「資材が足りないな……」
国防強化に向けて、マドリムが国庫に納められている資源の確認とその割り振り、及びアシハラから返ってきた便りに書かれていた近況を照らし合わせていた。そこから察するにラウンズ国内だけであればどうにでもなるが、今回はアシハラへの援助が必要であり、それだけでは足りない。とはいえ、プラントから生成される素材にも限りがある。その時だ、マドリムが管理する端末がアラートを鳴らす。
「やはりもう一度来たか……ちょうどいい、彼らに任せる事にしよう。あの辺りは市民に任せるわけにはいかないからな……」
「二度あることは三度ある、とは申しますが……」
渋い顔をした人首・椿(傷と記憶は刻むモノ・f06124)はいつものラウンズ周辺の地図を広げて。
「いままで、巨神と呼ばれる機体を巡ってタカマガハラの霊地を巡って来た皆さまですが、今までの雪山、火山と続いて、此度は墓地……もとい、戦場跡に眠る巨神だそうです」
違う意味で物騒な場所に眠っている機体らしい。
「いわゆる『良くないモノ』が出る場所らしいのですが、今後の為の資材が足りないとかで、巨神に近づくオブリビオンマシンの撃破と同時に、戦場から離れた地点に輸送部隊を配備しているとかで、そこまで資材を運んで欲しいとのことです」
要するに、交戦前に戦場跡に散らばるスクラップの山から使えそうなもんを持って来てほしいって事らしい。なお、言ってしまえばキャバリアの死体が散らばった戦場からそんなもん持って来て大丈夫なのかって話については、多分駄目だから猟兵に依頼が来たのだろう。
「それでは皆様、ご武運を……右肩が重くなったら、教えてくださいね」
今回の椿は武器の代わりに塩壺を構えており、今回ばかりは物騒であって欲しかったと思った猟兵もいたとかいないとか。
久澄零太
久澄です
ヒャッハー『ネタ依頼』だァ!!
まずはスクラップというか、ぶっ壊れたキャバリアから使えそうな資材を集めて運ぶお仕事だそうですが、まぁ、はい。『出る』現場だそうです
マドリム曰く「まぁ、彼らなら大丈夫だろう」って案件をぶん投げたくらいにはシャレにならない場所だそうです
ではでは、皆さんのオカルトめいたプレイングをお待ちしております
第1章 日常
『市街地修復』
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POW : 大量の資材を運び込む
SPD : 現地の人と協力し、大掛かりな作業を行う
WIZ : 今後の戦争にも備えて、防備を固める
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
桐嶋・水之江
お化けですって?
あんなものただのプラズマよプラズマ
科学を知らない人にはそれが分からないのよ
どうせ誰かが巨神を横取りされたくなくて撒いたデマよデマ
廃品回収ね
これはシノギの匂いがするわ
回収するには輸送手段が必要よね?
今回はワダツミを出しましょう
回収するにはこちら
水之江式回収術よ
トラクタービームを当ててどんどんしまっちゃいましょう
なんだかUFOが牛を誘拐してるみたいな絵面ねぇ
これじゃ私がオカルト現象じゃない
ん?
回収したスクラップが勝手に動く?
それはそうよ
獲れたてピチピチの新鮮なスクラップだもの
人の声がする?
最近のスクラップはお喋りなのね
あーあ、働きすぎて肩が凝っちゃった
シルヴィ・フォーアンサー
アドリブ絡みご自由で
……まずは廃品回収だね、右肩が重くなったらってどういう意味だろ?
『……重いもの2つ下げてるから肩が凝りやすいと思われたのではないか』
……そういうのセクハラっていうんでしょ、第一それなら両肩になるよね。
『悪かった、さっさと済ませて帰ろうじゃないか』
むぅ……まぁ人海戦術でさっさと終わらせちゃお。
荷物運搬用のトレーラーでも用意してもらって
指定コードからのハンドレッド・イリュージョンで複製一杯作ってスクラップかき集めるよ。
(半透明で物をすり抜ける幽霊系は超苦手、ガタガタ震える。
ゾンビとかグロかったり反応無いのに動くスクラップとか物理的に触れるのは平気)
後はお任せで泣かせても可(酷)
ナミエ・オイローパ
アドリブ/連携可
初っ端からUC発動で船の姿。
「大量に運ぶときはこちらの姿が便利なんですよね」
甲板に積んだ資材をクレーン代わりに器用にヨーヨーを使って地面に降ろす。
荷物を全て降ろしてから人型に戻る。作業を手伝いつつ確認。
「今回は古戦場でスクラップ回収でしたっけ?私の地元(サイバーザナドゥ)のダストエリアよりはマシなものが転がってそうです」
特にお化けの類が怖いという訳ではないらしい。
「え?怖くないのかって?本当に怖いのは常軌を逸脱した欲望ですよ」
過去に色々あった、と言いたげな顔で遠くを見る。まぁ金さえあれば何でもできることでお馴染みサイバーザナドゥ出身だし(適当)
アイ・リスパー
「戦場跡から機械のスクラップを拾ってくればいいのですね」
ふふん、機械のことならこの私にお任せください。
ジャンクパーツからキャバリア一体くらい組み立ててみせましょう。
プラモ作りで鍛えたこの腕、存分に振るってみせましょう。
「とはいえ、重いものは持てないので……
オベイロンをパワードスーツとして装着です」
これなら、どんなに重いパーツでも持ち運べますね。
『ところで、アイ、大丈夫なのですか?』
「え、なにがですか、オベイロン?」
『ここは「出る」という話ですが――アイはその手のものが苦手だったのでは?』
オベイロンの言葉に固まります。
そんな、お化けなんて……
「怖いに決まってるじゃないですかーっ!」(泣いて逃げる
黒木・摩那
今回の依頼は今までとはちょっと違いますね。
ラウンズは元から資源の乏しい国だから、墓場であっても資源は魅力ですね。
良くないものが出るということですが、
そんなときのために日々鍛錬積んでます。
【呪詛耐性】はばっちりですよ。
カクリヨ世界も怖くない。
そうは言ってもこういう場所に長居は禁物。
さっさとめぼしいものを探し出して、輸送部隊に引き渡してしまいましょう。
ドローン『マリオネット』で上空から資源探査。
役立ちそうな物をキャバリアでがんがん運びましょう。
あとからオブリビオンマシンも来るようなので、余裕があれば巨神のいそうな場所にバリケードも作りたいですね。
ジュディス・ホーゼンフェルト
良くないモノねぇ?
古戦場跡には良く立つウワサじゃない?
巨神なんてヤバイ代物が埋もれてたら尚更ってもんでしょ
ま、アタシこんな見た目通りに一応神官なんで
本当に出てきたら鎮魂歌のひとつでも歌ってあげよっかな?
上手くはないけど
さーて行くよガルム
お宝ってのは埋まってるのがお約束じゃない?
表に出てるのより埋もれてるのを狙おうっも
ひょっこり頭を出してるガラクタを見付けたらここ掘れワンワンってね
パルスクローならすぐ掘り出せるでしょ
無事に掘り終わったら咥えて持っていこう
これってどの位の値段付くのかな?
あ?
なにさガルム?
急にギャンギャン吠え始めて
マルチスキャニングセンサーに反応?
敵かな?
何も居ないけど?
朱鷺透・小枝子
……キャバリア、起動。
〈灯火の戦塊〉自律キャバリアを召喚、使えそうな資材の回収と運搬、そして巨神掘削を命じておきます。
『あんまり気分の良い作業じゃあないねぇ。奏者、こういう時は音楽じゃないかい!?』
クレイドル、使えるものは使わねばなりません。あと演奏はしません。
……此処に野晒しにしている事が、良い事とは思いません。
『うーん……まぁ、此処に放置している方がむしろ良くないのかもね?とはいえ、だ。使わせてもらう以上は、死者には敬意が必要だろう?』
……。
魔楽機:|揺籃の子守唄《クレイドル・ララバイ》をバイオリンに変形
【楽器演奏】鎮魂曲を奏でます。騒ぎ立てているのは事実。
謝罪と感謝を込めて、弾きましょう
御園・桜花
「ほむほむ、運搬依頼ですか。私もお役に立てそうな気がします」
「…その心は」
「無機物なら食べられますから。食材イマジネーションを磨く良い機会な気がします」
(食べちゃダメなんじゃないかなあと考えつつ言っても無駄かあと結論づけ)「………行ってらっしゃい」
「何言ってるんですか花燕さん。一緒に行くに決まってるじゃないですか」
「…え〜」
引き籠ろうとする165cmおっとりニート系少女引摺り参加
自分の死体運ぶみたいで絶対ヤダ、外に出ないとゴネた巨神を車内に残し外へ
「人形焼くらいしか浮かびません。修行不足です。燃え上がれ私のイマジネーション!あ、皆さんは適当に資材集めお願いします」
依頼はノームの自主性任せで修行
ベティ・チェン
「ジャンクヤードで、スカベンジャー…行って、みようかな」
|四龍《スーロン》の装備は拾えなくても、スペランサが使える装備は拾えそうな気がする
「拾ったもの。全部渡す契約じゃ、ない、よね?」
いいもの、あるといいなあ
「えと、お代は。そっちが拾ったものの、3割。選択権と、条件アリ。依頼は、2つ。キャバリアがすぐ使えそうな、修理軽微か修理不要な兵装の、発掘と。キャバリア修理に使えそうな、部品の、発掘。選択権の、条件は。先に、ボクが1つ、兵装を取る。どう?」
汎用シノビ294名とサルベージ
「ヒトも、ドナーになる。キャバリアがなっても、おかしくない。事後承諾、だけど」
死にかけと死体は似てる
追剥じゃないといいけど
涼風・穹
……ラウンズからの依頼にしてはまだ自滅していないだけ真面だな…
もっとも、それが普通だし、ましてラウンズならフラグだとしか思えないんだけどな…
戦場跡に生身で行くのは危険だろう
幽霊云々以前に不発弾やらの危険物や|有機物《穏当表現》が腐敗して疫病の温床になっていたりと物騒なものがごろごろしているだろうしな
『ズィルバーンヤークトフント』で出撃
現地で使えそうなものがあれば《起動》で『イグニッションカード』に収納しておきます
内部では収納したものを自動で整備してくれるから部品ごとに分けるなり寄せ集めから使える機体を組み上げるなりしてくれるだろう
残骸は抵抗してカードから勝手に出てきたりはしないしな(フラグ?)
ヴィリー・フランツ
※如何様にお使い下さい
心情:はぁ~、出る‥ねぇ?(背後の召喚した工兵隊を見る)
散っていった仲間を呼び起こしてる俺が言えたもんじゃねぇな。
手段:【宇宙海兵戦闘工兵隊】を召喚、他の猟兵と協力しながらスクラップを重機で解体し輸送ビークルで搬出部隊にピストン輸送するぞ。
CPUはそのまま使えるかもしれんな、俺のレーザーガンをトーチモードにするか工兵のディスクグラインダーでコアを切り分けてサルベージを試みる。
実際は基板をまっさらにしてサイドプログラムする必要があるがな。
ガスウェルダーを使う時は注意しろよ、たまに他の猟兵がハッチャケてる時もあるからな、巻き添えはゴメンだぜ。タバコも離れた喫煙エリアで吸う
幽霊が怖くないかって?あのな…そもそも宇宙船に一体何人乗ってるか知ってるか?吹っ飛んだ船も数しれず、ならあの|宇宙《エーテルの海》には大量の思念体が浮いてる筈だ。
それにスペースオペラワールド宙域では、ある日突然消し飛んだ惑星も少からずあるだろう、そこのフィラメントの切れた電球みたいに前触れなくな。
さぁ始まりました、曰く付きの現場で廃品回収のお仕事です。連携もへったくれもないんで、個々人にフォーカスを当てていくゾ☆ていうか十一人も連携させられるか!!(本音)
「お化けですって?あんなものただのプラズマよプラズマ。科学を知らない人にはそれが分からないのよ」
のっけから全否定していく桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)。盛大な死亡フラグに聞こえなくもないが、まぁ多分大丈夫でしょう。
「どうせ誰かが巨神を横取りされたくなくて撒いたデマよデマ」
「おや、もしやこの現場の事情をご存じない?」
けらけら笑い飛ばす水之江に、黒いキャバリアに搭乗した黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)がコックピットで首を傾げる。
「我々がオブリビオンマシンから防衛しないといけない巨神は、目覚めたが最期、周辺地域が消し飛ぶ災厄の兵器だそうですよ。だから、横取りも何も、触れてはいけない存在らしいです。オブリビオンマシンの目的は、その巨神を目覚めさせて周辺諸国の人類を滅ぼして資源を独占する事らしいですからね……」
などと、廃材を選別して、使えなさそうなものを利用して巨神が眠っているのであろう、戦場跡の中心地に配置された巨大な社の周りにバリケードを構築していく。この話を聞いた水之江は一瞬、目のハイライトが消えて。
「という事は、巨神が覚醒する『事故』が起こった後、オブリビオンマシンより先にこの近辺を飛び回れれば、資源獲得し放題ということ……?」
頭オブリビオンな極悪博士ムーブしかねない水之江だが、余計な真似をするなら排除するしかないな……。
「何はともあれ、まずは廃品回収ね。これはシノギの匂いがするわ……回収するには輸送手段が必要よね?今回はワダツミを出しましょう」
というわけで強襲揚陸艦を転送する水之江。上空をゆっくりと進んでくるそれは、艦首のウェルドックを開き、謎の光を地上へ照射。
「回収するにはこちら、水之江式回収術よ。トラクタービームを当ててどんどんしまっちゃいましょう」
なお、回収術とか言っているが、何か特別な技術とかではなく、完全に機械任せなので水之江自身は簡易テーブルで茶を嗜む暴挙に出ている。まぁ、実際重力操作の光なんて技術が出てくるなら、猟兵個人がやる事なんてなにもないのだが。
「なんだかUFOが牛を誘拐してるみたいな絵面ねぇ……これじゃ私がオカルト現象じゃない」
などと呑気な事を言っていた時だった。ワダツミから通信が飛んでくる。
「ん?回収したスクラップが勝手に動く?それはそうよ、獲れたてピチピチの新鮮なスクラップだもの」
……スクラップって、なんだっけ?少なくとも新鮮な代物ではないはずだが……。
「人の声がする?最近のスクラップはお喋りなのね」
他人事のように笑う水之江は、通信機越しに聞こえる服従プログラムをぶち込んで下僕化した戦闘兵器兄妹(?)か、あるいはワダツミのAIか、とりあえずその辺からの恨み言を聞き流し、通信を強制終了すると、グッと体を伸ばし。
「あーあ、働きすぎて肩が凝っちゃった」
此奴……生きて帰れるのか……?
「……まずは廃品回収だね、右肩が重くなったらってどういう意味だろ?」
シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は愛機ミドガルズを駆り、残骸に埋め尽くされた墓場の中を低空飛行していた。スキャンして使えそうなものを探す傍ら、ヨルは余っていた演算能力でシルヴィと今回の転送役の差異を計算すると。
『……重いもの二つ下げてるから、肩が凝りやすいと思われたのではないか』
機械特有の無神経な計算結果を叩きだした挙句、それをそのままシルヴィに伝えてしまう。この発言には日頃から気だるげなシルヴィも、更にジットリした目を向けて。
「……そういうのセクハラっていうんでしょ、第一それなら両肩になるよね」
『悪かった、さっさと済ませて帰ろうじゃないか』
自分の発言が『不快な感情』というものを生み出す引金になった事を理解するくらいには、ヨルは人心というものに通じている。どこぞの人造天災博士とは大違いである。
「この超絶究極天災博士を呼んだかしら!?」
呼んでないから水之江さんは黙ってお茶しばいててください。
『シルヴィ、この辺りは比較的原型が残っているスクラップが多い。回収作業を始めるには手頃ではないかね?無論、有機物の反応も多少はあるようだが……』
「むぅ……まぁ人海戦術でさっさと終わらせちゃお」
先ほどのやりとりを根に持っている節があるシルヴィは、ややむくれつつも複製体を生み出し、その複製体と共に複製体を生み出して、蜘蛛の子を散らすようにスクラップの山に突撃。転がっていたキャバリア『だった』物を、運搬用に用意してもらったトレーラーに運んでいると、ガタガタガタガタ……バン!
