7
闇の救済者戦争⑨〜オムネス・プロ・マドフィケイション

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #闇の救済者戦争

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#ダークセイヴァー上層
🔒
#闇の救済者戦争


0




●花園は戦火に歪む
 美しい花園。
 それはこの暗闇の世界ダークセイヴァー、その第四層においてはさながら天国を思わせる光景であった。
 そこに響くは剪定の音だった。
 しゃきん。しゃきん。
 小刻みの良い音。だが、それだけではなかった。響くは悲鳴。絶叫。痛みに喘ぐ声は、絶え間なく響き続けている。
 凶行の音とは裏腹に花園の美しさは暖かさを齎すものであった。
「うむ。やはり人間はよい養分であるな」
 凶行の主、怠惰の王『ジャルディニエ』は満足げにうなずいていた。

 彼の目の前にあるのは剪定を終えた人間という名の養分であった。
 眠たげな瞳であったが、しかし、振るう園芸鋏は鋭く翻り、彼が見立てる人間の指を跳ねる。
 悲鳴が上がる。
 だが、それがまるで彼には聞こえていないようであった。
「ふむ。少し短く切り詰めたか。もう少し切ってもいいな」
 やめて、という言葉すら聞こえない。
 見えているのだろう。けれど、まるで意に介した様子はなく、その鋏が人間の指を寸断する。
 血潮が地面に滴り落ちる。
「やはり痛みは良いな。長く続く。色褪せることなく、その痛みによって花はより一層美しくなる。痛みこそが極上の養分だ」
 怠惰の王『ジャルディニエ』は笑む。
 満足げな笑みだった。
 彼が見つめる人間は彼の臣民。この花園に訪れたものは皆、己の臣民である花のためにあるのだ。
 この花園は『祈りの双子』によって与えられた『現実改変ユーベルコード』によって構成されている。
 偽りの楽園と呼ぶ者もいるであろうが、怠惰の王『ジャルディニエ』にとっては意味のない言葉であった。

 自らと、己の臣民たる花が在る。
 それで充分なのだ。
「怒りは強烈だが永続しない。哀しみは薄れていくし、喜びは揮発していく。やはり痛みだな。これこそが永続するものだ。人間など我が花園の養分にしかならん。血潮は枝葉を潤し、肉骨は肥やしになる。そして、人間の痛みはそれらを一層より良いものとする」
 悲鳴が上がっている。満ちている。
 だが、それでも。
 彼には人間の声は聞こえない。
 怠惰の王『ジャルディニエ』にとって、人間は臣民たる花たちの養分でしかないのだから――。

●闇の救済者戦争
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。ダークセイヴァー世界、第四層において『祈りの双子』によってオウガ・オリジンが有していた『現実改変ユーベルコード』を移植されたオブリビオンの存在が確認されました」
 彼女が示すのは第四層にありながら天国の如き暖かな光を放つ花々に囲まれた花園。
 どう考えても第四層の光景ではない。
 これこそが『現実改変ユーベルコード』によって生み出された偽りの楽園である。

 その花園に座すのが『現実改変ユーベルコード』を移植された主、怠惰の王『ジャルディニエ』である。
 彼等は強力な『現実改変ユーベルコード』によって、この花園に迷い込んだ人間たちを花々の養分として痛めつけながらゆっくりと絶命させることに腐心している。
「怠惰の王『ジャルディニエ』……彼が『現実改変ユーベルコード』によって、用いる法則は『花園に踏み込んだ者の生命を花々に吸い上げさせる』こと。そして、その生命吸収は、花々を通して怠惰の王『ジャルディニエ』へと流れ込んでいます」
 あまりにも理不尽である。
 猟兵たちはこの花園に踏み込んだ瞬間から、抗いがたい生命吸収能力によって劣勢を強いられるだろう。

「ですが、強力過ぎる『現実改変ユーベルコード』によって怠惰の王『ジャルディニエ』は倒しやすくなっています」
 其の言葉に猟兵たちは疑問を抱く。
 敵はこちらの生命力を吸い上げる花々という『現実改変ユーベルコード』を扱う。
 ならば、倒し難い、というのが正解ではないかと。
 ナイアルテは頷く。
 それもまた正しいと。元より『現実改変ユーベルコード』は強力であることは言うまでもない。
 世界法則たる『生命力を吸収する』という力。
 だが、怠惰の王『ジャルディニエ』は、その吸い上げた生命力を十全に扱えていない。
「皆さんの生命力が強大である、ということでもあるのでしょう。生命力を吸い上げ続けることはできても、それを蓄える器がないのです」
 つまり、吸い上げても溢れかえって使えないということ。
 ならば、その器以上に攻撃を叩き込めば……。

「そういう意味で与し易い相手、といえます。とは言え、危険であることには代わりありません」
 ナイアルテは予断と油断を許さぬ状況であることを説明し、猟兵たちを送り出す。
 鮮血の濁流に世界を飲み込ませぬために。
 そして、目指す第二層へと至るために。
 猟兵たちは、困難に立ち向かっていくのだ――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『闇の救済者戦争』の戦争シナリオとなります。

 楽園の如き花園にて人間を養分にして花々を育てる怠惰の王『ジャルディニエ』を打倒するシナリオになります。
 彼は『祈りの双子』によって移植されたオウガ・オリジンの『現実改変ユーベルコード』によって、これら偽りの楽園を形成しています。

『現実改変ユーベルコード』によって彼が得たのは『花園に踏み込んだ者の生命を花々に吸い上げさせる』ことにより、己の生命力と為すという世界法則。
 強力なユーベルコードである『現実改変ユーベルコード』に対処するのは難しいことでしょう。

 ですが、怠惰の王『ジャルディニエ』は、その吸い上げた生命力の全てを十全に扱えません。
 許容量以上は蓄えられないため、一気に攻撃を叩き込むことなどすれば、勝機も見出だせるでしょう。

 プレイングボーナス……「現実改変ユーベルコード」に対処する。

 それでは、『鮮血の洪水』を防ぎ、己の弱点をひた隠しにしようとする闇の種族を打倒する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
273




第1章 ボス戦 『怠惰の王『ジャルディニエ』』

POW   :    斬首に処す
【巨大な園芸鋏】が命中した対象を切断する。
SPD   :    頭を垂れるがよい
【大鴉の翼】を使ってレベル×5km/hで飛翔しつつ【甘き花の香を乗せた南風】を放ち、命中した対象全員の【厭戦感】を活性化する。
WIZ   :    余に身を捧げよ、臣民たちよ
自身の【庭に咲く美しき花々の首】を代償に、【花々への哀惜の念】を籠めた一撃を放つ。自分にとって庭に咲く美しき花々の首を失う代償が大きい程、威力は上昇する。

イラスト:西東源

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はヴィルジール・エグマリヌです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヤーガリ・セサル
現実改変には現実改変を。世の法則を書き換えるのは電脳魔術師の得手とするところですゆえ。
「電脳聖域生成」ハッキングも併用し、「この地の花は弱き者の略奪者である」と定義し、現実改変ユーベルコードに対抗。
馬鹿な王様が気付かぬうちに、生命力を吸い取る量を減らしていきましょう。
慢心こそが敗因を呼ぶものです。圧政者である王ジャルディニエに戦いを挑む猟兵たちは、弱きを守り強きを挫く存在、ですよね?

まあ、あたしは「わーやられるー」などと言いながら術式を行っているなど気付かれないよう努力しておきます。仕込みがばれたら問題ですからね。

偽の楽園と聖域の写し、どちらが勝つか勝負と行きましょうや。



 世界改変するユーベルコード。
『現実改変ユーベルコード』――それはオウガ・オリジンの持っていた尋常ならざるユーベルコードである。
 怠惰の王『ジャルディニエ』は、その力を『祈りの双子』により移植されている。だが、彼にとって、それは些細なことであった。別に『現実改変ユーベルコード』がなくとも彼は構わないとさえ思っていたのだ。
「私にとっては我が臣民たる花だけが全て。それ以外の何物も必要ないのだ。我が花園に踏み込みし愚か者よ」
 眠たげな瞳のまま黄金の園芸鋏を打ち鳴らす。
 刃と刃が交錯する音が響く。

「現実改変には現実改変を」
 ヤーガリ・セサル(鼠喰らい・f36474)は左手に開かれた電子魔導書の輝きを見やる。
 確かにオウガ・オリジンの『現実改変ユーベルコード』は凄まじい。されど、オンロエが手繰る電脳魔術もまた世界の法則を書き換えるもの。
 彼の瞳がユーベルコードに輝く。
 手繰り寄せるは虚数。
 敵がこの花園一体を改変によって生み出したというのならば、己の力の及ぶ範囲を電脳魔術によって改変する。
「私は聖なる言葉で、虚数に呼びかける。今は遠き我が君ターマイェンよ……」

 示す。
 ユーベルコードの輝きは示す。
『弱気を守り強きをくじく世界に』
 即ち、『この地の花は弱き者の略奪者である』という定義を押し付ける。花園全てに及ばぬまでも、しかしこの花園に踏み込んだ者の生命力を奪う花々という法則を捻じ曲げる。
「おお、愚かなる者よ。お前たちが踏みつけている花々の尊さを知らず、我が臣民を足蹴にするというのならば、私はお前たちの首を断ち切り、即座に血肉を彼等の養分として贖わねばならぬ」
 怠惰の王『ジャルディニエ』は手元にあった花の首を断ち切る。
 鮮血のような花弁が舞う。
 その最中、ヤーガリは見ただろう。その悲哀に満ちた瞳を。
 眠たげな瞳の中に悲哀を。

 それはなんたる傲慢であろうか。
 己で断ち切った花を愛おしげに愛でながら、その黄金の鋏をヤーガリに振るうのだ。
「それを慢心と呼ぶのです圧制者」
 ヤーガリは迫る黄金の鋏を受け止める。
 血が流れる。
 その赤を、鮮烈なる赤色を見遣り怠惰の王『ジャルディニエ』は笑む。血潮こそが己の臣民たる花を咲かせる要因である。
 だが、ヤーガリは物憂げな瞳でかの王を見やる。

 傲慢。不遜。
 目の前の存在は生命を見ていない。生命を見ず、さりとて花を愛でる矛盾。
 吸い上げられる生命力は、目に見えて減っているはずであろう。だが、『ジャルディニエ』は気が付かない。
 なぜなら、そこに頓着していないからだ。
 彼にとって必要なのは、花たる臣民のみ。それさえあれば、他の瑣末事であると切り捨てる。故にヤーガリの目論見は達成される。
「偽りの楽園と聖域の写し、どちらが勝つか勝負と行きましょうや」
「我が楽園を偽りと申すか」
「ええ、傲慢であり怠惰たる王にとっては、それが似合いでしょうや。結局、王と言いながら人ではなく花を臣民としているのですから。そんな王が」
 圧政を敷く王に立ち向かう己たちが。
 弱気者のために戦う者であるのならば、電脳聖域生成(ターマイェンズ・サイバー・サンクチュアリ)は応える。

 真逆たる力の作用。
 それに気がつけぬ怠惰の王は、ヤーガリの目論見に気が付かぬままに、その力を減ぜられていく。
 己が滅びの道に差し掛かっていることも理解できぬまま。
 それをヤーガリは正すことなく告げるのだ。
「王冠を戴いているっていうことがそもそもの間違いでしょうや――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
『現実改変ユーベルコード』、そして『ライトブリンガー』の権能「フォーミュラの能力を移植する【Q】」。
脅威と言う他ありませんね

賦与されたオブリビオンが強大である程に、即製で偽りのフォーミュラを作り上げてしまうのと変わらない効果を持ち得てしまっている

しかし、一方で
権能を御し得ないオブリビオンであれば謂わば粗製
膨大な力に振り回されるあまり器の強度自体が脆くなってしまっている始末

所詮は使い捨てと高を括っているのかもしれません
この勝機は逃さない

◆ブーステッド・オーヴァード
生命力吸収。望むところ!

