Crymax of Cran's pax
「こんばんはー」
ログインの後、まず最初に訪れるのはクランの拠点だ。
「こんばんはじゃ」
「こばわー」
「こんばんにゃー☆」
挨拶と共に入室すれば、返ってくるのはメンバー各々の個性感じられる挨拶。そんな光景を前として漸く、彼女――このクラン『ナイトウォーカーズ』のマスター、ミナセは実感する。
――帰って来た、と。
「にゃーにー、ミナちゃん? 今日もだーいぶお疲れっぽいかにゃーん?」
「そりゃもう毎日お疲れよ、昨日も今日も明日も毎日変わり映えしない仕事ばっかりでさあ」
絡んでくるクランメンバーのリッツに吐き出す、現実世界の憤懣。生まれた時に敷かれたレールを死ぬまで走り続ける、ただそれだけの人生にはうんざりだという本音。
なれど、其を表立って口にするは許されぬ。許されるのは、このゲーム――『ゴッドゲームオンライン』の中でだけ。此処でなら、あらゆる自由が許される。
故にこそ。このゲームの中でだけは本当の自分でいられる――ミナセは、否、ナイトウォーカーズのメンバーは皆、そう感じていた。
「うむうむ。現世は辛く苦しきもの。今この時は斯様な辛苦は忘れ、楽しく過ごそうではないか」
そんなメンバーの心境を纏めるかの如く、メンバーの一人であるコトナが妙に古めかしい口調――無論|なりきり《ロールプレイ》である――で告げれば、一同は実感を込めて頷くばかり。
「で、早速なんだけど。今日だよね? クラクエ」
次いでこの場に在る最後のメンバーであるイツキが新たな話題を振ると、ミナセはぽん、と手を打って。
「そうだったわ。他のメンバーにも話は伝わってるハズだし、予定通り20分後にギルドへ集合しましょう」
かねてから予定していた、クランを挙げてのクランクエスト攻略。今日はこれを楽しみにしていた面子も多い筈、とミナセは語る。
「それじゃ、『浮遊群島イズルカ探索』クリア目指して頑張りましょうね」
「心得た」
「あいよー」
「はいにゃー☆」
ミナセの呼びかけるに一同も応を返し。そうして、彼女達は意気揚々とクエストへ向かっていった。
――だが、彼女達は知らない。かのクエストに、理不尽極まりなき『バグ』が発生していることを――。
●
「みんな、『ゴッドゲームオンライン』の世界へようこそ♪」
グリモア猟兵、ウュル・フゥ(貪り喰らうもの・f41775)は、妙に芝居がかった所作で以て猟兵達へ挨拶してみせた。
ゴッドゲームオンライン。其は名前の通りのオンラインゲームであるが、同時に猟兵達がこのたび来訪可能となった世界でもある。
『|統制機構《コントロール》』という、管理と抑制を是とし、人々の人生すらも完全に規定された超管理社会の世界に生まれたこのゲームは、かの世界に在って唯一の自由の楽土。世界のネットワークインフラの一切を掌握している|統制機構《コントロール》にさえ撲滅叶わぬこの非合法オンラインゲームに、人々は日々現実を忘れるべくのめり込んでいるのだ。
だが、其処にも脅威は存在する。『バグプロトコル』という本来ゲームに存在しない筈の怪物が現れ、これに殺害された人々が|統制機構《コントロール》下で人権を得る為に最低限必要な|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却され現実世界での人権を剥奪されるという事件が相次いでいるのだ。人権を喪失した人々の末路は、最早語るまでもあるまい。
バグプロトコルの出自は不明──一説には|統制機構《コントロール》が内部からのゲーム破壊と人権剥奪労働奴隷の確保を目論んで送り込んでいるとも言われる──であるが、その正体がオブリビオンであることは判っている。即ち、これらもまた、猟兵達が解決するべき事件であるということだ。
「というわけで! 皆にお願いしたいクエストは、こちらになりますっ♪」
ウュルが掌を掲げると、グリモアから空間に映像が投影される。其処に映るのは、大小数多の浮島が空中に浮かぶなんともファンタジーらしい風景だ。
「ここ『浮遊群島イズルカ』に現れたバグプロトコルが、ここにクエストで訪れた『ナイトウォーカーズ』ってクランの人達を襲うって予知が出てるの。皆には、そのバグプロトコルをやっつけて欲しいんだ」
ただし、と。ウュルは|任務《クエスト》目的を語るに続けて注意事項を語る。
「浮遊群島イズルカは『クランクエスト』っていう特殊なクエスト専用のエリアなんだ。此処に入るには、何処かしらのクランに入ることが条件になるんだよ」
つまりクランに入らないと戦場に立つことすらできない。ではどうするか。
「アタシが予め適当にクランを作っておいたんで、此処に入るだけでも大丈夫だよ。後は、さっきの予知に出て来た『ナイトウォーカーズ』の人達に仲間へ入れてもらうって手もあるしね」
更に、猟兵達が別口でクランを立てるのもアリだという。旅団の仲間などと一緒に参加する場合は、この手を利用すると良い、とウュルは語る。
イズルカに突入したら、まずは浮島を跳び渡って一番奥を目指すことが最初の目標となるが。
「イズルカにはバグプロトコルの影響で、ヤバい仕掛けがいっぱいできてるの」
元々落下すれば即死という危険地帯がこのイズルカだが、バグプロトコルに侵食されたことにより転落が即|遺伝子番号《ジーンアカウント》焼失に繋がるという更なる危険地帯となっている。更に、プレイヤーを叩き落としにかかるモンスターの群れや、飛行で突破を試みる者達を撃ち落とす対空兵器群も完備されているので、猟兵といえど油断は禁物だ。
「あと、ナイトウォーカーズの人達のことも、できれば助けてあげて欲しいんだよ」
彼ら彼女らはいずれ劣らぬ優秀なプレイヤーでこそあるが、それでも一度の失敗が致命的な結果を招いてしまうこの場にあっては何としても死は避けねばならない。確実にこの場を突破できるよう手助けしてやるべきだろう。
「最深部に到着すれば、クエストボスの『ドラゴンゾンビ』が出て来るから、これをやっつけてね」
これもバグプロトコルであり、本来のクエストボスとは桁違いの強さになっている。加えて、フィールドは至る処に穴が開き、上空にも巻き込まれた者を即死させるバグの嵐が渦巻いているので、かなり困難な環境下での戦いとなる。心してかかるべきだろう。
ドラゴンゾンビを倒せば全てのバグは取り除かれ、クエストは正常化される。然し、もう一つやることがあるとウュルは言う。
「クエストがクリアできたら、後はギルドに戻って報告してねー」
それを以てクエストクリアとなり、報酬として『トリリオン』――この世界での通貨であるのみならず現実世界でも電子通貨として利用可能な代物――が入手できるとのことだ。
また、ギルドには様々なNPC――この世界では自我持つAIというべき人々――がおり、先のナイトウォーカーズのメンバーも、暫く此処に留まるようだ。彼ら彼女らと交流してゆくのも良いだろう。
「クエストの情報は以上になるよ。それじゃ、頑張ってきてねー」
説明を終え、ウュルはグリモアを起動。
猟兵達が向かうは、閉塞した世界に残されし自由の楽土。究極のオンラインゲームの世界。
五条新一郎
クソギミックというレベルではない。
五条です。
というわけでやって参りました新世界ゴッドゲームオンライン!
当方よりも早速シナリオの方出させて頂きました。
理不尽な社会的死を招くバグを取り除き、プレイヤーの方々を助けてあげましょう。
●目的
『ドラゴンゾンビ』を撃破しバグプロトコルを除去する。
●戦場
ゴッドゲームオンライン、浮遊群島イズルカ。
大小数多の浮遊島が浮かぶ空域。落ちると即死(猟兵はグリモアベースへ強制帰還)です。
基本的にはファンタジー風のロケーション。
●NPC
『ナイトウォーカーズ』
今回このクエストに参加するクラン。
クランマスターの『ミナセ』以下OPに名前の出た四名の他、今回参加するだけでも十数名のメンバーがいます。
プレイングで指定頂ければ、それに応じたメンバーが出てきます。
●第一章
イズルカの最深部を目指して進む「冒険」です。
道中には様々なモンスターが襲って来る他、飛行するプレイヤーには対空兵器の攻撃も襲ってきます。
●第二章
『ドラゴンゾンビ』との「ボス戦」です。
地面が穴だらけになっている上、上空にはバグの嵐が渦巻いているため飛行にも工夫が必要となります。
●第三章
ギルドにクエストを報告の後、ギルドにいる人々と交流する「日常」です。
ギルドに常駐するNPCの他、ナイトウォーカーズのメンバーも暫く留まるようです。
また、ウュルも同地に向かいますので、プレイングで指定頂ければ同行させて頂きます。
●プレイングについて
第一章はOP公開直後から、第二章以降は章移行後に断章を投稿しますのでそれ以降からプレイングを受け付けます。
それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
第1章 冒険
『浮島アスレチックの攻略』
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POW : 勢いで浮島を跳び移っていく。
SPD : 道具を使って確実に移動する。
WIZ : 空を飛べる魔法でひとっ飛び!
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
面白い地形ですねぇ。
さて、何とか参りましょう。
グリモア猟兵さんの御用意したクランに一時加入、参加条件を満たしまして。
【炳輦】を発動し『防御結界』を展開、『FPS』で周囲の情報を探知しつつ飛行して向かいますねぇ。
『対空兵器』は『FLS』の空間歪曲障壁で直撃を避け、余波は『結界』で防ぐか『転移』で回避しますぅ。
モンスターは『時空切断の嵐』で排除しましょう。
Nウォーカーズの方々の動向は『FPS』で把握可能、ゲームを楽しみに来ている方々ですので、此方からの手出しは必要になった時のみとし、それがモンスターなら割込んで排除、転落危機なら『FIS』で転移させ『結界』内に回収しますぅ。
クエストを受け、訪れた地は空に浮かぶ浮島の上。見回せば、周りにも大小数多の浮島群。ここが此度のクエストの舞台『浮遊群島イズルカ』だ。
「面白い地形ですねぇ」
これまで訪れた世界でも似たような風景は見覚えあるが、それらともまた異なる雰囲気を醸す風景。夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は興味深げに辺りへ視線を巡らせていた。
「ですが、ここの一番奥まで行かないといけないのですよねぇ」
だが此処を目的は風景を眺めることではない。本来の目的を果たさねば。周辺情報を探知するべく水晶柱型の祭器を展開すると共に、その手を合わせ祈り始める。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて典礼を捧げましょう」
祈りが結ばれると共に、るこるの身は祭器としての性質を宿す衣に包まれ、その場から緩やかに浮かび上がる。周囲に展開されるのは、全長19mにも及ぶ防御結界だ。
「さて、何とか参りましょう」
以て空へと飛び上がったるこるは、早速移動を開始する。探査祭器に示された最深部と思しき領域を目指して飛び進んでゆくと。
「――おお?」
防御結界に伝わる僅かな振動。見れば、結界に何かが衝突し、爆発している。探査祭器の反応を確かめると、その原因は直ちに特定された。
「なるほどぉ、あれが対空兵器というわけですねぇ」
前方やや下方、幾つもの砲台がるこるの方へとその砲口を向け、断続的に砲撃を放ってきている。飛来する砲弾が結界へと着弾すれば、発生するのは猛烈な衝撃を伴う爆炎。
更に、砲台群の中には大きな|弩弓砲台《バリスタ》も混じっており、そこから放たれるのはレーザービームじみた矢。砲弾の爆発共々、まともに喰らったら一たまりもなさそうな代物だ。
だが、それらはいずれもるこるの身には届かない。展開されている防御結界に加え、祭器によって形成される空間歪曲障壁によって衝撃力や貫通力を殺がれているが故に。
そんな盤石の防御態勢で以て対空攻撃をやり過ごしながら、空を行くるこる。其処に、探査祭器から新たな反応。バグプロトコルとは異なる、人型の存在。即ち。
「あれがナイトウォーカーズの皆さんでしょうかぁ」
グリモア猟兵の予知に見えた者達を中心に、十数名のプレイヤーキャラ達が一纏まりとなって進んでゆく。どうやら、あれが件のクランの者達と見て間違いないようだ。
現れ出るモンスター達に対しても其々が己のジョブにおいて適切な動きを取り、敵を効率よく撃破していっている。此処のモンスターもバグプロトコル化している筈だが、見事な連携ぶりだ。
「此方から手出しの必要は無いでしょうかぁ……」
彼らは純粋にゲームを楽しんでいるプレイヤー達。通常のゲームの仕様を逸する猟兵たる身で必要以上に干渉するのは好ましくない。るこるはそう考える。故に、干渉するのは彼らに危険が及んだ時のみ。
とはいえ彼らの動きに危なげな様子は無い。これならば大丈夫だろうか――そう考え、先へ進もうとした、まさにその時。
「うわぁぁぁ!?」
メンバーの一人、銃による遠距離攻撃で戦っていた少年キャラが、突如飛び出してきた獣型モンスターの突撃を受け吹き飛ばされる。吹き飛んだ先は――下方に一切の足場が無い、全き空中。このままでは転落死は確実。
「や、ヤバ……!」
焦る少年。そして事態は彼が考えている以上に深刻である。本来ならば死んだとしてもギルドへの強制送還で済むが、今はプレイヤー自身の社会的生命までをも奪われかねぬ。全き死へと真っ逆さまの状況――
と、次の瞬間。
「……あ、あれ?」
少年の目の前の風景が一変する。気付けば、浮島から落下せんとしていた状況から、元いた浮島を見下ろすような位置にいる。これは一体?
「危ないところでしたねぇ」
声に振り向けば、其処にはるこるの姿。少年には勿論知り得ないが、るこるが祭器の力を以て彼を空間転移させ、防御結界の中に回収したのだ。
「あ、う、うん。ありがと」
「どういたしましてぇ」
このような救出行動を可能とするスキルなど知らぬが故か、戸惑っている様子の少年だが。礼は確りと述べる。
微笑みと共に応えたるこる、先立ってモンスター群を排除しておいた浮島の上へと少年を下ろし、仲間達への合流を促すと再度飛翔を開始。彼らの動向に注意を払いながら、最深部を目指し進んでゆく。
成功
🔵🔵🔴
ギルフォード・アドレウス
おー…あー…、俺もとうとうゲームのキャラクターかよ…。とんでもねぇ事になってんな。
まぁ、考えても始まんねぇか。
「ナイトウォーカーズ」の面々に入れてもらう事にするわ。コミュ力使って印象良くしとこ
距離近い方がいざというとき護りやすいからな。
んじゃま、UCを使わせて貰うか。斥力で即席の足場にもなるし敵の攻撃や敵そのものも逸らす事も出来るしな。
基本、防御は|左手《月輪》で攻撃は右手|《日輪》だな。
白刃は適宜使用。障害物も斬れるし。
あんま離れんなよ?俺そこまで面倒見良くねぇからな??
【アドリブ歓迎】
クランを挙げてのクエストに臨む『ナイトウォーカーズ』。この日、このクランには何人かの一時所属者が加入していた。それが全員猟兵であるということなど、彼らには知る由もない。
「っつーワケで、このクエスト限りだがよろしくな!」
冒険者ギルドにて、明朗な声音と共に片手を挙げて挨拶してみせるギルフォード・アドレウス(|終末機巧《エンド・オブ・マキナ》・f41395)。応えるクランメンバー達の反応は様々だが、概ね好意的な反応ではある。
(……っち)
然しギルフォードは内心で舌を打つ。馴れ合いを好まぬ彼、こうした雰囲気は正直なところ苦手ではある。それでも愛想良く挨拶してみせたのは、その方が距離を取られにくくいざという時に護り易いがため。
「それじゃあ皆、クエストを受けて移動してね」
クランマスターの黒髪女剣士風の女性――ミナセの指示に従い、カウンターへ向かってゆくメンバー達。それについていきながらギルフォードは思う。
(しかしまあ……俺もとうとうゲームのキャラクターかよ……)
ケルベロスディバイド――|の別領域《ケルベロスブレイド》から飛び出し、暴れ回った末に猟兵となった身だが。よもやこのような世界にまで至ろうとは、果たして想像できただろうか。思う処は無いではないが。
(まぁ、考えても始まんねぇか)
何処であれ倒すべき敵が居り、護るべきものが在るなら。己は其を果たすだけだ。頷くと共に、ギルフォードもまたかの浮遊群島へと転送されていった。
そうして到着した浮遊群島イズルカ。探索に先立って、各メンバーが戦闘に備え装備の変更やスキルの使用を行う中、ギルフォードもまた動く。
「んじゃま、やるとしますか」
その一言と共に展開されるのは、総数127個にも及ぶ直径30cm程の歯車群。其々がギルフォードの頭上を旋回浮遊し、彼の思念による指示を待つ。
「ほー……見たコトないスキル、なにこれ」
其に興味を示したか、クランメンバーの一人が問いながら近づいてきた。ショートカットに丸眼鏡の小柄な少女、イツキである。
「あん? こいつはな……」
ギルフォードは語るより示すが早い、とばかり歯車群を動かし始める。彼の意志に応えて飛翔する歯車群は浮島の縁まで到達すると、その場で数個毎に固まって階段状に並んでゆく。その向こうには、次に向かうべき別の浮島。
「こうやって足場にもできるし、戦闘にも使える。ま、見ておきな」
瞳を瞬かせるイツキを後目に、ギルフォードは階段を上って次の浮島まで向かっていく。その危なげなさにイツキも他のクランメンバー達も驚くが、大丈夫と分かれば一人ずつ歯車の階段を上り始めてきた。
「……って、敵がいるじゃねぇかよ」
階段を上りきったギルフォードは舌打ちする。空を泳ぐ魚めいた生物、或いは小型の鳥脚類恐竜風の生物などといったモンスターが群れを成していた。しかも見れば、これも全てオブリビオン――即ちバグプロトコル。
「なんか聞いてたより数が多いわね」
「そういうコトもあるんでないかにゃ? 突破あるのみにゃ!」
正規ルートから此処まで到達していたミナセはその様相を訝しむが、猫耳獣人めいた装いの女性――リッツは特に気にすることなく戦闘態勢へ移行。
「そうだな、思う存分殴り倒してやろうじゃねぇか!」
ギルフォードも彼女に応え、両手を拳と成して構える。左手周囲の大気が白く冷たい蒸気を纏うと共に、恐竜型のモンスターがギルフォード目掛け突っ込んできた!
