4
暗闘

#獣人戦線 #ダークセイヴァー上層 #ワルシャワ条約機構 #ロシア戦線 #閉鎖都市

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#獣人戦線
🔒
#ダークセイヴァー上層
🔒
#ワルシャワ条約機構
🔒
#ロシア戦線
🔒
#閉鎖都市


0




 猟兵が集まったことを確認したワン・イーナ(シンギュラリティ・f30274)は資料片手に説明を始めた。

「今回の依頼は獣人戦線のロシアに点在する街の一つ、その救援だ。支配者であるワルシャワ条約機構は、反乱要素が確認された街を封印指定の『|閉鎖都市《ザトー》』に指定する。閉鎖都市は生い茂る血管樹の吐き出す『完全な闇』に覆われて、地図にも載らない『存在しない扱いの街』に変えられてしまう……内部の住人がどうなるかなんて、言うまでもない」

 それは脱出不可能な監獄にして虐殺のための屠殺場。取り込まれた生命に救いは無い。猟兵を除けば。

「皆には内部に潜入して獣人たちの救出とオブリビオンの撃破を頼みたい。通常、閉鎖都市は出入りができないが|転移《テレポート》なら侵入できる。街の中は完全な闇に覆われていて、一切の光を通さないようになっている。対策を忘れるなよ」

 完全な闇は光を駆逐している。あらゆる光源は意味をなさないため、道具なり技能なり対処が必要となる。

「街の中は自動操縦のパンツァーキャバリアたちが巡回している。こいつらは荷電粒子砲を装備していて、視界を熱源探知と音響を代用に索敵・捕捉している。巡回ルートの中心には捕まった獣人たちが檻に入れられて、まあ言い方は悪いが……他の仲間をおびき寄せるための餌にされている」

 生き餌である捕虜たちを中心に、周囲を巡回している複数のパンツァーキャバリア。助けるために顔を出した獣人を撃つ、あるいはじわじわと衰弱死させる、陰湿な手段である。
 そして、この陣形は街のあちこちに存在しているのだ。

「捕まってる獣人は重傷で、治療が必要だ。上手く救出したら他の獣人についていくんだ。地下にセーフハウスを作ってあって、そこでなら安全に治療できる」

 地下室の物資は潤沢とはいえないが治療する分はある。全ての捕虜を救出し憂いを断ったら、次は敵の排除である。

「パンツァーキャバリアは先も言った荷電粒子砲に加えて、全身に機関砲を備え付けてある。防御力も高く頑丈だが、自動操縦なため対応力は高くない。普通にやり合っても勝てなくはないが、獣人たちから地形の情報や物資の供給を受ければ、もっと楽に倒せるだろう」

 倒しようはいくつもある。ただし火力は高く被弾すれば危険だ。闇の中の戦いでは、不意の攻撃に注意が必要だろう。

「全てのパンツァーキャバリアを破壊すると敵の親玉が姿を現すぜ。ワルシャワ条約機構の最高戦力といわれる『殲滅大公』……その正体は『闇の種族』であり、今回出てくるのは蛇王ペイヴァルアスプ」

 無数の毒蛇が寄り集まって形成され、胸には太陽の如き球体を備える強大なオブリビオンだ。

「……正直やり合っても勝ち目は無い。攻撃範囲は街丸ごと、強力な再生能力も有しているうえ、単純なスペックが高い。だが、獣人たちの協力を得られれば勝機を見出せる」

 残念ながら予知では具体的な手段までは見通せなかったが、対抗する術はあるようだった。現地で臨機応変に対応するしかない。

「説明は以上だ。改めて言っておくが完全な闇への対策を忘れるなよ。それじゃ、準備ができたら来てくれ」


松六
 松六です。獣人戦線のお話となります。

 全章共通プレイングボーナス……完全な闇に対処する。

 第一章は捕虜の『救出』または『治療』です。フラグメントは治療になっていますが、潜入して救出する行動でも構いません。治療のみのプレイングでも大丈夫ですよ。
 第二章は集団戦です。パンツァーキャバリアはキャバリアだけあって攻撃・防御ともに高いですが、頭は良くありません。あの手この手で倒してしまいましょう。
 第三章はボス戦です。闇の種族が相手となります。普通に戦っても勝てません。ですが、獣人の皆さんは作戦があるようです。僅かな勝機を手繰り寄せましょう。

 第三章プレイングボーナス……獣人たちを守る。

 以上です。皆さまの冒険が楽しいものでありますように。
22




第1章 冒険 『『奴が死ぬ時は戦争が終わる時だけ』』

POW   :    力の限り心臓マッサージを続け、獣人の生命力を呼び覚ます。

SPD   :    蘇生に必要な医学的処置を素早く施していく。

WIZ   :    戦友との絆を信じ、枕元で呼びかけさせる。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●闇を行く
 転移した猟兵が目にするのは、文字通りの『闇』だ。一寸先どころか己の手の輪郭すら見えない黒。心の弱い者なら狂ってしまうかもしれない。
 遠くからは威圧するように重々しい鋼の音が届いてくる。巡回しているパンツァーキャバリアだろう。その近くには、捕虜となった獣人がいるはず。
 気配を探れば、静かに動き回る誰かしかを感じる。抵抗を続ける獣人だろう。
 完全な闇の中、いかにして救出するか。あるいは治療を施すか……。
風花・ゆきみ
ぴ……なんと恐ろしい光景
ここに捕らえられた方々の負担、考えるだけでも辛くなるのであります
けれど、それをなんとかするために私達がやってきたのであります!
まずは救助活動なのであります!

しかし真っ暗……
出来る限り聞き耳を立て【野生の勘】を働かせなければ
人手も必要でありますね
UCで【集団戦術】が得意なコウモリ達を呼ぶのであります!

コウモリさん達には囮班と救助班に分かれてもらうのであります
皆様なら闇の中でも音で捕虜やキャバリアの気配を探れるかと!
囮班がキャバリアを引き付けている間に、救助班には捕虜達を安全な場所まで運んでもらうのであります!

私は囮班に参加します!
ぴーぴー鳴いて敵を引き付けるのであります!



 暗闇の中、風花・ゆきみ(戦場の綿雪・f39971)は地に足を着けて聞き耳を立てる。大地を揺らす重々しい足音、鋼が擦れる関節の音。重なり合う機械巨人の音の合間に、微かに聞こえる弱々しい呻き声。

「ぴ……なんと恐ろしい光景」

 背筋が冷たくなり羽毛が逆立つような恐怖。視界の通らない完全な闇がそれを助長する。ここに捕らえられた人々の心身にかかる負担は、想像以上のものであり、ゆきみはそれを考えるだけで辛くなってしまう。

「けれど、それをなんとかするために私達がやってきたのであります! まずは救助活動なのであります!」

 スズメの本能に根差す臆病さが顔を出しそうになるが、小さな体に宿る気合と勇気で奮い立つ。
 ゆきみは嘴で体から羽根を抜くと、器用にも空中へ放ってユーベルコードを発動する。

