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曹豹の野望・迫真

#封神武侠界 #戦後 #ハビタント・フォーミュラ #エクスマトリックス・オーバーロード #禁軍猟書家 #曹豹

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●そそそそそそそそーひょー
「そーっひょっひょっひょっひょっひょ」
 ここは封神武侠界を模した異空間。そこに謎の高笑いが響いていた。
「この威容!かつての主君、陶謙殿や劉備殿ですらこれほどの兵を率いた事はあるまい!」
 もっとも高い櫓より眼下を見下ろす笑いの主。その目に映るものは壮大なる規模の砦、そして凄まじい数の兵士たち。その全てが自分に忠誠を誓い、自身の名を称えているのだ。天下人とはかくも素晴らしい気分を味わうものなのか。
「韓信殿には感謝せねばなるまいのお!そーっひょひょひょひょ」
 砦の主の名は、曹豹といった。
「いつでもかかってくるがよいわ猟兵ども!このわしが貴様らの剣のサビになってくれようぞ!そーっひょっひょっひょっひょっひょ」

 所変わってシルバーレインは金沢市。
「……ついに、彼も現れてしまったのか」
 いつになく真面目な顔をして、大豪傑・麗刃(24歳児・f01156)は猟兵たちに語り始めた。
 彼らの前に現れた超次元の渦。これこそまさしくハビタント・フォーミュラが逃走した『|全能計算域限界突破《エクスマトリックス・オーバーロード》』の入り口だったが、そこには『禁軍猟書家』なる強敵が待ち構えている。そして今回、猟兵たちの前に立ちはだかるのが……。
「……曹豹くんなのだ」
 曹豹。名の読みは『そうひょう』あるいは『そうほう』。まあ好きな方でいいだろう。
 司馬炎の天下統一より70年ほど前に徐州の主である陶謙に仕え、劉備が徐州を受け継いだ後はそのまま劉備の配下となった武将だ。だが劉備が外敵との戦いで留守にしている際、城を守っていた劉備の義弟張飛といさかいになってしまった。その後はそのまま張飛に殺された説と、張飛への恨みから呂布に内通した(生死不明)説があり、現在では三国志演義が採用した「呂布に内通した後張飛に殺された」という両者のハイブリッド説がよく知られている。それだけならただのマイナーないち武将であり、どちらかといえば情けなさで多少後世に語られる程度だっただろうが、どういうわけだかごく一時期の局地的な範囲でとはいえその人気が爆発してしまった事があった。その評判を韓信が聞きつけ(たかどうかは知らないが)、その配下になったという。そして現在は禁軍猟書家にまで至ってしまったのだった。復活の際にその性格は様々な要因から多少エキセントリックなものになってしまったようだが。
「ともあれ、曹豹くんの所に辿り着くのが第一段階。しかる後に曹豹くんをやっつけるのが第二段階なのだが、そこは禁軍猟書家、なかなか厄介なギミックが存在するのだ」
 まず堅固な砦を守るのは『曹豹血盟軍』と呼ばれる忠実な部下たちだ。その戦意は高く数も多く砦による地形効果も高いため、まともに戦っていてはきわめて厄介だろう。できればボスと戦う前に消耗したくない。だが麗刃によれば、彼らには弱点があるのだという。
「ズバリ、酒とメシと女に弱いらしいのだ。酒!メシ!女!酒!!メシ!!女!!って感じで」
 謎の身振り手振りを交えながら説明する麗刃。『演義』において曹豹が呂布に内通した際に、禁酒の誓いを破った張飛の酒盛りにつきあった城兵の大部分が酔っぱらって攻めてきた呂布相手にまともに戦えなかったという逸話の再現であろうか。うまいことその弱点を突けば、戦う事なく突破できることだろう。
 突破すれば曹豹との決戦となるが……。幸いな事に曹豹本人の直接戦闘力は決して高くない。しかし韓信より与えられた【EP風火輪】による高速移動と遠距離攻撃は強力であり、曹豹自身が用いるユーベルコードとのコンビネーションでさらに手ごわい物となるだろう。さらに厄介な事に、猟兵が曹豹に攻撃を加えようとすると、どこからともなく【刃のごとき竜巻】が襲い掛かって来るのだ。それはダメージに加えて猟兵の機動力をおおいに削って来ることだろう。様々な要因に対処しなければ曹豹に刃を届かせることすら困難なのだ。

「本来ならわたし自ら出向いて彼とは決着をつけねばならない所なのだが、今回はここから動く事ができない身。なんとかしておかしい人を亡くさせてほしいのだ」
 麗刃の一礼を受け、猟兵たちは渦へと飛び込んでいくのであった。


らあめそまそ
 ついに彼が現れてしまったか……らあめそまそです。禁軍猟書家戦をお送りいたします。
 全2章構成の第一章は【曹豹血盟軍】戦……ですが、扱いとしてはあくまで戦闘ではなく【日常】です。できればグリモア猟兵の説明通り、弱点を突いて戦う事なく突破していただいた方が良いと思われます。
 戦闘は第2章で思いっきりできる事でしょう。ただし、多少の工夫は必要になってくるかもしれません。詳細は第1章終了後の断章をお読みいただければよろしいかと。

 それでは改めて皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 日常 『日々祭々』

POW   :    お肉とかがっつり食べよう!

SPD   :    お酒やジュースを飲もう!

WIZ   :    甘味もお忘れなく!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●新下ヒ(機種依存文字)城とでも呼ぼうか
 超次元の渦に飛び込んだ猟兵たちの前に現れたのは壮大なる砦。そして。
「曹豹様~!」「曹豹閣下万歳万歳万々歳!」
 砦の主を称えるすさまじい声だった。彼らこそ、話に聞いた曹豹血盟軍なのだろう。その数、そして戦意の高さ、曹豹への忠誠心は明らかだ。まともに戦っていては相当に面倒だろう。だがグリモア猟兵は語っていた。
「彼らはズバリ、酒とメシと女に弱いらしいのだ」
 うまい事、この3種で篭絡できれば、兵士たちは猟兵と戦うよりも自らの欲望を満たす事を優先し、猟兵たちは無傷で通れる事だろう。選択肢には食の事しか書いてないが、別に酒や色で絡めとる手段をとる事は何の問題もない。猟兵の得意とする手段をとれば良いだろう。
 さて、どれで行ったものか。猟兵たちは頭をひねるのであった。
(訂正)
・選択肢には食の事しか書いてないが、別に酒や色で絡めとる手段をとる事は何の問題もない。
→選択肢には食と酒の事しか書いてないが、別に色で絡めとる手段をとる事は何の問題もない。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
『下邳城』と言われると、水攻めしたくなりますが。
何とかやってみますぅ。

『FFS』のコンコンを使い、沢山の『この世界らしい食料や酒類』を用意、同様に『荷車』を多数用意しまして。
【涵輔】を発動し『ケモ耳ケモ尻尾』程度の姿の『女性の女神の信徒』を召喚、皆で輸送して参りますねぇ。
そして、表向きは『慰問団』とし、皆でお食事とお酒を配りましょう。
私は年齢上お酒は頂けませんが、『成人済みの信徒』も居ますから、その方々であればお酒の相手も可能ですし、『豊饒属性』の通り、私程ではないにせよ豊満な方揃いですから、其方の欲求も満たせますぅ。
折を見て『信徒』達にこの場を任せ脱出、進みますねぇ。



