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天空に浮かぶ「魔空原城」を根城とし、上空からサムライエンパイアを攻撃していた猟書家『クルセイダー』。
グレイズモンキーに連なると言われた男は、然し自らが憑装した陰陽師『安倍晴明』に肉体を奪われた。
この緊急事態を察知した江戸幕府は、首塚の一族の頭領でもある将軍様御局「斎藤・福」に命じ、呪詛の鎖の力を以て「魔空原城」を地上に引きずり降ろしたのだが、目下、地上に繋がれた魔城から続々とオブリビオン軍勢が溢れ出している。
『江戸幕府を打倒せよ! 徳川はウソつきだらけだ!』
『幕府を倒せば、エンパイアには真の平和が訪れる!』
幕府に対する不満を叫びながら飛び出して来たのは、「島原一揆軍」。全て骸の海を潜った者達だ。
彼等は異常な信仰心によって狂う程に士気を上げており、そのうえ安倍晴明によって密かにゾンビ化も施されている為、頭や脚を吹き飛ばした程度で死ぬ事は無い。
『ウソつき幕府に組する者を捕えよ!』
『幕府の犬ども! これでも喰らえ!』
強靭な生命力を与えられた一揆軍の武器は、「手毬」なる投擲武器。
彼等はヒトやモノ、またヒトでもモノでも無いものを吸い込んでは吐き出す、奇妙な力を持った手毬を使って猟兵を捕えようとしているようだが、この幻術めいた手毬に翻弄される訳にはいかない。
地上に鎖がれた「魔空原城」の内部に待ち受ける脅威に、猟兵は一刻も早く辿り着かねばならなかった。
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「――世の常は上剋下、より強い者が下の者を滅ぼすという事かな」
嘗て多くの猟書家幹部を束ねた男も、安倍晴明に較べれば青かったと嘆声を置く枢囹院・帷(夜帷の白薔薇・f00445)。
志半ばにして倒れたクルセイダーに代わり、かの男の肉体を乗っ取った陰陽師は、自らを「晴明クルセイダー」と名乗り、自身の尖兵である「生殖型ゾンビ」に「超・魔軍転生」を使用したと説明を添えた帷は、その悪夢が今、地上に広がろうとしていると蛾眉を顰める。
「どうも『興が乗った』とか。言ってくれるじゃないか」
魔軍将は自我無きゾンビの肉体を瞬く間に奪い、「魔軍将ゾンビ」として復活を遂げた。
而して晴明クルセイダーは、このゾンビを速やかに「量産化」しようとしている――。
エンパイアにゾンビ化した日野富子や上杉謙信が跳梁跋扈する、その滑稽で無様な景色が見てみたいとは、随分と狂っているように思われるが、既にゾンビ化した「島原一揆軍」が魔城より溢れているから冗談では無い。
「現在、魔空原城は呪詛の鎖の力によって地上に繋がれているが、先ずはこの城から流れ出すオブリビオン軍勢をやっつけて欲しい」
島原一揆軍は「異常な信仰心」による極めて高い士気を誇り、ゾンビ化も施されているため、頭や脚を吹き飛ばした程度では死なない。
然し彼等が細切れになるまで戦っていては、城内で進められるソンビの量産化を食い止めるにも時間が掛かり、また呪詛の鎖の力もいつ切れるか分からないので、武器である手毬を無効化しようとは帷の提案だ。
「逸早く集団戦を制すれば、城内に突入し、魔軍将ゾンビと対峙する事になるだろう。私が案内するのは、そのうち上杉謙信の霊を憑装したゾンビだ」
晴明クルセイダーを守護するべく配置された魔軍将ゾンビ「上杉謙信」。
その者は嘗て「軍神」と呼ばれた時と同等の力と理性を取り戻した強敵で、12本の毘沙門刀を巧みに操り攻撃を仕掛けて来ると言を足した帷は、どうにか彼奴を倒して首魁に辿り着いて欲しいと頼む。
「上杉謙信を凌駕する事が出来れば、君達は魔空原城の最奥、晴明クルセイダーの元に辿り着けるだろう」
其が最終決戦となるとは、帷の表情で分かる。
現状で説明できる全てを語り終えた彼女は、ぱちんと弾指してグリモアを喚び、
「なに、相手が変わったとはいえ、君達の刃は突き立てられる。宛ら終止符を打つように」
無様で滑稽な景色を見るのは誰か。
どうか教えてやって欲しいと嗤うのだった。
夕狩こあら
オープニングをご覧下さりありがとうございます。
はじめまして、または、こんにちは。
夕狩(ユーカリ)こあらと申します。
こちらは、サムライエンパイアに侵略する猟書家の決戦シナリオのうち、魔軍将ゾンビ「上杉謙信」との戦いを挟む「軍神・晴明クルセイダー」と戦うシナリオです。この決戦シナリオを合計「20回」成功すれば、完全にオウガ・フォーミュラを滅ぼすことができます。
●戦場の情報
サムライエンパイア、魔空原城。
現在、首塚の一族の頭領でもある将軍様御局「斎藤・福」が、呪詛の鎖の力を以て「魔空原城」を地上に引きずり降ろしています。鎖が切れる前に攻略しましょう。
●シナリオ情報(三章構成です)
第一章『蒐集者の手毬』(集団戦)
魔空原城よりわらわらと湧いてくる「島原一揆軍」(オブリビオン軍勢)が投擲してくる手毬で、任意の品(人間も品物も)を蒐集させ、吐き出させることができます。ゾンビ化した軍勢から手毬(武器)を奪う事で無力化し、その間に魔空原城へ突入しましょう。
第二章 軍神『上杉謙信』(ボス戦)
晴明クルセイダーを守護するべく配置された「魔軍将ゾンビ」です。
嘗て「軍神」と呼ばれた時と同等の力と理性を取り戻した強敵で、12本の毘沙門刀を巧みに操り攻撃を仕掛けてきます。
第三章 憑装猟書家『晴明クルセイダー』(ボス戦)
サムライエンパイアを狙う猟書家「クルセイダー」の肉体を乗っ取った、かつての魔軍将・陰陽師「安倍晴明」です。奪った「超・魔軍転生」を用い、魔軍将ゾンビの生産を進めようとしています。
●リプレイ描写について
フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や【グループ名】をお書き下さい。お互いの関係や呼び方があれば、より踏み込んだ描写をさせて頂きます。
以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
第1章 集団戦
『蒐集者の手毬』
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POW : あなたと共に在るために
【自身がよく知る死者】の霊を召喚する。これは【生前掛けてくれた優しい言葉】や【死後自分に言うであろう厳しい言葉】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 理想郷にはまだ遠い
【自身と同じ能力を持つ手毬】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ : いつか来る未来のために
小さな【手毬】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【全ての望みを再現した理想郷】で、いつでも外に出られる。
イラスト:にこなす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
手毬の無効化ですか。無数の毬を斬ることは難しそうですよね。
ならば毬の穢れを払ってみましょう。ついでに浄化も試みます。
限界突破し破魔と属性攻撃を付与した【神座『榊』】を舞ます。
上手くいけばゾンビかした島原の方々も還れるかもしれません。
還らなくともゾンビの弱体化ができる…かもしれませんから。
舞っている間は無防備になりますが気にしてはいません。
集中して周囲のことに気を留めてないというのもあります。
それとは別に気にしていない理由が一つ。
私にはとても心強く可愛い相棒が護ってくださっているので♪
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
パフォーマンスで運動能力を上げてから封印を解くじぇ。
それから限界突破。多重詠唱しながら【雷神の大槌】発動!
速度と威力の維持に継戦能力。重量攻撃で蹴りの威力上げるよ。
墨ねーを襲うために来るゾンビと手毬をバンバン蹴り飛ばすじぇ。
踊ってる墨ねーには絶対に触れさせないじょ♪うぇ~い。
毬はサッカーの要領で蹴り返してみようかな。帰ってくるかも?
毬の吸収能力は僕の速度じゃあ吸い込めないんじゃないかなーと。
でも一応は吸い込まれないように注意してみようと思うよ。
十字架を掲げて反抗した「島原一揆軍」は、数にして三万七千。
農民や浪人で構成された軍勢は、異常な信仰心に気を狂わされていたが、彼等も里神樂を見た事はあったろう。
信じる神こそ違おうが、巫女が鈴を鳴らして舞えば、其処は「|神座《かみくら》」――神人一躰の|宴樂《うたげ》となるとは、侍の國の古き|習俗《ならわし》であった。
「……吉々利々千歳榮、白衆等、聽説晨朝、淸淨偈也……」
丹花の脣が紡ぐは、玄妙なる神樂歌。
|舞人《まいて》は浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)。
白衣朱袴の裝束で神樂が一、神座【榊】を舞った彼女は、招魂と鎮魂の力を宿す神樂鈴を手にリン、シャンと、淸澄なる玉音を|透徹《すみわた》らせて一揆軍を迎えた。
『なんっだ……この神々しさは……!?』
『戰場で……巫女が踊っている……!?』
破魔の氣に滿ちて白々と照る巫女を見れば、不覺えず進撃の脚が緩まる。これが畏怖か。
俄に動搖する一揆軍が見る先、白磁の繊手が奏でる鈴音は淸く、吹き渡る風は快く――不死の軍勢は、己が内で濁々と澱む不滿が淨われていくような感覺に戸惑った。
「……|明星《あかぼし》は、|明星《みょうじょう》や、くはや此処なりや……」
(「上手く……いけば……ゾンビ化した……方々も……還れる、かも……しれません……」)
一揆軍が武器に持つ手毬と、不死に堕とされた島原の人々の邪氣を祓う――其が墨の狙い。
かの手毬を斬るのは難しかろうが、手毬に宿れる穢れを祓う事は出來ようと、薄く開いた花脣に法華懺法の讃の句を唱えた墨は、鈴音玉聲による|治癒《いやし》を以て彼等を牽制した。
「……今宵の月は、唯爰に|在《ま》すや……」
――果して、その効果は。
苦々しく歪む皆々の表情に見て取れよう。
『ッ……畜生ッ!! この神樂も徳川による策謀なのか!?』
『惑わされるな!! 手毬を擲げて吸い込んでしまうぞ!!』
骸の海を潜った躰が淸淨の氣に悲鳴を上げるが、彼等に與えられたが強靭な生命力が倒れる事を許さない。
如何なる強敵も、投擲するだけで吸い込める『蒐集者の手毬』を振り被ったゾンビ達は、然し、側面から突如として襲い掛かる衝撃に撞ッと倒れ込んだ。
「墨ねーには絶対に触れさせないじょ~!」
『ッ、ッッ――!!』
「うぇ~い♪」
投げ込む瞬間、ガラ空きになる脇腹に蹴撃を叩き込むはロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)!
スカートの裾から覗いた瑞々しい脚は、然し戰槌の如き超重量を橫薙ぎに叩き付け、連中の躯を「く」の字に曲げてドミノ倒しにする。
『んおおっ!! 舞いに気が取られていたーっ!!』
「あっ、ボール♪ こぼれ球ってやつだねい」
激痛を叫ぶゾンビ達の手から零れた手毬は、足技の巧みな少女にとっては蹴毬に見えよう。
コロコロと轉がった手毬めがけて脚を振り上げたロベルタは、眩く雷光を迸りながら【|雷神の大槌《ミョルニル・ハンマァー》】ッ!
超光速キックに彈かれた手毬も超光速で飛び、ゾンビ達の懷に凄まじい衝撃を閃かせた――!
「シュートだじょっ!」
『――ぁぁぁああ嗚呼っ!!』
ロベルタは手毬に觸れる瞬間、能力を全開に抵抗した爲に吸い込まれはしなかったが、超光速ゆえに身構える事さえ出來なかった彼等は、着彈の瞬間に吸い込まれてしまう。
投げ手を失って轉がる手毬を前に「どうだっ!」と仁王立ちしたロベルタは、佳瞳を墨に向けると|微咲《えみ》ひとつ。
「墨ねーを襲いに來るゾンビと手毬は、僕がバンバン蹴り飛ばすじぇ♪」
「……ふふ……りがとう……い、ます……♪」
墨もぺこりと礼をするものの、その實、ロベルタを信じてもいた。
とても心強く可愛い相棒が護ってくれるからこそ、神樂舞に専念する事が出來たと、手毬を擲げれもせず|蹲跪《つくば》う者達を見た佳人は、佳脣に仄のり|艶笑《えみ》を差す。
「然し……この、数……す……。道を……切り……いて……魔空原城、を……目指しましょう……」
「う! 格好良く一点突破しようねい♪」
戰場を共に駆けるに、これほど頼もしい|戰友《とも》は居まい。
凛乎たる|星眸《まなざし》を結び合った二輪の花は、息を揃えて爪先を彈くと、どろどろと溢れて滿ちる軍勢の中に道を開いて征くのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
嘘ってゆーか夢見たぱらいそが幻だったのかもねェ…
けど真はある
アンタらを煽動したアイツは確かに外道て事だ
…あの鞠
見た目よりイヤな手使うよな確か
【念動力】で囲まれないよう押し返し防御、UCの蜂を6匹と手裏剣【投擲】で遠い個体から撃破狙おう
傍に蜂1匹残し【追跡/情報収集】フォローに充てる
猫目雲霧とクナイを結び疑似の鎖鎌、投げクナイ・念動を通し即席の槍として周囲をなぎ払い【切断】
>敵UC
殺害訓練で殺した壮年の男は当然のように呪いを吐き
幼馴染のミサキや夭折した兄貴分は場違いに気遣う言葉をかけてくれる
…あは
「霊」で良かった
あの外道に弄られたらほんとキレるわ
ここは戦場
其は幻
滞りなくやるとも【暗殺】
アドリブ可
あの手毬が一癖も二癖もある代物とは、嘗ての交戰経験が教えて呉れる。
かの人心操術が厄介だと、其を駆使する|忍者《しのび》として実感する鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、『燈ノ護』を纏う右腕を突き出すと、眼路に迫る手毬を念動力で押し返した。
「|此方《コッチ》の記憶を利用するってのが、また――」
佳脣の端より皮肉を零しつつ、外套の裏地から取り出した古い針を|掌指《ゆび》で一撫でする。
而して羽音もなく飛び立つは、【|虚蜂《ウロバチ》】――大型の蜂靈が七針に七匹。そのうち六匹がトーゴが擲げる手裏劍を先導に、続々と擲げ込まれる手毬を刺突する傍ら、残る一匹は術者の傍らで八の字に動き、暗号めいた挙動で情報の伝達に當った。
「遠距離はお前達に任せるとして、俺も働こうか」
飄と告ぐや、六尺手拭い『猫目・雲霧』の片端にクナイを結んで疑似的な鎖鎌に、中距離まで届く手毬をブンと振り回した其に手折って地面に轉がす。場合によっては切り離し、元のクナイと、念動力で縒り合せた布棒でも戰えよう。
斯くして数々の手毬を距離ごとに捌いたトーゴは、然しその数に驚いたに違いない。
「えぇと、慥か島原の一揆に加わった者達は……三万七千?」
どれ程がゾンビ化に成功したかは判然らないが、兎に角、手毬の数も尋常で無い。
一つか二つかには頭を小突かれるかも知らんと、空に弧を描いて來る手毬を仰いだ彼は、あの聲質、あの音色を囀る像に、一瞬、時を止めた。
『努々忘るな……! お前が人を殺す度、俺を殺めた感覺がお前の五感を染める……!!』
其は殺害訓練で殺めた壮年の男。
耳元で當然の樣に呪いを吐く。
『トーゴ、怪我をしているじゃない。ほら、見せて?』
『双子の|巫女《あね》にも言えぬ想いは、どうだ、俺が預ろう』
其は幼馴染のミサキ。其は夭折した兄貴分。
場違いなまでに気遣う言葉を掛けてくれる。
「……あは、『靈』で良かった。あの外道に弄られたら、ほんとキレるわ」
語調も表情も|完《まった》き同じ、|宛《まる》で隣に居るかのような生々しさに安堵と瞋恚が交錯する。
己が忍で無ければ術に囚われていたろうか、否々、忍の道が招いた事だと自虐気味に|頭《かぶり》を振った彼は、交睫ひとつして像と|訣別《わか》れると、巧みに操った鎖鎌で手毬を兩斷した。
「ここは戰場。すべては幻――滞りなくやるとも」
手毬も、外道も、等しく。
その爲の道を歩き切って遣ろうと、トーゴは狂熱の渦動に道を切り開くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
対人用鹵獲装置と言ったところか
猟兵は「生命体の埒外にあるもの」
故に理外の邪法であろうと何等通用するものでは無いが
この災禍に巻き込まれた民草が虜となれば、速やかに生命の尊厳を奪われ生殖型ゾンビに成り果てよう
量産化等
これ以上、日の本の国を徒に荒らされるようなことが有ってはならぬ
◆熱力学第一法則
異空間に吸い込まれることで、手鞠を内側から破壊し可能であれば囚われた一般人を救出します
心眼+念動力で心を強く
悪を討つ想いは熱く
庇う+火炎耐性を付与した熊野牛王符の浄化結界で一般人を保護し、限界突破+破魔の焼却を放出して理想郷を焼き払う
まやかしが一時の救いになったとてその末路は傀儡の屍
未来永劫の煉獄が望みか晴明
目下、『魔空原城』は首塚の一族の尽力によって大地に鎖がれたが、其は地上を戰場にするという事。
この災禍に民草が巻き込まれたなら、忽ち虜とされ生殖型ゾンビに成り果てようと、どろどろと溢れ出る島原一揆軍に対峙した戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は、陽炎の如く立ち昇る狂熱の向こうに邪の巨影を見た。
「――不死者の量産化など。これ以上、日の本の國が徒に荒らされるような事が有ってはならぬ」
己は民の|寄邊《よるべ》。
本山を棄てて猶も衆生を救いたいと凛然を兆した破戒僧は、眼路に迫る手毬が己に觸れる儘、中に吸い込まれた。
『よっしゃ!! 猟兵の一人を捕えたぞ!!』
『我らが総大将は果して悦ばれるか』
遙か上空で一揆軍の嬉々たる聲が谺するのを聽きながら、蔵乃祐が疾るは手毬の中の異空間。
幽邃の梵刹を過ぎれば、忽ち蘭麝の馨なまめかしき御殿に至り、靜謐なる水車の音を聽く――この継ぎ接ぎの景色に|合點《がてん》がいこうか、複数人の理想が映されていると気付いた傑僧は、傍らで陶然とする者を見つけるなり肩を抱いた。
「これは|騙術《まやかし》。偽りの理想郷に留まる事もありますまい」
確り、と聲を掛ける彼は、手毬が差詰め「対人用鹵獲装置」である事を見切っている。
(「猟兵は『生命体の埒外にあるもの』……それ故に理外の邪法であろうと何等通用するものでは無いが、民草は」)
民草は違う。
彼等は死ぬ以上の冒瀆に晒されると、清明に差し出される人々を保護して回った彼は、「興が乗った」というだけで命を弄ぶ悪に對し、沸々と滅殺の想いを滾らせた。
「虚無泯滅に結ばれる理想郷など地獄に等しく、地獄なれば相應しい景色がある」
二指に挟める『熊野牛王符』に念を籠め、水平に斬り払うと同時、淨火の結界を巡らせる。
異空間を押し広げるようにして展開するは、【|熱力学第一法則《ゲヘナ》】――人々の理想が創り出した樂園を破魔の炎に灼き払った蔵乃祐は、人々を守りながら唯一つの出口へ嚮導する。
目指すは、勿論、理想郷を破壞した先にある現実だ。
「まやかしが一時の|救恤《すくい》になったとて、其の末路は傀儡の屍――」
褐色の肌膚を明々と炎に照らしながら進んだ男は、軈て殺伐たる大地を踏む感覺を得る。
奇しくも異空間を渡る事で三万七千の軍勢を突破したか、目前に迫る『魔空原城』の威容を烱瞳に映した蔵乃祐は、クルセイダーの肉体を以てエンパイアを転覆せんとする巨悪を重ねる。
「未来永劫の煉獄が望みか――晴明」
決意に滿ちた一歩が、今こそ魔城に踏み入った。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
エンパイアは故国でもあり
馴染みや、守りたい大切な場所が沢山
晴明の策…屍人蔓延る景色など
させない為に僕らが在るのだから
随分士気が高いですね…
声高に叫ぶ声に惑わされる者は、ないとは思うが
倒れず、死なぬ様は恐怖だろう
先には行かせぬ
手鞠に、刀や瓜江を吸い込まれては堪らぬ
軌道を逸らしたいが…
跳ね返し、彼らの手元に戻しては
再度投げられるだけできりがない
ならばと投擲の機を見切り
薙ぎ払い放ち焔旋風を生み
炎纏う風に手鞠引き寄せ、燃やして
鞠さえ奪い消すこと叶えば…
瓜江も積極的に攻撃に加わり
一揆軍が塞ぐ道を切り開き、城内へ向け駆ける
鎖が保つ間…
時間とも戦わねばならぬのが、厳しいが
首謀者の晴明倒すまで
止まりませんとも
山水の佳景、質朴なる町並み、言葉尠くも情に厚いサムライの気風――。
大切な場所も馴染みも沢山、その全てを守りたいと故郷の土を踏み締めた冴島・類(公孫樹・f13398)は、魔空原城より溢れる喊聲の怒涛を前に、そと言を置いた。
「……徳川が嘘吐きと。果して騙しているのは何方か」
晴明は、屍人が蔓延る滑稽を見たいと云った。
興尽くる事を知らぬ狂邪にゾンビと化せられ、信仰は歪に煽られたか――異常に士気を上げた軍勢に正對した類は、短刀『枯れ尾花』を目線の位置で抜き払うや、|晃乎《きらり》と輝く白刃に破魔の風を呼んだ。
月白の髪がさやと搖れ、烱々と冱ゆる双眸を暴いたのはこの時。
「――この先へは征かせますまい」
聲高に叫ぶ|虚妄《うそ》に惑わされる者は居まいが、不死者の行軍は|恐怖《おそろ》しかろう。
抗う力を持たぬ民が蒐集されてはならぬと、目下、一斉に擲げられる手毬の軌跡を視た類は【|焔旋風《ホムラツムジ》】――!
