デヴァーリムは差し伸べる手を取る所以か
●穏やかな空気
冬になれば雪がすべてを埋め尽くす。
それは時の移ろいを教えるものであったけれど、その雪が溶ければ春がやってくる。
春は好きだ。
暖かな空気も、穏やかな空気も。
だから、吸って。吸って。吸って。肺いっぱいに満たした空気は人の心を穏やかにする。
「素晴らしい。なんて素晴らしいのだろう。君たちは文明を得られなかった代わりに、得難き平和を得たのだろう。少なくとも私達にはそう思える」
彼らはやってきて言った。
穏やかな顔をしていた。
どうやら彼らは戦火に追われて『此処』にたどり着いたようだった。
深く傷ついていたし、彼らが駆る鋼鉄の巨人もまた同様だった。
自分たちは彼らを手厚く介抱した。
彼らは感謝してくれたし、自分たちも人としてそういうことをするのが誇らしいという空気が充満していた。
かくいう自分もそうであった。
空気に流されて、傷ついた人々を助ける喜びに震えていた。
「だが、すまない。私たちはどうしても仲間のことが気になるんだ。彼らの安否が」
「けど、そんな状態じゃ……まだ傷だって治っていない」
「君たちのお陰で私たちは動ける。しかし私達の仲間が今も傷ついていると思うと居ても立っても居られないのだ」
彼らは自分の仲間たちがまだ追い立てられているのだと訴えた。
拾った生命を捨てるような行いだと彼らは理解していた。
けれど、それでも誰かのためにと言う彼らの言葉に『此処』に住まうみんなは胸を打たれた。
「助けてもらった上に厚かましいとは理解している。けれど、一つ頼まれてはもらえないだろうか。私達の仲間を受け入れてほしい。彼らもまた私達と同様に傷を追っているだろう。せめて」
「言わないでもいい。無論、君らを受け入れるとも。『此処』は平和そのものだ。だから、遠慮なんてしなくていいのだ」
その言葉に彼らは笑った。
笑ったのだ。
けれど、その笑みに自分はどうしようもないほどの違和感を覚えた――。
●違和感
「お前は傷ついた彼らを疑うというのか!」
「恥を知れ! 彼らは傷ついていた! 深く! それに疑いをかけて追い打ちをかけようと言うのか!」
「そうだ! 可哀想ではないか! そうは思わないのか!」
それは空気だった。
冷たく流れ込むような空気。
『此処』に住まう人々が口々に自分にまくし立てる。
自分は思ったことを告げた。
彼らは本当に傷ついているのか。本当に仲間を連れてくるだけなのかと。
だが、みんな自分の言葉を否定した。
『此処』は平和だった。平和すぎたとも言えた。
だからこそ、自分は異端なのだろう。彼らの言う通りの取越苦労だったのならば、自分がどれだけ謗られても構わない。
けれど、もし。
もしも、自分の聞いたあの言葉が本当だったのならば。
「これより本隊を引き入れる。『此処』にはキャバリアもなければ武装らしいものは何一つない。『此処』のプラントを奪えば、我等の再起も可能だろう。そう、我等『シーヴァスリー』の再起が!」
きっとそれは良くないものを呼び込む――。
●邂逅は突然に
ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)はクロムキャバリアの雪原に立つ。
冷たい空気が肺を満たしていく。
吸って、吐いて。吐いて。吐いて。胸の内側にある空気をすべて吐き出す。そうすれば、また一つ大きく息を吸い込むことができる。
傍らにあるのは|白銀の巨人《ジャイアントキャバリア》。
まるで彼女が息を吐き出し切るのを待っているかのように佇んている。
だが、彼女は息を吐き出し切る前に瞳を見開く。
足音がしたからだ。
此処には己だけでやってきていた。自然の中を歩くことを好む彼女は、クロムキャバリアの雪原には己と己のジャイアントキャバリアだけが存在していると思ったのだ。
「あ、あなたは……もしかして、その巨人は……!」
その言葉にナイアルテは首を傾げる。
敵意を感じなかったからだ。
「キャバリア、と呼ばれるものです。ご存知かと思いますが?」
そう、クロムキャバリアにおいて5m級戦術兵器こそが戦いの花形であり、主流。戦乱渦巻く世界にあっては知らぬ者などいるはずもない。
だが、彼女の前に現れた少年には奇異なる物に……いや、追い求めたものを漸く見つけたという感慨に黒い瞳が潤んでいた。
「助けてください! その鋼鉄の巨人を駆るあなたなら!」
「……助け?」
「はいっ、僕……いや、俺は『メリサ』と言います! こ、ここから向こうに行ったところに住んでいるものです! 俺の、俺達を助けてください……!」
亜麻色の髪が冷たい風に揺れて、『メリサ』と名乗る少年がナイアルテにすがりつく。
彼の言葉にナイアルテは宥めるように、落ち着かせるように微笑む。
「わかりました。まずは落ち着いてください。そして、どうかお聞かせください。あなたに、あなたたちに何があったのかを――」
●シーヴァスリー
『メリサ』と名乗る少年が語る言葉をナイアルテは理解する。
彼らは名もなき『此処』と呼ばれる集落に住まう人々。
いかなる小国家の支配下にもない、所謂、未開地に住まう人々である。
文明から取り残されつつあるものの、戦乱からは無縁の暮らしを送っていた。
「でも、ある日、傷ついた鋼鉄の巨人と共にやってきた人たちがいたんです。彼らを僕……俺達は介抱して、助けたんですけど……」
彼が語る所によると、それは偽装であったようである。
彼らは傷ついた風を装って集落にやってきて、集落の人々の信頼を得ていった。同情もあったのだろうし、何より集落の人々の気質は優しいものであった。
そこに彼らは付け込んだのだ。
彼らは追われてきたのではない。
未開地である『此処』に存在するプラントを奪うために集落の情報を得ようとしていたのだ。
「それで、あなたは彼らの真意に気がついたと」
「はい、あいつらは嘘を言っていた。聞いたんです! 俺は! あいつらが『シーヴァスリー』って名乗っていたことも、次に来る時は『本隊』ってやつを連れてくるってことも!」
だから、『メリサ』と名乗る少年はこうしてなけなしの財産を手に、戦うすべを持たぬ自分たちの代わりに戦ってくれる誰かに助けを求めようとしたのだと告げる。
彼が集落を出て初めて出会ったのがナイアルテであったのだ。
「お願いです! 俺ができることなら、なんだってします! 欲しい物があるのなら、なんでも! だから!」
助けてほしい。
その切実なる願いにナイアルテはグリモアの予知を見る。
訪れる災厄。
鋼鉄の巨人。
『此処が分水嶺』だと理解し、同時に一刻の猶予もないこと悟る。
輝くグリモアが呼び寄せるは、他世界より駆けつける一騎当千たる世界に選ばれた戦士。
その名を猟兵と云う――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリア、かつてオブリビオンマシンの策動によって生み出され、皆さんに敗れた小国家『シーヴァスリー』が未開地に存在する集落を襲うことが予知されました。
ですが、すでに『シーヴァスリー』の斥候によって騙された集落の人々は、戻ってくる彼らを信用し、無抵抗に殺されてしまうでしょう。
これを防ぐシナリオになります。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
集団戦です。
皆さんは呼びかけられ転移して即座にキャバリア戦闘に突入します。
未開地である『此処』に攻め込む小国家『シーヴァスリー』のキャバリア部隊との戦いになります。
彼らはオブリビオンマシンに乗っておりませんが、『シーヴァスリー』の世論に後押しされて未開地の『古代プラント』を奪おうとしています。
もしも、彼らに『警告』めいたことを行うことができれば、『シーヴァスリー』の世論が流され、この策略を手繰るオブリビオンマシンの乗り手に逆風を起こせるかもしれません。
●第二章
日常です。
『シーヴァスリー』のキャバリアを退けた皆さんは、未開地『此処』に招かれます。
未開地に在る彼らは武装を何一つ持っていません。
第一章で撃破したキャバリアやかく座した機体などから新たな自衛戦力を生み出してあげましょう。
また、この集落の人々に皆さんは質問をすることができます。
●第三章
ボス戦です。
『シーヴァスリー』の世論を扇動できぬと悟ったか、もしくはオブリビオンマシンの性能に自信があるのか、単騎でオブリビオンマシンが集落に攻め入ってきます。
狙いは『古代プラント』です。
これを打倒しなければ、未開地である『此処』は、これからもずっと『古代プラント』を狙われ続けることでしょう。
それでは外典は結実し、種火となるのか。オブリビオンマシンのもたらす戦乱を止める皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』』
|
POW : |数重《かずしげ》達による多段強襲攻撃
【短距離虚空潜航からの強襲斬撃】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 関節・急所への斬突や体勢を崩す体当たり
【虚空】に消え、数秒後に出現し【介者剣法】による素早い一撃を放つ。また、【RX長巻を使い捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 囲んで長巻で斬る
【短距離虚空潜航を使い、数重で相手を囲む事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【出現からの強襲袋叩き】で攻撃する。
イラスト:イプシロン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちは困惑したかもしれない。
突如として招集され、転移した彼らの前に広がるの雪原と無数の量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』の姿であった。
「どういうことだ! 情報では連中には戦力はないはずだ!」
量産型サイキックキャバリアを駆るパイロットたちが困惑しているのが伝わってくる。
猟兵たちも同様であった。
これは如何なることかと。
「皆さん、どうかお願い致します。彼らは『シーヴァスリー』、この先にある未開地の集落に存在する『古代プラント』を奪おうとしているのです! 彼らは情に訴え、集落の人々を欺き、非道をなさんとする者たちなのです!」
グリモア猟兵の言葉に猟兵たちは理解するだろう。
また、だと。
これは侵略であると。
己たちが招集されたということは、即ち彼らの背後にオブリビオンマシンの策動があるということ。
ならばこそ、猟兵たちは、理由はそれだけで十分だと思うだろう。
「馬鹿な……! 容易いものではなかったのか!」
「どうする! 退くか!?」
「できるものか! 我等も退くことはできないのだ。どれだけ悪道に堕ちようとも! プラントがなければ!」
量産型サイキックキャバリアを駆る彼らも理解しているのだろう。
己たちの非道なる行いを。
だが、だからこそ退けない。
この戦乱の世界にあっては奪うことこそが摂理。
争い、奪うことできなければ、奪われるばかりなのだ。だからこそ、彼らは、その空気に後押しされるよに牙を向くように抜刀するのだった――。
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『シーヴァ・スリーか…なぜ、道を外れる!』
機体に【オーラ防御】を纏い、【フェイント】を入れて突撃しながら叫ぶ。
電磁機関砲の【制圧射撃】とブレードでの【鎧砕き】で攻撃するぜ。
『これ以上道を外れ、非道な行為をするのなら…猟兵として、世界の敵とみなす!』
敵をユーベルコード【獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』】の焔で焼き尽くしながら警告するぜ!
猟兵達は見ただろう。
雪原に点在する量産型キャバリア『武甲・数重』たちの姿を。
彼らは猟兵たちの到来に困惑している。それもそのはずだ。彼らが斥候として差し向けた兵たちの報告によれば、これから攻め込もうとしている集落に武装の類がないと言われていたからだ。
だというのに、己たちの到来に対して猟兵の駆るキャバリアの姿が見えれば驚愕するのも無理ないことであった。
「『シーヴァスリー』か……」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は己の機体と共に戦場に飛び出す。
雪原を蹴って、飛ぶようにして駆ける姿を認めた量産型サイキックキャバリアたちが瞬時に虚空へと消える。
それは短距離でありながら虚空潜航という凄まじき機能をもってなされる強襲戦術。
「段取りが違うなどと今更だ。『此処』のプラントを取ることができなければ……!」
そう、彼らにあるのは滅びだけだ。
このクロムキャバリアにおいて国力とはプラントの数で決まる。
『シーヴァスリー』はこれまでいくつかの小国家を滅ぼしてきた。そのいずれもプラントを得る為であったし、また同時にオブリビオンマシンの策動によるものであったことだろう。
しかし、それは猟兵達によって阻まれたのだ。
瓦解していく小国家でありながらも、しかして彼らは己たちの小国家を立て直そうとしている。
それ自体は、この戦乱渦巻くクロムキャバリアにおいては摂理と呼ぶべきものであったのかもしれない。
「……なぜ、道を外れる!」
ガイの言葉に量産型サイキックキャバリアたちが虚空より一斉に強襲し、その斬撃を見舞う。
その一撃をオーラで受け止めながらガイは叫ぶしかなかった。
そう、なぜ悪道に墜ちるのか。
なぜ道を外れたと知りながらも、その道をゆこうとするのか。
ガイには理解の及ばぬことであったかもしれない。
放たれる電磁機関砲の弾丸が量産型サイキックキャバリアたちを牽制する。
「しれたことよ! 戦乱ばかりが渦巻くゆえ。正道も王道も、非道も、悪道も! いずれも道に代わりはあるまい!」
振るう一撃をブレードで受け止めながらガイは頭を振る。
道。
それは誰しもが持つものである。
生きているということは道を歩むということでもある。
だからこそ、ガイは告げる。
「これ以上道を外れ、非道な行為をするのなら……猟兵として、世界の敵とみなす!」
「敵だと? 当然のことだろう! 我等は敵を求めている。奪って良い敵を。切り捨てて良い敵を。奪って当然と! 己たちだけで平穏を甘受している者共には!」
一撃を振り払いながら、ガイの瞳がユーベルコードに輝く。
機体より噴出するは、9つの首を持つ竜を模した獄炎。
獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』(ゴク・グレンカイホウ・ヴリトラ・ファンタズム)によって放出される力の奔流が、大地を白く染める雪を溶かしながら量産型サイキックキャバリアへと迫り、その走行を焼き尽くす。
「これは警告だ。お前たちが、それでも先に進むのなら。お前たちが防ごうとした滅びは、すぐさまお前たちに迫るだろうよ!」
ガイは彼らに告げる。
それは脅しとも言える言葉であったことだろう。
けれど、『シーヴァスリー』の人々もまた必死なのだ。プラントがわずかでも稼働を止めれば、小国家のインフラは破綻する。
それほどまでに依存しているのだ。
ガイは、それでもと思う。
それでも誰かから奪うこと是としてはならないのだと。
人の道ではない。獣の道でしかない。
生きて、他者と交わり、そして助け合っていくのが人間の生み出す社会というコミュニティであるというのならば、奪うばかりが正しいなどとは言えないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
超神竜姫・勇者
力無き人々の危機を見捨ててはおけない!何故ならボクは……|勇者《ヒーロー》だからだ!
いっくぞー!大勇車ドラグンガル!発進だー!
UCを発動して大勇車を「絶対に全員を守る」という意志の力で強化して、Lv×100㎞/h飛翔させるぞ!!
キャバリアを超える巨城の如き巨大戦車だ!このすばやさで|たいあたりさ《轢か》れたらタダじゃ済まないぞー!
目標補足!主砲用意ー!(超究勇気をエネルギー充填し、エネルギー弾の砲撃」
ひっさーつ!ドラグンガルキャノン!
雪原に踏み出す一歩の理由は簡単なことだった。
『此処』に住まう人々は武器を持っていない。争うことがないからだ。
それは戦乱が渦巻くクロムキャバリアという世界にあっては、あまりにも稀有な場所であった。
争いが争いを呼び、争いが集結したとしても新たな火種が撒かれ続ける。
そうして戦火の中にいくつもの小国家が潰え、生命が消えていった。
百年続いた戦争は今もなお続く。
誰もが平和を望みながら、平和というものを知らぬ。
故に奪い合うのだ。
プラント。
それさえあれば多くのものが生み出せる。
食料もキャバリアも。何もかも。逆にいえば、プラントがなければこのクロムキャバリアで人は生きていけないのだ。
「だから、私たちは奪うのだ。奪って、己の糧にする。獣と云うのならば、謗るが良い。我等は獣の如き所業に身をやつせど、人としての業を背負う者!」
小国家『シーヴァスリー』の量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』が雪原を走る。
だが、その一歩よりも小さく、そしてまた大きな一歩を踏み出す影があった。
「力なき人々の危機を見捨ててはおけない!」
超神竜姫・勇者(超究英勇竜神・f38456)は、小さいけれど、確かな一歩を持って前に進む。
そう彼女は恐れを知らぬ者ではない。
けれど、恐れだけを知る者でもない。
「なぜならボクは……|勇者《ヒーロー》だからだ!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
スーパー・ジャスティス輝く瞳は、己と共に雪原を疾駆する伝説の戦車、大勇車ドラグンガルを黄金のオーラで覆う。
それは彼女の意思に応えるものであった。
「いっくぞー! 大勇車ドラグンガル! 発進だー!」
黄金のオーラは、どれだけ虚空潜航による強襲攻撃であっても傷をつけることはできなかった。
車体を覆う黄金のオーラは彼女の意思によって成り立つものだ。
即ち、『絶対に全員を守る』という意思。
それを彼女が損なわぬ限り、『シーヴァスリー』の量産型サイキックキャバリアたちの刃は傷一つ車体につくことはないのだ。
「巨城の如き戦車だと……!?」
「それに、速い……! 一体どういう動力源を使っているのだ!?」
同様が『シーヴァスリー』の量産型サイキックキャバリアを駆る者たちの中に広がっていく。
「そうだよ! このすばやさで|たいあたりさ《轢かれ》たらタダじゃ済まないぞー!」
勇者の言葉が戦場に響き渡る。
それは端的な事実であったし、量産型サイキックキャバリアたちは躱すので手一杯であった。
しかし、ドラグンガルの本領は巨大さと速さだけではない。
そう!
