問いかける歌の名は
●平和の意味を教えてくれ
「問おう。諸君らに問おう、私は」
それは平和な|『須弥山型都市』《シャングリラ・シュミセン》の有頂天蓋の頂上、その頂点に立っていた。
『サロメ・サージェント』と呼ばれるオブリビオン『ノイン』は見下ろしていた。
街中に生きる獣人たちを。
彼らの生活を見ていた。
しかし、有頂天蓋の頂上に立つ己を認める者がいないこともまた理解していた。
だが、その問いかけに応える者があった。
いや、違う。
問いかけに答えたのではない。問いかけのかわりに彼女に叩き込まれたのは蒼炎と赤雷放つ二刀の斬撃であった。
宝貝である赤と青の刀の二連撃は確かに『サロメ・サージェント』の体へと叩き込まれていた。
しかし、目に見えない空気の層が、その蒼炎と赤雷を受け止めていた。
「【Q】宝貝による攻撃は私には届かない」
「……――ッ! なんだ、お前は!」
「お前、とは他人行儀な言い方をしてくれるじゃあないか、『フュンフ・エイル』。いや、『熾天大聖』と呼ぶのが正しいのかな、この場合は」
『サロメ・サージェント』が視界に捉えたのは、今しがた空より飛来し己めがけて二振りの刀の宝貝に一撃を叩き込んだ大鴉の獣人、戦闘義体を持つ『熾天大聖』の姿であった。
「名乗ろうか、『熾天大聖』。私は『始祖人狼の使者』、『ワルシャワ条約機構』より遣わされたオブリビオン。私の言葉は全て【Q】……」
「わけのわからないことを!」
再び放たれた斬撃は、しかし『サロメ・サージェント』に届かなかった。
呆れたように彼女は『熾天大聖』を見つめた。
「ガッカリさせてくれるなよ。言ったはずだ。【Q】宝貝による攻撃は私に届かない、と。そして、【Q】この『須弥山型都市』に『セラフィム』による戦乱を与える」
彼女の言葉が響いた瞬間、『須弥山型都市』の街中に現れるのは無数の体高5m級の戦術兵器である鋼鉄の巨人達であった。
『セラフィム』と呼ばれる赤い装甲を持つ鋼鉄の巨人たちは、胸部砲口を輝かせた瞬間、凄まじい熱線を解き放ち、街中を溶断してみせる。
さらに放たれるクリスタルビットが無数に展開し、建物を打ち砕く。
だがしかし、この『須弥山型都市』には多くのサイバー武侠や戦闘義体をもつマフィアや仙人、妖怪変化たちが無数に存在している。
戦うことにおいては、彼らの戦闘能力はずば抜けていた。
「なんだ、鋼鉄の巨人たちは……!?」
「強すぎる……! パンツァーキャバリアの比じゃあない……!」
物言わぬ『セラフィム』たちが放つプラズマブレイドの斬撃が次々と『須弥山型都市』の獣人たちを消し飛ばす。
炎が立ち上っていた。
それは熾火のようであった。熾烈なる戦いの炎。その揺らめく炎の向こう側に、その炎よりも赤き装甲を持つ『セラフィム』たちが行軍する。
其の様を見て『熾天大聖』は、大翼を羽ばたかせて一直線に地上へと急降下しようとする。
だが、その彼を『サロメ・サージェント』は白と黒の二丁拳銃でもって撃ち落とす。
「させると思ったかい、『熾天大聖』。私は君に絶望を与える者だ。君に『平和』など願わせはしない。そう願うことを許さない」
「『平和』を願って何が悪いんだ! 誰だって願っているはずだ。『平和』を! それを!」
「君が齎す、とでも? とんだうぬぼれだな。戦いがあるから『平和』がある。『平和』があるから争いが起こる。そして、戦いの根底にあるのは……!」
肉薄する『サロメ・サージェント』、『ノイン』は吐息さえ掛かる至近で『熾天大聖』と視線を交わし、その銃口を突きつけて引き金を引く。
「『熾天大聖』。君は『平和』への願いの根本にあるものを知らない。それを知らぬままに願うから歪んだことを知るがいい。君は、過去の堆積に歪めさせられるほどの価値すらない」
息を吸い込む。
「いいかい。『平和』の根本にあるのは、怨みだよ――」
●【Q】
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。獣人戦線において須弥山型都市にて『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオンが現れ、【Q】と呼ばれる謎めいた力を操って瞬く間に『須弥山型都市』を支配してしまう……そんな予知が見えました」
ナイアルテの言葉に猟兵たちに戦慄が走る。
儀式魔術【Q】。
それを操るオブリビオンの存在を猟兵達は知っている。
常闇の世界ダークセイヴァーにおいて、六柱のオブリビオン・フォーミュラの一柱、五卿六眼『ライトブリンガー』が手繰る力であった。
「『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオンは『ワルシャワ条約機構』に属する『サロメ・サージェント』……彼女を倒すには、皆さんの力を持ってしても足りないやもしれません」
それは恐るべき事実であった。
戦場となる『須弥山型都市』は、今まさに【Q】によって『【Q】この『須弥山型都市』に『セラフィム』による戦乱を与える』状況を付与し、体高5m級の戦術兵器、赤い『セラフィム』による一大侵攻に晒されている。
「……『須弥山型都市』に住まう獣人の皆さんの力を集結する以外にこれを退けることは難しいかもしれません。ですが、嘗て皆さんはこの都市に生きる人々を『信義』に基づいて助けています。ならば、皆さんの呼びかけに彼らは『友情』を持って応えてくれることでしょう」
とは言え、この状況に獣人たち全てが対応できるわけではない。
子供だっているだろう。
戦えない者だっているだろう。
そんな彼らを迅速に助けつつ、彼らに呼びかけることでサイバー仙人やサイキック宿星武侠、果てはヤクザ寵姫といった面々が加勢してくれるはずなのだとナイアルテは告げる。
「『須弥山型都市』を救った後は、獣人の皆さんと共に『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオンが座す『須弥山型都市』の天頂、有頂天蓋へと向かいましょう」
とは言え、今だそこには『サロメ・サージェント』、『ノイン』の取り巻きたるパンツァーキャバリアが存在している。
しかも、『ワルシャワ条約機構』の精鋭である。
獣人たちとの連携がなければ勝利は得られないだろう。
「これを突破したとて、『サロメ・サージェント』、『ノイン』の操る【Q】は消えません。これに対処する必要があります。とは言え、それは……」
あまりにも厳しい戦況である。
此処までの戦いで獣人たちの被害もあるはずだ。その状況の変化を見極め、彼らと共に『始祖人狼の使者』たる『サロメ・サージェント』、『ノイン』を打倒しなければならない。
「非常に危険な戦いであることは承知の上です。ですが、このままでは……」
『須弥山型都市』が滅びてしまう。
ナイアルテは危険な戦いに猟兵たちを頭を下げて送り出すのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
『獣人戦線』において『超大国』の一つ『人民租界』の戦域に存在する『須弥山型都市』に突如として現れた『ワルシャワ条約機構』、『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオンの襲撃に立ち向かうシナリオになります。
●第一章
冒険です。
『【Q】この『須弥山型都市』に『セラフィム』による戦乱を与える』によって、『須弥山型都市』の街中は、体高5m級の鋼鉄の巨人、赤い『セラフィム』による苛烈なる攻撃が続いています。
有頂天蓋に存在する『始祖人狼の使者』の元に向かうためには、この状況を切り抜けなければなりません。
ですが、皆さんの力だけでは、この【Q】による状況を切り抜けるのは難しいでしょう。
戦えぬ獣人たちを迅速に救い出し、『信義と友情』を得て協力しましょう。
●第二章
集団戦です。
第一章で味方につけた獣人達と共に、『須弥山型都市』の頂点、有頂天蓋にいる『始祖人狼の使者』たるオブリビオンの元へと向かいます。
ですが、『ワルシャワ条約機構』の精鋭である、パンツァーキャバリア『アイアン・サム』が立ちふさがります。
精鋭であるため、皆さんだけでは勝利は難しいでしょう。
やはり獣人たちと協力する必要があります。
●第三章
ボス戦です。
『始祖人狼の使者』である『サロメ・サージェント』、『ノイン』との戦いとなります。
彼女は通常ユーベルコードに区分け、【Q】によって有頂天蓋で第一章と同じ状況を作り出す可能性があります。
これに対処する必要があります。
また、強敵であることもあって、獣人たちの加勢も必要になるでしょう。此れまでの状況で彼らの消耗度が高ければ、それだけ難易度が跳ね上がります。
それでは、中国戦線に迫るワルシャワ条約機構の『始祖人狼の使者』。その迫る魔の手から『須弥山型都市』を守らんと戦いに挑む皆さんの物語の一片となりれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『シュミセンを襲う【Q】』
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POW : 建造物の崩落を力任せに防ぐ
SPD : 一般人を間一髪で危険から助け出す
WIZ : 異常現象に魔術や仙術で対抗する
イラスト:del
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
赤い戦乱が街中を包み込んでいる。
放たれる火線は地面を溶断し、あらゆる者を灰燼へと帰さしめる。どんな生命も、『プロメテウス・バーン』と呼称される胸部砲口より放たれる熱線に燃え尽きる。
手にした二振りのプラズマブレイドの斬撃は、宝貝の守りさえ容易く切り裂く。
迫る獣人たちを吹き飛ばし、立ち振る舞う姿は鬼神めいていた。
そして、宙を埋め尽くす水晶体……クリスタルビットが乱舞する。
それが、体高5m級の鋼鉄の巨人、赤い『セラフィム』の性能であった。
まさに戦うために生み出され、鏖殺だけを目的にしたような一切の無駄のない動き。その巨体の眼光が激しく明滅する。
揺らぐ戦火の向こうに、その眼光めいたアイセンサーが無数に煌めく。
そう、赤い『セラフィム』は一体ではない。
泣く幼子の声が聞こえる。
瓦礫に押しつぶされ呻く者の声が聞こえる。
苦悶の声はそこかしこで響く。
だが、そんな音をかき消すように、赤い『セラフィム』は無言のまま、その手にしたプラズマブレイドを振り上げるのだった――。
サーシャ・エーレンベルク
鋼鉄のデカブツが嫌というほど立ち並んでるわね。
早急に獣人達を救い出しましょう。
ユーベルコード【冰縛血風】でセラフィムたちを凍結の魔力で妨害、同時に使うユーベルコードは【呪詛死神】よ。
鋼鉄の体に、腐蝕の銃弾を叩きつけましょう。
積まれた瓦礫や障害は、氷を纏った一撃で凍結し、脆くさせて破壊、獣人たちを救い出す。
戦乱を巻き起こす超大国が、平和のなんたるかを語るなんて馬鹿馬鹿しいとは思わない?
奴らはいつも私たちへ高慢に振る舞い蹂躙を行う。平和を願う者たちをいつだって貶める。
なら、立ち上がるのよ。私たちは決してお前達に屈しない、とね。
戦火の炎が全てを飲み込んでいる。
あらゆる嘆きも。苦悶も。憎悪も。
全て煉獄によって浄化されるかの如き、赤き炎が立ち上る。
熾火めいた明滅を見せる戦場となった『須弥山型都市』の街中に赤き鋼鉄の巨人たちは炎を手繰る。
胸部より放たれる炎は汎ゆる者を溶断せしめる火線となって迸り、戦闘義体と仙術が融合を果たした獣人達すらも薙ぎ払っていくのだ。
「けが人を、いや、戦えない者を護れ!」
「嫌だ、お父さん! 嫌だぁ!!」
焦燥と嘆きの声が交錯する。
何処を見ても、そんな光景が拡がっていた。今生の別れを悟るかのような幼子の声を背に獣人は走る。
わかっている。
これは恐らく死に向かう道でしかないのだ。後に戻ることはできず、後に戻ればきっと、背に残してきた子らこそ死に至らしめる行いでしかないと。
だから、前に進むしか無い。
そう思った瞬間、目の前に迫るのは体高5mを誇る鋼鉄の巨人。
その赤い装甲の向こう側で睥睨するように煌めくアイセンサーは、ぞっとするほどに冷たい眼差しであった。
放たれようとする胸部砲口の火線。
「まっ……! 敵は俺だろう! 敵は、こっちだ!!」
砲口の先には背に残してきた我が子たちの逃げる背中。
何故、と問うまでもない。逃げるから撃つのだというように迸らんとする砲口。今まさに放たれんとした火線は、しかし其の力を示すことはなかった。
「凍てつきの塵風よ」
その言葉と共にユーベルコードが煌めく。
凍てつくは赤い装甲の巨人『セラフィム』の胸部。熱線は放たれようとして、その内部から爆発を起こす。
きしむ巨体に続けざまに放たれる銃弾。
冰縛結風(ディアマント)が導くは、呪詛死神(デス・コラプション)。
「死神の所以を知りなさい」
サーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)は見据えていた。己の手にした狙撃銃のスコープ。その先にて、死線を己が子のために越えようとしていた獣人の姿を。
そして、それをあざ笑うようにして『セラフィム』が砲口を彼ではなく、背後の守らんとした子らに向けたことを。
故に。
「これが『平和』のなんたるかを語る者のやること?」
呪詛を籠められた弾丸が『セラフィム』の赤い装甲を貫き、その巨体を爆発させる。
膨れ上がる爆風に煽られながら獣人の武侠は見ただろう。
己と己の子らの窮地を救った『戦場の白き剣』の姿を。
狙撃銃を構え、すぐさまに暴風と共に弾丸を放つサーシャの姿を。
「馬鹿馬鹿しい。本当に馬鹿馬鹿しい」
サーシャは忌々しげにつぶやく。
本当にくだらないことだ。
眼の前の蹂躙撃を引き起こしておいてオブリビオンは『平和』を語ったのだ。許しがたいことだ。
彼女の傲慢さを知る。
「奴らはいつだって私達へ高慢に振る舞い、蹂躙を行う。『平和』を願う者たちをいつだって貶める」
だから、とサーシャは引き金を引く。
凍てつく暴風の最中で寒さを感じることはない。
スコープに収める。引き金を引く。たったそれだけでいい。それだけでサーシャは示してみせたのだ。
「なら、立ち上がるのよ」
そうしなければ、いつまでたっても『平和』はやってこない。『平和』に程遠い今であったとしても、後に連なる者たちのことを思うのならば、やはり立ち上がらねばならない」
「そうだ。そのとおりだ!」
武侠の獣人が咆哮する。
これは死に往く戦いではないのだと。生きるために。『平和』のためにと咆哮する。
「そう、わたしたちは決してお前たちに屈指ない、と叫びなさい」
それだけが今生きるために必要な戦いなのだと示すように、サーシャは武侠の獣人の背を守るように『セラフィム』を凍てつく暴風でもって留め、その装甲を弾丸で撃ち抜くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
大天使ブラキエルの「世界を喰らう骸の月」
レディ・オーシャンの「骸の月を喰らう月」
韓信将軍の「天地黎明大逆道」
五卿六眼・ライトブリンガーはその何れとも違う賦与の【Q】
一切の縛りが無い大魔術なれど、全能を与えはするが確定的な未来を齎す程ではない
事件を起こすことは出来ても
須弥山型都市崩壊を止められない程ではない
◆バトルアーマー
怪力と光鎧武装による硬化で敵性キャバリアの攻勢から人々をかばう
意思を伴わない鉄屑の自動攻撃
恐るるに足らず
そして鍛錬を積んだサイバー武侠者の功夫がこんな程度を物ともしないことは明白
相手は立ち合いの礼すら知らない不埒物
ならば応報を以て獣人戦線此処に在りと知らしめるべきでしょうとも!
『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオンが手繰る【Q】。
その力は凄まじいものであると言えるだろう。
彼女の言葉はすぐさまに世界に反映される。
『【Q】この『須弥山型都市』に『セラフィム』による戦乱を与える』
ただの言葉は赤い鋼鉄の巨人を『須弥山型都市』の街中に呼び出し、その猛威を震わせる。火線が飛び交い、建物は瓦礫へと化す。
水晶体の弾幕がサイバー武侠たちを寄せ付けず、さりとて弾幕をかい潜れば、プラズマブレイドの一閃が彼らの体を切り裂く。
なんたる暴威であろうか。
「『大天使ブラキエル』の『世界を喰らう骸の月』、『レディ・オーシャン』の『骸の月を喰らう月』、『韓信将軍』の『天地黎明明大逆道』……」
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は【Q】によって『須弥山型都市』の街中で暴れまわる『セラフィム』の姿に、五卿六眼『ライトブリンガー』の手繰る力を想起した。
先に上げたオブリビオンたちの操るものとは異なるもの。
そして、それを賦与せしめる何者か。
『始祖人狼』と呼ばれるオブリビオンの力の一旦を彼は知る。
「一切の縛りが無い大魔術」
一言で言うのならば、そういうことなのだろう。
だが、全能を与えはするが確定的な未来を齎すものではない。なぜなら猟兵の予知が間に合っている。
事態は壊滅的な打撃を受ける前である。
ならばこそ、蔵乃祐は戦場を駆け抜ける。火線が飛び交うさなかに飛び込むことは自殺行為に他ならなかった。
彼がかばうようにとして飛び出した先に在ったのはヤクザ寵姫の女人。彼女は森羅万象の一切を魅了して止まぬヤクザ者であったが、しかし戦う力はか細いものであった。
故に、彼女は火線の餌食になる運命であったのだ。そこへ蔵乃祐は飛び込んだ。
「あ、あなた……ダメよ、その火線は!」
「案ずるは無用ですとも!」
火線の威力は凄まじいものだった。
だが、彼の瞳はユーベルコードに輝く。
輝く戦神の防具を召喚し、身にまとい真正面から火線の一撃を防いでみせたのだ。飛び散る火線が建物を破壊する。だが、生命は守られるのだ。
「あ、あんたは……!」
「やはり意志を伴わない鉄くずの自動攻撃! 敵はこちらの動きに反応して攻撃をただしかけてくるだけもの愚図! なれば、恐るるに足らずというものでありましょうや!」
彼の言葉に窮地を救われた獣人のサイバー武侠は呆気に取られていた。
この状況においてなお、そんな言葉を紡ぐ気概がある者がいるとは思えなかったのだ。なぜなら、彼らが住まう街中は徹底的に破壊されていたからだ。
この光景を前にして心の折れぬ者がいるという証明こそが、彼らがまだ戦えることの証明でも在った。
再び放たれる火線の一撃をバトルアーマーを纏う蔵乃祐は完璧に防いで見せる。
傷の一つも負わぬ彼の雄々しい姿に武侠達は色めきだつだろう。
「火線は僕が防ぎましょう! あなた方は!」
「ああ、任せておけ! 今暫く耐え忍んでくれ!」
サイバー武侠たちの戦闘義体が輝く。
チャージされている電力。その力のきらめきはユーベルコードにまで昇華することだろう。
「やはり、そうでしょうとも。鍛錬を積んだサイバー武侠者の巧夫がこんな程度を物ともしないことは――!」
放たれる電力は彼らの義体の関節部を伝わって、動作へと変貌する。
動作は幾度となく繰り返されてきた巧夫によって練磨され、一切の無駄なく電力を純然たる力へと変貌せしめる。
一切のロスなく放たれる清廉された拳の一撃。
名付けるのならば、電力発剄。
最小にして最大を放つ拳の一撃は火線受ける蔵乃祐の直ぐ側を駆け抜け、鋼鉄の巨人の装甲すら容易く穿つのだ。
「やはり明白!」
「そうとも! 俺たちが間違っていた。恐れに慄くことを知れど、それを克服する術はすでに我らの中に在り!」
「相手は立ち合いの礼すら知らぬ不埒なる鉄屑! ならば応報を以て獣人戦線此処に在りと知らしめるべきでしょうとも!」
共に、と蔵乃祐は笑む。
その笑みは不敵であると同時にサイバー武侠たちにとっては、頼もしきものであったことだろう。
「いいわ、なら、向かいましょう! 貴方達と共に!」
ヤクザ寵姫の瞳が煌めく。
頼もしき獣人たちの戦友を得て、蔵乃祐は【Q】によって呼び起こされた戦乱の最中を征くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
オーガスト・ガンバレル
判定:POW
【心境】
あれはパンツァーキャバリアとは別系統のキャバリアだな。
まあ最近ではあまり珍しくもなくなった気もするが…。
【行動】
ツキミヅキをビーストライズで荒ぶる山の神に変形させ、『誘導弾』を
『範囲攻撃』で敵セラフィムをまとめて爆撃し、戦場の獣人に加勢する。
Qだか何だか知らないが、貴様らは荒ぶる山の神がすべて破壊する!!
味方の獣人に畏怖の感情を与え同時に鼓舞して共に戦うように説得(?)する。
お前たちには荒ぶる神が味方してる。共に戦えばこの程度の奴らに負ける道理などないくまー。
行くぞ同胞たち。オレ達の戦いはこれからだ―ッ!!
炎に包まれる『須弥山型都市』の街中。
そこにあるのは苦悶と悲鳴と悲嘆ばかりであった。
いずれもが火線解き放つ赤い鋼鉄の巨人によるものであることは疑いようがない。体高5m級の戦術兵器である『セラフィム』は、『始祖人狼の使者』であるオブリビオンの手繰る【Q】によって、その姿を表し、蹂躙劇を猟兵に見せつけていた。
「あれはパンツァーキャバリアとは別系統のキャバリアだな。とは言え、最近ではあまり珍しくもなくなった気がするが……!」
オーガスト・ガンバレル(8月のキムンカムイ・f39985)は己の駆るキャバリアと共に、その瞳にユーベルコードを宿す。
「キムンカムイの名のもとにッ野生開放“ビーストライズ”!!」
鋼鉄の躯体が荒ぶる山の神へと変貌する。
その巨躯に反応したように赤い鋼鉄の巨人『セラフィム』が水晶体を弾幕のように放つ。その弾幕は隙間の無い乱舞めいたものであり、オーガストは毒づく。
「チッ、まったくもってやってらんねーな! だがよ!」
放つ誘導弾が水晶体を迎え撃つ。
激突しては爆発する誘導弾は爆風の中に水晶体を巻き込んでいく。
その爆風の中をオーガストは己のキャバリアが変じた荒ぶる山の神と共に咆哮する。
「【Q】だかなんだか知らないが、貴様らは荒ぶる山の神が破壊する!!」
咆哮は恐ろしく。
遭遇すれば死の定めしか存在しないであろう圧倒的な力の現れを示すようにオーガストは告げる。
『須弥山型都市』に住まう獣人たちにとっても、それは畏怖の対象でしかなかった。
「お、おお……山の神、あれこそが……!」
サイバー武侠であろうとヤクザ寵姫であろうと、サイバネティック仙術を手繰る仙人であろうとも、それは平等に畏怖を与える姿であった。
鋼鉄の巨人である赤い『セラフィム』には意味ない感情であったが、しかし、オーガストは告げる。
「お前たちには恐るべき荒ぶる山の神が味方している! 共に戦えば、この程度の奴らに負ける道理などないくまー」
その言葉は獣人達の心に幾ばく雰囲気を奮い立たせるものであった。
彼らと手むざむざ殺されるわけにはいかない。
こんなふうに炎に撒かれて死ぬことなど考えたこともない。
戦って、勇敢なる死の元へと向かうことこそ、彼らが生きた証である。安穏たる平和は確かに欲するものであったが、しかし、彼らが最も大切にしているのは『勇気と友情』である。
「奮い立たせるくまー、勇気を! そして助けられたのならば、助け返すが仁義ってもんくまー!」
オーガストはさらに煽るようにして告げる。
畏怖たる感情は圧倒的な力への敬意にも似たものであったことだろう。
だからこそ、オーガストは炎に包まれる街中にあって迫る『セラフィム』を打ちのめしながら叫ぶのだ。
「いくぞ同胞たち。オレたちの戦いはこれからだーッ!!」
そう、そのとおりであった。
自らを戦いの元に置くのならば、死ぬまでが戦いである。
片時も休む暇さえないことを嘆くのではない。
戦わぬことで失われる己等が守りたいと思ったものが失われることを恐れるべきなのである。
故に己たちの背を守るようにして咆哮する荒ぶる山の神の前を征く。
「押し返すぞ!」
「ああ、俺たちは戦うしかない。逃げてもオブリビオンは何処までもやってくるというのなら」
「その意気くまー!」
オーガストは己の変貌させたキャバリアと共に炎の火線荒ぶ戦場を駆け抜け、その一撃を『セラフィム』に叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
おおぅ……。
今日の雄叫びはレベルが高いですね。
具体的に言うと77db。いつもより6dbくらい……。
新幹線を超えてきました。これはもう騒音防止条例違反ですね。
またヤバイ度があがってしまいました。
ステラさん、何故とかですらなく周囲一帯ドン引きですからね?