「甘ぇな!」
対するギルフォードは左手を掲げるように突き出す。するとその手を中心に氷の壁が形成され、瞬く間にギルフォードの前面を覆いきり。障害物を前として、恐竜は脚を止めざるを得ず。
直後、氷壁を突き破って飛来した白熱の槍。其が恐竜を貫いた直後、その全身を激しい炎に包み込み燃え上がらせた。壁の向こうには、右の拳を振り抜いたギルフォードの姿。
それこそは彼の基本武装。超低温を操る防御の要の|左手《月輪》と、劫火を操る攻撃の要たる|右手《日輪》だ。
続く敵数体を、左手に形成した氷盾で凌ぎ爆炎を纏った右拳で殴り飛ばし仕留めたところで、ギルフォードは周囲へ視線を巡らす。二刀を振るい敵を斬り倒すミナセと、鋭い爪を振り回し走り回るリッツ。更に後へ続いてきたメンバーも順次参戦してきているが。
(……ちっ!)
ギルフォードは見る。ミナセの横合いから彼女目掛けて突撃をかけんとしている恐竜型モンスターの姿を。ミナセにとっては死角らしく、其に気付いている様子が無い。他のクランメンバーも、己の相対する敵への対応で精一杯と見える。
自分が動くしかなさそうだ。ギルフォードは歯車達の何体かを飛ばし、ミナセと恐竜の間を隔てるように配す。恐竜型モンスターはそれらも諸共に吹き飛ばしてしまわんとばかり、スピードを緩めることなく突撃し――ミナセを逸れていく。
「うにゃ!?」
「え!?」
そこでミナセを狙う敵の存在に気付いたリッツが驚いた声を上げる。それに気づいて振り向いたミナセも同様に。不自然な機動でミナセを逸れるように突撃していった恐竜が、逆側から飛来した斬撃波で斬り倒される様を目撃したからだ。
「ったく、危ねぇトコだったじゃねぇか」
斬撃波の主たる白刃を収めながら、ギルフォードは肩を竦める。二人の受けたダメージが大したことないと確かめつつ。
「あ、今のは……そっか。ありがとう」
助けられたと気付いたミナセ、礼を述べるがギルフォードは渋い顔で。
「今みてぇな感じでフォローはしてやるが、あんま俺から離れんなよ」
俺そこまで面倒見良くねぇからな、と半ば吐き捨てるように言って。尚も迫る敵群へ向かってゆく。
ミナセとリッツは、そんな彼の背を数瞬見届けてから自らも戦闘を再開したが。――その口元が笑っていたことにギルフォードは気付いたか、否か。
成功
🔵🔵🔴
ファーラ・フォージマスター
サぁプラーイズ☆はっはっは、遠路はるばるやってきたZE
ナイトウォーカーズの諸君ってアレかな?これから此処(浮遊群島イズルカ)の探索?正直あまりオススメはしないよ。
有体に言っちまうとバグが出てるんだよネ、重篤で笑えないタイプのヤツ。
ま、それでも行くというのならうちを頼るといい。特別だよ?いや言う程特別でもないか……最近このテのバグ対応少なくないし(ぉ
ともあれ先ずは落下多発地帯を越えないとだ。
まず此処がバグってて、落ちるとアカウントがイカれる!
なモンだから、っと。《蒸気魔導兵器:ジャイロフライヤー(ファンタジック且つスチームパンク風味なデザインのヘリ的なやつ、10名前後輸送可)≫!
良かったら乗る?
「サぁプラーイズ☆」
浮遊群島イズルカの探索を進めんとしていたナイトウォーカーズの面々の前に、剽軽げな声音を伴い現れた一体のドラゴンプロトコル。その姿を前としたクランメンバー数名が、驚いたような声を上げる。
「え!? ちょっと、何でアンタ……!?」
「何故此奴が斯様な処に……?」
クランマスターのミナセと、着物らしき装備を羽織った黒髪の女性――コトナが訝しんだ理由。それは、彼女達の知るこのドラゴンプロトコルの素性にある。
「はっはっは、訳あって遠路はるばるやってきたZE☆」
彼女はファーラ・フォージマスター(|悪魔の鍛冶場《デーモンズフォージ》の主・f41782)、気さくな態度で冒険者達に接しこそするが、その正体は鉱山及び麓の都跡地に在る高難度エリア・工廠城塞【|悪魔の鍛冶場《デーモンズ・フォージ》】の|主《ミストレス》――ボスモンスターである。つまり、本来浮遊群島イズルカにいる筈のない存在なのだ。
「さてナイトウォーカーズの諸君、これから此処の探索をするのかい?」
驚くクランメンバー達の疑問への返答はそこそこに、ファーラは本題に入るべく確認めいて問う。ミナセが首肯すればファーラ、「うーん」と軽く悩んでいるかのような仕草を見せて。
「正直、今はあんまりオススメはしないよ。有体に言っちまうとバグが出てるんだよネ」
それも、重篤で笑えないタイプのヤツ。ファーラのその返答に、ナイトウォーカーズの面々にも動揺が広がる。
「バグ……其は如何様な?」
「敵が想定より強くなってるのと、あと此処でのデスペナルティが重くなってるのさ」
コトナの問うにファーラはやれやれ、と言わんばかり両手を広げてみせる。こんなバグが発生していることにうんざりしている、といった風に。
「具体的に言うと……アカウントがイカれる!」
其を聞いたナイトウォーカーズの面々、流石に動揺を見せる。|遺伝子番号《ジーンアカウント》の焼失にまでは言及していないが、アカウント自体に異常が生じるとあっては今後のゲームプレイに支障が出るのは想像に難くない。不安の声を上げる者も何名か出てきている。
然しミナセをはじめ、数名のクランメンバーは複雑げな表情。折角のクランを挙げてのクエスト参加、碌に探索もせず帰るというのは未練が残る。彼女達が考えているのはそんなところだろう。其を察したかのように、ファーラはフォローめいて告げる。
「それでも行くというのなら、うちを頼るといい。できるだけ安全に先へ連れていってあげよう」
特別だよ? と言いかけたファーラだが。言うほど特別でもないなと思い直した。何しろ最近、ゴッドゲームオンラインではこの手のバグが頻発しており、今回のようにファーラが対応に回ることも少なくないためだ。猟兵として対応に赴くのは今回が初めてとはなるが。
「……お願いしても良いかしら?」
ともあれ。これは渡りに船、とばかりに乞うミナセに対し、ファーラは鷹揚に頷いて。
「良いとも。それじゃ――」
片手を掲げてフィンガースナップを一つ打てば。展開された如何にもな魔法陣が光を放ち、その中から一機の大きな機械が姿を現す。魔術的な装飾とスチームパンク的な意匠を兼ね備えるそれは、上部と後部とに大きなローターを備えたヘリコプターと思しき魔導蒸気兵器。その名を『ジャイロフライヤー』。ファーラが己の権能を以て作り上げた代物だ。
「さ、良かったら乗るといい。少なくとも乗ってる間の安全は保証するよ」
ジャイロフライヤーのドアを開けて促すファーラ。早速乗り込もうとするナイトウォーカーズ一行だが。
「――時に。対価には何が望みかえ?」
ふとコトナが問う。というのもファーラ、ボスでありながら『賄賂が有効』という性質を有しているためだ。その点を踏まえ、無償とはいかぬだろうと見ての問いであるが。
「ああ、今回は|無料《ロハ》で構わないよ。うちもこの先に用があるのだしね」
ナイトウォーカーズ一行を乗せるのはそのついで、という名目であるとの答えに、コトナは一先ず納得した様子。
ともあれ、一行を乗せたジャイロフライヤー。最後に操縦席へファーラが乗り込めば、ローターが力強く回転を開始して。
「それじゃ、出発するとしようか!」
その宣言と共に。魔導蒸気ヘリは浮遊群島の空へと飛び上がり、深部を目指し向かってゆく。
成功
🔵🔵🔴
ネルコ・ネルネコネン
クランの方々に挨拶をしてから行動に移りましょう。
飛行するのが難しいとなると跳躍しながら進むのがよろしいでしょうね。ここは【聖なる光橋】を使用いたします。
遠くの浮島まで跳躍し橋を架けつつ浮島で待ち構えているモンスターを聖者のメイスのぶん回しで排除いたしましょう。
クランの方は橋を渡っていけば安全ですし、飛行とみなされなければ対空兵器も作動しないでしょう。さらに渡れる方をクランメンバーに限定すれば、モンスターに追われることなく安全に進めるはずでございます。
人権の喪失…オブリビオンに囚われた際、同じような境遇になった者として、見過ごすわけには行きません。共に進む方達の安全を第一に進んでまいりましょう。
「皆様、此度はどうぞ宜しくお願い致しますね」
浮遊群島イズルカの探索に臨むクラン『ナイトウォーカーズ』の一時メンバーとして所属する運びとなったネルコ・ネルネコネン(呪いを宿した聖者・f13583)は、集まったメンバーを前に丁寧な所作で挨拶を行う。
「改めて、クランマスターのミナセよ。宜しくね」
「妾はコトナと云う。よしなにの」
「リッツだにゃー、よろしくにゃ☆」
「ウチはイツキ、よろ」
主要メンバーに続き、次々と挨拶を返すクランの面々。ネルコは一人一人に対し頷き返しつつ、その姿と名を覚えてゆく。
挨拶が終われば、いよいよクエストの始まりだ。ネルコも事前に聞いていた通りにクエストを受け、件の浮遊群島へと向かっていった。
転送が終わり、見回せば其処は大小数多の浮島が浮かぶ空の只中。成程、此処から落ちれば即死は免れぬというのも納得だ。そして現状において、其が齎す事態はより深刻である。
(|遺伝子番号《ジーンアカウント》の焼失――人権の喪失。見過ごすわけには行きません)
ネルコ自身、かつてオブリビオンに囚われ、冒涜的魔術によって数多の呪いを刻み込まれた過去を持つ身だ。故にこそ、人権を剥奪された者が辿る末路というものを、他の猟兵に増して明瞭に想像できる。其を思えば尚の事、斯様な事態を捨て置くことなど出来ぬ。
ならば、その要因は徹底的に排除すべきだ。その意志のもと、ネルコは移動を開始しようとしたクランメンバーへと進言する。
「私が先行し、橋をかけて参ります。皆様はその後に続いていらして下さいませ」
「橋……?」
このエリアにそんなギミックはあっただろうか。訝しむクランの者達に、ネルコは「然らばご覧になってくださいませ」と実践を以て示してみせんとする。
(――光よ、輝く橋を架けるため力をお貸しください)
祈ると共にその身から溢れるは、聖者としてのネルコの力の具象たる光。其を纏って、前方の浮島を目指し一気に跳躍。浮島までは決して近くはないが、この状態のネルコならば最大128mの跳躍が可能。故に、余裕を以て目標の浮島への着地を果たしてみせた。
更に。
「おお、光が橋になってる」
「これを渡ってけばいいのかにゃ?」
纏った光は跳躍の軌跡に沿って輝く橋を形作っていた。其を興味深く見ていたイツキとリッツとが渡り始めるのに続き、残りのメンバーも次々に橋を渡り始めた。
一方、ネルコは跳び移った先の浮島にて前方を厳しく見据えていた。彼女が対峙するもの、其は。
「この敵も全てバグプロトコルなのですね」
獣型、小型恐竜型、巨人型。様々な形状の、多数のモンスター達。猟兵たるネルコには判る。その全てがオブリビオン――即ちバグプロトコルであると。これに倒されてしまえば、やはり|遺伝子番号《ジーンアカウント》の焼失を招くと。
ならば、クランの者達の交戦は最低限にせねばならない。得物たる出縁式のメイスを構え、敵群目掛けて走り出す。敵群もまた己を狙い迫り来ると見て、ネルコは大きくメイスを振りかぶり――
「全て、排除させて頂きます!」
渾身の力を以て、メイスを思い切りぶん回し始める。神聖なる力の籠った一振りごとに、小型のモンスターは浮島から叩き落とされんばかりの勢いで吹き飛ばされていき、中型のモンスターもその衝撃には耐えられない。
戦域を駆け抜けながらメイスを振るうたび、モンスターが凄まじい勢いで数を減らしてゆく。一般のプレイヤーにとっては相応の脅威であるこれらモンスターも、猟兵にとっては敵ではない。
辛うじて吹き飛ばされずに耐えきった大型モンスターも、受けたダメージ自体が非常に大きく。どうにか反撃せんと得物を振りかぶるが。
「やらせはしないわよ!」
「砕け散るが良いわ!」
二刀を振りかざすミナセと、大棍棒を振り抜くコトナを中心としたクランの者達が追い付き。彼らの攻勢の前に、まともに戦えないまま倒されていった。
「皆様、ありがとうございます。では、次の浮島へ――」
己の隙を埋めてくれた彼らへと礼を述べ。ネルコは次の浮島を目指し跳躍せんとした――が。
「って、もう敵が湧いてきてる!?」
「|再出現《リポップ》早過ぎね!?」
クランメンバーの一人の叫んだ通り、倒されたモンスターが再び現れ出て来た。それ自体は仕様ではあるが、イツキの言う通りその頻度が異常――通常数分は開く筈の|再出現《リポップ》が、1分もしないうちに始まったのだ。これもバグプロトコルの影響か。
「これは早急に次へ行きませんと……! 皆様、橋がかかりましたらすぐ渡ってくださいませ!」
ネルコは即座に決断、ナイトウォーカーズの面々へそれだけ叫ぶと一気に跳躍。次の浮島までの間に橋を架ける。
クランメンバー達は其を確かめて次々と橋を渡り始める。追いかけてくるモンスター群は、橋まで駆け迫ってくるものの、橋を渡ろうとはしない。このユーベルコードの効果でかけられた橋は、ネルコ自身が指定した者にしか渡れぬ故に。
以て、無事に次の浮島まで到達を果たした一行。この先も、クランの面々の安全を第一として進んでいこう、とネルコは気を引き締め直し。最深部を目指し、彼らと共に進んでゆく。
成功
🔵🔵🔴
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
|おんらいんげーむの世界《ゴッドゲームオンライン》?…いろんな世界があるんだね…ともかく…
彼等を助ける為に行こうか…私は…処刑人…!
私はアンナ…くらん?は…えぇと…ダークセイヴァー…かな…
彼等と合流し浮島に着いたら地獄の炎を空中に放ち【炎獄の大地】を発動
空中に地獄の炎の道を作り範囲攻撃で道を広げてゆき彼等と共に最深部へ向かおう
敵群には七本の慈悲の剣での追跡と赤錆びた拷問具を投げつけ誘導弾で攻撃を仕掛けよう
そして鉄塊剣の柄に鎖の鞭を巻き付けてロープワークで自在に操り
遠方にいる敵を重量攻撃と鎧砕きで吹き飛ばして粉砕してやろう…!
その隙に彼等を先へと急がせよう
私は…処刑人だッ!!!
「はじめまして……私はアンナ……」
グリモア猟兵が用意したクランに加入、浮遊群島イズルカにてクラン『ナイトウォーカーズ』の面々との合流を果たした仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)は自己紹介を行う。
「この先、一緒に行っても良い……かな……」
「ええ、大丈夫よ。折角だし、一緒に行きましょう」
茫洋とした口調のアンナに対し、クランマスターのミナセは快く同行を承諾。以て、共同戦線の成立と相成った。
(それにしても……)
そこでふと、アンナは辺りの風景を見回す。浮島を形作る岩肌、芽吹く草花の揺れる様、風の冷たさに降り注ぐ陽光。現実と紛う程にリアルな風景ではあるが、然し。
(|おんらいんげーむの世界《ゴッドゲームオンライン》……いろんな世界があるんだね……)
飽くまでもこの世界はまさにオンラインゲームであり、目の前のクランメンバー達は別個にプレイヤーたる人々が存在している。これまで訪れた世界に増して独特なその在り方に、ただただ驚くばかりであるが。
(ともかく……彼等を助ける為に行こうか……!)
