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レイヤードミッション『フェアリーテイルレジメント』

#クロムキャバリア #古代プラント #レイヤードミッション

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#レイヤードミッション


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 メレ・ルゥルに覚えがある者は幸いである。
 おおよそ、軍属として新天地であるレ・タンカを勤務地として数年。
 妖精や騎士などといった空想の世界に浸るような文学や映像作品に触れる事も少なく、相手にするのは暗黒の地底湖の調査と、そこに湧いて出る無法者達であった。
 生まれにコネがあるせいで、前線基地が危機に陥った際には臨時の司令官に任命されるなど、不得手なこともやってきたが、私が軍属の地位に求めるものはただ、キャバリアを駆って作戦に出る事。
 だとすれば、ここ一か月と少しの余暇は、大冒険と言っていいだろう。
 何から話すべきだろうか。
 きっかけは、我等が地底国家レイヤードが擁する天然の地底湖を開拓するリージョン『レ・タンカ』での任務中だった。
 広大な地底湖の全容は、数年に及ぶ調査にも拘らず掴み切れていない。その水源や流出先に至るまで、謎が尽きないことで、前線基地の役割も活きていると言えた。
 水中用に改修したキャバリアの故障により、制御を失った私は水流に呑まれ、湖底へと流されていった。
 機体の限界耐圧深度を超え、さらに降下していく機体が軋む音を聞きながら死を覚悟していた私を待っていたのは、19年の生涯の中で見たことも無い妖精郷との出会いだった。
「リゼル、さっきから一人で何喋ってるの?」
「ん、ああ……日記をつけていたんだよ。私に何かあっても、誰かが気づいてくれるようにな」
 コクピットで機体の動作チェックをしながらボイスレコーダーに記録をつけていると、膝の上に小さな人影が乗った。
 妖精と呼ばれる、このメレ・ルゥルの住人の中で、最初に私の友人となったレナという少女は、ビロードのような翅と手に乗るようなサイズであるが、これでも成人しているという。私より年上にしては、子供らしさが抜けていないようだが。
「……やっぱり、気にしているの?」
「ああ、短慮だった。救難信号を出さなければ、ここの存在を知られることも無かった」
 貴女のせいじゃない。と、レナは首を振るが、私がメレ・ルゥルに争いを持ち込むきっかけになったのには違いないだろう。
 この国は今、侵略の危機に瀕している。
 レ・タンカに帰還する為の信号を辿り、やってきた者達は、私を消し、国を乗っ取るつもりらしい。
 目的は、この国一つを賄うという古代のプラントに違いない。
 加えて、メレ・ルゥルにはキャバリアを用いる概念が無い。今まではプラントによる水の皮膜のような防御フィールドに守られ、この小さな国は脅威にさらされることが無かったのだ。
 様々な意味で、この国を取り巻く状況は、私一人の手に余る。
 私一人でこの国を守る事は不可能だし、助けを求めるべき前線基地はもはや敵だ。
 しかし、レイヤード各地に枝葉を広げる傭兵組織ならば、金次第で無茶な仕事も請け負ってくれるに違いない。
「私の機体では外に出ることができない。端末にアクセスするには、レナ、君の手を借りるしかない」
「任せて……必ず助けを呼んでくる! だから、無事でいてね」
 単身でレ・タンカの前線基地へと旅立つレナを見送り、本調子ではない機体を鞭打つ。
 なぜ、嘗ての味方を相手取る方に立つのか。私にも義理があるからだ。
 リゼルヴァ・C・クラシコ。これでも、名家の生まれなのだ。

 グリモアベースはその一角、黒い鳥を連れた給仕こと疋田菊月が、居並ぶ猟兵たちに今回の依頼の説明をしているところであった。
「ええと、クロムキャバリアはレイヤードという地下国家のお話です。地の底に枝を伸ばす国は幾つかの|区画《リージョン》に分かれておりまして、今回は大きな地底湖のある『レ・タンカ』という地方の、その地底湖の底の底に見つけられた妖精の国が舞台のようですねー」
 自分で言っておいてややこしいと思ったのか、考えを整理するべくお茶をぐいっと飲み干す。
 これまで誰にも見つかる事のなかった独自の文明を持つ妖精の国『メレ・ルゥル』は、水の底に気泡のような空間を作り出し、そこで静かに暮らしているという。
 人の背丈を超えるようなキノコや、変わった樹木や野生生物が好き放題に暮らす豊かな国は、古代魔法帝国から変わらぬ文明を残している。
「耐水耐圧に改修したシュタインバウアーが悲鳴を上げるような水の底ですからね。誰も踏み入れたことがなかったのでしょう。リゼルさんも、よく命があったものです」
 そんな極限の自然の中で文明を築けているのも、彼等の国の根幹に位置する古代プラントによる力が大きいようだ。
「古代のプラントなんて、胸が躍るお話ですね。しかしどうやら、リゼルさんが事故でこの国に迷い込んだことから、レイヤードに知れる事となったようです。豊かな植生、そしてプラント。狙われるのは間違いないでしょうが、当のリゼルさんは命を救われた恩義からか、メレ・ルゥル側に立つようですね。とてつもなく義理堅い人のようです」
 場所が割れてしまえば、レ・タンカの前線基地はキャバリアを搭載した潜水艇で妖精の国に乗り込み戦いを仕掛けてくる。
 そしてそれらはどうやら、オブリビオンマシンと化している。
 リゼルの救助ではなく侵略となっている事に、彼女は納得いかずに立ち上がったらしい。
「リゼルさんのお友達、妖精のレナさんの決死のアクセスにより、我々にもお鉢が回ってきたという訳ですねー。今までとは少しだけ訳が違う戦いになりそうです」
 猟兵たちは急ぎ、メレ・ルゥルまで行って、オブリビオンマシンを倒さなくてはならないが、最初に相手になるのは数を頼りにした先遣隊。
 大方の占領を終えてから、今回の首謀者が現れる算段のようだ。
「数で圧倒して、最後に大将がご到着という、よくある流れです。が、我々が手助けするなら、話は別ですね。最初の敵集団を蹴散らし、万全の備えをしてから敵将を迎え撃ちましょう」
 妖精郷メレ・ルゥルは、古代魔法帝国時代からひっそりと続く秘境である。
「中でも古代プラントと同じくらい長寿でいらっしゃる族長様は、色々と物知りでいらっしゃるそうですよ」
 敵首謀者を待ち受ける準備がてら、彼等の歴史、或はこの世界の秘密について、気になる事を聞いてみてもいいかもしれない。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文章書き、みろりじと申します。
 クロムキャバリアの秘密に迫るような、そのきっかけとなるようなシナリオのようですね。
 MSとしては、オリジナルの世界観以上の事を返答する事は現状では確約いたしかねますが、新たな進展に繋がる事には違いない事でしょう。
 気になってきましたか? ぬふふ。
 というわけで、今回のシナリオは、集団戦→日常→ボス戦というフレームを使わせていただいております。
 広大な湖と大地の狭間にある妖精郷に降下してくるロボットたちを倒しつつ、何か気になる事があれば聞いてみましょう。
 あと、シナリオを彩る以上の意味はあんまりないですが、今回のシナリオは、過去に私が書いたことのあるレイヤードミッション『ブラックレイクダウン』と同じ舞台となっております。
 あれから時間が経っているので細かな違いこそありますが、別に知っていても知らなくても、同等に楽しめる……ようにします!
 レイヤードを舞台にした物語を詳しく知りたければ、ものすごくお手数ですがタグを辿ってみてください。
 例によって、最初の断章は投稿せず、章の合間に説明っぽいお話を幾つか投稿する予定です。
 プレイング募集期間などは設けませんので、お好きなタイミングでどうぞ。
 また、クロムキャバリアのシナリオでは、キャバリアを持たない猟兵でもご参加できるよう、キャバリアの貸与が可能となっております。
 案内役の菊ちゃんがいっぱい持ってるレイヤード製の量産型キャバリア、シュタインバウアーmk-2がいっぱいあるので、そちらの運用となる予定です。
 詳しくは、菊ちゃんのキャラシなどをご覧くださいませ。
 それでは、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作ってまいりましょう。
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第1章 集団戦 『グレイル』

POW   :    シールドストライク
【シールドを使用した格闘攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【パイルバンカー】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    バレッジ
【友軍と共に繰り出す一斉掃射】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を制圧し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    グレネードショット
単純で重い【榴弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。

イラスト:イプシロン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユリウス・リウィウス
妖精境か。アックス&ウィザーズならともかく、クロムキャバリアでとはな。
この依頼を引き受けた者として、必ず守りきってみせよう。

人間相手にシールドバッシュするのか? 当たるわけがなかろう。
こちらは虚空斬で容赦なく切り捨てていくぞ。脚を断ち切れば、ろくな行動も出来まい。とどめは他の仲間に任せて、オブリビオンマシンの足を止めて回る。

どうした? ただの人間相手にキャバリアが右往左往か? ムカついたなら当ててみろ。
この挑発に反応するかどうかで有人かどうかを試してみよう。無人機なら楽なんだがなぁ、なあ、おい。

まあ人が乗っていようといまいと、俺の仕事は変わらん。敵の足下に入り込めば、銃器もそうそう使えんだろ。



 銀紙のフィルターを張ったかのように光を含む巨大な水泡の中に、その郷はあった。
 鉄と土以外はほぼ見かけない筈のレイヤードの地底暮らしには、おおよそ縁のなかった自然光の明かりが、湖底に留まる巨大な水泡を照らし、時には虹色に分散させていた。
 これが青空というものなのだろうか。
 否、この地底に空は無い。この郷の空もまた、偽りの空であった。
 だが、他のリージョンで見るようなホログラムともまた一味違った空、大気、そしてキャバリアの足元を覆うような大量のキノコや野生植物は、異様の一言に尽きる。
 自ら光を作り出す植物で溢れた豊かな大地が、広大な湖の底に空気と共に存在するなど、誰が信じようか。
 だが、この夢物語の舞台に、あまりにも馴染み深い兵器と共に流れ着き、見て触れて、命を救われたからには、信じぬ訳にもいかない。
 今のリゼルヴァにとって価値観は大きく揺らいでいる。
 魔法としか言いようのない不可思議な国と、その住人の生活様式。
 それらは、少なくとも今現在における、彼女の所属する前線基地よりも信じることができた。
 キャバリアのモニター越しにぐるりと見回す光景の中に目に留まる、先端の丸い円錐形のような巨大建築。
 妖精の国では神殿と言われるそれがプラントである事は、直感的に理解した。
 多くの資材を要するキャバリアが主戦力のこの世界に於いて、プラントの有無はまさにその趨勢を担う。
 しかしながら、妖精郷の民はそれを争いに用いる事はしなかった。
 まるで闘争の世界から隔絶するかのように、自らの種が用い得る能力、即ち彼等の場合は独自の魔法と呼ばれる超能力を使って、この極限の湖底の大地でひっそりと暮らしていたに過ぎない。
 だがそれも、自分という闖入者の出現により、平和を脅かしてしまった。
「来たか……!」
 見上げた空に、馴染みのある影が迫るのを見つけて、リゼルヴァは口の端を引き締める。
 耐水耐圧にチューンしたシュタインバウアーであっても、行動不能にまで陥った水圧の地獄。
 しかし、最初から深海探査を目的とした潜水艇と、弾頭型キャバリアケージならば、この国に投下する事は不可能ではない。
 場所さえわかれば、キャバリアを送り込む手段などいくらでもあるのだ。
 空を覆う水の膜を、キャバリアを内包した魚雷管が突き破り、降下してくる。
 リゼルヴァのシュタインバウアーは、本調子ではない。
 先遣隊と言っても複数体を相手にするなど、不可能であろう。
 だが、手をこまねいていても、口を封じられる。
 それほどまでに、この国は宝の山なのだ。
「妖精郷か。アックス&ウィザーズならともかく、クロムキャバリアでとはな」
 ぽつりと呟いた男の言葉をマイクで拾い、その姿を見つけたリゼルヴァは目を丸くする。
 巨大に成長し枯れて石化したキノコのぼうしに座り込む甲冑姿には、覚えがあったからだ。
「君は……来てくれたのか……!」
 疲れたような眼差しをちらと一瞥くれたその男は、すぐに空へを向き直り、立ち上がった。
 降下する魚雷の外装を脱し、キャバリアが飛び出したのを見たからだろう。
「夢のような国に、無粋な連中だな。この依頼を引き受けた者として、必ず守りきってみせよう」
 一瞬にして戦う者の顔つきに変わったユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)は、足場にしていたキノコを蹴りつけると、降下するオブリビオンマシンの方へと跳んでいく。
「レナ……間に合ってくれたんだな!」
 かつて、上司を救出するときにも手を貸してくれた、キャバリアを用いない傭兵の出現に、小さな友人の成してくれた奇跡を想う。
 この戦い、もしかしたら希望が見えてきたかもしれない。
 魔法の御業か、どういうわけか、と訊かれればグリモア猟兵によって送り込まれたというからくりがある猟兵の存在に、オブリビオンマシンはさっそく反応を示した。
 湖上から送り込まれた戦力は、量産型キャバリア『グレイル』個人の設計としては破格の生産性を誇っていたため、そのブランドはいつの間にかレイヤードにも出回るようになったという。
 部品点数を抑え、低コスト化と整備性を誇るその機体の扱いやすさは、先遣隊の武装にも持って来いという訳だ。
 突撃してくるユリウスにも、グレネードランチャーを備えたマシンガンを構えるが、キャバリアよりも的が小さく、そして素早く懐に潜り込んでくるユリウスのスピードは、もはや人間業ではない。
 そもそも、キャバリアに向かって積極的に飛び込んでくる人間がいるとは想定できないものである。
 思わず盾を構え、質量差で以て押し返そうと試みるが、その動きは、大柄であればこそユリウスにはよく見通せた。
「そんなものが当たるわけがなかろう」
 振り払うような盾の一撃をやり過ごすと、胴ががら空きになるも、グレイルのシールドに内蔵された杭がこちらに向いたのにも気付いた。
 腕ごと打ち付けてくるそれをすり抜け、
「こいつを喰らっとけ」
 抜き付けた二刀が、牙を剥くように突き出された腕と、片足を切り裂いた。
 【虚空斬】すれ違うように振るわれた二刀一対の黒剣が、グレイルの関節部、その動力線を的確に切り裂いていたために、わずかな損傷ながら機能不全に陥る。
 ユリウスの技量ならば、或はコクピットを直接狙う事も不可能ではないかもしれないが、オブリビオンマシンは操縦者の思想を乗っ取ると聞く。
 無人機ならいざ知らず、有人であった場合は極力、殺害すべきではないだろう。
 無論、最悪の場合は手っ取り早い手段を取るつもりではあったが。
 行動力を奪うと、ユリウスは完全に撃破せずに次の目標へと移る。
「どうした? ただの人間相手にキャバリアが右往左往か? ムカついたなら当ててみろ」
『……こいつ!』
 明らかな挑発。しかし、生身一つでそれができてしまう技量が、ユリウスにはあった。
 そして、それをわざわざ敢行するのは、中身が人間かどうかを探る為でもあった。
「まあ人が乗っていようといまいと、俺の仕事は変わらん。敵の足下に入り込めば、銃器もそうそう使えんだろ」
 次々と降下してくるグレイルの部隊を突っ切るようにして、ユリウスはそれらを次々と擱座していく。
 無論、足止めをするだけでは完全な無力化とはいかないが、動きを止めたキャバリア相手ならば、パワーダウンしたシュタインバウアーでも十分に対抗できるものであった。
 緩慢な動きでマシンガンを構え、足を奪われたグレイルがユリウスを撃とうとするのを、横合いからリゼルヴァのシュタインバウアーが撃破する。
 体格差からくる武器の攻撃力は量産型ですらこんなものだが、ユリウスはそれでも生身で敵陣を切り崩していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
妖精郷かぁ…。アックス&ウィザードみたいな感じかな?それなら、なんだか親近感がわくね。
ともあれ、平和に過ごしている所に戦火を広げさせるわけにはいかないしね。
それじゃ、いっきまーすっ!