破壊のスペシャリスト……(そんな人いたっけ顔)
まぁステラさんなら、無人の赤ゴーレムくらいちょちょいのちょいだと、って!
わたしは演奏のスペシャリストだって言ってるじゃないですか!
あれは、光の波動で悪が滅びてるだけですからね!
いえ。もちろん演奏はしますよ!
それにしてもー……なんだかわたし、最近ステラさんのユーベルコードみたいになってません?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!香りがしまぁぁぁすっ!!
熾天大聖様、ご無沙汰しております
|メイド《犬》のステラ、ただいま参上です!
…ルクス様はともかく、何故に熾天大聖様まで引き気味なのでしょうか?
ともあれ、お側に駆けつけるのはしばしお待ちを
あの|セラフィム《ガラクタ》を片付けてから!
|赤いセラフィム《完全なる悪性》
例え破壊の権化とて
乗り手なき機械ならば恐れるに足りません!
というか、破壊に関してはこちらにもスペシャリストがいますし
えっ?ルクス様どこ見てますか?
貴女様ですよ貴女様!
さぁ、演奏会オッケーです
私は後ろから【アウルム・ラエティティア】してますので
皆様ー巻き込まれますよー
早く逃げてー
キンキンと響く声が戦火の揺らめく炎を吹き飛ばす。
それは叫び。
あまりにも凄まじいがゆえに叫びであると理解できたものは多くなかっただろう。
だが、直近にいたルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は頭を抱えるようにして耳を抑えていた。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁすっ!!」
多分、こんな感じのことをステラ・タタリクス(紫苑・f33899)が叫んでいるのだとルクスは理解していた。
いや、耳を抑えていても鼓膜を震わせるほどの叫びであるから、それでちょうどいい具合に聞こえるということ事態が異常である。
異常事態が通常運行だから、まあ。
そんなふうにルクスは思っていたが、今日の雄叫びはさらにレベルが高いとルクスは思った。
光の勇者にして演奏家を自称するルクスは、その騒音レベルを数字で顕す。
「具体的に言うと77db。いつもより6dbくらい……新幹線を超えてきました」
新幹線を知っているのか、光の勇者!
いや、そんなことよりステラの叫びは公害レベルってことであろうか。
騒音防止条例違反。
またヤバい度がぐんぐんと跳ね上がるメイドの叫び。
「『熾天大聖』様、ご無沙汰しております! |メイド《犬》のステラ、ただいま参上です……ってあれ!? お姿が見えない!? 隠れていらっしゃる? 恥ずかしがり屋三!」
「いえ、どう考えても皆さん引いてますからね?」
「何故です!?」
「何故とかですらないですからね? 周囲一帯ドン引きですからね?」
ルクスは戦火溢れる街中を示す。
いや、赤い鋼鉄の巨人『セラフィム』が闊歩しているのだ、それどころじゃないというのが正しいのだろうが、ステラの叫びに人々は逃げ惑っている。
ただ一つ。
無数の赤い鋼鉄の巨人『セラフィム』のアイセンサーだけがステラたちを捉えていた。
明確な敵意。
確実に滅ぼすと言わんばかりの胸部咆哮から放たれる火線の一撃が街中の地面を溶断し、ステラたちを吹き飛ばす。
「|赤い『セラフィム』《完全なる悪性》! 例え破壊の権化とて、乗り手なき機械ならば恐れるに足りません!」
ステラは火線が放つ衝撃を身に受けながら、ルクスの方をひっつかむ。
「あの! なんか盾にしようとしていませんか!」
「いいえ、盾ではございません。破壊のスペシャリストを矛として使おうというのです!」
ステラの言葉にルクスは首を傾げる。
破壊のスペシャリスト?
え、誰のことを言ってるんだろう、と衝撃波に吹き飛ばされながら、ルクスはそんな人がいたっけなと言わんばかりに周囲を見回す。
「えっ? ルクス様、何処見てますか? よそ見している暇などございませんよ」
「いえ、わたしじゃないですよねって思ってて。まあステラさんなら、無人の赤いゴーレムくらちょちょいのちょいだと」
「ルクス様の演奏のことを言っているのですが」
「ちょっ! わたしは演奏のスペシャリストですが、破壊のスペシャリストではないんですが!」
え~? とステラは首をひねる。
またまたそんなこと言ってぇ。勇者の破壊音波魔法見てみたい! みたいなホストみたいなノリの顔をするステラにルクスは顔をしかめる。
「いつも言ってますけど、あれは光の波動で悪が滅びているだけですからね!」
無理があるなって誰もが思ったが、言葉にする者はいない。残念ながら。
「でも、演奏は~……?」
「しますけど、もちろん! っていうか、これだとなんだかわたし、最近思うんですけど」
「ステラ様、前! 前!」
見て! とステラが叫ぶ。
それはユーベルコードとなって放たれるアウルム・ラエティティア。
ステラから放たれる衝撃波でもって赤い『セラフィム』のプラズマブレイドの一撃を受け止める。いや、相殺したと言えるだろうか。
ほとばしる火花を見ながらルクスはいつの間に、と思っただろう。
「やっぱり盾じゃないですか! あ、こら、ステラさん、後ろに回り込まない! わたしはステラさんのユーベルコードじゃあないんですよ!?」
「今、それどころじゃあないですってば! ほら、早く演奏! はりーあっぷ! あ、縦陣の皆様ー! 逃げてー! 巻き込まれますよー! 早く逃げてー!」
「人聞きが悪すぎる! でも、演奏します!」
Canon(カノン)奏でるルクスのヴァイオリン。
その旋律は斬り掛かっている『セラフィム』の装甲を揺らし、振動させ、ひしゃげさせる。
もしも、赤い『セラフィム』に乗り手、もしくは意志があったのならば、その音に戦慄したことだろう。
けれど、彼らに意志はない。
ただ戦乱を齎すものとしてだけの力の発露。
それによって、ただ目の前の敵を打ち倒すためだけに振るわれる兵器。
だが、それをルクスの演奏はことごとく破壊してみせるのだ。
「これが、光の勇者の波動です!」
「いえ、破壊音波魔法です」
「ちーがーいーまーすー――!!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エドワルダ・ウッドストック
【鋼獣小隊】POW
アドリブ歓迎
清導(f28542)と共に参戦しますわ。
戦いを引き起こすのも怨み苦しみを撒き散らすのも、あなたでしょうに……!
『須弥山型都市』の人々を蹂躙するなど、看過しませんわよサロメ・サージェント!
【Q】による苛烈な攻撃であろうと、敵性個体がいるならば倒せば良いのです!
一般人の救助は任せますわよ、清導!
わたくしは戦える獣人と共に前線に立ち、ライフルや持ち込んだ数々の武装を展開いたします。
挨拶は不要ですわね。加勢しますわ、皆様!
『セラフィム』とは問答無用、力任せに排除させてもらいますわよ!
ビットや関節部を狙って、銃弾やナイフを放ちます!
後方の非戦闘員には傷つけさせませんわ!
空桐・清導
【鋼獣小隊】SPD
アドリブ大歓迎
エド(f39970)と参戦だ!
「ライトブリンガー以外に【Q】を使う奴が居るとは!
だが!獣人達に害するならば、この鋼獣小隊が相手になるぜ!」
マントをはためかせて熱く宣誓する
「ああ。救助はオレに任せてくれ。
道を開くのは任せるぞエド!」
UCを発動して疾風の如く駆け出す
一陣の風と化しながらセラフィムの攻撃から獣人達を守る
「助けに来たぜ、みんな!」
動けない人、傷ついた人も青いオーラで急速に回復していく
「走れる人はついてきてくれ!」
走れない人は一人残らず担いで駆け抜ける
戦場にいる全員を救助するぞ!
「オレ達はこれから今回の首領を討ちに行く。
共に来てくれる人はついてきてくれ!」
『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオンが手繰るは【Q】。
恐るべきことに『須弥山型都市』の街中に戦乱を齎す力は、その力を体高5m級の戦術兵器、赤い鋼鉄の巨人『セラフィム』として発現する。
戦火の炎が街中に満ちている。
逃げ惑う獣人たちの嘆きと悲鳴が響き渡る。
誰もが傷つかずにはいられなかっただろう。駆けつけた猟兵達によって戦闘義体を駆使した武侠たちが果敢に戦いに挑むが、しかし、終始押されていることが見て取れる。
戦乱を呼び起こす者。
問いかける者。
『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオン『ノイン』の言葉は頭上より降り注ぐ。
そう、彼女が座すのは『須弥山型都市』の天頂。有頂天蓋である。
「戦いを引き起こすのも、怨み苦しみを撒き散らすのも、あなたでしょうに……!」
エドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)は怒りに震える。
その瞳は有頂天蓋を見つめていた。
しかし、すぐさまに視線を地上に戻す。
そう、今彼女がしなければならないのは戦うことだ。あの赤い鋼鉄の巨人に蹂躙される獣人たちを救うこと。
看過することなどできようはずもない。
平和の名を冠しながら、その平和をこそ乱す者。
「オブリビオン『サロメ・サージェント』! 赦してはおけませんわ!」
エドワルダは共に駆け出す空桐・清導(ブレイザイン・f28542)の姿を認める。
「あの『セラフィム』は!」
「ああ、エド、頼んだぜ。救助はオレに!」
「任され、任せますわよ、清導!」
エドワルダの瞳がユーベルコードに輝く。手にした数々の武装が展開し、その砲口を赤い『セラフィム』に向ける。
あの鋼鉄の巨人が敵意などに反応するのではなく、ただ生きとし生けるもの全てに対して砲火を向けることをエドワルダは知る。故に彼女は、己のユーベルコードのきらめきこそが、赤い『セラフィム』の敵意を引き付けるものだと知る。
「さあ、こちらですわ!」
放たれる火器の銃撃。それは嵐のように吹き荒れ、弾丸の一斉射となって赤い『セラフィム』の装甲を穿つ。
きしむようにして巨体が倒れ伏し、その上へとエドワルダは駆け上がる。
獣人たちも戦っている。
この状況を打破するためには彼らの協力が必須。故に彼女は叫ぶ。
「挨拶は不要と存じ上げますが、加勢いたしましわ、皆様!」
「ありがたい! だが、敵は……!」
エドワルダは己が打倒したと思った赤い『セラフィム』が自身の下で軋む音を立てながら立ち上がろうとしているのを認め、その銃を眼下に向け、引き金を引く。
弾丸は鋼鉄の躯体を貫き、動きを今度こそ止める。
「力任せ、というのは難しいですわね、これは」
「装甲は硬い。だが、関節部は!」
「ええ、味方が今、非戦闘員の方々を救助しております。背後のことは!」
気にせず戦おうと、エドワルダは告げる。
そう、ここは街中である。
突如として現れた戦乱を前に戦えぬ者たちも居たことだろう。
だからこその混乱。突如として吹き荒れる戦火を逃れ得るものなどいなかったのだ。故に清導は、その赤い鎧を纏いながら戦場となった街中を駆け抜ける。
「もう大丈夫だ、俺たちが、この鋼獣小隊が来た! みんな!」
一陣の風となって疾駆した清導は、瓦礫を押しのけ、その下敷きになっていた獣人たちを助け起こす。彼らの足を見やる。潰れ、折れていることが一目にわかることだろう。
「うぅ……助けて……」
「もちろんだ。助ける。助けて見せる!」
絶対救助(アメイジング・レスキュー)たる意志が心に灯る。
それはユーベルコード。
救助するという意志を込めた青いオーラが清導から迸り、足の折れた獣人の体を包み込んでいく。
さらに清導は負傷した獣人たちを抱えるだけ抱えて、戦場を走る。
背にはエドワルダと武侠獣人たちが果敢に赤い『セラフィム』を抑えるようにして砲火を交えている。
乱舞するクリスタルビットを彼女の銃が叩き落し、迫る巨体の一撃を交わす。
衝撃波が荒び、その風が清導と獣人たちの頬を撫でる。
恐るべき熱波とも言える風。
炎が吹き荒れ、宛ら地獄めいた光景が拡がっている。だが、清導は思いを新たにする。そう、自分の心が折れていては誰も救うことなどできはしない。
「走れる人はついてきてくれ!」
担いだ獣人たちを戦火満ちる戦場から引き離すようにして声をかけながら、救える生命を救わんと走る。
誰も彼もが己の手の隙間からこぼれ落ちていく。
けれど、それでもと思うのだ。
救わねば、という気持ちが折れた時、それは生命の終わりを意味するのだから。
「此処で待っていてくれ。安全にする。だから」
清導は戦場を走る。
ともに戦う者を連れ、抵抗続けるエドワルダたちの元へ。
「敵の首領は天頂にあり、ですわ!」
エドワルダが示すは有頂天蓋。その先にこそ、この戦乱呼び起こす【Q】をもたらした者が存在している。
これを討たねば戦乱は終わることはない。
故に、と清導は告げる。
「共に戦ってくれる人は来てくれ! アンタたちの力が今必要なんだ――!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イーブン・ノルスピッシュ
幾度となく俺達から『平和』を奪い去る者に、それを問う資格などあるものか!
貴様らの|押し付け《侵略》に喰い潰されるのは、もう沢山だ!
軍用バイクに炎を纏い、無我夢中でセラフィムに突っ込む
大したダメージにならなくて良い
さぁこちらを向け!
猟兵はここにいるぞ、オブリビオン!
バイクからセラフィムの装甲へ駆け上がり、機体を蹴って高く跳ぶ
敵機から敵機へ
建物から建物へ
都市の獣人達と示し合わせた区域へ向かって空中を機動する
予め仕込んでもらったブービートラップに引っかかっても
背後から誰かに攻撃されようとも
奴らは俺から視線を逸らすことは出来ない
今度は俺たちが狩る側だ
さぁ火を熾せ、撃鉄を起こせ!
今が応報の時だ!
許せるものではない。
いや、許しがたいことである。
戦乱の炎が揺らめいている。そのさなかに聞こえる悲鳴も怒号も、何もかもが己の中にある怒りに薪をくべるものであった。
少なくとも、イーブン・ノルスピッシュ(戦闘猟兵・f40080)は己の身を焼くような怒りの炎が吹き荒れるのを感じたことだろう。
復讐の炎が体の奥底から溢れ出す。
「幾度となく俺たちから『平和』を奪い去る者に、それを問う資格などあるものか!」
戦場を走る。
跳ねるようにして走る。
己の足は兎の足。逃げ惑うために駆けるのではない。戦うために今駆けている。
揺れるドッグタグが音を立てている。
赦すな、と言っているようにも聞こえたのはイーブンの幻聴であったかもしれないが、また同時に真実でもあったことだろう。
「貴様らの|押し付け《侵略》に喰い潰されるのは、もう沢山だ!」
軍用バイクを駆り、砲火荒ぶ戦場の中をひた走る。
視界の全てが炎に塗り込められている。だが、それでもイーブンは前に進む。戦いの駆け引きなど必要ない。
ただ、敵がいるのならば穿つのみ。
その意志と共にイーブンは鋼鉄の巨人……赤い『セラフィム』へと突っ込む。
軍用バイクが激突に酔ってひしゃげ、爆煙を上げる。
だが、それをものともせずに赤い『セラフィム』が、手にしたプラズマブレイドを振るう。
打ち込まれた一撃を躱すも、その衝撃波がイーブンの体を吹き飛ばす。
転がるようにして地面に逃れながらイーブンは顔を上げ、叫ぶ。
「さぁこちらを向け! 猟兵は此処に居るぞ、オブリビオン!」
その言葉と共にイーブンは赤い『セラフィム』の巨体を駆け上がり、高く飛ぶ。
兎の脚力は赤い『セラフィム』との間を跳ねるようにして己に視線を集める。
「こっちだ、貴様らの敵は!」
火線が荒ぶ。
クリスタルビット、水晶体が弾幕のようにイーブンを襲う。盾にした建物が砕かれ、瓦礫と化し、炎が立ち上る。
その最中をイーブンは駆け抜ける。
「頼めるか!」
「ああ、惹きつけてくれたお陰で俺たちも準備ができた!」
イーブンは飛び、すれ違いざまに突撃の前に打ち合わせていた獣人たちに告げる。
そう、己は囮。
彼が仕掛けたブービートラップへと赤い『セラフィム』を引き付けるためにこそ、カインの羨望(カイン・ヴァニティー)たるユーベルコードの力を発露し、赤い『セラフィム』を引き付けてきたのだ。
ブービートラップに掛かった赤い『セラフィム』が爆発の中に消える。
「クソッタレが、あれでもまだ動くっていうのかよ!」
「いいや、止まるな。奴らは俺から視線を外せない。俺が惹きつけ続ける。その間に」
「攻撃をし続けろっていうのか、だが、アンタは……!」
獣人の案ずるような視線を振り切ってイーブンは飛び出す。
問答は不要だった。
気遣いもまたそうだった。
己が出来るのは戦うこと。駆け抜けること。ただそれだけだ。だからこそ、イーブンは叫ぶ。
「今度は俺たちが狩る側だ。さぁ火を熾せ、撃鉄を起こせ!」
イーブンは咆哮と共に赤い『セラフィム』へと駆ける。
そう、己は弾丸。
弾丸たる己を放つための撃鉄を起こすのは、彼ら獣人でなければならない。奪われた生命は奪うことでしか贖うことができない。
故に。
「今が応報の時だ――!」
大成功
🔵🔵🔵
リア・アストロロジー
戦乱。
その犠牲になるモノを、それが生むモノを理解していながら。
……いえ、今はそれより皆さんを。
3体のドローンを展開、カスパールで情報を集め、バルタザールの重力操作を自分の移動や瓦礫など重量物の除去に使いながら救助に当たります。
轟音の中に耳を澄まし、爆炎の瞬きに目を凝らして、助けを必要としている人を、助けます。
【星かげさやかに】で怪我人を癒し、メルキオールの音響も使った誘導で少しでも安全な場所への避難を促進。
守ることは、壊すことよりも遥かに難しいけれど。
燃え広がる争乱の中においてはそれがどんなにちっぽけに見えたとしても。
星は地を照らし、闇を切り裂くのだと――わたしは、そう示さなければなりません。
戦いは常に喪うものである。
財貨を、歴史を、生命を。
あらゆるものが失われる。残されるものは瓦礫の山と炎に焼かれた大地ばかりである。故に滅びる。やりすぎれば滅びると歴史が語っていたとしても、それでも争いを齎すものは止めない。
そうすることでしか示せないものがあるという妄執に取り憑かれたように炎を手繰る。
それが戦乱である。
「その犠牲になるモノを、それが生むモノを理解していながら」
『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオン『サロメ・サージェント』、『ノイン』の言葉は尤もであったが、それをリア・アストロロジー(M2-Astrology・f35069)は認めるわけにはいかなかった。
戦うために生み出された己の身であれど、しかし、それでも彼女は炎が荒ぶ戦場となった『須弥山型都市』の街中を駆ける。
戦うためではない。
救うためだ。
彼女が今することは、獣人の犠牲を一人でも減らすことになる。
三体のドローンが宙を飛ぶ。
周囲の状況を集めるドローン、重力操作に寄って瓦礫を持ち上げる。
呻く声は助けを求める声だ。
「うぅ……誰か、誰か……」
「こっちだ! 助けてくれ! 炎が! 炎が来ているんだ、そこまで!!」
「おかあさん! おかあさん!!」
その悲痛めいた声をドローン越しにリアは聞く。
目を背けたくなるような惨状がそこかしこに拡がっている。だが、リアは瞳を見開く。この惨状から目を背けたところで救われる生命は何一つないことを彼女は知っている。
他の猟兵たちが赤い鋼鉄の巨人『セラフィム』を抑えている現状だからこそ、彼女は人々の救助に専念するのだ。
「助けます、必ず……夜があなたを呑み込んでしまわないように……」
星かげさやかに(ホシカゲサヤカニ)に願う。
星降る夜に守られたかのような空間が広がる。人々の傷口を癒やす。次から次に他の猟兵達によって導かれた非戦闘員の獣人たちが空間の中に入ってくる。
「守ることは、壊すことよりも遥かに難しいけれど」
だが、やらなければならない。
他ならぬ己がやらなければ、彼が死んでしまう。生命が失われてしまう。
失われた生命は元には戻らない。
誰も、それをなし得ることができないからこそ、生命は尊いのだと思う。
己のやっていることはこの戦乱の中にあっては、ちっぽけな行いでしかないのかもしれない。
赤い鋼鉄の巨人『セラフィム』の放つ火線一つで吹き飛んでしまうようなか細い光であったのかもしれない。
けれど、それでもリアはこの現状に立ち向かわなねばならない。
己の操るドローンに導かれて人々が誘導されて、空間の中に入ってくる。
誰もが憔悴している。誰もが嘆いている。
「なら、わたしは、この嘆きをこそ拭わねばなりません。癒やさねばなりません。そうすることでしか、わたしは」
星の輝たり得ない。
か細い光であっても闇夜の下にあっても、その星の光が地を照らすこともあるだろう。
今はまだ煌々と滾るような戦火があるのだとしても。
それでも、一筋の希望として己が此処にあることを示すように、リアは己のユーベルコードを瞳に灯し、人々を癒やし続ける。
誰も彼もが傷つかずに居られないというのならば、せめて己は誰かを癒やす鎹になれますようにと祈るように星に願うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…ふむ…あの儀式魔術【Q】は一種の現実改変ではありそうだな…
…問題はどの程度まで強制力があるか……と言うところか…
…まずは赤いセラフィムをどうにかして非戦闘員を助け出さないとだね…
…【闇に潜りし貪食の群狼】を発動…影狼を多数召喚してセラフィムに喰いつかせよう…
…サイズ差があろうとも動的エネルギーを奪ってしまえば停止するからね…喰いでがあって影狼達もやる気いっぱいだ…
…影狼達がセラフィムを止めている間に操音作寂術式【メレテー】で周囲の音を集めて要救助者の位置を把握…助けに行くとしようか…
怪我人は医療製薬術式【ノーデンス】で応急手当…武侠達に預けて比較的安全な場所へと避難して貰おう…
『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオンの手繰る力、【Q】。
その力は尋常ではなかった。
『須弥山型都市』に突如として出現した無数の鋼鉄の巨人。
赤い『セラフィム』は命令者に従うようにして街中で火線を解き放ち、その手にしたプラズマブレイドでもって抵抗する獣人たちを打倒した。
無数に散らばる水晶体は弾幕のように放たれ、建物を破壊し、迫る獣人たちを寄せ付けない。
その苛烈なる戦火は徐々に『須弥山型都市』に拡がっていく。
止めようがない炎の勢いと共に生命が数多失われていく光景にあって、猟兵達は事態を終息させるために駆け抜ける。
「……ふむ……あの儀式魔術【Q】は一種の現実改変ではありそうだな……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はかつて常闇の世界ダークセイヴァーにおいて対峙した五卿六眼の一柱『ライトブリンガー』の手繰る力の一旦を思う。
まさしく現実を捻じ曲げるかのごとき力。
この戦乱を呼び込む力は、どの程度の強制力が存在しているのかを彼女は未だ測りかねていた。
猟兵に予断を許さない状況。
まさしく『始祖人狼の使者』、『サロメ・サージェント』である『ノイン』の思惑通りに事態が進んでいるように思えた。
「……まずは赤い『セラフィム』をどうにかして非戦闘員を助け出さないとだね……被害が甚大過ぎる……」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
揺らめく炎の影より飛び出す、無数の影の狼たち。
それは、闇に潜りし貪食の群狼(オペレーション・ウルフパック)。彼らはすぐさま駆け出し、赤い『セラフィム』に取り付く。
だが、すぐさま振り払われてしまう。
火線が放たれ、影は霧散するが、しかし、すぐさま新たに影より飛び出し、その装甲に食らいつく。
「……そう、それでいい。例え、その巨体がどれだけの力を有しているのだとしても、動的エネルギを喰らう影狼たちならば」
メンカルは赤い『セラフィム』の動きが止まるのを見る。
攻撃の意志を感じるようにアイセンサーが明滅している。
だが、影狼たちが動的エネルギーを食らっている以上、動くことはできないだろう。
その間に要救助者たちの所在を見つけ出し、彼らを救い出さなければならない。
「周囲の音を拾おう……」
術式によって周囲の音を拾い上げる。瓦礫の中から響く呻き声はか細いものであったが、術式に酔って拾い上げられた声は確かにメンカルに届いた。
位置を把握したメンカルはすぐさま駆け出し、瓦礫を押しのける。
「容態を確認させてもらうね」
「……まだ、俺の子が……」
メンカルは頷く。
助け出した獣人が己の子の安否を気にかけているのだろう。術式で拾った音をさらに拡大していく。
声ではない。
心音が聞こえる。
「ひとまず、この術式で応急処置をさせてもらう。子のことは……安心して……」
メンカルはすぐさま周囲に展開していたサイバー武侠達の戦闘義体にアクセスして呼びかける。
「……手が足りない。要救助者の運搬を。他の猟兵の展開した領域があるから、そちらに運んで欲しい。あと、こっちにの瓦礫の下にも……」
「……っ!? あんたどうやって……いや、わかった。今すぐそちらに急行する。待っていてくれ!」
メンカルの突然の通信に驚いたサイバー武侠達は、しかし事態を呑み込んでくれる。
すぐさま駆けつけてきた武侠たちにメンカルは治療を施した獣人たちを預け、未だ救助されぬ人々を救うために駆け出す。
時間は少ない。
もう幾ばくもすれば、あの赤い『セラフィム』たちを影狼たちは抑えきれなくなってしまうだろう。
だからこそ、メンカルはより多くを救うために懸命に手を伸ばす。
生命がまだそこにあると信じて――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
瞋憎を喰らえ、守り、壊せ、敵を、ディスポーザブル!!