ひやうと刃鳴して斬り払った白条一筋に淨火の風を結び、不可侵の疆界を引くと同時、手毬を灼き払ッた!
「手毬は追跡し、焔旋風は誘引する。――相性は宜しいかと」
『ああっ熱ゥ!! 俺まで焼けるようだッ!!』
手毬を跳ね返しては、再度投げられるだけで|限《きり》が無い。
彼等の手元に戻らせまいと手毬を引き寄せた類は、放物線の途中で虚しく散る灰燼と、其と五感を共有していた者が膝を折って悶えるのを見つつ、更に繊手を動かした。
「瓜江」
短く鋭く呼ぶは、我が半身。艶めく濡羽髪の絡繰人形。
赫い絲に結ばれた美丈夫が、手毬を擲げた直後の軍勢へ突撃! すらりと伸びた長い手足で拳閃蹴撃を繰り出せば、三万七千の大軍勢も楔打たれたように亀裂が疾った。
「|鹵掠《うば》うのは手毬だけにしましょう」
刀も、瓜江も、民草の命も。
何一つ奪わせないという気概なれば、己こそ多くは奪うまい。
魔空原城に向かう道の一筋を開いた類は、眼路の先、聢と大地に結ばれた巨城を捉えると、瓜江と二人、一陣の風となって走る。
「僕達に許された時間は、呪詛の鎖が保つ迄……急ぎましょう」
万一にも討ち逃せば、ゾンビの量産化は止められまい。
時間とも戰わねばならぬのが嚴しいが――と、狂熱の渦を駆けた類は、軈て瞳いっぱいに映る魔城に首謀者の邪影を重ねると、冷やかに言ちた。
「無論、止まりませんとも」
清明を倒すまで、この身は決して止まるまい。
搖るぎない決意を花脣に結んだ類は、間もなく魔城へ、二つの影を滑らせた。
大成功
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杜鬼・クロウ
憑依にゾンビに
全っ然笑えねェなァ
鎖が切れる前に何とかしねェと
俺の故郷の地を覆う暗雲や遺恨は総て祓う(背負う剣を下ろし島原軍見据え
死者を召喚され驚く
ハ…?主…にお嬢…
『あなたは沢山の思いを映し束ねて、自らのものとして背負う者になるのです』
「正しき想いを持てば、仏の如き正しき魂を得るに至る」
やめろ
『義とは、数多の人の為にあるもの。世界を巡り廻ってここまで届いたのなら、わたくしは幸せですよクロウ』
「この邂逅が、御前の行く先の希望とならんことを願うよ」
俺の記憶(かこ)を穢すンじゃねェ…!
心底、胸糞悪ィぜ…クソが
炎を宿した剣で手毬や品物を叩き斬る
UC使用
鬼火で敵を爆破し、糸で引き寄せ手毬回収
城まで駆ける
質樸を是とする|侍の國《エンパイア》には、其と同様に“粋”や“洒灑”を味わう気風もある。
而してクルセイダーを乗っ取った清明が謀る「ゾンビの量産化」は、この國を故郷とする杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)を興醒めさせるに充分“無粋”であった。
「……全っ然笑えねェなァ」
目前に見る喊聲の怒涛、三万七千の狂熱すら白々しい。
笑えぬ芝居が幕開くというなら、その幕ごと斬ればいいと烱瞳を眇めた彼は、背に負う漆黑の大魔劍を下ろしざま、目下、蒼穹に放物線を描いて迫りくる手毬めがけ、赫耀の炎をたばしった。
「この地を覆う暗雲や遺恨は総て祓う。――悪趣味な奴は特にだ」
鎖が切れる前に叩き斬る。
烱瞳に捉えた手毬に清明の影を重ねたクロウは、刹那、炎を浴びせた手毬がゆうらと輪郭を解いて「像」を結ぶ――その生々しさに時を止めた。
“あなたは沢山の思いを映し、束ねて、自らのものとして背負う者になるのです”
“正しき想いを持てば、仏の如き正しき魂を得るに至る”
この聲、この音色。
生前と變わらぬ、ふたつの優姿は――。
「ハ……? 主……に、お嬢……」
喫驚に開いた紅脣から、不覺えず言が零れる。
擦り抜ける佳聲に動搖を自覺したクロウは、小さく|頭《かぶり》を振ったか。二人を前に隔絶を置けないのは、|往時《むかし》と同じだ。
“義とは、数多の人の爲にあるもの。世界を巡り廻ってここまで届いたのなら、わたくしは幸せですよクロウ”
“この邂逅が、御前の行く先の希望とならんことを願うよ”
「――やめろ」
芯のある優しい聲。
決意に滿ちた穩やかな表情。
なんて甘くて、なんて切ない。
「やめろ」
彼等が紡ぐ一語一句に、過去の己が切り出されるようだと奧齒を嚙んだクロウは、先程とは較べものにならぬ火力を迸って刃鳴一閃ッ! 力いっぱい手毬を薙ぎ、焼き払う。
「俺の|記憶《かこ》を穢すンじゃねェ……! 主を、お嬢を、穢すンじゃねェよ」
己の中で靜かに眠る二人を醒ます、その樣な冒瀆を許す筈が無いと睨めたクロウは、【鬼遊び】――炎々たる鬼火に手毬を摑まえるや爆熱に抱き、炭となった塊を絲に手繰って回収する。二度と|悪戯《わるさ》をせぬように。
「心底、胸糞悪ィぜ……クソが」
全然笑えやしねェ、と端整の脣は當初と同じ悪態を吐いて。
畢竟、これだけの無粋を重ねる手合は斬るしかないと、クロウは無力化した軍勢を抜けて城を目指すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
私の世界の安倍晴明はまともでしたが、この晴明はどうしようもないですね!
滅ぼされる事に慣れていそうなので、滅ぼすだけでなく、きっちりお仕置きして躾けてあげましょう!
と激おこ。
晴明の戯れで犠牲者が出ないよう、島原一揆軍に安らかな眠りを与えましょう。
まずは《慈眼乃光》で一揆軍・手鞠・自然現象などを友好的にします。
その上で念動力・範囲攻撃・捕縛にて手鞠を纏めて掌握し、詩乃の元に運んで確保します。
一揆軍の皆さんには「どうか安らかにお眠りください。」と、光の属性攻撃・浄化・破魔・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃で一揆軍に安らかな眠りを与えます。
これを繰り返し、そうして出来た突破口から魔空原城へ突入しますよ。
畢竟、清明が命を輕んじるのは、彼自身が|滅ぼされ慣れている《・・・・・・・・・》からだ。
死の疆界が曖昧だからこそ、魔軍将の御靈を掬い上げ、ソンビの量産化なる悪逆を犯せるのだと、『魔空原城』より溢れる喊聲の怒涛を見た大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)は、ぷっくり頬を膨らませた。
「私の世界の安倍晴明は|善良《マトモ》でしたが、この晴明はどうしようもないですね!」
ど う し よ う も な い 。
斯くもバッサリ云ってのけるのは、狂信的に士気を上げた「島原一揆軍」を見るからか。
(「……幕府は嘘吐きと。彼等をゾンビ化しておいて、そう叫ばせるのですね」)
おこもおこ、激おこである事をきゅうと顰める翠眉に示した詩乃は、目下、一斉に擲げ放たれた手毬が空を覆うのを見ると、我が身に祕める神氣を白光のオーラと解き放った。
「|首魁《かれ》は滅ぼすだけでなく、きっちりお仕置きして、躾けてあげないといけませんね!」
戯れで犠牲者を出してはいけない。
興に乗じて命を弄んではならない。
そんな事をすれば、神とて批難を浴びると凛然を萌した女神は、然し頬や眉に表した瞋恚を収めると、|眼眦《めじり》を柔かく――温かく慈しむような|星眸《まなざし》を射た。
「あなた方も、悪者に与してはなりませんよ」
詩乃の内なる慈悲を溢れさすは、【|慈眼乃光《ジガンノヒカリ》】。全てを從える神威。
敵意を露わに進撃する一揆軍、そして彼等が投擲する手毬に優しく呼び掛けた女神は、眼前でピタと止まる軍勢と、力無く落下する手毬にふうわと咲み掛けた。
『手毬を武器にするとか、すいませんした……』
『あなたを吸い込もうとして、ごめんなさい……』
彼等が十字架でなく|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》に恭順を示す時間は139秒。
それだけあればと、彼等の前で純白の小袖を搖らした詩乃は、今度は巫女の本領発揮、花脣に淨化の祝詞を紡ぐと、瀲灔と振る袖に破魔の風を集め、不死者となった彼等の魂を慰めた。
「皆樣、どうか安らかにお眠りください」
其は靜けき夜の到來を告ぐ、さやかな|夜鳴鶯《ナイチンゲール》の囀聲。
佳人は一揆軍の魂を鎮めつつ、大地に轉がった手毬を念動力で回収し、果して無力化する。
清明の悪行に付き合う義理は無いと、慈悲に溢れる道を切り開いた詩乃は、凡そ軍の庭とは思えぬ靜けさの中を進み――軈て大地に鎖がれた『魔空原城』に至るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
リューイン・ランサード
また晴明かあ。
相変わらず趣味が最悪だ。
これでも陰陽師の端くれなので、陰陽師の名誉の為にも倒しておかないと。
(神隠しでアルダワ学園に来た陰陽師に学んだ経験あり。)
敵軍が使う手鞠はUC:ブラックホールクリエイションで左手をブラックホールに変換して、まとめて吸い込んでしまいましょう。
武器を喪って戸惑う相手には、浄化・破魔・除霊・範囲攻撃でぱらいそに旅立っていただきます。
光の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱で、空に巨大な十字架を作り、彼等へのせめての手向けとします。
何か周囲の相手の動きが止まったような気が。
今の内に城内に突入します。
次は戦国最強の将かあ。
織田信長や武田信玄の方がまだやりやすいのだけど<汗>
アルダワ世界は北方帝國の名家に(間違って)生まれたリューイン・ランサード(|波濤踏破せし若龍《でもヘタレ》・f13950)は、縁あって門を叩いた魔法學園で陰陽術を學んだ経験がある。神隱しで學園に來た陰陽師に師事したのだ。
「――また晴明かあ。不死者の量産化なんて、相變わらず悪趣味な」
佳脣より零れるは、同門としての皮肉。
己も陰陽師の端くれにて、同士の名誉の爲にも尽力すべきと凛然を萌したリューインは、清明らしい悪趣味の塊――ゾンビ化した島原一揆軍を目にするや、彼等が持つ手毬を注視した。
「慥か蒐集したいものを吸ったり吐いたり出來るとか……」
目下、一揆軍が一斉に手毬を擲げ込むが、彼は至って冷靜。
空に架かる無数の放物線を見る一方、「己も似た術が使える」と左手を翳した彼は、赫黑い筋を環状に巡らせた闇黑を形成した。
「僕も吸い込んでみましょう。手毬と違って一方向ですが、大丈夫、何處かには行きます」
簡單に云ってのけるが、左掌に創られたのは超高密度・超重力の天体。
光すら抜け出せぬブラックホールにて、吸い込まれた手毬が戻る事は――無い。
『んンッ!? 消え……た……!? 幻術か、|騙術《まやかし》か!?』
「ブラックホールクリエイションです」
『!? ッッ!? 追跡が……途絶えた……!!』
「対象を追う手毬と、万物を吸い込むブラックホールの相性は抜群でしたね」
『ッッ――!!』
手毬と五感を共有していた兵士は、己が無力だけを感じよう。
数は増やせど全ての手毬を闇に呑まれた連中は、後は強靭な生命力の爲に細切れにされるのを待つのみであったが、リューインは逆手に破魔の氣を漲らせると、澎湃と溢るる淸淨の輝きに輪郭を與えた。
「皆さんは闇黑空間でなく、行くべき處があるでしょう」
『おおぉ……十字架……!!』
高く掲げた右の繊指が示す先、蒼穹には巨大な十字架。
聖性を帯びて輝く十字架を仰げば、島原の者達は心を鎮めて跪き、淨化の光を受け容れる。
「せめての手向けです」
彼等が夢見た「ぱらいそ」へ旅立てますようにと、肉を零して果てるゾンビ達を見届けたリューインは、敵の動きが鈍った隙に疾駆し、『魔空原城』へ突入を図る。
「城に入れば、戰國最強の将と對面かあ……。織田信長や武田信玄の方がまだやりやすいのだけど」
次なる敵は、かの軍神。
一揆軍には胆力を見せたものの、この先で待ち構える強敵を思えば、ちょっぴりヘタレ気質が覗くリューインであった。
大成功
🔵🔵🔵
篝・倫太郎
ま、集団相手に時間掛けてられねぇよなぁ
つー訳で、しょこさんとしーちゃんは懐入っててな?
後、ゾンビとかさ、そういうの、ちょっとどうかと思うンだけど
尊厳とか踏み躙ってんじゃねーよって話
さっさと奥の大本命ンとこ行かせて貰うぜ
敵集団を視認したら範囲内の敵を拘束術で先制攻撃からの拘束
華焔刀に衝撃波と斬撃波乗せてなぎ払いからの範囲攻撃
出来りゃ、手毬持ってる手を手毬ごと部位破壊
刃先返して二回攻撃で手毬を無効化
敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防いで凌ぐ
『投擲』させなきゃ怖くねぇよ
尤も、俺を攻撃するにゃ色々足りてねぇよ、ばーか
爺も里の連中も……
オブリビオン如きが召喚出来ると思うなってンだ!
目下、大地に鎖がれた『魔空原城』から溢れる軍勢は宛ら怒涛。
喊聲が肌膚を搏つ中、狂熱に對峙した篝・倫太郎(|災禍狩り《厄を狩り還す者》・f07291)は、|不圖《ふと》、我が胸元をとんとん、むにゅむにゅと叩く温もりに睫を落した。
「🐰!!」
「お、しょこさん。ヤル氣滿々なとこ悪ぃけど、懷に入っててな?」
「🫠!!」
「うん。しーちゃんも気持ちだけ受け取っておくから」
黑兎『しょこら』とミニ視肉『しーちゃん』が助太刀せんと、むいっと胸を張るが、此度は応援役(やすみ)。
前哨戰に時間を掛けてはいられぬと一点突破を決めた倫太郎は、我が懷で「えいえいお!」と拳を交互に突き上げる応援団に|微咲《えみ》ひとつ、華焔刀 [ 凪 ]を手に一揆軍を見据えた。
「――頭を吹き飛ばしても死なないとか。そういうの、|些少《ちょっと》どうかと思うンだけど」
清明は「興が乗った」と云っていたが、冒瀆が過ぎよう。
迫る軍勢に邪の巨影を映した倫太郎は、敵が一斉に手毬を振り被った瞬間に仕掛けた。
「命とか、尊嚴とか、輕々しく踏み躙ってんじゃねーよって話」
『ッ、ッッ――!!』
手毬が兵士らの手を離れるより迅く放たれたのは、【拘束術】――|災禍《わざわい》を縛る不可視の鎖。
投擲するにも振り被り、踏み込む動作が要ると、先手を打って拘束した倫太郎は、華焔刀を水平に薙ぎ払って斬撃波を叩き付けると、不死の躯が「く」の字に折れた瞬間にもう一閃ッ! 今度は手毬を兩斷した!
『!! 手毬が……!!』
「あんたらは強靭な生命力を與えられたらしいが、手毬はそうじゃないだろ?」
所詮は付焼刃と、斬撃の餘波に前髪を梳る男の小気味佳いこと!
先ずは広範囲に衝撃を疾らせて突撃の勢を崩した倫太郎は、各個撃破より更に的を絞って部位破壞、手毬を持つ腕を狙って刀鋩を衝き入れると、投擲そのものの動作を封じる。
「さっさと奧の大本命ンとこ行かせて貰うぜ」
畢竟、投擲さえ阻めば、連中は唯の木偶。
而して徒手で止められる己では無いと、倫太郎は残像すら摑ませぬ速度で戰場を駆けた。
『|圍《かこ》め、|囲繞《かこ》め!! 城に入れてはならんっ!!』
「――尤も。俺を攻撃するにゃ色々足りてねぇよ、ばーか」
無力を嚙む不死者を石突に突き飛ばし、疾る、走る。
斯くも倫太郎が手毬の幻術を拒むのは、我が記憶に眠る者達まで蹂み躙られてはならぬからだ。
「爺も里の連中も……オブリビオン如きが召喚出來ると思うなってンだ!」
死を、命を、靈を。冒瀆させやしない。
花脣をきつく結んで進んだ倫太郎は、間もなく見えた巨城に忌わしき男の影を重ねるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
何時までも無駄な足掻きをし続けた挙句に此の結末とは
いっそ憐れと云えるやもしれんが……同情する気にはならんな
此方の成すべきに変わりは無く――今度こそ終いにしてくれる
成る程、数だけは多いと見える
ならば――刑牲逸返
戦場内の何処に居ようが構いはせん、敵であるなら全てが的だ
投擲時には腕を引いたり上げる等の予備動作があろう
其の起点を狙い、叩き落して手鞠を砕くと同時、
次を掴ませず、移動も叶わぬよう腕と脚も潰してくれる
有象無象に時間を掛ける心算は無い
城への進行方向を中心に放射状に攻撃を加えて強引にでも道を開け
速やかに城へと向かうとしよう
疾く潰えろ――
捻じ曲がった信仰に齎される平和なぞ、歪んだものにしかならん
かの男の最期は憐れであった。
然し同情には値せぬ男でもあった。
「延々と無駄な足掻きをし続けた挙句に、此の顛末。笑えぬ話だ」
喊聲の怒涛の奧に据わる『魔空原城』に、先に見た|予兆《ヴィジョン》を重ねる。
クルセイダーの肉体を乗っ取った清明は、曰く「興が乗った」そうだが、|悪戯《たわむれ》に魔軍将ゾンビを拵え、島原一揆軍をゾンビ化するなど、余興にもならぬと鷲生・嵯泉(烈志・f05845)はぴしゃり。
「畢竟、此方の成すべき爲事に變わりは無し――今度こそ終いにしてくれる」
クルセイダーが清明に變わった処で、刃は、決意は搖るがぬ。
どろどろと迫る狂熱の渦に昏闇の軍裝を翻した劍士は、靴底に大地を踏み締めるや、腰を落として抜刀した。
「成る程、数だけは多いと見える。ならば――|刑牲逸返《ケイセイイッペン》」
薄く開いた佳脣から、呼吸と共に滑る破魔の氣が全身を包み、刀身を白光させる。
鞘より暴かれた沸の美しき刃が延伸し、鞭の如く撓りを帯びた瞬間、膂力いっぱい振り抜かれた『秋水』が灼輝して戰場を疾った。
「軍の庭の何處に居ようが構いはせん。敵であるなら全てが的――亂れ搏ってすら|命中《あた》る」
『な、ン――ッ!!』
手毬を投擲せんと振り被った刹那、島原一揆軍の兵達が腕ごと手毬を消失させる。
腕だけでは無い。遠投しようと踏み込んだ脚は抉るような斬撃波によって寸斷され、而して遁げる事も叶わず、徒に與えられた強靭な生命力によって、死にさえ辿り着けず|蹲踞《つくば》った。
「有象無象に時間を掛ける|心算《つもり》は無い」
『くっ、お嗚嗚をを……!!』
「退かぬなら、道を開いて押し通るまで」
隻眼の劍士は柘榴の如き緋の虹彩を烱々と、攻撃時、投擲する際に必ずある“予備動作”を見切り、時を被せるように亂撃を放つ。鞭状に伸びた白刃の射程は四里半を超え、三万七千の戰力をほぼ網羅した。
「疾く潰えろ――この戰いに大儀は無い」
不死者となって戰い抜いたとて、彼等が熱望する“Paraíso”には至るまい。
既に十字架を掲げる戰いではなくなったと、返す刀にもう一閃、進行方向へ放射状に鞭撃を放ち「道」を切り開いた嵯泉は、此度は如何に千切れても斃れぬ者達の“不死の事象”を反転させ、「正しき死」を置いて進む。
「捻じ曲がった信仰に齎される平和なぞ、歪んだものにしかならん」
『……ォ……ォォヲ……ッ』
「その歪みを置いた者の始末は預ろう」
すれ違い際にそう言を置き、男は速やかに城へ向かった。
大成功
🔵🔵🔵
ピオニー・アルムガルト
声高に不平不満を言ってるけど、島原一揆軍の目指す理想は何処に行き着くのかしら?
目指す頂きまでの道を示し照らさなければ、道に迷っては何も成せないわよ。世が乱れれば、お腹を空かしちゃう人も出てきちゃうし、そういうのは貴方達にとっても本望じゃないと思うのよね。
まあ、相手にも譲れない物があるんだろうし最終的にはガチンコ勝負よね!時間もないし、城門まで斧でぶっ壊しに押し通らせてもらうわよ!
自身がよく知る死者はお祖父様かしら?歴戦の戦士で厳しく優しかったけど、小言がうるさいのよね…。
戦の先陣きってくるわ!って言っとけば、さすがは我が孫、我が誉れじゃ!とか上機嫌になってくれないかしら?
