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トロピカル☆サマーデイズ

#UDCアース

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#UDCアース


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●トロピカル|☆《因習》アイランド
 その島は小さな島で、人口も五百人いるかいないかという規模。けれど、その島の豊かな緑と透き通った青い海の珊瑚礁は美しく、観光地として隠れた人気を誇っていた。
 ホテルはないけれど、海の近くにはグランピング施設があったり、個人経営の小さな旅館があったりと大人数の宿泊も可能となっている。島というだけあって海産物が豊富で、獲れたばかりの魚のお造りや貝の網焼きなどがメインだが、畜産農家もあって自家製チーズやバター、上質な牛肉も楽しめるのだとか。
 勿論、マリンアクテビティも豊富でジェットスキーやバナナボート、シュノーケリングなど様々なものが用意されている。運動が苦手だという人にだって、海辺の木陰で寛いで過ごせるようにとリゾート風の休憩所が作られており、BBQをしたりゆっくりと読書を楽しむのも人気なのだそう。
 島には老人も多いが若者もそれなりに残っており、近隣の島よりは随分と栄えていると言っていいだろう。
 何より、この島には有名な祭りがあるのだ。
 取材お断り、けれど祭りを楽しみにやってくる観光客は歓迎する、そんな島を挙げての祭りだ。
 どんなお祭りかは始まってからのお楽しみという形らしく、主軸は変わらないが細部は毎年アレンジされているらしいとはネットでの噂である。
 夏を100%楽しむにはうってつけの日本で楽しめるトロピカルアイランド、一度は訪れてみるのもいいはず――!

「今年もこの時期が来たねぇ」
「んだなぁ、キメン様の祭りの時期じゃあ」
「去年はよぉ、嵐だなんだぁいうて、結局出来んかったからなぁ」
「なんなら一昨年も流行病だなんだぁ言うて、観光客が来んかったからの」
「や……そんなこと言うたら、ここ五年くらいうっかり儀式しとらんかったやないか? ほれ、|長《おさ》がぎっくり腰やったとか、TV取材が入っちまったとかいうてよ」
「キメン様もうっかり寝てたでよ、こっちも起こさんかったもんな」
 島の人々が朗らかな声で笑う、だから今年はいつもより盛大に祭りを行わなくては、観光客を盛大にもてなさなくては、と――。

●グリモアベースにて
「君達、トロピカル|☆《因習》アイランドに興味はないかい?」
 グリモアベースに集まった猟兵に向かって、深山・鴇(黒花鳥・f22925)がさらりとそんなことを言う。あんまりにもさらっと言われたものだから、トロピカルアイランド……リゾートか! と早合点したままの猟兵が出てもおかしくないくらいである。
「いいところだよ、小さめの島だけど海が綺麗でね。マリンアクティビティもできるし釣りもできる。森には珍しい昆虫なんかもいるから、童心に帰って虫取りも楽しいかもしれないね。運動が嫌いな人は木陰で読書や昼寝を楽しむのがお勧めだよ」
 小さめのリゾートアイランド、君達が想像したような風景が広がる島だよと鴇が笑う。
「宿泊はグランピング施設もあるし、少し古いけど綺麗な旅館もあるからね」
 グランピング施設に泊まるならBBQを楽しめるし、旅館であれば旅館の板前さんの心づくしのお料理がいただけるだろう。
「夜には島にある神社で祭りも開かれるそうでね。で、話はここからが本題なんだけど――因習って言葉を知ってるかい?」
 簡単に言えば、その地域に古くから伝わる風習を示す言葉で、あまりいい意味のものではない言葉だ。
「この島には古くから伝わる因習……つまり、あまりよろしくない習わしがあるみたいでね。どうやら島の神様とやらに生贄を捧げているらしいんだ」
 それも、土着の島神などではなくUDCである、と鴇は予知している。
「離島ということもあって、誰にも気が付かれる事なく生贄を取り込んでいたんだろうね。それなりに強いUDCみたいだよ」
 だが、どうも今回に限ってはそうでもないらしいと鴇が言う。
「ここ数年祭りはどうも時期に嵐が被ったり、取りまとめる村長の体調だとかで延期していたらしくてね。時期をずらして行うという話もあったらしいんだけど、まぁなんていうか……南の島の人っていうのはその辺こう……おおらかだろう?」
 言葉を濁しつつ言ってはいるが、南の島の穏やかな時間で過ごす人々はわりとルーズでうっかりな部分がある。そんな人々に祀られている神、UDCもまぁそこそこルーズでうっかりなので、起こされなかったから起きなかった、みたいな事になっているらしい。
「それに島の人はおもてなし精神が高い……まぁ暇を持て余してるとも言うんだが、毎年生贄を捧げるのは変わらないがやり方をちょいちょい変えているらしくて」
 それはもう因習として成り立っているのだろうか? 生贄を捧げているのだから因習は因習、はい。
「本当に祭りの一環として行っていると思ってやっている島民もいるくらいだからねぇ……」
 というわけでね、と鴇が取っ散らかった話をなんとか纏めようと口を開く。
「この因習、ちょっとバカンスに行ったついでにぶっ潰してきてほしいんだ」
 最初に聞こえた因習って言葉、聞き間違いじゃなかったんだなと猟兵が遠い目をするにも拘わらず、話を続けていく。
「一番簡単なのは因習には因習をぶつけるってことなんだけど」
 目には目を、歯には歯を、因習には因習を、である。俺の考えた因習が最強なんだ、とわからせれば島民は|大人しく引いて《ドン引きして》くれるはず。
「そんな因習考えも付かないって場合は、UDCを倒すだけでも助けになると思うよ」
 そもそも、UDCがいなくなれば生贄を捧げる必要もなくなるのだから。
「それじゃあ、あとは現場の判断でよろしく頼むよ」
 鴇が手のひらに煙のようなグリモアを喚び出して、そう締め括る。
 ゲートの先は美しさの中に悍ましさを隠した島――君達は無事生き残る為、渾身のぼくが考えた最強の因習と共に足を踏み出す。


波多蜜花
 閲覧ありがとうございます、波多蜜花です。
 お前何言ってんだみたいなOPですが、お分かりでしょう、トンチキシナリオです。
 リゾートを楽しむもよし、トロピカル因習アイランドをぶっ潰すもよし、なシナリオになっております。一章のみのご参加も歓迎しております、お好みでどうぞ!

●プレイング受付期間について
 タグやMSページ記載のURL先にてご案内しております、参照いただけますと助かります。
 また、参加人数やスケジュールの都合、予期せぬ出来事によっては再送をお願いする場合がございます。なるべく無いように努めますが、再送となった場合はご協力をお願いできればと思います(この場合も、タグとMSページ記載のURL先にてお知らせ致します)
 オーバーロードで参加をご予定の方は受付期間前でも送っていただいて構いません。
 ※今回に限りまして、二章の開始が遅くなる可能性が非常に高いです。お盆……だから……!!!(詳しくはMSSページ記載のURL先でどうぞ)

●できること
・一章
 夏の浜辺や森で出来ること全般、出来そうな事は大体通します、頑張ります。
 楽しく遊んで下されば幸いです。
 POW/SPD/WIZは気にしなくて大丈夫です。

・二章
 因習には因習をぶつけんだよ……!!
 詳しくは断章にてご説明いたします。

・三章
 因習の原因をぶっ潰せ!
 UDCとの戦闘~トンチキもあるよ~
 トンチキしてもいいですし、真面目に戦ってもいいですし、その場の気分でどうぞ。
 こちらも詳しくは断章にてご説明いたします。

●同行者について
 同行者が三人以上の場合は【共通のグループ名か旅団名】+【人数】でお願いします。例:【因習3】同行者の人数制限は特にありません。ペアの場合は人数表記はなしで大丈夫です。
 プレイングの失効日を統一してください、失効日が同じであれば送信時刻は問いません。朝8:31~翌朝8:29迄は失効日が同じになります(プレイング受付締切日はこの限りではありません、受付時間内に送信してください)
 未成年者の飲酒喫煙、公序良俗に反するプレイングなどは一律不採用となりますのでご理解よろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『「祝祭」への参加』

POW   :    奇妙な食事を食べたり、奇怪な祈りのポーズを鍛錬する等、積極的に順応する

SPD   :    周囲の参加者の言動を注意して観察し、それを模倣する事で怪しまれずに過ごす

WIZ   :    注意深く会話を重ねる事で、他の参加者と親交を深めると共に、情報収集をする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

トロピカル、とはいったい…?横文字は慣れませんねー。むしろ因習のほうが馴染みあるというか。
……まあ、考えてることはあるのでー。

さてまあ…まずは休みますかー。動くのは『何かが起こった』時でいいのですからー。
旅館でゆっくりしてますー。ふふ、板前さんの料理いただきましょうかー。
海が近いと魚が美味しいとは聞きますが、はてさてー?
こうして『人が作った料理を堪能する』のは…旅の楽しみですねー。
※『疾き者』は料理担当。



●のんびりゆったりアイランドタイム
 透き通るような青い海に、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は眩しそうに目を細め、トロピカル……と小さく呟く。
「はて、トロピカル、とはいったい……? 横文字は慣れませんねー」
 言葉の響きはどこか楽しそうな、夏らしさを感じるような。港を歩きながら、聞きなれぬ言葉を口の中で転がす。
「帰ったら意味を調べてみましょうか。因習の方は馴染みがあるんですけどねー」
 聞く者がいればそれもどうかと思うような事を言いながら、義透は旅館の方へと向かう。
「色々見てきましたからねー。それはさておいても、考えていることはあるのでー」
 この島の因習がどんなものかは知らないが、それが霞んでしまうような……とまで考えて、義透はのほほんと笑う。
「さてまあ……まずは休みますかー」
 何も起こっていない内から動く必要は無いだろう、案内をしてくれた猟兵もその時が来るまではゆっくりしてくれと言っていたはず。
「そう、動くのは『何かが起こった』時でいいのですから……それまでは旅館でゆっくりするとしましょうかー」
 楽しみにしていたんですよね、旅館でいただくお料理。と、うきうきとした足取りの軽さで旅館へと向かった。
 ようこそいらっしゃいませ、と手厚く出迎えてくれたのは旅館の女将と数名の仲居で、食事をお願いしたいと言えばお部屋からの眺めがいいですから、どうぞお部屋でと案内される。
「これはこれは……確かに良い眺めですねー」
 海遊びを楽しむ人々が見える浜辺に、港。その向こうの煌めく水平線までも、何もかもが美しく見えた。
 そして出されたお料理は海鮮尽くし、新鮮な舟盛りの姿造りに天ぷら、煮付けに揚げ物、海老の焼き物に小鉢各種と彩りも豊かだ。
「海が近いと魚が美味しいとは聞きますが、はてさてー?」
 海が近いどころか、目の前にあるのだから期待も高まるというもの。
「ん、美味しいですねー」
 鮮度抜群の刺身は程よく脂がのっていて、それだけでご飯が進む味わい。醤油も島で作っているものらしく、仄かな甘みが刺身によく合っている。天ぷらも煮付けも揚げ物も、それ一品だけでもメインとして成り立つくらいだ。
「こうして『人が作った料理を堪能する』のは……旅の楽しみですねー」
 うんうん、と頷いて潮騒をBGMに義透は美味しい食事に舌鼓を打ち続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セラ・イーズデイル
心)うん、なんて?☆って書いて因習って読むのぉ?もう、日本語ってば難しいわねぇ。まあ、いいわぁ。トロピカルで楽しいアイランドでしょぉ?遊ぶわよぉ!
行)釣りするわよぉ!(バスピス君Tシャツ&バスピス君バッグ&バスピス君リボンで飾った麦わら帽子装備の31歳児爆誕)お魚は見るも飼うも食べるもだぁいすきよぉー!!
島の人捕まえてオススメで簡単な釣りスポット教えて貰うわぁ。あ、テトラポット付近は却下よ、死ぬから。最悪、遺体も回収されずに海流洗濯機に回され続けるとか冗談じゃないわぁ。
美味しいお魚釣れたら持ち込みで料理してくれるお店ないかしらぁ。思いっきり楽しんで美味しいもの食べて~お酒も飲んで~最高だわぁ!



●とっても楽しいアイランド!
「うん、なんて?」
 この話を聞いた時のセラ・イーズデイル(行楽殺人鬼・f40633)の第一声がこれである。恐らくほとんどの猟兵もそう思ったことだろう、けれどセラは一味違う捉え方をしていた。
「☆って書いて因習って読むのぉ?」
 やだもう、日本語ってば難しいわねぇ、と。
「♪って書いて虐殺とかって読んだりするのかしらぁ」
 ありそぉ! なんて言いながら、セラはトロピカル|☆《因習》アイランドへ降り立ったのであった。
 因習だとか虐殺だとかがあるとしても、セラにとってはそれも含めてトロピカルで楽しいアイランド。遊ぶわよぉ! と釣竿を手にして島の人にオススメスポットを聞き出すとウッキウキで海へと向かう。
 お気に入りの古代魚――すでに絶滅している種だが――の|バスピス君Tシャツ《すごく可愛い!》! |バスピス君バッグ《最高に可愛い!》! |バスピス君リボンで飾った麦わら帽子《リボンに刺繍されてるのがポイント》! という、完璧なまでのバスピス君装備! 夏休みを満喫する小学生のような三十一歳児は岩場を前にして赤い瞳をキラキラとさせていた。
「うーん、絶景じゃない! そうそう、こういう場所よぉ! テトラポッド付近とかはねぇ、駄目なのよね」
 だって死ぬから。
「最悪、遺体も回収されずに海流洗濯機に回され続けるとか冗談じゃないわぁ」
 滅茶苦茶物騒な事を言いながら、セラがえいっと釣り糸を海へ向かって垂らす。
「あ、でも魚の餌になるのは悪くないかも……?」
 いやいや、確かにお魚は見てよし! 飼うもよし! 食べるもよし! で、セラがだぁーいすきな生き物だけど。
「うーん、食べるのはいいけど、食べられるのはアタシの趣味じゃないわねぇ」
 ふふ、と不敵な笑みを浮かべたのも束の間、糸が引いているとわかるや子どものような笑顔を浮かべて竿を引く。
「お魚ゲットよぉー!」
 教えて貰ったポイントは確かなようで、入れ食い状態で魚が釣れる。ほくほくの笑顔で釣った魚を入れたクーラーボックスを肩に担ぐと、民宿やお食事処のある方へと向かう。
「さてさて、持ち込みで料理してくれるお店はあるかしらぁ。お酒も美味しいということないんだけどぉ」
 お刺身に煮付け、唐揚げだって美味しいに違いない。
「んん~、考えるだけで最高だわぁ!」
 すいませーん! と入った小料理屋で快く釣った魚を調理してもらい、セラは美味しいお魚とお酒を日が暮れるまで堪能したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
【WIZ】

ジェットスキーで島に沿って周りながら、疾走感を楽しみます。
「海も綺麗で、島の景色も素晴らしいです」
リゾートを存分に楽しみながらも、任務は忘れていません。
にこやかに交流しつつ、島の地形をそれとなく観察し村人の様子は【追跡眼】に探らせています。
陽光の下だろうと影は出来るもの。「眼」達の活動に問題はありません。
祭りに先立って情報は探っておかなくては。

マリンアクティビティを楽しんだ後は旅館へ。偶には旅館で過ごすのも乙なものです。
どんな料理が出てくるのか楽しみですね。

闇色の狼の姿のUDC「ツキ」が部屋の天井の僅かな暗がりを通して顕現し。
『その肉を寄越せ』と。料理の良い匂いに引かれたようですね。



●トロピカルな夏休みを
 水上バイク、その名の通り水の上を走る爽快な乗り物。海や川などでその姿を見るのは珍しい事ではない、水上バイクを個人で持つ者も少なくはないのだ。
 そんな水上バイクを軽快に駆って青い海に白い波飛沫のラインを描くのはシン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)で、時折跳ねる車体を巧みに操りながら島を周回するようにスロットルレバーを握っていた。
「この爽快感、堪りませんね。それに海も綺麗で、島の景色も素晴らしいです」
 少し離れた場所からでも、近くからでも、島と海の美しさは変わらない。日光を反射して煌めく水面を駆け回りながら、シンは島の地形を頭に叩き込む。そして、さりげなく影の中から影や闇を伝って移動する『眼』を召喚し、島の人々の様子をも窺っていた。
「ふう……充分に堪能しました、そろそろ上がりますか」
 スロットルレバーから手を離し、徐々に減速しながら浜の方へと寄せていく。近くまでくれば島の人が引き受けてくれて、シンはそのまま浜へと上がった。
 海の家の人に声を掛ければ、楽しかったかいと笑顔を向けられる。
「ええ、とても。いい島ですね」
 そう答えれば、海の家の人もそうじゃろうそうじゃろう、と大きく頷いてシンにサイダーを振舞ってくれたので、ありがたく頂いて旅館への道を聞いた。
 教えて貰った通りに向かえば、確かに少し古さはあるが綺麗に整えられた旅館が見える。
「風情がありますね」
 こういう旅館で過ごすのも乙なもの、どんな料理がいただけるのだろうかと考えるだけで、マリンアクティビティで程よく空いたお腹が期待するようにきゅるる、と小さく鳴った。
 旅館の風呂を使っている間に部屋には豪華な料理が運び込まれていて、濡れた髪を拭きながらその品数にシンが目を瞬く。
「やはり島というだけあって海産物が豊富ですね。それにこちらが島の牧場で作られているお肉ですか」
 どれも美味しそうだと、肩にタオルを掛けたままシンが席へとつく。
「いただきます」
 綺麗な所作で箸を持つと、早速とばかりに目に付いたお刺身に伸ばした。
「美味しいですね」
 あれも、これもと箸を伸ばしていると、部屋の天井の僅かな暗がりから闇色の狼の姿をしたUDC『ツキ』が姿を現す。
「ツキ」
『その肉を寄越せ』
「……僕、まだ食べてないんですが」
『寄越せ』
「わかりました」
 料理の良い匂いに引かれたのですね、と笑ってシンがツキの所望する肉を与える。
『美味い』
「そうでしょう、こっちも美味しいですよ」
 肉に魚に、と美味しく料理をいただいて、暫しの平穏を享受するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御簾森・藍夜
【朱雨】◎

なぁ心音、キメン様ってどんなだろう
やはり鬼か?

(テントを張りながら
グランピング、良い案だ。心音は賢いな
うん、上手
確かに秘密基地だ

だがキ“メン”
メンって面なのか
?わざわざ面を作るのは印象操作、“キメン”様自体をそう思わせるためであり存在の確立と同時に祭という儀式用でもあっただろう一番手軽いからな

あ、BBQ用に肉漬けて来たんだ
(肉を焼いて
大蒜と醤油で甘辛だが、どうだ?

でだ、キメンが何かの略だった場合何の略だろう
部外者が見るだけで何があるのだろうか?

心音、玉葱甘くて美味いぞ
茄子は塩とオイルで美味い

…いや、見ることで感染させるのかもしれない(スイカ切りわけ
俺は見たいんだが、心音はどう思う?


楊・暁
【朱雨】◎

グランピングやってみてぇ!
まずはテント建て
えっと…こうして、こうか…?できた!
ふふ、なんか秘密基地っぽくってわくわくするな!

んー…キメン…漢字なら“鬼面”…か?
鬼…なんじゃねぇか?

次はBBQ!俺、初めてだ…!

流石藍夜、頭いいな…!(尊敬
祭りで面被ってる奴、よく見かけるもんな
儀式でもそういう奴いるし…
“中身が誰か”を特定させねぇ為…とか?

ん~…炭火で焼いた肉、美味ぇ…!
藍夜の味つけ大好きだ

略…?
キ…“奇妙奇天烈…MEN”…
…絶対違うな…(恥ずかしさ誤魔化すように野菜食べ

水辺で冷やしたスイカも美味ぇ!
…感染しようがしまいが、止めたら絶対隠れて見に行くだろ?
一緒についてくに決まってる(呆れ



●グランピングとキメン様の謎について
 突き抜けるような青い空に白い入道雲、地平線で青と緑に別れたように見える海。どこまでもトロピカルな雰囲気に溢れた砂浜、夏のレジャーには打って付けな島で、楊・暁(うたかたの花・f36185)は貸し出されたテントを御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)と共に担ぎ、すごい! と耳を揺らす。
「海が見えるし、夜は星が見放題だな! 藍夜!」
「そうだな、心音。コテージタイプもあったがテントでよかったのか?」
 グランピングをやってみたい、という暁の言葉に一も二もなく頷き『良い案だ、心音は賢いな』と、彼の望むままに大型のテントを借り出してきた藍夜が今更ながらに問う。
「コテージもいいけど、やっぱテントの方がそれっぽだろ」
 どうそれっぽいのだろうか、とは思わなかった。暁が言うならそれっぽいのだ、藍夜は恋人……いや、結婚したばかりの妻の言う事ならなんだって聞いてやりたい夫なのだ。
「新妻だぞ、当たり前だろう」
 そうですね、わかる。
「藍夜ー? テント立てるぞー?」
「ああ、手伝おう」
 しみじみとした独り言に返事があったような気がするが気のせいだろうと、藍夜は楽しそうな暁と共にテントの取扱説明書を覗き込んだ。
「えっと……こうして、こうか……?」
「うん、上手。こっちの|キャノピー《ひさし》を立てて……」
「できた!」
 完成したテントは中に荷物を持ち込んでも二人寝転がるには充分な広さがあったし、メッシュスクリーンも付いていて通気性もいい。前室と呼ばれる靴を置いたりアウトドアチェアを置いたりできる場所も広く、快適だ。
「こんなに簡単に立てられるんだな、テントって」
「ワンタッチで展開するテントか……いいな」
「ふふ、なんか秘密基地っぽくてわくわくするな!」
「確かに秘密基地だ」
 帰ったら買う? なんて視線で会話しつつ、藍夜が思い出したようにぽつりと呟く。
「なぁ心音、キメン様ってどんなだろう。やはり鬼か?」
 そう言いつつも、アウトドアチェアを収納袋から引っ張り出し、前室へと設置する。
「んー……キメン……漢字なら『鬼面』……か? なら、鬼なんじゃねぇか?」
 対する暁も、バーベキューコンロをセットしつつ答える。
「だがキ『メン』……メンって面なのか?」
「他に何かあるっけ? メン。っと、次はバーベキューだぞ! 俺、初めてだ……!」
「わざわざ面を作るのは印象操作、『キメン』様自体をそう思わせるためであり、存在の確立と同時に祭という儀式用でもあっただろう。一番手軽いからな」
 面は顔を隠すもの、正体を隠すものだ。
「流石藍夜、頭いいな……!」
 尊敬を滲ませつつ、コンロのセットが完了したと暁が胸を張る。
「祭りで面を被ってる奴、よく見かけるもんな。儀式でもそういう奴いるし……もしかして『中身が誰か』を特定させねぇ為……とか?」
 考察を進めながらも、コンロに炭を入れて着火剤で火を点ける。簡単に点いた火に、バーベキューって思ったよりも手軽なんだな、と暁が藍夜を見れば、近年のグランピングブームも頷けると彼が笑った。
「庭とかでバーベキューもいいな……」
「庭で……!」
 藍夜賢い、流石、と暁が目を煌かせる。
「あ、バーベキュー用に肉漬けて来たんだ」
 自家製のタレでな、と藍夜がいそいそとクーラーボックスからお肉を取り出すと、暁の尻尾がぶんぶんと揺れた。
「いい肉が手に入ってな、折角だしバーベキューで食べるのがいいかと思って」
「最高じゃねぇ? 早く食べたい!」
 火の様子を見て、網にも熱が伝わっているのを確認して藍夜が漬け込んだ肉を焼いていく。勿論、島の野菜と肉、海鮮類も満遍なくだ。
「ほら、心音。熱いから気を付けるんだぞ」
「肉!」
 やった、と紙皿に載せられた肉をふうふうと冷まし、口の中に放り込む。
「ん~……! 炭火で焼いた肉、美味ぇ……!」
「大蒜と醤油で甘辛だが、どうだ?」
「美味ぇ! 藍夜の味付け、大好きだ」
 とろりと蕩けるような笑みを向けられ、漬けてきてよかったなと心底思いながら藍夜も肉を頬張る。
「ん、美味いな。でだ、キメンが何かの略だった場合、何の略だろう」
「略……?」
「あ、心音。玉葱も焼けたぞ、甘くて美味いぞ」
 はい、とお皿に野菜が肉と共に盛られていく。
「ありがと、略……キ……『奇妙奇天烈……MEN』……? や、絶対違うな……」
 思い付いた言葉をそのまま言ってしまった恥ずかしさからか、誤魔化す様に視線を外して野菜を食べる。そんな姿も可愛らしいな、なんて思いながら藍夜が焼いた茄子にオイルと塩をかけて食べ、これと肉を合わせても美味いとしみじみとした笑みを浮かべた。
 肉や海鮮、野菜を綺麗に食べた後は水辺で冷やしておいたスイカを切り分け、僅かな塩と食べる。夏の塩分水分補給にはもってこいなデザートだ。
「しかしキメン……部外者が見るだけで何かあるのだろうか?」
 てきぱきとスイカを切り分け、一番美味しそうなところを暁の皿に載せながら藍夜がふむ、と考え込む。
「何か?」
「たとえば……見ることで感染させる、とか」
「感染……」
 何に、それこそ病であったり、UDCであるならば狂気にかもしれない。少し真剣な顔をして、暁がスイカを齧る。
「水辺で冷やしたスイカも美味ぇ!」
「美味いだろう、一番美味しいスイカをくれって言ったからな」
 藍夜も、暁のその笑みにつられるようにスイカを齧って。
「で、俺は見たいんだが、心音はどう思う?」
「……感染しようがしまいが、止めたら絶対隠れて見に行くだろ?」
「……ははは、そんな」
 じぃ、と暁が藍夜の瞳を見つめる。
「まぁ、あるかもしれないな」
「あるかも、じゃなくてあるんだよ。まったく、一緒についていくに決まってる」
 一人で危ない目に合わせるつもりはないと、暁がスイカの種をぷぷぷ、と皿に出しながら言った。
「心音……!」
「だからこっそり一人でいくなよな!」
 その言葉に、勿論だと藍夜が笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

茜崎・トヲル
【イツメン6】

さいきょーのいんしゅー……
(こそこそ)(ねーねー、スーさん、いんしゅーってなーに?)(ふむふむー?なるほどー!)
つまり、やべーお祭り、フェスってことだね!あと、スーさんは、ぺそーんってならないよーに、ね!(水をわたしーの)(みんなにもくばりーの)(肉焼いてたべーの)

飲み比べ!は、もう出たから、食べ比べ!にしよー!
いつものだね!
このステーキピラフ5kgを、一番はやーく食べられたら、優勝です!
これならやーさんも食べられるね!ね!