ディスポーザブル01操縦、
『破却性ディスポーザブル』【集団戦術】無数の機体群を召喚、指示を飛ばし、その重装甲でセラフィムの攻撃から獣人たちをかばう。
【念動力】損傷を海の霊物質が補い【継戦能力】戦闘続行
灰燼の灰から、切り裂かれた宝貝から、亡骸から、戦場の無念を、怨念を喰らうディスポーザブル群の、損壊恐れぬ攻勢と【怪力】でセラフィムを抑え、電磁音響兵器でビットを吹き飛ばし、【早業】念動鞭で重機爪を飛ばし、他機が抑えたセラフィムを抉り壊す。
戦え、壊せ!獣人たちよ、どれだけの恐れがあろうとも!!
明日を、願いを勝ち取る為に!!生きて立ち行け!!
争いを怒り憎む感情がある。
誰だって奪われたくはない。失いたくはない。当然のことだ。わかっている。
だからこそ、争いとは無為なことである。
しかし、人は争わずにはいられない。なぜなら『平和』があるから。『平和』があるから争いが存在する。争いがあるから『平和』を希求する心がある。
そうした人の機微は、いつだってすれ違い、理解とは程遠い場所でもって拳を振り上げてしまう。
振り上げられた拳は振り下ろさなければ行き場を失ったままだ。
だからこそ、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は叫ぶ。
「瞋憎を喰らえ、守り、壊せ、敵を、ディスポーザブル!!」
戦火満ちる『須弥山型都市』の街中を駆け抜ける。
無数の『ディスポーザブル01』の霊と共に駆け抜け、赤い『セラフィム』の放つ火線の一撃を受けながらも、その砲火の前へ、前へと飛び出していく。
それは果敢なる突撃にも、無策無謀なる行いにも見えたことだろう。
だが、そんな事を赤い『セラフィム』は意に介さない。
迫るから撃つ。
動くから撃つ。
ただそれだけのために破壊を齎す赤い『セラフィム』を小枝子は睨めつける。
確かに彼女の手繰るユーベルコード、破却性ディスポーザブル(ディストラクション・ディスポーザブル)は無数の霊物質満ちる海を広げることによって、残骸さえも機体の強化へと繋げていく。
しかし、それを上回るのが赤い『セラフィム』の火力だった。
押し迫るディスポーザブルをことごとく火線が打ち据え破壊していく。
だが、それでも小枝子が止まらなかったのは、己の背に守る獣人たちの姿があったからだ。
「これ以上、失わないためには!」
踏み出す。
小枝子は己の生命が失われることにさえ頓着していなかった。
己の目の前に広がるのは灰燼の灰。切り裂かれた宝貝の残骸、亡骸、無念、怨念ばかりであった。
己の背後にある生命を守らんとした者たちの亡骸めいた光景を目の当たりにして己が退くわけにはいかなかったのだ。
故に損壊を彼女は恐れない。
己の存在は、ただ一つのためにこそある。
「戦え、壊せ!」
そうそれだけであった。
己たちの生命を脅かすものに対抗するためには戦わねばならない。恐怖に震える足を踏みしめ、それでも立ち上がらねばならぬと叱咤するように小枝子は叫んだ。
「獣人たちよ、どれだけの恐れがあろうとも!!」
踏み出す。
胸部の音響兵器の立方体が回転し、凄まじい音波を解き放ち赤い『セラフィム』を吹き飛ばして更に進む。
組み付いた赤い『セラフィム』を薙ぎ倒し、さらに破壊されても重機の爪が引き裂く。
まるでスマートとは言えない戦いぶりであった。
しかし、背後に守る獣人達は己の中にある恐怖を壊すように前に踏み出した。
「明日を、願いを勝ち取るために!! 生きて立ち行け!!」
そう、それしかないのだ。
明日を生きるためには。
己の生命が脅かされるのならば、それを赦してはならないと叫ぶのならば。
戦い、己の恐怖さえも破壊して前に進むしか無いのだと、小枝子はボロボロに砕かれた機体と共に赤い『セラフィム』の齎す火線を受け止めながら、その躯体を叩き潰すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
思うんだけどさー、敵が使う【Q】って誰がいいねしてるんだよ!
いいね集めてからやりやがれよ!!!
絶対にいいね入れないからさあ!!
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
『斬撃波』でセラフィムのクリスタルビットを牽制しながら【断章・焔ノ血】を起動
蒼炎でセラフィムを焼き、紅き炎で周囲の獣人達を癒しながら戦場を駆けよう
ビットを牽制しつつ、本体にも接近
建物とか利用出来るなら使って登り、セラフィムの上半身に取り付こう
装甲の薄そうな首関節とか、アイセンサーとかを狙って剣で『串刺し』!
こっちに敵の意識を持ってけば、周囲への攻撃は少しは弱まる…はず!
インチキ効果もちゃんと手順踏めよこらー!
儀式魔術【Q】――それは予知を待たずして【謎】を暴く、暴虐なる知の剣。
しかし、それは道標にほかならないものであった。
少なくとも猟兵たちに取っては、である。
『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオンが齎す【Q】の力は異常なる現象を呼び寄せるものであった。
『須弥山型都市』に吹き荒れる戦火。
それを齎すは、赤い鋼鉄の巨人『セラフィム』であった。
火線が放たれれば汎ゆる物を燃やし、溶断する。
放たれるプラズマブレイドの一撃は戦闘義体を持つ武侠や仙人たちすらも打倒してみせた。
乱舞するクリスタルビットは迫る脅威を尽く寄せ付けぬとばかりに展開し、獣人たちの営みの基盤たる建物を破壊し尽くす。
「思うんだけどさー、敵が使う【Q】って誰がいいねしてるんだよ! いいね集めてからやりあやがれよ!!! 絶対にいいね入れないからさあ!!」
ものすごい剣幕で月夜・玲(頂の探究者・f01605)は戦火渦巻く街中を駆け抜けていた。
抜き払った二振りの模造神器の蒼い刀身がきらめき、斬撃波を解き放つ。
水晶体の弾幕を切り裂きながら、道開く彼女の瞳が見据えるのは赤い鋼鉄の巨人。
彼女の言葉も尤もであった。
とは言え、猟兵の手繰る儀式魔術【Q】とて万能ではない。
この状況を発現させてみせたオブリビオンの力とは、あまりにも融通の聞かぬものであったかもしれない。
だが、である。
「だからって、ここで足止め食らってる場合じゃあないんだよね!」
玲は火線の一撃をかわしながら、衝撃波に煽られるようにして飛ぶ。
「偽書・焔神起動。断章・焔ノ血読み込み開始」
火線の一撃をかわしたはずの玲の腕から血潮が溢れる。
うまくかわしたつもりであったが、しかし、火線の一撃は彼女の腕を焼いていたのだ。
滴る血が大地に落ちる。
「上等!」
断章・焔ノ血(フラグメント・ファイアブラッド)の発動条件こそ、己の負傷そのものである。
流血している間にこそ力を発露するユーベルコードは彼女の身より蒼き炎を噴出させ、赤い『セラフィム』を焼き滅ぼす。
そして、同時に彼女の身寄り噴出するは紅い炎。
「な、何だ、この炎は……!」
「あーね、ちょっとは熱いかもしんないけど、それ負傷を癒やす炎だから。振り払わないでそのままそのまま」
玲は戸惑う武侠の獣人たちをよそに戦場を駆け抜けていく。
誰もが傷つかずに入れない。失わずにはいられないのが、この戦場だ。だからこそ、玲は傷つくことを止めるのではなく、傷ついた痛みをこそ癒やす炎となって戦場を駆け抜ける。
「巨体だってんなら、その装甲のうっすーい、ところを!」
赤い『セラフィム』の巨体に取り付き駆け上がっていく玲の斬撃が見舞われるのは首関節。
放つ一撃は確かに首を捉え、両断する。
仰向けに倒れ込む『セラフィム』の上に立ち、玲はコクピットブロックに斬撃を叩き込む。
「……やっぱり無人機か。ならさ、やぱっりこっちに敵の意識を引き付けておけば、周囲への被害は抑えられる……はず! ただのアルゴリズムだってんならなおさらでしょ!」
玲は手にした模造神器の放つ蒼炎を篝火のように掲げ、赤い『セラフィム』の注意を引き付ける。
敵の操る【Q】は、ほぼインチキの類にしか思えない。
けれど、自分たちの手繰る儀式魔術【Q】もまたオブリビオンにすれば理外そのもの。
ならばこそ、と思うのだ。
「ちゃんと手順踏めよこらー!」
自分たちだってそうしているんだからと、玲は蒼炎でもって赤い『セラフィム』に当たり散らすように斬撃を放つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
なんか一々住民のガラが悪くないかい?
それどころじゃないって?
いやいや明日までの宿題があるときほど部屋の散らかり具合が気になるって言うじゃない?そんな感じ!
●立って立って
ボクの勘【第六感】ではこの辺り…ていっ
とどんどこ瓦礫をひっくりかえしてみんなを助けていこう
きっとボーナスキャr…力強い味方だっているはずさ!
こどもや非戦闘員にはお菓子をあげよう
ほらほら、あのあっち通りをまっすぐ抜けてけば敵の弾は当たらないよ~
え、あそこはすごく撃たれてるって?大丈夫!ボク(の勘)を信じて!
さあ助けてあげたんだしまさか手伝ってくれないなんて言わないよね!
え?キミもお菓子ほしかったの?
「うーん、なんか『須弥山型都市』の住人ってガラ悪くなーい?」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はなんとなく思っていたことを言う。
それは他世界の技術と文化とが入り混じった『須弥山型都市』の有様を指し示したことであっただけなのだ。
二つの世界の様相が混ざるということは混沌めいたことである。
収束しきれない何かがあるようにも彼には思えたのだろう。
「いやいや、それどころじゃないってね。いやー、また派手にやってるねー」
ロニは戦火に沈む街中を見やる。
汎ゆる建物が破壊され、人々は逃げ惑うしかない。
立ち向かうサイバー武侠や、ヤクザ仙人たちの姿もあれど、しかし、いずれもがあの赤い鋼鉄の巨人『セラフィム』の放つ火線と斬撃、水晶体によって押され気味であるように思えたのだ。
「まったくもー、これじゃあ、気になってしようがないよね。明日までの宿題があるときほど部屋の散らかり具合が気になるっていうあれだよね!」
とは言え、とロニは己の第六感に従って瓦礫を片っ端から、有り余る膂力でもって引っ剥がしては投げ捨てていく。
何を、と誰もが思うかも知れないが今は咎める者などいない。
「よしよし、きっとここにボーナスキャ……じゃない心強い味方だっているはずなんだよね!」
だが、瓦礫を引っ剥がす度に現れるのは負傷した獣人たちばかりであった。
逃げ遅れた非戦闘員とでも言えば良いのだろうか。
彼らは皆一様に憔悴しているし、傷ついている。
ロニは仕方ないなーと笑って彼らを救出し、走れるかどうか呼びかける。
殆どが幼子であったが、しかしロニは彼らに微笑む。
「いいかい、あっちの通りをまっすぐ抜けていけば敵の弾は当たらないよ~」
「うぐっ、えっぐ……」
「あーもー泣かないで。ほら、お菓子をあげよう。泣くのは仕方ないことだけれど、生きることをやめちゃあだめだよ。ほら、ね」
だから、とロニは砲火荒ぶ戦場と化した街中を示す。
どう見ても、幼子であってもわかるほどに、そこは安全地帯とは言い難い光景が拡がっていうのだ。
「……むり」
「むりじゃないよ。大丈夫。ボクを信じて」
勘というか、第六感だけれど。
それ故に説明がし難い。説得の材料としては弱々しいものであったことだろう。けれど、それでも彼らを助けるためには、走らせなければならない。
「きっとだいじょうぶ! さあ!」
ロニは幼子の背を押す。
己の足元に次なる瞬間、赤い『セラフィム』の火線が飛び込んでくる。衝撃が荒び、幼子は、その衝撃に押されるようにして走り出す。
生きるということはかくも厳しいことなのだろうかと思ったことだろう。
己を助けてくれたロニでさえ、火線の中に消えた。
熱が背を焦がすようであった。
けれど、走る。あの人が走って、と言ったから走る。振り返ることなんてできない。ただ、只管に生きるために痛む体を引きずってでも幼子は走ったのだ。
その背中を認め、ロニはやれやれと頭を振る。
「まったくもー、こっちが折角頑張ってるのに無粋だなー」
そう言ってロニは炎の中から、ひょっこり顔を出す。
彼は火線受ける瞬間に、神撃(ゴッドブロー)でもって衝撃を生み出し、その衝撃の壁でもって火線の一撃を防ぎ、また同時に幼子を送り出したのだ。
ぐるん、と腕が回る。
「そんな無粋な子には、少しお仕置きしてあげないといけないよね!」
笑ってロニは、その拳を振るう。
赤い鋼鉄の巨人『セラフィム』の残骸が宙に舞った――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『パンツァーキャバリア『アイアン・サム』』
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POW : ファイヤフライ
【17ポンド対戦車砲】から【激しい閃光と共に放たれる砲弾】を放ち、レベルm半径内の敵全員を攻撃する。発動前の【装填時間と狙撃】時間に応じて威力アップ。
SPD : イージーエイト
自身が操縦する【パンツァーキャバリア】の【主砲威力】と【装甲】を増強する。
WIZ : スーパーサム
自身の【パンツァーキャバリア】を【多連装ロケット砲モード】に変形する。変形中は攻撃力・射程が3倍、移動力は0になる。
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵達は多くの獣人たちを救い、また共に戦うことによって信義を深めた。
赤い鋼鉄の巨人『セラフィム』は漸く街中から排除されたが、しかし未だ炎が街中を包んでいる。それでも猟兵たちと獣人たちは空を見上げていた。
いや、違う。
見上げていたのは空ではなく、『須弥山型都市』の天頂たる有頂天蓋。
そこにこそ、この戦乱たる状況を呼び込んだ張本人がいる。
「あのオブリビオンが居る限り、この状況はまだ続くってことか……!」
「大本を叩く。当然でありましょうな。猟兵の皆様、我々も!」
共に戦うと獣人たちは拳を握りしめる。
だが、そんな彼らの戦意をくじくようにして、有頂天蓋より降下してくる影があった。
それは、鋼鉄の巨人。
赤い鋼鉄の巨人ではなく、その戦車を上半身にしたかのような歪なる巨人であった。
「パンツァーキャバリア……!?」
「まだこれだけの物量を有していたというのか……!」
「コイツら、動きが違う! 中国戦線のパンツァーキャバリアじゃない!」
そう、猟兵達は知るだろう。
降下した瞬間に即座に大地を駆け抜けるパンツァーキャバリア『アイアン・サム』の動きは、凡庸なるそれではないことに。明らかに動きが良いのだ。
それはオブリビオンが乗り込むことによって、精鋭戦力となった機体は『ワルシャワ条約機構』の戦力であることを示していた。
この精鋭たるパンツァーキャバリア『アイアン・サム』を退けない限り、いつまた【Q】によって街中が戦火に沈むともわからない。時間はなく、されど、迫る敵は脅威そのもの。
獣人たちの助けがあってもなお、この状況は厳しいと言わざるを得ない。
だが、それでも進まねばならないのだ――。
サーシャ・エーレンベルク
……次から次へと。
さっきのセラフィムと違って高機動、かつ圧倒的な巨体、みんなが臆するのも道理。
――けれど、ここには私がいる。
臆する必要はない! 先陣は私が切る!
【白闇】を発動する。吹雪による超低温、金属は極低温化でその堅牢性を失う。
それなら、あなた達は素手でもあのキャバリアの装甲を打ち破ることも可能でしょう。
ウォーマシンのようなプログラムされた思考なら打つ手はなかったわ。けれど、私の吹雪が奪うのは敵の熱だけじゃない、操縦者の思考もよ。
操縦者の思考が凍結すれば、高機動性も無意味!
私の竜騎兵サーベルの一撃を以て、この難局を打ち払う!あなた達は援護を!
まだ、絶望するには早いわよ!
戦場に炎が立ち上れど、しかして煌めく標がある。
それは白き剣。
人の心の恐怖あれば、その標を見るがいい。それは恐怖の先を征く者が示す煌めき。
そう、恐怖の先にあるものとは即ち勇気である。
挫けそうになる心も、恐怖に竦む心も、全てその白き剣が切り裂く。そう言わんばかりの煌めきとともに白い髪がたなびく。
炎の赤も染めるに能わず。
「臆する必要はない! 先陣は私が切る!」
その声と共にサーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)は有頂天蓋を目指して走る。
巨体が蠢く。
明らかに連携するような動きで持って鋼鉄の巨人、パンツァーキャバリア『アイアン・サム』はサーシャの突撃を囲い込む。
見事な連携である。
彼らは内部にオブリビオンが搭乗しているのだろう。
先程までの赤い『セラフィム』が無人機であるがゆえの反応めいた戦いを示していたというのならば、『アイアン・サム』はオブリビオンが乗ることによって、その戦術、戦法を手繰る存在である。
突出したサーシャを取り囲む彼らの主砲がサーシャを捉え、その砲弾が放たれる。
それは彼女を爆煙の中に飲み込み、獣人立ちをどよめかせる。
しかし、そのどよめきを切り裂くようにして、白き剣の切っ先が飛び出すのだ。
そう、確かに敵は恐ろしい。
そして強い。圧倒するような巨体を前に獣人たちが畏怖するのも、臆するのもまた道理。
だがしかし。
此処には『白き剣』がいる。
「白い闇よ、吹き荒れなさい!」
その剣の切っ先から放たれるは白闇(ホワイト・アウト)たる吹雪。
猛烈な凍気が一気に『アイアン・サム』の鋼鉄の装甲を凍結させる。
「金属は極低温化によって堅牢性を喪う。なら、あなたたちだって!」
サーシャの言葉に武侠の獣人たちが頷く。
己たちが戦闘義体に置き換えた肉体を持ちながら、何故これまで功夫を積み重ねてきたのか。それはこの時のためにあるのだと言わんばかりにサイバー武侠たちが駆け抜ける。
叩きつける拳が装甲を砕く。
「おおっ! 俺たちも征くぞ! あの『白き剣』の煌めきに続け!」
サイバー武侠たちが拳を振るう最中、『アイアン・サム』を駆るオブリビオンたちは戸惑っただろう。
如何に装甲が脆くなったのだとしても、己たちの機体の俊敏性は損なわれていない。圧倒できるはずだ。
だが、彼らは靄が掛かったような思考を振り払えないでいた。
「ダメだ、どうして、こんなにも頭に靄がかかったような……操作が、鈍る……!」
「それはそうよ」
『アイアン・サム』の頭部に立つ者がいた。
その竜騎兵サーベルを手にした彼女は言う。
「あの赤い『セラフィム』のように自律する存在であったのならば、打つ手はなかったわ。けれど、あなた達が精鋭として操縦してくれていたおかげで私のユーベルコードは思考を凍結させることができる」
振り下ろした竜騎兵サーベルの一閃が『アイアン・サム』の巨体を一文字に両断する。
左右に崩れ落ちるパンツァーキャバリアの躯体の下でサーシャは己の剣を掲げる。
この難局。
どうしようもないほどに苛烈なる敵の攻勢。
その一の矢の如き嚆矢を今まさに彼女は切り裂き、示してみせたのだ。
「まだ、絶望するには早いわよ!」
サーシャの言葉にサイバー武侠たちが応える。
そう、まだ絶望には早すぎる。
戦って、戦って、その恐怖の先にある勇気を手にした彼らが掴むのは絶望ではない。
それを示すようにサーシャは己の掲げた剣の先にこそ、未来があることを指し示し、迫る『アイアン・サム』を打ち倒すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
どこまでも憎しみを
いえ…これは超大国なりの大義だろうか
|犇《ひし》めく悪意が跳梁跋扈するこの世界に於いて、
弱さが罪だと云うのならば
たとえこの攻勢がワルシャワ条約機構、『始祖人狼』以外の作戦行動だったとしても
退けられるかどうかは五分五分だったか否か
しかし、それがどうだというのだろう
嘗て、かつて、助けを求める声に応じて立ち上がった者達が居た
オブリビオンは恐れている
反抗の灯火は、何時かは圧制者を燃やし尽くす大火となり得よう
その火を今絶やさせはしない
◆我流・神気絶命旋
直撃弾を見切りで躱し、爆風をジャンプで越え、機銃掃射を武器受けで切り返しながら切り込み打って出る
早業+重量攻撃の乱れ撃ち
有象無象を薙祓え
人の生命が喪われる。
それは決して贖うことのできないものであるからこそ、生命を奪ったものへの強烈な憎しみを生み出す。
その強烈なる憎悪こそが争いの源であるというのならば、それはあまりにもどうしようもないことであったのかもしれない。
贖うことはできず。
さりとて憎しみがだけが募っていく。
憎しみを払うことはできず、ただただ体積していく。
故に滅ぼし切るしかないのだ。
そうすることでしか憎しみは裁ち切る事ができない。だが、同時に滅ぼし切る、ということができないのもまた事実。
故に忘却するしかないのかもしれない。だが、その忘却さえも人は認めない。
「どこまで憎しみを。いえ……これは超大国なりの大義だろうか」
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は考える。
これが大義であるというのならば、この炎によって失われた生命は大義の犠牲であると言うのだろうか。
大義を掲げたのならば、全てに言い訳が突くと考えるのならば、それはあまりにも浅はかなものであったことだろう。
「そして、それを弱さだとそしるのならば、罪だと言うのもまた人。例え、この攻勢が『ワルシャワ条約機構』、『始祖人狼』以外の思惑が在るのだとしても、これを退けられるかどうかは五分五分だった筈」
走る。
戦場をただ走る。
迫るは、パンツァーキャバリア『アイアン・サム』の砲塔より放たれる強烈なる閃光と共に放たれる砲撃。
それらは瞬く間に戦場に在りし猟兵たちや獣人たちへと襲いかかる。
恐るべき砲火。
精鋭と呼ばれる『ワルシャワ条約機構』のパンツァーキャバリアの底力を見せつけられるようだった。
故に、これで五分、と蔵乃祐は言ったのだ。
これほどまでの戦力を前にして彼は、獣人達はしかし退くことはしない。
はるか昔に助けを求める声に応えた者がいた。
それが猟兵と呼ばれるものであったのならば、それこそが始まりの猟兵である。故にオブリビオンは恐れているのかも知れない。
恐怖に、憎しみに、争いに抗う灯火。
それはいつしか彼らを、圧制者を燃やし尽くす大火となり得る可能性を秘めているのだとしたら。
「その火を今絶やさせはしない」
煌めくユーベルコード。
蔵乃祐の手にした大連珠が振り回され、『アイアン・サム』の巨体へと叩きつけられる。
甲高い音が響く。
如何に高速で振り回した大連珠と言えど強靭な装甲を持つパンツァーキャバリアには無意味。
だが、しかし、次の瞬間大連珠打ち据えられし『アイアン・サム』の巨体が傾ぐ。
いや、傾ぐのではない。
内部のフレームが歪み、そして、大連珠によって打ち込まれた蔵乃祐の練り上げられた『気』が今まさに『アイアン・サム』の内部をずたずたに破壊しながら、衝撃が泡立つようにして吹き荒れているのだ。
「なんだ、どうなっている! 猟兵の一撃は防いだはずだぞ! なのに!」
「天藍よ御照覧あれ!」
蔵乃祐は叫ぶ。
その瞳に輝くユーベルコードは、かつてこの地の獣人たちに戦うための術として伝えられたもの。
そして、今まさに蔵乃祐は己の練り上げられた『気』をこそユーベルコードにさえ昇華せしめた者。
この技の名を知るが良い。
「我流・神気絶命旋(ミヨウミマネゼツメイセン)! 有象無象を薙祓え!」
爆裂する鋼鉄の巨人。
その様を見やる獣人たちは声を上げる。
応える蔵乃祐はさらに迫りくる精鋭たる『アイアン・サム』を前に一歩も退くことはなかった。
一歩引けば、それだけで己の背後にあるであろう灯火は立ち消える。
故に、その苛烈なる風を前にこそ己の姿を晒し、その灯火を守るために戦うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジュディス・ホーゼンフェルト
世の中には同じ名前の人間が3人はいるって言うけどさ、この場合もただの偶然?
