エンドブレイカーの戦い⑲〜悪性臨界
●ヴァーサス・単一世界
赤い巨大な蛇は佇んでいる。
ゆっくりともたげた口腔より滾々と放出され続けているのは、毒液であった。
それは瞬く間に拡がっていく。
汎ゆる存在を殺す毒。
それこそが『11の怪物』の一柱『バシュム』の唯一の能力だった。
毒を吐き続ける、という単一の能力。
一見すれば、与し易い敵であるように思えただろう。だが、複雑に絡まりあった光が白く、白く近づいていくのと同じように、結局のところ、最も強い光が白色へと至るように。
『毒液を吐く能力』という単一を有する『バシュム』こそが『11の怪物』の中で最も強い存在へであることを証明していたのだ。
かの怪物の周囲に生物は存在できない。
如何なる神も。如何なる怪物も。如何なるオブリビオンも。如何なる猟兵も。
いずれもが『バシュム』の毒液を防ぐことはできない。
故に『単一世界バシュム』。
それ以外は存在せず、世界をまるごと己の存在へと変貌せしめる力。
例え、『エリクシル』を創造する力を保たぬ無能と謗られようとも『バシュム』には意味を成さない。
そう謗る存在ですら、『バシュム』には近づくことはできず、また如何なる作用においても打倒することはできない。
故に|『終焉に至る病』《カタストロフ》である。
物言わぬ赤き蛇は、その悪性単一であるがゆえに、強烈な力を誇示するでもなく、ただ粛々とエンドテイカー! 世界の大地そのものである『大地母神』を殺すために、水を腐らせ、風を澱ませ、土を崩落させるのだった――。
●エンドブレイカーの戦い
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。『11の怪物』の一柱『バシュム』との決戦となります。エンドブレイカー! 世界を滅ぼさんとする恐るべき脅威。|『終焉に至る病』《カタストロフ》の原因、それが『バシュム』です」
ナイアルテの言葉には緊張が走る。
彼女はフラスコチャイルドである。清浄なる空気の中では生きられず、生命維持装置を必要とする。
汚染された環境への耐性を持つ完成されたフラスコチャイルドですら、『バシュム』の存在する領域に踏み込むことをためらわせる。
それほどまでの毒性を『バシュム』は常に吐き出し続けているのだ。
しかし、『バシュム』を放置すれば、確実にエンドブレイカー! 世界の大地である『大地母神』が死に絶えるだけではなく、あらゆるものを殺し尽くし『バシュム』のみの『単一世界バシュム』へと変えてしまうだろう。
無論、生物や神性だけではなく、死者やオブリビオンすらも存在できない。
つまり、猟兵の如何なる種族であっても存在を許されない世界へと変わってしまうのだ。
「『バシュム』は毒性は今、毒性は弱いですが拡散性の高い毒を戦場に散布しつづけ、己だけしか存在出来な『単一世界バシュム』を作り出しています」
だが、弱い毒性とは一体どういうことか。
「後に残らない、という意味です。『バシュム』の毒は倒せば消えるものです。ですが、例え、神々とて『バシュム』のこの毒に耐えられるのは僅かな時間のみ……」
つまり、嘗て猟兵達が経験した『毒』にまつわる戦いよりもさらに高度な毒性への備えが必要となるのだ。
しかも、限られた時間で『バシュム』を打倒するに至らねばならない。
嘗てクロムキャバリアの古代魔法帝国の末裔が有毒装甲を用いたように、それ以外にも似たような毒性を持つ敵が存在したはずだ。
そのいずれをも量がする毒を『バシュム』は有している。
「その僅かな時間をこそ、毒に耐える方法を編み出すことで、『バシュム』へと有効打を叩き込みましょう。それしか勝機はありません」
ナイアルテの瞳が爛々と輝いている。
危機に際してこそ、人の力が最大限に発揮されるように。
彼女は猟兵達の力を信じているのだ。きっとやりとげ、エンドブレイカー! 世界の大地を救ってくれるはずだと――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『エンドブレイカーの戦い』の戦争シナリオとなります。
『11の怪物』最強の座を恣にしている『バシュム』との対決になります。
この『バシュム』は『毒液を吐き続ける能力』しか有していませんが、それ故に『バシュム』以外の全ての存在を殺す『単一世界バシュム』へと周囲を変貌させています。
この領域では、生物は勿論、死者やオブリビオン、あらゆる存在が殺されてしまいます。
散布される毒液は『ポイズンブレス』と同等の威力を持っていますが、弱く拡散性の高さを誇っています。
この毒に少しでも耐えられる方法を編み出し、僅かな時間で有効打を叩き込む以外の道はありません。
プレイングボーナス……僅かな時間でもバシュムの毒に耐える方法を編み出し、少しでも有効打を与える(敵は必ず先制攻撃してきます)。
それでは、エンドブレイカー! 世界から猟兵たちを放逐せんとする『11の怪物』と対決する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『バシュム-単一世界バシュム』
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POW : 単一世界バシュム
【口】から【毒液】を放ち、近接範囲内の全てを攻撃する。[毒液]は発動後もレベル分間残り、広がり続ける。
SPD : 単一世界バシュム
【口】から【毒液】を放ち、近接範囲内の全てを攻撃する。[毒液]は発動後もレベル分間残り、広がり続ける。
WIZ : 単一世界バシュム
【口】から【毒液】を放ち、近接範囲内の全てを攻撃する。[毒液]は発動後もレベル分間残り、広がり続ける。
イラスト:カツハシ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黒玻璃・ミコ
※美少女形態
◆心情
11の怪物の頂点に立ち、世界を滅ぼす毒蛇。
きっと『竜』と呼ぶに相応しい『怨敵』ですよね。
◆行動
此の地は既に毒液に満ちていますが私も『万毒の群生地』の主。
ガルシェンの装備と比類なき毒耐性を備えています。
しかしまだ決め手に欠けます。
敢えて此の身にショック死しかねない薬を投与し
バシュムの毒に反応する事で刺激により身体を強引に動かし続けましょう。
大丈夫、内臓や骨肉さえも爛れて溶ける劇薬だからこそ世界を滅ぼす毒にも影響を及ぼせるのです。
僅かですが時間は稼ぎました。
妄執に満ちた【黒竜の騎士】の装束を纏い空を駆け抜け『竜』に一太刀を入れましょう。
竜を狩る事だけは死んでも邪魔をさせませんよ。
その赤き悪性の蛇は、ただ其処に存在しているだけでよかった。
存在しているだけで『毒液を吐く能力』だけでもって、世界を己へと変貌させる。すなわち、『単一世界バシュム』。
己以外の存在を否定する力。
『11の怪物』の頂点。
『バシュム』――それは、ただそれだけの能力だけで己以外の全てを殺し尽くす。
滾々と湧き上がるようにして毒液が領域を広めていく。
其の様を認め、黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)は己を人の姿へと変えて見上げる。
巨大な赤い蛇。
そう形容するしかない。
世界を滅ぼす毒蛇。
きっと『竜』と呼ぶに相応しい悪性の塊。臨界を超えた悪意は、もはや善意と見分けがつかない。あらゆるものに死をもたらすことは、すなわち痛みもなく殺し尽くす救済にも似ている。
故に、ミコは満ちる毒液の領域に降り立つ。
「私の比類無き毒耐性を持ってしても決め手に欠けるとは……」
身を蝕む毒性。
それはあまりにも強烈だった。これで、弱い、と呼ばれるのは『バシュム』を打倒すれば消えることが要因であるが、それを差し引いても、この毒性は凄まじいものだった。
「ならば」
巫女は己の身に薬剤を投与する。
ショック死しかねない量。オーヴァードース。
体が震える。
体が『バシュム』の毒性に反応する刺激で強制的に意識をつなぎとめる。体が震えても、強引に突き動かす。
「大丈夫」
己に言い聞かせる。
内蔵や骨肉でさ爛れて溶ける劇薬だからこそ、世界を滅ぼす毒にも影響を及ぼすことができる。
今ここに境界がある。
臨界。
反応と反応が天秤に掛けられている。少しでもバランスを崩せば、臨界限界を迎えて、己の体はグズグズに解けて消えるだろう。
だが、わずかでもいいのだ。
この一瞬。
臨界を越えようとする刹那こそ、ミコが求めた時間だった。
「いあいあはすたあ……束制御術式解放。黒き混沌より目覚めなさい!」
己の全身を覆うは禍々しい黒竜騎士の甲冑。
それは三千世界の竜を屠るという執念を宿すミコの意志によって強靭なる戦闘能力を増強させる。
一気に踏み込む。
飛翔する彼女の手にした剣。
その剣に宿るは執念の力。
竜と見れば、必ず屠る。その意志がみなぎる黒竜の騎士(コクリュウノキシ)は『バシュム』の赤い巨体へと迫る。
『バシュム』は己の姿を捉えようともしない。
攻撃しようともしていない。
当然だ。『バシュム』は、『毒液を吐く能力』しか持ち合わせていない。それ以外できない。故に、端から己に迫る生物があるとは思いもしない。考えもしない。
故に、己の毒性に一瞬でも耐える存在がいるとは理解しないのだ。
「その首に叩きつける一太刀。死んでも邪魔をさせませんよ」
飛翔したミコの一閃が赤き蛇、『バシュム』へと放たれ、其の身に見事な一撃を刻むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィリー・フランツ
※HL-T10 ヘヴィタイフーンMk.Ⅹに搭乗、尚且つ気密が破られた場合に備え装甲気密服を着用
心情:単純にして最強、一つの技を突き詰めてこそ必殺技と言う奴もいるがまさにそれだな。
手段:転送直後のブレス先制はフォートレスアーマーのバリアで防ぐ、直撃時の濃い毒さえ防げれば何とか手はある、後はバリアが侵食され機体に触れる前にスラスターを吹かしてブレスの滞留帯からの離脱を試みる。
距離を取ったら……後は行き当たりばったり、野となれ山となれ、キャバリアスラスターを全開にして【ぶちかまし】てやる!
今迄の戦闘記録で弾は融解、榴弾は早爆していた、なら侵食されても問題ない更に大きい質量弾を叩き込めば良いわけだ!
テンペスト社製重装甲量産型キャバリア。
それが『HL-T10 ヘヴィタイフーンMk.Ⅹ』であった。ヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵・f27848)の駆るキャバリアは、守備隊に配備されることの多い量産機である。しかし、今まさに彼が駆る機体は『11の怪物』最強の一柱『バシュム』へと迫る。
かの怪物の毒性は汎ゆる存在を許さない。
生命であろうと、神々であろうと、オブリビオンであろうと、それこそ無機物たる兵器であろうと存在を許さない。
汎ゆるものを殺すがゆえに『単一世界バシュム』。
『毒液を履く能力』
このただ一つの能力によって規格外たる『11の怪物』の頂点に座す。
しかし、ヴィリーはキャバリアのコクピットのモニターを見る。
気密服に覆われたバイザーの向こうで猟兵の一閃が『バシュム』の赤い巨体に刻まれるのを見た。
確かに恐るべき敵だ。
「単純にして最強、一つの技を突き詰めてこそ必殺技という奴もいるが、まさにそれだな」
だが、とヴィリはー確信する。
届く。己達の力は確かに最強たる存在。頂きの存在に届くのだ。
それを証明したものがいるのならば、これが無謀たる突撃であったとしても、まるで勝算のない突撃ではないことを知る。
「前方、ブレス!」
迫るポイズンブレスの一撃。
ただ、滾々と吐き出し続けるだけの毒性であっても、ヴィリーのキャバリアの装甲を爛れ冴えていく。
フォートレスアーマーのバリアさえ貫通されている。
「バリアも抜かれているのか……! これは気密が破られるのも時間の問題か!」
己の身にまとう装甲気密服も気休めにしかならないだろう。
僅かな時しか稼げない。
だが、わずかでも良いのだ。己達は猟兵。己の一撃だけで『バシュム』を打倒しようなどとは思わない。
繋ぎ、紡ぐからこそ、今まで猟兵は己より強大な敵を打倒してきたのだ。
ならば、何も恐れることはない。
「スラスター! 後は……!」
ヴィリの瞳がユーベルコードに輝く。
同時に『ヘヴィタイフーン』のアイセンサーが煌めく。スラスターによる飛翔。
吐き出され続ける毒性の溜まった領域より脱出するように飛翔しても、『バシュム』に接近するだけで毒性が重装甲さえ溶かしていく。
時間は思った以上に少ない。
モニターに刻まれるカウント。それは己の機体の活動限界の予想だった。もっと早いかも知れない。
けれど、ためらわない。
「ああ、行き当たりばったり、野となれ山となれ、ぶちかまし(ブーストタックル)てやる!」
放たれる銃弾は空中で即座に溶解するように溶け落ちて、大地に失墜していた。ならば、未だ己の手の中にある武器は唯一つだ。
そう、己の操縦するキャバリア。
弾丸が質量の小ささ故に即座に毒性に溶かされるのならば、容易に溶け落ちぬ己自身をぶつけるのみ!