これは戦車。ならばこそ、必ず装備しているものがある。
「目標補足! 主砲用意ー!」
車体に備えられた砲塔がゆっくりと動き、虚空潜航によって逃れようとする量産型サイキックキャバリアたちを捉える。
「ひっさーつ!」
勇者の胸に宿る超究勇気をエネルギーに変えた砲身が光を放つ。
「ドラグンガルキャノン!」
その言葉と共に放たれる砲撃の一撃が直撃を避けて量産型サイキックキャバリアたちを吹き飛ばす。
ただの余波、その衝撃波だけでも彼らの機体は四肢を引きちぎられるようにして吹き飛んでいく。
その様をドラグンガルから見下ろし、勇者は笑うのだ。
「でんせつのゆうしゃがあらわれた――!」
大成功
🔵🔵🔵
妖精騎士・フェアリーナイト
技能:物を隠すで妖精特有の小さな体を隠し、死角からこっそり近づきます。
小さな壺に触れさせて、キャバリアをフェアリーランドの中に吸い込んでしまいましょう。
パイロットの方は抵抗されるでしょうから、キャバリアだけを吸い込めます。
エレメンタルロッドの精霊たちにも壺を渡して手伝ってもらいます。
上手くいけば、無傷のまま丸々鹵獲した機体を次章で味方に与えられますね。
例え敵でも、なるべく傷付けたくはないのです。
「小奴ら、ただの手練ではないぞ!」
量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』を駆る小国家『シーヴァスリー』のパイロットたちは動揺すれど、しかし戦うことをやめない。
雪原を戦場としながら、彼らの駆るキャバリアの挙動は些かも緩むことを知らないようであった。
「此処が我等の分水嶺。繁栄か滅亡か。その答えが此処にあるというのならば!」
彼らが駆るキャバリアの駆動はさらに加速していくようであった。
なぜなら彼らもまたこの戦乱の世界であるクロムキャバリアで生きる者たちであったからだ。
たとえ、オブリビオンマシンに心歪められた扇動者がいるのだとしても。
それでも懸命に生きようとするのならば、いずれ他者と衝突する。
人と人とが存在するのであれば、争いは避けようのないものであったからだ。けれど、と妖精騎士・フェアリーナイト(妖精霊騎術士のフェアリー・f39004)は思う。
「ただ奪うばかりが人の性ではないと信じたいのかもしれません」
彼女は小さな体を鋼鉄の巨人が疾駆する戦場に在りて翻す。
彼女の手に有るのは小さな壺。
一体それで何をしようと言うのだろうか。
そもそも彼女の体躯では、5m級の戦術兵器であるキャバリアには敵うべくもないだろう。
だが、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
彼女の壺の中はフェアリーランドそのものである。抵抗しないものを吸い込む。即ち、キャバアリアを駆る者たちは抵抗を示すだろう。
けれど、機体はどうであろうか。
「鋼鉄の巨人に意思はなく。乗る者にこそ意思が宿るのであれば」
彼女は壺を振りかざし、小さな体で量産型サイキックキャバリアに近づき、その口を触れさせる。
輝くユーベルコードは機体のみを吸い込む。
パイロットは突如として己を鎧う鋼鉄の巨人がかき消えたことに困惑し、雪原に立ち尽くすしかない。
「な、何が……キャバリアが消えた!?」
確かに今まで己が操縦していたのだ。
けれど、今はない。
まるで幻覚か幻を見ているかのような気持ちになるだろう。そこにフェアリーナイトは小さな体躯でもって舞い降りる。
彼女の姿は猟兵であるからこそ、彼に違和感を与えない。
けれど、フェアリーナイトにはそれは関係のないことだった。
「例え敵でも、なるべく傷つけたくはないのです。だから、こうしました」
彼女の言葉。
それは彼からキャバリアを奪ったことを示している。
こうすれば、量産型サイキックキャバリアそのものを次に活かすことができる。例え、戦うために生み出された存在でも、もしかしたのならば誰かの生活の礎になることもできるかもしれない。
そんな使い方ができたのならば、それは彼女にとって喜ばしいことだろう。
どんなにそれが難しいことであるのだとしても。
「あなたたちが糧を求めたように。手を伸ばさすことは止めてはならないのです。きっとそれが生きるということでしょうから」
フェアリーナイトは身を翻して、呆然と立ちすくむ『シーヴァスリー』のパイロットから離れ、また再び雪原を疾駆する量産型サイキックキャバリアの元へと舞い戻り、同じようにキャバリアを、争うための道具を取り上げるようにユーベルコードの輝きの奇跡を戦場に刻むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
シーヴァスリー?
はて?どこかで聞き覚えが…
あー!
あのシーヴァスリーですわね!
お話しは後回しですわ〜!
ヴリちゃん!クロムジェノサイダーで参りますのよ〜!
このおサムライのようなおキャバリアは存じておりますのよ!
短距離おワープするのですわ!
追いかけるとぴょいぴょい飛ばれて鬱陶しいのですわ!キャバぴょいキャバぴょい!
なので先に攻撃をお誘いするのですわ!
へい!かもん!
ラージシールドで受けてカウンターエッジ!
ギロチンシザーで達磨さんみたいにして差し上げますわ!
おほほのほ!わたくしが怖いでしょう?
お尻尾をお巻きになってお帰りくださいまし〜!
さもないとその頭がお身体と永遠にお別れしてしまいますのよ?
メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は、基本的に物事を暴力で解決しようとするし、してきた。
それはこの争乱の続く世界であるクロムキャバリアにおいては有効的な手段であったことだろう。
どれだけ言葉で友好を結ぶのだとしても、裏切るのが世の常であり、人の常であったからだ。だから、暴力が要る。最終的に、それで早期に片を付けることが最も血の流れぬ手段であったことだろう。
けれど、現実はそうはいかないのである。
だからこそ、メサイアは己がやってみせようというのだ。
「はて?」
とは言え、グリモア猟兵によって招集された当然の雪原での戦いは彼女にとって困惑するものであった。
『此処』と呼ばれる集落に存在する『古代プラント』。
それを求めて侵略しようとする小国家『シーヴァスリー』。
その名を彼女は聞き及んでいたし、知っているはずだった。しかし、どうにも出て来ない。喉元まで来ているのに、どうにもすっきりしない感じ。
「我等『シーヴァスリー』の繁栄のためには!」
量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』たちは虚空に潜航し姿を消す。それを見てメサイアは理解した。
一度戦ったことがある。
「あー! あの『シーヴァスリー』ですわね!」
メサイアは、暴竜型キャバリア『ヴリトラ』のコクピットの中で掌を打つ。漸くにして思い出したのだ。
これまで幾度か戦った小国家。
オブリビオンマシンの策動によって、思想をオブリビオンマシンなくとも染め上げられた者達。
「そんな方々がこんな遠い地まで一体何をしにいらして? って、お話は後回しですわ~!」
どうせ細かいことを考えて、小難しいことを言って来るに違いないとメサイアは決めつけ『ヴリトラ』の背に負うサブアームがラージシールドを打ち鳴らし、ギロチンシザーを開閉させる。
「そのおサムライのようなおキャバリアは存じておりますのよ!」
虚空に潜航し、強襲する戦法。
それは驚異的な性能であった。量産型に与えられて良いスペックではない。けれど、現実として『武甲・数重』は一瞬で距離を詰め『ヴリトラ』に迫る。
周囲を取囲む無数の機体。
「此処で叩かせて頂く!」
「ええい、追いかけるとぴょいぴょい飛ばれて鬱陶しいのですわ! キャバぴょいキャバぴょい!」
キミの愛機が!
違う。そういう話ではないのである。メサイアは迫る量産型サイキックキャバリアの一撃をラージシールドで受け止める。
敵に先制を許すことは戦闘においては如何に此方に不利に傾くかなど言うまでもない。
けれど、敵は追えば必ず虚空潜航でもって距離を取る。
ならばこそ、後の先――即ち、カウンターを狙うのだ。
「確かに強力なおスペックですこと! ですが! お踏み込みが足りねぇんですのよ!」
それは、反撃の刃(カウンターエッジ)。
虚空より飛び出す量産型サイキックキャバリアたちに対して、一瞬で翻る閃光の如き斬撃があった。
それはラージシールドに備えられたギロチンシザー。
その一撃は一瞬で量産型サイキックキャバリアたちに四肢を切り裂き、戦闘能力を奪う。
「速い……見えなかったぞ!?」
「おほほのほ! わたくしが怖いでしょう? だるまさんになったおキャバリアではても足も出ないでしょう! お尻尾をお巻になっておかえりくださいまし~!」
ギロチンシザーが四肢を失った量産型サイキックキャバリアの頭部に突き立てられる。
「さもないとその頭がお身体と永遠にお別れしてしまいますのよ?」
黒き暴竜の顎の如きクロスシザーが、その言葉を最後に見せたのは『武甲・数重』の頭部を断ち切り、宙に舞わせる光景であった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
焔天武后を駆って出陣です。
侵略も虐殺も見過ごす訳にはいきません。
一方的な略奪を是とするその思想をこそ打ち砕きましょう!
残像を生み出しつつ低空を飛行し、空中機動・空中戦で軌道を自在に変える事で、相手に攻撃タイミングを掴ませない。
攻撃してきたら第六感で予測し、見切り・心眼で躱すか、オーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで防ぐ。
《自然回帰》を使用。
敵機を行動不能にして、再起動する迄の間にレーザー射撃・スナイパー・貫通攻撃で敵キャバリアを不殺かつ戦闘不能状態に追い込む。
『此処』に供与できるよう破壊は最小限度に。
「今回は命までは取りません。国に戻り、他者と共存して生きていく道を模索しなさい。」と警告しますよ。
雪原たる戦場に燃え立つような色が降り立つ。
それは、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)の駆るスーパーロボット『焔天武后』の装甲の真紅であった。
「敵は手強いぞ! 武装を惜しむな! これより私たちは死地に入る! 刺し違えてでも!」
量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』のパイロットたちは己のキャバリアが手にした長巻を使い潰すつもりで虚空へと飛ぶ。
それは彼らの駆るキャバリアが量産型とは言え、サイキックキャバリアであることを示していた。スペックを考えれば明らかに雑兵とは思えぬ高いものであった。
けれど、詩乃はコクピットに座し口を開く。
「侵略も虐殺も見過ごすわけにはいきません。一方的な略奪を是とするその思想をこそ打ち砕きましょう!」
迫る虚空よるの跳躍。
その『武甲・数重』の放つ長巻の一撃は、リーチの長さも相まって強襲攻撃を必殺の一撃へと変貌せしめるだろう。
詩乃は理解していた。
虚空より飛び出す彼らは、雑兵ではない。
おそらく、小国家『シーヴァスリー』においては貴重な戦力なのだろう。
彼らの本気がうかがえる。
例え、斥候でこの先にある集落が戦闘能力を有していないのだとしても、根こそぎ奪うつもりなのだと。
「悪しき力は悪しき心を呼び起こすものです。例え、それが誰かのためであっても!」
『焔天武后』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
煌めくアイセンサーの残光を残すように雪原に走るは真紅。
残像生み出すほどの速度で飛翔し、地表を舐めるように詩乃の『焔天武后』は虚空より現れる『武甲・数重』の斬撃の一撃を躱す。
「強襲の一撃を躱す!?」
「手練だ、一気呵成に……!」
「いいえ、その必要はありません」
詩乃の瞳がコクピットでユーベルコードに輝いている。
彼女の全身から発露するのは、神気。
人ならざる神性としての力。彼女のユーベルコードは、あらゆる装甲、障壁を突破する若草色の神気となって迫る量産型サイキックキャバリアにふれる。
それはあらゆる機械のシステムを停止させる力。
即ち、キャバリアの操縦システムを止め、またエネルギーインゴットからの出力を落とす力。
「自然の営みによらずして生み出されし全ての悪しき存在よ、アシカビヒメの名において動きを止め、本来あるがままの状態に帰りなさい――自然回帰(シゼンカイキ)こそが、あなたたちの融和の道であると知りなさい」
詩乃のユーベルコードによって彼女を襲わんとしていた量産型サイキックキャバリアたちはその場にかく座するようにして動きを止める。
即座に詩乃は次々と彼らの機体の頭部を打抜き、再起動できないように無力化していく。
「今回は生命までは取りません」
詩乃は動きを止めたキャバリアから転がり落ちるようにして脱出した『シーヴァスリー』のパイロットたちを真紅の装甲のスーパーロボットより見下ろし告げる。
「国に戻り、他者と共存して生きていく道を模索しなさい」
それは警告だった。
他者から奪うこと。クロムキャバリアにおいては常識だろう。
なにせプラントは作り出すことはできない。遺失した技術であるがゆえに。
そして、限られた資源を巡る争いというのは、如何なる世界においても起こりうる事柄であった。
だからこそ、詩乃は願うのだ。
奪い合うように手を伸ばすのではなく、誰かに手を差し伸べられるように思えること。
それが人にはできると信じているからこそ、彼女は彼らを生かし、この戦いの結果が新たなる礎になることを祈るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
シーヴァスリーもなかなかしぶといね。
プラントの争奪戦はクロムではいつものことかもだけど、
オブリビオンマシンが関わってる案件だし、
なにより、一般の人に被害をだすのは許さないよ!
ナイアルテさん、『メリサ』さんから聞いた話と予知、
『集落』に流すからちょっと協力してもらえるかな。
わたしは【ネルトリンゲン】で出撃して【E.C.O.M.S】を発動。
まずは『集落』の上空にホロディスプレイで、さっきの話を再生。
このままだと予知のようになる、と警告するね。
そしてその証拠として、ユニットからの映像を写してみせるよ。
『集落』の人にしっかりとそれを見てもらって、
ここは絶対守るから、と宣言して、攻撃を開始するよ。
小国家『シーヴァスリー』――それは嘗ての小国家『グリプ5』を巡る戦いにおいてオブリビオンマシンの策動によって思想を歪められた小国家の名であった。
彼らはオブリビオンマシンに乗らずとも、作動したオブリビオンマシンの思想に染め上げられていた。
いくつかの小国家を滅ぼした彼らにとって、奪うことは当然のことだったのだ。
騒乱ばかりの世界にあって、分け与えることは即ち弱体化を示す。
ならば、奪い、奪い尽くして、己達以外の敵を全て滅ぼすしかない。
それは、ある意味で正しいことであっただろう。
「『シーヴァスリー』もなかなかしぶといね」
嘗ての戦いを知る菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は舌を巻く。
戦闘空母『ネルトリンゲン』の艦橋で戦場の様子を俯瞰する。
このクロムキャバリアにおいて空は蓋をされている。暴走衛生によって、飛翔体はすべて狙撃されるからだ。
だから、『ネルトリンゲン』は飛行船と同じ速度と高度しか保てない。
迫る『シーヴァスリー』の量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』と戦うには心もとない。
けれど、理緒は自分にできることがあると知っている。
自分を知る者は、己のできることとできないことを正しく理解している。
「プラント争奪戦はクロムキャバリアではいつものことかもだけれど」
理緒は艦橋でホログラムディスプレイのキーボードを叩く。
グリモア猟兵から告げられた言葉と、彼女が保護した少年の言葉を映像として再現するのだ。
「何をするつもりだ!」
「させるな、敵の好きにさせては……!」
「E.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)、『希』ちゃん、お願いね!」
理緒の言葉と共に『ネルトリンゲン』からユニットが飛び出し、迫る『武甲・数重』の接近を牽制する。
僅かな時間稼ぎしかできないだろう。
けれど、理緒にとってはそれで十分だった。
『ネルトリンゲン』から照射されるのはホロディスプレイ。それは集落である『此処』に照らし出されていた。
ここからでもわかる。
集落の人々が空に浮かぶホロディスプレイを見上げているのが。
「あいつらの言っていたこと、嘘だったんです! あいつらが『本隊』ってやつを連れてくることも、俺達の集落にある『古代プラント』を奪おうっていうことも!」
『メリサ』と呼ばれた亜麻色の髪の少年の言葉と姿が戦場に響き渡る。
「な……ッ!」
その光景に動揺したのは『シーヴァスリー』のパイロットたちだった。
己たちの動向はすでに漏れているのだという事実。
それはあまりにも計算違いであった。本来ならば戦闘能力のない集落の人々の制圧は容易いものであったはずだ。
なのに、現実には猟兵たちが駆けつけ、己たちを駆逐しようとしている。
「このままだと、全部何もかも奪われちゃう、よー。ほら、証拠もあるんだよー」
理緒は『ネルトリンゲン』に迫る量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』の姿を戦闘ユニットを介してホロディスプレイに示す。
「けどね、ここは絶対に守るから!」
この戦いが終わっても、一つの戦いが終わっただけにすぎない。
だからこそ、次なる戦いに備えなければならない。
自分たち猟兵たちだけが戦えばいいというものではない。自分たちの手で戦うことを人は選ばなければならない。
穏やかな空気は何事にも代えがたい。
この戦乱の世界であればこそ、争いとは無縁の生活を送ってきた集落の人々は忌避感を示すだろう。
でも、だから。
「戦わないといけないんだよ。平和は尊いものだけれど、それだけでは立ち行かなくなるから」
理緒は『ネルトリンゲン』の艦橋に座し、その光景を詳らかにディスプレイに灯し、集落の人々に訴えかけるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
シーヴァスリー、
偽りの虚神の徒か!
ディスポーザブル01操縦
【レーザー射撃】ホーミングレーザーで潜航を誘発。
教義の為なら死ねるのだろう!?
弱者を作って安寧を享受したかったのだろう!
今更何故悪ぶる!?ええ!!|壊れろ!!!《答えろ!!!》
人工魔眼の【第六感】で出現を感じ取り、
数重へブラストナックルで【マヒ攻撃】
【継戦能力】多段強襲攻撃を01の重装甲で【武器受け】
【カウンター】パルスアトラクター【範囲攻撃】
『破壊態勢』を以って|破壊《警告》する
自分達のしてきた事が間違いだと気付いたならまず改めろ!!
改善しろ!そんな心持ちで侵略するな!!
それすらできないなら殺してやる!!壊し尽くしてやる!!!