オブリビオンを討ち、人々を守る。その点だけは変わり無い。処刑人として務めを果たす。その意志を改めて心中に固めれば、ぼんやりとした表情が引き締まり、瞳には苛烈なる意志の炎が宿る。
「ではッ! 私が道を拓くとしようッ!!」
「うにゃっ!?」
そして行動に移るべくその意を口に出せば、隣にいた猫娘風装備のメンバー、リッツが驚いた声を上げる。アンナの様相が先程までとは一変したためであろう。
「地獄の炎よ、我等が進む為の地と成り道を作れ!」
そんなリッツの様子は意に介さず、アンナは片手を前方へ翳す。その掌からは燃え滾る地獄の炎が溢れ出し、真っ直ぐに前方へと迸り――そのまま、次の浮島までの空間をほぼ一直線に焼き潰してゆく。その痕には、尚も燻る炎によって形作られた、道のようなものが残されていた。
「さあ、これを渡り進め!」
言うが早いか、アンナは自ら作ったその道へと飛び乗って走りだす。尚も燃える炎によって少しずつ空間内に幅を広げてゆく炎の道は、鉄塊剣や鎧など重装備を纏ったアンナが駆けても小動ぎもしない安定性を見せる。
初めて見る業ゆえに半信半疑の様子を見せていたクランの者達だが、やがてリッツが意を決して其に飛び乗る。すると。
「……おお! ちゃんと乗れるにゃ! 走れるにゃ! これは便利にゃ!」
思った以上の安定性に思わず声を上げつつ、アンナを追って走りだした。其を見た他のメンバー達も次々と炎の道へと飛び乗り、駆けだし始める。
「やはり現れるか、オブリビオン共!」
一方、次の浮島へと一番乗りで到達したアンナは、其処に群れる無数のモンスターと対面していた。全てがバグプロトコル――オブリビオン。ユーベルコードは使えないようだが、この数はクランの者達にとって脅威となろう。
「だが!」
なれどアンナは怯まぬ。両手に何枚もの|円盤鋸《バズソー》を構えると共に、背後からは七本の随行剣がアンナの意志に従うかの如く浮き上がる。即ち。
「私は……処刑人だッ!!」
|円盤鋸《バズソー》を投擲、同時に随行剣群も敵群目掛けて飛翔開始。敵群の只中へ飛び込んだそれらは縦横に飛び回り、軌道上の敵を引き裂き貫き傷つけてゆく。小型のモンスターならばそれだけでも耐えきれず倒れていき、耐えられる中型以上のモンスターも只では済まぬ。
「おおおおお……!!」
其処へ更なる追撃。咆哮と共にアンナが振るうは、鉄の乙女を意匠せし鉄塊剣。その柄に鎖鞭を巻き付けて、攻撃範囲と遠心力を上乗せした代物だ。
そんなものが振り回されれば、彼女の周囲には鉄の竜巻と称すが相応しい破壊の嵐が荒れ狂う。拷問具や飛翔剣にはない力強さと重さを伴うその攻撃は、大型のモンスターをも浮島外まで吹き飛ばす程のものだ。
「さあ! ナイトウォーカーズの者達よ!」
其処にかのクランのメンバー達がやって来たのを見れば、鉄塊剣に地獄の炎を纏わせ敵群目掛けて一気に振り下ろす。其は軌道上のモンスター達を火達磨と為して吹き飛ばしながら、その直線上に先程同様の炎の道を作り上げる。
「この敵共は私が打ち倒す! その間に先へ進むが良い!」
叫ぶが早いか、アンナは再び鎖鞭に繋いだ鉄塊剣を振り回しつつ敵群へ突撃。これらを薙ぎ倒しにかかる。
「いやそれ死亡フラグっぽくないかにゃ!?」
などとリッツの突っ込みがありつつも、アンナがそう言うならばとクランの者達は炎の橋を渡ってゆく。付近に|再出現《リポップ》したモンスターが追いすがるが、炎の道に触れた瞬間に炎へ包まれ倒れてゆく。この橋はアンナが認めた者しか渡れないのだ。
一通りの敵を薙ぎ倒したアンナもまた、炎の橋を渡り先へと進む。このバグの元凶、確と仕留めねば。
成功
🔵🔵🔴
岩社・サラ
アドリブ共闘歓迎
ふむ、オンラインゲームに生身で転送ですか…重大な秘密が隠されていると見るべきでしょうが今は目の前の仕事に集中しましょう。
ゲームというのは元々興味がある分野というわけでもないので詳しくは知らないのですが、現実での常識が通用することはないでしょうし注意して進んでいきたいですね。
今回の浮島での最大の障害はプレイヤーを転落させようとするモンスターであると思われるので、UCを発動し水晶の矢の弾幕で敵集団を殲滅しつつ進んでいきましょう。
ナイトウォーカーズの方と同じルートを通ることがあったら協力していきたいですね。ゲームに慣れている方から話を聞くことが出来れば今後の参考となるでしょう。
無数の浮島が浮かぶ空中の領域。その島々も、其処に息づく草花も、雲の漂う空と眼下に広がる大地の風景も。現実と何ら変わりなきものと見える。だが。
「オンラインゲームに生身で転送、ですか」
飽くまでも、この世界はオンラインゲームであるのだという。草生した地面の現実と何ら変わらぬ感触をブーツの足元に感じながら、岩社・サラ(岩石を操る傭兵・f31741)は興味深げに呟く。
これ程までに現実と寸分違わぬ世界、そして其処へ猟兵達は生身にして転送されるという事実。何やら重大な秘密が隠されていそうな予感を覚えるが。
「――今は、目の前の仕事に集中しましょう」
目の前に現れた、四足の大型獣じみたモンスターの一群を前として、思考を一旦脇に置く。斯様なことは今考えても詮無き事。先ずは任務の遂行が先決だ。
地を蹴り、サラを目掛けて突撃を敢行するモンスター達。其に対し、サラは冷静に片手を前方の地面へ翳す。
「大地の力、水晶の太矢――」
詠唱と共に地面から浮き上がる、数百本にも及ぶ細長い水晶体の群れ。其は魔力を帯びた|水晶の太矢《クリスタルボルト》。其々が、突っ込んでくる獣の群れへとその鏃を向けて――
「――射抜け」
宣言を合図として一斉に撃ち出される太矢群。その圧倒的物量が生み出す弾幕は、モンスターの小集団程度ならば容易く殲滅できる威力を以て降り注いだ。
浮島から別の浮島へと飛び移りながら、その道中にて遭遇したモンスター群をユーベルコードで殲滅してゆく。その繰り返しで以て、サラは着実に浮遊群島の深部へと歩を進めていった。
此度の最大の脅威は、即死となる浮島からの転落を誘発させようとするモンスターであると判断したサラ、その為に、道中のモンスターは確実に殲滅する方針を採っている。モンスターがいなければ、不意を打たれて吹き飛ばされるということもない。
殲滅を終え、浮島の端まで進む。眼前に在る次の浮島との彼我の距離を確かめて後、跳躍。難なく浮島を跳び渡る。
(――然し、やはり現実と然程の違いが見えませんね)
そうして浮遊群島の領域を進みながら、サラはふと思う。元ゲームというものには然程興味のない身ゆえに詳しくは知らぬが、ゲームの世界とは良きにつけ悪しきにつけ現実では考えられぬ世界法則が働くものだ。故にこの世界においても、現実の常識が通用するとは限らぬ、と警戒していたが。
だが実際はどうかといえば。少なくとも此処までにおいては、現実と大きく異なる事象には遭遇していない。精々、撃破した敵がどう見ても持ち歩けそうにない|道具《アイテム》を残していくことがあるぐらいか。
(偶々此処まで遭遇していないだけかもしれません。引き続き警戒していきましょう)
とはいえ、此処までに遭遇していないだけかも知れぬ。可能性は常に想定しておくべきだろう――そう結論付けたところで、サラの前に現れる大規模な敵集団。
「今度は中々に多いですね……」
これまで遭遇した集団の三倍はいるだろうか。油断なく敵を見据えつつ、サラはユーベルコードを発動する。敵数が増えれば一体当たりに与えられるダメージはどうしても減るというのが難点のユーベルコードだが、全滅とはいかずとも相応の損傷は与えられる筈。そう判じ、サラは水晶矢群を射出する。
驟雨の如くモンスター群へ襲い掛かる太矢群、立ち塞がるモンスター達を片っ端から薙ぎ倒して殲滅していき――
『グ……ガ……ガァ――』
数体の大型エネミーが、殲滅しきれずこの場に残る。サラを睨み据え、反撃を期さんとして漏らした唸りは、しかし直後に断ち切られる。
飛来する斬撃波と銃弾、次いで突撃してきた幾つかの人影。瞬く間に生き残りのモンスター達に止めを刺してみせた彼らは。
「ほう? 妾ら以外のクランの者が居ったか」
「珍しい、|単独《ソロ》で此処まで来るなんて」
グリモア猟兵の予知に出てきた、クラン『ナイトウォーカーズ』のメンバーの二人、コトナとイツキ。その後に続く者達は仲間たるクランメンバーだろう。即ち、此度守るべき者達だ。
ならば、共に行動した方が何かと都合が良いだろう。それに、今後のことも考え、この|世界《ゲーム》に長く触れてきた者の話も聞いてみたい処である。
「初めまして、私はサラという者です。此処で出会ったのも何かの縁、同行させて頂いても構わないでしょうか?」
故に、同行を申し出る。クランマスターであるミナセからの返答は是。そうして共同戦線を張ることとなったサラはその道行き、彼らから様々な話を聞くことができたようだ。
成功
🔵🔵🔴
ミア・ミュラー
ん、ゲームの中、とっても楽しそうなところ、だね。こんなところを悲しい世界には、させないよ。
わたしはナイトウォーカーズの仲間に、入ろう。いつもひとりで遊ぶひとが、こういうクエストに参加するために一時的に入ることがあるって、聞いたよ。戦いの経験はあるけど、ここでは調べればわかるん、だっけ。ユーベルコードを見せても、いいけど。
不安定な浮島だし事故が、怖いね。あらかじめ眠くなる本をモンスターに見せて無力化しながら、進むよ。飛び出してくるやつは炎槍で、反撃。危なければソリッドダイヤを一時的な足場に、しよう。怪しまれちゃうだろうしバグプロトコルのことは話せないけど、その分しっかりサポートして、あげよう。
冒険者ギルドでクエストを受け、転移を果たせば其処は天空に浮かぶ幾つもの浮島群の只中。見下ろせば、砂漠や森林、雪山に荒野といった全く異なる風土が一つの視界に収まる不思議な風景が広がっている。
「ん、ゲームの中、とっても楽しそうなところ、だね」
そんな光景を前として、ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)は呟く。茫洋とした無表情、淡々とした声音なれど、其処には確かな高揚が滲む。表情豊かな世界、其処での冒険。好奇心旺盛な彼女にとって、大いに興味を惹かれる処であるようだ。
(こんなところを悲しい世界には、させないよ)
だが、故にこそ斯様な世界を楽しむ人々に影を落とす所業は許せぬ。其を為さんとするバグプロトコルを排除するという目的への意志を新たに、ミアは表情を引き締める。
「ミアさーん、そろそろ行くよー」
と、其処にミアを呼ぶ声。クラン『ナイトウォーカーズ』のクランマスター、ミナセの声だ。
「ん、わかった。今行く、よ」
返答と共にミナセのもとへ駆けてゆく。其処には他のクランメンバーも準備を終えて集まっていた。ミアは此度、一時的なメンバーとしてナイトウォーカーズに加わることでクエストに参加するという形を取っている。普段クランに所属せず活動している者が、クランクエストの為に何処かのクランへ一時的に所属する、というのはこのゲームにおいてそう珍しくない。ミアの見立ては間違ってはいなかった。
戦闘力の方も、他のメンバーから把握できる限り問題ないとの判断であった。必要ならユーベルコードを使ってみせることも考えてはいたが、どうやらそれは実戦の中で、ということで良いようだ。
「それじゃあ皆、出発よ。落ちないように気を付けて」
ミナセの呼びかけるに、ミアも他のメンバーも移動を開始する。ミアは落下防止用のマジックアイテムを傍らに控えさせつつ。
危なげなく浮島を跳び渡り進んでゆくナイトウォーカーズ一行。だが、やはりこのまま無事に踏破とはいかないようで。
「モンス一杯、対処よろ」
小柄な眼鏡娘といった容貌のメンバー、イツキが簡潔な言葉で他メンバーへ対処を呼びかけた通り。一行の行く手には多数のモンスターが群れをなして道を塞いでいる。これらは見た目こそ元々この地に棲息するモンスターと変わりないが、その本質は別物であるとミアには理解できる。即ち。
(オブリビオン――これがバグプロトコル、なんだね)
このモンスター達は全てがオブリビオンである、とミアの目には映る。つまりこれらこそがバグプロトコル、死に至らしめたプレイヤーの|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却し社会的に抹殺する、理不尽なる存在。
更に、戦域は不安定な浮島。ナイトウォーカーズの面々はいずれ劣らぬ実力者だが、万が一の事故が無いとも限らない。一度の事故が彼らの社会的生命の喪失を意味する以上、その可能性は徹底的に潰さねばならぬ。
意を決し、ミアは片手に分厚い書物を取り出し、手の上に浮かばせる。浮遊する書物が開かれると、其処から飛び出してくるのは、砂浜や珊瑚礁といった美しい海の光景。今にも潮騒の音が響いてきそうなリアルさを帯びた風景だ。
其を前としたモンスター群、今まさにプレイヤー達を目掛け突撃せんとしていた様相に変化。足を止め、その場で項垂れ。何やら「zzz...」というエフェクトが頭のあたりから漏れ始めた。即ち、ミアのその手の書物の術中に陥った――眠りについたのだ。
「これで、大丈夫。起きる前に、先へ進もう」
一瞬で無力化したモンスター群を前に驚くクランメンバー達だが、ミアに促されれば応えて頷き。眠っているモンスター群を迂回して、戦闘を回避して先へ進んでゆく。
そうして次の浮島へと跳び渡った、その直後。
『GyaOooooooooonn!!』
「うにゃー!?」
浮島の岩の陰から、けたたましい咆哮と共に飛び出してきた一体の大型モンスター。所謂ワイバーンに似た姿をしたそのモンスターの突撃を横跳びで躱した猫耳尻尾のメンバー、リッツであったが。
「わわ、落ちるにゃー!?」
跳躍した先が浮島の縁ギリギリ。このままでは落ちてしまう。何とか踏ん張ろうともがくリッツだったが。耐えきれず何もない空間へ足を伸ばしてしまい――
「――にゃ?」
其処に何かを踏みしめる感触。見れば、ダイヤのスートを模したオブジェクトが其処に浮かんでおり、足場代わりとなってリッツの落下を防いでくれていた。
(間に合って、良かった)
そうしてリッツが体勢を立て直し復帰するのを見て安堵するミア。彼女の持ち直すのを助けた足場は、ミアがこの時の為に展開していたマジックアイテムだ。
後はこの元凶を排除せねば。既にクランメンバー達が交戦を始めている敵に対し、ミアもまたスートロッドを向けて意識を集中する。
(其は炎……突き通し、燃え盛れ)
念ずるや否や、撃ち放たれるのは秒間137発という勢いで飛び出してくる炎の槍の群れ。其は次々とワイバーンもどき目掛けて着弾し、これを炎上せしめ。一気に仕留めてみせた。
「ほほう、大した技じゃのうミア殿」
黒髪和装の女性メンバー、コトナはその攻撃に感嘆を示す。見慣れないスキルによる攻撃、と彼女らの目には映っただろうか。
「ん、鍛えた成果、かな」
謙虚に誇ってみせるミア。実際のところ、己が実際には猟兵であることやバグプロトコルのことは、怪しまれてしまうが故に話すことができない、と考えるが故の一種の誤魔化しとも言えた。
だが、その業自体は確かな力を発揮する代物である。これらを以て、皆が無事にクエストを終えられるようしっかりサポートしてゆく。改めてその意志を固めるミアであった。
成功
🔵🔵🔴
ミノア・ラビリンスドラゴン
管理者AIとして、バグプロトコル許すまじですわ!
浮遊群島に転移……便利ですわね、あのグリモアっていうアイテム
それはさておき、|聖剣士《グラファイトフェンサー》のスピードでビューンと駆けつけますわよ!
プレイヤーの方々を撃ち落とそうとする対空兵器を、【グラファイト・スピード】で逆に撃ち落としてさしあげますわ!
ごきげんよう皆様方ぁああ!!!
このエリアはちょっとしたバグが発生していますので、通りすがりのドラゴンプロトコルであるわたくしがお手伝いしてさしあげましてよ!
わたくしを脅威と見做したモンスターが殺到しても、とても頑丈なドラゴンボディは【鉄壁】!
【アクセルコンボ】でボッコボコにしてさしあげますわ!
浮遊群島イズルカに配置されている対空兵器群は、通常は飛行するプレイヤーのみを狙う。素直に浮島を跳び渡るプレイヤーとの間に難易度格差を生じさせないための措置だ。
逆に言えば、地上を行くプレイヤーにとっては無害な存在である。その筈であるのだが。
「……あの砲台、こっち狙ってない?」
「あれ対空砲台でしょ? 地上にいる私達を狙ってくるハズは無いと思うけど」
『ナイトウォーカーズ』のメンバーの一人、イツキが指摘するのは、己らへ砲口を向ける対空魔導砲台の存在。本来空へ向けられているそれが、何故か地上にいる己らへ向けられている不自然な状態。
クランマスターのミナセは仕様上有り得ないと否定するも、仕様というならそもそも砲口を向けて来ること自体が有り得ない。これは一体どういうことか。
だが、彼ら彼女らに考える時間は残されていなかった。魔導砲台の砲口に魔力の光が溢れだし、今にも一行目掛けて砲撃を繰り出そうと――
「やらせませんわぁぁぁぁぁぁ!!」
其処に響く叫び声。吹き抜けた一陣の風がナイトウォーカーズ一行の間を駆け抜け、砲台のもとまで到達。
直後、発射寸前の砲台は無数の斬閃によってバラバラに解体され。その場に無残な残骸を残すばかりとなった。
「へ……?」
一瞬の間に発生したその出来事に、イツキも他のメンバーも只々呆気に取られ。只々、其を為した竜人娘の背中に視線を注ぐのみ――
と、其処で徐に竜人娘が振り返る。その可憐な唇が開き、発された言葉はといえば。
「ごきげんよう皆様方ぁああ!! 危ないところでしたわねぇぇえぇぇ!!」
やたらと声がでかいお嬢様――ミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)であった。
バグプロトコルの作用により、対空兵器群が地上にいるプレイヤーにすら攻撃を仕掛けて来る可能性を憂慮した彼女、|聖剣士《グラファイトフェンサー》ならではのスピードで浮遊群島内各所の対空兵器をチェック、今まさにプレイヤーを撃とうとしていた砲台を破壊してみせたのである。
「ありがとうございます……って、あなたはもしかして」
「あ、ミノアたんだ。今日も金策?」
ミナセは助けられたことに礼を述べるが、そこでミノアの素性に気が付いたらしく。更にイツキはもっと突っ込んだ認識をしていたようで、挨拶がてらにその目的を尋ねにかかった。
「違いま……いえ、合ってるのかしら」
否定しようとするミノアだが、どうやら間違ってない気がしてしまった様子。何しろ彼女、自分の担当する迷宮の開発費で常に素寒貧状態であるためだ。今回は飽くまで猟兵としての|任務《クエスト》でこそあるが、報酬は|通貨《トリリオン》で支払われるが故、金策としても機能することは機能するのだ。が。
「――ではなく!!」
認めてはいけない気がする。故に否定する。その本当の目的はといえば。
「このエリアはちょっとしたバグが発生していますので、通りすがりのドラゴンプロトコルであるわたくしがお手伝いして差し上げましてよ!!」
何も知らぬ一般人に対して猟兵やバグプロトコルの話をするわけにはいかない。故に、一般通過ドラゴンプロトコルを装って対処せんとしていたようだ。
其を受けて、ナイトウォーカーズのメンバー達も納得した模様。以てエリア最深部まで同行する運びとなったのだが。
「って、なんかモンスター出て来たんだけど!」
移動を始めようとしたまさにその時、ミナセが声を上げる。行く手にモンスターの大群が現れ出ていたのだ。その数は多く、クランメンバー総出でかかってもなかなか骨の折れそうな敵達だ。
「早速わたくしの出番ですわね!」
ならば己が対処すべき、とミノアが前に出る。其を見たモンスター達が一斉に殺到し攻撃を仕掛けてくるが。
「ふふん! その程度でわたくしのドラゴンボディは傷つかなくてよ!」
繰り出される様々な攻撃も意に介さぬとばかり、ミノアは平然と其処にある。頑丈極まりないドラゴンボディは|聖剣士《グラファイトフェンサー》の紙装甲ぶりを補って余りあるほどの防御力を誇る。こうして耐える|盾役《タンク》すらもこなし得る程だ。
一通り攻撃を凌いだら、次は反撃。ミノアの両手に構えた拳に力が滾る。
「それでは、お返しですわぁぁぁぁ!!」
振るわれる拳。其が命中したら続けざまに逆の拳でもう一撃。その速度は、命中のたびに速くなってゆく。これこそがアクセルコンボ、加速する連続攻撃だ。
成す術もなくボコり倒されるモンスター達。生き延びた者も、クランメンバー達の攻撃を受けては一たまりもなく。そのまま、成す術なく全滅の憂き目を見たのであった。
成功
🔵🔵🔴
レテイシャ・マグナカルタ
事前にナイトウォーカーズに加入
『魔法は使えないが自己バフで多彩な武器と格闘で戦う』っていうオレ自身みたいなジョブがあったんで、それを名乗るぜ
モンスターを殴り飛ばしながら浮島と飛んでいくのは造作もなく、だが心配なのは……っと!