激痛耐性+限界突破で肉を切らせて骨を断つ
再生力に任せて鋏を武器受けしながら怪力+重量攻撃のグラップル
粉骨砕身!



 世界を改変する力。
 それは嘗てオウガ・オリジンが持ち、猟書家たちが求めた力である。
 あらゆる世界法則を書き換える力。
 その力を移植するという力は、強大そのものだった。尋常ならざるものだ。如何なる権能を持てば、それが可能となるのだろうか。
「脅威と言う他ありませんね」
 戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は花園に足を踏み出す。
 確かに強大だ。
 そもそもがオブリビオン自体、猟兵以上の力を個として有しているのだ。『ライトブリンガー』の持つという権能。

「即製で偽りのフォーミュラを作り上げてしまうのと変わらない効果を持ち得てしまっている」
 だが、蔵乃裕は気がつく。
 どれだけ強大な力といえど、力でしかない。道具でしかないのだ。それを如何にして使うかが知性を持つ者の力であろう。
 故に強大な力に振り回されている以上、この花園のオブリビオン――怠惰の王『ジャルディニエ』の強度自体はもろくなっている。
 とは言え、そもそもが強大な存在である。
 巨大な黄金鋏の刃が煌めく。

「不敬。否、我が花園に許可なく踏み込み、我が臣民を踏みつけにした罪、万死に値する。斬刑に処す」
 踏み込む怠惰の王『ジャルディニエ』の姿を認める。
「所詮は使い捨てと、見放されていることに気が付かないとは」
 蔵乃裕は彼に移植された『現実改変ユーベルコード』が先行した猟兵によってげんぜられていることに気がついていた。
 生命吸収を行う花々。
 それは確かに脅威だ。吸収された生命力はそのまま怠惰の王『ジャルディニエ』へと注がれる。

 しかし、その生命力は器に留まるものだけが彼の自由になるものだ。
 こぼれたものは扱えない。
「器ではないというのです。そして、溢れ続ける器は、ひび割れていくもの! この勝機は逃さない」
 蔵乃裕の瞳がユーベルコードに輝く。
 上等であると思う。
 彼のユーベルコードは己の限界を超えたエネルギーを余さず扱う。溢れたエネルギーは己の身を覆い、筋繊維が次々と断裂していくのを感じさせるだろう。
 絶え間ない激痛が体を走り抜けている。
 軋む骨身は限界を超えた駆動を見せるが故である。

 踏み込んだ瞬間、花園の花々が揺れ、花弁が舞い散る。
「我が臣民を! よくも、踏みつけに!!」
 激昂たる表情を見遣り、蔵乃裕は咆哮する。
 怒りは瞬発力である。
 強大な力を振るうが、冷めやすい。霧散していく。けれど、己の肉体は限界を超えている。ブーステッド・オーヴァード。
 それこそが蔵乃裕のユーベルコード。
 限界を超えた駆動を見せる度に己の筋繊維が引きちぎれ、骨が軋み、神経が焼ききれていく。
 臓腑が燃えるように熱を持っている。

 黄金の鋏が彼の肉体を切り裂く。
 だが、それは薄皮一枚しか切り裂けなかった。身にまとったエネルギーが刃をほとんど通さないのだ。
「……馬鹿な。何故、我が鋏が断ち切れぬ。我が鋏は万物を切断するはず! なのに何故血潮を撒き散らさない!」
「肉を切らせて骨を断つ。望むところ! ですが!」
 蔵乃裕の拳が握り込まれる。
 エネルギーを溜め込まれた拳は、怠惰の王『ジャルディニエ』の顎を穿つ。
 だが、その一撃では終わらない。

「この連撃は止められますまい!」
 すでに己の筋繊維は断裂し、骨は亀裂走り、神経は焼き切れ、臓腑は炎症を齎す。故に、彼の拳は一撃の刹那に四連撃。
 音が遅れて耳に響く。
 強烈なる拳は怠惰の王『ジャルディニエ』の顎を砕き、肋骨を粉砕し、黄金鋏の刃に亀裂を走らせる。
 さらに踏み込んだ足は軸足として回転し、左右からの蹴撃を一瞬で解き放つ。
 吹き荒れる暴風の如き攻撃は、彼の生命力を散々に砕く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーわ、何処が楽園なんだか
純粋に趣味が悪いね
まあ慣れない現実改変で不便も起きてるみたいだし…
こんな楽園ぶっ壊してやろう

《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
剣で自傷し血を流し、【断章・焔ノ血】起動
周囲の花園を蒼き炎で燃やしつつ、紅き炎で奪われた生命力も回復
こんな楽園は必要ないよ
燃える花でどれだけの生命力が吸えるかな?
一方的な生命力吸収なんてフェアじゃないよね
だから楽園ごと君を燃やしてあげよう

楽園を燃やしながらジャルディニエに接近
『なぎ払い』や『串刺し』といった斬撃を叩き込みながら更に炎で燃やしていこう
さあ、こっから先は我慢比べ
どっちが先に音を上げるか…勝負といこうじゃないか!



 花園には悲痛なる悲鳴だけが満ちていた。
 寸断された傷口から滴る血潮が流れる度に、悲鳴はか細いものとなっていくだろう。そして、悲鳴の主は生命を喪う。
 だが、怠惰の王『ジャルディニエ』にとって、それは人ではない。
 彼にとっての臣民とは即ち花園に裂く花々である。故に彼に悲鳴は届かない。哀切なる懇願も届かない。
 だからこそ、猟兵が居る。
 撃ち込まれた拳に顎を割られ、骨を砕かれながらも怠惰の王『ジャルディニエ』は立っている。いや、負った傷が見る見る間に再生されていく。

 これこそが彼が移植された『現実改変ユーベルコード』による力。
 改変された世界法則。
 花園に踏み込んだ者は生命力を吸い上げられ、吸い上げたそれは怠惰の王『ジャルディニエ』のものとなる。
 即ち、これは消耗戦にほかならない。
 ただし、怠惰の王『ジャルディニエ』にとって一方的なアドバンテージでしかないが。
「我が体をよくも。いや、それ以上に許しがたいのは我が臣民たる花を踏みつけたこと。許せぬ。到底許せぬことだ」
 彼の手にした黄金鋏が煌めく。
 断ち切られた花を一輪手にとって、彼は己の首を切断されたかのように嘆く。

 その表情を見遣り月夜・玲(頂の探究者・f01605)は思わず、『うーわ』とつぶやかずに入られなかった。
 あまりにも趣味が悪い。
 純粋に嫌い。
 そう思うに至るのには十分すぎる光景であった。目の前の花園。偽りの楽園。いや、楽園という言葉すら必要ではない。
 ここにあるのは地獄。
「慣れない力を持ってるせいで振り回されているやつがさ、偉そうに言うんじゃないよ」
 抜き払った模造神器の蒼き刀身が煌めく。
 己の腕を切りつけ、血潮が流れる。
 その自傷行為は怠惰の王『ジャルディニエ』にとって、どうでもいいことだた。彼には人の見分けがつかない。人を人とは思わない。
 故に、玲が血を流していようが、その意図を理解できかねるのだ。

「こんな楽園は必要ないよ」
 瞬間、玲の瞳がユーベルコードに輝く。
 断章・焔ノ血(フラグメント・ファイアブラッド)。彼女の血潮は蒼き炎となって燃え上がる。
 膨れ上がった蒼い炎は、一瞬で周囲に荒び花園の花々を燃やしていく。
「貴様!!!」
 激昂。そう呼ぶにの相応しい形相であった。
 己の肉体を傷つけられる以上に、怠惰の王『ジャルディニエ』は己が臣民たる花を傷つけられることを厭う。
 そして、同時に、燃え落ちる花々の中を玲へと突き進む。
 哀切を込めた一撃。手にした黄金鋏の鋒が玲へと叩き込まれる。だが、それを彼女は既の所で模造神器でもって受け流す。
 純粋な一撃。
 重たい衝撃波は玲の体を強かに撃つだろう。

 だが、紅き炎が吹き上がり、彼女の肉体を瞬時に癒やすのだ。
「一方的な生命力吸収なんてフェアじゃないよね。だから、楽園ごと君を燃やしてあげよう」
 この花園が『現実改変ユーベルコード』によって生み出されたものであるというのならば、花園事態を燃やす。
 蒼き炎は周囲に飛び散り、二人を炎に取り囲む。
 叩き込まれる斬撃が打ち合い、火花を散らす。
「貴様ぁッ!!!」
「こんなの楽園じゃないよ。ぶっ壊してやる」
 趣味が悪い。絶対に仲良くなれない相手だと玲は理解するからこそ、己のユーベルコードでもって花園を燃やす。
 打ち合い、体が軋む度に紅き炎が体を癒やす。
 同時に怠惰の王『ジャルディニエ』もまた花園が吸い上げる生命力でもって肉体の損壊を復元していく。

「さあ、こっから先は我慢比べ。どっちが先に音を上げるか……」
「不遜! 我が臣民を燃やした罪は、贖ってもらう! 我が黄金鋏が貴様の首を!」
「そのつもりはないよ。これは勝負だよ!」
 振るう斬撃が蒼き炎と共に煌めいて、黄金鋏と打ち合う。その度に黄金鋏の刃は刃こぼれを起こすように砕けていく。
 明らかに敵は脆くなっている。

 それは強大な『現実改変ユーベルコード』を移植された弊害であろう。
「なら、大きすぎる力に振り回されているってことでしょ! 持ちなれない力に振り回されてるようなのに、負けるわけないじゃん!」
 黄金鋏を跳ね上げ、玲の手にした模造神器が怠惰の王『ジャルディニエ』を袈裟懸けに切り裂き、返す刃が彼の肉体に消えぬ十字を刻み込む――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
元気爆裂超元気な藍ちゃんくんの生命力を!
吸い尽くせまっすかー?
ではではステージメテオなのでっすよー!
臣民を代償に攻撃することを厭わない王様なのでっす!
きっとステージ落としも躊躇なく避けることを選択するはず!
ですが!
そうすれば花畑は藍ちゃんくんのステージに早変わりなのでっす!
はてさて首を断つ花畑は残ってますかー?
ステージの下敷きな花々の首を断てますかー?
遺ってたとして、さて、我が身可愛さに犠牲にした花々の首は大きな代償と言えまっすかー?
民を護らず自分だけが生き残る道を選んだ時点で、王様でもなんでもないのでっす!
ファンあってこそのアイドル、民あってこその王なのでっす!