「『シーヴァスリー』、偽り虚神の徒か!」
その叫びと共に雪原を走るのは、『ディスポーザブル01』の巨躯。
放たれる熱線は、戦場にある量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』へと走る。
しかし、その熱線の一撃を彼らは虚空へと潜航することで躱す。
明らかに量産型には似つかわしいスペックであると言えるだろう。それほどまでに『シーヴァスリー』の小国家としての力は凄まじいものであった。
確かに彼らは、猟兵――朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)たちとの戦いに敗北した。
けれど、彼らはまだ終わっていなかったのだ。
領土を拡大し、オブリビオンマシンの策動によってオブリビオンマシンにも乗らずに思想を歪められた者たち。
彼らが求めるのは領土であり、クロムキャバリアに生きる者たちが求めてやまぬプラントであった。
「邪魔立てをしてくれる!」
「一気に叩くぞ!」
虚空より出現し強襲する『武甲・数重』たち。
手にした長巻の一閃が『ディスポーザブル01』の装甲を切り裂く。だが、切断には至らない。
強固なる装甲が長巻の一撃を押し留めているのだ。
モノアイセンサーが煌めく。
いや、睨めつける。
「嘗てお前たちは言ったな。教義のためなら死ねるのだと。弱者を作って安寧を享受したかったのだろう! 今更何故悪ぶる!? ええ!!」
小枝子は叫んだ。
心の奥底から叫んだ。彼らは言っていたのだ。弱者を作り出すことによって、それを踏み台にした豊かさを己たちが手にしたいのだと。
臆面もなく。
恥ずかしげもなっく言ったのだ。
ならば、それを穿けば良い。己たちと道が交錯するのは必定であったし、また当然のことだった。
ここはクロムキャバリアだ。
騒乱ばかりが渦巻く世界。その中で、彼らが襲わんとしていた集落は稀有な場所だったのだ。争いとは無縁の未開地。されど、そこには得難き平穏があった。
「それを壊そうとしたな! お前たちは!! |壊れろ!!!《答えろ!!!》」
小枝子の咆哮と共に放たれるブラストナックルの一撃が『武甲・数重』の頭部を打抜き、ひしゃげさせる。
砕ける破片のさなかに『ディスポーザブル』のモノアイセンサーが煌めきを残す。
「壊せ、壊れろ! 壊し尽くせ!! パルスアトラクター!!」
破壊態勢(ブレイクロウ)に至った『ディスポーザブル』を止められはしない。吹きすさぶ指向性電磁音波。
胸部装甲が展開し、キューブ状のそれが光を放つ。
その衝撃波に『武甲・数重』たちは如何に強襲攻撃を仕掛けるのだとしても、一歩も『ディスポーザブル』に近づくことができなかった。
「この、化け物が……!」
「やつを止めろ……!!」
量産型サイキックキャバリアを駆る『シーヴァスリー』のパイロットたちの言葉が小枝子の耳を打つ。
「自分たちのしてきたことが間違いあと気づいたのならまず改めろ!!」
「そのつもりなどない! この戦乱の中のどこに正義がある! 正しさなど、この世にはありはしない。それを決めるのは勝者のみだ!!」
その叫びに小枝子の人口魔眼が燃えるように光を放つ。
何も省みない。
何も思わない。
有るのは歪んだ心持ちだけだった。
それが侵略を産む。悲劇を生み出す。破壊しかできぬ己でも理解できることを彼らは理解できていないことを小枝子は理解して咆哮する。
「自分にできることさえ、それすらできないなら殺してやる!! 壊し尽くしてやる!!!」
どうしたって人と人とはわかりあえない部分がある。
だが、しかし。
そのわかりえぬことをこそ己は破壊するのだと小枝子は『ディスポーザブル』の鋼鉄の拳を叩きつけ、宣言するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
(アマテラスで通信を傍受して『情報収集』中)
「…『-どれだけ悪道に堕ちようとも…』『プラントがなければ…』か…。」
結局…戦争に正義も正道もないのよ…
行くよレスヴァント。
今は…集落を護ることに集中する!!
アマテラスの『索敵』で敵機を補足。
その情報を『瞬間思考力』で判断して、自慢の『操縦』テクニックで回避しつつ、敵集団の中央へ突入する。
さて、囲まれたわね。つまり…ボクの、レスヴァントの間合いに居るってことだよ。
プラズマ・スフィア発動。
EMP干渉を『範囲攻撃』して敵を纏めて行動不能にする。
その後回復する前に機体を破壊する。パイロットは死にたくなければ脱出しろ!!(コックピットを外しつつ)
小国家『シーヴァスリー』のパイロットたちの言葉はどれもが独りよがりなものであったことだろう。少なくともそう聞こえる。
これまで弱者を作り出すことによって己たちの礎としてきたのだ。
そして、自分たちの立場が変われば、声を高々と弱者としての権利を主張する。
そのさまはあまりにも浅ましいと言わざるを得なかったかもしれない。
「結局……戦争に正義も正道もないのよ……」
量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』を駆るパイロットたちの言葉を傍受していたユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は息を吐き出す。
己の心情を吐露したものであったし、また同時に真理であったかもしれない。
人は争う。
争い続ける。
平和などやはり幻想だったのかもしれない。
けれど、それでもと思う心もあるのだ。争いばかりの世界にあっても芽吹くものがあると知っているからこそユーリーは白いキャバリア『レスヴァント』と共に雪原を駆け抜ける。
「今は……集落を護ることに集中する!! ユーリー・ザルティア、レスヴァント、出る!」
アマテラスからの情報ですでに敵の位置はわかっている。
だが、虚空を潜航するサイキックキャバリアである『武甲・数重』は雑兵とは思えないスペックを持つキャバリアだ。
位置情報は役に立たない。
けれど、ユーリーは一瞬の思考で虚空を飛ぶ『武甲・数重』たちの情報を処理する。
コンソールスティックを握りしめる。
「単騎で攻め入るか!」
「手練といえようとも! 囲えば!」
長巻を構えた『武甲・数重』たちが一斉に虚空より飛び出す。
四方を囲む一斉攻撃。
しかし、ユーリーは一瞬で判断する。確かに虚空潜航は凄まじい力だ。けれど、扱うのが人であるというのならば、一糸乱れぬ攻撃というのはありえない。
必ず遅れがある。
遅れれば、それは歪に変わる。
「そこを突くのが『エース』ってものでしょう!」
囲まれたとしてもユーリーは落ち着いていた。
囲まれるということは即ち、己の機体の間合に入るということ。
「プラズマ・スフィア――起動!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
頭脳から放たれる強電磁波。それはすべての電気エネルギーを完全に破断させるユーベルコードであった。
『武甲・数重』たちのジェネレーターと機体を繋ぐパスを破断させる。
それにより、機体が勢いを失って動きを止めた。
「機体が、動かない……!」
「EMPか! 干渉されている……!」
「パイロットは死にたくなければ脱出しろ!!」
ユーリーが叫ぶ。
瞬間、彼らの機体は大きく揺れたことだろう。強電磁波によってかく座した機体の戦闘能力をアサルトライフルで奪ったのだ。
傾ぐ機体。
仰向けになった機体のコクピットから『シーヴァスリー』のパイロットたちが這い出していく。
そのさまをユーリーは『レスヴァント』のコクピットの中から見下ろす。
追撃は必要ない。
こんなことで死ぬ必要なんてないのだ。
本当の戦いとは、こういうことを言うのではない。如何にクロムキャバリアの争いがキャバリアによって引き起こされるのだとしても。
オブリビオンマシンが争いの火種を撒き散らすのだとしても。
人の本当の戦いは。生きるということは、戦火に飲み込まれることで潰えることを意味しないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
えー…しぶと…
シーヴァスリーしぶと…
いやなんか、逆に凄いなここまで来ると…
多分1回懲らしめたら3倍になって帰ってくる系だよ
●
《RE》Incarnationを抜刀
そしてEX:I.S.T[BK0001]に騎乗
道は良くないけど『悪路走破』で駆け抜ける
【Code:B.T】起動
敵のキャバリアの足元をすり抜けながら、脚部に斬撃を喰らわせていこう
そして同時に雷を流して、脚部の操作系を『ハッキング』
バランスを崩させて『斬撃波』でダメ押しして転ばせる!
後はコックピットをこじ開けて…パイロットを確保していこう
普通のキャバリアだしあんまり派手に壊してもあれだしね…
勿体ない勿体ない
此処じゃ無ければ良い値が付いたのに!
小国家『シーヴァスリー』はオブリビオンマシンの策動によって、オブリビオンマシンに乗らずとも思想を歪められた者たちの小国家である。
彼らは猟兵たちに敗れた。
幾度も戦乱に暗躍して、いくつもの小国家を滅ぼしてきた。
けれど、己たちが滅びに直面した時、翻すのは言葉であった。
「えー……しぶと……『シーヴァスリー』しぶと……」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は雪原に立ち、量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』の姿を見た。
あれだけの大攻勢を退けられ、首魁たる者も存在しなくなったというはずなのに『シーヴァスリー』は瓦解することなく、こうしてまた他に侵略を行おうとしている。
「いやなんか、逆に凄いなここまで来ると……多分一回懲らしめたら三倍になって帰ってくる系だよ」
呆れ果てる。
そういう言葉がしっくり来ると玲は思ったことだろう。
抜き払った模造神器の蒼い刀身が煌めく。彼女が跨る特殊バイクのエンジンが唸りを上げ、雪原を疾駆する。
「……ッ! 動態反応!? キャバリアではない、だと……!?」
「な、生身でキャバリアに突っ込んでくる!?」
このクロムキャバリアの世界にあってキャバリアとは戦いの主役だ。
キャバリアとは即ち争いの象徴。
キャバリアがなければ人は抗おうとさえ思わないだろう。けれど、玲は違う。彼女は生身単身でキャバリアに肉薄しているのだ。
その光景を見た『武甲・数重』のパイロットたちは動揺しただろう。
雪原を物ともせずに疾駆する玲は笑う。
「こんなことで一々驚いていたんならさ!」
身が持たないよ、と玲は二振りの模造神器をキャバリアとすれ違いざまに脚部の接合を狙っって切り裂く。
同時に雷が流れ込む。
フレーム内部に通った配線を伝うようにして走る電流は、それだけで玲とのパスをつなげる。
「機体の制御が、オートバランサーが切れた……!?」
それは玲によるハッキング。
操作系統にアクセスし、オートバランサーを切ってしまえば、この雪原という足場の悪さをオートバランサーに頼っていた機体は容易くバランスを崩して倒れ込むだろう。
「バランサー、機体の性能に任せているからそういうことになるんだよ」
バランスの崩れた機体にダメ押しのように玲は模造神器を振るい、斬撃波でもって転倒させる。
仰向けになった機体の上に玲は飛び乗り、コクピットを模造神器で切り裂きパイロットを引きずり出す。
「ひっ……!」
恐怖に染まっている。パイロットたちの反応は一様にそうであった。
キャバリアに生身単身で立ち向かってくる者など聞いたことがない。立ち向かおうという考えすら浮かばなかったはずだ。
だからこそ、玲の姿は完全に超常のそれでしかなかった。
故に染まる恐怖に玲はため息一ついて、彼らを雪原に放り出す。
「勿体ない勿体ない」
あんまり派手に壊すのは憚られた。
だって、これをうまいことあれしてこうして、そうすればしっかりとマネーが懐に入ってくるからだ。
けれど、『此処』では殆ど無意味だろう。
なぜなら『此処』は未開地。
玲が求めるものがお金であるというのならば、きっと期待外れだろう。
けれど、と思う。
「『古代プラント』か……それはちょっと興味あるかもね!」
玲は撃破した量産型サイキックキャバリアのかく座した上に立ち、未開地の集落を見やるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
ス、ステラさん!
あまり大声とか出すと、雪崩れ起きちゃいますから!
ステラさんの叫びで『集落』全滅とかやめてくださいね!?
よし、これでいちばんの危険因子は取り除かれました。
ステラさんの愛に比べれば、キャバリアなんて子猫みたいなものですよね!
とはいえ、この世界とは相性良くないんですよね。
って、またですかー!?
紐なしバンジー、もうしないって言ったじゃないですか!
お約束とか様式美とかいいですから!
って、なにルクスちゃん?
雪崩は良案? ピアノの出番?
うう、わかりましたよぅ。
あきらめてフォルさんにぶら下げられ、
高いところから落とされますね。
あっ、ちょっと気持ちよく……なるわけありませーん!!
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
|エイル様《主人様》の! 香りがします!!!
ってなんですかルクス様?
えーもっとさけびたいんですけどぉー
まぁ仕方ありません
エイル様……じゃないですね
メリサ様に迷惑をかけるのは本意ではありませんので
しかしここでも亜麻色の髪の男……
今さらですが、エイル様って何者なんでしょうね?
いえ、私は何があってもエイル様の|メイド《犬》なのですが
では
フォル!いらっしゃい!(鳥型キャバリアを呼び寄せる)
さてルクス様?
|あーゆーれでぃ?《覚悟はいいですか?》
【ファム・ファタール】いきますよ!
そろそろフォルも慣れてきたのか
命令しなくてもぽいってできるように
後はルクス様を調教……じゃない
慣れさせるだけですね
雪原に響き渡るは愛。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがします!!!」
愛かな?
愛なのかな?とステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の叫びに、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は毎度のことながら首を傾げていた。
いや、というか、この状況でそれはちょっと危ういような気がする。
なにせ、転移してきて即座に戦場なのである。
ステラの叫びは、愛の叫びであるが、それが返って敵の注目を集めてしまうのであれば、それは自重してほしかったというのがルクスの本音であった。
「す、ステラさん! あまり大声とか出すと、雪崩起きちゃいますから! ステラさんの叫びで集落全滅とかやめてくださいね!?」
「えーもっと叫びたいんですけどぉー」
「わがまま言わないでくださいね!?」
いや、叫びたいのか? とルクスは思った。何か目的があって叫んでいたわけではなく、単純に主人への愛を叫びたかっただけだとステラは事もなげに言ってのけたのだ。
我が身が危うくなるとか、そんなことまるで関係ないのである。
「まぁ仕方ありません。『エイル』様……じゃないですね」
いや、とも思う。
あの亜麻色の髪。黒い瞳。グリモア猟兵と共に在る少年は、どこか『主人様』に似通っているように思えただろう。
成長したのならば、あんな感じになっていることが幻視できてしまう。
「……」
だが、とも思う。
同じように見えて違う、と思えてしまう。今更、と思うけれど、『エイル』は一体何者なのだろうか。
そんな懸念をステラは『フォルティス・フォルトゥーナ』のコクピットで頭を振って払う。
問題はそこではないのだ。
「そう、私が何があっても『エイル』様の|メイド《犬》なのですから!」
「今、犬って言いましたよね……」
しかし、これで直面の危険因子は排除できたとルクスは額の汗を拭う。
ステラの愛に比べれば、キャバリアなんて子猫みたいなもんであるとルクスは認識していた。
それはあまりにもあんまりな気がしたが、ステラのやることである。これくらいの警戒度合いがちょうどいいのである。
「とは言え、この世界とは相性良くないんですよね……」
ルクスは共にあるキャバリアの複座コクピットのシートで考える。
敵の数は多い。
どうして戦うべきかと頭を悩ませるのだ。
だが、ステラはにっこりと笑顔で言うのだ。
「さて、ルクス様? |あーゆーれでぃ?《覚悟はできていますか?》」
「なんで今ルビ付きで言いました!? っていか、ルビ付きってなんですか!? いえ、それよりまさか!」
「ええ」
にこり。
微笑むメイドの顔は、そこだけ切り取れば本当に美少女だった。文句なしに美少女メイドだった。だからこそ、ルクスは叫ぶ。
「またですかー!? 紐なしバンジー、もうしないって言ったじゃないですか! 言ったじゃないですか!!」
「ふふ、ルクス様もお約束ということをよく理解されていらっしゃるようですね。わかっております。フリ、というやつですよね。ええ、わかっておりますとも」
「ちーっともわかってないじゃないですか!?」
お約束も様式美もどうでもいいのである!
紐なしバンジーこと突撃勇者ルクスちゃんはもう懲り懲りなのである。
しかし、そこにぽこんって現れるのは光の勇者ルクスちゃんである。
「え、なになにルクスちゃん? 雪崩は良案? ピアノの出番?」
「そのとおりです。ルクスさまをフォルに吊るして、演奏していただく。これで敵キャバリアを雪崩に巻き込ませて一網打尽にするのです」
ぺいっ、とルクスの覚悟のほどを聞く前に『フォルティス・フォルトゥーナ』はルクスをコクピットから吐き出すように紐ありバンジーにて放り出すのだ。
「って、あああー!?」
冷たい風がルクスの頬をビンタするみたいに叩く。
冷たい寒いが勝って怖いを通り越していく。
「さすがはフォル。そろそろなれてきたのですね。後はルクス様を調教……じゃない、なれさせるだけですね」
ステラの言葉に嘶くように鳥型キャバリアが低空を飛び、ルクスを吊るしたまま量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』へと突撃していく。
飛翔によるソニックブームは迫る『武甲・数重』たちを吹き飛ばす。
その光景は爽快感極まりないものであったことだろう。
それに荒ぶ風の中弾くピアノというのも案外悪くないのではないかとルクスは思ってしまうのだ。
ちょっと気持ちよくなってきたような気がする。
けれど、それは気の所為だ。
「本当ですよ!? こんなの慣れるわけないじゃないですかー!!」
「いいですから、演奏つづてくださいルクス様。敵が雪崩に巻き込まれるまでたくさん演奏していいですよ」
ステラは耳栓しながらこともなげに言う。
荒ぶ風とルクスの悲鳴、そして奏でられる不協和音が雪原に巻き起こり、『シーヴァスリー』のパイロットたちは皆一様に困惑されながら、盛大に撃退されるのであった。
「もうバンジーから離れてくださーい!!」
そんな叫びが聞こえたとか聞こえなかったとか……――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
(溜息)……プロトミレスで出るわ
コルヴィルクスの出力を上げ、足を止めず常に移動、残像を残しつつ機動戦を狙うわ
ステララディウスで弾幕を張り、隙を伺ってルーナグラディウス(斬撃)での一撃で機体の首、もしくは腕を狙っていく
こっちに気を取られたところでUCで機体自身と兵装を機能停止させ戦闘続行不可にするわ
そうやってプラントを奪い侵略の為のキャバリア生産に全てつぎ込んだ結果どうなったか…忘れたなどとは言わせない
騙された?その甘言に乗って思考を止めてたのは自分達よね?