「|おとぎの国の仲間たち《オトギノクニノナカマタチ》!」

 ふわふわと落ちる羽根が9匹のコウモリに変化し、それぞれに飛行して近くの木や建物の屋根などに掴まりぶら下がった。

「コウモリさん達には囮班と救助班に分かれてもらうのであります」

 ゆきみの方へ首を向けたコウモリたちへ、彼女は指示を言い渡していく。

「皆様なら闇の中でも音で捕虜やキャバリアの気配を探れるかと! 囮班がキャバリアを引き付けている間に、救助班には捕虜達を安全な場所まで運んでもらうのであります!」

 コウモリたちは動きを揃えて敬礼する。見えているわけではないが、指示を理解したのだと判断したゆきみは、頷いて翼を広げて飛ぶ準備に入った。

「私は囮班に参加します! ぴーぴー鳴いて敵を引き付けるのであります! では、作戦開始です!」

 風を掴んでゆきみが闇を飛翔し、それに4匹のコウモリが続く。残り5匹も飛び立ち、捕虜のもとを目指す。
 先行するのは囮班だ。ゆきみは聞き耳と野生の勘で、コウモリたちは音で暗闇に包まれた世界を把握しパンツァーキャバリアの巡回に接近していく。
 音を立てるような飛行では無かったが、敵キャバリアは囮班の熱と、反射される音を感知。足を止めて上半身ごと砲身を動かして狙いをつける。

「ぴ! こっちであります!」

 目立つようにゆきみが挑発する。無情な機械はそれに反応したわけではないと思われるが、荷電粒子を集束。完全な闇でなければ見えたであろう眩いほどの光。パンツァーキャバリアはシステムに従うまま荷電粒子砲を発射した。

「回避です、ぴー!」

 急降下してゆきみとコウモリたちは射線を外れる。通り過ぎた荷電粒子が高熱の余韻を軌跡に残し、もしも当たればただではすまないことを伝えてくる。
 しかし、事前に聞いていた通り敵キャバリアの頭は良くないようだ。偏差も利いていない、狙って撃つだけの砲撃。見かけた目標を愚直に追って動く単純さ。油断はできないがこれならなんとかなると、囮班は敵を引きつけて動かしていく。
 そして、巡回が離れた隙に救助班が低空を飛んで捕虜のいる檻へと近づいた。檻の扉には鎖が巻かれているが、他に罠などは無いようだ。逃げられやしないということなのだろうか。

「う……ぅ……」

 傷だらけの捕虜は衰弱しており、意識も朦朧としていることがわかる。コウモリたちは手早く鎖に取りつき破壊した。1匹が扉を足で掴んで開き、その間に4匹が中に入って捕虜を掴むと、息を合わせて飛翔し外へ運ぶ。扉を掴んでいた1匹も運搬に合流すると、渾身の力で羽ばたいて捕虜を移動させていく。
 あとは、隠れている生き残りの獣人たちのもとへ運べばいい。救助班は、急いで闇の中を飛んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「猿が一人勝ちしなかったこの世界を、私ほど愛している者はおりますまい。後は甘味さえ充実していれば完璧だったのですが」
嗤う

暗闇の中普段連れ歩く黄巾力士に自分を庇わせまず米粒大の式神を山のように放って檻の中の捕虜と救出者達、敵機のルート確認

「それでは救助に参りましょう」
745体の騒霊召喚
檻の鍵・捕虜を拘束する鍵・巡回する敵機の武器に接触させどんどん壊し使用不能に

「私は外からこの都市に侵入したザトー開放戦線の1人です。檻の中の彼等は既に動く余力もないようですから。貴方達に助力を請いにきました」
先に檻の外の獣人達に接触
捕虜を檻から連れ出す手伝い頼む
獣人達と捕虜を安全な場所まで運んだら仙丹食べさせ治療



 自作宝貝・黄巾力士に護衛を任せた鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は、暗闇に沈んだ世界を我が物と言わんばかりの顔で堂々と歩む。闇の帳など無いかのように、障害物を避けて悠々と行く。

「猿が一人勝ちしなかったこの世界を、私ほど愛している者はおりますまい。後は甘味さえ充実していれば完璧だったのですが」

 嗤う。散歩の途中で口の中が寂しくなったので菓子でも買おうか、などと言う如き余裕。甘味が無いことが実に残念だと仕草で表現しつつ、指を弾けば無数の式神が虚空より召喚されてくる。米粒ほどの大きさの式神たちは、召喚主たる冬季の意に従い四方八方に虫めいて散り、街中の状況を調べ、迅速に帰還した。
 冬季は顎に手を添えて思案する。檻の位置と捕虜、救出者達、敵機の巡回ルート……この程度、問題足り得ず。

「式鬼神招来急急如律令」

 手品のように取り出された符を指に挟んだ冬季は、闇の中へそれを雑に放った。宙を舞う符は瞬きの間に倍々増えて745体の騒霊の式神へと変じる。彼が散れと手を振れば、先に得た調査情報をもとに暗黒をすいすいと騒霊が散っていく。
 式神が働く間に冬季は歩みを進める。彼が目指す先は最初から定めていた場所であり、それは巡回するパンツァーキャバリアを観察するに適した、やや離れた廃墟の影である。
 傍目には無警戒に映りそうなほどの気楽さで近づいた彼は、知人に接するかのようにやはり気軽に目的を告げた。

「私は外からこの都市に侵入したザトー開放戦線の1人です。檻の中の彼等は既に動く余力もないようですから。貴方達に助力を請いにきました」

 闇に動揺が広がる。狐面を張り付けた笑みの冬季は静かに待つ。

「……知らぬ匂いだ。外から来たというのは本当らしいな。わかった、そちらの要請に応えよう……感謝する」

 老成した犬のような雰囲気。選択肢は少なく、ワルシャワ条約機構が自分たちと語るはずもなしと考えて、獣人たちは冬季の言に頷いた。

「それでは救助に参りましょう」

 呵々と声を出さずに嗤う。
 人手を連れて身を隠すことなく大通りだったであろう道を行く冬季に、獣人は驚き、慌てるが、すぐにその理由を知ることとなった。
 視界が利かずとも各々の技術・能力で暗闇の向こうを感知する者らは、擱座したまま動かなかったり、倒れ伏してバチバチと漏電したりと壊れて行動不能に陥っているパンツァーキャバリアを知り慄く。凶暴な虫に集られるように騒霊が破壊する様は恐ろしい。
 何事も排された道の先で、鍵が壊れた檻があった。冬季は扉を開き、獣人たちにお願いしますね、と招く。檻に入った獣人は捕虜の拘束が壊されていることを確認すると、容態を調べる。

「おい、意識はあるか。助けに来たぞ」
「っ……ぐ……」

 弱っているが意識はある。しかし、相当に痛めつけられたのだろう、呻き声のような微かな返事。衛生兵の獣人は手早く応急処置を行い、慎重に急いで檻の外に用意した担架へ移す。
 運ぶ準備は整った。冬季は先頭に立って先導する。騒霊を周囲の警戒に回して安全確保を行いつつ一行は近場の地下セーフハウスを目指す。障害を先に排除したこと、周囲の地形を調査してあったこと、獣人たちの案内もあって驚くほど速くセーフハウスに到着した。

「これほどスムーズに救助できるとは……改めて、感謝する」
「いえいえ、大したことでは」

 救助の成功と治療で俄かに騒がしくなった地下室で、老犬の獣人は冬季と向き合った。
 抵抗を続けながらも長らく明るいニュースの無かった状況で、この朗報は獣人たちの士気を上向かせるに足るものだ。感謝の言葉には、そういった意味も含めた思いも籠っていた。

「ああ、それと。治療でしたらこちらもどうぞ。効きますよ」

 そう言って冬季が渡したのは仙丹と呼ばれる霊薬だ。彼の自作品だが効果は確かな代物である。ただし激しく甘い。
 仙丹を摂取した獣人の回復は著しく、すぐに会話できるほどだ。ただ、甘すぎて胸焼けするそうだが良薬ゆえに致し方なし。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…闇なる都市
…私が生まれた常闇の世界で見かけた忌々しき闇がここにも!
…ここで止まる訳にはゆくまいぞ!私は…処刑人だッ!!!