目前に見る島原一揆軍は、数にして三万七千。
狂信的興奮にある彼等は声高に不平不滿を言い、喊聲の怒涛で大地を搖らすが、果して彼等の理想は何処に行き着くのだろう――。
そと小首を傾げたピオニー・アルムガルト(ランブリング・f07501)は、眼路に迫る手毬を颯と躱しつつ、大胆にも彼等の聲に耳を傾けていた。
『幕府の犬め、邪魔するな!!』
「あっこれは犬じゃなくて狼の耳なのだけれど」
『そうじゃないが!? 兎に角、我らは十字架の掲げる先、真の平和を目指すのだ!!』
「真の平和って言うけれど、目指す頂きまでの道を示し照らさなければ、道に迷っては何も成せないわよ」
口々に叫ぶ「ぱらいそ」、其が彼等の目指す理想か。
然し手毬に猟兵や民草を“蒐集”した先にある未來、ゾンビの量産化に|樂園《パライソ》があるとは思えないと、眼路に迫る一撃を鼻先に遣り過した佳人は、夜藍の髪を躍らせて言った。
「世が亂れれば、お腹を空かす人だって出てきちゃう」
『そうだ、俺達がそうだった!!』
「今まさに天下は亂れて、人々は困窮して。それは貴方達にとっても本望じゃないと思うの」
『天下の安寧を奪ったのは徳川だ!!』
故にグレイズモンキーに連なるクルセイダーを擁したのだと、彼等の“信仰”は搖るぎない。
一揆軍にも譲れぬモノがあると理解を示した佳人は、幾筋の放物線を避けざま、手斧を握って云った。
「まあ、最終的にはガチンコ勝負よね!」
『おの』
「ええ、時間もないし、押し通らせて貰うわよ!」
玉臂が振るうは『ヒッツェシュライア』。太陽の加護を受けた者に授けられた手斧。
こちらを大きく振り被り、いち、にの、さーん! で、ドォォヲヲヲンッと響めくは【|地駆ける神鳴《ドンナーヴォルフ》】!
純然たる斧撃の衝撃に手毬も兵士も吹ッ飛ばして道を開いた佳人は、|不圖《ふと》、朦々と巻き起こる砂煙の中から見知った者が輪郭を結ぶのに気付き、睫をぱちくりと瞬いた。
「――お祖父樣、かしら?」
見紛う筈も無い、彼こそアルムガルト家の中でも武勇に優れた我が祖父。
孫も知る歴戰の戰士で、嚴しくも優しかった記憶があるが、少々お小言がうるさかったとは祕密の話。
蓋し思い出に耽るより、己と共に居てくれるのかと勇気を得たピオニーは、ぎゅっと拳を握って咲んで見せた。
「戰の先陣きってくるわ!」
『さすがは我が孫、我が誉れじゃ! 征くが佳い!!』
この孫にしてこの祖父よ。
特に精神的な枷は無し、寧ろ上機嫌な祖父に送り出されて凛然を得たピオニーは、兩手斧でどっかんどっかん軍勢をやっつけながら、元気に魔城に入るのだった。
大成功
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矢来・夕立
オレはどっちかというと|反乱する《あっち》側ですが。
しかし先方の行動って信仰ベースなんですよね。報われない前提で行うもの。つまるところ時間の無駄。気は合いそうにありません。
それにオレは鞠遊びより折り紙の方が好きです。
【紙技・真奇廊】。『当たったら吸い込まれる手毬』に対して『当たったら吸い込まれる折り紙箱』をぶつけたら対消滅しません?
一瞬の時間稼ぎにしかならないかもですが。
でもあの鞠、一応オブリビオンですよね。なんかフツーに道具みたいに投げられてますけど。それで吸い込めなかったとしても、一度ぶつかってオレから軌道は逸れると思います。
…ホントにめんどくさいな。斬れば吸われるんだろうし。魔術や呪術でも使えないとその場凌ぎにしかなりませんね。式紙を使ってとっとと上へ行きます。
まあ、うっかり吸われちゃっても死ぬわけではないようですが。
望みの叶った世界って、例えば死んだ友達が生きてるとか。いなくなったひとが居るとか。そういうのでしょう。頑張って避けます。ソロだとなかなか抜け出しづらいんで。
少々めんどうくさい案件かもしれぬと、喊聲の怒涛を前に|溜息《といき》が零れる。
討ち取る大将首が、クルセイダーから清明に變わったからか。――否、「器」の中身が誰になろうと刃を突き立てる事には變わらぬと、交睫ひとつして前方の大軍勢を見た矢来・夕立(影・f14904)は、先の溜息を音吐に示した。
「オレはどっちかというと|反乱する《あっち》側なんですが」
まさか騷擾を抑える側だとは皮肉が利いている。
目下、『魔空原城』より溢れる島原一揆軍は、曰く“興が乗った”清明によって不死化されており、頭や腕が捥げた処で死なぬ狂戰士となっているらしい。
『ウソつき幕府に從うお前達もウソつきだ!!』
『徳川を滅ぼさない限り、平和は、ぱらいそは訪れない!!』
旗幟の代わり十字架を掲げて吶喊する大群を、硝子を隔てた|眞緋《あけ》の瞳に映した夕立は、鴇色の花脣に淡然を滑らせて隔絶を示す。
「――先方の行動って信仰ベースなんですよね。報われない前提で行うもの。詰まるところ時間の無駄」
聽覺は鋭く、連中が高々と叫ぶ聲に「ぱらいそ」なる語を拾っている。
信仰を歪められ、不死の躰を與えられ。それでも|樂園《ぱらいそ》を目指す彼等を見た夕立は、己はこれほど殊勝にはなれぬと、黑手袋に包んだ繊指で眼鏡を押し上げ、連中との間に疆界を置いた。
畢竟、反乱軍と同じ景色は見られまい。
――なれば。
「どうも気が合いそうにありませんね。矢張り、この|方向《むき》で合っているようです」
言うや狂熱の波濤に向かって踵を蹴り、進路は眞直ぐ正面突破。
この時、猟兵めがけて一斉に擲げられる手毬が、蒼穹に無数の放物線を描くのを見た彼は、手を|懷裡《ふところ》へ――小さく折り畳んだ千代紙に息を吹き掛けるや、立方体に膨らませた其をポンと彈ませた。
「――それに、オレは鞠遊びより折り紙の方が好きなんで」
實に便利なのだと、折り紙付きで放たれたのは【|紙技《カミワザ》・|真奇廊《シンキロウ》】。
夕立の手を離れるや、ふうわと風に舞った匣型の折り紙は、手毬と斜線を結ぶや互いに輪郭を溶かし始めた。
『んンッ!? 手毬が消え……んんン!?』
「この『当たったら吸い込まれる手毬』と『当たったら吸い込まれる箱』、ぶつかったらどうなると思います?」
『あっあっ……俺達の武器が……!!』
「双方に吸い込んで、喰い合ったようです」
喫驚する一揆軍が見るは、“Pair annihilation”――即ちユーベルコードの対消滅。
連中がフツーに道具のように擲げている手毬もオブリビオンにて、全き同じ性質を持つユーベルコードを合わせば、互いに吸い込み合って消滅するか、少なくとも命中の軌道からは逸れようと、夕立は幾許にも冷靜。
「相性が良すぎたか判然りません」
手毬は諸有る願望を投影した理想郷を見せて、箱型の折り紙はいつか見た街に似た何處かの星景を見せて――。
己が理想が星の迷宮と溶け合って消えるのを暫し瞥た夕立は、而して視線を地上に戻すと、武器を失って無力化した兵士達が逃げ惑う中、手毬を持った新たな軍勢が己を囲繞するのを見て、くしゃり、蘭麝の髪を搔き上げた。
「……ホントにめんどくさいな」
當初に過った直感の通りとは咽喉の奥に祕める。
この紙技も一瞬二瞬の時間稼ぎ――斬撃に斷とうとも刃が觸れれば吸われるし、魔術や呪術でも使わぬ限り、その場凌ぎにしかなるまいと花脣を結んだ夕立は、再び繊手を懷に、今度は式紙を呼んで上に向かった。
『ッッ、追え!! 追えーッ!!』
『彼奴を“蒐集”して、総大将に奉じるのだ!!』
清明の傀儡となった一揆軍が執拗に手毬を投げ付けるが、万一にも吸い込まれたとして「死ぬ」訳では無い。
抵抗すれば理想郷の虜となる事も無し、敢えて捕われる事で城内に侵入し、首魁に近付く大胆も出來たか知れぬが、己が全ての理想を叶えた空間に招かれる事が何より面倒で煩わしい。
次々と擲げられる手毬を|眼眦《めじり》に遣り過して駆けた夕立は、ほつり、一陣の風に科白を置き去り、
「望みの叶った世界って、譬えば死んだ友達が生きてるとか。いなくなったひとが居るとか。そういうのでしょう」
噫、頑張って避けようと思う。
見渡す限り敵、敵、敵。單身で抜け出すのは中々に骨だと、またひとつ迫る擲撃を半身を捻って躱した夕立は、眼路の端へと流れていく手毬と靜かに訣別し、視線を眞直ぐ――『魔空原城』を目指すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『軍神『上杉謙信』』
|
POW : 毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 毘沙門刀車懸かり
対象の攻撃を軽減する【回転する12本の『毘沙門刀』】に変身しつつ、【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
イラスト:色
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
島原一揆軍の戰力は三万七千。手毬の数はもっと多かったろう。
殺伐たる軍の庭、蒼穹を覆い尽す放物線を掻い潜った猟兵たちは、その勢いの儘、大地に繋がれた『魔空原城』へと侵入を果したが、城内には其を“想定していた”武将が待ち構えていた。
「――流石はグリモアの予知を得た者達。見事だ」
天守二階、武者溜にて猟兵を迎えたのは、軍神「上杉謙信」。
自我無きゾンビの肉体を瞬く間に奪い、「魔軍将ゾンビ」として復活を遂げた強者だ。
クルセイダーの器を奪った安倍晴明は、自身の尖兵である「生殖型ゾンビ」に、魔軍将を憑装させる「超・魔軍転生」を使用し、己を守護させるべく彼を配置したようだが、清明は更にこれを“量産化”しようと考えている。
而して精鋭と相見えた上杉謙信は、直ぐに十二本の毘沙門刀を躍らせて敵意を示した。
「あれだけの軍勢を突破した者達にて、私も一切の油断はすまい。最初から全力で挑もう」
いま再び受肉した男は、嘗て「軍神」と呼ばれた時と同等の力と理性を取り戻している。
決して侮る相手で無しと、拇指球を踏み込んで構えた謙信は、片腕を頭上に振り翳して言った。
「私の名は上杉謙信。グリモアを、【Q】を知る者。――猟兵を食い止めるに最良の私が、お相手致そう」
而して、目下。
十二の鋭鋩が綺羅と躍った。
鹿村・トーゴ
下っ端忍びには荷が勝ちすぎるねェ
軍神と謳われるお人だ
オレ程度が策を弄する意味も無し
なら羅刹らしく此度は真っ向力勝負を挑む
さて始めよう
UCで全強化
右腕を黒曜石で覆い鉤爪状に変化
代償流血は目に入れぬ為額に布の猫目雲霧を巻き対処
回転する刃は【野生の勘と激痛耐性】で躱し凌ぐ
手裏剣数枚【念動力で投擲】刃に当て軌道を逸らし剣速妨害
同時に懐へ駆け【追跡】羅刹の膂力任せに剣をへし折る勢いで鉤爪で撃ち込み二の手は左手のクナイで
剣なら叩き割る
人の姿なら斬り上げ蹴りつけ
血と念動を染ませた猫目雲霧を槍化し【串刺し】
剣なら【武器受け】で弾き布化し巻き付け床に叩き付ける
速さと体力で隙あらば一撃離脱し攻撃【暗殺】
アドリブ可
常は飴売りとして郷々を渡り歩く鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、謂わば民草に紛れた草の一本。
戰國の世に燦然と輝いた巨星が、端から|抜刀《ぬきみ》で草を狩りに來ようかと、喫驚に開いた佳脣から少々の皮肉が零れた。
「――ハ、下っ端忍びには荷が勝ちすぎるねェ」
『謙遜を。私は|買冠《かいかぶ》りはせぬ』
「だろうな。何せ“軍神”と謳われる|御仁《おひと》だ」
生ける屍に宿るは、魔軍将『上杉謙信』。猟兵を討つに最良の駒。
信玄を【Q】に阻み、信長の野望を打ち砕いた猟兵を滅ぼすに、今の抜刀は正しいと英気漲る威容に正對した彼は、草では居られぬと殺氣を迸った。
「背伸びしてでも向き合わねーと」
而して見せるは羅刹の|表情《かお》。
エンパイアに生きる戰鬪狂、黑耀の鬼の血を滾らせたトーゴは、六尺手拭『猫目雲霧』を額に巻くや、肌膚に刻める羅刹紋を赭々と、右腕を黒曜石で覆って鉤爪状に變化させた。
「始めよう。眞向勝負だ」
先刻は針に蜂靈を降した彼は、此度【降魔化身法】に以て己に化生を降し、殺戮を唆す呪縛、血腥い流血、灼けつく毒の痛みに蝕まれながら鬼神と化す。
而して|向方《むこう》も心得たものだ。
『――いざ』
謙信が怜悧に囁いた瞬間、その躯は輪郭を解いて十二の刀に――嘗て川中島で見せた車懸之陣、その渦動循環戰法を毘沙門刀で再現せんと躍り掛かる。
(「彈くか、逸らすか、躱すか。或いは受けて堪えるか」)
属性を違えた十二の鋩、其の一つ一つに対処するのは至難の業だが、これを「勘」でやってのけるのが今のトーゴ。
高速旋回する刀がハッキリと見えると烱瞳を研ぎ澄ませた彼は、数枚の手裏劍を念動力で擲げつけて軌跡を逸らし、|可蘭《カラン》ッと刀が床に轉がった瞬間、眼路に迫るもう一振りを右の怪腕で払い落とす。
『だが残る十本は』
「凌いで見せるさ」
極限状態にある兩者が、果して言で語ったか思念を読んだか判然らない。
唯だ、彼の強さを見極めるように急旋回した謙信は、腿に突き立てられた一刃をその儘、力任せに圧し折るトーゴに感嘆を覺えたのは事実。
「刀の儘なら叩き割るし、人型に戻れば斬り上げる。それだけだ」
方法は幾らでもあるとは、激痛に犯されながらも小気味佳い嗤笑。
身に染む呪縛が「|殲《コロ》セ」「|戮《コロ》セ」と煽る中、トーゴは血と念動を染ませた手拭を烈風に戰がせるや布棒に、間もなく迫る刀を絡め取って床に叩き付けた。
『ッ、ッッ――!!』
毘沙門刀に變じたとて痛撃は遁れられず、身を砕かれた謙信は激痛を叫んだか。
なれば「あと七回だ」と、血を浴びて愈々気魄を灼え上がらせた羅刹が、赫々しく嗤った。
大成功
🔵🔵🔵
ピオニー・アルムガルト
とりあえず斧を振り回した勢いのままに来ちゃったけど、なんか強そうな人がいるわね!
とりあえずお互いの名を名乗っておきましょうか!
刀が12本とか卑怯じゃないかしら!?こちらは斧が1本なのに。手数で負けるなら、パワーで押していくわ!
世を乱す行為は絶対ダメ!みんな笑顔な方がいいんだから。
軍神さんの義はどこにあるのかしら?
最初から全力?私はいつも全力よ!
島原一揆軍をどっかんどっかん切り崩して魔空原城に至ったピオニー・アルムガルト(ランブリング・f07501)は、城内に入りてもどっかんどっかん、建物に悲鳴を叫ばせながら武者溜に至る。
而して斧が暴れる勢いのまま來ちゃった元気の塊は、精鋭の到來を待ち構えていた智将と邂逅するや、パッと花顏に|微咲《えみ》を広げた。
「――あなた、なんだか強そうね! とりあえずお互いに名乗っておきましょうか!」
『とりあえず』
「私はピオニー・アルムガルト! 先刻はお祖父樣に会った事もあって、この名を告げる事を誇らしく思うわ」
到達一秒で会話の主導権を握る、この度胸。
この場を預る主に先駆けて名乗る胆力に|喫驚《おどろ》かされるが、同時に其の|淸爽《すがすが》しさに快哉を覺えた男は、雪華の如き麗顏を澄まして名乗った。
『私は魔軍将が一人、上杉謙信。これより先には通さぬ』
言って、月白の陣羽織を炎の赫光や稲妻の灼光に輝かせる。
この時、麗人の周囲に躍るは、十二本の『毘沙門刀』。属性を違えた靈刀が敵対者に刀鋩を結べば、ピオニーは己の手元と交互に見て、瞳を皿のようにした。
「待って刀が十二本とか卑怯じゃないかしら!? こちらは斧が一本なのに」
『車懸之陣の強味は、間隙無き渦動の循環。信玄を【Q】で阻み、信長を滅ぼした猛者を討つに相應の戰術である』
「多いわよーっ!」
強敵にはこれくらいが妥當と、十二本の刀を代わる代わる取って攻め掛かる謙信。
ピオニーはこれに反駁を示しつつも、斧筋や斧刃に彈き返し、また柄に受け止めて持ち堪えると、兩脚をグッと踏み込んで力を溜めた。
「ッ、魔軍将ゾンビなんて、あなた自身が望んだ事か理解らないけれど! 世を亂す行爲は絶対ダメ!」
『!! 私の太刀筋を……』
「みんな笑顏な方がいいんだから」
斬り、払い、突きと、多彩に閃く十二の劍筋を読むは、歴戰で磨かれた野生の勘。
致命傷でない斬撃は頬に掠めて遣り過ごす、ギリギリの判斷をやってのけたピオニーは、手数で負けるならパワーで押さんと、拇指球を蹴って迫る――!
「ねぇ、軍神さん。あなたの『義』は何處にあるのかしら?」
滿月のように輝く金瞳が肉薄し、美し虹彩に智将を映す。
嘗てこの者も一門の名に愧じぬ生き方を、義を貫いたろうと、鏡のように今の謙信を映したピオニーは、兩の繊手を大きく振り被り、柳腰を捻って溜めた力を水平に、巨樹を薙ぎ倒すような勢いで斧を衝き入れたッ!
『ッッ、ッ!!』
間隙無き刃の舞踏が、一瞬、時を止める。
嘗て抱いた“義の心”がそうさせたか判らないが、かの軍神は十二の斬撃を全て受け取る覺悟で振り切られた斧に隙を許した。
「最初から全力? 私はいつも全力よ!」
春・夏・秋・冬! 序・破・急!!
いつ何時も全力を振り絞る、其こそ我が義であると閃いた【|地駆ける神鳴《ドンナーヴォルフ》】は、超弩級の斧撃で謙信を吹ッ飛ばし、武者溜の壁にドォォヲヲヲンッ!! と、不死を得た躯を強く強く叩き付けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
魔軍転生で降ろされた側
上杉殿の望みではないのかもしれぬが
貴方程の強敵を量産し、晴明の手駒になど勘弁願いたいんですよね
手数の多く一人では何撃かまでは見切ろうと
捌ききれない
瓜江
踏ん張りどころだ
気合い入れていこう
共に狙いを定めさせぬ為残像使ったフェイント用いつつ駆け翻弄
刃をまともに受けぬよう見切り
破魔の力乗せた薙ぎ払いで、弾き
瓜江は刀を横から蹴撃仕掛け捌こうと
避け切れるとは思ってないが
負傷したら活用しないとなと
血を使い瓜江の封を解き、風刃纏う姿へと
中距離から放つ鎌鼬で援護してもらい
隙を見出せたなら、逃さぬよう
踏み込み、斬る
あなたは、おひとりで充分ですよ
屍人に宿るなど、摂理を覆さず…
終わりにしましょう
軍神『上杉謙信』が猟兵を侮らぬのと同樣、猟兵も彼を認めている。
嘗て彼は真田神十郎に、此度は安倍晴明に喚び召された訳だが、越後の龍が「駒」と扱われるべき武将でないとは、戰國の世に燦爛と輝いた彼を知る冴島・類(公孫樹・f13398)が嗟嘆を祕めて告ぐ。
「上杉殿。貴方程の強敵が量産され、晴明の手駒と使われるなど勘弁願い|度《たく》」
今の状況を、謙信が望んだかは判然らない。
炎熱、閃雷、氷雪と、属性を違えた十二本の刀を次々と握っては突き立てる軍神の正面、逆手に握れる短刀に劍筋を手折りながら類が呼び掛ければ、智将は烱瞳に光を湛えて言を返した。
『謙遜を。エンパイアを不死の魔軍将で滿たさねば、興じられぬようにしたのは猟兵の方』
「我々が地獄を招いたと」
『或は』
噫、智者は斯くも涼しげに虚實を|囁《つつや》く。
謙信が「識る者」である限り、本音は言うまいと花脣を引き結んだ|宿神《かれ》は、愈々苛烈に迫る十二の鋩を幾つか彈き、幾つかに流血を許すと、ぬうらり滑る繊指に絲を操るや相棒を鼓した。
「瓜江。今が踏ん張り処だ。氣合を入れていこう」
何撃かは見切り、何撃かは躱して。捌ききれぬ斬撃は、頼れる者に任せよう。
肌膚に大小の裂傷を許した類が鮮血に濡れる絲を繰れば、主人と結ばれた絡繰人形は神速の機動で側面に回り込み、類に結ばれた射線を手折るよう蹴撃を閃かせる。血を流さぬ者を斬っても面白くあるまいと、瓜江が裂かせるは己の残像のみ。
而して、受肉したが故に血を流す類も中々の策士。
目下、眉間に迫る鋭鋩を破魔の刃に往なした彼は、軌道の逸れた炎刃が肩口を掠める間に口角を持ち上げた。
「|貴殿《あなた》の劍技を全て避け切れるとは思ってません。唯だ、これだけ負傷したなら“活用”しないと」
『活用……?』
創痍から滴る鮮血を代償に覺醒させるは【|風巻《シマキ》】――荒れ狂う鎌鼬。
相棒の奧に隱した“魔力の憑代”の封印を解いた類は、瓜江に風を降して風刃の塊に、彼を中心に烈風の渦動を起こして毘沙門刀を巻き込んでいく。
『ッ、まるで“逆車懸かり”の如き……!!』
続々と渦中に引き込まれては身を砕いていく毘沙門刀に、謙信は慥かに驚愕したろう。
その隙を見逃さず踏み込んだ類は、新たなる風を紡いで『枯れ尾花』の組紐飾りを搖らす。
「あなたは、おひとりで充分ですよ」
(『間に、合わ……!!』)
「屍人に宿るなど、摂理を覆さず……畢りにしましょう」
『くっ、――ッ!!』
颯ッと吹き抜ける淸風を擦り抜ける佳聲は、宛ら冬枯。
穩やかにも幽寂の染む音色が、赫々と躍る血斑に濡れた。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
名を名乗られたのでこちらも真正面から戦います!