「銃弾は防げても、衝撃は防げないだろう!」
飛び込む重装甲の機体。
装甲は溶け落ち、脱落しかかっているが関係ない。ヴィリーは己がモテる最大火力――すなわち、己自身を質量弾として『バシュム』の毒性を振り切るようにして飛翔し、巨体へと突撃するのだ。
其の一撃は痛烈なる一撃と成って『バシュム』の巨体を揺るがし、ヴィリーはスラスターの噴射が持つままに即座に離脱する。
モニターに映るカウントは、もはや刻まれていない。
限界の既でとどまる機体のフレームが軋む音を聞きながら、ヴィリーは己の命をかけた突撃が相成り。そして、生命までも丸儲けであることを知るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
山吹・慧
自分しか存在しない単一世界……。
果たしてそこに何を望むのか……。
僕の理解が及ぶところではありませんが……
認めるわけにはいきませんね。
先制対策として【気功法】と【集中力】で
【浄化】の力を加えた闘気を限界まで高め、
【オーラ防御】を展開します。
そして【衝撃波】の【乱れ撃ち】で
毒を【吹き飛ばし】ましょう。
毒を凌いだら、浄黒で賦活する波動を
自身の身体に打って気合を入れます。
まだまだいけますよ。
そして、エンジェリックウイングで飛翔して
【空中機動】により最速最短で間合いを詰め、
そのまま【リミッター解除】した【羅山天昇波】を放ちましょう。
『単一世界バシュム』。
それは毒性によって己以外の存在を殺し尽くす能力である。
『毒液を吐く能力』――ただ一つの能力だけで『11の怪物』の頂点に『バシュム』は立つ。汎ゆるものを殺す毒性。
故に己以外は存在できない。
「自分しか存在しない単一世界……」
それはあまりにも寂しいものであるように思えただろう。孤独を癒やす物は何一つなく。ただひたすらに己だけしか存在しない世界に座す。
それしかできないことに対して、山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)は己であれば、と理解を放棄した。
しかし、認めるわけにはいかないのだ。
理解及ばぬからとて、理解を放棄したとて、その単一の世界を認められない。
この世界を滅ぼさせる訳にはいかないのだ。
吹き荒れる毒性の最中を慧は走る。
己の体内で気を練り上げる。浄化の力を加えた闘気を限界まで高め、オーラとして毒性を防ぐのだとしても、それでもオーラは爛れて解けていく。
恐るべき毒性である。
『バシュム』は己達を認識すれど、『毒液を吐き出す』だけだ。
それ以外できないのだろう。
いや、する必要がない。
『バシュム』の毒は生命であろうとオブリビオンであろうと、神々であろうと耐えられない。ならば、毒液を吐き出し続けるだけで勝利は得られる。
『単一世界バシュム』へと変貌することを止められない。
しかし、ユーベルコードの輝きが世界に明滅する。
いくつかの猟兵の放ったユーベルコードが『バシュム』の赤い巨体を揺らす。
かしぐ巨体。
「認めるわけにはいきません。その存在を。そう思うものが共に立つというのなら」
彼の瞳がユーベルコードに輝く。
届かないわけではないのだ。
ならばこそ、彼は森羅万象の気を体内で練り上げる。己の体内で練り上げられた気は己の意識を賦活する。
強引に波動を打ち込むことによって、毒性の影響を少しでも遅らせる。
「まだまだいけますよ」
その言葉と共に広がるは聖なる力を秘めた光の翼。
飛翔し、慧は『バシュム』の巨体を見下ろす。最速にして最短。彼が見定めたのは、『バシュム』へと己の拳を届かせるための距離。
そう、時間はわずかしか無い。
この僅かな時間を逃せば、己は『バシュム』の毒性によって肉体を崩され、死に絶えるしかない。
ならばこそ、踏み込む。
己にはすべての気が味方している。森羅万象が叫ぶ声を聞いたのだ。
世界は単一ではない。
汎ゆる存在が、汎ゆる気が、世界を満たしている。故に、離合合一して、世界は一つになる。
その天を貫く家の如き衝撃波を慧は解き放つ。
己の体を器とし、その気を流入させる。拳こそが放出点。その振り下ろした拳が放つは、羅山天昇波(ラザンテンショウハ)。
赤き蛇は、そのすさまじい衝撃波を受けて巨体を大地へと沈ませる。
慧は己の体内を駆け巡った気を落ち着かせるように息を吐きだし、大地に叩き伏せた『バシュム』を認めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アディリシア・オールドマン
純粋な脅威だな、バシュム。
エリクシルに寄らずとも単独で世界を相手にするほどの怪物。
面白い、心が滾る。
怪物退治は冒険者の花形だ。いわんや、竜の如き蛇となればなおのことな。
レッドローズにイスカンダルとモロクで身を固めて……行くぞ。
生きたカタストロフとの戦いに小難しい問答は要らない。
ただ、互いに全力をぶつけて、相手を潰した方が勝つ。
ああ、シンプルだ!
戦場に漂う毒に耐え、広がる毒液をモロクで受け、バシュム目指して突き進む。
応とも、よく見ろ、認識しろ。私たちが、お前を打倒する|天敵《生命体》だ!
UCを発動。これより敵を殲滅する!
高速で飛翔し一気に距離を詰め、ロンギヌスとマクシモス、打撃と斬撃を叩き込む!
赤い蛇の姿をした『11の怪物』の一柱『バシュム』は言葉を発することはなかった。
ただ只管に毒液を吐き出し続けていた。
その周囲は『バシュム』以外は存在できない。大地は腐り落ち、風は凪ぎ、水は流れることなくよどみ続けている。
「純粋な脅威だな、『バシュム』」
アディリシア・オールドマン(バーサーカーinバーサーカー・f32190)は黒き甲冑の奥で瞳を輝かせる。
『単一世界バシュム』。
そう表現するのが最も正しいと思わせるような戦場の威容に彼女は、面白い、と心が滾る思いであった。
『エリクシル』を生み出せずとも、ただ存在するだけで世界の汎ゆるものを殺す力。
突き詰めれば、結局のところ、そういうことだ。
力とは絶対たる一つ。
故に『バシュム』は『11の怪物』の頂点に立っている。
「怪物退治は冒険者の花形だ。いわんや、竜の如き蛇となればなおのことな」
彼女は全身を覆う黒き甲冑と共に足を踏み出す。
最早問答など不要である。
元より『バシュム』との対話は不可能である。何故なら『バシュム』には対話する必要がない。ただ存在するだけで相対する存在が死せるのだから。
故にアディリシアにも対話の予知はない。
生きた『終焉に至る病』へと立ち向かう彼女は己の全力で持って、『バシュム』の放つ毒液に対抗する。
ここに来て戦いはシンプルそのものだった。
全力。
単一の力をぶつけ合い、強きが残り、弱きが去る。
ただそれだけのことだ。
「広がる毒……! 拡散性が高いということだったが……! これの何処が弱いのだ!」
事前に知った情報と現実に眼の前にした情報は体感すればよく理解できる。
強烈過ぎる。
長く対峙することは、正しく死を意味する。
故に彼女は大盾を掲げ、一気に毒性満ちる毒液をかき分けて進む。
毒に耐える、ということは激痛に耐えることと同義であった。
『バシュム』は己に迫る敵に頓着しない。
認識しているようで認識していない。ただ滾々と毒液を吐き出し続ける。『バシュム』にとって、これは戦いですらないのかもしれない。
故にアディリシアは叫ぶ。
「よく見ろ、認識しろ。私達が、お前を打倒する|天敵《生命体》だ!」
突き進む。
『11の怪物』にとって『知的生命体に喰らう』ということは至上命題である。故に彼女は毒液をかき分けるようにして進む。
長く保たない。
しかし、彼女の甲冑は流線型へと姿を変え、飛翔する。
毒液がこぼれ続ける戦場にありて、彼女の瞳がユーベルコードに明滅する。
放つは恐怖の感情。
それを受けて『バシュム』は漸くアディリシアを認識したようだった。しかし、その瞳めいた部位からアディリシアは読み取れる感情はなかった。
だが、己を認識した、ということは即ち『毒液を吐き出す』という単一が崩れた事を示す。
己を強制的に認識させるユーベルコードによって、アディリシアは『バシュム』の能力を一時的にでも封じたのだ。
「この一瞬に!」
賭けたのだ。
放つ一撃は『バシュム』の頭部を打ち据え、切り裂きながら吹き飛ばす。だが、それだけが限界だった。
アディリシアは己の身にまとう甲冑が限界を迎えようとするのを悟り、飛翔と共に赤き蛇の威容を見届けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
秋山・軍犬
この世界、初めて来るんすけど
初仕事が絶対に防げない毒なんとかしてきてね❤
…とか、猟兵の仕事ってそんなんばっかやん
…そろそろ訴えたら勝てますよ、奥さん
さて【指定UC】は言ってみれば、不死性を得る程鍛えた肉体と
料理関係限定とはいえ宝貝を作り出すほどのフードファイター
としての経験の積み重ねでしかない、つまり常時発動型
先手を取られても対処は間に合う
そして! 食の歴史は毒との戦いの歴史!
なんで河豚を食おうと思った! 他に食うもんあるだろう!
えッ!? 河豚の卵巣を糠に…!? この想いを文章化できるか!?
そんな想いを込めて! 己の肉体を対毒調理器具に見立て宝貝化!
毒を頑張って捌く捌く! バシュム君も捌く!
秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)にとって、未知の世界とは未知の食材との出会いを意味する。
故にエンドブレイカー! 世界は初めての来訪となるのだが、此度の戦いは様相が異なるようだった。
眼の前に広がるのは毒液の広がる光景。
何処にも食材らしきものは見当たらない。
風は淀み、水は腐り、大地は崩れる。
それが『単一世界バシュム』である。『11の怪物』、『バシュム』以外は存在できない死の世界。
「この世界での初仕事が絶対に防げない毒をなんとかしてきてね……って猟兵の仕事ってそんなんばっかやん」
訴えたら勝てるのではないかと思ったが、軍犬は考え直す。
いや、何処に訴えるというのだろうか。グリモアベース裁判所? 訴えるのはグリモア猟兵でいいのだろうか。それとも毒液撒き散らしまくっている『バシュム』であろうか。
まあ、どちらにしたって、現実的ではないなと軍犬は頷く。
「この毒液、弱いっていっても拡散性の高さがネックっすね! マジでどうしようもないっていうか」
軍犬は己に迫る毒液の異常な速度を知る。
この毒液に触れて無事で済むわけがない。
故に彼の瞳はユーベルコードに輝く。
【パシッブスキル】仙人(パシッブスキル・センニン)。それは常にフードファイターとしての活動であり、実質仙人としての修行を行っている彼の体を不老不死にし、限定的な宝貝作成能力を得るに至る力。
強化された軍犬の体は確かに耐毒を得ているだろう。
しかし、その耐毒性能を遥かに『バシュム』の毒液は超えてくるのだ。
「たしかに強烈! しかし、食の歴史とは即ちこれ毒との戦いの歴史!」
河豚しかり!
なんでそれ食べようと思ったの!? 他に食べるものがないわけじゃないよね!? 止むに止まれぬ事情があったのだろう。
人の食の歴史とは常に多くを喰らうことに在る。
そして、如何にして食料を保たせるかでもあるのだ。新鮮なのが一番。しかし、保存するとなれば、滅菌がネックとなる。
塩であれば、それは可能となるが、生きるのに不可欠であるがゆえに税を重くするのがお上のやり方ってもんである。
そうして香辛料が発達するのである。
然るに河豚の毒もまた同様なのだ。
塩がなければ香辛料で漬け込めば保存できるんじゃね!? という閃きと偶然と情熱と後なんか妄執めいたもの!
これを絶対に食ってやる! という執念!
それこそが人の歴史を繋いできたのだ。
軍犬はそれを知っている。だからこそ、彼はフードファイターとして戦い続けているのだ。
ならば。
「その毒液だってどうにかこうにかしてやるってもんっすよ!」
オラァー! と軍犬は己の五体を耐毒調理器具へと見立て宝貝と化すのだ。デタラメにも程がある。
蛇って蒲焼がいいのかな、とか思ったが軍犬は迫る毒液を無効化しながら、捌き続ける。ついでというように手刀が『バシュム』の体を切り裂き、さらに毒性が噴出する。
その苛烈なる勢いに軍犬は負けず飛びかかる。
負けてなるものか。
かつて過去の先達が情熱持って河豚をくらわんとしたように。
「自分も絶対アンタを、さばいてやるっす!」
軍犬の情熱輝く瞳は、防げぬ毒を捌き『バシュム』の体へと言えぬ傷を刻み込むのだった。
これこそが食への情熱。
人の紡いだ歴史の重さだと示すように、彼の手刀が煌めく――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
あやー。
只一つを極め、世界さえもまるごと己の存在へと変貌させるでっすかー。
思うこと、感じること、触れ合うこと、歌うこと、踊ること。
己の成す全てを藍ちゃんくんとする藍ちゃんくんとは真逆なのでっす。
世界を全部自分自身に変えてしまう――その実、自らは不変であるバシェムさんと。
変わりに変わり続ける自分自身を全て藍ちゃんくんだとし、その在り方で皆々様に変革を謳う藍ちゃんくん。
矛盾対決といっちゃおうなのでっす!
藍ちゃんくんでっすよー!
ガルシェンの皆様と作り上げた対毒ステージセットアップ!
これもまた変わるということ!
皆々様と新しい藍ちゃんくんになるということ!
毒に強い藍ちゃんくんなのでっす!
とはいえ絶賛溶かされ中なのでっすが!
あやー、藍ちゃんくんは藍ちゃんくんでっすからねー。
バシェムさんにされるのはごめんなのでっすよー?
歌うのでっす、エンブレ世界を包み込むバシェムさんの巨体と毒を吹き飛ばす歌を!
この歌は感情を呼び起こす歌!
変革の歌!
不変であるはずの自分に生じた変化に、バシェムさん、戸惑うのでは!?