『どうしたシルヴィ?』
「スクラップが震えてたから、殴って止めただけ」
『そうか……振動の原因はなんだったのだろうな?』
怪奇現象を物理的に黙らせるくらいには肝が据わっていた彼女達は、ホイホイ作業を進めていくのだった。
「大量に運ぶときはこちらの姿が便利なんですよね」
というわけで今回は登場時点で飛行船状態のナミエ・オイローパ(魅惑の秘宝船・f41405)。飛行船化に伴い、積載装備に変わったヨーヨーのワイヤーで資材をまとめて甲板に乗せて、ラウンズまでの運送を担当する一般人が待っている地点まで輸送すると、トレーラーの荷台に資材を降ろして人型に戻り、運んできたものの品質と数量をチェック。
「しかし、思っていたより使える資材が多いですね……」
「今回は古戦場でスクラップ回収でしたっけ?私の地元のダストエリアよりはマシなものが転がってそうです」
「え……」
輸送担当の民間人が、ナミエの顔を見て固まる。というのも、ナミエの故郷はサイバーザナドゥであり、無法地帯めいたサムシング。転がっているモノと言えばジャンクとハラワタを抜き取られた生ごみと、骸の海に汚染された『スクラップ』くらいのもの。
対して民間人にとっては、猟兵が資材回収に当たっているタカマガハラの戦場跡は踏み込めば最期、生きては帰れぬ呪われた死地であり、今までの山麓と異なり踏み込むことそのものが禁忌足りえる地域なのだ。
そんな地獄に等しい場所に臨んで、『地元よりマシな物が転がっている』と来た。
「すごい度胸ですね……」
「え?怖くないのかってこと?本当に怖いのは常軌を逸脱した欲望ですよ」
などと、ナミエは吹き抜ける風に髪をかきあげながら、ふとどこか遠くを見つめるのだった。
「戦場跡から機械のスクラップを拾ってくればいいのですね」
意気揚々と現れましたこちら、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)。
「ふふん、機械のことならこの私にお任せください。ジャンクパーツからキャバリア一体くらい組み立ててみせましょう。プラモ作りで鍛えたこの腕、存分に振るってみせましょう。とはいえ、重いものは持てないので……」
というわけで、通常の三分の一にも満たないサイズのキャバリア……あ、違う。パワードスーツ形態での参戦になります。が、このパワードスーツ、元は人工知能を搭載した機動戦車。
『ところで、アイ、大丈夫なのですか?』
「え、なにがですか、オベイロン?」
どこぞのお父さん系戦闘補助人工知能よろしく、余計な事を言ってしまう。
『ここは『出る』という話ですが……アイはその手のものが苦手だったのでは?』
ピシィ!その瞬間、アイの全身が硬直して思考回路がフリーズ。じわじわと言葉の意味が脳髄に浸透して……。
「そんな、オバケなんて……」
ガタガタガタガタ……マナーモードアイちゃん状態に陥り、かーらーの。
「怖いに決まってるじゃないですかーっ!」
『アイ!?仕事はどうするのですか!?』
号泣しながら逃げ出してしまった!!一方そのころ。
『……』
「ヨル?どうしたの?」
『いや、どこかで先ほど、不名誉な称号をつけられてしまった気がしてな……』
ミドガルズの中、段々人間臭さが増して来たヨルなのでした、まる。
「今回の依頼は今までとはちょっと違いますね。ラウンズは元から資源の乏しい国だから、墓場であっても資源は魅力ですね」
さーて、今度はある意味一番戦場を動き回っている摩那のターン。
「良くないものが出るということですが、そんなときのために日々鍛錬積んでます。カクリヨ世界も怖くない」
一瞬、摩那ってそっちの人だったっけって、履歴書【ステシ】確認しちゃったけど、スピリチュアルな経歴ではなかったわ。そう考えると、一体何のために鍛錬を……いや余計な推測はやめよう、藪蛇にぶつかる気しかしない。
「そうは言ってもこういう場所に長居は禁物。さっさとめぼしいものを探し出して、輸送部隊に引き渡してしまいましょう」
などと、搭載ドローン、マリオネットを射出して上空から探査しつつ、反応を確認したらエクアトゥールで急行。発見した資材が良質か、悪質かを見定めて、良質であれば輸送部隊に引き渡し、悪質であれば戦地中心の社の周りに運ぶ。
「今までは雪山の洞窟の奥だったり、火山の火口の中だったりと、防衛しやすい地形でしたが、今回はスクラップゴロゴロの危なっかしい足場とはいえ、平地のど真ん中……数の暴力で攻め込まれたらさすがに守り切れるか怪しいですからね」
などと、どっちかっていうと城じゃね?ってサイズの社の周りに防衛線を敷いていくのだった。
「良くないモノねぇ?古戦場跡には良く立つウワサじゃない?巨神なんてヤバイ代物が埋もれてたら尚更ってもんでしょ。ま、アタシこんな見た目通りに一応神官なんで、本当に出てきたら鎮魂歌のひとつでも歌ってあげよっかな?上手くはないけど」
ジュディス・ホーゼンフェルト(バーラント機械教皇庁三等執行官・f41589)は死神染みた大鎌に定評がある処刑人だが、修道服(と、呼ぶには運動性の方を優先させすぎている節もあるが)に身を包んで祈りを捧げるくらいには信心深い。
「さーて行くよガルム、お宝ってのは埋まってるのがお約束じゃない?」
……はずなんだけどなぁ。
「表に出てるのより、埋もれてるのを狙おうっと。ひょっこり頭を出してるガラクタを見付けたら、ここ掘れワンワンってね。パルスクローならすぐ掘り出せるでしょ。無事に掘り終わったら咥えて持っていこう」
困っている人々の為に頑張る、とかじゃなくて思いっきり利益を狙いに行ってるんだよな……バーラント機械教国連合とやらでは、もしかしたらこちらの思う善性を『薄っぺらい偽善』とぶった切るタイプの教えが主流なのかもしれないが。
「……これってどの位の値段付くのかな?」
早速見つけたのは、謎の棒。コレを、仮にも機械神の一柱に数えられた獣型のキャバリアという特異な存在が、装甲諸共電子回路を引きちぎる爪で、ほりほり……敵を葬るための爪で土を掘るガルムは、今、何を思うのだろう……いや、中身ワンコ疑惑があるから、意外と楽しんでいるのかもしれないが。せっせ、せっせ、掘り進めて、棒の正体が金属塊に繋がった、鈍器の柄だった事が判明した辺りで。
「グル……」
ふと、ガルムが動きを止めて、周りを見回し始めた。最近は喋るキャバリアというものがやたら多いが、ガルムも例にもれず……というわけではなく、彼(彼女?)の搭載兵器によるものなのだが、その辺の話はネタ依頼で語るもんじゃないから置いといて。
「ヴゥウウウ……」
「あ?なにさガルム?」
もう少しで見つけた廃棄武装が掘り出せるという時に、動きを止めて警戒態勢を取ったビーストキャバリアに、ジュディスが眉間に皺を寄せる。
「バウッ!!」
その咆哮に、近隣のガラクタが吹き飛んだ。ただの鳴き声ではなく、大気を震わす砲弾を放ったキャバリアの挙動に、ジュディスは苛立たし気に。
「急にギャンギャン吠え始めて……マルチスキャニングセンサーに反応……はないよね?敵かな?何も居ないけど?ほら、さっさと仕事を済ませるよ!」
「クゥン……」
ちょっと不満そうな声を残して、ガルムは武装の発掘作業を再開するのだった。
「……キャバリア、起動」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の音声を認識して、無数のキャバリアが召喚されると、各々の役割に散って行く。資材の回収、及び運搬。そして……あー、この辺はちょっと後で記録するか。
『あんまり気分の良い作業じゃあないねぇ。奏者、こういう時は音楽じゃないかい!?』
「クレイドル、使えるものは使わねばなりません。あと演奏はしません」
小枝子の搭乗する、魔女を彷彿とさせる意匠のキャバリア……ではなく、その機体が搭載している魔楽機と呼ばれる特殊兵装のAIの声に、彼女はため息を溢し。
「……此処に野晒しにしている事が、良い事とは思いません」
それは、資材になるはずだった金属を風雨に晒して劣化させてしまう事を言っているのか、それとも……意図を汲んだクレイドルは小さく唸ると、その身をバイオリンに変形させて。
『まぁ、此処に放置している方がむしろ良くないのかもね?とはいえ、だ。使わせてもらう以上は、死者には敬意が必要だろう?』
「……」
先ほどよりも短い呼気を残して、小枝子が操縦桿を握る。手元で小さく揺らせば機体の腕は前後左右に動き、ピンと張られた弦の上を粒子光線が走る弓が踊り、静かな音色を奏で始めた。
(「騒ぎ立てているのは事実……謝罪と感謝を込めて、弾きましょう」)
目蓋を降ろした小枝子が曲を贈る中、呼び出された自律機体達は己が使命を遂行する……。
時は少々遡り、グリモア猟兵から依頼の通達があった、とあるお家の一室の事。
「ほむほむ、運搬依頼ですか。私もお役に立てそうな気がします」
「……その心は」
「無機物なら食べられますから。食材イマジネーションを磨く良い機会な気がします」
先ほどとは打って変わって、漫才かなって始まり方をしたのが御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)と花燕のコンビ。桜花の借りている部屋に一緒に住むため、人間形態で過ごしていた花燕は、無機物とか有機物とかそんな話以前に、曰く付きの土地に散らばった血濡れの残骸なんか、食べちゃ駄目なんじゃないかなぁ、と思いつつ、桜花のぶっ飛んだ行動力を前に、無駄なんだろうなぁ……と諦めて、そろそろお別れが近づいてきた炬燵の中で丸くなると。
「……行ってらっしゃい」
私は絶対に行きませんよモードに移行する、が、しかし。
「何言ってるんですか花燕さん。一緒に行くに決まってるじゃないですか」
「……え〜」
と、引きずり出したのが今朝の事。何とか現場までは連れて来たものの、大量のスクラップを目の当たりにした花燕は口元を押さえて丸まったかと思えば、助手席のシートにしがみつき。
「皆にとっては鉄屑みたいなものだけど……私にとっては自分達の死体を運んでるみたいでやだ……」
と、ガチめに拒否られて、結局一人で作業する事になった桜花なのでした、っていうのが現状。結果、桜花は車を停めて、しばらくウロチョロしていたのだが、不意に立ち止まると唸り始める。
「使い道が人形焼くらいしか浮かびません。修行不足です……燃え上がれ私のイマジネーション!あ、皆さんは適当に資材集めお願いします」
『はいよー!!』
呼び出された陽気な小人達は穴掘り技術を活かして、埋まってしまった廃材を掘り出して、運び始めるのだった……が。
「折角の鉄板ですし……あ、いえ、キャバリアの装甲だから、純粋な鉄ではなく、特殊な合金ですよね……これでお好み焼きとか焼いたらどうなるんでしょう……」
桜花、お仕事サボってない……?
「ジャンクヤードで、スカベンジャー……行って、みようかな」
ベティ・チェン(迷子の犬ッコロ・f36698)は使命感とか正義感よりも、ちょっとした好奇心で現場に訪れていた。というのも……。
「四龍の装備は拾えなくても、スペランサが使える装備は拾えそうな気がする」
諸事情により、万年金欠のベティには、キャバリア二機の追加兵装を獲得するだけの資金がないからだったりする。
「拾ったもの。全部渡す契約じゃ、ない、よね?いいもの、あるといいなあ」
……依頼内容的に、多分、全部納品しないといけないんだけど、その辺は報酬と調整って事で応相談かな……?
まぁその辺の相談はマドリム辺りと直談判になる気がするから置いといて、ベティはいくつかの煙玉を焚き、布を被せて空に上がる煙を調整して忍者信号を上げて……。
『マイドッ!ハンヨーシノビ、デス!!』
二百九十五人の、ザ・忍者って感じの集団を呼び出した。
「えと、お代は。そっちが拾ったものの、三割。選択権と、条件アリ。依頼は、二つ。キャバリアがすぐ使えそうな、修理軽微か修理不要な兵装の、発掘と。キャバリア修理に使えそうな、部品の、発掘。選択権の、条件は。先に、ボクが一つ、兵装を取る。どう?」
なんとまー、いう事を聞いてくれる仲間ではなく、日雇いのバイト形式なんですよね、コレ。スッゲー数の忍者たちが馬鹿でかい円陣を組んで、ひそひそ……最後に、一斉に頷いて。
『委細承知、任された!!』
かくして、文字通りの人海戦術を展開するベティが発見したのは、コックピットが圧壊しているにも関わらず、奇跡的にオーバーとアンダーのフレームが繋がっているキャバリア……正確には、そうだったモノ。
「ヒトも、ドナーになる。キャバリアがなっても、おかしくない。事後承諾、だけど」
そっと両手を合わせて、一礼してから忍者たちと解体作業に入ってからふと思う。
「死にかけと死体は似てる……追剥じゃないといいけど」
生き物であれば、脈とか呼吸を見るって手段もあるが、今回の相手はキャバリア。完全に死んでいるのか、実はエネルギー切れを起こして眠っているだけなのかは、ベティには判断がつかない。
「……死んでます、ように」
ちょっとだけ、お祈りしながら装甲を剥ぐベティなのだった。
「……ラウンズからの依頼にしては、まだ自滅していないだけまともだな……もっとも、それが普通だし、ましてラウンズならフラグだとしか思えないんだけどな……」
涼風・穹(人間の探索者・f02404)は若干遠い目になりつつ、愛機、ズィルバーンヤークトフントの歩みを進める。
「戦場跡に生身で行くのは危険だろう。幽霊云々以前に、不発弾やらの危険物や『有機物』が腐敗して疫病の温床になっていたりと物騒なものがごろごろしているだろうしな」
そして現場は案の定、ぶっ壊れた機体の他に、機体が破壊されたか、あるいは弾切れを起こしたのか、放置されたままの武装も転がっている。無論、そのどれもがとても戦闘に利用できるようには見えないのだが……。
「こういう時こそ俺の出番だな」
ズィルバーンヤークトフントが掌を上にして広げれば、ゆっくりと回転するカードが生成される。本来であれば直に触れる必要があるUCだが、今回はカードが浮遊した状態で手を向けると、ゆっくりとスクラップを吸引してくれる特別仕様らしい。少しずつガラクタを吸い込んでいくカードだが……。
「中はフルオートの整備工場だからな。部品ごとに分けるなり寄せ集めから使える機体を組み上げるなりしてくれるだろう……残骸は抵抗してカードから勝手に出てきたりはしないしな」
最後に何故かフラグを建てていく穹なのだった。
「はぁ~、出る……ねぇ?」
ながーいため息をついたおじ様の名は、ヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵・f27848)。肩越しに振り返った彼の後ろには、総勢百四十七名の工兵隊が並んでいる。
「散っていった仲間を呼び起こしてる俺が言えたもんじゃねぇな」
自嘲気味に笑ったヴィリーは腕を高く伸ばし、ハンドサインを送る。それを見届けた部隊後方に待機していたジャイアントブレーカーとトラックが人員を避け、スクラップの横に来ると。
「よーし野郎共!今日の仕事はサルベージだ!縁もゆかりもねぇ国だが、俺達みたいな軍人モドキが守ってやらなきゃならねぇ市民がいる事に違いはねぇ!顔も見た事ない連中だが、その生活の足しにしてやろうぜ!!」
ヴィリーの声を合図に部隊が散開。各々の持ち場に着くと、ヴィリーはジャイアントブレーカーが瓦礫を取っ払った下に眠っていた、大破したキャバリアに登って。
「装甲はもう、一度溶かして精製しなおすくらいじゃねぇと使えないな……だが、傷の具合を見るに、中身は使えるかもしれん」
ヴィリーが発見したキャバリアはコアユニットとオーバーフレーム、それぞれにCPUを搭載した射撃支援機能を有する機体だった。レーザーガンを構えると、安全装置を弄って照準モードと射撃モードの中間に出力を調整し、トリガーを引きっぱなしにする。ジリジリと赤熱して頭部装甲が溶け始めたらトリガーを放し、ちょっと離れた位置に同じことをして……。
「この点線にそってディスクグラインダーかけてくれ。多分、マシンアイが拾った情報を頭【CPU】に持ってって処理するタイプのはずだから、こっからここまで、かつ刃を沈ませないようにギリギリで切れば綺麗に取り出せるはずだ。つっても、基板をまっさらにして再度プログラムする必要があるはずだから、基板さえ無事なら周りの配線の方は多少切っちまってもいい」
目印の焼き跡をつけたヘッドパーツを銃で叩きながら工兵に指示をしたヴィリーが視線を降ろすと、ハッチが潰れて開閉できなくなったコックピットを解体しようとしている工兵が見えた。
「ガスウェルダーを使う時は注意しろよ、たまに他の猟兵がハッチャケてる時もあるからな、巻き添えはゴメンだぜ」
分かってますよ!とハンドサインを返した工兵に、やれやれ、とため息をついたヴィリーは煙草を取り出して……。
「いや、さすがにここはマズいな」
他の工兵の動きを見るついでに、ちょっと離れた位置まで煙草をふかしに行くのだった。
かくして、猟兵達は資材になりうる物の回収に精を出すのだった……よし、俺の義務は果たした。後は知らん。
……最初に異変に遭遇したのは、アイだった。
「うぅ……我ながら、どうしてこんな依頼を受けてしまったのでしょう……」
『依頼内容をきちんと確認しないからですよ』
オベイロンに小言を言われつつ、廃材を引っ張り出して来るアイは、元はマシンヘッドだったと思しき球状のそれを転がして運んでいると。
――なんであなただけ生きているの?
