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十三面待ちを卓ごとひっくり返す行為

#封神武侠界 #戦後 #『韓信大将軍』 #曹豹

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●対になる絶対佳人って言葉は本当にあるのかわからん
 国士無双と称されたほどの英傑である自らが仕えるに相応しい人物。韓信はそれを探していた。
 かつて仕えていた、将に将たる器の男。あるいは覇王と呼ばれる武の化身。ちょっとした行き違いから袂を分かち、あるいは死を与えられる結果となってしまったが、それでもなお偉大な主君である事にかわりはない。その後継者たりうる者は三国志の世界にもいたはずなのだ。圧倒的な才を持ち、大敵に勝利して封神武侠界統一に最も近かった男。常にどん底にあって世界中を放浪しながらも将に将たる器の片鱗を常に見せ続け、ついに自らの国を持つに至った男。地の歴史と血の流れを積み重ね続け、大国に最後まで抗った男。オブリビオンの中に彼らのうちひとりでも現れていたならば、あるいは韓信もそれを主君と定める事に異を持たなかったかもしれない。だが、ついにそうなる事はなかった。そして韓信の目指していた、全ての人仙を封じる封神台の建立もまた、成し遂げられる事なくその野望は潰えようとしている。麻雀で言うならオーラスを前にひとり沈んでいるような状況だ。
 しかしオブリビオンたるもの、最期の最期まであきらめる事はない。封神台をどこかの世界に送り、その世界のオブリビオン・フォーミュラに役立ててもらう事を考えたのである。そしてそのための儀式が終わるまでの時間稼ぎとして、南蛮の魔物を呼び出そうとしていたのだ……!!

「いやあ仕事熱心だねえ。感心感心。韓s」
「言わせねえよ」
 大豪傑・麗刃(25歳児・f01156)の言葉は他の猟兵に止められてしまった。おおいに不満そうな顔をした麗刃だったが、それでも説明を開始する。
「ともあれ、封神台が他世界に輸出されてそこで本領発揮されたらえらい事になるので、そうなる前になんとかしてほしいのだ。幸いにもタイムリミットは決まっていて、まだまだぜんっぜん余裕あるぽいから、まー大丈夫だろう!」
 フラグやめろ。それはわかったけど、具体的に何をすればいいの?
「まず韓信くんの手下がきみたちを止めに来るので、それをどうにかして倒してほしいのだ。わたしも良く知ってる人で、ちょっとめんどうなギミック持ちだけど、まーそこはあれだ。知恵と力と勇気でどうにかしてほしいのだ!」
 あんまりアドバイスになっていないが、まあとりあえずぶっ倒せばいいらしい。
「で、韓信くんとの決戦だけど、その前に南蛮門とやらから南蛮王とかいう化け物がいっぱい出て来てるらしいので、それをどうにかしてほしいのだ。ほら、戦争の時に出た兀突骨って覚えてる?ああいうやつららしいのだ」
 韓信を倒してもそいつらを放置しては封神武侠界はめちゃくちゃになってしまうだろう。なんとかしてこいつらを止めなくてはならない。ちなみに南蛮王たちは『三国志演義』における南蛮の武将の名を持っているらしいが。
「えっと、今回出てくるのは……あれちょっとノイズ入ってるな。えっと?アゴだかカツオだかコンブだか、そんな感じの名前みたいなんだけど……もうちょっと細かい事わかったらあとで連絡するのだ!」
 おいおい。
「ま!きみたちならなんとかしてくれるだろう!なにせ時間はたっぷりあるのだ!えっと12月27日までに20回倒せば大丈夫らしいってんで。2か月もあればなんとかなるであろう!よろしく頼んだ!」
 だからフラグぽいコメントはやめい。いまいちしまらない感じになってしまったが、ともあれ麗刃の一礼を受け、猟兵たちは決戦の地へと向かうのだった。


らあめそまそ
 らあめそまそです。韓信戦をお送りいたします。
 今回は全3章全てに特別なギミックが用意されております。そのためご参加の前に断章の情報をご参照いただければ幸いです。

 それでは改めて皆様のご参加をよろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『曹豹』

POW   :    血盟軍団員全員集合
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【曹豹血盟軍軍団員】が出現し、指定の敵だけを【白兵戦による集団戦術】と【弓矢の一斉射撃】で攻撃する。
SPD   :    娘婿への内通
【娘婿・呂布】の霊を召喚する。これは【方天画戟】や【赤兎馬の騎乗突撃】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    魔人の罵声
【真剣な或いはどこか滑稽な、魂からの罵倒】を給仕している間、戦場にいる真剣な或いはどこか滑稽な、魂からの罵倒を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。

イラスト:聖マサル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠大豪傑・麗刃です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●数奇な運命というか
『韓信様!』
 そのオブリビオンを前に、韓信は悩んでいた。
『……私は……本当にこの男を配下にしたのだったかな……』
 曹豹。一応、三国志の英傑の末端である。名の読みは『そうひょう』あるいは『そうほう』。まあ好きな方でいいだろう。司馬炎の天下統一より70年ほど前に徐州の主である陶謙に仕え、劉備が徐州を受け継いだ後はそのまま劉備の配下となった武将だ。だが劉備が外敵との戦いで留守にしている際、城を守っていた劉備の義弟張飛といさかいになってしまった。その後はそのまま張飛に殺された説と、張飛への恨みから呂布に内通した(生死不明)説があり、現在では三国志演義が採用した「呂布に内通した後張飛に殺された」という両者のハイブリッド説がよく知られている……これだけなら英傑と呼ぶにはちょっと寂しい人物だが、どういうわけだかごく一時期の局地的な範囲でとはいえその人気が爆発してしまった事があった。どこからかそれを知った韓信が配下にした……と思われたのだが、実際は禁軍猟書家として選抜され、現在はそれも解かれてただのいちオブリビオンとなっているため、本当に韓信配下なのかは怪しい。なにせ配下マークも付いていないのだ。ただ、韓信が配下に持たせる神器【EP風火輪】を曹豹が使っていたのもまた確かである。
『ようやっと韓信様の下で働く事ができ、この曹豹!歓喜に耐えませぬッッッ』
『……まあ、良い』
 曹豹を一瞥した韓信、曹豹が握りしめているEP風火輪を取り上げた。
『貴殿にはこちらの方が使いやすかろう』
 そして代わりに渡したものは……。

『そーっひょっひょっひょ!』
 かくして猟兵たちの前に曹豹は現れた。戦場にはいつの間にか風が吹き荒れていた。
『韓信さまに感心な将と言われたこの曹豹!おまえらごときにこのわしが勝てるわけがなかろう!きさまらなどこのわしが剣のサビになってくれるわ!』
 なにやら言ってる事がおかしい気がするが馬鹿にしてはいけない。曹豹の『魔人の罵声』を馬鹿にした者はとんでもない目にあうのだ……具体的には後述。
『連中をみんなぶち倒し!「猟兵など雑魚かった」と総評してくれよう!曹豹なだけに!!』

 この曹豹、禁軍猟書家として登場した時からそうなのだが、どうやら横光版(謎)らしく白兵戦は弱いらしい。その代わり、様々なギミックが曹豹を強敵たらしめているのだ。
 まず禁軍猟書家時代のギミック【刃の如き竜巻】が復活している。これは猟兵が曹豹を攻撃しようとした際に竜巻が襲いかかって来るというものだ。夏侯惇と一騎討ちした時の逸話に基づくものなのだろうが、ユーベルコードによるものか、ただの偶然なのかすらわかっていないらしい。竜巻のダメージも馬鹿にならないが、間合いや攻撃のタイミングを大きくずらされてしまうという事の方が脅威かもしれない。
 次にこれまで装備していた【EP風火輪】に代わり、韓信より神器【水銀の渦】を与えられている。始皇帝に由来するこの神器の効果は戦場全体に水銀の渦を発生させるもので、敵には内臓破裂ダメージを与え、曹豹自身は戦闘力を増加させるというものだ。前述した【刃の如き竜巻】で移動を制限されてしまったら水銀の渦から逃れる事も困難となってしまうだろう。
 さらにタチが悪い事に、曹豹が持つ以下の3つの能力も竜巻や水銀の渦とかなり相性が良いのだ。
【血盟軍団員全員集合】は曹豹血盟軍軍団員を呼び寄せて白兵戦や弓矢で猛攻をくわえるものだ。軍団員たちは戦意も曹豹への忠誠心が高く数も多い。人海戦術で曹豹に攻撃が届きづらくなったり、水銀の渦から逃れづらくなったりする恐れがある。幸いにも軍団員は水銀の渦の対策のために来るのには多少時間がかかるが、曹豹は竜巻で血盟軍が集まるまでの時間を稼ぎにかかることだろう。
【娘婿への内通】は世に知られた天下無双の飛将軍・呂布を呼び寄せるものだ。実は曹豹の娘が呂布の側室となっていた事がある(残念ながら早世したようだが)。一日千里を行くとされる名馬『赤兎馬』に乗り、方天画戟を振るう呂布が強いのは当然だが、水銀の渦によりその強さはさらに強化されるらしい。一方猟兵は竜巻による行動制限を受けながらこの脅威と相対しなければならないのだ。
【魔人の罵声】は冒頭に出たような曹豹得意の罵声を受けた者の行動速度を超絶的に減少させるものだ。行動速度が減少したら竜巻や水銀の渦への対処もきわめて困難となるだろう。対抗するには罵声に対してあきれたり白けて馬鹿にしたり怒ったりするのではなく『楽しむ』必要がある。曹豹的に『楽しむ』とは『畏敬の念を抱いて平伏し忠誠を誓う』程度の意味らしいが、そこは猟兵なのである程度の恣意的解釈も可能だろう。なおプレイングの字数に余裕があれば『曹豹に言わせたい罵声』を書いてみるのもおもしろいかもしれない。

 以上、繰り返すが本人はむしろオブリビオンの中でも弱い部類ではあるが、それでもこれだけギミック満載だと決して油断できる相手ではない。だが曹豹はあくまで尖兵なのだ。オードブルはあっさりと平らげ、この後のメインに備えようではないか。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
この方とは、韓信さんも人手不足ですかねぇ?

『FAS』を使用し飛行、『FLS』の空間歪曲障壁で『水銀』が体に届くのを防ぐと共に『FES』の対毒結界をフィルタに使い対処しまして。
『FPS』で『竜巻』発生を探知、時機を合わせ『FIS』の転移で躱し【餮囹】を発動、『波動』を放射し[範囲攻撃]しますねぇ。
此方は『攻撃自体の吸収』が可能ですから、『水銀』『竜巻』共に吸収し此方の力に出来ますし、範囲内の『敵対者』も対象故に、曹豹さん自身や『血盟軍』も範囲に入れば吸収出来ますぅ。
『血盟軍』が近づかなくても攻撃は無力化されておりますので、後は全攻撃用『祭器』を集中、曹豹さんに[追撃]を。