『毒液を吐く能力』。
それだけが『11の怪物』、『バシュム』の持つ能力であった。
『エリクシル』を生み出すこともなく。
それ以外の能力すら保たぬ無能と謗る者もいただろう。しかし、『バシュム』は意に介さない。彼にとって他とは必要のないものだった。
今もそうだ。
滾々と湧き出すようにて世界を満たさんとする毒液。
それこそが『終焉に至る病』そのものである。大地である大地母神をも殺す毒液。それが常に湧き出し続けているのだ。
驚異的な毒性である。
この毒の前にはオブリビオンも猟兵も、神々ですら存在できない。
故に『単一世界バシュム』。
それ以外は存在できない。例外はない。
「あやー。ただ一つを極め、世界さえもまるごと己の存在へと変貌させるのでっすかー」
紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は、それを凄まじいことだと思った。
自分以外の全てを殺し尽くせば、即ち世界が己である。
それをたった一つの能力だけで達成できる存在。それが『バシュム』である。
だが、と藍は思うのだ。
思うこと。感じること。触れ合うこと。歌うこと。踊ること。
多くを得て己自身を自覚するのが自分である。
わかっていることだ。『単一世界バシュム』は藍の思う藍とはまったくの真逆。
世界を全て自分自身に変えてしまうがゆえに不変であり、変わりようのない存在である『バシュム』と、転がる石のように変わりに変わり続ける自分自身。
それが変わり果てたとは思わない。
「どこまで行っても、藍ちゃんくんは藍ちゃんくんなのでっす! そして、皆々様に変革を、と謳う愛ちゃんくんなのです! 宛ら、矛と盾なのでっす!」
だから、と藍は叫ぶ。
口を開け、迫る毒性など意に介した様子もなく。
ただ只管に口をあけ、息を吸い込む。
藍の足元からせり上がるは骸殻都市ガルシェンにて作り上げた耐毒ステージ。
「セットアップ! 藍ちゃんくんでっすよー!」
迸る叫び。
耐毒ステージは、しかし、長くは保たないだろう。それほどまでに『バシュム』の毒性は強烈だった。
ガルシェンで生み出したものでさえ、完全に毒を殺しきれないステージの骨子が蝕まれていくのを藍は軋むステージの上で感じたことだろう。
「これもまた変わるということ! 皆々様と新しい藍ちゃんくになるということ! 毒に強い藍ちゃんくんなのでっす!」
響くは青空の如く澄んだ歌声。
心なき者にすら感情を呼び起こす魂の歌。
それが響き続けている。毒性だけではない。『単一世界バシュム』に歌が響いている。その事自体が脅威であった。
風すら澱ませる毒性の最中に藍の歌声が響き渡る。
「藍テール(アイチャンクン・アオゾラステーッジ)! 天を覆う毒性も吹き飛ばして!青空に藍ちゃんくんの歌を響かせるのでっす!」
それだけが己自身である。
けれど、それさえも変容していく。自分が自分であることは変わり続けること。他社との交わりで変わっていくこと。
それを移ろうがゆえの哀愁と見る者もいるだろう。
けれど、その形容すらも変わっていく。変えていく。人とは、その歩みで己を変えていける者であると同時に変わらずにはいられない生き物の名でもある。
そして、歌声はその際たるものであっただろう。
感情なく。
ただ己だけの存在として世界にあり続けた『バシュム』にとって、その感情を生み出す歌声は、変革の歌そのものであった。
「変わって良いのです! 変わらないなんて思っていること事態変わる前フリでしかないのでっす! だから!『バシュム』さん!」
藍は謳う。
力の限り歌い続ける。響く歌声でもって毒性を吹き飛ばしながらもステージが崩れていく。足場がなくなっても藍は謳う。
限界まで謳う。
「その戸惑いもまた、正しいんでっすよー!」
恐れないで良いのだというように藍は歌声を響かせ、そのあふれる毒をも吹き飛ばし続ける。
渾身の歌声は、そよぐ風と、あふれる清涼なる水と、そして芽吹く大地を『バシュム』に幻視させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(飛行式箒【リントブルム】に騎乗)
単一の機能に特化すると言うのは強みだけど……それを突き詰めるとこうなるか…
…解析する手段すらないなこれは…厄介な…
…毒液は近接範囲から拡がっていくようだから直撃だけは空中機動で回避して避けて…
…魔術障壁を多重に仕掛けた上で遅発連動術式【クロノス】で毒液によって破られた瞬間に障壁を張り直して時間を稼いで…
…【我が身転じて災魔となる】を発動…周囲の時間を遅らせることで毒液が侵蝕してくる速度も低下させよう…
…あとは毒で動けなくなる前にバシュムに接近…浄化復元術式【ハラエド】による浄化の魔力を籠めた黎明剣【アウローラ】でバシュムを切り裂くよ…
単一たる能力。
それはともすれば、究極へと至ることであっただろう。
『毒液を吐く能力』。
突き詰めれば、それは世界そのものを終焉に導く恐るべき能力であった。世界を己と一つにするのに『エリクシル』は必要ない。
己以外の全てを殺し尽くすことができたのならば、世界には己しか存在しない。
即ち、世界が己となる。
己だけの存在。
『単一世界バシュム』である。
「単一の機能に特化すると言うのは強みだけど……それを突き詰めるとこうなるか……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は飛行式箒にまたがり、飛びながら赤い蛇『バシュム』を見下ろす。
滾々と湧き上がり続ける毒性は、空を飛んでいたとしても迫ってくる。
拡散性が高すぎる。
それ故に長引けば、それだけ『バシュム』の領域が拡がってしまう。いや、それ以上にメンカルさえも殺されてしまうだろう。
解析する手段すらない。
毒性との戦いとは即ち、それが如何なる成り立ちをしているか、から知ることで始まる。だが、『バシュム』の毒液はそれさえ許さない。
触れれば即座に死ぬ。
耐毒でもって耐えたとしても、それは焼け石に水でしかない。わずかに時間を稼いだだけでしかないのだ。
故に解析から無毒化するというのは現実的ではなかった。
「多重障壁でもダメか……」
メンカルは遅発連動術式でもって毒液に障壁が破られた瞬間に障壁を張り直しながら、毒液に触れる時間を先延ばしにし続けていた。
だが、それも永遠には続かない。
確実に毒液は己を殺すために迫っている。
恐るべきことである。どうしようもない死が其処まで迫っているのをメンカルは理解しただろう。
故に彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
時を稼げぬのならば、如何にするか。
「……我が盟友よ、結べ、混ざれ。汝は合身、汝は災禍、魔女が望むは流転を阻む悪食の怪」
骸魂『時食み』と合体し、オブリビオンへと変貌するメンカル。
周囲の時間を遅らせる。
それもまた問題の先送りでしかなかった。しかし、その得難き時間をメンカルは得る事ができたのだ。
己の周囲の時間を喰らうこと。
それがオブリビオン化することへの代償である。だが、周囲の時間が尽きた時、『時食み』との合体は解除され、メンカルは毒性によって死に至る。
故に、僅かな時間に彼女は術式を編み上げる。
浄化復元術式。
それによって得られた魔力を黎明剣『アウローラ』へと注ぎ込む。
「……この一撃が、我が身転じて災魔となる(コンバート・タイムイーター)に足り得るかわからない、けれど……」
煌めくユーベルコードと浄化の魔力が流星のように戦場の毒性を切り裂きながら『バシュム』の巨体へと迫る。
己が手にした黎明剣は僅かな時間であったが、迫る毒液を浄化する。
しかし、次々に遅い来る毒性は防ぎようがない。
『時食み』に寄る僅かな時間。
刹那に満たぬ時間にメンカルは『バシュム』の巨体へと斬撃を叩き込み、飛翔する箒と共に離脱する。
恐るべき毒性。
されど、メンカルは確かに『バシュム』の体を切り裂いたのだ。
己一人では為し得ぬのだとしても、傷は負わせることができる。それを示し、メンカルは毒液から逃れ、後を託すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リカルド・マスケラス
「ガルシェンで作ってもらった装甲、これでだいぶ心強く放っているっすね」
ガルシェンの工房で【毒耐性】をつけてもらったサイキックキャバリア『ヴェガ』に乗って戦うっすよ
「ヴェガ、よろしく頼むっすよ!」
【結界術】で味方ごと毒を【浄化】できる結界を張って少しでも耐えられるように頑張る
「よく頑張ったっすよ、ヴェガ。ここからアルタイルも一緒に行くっすよ!」
宇宙バイク『アルタイル』をヴェガの強化パーツとして装備し、【牽牛星覚醒】で威力を強化したビーム砲やミサイルランチャーを【一斉発射】して攻撃を仕掛ける
「この場所も、早く元に戻ってくれるといいっすね」
骸殻都市ガルシェンの巨人たちと共にリカルド・マスケラス(希望の仮面・f12160)は予め、『バシュム』の毒液に対抗する装甲を作り上げていた。
その効果が確かに出ていることを己が駆るサイキックキャバリア『ヴェガ』が毒性の中で活動できていることで知る。
「だいぶ心強いっすね、これは!」
とは言え、いつまでも耐毒性能が発揮されるとも限らない。
たとえ、神々でさえ『バシュム』の毒液を前にしては耐えきれないのだ。巨人達の作り上げた装甲でさえ、一時しのぎにしか過ぎないのだ。
だが、リカルドは恐れるてはいなかった。
巨人達の技術。そして、己が駆るサイキックキャバリア『ヴェガ』のことを信じている。
張り巡らせる結界術でもって『バシュム』の毒液を浄化しようとするが、しかし、それは意味をなさなかった。
有象無象。
汎ゆる存在を『バシュム』は殺し尽くす。
結界とて例外ではなかった。
そう、汎ゆる全てを殺すからこそ、『バシュム』は『単一世界バシュム』として存在することができる。
世界の全てを殺し尽くし、己以外存在できないのであれば、それは世界そのものが己になるということを示していた。
あまりにも乱暴過ぎる。
けれど、捨て置けば確実にエンドブレイカー! 世界もまた『単一世界バシュム』へと変容するだろう。
そうなれば、残された生命は全て死に絶える。
「『ヴェガ』! 頼むっす! 自分を『バシュム』に届けてくれっす!」
リカルドは毒液の中を突っ切る『ヴェガ』の装甲をパージし、その内部より宇宙バイク『アルタイル』と共に飛び出す。
弾けるよう宙を舞う装甲パーツを強化パーツと化し、合体しながら、牽牛星覚醒(アルタイル・オーバーロード)へと至る。
リカルドは宇宙バイク『アルタイル』と合体し、さらには『ヴェガ』とも合体することによって、さらなる力を得るのだ。
耐毒装甲はすでに溶け落ちている。
けれど、十分だった。
この時、この瞬間まで持てばよかったのだ。リカルドは叫ぶ。
「よく頑張ったっすよ、『ヴェガ』! ここから『アルタイル』、頼むっすよ! すごいとこ見せてやるっすよ!」
その叫びと共に放たれるビーム砲とミサイルランチャーの一斉掃射。
それは嵐のように、煌めく星のように『バシュム』へと放たれ、圧倒的な火力と共に吹きすさぶ。
『バシュム』の巨体が傾ぐようにして揺れている。
他の猟兵達が刻んできた傷跡を広げるようしてリカルドの宇宙バイクはユーベルコードによって強化された火力を全て叩き込む。
全弾頭、全エネルギーの全てを注ぎ込んだ攻撃は『バシュム』の巨体を穿つかのような傷跡を残す。
かの怪物の毒液に侵された大地は元には戻らない。
拡散された毒性は『バシュム』が倒されれば消えることだろう。けれど、蝕まれた大地は言えない。
だからこそ、リカルドは思う。
この戦場となった場所が早く元に戻ってくれますようにと。そして、その方策が見つかりますようにと。
その願いを星の名を持つ己の相棒たちに託すようにして戦場を後にするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
サイキックシールドを展開し【オーラ防御】
【早業】防御が溶け破られると同時にUCを発動。
【激痛耐性】世界を殺す劇毒を吸収捕食。
……毒食らわば、最後までだ!
壊せ!壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ
ゴ、カァ、アアアアアアアアアアア!!!
【継戦能力】毒を吸収し、自身を巨大怪物化。
バシュムの毒に因ってバシュムが如き存在へと自身を変化させることで、【環境耐性】バシュムが此処に存在し続けられるように、自身も毒を克服する。
……………。
怪物化で増えた複眼、その視界にバシュムを収める。
【狂気耐性】己が|【闘争心】《破壊衝動》は変わらずこの|毒蛇《同族》へ注がれている。
RX打刀、巨人の打刀を召喚装備、【呪詛】を纏わせ巨体特攻付与。
怪物の【怪力】で打刀を振るい、毒属性の【斬撃波】で毒液を【なぎ払い】【追撃】
敵は間違えない。自分が壊すのは、バシュム、貴殿だ…!!!
