闇の救済者戦争⑳〜オムネス・プロ・バイスタンダー
●ブラッド・セイヴァー
ダークセイバー第二層。
そこは血管が敷き詰められたかのような異様なる光景であった。
鮮血の大地。
そう呼ぶに相応しい光景。
振るわれる双刃が煌めき、大地を切り裂いた。噴出する血潮が瞬く間に大地を血の海へと変えていく。
比喩ではない。
まさに鮮血の海。
「「……鮮血の大地に潜り、猟兵達を迎え撃つ……」」
オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』は、その鮮血の色を見下ろす。
ゆっくりと体を浸すように血の海へと降下していく。
「「……わたしたちが操るは『生贄魔術
』……」」
「「……無限の鮮血を以て、贄とするとき、わたしたちは最強……」」
彼女たちは寄り添うように双刃を手に虚の如き眼窩を互いに覗き込む。
そこにあるものを。
煌めくユーベルコードの輝きを。
「「……つまり、これでようやく猟兵と五分……」」
謙遜ではなかった。
彼女たちは語る。
己たちは『最も古く、故に最も弱きフォーミュラ』であると。
相対した猟兵たちは知るだろう。これまで戦ってきたフォーミュラと比べるのならば、特別に強い、というわけではないことを。
「「……わたしたちは最も古き『はじまりのフォーミュラ』として……」」
「「……『ライトブリンガー』、かつてあなた達と戦った時のように……」」
彼女たちは鮮血を手繰り寄せる。
互いの掌に溜まった鮮血が魔術の力を得て、彼女たちの力へと変わっていく。
「「……六番目の猟兵達との戦いに、死力を尽くしましょう……」」
●其の名は『セラフィム』
メーデー。
君は知ることになる。
未来は『白』紙で、過去より脈々と続くは人の善性たる『青』であり、またその未来へと続く血潮は『赤』く昌盛することを。
それは不可逆であるように思えるかもしれない。
「わかっている。僕には……俺には『勝利する才能』しかない」
彼は小さく呟いた。
ただ勝つことしかできない。
けれど、勝利した後のことは何一つ成し遂げられない。勝利の後に平和があるというのならば、彼には『平和』を作り上げる能力もなければ、維持する力もない。
だから、失敗する。
「けれど、この血の一滴がいつかの誰かのためになりますようにと願うことはできる」
それがどんなに残酷であるのかを彼は知っている。
いつかの誰かを助けることにはなるかもしれない。けれど、それは彼らの『真の姿』を暴くことになることを彼は憂う。
不躾なことであるとわかる。
人の心に土足で踏み込むことになることも。
「それでも求めるのなら、僕は、俺は」
彼は心の中でつぶやく。
己の選択を信じるように。
『戦いに際しては心に平和を』
次の瞬間、血の海より水柱が立つように体高5mはあろうかという『赤』色の鋼鉄の巨人が立ち上がる。
「君たちが、拒むのだとしても助ける――」
●闇の救済者戦争
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。遂に『祈りの双子』との戦端が開かれました。彼女たちが座すは第二層。血管樹がダークセイヴァー世界において流れた血潮を全て吸い上げた先こそが、この第二層なのです」
ナイアルテが示すのは、大地を覆う無數の血管。
そして、オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』は、この大地を血で満たし、『生贄魔術』によって超強化し襲いかかってくるのだという。
彼女たちが語る言葉を信じるのならば、『最も古く、最も弱きフォーミュラ』である。これまでのフォーミュラと比べても特別に、という感触はないだろう。
『欠落』を破壊してはいないが無敵能力を有していない。
このまま力押しで滅ぼすことができるかもしれない。
けれど、『生贄魔術』によって強化された彼女たちの力は、今の猟兵達の力では難しいだろう。
「確かに『祈りの双子』の『生贄魔術』は凄まじい力をもたらしています。それもこれも全ては『これまでこの世界で流された全ての血液』であり、その血を流した人々の『オブリビオンに対する憎しみの記憶』を糧にしているのです」
これに対抗するには猟兵達も鮮血の海に潜り、自らを助けてくれる『血の記憶』を見つけ出し、力とする他ないのだ。
だが、とナイアルテは言葉を続ける。
「皆さんを助けてくれる『血の記憶』は確かに存在しているでしょう。ですが、皆さんがそれを見つけ出した時、『真の姿』を隠すことはできないでしょう」
それは猟兵達の心の中に土足で踏み込み、暴くようなものであった。
自覚できぬ本来の姿もあるだろう。
触れてほしくない姿もあるだろう。
衆目に晒したくない姿もあるだろう。
いずれもが理解できることである。しかし、『血の記憶』を味方に付けた瞬間、これにあらがうことはできない。
さらけ出された『真の姿』で『祈りの双子』と戦う他ないのだ。
「抗うことはできないでしょう。厭う気持ちも、憂う気持ちも、私には分かる、とは言い難いものがあります。ですが、それでもと戦いに赴く皆さんを送り出す他にできることがありません」
ナイアルテは瞳を細め、ゆっくりと伏せる。
猟兵の『真の姿』は千差万別。
故に、彼女は各々が導き出した答えを尊重する。
戦うことも。足を止めることも。
それが猟兵達の選択であるのならば、彼女はそれを微笑んで見送るのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『闇の救済者戦争』の戦争シナリオとなります。
ついにダークセイヴァー世界のオブリビオン・フォーミュラにして、この世界の真なる支配者『五卿六眼』の一柱『祈りの双子』との対決となります。
これまでのオブリビオン・フォーミュラ」と比べて特別に強い存在ではありませんが、第二層に満ちる膨大な鮮血を生贄とする『生贄魔術』によって超強化を得ています。
『欠落』は健在ですが、無敵能力はありません。
この第二層の大地には、ダークセイヴァー世界で流された全ての血液が集まっています。
その血の記憶の中にある『オブリビオンに対する憎しみの記憶』を糧に『祈りの双子』 は超強化されています。
これに対抗するには、皆さんも鮮血に潜り、自らを助けてくれる『血の記憶』を見つけ出して力とするしかありません。
ですが、その時、皆さんは『真の姿』を隠すことはできません。
🔴なしで自動的に「真の姿」が現れます。
プレイングボーナス……鮮血の中に満ちる人々の記憶の中から、自身を助けてくれる「血の記憶」を見つける。
それでは、『鮮血の洪水』を防ぎ、己の弱点をひた隠しにしようとする闇の種族を打倒する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『五卿六眼『祈りの双子』』
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POW : 化身の祈り
自身の【支配するダークセイヴァーに溢れる鮮血】を代償に、1〜12体の【血管獣】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
SPD : 鮮血の祈り
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【支配するダークセイヴァーに溢れる鮮血】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : 双刃の祈り
自身の【支配するダークセイヴァーに溢れる鮮血】を代償に【血戦兵装】を創造する。[血戦兵装]の効果や威力は、代償により自身が負うリスクに比例する。
イラスト:ユヅカ
👑11
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サク・ベルンカステル
鮮血など半魔半人となって以来、切っても切れぬ関係だ
躊躇いなく鮮血の海に潜る
失われた故郷よ…
家族よ…
友も…
恋人よ…
私と共に不条理を振り撒く化物に復讐を
、、、!!!
ダンピールとしての感覚が自身に縁のある血液の力を感じると、鮮血の海から真の姿となり飛び上がる。
その姿は体内の闇の血と、力を与えてくれる血を装甲や刃として全身に纏った魔人としての姿。
「忌まわしい姿だが、、、故郷の皆となら悪くはない」
血管獣と双子に向かい突撃する
使用するUCは概念斬断。
概念斬りのUCを纏った随行大剣4本で血管獣を押し込み道を切り開き、周囲の血に宿る憎しみを斬る
遂に辿り着いたサクは黒剣に必殺の想いを込め双子へと剣閃を走らせる
血の色を月光の下で知って以来、サク・ベルンカステル(幾本もの刃を背負いし剣鬼・f40103)は、その色が常に己の回りに存在していることを知っている。
逃れたいと思ったことはないだろう。
言ってしまえば、それは己と過去とを繋ぐ縁のようなものであったからだ。
半魔半人。
猟兵となった今も追いても切っても切れぬものである。
ダークセイヴァー第二層は、鮮血の海であった。
溢れ出す血潮はどこまでも続き、また己の瞳が睨めつけるオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』は、その『欠落』した眼窩をユーベルコードの輝きに満たす。
「「……この鮮血はダークセイヴァーに流れし全ての血。わたしたちが得た力。故に
……」」」
「「……猟兵、わたしたちの死力を持ってお前たちを滅ぼす……」」
己たちを『最も古く、最も弱いフォーミュラ』と嘯く彼女たちをサクは見上げる。
あの『生贄魔術』に対抗するためには、この血の海に潜らねばならない。
ユーベルコードに寄って生み出された『血管獣』が迫っている。躊躇いはなかった。この血の海の何処かに己の失われた故郷で流れた血潮があるというのならば。
「ためらう理由はない」
むせ返るような血の匂いが満ちる。
家族が。
友が。
恋人が。
それらの過去が幻視されるようだった。
理不尽と不条理に塗れた過去だったように思える。多くの者が抵抗もできなかった。ただいたずらに生命を奪われるだけだった。
上位たる化け物に殺されるだけの日々。
逃げ惑うことができただけでも幸いであったのかもしれないし、不幸であったのかもしれない。
光無く。
されど希望もなく。
だが、とサクは思うのだ。絶望だけの日々ではなかったと。確かに暖かなものがあったのだと。
焦がれるように伸ばした先にあるのは、『血の記憶』。
己を助ける記憶に手が触れた瞬間、サクの瞳は見開かれる。
隠していた『真の姿』が血の海より顕現する。ダンピールとしての感覚。力が満ちる。己に縁を持つ者たちの血の記憶が力へとなって漲っていく。
血色の装甲が刃を生み出し、全身に纏われる。
宙を浮かぶ大剣と手にした大剣が交錯し、火花をちらしながら、サクは『祈りの双子』を見る。
「忌まわしい姿だが……」
忌避すべきものだった。
『真の姿』。
己の心にあるものであり、半魔半人たる己の力の発露。けれど、同時にこれは嘗ての家族や友、恋人の力でもあった。
悪くはない。
死した後でも尚、こうして記憶を介してあの日を思い出すことができる。
「……故郷のみんなとなら悪くはない」
迫る『血管獣』を大剣の一撃が揮って吹き飛ばす。
概念斬断(ガイネンザンダン)。
それはユーベルコードであり、また己の周囲に浮かぶ随行大剣が見せる剣閃の煌めき。
「「……『血の記憶』をたどるか、猟兵……」」
「「……不規則にして不気味。その真の姿を……」」
「そのとおりだ。お前たちが全ての不条理の源であるというのならば」
サクの瞳がユーベルコードに煌めく。
この血の海の中にあるのはオブリビオンへの憎しみの記憶。
それを糧にする者と、あの暖かな日々の記憶を糧にする者戸では、力の本質が違うのだとサクは感じる。
憎しみは果てのないものである。
けれど、それだけではないのだ。人の道行に憎しみは必要なものであろうが、しかして、全てではない。
「我が剣閃で断ち斬る!」
血の海を切り開いて剣閃が走り、『祈りの双子』へと走る。その双刃が剣閃を受け止めた瞬間、サクは踏み込んでいた。
己の思いを込めた一撃。
これまで数多の記憶があった。耐え難いもの。こらえがたいもの。あらゆるものがあった。
だが、語ることはない。
何故なら、己は剣を以て此れを成す者。
ならばこそ、言葉にならぬ思いは剣の一閃に込めるのだというように一撃が『祈りの双子』を捉えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎
【WIZ】
この中に
『祈りの双子』さんが…
意を決し
鮮血の中へ
その中で
ひとつの記憶に出会い
それは
私自身
記憶にないけれど
何故か夢に見る
あの女の人…
(実は
オブリビオンに殺された姉)
『私に…お力を?…はい…この世界を…救う為に…!』
その記憶に希望を貰い
真の姿――
全身に
光輝の神氣を纏い
髪に青い薔薇が咲き
背には六枚の翼
頭上や身体に
光輪を展開する
幼い女神となり
青い
十字の細剣の様な棘
【青薔薇の棘】を手に
祈りの双子さんに
【破魔】を込めた
武器を
青い薔薇に変えての
UCで攻撃
『この世界を…鮮血に、沈めはさせません…!』
敵の攻撃は
【第六感】【心眼】【残像】
【結界術】【オーラ防御】で
防御・回避
ダークセイヴァー第二層。
その大地は血管に塗れていたが、オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』により、切り裂かれ血潮が溢れ出していた。
溢れ出した血は海のように大地を染め上げ、膨大な血潮が如何なる場所から運ばれてくるのかを知らしめる。
そう、この第二層に満ちる血の海は、全てダークセイヴァーに流れた血潮である。
第三層にありし、あの血管樹より吸い上げられた血潮は、全て第二層に集まっている。オブリビオンによって虐げられた人々の流した血潮。
それに宿る憎しみの記憶を糧に『祈りの双子』は『生贄魔術』を以て己を強化する。
斬撃が煌めき双刃に受け止められた。
刃こぼれを起こすように『祈りの双子』の手にした双刃が僅かに欠ける。
「「……超強化をなして尚、これほどとは……」」
「「……やはり猟兵の怒りを買ったということは事実……」」
「「……肯定する。これはわたしたちの招いた現実……」」
「「……ならば、死力を尽くすとしよう……」」
彼女たちの身を覆うは『血戦兵装』。
赤く染まりあがる巨人の如き体躯は、ふくれ上がるようにして血の海より血液を凝固させていくようであった。
その光景を見遣り、アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)は意を決して、血の海へと身を投じる。
むせ返るような血の匂い。
視界を染める赤色。
その中、彼女は一つの記憶を手繰り寄せる。いや、己の手に近づいてきた、と言っても良い。
彼女自身には記憶はない。
けれど、その記憶はアリスのことを理解しているようだった。
それまるで夢のような時間であった。あやふやで、靄がかかったような、そんな記憶の中。
あるのはただ一人の女性。
「あの人は……」
アリスは靄のかかった記憶の中を藻掻くようにして、手を伸ばす。
触れることはできなかった。
けれど、わかる。あれが『血の記憶』であり、己を助けてくれる者の存在であることを。どうしても思い出せない。忘れてはならないもののはずだったのに。
どうして自分は忘れてしまったのだろうとアリスは眦に涙が浮かぶのをやめられなかった。
「……――」
声が聞こえた気がした。
助けてくれるのだと直感的に理解したアリスは、その記憶に触れる。瞬間、彼女の体は光輝たる神気纏う姿へと変わる。
血の海より飛び出した彼女の翼が広がり、六対の煌めきを解き放つ。
「……はい……この世界を……救う為に……!」
聞こえた声は優しかった。
悪意はなく。それでもアリスは忘れてしまっていた哀しみに僅かにくれる。
けれど、それをさせぬと迫るは赤い血潮の巨人。
ふるいあげられた『祈りの双子』の一撃を前に、アリスの金色の髪が揺れる。青き薔薇が咲き誇るは、彼女が得た助けの象徴か。
それを知ることはできないけれど、その体に
光輪が展開する。
それは幼き女神とも言うべき姿であったことだろう。
迫る血の拳の一撃を青い十字剣で受け止め、アリスは『祈りの双子』を見据える。
「「……世界は鮮血の洪水に飲まれる。遅かれ早かれ、こんな記憶が世界に満ちるというのならば、猟兵……」」
「「……お前たちは何故抗う……」」
「人の……生命がきらめいているから……昨日を振り返って、今日は前を向いて、そして……」
どんなに辛い現実があるのだとしても。
それでも今日を生きて明日を目指していく。それが人だ。この太陽の輝き無き、夜明けすらない世界にあっても、人々は懸命に生きている。
アリスは知っている。
それを知っているからこそ、彼女もまた懸命に今を生きるのだ。
煌めくユーベルコードが薔薇十字の剣より迸る。
「この世界を……鮮血に、沈めはさせません……!」
昨日を生きた人を。今日を生きる人を。明日を生きる人を。
鮮血の濁流に飲み込まさせはしない。故に、アリスは青い薔薇へと変じたユーベルコードでもって、血によって生み出された『祈りの双子』の身に纏う巨大な赤い巨人の如き『血戦兵装』を切り裂き、細剣の剣閃の一撃を彼女たちに見舞う。