●他の韓信はもっとシリアスな配下を使っているので人手不足ではないはずだが
「この方とは、韓信さんも人手不足ですかねぇ?」
 と曹豹を評した夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の発言は、これまで曹豹と4回戦って4回撃破した実績によるものであり、決してイロモノである曹豹をシリアスキャラより数段格下と侮ってのものではないのだろう、たぶん、おそらく。そう思いたい。そうでなければこいつを宿敵としているどっかの誰かが嘆くぞ。
『何を言うか!』
 人手不足の出涸らシックスゲイツ呼ばわりされた曹豹、当然のように怒った。
『わしを取り立ててくださった韓信殿や禁軍猟書家に取り立ててくださった|ハビタント・フォーミュラ《うーちゃん》殿の悪口ならまだしも!わしの事を悪く言うのは絶対に許さんぞ!』
「そこは普通逆でしょう」
 るこるはあきれたが、魔人の罵声なるあやしげな話術(?)を得意とする曹豹なので、あえて逆に言った可能性はある。が曹豹の性格からいって本心って可能性も否定はできない。いずれにせよ本当のところは本人に聞いてみないと何ともだが、るこるにとっては別段それは大して気になるものではなかった。
「いつものようにさくっとやってしまいますねえ」
 3対6枚のエネルギー翼を広げて空を舞いあがったるこるに対し、曹豹は。
『ええい!これまでのわしと同じだと思ったら大間違いじゃ!』
 なにやらこれまでの戦闘の記憶が一部あるようだ。このあたりはなんやかやの匙加減であろう。
『ゆけい【水銀の渦】よ!あの肉塊を撃ち落とすのじゃ!』
 これまで曹豹はギミックで敵を足止めしつつ、高速移動で逃げつつ遠距離攻撃で戦う戦法をとっていた。それが今回はがらっと変えてきたのだ。かの始皇帝が使っていた水銀蒸気を彷彿とさせる【水銀の渦】は、水銀の液体と気体を飛ばす事で敵を攻撃するものだ。性質上回避は困難だし、吸い込んだら致命的だし、しかも曹豹自身を強化するという反則なものだ。だが。
「FIS!FES!発動ですぅ!」
 残念ながら曹豹の戦法変更は既にるこるに事前に知らされていたのだ。空間歪曲障壁で物理的に水銀を防ぎ、さらに毒に対する結界を張る事で毒そのものを無効化させる。これでひとまず水銀の渦に対する安全は確保した。さて防御は固めたので次は攻撃する番だが……。そんな事を考えたるこるの耳に届く声があった。
「曹豹様~!お待たせいたしました~!」
 対水銀装備を万全にしたために到着に時間がかかった血盟軍たちがようやっと到着したのだ。
『思い切り待ったわ!あの肉塊をやってしまえ!』
「ウィルコ!」
 曹豹の指示を得て、血盟軍たちは弓をつがえて空中のるこるを狙う。同時にるこるもユーベルコードを発動させた。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、咎人を留め置く扉の鍵を此処に」
 力ある言葉とともに、るこるの体から乳白色の波動が発生した。効果範囲はるこるの半径146mなので戦場全てを覆うほど広くはない。位置からいって、乳白色の波動はるこる周囲を覆うが、曹豹や血盟軍たちはその範囲から外れていた。
「撃て!」
 血盟軍たちは一斉にるこるに矢を撃ち込む……が、大量の矢は波動に当たった瞬間崩れ去り、消滅していった。
「な……!」
「無駄ですよぉ、全て囚われて吸収されるのですぅ」
 そのユーベルコードの名は【|豊乳女神《チチガミサマ》の加護・|餮囹《ドンヨクナルヒトヤ》】といった。『餮』は貪り食う事、『囹』は牢獄の事だ。これで『ひとや』とも読む。『ひとや』は通常『獄』『人牢』『人屋』と漢字をあてられるもので、クリスマスソングで有名な『もろびとこぞりて』の歌詞にある『悪魔のひとや』が一番有名かもしれない。その名の示す通り、これはまさに貪欲なる牢獄であった。なにせたった今見せつけられた通り、飛んでくる攻撃全てを吸収してしまうのだ。仮に曹豹や血盟軍がこれに触れたらやはり吸収されてしまうだろう。
「さて、こちらの番ですねぇ」
 るこるは攻撃用祭器を大量に展開した。敵の攻撃を封じた上で、一方的に攻撃しようというのだ。
「ど、どうしましょう!曹豹様!」
『ええい!慌てるでない!』
 狼狽する血盟軍に対し、窮地に陥った所で思わぬ曹豹のリーダーシップが発揮された。
『そもお前ら!なんで対水銀の装備をしてきたじゃ!』
「え?なんでってこれ吸い込んだら……」
『パワーアップするじゃろ!』
「あ」
 ……そう。筆者も今になって気が付いた事だったのだが、始皇帝の水銀蒸気は本当に敵味方なく有害なものだったが、神器の水銀の渦は曹豹に対してはむしろ強化してくれるのだ。だったら血盟軍が強化してもおかしくはないだろう。実際呂布は強化されるようだし。曹豹の言葉に従い、血盟軍たちは次々に防護装備を脱いだ。そして曹豹自身はといえば。
「……FPSに感がありますねえ。ということは竜巻が来るということでしょうか」
『来たれ【刃の如き竜巻】よ!』
 曹豹の言葉に応じたのかはわからないが、るこるの攻撃態勢に反応して久しぶりの【刃の如き竜巻】もやってきた。これで神器の集中砲火を防ぐのか、と思われたが。
『竜巻よ!水銀を飲み込み水銀の竜巻と化すのじゃ!』
 曹豹の言葉とともに水銀の渦と刃の如き竜巻が合体した。なんだか知らないがすさまじいエネルギーの奔流がるこるに突っ込んできた。そして水銀を吸い込んで強化された血盟軍たちも改めて矢をるこるに撃ち込んできた。
「あら~」
 るこるの言葉は敵の攻撃にだろうか。それとも敵のあきらめない姿勢にだっただろうか。ともあれ、水銀の竜巻と、水銀で強化された血盟軍の矢の嵐とがるこるに飛んできた。こうなったらもはや勝敗はわからない。無敵な矛と盾がぶつかり合ったならば、純粋により無敵な方が勝つ。果たして勝つのは……

『ちょっと待てぇ!』
「はい?」
『なんでこの流れで、逃げたぁ!?』

 そう。るこるはユーベルコード同士のぶつかり合いを避けたのだ。『FIS』の力で転移を行い、水銀の竜巻と矢の嵐を回避したのである。そして転移した先は……曹豹と血盟軍の真上。
「確実な方法を選んだだけですよぉ」
「そ、曹豹様~!ちにゃ!」
 貪欲なる人屋の範囲内に入った血盟軍団員たちは水銀による強化もむなしく次々に吸収されていった。
『お、おのれわしが手塩にかけて育てた精鋭たちがー!』
 曹豹はさすが腐っても元禁軍猟書家、吸収には耐えていた。が。
「じゃ、行きますよぉ」
『ちょ、ちょっと待って』
 波動で動きを封じられた所に今度こそ神器の集中砲火を受けてしまったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イリスフィーナ・シェフィールド
また貴方かですかっ……どうせそっちは覚えてないでしょうし話すことありませんわ。
時間もないし速攻ですわ、新必殺技ブレード・シュートのサビにして差し上げますっ。

邪魔する竜巻も水銀の渦も避けるか斬り散らかし貫通しするかして曹豹を攻撃。
遠隔操作で息の根止まるまでボコボコにしつつ自身は竜巻や水銀の渦に飲まれないよう飛んだり走ったりして逃げ回ります。
もし捕まったならオーラ防御で体内への吸収を防ぎつつ環境耐性で堪えられるうちに脱出しようとしますわ。



●ちょっと荒れ味なエースが通る
「また貴方かですかっ……」
 イリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼|スーパーヒロイン《承認欲求の塊》・f39772)が曹豹と相対するのはこれが2度目だ。前回遭遇した時にも特になんの感慨もなかった相手だったがゆえに、今回の体面においても別段なんら思う事も言いたい事もないようだ。
「どうせそっちは覚えてないでしょうし話すことありませんわ」
『ふん!きさまは前回ひきょうな手段を使ってくれたやつではないか!』
「え?」
 別にイリスフィーナは卑怯な手段を使った覚えもないのだが、なんか前回の戦いについて曹豹が触れてきたのは多少意外ではあった。まあこのあたりはなんやかやの匙加減が働いているとかいないとからしいのだが。
『今回は姑息な手でわしの裏をかいてたまたまうまい事いったようだが、今回はそうはいかんぞ!』
「……」
 むろんイリスフィーナがとった戦法は卑怯な手段でも姑息な手でもない。血盟軍が戦場に現れる前に決着を付けるべく、超速攻をかけてそれがうまいことハマっただけのことだ。まあ曹豹としては本領発揮前にやられたのは非常に悔いが残る事であり、その怒りを相手に責任転嫁したくなる気持ちもまあわからないではない。非常に小物ムーブなのは間違いないが。
「……時間もないし速攻ですわ」
 で、結局今回もイリスフィーナがとった手段は超速攻であった。曹豹血盟軍は来るまでに時間がかかるという弱点があり、到着までにカタをつけるというものだ。ただ時間がかかるといっても5分弱しかない。イリスフィーナには本当に文字通りの超速攻が要求されるのである。
「剣ではなく私の新必殺技のサビにして差し上げますっ」
 早速イリスフィーナはオーラで球体を作った。サッカーボールサイズのそれを地面に落とすと、イリスフィーナはそれにむけて全力で駆けていくと、両腕を広げて右足を思い切り後方へと跳ね上げた。
「これがわたくしの!縦横無刃っ、ブレード・シュートですわっ」
 右足を振り抜くとオーラのボールは一直線に曹豹へと飛んでいった。むろんただのボールではない。超高速回転とオーラの力により、あらゆるものを切断貫通しながら進み、それがなしえぬ場合はイリスフィーナの意思で自在にその軌道を変え、着実に敵を斬り刻むのだ。むろん曹豹とて無策でこれをくらうわけにはいかない。
『ぬう!凶風よ!あの球体を抑えるのじゃ!』
 敵の攻撃にか、あるいは曹豹の叫びにか。このどちらかに呼応して刃の如き竜巻が現れた。竜巻は人間を容易に斬り裂くカマイタチの威力といかなるものも吹き飛ばす暴風をもってボールへと襲い掛かる。全てを斬り裂くボールは竜巻をも斬り裂いて進むが、そも形を持たぬ風は切ってもすぐに元通りになりボールを包み込みにかかる。
「むう、思ったより厄介ですわね」
『そーっひょっひょっひょ!今度はこちらからじゃな!行け!水銀の渦よ!』
 ボールをコントロールして竜巻を回避しようとしたイリスフィーナに曹豹は嵐のように渦巻く水銀を飛ばしてきた。これに包まれたらさすがにまずい事になるだろう。イリスフィーナはオーラ防御を張りつつ、やむなくボールを自分の元に戻して迫りくる水銀を斬り防いだが、そこにさらに竜巻も迫って来る。いつの間にか防戦一方に追い込まれていた。
「こ、これは少々……」
「曹豹様~!」
 悪い事はさらに続く。速攻による早期決着の狙いがはずれた事で、ついに血盟軍が戦場に到着してしまったのだ。
『お前ら遅いぞ!対水銀装備はしなくていいはずじゃろ!なんでこんな遅くなったのじゃ!?』
「そんな事言われたって、変なオーラに吸収された所からやっと戻って来たんですよう」
『……あ~、そうじゃったなあ、そう考えるとむしろよくもまあこんなに早く戻ってこれたと言うべきか』
 どうやって戻って来たのかと聞かれたら、それはもう、ものすごーい苦労があったんですよとしか言いようがない。ともあれイリスフィーナは大ピンチだ。刃の如き竜巻や水銀の渦を防ぐのに手いっぱいな所に、水銀で強化された血盟軍の相手もしなければならないのだ。
『まあよいわ!あの張飛のごとき粗暴で粗野な女をやってしまえ!』
「ウィルコ!」
「ちょ、張飛……!」
 三国志でもその武勇と粗暴すぎる性格で名の知られた猛将に例えられ、さすがにイリスフィーナも思うところはあったようだが、今はそれを気にしている場合ではない。刃の竜巻と水銀の渦と水銀で強化された血盟軍の弓矢。これをどうにかして曹豹に一撃をくらわさなければならないのだ。
(どなたか、わたくしに道を示してくださいまし!)
(『何事も暴力で解決するのが一番だ』)
(……え?)
 どこからか声が聞こえたような気がして、そちらを見るとなんか笑顔でサムズアップしている虎髭の男。
(だ、誰なんですの?あなたみたいなメンターを持った覚えはございませんわ!)
 イリスフィーナはさすがに困惑したが、それでもまあ、自分には一番合っているやり方のような気はしたのであった。そして何より考えている暇はもはや与えられていない。
(どなたか存じませんが、教えはだけは承りましたわ!教えだけは!!)
 決心を決めるとイリスフィーナはオーラボールを超高速で左右に動かし始めた。振動するボールは一種の盾となり、飛んでくる嵐や水銀や弓矢を弾いてくれる。そしてそれを曹豹に向けて突撃させ、自分もその後を追った。いわばボールが嵐や水銀の渦にトンネルをうがち、その中を自分が駆け抜けていく形になる。むろん大きな賭けだ。ボールの操作回数が限界を迎えたら?開けた『トンネル』はすぐに閉鎖される。自身の速度が閉鎖に間に合わなかなったら?はたまた……。
「ええい!考えていても埒が明かないですわ!」
 今は何も考えずに走るだけだ。左右運動をしていたボールは操作回数が限界に近づいていつしかただの直線軌道となり、トンネルは確実に狭くなり、イリスフィーナはわずかに開いた空間の中で必死でオーラ防御と環境耐性で刃の竜巻と水銀の渦と矢弾の嵐に抵抗する。長いようで短いような時間の果てに。
『!!??』
「いっけーですわ!」
 ついに嵐が晴れた。残り少ないコントロール回数を消費し、早速イリスフィーナは刀を持って迫る血盟軍たちにボールを差し向け次々に切断していく。
『ちょ、ちょっと待てぇ!この無残な光景はちょっとイラストにしてお出しはできないぞ!』
「やかましいですわ!誰が張飛ですの!まったくどいつもこいつもですわ!」
 そしてイリスフィーナの怒りの矛先は当然のように曹豹に向けられた。曹豹にとって幸運だったのはボールのコントロール回数が残り少なかったために完全にやられる所までは行かなかった事だった。それはもうボコボコにされたのは確かではあったが。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

