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バトル・オブ・オリンピア⑰〜アンライバルド・セラフィム

#アスリートアース #バトル・オブ・オリンピア #トライアスロン #トライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』 #ACE戦記外典

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●悪魔
 熾火が昌盛するようにアイセンサーが煌めいていた。
 迫る砲火などかすりもしない。
 戦場にあって、破損など一度たりとも負うことはなく。まるで、『最初からそう来ると知っている』かのような動きで持って対峙する敵の尽くを打倒していた。
 二刀のプラズマブレイドと背面に懸架されたライフル。ただそれだけの武装しか持たぬというのに、圧倒的な力でもってキャバリアを破壊し続けた。

 揺らめく炎。
 それは戦火。
 その向こう側に青いキャバリアは立っていた。
 一軍を以てしても止められない単騎。キャバリア『熾盛』は、正しく。
「『悪魔』め……!」
 敵対する者から幾度となく、そう吐き捨てられた。
 それは怨念だった。己を脅かした者に対する怒りと憎しみだった。それは火種だ。争いの火種としてくすぶる感情だ。
 だから、『フュンフ・エイル』は告げたのだ。

「生きているじゃあないか。あなたたちは。生命がある。それ以上の何を望むというんだ。僕……俺は『戦いに際しては心に平和を』抱いている。だから、生命は……」
 奪っていない、と告げる彼に対して燃え盛る瓦礫と化した小国家に立ちすくむ一人の兵士は怒りに満ちた瞳を向けた。
 生身である彼にとってキャバリアは敵うべくもない存在である。
 だが、臆せず言うほかなかった。自棄になっていたとも言える。
「この有様を見て何が平和だ! そんな有名無実なものを求めた結果がこれだ! やはりお前は『悪魔』だ。『フュンフ・エイル』!」
「そんなことはない。俺は『平和』を望んでいる。だが、あなたたちは違う。他を排斥しようとしている。調和を尊ぶことなく。調和、それを俺たちは望んで戦っている」
「調和? 力による屈服の間違いではないのか! 今のお前の存在こそが不和の源だ!」
「なんで理解してくれない」
「理解? できるわけがない! お前が強すぎるからだ。強大すぎるからだ。存在していること自体がおかしなことだからだ! 確かにお前はお前に付きしたがう者にとっては『救世主』だろう。だが、お前に付き従う者にとっての敵を救うことはしない。結局お前がしたことは! 争いの火種を生み出すことだけだ!」
 怒りの瞳を向ける兵士の言葉を『フュンフ・エイル』は理解できなかった。
 今はまだ――。

●聖なる三位一体
 彼女は知っていた。
 遥か昔。古代アスリートアースより彼女は知っていたのだ。
 今日と言う日に、己が眼の前に猟兵たちがやってくることを。
「我が名は時宮!『時宮・朱鷺子』! 古代バトリンピア時代から蘇った、最強のダークリーガーである。またの名をトライアスロン・フォーミュラ!」
 漲る闘気。
 目の色が変わるように彼女の瞳は熾火宿すように炎が昌盛する。

「諸君らもすでに知っているように、われわれはかつて世界の危機を救うべく、スポーツに寄る平和な世界を作ろうとし、脈々と紡がれた歴史に寄ってアスリートたちはこれを成し遂げた! 実に立派である」
『時宮・朱鷺子』は、その言葉とは裏腹に満足げではなかった。
 そう、漲る闘気は重圧となって猟兵達にのしかかるようだった。
「ですが、このバトル・オブ・オリンピアは……」
 グリモア猟兵、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は、5thKING『勇者リリリリ』……いや、『魔王ガチデビル』が画策した世界の破滅、即ち、カタストロフの危険性を説く。
 その言葉を『時宮・朱鷺子』は遮るようにして掌を向けた。

「みなまで言うな。私は諸君らに試練を与えると言った。そして、私は全身全霊で諸君らに戦いを挑む」
「な、何故です。そこまでわかっていながら、何故……!」
 カタストロフを、世界の破滅を望まぬというのならば共闘も在り得るのではないかとナイアルテは思ったのだろう。それは他の猟兵も同じであったかもしれない。
 けれど、彼女は否定する。
 あふれる闘気が、それを証明していた。
 彼女の言葉は誠だった。
 全身全霊。最強のダークリーガーが己達との戦いは避けられぬと言っているのだ。加減も手心も一切ない。純粋な戦闘の気配が猟兵たちの肌をジリジリと焼くようだった。

「来るがいい。諸君らが『戦いに際しては心に平和』を抱くのならば! この『時宮・朱鷺子』を全身全霊で打倒してみせろ! これが私が諸君らに与える試練! 征くぞ!!」
 もはや問答無用と言わんばかりに『時宮・朱鷺子』は猟兵たちに迫るのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『バトル・オブ・オリンピア』の戦争シナリオとなります。

 猟兵である皆さんが到来することを予め知っていたかのように最強のダークリーガー、トライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』が待ち受けています。
 彼女は『時間遡行特訓能力』を有しており、初見の攻撃でさえ『遥か大昔からこの時の為に特訓してきたように』対処してきます。
 それは完璧な対処法であり、彼女の攻撃は『必ず命中』し、同時に皆さんのユーベルコードへの対策法を編み出してきます。
 此処が名実ともに最強のダークリーガーたる所以です。

 ですが、彼女は何らかの理由で『全力を出し切る』ことを決意しているため、必ずしも彼女を打倒する必要はなく『全力を出し切る』ことさえできればいいようです。

 プレイングボーナス……敵の「時間遡行特訓能力」に対処する/敵に全力を出させる。

 それではアスリートアースに巻き起こる熱きスポーツバトルの祭典を戦い抜く皆さんの物語の一片となれますように、たくさんがんばります!
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第1章 ボス戦 『時宮・朱鷺子』

POW   :    デッドヒート・マラソン
【果てしない特訓の成果】を纏いレベル×100km/hで疾走する。【自身の前方直線上】に誰かを乗せると轢殺ダメージ2倍。
SPD   :    ディープ・スイミング
【「爆走!オリンピアロード」の水中ステージ】を降らせる事で、戦場全体が【海中】と同じ環境に変化する。[海中]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    ブレイン・バイシクル
自身が操縦する【時宮・朱鷺子専用ロードバイク】の【何物をも破壊する硬度】と【骸の海すら飛び越える速度】を増強する。

イラスト:みそじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月夜・玲
例えどれだけの無茶ゲーだろうとも、乗り越えて見せるのが猟兵魂!
知らんけど
この世界のフォーミュラは良い人、なんだろう
ガチデビルが居なければ
だからこそのバトリンピア
それなら小賢しく、貴女に勝って見せようじゃない

《RE》Incarnationを抜刀、そしてEX:I.S.T[BK0001]に騎乗
ロードバイクの一撃を『オーラ防御』で機体を強化し受けつつ、【断章・焔ノ血〈焔ノ絆〉】起動
蒼炎で命を繫ぐ
対策してくるんなら、あんたの強さを使えば良い!
そっちが勝るならこっちは死なないし
こっちが勝るなら貴女の目論見の勝ちだ
騎乗しながら『なぎ払い』や『斬撃波』で全力で戦おう
こっちが勝つまで負けなければ、それで良い!



『時間遡行特訓能力』――それは未来に対峙するべき相手の手を知り尽くすということである。
 どう動くのか。
 どのような癖を持つのか。
 如何なる能力があり、何を目的としているのか。
 それらのあらゆることを遥か太古より理解し、対処する術を磨くことができる、ということである。
 平和な世界の実現。
 そのためにこそトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』は『時間遡行特訓能力』を使用してきたのだ。

 つまり。
「諸君ら猟兵の手のうち、それは私にすでに割れているということだ! だが! あえて言わせてもらおう! 私は全身全霊を以て諸君らと戦うと!!」
「どんな無茶ゲーなんだろうね、これは!」
 踏み込んでくる月夜・玲(頂の探究者・f01605)に『時宮・朱鷺子』は合わせるようにして前に踏み出す。
 手にした二刀の模造神器。
 その蒼き刀身の鋭さを彼女は既に知っている。

「君もまたアスリート魂を持っている。そうだな」
「そうだね。どんな無茶ゲーだろうとも、乗り越えて見せるのが……そう、猟兵魂! しらんけど!」
 振るわれる斬撃と打ち合う『ブレインバイシクル』。
 まるでフリースタイルのように『時宮・朱鷺子』は専用ロードバイクのハンドルを手にし、サドルから腰を下ろして模造神器と打ち合っているのだ。
 火花散る模造神器と『ブレインバイシクル』。
「どうした、猟兵。その程度ではないはずだろう。諸君らは!」
「こなくそ……!」
 玲は迫る一撃を受け止めながら歯噛みする。
 この世界、アスリートアースのフォーミュラたちは皆、邪悪とは言い難い者達ばかりであった。
 そもそもダークリーガーたちからしても真に邪悪なる者はいなかった。

 そう、皆アスリート魂を宿し、懸命に勝利を追いかけていた。
『ガチデビル』が居なければ、と思う。
 いや、だからこその『バトル・オブ・オリンピア』である。
「策は講じないのか。このままでは受けの一手。私の猛攻を前に君は沈むことになるぞ!」
「それならさぁ!」
 玲の瞳がユーベルコードに輝く。
 蒼炎がほとばしり、互いをつなぐ。

「……知っているさ。これもまたな」
「なら話は速い! どうせ対策してきてるんでしょ! なら、こっちはあんたの強さを使えばいい!」
 そう、玲のユーベルコード、断章・焔ノ血〈焔ノ絆〉(フラグメント・ファイアブラッド・リザレクション)は互いが同意に死なない限り死なない蒼炎でもってつなぐ力。
 ゆえに玲は倒れないことを選択したのだ。

「だが、これは押し問答にして千日手。君自身の精神が摩耗するだけだと思うが。それまで耐えきるつもりかな?」
「泥試合のつもりはないよ! こっちが勝つまで負けなければ、それでいい!」
 叩きつけられる斬撃の尽くが打ち払われる。
 模造神器を握りしめた手が痺れる。けれど、それがなんだというのだ。
 眼の前のトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』は最強のダークリーガー。
 勝利を得るために未来から着た自分と特訓を重ねるような存在なのだ。
 時間遡行能力があるのならば、その繰り返される何千、何万、何億という時間に精神が押しつぶされる。
 だが、彼女は類稀なる魂、その精神性のみで『この時』を待っていたのだ。
 遥か古代から。

 なら、今という刹那を玲は耐えなければならない。
 そのための炎。
 故に、玲もまたその瞳を昌盛させ、蒼炎滾る刀身でもって最強と打ち合い続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡宮・ノエル
最初はヴァーイに乗っていこう。クローカは…何か道端つついてる(過去ほんのり操り)
そして、海中になったということは…ブレックに交代!しがみついて、これで海中対応しつつ…攻撃が命中するなら、まあ…食らうダメージは考えないように。
でも、全力出してくるなら、こっちだって!
使うUCはこのために…つまりは『全力を出させるために』使う!
ブレック、墨を吐いて!海中なら、これは無限に広がる!
なら、それをものともしないためにも、全力は出してくるはず!
クローカが道端で過去を啄んでたのは、少しでも誤差を出すためだ。
その誤差で…この退魔刀での居合抜きを当てよう。当てる、その気概こそ…全力に向かい合う礼儀だ。



 神威宿す鴉が飛ぶ。
 悠々たる姿。見上げたトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』は、それさえも知っていたかのように、その昌盛する瞳を持ってユーベルコードを発露する。
「空征く神威であろうと! 地走る神威であろうと!」
 鏡宮・ノエル(よく圖書館にいる學徒兵・f38658)は、確かに『時宮・朱鷺子』と初対面である。
 己の力の在り方。
 己の力の振るい方。
 そうしたものを彼女が知り得るはずもない。