もしシーヴァスリーのノイン首席と同一人物なら危険度を前提から再評価しなきゃいけなくなるね
Qも使うし別世界に渡る手段も持っていると来たら単なる頭が切れる首席じゃ済まないよ
中国戦線のパンツァーキャバリアじゃない…ねぇ
そもそもこの世界産ですらなかったりして
こりゃますます調べ甲斐が出てきたね
それはそうとしてこいつらは叩かせて貰うよ
でなきゃノインの元に辿り着けないからね
アタシは脇役らしく主演の引き立て役に回りますか
ダークイーグルで出るよ
オーバーブースト・マキシマイザーのスピードで撹乱する
敵機の射線軸に敵機を挟むように位置取りしつつ駆け抜けて戦列を引っ掻き回そう
あんな主砲まともに食らったら一撃でバラバラだからね
装甲も固いなぁ…関節部や砲門をゾディアスとスティングテールのビームキャノンで狙い撃って黙らせよう
後詰めは主演の現地民達にお任せ
撹乱した分だけ敵の注意はこっちに向くし、アタシがトドメ刺して回るより効率的でしょうよ
『ノイン』。
その名を幾度か猟兵は耳にする機会があった。
クロムキャバリア世界における遺失技術プラントより稀に生み出される脳無き巨人『ユミルの子』の素体『ノイン』。
獣人戦線においては、今回を含めれば四度目。
そして、鋼鉄の巨人が闊歩する世界に置いても、その名をジュディス・ホーゼンフェルト(バーラント機械教皇庁三等執行官・f41589)は聞いたことがある。
「世の中には同じ名前の人間が三人はいるって言うけどさ、この場合もただの偶然?」
『始祖人狼の使者』、オブリビオン『サロメ・サージェント』の容姿をジュディスは知らない。
だが、それが己が見た、とある小国家の首席の姿と同一であるかはわからない。
彼女は最悪を考えた。
もしも、これが彼女の最悪に部類するものであったのならば、彼女が一度下した『ノイン』という存在への評価を改めなければならない。
別世界に渡る手段を持っているのか、そして【Q】もまた手繰るのか。
その力の全てを一手に持つというのならば、もはや単なる頭が切れる首席程度では済まない。
それを見極めるために彼女は獣人戦線の『須弥山型都市』にキャバリア『ダークイーグル』と共に降り立つ。
数多の獣人達は戦闘義体に肉体を置き換え、その上で功夫を積み上げ、研鑽してきた技を持つ。さらには仙術さえも手繰り、なおかつ宝貝さえも持つ者さえいる。
あまりにも雑多な都市。
故に混沌めいていた。
言ってしまえば、この『須弥山型都市』には二つの世界の特徴が現れている。
封神武侠界とサイバーザナドゥ。
この二つの世界が獣人戦線という器の中に収まっているという魔境。
さらに敵の機体は……。
「中国戦線のパンツァーキャバリアじゃない……ねぇ。なるほど? こりゃますます調べ甲斐が出てきたねぇ」
『ダークイーグル』が戦場を飛翔する。
クロムキャバリアと違い、この世界では空を飛ぶことを厭う必要がない。
空ニ蓋をされていない世界における己のキャバリアの機動性は、オーバーブースト・マキシマイザーによって底上げされた速度で持って引き上げられる。
放たれる砲火。
その砲弾を空中で横に回転するようにして躱しながらジュディスは有頂天蓋へとつながる支柱を蹴って飛ぶ。
弧を描くようにして宙を舞う『ダークイーグル』はアイセンサーにパンツァーキャバリア『アイアン・サム』の砲塔を見つめる。
あれはオブリビオンが乗っている。
先程まで様子見をしていた赤い『セラフィム』にはない操縦者がいるがゆえの特有の癖を見出し、ジュディスはビームキャノンの一撃で持って『アイアン・サム』を沈黙させる。
「あの主砲は受けるわけにはいかないからね。まともに食らうつもりはないよ!」
さらに『ダークイーグル』が戦場を駆け抜けるようにして飛ぶ。
それは敵陣を引っ掻き回すような動きであった。
「あの黒いパンツァーキャバリア……こちらの動きを補助してくれているのか! 敵の鮮烈を崩してくれるのなら!」
「後詰めの現地民の人におまかせってね!」
ジュディスの『ダークイーグル』がさらに敵を撹乱する。かき乱された戦列を突破するようにして、サイバー武侠たちが己の宝貝を『アイアン・サム』の鋼鉄の躯体へと叩き込む。
傾ぐ巨体をジュディスのビームキャノンが貫き、爆発の中をさらに飛ぶ。
「ご助力感謝いたします!」
「いえいえってね。こっちのほうが効率的でしょ。アタシが撹乱、そちらがトドメ。よろし?」
「はい、おまかせを!」
拱手でもって一礼するサイバー武侠たちを背にジュディスは『ダークイーグル』で駆け抜ける。
この状況を切り抜け、有頂天蓋、この『須弥山型都市』の頂上へと向かわねば、彼女の目的である『ノイン』の元へはたどり着けない。
ならばこそ、この状況を最大限に利用させてもらうまでだ。
「『ノイン』、『フュンフ・エイル』……さァて、鬼が出るか蛇が出るかってところよね。百年前の『エース』の名を騙るだけの何者か、それともただの偶然なのか、見定めなきゃァね!」
ジュディスは砲火の最中を己の推測が正しいのか、それとも全く別の事実が浮かび上がってくるのか。
その真相を確かめるべく、苛烈なる戦場を征くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イーブン・ノルスピッシュ
……ここから先は更に危険度が跳ね上がる
ここで退くのも勇気ある行動だ
だが、奴らに一矢報いてやろうと言うならば
……改めてその命を俺に預けてほしい
黒い陽炎達が敵機の前に踊り出る
敢えて狙わせる事で足を止めさせる
ロケット砲が発射される前に、懐に入ってしまえばこちらのものだ
その為の隙は〝俺達〟が作る
変型機構というものは、得てして装甲が薄く、脆い
そこなら届くはずだ、|俺達《獣人》の爪と牙が!
……今少し思う
おそらく俺は、このドッグタグの持ち主達を、彼らの帰るベき場所へと帰してやることが出来なかったのだろう
(かつて仲間達を率いて戦い、全滅した)
だが今度こそ
預かったものは返さなければならない
ああそうだ、今度こそ!
胸にあるのは衝動。
自然と己が敵――即ちオブリビオンと相対している時、喉から漏れるような唸り声が響くのを感じる。どこか自分のものではないような気さえする。いや、そうであってくれたのならばと、イーブン・ノルスピッシュ(戦闘猟兵・f40080)は怒りの奥底にある感情を溢れさせながら、戦場へと飛び出す。
確かに『ワルシャワ条約機構』のパンツァーキャバリア『アイアン・サム』は恐るべき巨体と砲火でもって有頂天蓋に迫らんとする猟兵と獣人たちの前に立ちふさがる。
だが、それでも往かねばならない。
生きるために死地に飛び込まなければならないという矛盾。
「……ここから先は更に危険度が跳ね上がる。ここで退くのも勇気ある行動だ」
イーブンの言葉に横を走るサイバー武侠たちは不器用に笑った。
「何をおっしゃいますやら」
「ええ、俺たちは此処まで来た。ならば、一矢報いるまで。敵にではなく、共に戦ってくれた貴方たちに報いなければ、我らの同胞の死は無為に失墜することでしょう」
故に、と獣人たちはからりと笑って砲火の前に飛び出す。
言うまでもないことだったとイーブンは笑うでもなく、ただ己のうちから溢れる衝動と共に駆け抜ける。
炎纏う様々な獣人らしき黒い陽炎が溢れる。
「……改めて、その生命を俺が預かる!」
イーブンは獣人たちの誰よりも早く『アイアン・サム』の前に躍り出た。
黒い陽炎はその動きに追従するように飛び出し、『アイアン・サム』の脚部へと炎を叩きつけ、その巨体を傾がせる。
ぐらつく巨体。
だがそれだけでは敵は倒せない。
わかっていたことだ。
「ロケット砲……!」
多連装ロケット砲発射携帯に意向するように、ぐらついた機体は、その脚部を分裂させ、四脚めいた姿へと変貌を遂げる。
「放つか、砲撃を! だが、変形機構というものは!」
イーブンは飛び出す。
陽炎たちと共に恐れなど無いというように飛び出す。砲口が己たちを狙うのだとしても構わなかった。
己達には生命がある。
けれど、それ以上に爪と牙が研ぎ澄まされている。
「得てして装甲が薄く脆くなるというものだ! ならば届くはずだ!」
振り下ろされる陽炎の爪と牙。
その一撃が『アイアン・サム』の脚部、変形した四脚を引きちぎるようにして巨大な顎めいたよ様相を見せるのだ。
ぐらつく巨体が大地に沈んだ瞬間、サイバー武侠たちが、己たちの戦闘義体に施された電撃纏う一撃を叩き込む。
イーブンは、その爆発の様を見やる。
手首のドックタグが揺れて、鈍色の輝きを放っていた。
このドッグタグ。
誰の名なのかも判別がつかぬ、それ。この持ち主たちを、本来彼らの還るべき場所へと還してやるべきなのだろう。
だが、己はそれができなかったのだと思う。
きっとそうなのだと思う。
ならば、この胸に宿る衝動は敵への怒りではないのかもしれない。
己の不甲斐なさに怒りを込めるがゆえの咆哮。
いっそ、黒い陽炎が己をそしり、責めてくれたのならば楽であったことだろう。
己は此処にいる。
その事実こそが、イーブンを駆り立てる。
「だが今度こそ。預かったものは返さなければならない。ああ、そうだ、今度こそ!」
イーブンは駆け出す。
炎の中を。
先を見通すことのできない暗闇ではなく、炎に照らされ煌々たる視界の中へ。
それだけが己の理由だと言うように――。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
【鋼獣小隊】POW
アドリブ大歓迎
「そうだな、エド!恐れるほどのもんじゃねえ!
さあ!前線はオレ達二人が押し上げる!
みんなは協力して奴らに当たってくれ!
不安はあるだろうが大丈夫だ!
なぜならば!ここにはオレ達猟兵がいる!!」
UCを発動して戦場にいる仲間全員を絶大に強化
ソルブレイザーにエドと共に乗って突っ切る
オレのバイクの腕は超一流だ
攻撃は避けていくぜ!
右腕にクラッシャーを転送
エドを送り届け次第、クラッシャーで[貫通攻撃]
アイアン・サムを粉砕するぞ
そして、そのまま跳躍して次々とアイアンサムを撃波
砲弾が迫ればバイクに乗って[オーラ防御]で防ぎつつ回避
「まだまだ暴れまくるぞ!
一斉攻撃を叩き込め!みんな!」
エドワルダ・ウッドストック
【鋼獣小隊】SPD
アドリブ歓迎
有頂天蓋に向かう前の障害ですわね。
べらぼうな大きさと数ですけれども、怯むことはありません。
そうでしょう、清導?
わたくしたちが道を切り拓きますわ!
両手にコンバットナイフを握り締めて、清導のバイクに相乗りしてアイアン・サムに突撃します。
巨大で激しい閃光と共に放たれる主砲の攻撃は、見切ることは可能なはずですわ。
際どい時は強引に、ナイフで側面を狙い受け流して守りましょう。
接近すればバイクから飛び出し、増強されたその装甲にUCを放ちます。
霊体でなくとも、この斬撃を防ぐというのであれば叩き切ってやりますわ!
皆様! この箇所に一斉攻撃を!
この調子で次々に撃破していきましょう!
共に戦う者がいるということは喜ぶべきことであろう。
例え、己が倒れたとて託させる者がいるということは、憂うことではないからだ。
しかし、空桐・清導(ブレイザイン・f28542)とエドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)においてはそうではなかっただろう。
共に並び立つということは、即ち共に生きて戻るという決意の表れでもあったのだ。
ならばこそ、目の前に迫る巨体。
パンツァーキャバリア『アイアン・サム』の威容を前にしても彼らは恐れるkとはなかった。
「有頂天蓋に向かう前の障害ですわね」
己たちの背後には獣人達、サイバー武侠やヤクザ仙人といった歴々たる者たちが追従している。
止まるわけにはいかない。
彼らの勢いは立ち止まることで殺されてしまう。物量、質ともに『ワルシャワ条約機構』の精鋭には敵うべくもない。
ならば、己たちの街を守ると、奪われた怒りに突き動かされる彼らの勢いを止めてはならない。
故に先を走る清導のバイクのタンデムシートにまたがるエドワルダは思う。
「べらぼうな大きさと数ですけれども、怯むことはありません。そうでしょう、清導?」
「そうだな、エド! 恐れるほどのもんじゃねえ!」
清導は頷く。
この勢いのままに。
苛烈なる感情の赴くままに立ち向かわねばならない。
故に彼は叫ぶ。
「さあ! 前線はオレ達二人が押し上げる! みんなは協力して奴らに当たってくれ!」
不安はあるだろう。
誰にだって在るはずだ。戦いを前にして恐れる心の無き者は、白痴と同然であっただろうか。彼らはそうではない。真っ当に恐れ、真っ当に立ち向かう者たちだ。
故に示さなければならない。
「わたくしたちが道を切り拓きますわ!」
タンデムシートの上に立ち上がり、エドワルダが言う。
手にしたコンバットナイフの柄を握りしめる。その瞳がユーベルコードにきらめいている。霊力を帯びたコンバットナイフ。
それは清導が手繰るバイクのスピードを得て、巨体を誇る『アイアン・サム』の脚部をすれ違いざまに、まるで紙を切り裂くかのように両断せしめるのだ。
「大丈夫だ! なぜならば! ここにはオレたち猟兵がいる! 立ち向かう者達(ヒーローズ)が!!」
守りたいと思ったはずだ。
この『須弥山型都市』に生きる人々はみな、誰かを守りたいと思ったはずだ。
大切な人もいるだろう。
見ず知らずの隣人を守らねばと思う者だっているだろう。
そんな者たちがいるからこそ、己達は戦えるのだと清導は咆哮するように唸りを上げるバイクのエンジンをかき立てながらエドワルダを載せ、疾駆する。
「エド!」
「ええ、おまかせを!」
タンデムシートを蹴ってエドワルダが宙に舞う。
それを『アイアン・サム』は追うようにして砲塔を向ける。
だが、次の瞬間、その巨体の胸部を貫く光熱の杭の一撃『ボルケーノ・クラッシャー』の一撃が『アイアン・サム』へと叩き込まれる。
凄まじき一撃と共に清導の体がバイクと共に走り抜ける。
爆風が吹き荒れ、飛び立ったエドワルダの体をさらに宙高くへと押し上げる。
エドワルダは空より見ただろう。
俯瞰した戦場。
そこには多くの獣人たちの姿があった。
誰でもない己たちの手によって自らの暮らす『須弥山型都市』を守らんと戦う彼らの姿を認める。
これは己たちだけでは導けぬ光景だ。
彼らの一人ひとりが戦うという気概がなければ成さしめることのできないものであることをエドワルダはユーベルコード輝く瞳で見た。
「誰も彼もが一人きりで戦うものではないのですわ」
振るうコンバットナイフの一撃は、聖魔切断(スピリット・スライサー)たる一撃となって『アイアン・サム』の巨体を切り裂く。
爆炎が立ち上り、その最中をエドワルダは走る。
そんな彼女を迎えるように清導のバイクが駆け込み、その手を取ってタンデムシートへと導く。
「まだまだ暴れまくるぞ! 一斉攻撃を叩き込め! みんな!」
清導の言葉に従うようにして獣人たちの一撃がかしいだ『アイアン・サム』の巨体へと叩き込まれる。
その全てが戦う者の意志を示すものであった。
戦わずには得られるものなど何一つない。
それを示すように赤い軌跡を描く二人の猟兵は戦場を駆け抜けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オーガスト・ガンバレル
【心境】
今度はパンツァーキャバリアか。
ずいぶんと見慣れた姿に感動すら覚えるよ。
では、もうこの機体のツラは見飽きたのでバイバイくまー。
【行動】
愛機のツキミヅキで後退くまー。
生憎と精鋭だろうが何だろうが、その程度でビビるような新兵じゃないんでね。
この後進は貴様らを倒すための一手さ。
≪パンツァーフォートレス≫起動。
強化延長した射程内ギリギリからの遠距離砲撃だ。
機体を固定し、『自動射撃』モードに移行。
『誘導弾』『エネルギー弾』を『一斉発射』して敵機まとめて『範囲攻撃』
する。
さて、ツキミヅキはいい囮だ。
オレはこの隙に単独行動で敵機の背後に回り込み、愛用のアマロックの『乱れ撃ち』で止めを刺してやるよ。
戦場を席巻するは『ワルシャワ条約機構』の精鋭たるパンツァーキャバリア『アイアン・サム』の巨体と砲火であった。
凄まじいまでの火力。
そして、敵を威圧するかのような巨体。
見上げるほどの巨体であるということは、即ち敵の戦意を損なうには十分な視覚効果があったということだ。
だが、オーガスト・ガンバレル(8月のキムンカムイ・f39985)は目深に被った防止の奥で笑む。
不敵だった。
そう、彼にとってパンツァーキャバリアとは見慣れたものであり、また同時に感動すら覚えるものであった。
「確かにな。心動かされるものがあるよ。だがな」
オーガストは己の愛機である『ツキミヅキ』と共に後退する。
「何故、後退を!? 今が押し込む好機では……!」
追従する獣人たちの言葉にオーガストは笑む。
まさか臆したのかと問われるような表情にオーガストはやっぱり笑ったのだ。
「生憎と精鋭だろうがなんだろうが、敵がそんなもんだろうが、その程度でビビるような新兵じゃあないんだよ。まあ、任せておきな。お前らは俺の合図と共に突っ込めよ!」
オーガストの言葉に獣人たちは半信半疑であった。
しかし、彼の後退は十分に『アイアン・サム』の突進を引き付けるものであったことを彼らは知るだろう。
そう、これは自らを囮にした後退。
「そうさ。追ってこい。この後進は貴様らを倒すための一手さ」
オーガストの瞳がユーベルコードに輝く。
如何に火力を誇る敵であろうと、後進する敵を追うために砲撃を加えざるを得ない。そして、その砲撃はパンツァーキャバリアであるからこそ、砲弾を装填する一瞬の隙を生み出すものである。
彼の『ツキミヅキ』が変形する。
脚部が大地にアイゼンを打ち込み、その場に巨体を固定させた瞬間、『アイアン・サム』を操るオブリビオンたちはオーガストの狙いに気がついたことだろう。
「だが、遅ぇ!!」
固定砲台へと変形した『ツキミヅキ』の砲塔が『アイアン・サム』の巨体をとらえる。
射程ギリギリからの自動車劇モード。
誘導弾、エネルギー弾、己の機体に備わった弾丸の全てを打ち尽くすかのような一斉射撃に惹きつけられた『アイアン・サム』の群れは砲弾の雨にさらされ、その動きを止めるしかなかった。
脚部を破壊された機体。砲塔をひしゃげさせた機体。
いずれも敵は行動不能になるばかりであった。
そこにオーガストの合図と共に獣人たちが駆けつける。
「征きます!」
「おうともよ! 存分にやりやがれ!」
オーガストもまた自動車劇モードにいたった『ツキミヅキ』から降りて、愛用のアマロックを構え飛び出す。
放つ。
引き金を引く。
いずれも簡単なことだ。自らの機体を囮にして味方を活かす。生かすのではなく、活かすのだ。
敵は此方を打ち倒すことばかりを考えたものたちだ。
ならばこそ、この囮が効く。
「乱れ撃ちで構わねぇ。お前らも、もう連中のツラは見飽きただろう。キリよくバイバイするくまー」
オーガストは笑って引き金を引く。
銃声響く中、戦場は未だ炎に包まれている。だが、それは己たちが奪われるのではなく、簒奪者を打ちのめす炎であることを彼らは知るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
うう……ステラさんも天の声さんもひどいです。
破壊音波魔法とか心外ですよぅ(えぐえぐ
ほらまたそんなこと言うー……。
そんなことないですもん。
獣人の方にしっかり聞いてもらえれば解ると思います。
だからこそ、ソナーレでめいっぱい増幅してですね……。
ひどいです、ひどいですー!
癒やし殺すなんてそんな器用なことわたしできませんからね!
いーですもん、いーですもん。
今回はわたし拗ねちゃいますからね
ソナーレの中に籠城しちゃいますよ?(ちらっ
いいんですか? ほんとにしちゃいますよ?(ちらっちらっ
いいんですね!
言質取りましたよ! いまのナシとかもう聞きませんからねー♪
行きますよソナーレ! 全力【ボレロ】ー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
熾天大聖様の元に行くにはまだ障害があるようですね
ですが、キャバリア戦ならそれとやりようがあります
フォル!いらっしゃい!(鳥型キャバリア呼び寄せ)
えっと、ルクス様はソナーレ以外の手段を考慮すべきと思います
獣人の方々が死んじゃいません?
え?なんですその二律背反超技能!?
ええい、こんなコントをしている場合ではないのです!
フォル!いきますよ!
【ル・ディアーブル・ヴィアン】!
パンツァーキャバリアを足止めします!
獣人の皆様は遠距離から支援を!
ルクス様はやく……ってこんな時にひきこもり!?
ルクス様ー!ルクス様ったら!……ああもうソナーレでいいですから!
獣人の皆さまだけは巻き込まないように!
『始祖人狼の使者』を名乗るオブリビオンが存在するのは『須弥山型都市』の頂点、有頂天蓋である。
しかし、そこに至るまでの道のりを埋め尽くすのはパンツァーキャバリア『アイアン・サム』の群れであった。
『ワルシャワ条約機構』のパンツァーキャバリア。
彼らは精鋭である。有象無象とは違う。
全ての動きが連携を前提としている。数と質。その両方を兼ね備えた敵と相対するには猟兵たちの数が圧倒的に足りない。
けれど、それを埋めるように『須弥山型都市』の獣人たちが戦場を駆け抜ける。
「『熾天大聖』様の元にいくにはまだ障害があるということですか」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は空を見上げる。
その瞳に映るのは、未だ見ぬ敵と己が求める者。
「うう……ステラさんひどいです。破壊音波魔法とか心外ですよぅ」
べそべそしているルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は地面にのの字を書いていた。
それはごめんなさいって感じであるが、今はそれどころではないのだ。『アイアン・サム』の砲火は凄まじく、猟兵達だけでも獣人たちだけでも突破は困難であろう。
故に協調が必要なのだ。
けれど、ルクスがこんな様子ではステラも戦いづらいというものである。
ステラの元に空より飛来する鳥型キャバリア『フォルティス・フォルトゥーナ』。
「えっと、ルクス様は、『ソナーレ』以外の手段を考慮すべきと思います」
「またそんなこと言うー……」
ルクスのキャバリアは彼女の演奏に連動して動く。
故に演奏は不可欠。それ以外では操縦インポッシブル。
だからこそ、ステラはそれ以外をよろしくです、と言う。それは尤もなことだった。だって、そうしないと他の獣人たちがルクスの演奏に酔って耳をやられてしまうからだ。
「獣人の方々にしっかり聞いてもらえれば解ると思います。だからこそ、『ソナーレ』でめいっぱい増幅してですね……」
「確実に死に至る演奏じゃないですか」
「ひどいです、ひどいですー!」
わーん! とルクスは大泣きである。
戦場でこんなことをやっている場合じゃあないというツッコミを獣人たちはこらえた。
彼女たちには彼女たちの事情ってもんがあるのだろうか、外野である自分たちが何かをいうのは憚られたということもある。
けれど、此処戦場なんだけどなぁって顔だけはどうしても隠せなかった。
そんな獣人たちの表情にステラは焦る。
もしかして、一緒くたにされている? カテゴライズされている?