破壊属性の、終焉に至る大斬撃波を以てして、バシュムを【切断】
展開したサイキックシールドが即座に溶け落ちていく光景を朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は見ただろう。
『11の怪物』、『バシュム』は、『毒液を吐き出す能力』だけで最強の座を有している。
単一の能力を突き詰めるのならば世界すら殺して見せる。
その恐ろしさを小枝子は垣間見た。
しかし、その恐ろしさで彼女は止まらない。
痛みが走る。
毒性が己の肌を焼いたのだ。いや、溶かした、と言ったほうがいいだろう。凄まじ激痛が体の中を走り抜ける。
だが、耐えた。
耐える。耐えることができる。それは自己暗示にも似た思いだったことだろう。
「……毒を食らわば、最後までだ! 壊せ! 壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ――」
叫ぶ口元から鮮血がが迸る。
吐血したのだと、自覚した瞬間、小枝子の体の中から溶かすような痛みが走り抜ける。神経を焼き尽くし、脳髄すらも侵すような痛み。
強烈過ぎる。
「ゴ、カァ、アアアアアアアアアア!!!」
絶叫が迸る。
己のユーベルコードは、毒を吸収する。
己の体が変容していく。怪物の毒を食らって、小枝子の体は怪物へと変わり果ていていた。青い肌。赤い瞳。色素の抜け落ちた髪。
汎ゆるものが、死に絶えたような色。
小枝子の体は巨大化していた。
『バシュム』の強烈なる毒性を喰らい、怪物へと変貌させたのだ。
だが、同時小枝子にはわかっていた。
己が怪物を殺さんとするのならば、己もまた怪物に変わらねばならない。
赤き悪性に相対するは、青き怪物。
其処に善性というものは存在していなかった。小枝子は、『バシュム』の如き存在へと己を変容させたのだ。
動くだけで己の体に走る激痛。
克服した、と思った瞬間、小枝子は、己の額が割れるよな激痛に襲われる。
脳が割れる。
砕ける。
かき乱される。額が裂けた痕から現れるのは、開眼されし複眼。
その瞳が『バシュム』を睨めつける。
心の中で荒れ狂う衝動だけが真実だった。其処に悪性も善性も関係ない。破壊したいという思い。
そして、目の前の|同族《毒蛇》を縊り殺さねばならぬという意思だけが小枝子を支えるものだった。
「断て」
頭に響く命令。
「この刃を以て」
巨体と変貌した小枝子の手に現れたのは、巨人の打刀(ガルシェン・ブレード)であった。
巨大過ぎる打刀。
それを握りしめ、一気に『バシュム』へと飛び込む。
迫る毒性は、それを取り込んだはずの小枝子の体すら蝕んでいく。なんたることだろうか。『バシュム』の毒液は、耐性をつけることすら許さない。
故に小枝子に残された時間はわずかであった。
どれだけの己の中にある赤い衝動に振り回されようとも、敵だけは間違えない。
「自分が壊すのは、『バシュム』!!!」
踏み込む。
振りかぶった打刀の刀身が煌めく。
それは毒性を飲み込み、終焉至らしめる大斬撃波の一撃。
「貴様だ……!!! 自分は貴様だけを壊す!!!」
小枝子の斬撃は毒液すら切り裂いて、『バシュム』の巨体を切り裂く。壊す。壊す。壊す! その意思だけが彼女の刃を推し進める。
咆哮すら響かない。
『バシュム』にとって、己の巨体に刻まれる傷にすら頓着はなかった。
痛みすら覚えなかっただろう。
何故なら、それが『単一世界バシュム』であるということだったからだ。
小枝子との違いはそこだけだった。彼女は痛みに喘ぎながら、その一刀を放った。そこに明暗が分かれる。
どれだけ毒を取り込むのだとしても。
衝動が彼女を彼女にするのではない。痛みこそが、毒性による痛みこそが小枝子を小枝子にするのだ。
己が其処に在るという自覚。
破壊は痛みと共に常にあるのだということを理解し、小枝子は打刀を『バシュム』の巨体に突き立てた――。
大成功
🔵🔵🔵
ティターニア・グッドフェロー
■WIZ
「単一世界バシュム」にして、何をしようというのかしら
それって物凄くつまらない世界、でしょうしね
■対策
ガルシェンでつくっていただいた、マントとプロテクション・ブーツの出番、ですね。
勿論防具だけに頼っては、痛い目に逢いそうなので、[オーラ防御、毒耐性]を発動させて身を守り、それで守り切れなかったら[医術]を使って回復を図ります
■攻撃
【UC】の矢で兎に角パシュムを追いかけさせます
これで「聖水属性」を矢に乗っけられればいいのですが
(ケルベロスディバイド等の世界でよくある、ゲームなら毒持ちには聖水、とはいいますけどね)
なんにしても、全ての攻撃に使える技能全部載せます
※連携・アドリブ歓迎
世界とはなんだろうか、と考える。
ティターニア・グッドフェロー(Mature Charm・f40800)にとって、世界とは長らく使えていたマスターのことを差すのかもしれなかった。
自らの名を長らく呼んでくれていたマスター。
彼女の呼ぶ声をまだティターニアは覚えている。その音の音色を。それが見せる輝きを、ずっと覚えている。
これからもそれは陰ることのない宝石めいた輝きとして彼女の中に残されていくだろう。
しかし、その輝きを曇らせるものがある。
『単一世界バシュム』である。
膨れ上がっていく毒性。
『11の怪物』にして最強の座を恣にする『バシュム』の放つ毒性は、ティターニアの思い出すら死に塗り込めようとしている。
全てが『バシュム』になる。
「全てを己にして、何をしようというのかしら。それって物凄くつまらない世界、でしょうね」
心からそう思う。
一心同体だったマスターとの時間は煌めく虹色だった。
単一の世界とは似ても似つかない。
あの日々を思えばこそ、自分ではない誰かが隣にいることの喜びをしったのだ。ボクスドラゴンの体躯に纏うは骸殻都市ガルシェンにて作成したマントとブーツ。
耐毒性能を有した装備は、確かに毒液を防いでくれていた。
「でも、長くは保たない、かも」
不安なのではない。
事実だ。迫る毒液を僅かな時間でもマントとブーツは防いでくれている。けれど、それも時間の問題だった。
時間が経てば立つほどに縫い目がほつれるようにして毒が体に染み込んでくる。
オーラをまとい、それでも己の身を守りきれる保証は何処にもなかった。
けれど、僅かでも時間を稼ぐことができた。
凌ぐことができた。そのことにティターニアは感謝する。巨人達の職人たちも、この世界の全てにも感謝する。
他があるからこそ、今がある。
ただ己だけの存在する世界など灰色の世界でしかない。
故にティターニアの瞳は、得られた僅かな時にこそ輝く。
「奔れ、ボクスよ!」
彼女の声が響いた瞬間、自らの翼を広げる。
それは瞬時に矢を形成し、聖水の力を宿して宙を迸る。その聖水の力は、毒性を中和することはなかった。
『バシュム』の毒性は、聖水の浄化の力すら上回ってしまっている。
これが神々すら殺し、有象無象すら全て許さぬ死をもたらす毒性。
だが、ティターニアはためらわなかった。
己がいた世界。
マスターとの日々が詰まった世界。その世界すら『バシュム』は滅ぼす可能性があった。それだけは許せない。
あの虹色の日々を。
この毒性満ちる灰色の世界へと変えることはできない。
「だから、なんとしてでも!」
やり遂げなければならない。矢を放つ。
胸元に煌めくネックレスの宝石がさらに力を放つ。
ティターニアのマスターの遺品。残されたネックレス。そのはめ込まれた石の意味は浄化
故に、ティターニアは思う。
いつだって彼女の足を進めさせるのは、過去の日々だ。
「マスターの世界にあなたを到達させはしない」
それが己が為すべきことだと彼女は迸る矢を放ち、迫る毒性を躱すようにして飛翔しながら『バシュム』を打ち貫くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
(「黒影!今すぐ{要塞蠍}に搭乗して守りを固めなさい!」と頭の中の教導虫が急いで指示を出す)
はい!{蜂蜜色の靄}を媒介にした『結界術』による『オーラ防御』を行うことで『拠点構築』が…完了です!
(「よし!でもあまり時間はないわね!」)
はい!せんせー!しかし奴の毒で攻撃が届く前に虫さんたちが死んでしまいます!
(「UC【影蝕虫】を使えばあのクソ蛇の口の中の影を操ることができるわ!つまり瞬時に接敵できるってこと!」)
なるほど!運転兵さんに即座に口内を攻撃してもらえれば傷口から奴の体内に毒が回るかもしれない!
さすがです!せんせー!
(「ありがと!さぁ時間が無いわ!さっさと始めるわよ!」)
はい!せんせー!
巨大な口腔が開かれる。
それは『11の怪物』、『バシュム』が咆哮するかわりに毒液を吐き出す行為に他ならなかった。
ただそれだけの能力しか『バシュム』は有していない。
そう、たったそれだけ。
『11の怪物』の中で唯一『エリクシル』を生み出す力を保たず。ただ、『毒液を吐く能力』だけしか保たぬ存在。
しかし、それは与しやすいということを意味していなかった。
溢れ出す毒性は、汎ゆる存在を殺す。
有象無象など関係ない。
ただ『バシュム』以外の全てを殺してみせるのだ。オブリビオンであろうと、猟兵であろうと、神々であろうと、大地であろうと、風であろうと、水であろうと。
全てが『バシュム』の周囲では死に絶える。
『黒影!』
それは悲鳴めいた叫びであったと、頭の中で響く教導蟲の声に黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は思ったことだろう。
急かすような声色は緊急事態であることを示していた。
『今すぐ、要塞蠍に搭乗して、守りを固めなさい!!』
「はい、せんせー!」
瞬間、兵庫を襲うのは『バシュム』の拡散した毒性だった。
それは弱い、と言われているが、威力は致死。
弱い、と評されたのは、『バシュム』が打倒されたのならば霧散する、という意味でだった。なんの気休めにもならない、と教導蟲は思った。
これでは近づけない。
結界術も意味をなさない。
どんなオーラも、拠点構築も『バシュム』の毒液は無意味にする。
汎ゆる存在を殺し、『単一世界バシュム』へと変えてしまう。それができてしまえるからこそ『バシュム』は『毒液を吐く能力』ただ一つで、『11の怪物』最強の座を恣にしているのである。
『時間がないわ、黒影! まさかこれほどまでとは……!』
「はい! せんせー! しかし、やつの毒は……」
『そうね。近づけない。けれど、影蝕虫(エイショクチュウ)を使えば!』
その言葉に兵庫は疑問を持たなかった。
躊躇いも持たなかった。
それが命運を分けた。瞬時に放つ蟲が『バシュム』のもたげられた口腔の影へと走り、物質化し、取り付くのだ。
『これで毒をあのクソ蛇の口の中に、と思ったけど……!』
「やつの毒でやつは死なないようです! でも!」
『ええ、影を自在に操れるのなら!』
教導蟲の言葉に兵庫は応える。
そうだ、影の触覚は確かに敵の戦闘力を増加させる。だが、それは対象の影を操ることができる。それも自在に、だ。
「なら、影で『バシュム』をがんじがらめにすることもできます! 他の猟兵の皆さんの穿った傷跡だって!」
『そうね、でも時間がないわ!』
「はい、さっさと始めます、せんせー!」
兵庫の瞳がユーベルコードに輝く。
取り憑いた影蝕虫が『バシュム』の口腔の影から、大地に落とす影へと影響を及ぼし、その巨体を鎖のように締め上げていく。
苦悶に『バシュム』は喘がなかった。
かわりに、毒液を滾々と放出し続ける。なんたる規格外であろうか。しかし、兵庫はユーベルコード輝く瞳で戦場を見つめる。
己が生み出した隙。
その締め上げた鎖によって『バシュム』は動くことができない。
ならば、続く者たちが必ず『バシュム』を打倒する傷を穿つことだろう。それを信じ、兵庫は己の操る蟲が息絶えるその問まで、力の限り『バシュム』を大地に押さえつけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
世界を殺し尽くせば「知的生命体の捕食」もできなくなりそうだが
……怪物の考える事など理解できなくて当然か
耐毒装備の面を装備の上、神刀の封印を解除
拡散しつつ此方に迫る毒液を斬撃波で斬り裂く事で時間を稼ぎ、黎の型【纏耀】を発動
真の姿に変身する事で戦闘力を強化しつつ、状態異常への耐性を得る
もっともバシュム相手には気休め程度だろうが――僅かでも時間を稼げればいい
全速力でダッシュしてバシュムに突貫。一応、初手と同様に斬撃波で毒を斬って少しでも影響を抑えて
接近したなら、大きくジャンプしてバシュムの身体に飛び乗り
長く触れる訳にもいくまいが、そこは今更だ。一気に駆け上り、弱点……は不明だが、顔面に一撃叩き込もう
『11の怪物』の目的は知的生命体を喰らうことである。
故に世界に『エリクシル』を送り込んで知的生命体の有無を確認する。願いこそが知的生命体であることの証明。
しかし『11の怪物』の一柱にして最強の座を恣にしている『バシュム』は異なる。
『エリクシル』を生み出す能力を持たず。
あるのは『毒液を吐く』能力のみ。
ただそれだけで『バシュム』は頂点にざしている。
汎ゆる有象無象を殺し尽くす毒液。全てを殺し尽くせば、世界は『バシュム』へと変わる。『バシュム』しかいない『単一世界バシュム』へと変貌を遂げる。
それが知的生命体を喰らう、ということに繋がるのかは、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)にとって疑問を抱くところではあった。
だが、世界を己にする、ということは他の生命体を喰らい尽くすことと同義であるのだから、間違いではないのかもしれない。
それが正しいのか誤りであるのかを証明してくれる『バシュム』は物言わぬ存在。
ならば、正誤を確かめる術はない。
「……怪物の考える事など理解できなくて当然か」
他者の考えさえ理解しきれない所があるのだ。
己たちより最も遠い場所にある存在を理解できなくても、それは咎められることではないだろう。
神刀の封印を解除し、対独装備の面を被ってもなお『バシュム』の毒は完全に無効化できなかった。
時間がない。
拡散しながら弱い、と言われた毒性が迫る。
しかし、その毒性の高さはなんら変わることはなかった。耐毒装備であったとしても、僅か時間しか持たないだろう。
瞳がユーベルコードに輝く。
神気をまとい、神器との一体化を果たした鏡介は己に迫る毒性を無効化しながら、真の姿へと変貌する。
「この姿であっても、気休めにしかならないか」
だが、と鏡介は意を決する。
僅かでも体が持つのならば、己の一刀を『バシュム』へと届かせることは容易であった。
踏み込む。
その一歩だけでも爆発的な加速を得られる。
放つ斬撃波が迫る毒性を切り払い、道を作る。その切り開かれた道を駆け抜け、鏡介は『バシュム』の赤い巨体を見上げる。
その体躯には多くのユーベルコードの痕があった。
如何に『11の怪物』の頂点に立つ存在だとしても、『毒液を吐く』だけの能力しかもたず、それ以外の一切を捨てた存在。
その一点にこそ勝機を見出し、鏡介は駆け上がっていく。
巨大な体躯。
その表面に足を踏み出す度に激痛が体に走る。
耐毒と無効化の力を持ってしても、己の神経を焼く毒性の強さに顔をしかめる。
けれど、始めてしまった以上、立ち止まるわけにはいかない。鏡介は刀の柄を握りしめる。痛みが奔れど、それは己の体のことだ。
「自分のことは自分がよくわかっている。幽冥を越えて暁へと至る。黎の型【纏耀】(レイノカタ・テンヨウ)」
振り抜く神刀の剣閃。
それは『バシュム』の口腔もたげる頭部へと放たれる。
弱点化どうかなどはわからない。
けれど、その一刀にこそ鏡介は賭けたのだ。他の猟兵がそうであったように。この恐るべき毒性を持つ敵に対して長く対峙することはできない。
故に一撃。
この一撃に渾身を込めるからこそ、後に続く猟兵達の助けになるのだ。
単一世界と成り果てることしか持ち得ぬ存在にはわかりえぬ他者の存在を認める行為。
それを示してみせてこそ、この『単一世界バシュム』を切り裂く一手となることを鏡介は、その一閃に籠めたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
単純だからこそ、突き詰めて…極めた存在ですね。
尊敬はしますが、それが望む世界は否定します。
その先制は、邪気祓ノ弓矢を使用した破魔の結界術で遮り、さらに矢弾の雨にて弾いていきましょう。
侵食してくるのならば、毒耐性の破魔を内側に向けて、影響を少なく。
私が表に出たのは、これができるのが私くらいだからですよ。
一瞬だけでいいのです。UCを展開する、その一瞬だけで。
UCを使ったら、呪詛の塊で殴り飛ばしますよ。それだけです。
あなたを放っておくなぞ、できませんからね。
ただ一つの能力。
それだけを突き詰めていくのならば、世界さえ殺して見せる。
その証明とも言うべき存在、赤き蛇の如き姿をした『11の怪物』の頂点『バシュム』の口腔がもたげられる。
巨躯に刻まれた傷跡は無数の裂傷や穿たれた痕が様々と残されている。
猟兵達のユーベルコードの一刀。
生命の埒外である猟兵たちであっても、『バシュム』の恐るべき毒性を前にして、僅かな時間しか対峙を許されなかったのだ。
「単純だからこそ、突き詰めて……極めた存在ですね」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『静かなる者』は、その突き詰めたことをこそ認める。
けれど、存在を否定しなければならない。
『バシュム』の毒性は『バシュム』以外の全てを殺す。
殺し尽くし、有象無象の全てを排除して『単一世界バシュム』へと変貌を遂げる。
否定しなければならない。
『バシュム』が望むのは己だけの世界だ。
数多の生命があふれるエンドブレイカー世界のみならず、他の世界にだって進出させてはならない。
故に迫る毒液を前にして結界を張り巡らせる。
矢を解き放つ。
しかし、その尽くが『バシュム』の毒性を前にして溶け、腐り落ちた。
風が淀んでいる。
大気さえも殺すかのような毒性を前にして、やはり時間がないことをしっただろう。
身を蝕む毒性は如何なる防御も意味をなさない。
加護すらないものとするかのような強烈な毒性。これが世界を殺す『終焉に至る病』そのもの。
「……影響を少なく、と思いましたが、万全であってもこれほどとは……ですが」
『静かなる者』はゆっくりと瞳を開く。
そこにあるのは絶望ではなく、希望でもなく。
あるのはユーベルコードの輝き。
彼が求めたのは一瞬。
刹那にユーベルコードを発露する瞬間をこそ求めていたのだ。
「四悪霊・『怪』(シアクリョウ・アヤ)……ええ、届く。たとえ、どれだけ近づけのだとしても、私のユーベルコードならば」
己の中にある呪詛を塊にして、掴む。
それは巨大な己の内側からあふれる毒性に満ちた呪詛だった。
握りしめた霊力は毒素の影響を受けて爛れ始めていた。有象無象の全てを『バシュム』へと変貌させる恐るべき毒性。
呪詛の塊であっても長くは持たないことを理解し、その塊を鉄槌のように振りかぶり、『静かなる者』は『バシュム』へと叩きつける。
「あなたを放っておくなぞ、できませんからね」
己の身がたとえ、毒性に侵されるのだとしても。
世界にあの毒性を放つことは決して許されない。何のために己たちが戦っているのか。その意味をしるのならば、それは当然であった。
生命を奪われぬために。
無為に奪われる者を出さぬために。
己たちのような存在を生み出させぬために。故に、その呪詛は、これまで徒に奪われてきた生命の呪詛そのものだった。
苛烈なる一撃が『バシュム』の口腔もたげる頭部を打ち据え、その巨体を大地へ叩きつけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シン・コーエン
宇宙でも活動できる装備だがバシュムの毒は防げないか。
だが、エンドブレイカーの血を引く猟兵として、この世界を汚す怪物は必ず倒す!