 だが、彼女は即座にノエルが乗る狼ごと地面をオリンピアロードの水中ステージに巻き込むようにして戦場に引きずり込む。
「未来と過去を操る神威。それを手繰る猟兵であろうと、此方の領分に引きずり込めば」
「だろうね……けれど、『ブレック』!」
 ノエルの言葉に応えるようにして巨大な蛸『ブレック』が隅を吐き出す。
『時宮・朱鷺子』の視界を塗りつぶすように吹き荒れる墨は水中を真っ黒の染める。
 だが、その墨を彼女は、その強靭な腕部と脚部でもって渦を生み出すようにして撹拌していくのだ。
 如何なる視界を埋め尽くす墨とて、潮流を前には薄れていくのが道理であろう。
 初見殺しであるはずだ。

 だが、それにすら『時宮・朱鷺子』は対応してくる。
 まるで遥か昔から対策をねっていたかのように。
「こちらは全力、全身全霊と言ったはずだが!」
「こっちだって!」
 だが、まだ彼女は全身全霊ではないことをノエルは強いる。凄まじいほどの身体能力。それでもって『ブレック』の放った視界を埋める墨すらも彼女は対処してきた。
 これ以上を引き出さなければならない。
「『ブレック』!」
 もっと、と言うようにノエルの瞳がユーベルコードに輝く。
『卵形の宝石』に込めた神力を全て発露する。あらゆる行動に成功する神の手(グッドゥ・ハン)を手繰る。

 それは撹拌するように『時宮・朱鷺子』が生み出した凄まじい潮流を止めるように吹き荒れ、吐き出された墨を彼女の周囲へと集めるのだ。
「だが、それも対策済みだ! ……いや、そうか。君は、このために自分の力を使っていたのだな?」
「そうだよ。あなたに全力を出させるため。それが必要なんでしょう! だったら、僕はあなたの全力のために力を振るう! 少しでも、そう、少しでもあなたが!」
 ノエルは神威操る『クローカ』によって生み出された認識の齟齬を就くようにして水中を駆ける。

 だが、きっとそれも対処されてしまうのだろう。
『時宮・朱鷺子』とは最強のダークリーガー。
 天才とも言うべき身体能力と『時間遡行特訓能力』によって凄まじい時間を体感してきた存在である。
 その精神力は並のものではない。
 故に彼女は全力を持って迫るノエルを暗き水中の墨の暗黒の中で待ち受け、振るわれる退魔刀の一閃を受け止める。
「……なんて、こと!」
「素晴らしき居合の一閃だな! だが!」
 彼女はその一閃を肘と膝でもって受け止めていた。

 なんたる絶技であろうか。だが、ノエルは、此処まで彼女の全力を引き出したことを知る。
 初見殺しに認識齟齬。
 それらさえも乗り越え、さらには身体能力を総動員しての肘と膝による真剣白刃取り。
 正しく全身全霊。
 その力を引き出したノエルは『ブレック』と共に海上へと飛び出す。
 同時に『時宮・朱鷺子』もまた海上へと飛び出した。
「よい気迫だった!」
「あなたへ全力でもって向かい合う礼儀を尽くしたまで」
「なるほど。よいスポーツマンシップだ!」
 そう言って、互いに視線を混じらわせ、さらなり真剣勝負。その全身全霊たる戦いを続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
幾千幾億の彼方より、今日この日のために備えていたとは恐縮です
ちょっと照れますね///

ですが、最強の自負と責任を以て世界崩壊を食い止めようと臨むその生き様は
とても窮屈そうに見える
誰よりも自由な能力を持ちながらも。誰よりも不自由な矛盾に縛られている

貴女の重荷の幾ばくかを減らすことが出来れば幸いです

◆タイマンチェイス
デッドヒートマラソンの疾走を真正面から受け止める
その全力
その全身全霊受けて立つ!

心眼+ジャストガードで構え、限界突破の武器受けで激突する瞬間、早業+クイックドロウで刻印を飛ばす
渾身の怪力と重量攻撃で大地を穿つ両足のアンカー
グラップルの綱引き勝負に持ち込みます
曳!曳!応!応!曳!応!応!!



 トライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』は古代バトリンピアの時代より、『この時』のために備えていた。
『時間遡行特訓能力』によって、彼女は未来の自分から特訓を受けている。
 それは即ち、初見殺し殺しであったことだろう。
 全てはこの日のために。
 この瞬間のために、弛みない練磨を続けてきた最強のダークリーガー。
 それが『時宮・朱鷺子』なのである。
 海上から飛び出した彼女は、果てしない特訓の果てに得たスピードでもって猟兵に肉薄する。

 戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)の強靭な肉体すらも軽々と吹き飛ばす一撃。
 骨身が軋み、血反吐が彼の臓腑から込み上げる。
 口元に溢れた血潮を拭い、蔵乃祐は、しかして些か照れたように片目を閉じた。
「幾千幾億の彼方より、今日この日のために備えていたとは恐縮です。ちょっと照れますね」
「いいや、諸君らを見ればわかるとも。備えるに値するアスリートであると。私の一撃を受けてなお、まだ立っているということ。その練磨された肉体。鍛え上げられ、これまでの歩みを知らしめるような体躯。立派だ!」
『時宮・朱鷺子』の言葉に蔵乃祐はいよいよもって、むず痒い気持ちにさせられるだろう。
 だが、敵は最強のダークリーガー。
 これを乗り越えなければ世界の破滅を防ぐことなどできようはずもない。

 ならばこそ、蔵乃祐は告げる。
「ですが、最強の自負と責任を以て世界崩壊を食い止めようと挑むその生き様は、とても窮屈そうに見える。誰よりも自由な能力を持ちながらも。誰よりも不自由な矛盾に縛られている」
 たしかにそのとおりだろう。
 時間遡行能力を使えるのならば、他にもやりようがある。
 だが、不器用すぎたのだろう。愚直に過ぎたとも言うべきか。
「私はなんらその生き方に恥じ入るところはない、と言っておこう! 私は私の能力を世界平和たる未来を掴むために使っている。私がそう決めた。誰に言われるまでもなく、そう使うと私が決めたのだ!」
 だからこそ、と『時宮・朱鷺子』は迷わない。
 激突する音は、人間と人間がぶつかった音ではなかった。

 もっと頑強な何かがぶつかり合う音であった。
 岩と岩。
 否。鋼鉄と鋼鉄。
 それらがぶつかり合う轟音。
「貴女の重荷の幾ばくかを減らすことができれば幸いです」
「私は背負われるほど弱い女ではないと言っておこう! その気持こそがスポーツマンシップ! 平和の象徴! 誰かのためにと願う心を育てる行為こそが、スポーツなのだ! 故に、私も全身全霊を尽くそう! 君の!」
「ええ、僕の全力。その全身全霊受けて立つ!」
 再び激突する。
 タイマンチェイスによって刻まれた追跡者の刻印。
 それは剥がされるまで闘気の鎖によって互いが繋がるということ。そして、蔵乃祐の鍛え上げられた肉体。

 その振るわれる一撃が『時宮・朱鷺子』の放つ拳と激突し、周囲に衝撃波を生み出す。
 近づくもの全てを吹き飛ばすような嵐のような打撃の応酬。
 蔵乃祐は、その衝撃に血反吐を撒き散らす。
 だが、後退はない。
 己の足を大地穿つ楔となして、一歩も退かずに『時宮・朱鷺子』と打ち合うのだ。
 痛みあれど、そこには一種の爽快感さえあったのだ。
「さあ、ここからだ! 堪えろ! もっとやれるはずだ! 声を張り上げろ! この私の全身全霊を受け止めるといったのならば!!」
「曳! 曳! 応! 応! 曳! 応! 応!!」
 蔵乃祐は咆哮する。
 己の全力。その渾身をぶつけ続け、『時宮・朱鷺子』の突進を受け止め続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天道・あや
こっちの攻撃、動きは全部お見通しと。…うーん、となると、どうしたもんかなぁ

…うん!考えても分かんない!

という訳で真っ直ぐ全力でぶつかるとしましょう、そうしましょう!

やる気よし!テンションよし!大きな壁、よし!

んじゃ、行きますぜ、時宮さん!

こっちのUC対策があるなら、その対策使わせましょう!その対策をしてる時に、少なからず隙が出来ると信じて!【覚悟、激痛耐性】

あたしがこれから使うUCの発動条件、それは楽器を弾く!つまり相手は楽器、もしくはそれを弾く手を止める

つまり、上半身を封じてくる筈!!

だからあたしは封じられた上半身ではなく下半身で戦う!【ダンス、ジャンプ、足場習熟】

ダンスで鍛えた足技を見よ!



 圧巻というのならば、この事を言うのだろう。
 猟兵たちのユーベルコードに対して、初見のはずのトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』は完璧に対処していた。
 迫りくるユーベルコードの輝きを受けてなお、彼女は類まれなる身体能力とまるで見てきたかのような挙動でもって猟兵たちの攻勢をしのぎ、また凌駕していた。
「まだまだこんなものでは、足り――」
 彼女が駆る専用ロードバイク『ブレインバイシクル』がフィールドを疾駆する。
 その速度は凄まじく、圧倒的な速さでもって天道・あや( スタァーライト ・f12190)を翻弄する。
「――ないぞッ!!」
「うわ、とっ! こっちの攻撃、動きは全部お見通しって聞いていたけれど……うーん、これは本物だ。どうしたもんかなぁ」
 彼女は迫る『時宮・朱鷺子』の圧倒的な速度に驚愕することしかできなかった。

『時宮・朱鷺子』の『時間遡行特訓能力』は、正しくこの日のためにあった。
 まるで古代から自分に相対することを予見していたかのように完璧な対処でもって、その圧倒的なスピードで翻弄しているのだ。
 同時にあやは思った。
 これは考えるだけ無駄なやつだ、と。
 考えてもわからないことはしかたない。
 なら、どうするか。
「やる気よし! テンションよし! 大きな壁――」
 あやは指差し確認する。
 まずは自分を、そして自身の胸を、そして最後に『時宮・朱鷺子』を指差す。
「――よし! んじゃ、行きますぜ、時宮さん!」
「来い! この私に全身全霊の戦いを見せてもらおうか!」

 踏み込んでくる『ブレインバイシクル』は、その硬度を誇る。
 壊れることを知らぬ頑丈さ。
 その頑強なフレーム、ホイールに轢殺されることは簡単に想像できた。
「なら! 真っ向からぶつかるまで! さあ、これがあたしの!」
「させはしないさ! 君の本領は歌うことだろう。なら、それを防がせてもらおう!」
『時宮・朱鷺子』が飛び込み、あやの鳩尾を拳で打ち据える。
 容赦のない一撃に、あやは息が詰まる。
 如何に猟兵と言えど、呼吸を止められては歌うことはできない。そして、楽器を取り落とすように彼女は蹴撃を以てあやを蹴り飛ばすのだ。

 そう、楽器、歌、その起点となるのは全て上半身だ。
 上半身さえ動きを止めてしまえば、あやの本領は発揮できない。
「ぐっ、ふっ……!」
「さあ、見せてみろ! この対処を越えた対処を! 君ならばできるはずだ!」
 確かにあやは理解していた。
『時宮・朱鷺子』なら必ず、己の上半身を狙ってくると。
 だからこそ、あやは下半身で歌う。
 そう、言葉無くとも。
 手が動かなくとも。

 足がある。
 彼女の履いたヒールが地面を打ち鳴らす。タップダンスのように音が響き渡る。
 軽快な音。 
 リズムを刻めばビートが生まれる。
 そして、あやは鳩尾に叩き込まれた拳で呼吸困難になりながらも足を動かす。
 無呼吸のタップダンス。
「――ッ!」
「やはり、出来るか!」
「これが……あたしの!」
 音。音楽。なら、突き動かされるは想いだ。
 だから、最後まで聴けというように彼女の足が刻んだビートが夢や未来を歌うように音符となってほとばしり『時宮・朱鷺子』へと殺到する。

 その音符と激突する拳。
「正しく私の全身全霊を引き出してくれたな! 素晴らしい! 見事な音楽だ!」
 戦いの中に在っても楽しげに笑う『時宮・朱鷺子』の言葉にあやは今だ呼吸が困難ながらも、サムズアップし、刻むリズムで音符を放ち続け、猛攻を彼女に凌がせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルヴィナ・エルネイジェ
弱者必滅…それは分からなくも無いのだわ
だから貴女を超えろと言うのだわ?

