声は願いを支えるのだ。いつだって、……いつだって。
そう信じて、私たちは言葉を紡いで生きていく。
「『究極禁獣』……って、言うらしいね」
リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)はそう言って、静かに目を細めた。密首の獣らしいよ。と、静かに言葉をつづける。
「数百mの巨体を誇り、強靭な肉体、無尽蔵の魔力と呪詛、オーバーテクノロジーの機械兵器など、ありとあらゆる軍事兵器を保有する無敵の獣……。なんだか、子供の考えた最強の化け物、って感じだけど、現実に存在されると少し困る。……それと相対することになると、さらに困るかな」
そう言って、リュカは手帳の一枚を破って周囲に示した。そこには、異形の怪物の絵が描かれていた。何にと、例えるのも難しい異形は、神の中で静かにこちらを睨んでいるような気さえする。
「ケルベロス・フェノメノンと呼ばれているみたいだよ。体内に渦巻いているのは、殺戮の呪詛、っていうらしい。一瞬にして戦場を「ただ呼吸するだけで死の呪いが心身を蝕む魔境」へと変化させる能力を持っている。勿論その呪いは俺たちに向けられていて、そこに立っているだけで死の呪いにやられてしまうらしいんだ。……具体的に言うと全身から血を吹き出して死ぬ、みたいな」
もちろんそれだけではないのだけれども、とリュカは言う。しばし考えた後、
「圧殺、撲殺、焼殺、毒殺、勿論、それ以外にもいろいろ。どういう風に殺されるかはわからないけれども……嫌だろう? 何をしても絶対に殺される生き物の相手」
真面目な顔で、リュカはそう言った。続いた言葉が、「なお、相手は無敵ななので倒しても滅ぼせません」なんて付け足すものだからなかなかにえげつない。そんな周囲の空気を察したのか、リュカは一つ頷いた。
「まあ、どこかで「欠落」とやらを破壊すれば倒せるみたいだけどね……。それはともかく、この呪いをはねのける方法はある」
割と簡単だ。と、リュカはまじめな顔をして言う。そうして一つ、指を立てた。
「魂の叫び。……猟兵自身の非常に強い意思や願い、思いを込めた叫びが、唯一、死を回避する方法だよ」
真面目な顔をしてそう告げてから、リュカは若干、複雑そうな顔をした。
「まあ、俺も叫ぶのとかは苦手だからわかるんだけれども、どうやら、大きな声をあげる必要はないらしい」
例えば、怨嗟。心の底からの怨嗟は、決して大声をあげるものではないだろう。
例えば、強い祈り。強い祈りを込めて振るわれる武器は、何物にも勝る力となるだろう。
「特にこうしなければいけないというものはないから、自分なりの強い思いを持って、立ち向かってみて欲しい。……俺は、言葉というものは願いを支えるものだと信じてる。自分なりの言葉で、真摯に向き合うといいと思うよ」
極端な話、無策で敵に挑めばほぼ死にかける。それゆえに、「死にたくない」という強い思いを抱くことも可能だろう。
「それでも、そうだね。どうしても思い浮かばない人は……」
言いながら、しばし考えて、リュカはああ、と頷いた。
「お昼ご飯抜いてから挑むといいと思うよ。お腹が空いたって思いは何より強いからね」
真摯とか言った次の瞬間にはそんなアドバイスをして、リュカは話を締めくくった。
ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。
=============================
プレイングボーナス:「魂の叫び」を放ち、死の呪いを跳ね除ける。
=============================
状況は大体いった通り。
即戦闘になります。
対策がなければ痛い目に遭います。
対策をしていても痛い目に遭います。
後はいつも通りのノリとフィーリングになりますので、
細かいこと考えずに熱いプレイングをお待ちしております。
※プレイング募集期間
16日8:30より受け付けます。
18日中ぐらいまでは受け付けております。以降は開いている限りいつでもどうぞ。
(多分19日の夜くらいまでは空いてると思いますが、予定は未定です)
ただ、戦争ですので再送はなしで行きたいと思います。
頂いたプレイングから書きやすいものを書かせていただいて、出来なかった分はお返ししますのでご了承ください。
先着順ではありませんが、同じぐらいの書きやすさのプレイングを頂いた場合は早い方を優先します。
以上になります。
それでは。よい一日ヲ。
第1章 ボス戦
『禁獣『ケルベロス・フェノメノン』』
|
POW : グラビティブレイク・フェノメノン
【自身の肉体または武装】に触れた対象の【肉体を地表にとどめている重力】を奪ったり、逆に与えたりできる。
SPD : インフェルノファクター・フェノメノン
命中した【機械兵器】の【弾丸や爆風】が【炎の如く燃え盛る『地獄』】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
WIZ : サイコフォース・フェノメノン
着弾点からレベルm半径内を爆破する【呪詛と魔力の塊】を放つ。着弾後、範囲内に【消えざる『地獄』の炎】が現れ継続ダメージを与える。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
七那原・望
愛唱・希望の果実を歌いながら背中の翼で限界突破したスピードの空中戦。
第六感、心眼、気配感知、聞き耳も駆使して敵の行動を見切り、敵の近接攻撃や呪詛と魔力の塊を回避します。
この歌がわたしの全てです。
わたしに光を与えてくれた彼との終わらない幸せが、愛と希望に満ち溢れた日々がわたしの一番の望み。
だからわたしはこんなところで死ぬわけにはいかない。
殺すことしか脳のない怪物にわたしの望みを、ようやく手に入れた希望を踏み躙られるわけにはいかないのです!