これが明日を望み、懸命に今を生きる者たちの力であると示すように、アリスは血の海で得た記憶を抱えるように涙に潤む瞳のままに打ち据えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
バレーナ・クレールドリュンヌ
【真の姿】
白皙の人魚は脚を得た代償に、硝子の荊を脚に這わせる。
【鮮血の記憶】
鮮血の記憶から呼び出すのは負の感情、苦しみ、後悔、絶望、その奥底に沈む、小さな自分。
あぁ、ここにいたんだね。
『さぁ、もうなにも怖がらないで良いわ』
【赫を越えて】
泡沫夢幻郷の領域、血の奔流の中で得た感情を味方にして、領域のチカラを高め、生命力を奪うローレライの海域を広げるわ。
歌で立ち向かう限り、私を守る領域、そして、歌は無念の内に吸収された血の中に秘められた人の感情を癒す為、血戦兵装のチカラも奪っていくわ。
オブリビオンはあるべき場所へ……Requiemの響きと共に還ると良いわ。
血の海を泳ぐ。
そう表現するのならば、あまりにも残酷なことであった。
ダークセイヴァー第二層。
そこは血管が巡る大地であり、第三層以下にて流された血潮が『血管樹』を伝って吸い上げられる場所である。その大地はすでにオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』によって切り裂かれ、その鮮血で満たされている。
まるで海。
そう思わせるほどの膨大な血潮。
どれだけの血が流れたかなど知りようもない。それほどまでに膨大な生命がこの世界で徒に、無為に、奪われた来たことをバレーナ・クレールドリュンヌ(甘い揺蕩い・f06626)は知るだろう。
「「……わたしたちの『生贄魔術』を否定するか……」」
「「……人の記憶には哀しみと苦しみと憎しみとが満ちている。それは例えようのないものであり、また同時に人の一生を示すものである……」」
だからこそ、というように彼女たちの身を覆うのは血の巨人。
それが『血戦兵装』。
赤き巨人へと変貌した彼女たちが振るう双刃の一撃がバレーナを襲う。
血の海に潜り、彼女は目を見開く。
怒り、苦しみ、憎しみ、哀しみ、嘆き。
あらゆる感情の記憶が彼女の視界を埋め尽くしていく。
「一体どれだけの」
そう、どれだけの生命がこのような哀しみにさらされたのだろう。
鮮血の記憶を海そのものとして、彼女は泳ぐ。
負の感情が彼女の心を苛む。
痛みとなって走るのは、それが苦しみだったり、後悔だったり、絶望だったりするからだろう。
誰しものの心にそれはある。
けれど、バレーナは思うのだ。
哀しみがあるから喜びがある。苦しみがあるから楽しさがある。
色が対を成すように。光があるから闇があるように。それは表裏一体であり、また同時に得難きものであると知るからこそ、バレーナは、負の感情満ちる血の海にて一筋の光を見つけ出す。
血の記憶。
「あぁ、ここに居たんだね」
これは己自身だ。
血の海の底に沈んでいた小さな自分。
涙をこらえるように瞳を閉じている自分。何も見なければ、傷つくことはない。
耳を塞ぐ手。何も聞こえなければ、何も知らないで済む。
けれど、バレーナは今を生きている。
今を生きるということは多くの負から目を背けず、耳をふさがず対峙するということ。
「わかるよ。それがどんなに悲しいかってこと。恐ろしいことかってこと」
他の誰でもない。
自分だから分かる。触れる手が、その小さな手を導く。見上げる眼を見た。その心細げな表情も。
「さぁ、もうなにも怖がらないで良いわ」
開いた目の先には自分がいる。己の瞳にもいつかの自分がいる。
ならばこそ、もはやバレーナは『真の姿』を隠さない。暴かれるのではなく。己の意志で海の波間より踏み出すように。
硝子の荊棘纏う脚を持って『祈りの双子』と対峙する。
「これはわたしの記憶。いつかのわたし。そして、これがわたしの歌、わたしがわたしで在る為に」
煌めくユーベルコードはバレーナの海の翠を湛えた瞳より発露する。
波間に踊る白銀の糸のような髪が彼女の喉より発露した歌に揺れてそよぐ。白皙たる肌は血に濡れて、されど、その血が形を作るように彼女の手元に集まって、一滴となって血の海面に波紋を生み出す。
それは彼女の歌声と同調するように広がっていく。
そう、ここは不可侵の泡沫夢幻領域。
恐ろしいと思った気持ちも。悲しいと思った気持ちも。何もかもバレーナの歌声によって明日を願う者たちの心へと迸りを放つ。
「この世界に歌いましょう」
「「……歌を歌うか、猟兵……」」
「「……世界はこんなにも苦しみに満ちているというのに……」」
「だから歌わねばならないのよ。どんな哀しみにも、どんな喪失感にも立ち向かえるためには、人は負の感情を得て、希望を持ち得なければならないのだから」
血の海に埋没した無數の無念や感情を癒やすようにバレーナは歌い続ける。
それは『祈りの双子』が纏う赤い巨人の如き『血戦兵装』の力を削ぎ落とし、彼女たちの姿を晒す。
バレーナは見る。
その哀しみと苦しみの源を。
「どれほどの喪失感があるのだとしても、それでも得難きものを得るのならば。一夜に融けた幻も、久遠に響く麗らかな歌声に変わるのだから」
だから、とバレーナはユーベルコード煌めく本来の海の翠輝く瞳でもて、『祈りの双子』を見据え、歌う。
それは鎮魂歌。
この常闇の世界で奪われ続けた生命に贖う歌声で持って、バレーナは『祈りの双子」を退けるように負に沈んだ小さな自分の手を握りしめるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
ふうん…この世界で流された血が全て此処にあるのか
なんともまあ業が深い事を
けど贄を用いた術式はきっとどこかに反動が来る
君たちはきっと、積み重なった人の恨みに怒りに倒されるんだろうね
さて、悪いけど…他人に自分の事をどうこうされるつもりは無い
超克…オーバーロード!
外装展開、模造神器全抜刀
無理矢理晒されるくらいなら、出し惜しみはしない!
その状態で鮮血の海へ
憎しみや怒り、大事な人を失った者の怨嗟を探して力としよう
その感情は私が背負うよ
だからどうか安らかに
さてこれで五分五分、後はどっちの気持ちが強いかだ!
無敵じゃないなら勝ち目はどうとでもなる!
【Unite Dual Core】起動
全剣に雷刃展開
さあ、そっちの血戦兵装…さっさと出すと良いよ
君達に勝つのはただ勝つだけじゃ、この鮮血達の気が済まないだろうしね
全力の君達を圧倒する
それこそがこの血への手向けだ!
雷刃のサイズを常時変更
間合いを変化させ続け、双子の動きを翻弄する!
さらに牽制で蒼炎も出して動きを複雑に
『なぎ払い』や『串刺し』でガンガン攻めていこうか
目の前に広がるは鮮血の赤。
大地満たす血は、全てがダークセイヴァー世界にて流された血であることを猟兵たちは知る。第三層にてそびえ立つ血管樹より吸い上げられたそれは、めの前の第二層たる大地に満ちていた。
「「……これら全ての血を代償にわたしたちは『生贄魔術』にて超強化される……」」
「「……故にわたしたちは『最も古く、最も弱きフォーミュラ』であるが、今や猟兵とは五分……」」
オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』たちの眼球無き眼窩に光が満ちる。
猟兵達の攻勢は確かに凄まじいものであった。
彼女たちが死力を尽くさねばならぬと判断したのも無理なからぬこと。
それほどまでに猟兵達の動きは迅速であった。
「ふうん……この世界で流された血が全て此処にあるのか。なんともまあ業が深い事を」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は眼前に広がる鮮血の海を前にして、その瞳を超克に輝かせる。
オーバーロード。
真の姿を晒す力。
彼女にとって、この鮮血の海の中にあるであろう己たちを助けてくれる『血の記憶』に縋るつもりは毛頭なかった。
何故なら、己は他人にどうこうされるつもりはない。
どんなに『血の記憶』が己を助けるのだとしても。他者に暴かれるのと、自ら晒すのでは意味が違う。故に彼女の瞳は超克に輝く。
例え、どんな窮地であろうとも己自身の力でもって乗り越えていくという気概こそが彼女の歩みを支えるものであった。
「「……超克……オーバーロード。自ら真の姿を晒すか、猟兵……」」
「「……それが徒労に終わると何故理解しない……」」
「お生憎様! 無理矢理さらされるくらいなら、出し惜しみはしない!」
玲は鮮血の海を割るようにして『祈りの双子』へと迫る。
敵の強大さは今更語るべくもないものだ。何故なら、例え、彼女たちの語るところの『最も古く最も弱いフォーミュラ』という言葉は、オブリビオン・フォーミュラというくくりの中にあってのことだ。
通常のオブリビオンでさえ、猟兵に個としての力で勝る。
ならばこそ、玲は鮮血より響く怨嗟の如き声を聞く。
「『生贄魔術』か……君たちはきっと、積み重なった人の恨みや怒りに倒されるんだろうね」
「「……否定する……」」
「「……わたしたちが贄とするのは、まさにそれであるからだ。贄に感情は不要……」」
玲は鼻で笑う。
意味のないことだと、招来されたサブアームと抜き払われた四振りの模造神器の蒼き煌めきを解き放ち、その切っ先を突きつける。
刀身に封印された雷と焔の疑似邪神が玲の身に宿るようにして合体し、雷の刃を解き放つ。
「これで五分五分! 後はどっちの気持ちが強いかだ!」
玲の背中を推すのは、鮮血に満たされた怨嗟と怒り、そして憎しみだった。
大切なものを喪った者。
それは肉体無き記憶だけの血潮にはどうしようもない感情であった。
だからこそ、玲はそれを背負う。
血の記憶は消えることはない。それは刻まれたものであるから。だから、玲は己が背負うという。
「『欠落』を破壊していなくたってゴリ押しでどうにかなるってんなら、勝ち目はどうとでもなる!」
吹き荒れる浄化の蒼き焔が投射され、『祈りの双子』の体を追う血の赤き巨人を吹き飛ばす。彼女たちは見据える。
双刃の煌めきと共に砕けたように吹き飛んだ血の赤き巨人の破片が彼女たちの手にした刃へと重なっていく。
「「……愚かな……」」
「「……わたしたちを前にして猶予を与えるなど……」」
『祈りの双子』たちの言葉に玲は頭を振る。
「それがそっちの『血戦兵装』ってわけ……それにただ待っていただけじゃないよ。君たちに勝つのはただ勝つだけじゃ、この鮮血達の気がすまないだろうしね」
だから、全力たる『祈りの双子』を打ち倒す。
圧倒する。
それだけが憎悪と怨嗟の理由。その源たる存在を打ち倒す理由であるというように、玲は迸る雷と焔を共として『祈りの双子』へと飛び込む。
「それこそがこの血への手向けだ!」
振るう斬撃が常に刀身を変える雷刃でもって間合いを翻弄する。『祈りの双子』たちが振るう赤い双刃が煌めき、その斬撃をいなすが、玲の雷刃は間合いを自在に変える。さらに蒼き焔が牽制のように放たれれば、さらに彼女たちを追い込んでいく。
「人の恨みも感情に入れていない。ただ贄としているのなら!」
「「……わたしたちの『生贄魔術』は完璧……この第二層に満ちる鮮血の量を見ればわかるはず……」」
「「……猟兵たちよ、あなたたちが個ではなく連なることでもって、こちらを追い込んでくることは理解している……だからこそ、この大地にある血潮の全てがわたしたちの数……」」
「わかってないなぁ……!」
玲の雷刃が煌めき、赤い双刃と激突して火花を散らす。
オーバーロードにいたりて尚、この拮抗。
玲の背を推す憎悪と怨嗟さえも『祈りの双子』はものともしていない。
「『血の記憶』があるっていうのなら、ただ人間が贄にされるわけないじゃん。人はそんなに弱くない。負けるようにはできていない。だから、今もこうして私を圧倒できないでいるんでしょ!」
振るう斬撃が『祈りの双子』たちの手にした双刃を切り裂き、鮮血によって強化された刃を砕く。
振りかぶった刃が輝きを放つ。
「殺されてしまうかもしれないけど、人間は負けるようにはできていないんだよ! だから、私が圧倒する!」
振るう一撃がニ連十字を刻み込むように『祈りの双子』へと叩き込まれ、鮮血の海を切り裂いて、その歪なる大地をさらに刻む。
それは『祈りの双子』が持つ人を貶める視線を薙ぎ払う一撃であった――。
大成功
🔵🔵🔵
七那原・望
深く深く血の底へ。
……あぁ、しばらくぶりですね。こんな血の底であなたを見るとは思わなかったのです。まぁ、見るのは初めてなのですけど。
拒みません。受け入れます。
己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力。そうでしょう?
人々の希望、欲望の力を以て、この
世界を終わらせます。
真の姿は聖歌隊のような装束の女神の姿。
背中の翼で空中戦。第六感と心眼と気配感知で敵の行動を見切り、回避しながら簡易生成・勝利の果実で創り出した果実を魔法で細かく砕きながら体内に取り込みます。
みんなが望んでいます。お前達の死を。
だから、消え失せなさい!
高速詠唱限界突破全力魔法の乱れ撃ちで祈りの双子も血管獣も蹂躙します。
人の業と呼べばいいのか。
それはとても醜いものであるように思えた。けれど、どうしても人の心には光と闇とが存在する。拭えぬ一つの飛沫がもたらした染みのように。
悪性の中でこそ善性が輝くように。
ダークセイヴァー世界で流された血の全てが、この第二層たる大地に満ちている。
猟兵達のユーベルコードが煌めく度に、彼らの真の姿がさらされる。
血の海へと潜り、己に味方する『血の記憶』を探り当てることこそが、オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』の『生贄魔術』に対抗する術であった。
だが、七那原・望(比翼の果実・f04836)は知っている。
この『血の記憶』に触れれば、己の『真の姿』はさらけ出される。隠すことなどできないことを、承知している。
故に、常に彼女の眼を覆っている眼帯は溶けるようにして消えゆく。
まるで聖歌隊のような装束を纏う女神たる姿でもって、彼女の瞳は金色の輝きを放っていた。
アネモネの花。
そのかんばせは憂うでもなく、怒るでもなく、そして恐れるでもなく、ただまっすぐに鮮血の海の向こうにある『血の記憶』を見やる。
「……あぁ、しばらくぶりですね。こんな血の底であなたを見るとは思わなかったです」
まぁ、と彼女は頭を振る。
視覚を常に封じている己。故に気配はわかれど、その姿かたち、見目を彼女は知ることはなかった。
だから、その眼前の『血の記憶』を金色の瞳で初めて捉えた。初めてだけれど、初めてではない。
「これに触れるということはそういうことだ」
「拒みません。受け入れます」
真の姿を晒すことは、己の中をさらけ出すことと同義。だが、望は笑むでもなく、至極当然のように言うのだ。
「己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力。そうでしょう?」
これは己の力。
心の中にある闇。だが、それを御することで得られる力があるとうのならば、彼女は躊躇わない。
「長きにわたって、人の心に絶望を植え付けてきたのならば」
望の翼が羽撃く。
一気に加速し血の海より、オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』へと飛ぶ。
「「……わたしたちに勝つつもりでいる……これが猟兵……」」
「「……絶望でも止まらぬ者たち。諦観であっても、彼らを止めることはできないというのならば……」」
無數の血管獣たちが望へと襲いかかる。
だが、彼女はそれらを一瞬の内に魔力の弾丸で持って撃ち貫く。
僅かな瞬間。
だが、しかし彼女の瞳はユーベルコードに輝いている。金色の瞳が見据えている。己が穿つ敵を。
倒さねばならぬ敵を。
「人々の希望、欲望の力を以て、この
世界を終わらせます」
夜明けなき世界。
常闇の世界が絶望に染まるというのならば。
「……この無數の望み……数多の希望……わたしは、望む……いえ、わたしたちは望む……」
掲げた勝利の果実を砕き、己の体内に取り込んだ望より放たれる無數の弾丸は『祈りの双子』へと解き放たれる。
わかる。
今ならば分かる。
この世界の全ての人々が望むことを。
オブリビオンによって支配盤石たる世界ではない世界を望むのならば。
「みんなが望んでいます。お前たちの死を。だから、消え失せなさい!」
オブリビオンなき明日を望む者たちの声に答えるように、望の金色の瞳は煌めき、そのユーベルコードが放つ力と共に魔法の弾丸を『祈りの双子』へと叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
勝ったあとのことは、生き延びたものが決めることです。
既に死した私達がやれることと言えば、区切りをつけることくらい。
それでもいいじゃないですか。
私達は、今、勝ちたいんです。
こんな奴らも、嵩を増し続ける血の海もそのままになんて、死んでも死にきれないでしょう。
だから私は、この姿を曝す。
黒く憎悪に染まりきった、悪霊の本性。
あとの者に平穏があるように、憎悪はここで吐き尽くして奴を潰す。
血に溜まった憎しみも、奴の祈りの糧になる分すら残らないほどに吸い上げて、叩きつける。
私の身体、私の剣はそのためのもの。
お前の祈りは届かない。
潰えろ、五卿六眼……!