「癒やし殺すなんてそんな器用なことわたし、できませんからね!」
「なんです、その二律背反超技能!?」
「あーまたそんないい加減な事言うー!! いーですもん、いーですもん。今回はわたしすねちゃいますからね」
ぷんすこぷんである。
ルクス、此処に来て拗ねる!
勇者の拗ねはこじらせると厄介なのである。
『ソナーレ』の中に籠城するようにしてルクスが籠もる素振りを見せる。チラッ。
いいのか? チラッ。
本当にこのままでは。チラッ。
本当にルクスは『ソナーレ』の中に籠城して戦わなくなってしまうぞ。チラッ。
「いいんですね! このままわたしが籠城して戦わなくて被害甚大で大変なことになってしまって、『熾天大聖』さんも酷いことになってたりするかも知れなくってもいいんですね!!」
チラッ。
ステラは思った。
これはコントである。ひどいもんである。チラッチラッチラッと。こっちを伺ってくるルクスはこちらの譲歩を引き出そうとしているのである。
まったくもって悪辣なことである。
確かにルクスの言う通りである。このままでは有頂天蓋に居るであろう『熾天大聖』が危ういかもしれない。
その証拠に猟兵たちが打倒した赤い『セラフィム』の出現は、今は見られない。
これは恐らく『熾天大聖』が『サロメ・サージェント』を有頂天蓋で抑えているからなのだろうと推測できる。
「ええい、こんなコントをしている場合じゃあないのです。ルクス様! ルクス様ったら!」
「ぷーん」
「ええい、もう、『ソナーレ』でいいですから! いいですか、獣人の皆さんだけは巻き込まないように!」
「いいんですね! 言質取りましたよ! いまのナシとか聞きませんからねー♪」
早い切り替えである。
手のひらくるっくるである。
「……やられました……ですが、これで!」
ステラは演奏奏でられる戦場から空を目指す。
否、有頂天蓋を目指す。嫌な予感が胸に去来している。いや、それ以上に高度をとってもなお、コクピットの中に響く、ルクスの全力ボレロに脳を引っ掻き回されるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
進め、進め!ディスポーザブル!!
オブリビオンを壊し、踏み越え、突き進めぇッ!!!
ディスポーザブル01引き続き操縦
【継戦能力】霊物質の海を吸収し損傷修復『戦塵突撃』発動
攻性障壁を纏い【推力移動】砲撃を障壁で受けながら敵目掛け最高速で突っ込み【範囲攻撃】【闘争心】の発露と共に、展開した電磁音響兵器から電磁音波を放射。広範囲へ【マヒ攻撃】敵機の稼働を損なわせる。
自分がなすべきはオブリビオンマシンを壊す事。
搭乗者は獣人たちにまかせる!
【早業】念動鞭を振るい電磁音波から逃れた敵機を捕縛、人工魔眼を|稼働させ《燃やし》【念動力】で強引に引き寄せ、【怪力】で殴り落とし、電磁パルスを流し込んで内部破壊を行う。
躯体がきしむ。
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の乗機『ディスポーザブル01』の躯体は、赤い『セラフィム』との激闘に損壊していた。
「進め、進め! ディスポーザブル!!」
だが、小枝子は構わなかった。
オブリビオンを破壊し、踏み越えるためいは、己の機体の損壊状況など気にも止めることができなかった。
突き進むこと。
ただそれだけのために小枝子は己の機体ととともに戦場へと、その戦火へと飛び込むことを是とする。
「無茶だ、その機体では!」
獣人たちの案じる声が響く。
だが、小枝子は頭を振る。己の機体はパンツァーキャバリア『アイアン・サム』に対抗するためには十分だと。
なぜなら、獣人たちを守るためには。
「盾になるつもりか! ダメだ、それじゃあ!」
「いいえ、違うのであります。自分は! 突き進むために!!」
小枝子の瞳がユーベルコードに輝く。
放たれう砲火を超能力に寄る障壁でもって防ぎ、その人は人工魔眼の負荷の限界を超えて燃えるようにして煌めく。
己の中に闘争心が漲る。
そう、盾になるつもりなどない。
己は矛。
あらゆるものを破壊するための矛であるべきなのだ。故に機体を霊物質でもって損壊を修復しながら、砲火を受け止め、前に進む。
それは愚直に過ぎる突進であったことだろう。
『ワルシャワ条約機構』の精鋭たるパンツァーキャバリア『アイアン・サム』にとっては、良い的でしかなかった。
砲火が集中する。
爆炎が機体を包み込み、その姿を覆い隠す。
「ああ……ッ!」
「そんな……ッ!」
獣人達は己の盾となって爆炎に消えた『ディスポーザブル01』の姿を見失い、頭を垂れる。
だが、彼らの耳には届いていた。
軋みながらも前に踏み出す音を。
他ならぬ爆炎の中から。
「突き進めぇッ!!」
ほとばしる叫びと共に小枝子は『アイアン・サム』へと爆炎から飛び出して組み付く。
それは巨大なる砲弾めいた突進であり、『アイアン・サム』の巨体であっても軋み、ひしゃげるほどの衝撃であった。
押し倒し、踏み潰す『ディスポーザブル』の威容に獣人達は歓声を上げる。
「自分がなすべきことはオブリビオンマシンを壊すこと!」
燃える瞳が己の視神経を焼く。
眼窩から血潮が溢れ、頬を伝う。
だが、それでも小枝子は前に進む。
機体から放たれた念動鞭が迸り、『アイアン・サム』の巨体を縛り上げ、引きずり倒す。その倒された巨体の頭部たる砲塔を拳で叩き潰し、電磁パルスが流し込まれた事によって起こる爆発に巻き込まれながらも『ディスポーザブル』は爆炎の中から立ち上がる。
あまりにも鮮烈なる戦い方。
いや、苛烈と呼ぶに相応しいものであったことだろう。だが、それでも小枝子は前に進む。
それだけしかできない。
故にそれだけで守れるものがあるのならば、小枝子は壊すことで獣人たちの道行きを阻むものを打ち倒すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…砲戦型のパンツァーキャバリア……まともに戦うとなかなかに厳しそうだね…
…だからまともにぶつかるのは避けようか…相手は攻撃力と射程を伸ばしてくるがその場に固定される…そこを突くとしよう…
…腕に覚えのある獣人達を集めて…【我が手に傅く万物の理】を発動…
…これで地面の座標と硬度を変えてトンネルを作成……獣人達と共に砲撃を避けて地中からアイアン・サムに接近するとしよう…
…操音作寂術式【メレテー】で駆動音を聞いてアイアン・サムの位置を把握…
…アイアン・サムの足下の地面を崩して体勢を崩すと同時に獣人達を地上に上げて攻撃して貰おう…
…他の機体からの砲撃は地面を操作して壁にして防ぐとするよ…
『ワルシャワ条約機構』のパンツァーキャバリア『アイアン・サム』。
その巨体もさることながら、上半身に据えられた戦車砲塔の火力は凄まじいの一言に尽きるものであった。
まともに戦うには、こちらの火力が圧倒的に不足している。
厳しい、と現状をメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は把握していた。
「……まともにぶつかるのは避けよう……」
だが、そんなメンカルをあざ笑うかのように『アイアン・サム』の放つ砲火は彼女を、そして獣人たちを追い込むようにして叩き込まれる。
『アイアン・サム』を駆るオブリビオンたちは皆精鋭である。
此処にきて、敵戦力の底力……いや、地力の差というものを見せつけられるようでもあった。
「火力が違いすぎる!」
獣人達は迫る砲火を前に己が身を守ることで手一杯だった。
それをわかっているのだろう『アイアン・サム』は砲火を撒き散らすようにして放っている。だが、同時に彼らの砲撃は己が機体をその場に固定することを担保にしている。
つまり。
「……動けない……なら、そこを突くとしよう」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
ずらりと彼女の眼の前に居並ぶはリスト化された周囲の無機物。
項目を選択し、敵の座標を絞る。
幸いにして『アイアン・サム』は移動能力を捨て、火力に力を注ぎ込んでいる。ならばこそ、そこを突く。
「……行ける?」
「いつでも。ですが、大丈夫なのですか」
「……ん、これならば掘り進めることができる……」
メンカルが獣人たちに示したのは、地中の地質を変え、掘り進めることで『アイアン・サム』の元までのトンネルを形成し、砲火を受けること無く接近する策であった。
本当にそんなことができるのかと訝しむのも無理ないことである。
だが出来るのだ。
「我が手に傅く万物の理(マテリアル・コントロール)……これならば」
メンカルの言葉と共にサイバー武侠たちが、己の戦闘義体を持って一気に軟質となった土を掘り進める。
それはまるで柔らかい粘土をかき分けるような作業であったことだろう。
一気に掘り進める獣人達と共にメンカルは後を追う。
「このまま一気に!」
「……ん、敵座標は把握してる。掘り進めて、敵を地面に落とす」
「崩落させる、ということですな!」
「そういうこと……」
メンカルの言葉に獣人達は一気に敵座標へとたどり着き、周囲を掘り進める。地上からの衝撃が伝わる。
やはりここだと、認識した瞬間、メンカル達は地中のトンネルを崩落させ『アイアン・サム』の巨体を己たちが掘り進めたトンネルへと叩き落とすのだ。
「……今だね」
その言葉と共に獣人たちが地中より飛び出し、崩落した大地に崩れるようにして落ちた『アイアン・サム』へと打撃を叩き込み完全に破壊する。
「まずは一騎撃破!」
「すぐさま次に行くぞ!」
まるで、それは土竜の如き戦い方であったことだろう。
あくまで『アイアン・サム』の砲撃の威力が最大限に発揮されるのは地上にあってこそである。
だが、メンカルが示した地中を掘り進めることで砲火を防ぎ、なおかつ敵を崩落した穴へと叩き込む戦法は獣人たちの戦闘義体との相性が良すぎた。
それによって『アイアン・サム』を手繰る精鋭たちは、その精鋭たる所以を示すことなく、ただ崩落して行く大地に足を取られ、次々と打倒されていくしか無いのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
さっきの【Q】まみれよりはまだマシな感じかな
デカブツだけなら、何とでも戦えるしね
それに砲撃型なら…寄って斬るだけ!
引き続き《RE》IncarnationとBlue Birdを持って戦闘開始
『第六感』で直感に任せて主砲の攻撃を駆け抜け、距離を詰める
【雷鳴・解放】起動
更に加速、アイアン・サムに取りついて『なぎ払い』と同時に稲妻の斬撃を零距離で叩き込む
最初は砲塔を攻撃し、破壊もしくは歪ませて砲を潰す
後はもうどこでも狙い放題だね
1体仕留めたらそいつを盾にしながら次の敵を見定め、移動
装甲も強化されているなら、壊れるまで何度でも攻撃してあげる
数が多いだけなら、何とでもなるんだよ
さっきより全然やり易い!
『【Q】この『須弥山型都市』に『セラフィム』による戦乱を与える』
それは戦場にあって、この上ない混乱を齎すものであった。
だからこそ猟兵たちが切り抜けた後、赤い『セラフィム』が『須弥山型都市』から姿を消したことは幸いであった。
あれを全て撃滅するには、あまりにも時間が足りなすぎる。
とは言え、迫るは『ワルシャワ条約機構』の精鋭たるパンツァーキャバリア『アイアン・サム』の群れ。
彼らの火力は圧倒的であり、またその巨躯、数でおって猟兵と獣人たちとを合わせても五分と言ったところであった。
「さっきの【Q】まみれな状況よりはマシって感じだよね!」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は戦火満ちる戦場に飛び出す。
目指すは有頂天蓋。
この『須弥山型都市』の頂上。だが、迫る『アイアン・サム』をして彼女は言う。
「デカブツだけなら、なんとでも戦えるしね。それに砲撃型なら……」
玲はは二振りの模造神器の刀身を励起させる。
身に纏うは疑似UDCの力。
稲妻を纏う体は、一瞬で『アイアン・サム』の懐へと飛び込み、その斬撃を叩き込む。
「硬い! けどさ! 寄って斬るだけでいいってんなら!」
雷鳴・解放(ライトニング・リリース)。
それは玲の姿を認識させぬほどの速度を持って『アイアン・サム』の視界から消すほどの力を発露するユーベルコードの輝き。
寿命削るデメリットはあれど、一瞬で敵を切り倒せばいいのだから玲にとってはイージーゲームそのものであった。
「まずは、その厄介な砲塔から頂く!」
放つ斬撃が『パンツァーキャバリア』の砲身を一撃で切り裂き、さらにゼロ距離での斬撃が巨体を傾がせる。
倒れ込む巨体に飛び乗って突き立てられる模造神器の刀身が雷鳴を轟かせながら、その内部にエネルギーの奔流を流し込めば、内部の動力炉に触れた爆発を巻き起こす。
その爆炎を盾にするようにして玲は次なる得物へと飛びかかるようにして踏み込む。
閃光そのものと言えばいいだろうか。
彼女の踏み込みは神速にして光速。
戦場には振るう模造神器の蒼い刀身の残光ばかりが残されている。
「装甲が如何に強化されていたとしてもさあ! 壊れるまでぶっ叩けば流石に壊れるでしょ!」
振り抜く一撃。
ぐらつく巨体。だが、そのぐらついた巨体はさらなる連撃を受けて反撃すらままならぬ。
「数が多いだけなら、なんとでもなるんだよ。さっきより全然やりやすい!」
玲は赤い『セラフィム』が自律した存在であれど、その火力と汎用性のある戦い方の方が連携を前提とした動きをする『アイアン・サム』よりも戦いやすいと思った。
確かに砲撃は苛烈だろう。
だが、それだけだ。
できるだけ敵から離れたい、という意志を感じさせた時点、玲のような埒外の存在を前にしては全てが無意味。
連携を取れるのも、敵との距離を離しているからこそ。
だからこそ、その距離を一瞬で無にする玲の速度は『アイアン・サム』の天敵とも言えるものであったのだ。
「さあ、次は上だね! また【Q】まみれになるってんなら厄介極まりないけど……!」
パンツァーキャバリアが迎撃出てきたことが気になる。
際限なく【Q】が使えるというのならば、パンツァーキャバリアだけでなく、あの赤い『セラフィム』を出ずっぱりにしておけばよかったのだ。
だが、それをしなかったということは。
「同時に併用できる【Q】が限られているか、もしくは、それだけ上で『始祖人狼の使者』がかかりきりになるようなことがあったのかってことだよね」
ということは、勝利への道筋は光明として彼女の瞳に示される――。
大成功
🔵🔵🔵
リア・アストロロジー
●天蓋
そこにはきっと彼も居るのでしょう。
劣勢。
それでもなお戦っているのなら。
信じて待ってくれているのなら。
わたしは……『わたしたち』は。
行きましょう、共に。
●戦闘
【暁を残して】のネットワークを展開。
敵兵士の意図を読みとりながら思考の遅延妨害あるいは誘導を試みます。
味方にはドローンでの情報収集とあわせて集団戦闘、戦術面での支援を。
出来れば獣人の方々には交戦中の味方を遠距離や死角から狙う敵を優先的に排除して貰って。
隙を晒してみせて、むしろ攻撃態勢にある機体を逆に一網打尽にして盤面を一気に有利に進められるように。
サム……サムエル?
鉄の兵器を駆るあなた。
かつて優れた兵士だったひと。
もう、お眠りなさい。
猟兵たちが目指し、オブリビオンが阻む道。
それは『須弥山型都市』の頂き、有頂天蓋に至る道筋であった。
パンツァーキャバリア『アイアン・サム』が群れをなして阻むということは、きっとその先にこそ戦っている者がいるのだろうとリア・アストロロジー(M2-Astrology・f35069)は、理解する。
今もまだ、そこで戦っているのだろう。
街中に溢れた赤い『セラフィム』は【Q】によるものであった。
それが今、止まっているということは、有頂天蓋に座す『始祖人狼の使者』に【Q】を手繰るだけの余裕がなくなっている証明でもあったことだろう。
「きっと彼も居るのでしょう」
劣勢であるはずだ。
敵の数は多く、そして何より質でも此方を上回っている。だが、それでもまだ有頂天蓋で戦っているのなら、信じて待ってくれているのなら。
「わたしは……『わたしたち』は。行きましょう、共に」
リアは獣人たちと共に迫る『アイアン・サム』の猛攻に立ち向かう。
瞳に輝くユーベルコード。
それは戦場に張り巡らせたリアを核とした精神感応によるネットワーク。
ネットワークを介在して敵の意図を知る。
敵は連携に優れた者たちだ。
いや、前提条件にしている。単騎で戦うのではなく、連携によって他者を撃滅する方法を取るのならば、此方がすべきことは一つ。
「単騎ずつ打ち倒すこと……」
リアはドローンと共に獣人たちの戦闘を後押しする。
情報を素早く共有し、戦術を立てる。獣人達は多種多様な技能を持つ者たちが集まっている。
肉体を戦闘義体に置き換え、宝貝さえ手繰る者たち。
彼らの戦闘能力は高いものであったが、しかしてんでバラバラに戦う者ばかりであった。
故に、リアは戦術を持って彼らを支援する。
「引き付け、敵の死角に」
ドローンによる情報収集。これによって敵の連携の死角へと獣人たちを送り込み、敵の狙いを定まらせない。
さらに獣人たちの死角を狙う敵を優先目標に切り替える。
「次は、どうすれば!」
「ポイント情報を送ります。更新を」
「了解いたしました! ならば、我が宝貝で!」
獣人たちの技能をリアは即座に情報として把握する。適材適所。確かに彼らの技能は高い。尖った部分だってあるだろう。
融通の効かぬことだってある。
だがしかし、それをうまく活かすことができたのならば、彼らは複数で一個となり、また一騎当千たる働きを見せるであろう。
そして、なによりも。
リアの余剰リソースによる代理演算と未来予測によって、獣人たちの攻撃はさらに正確に『アイアン・サム』の急所を貫くに至る。
「網目を広げて、敵の突出を」
「姿を無為にさらす必要はありますまい。我らが仙術でもって陽炎を起こせば!」
獣人たちの仙術が発露し、複数の幻影が戦場に飛び込む。
それを敵と認識した『アイアン・サム』たちが砲火を加えるが、それは幻となって消え失せるのみ。
敵を撃破したと思い込ませたがゆえの一瞬の隙を突くようにして獣人たちがリアから得られる情報を元に次々と打倒していく。
「……確かにあなたたちは優秀な兵士だったのでしょう。けれど……」
鉄の兵器。
パンツァーキャバリアを駆るオブリビオンたち。過去の残滓にして、堆積によって歪んだものたち。
彼らを屠ることは眠りに誘うことと同義。
故にリアは告げるのだ。
「もう、お眠りなさい」
戦わずとも良い夢を。せめて、見てほしいと願うように――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
お待たせ―!ボクだよ!
敵に近付けないだって?そういうときは任せてよ!
前のように安心!安全!に前進できるように案内してあげるー
さあ!じゃあ敵に向かって真っすぐダッシュダッシュ!
●当たらなければまぶしい
うおっまぶしっ!って言いながら【第六感】で砲撃のタイミングと狙いを感じ取って[球体]を前面に押し出してジャストガード!
そうだよ分かっていたのさ!あえてちょっと焦げるのを我慢してこのタイミングで押し出せばボクの防御を破るほど威力を高めるチャージタイムは取れないって!
これも鍛えられたみんなの焦げた前髪の被害と脚力があればこそだよ!
ってとこでボクもUC『神撃』でドーーーンッ!!
パンツァーキャバリア『アイアン・サム』の砲撃は苛烈だった。
これだけ数を減らしてもなお、精鋭オブリビオンの駆る鋼鉄の巨人『アイアン・サム』の砲撃は正確であり、獣人たちを吹き飛ばす。
「くそっ、これだけ戦ってもまだいやがるのか!」
「諦めるな! まだ戦わなければ……うおっ!?」
炸裂する砲火。
炎が立ち上り、爆炎から追い立てられるようにして獣人たちが走る。
どこを見ても似たような状況だった。
『須弥山型都市』にて繰り広げられる苛烈なる戦い。
炎ばかりが立ち込める中にあって、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は颯爽と降り立つ。
「お待たせー! ボクだよ!」
じゃーん、と登場したロニは高らかに笑う。
「ありゃー、これまた酷い有様だね! 迂闊に近づけないほどの火力! ま、こういう時は任せてよ!」
「あ、あんた何を……」
「まーまー! 何も言わずにさ! 前のように安心! 安全! に前進できるように案内してあげるー!
さあ! とロニは獣人たちの手を引っ張って火砲炸裂する前線へと引っ張っていく。
「待て待て! 待て! あっちは無理だ! どう考えても!」
「だいじょーぶだって、ダッシュダッシュ!」
ロニの無茶振りに獣人達は青ざめる。
だが、手を振り払おうにもロニの力は強かった。振りほどけ無い。
「っていうかまぶしっ!」
炸裂する光。『アイアン・サム』の放つ砲撃は、明滅する光を解き放ち、凄まじい炎を巻き上げさせていた。
まばゆい戦場にありながらロニはしかし、第六感を頼りに駆け抜ける。
己が引っ張る獣人達は戦々恐々とし、生きた心地がしなかっただろう。
それでもロニは構わない。
迫る砲撃があるのならば、それを球体でもって防ぎながら、爆煙の中をかき分けるようにして駆ける。
「ちょーっと焦げ臭いけどね! 我慢してこ!」
「そういう問題かこれは!?」
「いーからいーから! あっちの砲撃はボクの球体くんを撃ち抜けない! ならさ、チャージしようってするでしょ! ぶち抜くために!」
ロニの言葉は真だった。
そう、球体の防御を抜けないと悟った『アイアン・サム』のオブリビオンたちは機体の砲身にエネルギーをチャージしようと、砲撃を緩める。
その瞬間こそが、ロニの狙いだった。
砲撃の雨が止んだ刹那めいた時間。
「さ、今だよ! 行くよー!」
「ま、まさかこうなるってアンタわかって……!」
「前髪焦がした甲斐があったよね! さ、みんなの脚力の見せ所だよ!」
ロニは手を引いた獣人達と共に球体を蹴って宙へと飛び上がる。
その瞳が輝くは共にユーベルコード。
振るう拳の一撃は、神撃(ゴッドブロー)となって『アイアン・サム』の躯体へと叩き込まれる。
炸裂する凄まじい衝撃に共にユーベルコードを放った獣人たちは吹き飛ばされてしまう。
「あー……」
ロニはそんな彼らを見て笑う。笑うしかなかった。
「アンタ一人でよかったじゃないか!」
「まあまあ、敵は一騎だけじゃないんだし、こっからだよ!」
なんて無責任に笑いながらロニは砲火荒ぶ戦場を獣人たちと共ににぎやかに走り、敵を打倒していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『サロメサージェント』
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POW : サージェントグレネード
【軍服】から【手榴弾】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。
SPD : ツインガン
レベル分の1秒で【2丁拳銃】を発射できる。
WIZ : デス・レイ
自身の【拳銃】から、戦場の仲間が受けた【負傷】に比例した威力と攻撃範囲の【殺人レーザー】を放つ。
イラスト:sawada2
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『須弥山型都市』の直上。
それは有頂天蓋と呼ばれた、まさに空を覆う天蓋。
その上で一人のオブリビオン『始祖人狼の使者』を名乗る『サロメ・サージェント』、『ノイン』は荒い息を吐き出して、額の汗を拭った。
「……【Q】この『須弥山型都市』に『セラフィム』による戦乱を与える……これとパンツァーキャバリアでもって猟兵達、諸共獣人たちを圧倒するつもりが……【Q】宝貝による攻撃は私には届かない!」
彼女の眼前には、大鴉の獣人『熾天大聖』の放った蒼炎と赤雷の斬撃が見えぬ空気の断層によって阻まれていた。
そう、一度に手繰ることのできる【Q】は一つ。
それが彼女の限界だった。
故に、猟兵たちを有頂天蓋に至る道で阻んだ戦力は『アイアン・サム』だけだったのだ。
とは言え、『熾天大聖』の前身は血潮にまみれていた。
穿たれた銃痕。砕けた四肢の戦闘義体を支えるのは羽ばたく大鴉の翼だけだった。
「意識なく、それでもなお、私を此処に留めたか。だが……最早死に体。君に構わずとも、私は! 【Q】この『須弥山型都市』に『セラフィム』による戦乱を与える!」
瞬間、『サロメ・サージェント』の周囲に現れるは、飛翔する無数の赤い『セラフィム』。
『須弥山型都市』の街を襲った赤い『セラフィム』と同種。
いくつもの鋼鉄の巨人がアイセンサーを煌めかせ、天蓋へと至った猟兵を迎え撃つ。
この【Q】による状況をかいくぐり、猟兵達は『サロメ・サージェント』を打倒しなければならない。
そうしなければ、この『須弥山型都市』は『セラフィム』による戦乱によって破壊されつくされてしまうだろう。大元たる『始祖人狼の使者』、『サロメ・サージェント』である『ノイン』を打倒すること。
「『平和』を問おう。猟兵。諸君らは知っているか。『平和』の意味を。『平和』の根源を。何故、それを希求するのか。求めて止まぬのに、何故それを否定することばかり行うのかを!」
それだけが、この戦乱を止める唯一なのだから――。
サーシャ・エーレンベルク
久しぶりね、熾天大聖。
そして、ノイン。
あなたが動乱の導き手である限り、これからもこの闘争は続くんでしょう。
平和と闘争の表裏、あなた達の平和の果ては結局、過去の怪物と成り果てること。
ならば私は、私達は幾度でも、真の平和を勝ち取るまで抗う!