●全部満たせればそれにこしたことはない
「下邳城と言われると、水攻めしたくなりますねぇ」
 新下邳城の名に夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)がこのような反応を示したのは、三国志をかじった者ならばすぐに理解できる事だろう。下邳に対して水攻めといえば、劉備から下邳を奪った呂布に対して曹操が行った戦術だ。ただその戦術はもともと水害が多かったオリジナル下邳だったからこそ可能なものであり、周囲を見渡しても沂水(沂河)や泗水(泗河)を思わせるような河川は存在しないようだ。むろん猟兵なら天然の地形関係なく水攻めできる者もいるかもしれないが、今回はるこるはその手段を取る事はあきらめたようだ。代わりに選んだのはグリモア猟兵により提示された策であった。
「何とかやってみますぅ……|F《フローティング》|F《フラワーズ》|S《システム》発動ですぅ!」
 FFS。それはキマイラフューチャーのなんでも物を取り出せるシステム、通称『コンコン』を疑似的に再現する道具である……なにそれすごい。ともあれ数多い血盟軍軍団員たちの囲みを突破するには相当量の料理が必要であることは想像に難くないが、それに必要な分の料理や酒、そしてそれを運搬するための荷車をFFSで調達する事はできた。あと必要なのは運搬するための人員だ。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、女神の加護を得し豊饒の信徒達よ、私の下へ!」
 るこるの力ある言葉によって【|豊乳女神《チチガミサマ》の加護・|涵輔《ミタサレシカイゾエ》】が発動した。そしてるこるの元に現れたのは……ケモミミケモシッポの女の子の群れ。定番の猫、狐、兎。ちょっとマイナー(筆者個人の感想)な犬、牛、鼠。そして昨今の流行を反映した(?)馬etcetc……。その数るこるのレベルと同じ136人。全員がるこると同じ豊饒の使徒であった。
「では、参りましょうかぁ」
「「「おー!!」」」
 そしてるこるを先頭として、料理や酒を積んだ荷車を引いた豊饒の信徒たちは新下邳城へと向かう。

「慰問に伺いましたぁ」
 よく通る声でるこるが城門前で訪問を告げると、固く閉ざされた城門はたちまち開かれた。
「おっ!これはすげえや!」「食いもんに、そっちは酒か?」
 事前情報の通り、山と積まれたごちそうに酒の数々に、曹豹への忠誠心も砦を守る使命もたちまちのうちに崩れ、血盟軍たちはるこるらのもとに殺到していった。
「はいはいはーい、そうあわてなくても、いっぱいありますからねー」
 るこるは他の信徒と共同で兵士たちに食事や酒を配っていく。やがて酒が回った兵士たちが、さらに酒を求めるようになるのは当然の流れであった。張飛が呂布の襲撃を受けた時の下邳城もこのような感じだったのだろうか。
「よー、ねえちゃん、酌してくれや」
 兵士のひとりがるこるに絡んできたが、いちいち相手にしているわけにはいかない。あくまで砦への潜入が本意であり、慰問のために来たのではないのだ。決して兵士に絡まれるのが面倒だったわけではない。たぶん。
「あ、私は飲めませんのでぇ、どなたかお願いいたしますねぇ」
「はーい」
 未成年を理由に他の信徒に兵士を押し付けるるこる。るこるほどではないがその体は豊満であった。豊饒の信徒が豊満って豊しかあっとらんやんか、と思う人もいるかもしれないが、豊かな体を作るには豊かな食生活が不可欠であり、すなわち豊満ボディは豊饒の象徴なのだ……たぶん。
「おー、ねーちゃんええ体しとるやんけ」
「あら、いやですわそんな」
 そして血盟軍の皆様はメシと酒のみならず女にも弱かった。それが酔っぱらった状況でケモコスでナイスバディな女の子に惹きつけられないはずがない。すなわち、豊饒の信徒たちは彼女ら自身が敵兵を引き付けておくための重要なパーツそのものだったのだ。兵士たちちょっとそこ代われ。
「……さて、そろそろでしょうかねえ」
 これ以上はあんまり描写しない方がいいかもしれない。タイミングを見計らい、るこるはこっそり宴を抜け出し、砦の奥へと向かうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒珠・檬果
いましたねぇ、そういう武将。私は『そうひょう』って呼んでますが。
そして、どこでもコアな人はいるものです…。

さて、忠誠心が確かにある戦意高い軍団ってのは厄介なものですから。搦め手いきましょうね。消耗したくありませんし。
私はズバリ『食』。UC使ってでも、美味しい食を用意しましょう。
人数多いですし、野菜炒めみたいな大皿料理がいいですかね。

材料は持ち込みました。あとは!作って!提供して!
その隙に通り抜けるのみです!
用があるのは、この先なんですから!



●野菜で飲む
 荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)は三国志が大好きなようだ。それは彼女の使うユーベルコードに三国志を題材としたものが多くある事からも伺える。ゲームが好きらしいので、もしかしたらそこから入ったのかもしれないが実際のところはわからない。ちなみに最推しは于禁らしい。陣営でいうなら魏>呉>蜀の順番になるだろうか。
「いましたねぇ、そういう武将」
 そんなものだから、いわゆる三国とのかかわりと言えば、一時期劉備の配下、曹操とは配下の夏侯惇と一騎討ちをした程度、孫呉に至ってはほぼ皆無な曹豹に対する檬果の認識は、まあこんな感じだった。ちなみに『そうひょう』呼びだったらしい。まあ『そうほう』って読みが知られるようになったのはわりと最近な事で、曹豹に血盟軍とかいう熱狂的ファンが付いた頃はみんな『そうひょう』呼びだったような気がするが。
「そして、どこでもコアな人はいるものです……」
 本当にねえ。曹豹が大人気になった事があると聞いて、すぐに信じられる人はそうはおるまい。もともとひとりの人がたぶん冗談で言い始めた事に、ノリのいい周囲の幾人かが呼応して、いつの間にかすごい事になっていたという感じではあったのだが。