爆風や地獄の炎は多重詠唱結界術で防ぎます。
更に龍脈の力も借りつつ多重詠唱全力魔法の乱れ撃ちで畳み掛けます。
わたしは望む、彼との永遠を!
終わらせたりなんてしない!
久遠寺・遥翔
イグニシオンに[騎乗]しての[空中戦]
鍵となるのは魂の叫びって話だ
[オーラ防御]と[結界術]による多重障壁で身を守りつつ、全霊を込めて叫ぶぜ
「輝けイグニシオン、俺達の未来を守り抜くために!」
大事な人がいる。シンプルでありがちな理由だがこの意思は何よりも強い
かつて小剣に願いを込めて叫んだ他の世界の誰かのように願いを込めて打ち砕く
「お前が何者であれ、切り裂いて未来へ飛ぶ!」
奴の機械兵器による攻撃や爆風は[心眼]でしっかりと[見切り]回避しつつ
こちらも全力のUCを叩き込む
超高速飛行のなかで繰り出される焔の太刀による乱舞
その巨体を斬り刻み焼き払うぜ
戦場に足を踏み入れた瞬間、咆哮があたりを満たした。
「――!!」
言葉にすることはできない。なのに背筋が震えるほど恐ろしい。……否、聞いているだけで精神がバラバラになって砕けでしまいそうな。そんな強い咆哮に、
「負けない、なのですー……!」
七那原・望(比翼の果実・f04836)は前面に結界を張りながら負けぬように声をあげた。それで心臓ごと震えるようなその声を完全に防御できるわけではないが、ほんの少し、その衝撃が和らぐ気がする。
「綺麗で眩しいこのせかいを 二人で行こうどこまでも……」
即座に己を奮い立たせるよう、望は歌い始める。己の力を強化する歌声とともに、翼を開いて獣へと飛び立った。
「は……っ。相手にとって不足なしだぜ……!」
そして同時に、空へと飛び立つ影がある。望の美しい翼に対し、赤い炎のような翼のようなものを出し、白い機体を駆るのは久遠寺・遥翔(焔の機神イグニシオン/『黒鋼』の騎士・f01190)だ。
「行くぜ相棒! 今はただ全霊を以てこの空を翔ける――ラグナレク・キャリバーッ!!」
機体もまた、高速で獣に接近する。焔の太刀とともに駆ける遥翔は、望と丁度鋏討つ形となり一瞬で獣に迫った。
「――!!」
機体だろうが結界だろうが。あまねく全ての魂を砕く方向が周囲に満ちる。それはすなわち死の声だ。
遥翔は目の前の敵を睨む。心がバラバラになる前に、魂の叫びが鍵となることを思い出す。機体の前にシールドを張りながらも、遥翔は声を張り上げた。
「輝けイグニシオン、俺達の未来を守り抜くために!」
応えるように焔の剣が強く輝いた。それと同時に思い描くのは大事な人の顔だ。その顔を思い浮かべるだけで、単純だけど力が湧いてくる。……そして、かつて小剣に願いを込めて叫んだ他の世界の誰かがいる。その事実が遥翔を後押しした。
「お前が何者であれ、切り裂いて未来へ飛ぶ!」
叫ぶ。叫ぶとどういうわけか砕け散りそうになった心が軽くなった気がする。けれどもそんなことを気にする余裕は遥翔にはなかった。大事な人の顔を思いながら、強く強くねがうと、漆黒の刀身にまとわりついた炎が輝きを増した気がした。……今はそれでいい。それだけでいい。
「……、りゃああああああ!」
叫び声とともに獣の側面へ。巨大な獣に、怯むことなく遥翔は剣を振り続けた。
……そしてそれを、望は視界の端に収めていた。
視界の端に収めながらも、どのような叫びを持っているのかなんて望には聞こえない。
それでも、なんとなくわかるのは、
みんなが、大切な人の顔を思い描いて戦っているということだ。
「――!!」
「わたしに光を与えてくれた彼との終わらない幸せが、愛と希望に満ち溢れた日々がわたしの一番の望み……!」
咆哮に、負けじと望もまた叫んだ。
大事な人を失う怖さに比べてば、心が砕ける痛みなんて……、否、
「この歌がわたしの全てです。だからわたしはこんなところで死ぬわけにはいかない……!」
心も守る。守って、世界を守る……!
「殺すことしか脳のない怪物にわたしの望みを、ようやく手に入れた希望を踏み躙られるわけにはいかないのです!」
遥翔の焔が目に映る。……知らない人も、知ってる人も、きっと今でも、大事な人の為に戦っている。えくるん。そう口の中でつぶやく。呟くだけで心が強くなれた気がした。
「絶対に……負けないなのです……!」
ちょうど遥翔とは反対側。左右から挟み込む形で望は黄金の林檎と片翼の装飾が印象的な美しい王笏を構えた。ぎろりと、目玉のようなものが動く。動いて、咆哮とともに望みをとらえる。……でも怖くない。魂を砕くような獣の声も、全身を凍らせるようなその視線も。えくるん。そう、心の中で呼ぶだけで何も怖くなんてなくなる。
「わたしは望む、彼との永遠を! ……終わらせたりなんてしない!」
そうして心を震わせるほどの声とともに、望もまた魔法を放った。
巨体の両側面から放たれる美しい光。
戦いの幕開けであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジュジュ・ブランロジエ
アドリブ歓迎
『』はメボンゴの台詞
うわっ、大きい!
『強そう!』
でも私達は負けない!
願いはいっぱいあるけど今一番の願いはこの世界を救いたい!
『美味しいスイーツ食べたいっ』
うん、それもあるけど…
お前を倒したい!
この世界に生きる全ての人を救いたい!