推力移動から空中機動に移行してからの空中戦っ!
狙撃モードのビームランチャーで敵の腕部か脚部を狙い撃つよ。
狙撃後は、ライフルモードに変更して敵に接近しつつ、ホーミングビームで動かして、ランチャーで丁寧に撃ち抜くよ。

敵の攻撃は、残像を生み出すほどの機動力で攪乱しつつ接近っ!
そのまま、ビームセイバーで攻撃していくよ。
ヒット&アウェイで斬撃して、離脱と同時にビット以外の射撃武器をマルチロックで撃ち放つよっ!
敵が残ったらUC



 地底に根を下ろして機械の導きで繁栄する人々。
 その生活の版図の一つに、天然の広大な地底湖。
 陽の光も届かぬ地底湖の更に湖底には、古代のプラントと魔法で作られた妖精の国。
 とてもじゃないが、機械の人形が戦争の道具として使われている世界の話とは思えないが、しかし、目の当たりにする光景は気圧と大気中の成分が、おおよそ生物にとって快適である事を示していた。
 まやかしなどではない。妖精の住まう国が、この世界にも存在している。
「妖精郷かぁ……。アックス&ウィザードみたいな感じかな? それなら、なんだか親近感がわくね」
 自身もまたエルフであるシル・ウィンディア(青き閃光の精霊術士・f03964)は、メレ・ルゥルと呼ばれるこの小さな妖精郷の不可思議な光景を目の当たりにして、奇妙な既視感を覚えるのだった。
 猟兵として数多の世界に於いて戦いの日々を送るうち、こうして鋼鉄の巨人たちがひしめく戦争の世の中にも介入するにあたり、精霊と心通わせるエルフも、彼等と渡り合うだけの力を手に入れた。
 白く青い巨人。『レゼール・ブルー・リーゼ』恐らくはシルの精霊術士としての能力によってその力を十分に発揮する超能力者専用のキャバリアは、高機動空戦型を想定しており、妖精郷に降りかかる脅威とも渡り合えるだろう。
 しかしながら、冒険の中でその存在を見出し、手に入れたキャバリアに乗り込む者が、その機械の人形を主戦とする世界に於いて、故郷のような匂いを感じさせる文明に触れるというのも、不思議なめぐりあわせである。
 宝石のように鮮やかな色合いのキノコや謎の植物と、それに群がる小さな妖精たちの姿は、それはとても幻想的で、湖底を覆う空を成している水の膜が銀箔でも巻いたかのように光を反射させ、時折虹色に光を含む様は、いっそここがクロムキャバリアである事を忘れそうにもなるが、動力反応の接近アラート共に空の水面に浮かんだ武骨な降下ポッドの出現に、シルは現実に引き戻される。
 遊覧飛行ならば願ってもない。しかし、ここはもう戦場なのである。
 穏やかな眼差しは、一つまばたきを挟めば、勇ましい鋭さを帯びていた。
「ともあれ、平和に過ごしている所に戦火を広げさせるわけにはいかないしね。
 それじゃ、いっきまーすっ!」
 スロットルを開放すれば、彼女の意気込みと魔力に反応したスラスターが気流を巻き起こし、翼ある巨人を空へと誘う。
 敵は量産型キャバリアのグレイル。バランスのいい機体だが、この世界の特性上、空戦は稀である。
 よって、空中での分はシルに軍配が上がるだろう。
 何より、降下ポッドから降りる瞬間は確実に無防備になるはずだ。
「あ、でも、中に人がいる可能性もあるんだよね」
 槍のようなビームランチャーを構え、その撃破を狙うシルは、わずかに逡巡する。
 オブリビオンマシンは、キャバリアが何らかの力で操縦者を操ってしまうものである。
 最悪の場合はパイロットブロックを破壊するのもやむなしだが、妖精郷への侵攻は恐らく彼等自身の思想ではない。
 中の人無罪! なら、なるべく生かすべきだろう。
「変な所に当らないでよ……!」
 狙撃スコープ越しに、高出力のビームを、降下ポッドを掠める程度に定めて発射。
 敢えて芯を外すようにして狙撃するというのも奇妙な話だが、果たしてそれは降下ポッドの外装を抉り取り、光線に煽られるようにして投げ出されたグレイルが手足の一部を破損させながら落ちていくのが見えた。
 ……まあ、死にはすまい。
 量産型なら安全装置もそれなりに機能する筈だ。
 流石に景気づけの一発のおかげで、降下中の部隊はシルの存在に気づいたらしい。
 慌てたようにポッドの外装を脱して射線から逆算したシルの方へと銃口を向けるが、それは想定済み。
 機体速度を上昇させたシルは既にその一団を|複数照準《マルチロック》に納めていた。
「ホーミングモード、セット!」
 ランチャーのバレットセレクトを変更し、中近距離の銃撃戦と誘導機能を付与。残像が残る程のスピードで通りすがりつつ、撃ち抜いていく。
 が、流石に数も多く、通り抜けるにも直線的過ぎたのか、反撃してくる機体もあった。
「うわわっ!?」
 マシンガンの弾をばら撒かれる程度なら、それはほとんど芯を捉えるものではない。
 弾幕とはもともと、接近を許さないためにばら撒くものだ。
 だが、それに混じってグレネードを撃たれるのは、流石にまずい。
 シルの機体は高機動を得るために装甲は薄い。榴弾の直撃を貰うのは危険である。
 マシンガンの弾幕に慣らしておいて、進路上に置いておくようなグレネードは、集団戦術ならではである。
『やったか……いや、当たっていないだと!?』
 高速で走り抜けるような機動は、急転身など不可能と見たが、風の精霊を宿したかのような不規則な機動を可能にするサイキックキャバリアは、着弾したかに見えたその一瞬手前で鋭角に軌道を変更、爆風に紛れて一瞬にして密着距離にまで踏み込んでいた。
『うわぁ!?』
 光刃一閃。ランチャーとは反対の手に持ったビームセイバーが、グレイルの上半身を斜めに切り裂いた。
 バランスを崩して墜落していく機体を見下ろすその姿が、空中に留まった瞬間に誰もが唖然としたが、相手が手を止めているならばチャンス。
『くぅ、撃て、止まってるぞ!』
「精霊たちよ──!」
 銃口を向けられるその瞬間、シルの【エレメンタル・バラージ】が発動する。
 複数属性の色とりどりの精霊から成す魔力弾が、その銃を通した敵意に反応して次々とグレイルの装甲を撃ち抜いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

結城・有栖
クロムキャバリアにも妖精さんっているんですね。

「古代魔法帝国時代には沢山いたのカモネ。
それはそうと、無粋な輩を何とかしないとネ」

ええ、平和な場所に戦禍を持ち込むのは許せません。
行きますよ、オオカミさん。

今回はトラウムに搭乗し、シュトゥルムシステムで飛翔させて出撃です。
敵の数も多いので、レーザーライフルを装備した乙女蜂兵団の皆さんも呼び出します。

乙女蜂兵団には【集団戦術】を利用して敵を撹乱しつつ、レーザーで【マヒ攻撃】をしてもらいます。
私も動きが鈍った敵を狙ってシュトゥルムの風の斬撃波を放って攻撃です。

敵の攻撃は【野生の勘で見切り】、上手く【操縦して空中機動】で回避し、【カウンター】で反撃です。



 胞子を吹き出す太ったキノコ。
 空飛ぶムカデのような虫を、捕まえて取り込む植物。
 その背景には、空の遠くを銀色の膜のように光を含ませる空が、時折その光を分散して虹色にも見せる。
 幻想的な光景は、本当にそれがクロムキャバリアの世界なのかと首をかしげるほどだった。
 だが、まあ、よくよく考えれば、レイヤードという閉鎖的な国の中では、こうしたドームに囲われた区画はよくあるもので、こういったジオラマというか、コンセプトのもとで作られた世界と言われれば、納得いかなくもない。
 ただし、どうやらこの作り出された湖底の箱庭には、いずれも本物が使われているらしい。
 妖精の住まうこの郷で一番大きな建物。神殿と呼ばれているそれは、巨大なタジン鍋みたいな姿を見せているが、それこそが古代から脈々と受け継がれた植物の種子などを生み出して、この極めて閉じている世界を維持しているようだ。
 この異質さ。結城・有栖(狼の旅人・f34711)は、奇妙な既視感を抱くのだった。
 夢の中にいるかのような幻想的な世界は、どこかアリスラビリンスの不可思議な世界にも似た雰囲気。いや、アックス&ウィザーズだろうか?
 誰かが言葉遊びで作ったような奇妙な空気が似ているのだろうか。
「クロムキャバリアにも妖精さんっているんですね」
『古代魔法帝国時代には沢山いたのカモネ』
 目で見て触れてみても、現実味がないようなモノには覚えがあったが、有栖にとって、その身に生じた変化と共に生まれた内なるオウガこと、なぜか本能を侵食してくる気がしない友人と化しているオオカミさん。そして、不思議な世界で知り合った愉快な仲間たちも、有栖にとってはいずれも掛け替えのない存在だ。
 ここで生まれ、生きている妖精たちにとっては、この幻想こそが現実なのだ。
 その小さな体を、小さな翅を震わせて、ただ平和を祈る様は、本当に争いごとに触れてこなかったのだと思わせるものであった。
 ぴくり、と有栖の髪を押し上げる狼耳が反応すると、オオカミさんも敵機の来襲を感知したらしい。
『それはそうと、無粋な輩を何とかしないとネ』
「ええ、平和な場所に戦禍を持ち込むのは許せません」
 見上げた銀幕の空からは、幾つもの魚雷が顔をのぞかせていた。
 深海探査用の潜水艇が、キャバリアを何機も運び込み、そのままでは上陸不可能なためか、キャバリア降下用のポッドを魚雷のように撃ち込み、この郷へと降りてくるようだ。
 武器を持たぬ者たちに対してというなら、明らかに過剰戦力だし……、無粋だ。
 もうしばらくメレ・ルゥルの空気に浸っていたくもあったが、そうもいかない。
 有栖は寝かせてあった機体のコクピットに潜り込むと、その身を起こして浮上システムを起動する。
 魔女のシルエットを思わせるキャバリア『トラウム』は、有栖の想像魔法を再現するのに適した超能力者仕様である。いかにも彼女の為に作り出されたかのようなシステムを積んだその機体の出所は知れないが、風を纏い空を飛翔する大魔女は、有栖の想像の通りに稼働する。
「行きますよ、オオカミさん」
『あいよー。相手は数が多いヨ』
 言外にオオカミさんから注意しろと言われているが、有栖も考えが無いわけではない。
 相手は生産性を重視したグレイルという量産型。単機では恐れる程ではないが、シンプルであるがゆえに連携を取られたときの戦力は侮れない。
 トラウム単機で当たる事も不可能ではないが、手数が足りなければどうしたって長引いてしまう。
 戦場をここに留めている以上は、郷に被害が出かねない。
「乙女蜂兵団に手伝ってもらいます」
『えぇ、攻撃通るカナー?』
「大丈夫です。通るものを用意すればいいのです」
 そうして起動したのはユーベルコード【想像具現・乙女蜂兵団】。
 トラウムの周囲に幾つも並ぶヘキサグラムの魔法陣から警告を告げるような黄色と黒のツートンカラーに身を包んだ蜂娘の兵たちが次々と飛び出してくる。
 その手には針のような槍……ではなく、武骨なレーザーライフルが握られていた。
 有栖の想像から作り出される蜂の乙女たちは、その武装も想像から生み出されるものであった。
「皆さん、なるべく敵をかく乱し、レーザーで動きを止めてください。深追いは禁物です。無理に倒そうとしなくても構いません。私達の戦いを見せてあげましょう」
「「「ビー!」」」
 簡潔で手早い指示のもと、武装した蜂乙女たちはトラウムと共に飛翔し、降下してくる部隊とかち合う。
 どちらかというと昆虫よりも人に近い大きさとデザインの蜂たちは、5メートル規格のキャバリア相手にはやや心許ないが、降下中の今ならば、空中戦で上を取れる。
『うお、なんだこいつら……生身……いや、人間じゃな──あばばば』
 想像から作られたレーザー兵器を受けたグレイルにも対エネルギー兵器用の加工はされているのかもしれないが、その武器は装甲を焼くことが目的ではなく、機体の制御を、中の人を麻痺させるためのものであった。
『くそぉ、本体だ。操ってる奴を狙え!』
「こちらへ来ますか……!」
 味方が麻痺攻撃に当り、機体制御を失ったところ不可視の風の衝撃波で切り裂かれるのを見たグレイルは、すぐに攻撃の本体がトラウムにある事を見抜いたようだったが、蜂の集団を突っ切り、直接攻撃を向けるには、機動性に差があり過ぎた。
 無理な突撃を難なくいなし、ひらりと身を翻す魔女の手には、伸縮する大鉈が握られ、勢いを殺せないグレイルの頭頂から胴にかけての装甲をかち割るものであった。
 カウンター気味に入ったものだが、その切っ先はコクピットブロックを両断するまでには至らなかったようだ。
「機能を止めるだけなら、十分ですね」
 機体にめり込んだ鉈を引き剥がすようにグレイルを蹴りつけると、頭を二つに増やした機体が真っ逆さまに落ちていくのが見えた。
 ……たぶん、命には関わらないはずだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「クロムキャバリアで妖精境、ですか」
「世界群は骸の海を揺蕩う泡沫、接触し重なりあい三次元的に存在することは確認されていましたが、匂わされていた四次元的な時間軸構造の証左となりうる事態です。…実に面白い」
嗤う

「水中なら最初からこれ一択なのでしょうね…合一・黄巾力士」
100m程に巨大化させた黄巾力士に融けるように融合
飛来椅を最大限に展開させ自分の周囲半径150m程に水の無い暴風の空間を作り出す
敵の榴弾が暴風に巻き込まれあらぬところに着弾するのを無視しつつそれでも近接して戦闘を行おうとする機体のみ仙術+功夫で縮地し自ら叩き潰す