「さて、忠誠心が確かにある戦意高い軍団ってのは厄介なものですから」
 そんな事を考えながら檬果が新下邳城に到着した際、主を称える声はまだ続いていたが、その一部では楽しそうな騒ぎが起こっていた。どうやら事前に侵入を果たした猟兵がいたようだ。
「では引き続き、搦め手いきましょうね。消耗したくありませんし」
 さすがに宴会らしきものが起こっているとはいえ、手ぶらで砦に入って無事で済むとも思えない。檬果もまた血盟軍兵士たちの弱点を突く事にしたのであった。それも3つある弱点のうち……
「ズバリ『食』!」
 一点集中砲火である。そのために必要な材料は自前で用意した。あとはそれを調理すれば良いのだが、さすがにひとりでやるのは無理がある。ならば人手を集めればよい。
「心の癒し、カモーン!」
 檬果の呼びかけに応じ現れた小さな兵士たち、その数129人。彼らは【需品科兵】と呼ばれる者たちだった。需品科とは現代UDCアースの自衛隊において物品の補給整備等を担当する兵科である。昔は輜重兵と呼ばれ「輜重輸卒(本来は輜重兵の下働きを指すが輜重兵との区別は曖昧だった)が兵隊ならば、蝶々トンボも鳥のうち、電信柱に花が咲く」などと軽視されていたが、現在ではその重要性は誰もが認める所であろう。けっして軽んずることなかれ、である。
「皆さんお願いいたします!」
「「「サー!イェッサー!!」」」
 需品科兵たちは檬果の指令を受け一斉に動き出した。集められた材料に向かうと、これを手際よく調理し始めた。料理こそ彼らのもっとも得意とするところであったのだ。そうして完成したのは大皿一杯の野菜炒めであった。中国料理を炎の芸術と呼ぶならば、炒め料理はその結晶といえよう。大人数に対応するために取り分け方式を採用したのも実に良い工夫であった。早速檬果は完成した野菜炒めとともに城内に入り込んだ。
「皆さんどうぞ~」
「おー!こいつぁすげえや!」
 既に酒が回っていた曹豹血盟軍軍団員たちは、運ばれた野菜炒めに好意的に反応した。適度に塩のきいた野菜炒めは酒との相性が抜群なのだ。
「いっぱいありますので遠慮なさらず」
 檬果の言葉を待つまでもなく、野菜炒めを小皿に取り分けて味わう兵士たち。需品科兵の料理の腕はどうやら血盟軍軍団員たちにも受け入れられたようだ。だが無論檬果はここに差し入れに来たわけではない。
(用があるのは、この先なんですから!)
 すっかり料理に夢中になっている兵士たちを尻目に、檬果は砦の最奥へと向かう。その動きに目を配る者は誰もいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴乃宮・影華
そう…ひょう…?
聞いた事ないですけど曹操の遠い親戚か何かです?

|閑話休題《だって曹〇ってすごい多いらしいじゃないですか》

成程、あの数の兵士相手にガチ戦闘なんてしてられませんね
とはいえ、お酒や御飯を大量に用意するのは、ちょっとお財布的にご勘弁願いたいというか
……もう面倒くさい、指定UC起動
不可視になってさっさと通り抜けましょう
扉が閉まってても『錬銀』で作った針金でちょちょっとやれば何とかなります

仮に誰かにぶつかっても無問題
女の子に|ボディタッチ《ぱふぱふ》されて嫌がる男は、少なくともこの陣にはいないでしょう?
(まぁ黒燐蟲の皆が薄皮一枚くらい覆ってくれてるので、直に触られてる訳ではないですけど)



●他に手段があるなら提示された弱点を突かなくても構わない
「そう…ひょう…?」
 グリモア猟兵よりその名を聞かされた時の鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)の反応は、三国志というものをほとんど知らない人にとっての一般的なそれであっただろう。実際、劉備三兄弟や諸葛亮、曹操の名ぐらいは知っているが他はさっぱり、という人の方が普通かもしれない。
「聞いた事ないですけど曹操の遠い親戚か何かです?だって曹なんとかって人はすごい多いらしいじゃないですか」
 曹操は知っていたらしい。実はこの疑問、封神武侠界が中国ぽい世界であるという事で、ある意味ではそれほど的外れなものではなかった。例えば劉備をはじめとして三国志にあまた出る劉姓の人はその多くが漢王室の末裔を名乗っているので間違いなく遠い親戚だ。また中国には姓が同じ人は親戚同士という考え方があったりするのだ。劉備が劉封を、関羽が(演義で)関平を養子にしたのは姓が同じって縁があったからだし、劉備の懐刀の趙雲が趙範(この人は趙雲と血縁ではない)から亡くなった兄の未亡人との縁談をすすめられた時に同姓を理由に断ったって話もある……まあこれについては断った理由は他にあったし、劉備を含めた周囲の人はむしろ縁談進めたい方向だったから個人の考え方もあるようだが。まあ、むろん曹豹が曹操の親戚であるという記述はどこにもないわけだが。
 そんな事を考えつつ影華は新下邳城へと向かったわけだが、そこで待ち受けていたものは事前情報にもある通りの敵軍の大部隊。そして厳重な警備がされている砦……だったはずだが、今はすっかり大宴会場と化していた。さりとてその数自体が減ったわけではない。
「成程、あの数の兵士相手にガチ戦闘なんてしてられませんね」
 かの呂布が下邳城を攻めた時だって、張飛以下城兵は酔っぱらっていたわけだが、そうであってもさすがに大軍相手に単騎で突撃する事はしなかった。ちゃんと兵を率いて攻め込んだのである。戦いは数だよ兄貴。では他の猟兵がやったように食事や酒を提供するのはというと……。
「……ちょっとお財布的にご勘弁願いたいというか……」
 なかなかつらい事情があったようだ。むろん色仕掛けもできればやりたくはない。メシ酒色気の全てがダメとなると、残された手段はそう多くない。
「……もう面倒くさいです、こっそりと通り抜ける事にしましょう。『私は此処に居なかった』!」
 影華は黒燐蟲の群れを召喚し、自らの体を纏わせた。かつて影華が一度失い、そして再び得た力だ。たちまち【|黒燐奏甲《イマジンドレス》・|喰《イーティング》】の効果でその体は他の者から見えなくなった。そのまま影華は既に開け放たれていた城門を通り、下邳城に入った。あまたいる兵士たちは既にしたたかに酔い、思い切り食べ、そして色香に溺れていた。それを差し引いてもなお、姿を隠している影華に気付く者は誰ひとりとしていなかった。兵士たちを避けながら、誰にも認識される事なく砦の奥へと向かう影華だったが、酔っぱらってよろけた兵のひとりとぶつかってしまった。
「……あん?なんかやわらかいものが当たったような……まー気のせい……か……」
 だが兵士は影華に気付く事なく、そのまま黒燐蟲の効果で気を失い倒れた。傍目には酔っぱらって気を失ったようにしか見えないだろう。
「……まあ、女の子に|ボディタッチ《ぱふぱふ》されて嫌がる男は、この陣にはいないでしょうからね」
 一瞬、気づかれたかと慌てた影華だったが、どうやらセーフだったようだ。そして黒燐蟲に覆われていたため直接触られたわけではないのだが、結果として色気に訴える事になった、のかはなんとも言えない所であった。
 そして砦の最奥に到達した影華は詠唱銀の塊『錬銀』を黒燐蟲の力で加工して針金を作り、扉を開けた。そこで待ち構えていた者は……。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『曹豹』

POW   :    血盟軍団員全員集合
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【曹豹血盟軍軍団員】が出現し、指定の敵だけを【白兵戦による集団戦術】と【弓矢の一斉射撃】で攻撃する。
SPD   :    娘婿への内通
【娘婿・呂布】の霊を召喚する。これは【方天画戟】や【赤兎馬の騎乗突撃】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    魔人の罵声
【真剣な或いはどこか滑稽な、魂からの罵倒】を給仕している間、戦場にいる真剣な或いはどこか滑稽な、魂からの罵倒を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。