広がる青空を、幸せに生きる人達の姿を見たい!
救世主に私はなる!
あ、声出さなくてもいいんだっけ
つい全力で叫んじゃう
『苺のケーキ!!ガトーショコラ!!』
ご褒美にケーキ作ってってお願いしちゃおう
きっと叶えてくれる
早く帰らなくちゃね!
オーラ防御にもUCにも浄化の力と光属性を付与
遠距離からUC2回攻撃
敵の攻撃はオーラで防ぎつつ早業軽業で回避
触れられないようにしなくちゃ
「……」
何も、感じないわけなんて、なかった。
その巨体は、ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)が見上げても、てっぺんが見えないくらいに大きかった。
『……』
思わず、沈黙する。沈黙したジュジュの傍らを、猟兵たちが通り過ぎていく。
「……あっ」
それで、思い至って。
ジュジュもまた顔を上げた。
「うわっ、大きい!」
『強そう!』
「でも私達は負けない!」
声をあげる。相棒の兎人形、メボンゴもまた声をあげる。ジュジュがそうして、声をあげたから。メボンゴはまた生き物のように、ジュジュと一緒に顔を上げて目の前の獣を見つめた。
「……いこう、か!」
三つ首の獣。どこを見てもこちらを見ているような、黒い手を持つ獣。真っ白い炎のような毛皮を纏った獣。すべての生き物を食べつくそうとしているかのような骨の獣。
それらが融合して、ジュジュをあざ笑っている。軽く頬に手を宛てて、ジュジュは一つ、うなずいた。
「願い……」
ジュジュは、普通の女の子だと、思う。自分ではそう思う。ちょっと自分でも楽観的かもしれないと、思うことはあるけれど。
それでも、特別、崇高な使命なんて持っていないし、たった一人だったら、こんな大きな化け物にどう戦えばいいのかと思わず足が竦んでしまう。……だから。
『美味しいスイーツ食べたいっ』
だから代わりに、メボンゴが応える。メボンゴはいつだって明るく、前向きで、無鉄砲なくらいに強く前を向いてくれていた。
「うん、それもあるけど……」
メボンゴに応えるように、ジュジュはそう声をあげる。
メボンゴは、ジュジュが動かしている人形だ。ジュジュが動かさなければ、何にもできやしない。
「願いはいっぱいあるけど今一番の願いはこの世界を救いたい!」
けれども、けれども。ジュジュがたった一人のとき、力をくれるのはやっぱりメボンゴなのだ。
まるで見ただけで押しつぶされそうな重圧感の中、ジュジュは顔を上げ前を向く。
その背中を見て、沢山の人が希望を抱いていることなんて……きっとジュジュには、気付いてはいないだろう。
そうして、ジュジュもまた躊躇うことなく戦場に足を踏み入れた。
「――!!」
咆哮。すべての人間の魂を砕くような方向に、ジュジュもまた吼えた。
「お前を倒したい!」
巨大な敵に負けぬよう、声をあげる。前を見る。その間も漆黒の闇から伸びた腕が、ジュジュを握り潰そうとするかのように伸びた。
「……っ!」
紙一重で避ける。足元の地面がえぐれる。手が無数に走る。それをかわしながら、ジュジュは走る。
「この世界に生きる全ての人を救いたい!」
走りながら、声をあげる。まとわりつくような空気は、着実にジュジュの肺から空気を奪っていく。絶対的な死のイメージに、ジュジュは冷静に魔法をかける。浄化と光の魔法を全身に。そして、敵に攻撃を与えやすいところに陣取る。
「広がる青空を、幸せに生きる人達の姿を見たい!」
思い出すのは、この世界で出会った人の顔。
こんな世界に生まれながらも、精いっぱい生きる人の顔。腕がジュジュをとらえようとする。それをかわす。骨の獣がカタカタと歯を鳴らせば、そこから炎の弾が吐き出された。
「負けない……!」
指を鳴らすとジュジュの掌からも炎が吐き出される。声をあげる。挙げるだけ心と同時に呼吸が楽になる気がする。炎が炎を相殺する。はじけ飛んだ敵の火の弾は、双方分裂して火の粉になってジュジュに降り注いだ。ジュジュの七色の炎と、敵の炎。両方ジュジュに降り注いでも、ジュジュは物ともしない。
「救世主に私はなる!」
叫ぶ。叫ぶ声が周囲を震わせた。絶対なる。そして……、
「あ、声出さなくてもいいんだっけ」
ふと。そんなことを呟いた。
心で思えばいいのに、つい全力で叫んでしまった。
巨体はもうすぐ目の前だ。正直どこから攻撃すればいいのかもわからない。けれどもメボンゴが口から火を吐いて、一緒にジュジュが炎を出し続ければ……きっと何とかなるだろう!