今度は誰が上に立ったか知らないけれど、進歩もせず自分達だけが安寧を得るために同じ事を繰り返すつもりなら
私も、ドラグレクスも、容赦はしないわ
吐き出す息は白い。
それはため息というものであったけれど、それを小国家『シーヴァスリー』の量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』を駆るパイロットたちは知る由もなかっただろう。
「……『プロトミレス』、出るわ」
それはアルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)の吐き出した息であった。
争いは続く。
人と人とが存在する以上、逃れ得ぬ現実であるかのように争いは世界に満ちている。
平穏があるのだとしても、それでも人は争うことをやめない。
どれだけの血が流れ果てたのだとしても、それでも顧みることをしないのかもしれない。
そんな風にアルカは思えたのかもしれない。
「そうやってプラントを奪い、侵略の為のキャバリア生産に全てつぎ込んだ結果がどうなたか……忘れたなどとは言わせない」
アルカは『プロトミレス』で雪原を駆け抜ける。
手にしたキャバリアライフルから放たれた弾幕が飛び、『武甲・数重』たちは一斉に虚空へと潜航し、距離を詰めるのと同時に手にした長巻でもって『プロトミレス』へと襲いかかる。
だが、アルカの駆る『プロトミレス』は即座に反応する。
「旧式ごときが!」
「そう。そう見えるのね、あなた達には」
如何に『武甲・数重』が雑兵に有り余るスペックを持っているのだとしても、アルカには関係なかった。
即座に機体を振り返らせることなく跳ね上げた腕部が手にした実体剣の一閃が『武甲・数重』の腕部を切り裂く。
「……ッ!? 振り返りもせずに、反応した!?」
「コイツも手練れか……! 奴等我等を謀ったか!」
「……騙されたと云うのね、あなた達は。己の都合の良いように考えることしかできない。いえ、それは考えるとは言わないわね。流されているだけ。空気に流されて、熱に浮かされて、湯だった頭でものを考えることなんてできないと、そんな言い訳ばかりを探すことにかまけているから……」
アルカの駆る『プロトミレス』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
その輝きを標とするように虚空より転移出現するのは、機竜『ドラグレクス』。
顎がもたげるようにして開かれ、咆哮が戦場に轟く。
XXX-07D ドラゴニックロアー(ドラゴニックロアー)――機竜の咆哮は、あらゆる機械の機能を狂わせる。
衝撃波を伴うがゆえに『武甲・数重』は、その機体を転倒させられ、その場にかく座するしかなかった。
機能停止した機体をパイロットたちは捨てざるを得なかっただろう。
「……くっ、またこれか……! 機能停止……奴等はEMPに長けているのか……!? ひっ……!!」
そんな彼らを睥睨するように影が落ちる。
『プロトミレス』と機竜『ドラグレクス』だった。
アルカは、そんな彼らを見下ろす。
「甘言に乗って思考を止めてたのは自分たちよね? 今度は誰が上に立ったか知らないけれど、進歩もせず自分たちだけが安寧を得るために同じことを繰り返すつもりなら」
その言葉は雪原の雪よりも凍えるような重圧を持っていた。
アルカは知っている。
国が滅びるということを。
人の性を。如何にして国家が滅びるのか、その経緯も何もかも知っている。一度見てきたからだ。
そして、それは他の小国家も例外ではないことを知った。
故に彼女は告げる。
凍えるよな冷たさを帯びた声で。
「私も、ドラグレクスも、容赦はしないわ」
人は変わらねばならない。
変わる為に争いが起こることは、構わないのだと思う。けれど、安寧という名の停滞を望むための争いならば、それを是とするわけにはいかないのだ。
それはきっと退化ですらない、滅亡への幕開けであるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『新型キャバリアを開発せよ!』
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POW : 既存の性能をとことん高めた特化型キャバリアを作成
SPD : あれもこれも詰め込んだ超多機能キャバリアを開発
WIZ : 誰も考えなかったような新機軸キャバリアを発明
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
小国家『シーヴァスリー』の部隊を退けた猟兵たちは雪原に残された機体の残骸や、鹵獲した量産型サイキックキャバリアをもって、亜麻色の髪の少年『メリサ』の案内の元、集落に招かれる。
すでに猟兵によって『シーヴァスリー』がこの未開地の集落である『此処』に攻め入ろうとしていた事実は知れ渡っている。
集落にたどり着いた猟兵たちを出迎えたのは亜麻色の髪の少年『たち』であった。
皆、一様に同じ顔をしている。
『メリサ』と名乗った少年と全てが同じ顔をしている。
「すまなかったな、『メリサ』。君の言葉を僕……俺たちは信じることができなかった」
「みな同じだというのに。なのに、どうしてか君の言うことを信じたくないと思ってしまっていたんだ。みんな同じだから、みんな同じように考えると思っていたから」
「いいんだよ『メリサ』。僕、あ、俺だって……」
同じ顔で、同じ声で、彼らは互いの非を認め合う。
それは奇妙な光景であったことだろう。
けれど、それ以上に猟兵たちの目を引くものがあった。
集落の中心にある、奇妙な超機械。
あれが『古代プラント』と呼ばれるなのだろうか。これまで見てきたクロムキャバリアのプラントとは異なるようであったし、また事実『メリサ』たちが告げる所によると、あれは武器を生み出すよりも食料や種子ばかりを生産するものなのだという。
ともあれ、猟兵たちは備えなければならないと理解する。
今回のことのように、この地を狙うものがいるかもしれない。
そのためには自衛のための力……即ち、キャバリアが必要となるだろう。
幸いにしてキャバリアのパーツや本体と言ったものは多く先の戦闘で残されている。
これらを活用することもできるだろう。
「助けてくださってありがとうございます。差し上げられるものであれば、なんでも差し上げます。僕、俺たちが答えられることなら、いくらでも答えます」
だから、と『メリサ』たちは同じ顔と同じ声で言う。
助けてほしいと。
猟兵たちはその言葉に応えるだろう。
そして、自らの胸にうちの湧き上がった疑問。
それを彼らに質問することができる機会と猶予が与えられたのだと、自覚する――。
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『これは、不思議なこともあるというべきか…』
鹵獲したキャバリアを【武器改造】スキルと【戦闘知識】を用い、カスタム。遠距離砲撃タイプにキャバリアを仕上げるぜ。
未開地の集落。
そこに在った住人たちの顔は全て同じだった。
亜麻色の髪に黒い瞳。
年の頃は全てが少年の頃合いだろうか。彼らの中のたった一人が周囲と意見を異にして集落を飛び出し、グリモア猟兵に助けを求めたのだ。
それはあまりにも奇異であったことだろう。
彼らがどうして此処にいるのかも、いかにしてこれまで生きてきたのかも。
「これは、不思議なこともあるというべきか……」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は思わず、そうつぶやいていた。
招かれた集落は、少年たちばかりだった。
誰もが同じ顔をしていて、同じ声を発する。不思議、と片付けるのは簡単であったが、あまりにも作為的なものを感じずに入られなかっただろう。
「だがまあ、やることはやらねぇとな」
「何を……?」
『メリサ』と呼ばれている彼らが首を傾げている。
ガイたち猟兵が運び込んだ『シーヴァスリー』の量産型サイキックキャバリア。
その残骸や鹵獲された機体を彼らが扱えるようにしなければならないとガイは思ったのだ。
仮に自分たちがオブリビオンマシンを退けたとしても、他の小国家が再びこの集落を狙わないという保証はない。
その都度自分たちが助けに来ることができるのかと問われれば、それは否である。
自分たち猟兵はあくまでオブリビオンマシンのもたらす事件を解決するためにやってくるのだ。
オブリビオンマシンが介在しない戦いに己たちが介入することはない。
ならばこそ、ガイはこの残された量産型サイキックキャバリアを仕上げてしまわねばならないと必要性を感じていたのだ。
「こういうのをお前らは扱ったことは……」
『メリサ』たちは一様に首を横に振る。
どうやらこの集落は本当にクロムキャバリアの世界でありながら、争いとは無縁であったようだ。
彼らは『古代プラント』から生み出される食物や種子などで生命を繋いでいたのだろう。
「そうか、教えてやるからこっちに来てみろよ」
「でも、これって……あの鋼鉄の巨人と同じもの、ですよね?」
「ああ、確かにそうだ。けど、使い方次第では、いろんな事ができるようになるはずだぜ。ならさ、知っていて損はないんじゃないか?」
ガイは量産型サイキックキャバリアを改造していく。
それは自分の戦闘知識と武器に関する知識を用いたものであったし、また戦うにしても危険性が高まる近接戦闘を主にするよりも、降りかかる火の粉を振り払う砲撃タイプにしたほうがいいと思えたのだ。
だからこそ、ガイは機体を砲撃仕様に換装していく。
「引き金はこっち。照準はこれ。センターに合わせて、引く」
『メリサ』たちのキャバリア操縦の習熟具合は凄まじいものであった。ガイの教えた事を即座に吸収して、苦もなく再現していくのだ。
これがもともと彼らの素養であったのか、それとも後天的なものであるのかはわからない。
けれど、ガイは少し胸をなでおろす。
これならば、と思うのだ。
自分たちがいなくても、恐らく降りかかる火の粉は払うことができるだろう。
最低限のこと、その備えができたからこそガイは安心するのだ。
多くの謎を孕んだ集落。
ガイは謎を解き明かすことよりも、彼らの未来を案じるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
レプリカントの集落…?
いや
アンサーヒューマン試作モデルのクラスター……
人造兵士計画の残滓と言ったところでしょうか。
◆開発
斥候は近接兵装のみを携行した残党軍だった様子
とはいえ素人に銃床を構えさせるのも酷というものか…?
大楯を構え、銃眼の様に設けたガンラックからリーチの長い槍を突き出させるファランクス兵装を提案
『one for all, all for one』ですよ
僕は後詰めとして防衛に回りましょうか
古代プラント…
色々と。興味深くもあります。
※2章のみの参加です
◆調査
オブリビオンマシン『哪吒』と、攻撃衛星『|九竜神火罩《きゅうりゅうしんかとう》』について、何か記録は残されていないのでしょうか?
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は『此処』と呼ばれる未開地の集落を訪れて、目の前に広がる光景に疑問を抱く。
小国家『シーヴァスリー』による侵攻を受けた集落にあるのは、皆同じ顔をと声をした少年たちだった。
全てが同一。
名も『メリサ』と名乗っている。
皆同じ名前と同じ姿。
その異様な光景に違和感を覚える。
プラントから稀に生まれるというレプリカント。
それならば説明がつくかもしれない。だが、しかしと思う。
「レプリカントもまた人間と同様に生命維持を必要とする種族。成長もすれば生殖も行うもの……だとすれば、残されたのはアンサーヒューマン試作モデルのクラスター……」
打ち捨てられた計画の残滓とでも言えば良いのかもしれない。
「けれど、それにしては……」
暮らしがあまりにも文明から程遠い。
『此処』に存在している『古代プラント』を『シーヴァスリー』は求めた。
その理由がただの版図を広げたいということだけであったのならば、あまりにも軽率であった。
「とは言え、彼らの扱うキャバリアを用意しないことには」
『シーヴァスリー』の扱っていたキャバリアは近接兵装のみを有していた残党戦力。
あれだけ猟兵に叩きのめされたのだ、そう多くの戦力を有しているとも言えない。けれどグリモア猟兵の予知は再度の敵の襲来を示している。
「彼ら自身で防衛できるようにしなければならないのは当然のことながら……とはいえ、素人に銃床を構えさせるのも酷というものか……?}
蔵乃祐は少し考える。
彼らは戦いの素人だ。他よりもほんの少し物覚えがいい、という程度でしかないだろう。
ならばと彼は一騎のキャバリアを回収していく。
構える獲物は大盾。
そして銃眼のように設けたガンラックから伸びるリーチの長い槍を突き出させるファランクス兵装。
これならば攻防一体である。
「これはどう扱うものです?」
「集団で戦うための装備といえば良いでしょうか。『one for all, all for one』ですよ」
「わんふぉーおーる、おーるふぉーわん。不思議な言葉ですね。初めて聞きました」
『メリサ』と名乗る一人の少年が蔵乃祐の言葉にうなずいている。
キャバリアの操縦を教わっているのだが、恐ろしく飲み込みが早い。
物覚えが人より良いと言っても限度があるように思える。
一通り教えてしまえば、もうキャバリアを自分の手足のように扱ってしまっている。
これならば、と蔵乃祐は空いた時間に彼らに尋ねる。
「僕は後詰めとしての防衛にまわりますが……」
『古代プラント』も気になる。
しかし、それ以上に気になることもある。他世界を知る猟兵であるからこそ、知り得る事実もある。
それは封神武侠界にて遭遇したオブリビオンマシンのことだ。
「『』と攻撃衛生『|九竜神火罩《きゅうりゅうしんかとう》』について何か聞いたことはありませんか。そのような記録が残されていないでしょうか?」
彼の言葉に少年『メリサ』は答える。
知っているのか、知っていないのか。告げる言葉は如何なるか――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
自衛の為…というのは理解できるけど…こーやって戦火は広がっていくのね。
ホント…しょーもない世界。
開発や発明は無理だからね。
専門家を呼ぶべきね。
「あ、カンチャン?悪いんだけど壁ノ工房出張サービスお願いできない?うん…急ぎね。」
壁ノ工房のみんなには先の戦闘で破壊したキャバリアを『メンテナンス』してレストア。&『武器改造』で初心者向けの調整を頼もうかしらね。
ただ、本当に武器を彼らに渡していいもののかしら…
さて、ボクはあの『古代プラント』について『情報収集』しようかね。
あいつら…なんで謀略してまで手に入れたかったのやら…
古代…ね。集落の住民から話聞いたり、プラントに直接『ハッキング』も試みるか…。
小国家『シーヴァスリー』のキャバリア部隊を撃破し、ひとまずの戦いは終わりを告げた。
機体の残骸を集め、また鹵獲した量産型サイキックキャバリアを集落に運び込みながらユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は暗澹たる思いであった。
「ホント……しょーもない世界」
争いとは無縁だった未開地の集落。
『此処』は本当に争いから隔絶された場所だったのだろう。
けれど、もう無関係ではいられない。争いから離れていても、こうして戦火というものは広がっていく。
そして、今から自分たちがしようとしていることも戦火を広げる一端を担う行為であるとユーリーは悟る。
例え、自衛の為とはいえ、扱うのは兵器だ。
兵器という力を手にした者が、ただ己を護るためだけに力を振るうとは限らない。
攻め入る者たちを殺せば、その後ろにある者たちは撃った者たちを憎むだろう。憎しみは連鎖となって必ず牙を剥く。
あとは堂々巡りでしかないのだ。
「……けど」
ユーリーは思う。
だからと言って無抵抗に奪わればいいだなんて、口が裂けても言えない。
「あ、カンチャン? 悪いんだけど壁ノ工房出張サービス(ヘキノコウボウシュッチョウサービス)お願いできない? うん……急ぎでね」
『レスヴァント』から呼び出した整備クルーとメンテナンス用トレーラーが雪原を抜けて集落にやってくる。
彼らはユーリーの言葉を受けて即座にかく座した量産型サイキックキャバリアや、残骸、鹵獲した機体などの状況を見やる。
「これを?」
「うん、メンテナンスとレストア……あとは初心者向けの調整を頼もうかしらね」
「ああ、任せておいてくれ」
ユーリーの依頼に答えるようにメカニックたちはせわしなく働き始める。
けれど、ユーリーは一抹の不安を覚えていた。
「……本当に武器を彼らに渡していいものかしら……」
同じ姿をした少年たち。
『メリサ』と名乗った彼らは一体何者なのだろうか。そして、そんな彼らを謀略してまで手に入れたいと『シーヴァスリー』は思ったのか。
「ねえ、あのプラント……『古代プラント』と言うみたいだけど、どういうものなの?」
「あれは食べ物や種子なんかを生み出してくれるんです。彼らも言っていましたが、『此処』とは違う場所にあるプラントは、あの鋼鉄の巨人を生み出したりするそうですね。僕……俺達のプラントは、そういうのを生み出したことはないんです」
『メリサ』の言葉にユーリーは首を傾げる。
確かにプラントは小国家の国力の要だ。
インフラを整備するためにも使えるし、何より力の象徴であるキャバリアを生み出すことができるのだ。
一つでも多くのプラントを……と願うのは当然かも知れない。
けれど、本当に彼らは『古代プラント』のことを知らなかったのだろうか。『シーヴァスリー』はただ本当にプラント欲しさという一点においてのみ、『此処』に攻め入ったのだろうか。
あの超機械の如き『古代プラント』を眺めながらユーリーはハッキングを試みることはできないかと取っ掛かりを探るように『メリサ』たちに尋ねる。
「これにどこか接続できそうなところはない?」
その問いかけに『メリサ』は答える。
その言葉はユーリーの求める答えであっただろうか。その言葉は如何なるか――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
ここがメリサ様のおハウスですわね
ってメリサ様が大勢いらっしゃいますわ!
お名前まで同じなんですの?
紛らわしいですわね!誰がどのメリサ様かわっかんねぇですのよ〜!
わたくしも兄弟姉妹が大勢いらっしゃいますけれどここまでではありませんのよ…
メリサ様のお父様とお母様はすんげぇ方なのですわねぇ…
なんですヴリちゃん?
こちらの数重を動かせるようにしておけと?
お任せあれ!こういうのはこうするのですわ!
壊れた頭と機械は叩けば直る!
お母様直伝の修理術ですわ〜!