海中の環境を利用して全力を出さざるを得ない状況を作るのだわ

まずオーバーロードでリヴァイアサンを真の姿にするのだわ
これは泳ぐだけで津波が起きる程の大きさなのだわ
蟻を潰すより鯨を狩る方が力を使うのは間違いないのだわ

戦場が海中になるのは良い事なのだわ
お互い全力が出せるのだわ

水圧を得る為に可能な限り深く潜るのだわ
そして大海嘯で水の癒しを受けるのだわ
海竜装甲の高速再生と合わせて二重の永続回復を得るのだわ
攻撃は強力で必中だから回復で対処するのだわ

この対処方法は簡単なのだわ
回復効果を上回る攻撃を与え続ければいいのだわ
でもここは海なのだわ
海中での活動は水の抵抗と水圧で通常の何倍もの力が必要になるのだわ
それも海上では津波に、海中では津波が引き起こす激しい流れに耐えながらなのだわ
更に海杖で周囲に乱流を作るのだわ

きっとこの環境にも対応するのだわ
全力で泳ぐ事で…なのだわ

最後に鰭や尾で叩き、顎で噛み付く水中格闘戦で全力を引き出すのだわ



 猟兵の猛攻がトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』を襲う。
 しかし、その尽くを彼女は対処し、上回ってきた。
 最強のダークリーガー。
 その名を示すように彼女は全身全霊をもって猟兵達の攻勢とぶつかる。
「まだだ、まだなのだ、猟兵! 弱いままでは生きることは出来ない!」
「弱者必滅……それは分からなくも無いのだわ。だから貴女を超えろというのだわ?」
 メルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は『時宮・朱鷺子』のユーベルコードによって海中へと変貌したフィールド、その海面に立っていた。

「いいや、確かに人は強くなければ生きられない。しかし、優しくなければ生きる資格すらないのだ! ならば!」
『時宮・朱鷺子』は海面を走る。
 片足を踏み出す。踏み出した足が沈む前に次なる足を踏み出せば沈むことはない。なんたる身体能力だろうか。
 沈まぬことはできても、進むことは遅々たるものであろう。
 しかし、彼女は地上となんら変わらず疾駆してみせたのだ。
「スポーツを通して人は平和を知るべきなのだ!」
「そう……なら、これもまたスポーツなのだわ。全力で行くのだわ……『リヴァイアサン』」
 メルヴィナの瞳に輝くはオーバーロードの輝き。
 彼女の背後から海面がせり上がり、現れるは竜の如き威容を持つ彼女のキャバリアだった。
 真の姿を晒した『リヴァイアサン』は咆哮する。

 裂帛の如き咆哮。
 それを受けて『時宮・朱鷺子』は不敵に笑む。
「姿を表したか。機神。君の本領は海上ではないだろう。海中こそ、君のテリトリー! よかろう! この時のために鍛え上げた私の肺活量、示す時!」
「戦場が海中になるのはよいことなのだわ」
 メルヴィナは『リヴァイアサン』と共に海中深くへと潜航する。
 一気に水圧が上がる。だが、『リヴァイアサン』も『時宮・朱鷺子』も一向に構わなかった。
 海中にあって『時宮・朱鷺子』の動きは人外じみていた。
 バタ足はまるでスクリューでもついているのかと言うほどに海流さえ意に介さないように『リヴァイアサン』へと迫るのだ。

「受けてもらおうか! この私の拳を!」
 振るわれる一撃に『リヴァイアサン』の装甲が軋み、凹む。なんたる膂力だろうか。
 これで水中の抵抗を受けているというのだから、地上で受ければどうなるか。
 恐ろしいことである。
 だが、『リヴァイアサン』もまた同様である。
 この海中にあって、『リヴァイアサン』の装甲は海水で補填される。
 さらに大海嘯(タイダルウェイブ)が『時宮・朱鷺子』の体を押し流す。
「やはり対処してくるのだわ……」
「ああ、海流が強く、波を私にぶつけるというのならば、それを単純に上回れば良い! 簡単なことだ! そして!!」
『リヴァイアサン』の体躯が打ち上げられる。
 下からの衝撃。

 それは『時宮・朱鷺子』の拳の乱打だった。
 海水で抵抗を受けてなお、衝撃が走る。上へ、上へ。
「まさか、海中から海上へと『リヴァイアサン』を打ち上げるつもりなのだわ……!?」
「そのまさかだ!」
 衝撃が走る。
 真の姿を晒した『リヴァイアサン』さえも『時宮・朱鷺子』は拳一つで海上へと押し上げていくのだ。
「……! この環境にも対応するのだわ……! でも!」
 メルヴィナは海杖でもって『リヴァイアサン』の周囲に乱流を生み出し、拳の衝撃を低減させる。

 さらに『リヴァイアサン』が身を捩るようにして鰭と尾の殴打でもって『時宮・朱鷺子』を突き放す。
 けれど、即座に彼女は距離を詰めてくるのだ。
「しつこいのだわ!」
「生憎と、これが私なのでね!」
「でも、これで貴女の全力を引き出すことができるのだわ……! こちらも全身全霊なのだわ!」
 メルヴィナは『リヴァイアサン』と共に海中にありて装甲を修復し続け、『時宮・朱鷺子』を引き付け続ける。
 その息が続く時まで。
 それが今メルヴィナが出来る最大。
 きっと彼女は息が続かぬと判断すれば即座に海上に出るだろう。そこを狙う。それもまた対処されるのだろうが、構わない。

「貴女を倒す必要はないのだわ。ただ超えるだけでいいというのなら、私にもできるのだわ!」
「そのとおりだ! その熱き魂でもって私に向かってくるが良い!」
 渦巻く海中ステージ。
 その渦中にて超克の輝きが星のように煌めくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎

「最強のダークリーガー。相手に取って不足無し!
しかも、全身全霊を出させるのが目的だって!?
いいぜ!その全力!このブレイザインが引きだそう!!」
UC発動
この砲撃はブレイザインの後方以外は全てが範囲であり、
チャージはなく即座に発射される
これを防ぐ方法は後方に回ることのみ
それだけでも尋常ではない対処が必要
後方から突っ込んでくる朱鷺子を[オーラ防御]、[気合い]で耐える

「流石だな。だが、こっからもブレイザインは強いぜ!
改めて挑ませて貰うぞ!朱鷺子!」
朱鷺子の全身を炎で拘束して超極大強化されたブレイザインが立ち、
拳を握りしめて殴り合う
全てに対処可能なら全てシンプルにやるのみ!



 海中に生まれた渦より脱したトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』は息を肩でする。
 息切れ。
 海中にて格闘戦を繰り広げたのだから当然と言えば当然である。
 しかし、その息の乱れは即座に収まる。
 血流のコントロールによる心拍、神経の沈静化。
 自在に行われる彼女のアスリートとしての、いや……最強のダークリーガーたる所以を見せつけるようにクラウチングスタートの体勢を取る。
「最強のダークリーガー。相手に取って不足無し!」
 彼女の視線の直上に空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は真っ赤な機械鎧を纏て立ちふさがる。

「ならば、受けろ! この一撃を!」
 大地が砕ける。
 衝撃が迸る。
 スタートを切っただけで、この気迫、重圧である。清導は、しかし恐れなかった。
 敵に勝つ必要はない。
 全身全霊を引き出し続けることが目的である。ならば、加減など必要ない。される必要もない。
 自分が、受け止める。
「いいぜ! 来い! このブレイザインが受け止めてみせる!!」
 煌めくはユーベルコード。
 潜在能力のすべてを引き出し、清導は覚醒する。
「決着変身!(ファイナル・ブレイザイン) ファイナル・ブレイジングドライブ!! コレこそが!! ファイナル・ブレイザインだ!!」
 激突する力と力。
 極大威力の特大二連火焔砲と超極大威力の超特大光焔砲が『時宮・朱鷺子』へと迫る。

 この対処法は清導の前面から姿を消すことである。
 上方でもいい。後方でもいい。
 どちらにせよ、彼の前に立つ以上この一撃には対処できない。
 はずだった。
「真っ向勝負!!」
『時宮・朱鷺子』の拳が二連の光条を引き裂くようにして放たれ、凄まじい熱量の中を清導へと迫っていたのだ。
 それだけではない。
 彼女の拳は光条を切り裂くだけではなく、清導の機械鎧をも砕く一撃を叩き込んだのだ。
「ぐぁぁぁっ!! さ、流石だな。だが……!」
「ここからでも立ち上がるのだろうブレイザイン。君は!」
 わかっていたことだった。

『時間遡行特訓能力』を持つ彼女にとって、ブレイザインとの戦いは一度目ではない。
 ならば、この一撃を以ても彼が立ち上がることを知っている。
 故に。
「この炎の拘束も織り込み済みさ」
 ふん、と裂帛の気合と共に身体能力のみで炎の拘束を破ったのだ。
 一瞬。
 だが、一瞬で清導はよかった。
 拳を握りしめるだけの時間があればよかったのだ。
「負けるものか! 負けてたまるか! オレは!!」
 踏み込む。
 全身全霊であったのは『時宮・朱鷺子』だけではなかった。清導もまた全身全霊だった。
 己のすべてを込めた拳。

 拳を握りしめる時間が必要だったのは、覚悟を決めるためだった。
 全てに対処される。
 なら、全てこちらもシンプルに立ち向かうのみ。
 拳。己の拳。それだけで清導は戦う。激突する拳と拳。ぶつかり合う衝撃がフィールドに亀裂を走らせ、その戦いの激しさを知らしめるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
完璧な対処法でっすかー。
速度自慢とのことでっすし、藍ちゃんくんが何かする前に轢いてしまう……。
そういう相手の土台に上がらないメタの張り方ですと何よりもおねえさん自身が納得しないでしょうねー。
いくらでも手があるというのにご自身が特訓して真正面から打ち破ろうとする方でっすからねー!
世界の危機を救うためだとか、全力を出し切る必要があるとか、藍ちゃんくんを鍛えるとか抜きでも、特訓し打ち勝つのが好きなのかと!
でしたら、ええ。
藍ちゃんくん対策は即ち藍ちゃんくんのファンにならないこと!
きっともうこれでもかと未来のおねえさんが持ち込んだ藍ちゃんくんの映像やら音源やらグッズやらに囲まれても自制心を保つ訓練をしてきたのではないでっしょかー!
ですがそれって、これでもかと既に藍ちゃんくんのファンなのではー?
生藍ちゃんくんに興味津々ではー?
ライブは生物!
完璧な対策をしてきたおねえさんだからこそ味わえる世界がここにあるのです!
おねえさんが会ったおねえさんとはまた違う、今のおねえさんだけの時間をプレゼントするのです!