イラスト:聖マサル

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠大豪傑・麗刃です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●そーひょーそーひょーそひょそひょそーひょー
「ええい!これだから酔っ払いはいかんのだ!あの張飛といい!!」
 猟兵の侵入に、血盟軍のふがいなさに、砦の主、曹豹はたいそう怒っていた。
「こうなったらわし自らが相手をしてくれようぞ!猟兵ども!このわしが貴様らの剣のサビになってくれるわ!!」
 血盟軍団員から【魔人の罵声】と呼ばれて恐れられる独特の言い回しで猟兵たちを罵倒しつつ、曹豹は戦闘態勢を整えた。
「この曹豹がきさまらを打ち倒し!『猟兵など雑魚かった』と総評してくれよう!曹豹なだけに!!」

 直接戦闘力が弱いとされる曹豹だが、そこは禁軍猟書家と呼ばれたほどの男である。様々なギミックが曹豹を強敵たらしめているのだ。
 まず、猟兵が曹豹に攻撃を仕掛けた時に【刃の如き竜巻】が襲い掛かって来る。夏侯惇と一騎討ちした時の逸話に基づくものなのだろうが、ユーベルコードによるものか、ただの偶然なのかすらわかっていないらしい。言えるのは竜巻のダメージは大きく、また間合いや攻撃のタイミングを大きくずらされてしまうという事だ。
 同じく夏侯惇との一騎討ちに基づき韓信より与えられた【EP風火輪】も強力だろう。使い手に炎の竜巻による遠距離攻撃と高速飛翔の能力を与えるこの神器により、曹豹は飛び回り逃げながら飛び道具を撃ってくる。ただでさえ高速なのに【刃の如き竜巻】で機動力を封じられている状況も相まって、逃げ回る曹豹を捉えるのはなかなか困難であろう。
 さらにタチが悪い事に、曹豹が持つ以下の3つの能力も竜巻やEP風火輪とかなり相性が良いのだ。
【血盟軍団員全員集合】は曹豹血盟軍軍団員を呼び寄せて白兵戦や弓矢で猛攻をくわえるものだ。軍団員たちは戦意も曹豹への忠誠心が高く数も多いので強敵だろう。幸いにも軍団員はメシや酒や色香にやられているため来るのには多少時間がかかるが、曹豹は竜巻やEP風火輪で血盟軍が集まるまでの時間を稼ぎにかかることだろう。
【娘婿への内通】は世に知られた天下無双の飛将軍・呂布を呼び寄せるものだ。実は曹豹の娘が呂布の側室となっていた事がある(残念ながら早世したようだが)。一日千里を行くとされる名馬『赤兎馬』に乗り、方天画戟を振るう呂布が強いのは当然として、竜巻や曹豹からの援護射撃でその強さはさらに強化されるだろう。また呂布のために逃げ回る曹豹への攻撃が届きづらくなるのも問題だ。
【魔人の罵声】は冒頭に出たような曹豹得意の罵声を受けた者の行動速度を超絶的に減少させるものだ。行動速度が減少したら竜巻やEP風火輪への対処もきわめて困難となるだろう。対抗するには罵声に対してあきれたり白けて馬鹿にしたり怒ったりするのではなく『楽しむ』必要がある。曹豹的に『楽しむ』とは『畏敬の念を抱いて平伏し忠誠を誓う』程度の意味らしいが、そこは猟兵なのである程度の恣意的解釈も可能だろう。なおプレイングの字数に余裕があれば『曹豹に言わせたい罵声』を書いてみるのもおもしろいかもしれない。

 以上の通り、正直かなり厄介な相手ではあるが、それでもこいつを倒さない事には平和は訪れないのだ。その、なんだ。猟兵の皆様方のご健闘をお祈りしております。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
|使い方《技能》

|タイムフォールダウン、時間質量を解放し時を凍結させ一切の活動を禁じる『夜』の領域を展開する《高速詠唱早業先制攻撃重量攻撃凍結攻撃封印術身体部位封じマヒ攻撃気絶攻撃息止め禁呪多重詠唱拠点構築結界術》。時間停止しちゃえば諸々関係ないわよね♪心臓マヒと窒息で有象無象は足切りよ☆
一応は空間の切断解体から切断部位の接続で再構築しての空間ジャンプで機動性は確保してるけど。
さらに|量子的可能性を私に有利に収斂させれば《仙術、禁呪、幸運》安泰ね。
実はこういうおじさまも好みなのよね、|えっちなのうみそおいしいです❤《大食い、魔力吸収、魔力供給》



●複数能力には複数技能を
「なかなか楽しそうな人ね」
 禁軍猟書家曹豹のもとに最初に現れたアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)は開口一番言い放った。
「名前からして、そう、うっひょー、だし」
『ほう』
 軽口に怒ると思いきや。にやりというか、にちゃあ~というか、ともあれ曹豹は戦いの場には似つかわしくない笑顔を浮かべた。アリスの中に何か自分に通じるものがあると思ったのだろうか。まさしく|自分と同類《ネタキャラ》のニオイ。
『貴様、猟兵にしてはなかなか風流というものがわかっているようだな、だが』
 しかし笑顔はすぐに消えた。もしかして深く語り合えれば年齢性別立場の差を超えて|親友《とも》となり得るかもしれない相手……少なくとも曹豹の方はそう思った……ではあったが、少なくとも今は禁軍猟書家と猟兵、命の取り合いをする剣呑な関係なのだ。猟兵を排除すべく、曹豹は自信の誇る精鋭部隊を呼び出すべく、大声を張り上げた。
『曹豹血盟軍よ!わしのもとに来るのじゃ!!』