えっなになに、スイカバレー?
はーい、アターック!(ちゃんと軽くやったよ!)(あーさんにぶつかるからね!)
あっ、スイカが腐っていく……お酒もそえよっと。


結・縁貴
【イツメン6】
因習に最強も何も無いと思うのは俺だけ??
そうだな…因習と飲酒をかけよう
その心は、飲まれたら終わり
酒飲み比べ、此れは勝つ(上に島民達がドン引きする)ね!
俺は飲めない年だからやらないよ
小雲珠、和やかに全部乗せにするのは止めて

わァ立派な西瓜。崇めるの?担ぎあげようか
マナセ、レシーブ(西瓜をボールの如く投げる
トヲル帅哥、アタック!
応、スー帅哥、ナイスキャッチ
…誰も崇めてないとか西瓜でバレー!?とか言わない(諦観

今回は何でも斬れる人が居ないんだよな
じゃあ眷属方、西瓜割って貰え…わァ
(わくわく顔な眷属方がかみさまごと森から来た。西瓜は割れたが神は死んだ)
…御冥福をお祈りします
(西瓜を供える)


朱酉・逢真
【イツメン6】
心情)トロピカル要素いらンくない? いる? むしろソレが大事? チッ。じゃア"俺の作った因習が最強"コンテストしようぜ。勝ったら|この後《次章》にソレやろう。呼び出される邪神役は俺がやるからよ。はいスタートォ。(映画監督がカチンってやるやつを鳴らす)
行動)とりあえず森に避難するよ。木陰を求めている。皆の因習は|眷属《獣・鳥》どもの目を通して見てっから大丈夫、だから海辺に引き出そうとするなよ…するなって言ってンだろアホ! スットコドッコイ!(眷属のデカい犬たちに善意で運ばれ)ウッ夏の日差しと陽キャの海辺(突然の死)


マナセ・ブランチフラワー
【イツメン6】
因習、因習ですか……
……とりあえず飲んで、食べて、ビームとマイムマイムを……?
スキアファールのそれはビームが出せるんですか??

あ、そういえば、ここに来る前にかみさまから『スイカ利き』のお話を聞きましたよ
みんなで西瓜を持ち寄って、その中から一番いい西瓜を選び、他を叩き壊しながら選ばれた西瓜を崇めるとか……
ちなみにこちらがその選ばれた西瓜だそうです

謎の儀式を経た西瓜で突然バレーをするのも、何というか因習に近いのでは(レシーブ)
かみさまは……木陰に戻して差し上げた方がよろしいかと思いますが……


雨野・雲珠
【イツメン6】
寝かせておいてあげればいいですのに…
ほら、眠い子起こしてもご機嫌悪くて泣いちゃうわけで
だから生贄でご機嫌をとる? そんなぁ

飲み比べに食べ比べにビーム鑑賞
どれも『ぱりぴ』っぽい村の皆さまに受けそうな良案…
じゃあ俺はここに高速マイムマイムを追加します!
えへへ…(突っ込まれて照れてる)
神と人との間に踊りは切って切れぬもの…いわば奉納舞
目を回さず、振り落とされず、
最後まで踊りきれた人がその年の勝者です!

待って、マナセさん待って!
そんなすごいスイカをトヲルくんに振ったら…
あ!加減した!えらい!
ナイスキャッチですスーく…

うわー!眷属を伴って邪神さまがお出でになられ…
なられ…
し…死んでる…!


スキアファール・イリャルギ
【イツメン6】◎
因習って競うものなんでしたっけ??
しかし暑いですね、ぺそーんしないように気を付けねば…
(こそこそ)(因習はですね、昔から続くしきたりのことで…)(主に悪いもののことをそう言いますねぇ)
…まぁつまりはそういうことですね!

ぐっ、飲み食い案が初っ端から出てしまった…!
どうしましょう、私の案はしょーちゃんさんの放つビーム鑑賞くらいしか…
えぇメガリスの力でビームを撃てるんです、今度お見せしますね
はっ、「猫を崇めよ」…ラトナを愛でる会…それも良い…
高速マイムマイム、ここでも出ます!?

おぉっ、ナイス西瓜バレーです!(スイカキャッチ!)
あっかみさまの突然の死…砂でお墓を建てましょう(なむなむ)



●最強の因習決定戦、勝つのは誰だ!?
 トロピカルアイランド……それは魅惑の響き。
 ある者は『よくわからないけど、きっと楽しいやつだと思います!』と言い、ある者は『夏を漫画喫茶できちゃうねー!』と言い、ある者は『それは漫喫で、こっちだと満喫ですね。私はぺそーんしそうですけど』と言い、ある者は『この夏新調した水着が映える場所じゃない? あんまり暑くないといいなァ』と言い、ある者は『皆さんが一緒なら、きっと面白いのでしょうね』と言い、ある者は真顔で『死』と言う――そんな六人六様のトロピカルな一日が始まろうとしていた。

 空はどこまでも高く、海はどこまでも広い。青と碧の境目の向こうには船が、空には白い絵の具を真っ直ぐに引いた様に飛行機雲が見え、真夏の太陽は世界を照らす。
「無理、死ぬ、帰る」
 やってられっかよォ、と朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は早々に木陰の下でデカい犬達を背凭れや日除けにしつつ、フードを目深に被り夏を真っ向から否定していた。
「かみさま、そうおっしゃらず……! 来たばかりですのに」
 それでも、逢真が夏という季節を嫌悪レベルで苦手としている事は知っているので強くも言えず、せめてもと雨野・雲珠(慚愧・f22865)がその辺で拾ったおっきな葉っぱで逢真を扇いでいる。
「そうは言っても坊よ、俺はこの日差しの下じゃ無力だぜ、死ぬ」
「朱酉さんほどではないですが、確かにぺそーんとしても仕方ないくらいの暑さですね」
 木陰の下、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)が水分補給を怠らないようにしなければ、と夏の心得をおさらいするように頷く。
「でもさー、湿度? はそーでもねーから、カラッとしてて過ごしやすいと思うんだよね! ね! あ、でもぺそーんってならないよーにするの、だいじ!」
 クーラーボックスから飲み物を出し、茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)が飲む人ー! と、皆に配った。
「じめッとしてようがカラっとしてようが死ぬ」
「もー、かみさまはすぐそういうー! でもほんと……気が付くと死んでるもんね……」
 かみさますぐ死ぬ、夏は多分マンボウより気軽に死んでる気がする、かみ死、とトヲルがさりげない動きで既に火を熾し済みのバーベキューコンロに肉を並べる。
「トヲル帅哥、めちゃくちゃナチュラルにバーベキューしてるね……」
「夏の海っていったらー、ばーべきゅー! はお約束なんだって!」
 肉肉肉野菜肉肉肉、みたいな割合だな、と網の上にみっしりと並べられた肉を結・縁貴(翠縁・f33070)がまじまじと眺め、いつものことだったと手にしたペットボトルから水分を補給した。
「トロピカル……あの、確か……因習とか言ってませんでしたか?」
 皆と一緒で楽しいな、とふわふわしていたマナセ・ブランチフラワー(ダンピールの聖者・f09310)が思い出したようにその言葉を口にする。
「言ってたなァ、俺は思うンだがトロピカル要素いらンくない? いる? いらンだろ?」
「かみさまわかってないなー! あれだよほら、夏のコトー? といえばトロピカルはバーベキュー並にお約束なんだって!」
「そうなんですか? トヲルは詳しいんですね。お約束というからには必須なのでしょう」
 焼けた肉を遠慮なく頬張りつつ、マナセが、トヲルの言葉にひとつ賢くなったと笑みを浮かべた。
「むしろソレが大事ってかァ……チッ」
「舌打ちが漏れてますよ、かみさま」
 ちょっと大きな葉っぱで扇ぐのが楽しくなっていたけれど、腕が疲れたので雲珠がそっと葉っぱを木陰に立てかけながら言う。
「坊は優しいなァ、あとで小遣いやろうな」
「まだ前にいただいた卵がありますのに……」
「貰えるものは貰っておくといいよ、小雲珠」
 はい、と紙皿を雲珠に渡しつつ、縁貴も肉をつつく。
「よし、じゃア『俺の作った因習が最強』コンテストしようぜ」
「はい?」
 なんて? と、スキアファールが焼けた野菜を取り落としそうになりながら逢真を見た。他の面子もなんて?? 顔である。
「ン? だから『俺の作った因習が最強』コンテストをな。勝ったらこの後にソレやろう、呼び出される邪神役は俺がやるからよ」
 それは多分、この島にいるというUDCよりもそれらしくなるのだろうけれども。
「因習って競うものなんでしたっけ??」
「さいきょーの、いんしゅー……」
 肉を焼く手を少し止めて、トヲルがスキアファールをちらりと見る。その表情にスキアファールも心得たもので、なんでしょうと顔を寄せた。
「ねーねー、スーさん、いんしゅーってなーに?」
「因習はですね……」
 こそこそ、ひそり。
 昔から続くしきたりで、主に悪いものの事をそう言うのだと、スキアファールがトヲルに耳打ちする。ふむふむー? なるほどー? わかったー! と、トヲルの表情がすっかり『わかりを得た』ものになった。
「つまり、やべーお祭り、ヤバフェスってことだね!」
「やばふぇす……でも、その、やばふぇすを開かなければ件のゆーでぃーしーは寝たままなのでは……寝かせておいてあげればいいですのに……」
 どうしてわざわざ寝た子を起こすような真似を? と、雲珠が嘆きながら肉と野菜をバランスよく皿に載せる。
「眠い子を起こしてもご機嫌が悪くて泣きますでしょう? それと同じだと思うんです、俺」
「勝手に起きてくるとヤバいからじゃない? 起きた時に腹が減ってても泣くみたいなさ」
 どう転んでも生贄は必須って話だね! と縁貴が乾いた笑いを浮かべた。
「だから生贄でご機嫌をとる? そんなぁ」
「確かに厄介でしょうね。今まで捧げられてない分も寄越せとなれば、島民……自分達にも被害が出る可能性があるのでしょう」
「だからって観光客を生贄にしていいってわけではないと思いますが、そんな事は知ったこっちゃないでしょうしね」
 マナセとスキアファールが顔を見合わせ、本当に、と言いながら肉を飲み込んだ。
「そこで俺たちの出番ってわけさ、旦那も言ってただろ? 因習は因習でぶっ潰せ、ってなァ?」
 ニヤァと笑った逢真がどこから出したのか映画の撮影スタート時に鳴らすあれ、カチンコを取り出して。
「はい、『俺の作った因習が最強』コンテストスタートォ」
 カチン! と鳴らされた音に、強制的にそれぞれの考えた因習コンテストが始まったのである。
「因習に最強も何もないと思うのは俺だけ?? って、俺が一番手? 相変わらず無茶振りするなァ」
 ほい、と何処からか出されたマイクを渡され、縁貴が引き攣った笑みを浮かべつつ腹を括る。
「そうだな……因習とかけまして、飲酒ととこうか」
「その心はー?」
 落語に多少の心得のある雲珠が合いの手を入れる。
「飲まれたら終わり。つまり、酒の飲み比べ! 此れは勝つね!」
 ちらっとトヲルとスキアファールを見遣り、あの二人にかかれば間違いなく島民達もドン引き間違いなしだろうと縁貴がほくそ笑む。
「あ、俺は飲めない年齢だからね、やらないよ」
 安全圏から見物しようというスタイルである、さすが縁貴。だがしかし! そんな彼の思惑を予想外の方向から突き崩すのがこの男、そう……トヲルである!
「えー、じゃあ次おれね! えーっとー、飲み比べ! は、もう出たから、食べ比べ! にしよー!」
 いつものだね! と、底抜けに明るい笑顔でトヲルが言いながら出してきたものは――!
「このステーキピラフ5kgを、一番はやーく食べられたら、優勝です!」
「トヲル帅哥、それ大食い選手権じゃない? 因習じゃなくない?」
「これも、いんしゅー! それにこれなら、やーさんも食べられるね! ね!」
 圧が、圧が強い。
「さすがですトヲルくん、縁さんを思いやって……!」
「ええ、トーさんは思いやりの塊ですね!」
 手放しに雲珠とスキアファールが褒めるものだから、トヲルはちょっと照れながらもえへへと喜んでいる。
「そうやって小雲珠とスー帅哥が甘やかすからじゃない!?」
「縁、人のご厚意を無下にしてはいけませんよ?」
「マナセ!?」
「ひ、ひ、厚い友情ってやつだねェ、いいぞォ白いの。よし、次」
 次、と言われておずおずと手を挙げたのはスキアファールだ。
「飲み食い案が初っ端から出てしまい、何を出せば……と悩んだのですが……」
 まだ少し悩んでいる、といった風な表情ではあったが出せるものはこれしかないとスキアファールが顔を上げる。
「私の案は、しょーちゃんさんの放つビーム鑑賞です。あ、しょーちゃんさんは超大型のジンベイザメなんですが」
「ビーム鑑賞……スキアファールのそれはビームが出せるんですか??」
「えぇ、メガリスの力でビームを撃てるんです、今度お見せしますね」
「それは……はい、とても見たいです」
 社交辞令などではなく、|本気《マジ》の顔でマナセが言うのを縁貴はまたトンチキのフラグ立てたな……って顔で見ていた。
「飲み比べに食べ比べにビーム鑑賞!! なんと素敵な……」
 どれも良いですねぇ、と雲珠がお肉美味しいですって顔で頷く。
「どれも『ぱりぴ』っぽい村の皆さまに受けそうな良案……さすがイツメンです」
「次は坊の番だよォ」
「じゃあ俺はここに高速マイムマイムを追加します!」
「高速マイムマイム、ここでも出ます!?」
「えへへ……」
 LIN〇っぽいやり取りで出たマイムマイム、もう躍るしかないと雲珠は考えたのだろう。照れながらもマイムマイムについてレクチャーしつつ、熱弁を振るう。
「神と人との間に踊りは切って切れぬもの……いわば高速マイムマイムも奉納舞なんです!」
 ほんとに? って目をして縁貴が逢真を見るが、逢真は鷹揚に頷くだけだ。
 もしここに、残るイツメンの一人がいれば『あれはわかってないけど取り敢えず頷いとけばいいかって顔だよ』と言ってくれたかもしれないが、彼はグリモアゲートの維持に勤しんでいるのでこの場にはいない。つまり――なるほど、マイムマイムは奉納舞なのかもしれないという、そうはならんやろ知識が植え付けられたのである。閑話休題。
「目を回さず、振り落とされず、最後まで踊り切れた人がその年の勝者です!」
「なるほど、年男みたいなものですね」
「サクラミラージュってそんな奇祭ばっかなの??」
「縁さん、これは因習ですので……」
 ね、みたいな顔を雲珠がすれば、にーちゃんがそう言うならそう! とトヲルが後押しするし、逢真は鷹揚な顔で頷くしで、高速マイムマイムは奉納舞ということになったのであった。
「……とりあえず飲んで、食べて、ビームとマイムマイムを……?」
「マナセ、何で全部合わせたの? 和やかに全部乗せにするのは止めて、混ぜるな危険って言う言葉知ってる?」
「朱に交われば赤くなる、なら……」
「手遅れ~~~!」
 だめだ、この島は終わったとばかりに縁貴が諦めたように肉と野菜を食べだす。
「僕は申し訳ないことにみんなのような因習は思いつかないんですが……ここに来る前に、かみさまから『スイカ利き』のお話を聞きましたよ」
「スイカ利きですか? 美味しいスイカを当てる、とかでしょうか。それなら俺、是非知りたいです!」
 スイカ大好きなので! と、雲珠がマナセの話の続きをわくわくしたような顔をして待っている。
「ええとですね……みんなで西瓜を持ち寄って、その中から一番いい西瓜を選ぶんです」
「……普通だね?」
 選び方はどうするの、と縁貴が聞こうとする前にマナセが話を続ける。
「それで、一番いい西瓜以外を叩き壊しながら選ばれた西瓜を崇めるとか……」
「こわ、純粋に怖い」
 何それ、サイコでパスなやつ?? と縁貴が腕をさする。
「そんな……選ばれなかった西瓜も美味しかったかもしれませんのに……」
「小雲珠はそこ????」
「すいかぎゃくさつ事件! いやな事件だったね……」
「あの、それはただのスイカ割りではないでしょうか」
「なんだー、すいか割りかー!」
 虐殺された西瓜はいなかったんだね! とモノクロブラザーズがきゃっきゃしているのを縁貴は絶対違うでしょ、という顔で見ていたし、逢真は然もブラザーズの言う通りと言わんばかりに笑んでいた。
「ちなみに、こちらがその選ばれた西瓜だそうです」
「わァ立派な西瓜。マナセは何でそんな西瓜持ってきたの???」
「えっと……いただいたので、みなさんでと思って」
「食べる気!?」
「ええ、西瓜ですから。あ、でも謎の儀式を経た西瓜で突然バレーをするのも何というか因習に近いのでは」
 思い付いたままに言ってるな、でもヤバそうな西瓜食べるよりはバレーした方がいいかもしれない。
「よし。マナセ、レシーブ」
 縁貴は躊躇う事無く西瓜をビーチボールか何かのように、マナセに向かって投げる。
「はいっ」
 咄嗟の動きでうまくレシーブをするマナセ、西瓜でバレーとか常人からすれば手首が死ぬだろうが彼らは猟兵、ボールが選ばれた西瓜であっても問題はないのだ。ないったらないのだ。
 西瓜は綺麗にトヲルの方へと飛んでいく。
「トヲル帅哥、アタック!」
「あっ待って、縁さん待って! そんなすごい西瓜をトヲルくんに振ったら……!!」
「えっなになに、スイカバレー? はーい、アターック!」
「あぁ……っ!」
 思わず雲珠は目を閉じたけれど、グシャっとかバキャっとかそういう音はしていない。薄っすら目を開ければ、スキアファールが西瓜をキャッチする姿が見えた。
「おぉっ、ナイス西瓜バレーです! トーさんは力加減もばっちりですね!」
「あ! 加減した! えらい、トヲルくんえらいですよ! そしてナイスキャッチです、スーくん!」
「へへー、やればできるってことー!」
 だって、本気でやれば西瓜は壊れるし、なんたってスキアファールに当たってしまうから。トヲルはブラザーズを守る男なのだ。
「ひ、ひひ、いいねェ、いい因習だったよォ」
「本当に見てました???」
 見てたよォ、と手をひらひらした逢真に縁貴が胡乱な目を向けつつも、西瓜を食べようと盛り上がるブラザーズとマナセを見遣る。
「結局食べるのかァ……今回は何でも斬れる人が居ないんだよな」
 さてどうしようか、と考えて、縁貴は逢真の眷属に頼むことにした。
「すいませんがかみさま、眷属方に西瓜を割って貰っても……」
 いいですか、と問おうとした時だった。
 呼んだ? 呼んだ? 呼んだよね、呼んだ! とばかりに逢真に背を貸していたデカい犬が立ち上がった。
「あっこら! 呼んでない、お前らは呼ばれてないンだよ、百歩譲っても俺を連れて行こうとすンな! 海辺に引き出そうとするなよ!」
 だってご主人! 呼んでる! あと砂浜! たのしそー! いっしょにいこー! って感じで尻尾を振った眷属は逢真を乗せたまま皆がいる砂浜へと駆けだしたのだ。
「……するなって言ってンだろ、アホ! スットコドッコイ!!」
 一匹が駆けだせば、他の犬達も駆けだす。そう、それが犬……!!
「うわー! 眷属を伴って邪神さまがお出でになられ……!」
 雲珠がこれが選ばれし西瓜の威力、と目を瞬かせる。
「クソッ! こンな事ならちびすけにしときゃよかった!!」
 木陰を出た瞬間に照り付ける眩しい夏の日差し! 煌めく海辺! 逢真への特攻無限大である。
「ウッ 夏の日差しと陽キャの海辺」
 フゥ……ッと逢真が綺麗に倒れ、そのまま砂浜と|同化《スナァ》していく。
「お出でになられ……し……死んでる……!」
「わ、わァ……」
「あっ、かみさまの突然の死……」
 まさしく突然の死である、犯人は夏。戦犯は眷属。
「砂でお墓を建てましょう、それが私たちにできる精一杯です」
「……御冥福をお祈りします」
 西瓜は眷属の犬がえいっと斬ってくれたので、縁貴が半分まるまるこんもりとした砂の上にお供えしてみる。
「あっ、スイカが腐っていく……お酒もそえよっと」
 お清めお清め! みたいにトヲルがお酒を供えて、残ったスイカ食べよっか! と木陰へ向かう。
「あの、かみさまは……木陰に戻して差し上げた方がよろしいかと思いますが……」
 思うのだが、もうヒトの形ではなく砂になってしまったのでどうしようもない。
「ん-、そのうちふらっと復活するとおもうー!」
「太陽が出ている間は出てこないかもしれませんね……あ、西瓜美味しいです!」
「結局、どの因習にするか決まりませんでしたね。はっ、『猫を崇めよ』……ラトナを愛でる会……それも良いのでは……?」
「ラーさんのかわいさはー、いんしゅーにもまさる! ね!」
 既に逢真が砂になったことなどなかったかのように、ブラザーズが西瓜を食べている。
「あの……いいんでしょうか……?」
 マナセが控え目に、縁貴に問う。
「……いいんじゃない? 多分帅哥達が慣れるくらい、夏場は死んでるんだと思うよ」
「そういうものなのでしょうか……いえ、そういうものなのでしょうね」
 夏の風物詩のように――そう言って、マナセは夏の太陽を見上げたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルフィード・クローフィ
【雲蜘蛛】

わぁ!!海だーー!!
本当に綺麗だねー
ふふっ、環ちゃんの方が海のキラキラがうつってキラキラしてるよー!
ん?速い!!何だろー
うんうん、ジャットスキーって言うんだね!
じゃ乗っちゃおう!!