「あぶねぇ!」
クランで知り合った魔法使い系ジョブの少年風アバター、何度か一緒に狩りにも出て、この手の体動かすのは苦手そうだったから気にかけてたら案の定落ちたんで飛んで抱きかかえる
対空攻撃がくるからUC発動し機動力あげて両手に拳銃装備して迎撃突破する!
「抱えてる余裕ねぇから自分でしっかり捕まっとけよ!」
顔を赤くしながらも向かい合わせにしがみつくのを確認して、一気に突破だ!
猟兵達の助力もあり、浮遊群島イズルカにてのクラン『ナイトウォーカーズ』のクエストは順調に進行。もう少しで最深部にまで至る、という処までやってきた。
なれど、モンスターの出現は未だ続く。最深部への道を開くべく、彼らは浮島に群れ成すモンスター群との交戦を開始していた。
「おらぁっ!」
荒々しき掛け声に続いて、重く激しい打撃音が轟き、四足の猛獣めいたモンスターが吹き飛ばされ、そのまま浮島から落ちていく。
「へへっ、どんなもんだっ!」
得意げに笑ってみせる、蒼い竜の翼と尾を持ち豊かな金の髪と胸の双房とを揺らす女性。彼女――レテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)こそが、今の一撃を繰り出した主。自身の身体能力を魔術的に強化することにより、素手であれだけの一撃を繰り出せるだけの腕力を獲得しているのだ。
「うにゃー、レテイシャちゃんてば相変わらずエッグいパワーにゃ」
「|魔闘士《エンチャントケンプファー》が此処までバフ盛れるとか初めて知ったし」
その様を目撃したクランメンバーの二人、猫耳尻尾のリッツと小柄眼鏡のイツキが、各々の引き受けたモンスターとの交戦を続けつつも口々に驚嘆の声を漏らす。|魔闘士《エンチャントケンプファー》――かつてはそれなりの強ジョブではあったものの、|聖剣士《グラファイトフェンサー》の実装以後は実質その下位互換とされ忘れられかけていたそのジョブにあって、このクエストの敵を軽々殴り倒せる程の打撃力を発揮できる者がいたとは、と。
「まぁ、長いコトやってきたコトなんでな、っと!」
レテイシャは応えながらも疾走、跳躍。別のクランメンバーを追い込みつつあった巨人型モンスターを目掛けて飛び蹴りを叩き込み、これも浮島の外まで蹴り飛ばしてみせる。
さて、随分とナイトウォーカーズの面々と打ち解けている様子のレテイシャであるが。実は彼女、此度の事件の少し前にナイトウォーカーズに加入しており、これまで彼らと共に幾度かのクエストやレアモンスター狩りなどをこなしていたのだ。その結果としてクランの面々と親睦を深め、此度のクランクエストにも参加を決めた処に、此度の事件が予知された――という処であるらしい。
自身もグリモア猟兵であるレテイシャだが、それ以上に仲間として、クランの者達を守りたいという想いは強い。故に、こうしてクランの一員という形で事件解決に臨んでいるのだ。
「よし、大丈夫かシーリス?」
「う、うん。ありがとレテイシャさん……」
周囲の安全を確かめたところで、レテイシャは助けた相手――魔術士系ジョブの少年へと声をかける。彼はシーリス、あどけない少年の姿に違わず、未だゴッドゲームオンラインを始めてひと月程度という漸く初心者を脱したかどうかというプレイヤーだ。
レテイシャも彼とは幾度か狩りなどを通し友誼を得てきたが、その中でひとつの懸念事項に気付いていた。戦闘に関しては問題ないが、それ以外における問題――現状においては特に致命的な結果を招きかねない問題。
「それじゃ、先へ進みましょう」
一通りモンスターを排除した処で、クランマスターのミナセが移動を呼びかける。彼女に従い、クランの者達が次々と最深部へ通じる浮島の方へ跳び渡ってゆく。
「シーリス、オレ達も行こうぜ」
「そ、そうだね……」
レテイシャとシーリスもまた、同様にして移動を開始。レテイシャは軽やかに跳躍し見事対岸へ渡ってみせたが――
「っ、うわぁっ!?」
直後にシーリスの悲鳴。踏み切りが不十分だったのか、跳躍した彼の身は対岸の浮島に一歩届かず。数瞬だけ宙を泳いだ後、真っ逆さまに落下を開始した。
「あぶねぇ!」
其を見たレテイシャ、即座に背の翼を広げ真っ直ぐ降下開始。実の処、これこそがシーリスの懸念点。この手のアクション要素は苦手とこれまでの交流から判じていたが故に、素早く 行動に出ることができた。
徐々にシーリスとの距離を縮めていくレテイシャ、その背の翼が蒼い光を帯びて一層大きく力強い翼となる。以てその身はより速く、落下するシーリスへと追い付いて――
「捕まえたぜ!」
伸ばした両腕で、シーリスの身を確と抱え上げてそのまま反転し上昇。目的の浮島まで戻るべく、再上昇を開始した。
「あ、ありがと、レテイシャさ――」
「悪ぃが礼は後だ! 抱えてる余裕ねぇから自分でしっかり掴まっとけよ!」
礼を述べようとしたシーリスの声を遮り、レテイシャは得物の一つたる拳銃を両手に構える。シーリスは事態を察し、彼女の腰に腕を回して抱きつく姿勢へと移行。
見上げるレテイシャの視界に、迫り来る幾つもの光や砲弾。そう、飛行するプレイヤーを咎める為の対空兵器が、此処にきてレテイシャ達に火を噴いたのだ。
「させるかよ!」
なれど安易に其を受けるレテイシャでは勿論無い。砲弾に対して二丁拳銃を発砲、これを中途で爆発させると、身を捻ってレーザーを回避。立て続けに放たれる其を、蒼い光の障壁と合わせて防ぎ逸らす。
更に飛来してきた弩の矢も拳銃弾で弾き飛ばしながら、レテイシャは胸元を確かめる。己の胸へ顔を埋めるようにして、シーリスは確と抱きついていた。その顔が真っ赤に染まっていたことに、レテイシャは気付いたかどうか。
「よし、もうちょっとの辛抱だ、しっかり抱きついてろよ!」
ともあれ、しっかりと抱きついているなら遠慮は不要、とばかりレテイシャは一気に突破を図る。加速しての障害突破、最低限の機動での敵弾回避。対処行動を最低限にして迅速に突破せんとするレテイシャは、シーリス共々その高度を一気に上昇。
やがて元の浮島さえも超えた高さへ至ったところで再反転、クランの仲間達の待つ浮島まで到達。着地を果たした二人を、安堵の声と共に迎えるのであった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『ドラゴンゾンビ』
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POW : グリムドラゴン
【霊鬼(グリム)のドラゴン】を召喚する。主に【霊属性ブレス】を駆使した戦闘や偵察を得意とするが、使役者への【忠誠心】が低いと暴走する。
SPD : ドラゴンゾンビテイル
【腐敗毒を帯びた尻尾】のスイングで近接範囲の敵全員にダメージを与え、100m吹き飛ばす。
WIZ : ドラゴンゾンビガス
【全身】から【毒ガス】を放ち、近接範囲内の全てを攻撃する。[毒ガス]は発動後もレベル分間残り、広がり続ける。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
危険な浮島エリアを猟兵達と共に踏破したクラン『ナイトウォーカーズ』の一同。やがて最深部のエリアまで到達すると、一歩踏み込んだ処に力強い咆哮が木霊する。
『Grrraaaaawooooooonn!!』
その咆哮の主は、全身が腐れ落ちた醜い様相を晒す竜、その屍。即ち『ドラゴンゾンビ』だ。
「って、何で此処にドラゴンゾンビが!?」
だがその姿を認めたミナセが驚いた声を上げる。何故ならこの屍竜、本来ならばこのクエストのボスではないためだ。どうやらバグプロトコルにより、本来のボスモンスターに置き換わる形で配置されたものらしい。
「しかもいつものヤツより強そう」
「って言うか床が穴ボコだらけにゃ」
敵の様相を見たイツキと、戦場を見回したリッツが其々に違和感を語る。本来フィールドに穴など開いていないし、敵も皆で力を合わせればある程度は楽に倒せる敵だった筈。これは一体。
「じゃが、此処まで来た以上はやるしか無かろうて」
大棍棒を担いだコトナが一歩進み出ながら言うに、他のクランメンバーも其々の言葉で同意を返す。どのみち、此処まで来たら後戻りはできないのだ。
「……そうね。どんなに強い敵であっても!」
これがゲームである以上、勝てる可能性は低くともゼロではない。そう信じ、ミナセは頷く。
「よし、行くよ皆!」
そして呼びかけるに応え、メンバー達はドラゴンゾンビへ向けて攻撃を開始する。ボス戦の始まりである。
だが猟兵達は知る。彼らだけの力では、確実にこの屍竜には勝利できぬと。全滅し、全員の|遺伝子番号《ジーンアカウント》が焼き払われてしまう結末を迎えるのだと。
故にこそ、助けてやらねばならぬ。彼らが倒されぬように。共に、この理不尽なるバグプロトコルへ立ち向かうのだ。
●
※ナイトウォーカーズの面々のうち、OP~第一章リプレイの何処かで名前が出た面子について簡単に纏めておきます。プレイングのご参考に。また、此処に出ていないメンバーも十数名います。
・ミナセ
外見20歳前後の黒髪女剣士風の女性。ナイトウォーカーズのクランマスターで、明るく気さくな性格。
ジョブは|聖剣士《グラファイトフェンサー》、二本の刀が武器。
・コトナ
外見20代半ばの、着物を羽織った長い黒髪の女性。古風な言葉遣いが特徴で、落ち着いた性格。
ジョブは|重戦士《ヘビーウェイト》、大きな棍棒が武器。
・リッツ
外見10代半ばの、猫娘風のアクセを装着した女性。猫っぽい言動でノリが軽い。
ジョブは|聖剣士《グラファイトフェンサー》、獣爪が武器。
・イツキ
外見10代前半の、小柄な体格で眼鏡をかけた女性。少々ぶっきらぼうな性格。
ジョブは|月穹士《アルテミスガンナー》、ライフルが武器。
・シーリス
外見10代前半のあどけない少年。大人しめの性格。
ジョブは魔術師系アタッカー、杖を持ち様々な攻撃系魔法スキルを扱います。
ファーラ・フォージマスター
ハハッ!その意気やよし!
とはいえ出発前に言ったことは覚えてるかな?キミらは御身を大事にするのだよ
つーワケで真正面からはうちが
その間にキミらで周囲から攻撃を加えるんだ、イイネ?
ま、そういうワケだ腐った同族(?)よ
ここはひとつがっぷり四つの怪獣大決戦といこうか……では見せてやろうかね。この【悪魔の鍛冶場の主】の真の姿をな!
(鎧を纏った赤き竜に変身、共に携えしハンマーも大きく)
では、いざ勝負ッ!
口から吐き出すドラゴンブレスで焼き払い、手にしたハンマーで叩き潰す。
配下の霊気竜を呼べるようだが、ソイツも纏めて焼き尽くし叩き潰してやろう!
ミノア・ラビリンスドラゴン
あら、ドラゴン族……でもえんがちょですわ~!
ドロップもドラゴン肉ではなく腐肉ですし、その上バグプロトコル?
いいトコなしですわね!
尾の一撃から皆様方を庇い、ドラゴン偃月刀でいなしますわ!
【拠点防御】の応用ですわね! でもくっせぇですわー!
あ゛……ドレスに腐汁がああああああ!! ド許しませんことよ!?!?!?
穴だらけの地形でもエリアボス故に落ちないのでしょうが、油断しましたわね!
わたくしのセットした落とし穴のトラップカードが紛れ込んでましてよ!(罠使い)
さらに尻尾を縛鎖と呪縛で雁字搦め! これぞわたくしの【罠だらけの迷宮】!
これで動きは封じましたわ! 皆様方、畳みかけておしまいなさい!
ネルコ・ネルネコネン
善を守り悪を討つため戦いを始めるといたしましょう。
毒を持つ邪竜が相手ならば罪なき方々を守るためにも毒への対処が必要でございますね。
祈りを捧げ【焼き尽くすは翠の宝玉】を発動することにいたしましょう。
邪悪のみを焼き尽くす翠の光で照らせば放たれた毒ガスを焼却・消毒し効力をなくすことも可能でございます。周囲に危害を巻く毒ガスさえなくなればクランの方々も安全に行動できますでしょう。
後は毒ガスを焼却したのと同じように敵本体も焼き尽くすといたしましょう。
ここが勝負所でございます。敵の反撃も襲ってくるでしょうがどんな事になっても決して祈りは止めません。守るためなら私は自身が傷つくことを厭いません!