 振るわれた斬撃の見せる十字は鮮烈そのものであった。
 しかし、『現実改変ユーベルコード』によって吸い上げられる生命力によって、怠惰の王『ジャルディニエ』の傷はふさがっていく。
 この花園にある限り彼の生命力は無尽蔵。
 此処に足を踏み入れる者が居る限り、彼の傷は癒えていくのだ。
 しかし、間髪入れずに猟兵たちは果敢にも彼へとユーベルコードを叩き込んでいく。

「無駄なことをする。この花園にありて我が臣民があるかぎり、我が滅びることはない。何故ならば」
『現実改変ユーベルコード』の力は強大そのもの。
 この力がある限り滅びとは縁遠きものである。例え、猟兵たちが如何なるユーベルコードを叩き込んでくるのだとしても怠惰の王『ジャルディニエ』は己の滅びを想像することすらしなかった。
 だが、そんな彼の頭上に影が落ちる。

 それは巨大なステージであった。ステージある、とわかるのは多くの照明器具や音響設備があるからである。
「な――」
「藍ちゃんくんでっすよー!」
 その言葉とステージと共に紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は怠惰の王『ジャルディニエ』へと落ちて来る。
「藍ちゃんくんオンステーッジ!(ワールド・イズ・アイチャンクーッン)これがステージメテオなのでっすよー!」
 藍の言葉と共に大質量たるステージが落下してくる。
 まるで空そのものが落ちてくるかのような光景に怠惰の王『ジャルディニエ』は眠たげな瞳を見開くしかなかった。

 そう、藍は考えた。
『現実改変ユーベルコード』は世界の法則を書き換えるユーベルコード。
 オウガ・オリジンがそうであったように、あらゆる世界の法則を書き換えることによって己の自由を得るものである。
 猟書家が狙ったのも無理なからぬ力。
 だが、藍のユーベルコードは改変された世界の上からさらに塗りつぶすものである。
 限定的であれど、しかし降り注ぐ巨大ステージは確実に怠惰の王『ジャルディニエ』を含む花園を砕くだろう。
 彼が躱しても良い。
 躱せば、確実に花園は潰れ煌めくステージが築城される。
 躱さなくても、その巨大質量によって怠惰の王『ジャルディニエ』は消耗するだろう。

「どうせ躱すでしょうかっらねー!」
 落下するステージが花園を踏み潰す。
 それは一瞬の出来事だった。彼の力が花園を起点としているのならば、その花園事態を砕けば良い。
 簡単なことだと藍は笑う。
 土煙が舞い上がる花園であった大地にそびえるステージの上で藍は怠惰の王『ジャルディニエ』を見下ろす。
「はてさて首を断つ花畑は残ってますかー? ステージの下敷きな花々の首を断てますかー?」
 藍は煽るようにマイクを向ける。
 マイクパフォーマンスじみたたことをしながら、藍は怠惰の王『ジャルディニエ』の憤怒に満ちた顔を見るだろう。

 吹き荒れるユーベルコードは『現実改変ユーベルコード』。
 藍のステージを侵食する花々。
 そのさなかに藍は歌う。
「我が臣民を押しつぶしておいて何をいうか!」
「民を護らず自分だけが生きる道を選んだ時点で、王様でもなんでもないのでっす!」
「王たる我が居てこその臣民である。臣民は再び生えてくるであろう!」
 砕かれた大地は再び『現実改変ユーベルコード』によって戻るだろう。
 だが、その戻る間こそが猟兵たちの攻勢を助けるものとなる。
 藍は、己のステージこそが生命力を奪う花々をこそくじくものであると知っているからこそ、マイクを手に取り謳い続ける。
「そんなの裸の王様そのものでっす! 何もわかってないのでっす! ファンあってこそのアイドル、民あってこその王なのでっす!」
 ならば、それは誤ちである。

 この戦いにおいてどうしうもないほどに掛け間違えたボタンそのもの。
 その歪は必ず怠惰の王『ジャルディニエ』を窮地に追い込むだろう。藍は輝くステージを侵食する花々の中、高らかに王の排斥を歌うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナータ・バルダーヌ
わたしの翼を奪った領主様も、よく似た嗜好の持ち主でした。
もう繰り返す理由は無いのですけど、倒すために必要なら仕方ありません。
いま一度、久しぶりにお付き合いしましょうか。

器を割るのは後続の方にお任せして、ひたすら溢れさせます。
【真の姿】になることで【∀.B.エヴォケーション】を発動、自身の回復力を高めます。
わたしの生命力ならいくらでも吸って構いませんけど、迷い込んだ方々の命はこれ以上奪わせません。
人々を【かばう】ように立ち回り、サイキック【オーラで防御】します。
負傷している方がいれば、同時に内なる念動発火で傷の回復を。
わたし自身への攻撃は敢えて防御しません。
【痛みに耐える】のには慣れていますし、矛先がこちらに向く分には好都合ですから。



 痛みによって人々を虐げる。
 それが怠惰の王『ジャルディニエ』の為すことであった。
 嗜好であると言っても良い。
 彼にとって臣民とは花園に咲く花々。それ以外は人間とすら思っていない。彼が虐げる人間たちは養分でしかない。
 血潮は水。
 肉骨は肥やし。
 痛みによる悲鳴は花々にとっての環境。それを嘯くのではなく、本当に信じているのだ。だからこそ、簡単に人間を傷つけることができる。
 何も厭うこともなく。
 良心の呵責もなく。
 ただひたすらに痛めつけることだけをするのだ。

 そんな怠惰の王『ジャルディニエ』は猟兵たちの攻勢によって窮地に追いやられていた。確かに彼が持つ『現実改変ユーベルコード』は強大な力だった。
 世界の法則を書き換える力。
 オウガ・オリジンが有し、猟書家たちが求めた力。
 この花園は踏み込んだ者の生命力を奪い続ける。そして、奪い続けた生命力は怠惰の王『ジャルディニエ』へと注がれるのだ。
 これまで猟兵たちが叩き込んだ攻勢によって、得た傷も塞がりかけている。
「わたしの翼を奪った領主様も、よく似た嗜好の持ち主でした。もう繰り返す理由は無いのですけど」
 けれど、とレナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)は己の過去を思う。
 吸血鬼に囚われ、玩具としてもてあそばれた過去。
 心は壊れ果てようとしていたあの日のことを思い出す。行き場のない復讐心が彼女の中にあった。

 それも過去のことだ。
 復讐をやり直しても、どれだけ行っても、力は暴走する。
 忘却の果てにあった記憶は今、己の中にある。
「貴様たちが我が臣民を!」
 空より落ちた猟兵の放ったステージが花園を砕いている。徐々にステージを侵食する『現実改変ユーベルコード』の花々。
 今は生命力を吸い上げる力は弱まっている。
 けれど、いつまた最盛たる力を取り戻すとも限らない。

 だからこそ、レナータは今こそ怠惰の王『ジャルディニエ』に囚われた人々を救い出すべきだと思ったのだ。
「今一度、久しぶりにお付き合いしましょうか」
 復讐の意味も。
 記憶も。
 もう繰り返して見ることはない。けれど、これはレナータにとって救うための戦いである。
 確かに怠惰の王『ジャルディニエ』は強敵だ。
 けれど、彼に虐げられた人々の息が、生命がまだあるというのならば救わねばならない。
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「今のわたしならできるはず……」
 そう、復讐に囚われたあの頃の自分でもなく。
 忘れた記憶に振り回される自分でもなく。

 今、己は自身の意志でこの戦場に立っている。
 ならばこそ、彼女のユーベルコード、∀.B.エヴォケーション(アルケインブレイズ・エヴォケーション)は己の胸のうちから生命の炎を熾す内なる念動発火によって、怠惰の王『ジャルディニエ』によって傷つけられた人々の傷を一瞬で癒やす。
 欠損した指も、腕も、目も。
 全て彼女の炎が暖かな光と共に人々を癒やすのだ。
「それは、我が臣民達への供物だ! 何をする!」
 激昂が響き渡る。
 悲鳴こそが花々へと注がせるものであると言わんばかりにレナータが施した治療は、彼に取って許しがたいものであったのだ。

 だが、レナータは頭を振る。
「わたしの生命ならいくらでも吸って構いませんけど、迷い込んだ方々の生命はこれ以上奪わせません」
 レナータは救った人々をかばうようにして立ちふさがる。
 迫る黄金鋏の一撃は確かに鋭い。
 けれど、遥かに威力が落ちている。そう、猟兵たちの攻勢が、戦いが、怠惰の王『ジャルディニエ』の力をそいでいるのだ。
 本来ならば防げぬ一撃。
 弾く音が響き渡る。オーラの防御は黄金鋏の鋒を受け止め、留めていた。

「我の一撃を防ぐ……十全ではないというのか!」
「そうなのでしょうね。確かにわたしは痛みに耐えることは慣れています。あなたの矛先がわたしに向く分には好都合だと言えるでしょう」
「くだらぬ真似をしてくれる!」
「これは守るための戦い。生命を奪われぬための戦いです。なら、護ってみせます――一緒に明日を迎えるために!」
 レナータの瞳が怠惰の王『ジャルディニエ』を射抜く。
 そうだ。
 そのためにこそ己は超克たる力を振るう。

 いつだってそうだ。
 自分の忘れていた記憶。力の意味。
 それを決めてきたのは自分なのだ。どうして戦うのかなんて、言うまでもない。誰かを守るために。
 己が得た痛みを誰かに強いることのないように。
「そのためには!」
 レナータはほとばしるユーベルコードが放つ炎と共に怠惰の王『ジャルディニエ』を押しのけ、背に守る人々を守り続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワタリ・イブキ
定命者の命を花の糧と為すか。
実にらしい傲慢さよ。
そして際限なく生命を吸い上げるこの庭園。
これもまた、らしい貪欲さよ。

じゃが、己の限度くらいは弁えるべきであったのう。
主では吸い上げたる生命を十全に扱えぬ。
主は、この花園の主として不相応。其を思い知るが良かろう。

振るわれる鋏の軌道を見切り、身を躱しつつ距離を詰める。
奴の必殺の一撃は、鋏で挟む動きから繰り出されよう。その動作に注意しつつ動いてゆく。
自らの攻撃を撃ち込む好機と見たら、敢えて奴が鋏を広げ待ち構えておる処に飛び込むも手やも知れぬがな。

距離を詰めたら、轟然たる一撃をその身に叩き込んでくれよう。
その身を守るに、奪った生命の力は役に立つまい?