 迸る衝撃。
 拳と拳の応酬はフィールドを砕く。
 大地が揺れ、空気が震える。打ち合う音は轟音か雷鳴か。
 そう思うほどにトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』と猟兵の戦いは苛烈だった。
「全身全霊を懸けて戦う。これこそが私の求めた戦いであり、君たち猟兵に必要なことだ。私を超えていけ!」
 彼女は専用ロードバイク『ブレインバイシクル』を駆り、疾駆する。
 凄まじい速度。
 目指す先は唯一。

 紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)である。
「歌わせはしない。歌われれば、無意識に君に友好的になってしまうからな! そうなっては全身全霊の戦いは難しい! 故に潰す!!」
「あやー! まさか……!」
 藍は自身が何かをしようとした瞬間に『時宮・朱鷺子』が迫る姿を見やる。
 そう、藍への対処は唯一。
 何もさせないこと。
 そう、なにかの挙動、その初動を潰すために彼女は圧倒的な速度で持って『ブレインバイシクル』による轢殺を敢行しようとしているのだ。

 何故、そこまで。
 理由がある。
 そう、『時間遡行特訓能力』である。
 彼女は未来から来た自身と特訓をすることで最強のダークリーガーとなった存在である。
 ならば、この日も既に経験している。
 藍という猟兵を既に知っている。
「まさかおねえさんはもう藍ちゃんくんのファンなのでっはー!?」
 そのとおりである。
 藍という藍ドルに対抗するすべは、ファンにならぬこと。即ち、魅了される前に潰すことしかないのだ。

 だが、皮肉なことだ。
 藍に対する特訓をすればするほどに。
「そうだ。ファンになってしまう! 皮肉なことだ。私の『時間遡行特訓能力』が仇となるとはな! だが! すでに私は乗り越えた! ファンすぎるが故にファンサが逆に解釈違いになるほどにこじれているのだ!」
「それもどうかと思うのでっすがー!?」
 藍は思う。

 彼女は、『時宮・朱鷺子』は相手の土俵に上らぬメタの張り方は決してしないのだ。
 真っ向から打ち破る特訓ばかりをしてきたのだろう。
 いくらでも手があるはずなのだ。『時間遡行』できるのならば。だが、だからこそである。
 世界の危機を救うため。
 全力を出し切って、己の能力を失おうとさえしている決意。
 それは藍にとって敬意に値するものだった。
 だからこそ、藍は迫る『時宮・朱鷺子』を見据える。
「ぐっ!」
 呻く『時宮・朱鷺子』。
 そう、なんだかんだ言ってもファンである。紛れもない事実である。

 だからこそ、藍はウィンクしてみせうrのだ。
 そう、既にファンなのならば、己に興味津々。自分の一挙手一投足を注視してしまうのは無理なからぬこと。
 そして。
「ライブは生き物! 完璧な対策をしてきたおねえさんだからこそ味わえる世界が個々にあるのです!」
「いいや、私は完璧に対処している。目を覆ってしまえば……! 耳を防げば!」
「おねえさんが会った未来のおねえさんとはまた違う、今のおねえさんだけの時間をプレゼントするのでっす!」
 その言葉に『時宮・朱鷺子』は止まる。
 なんて言ったのか、とワンモア、というように指を立てている。

「ですから、今のおねえさんだけの時間を藍ちゃんくんがあげるのでっすよー!」
 星の瞳(アイクルスイート)がばちこん、と星を飛ばすようだった。
 なんたる望外なファンサ。
「ぐふっ!!!」
『時宮・朱鷺子』は歯を食いしばっていた。
 全身全霊でもって、歯を食いしばっていた。
 そう、彼女はここに来て藍の凄まじいファンサに血涙流すほどの自制心で持って、耐えきっているのだ。
 なんたる精神力。
 藍は、その様に全身全霊を以て対処していることを知って、これは酷なことをいたかもな、と思った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東・御星
海鶴マスターにおまかせします。かっこいい東・御星をお願いします!

 雪女の寵姫×ワールドハッカー、20歳の女です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、負傷した仲間には「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



『時間遡行特訓能力』を持つトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』の力は凄まじいものだった。
 彼女は古代バトリンピア時代から、『この時』を待っていた。
 迫る猟兵。
 バトル・オブ・オリンピア。
 この時をおいて世界の破滅を防ぐことはできない。
 己の能力『時間遡行特訓能力』が『ガチデビル』へと渡れば、猟兵の敗北は必至である。
 ならばこそ、彼女は覚悟したのだ。
 全身全霊でもって戦い、己の『時間遡行特訓能力』を喪わせることを。
「もっとだ。もっと戦えるはずだ、猟兵!」
 彼女はフィールドを海中ステージへと変貌せしめる。

 荒れ狂う海。
 その最中を彼女はまるで荒波を意に介さないように適応し、泳ぎ切るのだ。
「すごい。でも、私だって……岬ちゃん、いくよ。一緒に!」
 東・御星(紅塵の魔女・f41665)の瞳がユーベルコードに輝く。
 空中に描かれる文字。
 それは、氷炎龍壱ノ型・「岬」(サラマンドライチノカタ・ミサキ)。

 召喚されるは氷炎龍。
 巨大な龍の放つ炎で出来た無数の小型機雷が『時宮・朱鷺子』へと迫る。
 海中に在っても氷炎龍の生み出した機雷は消えることはない。しかし、その機雷を彼女は即座に対処する。
 機雷は触れなければ爆発しない。
 ならば、触れぬように海中で自在に泳げば良い。
 単純に言えばその通りであるが、しかし、この荒波立つ状況でそれができるのは尋常ならざる特訓があればこそであっただろう。
「この程度、全て躱し切ってしまえば!」
「でも……! 岬ちゃん!」
 御星が叫ぶ。
 瞬間、氷炎龍から放たれる無数の氷の礫。

 それは炎の機雷と相まって間断無き飽和攻撃となって『時宮・朱鷺子』へと迫る。
 一撃一撃は軽いが、しかしその手数でもって御星は彼女の手を潰し続ける。そう、氷の礫すら彼女は拳や蹴撃で打ち払っているのだ。
「本当に人間なの? でたらめがすぎるよね?!」
「人間だからこそだ。鍛え続ければ、誰にだって、何物にも負けぬ強さを身につけることができる!」
「限度があると、思うんだけど……!?」
 けれど、御星は諦めない。

 そう、ここで彼女に全身全霊の力を発揮させなければならない。
 ならば、彼女は信じる。
 己の力ではない。呼び出した氷炎龍『柴崎岬』を信じる。彼女を信じる。それだけは確かなことであったし、どんなにデタラメな力で対処してくる『時宮・朱鷺子』にだって負けないと思った思ったのは本当だったのだ。
 だから。
「岬ちゃん!」
 叫ぶ。
 何があっても、どんな敵が迫るのだとしても。
 前を向かなければ。
 でなきゃ――。
「私らしくない!」

 その叫びに応えるように氷炎龍の炎の機雷と氷の礫が『時宮・朱鷺子』へと降り注ぎ、ユーベルコード同士が激突する凄まじい衝撃波でもって海中ステージを荒れ狂わせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
相手は完璧な対処法ですか
なんの、文明の、異能の、過去の
私よりも遥かに”持って”いる強敵達を蛮勇1つで渡り合いました
今日も同じ、ですっ!

理性を捨てますゆえ語ることが出来ないことをお詫びします
その代わりに、貴方の全力をめいっぱい引き出す!

想いとともに《ディープトランス》を発動
[海中]に適応する行為を成功させ
朱鷺子さんに食らいつきます!

理性を捨てて戦い続けますが、
天性の野生の勘は、積み上げた戦闘知識は
私の体を満たす覚悟と勇気は
猟兵としてのこれまでの戦いは!

きっと予知以上に最適な動きを私に行わせてくれます
何を信じるか、それは体に培われた全て!
それを信じずして未来は拓けない!
全力全開!限界突破ですっ!!



 己に対する完璧な対処。
 それがトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』の『時間遡行特訓能力』の凄まじいところである。
 そう、彼女の最たるところは事前に相対する者のことを知ることができる、ではない。
 知って、それに対する対処法を凄まじい特訓量でもって無し得てくるところであり、その精神力の高さであった。
 故に、『時宮・朱鷺子』はこの日のために尋常ならざる特訓量を重ねてきたのだ。
「故に、私は全身全霊でもって君たちへと対処する!」
「なんの! 文明の、異能の、過去の……私より遥かに“持って”いる強敵たちを蛮勇一つで渡り合いました」
 ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)の言葉に彼女は頷く。
「今日も」
「同じだというのだろう」
「……そのとおりです。そして」
 すでに、そのことを知っているように『時宮・朱鷺子』は言う。

「理性を捨てます故語ることが出来ないことをお詫びします」
「だが、私に全身全霊の全力を出させてくれるのだろう?」
「そのとおりです!」
 ユーフィの瞳がユーベルコードに輝く。
 ディープトランス(ディープ)――それは野生を縛る理性を解き放つ光。
 ユーフィは己の身に宿す野生を理性でもって押さえつける。ともすれば、それは武というものであった。
 けれど、それを彼女は捨てる。
 この時において、彼女は理性そのものをないものとし、己の野生を介抱するのだ。

「如何なる野生とて、この海中にあってはどうかな!」
 そのとおりだ。
『時宮・朱鷺子』のユーベルコードに寄って海中ステージへと変貌するフィールド。
 その中で大波をユーフィは構わず割るようにして泳ぎ、彼女へと組み付く。迫る手を『時宮・朱鷺子』は振り払うようにしてはねのけ、海面へと叩きつける。
 ユーフィの体はまるで水切り石のように海面を弾かれるようにして飛ぶ。だが、そこに『時宮・朱鷺子』が海上を蹴って走りこみ、蹴撃を見舞う。

「……!」
「――ッ!!」
 声無き声。ユーフィは蹴撃の一撃を受け止め、衝撃を体に走らせながら『時宮・朱鷺子』の足を捻るようにして関節を極めるのだ。
 野生。
 そう、野生が身を満たすのだとしても、ユーフィの肉体に染み込んだ技術は消えるものではない。そして、彼女は思う。
 己の体を満たしているのはそれだけではない。
 覚悟と勇気。
 そして、これまで猟兵として重ねてきた戦いの経験。
 それが今の彼女を支える。

「この動きは……! 私の知らない動き、だと……!?」
 そう、ユーフィは超えていく。
 未来から提示されたユーフィという猟兵。
 その情報に齟齬が生まれるほどにユーフィの力は予測不能な動きを見せる。
 ユーフィは信じているのだ。
 何を、と問われたのならば、それは己の体に培われてきた全てである。
 それを信じずには未来は拓くことはできない。
 故に、ユーフィは全力全開の限界を超える力でもって『時宮・朱鷺子』の全力を引き出し続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
過去に遡るとか、またなんともややこしい能力を……
だが、妙に正々堂々としているのはあくまでスポーツマンって事なのかね

利剣を抜いて奥義【無想】。今、この場で相手の予想を上回る剣術を生み出していく
尤も、敵の能力を考えればそれにも対応してくるのだろうが。その適応に対して、俺が更に対応すればいい……ここはもう、意志とイメージの勝負だろう

単純な速さや強さでは相手に到底及ばないので、基本的には相手に対処する形
突進を真正面から受け止め僅かに力の方向を逸らす形で攻撃を凌いで、刹那のカウンターで刀を振るっていく

攻防の度に剣術を研ぎ澄ませていく。相手が本気を出さないのであれば、上回って獲りにいく覚悟だ



「過去に遡るとか、またなんともややこしい能力を……」
 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』の持つ『時間遡行特訓能力』を目の当たりにする。
 これまで先行した猟兵たちのユーベルコード。
 その何れにも完璧に『時宮・朱鷺子』は対処していた。初見の筈であるというのに、まるで見てきたかのように対応しているのだ。
 それこそが『時間遡行特訓能力』である。
 彼女は、この日この時、猟兵と相対した未来から過去に戻り、過去の己に特訓を課していたのだ。
 つまり、この日のためだけに古代バトリンピアから彼女は対策を打ち立ててきたのだ。