巨体は目の前。獣がこちらを確かに向いている。威圧と同時に呪いの炎が降り注ぐ。
「メボンゴは攻撃をよろしく! 私はあの炎を何とかするから!」
『りょーかい! 苺のケーキ!! ガトーショコラ!!』
ジュジュの炎が降り注ぐ炎を消し、メボンゴの炎が巨体を焼く。相殺しきれない攻撃はなるだけ回避する。けれども当たっても……必要以上に怯みはしない。
ジュジュは気付いていた。いつの間にか、獣からしを与える威圧が消えていることに。
「ふふ、なにそれ」
だから、メボンゴの言葉にほんの少し笑ってしまう。
『メボンゴが今食べたいもの!』
「そっか。じゃあご褒美にケーキ作ってってお願いしちゃおう。……きっと叶えてくれる」
『うん、絶対、大丈夫!』
笑う声。傍から見れば、きっと踊りでも踊っているような気軽さで。
苦しいことなど一つもないようなそんな笑顔で。
ジュジュは死に立ち向かっているように見えるだろう。
「……早く帰らなくちゃね!」
声に、メボンゴが大きく頷き火力をあげる。
ついにジュジュの炎が死の炎を退け、大きく骨の獣の顔を焼いた。
大成功
🔵🔵🔵
リィンティア・アシャンティ
これが鉄と病の森に集まっていた元オラトリオの魂人さん達が言っていた、殺さねばならないもの……
無敵と聞きましたが、今できることを精一杯やりましょう
翼圧症の治し方も分かると良いのですけど
何となく力がより込められそうな気がするので
以前どこかから飛んできて助けてくれたバイオリン、勝手に名前も付けてしまいましたが……を使って
力強く鼓舞し、優しく祈りを込めて【七勇者アウィンの歌】を歌います
少しでも禁獣の力を削げますように
死の呪いで倒れるわけにも終わらせるわけにもいかないのです
この先にずっと続く未来は見たいですし
ええと……お家にいる意地悪魔王様も倒さなければいけないので!
強く願い、呪いをはねのけてみせます!
骨の頭がカタカタと歯を鳴らす。かと思えば重なる無数の黒い手を持った獣の顔が、どこを見ているのかわからぬような目で、しかしはっきりとそうとわかるようにリィンティア・アシャンティ(眠る光の歌声・f39564)を睨めあげる。
「これが鉄と病の森に集まっていた元オラトリオの魂人さん達が言っていた、殺さねばならないもの……」
ひゅ、とリィンティアの喉が鳴った。自分自身がちゃんと呼吸をできているのか、自分にさえ今ひとつわからなかった。それくらい目の前の獣は巨大で、異形で、異様であった。ともするとあふれる死の呪いが、実際に彼女から空気を奪っているのかもしれない。
「……」
ひとつ、深呼吸。
大丈夫、息はできる。……ともすれば息ができそうにない場所だって生きてきた。それがエンドブレイカーだ。今回だって、大丈夫。
「……無敵と聞きましたが、今できることを精一杯やりましょう」
そうしてすっと目を開けた時には、リィンティアはすでに戦いに赴く目をしていた。翼圧症の治し方も分かると良いのですけど。と呟くその声に、怯えはなかった。
そうしてしかと目の前の獣を見て、リィンティアは走り出す。
目玉が動いていないはずなのに、どう動いてもリィンティアを追いかけているような気がする。
それに気づきながらも、リィンティアは近づく。少しでも。……少しでも。
「……!」
巨体が牙をむき、骨が歯を鳴らす。それだけで足が重くなっていく。空気が絞れていく気がする。
「(石化死って言うのも……あるのでしょうか?)」
じわじわ石化しながら死んでいくのは、こういう気持ちだろうか。腹に力を込めながら、それでもリィンティアは足を前に動かした。
「(私の技……皆さんを巻き込むわけにはいきませんから……)」
リィンティアの技はリィンティアの歌を聞いたものの戦う力を削ぐもの。ならば、仲間に歌を聞かせてはならない。幸い、獣は巨体だ。だから、回り込めばいくらだってそのような場所はあるだろう。
「(問題は、それまで、私が……)」
持つかどうか。徐々に足先から重く、そして灰のような色に変わって行っている己の体を見下ろしリィンティアはそう思う。石化の呪詛と同時に、重力が寡聞に加わっている気がする。己の灰色の足を見ると背筋が震えるような気がしたが、
「……」
バイオリンを胸に抱いて先を急いだ。大事に、大事に。そのバイオリンを持っている。
名前は知らない。謂れも知らないただのバイオリン。けれどもリィンティアを助けてくれたバイオリン。けれども何となく、力を感じた気がして。リィンティアはそれに名前を付けたのだ。
バイオリンを模した小盾を弓を模した細剣で弾くそれは、リィンティアにいつだって、力を与えてくれる。
「……」
もう一度、深呼吸。
大丈夫。まだ手と口は動く。……だったら、
「……死の呪いで倒れるわけにも終わらせるわけにもいかないのです」
歌を歌おう。優しく祈りを込めて、己を奮い立たせて。七勇者アウィンの歌を、リィンティアは奏でる。少しでも禁獣の力を削げますように、と、そう願って。
「この先にずっと続く未来は見たいですし……」
ままならなくなってきた体で、思いをはせながら。ほんの少しの恐怖に……打ち勝つために。
「ええと……お家にいる意地悪魔王様も倒さなければいけないので!」
そう、声をあげた。その瞬間。
すっと体が軽くなった気がした。
「……!」
獣が怪訝そうに、不愉快そうにリィンティアを見る。リィンティアは負けじとそれを見返す。……正直、その顔を思い描いた瞬間から、体が一瞬で軽くなった自分に対しても言いたいことはあるのだ……けれど。
「それは、あとで考えるとして……呪いをはねのけてみせます!」
思わず自分に対してそんなことを言いながら、リィンティアは歌を奏でるのであった。
少しでも、周囲の手助けができるように。その動きを封じるために……。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
一体なにがあれば、これだけの呪詛を振り撒けるようになるのか……分からないし、恐らく知る方法もないだろう
今はとにかく、戦って乗り越えるしかないな
猟兵として、力を持つ者として。力のない人々の代わりに俺は戦う
選ばれた者としての責務だけでなく、それが俺の望みでもあるから