「この暴風の中、飛行も空中機動もない機体など蟻以下の存在です」
嗤う



 地底を掘り進んで広げた国、レイヤード。
 その中に於いて天然物として資源と試練を与えるかのようなレ・タンカの天然洞窟に広がった地底湖。
 陽の光の届かぬ暗黒の湖の探査は、長年にわたり謎を極めていたというが……。
 その湖の底に、気泡のように空間が存在し、あまつさえ妖精が住まう郷があるなどと、誰が信じよう。
「クロムキャバリアに妖精郷、ですか」
 長く長く生きた大妖怪……をあくまでも自称する、謎に包まれた妖狐、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は、その涼やかな顔を崩す事はほとんどない。
 長い時を生き過ぎると、大概の事に驚かなくなるというが、そこに発見が無いわけでもなく、滅多に遭遇しない事態にも見舞われる機会は増える。
 心身に余裕が生まれたとしても、新鮮に感じる感性自体は、たとえ長く生きようともそう衰えるものではなかった。
 何故ならば、猟兵となってよその世界を行き来するようにもなって、それでもなお、冬季の探求心は尽きないからだ。
 せっかくの未知。興奮するばかりでは大事なことを見過ごしてしまう。
 クロムキャバリアの成り立ちには謎が多い。
 空を支配する殲禍炎剣。100年以上も戦争を続けて、尚も種を尽きさせぬ恵みと争いを齎すプラント。
 まるで箱庭の中で戦争が続くことを、意図的に維持しているかのような歪さもそうだが、長年続く戦争の影響か、どうしてそうなったという成り立ちを覚えているものはほとんどいないらしい。
 冬季が指先でついと触れる植物も、何百年と生きた珊瑚かキノコか、いずれにせよ白化して朽ちてしまっているそれは、固まった砂のようにボロボロと崩れてしまう。
 いくつもの小国家が立っては朽ちていく戦乱の世界に於いて、このような植物が年老いて散って行くのは稀だ。
「世界群は骸の海を揺蕩う泡沫、接触し重なりあい三次元的に存在することは確認されていましたが、匂わされていた四次元的な時間軸構造の証左となりうる事態です。……実に面白い」
 指先に残った灰化した植物の名残を払いつつ、豊かな植生と頭上に水面を見上げるという不可思議な光景を見やり、やや興奮したように息をつく。
 浮かぶ笑いは、含みを見せるかのようなものがあり、それが既知であるのか未知であるのか、試してみたくもあるような、そんなニュアンスを感じさせる。
 だがしかし、思考の海に身を任せるには、やはりというかこの場所は剣呑過ぎるようだ。
 銀と虹を思わせる幻想的な空の水面の向こうに、無機的な金属の接近を感知する。
 そうだ、ここへは争いがやってくる。その為に猟兵は呼び出されたのだ。
 こんな辺境くんだりまで、危険な水圧を押しのけて。
 見たところ、レイヤードのキャバリアは深度の深い水圧に堪え得るものではない。そのために、量産型キャバリアをこの地に送り込むためには、耐圧式のポッドに包まって侵入するしか手が無いようだ。
「ふむ……手も足も出ない魚雷の中でなければ、こちらに来ることすら叶わぬというわけですか」
 見上げる冬季は、顎を手でさすりつつ、その口の端に意地の悪い笑みを浮かべる。
 わざわざ敵が土俵に立つまで待つ必要もない。
 ざっと地を蹴る冬季のその背後に、金色の装甲に包まれた歩行戦車が姿を現す。
 仙人となった冬季が自作した宝貝・黄巾力士はキャバリアのようでキャバリアでなく、戦車のようでいてとてもそうは見えない。
 仙人がその不思議な通力で以て作り出した不可思議な便利アイテムであり、乗り込むこともまたリサイズもそこそこ自在であるようだ。
「水中なら最初からこれ一択なのでしょうね……【合一・黄巾力士】」
 号令と共に、冬季の身体は溶け込むように黄巾力士の身体に吸い込まれて行き、その全長はぐんぐんと大きくなっていく。
 100メートルサイズの巨大機動兵器。それは、5メートル規格のキャバリアの実に20倍。
 それが腕を伸ばせば、妖精郷の空を覆う水の膜にずぶりと入り込み、今まさに侵入しようとしたオブリビオンマシンを内包したポッドを掴んでいた。
 鋼鉄の装甲、それと合一した冬季は、今や呼吸すら不要の戦車そのもの。
 魚雷のようなポッドを押し返すように自らも水の中に入り込んでいき、無理矢理水中でポッドをこじ開けていく。
『う、うわぁ、水が……なんだ、こいつ!?』
 ぎりぎりと装甲が歪んでいく嫌な音が聞こえてくる。
 水中用に換装しているとはいえ、湖底の水圧はキャバリアには苦しい。
 それを力技でこじ開けるのは、流石に黄巾力士と言えど手間がかかる。
 これじゃあだめだとばかり、破損したポッドを水中に投げ捨てると、今度は黄巾力士の装備を使用する。
 あらゆる地形に対応可能な不思議アイテム宝貝とはいえ、水中では使える武器も限られる。
 しかし、積み込んだ音波兵器『飛来椅』は問題なく機能する。
 水中ではやや抵抗が大きいが、飛行するために発生するソニックウェーブはやがて大きな渦を作り出し、周囲の水をかき分け暴風の空間を作り出した。
 水の中を進むためのポッドは制御を失い、暴風の中で煽られるばかり。
『パージしろ! 奴を撃ち落せ!』
『バランサーが、動かない! なんで水の中に嵐が起きてるんだよ!?』
 阿鼻叫喚に包まれるオブリビオンマシン・グレイルは、それでも水のない環境で役に立たないポッドを脱ぎ捨てて応戦しようとするが、激しい暴風の立ちこめる中では、まともに狙いが付かない。
 マシンガンも、グレネードも、地上のキャバリアを相手にするための兵装だ。
 戦場の関係上、水中にこそある程度の必要装備を施してきたものの、この状況は予想外であった。
 明後日の方向にそれて虚空で爆発を起こすグレネードを視界の端に、射撃が功を奏さないと判断するや、必死の突撃を敢行するグレイルの姿を、冬季は真正面から見据える。
 サイズ差は歴然。しかし、張り付いての接近戦ならば、少なくとも風の影響は受けまい。
 その考えはきっと正しい。が、
「この暴風の中、飛行も空中機動もない機体など蟻以下の存在です」
 降下するための最低限のブースト機能は、飛行のためではなく跳躍補助のためだ。
 制御の利かない空中での戦いについて来れるわけも無く、振り上げた腕をたたみ速度を増した黄巾力士の突き出た肘が、グレイルの機体装甲を叩き潰した。
 功夫に於いては、基本的な肘による打突。頂肘。大地を蹴ることによるブーストもない、基本的な動作だけではたき落されるオブリビオンマシン。
 つまりは、それだけの重量差と、自由度の差があったという訳だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
(エイストラ搭乗中)
この場合、どちらが依頼主なんでしょう……?
まぁ、出元がどこにしろ疋田さんに請求すれば済みますか。

相手がグレイルでしたら、そこまでの火力は要りませんね。
ライフル出力を即射モードに落として連射しましょうか。

実体弾の類はオーラ防御(と称するガーディアン装甲の迎撃機能)で
全部止まりますから、近寄らなければ圧倒的優位ですね。
盾で殴られるほど鈍くもありませんし、そもそもこちらが速いです。
飛べばさらに有利と……。
この戦場、遮蔽物あるんですかね。あっても大概貫通しますが。

複数固まっていれば鎧無視攻撃/範囲攻撃/キャノンで一網打尽。
ばらけていたら貫通攻撃/ライフルで片端から撃ち抜くだけです。



 空には夕暮れ時のような光を銀色に含む水面。
 大地には巨大に成長したキノコをはじめとした、陽の光の下では見かけないような奇妙な植物群。
 レイヤードという特異な地底国家にも多様な都市群があったが、妖精郷とされるメレ・ルゥルの在り様は、まさに幻想の一言であった。
 とはいえ、少女の記憶には、陽の光ほど縁遠いものも無いのだが。
 データを取得する以外に興味を見せないかのような無機質な眼差しが、キャバリアの視界を共有し、周囲の資格情報を得ると共に、特殊レーダーを通じて住環境及びキャバリアの行動予測を無意識のうちに計算する。
 未知の領域を飛ぶ場合は、その情報が何よりも大切。
 とはいえ、飛ぶにはいささか狭い空域と言わざるを得ない。
 やはりここにも空は無いのか。
 レプリカントの少女、ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)は、表情の薄い顔の奥で敵機の来襲を思わせる空のさざ波を見るともなく見ていた。
 だまし絵のような光景は、きっと本物の空ではない。
 最も、猟兵として様々な戦場に出るからには、本物の空を堪能したことも一度や二度ではないし、もしかしたら、ここにある偽りの空は、他の戦場と比べていくらか美しいものなのかもしれないが。
 生憎と、それに感情を揺さぶられるために来ているわけではなく、彼女はあくまでも傭兵として荒事をやるためにこの辺境にまで足を運んでいる。
 傭兵、といえば、そうだ。重要なことを失念するところであった。
 今回の依頼人は、ちょっと前にも仕事で参加した事のあるレ・タンカの軍人と聞いている。
 しかしながら、ここを襲撃するとされる敵側も、同じ所属であるという。
 実に奇妙な依頼だが、問題はそこではない。
「この場合、どちらが依頼主なんでしょう……?」
 クロムキャバリアの依頼を、オブリビオンマシンが関わっているものに限り、グリモア猟兵が感知する事が可能であり、その解決の為に猟兵にお鉢が回ってくる仕組みのようだが、話を聞く限りでは依頼を発令したのはここに流れ着いたリゼルヴァか、単身で軍の端末にまで辿り着いた妖精のレナか。
 ちら、と搭乗するキャバリア『エイストラ』のカメラから周囲の景観をいくらかピックアップしてみるが、ここ妖精郷には、キャバリアの資材や資金に繋がりそうなあれやこれは、あんまり見かけないが……まさか、成功報酬であのタジン鍋めいた古代プラントをもらい受けるなどとは言えない。
 あっても、その、なんだ。困る。
 レプリカントであるノエルにとっては、生活に直結することなだけに、割と真剣に考えてしまうが、思案するうちに敵機の来襲をアラートが知らせると共に、弓を張るような水面が揺らめいて、魚雷のような降下ポッドが次々と姿を現す。
 ひとまず、後回しにすべきか。
「まぁ、出元がどこにしろ疋田さんに請求すれば済みますか」
 あのうさん臭い給仕の笑顔が引きつるのが目に浮かぶ。仕事を斡旋するからには、責任を取ってもらわねば。
 彼女なりの冗談なのかもしれないが、その表情は薄く、本気とも冗談とも受け取れる。
「データ照合……該当データ、グレイルですか」
 既に相手となる機体を過去の交戦データから推察し、その対策を構築すると、火器管制データを調整する。
 【セレクタブル・ウェポン】相手を見て適切な攻撃方法を取るのは、戦闘の基本である。
 敵機体のグレイルは、パーツ点数と構造をなるべくシンプルにまとめ、安定性と生産性を向上させることに成功した、量産型としては傑作の部類に入るキャバリアだが、言うなれば廉価版。
 安くていいものといえば聞こえはいいが、ドラッグカーとレース可能な性能とは言い難い。
 震動干渉を応用したバイブロジェットブースターを一度だけ加速噴射、滑空するようにして降下ポッド群を迂回しつつ、ライフル出力を抑え連射モードでなぞるように掃射する。
『うおっ、待ち伏せか!? 敵は一機だけじゃないのか!?』
『ポッドをパージしろ。誘爆するぞ!』
 プラズマライフルの連射で爆炎を上げるポッドからばらばらとグレイルが脱するが、殲禍炎剣のもとで開発されたキャバリアのほとんどは、航空機能をもたない。
 まして安価な量産機にそこまで贅沢な機能など無く、跳躍補助にブースターが付いているくらいに過ぎない。
 ようするに、ほんのり浮遊はできても、空は飛べないのである。
『応戦しろ。敵は飛んでいるぞ』
『無茶言うなって! こんな豆鉄砲で追えるかよ!』
 マシンガンの応射を構わず、グレイルの頭上を抜けていくエイストラの装甲が、その弾幕を弾くようにきらきらと火花を上げる。
 流れ弾はやや距離と角度を外せば、ガーディアン装甲を貫けるものではない。
『ぬうっ! ならば、接近して格闘戦に持ち込む。援護しろ!』
 着地した数機が、エイストラを捉えんと再び跳躍して接近戦を試みるが、元から空を飛べる機体を捕まえるにしてはやや確実性に欠ける。
 それが無茶であっても、最も確実にエイストラにダメージを与える手段としては妥当。
 しかし無茶には変わりなく、
「それほど鈍くはないですよ。その機体では、エイストラに追いつけません」
『うぐぁ!?』
 迎え撃つかのようなキャノンの直撃。機体を火に包みながら撃墜されたグレイルが奇妙な植物群をなぎ倒していく。
 そこではたと、大きく成長した植物が遮蔽物になり得ることを考えに入れたノエルだったが……キャバリアが転げまわるだけでなぎ倒してしまうなら、大した邪魔にもならないかと思い直し、地上に降下したグレイルを丁寧に撃ち抜いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クゥ・クラウ
……――。
周囲に広がる景色に息を吐く。水の壁に囲まれた、驚くほどに広く、緑にあふれた空間。
『実に興味深い』
AIのジョン・ドゥが話し掛けてくる。
『だけど、いまは足を止めている時間は無いようだよ』

観測機・ゲイザーを周囲に飛ばして情報収集。
住民は古代プラントに避難している? 地形や敵の侵攻状況も確認。

UC【オーバーブースト・マキシマイザー】。天翼を展開。敵に囲まれないよう、弾幕を回り込むように高速で飛行。……勢いあまって水の壁を突き破ってしまわないように注意しないと。

「ジョン・ドゥ、サポートお願い」
アンタレスとレーザーでコックピットを外すようにして攻撃。
敵がプラントに近づかないように立ち回る。



 波の音が聞こえる。
 だがそれは海でなく、おそらくこの地下世界には、空も海も無い。
 むしろ、キャバリアのカメラ映像越しの光景が、夢を見せていると言われてもうっかり信じてしまいそうだった。
 それくらいには、妖精郷の在り様は幻想的な魅力があったのだ。
 ペットボトルの底に炭酸ガスの気泡が張り付いているかのような。それを大きく大きく拡大したかのようなもの、というにはスペクタクルを感じずにはいられない。
 弓を張ったような曲線を描く空の水面に、鬱蒼と萌える木々や緑。あとなんかでかいキノコ。
 戦乱続きのクロムキャバリアには、最も得難い光景が此処にはあった。
「……──」
 クゥ・クラウ(レプリカントのクロムキャバリア・f36345)は、心有る機械として生まれた。
 尤も、それの証左は容易ではないが、モニタ越しに見る光景を前に息をつく仕草は、人を模した機械にはあるまじき機微であった。
『実に興味深い』
「……ごめん。少し呆けていた」
『気持ちはわかるよ。美しい光景を見聞きした時、人は感動して声も出なくなるのさ』
 彼女がロールアウトしてからの付き合いでもある、サポートAI兼教育係のジョン・ドゥは、その豊富な知識故なのか、AIのくせに妙に人間臭い。
 端末を通じてコンタクトを取ってくる形無き友人は、シルクハットのアイコン以外に明確な形を持たないが、それでもなんとなく擬人化モデルをイメージできるくらいには、どこか伊達男じみた気取った雰囲気を感じる。
 そういった機微を感じる程にクゥの情緒が育ったのか、それとも単純に付き合いが重なった影響なのか。
 ともあれ、その語調からして、仕事の時間を告げるニュアンスは十分に感じ取れた。
 先に続く言葉ももう予測できる。
『だけど、いまは足を止めている時間は無いようだよ』
「わかってる」
 あらゆる世界、あらゆる形で偏在するオブリビオン。それらの情報収集を命じられたクゥは、あくまでもその使命の為に、時としてクロムキャバリアの依頼を取る形で作戦に参加する。
 その感情の発露は表面的には乏しく、少なくともキャバリアを運用する時点では機械的でありスマートである。
 合理的な判断のもと、周囲の索敵と敵の侵攻状況を把握するべく、ドローン型観測機・ゲイザーを速やかに展開。
 鬱蒼とした植物の森は、中心に行くほど整えられており、どうやら郷は丸みを帯びた円錐状の建造物……古代のプラントを中心に構成されている。
 住人である20センチちょっとの妖精たちは、集落に避難しているようで、どうやら漏れはない。
 防壁や堡塁に相当するものは、残念ながらキャバリア相当の戦力を抑えきれるようなものはなく、どちらかといえば獣避けといったとろこか。
 そして敵。数ある報告書から交戦記録を参照し、敵機体を参照、勢力を算出する。
 水の膜の向こうには、キャバリアを運び込んだ潜水艇が控えているようだが、こちら側には入ってこれないようだ。
 仮に入って来ようものなら、水中専用の機体では浮上不可能になるためだろうか。
『敵機のデータの照合完了。グレイル。量産型。いわゆる廉価版。インスタントなタイプのようだね』
 淀みのないジョン・ドゥは口さがない。
 生産性と安定性が、高い信頼度を得た傑作ではあるが、クゥの乗機である『アインベル』とは比べるべくもない。
 古代の技術で作られたワンオフ機と比べる方が間違いではあるが、グレイルのような量産機の強みは、同じ規格による高い連携の素質と操作性のシンプルさにある事だろう。
 習熟の容易な兵器ほど、数を揃えられると厄介だ。
 ところが、どうやらこれまでの戦いで味方の猟兵たちの活躍もあり、増援はいったん打ち止め。
 残すところ残敵を掃討すれば、ひとまずの安全は確保できそうである。
『捕捉が完了したよ。オードブルを摘まんでくるといい』
 レーダー上に敵機を捉え、クゥは機体を加速させる。
 淡く発光するかのような白い装甲のアインベルに、魔力が充満すると、その継ぎ目という継ぎ目からエメララルドの魔力光が煌めき、背部に備えたサイキックウィング『天翼』が有機的に羽ばたいて機速を飛躍的に上昇させる。
 瞬間的に魔力注入を行う事による爆発的なオーバードブーストにより、耐G機能を備えたコクピットブロックにも衝撃が伝わるものの、クゥはその加速を制御し、敵陣へと切り込んでいく。
 郷には、一機も入り込ませてはならない。
 両の手にそれぞれ大型レーザーハンドガンと、電磁徹甲弾を連射するマシンガン・アンタレスを備えつつ、アインベルは光粒子を尾に引いて揺れる視界を真っ直ぐと飛ぶ。
「ジョン・ドゥ。サポートお願い」
『勿論だとも』
 まっすぐまっすぐ、と見せかけて、騒がしく接近したかと思いきや、敵機が奇襲に気づくよりも前に急展開、弧を描くようにして偏差射撃のラインを切る。
 急激な加速とカーブ。うっかりすると水の膜に突撃してしまいかねない自由な飛行だが、それだけに予測不可能な機動を前に、グレイルの応射は空を裂くしかない。
 そして、敵が撃てるという事は、こちら側も射程内という事でもある。
『射撃データに補正をかけるよ。心配しなくても郷に被害は出させない。安心してぶっ放すといい』
 ちょっと小癪なほどのAIが過保護っぷりを見せてくれるが、構っている余裕はない。
 猛禽が地上のげっ歯類へと食らいつくかのように、複数機残存していたグレイルは、瞬く間に無力化されていった。
 無論、有人機であることは調査済みなので、コクピットへの攻撃はうまく外してあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『マシンも人も補給の時間』