 そんな彼女の対処が完璧であることは言うまでなく。
「時間遡行できるというのに、なんとも妙に正々堂々としているとは……あくまでスポーツマンということなのかね」
「無論、と私は答えよう。そのとおりだ。私はアスリートである。ダークリーガーであるが、しかし、そこだけは譲れぬ点である」
「そうか……ならば、その一点において俺は答えよう」
 鏡介は構える。
 己の剣術を彼女は知っているのだろう。手にした利剣の輝きを前にしてもなお、『時宮・朱鷺子』はたじろぐことはなかった。
 既に知っているのだろう。
 故に対策は十分。
 対応してくることも織り込み済みである。

 戦場に満たすは静寂。
 互いの意識の中で何合も打ち合いが始まっている。
 鏡介は集中する。汗が頬を伝うことも感じなかった。それほどまでに極限まで集中しているのだ。
 意識の中での打ち合い。
 そのいずれも鏡介は『時宮・朱鷺子』の猛烈なる突進によって吹き飛ばされている。
 彼女の中にある鏡介への対策は完璧だった。
「征くぞ」
 音が遅れて聞こえる。
 眼の前には『時宮・朱鷺子』の顔があった。
 振るわれる拳の一撃が斬撃をも抑え込むようにして叩き込まれ、鏡介の体が吹き飛ぶ。
 なんたる一撃。

 これが人間の、肉体を極致まで研鑽した結果なのかと思うほどに凄まじい一撃だった。
 身に走る衝撃は言うまでもなく骨身を分断するかのようであった。
「ぐっ……だが!」
 そう、鏡介の瞳はユーベルコードに輝く。
 いつかたどり着く剣の極致。
 即ち、それは奥義【無想】(オウギ・ムソウ)。

 意識、その想像の中で『時宮・朱鷺子』と打ち合ったのは数百を超えている。ならば、その経験は全てが真実。
 吹き飛ばされた体を逃さぬように彼女が踏み込んでくる。
 振るわれる拳は全て強烈。
「……今、此処で超えていく!」
「できるものならばな! 君は想像の中で私と打ち合った。それは私の『時間遡行特訓能力』と似たものだな。最も有効な剣術を想像する力。ならば、君は疑念を抱いてはならない」
「そのとおりだ。俺は、『時宮・朱鷺子』に勝つ。その想像に疑念を抱かない。故に!」
 研ぎ澄まされていく。
 振るうは斬撃。
 眼の前の『時宮・朱鷺子』が己に示す道筋がある。

 ただ無心であること。
 そこに駆け引きなどない。集中から引き上げられていく想像。そして、創造へと至る。
 無窮へと至る太刀筋。
 その一撃が『時宮・朱鷺子』の拳と激突し、その全身全霊を以てフィールドに衝撃を走らせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

あれ?そうなんです?
今回そんなに濃いめじゃないんですか?
アメリカンなエイルさんなんです?

でもたしかにステラさんのふんがふんが度が低いですね。
これは、エイルさんの残り香に反応してる感じでしょうか?

やばくない演奏家には解りません!

って、ステラさん、演奏していいって聞こえた気がするんですけど、
なんかまたルビで酷いこと言いませんでした?

でも|勝てば官軍《魅了すれば勝ち》ですよね!
それではいっちゃいましょう、すべてを魅了する光の演奏を聴けー!

時間遡行で特訓するみたいですけど、
やる気の減少は特訓ではどうにもならないはずです!

ぐったりしたところに、ステラさんのやべーオーラは効きますよ!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまーーすっ!!
いえ、ぶっちゃけそんなに濃くないのですが
この微妙な感じ……もしかして時宮様はフュンフ・エイル様にお会いしたことが……?
いえ、戦いの前柄では些末なことでした
お見せしましょう、メイドの本気を!
そして、|光の勇者の奏魔法《破壊の演奏者のシン破壊》の力を!
え?どうしましたルクス様?
|勝てば《壊せば》官軍?
やだこわいこの|光の勇者《破壊音波使い》
誰がやべーメイドですか

さて
メイドに不可能などございません
私のUCに対応したとて
メイドの完璧さに対応できたわけでもないでしょうに!
つまり!普段の私が最強です!
主様に至るまで|メイド《犬》は不退転ですので!



 熾火が昌盛するようにトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』の目の色が変わる。
 吹き荒れる炎のようであり、また同時に凄まじい力の発露でもあった。
 彼女は専用ロードバイク『ブレインバイシクル』を駆り、圧倒的な速度で持って猟兵達を翻弄する。疾駆するだけで竜巻を起こすかのような尋常ならざるスピードを特訓によって得ているのだ。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまーーすっ!!」
 いつもの。
 そう、いつものであるが、しかし『時宮・朱鷺子』は笑った。
 彼女は既に聞き及んでいたのだろう。
 未来の自身。
『時間遡行特訓能力』によって未来来た己自身からステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の雄叫びを。
 だからこそ、笑ったのだ。

「それが聞くところに寄る雄叫びというやつか。確かにやべーメイドというだけはある」
「誰がやべーメイドですか。いえ、しかし、そんなに濃く……いえ、あなたこの微妙な感じ……『時宮・朱鷺子』様は、『フュンフ・エイル』様にお会いしたことが……?」
「そうなんです? 今回そんなに濃い目じゃないんですか? アメリカンな『エイル』さんなんです?」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はステラの言葉に首を傾げる。
 確かに言われてみれば、ステラのいつものふんがふんがと香りを全て鼻腔に吸い込むような勢いが弱いように感じたのだ。
 もしかして、残り香程度であったのならば、この程度しか鼻を効かせられないということなのだろうか?

「しかし、君。『彼』を主人と定めるのは本当なのかい? あの現代の『プロメテウス』――『怪物』を主人とするのか?」
「そのとおりです。貴女様が如何用に『主人様』のことを知るのだとしても、戦いの前では些末なことでした。お見せしましょう、メイドの本気を!」
 ん? とステラは其処で傍と止まる。
 今なんて?
「やばくない演奏家にはわかりません!」
「今ちょっと|光の勇者の奏魔法《破壊の演奏者のシン破壊》の力は、おいておいてください」
「またルビで酷いこと言いませんでした?」
「副音声とも言うな。だが、そのとおりである! 今は全身全霊で私と戦ってもらおう!」
 セット、と『時宮・朱鷺子』は専用ロードバイクを駆り、一気に突進してくる。

 その一撃はルクスとステラを吹き飛ばす。具体的には銀河を砕く拳的なエフェクトで空中に舞い上げられ、そのまま顔面から地面に落ちる運命だった。 
 しかし、彼女たちは猟兵である。
「メイドに不可能などございません! 例え、漫画敵表現でぶっ飛ばされようとも!」
「そうです! |勝てば官軍《魅了すれば勝ち》ですよね! それでは行っちゃいましょう!」
「|勝てば《壊せば》官軍? やだこわいこの|光の勇者《破壊音波使い》」
「またルビでそんな事言う! 着地しますよ! 顔面から言ったら、ゴシャァってなりますからね!」
 ルクスはアイネ・クライネ・ナハトムジークを奏でる。
 そう、それは自身の演奏を強制的に聞かせるユーベルコード。

「知っているよ。それは君の破壊的では滅な旋律で鼓膜が壊されるという確定した未来。ならば!」
「えっ、やる気を喪わせるだけなんですけど!?」
「耳栓も貫通してきますしね」
「その通り。ならば、私は私のモチベーションを高めるのみ! 半減しようと! 私は! この全身全霊たる戦いのために長き時を過ごしてきたのだ! 今更、この演奏程度で……!」
「『時宮・朱鷺子』様、足ガックガクですが」
「武者震いだよ」
「ですが、確かに!『主人様』の話題で私の完璧メイドなる平常心を突き崩してくるとは見事な手腕でございました! ですが!!」
 ステラの瞳はユーベルコードに輝く。

 平常心がなんだ!
 こちとらヤベーメイド……あ、いや。えーと、主に至るまで不退転の覚悟燃やす|メイド《犬》なのだ。
「やってやれないことなどないのです! メイドに不可能などありませんので!」
「そうです。やる気が失われたところにステラさんのやべーメイドオーラは効きますよ!」
 ステラはルクスの演奏に鼓膜破壊されながらも、しかし、不退転の覚悟でもって着地し迫る『時宮・朱鷺子』と激突するのだ。
「即ち、普段の私が最強です!」
 最強のダークリーガーなにするものぞと、やべー音楽家の旋律とやべーメイドの拳が『時宮・朱鷺子』の全身全霊を引き出すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【サージェさんと】

なにか勘違いしてるね。
『戦いに際しては心に平和を』
これは『エイル』さんの信念であって、別に猟兵の信念ではないけど?

それと、あと2つほど聞きたいんだけど。
あなたは『戦いに際して心になにを抱く』の?
あと、なんであなたに試練を与えてもらわないといけないのかな?
頼んでないけど?

理由も説明しないで試練とか、あなたこそ神か悪魔にでもなったつもり?
ま、立ち塞がるなら潰すよ。

時間遡行とかチートだけど、チートはこっちもだからね。
それならアビリティなしってことでいこう。

わたしは、わたしの好きな人を手が届く限り護るだけ。

さぁサージェさん、いまこそクノイチのスペックを見せるときだよ!(丸投げ


サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!
というか、その胸の大きさはトライアスロンでは不利では!?
えっ?お前が言うな?ナンデ??(首傾げ)

とはいえ、理緒さんのシリアスが久しぶりに里帰りしたので
ここは茶化す場面では無いのです
理緒さんがアスリートアースでりおりおしてないなんて
奇跡に近いので!!
ま、理緒さんが頑張るなら私も頑張りますよ
友達ですので!

まぁUCに対応とか好きにしてくださいなっと
【かげぶんしんの術】です!
ええ、力と速度があろうとも所詮は1人
数の暴力で私に勝てると思うな!
理緒さんも全力で乗っかってきてくれると嬉しいです!!



 猟兵と激突するトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』の猟兵への対策は万全であった。
『時間遡行特訓能力』によって未来の自身から猟兵のユーベルコードの詳細を聞き及んでいるのだろう。それに対抗するために古代バトリンピア時代から、この日のために特訓を重ねてきたのだ。
 そこに一部の隙もありはしないのだ。
 ハッキリ言って、強敵であった。
 最強のダークリーガーという触れ込みは伊達ではなかったのだ。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとか」
「そんなことしかないだろう」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の前口上にすらインターセプトしてくるのだ。

 流石としかいいようがないツッコミ。
「んなっ、そ、そんなこと言いましたら、そちらm胸の大きさはトライアスロンでは不利では!?」
「鍛えているからな。胸の大きさなど、特訓で如何ようにでもなるというもの。重要なのは、その胸に『戦いに際しては心に平和』を抱くかどうかだ!」
 サージェは、圧倒される。
 そう、このやりとりも未来の『時宮・朱鷺子』から伝え聞いているのだ。
 前口上を阻まれたクノイチはリズムを崩す!
「なに勘違いしているね」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の声が響く。

「『戦いに際しては心に平和を』これは『エイル』さんの信念であって、別に猟兵の信念ではないけど?」
「だが、ただの言葉だ。その言葉に何かしらを感じるところがあるのならば、その言葉の意味もまた変わってくるだろう? そういうものだ」
 理緒に向き直る『時宮・朱鷺子』は専用ロードバイク『ブレインバイシクル』のペダルに足を掛けて笑む。
「それと、後二つほど聞きたいんだけど」
「構わないが」
「あなたは『戦いに際して心になにを抱く』の? あとなんであなたに」
 理緒がビキっているとサージェは思った。
 え、シリアス? 胸の大きさ的な話でビキってるのではないのかとサージェは思ったが口には出さなかった。
 理緒のシリアスが里帰りしているのならば、茶化す場面ではないのだ。
 だって、理緒がアスリートアースでりおりおしていないなんて奇跡に近いのである。