己の指先に地獄の炎を灯し炎を操り視界を確保しよう
そして迷彩布を被り迷彩で姿を消し闇に紛れ目立たぬよう戦場を行こう
情報収集と気配察知で敵の動向を探り捕虜の元へ進もう

捕虜の元に辿り着いたら怪力で捕虜たちを担ぎ救出し【大鴉の訪問】を発動
瞬間移動で地下の避難所に捕虜たちを連れてこよう

そして再び瞬間移動し地上へ戻り、捕虜たちを救出し続けよう…

今はまだ戦う時ではない…だが…
時が来たらば敵を屠るのみだ…!覚悟せよ…私は…処刑人だッ!



 都市の端、一切の視界の通らない完全な闇の中、影のように揺らめくは仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)。

「……闇なる都市……私が生まれた常闇の世界で見かけた忌々しき闇がここにも!」

 彼女にとって見慣れた闇、ダークセイヴァーで蔓延する濁った汚濁の如き夜色の黒。その帳の向こうにあるものを睨みつけるように、瞳孔が開く。

「……ここで止まる訳にはゆくまいぞ! 私は……処刑人だッ!!!」

 ぼんやりとした印象から反転し、アンナは苛烈にして鮮烈な業火を纏う。身の内で燻る地獄の炎が彼女の熱を高めるのだ。
 指先に地獄の炎を灯す。通常の灯りは完全な闇に飲まれるが、この炎ならばどうか。

「本当に……忌々しき闇だ!」

 紅く盛る地獄の炎は闇を喰らい僅かに周囲を照らすものの、それは一時的なものですぐに完全な闇が熱を残して光を呑みこんでしまう。
 吐き捨てるように炎を消したアンナは、灯りがなくとも怯むこと無き強靭な意思で迷いなく闇へ足を踏み出す。払えぬなら己も利用するまでと、暗闇に紛れて処刑人は行く。
 視界が利かずとも気配で探れば敵を知ることは容易い。巡回のパンツァーキャバリアが発する音を聞き、ルートの選定や数の把握を行う。

「今はまだ戦う時ではない……」

 炎が燻る。刃が鳴る。それをアンナは押し止めて、慎重に情報を集めた。敵の足音から歩数で距離を測り、ルートを計算し、巡回の中心、捕虜がいる場所を予測するのだ。
 彼女は音も無く駆ける。障害物など無いも同然、見えているかのように避けて檻へ向かった。
 瞬く間に辿り着いたアンナは、檻の鍵や雑に巻き付いた鎖を掴んで力を込める。そのまま捩じるように手を反対方向へ引けば、粘土細工のように千切れる。破壊した鍵を放り捨て、扉を開き、捕虜の拘束具も同様に砕く。
 傷に触れないよう慎重に捕虜を担いだアンナは、暗黒を睨む。

「時が来たらば敵を屠るのみだ……! 覚悟せよ……私は……処刑人だッ!」

 アンナの足元から大鴉が飛び立つ。夜に溶けるような黒色の大鴉が群れとなって昇り、やがて彼女と捕虜を覆い隠した。
 そして、大鴉がいなくなったあと、そこには誰も残っておらず。地下の避難所、獣人たちの中心にアンナは出現する。驚く獣人たちへ捕虜を渡した彼女は、他の捕虜たちを救出すべく|大鴉の訪問《オオガラスノホウモン》による瞬間移動で再び地上へ戻っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミア・アルタージュ
完全なる闇…光の精霊の気配すら感じませんね。
精霊のバランスが著しく偏っている…これは初めて経験する環境です。
研究の対象としては興味深い所はありますが…今はそれどころではありませんね。
視界に頼れない環境ですが、例えば土壁であれば大地の精霊が必ず居ますし、精霊の気配を感じれば地形の把握は何とかなります。
敵のキャバリアの位置の把握は…聞き耳を立てていれば十分でしょう。
いざとなったら大地の精霊の力を借りて土壁を作って攻撃を防げば良いですし。

捕虜の方の気配があれば契約によって連れている光の精霊の力で治療を。
闇の精霊の勢力が強い環境なので効果は落ちてしまいますが…応急処置程度であればこれでも十分でしょう。



 ミア・アルタージュ(ケットシーの精霊術士・f41672)は精神を集中する。世界に遍く存在する精霊を感じ取ろうとしているのだ。ケットシーの特徴である猫耳が、忙しく向きを変え続けている。

「完全なる闇……光の精霊の気配すら感じませんね」

 一切の光を駆逐する闇の中は、やはり光の精霊もいないようだとミアは思案する。

「精霊のバランスが著しく偏っている……これは初めて経験する環境です」

 アルダワ魔法学園で精霊術を研究している彼女にとって貴重な状況なためか、危機感とは別に探究欲とも言うべき興奮もあった。このような環境は人工的でも容易く作れるものではないはずだと、知識が囁くが、しかし。

「研究の対象としては興味深い所はありますが……今はそれどころではありませんね」

 知識欲を抑えるように頭を振る。成すべき仕事がある。捕虜の治療だ。
 救出は多くの猟兵によって無事に果たされたが、捕虜たちはいずれも心身ともに重傷であった。獣人たちは暗闇の中、懸命に治療を施しているが些か手が足りていない。
 ならば猫の手を借すべきだろう。ミアは決断すると、地下のセーフハウスへと移動を始める。

「視界に頼れない環境ですが、精霊の気配を感じれば地形の把握は何とかなりますね」

 完全な闇によって感じ取れないのは光の精霊であり、それ以外の精霊は感知できる。地面や土壁から大地の精霊を感じ、吹き抜ける空気の流れから風の精霊を知る。研究者としての明晰な頭脳には、それで十分だ。

「敵のキャバリアの位置の把握は……聞き耳を立てていれば十分でしょう」

 ミアの猫耳が動いて音を探る。パンツァーキャバリアは隠密行動をしているわけでもないため、駆動音や足音はよく聞こえる。防御手段はあるが、この音の大きさならば、巡回ルートに気をつけて動けばぶつかることもないだろう。
 まさに影を行く猫、あるいは森林に潜む豹めいて、静かに素早くミアは闇を進む。ほどなくして地下室の入り口へと辿り着き、ノックするように扉を叩いて自らの素性を明かす。僅かな間のあと、扉が開いて入ってくれ、と招かれるので、彼女は礼を告げながらセーフハウスに入った。

「ささやかですが、治療の手伝いに来ました。捕虜だった方はどちらに?」
「ありがたい。こちらだ、来てくれ」

 感謝と安堵、敬意の籠った言葉とともに獣人が案内する。短い通路を進んだ先には、ベッドが並べられて捕虜だった獣人たちが寝かせられていた。その周りでは慌ただしく衛生兵らが治療のために動き回っている。
 案内人が一言、二言告げて道を開けてもらい、ミアは患者に近づく。鉄の味がしそうなほどの血の臭い、それと負けないくらいの消毒薬の匂い。弱々しい呼吸と呻き声。
 彼女は杖を手に祈る。

「精霊の力……お借りしますね」

 もしここが闇の中で無ければ、彼女の声を聞いて集う幻想的な光の精霊を目にすることができただろう。契約によって連れている精霊であるため、闇に偏った環境でもその力を発揮できる。
 光の精霊の力を受けた患者たちは、呼吸が穏やかなものに変わっていく。呻き声も落ち着き、重傷も癒されていった。

「闇の精霊の勢力が強い環境なので効果は落ちてしまいますが……応急処置程度であればこれでも十分でしょう」

 ふぅ、と息を吐いたミアは医療者たちにそう伝えた。
 応急処置程度と言うが、その回復力は十分なもので獣人たちにとても感謝されることとなった。
 そして、捕虜の救出と治療が済んだのならば、次の手を打つ時ということ。巡回するパンツァーキャバリアを倒す時である。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』