通常よりも遥かに強大なボスを前にしても、戦意充分な『ナイトウォーカーズ』の面々。その意気や良し、とファーラ・フォージマスター(|悪魔の鍛冶場《デーモンズフォージ》の主・f41782)は笑う。とはいえ。
「皆、出発前に言ったことは覚えてるかな?」
確認めいて告げれば、面々の顔に浮かぶ緊張の色も濃くなる。即ち、此度のクエストでの死亡が齎すアカウントの不可逆的な異常の発生。その正確な意味は伝えずとも、其は何としても避けねばならぬという意志を齎すには充分だ。
「つーワケで、真正面からはうちが攻める。その間にキミらで周囲から攻撃を加えるんだ。イイネ?」
故に、ファーラのその指示にも異論なく従う。
「ええ、こんなえんがちょなドラゴン相手に正面戦闘なんて真っ平御免ですわ~!」
そしてミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)も同じく従う。寧ろ乗っかった、という方が適切かもしれない。
「あの、我々は正面から戦った方が良いのでは」
そんな彼女にネルコ・ネルネコネン(呪いを宿した聖者・f13583)からの突っ込みが入る。猟兵ならば簡単には倒されぬ以上、積極的に矢面に立つべきでは、と思われるが。
「とはいえ相手はドラゴン! 何処から致命的な攻撃が来るか分かったモンじゃありませんわ!」
然し続くミノアの言葉を聞けば、ネルコは考え直す。この竜娘はどうやら、正面以外に繰り出される脅威への対処を企図しているのでは、と。ならば、これ以上己が意見するのは野暮だろう、と結論付ける。
納得の上にて、得物たるメイスを構え。今にも襲いかからんとする屍竜を見据える。
「――では、戦いを始めるとしましょう」
善を守り悪を討つための戦いを。ネルコの宣言に応え、その場の全員が一斉に行動を開始する。
「やっぱ渡りにくい。ウザい」
「けどやってやれないコトは無いにゃ!」
フィールド一面に空いた穴。本来のボス戦フィールドには存在しない筈の其を躱しつつの行動に、イツキはぼやきつつもその位置取りに無駄は無く。更にリッツも応えながら床を馳せる辺り、この地形も彼女達にとって絶対的な脅威というわけではないようだ。であるならば。
『Grrrrraaaaaaawooooooooo!!』
何よりの脅威は、やはりドラゴンゾンビとなる。腐れ落ちた筈の喉から歪んだ咆哮が放たれると共に、その周囲に如何にも毒々しい暗緑色の煙が溢れ出す。猛毒を帯びたガスの散布攻撃。強烈な毒性は勿論、長時間その場に残り続ける性質が近接攻撃を困難とする、大変に面倒な性質の毒だ。
「天より来たれり尊き宝玉よ――」
故にネルコは祈る。共に在るクランの仲間達を、そして猟兵の仲間たるファーラやミノアの身を護る為に。
そんな祈りは、ユーベルコードとして形を持ち結実する。即ち、己の身の周りを高速旋回する宝玉。翠色に輝くその姿は神々しさを伴う。
そして見目だけではない。そこから放たれる翠の光線は、ドラゴンゾンビへと命中すると共にその身を同じ色の炎へ包み、更にその力を周囲へと広げてゆく。かの竜の身を護るかのように展開された暗緑の煙が、瞬く間に翠の炎に呑み込まれ、その存在を薄れさせる。
『Guwaaaaahhhhhh!?』
「これで毒ガスは脅威とはなりません。皆様、攻撃を!」
尚も祈りを続けながらネルコは皆へ呼びかける。己はこの炎とその元凶の制御を保つべく、祈りを続けねばならぬが故に、自ら率先して攻撃とはいかぬが。
「ええ、任せておいて!」
「打ち倒しに参るとするかの!」
応えたミナセとコトナ、そしてナイトウォーカーズの面々は、直ちに己らの持てる最大火力の攻撃を屍竜へと叩き込んでゆく。一撃一撃のダメージは膨大な体力に対し僅かなれど、重なれば確かな傷となる。
『Ghyaoooooooooo!!』
煩わしげに唸り叫ぶドラゴンゾンビ、その尾に力が籠められ、全力で振り抜かれんとする。其処から滴る腐敗毒に侵して腐り落とさんとばかりに。
その腰が捻られる予備動作が入ってから、尾が振り抜かれるまでの所要時間は実に一秒も無し。いずれ劣らぬ高レベルプレイヤーたるナイトウォーカーズの面々をして反応困難な速度の一撃は、到底回避できるものではなく――
「やらせは致しませんわ~!」
だが猟兵でもあるミノアの反応速度は超えられなかった。振り抜かれる強靭な尾の一撃は、彼女の構えた偃月刀に防がれ、その力を巧みに殺がれた上にて受け流される。そうなっては、最早回避動作で容易く回避できる程の速度にしかならぬ。滴る腐敗毒も、ミノアの身を侵す程には飛散せず――
「――くっせぇですわ~!!」
それでもプログラムできっちり表現された悪臭で苛むことはできたらしい。眉を顰めてその不快感を確と声に上げるミノア。そしてそれだけではない。
「あ゛……ドレスに腐汁がああああああ!?」
見れば、滴った毒液がミノアの纏う豪奢なドレスに汚らわしい色の染みを作っていた。お気に入りの一張羅を損ねられ、ミノアは怒りに身を震わせる。
「ド許しませんことよ! このド腐れドラゴンめぇぇぇぇぇぇ!!」
その怒りを叩き付けんばかり、偃月刀を振り回し屍竜に殴りかかるミノア。その猛攻は重く鋭く、確かな傷を屍竜の身へと刻み込んでゆく。
「ハハハ、良い怒りだね! これはうちも負けてはいられないかな!」
ミノアの戦いぶりを評したファーラは楽しげに笑うと、ドラゴンゾンビ――腐った同族、かもしれない存在へ視線を移す。ナイトウォーカーズの面々の攻撃も併せ、既に相当なダメージが叩き込まれている筈だが、己もクエストボスであるファーラは理解する。まだまだ、撃破には圧倒的なまでに足りぬ、と。
「ここはひとつ、がっぷり四つの怪獣大決戦といこうか――」
故に本気でいく。そう決意したファーラの身に変化。肉体の露出部位が鱗や強靭なる外皮で覆われだすと共に、その身が巨大化を開始する。
「――見せてやろうかね、この【|悪魔の鍛冶場の主《ミストレスオブデーモンズフォージ》】の真の姿をな!」
更には頭部も人間の女性のものから、明確なドラゴンのそれへと変異し。肉体が5m程にまで巨大化を果たすと共に、胴部を始め各部が鋼鉄めいた金属装甲に覆われてゆく。その素材、形状は途轍もない業物であることが容易に推察可能な程の代物。
そうして変異を果たしたファーラの姿は、強靭なる外皮と装甲に全身を鎧った二足歩行の赤きドラゴン、と言うべきもの。得物たる愛用のハンマーもまた、共に巨大化を果たしている。
『では、いざ勝負ッ!』
吼える声はエコーがかかるかの如く深い響きを伴う。以て、ドラゴンゾンビへと殴りかか――らんとするその前に。
徐に大きく息を吸いこんだファーラ、其を鍛冶場の炉の如き高熱の炎を帯びたブレスとして吐き出し放つ。狙いはドラゴンゾンビ――の頭上に浮かぶ霊体めいた竜だ。
其はドラゴンゾンビが呼び寄せし|霊鬼《グリム》の竜。上空から霊気のブレスを以て使役主を援護せんとしていたようだが、その前にファーラのブレスを浴びる羽目となり。
「そのまま、退いてくださいませ……!」
尚も祈りを続けるネルコの意志にて放たれた、翠の光線をもまともに受けて。浄化の炎にも包まれた霊気の身体は、瞬く間に悶え苦しむかの如くして消え去っていった。
『このまま殴りあいといこうじゃないか!』
その間に距離を詰めたファーラは巨鎚を振るい、屍肉の肉体を力強く打ち据える。その強烈なる攻撃力の前には、圧倒的なまでの打たれ強さを誇る|不死生物《アンデッド》の肉体も揺らがざるを得ない。
殴り飛ばそうとする攻撃の衝撃でよろめいたドラゴンゾンビ、急にその下半身が床に沈み込む。下半身だけが砕けたのか。否。
「引っ掛かりましたわね!」
得意げな顔で歓喜の声を上げるはミノア。実は彼女、ダンジョンボスとしての知識を活かし、フィールド上に幾つものトラップを敷設していたのだ。ドラゴンゾンビはあまり動かぬが故に罠にハマる姿は想定できなかったが、味方の攻撃で押し込まれることで罠にハマる可能性は確かにあった。
結果、ドラゴンゾンビの下半身は落とし穴の罠にハマリ込み。更には尻尾が縛鎖と呪縛とで雁字搦めとされ、先のように尾を振るう攻撃すら侭ならなくなってしまった。
「これで敵は暫し動けぬ筈……勝負どころでございます!」
罠にかかった屍竜の姿に、ネルコは仲間達へと呼びかける。敵の大技が実質全て封じられた状況は、プレイヤー達にとっては絶好の攻撃機会。このまま一気に削り倒さんと、全力攻撃を呼びかける。
勿論、罠から脱出したとて攻勢を緩める気は無い。尚も祈りを続け、翠の光線を浴びせ続ける。例え攻撃が己の身へ迫ろうと、祈りを止めるつもりは毛頭なし。味方を――ナイトウォーカーズの面々を守る為ならば、幾らでも傷を引き受けてみせると。確たる決意のもと、ネルコは祈りを続けてゆく――
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
岩社・サラ
アドリブ共闘歓迎
情報として聞いてはいましたが、こうも地面に穴を開けられると厄介ですね。
敵UCへの対処は準備ができているので、この地形への対処を優先しましょう。
UCで無機物を岩石に変換することで、穴を岩石で強引に埋めてしまいましょう。フィールド全ての穴を塞ぐことは出来なくても、一区画だけでも足場に気を配らずに戦うことが出来る場所を作り出せれば、私だけでなくナイトウォーカーズの方も戦いやすいでしょう。
敵のUCは正面から突破します。
この大剣、輝鉱は|毒液を吐く怪物《 バシュム 》を討つため作られた毒を払う剣です。
敵UCにより発生した毒ガスを切り払いながら進み鎧砕きの重たい一撃を食らわせましょう。
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
…屍の龍か
ならばやる事は屠るのみ!さぁ行くぞリッツ…私は…処刑人だッ!!!
地獄の炎纏い仮面を被り、毒耐性とオーラ防御の加護を得て真の姿の封印解除
地獄の炎纏う鉄塊剣と宝石大剣抜き振るいリッツと共に敵と戦おう
敵の尻尾の攻撃を心眼で見切りダッシュとジャンプで回避し隙をついて
【スキルクロス・モンストルム】を発動
怪物が如き力を発揮して二刀の大剣を振るい鎧無視攻撃で尻尾を引き裂き
鎧砕きと重量攻撃を叩き付けその身を粉砕
地獄の炎の属性攻撃で敵を継続ダメージで焼却し恐怖を与え屠ってやろう…!
…逃がすまいぞ!私は…処刑人だッ!!!
このようにかせぐんだ…わかったかなリッツ…?
ミア・ミュラー
ん、みんなで生きて、帰ろう。力を合わせればきっと、大丈夫。
まずは地形を何とか、しないと。誰か落ちちゃったら、大変。ここはシャボン玉の指輪で作ったシャボン玉で穴埋め、だよ。見た目より丈夫だから足場に、使ってね。
毒ガスは早めに対処したいけど、いつ使ってくるの、かな?みんなは戦ったことあるみたいだし、攻撃のタイミングを教えてもらって【風槍】を、使うよ。槍で取り囲んでぐるぐるして毒ガスを上に、飛ばしちゃおう。そのまま一斉に飛ばして怯ませたら、聖剣士のふたりに槍を、渡す。これで足場も関係ないし、もっと速くて強くなる、はず。これでぼこぼに、しちゃってね。ちょっと飛びすぎちゃうかもだけど大丈夫、たぶん。
『Grrrrwooooooooonn!!』
猟兵やナイトウォーカーズの者達の攻撃を受け、苦悶するかの如き呻きを上げるドラゴンゾンビ。なれどもその挙動にはこれといった衰えが見えず、未だ殲滅には遠いことを窺わせる。
「ならば、やることは屠るのみ!」
斃れるまで攻め続ける。その意志を以て屍竜を目指し踏み込む仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)。その身には紅き地獄の炎が纏われ、貌にはペストマスクにも似た仮面を被る。其はアンナの処刑人としての正装であり、真の姿の発露。
「さあ……行くぞ、リッツッ!」
「アタシをご指名にゃ!? いいけど!」
呼ばわるはナイトウォーカーズの一員、リッツ。徐に名を呼ばれ驚いた様子の彼女であるが、呼ぶならばと応え隣へ駆け寄ってくる。
「凄い強い敵にゃけど、アタシ達に倒せない道理なんて無しにゃ!」
気合十分と見える彼女に、アンナはその意気や良しと頷いて。左右の手へ得物を抜き構える。片や鋼鉄の処女を模せし鉄塊剣、片や血の如き真紅色に輝く宝石大剣。巨大かつ重厚なその二振りを、アンナは其々片手で構えて。
「――私は……処刑人だッ!!」
己のその役割を声として発するや否や、アンナの足は一気に加速。戦場たるフィールドに聳える巨体を目掛けて疾走する。リッツも、他のナイトウォーカーズのメンバー達も続いて駆けてゆく。
「随分とタフなボスだけど……皆で力を合わせて、倒しましょう!」
その戦闘を行くクランマスター、ミナセが仲間達に、そして並び立つ猟兵達へと呼びかける。二人の猟兵は共に頷き。
「ん、みんなで生きて、帰ろう」
「ええ、その為にこそ私達は来たのですから」
ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)が辿々しくも確と決意を示すと共に、岩社・サラ(岩石を操る傭兵・f31741)が変わらぬ冷静さで以て応える。応えつつも、戦場たるフィールドに視線を巡らせて。
「とはいえ、こうも地面に穴を開けられると厄介ですね」
「そうだね、誰か落ちちゃったら、大変」
二人が懸念するはまさにその一点。常には無い穴、落ちれば二重の意味での死を迎えることとなる代物。如何にかしてこの危険な地形状況を変えねば。
「――となれば」
「――そ、だね」
その為の解法は、奇しくも二人ともが類似の手段を持ち合わせていた。単純にして最もシンプルな解法。即ち。
「……おお?」
「おや、穴が塞がっておるではないか」
ナイトウォーカーズのメンバーたるイツキとコトナは、戦場に生じた変化を察し頷きあう。フィールドの至るところに空いていた穴という穴が、岩石群や無数のシャボン玉を詰め込まれて、以て落下不可能な状態へと為さしめられていたのだ。
「見た目より丈夫だから、足場に使って、ね」
シャボン玉の主はミア。その指に嵌めた指輪の魔力により呼び出したシャボン玉群は、見目に反してそこそこの耐久力を有する。人間大の存在が足場とするには充分な筈だ。
「これだけ穴を埋めてしまえば、戦闘中に落ちてしまうことはほぼ無いと言えるでしょう」
ユーベルコードを以て周辺無機物を岩と成して穴を埋めたサラ。己一人だけならば、ボス周辺の一区画に留めるつもりではあったが。奇しくも類似の対策を取ろうとしていたミアと協力することで、フィールド上の大半の区画の穴を埋めることに成功していた。
ならば後は敵を倒すだけだ。サラとミアがその意を示すと共にイツキとコトナもまた頷き。改めてボスへ挑みかかってゆく。
『Grrrrraooooooonn!!』
「おおおおおお!!」
一方の前線では、既にアンナが光線を開始していた。雄叫びと共に爪を振るうドラゴンゾンビに対し、右前方へと飛び込み地を転がることで回避。起き上がりざまに鉄塊剣を振り上げれば、その前脚に斬撃が刻まれる。
「気を付けるにゃ! コイツは背中に回り込むと面倒な攻撃をしてくるにゃ!」
一方、ドラゴンゾンビの左側面へと回り込んでいたリッツは警告の声を上げる。この敵、此方が背後に回り込むと、高威力かつ強烈な毒を伴う広範囲への尾撃を繰り出してくるのだという。故にドラゴンゾンビ戦は敵の側面から攻めるのがセオリー、とのことだが。
「良かろう! ならば其を凌ぎ押し返してくれよう!」
だがアンナは望む処とばかり応え。更に駆け出せば一気にドラゴンゾンビの後肢へと肉薄、此処にも一太刀を打ち込む。その勢いのまま、屍竜の背後まで走り抜ければ。
『Ghyaoooooooooo!!』
待ち構えていたかのようなドラゴンゾンビの雄叫びに続き、その腐肉と腐臭塗れの尾が大きく振れて。太い尾をしならせ、横薙ぎの猛烈な一撃がアンナ目掛け振り抜かれ――
「当たらん!!」
だがアンナは構わず疾走。回避を放棄したと見えるがさにあらず。疾走の勢いを乗せて跳躍、振るわれる尾を跳び越え躱す。そして、それだけではない。
「我が力を思い知れ……そして恐怖に震えるがいい……!」
着地と共にアンナが吼えれば、その双腕には更なる力が宿り。携えていた二つの大剣がより軽々と振るわれて、尾の付け根辺りを狙い叩き込まれる。斬撃の都度溢れ出す地獄の炎が、炎の追加ダメージを与え屍竜を苛む。
『Grrrrraaaaaaawooooooooo!!』
其に対する苛立ちを示すかの如く屍竜が吼えると共に、胴部の肉の隙間から溢れ出てくる暗緑色の煙。強烈な毒性を伴うガスを浴びせて、周りに在る敵を退けんとするが。
「今、だよ……! 穿ち、吹き荒べ!」
其処に届くミアの声。続いて飛来するのは、魔力にて形作られし風の槍。穂先の螺旋回転と石突のスクリュー回転とによってそれ自体も大気の流れを纏う槍が、屍竜の周囲を高速で旋回し始めた。伴って生ずる気流の流れは上方へと向けられ、屍竜から溢れ出す毒ガスを上空へと発散させてしまう。
「感謝します。これならば、確実に届く……!」
続いて屍竜へと肉薄を仕掛けんとするのはサラ。ミアの風槍へと跳び乗って高速接近を果たすと共に、両腕で担ぐように構えるは輝く鋼じみた見目の大剣。先のエンドブレイカー世界での戦の折、骸殻工房ガルシェンの巨人にバシュム対策として鍛えてもらった逸品だ。
肉薄と共に、刃を振り下ろす。如何に屍竜のガスの毒性が強いとて、かの怪物の如き世界を侵す毒という領域には至っていない。ならばこの剣で切れぬ道理は無し。確信を以て、唐竹に振り下ろせば。
『Gyaaaaaaaaahhhh!?』
苦悶の叫びと共に身をよじらせる。胸辺りを深く裂かれ、確かなダメージが入ったようだ。
「今が、チャンス。二人とも、それ使って、ね」
「この槍、かしら」
ならば追撃を仕掛けねば。ミアは風槍のうち数本を、ミナセとリッツ、他にもナイトウォーカーズ内の|聖剣士《グラファイトフェンサー》達のもとへと飛ばして渡す。
「それを使えば、もっと速く強くなれる、はず」
「おお、ホントにゃ! なんか速く動ける感じにゃ!」
ミアの請け負うに、リッツが興奮気味に声を上げる。その移動速度は常の倍近いとか。
「あ、でも。ちょっと、飛び過ぎちゃうかも、だけど」
其処にふと、懸念を漏らしたりもしたが。其が杞憂であると示すかの如く、|聖剣士《グラファイトフェンサー》達はその速度を十全に乗りこなし飛び回っていた。屍竜の周囲から猛烈な勢いで斬撃波を連射し、DPSにおける覇権ジョブの面目躍如とばかり凄まじいダメージを叩き出してゆく。
「リッツ……分かっているな……? このようにかせぐんだ……!」
ドラゴンゾンビ後方へと回り込んだリッツに、アンナの声が届く。膂力の限りに鉄塊と巨大宝石を振り回し、重量を乗せた斬撃に地獄の炎を以てのダメージ上乗せ。そのダメージ効率は成程、猟兵であるという事実を抜きにしても|聖剣士《グラファイトフェンサー》に匹敵する。
「勿論にゃ! つまりはこういうこと……にゃね!」
アンナの立ち回りを己なりに解釈したリッツ、風槍を構えて屍竜目掛けて突撃。螺旋回転する穂先が幾重もの斬撃波を纏い――屍竜の臀部へ突き刺すと同時に、其がドリルの如く一帯の肉を抉り削り、爆ぜ飛ばした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
レテイシャ・マグナカルタ
「へっ、ナイトウォーカーズの敵じゃねぇ、だろ?みんな」
支援系のメンバーからバフをもらって突撃。狙うのは本体じゃなくて霊鬼の方だ!