相手は軍神といわれた方。油断は一切できません。
私の剣技がどれだけ通用するか…楽しみです。
腰を低く構え目を閉じ精神を統一しつつ準備を行います。
リミッターを解除した後に限界突破で身体機能の上昇を。
『兼元』の一振りに鎧砕きと鎧防御無視に重量攻撃を。
「…私…の名前…浅間…墨…です。参…ます…」
鯉口を切り駆けつつ相手の懐で潜るように更に身体を沈めます。
身体を沈めてから【黄泉送り『彼岸花』】の斬撃を繰り出します。
私の一撃は防御を考えず相手を受けた刀ごと断つ気で放ちます。
そうしなければ私の腕では太刀打ちできないと思いますから。
ロベルタさんとの連携は必須なのですが斬り合いでは負けません。
攻撃は見切りと第六感と野生の勘で回避と動作を見極めますね。
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
「おー♪ 軍神かっこいいじぇ~。刀が浮いてる!!」
封印を解いた後にパフォーマンスと限界突破で身体強化だじぇ。
それから鎧砕きと鎧防御無視に重量攻撃を脚に籠めて準備完了。
【魔女の一撃】で墨ねーの一騎打ちのフォローをするじぇ♪
墨ねーがミスするとは思えないけど斬られないようにしないとね。
「ロベルタ・ヴェルディアナ、いくじぇ!」
名乗るのは墨ねーだけで十分かなって思ったけど僕もしておくねぃ。
墨ねーが仕掛けた直後に一緒にダッシュして謙信のにーちゃんへ。
謙信にーちゃんの武器で墨ねーが斬られる前に僕の蹴りで攻撃を。
2回攻撃と早業のクイックドローに零距離射撃で直ぐに二度目を。
謙信にーちゃんの斬撃は早いから互角…かもしれないねぃ?
墨ねーの邪魔をしないように注意しながら連携と協力するじぇ。
「…墨ねーは、斬らせてあげないじぇ…!」
『私は魔軍将が一人、上杉謙信。グリモアを、【Q】を知る者として、今ここで食い止める』
武者溜に凛乎と澄み渡る、冷艶のバリトン。
佳聲の主、屍を器に復活した『上杉謙信』は、清明クルセイダーの討滅に向かう猟兵を必ず我が手で討ち取らんと、正々堂々、名を名乗る。
その覺悟は、|武士《サムライ》の魂を識る者に聢と伝わろう。
敵方も此度が天王山と理解っているのだと、殺氣漲る板間へ進んだ浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、深呼吸ひとつ、而して閉していた花脣の結びを解いた。
「……私…の名前……浅間……墨……です」
『――浅間と』
|繊細《かぼそ》く擦り抜ける、それでも意志に滿ちた|聲色《こえ》。
その透徹たる美々しさに謙信より耳を寄せたのは、彼女の佳聲を誰より近くで聽くロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)その人だった。
「僕はロベルタ・ヴェルディアナ! 謙信にーちゃん、一戰よろしくねい♪」
これは墨の眞似っこ。
漂う雰囲気的に、此度は墨を|主役《メイン》に据えた劍劇になるかと思われたが、名乗らずして此の場に居るのは義に悖ると、少女はもっともっと空気を読んでいる。えらいっ。
而して二人の名乗りを聽いた謙信は、烱瞳に光を湛えて云った。
『成程、浅間と、ろべるた……見た目は花のような乙女だが、信玄を【Q】で阻み、エンパイアウォーを制した猟兵なら油斷はせぬ。全力で挑もう』
己もまた敗れた過去があると、軍神は挑戰者たる気構え。故に驕らぬ、侮らぬ。
我が殺氣にヒラと裾を躍らせる陣羽織、その雪白の生地に刀光を――属性を違えて炎々、閃々と耀う『毘沙門刀』を躍らせた謙信は、嘗て戰國の世に燦然と煌いた巨星として、堂々と立ち開かった。
「おー♪ 軍神かっこいいじぇ~。刀が浮いてる!!」
これに喜んだのは、ロベルタ。一縷と恐れぬ胆力よ。
焔に、稲妻に、冷気に……樣々な霊力を宿す十二本の刀を見た少女は、|軍《いくさ》の神とは斯くの如きかと瞳を輝かせる。
蓋し同じく英姿を見る墨も中々の肝の据わり樣で、
(「この気魄、この劍圧……私の劍技が、どれだけ通用するか……樂しみです……」)
決戰に相應しい強敵を前に、ゾクリ、武者震いする。
然し血が騷ぐのは敵方も同じか――武才と知略に長けた軍神は、水を打ったような靜けさで芙蓉二花を見つめると、薄く開いた紅脣より細く息を吐きながら打って出た。
「――いざ」
すらりと伸びた長躯ごと叩き付けるように突進した謙信が繰り出すは、【毘沙門刀連斬】――十二の劍閃。
其々に属性を帯びた刀劍が二人めがけて渦を巻きながら斬撃を突き入れる、まるで川中島で披見された「車懸之陣」を見るような連続攻撃が、謙信本人の劍技によって猛威を振るう。
『十二の劍が常に標的に向かって斬り掛かる……毘沙門刀による渦動循環戰法を受けてみよ!』
「……っ……兼元……」
十二本の冱刀を代わる代わる握りながら、旋風の如き勢いで攻める謙信に對し、墨は判斷を迷わない。
腰を深く落として下半身の粘りを保った彼女は、五感を鋭く斬撃を見切り、雪膚に迫る劍圧を細かに読みながら愛刀『真柄斬兼元』の切先に劍閃を往なし、或いは手折る。防禦に鞘を使うのも、臨機応變なる選択の一だ。
「……墨ねーは、斬らせてあげないじぇ……!」
而して今日はロベルタも精一杯、意地悪になろう。
大事な相棒、墨への創痍は決して許さないと疾風を纏った少女は、毘沙門刀の大亂舞に蹴撃を合わせて蹴り彈くと、赫炎や凍氣が影響を及ぼすより迅速く、二撃目に踵――! 刀身を叩くように蹴り落とす。
目下、雪嶺の鼻梁をギリギリに掠める炎熱や凍風が、ロベルタを集中の|極限《はて》へと没入させていった。
「……ロベルタさん……」
「う! へーきへーき♪」
限りなく凝縮された時の中で、一瞬、視線を結び合う。
お互いに身体能力を強化しておいて正解だったと安堵の表情を交した二人は、この速度、この疆界を超えていこうと首肯を揃えるや、語らずして呼吸を合わせた。
「參り……す……」
先駆けたのは墨。
防禦を棄てねば、己が腕では太刀打ち出來ないと、一度『兼元』を鞘に戻した佳人は、凄まじい劍圧が迫るほど腰を低く、鯉口を切るや摺足で一気に敵懷へ――多少の刃撃を受け取りながら駆ける。
「……斬り合……では……ません……」
迫る刃撃のそれ以上を繰り出すのみだと、眼路に迫る幾条の太刀筋ごと斬らん勢いで放つは、黄泉送り『彼岸花』。
感性鋭く森羅万象を斷つ斬撃をイメージとして膨らませた墨は、想像が現実となるよう究極の斬撃を創造する。
「散れ……」
言は短く、聲は繊細く、而して事象はさやかに。
刃鳴一閃して放たれた斬撃は、墨に迫る幾本の毘沙門刀を硝子の如く兩斷し、更には謙信自身にも鮮血を躍らせた!
『莫迦な……毘沙門刀が……!!』
「ね! 墨ねーってすごいんだじぇ~?」
えっへん、と誇りながら次撃を預ったのはロベルタ。
墨が祕劍を暴く瞬間を援けたなら、彼女が致命打を與えた次の瞬間も預るのが相棒の役目か。心得たとばかり駆けた少女は、謙信が体勢を崩した隙を狙って【|魔女の一撃《コルポ・デッラ・ストレーガ》】ッ!
「Un duro colpo! 僕の強烈な一撃も貰って欲しいんだじぇ♪」
『ッ――!! くっ嗚呼ッ!!』
繊麗の躯まるごとバネにしたような、戰弩の如き蹴撃が連続で閃き、謙信を大きく突き飛ばして板間に叩き付ける。
「やたっ♪」
「……お見事、……す……」
謙信の素早い斬撃が互角に持ち込む処、其を上回ったのは、偏に二人の連携が巧みだったからに違いない。
かの長躯が折り曲がる程の衝撃を突き入れたロベルタは、宙空を何度か蹴るようにして着地すると、その風に蘭麝の髪を梳った墨が繊手を添えて相棒を迎え、ぱちん、と可愛らしいタッチをして喜び合うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
篝・倫太郎
量産ってことは、賄い切れなきゃ
殺して『器』用意するんだろーなぁ
はー、ヤダヤダ
てめぇが【Q】を知ってると嘯こうが知ったこっちゃねぇンだ
ただ、もう一回骸の海に還ンな
拘束術使用
謙信が、使役する刀が、攻撃範囲に入った時点で攻撃して拘束
拘束が不可能でも鎖で弾くことくらいは出来るし
謙信にかんしちゃ、『動ける範囲』を制限出来りゃ僥倖ってな
拘束と同時にダッシュで接近
衝撃波と鎧砕きを乗せた華焔刀でのなぎ払い
刃先返して2回攻撃
攻撃に関しては見切り第六感を使って残像とフェイントで回避
回避不能時はオーラ防御とジャストガードで防いでカウンター
自由にさせないよう拘束術を適時重ね掛け
俺がてめぇを還せなくたっていいのさ、謙信
これまで幾度と猟書家を打ち破ってきた猛者は知っている。
連中がクルセイダーの名の元に使う「超・魔軍転生」は奇跡を生む魔法で無し、必ず「器」を必要とするのだ。
「――魔軍将を“量産”するって事は、賄い切れなきゃ、殺してまで『器』を用意するんだろーなぁ」
エンパイアに魔軍将ゾンビが跋扈する分だけ、連中に「器」として使われる「命」が減る――。
其を滑稽だの無樣だの、よくも興じて呉れると、繊指を櫛にクシャリと艶髪を搔いた篝・倫太郎(|災禍狩り《厄を狩り還す者》・f07291)は、冷めた|眼光《めつき》で云った。
「はー、ヤダヤダ」
奇人狂人の心に寄り添うのは骨が折れる。故に溜息して袂別する。
無造作に髪を搔き上げた掌を宙で泳がせた彼は、その指先を正面に、進路を塞いで立つ軍神『上杉謙信』をシッシッと払って見せた。
「てめぇがグリモアや【Q】を知ってると嘯こうが、知ったこっちゃねぇンだ」
『私では止められぬと』
「噫、もう一回骸の海に還ンな。信玄も其處に居ンだろ」
エンパイアウォー然り、真田神十郎との戰い然り、軍神の還る場所は一つ。
蓋し彼も骸の海より涌き出た“災禍”にて、己が帰すべしと華焔刀 [ 凪 ]を脇抱えに構えた戰禰宜は、逆の手に破魔の氣を滿たすと、不可視の縛鎖として解き放った。
「戰國の世に輝いた綺羅星も、時を間違えれば凶星さ」
『!! 毘沙門刀を止めるか』
「刀だけじゃない。てめぇも巻き添えを喰らって貰うぜ」
倫太郎が【拘束術】で縛せる範囲は半径133m圏内。これは武者溜の全てを網羅する。
唯、凄まじい靈力を迸る刀が十二本、更に遣い手の謙信を制するには相當な神力が必要だが、敵方が抗う前にと板間を蹴った倫太郎は、華焔刀の美しき刃紋を閃々と、衝撃波を放って毘沙門刀を振り払った。
「刀身に対して眞橫から攻めるのが|定石《セオリー》だ」
『慥かに。用兵に通じる』
「余裕かよ、っ」
|可蘭《カラン》ッと音を立てて轉がる幾本を眼路に置きつつ、刃を返してもう一閃!
須臾に繰り出た刃撃は、謙信が握る黑白二對の刀が拒んだが、兩者はギリギリと鍔迫合しながら鋭眼を結び合う。
刃を嚙み合せた対面には、軍神の烱々と光れる靑瞳に“意志”を読み取れたが、其に應える訳には往かぬと膂力いっぱい突き放した倫太郎は、再び縛鎖を放って時を|鹵掠《うば》った。
「俺がてめぇを還せなくたっていいのさ、謙信」
『ッ、ッッ――!!』
「俺が掠めた時を、預かって呉れる仲間が居る」
猟兵が持てる力は、グリモアや【Q】だけでは無い。
其を示すように口角を持ち上げた倫太郎のすぐ傍を、一陣の風が疾った。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
仮初めの魔軍将、猟書家「上杉謙信」
エンパイアウォーの時点に於いては書架の王、骸の月も猟兵は知り得なかった故に
彼の王の尖兵として暗躍しつつも織田信長の将に与していたか
儀式魔術【Q】を認知していたのは道理であったことでしょう
しかし王の後継と目される|未来見の臣民《 ハビタント 》は敗走し
秘されし禁軍猟書家達も悉く敗れ去りました
…この地のクルセイダーも過信、驕りによって|業《カルマ》に呑まれた
貴方の残滓を滅ぼし、オウガ・フォーミュラを討つことで長きに渡る乱に今一度の終焉を
◆サウザンドアーツ
早業+グラップルで切り込み
大連珠の武器受け+ジャストガードで12刀流に対抗
怪力+重量攻撃で怒涛の連鎖を抉じ開ける
倫太郎の頬を掠め、一陣の黑風が戰ぐ。
不可視の縛鎖に時を|鹵掠《うば》われた軍神の前、荒ぶる白雨と降り掛かるは戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)――彼もまた三年前の大戰、そして数々の猟書家の侵略を阻んだエンパイアの勇士だ。
「仮初めの魔軍将、猟書家『上杉謙信』。信玄が【Q】に殺され、風魔小太郎がドクター・オロチに掠められた状況下で|貴殿《あなた》方が復活を遂げたと」
(『|迅速《はや》い――!!』)
仲間から時を預って須臾、身を低く板間を滑るように足元から侵襲する|聲色《こえ》。
鋭い科白と共に迫った直蹴が謙信の脛に閃いた刹那、その場で床に掌を衝いた蔵乃祐が遠心力を活かした回し蹴りを打ち込むと、二拍ほど遅れて毘沙門刀が鋩を下に、三撃目を拒むように墜下する。
炎熱の一刀と氷雪の一刀を甘んじた蔵乃祐は、痛撃を奧齒に嚙み殺すや、吃ッと睨め据えた。
「エンパイアウォーの時点に於いて、猟兵は『書架の王』も『骸の月』も知り得ず、それ故に彼の王の尖兵として暗躍しつつも、織田信長の将に与していたか――」
『……昔話を』
「貴殿が儀式魔術【Q】を認知していたのは、|心洵《まこと》、道理であった事でしょう」
床に突き立った毘沙門刀を拳で彈き飛ばしつつ、其處から更に仕掛ける。
蛾眉ひとつ崩さず己を烱瞳に組み敷く智将めがけ、彈ッと踵を蹴るや膝頭を繰り出した蔵乃祐は、彼が身を反らして避けるのを想定した上で、宙空を舞う躯を軸に急旋回ッ! 謙信の目線の位置で背面蹴りを繰り出した!
「然し王の後継と目される|未来見の臣民《 ハビタント 》は敗走し、祕されし禁軍猟書家達も悉く敗れ去りました」
『成程、御僧は|詳細《くわし》い』
透徹と澄める靑の虹彩に果して誰を映したか、雪白の麗顏は涼しい儘。
眼路に迫る蹴撃が連れる殺氣だけを鼻梁に掠めた謙信は、片手に握れる黑刀を一揮して蔵乃祐を床に轉がすと、受身を取って距離を得た彼が継ぐ言を靜かに聽いた。
「そして。……この地のクルセイダーも、過信と|驕慢《おごり》によって|業《カルマ》に呑まれた」
『一定この世は無常が棲み処。未だ天下泰平ならぬ世に武を唱える身ならば、畢りを選べよう筈も無く』
「若しか貴殿も」
『無論』
是を示す男に見えるは覺悟。
答えるや間もなく鋭鋩を揃えた十二の刀が、一斉に己へと飛び込む瞬間を見切った傑僧は、大連珠を旋回させて之を振り払うと、板間が撓むほど踏鳴して肉薄――!
覺悟に勝る決意を以て、謙信が握れる白黑の毘沙門刀を握り潰しながら懷を抉じ開けた!
「貴方の残滓を滅ぼし、オウガ・フォーミュラを討つ事で長きに渡る亂に今一度の終焉を」
『ッ、ッッ――!!』
剛拳が閃く直前は、水を打ったような靜けさ。
而して時を止めた軍神の心窩に、決意の拳が炸裂した。
大成功
🔵🔵🔵
リューイン・ランサード
義を掲げる謙信公が、晴明の様な変態クズ野郎の悪行に付き合う謂れは無いと思います!
と青年の主張をしてみます。
戦いは避けられないだろうけど<汗>
自分の翼で空を飛んで風の属性攻撃・高速詠唱で魔法攻撃。
謙信公の攻撃に対しては、第六感で読んで、瞬間思考力・見切りで回避したり、ビームシールド盾受けで防ぐ。
オーラ防御展開。
毘沙門刀天変地異を使ってきたら、UC:アドヴェントパストで相殺。
同時に仙術で多数の分身を作って幻惑しつつ、限界突破した急降下を敢行。
2回攻撃の1回目で光の属性攻撃・高速詠唱による目くらまし。
2回目でエーテルソードによる風の属性攻撃・怪力・鎧無視攻撃で謙信公を斬ります!
どうかお帰り下さい。
品行方正、実直を尊ぶ靑年には納得出來ない事がある。
義を重んじた智将として戰國の世に燦爛と輝いた巨星『上杉謙信』が、魔軍将ゾンビの量産化を謀る晴明を守るべく配下に附くなど、謙信自身が認めていようかと、目下に閃いた拳撃に|躑躅《てきちょく》する巨影に呼び掛けた。
「亂世に義を掲げた謙信公! |貴殿《あなた》が晴明の樣な変態クズ野郎の悪行に付き合う謂れは無いと思います!」
|淸爽《すがすが》しく澄み渡るテノール・バリトン。
佳聲の主はリューイン・ランサード(|波濤踏破せし若龍《でもヘタレ》・f13950)。
殺伐たる武者溜に至った若龍は、凛乎堂々、赫々しく染まる「越後の龍」に正對して云った。
『……変態クズ野郎……はは、これは酷い』
幾度と骸の海を潜った魂には、彼の主張は餘りに眩しい。
随分な言いようだと今の科白を|捺擦《なぞ》った謙信は、体勢を立て直すや片腕を振り被り、バラバラになっていた毘沙門刀を集めると、十二の鋩すべてをリューインに結んだ。
『だが|壮快《おもしろ》い。その言葉、本人に届けられるか』
「も、勿論です。隱れて悪口を云うのはいけませんから」
『ならば私を倒さねばならぬ』
「……はいっ」
(「……噫、やっぱり戰鬪は避けられないかあ……」)
目下、一斉に飛び込む靈刀に戸惑いつつ、爪先を彈いて後方に飛翔する。
|眞緋《あけ》に輝く翼を広げて天井スレスレを翔けたリューインは、『フローティング・ビームシールド』の出力を最大に、己を追跡する毘沙門刀を盾に彈き、或いは白光のオーラに包んだ躯を捻って躱す。
無論、逃げ回るだけでは無い。
彼は我が身に祕める魔力を最大まで励起させると、幾重にも風刃を繰り出し、攻守一体の戰法で軍神の連撃を阻んだ。
『――降りて來ぬなら、撃ち落とす』
属性を違えた毘沙門刀が光彩を揃えたのは、この時。
十二本の刀全てが雷光を迸って「稲妻の雨」を降らせた瞬間、リューインは雷に打たれて撃墜される筈であったが、その時は訪れず――武者溜には炎熱や氷雪を纏った刀が靜かに浮遊していた。
『!? これは如何云う――』
「世界に遍在するマナの力によって、“過去を再現”しました」
喫驚する謙信の前に齎されたのは、【アドヴェントパスト】――時の遡及。
毘沙門刀が天変地異を起こす前に遡ったリューインは、雷属性を揃えんとした靈刀に代わって澎湃と白光を迸ると、『エーテルソード』を手に急降下ッ!! 眼も眩む燦爛の中、翼の推進力を乗算した斬撃を疾らせる――!