それはまるでチートのような、とんでもない才能ですって。ま、私の戦術って技能中心だから何がきても大丈夫大丈夫、たぶん、きっと、めいびー。
魂からの罵倒かぁ、うーん、うん?え?魂からひねり出してそれだけ?ええ?魔人のっていうから期待してたのに……本当に?
まぁ、行動速度1/5にされても|タイムフォールダウン《高速詠唱早業先制攻撃多重詠唱拠点構築結界術》があるから無問題よ。
ギミックも色々あるみたいだけど、|エネルギーを消失したらただ置物よ《大食い、魔力吸収、魔力供給、エネルギー充填》。禁呪をもちてそのギミックを|禁じます《封印術》。
では、おじさまいただきます❤



●マッドティーパーティー
『ぬう!きさまは……』
 アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)の顔を見た瞬間、曹豹は覿面に反応を示した。
「あれ?覚えてるの?まあいいわ」
 ちょっと意外そうな顔のアリス。実際、本シナリオの他参加者同様、アリスも曹豹と交戦経験のある猟兵だ。あるオブリビオンの記憶は同一個体には受け継がれないとされているが、そこはまあ匙加減というやつでいろいろあったりするとかしないとか。で、実際アリスと曹豹の前回の交戦において、ちょっと曹豹にとってはトラウマめいたものがあったとかなかったとか。もうちょっと詳細に言うなら血盟軍(今回は出番なし)を呼び出して盾にして自分は後方から援護射撃する布陣ができあがったと思ったら何が何だかわからないうちに一瞬のうちに血盟軍が全滅していてしかもアリスは至近距離にまで踏み込んでいたという。催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ……もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……そしてその後にはさらに恐ろしい目にあってしまったのだから、まあねえ。
「恐ろしいとは失礼ね、とっても良かったんじゃないの?」
『……』
 何やら恐ろしいようなちょっとうらやましいような事があったような気もするが、そのあたりは匙加減の問題で詳細までは覚えていない曹豹であった。ただそれでもなんやかやでアレでナニな感情は胸の内に確かにくすぶっていたのは確かであり、そして曹豹にはそういう悪感情を一気に放出する手段があった。
『き、きさまなど……』
 曹豹は思い切り息を吸うと、さまざまな感情をこめて一気に絶叫した。
『このわしがきさまの剣のサビになってくれるわ!』
「……」
 それに対するアリスの反応は。
『韓信殿より感心と呼ばれたこのわしが!猟兵など雑魚かったと総評してくれよう!曹豹なだけに!』
「それだけ?」
『え?』
「魂からの罵倒って、魂からひねり出してそれだけ?魔人のっていうから期待してたのに……本当に?」
 さすがネタキャラ。ネタには厳しい。どうやら汎用のネタではお気に召しては頂けなかったようだ。
『き、貴様……』
 この反応に曹豹は当然怒った。
『ええい!わしの渾身の罵倒を馬鹿にするものがどうなるものか!我が身で味わうが良いわ!』
 瞬間、アリスの視界で曹豹が超高速で動き出した。その速度、これまでの5倍だ……いや違う。
「あー、これが噂の……」
 これこそ曹豹の【魔人の罵声】の効果であった。曹豹の罵声を馬鹿にするものはこの通り、行動速度を大幅に減少させられてしまうのだ。この状態で曹豹の攻撃を受けたら回避困難というレベルではない。
『そーっひょっひょっひょ!こんな遅くなってしまっては【水銀の渦】は回避できまい!』
 ただでさえ広範囲に水銀蒸気が広がる神器は回避が難しいというのに、さらに行動速度が低下した事で回避はほぼ絶望的だ……そう思われていた。が。

「……あれ?」
『!?』

 次の瞬間、曹豹は驚愕し、アリスは困惑した。
 何が起こったか。曹豹視点から言うなら、低下させたはずのアリスの速度が突然元に戻ったのだ。必殺のユーベルコードが破られたのか。それはあってはならない事態であった。一方、アリスからすれば。
(おっかしいわね、完全に止めたと思ったんだけど)
 アリスの狙いは混沌魔術による|時止め《Time fall down》だった。相手の速度をゼロにしてしまえば自分の速度がゼロでない限りは一方的に攻撃できる。水銀の渦だろうが竜巻だろうが回避して相手の至近距離に近づいてしまえば白兵戦の弱い曹豹など簡単に制圧できる……が、曹豹の速度はゼロになっていない。低下はしたようだが、アリスと同程度の速度、すなわち1/5に留まっているのだ。もし外部からこの闘いを見る者がいたならば、すさまじく速度の遅いアリスと曹豹が対峙している光景を見る事になるだろう。
(前回はうまくいったんだけどな)
 そう。実際、曹豹との前回の遭遇においてはこれで完封したという実績がある。それが今回うまくいっていないのは、水銀の渦で曹豹がパワーアップしたためにレジストされたのか、アリスの行動速度が低下した事で混沌魔術の『練り』のための時間が短くなったのか、それともただの『匙加減』なのか。
『まあ良いわ!変な手段で加速したようだが、その速度では水銀の渦も!そして刃の如き竜巻も避けられまい!』
 アリスの混沌魔術に反応したのか、戦場に狂風が吹き始めた。狂風はやがて刃の如き竜巻と化し、アリスを斬り裂くと同時にその動きを封じるだろう。そこに水銀の渦まで来ては回避もできまい。アリスは水銀の渦や竜巻に対して禁呪を使う事でエネルギーを奪い停止させようと試みた……が。
(うーん、禁呪の効きも悪いみたいね、ひょっとして速度低下が影響してるのかしら?)
 わずかに止まったように見えなくもないが、ほとんど影響はないようだ。これはさすがに少しまずいかも……だがアリスにはまだユーベルコードが残っている。つい先日、新たな世界で発見されたばかりの、とんでもない効果を持つユーベルコード。好奇心の強いアリスがこれに目を付けないはずがなかった。
(ま、私の戦術って技能中心だから何がきても大丈夫大丈夫、たぶん、きっと、めいびー)
『なにをブツブツ言っておるかぁ!アリスというなら巣に水を流し込まれたアリのように混乱ぐらいして見せろ!蟻巣なだけに!!』
(あとは頼んだわマスターさん!)
 祈りながら、アリスはユーベルコード【それはまるでチートのような、とんでもない才能】を発動させる……わかりました。それではこんなのはいかがでしょう。

『……な!なんだこれは!』
 突如場面が変わった。晴れ渡る太陽、野原の上にテーブルが、椅子が置かれ、その中央にはなにやらポット。困惑する曹豹。そしてアリスはポットを手にすると、紅茶をカップに注いだ。
「あなたもいかが?」
 紅茶に口をつけ、アリスは曹豹にもそれをすすめるが。
『そんな邪道なものが飲めるか!わしが飲むのは中国茶……もとい封神武侠界茶と決まっておるわ!』
 むろん武侠茶だって飲むはずはない。敵に出された飲み物を素直に飲む馬鹿はいないのだ。だが曹豹にとって不幸だったのは、今回ばかりはそのセオリーに逆らう事が正解だったのだ。
「あら、残念ね」
 カップを置いたアリス。次の瞬間、また場面が元の戦場に戻る……が。

『……な……何が……』
 曹豹の前でアリスは超加速していた。いや、実は逆なのだ。紅茶を断った事でただでさえ低下している曹豹の速度がさらに鈍化したのだ。採用されたユーベルコードが何なのか、もうお分かりですね。こんなあたりでいかがでしょうか。
『こ、こんなんアリっすか』
「アリスだけにって?」
 同時に水銀や竜巻の速度も低下していた。アリスは今度こそゆうゆうと禁呪でギミックを封じると、満足に動けぬ曹豹のもとに近づいた。
「では、おじさまいただきます」
『ま、ま……』
「えっちなのうみそおいしいです」
 ……この時、曹豹が前回の戦いの結末を思い出したか否か。それは本人にしかわからない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリコフィトン・トンズランス
その依頼承りました(予知を業務命令としてバトラーズ・ブラック発動)
この水難の悪魔……なにか言いたげですね、それ以上の指摘には水の難を授けますよ?
さて、刃の如き竜巻に水銀の渦、加えて呂布の霊ですか。ですが幸いにも先制攻撃はされないようですね、ならば早業の先制攻撃で天叢雲剣を掲げて|天変地異《天候操作、地形の利用》をおこしましょう。
ええ、呂布であるならばこの程度は突破してきましょう、ですが、こっそり混じっていた|水難《水虫》の呪詛はいかがですか?その痒みとても耐えきれるものではないでしょう。
ああ、あと、この水難の呪詛そのもの神器ですので現象や無機物にも有効ですよ?
では改めて天叢雲剣の雷霆で蹂躙を