「ひっ!?」
『どうしました?』
「いいいい、今!誰かの声が!?」
ガタガタ震えながら足を止めてしまうアイだが、オベイロンのセンサーには反応がなく……。
『気のせいではありませんか?』
「そ、そうですよね!誰もいないのに声なんてしませんよね!!」
と、再びコロコロし始めると……。
――なんであなただけ生きているの?
「やっぱり気のせいじゃないですよ!?」
『何がですか?』
再び聞こえた声に、再びアイは足を止めて周囲を警戒。しかし、そこは広い戦場跡。他の猟兵とて傍にはいなかった。
『ほら、センサーに感なし。早く運びましょう』
「そ、そうですね!そして早く帰っ……」
ぐるり、運んでいたキャバリアの首が、振り返る。
ナ ン デ ア ナ タ ダ ケ ?
「いやぁああああああ!?」
「……今の声、何?」
『僚機からSOSコールを確認したが……同時に、『驚いただけです、失礼しました』とメッセージが届いている』
アイの悲鳴にシルヴィが反応すると、ヨルが届いた通信をチェックして、ため息交じりに。
『曰く付きの戦場跡、という状況から、恐怖心を駆り立てられて目が錯覚を起こしたのだろう。シルヴィ、君も気を付けたまえよ』
「……気を付けるもなにも」
損傷の酷い装甲を引き剥がせば、それがコックピットだったらしく、中に残されていた『有機物』を放り捨てたシルヴィは使えそうな金属塊を運びながら。
「出ても潰す。それだけ」
短く言って、作業を続けていると。
「そうだよね、シルヴィは私達だって、ご主人様だって潰したもんね」
「ッ!?」
不意の声に、振り返る。しかし、そこにあるのは万が一に備えた、シルヴィの生命保護のための機材だけだ。
『どうかしたかね?』
「……なんでもない!」
自分に言い聞かせるように、大声を上げたシルヴィが再び作業を開始すると。
「いいよね……自分だけ助かって……自分だけ逃げだして……」
「……ヨル?なんか言った?」
『む?私は何も発していないが?』
しかし、シルヴィの声が微かに震えている……異変に気付いたヨルが周囲をスキャンするが、何も引っかからなかった。
「私達にも同じものが配備されてたはずなのに……シルヴィだけ……」
「何……なんなの……!?」
『シルヴィ、落ち付きたまえ。君は錯乱しているようだ。一度深呼吸するといい』
ヨルに促されるまま目蓋を降ろし、深く息を吸って、吐いて、再び目を開くと。
「ねぇ、シルヴィ……私達、同じ境遇の、お友達よね?」
「ッ!?」
咄嗟に、トリガーを握った。連動したミサイルポッドが起動して弾頭をばら撒き、コンソールに映っていた地上の人影を焼き払う。濛々と立ち込める煙を映す画面を、見開いた両目で凝視するシルヴィは短い呼吸を繰り返していて。
『シルヴィ、先ほどからおかしいぞ。一体どうしたのかね?』
「……死んだ?ねぇ、あいつ死んだ!?」
『あいつ?』
震え声で叫ぶシルヴィに釣られて、ヨルが地上を確認すると同時にセンサーによる探知を走らせるが、そこに反応はない。が、ここで事実を告げても、何の救いにはならないと知っている故に。
『あぁ、死んだとも。とはいえ、この至近距離でミサイルなど叩き込んだせいで、血痕も残さず消し飛んでしまったから、君に確認させる手段がない事は申し訳ないが』
「……そう、ならいい」
と、シルヴィが少しずつ呼吸を整えようとした時だった。
「そうだよ……私達、死んじゃったの……」
「ひっ!?」
ゆっくりと、周辺状況を映し出すコンソールからにじみ出るように姿を見せたのは、全身が鉄屑で引き裂かれて臓腑を晒し、頭の半分は焼け焦げて、赤黒い眼窩を晒す、『見覚えのある』少女で……。
「仲間外れって、よくないでしょう?だからね、シルヴィ……」
コ ッ チ ニ オ イ デ ?
「うわぁあああああああ!?」
『シルヴィ!?どうしたのだ!?』
ミドガルズは機能を停止して、座り込んでしまった。
「……ちょっと、ガルム?」
そしてこちらは発掘作業の途中から、動かなくなってしまった機体の中に閉じ込められた形のジュディス。操縦桿を揺らそうとも、ブーストペダルを踏み込もうとも、一切操作を受け付けてくれない。だというのに、『お偉いさん』から預けられた機体は機能を停止するどころか臨戦態勢を維持したまま……つまり、正常に稼働した上で、ジュディスの操縦を拒否しているのだ。
仕方がないから機体から降りようとするが、コックピットハッチは頑なに解除を拒み、自分一人での調査もままならない。
「一体、何が起きてるっていうの……?」
とはいえ、実はこの手の経験は始めてではない。
「まさか……アンタには、何か見えてるの?」
ガルムは答えない。しかし、わずかに身を捻り、胴体を庇うような仕草はコックピットを……ジュディスを守ろうとしているようにも見える。
「あーもー!本当になんなのよアンタは!!」
他の猟兵が絶叫している中、ジュディスは頭を抱えて違う意味で叫ぶのだった。
「さーてお嬢さん方、声をかけられた理由は分かってるか?」
「……」
「えぇ、そういう事でしょう」
ヴィリーが短くなった煙草を携帯灰皿に押し込むと、ベティが小さく頷き、桜花は扇子を広げて。
「私に声をかけたという事は、小腹が空いたという事ですね!」
「「……は?」」
気の抜けたヴィリーとベティが同時に首を傾げるが、当の桜花はドヤ顔で。
「私の車はどこでもお店を展開できるキャンピングカーならぬ、クッキングカーですからね!さぁ、ご注文はなんですか!?」
などと、パーラーメイドの本領発揮と言わんばかりにノリノリの桜花だが。
「お前んとこの妖精の数を言ってみろ」
「……はい?」
ヴィリーの質問に、桜花が固まった。答えない桜花から、ベティの方に視線が滑ると。
「ボクのとこ、忍者、呼んだ数より、一人、多い」
「やっぱりか。俺のとこも一人、知らねぇ奴がいる」
で、お前は?と言わんばかりに、ヴィリーとベティが視線を向けると、桜花は両手の人差し指をくっつけて目を逸らしながら。
「私は、その……彼らの自主性を重んじているので……」
「だから『出た』時に分かんねぇんだろ」
「ぎゅう……」
ぐうの音が潰れてしまった桜花だが、事前に聞いていた話と照らし合わせるに。
「そういえば、お二人は平気なんですね」
「幽霊が怖くないかってことか?」
ヴィリーは呆れたような顔をするが、あー、いや……と頭をかき。
「俺はいわゆる、宇宙世界の生まれなんだが……そこで人が生活してる宇宙船に、一体何人乗ってるか知ってるか?吹っ飛んだ船も数しれず。なら、あの宇宙【エーテルの海】には大量の思念体が浮いてる筈だ」
などと、頭上の空を示すヴィリーは、ちらと、透過装甲が砕け散り、中の電球が露出したマシンヘッドの照明パーツを示して。
「それにスペースオペラワールド宙域では、ある日突然消し飛んだ惑星も少からずあるだろう、そこのフィラメントの切れた電球みたいに前触れなくな。俺らにとっちゃ、やれ死人だの亡霊だのは、身近どころかそいつらの腹の中で生活してるようなモンなんだ。今更どうってことはねぇよ」
鼻で笑ったヴィリーは、桜花を見遣ると。
「そういうお前さんはどうなんだ?」
「私はお会いできてうれしいですよ?だってほら、まずは遭遇しないと、転生も何もありませんから!」
「お、おぅ……」
何言ってんだコイツ?って顔したヴィリーだったが、桜花の頭には小さな桜の花が咲いている。それを見て、彼女が異界の怨霊とも亡霊ともつかぬ者共を導く立場なのだと察して、小さく笑った。
と、ここで先ほどから無言のベティに、二人の意識が向かうと。
「幽、霊……お腹の、中……?」
ベティの頭の中では大宇宙という名のオバケがいて、そのお腹の中に地球があって、地球の中に自分がいて、つまり自分は既にオバケに食べられた後ということで、でも自分は生きてるからオバケではなくて、死んだ人はオバケになって、オバケは宇宙になって……と、謎のグルグルを起こしてスペースワンコ状態になっていた。
「敵性存在あり、か……」
ヴィリー達から、どうやら侵入者が存在しているらしいと報告を受けた穹はふと虚空を見遣る。
「オブリビオンマシンがこっちに向かって来てるわけだし、既に何かを仕掛けられている可能性は否めないよな……」
だとしたら、こちらもいつでも打って出られるように身構えておく必要がある、なんて思った瞬間である。
ガァン!!凄まじい金属音を立てて、カードに取り込んでいた廃材が止まった。
「な、なんだ?」
もしや、容量の限界を迎えたのだろうか、と焦る穹がズィルバーンヤークトフントの手元を見遣ると、吸い込もうとした廃材がゆっくりと押し出されて、キャバリアの腕が見えてくる。迷彩効果を狙ったものか、モスグリーンの腕に釣られてもう一本の腕と、扁平な胴体……そこに連なる六本の脚。そして円盤状の胴体は磨き上げられたような平面で、三つの首が回転しながら動きまわっており……ボトッ、金属製のはずが、やたら生々しい音を立てて落ちたそれは、胴体にある三つの顔でズィルバーンヤークトフントの頭部を見つめ、ピタと止まると。
「キャバリ・リ!」
再び首を回転させて胴体上を滑らせながら、八本の四肢(?)で素早く距離を詰めてくる!
「うぉぁあああ気色悪ぃいいいいい!?」
カサカサカサカサ……禍々しいテーブルのような奇妙な機体との邂逅を果たしてしまったあなた、正気度判定のお時間です。
「つまり、巨神は埋めておかないといけないと?」
戦場が段々と混沌として参りましたが、今度は例の巨大な社からお送りしています。
小枝子の質問に、コックピットにいるんだから顔なんて見えてないけど、頷いて見せた摩那曰く。
「今まで、私達は二機の巨神が封印された現場に赴きましたが、このタカマガハラに眠る機体は、どれも目覚めるだけで災厄を起こす機体だそうでして……」
えぇはいそうなんですよ。この手の案件、三回目だから目覚めさせんなって説明すんの忘れてて、小枝子は奪われる前に確保するつもりか、あるいは目視できる状態にすることで、気が付いたらオブリビオンマシンに奪われてました、なんてオチを回避しようとしていたのか、巨神を露出させようとしたっぽいんですね。
結果、巨神を動かせないように社を更にバリケードで囲もうとしていた摩那と、社の解体に来た小枝子のとこのキャバリア部隊がかち合って今に至る、という事に。
「事情は分かりました。しかし……」
ふと、小枝子は社を見上げて。
「これ、本当にキャバリア一機の為のものでありますか?」
キャバリアは五メートルという統一規格で製造される。しかし、目の前の社は目測で六、七十メートルはある。それより一回り二回り小さいとしても、五十メートルはある事になるのだが。
「他の所はこのくらいの大きさの、岩だったんですよね……」
「岩でありますか!?」
そらー、ネタ依頼とは無縁そうな小枝子だもの、驚くでしょうね。
「一体、どんなキャバリアなのでありましょうか……?」
「気にはなりますけど、変に覗いて目覚めさせて、地図を白紙にするようなことになったら大変ですからね……」
とまぁ、小枝子は話せばわかってくれそうだからまだいいんだけどさ。
「んー、スクラップを集めて運んで集めて運んで……飽きて来たわね」
何かしでかしそうで怖いのがこちら、水之江さんです。
「何か面白い事ないかしらねぇ……」
などと、ぼんやりワダツミに吸い込まれていくスクラップを眺めていたら、通信機から凄まじい騒音が響く。聞くものが聞けば、それは騒音ではなく、向こう側にいるであろう者の怒号だったと分かるかもしれない。
めんどくさそうに目を細めた水之江はボリュームを絞って怒鳴り声を小さくしつつ。
「だからスクラップが動いたり喋ったりするのはよくあることだって言ってるでしょう?ていうかあなた達だって喋るスクラップみたいなものじゃない。そんなに騒ぐなら、鏡でも見てれば慣れるわよ。じゃあね!」
などと通信を遮断して電源を落とした水之江は、改めてお茶を淹れ直し。
「まったく、私みたいな天才って、凡才に理解されないから、本当に苦労人よね……」
などと呟きながら、何故か片側だけ妙に重い肩をぐりぐり回して解すのだった。
「えーっと……?」
さて、ここで輸送から帰ってきたナミエが困惑する事になった原因がこちらのお二人。
「おばけこわいおばけこわいおばけこわいおばけこわい……」
「ヨル……よるぅ……!」
白い機械装甲が膝を抱えてガタガタガタガタしている横で、赤いパイロットスーツの少女がスーツ姿の男性の胸にしがみついて泣いている……アイとシルヴィのとんでもない有様に、ついていけないナミエがチラチラと視線で右往左往していると。
『アイは、どうやら運んでいたマシンヘッドをオバケの顔と見間違えてしまったようでして……』
「こちらも似たようなもの……だったらよかったのだが」
アイが丸まって震えている為、俯いたままビブラートボイスで説明してくれるオベイロンに対し、ヒューマノイドボディに移行したヨルの目つきは険しい。
「こちらは見間違い、というにはあまりにも状況がおかしい」
現在進行形でシャツをびしょびしょにするシルヴィの髪を撫でて、なだめながら語るヨルは、その時の機内映像を投射する。そこには恐怖に震えて涙するシルヴィの姿が映っているのだが……。
『誰か、います?』
「え?」
シルヴィしか映っていない映像だというのに、オベイロンの指摘にナミエが首を傾げ。
「シルヴィの目を見てくれるかね?瞳孔の動きからして、彼女のピントはすぐ傍に当てられている。だが、コックピットには誰も入れていないし、ミドガルズのセンサーにも反応はなかった」
「え、じゃあ、本物のオバケが目の前にいたってこと!?」
ナミエが驚いた途端、アイとシルヴィがビクッ!
「「いやぁああああああ!?」」
更に泣き出してしまう二人に、保護者組からジトッとした目を向けられて、ナミエはてへぺろ顔でごまかすのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『喚造機・マッシャー』
|
POW : 鋳造
【呪殺追尾光線砲台】に変形し、自身の【遺骸を鋳潰し、抽出し、溜め込んだ殺意】を代償に、自身の【三つ目砲台の呪殺力とホーミング性能】を強化する。
SPD : 鍛造
自身の【遺骸を鋳潰し、抽出し、溜め込んだ憤怒】を【代償に、三つ目の貫通熱線砲台】に変形する。変形中は攻撃力・射程が3倍、移動力は0になる。
WIZ : 製造
【遺骸を鋳潰し、抽出し、溜め込んだ狂気】を籠めた【三つ目から発狂オブリビオンマシン化光線】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【正気】と【キャバリア】のみを攻撃する。
イラスト:100
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「テーラテラテラテラー!」
奇妙な笑い声をあげる、重機のようなオブリビオンマシンがいた。
「戦場跡の蠢く無尽蔵の恐怖……コレを掻き集めて濃縮して、再び解き放つだけで近づいてくる連中がどいつもこいつも泣きわめくのが、面白くて仕方ないテラー!」
ガッコガッコ……転がっている無惨なキャバリアの残骸を、自前の溶鉱炉に放り込むと、そこに宿った恐怖の感情が抽出されて、濃縮されていく。
「どれほど機体や心が強くとも、それを操作する人格部分に無理やり恐怖の感情をぶち込んでやれば、勝手にトラウマを引き起こして、実際には何とも思っていなくても、自分で自分に『それが怖い』と思いこませて自滅してくれるんだから、楽な仕事でテラね!」
まぁ要するに、猟兵が見た幽霊とやらの正体は、こいつが戦場にまき散らしていた恐怖の感情の影響を受けた結果だったみたいですね。
「さーて、あとはこの『素材』の山の中を見つからないように逃げ回ってれば、あいつらは勝手に潰れてくれるテラー。心が折れて、戦えなくなってから、あいつらも素材にしてやるテラー……」
無感動な仮面のようなマシンヘッドが、笑った気がした。
※スクラップの山で見通しの悪い戦場跡で、逃げ回る敵と鬼ごっこしながらの戦闘になります。なおかつ、戦場には今まで敵が抽出、濃縮、放出を繰り返してきた恐怖が充満しており、自分にとって『怖いもの』が襲いかかってくる幻覚を見続けることになります。どのくらいヤバいのかは、幽霊が苦手な二人組からお察しください。あと、ついでに戦場には敵とは別に、六本の脚と二本の腕が、円盤状の胴体に並んでくっつき、平坦な胴体の上に三つの頭がグルグル回転しながら動き回っている謎の機体も、たまに襲いかかってきたり来なかったりするようです(要はオマケ要素。無視してオーケー)
涼風・穹
正気度判定に失敗した挙句に狂人の洞察力の判定には成功
この気色悪い変なのはスクラップにぶつかったなら物理攻撃が有効
つまり幽霊とかではないから壊せば資源として使えるという謎理論に到達
謎機体に向けて《贋作者》で作り出した銃火器が火を噴きます
周囲の被害も気にせず物陰に何かが隠れているかもなんて考えもせずに、ライフルからバズーカその他諸々をそれはもう盛大に撃ちまくります
怖いもの?