運転はこうやってあーやって
何となくわかった!!
じゃしゅっばーつ!
おぉ、海の上を走ってる
速い!速い!!
環ちゃんこっちこっち!!
イルカさんがいるよーー
追いかけてるみたいで楽しいね!!

あっちのバナナボートも楽しそうだよ!
バナナの形だね!
これに乗ってずっとつかまえてたらいいみたい
ヨイショと環ちゃんを先に乗っけて
自分も後ろに乗る
おぉ、こっちも凄い速いねー
落ちそうになるねー
あっ、アレにぶつかりそう!
環ちゃんを抱きしめてそのまま海の中にどぶーん
あはははっ、落ちちゃた!
ごめんね!大丈夫?
そうなの?それは良かった!
また遊ぼうね!


雨絡・環
【雲蜘蛛】◎

なんとうつくしい海の色でしょう
眩い程ね
ま、お上手
アルフィードさんのお姿こそ眩いわ
蒼天浮かぶ入道雲のように真っ白ですもの

……あら、あらあら
ご覧くださいなアルフィードさん
海を何かがあっという間に駆けてゆきました
あれは何でしょう?じぇっと、すきー?
なんて楽しそうな
試してみませんこと?

わたくし、機械仕掛けはさっぱりですけれども
一先ずここを押せばよろしいのね
アルフィードさんはお分かりになります?
ま、お早い
はい、出発です
あらまあ
なんと爽快でしょう
風が心地よい
はい?まあ、入鹿魚ですか
でも少々お待ちくださいましね
其方に行先を曲げるのはどうしたら?
大変楽しゅう御座いました
長生きはするものですねえ
いえ悪霊なのですが

ばなな、ぼーと
確かに形が似ています
恐れ入ります
掴まっているだけならわたくしでも安心
ええ此方も速いですが
より海に浮かんでいる感覚があって違う楽しさ
?アルフィードさん
正面に何か……あら?

何かに包まれたと思えば
くるり視界が反転して水の中へ
……まあ、何という事
今のが一番楽しかったかもしれません



●トロピカル・バカンス
「わぁ!! 海だーー!!」
 目の前に広がる、どこまでも澄んだマリンブルー。空を見上げればスカイブルーのキャンバスに白い絵の具で描いたような入道雲、それは普段見る景色とは違っていて、アルフィード・クローフィ(仮面神父・f00525)は思わず喝采の声を上げたし、雨絡・環(からからからり・f28317)は感嘆の声を零していた。
「なんとうつくしい海の色でしょう、眩い程ね」
「本当に綺麗だねー」
 銀色の瞳を細めてそう言う彼女をちらりと見遣れば、その瞳には海の青がキラキラと映っていた。
「ふふっ、環ちゃんの方が海のキラキラがうつってキラキラしてるよー!」
 海に負けないくらい、綺麗だねとアルフィードが屈託なく笑うから、環は口元を手でそっと隠して微笑む。
「ま、お上手。わたくしにはアルフィードさんのお姿こそ眩いわ」
「え、俺ー?」
「ええ、蒼天浮かぶ入道雲のように真っ白ですもの」
 ほら、あのように真っ白、と入道雲を指さして環がアルフィードに視線を向けた。
「確かに俺の水着は白いけどー」
 そう言いつつ、蜘蛛と雲だねと笑った。
 暫しの間並んで海を眺めていると波飛沫を上げて海の上を駆け抜けていく何かが見えて、環が瞳を瞬かせる。
「……あら、あらあら。ご覧くださいなアルフィードさん」
「ん?」
 環の視線の先を追えば、飛行機雲のように海の上に白い跡を残して駆けていく何か。
「速い! 何だろー」
「何でしょう? あっという間に駆けてゆきました」
「追ってみよー!」
「ええ、行ってみましょう」
 謎の何かを追うように、二人は浜辺を歩いていく。
「アルフィードさん、あそこ」
「何だろう、バイク? みたいだね」
 乗っていた人を見れば、海の家と呼ばれる休憩処へと向かっていくのが見えて、そのまま視線で追っていけば『ジェットスキー・水上バイク貸出有り〼』の文字が見えた。
「じぇっと、すきー? 水上ばいく?」
「うんうん、どうやらジェットスキーとか、水上バイクって言うみたいだね!」
「なんて楽しそうな……ねえ、アルフィードさん」
「何だい、環ちゃん」
 彼女の視線を真っ直ぐに受け止めて、次に言う言葉なんて予想が付いているだろうにアルフィードが楽し気に笑う。
「試してみませんこと?」
「いいね! じゃ、乗っちゃおう!!」
 すいませーん、と海の家へと入り、レンタルできるかを問う。本来であれば免許が必要らしいのだけれど、そこは猟兵。無理強いをすることもなく、すんなりと借りることができ運転の仕方も簡単にレクチャーしてもらうことができた。
「ふむふむ、なるほどー」
「わたくし、機械仕掛けはさっぱりですけれども、アルフィードさんはお分かりになります?」
 一先ずはここを押せばいいという事だけはわかったのだが、他がさっぱりだと環が悩まし気に首を傾げる。
「うん、運転はこうやってあーやって、何となくわかった!!」
「ま、お早い」
 救命胴衣を身に付けて、アルフィードが運転席へと座る。
「さ、環ちゃんは後ろに乗って!」
「二人乗りができますの? では、運転はアルフィードさんにお任せしても?」
「もっちろん! しっかり掴まっててね!」
 では遠慮なく、と同じく救命胴衣を身に付けた環がアルフィードの後ろに座り、彼の腰に手を回す。
「準備はいーい?」
「ええ、いつでもよろしいですわ」
「じゃ、しゅっぱーつ!」
「はい、出発です」
 スロットルレバーを握れば、水上バイクは徐々にそのスピードを上げて海の上を走っていく。
「あらまあ……! なんと爽快でしょう!」
「おぉ、海の上を走ってる! 速い! 速い!! これ、たのしーねー!」
 エンジン音と海を掻き分け走る音に負けないような声を上げながら、二人は楽しい、風が心地いい、と大きな声ではしゃいで笑う。水上バイクにブレーキはない為、レバーの握り加減で減速したり加速したりを繰り返しているとアルフィードが何かを見つけて環へと叫んだ。
「環ちゃん、こっちこっち!!」
「はい?」
 こっち、と言われた方を見れば何かヒレのようなものが見える。
「イルカさんがいるよー!」
「まあ、入鹿魚ですか」
 いるか、と環が言うとまるで応えるかのようにイルカがジャンプをしてみせた。
 並走するように泳ぐイルカに、二人思わず笑みが浮かんでくすくすと笑って暫くの間イルカとの海上逢瀬を楽しんだ。
「イルカと追いかけっこしてるみたいで楽しかったね!」
「ええ、大変楽しゅう御座いました。長生きはしてみるものですねえ」
 長生きと言っても、環は悪霊なのだけれど――それでも、永らえただけの楽しさがそこにはあったのだ。
「次は環ちゃんが運転してみる? 浜辺まで戻るくらいなら難しくないと思うよ」
「そうですねえ、アルフィードさんが教えてくださるなら何とかなるような気がしてきました」
 やってみましょうか、と前後を交代し、いざ出発しようとして環がアルフィードに問う。
「あの、少々お待ちくださいましね。あちらに行先を定めるのはどうしたら?」
「それはこうだね!」
 二人羽織のようにして、アルフィードが後ろから環の運転を助けつつ、二人は無事に浜辺へと帰還したのだった。
 戻ってきた二人が次に楽しそうだと向かった先は、水上バイクで牽引するバナナボートに乗せてくれるというマリンアクティビティだ。
「ばなな、ぼーと。確かに形が似ています」
「うん、バナナの形だね! すっごく楽しそうだよ、乗ってみよう!」
 アルフィードに促され、バナナボートの前まで進む。
「これに乗ってずっとつかまってたらいいみたい」
 ここに取っ手があるからね、と言われて見れば確かに掴まる場所があった。
「掴まっているだけならわたくしでも安心ですね」
「じゃ、失礼して……ヨイショっと」
 ひょいっと環を抱き上げて、アルフィードがバナナボートの上に乗せる。
「あら、恐れ入ります」
「どういたしまして!」
 環が乗れたのを確認すると、その後ろに自分も座って準備は完了だ。
 準備ができた事を確認したボートの運転手が出発しまーす! と二人に声をかけ、水上バイクのエンジンをふかして動き出す。ぐん、と引っ張られるような感覚に身体を持っていかれそうになりつつ、その速さにまた二人が楽し気に声を上げた。
「おぉ、こっちも凄い速いねー! 運転しているのとはまた違う感じだねー」
「ええ此方も速いですが、より海に浮かんでいる感覚があって違う楽しさで……」
 波にバナナボートが弾んで、ふわり浮くような感覚もまた楽しいと環が笑う。
「でも、気を抜くと落ちそうになるねー」
「ふふ、しっかり掴まっていなくてはね」
 暫しその感覚を楽しんでいると、正面に何か見えてアルフィードが身構える。
「あっ、アレにぶつかりそう!」
「? アルフィードさ……」
 回避行動を取ろうとした水上バイクの遠心力に持っていかれそうになった瞬間、環は何かに包まれる。そしてそのまま、何かと思うよりも前にくるりと視界が反転し――水中にどぼんと落ちたのである。すぐに救命胴衣の浮力によってぷかりと浮きあがれば、アルフィードが後ろから自分を抱き締めているのがわかって後ろを振り向く。
「アルフィードさん」
「あはははっ、落ちちゃった! ごめんね! 大丈夫?」
「アルフィードさんが守ってくださったのね、ありがとう」
「咄嗟にね、つい」
 環を抱き締めて、海の中に落ちたのだとアルフィードが笑う。
「……でも、ええ、わたくし」
 何という事かしら、と環が口許を押さえる。
「今のが、一番楽しかったかもしれません」
「そうなの? あはは、それは良かった!」
 なんだかおかしくなってきて、二人でふふふ、あははと笑い合っていれば、バナナボートが近くまで戻ってきてくれたので再び乗り直して浜辺へと戻る。
「海って、とても楽しいものですのね」
「環ちゃんが楽しかったなら、俺も嬉しいよ! また遊ぼうね!」
「ええ、また遊びましょう」
 約束、と二人暮れゆく海を前にして、指切りをして。
 次もきっと、楽しい事を一緒にと視線を交わし、太陽が沈んでいくのを静かに眺めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『悪霊』

POW   :    共食い
戦闘中に食べた【他の個体】の量と質に応じて【自身の傷を癒し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    ミーム拡散
自身が【一般人に認識されたこと】を感じると、レベル×1体の【新たな悪霊】が召喚される。新たな悪霊は一般人に認識されたことを与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    不滅
自身が戦闘で瀕死になると【相手の記憶を元に生成された新たな悪霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●それぞれの因習
 太陽の光を反射してキラキラと光っていた海は宵闇に沈み、空には月と星が浮かぶのみ。昼間の喧騒は鳴りを静め、祝祭の夜がやってくる――。
 祭りが行われるのは島の中腹にある神社で、神社に続く道には提灯が吊るされている。海から見るその景色はどこか非現実的な美しさがあって、まるで炎に惹かれ飛び込む虫のようにふらりと足を向けたくなるのだとは、過去に参加した観光客の弁だ。
 参加する島の人々は面で顔を隠して祭事を行うが、観光客はそのまま訪れて貰うのも特徴のひとつだろうか。時折、選ばれた観光客は祭事に参加し神社の奥から繋がる洞窟へと案内されることがある――なんて噂もあるのだが、それが真実であるかどうかは謎のままだ。
 何せ、洞窟の奥へ向かったことがあるという観光客が現れることがないのだから。

「今年の仮装はホラーで行こうと思うんやがね、どうじゃろかねぇ」
「流行じゃろ、ホラー」
「五年前はトロピカルを全面に押し出してなぁ、ハワイアンダンス風やったけぇ」
「あれもなぁ、盛り上がったんやけどな」
 TVが入ってしまったが故に、生贄とする観光客を洞窟へは連れていけなかったのだと祭りを取り仕切る島の者が言う。
「ほんじゃぁよ、今年はホラーで行くべな」
「キメン様が寄越してくださるなんやね、あのあれと丁度よかろうて」
「あのようわからんお手伝いさんかね」
「似たような恰好で歩きまわってよ、神社の方さ追い立てりゃええ」
「そいじゃ、それで決定っちゅーことで!」
 細かい事は各々で、それっぽい恰好をして観光客を怖がらせつつ神社まで連れていけばいい。行き当たりばったり感が所々に滲み出ていたが、何せここはトロピカル|☆《因習》アイランド。
 緩さが売りみたいなものなので島民達は全く気にしてはいなかったし、キメン様から使わされるお手伝いさん――『悪霊』達も大して気にしたりしなかったのである。
 けれど、この祭りに紛れて観光客が生贄にされるのは紛れもない事実。猟兵達は彼の因習を断ち切る為に立ち上がる――!

※※※

●できること
 1・島民が扮する『悪霊』に対し、俺の考えた最強の因習をぶちまける。
 島民が扮した『悪霊』は猟兵達を観光客と思っていますので、ゾンビホラーよろしくお祭りが行われる神社の方へ追い立てようとします。これにダメ出しをしつつ、本物の因習ってものを見せつけてやってください。

 2・UDCである本物の『悪霊』と対峙する
 因習はちょっとよくわからないなって方向け、『悪霊』は島民とは違って多少生贄を傷付けようとも神社の奥へ観光客を連れて行こうとします。これを守って戦う、または自分達に襲い掛かってきた『悪霊』を倒すといった行動が可能です。

 1と2、どちらを選んでも進行に変わりはありません。
 好きな方を選んでぶちかましてやってください、2でトンチキしたっていいですし、1でシリアスしてもいいです。
セラ・イーズデイル

心)全力で逃げるわぁあああ!!(ホラー展開大の苦手)

行)いやあああ!!(オネエ全力の絶叫)トロピカルで因習なアイランドってこういうことだったのぉ!?無理無理、無理なんだけぉおおお!!寄らないで気持ち悪いわ!!怖いわ!!

…とかアタシが叫びながら逃げてたら目立つでしょぉ?一般人観光客もびっくりなくらい叫んで騒いでアタシにタゲ集中させてあげるわよぉ、冗談じゃなくって本気で怖いけどぉおお!!一般人守っちゃうアタシ偉いわああ!!(半泣き)

いい感じに集まってきたらジャグリングナイフ投擲するわぁ。当たっても当たらなくてもいいわよぉ、UCの発動条件は【使えば】いいんだものねぇ!
さぁ此処からが見せ場よぉ!!



●とってもホラーなアイランド!
 釣りの成果は上々、お願いした料理もとっても美味しかったのに、何故こんなことになっているのか。
「いやあああああああ!!!」
 全力でオネエの絶叫を上げ、ドップラー効果を伴いながらセラ・イーズデイル(行楽殺人鬼・f40633)が走る。
「無理ィィィィィ! トロピカルで因習なアイランドってこういうことだったのぉ!? 無理無理、無理なんだけどぉおおお!! 寄らないで気持ち悪いわ!! 怖いわ!! やめてこないで!! 酷いことするつもりでしょぉ!!!」
 そんな彼の後ろを追い掛けていくのは『悪霊』達で、その見た目に反して意外と速い、振り切れない、絶望じゃない!? とセラが涙目になりながら叫べば、お祭りに行こうとしていた他の観光客達が思わず足を止めてセラと悪霊達を見送るのが見えた。
 その姿をちらりと確認し、悪霊がそちらへ行かずに自分を追い掛けてくるのを見て、セラが逃げながらも小さく笑う。
「ふふふ、こうやってアタシが叫びながら逃げてたら目立つでしょぉ?」
 そう、これもセラの作戦の内。悪霊の目を自分に惹き付け、一般人である観光客達に被害が向かわないようにしているのだ。
「アタシってばなんて健気なの! 猟兵の鑑ねぇ、間違いないわぁ!」
 なんて言いながらも人気のない場所へと走るセラであったが、こうも独り言が大きいのはそうでもなければやっていられないからである。冗談などではなく、本気で怖いのだ。
「なのに一般人守っちゃうアタシ偉いわああ!!」
 これは新しいバスピス君グッズを買っても許される、間違いない。
「そう考えれば少しは……」
 ちらっと後ろを振り向けば、ぞろぞろといい感じに集まっていて――控え目に言っても怖い。
「やっぱり怖いわぁあああ! もう、そろそろいいわよねぇ、ねぇ!?」
 誰に言うともなくそう叫ぶと、振り向くことなくジャグリングナイフを悪霊に向かって投げた。
 当たっても当たらなくても構わない、そんな風に投げられたナイフは失速することなくまるで悪霊を目掛けるかのように的確にその額に突き刺さる。ここで漸く、悪霊達は自分達が追い掛けていた者が大人しく連れ去られてくれるわけではないと悟ったのだろう、セラの投擲によって額を割られた仲間を躊躇う事無く喰いだしたのだ。
「うえぇぇぇ気持ち悪ぅっ!! 共食いってやつなのぉ!?」
 エグいしグロい! と、次々にセラがナイフを放つ。
「あんた達が減るのと、こっちのナイフが尽きるの、どっちが早いか勝負ってねぇ!」
 ここからが見せ場だと、セラが不敵な笑みを浮かべて悪霊達に再びナイフを投げ放つのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
アドリブ可
【WIZ】

祭りの雰囲気も風情があって素晴らしいですね。(因習さえなければ)

島民達を監視させている【追跡眼】は夜の闇にも移り。
僕は「眼」を通じ様子を視ているので、危険が迫っている一般の方々を護る為に祭事に紛れます。

島民の前で興味津々といった雰囲気を出し、祭事に参加します。
こういった人物が狙われるのはよくある話ですから。

【指定UC】は一般の方を中に入れて、避難通路のようにして運用します。
僕と共に結界を張ったノクスが出口を知っているので、安全圏へはノクスに導いてもらいます。

僕とツキはオブリビオンの殲滅です。
ツキ、存分に暴れて構いませんよ。
僕も炎の魔術(【属性攻撃】)で敵を焼き尽くします。



●夜は祭り、それから悪霊と共に
 旅館で美味しいお料理を頂いたあと、お祭りがあるのだと仲居さんに聞いたシン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は『ツキ』を伴って島の中腹にあるという神社を訪れていた。
 道中、お面を被り『悪霊』らしき恰好をした島民と出会ったが、神社へ行くのだと言えばあっちの方だと親切に教えてくれて、手を振って別れるという平穏さ。いささかこちらが拍子抜けする程であったが、これもトロピカルアイランドだからと思えば納得もいくというもの。
「それにしても、祭りの雰囲気も風情があって素晴らしいですね」
 そう、祭り自体はテレビが取材に入りたいとやって来るほどのもの。神社に来るまでの道は提灯が吊り下げられて、どことなく非現実感があった。都会の喧騒を忘れたい人々には受けがいいのだろうとシンは思う。
「それも因習さえなければ、ですが」
 他の場所にいる観光客は他の猟兵に任せ、神社にやってきた他の観光客の安全を優先すべく動く。
「これが祭事を行う場所なのですか?」
「おお、お前さん興味があるのかい?」
「ええ、とても。神秘的というか……心惹かれるものがあるな、と」
 そうかそうか、と人の好さげな顔をして、祭事を手伝う島民が頷く。
「それならよ、中に入ってみるけ?」
「いいんですか?」
 掛かった、とシンが本音を押し隠しながら笑みを浮かべる。
「ああ、他にも興味のある子らと一緒に連れてったるよぉ」
 他、と言われたのは祭りに参加しにきた一般人だ。
「さ、こっから入るんだ。洞窟内に灯りがあるでな、そのまま進んでいけばええ」
 洞窟の入り口から見送る島民に促されるままに進み、途中でシンが|隔絶結界《スタンドアローン・キューブ》の力を開放する。それは即座に外の世界と全く同じ風景の異空間となる迷路を作り出し、一般人を隔離する。
 出口を知っている月と夜の精霊ノクスに案内を任せ、現れた悪霊を前にシンがツキへと声を掛けた。
「ツキ、存分に暴れて構いませんよ」
『いいだろう、喰った肉の分は暴れてやる』
「ふふ、お願いします」
 そう言いながら、シンも赤い魔法石の指輪を嵌めた左手を悪霊へと翳す。
「不浄は焼き尽くすに限りますからね」
 鮮やかなまでの炎が悪霊を包み込み跡形もなく消し去るその横で、ツキが鋭い爪と牙を振るい、次々と悪霊を殲滅していく。
「さて、この奥に……キメン様とやらがいるのでしょう。行きますよ、ツキ」
 因習の原因となるUDCを倒すべく、シンとツキは洞窟の奥へと向かう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
◎【トンチキ大歓迎】
【2】

いやーバカンスしそびれたかな?
なんてーかすっごいアウェー感バリバリ、お仕事だけモードじゃねぇかよ。
乗る船が一便違うってこういう事になるなんてなぁ……。
ま、その分「おみやげ」は十分用意できたし、お手伝いさんには丁寧にお礼しないとね!

他の観光客と一緒にさも一般人でございって、水着姿で同行しようじゃないの。
ちなみに、クーラーボックスも持ってだね。
そしてガチの悪霊がご挨拶してきたら、
思わず「キャーっ!!」と叫んでボックスの中の「おみやげ」をぶちまけるよ。
……そう、サメの脳みそをね。

ヤバい港町出身なめんな、
【これがアタシの禁じ手!!】さ。
さすがに一般人相手にゃ使えないからね!