●水難
 水虫。医学用語で言うなら足白癬となる。白癬菌という真菌の一種によって引き起こされる皮膚等の病変であり、幹部の激しいかゆみ、皮膚のひび割れ、皮むけ、湿ったようなじゅくじゅく等が症状として挙げられる。
「……なんですか、この導入は」
 トリコフィトン・トンズランス(自称水難の悪魔・f31548)はどこか虚空にジト目を向けた。これは今回の物語には全く関係のない話であるが、白癬菌にもいろいろな種類があるが、足白癬の原因として最も多いのはTrichophyton rubrum、次いでTrichophyton mentagrophytesであるが、ここ最近、それこそ今世紀に入ってから日本においてTrichophyton tonsuransが増えてきているらしい。あくまで今回の話には全く関係がない。
「それ以上の指摘には水の難を授けますよ?」
 水の難。トリコフィトンは自らを水難の女神と名乗っているらしい。だがそれはそこまで無理やりな言い分でもない。水虫という名の由来は、田んぼで仕事をしている人がこれにかかった際、田んぼの水の中に虫がいて、それに刺された事が原因だと考えたからだそうな。実際プールやら風呂やらの湿った環境が関係している事もあり、ある意味水難と言えなくもない……いや無理やりだわやっぱ。ちなみに運動選手にこれになる人が多い事からアスリートの足と呼んでいる国もあるらしい。
「……」
 ……そろそろ水難も怖いので本題に入ろう。ともあれ、グリモアベースにてグリモア猟兵の依頼を聞き、トリコフィトンはただ一言のみを返した。
「その依頼承りました」
 実はこの言葉自体がトリコフィトンのユーベルコード【|執事の黒《Butler's Black》】発動のトリガーとなっている。グリモア猟兵の依頼を命令と認識し、その完遂まで全技能レベルを上昇させるというものだ。ただし24時間の制限時間があり、その時間内に完遂しなければならない。まあ移動時間に戦闘時間を勘案しても24時間は経過しないだろう……おっと章またぎはダメね。つまり「依頼は韓信打倒だからそれを成し遂げない限り有効」ではない、らしい。残念。ともあれトリコフィトンは曹豹に対峙した。
『もはや血盟軍には頼らん!出でよ呂布よ!』
 早速、曹豹は娘婿である呂布の霊を召喚した。方天画戟をたずさえ、赤兎馬にまたがる呂布はただでさえ天下無双の力を持つというのに、その力は水銀の渦でさらに強化されているのだ。
『よくぞ呼んでくれた舅殿。猟兵よ、この俺を少しは楽しませてみよ』
 殺る気満々な呂布。しかしトリコフィトンは慌てる事も恐れる事もなく眼前の脅威について思考を巡らせる。
(さて、今出ているのは水銀の渦、加えて呂布の霊。さらにまだ出ていないですが刃の如き竜巻ですか)
 曹豹本人の脅威度が低い代わりにどれもなかなかの脅威度だ。しかし幸運な事に呂布は近接戦専門のようだし、水銀の渦や刃の如き竜巻はこちらに届くまで時間がかかるとまでは言わないが、今すぐではなさそうだ。ならば100レベルに達した先制攻撃技能ならばこの難敵相手であっても先手が取れるはずだ。
「天叢雲剣よ!かの者に水の難を!」
 雷雲を呼ぶ神器をトリコフィトンが振り上げると、たちまち天は荒れ雲が湧き雷鳴轟き風が逆巻き大雨が降り始めた。雨風は水銀の渦を散らし、ほどなく巻き起こった刃の如き竜巻も相殺する勢いだ。だが。
『ふん!このようなもので呂布を止める事などできぬわ!断じて行えば鬼神も之を避く、じゃ!』
『言われずとも』
 常人ではたちまき心折れ、あるいは身が折れ吹き飛ばされかねぬ大嵐の中を呂布はまったく動じる事もなく堂々と進んだ。その威容はまさしく人中の呂布、馬中の赤兎の名に相応しいものであった。やがて呂布は大嵐を突破し、トリコフィトンのもとへとたどり着く。
『なかなか面白い手品であったが、俺を止める程ではなかったな』
「いいえ」
 とどめを刺さんと方天画戟を振り上げた呂布に、しかしトリコフィトンは全く慌てる事もなく告げた。実際、呂布がここまで来るのは計算の範疇だった。
「むしろここからです」
『!?』
 振り下ろした方天画戟はトリコフィトンを大きく逸れた。呂布クラスの武人が動かぬ的を外すなどあってはならない事だ。あってはならない事が、起きた。
『こ、これは……』
「こっそり混じっていた水難の呪詛はいかがですか?その痒みとても耐えきれるものではないでしょう」
 水難の呪詛。その正体は……そう。白癬菌は水を介して感染するのだ。呂布の全身は今や白癬にやられていた。また白癬菌は馬の感染症としても重要なものであり、赤兎馬も苦しんでいた。ちなみに水虫という場合は前述した通り足白癬であり、それ以外の場合は外陰部の場合は|陰部白癬《いんきん》、頭部なら|頭部白癬《しらくも》、それ以外の皮膚は|皮膚白癬《たむし》と呼ぶようだ。それでもただの痒みごときで呂布が狙いを外すかといえば……。
「ああ、あとこの水難の呪詛そのもの神器ですので現象や無機物にも有効ですよ?」
 そう。ただの白癬菌ならまだしも、この水虫、実はれっきとした神器だったのだ。なのでそれがもたらす掻痒感は想像を絶するものだっただろう。それが呂布の狙いを外させたのだ。それで水銀の渦や刃の如き竜巻が痒がってその動きが止まっているということなのだろうか?
「さて、後は……」
『ええい!どいつもこいつも!』
 天叢雲剣による天変地異で曹豹を蹂躙しようとした時、その曹豹が、吠えた。
『このわしを馬鹿にしおって!許さぬ!』
 それに呼応したのかはわからないが、水銀の渦が、刃の如き竜巻が、動き出した。そして一度は動きを止めた呂布もまた動き出す。もと禁軍猟書家としての最期の意地が、神器や亡霊をも動かしたというのだろうか。あるいは技能LV100に上がったとはいえ、トリコフィトン自身が猟兵として初陣であり、経験が足りなかったのが問題だっただろうか。
「これは……予想外です」
 それでもトリコフィトンは負けるわけにはいかない。天叢雲剣を振り上げ暴風雨を起こし、呂布や水銀や竜巻を少しでも遅延させようとした。敵の進撃を遅延できれば、手段を考える時間を稼げる。そう、あきらめなければどこかに手段はある。あるはずなのだ……
『そーっひょっひょっひょ!覚悟せい!』

「あなたはよくやったわ」
「……え?」

 結論として、自らの力でこの窮地を乗り切る事はできなかったかもしれない。だが、あきらめず時間を稼いだのは無駄ではなかった。皆が駆けつけてくるのが間に合ったのだ。
「しつこさだけは一人前のようですねえ」
「まったくですわ!きっちりととどめを刺さないとですわ!」
『ちょ、ちょっと待てぇ、またこのパターンかぁ』
「意味がわからないわね、では、今度こそ全部おのこしなしで、いただきます」
 数分後。

(……猟兵は強かったと総評してやろう……曹豹なだけにッッッ)
 いつものセリフとともに、今回も曹豹は骸の海へと還っていった。次回は……あるのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『『南蛮王』を撃退せよ』

POW   :    苛烈に攻め立て、南蛮王の軍勢を後退させる

SPD   :    超強大な魔獣の僅かな隙や弱点を突く

WIZ   :    計略で敵の動きを誘導する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●猛毒のだし
 猟兵たちが曹豹を撃破したのとほぼ同時刻、グリモアベースにて。
「そうだ!思い出したのだ!」
 グリモア猟兵は叫んでいた。
「だし大王だ!韓信くんが呼び出そうとしていたのは出汁大王だったのだ!」
 絶対違う。その光景を見ていた猟兵たちはみなそう思った。

 韓信が明けた南蛮門の前に到達した猟兵たちは、そこから強力なる魔獣の大軍が出てこようとしているのを見る事になった。その名は出汁、ではなく|朶思《だし》大王と言うらしい。
 三国志演義の朶思大王といえば諸葛亮の南蛮征伐において南蛮王孟獲に協力した大王のひとりで、南蛮一の知恵者との異名を持ち、4か所にある毒の泉や毒矢を用いて蜀を苦しめたとされる。その名を受け継ぐこの魔獣も当然のように強大な毒の力を持つとされる。いわば猛毒を使う兀突骨と考えて過言ではあるまい。こんなのが封神武侠界に大量に放たれたら……つい最近、別世界の戦争で超強力な毒一本で最強と呼ばれた敵を見たばかりである。絶対にそれは阻止せねばならない。
 だが敵は強力な上に多勢である。全てを打ち倒すのは不可能だろう。それでもなんとかして、こいつを南蛮門の奥へと押し返さねば。さて力で対抗するか、敵の弱点をなんとか見極めるか、策を用いるか、それとも?全ては猟兵にかかっている。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
沢山存在する『大王』と言うのも不思議ですねぇ。

相手が『朶思大王』なら、洞陥落の際の事を参考にしましょう。
『FAS』を使用し飛行、『FLS』の空間歪曲障壁と『FES』の対毒結界、『FMS』のバリアで攻撃に備えまして。
目立つ空中で【觧媱】を発動、『祭神衣』を着用しますねぇ。
この姿は見た者に『絶大な魅了』と『従順性』の付与が可能、南蛮魔獣の強さ故に全員は無理でも、一定以上を『魅了』し従わせることは可能でしょう。
後は、従った者達に『従わない者達の押し返し』を指示、強化した『祭器』の[援護射撃]も併せ、門の向こうまで追い返しますねぇ。

折角の機会ですし、一頭くらい捕獲したいですが。


アリス・セカンドカラー
おまかせプレ、汝が為したいように為すがよい。

ステータスオープン☆
理解せよ
理解せよ
理解せよ
脳内に直接流し込まれる私の|個人情報《ステータス》。
耐えきれなければ|頭がぼんっ《爆破、爆撃、破壊工作》よ☆まぁ、弱いやつの足切りね。
耐えきっても理解が進めば自他の境界が曖昧になって私になってしまうのだけどね。|禁断の知恵の実《禁呪『理解』》とはよく言ったものよね。
毒?多重詠唱拠点構築結界術による|解毒魔法《医術》で無毒化するわ。
攻撃そのものは|生存技法《継戦能力、サバイバル》と|ご都合主義《幸運》で回避よ。
|エナジードレイン《大食い、エネルギー充填》も運動・位置エネルギーを吸う形で防御に使えるわ。



●結局似てるのか似てないのか
 南蛮門の前に立つふたりの猟兵、夢ヶ枝・るこるとアリス・セカンドカラーは性別以外は何もかもが対照的と言えるだろう。|体格《スタイル》、性格、雰囲気、などなど。それでもふたりはここにいる目的においては共通していた。すなわち。
「沢山存在する『大王』と言うのも不思議ですねぇ」
「まあ自称する分には自由だしね」
 大量に存在するのに大王の名を冠せられた魔獣・朶思大王の封神武侠界進出阻止、そして再封印であった。ちなみに封神武侠界で大王というのは君主、諸侯王(皇帝の臣下である王)、王太子に対する尊称なので複数いてもまあおかしくはないが、さすがにちょっと目の前の魔獣たちはいくらなんでも多すぎだ。
「で、どうするの?」
「相手が『朶思大王』なら、洞陥落の際の事を参考にしましょう」
 アリスに問われたるこるが答えたのは三国志演義の第八十九回に描かれた、諸葛亮対孟獲の第5戦の事であった。朶思大王の住む禿竜洞への道はふたつしかないが、朶思大王は孟獲が通った安全な道を封鎖して危険な方だけを残した。これにより酷暑の上に水のない道を進んだ蜀軍の兵は4種類の毒泉を飲んで全滅するだろう、というのが朶思大王の狙いだったのだ。実際蜀の先発隊は唖泉という飲んだら口がきけなくなって数日後に死ぬ水を飲んでしまったが、様々な奇跡も重なって安楽泉なる解毒効果のある泉によって救われたのである。そして楊鋒なる南蛮の将が諸葛亮に恩を受けていた(詳細は不明)ため、これを援軍と孟獲と朶思大王の籠る禿竜洞に送り込み、両者を捕えさせたのだった。
「ほむほむ」
「とにかくやりましょうかねえ」
「あら、もう行っちゃうの?早すぎるのは嫌われちゃうわよ」
 るこるは3対6枚のオーラ翼を広げると大空に飛び立った。一方、アリスはそれを見送りつつ、地上にて迫りくる魔獣の群れを迎え撃つ構えだ。やがてふたりの姿を認めた朶思大王たちは大王に逆らう不遜な猟兵を叩き潰し、あるいは毒の餌食にせんと殺到してくる。が、むしろふたりにとってはむしろ好都合だった。偶然にも、るこる、アリスの両名がとった戦法は、敵に我が身を晒す事で高い効果を発揮するものだったのだ。しかしそれを実行する前に魔獣の群れが飛ばしてきた毒に対抗しなくてはならない。
「FLS!FES!FMS!発動ですぅ!」
「そんなの解毒魔法で無毒化するわ」
 このあたり、なにげにふたりの解決法はよく似ていた。るこるは|神器《アイテム》を複数重ねる事で、アリスは技能を複数重ねる事でそれぞれ毒に対する結界を張り巡らせた。かのエンドブレイカーに出た毒を極めた化け物には及ばないかもしれないが、大陸ひとつを毒で滅ぼす可能性を秘めていた猛毒ではあったが、いまだその進撃が始まっていなかった事もあり、またふたりの毒対策が相乗効果を生んだ事で、厄介な先制攻撃はどうやら防ぎ切ったようだ。今度は猟兵の反撃のターンだ。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『傾天の加護』をお与え下さいませ」
「ステータスオープン☆」
 ふたりの声は、ほぼ同時に発せられた。

 理解せよ
 理解せよ
 理解せよ

 瞬間。何匹かの朶思大王が頭部を吹き飛ばした。アリスが自己についての大量の情報を送り込んだ事で、それに耐えきれなかった者が自己崩壊を起こしたのだ。ただ、それに耐えきった者は?
「|知《識》るは|知《識》られる。『理解』が深まればやがてお互いの境界は曖昧になり“一つ”となるのよ」
 アリスを『理解』してしまう……それはいわばかの海底に沈む大いなる者を想起させるもの、あるいはさらに巨大な|宇宙的恐怖《Cosmic horror》。それを知る者は狂気に……いや|真実《アリス》に近づくのだ。果たして朶思大王がアリスと化した時にいかなる事が起きるのか……だが朶思大王たちは耐えた。どうやらSANチェックに成功したようだ。さすがは魔獣といったところであろうか。
 だがそこにるこるのユーベルコードが飛んでくる……

 その名は【|豊乳女神《チチガミサマ》の加護・|觧媱《カイキンサレシエンレイ》】といった。『觧』は『解』とほぼ同義、『媱』は美しいという事だ。すなわち『解禁されし艶麗』という事だろうか。その効果は、まさにるこるの美しさを解禁するものであった。その姿を見たものを魅了し、従わせてしまうという恐るべき効果である。そしてそれは確かに効果を発揮し、諸葛亮に懐柔された楊鋒が朶思大王を捕える故事にならうかのごとく、魔獣の一部が味方を裏切り、他の魔獣を門へと押し戻させたのだ。
「どうやら魔獣にも|豊乳女神《チチガミサマ》のすばらしさが分かっていただけたようで何よりですねぇ」
 微笑みつつもるこるはさらに神器を大量展開して魔獣たちに猛攻を加えたが、あるいはいかに神の奇跡とはいえ、魔獣たちが万全の状態だったら結果はどうだっただろうか。アリスのユーベルコードで精神に異常をきたしていた事で、魅了が通りやすくなっていた可能性は否定できないかもしれない。

