚と酒を手に、しばし市を物色…と見せて見回りを
安全を確認して後、村を出て
梅の木の下に腰を下ろすぞ

平和そのものだったな
妖の存在も、結界の外のことも知らぬゆえか
…呑気なものだ!

干魚を酒で流し込む
味は、なかなか悪くない




 ゴズ・ノウズにとって妖を倒し結界を守ることは大切な仕事だ。
 しかし、その上で警備も兼ねて村を見回って欲しいとは。予定外の仕事だが、ゴズがそれを断ることはなかった。
(……まあいい。万が一にも妖どもが忍び込んでいては困るからな)
 内容は自分の正義から外れてはいない。それに猟兵というものになったからには、試してみたいこともある。
 ゴズは村から少し離れた位置に身を潜め、暫し様子を伺う。
 式神であるゴズの見た目は異形に近い。だから今までは、人間の生活圏に立ち入ることは少なかった。
 しかし猟兵ならば、外見で違和感を与えないそうではないか。ならば堂々と、彼らの元に行ってみるのも面白いだろう。
 ゴズは堂々と道の上を進み、村の中に入っていく。彼のことを警戒する者は、誰もいなかった。

「おい、店主よ」
「どうしました?」
 ゴズが声をかけたのは、魚を売っている商人だった。彼の表情は少々緊張しているが、せいぜい『大男に声をかけられ驚いた』程度のもののようだ。
 なるほど、これが猟兵の力。悪くないものだ。ゴズは変わらない調子で言葉を続ける。
「その、旬の干魚をくれ。ついでに酒を売っている店は近くにあるか?」
「はいはい、用意しますよ。酒でしたら……」
 商人はゴズの言葉に素直に応じ、川魚の干物を渡してくれた。酒を売っている商人もすぐ側にいるらしい。
 そちらにも立ち寄って、安い酒を買って。
(……本当にごく普通の対応をされるな。私の外見にまるで動じないとは驚いた)
 干魚と酒を片手に、ゴズは暫く市を行く。時に挨拶してくる者もいて、なんだか不思議な気分だ。
 そういえば、猟兵は他の世界にも渡ることが出来るとか――そういった場所も問題なく溶け込めるなら、行ってみるのも面白いだろう。
 新たな楽しみにも思いを馳せつつ、ゴズは村から山の方へ向う。目指すは、咲き誇る梅の花の下。

 愛らしく、けれど堂々と咲き誇る梅の元に腰掛けつつ、ゴズはようやく一息つく。
 村の方はまったく問題なかった。人々は妖騒ぎも結界のことも知らず、ただただ平和に暮らしている。
「……呑気なものだ!」
 けれど彼らの作るものは悪くない。干魚を酒で流し込めば、意外と濃い味わいが身体に伝わる。
 酒で少し火照った身体を冷ますのは、春を知らせる風と、それに乗じる桃の香り。
 それらを静かに味わいつつ、ゴズは桃の木に背中を預ける。
 薄桃色の合間から、見える空は晴れやかだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杓原・潤
ふふーん、どうだった?
陰陽師にも負けない魔法使いの力は!
まぁその結界の修復とかは出来ないけど、うるうの勇姿を和歌に詠んで後世に残しても良いんだよ!

よーし、とりあえず見回りに行くかな。
たまには箒を使わず歩くのも良いよね。
梅の花を眺めながら……風流、ってやつ?
もうちょっとしたら桜も咲くのかな?
こーゆー自然豊かな世界でお花見って言うのもいいね!
うーん、市で売ってるのはお魚や野菜かぁ……甘い物とか無いのかな?
後はこの風景に似合う服が着たいなぁ、こっちは売ってるかな?
まぁ十二単はなさそうかな。
でものどかでいいよね、UDCアースとかじゃ味わえない。
この世界の人達とのんびり遊んだり、日向ぼっこでもしよっと!




 戦いを無事に終え、杓原・潤は陰陽師達に声をかけていた。
「ふふーん、どうだった? 陰陽師にも負けない魔法使いの力は!」
「素晴らしかったです。本当にありがとうございます!」
「うるうも結界の修復とかは出来ないから、そっちはお願いするけど……でも! うるうの勇姿を和歌に詠んで後世に残しても良いんだよ!」
「なるほど、猟兵様を描いた歌……!」
 陰陽師に新たなインスピレーションを与えたところで、潤が向かうのは村の方。見回りまできちっとしてこそのお仕事である。