●遅れた詫びは手土産で
 トロピカルタイム、というのは南国の方では珍しくもないもの。二時間に一本の便が三時間に一本になったりだって、島民からすればよくあることなのだが――。
「いやー、まさか乗る船が一便違うだけでこういう事になるなんてなぁ……」
 船着き場に到着した数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)がクーラーボックスを肩に担いで思わず、と言った風情で呟く。
「いや、これ完全にバカンスしそびれたな?」
 とっぷりと暮れた空、島の中腹へ誘うように揺れる提灯、楽し気に歩いていく観光客……多喜でなくとも思うだろう、コイツはアウェー感バリバリだぜ! と。
「お仕事だけモードじゃねぇかよ、嘘だろ。青い空白い雲、透き通る海はどこいっちまったんだよ」
 あと二時間早ければギリ間に合っただろうに、これが……トロピカルタイム……!
 そんな洗礼を受けつつも、多喜は持ち前の明るさですぐに気を取り直す。
「ま、その分『おみやげ』は充分用意できたし、お手伝いさんとやらには丁寧にお礼しないとね!」
 スポーティーな水着の上に、夜でも目立つ黄色いTシャツを腹の辺りで捲り上げて結ぶと、よし! とクーラーボックスを担いで歩き出す。さも最初からいました! みたいな顔をして観光客に紛れ込むと、UDCを警戒しながら歩き出した。
「あ、あれじゃない? 宿の人が言ってた神社まで案内してくれるホラー風の人!」
「え、すっごい特殊メイク、ヤバいじゃん、テーマパークじゃん」
 なんて声を聞いて、多喜がそちらへ視線を向ける。見れば、島民が化けた『悪霊』の中にガチもんの『悪霊』が混じっていて、靴紐が解けた振りをしてしゃがみ込んだ。
 観光客達は島民が化けた悪霊と共に神社へ向かっていき、UDCたる悪霊が自分へと向かってくるのを確認して多喜がほくそ笑む。さりげなくクーラーボックスの留め具を外し、悪霊が多喜へとその手を伸ばした瞬間――!
「キャーーっ!!」
 と、多喜が怖がる一般人を装ってクーラーボックスの中身を悪霊達へとぶちまける! 飛び出たのはサメの脳みそ、悪霊達は『!?!?!?!?』みたいな戸惑いを見せながら、何故かくっついて離れないサメの脳みそに動きを鈍らせる。
「アタシのお土産は気に入ったかい? これがあたしの禁じ手ってやつさ」
 この島がヤベートロピカルアイランドなら、多喜の出身はヤベー港町。鮫の脳みそを手に入れるくらい朝飯前って寸法だ。
「ま、そのおかげでバカンスを逃しちまったんだけどね……っと、もう聞こえてないか」
 悪霊に命中したサメの脳みそは癒着した拒絶反応の塊となって悪霊へと突き刺さり、彼らを絶命させていた。
「やっぱ悪霊よりサメの脳みそだよね!」
 因習よりも恐ろしいのはサメの脳みそだったのかもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茜崎・トヲル
【イツメン5】1

(ぐったりやーさんのまわりに氷をいっぱいならべてました!)(あついからね!)(あと白い線もひいといたよ!)(やーさん領地!)

あっ、インシュー、はじまった?行かないとだねー、兄ちゃん!
兄ちゃん?!(ひめい!)(兄ちゃんがおっけいなら、ばっ!て、おぶっていきます!)(マーさんと、スーさんに、合流!)
みんなー!ぶじー?!

結界かー!聖者なマーさんが言うなら間違いないね!おれ?おれはダメ聖者だから!
よーしっ、スーさん、手、つないでもいー?(スーさんは触られるのあんまりだから、声をかけてからにします!)
おおーっ!みんなはじきとばされてく!すごいすg ウワーッ高波!!


朱酉・逢真
【イツメン5】
心情)虎兄さんが暑さにやられて木陰でおやすみだ。毛皮あるとタイヘンよな。殺されたので次の俺に託そう。前任は雑魚い反逆者だったが、今回の俺はイケる気がしないでもない。マア宿交換してンだが、皆には言ってねェし言う必要もなかろ(*と逢真は思っている)。砂が波に持ってかれて海からドーンと出たみてェな雰囲気で行くよ。
行動)皆が因習的マイムマイムしてくれるンで、ソレに合わせて海からドーンと出るよ。この状態だとまともに話せねェから話さない。軽い高波で追っ手を押し流そう。ガチモンの悪霊はそのまま波で攫っていくからよォ。沈め、沈め。


雨野・雲珠
【イツメン5】
(でっかい葉っぱで縁さんに風を送っている)
やや、因習の時間のようです…行ってまいりますね

って、キャーー!?
ワッ……や、ヤダー!
(悪霊の見た目が超怖かった)
(あわあわ逃げ回り、ぴょんとトヲルくんに飛びついて皆に合流)
みなさま!てっ、…て!手をつないでください!
言わせていただきますがその見た目!
明らかに何か失敗してるじゃないですか!
見せてやりましょう…本当の因習力ってやつを!

わーー(マイムマイムマイムマイム、でずんずん前に出る)
わーーー(戻る戻る)(とても楽しい!)
って、きゃあああああーーーーー!!?
なんか出た!なんか出ましたよ!これ俺たちのせいですか!?
しっ……鎮まりたまえーーー!


マナセ・ブランチフラワー
【イツメン5】
トロピカルと言うだけあって、気温も高いですからね。縁にはゆっくり休んでいていただきましょう。

因習には因習を、でしたっけ。一般人にスイカバレーは少々危険ですし、高速マイムマイムは良いと思います
円で囲むことは簡易的な結界になる気もしますし、高速でぐるぐる回っておけば、悪霊くらいはね飛ばせるのでは?(※ノリと勢いで言っています)
等と言っていたら、脅かし役の方が来ましたね。大丈夫ですか雲珠、トヲルとスキアファールもこちらに。手を繋いで回りましょう
回りつつ進んでいたら、わっ、波が。もしやスキアファールの言うとおり、高速で回転することによる遠心力で因習力が……あ、これかみさまなんですか??


スキアファール・イリャルギ
【イツメン5】◎
暑いですからねぇ…縁さんはゆっくり休んでくださいね
(クーラーボックスに氷とボトルを入れる)

朱酉さんはそろそろ復活される頃でしょうか…
はっ、雲珠さん大丈夫ですか!?
これは…お化け屋敷やホラーゲームでよくある、儀式失敗パターン!

マナセさんがそう言うと納得しかけるんですが、
高速で回って悪霊を吹き飛ばすのは結界ですか? 遠心力とかでは??
確かトーさんも聖者、えっダメ聖者? そんなー
はい大丈夫ですよ、どうぞ(※親しい人でも突然触られるのは苦手

わっ、これ早すぎ、わーー!?(バランスを崩しかける
やっぱりこれ遠心力で吹き飛ばしてますよねって何か出たーッ!?
わ、私は今日はフラグ立ててませんよ!



●高速マイムマイムは儀式であるが故に
 浜辺での楽しかったバーベキュー、よくわからない厳選されたスイカで行ったスイカバレー、走り出すかみさまの|犬達《眷属》、夏の日差しと陽キャの香り漂う海辺に殺されたかみさま――そんな凝縮された夏の一日は終わりを告げ、夜が来ようとしていた。
「縁さんがダウンしてしまわれましたね……」
 木陰の下で倒れ込んだ縁を雨野・雲珠(慚愧・f22865)が大きな葉っぱで扇ぎ、茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)が大きな氷を並べている。
『毛皮あるとタイヘンよな』
 砂地に朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)の言葉が文字として浮かび上がり、それを読み取ったマナセ・ブランチフラワー(ダンピールの聖者・f09310)が重々しく頷く。
「トロピカルと言うだけあって、気温も高いですからね。縁にはゆっくり休んでいていただきましょう」
「暑いですからねぇ……縁さんはゆっくり休んでくださいね」
 クーラーボックスに氷と飲み物の入ったボトルを入れ、彼の傍に置いたスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)が尻尾だけで返事をした縁を労わった。
「でーきた!」
「何ができたんですか? トヲルくん」
 一生懸命にぐったりと倒れ込んだ縁の周囲を整えていたトヲルに、雲珠が問い掛ける。
「やーさん領地!」
 白い線が横たわる彼の形に引かれている――雲珠は何かに気が付いた様に扇ぐ手を止めた。
「これは……殺人現場!」
『白いのが犯人、はい解決』
「なんでー!?」
 おれは過ごしやすいようにと思って整えただけなのに……! と、無垢な幼女のような瞳がスキアファールとマナセを見遣る。
「ええと……線が黒なら良かったかもしれません!」
「次回から黒で引くと事件性は低いかもしれませんね」
「そっかー! じゃあ次はー黒でー!」
 そういう問題じゃなくない? と縁がぶっ倒れてなかったら言ってくれただろうし、今もゲートを開いているであろう煙草屋の店主も何かしら言ってくれたかもしれない。でもこの場にはいない、そう――ボケしかいないのである!
『ウケル』
「うけている場合ではないですよ、かみさま。そろそろ因習の時間のようです」
「あっ、インシュー、はじまった? 行かないとだねー、兄ちゃん!」
 トヲルが膝に付いた砂を払い、雲珠がそっと大きな葉っぱを置くと白線で囲まれ氷を周囲に配置された彼に向かって言う。
「……行ってまいりますね」
「おれ知ってる! こういうの、クラゲがたったって言うんだよね!」
「トーさん、それを言うならフラグですよ」
「何のフラグが立ったんでしょうね……?」
 首を傾げつつも、マナセが島の中腹に向かって灯った提灯の火を眺めた。
 準備は万端、いざ祭り会場へと雲珠が顔を上げ足を踏み出し――。
「って、キャーーー!?!?」
 絹を裂くような雲珠の悲鳴! 即座に反応したのはトヲルだ。
「兄ちゃん?!」
 視線を向ければ、何処から現れたのか悍ましい姿をした『悪霊』達が雲珠の行く手を阻むように……否、その手を掴み、連れ去ろうとするかのように取り囲んでいく。
「ワッ……や、ヤダーー!」
 あわあわと逃げ惑い、悪霊に捕まる寸前という所でトヲルが雲珠の目の前に走り出る。
「兄ちゃーん!」
「トヲルくん……っ!」
 乗りな! みたいに背を向けたトヲルに雲珠が飛びつくと、おんぶスタイルでトヲルがスキアファールとマナセの方へと走った。
「雲珠さん、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫です、ありがとうトヲルくん……!」
 涙目の雲珠がトヲルに礼を言いつつ、スキアファールの言葉に頷く。
「マーさんとスーさんもぶじー?!」
「ええ、こちらはなんとか……とはいえ、これでは時間の問題というやつですね……神社に行く前に彼らに捕まってしまうでしょう」
「これは……お化け屋敷やホラーゲームでよくある、儀式失敗パターン!」
 ホラーゲームも斯くや、という感じで増えた悪霊達がこちらに向かってくるのが見える。このままでは因習の餌食になるのは火を見るよりも明らか、みたいな状況。幸い、観光客がこの付近にいないのだけが救いだろうか。
「因習には因習を、でしたっけ」
「マナセさん? 落ち着いている場合ではないのでは……ハッ、マナセさんには何か考えが……!?」
 落ち着いているというか、ぽややんとしているというか、自然体というか、とにかくマナセは深く考えずにスキアファールに頷く。
「僕、思うのですが。一般人にスイカバレーは少々危険ですし、高速マイムマイムが良いと思います」
 高速マイムマイムという言葉に、雲珠が確かにとトヲルの背中から降りた。
「円で囲むことは簡易的な結界になる気もしますし、高速でぐるぐる回っておけば、悪霊くらいはね飛ばせるのでは?」
 マナセは自信に満ちた顔をしているが、これ多分何も考えてないしノリと勢いだけで言っている。
「マナセさんがそう言うと納得しかけるんですが、高速で回って悪霊を吹き飛ばすのは結界ですか?  遠心力とかでは??」
「結界かー! 聖者なマーさんが言うなら間違いないね!」
「そうなんですか? 確かトーさんも聖者……」
「おれ? おれはダメ聖者だから!」
「えっダメ聖者? そんな、トーさんはダメではありませんよ!」
「そうです、トヲルくんはダメじゃないです、イイネ! です!」
 即座にブラザーズから否定が入る、えへへーおれの兄弟めっちゃイイネ! って顔をしてトヲルがえへえへとしている。思わずほっこりしちゃったんだな、でもほっこりしている場合ではない。
「これが……兄弟愛、というものなのですね」
『ツッコミがいない弊害やべーな』
 砂地の文字がそんな事を言うと、ハッとした雲珠がじわじわと距離を詰めてくる悪霊達を前にして皆を見る。
「みなさま! てっ、……て! 手をつないでください!」
「ええ、手を繋いで回りましょう」
 差し出された雲珠の手をマナセが取り、マナセの空いた手をトヲルが繋ぐ。
「よーしっ、スーさん、手、つないでもいー?」
「はい大丈夫ですよ、どうぞ」
 突然触れられるのは親しい人でも苦手としているスキアファールにトヲルが問うと、頷いてその手を取った。そして、雲珠から俺ともお願いしますと差し出された手を繋げば――四人高速マイムマイムの完成である!
 そう、四人で。本来であればマイムマイムとはもうちょっと多めの人数で踊るものではないだろうか。だがしかし、ここには四人しかいないのだ。かみさま? まだ砂になってるよ。
 皆と手を繋いだ雲珠は、きりっとした顔で悪霊に向かって言い放つ。
「言わせていただきますがその見た目! 明らかに何か失敗してるじゃないですか!」
 恐怖を煽るには充分な見た目だが、雲珠には関係ない。だってめっちゃくちゃ怖かったのだ、逆ギレである。
「みなさま、見せてやりましょう……本当の因習力ってやつを!」
「わぁ、兄ちゃんがぷりぷりしてる! これはやるしかないねー!」
「ええトーさん! 雲珠さんの仇を……仇は変ですかね?」
「大丈夫でしょう、やってしまえば皆同じですよ」
 何が同じなのだろうか? 全くわからなかったが、逢真が砂地にサムズアップをでかでかと浮かび上がらせたので、多分同じなのだ。知らんけど。
「いきますよ!」
「おー!」
「お、おー!」
「はい!」
 途端流れ出すのはマイムマイムの音楽、提供は逢真の眷属である。
「わーーー」
 マイムマイムの音楽に合わせ、踊りながらずんずんと悪霊の方へ出ていく。四人の輪は大きくなったり小さくなったりしながら、足元ではステップを踏みながら時計回りにどんどこ回る。その勢いは音楽が速くなるにつれ合わせて速くなり、コーヒカップみたいなことになっていた。
「わーーたのしー! みんなはじきとばされてく!」
 弾き飛ばしているのは概ねトヲルなのだが、これはもう新しい遊び! みたいな気分だ。
「わっ、これ早すぎ、わーーー!?」
 スキアファールがバランスを崩しかけると、トヲルが絶妙なフォローを入れて四人の高速マイムマイムが立て直される。
「あの、これ、やっぱり遠心力で吹き飛ばしてますよね!?」
「スキアファール、これが僕たちの因習……きっとそういうことですよ」
 否定するものは誰もいなかった、テンションがぶち上がってきてるのだろう。バイブスアゲアゲみたいなやつ。
「わーーーー」
 雲珠はもう楽しくなってしまって、頬を赤くしてはしゃいでいる。高速マイムマイムは止まらない――!
 さて、逢真はといえば砂になってから効果的に姿を現すにはどうすればいいか、と考えていた。
『夏に|殺《ヤ》られちまったからなァ、次の俺に託そう。前任は雑魚かったが、今回の俺はイケる気がしないでもない』
 何を根拠に言っているのかといえば、まず夜である。そして、目の前は海だ。
『海なら、アレがいいな』
 砂地に文字を浮かばせて返事をするのがウケたので、特に皆には言ってはいないが既に宿は交換したあと。前の宿が砂に――細かく言えば砂になったわけでもないが今は不要であろう、|本神《本人》は言う必要もなかろ、と思っているのだが説明を省くのは逢真の悪いところだ。
 しかしそう、指摘する者もいないので好き放題なのだ!
『お、いい高波が来たじゃないか』
 四人の高速マイムマイムは最高潮を迎え、UDCたる悪霊をバッタバッタとなぎ倒している。残っているのは僅かな数の悪霊と島民が化けた悪霊であろう。波が砂を攫い、引いた瞬間を狙い――。
 海より、それは来たのだ。
『《驍?m縺。縺?▲縺励g縺ォ》』
 高速マイムマイムを奉納舞とし、高く高く水飛沫を上げ、姿を現したのは六本の腕を持ち人面の浮く海蛇の下半身を持つ、強大なる神であった。
「ウワーッ高波!! って、ナンカ・スゴイ・デカイ!」
「わ、あの、あ、何か出たーッ!?」
 輪の角度的に一番にそれを目にしたのはスキアファールとトヲルで。
「きゃああああーーーーーー!!?!? なんか出た! なんか出ましたよ! これ俺たちのせいですか!?」
 次に雲珠が目の当たりにし、そして最後にマナセがマイムマイムを止める事無く見上げた。
「もしやスキアファールの言うとおり、高速で回転することによる遠心力で因習力が……? こう、海に眠るなんたらを呼び起こしてしまったみたいな……?」
「わ、私は今日はフラグ立ててませんよ! 立てたのは雲珠さんでは……!?」
「お、俺ですか!? え、あっと……しっ……鎮まりたまえーーーーー!」
 さぞかし名のある神とお見受けなんちゃらかんちゃら、とか言いそうになりつつ、雲珠がよくよく海より現れ出でた何かを鎮めようと見れば、ひらひらとこちらに手を振っているのが見えた。
「あ、あれ?」
 なんだかとっても親近感が湧くような……よく見れば見た事のあるお顔立ちのような……それにあの瞳は――。
「あ、か、かみさまーー!?」
「え、あ、ほんとだーーー! かみさまじゃん!!」
「あ、これかみさまなんですか??」
「これは初めてお見掛けする姿ですね」
 そうとわかれば安心安心、と四人はマイムマイムを踊るのを止めて逢真に手を振り出した。
「あれかなー、かみさまのー海のすがたってやつ!」
「なんとかモンスターみたいな感じですか? 僕はよく知りませんが」
「空のお姿があるのですから、海のお姿があっても不思議ではないですね!」
 トヲルとマナセの言葉に、雲珠がきゃっきゃとはしゃぐ。
「あれ……先程の高波で悪霊がいなくなってますね」
 そういえば、とスキアファールが辺りを見回すと、残っているのは変装がはげた島民のみ。ガチモンの悪霊は逢真がそのまま波で攫って沈めてしまったのだ。
「ど、どうですか! これが高速マイムマイムの因習力です!」
 ハッとした雲珠が島民達に因習力を見せつけると、トヲルとスキアファール、マナセも同じように高速マイムマイムは島民達が行う因習よりも強いのだと知らしめる。
「なんてこったぁ……わしらは間違ってたのか……」
 高速マイムマイムに負けた、と打ちひしがれる島民が今後どうなるのかはわからないが、できれば改心してくれたら……と雲珠が願いながら逢真を見上げた。
「あの、ところでかみさま」
 呼び掛けに、巨大な姿になった逢真が小首を傾げる。返事をしないのは、この姿ではまともに話せないからだ。
「そのお姿もとってもかっこいいと思うのですが……このあとは、どうなさるんですか?」
「あー、そのすがたじゃー、神社まではいけないもんねー」
「神社の奥に洞窟があると言ってましたから、僕らはそちらに向かいますが……朱酉さんはどうしますか?」
 スキアファールにそう言われ、逢真は一本の腕で神社を指さす。
「これはきっと……僕らに先に行け、ということではないでしょうか」
 いい感じに察したマナセが言うと、逢真が鷹揚に頷く。某煙草屋店主がいれば、あれは何も考えてなかったけどそういうことにしておこうって顔だよ、と言ったかもしれないがここにはいないので、全員が納得して神社へと向かうべく走り出した。
 逢真はといえば――どうすっかな、このあと。なンも考えてなかったわ、とこちらもノリと勢いと雰囲気だけでやり切った感を出しながら、四人の後ろ姿を見送ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
2(悪霊には悪霊をぶつけるんだよ!)
引き続き『疾き者』で

因習ってのは『性別違いの双子が生まれたら、男の方を殺せ』もそうでしょうからね、馴染みあるんです
私の家(外邨家)の決まりでしてねー。私(外邨義紘)が該当者だったんですけどねー。助かった代わりに、母が死にました
(命懸けの加護を与えた。出産直後に動いたら、そりゃあ…)
私が生涯独身だったのも、その延長線上のことですよ。外邨は一子だけで…私には甥がいたのですから
(外邨の女が産んだ子は、外邨の血が確実にひくため)

さて、来ましたねー
ええ、陰海月、出ていらっしゃい
踊って光って…いやー、癒やしですよねぇ
そしてまあ…漆黒風を投擲していきますかねぇ
ああ、ちょっと光を反射するようにした四天霊障(つまりは極彩色)で潰すのもいいですかねー?


陰海月「ぷきゅ!」
陰海月の『トロピカル』への語感印象…それが『カラフル』だったので、じゃあUC使って光って踊ろう!と考えてた
義透はそれを告げられてたので知っていた
というわけで、ゲーミングなクラゲダンスである



●トロピカル因習にゲーミングクラゲダンスを添えて
 なるほど、これがこの島の因習ですか……と馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)――今回この島に訪れているのは、彼の四つある人格のひとつ『疾き者』だが――が、しみじみと『悪霊』が生贄を求めて観光客を探す姿を見て呟く。
「因習ってのは、どこにでもあるものなのですねー」
 生贄を神に捧げるのもその一つであれば、義透にも一つ覚えがあった。
「私の家の話で恐縮なのですが『性別違いの双子が生まれたら、男の方を殺せ』というのも、因習にあたるのでしょうねぇ」
 のほほんと言う事ではないが、馴染みがあると義透が目を細める。
「ろくでもないとは思いますが、そういうものだったんですよ。きっとこの島も、そうなのでしょうね」
 人の死で成り立つ繁栄、その恩恵にあやかる者達からすれば島民でない者の命など砂粒よりも軽いのだろう。
「まぁ、|私《外邨義紘》が該当者だったんですけどね」
 殺せと言うだけの理由も確かにあったのですがと、義透は僅かに目を伏せる。では、何故殺されずに済んだのかといえば、母のお陰だと言うより他にない。双子である妹と共に生きていられたのは、母が命懸けの加護を与えてくれたからだ。
「私が助かった代わりに、母が死にましたけれど」
 出産直後にそれだけの加護をとなれば、文字通り命懸けだったのだろう。
「子を想う母の愛……ですかねぇ」
 想像に過ぎないが、産まれたばかりの我が子を救わんとする母の想いは何よりも強かったのだと思う。
「私が生涯独身だったのも、その延長線上のことですよ」
 外邨の地を途絶えさせないという点においては、自分にとって甥にあたる妹の産んだ子がいた。だから、自分が子を成す必要はなかった。
「因習なんてものがなければ、とは思うこともありましたけどねぇ」
 今となっては全てが過去だ、自分は気が付けば悪霊として他の三人と共にあるのだから。
「悪霊が悪霊退治……そう考えるとおかしなものがありますね?」
 なんて言いながら、義透は現れた『悪霊』に向かって笑った。
「私がいうのもなんですが、随分と……ええと、今の時代で言うとホラー? というんでしたか。そんな感じですねぇ」
 このくらい、自分からしたら可愛いものではあるが。
「さて、それではお相手致しましょうか。陰海月、出ていらっしゃい」
『ぷきゅ!』
 あまりにもこの場にはそぐわないような可愛らしい鳴声が響き、義透の影から大きなミズクラゲが姿を現した。
『ぷきゅきゅ?』
「ええ、陰海月の思う通りにやっていいですよ」
『ぷきゅー!』
 合点承知! とばかりに、陰海月がふよふよと悪霊達の前へと出る。それから、少し考えるような仕草をして――光り出したのである。
「いいですねぇ、今は夜ですから灯りに丁度いいです」
『ぷっきゅ!』
 さらには様々な色――正確に言うと1680万色、いわゆるゲーミングカラーと認知されているものにそっくりな光り方――で発光しながら、ゆらゆらと可愛らしく踊り出す。
「踊って光って……いやー、癒やしですよねぇ」
 ぱちぱちと拍手をして義透が陰海月を褒めれば、ますます陰海月が張り切って踊り出す。
 ちなみに、何故陰海月が光って踊り出したのかといえば、陰海月の『トロピカル』への語感印象が『カラフル』だったからである。
『ぷきゅきゅ~』
 ぴかぴか、ふわ~~。
『ぷきゅぷきゅ~』
 目まぐるしく光ってはゆらゆら、ひらひらと踊る陰海月を義透は心底楽しみながら棒手裏剣『漆黒風』をどこからともなく取り出す。
「おや……あなた方は楽しんでいないご様子ですねー?」
 のろのろとした動きを見せる悪霊達に微笑んで、漆黒風をひとつも的を外す事無く投げていく。投げながら、何かに気が付いた様にその手を止めた。
「ああ、ちょっと光を反射するようにした四天霊障で潰すのもいいですかねー?」
 どれ、と霊障を起こしつつ試してみれば陰海月の放つ光をいい感じに反射した……つまりは極彩色の霊障が悪霊達を襲う。
『ぷきゅー!』
 その輝きに陰海月が更にテンションを上げたのか、ご機嫌に光りながら優雅に可愛らしく踊って――極彩色の霊障で悪霊達を倒し終わった義透が、うちの子が可愛すぎますねぇと満足気に拍手を送るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルフィード・クローフィ
【雲蜘蛛】

悪霊でも色々あるんだね!
だって環ちゃんって和風美人さんだし
可愛いから怖くないよー
他の子達も可愛いもの!
本当に怖いのは生きてて他の人を利用したりしてる人!