肚に力を込めて、神刀の封印を解除。参の秘剣【紫電閃】を発動し、紫紺の神気を纏う事で行動速度を大きく強化
強化した速度を活かして、出来る限り相手の攻撃は回避。避けきれない分は斬撃波などで切り払い
巨体相手に末端を狙っても仕方ない、ケルベロス・フェノメノンの身体を斬りつけながら駆け上がり、跳躍して三つ首のうちいずれかの元へ
渾身の斬撃を叩き込もう
呪いだろうか。恨みだろうか。
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はそんなことを考えた。
一体なにがあれば、これだけの呪詛を振り撒けるようになるのか……。
目の前の巨体は、複数の化け物を組み合わせたような顔をしていた。
どこを向いているかわからぬ獣の目玉は確かに鏡介を睨み、
白き獣は万別に溶けるように姿を変えながら地獄の炎を放っている。
圧殺、毒殺、焼殺。そんな様々な殺し方を持つ呪いだと鏡介は聞いた。……だから、
「……分からないし、恐らく知る方法もないだろうな」
そんなものは、知らなくていいだろう。
もしかしたら、知っても理解できないかもしれない。納得できないかもしれない。
そういう時、鏡介はどうすればいいのか理解していた。
「……いつも通りだ。戦って乗り越えるしかないな」
神刀【無仭】を構え、鏡介は走り出した。
いつも通り。真に斬るべきものを斬ると定められた刀は、鏡介とともにあった。
戦場は広く、獣からは距離がある。
だから鏡介は走る。同時に炎の弾のようなものが白き獣から吐き出される。
「小手調べ……だ!」
その程度。炎の呪いを紙一重でかわしながら、鏡介は愛刀を握りこみ肚に力を込めた。
「神刀解放。我が刃は刹那にて瞬く――!」
神気を纏う。ずっとこちらを、あまねく全ての戦場を眺めていた獣がこちらに確かに目を向けた。
「参の秘剣【紫電閃】」
体が重くなる。それを無理やり鏡介は行動速度を上げることで対抗する。息を吸う。見ただけで心臓を止めてしまうようなその目を鏡介は正面からしっかりととらえた。
「猟兵として、力を持つ者として。力のない人々の代わりに俺は戦う!」
勝負は、この一瞬だ。鏡介は声を張り上げる。万死を与える獣に対して、高らかにこう宣言する。
「選ばれた者としての責務だけでなく、それが俺の望みでもあるから……!」
跳躍した。巨体を足場に、鏡介は駆けあがる。声をあげる。それとともに獣の視線の強さが緩んだ気がする。
「―――!!」
炎が吐き出される。それを鏡介は正面から受ける。刀で斬りはらい、その余波で体が焼けるも鏡介は構わなかった。……すでに呪いは失われた。ならば、
「そこだ……!」
青い炎のような獣の首元に、鏡介は己の刀を振りかぶる。
「決して……負けはしない!」
渾身の力で首を斬りつけると、すさまじい声が周囲を支配した。
大成功
🔵🔵🔵
マシュマローネ・アラモード
◎
【魂の叫び】
惑星ラモード王家、第十二皇女、マシュマローネ・アラモード!
神殺しの剣であるあなたを越えるべき強敵と見定めました!
あなたを越えることで、私の権能は高みに至りますわ!
【権能】
UC、巨躯屠る栄誉、月を駆り、上段へ!
凄まじい威圧感!ですが、高速の推力移動とグレイスフルムーンの防衛機構、ラヴィアラモードのオーラ、権能斥力(吹き飛ばし)を集中して回避と防御!
重力の力とあらゆる外敵を排斥する力、私の斥力と繋がるところがありますわ……!
|窮地での閃き《アナザー・プリンセスエフェクト》が告げています。
斥力を重力を返す力として、『絶』の力として反射、超威力のUCとして撃ち返すますわ!
征きますわ!
マシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)はとっさに後方へと大きく飛んだ。目の前に炎の塊が落下する。爆風波熱気うぁらんで、マシュマローネの前髪を軽く炙った。
「……っ!」
顔を上げる。顔を上げた瞬間に三つ首の一つと目が合う。どこにいても目が合うような気がするその目玉を持つ黒い首は、不愉快そうにマシュマローネを睨む。瞬間、言いようのない痛みがマシュマローネを襲った。
「は……っ!」
外傷もなければ、どう攻撃されたのかもわからない。
ただその黒い手で、心臓を握りつぶされるような感覚がある。ぎりぎりと締め上げるその手は、一見すると何にも見えないのに確実にマシュマローネの内側から息の根を止めようとしていた。
「モワ! ……上等、ですわね!」
見えない。故に全く防げない。振り払えない。しかしながら構わない。内側から発する痛みにマシュマローネは笑いながら手を掲げる。その手に降りてくるのは、月であった。
「強き者に挑む事も、栄誉なれば!」
月を駆る。抱えるように三日月を握りしめて、その上に乗る。三日月はすさまじい勢いで上昇していた。
「――!!」
獣が咆哮する。方向とともに空気が震える。それとともにマシュマローネの心臓が悲鳴を上げる。
「う……ァっ!!」
見知り、とマシュマローネは己の心臓が悲鳴を上げる音を聞いた気がした。
「凄まじい威圧感! ……、ですが!」
そんなこと、最初から知っていた。
ここからが本番だと、マシュマローネは前を向く。何とか軋む意識の中でオーラを練る。王たるもの、顔を下げてはいけない。なんとか意識を向けて心臓をオーラで防御してみる。……できる。多分。その間にも咆哮にさらされる己の体もまた、守りを固めていく。
らちが明かないと思ったのか、黒い腕が伸びていく。それと同時にマシュマローネの体に圧力がつかされる。……重力だ。何とか、ぎりぎりのところで月がそれを回避し、獣へと接近した。……その時。
「惑星ラモード王家、第十二皇女、マシュマローネ・アラモード! 神殺しの剣であるあなたを越えるべき強敵と見定めました!」
獣と、目が合った。三つの首、すべての獣がマシュマローネの顔を見ていた。マシュマローネの直感が告げる。……今が、名乗りを上げる時だと。この窮地で、彼女のプリンセスとしての何かがそう告げた。
「あなたを越えることで……、私の権能は高みに至りますわ!」
相手の重力を跳ね返すように、マシュマローネは叫ぶ。強い思いに負けないように、マシュマローネは精いっぱい胸を張った。……これは宇宙の騎士が磨いた戦技。対巨獣の奥義であり、星を護る為の力……!