 花園を砕いたステージを浸蝕していく『現実改変ユーベルコード』の力。
 花々は生命力を吸い上げる。
 だからこそ、その基盤たる大地を砕き、花々を押しつぶすことによって怠惰の王『ジャルディニエ』の傷を塞ぐ生命力を滞らせていたのだ。
 だが、それも『現実改変ユーベルコード』によって侵食されきってしまう。
 再び傷が塞がろうとしていた。
 けれど、その合間に猟兵が傷つけられ囚われいた人々を救い出す。
「定命者の生命を花の糧と為すか」
 漲る生命力。
 叩き込まれた猟兵たちのユーベルコードによる傷跡を塞ぐ力。
 怠惰の王『ジャルディニエ』の姿をみやり、ワタリ・イブキ(黒羽忍者/ブラックフェザー・f36634)は息を吐き出す。

 彼女は人間たちがあがく姿を見守る者である。
 手助けはしない。
 人は自らを助ける力を持っているからだ。自身がそれに手を貸すことは簡単なことである。彼等にとって困難なことであっても自らにとっては容易いことだ。だからこそ、それを為してはならぬという分別があった。
「だが、その傲慢さは許さぬ」
「我を傲慢というか! 我が臣民を砕き、なお我の玉体を傷つけるとは!!」
 怠惰の王『ジャルディニエ』の黄金鋏が剣呑の煌めく。
 確かに『現実改変ユーベルコード』は強大な力だ。
 花々から吸い上げた生命力を己の傷を塞ぐことに使っている。そうすることで彼は無敵たる力を手に入れいているのだ。

「そうであろう。生命吸い上げるこの庭園。これもまた、らしい貪欲さよ」
 しかし、とワタリは頭を振って迫る黄金鋏を迎え撃つ。
 拳の一撃。
 何故、彼女がここまで怠惰の王『ジャルディニエ』の接近を許したのか。答えは簡単であった。
 彼女のユーベルコードは至近でしか発動しない。
 故にこちらから近づくのではなく彼が己に近づくことを望んだのだ。振るわれる鋏の軌道を怠惰の王『ジャルディニエ』の体の動きから予測する。
 振るい上げる姿。
 両手で扱うがゆえにわかりやすく筋肉が動いている。
 人型をしていなければ、それに則った法則というものを知らねばならぬが、しかして怠惰の王『ジャルディニエ』は人型。

 ならば容易いことである。
「貴様を断ち切り、その血潮でもって贖わせてもらおう!」
 放たれる黄金鋏の一撃。
 それはワタリの首を寸分違わず断ち切るために振るわれたものであり、また事実、数瞬の後には彼女の首は断ち切られるはずであった。
 だが、ワタリは覆われた口元を僅かに動かす。
「恐るべきは『現実改変ユーベルコード』。じゃが己の限度を知らぬもの、わきまえぬ者ではな」
「なにを」
 何を言っているのだと怠惰の王『ジャルディニエ』は思ったことだろう。
 振るう一撃は確かにワタリを寸断する。
 なのに、この余裕はなんだ。

「主では吸い上げたる生命を十全に扱えぬ。主は、この花園の主として不相応。其を思い知るが良かろう」
 ワタリは踏み込む。
 鋏点へと進むように狭まる鋏の間を一瞬で詰める。
 振るう拳は、黄金鋏を跳ね上げさせる。
「な――!?」
「云うたであろう。不相応であると。その黄金の鋏もな」
 煌めくユーベルコードの光が、ワタリの瞳に宿る。
 最早、ここは己の距離。
 尊大なる態度も、傲慢たる意志も、全て彼女にとって瑣末事であった。彼女にとって怠惰の王『ジャルディニエ』は与し易い相手であったと言わざるを得ない。

 なにせ、吸い上げる生命力によって彼は傷を厭わない。
 故に散漫になっているのだ。
 己を穿つ拳が如何なる一撃化を。

 そう、これは轟然たる一撃(ポン・ナックル)。
 超高速の拳の一撃が花園に轟音を響かせる。炸裂する一撃は塞がりかけていた十字傷をさらに押し広げるように撃ち込まれ、怠惰の王『ジャルディニエ』の胸を砕く。
「その身を守るに、奪った生命の力は役に立つまい?」
 炸裂する拳。
 それは吸い上げる生命力を凌駕する強烈な一撃として彼の肉体を盛大に空へと吹き飛ばすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 人を養分よばわりなんてあんまりだわ。どれほど強大な力を持っていたとしても無敵ってわけじゃないはず。覚悟なさい、王さま。このゾーヤさんが相手になるわ!

 【UC:慈悲なき冬、来たれり】(WIZ)を発動よ。ゾーヤさんは〈寒冷適応〉〈環境耐性〉で大丈夫だけど、王さまと庭のお花はどうかしら。お花がしおれて吸収しきれない今がチャンス、この隙に〈追撃〉して押し切るわ。攻撃は盾で〈受け流し〉ながら、長剣に纏わせた冷気の〈属性攻撃〉で絶え間なく切りかかるわね。

 人を虐げて得られる美しさなんて、そんなのデタラメよ。これ以上の乱暴は許さないわ、咎人さん。骸の海に還りなさいな!

(アドリブ等々大歓迎です)



 拳の一撃が怠惰の王『ジャルディニエ』の体を上空へと吹き飛ばす。
 血反吐を撒き散らしながら胸に刻まれた十字傷にさらなる深い打撃の痕を刻まれ、彼は眼下に見ゆる花園を知る。
 砕かれ、一度は起点を喪った『現実改変ユーベルコード』の力。
 けれど、再び世界法則を書き換える力は砕かれた大地すら侵食していく。そうすれば、花々は、己の臣民は、己のために生命力を吸い上げ、己の傷を癒やしてくれるだろう。
「そうだ。そのとおりだ、我が臣民たちよ! 我は敗れぬ! まだ奴らを養分にすれば、如何なる支配も可能であるのだからだ」
 故に、許せ、と怠惰の王『ジャルディニエ』は落ちた大地に咲く花々を手折る。

 手折られた花を愛でるように口づけし怠惰の王『ジャルディニエ』はゆらりと立ち上がる。
「貴様たちは必ず滅ぼす。苦痛など生ぬるい。生き地獄すら遠きものとするような、惨憺たる責め苦でもって貴様たちは必ずや我が臣民の贄とさせてもらう!」
 吹き荒れる力。
 それを前にしてゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は頭を振る。
「人を養分呼ばわりなんてあんまりだわ!」
 どれだけ強大な力を持っていたとしても、無敵ではない。
 それは先行した猟兵たちのユーベルコードの輝きと、怠惰の王『ジャルディニエ』に刻まれた傷跡を見れば分かる。
 吸い上げた生命力によって彼の傷口はふさがっていく。
 だが、瞬時に癒えるわけでもなければ、全てが完璧なわけではない。

 生命力を注ぐ器。
 怠惰の王『ジャルディニエ』のそれは『現実改変ユーベルコード』を移植されたことによってもろくなっている。
 ならば、それを一度に注ぐことはできない。
 そして、注ぎきれなかった生命力はこぼれていく。得ることも、有効活用することもできないままに垂れ流しになっているのなら。
「覚悟なさい、王さま。このゾーヤさんが相手になるわ!」
「ぬかせ! 我が玉体を傷つけし万罪、その身で受けよ!」
 放たれる一撃は鋭く重たい。
 ゾーヤの手にした十字の紋様刻まれし盾が弾け飛ぶ。重たい。痛みが鈍くゾーヤに走る。
 けれど、初撃を防げた。

 強烈な一撃なれど、しかし、これまで猟兵たちが積み重ねてきた行いが怠惰の王『ジャルディニエ』の力をそいでいるのだ。
「弱くなっている。なら!」
 ゾーヤの瞳がユーベルコードに輝く。
「ゾーヤさん、寒さは大丈夫だけど、王さまの庭とお花はどうかしら?」
 怠惰の王『ジャルディニエ』の力の起点が花園であるというのならば、ゾーヤは己のユーベルコードで持って示す。

「わたしの運命は氷、氷あるところに雪は降る。ここはもう、わたしの領域。――慈悲なき冬、来たれり(ジャッジメント・コキュートス)!」
 天に掲げた掌が示すは、降り注ぐ氷の槍。
 落ちる一撃は、余波を生むように氷雪でもって花園を埋め尽くしていく。
 彼女のユーベルコードは戦場を氷雪に塗りつぶす。
 これは厳冬と同じ環境。
 冬とは即ち植物にとっては暗黒の時代。

 どれだけ現実改変ユーベルコードによって生命力を奪う花園へと書き換えられているのだとしても、花々が枯れてしまえば生命力は吸い上げられない。
「我が臣民を……! この美しさを虐げるか!!」
「人を虐げて得た美しさなんて、そんなのデタラメよ!」
 ゾーヤが踏み込む。
 天に掲げた掌には氷の槍が握られている。
 冷たい、と思う。でも、心まで凍えるほどではないとゾーヤは思う。怠惰の王『ジャルディニエ』がこれまで傷つけてきた人々の事を思えば、この冷たさなんて、なんてことのないものだと彼女は思った。

「これ以上の乱暴は許さないわ、咎人さん」
 投げ放つ氷の槍が怠惰の王『ジャルディニエ』の胸を穿つ。
 これまで猟兵たちが叩き込んできた打撃の痕へ重ねるようにして、撃ち込む槍は鮮血に染まる。
「ぐ、おっ……!」
「躯の海へ還りなさいな! あなたの居場所は此処にはない。どんな花も散るからこそ美しいのよ。そして、春の芽吹きを知らせてくれる。そのためには!」
 押し込むようにしてゾーヤの拳が氷の槍へと叩き込まれ、怠惰の王『ジャルディニエ』の肉体を穿つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

播州・クロリア
こんにちは
貴方を倒しに来た猟兵です
面倒だと思うならじっとしていてください
後はこっちで勝手にさせていただきます
(『ダンス』への執念と欲望を生命力へと昇華すると『催眠術』による自己暗示でさらに執念と欲望を強くし
現実改変ユーベルコードによる生命力吸収を凌駕する)
もう溢れましたか
随分と器が小さい…
(肩幅ほどに足を開き、深く息を吐きながら全身の力を抜いた後{霹靂の旋律}で踊り始める)
おや、甘い風が
すみませんすぐに終わります
(ふわりと飛び上がるとUC【蠱の足】による鞭のようにしならせた瞬速の蹴りを旋律で発生した『雷撃』と共に叩き込む)



 胸に撃ち込まれた氷の槍が鮮血に染まり、溶けて消えていく。
 穿たれた穴からはとめどなく血潮が流れるが、花園より吸い上げた生命力がじわじわと、その穴を塞ぐようにして再生させていくのだ。
「我は滅びぬ。我が臣民たちが有る限り、我は滅びない。そうであろう!」
 怠惰の王『ジャルディニエ』は咆哮する。
 彼の持つ『現実改変ユーベルコード』によって世界の法則を書き換えられている。
 この花園に足を踏み込んだ者は生命力を吸い上げられる。

 即ち、彼以外の存在が有る限り、彼は生命力を我が物とし、傷を癒やし続けるのだ。
「貴様たちは数多の臣民を虐げた。許してはおけぬ。その仇を王たる我が討たねばならぬのだ!」
 頭を垂れよ、と彼のユーベルコードが風と共に吹き荒れた瞬間、場違いな声が響く。
「こんにちは」
 それは、播州・クロリア(踊る蟲・f23522)が発した言葉。
「貴方を倒しにきた猟兵です」
 怠惰たる王を前にしてクロリアは己に暗示をかける。自らが表現する方法は唯一。舞踏そのもの。
 自らの欲望は、執念は、生命力へと昇華する。
 踊る度に吸い上げられていくものを感じる。生命力が奪われている。わかっていたことだ。