 この世界の道は、舗装もされていないため歩くと少々大変だ。
 けれど箒を使わず、自分の足で進むのは悪くない。潤は周囲の様子を観察しつつ、村へと足を踏み入れる。
「わぁ……!」
 頭を上げれば、咲き誇る梅の花が目に入る。長閑な景色や抜けるような青空と相まって、その光景は心を落ち着かせてくれる。
 これこそが風流、というものだろうか。
 授業で似たような話は見聞きしたけれど、自分で体感するそれは格別だ。
 周囲には蕾を膨らませている枝もある。あっちは桜だろうか。こちらも花開けば、きっと美しい光景を作り上げるだろう。
「こーゆー自然豊かな世界でお花見って言うのもいいね! お花見だったら、美味しいものも用意しなくちゃ!」
 潤が元気いっぱい目指すのは露店だ。並べられた魚や野菜も、不思議と美味しそうに見える。
 甘い物もないだろうか、と視線を巡らせ、潤の瞳が捉えたのは――つやつや輝く蜜柑だ。
「あ、これください!」
「お嬢さん、お目が高いね。これ、都のほうから手に入れたんだよ。はい、どうぞ!」
 蜜柑を手に入れ、潤の足取りは更に弾む。せっかくだから、この世界らしいものでも買ってみようか。
(十二単とかは……流石にないか)
 売られているのは、小袖と呼ばれる丈の短い着物だ。庶民はこれを着ていることが多いらしい。
 潤は自分に合う着物も購入し、早速袖を通す。いつもと違う服装も、異世界に行った時ならではの体験だろう。

「よーし、準備完了だね!」
 風景に合う服装、美味しい食べ物、長閑な景色。
 それらが合わされば、あとはひたすら楽しむのみ!
 潤は手近な桃の木の側に腰掛け、早速蜜柑の皮を剥く。そうしていると、小さな子供達も集まってきていた。
「お姉ちゃん、どこから来たの?」
「遠いところだよ。素敵な村だから遊びに来たんだ!」
「旅人さん! すごい! お話聞かせて!」
 気付けば彼らとの会話も弾み、楽しい時間が流れていく。
 その穏やかさを享受しつつ、潤もまた笑顔を浮かべる。初めての世界で、素敵な思い出が作れたのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳獣寺・棗子
結界修復も無事完了、事件は解決、ですわね。
然し見回りが必要でしたらば、一つ巡って参りましょうか。
この長閑な雰囲気。然程も味わうことなく帰ってしまうのも、少々味気ない処ですし。

まずは市を巡り、食べ物を幾らか買い求めましょう。
できれば調理済みのものを。川魚を焼いたものなどあれば最良ですわね。

その後は梅見と参ります。
眺めの良い処に座り、購入したお食事を頂きながら梅を眺めましょう。

――平和ですわね。
この平和が、つい先程まで今にも壊れんとしていた事など嘘のようです。
それこそが、私達の役目の成果、でもあるのでしょうけれど。

――初春の 麗らかなる世 梅に見ゆ
永久なりしと ただ願いたり――




 鳳獣寺・棗子は陰陽師達の側に立ち、ほっと安堵の息を吐く。
 皆で力を合わせれば、裂け目の修復はあっという間に終わった。これにて事件解決だ。
 しかし陰陽師達は、続けて見回りも依頼したいのだという。彼らの言葉に、棗子は柔らかく微笑む。
「見回りにも勿論参加しますわ。この長閑な雰囲気。然程も味わうことなく帰ってしまうのも、少々味気ない処ですし」
 人々の穏やかな暮らしを見守ることも、自分達の大切な仕事。
 それに市というものを見る機会もあまりない。棗子の胸中には使命感だけでなく、弾むような気持ちも湧き上がっていた。

 村の中では人々が行き交いつつ、楽しげに言葉を交わしている。
 鼻を擽るのは美味しそうな食べ物の香り。見れば焼き魚を売っている店があるようだ。
 棗子の足は自然とそちらの店の方へと向かっていた。店主は優しそうな女性だ。
「ごめんください、焼き魚を一つ下さいませ」
「まあ、ありがとうございます。すぐに用意しますね」
 女性は貴族の少女が現れたことに驚いていたが、すぐに魚を用意してくれた。
 どうやら川魚を焼いたもののようで、焼き立てのそれからは香ばしい香りが漂ってきている。
「ありがとうございます。大切に食べますね」
 棗子は礼儀正しく感謝を述べ、村の外れを目指す。そこにあったのは、愛らしく花を咲かせた梅の木々だ。