体を捻ってブレスを避けて周りこんで尻尾を掴んでUCで頭が上を向く体勢で振り回す!これなら皆がブレスに狙われ、万が一にも倒される危険はねぇはずだ!
「コトナ、合わせろ!」
霊鬼と棍棒のスイングで敵をぶったたいて穴に落とす(無理なら足だけでも落としてバランスを崩させる)
「いけ、イツキ、シーリス!」
たっぷり狙いを定めたライフルと、長い詠唱の大技魔法を叩きこんでもらい
「トドメだぜ、|ミナセ《クラマス》!」
霊鬼投げ捨て、ミナセの足を掴んで彼女の跳躍タイミングに合わせて全力で投げる
ギルフォード・アドレウス
よーしお前らぁ、生きてるな?
気張ってやんぞ
こーゆーのは気持ちで負けたら終わりだかんな?
さて、と。
奴さんはゾンビらしい。ゲームには明るくねぇが、炎属性や光属性が通りそうだな。
地面の穴凹には、凍結攻撃で足場形成して塞いじまおう。
これなら、落下によるデスは無くなる筈だ。
Primal Gearは光属性のレーザーで援護射撃しつつ|攻撃開始《UC発動》
あんま邪魔すんなよ?よーやく、楽しくなってきたんだからな
右手なら炎、左手なら氷。持ち手に応じて白刃の属性を変化。距離を取り、斬撃波中心の攻撃
尻尾を振って来る兆候が見えたら、パーティメンバーには警告する。俺は逆に肉薄して、氷の壁作ってフェイントしつつ、両手で|流して防ぐ《武器受け》
まあ、振って来たタイミングで白刃を上空に|投げといたから《ジャグリングの要領》両手は空いてるぞ、と
敵の足下に|炎《焼却》と|冷気《凍結攻撃》で属性攻撃。
(降って来た白刃をキャッチして、炎と冷気の斬撃波を十字に斬って…放つ)
斬り結ぶ!|エクリプス《日蝕》!
【アドリブ歓迎】
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
色々と厄介ですが、やってみましょう。
『FLS』の空間歪曲障壁と『FAS』の障壁を展開、『FPS』による探査で敵味方の動きを把握しますねぇ。
危機に陥った味方は『FIS』の転移で躱させるか、『FMS』のバリアを斜めに展開し受け流してガードしますぅ。
【霊鬼竜】が召喚されたら【斷瑗】を発動、多数の『環』を放ちますねぇ。
此方は【UC】の干渉や敵対者を[切断]するもの、召喚された個体には非常に有効な上、或る程度の範囲を纏めて庇うことも可能ですぅ。
後は『環』と『FRS』『FSS』の[砲撃]を合わせ、味方の保護を優先しつつ、ドラゴンゾンビ本体と【霊鬼竜】を纏めて[範囲攻撃]しますねぇ。
『Grrrrr……Gwoooooo……!』
激しい戦いの末、ボスたるドラゴンゾンビは甚大なダメージを受けるに至り。腐れたる喉から発される唸りは、力を振り絞らんとしているようにも見える。
「ま、まだ倒せにゃいの……!?」
「こんなタフなボスじゃなかったハズなのに……」
だがナイトウォーカーズの面々にも疲労の色が濃い。追い詰めはできても撃破に至れぬ状況へ、リッツは愕然と呻き、イツキは有り得ない程の耐久力の高さを訝しむ。
『Grrrrwwwaaaaaaaaaa!!』
だが思案する時間は無い。大きく息を吸いこんだドラゴンゾンビが、クラン一同の在る地点を目掛け毒のブレスを吐きかけてきたのだ。
回避を試みるメンバー達、だが疲労故にか反応には僅かながらに遅れが生じ、其が毒息を躱しきれぬ結果を招く。
「あ、ヤバ……」
事態を悟った時にはもう間に合わない。現状の消耗でこのブレスを浴びてしまったら、果たして耐えきれるかどうか――
「やらせはしませんよぉ」
聞こえてきたのは上空からの緩やかな声音。同時に展開された白く煌めく光の壁が、迫り来ていた毒煙を斜め上へと受け流してゆく。
驚くクランメンバー達。上空、声のする方を振り向けば、其処には豊満極まりなき肢体を和装に包んだ女性の姿。即ち夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)である。
「ご無事なようですねぇ。お手伝いに参りましたぁ」
此処までは陰ながらの救援に徹していたため、道中で救助した一人を除けば、ナイトウォーカーズとの顔合わせは初めてだ。故に、簡易的な挨拶を経て共闘を申し出る。
「有難いわね。後一歩で倒せそうな敵なんだけど、これがなかなか硬くて……」
申し出を受けるクランマスターのミナセもまた、その表情は硬い。此処まで打たれ強いボスなど知らぬ、という困惑混じりで。
「そんなら一層気張ってやるだけだろ」
此処までクランの者達と共に行動していたギルフォード・アドレウス(|終末機巧《エンド・オブ・マキナ》・f41395)はぶっきらぼうな物言いでミナセの語るを遮る。尤も、其処に悪意は無く。
「こーゆーのはアレだ、気持ちで負けたら終わりってヤツだかんな」
「おう、どんなに強い敵だからって――」
応えるレテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)、周囲の仲間達――此処まで共に冒険を繰り広げてきたクランの仲間達を見回し。
「俺達ナイトウォーカーズの敵じゃない――そうだろ、みんな?」
浮かべる笑みは信頼。此処まで来たクランの仲間達なら、此度の戦いにも確実に勝てるという確信。其は彼らにも伝わったか、表情に精彩を取り戻す者、意を決し頷く者と反応は様々ながら、確かな戦意が其処からは伝わってくる。
「おう、盛大にやってやろうじゃねぇか」
「色々と厄介ですが、やってみましょうかぁ」
ギルフォードとるこるもまた、己の言葉で応え。
「――そうね。倒せるまでは後一歩。後は押し切るだけ」
頷くミナセ、猟兵達とクランの皆を眺め渡して。
「――行きましょう、皆!」
呼びかけると共に、全員が動き出す。この強大なる|ボス《バグ》を打倒しクエストクリアへ至る為に。
「まずは足場を何とかしねぇとな!」
駆け出すクランメンバー達、その背後からギルフォードの声。直後、戦場の地面を冷気の流れが駆け抜けた。
見れば、フィールド随所に開いた穴の表面に、薄くも確かな強度を窺わせる床が形成されていた。成程、これならばビルより転落の恐れは無いか。
「足は止めさせて頂きますねぇ」
其処へるこるの声。戦場上空、バグの嵐に飲まれぬ程度の高度より展開した浮遊砲台群から熱線や炸裂弾が放たれ、屍竜の身を灼き穿つ。
「やっぱゾンビとなると、炎や光がよく効くんかね」
ボスの怯み具合を見て、ギルフォードはそう予測する。ゲームには其処まで詳しい訳ではない彼だが、アンデッド系のモンスターはそれらの力を嫌う傾向が強いという話はよく聞く。
「その通りにゃ。アイツは炎属性と光属性が弱点にゃ」
隣を駆けるリッツからも肯定の応え。ならば、とギルフォードが念を籠めれば、何処からか飛び出した数枚の歯車が宙を飛び、レーザーを撃ち放って屍竜へと牽制を仕掛ける。
光線を浴びた屍竜は、それ自体は有効打と言えずとも怯み動きを鈍らす。其処にギルフォードが白刃を抜刀、右手で以て振り抜けば、放たれるのは炎を纏う斬撃波。燃える斬閃が屍竜の腐った肉体を焼き焦がし、更なるダメージを刻んでゆく。
『Grrrrraaaaaaaoooooooooo!!』
上がる鳴き声も苦悶の色が濃い。ならば更なる追撃を、と、白刃を振るわんとして――
「と、危ねぇ! 跳べ!!」
だが徐に叫び跳ぶ。続いて呼びかけにクランメバーが応え飛んだ直後。その足元を、腐れたる竜の尾が薙ぎ払う。
『Gyaaaaoooooo!!』
続いて吼えるドラゴンゾンビ、その頭上によく似た、霊体で肉体を形作るドラゴンの姿が見える。しかも二体。|霊鬼《グリム》のドラゴンだ。
「ぬう、よもや配下を呼び寄せる術が使えたとはのう」
コトナが唸る。本来のドラゴンゾンビが使えぬ筈の技。現れ出た霊鬼竜はブレスを吐いて地上の猟兵達とナイトウォーカーズの面々を攻撃せんと――
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『天環の加護』をお与え下さいませ」
だが其処でるこるが動く。祈りを以て発動せしユーベルコードにて成る『環』を己の周囲にて旋回させ、霊鬼竜目掛け撃ち放ったのである。
『環』は鋭い刃めいた性質を合わせ持ち、撃ち込まれた霊鬼竜の身をズタズタに引き裂いてゆく。数百発もの『環』にて裂かれたその姿は、召喚主たる屍竜よりも無残な有様だ。
「っしゃ、一気に決めるぜ!」
其を見たレテイシャは翼を広げて飛翔、霊鬼竜目掛けて真っ直ぐに突撃。クランの仲間達から受けた|強化魔法《バフ》によってその身を煌めかせながら。
迎撃せんと霊鬼竜が放ったブレスは身の捻りでギリギリで躱し、そのまま交錯――した直後。二体のうちの片方の尾を掴み、猛烈な勢いで振り回し始めた!
「おおおおおらああああああああ!!」
魔力による肉体強化を最大限に発揮するレテイシャ、その腕力は巨大なドラゴンの肉体さえも振り回せる程。以て霊鬼竜を己の武器かの如く振り回し、もう一体の霊鬼竜へ叩きつけて双方を更に弱らせてゆく。
「コトナ! 合わせろ!」
「! 良かろう!」
掴んだ竜を大きく振り上げつつ、呼びかけるは和装の|重戦士《ヘビーウェイト》。その意図を察したコトナ、棍棒を振り上げて駆ける先は――既に虫の息と見えるもう一体の霊鬼竜。
跳躍、棍棒を振り上げる。レテイシャ、其が振り下ろされるに合わせて、自らが掴む霊鬼竜を振り下ろす。その先に在るのは、ドラゴンゾンビ本体!
『Gyaaaaaaaaooooooooooo!!?』
棍棒によって叩き落とされた竜と、怪力によって叩き付けられた竜。己の呼び寄せた竜を直接ぶつけられ、驚愕するかのように吠える屍竜。無論、これで終わりではない。
「今だ、イツキ、シーリス!」
呼びかけられた先には、銃を構えた|月穹士《アルテミスガンナー》と杖を掲げた魔術士の姿。
「ん、ずっと溜め続けてた甲斐がある。フルパワーの一発、喰らわせてやろう」
「こっちも詠唱完了……叩き込むよ!」
レテイシャが突撃をかけてより、ずっとチャージと詠唱を続けていた大技。普段はチャージと詠唱の長さ故に実用性の無い技だが、これだけ時間を稼いで貰えれば充分に使える。
そして解き放たれるそれらの技。撃ち出された黄金の光線と、上空より降り落ちてきた隕石とが、屍竜の身を貫き、押し潰し。更なるダメージを齎す。
「こっからが本番……いや、締めってところか。なら、俺も決めてやるとするか」
そんな攻勢を前として、ギルフォードもまた大技を仕掛けにゆく。徐に白刃を上空へ放り上げると、両の拳を腰だめに構えて力を溜める。|右の拳《日輪》には炎が溢れ、|左の拳《月輪》には冷気が纏われ。其々が力の密度をより高め――
「――凍てつき、燃え尽きろ!」
突き出すと同時、火炎と冷気とが同時に撃ち出され。屍竜の足から胴にかけてへ浴びせかけられる。凄まじい温度差を伴う氷炎の奔流が、腐敗した体組織を瞬く間に破壊し、竜の巨体を地へと崩れ落としめる。
「それでは、止めと参りましょうかぁ」
其処にるこるが祭器群による砲撃と『環』による斬撃を集中。翼が裂かれ、全身が熱線に貫かれ、爆撃によって打ち砕かれ。最早死に体と言って良い状態へと至らしめ。
「トドメだぜ、|ミナセ《クラマス》!」
「ええ……これで、終わりよ!」
跳躍するミナセ、その足を掴むレテイシャ。彼女の身を空中で一回転させ、その遠心力とレテイシャ自身の膂力を上乗せし――ドラゴンゾンビを目掛けて、投げ飛ばす!
「おう、こいつで終いとするか」
超高速で屍竜目掛けて飛翔するミナセ、其に合わせるかの如く、ギルフォードも構える。降り落ちてきた白刃を大上段に構えれば、迸るは炎と冷気の入り混じったエネルギー。
「――一閃!」
「斬り結ぶ! |エクリプス《日蝕》!」
ミナセが屍竜と交錯すると同時、渾身の抜刀斬撃を以て横薙ぎに両断。其に合わせ、ギルフォードは十字型に刃を振るい斬撃波を射出。
炎と冷気を共に帯びた斬閃が、十字を象り放たれて――屍竜を斬り裂き。
『Gyaaaaaaa……aaaa……aaa……――』
以て致命傷を受けたドラゴンゾンビは、最期に断末魔の悲鳴を上げながら崩れ落ち。そのまま、その場より消滅していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『ギルドで話そう』
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
見事にドラゴンゾンビの討伐を成し遂げたクラン『ナイトウォーカーズ』の面々と猟兵達は、街の冒険者ギルドへと帰還していた。出発時の面子誰一人とて欠けることのない、全員での凱旋である。
「皆さん、お疲れ様でした! 報酬は皆さんの|所持品一覧《インベントリ》に送られていますので、ご確認くださいね」
報酬となる|通貨《トリリオン》やアイテムの一覧を示しながら、ギルドの受付嬢が笑顔でプレイヤー達を労う。このような形で報酬が与えられるのも、オンラインゲームの世界ならではというところか。
「……あんだけ|難《ムズ》かったのに報酬いつも通りとか」
「あの難易度は正しくバグの産物、ということじゃのう」
「寧ろ、いつも通り貰えただけマシかもにゃ」
イツキとコトナ、それにリッツは、高難易度化に伴って報酬が豪華になることを期待していたらしく、落胆している様子であったが。
「改めて、皆、お疲れ様」
そうして報酬の受け取りを終えた一同を、クランマスターのミナセが労う。己らが知っているのとは全く別の、理不尽なまでの高難易度と化したクエスト。それでも完遂に至れたのは、ひとえに皆の――主に猟兵達の協力あってこそ、と。
それに続いて各々のメンバー達が互いを労いあうこと暫し。ひと段落したところでミナセが締めに入る。
「それじゃ、今日はここで解散。また、皆で何処かのクランクエストか何か行きましょうね」
全員が再びの集まる機会に前向きな応えを示しながら。クランの面々は解散し、|思い思いの行動《ソロプレイ》へ移っていった。
明日の仕事や学校に備えて早々にログアウトする者、店やプレイヤーバザーを覗きに行く者。また別のクエストを受ける者もいる。或いは、特に何をするでもなくその場で雑談を始める者も。
猟兵達も、グリモアベースへ帰還する前に、ギルドで思い思いの時間を過ごしていくと良いだろう。
※冒険者ギルドで過ごす日常章です。
※ナイトウォーカーズの面々や、ギルド内のNPCと会話するのが主な行動となります。
※ミナセ以下ナイトウォーカーズの名前のあるメンバーは皆ギルド内にいます。
※グリモア猟兵のウュルもいますので、絡んでやっても良いという方はプレイングにてご指名くださいませ。
ファーラ・フォージマスター
やー、皆して無事でよかったよかった!
他所から来てる皆さんもおつかれー
……ん?どうした
(なにやら【悪魔の鍛冶場】にて留守番対応中の配下エネミー・悪魔鍛冶師副長(筋肉質セクシー女悪魔)から連絡が
バグエネミーが湧いてきたとの事。リザードマン率いる配下らで対応しており、エリア内ではさながら『エネミー対エネミー』の様相を呈してるとか)
マぁジか!
わかった待ってな、暫くは保つしょ?土産持って帰っから楽しみにしつつ頑張れ!
しゃーない、ギルドん中か近場に飯屋あったっけ?たっぷりテイクアウトして帰ろっと
待ってやがれバグ共ぉ!はーっはっはっはー!
(蒸気魔導兵器アドベンチャーバイクに土産をたっぷり載せていざ帰還!)
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
一先ず、戦死者無しで解決出来たのは良かったですねぇ。
お疲れ様でしたぁ。
折角の時間ですし、この世界について色々と調べてみたいですが。
或る意味変わった能力を見せてしまいました分、話し易い状態でおりますと、厄介な質問をされそうですねぇ。
【豊饒宿霊】で[情報収集]を強化、ギルド職員の方に「ギルドの『書庫』」等が使えるか尋ねますぅ。
入れそうならば『書庫』に、難しければ同質の別所を尋ねて其方に向かい、強化した[情報収集]と『FPS』を利用し『冒険者として一般的な情報』を一通り把握しますねぇ。
場合により、今後『実在するスキルの亜種に見せかける』必要が出て来る可能性も考えられますので。
ミノア・ラビリンスドラゴン
もうちょっとこう、報酬に色を付けたり……バグもやっつけましたし……うぅ、なんでもございませんわぁ……(AIから嫌われる|没貴族《アークロイヤル》)
ドレスの修理代(めちゃくちゃ高級品)で差し引き赤字ですわねぇ……
しょんぼりとぼとぼしていたらナイトウォーカーズの方々と出会いますわ
ごきげんよう皆様方! 色々とアクシデントがございましたが、ご無事で何よりですわー!
あら、これは……対空兵器の|残骸《ドロップ品》?
そういえばほったらかしでしたわね
お譲りいただける? 修理費の足しに?
まあまあ! ありがとうございますわ!