先程からどう見ても死んでいる状態の知人達から責められ続けています
一応グリモア猟兵の端くれですので内心では自分の出す依頼で予知の見落としや伝達に齟齬があったせいで猟兵達を死なせてしまうような事態にならないかと恐れているせいでしょう
御園・桜花
「恐怖…言われてみれば、感じたことが無かったような…憤りとか怒りとか驚愕とかはありますけれど」
「影朧になるかならないか、死者の違いはそれだけだと思いますし」
首傾げ
「花燕さんが怖がるから、いっそ此の辺りの無機物全部食材にしてしまおうかと思いましたけれど、今回コンテナ持って来ませんでしたし…計画不足でした」反省
「此れは彼れです。動く物だけ厳選して食材イマジネーションを磨けと言う神の試練!」迷走
UC「食欲の権化」
第六感と呪詛耐性大活躍
駆動音や悲鳴聞き駆け付け
敵と思われる動く物を桜鋼扇でバシバシ叩く
敵の攻撃は第六感で躱す
「三面八脚…人面蟹!鱈場蟹最高です!」
「ポテトマッシャー?タラモ?ポテサラ!」
シルヴィ・フォーアンサー
……帰るぅ、もう帰るぅ(涙目+若干幼児化)
『残念だがすぐに帰れそうにはない、気をしっかり持て』
ヨルから目撃したのはオブリビオンマシンによる幻影攻撃で
本当の幽霊等ではないだろうと言われてなんとか持ち直し及び腰ながらも敵捜索に出ます。
またも出現する同型モデルの娘達や最近穴だらけにした盗賊(クロムキャバリアノベル:懲悪どもの産気参照)
がすり抜けて出てくるのを幻覚幻覚となけなしの勇気で振り払うも
下半身が潰れた血塗れご主人様(同じく叛逆的クリティカル、偶然と必然のゲーム参照)
には耐えられなくて少々熟れたが食いではありそうだなぁと(カニバじゃなく性的ロリコン)迫られると
ごめんなさい、許して、痛いのはもう嫌と繰り返して追い詰められて
極度の緊張からの過呼吸を首を絞められてると思いこんで苦しみ悶える。
ストレスと恐怖から限界を超えて衝動的にシルエット・ミラージュからのテラー・エリミネートを発動。
狙いも付けず分身と手当たり次第にスクラップを透過攻撃をばら撒く、当たるかは運。
最終的に気絶かカロリー切れでダウン。
ナミエ・オイローパ
苦戦/アドリブ/連携可
スクラップの影に隠れて敵の様子をうかがう。
「なるほど、ああやってキャバリアの残留思念を抽出していたのですね」
飛んでくる敵の光線を回避するも、運悪くキャバリアの装甲に反射した光線が直撃。
目から光が消え、フラフラと敵に飛んでいく。
「ねぇ、気持ちいいことしない?」
UC発動。敵も動きを止める。パラボラアンテナの様な砲台にディープキスを交わし・・・(ここで「チョコとは名ばかりの名状しがたき物体X」のトラウマ発動)
とりあえず正気に戻ったら乱入してきた謎の機体にもUCを発動し、敵にけしかける。
「『巨神』じゃなくてアレ(謎の機体)でもいいかな」(考え直せ)
アイ・リスパー
アイが「おばけこわいおばけこわい」と使い物にならないため、自動操縦に切り替えて、私、オベイロンがお届けします。
『このままでは、アイの精神がもちませんね。
ここは私がお相手しましょう』
アイのせいで私がスクラップにされるのは困りますからね。(本音)
機械の墓標を冒涜し、『素材』としか見ないオブリビオンマシンは排除させていただきましょう。
『EMフィィィルド!』
電磁障壁を展開し、光線による攻撃を減衰させて防ぎましょう。
『反撃です!
プラズマブレェェェド!』
距離を詰め、荷電粒子のブレードで斬り裂き――
『とどめです!
プラズマキャノォォォン!』
敵に向かって大型荷電粒子砲を放ちましょう。
機械の墓所で眠ってください。
桐嶋・水之江
やたら肩が凝るわねぇ
働き過ぎ?
なに?四十肩?
次同じ事言ったら病院で栄養食を食べる羽目になるわよ?
いまレーダーに反応があったわね?
敵かしら?
邪魔されるのも面白くないしカナリアで掃除してくるわ
あらあら?なによこれ?
私の健康診断の結果じゃない
どうしてこんな所に…メガビームキャノンで吹っ飛ばしましょう
だって嫌だもの
こんな恐ろしいもの見たくないわ
なんでかって?聞けば命に関わるわよ?
ええい次から次と…まさかこれは…私が破り捨てた健康診断の怨念?
んな訳ないじゃない
幽霊なんてプラズマなんだから
そういう種族もいるけどあれもプラズマよ
という訳でプラズマにはプラズマよ
祝福でバフ掛けたハイパーメガバスターでさよならよ
ジュディス・ホーゼンフェルト
うわああああ!
注射器だああああ!
仕方ないでしょーが!
アタシだって怖いもんは怖いんだよ!
むしろアレが怖くないって方がどうかしてるんじゃないの!?
自分の身体にブッとい針ブッ刺されて変な薬注入されて…平気でいられる方がおかしいってもんでしょーが!
ぎゃー!こっち来んな!
ガルム!もっと速く走りなよ!
いやちょっと待った
なんでこんな所に注射器があるのさ?
そもそも注射器が追いかけて来るなんておかしいでしょ?
これは…幻覚だ!
ふざけやがって!引き付けてパルスクローの斬狂惨禍でバラバラにしてやる!
どこのどいつだコノヤロー!
ホーミングレーザー?ジャミングスモーク展開!
そこか!
ビームキャノンとミサイルを叩き込んでやる!
ベティ・チェン
「…|電脳幽霊《サイバネティクスゴースト》、か」
手を打つ
電脳魔術師が強制シャットダウンで電脳内に取り残され幽霊化する事例は遭遇済
「ここも、磁場異常がある、多分。それに」
「|貴族的何か《ヴァンパイアアトモスフィア》を狩るために、ボクらは生きてる」
笑う
「恐怖を、笑え!ブッダに会えば、ブッダを殺せ!」
「ドーモ、ネズミ=サン。ベティ、デス。キリステ・ゴーメン!」
殲禍炎剣に引っ掛からない高度から鳥瞰
猟兵やその仲間でない動く物に殲禍炎剣に引っ掛からないぎりぎり速度で吶喊
雷属性乗せた自分の身長ほどある大剣(偽神兵器)でぶった斬るヒット&アウェイ戦法
「遠い…」
戦闘後
確保した兵装以外怪力で1個ずつ抱え飛行で運搬
ヴィリー・フランツ
※如何様にお使い下さい
ヘヴィタイフーン搭乗
怖いもの:20歳頃の帝国残党との戦闘で自分のミスで戦死した同僚
心情:出たか、なら本業に取り掛かろう。
手段:【神経ステープラー】処置、実行、強固な狂気耐性を得る、これを敵幻惑の対抗とする。
「修正プログラム最終レベル、全システムチェック終了、ターゲット確認、排除開始」
工兵隊は任務を続行、敵はこちらで処理する。肩のアウル複合索敵システムで付近を索敵、念を入れて生体センサーも併用。
成功ならスクラップ山にスラスターによるブーストジャンプで登頂部に登りコングⅡ重無反動砲にて目標を砲撃、弾頭は榴弾、狙いはズレても破片効果はある、射線が通ったミサイルの斉射も加える。
黒木・摩那
UDCの化け物やカクリヨの妖怪相手にしてるから、お化けや幽霊は平気なんですけどね。
むしろ人間の方が怖いですよ。
そして、それよりも怖いアレ……
あんまりたくさん出ると殺意MAXになって、大爆発しちゃいますよ。
そんなモノが大量発生しないうちに成敗です。
【呪詛耐性】が効いている内に早々に片付けましょう。
敵の位置はドローン『マリオネット』で把握して。
目標を見つけたら、ヨーヨー『エクリプス』を巨大化&長射程化します。
あとはレーザーをかいくぐるように【念動力】で軌道を操作して、ブチ殺します。
人の恐怖で遊ぶなんて悪趣味なオプリピオンは潰します。
朱鷺透・小枝子
恐怖は敵だ!貴様オブリビオンだな!!壊れろォオ!!!
『どいてー!!奏者今ちょっと話が通じないよー!!』
デモニック・ララバイ操縦、周囲の恐怖に当てられ【闘争心】異常増幅。
変形フォースサーベルで光線を【武器受け】し、殺戮音叉をやたらめったらに発生させ伸ばし超振動【衝撃波】で周囲のキャバリア残骸を破砕しながらオブリビオンマシンを追う!
壊す、壊す!敵はいずこか!?我らに仇なすならば死ね!!!
壊れればお前も仲間だ!!お前もこっちにこい!!ハハハハハハハ!!!
何を笑うか!!!!
〈瞋憎喰〉で周囲の恐怖、怨念、執着をたらふく喰らってしまい、
遺骸の人格達と自身の人格を混合します。そのうち消化されて元に戻ります。
私の周囲にいたモノは、顔つき以外の全てが同じでした。白い髪と赤い瞳はアルビノを思わせ、誰も彼もがボロボロの術衣に身を包んでいました。その姿は私にとって、忘れることができないものです。全ての……そして、私という個体の始まりは、故郷の研究機関まで遡ります。
私達は、電脳適応能力を強化する実験で生み出された、デザインチャイルドでした。有益な遺伝子を持っていても、それを発現できなければ意味はありません。日々、過酷な実験を繰り返しては、成功しても失敗しても、私達は次々と殺されていきました。
恐怖という感情は生存本能を刺激し、脳を活性化させます。そのため、例え実験に成功したとしても、総合評価の平均に満たなかった個体は『廃棄』されました。そうして厳選に厳選を重ね、幸か不幸か最後の一人になった、『アイリス計画』の生き残り……それが、私という個体です。検体番号でしか呼ばれなかった兄弟姉妹達と異なり、私には正式に『アイリス』のネームタグが与えられました。
しかし、私がその名を呼ばれる事はなく、政府に発見された研究機関は解体され、携わった研究者はいなくなってしまいました。ようやく自由になれる……そう思った矢先、私を襲ったのは、いわゆる裏社会の人達です。彼らにとって、高い適性を持つ私の脳髄は電脳魔術を軍事利用する為に必要不可欠な物でした……あの時の事も、忘れられません。私を捕らえようとした……『政府の』エージェントさんの、冷たい目を。
私は故郷を離れ、全てを捨てて第二の人生を歩むつもりでした。ですが、死んでいった兄弟姉妹の事を思うと、『アイリス』という、私達が存在した証を完全に捨て去るには忍びなく……結局、新しい名前の一部に、その名を残したのです。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……私一人が生き残ってごめんなさい……」
本当は、幽霊など存在しないと分かっています。けれど、それを否定する事を、私の胸に刺さった棘が許してくれません。だから、私は幼い子どものように、目と耳を塞いで震える事しかできないのです。
――検体名『希望を囁く者』の記憶情報より抜粋
『って、何勝手に走馬灯みたいなものを見てるんですかー!?』
ながーい回想シーンを終えて、オベイロンが動き出す!
『アイが「おばけこわいおばけこわい」と使い物にならないため、自動操縦に切り替えて、私、オベイロンがお届けします』
こいつ、なんだかんだでネタ堕ちしないシステマティックなAIだと思ってたのに、ついにやらかしやがったな……。
『アイのせいで私がスクラップにされるのは困りますからね』
最近のAIは生存本能を実装してるのか……。
『どちらにせよ、このままでは、アイの精神がもちません。ここからは私がお相手しましょう』
ビカァン!真っ赤なアイカメラを光らせて、立ち上がったオベイロンはセンサーを走らせる。発見した微弱な反応は、同時に音声も拾っていた。
『機械の墓標を冒涜し、『素材』としか見ないオブリビオンマシンは排除させていただきましょう』
アイがほとんど死んだも同然と見誤り、近づきすぎた個体を察知したオベイロンは、電磁障壁を展開。
『EMフィィィルド!』
叫んだことで気づかれたが、敵が逃げたところでスクラップの山に飛び込み、残骸を蹴散らして最短距離で背後をとる。
「テラッ!?何故バレた!?」
敵もすぐさま反転し、体を畳むようにして、顔のように見える砲台をオベイロンに向けるが、撃ち出される光線は電磁障壁に逸らされ、肉薄するオベイロンは構えた刃に荷電粒子を走らせて。
『反撃です!プラズマブレェェェド!』
斬りつけた傷跡からスパークをまき散らし、蹴り飛ばして体勢を崩すと跳び上がり、肩の荷電粒子砲が砲門を開く。
『とどめです!プラズマキャノォォォン!』
「テラァアアアアアア!?」
チュドーン!!派手な爆発を起こした敵の光が、装甲に反射する。オベイロンはその中心地を見つめたまま。
『機械の墓所で眠ってください』
小さく呟くのだった。てゆーわけで、じゃんじゃん戦闘いくぞ!!
「やたら肩が凝るわねぇ……働き過ぎ?」
全部機械任せで、本人は仕事のしの字もしてない水之江がなんか言ってんな……。
「なに?四十肩?次同じ事言ったら病院で栄養食を食べる羽目になるわよ?」
言ってねぇし言われてブチ切れるって事は自覚あんだろお前!?まぁ、何を言ったところでそもそも水之江に『こちら』の声は届かないわけだが……待って、だとしたらあいつは誰に返事したんだ?
「……今、何か爆発した?」
深く考える前に、今まさにオベイロンが一体吹き飛ばした爆音を聞いた水之江が近隣を探知すると、アイを回収しようと集まっていたオブリビオンマシンがひっかかった。
「レーダーに反応があったわね?敵かしら?」
水之江がコードを送ればワダツミの中心に走る白いライン、その片側が開き、内部から黄金の機体がせり上がってくる。デッキロックが解除された機体は推進器に火を入れて、飛翔。しかし、そこから距離を稼ぐことなく推進力を失い落下して……。
「邪魔されるのも面白くないし、カナリアで掃除してくるわ」
ズゥン……水之江の前に、片膝をついた格好で落ちてくる。開かれたコックピットに水之江が納まると、空から何かが降ってくるが……。
「あらあら?なによこれ?」
アドバルーンよろしく、錘と風船がくっついたそれは、巨大な通知書であり。
「私の健康診断の結果じゃない。どうしてこんな所に……メガビームキャノンで吹っ飛ばしましょう」
カナリアは肩の砲塔を起動して、目の前にあった不健康証明書を焼き払い、その後ろにあったスクラップの山すらも消し炭に変えるが……なんで!?どうみても紙一枚に対してオーバーキルやろ!?
「だって嫌だもの、こんな恐ろしいもの見たくないわ……なんでかって?聞けば命に関わるわよ?」
いつまでも目を逸らしていると、そのうち取り返しのつかない事になると思うのだが……はてさて。
「ええい次から次と……まさかこれは……私が破り捨てた健康診断の怨念?んな訳ないじゃない、幽霊なんてプラズマなんだから」
一枚目を焼き払ったのが合図になったかのように、次々と降ってくる健康診断の結果。えーと……食生活の偏りと分かりやすい運動不足の傾向が見えますね?やはりあれか、忘れられかけたコロニーの片隅でボッチライフしてると、段々動かなく……。
「よし、消すわ」
突然の砲撃が診断結果を襲う!もはや焼き払うとかそういう次元じゃない火力をぶっ放した水之江は、スラスターを微弱稼働させてカナリアの姿勢を安定させると、出力を求めた結果、三角形の鉄板のような形状に行きついてしまった武装を構える。
「そういう種族もいるけどあれもプラズマよ、という訳でプラズマにはプラズマよ、祝福でバフ掛けたハイパーメガバスターでさよならよ」
とにかくプラズマってる事しか伝わってこないが、水之江はこんな人としてアレな頭をしているが、頭脳という意味で言えば人並み外れている。電脳魔術を用いる彼女の扱う術式は、それ単体で何かを実行するためのものではなく、自身の手元にある機器の性能を引き上げる……いわば、魔術という名のプログラム。
「対ショック姿勢良し、予測反動相殺シミュレーションOK、加速器稼働開始……」
あのー、水之江さん?これネタ依頼なのよ?なんでそんなガチ兵器を持ち込んでるのかな?