「なんであなたに試練をあたえてもらわないといけないのかな? 頼んでないけど?」
「平和を。それだけだ。そして、それが世界の破滅を食い止めることに繋がるからだ。頼まれなくたって私は世界の破滅を食い止めるためならば、己が役目を果たすのみ!」
 征くぞ、と迫る超スピードの『ブレインバイシクル』を駆る『時宮・朱鷺子』。その姿に理緒は立ちふさがる壁だと理解しただろう。
 理由を説明しないことに意味があるのか。
 試練であることに意味があるのか。
 そこに理緒は人間性を見いだせなかったのかも知れない。
 神か悪魔にでもなったつもりならば。
「立ちふさがるなら潰すよ」
 サージェはずっとシリアスな理緒の顔に、いつもの理緒を見出すことができなかったが、しかし、彼女ががんばるというのならば、自分も頑張るつもりだった。
 だって、友達だから。

「World Without Abilities(ワールド・ウィズアウト・アビリティズ)……さあ、ここからは単純な力比べだよ」
 理緒のユーベルコードは戦場をユーベルコードを含む全特殊能力使用禁止の法則を生み出す。
 違反者は行動の成功率が激減する。
 だからこそ、と思う。
 サージェは走る。例えユーベルコードが禁止されていても。
「サージェさん、いまこそクノイチのスペックを見せるときだよ!」
「それって丸投げじゃないですか!?」
「ユーベルコードの禁止か。なるほど。だが、それで私の全身全霊は止まらないぞ!」
 激突するサージェと『時宮・朱鷺子』。
 凄まじい轟音が響き渡る。

「理緒さんも全力で乗っかってきてくれると嬉しいんですけど!? 流石にクノイチスペックでも、この人……!」
 強い、とサージェは呻く。
 理緒は無理、と首を横に振っていた。ムリムリ。そんなの死んじゃう、と言わんばかりに首を横に振っていたのだ。
「丸投げ過ぎませんか!?」
「わたしはここまでやったからね! わたしは、わたしの好きな人のことを信じてる。だから!」
 ユーベルコードを介在させない究極の現実においてもクノイチは、サージェは戦えると信じているのだ。

「友達を応援するだけなんだよ!」
 フレー! と理緒はサージェを応援する。これが『時宮・朱鷺子』と自身の差である。
 ただ一人で戦う者と、背を押す応援が響く者の差。
 サポーターもまたもうひとりの選手なのだ。
 故にサージェは己の渾身を持って『時宮・朱鷺子』に押し勝てずとも、しかし踏みとどまり、突進を受け止めたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レジーナ・ビエルニィ
……。
相手の疾走前に『ゆきだまグレネード』を投擲、『ぺんぺんくんシューズ』で地面を滑り、相手と私とを結んだ「直線」に対し交差するよう移動し、UC【氷影の狙撃手】を使う

このUC、実は気温の下がり具合で位置はなんとなく読める。だから不可視なんてないものとして動く。
後はひたすら、距離があるなら『しろくまくん2号』、『アサルトライフル』で弾幕、近寄られたなら『ショットガン改』を撃ち、撃ったら即動く、っていう基本の動きを徹底する。
銃撃は着弾点を凍結させ、凍った床は「解ってても」滑る。

特に対戦形式のアスリートなら、自分の手の内がバレるのは遅かれ早かれ通る道。変に気負いはしない、いつもの自分の全力で挑むだけ



 戦場を認識する。
 アスリートアース世界は確かに平和だった。ダークリーガーが存在していても、そこに生死の絡むような事件はなく。
 ただひたすらに超人アスリートたちはスポーツに勝利するために自らを研鑽する。
 そういう意味で朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)はこの世界に身の置き場がないとさえ思った。
 だが。
「ダークリーガーがいる。『ガチデビル』もいる。ここは戦場だ。そうだ! 此処は平和などではなく!! 自分がいるべき戦場なのだ!!!」
「故に戦えというのかい」
 トライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』は、クラウチングスタートの構えを取る。
 昌盛するかのような瞳の炎は、熾火へと変わっている。
 全身全霊の戦いを求める彼女にとって、これは己が『時間遡行特訓能力』を喪うための戦いである。

 自身が戦場の残っていれば、己が能力を『ガチデビル』が得てしまう。
 そうなれば限りなく猟兵の勝利は低いものとなるだろう。そうなれば、世界の破滅は避けられぬものとなる。故に彼女は小枝子の咆哮に応えるように突進する。
「ぐっ、うううっっ!!!」
 小枝子はその一撃に身をのけぞらせる。
 痛みが走る。
 人口魔眼の動体視力を持ってしても、捉えられぬほどの突進。
 第六感でによってメガスラスターの推力でもってダメージを受け流していなかったのならば、この時点で勝負は決して居ただろう。
 そうでなくても『時宮・朱鷺子』はこの日のために古代バトリンピア時代から特訓を重ねてきているのだ。

 小枝子が人口魔眼による超動体視力を持っていることなど織り込み済みである。
 ならば、その動体視力を超える速度で突っ込むまでなのだ。だが、理屈では理解できても、あまりにも埒外。
 特訓でどうにかなるものなのかと思わしめるほどの身体能力で持って迫る一撃。
 痛みが走っても、それでも小枝子は噛み殺した。
「壊れろッ!!」
 手にしフォースサーベルの一撃を『時宮・朱鷺子』へと叩き込む。
 いや、捉えられていない。
 その一撃を彼女は苦もなく躱してみせたのだ。
「そう来ると理解している。だが、君の本領はそこではないだろう」
 密着した状態から放たれる拳。
 予備動作もないはずなのに、打ち込まれる拳は大地から汲み上げた力を腕部に一切のロスなく伝達し、小枝子の腹部を撃ち抜かんばかりの勢いで放たれ、彼女の体を吹き飛ばす。

 地面を砕くほどの衝撃。
「戦え! 壊せ! 朱鷺透小枝子オオオオオオオオ!!!!!」
 咆哮が迸る。
 如何に己の体が拳で撃ち抜かれようと、血反吐を撒き散らそうとも小枝子は立ち上がり、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
 死んでも黄泉帰る悪霊。
「自覚なき狂った悪霊、か。その執念、歪み果てる事無く、此処に在るという事実をこそ喜ぶべきかな!」
 振るう拳がフォースサーベルと激突して火花を散らす。
 小枝子の腕が衝撃で久hゲル。
 だが、即座に腕が生え、四碗へと変貌する。膨れ上がる霊物質が奔流となってフォースサーベルを生み出し、手数が倍へと増える。

 それでも『時宮・朱鷺子』の拳の殴打、突進は凄まじかった。
「壊れても」
「壊れ失せても」
「壊せ!!!」
 だというのに小枝子の中には、それだけが渦巻いていた。
 己の全力を持って『時宮・朱鷺子』に全力を使い切らせること。わかっている。だからこそ、自らもまた全力で彼女を壊しにかからなければならない。
「そうだろう!!! 時宮殿!!!」
「そのとおりだ。君は己の肉体が壊れることもいとわず戦う破壊の化身。ならば、私も全力が出せるというものだ!」
 噴出する呪詛。
 それすらも『時宮・朱鷺子』は拳で打ち払う。

 対策、というにはあまりにもフィジカルに頼り切っ戦い。
 禍戦・討生棄(デッドオーバー・ディスポーザブル)を発露した小枝子に対する対策は唯一。
 打ち据え続けるのみ。
 故に、『時宮・朱鷺子』は全霊を持って小枝子の迫る呪詛をも打ち払いながら、己が持てる全力を尽くすように苛烈なる……戦火渦巻くような斬撃と打撃の応酬を続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
ダークリーガーがいる。ガチデビルもいる。
此処は戦場だ。そうだ!此処は平和などではなく!!
自分が居るべき戦場なのだ!!!故に戦え!

疾走してくる時宮殿を人工魔眼の超動体【視力】と【第六感】で捉え、
メガスラスターで後方へ【推力移動】轢殺ダメージを多少なりとも【受け流し】【激痛耐性】己が戦意【闘争心】で痛みを無視し【カウンター】
【早業】硬く手に握りしめていた双剣変形フォースサーベルの刀身を発現させて【不意打ち】自傷も躊躇わず刺しにいく。壊れろ!

戦え!壊せ!朱鷺透小枝子オオオオオオオオオオ!!!!!

【継戦能力】『禍戦・討生棄』でどんなダメージを喰らおうと、幾たびでも負傷を治し、腕を生やし、どの方向から轢殺してこようとも生やした手に騎兵刀を持ち【怪力】で振るい【切断】攻撃!

『壊れても』『壊れ失せても』『壊せ!!』

目的は全力を使い切らせる事。それは分かってる。
だからこそ、自分もまた全力で壊しに行かねばならない!!そうだろう!!!時宮殿!!!

騎兵刀から破壊の【呪詛】物質を放出し、呪い壊しにかかる!!



 レジーナ・ビエルニィ(雪女のバトロワシューター・f37984)は変わらなかった。
 トライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』は『時間遡行特訓能力』を持つのだという。
 それは即ち、今日という日を前もって経験しているということだ。
 レジーナの手の内、技量、その全てに対策を取ってくることができた、ということでもある。故に『時宮・朱鷺子』は猟兵たちの天敵とも言って良い存在だったのだ。
 けれど、レジーナはいつもと変わらなかった。

 放つ『ゆきだまグレネード』でもって己の直線上にてクラウチングスタートの体制を取る『時宮・朱鷺子』の全面を凍結させ、『ぺんぺんくんシューズ』で地面を滑るようにして駆け出す。
「……」
「だんまりか、猟兵。わかっているのだろう。私の能力のことを。君のことはよく知っている。冷静なシューターだ。君は動揺しない。どんな状況にあっても冷静に状況を把握し、己の持てる全力を尽くす。そういうバトロワシューターだということを私は知っている」
 そう、知られている。
 知り尽くされているといってもいい。
 だからこそ、レジーナがユーベルコードに寄って自身の姿を不可視にする冷気を帯びて、『時宮・朱鷺子』と交錯するように走ってもなお、彼女はたじろがない。

 如何にレジーナの姿を見ることができなくても、認識するすべはある。
 完全に人間の体温を周囲の気温を下げることでひた隠しにするのだとしても、揺れる大気、その気配だけで『時宮・朱鷺子』はレジーナの所在を把握していた。
 チッ! と音が響く。
 それは焦燥から来る舌打ちではなかった。
『時宮・朱鷺子』は音の反響だけでレジーナの位置を把握し、一気に踏み出す。
 飛び込むようにして、弾丸めいた一撃がレジーナを吹き飛ばす。

 手にしたバトロワシューターの火器でもって応射するも、それらを跳ね除けるようにして『時宮・朱鷺子』は踏み込んでくるのだ。
 着弾箇所を凍結さえ、氷塊に閉ざすのだとしても、それすら彼女は砕いて飛び出してくるのだ。
 なんたる力であろうか。
 だが、レジーナは動揺一つしなかった。
 なぜなら。
「自分の手の内がバレるのは遅かれ早かれたどる道」
「故に気負いなどないということか。素晴らしいな、君は。ならば、手の内も知られて君はなんとする」
 その言葉にレジーナは簡単だと頷きを返す。

 氷影の狙撃手(インビジブルスナイプ)は同様しない。
 たじろがない。
 恐怖しない。
 如何に眼の前に迫る敵が最強のダークリーガーであろうとしても、レジーナは唯一つのことだけをなすのみ。
 即ち。
「いつもの自分の全力で挑むだけ」
 それだけなのだと言うようにレジーナは代わる代わるアサルトライフル、ショットガンを叩き込みながらフィールドを滑るように疾駆する。

 凄まじい速度は互いの得意とするところであろう。
 けれど、レジーナは基本に忠実だった。己の肉体に刻み込まれた反復練習。それによってレジーナは意識しなくても弾丸を放ち、即座に移動するという動きを徹底しておこなっていた。
 そして、弾丸は着弾点を凍結させる。
「凍った地面は『理解ってても』滑るもの! ならば!」
 地面を踏み抜く『時宮・朱鷺子』。
 己が足を楔のように打ち込み、彼女はレジーナの放つ弾丸を拳で撃ち落とし、凍結してもなお、拳を振るう。次第に膨れ上がる氷結が、その身を氷塊に閉じ込めても。
 彼女は全身全霊でもってレジーナの放つ弾丸を迎え撃ち続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

金城・ジュリエッタ
良いでしょう!
わたくしの全身全霊を以て!
あなたを打倒してみせましょうとも!