あの時は言えなかった。
けれど、平和を願う者たちがいるならば、今度こそ心を込めてこの言葉を言いましょう。
――白き剣は此処に在り! 私に続け! 平和を問う愚か者に、私達の意志を見せつけるために!
熾天大聖をUCで癒し、味方の獣人たちにセラフィムの掃討をお願いしましょう。
悪路走破、切り込みでノインに接近、拳銃の銃口を見切り回避、竜騎兵サーベルの一撃を叩き込む!
有頂天蓋に在りて赤い『セラフィム』は火線を解き放つ。
水晶体が弾幕のように空を埋め尽くし、煌めきの元に多くの獣人たちが穿たれる。
その状況に在りながら『始祖人狼の使者』、『サロメ・サージェント』たる『ノイン』は問う。
問いかける。
『平和』とは。
いかなるものかを問いかける。
人たる者の業を問いかける。
「久しぶりね、『熾天大聖』」
サーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)は赤き血潮に塗れた戦闘義体持つ大烏の戦禍階梯の獣人『熾天大聖』の倒れ込みそうになる背を支えて告げる。
四肢の義体は砕けて使い物にならない。
だが、その瞳に『平和』を希求する者の輝きをサーシャは見ただろう。
「そして、『ノイン』。あなたが動乱の導き手である限り、これからもこの逃走は続くんでしょう」
「その通りだと言っておこうか、猟兵。『暁の歌』は人が人である限り紡がれ続ける。変わらぬ明日が訪れるように、日が昇り、沈むように。変わりなく」
「そうね。『平和』と闘争は表裏、あなたたちの『平和』の果ては結局、過去の怪物と成り果てること」
変わらぬ時間。
停滞する時間。
その中で繰り返されぬ闘争。故に、オブリビオンは己の欲望で持って世界を破壊しようとする。
そして、その破壊しようとした営みこそが、この世界に生きる者たちが求めた平穏そのものであるというのならば、サーシャの瞳はユーベルコードに輝く。
燦然と輝く。
「ならば私は、私達は幾度でも、真の『平和』を勝ち取るまで抗う!」
それが例え、連綿と続く闘争の果てを目指すものだとしても。それでも、戦わなければ明日さえ手を伸ばせないというのならば!
「それが過ちだというのだよ、猟兵。君らの言うところの『平和』とは世界が骸の海に沈んでも得られるものであろうさ!」
交錯する視線。
されど交わらぬ道。
平行線なれど、しかして激突する意志と意志があるのならば。
『熾天大聖』の血に濡れた手でサーシャは白き剣を、竜騎兵サーベルを握りしめて掲げる。
あの時は言えなかった。
しかし、己の側には『平和』を願う者たちがいる。
ならば、今こそ己の心に従い、言葉に込めるべきものを知る。
「――『白き剣』は此処に在り!」
示す煌めき。
白剣の御旗(リヒト・デア・ムーテス)は、此処に翻る。
恐怖の先を征く者。
勇気という名の輝きを示す者。
『先導者の御旗』は燦然と輝き、聖なる魔力によって『熾天大聖』と傷ついた獣人達の傷を癒やす光の領域を示す。
共に戦うのならば。
「私に続け!『平和』を問う愚か者に、私達の意志を見せつけるために!」
疾走る。
求める平穏が恐怖の先の勇気を得た、さらに向こうにあるというのならば。サーシャは踏み出す。もう大丈夫だと言うように蒼炎と赤雷がほとばしるようにして『熾天大聖』は血に塗れながらも、前に踏み出す。
「征きましょう」
「ええ! 私達の意志は!『平和』を求めている!」
「先導者は扇動者なり得ることを知るべきだな、猟兵! 君は! 今まさに『平和』との対極にある死地へと彼らを導こうとしているというのに!」
放たれる『ノイン』の言葉にサーシャは飛び込む。
どんな言葉も、彼女を止めるには値しない。
『平和』なく、戦乱のさなかに生きてきた彼女にとって『平和』とは幻想そのものであったかもしれない。
けれど、今まで彼女の元から死へと歩んでいった者達は皆、求めていたのだ。
それを。
『平和』を。
故に、サーシャは光り輝く魔力と共に、その手にした『白き剣』を振るい、『ノイン』の放つ光線を切り裂きながら、一刀を彼女に叩き込み告げるのだ。
「私は『戦場の白き剣』、この戦いの勝利の先にあるものが幻想であろうとも!」
それでも己は戦うのだという意志を示し、『ノイン』と交わらぬ意志籠めた視線でもって火花を散らすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
言うに及ばず、ですよ
ワルシャワ条約機構
停滞と支配。抑圧と統制。
それこそが『平和』だとでも?
調和と自然。進歩と克己
唯々在るが儘に、産めよ、増やせよ、地に満ちよとの言葉があった
その果てに際限の無い三欲や我欲、根源的な本能が地に溢れてしまったとしても
ヒトの理性は必ず正しき答えを導こうとする。それが真理、それこそが摂理でしょう
僕も、貴女も、|彼等《獣人》も、何時か確実な死が訪れる
そして、その屍を糧に次の世代が育っていくのです
オブリビオンである貴女も
道理を全うする時が来たということです
◆来迎会
熊野牛王符を用いた破魔+浄化結界で殺人光線から武侠達をかばう
焼却と電撃の念動力でサロメサージェントを釘付けにする
白と黒の二丁拳銃より放たれる光線の一撃が有頂天蓋に煌めく。
その苛烈なる光線の一撃を受けて大鴉の戦禍階梯『熾天大聖』が吹き飛ぶ。だが、しかし、その瞳には未だ戦う意志がきらめいていた。
「度し難いな。やはり。『平和』を求めながら、その対極にある争いに身を投じる」
『始祖人狼の使者』である『サロメ・サージェント』、『ノイン』は吐き捨てるようにして二丁拳銃から光線を放ち続けている。
さらには【Q】によって赤い『セラフィム』が街中で行ったように飛翔しながら火線を解き放ち、有頂天蓋に至った獣人たちに襲いかかっている。
「言うに及ばず、ですよ。『ワルシャワ条約機構』」
その混乱極まる戦場において、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は告げる。
「停滞と支配。抑圧と統制。それこそが『平和』だとでも?」
「その通りだが?」
『ノイン』から放たれる光線を符による結界で持って防ぐも、その結界は瞬く間に貫かれる。
強烈過ぎる。
この戦場において『サロメ・サージェント』が失った仲間は、数しれず。しかも、赤い『セラフィム』をも数に入れるのならば膨大な数となるだろう。
故に彼女の力は極まっていた。
「調和と自然。進歩と克己。唯唯在るが儘に、産めよ、増やせよ、地に満ちよとの言葉がった」
「それが混沌の果だよ。君も知るところだろうよ、それは!」
光線を受けながら蔵乃祐は呻く。
血潮が溢れる。
だが、それでも彼は踏み出す。
そう、知っている。
ただあるがままに。
そうであるのならば、人は際限がない。三欲、我欲。本能のままにあるがままにというのならば、これほどまでに醜い獣の姿もないだろう。
だが、しかし、それでもなお理性持つからこそ人は得たのだ。
懊悩と云う名の答えの出ぬ惑いを。
故に揺れ動く。
「人の心に悪性ばかりもなくば、善性ばかりであることもまたなし。故に揺れ動く感情の名を良心と呼ぶのです」
「それが過ちを呼ぶ!」
「いいえ、ヒトの理性が求めるは正しき答えを導こうとする真理。それこそが摂理というものでありましょう!」
蔵乃祐の瞳がユーベルコードに輝く。
戦場に渦巻くプラズマストームが赤い『セラフィム』を巻き込みながら、また同時に獣人たちを磁界結合によって身を守らせ、彼は征く。
そう、この一歩こそが耐え難い苦痛に踏み出すことになることを知っている。
人は苦しみを得るからこそ、楽しさを得る。
楽しさを得ようと思うのならば、苦しみを得ればよい。
苦しみに嘆くことはないのだ。
故に、彼は拳を握りしめる。
「僕も、貴女も、|彼等《獣人》も、何時か確実な死が訪れる。そして、その屍を糧に次の世代が育っていくのです」
「私にはそれはないがな。このまま停滞した身だ。ただ利用されるだけの身であるというのは、我慢がならない。私の躰を! 宿るべきものがないと言う傲慢を!」
穿つのだというように『サロメ・サージェント』は光線を放つ。
撃ち抜かれる蔵乃祐は血反吐を撒き散らしながらも、しかし拳を握る。
己の瞳がユーベルコードに輝くのならばこそ、この嵐は止まらない。人の眼前にあるのは暗闇ではない。そう、嵐だ。試練が続いている。
立ち行く先の嵐を避けることもできるだろう。
退くこともできるだろう。
やり過ごそうと立ち止まることもできるだろう。
けれど、それでもなお前に進む意志を持って征くからこそ、人は己の暗闇の征服者足り得るのだ。
「観音、勢至、無数の化佛、百千の比丘声聞大衆、無量の諸天、七宝の宮殿と共に行者の前に至る……オブリビオンである貴女も、道理を全うする時が来たということです」
「そのつもりはないよ! 私は!」
踏み込んだ蔵乃祐の拳に雷の嵐が満ちる。
叩き込まれた一撃は吹き荒れるようにして彼女の体を空へと打ち上げ、その躯を砕くように雷を発露させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
埒外の存在に平和を問うのは見当違いだよ
そもそも平和という言葉に意味は無い、それぞれが思うそれぞれの平和
相反する平和もある、結局の所……妥協の末に結果的に平和と呼ばれる状態になるだけ
哲学的な問答がやりたいのなら、どっかで研究会でも開いてな
……だけど、少なくとも君を倒せば今この場は落ち着く
それを平和と呼ぶかは知らないけれども、それをするのが猟兵だ
超克……オーバーロード!
外装展開、模造神器全抜刀
私は平和になんて興味は無い、けれども私の行動の結果……それを平和と感じる人が居るのならそれで満足だよ
そう感じる人達が居るからこそ、私は何処迄も傲岸不遜で居られるんだから
【Unite Dual Core】起動
右手側の剣に雷を、左手側の剣に蒼炎を
追尾する蒼炎と『斬撃波』でセラフィムを迎撃
雷刃の長さを随時調節し、ノインを常に射程に収めて『なぎ払い』続ける
この剣の射程から逃れられると思わない事だね
『オーラ防御』でピンポイントにシールドを貼り殺人レーザーを受け止めその隙に剣で斬り払って『武器受け』して対処しよう
『平和』を問う者がいて、その問いかけに果たして誰が正しい答えを示すことができたであろうか。いかなる答えを放ったとしても、それは相対するものが求める答えではないかも知れない。
解なき式とでも言えば良いのだろうか。
「埒外の存在に『平和』を問うのは見当違いだよ」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は『始祖人狼の使者』であるオブリビオン『サロメ・サージェント』に言う。
彼女の求める答えは此処にはない。
何処かには在るかも知れないし、彼女自身がすでに解を得ているのかもしれない。
けれど、それを己に問うことは意味のないことであると玲は断じる。
「そうかな? 人の世の言うところの『平和』を人が導き出せぬというのならば、人ではない埒外が答えを持つ、というのは存外悪くはないことではないかな。人が神を見出したように」
雷鳴の如き光が戦場たる『須弥山型都市』の有頂天蓋に走る。
明滅するユーベルコードの輝き。
此処は今や戦場だった。
『サロメ・サージェント』の手繰る【Q】によって生み出された赤い『セラフィム』に立ち向かう獣人たちの輝きと『サロメ・サージェント』の放つユーベルコードの輝き。
そして、何よりも玲の放つ超克の輝きこそが全てを白く染め上げていく。
「超克……オーバーロード!」
展開される外装。
模造神器が副腕によって抜き払われ、四振りの刀身が励起し輝きを放つ。
「相反する『平和』もある、結局の所……妥協の末に結果的に『平和』と呼ばれる状態になるだけ。哲学的な問答がやりたいのなら、どっかで研究会でも開いてな」
「それで事が収まるのならばね。有史以来どれだけ言葉を尽くしても、人は結局『平和』というものをなし得ていない」
「……だけど、少なくとも君を倒せば、今この場は落ち着く」
「それは仮初めというものだ。偽りと言ってもいい。欺瞞だよ、それは!」
放たれる光線を玲の張り巡らせたオーラが受け止める。
貫かれるはずだった光線が弾かれるのを『サロメ・サージェント』は見ただろう。
そう、彼女はピンポイントでオーラを張り巡らせる。
何処から攻撃が来るのかわからないのではない。
あくまでの『サロメ・サージェント』の放つ光線の一撃は、あの二丁拳銃のいずれかの銃口を起点にしているのならば、その一点に己の持てるオーラの全てを集約させて防ぐことができる。
尤も、その全てのオーラを集約させて漸く一度弾く事ができるかどうかでしかない。
つまり、勝負は一瞬。
吹き荒れるようにして大気が震える。
豪雷めいた轟きが玲の手にした模造神器に宿る。
「確かにそれを『平和』と呼ぶかは知らないけれども、それをするのが猟兵だ」
「つまり、過去の化身である私の存在自体が『平和』から最も遠いと」
「世界を壊そうとするのなら、そうでしょう!」
弐神合一プログラム――Unite Dual Core(ユナイトデュアルコア)。
玲の手にした四振りの模造神器に籠められた雷と焔の疑似邪神が開放され、彼女の身に宿る。
放たれる斬撃は雷刃。
一瞬にして伸びる斬撃は『サロメ・サージェント』の放った光線を切り裂いて、相殺される。しかし、敵の拳銃は二丁。
放たれる二撃目を玲は躱せない。いや、交わさない。
「私は『平和』になんて興味はない」
吹き荒れるようにして噴出した浄化の蒼き焔が迫る光線を寸断するようにして、玲まで届かせない。
形成された雷刃の一閃が迫る赤い『セラフィム』を両断し、吹き荒れるままの焔を解き放ち穿つ。
火球となって爆発する『セラフィム』の光を玲は受けながら踏み込む。
「けれども私の行動の結果……それを『平和』と感じる人がいるのなら、それで満足だよ」
「それが不遜だとわからないか」
「わかってるよ。傲岸不遜だってことはね。けどさ」
それでも、と玲は思う。
己の勝手気ままたる振る舞いに恥じるところはない。そういうものだと理解しているから。開き直っているわけじゃあない。
ただ、そのままに在るという事をしているだけの話だ。
何処まで行っても人はわかりあえないと『ノイン』は言った。そのとおりだ。己という個がある限り、どうあがいても理解できない他者がいる。
けれど、その他者が己と同じでないということに玲は笑う。
『ノイン』が欺瞞といったものでさえ、自分たち以外の誰かに『平和』として感じられるものである。
「だからこそ、私は何処までも傲岸不遜で居られるんだ。そうであっていいって、示したって良い」
だって、と玲は笑う。
振るう雷刃が天を切り裂かんばかりに極大まで形成される。
振るう斬撃はほとばしる雷撃めいていた。
「そんな小難しいことを考えなくったって人は生きていける。『平和』の意味を知らなければ、『平和』を実感することができないなんてことはないでしょ」
だから、と玲は振り下ろした斬撃と共に『サロメ・サージェント』、『ノイン』の体を焼き切るようにして雷の奔流に飲み込ませる。
「それが! そのような言葉で私を弄するか!」
「いいや、事実だよ。それぞれが思う、それぞれの『平和』……其処にこそ君が求めた真というものが見え隠れしている。それから目を背けて問いかけるばかりじゃあ、得られるものも得られないよ」
焔が吹き荒れる。
煉獄の如き焔は、浄化を齎す。
その欺瞞とそしる心も。
『平和』を希求するがゆえの矛盾も。
誰もが抱く『平和』などない。『平和』をもたらさずとも、しかして人の手に何かを手渡すこと。
世界を救うということは、その世界に生きる者たちに、そうした時間を手渡すことなのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ジュディス・ホーゼンフェルト
そんなのアタシが聞きたいですよ
アナスタシア聖下の支配を受け入れていれば平和に暮らせるのに、どいつもこいつも自由だ主権だと…おっと失礼
出身地の愚痴だからお気になさらず
でも質問には答えておくよ
平和の意味?
安定
平和の根源?
支配
国、秩序、社会
人は何かに支配されていないとすぐ好き勝手争い出すからね
平和の為には絶対の力に管理統制されてるべきなんだよ
あなたの事は否定も肯定もしない
でも依頼の手前があるからね
責任は果たさせて貰うよ、ノイン首相
あれ?覚えてない?
ハロー、アタシはハロウィンの魔女ダヨー
思い出した?それともホントに人違いだった?
どっちにしろ1発入れさせて貰うけどさ
とは言っても取り巻きが邪魔ったらないねぇ…
もしもーし現地民の皆さーん
ちょっち取り巻きと遊んでてくれない?
アタシはボス一点狙いで行くからさ
ブレイゾンを構えて明鏡止水
取り巻きの動きを見て隙間を掻い潜るよ
ノインの早撃ちは剣で受けるなり諦めて食らっておこう
ノインの元に届いたら一撃離脱
後はしーらないっと
アタシは事の成り行きを見届けさせて貰うんで!
『平和』というものが本当に存在するのだとして、それがいかなる形をしているのかを知る者は多くは居ないだろう。
仮に、それを本当に知る者がいるのだとしても、それは千差万別である。
見た者によって色が異なるように。感じる事柄が違うように。『平和』を『平和』と認識できないのならば、それは果たして万人の受け入れるところの『平和」であっただろうか。
「そんなのアタシが聞きたいですよ」
ジュディス・ホーゼンフェルト(バーラント機械教皇庁三等執行官・f41589)は『須弥山型都市』の有頂天蓋に黒きキャバリア『ブラックイーグル』と共に駆け上がり、『始祖人狼の使者』、『サロメ・サージェント』を見下ろす。
「『アナスタシア聖下』の支配を受け入れていれば『平和』に暮らせるのに、どいつもこいつも自由だ主権だと……おっと失礼、『ノイン』首席」
そこにあった姿とジュディスが知るところの『ノイン』との差異を知る。
違う。
姿が違う。
ジュディスが知る『ノイン』は、あのような姿をしていなかった。
「愚痴が止まらないな、バーラントの機械教の執行官ともあろうものが」
「……アタシのことを知っている?」
「そんな機体を持ち込んでおいて。君のその思想こそが『平和』とは程遠いとは思わないかい」
「『平和』の意味を問うオブリビオンとしては、なんとも真っ当なことを言っている風に語るじゃあないですか」
ジュディスは己の機体を取り囲む赤い『セラフィム』を見やる。
火線を解き放とうとする胸部砲口。
その湛えられた光は今まさに放たれんとしている。
「『平和』の意味? 安定というものです。『平和』の根源とは支配。国、秩序、社会。人はなにかに支配されていないとすぐ好き勝手争い出すからね。『平和』のためには絶対の力に管理統制されてるべきなんだよ」
ジュディスの言葉に『サロメ・サージェント』、『ノイン』は笑う。
その通りだと。
同時に、それを否定する。
「その絶対たる力があればの話だ、猟兵。画餅だよ、その絶対というものは」
「いいえ、『アナスタシア聖下』こそが絶対。でもまあ、ワタシにも猟兵としての手前があるからね」
だから責任は果たすとジュディスは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
明鏡止水(コンセントレイション)。
それは水の一滴が波紋を広げるようにして戦場の状況を一瞬で知ること。
そして、アンサーヒューマンであるジュディスは、すべての状況、その情報のすべてを一瞬で読み解く。
己を取り囲むは赤い『セラフィム』。
火線は間違いなく己の乗機『ブラックイーグル』へと叩き込まれることだろう。
となれば、その火線の先は全て己に集約されている。
「もしもーし現地民の皆さーん!」
ジュディスの言葉と共にサイバー武侠たる獣人たちが有頂天蓋へと飛び上がる。
手にした宝貝。
それは本来であれば、【Q】によって効果を発揮しないものであったが、今は違う。『ノイン』は【Q】を同時に発現できない。
ならばこそ、彼等の宝貝は放たれる火線を宝貝の張り巡らせる結界で持って防ぎ、『ブラックイーグル』を守るのだ。
「……ちょっち取り巻きと遊んでてくれない?」
「おまかせを! 我らの身命をとして!」
ジュディスの求めに獣人達は答え、赤い『セラフィム』たちへと立ち向かう。
だが、目の前に迫る『サロメ・サージェント』の二丁拳銃の銃弾が『ブラックイーグル』の装甲を貫通する。
砕ける装甲。
一撃でキャバリアの装甲を抜くほどの威力を何の反動もなしに放っているのだ。
「情報を全て知覚してもこれ……!」
「|『ハイランダー』《超越者》とかつて呼ばれた者がいる。確かにそれは絶対的な力に思えたけれどね、だが、過去を知るがいい。猟兵。その超越した絶対に思える力でさえ、いつかは朽ちる。『フュンフ・エイル』の名がそうであったようにね!」
迫る『サロメ・サージェント』の一撃をジュディスは見る。
確かにあの二丁拳銃を躱すことはできない。
けれど、ジュディスは一瞬で良かった。諦めてもいたからだ。あの一撃は躱せない。ならばこそ、敵は確実に己を仕留めるために飛び込んでくる。
装甲を撃ち抜くために。
距離を詰めようとするだろう。故に己から敵に近づく必要はない。
「集中……!」
『ブラックイーグル』の手にした実体剣が高速回転し、迫る弾丸を弾く。
だが、もう一射放たれた弾丸がコクピットの装甲を貫き、その弾頭がディスプレイモニターの寸前で止まる。
ブラックアウトする視界。
「そこにいるってことはもうわかってんだから!」
高速回転した実体剣を振るう。
例え、モニターがブラックアウトとして視界ゼロであっても、己には出来る。情報が数多世界には溢れているのだから。
見えずとも手応えでわかった。
彼女の一撃は確かに『サロメ・サージェント』の体を打ち据え、有頂天蓋へと叩き落したのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
リア・アストロロジー
ノインさん。あなたはかつて彼らを臆病者と罵った。
傷を負うのを憂い、平和が勝ち取れるわけがないと。
それなのに……今度は平和を求めなぜ戦うかと問うの?
わたしには、あなたの満足する答えはあげられない。
それはきっとわたしの中にしかないものだから。
あなたの中にあるその欠落を満たすものではないだろうから。
だけど言葉をもって問いかけてくれたのなら、わたしは応えたい。
それは例えば凍える夜に縋りつける温みが在ったこと。
安心して眠り、飢えることなく過ごせること。
受け入れてくれるひとが、在ったこと。
せめてわたしの大事な人たちが……そうであること。
だけどそれは壊れやすいモノだから。
そうしてひとは臆病だから、間違えるのでしょう。
だから祈りが生まれたのでしょう。
だから、ひとは祈らずにはいられないのでしょう。
何度でも。何度でも。
あなたがそうして、世界に問いかけるように!