「……あ~、曹豹様のお呼び出しだ……」
「まだメシ食い終わってないし……」
「もっと飲みたいし……」
「美人のねーちゃんとも離れたくないし……」

「……」
『……』
「来ないわねえ」
 むろんアリスは事前情報で血盟軍団員が来るのが遅れる事は知らされていた。知ってる上で言ってるのである。
『ええい酔っ払いどもめ!やはり酒飲みにはろくなものがおらぬわ!あの張飛といい!!(2回目)』
「来るまで待っててあげてもいいんだけど?」
『いらん配慮じゃ!わしには韓信殿より賜った【EP風火輪】がある!』
 小娘に馬鹿にされるわけにはいかん!大人として!と言わんばかりに曹豹の両足に装着された車輪より炎が吹き上がった。それはかの殲神封神大戦にて猛威を振るったオブリビオンマシン『哪吒』の装備を人間サイズに再設計したものだった。オリジナルには及ばないにせよ、使い手に高速飛翔能力と遠距離攻撃能力を与える神器は強力だろう。で、その強力な神器を用いての戦術といえば……
『そーっひょっひょっひょ!追いつけまいて!』
 高速飛行による逃走、そして遠距離からの火炎弾発射だった。まあ有効ではあるだろうけど、ちょっと大人の威厳を見せる的にはいかがなものだろうか。しかもである。
「あら?それがあなただけの専売特許だと思ったら大間違いよ」
 残念なことに、アリスもまた|真なる『夜』《マスターデモン》に変身することで高速飛行の能力を得るのだ。その速度はレベル×100km/hなのでなんと時速13.6km。約マッハ11である。猟兵すげえ。仮に曹豹のEP風火輪が哪吒の持っていたオリジナルなら飛行速度がレベル×100km/hなので純粋にレベル勝負となったが、コピーではそこまでの速度は出なかったようだ。曹豹が繰り出す炎を次々に回避し、アリスは曹豹に肉薄しようとしていた。
「あんまり早すぎると嫌われちゃうわよ」
『ぬう!確かに速度では貴様に分があるかもしれないが、わしにはアレもあるのだ!』
 追いつこうとしたアリスに向けて突然すさまじいばかりの大嵐が吹きつけてきた。暴風によって引き起こされるカマイタチ現象は刃の様に鋭く、アリスを切り裂かんとする。さすがにこれにはアリスも接近を断念せざるを得ない。
「あらやだ、乱暴なのねえ」
『そーっひょっひょっひょ!これでは近づけまい!そして……あれを見るが良い!』
 勝ち誇る曹豹が指さした方向には一軍の姿。どうやら酔っぱらっていた曹豹血盟軍がようやっと到着したようであった。その数は使用者のレベル×1体……現在のレベル限界の倍、272人としておこう。曹豹はただ逃げ回っていただけではない。血盟軍が来るまでの時間を自ら稼いでいたのであった……まあ他力本願には違いないが。
「曹豹様~!お待たせいたしました~!」
『思い切り待ったわ!この不遜な猟兵めをやってしまえ!』
「はっ!!」
 そして曹豹血盟軍軍団員は一斉に弓矢をつがえ、アリスに矢の雨嵐を浴びせようとする……。
「えっちなのうみそおいしいです」

 が。
『……え?』
 次の瞬間。そう、アリスがその言葉……つい先日の戦争で倒されたオブリビオン・フォーミュラを連想させる言葉を発したと思った、まさにその時であった。眼前に展開された光景に、曹豹は口をあんぐりと開けて絶句するしかなかったのだ。
「……ちにゃ……」
 272人いた曹豹血盟軍軍団員は全て倒れていたのだ。その顔はだが、どことなく幸せそうであった。そしてさらに信じがたい事には。
「これに耐えきれないようじゃお呼びじゃないわ。『夜』の本番はこれからだもの♪」
 笑顔で言い放つアリスが曹豹のすぐ目の前にいた事であった。
『……な、何が起こったの今???』
 ものすごく簡単に言うなら、アリスは時を止めた上で『いんよくのかぜ』を放ったのである。むろんオブリビオン・フォーミュラの技を再現するのは並大抵の事ではなく、アリスはすさまじい数の技能が凝縮することでそれを可能にしたのである。そして血盟軍たちは同名の技の犠牲者のように、死の絶頂に至ったのであった。曹豹はいんよくのかぜの効果を逃れたものの時間停止でその動きは止まり、さらに空間の切断再構築による彼我の距離の消失、加えて量子的可能性を自身に収斂させた事によりアリスは竜巻の妨害を回避して近接に至ったのであった。
『……そ、そんな事あっさり言われてもなあ』
「さて」
 こうなったら直接戦闘力が劣る曹豹に勝ち目はない。アリスはぺろり、と舌なめずり。
「実はこういうおじさまも好みなのよね」
『え?』
 え?女の子と男の娘が対象だと思いきや。まさかそう来るとは。曹豹とて娘もいる年齢の自分がこんな事言われるとは思いもよらず。
「えっちなのうみそおいしいです」

 ……かくして曹豹はエナジーを大量に吸収されて大ダメージを負ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
勇猛でない分、厄介ですねぇ。
それでは、嘗て下邳の地で提示された案を参考にしましょう。

『FAS』を使用し飛行『FMS』のバリアと『FES』『FXS』の結界を多重展開し、二つの『竜巻』に備えまして。
『FPS』の探査で曹豹氏の位置を把握、『FIS』の転移で動けば、移動妨害は防げますぅ。
そして【紘器】を発動し戦域を『複製FMS』のバリアで封鎖、援軍到着阻止と逃亡可能範囲制限を行いますねぇ。
更に全『FGS』の重力波で動きを抑え、『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FDS』の[爆撃]他、攻撃用『F●S』各種で前後から挟撃、片方に意識が行けばもう片方が死角から叩ける状態で仕掛けますぅ。