衝撃波・念動力で可能な限り毒を吹き飛ばし、
結界術・高速詠唱・毒耐性で対毒結界を構築し、
更にオーラ防御を展開。
限界突破で耐えつつ、UCにて縦10㎝×横10㎝×長さ14キロメートルの灼星剣皇を創造。
(フォースセイバー故に重さを感じずに振るう事が可能)
灼星剣皇に解毒の魔法を纏い、早業・衝撃波・斬撃波によって毒のフィールドを吹き飛ばしつつ、念動力で刀身を加速した、斬り下げ斬り上げの2回攻撃・鎧無視攻撃によってバシュム本体の胴体を切断する!
悲劇の終焉は破壊する。それが俺達だ。
宇宙線や真空でも活動できる宇宙服は無論、その機密性故である。
スペースシップワールドを始めとする世界においても、その機密性は確保されたものである。
毒性は肌に触れなければ、生命体にその害を及ぼすことはない。
けれど、『11の怪物』、『バシュム』の毒性は有象無象すら殺す。
風すら澱ませ、水を腐らせ、大地を崩落させる。恐るべきことである。己以外の全てを殺す毒性。それによって『バシュム』は『11の怪物』最強の座に君臨しているのだ。
だが、それすら『バシュム』には意味のないことだっただろう。
『単一世界バシュム』へと世界を変容させる。
そのためだけ『毒液を吐き出す』のだ。
「やはり、この装備でも毒は防げないか」
シン・コーエン(灼閃・f13886)は歯噛みする。
エンドブレイカーの血を引く猟兵である彼にとって、この世界は第二の故郷とも言うべき世界であった。
この世界は大地母神の肉体そのものだ。
その大地母神を殺す『終焉に至る病』、その根源たる『バシュム』を打倒することは世界を護ることに繋がる。
「この世界を汚す怪物『バシュム』……必ず倒す!」
振るう衝撃波と念動力が迫る毒液を吹き飛ばす。結界術に耐毒を織り交ぜてオーラを展開する。
だが、有象無象すら腐らせ、殺す毒性を前にしては意味をなさない。
僅かな時を稼ぐ程度の方策でしかなかった。
すぐさまにシンの体を激痛が走り抜ける。
神経に作用するような痛み。皮膚の真下を貫くような痛みにシンは表情を歪める。だが、歯を食いしばる。
ここで立ち止まってはいられない。
足を止めれば、それだけ『終焉に至る病』は進行を果たすだろう。そうなれば、この世界の大地は死に絶えてしまう。
時は一刻も早く。そして、己に残された時間はあまりにも少なかった。
限界はすぐさまやってきた。
視界がぼやける。
汗が滲む。
息が切れる。
臓腑を焼かれるような痛みが毒性によってもたらされていることを知る。
「……だがッ! 我が剣よ」
握りしめた愛刀を握りしめる。灼星剣。それこそが己の力。己の刃。敵を切り裂き、穿つための力。
「無限の念の元、全てを超越せし剣皇として顕現せよ!」
シンの瞳がユーベルコードに輝く。
灼星剣皇(シャクセイケンオウ)――その名を示すように彼の周囲に浮かぶは、己が手にした愛刀の模造。
しかし、それは己が最も知るものであり、同時に複製されたそれは本物と寸分違わぬ精度で生み出されていた。
「受けよ、この一撃!」
毒性を振り払う。
己の身を侵す毒性すら払いながら、シンは目にも止まらぬ斬撃を解き放つ。
毒性満たす戦場を切り裂きながら、己の念動力で持って生み出した灼星剣の切っ先を一斉に『バシュム』へと向ける。
「悲劇の終焉は破壊する」
そう、己の体に流れる血が言うのだ。悲劇を砕け、と。終焉を破壊せよ、と。
その言葉に従うようにシンは示した指先に力を込める。
一斉に宙を飛び、無数の灼星剣の群れが『バシュム』の体躯へと突き立てられ、その名を示すように強大な深紅に輝くサイキックエナジーを放出しながら、赤き悪性の体を爆発に包み込む。
「それが俺達だ――」
大成功
🔵🔵🔵
イクシア・レイブラント
【ドヴェルグ】 アドリブ歓迎
だたらさんの対毒兵装は装甲に火炎放射器、機関砲、杭打ち器、斬蛇刀…たくさん開発したのね。
準備はいい? 行くよ、みんな。
まずは、先制攻撃の誘発からね。
私たち4人の立体映像を被せたデコイドローンを先行突入させ[存在感、陽動、おびき寄せ]。
その後は[推力移動、滑空]で飛翔し接近、アヤトさんと共に攪乱に徹し隙を作る。
マオさんがいる限り私たちは戦える。アヤトさん、ここで足止めするよ。
敵の攻撃は[空中機動、戦術演算]で回避、滞留する毒液はだたらさんに焼却してもらう。
反撃は大型フォースブレイドで[空中戦、なぎ払い、鎧無視攻撃]。
毒の血しぶきも【紅薔薇乱舞】で無害な花弁に改竄する。
マオ・ロアノーク
【ドヴェルグ】
転送前にガルシェンで制作した「毒耐性のお守り」を配り、自身も身に着けておく。
これで毒なんてへっちゃらだよ! それに傷付いたって直ぐに僕が治してあげるっ。だから皆、安心して戦ってね。
攻撃は行わず後方に立し[楽器演奏/歌唱/詩詠み]を駆使し治癒に集中。
歌唱中も[気配感知]は怠らず敵からの攻撃は[幸運/第六感/見切り]で最低限の動きで回避し歌い続け、仲間には「こっちは大丈夫だよ」と笑顔でウインク。
[属性攻撃]で治癒力を、[範囲攻撃]で効果範囲を強化。
その場に居る猟兵は勿論、|侵された大地《大地母神》も僕が癒そう。何処まで保つか分からないけれど…大丈夫、こんなにも心強い仲間達が居るから!
瞳ヶ丘・だたら
【ドヴェルグ】アドリブ歓迎
初めての団体行動がこれほどの大物とは。胸を借りるぞ、きみたち(えらそう)。
御守をマオから受け取って臨む。あたし自身の工房製装備一式も持ち込むぞ。
先制攻撃はイクシアに一任。下手に手を出しては邪魔になろう。
二人ともいい仕事をしてくれた。ふん、我々も負けていられんな、伊川?
改めて戦闘行動に。
魁として、大気と滞留毒素を火炎放射で〈焼却〉。舞台を整えよう。
間断無く〈空中戦〉仕様の戦車で接近。
長大な体を杭打機で〈串刺し〉に捕らえてからUCを。
この戦いに備えて骸殻工房で培った〈マシン/武器/防具改造〉の時間をお見せしよう。
その後皆を伴って離脱。マオの負担も気になる、疾く船に戻るか。
伊川・アヤト
【ドヴェルグ】アドリブ歓迎
万物を腐らす毒液、何でそんな物がここにいるから気になりますが……それは後、三人とも宜しくお願いします。
ええこれで気兼ねなく戦えます(そうだたらに返す)
では、【直毘抜刀】。最初から5割で行きます。
身に宿る呪詛は耐性とplaceboの薬品調合で耐える。
切断し空中機動で回避又は受け流す3次元的な動きを主体に、先制攻撃後はだたらさんが攻撃しやすい様に注意を引く。隙を見てPIECEに装填した対毒兵装の弾丸を使いカウンター。
ええマオさんは戦いの要ですからね、彼女がいるから戦える、ギアを上げましょう1割ずつ|使い《浄化し》ます。
怪物である以上人に倒されるってのが筋でしょうバシュム
己以外の汎ゆるものを殺す。
それが『11の怪物』の頂点に座す『バシュム』の力だった。
『毒液を吐き出す』能力。
ただ一つの能力だけで『バシュム』は他の『11の怪物』の全てに凌駕する。有象無象であろうと変わりなく殺す毒性。
風は淀み続けている。
水は腐臭を放っている。
大地はぬかるむように不浄を放っている。
このような場所に生命体は存在できない。そう確信冴えるほどの光景を伊川・アヤト(明星の旅人と白雨の探偵作家・f31095)は目の当たりにする。
「万物すら腐らす毒液、なんでそんなものが、ここにいるか気になりますが……」
「時間がないよっ! 御守だってどれだけ持ってくれるかわかんない!」
マオ・ロアノーク(春疾風・f40501)は骸殻都市ガルシェンにて作成した毒耐性の御守を共に並び立つ仲間たちに配った。
気休めにしかならないかもしれない。
強烈な毒性に対しての耐性をもたらす御守であっても、『バシュム』の毒性を前にしては僅かな時間しか効果をもたらさないだろう。
それほどに『バシュム』の毒性は恐るべきものだったのだ。
けれど、マオは微笑んで言うのだ。
「傷ついたってすぐに僕が直してあげるっ。だから、みんな、安心して戦ってね」
きっと自分の力は仲間を守ってくれる。
それが僅かな時間しか持たぬのだとしても、だ。それでも一瞬。刹那でも守れるのならば、仲間たちはきっと、そのユーベルコードの刃を『バシュム』に打ち込むであろうという確信がマオにはあったのだ。
「これほどの大物だ。胸を借りるぞ、きみたち」
瞳ヶ丘・だたら(ギークでフリークな単眼妖怪・f28543)は些か尊大な態度を取ったが、しかし、今はそれが頼もしいと仲間たちに思わせただろう。
彼女が持ち込んだ攻防装備の一式。
それによって対独性能は跳ね上がるだろう。時間を稼ぐ、という意味ではマオの御守と併用することで、瞬時に毒性に侵されるということはないはずだ。
準備は万全。
そう想うには十分だった。
「ええ、これで気兼ねなく戦えます。イクシアさん!」
「うん。準備はいいよ。行くよ、みんな」
クシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)は頷く。
マオの御守を握りしめ、ダタラの持ち込んだ耐毒兵装を装備する。彼女が持ち込んだ毒性に対抗するための装備は様々だった。
火炎放射器、機関砲、杭打機、残蛇刀……それは多様というにはあまりにも多い。
けれど、これだけの数を用意してもなお、『バシュム』に僅かに対抗できるかどうかという算段んしか算出されなかった。
「イクシア、あたしは下手に手を出しては邪魔になろう。だから」
「わかってる。敵の先制攻撃を誘発させる」
イクシアは己達の立体映像を被せたデコイドローンを飛ばす。先んじて敵の戦場『単一世界バシュム』へと突入させるのだ。
しかし、イクシアは知るだろう。
『バシュム』に敵意はない。
いや、厳密にはあるのだろうが、それは敵意ではなく悪意だった。
己以外の全てを殺し尽くす。
それだけしかないのだ。故に、臨界を越えた悪性は、毒性という形を持って飛び込んdデコイドローンを瞬時に腐り落とすようにして溶かし、破壊する。
一瞬だった。
耐毒性能を持たせていても、恐るべき毒性である。
『バシュム』にとっては、攻撃、という意識すらなかったはずだ。ただ、そこにあるだけで世界を滅ぼして見せる存在を前にイクシアはアヤトと共に飛び込む。
御守が僅かにおのれ達の身を守ってくれている。
それに、マオの捧浄の詩(ピュリファイソング)が響く。
「こんなのへっちゃらだよ」
眼の前には美しい光景が拡がっている。それは、『単一世界バシュム』という世界の表層を塗り潰す光だった。
マオの歌声はユーベルコードに昇華し、迫る毒性を無効化する。
だが、その代償は少なくない。
突入したイクシアたちに迫る毒性の痛みを彼女は肩代わりする。痛みが走る。喉がかすれる。口腔に血の味が広がる。
脂汗が噴出する。
けれど、マオは微笑んでみせた。ウィンクさえしてみせた。
ここが自分の戦場だ。踏ん張らなければならない。仲間たちが気兼ねなく戦いに集中できるように。
少しでも長く戦えるように。
彼女は謳う。
この大地を癒そう。仲間たちを癒そう。何処まで保つかなんて自分でもわからない。
けれど、彼女は謳うのだ。
「大丈夫。大丈夫だよ。こんなにもみんなが心強いから!」
血滲む喉より迸る歌声に背中を押され、イクシアとアヤトが『バシュム』の巨躯へと迫る。
「アヤトさん」
「ええ、やってみせます」
アヤトの瞳がユーベルコードに輝く。
その身が偽神へと変貌する。手にした三振りの太刀が身にまとう呪詛を祓う度に強化されていく。一気に身にまとう呪詛は半数が消えてなくなる。
身に迫る毒性は呪詛を失ったことにより、身をきしませる。
マオが癒やしてくれているが、それを凌駕する速度で持って己の神経を焼く。皮膚を爛れさせる。
しかし、とアヤトは歯を食いしばる。
歯の根が痛む。
けれど、関係ない。
「だろうな、伊川。負けてはいられん」
だたらの声が響く。
手にした火炎放射器が大気と滞留する毒性を焼き払う。炎さえも勢いを喪わせるほどの毒性。規格外が過ぎる『バシュム』の毒液を前にして、だたらは手間取る。
けれど、舞台は整えた。
熱せられ、滅却された毒性。その清浄といえる空気は熱せられたがゆえに上昇する。それに乗るようにしてイクシアとアヤト、だたらは『バシュム』の頭上へと飛ぶのだ。
「さあ、ここからだ」
だたらは火炎放射器を投げ放ち、手にした杭打機を手にし、『バシュム』の頭蓋へと鉄杭の一撃を叩き込む。
ただの鉄杭であったのならば、毒性によって瞬く間に腐り落ちただろう。
けれど、これはガルシェンでも生み出してきた耐毒性能を保つ鉄杭の一撃。それは腐り落ちる事なく『バシュム』の口腔を閉じるように大地へと打ち付けられる。
響く地鳴り。
しかし、だたらは止まらなかった。
「静粛に。行儀よく耳を傾け給え」
踏鞴印の蒸機一斉射(ダタラファイア)。それは戦車より放たれる一斉射。嵐のような砲撃。
このときのために、だたらは骸殻都市の工房でもって培った改造技術のすべてをつぎ込んできたのだ。
砲火の嵐は大地に釘付けにした『バシュム』の体躯を焼く。
毒性を焼き滅ぼすかのような勢いで吹き荒れる砲火。そのさなかをイクシアが飛ぶ。
マオが己たちの身に受ける傷を肩代わりにしてくれている。
長くはかけられない。
滅却された毒性の大気の中を彼女は飛ぶ。
手にした大型フォースブレイドが煌めく。
「切り裂く」
振り抜いた斬撃の一撃。フォースブレイドの刀身が『バシュム』の毒性に負けて、その鋭さを喪う。
けれど、イクシアは振り抜く。
この刻む傷跡こそが、後に続くアヤトの一撃を生かす。
「ギアをあげましょう。『バシュム』、怪物であるといううのならば、人に倒されるのが筋でしょう」
アヤトの手にした太刀が振るわれる。