「消し飛びなさい」
引金を引いた瞬間、照射された光は診断書を文字通り『消滅』させ、その向こうのスクラップを溶解させるのみならず。
「テラ?」
何も知らないオブリビオンマシンを、ジュッ!!
「……いけない、レーダーから反応が消えてる。取り逃がしたかしら?」
オブリビオンマシンを流れ弾で消し飛ばした水之江は苛立たし気にコンソールを叩いて探査範囲を拡大するのだった。次は、もうちょっとマシな人だといいな……。
「うわああああ!注射器だああああ!」
違う意味でまともじゃない猟兵に当たってしまった気がするが、ネタ依頼ってのはこのくらいの方が落ち着く……見てるこっちは落ち着くかもしれないが、実際に絶叫するジュディスを腹の中に乗せているガルムは困惑しており。
「仕方ないでしょーが!アタシだって怖いもんは怖いんだよ!むしろアレが怖くないって方がどうかしてるんじゃないの!?」
「きゅぅん……」
操縦桿握り込んでコンソールに怒鳴りつけるジュディスだが、ガルムにしてみれば「そんなこと僕に言われても……」って顔になるばかり。まぁ、キャバリアだから表情なんてあってないようなもんなのだが、そもそもガルムには注射器という物が理解できない。
「自分の身体にブッとい針ブッ刺されて変な薬注入されて……平気でいられる方がおかしいってもんでしょーが!」
伝わっていない事を察したのか、その瞬間の恐怖に囚われているのか、目を見開いて語り続けるジュディスに、ガルムはその概要を把握。自分の背中を追ってきている飛行物を見遣り、コンソールにも巨大な注射器が映された。
「ぎゃー!こっち来んな!ガルム!もっと速く走りなよ!」
後ろ脚のブースターを点火し、ガルムが高速航行モードに入ろうとした瞬間である。どこぞの不健康魔女がぶっ放した荷電粒子砲がガルムの後方を焼き払い、注射器がその熱線をすり抜けて追って来た。
「荷電粒子が直撃して無事だと!?本当に注射器か!?」
と、恐怖と驚愕で涙目になるジュディスだったが……。
「いやちょっと待った、なんでこんな所に注射器があるのさ?」
見覚えのある熱線だったからこそ、その威力はよーく知っている。それが当たっても平気というとんでもない事態に、一周回って冷静になったジュディスは、ガルムを回頭させて、地面に爪を立てて急制動。
「そもそも注射器が追いかけて来るなんておかしいでしょ?これは……幻覚だ!」
真っ直ぐ突っ込んでくる注射器に向けて爪を振るえば、恐怖が薄れたことで引き裂かれたシリンダーが霧散する。自分がおちょくられていただけだと理解したジュディスは全身を震わせて……。
「ふざけやがって!引き付けてパルスクローでバラバラにしてやる!どこのどいつだコノヤロー!」
ガルムがその場で荒ぶり、爪が振るわれる度に放たれる衝撃波は、命中したスクラップを引き裂いて。
「テラ?」
山の向こうに潜んでいたオブリビオンマシンとご対面。
「ばれては仕方ないテラ……!」
「そこか!」
すぐさま変形して砲台モードになったオブリビオンマシンだが、ガルムの四足から噴き出した煙幕が機体を覆い隠して、照準装置が動かなくなる。当たらずとも牽制しようと、とにかく撃ちながら後退しようとしたオブリビオンマシン、その頭上へ煙幕を引き裂いてガルムが飛び出した。その背の砲塔は反転し、前方……飛び掛かろうとする重機染みた機体へ向けられており。
「全弾持っていけ!!」
両肩のミサイルと背中のビームキャノンを同時に叩き込み、大爆発を起こした反動で吹き飛んだガルムは空中で後転、敵機の健在を警戒しながら着地するも、煙が晴れた後には鉄屑しか残っていなかった。
「……出たか」
次々と響く爆発音と爆炎に、転がっていた装甲板に座って一息入れていたヴィリーは、ゆっくりと煙を吐く。
「……行くのか?」
「あぁ……」
隣に座っていた男は柔らかく微笑み、ヴィリーはいつもとは銘柄の違う煙草を消して、腰を上げる。そこへ走って来たトラックに向かって歩きながら、振り返りもせずに片手をあげて。
「あばよ。死人は死人らしく、大人しく眠ってろ」
「ははっ、手厳しいなぁ……」
苦笑する男は、鳩尾に大穴が開いており……。
(「ちったぁ貶してくれりゃ、こんなモンに頼らずに済んだんだがな」)
ヴィリーが吸っていた煙草の正体は、複数の薬草を特殊な配合で混ぜた葉巻であり、その香りを吸えば自律神経の働きを制御し、頭で何を考えていようと、問答無用で『無感情』に引きずり戻してくれる代物。
だからこそ向き合えた、ヴィリーにとって恐怖であり、黒歴史でもある、先に逝ってしまった同僚の姿。
「幻覚だって分かっててもよ、宇宙で相変わらず笑ってんのかって思うと……」
そこから先は、言葉が続かない。吸い込んだハーブの香りが、改めて思った事も、己が内から湧き出た想いも、全て呑みこんで消えていく。
「随分経つってのに、忘れられねぇもんだな」
傭兵家業を始めたばかりの頃……あの同僚にあった風穴は、本当はヴィリーに開いているはずだった。あのお人好しが自分を庇ったが為に、彼の命を犠牲にして自分が生きている。その事実に、ヴィリーが何を思ったところで、今は薬が忘れさせてくれた。
「さて、本業に取り掛かろう」
トラックの荷台にはシートがかけられており、その下に眠っているモノに用がある。工兵に覆いをどかせた下には、灰色迷彩柄のキャバリアが横たわっていた。
「修正プログラム最終レベル、全システムチェック終了」
乗り込んだヴィリーが淡く光るコンソールへ起動コードを打ち込み、ベルトで自分の体を固定する。徐々に光を強めていくコックピットは、テンペスト社の社章を示して周囲の環境情報を提供。マシンアイに光が灯ると、ヴィリーが乗り込んだ拠点防衛兵器……ヘヴィタイフーンが起き上がった。
「アウルの複合探査を舐めてもらっちゃ困るな」
センサーを走らせるとスラスターを点火。重量がありすぎるヘヴィタイフーンに空を飛ぶだけの機動力は皆無に等しいが、機体自身にも跳躍させることで高く『跳ぶ』ことくらいはできる。スクラップの山を半ば蹴り飛ばすように登頂付近に降り立ったヘヴィタイフーンは、自重によって崩れ始める山の上を滑落しながら無反動砲に榴弾を込めると、隣の山に撃ち込んだ。突き刺さった榴弾が爆ぜてスクラップを吹き飛ばすと……。
「悪いが、かくれんぼに付き合ってやる趣味はない」
「テラッ!?」
隠れ潜んでいたオブリビオンマシンが姿を晒す。山の傾斜に沿って滑り降りて来たヘヴィタイフーンが再び跳んで、オブリビオンマシンを踏みつけて押さえ込むと、肩の装甲が展開。
「じゃあな!」
肉食魚の名を冠した小型弾頭が殺到し、敵機をスクラップの仲間入りさせるのだった。
「……電脳幽霊【サイバネティクスゴースト】、か」
何かを納得して、ポンと手を打ったベティ。周りの猟兵達が見たという物を、既に遭遇した経験のある物に置き換えて、理解してしまえばそれは恐怖ではなく、知識に変わる。
「ここも、磁場異常がある、多分。それに」
ふと、自分にも見えている何か。既に恐怖を越えてしまったベティには、その詳細は分からないが……。
「貴族的何か【ヴァンパイアアトモスフィア】を狩るために、ボクらは生きてる」
にやり、口角が上がった。
「恐怖を、笑え!ブッダに会えば、ブッダを殺せ!」
振りかざす大剣は雷霆を纏い、周囲の磁場と反発する磁場を生み出してベティの体を浮遊させた。遥か上空……とはいかないが、ある程度の高度を確保したベティは、時に物陰から物陰を動き回り、時にスクラップの山を掘り進んで完全に姿をくらますオブリビオンマシンを見止める。
「そうか、ボク達は、敵が作った包囲網の中に、囚われていた!」
戦場のあちこちに散らばったオブリビオンマシン、喚造機・マッシャー。その特性は戦場の残骸を取り込んで、そこから抽出した残留思念……『恐怖という感情』を周囲にばらまき、縄張りに踏み込んだものを恐慌状態に陥れるもの。それに取り囲まれるような戦場になっているため、戦闘を長引かせるだけでどんどん猟兵が不利になるのだ。
「どうか、当たりません、ように……!」
殲禍炎剣は一定以上の高度、もしくは一定以上の速度で反応して撃墜する暴走衛星である。一応、ベティはワダツミよりも高い位置まで飛び上がったとはいえ、視界内に収まっているのはあくまでも猟兵がいる範囲程度。広域の地形情報を把握できないくらいなら大丈夫……な、はず?
「ドーモ、ネズミ=サン。ベティ、デス」
「テラッ!?」
急降下。敵の直上にすっ飛んできたベティはオブリビオンマシンの装甲に大剣を突き刺して、捻り、内部構造を捩じ切りながら。
「キリステ・ゴーメン!」
斬り上げるようにぶっこ抜き、大破させて再び上昇。次のオブリビオンマシンを狙いに向かうのだった。
「……帰るぅ、もう帰るぅ」
『残念だがすぐに帰れそうにはない、気をしっかり持て』
戦場には恐怖が充満している。たとえ遺伝子操作された人間であっても、一度心的外傷を抉られれば、正気を保ってはいられない。
ヨルから全ては幻影だったとも、オブリビオンマシンの攻撃なのだと説明をされてなお、コックピットに収まったシルヴィの双眸には涙が湛えられていた。
「おいおい、あの時の威勢はどうしたよ?」
「ひっ!?」
不意に、シートの後ろから声がする。振り向いた先にあった顔には、見覚えがあった。
「俺達の夢も希望もぶち抜いてくれやがってよぅ」
「俺達はさ、正義の味方だったんだよ」
「一見すりゃあ、いい国だったさ」
右から、左から、聞いたことがあるような、ないような声が続く。だって、銃声が全部掻き消してしまっていたから。でも、最後の声に、シルヴィはつい、顔を上げてしまった。
「立派な王様、愛国心溢れる軍人、真面目な国民……いかにも幸せそうだろう?」
その顔だけは、記憶に残っている。最後に殺した、盗賊団の頭だったから。
「だが実態はどうだ?新しいキャバリアの設計図なんてもんを俺らみたいなコソ泥に持ち出され、お前の様な余所者に奪還を依頼する……もはや自力であれこれできない所まで、腐っちまってたんだよ、あの国は。王は玉座にふんぞり返って、軍人どもは腐敗から賄賂が横行、国民達はそれに気づきながらも、プラント無しでは生きられない故に見て見ぬフリ……何と言われようと、誰かが動かなくちゃならなかった」
ぺり……ゆっくりと、剥がれ落ちていく。目をまん丸にした少女の前で、男の頭は皮が剥がれ落ちて、溶けるように肉が零れ落ちていく。ぺたり、何かがシルヴィの手に触れた。見ればそれは眼球だった。ぐるり転がり、ジッと見返す視線から逃れようと顔を背けても、首を失い、蜂の巣というには粗雑に穴が開いた胴体がぐらぐらしている所に遭遇する。
「分かるか?傭兵のお嬢ちゃんよ」
むりやり、正面を向けられた。そこにもう顔はなく、上顎を失った頭蓋だったモノが、舌を動かし言の葉を耳に注ぎ込んでくる。
「お前が全部台無しにしたんだ……俺達の命も、あの国の未来も、全部、全部な……!」
頬に触れる手を振り払おうとするのに、触れることができない。すり抜ける感触は、ただヒヤリとした冷気を以て、何かが『いる』事だけを伝えて……。
『しっかりしたまえ、シルヴィ!!』
「……あれ?」
気が付けば、ミドガルズは完全に足を止めており、シルヴィは操縦桿を握ったまま固まっていた。
『うなされていたが……まさか、また幻覚を見ていたのかね?』
「……多分、そう」
そっと、自分の頬に触れる。そこに先ほどまでの冷たさはない。
「……でも、大丈夫。ヨルが、起こしてくれたから……」
『いつまで甘えている気かね?』
「……え?」
いつもよりも、少し低いヨルムンガンドの声に、シルヴィは背筋を震わせた。
『私は戦闘補助プログラムであって、君の保護者ではない』
「……ヨル?何、言って……」
『戦えないアンサーヒューマンに価値などないと言っているのだよ』
コンソールの一部が消灯する。それは、ヨルが受け持っていた機体の制御システムを示すモノであり、AIヨルムンガンドの停止を意味していた。
「ちょっと、ヨル……?」
『君には失望したよ』
「え……噓だよね、ヨル……?ヨルッ!?」
何度声をかけようと、コンソールを叩いて再起動しようとも、そこには彼女を支え続けてくれた人工知能の気配はない。
「嫌だよ……ヨル……ヨルがいなくなったら、シルヴィは……!」
「まだ私がいるだろう?」
その声だけは、聴きたくなかった。
「何の価値もないお前を生かして、使ってやっていた、この私が」
「い……や……」
ずるり……ずるり……衣擦れにしては、妙に締めっぽい音がする。少しずつ大きくなる音と共に、シルヴィの足を何かが掴んだ。ヨルムンガンドが機能を停止したことでいつもよりも暗いコックピットの中。その中でも完全に真っ暗になった小さな空間……シルヴィの足元から、それは姿を見せる。
「おぉ、おぉ、少々熟れてはいるが、食いではありそうだなぁ……」
「ひっ……!」
膝を、腿を、腰を……少女の体を掴んで這い上がってくる男は、かつてシルヴィの主人であった。
頭に落とされた拳か、首に流された電流か、あるいはわざわざ見えるように手首に突き刺されたインジェクションか。いくつもの苦痛の記憶が、少女の体から抵抗の意思を奪っていく……。
「ごめんなさい……許して……痛いのは、もう嫌……!」
後退ろうにも、コックピットのシートという小さな密室は、常であればその命を守るものだが、この時ばかりは彼女を囚える牢獄に等しい。
シルヴィの肩に腕を回した男はその頬に舌を這わせ、豊かに実った果実を手中に収めて品定めしながら囁く。
「怖がることはない……痛いのはすぐに終わるとも……」
「ぃ……やぁ……」
本来の役割を果たせるのか怪しいシルヴィの『器』に、生暖かいモノが触れている。蠢くそれは、入り口を探っているようだったが……一向に潜り込んでこない。恐怖に震え、目蓋を降ろす事すらできなくなったシルヴィの視界が、ご主人様に埋め尽くされていたのは、幸か不幸か……。
「どうにも締まりが悪いな……どれ、手を貸してやろう」
少女の中に捻じ込もうとした己の欲望が、とうの昔にシルヴィ本人に叩き潰されたことを忘れているのか、垂れ下がった腸が寄生虫のように蠢く男の手が、少女の首にかけられた。
「……っ」
ゆっくり、ゆっくりと、喉が絞まる。生かさず殺さず、その全身を緊張させて、快楽を絞り出させるために。
「ぁ……かはっ……!」
振り払おうと手を伸ばしても、亡霊に触れられる道理はない。圧迫される気道から、声も、息も奪われて、ピンと両脚を突っ張り、戒めを解こうとして自分で自分の首を締め上げるシルヴィは目を剥いたまま……。
『目を覚ましたまえ!!』
「ッ!?」
唐突に引き戻される現実。そこにあったのはいつもと変わらぬコンソール。モニターにはガラクタが転がる戦場が広がっており、センサーには何の反応もない。
「ヨ……ル……?」
『ようやく気が付いたか……どうやら、この戦場は君と相性が悪いらしい。申し訳ないが、撤退させてもらおう』
「……やだ」
『……シルヴィ?』
震える、小さな否定に続いたのは、十四機の複製体。
『シルヴィ!?急にどうしたのだ!?』
「あはははははは!見て!見ててねヨル!シルヴィはお仕事できるんだよ!頑張るから!頑張るからねっ!!だから……ッ!」
合計十五機のミドガルズが、一斉にミサイルをばら撒きながら両手のガトリングを撃ちっぱなしにして、お互いに当たりそうになるのも構わずハイペリオンランチャーを乱射する。無機物の山とはいえ、炎上し始める廃材の中、シルヴィは虚ろな瞳から涙を流し。
「捨てないで……!」
燃え盛る火の海の中に、ミドガルズが沈んでいく……。
「マズいな……猟兵側に呑まれている奴がいるみたいだ」
先ほどから派手な爆発が続いている。その轟音を聞けば、否応なしに猟兵側の危機を感じざるを得ないというもの。
「それに……俺にも見えるようになっちまったからな……」
あるいは軽薄そうな仮面の男、あるいはじゃれ合っていたお団子頭の妖精、あるいは魔砲に定評のある少女……その誰も彼もが、穹と笑い合う日常を送っていた猟兵達。ただし、その目元は血塗られて視線が見えず、胸に抉り抜いたような穴が開き、心臓の鼓動が見えていた。
『……』
狭いコックピットの中、穹を取り囲んで立つ人影は、声ならぬ声を延々紡ぎ続けている。
「あんなの聞いてないっすよ……」
「どうして正確に伝えられないのかしら……」
「あなたのせいでこんなことに……」
ドクン……ドクン……小さく、しかし確かに聞こえる脈動。しかし、心臓を晒した彼らの命の鼓動は、徐々に弱まっていて……。
「あぁ、そうか」
穹は、理解して『しまった』。
「これは、俺自身の予知なんだな」
グリモア猟兵は未来を見る。穹の周りに立つ知人たちは、自分のせいで命を散らす事になった、未来の姿なのだ。
何の意味も分からず、ただの恐怖と思っていれば、どれほど救われただろう。しかし、予知という光景は、決して覆ることなく訪れる物である。グリモアを持っているが故に、その絶対性を知っている穹は、実に落ち着いていた。
「そうか、俺のせいでお前達、死ぬんだ」
ズガァン!不意に、引金を引く。ズィルバーンヤークトフントの手に握られていたのはアサルトライフルであり、銃口の先には六足二腕三頭の奇怪な機械。
「キャバリ・リ!」
「さっき、スクラップにぶつかったなら物理攻撃が有効、つまり幽霊とかではないから壊せば資源として使える」
カサカサと、すばしこく動き回る怪奇機械相手に、ライフルを捨てた白騎士はバズーカを両手に構え。
「よーしぶっ壊して建材行きだ。はは……はははははははははははははははは……!」
辺り一面、とにもかくにも叩き込まれる弾頭は延焼と炎上をまき散らし、吹き飛ばした残骸の微細な破片が粉塵と舞う。
「敵も味方もゴミも資材も、全部、全部、全部吹き飛ばせば片付くよなぁ!!」
狂気とは、狂ってしまっている事ではない。受け入れてしまう事なのだ。幻覚を己が運命と飲み干した穹は、動く火薬庫と化した……。
「恐怖……言われてみれば、感じたことが無かったような……憤りとか怒りとか驚愕とかはありますけれど」
あ、よかった、桜花はいつものトンチキヘッドだ……!