「折角の機会ですし、一頭くらい捕獲したいですが」
 自身の魅力に魅了された魔獣ならあるいは従順になっているため持って帰る事も可能かもしれない。そんな期待をるこるは抱いたが。
「あー、それはどうかしらねえ」
 アリスは否定的だった。
「だって、頭セカンドカラーになった子が、あなたみたいな子に本当になつくかしら?」
「言われてみればそうかもですねえ」
 精神がアリスに近づいた者は当然ぺたん娘好きに傾くだろうし、一方でるこるへの魅了は豊満体形への魅了であろう。相互作用で魅了効果を増強はしたが、一方で本来相容れぬ者同士、打ち消し合う関係にあったのも間違いはない。残念ながらお持ち帰りは無理なようだ。これにはさすがにるこるもあきらめざるを得ない。
 それでも戦況は間違いなく猟兵有利に傾いている。朶思大王の大軍は確実に門へと押し込まれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イリスフィーナ・シェフィールド
毒ですか、先のバシュムとは相性悪そうで挑まなかったのですよね。
でもまぁ流石にあれほど強力ではないでしょうし最近発現したユーベル・コード使えばなんとかできますでしょう。

というわけで真の姿(イェガーカード参照)に変身してアイシクル・レインですわ。
毒爪や牙もしくは液体を吹きかけてくるにしろ全て凍らせてしまえば問題ないでしょう。
全てカチンコチンにした上で砕いて差し上げますわ。



●道はひとつではない
 今回の相手である南蛮の魔獣、朶思大王についての情報を聞き、イリスフィーナ・シェフィールドは悩んでいた。
「毒ですか……」
 相手がただの魔獣であれば右ストレートでぶっとばす真っすぐいってぶっとばすで行けば良かった……まあそれでなんとかなる相手ではないのかもしれないが、そも真っ向からの力押しというのは選択肢にもある立派な戦略なので、案外どうにかなるかもしれない。ただやはり毒というのは気になるところである。直接ダメージ系か、デバフ系か、それとも……。
「先のバシュムとは相性悪そうで挑まなかったのですよね」
 単純に比較できるわけではないだろうが、それでも直近の半端ない毒使いとして名の挙がった異世界の化け物との戦闘を回避したという『実績』を思い出し、改めてイリスフィーナの表情に逡巡の色が浮かぶ。むろん苦手分野を無理にやる必要はなく、他の猟兵に任せて撤退するというのも無駄な赤丸を回避するという点では立派な戦略だ。だが、最初から回避を決めていたならともかく、敵を倒すと決めてここまで進んでおいて、いざ苦手な敵が出てしまったから撤退しよう、と考える事はイリスフィーナにとっては不本意なようであった。
「……でもまぁ流石にあれほど強力ではないでしょうし……」
 そうであってほしいという期待も込みで、イリスフィーナは南蛮門の前に立った。だがそれはただの希望的観測のみではない。こんなこともあろうかと用意があったのだ。
「最近発現したユーベル・コード使えばなんとかできますでしょう」
 イリスフィーナのとった手段は先の猟兵とは真逆であった。先の猟兵は魔獣の精神の切り崩しを狙い、そのために多数のスキルやアイテムを積み重ねて土台とし、その上にユーベルコードを立てたのである。だが世の中正解はひとつではない。三国志演義において朶思大王の住む禿竜洞に続く道は本来ふたつあったが進みやすい方が封鎖されたために蜀軍は困難なもうひとつの道を進まねばならなかった。だが、ふさがれた道を無理やり再開通させる方法もあったのではないだろうか。イリスフィーナの選んだ方法はいわばそういう事だったのかもしれない。イリスフィーナは姿を変えると薄青と純白の着物に身を包んだ。ハロウィン仮装にも使える真の姿である。そして高らかに叫んだ。
「吹けよ氷雪!降り注げ氷柱!アイシクル・レインですわッッッ」
 魔獣そのものの爪牙や剛力であろうと、それが放ってくる毒が爪や牙に含まれていようと気体あるいは液体の形で飛ばしてくるものであろうと、全て凍らせてしまえば解決だ。搦め手で崩すとか、スキルやアイテムを重ねるとか、そんな手段などには頼らない。パワーイズジャスティス!自分はこの闘いでなに一つ負い目はねぇッ その気負いッ その自尊心こそが拳に力を呼び勝ち目を呼ぶんだッッッと言わんばかりのユーベルコード一点勝負である。そしてイリスフィーナの気合が乗った氷の柱が大量に魔獣たちへと降り注ぐと、魔獣たちは次々と凍り付き、その動きを止めていった。果たして小細工を使わずユーベルコード一本で戦ったのが功を奏したのか、それとも先の猟兵が敵にダメージを与えていたのが続くイリスフィーナの攻撃を通しやすくしたのか、それはなんとも言えない。ただ言えるのは。
「ふう、どうやらうまくいったようですわね」
 魔獣を押し戻すという結果が得られた。その事実を前に、原因などなんだって良いではないか。イリスフィーナの笑顔はそう語っているようにも見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神城・瞬
妹の奏(f03210)と参加

あの戦争の終盤に出てきた張角も勢いのある大軍勢で押し切る戦法を取ってきましたね。かなり相手方が追い詰められてるのが伺えます。でもこれ以上進ませる訳にはいきません。蹂躙はさせませんよ。奏、いきましょう。

決戦配備;ジャマー発動!!【高速詠唱】で朧月夜の狩人を発動し、大量の狩猟鷲を飛び回らせて敵の狙いを分散させます。僕自身は【マヒ攻撃】【鎧無視攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【凍結攻撃】を【範囲攻撃】で展開して敵の攻撃を阻害していきます。

【残像】【オーラ防御】【心眼】で敵の攻撃を凌ぎながら【衝撃波】で敵軍を蹴散らしていきます。これ以上の侵攻、阻止させて貰います!!



●たとえば君がいるだけで心が強くなれること
 仲間とは良いものだ。ひとりでは戦えぬ相手、それは例えば単体の超絶強者だったり、あるいは大軍だったりするが、ともあれ複数でかかればなんとかなる事もある。実際猟兵はそうやってこれまで激戦を戦い抜いてきたのだ。ましてやその仲間が長い付き合いであり、さらに最愛の相手であるならそれは千万の精兵を得たにも等しく、これほどに心強いものはない……
「……」
 はずであった。だが現在、神城・瞬(清光の月・f06558)は単騎にてこの戦場に立っていた。合流するはずだった相方はどうしているだろうか。遅れているのか、それともこの戦場の他の場で既に戦いを始めているのか。それはわからない。ただ言える事は、刻一刻と変わりつつある戦況を前にして、どうやら瞬にはこのまま最愛の義妹を待つ時間はそれほど与えられてはいないようであった。
「あの戦争の終盤に出てきた張角も勢いのある大軍勢で押し切る戦法を取ってきましたね。かなり相手方が追い詰められてるのが伺えます」
 攻撃に出る前に、改めて瞬は戦況を確認した。その言葉通り、猟兵たちは韓信を確実に追い詰めていた。それだけではない。韓信が繰り出そうとした南蛮の魔獣も猟兵は間違いなく追い詰めつつある。だが、いや、だからこそ。猟兵は攻撃の手を止めるわけにはいかない。万が一ここから逆転などされた日には封神武侠界はたちまち危機に陥る事だろう。
「……さすがに時間ですね。これ以上進ませる訳にはいきません。蹂躙はさせませんよ」
 もはや待つ時間は終わった。最後の反撃を行おうとする朶思大王の群れに、瞬は勇躍して飛び込んでいった。
「さて、この子らの攻撃に耐えれますか?」
 走りつつユーベルコード【朧月夜の狩人】を高速で発動させ、144匹もの鋼鉄の翼を持った鷹を呼び出した。鷹は大空を飛び回り、各々がそれぞれ別の標的を目指して突撃していった。隊列らしきものを組んで突撃を敢行しようとしていた朶思大王たちもこれには隊列を崩さずを得ない。
「よくやってくれてますね。では僕もいきます!」
 空飛ぶ鷹に対して朶思大王は猛毒を飛ばす事で落とそうとするが、それをさせるわけにはいかない。瞬が六花の杖を振りかざすと氷の結晶が広範囲に飛び、朶思大王を凍らせてその動作を封じ、視界を妨げていった。対空攻撃がうまくいかないと見るや、朶思大王たちはその目標を瞬へと向けるが、残像を分身の術のようにばら撒きつつ移動する瞬をなかなか捉える事ができない。それでも広範囲に広がる毒はその一部を瞬にまで届かせていた。
「くっ……南蛮王の名は伊達ではないということですか、ですが」
 大挙して放たれれば封神武侠界全土を蝕みかねない猛毒であったが、心の目とオーラによる防御で大量にかぶる事は免れた事、敵もこれまでの戦いで消耗していた事で、瞬はどうにかこの厄介な毒に耐えた。何よりも心の底から想う相手の存在が、瞬に猛毒に耐える力を与えてくれた。今、ここで倒れるわけにはいかないのだ。
「……ふうううううう……破っ!」
 呼吸を整え、瞬が霊符を掲げると衝撃波が発せられ、今も狩猟鷹の攻撃にさらされ続けている朶思大王たちを押し戻していった。

 各所での猟兵たちの必死の攻勢により、やがて朶思大王たちは南蛮門のむこうへと押し戻されていった。これで当分は大丈夫であろう。
 残された敵は韓信、ただひとり。誰もがそう思っていた……それは半分は正しく、半分は間違いであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『韓信大将軍』

POW   :    楽浪郡勇士集結
レベル×1体の【神器で武装した楽浪郡の勇士(異世界人)】を召喚する。[神器で武装した楽浪郡の勇士(異世界人)]は【他世界】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    南蛮魔獣集結
自身の【召喚した、南蛮界の魔獣の軍勢】に【背水の陣】を宿し、攻撃力と吹き飛ばし力を最大9倍まで強化する(敗北や死の危機に比例する)。
WIZ   :    三国武将集結
【偉大なる三国時代の武将達】の霊を召喚する。これは【生前に得意とした武器】や【韓信大将軍に与えられた『神器』】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:瑞木いとせ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●背水の陣
『とうとうここまで来たか、猟兵よ』
 神器を与えた配下。南蛮の魔獣。これらをことごとく退け、ついに韓信を追い詰めた猟兵たちだったが、韓信はあくまで落ち着き払った態度を崩そうとしない。
『だが、私はまだ敗れたわけではない』
 その通りだ。韓信を真に破るためには、前述した通り12月27日までに20回打倒しないといけない。現時点で何度破れたかは定かではないが、そのうちの1回を積み重ねないうちは、少なくとも勝ったとは言えまい。
『今日、猟兵を破って、会食をしようではないか』
 韓信の言葉と同時に、どこからともなく大軍が現れ、韓信を追い詰めたはずの猟兵を逆に包囲せんとする……。

 さてこれまでの第1章・2章同様、韓信も数多くのギミックを用いて猟兵を迎撃にかかるだろう。
 まず、国士無双と呼ばれた韓信は確実に猟兵の先手をとってくる。すなわち猟兵がいかなる手段を用いても、韓信のユーベルコードによる先制攻撃そのものを止める事はできない。猟兵は必ず一度は「自身のユーベルコードに頼らず」に韓信の先制攻撃を防がなければならないのだ。
 次いで韓信は【双炎の拳士】の大軍を引き連れている。拳士軍団は近距離戦では両の拳に炎を纏わせて殴り、遠距離戦では炎を飛ばしてくる。自らを評し「多多益善(率いる兵が多ければ多いほどうまく使いこなす事ができる)」と豪語した韓信により率いられた拳士たちはよく統制のとれた動きで猟兵を包囲殲滅せんとするだろう。これも韓信の先制攻撃に含まれるのだ。これにも対応しなければならない。