【誘い】で万全に回復し【Q】の世界改変をも切り裂く熾天大聖さんの幻を共に見ます。
ひと粒の飴玉。
一緒に食べてくれたこと。
あの時、わたしの心には確かに――
叩きつけられた体を持ち上げ、『サロメ・サージェント』、『ノイン』は有頂天蓋の上に立ち上がる。
ゆらりと揺れる体。
しかし、その瞳には未だユーベルコードが輝いている。
「『平和』とはなにか。それを問い続けなければならない。私はそういうものだからだ」
「あなたはかつて彼等を臆病者と罵った」
リア・アストロロジー(M2-Astrology・f35069)は有頂天蓋に至った獣人たちを示す。
赤い『セラフィム』に果敢に挑む獣人達。
彼等をかつては臆病者と謗ったのが『ノイン』だった。戦うことを厭い、引きこもり、己たちだけの平穏に籠もった者たち。
戦わずに勝ち取れるものなど何一つない。
故に彼等の手には望む『平和』は訪れないのだと。
なのに、それなのに何故、とリアは問いかける。
「……今度は『平和』を求め何故戦うかと問うの?」
「それが人の宿業だからだ、猟兵。生命の埒外たる君にはわかるまいさ」
「ええ、わたしにはあなたの満足する答えはあげられない。だって、それはきっと」
リアはは思う。
例え、今此処が戦場の最中であったとしても、不思議と『サロメ・サージェント』、『ノイン』は己に攻撃を仕掛けてこないと思ったし、確信できたのだ。
彼女が問いかけるのは答えを求めているからだ。
「わたしの中にしかないものだから。あなたの中にある欠落を満たすものではないだろうか」
リアだってそうだ。
律儀に問いかけに応える必要性なんてどこにもない。
けれど、どうしたって彼女は応えるしかない。いや、そうしたいと思ったのかも知れない。応えたいと思ってしまったのならば、もう止めようがないのだ。
「『平和』とは、例えば凍える夜にすがりつける温みが在ったこと。安心して眠り、飢えることなく過ごせること。受け入れてくれるひとが、在ったこと」
「随分と詩的なことを言うじゃあないか」
だが、そのセンチメンタリズムさえ感じさせるリアの言葉に立ち止まっている者が『ノイン』というオブリビオンであった。
手にした二丁拳銃の引き金を引くこともせずにリアの言葉に耳を傾けている。
造られた者。
そこにあったのはシンパシーであったのかもしれない。そう錯覚するには十分な時間だった。
「せめて、わたしの大事な人達が……そうであること」
「だが、それは壊れ易いモノだ」
「ひとは臆病だから、間違えるのでしょう」
「その間違いを正すものがない」
「いいえ、それは祈り。祈りが生まれたのは、きっと臆病な人の心を誰かに示すため。人ならざる何モノかに聞いて欲しいと願ったから」
「そんなモノは非ざるモノだ。だから、『平和』は来ない。いつまでたっても、戦乱が人を殺す。何度でも。何度でも」
互いの言葉がズレていく。
共感を覚えたことさえも遠い日のようにリアには思えただろう。
きっとこんなにも些細なことで人は争うようになるのだろう。
少しのすれ違いで、掛け違いで、終わり無く憎しみの連鎖に取り込まれていってしまう。裁ち切る術を忘れてしまって。
「それでも、何度でも。何度でも。あなたがそうして、世界に問いかけるように! わたしも何度でも祈りましょう!」
リアの瞳がユーベルコードに輝く。
彼女の強化脳から溢れる誘い(イザナイ)は、リアの思う『平和』を示す。
涙が溢れる。
自覚なき言葉は溢れた感情の発露であったことだおる。
彼女の背後で膨れ上がる蒼炎と赤雷。
『熾天大聖』の姿がある。
「誰かの祈り。誰かの願い。歪に形を変えるのだとしても、最初の願いはきっと」
誰かのためにと願ったことなのだとリアは思う。
精神感応は己のかつてを『ノイン』に共有させるものであった。
「……私は知らない。私にはなかった。君のような」
一粒の飴玉。
一緒に他bてくれたあの人のことを。
あの時、己の心は確かに『平和』を感じていたのだ。他者にとっては一時の平穏であったとしても、確かにリアの心にはそれがあったのだ。
故に、リアは示す。
何もなかったという彼女に、その心を改変する蒼炎と赤雷と共にリアのあの日、あの時、いつかの誰かと感じたであろう『平和』を刻み込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
【鋼獣小隊】POW
アドリブ大歓迎
「『平和』の根源や意味を問うなら、犠牲を強いるんじゃねえ!
アンタがどういう思いを抱えていても、
世界に戦乱を呼ぶならば此処で倒す!
やるぜみんな!ケリをつけるぞ!」
エドや獣人達がセラフィムを抑えている間に[力を溜める]
UCを発動させると同時に太陽が天に現れる
そして、力を吸収していく
そのままソルブレイザーで駆け抜けてサロメに近づく
「援護任せたエド!オレは全力で奴にぶち当たる!」
手榴弾の攻撃はエドを信じてオレは攻撃に集中
爆発炎上した火焔も吸収して威力は[限界突破]を果たす
「ああ!任せておけエド!この一撃!
受けてみやがれえ!!」
巨大な火球と化したソルブレイザーと共に激突!
エドワルダ・ウッドストック
【鋼獣小隊】SPD
アドリブ歓迎
平和と問うのなら、【Q】を解除し武装を解いて跪きなさいな!
【Q】を止めなければ街の被害が広がる一方、なので時間稼ぎの問答に付き合うつもりはありませんわ!
そちらも早撃ちに自信がある様子ですが……こちらの攻撃は既に終了していますわ。
ぶっ飛ばすと言ったならば、すでに銃弾は放たれているのです!
セラフィムの挙動に自動反撃で抑え込み!
ツインガンを放つより先に、胸の内に納めた殺意を抜いてライフルでその手を撃ち抜きますわ!
清導に向けて手榴弾を使おうというのなら、そちらにも0秒攻撃でナイフを投げて防ぎましょう。
援護はお任せを。協力すれば威力が倍増、ですわね!
清導! 頼みましたわよ!
『平和』は人の数ほど存在する。
そして、重なる部分があれど、決定的に違うからこそ争いは終わらない。
「そうだ。凍える己の身を温めてくれれる他者に『平和』を見出す者もいれば、強固な壁に囲われて絶対に思える構造に『平和』を見る者だっている。そして、こんなにも些細な、吹けば飛ぶような平穏にさえ『平和』を思う者だっている」
『始祖人狼の使者』、『サロメ・サージェント』は自覚なき涙をこぼしながら、有頂天蓋の先にある空を見た。
幻視する蒼炎と赤雷に飲まれながらも、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
手にした二丁拳銃が迫る二人の猟兵に向けられる。
凄まじいほどの速度で抜かれ、打ち込まれた弾丸を空桐・清導(ブレイザイン・f28542)とエドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)を受け止めた。
血潮が体から溢れる。
痛みが走ってもなお、それでも二人は叫ぶ。
「『平和』の根源や意味を問うなら、犠牲を強いるんじゃねえ!」
「【Q】を解除し武装を解いて跪きなさいな!」
二人にとって、『サロメ・サージェント』の為す【Q】とは戦乱を拡大させるものでしかなかった。
如何に問いかけがあるのだとしても。
それでも、その問いかける間にも生命が奪われていくというのならば、この戦いこそ無意味であると知るからだ。
「……何故?」
血潮が噴出する。
それは『サロメ・サージェント』の体から噴出していた。彼女は己の傷跡の由来を知らなかった。
そう、それはエドワルダのユーベルコード。
己が敵への殺意を胸の内に秘めた瞬間、彼女の放つ斬撃はすでに『サロメ・サージェント』の体へと叩き込まれている。
そう、刹那さえも越える無。
攻撃する、という意志を抱えた瞬間に、有言済・攻撃完了(ウォーク・ザ・ウォーク)なのである。
「世界に戦乱を呼ぶならば此処で倒す! アンタがどういう思いを抱えていても!」
清導は戦場を走る。
エドワルダが『サロメ・サージェント』に刹那の一撃を叩き込んだ瞬間に彼の瞳にはユーベルコードが輝く。
しかし、それらをさせぬとばかりに周囲に赤い『セラフィム』が迫る。
「頼んだぜ、みんな!」
「おまかせを!」
エドワルダと共に獣人たちが有頂天蓋に走る。
手にした宝貝で、コンバットナイフで、迫る『セラフィム』へと立ち向かう。
無謀にも思えただろう。
火線は苛烈。
弾幕の如き水晶体は乱舞し、清導ごと滅ぼさんとしている。防ぎきれるものではなかった。
それほどまでに圧倒的な『セラフィム』の攻勢は凄まじい。
「抑え、きれない……!」
エドワルダの瞬撃の如きユーベルコードですら圧倒される『セラフィム』の無限弾幕。
防ぎきれぬ水晶体の猛攻に晒される。
しかし、それを獣人たちがかばう。
血潮が溢れる。崩れ落ちる獣人をエドワルダは抱える。
「何故……!」
「我らが尊ぶは信義。あなた方がそうしてくれたように、我らもまた」
彼等はただ戦っていただけではなかった。
エドワルダは血に塗れる獣人を抱えて走る。
「清導!」
「ああっ! 任せておけエド!」
彼の瞳が極大に輝く。
太陽の光を吸収し、まとった焔と共に彼は戦場を走る。迫る『セラフィム』を押しのけるようにして吹き荒れる焔。
それはサンシャイン・フレア。
もう一つの太陽が有頂天蓋に現れたかのようなすさまじい輝きを纏う清導は一直線に『サロメ・サージェント』へと迫る。
その焔は一人では生み出せないものだった。
この戦場に集った者たち全ての声援が糧となって膨れ上がった太陽の如き一撃。
「頼みましたわよ! この戦いを! 戦乱を!」
終わらせて、とエドワルダは叫ぶ。
獣人たちも同じ思いだったことだろう。戦乱はいつだって傷を生む。生命を奪う。あらゆるものが傷ついていく。
だからこそ、その痛みを忘れてはならないのだ。
「この一撃! 受けてみやがれえ!!」
放たれる一撃を『サロメ・サージェント』は受け止める。空にもう一つの太陽が生まれる。それほどまでの熱量を解き放ち、清導は『平和』を希求する人々の思いを拳に込めて、叩きつけた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オーガスト・ガンバレル
【心境】
「平和ねぇ…それって『問う』ほど遠いものかねぇ。」
確かに戦争、闘争吹き荒れる世界だが…平和の時間がなかったわけじゃあなかったがなぁ。
平和を得るために戦う…そこに疑問なんて抱いたことねぇよ
そもそもオブビリオンが言うなや。
【行動】
行くぞ同胞たち。
オレ達獣人が力、パワー、ストレングスの三つがそろった超戦士だということを教えてやるくまー。
引き続き、ツキミヅキを『自動射撃』モードで『誘導弾』とエネルギー弾の『一斉射撃』を行わせて囮にする。
『野生の勘』で奇襲のタイミングを計って接近する。
いいことを教えてやるぜ。力こそパワー!なんだッ
ギャザウェイ墜としで脳天を地面に埋め込んでやるくまー。
人の願いを受けて煌めくユーベルコード。
太陽の如き光を受けて、『サロメ・サージェント』は皮膚を爛れさせる。
凄まじい熱量。
痛みが走っているはずだ。だが、しかし太陽の焔によって溢れた無自覚な涙は乾き、その痕を残すばかりだった。
「これだけの願い。それが為すのは『平和』とは程遠い結果だ。強い願いはいつだって裏返る。己の重さで沈んでいく。そういうものだ。なら、『平和』とはなんなのだ」
彼女の問いかけに、オーガスト・ガンバレル(8月のキムンカムイ・f39985)は『ツキミヅキ』と共に有頂天蓋に上り詰め、その機体が『自動射撃』モードへと変形していく中、コクピットから躍り出る。
そして、首を鳴らす。
それはその問いかけに応えることを意味するものであったことだろう。
「『平和』ねぇ……それって『問う』ほど遠いものかねぇ」
「この光景を見てもそう想うかい、猟兵」
人が希求する『平和』への願い。
それを力に変える猟兵のユーベルコードの輝き。それが齎すのは『平和』とは程遠い破壊の力だった。
「確かにな。この状況を呼んだのは確かに己の『平和』を求める者の力だろうさ。だが、戦争、闘争吹き荒れる世界……いっときも平和な時間がなかったわけじゃあなかったがなぁ」
オーガストは思う。
己の記憶の中に在る『平和』。
確かにそれは彼女の言うところの『平和』とは違うのかもしれない。
恒久に続く『平和』はなくとも、しかしオーガストは『平和』を知っている。戦乱ばかりの世界にあっても、その間隙に差し込むような爽やかな風を知っている。
穏やかで暖かな風を知っている。
あの日差しを知っている。
「『平和』を得るために戦う……そこに疑問なんて抱いたことねぇよ」
それにな、とオーガストは笑った。
「そもそもオブリビオンが言うなや」
この状況を生み出した、呼び込んだのは力だろうし、願いだろう。だがしかし、それをそしるオブリビオンが問いかけることではない。
故にオーガストは共に戦う獣人たち共に『ツキミヅキ』の放つ砲火を背に『サロメ・サージェント』へと飛び出す。
「行くぞ同胞たち!」
「おう! 共に!」
「ああ、オレ達獣人が力、パワー、ストレングスの三つが揃っった超戦士だということを教えてやるくまー!」
「全部同じな気がしますが!」
「気にすんない! 」
オーガストたちを襲う『サロメ・サージェント』の放つ手榴弾の爆風。
ひりつくような熱が毛皮を突き抜けて肌をさす。
凄まじい熱量だ。
「オブリビオンだからこそ、問うというものだよ。そういうものだろう、私は!」
「知ったことかよ!」
オーガストは爆煙の中を走り、『サロメ・サージェント』へと飛びかかる。
だが、その飛び駆るオーガストの巨体を蹴り飛ばしながら、さらに手榴弾が投げ放たれる。
閃光のように爆風が荒び、オーガストの体が吹き飛ぶ。
けれど、それを支えるサイバー武侠たちの姿があった。
「お前ら……!」
「此処は我らに! あなたは!」
「ああ、任せておけよ! 故人曰くってな!」
オーガストの瞳がユーベルコードに輝く。
その俊敏性は、巨体からは考えられないものだった。いや、違う。筋力を多く有する体躯だからこそである。
筋肉はパワーであるが、しかし同時に瞬発性能を示すものである。
跳ねるようにしてオーガストは『サロメ・サージェント』の背後に回り込み、その躰を掴み上げる。
「……っ、君は!」
「いいか、教えてやるぜ。力こそパワー! なんだッ!なんだかんだと問いかける前になぁ!」
オーガストの体が反り返った瞬間、バックドロップの一撃が『サロメ・サージェント』の体を持ち上げたままに脳天から地面に叩き落とす。
天蓋を砕きながら『サロメ・サージェント』の体が失墜するのを見やり、オーガストは不敵に笑う。
「ギャザウェイ墜とし(ギャザウェイオトシ)つってな!」
オーガストは、指で小鼻を弾いて睨めつける視線に動じないのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
イーブン・ノルスピッシュ
いくら祈っても|お前達《オブリビオン》が平和を取り上げる
もはや獣人達の安寧は、鉄火と硝煙の丘を越えた先にしか無い
……|ああ《・・》、|そうだ《・・・》
結局は俺達とて〝戦う生き物〟だ
戦って勝ち得たものを糧とする生き物だ
だから|戦う《生きる》
生きて、戦って、生きて、死んで
そして必ず|過去《お前達》を乗り越える!
未来へ向かう歩みを止める事など出来はしない
〝丘を越えて彼方へ〟
必ず辿り着いてみせる!
よく保たせてくれた、熾天大聖
その献身に報いよう
炎と共に拡がる光景
この都市を模した市街の迷路
先程の罠も再現済みだ
レーザーは建物で遮蔽し、路地から路地へヒットアンドアウェイで撹乱する
彼らは此処での戦い方を良く識っている
此処は彼らの狩場となった
迷路をどうにかしたければセラフィムを出すがいい
無論、それは俺が狩らせてもらう
炎のオーラ防御を纏い、敵機を盾にしながら吶喊しよう
出口で待っていてくれ、熾天大聖
セラフィムが居る内は宝貝が通用する
上手く追い込んでみせよう
受けた借りは返されなければならない
倍にして見舞ってやれ
有頂天蓋を突き破って落ちた『サロメ・サージェント』が再び這い上がる。
それは問いかけるためではなかった。
いくら言葉で問いかけたところで、彼女の問いかけに十分な応えを出す者は存在しない。そのことをイーブン・ノルスピッシュ(戦闘猟兵・f40080)は知っていた。
故に、告げる。
無駄と知りながら。
意味がないと知りながら。
しかし、それでも言わずにはいれなかった。
多くの同胞が傷つき、死んでいった。そこにあった感情の種類は数えようがない。
「いくら祈っても|お前たち《オブリビオン》が『平和』を取り上げる」
怒りが満ちていく。
いや、元より怒りしかない。
だから、イーブンは言葉を吐き出す。
溢れ出す怒りが己の体を突き破らぬようにと。
「もはや獣人たちの安寧は、鉄火と硝煙の丘を越えた先にしかない」
「それは君たちが君たちであるからだ。そうであるからだ。
「……|ああ《・・》、|そうだ《・・・》」
イーブンは肯定する。『サロメ・サージェント』の言葉を肯定する。どんなに否定しようとしても否定しきれぬものがあるからこそ、彼女に告げる。
別に彼女が有頂天蓋に戻ってくるのを待っていたわけではない。
「結局は俺たちとて“戦う生き物”だ。戦って勝ち得たものを糧とする生き物だ。だから|戦う《生きる》」
踏み出す。
一歩を前に。
戦場には赤い『セラフィム』が飛ぶ。
まるで乱舞する飛蝗のようであるようにさえイーブンには思えただろう。
完全なる悪性を示す赤。
赤熱するような怒りは己のものと同じであったかもしれない。けれど、とイーブンは隣に立つボロボロの『熾天大聖』の姿を認める。
「……『平和』を欲するから。人は誰だって『平和』を得たいと思う。人によってそれが異なる形をしているのだとしても、きっと誰かの心にも灯る『それ』あると信じたい」
「よく保たせてくれた、『熾天大聖』」
イーブンの言葉に血に染まった亜麻色の髪が揺れる。
聞こえていない、と理解できただろう。
狂気めいた感情。
そこにあったのは源さえ異なれどイーブンと同じものであった。
そうしなければならないというなにかに突き動かされる者同士だけが感じ取れるシンパシー。
故にイーブンはそれ以上言わなかった。
献身と呼ぶにはあまりにも痛々しいもの。それは他者から見た己でもあったことだろう。広がる焔。破壊された街中。
しかし、それは、 スペクタキュラーの才腕(スペクタキュラー・ロウ)を示すイーブンのユーベルコードによって生み出された迷宮。
「『サロメ・サージェント』……オブリビオン。お前は逃さん」
「元より、逃げるつもりなどないさ。憎悪の塊にが、生きることを語るなど!」
「生きて、戦って、生きて、死んで……そして必ず|過去《お前たち》を乗り越える!」
互いは交わらない。
どうあっても平行線。
互いを認識できれども、理解はできない。
故に、滅ぼし、滅ぼされる間柄でしか無いのだ。イーブンにも『サロメ・サージェント』にもそれがわかっている。
わかっているからこそ、立ち向かう。
己の存在の全てを賭けて、目の前の存在を滅ぼさずにはいられないのだ。
「未来へと向かう歩みを止めることなどできやしない」
「憎悪が語ることか、それが!」
「いいや、それは俺ではない」
イーブンは見ただろう。己が生み出した迷宮で戦う獣人たちを。
『セラフィム』を誘い込み、複雑な地形でありながら、それを利用して打倒していく獣人たちの姿を。
そう、それこそが己の言うところの未来へと向かう者たちの背中である。
『熾天大聖』は誰に言われるまでもなく飛んでいた。
血に塗れ、砕けた四肢を支えるようにして、それでもなお大鴉の翼を広げて飛んだのだ。
あれもまた己とは違うもの。
未来というものに邁進することのできる者。
故に、とイーブンは告げる。
「征け、『熾天大聖』」
追い込むのは己がやる、と『サロメ・サージェント』へと肉薄する。
「“丘を越えて彼方へ”必ず辿り着いて見せる!」
「君自身が、そこへ征けぬと知りながらもか!」
「ああ、そのとおりだ。俺自身が例え、そこにたどり着けなくても、其処にたどり着ける可能性が在る者たちがいることを俺はしっている。だからこそ」
己は鎹であり、楔。
誰かの今と誰かの未来をつなぎとめる。
過去は過去でしかない。
排出されて元に戻らない。故に過去なのだ。それを知る彼にとって、『サロメ・サージェント』の存在は世界を歪める者でしかない。
だから、とイーブンは見ただろう。
迷宮の入り口へと追い込んだ『サロメ・サージェント』を穿つ蒼炎と赤雷の迸りを。
それこそが、彼の幻視した未来。
鉄火と硝煙さえ吹き飛ばす玲瓏たる明日を思わせる光景であった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
生存本能ってものもあるからね……生存が脅かされない平和はそのために必要だしそのために戦う事はなんら矛盾はしていないよね
まあ問題は思い描く平和がずれてる場合なんだけど……その辺は歴史が解決するしかないよね
……早速Qが展開されたけど……対抗手段はある…
【新世界の呼び声】を発動……戦場を仮想現実世界と置き換えるとしよう
これでセラフィムが戦場の外へ行くこともない……ここで決着をつけてしまおう
『Qの恩恵を受けることを禁ずる』と命令をだしてセラフィムとサロメの行動を阻害……
獣人達に攻撃に回ってもらって自分は現実改変による妨害と障壁を張る事による防御で援護に徹するとしよう…
蒼炎と赤雷がほとばしる。
その玉の如き輝きを裁ち切るようにして光線が迸り、『サロメ・サージェント』は一歩を踏み出す。
彼女の額には血潮が流れている。
猟兵たちのユーベルコードはたしかに彼女を追い詰めていた。
しかし、問いかけ続けることを彼女は止められないようだった。
「『平和』はどうして力でなくては得られないのか」
その問いかけにメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は頭を振る。
「生存本能ってものもあるからね……生存が脅かされない『平和』はそのために必要だし、そのために戦う事はなんら矛盾はしていないよね」
「得難いものであると理解していても、人はそれを壊す」
「それはみんながそれぞれに思い描く『平和』が少しずつ違うからだよ。ズレているからだ……歴史が解決するしかないよね」
その言葉に『サロメ・サージェント』は怒りに満ちた瞳を向ける。
「歴史だと? 時間が解決するとでも!」
「……そうだよ、それしかない。急いでも答えはでない。見つけることができても、それは答えに似たなにかでしかないんだよ……」
だから、とメンカルは【Q】によって呼び出された赤い『セラフィム』たちを見上げる。
確かにそれは強大な力だ。
この場に集った戦力さえも押しつぶすような圧倒的な力。
けれど、メンカルの瞳はユーベルコードに輝く。
「新たなる世界よ、換われ、染めろ。汝は構築、汝は創世。魔女が望むは万物統べる星の声」
新世界の呼び声(ハロー・マイワールド)が響く。
戦場はメンカルが構築した仮想現実に置き換わる。
「……決着は、この中でつけさせてもらうよ」
「望む所だ……!」
「……君が【Q】を手繰るのならば、私は……『【Q】の恩恵を受けることを禁ずる』よ」
この仮想現実においてメンカルことそが、世界の上位者
絶対上位。
彼女の意志が全てに勝るものであるがゆえに『サロメ・サージェント』が一度に一つの【Q】を手繰れぬ以上、それを上回ることはない。
赤い『セラフィム』たちが次々に消えていく。
それは『サロメ・サージェント』が操る【Q】の力を無効化したものであった。
この戦場内部という限定的なれど、しかしそれを成さしめる力が此処に発露している。
獣人たちが、その戦場を駆ける。
メンカルと共にこれまでパンツァーキャバリアを相手取り、戦ってきた彼等だ。
「……防御は任せておいて」
「ハッ! 此方は貴女様の矛となりましょう!」
飛び出す彼等の宝貝が煌めき、その一撃と『サロメ・サージェント』の放った光線とが激突する。
それは本来であれば獣人たちの持つ宝貝を容易く打ち破るものであった。
しかし、メンカルが改変した仮想現実の中においては違う。
現実改変による妨害と障壁。
それによって光線は完璧に防がれるのだ。
「……時間が解決してくれているのならば、何故こんなにも世界は『平和』ではないんだろうね。悲しいことだけれど」
未だ見果てぬ夢の如き『平和』。
遠く、遠く。
どこまでも遠いと思えてしまう。『サロメ・サージェント』の言葉は、その絶望を示すには十分な事柄であっただろう。
だからこそ、メンカルは詮無きことだと、過去という堆積に歪んだ者の末路を見やるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
『禍戦・恐喜歩』守り、敵を壊す為、継続してきた【闘争心】を以てして、
オーバーロード、ディスポーザブル真の姿化
なんだ、つまり貴様も、平和がほしいのか?