POW   :    試作型荷電粒子砲収束式
敵を狙う時間に比例して、攻撃力・命中率・必殺率が上昇する【荷電粒子】を武器に充填し続ける。攻擊すると解除。
SPD   :    試作型荷電粒子砲連射式
レベルm半径内の対象全員を、装備した【大口径荷電粒子砲】で自動的に攻撃し続ける。装備部位を他の目的に使うと解除。
WIZ   :    近接防御火器システム
【全身に装備されている対空機関砲】で射撃している間、射程範囲内の味方全員の行動成功率を若干増やし、敵全員の成功率を若干減らす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●闇を越える
 捕虜を救出したことで戦闘に巻き込まれたり、捕虜ごと攻撃されたりといった憂いは消えた。
 後は変わらず巡回を続けているパンツァーキャバリアだ。性能の低い自動操縦とはいえ、火力は随一。完全な闇という不利も鑑みると、油断して直撃をもらう、という事態も考えられる。
 地形や敵の射線に注意して倒していくべきだろう。
ミア・アルタージュ
巡回しているキャバリアにとって敵の位置を探知する手段は…熱源と音でしたね。
内部的にどう言った指示が与えられているのかまでは製作者でもないとわからないので推測に頼らざるを得ませんが…例えばゴーレムを作る際は敵がより多そうな方を優先して攻撃させるような指示を与えたりしますよね。
…ゴーレム作成は私の専門外ですが。

此処は熱源として炎の精霊をいくつか…私から離れた一点に集中して飛ばして、風の精霊で積み上がっている荷物を崩す、と言う形で敵の攻撃を集中させて私への攻撃をさせないようにしておきましょう。
後はソードオブフェアリーで一体ずつ。
敵の位置把握は聞き耳を立てて…音での位置判断だけでも十分でしょう。



 完全な闇の中にパンツァーキャバリアの歩行する重低音が響き渡る。遠く、聞き耳を立てて変わらず巡回している様子を音で判断したミア・アルタージュ(ケットシーの精霊術士・f41672)は、顎に指を当てて思考を回す。

「巡回しているキャバリアにとって敵の位置を探知する手段は……熱源と音でしたね」

 視界が利かないのは敵も同じ。となると、当然それ以外の機能で闇を見通す必要があり、敵は熱と音で探知するようにしているようだ。
 そして、自動操縦で動いている、ということはつまり、与えられた指示に従っているわけで、対応力が高くないならば、指示は単純なものが出されているはず。

「内部的にどう言った指示が与えられているのかまでは、製作者でもないとわからないので推測に頼らざるを得ませんが……例えばゴーレムを作る際は、敵がより多そうな方を優先して攻撃させるような指示を与えたりしますよね」

 ミアは考えを言葉にすることで整理して明確にしていく。自らの蓄えた知識の棚から、参考になりそうな知恵を取り出して推理する。技術や文明が違えど、基本、目的を達成するために至る思考、手段は似通うことも多い。

「……ゴーレム作成は私の専門外ですが」

 知識はあれど専門家ではないミアは、この推測に十分な自信があるとは断言できなかったが、これ以上に良い案は出そうにない。あとは実際にやってみるのみだ。
 彼女は思考を切り上げると、巡回ルートの一つに向けて歩みを進める。このルートは敵の巡回間隔が長く、1体に多少時間をかけることになっても挟撃されにくい。猫耳をピンと立てて警戒しつつ、今だ遠い巡回の音を聞く。
 敵が来る前に仕込みを行わなければならない。ミアは杖を手に、火の玉にも似た姿の炎の精霊を複数呼び出し、離れた地点に向けて飛ばす。できるだけ集まっていてもらい、彼女はルート上から距離を取る。先に見つかってしまっては意味がない。
 瓦礫の影に潜んで、敵を待つ。ほどなくして近づく足音が聞こえてきた。それは変わらず一定のリズムで歩んでいたが、突然動きを止めると、歩行音とは異なるモーター音が耳に入る。炎の精霊に反応して、砲塔を回しているのか。
 ミアは落ち着いて杖を振る。すると風の精霊が、炎の精霊の近辺にある荷物や朽ちた木材を崩し、騒音を鳴らす。敵は音にも反応し、足を速めて近づいて行く。砲に荷電粒子を充填し機関砲を向けている姿は、獲物に集中する狩人そのもので。

「ソードオブフェアリー」

 奇襲するには絶好のチャンスであった。ミアが放った無数の剣状の精霊が、パンツァーキャバリアの無防備な背中や頭上に突き刺さる。針山めいて串刺しにされた敵は、致命的な部位を貫通されたのかノイズ混じりの電子音を垂れ流して倒れ伏す。

「後は1体ずつ、断ち切りましょうか」

 完全に機能停止したと見て、ミアは残心を終える。作戦が上手くいったことに微笑み、このまま残りの巡回も処理するべく仕込みを再び行っていく。
 同僚の壊れ様を知らないパンツァーキャバリアたちは、ミアの宣言通り同様の手法でもって倒されていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

風花・ゆきみ
捕虜の皆様はご無事のようですね……!
それだけでもとっても嬉しいのであります
けれど敵を殲滅しなければ勝利とはいえませんね
残る戦いも全力であります!

暗闇での戦いになる以上、戦いはこちらが不利
狙いを定めるにも工夫が必要そうであります
相手の装備も充実していますし、まずは無力化を目指しましょう

ということで……ぴぴーッ!!!
全力の鳴き声で【おどろかす】のであります!
相手の射撃の手が止まれば『特製ダイナマイト』を投げ込むのであります
そこから広がる衝撃や音を頼りに狙いを定め、飛び回りつつ『ライフル』で【制圧射撃】をしていきましょう!
捕虜達がいたら取れなかった作戦であります
救出作戦が成功してて本当に良かった……



 敵を引きつける囮の役目を自ら担った風花・ゆきみ(戦場の綿雪・f39971)は、捕虜の救出が終わるまで弾幕の回避を続けた。救出が上手く行ったことを知ったあとは、障害物を利用して射線を切りながら離脱して、今は小休憩の最中であった。

「捕虜の皆様はご無事のようですね……! それだけでもとっても嬉しいのであります」

 心優しいゆきみは捕虜の無事に安堵し、胸をなでおろす。
 さりとて喜んでばかりもいられない。敵を殲滅しなければ勝利にあらず。このままでは同じことが繰り返されてしまう。

「残る戦いも全力であります!」

 気合と決意を新たにして、彼女は飛ぶ。弾幕の只中を飛び回ったというのに、その元気と活力は十分。日々の鍛錬の賜物と力強く翼で闇を打ち、風に乗って飛翔する。
 耳を澄ます。ゆきみの姿を見失かったからなのか、追ってきていたパンツァーキャバリアたちは巡回に戻るべく移動しているようであった。その機体間の距離は離れていて、バラバラに戻っていっているようだ。
 ゆきみは最後尾の敵を攻撃目標に定めるが、暗闇の中では正確な攻撃は難しい。一方、パンツァーキャバリアの装備は充実しており、このまま戦えば不利なのは彼女だ。対策や工夫が必要である。

「まずは無力化を目指すであります。ということで……」

 ゆきみは翼を畳み、高度を下げながら加速して敵との距離を縮める。多少近づいたところでパンツァーキャバリアはゆきみに気付き、旋回、機銃で対空射撃を開始する。闇のせいか性能によるものか、射撃は正確とは言い難いが、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる可能性は低くない。
 それでも勇敢に飛び込むゆきみは、翼を広げてブレーキをかけつつ大きく息を吸い、ふわふわの羽毛に覆われた胴体を膨らませる。
 そして、腹の底から鳴いた。