シャルロット・クリスティア(霞む照星の行方・f00330)は思う。
いつだって歩み続けなければならない。
死の運命さえ越えて、今己は歩んでいる。
これは偶然であったのかもしれない。
いや、偶然ではないと彼女は言うだろう。
己が持つは執着。
その執着こそが転生を拒み、悪霊として猟兵と覚醒を遂げたのだ。
全てが燃え落ちたあの日を思い出す。
死の安息を得た家族や隣人に代わり、歩き続けることが弔いであると彼女は言う。けれど、それはそう思いたかったから、という言葉では表せない残酷なる現実を知ることとなる。
ダークセイヴァー世界において、人間は死ねば永劫の如き苦しみから開放されるのではなく、魂人として上層へと転生し、さらに上位たる存在より虐げられる。
弄ばれ、その血潮を以て彼らの力となるしかない。
その現実を知った瞬間、シャルロットは己だけが安穏たる世界に生きていたことを知る。死は救済ではない。救いではない。
「ええ、でも」
シャルロットは血の海に沈む。
第二層たる大地。
そこに満ちる血より記憶を手繰る。
「買った後のことは、生き延びた者が決めることです。既に死した私達がやれることと言えば、区切りをつけることくらい」
わかっている。
これが手前勝手な理屈であることは。
でも、それでもとシャルロットは思うのだ。差し伸べた先にあるのは、彼女を助けるいつかの誰かたちの『血の記憶』。
触れえずともわかる。
それが誰であるのか。けれど、呼びかけることはしない。そうした所で運命が覆るわけではない。
「でも、それは今じゃあない。今、私達は勝ちたいんです。こんな奴らも、嵩を増し続ける血の海もそのままになんて、死んでも死にきれないでしょう。そうでしょう!」
シャルロットの中の軛が弾けるようにして飛ぶ。
それは己の本性を押さえつけていたものだった。
『真の姿』。
それこそが彼女の悪霊としての本性。
黒く憎悪に染まりきった、悪性たる象徴。怒りが、憎しみが、哀しみが、苦しみが、あらやうる臓腑を焼き尽くすかのような熱でもって彼女の体を駆け巡り、膨れ上がっていく。
「私達の平穏は端から存在しなかった。私達の運命は決定していた。けれど、それで後に続く人達の平穏を陰りあるものにしてはならないと知っています」
だから、と彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
嘗ての暴政の犠牲者達の魂が彼女の体に合わさっていく。
「「……猟兵の怒り……これが、そうであるとわたしたちは知っている……」」
「「……見くびったわけではない。軽んじたわけではない。わたしたちは知っている。鮮血の濁流で止まる猟兵はいないと……」」
『祈りの双子』たちが振るう双刃の一撃がシャルロットの体を切り裂く。
だが、今のシャルロットはオブリビオンと化している。
あの日叶わなかった叛逆を、今此処に(エージェント・オブ・ジ・リベリオン)果たすためだけに存在している悪霊そのもの。
故に、彼女は今此処で憎悪の全てを吐き出す。
一欠片とて、後に残すことがないように。
身を浸す血の海より吸い上げるは憎しみ。
「お前はの祈りは届かない」
煌めくユーベルコードの輝きが、憎悪の闇の中で明滅するように輝きを解き放つ。
握りしめたガンブレードの意味を彼女は知っている。
悪霊の呪詛を込めた邪剣。
そして、己の体は、その呪詛を叩きつけるためのもの。
ならばこそ、シャルロットはふくれ上がる憎悪と共に『祈りの双子』へと飛び込み、その斬撃を見舞う。
振るう一撃は『祈りの双子』の体を同時に横薙ぎに切り裂く。
「消えろ、五卿六眼……! この先に、この後に、あるであろう平穏にお前たちの祈りは必要ない」
言い切るようにシャルロットが憎悪の全てを使い切るように『祈りの双子』の体へと癒えぬ傷を刻み込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
バレーナ・クレールドリュンヌ
【真の姿】
硝子の荊も、歩く事を阻む枷にはもうならない。
【赫い記憶の先に】
小さなバレーナが手を引く……。
一体どこへ連れて……。
遠い記憶の奔流の更に奥……私のお母さん……正しくはお母さんから創り出されたのが私……一度だけ実験室で出会ったその姿は……見間違えるはずがない。
「ただいま」
『おかえりなさい』
【清き嵐】
力が溢れる……これが本当の私?
嗚呼、今ならなにも怖くない……終わりにしましょう、この世界の悲劇を……!
歌声で呼ぶのは清らかな水のマナの嵐。
そして祈りの双子の血戦兵装を穿つ時に、血を清らかな水と共に奪い去り、強化を封じるわ。
お母さん……もう終わるわ。
だから、私の中で、眠っていって……。
幼き日の自分の手を取る。
歌声は響いている。未だ止まらぬ歌。その歌の道行を示すのはユーベルコードの輝き。
「「……歌が聞こえる。聞こえてはならぬ歌が聞こえる……」」
「「……わたしたちに歌は必要ない。わたしたちに歌は響いてはならない……」」
オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』は、その力を行使する。
第二層たる大地に満ちる夥しい血。
海と表現するに相応しいほどの大量の血を生贄とし、己の『血戦兵装』を作り上げる。赤く巨大な巨人。
それが彼女たちを包み込んでいく。
振るわれる双刃の一撃がバレーナ・クレールドリュンヌ(甘い揺蕩い・f06626)の体を吹き飛ばす。
体が血の海に沈む。
耳に響くは血の海にて空気が浮かぶ音。
掴んでいた幼き己の手は、彼女を血の海の底へと誘う。
「一体どこへ連れて……」
わからない。
己の記憶ではない。これは『血の記憶』。己に味方する『血の記憶』であるというのならば、これは。
「――……」
バレーナの瞳が見開く。
追憶は正しく、底にある。
それにバレーナは母性というものを感じたかもしれない。
ただ一度。
ただ一度だけ見たことのある顔。己の顔。違う。母親と呼ぶべき存在。己が実験室で生み出されたものであると知るのならば、バレーナの唇は僅かにわななくようにして言葉を紡ぐ。
「ただいま」
震える声があった。
握りしめた小さな手をバレーナは思う。
いつかの誰かではない、いつかのわたし。
『おかえりなさい』
懐かしい顔で。追憶に擦り切れた先に浮かぶ顔が、そう呟いて微笑んだ――ような気がした。そうであってほしいという願望であったのかもしれない。
けれど、それで充分だった。
血の海の底でユーベルコードが煌めく。
吹き荒れる嵐のように思えただろうし、また同時に清涼なる空気を纏うものであったかもしれない。
母は子へとつながる。
総ての母なるティアマト・全ての父なるアプスー(ヒエロス・ガモス)が在りて己という存在があるのならば、バレーナは最早何も恐れない。
力が溢れ、迫る『祈りの双子』の振るう赤き巨人の如き『血戦兵装』を吹き飛ばすは、清らかな水のマナまとう嵐。
「「……力が奪われている……」」
「「……真の姿を晒しなおも、恐れを抱かぬか、猟兵……」」
「ええ、今ならわたしはなにも怖くない……終わりにしましょう『祈りの双子』。この世界の悲劇を……!」
高らかに歌う。
響き渡るは己が紡ぐ軌跡の世界の歌。
過去のあらゆるものを抱いていく。何一つ取りこぼすことなく、バレーナは前に進むために、その海の色をした瞳を見開く。
煌めくユーベルコードが知らしめる未来がある。
そこには絶望はないはずだ。
いつだって未来には希望があるはずだ。
そう願うのが烏滸がましいことであったのだとしても、それでもバレーナは歌うことをやめない。
己の手を握っていた幼き日の手はもうない。
あれはきっと幼き日の自分ではなかったのかもしれない。いつも、いつでも、底にあったものなのだろう。
己が娘であるというのならば。
「お母さん……もう終わるわ。だから、私の中で、眠っていって……」
母想う歌声は、血の海に響き渡る。
さよならは歌わない――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「世界で流された血、今までに一体どれだけの……。
しかしこの中にお前達に利用される為に流された血は一滴もない。」
鮮血に潜り
(人々の記憶を己の戦いに利用しようとしている俺に
言えたセリフじゃないが。)
助けになる血の記憶は
ダークセイヴァーで戦っている(居た)
闇の救済者達。
「巻き込みたくはなかったけど。
此処でも俺を助けて欲しい。」
真の姿は血煙の様なオーラを纏った姿
(ヴァンパイアとしての特性が強く出ている)
「どんなものでも俺の力。
存分に使うだけだ。」
冥空へと至る影を発動し武装を強化。
デモニックロッドから闇の魔弾を放ちながら闇の救済者の先陣を切り
接近したら血煙のオーラとフレイムテイルの炎を合わせた拳で攻撃。
目の前の鮮血を見やる。
この世界、ダークセイヴァーにおいて流れた全ての血が此処に集められている。
常闇の世界は、多くの人間たちに絶望を教えただろう。
希望を知ることがあったとしても、それは絶望をより深めるための素材でしかなかっただろう。
希望があるから絶望がある。
絶望があるから希望が潰えていく。
わかっていたことだ。
フードの奥の瞳は今、如何なる色をしていたことだろうか。
「『祈りの双子』……確かにこの世界は多くの血を流した。どれだけの者が血を流したかわからない。しかし、この中にお前たちに利用される為に流された血は一滴もない」
フォルク・リア(黄泉への導・f05375)はフードの奥の瞳を赤く染めながら、オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』へと視線を向ける。
迫る赤い巨人の如き体躯。
それが『祈りの双子』の『血戦兵装』であった。血に塗れたような赤色の双刃が歌声にかき消されて尚、それでもフォルクに迫る。
しかし、その一撃が加えられるより早くフォルクは鮮血に潜る。
『血の記憶』――それはこの世界にこぼれ落ちた一滴であったとしても、例外なく存在するものであった。
己達猟兵に味方する『血の記憶』を見つけ出す。
それこそが勝利するために必要なことであるとフォルクは知るからこそ、これが『祈りの双子』を糾弾する者のすることではないと知る。
けれど、それでも、と思う。
いつだって人間たちは戦っている。
己達の生存をかけて戦っているのだ。第四層にて今も抵抗を続ける者たちがある。
『闇の救済者』――人間でありながらわずかにユーベルコードに目覚めた者たち。彼らを巻き込まぬためにこそフォルクは戦っていた。
けれど、彼らとて戦う者たちである。
流した血は、確実に此処にある。
「此処でも俺を助けて欲しい」
願う心に応えるものがある。『血の記憶』はこれまでフォルクがダークセイヴァーで多くを救ってきたからこそ、応えるものであった。
ふくれ上がるようにしてフォルクを天に掲げるようにして血の海の外へと押し出す巨腕があった。
その掌の上でフォルクの瞳が輝く。
血煙の如きオーラを纏うフォルクの姿は、フードに隠された常なるそれではなかった。
ともすれば、ヴァンパイアに親しい者であると思わせる者であったことだろう。
『真の姿』を隠しきれない。
それが『血の記憶』に助力を求める代償であったというのならば、皮肉なことであろう。
ヴァンパイア支配盤石たる世界が、このダークセイヴァーだ。
そこで、彼らの力を半身に持つ存在は忌避されるべきものだったかもしれない。
けれど、フォルクは瞳をユーベルコードに輝かせる。
「「……仇敵の力で戦うか、猟兵……」」
「「……それがどんなに愚かしいことか自覚しているか……悪しき力こそ、輝くものであると……」」
『祈りの双子』たちの振るう巨大な血の双刃が振り下ろされる瞬間、フォルクの頭上で赤い巨人の腕が交錯し、双刃を受け止める。
「どんなものでも俺の力」
フォルクに迷いはなかった。
真の姿をさらけ出されて尚、それでも彼の瞳はユーベルコードに輝く。
己の忌まわしき影が冥府へとつながる。己の影が冥府より魔力をフォルクの武具に与え、強化されていく。
冥空へと至る影(ディアボロス)は、そのための力。
冥界と接続することにより得られる力は、己の体を護る巨腕をさらに膨れ上がらせる。血煙たるオーラを纏い、巨腕が焔と掛け合わされ、その一撃を『祈りの双子』へと叩き込む。
「存分に使うだけだ。お前たちを打倒するために。俺を助けてくれる者たちのために。彼らを真に救うためには」
忌まわしき己の血すらも使う。
躊躇いはない。
「俺は俺のまま。ありのままであることを望む」
何故なら、己は猟兵であるという確固たる矜持がある。ゆえにフォルクは、振るわれる焔纏う巨腕と共に血の海に柱が立ち上るほどの一撃をもって『祈りの双子』を吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メフィス・フェイスレス
【アドリブ歓迎】
なんとも美しい情景ね
(冗談か皮肉か、それとも本気なのか)
血の記憶ね、必要というならやる。それだけ
どんな記憶も時が経てば少なからず摩耗する
修道院とは名ばかりの家畜小屋で共に糸車を回す修道服姿の彼女は誰だった?
――姉さん、血の繋がりもないけれどそう呼ぶ程度には慕ってた
女として妬ましく思う程に綺麗な長い白髪の
似合いもしないのに髪を伸ばしてたのはソレが羨ましかったから
戻らぬ過去に焦がれる事に意味なんてないのよ
この期に及んで余計な事を思い出させてくれる…
アンタは唯の記憶で姉さんじゃない、今の私を構成する肉の一部だってそう
かつての私ごと、全部塵になってしまえばいい
――でも、礼は言っておくわ
降り立つダークセイヴァー第二層は血の海だった。
血管が張り巡らされたような大地。
オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』が放った斬撃が大地を切り裂き、噴出する血潮は彼女たちの力をさらに増大させていく。
猟兵達のユーベルコードが煌めく度に、彼女たちは追い込まれていく。
『血戦兵装』は形を崩され、吹き飛ばされた。
だがしかし、それで彼女たちの『生贄魔術』が潰えたわけではない。吹き荒れるように血潮が渦を巻き、生み出されるは血管獣。
「「……死力を尽くす、というのならば、わたしたちもそうである……」」
「「……何も、それがお前達猟兵の専売特許であるとは思わぬことだ……」」
彼女たちもまた死力を尽くして猟兵を迎え撃っていると理解できる。
だからこそ、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は皮肉を……いや、それとも本気であるかのような言葉を紡ぐ。
「なんとも美しい情景ね」
鮮血に沈む大地と死物狂いの『祈りの双子』。
血の海と成り果てた大地に彼女は飛び込む。『血の記憶』――それこそが『祈りの双子』の操る『生贄魔術』に対抗する唯一であるというのならば、彼女は躊躇わなかった。
探す。
このオブリビオンに対する憎しみだけが満ちる血の海の中で、己達に味方する『血の記憶』を探す。
わかっている。
これはきっと己の記憶だ。
どんな記憶だって時が経てば摩耗する。摺り切れるし、組み替えられるし、改ざんもされるだろう。
己の中にある記憶は、きっとそうして擦り切れた記憶でしか無いのだろうとさえ思った。
幻視する。
揺れる修道服。
美しい白髪。
血の繋がりはなくとも姉と慕う程度には、己が惹かれていたのもまた事実である存在。それをメフィスは幻視した。
――誰だっけ?