「いざ……!」
月とともに弾丸のように獣へと突入する。その力を受け流し、跳ね返すような突撃をまっすぐに黒い獣への首へと。
そうして敵の巨大さに負けぬよう、マシュマローネは気高く、躊躇うことなくその眉間に穴をあけた……。
大成功
🔵🔵🔵
バーン・マーディ
…なぜだろうな
ケルベロス…その名…その存在は我が心を震わせる(なぜか浮かぶ飫肥城と…そこで戦うデュランダル騎士達
【戦闘知識】
敵の動きと攻撃の癖とパターンをこれまでの経験も踏まえて分析
魂の叫び
成程…我らを滅ぼす事が貴様の正義に連なるか
善い…それが貴様の在り方ならそれを認めよう
だが…我は|悪《ヴィラン》である
貴様の齎す滅びに抗おう
即ち
叛逆である!!!
UC発動
【武器受け・オーラ防御・属性攻撃】
炎のオーラを己とデュランダル騎士達に展開
地獄の炎に対する耐性を高め呪詛の塊は武器で受け止め迎撃
【集団戦術・カウンター・怪力・二回攻撃・鎧無視攻撃・鎧破壊】
騎士達と共に受け止め叛逆の刃を叩きこみ猛攻!!
吹くだけで体を地面に縛り付けるような風が吹いていた。
三つ首の獣から放たれた兵器がなんであるか、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は気付いていただろうか。
呪いの炎の弾が降り注ぐその戦場に、バーンは立っていた。
「……なぜだろうな」
息を吸うごとに呪いで肺が痛む。バーンの目になぜか浮かぶのは城と、そこで戦う騎士たちの姿であった。
「ケルベロス……その名……その存在は我が心を震わせる」
なぜかは、わからない。だが今はその感情に浸り、理由を追及している暇がないことはよくわかっていた。バーンは手を掲げる。
「死して尚共に在りし忠臣たる騎士達よ。我が声に呼応せよ。今が戦いの時だ」
バーンの静かな宣言に応えたのは、人ではなかった。
騎士たちの霊が、いつの間にかバーンの後ろに現われていたのだ。まるで幻が現実になったようなその姿。騎士たちは壮麗な姿をしているわけではない。志半ばに倒れ、そしてそれでもなお不屈の精神を持った亡霊たちの魂であった。
手に派遣や槍を持っている。それもまた、不滅の刃や混沌の槍という、おおよそ騎士と聞いて創造する、麗しく、光り輝く存在とはかけ離れたその姿であった。
しかしながら、バーンはそれをよしとしていた。掲げた手を、こぶしを固めて握りしめる。
「成程……我らを滅ぼす事が貴様の正義に連なるか」
対する三つ首の獣もまた、不気味に彼らを見返している。一人たりとも。亡霊のひとかけらたりともの腰はしないと。すべて殲滅すべきと、その意思を示していた。
それだけで魂が砕けそうになる。どれだけ強く、その意思を持ってもそれは絶対の理としてそこにある。……だが、
「善い……それが貴様の在り方ならそれを認めよう。だが……我は悪である」
バーンはその覆し方を知っていた。息を吸い、前を見据える。獣の巨体の前で、己の姿はあまりに小さい。……だが、
「貴様の齎す滅びに抗おう。……即ち」
……だが。
「叛逆である!!!」
誰にも負けぬと声をあげ、バーン前に向けて手を振り下ろした。
盛大な時の声が、バーンの後ろから上がる。鬨の声だ。
「今が闘いの時だ。総員……参る!」
応! とでもいうような、すさまじい咆哮のような返答が起こる。
負けじと、獣が咆哮を発する。方向と同時に襲い来る炎の弾に、バーンと、その騎士たちもまた、走り出した。
「三つ首の獣、何するものぞ!」
歓声が上がる。バーンがかけるのは声だけではない。ともに機神を狩り、魔剣を携え。
そうしてともに、獣たちに戦いを挑む。
亡霊の騎士たちと三つ首の化け物の戦いは、光りなき激しい戦いとなるだろう……。
大成功
🔵🔵🔵
夏目・晴夜
自分なりの強い思い…成る程、成る程
声を出さない祈りでも良いのは有り難いですね
私も大声で叫ぶのはあまり得意ではないですから!
このハレルヤなりの強い思いは『褒められたい』一択です
「褒められますように」という切なる祈りや「これは間違いなく褒められる」という強い確信を込めて妖刀を振るい
敵をズタズタに切り裂き、【串刺し】、殺戮の呪詛とやらが渦巻く体内へ新たな呪詛をプレゼントしてあげます
痛い目に遭っても、とりあえず耐えます!