イクシアの放ったフォースブレイドの斬撃によって刻まれた傷跡は『バシュム』の強固な外皮を切り裂くにとどまった。
その真皮の下にある筋繊維の如き肉を絶ち切るには至っていない。
けれど、それはきっかけに過ぎない。
イクシアの斬撃はアヤトの斬撃が外皮に邪魔されぬための道筋。アヤトが振るった一撃が『バシュム』の体躯を切り裂く。
肉を裂き、骨を断ち切らんばかりの一撃に『バシュム』の体が揺れる。
あふれる毒液がアヤトとイクシアの体目掛けて噴出する。一瞬で耐毒の効能が溶け落ちる。
しかし、イクシアの瞳は瞬時に輝いていた。
「紅薔薇乱舞(ローズトーテンタンツ)」
それは、汎ゆる因果、事象、現象を切断する紅き薔薇の花弁へと変貌し、イクシアたちに迫る毒性を無害なるものへと変えるのだ。
「これ以上は……!」
「ええ、マオが肩代わりしてくれているとはいえ」
「十分だろう。疾く船に戻ろうか」
イクシアの言葉にアヤトとだたらは頷く。
マオは彼らが飛翔し己の元に戻ってくる姿を見上げて笑む。己の歌は、この淀む『単一世界バシュム』であっても響いていた。
『バシュム』以外の全てを殺し尽くす世界の中で、彼女の旋律だけが確かに響いていた。
それは『単一世界』という他者の介在を許さぬ世界にあって、唯一の例外として今も響いている。
歌声が響くのは誰かがいるから。
己の喉があるからではない。己の心があるからではない。他者という存在が会って初めて反響して世界に広がっていくものだ。
故に、マオは笑顔と共に仲間たちを迎え、共に頼もしき仲間たちの居る船へと無事に戻るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シーザー・ゴールドマン
「世界を毒に浸すだけの存在か。
極めて強力ではあるが……何の面白みもないね。」
毒対策
超常の護りをも溶かす猛毒。ならば溶かされるのと同速度で新たな護りを生成し続ければよい。各種|魔力《オド》を活性化、『超越者の肉体』に宿る無限のそれで魔力を放出し続けて猛毒を防ぐ。(オーラ防御×結界術)
「とは言え骨が折れる。時間はかけられないな。」
『真紅の魔神』を発動。
『魔王眼』を輝かせ、超光速×惑星破壊級の怪力を以て『オーラセイバー』を渾身の一撃を叩き込む。(暴力×功夫×怪力)
単一の能力。
それは究極を求めるのならば、辿り着くべき道程の一つであったことだろう。
結局のところ、どれだけ多くのことをできるかではない。
何処に到達するのか、であるとういうのならば『11の怪物』の頂点『バシュム』の辿った道筋は正しいものであったことだろう。
『毒液を吐き出す』能力。
ただ一つのこと。
たったそれだけのことで『バシュム』は有象無象の全てを殺し尽くす。
己以外の全てを殺し尽くし、世界を『単一世界バシュム』へと変貌させる。自身以外の存在を介在させぬというのならば、その力は恐るべきものであった。
しかし、である。
そう、しかし、と言える存在が在る。
「世界を毒に侵すだけの存在か。極めて強力であるが……」
シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は己に迫る毒性を前にして、超常の護りさえも溶かされゆく光景を目の当たりにする。
しかし、彼は護りが溶かされるのと同じ速度で護りを生み出し続けていた。
己の魔力を活性化させ、己の肉体に宿る無限の魔力で持って毒性を防ぎ続けているのだ。
「……何の面白みもないね」
これでは堂々巡りだ。
いや、正確には違う。毒性は世界を満たしていく。
仮にシーザーを今すぐに滅ぼせなくても、彼を取り巻く世界は滅ぼされてしまう。無限の魔力を持ちえても『バシュム』事態をどうにかしない限り、抜本的な解決には至らないと知るだろう。
「そういう意味では骨が折れる。時間はかけられないな」
恐らく時間経過と共に世界の命運は決してしまう。『終焉に至る病』である『バシュム』の毒性は、存在するだけで大地母神を殺してしまうからだ。
そうなってはシーザー自身も危うい。
「他の猟兵に倣うとしよう。ルフス・トリア」
シーザーの黄金の瞳がユベルコードに輝く。
瞬間、己を強化する力が宿る。
超光速の速度。
惑星を砕く怪力。
完全防御の魔力障壁。
それらでもって己を真紅の魔神(シンクノマジン)へと変容させるのだ。
手にしたオーラセイバーの刀身がみなぎるようにして力を満たしていく。ここに超光速の速度と己の怪力をかけ合わせる。
完全防御の魔力障壁は、しかし、それさえも『バシュム』の毒性は冒していく。
凄まじい毒性。
『バシュム』にとって対象が生命であろうがオブリビオンであろうが、猟兵であろうが、それこそ神々出会っても関係ないのだろう。
有象無象の全てを毒で持って殺す単一の存在。
一切の内在を許さぬただ、そうあるべきと定められたかのような存在を眼前にしながらシーザーはみなぎるオーラセイバーを振るい上げる。
「もっと、面白いものというのは単一ではなく複雑に絡み合った色合いを見せるものだよ。確かに純色は鮮やかで美しいがね」
だが、それだけでは意味がないのだ。
混じり合い、濁る色もあれば、鮮やかになっていく光もある。
多様性というものに、不完全さを見出すのならば、それもまた美しさであろう。故にシーザーは渾身の力を込め、猟兵達の刻んだ傷跡へオーラセイバーの刀身を叩き込む。
骨身を切り裂き、両断する一撃は、ついに『バシュム』の胴を切り裂いたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
自分以外の全てを拒絶し、滅ぼす存在ですか。
それは相容れる事は出来ませんね。
全力で倒しましょう!
《神性解放》発動!
多重詠唱による薬と水の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱で、一番外側に毒を中和する薬水の膜を形成。
その内側に結界術・高速詠唱で対毒結界を形成。
更に自身にUC効果による危害ある全てを浄化消滅する若草色のオーラを覆う。
それでも毒を防ぎきる事は難しいでしょう。
故に最高速度のマッハ11で飛行しつつ、煌月に神罰・薬の属性攻撃・浄化を宿しての衝撃波・鎧無視攻撃・2回攻撃で、私が力尽きるまで出来る限り攻撃を重ねます。
あなたにはあなたしかいない。
私には後を託せる仲間がいる。
それが勝敗の分かれ目なのです!
猟兵の一撃は遂に『11の怪物』の頂点『バシュム』の胴を切り裂く。
しかし、溢れる毒液が切り裂かれた胴をつなぐようにして満たされていく。口腔より溢れる毒液は勢いを増すことはなかった。
同時に勢いをそがれることもなかった。
傷を負いながらも『バシュム』は咆哮も、苛立ちも、憎悪も見えなかった。
感情というものが他者の存在があるからこそ生まれるものであるのならば、『単一世界バシュム』たる存在においては発露し得ないものであったのかもしれない。
「自分以外の全てを拒絶し、滅ぼす存在ですか」
故に感情無き怪物を前に大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は思うのだ。
相容れることのない存在。
己以外の全てを殺し、世界にただ己だけを為す者。
それは植物という他を尊ぶ彼女にとっては、正しく真逆。単一ではない多様性でもって世界を覆う植物とは全く持って相容れない。
「全力で倒しましょう!」
溢れる毒性を前にして詩乃は薬水の膜を形成して、己を覆う。
しかし『バシュム』の毒は中和するどころか、薬水の膜すら侵食してくる。さらに内側に結界術でもって耐毒結界を張り巡らせても結果は同じだった。
なんたる毒性であろうか。
これは防げない毒性であると詩乃は知るだろう。
ただの毒性ではない。
単一であることを突き詰めた毒性。己以外の全てを否定し、感情というゆらぎすら保たぬ完全悪性。それ故に詩乃は己の結界が僅かな時間しか作用しないことを知る。
「人々を世界を護る為、全力でお相手致します!」
ユーベルコードに輝く詩乃の瞳。
危害ある全てを浄化消滅させる若草色のオーラが結界溶け落ちる刹那に間に合う。
詩乃の心の中にあるのは、ただ一つだった。
単一の思い。
しかし、其処に内在するものは唯一ではなかった。多くを守りたいと思う。人を、獣を、生きとし生けるもの全てを護りたいという想いが膨れ上がっていく。
飛翔する。
神性解放(シンセイカイホウ)された詩乃の瞳は『バシュム』を睥睨する。
手にした薙刀の刀身がきらめいている。
「あなたにはあなたしかいない」
けれど、と詩乃は『バシュム』に言う。
応えはない。あるはずはないのだ。単一であるがゆえに他者との対話すら捨てた存在。滅ぼすだけの存在に詩乃の言うところの言葉は意味をなさい。
けれど、それは詩乃の心に響くものだった。
「私には後を託せる仲間がいる」
仮に僅かな、刹那に満たぬ瞬間しか詩乃が攻撃を与えることができないのだとしても。それでも詩乃は繋ぐのだと知る。
己は鎹。
この戦場に至る仲間たちが居ることを知るからこそ、此処こそが分水嶺。
「それが勝敗の分かれ目なのです! 故に、受けなさい。この世界に生きる者たちの願いを。明日を思う心を! これが!」
振るう薙刀の一閃が『バシュム』の胴へと叩き込まれる。
「他と共に生きるということです!」
浄化宿した刃は毒液を霧散させながら、詩乃のちからが尽きる瞬間まで斬撃となって『バシュム』の体躯へと傷を刻み込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
危険な蛇だそうだが
やることは変わるまい
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
己が本質を呼び込み境界にて世界を染める
無限量の全に呑まれれば如何な毒も死も無きに等しい
この世界の外たる空虚は絶無。何を注ごうと波紋も起きぬ
全を侵す要素は存在し得ぬ
全とは例外なく全てが静止する空虚
毒を吐いた事実すら無へと溶け消えるのみ
その蛇身とて無の内へ溶けるまで如何程の猶予が残されているだろうな
自身故に自らは影響を受けぬが、能動的には何もしない
己の本性を晒すこの場であれば魔力という概念も意味を持たぬ故、時間を気にする必要もない
無関係な周囲が影響を受けぬよう維持するに留める
呼ばれもしない客の出る幕は世界の内にはないものだ
大人しく終わっておけ
※アドリブ歓迎
「やることは変わるまい」
眼の前に存在する赤き蛇の如き体躯。
巨躯、と言って差し支えのない存在を前にして、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は淡い蒼光と共に浮かぶ。
毒性撒き散らす戦場。
回す原理を前にしても毒性は有象無象の全てを殺す。
この場に存在している。
ただそれだけの因果を起点としてアルトリウスに纏う光すら毒性は侵食してくるのだ。
これが『11の怪物』の頂点。
最強の座に在る怪物『バシュム』の単一たる能力である。
「だからどうした。己が本質は、世界を染める。お前の悪性が臨界に到達するのだとしても、その境目を超えることはまかり通らぬぞ」
境界(キョウカイ)。
アルトリウスの本質を世界の外より呼び込む淡青色の光の雪が戦場を埋め尽くしていく。
無限量の全て。
それを持ってしてもなお、『バシュム』の毒は、全の対極たる単一でもって塗りつぶしていく。
空虚に飲み込むのが零であるというのならば、究極の一たる『バシュム』は臨界に至る。
圧倒的な力。
それは同時に波紋すら起きぬ拮抗状態であることを示していた。
反応は起こっている。
しかし、それが釣り合っているがゆえに安定しているとも言えるだろう。
完全なる悪性。
揺れることのない存在は、それ自体がただ、其処に在るだけで世界に影響を及ぼす事をしる。
「何もしない。する必要がない。拝せ。それだけでいい」
アルトリウスはゆっくりと佇む。
全てを侵す要素は存在し得ない。例外のないもの。制止する空虚であるというのならば、『単一世界バシュム』はアルトリウスに害を成さない。
しかし、臨界を超えるのが悪意というものである。
どれだけ因果律の地平線を見やるのだとしても。
そこに停滞した時しかないのならば、それは決壊する。言葉通りの意味で時間が質量を保つのではないのだとしたら、その時間こそが今を圧潰させるものである。
故にアルトリウスが留意すべきは、無関係な周囲が影響を受けないように己の本質を維持するのに留めるのみであった。
「呼ばれもしない客の出る幕は世界の裡にはないものだ」
このエンドブレイカー世界に『バシュム』は必要ない。
端から受け入れられるわけがないのだ。
究極の単一。
それは世界そのものであると言えるだろう。世界の中に世界は内在することは、小世界を保つエンドブレイカー世界にあっては証明された事実である。
しかし、同じ世界がぶつかるのならば、それは臨界を超えるということでもある。
「故にお前は世界を滅ぼす赤い蛇、悪性であるというのだろうな。だが、お前は知らないのだ。完全なる悪性があるのならば、完全なる善性もあるのだ。それがどんなに空虚なことか。無為なることかをお前は他者の存在を許さぬ故に知らぬのだ」
だから、とアルトリウスは、毒性がこれ以上の拡散を成さしめぬことだけに注力する。
己がトドメを差す必要はない。
攻撃を叩き込む必要はない。
ただ、在るだけでいい。
己がそうであったように。世界の臨界こ超えることは崩壊を意味するのだから。
「大人しく終わっておけ――」
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁすっ!!