問いかける言葉がメフィス自身の脳を揺らす。
わからない。
名前も出て来ない。
手を伸ばす。触れた、それはメフィスの真の姿をさらけ出させる。抗いようのない情動めいた衝動が体から膨れ上がり、メフィスは血の海より飛び出す。
力が溢れている。
「戻らぬ過去に焦がれることに意味なんてないのよ」
赤い髪が鮮血の海よりも燃えるように映える。
己の体が燃える。
焔翼が広がり、迫り来る血管獣を焼き滅ぼす。
「この期に及んで余計なことを思い出させてくれる……」
あれは、あの幻視は、記憶でしかない。ただの記憶だ。己の中にあるであろうそれとは違う。いや、今の己を構成する肉の一部だってそうだ。
そうじゃない、という否定の言葉がメフィスの瞳をユーベルコードに輝かせる。
「「……過去を否定したとして意味はない……」」
「「……過去を踏みつけて今がある。それを否定することは……」」
『祈りの双子』達の声が響き渡る。
癇に障る言葉だとメフィスは忌々しく思ったことだろう。
「なら、かつての私ごと、全部塵になってしまえばいい」
ふくれ上がるユーベルコードは常闇の世界に、赫灼を灯す(カクシャクヲトモス)かのようであった。
体内より膨れ上がった熱は焔へ。
焔は翼へ。
纏うそれは、『祈りの双子』ごと空間を爆砕させる。それは己の中に燃える焔に比例するように爆発的な威力を持って彼女たちを血管獣ごと吹き飛ばす。
鮮血が舞う中、メフィスは背を向ける。
それは過去に背を向けるようであったし、目をそらすようでもあった。
けれど、メフィスは思うのだ。
過去を見た所で、変わることがあるものではない。過去は確かに今という足場でしかないのかもしれない。
「――でも、礼は言っておくわ」
過去があるから今がある。
故に、メフィスは幻視した血の記憶の中で垣間見た者へとつぶやく。
小さく。
本当に小さく『姉さん』、と――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
何やらお気遣いいただきありがたいことでっすが!
藍ちゃんくん、真の姿といっても何かが変わる訳では無いのでっしてー。
藍ちゃんくんの一挙一動、過去も現在も未来も、全てが全て、藍ちゃんくんですので!
藍ちゃんくんの真の姿とは藍ちゃんくんに他ならないのでっす!
でっすよね、皆々様ー!
藍ちゃんくんを助けてくださるのはもちろん、ファンの皆様!
ダークセイヴァーに光を、文化を、夢をと歌い歩いた藍ちゃんくんでっすのでー!
血の記憶にもファンの方が沢山いらっしゃるのでっす!
し・か・も!
今からファンになる方もいらっしゃるのでっす!
歌い、踊り、奏でるのでっす!
鮮血のステージで!
過去の皆様にも届けと変革の歌を歌うのでっす!
藍ちゃんくんは憎しみを否定しないのでっす。
ですが憎むだけではしんどいのでっす。
憎しみだけが皆々様ではないのでっすから!
さあ、皆々様、藍ちゃんくんの歌に合いの手を!
憎しみの血管獣を皆々様のコールで魅せちゃうのでっす!
それはきっととっても気持ちいいのでっす!
それでは皆様、ご一緒に!
藍ちゃんくんでっすよー!
世界には変わることと変わらぬことがある。
不変たる事が正しいとは言わない。変わることが正しいとも言わない。
ただ、あるがままにあればいいと思う。
だからこそ、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は歌うのだ。たとえ、血の記憶に触れることによって己の『真の姿』がさらけ出されるのだとしても、構わなかった。
鮮血の海の中をオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』が解き放った血管獣が疾駆する。
かき分け、その牙を藍に食い込ませようと迫っている。
けれど、藍は叫ぶ。
「藍ちゃんくんの一挙一動、過去も現在も未来も、全てが全て、藍ちゃんくんですので!」
それは宣言と同じだった。
変わらないこと。
そこにあること。
真の姿をさらされても、藍には何も変わることはなかった。
変わらない。
何時だって己は己であるという自負がある。強烈な自己であるとも言えるだろう。
「「……いいや、過去も現在も未来も。全てが移ろい、変わっていくものだ……」」
「「……不変たるもの過去であれど、歪み果てる。オブリビオンという存在を見れば分かるだろう……過去とて歪みにじみ出る。幾度も変わる者たちを見てきただろう……」」
『祈りの双子』たちの言葉ともに血管獣の牙が藍の歌によって砕かれる。
「いいえ、変わらないのでっす! でっすよねー、皆々様ー!」
藍はマイクを向ける。
鮮血の海たるステージの上で、藍は歌う。歌って、己に味方する『血の記憶』より形作られた赤い血の巨人を背に歌い続ける。
それはいつもと変わらぬ歌声であったし、パフォーマンスであったことだろう。
藍の手(コールミーアイチャンクン)もいつものように響いている。ならば、歌い、踊り、奏でるのを続ける。
嘗て過去にファンであった者の血があったとしても、藍は笑って言うだろう。
「今は違うのだとしても、これからファンになる方もいらっしゃるのでっす! だから、藍ちゃんくんは歌うのでっす!」
膨れ上がっていく鮮血の大地。
そこにあるのはオブリビオンへの憎しみだろう。
奪われ続け、弄ばれるだけでしかない生命。
それがこの常闇の世界の人々の生命だ。誰もが願っていたはずだ。誰にも縛られぬ明日を。夜明け来る明日を。
けれど、見果てぬ夢でしかない。
夜明けは来ない。
運命は変わらない。弱者は弱者のまま、圧倒的な存在に弄ばれ続けるしかない。
「それでも! 憎しみだけではないと藍ちゃんくんは、憎しみ事態を否定せずに、変革をもって皆様に届けと歌うのでっす!」
歌が血管獣を吹き飛ばしながら、さらに高らかに響く。
「憎むだけなのはしんどいのでっす! 皆々様は! 憎しみだけでできているわけではないのでっす! さあ、皆々様、藍ちゃんくんの歌に合いの手を!」
人間の感情は千差万別。
多くの違いがある。言葉では語り尽くせるものではないとわかっていながら、その思いを、万感たる思いをもって藍は代弁するように歌に乗せる。
誰もが憎しみだけでは生きてはいけない。
喜びだけでも生きてはいけないだろう。
人生に楽しさを見出すためには苦しみを得なければならない。幸せであるためには不幸を得なければならない。
それが人の生であるというのならば、きっと夜明けはあるのだと示すように藍の瞳がユーベルコードに輝く。
響き渡る合いの手は、藍の心を高鳴らせる。
膨大な数の生命が奪われただろう。その一つ一つに呼びかける。
マイクを向け、そこにあるのは憎しみの歌ではないことを教えるように藍は『祈りの双子』に解き放つコールと共に押しのける。
「それでは皆様、ご一緒に!」
心よりの叫び。
それによって山すら動かすことができると示すように、藍は息を吸い込む。
響き渡るはコール。
いつものコール。
何百、何千回と繰り返してきたいつもの叫び。
それがなければ何も始まらないとわかっているからこそ、赤き血潮満ちるステージで藍は叫ぶのだ。
「藍ちゃんくんでっすよ――!」
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
文字通り、血の海ね。この中に、あたしを助けてくれる記憶なんてあるのかしら?
とにかく、潜らないと。
剣の打ち合う音、戦闘の音が聞こえる。これは――私たちの救援が間に合わなかった人類砦?
オブリビオンに襲われ勝ち目はないというのに、誰一人諦めず戦い続けている。――でもやがて陥落し、炎に包まれる。
あなたたちの戦う意志、確かに引き継いだわ。
●真の姿
三面六臂の阿修羅。手に剣や戟や弓矢、戦輪などを持つ
待たせたわね、フォーミュラ。あたしの中の血が騒ぐわ。オブリビオンを滅ぼせと。
血管獣に対して落魂陣を展開。与えられた本能を消し飛ばす。
祈りの双子には一人ずつ全力で、全ての武器を叩き込むわ。この世界も解放の時よ!
「文字通り、血の海ね」
ダークセイヴァー第二層たる大地は血に染まっていた。いや、血に溢れていたと言っていいだろう。
大地より噴き出し続ける血潮。
それはダークセイヴァー世界にて流れた一滴の血すら逃さずに吸い上げる血管樹による所業であった。
全ての血潮はオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』の『生贄魔術』の糧となる。オブリビオンを憎む『血の記憶』によって彼女たちは超強化を施されている。
しかし、度重なる猟兵達のユーベルコードに寄って、彼女たちは消耗し始めていた。
「「……まだである。わたしたちは死力を尽くす。かつてそうしたように、今再び……」」
「「……わたしたちが勝利する。人の憎しみは、その『血の記憶』は、わたしたちに力を与える……『血管獣』よ……」」
行け、とけしかける無數の獣たちがゆかりへと迫る。
その強烈な一撃にゆかりは血の海へと吹き飛ばされ、沈む。
「『血の記憶』……」
視界が赤く染まっていく。
己を助ける記憶などあるのだろうかと思う。この世界に。己の手を取るものがあるのだろうかと思う。
どうしたって、そうは思うことはできなかった。
剣戟の音が聞こえる。
何処か遠く。
他人事のようにさえ思えたことだろう。この血が見せる記憶は過去だと、ゆかりは理解する。
『闇の救済者』たちの砦。
その抵抗の記憶だろう。
自分たち猟兵の救援が間に合わずに滅んだ砦。
わかっている。全てを救うことができるのならば、世界はここまで険しくも厳しいものではないはずだ。
間に合うこともあれば、間に合わぬこともある。
誰かが己を責めるわけではなくとも、己自身が許せぬこともあるのだ。
焔が目の前を染め上げていく。
最後の一人になったとしても。
「充分に生きたと言って死ねるのならば、こんなに喜ばしいこともないだろう。だけど、それでも足りないと思ってしまう」
それでも生命は散る。
焔が己の手に在るように熱を帯びる。
ゆかりは、己の真の姿を晒す。灼熱帯びるような命の煌めきを満たしながら、血の海よりゆかりは這い出すようにして、その三面六臂たる体躯でもって『祈りの双子』へと迫る。
「「……血の記憶に触れたか……」」
「「……だが、それで終わりだ、猟兵……」」
放たれた血管獣をゆかりは、己の瞳に輝くユーベルコード、落魂陣(ラッコンジン)による呪詛でもって消滅させる。
戦場に浮かぶは無數の呪符。
それより放たれる光線の一撃は、尽く『血管獣』たちを討ち滅ぼす。
「その血の本能を消し飛ばす……『祈りの双子』、知らしめましょう」
ゆかりは呪符の光線の乱舞と共に『祈りの双子』へと己の手にした剣と戟を打ち据え、火花をちらしながら睨めつける。
「「……何を知らしめる……」」
「「……お前たちの敗北か……」」
「いいえ、この世界の開放の時を知らしめるのよ!」
常闇の世界に夜明けは来ない。
あるのは月光のみ。
積層世界であるダークセイヴァーにおいて、それは如何なる意味を持つだろうか。きっとあの『闇の救済者』たちも同じ思いだったに違いない。
見果てぬ希望を胸に死んでいったのだ。
ならばこそ、ゆかりは『血の記憶』に触れて、手にした灼熱の如き情動を持って力に変える。
「彼らの戦う意志を、確かに引き継いだのよ! だから! あたしの中の血が騒ぐのよ、オブリビオンを滅ぼせと!」
吹き荒れるユーベルコードの輝きと共にゆかりは『祈りの双子』を打ち据え、吠えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
榊・霊爾
下駄を何足も履かされた自称最弱がのこのこ出てきたか…
血の中から志半ばで果てた│ヴァンパイアハンター《咎人殺し・黒騎士》達の遺志を小夜啼鳥に憑依させ、刃に血を纏わせ超巨大な人食い大太刀にする
あの双子を八つ裂きにし、この刃の一員に加え、死も生も許されぬ眷属に堕としたい者、この刃に集え
│八咫烏人《真の姿》となった今なら、この獰猛な刀も制御できる
貴様らは忠犬にすらなれなかった駄犬だ、共は私を怒らせた
『復讐』の鬼と化した私とこの刃は貴様らを切り刻み、肉片にし、食い殺すまで決して赦しはしない
(見切り・ダッシュ・早業で回避、切断・抜刀・カウンターで猛攻)
迫る猟兵達のユーベルコードを吹き飛ばす祈りの力があった。
それはこのダークセイヴァー第二層の大地に溢れる鮮血を代償にして生まれる祈りであり、『生贄魔術』による力であった。
オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』は『最も古く最も弱いフォーミュラ』であると宣う。
その言葉に偽りはないのかもしれない。
けれど、最弱を自認しながらも死力を尽くして猟兵達の攻勢を弾き返す力は、オブリビオン・フォーミュラと呼ぶに相応しいだろう。
「「……生贄によって最高にまで高められた戦闘力を持ってしても、五分……」」
「「……やはり、猟兵は鮮血の洪水では止まらない。知っていたはずだ。理解していたはずだ……」」
『祈りの双子』は互いの手にした双刃を振るう。
その斬撃は凄まじいものだった。
大地を刻み、鮮血をほとばしらせながら迫る猟兵たちを薙ぎ払い続けた。
「下駄を何足も履かされた自称最弱がのこのこ出てきたか……」
榊・霊爾(あなたの隣の榊不動産・f31608)が手にした大太刀が慟哭の如き声を上げる。
大地に突き立てられ、鮮血の海に浸した刃が触れるは『血の記憶』。
オブリビオン――ヴァンパイアを打倒せんとして志半ばに果てた存在の記憶を彼は手繰り寄せる。
その意志を霊爾は感じ取り、己の姿を晒す。
真の姿。
『血の記憶』に触れたが故に抑えきれない、隠しきれない真の姿は、三つ脚の鳥人。
手にした大太刀が鳴く。
巨大な刀身へと変貌していく。ふくれ上がる殺意。
ヴァンパイアを、オブリビオンを必ず殺すと息巻くように大太刀が叫ぶのだ。
「あの双子を八つ裂きにし、この刃の一員に加え、死も生も許されぬ眷属に堕としたい者、この刃に集え」
霊爾は告げる。
『血の記憶』はオブリビオンへの憎しみに満ちている。
ならば、応える者もあるだろうと理解する。
憎しみは、怒りに似ている。
だが、怒りよりもドロドロとしたものであるとも理解する。獰猛さを示すように大太刀が猛り狂うように刃を鳴らす。
真の姿の己であればこそ制御できる大太刀の嘶きの如き震えを柄を握りしめることによって抑えながら、彼は『祈りの双子』へと迫る。
まるで先回りするかのように『祈りの双子』たちが振るう双刃を弾き上げる。
「「……疾い……」」
「「……わたしたちの迅速さを超える……」」
「貴様が何処にでも逃げようとも、俺は先回りして待っている」
それが己のユーベルコードであると占めるように霊爾は大太刀を振るう。
そう、この血の記憶が言っている。
己たちを怒らせたと。
憤怒と憎悪によって己たちを復讐鬼へと変えたのだ。
故に、と霊爾は告げる。
振るう斬撃が火花をちらしながら『祈りの双子』の祈りを削ぎ落とすように刃が噛み砕いていく。
「この私と、この刃は、貴様らを切り刻み、肉片にし、食い殺すまで決して赦しはしない」
それがこの世界に満ちた怨嗟の源たる責任の所在である。
多くが死んだ。
多くが苦しんだ。
死すら救済ではない輪廻の閉じられた世界。死して尚弄ばれる。狂うほどの苦しみの中にありて、血は流れ続け、『祈りの双子』のために消費されていくなど。
「赦してはおけぬ」
ただ一言。
それだけを示すように霊爾は荒れ狂う大太刀の一撃で持って『祈りの双子』の胴を引きちぎるように薙ぎ払うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
真の姿『樹氷世界』(20/8/7)
…潜っていましたら、母のような人を見かけました。
わからぬ世界で戦う…それも人々のために。そのような。
(※本当に神隠しにあった母だったりする。この世界にいたことを、四悪霊は知らない)
そのまま…氷雪属性をつけたUCにて攻撃を。もちろん、範囲攻撃となったものを三回ですよ。
凍っていきなさい。あなた方は、『我ら』を怒らせたのですから。
相手の攻撃は、四天霊障を結界に転用して防御いたしましょう。
…ええ、これ。半ば暴走してるので…私にもどうなるかわかりませんよ?