「ぴぴーッ!!!」

 可愛らしい鳴き声とは裏腹にその音は凄まじい衝撃と化して敵を叩きのめす。予想外の反撃を受けたパンツァーキャバリアは足が浮くほどに傾き、多脚ゆえの安定性の高さでどうにか持ち直すものの姿勢制御がエラーを起こしたのか、一時的に動きが止まる。

「投下であります!」

 その隙にゆきみは特製ダイナマイトを取り出して足で保持。大雑把な敵の位置へ、バク転するように空中で器用に回転して特製ダイナマイトを投げる。彼女の体躯に合う小さなサイズの爆発物は、しかし大きさに見合わない魔力を含んだ爆発を起こした。
 広がる衝撃や音がパンツァーキャバリアにぶつかって反射する。魔力が残留して姿を浮かび上がらせる。それらの情報を頼りにゆきみはライフルの狙いを定めて撃つ。

「射撃始めであります。ぴーッ!」

 足で器用にライフルを保持しつつ構えて、飛び回りながら小刻みに連射する。爆発で機関砲を損傷したパンツァーキャバリアはどうにか復帰したが、その時にはライフル弾が装甲を叩いていた。
 そして、敵が主砲を動かそうとした時、数発のライフル弾が脚の関節やカメラ部分を破壊。パンツァーキャバリアは旋回しようとしていたこともあり、突然支えを失って慣性で傾き、損傷した脚部では抑えきれずグラッと揺れて倒れた。
 どうやら倒れた時の衝撃で内部に致命的なダメージが入ったようで、パンツァーキャバリアの機能が停止する。
 ゆきみは他の敵が集まってくる前に一時離脱した。

「捕虜達がいたら取れなかった作戦であります。救出作戦が成功してて本当に良かった……」

 巻き込む心配なく、捕虜たちも治療されている。彼女は安堵の息を再び吐き、羽ばたいて上昇、旋回。闇の中、残った敵を討つべく飛翔した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

いよいよか…
だが…ここで止まる訳には行くまいぞ…!
さぁ行くぞ…私は…処刑人だッ!

地獄の炎を灯した霊剣を構え、破魔と浄化の力で忌々しき闇を振り払い戦場を行こう
鉄塊剣と霊剣を振るい【疾走する地獄の炎】を発動
全身を地獄の炎で纏いて戦場を駆け抜けながら、敵の攻撃をダッシュと地形を利用したジャンプで回避
鉄塊剣を振り回し鎧砕きと怪力で敵の装甲を叩き潰し、霊剣を振るい鎧無視攻撃で手足を引き裂き切り捨てよう

心の臓に地獄の炎を宿し、回復力と不眠不休の力で継戦能力を維持しながら
戦場を走り続けて、敵群を殲滅してやろう…!

…忌々しき闇なるモノどもめ!
逃がすまいぞ…私は…処刑人だッ!!!



 吐息に火の粉が混じる。闇より濃い夜色の瞳は見えぬ敵を睨み。仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)の血は熱を帯びる。

「いよいよか……」

 彼女の心臓から生じた地獄の炎が、右肩、右腕、右手を蛇めいて伝って|波打つ刀身の霊剣《フランブウジュ》に巻き付く。
 同様に左肩に担ぐように保持した、|拷問器具【鉄の処女】をモチーフにした奇怪な鉄塊剣《錆色の乙女》にも地獄の炎を纏う。

「さぁ行くぞ……私は……処刑人だッ!」

 死体と見紛うような白い肌を赤い炎で着飾って、アンナは跳ぶように疾走する。
 完全な闇が炎を呑むならば薪を放ってより強く焼き払うべし、破魔と浄化の力を注ぎ闇が呑む度に地獄の炎を再燃させる。
 不安定な視界の先、無機質な殺意が膨れ上がる気配をアンナは察知して斜め前にステップ回避。直後に荷電粒子の熱光が大気と地面を焼く。炎で身を包む彼女はパンツァーキャバリアにとって大いに目立つ。

「だが……ここで止まる訳には行くまいぞ……!」

 アンナは加速する。空気の壁を破り音を超えて赤い影を残す。残影と化した熱を追うように荷電粒子砲が連射されるが、彼女には狙いが追いつけない。
 射線を辿りパンツァーキャバリアに接敵したアンナは、脚部を狙って速度を乗せた鉄塊剣を振るう。装甲がひしゃげてフレームが圧し潰され、関節が千切れて四つ足の一本が廃墟を転がった。
 懐に入ったアンナの右腕が高速でブレる。彼女を撃とうとした機関砲がバラバラに溶断された。

「|首《こうべ》を垂れよ」

 霊剣が関節を断ち、地獄の炎が溶かしてもう一本足を鉄屑にする。鉄塊剣が叩きつけられ、断頭台に上げられた罪人めいてパンツァーキャバリアが傾く。

「処刑……執行ッ!!」

 横に寝かせた両手の剣を重ねてアンナは跳躍、敵のカメラアイに刃を突き入れる。内部を地獄の炎で焼きながら、恐るべき怪力で剣を左右に開いていく。金属の擦れる耳障りな音を撒き散らし、翼を広げるようにして剣は斬り抜けた。
 断頭の刑に処されたパンツァーキャバリアの頭部が落下。遅れてアンナが着地。幽鬼のように揺らめく彼女の眼が、次なる敵の気配を睨む。戦闘の音と熱を感知した他のパンツァーキャバリアが近づいているのだ。

「……忌々しき闇なるモノどもめ!」

 だが、わざわざ待つ道理は無いとアンナは体の向きを変え、炎を滾らす。

「逃がすまいぞ……私は……処刑人だッ!!!」

 彼女は|疾走する地獄の炎《フィアンマ・デ・インフェルノ》と成る。止まらず、休まず、燃え尽きることなく。一心不乱に敵群を殲滅するのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「目には目を、キャバリアにはキャバリアを。|出《い》でよ闘神アスラ」

仙術+功夫で縮地(短距離転移)して一気に接敵
胡蝶双刀八斬刀で荷電粒子砲跳ね上げつつ細い胴体に膝蹴り入れ圧し折る
敵の攻撃は縮地や上体を捻って後ろに反らしながら前蹴りしたりして回避
距離が少し離れてもすぐ縮地で0距離に詰める
荷電粒子砲の左下側に出現し胡蝶双刀八斬刀でかち上げながら連打して接合部分をぶち壊したらそのまま胡蝶双刀八斬刀をマシンアイの上から叩き付け頭部ごと陥没させる

「胡蝶双刀八斬刀は盾代わりに使えるほどの鈍器ですから。叩き潰すための武装と言っても過言ではありません。無人兵器であればこそ遠慮なく叩き潰せるというものです」
嗤う



 猟兵たちによって破壊されてきたパンツァーキャバリア、その最後の巡回地点。闇に滲む墨のように立つ鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は、嘲るようにも愉快なようにも見える相変わらずの狐顔であった。
 彼の熱を探知したパンツァーキャバリアが砲口を向けてきても、それを式神で感知しても、彼の表情姿勢は静かなままだ。