嵩張るのに価値の低い鉄屑を大量に持ち込んで商店NPCから嫌われる|没貴族《アークロイヤル》
「やー、皆して無事でよかったよかった!」
「戦死者無しで解決できて何よりですぅ」
解散直後のギルドにて、クランマスターのミナセをはじめとするナイトウォーカーズの面々へファーラ・フォージマスター(|悪魔の鍛冶場《デーモンズフォージ》の主・f41782)が鷹揚な声をかける。後に続く夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)もまた、微笑と共に全員無事にクエストクリアへ至れたことを喜ぶ。
「本当にね……なんだか今までにないぐらい強いボスだったし。これもあなた達の協力のおかげよ。ありがとうね」
ミナセは実感を込めて頷く。|遺伝子番号《ジーンアカウント》焼失の件は誰も話さなかったものの、アカウントの異常が発生することはファーラが話していたため、そのような事態が発生してしまうことをクランマスターとして危惧していた様子。
「偶々のご縁ではありましたが、お力になれていたなら幸いですぅ」
「うちとしても仕事ではあったからね。此方こそ、協力ありがとうね」
謝辞に対し、るこるはあくまでも謙虚な応えを見せ、ファーラは寧ろ己が感謝する側と返す。と、そこに。
「もうちょっと何かございませんの!? 折角あんな強いボスを倒してきましたのに!!」
受付の方から聞こえてきた悲痛な叫び声。振り向いてみれば、受付嬢相手にミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)が何やらゴネていた。如何に此度は猟兵としての任務とはいえ、流石に経費ぐらいはペイしたいという処か。
「本クエストに報酬の増減要件は設定されておりません」
なれど、対する受付嬢は事務的に答えるのみ。表情もまた徹底的な無表情――否、その視線には確たる感情が籠っていた。
「こう、報酬に色をつけたりとかありませんの……? 折角バグもやっつけ――」
どうにか増額を引き出さんとゴネ続けるミノアだが、向けられた視線の鋭さに気付けば徐々に尻すぼみとなっていってしまう。
視線に宿る感情、其は即ち敵意。|没貴族《アークロイヤル》でもあるミノアは、ただでさえNPC――この世界の住民たるAI人間達に嫌われやすい性質を持つ。その上でこのような行いをすれば、彼らから敵視されるも致し方なし、であった。
「うぅ、なんでもございませんわぁ……」
最早取り付く島も無し、と悟り、すごすごと引き下がらざるを得なかったミノア。戦闘で汚れ破けたドレスの修繕費用――元々が恐ろしい程の高級品故に大変高額――を差し引けば此度は赤字、としょぼくれていた処で。
「――あ! ごきげんよう皆様方!」
己の存在に気付いていた一同を見つけ、ぱぁっと明るい笑みを浮かべ。手を振り挨拶しながら歩み寄る。
「ご無事で何よりですわー!」
「ミノアさんも手伝ってくれてありがとう。……やっぱりお金足りないのね?」
対するミナセは微笑と共に謝辞を述べるも、やはり今のやり取りは気になっていた様子で。
「え!? え、ええ……ちょーっと、こう、足が出てしまったといいますか……」
思わぬ指摘にミノア、驚きの後で視線を逸らす。令嬢としてのプライドと言うべきか、素直に認めるのはなかなか抵抗があるらしい。
「おや、それなら。うちの鉱山の資源を少し融通しよっか?」
「え!? よ、よろしいんですの!?」
然し其を察したファーラが出してきた提案には全力で食いついた。プライドで腹は膨れぬのである。
「なぁに大丈夫さ、少しくらいなら――っと、ちょっとタンマ」
鷹揚に応じようとしたファーラだったが、其処で一旦話を打ち切り。空間に手を翳せば、其処に開いたウィンドウに女性型悪魔の姿が浮かび上がる。会話を打ち切ったのは、彼女からの緊急連絡があったためだ。
「どうしたー? うちの留守中なんかあったか?」
彼女はファーラが|悪魔の鍛冶場《己の持ち場》を離れる際の留守を預かる悪魔鍛冶師の副長。プレイヤーから見れば、かのダンジョンの中ボス的な存在である。筋肉質な体格ながら女性的な色気も確と備えた彼女に対し、ファーラが用件を尋ねると。
『それは勿論緊急事態ですよ! 鉱山からバグエネミーが湧き出てきたんです!』
「マぁジか!」
副長曰く、鉱山の奥まったエリアからバグエネミーが発生し、都跡の方面へと侵攻中なのだという。直後にもう一つ開いたウィンドウには、スケルトンやゴーストの系統のモンスター――本来このダンジョンに存在しないエネミーと、小隊長格のエネミーであるリザードマン達に率いられた配下モンスター達が交戦する映像が映し出される。その様、さながらエネミー対エネミーというべき様相。普段のゴッドゲームオンラインでは有り得ない光景だ。
『今の所戦況は拮抗していますが、押し返すにはやはりファーラ様がいらっしゃらないと――』
「わかった、そんなら暫く待ってな!」
至急の帰還を求める副長に、ファーラはしかし、暫く待てと告げる。何故かと言えば。
「土産持って帰っから、楽しみにしつつ頑張れ!」
との答え。何か言いたげな副長だったが、その前にファーラが通信を打ち切ってしまった。まさかの事態に驚くミナセとギルド内に残るナイトウォーカーズの面々だが。
「というわけで皆! この辺で美味い飯屋があったら教えてよろしく!」
「へ!?」
続いてファーラが尋ねてきた内容ときては、一同唖然とせざるを得なかった模様。それより早く戻ってやった方が良いんでは、と思っていたかもしれない。
「あー……大通りの肉屋の串焼き肉とか美味しかった覚えがあるにゃ」
それでも質問には素直に答えるリッツ。他にも幾つかギルド周辺の美味い店情報の提供を受けたファーラは満足げに笑い。
「サンキュー皆の衆! じゃあ其処でたっぷりテイクアウトして帰るとするか!」
るこるとミノア、ナイトウォーカーズの面々へ簡単に別れの挨拶をすると、颯爽とギルドを飛び出し。呼び寄せた蒸気魔導機関搭載の大型バイクへと跨る。
「待ってやがれバグ共ぉ! はーっはっはっはー!」
ギルド内にまで聞こえる高らかな笑い声を残し、己の本拠へ――帰る前に土産の飯を買い込みに――走り去ってゆくのであった。
「……………」
ミノアは只、呆然と其を見送ることしかできなかった。折角の申し出だったが、これでは立ち消えと判断するより他になさそうだ。即ち己の素寒貧生活はまだまだ続く、と肩を落とすミノアだが。
「……あ……あれは?」
其処で気付く。ミナセとコトナの背後に積み上がった、鉄屑やガラクタの類を。
「え、これ? 今回の戦利品の余りよ」
「売り払っても二束三文にしかならぬ故、どう処分したものかと考えておってな」
曰く、探索の過程で破壊した対空兵器の残骸や、倒したモンスターのドロップ品とのこと。各種生産コンテンツで使えるものは必要としているメンバーに分配したが、使い道のないこれらをどうしたものか、と考えていたらしいが。
「……良かったら、ミノアさん持っていく?」
「え、良いんですの!?」
ふと思いついたようにミナセがそんな提案を口にすると、ミノアが表情を輝かせて食いついてきた。
「二束三文とはいえ金にはなろう。ドレスの修繕費の足しにするが良い」
コトナが補足めいて告げるに、ミノアは感激したかのように両手を合わせて「まあまあまあ!」と声を上げ。
「ありがとうございますわ! では遠慮なく頂戴して参りますわね!」
二人への謝辞もそこそこにそれらガラクタ群を抱え上げ、意気揚々とギルドを後にしていった。
……尚、これらの残骸は大変に嵩張るにも関わらず大した価値が無い。無事換金はできたものの、ミノアは正しく二束三文の金と引き換えに商店のNPCのヘイトを買う結果になったとか。
そんな一連のやり取りの間に、るこるはそっとクランの輪を離れていた。現状のまま話しやすい状態でいると、厄介な質問をされかねぬ、と判じたが為だ。
るこるを始め、異世界出身の猟兵達の戦闘技能は、当然だがゲームの仕様によらないものだ。そんな力を持つことが知れれば、無用の混乱を招きかねぬ。
(何とか誤魔化す手段を考えておきませんとねぇ……)
その為には、この|世界《ゲーム》のことをもっとよく知る必要がある。そう判じたるこるが取った行動は。
「此処ですねぇ」
ギルドを出て暫く歩いた先、聳える立派な建物。其は即ち図書館である。
最初はギルドの書庫の閲覧許可を求めたるこるだが、その許可は得られず。代わりに情報を得られる場所として教えて貰ったのが、この図書館だ。
早速中へ入り、祭器による解析を併用して目的の書が収められた区域へと向かう。其処は冒険者として活動するに必要な情報が一通り集められた区域。その知識を把握しておけば、一般のプレイヤーを装うことは充分可能な筈だ。
収められた書へと目を通し、或いは祭器で情報を解析し。一通りの知識を頭に叩き込んでゆくるこる。その中で知ったのは。
「……この世界のスキルって、私達の使う技能に似ているものが多いんですねぇ?」
形は多少異なるが、他の世界の猟兵が行使する技能と酷似したものが過不足なく存在している。キャバリアに搭乗しての戦闘にすら対応しているのだから、この世界の多様ぶり、或いは混沌ぶりが分かろうというものである。
また、るこるの普段の戦闘手段に似た戦い方をするジョブもまた存在していることが分かった。これなら特段の偽装をせずとも、怪しまれる可能性は薄そうである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
終わったね…
……せっかくだから…この世界でどんなものが売っているのかお店を覘いてみようかな…
店やバザーを覘きにいったクランの人達の後をついて行こう
いろんな品物を見て回り、いろんな物を見て回ろう…
武器とか防具とか…道具のような物…あとは…何だろう…これは?見たことがないものもある…
よくわからない物があったらクランの人に質問してみよう…
……そうなんだ…そういうものもあるのか…
…お腹が空いたね……ここって食べ物とかあるのかな…?
どこか食べれる所を探そうかな…
ギルドのある通りから一本表へ出ると、其処は街のメインストリート。様々な店が立ち並び、また通り沿いにはバザーを開くプレイヤー達の姿も多く見られる。
「……で、お前は何でオレ達についてきてんの?」
其方へ向かって歩いてゆくナイトウォーカーズのメンバーの一人、小柄な少年風のプレイヤーは、後からついて来る仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)に怪訝そうな表情を見せる。いつの間にか彼女がついて来ていたことに今気づいた処らしい。
「……折角だから、どんなものが売っているのか覗きに行こう、と思って……」
戦闘時とは打って変わって茫洋とした様子で、アンナは応える。この世界の店が扱っている品物に興味を持ったようだ。
「ああ、もしかしてこのエリアに来るのは初めてだったりするか?」
少年と共に歩いていたメンバー、大柄で筋肉質な男性プレイヤーは一度首を傾げたものの、ややあって納得したように頷く。どうやらアンナのことを「これまで別のエリアでのみ活動していたプレイヤー」と認識しているらしい。ゴッドゲームオンラインの世界は広大なので、そういうことも有り得るようだ。
男性の確認にアンナは頷く。実際はこの世界自体初めてなのだが、「このエリア」に来るのが初めてなのも確かだ。
「そういうコトなら色々見て行こうぜ。案内してやるよ」
其を見て取った少年の申し出に、アンナは再度頷き。そうして三人はメインストリートへと出ていった。
最初に入ったのは武器屋である。置かれているのは剣や槍、斧といった、アックス&ウィザーズ辺りで見られる武器が主だ。
「あ、銃もある」
その中に紛れて置かれている銃を見て、アンナは物珍しげに瞳を瞬かせる。意匠はエンドブレイカー世界の紫煙銃に近いだろうか、それにしても他の武器に紛れて置かれているのは目を惹くところである。
「|月穹士《アルテミスガンナー》用だな。弓より一発は軽いけど攻撃速度は速い。手数を重視する奴向けだ」
男性の解説もそこそこに、アンナは店内を見回す。武器は戦闘の必需品であるのに、妙にプレイヤーの姿が少ないような。
「まあ武器屋の世話になるのは、だいたい本命の武器までの繋ぎが欲しい時だからな」
アンナの疑問を受けた少年曰く、クエストやエネミーのドロップで手に入るレアな武器の方が性能が良いので、大体のプレイヤーは其方を使うため、だそうだ。
続いて入ったのは防具屋。此方はそれなりにプレイヤーの姿も見られる。
「性能の良い防具はどれも激レアだし、店で買える防具だけで装備固めても割と戦えるしな」
その理由を語る少年の視線が、店の片隅に向いているのにアンナは気付く。その視線の先を見ると――
「――ああいうのも?」
其処にあったのは、殆ど紐と言って良いレベルの大胆極まりない水着である。女性キャラクターが着用したら大変けしからん光景が現出することは想像に難くない。
「……あれはどっちかって言うと見た目重視のヤツだな」
曰く、あの手の防具で性能も両立しているのはイベント配布品に限られるそうな。
その次に入った道具屋は、更に多くのプレイヤーで賑わっていた。曰く、回復アイテム等の消耗品を扱っているので需要が多いのだとか。
「……あれは?」
店内を見回すアンナ、その一角に置かれた怪しい袋の山に気付く。何やら腐臭めいた気配さえ漂わすそれは何かと言えば。
「ああ、そいつは腐肉だな。此処のギルドで受けられるクエストで使うヤツだ」
クリアまでに相応の数が必要になるので、いつぞやのバージョンアップ以降ここで取り扱うようになったらしい。
「……そういうのもあるのか……」
腐った肉にそういう価値がつくのもゲームの世界ならではか。興味深げに頷くアンナであったとか。
道具屋を出たアンナ、其処で徐に腹の虫が鳴るのに気付いた。一仕事終えた後ということで腹が減っていたらしい。
「お腹が空いたね……此処って、食べ物とかあるのかな……?」
ゲームの世界に食事が可能な場所などあるのだろうか。そんな心配を抱くアンナであったが。
「ああ、それならあっちの通りに色々飯屋があるぜ」
「此処は肉が美味いんだよな、良かったら一緒に行こうぜ」
クランメンバー達の応えは、その心配を払拭するものであった。曰く、現実では得られない食の楽しみをゲーム内では得られるのだとか。
「それは食べてみたい……一緒に行こう……」
伴う誘いに頷き応え。食べる楽しみを存分に味わうべく、アンナとクランメンバーの男性達は飲食店の集まる通りへと足を向けた。
大成功
🔵🔵🔵
岩社・サラ
SPD
アドリブ等歓迎
作戦は無事に終了しましたね。
報酬のトリリオンというものがどれ程の貨幣価値があるのかはわかりませんが、もらえるものであればもらっておきましょう。
まだ少し時間もあるようですので、ナイトウォーカーズの方とお話をしていこうかと思います。
気になる話題というと、私としてはやはり武器についてですね。
ゲームの中という世界を訪れるのは初めてですし、どういった性能の武器が流行っているのかという話や武器の入手方法なども聞いてみたいです。
ナイトウォーカーズのみなさんも多種多様な武器を持っているようですし、それぞれがどういった性能や効果を持っているのかといった話を聞いてみるのも良いかもしれませんね。
ミア・ミュラー
ん、みんな無事に帰れて、よかった。クエストはばっちり大成功、だね。
報酬はお金だけじゃなくてアイテムも、あるんだね。珍しくて見てるだけでも、面白い。
そうだ、ミナセさんに改めてお礼を言っておこう、かな。クランに入れてくれたことと、一緒にバグと戦って、くれたこと。流れでいきなり風槍を渡しちゃったけど、信じて使ってくれて、ありがとう。
それから、せっかくだからこのクランのことをいろいろ、知りたいな。どうやって名前を付けたのか、みんなでどんな冒険をしてきたのか、とか。ん、こうして楽しく過ごせる場所があるのはとってもいいこと、だね。それを守ることができて、よかった。
クエスト完遂報酬の|通貨《トリリオン》は、クエストに参加していた猟兵にも勿論払われている。電子通貨という形で支払われた其の金額を確かめ、岩社・サラ(岩石を操る傭兵・f31741)はふむ、と思案顔。
(このトリリオン、どれ程の貨幣価値のあるものなのでしょうか)
傭兵という職業柄、報酬として得られた通貨の価値は己の仕事の評価基準として気になるのかもしれない。ことゴッドゲームオンラインは元がゲームの世界という性質上、他の世界とそもそもの経済観念が異なるのもあり、金銭の価値には独特なものがありそうではある。
「こんなアイテムも、報酬で貰えるんだ、ね」
一方ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)は、報酬として獲得したアイテムに興味を示していた。見る角度によって色彩を変える鉱石や、とても細いのに伸縮性が高く丈夫そうな糸の束など、だ。
「それはどのようなアイテムなのでしょうか?」
「んー、わかんない。けど、珍しくて見てるだけでも、面白い」
サラが問うに対し、ミアはそんな答えを返す。新しい世界で見つけた初めて見るものに対し、大いに興味を示している様子。
そういえば、己も報酬アイテムは幾つか貰っていた、とサラは思い出す。ミアのものと同様、用途の分からないアイテムばかりではあるが、あれらの中に高い価値のある品があるのだろうか。
(まあ、貰えるものであるなら貰っておきましょう)
とはいえ、現状ではあまり深く考えるべきことではないのかもしれない。一先ず納得し端末を閉じ、辺りを見回すと。
「と、あちらにミナセさん達がいますね」
「ん、そうだ。お礼言っておかないと」