「影朧になるかならないか、死者の違いはそれだけだと思いますし」
そもそも幽霊ってモンに対する価値観がちょっとずれてる桜花は首を傾げつつ、とりあえず周りをぐるっと見回して。
「花燕さんが怖がるから、いっそ此の辺りの無機物全部食材にしてしまおうかと思いましたけれど、今回コンテナ持って来ませんでしたし……計画不足でした」
と、どこぞのおさるさんよろしく、キャンピングカーに片手をついて項垂れて、全身で反省を表現すると。
「此れは彼れです。動く物だけ厳選して食材イマジネーションを磨けと言う神の試練!」
反省+後悔=迷走、という謎の等式を成立させてしまったんだが、コイツ違う意味で狂気に呑まれてない?
そんなところにカサカサカサカサ……例の奴が現れて。
「三面八脚……人面蟹!鱈場蟹最高です!」
オイマジか。あの狂気の代物を食い物にする気か……!?
「ほら、殴れば食べられますし」
などと、畳んだ扇子を素振りし始める桜花。凄まじい速度でカサカサ言ってるアレを追いかけようとして。
「ひゃっはははははははは!!」
ぶっ壊れた穹がドッカンドッカンしながら後を追い。
「あーれー!?」
爆風に巻き込まれた桜花がポーン……ぽてっ。落ちた先はお目目が三つの仮面みたいなキャバリアの上で。じっと見てたら、オブリビオンマシンの方も顔(?)をグリッと回して。
「マッシャー?」
「ポテトマッシャー?」
「テラー」
「タラモ?」
「テラテラ」
「ポテサラ!」
\スパァン!!/
「ということで明太ポテトサラダが確保できました!」
どうしてそうなった!?
「なるほど、ああやってキャバリアの残留思念を抽出していたのですね」
さて、こちらは輸送任務がメインだった関係で大分遅めの参戦となったナミエ。ベティ同様、上空から戦場を俯瞰で来ていた彼女は降下してから人型に戻り、物陰から様子を窺っていたが。
「キャバリ・リ!」
「待てコラ待てコラ!!」
カサカサチュドチュドしてるコンビが乱入!戦場をひっかきまわすっていうか、諸々吹き飛ばしてしまい。
「えぇえええええ!?」
「テラァアアアア!?」
オブリビオンマシンとナミエも巻き添えになって吹き飛んで、同時に落下して地面に叩きつけられると、目が合った。
「あ、ヤバ……」
「発狂ビーム!!」
「え、それそんな名前な……きゃぁあああ!?」
至近距離で正気度を削る光線を浴びてしまったナミエは目からハイライトが消え、ふらふらと敵に歩み寄り。
「ねぇ、気持ちいいことしない?」
「テ、テラ……?」
普通ならここで轢き殺される所だが、先ほど見つめ合った瞬間、実は、『相打ち』だったりする。敵の正気度を削る攻撃をナミエが避けられなかったように、ナミエの篭絡の眼差しを敵もまた直視していたのだ。
口……ていうか目?に唇を寄せるナミエは、その内側に舌を這わせて……。
「ヴッ!?」
乙女(で、いいんだよね?)が出してはいけないタイプのうめき声をあげた。そりゃまー、そこ、口は口でも例の発狂ビームの発射口だから、焦げ臭いの油臭いの……あまりの酷さにいつぞやのチョコとは名ばかりの名状しがたき物体Xを想起してしまい……ちょっとここ、公開前にカットしておきますね。
「ひっどい味だったわ……」
正気は取り戻したものの、違う物を失ってしまった気がするナミエ……そこへ。
「キャバリ・リ!」
「待てっつってんだろテーブル野郎!」
「今夜は焼きガニですよー!!」
さっきのコンビに、食欲に塗れた桜花を加えてもっかいバタバタ。
「……ちゅっ」
ナミエ、ここでテーブルめいたアレに投げキッス&ウィンク。それを見ちゃった円卓モドキが、全手足を畳み。
「キャバリ・リ!」
「テラ!?丸鋸が追いかけてくるテラァアアアアアア!?」
ギュイィイイイイン!!方向性の違うホラー要素を追加してしまった。それを見てしまったナミエ、ぽつり。
「『巨神』じゃなくてアレでもいいかな」
お前は何を言ってるんだ……!?
「UDCの化け物やカクリヨの妖怪相手にしてるから、お化けや幽霊は平気なんですけどね。むしろ人間の方が怖いですよ」
などと、浮遊機マリオネットを飛ばして敵の探査を行っていた摩那は笑いながら。
「そして、それよりも怖いアレ……あんまりたくさん出ると殺意MAXになって、大爆発しちゃいますよ」
あの、摩那さん?目が笑ってないんですが?
「そんなモノが大量発生しないうちに成敗です、早々に片付けましょう」
マリオネットを飛ばして、逃げ回るマッシャーを捕捉した摩那はエクアトゥールにヨーヨーを持たせると、巨大化させて上空に射出。
「角度調整……対象の予測位置再計算……」
マリオネットの位置を微調整しつつ、空高く飛ばしたヨーヨーのワイヤーを振り下ろすと浮遊機にぶつかって、ヨーヨーがカクッと折れるように軌道変更。その落下地点は……。
「テラーッ!?」
オブリビオンマシンに直撃して、マッシャーがグッシャーに!!
「人の恐怖で遊ぶなんて悪趣味なオブリビオンは潰します」
物理的にやるとは思わなかったよ……と、敵の撃破を確認した直後、摩那の背後にあったスクラップの山が吹き飛んだ。
「しまった!?」
敵の伏兵かと、振り返った彼女が見たものは。
「恐怖は敵だ!貴様オブリビオンだな!!壊れろォオ!!」
『どいてー!!奏者今ちょっと話が通じないよー!!』
絶賛暴走中の小枝子だぁああああ!?
「どぅえええええ!?」
びっくりした拍子に飛び退いたエクアトゥールの横を、小枝子の駆るデモニック・ララバイは、魔女っぽい見た目とは裏腹に、光学両剣を振り回しながら、逆の手には引きちぎって来たと思しき、マッシャーの仮面っぽい発射口が掴まれている。その全身には、先ほどまでは見られなかった、紫薔薇の棘が生えているようだが……。
「テラ~……物騒な連中テラねぇ……」
猟兵側が派手にドンパチやり始めた為、オブリビオンマシン側もちょっとずつ集結。
「そろそろ撤収した方が身のためテラかねぇ……」
「我々の目的はあくまでも恐怖の蔓延であって、奴らの抹殺じゃないテラ」
「ここらが潮時テラね……」
と、逃げ出そうとした時だった。その全身がビリビリと痺れて身動きが取れなくなる。電気的攻撃ではない事は何となくわかるが、この振動は一体……!?
ミ ィ ツ ケ タ
その答えは、身を隠していたスクラップの山を吹き飛ばして現れた。
「壊す、壊す!敵はいずこか!?我らに仇なすならば死ね!!」
手近なマッシャーを掴み上げると、その全身の棘が音を発し、大気を震わせることで発生した振動をマッシャーの機体に伝導して震わせて、共振現象を引き起こしバラバラに自壊させる。手の中に残った仮面の様な砲台を握りつぶし、無数の腕で引きちぎられたような残骸と化したマッシャーの上に落としたデモニック・ララバイは、アメジストの眼光を向けて。
「壊れればお前も仲間だ!!お前もこっちにこい!!ハハハハハハハ!!」
『コイツ狂ってるテラー!?』
「何を笑うか!!」
「笑ってるのはお前テラよ!?」
ツッコミを入れたマッシャーは、次の瞬間、高速回転させた両剣を叩きつけられて両断された後、中心で割れて双剣になった光学兵器によって微塵に叩き潰されて……。
「次は……どいつだッ!?」
『奏者の名誉の為に、後でモザイクかけてもらわないとかな……』
コックピットの中で、ニチャァ……狂気っていうか凶気に染まった小枝子は、笑っていた。
俺はもう、疲れたよイェーガー……。
「敵、確認、援護、する!」
ってあー!?よりによって暴走してる小枝子のフォローにベティが急降下!本人的には援護したつもりなのだろうが、獲物を横取りされたと勘違いしたデモニック・ララバイが、ギョロ。
「なんだ貴様はぁ……ぶっ壊す!お前もこちらに来るのだ!!」
「ッ!?」
棘から発する振動を、大剣で受けながら後方に跳んで被弾を押さえつつ、厄災の渦を燃料とする得物に取り込んで、ベティはビックリ。
「ボク、なんで、怒られた?」
『奏者はちょーっとバーサークしてるから、全力で逃げて!!』
「なるほど、ネタ依頼では、よくある事」
「貴様ァ!軍人の誉はないのかァ!?」
コクコク頷いたベティはすたこらさっさ。使えそうな資材の運搬に向かい、デモニック・ララバイが後を追おうとすると。
「キャバリ・リ!」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
横から飛び出して来たのは、例の混沌機体と、そのカサカサ音に何かを想起して発狂した摩那だー!!
「全部吹き飛べー!!」
その後ろからズィルバーンヤークトフントがバズーカを乱射してスクラップを巻き上げながら、物陰から七輪を抱えた桜花が追ってきて。
「焼きガニ!焼きガニにいたしましょう!!カニ鍋も可!!」
次々と現れる闖入者を前に、小枝子は武装を連結して、斬艦刀を構築すると。
「全員纏めてブッた斬ィいいいいるッ!!」
『奏者落ち着いてー!?』
あーもー、めちゃくちゃだよ……。
「……どうしてこいつらは普通に仕事ができないんだ?」
『私に聞かないでください』
遠くから眺めてるヴィリーの問いに、オベイロンは演算を放棄して。
「健康診断再検査のお知らせ……ふぅ、まだ幻覚が解けてないのかしら……」
「あら、若いからって調子に乗ってると、後で苦労するわよ?」
「え……」
現実逃避しようとした水之江の頬をナミエがつつき、実は二人の年齢は……という一触即発の現場が完成していたり。
「やはりアイツか……」
ものすごーく離れた物陰から、その光景を確認して、苦虫ドリンクを飲み干した顔になるジュディスがいたりしたが。恐らく一番の苦労人は。
「えへへ……ヨル……よーる……」
「何故私がこんなことをしているのだ……?」
またしてもヒューマノイドボディに移って、シルヴィに膝枕しながら「あーん」で極限まで消費したカロリーを補充させているヨルだったのかもしれない。
大成功
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第3章 ボス戦
『武甲・無纏』
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POW : 無念無想の歩み
非戦闘行為に没頭している間、自身の【無意識】が【キャバリアを動かし】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD : 無念無想の歩み
非戦闘行為に没頭している間、自身の【無意識】が【キャバリアを動かし】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ : 無念無想の歩み
非戦闘行為に没頭している間、自身の【無意識】が【キャバリアを動かし】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
イラスト:イプシロン
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「廿鸚・久枝」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「拙者、一芸を磨き極点を目指すにあたり、この地に配属を願い申したが……」
こそっ、例の恐怖製造マシーンの親玉が、物陰から見ている。
「あれは一体、何事ぞ……?」
なんかもう、みんなして暴走してたからね。仕事にならねぇって、真面目にやってた猟兵が暴走してた猟兵を正座させて説教してるわけですよ。
「恐らく、アレもまた修業の道……でもあいつら頭おかしいから近づかんとこ」
などと、本日のボスは戦闘を放棄して社の方に向かおうとする。奴をぶちのめせば依頼完了だぞ!!
※発狂状態は解けたって事にしてもしなくても構いません。面白そうな方向で参戦しましょう。また、相手に『戦いたい』と思わせないと一切ダメージが入らないという地味に厄介な敵です。巨神を目覚めさせないように、足止めするか、腕の立つ武人アピールをしましょう
御園・桜花
じぃーっと物影から敵眺め
「彼れを見ても、猿の丸焼きやキャバリア鬼殻焼きしかパッと浮かびません…私は料理人失格です」
伏して地面連打
「猿は脳味噌しか食べませんのにっ!キャバリア焼くだけじゃ金属で食べられませんのに!もっと華麗で自由な想像力が欠如し過ぎです!」
「立体メレンゲクッキーとかプラマンジェとかキャラデコケーキとか、小手先に逃げちゃ駄目なんです!だから私…貴方の中身になって食材の気持ちを考えます!そう、今の私はポンポンペイン!」←?
通電物質内移動で機体内に入り込み雷鳴電撃
「これが内臓の気持ち…いえもしや排泄物…?」
敵機が破壊される迄熟考
「深い依頼でした…」
感謝兼ね車の後ろに機体括りずるずる運搬
ヴィリー・フランツ
※熟練操縦士にて性能アップ
(手の空いた工兵隊員が猟兵各機体のEインゴットや弾薬の補給作業中)
心情:元凶を叩き戦利品を納品して、そして弾薬や特殊作業費用を上乗せした請求書をグリモア猟兵に送付して今日の仕事は終わりだ!
手段:「そもそもだな(ガミガミ…)工兵から報告?…残業だな、これ以上帰りが遅くなる前に片付けるぞ」
起動完了後、直ぐに未確認機の元に向う、場所は肩のアウル複合索敵システムの情報をゴーグル型HMD投影。ついでに交戦記録と照合、…初遭遇か?性能は未知数だな。
一直線に防衛目標に行かれても面倒だ、ミサイルや無反動砲を相手に撃ち込んで注意を引く、こちらを認識したら射撃武装を投棄、バーンマチェーテを抜いてスパイクシールドを構えて脚部ボバーによるブーストダッシュ、奴の得意な近接を試みる!
どうした?そのサムライソードはなまくらか?そうじゃないなら俺の装甲ごと叩き切って見せろや!
最悪、他の猟兵がターゲットに殺到出来る時間を稼げれば十分だ、酷い目にあった奴もいるから…相当トサカに来てるわな。
シルヴィ・フォーアンサー
あいつ倒すから見ててよねっ、そしたら褒めてくれるよねっ!?