 この花園は現実改変ユーベルコードによって、法則を持っている。
 それは生命の埒外である猟兵であっても例外ではない。
 いずれも必ず影響を受ける。
 だが、クロリアは己の中にある執念をもって生命を燃やす。生きていたいという欲望。もっと踊りたいという執念。
 それは彼女の中から溢れんばかりの生命力の発露となって迸る。
「なんだ、此奴は。どこから湧き上がってくるというのだ、その生命の波動は!」
 クロリアは構わなかった。
 彼女にとって踊ることは自然なことであり、同時に求めるものであった。
 此処が戦場であっても構わない。甘い香りのする風があろうがなかろうが、クロリアにとっては戦意とそれがイコールになることはない。

 あるのは舞踏への執着のみ。
 深く息を吐きだす。足を開く。
 大腿を撫で、指先が腰元から胸元へ、鎖骨を通って天に掲げられる。其処に有るのは空。
 己の心臓が跳ねる。
 広がるは雷光と轟音。
 刹那に響く畏怖のリズム。
「蠱の足(コノアシ)は、私が鍛え上げた執念そのもの。欲望の発露」
 故に、とクロリアは笑む。
 もうおしまいかと。
 吸い上げる生命力はまだまだ在るというのに、吸い上げきれぬとばかりに怠惰の王『ジャルディニエ』は呻く。

「器が小さいのですね。すみません、すぐに終わります」
「貴様、愚弄を! この我を侮るか!」
 其の言葉に激高する、怠惰の王『ジャルディニエ』を無視し、クロリアは大地を蹴った。
 飛び上がる体。
 クロリアの体が弧を描くようにして宙を舞う。
 その足は強靭でありながら、しなやかさをもって振るわれる。瞬足の蹴撃。それは大鎌のように振るわれる一撃であり、また同時に己の体に宿る雷光を示すように雷撃を伴って、怠惰の王『ジャルディニエ』へと叩き落される。
「お見せしましょう。この一撃こそが貴方の吸い上げた生命力を凌駕する一撃」
 青天の霹靂。
 それを示すように彼女の一撃は、怠惰の王『ジャルディニエ』の頭蓋へと叩き込まれ、割るような一閃で持って、さらなる傷跡を彼に刻むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

現実改変は驚異的ではありますが。適度、というのは本当に大切なものですよ。
あなた、力に振り回されてますねー。
とか言いつつ、相手の攻撃は第六感活用の見切りですねー。当たるわけにはいかないんですからー。
民を見ないあなたは、領主失格というやつですー。

過剰というのは、時にマイナスに働きますよねー。
というわけでー、このUCですよー。
さてさて…過剰なところへのこれは、あなたに何をもたらすのでしょうねー?



 雷鳴のような一撃と、雷光迸るユーベルコードの輝きが重なった瞬間、怠惰の王『ジャルディニエ』の頭蓋から地面にかけて一直線に斬撃の如き蹴撃が奔った。
 其の一撃を受けて尚、彼は未だ存命だった。
 脳天を割られているというのに、生きている。其れは全て『現実改変ユーベルコード』によって世界法則を書き換えたことによって花々から得られる生命力でもって繋ぐものであった。
「我が臣民が、我のために生命を吸い上げている。ならば、我は滅びぬのだよ!」
 吸い上げた生命は、彼の傷を癒やしていく。
 
「ですがー度重なる猟兵の皆さんの攻勢で、それも遅くなっているご様子ー」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は見ただろう。
 猟兵たちのユーベルコードが煌めく度に怠惰の王『ジャルディニエ』の肉体に傷が刻まれ、その生命力の起点となる花園をくじき、またそれが侵食され、復元されていく最中であっても攻撃を叩き込み続けてきたことを。
 それによって明確に怠惰の王『ジャルディニエ』は弱体化していっている。
「それもそうですよねー。現実改変ユーベルコードは確かに驚異的でありますが。適度、というのは本当に大切なものですよ」
『疾き者』は己に迫る黄金鋏の一撃が刻む軌跡を見定める。

 寸断されるべき力であったが、しかし、それは弱まっている。
 何故ならば。
「あなた、力に振り回されてますねー」
 風のように鋏の挟み込みをこじ開け逃れながら『疾き者』は告げる。
 そう、受ければ切断される。ならば、受けてはならない。
 もしも、彼が十全であったのならば、あの一撃で己は寸断されていたことだろう。けれど、度重なる消耗。起点となる生命力を吸い上げる花園を傷つけられ、其の度に復元するために力を使ってきたのだ。
 怠惰の王『ジャルディニエ』は『現実改変ユーベルコード』を使う度に、其の器としての体を消耗させているのだ。

「我を愚弄するか! 我が臣民を傷つけておきながら!」
「そうですかーですが、民を見ないあなたは領主失格というやつですー」
『疾き者』の瞳がユーベルコードに輝く。
 彼の体の内側から放たれる呪詛がカラスの姿へと形作られ、飛ぶ。
 それを払う暇すらなかった。
 なにせ、黄金鋏の一撃を放った後であったからだ。『疾き者』は見ていた。黄金鋏の一撃は確かに強烈だ。 
 だが、鋏に鋏点がある限り、その一撃は挟み込むもの。
 挟む、ということは即ち両手で扱わねばならない。

 人型には二本の腕しかない。
 ならば、その一撃を放った後には、大きな隙が生まれるものだ。
 故に、『疾き者』のはなったユーベルコード、四更・陰(シコウ・イン)の一撃を怠惰の王『ジャルディニエ』は躱せない。
「ほら、見えていない。だから、こんな一撃にも簡単に当たってしまう。何事も過ぎたるは猶及ばざるが如し……と言う」
 故に、と炸裂する呪詛。
 瞬間、怠惰の王『ジャルディニエ』の体が膨れ上がる。

「過剰というのは、時にマイナスに働きますよねー」
 それは過剰再生による肉体の破裂を引き起こすユーベルコード。怠惰の王『ジャルディニエ』は『現実改変ユーベルコード』によって、花園を踏み込んだ者の生命力を吸い上げる法則を組み込んでいる。
 ならば、その生命力と過剰再生によって彼の肉体は膨れ上がり、内部から破壊されていく。
 鮮血が迸るように前身から吹き出し、彼は膝をつく。
「プラスとプラスでニ倍、とは言いますまいてー。過ぎれば、それは時に毒ともなりましょうー?」
『疾き者』は前身から夥しいまでの血を噴き出し、膝から崩れる怠惰の王『ジャルディニエ』を見遣り、其の言葉を証明させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

董・白
現実改変ユーベルコード。
…私の力ではさほど抑えることはできないでしょうが、彼ものに一撃を与える…その一瞬なら!!

『龍脈使い』と『道術』の秘術で現実改変による生命力吸収されるこの地の『環境耐性』を与えた『結界術』を展開し戦場を覆います。
思っていた以上に持ちそうにないですね…ですが…一撃を食らわせるには十分な一瞬です!!
宝貝「五火神焔扇」を発動します!!
生命力を失う気持ち悪さに耐えつつ、『気功法』で強化した『オーラ防御』で攻撃を防ぎつつ『破魔』の炎による『属性攻撃』で焼き尽くします!!

哀しき花園よ…炎と消えよ。
そして、その灰から…きっと本当の花園を…咲かせて見せます。
…きっとッ!!



 怠惰の王『ジャルディニエ』より噴出する血潮は、これまで彼が人間に流させてきたものを示すようであった。
 たが、これでも足りない。
 彼が人間を痛めつけ、悲鳴と共にこの花園に与えた血は、たったこれだけでは飽き足らないものであった。
「我が玉体を……! よくも!」
 過剰再生は彼の肉体を傷つけるものであった。
 けれど、徐々にその勢いは収まり、また再び肉体へと刻まれた傷跡を元に戻していこうとする。

「『現実改変ユーベルコード』……私の力ではさほど抑えることのはできないでしょうが、彼の者に一撃を与える……その一瞬なら!!」
 董・白(尸解仙・f33242)は猟兵たちのユーベルコードの合間を縫うようにして、怠惰の王『ジャルディニエ』の間合いへと飛び込む。
 彼の手には己の血に塗れ、手折られた花があった。
 其れを見やる哀切たる表情は、確かに真に迫るものであったことだろう。だが、白にとって、それは偽りでしかなかった。
 そのような表情を花々に向けることができたのならば、何故、彼が傷つけてきた人々にも同じようにしてやれなかったのかと思うのだ。

 身を苛む世界法則。
 この花園に足を踏み入れた者は須らく、生命を吸収される。
 怠惰の王『ジャルディニエ』にとって一方的なアドバンテージを得る戦場。猟兵たちにとっては不利でしかない。
 そして、どれだけ傷を負わせても、徐々に花々が吸い上げる生命力によって、怠惰の王『ジャルディニエ』は傷を癒やしていくのだ。
 堂々巡り。
 だが、猟兵たちは諦めなかった。
 どれだけ生命力を吸い上げるのだとしても、限度がある。
「そもそもあなたが吸い上げる生命力満たす器が足りていないというのなら!」
 白の瞳がユーベルコードに輝く。
 手にしたのは、宝貝「五火神焔扇」(パオペエゴカシンエンセン)。

 振るった瞬間、巻き起こるのは狂風。
 そして、全てを塵に還すように吹き荒れる猛火。
「この炎は全てを焼き尽くし、この風は全てを吹き飛ばす」
 生きたいと願う者がいる。
 どれだけの痛みがあるのだとしても、それでも生きたいと思う。それはこれまで此処で命を落とした人間たちにとっても同じ思いであったことだろう。
 苦しみから逃れるために死があると嘯くものがいる。
 それを誤ちだと一概に切り捨てる事はできないかもしれない。

「けれど、それでも人は生きたいと願っていたはずです」
「だったらどうだというのだ! 我が臣民の栄養として死するのならば、それもまた本望であろう! 薄汚い人間どもが、美しき花を育てるのだと思えば!」
 黄金鋏が猛火と狂風を切り裂く。
 だが、勢いがない。
 そう、これまで猟兵たちが紡いできた傷が、彼を消耗させている。
 精彩を欠く、ということだろう。
 白は其処に勝機を見出した。

 踏み出す。
 あらゆる無機物を猛火と狂風に変換する扇の宝貝を振るいながら、己の生命力を根こそぎ奪わんとする世界法則を踏み込めるようにして、彼女は怠惰の王『ジャルディニエ』へと猛火と狂風を叩きつける。
「哀しき花園よ……炎と消えよ」
 放つ炎は風に巻き上げられて、花園を燃やし尽くしていく。
 例え、『現実改変ユーベルコード』によって再び元に戻るのだとしても。
「そして、その灰から……きっと本当の花園を……咲かせて見せます」
 そう、此処は偽りの花園。

 太陽ではなく、人の悲鳴と血潮によって生み出された花ではなく。
「……きっと!! いつか、必ず私が咲かせてみせます。太陽の光で満ちる、喜びの声満ちる花園に!!」
 その言葉と共に白は宝貝を振り抜き、怠惰の王『ジャルディニエ』を狂風と猛火によって生み出された炎の竜巻の中へと吹き飛ばすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メフィス・フェイスレス
へぇ、ヒトの声は耳に届かない、ね