とはいえ、わたくし凝ったコトはできませんで。
敵の攻撃は【気合い】と【激痛耐性】で凌ぎつつ、真っ向から殴りにいきますわ!
攻撃を避けられないなら只管殴り合いですわ!
時には【カウンター】や投げ技を狙いますわ!

あなたもアスリートなればお分かりでしょう!
我らが最後に頼るもの!
それは!

弛まぬ努力!
挫けぬ気合!
諦めぬ根性!

それらを【振り絞り】UC発動、防御力強化!
互いにアスリートとして戦う以上、対策もまた努力と気合と根性をおいて他に無し!
さあ、わたくしまだまだいけましてよ!
あなたの全力でもってかかっておいでなさい!



 全身全霊。
 それがトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』の求めるものであった。
「まだまだだ、猟兵。私の全身全霊の全力はまだ!」
 吹き荒れる力の重圧。
 彼女がそこに立つ、というだけで戦場には重圧がのしかかるようだった。
 瞳に宿す炎は、熾火のように昌盛している。
 目の色が変わる、とはこのことなのだろうと金城・ジュリエッタ(脳筋お嬢様・f37793)は理解しただろう。
 本気の本気。
 ならばこそ、彼女は深くうなずいた。

「よいでしょう! わたくしの全身全霊を以て! あなたを打倒してみせましょうとも!」
「その意気だ! この私を打倒できぬと諦観に塗れているのならば、と思ったが心配は無用であったし、いらぬ気遣いだったようんだな、金城・ジュリエッタ!」
 クラウチングスタートから一気に突進してくる『時宮・朱鷺子』のタックル。
 その一撃をジュリエッタは己が体躯のみで受け止める。
 衝撃が全身を走り抜ける。
 激突した腹部から脳天から足先まで重たく鈍い痛みが駆け抜けていくのだ。体が痺れる。視界が揺れる。意識が分断されるかのような凄まじい一撃。
 だが、それを彼女は気合のみで耐えきった。

「耐えたか!」
「ええ! 気合! 努力! 根性! アスリートが最後に頼るのはいつだってこの三つでしてよ!」
 そう、今のジュリエッタを支えているのは、DNA改造手術によって得た頑強なる体躯ではない。
 一つ、積み重ねてきた努力!
 一つ、勝つまでは倒れはしないという気合!
 一つ、己の力を全て絞り出さんとする根性!

 この三つで持ってジュリエッタの瞳がユーベルコードに輝く。
 たゆまぬ努力は彼女の体躯をさらに鍛え上げた。くじけぬ気合は、彼女の心を練磨し、諦めぬ根性を培った。
 それを『時宮・朱鷺子』は笑み、理解していた。
「そのとおりだ。今の君は美しい。他のどんな物をよりも尊いものだと私は喜びに震えている。ならばこそ、全身全霊の全力をぶつけるに値するアスリート!」
「ええ、わたくしだってまだまだいけましてよ!」
 組み合うようにして互いの体をつかみ合う。
 力を込めた瞬間、大地が割れ、衝撃が迸る。
 互いの膂力と膂力とがぶつかり合う、正真正銘の全身全霊。
「気合、努力、根性、これこそが勝利の三大理論ですわ!(トリニティ・ガッツ)」

 吹き荒れる衝撃の最中にありながらジュリエッタは『時宮・朱鷺子』と組み合い続ける。腕がきしむ。骨に亀裂走るかのような凄まじい力。
 だが、負けられない。
 投げなければ、と思う。それこそが己に与えられた力。振るう一撃は『時宮・朱鷺子』の体を持ち上げた。
「よくぞ此処まで……! 練り上げた!! だが、君の練磨に私は敬意を表そう! これが!」
 己の全力である、と空中を蹴るようにして『時宮・朱鷺子』の拳が降り注ぐ。

 恐るべき膂力に落下の速度が加わった流星雨の如き殴打。
 それをジュリエッタは絶望でもなければ、諦観でもない瞳で見上げ、ただひたすらに拳を振るう。
 それは対策を講じてきた『時宮・朱鷺子』を上回るものであったことだろう。
「あなたの全力、しかと受け止めましたわ! ですが、わたくしは!」
 もっと先へ、と煌めくユーベルコード、その瞳に宿った気合と努力、根性の炎でもって『時宮・朱鷺子』の全霊を超えるように拳を叩き込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎

ふむ…なるほどな。だからこそ…全力で当たるが礼儀よな!
はは!その一撃は…多重結界を貼り、さらに怪力で持って武器受けしよう!
おそらく腕がいかれるが、まあ構わんて。
UC使えるようになれば、即座に。これで腕も回復するしな…此度は攻撃力である!
なぜなら、これも全力で応えるため!
突きや薙ぎ払い、さらには斬撃波も加えていくこととする!

こういうふうに全力で当たるがためのわし!そしてUCである!
存分に戦おうではないか!!

陰海月と霹靂、認識中…。



 猟兵とトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』の戦いは苛烈さを増していく。
 肉体と肉体とがぶつかりあう。
 その度に衝撃が吹き荒れ、その衝撃は竜巻のようになってフィールドを席巻していく。
 嵐の如き様相の中で、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は見ただろう。
 煌めくように昌盛する瞳の炎。
 目の色が変わる、とも形容される『時宮・朱鷺子』の全身全霊の全力。
 その迸り。
「ふむ……なるほどな。だからこそ……全力で当たるが礼儀よな!」
 悪霊たる一柱『侵す者』は構える。

 迫るは『時宮・朱鷺子』。
 その体は砲弾そのものと言っていいほどの頑強さを持ち、また同時に踏み出す突進は砲撃よりも苛烈なる一撃となって彼を襲うだろう。
 躱す、という選択肢はない。
 全身全霊の戦いを求める者がいるのならば、それに応えなければならない。
「いざ!」
「はは! ならば受けて立つ!」
 凄まじい轟音が鳴り響いた。
 吹き荒れる衝撃。多重に張り巡らされた結界はまるで意味をなさなかった。『時宮・朱鷺子』は『時間遡行特訓能力』によって既に彼らの特性を理解している。

 四柱の悪霊。
 その一柱にして武人たる存在を前にして対策など多くはない。
 ただ、ぶつかるのみ。
 認識補助術式に寄って己の体が砕けようとも、彼らは体を再構築し、生み出し封じてきた呪詛でもって己の体躯を強化するのだ。
 故に『侵す者』は手にした槍で『時宮・朱鷺子』の突進を受け止めて見せたのだ。
 その代償は大きい。
 腕は砕け、身に奔るは裂傷の数々。
「四悪霊は滅びず、だったか。だが、私は止まらないぞ!」
『時宮・朱鷺子』にとって、この突進で勝敗が決するとは思っていなかった。そう、すえに知っている。
 初見なれど、しかして対処を知っている。
 だが、それを彼女は取らなかった。
 彼女ならば、彼らを認識している存在を排除することなど容易いことであっただろう。

『陰海月』と『霹靂』。
 この二人を排除すれば良い。対策は簡単なことだ。自身を認識されなければ、力は解け消えゆく。
 けれど『時宮・朱鷺子』はそれをしなかった。
「場外サポーターを排除する必要はない」
「……ならば、全力であたるがわしよ! 存分に戦おうではないか!」
 振るう呪詛と槍。
 それを『時宮・朱鷺子』は拳と突進のみでもって打ち払う。
 凄まじい力だ。
 そこに何を置いても敵を排除する、という意思があったのならば、彼女は猟兵の天敵たり得ただろう。

 しかし、彼女はダークリーガーである前にアスリートなのだ。
 勝利に貪欲であれど、しかし、スポーツの領域に出ることはない。彼女は、彼女の意思で、その対策を捨てたのだ。
 捨ててなお、この力。
 迸る拳の力は『侵す者』のユーベルコードをして相殺に持ち込むのがやっとであった。
「はは! そうよな! これこそが、この存分に力を振るってこそよな!」
「そのとおりだ! 故に!」
「応とも!」
 互いに笑む。
 互いの力を認め、互いに健闘を称えるように、拍手喝采のかわりに拳と槍とが激突する音が響き渡るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

結果が見えているならボクたちが争う意味ってあるのかな?
というのを今日のお題にしとこう!

●よく言うやつ
そう最高のライバルは己自身!
とか
己だけは騙すことができない!
とか
後なんかこーアスリートの極限は自分との闘いにある!
とか言うよねー

UC『神門』でもう一人の彼女を呼び出してその答えを見せてもらおう!
――――これもしかしてボクが暇なのでは?

●結論
競い合い、高め合い…そして理解し合う
それが…キミの、キミたちの思い描き、築き上げた理想だったんだね…
よかったよ
でも…
それはそれとして…
わーーーん!次はボクも戦うーーーー!!
うずうずしっぱなしだったよー
んもー魅せすぎだよー



 結果が見えている戦いに意味はあるのか。
『時間遡行特訓能力』によって未来のトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』は戦いの行く末を知っている。
 そして、猟兵のユーベルコードに対する完璧なる対処もまた古代より編み出してきたのだ。
 ただの特訓で、である。
『時間遡行特訓能力」は、利用すれば猟兵の天敵足り得る力であったはずだ。
 なのに、それを用いて行うは己の練磨のみ。
 ただ特訓だけで『時宮・朱鷺子』は猟兵に相対する存在へと鍛え上げてきたのだ。それは称賛に値するものであったが、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)にとっては、あまり興味のそそられないものであった。
「ま、そういうわけだから、ボクたちが争う意味ってあるのかないのかわからにあから、彼女に君の相手は任せるとするよ」
 ロニの瞳がユーベルコードに輝いている。

 神門(ゴッドゲート)の先に居たのは、『時宮・朱鷺子』その人である。
 なんやかんや平行世界へと通じる門から対象の平行世界同位体を説得し、召喚していいたのだ。
「私、ということか。未来の私ではなく」
「そう、なんやかや平行世界の鏡写しの私と言うべきか」
「最高のライバルは己自身! とか、己だけは騙すことができない! とか、後なんかこーアスリートの極限は自分との戦いにある! とかそういうやつ!」
 ロニはよろしくね、と呼び出された『時宮・朱鷺子』の肩を叩く。
『時間遡行特訓能力』があるのならば、ロニのそうしたユーベルコードに対する対策もまた『時宮・朱鷺子』は講じていたはずである。

 だが、それをしなかった、ということは。
「ちょうどよい。私の全身全霊を受け止めるのは私というのならば!」
「ああ、私の目的にも合致している。別段断る理由はなかったとううわけだ!」
 二人の『時宮・朱鷺子』が激突する。
 海中ステージを呼び出し、荒れ狂う海面を飛ぶように、跳ねるようにして人外の如き超人ファイトが始まってしまう。
 それは正しく驚天動地たる戦いであっただろう。

 競い合い、高め合い……そして理解し合う。
 それがアスリートアースにて目指した平和なのだろう。世界の危機をも乗り越えるアスリートたちの技量、その体躯。
 彼らは正しく平和を体現するために生まれてきた者達だったのだ。
「それが……キミの、君たちの思い描き、築き上げた理想だったんだね……よかったよ」
 ロニは目薬を目元に指して涙する。
 本当に良かった、と思っているのは本心だけれど、涙なんてでないっていうか。
 そもそもである。

 これって自分だけが蚊帳の外っていうか暇っていうか。
 なんにもすることがないっていうか。
 むしろ、二人の『時宮・朱鷺子』が繰り広げる戦いはロニもウズウズするほどに熱狂的な戦いだったのだ。
 ベストバウトと言っても良い。
 それほどまでに羨ましい。
「わ――ん! 次はボクも戦う――!!」
 そう、体がうずいてしかたないのだ。
 彼女たちの戦いは魅せるものだった。互いに互いを知るからこそ。そして、ロニが如何なる存在であるのかを知っているからこそ、魅せる戦いによって彼の闘争心を刺激するのだ。
 いや、そんな細かいことさえ彼女は考えていなかっただろう。

 ただ、全身全霊を以て己と戦う。
 例え、『時間遡行特訓能力』を喪うのだとしても、それが己の目的なのだからと、裂帛の気合迸る中、ロニの唸る声を聞いたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

李・玉明
WIZ アドリブ歓迎

最強のダークリーガーを乗り越えねば、魔王に勝つことはできぬのじゃな。
わかったのじゃ! ときこの試練、受けて立つのじゃ!
全身全霊で『勝負』するのじゃー!