血の海を往く。
それはダークセイヴァー世界において流れた『血の記憶』を手繰るものであった。
多くの血が流れた。
多くの生命が失われた。
それが常であった。誰もが傷つかずにはいられない世界であったからだ。多くの血は憎しみを抱く。
己達の生命を弄んだオブリビオンを憎む。
憎まずにはいられないのだろう。
わからないでもない。
悪霊たる己達もそうであるからだ。故郷を、生命を、奪ったオブリビオンに対する憎しみで呪詛はできている。
体を構成する呪詛は、束ねられ形を作っている。
辛うじて四柱で共存できている。
だからこそ、わかる。
これはきっと呪詛。故にオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』は己達を憎む『血の記憶』を持って、自身を強化しているのだ。
「「……憎しみこそが最も強烈な感情にして力であるがゆえに……」」
「「……わたしたちは、それを求める。最も、これだけ強烈な感情を糧としてなお、猟兵たちとの戦いは五分……」」
どちらに戦いの趨勢が傾くかなどわからなぬ戦い。
故に死力を尽くし、祈りの力によって、猟兵達の苛烈な攻勢を凌いでいるのだ。
「……戦う」
四柱の一柱『静かなる者』は血の海を凍結させ、その上に立っていた。
真の姿を晒す。
氷結した弓を、その呪詛に塗れた矢をつがえ、弦が引き絞られる。
理解した。
触れた記憶は『血の記憶』であり、この世界に流れた一滴であると知る。
あれが母であると思えたのは、人々のために戦っていたからだ。
「……どこに在りても、我が母であることに変わりはなく。人々のために戦う。その御姿こそが、私の道行を照らす」
煌めくユーベルコードが弓より放たれている。
「「……無駄だ。わたしたちは、あらゆる困難を排する……」」
「「……祈りによって……」」
放たれる矢。
それは無數に放たれる氷雪の矢。
四悪霊・林(シアクリョウガヒトリ・シオウタカユキ)は、雨のように降り注ぐ。氷雪の矢は礫のように『祈りの双子』に襲いかかるだろう。
強烈な矢の応酬は、ただそれだけで『祈りの双子』を追い詰めていく。
振るわれる双刃の一撃が『静かなる者』の張り巡らせた霊障に激突し、その霊障を砕いて、その身を引き裂く。
血潮が瞬時に凍りつく。
傷を塞ぐ、と言っても良い。
「「……己のが身で受けたか……」」
「「……氷雪、凍結……まさか……」」
「……ええ、これ。半ば暴走しているので……私にもどうなるかわかりませんよ?」
砕けた霊障より解き放たれる霊気と氷の矢。
それは我が身を厭わぬ攻勢であったことだろう。
敵味方を区別しない矢の雨。
礫、雹のように降り注ぐ矢は、『静かなる者』をも巻き込み、双刃食い込むままに凍結させ『祈りの双子』たちを留めた。
「凍っていきなさい。あなた方は『我等』を怒らせたのですから」
降りしきる氷雪に骨身を砕かせながら『祈りの双子』は飛び退くのが精々であったことだろう。氷雪にまみれ、傷すら凍結させ、『静かなる者』は凍結する赤き血の海にて彼女たちに底しれぬ怒りたる眼差しを向けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ
「勝利する才能か。似ているかもな、お前とは。」
血の記憶に彼方に見た彼にそう呟くと、真の姿が顕現する
そこに現れたのは煌めく空洞
恒星を、宇宙を、或いはそれ以上の何かを
人型にねじ込んだ空前絶後
その正体は『勝利』
あらゆる敵、理不尽、不条理に勝つ
そんな舞台装置にしか過ぎない虚無
「いいや、そいつは違うぜ。」
刹那、虚無すら呑まれる
急激にそれはみんなのヒーローに変わる
「オレは空桐清導!!無敵のヒーローだ!」
真の姿も自分の一部
男は胸を張って吼えるのみ
無限の勝利すら飲み込むヒーロー、空桐清導が現れた
「勝利の才能上等じゃねえかよ!
後は仲間の手を取れば良いんだ!
だから、オレの手を取れセラフィム!
世界を救いに行こうじゃねえか!
熾天!変ッ身!!
コイツが!セラフィック・ブレイザインだ!!」
朱き鎧に焔の六翼、黄金のオーラを纏った機神が顕現した
「一緒にいくぞ!あいつらをぶっ倒すんだ!」
迫る血管獣を鎧袖一触して双子まで突っ込む
輝く光焔を剣に変えて[限界突破]
埒外の力でもって双子を一刀両断する!
戦いにおいて勝利とは必須たるものであったことだろう。
勝利しなければ、敗北しか得られない。
この常闇の世界においては生命を喪うことと同義であったはずだ。喪われてしまった生命は回帰しない。
何故なら、この世界において死とは救済を意味しないからだ。
死した生命は巡ることなく第三層にて、新たなる苦しみを得るだけに過ぎないからだ。それを空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は幾度と無く見てきただろう。
故に、『血の記憶』に触れる。
その先に見たのは『勝利する才能』しか持ちえぬ者であった。
「『勝利する才能』か。似ているかもな、お前とは」
言葉が届かないことはわかっている。
あるのは『血の記憶』だけであって、そのものたる存在ではないからだ。
けれど、と清導は思う。
己は空洞である。しかし、それは言葉通りのものではなかったことだろう。虚ではなく、あるのは虚空でもなく。
宇宙を想起させるものであった。
人型に保つかのような鼓動は、『勝利』を具現化したかのような姿であった。
あらゆる不条理に、理不尽に、敵に打ち勝つ概念そものであったというのならば、それは舞台装置呼ぶに相応しいものであっただろう。
けれど、清導は否定する。
「オレは」
違うのだと思う。
己は確かにあらゆる『勝利』という概念を詰め込んだものなのかもしれない。けれど、それは誰かが思う英雄であったことだろう。
誰もが願う者。
人はそれを。
「オレは空桐・清導!! 無敵のヒーローだ!」
血の海に柱が立ち上る。そこにあったのは、胸を張り咆哮する『真の姿』を晒した清導――無敵の勝利すら飲み込むヒーロー。
「勝利の才能上等じゃねぇかよ! 後は仲間の手を取れば良いんだ! だから、オレの手を取れ『セラフィム』!」
赤き血の巨人に清導は手を伸ばす。
触れる血はふくれ上がるようにして弾け、清導の赤き機械鎧を染める。
「世界を救いに行こうじゃねえか!」
「「……世界の悲鳴に応えるか、猟兵……」」
「「……だが、わたしたちとて死力を尽くしている。故に……」」
オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』が、その手より血管獣を生み出し、けしかける。血の海を疾駆する獣は、その牙でもって清導を引き裂かんと迫る。
しかし、その牙は彼には届かなかった。
「熾天! 変ッ身!!」
朱き鎧に焔の六翼、黄金のオーラを纏うは、正義を超えた正義を宿す機神。
ふくれ上がる力は、黄金のオーラと意志の力に比例している。
拳を握りしめ、迫る血管獣を一撃のもとに吹き飛ばしながら、清導は叫ぶ。
「これが、コイツが!『セラフィック・ブレイザイン』だ!!」
広げた掌に光が光焔へと立ち上り、『祈りの双子』へと突進する。立ちふさがる血管獣など問題にはならない。
拳で叩きつけ、蹴撃で吹き飛ばし、さらに飛ぶ。
剣へと変貌する光焔。
それは生命の埒外と呼ぶに相応しい力であったことだろう。
「「……『血の記憶』を助けとするか……」」
「「……わたしたちのように糧とするのではなく……」」
「そうさ、一緒に! 共にあるということが! これほどまでに力を高めることを知れ! お前たちをぶっ倒して!」
振るう斬撃は『祈りの双子』へと叩きつけられる。
双刃が受け止める。
火花が散り、その力の激突が苛烈であることを知らしめるだろう。衝撃波が吹き荒ぶ。鍔迫り合うようにして互いの刃が一進一退の力の奔流を見せながら、それでもなお清導は叫ぶだろう。
多くを喪った生命たち。
死すら救済と開放を成さぬ世界。
輪廻を立たれた世界に囚われた血潮を開放するように、その光焔は『勝利』を具現化したように、『祈りの双子』の体を引き裂き、光を炸裂させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
鮮血に潜る。
血の記憶、オブリビオンへの憎しみ、怒り。
なら自分は、その怨みそのものとなろう!!
『瞋憎を喰らえ!!!』
【生命力吸収】戦争が、オブリビオンが生んだ憎しみの記憶、
その鮮血を【捕食】し、血の記憶を己が【闘争心】と、力としていく……!
この世界で関わりのある者は敵しかいないと思っていた。
…だが、そうか!貴殿は其処にも居るのか!!セラフィム!!!
『禍戦・瞋憎喰』憎しみの記憶を秘めた
鮮血、
【肉体改造】集め纏うその鮮血に形を与える。
敵に奪われるよう、敵と戦い、その怨みを晴らす鎧を、破壊を成す、
赤色の鋼鉄の巨人、その姿を!セラフィムを!!操縦する!!!
壊そう!!この敵を!過去を!壊し、勝利を!!
RX騎兵刀で切り込み、
【念動力】内から飛び出た
赤黒の霊障お手で血戦兵装を削り、その憎しみを喰らう。
使いきろう、有らん限りの怨みを叩き込み、祓へ、昇華せよ!そして!!
騎兵刀、呪詛物質解放!!
【怪力】で血戦兵装を押し切り、五卿六眼へ破壊を叩きつける!!
未来を!!!世界に齎せ!!!!
光が満ちている。
揺らめくような赤色は己の視界に何を映すだろうか。
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は見る。『血の記憶』を。
この血の海にはオブリビオンへの憎しみと怒りしかない。多くの者が命を落とした。いや、無為に奪われた。
もてあそばれたと言っても良い。
オブリビオンたちの成すことは全て生命を冒涜することであっただろう。
許しがたいという感情が小枝子の人口魔眼を燃やすように熱を灯す。
ダークセイヴァー世界第二層。
血管の大地はすでに血の海へと変わり果てた。膨大な量の血。夥しいまでの血の海は、これまでダークセイヴァーにて流された血潮の全てである。
一滴たりとて人の思いのままにはならない。
それがオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』の『生贄魔術』によって力へと変貌する。
超強化された双子は言う。
「「……死力を尽くす。それだというのに、なおもまだ食い下がるか、猟兵……」」
「「……全ての今は過去になる。過去になった今は踏みつけになるだけだと何故理解しない……」」
その言葉に小枝子は瞳を一度伏した。
飲み込む。
血を飲み込む。これは憎しみの連鎖。ならば己は怒りを飲み込み怨みそのものとなるだろう。そうであるべきだと思うし、そうでなければならないと己の中の何かが叫んでいる。
「瞋憎を喰らえ」
争いが生み出したもの全てが小枝子の中で荒れ狂うように闘争心へと変えていく。
怨念は満ちていく。
五体の隅々まで走り、彼女の体内の血管という血管を圧する。
常闇の世界にあるのは敵だけだ。
多くのオブリビオンが人々を虐げる。いたずらに人を殺す。いたずらに弄ぶ。死した後でさえ、オブリビオンは彼らの魂をも弄び続けるのだ。
死さえ救済ではない世界。
「……自分に関わりの在る者は敵だけだ。だが、そうか!」
見開いた小枝子の瞳は虚。
されど、その最奥に熾火が煌めく。
「貴殿は其処にも居るのか!!『セラフィム
』!!!」
小枝子は見ただろう。
戦場を切り裂くような光焔。猟兵のユーベルコードの煌めき。そして、己を覆うようにして立ち上がる赤い血の巨人。
其の名は『セラフィム』。
禍戦・瞋憎喰(デッドオーバー・ハート)は怨念でもって形を作る。
身に宿る闘争心は膨れ上がり、制御の効かぬまでに到達する。赤き色は
鮮血を示すようであった。
「壊そう!!」
赤き血の巨人と共に小枝子は踏み出す。
迫る血管獣を拳が吹き飛ばす。瞬間、血管獣の骸を小枝子は握りしめる。怨念が形作るは騎兵刀。
赤き血潮を思わせるような刀身を振りかぶって『祈りの双子』へと叩きつける。双刃が激突し、火花を散らす。
「「……破壊しかもたらさぬがゆえに、それだけを是とするか……」」
「「……度し難い。わたしたちの永遠を妨げる猟兵……」」
「この敵を! 過去を! 壊し、勝利を!!」
『血の記憶』の中で彼は言った。『勝利する才能』しかないと。だが、それでいい。それ以外の何物であっても弱き者は守れない。
たとえ、勝利の後に来る者が滅びであるのだとしても。
先延ばしだという者がいるのだとしても。
それでも戦わなければ生き残ることができないのが世界であるというのならば、戦って勝利を得るしかない。
故に激突する赤い血の刃と双刃が散らす火花の向う側で赤黒の霊障たる拳の一撃が『祈りの双子』に纏う『生贄魔術』による強化を吹き飛ばす。
いや、削る。
「「……憎しみを喰らうか……」」
「そうだ! そのとおりだ! この体は憎しみを喰らう! 使い切ろう、あらん限りの怨みを叩き込み、禊へ、昇華せよ!」
身に宿る怨念が何か別のものに変わるというのならば、昇華によってのみである。
人の心は怨念を救うか。
わからない。小枝子にはわからない。
それが如何なるものであるのかも。どうすれば怨念が晴れるのかも。わからない。喪ってしまったものの気持ちはわかったとしても、小枝子にできるのは破壊だけだ。
即ち、今を脅かす過去を破壊することだけだった。
「そして!!」
騎兵刀の宿る呪詛物質が開放される。
双刃を押し切るようにして刃が走る。衝撃が荒ぶ。血の海が割れるようにして、痛烈なる一撃が『祈りの双子』へと叩きつけられる。
「未来を!!! 世界にもたらせ
!!!!」
赤い血の巨人が身に宿した力の全てを『祈りの双子』へと叩きつける。
多くが失われただろう。多くが取り返しの付かないことになっただろう。
生命とはそいうものだ。不可逆たるもの。故に尊ばれる。
けれど、と小枝子は思うのだ。
生命を賭した先にあるのが未来だというのならば、やはり勝利しなければならない。勝利しなければ、描けぬ未来があると知るからこそ、小枝子の破壊は、その一撃は未来に昇華するように過去の化身たるオブリビオン・フォーミュラを切り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
サク・ベルンカステル
今の我が剣閃では完全に断ち斬れぬか、、、
今一度私に力を、、、
再び鮮血の海より故郷の皆の力を借り闇の血の装甲を纏った真の姿を保ち双子に向け斬りかかるも、
自身と力を貸してくれる物達の復讐の念
オブリビオンへの憎しみが宿った鮮血
この場に憎しみの負の感情が渦巻いていることに気付く
血戦兵装を扱う双子の攻撃を【見切り】【オーラ防御】【武器受け】でいなしながら、失われた故郷で、渡り歩いた数多の戦場で幾度となく歌い続けたUC鎮魂歌を、鮮血となってまで弄ばれる憎しみの記憶達の為に歌う
どうか安らかに、、、
オブリビオンの糧になどならずに休んでくれ
UCを通して無数の憎しみを引き受けて尚、剣戟を伴奏としながら鎮魂歌は響く
いくつものユーベルコードの輝きがあった。
血の海を割る斬撃。
オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』は吹き飛ばされながらも、しかして健在であった。
双刃はすでに欠けてはいるものの、即座に『生贄魔術』によって復元していく。
「「……ここまで来るか……」」
「「……侮っていたわけではない。過小評価していたわけでもない。かと言って過大に評価していたわけでもない……」」
彼女たちは知っている。
鮮血洪水で止まる猟兵は存在しないと。死にものぐるいでこちらを滅ぼさんとしてくることを彼女たちは知っていた。
だからこそ油断はない。
しかして、彼らはその力を満たすように迫るのだ。どうしようもないほどに愚直に迫りくる。
己達の全てが許せぬと言わんばかりに。
「……」
鮮血の海にてサク・ベルンカステル(幾本もの刃を背負いし剣鬼・f40103)は立つ。
己の剣閃は確かに『祈りの双子』に届いていた。
届いてはいたが、完全に絶ち切るには至らなかった。わかっている。今の己では無理だと。しかし、それで止まるわけがない。
己の歩みは止まらない。
時が止まらないように、己もまた止まれないのだ。揺れる血の海面に指先が触れる。『血の記憶』に触れる。
友が。家族が。恋人が。
その記憶が体を駆け巡っていく。
それで充分だ。
己がこの戦場をかける理由など、ただ一つで良い。
「今一度私に力を……」
踏み込む。
振るう大剣の斬撃を双刃が受けと得る。虚の如き瞳が己を見ている。
「「……なお迫るか……」」
「「……私達を滅ぼさんとする者。猟兵……」」
「無論、この場に憎しみの感情が渦巻いている限り、私は足を止めぬ。止められぬ。己の背中を押す者がなんであるかを知っているからだ」
双刃が赤く染まり、歪な形へと変貌していく。束ねられた異形なる刃はサクを左右から襲う。
鋏のように振るわれる斬撃は断ち切る、という点においては理想的な鋭さであった。サクの肉体を挟み込む刃。
血の装甲に食い込み、其の斬撃が強靭なる体を傷つける。オーラで受け止めていてもなお、その斬撃は砕いて、断ち切ろうとする。
押し切られる、と理解しただろう。
わかっている。
個としての力の差は歴然だった。さらには『生贄魔術』によって強化さえされているのだ。彼女たちの『血戦兵装』は確かに猟兵を殺すには十分すぎる力であった。
サクの肉体を断ち切らんとする刃。
己が理想とする太刀筋で、己が求めた断ち切る力を振るう『祈りの双子』にサクの瞳がユーベルコードに輝く。
それはあまりにも不似合いなものだった。
これまでサクが歩んできた道程を考えるのならば、それは不可思議とも思えるものであった。
深々と刻まれる刃の痛みなどなかった。
己の心にあるのは唯一つ。
憎しみだけのはずだった。けれど。この場を見ろ。この血を見ろ。これが生命であると言えるだろうか。
記憶だけになりて。血のみとなりて。それでもなお、上位たる存在に弄ばれるしかない運命を受け入れろと誰が言えるだろうか。
故にサクの唇がわななくように音を発する。
「そうだ。私が戦うのは、歌うのは」
鎮魂の歌。傷ついた魂しか、ここにはない。血しかない。ありとあらゆる残酷なる運命が彼らをこのような姿にしたのだと知るからこそ、サク歌う。
せめて、その魂に安らぎがありますようにと。
故に彼は歌う。
戦いにあって、初めてそう歌ったのだ。戦いが終わった時にしか歌ってはならぬと誰が言った。
数多の猟兵たちが歌うように。
其の思いを込めてサクを歌う。
憎しみだけが生命ではなかったはずだと。
「どうか安らかに……オブリビオンの糧になどならずに休んでくれ」
瞳が見開き、先の剣戟が挟み込む双刃を弾き飛ばし、『祈りの双子』への憎しみを肉体に引き入れ、斬撃を伴奏とするように戦場に響く鎮魂の戦歌(イクサウタ)は、戦場に在りし猟兵達のあらゆる傷を癒やし、其の傷をサクは負う。
そうすることが魂の安息に近づくと知るがゆえに――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
これだけの血を確保するために、どれほど多くの人々が犠牲になったのか。
その報いを受けさせましょう!