 韓信の用いるユーベルコードは以下の3種類だ。
【楽浪郡勇士集結】……楽浪郡は神隠しによって多くの人が異世界から飛ばされてくるという不思議な土地であり、韓信はその楽浪郡出身の者たちを部下として使役している。自らを評し「多多益善(率いる兵が多ければ多いほどうまく使いこなす事ができる)」と以下略。なお『異世界人』は基本的には『機関銃を持った軍人』となっているが、プレイングの字数に余裕があれば来た世界を予想(指定)するのもおもしろいかもしれない。ただし「絶対戦えない人を指定して弱体化させよう」という試みは戦術の天才である韓信には通じないものと思った方が良いだろう。
【南蛮魔獣集結】……猟兵達によって南蛮門に戻されたと思われた【朶思大王】たちだったが、その一部は韓信が回収し、使役に成功していた。猟兵たちに追い詰められた事で魔獣たちはその攻撃力と吹き飛ばし力を超絶強化している。その様は韓信自身が経験した【背水の陣】のようではないか。当然毒も強化しているであろう。さらに危機的状況が増せば増すほどその力も強くなるのだ。従って戦いの後半にこの選択肢を選ぶならば相当な覚悟が必要となるだろう。
【三国武将集結】……韓信は三国志の将の中から自らの主君を探すつもりであったがそれはなしえなかった。しかし武人としては韓信の眼鏡にかなう者もいたようで、そういった者たちを呼び出し、さらに【神器】を与えて戦わせるようだ。かの戦争を体験した者たちは当然強敵だろう。なお【三国志の将】は基本的には【呂布】、神器は持ち主と同時に自動攻撃を行う【ユグドラシルブレイド(複製)】となるが、プレイングの字数に余裕があれば武将や神器を予想(指定)するのもおもしろいかもしれない。ただし「絶対戦えない人や相性の悪い神器を指定して弱体化させよう」という試みは戦術の天才である韓信には通じないものと思った方が良いだろう(2回目)。

 繰り返すが、韓信の先制攻撃は【ユーベルコード】+【双炎の拳士軍団による包囲攻撃】である。この両方をユーベルコードを使わずに対応した後でないと、韓信本人と戦う事はできないのだ。

 以上、猟書家(正確には違うけど)のラストを飾るだけあって、かなり面倒な相手であるが、こいつを倒さない事には封神武侠界に、ひいては他世界も含めて平和は訪れない。その、なんだ。なんとかしてください。お願いいたします。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
正に名将、お相手願いますぅ。

『FAS』で飛行し上空に退避、『FPS』で戦場を把握し『FLS』『FMS』『FES』の多重防御を展開しましょう。
『双炎』に飛行能力は無く『軍人』も同様、攻撃手段は遠距離に絞れますので、『FLS』の空間歪曲で直撃を防いだ上で『軍人』の機銃は『FMS』のバリアを斜めに受流し、『双炎』の炎は『FES』の耐火結界で遮断して凌ぎますぅ。

可能になり次第【錺剿】を発動、戦場全体へ『超重力&存在吸収&拘束&自壊誘発』の多重攻撃を仕掛けますねぇ。
『双炎』『軍人』の誰かに微傷でも与えられれば全て連撃可能、『祭器』による攻撃は韓信大将軍に集中させ一気に叩きますぅ。



●溜め必殺技
 何度かの戦いを経て、夢ヶ枝・るこるが封神武侠界(正確には他世界の封神武侠界とよく似た国と言うべきか)の歴史に詳しい事が明らかになりつつある。当然、韓信という人の事もよく知っているようで。
「正に名将、お相手願いますぅ」
 敵手であっても偉大なる英雄に対し敬意をもって恭しく一礼をしたのであった。
『ほう、私も少しは名が知れているようだな』
 だからといって韓信が態度を変える事はありえない。むろん攻勢の手を緩める事も。
『ならばせっかくだ、私の軍略をとくと味わって故郷だか骸の海だかへの土産話にでもするが良い。自分はあの韓信と戦ったのだと言えば、負けたとて誰も責める者もおるまい』
 その言葉に合わせ、赤と黒の軍団が現れた。片や両腕を赤熱させた拳士の集団、片や軍服に身を固めて機関銃で武装した軍人の集団はまるで太極図を思わせる動きでるこるを包囲し殲滅せんとする。攻撃のタイミングを掴ませぬ隠形、一糸乱れぬ動き、そしてるこるがユーベルコードを用いる前に先制攻撃を鮮やかに仕掛けるさまはまさに国士無双の面目躍如と呼べるものであった。
「FAS!発動ですぅ!」
 るこるはユーベルコード発動までの時間をなんとしても稼がねばならない。そしてるこるにはそれを実現させるための大量の|神器《アイテム》がある。早速3対6枚の光の翼を展開させて大空高く舞い上がった。
『空に逃げるか猟兵、それでもひとつの手ではあるが』
 むろん韓信とてるこるがその手を取る事は想定していた。二次元の戦闘を繰り広げていた他世界における同時代の帝国と異なり、封神武侠界には飛行の手段は数多い。なればこそ、その対策も十二分に熟知していたのである。
『たしかに単純に包囲殲滅される事はなくなったかもしれないが、今度は四方八方からの攻撃を受ける事になる』
 そう。地上にいる時には前後左右に上を警戒すれば良かった。大地に足をつけている限り、余程特別な手段を用いない事には下から攻撃される事はないのである。が、空中ではその大地の守りがない。前後左右上下全ての攻撃を警戒しなければならないのだ。しかしるこるもそのような事は重々承知であった。そのデメリットよりも、相手の白兵戦を封じて遠距離攻撃一本に対処さえすればよくなるメリットを重視したのである。
「FPS!FLS!FMS!FES!一斉展開ですぅ!」
 FPSで戦況を逐一把握し、飛んできた弾は火炎弾だろうと弾丸だろうと全て防ぎきるというのがるこるの算段だった。むろん韓信もそれくらいの予想はしている。雨あられと飛び来る弾丸を全部回避するよりは防ぎきる事を考える方がまだ現実的だろう。
『おもしろい、その自信の程を見せてもらおう。封神武侠界の伝統芸と外世界の優秀な火器にどこまで耐えられるか』
 拳士たちが火炎弾を、軍人たちが弾丸を、一斉にるこるに撃ち込んだ。だがるこるの対策は万全で、飛んできたミサイルの多くはFLSの空間歪曲でその軌道を逸らしていった。そこを突き抜けた飛び道具に対してはFPSでその種別を瞬時に判断、弾丸はFMSのバリアの角度を調整して受け流すように防ぎ、火炎弾はFESの耐火炎属性結界をあわせ、見事に苛烈な攻撃を防いでいた。
『ふむ、なかなか優秀な|宝貝《アイテム》を持っているようだが、まるきりその性能頼りでもなさそうだな。彭越や英布あたりの足元を伺う程度の軍略はあるやもしれぬ』
 さすがにこれは韓信も軍人としてるこるにある程度は評価めいた発言をせざるを得ない。だが優秀な敵手に対して感心ばかりしてもいられない。韓信はすぐさま別の策を講じた。
『ならば一点集中砲火だ、いかな宝貝とて一か所に火力を集中すれば必ず撃ち抜ける。「泰山の|霤《あまだれ》は石を穿つ」だ』
 韓信が生きた時代と今の封神武侠界の間頃の枚乗なる者の言葉を引き合いに、韓信は陣形を変えた。四方八方からるこるを全方位射撃するのではなく、ただ一か所からの攻撃を行うための布陣だ。
「そうきますかぁ、それならぁ」
 ならばるこるもまた防御を一点に固めるだけである。来る方向は分かっているのでそれを全力で防げばよい。実に分かりやすい論理だ。あとは無敵の矛と無敵の盾のいずれがより強い無敵なのかを競うだけである。
『|射撃《撃て》!』
「出力フルパワーですぅ!」
 弾丸と火炎弾の大嵐が障壁と耐炎結界が一点に集中し、すさまじい轟音と閃光が沸き起こる。るこるの神器が悲鳴のような唸りを上げ始めた。限界が近いのかもしれない。るこるは相手の攻撃が尽きるまで耐える必要はない。ユーベルコード発動までの時間を稼げれば良いのだ。しかし、果たしてそこまでもつものか……。
『なんとしても猟兵にユーベルコードを使わせるな!その前に決着をつけるぞ!』
「も、もう少し、がんばってくださいませ……」
 双方にとって長いような短いような時間が続く。そして。
「大いなる豊饒の女神!」
 どうやら、るこるは耐えきったようだ。そして必殺のユーベルコードが炸裂する。
「あなたの使徒に『宝冠の加護』をお与え下さいませ!」
 そのユーベルコードの名は【|錺剿《マクナシノソウメツ》】といった。『錺』は金属の華やかで荘厳な飾り、『剿』は攻め滅ぼす事だ。マクナシノソウメツは『幕無しの掃滅』だろうか。たちまち戦場全体を破滅の領域が覆い尽くした。それは敵対する者に超重力で潰し、動きを止めた上で破壊し吸収するというもので、そこにさらに強化した祭器を展開して猛攻を加えるというものだ。加えて強力なのが、多段攻撃のどれかひとつでも命中すれば再度攻撃ができるというものであった。まさにのべつ幕無しに敵を掃滅する恐るべきユーベルコードであった。
『くっ!おのれ猟兵!』
 もはや韓信には精兵が瞬く間に蹂躙されていく様子をただ眺めている他にない。さすがの軍略の天才であっても自身も神器による攻撃を受けていては部下に指示を与える事もできまい。恐るべきユーベルコードを使わせる前に決着をつけるという韓信の方針はまったくもって正しかった。どうやらそれが証明された形になったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
|使い方《技能》

ふむふむ、包囲攻撃ね。まぁ、|多勢に無勢の中で生き残る生存技法には自信はあるの《サバイバル、継戦能力》。その上で|タイムフォールダウンで時間凍結して時間稼ぎ《高速詠唱早業先制攻撃詰め込み重量/凍結/マヒ/気絶攻撃身体部位封じ禁呪封印術》。
凌ぎきれたら|超次元の渦《多重詠唱拠点構築結界術》を展開。|追い込まれてパワーアップ《リミッター解除、限界突破》するのは私もよ、完全邪神|第一形態《集団戦術》で朶思大王と双炎の拳士軍団を蹂躙しましょう。
流石に韓信相手だと第三形態まで追い込まれるか。でも|エナジードレイン《大食い》で搾り尽くしてあげるわ