風習かぁ
日本も他の国でもあるんだね、生贄って
ふむふむ、怖がったふりだね!
わぁーー!!怖いよー環ちゃーん!
環ちゃんあっちに逃げよう!!
あっ!!人がいる!!助けてーー!!
こんな感じかな?
おぉ、環ちゃんの風習ってどんなのだろう楽しみ!

彼女の説明をにこにこと聞いている
相手さんが飲むのを迷っていると
環ちゃんのお手製ドリンクを飲んで
んー、美味しいよ?
それでも飲むの苦手?
じゃ俺の国の風習なんだけど
神に捧げたモノの血を飲むと神の力が宿るだって
牛さんや豚さん達が普通なんだけど此処は人なんだよね?
だったら自分の腕をナイフで切り
真っ赤な血の杯を見せて
こっち飲む?

飲んでぐったりした人達を見ながら
あっ!環ちゃん!!
血止まんなーい!
勿体無い?環ちゃん飲む?
はぁーい!ごめんなさい!


雨絡・環
【雲蜘蛛】

可笑しいこと
化生であり悪霊であるこの身を
悪霊に扮して脅かそうだなんて
結局恐ろしいのはヒト、と申しますねえ

之も心尽くしのもてなしと言えましょう
先ずは怖がり逃げるふりを
はい、彼方ですね
わたくしもこわぁい
暫しお付き合いした後に
お礼にわたくしの知る因習をお伝え致しましょう

「干杯」という言葉をご存じ?
器の中身を全て飲み干すべし、というしきたりですの
そして此方は下が丸く置けない盃…可杯と申します

そう、器に継がれたお酒は必ず飲み干さねばなりません
ただこのご時世、強引にお酒を勧める訳にも参りませんでしょ?
ですのでわたくし
じゅーす、を持って参りました

取り出だしたるは此方
薄紅色に深緑色のもじゃもじゃが浮かぶ汁
林檎じゅーすです
林檎をぎゅうっと絞った、十割の林檎、じゅーす、ですわ
さささ、飲み干して下さいます、…よね?
ま、アルフィードさん
うれしいわ
皆さまも如何?お嫌?まあ、いけず

あらあら
立ち昇る命の香りが芳しい
手にした懐紙で傷を押さえて
だめよアルフィードさん
勿体ないわ
だぁめ
斯様な誘い文句を言っては、めっ



●げに恐ろしきは
 わー、という顔をしてアルフィード・クローフィ(仮面神父・f00525)が悪霊に扮した島民を遠目から眺める。
「悪霊かー」
「ふふ、可笑しいこと」
 アルフィードの隣で雨絡・環(からからからり・f28317)がくつりと笑う。馬鹿にしている様子もなく、ただただ可笑しいのだと口元を手で隠して笑っている。
「環ちゃん?」
「化生であり悪霊であるこの身を悪霊に扮して脅かそうだなんて」
 ね? と環がアルフィードにまた違う笑みを浮かべた。
「そういえば、環ちゃんも悪霊だった! なんかあれだね、悪霊でも色々あるんだね!」
「色々?」
 うん、とアルフィードが頷く。国によって悪霊の姿形というのは違うもの。共通する点といえば、一般的な感覚で言えば姿形がどれも|悍《おぞ》ましいといったところだろうか。でも、とアルフィードが環を見て笑う。
「環ちゃんって和風美人さんだし、可愛いから怖くないよー」
「あら、ありがとうございます」
「それにね! 他の子達も可愛いもの!」
「ふふ、悪霊ですのに?」
「うん、それぞれに可愛いポイントがあってねー」
 アルフィードがいう所の『可愛いポイント』彼にしかわからないポイントではあったけれど、環は楽しそうに聞いていた。
「でね、俺は思うんだけど本当に怖いのは生きてて他の人を利用したりしてる人!」
「結局恐ろしいのはヒト、と申しますねえ」
 人の悪意や執念、執着は生霊となる事だってあると環もこくりと頷く。
「この島もそうだね、勿論人を利用しているUDCが悪いのはそうなんだけど」
「わたくしもそう思います、その意志にのったのはヒトですからねえ」
 一般人には抗うのが難しい相手だ、それもわかる。けれど、いつの間にかそれが当たり前になってしまったならば――。
「風習、因習とはよく言ったものですわ」
「風習かぁ」
 日本に限らず、神に生贄を捧げるのは他の国でも古代よりある風習だろう。それこそ、豊穣や地鎮、治水の為に人柱を捧げるのもそうだ。
「そう考えると観光客って打って付けなんだろうね」
「自分達に害はありませんものね」
 恐ろしいこと……と環が言い、すっと指を向ける。その先には悪霊に化けた島民がこちらに向かってくるのが見えた。
「之も心尽くしのもてなしと言えましょう」
「うーん、サービス精神なのかな?」
「ふふ、そうかもしれませんね。先ずは怖がり逃げるふりを致しましょう」
「ふむふむ、怖がったふりだね!」
 そういうのは得意だよ! とアルフィードが笑って彼女の手を取った。
 島民達は見慣れぬ二人を見て、観光客だと判断したのだろう。やや緩慢な動きでそれっぽさを演出し、低い唸り声のようなものを上げて二人に迫る。
「わぁーー!! 怖いよー環ちゃーん!」
「わたくしもこわぁい」
 身を寄せ合い、怯える振りをする二人に島民達は気をよくしたのか、サービスのように両腕を上げて襲い掛かる振りをする。
「環ちゃん、あっちに逃げよう!!」
「はい、彼方ですね」
 島民を引き離しすぎず、かといって本気で逃げていると思われるような距離を保ちつつ二人で走る。
「なんだかちょっと楽しいね」
「ええ、少し」
 茶番ではあるのだが、テーマパークでハロウィンなどの時期に行われるホラー系のショーはこんな感じなのかもしれない、とひそひそ声で笑った。
「あっ!! 人がいる!! 助けてーー!!」
「あら、アルフィードさん。彼方も悪霊の方達ではないかしら」
「え、あ、ほんとだー! どうしよー!」
 挟まれちゃった! なんてわざとらしく言いながら、アルフィードと環が立ち止まった。
「この辺でいいかな?」
「そうですね、他の人もいなさそうですし」
 ひそひそ、ひそりと内緒話をして、頷き合うと悪霊に化けた島民達に環が微笑む。そうなれば戸惑うのは島民達だ、いい感じに追い立てていた観光客が囲まれているというのに怯えずに微笑んでいるのだから。
「とても楽しい催し物でした、お礼にわたくしの知る因習をお伝え致しましょう」
「おぉ、環ちゃんの因習ってどんなのだろう、楽しみ!」
 わくわく! といった表情でアルフィードが環の話を待つ。島民達も、なんだかよくわからない圧のようなものを感じたのか顔を見合わせつつ大人しく聞いてみることにした。
「ふふ、そんなに怖い話ではないのですよ」
 気負わずに聞いてくださいませ、と環が話し始めた。
「皆様は『千杯』という言葉をご存じ?」
 それは穏やかな声でありながら、どこかひたりと迫る怖さが滲む美しい声であった。
 逃げ出すなら今だったのかもしれない、けれどその声に抗う気にもなれない。島民達は夏の夜だというのに、冷や汗をにじませながら話の続きを待つ。
「これは器の中身を全てのみ干すべし、というしきたりですの。そして此方は下が丸く、置きたくとも置けない盃……|可杯《べくはい》と申します」
 環がそう言いながら取り出したのは独楽のような形をした盃で、確かにそのまま置いてしまえば傾いて倒れてしまうようなもの。
「ふふ、お気付きです? そう、器に注がれたお酒は必ず飲み干さねばなりません」
 そうでなければ、酒が零れてしまうから。渡されたなら、それが|どんな酒であっても《・・・・・・・・・》飲まねばならないということだ。
「ただこのご時世、強引にお酒を勧める訳にも参りませんでしょ?」
「あ、俺知ってるよー。アルコールハラスメント、略してアルハラっていうんだよね!」
 にこにことして聞いていたアルフィードが嬉々として答えると、その通りだと環が頷く。それを見て、島民達は酒を飲まされる事はないのだと、ほっと胸を撫でおろす。
「ですので、わたくし」
 パン、と軽く手を打ち鳴らし、環が何処からともなく何かが入った四合瓶ほどの大きさの硝子瓶を取り出した。
「じゅーす、を持って参りました」
 ジュースだと言いながら、環が硝子瓶を見せる。月明かりと、辺りに吊るされた提灯の灯りで目を凝らすまでもなく中身が見えて――。
「ひっ」
 息を吸い込む様な、悲鳴のような声が島民から上がる。
「林檎じゅーすです」
 薄紅色に、深緑色のもじゃもじゃとしたものが浮かんだ汁の入った硝子瓶を持ち、環が微笑む。
「中の、中のそれはなんだい、もじゃっとした、それ」
 勇気ある島民が声を振り絞り、問う。
「林檎をぎゅうっと絞った、十割の林檎、じゅーす、ですわ」
 一言一言区切るように、幼子に言って聞かせるかのように、環が林檎ジュースだと答えた。
「林檎ジュースにはそげなもん入っとらんやろ」
「まあ、まあまあ……飲んだことがございません? でしたら是非、飲んでみてくださいな」
 美味しいですよ、と有無を言わさぬ雰囲気で環が島民に杯を持たせ、林檎ジュースを注ぐ。
「さささ、飲み干してくださいます、……よね?」
 お面の下の顔色が真っ青になっていくのを感じながら、島民達は首を横へと振る。
「あら……飲みません? 杯、置けませんのに」
 困りましたわね、と環が呟くとアルフィードがひょいっとその杯を島民の手から取り、迷わずに口を付けて飲み干す。
「んー、美味しいよ? 林檎ジュースの味がするしね!」
「ま、アルフィードさんったら……うれしいわ。さ、皆さまも遠慮なさらずに如何? お嫌?」
「美味しいよー、それでも飲むの苦手?」
 苦手? という声に、島民達がぶんぶんと首を縦へと振った。
「まあ、いけず」
 こんなに美味しい林檎じゅーすですのに……と環が溜息を小さくひとつ。
「そっかぁ、残念だね。こんなに美味しいのに」
 くぴ、ともう一杯飲んだアルフィードがいい事を思いついたと柔らかな笑みを浮かべる。
「じゃ、俺の国の風習なんだけどね」
 そうしてアルフィードが滔々と語り出したのは、こんな話だった。
「神に捧げたモノの血を飲むと神の力が宿るんだって」
「神に捧げたモノの……」
 島民達が思い描いたのは、今まで捧げてきた観光客達の姿。その血を飲めば、神と同じ力が? と、島民達の気配が変わる。
「そうだよ。俺の国だと牛さんや豚さん達が普通なんだけどね」
 牛や豚の血……と島民達が目を合わせる。病気になったしないのか、なんていう心配のようだがアルフィードはお構いなしに話を進めていく。
「でも、此処は人なんだよね? ああ、丁度いいかも」
 そう言って、アルフィードが自分の腕を見せ、取り出したナイフの先ですっとなぞった。途端、流れ出すのは真っ赤な血、それを飲み干した杯に注ぎ、島民達に見せる。
「こっち、飲む?」
 それはまるで誘惑のようであった、抗うこともなくまるで魅了でもされたかのように島民達が我先にと争うように杯を奪いあい、仮面を捨てて口を付けて。
「あらあら、林檎じゅーすよりも生贄の血の方がいいなんて」
 浅ましくも可愛らしいこと、と環が笑う。
「う……なんだか気分が」
「立ってられん……」
 次々にぐったりと座り込んでいく島民達を眺め、アルフィードが冷たく輝くようなエメラルド色の瞳を細めた。
「自業自得、というのですよ」
「あっ! 環ちゃん!! 血止まんなーい!」
「全くもう、アルフィードさんもアルフィードさんよ」
 立ち昇る命の香り、それは芳しく香って環がこめかみを軽く押さえる。それから、ひとつ溜息をついて懐から出した懐紙で彼の腕の傷を押さえた。
「だめよ、アルフィードさん。勿体ないわ」
「勿体ない? 環ちゃん飲む?」
 いとけない子どものような物言いに、環がぴしゃりと答える。
「だぁめ」
「だめ? 勿体ないって」
「だめ、斯様な誘い文句を言っては、めっ」
 めっとされて、アルフィードがぴしっと姿勢を正した。
「はぁーい! ごめんなさい!」
「仕方のない方ね、許してあげます」
「ありがとー!」
「さ、血が止まったらいきましょう」
 神社のその奥、洞窟を抜けた先に、と環が神社を見遣った。
「悪いものは根本から絶たないとだもんね」
「ええ、アルフィードさんの言う通り」
 そうして二人は歩き出す、提灯の灯りが続く神社の先へ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御簾森・藍夜
【朱雨】1◎

―最高だ

おい見ろ心音こんな“よくある”が全部盛だ夏休みとクリスマスと正月が一気に来た感じだ俺は知ってるんだなんだあの爺さん婆さんがゾンビかゾンビだな惜しいメイクが下手だ一つここは俺がゾンビの真似でもいややめよう追われるのなら追うそれだけだろうそうだろう行くぞ心音ガチの方も良いがこれはやはり島民を追おうそうだ追うべきだ俺は問わねばキメン様を!!!

向かってくる悪霊に扮した島民へ全力ダッシュ
一人捕まえては次へ、虱潰しに心音と尋ねてゆく

追ってキメン様とは何だ!鬼の面での顔隠しか!それとも鬼の面自体が神なのかそれとも何かを封印したのが鬼の面なのか!それとも!鬼ですら!ない!のか!

いいか、神というのならば神であるとはっきりしろ!
俺のように追いかけてきたらどうするつもりだ!
いいか、一人でやるな
逆だ、集団で一人を囲め
そして捕まえ頑張れば解ける括りを…そう、こうだ
仮面被せて“お前が次のキメン様じゃ”ってな!!


暴くものがある…最っ高だ!
これが夏休みの課題ってもんだ自由研究だ自由研究!な、心音!


楊・暁
【朱雨】1◎

そういや耳と尻尾は島民驚かせちまうかなぁ
帽子と服で隠しておこう

ああいう藍夜はいつものこと
楽しそうな藍夜を見てるのは好きだ

って、ちょ、藍夜…!(慌ててついてく
島民の“どうにかしてくれ”って視線には困り顔しか返せねぇ…
ごめんみんな…俺、藍夜が嬉しい事の方が優先だから
甘んじて受け止めてやってくれ

ふと昔聞いた話を思い出す

あ、それで被った仮面が外せなくなるんだろ?
外すためには“生娘の生き血”が必要で
仮面によって祟りの力も得たそいつは、村人を脅すんだ
生娘を寄越せ、さもなけば祟る、ってな
で、何人もの村娘が送られるんだけど、もっと寄越せって言われて
そのうち村娘もいなくなって村の外の娘を襲って捧げるようになる
…そうしてその村の周辺には
“一際漣が大い夜は、娘は外を出歩いちゃいけない”
“キメン様にさらわれて心の臓を食われてしまうからね”

何で詳しいかって?
…俺がそのキメン様だからな(にやりと笑い耳と尾出し

なーんて冗談…あれ?じいさん?大丈夫かー?
へぇ、自由研究ってこういうもんなのか…(やったことない



●楽しい大人の自由研究
 夕焼けが地平線の向こうへと沈むのを眺めながらテントの前室に置いたアウトドアチェアに座り、焚火を囲みながら串に刺したマシュマロを焼いて食べる――最高のグランピング体験をしつつ、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)が楊・暁(うたかたの花・f36185)へと優しい笑みを向ける。
「美味いか? 心音」
「うん、焼いたマシュマロってこんなに美味ぇんだな、藍夜!」
 一口サイズのマシュマロではなく、大きなサイズのマシュマロにはふはふと齧りつく暁を眺めて、俺の奥さん可愛いなとしみじみ思いつつ藍夜も程よく炙ったマシュマロを齧った。
「心音、これを……こうしてビスケットでチョコと一緒に挟むのも美味いぞ」
「!? そんな食べ方が……!」
 スモアを前にし、暁の瞳がキラキラと輝く。
「これも甘くて美味ぇな!」
「キャンプの醍醐味だな」
 とろりと溶けたチョコにマシュマロが合うし、ビスケットの食感がまたアクセントになっていて美味しい。すっかり夕食後のスイーツに夢中だった暁だが、太陽が沈んで辺りが暗くなるとそれまでのゆるりとした表情を引き締めるようにして藍夜に視線を向けた。
「そろそろだよな、祭りの時間」
「ああ、丁度ほら――神社までの道に灯りが点いたみたいだぞ」
 どの道からも迷わぬよう、誘い込むように灯された提灯が揺れている。
「そういや耳と尻尾は島民を驚かせちまうかなぁ」
「可能性は否定できないが」
「ん、帽子と服で隠しておく」
 ピンと立った狐耳を帽子で隠し、ふさふさの尻尾は少し窮屈だが服の中へとしまう。
「準備はいいか? 心音」
「いつでもいいよ」
 では、と藍夜がエスコートするように手を差し伸べ、暁がその手の上に自分の手を重ねると灯りを目印に歩きだす。少しばかり歩くと、悪霊の姿を真似た島民達が二人を見つけたのだろう。他の島民に合図するかのように手に持っていた灯りを揺らすのが見えた。
「おい見ろ心音……」
「ああ」
「――最高だ……!」
「……そうだなぁ」
 俺にはよくわからないけど、藍夜がそう言うならそうなのだろうと暁が集まってくる悪霊の恰好をした島民を見遣る。どうもその仮装の出来には個々の差があって、出来栄えがいい者からちょっと残念な者、それはもう悪霊ではないのではないか? みたいな恰好の者までと幅広い。
「これが南の島ってやつなのか?」
 方向性が合っていれば良いというものではない、と暁は思うけれど藍夜はといえば――。
「こんな……こんな『よくある』が全部盛りだと……!?」
 めちゃくちゃに目を輝かせていた、スモアに齧りついていた暁よりも輝いていると言っても過言ではない。
「夏休みとクリスマスと正月が一気に来た感じだ俺は知ってるんだなんだあの爺さん婆さんがゾンビかゾンビだな惜しいメイクが下手だ一つここは俺がゾンビの真似でもいややめよう追われるのなら追うそれだけだろうそうだろう行くぞ心音ガチの方も良いがこれはやはり島民を追おうそうだ追うべきだ俺は問わねばキメン様を!!!」
 ワンブレスである、これには近付いていた島民を思わず動きを止めるというもの。
「藍夜、藍夜、息継ぎはしよう、な?」
「ああそうだな心音、ゾンビのメイクだけは修正案をだしてやるべきだな」
 そうじゃねぇんだよな~~~~!!! という仕草で島民達が藍夜を見た。
「うん、それはそうだな、教えてやるのはいいと思う」
 それでいいの~~~~??? という仕草で島民達が今度は暁を見る。視線を感じた暁は軽く首を傾げるが、島民達の気持ちは伝わっていない。だって、こんな風になる藍夜はいつものことだし、楽しそうな彼を見るのが暁は好きなのだ。
 夫が楽しいと思う事を全力で肯定する、なんて出来た嫁なのだろうか。藍夜は幸せを噛み締めつつ、突撃目の前の島民達! を敢行した。
「行くぞ、心音!」
「って、ちょ、藍夜……!」
 そんなに一気に距離を詰めても大丈夫だろうかと思いつつ、暁は全力ダッシュで島民の一人へと接近する彼に慌ててついていく。
「そのお面は何だ! キメン様とやらと同じものなのか! 鬼というにはいささか不十分な造形……いや大分違うものではあるが、何か意味があるのか!?」
「えっ」
「えっじゃない、聞いているんだ答えてくれ!」
「えぇ……」
 ちらっと、助けてほしそうに島民が暁を見るが、暁は困り顔をするのみだ。
「俺の心音を見るな、いいな?」
「ハイ」
 圧が、圧が強い――!
「で、そのお面についてだが!」
「これは自分らで作ったもんで」
「自作か! ということは元になった面があるということだな!?」
「あるかなしかで言われればあるけども」
「いいぞ!!! 他には?」
 他に話すような事はないと困った風な島民にこれ以上聞けることもないか、と他の島民を捕まえて次々に藍夜が質問をぶつけていく。
「ではお前!」
「ひっ」
「キメン様とは何だ! 鬼の面での顔隠しか! それとも鬼の面自体が神なのかそれとも何かを封印したのが鬼の面なのか! それとも! 鬼ですら! ない! のか!」
「き、キメン様はキメン様だで……」
「だから! それが何かと聞いているんだ!」
「わ、儂らにとってはこの島の神様で……」
「神なのに鬼なのか!? どうなんだ!」
 もう勘弁してほしい、と詰め寄られた島民が暁をちらりと見遣った。
「俺の心音を見るな、いいな?」
「ハイィ!」
 そんな繰り返しを見ながら、暁は控えめに声を発する。
「ごめんみんな……俺、藍夜が嬉しい事の方が優先だから甘んじて受け止めてやってくれ」
 ストッパーがいない――! 絶望を感じながら島民達が次々に藍夜からの質問攻撃の凄まじさにへたり込んでいく。
「次はお前……それはもう悪霊でもなんでもないぞ、間違ったゾンビメイクだ。だが丁度いい、ご老体はこの島に住んで長いのだろう?」
「へ、へぇ……産まれてからずっとこの島だで」
「よし! ではキメン様だ、鬼なのか神なのか、神というのならば神であるとまずそこをはっきりさせろ! 俺のように追い掛けてきたらどうするつもりだ!」
 普通は追い掛けてこないし、逃げ出すのだがという雰囲気で島民達が顔を見合わせる。
「いいか、まず一人でやるな。逆だ、集団で一人を囲め」
 なんだろう、どうして俺達は生贄として追い立てるはずの相手に正しい生贄の追い詰め方を教えられているんだ?? と島民達の困惑は続く。
「そして捕まえたなら、頑張れば解ける括りを……そう、こうだ」
 こんな風に、と島民の一人を何故か持っていた麻縄のようなもので括る。
「どうだ、頑張れば解けるだろう。でだ、ここからが肝だ、よく聞けよ。仮面を被せて、『お前が次のキメン様じゃ』って決め台詞をだな!!」
 あっこれ途中からダメ出しになったな? って島民達が気付いたがもう遅い。熱く語る藍夜の横で大人しく聞いていた暁がそういえばと思い出したように口を開いた。
「あ、それで被った仮面が外せなくなるんだろ?」
「ん? 心音は何か知ってるのか?」
「いや、昔聞いた話なんだけど、外すためには『生娘の生き血』が必要で仮面によって祟りの力も得たそいつは、村人を脅すんだ」
 とても興味深い……! と、藍夜が話の続きを促す様に暁の手を握る。
「生娘を寄越せ、さもなけば祟る、ってな。で、何人もの村娘が送られるんだけど、もっと寄越せって言われてそのうち村娘もいなくなって村の外の娘を襲って捧げるようになる」
「ふむ、生贄によくあるパターンだな」
「……そうして、その村の周辺には言い伝えが残るんだ。『一際漣が大い夜は、娘は外を出歩いちゃいけない。キメン様にさらわれて心の臓を食われてしまうからね』ってな」
 暁の言葉と共に、波の音が大きく響く。
「えらい詳しいんやね、あんた」
 何故、と問われて暁が薄い笑みを浮かべる。
「何で詳しいかって? ……俺がそのキメン様だからな」
 そう言いながら、暁が帽子を取り狐耳を見せ服の中から尻尾を取り出してにやりと笑った。臨場感たっぷりな暁の演技に、お年寄りの皆さんが腰を抜かし若者は身を寄せ合って震え上がる。
「なーんて冗談……あれ? じいさん? 大丈夫かー??」
「しんぞ、心臓に悪いんじゃあ……っ」
 悪い悪い、と軽く謝りつつ暁が藍夜を見れば、そういうのもあるのかと藍夜が真剣な顔をしていた。
「有益な話だった、ありがとう心音。さて、ここまで議論してきたわけだが」
 議論とは――??? っていうような疲れた顔で島民が藍夜を見上げる。
「で? 結局キメン様は鬼なのか神なのか!」
「キメン様は鬼ではないでよ、わしらの神様じゃで」
 ご老体がそう答え、若者に支えられながら立ち上がった。
「ふむ、鬼ではなく神……」
 神であるならば、キメンとはどういうことだと藍夜がぶつぶつと考察を立てていく。
「そんなに気になるなら、神社から洞窟へ行けばええ」
「ふむ、神社の奥に洞窟が?」
「その奥に、キメン様はいらっしゃるでよ」
「よし行こう今すぐ行こう、心音!」
「ん、わかった」
 どのみち、この島を脅かしているであろうUDCは倒さなくてはならないし、と暁が頷く。
「いやぁ、来て良かったな……! 暴くものがある……最っ高だ!」
「そういうものなのか?」
「ああ、これが夏休みの課題ってもんだ自由研究だ自由研究! な、心音!」
「へぇ、自由研究ってこういうもんなのか……」
 そんなわけねぇだろ、という島民達の心の声は暁には届かなかった。何せ、自由研究なんてやったことがないのだ。
「自由研究なら、最後までやんないとな」
「そうだとも!」
 さすが俺の妻! と藍夜が笑い、暁の手を引いて神社へと向かう。彼らの夏休みの自由研究は佳境を迎えようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『奇面呪殺怨邪仏』