ハレルヤは生きているだけで褒められる程に偉いので
あと単純に、まだ死にたくはないですからねえ
私はとても謙虚なので、あと5年、いや10年…
いや、20年で我慢します。あと20年は生きたいです
三つ首が蠢いている。
「自分なりの強い思い……成る程、成る程」
夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は神妙な顔をして一つ、二つ。頷く。何やら分かったような、そんな顔をして、
「つまりはこのハレルヤに最適の舞台というわけですね! はーっはっはっはっはっはっはっは……ゲホゲホゲホゲホゲホ!!」
むせた。叫んでむせた。盛大に喉の奥に引っかかった。
さもありなん。周囲に満ちる気は死そのものである。吸い込むだけで肺を破壊するような呪いに満ちた空気は、地獄の炎の余波で高温も伴っている。
つまりは、死ぬほど息がしづらいし、息をしているだけで死んでいくのが現状である。
「声を出さない祈りでも良いのは有り難いですね。私も大声で叫ぶのはあまり得意ではないですから! このハレルヤ、古式ゆかしく奥ゆかしく褒められたいという願いを持ちながらも口にはなかなかできないシャイボーイですから、口に出さずとも思いを汲んでくれるのはありがたい。ここには人が少ないですがもしかしたらはるか遠くまでこの思い届くかもしれませんし、全世界の人々がハレルヤの無事と勝利を祈りそして褒めてくれるのは間違いなく……」
言うじゃん。全部言うじゃん、この人。
誰かが聞いていれば間違いなく突っ込まれたかもしれないが、生憎ツッコミ役は今日はいない。息をするだけで苦しい状況の中大声で晴夜は喋る喋る。よく喋る。
そんな晴夜に向こうの方も気が付いたのであろう。三つ首のうち、どこを見ているのかわからないのに必ずこちらを見ているような。そんな獣の目玉が、動いた。
「うぉっ!!」
目の前が真っ赤に染まる。炎の弾が晴夜に降り注いだ。呪いを含んだそれに、晴夜は僅かに口元をゆがめる。
「今、世界の誰かがちゃんと避けられて偉いねって言ってくれた気がします! 生きてるだけでハレルヤは褒められるほどに偉いのです!」
最強である。炎の余波で若干尻尾が焦げた気がするが気にしない。晴夜は愛刀悪食を手に走り出した。
その動きに、獣も反応する。尾が翻る。白のような蒼のような。炎でできたような三つ首の一つが首をもたげる。尾の先から炎が吐き出され、それと同時に槍のようなものが降り注いだ。
「ふ……っ!」
紙一重で回避する。避け損なった槍が一本、晴夜の足を貫く。だが晴夜は走るのをやめない。抜くか否か、一瞬悩んでいる間に、槍は大きな獣の毛となり、炎となって消えた。
「うわ、めっちゃ硬い毛並みですね! ブラッシングちゃんとしましょう!」
もちろんハレルヤはふっさふさです。褒めてもらいます。なんてなぜかそこで自慢しながらも、第二撃の尾を悪食で払い落とす。
「――!!」
「負けませんよ!」
咆哮に負けじと吠え返す。今の啖呵、ちょっとかっこよかった。これは間違いなく褒められる。誰にかはわかんないけど世界のどこかに届けこの祈り!
「仕方がないのでハレルヤがブラッシングしてあげましょう!」
目の前に至れば、やはり敵は巨体。晴夜はそれを見上げ、躊躇うことなく尾に足をかける。登る。登りながら悪食を地面、すなわち尾を斬り裂いていく。走りながら斬り裂き、その内部に晴夜自身の呪詛を流し込む。
骨の首が歯を鳴らす。同時に炎の弾が降り注ぐ。全部避けるのはつらい、と晴夜は判断する。幸いにも、さっきから心の叫び駄々洩れなので即死は免れよう。……ならば、
「ええい、とりあえず耐えます!」
きっとこの雄姿、誰かが褒めてくれると信じて。致命傷だけ避け、晴夜は走った。手足が焼けようと、気にしない。痛みを感じないのではない。気にしないのだ。だって誰かが褒めてくれる。それを思えば痛みなんて耐えられる。
全身を焼く痛みと、ほんの少しの死の予感に晴夜は目を眇めた。いくら明るいの好きと言っても、これだけ地獄っぽい炎で明るいとおよろしくない。
「でもハレルヤ、生きてるだけで偉いので!」
死に、ハレルヤは真顔で言い切った。獣の顔は目の前だ。ぎろりと、白のような蒼のような銀のような獣の巨大な目が、晴夜を見る。
「いやいやいや。あと単純に、まだ死にたくはないですからねえ」
かまわず、晴夜は悪食を構えなおした。両手で持ち、刃を下へ。
「私はとても謙虚なので、あと5年、いや10年……いや、20年で我慢します。あと20年は生きたいです。最期は愛する人とかに囲まれて誉められながら死にたいですし何でしたら死後も頑張ったねって神様に褒めてもらいます。あ。ハレルヤは神なのですが」
ちょうど獣の眉間のあたりにいた。敵の火の弾が吐き出されるより、早く。
「だから、代わりにあなたが死んでください」
刃が、三つ首の一つの額を貫いた。
大成功
🔵🔵🔵
フィッダ・ヨクセム
死ぬ、は恐れるものなのか
俺様にはわからない、特殊な生い立ちのせいだ
戦場で武器が死ぬのは誉だろ?……武器が壊れるのは仕方がないことだ
俺様は詠唱兵器のバス停、終わるときは何かの意志を護ッた時だと薄らと思ッているが俺様には生の執着は無いからね、そんなの終わり間際にしかわからんだろうけども
なにをまもりたいのかも
なんのために戦いに身を置くのかも
……俺にはない方だから(手首のアクセサリー夢路を気にかけつつ)
……だが、そうだな
理不尽な殺戮は、俺でも許せない
お前が無敵だろうと知るかよ、関係ないな
|本体《バス停》を手に、UCを扱おう
目的を、目標を、見失うな。生きろ、しぬな。
バス停が道を示せばいいか?範囲が足りないなら、俺(人)と|本体《バス停》をそれぞれ別の位置に配置してでも範囲を広げてやる
炎で描く魔法陣、俺の使う魔法は基本全て炎魔法だ
全力を出せば出すほど青く燃える
ヤドリガミだ、腹に穴、絶命すれすれでも本体が生きれば……
…ああ、そうか
俺は自分より先に誰かが死ぬのが嫌だから
|死にたくない《生きたい》……!!