POW   :    機体の搬入、重たい荷物を運ぶのを手伝う

SPD   :    燃料やパーツ、食料などの配給を手伝う

WIZ   :    電装、パーツの在庫などのデータ管理、ムードを盛り上げる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「なんとか、もったが……くそ、この機体も限界か」
 オブリビオンマシンと化した敵機、同軍のグレイルを、猟兵の助けも借りてなんとか退けることに成功したが、リゼルヴァのシュタインバウアーは、戦闘モードを解除した途端、あちこちに緊急停止がかかった。
 フレームに負担がかかった状態でさらに無理矢理戦闘機動を繰り返したため、これ以上の稼働にメインシステムが待ったをかけたようだった。
 動かなくはないが、戦闘は不可能だろう。
「助けが来たという事は、レナは間に合ってくれたのか……? 軍部は今、どうなっているんだ……レナ……!」
 最後の防衛線とばかり、集落の近くにキャバリアを停止させると、コクピットのハッチを開ける。
 単身で前線基地の端末を目指した妖精の友人の安否が気になるリゼルは、軍共有の専用回線を開こうとするが、如何せん隔たりが強すぎるのか、湖底からの通信が届くことはなかった。
 いや、望みの薄い通信にコンソールを殴りかけたリゼルの耳もとに、かすかなノイズを聞く。
『……せよ、……ゼル! こちら、レ・タンカ前線基地所属、グレン・フィディック中尉だ。リゼル! 聞こえているなら、応答しろ』
「グレン中尉!」
『リゼルー、聞こえてる? 私、ちゃんとグレンに会えたよー!』
 リゼルは今度こそ、キャバリアの通信機に噛り付いた。
 信頼できる上司と、親友の声が、奇跡的に通信を介して聞こえてきたのだ。
 あまりにも出来過ぎた偶然は奇跡としか言いようがないが、しかしながら、距離のあり過ぎる通信が、ここまで明瞭に聞こえるものだろうか?
「二人とも無事なのか!?」
『それはこちらのセリフだ。消息を絶ったと思えば、いきなり未開の集落から特使だけを派遣するって、どういうことだ。俺の仕事じゃないぞ』
「すいません。状況がひっ迫しておりましたので……」
『話は小さな友人から聞いている。お互いに、情報の交換をした方がいいな』
 リゼルヴァがただ一人、メレ・ルゥルに辿り着いて救難信号を出したことは、軍部の誰にも知られていなかったという話だった。
 ただ、彼女が消息を絶ってからしばらくして、戦力を率いて潜水艇を引っ張り出しての不審な出撃を、グレンは知ってはいたもののそこに言及はできなかったようだ。
 グレンも一度はこのレ・タンカの地底湖で作戦中に消息を絶ったことから、出世コースから外れることになってしまい、また彼自身も調査隊として現役であり、前線に駆り出される下っ端に過ぎないため、作戦に関して意見できる立場ではない。
 が、今回、妖精郷の住人であるレナからコンタクトがあり、ようやく事態を掴むに至った。
『いいか。未開の集落を襲撃している件、こちらは誰も感知していない。キャバリアを積み込んで潜水艇を引っ張り出したりしているのは、アルド・ベック少佐の独断だ。出撃記録も毎回、消されていた。こりゃあ、よくないものの息がかかってる可能性がある』
「……単純に、私の息の根を止めるという、そんな話ではなさそうですね。いえ、傭兵に依頼を出してくれただけで有り難い話です」
 どうやって傭兵を寄越してくれたかは謎だが、話を通してくれただけでもグレンは信用に値する。
 リゼルヴァはこれでも、臨時で前線基地の司令官を務めたこともある。
 彼の事件以降、人員不足を解消するために後任が配置されたものの、リゼルヴァの持っていたコネクションは、彼女が思っていた以上に基地内外に派閥を生んでしまった。
 だが、今回の件とはほぼ無関係なのではないだろうか。
 ベック少佐がどうして乱心したのかは不明だが、未開のプラントは、レイヤードを支配する企業にとって垂涎の的だ。
 小娘一人、集落一つを闇に葬ってでも手に入れる価値のある資産と言えるだろう。
 だが、軍部がこれ以上、戦力を投入しないというのは朗報であった。
 ベック少佐の暴走であるなら、いずれ自体は収束に向かうだろう。ここが落とされない限りは。
『こちらからも手を回したいのは山々なんだが……基地の現状は滅茶苦茶でな。友軍を撃つことになりかねん』
「全てが終わってから帰還いたします。中尉、そちらをしばらく頼みます」
『お前の方が出世してるんだから、敬語はいい加減、いいぞ。なるべく早く帰ってきてくれ』
 やや安心した顔で通信を終えると、リゼルヴァは再び相好を引き締める。
 先ほどから、通信に一切のノイズが乗らない理由。それを可能としていた存在に、彼女はいい加減、気づいていた。
 小さな妖精の里にあって、キャバリアという巨人を日常的に乗り回す立場にあって尚、目の前の建造物は巨大に見えた。
 上部を細く絞った壺のようにも見える古代のプラント。それが、今はその表層に幾何学的な模様を浮かべ、脈動するように光を浮かべていた。
 その光に共鳴するかのような、他の妖精とは一回りほど大きさの違う妖精が銀糸のような翅を輝かせて、コクピットから這い出てきたリゼルヴァを見上げていた。
「お話は無事にできたようですね」
「やはり、手助けをしてくれたのですね。挨拶が遅れてしまって申し訳ない。こちらの里には、随分世話になってしまった」
「いいえ、私も随分と寝坊をしてしまい、このような事態を招いてしまいました。プラントを預かる身として、お恥ずかしい限りです」
「では、貴女がメレ・ルゥルの族長……」
「今は、そうなってしまいましたが、そうですね……私の名前はシンルー。
 古く旧く、この地に構えたプラントの管理を仰せつかった電脳妖精。この有機体は、帝国の脅威から妖精の皆さんを避難・誘導するために作成したモデルに過ぎませんが、長らくこの身体を操作するにあたり、族長という立場にもこの身体にも慣れてしまいました」
 それは、リゼルヴァにとっても猟兵たちにとっても未知なる情報であったが、どうやらシンルーという妖精は、ほぼ古代プラントと同じだけの時間を過ごしているとみていいのだろう。
「此度の戦い、ようやくお話をするだけの余裕を見出しましたが、今だ危機は去っていない様子……この郷に人を招き入れるのは、そう、とても久し振りではありますが、心ばかりの宴席を設けましょう。そして──戦いに向かう方々には、平和利用の誓いを暫しの間、噤みましょう……。データリンク、機能一時開放を申請」
 平坦な口調のままで告げるシンルーの言葉に促されるように、継ぎ目一つ見られなかったプラントの壁面の一部が重々しい音を立てて開いていく。
 どうやら、キャバリア等の補給のため、一部機能を開放してくれるらしい。
 一時的な平和が戻ったことにより、他の妖精たちも、猟兵たちを歓迎してくれるらしい。
 ここで英気を養い、水の膜の向こうに待ち受ける最後の決戦に備えることもできる。
 そして、シンルーは猟兵たちに向き直る。
「皆様はどうやら、他の方とはその軸が異なるように感じます。何か、別の目的をもって、おいでになった方もいらっしゃるのでは? ここには古い旧い知識しかありませんが、お力になれることがあれば、知っている範囲でお話ししましょう」
ノエル・カンナビス
(SPD)
知識は常に有用ですが、特に何も要りません。

ただ、転がっているグレイルは戴いていきます。戦利品に。
オブリビオンマシンでも欲しい猟兵はいるでしょう……というか、
残しておいたら拙いでしょ。死に切っていないかも知れませんし。

適当にバラしてアセンブリ単位で選別し、
戦利品回収ネットに放り込んでコンバットキャリアに満載します。
帰還後に何機か組めるでしょう。積み残しは破壊処分。

トップクラス傭兵の依頼料、払えませんでしょ。リゼルヴァさん。
現物払いという事にしておきます。

……シュタインバウアーどうしました?
汎用部材で良ければ直しましょうか?
多少時間は要りますが、私のキャリアは整備拠点でもありますので。



 この世には謎が満ちている。
 言い換えるならば、この世の中には真実しかないが、それらを読み解くツールである知識が不足しているのだ。
 故に、謎を読み解くための知識は、あるだけ有用であると言えるだろう。
 しかしながら、世の中には知らなくてもいい事もたくさんある。
 世の中の広さを知り過ぎる事に億劫である事もあるし、人には知識を受け止めるだけのキャパシティというものが存在するのである。
 多くの場合、人は生きるために、生活の糧を得るために知識を使う。
 世の中の謎を解き明かすために使うなどという高尚なためでなく、振るえる範囲の知識を使いこなせてこそ、それは初めて知性と呼べるのであろう。
 生きるに不要な知識など存在しないのかもしれないが、それでも知り過ぎてしまったら紛れもなく不必要に考えてしまう。
 傭兵として戦場を駆けるに、世界の真実は果たして有用か。
 自身の活動に、極めて規模の大きな『報酬』を前にして、ノエル・カンナビスは少しの逡巡を要した。
 レプリカントである彼女の生い立ちは、恐らく同族の中の者達に比べて、そこそこ異質であるかもしれない。
 戦闘における彼女を知っている者が、キャバリアを降りた普段の彼女の姿を見れば、それこそ別人と疑うかもしれない。
 合理的に敵データを参照、対策を講じ、自身の能力で以て可能な戦術を用いる。何よりも、その判断の素早さと正確さが、彼女の命運を分けてきた。
 彼女にとって、戦いはシンプルだからだ。
 戦いを制し、報酬を得る。自らの存在理由の一つと定めている、明確で簡素な在り様。
 それ以外がどうでもいいかと訊かれれば、それはちょっと困ってしまう。
 生活に飽いているだとか、贅沢な悩みではない。まして、不満を持っているという訳でもない。
 もしかしたら、真実に向き合うことは、自分にとって有用なのかもしれないが、それでもノエルは、今は事情に通じ過ぎてしまう事に、ひとまずは蓋をしておくことにした。
「知識は常に有用ですが、今は特に何も要りません」
「そうですか。必要であれば、補給も可能かと思われますが」
「今はそれよりも……」
 シンルーという、妖精郷の長は、不思議な存在感を有している。
 恐らくは、レイヤード。ひいてはクロムキャバリアの真実の一端を担っている存在の一人なのかもしれない。
 ただ、今のノエルが気になっているのは、そんな厄介な代物より、今しがた撃破したオブリビオンマシンの残骸のほうだった。
 再びエイストラに乗り込んだノエルは、装備運搬用のコンバットキャリアを呼び寄せると、えっさほっさと集落周辺に墜落したグレイルを回収に向かう。
「出撃準備か? 警戒なら交代で行っているが、君達は休んでいなくていいのか?」
 次の戦場まで時間はある。その時は必ずやってくるとはいえ、妖精郷の民とここへ迷い込んで早一か月のリゼルヴァが交代で哨戒についている。
 一番の戦果を上げた猟兵たちには、最も休養が必要ということで、補給やささやかな宴席を設けている中で、せっせとキャバリアを駆り出しているのは、ちょっとストイックすぎるように見えるだろうか。
「撃墜したグレイルを頂いていこうかと。戦利品に。
 というか、残しておいたら拙いでしょ。死に切っていないかもしれませんし」
「そうか、生きているパイロットはなるべく回収に向かっているが、なるほど確かにここに残骸を放置するのも問題か」
「トップクラス傭兵の依頼料、払えませんでしょ。リゼルヴァさん。
 現物払いという事にしておきます」
「ふ、そうしてもらえると有難いな……おっとと」
 並走しようとするリゼルヴァの機体は、明らかに調子が悪そうであり、乗り心地に支障をきたすレベルでガクガク軋みを上げている。
「私も手伝いたいところだが、この様ではな」
 あらゆる悪環境にも対応可能なタフさが持ち味という売り文句のシュタインバウアーMk-2だが、許容範囲を超えた水圧に耐えてなお、約1か月ほぼ無補給で動き続けた代償は大きかったらしい。
「……シュタインバウアーどうしました?
 汎用部材で良ければ直しましょうか?
 多少時間は要りますが、私のキャリアは整備拠点でもありますので」
「古代プラントでも資材を補給する事はできるらしいが……そうだな、せっかくならそちらの厚意に甘えるとしようか」
 元より、安さと頑丈さが売りのシュタインバウアーは、同じようコンセプトのグレイルとも通ずるものは多い。
 幾つか部品を流用する事も不可能ではないかもしれない。
 シルエットがちょっと違うため、大幅にいじると不格好になってしまいかねないが、戦えればなんだってかまわない。
 そうして、撃墜したグレイルや、汎用のキャバリア部品をあれこれ駆使し、残骸を切っては回収ネットに放り込んで、使えそうな部品をキャリアに積んでいくのと、シュタインバウアーの修理を同時にこなしていく。
 一応中尉で偉い人な筈だが、機体を弄り回すのが楽しいのは、なんだかんだで通じるものがあるのか、忙しい中での残骸漁りは、無表情なノエルをそれなりにほっこりさせるものがあったようだ。
 どうでもいいが、こんな湖底にどうやってキャリアを運び込んだのかと疑問に思うところがあったようだが、まあ、その、なんだ。細かい事は言いっこなしである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユリウス・リウィウス
ふむ、宴を開いてくれるのはありがたいが、俺たち人間サイズの食事や食器はあるのか? 用意するだけでも大変だろうに。よければ手伝おうか。リゼルも来てくれ。

この後もまだ戦闘があるだろうからな。酒は控えめだ。その代わり、料理は遠慮なく食うぞ。いいんだろ、なあ、おぃ。

シンルーと言ったか。このプラントが作られた当時の話を聞いてみたい。それから、この世界の歴史をな。
|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》が暴走したところまでは把握してるか? それとも、その頃には地上と断絶して無縁に過ごしていたか?