「僕は、あのド変態に不義不徳を訴えに行きます」
『見ッえッ――!!』
「なので、|貴殿《あなた》はどうかお帰り下さい」
花脣を擦り抜けるは訣別。
而して斬撃は閃き、若龍の白皙に血の華が咲き亂れた。
大成功
🔵🔵🔵
叢雲・源次
【義煉】
(外壁を瞬時に細切れにし乱入。不意打ちの一刀を見舞いつつ)
憚りながら真打として馳せ参じた。
無論、俺とクロウ…合わせて二振り…斬れぬものなどあるまいよ
「ヤツの斬撃は俺が捌く。」
返答も聞かずに瞬転、疾駆
手数だけの攻撃であればこのまま斬って捨てるが…そうもいくまい
こちらも相応の業を以て迎え討たん
執行【七閃絶刀】
対神太刀、対神打刀を用いた二刀による十四連斬(【二回攻撃】を乗せた七閃絶刀)で車懸かりを捌き切らんとする
「軍神ならば分かるだろう?クロウが居て、俺が此処に来た。その時点で貴様は既に詰んでいるのさ」
やれ、クロウ。こちらは既に仕事を果たした
杜鬼・クロウ
【義煉】アドリブ◎
一章後、心頭滅却
…遅ェよ、源次
準備運動は万全か?(顔見ずに嗤う
ハ、上々!そうこなくっちゃァな
お前、過去に奴を相手にしたコトは…って、オイ!
ったく…(お前ならやれるだろうってか?
阿吽の呼吸
幾度と戦場を共にした相棒ならば
分かってンだよッ!
(攻撃の手数の多さと刀の威力
隙がねェ
此れが軍神か)
※初対峙
利用されてると知りながらも
再び、俺達に刃を向けるか
何度でも12刀総てを
お前を
止める
死者に未来はねェ
源次の連斬の死角を縫う様に畳み掛け
炎属性を剣に宿し、敵の刀を壊す
相性悪い属性は源次任せ
UC使用
敵が手に持つ2刀と応対
連携し素早い熱い剣戟合戦
任せろ
俺の故郷をこれ以上好き勝手にさせてたまるかよ!
兵法曰、「心戰爲上、兵戰爲下」。
昔人は「心を攻めるは上策、城を攻めるは下策」と云ったが、陰陽師『安倍晴明』の戰略は「心を攻める下策」――最も許し難い奸策で國を脅かし、興を得る。
「……やってくれるぜ」
魔空原城に至る頃には、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)の瞋恚も幾分は収まったか。
蓋し天守二階、武者溜に立ち塞がる『上杉謙信』と相見えた彼は、心頭滅却して猶も燻ぶるものがあったろう。
「――なァ軍神サン。以前は真田に、今回は清明に|使役《つか》われて、もう|顰蹙《ウンザリ》だろ」
俺だったら|疾《とっく》にキレていると、ヒラリ掌を見せて訊ねてみる。
然れば戰國の智将は翠眉も顰めず答えた。
『衆生、何一つ択んで生まれる者は無し。|終焉《おわり》も然り』
「そりゃ坊さんの達観だな」
『亂世は死場所も択べず、せめて魂を置く処で役儀を果たすのみ』
而して交す言こそ、口上に代わる宣戰布告。
互いに袂決を示せば、毘沙門刀はクロウに鋩を結び、クロウは『玄夜叉・伍輝』を構えただろうが、時にして須臾、斜陽を採る窓が凄まじい衝撃に桟を砕き、綺羅と燦めく白光一条が軍神の側面を衝いた。
「名を叢雲。憚りながら眞打として馳せ參じた」
『ッ、ッッ――!!』
対神打刀『灰ノ災厄』の劍筋に白の陣羽織を斬り裂くは、叢雲・源次(DEAD SET・f14403)。
木っ端微塵と躍る破片を連れて謙信を強襲した彼は、間もなく閃く白黑の二刀を黑鞘に受け流すと、彈ッ! と床を蹴ってクロウの傍らに着地した。
この時こそクロウは雲を晴らしたろう。
彼は品佳い鼻梁を敵に結んだ儘、小気味佳く登場した相棒に悪態を吐いた。
「……遅ェよ、源次。準備運動は万全か?」
「無論。俺とクロウ、二振りもあれば斬れぬものなどあるまいよ」
「ハ、上々! そうこなくっちゃァな」
顏も合わさず、視線も寄越さず、冷然と云ってのける源次も心得たもの。
冷靜と情熱、対極にありながら金蘭と契れる源次とクロウは、愛刀の鋩を揃って謙信に結ぶと、円を描きながら浮遊する毘沙門刀を注視しつつ言を交した。
「お前、過去に奴を相手にしたコトは? 俺は初――」
クロウが云った時だった。
「ヤツの斬撃は俺が捌く」
「って、オイ! 源次!」
返答の代わり颯然の風を置いた源次が疾駆する。
間もなく響く劍閃鏘々の音に瞠目したクロウは、相變わらずだと吐息する一方、随分と任されたものだと片眉を吊り上げる。
「ったく、お前ならやれるだろうってか? ――分かってンだよッ!」
最早、多言を交すのも野暮。
幾度と戰場を共にした相棒ならば、阿吽の呼吸で合わせられると鬪志を萌したクロウは、血烟の中で謙信と斬り結ぶ源次に続き、板間を蹴って加勢した。
「刀身も違えば間合いも異なる“二刃”で、十二の刀を散らす!」
『――成程。慥か猟兵はグリモアや【Q】以外にも厄介な力を有していた』
「連携の妙、貴樣らオブリビオンは喰らう事でしか知り得まい」
『これは痛烈な』
謙信は二人の連撃に舌を巻くが、實情、この純戰を愉しんでもいる。
己が転生した意味は有ったと咲んだ謙信は、嘗て川中島で見せた車懸之陣を毘沙門刀で再現すべく、間隙無き渦動循環戰法を二人に叩き付けたッ!
『これ程の手練、矢張り通す訳には往かぬ』
(「ッ、用兵を劍技に活かした戰法……流石と云うべきか」)
『此度の企てが下策か上策かは、歴史が証明しよう』
(「手数も多ければ、一本一本の刀の威力もあるし……何より隙がねェ! 此れが軍神か」)
劍戟に混ざる謙信の言を掠めつつ、猛攻を凌ぐ源次とクロウ。
幾度と刃撃を受け取った二人は、然し痛撃に顏を顰めず、瞥見すら結ばず、唯だ反撃の鋩だけを同じくした。
「利用されてると知りながら猶も俺達に刃を向ける。その覺悟は認めるぜ」
「貴様の覺悟に見合った業を以て、今こそ應えん」
云うや、板間が波打つほど震脚して先ずは源次が出る。
弓張月の如く冱ゆる橫顏にヒヤリと光を疾らせるは、【|七閃絶刀《ストラト・セイバー》】――対神打刀に加えて対神太刀『黒ノ混沌』を抜き放った劍鬼が神速で駆け込み、白刃一揮して七条、二刀で十四連斬を閃かせたッ!
『!! 毘沙門刀が……!!』
「軍神ならば分かるだろう? クロウが居て、俺も來た。その時点で貴樣は既に詰んでいるのさ」
この時点で源次が手折ったのは、宙空を舞う十の毘沙門刀。
残る二刀――謙信が握れる白黑二刃は、間隙や死角を埋めるようにして肉薄したクロウが始末を預った。
「やれ、クロウ。此方は既に仕事を果たした」
「任せろ」
総ての刀を、謙信を、止める――。
死者に未來は無いと、決意に滿つクロウを守護するは【|射干玉の思慕《トオキニアリテモオモウモノ》】――仄かに馨る靈氣に傷を慰められた彼は、相棒が受けた刃撃すら背負わんと炎熱を帯びると、漆黑の大魔劍に赫炎を纏って斬り掛ッた!
「俺の故郷をこれ以上好き勝手にさせてたまるかよ!」
『くッ……ッ!!』
長身のクロウの身丈に及ぶ玄夜叉は、炎を纏えば宛ら火柱。
細身の劍では捌ききれぬ大灼熱は、更に劍筋を増して烈々と、謙信が持てる二刃を熔かさんばかり火勢で攻め立て、遂に灼き折る――!
『ッ、……見事な』
車懸かり、敗れたり。
我が策の敗北を認めた謙信は、(或いは清明の策も……)と紅脣を結びつつ、がくりと膝を折った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大町・詩乃
徒手空拳にて、ぺこりと一礼。
【軍神】上杉謙信さん。
貴方の高潔な言行は私も聞き及んでおります。
その謙信さんが民草を蹂躙するのを見るのは忍びなく、
ここを通して頂けませんか?
と《慈眼乃光》も使いながらお願い。
さすがに許可は出ないでしょうが、謙信さんも毘沙門刀も天変地異も
少し弱くなるかな?
謙信さんの攻撃は、
■心眼・第六感で予測して、見切り・ダンスで舞うように回避。
■天耀鏡で盾受け
■結界術・高速詠唱で防御壁を作って防ぐ
■念動力で捕縛
を駆使して接近する。
懐に入り込んだら「人々を護る為、押し通ります。」と、
右掌を謙信さんの身体に当てて、功夫・雷の属性攻撃・衝撃波・
貫通攻撃による太極拳の発勁を打ち込みますよ。
猟兵の猛攻に膝を折った男に、新たな跫音が近付く。
楚々と歩み寄るは大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)――梳き流した黑髪を鏡の如く輝かせて現れた凄艶は、何も持たぬ手を揃えてぺこりと御辞宜した。
「嘗て『軍神』なる誉れを得た上杉謙信さん。貴方の高潔な言行は、私も聞き及んでおります」
彼が体勢を立て直すまで待つのは、誠意と敬意を示す爲。
戰國一の武将として輝いた過去まで否定はすまいと言裡に祕めた詩乃は、玻璃と澄める靑の虹彩に十二本の毘沙門刀を映しつつ、丁寧にお願いをした。
「その謙信さんが民草を蹂躙するのを見るのは忍びなく……ここを通して頂けませんか?」
云うや溢れるは【|慈眼乃光《ジガンノヒカリ》】。
慈愛に滿ちた|星眸《まなざし》を注がれた者は、心の有る無しにかかわらず女神の願いを聽き入れるが――。
『……はは、美姫の頼みは聽きたいが、私は仏に帰依した身』
「ダメですか?」
『……。…………。…………いい、いえ、いけません』
めちゃ顏を歪めて耐える軍神。
毘沙門刀の一刃を己が太腿に突き立てる、その痛撃で詩乃のおねがいに抗った謙信は、斯くも神々しい彼女を傷付けるのは忍びないと思いつつ、思いつつも、十二の鋩を一斉に天井に向けた。
『今は天地の力に頼むべきか』
其々に属性を有していた毘沙門刀が全て雷属性に、雷電を迸って天井と床を結ぶ。
はつはつと音が出るほど放電した十二の雷柱は、可ッと周囲を白ませるや篠突く雨に、【雷の驟雨】なる天変地異を捲き起こすが、詩乃はヒラリ白袖を踊らせてこれを躱した。
「――許可は出ませんでしたか。でも、私の想いは一つです」
眼路に飛び込む雷雨に向かって、再び温かく頬笑んでみせる。
然れば變異した自然現象は穩かに、まるで傘を差したように彼女を避けた。
『ッ!! 毘沙門刀が……融和しようとしている……!?』
これに焦燥した謙信は更に雨脚を強めるが、而して届く閃雷の雨滴も『天耀鏡』の鏡面に撥ね返され、また佳人を包む『桜玻璃』が雪膚を灼かせはせぬと、芳しき花馨を広げる。
『……ッ如何した、毘沙門刀……!!』
「私の想いはひとつ。人々を護る爲、押し通ります」
エンパイアの民を護るには、清明を止めねばならぬ。
その爲には――と雷柱となった毘沙門刀に繊手を差し向けた詩乃は、『不壊の指輪』より念力を放って拘束すると、雨上がりに疾駆して謙信本人に肉迫したッ!
「謙信さん。貴方の高潔は犯されるべきではありません」
『ッ、ッッ――!!』
軍神の懷にさやと爽風が吹き込んだ瞬間、その胸に掌手が添えられる。
須臾に閃くは「発勁」――佳人の体内で練り上げられた太極の氣が雷霆となり、謙信の五臓六腑を駆け疾る――!
「どうか、お譲りを」
溢れる氣に花顏を白ませた詩乃は、臓腑の捩り灼かれる音を耳に、粛々と佳聲を添えた。
大成功
🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
軍神とまで称されながら黄泉返りとは……其の銘に瑕も付こうに
しかも2度目とあっては笑えもせん
だが戦人としての業、理知を取り戻しているとなれば
小細工など通用しないだろう事は必至
なれば取るべき手段は1つ。砕き至らん――終葬烈実
視線に体捌き、切っ先の向きに重心の位置
不可視の変動とて逃さず読み取り
戦闘知識に気配感知と第六感を重ね、攻撃の起点を見切り躱し
間隙にカウンターでの攻撃を加え続ける事で
武を嗜んだものならではの拍子を崩し、全力の斬撃を叩き込む
此の手が通じる機は恐らく1度きり――だが其れで十分。決して逃さん
愚物の先兵なぞに成り果て堕ちた越後の龍よ
――知っていたか?「悪竜とは人に討たれる」べきものだ、と
鞭聲肅肅夜過河 曉見千兵擁大牙
遺恨十年磨一劍 流星光底逸長蛇
「……嘗て一瞬の爲に十数年と一劍を磨いた者が、この仕儀」
エンパイアに生まれた者なら、龍虎の死鬪を知らぬ者は居まい。
川中島の戰いに見る『上杉謙信』は、戰亂の世に燦然と煌く巨星に違いなかったが――と、或る歌を胸裏に|捺擦《なぞ》った鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は、目前に相對する男に顕然と失望を示した。
「軍神とまで称されながら黄泉返りとは……其の銘に瑕も付こうに」
『|冷嘲《わら》うか』
「|否《いいや》、二度目とあっては笑えもせん」
|武士《サムライ》は畢るも美。
無理に死屍に容れられたかは判然らないが、悪趣味極まる清明の奸策に加担するなど、『軍神』らしからぬ愚行だと聲色を低くした嵯泉は、己こそ磨き上げた一劍を揮るわんと『秋水』を抜いた。
「不死に堕ちた愚将を|帰《おく》る。砕き至らん――終葬烈実」
『――ッ』
さやと白刃を暴くや淸かな光が晃々、合わせて殺氣が|迸發《ほとばし》る。
練磨を尽せる武藝の際涯まで覺醒した嵯泉は、戰人としての業、理知を取り戻した謙信に對し、小細工無しの正劍を叩き付けるべく踏み込んだ。
「嘗て千兵は大牙を擁したが、此たび己が擁するは討ち砕く力のみ」
瞳の動きに見る狙い目から、体捌き、切先の向き、重心の位置……劍筋を予見する手立ては充分。
更には不可視の變動とて逃さぬと、隻眼の士は|眞緋《あけ》の鋭眼を烱々と、極限の集中によって刹那を幾年にする。
『|心洵《まこと》、サムライよ……ッ!!』
對する謙信は、十二本の毘沙門刀を代わる代わる握っての間隙無き連斬。
其々に属性を違えた靈刀で攻める姿は正しく流星光底、此度は討ち逃さぬと手数を増やして迎え撃つ――その劍技は「武」を嗜んだ者ならでは、見惚れるばかりの美々しさ。
蓋し嵯泉が踏み込むのも、この流れるような劍戟の旋律の只中。
(「|仮令《たとえ》“器”を變えようと、“魂”に仕込まれた拍子を――崩す」)
此の手が通じるのは、恐らく一度きり。軍神は二度と機を呉れまい。
だが其れで十分だと息を吐ききった嵯泉は、謙信一択、彼の周辺を浮遊する毘沙門刀には幾らでも血を差し出さんと駆けると、災禍を絶ち切る一刃を一条、逆袈裟に疾らせたッ!