――あら、結構なお手前ね
(不意に斬り落とされる腕を見やる)

瞬間躰から溢れ出す「飢渇」の群れ
さらに地面から隆起した夥しい数の「骨身」の武具が一斉に花園を引き裂き、捕食して回る

当然骨の津波はジャルディニエにも大挙して襲いかかり串刺しにする
……同時に骨の針が養分となっている人間達の身を掠めるような形で触れ合う

狙いを誤った?違うわね、必要な仕込みだからよ
言ったでしょ?アンタがコイツラに与えてきたものを味あわせるって

言い忘れたけどその骨、触れた奴同士の痛みと傷を転写する呪いも纏ってるのよ
アンタが今までその“養分”とやらに与えてきたものを味わって貰うわ
ついでに私の腕の分もね



 猛火と狂風によって生み出された炎の竜巻が怠惰の王『ジャルディニエ』を包み込み、その内部に在る彼を焼滅さんと花園を巻き込みながら燃え盛る。
 だが、その炎を切り裂くユーベルコードの輝きがあった。
 炎に揺らめく黄金鋏。
 それを手繰る怠惰の王『ジャルディニエ』は『現実改変ユーベルコード』によって炎によって燃え落ちた花園を復元する。
「よくも、よくもやってくれたな! 我が臣民たちを!」
 激昂と共に放たれる斬撃が猟兵たちに迫る。

 そうでなくてもこの花園は踏み入れた者の生命力を奪う。
 圧倒的なアドバンテージ。
 猟兵たちにとっては不利しか無い戦場である。さららに吸い上げた生命力は怠惰の王『ジャルディニエ』の傷を塞いでいくのだ。
 焼き焦げた皮膚が徐々に新しい皮膚へと変貌していく。
「我が臣民を! 愛でるべき彼等を!」
「へぇ、ヒトの声は耳に届かない、ね」
 メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は、己の腕が片方なくなったことに気がつく。
 刹那の一撃。
 言葉を発した瞬間に怠惰の王『ジャルディニエ』は黄金鋏による斬撃を放っていた。

「――あら、結構なお点前ね」
 だが、メフィスは片腕を切断されてもなお、飄々としていた。
 彼女はデッドマンである。
 故に、片腕がなくなったとしても、動揺することはなかった。まるで自分の腕ではない何かを見るかのような目で彼女は落ちた腕を見た。
 次の瞬間、彼女の躰から溢れ出すのは『飢餓』――己の衝動より生み出され、滲み出す眷属。異形なる球体めいたそれらが一斉に戦場に溢れ出す。
 変幻自在たる性質は、形を変え、顎を大きく広げ花園を喰らわんとする。
 さらに地面から隆起したおびただしい数の『骨身』――彼女の躰を食い破るように、腕より溢れ出すそれは、あらゆるものを削り取り分解し、生命力へと変換する。

「貴様、我の花園を! 臣民を食らうか!」
「ゲテモノ喰いだってことよね。けれど」
 メフィスの瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女のユーベルコードは己が触れているものの内部から溢れ出す『骨身』によって怠惰の王『ジャルディニエ』へと襲いかかる。
 骨の鋒が迫る最中、怠惰の王『ジャルディニエ』は黄金鋏を揮って弾き返す。
 だが、弾かれたそれは、この花園の養分となっていた人間たちの頬をかすめる。

 狙いが外れた、思惑が外れた、と怠惰の王『ジャルディニエ』が思うのも無理なからぬことであった。
 猟兵は人間を救う。
 彼にとっては理解できぬことであったが、そうすることが彼等にとっては大切なことなのだと理解できる。だからこそ。
「功を焦ったな!」
「いいや? 違うわね。必要な仕込みだからよ。これは」
「なに?」
「わからないかしら。その骨」
 メフィスが示すのは彼を襲う『骨身』。
 それがどうしたとばかりに怠惰の王『ジャルディニエ』は黄金鋏でもって、迫る鋒を弾き返す。
 だが、その動きが止まる。
 徐々に回復していた肉体が止まる。
 何故、と理解するより早くメフィスが告げるのだ。

「その骨、触れた奴同士の痛みと傷を転写する呪いを纏っているのよ」
 恩讐を刻む(オンシュウヲキザム)ようにメフィスは告げる。彼女が操る『骨身』は、変形し怠惰の王『ジャルディニエ』の身に、彼が人間たちにしてきた行いをそっくりそのまま転写する。
 数百ではきかないであろう残虐なる行い。
 その報いこそが、今まさに彼の躰を襲っている。苦痛。激痛。鈍痛。あらゆる痛みが怠惰の王『ジャルディニエ』へと襲いかかっているのだ。
「ば、バカをいうな! これが! 人間の痛みだと!? 奴ら養分如きの痛みを我が味わうだと!?」
「そうよ。ああ、そうよ」
 メフィスは『骨身』の鋒に指を触れさせる。
 瞬間、怠惰の王『ジャルディニエ』は悶絶するように片腕を抑える。

 冷や汗ではない脂汗だ。
 満ちる苦痛は、まさしく。
「まさ、か――」
「ついでに私の腕の分も味わってもらうわ」
 メフィスは金色の瞳でただ怠惰の王『ジャルディニエ』を見つめる。
 これは報いだ。
 復讐だ。
 強いてきた痛み。それはこの花園にて吸い上げる生命力を凌駕し、その器に満ちる力を根こそぎ削ぎ落とすように襲いかかるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
現実の改変。か。
強力ではあるが、ネタが割れているなら
対処のしようもある。

先手を取り生命を喰らう漆黒の息吹を発動し
鳳仙花の花びらに周囲の花々の【生命力吸収】をさせて
花を枯らしていく。
「守るべき花々がなくなってしまえばその玉座も空の器だ。
いや、空っぽなのは元々かな。」
【挑発】しつつも花びらを敵の周囲に忍ばせて
生命を喰らわせる。
生命を喰らって力を増した花びらを自分の周囲に展開して身を守り
その数を活かして敵の周りにさばききれない数の花びらを舞わせて
動きを封じ。
「生命の扱いに関しては冥府の植物には及ぶまい。
その生命は元々生きた人間のものだ。
だから、お前を倒すのも今まで踏みにじってきた
人々の生命の力だ。」



 嘗てオウガ・オリジンが持ち得た強大なる力。
『現実改変ユーベルコード』――それは猟書家さえも求めた力である。
 世界の法則を書き換える力は、それだけで強大な力であることは言うまでもない。現に猟兵たちが戦う、怠惰の王『ジャルディニエ』は圧倒的だった。
 書き換えられた法則は、花園に踏み込んだ者の生命力を吸い上げる、というものだった。
 つまり、猟兵には生命力を喪わせ、怠惰の王『ジャルディニエ』は傷を塞ぐ。
 相対している以上、こちらの不利しか存在しない戦場。

「現実の改変、か」
 だが、とフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は現状を認めながら、しかして、それが脅威であれど対処のしようがないものではないと知る。
「この我に痛みを齎すか! この痛みを!」
 怠惰の王『ジャルディニエ』は、猟兵のユーベルコードによってこれまで人間に与えてきた苦痛を一身に受け止めている。
 それでいて尚、その体は生命力を吸い上げるがゆえに再生していくのだ。
 無駄に見える。
 だが、しかし、それは無駄ではないのだ。

 再生する力が落ちている。
 花園が吸い上げる力が弱まっているのではない。これは怠惰の王『ジャルディニエ』そのものの器の問題だ。
 どれだけ大量の生命力を吸い上げても、注がれる器が大きくない。
 故に。
「よく見ておけ。これが、お前の命を刈り取る手向けの花だ」
 フォルクのフードの奥でユーベルコードの輝きが解き放たれる。
 己の装備を冥界の鳳仙花の花びらへと変貌させる。偽りの楽園に冥界の花が咲くように吹き荒れる。

「鳳仙花……花弁が何を」
「言ったはずだ。手向けであると」
 フォルクの手繰る花弁は花園に咲く花々から生命力を奪い続ける。そう、それこそが彼のユーベルコード。
 生命を喰らう漆黒の息吹(イノチヲクラウシッコクノイブキ)とも言うべき鳳仙花の花びらが次々と花園をからしていくのだ。
「守るべき花がなくなってしまえば、その玉座も空の器だ。いや、空っぽなのは元々かな」
「ぬかせよ! 我が臣民を! よくも!」
 手折る花が枯れ果てるのを見遣り、哀切の表情を浮かべる怠惰の王『ジャルディニエ』。
 その姿をフォルクは見やる。

 何故、それを他者に向けられないのだと。
「生命の扱いに関しては冥府の植物には及ぶまい」
「だったらどうしたというのだ! 我が臣民の生命! 返してもらう!」
 放たれる黄金鋏の一撃。
 その鋒を受け止めるのは大量の花弁だった。鳳仙花の花弁。それが盾のように成って折り重なりフォルクを狙う一撃を受け止めた。
 その花弁の奥でフォルクは言う。
「その生命は元々生きた人間のものだ。だから、お前を倒すのも」
 フォルクは盾となった花弁を手繰る。
 変わる形は槍。

 巨大なる花弁の槍が頭上に掲げられる。
「今まで踏みにじってきた彼等の、人々の生命の力だ。そんなお前に対して振るわれる手向けの一撃は、似合わぬものであろうが」
 しかし、これこそが彼等の無念を体現した槍。
 哀しみと苦しみが満ちる世界にあって、弄ばれた者たちの怒りを代弁するようにフォルクは花弁の一撃を怠惰の王『ジャルディニエ』へと叩き込み、その身を穿つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ

「人間を養分にするなんて許せねえ!
ヒーローとしてなんとしても止めてやる!」
戦場に転移した瞬間訪れる倦怠感は[気合い]で耐える
鋏の攻撃は[オーラ防御]で捌く

「エネルギーを受け止められないなら、
全身全霊で注ぎ込んでやるぜ!!ハアアア!!」
UCを発動して意志力を大爆発させる
意思力によって無限に戦闘力が上がる力であるが故に、
一瞬にしてジャルディニエをパンクさせる
立ち眩んだ瞬間に[限界突破]して
先ほどとは比べ物にならないほどに[力を溜める]
低空を飛翔することで一気に近づいて拳を構える
「超必殺!オーバーウィル・インパクト!!」
絶大なエネルギーを込めた一撃を叩き込んで決着だ!