とにかく、この先もこの妖精境の平和が守られるよう尽力しよう。
お伽噺の終いは、めでたしめでたしで終わるもんだ。



 生きている限り、人は消耗するし腹も減る。
 生きていなくても同じだ。形を持ち、名前を付ければ、それはいつしか終わりを迎えることを宿命づけられる。
 そんな極端な話をしなくとも、包丁だって研がなくては切れ味は落ちるし、メンテナンスを怠れば錆びついてしまう。
 つまりはまあ、働けば疲れるのが人間だ。
 ここクロムキャバリアに於いては、戦乱が支配する即ち、その道具であるキャバリアの整備に余念がない。
 戦う術なのだから当たり前なのだが、それを扱うのはあくまでも人。
 人も機械も、時に休み、英気を養い、研ぎ澄まさねば戦えない。
 まして、こんな世界で身一つで戦いに身を投じる奇特な猟兵の一人、ユリウス・リウィウスは、さほど強敵とも言い難い量産型とは言え、体格に勝る5メートルの鉄巨人の集団を相手に大立ち回りを演じた後である。
 もう着慣れて久しい騎士甲冑も足取りを重くする疲労感に、妖精郷の明るい雰囲気は、幾らか救われるものがあった。
 彼の故郷は、闇に包まれたダークセイヴァー。かの地も地底世界ゆえに闇に包まれているというが、それにしてもこの妖精郷メレ・ルゥルは変わっているのだろう。
 そこかしこに光が溢れ、地上と変わらぬ日の下のような明るさは、やはり魔法のなせる業なのか、それともどこかのサイエンスファンタジーよろしく光るコケでも生えているのか。
「久しぶりのお客さんだー。料理を運ぶぞ。えっさかほっさか」
「とっておきのハーブ酒を用意しましょう。えっさかほっさか」
 集落をちまちまと飛び回る妖精たちは、猟兵でも見かけるような同種族と変わらず、その辺の野鳥よりちょっと大きいくらいの体格で、普通の成人男性と相違ないユリウスと比べると、巨人と小人である。
 おまけに戦場の気配を纏う疲れた雰囲気と、今まさに戦火に巻き込まれつつあるというのに呑気な雰囲気の妖精たちとでは、ちょっと隔たりを感じなくもない。
 いやいや、平和に暮らしているならそれでなによりではないか。
「ふむ……宴を開いてくれるのは有難いが、人間サイズの食事や食器はあるんだろうか」
 せかせかと飛び回る妖精たちは、基本的に温和だが忙しそうなのは見て取れる。
 久しぶりの来訪者と意気込んでいるのは結構だが、準備するだけでも大変そうに見える。
 素朴な疑問を解消するように、宴席には次々と料理が運ばれたりするが、食器類はリゼルヴァという先駆者の存在もあってか、不自由しなさそうである。
「何か手伝うことはあるか? 無精者だが、物を運ぶくらいはできるぞ」
「おおー、騎士様。本物だー。はい、じゃあこれ」
「はい、じゃあこれ! 大きいから、いっぱい運べるね!」
「お、おう」
 名乗り出たのが運の尽きか。妖精郷とファンタジーなことを言っても、基本的には牧歌的で助け合い精神の集落であった。
 使えるものはよそ者でも遠慮なく頼る。
 次々と、料理の乗った皿や、謎の瓶などを持たされる。
「なあ、おい。俺の腕は二本しか無いんだがな」
「肘や肩が、空いてるよ」
「頭にも乗せよう!」
「……遠慮のない連中だな。リゼルも来てくれ」
 楽しげに色々と乗っけてくる妖精たちに頼られるまま、大陸の大道芸人よろしく料理を運ぶユリウス。
 そういえば、妖精という種族が悪戯好きであることをすっかり忘れていた。
 このままでは自分だけ玩具にされかねないとリゼルヴァも呼び寄せるが、そちらもとっくに妖精にまとわりつかれていた。
「まったく、えらい目に遭った……ようやく飯にありつける。まだまだ戦いは残っているからな。遠慮なく食うぞ。なあ、おい」
 憎まれ口をたたくようにしつつ、次の戦いに備えて、食事はしっかりとる。
 妖精サイズの食事をちょっと心配していたユリウスだったが、戦争と縁のない未踏査地区であるこの妖精郷は大変豊かな場所らしく、食べる分にはまったく困窮しなさそうだ。
 宴席と言っても、まだ戦いを控える内は、酒は控えるべきだろう。ということで、飲むにしてもほんの少しに留めてもらう事にした。
 仮にもっと原始的な集落であれば、戦意高揚のために強い酒を煽る文化もあったかもしれないが、ここはそれなりに上品であるらしい。
 妖精のハーブをブレンドした蜂蜜酒は、いくらか果汁で薄くされてとても爽やかな味わいだった。
 というか、全体的に薄味で、あっさりしている。
 肉厚のキノコを、謎の生物の肉と一緒に炒めたものと、主食らしき木の実を焼いたもの。
 パンに近いふかふかした木の実をちぎって食べるのだが、味は割と芋だった。
「お口に合いましたか?」
 薄味なのと、程よく疲れていたのもあって、エネルギー補給のためモリモリ食っていたユリウスのもとへ、一回り大きいサイズの妖精。族長のシンルーが語り掛けてくる。
「薄味だが、なかなかいけるもんだ」
「妖精たちは身体が小さいですからね。あなた方の体格に合わせたら、塩分過多になります」
「そんなものか……夢が無いな」
 いや、単に健康志向なだけかもしれないが。
 食事を進め人心地ついたところで、あらためてユリウスの頭には糖分が回って落ち着きを取り戻す。
 今までが混乱していたわけではないのだが、闘争心を燃やす時とは違う話し合いのための用意が整ったという訳である。
「確か、シンルーといったか。飯のあてに、少し昔話を聞かせてくれないか?」
「良いでしょう。何からお話ししましょうか」
「そうだな。このプラントが作られた当時の話を聞いてみたい。それから」
「それから?」
「歴史だな。|殲禍炎剣《ホーリーグレイル》が暴走したところまでは把握してるか?
 それとも、その頃には地上と断絶して無縁に過ごしていたか?
 つまり──」
「なるほど、如何にしてこの地へ至ったか……良いでしょう。少しばかり長いお話になりますが──」
 そうしてシンルーは、その長い歴史を語る。クロムキャバリアに関する真実の一端。
 その質問の幾つかの答えを得るに至ると、ユリウスは最後に妖精の酒樽(人間には丁度いいジョッキ)に入った果汁割りハーブ酒をぐいっと煽る。
「なるほどなぁ。まあ、とにかく、この先もこの妖精郷の平和が守られるよう尽力しよう。
 お伽噺の終いは、めでたしめでたしで終わるもんだ」
 そうだろう。と笑いかけるユリウスに、シンルーも静かに笑みを湛えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クゥ・クラウ
……?
補給の設備や物資が整っているようだけど、過去にはこの妖精の国にもキャバリアがあったのかな

『これは参った。知識という宝が目の前に積まれているのに、どこから手を付けて良いかわからないな』
端末からAIのジョン・ドゥの声が聞こえてくる。もちろん可能なら「全て」を知りたいけれど、いくら時間があっても足りない。

「シンルー、このプラントで、プラントを造ることはできる?」
唸っているAIを尻目に自分が知りたいことを尋ねる。
古代のプラントって、すごいものなのでしょう? おかあさん(自分を生産したプラント)が故障したときに換えの部品があれば安心だし、新たなプラントを造ることができれば皆もうれしいと思う。



 妖精たちの歓待もそこそこに、猟兵たちは自らの装備の調整を行わなければならない。
 何故ならば、この小さな国を脅かす脅威は去っておらず、最後に妖精郷への襲撃を決定づけたオブリビオンマシンがやってくる前に消耗した弾薬などを補給しておかなくてはならない。
 前哨戦は、大した相手ではなかった。
 相手の性能が低いという訳ではない。誰にとってもこの地はアウェーであり、地の利を活かした戦いができなかったというのもあるだろう。
 量産型キャバリアの強みは、その生産性からくる数の暴力が最も効力を発揮する。
 単騎では行えない戦術、それこそ画一規格でこそ可能な連係プレーができてこその脅威であろう。
 各個撃破されるようでは、その運用法そのものに問題があるというものだ。
 尤も、彼等の想定では、この村落にキャバリア相当の戦力は、あの壊れかけのシュタインバウアー一機程度しか想定していなかったのならば、相手にとって猟兵の存在は寝耳に水であっただろう。
 しかし次は、そうはいくまい。
 残すところは一機。しかし、今回の襲撃の首謀者であるベック少佐が駆り出した機体は、生半可なものではない筈だ。
 最初の戦いをほぼ損傷らしいものも受けずに突破したクゥ・クラウは、しかし万全を期して万難を排するべく、古代プラントの補給を受けることに決めた。
 のっぺりとした巨大な壺の様にも見える古代プラントの表面には一見すると継ぎ目が見えないが、いくつかの不可思議な記号の浮かんだ後に展開するその中には、見慣れた物々しい整備ドッグめいた光景が広がっている。
 そこにキャバリアを留めておけば、半自動的に補給や補修を行ってくれるという便利なものだが、しかし、そこで疑問が生じる。
 設備に任せてキャバリアを降りたクゥは、その身に浴びる風が白い髪を泳がせると共に、そこに植物特有の青い匂いを感じる。
 ここは地下で、加えて、暗闇の湖の湖底に生じた気泡の中。そんな事実を忘れてしまうほど、ここの空気は荒廃した地上や戦争中の国々とは比べ物にならないほど生気に満ちている。
 空気中に有機物の存在を感じるのは、クロムキャバリアとしては珍しい感覚だった。
 ここには争いの気配など、感じられない。
 だというのに、前もって仕込んでいたかのように、キャバリアの整備ドッグが古代プラントから出現するのは実に奇妙だった。
「補給の設備や物資が整っているようだけど、過去にはこの妖精の国にもキャバリアがあったのかな……?」
 集落からも見て取れる、この小さな郷には余りある自然の在り様を物珍しそうに眺めつつ、生じた疑問を口にすると、いつの間にやら視界を横切る燐光に目が留まる。
 光る粒子のような鱗粉を振り撒くのは、この郷に住まう妖精たちのものでもあるが、彼等は積極的に機械兵器に近づく気配はない。
「お答えしましょう。今回の件に限った話で言えば、周囲の国……リゼルヴァさんはレイヤードと言っていましたか。そちらの所有しているプラントとデータを共有し、この場に再現したものです。リゼルヴァさんの戦闘兵器を維持するために用意していたものですが、形にするのに今までかかってしまいました」
 いつの間にかクゥのすぐそばまで来ていたのは、シンルーと名乗るこの郷の族長であった。
 彼女の話では、殲禍炎剣から地下に逃れて繁栄したレイヤードが、その限られた勢力圏の中でも繁栄を遂げる事が出来た背景、その権力の象徴とも言うべき地下プラントは、レイヤードが作られる前から存在していた古代遺跡であった。
 そしてメレ・ルゥルにもある古代プラントもその一つであるという。
 時代と共にそれらとは隔絶されていき、最終的にはこの湖底に残ったプラントを中心に平和な郷を何年も維持してきたが、やろうと思えば地下のプラントとの情報交換ができるらしい。
『これは参った。知識という宝が目の前に積まれているのに、どこから手を付けて良いかわからないな』
 話を聞くうち、知識欲を抑えきれないらしいジョン・ドゥが悩ましげに音声を漏らす。
 キャバリアから離れていても、AIであるジョン・ドゥはクゥの髪飾り型の端末を介して行動を共にすることができる。
 クゥとて、可能ならばシンルーから全てを聞き出しておきたいところだが、敵の排除も完全でない現状では、時間は有限である。
 ジョン・ドゥのお話に付き合っていては、ちょっぴり時間を損してしまいそうな気配だ。
「シンルー、このプラントで、プラントを造ることはできる?」
「……面白いお話ですね」
 AIの癖に何やら唸り続けるジョン・ドゥの存在はひとまず放っておいて、クゥは気になっていた事をぶつけてみる。
 興味を示したらしいシンルーは、考え込むように小さな手を顎に沿える。
 こうしてみると、元が電子の存在であるというシンルーの仕草と、現在進行形で考え込んでいるジョン・ドゥは似ているところがあるのかもしれない。
「古代プラントってすごいものなのでしょう? それが可能なら、おかあさんがもし故障したときでも安心だし、プラントを増やす事ができれば、皆も嬉しいと思う」
 レプリカントであるクゥは、プラントから生成された存在であるという。
 ゆえにその母体というべき者はプラントであり、機械として生まれながら心優しい気性の少女は、有益という意味以上にプラントの増産を考えていたようだ。
「そう、貴女はプラントから……。心あるお方、質問にお答えしましょう──」
 有機体とは思えぬぶれない仕草のまま、シンルーはクゥの疑問に丁寧に答えていく。
 その答えについてクゥは満足したかどうか……。
 それが判明するのは、しばし後の事になるかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「てっきりここはA&Wからこぼれ落ちた界隈かと思ったのですが。…残念です」
「世界の成り立ちに興味を持たぬ仙など居ません。羽衣人よりはフェアリーに近いように思えたので、世界が四次元的多重構造の証左となるかと期待してしまったのですよ」

「私は次の戦が始まるまで、知的好奇心を満たしたいだけです。…出でよ、黄巾力士金行軍」
45体3隊計135体の黄巾力士召喚
先ほど倒したグレイルの残骸利用し防空壕等防衛設備の建設を任す

「貴方の話ぶりからは、貴方がその姿を取ったのは、ここに来た妖精達を守るためと受け取れます。実際のところ、妖精がプラントを作成するのはサイズ的にも無理がある。貴方は元々は人の逃亡者用でしょう?」