鮮血を厭うことなくその身を浸す。
この中にはきっと人々や世界を護ろうとした人々の想いもある筈。
《神性解放》発動。
詩乃自身も同じ想いを持ちて『祈りの双子』を倒しましょう。
「今こそ貴方達の願いを叶える時。」
UC効果&神罰・雷の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃による特大の雷が血管獣達を貫通攻撃して打ち据えます。
更にUCによる高速飛翔で『祈りの双子』へ一気に迫り、神罰・光の属性攻撃・破魔・浄化を宿した煌月による2回攻撃・なぎ払い・鎧無視攻撃にて二人纏めて斬ります。
何度蘇ろうと、何度でも倒してあげます!
ダークセイヴァー第二層は血の海へと変貌していた。
元より血管だけがはびこる大地であった。けれど、その異様たる光景は、大地を切り裂いて噴出する血潮によって埋め尽くされていた。
オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』たちの『生贄魔術』によって、其の血は彼女たちの強化に使われている。
全ての血は、この第二層に吸い上げられる。
夥しい、と表現するにはあまりにも言葉が足りないと大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は思ったことだろう。
「これだけの血を確保するために、どれほどの多くの人々が犠牲になったのか」
詩乃は思う。
ダークセイヴァー世界は人の生命など塵芥のように扱われる。
死した後でさえ、魂人に転生し、その生命を弄ばれる。そうすることでオブリビオンたちは力を得てきた。
今でさえそうだ。
吸い上げた血。それによって強化を得た『祈りの双子』たちから血管獣がけしかけられる。血の海を疾駆する獣たちの牙が詩乃へと迫る。
「その報いを受けさせましょう!」
彼女はためらうことなく鮮血の海へと飛び込む。
憎しみばかりが満たされていた。
血の赤を染め上げるは憎悪。オブリビオンへの憎悪。それしかない。怒りも苦しみも、哀しみも、憎悪に塗りつぶされてしまっている。
おぞましいまでの憎悪。
けれど、詩乃は思うのだ。
多くを見てきた。
『闇の救済者』たちを見てきた。彼らは確かに絶望的な戦いを強いられていた。けれど、それでも、彼らが立ち上がったのは一体何のためであったのか。
それを詩乃は知っているのだ。
「憎悪だけが染め上げる『血の記憶』の中でさえ、人々や世界を護ろうとした人々の想いも在るはずなのです! だから!」
詩乃の瞳がユーベルコードに輝く。
神性解放(シンセイカイホウ)されし、若草色のオーラが鮮血の海に迸る。
自分にも同じ想いがある。
世界を守りたいという想い。誰も彼もが痛みに喘ぐ必要のない世界が欲しいと願う。常闇の世界は何処まで行っても人に不条理だ。理不尽を強いる。
それがどうしても許せないからこそ、詩乃は血の海より飛び立つ。
手にした懐剣の切っ先が天に掲げられた瞬間、天より穿つ雷の一撃が血管獣たちを打ち据え、消滅させる。
「「……浄化するか、憎悪を……」」
「「……その先に何が待つという、猟兵よ……」」
『祈りの双子』たちの双刃が煌めき、詩乃へと迫る。
その一撃を薙刀の一撃が受け止める。
詩乃の瞳が欠落した眼窩の奥を見やる。そこには何もない虚無しかない。あるのは憎悪されるという事実のみ。
「今こそ貴方達の願いを叶える時」
憎悪に憎悪をぶつけてはならない。
それは意味のないことだからだ。輪廻の如き怨嗟にとらわれるだけだ。それが綺麗事だということは簡単だっただろう。
偽善だと謗られることもあるだろう。
けれど、詩乃はそれでも信じるのだ。
人の想いは、憎悪に塗りつぶされてばかりではないことを。怨嗟を生み出すのが人ならば、怨嗟を断ち切ることができるのもまた人であると彼女は知っている。
「あなた達が何度でも蘇るのだとしても」
詩乃の振るう薙刀の一閃が『祈りの双子』の体を切り裂く。
血潮が迸ることはなかった。けれど、詩乃は構わずに続ける。浄化の力を宿した刃が煌めく。
若草色に染まる詩乃のオーラが血の如き色を持つ双刃を受け止めて弾き返す。
「何度でも倒してあげます! 人の心が憎悪ばかりではないことを。明日を望む彼らに、其の感情は必要ないのだと私は」
示すのだと振るう斬撃が『祈りの双子』にまつわる因果の如き怨嗟を断ち切るように『血の記憶』の螺旋を引き裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
血の記憶が見える…
あれは…死んでる拙者の記憶!アレは坂道でジャンプした時のかな?まあその後リスポーンしたんだが…やはり自分を救うのは自分しかないという事でござるな
よし拙者も真の姿に…いつもと変わらねぇ!(絵姿が)無い物は無いから変わらないってか!
滅多な真似を…殺してやる…殺してやるぞ祈りの双子!
記憶があるなら血だまりは実質拙者の死体でもあるので【ギャグ時空】が出ちゃっても仕方ないね!よろしい、ならば爆発オチでござる
【血戦兵装】で兵器ならば常に爆発するリスクを負う!これ世界の掟
拙者も爆弾は沢山あるからさ…自爆しようぜ!これが猟兵、悪魔の力よ!まあ拙者は後でリスポーンするんだが…
鮮血満ちる大地は、すでに大地という様相を捨て去っていた。
あるのは海。
赤き血の海だけだった。
エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)は沈む。ごぼがぼと音がするのは気の所為である。これだけシリアスをやっている時にまさか血の海で溺れかけているなど誰が思うだろうか。
彼は見る。
『血の記憶』を。
何処を見ても怨嗟と憎悪ばかりだった。
あらゆる記憶が怒りに満ちている。オブリビオンに対する怒り。そればかりが、この血の海に満たされていた。
「「……わたしたちに対する憎悪。それこそがわたしたちの体を強化する。それを糧にするのが……」」
「「……即ち、『生贄魔術』……超えられるか、猟兵。幾千、幾万を超える怨嗟の先にあるわたしたちを……」
オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』たちの言葉をエドゥアルトは何処か遠くに聞いていた。
彼にとっては、それどころではない。
鼻に水が、じゃなくて血が入り込んでむせ返る。
やばい。これは『血の記憶』を探しているとかそんな場合じゃ……となっているのである。シリアス演っている所に大変申し訳ないとおも……思わないな、これは。
「っていか、あれは死んでる拙者の記憶!」
ああ、ダークセイヴァーの段差を飛び越えようとして坂道でジャンプして些細な段差に脚が引っかかって死んだときのやつかなと、エドゥアルトは冷静に理解を深めていた。
え、ものすごく理解が早いじゃん。
「まあその後リスポーンしたんだが……やはり自分を救うのは自分しかいないということでござるな!」
パワフルすぎる拡大解釈である。
どこまで拡大解釈すれば、そんな解釈が生まれるのだろうかと思うほどに清々しいほどの解釈が生まれるのだろうか。
ポジティブシンキングも極まると、こんな感じになるのだろうか。
「これでよし! 拙者も真の姿になるでござるよ! っていつもの姿と変わらねぇ!」
エドゥアルトは真の姿を晒しているはずである。
あっぷあっぷしていた血の海からざぱりと体を起こしてみたら、あら不思議、あんがい血の海って浅瀬なのね、と思った。
いや、水深5cmでも溺れようと思えば溺れるのが人間である。いや、溺れようとは思わないだろうが、それだけの浅瀬でも危険がデンジャーなのが世界というやつである。
しかしながら、それとこれとは違うのである。
「ええい、無いものはないから変わらないってか!」
絵姿がないのは仕方ないね。
「滅多と書いてルビでメタと読ませるダブルミーニング! 味な真似を!」
「「……」」
『祈りの双子』は不可解な者を見る目でエドゥアルトを見下ろしていた。
見下ろしていたが、なんか普通にあれはやれそうだと判断したのだろう。血の塊が折り重なる双刃をだしぬけにエドゥアルトへと振るう。
その一撃は凄まじい衝撃を持ってエドゥアルトを吹き飛ばす。
一撃だった。
それだけでエドゥアルトの体は真っ二つである。
「「……なんだったのだ、これは……」」
「「……理解不能……」」
「よくも……よくも絵姿が無いからっていつもの拙者をよくも!!」
その隣でエドゥアルトはうなずいていた。
え、と思うより早くエドゥアルトは憎しみに血走った目で『祈りの双子』を睨めつける。
「……殺してやる……殺してやるぞ『祈りの双子』!!」
大変だな、オブリビオン・フォーミュラ。
「天の声もだ!」
マジでメタの壁ぶち抜いてくるじゃん。
「これもこれもギャグ時空ってやつのせいなんだ。ネットミームに汚染されてしまえ! これで爆発オチもつくでござろうもん!」
シリアスな空気は普通に消え去っていた。
どこにもなかった。
欠片もなかった。あるのはエドゥアルトのリスポーンと残された死体。その真っ二つにされた死体がギャグ時空が発生しているのだからしかたない。
ふくれ上がる自爆玉砕攻撃。
「これが世界の掟! 拙者も爆弾は沢山あるから安心だね! 自爆しようぜ! これが猟兵! 悪魔の力よ!」
後年後乗せサクサクでいい感じに設定もられた感じなる奴。
そんなこんなでエドゥアルトは『祈りの双子』に立ち向かう。この果てしなく続く自爆坂を。
黒ひげは二度死ぬ(ニカイイジョウシンデマスヨネ)・完――!!
大成功
🔵🔵🔵
ゾーヤ・ヴィルコラカ
双子さん、あなたも覚悟をきめてそこに居るのね。それは、わたしたちだって同じこと。この世界を押し流すだなんてそんなことさせない、必ず止めてみせるわ。
〈勇気〉を出して鮮血に身を沈めるわ。たくさんの怨嗟の声の中で、どこか懐かしい声が聞こえる気がする。わたしを呼ぶ声、声色もはっきりしないけど、でも直感でわかる……お母さん?
わたしを信じる想いを受けて、【UC:裁きの冬、来たれり】(WIZ)を発動よ! 血潮すら凍り付き細氷が降り注ぐわたしの領域、パワーアップした氷の〈属性攻撃〉を双子さんに放つわね。
お母さんは、わたしを希望と呼んだわ。昔はわたしなんか誰の役にも立ちやしないって思ったこともあった。けれど今は、それをちっとも重く感じないし、むしろ誇らしい。わたしは、わたしを信じてくれるみんなの気持ちに応えたい。だから、あなた達には負けられないわ!