●掎角とは鹿を生け捕りにする時に頭と角を同時に捉える事
 直接戦闘力が弱いと評されている曹豹だったが、実際はかなり武断的な人物であった。例えば陶謙時代の徐州に曹操が攻め込んだ際に兵を率いて迎撃に出たのはほかならぬ曹豹だった。呂布に内通後には逃げる張飛を(張飛が寡兵だったというのもあるが)自ら兵を率いて追撃したりもした。民間伝承であるが呂布と一騎討ちしたなどという話もあったりする。が、今の曹豹は……
「勇猛でない分、厄介ですねぇ」
 と、夢ヶ枝・るこるが評した通りであった。EP風火輪や謎の狂風に頼り、自前のユーベルコードも援軍や補助であり、逃げ回りながら戦う曹豹は、まさしく諸葛亮が兵法書『将苑』で語っている、君主として不適当な条件のひとつ「策を弄し臆病である」に該当しているだろう。なんでこうなってしまったのかはといえば、曹豹が復活するきっかけとなった【曹豹血盟軍】が曹豹をそういうものと解釈してしまったのが大きいとかどうとか……閑話休題。実際防御を固めて逃げながら戦う戦術は臆病者のそれではあるが、実際有効であるのも確かなのだ。
『そ~っひょっひょっひょっひょ!』
 高笑いする曹豹。先刻の攻防でかなりのダメージを受けたはずだが、それを感じさせないのは曲がりなりにも禁軍猟書家といったところだろうか。
『さっきはわけのわからん技に不覚を取ったが、そう何度もやられはせんぞ!』
「そうですねえ……それでは、嘗て下邳の地で提示された案を参考にしましょう」
 陶謙、曹操、劉備、袁術、呂布、陳登、孫策……さまざまな群雄が覇を競ったこの地において、当然様々な策が出ただろうが、さて今回るこるが採用した策とは?
「大いなる豊饒の女神、その『祭器』の真実の姿を此処に!」
 曹豹が神器を使うなら、るこるには祭器がある。使用したユーベルコード【|豊乳女神《チチガミサマ》の加護・|紘《ヒラカレシ》|器《ウツワ》】は自身が使う祭器を強化し、さらに数を増やすものであった。
「ええと、FASにFMSに……とにかくいっぱい発動です!」
 そして|F《フローティング》|A《エアロフォイル》|S《システム》を発動させると、背中から3対のオーラの翼が発生、るこるの体は高々と空へと舞い上がった。
『わしに空中戦を挑もうてか!先刻の奴と同じでよほど速度に自信があるというのか!』
 曹豹はEP風火輪より炎を撃ってるこるを迎え撃つ。対するるこるは|F《フローティング》|M《ミラーコート》|S《システム》、|F《フローティング》|E《エレメンタル》|S《システム》、|F《フローティング》|X《シェンタオ》|S《システム》による多種多様な防御壁で火炎弾を、そして続いて来る嵐を防ぐも、逃げ回る曹豹相手に追いつくほどの飛行速度は出ないようで、曹豹になかなか迫れずにいた。
『そ~ひょひょひょ!やはり先刻のような事はそうは起こらんわ!そうこうしているうちに、ほれ見てみぃ!』
 勝ち誇る曹豹、その視線の先には再度駆けつけてきた血盟軍軍団員たち。
「たしかに、あんな大技はできませんが、私には私なりのやり方がございましてぇ」
 るこるはユーベルコードで数を増やしたFMSを広範囲に展開させた。本来12枚で運用するFMSをさらに136枚追加する事により、その障壁は戦場全体を覆える程にまで拡大していた。だがそれは曹豹の攻撃から身を守るためのものではない。
「わ、なんだこれは!これでは曹豹様に近づけぬぞ!」
 超広範囲に展開された障壁のために、集まった血盟軍軍団員は戦場へと到達する事ができない。当然、弓矢を放ってもそれがるこるに届く事はないだろう。そして曹豹もまた障壁の範囲内から出る事ができないだろう。今や戦場は完全に外界と遮断されていた。
『ふん!生意気な手を使う。だがわしに攻撃を届かす事ができるようになったわけではないぞ!』
「わかってます、なのでもうひと手間加えますぅ。FPS!FIS!FGS!続けて発動です!」
 るこるは探知用の|F《フローティング》|P《プローブ》|S《システム》で曹豹の居場所を探知すると、|F《フローティング》|I《インタディクト》|S《システム》を用いて曹豹のもとに|F《フローティング》|G《グラビトン》|S《システム》を送り込んだ。これで刃のような嵐の妨害を受けることなく祭器の輸送ができるというわけだ。そして136本の錫より重力波が曹豹を襲った。
『ぐおおおおおおお、だ、だがままままままだじゃまだ終わらんよッッッ』
 すさまじい重力を前進に浴びながら、それでも曹豹はまだ飛行を続けていた。EP風火輪の性能がゆえか、禁軍猟書家としての意地か。だがるこるの策はむしろここからが本番なのだ。
「えっと……FRSにFSSにFDSに……とにかく全部!行っちゃってくださいです!!」
 るこるは自身の持つ祭器のうち、攻撃能力のあるものすべてを出撃させたのだ。普段は10個とか20個とかで運用している祭器の数は全て136個にまで増加している。それらを全てFISの機能で曹豹の近くにまで送り込んだのだ。それら全てをふたてに分け、曹豹の前後に配置して挟み撃ちの形をとった。その片方が曹豹に向けて一斉放火を開始した。
『ぬう!小癪な!』
 曹豹はEP風火輪と竜巻をもってそれを防ぐ……が。そこに今度は後背から別動隊の攻撃。竜巻は自動的してくれるがEP風火輪の防御はそちらにまで回らない。回避しようにも重力波の影響が強すぎる。
「……どうやら、うまく行ったようですねえ」
 勝利を確信して、るこるはつぶやいた。それは呂布が曹操に攻められた時、陳宮が呂布に提示し、そして却下された策であった。よもや新下邳城に籠った側の曹豹が、その策……掎角の計を受ける事になるとは、なんという皮肉であっただろうか。
『ぐわあああああああ』
 やがて前後からの猛攻が防御を貫き、曹豹は放火の嵐に晒されていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


(訂正)
掎角とは鹿を生け捕りにする時に頭と角を同時に捉える事

掎角とは鹿を生け捕りにする時に足と角を同時に捉える事
荒珠・檬果
七色竜珠を全て合成して白日珠[ビーム書簡形態]にしまして。赤兎馬に乗っておきましょうかね。

刃のごとき嵐…攻撃タイミングでくるのならば、いっそ間合い関係ないやつにしますか。回避は赤兎馬に任せますよ!

赤「ヒヒン(承った。第六感+見きりで避ける)」

そういえばここ、近場に河はなくとも新しい下邳城…でしたっけ?
出しますか、水計。【十二秘策・水】ですよ!これならば、狙うもなにもないんですよ。
凍るでもなくまとわりつく水ってのは…体力諸々奪いますからね。

しかし、呂布からは逃げねば。赤兎馬は同速勝負になる可能性…いえ、あっちも水いってますが。
逃げて逃げて…曹豹には曲がるビーム撃っていきますね!



●不言実行戦術成功
『おのれ猟兵ども!』
 苦戦に次ぐ苦戦に、禁軍猟書家とはいえさすがに曹豹にも疲労の色が濃く見えた。だが曹豹の戦意はいまだ軒昂であった。まだ猟兵は曹豹血盟軍を破ったに過ぎず、曹豹自身はいまだにこうして健在なのだ。そして曹豹にはまだ破られていない策が残されている。
『こうなったらもはや血盟軍など当てにせぬ!役に立たん連中に頼るまでもなく、わしにはもっとも信頼できる味方がおるのじゃ!』