むぅ、やはり手強いのじゃ……!
妾の術も、ユーベルコードも、老君すらも完璧に対策されているなら……。
妾でも予測できない力を発揮するしかあるまい!
《それはまるでチートのような、とんでもない才能》!
時間遡行特訓能力でどれほど練習してきたとしても、アドリブへの対策は臨機応変に対応するしかあるまい!

発動した何らかのUCに合わせて、全力で歌って踊って頑張るのじゃ!
殺し合いじゃない、スポーツとしてのバトルとして!
妾たちの懸命を示すのじゃー!



 トライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』は肩で息をしていた。
 そう、それはもはや己の心拍や血脈をどうこうできる領域を超過していた。消耗している。如何に『時間遡行特訓能力』でもって、今日という日に対峙する猟兵達への対策を万全に行ってきているのだとしても、消耗だけは避けられない。
 いや、それが彼女の狙いであった。
『時間遡行特訓能力』を喪うほどの全身全霊の戦い。
 これによって、彼女は世界の破滅を防ごうとしているのだ。
「だが、限界を迎えたところからが私達アスリートの本番である。最強のダークリーガー、この私を乗り越えなければ『ガチデビル』を倒すことはできない」
「わかったのじゃ!」
 李・玉明(豪華絢爛西欧天女・f32791)はフィールドに降り立ち、言い放つ。

 そう、彼女は最強のダークリーガーであるが、しかし、乗り越えて行かねばならぬ存在である。
 彼女の試練。
 それを受けて立つ、と玉明は己の身にユーベルコードを宿す。
 けれど、それらはすべて完璧に『時宮・朱鷺子』に対策されている。如何なる奇策を用いたとしても、即座に対処されるだろう。
「ならば、それはまるでチートのような、とんでもない才能である!『時間遡行特訓能力』でどれほど練習してきたとしても、アドリヴへの対策は臨機応変に対応するしかあるまい!」
 彼女はかき鳴らす。
 奏者を呪い殺すギターとも云われた『スペシャル☆ディザスター』の弦を。
 その演奏がもたらすは、レゾナンスワールド。
 世界を揺るがす真理。
 表現されるは、その音色。
「この音色は……!」
 そう、多くのユーベルコードへの完璧な対策。

 それは玉明の持つユーベルコードの全てに対策を打つ、ということだ。だが、ここに来て玉明は己が行動を、己が有するとんでもない才能に委ねたのだ。
「歌って踊ってがんばるのじゃ! あ、それ! ついでに衣装チェーンジ、なのじゃ!」
 彼女の身が翻る。
 サイバーなファッション。
 赤と白を基調とした艶やかなな姿。
 手にしたギターをピックが弾く。
 音色が旋律となって迸り、『時宮・朱鷺子』の体を震わせる。振動は空を伝わる。故に彼女の体躯では防ぎようがない。

 そして、玉明は笑うのだ。
「殺し合いじゃないのでな! スポーツのバトルとして! これは応援歌である! お主が世界のために数え切れぬ、妾たちが知り得ぬほどの時間を過ごしてきたことへの!その労いの歌! 故に、この演奏を持って妾は懸命を示すのじゃー!」
「なるほど。らしいやり方だ。既に私とて限界を超えている。諸君らの戦いは、正しく私の全身全霊を引き出してくれた……ならば、私もこの応援歌に応えるとしよう」
 漲る闘志。
 一片の悔いも残さぬというように『時宮・朱鷺子』は力を振り絞る。
『時間遡行特訓能力』を喪うほどに全身全霊を懸けること。

「絞り出してくるのじゃ! 古代より続くお主の戦い! その終幕にふさわし道へと!」
 その背を押す応援歌は玉名によって奏でられ『時宮・朱鷺子』最後の戦いへと送り出すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
…敵に回すと実感するけれど、あらかじめ盛大にメタ張れる|猟兵《あたしたち》って大概|反則《チート》よねぇ。自覚はあったけれど。
こんな能力持ってるのがこーいう相手じゃなければ、本気で詰んでたかもしれないわねぇ…

「全力を出し切る」ことさえできればいいって話ではあるけれど…やられっぱなしじゃ、癪だものねぇ。
ミッドナイトレースは元々UFOだし〇水中機動は十分可能、射撃武装も|ウル《突破》を使えば〇水中戦には対応可能。ただ、あたし対策の上からブチ貫ける類の手札はないのよねぇ。…けれど、「当たる」と分かっているなら対処のしようはあるわぁ。
●射殺・改式を起動、マルチタスク全開で〇射手の眼光ブン回して|対策《メタ》に|即興《アドリブ》で対処するわよぉ。あたしを倒すために特訓したとしても、即興である以上必然その時々で必ずブレが出る。片手間でやろうものならあたしは必ず喉笛を食い破るであろう以上、常に「全力」で対処しないといけないでしょぉ?
…当然、ガンメタ張られててもやってやる気概ではいるけどね?



 漲る闘志がある。
 膨れ上がるようにして重圧がフィールドを染め上げていく。
 変貌した海中ステージは大荒れだった。白波が立つほどに荒れ狂う中にあってトライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』は海面を蹴って疾駆する。
 猟兵たちとの全身全霊の戦いによって、彼女は限界を超えている。
 だが、アスリートにとって限界を超えてからが本領である。
 故に、ここに来て彼女は最大の力を発揮していると言いてもいいだろう。
「これが最後だ、猟兵たちよ。諸君らの全身全霊の戦い、私も知り得ぬほどに力を引き出された! 素晴らしいことだ! だが、私とてアスリート! 最後の一片を絞り切るまで戦うことを誓う!」
 その宣誓を受け、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はいつものように笑む。

 そう、確かに『時間遡行特訓能力』を持つ『時宮・朱鷺子』は猟兵にとっての天敵であろう。
 謂わば、これは猟兵を敵に回したようなものだ。
 自分たちはグリモアの予知によって盛大に対策を講じることができる。
 眼の前の『時宮・朱鷺子』は正しく己たちと同じように完璧なる対策能力をもって、この戦いに臨んでいるのだ。
「|猟兵《あたしたち》って大概|反則《チート》って自覚はあるのよねぇ。でも、あなたじゃあなければ、本気で詰んでたかもしれないわねぇ……」
 そう、『時間遡行特訓能力』は、未来の己から特訓を受ける能力である。
 だが、遡行できるのならば、如何ようにでもやりようはあったはずだ。悪辣なる者の手に渡ったのならば、とと考えれば『ガチデビル』の邪悪さこそが世界の破滅を覆せず、猟兵の敗北へと至る、ということにも理解が及ぶ。

 故に、彼女に勝利する必要はない。
『時宮・朱鷺子』自身が『時間遡行特訓能力』を喪うほどの全身全霊でもって戦うことを臨んでいるからだ。
「これが最後の一滴だ。だが、この最後の一滴の力こそがアスリートにとって最大にして最高なのだ。心してかかるがいい。私は! 微塵も! 負けるつもりはない!」
 降りかかる重圧にティオレンシアは困ったように笑む。
「困ったわぁ」
 そんなふうに云われては、此方も立ち向かわないわけにはいかない。
 当然此方に対する対策は取られているだろう。
 ヒーローカーたる『ミッドナイトレース』は水中での機動を可能としている。射撃武装も己の力を使えば対応できるだろう。
 だが、その点を踏まえた上でも『時宮・朱鷺子』は己の力に対策を取っている。

 その対策を穿つほどの手札が己にはない。
 それもまた『時宮・朱鷺子』は承知の上だろう。だからこそ、厄介なのだ。
「でもぉ、それでただ座して終わりなんていうのも味気ないわぁ」
「ならばなんとする」
「ええ、『出来ない』なんて言ってられないものねぇ」
 迫る荒波をぶち抜く勢いで突進してくる『時宮・朱鷺子』。
 ここに来て彼女の力は底上げされている。アスリートの本領が、限界を越えた先からであるという言葉も眉唾ではないのだろう。

 それがうかがえる突進だった。
 振るう拳は大波すら切り裂き、ティオレンシアへと迫る。
「|対策《メタ》に対抗するには|即興《アドリブ》しかないわよねぇ!」
 回す。
 己の力を回す。
 思考を回す。演算する。弾道を計算し、戦闘に対する演算でもって己の脳を酷使する。それをユーベルコードで強化し、組み合わせていく。

 それは全く新しい独自の技能にして、ティオレンシアしか到達できぬ領域。
 薄っすらと開かれた瞳が見据えるは『時宮・朱鷺子』の急所。
 そう、彼女の急所は鳩尾。
 どうあっても人体においては鍛え上げることのできない箇所。故に急所なのだ。
 それは超人アスリートであっても変わらないことだである。

 故にティオレンシアは踏み込む。
「どんなにガンメタ貼られててもやってやる気概はあるのよぉ?」
 甘ったるい声があまりにも場違いに響いた。
 けれど、構わなかった。踏み込んで来る『時宮・朱鷺子』の拳。それがティオレンシアの頬をかすめる。
 ただ、それだけだというのに彼女の体に走り抜ける衝撃は凄まじいものだった。
 五体が砕けるとも思うほどの痛みをティオレンシアは噛み殺し、彼女のまた魔術刻印込めた弾丸を装填したリボルバーを突きつける。
 即座に払われる銃身。
 知られている。

 いや、その知られているという『時間遡行特訓能力』さえもティオレンシアは計算に入れている。
 銃撃を主とする己。
 ならば、手にした銃撃こそが『時宮・朱鷺子』との戦いに用いられることは当然であった。
 だが、『時宮・朱鷺子』は知る。
 今、ここで知る。
 そう、彼女が掌に握り込んだのは一発の銃弾。ルーン刻印された銃弾だった。その先端を押し込むようにして『時宮・朱鷺子』の鳩尾へと叩き込む。

 炸裂した魔術刻印の力が迸り、彼女の体を跳ね上げる。
 それで持ってもなお『時宮・朱鷺子』の体を穿つことは叶わなかった。何たる頑強さ。しかし、其の一撃はこれまで猟兵たちが積み重ねてきた全身全霊の攻撃あればこそ。
 そして、宙に舞い上がった彼女の体が海に没し、浮かぶ。
「どぉ? もう知っていることだと思うけれど、やるのなら必ずあたしは喉笛を食い破るわよぉ?」
「ああ、知っているとも。だからこそ、君の、君たちの勝利を讃えよう」
 差し伸ばされたティオレンシアの手を取って『時宮・朱鷺子』は立ち上がる。
 荒れ狂う海中ステージはすでになく。
 あるのは曇天の先より降りしきる陽光。
 照らされる猟兵達は、『時宮・朱鷺子』との健闘を讃えように力強く握手を交わすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年01月20日


挿絵イラスト