 花弁の槍が怠惰の王『ジャルディニエ』の体を貫く。
 だが、散る花弁を振り払うようにして黄金鋏振り回し、彼は叫ぶ。
「この我が、ただの人間の生命を踏みにじってきただと!? 我が臣民の養分になったのだ。誇るべきであろう。恨み言を聞かされる言われなどない!」
 その言葉が戦場に響いた。
 人々を虐げ、弄んできたことを彼は何一つ取り立てるものではないと言う。
 良心の呵責もない。
 後悔などあろうはずもない。
 ただ、邪悪であると空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は思ったことだろう。
「人間を養分にするなんて許せねえ!」
 それは己が猟兵であるからだろうか。

 否。
 自分がヒーローであるからだ。 
 誰かを助けること。そのためにこそ戦う。力を振るう。己が力を振るうのはいつだって誰かのためでなければならない。
 だが、この戦場たる花園に足を踏み入れた瞬間、自身の体から生命力が奪われるのを感じたことだろう。
「……ッ! これは……!」
「貴様たちは我が臣民の供物にすぎぬのだよ!」
 そう、この戦場は『現実改変ユーベルコード』によって、踏み入れた者の生命力を奪う。そして、奪った生命力は怠惰の王『ジャルディニエ』に注がれ、傷つけられた肉体を復元していくのだ。

 だが、度重なる猟兵たちの戦いによって、その復元の速度は明らかに落ちている。同時に彼の力もまた落ちてきているのを清導は知る。
「そんなことはない! 例え、生き死にがままらぬのだとしても!」
 それでも人間が贄であってたまるものかと彼の瞳がユーベルコードに輝く。
 身に纏うのは黄金のオーラ。
 意志の力が膨れ上がり、彼の生命が燃えるように立ち上る。
「馬鹿め、いたずらに生命力を高めるから!」
 黄金の鋏の鋒が清導に迫る。
 あれに触れてはあらゆるものが切断される。だが、生命力を奪われている状況では思うように動けない。

 と、怠惰の王『ジャルディニエ』は思っているだろう。
 確かに一歩も動けない。
 だが、それがどうしたと言う声が己の中に響き渡る。そのとおりだ。だからどうした。己が正義を燃やす限り、その生命は膨れ上がっていく。
「やっぱりな! わかるぜ、お前の器の小ささを! これだけの命を奪っておきながら、お前はお前以上の生命を蓄えることができない! なら!」
 放出される黄金のオーラが迸り、怠惰の王『ジャルディニエ』は受け止めきれぬエネルギーの奔流に黄金の鋏を止めてしまう。
 たじろいだと言ってもいいだろう。

 その瞬間、清導の赤い機械鎧が煌めく。
 ブレイザイン。
 それが己の名である。
 もうこの花園に悲鳴は上がらない。悲痛なる人間も存在しない。
 なぜならば。
「もう大丈夫だ! ヒーローは此処に居るぜ!!」
 叫ぶ。
 人はたしかに弱い。殺されてしまうだろうし、簡単に屈する。けれど、わかっているのだ。
「お前が人の心を弄ぶのなら、この俺が! ブレイザインがいる! お前を討ち果たせと叫ぶ心がある限り!」
 放つ拳の一撃が黄金のオーラと共に放出される。

 花園に生命力を奪われて尚、迸るような力。
 絶大なるエネルギーを込めた、渾身の一撃が怠惰の王『ジャルディニエ』へと叩き込まれる。
「これが、スーパー・ジャスティス……! 俺の黄金の意志! 受けろよ!!」
 吹き荒ぶ黄金の爆風。
 その一撃は怠惰の王『ジャルディニエ』の器に満たされた生命力を霧散させるように天を貫くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒沼・藍亜
……なんでダークセイヴァーのフォーミュラが、
他所の世界のフォーミュラの能力を知ってる上にコピーまでできるんすかね……

ま、何はともあれ今はそいつのとこまで行かないとっすね
さて。現実改変UCっすけど……現実を曲げたり蝕んだりする輩は馴れてる
当然、対応策もある訳で

UCを発動、「白と黒の異界」を割り込ませ、花園ごと黒い海で塗り潰し蹂躙してくっすよ
海というか異界そのものなUDC相手に生命力の削り合いは不毛だし、仮に奪えても到底扱える量じゃないっしょ?
まあ同時に白い雨で敵の痕跡自体を抹消し、現実改変の影響も削ぐけど

後ボクの厭戦感煽っても無駄だし、この海にとっては単に食事みたいなもんっすからね

あきらめて?



『現実改変ユーベルコード』はオウガ・オリジンが有していたユーベルコードだ。
 世界法則を書き換える力。
 それは言うまでもなく強大である。故に猟書家たちは求め、世界を書き換えようとしていた。そこまでいはいい。
 理解できる。
 分割してオウガ・オリジンの力を簒奪したからこそ猟兵たちはオウガ・オリジンという強大なるオブリビオン・フォーミュラを打倒できた。
 だが。
「……なんでダークセイヴァーのフォーミュラが、他所の世界のフォーミュラの能力を知っている上にコピーまでできるんすかね……」
 黒沼・藍亜(人■のUDCエージェント・f26067)は訝しむ。
 目の前で来る広げられるユーベルコードの明滅。

 花園に似つわしい光の乱舞。
 怠惰の王『ジャルディニエ』は、その力を振るう。
 この花園に足を踏み入れれば生命力を奪われ、怠惰の王『ジャルディニエ』の傷を塞ぐ。これまで苛烈なる猟兵たちの攻勢にさらされて尚、彼は生き残ってきた。それができたのは、この花園、『現実改変ユーベルコード』によって書き換えられた法則によるものだった。
 だが、その無敵たる力も万全ではない。
 どれだけ膨大な生命力を奪うのだとしても、その生命力を満たす器が小さければ意味がない。そこにこそ猟兵たちの勝機が存在しているのだ。
「ま、何はともあれ今は」
 考えるのは後にする。藍亜は瞳をユーベルコードに輝かせる。
 どこでもないどこにもない、どこにもいけない(セカイヲヌリツブスモノ)自分であるけれど、しかして彼女の足元に滴るように落ちる粘質の黒きUDCが広がっていく。

 彼女は多くのUDCに対処してきた。
 それらの殆どは世界を改変するものたちであった。現実を捻じ曲げ、蝕み、破壊する。そんな存在と多く相対してきたのだ。
 ならば、その対処ができずして彼女は猟兵足り得ない。
 怠惰の王『ジャルディニエ』は猟兵の拳の一撃によって胴を撃ち抜かれている。何故、それで死んでいないのかと思うほどの傷であったが、それでも。
「この我の玉体をよくもここまで傷つけた! だが、貴様たちには戦うことを厭う心があるだろう! ならば、跪け!」
 満ちる風。
 甘やかな風。
 だが、藍亜は構わなかった。戦いを厭う心は確かにある。

 けれど。
「あきらめて?」
「なに……?」
 其の言葉に怠惰の王『ジャルディニエ』は眉根をひそめる。
 藍亜は確かに戦いを厭う。けれど、戦場を、世界を、花園を染め上げていく漆黒の粘液の海は止まらない。
 見上げれば純白の空。
 いつのまに、と思う暇もない。それほどまでに一瞬にして藍亜のUDC『昏く暗い黒い沼』は広がっている。

「何故、我が臣民は生命を奪わない?」
「簡単っす。海というか異界そのものなUDC相手に生命力の削り合うは不毛っす。それに、奪えても……到底扱える量じゃないっしょ?」
 なぶるように触手が飛ぶ。
 そのしなる鞭のような一撃が怠惰の王『ジャルディニエ』を打ち据える。戦いを厭うのだとしても、それでもUDCは止まらない。
 言ってしまえば、反射だ。
 目の前に生きている者が居て、敵対の意志を示しているのならば。

「でも、それはもう戦うって次元ですらないっすよ」
 藍亜はけだるげに言う。
 そう、己のUDCはこれを戦いだとすら認識していない。
「この海にとっては、単に食事みたいなもんっすからね」
 藍亜は己の足元から広がっていく世界。
 それが『現実改変ユーベルコード』を上塗りにして怠惰の王『ジャルディニエ』を追い込んでいくさまを見ているだけでいい。
 海を飲み干すことはできない。
 故に、怠惰の王『ジャルディニエ』が如何なる力を振るうのだとしても、結局徒労に終わることを示すように、静かに、静かに……痕跡一つ残さずに塗りつぶしていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
植物の花は、生命の証だ。
多分、罪はない。

『騎兵骨刃』発動
ボーンブレイド型抗体兵器を自分の首に宛がい、

……血が欲しいか、命が欲しいか。
そうか、だったらくれてやる!!

首骨に当てるように抉り込み、抗体兵器と合体。
生命の代わりに与えるのは、己が身に詰った|【闘争心】《崩壊霊物質》
そして生命への【呪詛】!!
花々を枯らし、流血が、骨肉炸裂弾の【弾幕】が、
尋常ならざる【継戦能力】によって王とその領地に|毒素《呪詛》を流しこもう!!

貴様が王なら!花々も!大地も!
全てが、敵だ!!!

園芸鋏を無数に生えた骨刃で【武器受け】
【早業】相手の腕を【怪力】で掴み、
【肉体改造】全身を突き破って骨刃を生やし刺し貫き、斬り裂く。



 花園を飲み込む猟兵のユーベルコードは漆黒の海のようであった。
 しかし、『現実改変ユーベルコード』は強大な力。
 例え、世界を塗りつぶす力であったとしても、時間さえ掛けるのならば侵食し、元の姿へと戻るだろう。
「植物の花は、生命の証だ。多分、罪はない」
 朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は生命を吸い上げる花園に踏み込み、己の悪霊たる存在を更生する呪詛を厭う花々を見やる。

『現実改変ユーベルコード』は塗り替えられた世界をさらに塗り返すように元に戻りつつ在る。だが、その力は衰えていると言っても過言ではないだろう。
「我が臣民に罪などあろうはずもない。我が臣民こそ、一点の汚れもなく。罪もなく。その罪過に触れることはない。故に!」 
 怠惰の王『ジャルディニエ』は咆哮する。
 穿たれ、傷を塞ごうとしてもなお、猟兵たちの苛烈なるユーベルコードの輝きの前に膝を折ってきた者。
 だが、しかし、花園の力によって彼は、その矮小たる器を満たそうとしている。
 猟兵たちが見出した勝機。
 それこそが、その一点。
 膨大な生命力を取りこぼし続ける器の小ささこそが、『現実改変ユーベルコード』を手繰る怠惰の王『ジャルディニエ』を打倒する唯一の勝機。
 
 故に小枝子はためらうことはなかった。
「……血が欲しいか、生命が欲しいか」
 己の身は呪詛に塗れている。
 己を更生するのは全て悪霊たる身の怨念。霊物質。ならばこそ、彼女は己の手に宿るボーンブレイド型抗体兵器を己の首にあてがう。
「そうか、だったらくれてやる!!」
 何を、と誰もが思ったことだろう。
 瞬間、彼女は己の首へとボーンブレイドをえぐりこむ。血潮が迸る。だが、小枝子の瞳はユーベルコードに煌めく。

 それは己を騎兵骨刃(グレイブズグロテスク)とする力。
 抗体兵器は生命を許さぬもの。
 故に彼女は合体し、己自身を変幻自在たる体内より生成される骨刃と尋常ならざる継戦能力を発露させる。
 体から飛び出す骨刃は鋭く。
 また異形の怪物そのものであった。
「なんたるおぞましさ!」
「お前たちに、生命の代わりに与えるのは、己が身に詰まった|闘争心《崩壊霊物質》、そして生命の呪詛!!」
 己には生命がない。
 悪霊であるがゆえに。故に、小枝子は駆け出す。
 放たれる骨指弾が飛び、炸裂する骨肉が吹き荒れ、避けた腹部からは腸が縛縄のように怠惰の王『ジャルディニエ』へと迫る。
 
 そのさまはおぞましいという以上のものであったことだろう。
 だが、小枝子は思う。
 これが、己が、おぞましいというのならば。
「貴様の為してきたことが!!」
 如何に許しがたいことかを示す。
 人を人とも思わず。養分として痛めつけ、虐げ、弄んできた。数百ではきかず、数千でも生ぬるい。
 これまで猟兵たちが叩き込んできた攻勢は、わずかでもそれを濯ぐことができたであろうか。
 いいや、できはしまい。

「貴様が王なら! 花々も! 大地も! 全てが敵だ!!!」
 どれほどまでに美しいもので覆うのだとしても小枝子は敵を違えない。
 迫る黄金鋏の鋒が小枝子の肩をえぐる。
 だが、それでも小枝子は止まらない。
 飛び出す骨刃が怠惰の王『ジャルディニエ』の体を引き裂き、さらに腕を伸ばす。
「貴様……! その汚らわしい手で我に触れるな!」
「知った事か!ならば、この躯を壊せ!」
 そうでなければ己は止まらぬと叫ぶ。
 掴んだ腕を引き寄せ、小枝子は己の体躯を押し付ける。噴出するように満ちる呪詛。それが形をなすように怠惰の王『ジャルディニエ』を無数の骨刃が貫く。

 生命を許さぬ抗体兵器そのものと成った小枝子の骨刃は生命満ち、その身を塞ぐ怠惰の王『ジャルディニエ』をも許さぬとばかりに、その肉体を散り散りに切り裂き生命への呪詛を果たすように数え切れぬ傷跡を刻み込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡みも歓迎!

んもー
痛いのなんて永遠に続くわけないじゃん
なんでって?ボクが痛いのキライだから!

まったく趣味が悪いったらー
これに比べたらあの子のお花畑は…いやあけっこうわりと同じくらいに趣味が悪かった気がするね!
でもボクはあのアリスの方が好きだからぶっ壊しちゃうね!

と周囲に広げた[神様の影]から円を描くようにおーーっきな[餓鬼球]くんの咢を出現させて彼ごとバクリッ!
お花畑を壊して力を減らせるまではいかなくても動揺させたりできれば打ち込む隙は十分!

【第六感】に任せて鋏をよけてー…
UC『神撃』でドーーーーンッ!!

どうせ世界を自由にできっていうならもっときれいなお花畑を見せてよね~



 この花園たる地に集められた人間たちは悲鳴をもって楽園の如き花園を育てる養分とされていた。
 痛みに喘ぎ、血潮を満たし、骨肉をもって肥やしとする。
 そうすることによって生み出される花々を怠惰の王『ジャルディニエ』は臣民として愛でる。
 歪さは言うまでもない。
 人を人として認識していないのだ。
 だらこそ、痛みと悲鳴でもって彼は花々を育てる。狂気そのもの。歪み果てたがゆえの行い。
 いずれも正当化などできようはずもない。
「んもー痛いのなんて永遠に続くわけないじゃん」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は楽園の如き花園に降り立ち、ぷんすこと頬をふくらませる。
 だって痛いのは神たる己であっても嫌だ。
 キライだ。

 それをもって他者を虐げるというのならば、怠惰の王『ジャルディニエ』は趣味が悪いと言わざるをえない。
「これに比べたらあの子のお花畑は……いやあ結構わりと同じくらい趣味が悪かった気がするね!」
 あはは、とロニは笑って掲げた手に現れる球体を振りかぶる。
『現実改変ユーベルコード』。
 それは嘗て、アリスラビリンスのオブリビオン・フォーミュラ、オウガ・オリジンが有していたユーベルコードである。
 世界法則を書き換える力。
 それによって、この花園は今や踏み込んだ者の生命を吸い上げ、怠惰の王『ジャルディニエ』の傷を癒やすために振るわれている。
 しかし、その癒やす力は万全ではない。

 なぜなら、怠惰の王『ジャルディニエ』の器が矮小であるからだ。
 どれだけ生命を吸い上げても、その生命がふくれ上がるわけではない。注がれる端からこぼれ落ちていくのだ。ならば、その許容量を越えるほどに攻撃を叩き込めば良い。
「でもボクはあのアリスの方が好きだからぶっ壊しちゃうね!」
 球体が顎をもたげるように開き、怠惰の王『ジャルディニエ』ごと花園を飲み込まんとする。
 その球体は黄金鋏の鋒によって断ち切られる。
 けれど、ロニは構わなかった。
 あれは結局の所敵をひるませるための一撃に過ぎない。
「我が臣民を傷つけることは能わず! どれだけ巨大であろうが、我が黄金鋏は、あらゆるものを断ち切る! 触れれば如何なるものであろうとだ!」
 血潮が溢れている。
 猟兵たちの度重なる攻勢によって、彼の体はズタズタに引き裂かれていた。
 止まらない。
 どれだけ生命力で傷を復元しようとしても、苛烈なる猟兵たちの攻勢を前に彼の傷は増えていく一方であった。

 間に合わないのだ。
「仕方ないよね! 人の器は決まっている。誰かに限界を定められないと、自分で自分を壊してしまうのが人間だもの! 仕方ないよね! けどさ!」
 ロニの瞳がユーベルコードに輝く。
「どうせ世界を自由にでいるっていうなら、もっと綺麗なお花畑を見せてよね~!」
 自分はこんなものが好きだとは思えない。
 悲鳴が満ちる世界も。
 痛みと苦しみだけが満ちる世界も。
 どちらも極端だと思う。喜びだけが満ちるのもそうだ。

 だからこそ、壊す。
「はい、ド――――ンッ!!」
 神撃(ゴッドブロー)は怠惰の王『ジャルディニエ』の肉体を打ち据え、花園の大地を砕く。
 散る花弁は、ようやくにしてロニに取って綺麗だと思えるものであったことだろう。
 咲き誇る様も美しい。
 けれど、花は散る様だって美しいのだ。
 故にロニは打ち据え、血反吐撒き散らす怠惰の王『ジャルディニエ』を砕けた大地に下し、息を吐き出す。
「折角の力なんだから、もっと有効的に使わないとね!」
 それが君の敗因だと言うようにロニは笑って砕けた花園へと飛び上がるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…フォーミュラと同様の能力を付与するのは驚嘆に値するけど、
扱いきれていなければ、宝の持ち腐れも良い処だわ

…此方からすれば付け入る隙が多いのは歓迎すべき事だけど、ね

UCを発動して真の姿の吸血鬼化を行い、天空に限界突破して血の魔力を溜めた真紅の満月を浮かべ、
現実改変UCによる生命力吸収を戦場全体の花々から生命力を吸収する月光で相殺する

…光を鎖ざし、闇をも呑み込め。代行者の羈束、最大展開

吸血鬼化により研ぎ澄まされた第六感が捉えた敵の殺気から次の動作を先読みして見切り、
|吸血鬼の能力《肉体改造》で霧になる早業で敵UCによる攻撃を回避して受け流し、
人外の怪力任せに大鎌で敵を乱れ撃ちするカウンターを放つ



 叩きつけられた怠惰の王『ジャルディニエ』は強大な存在であった。
 きっと『現実改変ユーベルコード』がなくとも、猟兵たちを苦しめるほどの強敵であったことだろう。
 しかし、猟兵たちの苛烈さは、それを上回る。
 例え『現実改変ユーベルコード』によって花園に踏み込んだ者の生命力を奪い、その生命力でもって傷を塞ぎ続けるのだとしても。
 矮小たる器しか持たぬ、怠惰の王『ジャルディニエ』に注がれる生命力以上の攻勢でもって、此れを撃滅する。
 そして、大地を穿たれ、削れられ、塗りつぶされ。
 如何なる強大な力であっても、振り回されているというのならば、それは宝の持ち腐れでしかないことをリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は理解している。

 確かに驚嘆すべきことだ。
「……フォーミュラと同様の能力を付与するのは驚嘆に値するわ……けれど、あなたにとって、それは宝の持ち腐れね」
 だが、それはリーヴァルディや猟兵たちにとって勝機。
 器がもしも、十全であったのならば。
 この戦いの結末はどうなっていたかわからない。血潮に塗れながら、塞がらぬ傷跡を持ちながら、しかして怠惰の王『ジャルディニエ』は立つ。
 手にした黄金鋏の鋭さは未だ衰えず。
 触れればあらゆる者を切り裂く刃は、今も猟兵たちの首を断ち切らんと剣呑たる輝きを花立っている。

「ならばなんとする。歓迎するか。だが、我は我が臣民のためにこそ立つのだ」
「……人を人とも思わぬ王に、臣民を語る資格はないわ」
 リーヴァルディはにべにもなく返す。
 敵の力は未だ強大。
 されど、これまで紡いできた猟兵達の戦いが在る。
 あの傷の深さは、今だからこそだ。
 戦場の花園を穿ち、怠惰の王『ジャルディニエ』を消耗させたからこそ見えた勝機。コレを逃す訳がない。
「……光を鎖ざし、闇をも呑み込め」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 紅の月はすでに天にあり。

 この月浮かぶ空は、己の支配下であると示すように彼女は真なる姿を晒す。
 血の魔力はすでに彼女という器の限界を越えて溜め込まれていく。かの紅の月の月齢は満月。
 満ちる力はすでに彼女の魔力はあらゆる魂と生命力を吸収する月光として迸り、『現実改変ユーベルコード』によって書き換えられた法則すら相殺させる。
 拮抗している。
 あれだけの強大なる力をりーヴァルディは真の姿に至ることによって抑え込むのだ。
「馬鹿な、我が『現実改変ユーベルコード』が、相殺されている!?」
「……代行者の羈束、最大展開」
 限定解放・血の神祖(リミテッド・ブラッドドミネーター)。
 それこそがリーヴァルディのユーベルコード。
 救世の誓い。
 左眼に刻まれた名も無き神との契約。
 その証は呪縛そのもの。汚染満ちる眼は、されど彼女の瞳をもって怠惰の王『ジャルディニエ』を見据える。
 研ぎ澄まされた感覚。

 己に迫る黄金鋏。
 確かに鋭い。触れれば全てを断ち切られるだろう。しかし、その鋒は届かない。次の瞬間にはすでにリーヴァルディの体は霧へと変貌し、刃は届かないのだ。
「……血と生命と魂を捧げよ」
「誰が! この王たる我は、捧げられるのみ! 捧げるものなど!」
 ない、と言葉は続くことはなかった。

 人外たる膂力。
 それにより放たれる大鎌の斬撃は乱れ撃つ、という言葉通りであった。
 無数の斬撃は狙い過つことなく怠惰の王『ジャルディニエ』へと叩き込まれる。
 猟兵たちが叩き込んだユーベルコードの傷跡は塞がれど、その身に刻まれた痕は決して消えない。そこが脆い、とリーヴァルディは直感的に理解していた。
 放たれた斬撃の全てが、これまで紡がれてきた戦いの軌跡をなぞる。
「……終わりよ。灰は灰に。塵は塵に……」
 それだけがダークセイヴァーを統べる者たちに与えられるただ一つの結果であるというように、彼女の前にはすでに花園は消え失せていた。
 そして。

 彼女の背後で猟兵たちのユーベルコードの煌めき、その軌跡を示すように怠惰の王『ジャルディニエ』は滅びるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月06日


挿絵イラスト