ホールの一角で談笑している、ミナセ達ナイトウォーカーズの面々の姿が見えた。サラの呟くのにミアも気付けば、お礼を言いたいという彼女と二人でクランの皆の元へと歩み寄ってゆく。
「皆さん、改めてお疲れ様でした」
「みんなお疲れ様。無事に帰れて、よかった」
「ああ、サラさんにミアさん。お疲れ様です」
「お疲れ様じゃ。お主らのおかげで随分と助けられたぞ」
「おつー。二人とも強かったものねー」
「お疲れにゃー☆ ボス戦で穴塞いでくれたのも有難かったにゃ」
挨拶をすれば、ミナセに続いてコトナ、イツキ、リッツをはじめとしたクランメンバー達が次々に挨拶を返す。先のクエスト内での活躍を思い返し、其を讃える声も聞かれる。
「皆さんの力になれたのであれば何よりです」
謙虚に応えるサラ、一方ミアは一歩前に出ると、ぺこりと軽く一礼し。
「わたしの方こそ、ありがとう、ね」
礼を述べるは、このクランに入れてくれたこと、共にバグプロトコルと戦ってくれたこと。それに。
「流れで、いきなり風槍を渡しちゃったけど……信じて使ってくれた、ことも」
ドラゴンゾンビとの戦いの中、自身のユーベルコードで生み出した風槍を用いた連携は完全な即興。何の説明もできなかった状況下で、即座に応えてくれたことにも礼を述べる。
「ふふ、其処は当然じゃない」
なれどミナセは当然と笑ってみせる。何故かといえば――
「ミアもサラも、もうアタシ達の立派な仲間にゃのだからにゃ!」
横からリッツが割り込んで答えてしまった。台詞を取られたミナセの憤慨も含めて場に笑いが起こる中、ミアは安堵するように、サラは満更でもなさげに微笑んでいたとか。
「あ、そうだ。折角だし、聞きたいことあるんだけど、いいかな」
一頻り笑いが落ち着いたところで、ミアが話題を切り出す。この機会に、クランのことを色々知りたい、と。
「このクラン、どうやって名前を付けたのかな……とか」
クランの名の由来について問われると、ミナセは「ああ、それなら」と間を置かず応え。
「うちのクラン、立ち上げた頃は私含めて割と夜遅い時間に活動する人が多くてね。それで|夜の徘徊者《ナイトウォーカーズ》って名前が思いついたのよ」
とはいえ、今は昼間~夕方から活動しているメンバーもそれなりにいるとの事。因みにこの時点で現実世界は深夜0時を回っている。
「それと……これまで、皆がどんな冒険をしてきたのか……も、聞きたいな」
「それは私も興味ありますね」
続いての問いにはサラも乗ってきた。ただ、彼女の場合は正確には。
「皆さんが持っている武器の入手方法などにも興味ある処ですし」
新しい武器の収集や鑑賞を趣味とする身として、新たに訪れた世界の武器に興味を示したから、という点が大きいようだ。
「これまでの冒険――流石に全て語り尽くすには時間が足りぬのう」
「思いつく限りイロイロ話しちゃえば良いにゃ!」
曰く、ナイトウォーカーズは設立から大体3年程活動しており、その間に様々なダンジョンを探索しクエストを攻略してきたという。
その過程で、うっかり作動させたトラップによってクランメンバーの8割が途中離脱を余儀なくされた話とか、道の入り組んだジャングルのエリアでメンバーの悉くが迷子になったとかの失敗談や。
今回のドラゴンゾンビほどではないが強力なボスに全滅させられそうになりつつも、残ったリッツの決死の攻撃でボスを倒した武勇伝や。尚、この話が出た時リッツは清々しいまでのドヤ顔であった。
ボスドロップを巡っての他クランとの争いや、ある街の裏通りで特殊なプレイスタイルのプレイヤーの集まりに引き込まれかける対人トラブルまで、様々な冒険の思い出が飛び出した。
「今のリッツの話に出たボスからドロップしたのが、今の妾の武器じゃな」
コトナが掲げたその武器は、表面が無数のスパイクめいた棘に覆われた金属の棍棒。鬼の棍棒という雰囲気もある代物だ。因みに、現状第一線で有用な武器は大体ボスからのドロップのため、それらの武器を求めるプレイヤーが日々ダンジョンへ探索に赴いているのだとか。
「重量が凄まじく重いが、装備重量に比例した攻撃力と吹き飛ばし力の上乗せ効果があるのが魅力での。|重戦士《ヘビーウェイト》なら装備重量のペナルティを無視して恩恵だけ得られる故、相性抜群なのじゃ」
「なるほど、打撃武器となればウェイトがそのまま力となるというのは理に適っている話ですね」
コトナの掲げるその金棒を興味深げに眺めるサラ。見た目からはそのような性能があるとはわかりにくい、というのもこの世界の武器の特徴かもしれない。
「まーDPS職は現状|聖騎士《グラファイトフェンサー》の独壇場だから、流行はそれ用の軽い剣や刀なんだけどね」
何処か顰め面でイツキが呟く。より軽くてより攻撃力と攻撃速度の高い武器、がやはり随一の流行なのだとか。防御は回避テクニックで補って攻撃一辺倒、という戦闘スタイルを志向するプレイヤーが多いのだという。
「リッツみたいに爪に拘ってるプレイヤーもそれなりにいるけど」
「そりゃー猫キャラとしては妥協はできんにゃ!」
多少の攻撃力の不足には目を瞑り、爪系武器を装備して猫の手風のデザインアクセを装着し使っているのだという。
「基本的には攻撃性能を最重視、しかしデザインに拘るスタイルも無くはない、という処のようですね」
そう結論づけるサラ。その後も冒険やアイテムを巡る話は続き。
(こうして楽しく過ごせる場所があるのは、とってもいいこと、だね)
其々の話題について語るクランメンバーは、皆とても楽しそうな表情や声音で語りあっている。心底、この|世界《ゲーム》を楽しんでいると判る様相だ。
それを守ることができてよかった、と。心より思うミアであったとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ギルフォード・アドレウス
…………んで、実際幾ら貰ったんだ??どんなアイテムドロップしたんだろうな??
(インベントリ確認中)
(此処についてはまっっったく知らねぇから、街の情勢でも聞いとこうかね)
…あーそうだ、ミナセ。ほれっ(拳を突き出し、フィストバンプの姿勢)
決まってたぜ、最後の一閃。
ん?俺? 俺のはあれだよ、思い付き思い付き
(ミナセには皮肉屋で取っつき辛い方が本来の性格だと薄々気付かれていたらしく)
…バレてんのなら世話ねぇな。
まぁ、目覚めが悪い結果になると気分が悪いから手ぇ貸しただけ、だよ。
クラン?組む気はねぇよ。今も、これからもな。
俺は一人の方が性に合ってる
もう、会うことはねぇと思うが他の奴にも宜しく言っといてくれ。
?!?!?!
(後ろからリッツにギュ~って抱き締められ、頭ぐりぐり〜ってされる)
あ!!馬鹿、止めろ!くっつくな!離れろ!!!
(結局ミナセに剥がして貰った。条件として今度、剣を教えて欲しいと約束を付けられたが)
【アドリブ歓迎】
「……こりゃどの程度の稼ぎなんだろうな」
インベントリに送られたクエスト達成報酬、並んだアイテムの一覧を睨みながらギルフォード・アドレウス(|終末機巧《エンド・オブ・マキナ》・f41395)は唸る。未だこの世界に訪れて間もない身としては、各々のアイテムの価値というものはよく分からない。
と、そこに。
「うーん、まあ悪くないんじゃないかしら?」
背後から声をかけてきたのはクランマスターのミナセ。曰く、本命たるレアアイテムは無いが、そこそこ性能の良い装備品やデザインが人気のアクセサリー等がある、とのこと。不要なら、バザーなりで売ればそれなりの金額にはなるという。
「クランクエストだから報酬自体も多い方のハズだし、稼ぎとしては結構良いんじゃないかしら」
「なるほどなぁ……と、そうだ」
割とベテランらしいミナセが言うならそうなのだろう。納得げに頷くギルフォード、ふと思い立ち。
「ミナセ、ほれっ」
彼女へ向けて、軽く拳を突き出してみせる。その意図を理解するのに少々時間を要したか、数瞬不思議そうな表情をしたミナセだが、やがて意図に気付けば。
「ん、お疲れ様よ」
自らも拳を突き出し、ギルフォードのそれと押し合わせフィストバンプ。遅れ馳せながらの先の戦いの労いであった。
「決まってたぜ、最後の一閃」
話題に挙げるは、ボスへのトドメとなった渾身の斬撃。高速で賭け抜けながらの一撃は、成程決め技として申し分なしと言えようか。
「あれはまあ、クランの皆がお膳立てしてくれたしね」
そうでもなければ、あんな隙の大きい攻撃は早々狙えるものではない、とミナセ。それより、と続けて語るのは。
「ギルフォードさんこそ、凄い派手な決め技使ってたじゃない。あんな技初めて見たわ」
どうやらギルフォードが最後に繰り出した斬撃のことを指しているらしい。どうやって使ったのかと興味深そうなミナセだが。
「俺のか? あれは思いつきだよ、只の思いつき」
流石にこの|世界《ゲーム》の|仕様《システム》で再現する手段は分からないので、曖昧に応えるに留まった。
その後も先のクエストの感想や最近の街の情勢などを語りあっていた二人だが、ふと。
「そういえば。……こう言うと、気分を害しちゃうかもしれないのだけど」
不意に、ミナセがその表情を引き締めギルフォードに問う。何かといえば。
「……ギルフォードさん、あんまりこういう人付き合いとか好きじゃなかったりする?」
曰く、本来は斜に構えた皮肉屋なのではないか、と、これまでの言動を見て思ったらしい。クランマスターとして、メンバー達の実際的な性格は把握しておいた方が良いという意図での質問とのこと。
「……バレてんのなら世話ねぇな」
指摘に対し、バツが悪そうに頭を掻くギルフォード。一応、己なりに取り繕っていたつもりはあったのだが、と。
「……まぁ、目覚めが悪い結果になると気分が悪いから手ぇ貸しただけ、だよ」
軽く一息のあと、それまで以上の――本来のぶっきらぼうな口調で語りだす。あの浮遊群島にバグが発生していたのは知っていたので、万一を考えクランへの一時参加という手段を取ったのだ、と。
「ということは、クランからは抜けちゃうのね」
「ああ、組む気はねぇよ。今も、これからもな」
確認めいたミナセの問いにも素気無く。己は一人の方が性に合うから、と。告げるとその場から立ち上がって。
「そういうわけで、もう会うことはねぇと思うが。他の奴らにも――」
これが今生の別れである。そんなつもりで別れを告げようとした、その時。
「ギーールーーさーーーーん! 見つけたにゃー!!」
突如背中にぶつかってきた、女性の声と、押し付けられる柔らかい感触。
「――!!?!?!?」
そして頬に摺り寄せられるぷにぷにとした感触。あまりにも唐突なそれらの衝撃にギルフォード、思わず目を白黒させる。
「なんかこのままサヨナラするつもりみたいにゃけど、アタシがそーはさせにゃいにゃ!」
その主たるリッツ、どうやら此度の縁を離すつもりは無いようで。実力行使でその意を示しに来たらしい。だが背後から抱きついて頬を摺り寄せるという些かスキンシップ過剰な行為に及ばれては、ギルフォードとしては堪ったものではない。
「馬鹿、止めろ! くっつくな! 離れろ!!」
「離れる前にフレ登録にゃ! それまでテコでも動かんにゃ!」
「だから俺はそういうコトはしねぇって言ってんだろ!!」
そんな感じで暫し押し問答を繰り広げるギルフォードとリッツ。その様子を、ミナセは楽しげに見守っていたとか。
尚、最終的にはミナセの仲立ちでどうにかリッツは引き剥がされたが。見返りに、今度剣技を教える約束を取り付けられたという。
どうやらこの縁、暫く切れることはなさそうだ――
大成功
🔵🔵🔵
レテイシャ・マグナカルタ
クランの面々と各々健闘を称え合って別れ、ギルドの片隅にある酒場スペースに向かうとシーリスが1人座ってうつらうつらしてたんで隣に座る
「お疲れさん、大丈夫か?」
眠いならログアウトした方がいいんだろうが、それは口にしない
短い付き合いでもコイツ等にとって本当に自由になれるのが、この仮想の世界だけだってことがよくわかるからだ
性別は同じはずだが真の姿(プレイヤー)が幾つなのかは知らない。アバター通りの少年なのかもしれないし、年上かもしれない。老人と呼べる年齢だってあり得る
一つだけ確かなのは、それが今現在なのか遠い過去なのかはともかく、『彼』に自由を謳歌する『少年時代』など無かったという事実だけだ
だから、|ログアウトしろ《現実に戻れ》等とは言わない
四方山話をしながら故郷の義弟妹に重なる。ある意味で自由を奪われた世界で生きる姿を
だから心の中で決意する。いつか、『彼』と現実で|『自由』に会お《統制機構をぶち壊そ》う、と
遂に寝落ちしたシーリスを膝枕しながらオレは窓の外、1人電子の空に浮かぶ星に誓った
クランクエストが終わって暫し時が経ち、現実世界の夜も更け。
「――と、そろそろ私も寝ないとまずいわね」
「ん、もうこんな時間」
ギルド内で雑談を続けていたミナセとイツキも、既に相当遅い時間になっていたことに気付く。これ以上の夜更かしは明日に――彼らにとっての現実世界での活動に響く、と。
「そっか、そうだったな」
それまで彼女達と歓談していたレテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)は思い出す。彼女達ゲームプレイヤー達はいずれも、本来この世界の住民ではない。この世界と隣り合う『現実世界』――|統制機構《コントロール》より『ゲームの世界』へとログインしているのだと。
「それじゃ、私は落ちるわね。お疲れ様、二人とも。おやすみなさい」
「ん、おやすー。アタシは表通りで寝バザーするわ。おつ」
ミナセは挨拶と共にその場から|姿を消《ログアウト》し、イツキはレテイシャに手を振ってギルドを出ていく。表通りでログインしたまま席を外し、その状態でバザーの出店を行うつもりらしい。
「おう、お疲れさん」
そんな二人を見送って後、レテイシャはギルドの中を歩き巡りだす。夜遅い時間とあって、ギルドにいるプレイヤーの数は疎ら。とはいえこのような時間であってもまだゲームプレイを続けているというのは、それだけこのゲームを楽しんでいるが故なのか――或いは。
歩いてゆくうち、やがてギルドの隣、ロビーから直接繋がっている酒場へと足を踏み入れてゆく。流石にこの時間に食事をするプレイヤーはいないということか、いるのは夜通し呑み続けようというNPCばかりだが――その中に見つけたプレイヤーの姿を見て、レテイシャの眉が跳ねる。
「よう、シーリス。お疲れさん」
「――あ。レテイシャさん。お疲れ様」
酒場の片隅、一人でぼんやりと座っていたそのプレイヤー――シーリスへと声をかければ、彼ははたと気付いた様子で振り返り応える。
「大丈夫か? なんかぼーっとしてたみたいだけどよ」
シーリスの隣、長椅子の空いたスペースに腰を下ろしつつ問うレテイシャに、シーリスは目をくしくしと擦りながら。
「ん、大丈夫。この後どうしようかなって思ってただけだから」
答えた直後に欠伸を一つ。明らかに眠そうだが、レテイシャはその点を指摘しようとはせず。
「そっか。ならオレと一緒だな」
ただ、にっと微笑んでみせるのみ。本来ならば寝る為にログアウトを促すのが筋なのであろうが、敢えてそうしないのは。
(――この|仮想の《自由な》世界を、離れたくないんだろうな)
ナイトウォーカーズに加入して日は浅いレテイシャだが、それでも確と理解する。シーリスも、他のナイトウォーカーズの面々も。彼らが本当に自由になれるのは、このゲームの中でだけ。此処を離れれば、待っているのは自由なき監獄の如き現実である、と。
「そんなら、ちょっと駄弁るとしようぜ。大したコトじゃなくていいからさ」
ならばと、レテイシャは少年との会話を持ち掛ける。何の取り留めもない四方山話。それでも、現実よりは楽しいだろうと思うから。
言葉を交わすシーリスの様子は、見目に違わぬあどけない少年そのもの。だが、だからといって彼が現実でも少年であるとは限らない。
寧ろ、シーリスの現実での素性は何一つ分かっていない。ゲームの仕様上、性別が男性なのは間違いないが、それだけだ。年齢だけでも、この世界同様の少年なのか、レテイシャより年上の青年なのか――或いは中年、ややもすれば老人と呼べる年齢の可能性すらある。
だが、一つだけ確かなことがあるとレテイシャは考える。それが今現在であれ、遠い過去であれ。『彼』に自由を謳歌する『少年時代』など無かった。それだけは事実だろうと。
故にこそ、レテイシャにはできなかった。斯様な人生を彼に強いる、そんな現実への|帰還《ログアウト》を促すなど。だから、彼の夜更かし――現実への抵抗に手を貸す為に。レテイシャは彼に付き合おうとしていた。
なれど、其は長く続かず。やがて本格的に船を漕ぎだしたシーリスは、其処から然程の時を経ずしてレテイシャの方へと倒れかかる。その頭を膝で受け止めれば、聞こえてくるのは穏やかな寝息。
(―――――)
そうして寝落ちに至ったシーリスの寝顔を眺めるうち、レテイシャは其処に既視感を覚える。故郷たるアポカリプスヘルで共に育った、孤児院の義弟妹達の姿が重なったのだろう、と理解する。
文明の崩壊したかの世界は、誰もが生きる為に懸命とならざるを得ない。此方と形は違えど自由の奪われたかの世界で生き抜く彼らの姿もまた、少年時代を謳歌するには程遠い有様――そう考えるが故に。
膝枕する形となったシーリスの寝顔を暫し眺めた後、窓から夜空を見上げる。現実世界とは異なる、然し美しさには変わりなき星々の輝く空を。果て無き自由の空に煌めく星々――誰もが、あのように生きられれば、どれ程に良いことか。
(――いつか、きっと)
其を見上げながら、レテイシャは心中にて呟く空を満たす星々に、誓うかのように。
(――『彼』と|『自由』に会お《統制機構をぶち壊そ》う)
今日の戦いは、その為の第一歩である――レテイシャはそう信じ、決意を固めるのであった。
大成功
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