POW   :    贄トナレ
【自爆の呪詛が込められた信者】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    信仰セヨ
指定した対象を【信者】にする。対象が[信者]でないならば、死角から【教典】を召喚して対象に粘着させる。
WIZ   :    滅セヨ
レベル×1体の、【手の甲】に1と刻印された戦闘用【信者】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はラハミーム・シャビィットです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●キメン様
 島の中腹にある神社、その社には本来であれば本尊が置かれる場所に洞窟の入り口がある。まるで洞窟を隠すかのように建てられた社にも見えるが、それもまた観光客受けをする要因のひとつであった。
 洞窟の奥にはこの神社の本尊であり、この島を支配するUDC『奇面呪殺怨邪仏』が眠っている。祭りの時期に目を覚まし、生贄を喰らい緩やかに力を付け、進化をしてきた恐るべき相手――。
『ヤッバイ、寝スギタ』
 ……相手、である。
 寝すぎたせいでちょっと力が弱まってる気がする、と奇面呪殺怨邪仏がぶつぶつと呟きながら凝り固まった身体を解す様に、腕をぶんぶん回していた。
『エッ今モウ平成ジャナイ? 令和? マジデ寝スギタ』
 これは五倍生贄を喰らうしかない、そう心に決めて奇面呪殺怨邪仏はやがて訪れるであろう生贄達を待つ為、それっぽい仏像ポーズを取った。
『来ルガイイ、我ノ贄共ヨ』
 我の糧となり、力となるがいい。
 やってくるのが一般人ではなく、猟兵であることを奇面呪殺怨邪仏はまだ知らない。そう、お前の因習などもう古いとコテンパンにされるなど、知る由もなかったのである。

※※※

 ボスです、洞窟の奥は広く一般的な体育館くらいの広さがありますので、その範囲内くらいの攻撃は洞窟を崩すことにはなりません。多少暴れても大丈夫です。
 シリアスに振り切るも、トンチキに振り切るもお好きなようになさってくださいね! キメン様は最初こそ威厳がある風に振舞いますが、何せトロピカルアイランドに身を置いて長いので意外とノリがいい、かもしれない。
 それでは皆様のプレイングをお待ちしております!
馬県・義透
テンション上がった陰海月を止められる者は存在しない!早業でUC使用!
というわけで、トンチキです。

陰海月「ぷきゅっ?」

…陰海月語を翻訳します…

影の中から聞いてたけど、キメン様って彼(?)かな?
洞窟って暗いから、ぼくがいてちょうどいいや!

んー、何か人(信徒)が合体したり、こっち来たり(襲いかかってくる)してるね?
よし、この四天霊障(極彩色)で、押さえつけちゃえ。押さえつけるだけだよ?

さて、キメン様!ぼくのこのゲーミングカラーダンス+極彩色光珠に勝てる!?
え?トロピカルって、こういう…カラフルなことでしょ?


たぶん、夏祭りの『トロピカルジュースの屋台』から『カラフル』印象がついた陰海月である



●トロピカルは最高潮!
 生贄を攫う為にやってきた『悪霊』達を陰海月が可愛らしくも眩しいダンスで撃退した後、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は神社へと向かい洞窟へやってきていた。
「ここにキメン様とやらがいるのですねー」
 さて、名前だけならば鬼の面とも取れますが実態は果たして……と奥へ向かおうとすると、義透の影から陰海月が姿を現す。
「おや、どうしたのですかー?」
『ぷきゅー!』
「道が暗いから照らそうと……? 陰海月はいい子ですねぇ」
 さすが癒し担当だと、義透が陰海月の頭を撫でる。それに気を良くした陰海月がぴかぴかと光りながら進みだしたので、義透はありがたくその後をついていく事にした。
 少し歩けば広い空間へと出て、陰海月がその広さを確かめるようにふよふよと移動しようとして――動きを止めた。
「どうしましたかー?」
『ぷきゅ~!』
 あそこあそこ、と言う様に陰海月が触手で一方を示す。視線を向ければ、なんとも禍々しい仏像がそこに立っているではないか。
「あれは……もしかしてキメン様というやつですかねー?」
『我名ハ奇面呪殺怨邪仏……我ガ贄トナレ……』
「生贄を要求して仏を名乗るとは、なんとも罰当たりですねぇ」
『ぷきゅ、ぷきゅ~』
 頷くような陰海月に義透がどうしましょうかと笑みを向けると、陰海月が何か考えるような素振りを見せてから奇面呪殺怨邪仏へと立ち塞がった。
「やる気ですねぇ」
『ぷきゅ! ぷきゅきゅ~~!』
『面妖ナ海月風情ガ我ニ盾突クカ』
「海月風情と言いましたか? うちの陰海月をその辺の海月と一緒にして貰っては困りますねぇ。やっておやりなさい、陰海月」
 うちの子を馬鹿にしたな、と義透が目を細めれば陰海月も『ぼくの実力を見せてやるー!』とばかりに触手を蠢かし――カラフルに輝きだしたのである。
『小癪ナ』
 奇面呪殺怨邪仏が信者を召喚し陰海月へと向かわせれば、極彩色の四天霊障が信者達を押さえつける。身動きが取れないようにすると、陰海月がドヤ顔で奇面呪殺怨邪仏へと迫る!
『|ぷきゅ! ぷっぷきゅー、ぷきゅきゅっきゅ~~!?《ぼくのこのゲーミングカラーダンス+極彩色光珠に勝てる!?》』
 洞窟の中はまるでディスコかのように光り輝き、まさにトロピカルは最高潮! とばかりに陰海月がゲーミングに輝く光珠を投げ付けた。
『コレノ何処ガトロピカルナノダ、ギャー!』
『|ぷ? ぷきゅぷきゅきゅ、ぷきゅ、きゅ?《トロピカルって、カラフルなことでしょ?》』
「そうですねぇ、カラフルでいいと思いますよ」
『ぷっきゅ~~!』
 だよね! とご機嫌な陰海月は心ゆくまで洞窟の中を照らし続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セラ・イーズデイル
心)もう怖かったわよ、超・怖かったわよふっざけんじゃないわよ、もう!返しなさいよ、バカンスぅう!おだてて油断させてボッコボコにしてあげるわぁ!(怖さのあまり逆ギレするタイプ)
行)きゃあああ!(黄色い悲鳴)超・クールだわぁ!その顔!ええ、仏像なのにロックね、血の涙!?やっだ日本ってクール・ジャパンねぇ。パンクだわぁ、ロックだわぁ、いいわぁ!じゃあ、アタシがもぉっとロックにしてあげるわぁ!(ナイフぶん投げ)

何が星で因習よお!じゃあアタシは音符で虐殺、ハートで殺戮、バツでキリングパレェドって読ませてあげるわよぉ!おらおらおらぁナイフ…何本かしら、とにかく自動追尾よぉお!バツ印刻みまくってあげるわぁ!



●逆切れパーティナイト
 悪霊を倒しきったセラ・イーズデイル(行楽殺人鬼・f40633)は提灯の道案内に従うまま、神社へと訪れていた。
「何なのよもう! 超・怖かったわよ!!」
 キレにキレ散らかしながらも、セラは神社の奥にある洞窟へと足を踏み入れる。
「何で洞窟!? 神社の中に!? これ以上アタシの事怖がらせてどうするつもりなのよ!!」
 しかも中途半端に暗い、何というか想像力を掻き立てるような暗さなのだ。
「アタシ知ってるわ、これいきなり曲がり角の先から出てきたり上からぶら下がって落ちてきたりするのよぉ!」
 ホラー映画にありがちなあれ、驚かしにかかってくるあれ、ジャンプスケア的なやつ。
「アレほんとに許せないのよ、大きな音出す必要ある? ないでしょ? ないわよねぇ!!」
 セラが一番大きな音、というか声を出しながら進んでいるのだが、これも恐怖を誤魔化す為。
「バスピス君が出てくるなら許せるけど、大抵出てくるのってアレな奴なのよ!」
 もっと意外性できなさいよ、と文句を言いつつ進んでいれば、いつの間にかセラは大きく開けた空間に出ていた。
「何よここ、めちゃくちゃ広いじゃない。ここにキメン様とやらがいるのかし……きゃああああ!!」
 上がったのは恐怖に打ち震える悲鳴ではなく、どことなく黄色い悲鳴。
『ククク……モット恐怖セヨ、我ノ極上ノ贄ニナル為ニ……!』
 しかし現れたキメン様こと『奇面呪殺怨邪仏』には、そんな些細な違いはわからない。
「やだぁ! あったじゃない意外性! 超・クールだわぁ! ええ、仏像なのにロックね、血の涙!?」
『エッ』
「よく聖母像とか救世主像も血の涙を流すものね! やっだ、日本ってクール・ジャパンねぇ、ロックだわぁ、いいわぁ!」
『ソウイウモノカ……?』
 生憎、他国の宗教とは全く関係ないが、なんなら生贄の血がこびりついてるみたいなところもあるが、そう言うならそうかもしれない……と色々とゆるい島に君臨してきた奇面呪殺怨邪仏は口角を持ち上げた。
「じゃあ、アタシがもぉっとロックにしてあげるわねぇ!」
 セラが素早い動きでナイフを構え、避ける暇などない勢いで奇面呪殺怨邪仏に投げつける。
「なぁ~~~にが|☆《星》で因習よお! じゃあアタシは|♪《音符》で虐殺、|♡《ハート》で殺戮、|×《バツ》でキリングパレェドって読ませてあげるわよぉ!!」
 オラオラオラァ! とばかりにセラがナイフを投げ付け、奇面呪殺怨邪仏はナイフ投げの的みたいな事になっていく。
『何ダソレは、我ハ知ラヌゾ!』
「知らぬも案山子もないのよぉ!|♪《虐殺》|♡《殺戮》」
 奇面呪殺怨邪仏が避けようとも放たれるナイフは自動追尾機能を付与されており、何処までもついてくる。
「バツ印刻みまくってあげるわぁ!」
 奪われたバカンスの恨みは深い――! セラのナイフは奇面呪殺怨邪仏が樽に入った黒ひげの男みたいな事になっても止まることはなかったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茜崎・トヲル
【イツメン6】

ここがあの神のハウスね!あ、かみさまのことじゃないからね!なんか焦げ臭くない?
あ、ここでキャンプすんの?やったー!

スーさん!マーさん!キャンプファイヤーくみたてよーぜ!
あっ木がない おれちょっとダッシュで最初のところから取ってくる!丸太二本あればいけるいけるー!
はいバキー!メキー!いい感じのログがでーきた!くみたてましょー!

わーい花火!あっ、兄ちゃんあれやろ、これ!(両手の指の間に……花火!)(ウルヴァ○ン!)
えいえい(キメン=サンに向け)たのしー!たの……まって洞窟ゆれてない?!

かみさまコラーーーーッ!!バスに変身して、ぜんいん運搬しまーす!!


雨野・雲珠
【イツメン6】

あれっなんだか洞窟のほうが明るい……縁さん!
よかった…波にさらわれたかと
かみさま、呼んできてくださったんですね

あれがキメンさま…こ、怖…ゆる…
あっだめ、言ってることは普通に怖い!
捧げる人々にも責任はありますが、そろそろ生贄は時代遅れ
今はこけしや雛や人形がなういです
いかがでしょう。だめ?
だめだそうです、ぬしさま…(召喚)

いけないことをするなら、俺もしますよ!
こう…こう持って!
(手伝ってもらって鍵爪っぽく指の間に花火を挟む)
(盛り上げ役もいるので楽しくなっています)
今どきの因習力をお見舞いです!てやー!

洞窟の天井がとれっ…わーー!?
と、と、トヲルくん…!?
こんなすてきな姿に…!!


朱酉・逢真
【イツメン6】
心情)虎兄さん見に行ってたら、起きてたから呼ンできたよ。ボス面着いたかい? おお神社だ。俺も居心地いい薄暗さだな。せっかくだし花火でもするかい? 売れ残りの花火貰ってきたよ。
行動)体育館くらいの広さがある洞窟とか実質ホームみたいなトコあるンで、ちゃんと皆が因習できるよにキャンプファイヤー組んだり、打ち上げ花火をセットしたり(キメンさまに向ける)するよ。楽しいな。ああ、ケドここ空気が薄くなりそうだな。ヨシ広くしようか。よいしょォー(影の手で洞窟の上半分をバコッと持ち上げる)


結・縁貴
【イツメン6】
此処が本拠地か
皆はまだ着いてないか…
じゃあ、
やりたい放題出来るな!

丁度よく悪霊燃料が一杯いる~
縁を繋いで、宝剣に流し込んで、こうだ(洞窟の中に白焔を打ち込む)
燃料的に一回限りだけど、綺麗な焔だったね!
で、どんな敵だったのかな
まだ残ってるじゃん、すごーい

応、皆も来た
かみさまが持ちこんでくれた花火やろっか!
マナセ、火種出してくれる?
わァトヲル帅哥、素手で作ったとは思えない見事な篝火だね
はは、スー帅哥も小雲珠もはしゃいで…
…俺が言うのも何だけど、無邪気に花火を向け踊り続ける図って恐怖の光景だよね
まァいいか、UDCだし
楽しんでいこう!

哎呀!?
かみさま!俺達は巻き込まず暴れてください!?


マナセ・ブランチフラワー
【イツメン6】
やっとかみさまに追いつけました。おや、縁も。元気になったようで何よりです

花火にキャンプファイヤーですか。儀式とかって大体火を焚きますよね。わかりました、お手伝いします
で、そちらがキメン様とやらですね(花火を向ける)仮にも神と崇められた者が、花火向けたくらいで騒がないでくださいよ(塩対応聖者)
無害ならともかく、生贄を要求するような輩に容赦はしません
スキアファールのおかげで賑やかですし、どんどんやっていきましょう
雲珠とトヲルのあれ、強そうでいいですね。ねえかみさ、ま……(絶句)
えっ、天井……えっ、バス……!? あっ乗りますありがとうございます

……これが、僕らの因習ということですね


スキアファール・イリャルギ
【イツメン6】◎
縁さん回復されたんですね!
……あれっ既に惨事が!?
やけに人間臭いキメン様……何年寝てたんです?

なるほどキャンプファイヤー、定番ですね
トーさん調達が早い! ではちゃちゃっと組み上げて火を付けましょう(属性攻撃(炎))

花火は人に向けては……はっそうか
邪神だからこそ花火を向ける、これが令和の因習!(今そう決めましたって顔)
ハイカラでチョベリグでナウいのです!

折角ですしUCで影手を呼び出して盛り上げ役を!
(影手は高速マイムマイムやったり、手拍子したり、花火で遊んだり)
(ワーワーキャーキャー)(※影手は喋れないので手文字をしている)

て、天井ー!!
後で深山さんに怒られますよ、朱酉さん!!