 ひとまずの戦いを終えて、まだその水の膜の向こうに敵の存在を感じつつも、その場で戦い続けることが難しい事を悟ると、機を見て次の戦に備えなくてはなるまい。
 鳴上冬季にとっては、水中戦も吝かではないところだった。
 むしろ、だいたいのキャバリアが満足に行動できないであろう水圧のきつい湖底の水中ならば、先ほどのような竜巻を生じさせて一掃する事も或は不可能ではないのかもしれない。
 しかし強力すぎる術は、周囲に影響を及ぼしかねない。
 冬季が敢えて長時間の術の使用を控えているのは、この湖底に水泡のように作られた郷が、冬季の術によって均衡を失って弾けてしまわないかを危惧したものでもあった。
 そんな大それた事態に容易になってしまうとは思えないが、それでもこの郷の存在は奇跡の産物のようなものだ。
 それに、不用意にその世界に生活する者達の脅威になるつもりもない。
「ここに踏み込む者などほとんどいなかったのでしょう。あまりに無防備だ」
 極限地帯を無理矢理棲家にしているかのような立地には、何かしらの作為を感じるものの、それにしても平和に暮らし続けているせいか、妖精郷の防備は、せいぜいが野生生物を寄せ付けないためのものくらいしか見受けられない。
 ましてキャバリアなど、リゼルヴァが迷い込みでもしない限りは、その存在すら知らなかったのではないだろうか。
 それにしては設備が充実しすぎているように感じるが、プラントについては何かと謎が多い。
 その興味に飽かして、冬季は次の襲撃がやってくるまでの時間を、妖精郷の在り様、その奇妙な植生を見て回ることで過ごしていた。
 しかし、奇妙ではあっても、そこはどうやら求めるような浪漫としては、いささか当てが外れたらしい。
 ふう、と息をつくと、不意に視線を横切る妖精の鱗粉。
 妖精郷の中心にある古代プラントの管理を仰せつかったという、族長のシンルーがいつの間にか目の前にいた。
「何も無いところですから、さぞ退屈されていることでしょう」
「てっきりここはA&Wからこぼれ落ちた界隈かと思ったのですが。……残念です」
「なるほど、ルーツをお知りになりたいと? 彼ら妖精たちも、私もまた、この世で生まれ、育ってきました。貴方の仰るような異なる軸からとは……。しかしながら、そういった事例を頻繁に見受ける世界もまた、貴方はご存じのようですが?」
「それはそうですが……いえねえ、世界の成り立ちに興味を持たぬ仙など居ません。羽衣人よりはフェアリーに近いように思えたので、世界が四次元的多重構造の証左となるかと期待してしまったのですよ」
 世界の成り立ち。その構造。言うなれば、イメージしやすい形状のようなものが、自分の思った通りならば、そこから更に世界の真実にたどり着けるのではないだろうか。
 真実を導き出すツールとして、その歴史を紐解く事に興味は尽きないが、どうやらこの郷にはアックス&ウィザーズの空気との類似性はありつつも、人工的に、この場合はプラントによって齎される物資によって長い時間をかけて妖精たちにとって住みよい環境を整えられたようにしか思えなかった。
 仮に、グリードオーシャンのような多様な繫がりが証明できれば、世界はもっと広がりを見せたのかもしれないが、その証明の成否を決めるにはまだまだデータが足りないようだった。
 或は、この女をもう少し調べることができれば。
 剣呑なことをちらと考えてしまうが、先述の通り、彼自身が歴史の中の恐怖の大王になるつもりはない。
「貴方の話ぶりからは、貴方がその姿を取ったのは、ここに来た妖精達を守るためと受け取れます。実際のところ、妖精がプラントを作成するのはサイズ的にも無理がある。貴方は元々は人の逃亡者用でしょう?」
「さて、どう答えたものでしょう……そうですね──」
 話の順番を考えるかのように、シンルーは瞑目しつつ手を顎に沿える。
 可愛らしい少女のようにも見えるが、長く生きた生物特有の老獪さも思わせる、若くも年老いても見える不思議な佇まいだが、やがて語られる古代プラント、そしてクロムキャバリアの歴史の話は、それなりの時間を要したものであった。
「簡潔ですが、このような所でしょうか。しかし、面白いことを聞かれますね。外の方は、皆さまそうなのでしょうか」
「私は次の戦が始まるまで、知的好奇心を満たしたいだけです。……出でよ、黄巾力士金行軍」
 機械が作り出したとは思い難いほど朗らかに微笑むシンルーに釣られたわけではないが、冬季も涼やかな笑みのまま、取り敢えず次の戦いが始まった時に、この場がひどい事にならないよう、いくらかの手を打っておこうと黄巾力士たちを呼び出す。
 45体を3体編成。135体もの黄金の歩行戦車が、先ほど撃墜したグレイルたちの残骸を再利用して、防壁や防空壕などの、簡素だが頑丈な防衛設備を建設していく。
 ただ、先の猟兵がグレイルの残骸をいくらかかっぱらっていっているので、使える資材はそれほど多くはなさそうだ。
「同等の鋼材であれば、いくらか生産可能ですが」
「この機会にやっておきましょうか。また、いつ、このような事態が起きるか、わかったものではないですから」
 作業に移る冬季は、今度こそ悪そうな笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

結城・有栖
とりあえず、一段落できそうですね。

「そうダネー。今のうちにトラウムの補給もしてもらおうヨ」

本番はこれからですしね…トラウムは暫く休んででくださいね。
宴席も用意してくれてますし、私達もゆっくりしましょうか、オオカミさん。

まずは妖精さんたちにご挨拶と宴席の感謝を伝えましょう。
オオカミさんもUCで呼んであげますね。

そして、食事を頂きつつお話を聞きます。

此処のプラントは古代魔法帝国の時代から存在してるらしいですね。
なら、プラントの成り立ちや、伝承とかも長老さんは知ってますか?

「私は謎に包まれた魔法帝国のお話も聞きたいカナ。
うちのトラウムもサイキックキャバリアだしネ」



 敵、というか、リゼルヴァからすれば、味方の筈の軍部から出てしまったオブリビオンマシンによる襲撃を、一度は排除する事に成功した猟兵たち。
 しかしながら、事の首謀者であるベック少佐の姿はない。
 このまま退いてくれるなら、と思わなくもないが、オブリビオンを排除するのが猟兵のお仕事である。
 そういえば、未開の地に古代プラントの存在が明らかになったタイミングで、まるで待ち構えていたかのようにオブリビオンマシンがそれを襲撃するというのは、何か妙な意図を感じなくもない。
 それと関係しているわけでもないが、予感がするのだ。
 きっとオブリビオンマシンに支配されたベック少佐は、この妖精郷を諦めはしない。
 前哨戦のグレイル部隊が全滅したと知れても、構わずにここを再び襲撃しにやってくると、直感が告げている。
 だがそれまでは、
「とりあえず、一段落できそうですね」
『そうダネー。今のうちにトラウムの補給もしてもらおうヨ』
 グレイル部隊を全滅させた後も、結城有栖は、しばらくは妖精郷の周囲を警戒していた。
 撃墜したマシンから生存者の救出をするのも買って出ていたし、敵の追撃に正気に戻ったパイロットたちが巻き込まれたら、せっかく生かしたのが勿体ない。
 同じ基地の人間ということもあって、生き延びたパイロットたちはリゼルヴァにお任せする事にして、ようやく集落にトラウムを着陸させた有栖は、対して機体の損傷も消耗もしてはいなかったが、万難を排するというつもりで、古代プラントの補給を受けることにした。
 長らくキャバリアをはじめとした戦闘兵器を建造する事はおろか、戦うための武器も狩猟目的以外では作る事のなかった平和的な古代プラントが、緊急時とはいえ即座にキャバリア用の整備ドッグじみた設備を用意していたのは疑問が残る。
 しかしながら、1か月ほど前にリゼルヴァがキャバリアを持ち込む形で遭難していた事を考えれば、壊れかけの機体を補修するための機能を生み出すのもわからなくもない。
 とにかくまあ、使えるものにはお世話になっておくべきだろう。
 サイキックキャバリアであるトラウムは、魔女のようなシルエットを持つ機体よろしく、その駆動様式から攻撃兵器に至るまで、有栖の魔法や超能力による動力が大半であるが、全てがそれで賄われているわけでもない。
 使いべりする部分は、一言に魔法で片付けられるものでもないのだ。
 機械とて人と同じく、摩耗していくし、燃料だって必要だ。
「しばらく休んでてくださいね」
 ドッグに放り込んだトラウムを後にすると、有栖の胃袋が空腹を主張する。
「私達も少し、ゆっくりしていきましょうか、オオカミさん」
『お、ご飯を貰いにいくんダネ』
 そういえば、いきなり戦場に送り出されたため、妖精郷の人たちに挨拶もできていない。
 そんなことを考えつつ、ユーベルコードで、自分の身の内に生じたオウガことオオカミさんを具現化する。
 アリスラビリンスの世界に迷い込んでから、自分の中に生まれたとはいえ、自分ソックリの姿で現れるオオカミさんの姿を見るのは、ちょっと不思議な気もするし、納得もできる。
 オウガというものを知れば知る程、オオカミさんの穏やかさには謎が残るものの、『アリス』として迷い込んだ先で大きな悲劇に見舞われることも無く不思議の国で愉快な仲間たちと、それなりに穏やかに過ごしたつもりの有栖の中に生じた怪物ならば、然もありなん……とも思ってしまうのだ。
「いらっしゃーい! 久しぶりのお客さま! お酒は飲める?」
「こんにちは、妖精さん。お誘いありがとうございます。まだまだ未成年なので、お酒はダメです」
「うーん、そっかー。おっきいお客さんは久し振りだからね。大人か子供かわからないのさ! ささ、こちらへどうぞー」
 どこか呑気な妖精たちに誘われて、有栖とオオカミさんは宴の席に案内される。
 なんだかメルヘンで、ちょっとサイズが小さめな食器やイスやテーブル。そしてこのちょっと変な空気のノリは、どことなく懐かしい気分にもなる。
『ひょっとして、食べたら小さくなるケーキがあったりしてネ』
「まさか、そんな」
「えーとね、そういう悪戯は、族長様に禁止されてるんだよー。結婚式なら大丈夫なんだけどねー!」
「あるんですね……」
 けらけらと笑う妖精たちの雰囲気は、やはりちょっと懐かしい。
 ちなみに、宴会のごはんは、南国風味なお味で、妖精たちが小さいためか味付けはやや薄い。
 甘辛く炒めたキノコと謎の肉や、パンノキという木の実を焼いたものが主な食事だった。
 パンノキというのは、その名の通り、パンのようにふわふわした木の実で、食感はまさに固めのパンといった感じだが、味はだいたい芋である。
「あっさりしていて、けっこう食べちゃいますね」
『ターキッシュディライトでも出てくるかと思ってたけどネー』
 なんだかんだ言いつつ、戦闘で集中していた分、お腹は減っていたのも事実。
 愉快な雰囲気に流されるようにぱくぱくと食事を勧めていると、族長のシンルーが話しかけてきた。
 騒がしい他の妖精と比べ、年の功なのか随分落ち着いている雰囲気だ。
「何も無いところですが、お楽しみいただけているでしょうか」
「ええまあ。穏やかでいいところだと思います」
 気を使ったみたいな言い回しだが、穏やかで騒がしい妖精たちの空気は、嫌いではなかった。
 世間話もいいが、それよりも、せっかくなので謎の多いクロムキャバリアの中で珍しく年の功であるシンルーに、聞いておくべきことは何かあったろうか。
 質問をしておけるのは、今しかないかもしれない。
 有栖とオオカミさんは、顔を見合わせてお互いに頷く。
「此処のプラントは古代魔法帝国の時代から存在してるらしいですね。
 なら、プラントの成り立ちや、伝承とかも長老さんは知ってますか?」
『私は謎に包まれた魔法帝国のお話も聞きたいカナ。
 うちのトラウムもサイキックキャバリアだしネ』
 続けざまの質問に、シンルーは話すべきことを順序だてているかのように一息つく。
「なるほど、今ほど物質概念に依らない形式の……そうですね。では、昔話も添えてお答えいたしましょう──」
 そうして、しばしの食事の時間を、シンルーは古い歴史の話で彩るのであった。
 その回答が、二人の満足に至ったかどうかは、しばらく後に明らかになるかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『セラフィム・リッパー』

POW   :    断罪の剣
【無敵斬艦刀】が命中した対象を切断する。
SPD   :    エンジェルビット
自身が装備する【BS-Fクリスタルビット】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    フォールンウイング
【光の翼】を向けた対象に、【プラズマビーム】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:棘ナツ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 前哨戦を快勝に納めた猟兵たちと、妖精郷メレ・ルゥル。
 しかし、今回の事件の首謀者とも言うべきベック少佐は、まだその勝利を諦めていないらしい。
 猟兵たちが妖精たちの素朴な歓待を受け、消耗した機体の補給を行っている最中も、妖精郷を覆う水の膜の周囲では、中の様子を伺う潜水艇が、しかしその状態では迂闊に手出しできぬまま右往左往していた。
 キャバリアを積んだ潜水艇がそのまま乗り込む術は無い。
 グレイル部隊と同じように、魚雷管に似た降下ポッドで降りる他は、もう戻れない勢いで潜水艇ごと突っ込んでくるしかない。
 そもそも戦況を考えれば、今更キャバリア一機で飛び込む様な場所ではないのかもしれないが、生憎とオブリビオンマシンに支配されたベック少佐は、もうまともな判断力が付いていない。
 とにかく、新たなプラントを目前として退くという選択肢が無かった。
 そもそもの話をすれば、嘗ての事件で臨時とはいえ司令官の座に居座ったとも言うリゼルヴァの存在は、後任の役回りを仰せつかったベック少佐にとって邪魔であった。
 本人の意志とは裏腹に、企業とのコネクションを持つ令嬢であり、部下を扱い慕われるだけのカリスマ性を持っているリゼルヴァにはいわゆる華がある。
 中尉という階級に相応しい役職に戻ってもなお、彼女を推す者は前線基地内部に多く存在する。
 しかし軍人たる者、命令には従わなければなるまい。現在の前線基地司令官はアルド・ベックである以上、本人以上に基地所属の軍属すべてがその辞令に素直であるべきなのだ。
 にもかかわらず、基地内の派閥は割れている。
 そんな時にこの事件だ。渡りに舟であった。
 新たなプラント、そして行方不明だったいけ好かない女がここで消えてくれれば、侵略の大義名分も立つ。
 間違っていない。何も間違ってはいない。
 軍人の野心を後押しするのは、オブリビオンマシンによって塗り固められた思想か。
 しばらくの逡巡の後、ベックはレイヤード上層、カテドラルより下賜された『セラフィム・リッパー』を駆り、降下ポッドにその身を包むのであった。

「……よし、なんとか、動けるな。いつまたガタが来るかわからんが、ベック少佐を迎え撃つくらいなら、もってくれるはずだ」
 ささやかな宴会。妖精たちとの素朴な歓談を終え、補給および修理を終えた猟兵たち。そしてリゼルヴァとシュタインバウアー。
 その機体はもはや破棄すべきなのかもしれないが、現状で戦える機体は一機でも多い方がいい。
 というか、戦わずにはいられないタチなのだろう。
「シンルー、重ね重ね、貴女にはお世話になりました。奴を打ちのめし、投降してきた者達を連れて去る事が、きっとこの郷にとって一番いいのでしょう」
「行くのですね。いいえ、この出会いにはきっと、意味があるのでしょう。一段落したら、再び会えるかもしれませんよ」
「……そうですかね。いや、そうだな。私も、レナやグレン中尉、どちらも捨てたくはない」
 申し訳なさそうな顔は、いつしか希望をみる前向きな顔つきに変わる。
 それを見計らったかのように、シュタインバウアーのレーダーに接近アラートが明滅する。
 目配せすると、察したようにシンルーはコクピットから出ていく。
 それを確認し、リゼルヴァは本調子とは言い難い機体で、オブリビオンマシンを迎え撃つべく出撃するのであった。
『リゼルヴァ中尉ッ! すぐに出頭し、この場で撃たれるがいい! そして、プラントを明け渡すのだ。それで、何もかもうまくいく!』
「ふん、わかりやすくて困らないな……!」
ユリウス・リウィウス
確かセラフィム・リッパーと言ったか、あの機体。余所でも見たことがあるが、普及型のようだな。秘密兵器の類ではない。
だが、だからといって油断するわけにはいかんが。

華奢な形態からして、殴り合いには不向きだろう。
「降霊術」でアンデッドを召喚してから合体させて、巨大な人型の荒ぶる亡者を作り出す。
さあ、勝負をかけるぞ。

荒ぶる亡者の武器は、巨大な骨の棍棒だ。それを振り回してクリスタルビットを打ち払いながら、リッパーをぶん殴ってやれ。
まあ、屍人が寄り集まった身体は、少々の損傷を無視できるがな。
遠慮はいらん。その「呪詛」を思いっきり叩き込んでやれ。