『……あー、うむ、頑張りたまえ』
幻覚にアレコレされそうになった事より見捨てられたのがトラウマ化。
お仕事こなして役に立てるよアピールに必死、そんなわけで立ちふさがりますが現在強者感ゼロだし止まってくれず。
無視されたら子供じみた挑発をした挙げ句組み付きながら泣いてすがりそう。
それでも止まらないので構ってちゃんを増やす。
指定コードとイマジナリー・マイセルフ発動して14体のシルヴィとミドガルズを召喚。
本体の変貌ぶりに戸惑いつつ全機で纏わりついてグダグダウダウダ絡み続けます、後は任せます(え)
帰る頃には押し倒して責任取ってとかしようか考えてそう。
ベティ・チェン
「セプク?セプク勘弁!ね、ね!」
ハラキリ作法の正座見て驚愕
慌てて仲裁
「悪いのは。全部、ここのマシン。早くサヨナラ、させよ。ガンバロ」
非発狂〜軽度発狂者で早期討伐提案
「ドーモ、ニセ・キシ=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
発掘した頑丈な廃材ワイヤーロープ敵の足に引っ掛け飛行
怪力も使用し宙吊りに
「戦わぬ、サンシタ。辱めが、お似合い」
逃げようが戦う気になるまで何度も繰り返し挑発
「マサシのコトワザ。大勢で一人を攻撃すれば、楽に倒せる」
戦いになったら偽神兵器に雷属性乗せ殲禍炎剣に引っ掛からないギリギリスピードでヒット&アウェイ
「鯨の墓場を喜ぶのは、鯨以外」
巨神喚ばず作業
いいものあったかはお任せ
アイ・リスパー
「あれは……あの巨大なロボットは……『政府』の追っ手ですね――
死んでいった皆のためにも、私は何としても生き延びてみせます」
『アイ、気を確かに――記憶の混乱が見受けられます』
アイ?私はアイリス。アイリス計画唯一の生き残りにして、実験の完成体です。
乗っていたよくわからないパワードスーツから降り、電脳魔術【破砕領域】を発動します。
「これは反粒子を生成し、対消滅で相手を跡形もなく消し去る電脳魔術。計画で完成した禁忌の力です。
――皆、私に力を貸してください」
対消滅の余波でこの『宇宙船』も一緒に吹き飛ぶでしょうが、『政府』の追っ手を消せるのならば許容範囲内です。
「周囲一帯ごと消し去ってあげましょう――」
アリス・セカンドカラー
ホラー案件になったと聞いて☆
『戦いたい』と思わせないと一切ダメージが入らない?OKOK、逆にいえば思わせない限りずっと遊べるどん。
場違いな子供の声。何も無いのに反応するセンサーと警報音。なぜかバランスを崩す機体。見てはいけないセカカラちゃん。無視するとうざ絡みしてくるセカカラちゃん。倒しても倒しても後からの後から湧いてくるセカカラちゃん。勝手に機体のシステム音声になってるセカカラちゃん。目耳閉じても脳内でアレなセカカラちゃん。
相手が非戦闘行動に没頭してる間はずっと|心霊現象《ジャパニーズホラー》で遊び倒すわよ❤私の正体が分かるとかそれもう頭セカンドカラーだから。まぁ足止め程度にはなるでしょう。
ジュディス・ホーゼンフェルト
オイコラ待ちな!
アンタだね?雑魚をけしかけてたのは!
散々アタシをコケにしてくれちゃって…もう許さねぇからなぁ?
そっちに戦う気があろうとなかろうと、こっちにはぶん殴りたい理由があるんだよ!
どこに行くつもりなのさ?ビームキャノンとミサイルを連射!
足元にバカスカ撃ち込んで足止めしてやろう
それとアタシのワンコはよく吠えるんでね
ハウリングシャウターでギャンギャン吠えまくって精神的にも追い詰めてやろう
効かなくたって構いやしない
戦う気が無いなら一生サンドバッグになってな!
やる気になったら有り難くお相手するよ
すれ違い様にパルスクローで斬殺執行
オーバーとアンダーのフレームをお別れさせてあげるよ
黒木・摩那
名状しがたき何かは叩き潰しました。
これで安心です。悪は滅びました。
復活です。
おや? まだ悪いオブリビオンが残ってますね。
もちろん巨神の元にはいかせませんよ。
かと言って、こちらの武器は受け付けないと!
これは面倒ですね。
ここは相撲です。どすこーい。
日本の神技、スポーツですよ。
敵オブリビオンとがっぷり四つに組めば足止めもできて、お得ですね。
たとえ転がされても、再戦。
スポーツだから再挑戦は何度でもできますよ。
これで向こうが戦う気になったら、こちらはUC【超重新星】で殴ります。
桐嶋・水之江
甲冑っぽいキャバリアが出てきたわね
ははーん?さてはさっきのプラズマの原因はあいつね?
幽霊の 正体見たり 枯れ尾花ってやつよ
やっぱり心霊現象なんて存在しないのよ
はい論破
とりあえずぶっ飛ばしていいのよね?
来なさいよサムライ
刀を突き立て、相手が苦しみもがいて死んでいく様を見るのが望みでしょう?
さあ正々堂々1対10よ
楽しみをふいにしたくはないでしょう?
それとも…あれれー?ひょっとして負けるのが怖いのー?
よわよわ侍さん?
じゃ、私は廃品回収の続きを始めるから後はよろしく
なによ?なんで私が戦わなきゃいけないのよ?
はぁ…まったくワガママねぇ…
じゃあメガビームキャノンで援護射撃してあげるから
いぇーがーがんばえー
朱鷺透・小枝子
(ガン、ガン、ガン)(騎兵刀の鞘で頭を打ち付ける音)
(敵味方の区別すらつかぬとはなんたること…!!)
『奏者~頭打ち過ぎるとバカになっちゃうよぉ~』
もとから自分はバカです!反省終わり!戦います!!
〈魔音拡散器〉ララバイの両肩にメガホン型スピーカーを装着。
【楽器演奏】敵機へ催眠演奏!攻撃ではなく音楽で以て敵の精神に干渉し【催眠術】敵機の【闘争心】を増幅!
貴様が敵だ!自分達が敵だ!戦え!戦えぇえええ!!!
『あんまり雰囲気変わってないように見えるけど、これ平常だから気にしないでねぇー!』
敵機と社の間に自機を移動させ、改めてスピーカーから【衝撃波音響弾】で【吹き飛ばし】攻撃!
壊れろ!!オブリビオン!!!
ナミエ・オイローパ
苦戦/アドリブ/連携可
「ここまで皆さんがおかしいとなると、土地全体の気も確かめた方がいいかもしれません」
竜脈使いで土地全体の気が流れる方向を確認。土地の気が社に集中している。と、社に向かう敵を確認。
「近づけると良くないことが起こりそうです」
UCで社周辺に竜巻を発生させ、認識を阻害させる。残骸を巻き込んで敵を攻撃したりもする。
「あっ、こっち来ちゃダメ!」
謎の機体が乱入。カサカサと敵に向かっていく。
「もしかして、ここを守ろうとしているの?なら!」
天候操作で雷を発生させ、敵が剣を振り上げたところに落下させる。必要な魔力は竜脈から魔力供給で補う。
「そう、アレがここの守り神になるのね」(完全な誤解)
「お前ら、ブリーフィングの中身が抜け落ちてねぇか?」
暴走組の猟兵を正座させたヴィリーは腕組みして見下ろしつつ。
「事前に出るモンが出るって話聞いてたよな?幽霊が苦手でビビるのは分かる。敵のUCに当てられて追い詰められるのも分かる。が!」
ヴィリーが指したのは、焼け焦げた円盤状のスクラップ。
「なんでオブリビオンマシンでもねぇ鉄屑と追いかけっこした挙句、味方同士でドンパチやってんだよ!あぁ!?」
びっくりだよ……廃材が合体したスクラップキャバリア(?)があそこまで騒ぎになるなんて思わなかった。それこそ、この後の主犯格との戦闘に備えてヴィリーの工兵部隊が暴走したキャバリアにエネルギーインゴットを補充したり、弾薬の消耗が激しい機体については、規格が合う物については補給したり……引率の先生かな?
「そもそもだな……!」
「セプク?セプク勘弁!ね、ね!」
正座がHARAKIRIに直結してしまったベティが慌てて飛び降りてきて、ヴィリーを止めようとあわあわ。
「悪いのは。全部、ここのマシン。早くサヨナラ、させよ。ガンバロ」
と、ヴィリーから説教されてた方に視線を向けると。
ガン……ガン……ガン……。
小枝子はキャバリアの佩いた鞘に、延々と頭を打ち付けていた。
(「敵味方の区別すらつかぬとはなんたること……!!」)
ボソボソボソボソ……自分の失態を恥じるあまり、口の中で自分自身に呪詛を吐き続ける小枝子は、むしろこいつが怨霊なんじゃね?って瘴気を纏い始めて正気かどうか疑わしい状態に。
『奏者~頭打ち過ぎるとバカになっちゃうよぉ~』
「もとから自分はバカです!反省終わり!戦います!!」
「その前にテメェはメディック行きだ」
「何をするでありますかぁあああ!?」
デコが割れた小枝子をヴィリーの工兵隊が抱えて攫って行き、頭に包帯をぐるぐるしていると、入れ替わりに来た別の工兵がヴィリーにこそこそ。
「……残業だな、これ以上帰りが遅くなる前に片付けるぞ」
ヴィリーに届いた通達は、戦場に未確認機体が発見されたとのこと。猟兵が固まっている間に、巨神めがけて猛ダッシュしているらしい。敵影を確認したオベイロンが立ち上がると、何故か装甲を展開。
「あれは……あの巨大なロボットは……『政府』の追っ手ですね……死んでいった皆のためにも、私は何としても生き延びてみせます」
『アイ、気を確かに……記憶の混乱が見受けられます』
「アイ?私はアイリス。アイリス計画唯一の生き残りにして、実験の完成体です」
灰甲冑の武骨な機体を見据えるアイの瞳は虚ろ。ゆっくりと持ち上げられる腕は、オブリビオンマシンに向けられていて。
「これは反粒子を生成し、対消滅で相手を跡形もなく消し去る電脳魔術。計画で完成した禁忌の力です……皆、私に力を貸してください」
見えない手に掴まれているように、腕はまっすぐ伸びながら、手首は不自然に曲がり、その指先は力なく垂れ下がる。
「対消滅の余波でこの『宇宙船』も一緒に吹き飛ぶでしょうが、『政府』の追っ手を消せるのならば許容範囲内です」
『アイ!?やはり認識能力に異常が……!』
「周囲一帯ごと消し去ってあげましょう……」
アイリスの頭上で、徐々に圧縮されていく逆電荷をかけた粒子の渦。真球状の砲弾にして砲台を構築した電脳兵器は、その引き金を……。
「ぷぎゅっ!?」
引いた瞬間にヴィリーがゲンコツを落としてアイを撃墜。顔面から思いっきりズッコケたせいで、撃ち出された反粒子砲は軌道が逸れてやや上方に……あっ。
ゴッ!!
「社がー!?」
安全確保の為に、バリケードの構築を頑張って来た摩那。彼女の努力を嘲笑うように、対消滅を起こした爆風で社の屋根瓦が一部消し飛んで、中身が見えそうな見えなさそうな……。
「これセーフ?セーフですか!?」
あわわわわ……エクアトゥールの中で慌てふためく摩那の下方、怒りと苛立ちが限界突破して、眉間がアコーディオンなヴィリー。
「……」
何しれっと最大の脅威を引き起こそうとしてんだよ本当に何しに来たんだていうかそこの木偶の坊も普通に撃たせてんじゃねぇよ止めろやボケ危うくオブリビオン側の目的達成しかけてんじゃねぇかサポートAIならマスターがバカやった時にブレーキ役になるもんだろうがよって顔で、無言でキャバリアに向かっていったヴィリーに代わり、オベイロンはお目目ぐるぐるで頭上にお星様が公転軌道を描いているアイを拾って。
『やっぱり、あなたには電脳兵器アイリスよりも、ポンコツアイちゃんの方が似合っていますよ』
父親がそうするように、小さな体を抱きしめるのだった……。
だーかーら! ネ タ 依 頼 だ っ て ば !!
「ホラー案件になったと聞いて☆」
何という事でしょう……案件というかホラーそのもの、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の混沌魔術師艶魔少女・f05202)が来てしまった。
「『戦いたい』と思わせないと一切ダメージが入らない?OKOK、逆にいえば思わせない限りずっと遊べるどん」
あははは……うふふふふ……戦場に子どもの声が響く。
「あーそーぼ☆」
「おじちゃんどこいくのー?」
「イイコト、しよ?」
「ほぎゃぁああああ!?」
なんということをしでかしてくれたのでしょう。戦場にプチアリスが大量発生してしまいました。しかしまー、全力ダッシュで逃げる逃げる。足止めになるどころかアレ、加速してない?
「うーん、ビビらせるのは足止めにならなかったか」
しかしまー、ただでさえ猟兵が発狂してんのに、オブリビオンも絶叫するっていう混沌具合も加速してるから結果オーライ?
「あいつ倒すから見ててよねっ、そしたら褒めてくれるよねっ!?」
「……あー、うむ、頑張りたまえ」
ヒューマノイド・ヨルの背中からのしかかって、頭に錘(意味深)を乗っけて首元に腕を回し、足をパタパタさせるシルヴィにヨルは混乱を通り越して虚無の境地に至っている。
「それじゃ、れっつごー!」
「自分で歩きたまえよ……」
バタ足に背中を蹴っ飛ばされるヨルがミドガルズに戻ってくると。
「……」
『シルヴィ、どうせ立ちふさがるなら何か言ったらどうかね?』
デバフスキル『コミュ障』が発動して、敵機の進行方向に無言で立ちふさがるシルヴィ……もとい、ミドガルズ。いつもなら武装を構えて立ち姿だけで威圧感を放つところだが、中身【シルヴィ】がへっぽこモードになっている関係で機体の重心がずれてしまっており、どうにも『圧』が足りないミドガルズ。
「うぉわぁああああああ!?」
そんなキャバリアの横を、繋がったプチアリスがドレッドヘアみたいなことになってるオブリビオンマシンがスルー。半狂乱に陥ったオブリビオンに、ただ突っ立ってるキャバリアを相手にする余裕はないのだ。
『ほら、素通りされてしまったぞ?』
「……えーと、えーと」
さて、ここで問題になるのがシルヴィの語彙力である。物騒なモノを見たり聞いたりすることに忌避感を抱かない彼女は、じゃあそういう言葉の引き出しがあるかって言うと、そもそも他人と会話しないから言語の棚そのものが置いてないようなもんである。ない語彙を絞って出した言葉が。
「ばかーっ!!」
コレである。オブリビオンマシン?止まるワケねーじゃん。
『……シルヴィ、私としては、君がそういう言葉に触れずに育ってくれたことを微笑ましく思うぞ』
「いいもん!力づくで止めるもん!!」
ここでミドガルズが十四機の分身を生み出して、十五機のミドガルズが一斉に十五機のミドガルズを召喚すると、十四機のミドガルズが消滅して最終的に十六のミドガルズが敵を取り囲む……早口言葉かな?
「よーしフルボッコだね!」
「ヘイシルヴィ!たまには連携くらいしようZE☆」
「無敵だかなんだか知らないけど、皆で仕掛ければ怖くない!!」
などと、オリジナルシルヴィとは似ても似つかぬ陽キャのアナザーシルヴィ達。毎回騒がしい彼女達だが。
「うるさーい!全員とつげきっ!あいつやっつけてヨルに褒めてもらうんだからっ!!」
『……えっ』
オリジナルのはっちゃけ具合に、沈黙した。
「シルヴィが、壊れた!?」
「ととと、とりあえず続けー!?」
お手本(?)としてオリジナルシルヴィが飛び掛かるも避けられて、シルヴィ2が続いて襲いかかるがすり抜けて、シルヴィ3がその先で待ち構えるも躱され……これがまー、シルヴィ16まで続くんだよ。そして最後の一機を避けたと思ったら。
「お前を倒してヨルにご褒美貰うんだからぁあああ!」
メンタルがエレメンタリーな事になってるオリジナルシルヴィに順番が戻って、ローテーションでボディタックルを仕掛けてくるミドガルズズ(語呂の悪い複数形感)。
プチアリスに遊ばれながらミドガルズズにピョンピョン体当たりされてる敵機を、物陰からじっと見つめていた桜花は、急に崩れ落ち、周囲が真っ暗になって豆電球が上からパチッ。
「彼れを見ても、猿の丸焼きやキャバリア鬼殻焼きしかパッと浮かびません……私は料理人失格です」
小さな円形の照明の中、悔しさのあまりに地面を握った拳でペチペチし始める桜花は、やがて突っ伏して涙を噴き上げながら。
「猿は脳味噌しか食べませんのにっ!キャバリア焼くだけじゃ金属で食べられませんのに!もっと華麗で自由な想像力が欠如し過ぎです!」
そもそも食の追及に来るべき現場じゃねぇだろうがって話なのだが、その辺は置いといて。
「立体メレンゲクッキーとかプラマンジェとかキャラデコケーキとか、小手先に逃げちゃ駄目なんです!だから私……」
顔を上げた桜花の瞳には、強い決意が現れていて……。
「貴方の中身になって食材の気持ちを考えます!そう、今の私はポンポンペイン!」
ものすごくグルグルしていた。
「オブリビオンマシンであろうと、機械なら通電してますよね!?」
などと、桜花の体は風に吹かれて崩れるように攫われていくと、桜吹雪に姿を変える。それがアリスとシルヴィにピョンピョンワチャワチャされているオブリビオンマシンの前に回り込んで、激突すると同時にその電子回路に潜り込むと。
「これが内臓の気持ち……えいえい!」
やってることは完全に適性外の寄生虫である。が、そもそも敵は戦う意思を持たない限り無敵のオブリビオン。腹の中から何をしたって意味なんかなく、ただ揺られるだけの桜花は、ハッとして。
「いえ、これはどちらかというと、もしや ……?」
一応、修正はかけておきました。と、桜花が中の人(意味深)になっているところで、例の奇妙な機体を仕留めるのに一際尽力していた摩那が額を拭い。
「名状しがたき何かは叩き潰しました。これで安心です。悪は滅びました」
そもそもそいつは敵でも味方でもないから、善悪とか関係ないはずなのだが……。
「おや?まだ悪いオブリビオンが残ってますね。もちろん巨神の元にはいかせませんよ。かと言って、こちらの武器は受け付けないと!これは面倒ですね」
現在進行形で増殖するアリスと、陣形を組み直してアメフトタックルし始めたミドガルズ、そしてお腹の爆弾と化した桜花。ここに摩那が加えるアクセントが。
「相撲です。どすこーい」
どうしてそうなった?