 荒珠・檬果は馬に乗って戦場へと現れた。全身が赤い毛色を持つ馬……三国志ファンなら誰もがピンとくることだろう。董卓から呂布に与えられ、そして関羽に受け継がれたとされる、一日千里を行く名馬・赤兎馬であった。本来は檬果がユーベルコードで関羽を呼び出す時、彼に乗せるためのものであったが、今回は檬果自らが騎乗していた。その手には竜珠が握られていた。それは本来檬果が持つ七色の竜珠をひとつに合わせた白日珠であった。
「赤兎馬さん、来ますよ」
『ヒヒン……』
 檬果の言葉に赤兎馬もまた緊張したような表情を……見せたような気もするがちょっとわからない。それも当然だろう。檬果は伊達に赤兎馬を選んだわけではない。なにせ今から檬果たちが迎え撃つ敵もまた……。
『来おったか猟兵!婿殿!』
 檬果の姿を認め、曹豹の声が戦場に響き渡った。曹豹には娘がおり、早くに亡くなってしまったが、ある武将の側室だった事があったのだ。その名を出した事で張飛の怒りを決定的にしてしまった、その武将とは……。
『ふん』
 檬果が騎乗しているのと同じ赤兎馬に乗って現れたひとりの将。その手には長柄の武器。槍や薙刀の原型である矛に月牙と呼ばれる三日月形の刃が取り付けられた方天画戟。本来後漢の武将が持つはずのない武器であるにも関わらず、それはその将のトレードマークと呼ばれていた。
『ハビタント・フォーミュラとやらなどに興味などないが、舅殿を苦戦させる程の相手ならば、少しは楽しませてくれるのだろうな』
 封神武侠界では関係がないが、他世界なら奉先という字でも知られる男。天下無双の飛将軍。その強さから韓信の部下にも選ばれたほどの将だ。
『この呂布を恐れぬならば、かかってくるがよい』
『頼んだぞ呂布どの!わしは後方から援護させてもらおう!』
「……わかっていたとはいえ、なかなかシャレにならないですね」
 赤兎馬を選んだ事からも分かる通り、檬果は曹豹が呂布を呼び出す事は分かっていた。それでもなお、百聞は一見に如かずとはまさにこのことであろうか。檬果は確実に来る呂布の猛攻をやり過ごしつつ、呂布の背後に隠れるように飛び去った曹豹を攻撃しないといけないのだ。
『いざ!参るぞ!』
 そしてついに呂布の攻撃が始まった。赤兎馬を駆り、方天画戟を振り上げて思い切り斬りかかって来たのだ。
「赤兎馬さん!」
「ヒヒン!」
 承った、とばかりにひと鳴きすると、檬果が乗る方の赤兎馬は素早く横に動き、呂布の強烈極まりない斬撃を回避した。かつて乗せていた相手ということで、どうにか呂布の動きを見切る事ができたようだ。赤兎馬が呂布の攻撃を避けている間に檬果が反撃の策を練る算段だった。だがそう何度も回避できるとは思えない。また曹豹がEP風火輪で援護射撃を始めたら、さらに回避は困難となるだろう。今の所曹豹への直接攻撃をくわえていないことで、刃のような嵐は発生せずに済んではいるが。
「ヒヒーン!?」
「わ、わかってますよ!今考えている所です!」
 なんとかしてくれ、と言わんばかりの悲鳴をあげた赤兎馬に答えた檬果。とはいえそうすぐに策が出てくるとは……
『そーっひょっひょっひょ!どうやらこの新下邳城がきさまらの墓場となるようじゃな!』
「……新しい下邳城?そういえばそんな事言ってましたっけ?」
 ぴこーん。檬果の頭上に電球が灯った。言われてみればつい先ほども下邳城に由来する策を使っていた猟兵がいたではないか。ならば自分にはとっておきの味方がいる。まさしくこの時のために用意したのではないかというぐらいの適任の者が。檬果はゲームデバイスを取り出した。
「荀攸さん!」
(……あれは呂布ですか……よもやこのような所で再び見えるとは思いもしませんでした)
 檬果の呼びかけに応じた声。彼こそかつてオリジナルの下邳城において郭嘉とともに水計を提示し、曹操に勝利をもたらした者。荀攸であった。
「あなたに頼みたい事が」
(わかっております。ここまで隠していた策を、お披露目するときですね)
 次の瞬間、突如として戦場に轟音が鳴り響いたかと思うと、突然の濁流が呂布を襲った。濁流は荀攸の力により白日珠より出たものだった。荀攸は陣中で十二の策を練っていたとされている。その中で数少ない現在に伝わる策こそ、この水計だったのだ。
『ぬう!こ、これは!!』
 氾濫させるべき川がないはずのこの場所で起こった大洪水。しかも冷水は呂布のみをピンポイントで襲撃しているのだ。失われた苦すぎる記憶がよみがえったのか、呂布の顔はゆがんだ。
『な、なんじゃこりゃあああ』
 そして濁流は空中にいるはずの曹豹をも巻き込んでいた。さすがに猛烈な濁流にはEP風火輪や嵐による防御もさしたる効果を発揮できないようで、空中にいながら纏わりつく水に苦しみの声をあげていた。
「さて、ここからが本当の勝負です!赤兎馬さん!」
『むう!来るか!』
 強烈なデバフに乗じて檬果が仕掛けてくると考えた呂布だった……が、檬果を乗せた赤兎馬は呂布とは真逆の方向に走り出したのだ。そう、あくまで檬果が戦う相手は曹豹であり、呂布ではないのだ。
『貴様!強者だというのに敵に背を向け逃げるというか!』
「なんとでも言ってください!三十六計逃げるに如かずです!」
 赤兎馬同士、本来なら互角の速度のはずだったが、まとわりつく冷水のため呂布が乗る赤兎馬の速度は確実に低下していた。呂布は必死で追うが、その差は開くばかりだ。
「計算通りです!今ですね!」
 十分に呂布との間合いを離したところでついに檬果は曹豹に攻撃を仕掛けた。白日珠よりビームが発射されたのだ。ビームは曲がりながら突き進むと、濁流により動きを制限された曹豹に狙い違わず命中した。
『ぎにゃああああああ』
(ふむ、なるようになるもんですな)
 感心したような荀攸の声を、確かに檬果は聞いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴乃宮・影華
まぁ確かに、強い武器や部下を適宜投入できるなら
必ずしも将自身が強い必要は無いですよね

でもその装備は別世界へ転移できる訳でなく、貴方は絶対にこの戦場内の何処かにいなければならない
炎と刃、どちらの竜巻も即死攻撃ではない
という訳で
私や他の猟兵を味方、
そーひょーさんと呂布・赤兎馬を敵に設定し指定UC起動
「御自身で言ったからにはなってもらいますよ、私の|剣《蟲達》のサビに」
これで刃等で受けた負傷を治癒しつつ、タイミングがどうずれようと関係ない攻撃を継続できます
呂布の突撃や炎は『伍光』の光線を自分で浴びて重力加速を加えた横っ飛び等でも回避できるかな



●呂布はたぶんまた来るけど曹豹はわからない
『おにょれ~!猟兵どもめぇ~!!』
 エネルギーを吸収され、銃弾の嵐やビームをその身に浴び、もはや曹豹は満身創痍だが、それでも逃走を考えるつもりはなさそうだ。このあたりはどんなに情けないと思われても、どんなにネタキャラであっても、さすがは禁軍猟書家ということであろう。逃げながら戦う戦闘スタイルは一応本当に逃げているわけじゃないということで。そして何より曹豹の戦意がいまだに高い理由はその横を見ればすぐに分かった。
『頼りにしておるぞ!呂布殿!』
『ふん、俺はまだ負けたわけではないぞ、これからが本当の勝負よ』
 曹豹の娘婿たる飛将軍呂布もいまだ健在だったのだ。先刻の戦いでは猟兵に上手い事その戦意をいなされた形になり、欲求不満に陥っていた。水攻めで疲労していたにも関わらず、その強さは衰えを見せるどころか、むしろ爆発寸前の火山のようになっていた。
 相手が万全でないからといって全く油断はできないだろう。窮鼠猫を噛むという。ましてや相手は鼠どころかさらに危険な存在なのだ。そんな相手を鈴乃宮・影華は冷静に評価した。
「まぁ確かに、強い武器や部下を適宜投入できるなら必ずしも将自身が強い必要は無いですよね」
 繰り返すが曹豹本人は弱い。だがEP風火輪を使い、血盟軍や呂布を呼び出し、竜巻の援護も受け、これらの要素が曹豹を強敵たらしめていた。それでもなお猟兵たちはその曹豹をこうして追い詰めている。付け入る隙は必ずどこかに存在するだろう。さらに影華は分析を続ける。
「でもその装備は別世界へ転移できる訳でなく、貴方は絶対にこの戦場内の何処かにいなければならない」
 その通りである。血盟軍や呂布を盾として遠距離から逃げながら戦う曹豹ではあるが、その能力はあくまで高速飛行だ。少なくともこの戦場を離れる事はできず、それがゆえにダメージを受けた事もあった。
「そして炎と刃、どちらの竜巻も即死攻撃ではない……」
 これもその通りだ。炎の竜巻はどちらかといえば量による攻撃、そして血盟軍や呂布の援護射撃がメインなようだし、刃の竜巻はダメージよりも行動阻害が主であるように見えた。世の中即死攻撃なんてそれこそかのユグドラシルブレイドに代表されるような、ごく一部の者の特権であろう。
「それならば」
 方針は決まった。あとは実行し……確実に成功させるだけだ。