オブリビオンマシンを破壊できたら、少佐の捕縛だな。後は任せた。



 ざわりと波打つ空を破り、この不可思議な郷の外からやってきた闖入者。その首謀者であるベック少佐の駆るキャバリア『セラフィム・リッパー』は、降下ポッドを脱し、その翼を広げる。
 華奢なシルエットに似合わぬ大物の近接武器と、光り輝く翼は、さながら妖精のようにも天使のようにも見えるが、美しいフォルムとは裏腹にそこからもたらさる男の声は、ひどく濁って聞こえた。
『出てこい中尉! 私の敵よ!』
 それは、パイロットであるベック少佐の、リゼルヴァに対する妬みや目前の欲望に歪んだ感情が、幾らにも増幅されたかのような、人らしくそれでいて人でなしにも思える程歪まされた思想の吐露であった。
 まともではない。
「戦場で、己を見失ったら、おしまいだぞ」
 剣を手に立ち上がるのは、キャバリアではなく、それに比べれば随分小柄な生身に甲冑を着込んだ騎士一人。
 ユリウス・リウィウスは、切り拓かれた妖精の郷の門番の如く立ち塞がり、その存在感をアピールするかのように肩を竦めて見せる。
「確かセラフィム・リッパーと言ったか、あの機体。余所でも見たことがあるが、普及型のようだな。秘密兵器の類ではない」
 今や、各所でその姿を確認されている、猟兵としてはもはや見慣れた相手のように思うが、そういえばあらゆる小国家において、共通する形の敵が存在するのも思えば奇妙な合致である。
 量産型ならばいざ知らず、セラフィム・リッパーのような特別な機体が複数出てくるのには、何かの理由があるのだろうか。
 いや、考えても詮無いこと。
 ただ、知識として知っているのは、あれが油断ならない相手であるという事だ。
 華奢なフォルムから想像できるのは、装甲の薄さである。恐らく、先だって相手にしたグレイルと比べても特別頑丈そうには見えないし、飛行するためにはいくらか軽量化は余儀なくされていると考えれば、巨大な斬艦刀を手にしているといっても殴り合いはリスクが大きい筈だ。
『傭兵を雇っていたか! よもや、貴様もプラントを独占することを考えているのではないだろうな』
 聞くに堪えぬ醜悪な物言いは、自らの抱いた野望であるがゆえの邪推であると言えた。
 目立つところにいるユリウスを敵と見定め、セラフィム・リッパーが加速する。
「……毎度、巨大なからくり人形を相手にするのは、骨が折れるんでな。──来い、亡者たちよ」
 その進路上に、複数の魔法陣が浮かび、次々と暗闇の魔法陣からゾンビやスケルトンと言ったアンデッドたちが這い出てくる。
 死霊術士でもあるユリウスの降霊術によって呼び出されたアンデッドたちは、お互いを喰らい合うように覆いかぶさって巨大化していき、その体格は瞬く間にキャバリアにも匹敵するようなサイズの【荒ぶる亡者】となっていた。
『ぬぅう! 伏兵か。邪魔をしおって!!』
 やせ型のセラフィム・リッパーを受け止める形のふくよかなゾンビの戦士が、その手に持った骨のこん棒と共に、ユリウスの立つ妖精の郷への道を阻む。
 足止めさえしてしまえば、周囲に呼び出した別のアンデッドが続けざまに攻撃を仕掛け放題だが、敵もそのままではいてくれはしない。
 両肩の浮遊パーツからクリスタルビットを展開、射出する。
 キラキラと輝く浮遊砲台は個別に操作可能な小さな破壊兵器であり、サイズは小さいものの的確に敵の急所を攻撃する筈だが、その武器も織り込み済み。
「叩き落せ」
 ユリウスの指示のもと、小さな浮遊砲台ごとセラフィム・リッパーを押し込める様にこん棒を振り回して突撃するアンデッド戦士。
 防御など顧みないため、その身はクリスタルビットから発射されるレーザー光線で穴だらけにされてしまうが、アンデッドの身体はその程度では止まらず、穴が開いては傷を塞ぐように別のアンデッドが覆って修繕して、ダメージも顧みず攻撃を加えようとする。
『く、おのれ。どかんか! 亡者どもめぇ!!』
「お前も、その亡者の一員だがな。自分から出張ってくる姿勢は、大したものだが」
 斬艦刀で斬り伏せ、クリスタルビットで焼き払ってもなお、その損傷を修復して立ちはだかる荒ぶる亡者を前に、ベック少佐のセラフィム・リッパーはなかなか前に進む事も出来ず、徐々に追い詰められていく。
 その攻撃に含まれる呪詛によって、徐々に動きも悪くなっていくのも加えれば、捕縛するのも時間の問題だろう。
「俺の精神が持つ限りは、亡者は尽きない。が、倒しきるのも時間がかかるな。後は任せるとしよう」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
あー。判り易いですねぇ。
では先制攻撃/指定UC。

大量のビットをいちいち避けるのも面倒ですので、
オーラ防御(と称するガーディアン装甲の衝撃波/吹き飛ばし)で
ビットの鼻面を叩いて邪魔しましょ。
自動システムですから手間もありません。
手数が減ったところを見切り/範囲攻撃/制圧射撃/2回攻撃の
プラズマキャノン拡散放射で一網打尽にしてしまいましょう。

で、本体ですが……。
あれ死なせたらリゼルヴァさんの立場が悪くなりますね。
リゼルヴァさんご自身も戦わせない方がいいコンディションですし。
空中機動/推力移動/ダッシュ/鎧無視攻撃/切断/ビームブレイドで
頭なり手足なり叩き斬って無力化しましょ。



 湖面のような静かな飛沫を上げるその銀色を上に見るという奇妙で幻想的な世界を、物々しい疾走音が駆け抜ける。
 成長しすぎて枯れた化石のようなキノコに苔生し、朽ちた倒木がスポンジ状になるほど虫食った、クロムキャバリアではまずお目にかかれない原野を蹴散らすのは、武骨でずんぐりむっくりとした体格のどこか野暮ったい量産型こと、シュタインバウアー。
 水中作業用にカスタムされた機体は、惜しくもその役目を全うできず、湖底の世界をローラーダッシュで元気に走る羽目になっているが、その動きには精彩を欠くものがあった。
「チッ、最高速が出ない。どうにか、誤魔化し誤魔化し接近するしかないか……!」
 相手は飛行可能なセラフィム・リッパー。機動性は比べるべくもないが、運動性能では負けていないと思いたいところだが、無茶を重ねたリゼルヴァの機体は、補修を加えたと言っても本調子には届かなった。
 メインフレームのバランスが悪くなっているためか、最大スペックが発揮できずにいる。
 そして、水中仕様のニードルガンやワイヤーアンカーが、空中の相手に命中するとは考えにくい。
 それでも、命を狙ってくる相手に無抵抗とはいかない。
『逃げるな、逃げるな! そんな機体で、このセラフィム・リッパーを相手にできるものかよ!』
 悠然と上から追いかける形となっているセラフィム・リッパーは、その浮遊する肩の部品から射出するクリスタルビットでリゼルヴァを追い立てる。
 レーザー兵器を撃ち出す小型飛行砲台を、動きながら撃墜するのは至難の業だ。
 おまけに数も多く、それらを捌くだけでも地上戦は不利である。
 だが、それさえ凌いでしまえば、相手は業を煮やして接近戦を仕掛けざるを得ない。
 相手から距離を詰めてくれさえすれば、ようやくシュタインバウアーの間合いである。
 逆に言えば、そうしてもらえなくては、ほとんど勝ち目がないくらいに、相手の方が有利とも言える。
 シュタインバウアーの両脚に備えられたローラーダッシュ機能の回転差を利用したターンは、地上での運動性能の生命線だ。
 多少の悪路も、手数の多い攻撃も、ターン機動で身を振って不規則に軸をずらす事で耐え凌いでいたが、脚部にかかる負担も大きく、本調子でない機体でさらに無茶を重ねれば寿命もマッハである。
「ぐ……反応が悪い!」
 何度目かのターンにシュタインバウアーの足腰が付いて来れず、ついにレーザーを受けてバランスを崩した機体がもんどりうつ。
『追い詰めたぞ、女狐め!』
 さらに追撃を貰おうかというところで、追いかけてきたクリスタルビットが、横合いから殴りつけるようなレーザーライフル……もとい、粒子ビームを受けて撃墜される。
「あー、判りやすいですね」
『むぅ、新手か!?』
 続けざまの射撃によって、さらにシュタインバウアーに狙いを向けていたクリスタルビットを退け、おまけに空中に控えていたセラフィム・リッパーをも狙うが、それはあくまでも間合いを外すための牽制。
 敢えて先制攻撃を牽制などに利用したのは、相手の狙いを地上のリゼルヴァから逸らし、強敵がここに、空中に居る事を知らしめるためであった。
 本調子でないリゼルヴァの機体をあまり戦わせるのはよくないとばかり、ノエル・カンナビスの駆るエイストラもまた、セラフィム・リッパーと同等に空を飛べる機体である。
 隙を見せればさっさと相手を狩りに行く。そんな傭兵然とした立ち居振る舞いのノエルにはらしからぬことかもしれないが、あれでも一応、今回のパトロンである。(依頼料には期待できないが)
 ともあれこれで、セラフィム・リッパーの広い間合いを賄うクリスタルビットの狙いは、より強敵であるエイストラに移ったわけだが……。
「小型のレーザー兵器程度で、ガーディアン装甲を突破できるとはとても、思えませんね」
 バイブロジェットとブースターの複合利用した独自の機動メソッド【フォックストロット】でクリスタルビットの猛攻を潜り抜けるノエルであったが、大量のビットをいちいち回避していても、一向に相手にたどり着けない。
 そもそも空中に浮かして、機体に複数格納可能なほどの小型機動兵器の出力など、よほど当たり所が悪くない限りは、ガーディアン装甲のバリア機能を貫いてくるとは考えにくい。
 そう判断したノエルは、完全回避に専念する考えを改め、敵の攻撃を選び、装甲の厚い部分で受けられる側に敢えてぶつかっていく。
『なにぃ!?』
 それは、相手からすれば奇妙な光景であり、レーザー射撃に自分から当たりに行くエイストラはもとより、そのエネルギーを反射し、衝撃波を生んでクリスタルビットにダメージを与えていくのは更に奇妙だった。
「これなら、自動システムですし手間もかかりません」
 衝撃波で動きに支障をきたすクリスタルビットに目を付け、すかさずプラズマキャノンで一掃していくと、ようやくセラフィム・リッパーへの道が出来上がる。
 こちらもプラズマキャノンで仕留めるのが無難であるし、パイロットに対してもわかりやすい悪人と見受ける。
 しかしながら、
「あれ死なれたら、リゼルヴァさんの立場が悪くなりますね」
 できる事なら、公正な場で裁かせた方が、収まりがいい。柄にもないかもしれないが、優れた傭兵は、アフターケアも万全なのである。
 コクピットの中で静かに嘆息するノエルは、機体速度を上げてセラフィム・リッパーへと肉薄する。
『チィ、斬られに来たか!』
「ええまあ、斬りに来ました」
 腕部から直接伸びるビームブレイドの光刃がひらめく。
 それを迎えるような大型の斬艦刀が、エイストラの機体ごと両断するべく振るわれるが、真っ直ぐと向かってきた機体を切り裂いたかに見えたのは残像。
 メイン推進装置と別個のブースターを利用した変則機動は、直進から急転身も可能であり、目の前から近づいてきたはずのエイストラは、円移動するかのように展開してその片腕をビームの刃で切り裂いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

結城・有栖
補給も済みましたし、戦闘再開ですね。
…遠慮なくやっちゃっていいですよね?

「コックピットが無事なら大丈夫だと思うヨー。
侵略者を追い出しに行こうカ」

ええ、平和を取り戻しにいきましょう。

今回もトラウムに搭乗し、シュトゥルムシステムで飛翔して出撃します。

まずはUCでオオカミさんと同調し、風のオーラを強化して機体を加速させます。
敵の攻撃を【野生の勘】で見切って回避し、【残像】を残しつつ速度で敵を翻弄するように立ち回ります。

そして、ヒットアンドアウェイで想像暗器(クナイグレネード)を【念動力】で飛ばしたり、破壊の風を放って攻撃です。
敵のクリスタルビットも一緒に風に巻き込んで破壊してあげます。



 銀の光沢をもつさざ波が空に見える。
 そこは不思議な世界といっても誰も疑わないだろう。
 少なくともここで生まれた者以外は。
『ほら、はやく乗った乗っタ』
 補給を終え、装甲もピカピカに磨かれたサイキックキャバリア『トラウム』のコクピットに乗り込もうというところで、ふとこの郷の空になっている水面を見上げていた結城有栖は、後ろからぐいぐい押されて乗り込む事となった。
 彼女自身による想像魔法によって仮初の身体を得たオオカミさんにせっつかれる形で、この場に於ける最後の戦いに赴くことになったのだが、魔女のようなシルエットを持つトラウムはそのコクピットもそう広いものではない。
 5メートル規格のキャバリアなのだからそれは仕方のないこと。とはいえ、振り向く有栖の視界の先で、さらりと風景に同化するように姿を消していく自分ソックリのオオカミさんには、ちょっとだけ名残惜しいものを感じてしまう。
 オウガである彼女は、いつだって自分の中にいるのに奇妙な気分だった。
 いや、感傷に浸るのはもう少ししてからでもいい。今は、
「補給も済みましたし、戦闘再開ですね。……遠慮なくやっちゃって、いいですよね?」
『コクピットが無事なら大丈夫だと思うヨー』
 妖精たちと共に英気を養った今は、お腹もそこそこいっぱいだ。
 ハッチを閉めてキャバリアを立ち上げると、機体の重量が震動となって伝わってくる。
 それもひと時の事。シュトゥルムシステムによって機体に風が纏うと金属めいた軋みは空気を切り裂くような風の音色に掻き消されていく。
『侵略者を追い出しに行こうカ』
「ええ、平和を取り戻しに行きましょう」
 その意志の向くまま、トラウムは風に引っ張られるかのように飛翔し、加速する。
「相手の得物は、大きいみたいですね」
『何か、小さいのを飛ばしてるヨー』
 着目する点やその戦略性に多少の違いはあれども、視点の多さは個人にはない強みとばかり、有栖は素早く敵機を捕捉しつつ、どう対処するかを考える。
 見た目に厳ついセラフィム・リッパーの斬艦刀を警戒する有栖は、まず距離を取ってその間合いに踏み込ませない事を考えるが、相手の武装は長柄の近接兵器を補うものも装備されている事にオオカミさんがいち早く気付いたらしい。
『飛び込んで蹴散らしてミル?』
「……いえ、術中に踏み込む必要はないですね」
 クリスタルビットを振り切って飛び込むことも考えたが、雑な戦略では逆に取り囲まれてしまいかねない。
 熱くならずに、一つ一つ対処していこう。
『また傭兵か! こんな戦力を隠し持っていたとは、小癪な!』
 セラフィム・リッパーの浮遊する肩パーツから射出された無数のクリスタルビットがトラウムに狙いをつけたのを感じる。
 接近するリスクを負わず、全方向から攻撃できる手段は安易だが強い。
 囲まれる。そう感じた瞬間に、選ぶべき手段は決まった。
「行きますよ、オオカミさん」
『あいよー!』
 暴風のようなオオカミさんの意志と同調すると共に、トラウムに纏う風が出力を増す。
 不規則な機動で迫るクリスタルビットから逃げるように進路を取ると、当然、追いかけるような一団と回り込む様な動きを見せる一団に分かれる。
 そこで急転身、追う一団に向けて想像から生み出した武装、爆裂するクナイグレネードを投げつけてクリスタルビットを誘爆させつつ、突っ切る。
 その爆炎に紛れる様にして、クリスタルビットから降り注ぐレーザー兵器を凌ぎ、残像を残す事で狙いを逸らす。
 動物的な感覚で攻防を兼ねた回避方法で切り抜けるトラウムの両腕に、凝縮した風が渦を巻いていく。
 回り込んだビットもようやくひとまとめという辺りで、練り上げた破壊の風を繰り出した。
 【魔獣戦技・旋風破砕撃】。可視化できるほど高密度の暴風の渦がクリスタルビットを巻き込んで爆炎を煙に巻き、一条に伸びていくそれはその先に居るセラフィム・リッパー本体にまで届く。
『うおおっ!? ビームか!?』
 単なる気流の流れというには強力なそれは、いかなる攻撃兵器にも相当せず、防ぐ手立てを持たないセラフィム・リッパーを直撃する。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クゥ・クラウ
アインベルに搭乗