 梅の下に腰掛けて、焼き魚を一口食べて。
 宮殿の食事とは異なった、素朴で穏やかな体験。それらをしっかり味わえば、棗子の表情はあどけないものに変わる。
 けれど彼女の内にある気持ちは、年頃の少女のものとは少々異なっている。
(――平和ですわね)
 この平和が、つい先程まで壊れかけていたのが嘘のようだ。それを守りきれた実感が、改めて身体を満たす。
 棗子はまだまだ幼い少女だ。けれど彼女は既に獣鬼御遣の陰陽師として、一人の貴族として務めを果たしている。
 その意思や思いはこれからも変わらないだろう。
 美しい景色も人々の営みも、自分達が守るべきもの。その成果が目の前にあるのなら、それは何より喜ばしいことだ。
 棗子はこれからも、平安の世のために戦い続けるだろう。
 そこに秘めた願いを示すかのように、棗子が紡ぐのは一つの歌。
「――初春の 麗らかなる世 梅に見ゆ 永久なりしと ただ願いたり――」
 柔らかな声に合わせるように、穏やかな風が吹く。
 その風は桃の枝を揺らし、優しい香りを棗子の元へ運んでくれる。
 どうかこれからも、世界を守りきれるよう。その思いを確かに、棗子は春待つ景色を楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
見回り、勿論承りましたとも
あわせてぶらりと市ものぞいて行きましょうか
気負わず散歩気分でゆっくり

文化を知りたいから
ここらの独特なもの、があれば試しに買えたらなと思うので
並ぶ野菜や川魚、も良いが
干した物、加工品を主にみて
市の方々と、ここらに来るのは初めてでと世間話でもしつつ
おすすめやら食べ方も聞いておこうかな?
生ものでなければ、土産にもなるかもしれぬ
サムライエンパイアと雰囲気似た部分もあり
その点は落ち着くかもな
…甘いものや、果実もあればなんて

ひと通り市を歩いて、人々の賑わいに満足したら
帰る前に梅も見て帰ろうか
春の暖かさ、次々これから咲く
百花たちの先駆けでもある素朴な姿
…うん、これからが楽しみだね




「見回り、勿論承りましたとも」
 陰陽師からの依頼に、冴島・類は穏やかな笑みと共に言葉を返す。
 この世界に来るのは初めてだ。人々の行き交う市を見るのも、きっと楽しいに違いない。
 ほんのりと暖かさを感じさせる風は、もうすぐ来る春を教えてくれているようで。その長閑さに包まれながら、ゆっくりとした足取りで類は進む。

 市は人々が行き交っていて、村の規模の割には賑わっているようだ。
 商品として並べられているのは、野菜に魚が中心らしい。果たしてどのようなものがあるだろうか。
(せっかくだから、ここらの独特なもの、がないだろうか)
 類が気になるのはこの世界の文化だ。せっかくの新世界なのだから、人々の生活が分かるようなものが見てみたい。
 店先に置かれているものは、生物より加工品の方が多い様子。冬を越すために作っていたものなのだろう。
 例えば川魚は干物にされているものが多い。塩漬けなんてものもある。
 野菜の加工品は漬物が中心のようだ。粕漬にされた野菜は独特の香りを漂わせている。
 類が品々をまじまじと観察していれば、店主が興味深そうに彼の顔を覗き込んできた。
「お兄さん、随分真剣なようだね」
「ああ、ここらに来るのは初めてで。もしよければ、おすすめのものはあるだろうか?」
 類の言葉に、店主は嬉しそうに頷く。同時に手に取るのは、カブの粕漬だ。
「これなんかどうだい? アワやキビによく合うよ」
「だったらそれを頂こう。それから……」
 類はいくつかの加工品を選び、持ち運べるように包んでもらう。この時代の加工品は保存食としての側面も強い、持ち帰って楽しむことも出来るだろう。
 味わいもサムライエンパイアのものに近いだろう。類にとっては馴染み深いものだ。
「……あとは、そちらも」
 最後に選んだのは、都から売られてきたという蜜柑。少々小ぶりだが、つやつや輝く様は愛らしい。
 購入したものをしっかり抱え、類は店主に別れを告げる。そのまま暫く市を巡れば、あっという間に時間は過ぎていった。

 日が傾き始めた頃合いに、類が目指すのは梅の木の元。
 夕暮れ時の風は意外にも暖かい。やはり春が近いのだろう。
 素朴に、けれど確かに咲く梅の花。百花たちの先駆けでもあるその姿を前に、類は優しく目を細める。
「……うん、これからが楽しみだね」
 この世界全土を覆う、穏やかな気配。咲く花も人々の営みも、質素だけれど愛おしい。
 どうかこの世界が、少しでも平和であるように。そう祈りつつ、類は暫く梅の元に佇んでいた。


 こうして結界の裂け目は閉じられ、穏やかな人々の営みは守られた。
 それを示すかのように梅の花は揺れ、いずれ桜と共に世界を彩る。
 ――春は近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年03月28日


挿絵イラスト