●その変身をあと2回もオレは残している……その意味がわかるな
 一敗地に塗れたと呼んでも差し支えない程の打撃を受けたように見えた韓信だが、そこはさすがに国士無双と呼ばれた男であり、猟書家(正確には違うようだが)の最後を飾るに相応しい実力の持ち主である。
『援軍を要請せよ!隊列を立て直せ!まだ戦いは始まったばかりぞ!』
 アリス・セカンドカラーが到着する頃には拳士の部隊はすっかりその規模と士気を取り戻していた。そんな敵手の様子を見てアリスが考える事といえば。
「ああいうおじさまも悪くないわねえ」
 それは相手が強大な敵であってもなお失われない余裕からか、それとも戦闘の事よりも純粋に眼前の男を評価する事を優先してしまったのか。それも敵手としての実力ではなく、容姿についての評価を。
『……一体何を言ってるのだこの状況下で』
 むろん韓信は敵が何を言おうと気にする事はない。ただ自らのやるべき事をやるだけである。たちまちのうちにアリスは大軍に包囲されていた。先刻と同じ双炎の拳士の軍団に、今回はつい先程アリスが相対した南蛮の魔獣、朶思大王の群れが加わっているのだ。朶思大王を猛毒の壁として、そこに拳士たちがアリスを追い込む形となっていた。
「ふむふむ、包囲攻撃ね」
 アリスとてユーベルコード使用が間に合わないタイミングで敵の先制攻撃が来る事は知らされていた。あるいは韓信の容姿に言及したのは、どうせ準備しても後手に回るんだからそれなら敵の顔でも眺めていた方がよほど有意義だという考えでもあったのかもしれない。さらに言うなら、この状況に対してまるきり無策というわけではなかったのである。
「まぁ、多勢に無勢の中で生き残る生存技法には自信はあるの」
 根拠のない自信ではない。アリスは常日頃から非常に大量の技能を組み合わせて混沌魔術なる独自の使い方をする事に習熟しているようだ。それなので当然ユーベルコードなしで敵の先制ユーベルコードに対抗しなければならないという事態にもかなり慣れていたように見えた。
『ふむ、飛ぶわけではないようだな、ならば総員、炎を壁と為せ』
 アリスを観察していた韓信はすぐさま新たな指示を出した。それに従い、双炎の拳士たちは両の腕より出した炎を自らの前方に固定させた。いわば動く炎の長城だ。これにより、アリスは拳士が作った炎の壁に三方を、魔獣が自らの体で作る毒の壁に残りの一方をふさがれた状況にある。文字通り、蟻のはい出る隙間もない完全包囲だ。それに対しアリスは。
「|時間《Time》|凍結《fall down》!」
 つい先刻の曹豹戦でも見せた時止めだ。いくら多数の技能を用いたからといって本当にそんな事ができるのかといえば、できる。できるのだ。猟兵だから。
『ほうほう、だがそれからどうする気だ?』
 とんでもない大技を見たにも関わらず、効果範囲外だったのか術を破ったからかは定かではないが、なんか動ける韓信は感心しつつも(ダジャレではない)あくまで冷静だった。
『確かに壁の侵攻は止まった。だがお前がそこから出られない事に変わりはない』
「そうねえ、それならそれで構わないんだけどね」
 むろん時を止めた事で敵の包囲から逃れられれば最善だっただろう。だが朶思大王を用いた物理的な壁は時止めでは壁抜けはできない。一方炎の壁は、本当に時を止めたなら熱くないかもしれないが、疑似的な時止めだとあるいはわからない。また人の波をかきわけて進むのもなかなか骨だろう。それを韓信が黙って見ているとも思えなかった。それにアリスは無理に包囲を抜ける必要もない。要はユーベルコードが発動するまで時間を稼げれば良いのである。
『だがそんな大技、そうそう持つものでもあるまい。手品が解けたら炎と毒の壁がたちまちお前をすり潰すだろう』
「そん時はそん時よ」
 余裕めいた事を言いつつもアリスとてそこまで余裕があるわけでもない。だがユーベルコード発動が間に合う事を信じて時間稼ぎを続ける以外アリスに道はなかった。
 そして。
「完全邪神!」
 突如、アリスの周囲に超次元の渦が展開された。
『くっ!ユーベルコードか!』
 韓信はすぐさまそれを察知した。間に合わなかったか。果たしてアリスの技は広範囲攻撃か単体超絶強化か。いずれにせよやる事は決まっていた。
『拳士隊前進!朶思大王隊も動き出せ!完全に発動する前に押しつぶすのだ!』
 ユーベルコード発動した時点でもはや時間凍結は無用となったようで、自由に動けるようになっていた韓信配下は炎の壁と毒を纏った体当たりでアリスを叩き潰さんとする。だが。
「第一形態発動!」
 答えを言うならユーベルコード【|完全邪神《アリス》の淫蕩なる領域】は韓信の予測にあった単体超絶強化だった。ただ韓信の予想を上回る事があるとすれば、第一形態は一対多の戦いに特化した強化ということだった。韓信の眼前で瞬く間にアリスは拳士たちを蹂躙していく。
『なるほど、さすが一筋縄ではいかないようだ、だが』
「あれ?第一形態だけでそっちもやっちゃうはずだったんだけど」
 予定外の事にアリスは首を傾げた。朶思大王たちはアリスの予想を上回り頑強であり、アリスの攻撃を毒の体当たりによる吹き飛ばしで相殺し、逆に攻勢を仕掛けてきたのだ。
『これぞ我が背水の陣の威力よ』
 窮地に陥れば陥る程強くなる背水の陣が、アリスのユーベルコードに反応して朶思大王たちを強化していたのだ。だがアリスはいまだ第一形態だ。てことはまだ続きがあるわけで
「追い込まれてパワーアップリミッターするのは私もよ。第二形態発動!」
 限界突破を果たしたアリスの強化は朶思大王の強化を上回り、さしもの魔獣たちも次々に倒れていった。そしてアリスは韓信に肉薄する。
『なんたることだ、帥たる者が自ら刀を抜く事になろうとは』
 それでも韓信は大剣を抜くとアリスの攻撃を受け止めた。残された手段は自ら背水の陣を敷き、アリスの猛攻を防いでいる間に朶思大王の生き残りに背後を突かせるだけである。だが。
「流石は韓信ね、わたしに第三形態を使わせるのだから」
 まだあと1回の変身を残していたアリスのリミッターが解除される。
「感心感心、韓信なだけにね」
『お前は何を言ってるんだ』
 さすがに狼狽の色を隠せない韓信に対して、アリスは両手を合わせた。
「では、残さずいただきます」

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・奏
兄の瞬(f06558)と参加

戦場に行こうとしたら迷子になっ・・・(言い終わる前に軽く杖でポコッと殴られる)ごめんなさい。その代わり壁の役目はきっちりと果たしますので。

あっちからは機関銃の攻撃、反対側からは燃えてる拳士の集団ですか・・UC展開してる暇はなさそうですね。【オーラ防御】【武器受け】【盾受け】【拠点防御】【受け流し】【受け流し】【ジャストガード】・・・【吹き飛び耐性】、【火炎耐性】【激痛耐性】!!全て動員して受け切りますよ!!お、重い!!でも意地でも踏ん張りますよ。

凌いだらゴーレムマテリアイズ発動!!さあ、どこからでも攻撃こい!!【怪力】+【シールドバッシュ】で韓信を全力で殴ります!!


神城・瞬
妹の奏(f03210)と参加

まあ戦場で混乱してますからね。さすがに一人は辛かったですよ。全く。(杖で軽く奏の頭を叩く)双方から軍団が迫ってますか・・・説教は戦いが終わった後にしましょう。

【マヒ攻撃】【鎧無視攻撃】【捕縛】【目潰し】【部位破壊】を併せた【凍結攻撃】を伴った【結界術】を【高速詠唱】で展開!!軍団の足止めを!!僕自身は【オーラ防御】【第六感】【心眼】で攻撃を凌ぎます。

奏が耐えてくれています!!軍団さえ凌げば後は韓信のみ!!また大軍団繰り出してくる前に【高速詠唱】【全力魔法】【限界突破】で全力の氷晶の矢を突き刺しますよ!!



●何より大切なものを気付かせてくれたね
 どうにか単騎で南蛮の魔獣との戦いを切り抜けた神城・瞬の目にも今やはっきりと韓信が映っていた。連戦によるダメージは多大なはずであるが、それでもまだ韓信は健在だ。さすがにこれと単騎で戦うのは歴戦の猟兵である瞬であってもためらわれた……が。行くしかない。杖を握りしめ、瞬が決意を固めようとした、その時。
「兄さん!」
 待ち望んでいた声に振り向くと、果たしてそこにいたのは真宮・奏(絢爛の星・f03210)だった。本来なら南蛮門で合流しているはずだったのになぜに遅れてきたのか。心配しましたよと言う前に奏が。
「戦場に行こうとしたら迷子になっ……」
 ぽかり。思わず瞬は杖で奏の頭を小突いていた。
「まあ戦場で混乱してますからね。さすがに一人は辛かったですよ。全く」
 まあでも迷子なら良かった。何やら妙なアクシデントに巻き込まれたとか、どこか他の所で戦ってたとか、そういう物騒な理由がなかっただけでも良しとしておこう、とは思っても瞬は口にする事はなかった。強敵を眼前にしてそんな事言ってる場合じゃないのもあったが、何よりここは甘い顔を見せない方がいい場なのだ。
「ごめんなさい。その代わり壁の役目はきっちりと果たしますので」
「お願いします、説教は戦いが終わった後にしましょう」
 瞬が甘い顔を見せられないのは奏だけにではない。ついに対峙した難敵に対しても同じ事であった。
『今度の猟兵は複数か、なるほど理に適っている』
 1人でも強い猟兵が2人とあっては並の者なら顔に恐怖や焦燥のひとつも浮かべるかもしれない。だがオブリビオンには基本それがない(応用的にはあるかも)。とりわけ国士無双と呼ばれた程の韓信ならばなおさらである。特に今回の韓信は猟兵の数を恐れないだけの根拠があるのだから。
『だが、それでもなお数の優位はこちらにある』
 言葉とともに現れたのは、数度壊滅したはずであるがいまだに全滅する気配もなく士気軒昂な双炎の拳士の大軍。そして楽浪郡において雇用したと言われている、機関銃で武装した軍人たち。韓信の率いる兵は統制の取れた動きで瞬く間に瞬と奏を包囲した。
「あっちからは機関銃の攻撃、反対側からは燃えてる拳士の集団ですか……ユーベルコード展開してる暇はなさそうですね」
 事前には聞いていたが、本当にいったいいつの間にこの大兵力を展開したのか。それでも冷静に奏は戦況の把握につとめた。
「壁役は任せます、僕は……」
 言おうとした瞬だったがそこで言葉は止まった。新たな者がひとり、敵軍に加わるのが見えたのだ。
『待ちかねたぞ』
 赤兎馬に跨り、方天画戟を構えた武将といえば……三国志最強の将と呼ばれる者。その横に浮遊している大剣はユグドラシルブレイドの複製とやらであろうか。
『待たせたな呂布よ、私は飛将軍(韓信の死後より後世の武将、李広の異名)とやらを見た事はないが、その者に例えられたという武を存分に振るうが良い』
『貴様の言う封神台とやらになど興味はないが、武の振るいどころを与えてくれた事には感謝しよう』
 そして改めて呂布は瞬と奏に向き合った。
『猟兵とやら、貴様らなら俺の渇きを満たしてくれるのだろうな』
「……奏」
 険しい顔をして、瞬は義妹の方を見た。本来、奏がタンク役として敵軍を引き付けて、そこを瞬が大規模な攻撃で敵の妨害を行ってユーベルコード解禁まで待つ算段だったのだが、状況が変わってしまった。
「ちょっと予定より負担をかけてしまいそうですが、なんとかお願いします」
「……任されました、兄さん」
 さすがの奏とて、大軍に加えて呂布の攻撃まで受けきるのは荷が重いなどというレベルではない。呂布の攻撃は瞬がどうにか対処しなければなるまい。その上で瞬には大軍の妨害もしなければならなかった。韓信とは別種の強敵を前に、果たして敵軍の妨害に労力を割く余裕などあるだろうか?だが、やらなければいけない事であった。韓信の野望を打ち砕き、ふたりで一緒に無事に生還するためにも。
「来ます!」
「はい!」
 方天画戟を振りかぶり、呂布が瞬に襲い掛かる。同時にユグドラシルブレイドも唸りを挙げて飛んでくる。そして奏の方には大軍が殺到してきた。

 所説あるが、人間ひとりを同時に攻撃できる人数は最大4人なので、4人と同時に戦う事ができれば敵が何百何千人いようと関係ないとか言われている。むろん相当なスタミナがあれば、という前提ではあるのだが。
「来なさい!」
 奏は剣に鎧に盾とフル装備だ。それらを防御に使う算段である。四方から襲ってくる拳士の攻撃を盾で、剣で、あるいは鎧の特に分厚い部分で受け止め、ダメージを最小限に抑える。燃える拳の熱は肌が焼けるような感覚を与えてくるが、炎への対策も施してある。要は敵を攻撃する必要はない。ユーベルコードが使えるまで耐えればいいのだ。
『女とはいえ、なかなかの武者ぶり』
 韓信が生きていた頃、記録の上では女性の戦士の存在は確認されていないようだ。同時代に見られなかった女戦士の姿に韓信は感心しつつ(ダジャレではない)同時に珍しい者を見る目をした。
『だがせっかく封神武侠界には存在しない銃だ、活かさないのは勿体ない。狙い撃て』
 奏を取り囲む拳法使いの間を縫うように、軍人が銃を撃ち込んできた。確かに封神武侠界の火器といえば火竜砲なる大砲になるのでこんな風に使ったら味方を巻き込んでしまうだろう。銃であっても味方を誤射する可能性はおおいにあるだろうが、そこは韓信の類まれな軍略がゆえに楽浪郡の軍人たちはうまいこと奏のみを狙い撃っていた。
「……くっ!お、重い!!」
 奏は闘気を全身に張り巡らせて障壁とし、どうにか弾丸を受けたが、やはり状況は苦しい。痛みに耐える訓練は積んではいるが、それでもダメージは確実に奏の体力を奪っていく。それでも奏は気合を入れた。
「で、でも……意地でも、踏ん張りますよ……」