「目には目を、キャバリアにはキャバリアを。|出《い》でよ闘神アスラ」

 心地よく響く指を弾く音。すると初めからそこにいたかのように、冬季の隣に巨大な人型が出現する。突如現れた熱源に敵の動きが困惑するように停止した。

「アスラが貴方と|殺し合いたい《遊びたい》そうなので。少々付き合って貰えませんか」

 縮地でアスラの肩に移動した彼は、酷薄な笑みを張りつけて闇の帳の向こうに告げるとそのまま機体に搭乗。アスラは生物じみた滑らかな動作で胡蝶双刀八斬刀を引き抜く。
 一時的に止まっていた敵が再び動き出す。荷電粒子砲の照準をアスラに合わせ、連続発射。アスラは幾つも伸びる熱線を縮地、すなわち仙術と功夫による短距離転移でもって回避、接敵。突然目の前に瞬間移動されたパンツァーキャバリアは、しかし荷電粒子砲を咄嗟に撃とうとする。
 アスラは先じて武器を振り上げ、荷電粒子砲を跳ね上げる。熱線は上空に放たれて消え、その隙にアスラの膝蹴りが敵の胴体に叩き込まれる。上部機関砲が圧壊し、装甲は砕けてフレームが歪む。
 下半身の機関砲が火を噴くが、アスラは上半身を逸らして回避しつつ前蹴りを入れて機関砲を潰し、足の一本を圧し折った。

「胡蝶双刀八斬刀は盾代わりに使えるほどの鈍器ですから。叩き潰すための武装と言っても過言ではありません。無人兵器であればこそ遠慮なく叩き潰せるというものです」

 嗤う。凍土の如く冷徹に、焦土の如く悪辣に。|鉄人形《かかし》を砕くは児戯も同然。
 パンツァーキャバリアが必死の抵抗をせんと荷電粒子砲を向けるが、縮地で距離を詰められ無意味である。荷電粒子砲の左下に移動したアスラは、胡蝶双刀八斬刀でかち上げた。金属の塊であるパンツァーキャバリアが空中に浮くほどのパワー。それを無慈悲な嵐めいて連打すれば、容易く接合部分が砕け散る。
 両の手に持った胡蝶双刀八斬刀をアスラは振り上げる。断頭台のギロチンよりも容赦なく叩きつけられた鈍い刃は、すでにボロボロの敵のマシンアイごと頭部を陥没させ、ひしゃげ、無残な廃墟の一部と変えた。

「さて、次の遊び相手はどちらでしょうか?」

 まるでウォーミングアップが済んだと言わんばかりに涼しい顔の冬季は、新たに迫りつつあるパンツァーキャバリアを見やる。
 アスラによって残りの敵が全てスクラップになるまで、さほどの時間はかからなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『蛇王ペイヴァルアスプ』

POW   :    一万の蛇の王
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【大蛇】が出現し、指定の敵だけを【巻き付き締め付け】と【毒牙】で攻撃する。
SPD   :    ヴァイパースマイト
自身の【胸に埋め込まれた『偽りの太陽』】が輝く間、【蛇鞭状の両腕】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    有翼の蛇龍
召喚したレベル×1体の【大蛇】に【龍翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●闇を討つ
 全てのパンツァーキャバリアを破壊した猟兵は、まるで深海にいるかのような息苦しさと圧を感じる。都市を包む闇が質量をもったかのような気配は、ついに殲滅大公が現れたことを示していた。

『SYAAAA……!』

 無数の蛇の鳴き声が津波のように聞こえてくる。大地を埋め尽くす毒蛇の群れを率いて、『蛇王ペイヴァルアスプ』は進軍する。
 その時、猟兵へ通信が届いた。獣人たちからだ。

『聞こえるか、猟兵。殲滅大公は強大だ。特に不死同然の再生力、アレがあってはこちらがいずれ喰われてしまう……。だが、こちらにも対抗手段はある』

 皆のおかげでな、と話す獣人の声色には、希望が宿っている。

『巡回パンツァーキャバリアの荷電粒子砲を、オーバーロードさせて殲滅大公に撃ち込む。再生力を超過した攻撃ならば、一時的に回復も止まるはず』

 撃てば自壊するほどの砲撃で殲滅大公の再生を停止させ、その隙に猟兵が攻撃を叩きこむのだ、と。

『奴はすぐに立ち直るだろうが、再生が停止している間のダメージは残る。これを繰り返して倒す……だが、荷電粒子砲のチャージ中は無防備だ。敵の攻撃を、どうにかそちらで引きつけてほしい』

 荷電粒子砲のチャージ中は獣人たちを守り、砲撃が蛇王に直撃したら攻撃を加える。これが、おおよその流れになる。
 頼む、と告げて通信は切れた。光明はある。都市を呑む蛇を討つ時だ。
風花・ゆきみ
あれが殲滅大公……!
なんと恐ろしい相手でしょう
ですが退く訳にはいきません
獣人の皆さんもついているのです
皆で勝利を掴みましょう!

チャージ中の皆さんを守るためには人手が必要ですね
なので集合!連雀レンジャーズ!
【集団戦術】にて陣形を展開し、できる限り敵を足止めです!
ダイナマイトをどんどん投下して敵へと投げつけてきましょう
相手の手数も多いですから弾かれる可能性も高いですが……
しかし相手に味方はいません
どんどん負担はかけられているはずです!
私もどんどん『特製ダイナマイト』を【投擲】し続けるのであります!

チャージが終われば一時退避
攻撃が命中すればチャンスですね!
すかさず『ライフル』で攻撃するのであります!



 完全な闇越しに強大な気配を感じる。蛇に睨まれた蛙、いやスズメの気分を風花・ゆきみ(戦場の綿雪・f39971)は味わっていた。

「あれが殲滅大公……!」

 その恐ろしさに羽毛が逆立つ。本能の臆病な部分が表に出そうになるが、気合で抑え込んだ。先祖のように戦いたいと重ねた鍛錬が、立ち向かう勇気を生む。共に戦う獣人たちのためにも、退くわけにはいかないと恐れを払うように力強く羽ばたく。

「獣人の皆さんもついているのです。皆で勝利を掴みましょう!」

 味方を守る、敵を引きつけるには、この小さな体でどうするべきか。その答えは、やはり数だろう。

「なので集合! 連雀レンジャーズ! ぴーっ!!」

 闇に甲高い鳴き声が響き渡るとどこからともなくスズメレンジャー部隊が集ってきて、視界の通らない中ゆきみを先頭に見事な楔型の陣形を作った。

「できる限り敵を足止めです! ダイナマイトをどんどん投下して敵へと投げつけてきましょう!」

 ぴぴ、と鳴き声が続く。ゆきみは翼を畳み、矢のように急降下。スズメレンジャー部隊も従って順に降下していく。周囲が見えない暗闇の中では激突の危険性が高い急降下だが、全員一糸乱れず敵へ向かう。

『SYAAAッ』

 蛇王ペイヴァルアスプの胸に埋め込まれた偽りの太陽が輝く。完全な闇に飲まれて光は届かないが、熱量が増大するのをゆきみは感じる。ペイヴァルアスプの両腕の蛇が縄めいてしなり、編まれ、より太く形成されていく。それは大樹の如き威容を備えた9体の大蛇となり、ペイヴァルアスプが振るうに合わせてゆきみたちへ襲いかかった。
 迫る毒牙を、大気の流れと音と気配で感じ取りゆきみは回避する。9体の大蛇の隙間を潜り抜け、足で保持している特製ダイナマイトを投擲する。

「投下であります!」

 同様に抜けて来れたスズメレンジャー部隊も次々にダイナマイトを蛇王へ放り込んだ。暗黒に爆発音が何度も響き、ペイヴァルアスプの巨体を揺らす。だが敵の焼け焦げ千切れた体はすぐ元通りに再生していく。
 そして、ペイヴァルアスプは再び腕を振り上げる。だがゆきみは構わず特製ダイナマイトを取り出し、投擲を続行する。目的は敵の目を引きつけ、味方を守ることだ。