「日本の神技、スポーツですよ。敵オブリビオンとがっぷり四つに組めば足止めもできて、お得ですね。アシハラとかどう見ても日本臭い小国家ですし、行けるのでは?」
何が!?
「何はともあれ、いざ尋常に、勝負!」
ドズン、重々しい四股を踏むエクアトゥールは、格闘戦を想定して機動力を確保する為に、装甲そのものは決して厚くないが、それを補うだけの大盾を両肩に搭載したことで機体重量を確保した、関脇級(上から三番目くらい)。全身甲冑のオブリビオンマシンと十分に張り合えるであろうその身を低く構えて。
「はっきよい……残った!」
それ自分で言うんかい!真正面からぶつかりに行ったエクアトゥールに対して、オブリビオンマシンは……。
「あ、馬鹿!今来たら……」
「かくほー!」
前からエクアトゥール、後ろからミドガルズに激突されたオブリビオンマシン。板挟みになった衝撃はそのまま反発しあって摩那とシルヴィに戻り。
「うぐぅ!?」
「ゆーれーるー!?」
三機が一塊になって、衝撃でビリビリしながら固まっていると。
「今だー!」
「シルヴィに続けー!!」
後続のミドガルズがぶつかって、倒れ込んだ塊に更に飛びついてを繰り返し、ゴロゴロゴロ……。
「あれは、キャバリア玉?」
社の周りをぐるぐる転がり続けることになった、雪玉ならぬキャバリア玉に、困惑を隠せないベティ。しかし、ここまで一切ダメージを与えていないという衝撃の事実に基づき、ベティは挑発の方向で動く事に。
「廃材、ちょっと、使ってもいい、よね?」
取り出したのは、アンカーワイヤー。背負った大剣が放つ風に乗り、再び飛行するベティは先端に鉤爪が付いた金属線をキャバリア玉に投げつけて、その中心にいるオブリビオンマシンの足に絡ませると持ち上げ……られるのか?え、どうなのコレ?
「か、怪力で、頑張る、よ?」(震え声)
んー……まぁ、いけた事にすっか!(深夜テンション感)
「ドーモ、ニセ・キシ=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
空中に逆さ吊りした甲冑キャバリアを見下ろし、ベティは鼻で笑うと冷ややかな目で見下ろして。
「戦わぬ、サンシタ。辱めが、お似合い」
などと、挑発した瞬間に甲冑キャバリアはブースターを点火。自力で飛び上がり、掠め取るようにベティを手中に収めると。
「しまっ……」
「かたじけないぃいいいいい!!」
両腕の上から胴体を掴まれて、身動きを封じられたベティが焦ったのも束の間。物凄い勢いでスリスリされる。
「拙者正直、この現場に来たこと後悔してたでござる!助太刀感謝でござるぅううう!!」
酷い目に遭いすぎて、自分が貶されたのではなく、助けられたと思い込んでるオブリビオンマシン。問題はあれか、そのマシンフェイスは西洋甲冑を思わせる等間隔に複数のスリットが入ったデザインだったため。
「いたいたいたいたいたいたいたい!?」
頬ずりされる度にベティの首が鬼おろしで殴られてるかのような、多段ヒットコンボを喰らっていることだろうか。
「ここまで皆さんがおかしいとなると、土地全体の気も確かめた方がいいかもしれません」
正直、このメンツの中では良心ともいえるベティが、他のメンツがヤバすぎて犠牲者になってる辺り、いつも通りっちゃーいつも通りな気がしないでもないが、ナミエはその原因をこの土地の地脈と見て。
「近づけると良くないことが起こりそうです」
その流れが件の社に向かっているんだとか。
「いたい、てば!」
何とか腕を抜いたベティが大剣でキャバリアの顔面をガンガン叩いて解放させると、プンスコしながら雷霆を身に纏う。その背後でナミエは竜巻を起こし、スクラップを巻き込んでオブリビオンマシンにぶつけようとするが……。
「あっ、こっち来ちゃダメ!」
「キャバリ・リ!」
生きっとったんかいワレェ!?
「もしかして、ここを守ろうとしているの?なら!」
カサカサ動く謎の機体がオブリビオンマシンに向かっていき、それを見たナミエは天を示す。竜巻が起こした上昇気流は大気をかき混ぜ水蒸気を凝縮して、雲を生み出した。その内部は微細な氷粒が擦れて電荷を含んで……。
「落ちて!」
「マサシのコトワザ。大勢で一人を攻撃すれば、楽に倒せる」
「はて?外が何か騒がしいような……」
ナミエの落雷とベティの雷を伴う一撃が叩き込まれるのは同時。これだけなら何も起こらないはずだったのだが。
「あばばばばばばば!?」
「ななななんだか痺れれれれれれれれ!?」
キャバリアの中には電流めいたサムシングと化した桜花が潜り込んでおり、こちらに通電。奇跡的にダメージが通ってしまった。ありがとう桜花!君の犠牲は(そもそも、そこにいるって誰も知らないから)きっと忘れられない!!
「ははーん?さてはさっきのプラズマの原因はあいつね?」
桜花が雷様になったお空の下、盛大に感電した敵機を見た水之江がにやり。
「幽霊の、正体見たり、枯れ尾花ってやつよ。やっぱり心霊現象なんて存在しないのよ、はい論破」
自己完結してるけど、あれどう見ても猟兵にやられてただけやで?
「来なさいよサムライ。刀を突き立て、相手が苦しみもがいて死んでいく様を見るのが望みでしょう?さあ正々堂々……」
一対十、って言おうとして、分身してる奴がいるから数の暴力がエグイ事になっている事に気づいた水之江は口をつぐみ。
「とにかく、楽しみをふいにしたくはないでしょう?」
「拙者、そんな人倫に悖るような趣味、ないのでござるが……」
水之江よりも、オブリビオンマシンの方がまともな頭をしている疑惑が浮上したが、まぁ、水之江だし。
「それとも……あれれー?ひょっとして負けるのが怖いのー?よわよわ侍さん?」
敵側が戦う意思を見せない為に、舐めてかかり始める水之江は手を頬に添えながら口角を上げて、見下した視線を投げかける為に眉根が歪む。
「じゃ、私は廃品回収の続きを始めるから後はよろしく」
「あ、じゃあ拙者も本来の役割を果たすので、これにて」
と、各々が目的の為に背を向け合ったところで。
「ファーーーーック!!」
ヴィリーさん、絶叫。
「どいつもこいつも戦場を舐めてんのか!?もーいい!付き合いきれん!!元凶を叩き、戦利品を納品して、そして弾薬や特殊作業費用を上乗せした請求書をグリモア猟兵に送付して今日の仕事は終わりだ!」
この憤怒の絶叫が通信機を通して、全猟兵の耳をぶち抜き、水之江に至っては頭痛すら覚えてよろめきつつ。
「はぁ……まったくワガママねぇ、うるさくてかなわないわ……じゃあメガビームキャノンで援護射撃してあげるから、いぇーがーがんばえー」
やる気のない水之江がてけとーな事を言いつつ、コンソールをたったかたーん☆
カナリアの両肩にマウントされた大型砲塔が起動。翼のように機体と水平に装着されていた二門の兵器は、垂直方向に曲がりながら砲塔を起こし、首横のジョイントスリットへ砲塔下部のカバーの様な砲座が降り、噛み合わさる。連結した砲座に向けて、黄金の歯車の様な駐退機が回転。砲身そのものが反転しながら砲門を正面に向ける。
その内部で粒子に電荷をかけ、コンソールに浮かぶ二つのターゲットサイトを目標に重ね、連動した砲塔が水平角を修正。『Lock on』のアラートが鳴れば。
「当たらないとは思うけど、射線に飛び込んでくる方が悪いんだからね」
猟兵も同時に動き回る戦場に向けて、躊躇なく引金を引いた。
「味方ごと撃つ気でござるか!?」
咄嗟に身を翻して荷電粒子砲を斬る、という芸当を披露したオブリビオンマシン。未だ戦う意図はないようだが……。
「オイコラ待ちな!アンタだね?雑魚をけしかけてたのは!散々アタシをコケにしてくれちゃって……もう許さねぇからなぁ?」
荷電粒子砲が途切れると同時にガルムが飛び掛かるが、電磁波の巡る爪を手元で翻した刀の峰で受けられ、弾き返されると背負った砲塔を反転。
「そっちに戦う気があろうとなかろうと、こっちにはぶん殴りたい理由があるんだよ!」
両肩から合計六発の弾頭をぶっ放し、斬り捨てられて爆炎が視界を覆った瞬間に二連装ビームキャノンが熱線を吐く。しかし、荷電粒子の砲撃を、刹那に見切り斜に跳んだキャバリアは跳ねっ返るようにガルムの首を狙い。
「それと、アタシのワンコはよく吠えるんでね!」
「バウッ!!」
「む?」
その咆哮は大気を震わし、不可視の砲弾となって機体を襲う。実体なき衝撃波に刀身を叩きつけ、霧散させて見せたキャバリアは刀を納めて……。
「拙者、名を武甲・無纏と申す。そこな獣とその主……腕の立つ武人と見た。一手、死合うていただきたい」
「ようやくやる気になったかい?有難くお相手するよ!」
先に動いたのはガルム。電磁波を帯びた爪を振りかざし、地を駆けると同時にイオンブースターが起動。たった一足で無纏のコアにその爪を伸ばすが。
「速い……しからば拙者もお見せいたそう」
「なんっ……!?」
取った。ジュディスが勝利を確信した瞬間に吹き飛んだのはガルムの方。天地がひっくり返っている事に気づいてスラスターを噴かし、機体を捻って四肢で着地すると同時に首めがけて振るわれた斬撃をパルスファングで受けようとして、意図的に『遅らされた』斬撃は咬撃の牙を打ち鳴らさせて、その鼻先を斬り飛ばそうとするが背の大砲が光を放ち、剣閃はそちらに逸れて荷電粒子砲を二分する。
「おいおい冗談だろ……さっきはそういうもんかと思ったけど、UC無しで斬ってるのかい!?」
咄嗟に両者飛び退き、仕切り直しになるが、ジュディスの頬に冷や汗が伝う。
「拙者が目指すは無念無想が一太刀……その刃に、斬れぬ物なし」
「ほぉう、そうかい?だったら俺の装甲ごと叩き斬って見せろや!!」
脚部のホバーにより浮遊したヘヴィタイフーンが文字通り『吹っ飛んで』来て、刃の腹で受けたキャバリアを追加装甲による重量で強引に蹴り飛ばす。体勢を崩した隙を逃さず、安全ピンを抜いておいたファイアクラッカーを踏み、爆発の衝撃に乗って吶喊。スパイクシールドで殴り掛かるも、此度は刀の刃を向けられている事に気づいたヴィリーは機体の上体を捻じり強引に回転して、裏拳を横っ面に叩き込む。
「ほう、ここから避けて見せるか……よい反応でござる」
「そういうテメェも、コイツの重量でぶん殴られて微動だにしねぇとは、いい筋肉してんじゃねぇの」
「キャバリアに筋肉とは……面白い事を言う」
ヘヴィタイフーンが拳を振り切り、無纏が蹴り飛ばして両者をぶっ飛ばし、睨み合いに。先ほどの肉薄で敵機をスキャンしたヴィリーのゴーグル型HMDにはコンソールに映るはずの情報が出されており。
「……初遭遇か?性能は未知数だが、刀を持ってやがるのに、距離を取られるとヤベェってどうなってんだ?」
「何?」
これに眉をひそめたのがジュディス。先の打ち合いで、間合いに入ってしまうと神速の居合が飛んでくるものと思っていたが。
「マジックのタネは、あの長い刀身にある。後はテメェで考えろ」
ヘヴィタイフーンは高周波振動で赤熱する、マチェーテを抜いて構え。
戦えぇえええええええええ!!
「ッ!?」
スクラップの山を吹き飛ばして、社を背にしたデモニック・ララバイ。両肩に拡声器を模した特殊兵装を搭載した機体から発するそれは、小枝子の叫びと、もはや騒音にしか聞こえない大音声の軍歌を混ぜた音響兵器。巻き上げられたスクラップが降り注ぐ中、耳を塞いだヴィリーはプチッ。
「猟兵【うちのバカ共】は一々フレンドリーファイアしねぇと戦えねぇのか!?」
「貴様が敵だ!自分達が敵だ!戦え!戦えぇえええ!!」
『あんまり雰囲気変わってないように見えるけど、これ平常だから気にしないでねぇー!』
広域殲滅音響兵器をぶっ放し、スクラップの雨の中を突っこんでくるデモニック・ララバイに、ヴィリーがブチ切れ小枝子に変わってクレイドル・ララバイが謝罪。刀を納めた無纏目掛けて、双剣化したフォースサーベルを振りかざすデモニック・ララバイだが、一閃。斬り払われてしまい両腕を上げた格好のまま、振り抜いた刀を逆手持ちにした無纏を見つめて。
「壊れろ!!オブリビオン!!」
コックピットを斬り捨てる斬撃が帰ってくるより先に、全身に棘を生やす。肩のスピーカーが響かせる大音声に殺戮音叉が共鳴して、地響きすら起こす衝撃を生み出すが無纏は素早く刀を往来させる。戦場を揺るがすほどの振動が、彼の機体には届いていないようだが……。
「なーるほど」
ジュディスは、その足元に転がったスクラップを見ていた。
「行くよ、ガルム!」
イオンブースターを点火し、急速接近するビーストキャバリア。後方からの気配に気づいた無纏は大きく刀を振るい、デモニック・ララバイを吹っ飛ばして反転。刀を振り下ろそうとして……。
「タネが割れれば、ビームを斬るなんて真似はさせないよ」
二連装ビームキャノンは無纏からややずれた位置に撃ち込まれ、その余波に煽られた隙をジュディスは見逃さず。
「あばよ!!」
すれ違いざまにガルムの爪がスパーク。駆け抜けた先で急制動をかけながら振り向くと。
「……見事!」
ギィイ……耳障りな音を立てて、オブリビオンマシンの上半身が斜めにずり落ちていった。
「深い依頼でした……」
にゅっ……斬り捨てられた下半身の方から出て来た桜花は、しみじみと呟きながら、スクラップになった機体を自分の車の後ろに括りつけていく。それを皮切りに、猟兵達の緊張がほぐれていく……。
「……ヨル、ごほーびは?」
『……………………無事に生存したということで、何か考えておこう』
うやむやにして、逃げようとしたヨルであったが、シルヴィの寂しげな目に負けて小さく呟き。
『ほら、アイ。帰りますよ』
「うーん……あと五時間……」
『昨日もそう言って、あなた午後まで寝てたでしょう?』
毒気(?)が抜けたアイをオベイロンがペチペチ。その横でアリスが頭を抱えて。
「ジャパニーズホラーを演出しに来たつもりが、どっちかって言うと西洋の悪戯妖精みたいなことになっていた。何を言っているか分からないかもしれないが、私にも何が起こっていたのか分からない……!」
なんか混乱してんなー。で、こっちで遠くを見つめているナミエの視線の先には、例のテーブル染みたキャバリア(?)が社の周りでいそいそ……。
「そう、アレがここの守り神になるのね」
あなた疲れてるのよ。
「鯨の墓場を喜ぶのは、鯨以外」
で、最後に自分のキャバリア用に使えそうな装備を探していたベティが見つけたものは……。
「カタナ?」
RXアシハラ刀……刻まれた銘は、登鯉成龍・影打。使えないゴミと判断して売り払ってしまってもいいし、折角なので持っててもいい……が、何やら癖が強い、そんな気がする……。
大成功
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