「決して逃さん」
『ッッ返しが、追いつかぬ……!!』
目下、兩者の間に閃いた月白の劍筋が赫く染まり、|血衝《チッ》と繁噴く。
白藤の軍装束に朱々と牡丹を咲かせた謙信は、我が血を白皙に受け取った男の冱刃の如き|表情《かお》を見た。
「愚物の先兵なぞに成り果て堕ちた越後の龍よ」
――越後の龍。
創痍に沁みる科白に時を止めた軍神は、武の究極に至った男より贐を受く。
「――知っていたか? 『悪竜とは人に討たれる』べきものだ、と」
『……フ、フフ。然うか』
悪しき竜と告げられた謙信は、刃撃に震える睫を閉じ、総てを受け容れるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
矢来・夕立
そうそう。この刀が面倒だったんですよね。前はどうにも太刀打ちできなかったので盾役として誰かを頼らざるを得ませんでしたが、今はこんなこともできるようになったんですよ。
【紙技・枝絡】。
まず、紙垂で毘沙門刀を封じられないか。次に、取り上げられないか。その次はそれで斬り返せないか試してみます。
流石に軍神の刀ですから、扱うのが難しいようであれば諦めましょう。
紙垂で先方の動きをズラすだけでも幾分か戦いやすくなると思います。
《闇に紛れる》チャンスが少しでもありさえするならば、式紙での捕縛も本命の攻撃そのものも当てられる目はあるでしょう。
ところでオレ、謙信公と|戦《や》るのは三回目です。あちらはオブリビオンだったりゾンビだったりいろいろありますから、覚えていないでしょうけど。同一存在とも限らないですしね。
しかし二度あることは三度あると言いますが、仏の顔も三度までともいいます。つまり今回はギリギリセーフ
なワケないでしょうが。オレは気が長くないのでここで殺します。三度目の正直ですよ。
十二年餘に及んだ川中島の戰いに於いて、越後の龍と甲斐の虎、龍虎相搏ったのは第四次合戰の一回のみ。
かの信玄すら謙信と眞向からぶつかり合ったのは一度きりだが、この男、矢来・夕立(影・f14904)は此度の邂逅が|三度目《・・・》。前二回の戰いでは、いずれも勝利を掠めていた。
「――そうそう。この刀が面倒だったんです。あの時は誰かを頼らずして太刀打ち出來ませんでした」
決して樂な勝負では無かったと、目前に浮遊する毘沙門刀に烱瞳を結ぶ。
属性を違えて燦めく十二の鋩に、嘗て盾役を預ってくれた仲間達を重ねた夕立は、エンパイアウォーから三年超――情勢も状況も随分變わったと嘆聲を置いた。
「先の大戰では猟書家の存在を知らず、|猟兵《オレたち》はいいように振り回されてきた訳ですが、お陰で処世逞しくなりまして」
謙信の魔軍将としての肩書は仮初であったと、言外に皮肉を添える。
其は勝者の優か、否、骸の海を潜らずして生き続けた者の勇。過去二回の戰功を誇るより、顧みるものがあると懷に掌指を滑らせた夕立は、眞白の紙垂を取り出して云った。
「謙信公が真田や清明に|使役《つか》われている間に、こんな事も出來るようになったんですよ」
『な、に――』
白藤の軍装束に緋牡丹を咲かせた軍神が、蹌踉めく躯を持ち直すまで待ち、而して|飜閃《ヒラ》と投げ放つ。
漆黑に包まれた繊指を離れる紙垂――|式紙《シキガミ》『|朽縄《クチナワ》』は、楚々と嫋やかに宙を躍った。
「太刀打ち出來ないなら、取り上げられないかと思いまして」
『!? 一体、如何云う……』
どういう料簡かは、間もなく訪れる事象が答えよう。
其は忍術【|紙技《カミワザ》・|枝絡《シガラミ》】――暫し滞空した紙垂は、刹那、稲妻を疾らせるが如く空気を切り裂いて伸びると、炎熱や氷雪、紫毒など、様々な属性を帯びた毘沙門刀に身を絡めた。
『!! |豈夫《まさか》、毘沙門刀が……止まった……!?』
「――成程。斬り返せば上々と思いましたが、流石に軍神の刀は鹵獲するのが精一杯と」
『ッ、ッッ』
實に大胆な戰略と、戰國一の智将も|喫驚《おどろ》いたか。
左右二方向に延伸した紙垂が拘束した毘沙門刀は合せて十本。刀身に聢と巻き付いた紙片は不思議と炎に灼かれず、毒に朽ちず、荒れ狂う靈刀を虚しく宙空に|垂《ぶ》ら下げた。
『……縛して、更には引き寄せようと……? 否、させぬ!!』
今なお刀鋩を反転させようとする『朽縄』に對し、靈力を漲らせた毘沙門刀がギチギチと震えて抗う。
この時、手に握れる白黑二刃に紙垂を斷たんと振り被った謙信は、然しその瞬間に生じた焦燥――心の闇に踏み込む“黑影”を許した。
「ところでオレ、謙信公と|戰《や》るのは三回目です。覺えて無いでしょうけど」
(『ッッ|近接《ちか》い――!!』)
肌膚にヒヤリと迫るテノール・バリトンに息を呑む。時が止まる。
軍神は紙垂に結んだ劍筋を、我が身に迫る殺氣へ咄嗟に振り切れようか――否、斷じて否。
屋内、特に接近戰で極めて有利な小太刀術を使われては、二尺を越す打刀では間に合うまい。
『……くっ……見事、な……』
謙信の首筋にピタと宛てられたのは、齢六六の脇指『雷花』。
周囲で転輪する毘沙門刀を制した上で侵襲した夕立に、軍神は不覺えず賞讃を零していた。
蓋し夕立は聲色も表情も、或いは|心境《こころ》も。細波すら立てぬ。
「……オブリビオンだったりゾンビだったり、同一存在とは限りませんが、『二度あることは三度ある』と言います」
『而して三度目か』
「ええ、そして『仏の顔も三度まで』とも云います。今回はギリギリセーフ」
鋭刃を挟んだ超至近距離で言を交す。
逆抜之太刀に暴かれた白刃は、直ぐさま順手に握り替えられる筈であったが、夕立は逆手に握った儘、喉元に冷然を突き付けた。
「――なワケないでしょうが。これは『三度目の正直』ですよ」
『ぐっ、っっ――!!』
「オレは気が長くないので、|早々《サッサ》と殺します」
いま殺す。ここで殺す。
腕力でなく躯の重みを預けるように踏み込んだ夕立は、ぐるり回り込むように刃を宛てて首を搔ッ斬ると、屍にしては温かく迸る血汐を受け取る。
果して此度の袂別が『正直』になるかは謙信公次第だと――しとどに濡れる花脣は|空嘯《うそ》を告げなかった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『憑装猟書家『晴明クルセイダー』』
|
POW : 十字槍「人間無骨」
【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 憑装侵略蔵書「ぱらいそ預言書」
【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 『魔軍転生』秀吉装
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
イラスト:kawa
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
上杉謙信を倒した猟兵が辿り着いた大天守は、城らしからぬ靜謐の大聖堂であった。
其は魔空原城の最上にして最奧、美麗しきロマネスク様式の柱に支えられる「ぱらいそ礼拝堂」。
深紅の絨緞が敷かれた身廊を進めば、今の激鬪を音に聽いていた男が、勝者を待ち受けていた。
『私の憑装を試み、エンパイアを転覆に導かんとした蛮勇は見事でございましたよ、クルセイダー』
この聲色、この語調。
丁寧ながら耳に障る男の聲を、猟兵は知っている。
祭壇に立つは、クルセイダーの躰を奪った陰陽師『安倍晴明』――魔空原城を乗っ取り、島原一揆軍をゾンビ化し、不死者の跳梁跋扈を愉しまんとする狂邪。
兩手を広げて精鋭を迎えた清明は、今にも意識が消えかかるクルセイダーに向かって告げた。
『これはせめての贐に。貴方の肉体とユーベルコードにて、これより私がその望みを叶えてご覧に入れましょう』
『――フェンフェン!! フェンフェン!!』
刹那、揺らめく影から顕現れるは豊臣秀吉。
意識はほぼ晴明が乗っ取っているが、クルセイダーの「器」に由來する武将を召喚した彼は、更に十字槍を一閃して光線を放ち、猟兵の骨肉を溶かしに掛かる。
つまり、“一度で二回”――クルセイダーの肉体と霊体の晴明による二回攻撃を行えるのだ。
『扨て、軍神すら打ち倒した方々ですが、果してこの連撃を破れるか――』
最後に立ち開かるは、決戦に相應しき難敵。
憑装猟書家『晴明クルセイダー』が、エンパイアの未來を統べるべく猟兵を迎え撃った。
※『晴明クルセイダー』は、クルセイダーの肉体と霊体の晴明による「2回攻撃(1回の行動につき合計2回、フラグメントのユーベルコードを好きな組み合わせで使用できます)」を行います。
※「2回攻撃」を打ち破る方法を見出したプレイングにはボーナスが付与され、成功度が上昇します。
鹿村・トーゴ
喚び出したモノに乗っ取られる、か
化身忍には他人事じゃねーな
外道の陰陽師どのは何でも使い捨て潰す方の様で?いけ好かねェな
趣味嗜好で故郷の世界を死人で埋められて堪るかよ
敵は憑装利用して二度撃ちしてくる
オレは速さと【軽業】を使って敵の動き【追跡し情報収集】
そこから次の手を【野生の勘】も使い予測し躱し隙あらば【カウンター】を叩き込む【暗殺】
速さを武器に、不意打ちの見えない針を撃つ為UC行う
十字槍は初手を避ける為、預言書は掠り傷でも負わすため
足場は一定させず荘厳な建物を駆け跳びUCの針を撒き接近の際は両手に分割した七葉隠二振り持ち斬りつけ【串刺し】
一撃離脱
秀吉を蹴散らし本体へ挑み【傷をえぐる】
アドリブ可
手毬を擲げ込む島原一揆軍は、七針なる使役靈を降して無力化した。
十二の毘沙門刀を操る軍神は、我が身に化生を降して凌駕した。
而して大天守への道を抉じ開けた鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、礼拝堂の祭壇に立つ男と相見えた時、|不覺《おぼ》えず、乾いた嗤笑に皮肉が零れた。
「は、化身忍には他人事じゃねーな」
クルセイダーは、自ら喚び出したモノに乗っ取られた。
曰く、|業《カルマ》が違ったと。
降魔降霊を得手とする己には些かキツい絵だと橙の烱瞳を眇めた彼は、蓋し飄と口角を持ち上げて云った。
「外道の陰陽師殿は、何でも使い捨て潰す方の樣で?」
『せめて望みを叶えて遣るのが慰めかと』
「……いけ好かねェな」
|顏貌《おもて》は一縷と瞋りを見せず、唯だ佳聲は低く鋭く冷然を示す。
表情を變えぬは相手も同じか、足元の影から沸々と湧く“毛玉”――無数に召喚される豊臣秀吉のモフみに身を隱す清明を見たトーゴは、刹那、轟ッと直進する黑塊を橫ッ跳びに躱した。
「趣味嗜好で故郷の世界を死人で埋められて堪るかよ、ッ!」
『フェンフェンッ!! フェーン!!』
身廊を驀進した毛玉が数匹、離れざま忍刀『七葉隠』に斬られ、ボフッと風を置いて消滅する。
その風に外套を翻して側廊へ向かったトーゴは、荘嚴な柱を蹴って三角跳び! 礼拝堂内を飛ぶように駆け渡ると、己を追從する毛玉達を忽ち爆風に變えた。
「太閤殿、|痛痒《いたみ》は一瞬だ」
『フェーンッ!!』
トーゴの影を捕えんとした秀吉が觸れたのは【|刺硝子《シリカ》】。
刺草に似た不可視の棘が撒菱の如く宙空に抛られていたか、毛玉達は棘に突かれるやボフボフと消滅していく。
秀吉が一撃で消えるのに対し、透明な毒針は地に落ちても殺傷力はその儘、清明の移動範囲を狭めるから厄介だ。
『相討ちにもなりませんか。……ならば』
採光窓の付近、煌々と輝く光が棘かと祭壇に留まった清明は、左手に披いた預言書に未來を探りつつ、右手に握れる十字槍の鋩をトーゴへ、怪光線を放つ――!
(「――來る」)
然し予知は彼奴の専売ではあるまい。
鋩に攻撃方向や照射角度を読んだトーゴは、僅か一瞬を上回って光条を回避し、次なる柱に着地しざま『七葉隠』を二振りの刃に分けて持つ。
『宙空でここまで動くとは見事な』
「そりゃどーも、!」
このタイミングで、と更に加速したのは全き勘。一度と骸の海を潜らずして培われた野生の勘に相違無し。
黄昏色の烱瞳を冱々と、かの怪光が帯を引いて消えるまでの間に清明の左手へ回り込んだトーゴは柱を蹴って肉迫! 側面より透明な二刃の鋩を突き刺した!
「“ぱらいそ”の欠片も無ェ陰陽師殿は、その本を盾に使う筈だってな」
『ッ、見切って……!!』
「一本は呉れて遣る。もう一本で貫きゃいい」
恕ッと鈍い音を響かせたのは、一刃を受け止めた侵略蔵書。
而してもう一刃を男の腕にグッサリ突き刺したトーゴは、島原一揆軍に夢を、いや幻を見せた外道の血を浴びる事でエンパイアの民草の雪辱を果たすのだった。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
クルセイダーさん、まだ意識が残っていたのですね。
この状態でアレをグシャッとやるのは、さすがに可哀想かな💦
◆槍は心眼・第六感で予測して、見切り・ダンスで舞うように回避するか、
天耀鏡で盾受け。
◆小型秀吉さんは結界術・高速詠唱で防御壁を作って防ぎつつ、
風の属性攻撃・高速詠唱・範囲攻撃でまとめて倒す。
◆攻撃予想に対しては、「晴明、止まりなさい。」と催眠術を掛けつつ、
更に念動力で捕縛して、予想できても回避不可状態に。
ここは、煌月に神罰を籠めての《霊刃・禍断旋》で晴明の魂のみを、
ズバァッと真っ二つに捌いてしまいましょう。
今日のところはこれくらいで許しておいてあげます。
次やらかしたら本気で潰しますからね!
大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)は|激怒《ぷんおこ》していた。
必ず、かの邪智暴虐の陰陽師のアレをグシャッとし、泥遊びをする豚のように|踠打《のたう》たせてやると決意していた。
だが、然し。
「……クルセイダーさんの意識がまだ残っているのですね」
慈悲深い女神は、彼奴の書物を持つ手が細かに震えるのを見る。
僅かにも抗う意志があると認めた詩乃は、そと|吐息《いき》を零した。
「アレをグシャッとするのは、流石に可哀想かな💦」
これが神の赦しならば、クルセイダーは|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》こそ信奉すべきであろう。
ゴールデンなボールをブレイクするお仕置き技を、そっと心の玉手箱に仕舞った詩乃は、然し、命を贄にして愉しむ鬼畜は許すまいと、神氣溢れる『煌月』を構えるなり凛然を萌した。
「魔軍将が一、陰陽師『安倍晴明』。奸策を弄してはなりません、今すぐ止まりなさい」
『これは、これは。神が人世に口を出されるか』
「人世の爲に在るが神。悪逆を止めるが私の|責務《つとめ》です」
『……其も興に過ぎぬかと』
フ、と艶笑した男が足元の影を搖らし、ポワポワと黑い毛玉を溢れさす。豊臣秀吉だ。
無数のミニ太閤が身廊を驀進ッ、眼路いっぱいに迫る群体に刮目した詩乃は、咄嗟に襟へと繊手を滑らせ『紙垂』を取り出すと、防禦壁を構築して衝突させた。
『フェンフェーンッ!!』
「止まりなさい。|貴殿《あなた》もいいように使われてはなりませんよ」
ムギュッと結界にぶつかった毛玉へ月刃一揮! 淸き風の衝撃波で薙ぎ払い、まとめて消滅させる。
而してボフボフと毛玉が消える中、その群体に身を隱して疾った清明が、目下、十字槍を手に距離を詰めた。
『預言書に曰く、神人は十字に斃れると』
一手で未來を予見し、一手で其を現実とする、驚異の同時攻撃。
最後の毛玉が消えた刹那に鋩を捉えた詩乃は、90度転身しざま『天耀鏡』を身代わりに置くと、鏘々たる音色が刃を彈いて須臾、柄の方向に華奢を滑らせて“告げた”。
「今一度言います。晴明、止まりなさい」
『な、っン……!?』
この瞬間、強く踏み込んだ清明の足が――止まる。
當初から「止まりなさい」と言っていたのは、己に催眠術を掛ける爲だったとは、動かぬ脚を見てから気付くか――意識はあるのに動かぬ躰に、清明が肝を潰す。
『くっ……動かな……っ』
高名な陰陽師なれば術は破れるか、否。
念動力が外から躰を拘束する今、二重の枷を解くには――遅すぎる。
而して舞踏するようにヒラリと清明へ近付いた詩乃は、『煌月』の嶺で十字刃を叩き落すと同時、【|霊刃《レイハ》・|禍断旋《カダンセン》】ッ! 斷禍滅災の刃を閃かせた!
「今日のところはこれくらいで許しておいてあげます」
『ッ、ッ――!!』
「次やらかしたら、本気で|潰します《・・・・》からね!」
クルセイダーの肉体を傷付けず、内なる清明の魂のみを斬る――。
無樣や滑稽を愉しむ男の驕慢を兩斷した詩乃は、恐ろしい事を預言してアレを縮み上がらせるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
リューイン・ランサード
相変わらず無駄に人死にを出そうとする変態クズ野郎ですね。
何言っても蛙の面に小便っぽいから、陰陽師の端くれである僕が問答無用で倒します!
自身の翼で空を飛ぶ。
<槍攻撃>
第六感・瞬間思考力で読んで、空中戦・見切りで回避。
必要に応じてビームシールド盾受けで防ぐ。
オーラ防御展開。
<預言書>
UC:奔流斬舞で流水剣の複製1380本創造して、包囲攻撃。
予想されても回避しきれない攻撃を続ければ良いので。
<秀吉装>
道術で暴風と雷請来。
風で吹き飛ばし、雷を乱舞させて、一撃与えて倒していきます。
晴明は奔流斬舞でダメージ与えて追い込み、精神の属性攻撃・破魔・浄化を宿したエーテルソードと流水剣の2回攻撃・怪力で斬ります!
『……フ、フフ……随分お怒りの樣で』
義憤を露に戰う猟兵は、陰陽師『安倍晴明』には愉快に見えたか。
島原一揆軍やクルセイダーと等しき“蛮勇”と含笑する男に相對したリューイン・ランサード(|波濤踏破せし若龍《でもヘタレ》・f13950)は、斜に構えた彼に正面から云ってやった。
「相變わらず無駄に人死にを出そうとする、変態クズ野郎ですね」
『変態クズ野郎……。……言い過ぎでは?』
「全然」
この言葉を必ず本人に届けると、軍神に云ったのだ。
謙信は「酷い」と言いつつ咲ったが、本人は気に入らなかったか。清明は足元の影を煮え滾らせると、漆黑の毛玉をポコポコと湧かせて云った。
『品の佳さそうな靑年から出る語ではあるまいに』
|口性《くちさが》ない、と歪に嗤笑した麗顏を隱す程の秀吉、秀吉、秀吉!
無数のミニ太閤が一斉に突進すれば、若龍は二本指で空を切って暴風招引、霹靂請來! 猛き風刃雷槍を以て次々と毛玉を吹き飛ばし、灼き貫いた。
『フェンフェーンッ!!』
消滅時の風を受け取った若龍に、一縷と|忸怩《ヘタレ》の色は無し――。
さやと前髮を煽られた彼は、瑠璃の玉瞳を煌々と輝かせて確言した。
「何言っても蛙の面に小便と思いましたが、それっぽいですね」
『小便……』
「勿論、口喧嘩をしに來た|意《つもり》もありません」
淸冽なる瞳を見れば、清明も気付こう。
凡そ佳脣に似合わぬ悪言には、彼自身の瞋恚が顕現れているのだと烱瞳を眇めた清明は、毛玉がボフボフと消される最中で預言書を披き、同時に十字槍を脇抱えにして構えた。
『俄然、私の技で戰いたくなってきました』
「勝負です! 陰陽師の端くれである僕が問答無用で倒します!」
身廊と祭壇を結んで対角に据わった兩者が、澎湃と氣を溢れさす。
火蓋を切ったのは若龍――漲る鬪志をオーラと纏ったリューインは、双翼に空気を搏くや疾風となって身廊を翔け、我が前方に配した『フローティング・ビームシールド』ごと叩き付けるように攻め掛かる。
『空中なら有利が取れると? 預言書に曰く、竜は翼を捥ぐべしと』
「その未來を覆します!」
蓋しリューインも先が読めぬ訳では無い。
槍撃なら相應の体捌きがあると経験則で予測した彼は、研ぎ澄した「勘」と「感」で鋭鋩を躱すと同時、背に負った幾何学模様の魔法陣に白皙を白ませた。
「たとえ予想されたとしても、回避しきれない攻撃を続ければ良いので」
『ッ、これは――!!』
預言書に書かれたるは、1,380本の流水劍の複製が燦々と舞う――【|奔流斬舞《ホンリュウザンブ》】。
これらが「間隙なく」「躍り掛かる」と文字に記されるものの、千を優に超す劍を槍一本で振り払うには、刻一刻と過ぎる時が恕すまい。
「流水の劍よ、万物を斬り刻む奔流よ。我が二刃に加わり、邪を押し流せ!」
『くっ……をっ……!!』
目下、破魔の氣を帯びた本物の『流水剣』と『エーテルソード』を加えて1,382本。
精神を淨う刃の群れに囲繞された清明は、最早、猟兵の瞋恚を笑えまい。
己が興の爲に命を弄んだ変態クズ野郎は、疾ッと迸る鮮血を以て、預言書に「敗北」なる文字を兆すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
本命のお出ましですね
屍人やら人の身体を操って、手数が多いのは困りものですが……
それならそれで、やりようを探すだけですよ
瓜江に枯れ尾花渡し
自分は黒曜を使い、共に駆ける
使う技がどちらも攻撃力技とは限らぬ
予言書使っての回避もあり得ると念頭におきつつ
瓜江が薙ぎ払いで気を引き…
その隙に戦場に、鏡片を撒く
晴明や彼の手繰る秀吉に向け
撹乱する光放ち、自分達や味方の位置をずらして映すことで
相手が二度攻撃を放とうと
それの直撃防ぎ、掻い潜る
無論攻略された場合も考慮し
六感や見切りで注意しつつ
晴明の近くに、寄れたなら…
黒曜で預言書持つ手か見る目を狙い
無事当たるか、掠ったら
相手の血を媒介にした呪いで
動きを鈍く出来たら
凡そ城の大天守らしからぬが、とまれ、この荘嚴な洋風建築が本丸。
戛々たる靴音を隱す絨緞の上、城外とは眞逆の靜謐に包まれる礼拝堂を進んだ冴島・類(公孫樹・f13398)は、身廊の伸びる先、祭壇に立つ男に烱瞳を絞った。
「……本命のお出ましですね」
『はは、初対面という|表情《かお》ではありませんね』
窈窕たる微咲に迎えるは、クルセイダーを器にした不死の巨魁、陰陽師『安倍晴明』。
大戰以來の邂逅となろうか、幾ら姿を變えようと、かの魂より馨る不穏な狂氣に|騷《さざ》めかされると花脣を結んだ類は、傍に立つ『瓜江』に破魔の短刀を、自身は呪詛を帯びる黑曜の刃を手に、爪先を蹴った。
「斬るだけで獲れる首で無いとは承知しています。ですが、刃を届けねば意味も無く」
相棒の長躯に隱れ、影を一つにして疾る。
これが肉体と霊魂の二連撃を攻略する戰法とは「ぱらいそ預言書」が予見したか、類と瓜江の連携を記述として読み取った晴明は、足元の影より無数のモジャ玉――ミニ太閤を召喚し、間もなく肉迫する二人へ嗾けた。
『君子は|危難《あやうき》に近寄らず、また近寄らせず。ここは太閤殿に任せましょう』
『フェンフェン、フェーンッ!!』
幾千幾万の毛玉が眼路を覆った瞬間、先ずは瓜江が淸刃一揮! 風を紡いで薙ぎ払う。
一度は漆黑に塞がれた兩者が劍筋に添って暴かれれば、清明は爲手の麗姿を瀲灔と煌かせる“光”に瞳を眇めた。
『これは――』
「屍人やら人の身体やら、剰え太閤殿すら操って。手数が多いのは困りものです」
だがやりようはある、と堂内に溢れたのは【|閃輝鏡鳴《センキキョウメイ》】。
目下、百四十に及ぶ魔鏡の欠片が瑤々と漾って光を紡ぎ、像を結び、清明が視認する姿影や現象を動かし始める。
礼拝堂ごと万華鏡の世界に投げ込まれた清明は、ジリと靴底を踏み締めると、その場から十字槍を一閃ッ、斬撃波を放って全体を攻撃した。
『ッ、ならばその妖鏡ごと斬り払うのみ』
(「矢張り、攻撃範囲を広く……槍撃は大振りにならざるを得ない」)
類に預言書は無いが、骸の海を潜らずして鬪い続けた経験と勘がある。
精緻な斬撃を手放せば、骨を溶かす邪光線も鈍る筈だと虚像の世界を疾駆した類は、|綺羅《きら》、|晃乎《きらり》と光彈く中に刃光を隱して肉迫――ッ!
「掻い潜る」
『ッ、ッ!!』
眼路に迫るは比翼の|閃《ひらめき》。鏡片によって座標を變えられ、幾重にも増やされた|光耀《かがやき》。
右翼から瓜江が逆手に握った『枯れ尾花』を疾らせるなり、左翼から類が『呪殺の黒曜』を順手に一突き、光に眩惑された瞳を掠めるや、かの白皙に血斑を踊らす――!