この集落のおプラントは随分おレトロなのですわねぇ
これは古代のおプラント?
つまり古代に作られたおプラントとそうでないおプラントがあると?
教えてくださいまし〜!
「ここが『メリサ』様のおハウスですわね」
メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は雪原での戦いを終えて、猟兵たちに助けを求めてきた少年『メリサ』のいた集落である未開地『此処』へと招かれる。
しかし、彼女が見たのは、集落に住まう『メリサ』と全て同一の顔をした少年たちの姿であった。
「って、『メリサ』様が大勢いらっしゃいますわ!」
「はじめまして。僕……俺たちを助けてくれてありがとうございます。みんな、同じ気持ちです」
そう言って一斉に頭をメサイアに下げるものだから、妙な迫力がある。
「お名前まで同じなんですの? 紛らわしいですわね! 誰がどの『メリサ』様かわっかんねぇですのよ~!」
「そうですか? 名前ってそんなに重要ですか? 俺たちは、そうは思わないです。みんな同じだし、みんな一つになっているから、寂しくもなければ怖くもないですよ。一人じゃないって良いことじゃないですか?」
その言葉にメサイアは違和感を覚えるかもしれない。
確かにメサイアだって強大は大勢いる。
けれど、ここまでではない。
それに全て同じだから良いと彼らは言った。それは人のあり方としては、どこか……歪な気がしたのだ。
そう思うのは、大勢の中にあって誰一人として同じ者がいないという社会性をメサイアが持っているからかもしれない。
「『メリサ』様のお父様とお母様はすんげぇ方なのですわねぇ……なんですヴリちゃん?」
そんな風に感心しているメサイアに『ヴリトラ』が語りかける。
「そうですわ。こちらの量産型サイキックキャバリアを動かせるよにしておきませんとね!」
本来の目的を思い出してメサイアは掌を打つ。
再び『シーヴァスリー』の襲来があるかもしれない。それ以前に他の侵略があるかもしれない。
その時、オブリビオンマシンが介在していなければ猟兵が駆けつけることはない。
ならば、自衛の戦力を、と思うのは自然なことだった。
「でも、この鋼鉄の巨人は壊れているのでは?」
「お任せあれ! こういうのはこうするのですわ!」
メサイアは撃破された量産型サイキックキャバリアを運んできて叩く。
それはまりにも乱暴なやり方だったし、本当に治るのだろうかと思うやり方だった。メサイアが彼女の母親から時宜デンされた機械の修理術ということであったが、あまりにも無理くりがすぎるような気がする。
「こういうのは叩けば直るのですわ!」
「は、はぁ……そうなのかなぁ……」
「ところで、この集落のおプラントは随分おレトロなのですわねぇ」
メサイアは『此処』に存在しているプラントを見やる。
『古代プラント』と呼ばれる超機械めいた造形のプラント。
メサイアにとっては初めて見るタイプであったかもしれない。
「これはお古代のおプラント? つまり古代に作られたおプラントとそうでないおプラントがあるということでしょうか?」
何か知っていらっしゃる? とメサイアは『此処』の住人である『メリサ』ならば、それを知っているのではないかと尋ねる。
その言葉に住人である少年が答える言葉は如何なるか――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
古代プラントもすっごい気になるけど、
今は集落とそこに居る人たちを守るのが最優先だよね。
といっても、集落の人たちにも頑張ってもらわないとなんだけど!
まずは戦力の拡充から、だよね。
【Greasemonkey】を発動して人手を確保したら、
鹵獲したキャバリアをネルトリンゲンのハンガーで修理&整備。
OSは操縦初心者の人でもある程度戦えるように調整しておこう。
あとは集落のみんなが、わたしたちがいなくなってもなんとかなるように、
整備や修理の仕方、OSの調整の仕方とかも教えておかないとかな。
『希』ちゃーん。キャバリア直してる間にマニュアルの作成お願いできるかな?
初心者編から上級者編まで、段階を踏んだのを作ってもらえると嬉しいな。
それを教科書ってことにして、実践はわたしが担当しよう!
どのくらいまでできるか解らないけど、できる限りしっかり教え込むよ。
そこが一段落したら、古代プラントをちょっと調べさせてもらおうかな。
これまでと違うプラント、っていうのが気になるよね。
新しいものの調査はいつでもわくわくだよ!
『此処』と呼ばれる未開地の集落に存在している『古代プラント』。
それはキャバリアを生産するのではなく、食物や種子といったものしか生み出さない平和的なプラントであった言えるだろう。
それは『此処』に住まう『メリサ』と名乗る全て同じ姿をした少年たちの語るところであった。
超機械の如き様相を見せるプラントに菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は後ろ髪引かれる思いであったけれど、今はやらねばならないことがある。
「今は集落と其処に居る人達を護るのが最優先だよね」
けれど、と彼女は付け加える。
「はい、僕……俺達もやらないといけないことがあるんですよね」
理緒の言葉に『メリサ』少年たちは頷く。
「うん、そうだよー。わたしたちがいなくなってもなんとかなるようにしないといけないからね。応急処置だけではどうしようもなくなることってあるから……」
そう、如何にキャバリアという侵攻に備える力を用意できたとしても、メンテナンスもなしにずっと稼働し続けることができるわけはないのだ。
機械は常にメンテナンスによって生きながらえるものである。
「一応鹵獲した量産型サイキックキャバリアのOSは書き換えておこうかな……」
だが、理緒は驚く。
すでに猟兵たちの何人かが『メリサ』にキャバリア操縦についてレクチャーを行っているが、飲み込みが異常に速い。
すぐさまにキャバリアを手足のように動かして見せているのだ。
「……なら、『希』ちゃーん。キャバリアを直している間にマニュアルの作成お願いできるかな?」
初心者用のはいらないかもしれない。
けれど、基礎を固めるという意味では用意していてもかまわないだろう。『メリサ』たちのキャバリア操縦における習熟速度ははっきり言って異常だった。
まるで、すでにそれだけの素養が、下地ができているかのようにさえ思えてしまう。
「あの、此処はどうすれば……」
「あ、そこはねー」
理緒は彼らの吸収速度に舌を巻きつつ、キャバリアのメンテナンスの仕方を伝えていく。マニュアルを用意しているが、この分ならばすぐさまマニュアルを卒業してしまうかもしれないと思えてしまう。
空母『ネルトリンゲン』の格納庫を使った量産型サイキックキャバリアのメンテナンスと修理は順調に進んでいく。
「こっちの変数も注意していてね。ジェネレーターは出力するものだけど」
「暴走の可能性もある、ってことですよね」
「そうそう。だから余計に繊細に数値を見ていないとね。こっちのケースも見ておいてね」
「わかりました!」
そんな風に教えこんでいく最中に理緒は思い出す。
『古代プラント』だ。
あれが此処にあるということ。それが不自然であるとは言わないけれど、『古代プラント』と呼ばれていることが気にかかるのだろう。
「ねえ、あのプラントをちょっと調べさせて貰うことってできるかな?」
「それは構わないですけど……気になるんです?」
「うん、君たちにとってはタダの『プラント』かもしれないけれど、わたしたちにとっては、これまでとは違う『プラント』だからね」
新たな発見を前に理緒の心は踊るようであった。
いつだって新しいものの調査というのはワクワクするものだ。
得られる情報あるだろうか。
理緒は『古代プラント』と呼ばれる、超機械を前に何か新たな事実が得られないかと好奇心に駆られるように調べ続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
うーんこの古代プラント…他の普通のプラントとは違うんだよね
それこそバンブーク第二帝国にあった、|殲術再生弾《キリングリヴァイヴァー》を放ったアレと同系統?
分からんから、色々する前に色々調べとこ
と言うかこの世界、今はバリバリの機械技術全盛なのに古代には魔法帝国なんてあるんだよね
ん-、どういう技術ツリーが…
魔法を使える人とか、使えた人が過去居たとかないかな
魔法帝国の資料とかその辺りの文献残ってないか聞いておこ
さて調べ物が終わったらジャンク弄り!
まずは無事そうな機体を普通に仕上げて…後はジャンクパーツでカスタム!
足と手を一杯持ってきて多脚多腕キャバリア作ろう!
目指せ千手キャバリア
使いづらい?
知らない
「うーん、この『古代プラント』……他の普通のプラントとは違うんだよね」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は『此処』と呼ばれる未開地の集落に存在する超機械の如き『古代プラント』を前に首を傾げる。
クロムキャバリア世界に存在するプラントは遺失技術によって生み出されたものだ。
修理もできなければ、新たに作り出すこともできない。
だからこそ小国家は、プラントを奪い合う。
小国家『シーヴァスリー』が、この集落に手を伸ばしたのも、それが原因なのだ。
けれど、『此処』の『古代プラント』は食物や種子といったものしか生産しない。これまで武装の類を生産したことがないのだ。
それは『此処』を見ればわかる。
『シーヴァスリー』の侵攻を受けなければ、彼らが武器を手に取ることもなかったのだ。それほどまでに争いから隔絶されていたのだ。
「それこそ『バンブーク第二帝国』にあった|『殲術再生弾《キリングリヴァイヴァー》』を放ったアレと同系統?」
超機械のごとき様相。
これと同じなのかわからない。いや、若rな会いからこそ、色々する前に色々調べなければならないと玲は動き出す。
「というか、この世界、今はバリバリの機械技術全盛なのに古代には魔法帝国なんてあるんだよね……」
鋼鉄の巨人たる5m級戦術兵器、キャバリア。
それがこの世界における戦いの象徴だ。
如何なる小国家もキャバリアを用いた闘争に明け暮れている。
過去に魔法帝国が存在していた、という言葉は『バンブーク第二帝国』の者達からも示唆されている。
彼らは『サスナー第一帝国』の末裔だと名乗っていた。
ならば、それが古代魔法帝国であるというのだろうか? だが、それは『グリプ5』の前進である『憂国学徒兵』……100年前の戦争時に『ハイランダー・ナイン』によって滅ぼされたと言われている。
「んー、どういう技術ツリーが……」
わからない。
「魔法を使える人とか、使えた人が過去に居たとかないかな。ねえ、なんか文献とかって『此処』に残ってないの?」
その言葉に集落に住まう少年たち『メリサ』は答えるだろう。
それが如何なる答えであったか、そして玲の求める答えであったか……全ての道は地道に調べることから始まるのだ。
外れを引いても、当たりを引いても玲は知を求めることをやめないだろう。
「さって、と調べ物が終わったらジャンクいじり!」
玲のメカニックとしての血が騒ぐのだろう。
比較的無事な機体は無難に仕上げていく。量産型サイキックキャバリアとはいえ、『武甲・数重』は非常に優れた機体であると言える。
鹵獲した機体を『メリサ』たちが扱えるようにするのは、簡単だった。
メンテナンスさえ怠らなければ、長く戦えることだろう。
「問題はこっちだよね」
損傷箇所の激し機体を玲は見上げる。
「ふむ……」
玲は一つうなずいて量産型サイキックキャバリアの残骸を集めたジャンクボックスから多くの手足を持ち込む。
「それ、どうするんです?」
「簡単だよ。多脚多腕キャバリアを作るんだよ! 目指せ千手キャバリア!」
『メリサ』たちは、そんな玲の提案に首を横にふる。
どう考えても自分たちでは扱えないようなきがするのだ。というか、できる気がしない。
「む、無理ですよ……出来ても使えないです。きっと使いづらいですよ」
そんな彼らの言葉に玲は頭を振る。
違うのだ。
実用性とかなんとか知るところではない。
「知らない。作りたいから作るんだよ――!」
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
ディスポーザブル01のクローアームで、
当りの残骸キャバリアをかき集めるであります。
この量産機、虚空を潜航して近付くなど奇襲性能は評価します
しかし、守るに不適。壁となり、仲間を守る盾を用意する!
【解体】『壊物変成』壊し、纏めて、|一つに。《合体》
01の様に重装甲で、大きく敵を威圧する。
そんな大型鎧武者キャバリアを用意いたします。
これならば、そうそう舐められる事はないでありましょう。
複数人で協力して搭乗なされよ。一人で戦ってはいけませんよ!
古代プラント…古代魔法帝国時代に縁があるのでしょうか?
……貴殿らはどうやって生れ、増えておられるのです?
Holy Grail…あの空の向こうを知っておりますか?
鋼鉄の巨人――キャバリア『ディスポーザブル01』のクローアームが比較的無事な損傷具合の量産型サイキックキャバリアを掴み上げ、さらに戦場から次々と残骸を『此処』と呼ばれる未開地の集落へと運び込み続けていた。
「この量産機、虚空を潜航して近づくなど奇襲性能は評価できるであります」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』の性能をそう評した。
確かにサイキックキャバリアとしての性能は、ワンオフ機に比べれば劣るものがある。
けれど、サイキックキャバリアが虚空より現れることを転用して奇襲戦法を用いるという発想は見事なものだった。
個としてではなく、集団としての戦法としては優れている。
けれど、と小枝子は思うのだ。
「守るには不適」
そう、『此処』と呼ばれる集落に住まう人々……『メリサ』たちは攻め入るためにキャバリアを駆るのではない。
守る為。
自衛のためにキャバリアを駆るのだ。
ならばこそ壁となり、仲間を守るための盾を用意しなければならない。
「ふむ。ならば、壊物変成(カイブツヘンセイ)!!」
『ディスポーザブル01』のクローアームがいくつかの損傷の激しい量産型サイキックキャバリアを叩き壊す。
けれど、モノアイセンサーが煌めき、クローアームで破壊したキャバリアを変形させていく。
それは壊し、まとめ、|一つに《合体》するものであった。
「これでよし! であります!」
小枝子が用意したのは『武甲・数重』を大きくしたような重装甲キャバリアであった。言ってしまえば、大型鎧武者型である。
「でかい……でも、こんな大きな鋼鉄の巨人を一人で動かせるのか……?」
そんな不安を覚える『メリサ』に小枝子は告げる。
「複数人で協力して搭乗なされよ。一人で戦ってはいけませんよ!」
小枝子の言葉に『メリサ』たちは頷く。
もとより、全て彼らは同じ姿をしている。姿だけではなく名前も同じなのだ。傍から見たら見分けがつかない。
「わかってます。みんないっしょですから」
彼らは同じ仕草、同じタイミングでうなずいていた。
そんな彼らを見やり、小枝子は疑問に思ったことを告げる。
この集落に存在するプラントは『古代プラント』であると言われている。通常のプラントとは異なることは理解できる。
超機械のような造形を見やれば、クロムキャバリアの一般的なプラントとは違うのだろうと思えるのだ。
「古代プラント……古代魔法帝国時代に縁があるのでしょうか?」
更に小枝子は己の中に膨れ上がる疑問を言葉に紡いでいく。
彼ら……『メリサ』はどのようにして生まれ、増えていくのだろうか。皆同じ姿。レプリカントならば、プラントから稀に生まれることもあるのだという。
けれど、彼らが生命維持をすることは人間と同様だ。
食事も生殖も同じ。
ならば、全て同じ顔であるということに理解が及ばない。
「僕……俺達はずっと此処にいましたから」
「Holy Grail…あの空の向こうを知っておりますか?」
その言葉に少年たちは答える。
小枝子が求めるものに答える彼らの言葉は如何なるものであっただろうか――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
【POW】ね
『フローリア』を呼び出し、キャバリアの改造をするわね
センサー類の機能を拡張し、同時に虚空潜行機能を限定的に設定、何らかの投射や射撃機能と複合させ、「遠距離から敵を察知し銃弾や投射物を虚空潜行させ狙撃する」方向ね
キャバリアというよりは固定砲台になるけど、
少数で専守防衛に専念せざるを得ない以上、そもそも戦闘に持ち込ませない方がいい
……機界新生はしないわ。制御に不安があるし、機械細胞が余計な火種になる可能性もある
…その、一ついい?あなた達の集落やあのプラントがいつから此処にあるのか、誰か知ってる?
(「彼ら自身も含めた集落自体が全てプラントから生じた」なんて考えすぎとは思うけれど)
メイドを模した機械人形がせっせと工具を運び込み、かく座した量産型サイキックキャバリアの修理に勤しんでいる。
いや、それは修理と言うより改造というものに近かっただろう。
本来ならば、とアルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は思う。
機械細胞を用いた機界新生であれば即座に量産型サイキックキャバリアを改造することもできたし、建造することもできただろう。
けれど、彼女には機械細胞が余計な火種になることを恐れていた。
嘗て『グリプ5』を巡る戦いにおいてもそうであったように。
「制御に不安があるしね……さあ、『フローリア』、仕事を進めて」
アルカは機械人形たちに命じる。
小国家『シーヴァスリー』の量産型サイキックキャバリアの性能は量産型とは言え、そこらの量産型を凌ぐ性能を持っている。
虚空に潜航し強襲するというコンセプトは非常に強力であると言えただろう。
「なら、センサーの機能を拡張させよう。それに虚空潜航機能を限定設定して……」
確かに強力だ。
けれど、扱い方を間違えば、それは守るためではなく傷つけるための力になる。
ならばこそ、虚空潜航能力を機体ではなく射撃機能に付随させる。
遠距離からの敵を察知して銃弾や当社物を虚空潜航させて狙撃する、といった方向に限定させる。
「これじゃ動けないってことですか? 機動性を捨てて」
『此処』と呼ばれる未開地集落の住人『メリサ』たちがアルカの成す改修に興味深そうに覗き込んでいる。
「ええ、少数で専守防衛に専念せざるを得ないのがあなた達の状況。そもそも戦闘に持ち込ませない方がいい」
アルカの言葉に『メリサ』たちは頷く。
彼らだって好んで戦いたいと思っているわけではないのだろう。
ならばこそ、彼らに必要なのは傷つけるための力ではなくて、守るための力だ。
自分たちの居場所を。
けれど、それは時として表裏一体だ。
守るための力は簡単に攻め込むための力になる。振るう力の在り方をこそ変えなければならないのだとアルカは理解している。
「攻め込むためではなく、誰かの生命を守るために。あなたたちはみんな一緒がいいといった。なら、これはやはり動くのではなく、寄せ付けない力として扱うべき」
「……それは、多分そうなのだと思います。僕……俺達はまだわからないことが多すぎるから。だから、あなたたちから多くを学びたいと思っています」
その言葉にアルカは頷く。
彼らが何を成すのか、何をしたいのか。
それを見定めて力を与えることをしなければ、この戦乱渦巻くクロムキャバリアにまた堂々巡りの因果が生まれることにしかならない。
「……その一ついい? あなた達の集落やあのプラントがいつから此処にあるのか、誰か知ってる?」
その言葉に『メリサ』たちは頷く。
「僕……俺たちが居つから『此処』にいたのかは、ずっと昔からとしか。どれだけの年月を、と問われると難しいのですけど。でも、ずっといっしょでした。みんないっしょでした。そういう意味なら、あの『古代プラント』と呼ばれる超機械は」
その言葉はアルカにとって如何なる意味を持つだろうか。
少年たちの告げる言葉は如何なるか――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
さむい……こわい……(ハイライト家出中)
ななな、なんですか!?