●高速マイムマイムが儀式なら、キャンプファイヤーも花火も儀式ってワケ
 さて、楽しく海の姿を披露した朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)はいつもの姿に落ち着くと、ちょっとの間ダウンしていた結・縁貴(翠縁・f33070)の様子を見に行く事にした。
「いや、忘れてたワケじゃねンだって」
 誰にも聞かれていないのに、そういうことを言うのは忘れてた証拠である。現に縁貴は高波でずぶ濡れだったのだから。
「大丈夫かい、虎兄さん」
「波に攫われなかったのが不思議なくらいの高波だったね……何だったのあれ」
「夢でも見たかい?」
「夢でずぶ濡れになったりする??」
 アルカイックスマイルを浮かべた逢真が指先をくるんと回すと、ずぶ濡れだった縁貴が一瞬で乾く。なんなら尻尾の毛並みまで整っていた。
「夢だよ、なァ虎兄さん」
「……そういうことにしておきます」
「そンじゃ、ちょちょいと洞窟の方へ行くとするかい」
 逢真は|ちびすけ《大きな子猫》を喚び出してその背に乗ると、ついでにとばかりに縁貴に犬の背を貸した。
「|咦《えっ》、速い速い速い、犬速いんだけ――」
 ど、という言葉は言えないままに縁貴を乗せた犬はやる気を見せて、トップスピードで走り出す。
「わ、アーーーー!」
「マジで速いな」
 あンなスピードで夏の浜辺に連れ出されたらそりゃ死ぬンだわ、と半笑いになりながら逢真がちびすけの頭を軽く撫でる。
「アレよりはゆっくり目で追い掛けてくれっかい」
 その言葉に応えるように、ちびすけは速度を上げて縁貴を追った。
 縁貴を乗せていた犬はあっという間に神社から洞窟へ、そしてその奥へと到着する。悲鳴交じりの声にならない声を上げていた縁貴であったが、犬が速度を落として止まると余裕ができたのか息を落ち着けて顔を上げる。
「酷い目にあった……」
 そう言いつつも辺りを見回せば、暗くはあるけれど見えなくもない暗さの洞窟だと目を細めた。
「此処が敵の本拠地か」
 犬のせい、もとい犬のお陰でイツメン達の中ではどうやら自分が一番に到着したらしい。
「皆はまだ着いてないか……」
 という事は?
「じゃあ、やりたい放題できるな!」
 これ以上はない程の笑顔で、縁貴が言い切る。誰にも見られていないなら、誰にも怒られないということ――!
「丁度よーく悪霊もその辺にいる、うん、これはいい燃料になるね!」
 悪霊は燃料にはならんのよ、というツッコミを入れる人もいない。うっきうき気分で縁貴が悪霊と縁を繋ぎ、取り出した宝剣へと流し込む。
「これをこうして」
 鼻歌混じりに宝剣の切っ先を洞窟の奥、なんだか禍々しい気配がする方に向ける。
「こうだ!」
 こう、の時点で宝剣の切っ先から高圧縮された白焔が迸り、禍々しい気配を包み込む。
「燃料的に一回限りだけど、かなり綺麗な焔だったんじゃない? いやー皆に見せられなかったのが残念だなァ」
 あっはっは! と笑いつつ、どんな敵だったのかと縁貴が目を凝らす。
「え、まだ残ってるじゃん、すごーい!」
『スゴーイデハ無イ! イキナリ燃ヤス奴ガアルカ!』
「えー、でも綺麗だったでしょ?」
 あ、これは話が通じないなって顔をして、プスプスと煙を上げる『奇面呪殺怨邪仏』が縁貴に報復するべく動きだそうとしたその時である。
「やーっとついたー! ここがあの神のハウスね! あ、って言ってもかみさまのことじゃないからね!」
 と、縁貴にとっては頼れる味方、奇面呪殺怨邪仏にとっては地獄の始まり、みたいな声が響いたのは。
「あれー、なんか焦げ臭くない?」
「そういえば先程、ものすごく明るくなりましたよね」
「電気が付いたような明るさでしたね、すぐに収まりましたけど」
 そう、茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)と雨野・雲珠(慚愧・f22865)、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)の通称モノクロブラザーズである。
「真っ暗かと思いましたが、電気でも通ってるんでしょうか……ああ、でもあの一瞬だけでしたか」
 そして彼らの後ろからひょっこりと顔を出したのはマナセ・ブランチフラワー(ダンピールの聖者・f09310)で、縁貴の姿を見つけて軽く手を挙げた。
「おや、縁。元気になったようで何よりです」
「あっやーさん! いつのまにー!?」
「やあマナセ、お陰様でね。トヲル帅哥の問いにはさ、俺もいつの間にって感じなんだけど、かみさまがね」
 犬でね、そうだね。
「あー……」
 何かを察したトヲルが労わるような視線を向けると、雲珠がきょろきょろしながら縁貴に笑みを向ける。
「よかった……波にさらわれたかと。かみさまが呼んできてくださったんですね」
 さすがかみさま、痒い所に手が届くと雲珠が感心しつつも、はたと気が付く。
「あの、かみさまはどちらに……?」
「俺もわかんないんだよね、俺の後ろから来てたとは思うんだけどさ」
 何せ、何もかもを置き去りにする勢いで犬が走ったもので。
「あ、噂をすればという奴ですよ。いらっしゃったみたいです」
 ほら、とスキアファールが視線を向けた先、丁度よくちびすけに乗った逢真がやってきた。
「よォ、みなさまお揃いでェ」
「よかった、これで皆さん揃いましたね」
 マナセが微笑みながら頷き、それにしても広い洞窟ですねと天井を見上げる。
「いやァ、いいとこだ。神社の雰囲気もどこか薄暗かったが、洞窟の中は俺も居心地がいい」
「ここのー神ってのとー、趣味があうってことー?」
「まァそうさな、邪神だっつーからな」
 方向性としてはどちからといえばそう、多分そう。
「そんな! かみさまは邪神なんかじゃなないですよ」
「そうですよ、一緒にしてはだめですよ」
 生贄を欲しがったり、命を喰らったりはしないでしょうと雲珠とスキアファールが反論する。
「それもそっかー、なんかごめんね!」
「構わんさ」
 うん、望んだことはない。勝手に捧げられたのは知らんけど。
 つまりはまぁ、全てが間違いではないのだがそれを否定するような逢真ではない。いのちは|赦す《愛でる》ものだしね。
「さて、皆の衆。どうするね、皆が因習できるよにキャンプファイヤーでも組むかい? 花火でもするかい?」
 ここに売れ残りの花火がある、と影の手で花火を掴み五人に見せた。
「花火にキャンプファイヤーですか。儀式とかって大体火を焚きますよね」
 わかりました、みたいな顔をしてマナセが頷き。
「なるほどキャンプファイヤー、定番ですね」
 それは本当にキャンプファイヤーだろうか、でも似たようなものですよね、みたいな顔でスキアファールが笑い。
「キャンプファイヤー……花火……!」
 わぁ! 楽しそう! みたいな顔で雲珠が目を輝かせ。
「あ、ここでキャンプすんの? やったー!」
 ここを野営地とする! みたいな顔でトヲルが万歳をし。
「すげーな、ここまで敵をガン無視だよ」
 やっぱこの面子すごいな、色んな意味でという顔で縁貴が天井を見上げたのだった。
 そうと決まれば話は早い、まずはキャンプファイヤーの準備だとトヲルが張り切る。
「スーさん! マーさん! キャンプファイヤーくみたてよーぜ!」
「はい、任せてくださいトーさん!」
「ええ、お手伝いならお任せください」
 キャンプファイヤーといえばまずはいい感じの太さの木材をいい感じに組むのだが、生憎とこの洞窟に木材は見当たらない。
「あっ、木がない!」
「困りましたね……石でも積みますか?」
「それだと火が燃えないんじゃないでしょうか」
 マナセの代替案だと賽の河原みたいになりそうだなと、スキアファールがそっと軌道を修正する。
「じゃーおれちょっとダッシュで最初のところから取ってくる! 丸太二本あればいけるいけるー!」
 いってきまーす! という元気のいい声に、雲珠がいってらっしゃい気を付けて! と既に見えなくなりつつある後姿に声を掛けた。
「トヲル君が調達してくれる間に俺達は何をしましょうか」
「花火するかい、坊」
「それはとても魅力的ですけれど、トヲル君が働いてくれている間に遊ぶなんていいんでしょうか……」
「小雲珠、小雲珠、トヲル帅哥戻ってきたよ」
「えっ」
 早すぎません? と、雲珠が振り向けばそこには丸太を二本抱えたトヲルの姿が――!
「お、おかえりなさいトヲル君!」
「さすがトーさん調達が早い!」
「ただいまー!!」
 褒められちゃったー! ってな感じの笑顔を浮かべ、トヲルが丸太を地面に下ろす。
「ではちゃちゃっと組み上げて火を付けましょう」
「これをー、こう! はいバキー! メキー!」
 スキアファールの言葉に、任せて! と丸太を割り箸でも折るかのようにトヲルがバキボキに折って、キャンプファイヤーに適したいい感じのログを作り出していく。
『何アレコワ……』
 そっと距離を取り、遠くから見ていた奇面呪殺怨邪仏からすればお前をこうしてやろうか、と言われているようなもんである。
「今何か声が……したような?」
「えー? そう?」
「風の音か何かですかね?」
 マナセが聞き取っていた声はトヲルとスキアファールにより無かった事になり、三人はせっせとキャンプファイヤーの土台を組み立てた。
「かんせー!」
「仕上げですね、えい!」
 えい、とスキアファールが属性魔法で火を点ければ、あっという間にキャンプファイヤーの完成だ。
「これが、キャンプファイヤー……! さすがです、トヲル君、スー君、マナセさん!」
「こりゃ立派なキャンプファイヤーだな」
 雲珠が手放しで褒め称え、逢真がちぱちぱと手を叩く。
「ほとんどトヲル帅哥が組み立ててなかった??」
 よいしょー! という掛け声と共にトヲルが動くだけでどんどん積み上がっていくのだ、思い返すとちょっと面白かったなと縁貴が笑う。
「キャンプファイヤーが組み上がったということは、次は花火ですね!」
 やはり夏といえば花火です、と雲珠が逢真の影の手から渡された花火を頭上に掲げ、やりましょう! と意気込んだ。
「ところでかみさま、この売れ残りの花火はどこから……」
「ン? 深山の旦那がさァ、売れ残りの花火がまだあるって言ってたから」
 金貨一枚、ぽんっと置いて持ってきたのだと逢真がひひ、と笑った。
「なるほど、かみさまは経済も回してらっしゃるんですね!」
 いそいそと花火の袋を開ける雲珠に、逢真がそうだよォと頷きながら影の手でせっせと打ち上げ花火をセットしていく。
「これも経済を回す行為……なのですね」
「そうと言えなくもないかな? あ、マナセ火種出してくれる?」
「ええ、どうぞ」
 縁貴の差し出した手持ち花火に火を点け、自分の花火にも火を点ける。勢い良く噴き出す火花はキラキラと光り輝いていて綺麗で、これが夏の風物詩なのですねとマナセが微笑みながら――音もなく近付いてきた影に向かって躊躇う事無く花火の先を向けた。
『ア゛ッッ! 熱イ!』
「で、そちらがキメン様とやらですね」
『近付ケルナ、アツ、ア゛ヅ!!』
「仮にも神と崇められた者が、花火を向けたくらいで騒がないで下さいよ」
 イツメンに向ける声と笑顔とは正反対の冷たい声と表情、どこまでも塩対応な聖者に一瞬皆の動きが止まる。
「やけに人間臭いキメン様……何年寝てたんです? それにしても、マナセさんが……強い!」
「聖者として何か思う所があったのかもね、マナセ」
 スキアファールが塩対応聖者に感心する横で、知らんけど、と縁貴も花火を漸く皆に視認された奇面呪殺怨邪仏へと向けた。
「あの、あれがキメンさま……? こ、怖……ゆる……?」
『何ナノダ貴様ラハ! 我ノ地ニ足ヲ踏ミ入レタナラバ、我ニ捧ゲラレルベキダト言ウノニ!』
 何でキャンプファイヤーしてんの? あと花火。
『我ガ喰ラッテクレヨウゾ!』
「あっだめ、だめです! 言ってることは普通に怖い!」
「ねー、だめだよねー兄ちゃん!」
「はい、だめです! 捧げる人々にも責任はありますが、そろそろ生贄は時代遅れもいいところです!」
 時代遅れ、と言われて奇面呪殺怨邪仏がピタッと動きを止めた。
『時代遅レ……?』
「そうです、今はこけしや雛や人形がなういです」
「そォそ、生贄なんて流行らンぜ」
「かみさまがいうとー、ちょっとセッパ・ツマッテルね!」
「トーさん、それを言うなら説得力がある、ですよ」
「セットク・リョク!」
 またひとつ賢くなっちゃったねー! と、トヲルが笑いながら新しい花火に火を点けている。
「いかがでしょう、ここはひとつこけしで……キメンさまにも馴染みのありそうなお顔かと」
『誰ガコケシ顔カ! 纏メテ喰ラッテクレル!』
「だめですか……だめだそうです、ぬしさま……」
 ぬしさま、と喚ばれて雲珠が背負った箱宮から現れたるは春の化身のような角に花咲く神鹿。だめならしょうがないね、というような瞳で雲珠を見ると、神鹿は神威あらたかな蹄で奇面呪殺怨邪仏を蹴り上げた。
『グブルァッ!』
 芸術点の高い回転を見せながら奇面呪殺怨邪仏が天井に向かって吹っ飛ばされると、逢真が見計らったように設置しておいた打ち上げ花火に火を点ける。
「た~まや~ってなァ」
 ひゅるる、パン! と小気味のいい音を立てて打ち上げられる花火の全ては奇面呪殺怨邪仏に命中していく。
「わー! 兄ちゃん、おれたちもあれやろ、これ!」
 トヲルがはしゃぎながらゴソゴソと何か準備し、じゃじゃーん! と、雲珠に両手を見せた。
「こ、これは鉤爪っぽいかっこいい持ち方! 俺も、俺もやります!」
 いそいそと雲珠が指の間に花火を挟みだすと、スキアファールがそっと手伝ってくれてついでに火まで点けてくれたので、お礼を言って雲珠とトヲルは地面に落ちてきた奇面呪殺怨邪仏に向かってそれを向ける。
「キメンさま、あなたがいけないことをするなら、俺とトヲルくんもしますよ!」
「しまーす!」
「本当は花火を人に向けてはいけないんですが、あれは人ではない……はっ、そうか! 邪神だからこそ花火を向ける、これが令和の因習!」
 今決めた、はい決めた! みたいな顔をしてスキアファールがブラザーズを盛り上げるべく影手を呼び出し、キャンプファイヤーの周囲で高速マイムマイムと手拍子を任せる。
「わあ、ありがとうございます、スーくん!」
「ありがとーー、あーさん!」
 そして息を合わせ、雲珠とトヲルは容赦ない花火攻撃を奇面呪殺怨邪仏へと仕掛ける!
『ア゛ッッッ!!! 人ジャナクテモ花火ヲ向ケルナ!!』
「因習です! これが令和の因習……そう、ハイカラでチョベリグでナウいのです!!」
 もう因習という言葉で全てを押し切るつもりなんだな、と縁貴は線香花火に火を点けながらモノクロブラザーズの暴挙を見守っている。
「はは、スー帅哥もトヲル帅哥も小雲珠もはしゃいで……俺が言うのも何だけど、無邪気に花火を向け踊り続ける図って恐怖の光景だよね。まァいいか、UDCだし」
 あそこに混じると大変なことになるんだ、と一番に暴挙をかました騶虞が高みの見物みたいな笑顔を浮かべた。
「雲珠とトヲルのあれ、強そうでいいですね。僕もやるべきでしょうか」
「え? いいんじゃない、混じってきなよ」
「縁も行きましょう、ほら」
「いや、俺はいいかな!?」
「何を遠慮しているんですか、いきますよ。無害ならともかく、生贄を要求するような輩に容赦をしてはいけませんから」
「ほんと何?? どこでそんなスイッチ入ったの??」
「スキアファールのお陰で賑やかですからね、どんどんやっていきましょう」
「これも因習のせいってやつ!?」
 ずるずると引き摺られ、鉤爪花火を奇面呪殺怨邪仏に向ける会に参加させられた縁貴を逢真が手を叩いて笑っている。
「今どきの因習力をお見舞いです! てやー!」
「えいえい! たのしー!」
 盛り上げ役の影手の拍手が鳴り響き、高速マイムマイムも絶好調! ブラザーズに縁貴とマナセも容赦なく花火を奇面呪殺怨邪仏へと浴びせかけていて、ヤベェ儀式感マシマシだ。
「ねえかみさま、楽しいですね」
 ふっと、マナセが邪神ではないもうひとりの神へと声を掛ける。
「ああ、楽しいなァ。ケド、ここ空気が薄くなりそうだな」
 楽しそうないのちは愛い、と逢真が満足そうにしつつ回さなくていい気を回す。
「あれだろ、いのちってのは空気が薄いと拙いンだろ」
 知ってる知ってる、だから影の手をありったけ洞窟の上の方へと伸ばして。
「ヨシ、広くしようか。よいしょォー」
 ゴゴゴゴゴ、と地響きみたいな音がして。
「えっ、かみさ、ま……」
 絶句したマナセの動きが止まる。
「たのし……まって洞窟ゆれてない?!?」
 異変を察知したトヲルが迷いなく逢真の方を向いたと同時に、洞窟の天井が――バコッ!!!! と取れたのだ。
「洞窟の天井が取れっ……わーーー!?」
「哎呀!? かみさま! 俺達は巻き込まず暴れてください!?」
「て、天井ー!!」
 わあ、お星さまきれい。
 そんな場合でもなく、トヲルが叫ぶ。
「かみさまコラーーーーーッ!!」
 崩れちゃ危険だと、トヲルが動物を模した乗り物へと変身する。動物は咄嗟のことで逢真の背凭れになっていた猫を、乗り物は皆を運べるバスを思い描いた結果、そこには猫を模したバスが――!!
「と、と、トヲルくん……!? こんなすてきな姿に……!! これあれですよね、猫バ」
「いけません雲珠さん、それはいけない」
 ス、と言い切る前にスキアファールがそっと止めた。
「ええと、こうです、|NEKO-BUS《ねこばす》です!」
「ね、NEKO-BUS……!!」
 キラッキラした瞳で雲珠がNEKO-BUSに変身したトヲルを見上げ、すてきです! とはしゃぐ。
「そんな場合じゃないよ兄ちゃん! みんなもー! のってーーー!!」
「えっ天井……えっバス……!?」
 突然外された天井、突然現れたNEKO-BUSに言葉を失いつつも、マナセがハッとした様子でバスへと駆け寄る。
「あっ乗ります、ありがとうございます」
「俺も乗せて貰うよ、謝謝トヲル帅哥!」
「私もお邪魔しますね、トーさん!」
 次々とNEKO-BUSへと乗り込んでいくイツメンを眺め、逢真があれ、やっちまったか? みたいな顔をした。
「かみさまはねーーー! あとで説教だからねーーー!!!」
 にゃーん、と走り出したトヲルが叫ぶ。
「や、違うンだって。息できなくなったら拙いかなって思ってさァ」
「かみさま、事前に相談してくださいって前にも言いましたでしょうー!」
 NEKO-BUSから顔を出し、雲珠が叫び。
「だってほら、アレのせいでこの辺いのちがいなかったし、な?」
「後で深山さんに怒られますよ、朱酉さん!!」
 スキアファールの言葉に、えっそれはすごく嫌だなって顔をした逢真も、のっそりとちびすけへと乗る。大抵の説教は右から左に流してふんふふん、ってなもんだが、鴇の説教は何かこう……圧がすごいのだ。
「違うンだって……な!?」
 慌てて外した天井をそ……っと戻し、逢真もNEKO-BUSを追い掛ける。
「うける」
「縁、うけている場合ではないですよ」
 ケラケラと笑う縁貴の横で、マナセがそっと振り向く。
 残されたのはスキアファールの影手がキャンプファイヤーと花火の後始末をする姿と、ちょっと焦げた奇面呪殺怨邪仏の姿。
「……これが、僕らの因習ということですね」
 こうして、彼らのトロピカル|☆《因習》アイランドは――夏は終わりを迎えたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

楊・暁
【朱雨】◎

えっ

…あっ、もしかしてお前がキメン様?
耳と尻尾がへにゃり(落胆
なんだ…鬼の面かと思ってたから、もっとこう…
仁王像みてぇな鬼の形相で強そうな奴、想像してた…(ぼそ

藍夜すげぇ
博識だな…
格好良さに惚れ惚れ&尊敬しつつ
「そうなんだ!」「へぇー!」と感心

映えか…今はそっち方向が流行(はやり)だしな
すげぇ良いと思う!
ミラーボールって、あの天井にあるきらきらする球(たま)か!?
俺見たことねぇんだ。見てみてぇ!(大興奮で尻尾ぱたぱた
あ、そうだな。方向性は決めとこう
折角お洒落するんだ。統一性は大事だもんな

あ、ごめん…お前を否定するつもりはねぇぞ?
自分が好きな格好するのが一番良いんだから
誰に気遣う必要もねぇ。お前はお前だ(心から励ます
だからまずは、お前がどんな格好してぇか、聞かせてくれねぇか?
できるだけそれに添った飾りつけにできるよう頑張る

あ。そうか、倒すんだった
え?一発で?分かった
藍夜の期待に応えられるよう俄然やる気で
早業で距離詰めてUC

(血の涙見て
泣くほど喜んでくれるなんて…
お前、良い奴だな…


御簾森・藍夜
【朱雨】◎

…その顔一個一個に個性はないのか
もう少し修業が必要だな、少々スパイスが足りない
あと天女と仏の分類は違うからそのオーラというか羽衣にはキャラ乱れを感じる
更に言うが仏教に基本生贄理論は無いぞ
もう一度言うが、無い
獣や龍の類、そこから派生した自然関連なら生贄理論はある
鎮めるとか訳の分からない理由で
令和のオカルトブームは厳しいぞ
ついでに言うが人形が泣いた騒いだ系は押し入れに長らく仕舞われていた日本人形やゴミ捨て場出身系のがお前より幅利かせてるだろうな

心音、どう思う
折角の仏像だし飾られているしいっそもっと派手やかな映えに振り切るのはどうだ
こう、あれだ人が元気なるような
それこそこれほどの広さがあるならミラーボールを仕込むのもアリか?
ついでに装飾も少し淑やかにするか、いっそ海外呪術師風に牙や骨に振り切るか…
あれだあの、もう少しキャラの方向性決めよう、な?
ついでに言えばキメンは鬼の面じゃなくて奇妙な面なら猶更だ