「どんどん負担はかけられているはずです! 投擲し続けるのであります!」

 弾かれようともダイナマイトを次々に投げつけていく。一投一擲毎に蛇腕の網を搔い潜らなければならず、プレッシャーは羽ばたきを鈍らせようとしてくるが、ゆきみは果敢に飛び込んた。

『発射準備完了。射線から離れてくれ……よし、撃てッ!!』

 ついに来た。ゆきみたちは上昇して一時退避。その後、極大の熱量が触れる全てを消し飛ばしながら直進。

『GYAAAA!?!?』

 蛇王ペイヴァルアスプとて例外ではない。限界を超えて放たれた荷電粒子が敵を飲み込む。全身余すことなく分解せしめんと焼かれながら、高すぎた再生力で死ねないという地獄を味わう。
 熱と光が過ぎ去った後には、片膝を着き、再生が止まったペイヴァルアスプの姿。

「今です、総攻撃であります! ぴーっ!!」

 ゆきみが軍用ライフルを構え、ペイヴァルアスプに向かって撃つ。スズメレンジャー部隊もそれに続き、ありったけのダイナマイトを投げる。
 ライフル弾が幾度も体を叩き、剥き出しになった偽りの太陽を貫き、爆発が何度もペイヴァルアスプを打ちのめす。敵は声にならぬ悲鳴を上げて痛みに悶えた。
 しかし、それも僅かな間だ。再生が始まった蛇王ペイヴァルアスプは、抜けきらないダメージに苦悶しつつも立ち上がり、怒りを露にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミア・アルタージュ
敵の攻撃を引き付けるには…やはり目立つ動きをする必要がありますね。
わざわざ攻め込んでくるくらいです、何らかの方法で私の事は見つけてくれるでしょう。
単純に完全な闇の影響を受けていない、と言う可能性もありますが…それはそれで攻撃を引き付ける為なら寧ろ都合が良いですし。

風の精霊の力を借りてフライングフェアリー…近くを飛び回っていれば無視するわけには行かないでしょう。
腕の攻撃は風の精霊の力による強風で受け流していきます。
荷電粒子砲が放たれたら私も周囲の精霊の力を借りて全力魔法で攻撃しますね。
荷電粒子砲が放たれた直後なら周囲に電気の精霊も多く居るでしょうから、十分な威力は出るはずですよ。



 ミア・アルタージュ(ケットシーの精霊術士・f41672)は思考する。

「敵の攻撃を引き付けるには……やはり目立つ動きをする必要がありますね」

 蛇王ペイヴァルアスプはいかなる方法でもってこちらを見つけているのか。温度か、音か、はたまた単純に完全な闇の影響を受けていないのか。

「……それはそれで攻撃を引き付ける為なら寧ろ都合が良いですし」

 重要なのは見つけている方法ではなく、こちらを認識している、ということ。作戦に必要なことはそれだけだ。
 杖を手に、ミアは風の精霊へ祈る。彼女の体を強風が包み、大地の軛から解放する。まさに|空を飛ぶ妖精《フライングフェアリー》のように。
 飛行する彼女は自らペイヴァルアスプへ高速接近していく。向かってくるミアを迎撃するため、ペイヴァルアスプの腕の蛇が変容し、9体の大蛇となり、鞭のようにしなりながら牙を突き立てようとする。

『SYAッ!』
「っ、なるほど、相当な力ですね」

 迫る大蛇にミアは強風を叩きつけるが、わずかな拮抗の後、大蛇が勝った。押し合いで勝てないと理解したミアは、冷静に風を敵の側面から吹かせて受け流すように対処する。軌道が逸れた隙に潜り抜けた彼女は、ペイヴァルアスプの周囲を距離を保ちつつ飛翔する。

「近くを飛び回っていれば無視するわけには行かないでしょう」

 例えペイヴァルアスプにとって弱敵でも、周囲を飛び回られれば鬱陶しいもの。さながら虫を払うかのように、腕の大蛇を振り回す。暗闇をかき乱すように発生する暴虐の嵐。けれどミアは懸命に強風で受け流し、隙間を潜り、回避を繰り返す。至近を掠める毒牙に、冷や汗が流れる。

『チャージ完了。準備ができたぞ、猟兵! 離れろっ!』

 全力の突風を敵に叩きつけて、その反動でミアは距離を取った。直後、荷電粒子の奔流がペイヴァルアスプを呑む。

『GYAGYAGGG!?』

 再び、ペイヴァルアスプの衣が剥がされていく。再生力を遥かに上回る超過ダメージが全身を焼き焦がし、大蛇と化した腕が千切れて荷電粒子の余波で消し飛ぶ。耳障りな悲鳴すら、邪魔だと言わんばかりに高熱で溶かされた。
 砲撃が終わった時には、ペイヴァルアスプは焦げた臭いを発しながら痙攣していた。チャンスは今。

「全力の魔法で……攻撃します!」

 ミアは荷電粒子の過ぎ去った後に残った、数多の電気の精霊を束ねる。ペイヴァルアスプを中心にドーム状に配置された精霊は一斉に放電を開始。地上に雷を留めたかのような轟音と威力。電気の檻に捕らわれたペイヴァルアスプは悲鳴すら上げられないほどの痛苦を味わい、再生力が復活して檻を破るまで電撃で焼かれ続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…殲滅大公!
忘れはせぬ…あの姿…上層で見かけた忌々しき闇の巨人めが!
止まるまいぞ…私は…処刑人だッ!!!

葬送の炎を霊剣に灯し完全なる闇を切り払い、存在感で敵を惹き付け相手しよう
鉄塊剣と霊剣を抜き振るい敵が召喚した大蛇共を斬撃波で切り捨てなぎ払い地形を利用し
素早く駆け抜け攻撃を回避
回復力と継戦能力を発揮し獣人達の砲撃の時まで時間を稼ごう

巨人め…!ならば…我も巨人と成りて灼滅してやる!

砲撃を打ち込んだら【獄炎纏う黒き巨人】と成りて追撃
葬送の炎を巨身に纏わせ、怪力と鎧砕きによる拳と蹴りの重量攻撃で敵を焼却し
破魔の力で叩き潰してやろう…!

忌々しき闇の巨人めッ!この世界から消え去れッ!!!



 ぼうぼう、と炎が肉体から巻き上がる。憤怒と憎悪が形になったかの如き地獄の炎。仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)は闇の向こうを睨む。

「……殲滅大公! 忘れはせぬ……あの姿……上層で見かけた忌々しき闇の巨人めが!」

 ダークセイヴァー生まれの彼女には見覚えがある。燻る火が身を焼き、剣の柄を強く痛いほど握りしめた。

「止まるまいぞ……私は……処刑人だッ!!!」

 紺碧に輝く葬送の炎が|霊剣《フランブウジュ》に灯る。帳を裂くように完全な闇を切り払い、殺意を立ち昇らせて蛇王ペイヴァルアスプに己が殺気をぶつければ、その視線がアンナに向けられた。
 ペイヴァルアスプは身体の一部を切り離し、あるいは大地を這う蛇を呼び、それらに闇を注けば瞬く間に大蛇へと変異せしめる。大蛇の背からは禍々しい龍の翼が生え、2度3度と羽ばたけば巨大な体を空中に飛ばしてみせた。
 アンナに牙を向けて飛翔する有翼の蛇龍の群れ。対する彼女は地を蹴って疾走。鉄塊剣と霊剣を重ねるように構え、回転。巨大な剣先が土を削って小石を割り火花を散らしかかる抵抗もお構いなく、豪速で振るわれた刃は飛ぶ斬撃を生み出して進路上の蛇龍を真っ二つ。