(押し倒され、動けないけど正気には戻って)
ステラさんなにごとですか!?エイルさんはあっちですよ!
サービス?
たまにはわたしにもそのくらいのサービスくださいよぅ。
え?時間って、90分1コマとかになってたんです!?
それにしてもこの状態は、ステラさんが|限界突破《見せられない的》なことに……なってないです!?
そういうものなんですか?
蜂の巣とかそういう感じだと、女王蜂がいるのでしょうか?
あ、そうだステラさん。
女王蜂は解りませんが、エイルさんならほらここに!
と【亜麻色のウィッグ】を被って、それっぽいポーズをとってみますね。
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
(拗ねて座り込んでたルクス様を床ドン押し倒し態勢)
えっ?何してるかって
ルクス様の冷えた体を温めつつ
天の声へのサービスですが?
百合的展開もありませんし
時間になったら戻るのでご堪能いただければ
さてメリサ様がいっぱい、と
何で?
いえ大丈夫ですルクス様
やはりメリサ様とエイル様は違うのです
ですから、『私の』エイル様ご存じないですか?
しかし|蜂《メリサ》ですか……さながら蜂の巣ですね
彼らにエイル因子があるとすれば
むしろピーキーな機体の方がいいかもしれません
キャバリア適性が異常ですからね
ということでルクス様の変装はステラ的エイル因子が足りないので50点
もう少しエイル様感を出して
ガチギレしますよ?
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はめちゃくちゃすねていた。
言うまでもないけれど、幾度かに渡るバンジーのせいであった。
雪原の風はとっても冷たかった。
ほっぺたが切り裂かれるのではと思うほどの冷たさだった。
それ以上に怖かったのである。
「さむい……こわい……」
どれだけ勇者だと言っても中身は女の子なのだ。もうちょっと優しくしてくれないとハイライトが家出したまま帰ってこなくなってしまいそうだ。
そんなルクスの様子にステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は特に何か言うでもなく押し倒した。
所謂床ドンである。
なんでもドンってつければいいってもんではないのであるが、しかしルクスはちょこっと正気に戻った。
いきなりのことであるし、またステラのあったかさもあってハイライトをおかえりってしなければならなかった。
「なななな、なんですか!?」
うっ、顔が良い。
そう思うほどにはステラは美少女メイドであった。黙っていれば、という条件がつくけど。
「いえ、ルクス様の冷えた身体を温めつつ、サービスですが?」
なんの!?
誰への!?
とルクスは思っただろう。けど、なんていうかいい匂いするし、温かいしで、まあいっかぁと思いかけたがぶんぶんとルクスは頭を振る。
「サービスっていうのなら、たまにはわたしにもそのくらいのサービスくださいよぅ」
「いえ、時間になったら戻るのでご堪能いただければ」
「時間制!? 90分1コマとかになってたんです!?」
なんか意味ありげな数字であるが、具体的なことは言わないでおこう。何が何してとは言わないのである。
というか、とルクスは『此処』と呼ばれる未開地集落に住まう少年たちを指差す。
亜麻色の髪と黒い瞳。
どこか見覚えがある気がする彼らの姿にルクスは話をそらそうとする。
「『エイル』さんはあっちですよ!」
ステラがこういうことをするのは、いつだって『主人様』と呼んで慕って追いかけている少年に、だ。
だからこそ、ルクスはそう言ったのだが、言った後でしまったとも思った。
主人を敬愛するあまりステラはちょっとアレな感じになってしまうことで一部界隈で有名なのである。たぶん。だから、主人と同じ姿かたちをしている『メリサ』にもう|限界突破《見せられない的》なことになってしまうはずだったのだ。
だが!
「……なってないです!?」
スン、としている。
え、と思った。それはメイド的には正しい反応なのだろうかと。
「いえ大丈夫ですルクス様。やはり『メリサ』様と『エイル』様は違うのです」
スン、としている。
大事なことなので二回書いた。
「そういうものなんですか?」
「ですから、『私の』『エイル』様ご存知ないですか?」
今さりげに『私の』って強調した? したよね?
「『エイル』、ですか?」
『メリサ』と呼ばれた少年の一人が首を傾げる。
周囲の『メリサ』にも訪ねてみるが、皆一様に首を傾げている。みんなおなじ。みんないっしょ。姿も、声も、すべていっしょなのだ。
彼らの反応を見れば、ステラが求めて止まぬ『主人様』とはやはり違うのだろうとルクスも思う。
「しかし|蜂《メリサ》ですか……さながら『此処』は蜂の巣ですね」
ステラは集落の様子を見やる。
その名が体を現すというのならば、そうなのかもしれない。
「蜂の巣とかそういう感じだと、女王蜂がいるのでしょうか?」
「見たところ、皆全て一様におなじ『メリサ』様、ということなのでしょうが……」
ステラは色々考えているようだが、考えがまとまらない。
そもそも彼らが『エイル』とおなじであるというのならば、『エイル因子』を持っているはずだ。
その因子はキャバリア操縦において凄まじい適正を持っている事を示す。
ならば、汎用的な性能よりもピーキーな性能のほうが、彼らの特性を引き出すには持ってこないなのかもしれない。
だがしかし、此処に持ち込んだ量産型サイキックキャバリアのことを考えれば……ステラが難しい顔をしていると、そこに亜麻色の髪のウィッグを付けたルクスが顔を覗き込む。
「ほら、『エイル』さんがここに!」
なんちゃって、とルクスが笑顔でウィッグを被ってステラを励ますように目の前に現れる。
難しい顔はステラには似合わないとばかりに元気づけようとしているのかもしれない。
これまで何度も『エイル』絡みで空振りをしまくっていたステラ。
彼女を思っての行動であった。
けれど、ステラは厳しかった。こと『主人様』のことに関しては辛口も辛口であった。
「ルクス様の変装はステラ的エイル因子が足りてないので50点」
「えぇ~そんなぁ~」
「もう少し『エイル』様感を出して」
「こんな感じじゃなかったでしたっけ?」
ピク、とステラのこめかみがひくつく。それをルクスは見逃すべきではなかったのである。
ウィッグを付けた程度で? とそこからステラの『主人様』講釈が延々と続く。
そう、正座で――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大町・詩乃
みんなメリサさんと同じ外見?
…💡
私、知っています!所謂お●松くんなのですね。
お母さんは子育て大変ですね~💦
と状況理解?した詩乃はメリサさん達に明るく挨拶します。
キャバリアはできるだけ壊さないようにしたので、修理して使える筈ですが、私が修理できないので💦すみませんが他の猟兵さんにお願いして下さいね。
ここのプラントは食料や種子を生産するとの事ですが、農業は盛んなのでしょうか?
そちらなら知っている知識や神力で手助けできると思いますよ。
と協力を申し出ます。
皆さんの親御さんはどこにおられるのでしょう?
ご挨拶したいのですが(子育て大変なんだろうなあ、手伝える事は無いかなあと同情)。
と聞いてみます。
小国家『シーヴァスリー』を退けた猟兵たちが招かれた集落に見たのは全て同じ顔をした少年たちだった。
『此処』と呼ばれる未開地の集落。
『古代プラント』を中心に広がる光景に大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は驚きを隠せなかった。
「みんな『メリサ』さんと同じ外見?」
「はい、みんないっしょです」
その言葉に詩乃は額面通りに受け取った。
外見がみんないっしょ。
それに似たサブカルチャーに最近触れたのである。
ピコン、と豆電球が詩乃の頭上に点灯するようであった。
「私、知っています!」
所謂六つ子ストーリー的なあれである。
「でもみんな性格が違いましたよね。みなさんもそうなのでしょうか?」
「みんないっしょです。みんないっしょがいいんです」
そう言って笑う全ての『メリサ』。
その様子に詩乃はお母さんは子育て大変だなぁ、と思うのであった。と、そんな風に和んでいる時間も多くはない。
また敵が来るという予知を受けているのだ。
ならば、ここからは手早くしなければならない。
「キャバリアはできるだけ壊さないようにしたので、修理して使えるはずですが……」
そこは他の猟兵に頼らざるを得ない。
となると自分にできることはなんだろうかと詩乃は考える。
自分の特性――即ち神性としての力を最大限に活用するとしたのならば、それは戦う力を与えるよりも、生きるための糧になることをしたほうがいいと判断する。
「ここのプラントは食料や種子を生産するとのことですが」
「はい、あのプラントから生み出されるのはそうしたものばかりなんです。だから、他のプラントはそうじゃないって聞いて驚きました」
「では、そちらの方面でお役立てできるようにがんばりますね」
詩乃は植物と活力を司る神性として、彼らの力になろうとする。
けれど、周囲にある『メリサ』たちは全て少年ばかりだった。
詩乃が思う生命の在り方を考えるのならば、必ず両親がいるはずだった。それにこれだけの人数がいるのだ子育ては大変だろうと思ったのだ。
「皆さんの親御さんはどこにおられるのでしょう? ご挨拶したいのですが」
「オヤゴサン?」
「それはなんですか? それも僕……俺たちの知らないものですか?」
彼らに両親という概念はないようであった。
全てが一緒。
考えることもなすことも全て一緒。ならば、と詩乃は思う。この集落から飛び出し、グリモア猟兵に助けを求めた少年『メリサ』は一緒ではないということになる。
それは、つまり。
「あの、『メリサ』さんはどこにいらっしゃいますか?」
「俺達はみんないっしょですよ。みんな同じなんです。同じがいいんです。一つになるって、とても心地よいですから。だから、みんな同じがいいんです」
笑う彼らの顔は穏やかそのものであった。
けれど、どこか違和感を感じる。
あの少年がいない。
一体どこに、と詩乃が振り返った時、獣の如き咆哮が集落の外から響き渡る――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『Type-XXフルングニル』
|
POW : Regeneration
全身を【高度な自動修復機能を有する特殊強化装甲】で覆い、自身が敵から受けた【ダメージを修復し、捕食したキャバリアの数】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD : Evolution
【敵性体から受けたダメージへの高い耐性】【敵性体に有効なキャバリア用内臓兵器】【敵性体の活動限界を上回るエネルギー】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : Proliferation
自身の【口で捕食してきたキャバリア】を代償に、【敵性体の数×10体のベルグリサル】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【体内で生成した敵性体に有効な武装】で戦う。
イラスト:aQご飯
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ノヴァンタ・マルゲリータ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鋼鉄の獣が目の前にある。
|『メリサ』《みんな》は、全て一緒がいいと言った。
自分だってそれまではそうであったらいいと思ったし、みんないっしょであることの心地よさを知っている。
一つになれば何も悩まなくて良い。
一つになれば何も恐れなくて良い。
だから、みんなおなじになりたいと思ったのだ。
もとより自分たちはみんないっしょだ。姿も、形も、なにもかも。
けれど、自分は思ってしまったのだ。
小国家『シーヴァスリー』が『此処』に攻め込んでくると分かった時、自分がみんなのためにと思ったのだ。
みんなを助けるために、みんなと違うことになってもいいと。
「だから、僕は……俺は……!」
みんなを助けることをしたい。
その欲求にも似た感情が膨れ上がっていく。
どうしようもなく、助けたいという思いが溢れてしまう。
眼の前の鋼鉄の獣が口を開くようにコクピットハッチを開く。望むのならば、乗れ、と言われているような気がした。
救いたいという願いがあるのならば、と。
「僕は、みんなとは一緒ではないのかもしれないけれど。それでも!」
彼は――グリモア猟兵に助けを求めて『此処』を出奔した『メリサ』は、雪原にて佇む鋼鉄の獣――オブリビオンマシンに乗り込む。
助けなければ。
みんなを争いから遠ざけなければ。
もう『此処』には、争いの火種が持ち込まれている。
争いとは無縁だった集落。けれど、もう何もかもが争いに巻き込まれてしまう。ならば、『此処』ではない『何処』かに征かねばならない。
「みんな、いっしょにはもういられない。だから」
鋼鉄の獣、『Type-XXフルングニル』が咆哮し、雪原を駆け抜け未開地集落へと破壊を呼び込む――。
ユーリー・ザルティア
みんな同じ…
同じ顔、同じ思考、同じすべて…
嫌なもの思い出した(故郷を思い出しつつ)
…って、あのオブビリオンマシンはッ⁉
ホントろくでもない!!
とりあえず、止めようレスヴァント―出るッ。
パイロットは殺さずにオブビリオンマシンを…難易度高ッ。
自動修復する機体…一気に大ダメージを与えようにもパイロットを巻き込まないようにするには…。この手かッ
『瞬間思考力』で敵の機動を『見切り』、レスヴァントを『操縦』して回避、『カウンター』に≪ショックアンカー≫を撃ち込んで電流で『マヒ攻撃』と『ハッキング』で動きを瞬間的にでも停止させ、その一瞬にアンダーフレームをアストライアの『制圧射撃』で破壊する。
鋼鉄の獣の咆哮が轟く。
それは雪原を疾駆するオブリビオンマシン『フルングニル』の咆哮であった。同時に、それを駆る『メリサ』の咆哮でもあった。
「みんなとはもういられない! みんなとおなじではいられない! 僕の、俺の、僕の中にある声が! 助けなければと言う声が!! こんなにも膨れ上がっているから!!」
彼はグリモア猟兵に助けを求めて出奔した『メリサ』の一人だった。
すべてがおなじである『メリサ』たち。
彼らは全てが同じであるからこそ、共にあることができた。
もう彼は違う。
『シーヴァスリー』が『此処』を制圧しようと目論んだことを知ったときから、もう既に彼は『メリサ』ではなくなっていたのかもしれない。
けれど、それでも助けたいと願ったのだ。
「みんなおなじ……おなじ顔、おなじ思考、おなじすべて……」
それは、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)にとっても忌まわしき過去を想起させるものであったのかもしれない。
『メリサ』と同じく運命に翻弄された者。
故郷というものがあるのならば、ユーリーは『メリサ』のオブリビオンマシンによって歪められた想いに苦々しいものを感じていたかもしれない。
雪原を疾駆し『此処』に迫るオブリビオンマシン『フルングニル』の異様を見やり、ユーリーは『それ』を振り払う。
「……あのオブリビオンマシンはッ!? ホントろくでもない!!」
歪められているとユーリーは理解する。
その思いは、本当はそんな風に振るうものではないと知っているからだ。
「止めよう」
そう、止めなければならない。
オブリビオンマシンは想いを歪めて増幅させる。争いの火種を生み出すためならば、人心を如何ようにも歪めてしまうのだ。
「『レスヴァント』――出るッ」
獣のように疾駆する『フルングニル』の装甲は損傷を自己修復する機能を持っている。また戦場に散らばった量産型サイキックキャバリアの部品や破片を喰らいながら進むがゆえに、その力はますます持って強大になっている。
「パイロットは殺さずにオブリビオンマシンを……難易度高ッ。けど、やってやれないってことなんてないんだよッ ボクは!」
ユーリーの瞳がユーベルコードに輝く。
『メリサ』のキャバリア操縦技術は初めて乗ったとは思えないほどに卓越したものだった。
キャバリアをまるで自分の手足の延長のように扱っている。
速度も、装甲の性能もあちらが上だ。
「みんなをまもるためには! 僕が!!」
迫る鉤爪の一撃を『レスヴァント』が躱す。
敵の挙動を見切る。
一挙手一投足無駄のない動き。それゆえにユーリーは見切ることができる。無駄をしない。ブラフを仕掛けない真っ直ぐな、それでいて直線的な動き。
それを彼女の瞳は捉えていた。
「これなら!」
放つは、ショックアンカー。
パイロットを殺さずに機体だけ殺す。
そのためのユーベルコード。放たれたアンカーが機体に打ち込まれ、『フルングニル』に絡まる。
藻掻くように暴れる機体を押さえつけるように電流を流し込み、その動きを停止させる。
これ以上、あの機体を集落に近づけさせられない。
近づけさせれば、同士討ちをさせてしまう。
守りたいと願いながら、傷つけてはならぬ同胞を撃ってしまう。その哀しみ、怒り、苦しみというものが争いの火種になることをオブリビオンマシンはよく理解しているのだ。
「それをさせないためには!」
動きを止めた『フルングニル』にユーリーは『レスヴァント』のキャバリアライフルを打ち込む。
アンダーフレームに打ち込まれた弾丸が、機体の脚部装甲を吹き飛ばし、その修復機能を削ぎ落とす。
「っ、まずは動きを止めるッ!」
そう、誰も傷つけさせない。
『メリサ』が他の『メリサ』とは異なった想いを持ったとしても、それが過ちなどとは言わせないためにこそ、ユーリーは『フルングニル』をこれ以上進ませないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
あら〜?お客様ですわ〜!
きっとシーヴァスリーに違いありませんわ!
わたくしとヴリちゃんが返り討ちにして差し上げますのよ〜!
正面から殴り合いますわ!