死ぬ、は恐れるものなのか。
フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)が最初に思ったのはそういうことだった。
今、戦場は死で満ちていた。息を吸うだけで呪われて死ぬ、なんて冗談みたいな話だけれども、ここでは本当のことであった。
歩くだけで呪詛を孕んだ重力がまとわりつき、地獄とやらの炎が吸う空気すら焼いていく。
生憎と、その地獄とやらがどこにあるのか誰にも今のところはわからなさそうではあるのだが……、
そこまで考えて、フィッダはほんの少し、己の指向と周囲の感覚がずれていることに気が付いた。
「戦場で武器が死ぬのは誉だろ? ……武器が壊れるのは仕方がないことだ」
もちろん、大事にはしてほしい。できる限りなら。
けれども、武器を大事にして命を落としたり、惜しんで目的を達成できないのは違うと、そんな気がしていたのだ。
「(俺様は詠唱兵器のバス停、終わるときは何かの意志を護ッた時だと薄らと思ッているが……)」
もちろん、そんなことはその時になってみないとわからないけれども、
その時は、惜しみなく命を投げ出せる自分であると信じてる。
「残念ながら、今のトコロ宛はないが……」
命をかけるほどの意志。
すべてをなげうつほどの理由。
「だからだッてのか。いまいち、理解できないな……」
そんなもの、ないから。
知らず、手首にかけてある黒豹のぬいぐるみに触れた。特に意味はなかった。何で触れたのかもわからなかった。けれども確かに、意思を持って触れた。
「……」
早く、何でもいいから何か声をあげないと。
強く、何か願いを表に出さないといけない。
状況は待ってはくれない。そうしなければここにきた意味さえない。なのに……、
「……」
なのに。何もないのか。……なにもないのか。何か。
願うことは。求めることは。フィッダは己の手を握りしめる。……ふと、硬い感触があった。
「……そうだな」
いつの間にか、己の本体のバス停を握りしめていた。
「理不尽な殺戮は、俺でも許せない」
許せない。それはある。相手は強敵だと聞いている。けど、
「お前が無敵だろうと知るかよ、関係ないな」
何故だ。なぜそんなことを思うのだろう。フィッダの周りに炎が取り巻く。三つ首の獣が、じろりとフィッダの姿をとらえた。
「……」
それを、フィッダは見返す。
そして周囲を見る。戦っている猟兵たちがいる。みんな思い思いに、自分の気持ちを胸に戦っている。
「……目的を、目標を、見失うな。生きろ、しぬな」
思わず、言葉が漏れた。フィッダの周りに魔法陣が浮かび上がる。きっと誰もがフィッダの思いには気づかないだろう。フィッダがどれだけ支援しても、応援しても、それは届かないだろう。
……だって、彼はバス停だから。
雨の日も風の日も、どんな平和な世界でも、人は戦っていて、
バス停は、それをずっと見守っていたから。誰もバス停が、見守っていてくれるなんて思っていなかっただろうから。
「それでもいい。それでいい。バス停は道を示すだけだ」
本体を置いて、走り出す。炎の魔法が作り出される。青い炎が三つ首の獣へと牙をむく。
「……」
静かだ。驚くほどフィッダの気持ちは静かだ。
静かに、戦う猟兵たちの後ろから、魔法を撃つ。
「――!!」
咆哮がする。猟兵たちの援護をしながら、着実に攻撃を加えていくフィッダに、三つ首の獣が目を向ける。
最後に残った骨の首が凶悪に歯を鳴らす。まるであざ笑っているような。それとも何も意志を感じさせないような。そんな顔をしていた。
「燃えろッ!!」
地獄の炎が吐き出される。青い炎で相殺する。
致命傷は避ける。絶命すれすれでいい。本体だけでも生きていればそれでフィッダは戻ってこれる。
「……っ!!」
不思議と、地獄の炎からしの気配は消えていた。炎で腹をえぐられ、フィッダは顔を上げる。
「……ああ、そうか」
目の前に迫る三つ首の獣。死の間際となってもなお強いその獣に、フィッダは不意に感じた。
「俺は自分より先に誰かが死ぬのが嫌だから……」
自分は、バス停だ。
きっと自分が死ぬときは、そこにバスが来なくなった時で、そこに人が集まらなくなった時だ。
すなわち……、
「死にたくない。生きたい……!!」
この世界は、人々は、自分が守ると。
叫んで瞬間、炎の魔法陣がすさまじい勢いで骨の獣の目玉めがけて飛翔した。
「……!」
頭蓋の中に滑り込む。そして内側から爆発した。
「は……!」
三つ首の獣たちが崩れていく。
巨大が、ぐずぐずと下から砕けていく。
フィッダはそれを呆然と見やる。
獣は最期にひと声、咆哮して。
そして完全に沈黙した。
「……そう、か」
思わず、フィッダは呟いた。
「誰も……死ななかッたんだな」
その、呟きをもって。
戦いが終結したことに彼が気づくのは、もう少し後のことである……。
大成功
🔵🔵🔵