(アドリブ等々大歓迎です)
猟兵達の攻勢は苛烈そのものだった。
彼らの怒りを買ったことをオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』は理解している。鮮血の洪水で止まる猟兵は誰一人としていない。
充分だと思うから妥協が生まれる。
妥協は己達に隙を生み出すことであると彼女たちは知っていた。だからこそ、彼女たちは第二層の大地を切り裂き、血潮を噴出させる。
膨大な量の血が溢れ出し、その血に満ちる憎悪によって彼女たちは身を強化した。
「「……それでもなお迫るか、猟兵……」」
「「……生命の埒外であるがゆえに、死力を尽くしてなお、ここまで追い込まれる……」」
『祈りの双子』たちは猟兵たちを過小評価も過大に評価もしていなかった。
正しく理解しているつもりだったのだ。
だが、その理解はさらに超えてくるものであると知らなかっただけだ。
「双子さん、あなたも覚悟を決めて其処に居るのね」
ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は血の海に佇み、ユーベルコードの煌めき、その明滅を見上げ、其の中心にある『祈りの双子』を見上げていた。
死力を尽くしている。
己たちを滅ぼそうとしている。
それは猟兵とオブリビオンという間柄、当然の成り行きであった。わかっていた。そうなるということは。だからこそ、ゾーヤは改めて宣言するのだ。
「それは、わたしたちだって同じこと。この世界を押し流すだなんてそんなことさせない、必ず止めてみせるわ」
だから、ゾーヤは意を決する。
血の海に飛び込む。
身を浸すは血の記憶が見せる憎悪。
オブリビオンのもたらす痛みと苦しみ。理不尽と不条理に対する怒りばかりが司会を染め上げていく。
怨嗟がゾーヤの耳を埋め尽くしていく。
けれど、その最中に。
僅かに聞こえるものがあった。
己を呼ぶ声。声色もわからない。判然としない。けれど、ゾーヤは直感的に理解するのだ。それが誰かを恨む声ではないことを。
「……お母さん?」
疑念は声に出てしまっていた。
『血の記憶』が己の視界を幻視で埋める。
声しか聞こえないはずなのに。けれど、それでもゾーヤは知る。赤ではなく黒き視界。己がまぶたを閉じているのだと知った。
これは『血の記憶』。
誰かの記憶。
流された血の一滴すら、この世界は自由にはならない。ならばこそ、ゾーヤの信じるはその想い。
己を思う母の愛を彼女は信じる。
「心亡きものには痛みを、心清きものには癒しを」
裁きの冬、来たれり(ジャッジメント・ダイヤモンドダスト)。
ゾーヤの瞳がユーベルコードに輝く。
降り注ぐは戦場を凍てつかせる細氷。あらゆるものを凍結させ、絶対零度へと戦場を変貌させていく。
「お母さんは、わたしを希望と呼んだわ」
『血の記憶』の中で、そう呼んでくれたのだ。
愛おしさを込めて。
慈しみを込めて。
そうでありますようにと、祈りを込めて、呼ばれたことをゾーヤは知っている。
いつかは、己が誰の役にも立つことはないのだと思った。
それが誤ちであると優しく囁く声があった。
誰かの希望であるという重責は己の体に重くのしかかったことだろう。どうしても上手くできないことがあって、それでもなお藻掻くように生きてきたことは何一つ無駄ではなかったのだ。
「誇らしいの」
「「……何を、言っている……」」
「「……何を見た。この憎悪満ちる『血の記憶』の中で……」」
「咎人さん、双子さん、あなたには見えていないものが私には見えている。今、どんなにわたしが誇らしいと思っているのか、あなたたちにはわからないのでしょうね」
ゾーヤの瞳がユーベルコードにきらめいている。
真の姿は隠せない。
けれど、それでいい。隠すことは隠したいということではない。
多くの言葉がゾーヤに降り注ぐようであった。
愛ある言葉がゾーヤの力を増幅させていく。斯く在れかしと願う言葉は、誰かの希望になりますようにと願うものであったからこそ。
「わたしは、わたしを信じてくれるみんなの身持ちに応えたい」
ゾーヤは手を広げる。
広げた手は誰かを打ち据えるためでもなく、掴むでもなく。
胸の前で広げられた掌は合わさる。その掌の中にかけがえのない想いが宿っている。人はそれを祈りと呼ぶだろう。
誰かのためになりますようにと願う心は、超克の先をゾーヤに見せるだろう。
「だから、あなたたちには負けられないわ!」
掌と掌の間に満ちる光が、『祈りの双子』を凌駕する祈りへと昇華し、降りしきる細氷が彼女たちの身に纏う憎悪による強化を凍結し、砕いていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ギヨーム・エペー
真の姿:冷水たる吸血鬼(cold water)。鋭い瞳孔が赤く内側から発光しており、背にはハネが生えている
血の海。……。いや、ヒトの血以外も混ざっているか。おれの血だって流れたから、あるだろうな
名も知らぬきみ。故郷は好きかな。この世界、おれは誇りに思っている
おれはこの土地を愛している
どんなに血が流れていても、太陽が昇らなくても
暗闇から遠い、冷たくも凍えることのない家で育ったからかもしれないけれど
ひどい世界だとは思うよ。残酷で、生きづらくて、息も詰まりそうな空で……根から腐っているのかもしれない。だが、そこに立つ人々は立派だった。おれが見てきた生きものたちは生きて。生きていたんだ。この、世界で
……渡したくねえなあ、あの双子に。皆の血を一滴も。一粒も渡ってほしくねえ。だって元は、汝らのモノだ。幾ら自然の摂理があるからって、上には上がいるからって、血で世界を覆うんじゃねえよ。空が見えなくなるだろう。日が昇るんだ。空には
流されるのは嫌なんだ
帰る家がなくなるのは困るんだ
一緒に闘ってくれねえか。共に
目の前の血の海をギヨーム・エペー(Brouillard glacé calme・f20226)は見た。
そこに懐かしさを覚えるのは、この海の中に流れた己の血があるがゆえであろうか。
ダークセイヴァー世界において落ちた血の一滴すら自由にはならない。全てが吸い上げられ、第二層へと運ばれる。
それは全てオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』の『生贄魔術』によって糧とされるためである。
悍ましき事だろう。
わかっている。これが許されて良いことではないことはギヨームにもわかっている。
「「……ならばなんとする、猟兵……」」
「「……怒りを覚えるか、それがお前たちの怒りを買う、ということなのならば、わたしたちは死力を尽くしておまえたちを阻む……」」
ギヨームは見上げる。
幾度となく煌めくユーベルコードの輝きによって『祈りの双子』は消耗しているように思えた。
これが猟兵の怒り。
いや、と思う。これはきっと代弁なのだろうと思う。いたずらに殺され、弄ばれた者たちの怒りの代弁者として猟兵たちが力を振るったけっかなのだと。
だからこそ、ギヨームはおのれの血が流れるであろう血の海へと見を浸す。
その視界に広がるのは幻視たる『血の記憶』の光景。
そこにあったのは名を知らぬきみであった。
故郷の光景が広がる。
確かに月光しか明かりなき世界は薄暗く窮屈に感じるだろう。
「けれど、おれは誇りに思っている。この世界を、この土地を。どんなに血が流れていても、太陽が昇らなくても」
それでもやはり愛しているのだと思う。
だからこそ、己を助けるのは己の血なのだろうと理解する。
「暗闇から遠い、冷たく凍えることのない家で育ったからかもしれないけれど」
それは他者から見れば傲慢のように思えたことだろう。
けれど、それでもひどい世界だと思うのだ。
残酷で、いきづらく、いきが詰まりそうなのは空がないからだろう。
あれは空ではなくて天井であると知ったのは何時だっただろうか。わからない。けれど、それでもギヨームは見てきたのだ。
この世界で生きる人々の姿を。
常闇の世界であっても、月光しか明かりがなくても。
すぐに殺されてしまうかもしれなくても。
それでも、懸命にいきた人々を見てきたのだ。
「彼らは立派だった。おれが見てきた生き物たちは生きて。生きていたんだ。この、世界で」
揺らめくように鋭い眼光が血の海より『祈りの双子』を睨めつける。
其の輝きに走るは血管獣たち。
『祈りの双子』のユーベルコードに寄って生み出された獣が牙を剥いて迫っている。
鋭い牙がギヨームの体に突き立てられる。
だが、その血潮が溢れることはなかった。
彼の体はすでに冷水たる吸血鬼へと変貌を遂げていた。鋭い瞳孔が内側から光を発している。血の鮮血にも負けぬ光を放ち、背に羽根が羽撃くように幾度か振るわれた瞬間、身に突き立てていた牙ごと血管獣を吹き飛ばした。
「……渡したくねえなあ、あの双子に」
思う。
生きた人々を思う。誰もが明日を望んでいただろうし、生きることに懸命であった。その身に流れる血は尊いものだった。
「血の一滴も、一粒も渡ってほしくねえ。だって元は」
血の海に流れた人々のものであったはずだ。いくらこの世界が弱肉強食たる世界であったとしても。
「「……これが世の理……」」
「「……これが摂理……」」
「だからってな、血で世界を覆うんじゃあねえよ。空が見えなくなるだろう」
ギヨームの鋭い眼光が煌めく。
紫の眼に狂気が満ちる。
彼が望むは日にして空。
あの太陽がきらめく下を知っているからこそ、ギヨームは焦がれる。
「日が昇るんだ、空には」
煌めくユーベルコードは爆発的にギヨームの能力を増大させ『祈りの双子』へと拳を叩き込む。
吹き飛ぶ体を追い、さらに蹴撃を叩き込む。
「流されるのは嫌なんだ。帰る家がなくなるのは困るんだ」
だから、とギヨームは『血の記憶』を手繰る。
天に掲げた手に集まるは血の海より飛来する『血の記憶』。形作る拳が球体へと変わっていく。
それは空に浮かぶ太陽のように燦然たる輝きを持って、ギヨームの言葉に応えるのだ。
「一緒に戦ってくれると彼らは言ったんだ。生命無くとも、其の記憶が汝らを滅ぼせと叫ぶがゆえに」
鉄槌のように血の拳が『祈りの双子』へと叩きつけられ、その憎悪を誰かのためにという想いへと昇華させ、彼女たちを砕くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メリー・スペルティナ
今更血に濡れる程度どうって事ありませんわ!
血の海に潜り“声”を、この世界ではありふれた、
誰かを遺したまま死んだ者、理不尽に殺された者、支配され使い捨てられた者……多くの未練や無念、そういった想いの“声”を聴きますわ
黒い翼をもつ戦乙女っぽい姿で血の海より飛翔、手首の自傷と血晶石・ブルートヴァッフェを融かす事で呪血を確保しUC!この血の海に眠る未練と無念の想い、彼らに力と形を与え、今、この血に再生させますわ!!
加えて呪血の力でこの血の海の「憎しみ」を取り込み浄化、「彼ら」を引き連れ進み、『ヒルフェ』で血管獣を叩き切って突撃し、「彼ら」の刃とわたくしの剣を、あの双子に届かせてやりますわ!!
ダークセイヴァーに生きる者にとって血とは常なるものだった。
生命を繋ぐものであると知っているからこそ、その赤を厭うことはなかった。少なくとも、メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)はそうだった。
死した者の想いを受け止めて歩む者であるからこそ、それはさらに如実に感じることのできるものであったことだろう。
だからこそ、彼女は躊躇わなかった。
「今更ですわ! どうってことなんてないのですわ!」
血の海へと潜る。
己たちを助けてくれる『血の記憶』を探すこと。それは確かにオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』を打倒するために必要なことなのだろう。
そうしなければ、『生贄魔術』によって超強化された『祈りの双子』は打倒できない。だからこそ、血の海に染まりながらメリーは手を伸ばす。
聞こえているのだ。
彼女には死者の想いを受け止める術がある。だからこそ、メリーは手を伸ばさう。
誰かを遺して死んでしまった者がいる。
理不尽に殺された者がいる。
支配され、良いように使われ、死んでしまった者がいる。
ありとあらゆる不条理が、この血の海の中には揺蕩うようであった。いずれもオブリビオンを憎悪する感情ばかりがメリーの体の中を駆け巡っていく。
「これが未練というもの。無念というもの。受け止めるにはあまりにも強烈過ぎる想いだからこそ、誰もが受け止めきれぬもの。けれど、わたくしは違いますわ! わたくしならば!」
その声を聞くのだと、其の瞳を煌めかせる。
誰も彼がも受け止めて欲しいと願うだろう。
故にメリー・スペルティナは、死者の思いを受け継ぐ器足り得るのだというように彼女は黒い翼を血の海より羽撃かせる。
死者を導く戦乙女たる姿を晒す。
「あなたたちの思いを! その血を糧に! その遺志を遂げるための刃を与えます……」
例え、それが偽りであり、仮初であろうとも。
メリーの手首より溢れた血と血結晶、そして呪血剣が融け合わさって、偽・死の先を往く者よ(リバース・エインフェリア・フェイク)と呼びかける。
この血の海に眠る未練と無念の想いを受けて、赤き血の巨人が海より立ち上がる。
「これが再生。果たして見せなさい!!」
偽・死の先を往く者よ(リバース・エインフェリア・フェイク)。
それは偽りにして仮初の体。
されど、抱える想いは万雷の如き輝きと憎悪を持って『祈りの双子』へと迫る。
「「……憎悪は、憎悪のまま……」」
「「……わたしたちに向けられる憎悪があればこそ、わたしたちは強化される……」」
「ええ、わかっておりますとも。けれど、それは行き場のない憎悪であればこそ、ここに浄化されるのは、行き場のある憎悪! ならば!」
メリーは迫る血管獣をチェーンソー剣で引き裂きながら『祈りの双子』へと飛び込む。
赤い血の巨人の振るう刃が『祈りの双子』の防御ごと切り裂き、其の身を吹き飛ばす。
メリーの血には呪詛が満ちている。
そして、ユーベルコードに寄って再現された赤い血の巨人に宿るは『勝利する才能」である。故に、負ける要素はdこにもない。
「『彼ら』の想いは、わたくしの剣が届かせますわ!」
振るう一撃が『祈りの双子』の身を引き裂く。
溢れるは、身に宿した血の憎悪。
憎悪を持って身を強化していた魔術の力をメリーは引き裂きながら、その一撃を突き立てる。
「思いを受け止め、連れていく。それがわたくしの力なら! 全て受け止めますわよ!」
憎悪でもって縫い留めるこの世界の有様すら破壊するようにメリーは斬撃をオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』へと叩き込み、赤い血の巨人に満ちる思いを連れて行くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(真の姿:モノクロになって目が赤くなる。何か行動する度に周囲にノイズが走る。)
さて…鮮血にダイブして『血の記憶』を探ろうか…
…探るべきは…特定の誰かじゃない『祈りの双子達に抗い、戦った人間の記憶』その全て…
…負荷はだいぶかかるけどやるしかないね…真の姿も解放しよう…
…【数理導く知性の眼】を発動…『行動に関する要素の観測と解析を行う時間』を鮮血の中から見つけ出した記憶で代用することで大幅に代償を軽減…
『鮮血の祈り』に対抗するとしよう…
…今からお前達が戦うのは特別な誰かじゃない…文字通り『皆』の力だよ…
…攻撃を術式組紐【アリアドネ】で逸らしながら術式加速した黎明剣【アウローラ】で切り裂くとしよう…
血の記憶が満ちている。
何処を見ても憎悪ばかりがひしめきあっているようにさえ思えたことだろう。これが常闇の世界ダークセイヴァーにおいて引き起こされた不条理と理不尽の集大成であるというのならば、正しく其のとおりであったことだろう。
血の海に身を沈め、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は知る。
これがどうしよもないことであると。
生命は回帰しない。
この常闇の世界においては特にそうである
輪廻の輪から解き放たれることはない。
死さえ救済ではないのだ。第四層以下で死した生命は第三層にて転生し、さらに生命を弄ばれる。
大地に流れた血の一滴すら自由にはならない。
それが現実だ。
「……わかるよ。それがどれだけの無念であり、どれだけの怒りであり、どれだけやるせないことであるのかは……」
己の身に負荷が過剰にかかっていることをメンカルは知っている。
特定の誰かを彼女は探すことをしなかった。
何故なら、この血の海に満ちるのは誰かではない、『祈りの双子』に立ち向かった者たちの全て、その記憶を彼女は手繰り寄せる。
彼女の姿が変わる。
真の姿は、その色を喪わせる。色味がなく。存在性を喪わせるほどの色。だが、彼女の瞳だけが赤く爛々と輝いていた。
脚を踏み出す。
其の度に彼女の体にノイズが走り、周囲を汚染していくようであった。
「普く力よ、測れ、導け。汝は結実、汝は予見。魔女が望むは因果を結ぶ全知の理」
数理導く知性の眼(ラプラス・ガイスト)。
あらゆる行動に対して要素の観測と解析をおこなうユーベルコードは、メンカルをこの戦場において絶対へと昇華させる。
わかっている。
憎悪ばかりではないことを。憎悪だけではこんなふうにはならないことを。
「「……血を糧とするか、猟兵……」」
「「……数多流れる血から希望を見出すことは、残酷なことだ……」」
オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』たちの言葉にメンカルは瞳を向ける。
「希望を知るから絶望を突きつけられる、というのならば……そうだろうね……」
メンカルの赤い瞳が見上げている。
手にした黎明剣が煌めく。
わかっていることだ。
希望が大きければ大きいほどに、それを喪ったときの絶望は深くなる。暗闇に落ちた絶望は、憎悪に変わる。
どうして、何故、という怨嗟の如き言葉が脳裏にこびりついている。
けれど、それでも人は戦うことをやめないのだ。
明日を求めているから。生きているから。懸命に生きることは戦うことと同じだ。だからこそ、メンカルは告げる。
「……今からお前たちが戦うのは特別な誰かじゃない……文字通り『皆』の力だよ……」
掲げた黎明剣の切っ先が煌めく。
迫る『祈りの双子』の双刃と煌めきが激突する。互いに押し付けるは、絶対成功たるユーベルコードの力。
代償にするは無尽蔵たる血の憎悪。
対するメンカルは血の記憶にある、憎悪意外の全て。憎悪に墜ちる絶望があるのだとしても、それでも、それに相対する希望や記憶があった。
ならばこそ、メンカルは張り巡らせた術式組紐『アリアドネ』でもって『祈りの双子』を束ね、引き寄せる。
術式加速。
それは燐光のごとく輪を造り、黎明剣の名を示す『アウローラ』たる極光を生み出す。
「憎悪一つで覆せるほど……人の輝きは容易くはない。この暗闇の世界がどれだけ闇を色濃くするのだとしても、それでも人の生命の煌きは、さらに燦然と輝く……」
振るう斬撃の一撃が闇を切り裂き、憎悪を隠す極光となって『祈りの双子』の身を切り裂く――。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
※キャバリア騎乗戦闘
🔴真の姿
天蓋血脈樹が吸い上げた鮮血と自身の肉体とが溶け合い
『血の記憶』を飲み干した機体の潤滑液に血が通う
人機一対となった最終防衛機構
B.ファンタズム
則ち
CAST IN THE NAME OF __. YE NOT GUILTY
◆血の記憶
オブリビオンに対する憎しみの記憶
幾多の犠牲者の声なき声の中に、それでも。と叫ぶ祈りを探す
◆人機融合・イリーガルサーキット
副腕にガトリング、レールキャノン、ライフルを装備し限界突破+乱れ撃ちで血管獣に応戦
血戦兵装とはグラップル+怪力の重量攻撃で真っ向勝負の削り合い
飲み干す音が響く。
血の海に満ちる記憶は、其のほとんどがオブリビオンへの憎悪だった。
感情を埋め尽くすのは、怒り。
理不尽と不条理。
それが常闇の世界ダークセイヴァーに満ちていた。死すら開放ではない。血の一滴すら自由になることはない。
この大地は、全てを吸い上げる。
猟兵達のユーベルコードが煌めき、オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』と激突する度に明滅し、暗闇を照らす。
されど、『祈りの双子』は告げる。
「「……その憎悪がわたしたちの身を強化する……」」
「「……長きに渡り、蓄えられてきた血の海である。干上がることはないと思え……」」
幾度となく打ちのめされても尚、彼女たちの体に満ちる強化後からは削ぎ落としきれぬものであった。
「……そうでありましょうな。死力を尽くし、猟兵の怒りと真っ向からぶつかっているのでありますから」
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は己の肉体が沈む血の海、その鮮血が溶け合うのを感じたことだろう。
己の機体は、血潮を潤滑油のように飲み干す。
血が通う。
オイルでも無く、エネルギーインゴットが満たすものでもなく。
ただひたすらに『血の記憶』に宿るものが、蔵乃祐と彼の機体を満たしていく。溶け合うと、表現したのは、誤ちではない。
事実、己と機体は人機一対。
「最終防衛機構……」
流れるは、祝詞である呪言であり、赦しであり、断罪である言葉。
我、■■■■■の名において此れを鋳造す。
煌めく瞳にユーベルコードの輝きが解き放たれ、同時に彼の操るキャバリアのアイセンサーもまた光を灯す。
「汝らに罪なし」
憎むことは悪徳。されど、しかして、その憤怒は正統であると言えるだろう。蔵乃祐は名もなき数多の犠牲者たちを思う。
その声を聞く。
怒り、憎しみ、狂うような痛みの最中に絶命してもなお、続く美しき地獄を見た。
記憶の中にあるのは、そのような地獄ばかりだった。
けれど、と蔵乃祐は思う。
其の地獄のさなかに見出される光があったはずだと。人が人であるように、連綿と紡ぐものがあるのならば、それでもと思う。
その想いは祈りに昇華するがゆえに、今の蔵乃祐を突き動かすものへと変貌する。
「人機融合・イリーガルサーキット(ジンキユウゴウ・イリーガルサーキット
)……!」
飛び込む一撃が『祈りの双子』の振るう斬撃と激突する。
弾き飛ばされ、機体が軋む。
それは己の肉体が軋むことと同義であったことだろう。
だが、それでも止まらない。
祈る言葉が、祈る想いが、叫びが己の体の中に満ちているのならば、蔵乃祐は止まらない。
「「……人の祈りなど……」」
「「……この身に宿す憎悪が全てを無為にする……」」
「否であると言いましょうとも。全てのことに意味を見出すことなど人の身でもっては無理無謀であることは百も承知! ですが!」
己の身に宿る祈りが言うのだ。
人はそれだけではないのだと。憎悪だけで生きてきたわけではないのだと。
故に蔵乃祐は機体より放つ弾丸でもって『祈りの双子』を打ち据えながら組み付く。
機体が軋む。
人機一対たる己であるからこそ、痛みが走る。
されど、この痛みこそが生きている証であるとも言えるだろう。振るう一撃が鉄槌のごとく『祈りの双子』へと叩きつけられ、返す双刃が機体の腕部を切り裂く。
宙に舞い上がる腕部。
それを掴み上げる蔵乃祐と機体。
「それでもと、叫ぶ声を僕は聞いたのです! なれば、それに応えるのが!」
己であるというように掴んだ腕部を『祈りの双子』へと叩きつけ、その体を押しつぶすように身にまとう憎悪の強化を削り切るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
HAHAHA!