シールドガード!カウンターのシールドパンチ!ギロチンシザー!
サイドブースターで横にささっと避けてテイルスマッシャー!
吹っ飛ばしたらアンカークローで引き寄せてエグゼキューションバイトファングで喰い千切りますのよ!
ぜぇはぁ…なんだか効いてる気がしませんわ…
これではキリがありませんわ〜!
なんですヴリちゃん?
ここはシャドウプレデターの出番?
なるほど!では換装!
続けて超極悪毒電波!
パイロットも機体もそのまま!電子機器だけ死んで頂きますわ〜!
勿論無人機もですのよ!
「あら~? お客様ですわ~!」
メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は未開地集落である『此処』に迫る鋼鉄の獣の如きオブリビオンマシンの咆哮を聞き、そして他の猟兵が出撃する背中を見送る。
鋼鉄の獣――オブリビオン『フルングニル』の咆哮は、その内部にあるパイロット、グリモア猟兵に助けを求めて出奔した『メリサ』の咆哮そのものだった。
しかし、それが歪められ増幅した思いであることもまた理解できただろう。
「きっと『シーヴァスリー』に違いありませんわ! わたくしとヴリちゃんが返り討ちにして差し上げますのよ~!」
メサイアはあえてそういったのだろう。
『メリサ』。
それはこの集落に住まう者たちの名前である。
すべておなじ。姿も、声も、考え方もおなじ。
それが『メリサ』であり、またあのオブリビオンマシンに乗る『メリサ』は、そこから逸脱してしまった者でもある。
誰かを守りたい、助けたいという思いを歪められ、争いの火種に鳴るであろうキャバリアを根こそぎ排除しようとしているのだ。
だからこそ、メサイアは何も言わず、『シーヴァスリー』のキャバリアが来たと言って飛び出したのだ。
「正面から殴り合いますわ!」
『ヴリトラ』が加速し、ラージシールドでもって『フルングニル』に突撃する。
軋むフレーム。
装甲が削れ、火花を散らせながら『ヴリトラ』の突進は『フルングニル』を集落よりさらに引き離すように押し返す。
「邪魔をッ! するなッ!!」
『メリサ』の咆哮と共に『フルングニル』のアイセンサーが煌めく。
それは相対する『ヴリトラ』の推力を上回るほどの出力でもって機体を押しのけようとする。
「ヴリちゃん、ブースターで!」
振りかぶられる鋼鉄の爪を『ヴリトラ』はブースターを噴射させて横っ飛びに躱す。けれど、それで終わるわけではない。
横に躱した勢いで振り回すテイルスマッシャーの一撃が『フルングニル』の機体に激突し、吹き飛ば――せない。
大地に穿たれたアンダーフレームの爪が食い込み、衝撃を受け止めきっているのだ。
「なら、アンカークローで引き寄せて、くちぎりますのよ!」
放たれたアンカーが命中し『フルングニル』の機体を引き寄せ、その首元に『ヴリトラ』の牙が突き立てられる。
だが、その一撃がまるで手応えのないものであるとメサイアは理解しただろう。
「ぜぇはぁ……なんだか全然効いている感じがしませんわ……」
「僕の邪魔をするなら!」
膨れ上がる思い。
『メリサ』の中にある助けるという思いは、きっと歪められているのだろう。
争いから遠ざけたいと願うあまりに集落のキャバリアを排除しようと破壊をもたらすように。
歪な願いは、彼の原動力にしてオブリビオンマシンの糧。
そして、火種となるのだ。
「これではキリがありませんわ~!」
修復していく『フルングニル』の装甲。
だが、『ヴリトラ』のアイセンサーが煌めく。
瞬時に機体が『シャドウプレデター』へと換装され、電磁波が放たれる。それは『フルングニル』の電子機器だけを破壊するユーベルコード。
「機体が……なんでっ!」
「パイロットも機体もそのまま! 電子機器だけ死んでいただきますわ~!」
膨れ上がる電磁波。
それに『フルングニル』は内部から焼かれるような思いをするかのように身悶えし、『ヴリトラ』を振り切る。
けれど、そこに飛び込むのがメサイアである。
「あ、そぉれっ! そのお隙におタックルですわ~! ヴリちゃん、いまこそ影の捕食者(シャドウプレデター)たる所以を見せつける時ですわ~! エグゼキューションバイトファング!!」
メサイアの叫びに答えるように『ヴリトラ』の顎が開き、『フルングニル』のフレーム装甲を引きちぎり、切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
天舞風翔・シルフ
海鶴マスターにおまかせします。空中でダンスしながら美しく戦う、かっこいい天舞風翔・シルフをお願いします!
例え雪地でも、この|格好《ビキニアーマー》でなければいけないんですよね……極力装備重量を軽くして、僅かでも回避力を上げたいのです。
シルフの翅で飛び、スカイダンサーとして空中を舞い踊りながら戦います。
回避成功と同時に、剣の斬撃波やスライディングの蹴りで攻撃します。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
それはまるで身を切るような思いであったことだろう。
何処まで行っても人は争うものなのだと知らしめるようであった。
オブリビオンマシン『フルングニル』を駆るのは、『此処』と呼ばれた未開地集落から出奔した『メリサ』と呼ばれる一人の少年だった。
彼の心にあったのは、助けなければという思いだけだった。
みんなを。
おなじみんなを。けれど、自分はそのみんなの中から逸脱してしまっている。
それでもみんなが平穏に過ごせるのならばと思ったのだ。
その想いをオブリビオンマシンは歪める。
何故平和でいられないのか。
それは。
「キャバリアなんてものがあるからッ!!」
キャバリアさえなければ、集落は平穏のままにすごせたのだ。みんなとおなじように自分も生きられたはずなのだ。
なのに、それはもう叶わない。
「けれど、それでもみんなは! 僕が助けるッ!!」
破壊によって。
歪な形にねじれた思いは、破壊と破滅とをもたらすしかない。
「その思いは認めましょう。けれど……」
天舞風翔・シルフ(召喚獣「シルフ」の天翔舞剣士・f38288)は、己の五倍はあろうかという鋼鉄の獣――オブリビオンマシンの前に寒風荒ぶ中であっても果敢に舞うようにして飛ぶ。
彼女の翻る姿はまさに舞うが如くであった。
例え雪地であっても、軽量化された鎧……即ちビキニアーマーでいることを選んだのは、わずかでも敵の攻撃を躱す確率を上げたいからだ。
召喚獣『シルフ』の翅で飛び、シルフは己の瞳をユーベルコードにきらめかせる。
空中を蹴るようにして『フルングニル』の一撃を躱す。
「なんだ……何を……何を狙っているんだ?」
『フルングニル』を駆る『メリサ』には理解できなかっただろう。
キャバリアの敵はキャバリアだ。
生身の人など相手にはならない。けれど、オブリビオンマシンは猟兵であるシルフをこそ脅威と捉え、そのキャバリア武装である爪を振るう。
それをひらりと躱しながらシルフは見据える。
「あなたが成そうとしていることは、あなたの想いを踏みにじるもの。あなたが本当に願ったのは、誰かのためにとなるような力でしょう」
だが、とシルフは己の手にした刀身が蒼く透き通ったスカイソードを掲げる。
搭載された天使核が強く煌めいた。
それは彼女の想いを増幅させるようであった。戦いは結局のところ避けられないものだ。どうしたって諍いは絶えない。
衝突することもあるだろう。
みんなおなじ。
みんなとおなじがいい。
一つになりたいと願う気持ちもわかる。
それはとても心地よいものであるからだ。
けれど、何処まで行っても人と人とは他者でしかないのだ。自分ではない。どんなに姿形が似通っていた喉しても、理解しきれぬ他者がいて、それでもわかり合おうと手を伸ばす煌めきこそが。
「人と共に、他者と共に生きるということでしょう!」
振るわれる爪の一撃が彼女をかすめる。
衝撃波が迸り、その一撃にシルフは吹き飛ぶ。いや、違う。吹き飛んだのではない。
彼女の身体は風に舞い上がるようにして『フルングニル』の頭上を取ったのだ。
「ならば、その鋼鉄の獣は! 切り裂きます!」
放つ蒼き刀身の一閃が『フルングニル』に走り、その装甲を見事な一文字でもって切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『……馬鹿野郎が!!護りたいものをこわすつもりか!!!』
オブリビオンマシンに怒りを覚えながら、【オーラ防御】を幾重にも纏い突撃。ブレードでの【鎧砕き】と電磁機関砲での【制圧射撃】で攻撃を仕掛けるぜ!!
『歪められた想いを正すために!!』
システム『ヴァジュラ』を起動、機体を【リミッター解除】して【限界突破】、ユーベルコード【突撃機甲戦術『天嵐・改』】を叩き込んでやる!!
一文字に放たれた斬撃の一撃を受け、オブリビオンマシン『フルングニル』は咆哮を上げる。
そこに在ったのは怒りか、それとも。
「まだ動けるっていうのなら!」
オブリビオン『フルングニル』を駆る少年『メリサ』は、『此処』から出奔した者だった。小国家『シーヴァスリー』の目論見を知り、みんなを助けるためにおなじであることを捨てた者だ。
もはや彼はみんなの中には戻れないだろう。
けれど、彼の中にある助けなければと言う思いは膨れ上がっていく。
そして、それが歪められていく。
オブリビオンマシンに乗るということはそういうことだ。
「みんなを戦いから遠ざけないといけないんだ。そのためには、キャバリアなんていうものは、あってはならない! 壊さないと!」
キャバリアは、力は争いの火種である。
だからこそ排除しなければと願う。誰かを助けるという願いを叶えるために想いを歪める。それがオブリビオンマシンのやり方だ。
今までもそうであったようにオブリビオンマシンの撒く火種は、クロムキャバリアのあちこちでくすぶり続け散る。
平和を願うのだとしても。
それでも、平和になどさせぬと炎の破滅へと導くのだ。
「……馬鹿野郎が!! 護りたいものをこわすつもりか!!!」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は叫ぶ。
けれど、その叫びは届かないだろう。
どれだけ言葉を紡いでも、最早意味がない。
「壊すことでしか守れないというのなら!」
「その思いはオブリビオンマシンによって歪められているんだぞ、それをなんでわからない!」
「なんであなたが僕のことをわかると言えるんです。他人であるというのに。みんなと違うのに。僕とも違うのに。どうしてわかるって言えるんですか!」
『フルングニル』が迫る。
ガイの駆るキャバリアに肉薄する速度は圧倒的だった。これまで猟兵たちに当たられた打撃すらものともしないかのように踏み込んでくる。
これが今までキャバリアに触れてこなかった未開地の住人の技量であるかとガイは思ったことだろう。
怒りをオーラに代えて防ぐ。
オーラが砕け、装甲が爪の一撃に引き裂かれる。
明らかに『フルングニル』は己に敵対するキャバリアに有効な戦法を取ってくる。
防御にかまけていては、確実に敗北するとガイは理解しただろう。
「なら踏み込むまでよ!」
他者を完全に理解することなどできようはずもない。
胸の内など理解できるわけがない。
何処まで行っても人間は、個だ。
他者がいるから自己を理解できるように。でも、と思う。だからこそ、その内側に踏み込もうとするのだ。
理解するということは踏み込むことだ。
「歪められた想いを正すために!!」
電磁機関砲を向ける。
けれど、その砲門が爪によって切り裂かれて、宙を舞う。
なんという反応速度。制圧射撃すらさせてくれない。機体性能か、それとも搭乗者の技量の差か。
「正されるいわれなんてないですよ!」
迫る鉤爪の一撃。
だが、それをキャバリアが躱す。
リミッターを解除したキャバリア。ガイの瞳がユーベルコードに輝く。
それは、突撃機甲戦術『天嵐・改』(トツゲキキコウセンジュツ・テンランアラタメ)。
「システム・ヴァジュラ……起動!!」
機体性能の限界を超えた動き。
手にしたブレードのみが機体に残された武装だった。けれど、それでもガイは構わなかった。
戦術パターンはすでに身体に染み込んでいる。
残されたのは、この殺人的な加速度Gに己が耐えることのみ。己の身を省みぬ者にこそ放つことのできる一撃がある。
それは奇しくも『メリサ』が『此処』から出奔したこととおなじくするものだった。
誰かのために己のみを擲つこと。
その意味を問うようにガイの放つブレードの一閃が『フルングニル』へと叩き込まれる――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
あんなものを踏み込ませるわけにいかない
行くわ、融合合身…!
来なさい、貴方の“|敵《アルカレクス》”は、此処に居る……!!
力量は高いけれど……!!
進路上に陣取り、ドラグカプトで牽制の砲撃を仕掛ける
避けるか、受けるか。砲撃への反応を見て動きの癖を読み、砲撃を合わせていくわ
相手の近接攻撃を防性エナジーフィールドを張って防ぎ、
拘束フィールドをぶつけ手足を止めにかかるわ
生半可な火力では止められないし、チャンスも一瞬なのは解ってる
なら、その一瞬に|最大火力《【ゲネシス・デストラクティオー】》をぶつけるだけよ……!!
……楽園は失われ、過去にはもう帰れない
なら、この世界で前を向いて生きていくしかないじゃない
斬撃の一撃を受けたオブリビオンマシン『フルングニル』の装甲が自己修復によって覆われていく。
それこそが『フルングニル』の恐るべき性能であった。
攻撃を受ける度に敵の攻撃の性質を読み取り、それに対する耐性を身に着け修復していく。
「キャバリアなんて、なくたっていいんだ! こんな力いらない。みんなにはいらない! 争いを呼ぶだけの力なんて!!」
『此処』から出奔した『メリサ』と呼ばれた少年が叫ぶ。
彼はオブリビオンマシンに乗った。
確かに彼の中にある助けたいという思いは尊ばれるべき心根であったのだろう。
けれど、それを歪めるのがオブリビオンマシンだ。
守りたいと思ったものを傷つけようとする行い。
矛盾していながらも彼の中には集落からキャバリアという争いの火種を排除することしかない。
「あんなものを踏み込ませるわけにはいかない。行くわ、融合合身……!」
アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)の決断は速かった。
オブリビオンマシン『フルングニル』が集落に踏み込めば、他の小国家からの侵略に備えていたキャバリアを全て破壊される。
あれが破壊されれば、集落が壊滅するだけではなく、これを機に他の小国家から攻め込まれる口実になる。
そうなれば、確実に破滅に近づく。
だからこそアルカは示す。
「来なさい、貴女の“|敵《アルカレクス》”は、『此処』に居る……!!」
『プロトミレス』と融合した機竜『ドラグレクス』は、その姿を『アルカレクス・ドラグソリス』へと変貌せしめる。
その巨体に飛び込むのは『フルングニル』であった。
踏み込みの速度が尋常ではない。
本当にこれまでキャバリアに触れてこなかった未開地の住人とは到底思えない。隠された才能か、それとももとより持ち得た因子か。
いずれにせよ、アルカは歯を食いしばる。
「力量は高いけれど……!!」
「そんなもの!」
アルカの放つドラグカプトの牽制砲撃を苦もなく『フルングニル』は躱し、雪原を疾駆する。
躱した、とアルカはモニターを見つめる。
修復機能を持つが故に此方の砲撃を受けると思ったが、違った。あれはオブリビオンマシンの判断ではない。
パイロットである『メリサ』の技量であり判断だった。
「……ッ! 見てから反応しているッ!?」
アルカはそれでも砲撃を合わせて放つが、それさえも躱される。明らかに動きが違う。通常のパイロットではありえない。
「『エース』……それもッ!」
明らかにアルカに迫るほどの技量。
それを悟り、アルカは『フルングニル』の一撃をエナジーフィールドでもって受け止める。爪の一撃が引き裂くようにフィールドをきしませていく。
「手が付けられない……!」
だが、生半可な火力は返って『フルングニル』の修復機能でもって対抗策を生み出させるだけにすぎない。
ならばこそ、アルカはこの一瞬に勝負をかける。
「退いてくださいよ! 僕は! みんなのために、壊さなきゃあいけないんだから!」
フィールドが切り裂かれる。
その瞬間にアルカの瞳がユーベルコードに輝く。
「……楽園は失われ、過去にはもう帰れない」
それは自分に言い聞かせる言葉だった。
『アルカレクス・ドラグソリス』の両腕に破壊と再生の力が纏われ、渾身の一撃が叩き込まれる。
「なら、この世界で前を向いて生きて行くしかないじゃない」
何処まで行っても人は一人だ。
みんなの中にあるからこそ孤独を感じることもあるだろう。
一つになることもできない。
けれど、とアルカは瞳を見開き『フルングニル』の中にあるであろう少年『メリサ』を見つめる。
「それがあなたの道なのよ」
ゲネシス・デストラクティオーの一撃が『フルングニル』を貫き、その修復装甲を光に分解し、アルカは気を失うのだった。
その言葉が彼に届くかどうかを見届けることなく――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
…いやいやいやいや、君が乗るのかよ!?
そんなん乗るより千手キャバリア乗ってよ!
折角作ったのに…ええ…えー…
悩みがあるなら誰かに先に相談すれば良いのに…
ホウレンソウがなってない!
まあ、いいや!倒せば終わりだ!
【断章・機神召喚〈極限熱量〉】起動
召喚した右腕を『念動力』で浮遊させて動きをリンク
フルングニルに剣戟戦を挑もう
『なぎ払い』『串刺し』と連続して放ちながら、命中した部分を蒼炎で燃やす!