『来たか猟兵』
 サーベルのような刀を手に戦場に立った影華の前に。赤兎馬に跨り方天画戟を構え万全の戦闘態勢を整えた呂布が立ちふさがった。
『今度は俺の期待を裏切ってくれまいな』
『呂布殿!今度こそ武神とまで呼ばれた実力を猟兵に見せつけてやってくれい!』
 そしてその後方にはEP風火輪を発動させ、既に空高く舞い上がっていた曹豹の姿。強者を盾として自らは後方より攻撃する、これまでと同じ布陣だ。戦法を変えてこなかった事に、ひとまず影華は安堵した。
「あなたの期待にお応えできるかはわかりませんが」
 サーベル『伍光』を構えつつ、影華は戦闘態勢を整えた。
「お相手はいたしましょう」
『応!見せてもらおうか!猟兵の剣技を!』
 赤兎馬を駆り、呂布が躍動する。影華に向けて真っ向から、一直線に向かっていった。曹豹はといえば宙に浮いたまま動こうとしない。こちらの動きに反応して逃げる構えだろうか。
『|殺《シャア》!!』
 裂帛の気合とともに呂布が方天画戟を影華に振り下ろす。必殺の斬撃に対し、影華は防御するでも身をかわすでもなかった。ただその体が勢いよく横に動き、振り下ろされた一撃を回避したのである。それは奇妙な動きだった。自ら飛んだのではなく、何かに引っ張られたような、そんな動き。
「ふう、危なかったです」
『……よもや、貴様』
 影華のその動きに、呂布の顔に不満のようなものが浮かんだ。先刻の猟兵と似たような意思を、そこに感じたのである。呂布との戦いは避けて曹豹に狙いを定めた、そんな意思を。
「言いましたよね、あなたの期待にお応えできるかわかりませんって」
 影華の作戦はまさに呂布が読んだ通りだったのだ。そして影華にはその手段があった。曹豹が戦場にいる限り、どこに逃げようと、嵐で妨害しようと、そのようなものに全く左右されずに曹豹を攻撃できる手段が、である。
「えっと、そーひょーさん、でしたっけ?御自身で言ったからにはなってもらいますよ、私の剣のサビに」
『あ、やっと拾ってくれた人が出てきたか、よかった全スルーじゃなくて……ではなくて!おもしろい!その距離でわしに剣を届かせるというか!できるもんならやってみるがいい!!』
 なんかちょっと喜んでる曹豹に対し、影華は力ある言葉を放った。
「……それがそーひょーさん、あなたの選んだ結末ですね。『彼の力を以て世界は答える』!」
『そーひょひょひょ!何も起こらんではないか……ひょっ!?』
 曹豹の高笑いが止まった。その体には、何やら黒い靄のようなものがまとわりついていたのである。見る者が見れば、その正体は漆黒の虫の群れである事がわかっただろう。
『な、なんじゃこれは!?』
「……それが、私の|剣《蟲達》です」
 黒燐蟲。呪いの力を秘め、全ての獲物を跡形もなく喰らい尽くす恐るべき者たち。それこそが影華の最大の武器であった。影華の【|黒燐奏甲《イマジンドレス》・|因果応報《カルマ》】に操られた黒燐蟲たちは、全く気付かれる事もなく曹豹に忍び寄り、火炎の嵐や刃のごとき嵐を発生させる事もなく標的のもとに辿り着いたのであった。
『ぬう!なんだ!この奇妙な虫は!』
 そして黒燐蟲は呂布をも蝕んでいた。呂布は方天画戟を振るい、赤兎馬を走らせてこれを振り払おうとするが、蟲の群れに対してそれは有効になりえず、雲霞のごとく集まる黒燐蟲たちはさらにその密度を増していく一方であった。
『ええい!気色悪い虫どもめ!消し飛ばしてくれるわ!』
「……気色悪い……って、言いました?」
 黒燐蟲を追い払うべく火炎弾を放ちながら叫ぶ曹豹の言葉に、影華の表情が敵面に変わった。まさに曹豹は影華の逆鱗に触れてしまったのだ。
「……みんな、やっちゃってください!」
『ぐわああああああああ』
 影華の指示で、黒燐蟲たちは一斉に曹豹に取りついた。たちまち曹豹の全身は腐食の呪いに晒され、これまでの戦いで受けた傷が一斉に開き、おびただしい量の血が噴き出した。今や曹豹の全身は鮮血の赤と黒燐蟲の黒で赤黒く染まっていた。
『舅殿!おのれ猟兵!』
 同じく黒燐蟲に責めさいなまれ苦しみながらも、呂布は曹豹を救うべく影華に斬りかかった。しかし『伍光』が光を放つと、それを浴びた影華の体は先刻同様何かに引かれるように動き、呂布の斬撃は空を切る。伍光は斬りあいのための剣ではなく『自律型念動力機巧』と呼ばれる一種の重力制御装置だったのである。それでも強烈な剣圧だけで影華の肌に傷を負わせてはいたが、だが傷を負うたびに黒燐蟲がそれを治していった。
『うおおおおお、この曹豹が!曹豹があああああああああ』
 曹豹の断末魔の叫びが戦場に響き渡る。明らかに致命傷を負いながらも、禁軍猟書家としての最後の意地で、曹豹は言い放った。
『猟兵は強かったと、総評してくれよう!曹豹なだけに!!』
 その言葉を残し、曹豹は爆破四散し、骸の海へと還っていった。同時に呂布もまた実体を失い消滅した。その顔は無念で溢れていた。

(だが……わしはこんなもので終わる気はない!いずれ必ず戻って来るぞッッッ)
(次こそ……闘争を!この血が滾らんばかりの真剣勝負をッッッ)

「……何はともあれ、終わった、のでしょうか?」
 虚空に向け、影華はつぶやいた。
「そーひょーさん、そして呂布さん、本当にまた来てしまうのでしょうか……?」

大成功 🔵​🔵​🔵​



 気が付いた時、猟兵たちの眼前に広がっていたのは封神武侠界の大地であった。先刻までいた封神武侠界を模した異空間ではなく、本物の封神武侠界。その眼前には、彼らが戦っていた新下邳城には規模で及ばないものの、幾つもの戦いを潜り抜けてきた事が一目でわかる、貫禄のある城。そして周囲の河川。すぐに分かった。猟兵たちは今、本物の下邳城の前に立っていたのだ。
 さてすぐに取って返して次の戦いに備えようか。それともせっかく封神武侠界に来た事だし、少しゆっくりしていこうか。いずれを選ぶにせよ、猟兵たちは再びそれぞれの道を行き始めるのであった。

最終結果:成功

完成日:2023年02月15日


挿絵イラスト