『|殺《シャア》!』
 襲い掛かる呂布。この難敵の攻撃をユーベルコードなしでしのぎ切らねばならない瞬は、まず名が示すような素早さで結界を張り巡らせた。ユーベルコードは間に合わないが、この程度の小細工はどうにかできる。
「凍れ!」
『む?』
 結界に踏み込んだ呂布の全身がたちまちのうちに凍り付いた。それは呂布の体温を奪い、身体の動きを封じて拘束し、また冷気は視界をも奪ってくる。むろん呂布ならばこの程度はたちまちのうちに振り払ってくるだろうが、少しだけでも時間を作る事が重要なのだ。その時間で再度結界を作り、今度は奏を攻撃している大軍の動きを封じるために使う。そうすればさらなる時間を稼ぐ事も……。
「……っと!」
 その時間は瞬には与えられなかった。ユグドラシルブレイドが飛んできたのだ。かの神農兀突骨が用いていたオリジナルはそれがかすっただけで致命傷になるという恐るべき威力を持っていた。複製ならばそこまでの威力はないだろうが、それでもくらいたくはないものだ。敵の動きを注視していたために瞬はこの必殺剣をどうにか回避できたが、そこに呂布が襲いかかって来たのだ。
『味な真似をしてくれる、だがこの程度でこの呂布が防げるとは思ってはおるまい』
「できれば防ぎたかったんですけどね」
 それでも呂布には確かに冷気の影響がある……瞬はそう思いたかった。直感と観察をもって呂布の猛攻とユグドラシルブレイドの連続攻撃を回避し、回避し、回避し、とにかく回避する。わずかな間隙に冷凍の結界を作りつつ、必殺の攻撃を紙一重で回避し続けた。
『どうした猟兵、逃げてばかりではいずれ死が待つのみぞ』
「……わかってますよそんな事」
 呂布の挑発にも瞬は動じない。
「……もうすぐ、ちゃんと相手できますから」

 突然、戦場を冷気が襲った。それは双炎の拳士の炎を弱らせ、軍人の銃の働きを鈍らせ、そして兵たちの動きを鈍らせていった。
『落ち着け!冷静になるのだ!』
 ともすれば混乱に陥りそうになる兵たちを韓信は必死で抑えるが、なかなか簡単には平静に戻りそうにはない。皆の中でただひとり、奏だけが何が起こったかを把握していた。
「……ありがとうございます、兄さん」
 攻め手が鈍った事で、奏が敵の攻勢に耐えるのもかなり楽になってきた。そして。
「ゴーレムマテリアライズ!発動!」
 ついに奏のユーベルコードが発動したのだ。その全身がオリハルコンの装甲で覆われ、戦場に巨大なゴーレムが顕現したのである。これまでのウップンを全て晴らすがごとく、奏は叫んだ。
「さあ、どこからでも攻撃こい!!」

 その声は瞬にも届いていた。
「……どうやら、奏は耐えきったようですね」
 安堵の笑顔を見せた瞬。だがそれはすぐに消える。まだ倒すべき敵が眼前にいるからだ。
「軍団は奏に任せるとして、私は……」
『ほう』
 睨みつけてくる瞬を見て、呂布は凶暴な笑みを浮かべた。
『どうやらやる気になったようだな、猟兵』
「大変お待たせましたね」
 方天画戟を握りなおした呂布に、改めて瞬は向き直った。奏と時を同じくして、瞬のユーベルコードもまた発動できる状態になっていたのだ。
『|殺《シャア》!』
 赤兎馬を駆り、ユグドラシルブレイドと同時に襲いかかって来る呂布に、瞬は持てる以上の全力を叩き込む気合で必殺のユーベルコードを撃ち込んだ。
「さて、この【氷晶の矢】を見切れますか?」
 瞬の言葉と同時に、700本を超える氷の矢が呂布めがけて飛んでいった。

「それっ!」
 大軍を突破した奏の巨大な拳が韓信に叩き込まれた。その傍らには呂布。彼もまた瞬によって追い込まれていた。
『飛将軍とやら、噂に聞いた武勇はこの程度かね』
『誰に物を言っておる、戦いはまだこれからだ』
 顔を抑えながら耐える韓信に毒づかれながらも戦意衰えぬ呂布だったが。
「いいえ、もう戦いは終わりです」
 これ以上抵抗される前にと、瞬は韓信と呂布の両方を巻き込み氷晶の矢を撃ち込むのだった。

 仲間とは良いものだ。ひとりでは戦えぬ相手、それは例えば単体の超絶強者だったり、あるいは大軍だったりするが、ともあれ複数でかかればなんとかなる事もある。ましてやその仲間が長い付き合いであり、さらに最愛の相手であるならそれは千万の精兵を得たにも等しく、これほどに心強いものはない……瞬と奏、このふたりのように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イリスフィーナ・シェフィールド
むむむ、またも大量に出てきましたわね。
四方八方を囲まれてはたまりませんし空中に急上昇します。
飛んでくる炎を炎熱耐性で軽減し銃弾と合わせて
オーラ防御とブレイズ・スラッシャーで武器受けしつつ空中機動で回避しながら距離を取ります。

敵の攻撃が止みましたらシャドウ・モードを発動。
副次効果で敵が混乱してる隙に韓信にブレイズ・スラッシャーを投げて気をそらしつつ全速力で接近。
強化された蹴りで空中に打ち上げて邪魔されない所でエリアルコンボから
足を掴んで思いっきり回してから更に遠くに投げ飛ばし地面に叩きつけて
止めは背後から組技で首をギュっと絞めますわ、ジワジワとなんかせず怪力でもって一気に首をへし折ろうとします。



●光の中の影
『くっ、この韓信とした事が』
 これほどまでに追い込まれたのはそれこそあの時以来だろう。讒言にて閑職に追い込まれ、謀反を企むも露見して処刑されたあの時。だがあの時と異なる事も確かにある。あの時は謀反は企めど率いるべき兵もなかった。そのため囚人を開放して兵として使おうと考えていたのであったがその前に捕らえられたのである。今は違う。何度壊滅しようとなお韓信自身が折れるまではこうして次々に大軍が現れるのだ。
『この韓信、そう何度も猟兵などに後れを取ることなどない、かかってくるが良いわ』

「むむむ、またも大量に出てきましたわね」
 イリスフィーナ・シェフィールドもこれまでの猟兵同様、気が付いた時には既に四方を両腕を赤熱させた拳法家たちと機関銃で武装した兵士たちに取り囲まれていた。先刻戦った魔獣の群れ、その前に戦った血盟軍団員も多数だったが、今回の数はその比ではない。そして事前情報で聞いていた事ではあったが、韓信の大軍の展開があまりに速過ぎ、イリスフィーナにはこれに対抗するためにユーベルコードを発動する時間を与えてはもらえなそうだ。
「四方八方を囲まれてはたまりませんわ!」
 軍勢に前後左右をふさがれてもなお空中は残っている。イリスフィーナが羽衣のようなマントをはためかせ、空へと活路を見出したのは当然の流れであった。大空高く飛翔し空へと逃げるイリスフィーナを、むろん韓信は黙って見送ったりはしない。
『撃て撃て!猟兵を落とすまでひたすら撃ちまくるのだ!』
 これは別の猟兵戦でも見た光景だ。繰り返しになるが、空を飛べば確かに大軍に四方八方から攻め込まれる事はない。その代わりに前後左右に加えて上下(まあ上から来る事はめったにないだろうが)も加えた文字通りの全方位からの遠距離攻撃に対処しなければならないのだ。
「ですがそれも覚悟の上ですわっ」
 イリスフィーナもまた、地上で白兵戦と銃撃の両方に対処するよりは、銃撃に対する負担は増すが相手の白兵戦を封じる選択をしたようだ。そして炎と物理の弾丸に耐える覚悟を決めたイリスフィーナの意思を示すかのようにその全身をオーラが覆う。そんなイリスフィーナに早速苛烈に炎の弾が撃ち込まれるが、さすがにイリスフィーナとて空中でただ突っ立っているだけではなく、小回りを利かせつつ飛び回る事では敵の狙いを外そうとした。しかし物量の前にそれはささやかな抵抗でしかなく、確実に炎の弾はイリスフィーナの体を捉えている。
「うっとーしいですわ!」
 手にした大剣を振り抜きイリスフィーナはそれらを切り払っていった。それでもなお払い斬れずに体で受けた分は耐熱効果を持つ全身を覆うオーラによりなんとか防いでいる。だが熱ではない純粋な破壊のエネルギーを持つ鉛玉には耐熱効果もさほど役には立たない。また火炎弾より小さい銃弾は回避も困難だ。
「くうっ、ですが短機関銃なら射程距離はさほどではないはず」
 イリスフィーナはさらに空へと飛んだ。重機関銃なら射程距離1kmになるが、人が持ち運ぶ以上それはありえまい。人が持ち運べる短機関銃ならせいぜい100mだ。あるいはもっと射程距離の長い|突撃銃《アサルトライフル》やら|狙撃銃《スナイパーライフル》やらを持っている者もいるかもしれないが、それでも飛んでくる弾丸が減るだけでもかなりマシだろう。数は減らしたとはいえ、それでもなお雨あられと飛び交う弾丸や火炎弾を回避し、斬り防ぎ、我が身で受け、イリスフィーナはその時までひたすら耐えた。
 そして。
「闇夜に沈む黒い影!シャドウ・モードですわっ!」
 イリスフィーナの姿が変わった……真の姿らしいがそれらしいイラストがないので『くノ一風の正義のヒロイン』という説明、シャドウ・モードという名前から勝手に想像させていただくと、やはり基本は黒だろう。で黒の忍者装束(着物あるいはぴっちりスーツ)に、胸元や足の部分に網目模様が見て取れるがこれはむろん網タイツではなく鎖帷子であろう。髪型はポニテだ。どういうわけだがくノ一は昔からポニテと決まっているらしい。まあ実際のイラストができるのを楽しみにさせていただきますということで。ともあれ、そういえば今の戦場って昼だっけ夜だっけ。決めてなかった。まあいいや、真昼の青空に黒い影が顕現したのである。それを見た軍勢はみな固まった。イリスフィーナの姿に恐怖を覚え混乱した……という事になっているが、むしろイリスフィーナの恰好を見るに、魅了されて動きが止まったんだと言われてもまったく疑問も出なさそうな感じがしなくもない。
『ええい!この韓信の兵がそのようなもので動きを止めるではないぞ!』
 さすがに猟書家の最後を飾る韓信だ。猟兵の姿に混乱も魅了もされていない。その怒号に軍勢はたちまちのうちに秩序を取り戻し、猟兵を叩き潰さんと改めて弾丸の嵐を浴びせようとする。だが既にイリスフィーナは動いていた。
「くらいなさいませっ!」
 いつの間にか韓信の近くまで来ていたイリスフィーナは手にした大剣を振りかぶると思いっきり韓信へと投げつけた。他の猟兵はユーベルコードを発動させたらまず大軍を撃破し、その後に韓信を攻撃するという流れをとっていたが、イリスフィーナは軍隊をガン無視して韓信一点に狙いをつけたのである。
『くっ!兵士たちよ!早く戻ってこい!』
「させませんわ!」
 飛んできた大剣を自分の大剣で弾いた韓信に、イリスフィーナは既に飛んできていた。兵士たちに囲まれる前に速攻でカタをつける。曹豹の時は手間取ったが、今度は同じ轍は踏むまい。
『おのれ!私が軍略だけだと思うな!』
 思い切り振られた韓信の大剣をかわすとイリスフィーナは韓信を思い切り蹴飛ばす。そして空中に浮かんだ韓信にジャンプで追いつくとまるで格ゲーのようなエリアルコンボを決めてみせた。こうなってはもはや軍勢に手は出せない……と思いきや。
『兵たちよ!私に構わず撃つのだ!この猟兵を叩き落せ!』
「そうはいきませんわ!」
 もはや助かる見込みがないと思ってか、それとも弾丸に耐える覚悟でか。自らのダメージを厭わず猟兵を撃つ指示をした韓信を、だがイリスフィーナは容赦なく地上へと投げ落とすと、さらに高速飛行でそれを追った。つい先刻までイリスフィーナと韓信がいた空間を、銃弾が空しく通り過ぎていった。
『……くっ、だが、まだ……』
「いいえ、もうこれで終わりですわ。骸の海とやらで後悔することですわね」
 地面に叩きつけられ、やっとの事で起き上がろうとする韓信の背後を取ると、イリスフィーナはその首にしがみつき、思い切り捻った。韓信の首が数回転すると、まるでシャンパンの栓のようにすっ飛んでいった。同時にあれだけいた大軍も最初からいなかったかのように消えていった。

(……この私が……このような所で……)

 果たして他の戦場において、韓信は何度倒されただろうか。それは確かに懸念すべき事だっただろう。ただ猟兵たちは確実に、20回のうちの1回を積む事ができた。今はそれを素直に喜ぶ事にしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年11月23日


挿絵イラスト