この世界の皆様を助けるためならば、異はありマセーン!
躊躇うことなく鮮血の海に潜り込み、血の記憶を探しマース!
……ワタシは戦うために在る。
戦うための理由は数多有れども、その本質はただの存在証明。
戦いを楽しむのも、戦う以外のことをわからなかったが故の仮初。
…しかし、今(猟兵)のワタシはそれだけではないと理解してマース!
人と笑い合う感情の意味を知っている。だから全力で生きるのであります!
真の姿である軍装を纏い、グレネードランチャーを構えて戦闘開始。
攻撃回数を重視して血管獣を吹き飛ばし、そして……我輩の恩人との血の記憶を力に、命中率を重視して狙撃するように祈りの双子を爆撃するであります!
目の前に広がる血の海は、惨憺たるダークセイヴァーという世界の現状を知らしめるものであったことだろう。
何処を見ても理不尽と不条理に満ちていた。
嘆きと苦しみばかりが世界を覆っていく。それでもなお、死は人を救わない。輪廻の如き輪に囚われ、死した後にもまた人々の生命は弄ばれる。
この第二層たる大地に満ちる血が告げる。
これこそがオブリビオンの業であると。
だが、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)はそんな状況であれど、高らかに笑う。
いつものように笑う。
テンション高く笑う。
「HAHAHA! この世界の皆さまを助けるためならば、異はありマセーン!」
彼女は笑いながら躊躇うことなく血の海へと潜る。
その視界が赤く染まる。
みちるは憎悪の記憶ばかりであった。何処を見ても憎悪に染まっている。オブリビオンへの憎しみ。
そればかりが満ちていた。
これを持ってオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』は己の強化へと転じている。
ならばこそ、バルタンは思う。
己達に味方する『血の記憶』とは如何なるものであろうか。
「……ワタシは戦うために在る」
自身の存在を鏡に映す。
理由は多くある。オブリビオンが世界を破滅させようとするから。世界を守るためだから。人を守るためだから。その力があるから。
告げることが許されるのならば、数多あるのだ。
けれど、突き詰めていけばバルタンにとって戦う理由はシンプルだった。
多くの言葉を取り払っていった後にのこるのは、ただの存在証明だった。
「笑っているのは戦いを楽しんでいるためデース。戦う以外のことをわからなかったがゆえの仮初」
だから戦う。
戦って、戦って、その果に何があるのかも知らぬままに戦いに没するだろう。
けれど、今は違うと言いきれる。
「それだけではないと理解してマース! きっと人と笑い合う感情の意味を知っている。だから全力で生きるのであります! きっと皆様も一緒のはずデース!」
その言葉と共にバルタンの体が血の海より飛び出す。
身に纏うは軍装。
翻るは、そのサーコート。
手にした刃が煌めく。
全力で生きる、というのは言葉にすれば簡単なことかもしれない。けれど、難しいことであるとも知っている。
何を持って全力と言うのか。
その定義すら未だあやふやである。けれど、血の記憶が告げている。笑え、と笑って、笑って、笑い続けて。
そうして見える明日を見ればわかることがあると。
「「……憎悪の最中に別のものを見出すか……」」
「「……それがどんなに愚かしいことかを知らぬようだ。猟兵。希望は絶望にまみれ、憎悪へと変わり果てる。この世界の全てがそうであったように……」」
「いいえ、我輩は知っているのであります」
嘗て己の恩人が言っていた言葉がある。
笑うんだ、と。笑うことも知らなかった戦いだけが全てであった己にそれ以外を教えた言葉だ。
だからこそ、それを抱えてバルタンはグレネードランチャーを解き放つ。
爆風が荒び、『祈りの双子』を飲み込む。
だが、削りに削った血の強化であってもなお、『祈りの双子』は双刃をきらめかせ、バルタンに血管獣をけしかける。
牙を刃で受け止め、切り払いながらバルタンは戦場を飛ぶようにして駆け抜け、グレネードを打ち放ち続ける。
「HAHAHA! これであります! ハイになるってこと! テンションを上げるってこと! どれだけ小難しいことを宣うのだとしても! それでも我輩は笑うのであります!」
血の記憶が告げる。
恩人の言葉が蘇る。
どれだけの苦境にあっても、打ちのめされても、その憎悪に満ちた感情であっても、宿る光が在ると知るからこそ、バルタンは爆風でもって『祈りの双子』たちを追い詰め続ける。
憎悪に抗うには笑わなければならない。
それを知っているからこそ、バルタンは全力で
笑うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
うー口の中が黒ゴマ入りストロベリーパフェみたいな味がするー
●なんにもない
本当はあの子はなんにも興味は無いんだ
知っているから
終わりから、初めまで
全てが己の外に有っても、掌のなかに有ってもなんにも違いは無いんだ
だから…
―――まったくつまらないやつだよキミは!
―――でもぜんぶ知ってるならちゃんと
予定通りにしてよね!ボクはどうなってるかよく知らないけれど!
だからただこう言うのだ
『お前たちは』
『何も』
『見なかった』
UC『神帝』の力でなんやかや耐性をゲットしてがんばる!
欠落かー
ボクもいつかボクの欠落を見つけられちゃうのかな?
と目を指先でなぞりなぞり
血の海はどこまでも広がっている。
ダークセイヴァー世界、第二層の大地は鮮血の海。
そこに在るのは『血の記憶』。憎悪に塗れた記憶は、それだけでオブリビオンへの憎しみを満たしていたし、オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』に超強化をもたらしていた。
凄まじい力。
満たされた力は猟兵達のユーベルコードの煌めきと共に削ぎ落とされて尚、その輝きを放ち続けていた。
「「……死力を尽くしている。肯定する。だが、それでもなお、猟兵は止まらない……」」
「「……敗北を認めぬということか……」」
睥睨する虚の如き眼窩の奥に僅かに陰るものがある。
それは敗北の予感であったように思えたことだろう。
血の海に沈む猟兵。
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、ざぱりと浮かび上がり、頭を振る。
「うー口の中が黒ゴマ入りストロベリーパフェみたいな味がするー」
鮮血の海に潜っていた。
だから、こんな思いをしなければならないのだとロニは思ったことだろう。
己の中には全てがある。
いや、なにもない。
なにも興味がわかない。何も思わない。何故なら全てを知っているからだ。
終わりから始まりまで。
その全てを網羅し、見て、知っているからこそ。
己の掌の中に全てが在ることを知り、全てがないことに違いがないことを知っている。
故に叫ぶ言葉がある。
つまらないやつだと。
でもでも、と思う。
全部知っているのなら、予定通りにしてほしいものだと。不確定要素が入り込むのならば、何も知らないことであるのと同じであると。
自身がどうなっているかよく知らない。
行く末さえわからない。
だから、ただこういうのだ。。
『お前たちは』
『何も』
『見なかった』
煌めくユーベルコードがロニの瞳に輝く。
神帝(ゴッド)たる力はオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』の『生贄魔術』と打ち合う。
相殺する。
全知全能の能力が復活したロニのユーベルコードは憎悪の記憶を消滅させる。だが、それらは時間が戻されなかったことになる。
あらゆるものを遮断するユーベルコードの中で、ロニは思い続ける。
それが意味のないことであると知りながら、意味があると知るように、ロニは己の無敵性を持って『祈りの双子』のユーベルコードを消し飛ばし続ける。
「「……千日手……」」
「「……だが、終わりは来る。いずれにも終末が存在するように。いずれにも始まりが存在するように……」」
煌めくユーベルコードの中でロニは回り続ける。
果ての無い中で、ロニは己の目をなぞる。
触れて、痛みはない。
痛みがほしいわけではないのかもしれないけれど。
「ボクもいつかボクの欠落を見つけられちゃうのかな?」
わからない。
どれもがわからないことだ。あの子の
予定にはそんなことが書いてあるのだろうか。
答えなんてでない。でなくっていい。
歪み果てる現実になんて興味はないのだ。
だから、ロニはただひたすらに『祈りの双子』の強化たる源、その憎悪の記憶だけを消滅扨せ続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
エイル様の!!!! 香りがしまぁぁぁぁぁぁすっ!!!
こ、ここにきて濃厚すぎるエイル様の香り……!!
うっ、ちょっと
メイドには刺激が強すぎるのですが!!
いつまでも味わっていたいのですが戦わなければ
姿かたちはセラフィム・エイル様?
……ですが、
絆ぐ者
完全なる悪性という装置に、
エイル様が乗っているのならば
この戦い、負けようがありません
『戦いに際しては心に平和を』
あなたが求めるところが
メイドの行き着く先です
さて、ご支援いただけますかエイル様
メイド、参ります!!
真の姿は『未だ定義されず』
されど力は劣りません!
セラフィムの攻撃を背に、その間を縫うように
祈りの双子へ肉薄
「真の姿が解放された今、シンプルにいきましょう」
ええ、多少優雅さに欠けますが
暴力は全てを解決する、という方向で
敵の二人程度で今の私を止められると思いますか?
主人様の前ではメイドは無敵です
私の【スクロペトゥム・フォルマ】で
完膚なきまで叩き、撃ち抜いて差し上げましょう!!
血の海に沈む。
身が浸され、その血潮の中をステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はかき分ける。
己の嗅覚は、すでに麻痺しているかのように血の匂いしか感じ取らせない。けれど、それでも彼女は叫ぶ。
そう、叫ばずにはいられないのだ。
「
『エイル』様の!!!! 香りがしまぁぁぁぁすっ
!!!!」
それは紛うことなき香りであった。
忘れようのない香り。
「こ、ここにきて濃厚過ぎる香り
……!!」
正直に言えばヤバイ。
なんでそういうことになっているのかまるでわからないが、ステラにとっては刺激が強すぎる。
いつまでもスウィミングしていたいと思うが、しかし、戦わなければと思う。
この血の一滴が誰かのためになりますようにと願う者がいたのだとしたら。
それはきっと己が成さねばならぬことであるとステラは思ったからだ。戦わなければならない。戦わなければ贖うことも、誰かの助けになることもできないであろうから。
ふくれ上がるようにして力の奔流が立ち上る。
すでに猟兵達のユーベルコードは幾度も激突しオブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』の強化を削ぎ落とした。
憎悪の記憶は、この血の海に満ちている。
誰もが生命をもてあそばれた。死すら開放にはなりえず、死した後もまた弄ばれ続けた。
その意味を知るからこそ、ステラは未だ定義されぬ『真の姿』をさらけ出す。
「「……赤い血の巨人……まだ抗うか……」」
「「……運命は流転しない。生命は回帰させない。それでもなお、その血の一滴になろうとも抗い続けるか……」」
『祈りの双子』は双刃を振るう。
血より生み出された血管獣が疾駆し、その爪牙を振るう。
赤い血の巨人の腕がステラを守るようにして交差され、その一撃を受け止める。
「……
絆ぐ者が
完全なる悪性という装置であるのならば、
『エイル』様という揺らぎがあるのです。ならば、この戦いは!」
ステラは叫ぶ。
身にまとうようにして駆る赤い血の巨人と共にステラは踏み込んだ。
血管獣を吹き飛ばし、己を叫ぶ。
未だ定義されぬ己であろうとも。
それでも心には言葉がある。
『戦いに際しては心に平和を』
それは幾度も重ねられてきた言葉だった。あらゆる世界で響く言葉でもあった。人は人だけでは生きていけないから。
だから、その心の中に言葉を宿す。
不完全であるからこそ完璧であるのが人間である。
悪性と善性を持ち、その比率を常に変動させる揺らぎたる良心があるからこそ、人は手を取り合って生きていくことができる。
「あなたが求めるところが
メイドの行き着く先です」
ステラは更に迫る血管獣を見据える。
これは血の一滴が見せた力なのだとわかる。
「
メイド、参ります!」
憎悪満ちる戦場に灯せ、星の光。
その光を見ろ。
それは生命である。血の一滴すら縛る力があるというのならば、その枷の如き不自由の中でこそ煌めく自由があると知ればいい。
満ちる力は、ステラを赤い血の巨人より放つようにして飛び立たせる。
『祈りの双子』は見ただろう。
煌めく流星の如きユーベルコードを。
肉薄し、その構えた二丁拳銃が唸りを上げる。
「シンプルにいきましょう」
振るわれる双刃を二丁拳銃の銃身が受け止め、その一撃を持って弾き飛ばす。
「「……死力を、つくしているはずだ、わたしたちは……」」
「「……なのに、何が足りない。何がこの不可逆たる状況を生み出している……」」
「簡単なことです!」
ステラが叫ぶ。
銃撃が『祈りの双子』の身を穿ち、さらにステラの体が踊るように、優雅たる様さえ見せるように翻り宙を飛ぶ。
「主人様の前ではメイドは無敵です」
至極簡単なことであると言うようにステラのスクロペトゥム・フォルマは、その銃の型を持って『祈りの双子』を打ち据える。
迫る赤い血の巨人の一撃が『祈りの双子』を束ねるようにして巨腕でもって捕らえた。
その僅かな瞬間をステラは見逃さない。
それは刹那の勝機。
敵を穿つための銃。
そして、己はメイドである。
これまで猟兵たちが連綿と紡いできたものがある。
血の記憶の中を手繰り寄せ、多くの生命が憎悪だけに染まらぬことを示してみせた。己の真の姿を曝け出し、それでもなお誰かのためにと戦う姿があった。
同じ死力を尽くす戦いであったとしても。
己のためだけに戦うものと、誰かのために戦うものとでは、その力の在り方が違うだろう。
だからこそ、ステラの瞳はユーベルコードに輝き、その弾丸を『祈りの双子』へと叩き込む。
「これが人の心の輝き。例え、悪性にとらわれるのだとしても、善性によって振り戻され、揺らぐ良心があるからこそ、あなたたちは、私達ではなく、人の良心の前に、その死力は敗北を喫するのです」
その言葉と共に『祈りの双子』は知る。
己達の滅びを。
撃ち込まれた一撃は、ただの一撃。
されど、この世界にて奪われた生命、その全てを前に『祈りの双子』は敗北するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