「尽く……全てッ……処刑する!!」

 斬撃波を避けた個体が攻撃後の隙を狙って飛びかかる。アンナは振るった剣の重みを利用して体を流して回避し、鉄塊剣を地面に刺して支えに、廃墟の壁を駆け上がって蛇龍へ跳びかかった。反応の遅れた敵の首を霊剣で切り捨て、燃やす。
 そして、鉄塊剣を引き抜いて再び走る。邪魔な有翼の蛇龍を斬る、焼く、断つ、焼く、割る、焼く。彼女の道を地獄の炎が彩っていく。

『SYAAAA!』

 それでも敵の数は減らない。ペイヴァルアスプが生み出す蛇龍の数は夥しく、また減るたびに補充されてしまう。延々と戦い続ければ、アンナの苛烈な斬撃を掻い潜った運の良い個体が食らいついた。
 だが、アンナは怯まない。驚異的な筋力と体幹で踏ん張り、蛇龍に剣を突き刺してその体を捩じれば、ゴキュ、と首の骨が捻じれて折れる。絶命したそれを剣で引き抜き、近くの個体に投げてぶつけた後、傷を炎が焼いて塞ぐ。
 ペイヴァルアスプにも劣らぬ回復力でアンナが敵を殲滅し続ける最中、ついに通信が来た。

『いつでも撃てるぞ。用意はいいか?』

 酷薄な笑みをアンナは浮かべて、肯定を返す。全身をバネのように連動させて強靭な筋力を活かし、射線から跳び退く。
 死の砲撃が闇を貫く。荷電粒子の奔流に沿ってアンナは駆けた。道中の蛇龍は焼き尽くされて分解されていく。阻めるものはもういない。

「巨人め……! ならば……我も巨人と成りて灼滅してやる!」

 紺碧の炎がアンナの全身を包む。それは繭のように織り重なり、手足を形成し、|獄炎纏う黒き巨人《ブレイズフレイム・ムスペルフォルム》へと羽化する。
 何も残っていない破壊の跡を猛然と巨人が行く。蛇王ペイヴァルアスプは片膝と片手を地に着けて、それはさながら許しを請う罪人のようだ。

「忌々しき闇の巨人めッ!」

 葬送の炎を纏った巨人の拳がペイヴァルアスプの頭を殴打、無理矢理立たされるが、追撃の踏みつけが敵を大地に縫い付ける。巨人の怪力と重量で地面が割れた。

「この世界から消え去れッ!!!」

 巨人となったアンナは両の拳に破魔の力を込めた。紺碧の炎が一層火力を上げて盛る。全身全霊の叩き潰す一撃が、隕石の落下めいてペイヴァルアスプを襲う。悲鳴すら燃やし尽くす業火は、遂に敵を追い詰めるに至ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「手数が必要、と言うことですか」
嗤う

「では私も秘奥をお見せしましょう。…合一・真黄巾力士」
追加UC︰雷火陣
標準キャバリアサイズ又は蛇王サイズの何方か大きい方と同サイズ迄巨大化した黄巾力士に解けるように融合
敵増援に雷火放ち敵の頭部や羽焼きながら金磚から誘導弾連射
空中戦+空中機動に仙術加えトリッキーな動きで敵を翻弄
敵の攻撃は空中機動で回避出来ない場合のみ仙術+功夫で縮地(短距離転移)し回避
荷電粒子砲が撃ち込まれたら縮地で蛇王に接敵
0距離でガンフーして敵の攻撃を金磚の銃把で薙ぎ払いながら敵の腹部や頭部に金磚や砲頭から連射しダメージ加える
再生が開始したら縮地で離れ増援や敵引き付け次の機会待ち攻撃繰返す



 蛇王ペイヴァルアスプの焦げた体を毒蛇が覆う。どれほど再生しても消すことのできないダメージに、ペイヴァルアスプはふらつき、怒りの込めた唸り声を上げた。

『SYAAAッ!!』

 敵は有翼の蛇龍を生み出す。完全な闇に紛れて空を埋めて、都市の全てを飲み干すべく全力を絞り出しているのだ。

「手数が必要、と言うことですか」

 呵々。鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)が嗤う。窮鼠に喉を噛み千切られようとしてる蛇の王を、嘲る狐の笑み。

「では私も秘奥をお見せしましょう。……合一・真黄巾力士」

 ペイヴァルアスプと同サイズまで巨大化した黄巾力士の頭部に転移した冬季は、手で印を組む。彼の体が解けて沈み、黄巾力士に融合して文字通りの一体化を果たした。
 その巨体を噛み砕こうと、有翼の蛇龍たちが四方八方から襲いかかる。翼で闇を打ち、顎を限界まで開き、直剣の如き毒牙を見せつけミサイルめいて急降下。

「雷火陣。我が雷火をその身で味わえ」

 黄巾力士の頭部砲塔から轟音が響く。砲弾代わりに発射されたのは白色に輝き雷の尾を引く狐火。それは敵の群れのど真ん中で分離、拡散して蛇龍の頭や翼を貪るように焼き尽くす。墜落する同朋に目もくれず、かろうじて生き残った蛇龍はそのまま突撃してきた。
 黄巾力士の銃器型宝貝・金磚が実体誘導弾を連射。対空砲火の網にかかった敵が千々に微塵。さらに冬季は黄巾力士を飛翔させて群れへ飛び込み、攻撃をばら撒く。

「どこを狙っているのですか? こちらですよ」

 仙術を加えた物理法則に支配されない奇抜にして奇怪な空中機動に、有翼の蛇龍は攻撃を当てられない。どころか逆に弾丸や狐火を撃ち込まれている。ペイヴァルアスプはさらに数を増やし囲んで攻め立てるが、冬季は焼き払って風穴を空けることで回避を容易にしている。いざとなれば縮地もあるのだ。
 そして、詰めが来た。

『猟兵、準備ができた……コイツで最後だ。頼む』

 呵々。冬季が嗤う。
 黄巾力士を降下させる。散々にやられ続けていた蛇龍の群れは怒りのままにそれを追う。地に足着けた黄巾力士は無防備を晒し、敵は必殺と襲った。その毒牙が届こうか、という寸前に。

「失礼します」

 縮地で黄巾力士が消える。牙が虚空の闇を噛む。直後に蛇龍の群れは消しとんだ。荷電粒子によって。
 地面をガラス化しながら崩壊の一撃はペイヴァルアスプの再生力を剥ぎ取る。もはや己を守る全てが消え失せた蛇王の前に、転移してきた黄巾力士の姿。
 腕を振り上げようとしたペイヴァルアスプを、銃把が弾く。黄巾力士の金磚による流れるような連続打銃撃が敵の全身を打ち据え、衣を剥ぎ、罅を入れ、端々を抉る。

「これで、おしまいです」

 黄巾力士全身の火器を集中連射。回避も防御もできないペイヴァルアスプは無防備に受け止めるしかなく。砲撃が頭部を粉々に吹き飛ばし、銃撃が胸部の偽りの太陽を穴だらけにして破壊した。
 完全にトドメを刺された蛇王ペイヴァルアスプは闇に溶け込む霞のように消えていく。同時に、都市を覆う完全な闇も薄まり始め、本物の太陽の光が照らしだすだろう。
 遠く、獣人たちの歓声が響いている。猟兵たちへの感謝の声も絶え間なく続いている。長く暗闇に居た眼には光は眩しいが、晴々とした気分をもたらしてくれた。
 猟兵と獣人、両者の協力の末の、勝利だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年03月14日


挿絵イラスト