『ぐ、っ……目が……っ』
「扨て、この|未來《さき》は読めますやら」
當たるか、掠めるか。その兩方を叶えた類が齎すは、痛痒を操る呪詛。
清明の血を媒介に黑輝の呪いが瞼から眼球へと浸蝕すれば、今も未來を記し続ける預言書は読めず。而して預言書もまた、清明の勝利を記す事は無かった。
大成功
🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
既に舞台より排されたにも関わらず何時までもしがみ付く其の姿
滑稽を通り越し唯々無様で見るに堪えん
何より――此れ以上、騒乱の元たるお前の在る事が赦し難い
要は2人掛かりで掛かって来るという事だろう
なれば此方も手を増やすだけだ――禁精招来、応えよ大将軍
【其の無尽の刀術を以って盾と為し、討つ刃と成れ】
大将軍が先の攻撃、私は次撃へと応ずる事を繰り返して2連撃に対処
得物や視線の向きに体捌きから攻撃方向は見切り
大将軍の刀術と私の衝撃波で波状攻撃とし、書を読む暇とて与えはせん
前進する加速を躱す速度と攻撃の重さへと変え
其の身諸共、魂までも叩き斬ってくれる
お前に成し得る事なぞ何も無い――疾く潰えろ、胡乱なる過去の影
凡そ衆生には幕を下ろす瞬間があり、その緞帳は輕々しく引き上げられるものでは無い。
何度も上げ下げされる幕に覗く演者ほど陳腐なものは無いと、此度はクルセイダーなる器を憑代にした男と相見えた鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は、開口一番、痛烈な棘を浴びせた。
「魔軍将は先の大戰で敗れ、亂世と共に舞台より排された」
『……これは|懷古《なつか》しい話を』
眼眦を緩めるは、陰陽師『安倍晴明』。
嘗て魔軍将として肩を並べた上杉謙信らをゾンビとして復活させた巨魁だ。
彼奴の窈窕たる含笑に隻眼を眇めた嵯泉は、|抜刀《ぬきみ》の如き鋭い視線を射て返る言を斷った。
「其にも関わらず、何時までも獅嚙みつく其の姿。滑稽を通り越して唯々無樣……見るに堪えん」
彼奴は魔軍将ゾンビが蔓延る景色が滑稽と云った。
だが今は如何だ。
「何より――此れ以上、騷亂の元たるお前の在る事が赦し難い」
背筋も凍るほど冷たい瞋恚を萌した嵯泉は、麗笑を浮べた儘の清明と相對して幾許――彼奴の足元に落ちた影が沸々と滾りながら毛玉を、『豊臣秀吉』を召喚するのを見るなり殺氣を迸った。
『随分と嫌われて仕舞いました。|顏貌《かお》を隱せば少しは収まりましょうか』
『フェンフェン!! フェーンッ!!』
モジャモジャと湧く黑い毛玉、ミニ太閤が幾千幾万。
一撃で消滅するとは云え、一体が一手ならば悍ましい光景が視界に膨れ上がるが、嵯泉は小柄に掌指を滑らせるなり發氣すると、五行星辰に基く“真言”を操った。
「太閤の縁を手繰ったか。躰と靈の二人掛りなら、此方も手を増やすのみ」
『、|豈夫《まさか》』
「――禁精招來、應えよ大将軍」
“其の無盡の刀術を以って盾と爲し、討つ刃と成れ”
『八将神が壱、大将軍は万事に大凶と爲す。……魔王天王が其方に回ったと』
清明は皮肉を囁くが、大将軍の強さは佳く知っていよう。
かの凶神を從わせるには並ならぬ氣力が要る処、其を惜しげもなく差し出した嵯泉の相形こそ鬼神の如く、神人一体の劍技が閃々、礼拝堂に滿つモジャ玉を一気に斬り棄てていく――!
「預言書が何を記そうが構わん。文字を|捺擦《なぞ》る暇なぞ與えはせん」
『――は、は。遣って呉れる!』
忌々しいとはこの事。
大将軍が初撃を、術士が次撃に應じて二連撃に対抗する――その連携の妙たるや、毛玉に隱れて繰り出す槍撃は衝撃波に彈かれ、波状攻撃を繰り出しながら近付く二刃に、清明は|土も動かせまい《・・・・・・・》。
而してミニ太閤が消滅し、視界が晴れた時。彼奴は一挙手一投足も見逃すまいと睨める荒神に肝を冷やしたろう。
「其の身諸共、魂までも叩き斬ってくれる」
『――ッ!!』
焦燥を拒むよう繰り出した十字槍が、須臾に被さる劍筋に鈞ッと彈かれる。
その重い一撃に脇を甘くした清明は、次瞬、胴へと眞一文字に疾る斬撃を受け取るしかない。
「お前に成し得る事なぞ何も無い――疾く潰えろ、胡亂なる過去の影」
『く、ぉぉお!!』
齒嚙んで刻下。
時は刹那より短く。
血は無窮に繁噴いた。
大成功
🔵🔵🔵
篝・倫太郎
ふぅん……一回で二手打つってか
ま、チートだもんなぁ、セイメイも
っし!んじゃ、しーちゃん、しょこさん、いっちょヨロシクな?
しょこさんもしーちゃんも、分類:武器なんだよなぁ
ぐう有能!
人間無骨はしーちゃんに受けて貰お
槍は出来れば回避!
でもま、万が一当たってもしーちゃんに骨はない!(ドヤッ)
予言書はまぁ、しょこさんもしーちゃんも遊んどいで!
本能の生き物!ちょーっと何考えてるか判んないし
しかも思考する武器
秀吉装はまぁ、俺の幻影召喚で踊って貰いましょーってな
しょこ!みんな!とっつげきー!
俺自身も華焔刀に斬撃波か衝撃波を乗せたなぎ払いからの吹き飛ばし
刃先返して、2回攻撃と行かせて貰うぜ?
骸の海に還って眠りな
荘嚴なる「ぱらいそ礼拝堂」、その高天井に佳聲が響く。
予兆に見た光景を重ねつつ身廊を進んだ篝・倫太郎(|災禍狩り《厄を狩り還す者》・f07291)は、躰と魂の兩方でユーベルコードを紡ぐという相手を前に、ひとつ溜息を挟んだ。
「ふぅん……一回で二手打つって、まぁチートだよな」
噫ァ否、|彼奴《コイツ》が抑もチートだったと烱瞳に射るは、陰陽師『安倍晴明』。
窈窕たる含笑を崩さぬ男こそ不死の権化、骸の海などリスポーン程度と思っていようと半眼になれば、懷に収まっていた応援団がむぐむぐと動いて主張した。
「🐰!」
「お、しょこさん。やるき滿々?」
「🫠!」
「しーちゃんも、いって貰おか!」
GOサインを受け取って兩拳をグッと握るは、黑兎のしょこらと視肉のしーちゃん。こんなに可愛いが武器だ!
此の戰いの本丸である清明はチートだが、この二人は相性が佳さそうだと艶笑を湛えた倫太郎は、凛々しく眉を持ち上げる二人を堂々と送り出した。
「っし! んじゃ、しーちゃん、しょこさん、いっちょヨロシクな?」
『私に愛嬌は通じませんよ。興を|誘《そそ》らぬものは滅するのみ』
先ずはぷくぷく歩く健気な視肉めがけ、十字槍を一閃ッ! 容赦なく斬撃波を叩き付ける清明。
而して間もなく射られる怪光線が骨を溶かす筈であったが、しーちゃんのツヤプルボディは衝撃に波打っただけ――とくになにもおこらなかった。
『んっ』
「🫠~」
然う、しーちゃんに骨はない!
屍王と視肉の相性は抜群、或いは最悪で、しーちゃんは何の気兼ねもなく祭壇まで近付ける。つおい!
遠足気分で身廊を進む視肉に肝を冷した清明は、足元の影を沸々と煮え滾らせると、モジャモジャの毛玉を召喚して斜線を塞いだ。
『ここは太閤殿を頼りましょう』
『フェンフェーン!!』
クルセイダーの縁を辿って喚ばれる『豊臣秀吉』は幾千幾万。
無尽蔵に湧いて出る毛玉が忽ち清明の姿影を隱すが、これは黑兎しょこらにとって“遊び相手”が増えた程度。
きゅぴっと赤いお目々を輝かせる元気玉に頷いた倫太郎は、【幻影召喚】――共に躍れるラビットグリフォンの幻影を喚び、大いなる兎雪崩を起こした!
「しょこ! みんな! とっつげきー!」
「🐰!」
「🐇!」
ネザーランドドワーフグリフォン、ホーランドロップグリフォン、ジャージーウーリーグリフォン!
色々な種類の兎幻獸が665匹、しょこらを含めて666匹がお祭り騷ぎで翼をぱたぱた、ミニ太閤に向かって突撃し、遊ぶだけ遊んだら消えていく……この和みの空間を、預言書は攻略出來ようか。
「しょこさんもしーちゃんも、遊んどいで! 斜に構えた奴には、其が一番厄介だ」
二匹を佳く識る倫太郎は、本能で動く生き物の予測不可能な強さを信じている。
實の処、己もちょーっと何考えてるか判んないのだと悪戯な微咲を浮べた彼は、ぴょーんっと間合いを侵襲するや、預言書の紙片をはむはむするラビッツを見て竊笑を隱せない。
『あっこら、止めなさい』
焦った清明が書物を高く持ち上げた時が好機。
遅れること一拍、華焔刀 [ 凪 ]を連れて身廊を駆けた倫太郎は、足払いの斬撃波を一閃! また刃を返した二撃目に弧刃を薙ぎ払い、体勢を崩した清明を祭壇の奥へ吹き飛ばすッ!
『ッ、ッッ――!!』
「骸の海に還って眠りな」
この瞬間の佳聲だけは低く鋭く。
男の麗顏に張り付いた含笑の仮面を剥ぎ取るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
叢雲・源次
【義煉】
パライソ…と来たか
質の悪い宗教家というのはどいつもこいつも『楽園』を謳って人を惑わす。
楽園などありはしない
特に、貴様らオブリビオンには。
此処には俺がいて、クロウがいる…故に
「此処が貴様の地獄と知れ」
一度で二回、矛盾を孕んだそれを再現しうるは流石ユーベルコードといった所か。
だが、誤算だったな。
こちらは憚りながら手練れと自負している、更にはそれが二人いる
矛盾が通れば道理が引っ込むというのであれば、こちらは無茶を通させて貰う
炎獄機関最大出力
着剣…完了…
長大な蒼炎の刃を薙ぎ払う。力押しにも程があるとばかりに。
杜鬼・クロウ
【義煉】アドリブ◎
最終決戦には相応しい場所じゃねェか(粛々とした雰囲気に気が締まる
お前の目論見は此処で完全に潰すぜ
ハ、そうだな
俺達が来た以上
もう、日の目は見させねェよ(源次に目配せ
「仮初の楽園(虚像)」は終いにしようや
上着翻し剣を握り直す
敵が2回攻撃するなら一つ目は無駄にさせる
行動を読まれると踏んで態と剣を大振り
隙が出来たと舌打ちし、油断させてUC使用
娃しい剣閃
沈丁花の猛毒効果付与
豊臣秀吉を召喚されたら一気に踏み込み薙ぎ倒す
幾ら駒を繰り出そうと
俺達は止まらねェ
死者を蘇らせ利用する、その意地汚ェ魂(こころ)を真向からたたっ斬る!
─源次ィ!
源次と挟み討ち
同時攻撃
剣に紅焔燃え上がらせ
意志を力に終焉を
先の大戰で攻め入った魔空安土城も中々だったが、魔空原城の最奧部「ぱらいそ礼拝堂」も實に壮觀。
武者溜から駆けてきた猟兵は、身廊に敷かれた絨緞に戛々たる靴音を消されると、大天守とは思えぬ高天井を仰ぎ、嚴かな靜謐の空間に佳聲を響かせた。
「へェ、最終決戰には|御誂向《おあつらえむき》な場所じゃねェか」
『……お気に召して戴けましたかな』
「噫、悪趣味な陰陽師の悲鳴が佳く響きそうだと思うと、気が引き締まらァな」
口角を持ち上げて皮肉を|囁《つつや》くは杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)。
そして、敵意剥き出しの彼を含笑に迎える男が『安倍晴明』だとは、傍らに立つ叢雲・源次(DEAD SET・f14403)も理解っていよう。彼は金髪の若人が据わる祭壇に冷嚴を置いた。
「|Paraíso《ぱらいそ》、か。質の悪い宗教家は、どいつもこいつも『樂園』を謳って人を惑わす。此度は島原が貶められた」
「ええ、狂信を以て亂を起こすなど、まこと蛮勇でありました」
クルセイダーの口で本人を蔑む下劣は清明ならでは。
蓋し源次は感情の色ひとつ變えず一歩出ると、対神太刀『黒ノ混沌』を目線の位置に構えて云った。
「樂園など何處にもありはしない。特に、貴樣らオブリビオンには」
『随分と無常を仰る』
吃々と嗤う清明の前、さや、と冱刀が光を暴く。
綺羅と煌く刀身に映るは、奧手に清明、手前には頼れる相棒の夕赤と青浅葱の玉瞳。
「此処に俺が居て、更にクロウが居る。故に、貴樣が向かう先は決められている」
云えば清明は訝しげに噤み、相棒はからりと小気味良く笑おう。
「――ハ、そうだな。俺達が來た以上、気味の悪ィ陰謀が|日光《ひのめ》を視る事はねェ」
白刃に映れるクロウが|眴《めくばせ》し、上着を飜すや身丈に及ぶ大魔劍を構える。
刀姿を違えつつも、倒すべき敵へ鋭鋩を揃えた二刃は、其々の主人の聲が重なった須臾に白光一条を疾らせた。
「仮初の|樂園《虚像》」は終いにしようや」
「此處が貴樣の地獄と知れ」
風が戰ぎ、光が翔け、血華が散る。
訣別の|證左《あかし》に召喚された漆黑のモジャ玉、隱し将『豊臣秀吉』が進路に溢れれば、クロウと源次は一縷と怯まず踏み込んで二刃一閃ッ! 幾千と膨れ上がる毛玉へ十字に結んだ斬撃を叩き付け、ボフッと消失させた。
『フェーンッ!!』
『フェンフェン!!』
ミニ太閤が血斑を躍らせて消えゆく中、赫き驟雨を浴びて猶も二人の進撃は止まらない。
モフモフの黑塊が解けた刹那に見る彼等は、灼き入れられた刀の如く|赫輝《かがや》いて見えよう。
|啊呀《あなや》と気圧された清明が預言書に目を遣るが、戰局に合わせて浮かぶ文字を|捺擦《なぞ》る暇は――無い。
「躰と魂と。矛盾を孕んだ二連撃を再現したのは流石だが、どうやら相手を間違えたらしい」
「噫ァ、幾ら駒を繰り出そうと俺達は止まらねェ」
雪嶺の鼻梁を邪影に結んだ儘、科白の合うこと妙々。
「矛盾が通れば道理が引っ込むというのであれば、此方は無茶を通させて貰う」
「推し通るに駄賃が要るなら、払ってやらァ!」
手練の劍士が二人、流血を惜しまず疾る樣は宛ら戰槌。
敵が二連撃を仕掛けるなら、初撃は己が預ろうと前進したクロウが、巨劍一揮して預言書を斬らんとすれば、清明は大振りな斬撃を躱しざま槍を脇抱えに踏み込むが、耳を掠める舌打ちは果して「何」を呼び込んだか――。
「お前の目論見は、今、此處で完全に潰れるぜ」
『――!!』
甘美な馨香と漾えるは、滅鬼伝阿修羅流【八ノ型・|死の沈丁花《シノセンリコウ》】。
空を斬った『玄夜叉・伍輝』が齎した花馨は、清明の鼻先を掠めるなり沈丁花の猛毒を巡らせ、眞に油斷した者の槍を鈍らせると同時、荒々しくも娃しい劍閃を畳み掛ける。
「死者を蘇らせ利用する、その意地汚ェ|魂《こころ》を叩ッ斬る! ――源次ィ!」
「――承知」
クロウの情熱に呼應して、冷徹な聲色がヒヤリと肉迫する。
大魔劍が隙を作った瞬間に逆方向へ回り込んでいた源次だ。
彼は槍撃が閃いた直後の側面に一足で達するや、地獄化した心臓より蒼き煉獄の炎を溢れさすと、対神太刀を長大なエネルギーの刃に變えて振り被った。
「炎獄機関最大出力。着剣……完了……」
先に云った通りの地獄に突き堕とすは、【|炎獄機関《インフェルノ・シリンダー》】ッ!
力押しも力押し、細身に祕めた膂力いっぱい引き絞って蒼炎の刃を一閃すれば、クロウが逆側から紅焔を熾々炎々、彩の異なる刃撃を衝き入れて挟撃する――!
『ッ、ぜぁァアア嗚呼ッッ――!!』
「|終焉《おわり》だ」
「躊躇う事は無い、逝け」
意志は総て力に變えた。出し切った。
故に潔く散るべしと兩者が烱瞳を注げば、目下、眼路いっぱいに血華が咲き亂れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
もうそろそろ骸の海へ還っていただきましょうか。
身体のリミッターを解除後に限界突破して戦闘の準備を。
それから防御無視攻撃に鎧砕きと重量攻撃を刀に籠めますね。
『兼元』の一振りで【神滅 弐之太刀『神裁』】を使用します。
身を低くしながら鯉口を切りロベルタさんに遅れて晴明へ駆けます。
一挙手一投足を見切りと野生の勘と第六感で観察しつつ彼の懐へ。
晴明が十字槍を使用してもなるべく回避できるようにしますね。
懐に入ってしまえば槍ごと【神裁】で斬ってしまうつもりですが…。
槍が斬れなくとも早業と2回攻撃と継戦能力の二の太刀で斬ります。
私の技を予測して晴明が回避してしまっても次の手があります!
「…私ば…り見て…て…いい…ですか…?」
ロベルタさんの攻撃で動揺もしくは回避を試みたところへ再び斬撃を。
二度目の【神裁】は最初の時よりも深く入ると思っています。
それでも難しい場合でもロベルタさんの一撃があるので安心ですね。
私は全力で踏み込み力の限りの斬撃で晴明を斬るだけです!
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
パフォーマンスで僕の運動能力を上げてから封印を解くじぇ。
それから限界突破して【魔王の足跡】の蹴り技を出そうかな。
脚には鎧防御無視と鎧砕きに重量攻撃と属性攻撃を付与するねぃ。
僕が墨ねーよりも先にダッシュで晴明のにーちゃんの元へ行くじょ。
なるべく墨ねーとは別の位置から晴明にーちゃんまで一息に駆けるよ。
そーしたら晴明にーちゃんはどっちに攻撃していいか迷うよねぃ?
回避か攻撃か…迷ってくれたら上々…って墨ねーが言ってたじぇ♪
もし僕の蹴りに注目してくれて回避してくれれば…墨ねーの攻撃が。
逆に墨ねーの攻撃に注目してくれれば僕の蹴りが火を噴くじぇ~♪
墨ねーと同時に攻撃するんじゃなくて微妙にズレた連携を心がけるよ。
「うぇ~い♪ 晴明にーちゃん…覚悟ー!」
ワザと何時もよりも大きい声で僕の方へ注意を逸らすのもいいかも?
とにかくどっちの攻撃が当たっても良いようにしないとねぇ~♪
もし槍で脚技が受け止められてもだいじょーぶだじょ♪
即座に早業のクイックショットと零距離射撃と2回攻撃で蹴る!
「慥か猟書家のにーちゃんの中に、陰陽師のにーちゃんが入ったんだよねぃ」
「……べの……清明……す……」
「そうそう、清明にーちゃん!」
大天守に向かう間、先に視た予兆について話す。
陰陽師『安倍晴明』を憑裝する筈が、逆に躰を乗っ取られたのだと、クルセイダーの誤算が招いた急展開に身を置く二人は、目下、急勾配の階段を飛ぶように駆け上がっていた。
「魔軍将ゾンビの量産化って、謙信にーちゃんがいっぱいって事?」
小鳥の樣に無垢な聲を囀るは、ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)。
今方かの軍神を踏破した彼女だが、あれ程の強敵がうじゃうじゃ居ては堪らぬと、白い|花顏《かんばせ》にキッパリ「むり!」と示せば、共に駆ける浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)もこっくりと是を置いた。
「……一揆、を……起……れる、より……大変な……事態……かと……」
清明は“興が乗った”と云っていたが、其はエンパイアを再び戰亂の世に戻すという事。
ゾンビ上杉謙信やゾンビ日野富子など、永遠に死なぬ者が蔓延る地獄など見せられようかと、これまでエンパイアで逢った人々を思い起こした墨は、|不覺《おぼ》えず足が速くなる。
「ロベルタさん……後の……敵、は……油斷……ません……」
「う! がんばっていこうねい♪」
多分に此度が最終決戰。
器としては獲る|首級《くび》が變わらぬのが皮肉か、とまれ、長き侵略に終止符を打つ時が來たと凛然を萌した芙蓉二花は、華奢に祕める魔力を一気に励起させて身体能力・運動性能を引き上げると、比翼の燕の如き|迅速《はやさ》で最奧を目指した。
『……フ、フフ……次から次と。クルセイダーの首には、まだ価値があるようです』
ロベルタと墨が大天守「ぱらいそ礼拝堂」に至った時、當の清明は死鬪の渦中。
其は死を否定した者が見せる強靭か、或いは無惨か――祭壇を眞紅に染めて猶も永らえる男の狂氣に觸れた二人は、先ずは堂内を双瞳に一巡り。祭壇へ一直線に結ばれる身廊と、左右に配された側廊に道を見出すや爪先を蹴った。
「……參……す……」
「う! いっくじょー♪」
|眴《めくばせ》を交して須臾、ロベルタが絨緞の敷かれた身廊を駆け、墨が板間の側廊を疾る。
清明も新手に気付いたか、これ以上の追撃は許さぬと『豊臣秀吉』を――無数のモジャ玉を足元の影から溢れさせて斜線を埋めるが、漆黑の毛玉がどれほど密に壁を作ろうと二人は止まらない。
『フェンフェンッ!! フェーン!!』
「まっくろの、もじゃもじゃ! とんでけっ!」
『フェンフェンフェン、フェン!!』
「……押し……通……ます……」
ロベルタと墨は、天に在らば比翼の鳥。地に在らば連理の枝。
多言を要さずとも揃う水平一文字の蹴撃と刃撃が衝撃を結び、斬ッ! と閃いて天地を分つ。
幾千の毛玉を相手取る必要は無し、目線の高さに群がるミニ太閤だけを消滅させて道を開いた二人は、喫驚の表情を見せる清明を捉えるや、華奢を花葩の如く躍らせた。
「Ciao♪ 晴明にーちゃん、だよねぃ?」
「……第六……天魔王……が……揃えし……魔軍将が、一……安倍晴明……」
『ッ、ッ――!!』
身廊より迫るロベルタと、側廊から強襲する墨。先に何方に應じるか。
より速い方に應じるとして、初撃を躱すか、受け止めるか。
別々の方向から迫る二人を同時に映した清明には、限りなく凝縮された時の中で諸有る選択肢を用意し、且つ、そのどれもが許されていたろうが、其こそ|煩惱《まよい》であるとは墨の言。
遅れること一拍して少女の右脚を十字槍に受け止めた男は、まるで壁に叩き付けられたかのような衝撃に瞳を白黑させた。
「Orme della stella del mattino! “器”の奧、魂まで響かせてあげるんだじょ♪」
『ぐ、ぉ……!!』
差し出した槍の柄をミシミシと搖らしたのは、凄まじい鬪氣を纏った【|魔王の足跡《ルシファス・ショット》】!