『異常な攻撃性と、視野が狭く短絡的な言動。オブリビオンマシンの影響を受けた人間として分かりやすい症状だ』
AIのジョン・ドゥが言う。

UC【光成武装】。攻撃力重視。天翼を展開し飛翔して相手に接近しながら、光の粒子で槍を形成して突撃。
相手の大剣と打ち合って槍が破壊されても構わない。壊れた武器を光の粒子に戻して、今度は取り回しの良い剣状に再形成。
敵に体当たりするようにして刃を突き入れる。密着する距離なら大剣は振るえない、はず。
コックピットは外す。

リゼルヴァに通信。
「パイロットが狂ったのはオブリビオンマシンのせい。この機体はどこから配備されたもの? ……気を付けた方がいい、かもしれない」



 簡易的とはいえ、古代プラントから再現された整備ドッグは、やはりキャバリアにとってコンディションを整えるのに最適だったらしい。
 ひと時の休憩を終えて、ふたたび乗機の操縦席に着いたとき、クゥ・クラウは既に火の入った状態のキャバリア『アインベル』の状態に、表情にこそ出さないがご満悦だった。
『やはり、被造物にとって親とも言うべき生産ラインに近しい場所が、最も居心地がいいものだろうか。揺り籠としてはいささか物騒ではあるようだが、おっと、しかし、ここは本来、そうではなかったかな』
 いつになく饒舌なAIのジョン・ドゥ。ちょっとおしゃべりが過ぎる気がするので、そろそろ音声ミュートにでもすべきか。
 いや、これからお仕事だというのに、それはちょっと差し障るだろうか。
 存在しない舌の滑らかさは、時々羨ましくもなるものの、この相棒はやっぱりちょっと喋り過ぎだと思うのだ。
 とはいえ、もう戦いは始まっている。急いだほうがいい。
「起動シークエンス省略」
『ドレスアップは上々。いつでも遊園会に出撃可能だよ』
「……行こう」
 妙にウィットの利いた言い回しを流し、クゥはアインベルの出力を上げる。
 魔導由来の技術から生み出された白い装甲の機体各所から、緑の燐光を放ち背部から光の粒子が翼となって大きく撓うと、機体を宙へと押し上げ空へと駆ける。
 羽毛のように散る光の残滓がその軌跡を追い、戦場へと向かう先では、既に幾つかの戦闘が行われた形跡があった。
 細身の天使を思わせるシルエットの敵機体は、セラフィム・リッパー。
 非実体型のエネルギースラスターは、アインベルの形式とある種の共通点を感じなくもないが……今はそんな事より、相手を倒す事だ。
『距離を取り過ぎては、自動砲台に絡まれる。しかし格闘の間合いでは大型の実体剣がある。さてどうしたものか』
「インファイトを仕掛ける」
『了解だ。援護分の火器管制は任せて、存分にやりたまえ』
 機体速度を落とさぬまま、言葉少なに方針を決めるクゥに合わせて、ジョン・ドゥは柔軟に対応する。
 多くの戦術を提示するのではなく、周囲の戦況からクゥ自らが選んだのは、既に幾つかの武装が他の猟兵たちによって対処されたのを見越しての接近戦だった。
 セラフィム・リッパーの携えている大型の斬艦刀。その威力は脅威だが、それが有効な間合いに持ち込むためのクリスタルビットは、既に多く消耗し、巨大ゆえに生じる隙を補うにも至らないと見越した。
 とはいえ、いきなり接近するのは難しいので……ジョン・ドゥに任せられた権限の許す限り牽制を用いることで最大限に機会を作る算段である。
 アインベルの肩部に内蔵されたホーミングレーザー。
 両肩に各3門あるそれらを薙ぐ様に照射し、接近する時を稼ぐ。
『くおおっ、まだこのような傭兵を隠していたか! おのれ、女狐……さては、プラントを独占するつもりか! 私の、私のだ! このプラントは!』
 拾い上げる敵機体の音声は、もはや正気の人間のそれではなく、うわ言に近い叫びは妄執に駆られたものであるように聞こえた。
『異常な攻撃性と、視野が狭く短絡的な言動。オブリビオンマシンの影響を受けた人間として分かりやすい症状だ』
 厳密に、猟兵であるのはあくまでもクゥであり、ジョン・ドゥはAIに過ぎない。しかしながら、猟兵と共に多くの戦場を経験する事で、そのデータは蓄積されているのだろう。
 彼なりの判断基準であっても、ベックというパイロットの非正常は太鼓判を押せるものだったようだ。
 援護の甲斐あって、クリスタルビットの抵抗にあう事も無く、アインベルは容易に接近する事が出来た。
 その手には銃器ではなく、光が収束し、長柄の槍が生成される。
 【光成武装】は、光から形成された武器で武装する。その形状はクゥが思い描くものによって様々だが、いずれも原始的な近接武器に限定されている。
 光でありながら物質的な特性を持つようで、刃を作れば切れ、槌を作れば重くもなる。
 そして、アインベルの手にある十字の刃を持つウイングドスピアは、その名の通り翼のような尖った側面の槍穂が相手の攻撃を受け止め、また刺す以外にも振り回して打ち付けるのに適した形状だ。
 キャバリアの身の丈に匹敵するような斬艦刀と打ち合うなら、こちらも長物であろう。
「……ッ!!」
『させるかっ!!』
 機体の重さを乗せたスウィングと斬艦刀とが空中でかち合う。
 勢いに乗せた攻撃は、しかしそれが仇となったのか、それとも斬艦刀が思っていた以上に頑丈だったのか、なんと打ち付けた槍の方が砕けてしまった。
『所詮、付け焼刃よ!』
「そうね……」
 打ち付けた拍子に砕けた槍を振り抜いたために機体が空中で回るアインベルに対し、受けきったセラフィム・リッパーは返す刀で迎える形だが、クゥはあくまでも冷静さを崩さず、きらきらと舞う光の粒子の残る槍の柄の形状を変更する。
 受けられることは、最初から織り込み済み。
 絶好の攻撃のタイミングにこそ、隙は生まれる。
 大型の得物で打ち付ければ、それはわかり切った対応をされる。ということは、その次の行動も読めるというもの。
 素早く、折れた武器を扱いやすい片手用の剣に再構築した光の武器を、機体ごと捻じ込むようにしてぶつける。
「この距離で、それが振るえて?」
『ぬぐあっ……!?』
 光の刃がセラフィム・リッパーの機体を貫く。が、パイロットブロックから敢えて狙いを逸らした奇襲は、機能停止に持っていくことはできず、危ういところで後退する余地を与えてしまった。
 距離が空いてしまえば、同じ手はそう通用しない。そう判断し、クゥは追及に踏み止まる。
 その代わり、近くで膝をつくシュタインバウアーを認めると、通信を送る。
「リゼルヴァ、あのパイロットが狂ったのは、オブリビオンマシンのせい。あれは、どこから配備されたもの? ……気を付けた方がいい、かもしれない」
『どこから……? あれは企業製じゃない。おそらくは、カテドラル。管理者の……まさか』
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「ところで、あの方を倒せば全ての困難の解決になりませんか?あの方の生存は必要でしょうか」

「生きて返せば、この地にプラントがあることが大々的に公開されます。それはこの地に生きる妖精達の不利益に繋がりませんか。死んだ彼の妄想で済ませた方が問題がないと思うのですが」

「捕まえなさい、真・黄巾力士」
黄巾力士をキャバリアを掴める全長120m迄巨大化
他の猟兵の攻撃で動きの鈍ったキャバリア捕まえ手足も頭も捥ぎ取る
鉄の棺桶状態にしたところでもう1度リゼルヴァとシン・ルーに質問
「この命を助けることは、この地の危機に繋がります。本当に助ける必要がありますか」
絶対生存という返答がなければそのまま黄巾力士に握り潰させる



 白波が流れる雲のように、時折銀色の光沢を帯びる幻想的な空を描くこの場所は、きっと異世界なのではないかと、最初に足を踏み入れた者ならば思うだろう。
 しかしながら、今やこの場に立ち上る炎と煙を見た者は、ここが紛れもなく故郷にほど近い場所である事を思い出すであろう。
 同時に、硝煙の匂いと炸薬の破裂する音の絶え絶えに、その終わりを予感する者も居るだろう。
 そう、もはや戦いは終わりを迎えつつあるのだ。
 何者かが秘するかのように、極限の辺境に見出した古代プラント。そこに栄える妖精郷メレ・ルゥルに巻き起こった戦乱は、今まさに最後の戦力であるセラフィム・リッパーの撃滅を目前にその戦いに終止符を打とうとしていた。
 事前の準備に於いて、十分に補給を行った猟兵たちは、戦力の逐次投入を行い最後に一人残ったベック少佐を返り討ちにせんとするところであった。
 いかに強化されたキャバリアであろうとも、その戦力差を覆すには至らず、そこには既に満身創痍の機体がようやく宙に浮いている状態であった。
『投降しろ、少佐。貴方にこれ以上、戦火を広げさせはしない』
 地上から降伏を促すのは、こちらもやや戦闘には厳しい状態のシュタインバウアーを駆るリゼルヴァ。
 水中作業用のカスタムで空戦機の最新鋭機に立ち向かうという無茶な戦闘の中で生き延びただけでもそれなりに幸運だが、命を狙われながらそれでもベック少佐を機体ごと破壊しない事に、それまで積極攻勢を控えていた鳴上冬季は、一人腕を組んでふうと鼻を鳴らす。
『勝った気でいるのか。気に食わん女だ。全て、自分の思い通りに行くと思っているのか。この期に乗じて、プラントを我が物にできると? 嘗めるなよ。私は諦めんぞ……!』
『少佐! 機体を捨てろ。貴方はもう、まともな判断ができなくなっている』
『うるさい!』
 まだ戦う意志を捨てないセラフィム・リッパーに戦う能力はもはやほとんど残っていないが、それでもその手に武器を持ったまま向かってくる動きを止めようと、リゼルヴァの機体が水中銃ニードルガンを撃つ。
 不毛なやり取り。それを傍目にする冬季は低く喉を鳴らす。
「──ところで、あの方を倒せば全ての困難の解決になりませんか?」
『何が言いたい?』
「あの方の生存は必要でしょうか?」
『……くっ!』
 噛み砕いた簡潔な物言いに、リゼルヴァは言葉を失う。
 その隙に踏み込んできたセラフィム・リッパーの突撃を後退して躱さざるを得ず、バランスを崩してしまう。
 今ぞ好機! とばかりに、着地したセラフィム・リッパーは更に地を蹴ってシュタインバウアーを捉えんとするが、
「掴まえなさい、黄巾力士」
 冬季の【真・黄巾力士】によって、黄金色の歩行戦車がキャバリアの十数倍もの大きさまで巨大化すると、その巨椀によって夏の草むらで虫取りをするかのようにセラフィム・リッパーは抑え込まれてしまう。
 そのまま千切れかかった手足をもがれ、もはや戦闘続行不可能となった機体を、黄巾力士は抱え上げるように持ち上げる。
 戦いは終わった。そのように安堵するリゼルヴァに対し、冬季は張り付いたような営業スマイルのままやけに威圧的に視線を投げる。
「生きて返せば、この地にプラントがあることが大々的に公開されます。それはこの地に生きる妖精達の不利益に繋がりませんか。死んだ彼の妄想で済ませた方が問題がないと思うのですが」
 淡々と述べるその言葉は、いちいち尤もであるとリゼルヴァの胃の腑に落ちるものであった。
 いかにも合理的で、卒が無いように思える。ただし、倫理観という観点を抜きにすれば。
 この件に関して、誰もが口をつぐめば、リゼルヴァはこの地によって育まれた友情や感動をこれ以上、誰かの手によって傷つけられることは、しばらくの間はなくなるかもしれない。
 それは、彼女にとって厳しくも甘い言葉に他ならない。
『……そうかもしれない。いや、君の言うことは尤もなんだろう。正しいとすら思える』
「本当に……?」
 項垂れる様に立ち尽くすシュタインバウアーの傍らには、いつしか族長のシンルーが並び立っていた。
 更に二人に問う冬季の表情に、いつしか笑みはほんのわずかになっていた。
「この命を助けることは、この地の危機に繋がります。本当に助ける必要がありますか」
 もはや抵抗の意志を見せぬコクピットブロックをむき出しにするセラフィム・リッパーを手中に収める黄巾力士の手が、ぎしぎしと強まっていくのを感じる。
『確かに、この場の誰もが口を噤めば、この郷の平和はひと時だけ守られるかもしれないな。だが、きっと長くはない』
「ほう?」
『少佐を手に掛け、その部下に口を噤ませる事は不可能じゃない。だが、既にここを知っているグレン中尉が気まぐれに口を滑らせないとも限らないし、我が友レナを基地で見た者が他に居るかもしれない。もはや、人の口に戸が立つ状況ではない。
 次にベック少佐と同じ野心を持つ者が現れたとき、同じように処断を行おうとすれば、今度はより多くの血が流れる事になるだろう。それに──』
「それに?」
『そもそも、私がこの郷に流れ着きさえしなければ、今回のようなことは起こらなかったかもしれない。責任を取ると言うなら、君達にそいつの首を取らせることではなく、私が矢面に立つことだろうさ』
「ふむ……」
 わざとらしく顎をさする冬季は、その心中に思うところが生まれる。
 遅かれ早かれ、レ・タンカの地底湖の探査が進めば、この郷に辿り着くものは居ただろう。
 むしろ、その調査が実を結んだ形として、リゼルヴァが漂着したと考える事もできる。
「しかしながら、ならば尚の事、彼を生かしておく理由は薄いのでは?」
『いや、少佐は、軍人として裁かれるべきだ。どんな形であっても、彼の代わりはやってくる。後ろ暗いことは無い方がいいと思う』
「同じ轍を踏むだけでは?」
『この郷が公になれば、今度は我々が、大っぴらに守る事ができるだろう』
「……」
 嗤うような、困ったような、そんな複雑そうな面持ちで瞑目しつつ、冬季は額を抑えた後、ようやく一息つく。
 レイヤードは、政府よりも企業の力が強いという話だった。
 どちらかといえば、企業側にコネのある軍人であるリゼルヴァは、権力者側といってもいいだろう。
 それが、なんということだろう。あまりにもらしくない。
 アルド・ベックという軍人が狂ってしまうほどに、若くカリスマを持っているというのも、判らない話ではない。
 このブレのない人物は、なるほど確かに器があるのだろう。
 いささか清廉に在り過ぎるようにも感じるが、冬季の見聞きしてきた長い歴史の中に幾人か存在していた、神輿の上に乗る儚い人種によく似ている。
「まあ、良いでしょう。敢えて、茨の道を選び、火中の栗を拾いに行くならば、それを見ているのも、また」
『? 何が言いたい』
「いいえ、お好きにどうぞ」
 どうにも含みのあるような嗤いを浮かべると、冬季は掲げていたセラフィム・リッパーのコクピットブロックを降ろし、帰っていくのだった。
 こうして、幾らかの波乱を見せたものの、結局のところ、妖精の郷がレイヤードに広く知れ渡る事はなかった。
 新たな古代プラントの存在。古い妖精というあまり見かけない種族。それらが、まことしやかに囁かれる程度の噂に留まったのは、リゼルヴァの尽力もあったが、多くの企業、そしてレイヤードを統括するAIを主とする、カテドラルが情報の統制をおこなったため。
 多くの事が秘されたまま、この件は誰にも語られることなく、密やかに噂が流れるにとどまり、やがて誰も語らなくなった。
 まるで、そうなる事が必然であったかのように。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年03月12日


挿絵イラスト