と思って飛んで来たら全然関係ないじゃないですかばかぁぁぁ!!
赤くて悪性とかセラフィムと思ってくるじゃないですか
なんですかこのセラフィム詐欺!!
ですがこの戦いの先に平和があるのなら
エイル様は決して引かないでしょう
ならば|メイド《ステラ》、参ります!
どうしても何をしてもバシュムの毒は今は無効化できないでしょう
ならば触れないようにするしか
フォル!いらっしゃい!(鳥型キャバリアを呼び寄せ)
ごめんなさい、ただ飛びたいだけの貴方にこんなことをさせるのは酷なのですが
少しだけ貴方の命、私に下さい
フォル!【ファム・ファタール】!
一瞬で構いません!貴方の速度で毒を蹴散らしてください!
後はそのまま退避を!
貴方の作ってくれた一瞬、無駄にしません
【ヴァレット・パープル】
その一瞬で三日月形の階段を駆け上がる!!
さぁご対面です
あまり長い間いられないのは申し訳ないのですが
一瞬でカタをつけましょう!
【スクロペトゥム・フォルマ】で全力攻撃
今の私なら、何でも出来ますので!
戦場にやべーメイドの声が響き渡る。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁすっ!!」
マジでやべー叫びであった。
彼女――ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、この戦場にすっ飛んできていた。
だが、彼女を出迎えたのは『主人様』でもなんでもなく、全てを殺す毒性であった。
とんだ出迎え方もあったもんである。
正直に行ってステラは、なんというか、ものすごくがっかりした顔をしていた。
赤い蛇の如き威容。
『11の怪物』の頂点『バシュム』。
その姿は確かに『セラフィム』を連想させるものであった。単一の力。それのみにおいて、『バシュム』は他の『11の怪物』を圧倒する。
『単一世界バシュム』と呼ばれる他者の介在を許さぬ領域。
その毒性で持って世界さえ殺して見せる。絶対たる勝利が約束された道程。
「全然関係ないじゃないですかばかぁぁぁぁ!! 赤とか悪性とか『セラフィム』と思ってくるじゃないですか! なんですか、この『セラフィム』詐欺!!」
メチャクチャな言い分である。
だが、ステラにとっては尤もな言い分だったのだ。
詐欺ー! これは詐欺ー! 訴訟もじさぬ! と言わんばかりの瞳であった。
「ですが、この戦いの先に平和があるのなら、『エイル』様ならば」
そう、彼女が敬愛し、慕う者であれば。
ここで退くことはないだろう。己を殺す毒性が如何にして迫るのだとしても。どんな苦境にあっても、平和を求める心さえあるのならば、決して。
故にステラの瞳は意志にみなぎる。
誰かに言われたからではない。己の存在を賭けて迫る毒性を振り払わなければならないのだ。
「|メイド《ステラ》、参ります!」
瞳に輝くはヴァレット・パープル。
何事も完璧にこなせる、超有能なメイド。
それは彼女の敬愛する『主人様』が絡まぬ限り、その平常心は彼女の意志を強化していく。
わかっている。
超完璧有能メイドであるステラにはわかっているのだ。
この姿に変身したとしても、できないことはある。『バシュム』の毒性はそれほどまでに苛烈にして強烈な力なのだ。
ならば、どうするか。
「毒性とは触れることで効果を発揮するもの。ならば、触れなければよいのです!『フォル』! いらっしゃい!」
彼女の頭上に羽撃くキャバリア『フォルティス・フォルトゥーナ』が飛来し、彼女をコクピットへと収める。
「ごめんなさい。ただ飛びたいだけの貴方にこんなことをさせるのは酷なのですが、少しだけ貴方の生命、私に下さい」
飛翔する『フォルティス・フォルトゥーナ』が毒性の中を切り裂く。
しかし、その度に機体の装甲が焼けただれるようにして溶け落ちていく。
わかっている。
それほどまでの毒性なのだ。痛みにあえぐようにして嘶くのをステラは感じただろう。苦痛。けれど、ステラには恐怖はなかった。
羽撃く羽が毒性を吹き飛ばしながら、ステラはコクピットから巨体たる『バシュム』へと飛び降りる。
風を纏うステラの周囲に毒性はない。
それがただの刹那であろうともステラには構わなかった。風は三日月の階段のようにして戦場に刻まれている。
それを駆け上がる。
天使の階段めいた風をメイドは駆け上がっていく。
「完全なる悪性。その赤、その蛇の如き威容! あまり長く時間を賭けられないのは申し訳ないのですが! 一瞬でカタをツケましょう!」
今のステラならば、何でもできる。なんでも完璧にこなせる。
故に手にした双銃が煌めく。
放たれた弾丸は眼下にある『バシュム』の頭部へと打ち込まれ、その銃撃の一撃が苛烈なる衝撃となって『バシュム』を大地へと叩き伏せる。
飛来した『フォルティス・フォルトゥーナ』の脚部に捕まりながらステラは完全なる悪性の赤を見やる。
どうしても『セラフィム』を想起せざるを得ない姿。
しかし、完全なる悪性があるのならば、完全なる善性もまた存在するのである。それを知るからこそ、ステラはいつかの『主人様』を思うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
んもー
ひどい環境破壊もあったもんだね
●境い目
[白昼の霊球]くんで毒を遮断しよう!
"境界"の原型であるこの子すら浸蝕してくるんだろうだから実際大したものだね!
そうやってキミたちは世界を侵して食べものにしてきたんだろうね
これをキミたちは然るものして生まれ、然う振る舞うだけというのだろうね
キミたち…キミに今どれだけの想いが向けられているかなんてことにも興味がないんだろうね
でもそれこそがキミを否むものだということを教えてあげるよ!
UC『神心』発動
実況を無差別にみんな脳内に叩きこんで賛同を乞おう!
人の子らよ…聞くがよい…いやちょっと違うなー
聞け!世界は狙われている!…ジャンルが違う?うん!
―――みんな、こんな|エンディング《終焉》でいいのかい?
うんこれこれ!
キミが独りっきりで一つの世界だっていうならたった独りだけのキミじゃ絶対に勝てやしない
独りじゃないみんなの力はこんなに強いんだからね!
と!毒世界と毒ごと彼を切り裂いてズッバーーーーーンッッ!!
青い空と大地を取り戻そう!
眼の前に広がる光景は単一そのものだった。
『11の怪物』、『バシュム』以外が存在できない領域。
それが拡がっている。
有象無象の全てが殺される。
『バシュム』の毒性はそういうものだった。風であろうと淀み、水であろうとも腐り落ちる。大地は崩れ、その足場さえも無くなってしまう。
他者の存在を介在させぬ者。
それが『バシュム』であり、それこそが『11の怪物』の頂点に立たせるただ一つの力であった。
「んもー、酷い環境破壊もあったもんだね!」
毒性を遮断するようにロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は球体を展開する。
けれど、その境界さえも臨界を超えた悪性は、爛れさえるようにして溶かしてくるのだ。
侵食してくる。
恐るべき毒性である。
いや、実際に大したものであるとロニは関心さえしていた。
『バシュム』という怪物はそうして他の世界も滅ぼし、侵食し、知的生命体ごと食らってきたのだろう。
これは悪性だ。
完全なる悪性。善性が存在するのならば、然るべくして生まれたものである。
「だから、キミはそのように振る舞うのだろうね。それ以外があることも知らず。知る必要もなく、只々、キミだけが存在する単一の世界の中で生きてきたんだろうね」
それはロニにとっては、あまりにも歪むきっかけでしかないものだった。
「キミたち……キミに今どれだけの想いが向けられているかなんてことにも興味がないんだろうね」
『バシュム』が物言わず、ただ『毒液を吐き出す』ことだけに注力していることからも知れるだろう。
そう、『バシュム』に他者の存在は必要ない。
単一で完結しているからこそ、会話する必要もない。ならば、感情さえも必要ない。これまで猟兵達が、あの巨躯に攻撃をどれだけ叩き込んでも、苦悶の咆哮さえ上げなかった。
ただそう在るべきと言われるように滾々と毒液を吐き出し続けていた。
攻撃という意志すらない。
身を守るという意志などない。
故に、攻撃されても変わることない行動のみでもって猟兵と、否、世界と対峙しているのだろう。
「教えてあげるよ!」
ロニの瞳がユーベルコードに輝く。
人の希望。
人の夢。
人の業を成就したい。
その願いを、全世界の生命の意識へとロニは呼びかける。無意識に呼びかける言葉は、ロニの声を介在して届けられるのだ。
「人の子らよ……聞くが良い……いやちょっとちがうなー! きけ! 世界は狙われている!」
どう考えてもジャンルが違う。
うんうんとロニは唸る。
どうしたらシンプルに届くのだろう。他者を考えればあ、頭の中は混線しまくる。シンプルに物事を考えたら良いのだろうけれど、他者に何かを届けるという想いがあるのならば、そうも行かない。
言葉も違う。性差だってあるだろう。
種類だって違うかもしれない。
多くが違う。多くが異なる。故に、生命は他者を求めるのだ。己にないものを求めたいからではない。
己にないものを知るからこそ、そうであるべきという思いに囚われてしまう。
けれど、ロニの眼の前に広がる光景を前にして生命は思うだろう。
「――みんな、こんな|エンディング《終焉》でいいのかい?」
良いわけがないだろうとロニは叫ぶ。
眼の前にあるのは単一の世界。
『バシュム』。
その異様を前にしてロニは掲げる。
「これがみんなの力! ひとりじゃないっていうのはこういうことを言うんだよ!」
世界で唯一であることを存在意義とするのならば、その悪性は臨界をとうに超えているだろう。
故に勝てる道理などないと示してみせるのだ。
「キミが独りっきりで一つの世界だっていうなら、たった独りだけのキミじゃ絶対に勝てやしない!」
神心(ゴッドウィル)を中継して迸る全生命の迸る願いを受けてロニは掲げた光称える掌を振り下ろす。
それは汎ゆる生命が望む生存への祈りにもにたものであろう。
故に、それは毒性を切り裂きながら『バシュム』の巨体を切り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
マウザー・ハイネン
世界を殺させる訳にはいきません。
全力でその毒、突破して一撃を叩き込まねば。
可能ならガルシェンで作った対毒コートを着込んできます。
多重詠唱の召喚術で星霊ディオスとクリンを召喚。
ディオスの聖なる水流を風と浄化の力を籠めたオーラに混ぜ込んで大気に拡散した毒への抵抗力を更に高めます。
その上で敵の先制攻撃には星霊クリンのばら撒く氷塊を盾にし直撃を避けつつ、心眼と野生の勘で毒の薄いルートを見切りバシュムへと接近。
UC起動可能になったら氷細剣を媒介に氷の魔法で大気の水分を氷壁へと生成、眼前に展開しUC起動。
相殺されたら一気に飛び込んで急所と思われる位置に氷槍の凍結攻撃で串刺しにします。
※アドリブ絡み等お任せ
世界を殺す。
それだけの為に単一の能力を有するのが『バシュム』である。
『毒液を吐き出す』能力。
『エリクシル』を想像する力すら保たぬ無能と謗られながらも、しかし、『バシュム』に憤る感情は生まれない。
何故なら、感情とは他者の存在を認めるがゆえに生まれるものである。
他者がいなければ、感情など意味をなさない。
そこに相違を見出す必要がないからだ。故に『バシュム』は、猟兵達の一撃を受けながらも感情もなく只管に毒液を排出し続け、世界を殺し続ける。
マウザー・ハイネン(霧氷荊の冠・f38913)は己の手にした氷槍を掲げる。
彼女が纏うのは骸殻都市ガルシェンにて作成した耐毒コート。
しかし、『バシュム』の毒性は、それすらも上回る勢いで持って彼女を殺さんとする。召喚した星霊の放つ風と浄化の力宿す水流さえも腐り、淀んでいく。
毒性に対する抵抗力を高めてなお、マウザーに残されたのは僅かな時間でしかなかった。
「世界を殺させる訳にはいきません」
マウザーにあるのもまた、その単一たる願いだった。
この戦いに彼女が思うのは唯一つ。
世界を救うこと。
だが、その世界に内在しているのは、数多の生命。そして、数多の理由だった。マウザーにとって世界を救うことは、多くを救うことだ。
世界を救えば、数多の生命が救われる。
なら、彼女の背に乗るのは、単一ではなく無数。
「全力で、その毒を突破させて頂きます」
煌めく瞳。
意志宿す輝きを『バシュム』は見ることもしなかった。意味がないからだ。けれど、マウザーは、そのユーベルコード満たす瞳でもって見据える。
彼女と毒性の間に現れる氷壁。
それは一瞬で氷の細剣でもって生み出されていた。吐き出されるは全てを拒絶するかのようなポイズンブレス。
『単一世界バシュム』へと変わる世界。
けれど、起点が異なる。
マウザーの放ったのは、応報消失の氷壁(アイスキャンセラー)。
氷壁で受け止めたポイズンブレスは、『単一世界バシュム』を相殺する。
世界そのものが『バシュム』であるというのならば、そのユーベルコードは唯一『バシュム』の毒を確実に打ち消すちからだった。
「道が開けた」
マウザーは見上げる。
『バシュム』は此処に来て初めて、マウザーを睥睨したようだった。完全なる悪性。己とまったく同一の存在でもって相殺された世界に何事かを感じ取ったのかも知れない。
けれど、マウザーにとって、それは考えることではなかった。
そう、彼女は世界を救う。
ただそれだけだったのだ。『バシュム』が同一たる己を認識して如何なる感情を組み上げるのだとしても、彼女の氷槍はユーベルコードの煌めきを湛えている。
放たれる槍の一閃が『バシュム』の頭蓋を砕く。
痛みに喘ぐこともなく。
されど、『単一世界』であるが故に、その一撃は、世界そのものに亀裂を走らせるのであった――。。
大成功
🔵🔵🔵
ジークリット・ヴォルフガング
●POW【ケルナノ】
耐毒装甲に換装したモジュラーアーマー、それに耐毒特攻に特化したシロガネ…これらで身を固めていても簡単に勝てる相手ではないのは確かだ
しかし、私には頼れる|相棒《サーヴァント》が居るのでな
そうだろナノ?