と、言う訳で
死んで出直すしかないな
慈悲深い心音が一発で決めてくれるだろう
逃げるなよUC



●自由研究とは自由な研究なので
 いざ、キメン様との対面だ! と、意気揚々とテンションも高く洞窟へとやってきた御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)はキメン様こと『奇面呪殺怨邪仏』を見て深く溜息をついたし、藍夜の後ろを追い掛けてやってきた楊・暁(うたかたの花・f36185)も『……あっ、もしかしてお前がキメン様?』と言ったっきり耳と尻尾をへにゃりとさせた。
『我ノ顔ヲ見テ溜息ハ不敬デハナイカ!? 後アカラサマニ落胆シタナ!?』
 失礼極マリナイ! と憤慨する奇面呪殺怨邪仏を前にして、だってなぁ? みたいに二人が顔を見合わせる。
「俺、キメン様って鬼の面かと思ってたから、もっとこう……」
 軽く言い淀み、暁が奇面呪殺怨邪仏を見遣る。
『何ダ!?』
「仁王像みてぇな鬼の形相で強そうでカッコいい奴、想像してた……」
 ぼそり、と呟く様に言われた言葉は奇面呪殺怨邪仏にとっては寝耳に水みたいなものである、記号にするなら『!?』だ。
「……せめて、その顔一個一個に個性はないのか」
『個性』
 個性、と言った藍夜の視線は奇面呪殺怨邪仏の頭の方へと注がれている。奇面呪殺怨邪仏の姿は恐らく仏像の類をベースにしているのだろう、だが頭部は|螺髪《らほつ》や宝冠等で飾られる代わりに小さな仏の顔が並んでいるのだ。
「もう少し修業が必要だな、少々スパイスが足りない」
『スパイス……? ヨクハワカランガ要ラヌダロウ、我ハ完成サレタ邪神ゾ』
 完成された、という言葉に藍夜が片眉を跳ね上げる。
「……完成? その姿で完成しているのか?」
『ソウダ!』
「ならば指摘させてもらうが、天女と仏の分類は違うからそのオーラというか羽衣にはキャラの乱れを感じる」
『キャラノ乱レ』
 キャラとは……? 奇面呪殺怨邪仏からすれば、これが邪神たる己の姿。キャラもクソもないのだ、そう言おうとしたがそれよりも早く藍夜が畳みかける。
「更に言うが」
『マダアルノカ』
 これ以上? って顔ができたならしていたが、生憎仏面故に表情の変化には乏しい。
「仏教に基本生贄理論は無いぞ」
 仏教ではなく古代メソアメリカ文明辺りの神ならば別だが、と注釈を入れつつも藍夜が言い切る。
「もう一度言うが、お前の要素たる仏教には――無い」
「藍夜すげぇ……」
 ビシッと言い切った藍夜の後ろで、暁がぼそりと呟く。勿論そんな彼の呟きを聞き逃す藍夜ではなく、心音がそう言うのならばもっと良い所を見せたいという男心と、自分と何よりも心音が期待していた分のがっかり感を返してほしいという気持ちから、奇面呪殺怨邪仏に向けて更に言葉を重ねていく。
「いいか、獣や龍の類、そこから派生した自然関連なら生贄理論はある。それも自然災害を鎮めるとか訳の分からない理由で」
 龍が雨を降らし、獣や大蛇などから転じた山の神が地震を起こすと信じられていた時代。勿論、現代においても龍を水神として祀る神社は多くあるが、生贄など以ての外だ。
『庇護下ニ置クノダ、対価ハアッテシカルベキダロウ』
「は?」
 洞窟の気温がスッと下がるような藍夜の声に気圧されたのか、奇面呪殺怨邪仏が身半分下がる。
「いいか、それならば仏の姿を騙るなと言っているんだ。令和のオカルトブームを舐めてるのか?」
 昭和じゃあるまいし、今のオカルトブームは厳しいと藍夜がダメ出しを続けていく。
「ついでに言うが、その取ってつけたような血涙」
『取ッテツケタヨウナ』
「人形が泣いた騒いだ系は押し入れに長らく仕舞われていた日本人形やゴミ捨て場出身系のがお前より幅を利かせてるだろうな。というかだな、その血涙は海外で有名なマリア像でも意識しているのか? あれはそのほとんどが人の手によって細工されたものだと判明しているが」
「そうなのか!?」
「ああ、そうだぞ。今度一緒にドキュメンタリーの録画を見よう」
「見る! 藍夜は詳しくてすごいな!」
 ぶんぶん、と尻尾を振って暁が感心したように笑みを浮かべた。
 はい可愛い、俺の嫁が世界一と心の中で太鼓判を押しつつ、藍夜が暁に意見を求める。
「折角の仏像だし飾られているし、いっそもっと派手やかな映えに振り切るのはどうだろうかと思うんだが、心音はどう思う?」
「映えか……確かに今はそっち方向が流行だしな。すげぇ良いと思う!」
 完全に奇面呪殺怨邪仏を置いてけぼりにして、二人が令和のキメン様プロデュースについて語り出す。
「こう、あれだ。人が元気になるような」
『人ハ我ノ贄ダガ』
「元気に……そうなると、この洞窟も人が近寄りやすいようにするべきじゃねぇか?」
「良い案だ、心音。それならそうだな……これほどの広さがあるなら、ミラーボールを仕込むのもアリか?」
『無シダガ??』
 合間合間に奇面呪殺怨邪仏が口を挟むが、そんな声は盛り上がる二人には届くはずもない。
「ミラーボールって、あの天井にあるきらきらする|球《たま》か!? 俺見たことねぇんだ。見てみてぇ!」
 天井に取り付けられたミラーボールがキラキラと洞窟を照らす様を想像し、暁が尻尾をぶんぶんぱたぱたと振り回す。大興奮な心音も可愛い、やはり俺の嫁は世界一……と噛み締めながら藍夜がミラーボールを頭の中の決定事項へと放り込んだ。
「ついでに装飾も少し淑やかにするか、いっそ海外呪術師風に牙や骨に振り切るか……生贄を求めるくらいだ、それらしさがあった方がいいだろう」
『我ハコノママデ良インダガ』
 ここ、我の寝床ぞ? つまりは我の家ぞ?? プロデュースしてもらう必要もないんだが??? と奇面呪殺怨邪仏が訴えるが、藍夜は何か可哀想なものでも見るような瞳で見ている。
「あれだあの、もう少しキャラの方向性決めよう、な?」
「あ、そうだな。方向性は決めとかないと……折角お洒落するんだ、統一性は大事だもんな」
 藍夜につられたように、暁も奇面呪殺怨邪仏を見遣る。勿論その視線はどこか遠慮がちな感じで、奇面呪殺怨邪仏は全く以て解せぬって気持ちでいっぱいだった。
「心音の言う通りだ、ついでに言えばキメンは鬼の面じゃなくて奇妙な面なら猶更だ。もっと奇妙な感じでいったらどうだ、キモカワみたいなのも今なら流行るかもしれないぞ」
「きもかわ……女子にウケがいいって聞くぞ?」
『大キナオ世話ダガ??』
 もうやだ猟兵ってこんなのばっかり! おうち帰る! だが残念、ここが奇面呪殺怨邪仏のおうちである。
「あ、ごめん……お前を否定するつもりはねぇぞ?」
『ココマデ散々否定シテオイテ……!?』
「心音が喋ってるんだ、黙って聞け」
『ハイ』
 圧が、圧が強い……!
「俺達がどう言ったって、結局は自分が好きな格好するのが一番良いんだから」
 ファッションとは自我の発露であり、個性の一環。TPOに応じていれば、どんな格好であっても構わない。
「だからまずは、お前がどんな格好してぇか、聞かせてくれねぇか?」
『ドンナ……』
「そうだ、できるだけそれに添った飾りつけにできるように頑張る!」
 やる気に溢れ、善意に満ちた瞳。そしてその後ろには、お前わかってるんだろうな? という厳しさに満ちた瞳があった。
『我ハ……』
 もうなんかいっそイメチェンしても良い気がしてきたが、よく考えればこいつらは猟兵だし敵だし、何なら贄として喰えば力にもなろうと思い直す。
『我ハ邪神、クダラヌ戯言ヲ聞ク気ハ無イワ!』
「は?????」
 それは絶対零度みたいな声だった、お察しの通り藍夜の声だ。
「心音がお前如きに心を砕いてやったというのにその言い草はなんだ、覚悟はできているんだろうな」
 邪神よりも邪神めいたオーラを醸し出しながら、藍夜が判決を下す。
「と、言う訳でお前は死んで出直すしかないな」
「あ。そうか、倒すんだった」
 いけない、つい真剣にイメージチェンジについて考えてしまったけれど、相手はUDCだと暁が思い直す。
「俺がぶちのめしたいところだが、ここは慈悲深い心音が一発で決めてくれるだろう」
「え? 俺? 一発で?」
 暁が藍夜を見れば、期待に満ちた彼の瞳が自分を見ている。ならば、妻としてその期待に応えなければ――!
「分かった!」
『我ハ何ヒトツ分カランガ??』
 いや、ひとつだけ分かる事がある、取り敢えず逃げた方がいいだろうという事だけは。
「逃げるなよ」
 逃げられるとでも思っているのか? といった響きを含ませて、藍夜が力を開放する。
「魔女の宴だ」
 ここに|魔女《藍夜》がいる限り、欠けぬ夜は終わらない。逃げようとした奇面呪殺怨邪仏を即座に捕らえ、暁に視線を向ければ阿吽の呼吸とばかりに間合いを詰めた暁が気を纏わせた指先を奇面呪殺怨邪仏の――閉じられた目へと突き付けた。
『グァァァ!』
 それはただの突きではなく、触れた相手の内部を破壊する絶命の指先。血の涙を流しながら、奇面呪殺怨邪仏は地面を転げまわる。
「いい目潰しだ」
 さすが俺の妻、容赦がなくて最高に可愛い。
 一方、目潰しなんてするつもりではなかったし、なんなら額を突いたと思っている暁は血の涙を流して転がっていく奇面呪殺怨邪仏を見て、ぐっと声を詰まらせた。
「泣くほど喜んでくれるなんて……お前、良い奴だな……」
「ああ、心音の真心が伝わったのかもしれないな」
 よくやったな、と暁の肩を抱きながら藍夜が微笑む。
『喜ンデナイガ!?』
 奇面呪殺怨邪仏の言葉はもう彼等には届かない、何故なら自由研究もこれで終わりだな! と洞窟の出口に向かって歩き出していたからだ。
『何シニ来タノダ、オ前達』
 もし、この言葉が届いていたらきっと藍夜からこう返ってきただろう。妻と夏を満喫するついでに、自由研究をしにきただけだが? と――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルフィード・クローフィ
【雲蜘蛛】

わぁーー!環ちゃん、アレが敵さんだよ!
ん?仏様みたいな人なのかな?
生贄のせいで絶対的自信というか
とってもエライぞー感はあるね!
でも生贄をしてただけで別に偉そうな人には見てないし!強そうにも見えないね!!

なので、生贄さんはあげないよー!
えっ?俺達が生贄なの?
環ちゃんもダメーーー!!
もう!食べられちゃメだよ!
うん、無くなったら遊べないもの

最恐の戯れ
神様!悪魔さん!!変な奴を懲らしめたいから力を貸して!
さて、本当に怖くて最恐な本物がどういうものがその身で味わってね!!
環ちゃんも気をつけてー!
ふふっ、ありがとう!
ちょっと強くなったので君を刻んでしまいましょう!
包丁をブンブン振り回して

そう!生贄は君なのだー!
ん?そうなの?その何ものかわからないけど
今は俺が代わりにヤルね!
それにしてもコレって美味しいのかな?
人より美味しくなそうだけど、美味しいの?
環ちゃん…やっぱり食べちゃダメ!
お腹壊したらいけないから後でぺぃしよう!


雨絡・環
【雲蜘蛛】

まあ
何とも手を合わせたくなる様なお姿ですこと
といってもわたくし自身が仏様とは程遠い化生でございますが
そうねえ、贄を捧げられると信じて疑わないご様子ですし
だめですよ
自身のご飯は自身で狩りに行かねば
あら、わたくし達がご飯に?
ほ、ほほ
わたくしは構いませんけれども
凭れてしまっても責任持てませんよ
あらま、怒られてしまいました
わたくしもアルフィードさんが食べられては困りますし
仕方ありませんね、お仕事と参りましょう

有難う存じます
アルフィードさんもお気をつけて
『返し縫い』
信者の方々も、お寝坊さんも
みぃんな蜘蛛の網に捕らえてしまいましょう
逃しは致しませんよ
――と言っても、あなた方を料理するのはわたくしではありませんけれど
そう言えば、こういうのも「みすてり」定石でしたかしら
南の島で、包丁を持った何ものかに襲われる、とか
はい、今日はアルフィードさんにお願いしましょう

見た限りでは石か金属のようですね
美味しそうに見えないもの程、美味とも申しますけれど
あらいやだ、冗談で御座いますよ



●ほんとうにおそろしいもの
 提灯の灯りが続く道は、どこか神秘的にも見えてアルフィード・クローフィ(仮面神父・f00525)が楽しそうな声を上げた。
「わぁ、見て見て環ちゃん! 綺麗だよ!」
「ええ、ええ、とっても風情がありますね」
 神社では普通の祭りが行われているかのようで、お囃子の音色も聞こえてくると雨絡・環(からからからり・f28317)が微笑む。
「でも、生贄を求める神様とやらがいるのですよね」
「そう言われると妖しい雰囲気にも見えてきちゃうなー!」
 なんて言いながら石段を登り切り、観光客を装って洞窟の方へと進んでいく。
「ちょっとひんやりするね、寒くない?」
「大丈夫ですよ、ありがとうアルフィードさん」
 足元に気を付けてね、と手を引きながら前を歩くアルフィードに頷いて洞窟の奥を目指す。洞窟の中には松明が掲げられており、視界に困る事もなく進めば開けた場所に出た。
「すごい、広いねー!」
 見上げれば天井はそこそこ遠く、教会が一件丸々入るような大きさだなとアルフィードが思う。それから、見上げていた視線を戻し、奥の方を見て――。
「わぁーー! 環ちゃん、アレが敵さんだよ!」
 と、叫んだのである。
「まあ……ちょっと焦げ付いてるみたいだけれど、何とも手を合わせたくなるようなお姿ですこと」
 きっと自分達が来る前にやってきた猟兵達にやられたのだろうと思いつつ、環が『奇面呪殺怨邪仏』の姿を上から下まで眺めて言った。
「あ、日本の神様? だっけ、仏様みたいな人なのかな?」
「ええ、そうですよ。といっても、わたくし自身が仏様とは程遠い化生でございますが」
 懲らしめられ改心した化生が仏に手を合わす、という話はあれど――そこまで考えたところで、件の仏様、いやUDCたる奇面呪殺怨邪仏が声を上げる。
『我ニソノ身ヲ捧ゲヨ』
 常人が聞けば恐怖を感じるかもしれないような、底冷えのするような声だ。けれど、今この場にいる二人は猟兵。
「なんか、生贄のせいで絶対的自信というか、とってもエライぞー感はあるね!」
「そうねえ、贄を捧げられると信じて疑わないご様子ですし。だめですよ、自身のご飯は自身で狩りに行かねば」
 ねえ? ねー? と、二人が視線を絡ませて目の前の敵を品評する。あ、これまた普通の贄ではないなと奇面呪殺怨邪仏が悟るけれど、今度こそ喰らってくれようと前へ出た。
『貴様等ヲ喰ロウテ我ノ血肉ニシテクレヨウゾ!』
「血肉って感じのボディじゃないよね! それに偉そうにしてるけど、生贄を捧げられてただけで別に偉い人には見えないし! 強そうにも見えないね!!」
「そうね、それに酷く煤汚れているようですし」
『貴様等失礼ダナ!?』
 さっきから失礼な奴しか来ない、と奇面呪殺怨邪仏が唸る。もうさっさと殺して喰ってしまえばいいのではないだろうか? よしそうしよう今すぐ殺そうと奇面呪殺怨邪仏が決意する。
「だからね、生贄さんはあげないよー!」
『モウヨイ、我ガ貴様等ヲ喰ラッテクレル』
「えっ? 俺達が生贄なの?」
「あら、わたくし達がご飯に?」
 生贄が捧げられる洞窟へやって来たのはそちらなのに、何を言っているのだと奇面呪殺怨邪仏は思うが、アルフィードと環からすれば生贄としてここに入った訳でもないのでクエスチョンマークが浮かび上がるのも仕方のないこと。けれど、環はアルフィードとは少し違って、可笑しそうに口元に手を当てた。
「ほ、ほほ」
 頑是ない子どもの可愛らしい我儘を聞いた時のような笑みを浮かべ、環が奇面呪殺怨邪仏を見遣る。
「わたくしは構いませんけれども、凭れてしまっても責任持てませんよ」
 凭れるだけで済めばよろしいですけれど、とは言わずに首をこてんと傾げれば、慌てたようにアルフィードが環の手を引っ張った。
「環ちゃんもダメーーー!!」
「まあ」
 駄目かしら? と環が引っ張られた手をそのままにしてアルフィードに視線を移す。
「ダメ! もう! 食べられちゃメ! だよ!」
「あらま、怒られてしまいました。では止めておきましょうか」
「うん、無くなったら遊べないもの」
 そうなったらつまらないと、アルフィードが唇を尖らせる。
「ふふ、そうね。わたしくもアルフィードさんが食べられては困りますし」
 一緒に遊べなくなったらつまらないわね、と環も笑って。
「仕方ありませんね、お仕事と参りましょう」
 ごめんなさいね、と奇面呪殺怨邪仏へと向けた環の視線も、やるぞー! と気合に満ちたアルフィードの視線も、さっきまでのものとはすっかり切り替わり、笑顔を浮かべたままなのに奇面呪殺怨邪仏にとって獲物ではなく敵対するべきものだという認識へと変わっていく。
『マタ猟兵カ!』
 もうやだ、と思えどこれを倒して喰えば力になるのは間違いないはず、そう心を奮い立たせて奇面呪殺怨邪仏は二人を倒そうと動いた。
「あっちもやる気だね、環ちゃん」
「そのようね」
 では遠慮なく! とアルフィードが敵よりも先手を打つべく言葉を口にする。
「神様! 悪魔さん!! 変な奴を懲らしめたいから力を貸して!」
『変ナ奴』
 こちらからすれば貴様等の方が変だが? と言い掛けたけれど、環の纏う気配が変わったのを感じて警戒を強めたのか少しばかり距離を取る。それは賢明な判断だったと言えるだろう。
「さて、本当に怖くて最恐な本物がどういうものがその身で味わってね!!」
 アルフィードが手にしているのはなんて事のない包丁に見えるけれど、禍々しい気配は包丁が放っていいものではない。
『禍々シイ気配ダ』
「えー、君が言うの?」
「ふふ、こういうのを自分の事を棚に上げて……というのでしょうね」
「ほんとだよー!」
『エエイ、忌々シイ! 問答無用、贄トナレ!』
 奇面呪殺怨邪仏がそう叫ぶと、どこからともなく自爆の呪詛が込められた信者が現れ、二人へと襲い掛かる。
「ま、自分の手を下すのではないなんて。お仕置きが必要かしら」
「環ちゃん、気をつけてー!」
「有難う存じます、アルフィードさんもお気をつけて」
「ふふっ、こちらこそありがとう! よーし、ちょっと強くなったので頑張っちゃおうかなー!」
 アルフィードが奇面呪殺怨邪仏に向かって笑みを浮かべると、環がふわりと蜘蛛の絲を自身の周りに張り巡らせて自分達へ向かってくる信者の動きを止めた。
「さ、信者の方々も、お寝坊さんも、みぃんな蜘蛛の網に捕らえてしまいましょう」
 一人たりとも逃がしはしないと、環が絲を繰りながら笑みを浮かべる。信者の動きを全て止めると、その絲は奇面呪殺怨邪仏へと伸び絡めとる。
「――と言っても、あなた方を料理するのはわたくしではありませんけれど」
 そう言って環がちらりと視線を向けた先には、包丁を楽し気に振り回すアルフィードの姿が――!
「ん? なになに、環ちゃん」
「いえ、少し思い出して」
「何をー?」
「そう言えば、こういうのも『みすてり』の定石でしたかしら、って」
 こういう……そう、正に今『君を刻んでしまいましょう!』と、蜘蛛絲から逃げようとする奇面呪殺怨邪仏を追いかけ回しているアルフィードのような。
「南の島で、包丁を持った何ものかに襲われる、とか」
「そうなの? その何ものかっていうのはわからないけど、今は俺が代わりにやるね!」
「はい、今日はアルフィードさんにお願いしましょう」
『ソンナ軽イ気持チデスルモノデハナイダロウ!』
「あとはそう……生贄にしようとして、逆に生贄にされる……とか」
「なるほどー! よーし、生贄は君なのだー!」
『我ノ! 話ヲ! 聞ケ!』
 残念ながら、聞く耳を持っていたらこんなことにはなっていないのだ。
「それにしてもコレって美味しいのかな?」
 逃げ惑う奇面呪殺怨邪仏を追いかけ回し、包丁で斬りつけながらアルフィードが首を傾げる。
「人より美味しくなさそうだけど、美味しいの?」
「どうでしょう……? 見た限りでは石か金属のようですね」
「美味しくなさそうだよ、環ちゃん!」
「美味しそうに見えないもの程、美味とも申しますけれど」
『我、我ヲ食ベル気カ、貴様等!』
 猟兵は割と何でも食べるところ、あるよね。あるけれども――。
「環ちゃん……やっぱり食べちゃダメ! お腹壊したらいけないから、後でぺぃしよう!!」
 お腹が痛くなったら大変だもの、という顔でアルフィードが環に言う。
「あらいやだ、冗談で御座いますよ」
『半分本気ダッタト思ウガ!?』
「ふふ、嫌ですわ、人聞きの悪い」
「よかったー! じゃあ、さっさと片付けちゃおう!」
「ええ、そうしたら口直しに何か食べに参りましょう」
「行くー! 何があるかなぁ、お店開いてるかな?」
 和やかな会話をしながらも、二人の手は一切緩まずに敵を追い詰めていく。本当に恐ろしいものとはどんなものか、奇面呪殺怨邪仏が嫌という程思い知るはめになるのはすぐの事であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
アドリブ可
(※一応シリアス寄りで書いてます)

【WIZ】

「生贄も古びた因習もここでお終いです。あなたには在るべき場所にお還りいただきます」

黒槍(【指定UC】)を召喚。
戦闘用信者がUDCでしたら、遠慮無く葬りましょう。万一人間の信者を操って戦わせているのなら、気絶させる程度で。(黒槍には【人間は不殺】効果を付与)
黒槍で戦闘用信者の合体を妨害及びキメン様自身の攻撃も妨害しながら攻撃します。
黒槍を操りながら、必要ならば詠唱銃も使用。【クイックドロウ】【早業】【部位破壊】を駆使します。
仕事柄、呪詛や狂気には【耐性】があります。

『動きが鈍いぜ。いつまでもぐーすか眠っているからだ』
キメン様に悪態をついたツキは、彼に向いたキメン様の攻撃を素早く躱し、攻撃を加えつつ、『もう一度眠れ、寝坊助野郎が』

信仰の対象であった訳ですし、キメン様を失った島民の方々が少し心配ですね。
帰る前にそっと様子を窺っておきましょう。

―――
※「 」はシン
『 』はツキが話してます



●因習の終わり
 一般人は安全な場所へと避難させたし、これで心置きなくキメン様とやらと戦える――そう思いながら、軽く炎を灯したままシン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)はツキと共に奥へと進む。
「これは……随分と広いですね」
『暴れやすそうな場所だな』
 これほどに広い場所ならば、多少ツキが暴れても洞窟が崩れるようなこともないだろうと、シンが頷く。
「既に他の猟兵の方が暴れた後のようですが……どうやらメインディッシュは残っているようですよ、ツキ」
 メインディッシュ、と揶揄されたのは勿論キメン様こと『奇面呪殺怨邪仏』である。その姿は仏を模したものの様だが、どこか煤けていたしボロボロにも見えた。
「他の方にやられたのか、元々なのか……判断が難しいですね」
 年代物の仏像だと言われればそうかもしれないと、シンが奇面呪殺怨邪仏を観察するように見遣る。その視線を受けて、奇面呪殺怨邪仏は禍々しいオーラのようなものを立ち昇らせた。
『我ニソノ命ヲ捧ゲヨ……!』
「まだ生贄を求めるつもりですか」
『てめぇの立場をわかってないんだろうよ』
 ツキが唸る様にそう言うと、シンもそうかもしれませんねと目を細める。
「まだ理解が出来ていないかもしれませんが、詰みですよ」
 この場に猟兵がいる――この島の悲劇を終わらせる為に。
「生贄も古びた因習もここでお終いです。あなたには在るべき場所にお還りいただきます」
『黙レ、我ノ糧トナルガイイ!』
 聞き分けのない、とシンが虚空へと手を向け、黒槍を召喚すべく力を開放する。
「混沌から産まれし槍よ、我が命に従い、立ち塞がるモノを封じ殲滅せよ!」
 現れたるは無数にも見える黒い槍。帯びる力は奇面呪殺怨邪仏を滅するだけの力を持っていて、それらが一斉に自分へ向いた事に危機感を抱いた奇面呪殺怨邪仏は戦闘に特化させた信者を召喚し、自身は後ろへと下がった。
『滅セヨ』
「戦闘まで信者任せとは」
 遠慮なく叩きのめせそうだとシンが眼鏡のブリッジを軽く押し上げ、信者へと向けた黒槍に不殺の力を帯びさせる。
「キメン様に操られた信者に罪は無いですからね」
 殺さぬように――せいぜい気絶させるくらいで、と黒槍を操って信者が合体するのを防ぐように動く。複雑な軌道を描いて飛来する黒槍を避けるのは難しく、信者達は痛みを感じる暇すらなく地面に倒れていく。それを見た奇面呪殺怨邪仏が、ならばと信者を盾にするようにして攻撃を仕掛けた。
「ここまでくるといっそ清々しいまでありますね」
 黒槍を巧みに連携させ、自分も審判の名を持つ自動詠唱銃、『judicium』を手にすると奇面呪殺怨邪仏が反応するよりも早く足止めを兼ねて弾丸を放つ。
「それ以上、こちらへ近付かないでください」
 地面に向かって放たれた弾丸はシンの狙い通り石に当たり、奇面呪殺怨邪仏に向かって跳弾する。その様子を見て、ツキがフンと鼻を鳴らした。
『動きが鈍いぜ。いつまでもぐーすか眠っているからだ』
『無礼者メガ……!』
 ツキの言葉に激昂したのか、奇面呪殺怨邪仏がツキに向かって攻撃の手を伸ばす。
『動きが鈍いって言っただろ? そんな動きじゃ欠伸が出るぜ』
 その動きを難なく避けると、ツキが今度は自分の番だとばかりに奇面呪殺怨邪仏へと牙を剥く。
『オノレ、オノレェ……!!』
 その身から漏れ出す様な怨念の籠った声に、シンが唇の端を持ち上げた。
「生憎ですが……仕事柄、呪詛や狂気には耐性がありますから」
 UDCエージェントたる者、UDCとは切っても切れぬもの。その力を使役するのも、従えるのも、常に狂気との戦いのようなものだと奇面呪殺怨邪仏に詠唱銃を向ける。
「ツキ、いきますよ」
『言われなくても』
 シンの放つ弾丸に合わせ、ツキが咆哮を上げる。
『もう一度眠れ、寝坊助野郎が』
 闇色の狼が、黒色の槍と共に奇面呪殺怨邪仏へと襲い掛かり、その全てを喰らうかのように覆い尽くした。
『コンナ……コンナ筈デハ……ッ』
 断末魔の声を上げ、生贄をほしいままにしてきた邪神が消えていく。
「終わりましたね」
 誰に言うともなくそう言って、周囲に倒れている信者へと視線を向ける。
「あんな神でも、この島の信仰の対象であった訳ですし、キメン様を失った島民の方々が少し心配ですね」
『自業自得だろ』
 素っ気ないツキの言葉に、シンが困ったように微笑む。
「でも、これから大変でしょうから」
 いくらUDCであったとは言え、島民達が生贄を捧げて来たのは事実。これからそれは明るみに出るだろうし、罪を償うことになるだろう。人が離れた島は衰退するもの、そのケアも出来る事ならばとシンが言うと、お人好しめとツキが唸った。
「まずは彼らを連れ帰りましょうか」
 UDC職員達もすぐに駆け付けるはず。
 ――明けぬ夜は今ここに、本当の夜明けを迎えたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年10月22日


挿絵イラスト