かの繊躯の何處から引き出したか、骨を砕かんばかり超重量に清明が蹈鞴を踏めば、今度は墨が身を低く床面を滑るように駆けざま、鯉口を切る。
「もう……そろ……ろ……骸の海へ……還って……戴……ます……」
『ッ、ッッ!!』
嗚呼、この距離ならば墨の|繊細《かぼそ》い聲が佳く聽こえる。宛らヒヤリと冱える刃のように。
櫻脣を擦り抜ける訣別を聢と聽き拾った清明は、刻下、かの軍神を斬った『真柄斬兼元』が美し互の目乱刃を暴き、既に描かれた致命の劍筋をスッ――と|捺擦《なぞ》るのを見届けるしかない。
「滅せ……」
逆袈裟に一気に閃くは、|神滅《カミゴロシ》 弐之太刀『|神裁《カミタチ》』――!
魔神の如き劍氣を帯びた刃が白光一筋を燦かせて須臾、其を追うように血華が絢爛と咲き亂れ、錦の陣羽織を赫々と染め上げたッ!
『……カ……ハ、ッ……!!』
魔王と魔神。宿す力は違っても、ユーベルコードの本質は全き同じ。
超高速且つ超威力の二連撃は、「ぱらいそ預言書」が未來を記述する速度を上回って炸裂し、時には盾にもなる槍と書物を封じに掛かる。
『ハ、ハ……ッ、クルセイダーが受ける筈だった苦痛を、私が受け取る事になろうとは……これも|業《カルマ》か……っ』
蓋し清明は、悲鳴を叫ぶに口角を持ち上げる程には耐性がある。
二人のユーベルコードが持つ唯一の弱点、餘りに強大なパワーを持つ故に無防備になる瞬間があると見切った男は、刀鋩を天に駆け上がらせた瞬間の墨を睨め、十字槍を振り被った。
『これだけ近付いて戴きましたから。私の苦痛、貴女にも分けて差し上げましょう』
預言書には、もしか絶技を耐え切った「後」に攻略の筋があると記されていたろうか。
初撃を掠めでもすれば、墨を文字通り“骨抜き”にした槍撃は、然し、この距離にあっても命中を得なかった。
「……私ば……り見て……て……いい……ですか……?」
『な、に――』
「うぇ~い♪ 晴明にーちゃん……お覺悟ー!」
ハッとして佳聲を辿れば、我が頭上にはロベルタ。
時代劇めいた、そして幾分にも遊び心のある科白を連れた少女は、攻撃直後、無防備になる瞬間を埋めるよう接近、熾える鬪氣に火炎属性を付与して打ち落とす。
重力に乗算して垂直墜下する蹴撃は、炎を纏えばまるで火球だ。
「僕の蹴りが火を噴くじぇ~♪」
(『ッッ、二人で間隙を埋め合う、と……!!』)
花のような少女達を手弱女と侮った瞬間は無かったが、墨とロベルタの|連携《コンビネーション》が、清明を、預言書を上回る。
全き同時でなく、微妙に拍をずらした攻撃が功を奏したか、靜なる墨に對して動なるロベルタが惹き付けた|爾後《あと》は、また墨が時を預って斬撃を繰り出した。
「……全力、で……踏み込み……力の限り……振り払い……斬る……だけ……す!」
二度目の【神裁】は先刻より深く、鋭く。より懷に入るほど槍撃を躱せると知れば躊躇うまい。
墨は呼吸を亂すこと無く刃鳴一閃、槍の間合いを潜るように『兼元』を胴部に走らせると、どぶり赫黑い血が溢れる中に臓物が零れ落ちる音を拾い、そと、長い睫を伏せるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ピオニー・アルムガルト
貴方、後ろになにか憑いてるわよ。ここ、ちょうど大聖堂だしお祓いでもして貰った方が良いんじゃない?え、浮いてる貴方が晴明なの?
ゾンビばかり増やして少し悪趣味じゃないかしら。生命は終われば土に還るもの。無闇に弄くると罰が当たるわよ。
基本、強敵には名乗りをするわね!真の姿(太陽の神様の力を借りた金髪の子)にもなっておくわね。
光線は野生の勘で射線を読みながら、ちょうど良い盾になりそうな秀吉を盾にしながら動くわ。当たらなければどうって事はないわね!
秀吉達は高貴なる紅に技量を乗っけた数勝負で押しきる!
クルセイダー!まだ居るなら、躯を乗っ取られたのが本意ではないのなら、最期の意地を見せてみなさい!抗ってみせなさい、男の子でしょ!
と、呼び掛けで動きが止まってくれたらありがたいけど、止まらなくても隙を縫って拳で一発ぶん殴って目を覚まさせてあげるわ。結局は倒すけど!
『カ……ハ、ッ……!!』
どぶり赫黑い血を溢れさす男の前、ぱらいそ礼拝堂が新たな猟兵を招き入れる。
壮麗な高天井に澄み渡る佳聲は小夜啼鳥の如く、美しく|終末《おわり》を告げ……はしなかった。
「貴方、|背後《うしろ》になにか憑いてるわよ」
ちょんちょん、と男の左肩の上あたりを示す繊指。
眞直ぐ伸びる玉臂を辿れば、首を少うし傾げたピオニー・アルムガルト(ランブリング・f07501)が一花。
兩手斧『ヒッツェシュライアー』の石突を床にこつり、刃先を眞上に向けた佳人は、滿月に似た金彩の瞳をぐうるり巡らせると、片手を翳して云った。
「ここ、ちょうど|御聖堂《おみどう》だし。お祓いでもして貰った方が良いんじゃない?」
『……は、は……御祓と』
眞赫に染まった口を拭い、乾いた嗤笑を零す男。
ピオニーは何気なく云ったか知れぬが、陰陽師を名乗る者には中々の皮肉に聽こえたろう。
『痛みの餘り、躰から離れてしまいましたか……お恥ずかしい事です』
「え、浮いてる貴方が晴明なの?」
『……えぇ……はい』
織田信長が揃えし魔軍将が一、『安倍晴明』にここまで気拙い思いをさせた者は居るまい。
魔軍将ゾンビの量産化を企てているのは“浮いてる方”かと視線を結んだピオニーは、ハッキリ云ってやった。
「貴方、ゾンビばかり増やして少し悪趣味じゃないかしら」
『少し悪趣味』
「ええ、生命は畢れば土に還るもの。無闇に弄くると罰が当たるわよ」
ただ叱るでなく、柔かく摂理を説く。まるで隣の家に住んでいる面倒見の佳いお姉さんのよう。
そんな彼女には清明すらペースが握られるが、噫、今回が最終決戰だったと瞳を瞬いた佳人は、基本に則る形で堂々名乗りを上げる。
「私はピオニー・アルムガルト! あなたをやっつけに來た猟兵よ」
何も隱す事は無いと兩手斧を構えた瞬間、澎湃と溢れる鬪志が光となり、夜藍の髪を一瞬で|金色《ブロンド》に――陽を浴びて瑤々と穂を搖らす麥秋の如くする。
太陽の神の力を借りた佳人は、刹那、朦々と膨れ上がる昏闇――『豊臣秀吉』の大群が斜線を塞ぐのを視るや、驒ッと爪先を蹴った。
「まっくろ毛玉に姿を隱すなんて、やっぱり貴方、|後暗《うしろめた》い事があるのね!」
ぱらいそ預言書が未來を書き出すより迅く、戰斧閃々ッ! 赫灼を帯びる刃に炎を迸る。
花顔を照らしたのは、【|高貴なる紅《エンプレス・スカーレット》】――炎々と熾ゆる紅蓮の矢が放射状に放たれた瞬間、的を結んだミニ太閤が次々と消滅し、一度は塞がれた道を覗かせた。
『ッ、フェンフェーン!!』
『フェンフェンフェン!!』
斧刃一揮して640本。これをブンブン振り回して進むピオニーを止める術は、モジャ玉達には無い。
『数を数で押すと。ならばこれで如何です』
「毛玉を盾に――そう來ると思ったわ!」
ピオニーに預言書は無いが、清明の戰術は“読める”。
何せ己も秀吉を盾に動こうと思っていたと、勘を鋭く槍撃を躱した彼女は、己の代わりファッファッと消える毛玉を眼眦に送りつつ、灼光する斧刃に槍の軌跡を手折りまくった。
「命中らなければどうって事はないわね!」
『くっ、まだ槍が馴染まぬか……ッ』
忌々しげに翠眉を顰める清明を見て気付く。
誤差が生じていると悟った瞬間、ピオニーは肺腑いっぱい息を吸って聲を張った。
「クルセイダー! まだ居るなら、躯を乗っ取られたのが本意でないなら、最期の意地を見せてみなさい!」
『、ッ』
「抗ってみせなさい、男の子でしょ!」
聖堂中に響く程、男の肌膚を打つ程、微かにある魂に向けて呼び掛ける。
名を呼ばれたのは、志半ばに散り掛けたクルセイダー。初めて存在を認められた靑年は、全き本能で反應したか――ぎゅうと書を握って制止した。
『……ッ、ッッ……』
脣を眞一文字に結び、「莫迦な」と囀る事も許さず。
一瞬ではあるが、慥かな反抗を瞶たピオニーは靜かな首肯をひとつ置くと、拳を一發ッ、力一杯ブン毆った!!
「――男の子じゃない」
結局は倒すのだが、その前に目を醒ます。
その一瞬があって佳かったと、金瞳は晃々、曙光を浴びたように輝いていた。
大成功
🔵🔵🔵
矢来・夕立
同じ映画を何度も観るのって好きじゃないんですよ。
同じ相手を殺すのもそう。オレはきちんと殺しました。一度殺したら死んでもらわないと暗殺者としては困ります。
あと、終わったお話を引っ張り出して作った映画は余程上手くやらないとコケがちです。
《紙技・冬幸守》。何が起きるか書いてあろうと数の暴力を潜り抜けるのは簡単ではない。
一撃で消える奴らはコレで一掃できます。
あちらの手数については礼拝堂の地形を利用しましょう。
まず装飾的な建築物ですから、【闇に紛れる】余地はある。
それから槍の動き方にある程度制限がかかりますんで、完全な屋外戦闘よりは軌道を読みやすいと思います。
まあ槍を受けるまではいいですよ。でも骨が溶けるのは流石に勘弁願いたいのでね。
極力隠れながら避けます。
式紙、特に『朽縄』『幸守』『禍喰』あたりを使えば上下移動も可能ですから、回避の手立ては十二分にあるでしょう。
倒したハズの黒幕が全ての背後に居た、というのも定番ですが、そろそろ幕も引き時でしょう。死ね。
先に視た予兆で、かの男は「滑稽で無樣な景色が見たい」と言っていた。
そして、己が口から出た言葉が己に返って來るとは云ったものだ。
『くっ……ハァ……ッ』
「――成程、これが見たかった景色と」
連撃を浴びて赫黑い血を流すが滑稽か、否。
奸策破れ劣勢に追い込まれるが無樣か、否。
先の大戰で猟兵に破れていながら、何食わぬ顔で「器」を變えて現れるなど、抑もが滑稽で無樣なのだとは、鳥取城で彼奴に刃を突き立てた本人が零そう。
どぶりと他人の臓腑を轉び出す無礼者の前に立った矢来・夕立(影・f14904)は、これと同じ陳腐を見た事があると言を継いだ。
「オレ、同じ映画を何度も觀るのって好きじゃないんですよ。――同じ相手を殺すのもそう」
|全《まる》で|些末《つまら》ないものを瞥るように、赫血に染まる男を射る。
白金の髪を振り亂してはいるものの、この男は慥かに屍人の王、陰陽師『安倍晴明』であると麗瞳を眇めた夕立は、先の戰でも使った蝙蝠の式紙『幸守』『禍喰』を繊指より飛び立たせながら囁いた。
「オレはきちんと殺しました。この手で、慥かに」
『フ……フ……ッ、此れは因果な』
「一度殺したら死んで貰わないと、暗殺者としては困ります」
『……故に、|二度《ふたたび》私を殺めに來た訳ですか』
肉体の損傷は激しくとも、死を超越した魂は皮肉を返す程には餘裕がある。
知らず彼の評価を貶めていたと自嘲した晴明は、足元の血溜りに差す影を沸々と滾らせると、其處からモジャモジャと『豊臣秀吉』を召喚し、忽ち幾千と膨れ上がる漆黑の毛玉に我が姿影を隱した。
『然し私とて、二度も殺されては恥というもの』
ミニ太閤で進路を塞ぐ間、ぱらいそ預言書に記される未來を読むか――。
刹那に消える毛玉とて、幾千幾万と湧けば時は秒となり分となろう。数の暴力を潜り抜けるのは然う簡單でないと、スッと眼鏡を持ち上げた夕立は、緋の烱瞳に射止めて三秒。朦然と膨れ上がる毛玉を黑翼の羽搏きに切り裂いた。
「“三つ”は“滿つ”にして“充つ”。|呪《まじな》いは音と数に」
『フェンフェンッ!! フェーンッ!!』
太閤を殺めるは【|紙技《カミワザ》・|冬幸守《フユコウモリ》】。
右翼より翔けた『幸守』と左翼から滑った『禍喰』がX字に交点を結ぶや、礼拝堂に溢れかえっていた毛玉が一瞬で消失し、虎落笛の如き羽音を響かせた奧に首魁の姿を暴き出す。
この時、一瞬の|靜寂《しずけさ》に染む佳聲は、やけに肌膚に迫ったろう。
「あと、御存知ですか」
『ッ、何を……』
「終わったお話を引っ張り出して作った映画は、餘程上手くやらないとコケがちです」
其は只の経験則。
然し言外に晴明の稚拙を示しているとは、本人も痛烈に感じよう。窈窕たる含笑に舌打ちが隱れる。
とまれ預言書に記された通り、ここは十字槍で薙ぎ払うべしと踏み込んだ晴明は、槍鋩を嫌って物陰に遁げる夕立に“一瞬は”勝機を見たに違いない。
『おや、太閤が消えた今が好機でしょうに』
「斷ります。刃撃はまだしも、骨が溶けるのは流石に勘弁願い|度《たく》」
会話の方向が辿れたのは、|其限《それきり》。
此度の本丸は礼拝堂、西洋建築に似た装飾が多いと『朽縄』を延伸させるや垂直方向に遁れた夕立は、聖像や柱陰を跳び渡って追撃の鋩を撹亂させる。
闇に紛れつつ攻撃が読めるのは、槍の得物としての動きを識る上、屋内では更に軌道が絞られると把握する故にだ。
(『ッ、ならば預言書を――』)
而して幾許の焦燥が紙面へ目を滑らせたのが失策。
預言書と視線が結ばれる延長線上、その上方から飛燕の如く現れた夕立は、|片《ヒラ》と飜る『夜来』なる翼から災厄の刃を暴くと、延髄めがけて切り付ける――!
「倒したハズの黑幕が全ての背後に居た、というのも定番ですね」
(『ッ、|眞後《うしろ》――!』)
愈々|首級《くび》を狩るという最中にも、丹花の脣は淡々と映画の定石を告ぐ。
だからこそ死の瞬間は克明に、肝を、魂を凍らせるのだ。
「ですが、そろそろ幕も引き時でしょう」
『ッ……ッッ!!』
柄の長い十字槍では間に合わぬ。
未來に頼った清明は、|過去《かつて》、己が今際に耳にした言葉を漸と思い出したか。
「死ね」
あの時と同じ科白を突き立てる。
而して繁噴く血を受け取る。
矢張り同じ映像を觀るほど飽くるものは無いと、冷然たる白皙に赫々と血華が咲き亂れた。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
クルセイダーの思想はどこまでも|自分本意《エゴイズム》で、凡そ天下の救いに成り得る信念は無い
立身栄達によって下層階級出身でありながらも天下統一を果たし
天下人、関白まで上り詰めたとされる祖父
徳川の世に、その家名を取り戻そうとした野心は
猟書家を率いることでの国家転覆を目的としていた
だが。真偽が定かではなかったとしても。その実直な誇りに嘘は無かったのだろう
|エンパイアは僕から全てを奪い。代わりに別の生き方を導いてくれたから《いっそ、織田信長がエンパイアを滅ぼすならそれも盛者必衰の理であった故にこそ》
僕は…彼を羨ましく思っていたのかもしれない
何処までも惨めで、救いようのない|末路《 男 》だ
◆ブーステッド・オーヴァード
だからこれは燻り続ける恩讐、痕から流れ出る膿、僕の悪性そのもの
総ての|業《 カルマ 》を曝け出せ…!!
十字槍「人間無骨」
チェーンソー剣二刀・双神殺
その両方を金剛身で武器受け+激痛耐性
金丹仙薬による限界突破+ドーピング
再生力任せの怪力を、グラップル+重量攻撃を、ただひたすらに乱れ撃ち
先に対峙した島原一揆軍は、脚が捥げ、頭を吹き飛ばされた程度では死なぬゾンビとなっていた。
彼等に不死の力を授けた男も然り。
陰陽師『安倍晴明』は、クルセイダーより借りた臓腑を零し、吐血流血して猶も永らえる無惨を晒していた。
『フ、フフ……ゴフッ……この首を德川に差し出し、一揆を鎮めたと觸れますかな……』
この首にはまだ価値があると、皮肉を|囁《つつや》く程には餘裕がある。
痛撃に歪みつつも含笑を崩さぬ男を前にした戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は、蛮勇と貶められた「器」の影から沸々と黑塊が滲み出るのを見つつ、嚴然と口を開いた。
「クルセイダーの思想はどこまでも|自分本意《エゴイズム》で、凡そ天下の|救済《すくい》に成り得る信念は無く」
『曰く、預言書の御思召と。實に健気でありました』
ヒュウヒュウと咽喉より|呼吸《いき》を漏らして言が返る。嗤笑っているのだ。
晴明にとっては格下だろうが、蔑む相手に非ずと無言を挟んだ蔵乃祐は、視界を塞ぐように膨れ上がる毛玉を見るや驀進――! 血に拠って喚び召された『豊臣秀吉』の大群を、剛拳の閃きに撃ち落とした。
「立身栄達によって、貴にあらぬ身ながら天下統一を果たし、天下人、関白まで上り詰めたとされる祖父――豊太閤」
『フェンフェン!!』
『ッ、フェーン!!』
怪腕の一振りで毛玉が蹴散らされるのは、軍神と袂別して後、『金丹仙薬』を服した故に。
一時的とはいえ、肉体を不老不死状態まで励起した彼は、創痍損耗は覺悟の上と、身ごと突撃槍の如く一点突破!
鮮烈な拳撃で漆黑の闇を晴らすと同時、『ぱらいそ預言書』に目を落としていた晴明へ一氣に肉迫した。
「德川の世に、その家名を取り戻そうとした野心は、猟書家を率いることでの国家転覆を目的としていた――」
『ッ、電光石火……!!』
「而して預言が野心を援けた」
流石の晴明も、まさか幾秒の猶予も許されぬとは思ってもなかったろう。
轟と伸びる腕に飛び退く事さえ出來なかった彼は、開いた儘の預言書を摑み取られて漸と己の不覺に――否、蔵乃祐の迅速に舌打ちした。
「……眞偽が定かではなかったとしても、その実直な誇りに嘘は無かった」
『御僧、猟兵、ッ!!』
らしからぬ聲を張り上げるも間に合わず。
晴明が瞠目する中、蔵乃祐はクルセイダーが命運を預けた預言書を力任せに裂き、破り棄てる――。
未來を読む術を封じる以上の意図があるとは、|飄々《ヒラヒラ》と紙片の散る奧、彼の表情が万の言葉を代わろう。
|エンパイアは僕から全てを奪い。代わりに別の生き方を導いてくれたから《いっそ、織田信長がエンパイアを滅ぼすならそれも盛者必衰の理であった故にこそ》
僕は……彼を羨ましく思っていたのかもしれない――。
「……何處までも惨めで、救いようのない|末路《 男 》だ」
漆黑の毛玉を吹き飛ばし、眞白の紙片を払った傑僧が、目下、眞の|神姿《すがた》を顕す。
靜かなるも熱い魂の情動に鬪志を漲らせた蔵乃祐は、躯を流れる血のすべて、研ぎ澄まされる神経のすべて、逆立つほど煮えゆく骨肉臓腑のすべてを絞り出して猛攻――! 超至近距離から毆撲刺突を亂れ打つッ!
「総ての|業《 カルマ 》を曝け出せ……!!」
『こっ、れは――ッッ!!』
此れは燻り続ける恩讐。
痕から流れ出る膿。
彼の悪性そのもの。
「雄雄雄雄雄――ッ!!」
其は槍の間合いで止められよう肉彈撃では無い。
まるで暴悪と云える金剛身と拳閃は、皮肉にも晴明が「戯れ」にと重ねた悪行を具現したかのような苛烈さで、不死なる故に飽いた男の魂へ、志半ばに斃れた器へ、悍ましい強さと迅さで終止符を打っていく。
かの男に|終焉《おわり》を與えるに、蔵乃祐は躯ごと呉れてやる勢いで猛打し、首を縊り、喉笛を裂き――。その赫々と輝く|業《 カルマ 》は、慥かに晴明の心を動かし、惹かれると手を伸ばした処で突き堕とそう。
『……噫、だから猟兵は……ッ』
だからこそ、猟兵は。
|些末《つまら》ない存在に成り果てた男は、骸の海に沈むその間際まで痛みを味わい、陶然と身を砕いていくのだった。
大成功
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