生憎ガスマスクの類は持ち合わせていないが、なるほど
これが不死身のケルベロスでさえ死に至らしめる毒か
正直に言えば身体に応える
私が身を挺して護ったナノの癒しを受け、バシュムの毒が顕現した病魔をシロガネで斬ったらば反撃開始だ
まだ全快に至ってない身体で『タクティカル・トランスフォーム』の補助を借りてバシュムの巨体の頂…眉間を目指す
ナノの魔法も借りてだが、シロガネをそこへ突き刺してやるさ
ナノ・ナーノ
●WIZ【ケルナノ】
なのなのー、もの凄く強烈な瘴気に満ちているなの!
骸殻工房ガルシェンでジークは対毒の剣と装甲、ボクは対毒の杖に魔法使いの服を作って貰ったけど、防ぎきれるか怪しすぎるまでバシュムの毒は強力過ぎるなの-!
なの?
耳を貸せなの?
…なるほどなの
ボクを庇って先制攻撃を耐えたら、ジークの身体を蝕んでいる毒を『病魔召喚』で追い出してやっつけるのなの
本当、ジークはTAIMANIN並みの脳筋なの
けど、あっちの世界のケルベロスだから仕方ないかもなの
ジークの身体から追い出した病魔を叩きのめしたら、ボクもジークに付き合って眉間を目指すなのー
杖をくるくるって回しながら、電撃魔法とか解毒魔法で援護なの!
対策は完璧になし得ていたはずだった。
耐毒装甲に換装したモジュラーアーマー、それに加えて耐毒特化した白銀の長剣。
ガルシェンにて作成された『バシュム』に対抗するための力。
しかし、それほどまでの備えをしても『バシュム』の毒性は装甲を侵食し、その下のフィルムスーツにさえ効果を及ぼし始めていた。
ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)はやはり、と思っただろう。
これだけの装備に身を固めてもなお、簡単に勝てる相手ではないと見積もっていたのだが、実際に対峙すれば、その強大さに見積もりが甘かったことを知る。
しかし、と彼女はかたわらに浮かぶナノ・ナーノ(ナノナノなの・f41032)を見やる。
「なのなのー、ものすごく強烈な瘴気に満ちているなの!」
迫る毒性。
それを前にしてナノは慄く。
敵の能力が強力過ぎるのだ。これほどまでの怪物を相手取らねば、世界が滅びて島うこともまた事実。
「そうだろうな。だが、私には頼れる|相棒《サーヴァント》が居る。そうだろ、ナノ?」
その言葉にナノは振り返る。
そうだ。
自分にだってジークリットが居る。共に並び立つ者がいる。
『バシュム』のように唯一人ではないのだ。
ならば、戦えるはずだ。やれるはずだ。
「なの!」
「さあ、始めようか。ただ一つの存在だけで、孤独も知らず。他者も知らず。そんな存在を前にして私達ができることは一つだ!」
ジークリットは迫る毒性からナノをかばうようにして立つ。
モジュラーアーマーが溶け落ち、フィルスーツに毒性が浸透してくる。
肌を焼くような感触。毒性の痛みが体を駆け巡り、神経の末端までも焼き尽くすかのような強烈な痛みがジークリットを苛む。
だが、彼女は膝をつくことはなかった。
正直に言えば、応える。不死身であるケルベロスでさえ死に居たらしめ、世界さえ終焉に至らしめる病。
「応える……だが!」
「なの! まったく、ジークは本当に脳筋なの!」
えいや、とナノの瞳がユーベルコードに輝き、ジークリットの体内に侵食した毒性と云う名の病魔を召喚して見せる。
それはウィッチドクターのみに許された力。
召喚された毒性はジークリットの体が抜け落ち、敵として眼前に現れる。それをナノは見逃さなかった。
今まさに放たれているポイズンブレスは弱い、と言われていた。
それは威力という意味ではない。『バシュム』が打倒されれば霧散するから弱い、と言われていたのだ。
ならば。
「ジークの体の中で抵抗されまくって衰弱しているのなら!」
ナノの突進が毒性の病魔を叩きのめす。
瞬間、ジークリットの体を冒していた毒性の痛みが一瞬で消え去る。それどころか、ジークリットの神経を焼いた傷跡は瞬く間に回復しているのだ。
「流石だな、ナノ! やはり頼れる相棒だ!」
「なの! ジーク! 目指すは!」
「ああ、あの『バシュム』の眉間だ!」
ナノの言葉に応えるようにして、ジークリットの瞳がユーベルコードに輝く。彼女の纏うアームドフォートが変形する。
それは、迫る毒性への体勢を特化させた球体のような形状をしていた。
しかし、それでもなお『バシュム』の毒性はアームドフォートの装甲すら爛れさせる。僅かしか無い時間。
「十分だ! ナノ!」
「なのなのー! 魔法はおまかせなのー!」
くるりと球体となったアームドフォートの内部でナノは杖を振るって、電撃を解き放つ。
迫る毒性を振り払うような電撃の最中、ジークリットはアームドフォートから飛び出す。
一瞬だ。
本当に僅かな時間しか己は『バシュム』の毒性に耐えることはできないだろう。
けれど、ジークリットの背中を護るようにしてナノの魔法が追う。
解毒魔法。
それによって僅かにジークリットの腕が反応する。
「受けろ、星の輝を!」
振るうゾディアックソードの一閃が『バシュム』の放つ毒性を切り払い、その切り払った道に白銀の刃が走る。
手で振るうことがもう敵わない。
ならば、と彼女は『シロガネ』と銘打たれた浄化の力宿す長剣を投げ放つのだ。それは、ナノの雷撃を共といて、『バシュム』の頭部、その眉間へと突き立てられ、穿つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レヴィア・イエローローズ
黄薔薇のエリクサーと黄薔薇の魔導炉心を使い、血清精製用魔導武装『|A《アンチ》BCパイルバンカー』を使って毒を打ち消しながら慎重にポイズンブレスを回避していくわ
黄薔薇の黒檀杖と黄薔薇の白夜杖で時間軸を捻じ曲げ、毒を喰らったという時間軸を破却
単一世界ならば、ポイズンブレスと違って残留はしない筈……!
そのまま、バシュムの毒に対する血清を使ってUCを発動
血清の槍の弾幕をバシュムへと向け射出
刺さればバシュムの内包する毒に対する血清が蝕むはずよ
毒には毒でなく、血清を――その結晶化した弾幕はいかがかしら!?
レヴィア・イエローローズ(亡国の黄薔薇姫・f39891)は黄薔薇の花弁舞わせるかのように、彼女が開発した植物性の魔術を講師するための媒介たるエリクサーを振るう。
同時に魔導炉心が唸りを上げる。
彼女が手にしていたのは、血清を打ち込むための魔導武装。
迫る『バシュム』の毒性は弱まることはなかった。
拡散性の高い毒性は、ただ『バシュム』が其処にあるだけで拡がっていく。際限など無い。世界一つを滅ぼす『終焉に至る病』。
それこそが『バシュム』唯一の能力。
ただそれだけの能力で『11の怪物』の頂点に座している。
だが、『バシュム』がそれを誇ることはないだろう。
他者の介在を許さず、単一であることのみを体現した『バシュム』に近づくことのできる者は存在しない。
神々であっても。
オブリビオンであっても。
猟兵であっても例外はない。ただ只管に滅ぼす。毒液でもって殺し続ける。それだけを為す存在なのだ。
「なんという毒性!」
時間すらも爛れ、溶かすかのような強烈な毒性。まるで有象無象の全てを棄却するかのようであった。
レヴィアは黒壇と白夜の杖を振るう。
「『単一世界バシュム』、これほどとは」
ポイズンブレスと同等の威力を有する毒性。これをまともに受けてはどうしようもない。躱すことなどできなかったことだろう。
振り払ったとしても、振り払った杖が腐食されて機能を著しく損なわされてしまう。
だが、レヴィアの瞳はユーベルコードに輝いていた。
己のユーベルコードはアルケミスト用兵装から発生したガスでもって自身を覆う。汎ゆる物質を生化学構造体に鑑賞する純粋生命力のガスでもって加速させる。
即ち、拡散性であること。
そして、残留しないということ。
これを考慮した上で彼女は『バシュム』の毒性の半減期を加速させたのだ。
だが、臨界した悪性、その毒性は勢いを増していく。
「我が黄色に応じて開花せよ、羨望の深淵。それは生と死の境界と渦を司る気化の御業。錬金の秘奥に至らずとも、生と死を縦横する」
黄薔薇開花・気化するは生と死と化を司る神髄(イエローローズ・アクアウィターエ)と彼女は言う。
彼女が生み出すのは生と死の境界に渦巻くもの。
ガスでもって減速するのは、毒性の拡散性。
故に、レヴィアは放たれた毒性を躱すように身を捩りながら、数多の猟兵達が叩き込んだユーベルコードによって大地に縫い留められた『バシュム』の体躯へと飛ぶ。
手にした血清の槍。
それを生み出し、放つ。
「毒には毒ではなく、血清を――」
レヴィアは己の手繰る錬金を持って、血清を生み出す。
あらゆるものを侵す毒性。それに対抗するために放たれた槍は、尽くが毒性に侵されて溶け落ちていく。
だが、ただ一本だけが届く。
それは猟兵達が一撃を叩き込み続けて両断された『バシュム』の胴へと向かった槍だった。
「届く……! その結晶化した血清の槍は!」
毒を制する血清。
血漿は凝固するが、血清はしない。されど、その血清を槍として形作るのがレヴィアの力であるというのならば、其の一撃は毒性そのものたる『バシュム』の内部で臨界を超え、その内部を引き裂くようにして迸るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ノーメン・ネスキオー
本当に、覚醒したそのままで来た新人猟兵な薬師
いやー、案内のグリモア猟兵さん、何か親しみやすかったなぁ(フラスコ生命体な意味で)
まあ、私は武器があり合わせになったし、考えないと。
この機会逃したら、バシュムの毒が!!
ついたら、即座に高速詠唱による呪文で浄化属性攻撃をして、毒の到達を遅らせる。
唱え続けて、本当に少しでも遅らせつつの前進。
この…よくわかんないけどパリパリする多節鞭(雷公鞭)で…浄化属性攻撃を帯びたUCを使用しての攻撃!
何で持ってたかは知らないけどね!(神隠しのときに持ってた)
にしても、この毒は消え去るのが正解な気がするなぁ。
弱毒でこれなんだから、薬は至難だよ。
のたうつような赤い蛇の巨体を見た
それは己が求めた好奇心の源にして原因。戦場に溢れる毒性の全てが、汎ゆる生命を殺すものであると知ることができた。
有象無象であろうと関係ない。
この領域――『単一世界バシュム』において、他は存在すらできない。
たとえ、それが風であろうと。水であろうと。大地であろうと。
例外なく、『バシュム』以外は存在できないのである。
「これが……『バシュム』!」
ノーメン・ネスキオー(放浪薬師・f41453)は己が保つメガリスが駆動するのを感じただろう。メガリス・アクティヴである彼女にとって、この光景こそが求めたものであるが、しかし、準備する時間が足りなかった。
全てがありあわせだった。
考えなければならない。
戦場には多くのユーベルコードがきらめいていた。
今しがた打ち込まれた血清の槍は確かに『バシュム』に効果を齎していたし、数多の猟兵達の一撃が齎した斬撃は胴を切り裂いていた。
頭部に叩きいこまれた長剣は突き立てられたまま浄化の力を発露し続けているが、後僅かで溶け落ちるだろう。
事象を確認する。
知識を総動員する。
この機会は逃せない、とノーメンは思っていた。
故に彼女は即座に詠唱を始める。
迫る毒性に浄化の力をぶつけて、毒液の効果が己に及ぶのを遅らせる。だが、それも僅かな時しか稼げないであろうことを彼女は知っていた。
紡ぎ続ける詠唱。
けれど、それも焼け石に水だった。臨界を迎えた悪性によってすり潰されてしまう。
「わかってる。わかってるよ……けど!」
このままでは自分は毒性によって侵されて、溶けて死ぬだろう。
だが、ノーメンの瞳はユーベルコードに輝く。
多くの事象があった。ユーベルコードがきらめいていた。数多の猟兵達が紡いだ軌跡があった。
故に彼女は諦めない。
迸る悪性を前にして、その臨界を超えさせぬと相対する事象で持って反応を起こし続ける。競り負ける。
毒性の痛みが全身に迸る。
絶叫するほどの痛み。
神経の一つ一つをきしませるような、刺すような痛みが駆け抜ける。
けれど、彼女は手にした宝貝を掲げる。
何故、これを己が持っていたのかなんて理由はもうどうだっていい。この力が手にある。繋ぐ。紡ぐ。それだけだった。
「雷公天絶陣……! 降り注ぐ雷は、悪性を振り払う! そして、走る雷撃は!」
眉間に突き立てられた長剣に降り注ぐはユーベルコード、宝貝による雷撃の一撃。それは、白銀の長剣を介在して、『バシュム』の体内に残された血清をたどり、外皮に刻まれた無数の傷跡より迸る雷光。
駆け出しの猟兵である自分だけでは決してなし得なかったことである。
けれど、ノーメンは見たのだ。
数多の猟兵達が世界の脅威に立ち向かう様を。そして、己は好奇心でもって毒を制するのだ。
体中に走る痛みが教えてくれる。
この毒性は消え去るのが正解だ。あってはならぬものだ。他の存在を許さぬ毒。
臨界を超えてはならぬ悪性そのもの。
「これをもって薬を作るのは至難だよ。でもね」
ノーメンは思う。
これが完全なる悪性であるというのならば、きっと完全なる善性もあるだろう。光と影が同時に内在する世界のように。
きっと『バシュム』の毒性にさえ表裏があるだろうと確信することができる。
もしも、『バシュム』の毒性を完全に殺す薬、というものがあるのならば、きっとそれはそういうものなのだろうと思えたのだ。
「きっと大地すら癒やしてみせるよ。そのために私は、此処に在るんだろうから」
神隠しが偶然であったとは思わない。
必然であったとも言い切れない。けれど、それでも、と思うのだ。今目の前に広がる光景は病そのもの。なら、自分がすべきは『単一』そのもの。
癒やさなければ。
ノーメンの其の言葉に応えるようにして迸る雷光は、これまで打ち込まれた猟兵達を繋ぎ、『バシュム』の体を内側から炸裂させるようにして、その存在を、その毒性を、悪性を霧散させる。
霧が晴れるようにして、世界には淀む悪性はなく。
『終焉に至る病』は、猟兵という薬を得て進行を止めるのだった――。
大成功
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