背部展開黒輪光よりホーミングレーザー【範囲攻撃】敵攻勢を抑えながら、【推力移動】セラフィムの灼熱を湛えた胸部砲口へRBX騎兵刀を突き入れ【呪詛】物質開放、爆破。爆炎の中、【第六感】で雷架から光線を放ちノインへ【レーザー射撃】の牽制を入れる。
元より|無数の躯《過去》の上に自分達は在る!
どうしたって否が応でも屍が積み上がる!自分は全てを壊したい!!
霊障怨念結界【結界術】空間を【念動力】で捻じ曲げ殺人レーザーを【受け流し】、応報、胸部発光体から拡散灼熱光をノインへ発射【範囲攻撃】
だから自分は壊す!己を、我らが求めた平穏を、未来を!
悼みを抱え、それでも明日を生かんとする者の、其の道行きを阻むものを!!
ノインとの距離を詰め【早業】拳を振るう。何度も、
光子迸る雷架の【怪力】でレーザーを押し込み、ノインを捉え【属性攻撃】
強く、光子をスパークさせ、破壊する。
己の中にあるのは破壊の意志だけだ。
それを闘争心と呼ぶのならば、そういうものなのだろうと朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は自身を規定する。
超克の輝きがひしゃげた機体を覆っていく。
霊物質によって補填した機体であれど、度重なる戦いは彼女の機体に深刻なダメージを負わせていた。フレームが歪み、装甲は補填した端から赤い『セラフィム』によって穿たれる。
それは獣人たちを守るために戦線の戦端で戦ったことによるものであった。
だからこそ、彼女の心には敵を壊さんとする闘争心のみが溢れていた。
「鉄を裂き鋼を砕け」
難しいことは抜きにすれば良い。
自分が為すべきこと。
やるべきことをやり続けていれば、自ずと目的は達成されると彼女は知っていたからだ。
禍戦・恐喜歩(デッドオーバー・アドバンス)とは、即ち、そういうユーベルコードであったからだ。
どこまでも破壊することしか頭にない。
「破壊の申し子が!」
『サロメ・サージェント』が光線と共に小枝子の駆る『ディスポーザブル』へと迫る。
オーバーロードの輝きに満ちた彼女が支える戦端を崩してしまえば、獣人たちの勢いはそがれる。勢いが削がれたのならば、敵を打倒するには十分なきっかけとなるだろう。
そして、それは瓦解の一手でもある。
確かに獣人達は信義によって今此処に居る。
けれど、信義の要たる猟兵たちを退けさえすれば、あとは烏合の衆というほかない。
『熾天大聖』がただ一人、この場において『サロメ・サージェント』の存在に気がついたことが証明であった。
「『平和』さえも壊す者が、『平和』のために戦うか!」
オーバーロードの輝きから生み出された黒き輪光より放たれる光線が有頂天蓋を砕く。『サロメ・サージェント』は、その光線の間隙を縫うようにして駆け抜けている。
「なんだ、つまり貴様も『平和』がほしいのか?」
小枝子は問いかける。
問いかけに対する答えではなかった。
彼女の言葉は、どれもが問いかけであったが、同時に何かを欲するものであった。『サロメ・サージェント』、『ノイン』の頬には涙の痕があった。
小枝子は、その涙の理由を知らない。
けれど、わかっていることがある。
手にした騎兵刀を赤い『セラフィム』へと投げつけ、呪詛で持って爆破しながら前に進む。
牽制のレーザーを受け止め、さらに放ちながら、さらに進む。
戦場を。破壊の痕を踏みしめるようにして小枝子は前に進むのだ。
「元より|無数の躯《過去》の上に自分たちは在る! どうしたって否が応でも屍が積み上がる!」
「だったら、どうだというのだ! 過去の堆積を踏みつけて今を生きる君たちが開き直ったところで!」
「自分は全てを壊したい!!」
それだけであった。
放たれた光線は結界、そして空間を捻じ曲げてさえ直進し、小枝子の駆る『ディスポーザブル』の躯体を貫く。
火花が散って、内部から爆発が巻き起こり巨体が揺れる。
けれど、それでも小枝子はためらわずに前に進む。破壊を望む者が、破壊を受けれないでどうすると言わんばかりの気迫に『サロメ・サージェント』は呻く。
「だから自分は壊す! 己を、我らが求めた平穏を、未来を!」
戦え、と叫ぶ心がある。
破壊を求めるのならば、破壊を厭う暇などないと言わんばかりに。例え、如何に争いが多くの屍を積み上げるのだとしても。
それでも悼みを抱えて、明日を生きねばならない。
その道を阻むのが過去であってはならないのだ。
過去とは即ち轍にほかならない。そんな者が今を生きる者の前に立つなどあってはならないことなのだ。
「貴様を自分は壊す!」
拳を振るう。
巨体から繰り出される殴打は迫る『セラフィム』をも砕きながら『ノイン』へと迫る。
放たれるレーザーが『セラフィム』を押しのけて、彼女へと届く。
煌めくは光子。
「貴様が求めたものは『平和』であったとしても! その過程が、いや! 根源そのものが間違っている! 脳無き巨人! 貴様は!!」
振るう拳の一撃が明滅する。
炸裂する光子が膨大なる熱量を解き放って、『ノイン』の体を吹き飛ばす。
「虚ろなる器にこそ宿すべきものを探して彷徨い続けろ! その意義を問い続けろ! その度に自分が破壊してやる! その疑問ごと――!!」
大成功
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カシム・ディーン
やれやれ…まさかここでまでフュンフやらノインやらの名前を聞くことになるとはな
ノインだったな?
クロムキャバリアではやられましたよ(結局証拠を見つけ出せなかったのは、忌々しい)
平和ねー
僕には分からねーよ
生き物ってのはどうあれ戦いを求めるからじゃねーかな
だがまぁ…
こうして殺しあいをせずにすむ世界ならもう少し楽しいだろうよ!
【情報収集・視力・戦闘知識】
ノインとセラフィムの立ち位置と動きを把握
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で隠れ水の障壁で熱源匂い隠蔽
【弾幕・念動力・スナイパー・二回攻撃・切断・空中戦】
UC発動
超高速で飛び回り念動光弾でセラフィム毎蹂躙し距離を詰めて鎌剣で切り刻む!
明滅する光が『サロメ・サージェント』、『ノイン』の体を打ち据える。
跳ねるようにして有頂天蓋の上を彼女の体が飛ぶ。
その眼前に赤い『セラフィム』が守るようにして展開し、その胸部砲口から放たれる火線を解き放つ。
苛烈なる熱量を持った一撃が幾度も放たれる度に有頂天蓋は砕け、ひび割れる。
「やれやれ……まさかここでまで『フュンフ』やら『ノイン』やらの名前を聞くことになるとはな」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は己のキャバリアと共に空を飛翔し、火線の一撃を躱す。
元より速度に優れた機体である。
火線の一撃を躱すことは造作もないが、しかし、と彼は機体を隠す。
光学迷彩によって、水の障壁で熱源を隠すのだが、しかし火線の苛烈なる乱打によって機体を覆う水が蒸発してしまう。
「わかっているよ、猟兵。君がそう来ることは!」
赤い『セラフィム』の放つ火線は膨大な熱量を持ってカシムの機体『メルクリウス』の光学迷彩を無意味なものとする。
姿を晒した機体に襲いかかる赤い『セラフィム』の群れ。
手にしたプラズマブレイドの一閃が無数に放たれ、機体をかすめる。装甲が溶解し、さらに溶解した装甲を撃ち抜くようにして『サロメ・サージェント』、『ノイン』の手にした二丁拳銃の弾丸が貫く。
「『ノイン』だったな? クロムキャバリアではやられましたよ」
「知らないな。だが、君の言うところのしてやられた、という感情は、私にとっては愉快であるがな」
「はっ、忌々しいったらねーですね!」
乱舞する弾丸と水晶体が激突して爆発を起こす最中、カシムの瞳がユーベルコードに輝く。
己の機体の本領は機体を隠蔽することでもなければ、弾幕を形成することでもない。
「神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)、起動……『メルクリウス』……お前の力を見せてみろ……!」
加速する機体。
圧倒的な速度はコクピットに座すカシムにさえ負荷を駆けることだろう。
超高速機動による撹乱と赤い『セラフィム』の介在を許さぬ踏み込み。手にした鎌剣の一閃が天蓋を切り裂く。
「『平和』を求めながら、同時に人は力を求める。君の駆る機神のような、ね。そうだろう? どれだけ言葉を尽くしても、不可侵を求めても、結局人は他者を羨むことをやめられないのだよ」
「隣の芝生は青いってやつかよ。くだらねーな。『平和』だって僕にはわかれねーよ」
カシムは『ノイン』の言葉に頭を振る。
斬撃が旋風のように『セラフィム』を切り裂きながら『ノイン』を追う。
「生き物ってのはどうあれ戦いを求めるもんだろーがよ」
「獣と人間とを区別しておきながらか」
「そりゃ、殺し合いせずに済む世界ならもう少し楽しいだろうがよ!」
だが、そうはならない。
世に戦乱は尽きず、つきまとい続けるものであるから。
故にカシムは鎌剣を振るう。こうでなければいいと思いながらも、その剣を振るうことはやめられない。
オブリビオンの存在は、在るだけで世界を破滅に導くものであるから。
だから、止められないのだ。
振るう鎌剣の切っ先が『ノイン』の体を切り裂く。
血潮が赤く、吹き荒れる。
「それでもって思いながら、止められないのが人間ってもんだ。他者を食らって生きる以上、どうしようもねーよ」
人だけが『平和』を求める。
それがどんなに見果てぬ夢であっても――。
大成功
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ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
んもー
戦争しながらなんでそんな事大なことを問うのさー
みんなの平和はみんなそれぞれ持ってるものさー
正体不明の大きなものなんて思わず一人一人の小さなそれをみんな聞いていけば案外簡単に理解できるものかもしれないよ?
●ガンガンいこうぜ
とここまで道を切り拓いていっしょに地獄のような弾雨の中を駆け抜け友情を育んだかけがいのない戦友たちに何某の相手をしてもらいながら彼女と対面しよう!
みんな!なんとかがんばって!(飴ちゃんおいしい)
そして【第六感】に拠ってジャストタイミングでUC『神撃』で爆風ごと周辺地形ごとドーンッ!!
でも…平和をなくしてでも叶えたい願いはどこへいけばいいんだろう?
『平和』を問うオブリビオン。
『始祖人狼の使者』たる『サロメ・サージェント』は問い続ける。
獣人に、猟兵に。
『平和』とはなんたるかを問う。
「んもー。戦争しながらなんでそんな大事なことを問うのさー」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は吹き荒れるようにして放たれる赤い『セラフィム』の中を駆ける。
走って、走って、道を開いていく。
友人たち、とロニは一方的に思っている獣人たちはロニについてくるのにやっとだった。
「君たちは此処まで! あの赤いのの相手をよろしくね!」
「はっ!? ええっ!?」
「よろしくー!」
ロニは笑って火線の間隙を縫うようにして、血潮滴らせる傷を負った『サロメ・サージェント』へと迫る。
「みんなの『平和』はみんなそれぞれ持ってえるものさー」
「みんな違ってみんな良いとでも言うつもりかい? それこそ子供に対する答えだな。下らない!」
「でもさ、それも真実じゃあない?」
ロニは放たれる手榴弾の爆発をものともせず突っ切る。
己の第六感が言っている。
爆炎だろうがなんだろうが、突っ切っちゃうのが一番早くて、手っ取り早いと。
だが、そこに水晶体が降り注ぐようにして迫る。
「あっ、みんな! なんとかがんばって!」
ぺちゃころと口の中で飴玉が転がる音が響いて、獣人達は叫んだ。
「いや、無理!」
「そんなーもうちょっとがんばれるでしょ! ファイト! ファイト!」
「簡単に言ってくれる!」
だが、それでも獣人達は、赤い『セラフィム』に善戦していた。
「これが答えじゃない?」
「何のことだ」
ロニは示す。
平和を問う『サロメ・サージェント』に対する答えだと。
そう、『平和』とは見えぬ大きなものである。
だが、それをそんなものだと思わなければ良い。『平和』とは人の心それぞれにあるものだというのならば、思いがけず小さな物であるようにも思えるだろう。
「今、ボクがいて、彼等が居て、キミが居る」
ロニは手を広げて拳を握りしめる。
「見えないものに問いかけたって答えはでない。でもさ、みんなの心のなかに少しずつ答えがあるってんなら、キミの問いかけは案外簡単に理解できるものかもしれないよ?」
「そうでないから人は歪む。過去は歪んで、私という存在が生まれようというものだろう!」
「そうかな? そうかも? でもね」
振るい上げた拳の輝きはユーベルコード。
「……『平和』をなくしてでも叶えたい願いはどこへいけばいいんだろう?」
立ち行かなくなるものが必ず出てくる。
『平和』とはたしかに尊ばれるべきものであるけれど。けれど、それ以外の全てを犠牲になんてできやしない。
だから、とロニは拳を振るう。
神々しさを放つ拳は、神撃(ゴッドブロー)の鉄槌のごとく有頂天蓋ごと『サロメ・サージェント』へと叩きつけられる。
散る破片のさなかに落ちていく彼女の姿を見下ろし、ロニは答えを聞きそびれた、と口の中で転がした飴の甘さと共に息を吐き出すのだった――。
大成功
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ルクス・アルブス
【ステルク】
熾天大聖さん、おつかれさまです。
遅くなっちゃってすみませんでしたー!
こんなに傷だらけで……せめて当てm……。
アッ、ハイ、生きてます!
生きていたいです、マム!
と、熾天大聖さんを抱きかかえようとしてとんでもない圧に引き下がります。
って、平和を問う?
え、えと、なんだかまた難しい感じになっちゃってますけど、
問う、とか大げさなものじゃないですよね。意味とかいります?
……人の本質なんて、基本『ないものねだり』なんですから。
(一瞬だけハイライトが消えて雰囲気変わりつつ)
あ、あれ?
いまわたし何か言いました?
な、なにはともあれ、ケンカしてるより仲良しがいいに決まってます!
そこに意味とかいらないと思いますよ!
わ、ステラさんの許可出ました! わーい!
それならばこれですね!
ステラさんと熾天大聖さんには癒やしを、
ノインさんにはメンタルブレイクなバッドステータスを!
てれれれってれー♪
と、取り出したユーフォニアムで【協奏曲第1番】を全力演奏!
ステラさん、癒やしあるんですからちゃんと聴いてくださいね!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
(キャバリアから降りて『アンゲールス・アラース』で飛翔)
熾天大聖様!よくぞここまでノイン様を留めていただいて…
後はこの|メイド《私》にお任せください
ノイン様…『平和』を冠する争いの体現者
答えを聞いたところで貴女様は変わらないでしょう?
争いは生き物の本能
私たちは争わずにいられない
それ故に|『争いのない刻』《平和》を求める
平和を得ても本能がまた戦いを始める
これは決して終わらない|生き物の業《メビウスの輪》
ですが…同時に私たちは|希望《未来》を抱きます
|揺れ動く感情《良心》がそうさせる
貴女様の手では掴めないのです|過去の存在《オブリビオン》
ルクス様お待たせしました
生きてます?
全力でいいですよ全力で
出し惜しみ無しでよろしくお願いします!
乗り手無き|赤いセラフィム《完全なる悪性》
ただの『装置』に世界を変える力は無いととある男は言っていました
それが貴女様の限界ですノイン様!
空中戦に二丁拳銃
随分と私に寄せていただいたようで?
ではご期待に沿いましょう
【スクロペトゥム・フォルマ】で仕掛けます!
揺れる体がある。
血潮が溢れ、赤く染まる体。
大鴉の翼がかろうじて、その躰を支えている。いや、本当に体を支えているのは一つのことだった。狂気じみたそれしかなかったのだ。
大鴉の戦禍階梯『熾天大聖』は言葉無く、しかし、血に染まった亜麻色の髪を揺らしてボロボロの四肢たる戦闘義体と共に歩を進める。
砕け散った有頂天蓋。
けれど、未だ『始祖人狼の使者』たるオブリビオン『サロメ・サージェント』、『ノイン』は霧散していない。
落ちていった彼女を追うように蒼炎と赤雷がほとばしる。
振るう二刀の宝貝。
放つ二つの色をした炎と雷が有頂天蓋から落ちていく『サロメ・サージェント』を追うようにして放たれる。
だが、その一撃は彼女をとらえることができなかった。
「――……っ」
「限界だっただろうに! それほどに!」
『サロメ・サージェント』は見た。
意識を失いながら落下する己に縋るようにして二刀を振るおうとし、しかし気力が途切れて宝貝の力を引き出せずに落ちる『熾天大聖』の姿を。
だが、そんな彼の体を受け止める者があった。
「『熾天大聖』さん、おつかれさまです。遅くなっちゃってすみませんでしたー!」
受け止めたのは、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)だった。
彼を抱きかかえるようにして彼女は血まみれになった彼の体を知る。
どこもかしこも傷だらけだった。
彼が自分たちが有頂天蓋に駆け上がるまでに『サロメ・サージェント』を留めていることのできた理由を知る。
自身の武装が一切通じない相手に敵を留めることが如何に難しいことかは言うまでもない。懸命に戦ったことを知り、ルクスは。
「こんなに傷だらけで……せめて当て……」
手当ね! 手当ね! 手が抜けてるわー! あぶねーわー!
ルクスは、あ、と思った。
思わず受け止めてしまったけれど、彼女はさらに有頂天蓋から鳥型キャバリアから飛び出すようにして飛翔したステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の姿を認めて、青ざめた。
やっべ。
「……後はこの|メイド《私》にお任せ下さい」
静かな言葉だった。
ルクスは、あー……と思った。
彼女は傷だらけの『熾天大聖』を抱えるルクスを一瞥し、街中に降り立った『サロメ・サージェント』へと振り返る。
「『ノイン』様……『平和』を冠する争いの体現者。貴方様が求める『平和』の意味を私どもが答えたところで、貴女様は変わらないでしょう?」
降り立った街中にて対峙する『サロメ・サージェント』、『ノイン』とステラとルクス。
「変わらない。不変たるのがオブリビオンだ。歪めどね。確かに君たちのいう『平和」というものは興味深いと思うよ。けれど」
それでも『平和』を求める。
かつて『フュンフ・エイル』と言う不世出の『エース』が求めたもの。
あれだけの絶対的な力を持ちながら決してなし得ることのできなかったもの。得難きものであり、見果てぬものであるもの。
『平和』を求める者は多けれど、しかし、ただの一人として、それを得られた者はない。
恒久的な平和などまやかしであるということしか『ノイン』にはわからなかった。
「争いは生き物の本能」
「それは猟兵とオブリビオンも変わらないさ」
滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかないのと同じように、食うか喰われるかしかないのもまた生命の生存競争の本質であるとも言えるだろう。
「それ故に|『争いのない刻』《平和》を求める。『平和』を得ても本能がまた戦いを始める。これは決して終わらぬ人間としての宿業というものでしょう」
「だから、無意味だと言いたいのならば、そういうが良いさ」
「いいえ、だからこそ、私達位は同時に|希望《未来》をいだきます。|揺れ動く感情《良心》がそうさせる」
「だから私にはつかめないと!」
怒りがほとばしるようにして放たれた手榴弾の爆炎ががステラを襲う。
凄まじい熱量。
ステラの身を焼く一撃は『ノイン』の怒りを体現するものであった。
炎にまかれながらもステラはルクスへと叫ぶ。
「ルクス様!」
いつまで『熾天大聖』を抱いているつもりだと言う凄まじい圧力にルクスの背が伸びる。
「え、だって、なんかこう、その、えっと、『平和』を問うって難しい話をしてるので……だって、だって、血がこんなに!」
ルクスの言葉にステラが顔をしかめる。
そんなことは自分にだってわかっているのだ。
だからこそ、戦わなければならない。一刻でも早く戦いを終わらせなければならない。そのためには。
「全力で!」
「えっ」
ルクスはその言葉に首を傾げる。
彼女は『平和』の意味を知らない。
問いかけられたとて、大げさなものじゃあないとさえ思うだろう。意味さえもいらないのではないかと思うだろう。
だって、彼女にとって人間の本質というのは『ないものねだり』なのだと理解しているものであるからだ。
どこまで行っても人は、己にないものを求める。
得られないと知りながらも、手を伸ばす。
その伸ばす手が他者の頬を掠め、傷を作るのだとしても、止められないものだとしっちる。
だから、とルクスは己の瞳が光を喪うのを理解できなかった。
「……でも」
ルクスの耳元に届くのは呻くような『熾天大聖』の声だった。
誰かが願ったのだ。
もう誰も傷つかずに済む『平和』が訪れますようにと。
祈りが願いに昇華したあの日のことを彼は歪められて叶えられた結果でありながらも、分かたれ、摩耗した今であってもなお、胸に抱き続けている。
それがルクスの胸に光を灯す。
「そうですよね。ケンカしているより仲良しがいいに決まってます! だから! そこに意味とかいらないと思いますよ!」
だって、とルクスは『ノイン』が放つ光線を真っ向から見据えて抱えた『熾天大聖』を守るようにして庇いながら焼かれる痛みに呻く。
それでも彼女は立つ。
なぜなら、彼女は勇者だからだ。
「ルクス様、今回ばかりは出し惜しみなしでお願いします!」
「……え?」
「だから出し惜しみ無しで演奏を!」
「……わ」
わ?
「わーい! わーい! ステラさんの許可出ました! わーい!」
さっきまでのシリアス勇者返して。
ステラの許可が出たことで全部ぶっとんだルクスは、ユーフォニアムを構える。
てれれれってれー♪
協奏曲第1番(キョウソウキョクイチバン)~!
そういうあれじゃないが。
「むいむいむむむむむむぅのむぅ!」
「何を言ってるのかさっぱりわかりませんが!」
ルクスの演奏を受けて、ステラは爆炎の中を駆け抜ける。皮膚を焼く痛みも、肺を突き刺すような痛みも、今の彼女には関係ない。
迫る赤い『セラフィム』を手にした二丁拳銃で打ち抜きながら『ノイン』へと迫る。
「あの男は言っていました。超弩級の闘争を求めた男。ただの『装置』には世界を変える力は無いと」
だから、【Q】によって赤い『セラフィム』――完全なる悪性を手繰る『ノイン』には限界が在る。
手にした二丁拳銃は互いの同じ。
いや、銃の種類は違えど、その型は同質。
「それが貴女様の限界です『ノイン』様」!」
己を模倣するかのような銃撃。
凄まじいまでの銃弾のやり取りの最中、互いの視線が交錯する。
だが、彼女の体にも、『ノイン』の体にも旋律が満ちている。
同じ音であっても、それを感じる者によって感覚が異なるように。抱く『平和』もまた異なるのだと示すように。
「不変さえも堆積によって歪むんだ……なら、この結果は……」
得てしてそうなのだろうとと突きつけた銃口の先に在る『ノイン』の顔をステラは見ただろう。
「スクロペトゥム・フォルマ……これにて」
放たれた弾丸は『ノイン』を貫き、その躰を霧散させる。
問いかけられた『平和』に答えはなく。
されど、もたらされた戦乱の傷痕だけは残される。
それは言ってしまえば、通り魔の刃のように汎ゆる者たちの胸に傷を生み出すものであった。
砕けた天蓋の先に広がる空は、未だ見果てぬ『平和』の行き先を教えてはくれない。
だから。
『メーデー』
その歌が響く――。
大成功
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