『斬撃波』も混ぜて、攻撃パターンを変えながらガンガン攻めていこう
一応コックピット周りは当てないように注意しながら強化装甲を剥いでいこう
こっちが剥ぐのが早いか、そっちが修復するのが早いか
さあ、勝負といこうじゃないか
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は未開地集落より出奔してグリモア猟兵に助けを求めた『メリサ』の一人がオブリビオンマシン『フルングニル』を駆って、集落にあるキャバリアの尽くを破壊しようとしている姿に驚愕する。
「……いやいやいやいや、君が乗るのかよ!?」
それは驚くべきことだった。
オブリビオンマシンは人の心を歪める。
思想を歪める。
例え、『メリサ』少年の心根にあるものが誰かを助けたいという切実なる思いであったのだとしても、歪める。
集落を争いから遠ざけるために火種となる力……即ちキャバリアを破壊することなのだとしても、それは結局のところ集落を破滅に導くだけだ。
既に此処に『古代プラント』があることは知れ渡り、周辺の小国家はプラントを奪おうとするだろう。そうすれば、必ずキャバリアを失った集落は蹂躙される。
「だから、僕は!」
『フルングニル』を駆るのだと『メリサ』は言う。
「そんなん乗るより千手キャバリアのってよ!」
折角作ったのに、と玲は違う方向で怒っていた。
光波に飲まれながらも『フルングニル』は未だ立っている。修復装甲は一度受けた攻撃を持って修復し、さらに戦闘能力を増加させる。
『メリサ』少年の秘めた才能によって、その驚異は跳ね上がっているのだ。これを無視はできない。
「知りませんよ、そんなこと!」
「折角作ったのに……ええ……えー……」
振るわれる爪の一撃が衝撃波を生み出し、生身単身の玲を吹き飛ばす。
身体が宙に舞う。
しかし、玲は見据えていた。さらに追撃するように『フルングニル』が迫っているのだ。踏み込んでいるのだ。
「生身相手に容赦のないことで……! ていうかさー悩みがあるなら誰かに先に相談すればよいのに……」
「そんなことできるわけがない。僕はもうみんなとは違う。みんなとは違うから、僕の、俺の……この心の内はもう誰にもわからない!」
叫ぶ『メリサ』の言葉に玲は息を吐き出す。
他と違うこと。
一つにはなれないこと。
望みながらも出来ないことを知った『メリサ』は個として、自分たちの前に立っている。思想を歪められながらも、確実に個として。
息を吸い込む。
「ホウレンソウがなってない!」
玲の瞳がユーベルコードに輝く。
そう、他者とは違うからこそ、人は言葉を紡ぐ。言葉でつながる。すれ違い、不理解を知り、不寛容を乗り越え、理解と寛容を知ることができるのだ。
召喚される機械腕が『フルングニル』の爪の一撃を受け止める。
念動力でもって接続された機械腕が手にするのは模造神器。
蒼き炎をほとばしらせる刀身のさきに『フルングニル』は、『メリサ』は何を見ただろうか。
爪の一撃を受け止め、薙ぎ払う。
蒼炎が戦場に迸り、雪原を舞う。
「まあ、いいや! 倒せば終わりだしね! 後でみっちり話聞いてもらばいいよ。だって……」
それが人間というものだ。
玲の斬撃が走る。
斬撃波となった一撃が『フルングニル』の装甲を弾き飛ばす。コクピット周りを狙わないよに加減をしているが、その斬撃の尽くが修復装甲を引き剥がすものだった。
しかし、剥がした端から覆われていく。
「ハッ……こっちが剥ぐが速いか、そっちが修復するのが速いか。さあ、勝負といこうじゃないか」
不敵に笑い、玲は機械腕と己の二刀の斬撃の嵐を巻き起こす。
それは、断章・機神召喚〈極限熱量〉(フラグメント・マキナアーム・インフェルノ)。
蒼炎の嵐は止まらない。
引き剥がされ、蒼炎に燃える装甲。
その溶け落ちる最中、玲は『フルングニル』と猛烈な打ち合いを繰り広げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
個としての発露はおそらく喜ぶべき事でありましょう!
だがしかし!!オブリビオンマシン!!お前はダメだ!!!
ディスポーザブル01【操縦】
フルングニルへ、ホーミングレーザー射撃
人工魔眼の【動体視力】【瞬間思考力】で回避機動を認識し
パルスアトラクター展開、【フェイント】
【念動力】フォースウィップ射出【ロープワーク】!
拘束、その場に留まらせ!
『零距離回点』を発動する!!
止まれ!壊れていけ!!其処は違う!!!
【視力呪詛】退化退行の右目でフルングニルやベルグリサルを捕食前、
代償が無い状態にまで退化させる!
|メリサ《みんな》は間違いを犯した!
それをみな分かった筈だ!!
人工魔眼最大稼働!フォースウィップの力を増幅させ、
フルングニルを引き寄せ、メガスラスター【推力移動】
RX騎兵刀を振るい、鋼鉄の獣の素っ首を【切断】してやる!
なら後は!|個《メリサ》を受け入れられる
|みんな《メリサ》であれば良いだけの事だ!!違うか!!!
雪原に舞う蒼炎と装甲が溶け落ちる破片。
その中心にあるのはオブリビオンマシン『フルングニル』と、それを駆る少年『メリサ』であった。
『此処』と呼ばれる未開地集落に在りて、彼らはみんなおなじだった。
姿かたちも、その内面も。
何もかもがみんなおなじだったのだ。
それは即ち一つになっているということだ。心地よく、恐れも、哀しみも、何もない。あるのは喜びだけだ。
だからこそ、そこから逸脱することは恐ろしい。
けれど、そのみんなおなじであるという中から『個』が発露したことは、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)にとっては喜ぶべきことだったのだろう。
グリモア猟兵に助けを求めた少年『メリサ』に取っては不幸であったのかもしれない。
「だがしかし!! オブリビオンマシン!! お前はダメだ!!!」
『ディスポーザブル01』と共に雪原を駆け、小枝子は『フルングニル』にホーミングレーザーを叩き込む。
しかし、それは即座に躱されてしまう。
圧倒的な機動力というよりも、オブリビオンマシンを駆る『メリサ』の純粋なる技量によるものであると小枝子は理解しただろう。
あの少年は今まで争いとは無縁だったのだ。
キャバリアに触れるのもこれが初めてのはずだ。だというのに、まるでキャバリアに乗るために生まれてきたかのような操縦技術でもって追いすがるレーザーの一撃を躱し、立ち上がる水蒸気の中に身を翻すのだ。
「何がダメだっていうんです!」
機体より放たれる無数の無人機たち。
それを『ディスポーザブル01』の胸部装甲に収められたパルスアトラクターの一撃で持って吹き飛ばし、さらに追いすがる。
「止まれ!」
「嫌だ! 僕は、俺は!! 助けたいんだ!! みんなを!!」
強電磁波すら躱し、『フルングニル』が『ディスポーザブル01』に組み付く。爪が装甲を引き裂きながら、『ディスポーザブル01』を押し留める。
むしろ、それは小枝子に取っては好都合であった。
フォースウィップが射出され、『フルングニル』の機動性を封じるように拘束しその場に留めさせるのだ。
「壊れていけ!! 其処は違う!!!」
そう、小枝子は叫ぶ。
個の発露は喜ぶべきこと。
小枝子にはそう思えていた。
みんなとおなじことを望み、けれど、その心地よさを彼はみんなを護るために捨てたのだ。もう二度とおなじになれないと知りながらも、己の心地よさを捨てたのだ。
ならばこそ、小枝子はそれを勇気と呼ぶだろう。
讃えられるべきことだと思ったことだろう。
誰かを信じることをは尊ぶべきことだ。
喜ばしいことだ。
けれど、と思う。悪意はいつだって善意の裏側に存在する。
今回がそうであったように。
「|『メリサ』《みんな》は間違いを犯した! それをみなわかったはずだ!!」
小枝子の瞳がユーベルコードに輝く。
その片目は退化退行の魔眼へと変貌する。人工魔眼より発露する超能力が『フルングニル』と無人機を捕食前の状態にまで退化させ、燃えるように光を放つ。
「みんなとはもうちがう! みんなのことなんて、もう僕にはわからない! みんなと違ってしまったんだから!」
軋むフレームのままに『フルングニル』はフォースウィップの拘束を振りほどき、『ディスポーザブル』を吹き飛ばす。
巨体が雪原によろめく。
けれど、小枝子は機体のメガスラスターを噴射させ、騎兵刀を抜き払う。
確かに彼の言う通りなのだろう。
人はみな違う。
一様に違う。誰もがおなじであることなどあり得ない。個として存在するからこそ、他者を知覚することができる。
共にあることと同じになることは決して同一ではないのだ。
自分の隣に自分ではない誰かがいること。
それを理解しようとして、理解しきれぬことがあることを知ること。
それこそが相互理解というものだ。
理解しきれぬものがあってなお、それでも手を伸ばすこと。誰かを助けたいと願ったその思いが、『メリサ』という少年を一つの個にしたのならば。
「なら後は!|個《メリサ》を受け入れられる、|みんな《メリサ》であれば良いだけのことだ!!」
振るう騎兵刀の斬撃が『フルングニル』の右腕を切り裂く。
振り下ろされた一撃は、『フルングニル』と、そして、その内部にあるであろう少年に衝撃を与えることだろう。
「違うか!!!」
小枝子は叫ぶ。
何故こんなにも自分が叫ぶのか。
どうして、個を確立した少年にこだわるのか。それはきっと己が知らぬことであったけれど、己の出自に由来するからだろう。
知らずとも己のなかにあるものは、目の前の存在を捨て置くことなどできないのだ。
裂帛の気合と共に放たれる斬撃の一撃が『フルングニル』の頭部を切り裂き、個としての『メリサ』の道行きを示すように奔るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
何しに来たのか知りませんが、ここで会った以上、逃しはしません!
メリサさんを傷つけないよう慎重に。
結界術・高速詠唱による防御壁を展開し、その内側にはオーラ防御を纏った天耀鏡を滞空させて盾受けできるように。
更に近づいた機体は衝撃波で吹き飛ばす。
上記の防御を突破される前に相手のUCを把握して、《初発之回帰》で打ち消します。
念動力・捕縛で動きを封じ、レーザー射撃・貫通攻撃・スナイパーで足を撃ち抜き、光の属性攻撃・神罰を籠めた雷月による2回攻撃・鎧無視攻撃で両手を斬り落とし、回復される前に頭部を完全破壊しますよ。
群体では無く、個としての自我が芽生えたメリサさん。
此処から新しい歴史が始まるのでしょう。
斬撃がオブリビオンマシン『フルングニル』を切り裂く。
けれど、機体は止まらない。
そして、『フルングニル』を駆る少年もまた止まらないのだ。
なぜなら、彼の中にある助けたいという願いはオブリビオンマシンによって歪められているからだ。
膨れ上がった思いは確かに尊ぶべきものであったはずだ。
「ですが、そのオブリビオンマシンが人の心を歪めるというのならば、逃しはしません!」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は迸る神性の力をもって張り巡らせた防御壁を展開し、多重に編み込まれたオーラの盾へと変える。
迫る無数の無人機。
それは『フルングニル』より生み出されたものであり、詩乃を取囲むようにして迫るのだ。
手にした薙刀で衝撃波を生み出しながら無人機を寄せ付けず、詩乃は『フルングニル』に飛ぶ。
「何をそんなに恐れるというのです」
「おなじでないことが嫌なんだ。けれど、それ以上にみんなが傷つくことが嫌なんだ! 戦いは誰かを傷つけるということなんでしょう! 自分ではない誰かを!」
詩乃は『メリサ』の言葉に頷く。
戦いとは常に勝者と敗者が生まれるものである。
仕方のないことであるといわれればそれまでだ。けれど、それを厭う者がいる。
争いは傷つくことを恐れない者だけが生きることを許されるのだろうか。
しかし、それは違うのだと詩乃は思うだろう。
共に手を取り合って生きていくことだってできるはずだ。これまで長い歴史を彼女は生きてきた。
神性であるからこそ、人の争いは常であることを知る。
一つの平和が訪れたとしても、一つの争いの終わりでしかない。
終わりがあれば始まりが訪れるように。
「それでもあなたは、その力を手にしたのです。他の誰でもない、みなさんと違うあなたが選んだ道なのです」
傷つくこともいとわず。
己が痛みに苦しむ未来が待つのだとしても、それでも集落を救いたいと外に一歩を踏み出したのは、彼自身なのだ。
ならばこそ、詩乃は微笑む。
「歪んだ世界をあるべき姿に戻しましょう」
それはユーベルコードの輝き。
初発之回帰(ハジメノカイキ)は、『フルングニル』の発動したユーベルコードを発動前の状態に時間遡及する神力でもって、無人機を消滅させていく。
詩乃はユーベルコードの輝きの中を飛ぶ。
手にした懐剣を振るい上げる。
そこにあったのは光。
放たれた斬撃は『フルングニル』の腕部を切り裂き、大地へと沈める。
「群体ではなく、個としての自我が芽生えた『メリサ』さん。あなたの道行きはここからです。『此処』ではない何処かに連なっていく道を、あなたはあなた自身の歴史として進むのです」
詩乃は、その道行きを光で照らす。
暗闇に満ちた、見通せぬ未来があるだろう。
恐れを抱くのも無理なからぬことだ。
けれど、それでも人は歩み出すことができることを詩乃は知っている。だから、と詩乃は微笑むのだ。
みんなとおなじではないこと。
みんなとは違うこと。
だからこそ、ぶつかりあって照らす道があるのだと――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
えっと、あの、はい。
そうなんですね。香るんですね。
いえわたしにはさっぱりわかりません。
わたしにわかるのは、
「ステラさん今日もやべーな」ってことくらいです。
とはいえ、たしかにあの『メリサ』さんは、
他の方とちょっと違う感じはしますね。
だからといってお持ち帰りしていいわけではないですよ?
こ、これ以上シリアスになるとアレルギーがですね?
でも『集落』のためにも『メリサ』さんのためにも、
暴走を止めることには大賛成です!
今回はステラさんの愛を前面に押し出すのがいいですよね。
わたしはサポートということで、
【『魔弾の射手』序曲】を使って、足止めをしましょう!
ステラさん、あとはお任せしましたよー!
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
ふむ?あのメリサ様からは
仄かに|エイル様《主人様》の香りがしますね?(くんくん)
誰がやべーメイドですか
私はただのエイル様の|メイド《犬》です
ともあれ
『誰かの為に戦う』
彼は|絆ぐ者《セラフィム》の素質があるのかもですし
ならばあのキャバリアも片割れ足り得るのかもしれません
であれば、私がすべきことは……
お持ち帰りしませんよ!?
というかここ、シリアスシーンでは??
私にシリアスさせてくれないんです??
中破程度で押し留めたいところです
フォルを呼んで突撃します
ルクス様支援よろしくお願いします
【アン・ナンジュ・パス】で仕掛けます
目を覚ましなさい!
貴方はメリサでもあり
ひとりの戦士でもあるだけです!
「みんなとは違うんだ! 違ってしまったんだ! 僕は、俺は……僕は……!」
だから、もうみんなとは一緒にはいられない。
けれど、助けたい。
その思いが歪んで膨らんで、身の内側から己自身を滅ぼすような感覚に『メリサ』と呼ばれた少年は藻掻くようにオブリビオンマシン『フルングニル』を駆る。
咆哮が迸り、その装甲を修復していく力。
その力はわずかに陰りを見せている。
消耗しているのだろう。それもそのはずだ。『フルングニル』の力はパイロットなしでは発露できない。
その力の源は言うまでもなく『メリサ』自身なのだ。
「ふむ? あの『メリサ』様からは、ほのかに|『エイル』様《主人様》の香りがしますね?」
形の良い鼻を鳴らしているのは、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)だった。
彼女の言うところの香りとは如何なるものかはわからないし、わかる気がしないルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、あ、はい、そうなんですね、とお茶を濁すことしかできないでいた。
「えっと、あの、はい……そうなんですね。香るんですね」
さっぱりわからない。
わからないのだけれど、しかして否定はしてはならない。わかったふりもしてはならない。正直に言って、このモードに入ったステラをどうこうできる者なんていないのではないかとルクスは思ったし、『ステラさん今日もやべーな』ってことくらいしかわからなかった。
そんなルクスの心の声が漏れ出ていたのだろう。
「誰がやべーメイドですか。私はただの『エイル』様の|メイド《犬》です」
今ナチュラルに犬って言った?
ルクスに至っては、はいそうですねって具合である。もう慣れたのだろうか。
「とはいえ、確かにあの『メリサ』さんは、他の方とはちょっと違う感じはしますね」
さらっと流した。
その言葉にステラは何故だかわからないが後方メイド面をしながら頷く。
「ええ、『誰かの為に戦う』。彼は|絆ぐ者《セラフィム》の素質があるのかもですし、ならばあのキャバリアも片割れ足り得るのかもしれません」
「だからといってお持ち帰りして良いわけではないですよ?」
「お持ち帰りしませんよ!?」
あれー!? とステラはルクスの言葉に目を見開く。
今此処はシリアスモードではなかったのかと。
いや、何処らへんからだったのだろうかと思わないでもない。常時、犬モードでは? と思ったし、開幕からそうであったはずだ。
「私にシリアスさせてくれないんです??」
「いや、だって、これ以上シリアスになるとアレルギーがですね?」
ルクスはステラさんが最初からやったくせに、と思ったが口をつぐんだ。またバンジーさせられそうになると思ったからだ。
「いいでしょう。フォル!」
ステラは鳥型キャがリアを呼び寄せ、飛び乗る。
「サポートよろしくお願いします」
「はいはーい、任されました! あの集落のためにも『メリサ』さんのためにも、暴走を止めることは大賛成なので!」
迫る無人機の群れを前にルクスの瞳がユーベルコードに輝く。
『魔弾の射手』序曲(マダンノシャシュ・ジョキョク)が奏でられ、浮遊する音符記号が音の爆弾として無人機に炸裂する。
それは猛烈なる音であったし、また無人機を即座に行動不能に陥らせるのだ。
「ステラさん、あとはお任せしましたよー!」
ルクスは思う。
ステラは確かにやべーメイドだなって思うことも多々ある。むしろ、思わないことのほうが少ない。
けれど、彼女の愛は本物なのだろうと思うのだ。
ちょっと行き過ぎているところもあるけれど、本当に慕っているのだとわかるのだ。だからこそ、止めなければならない。
「あの愛は、触るとたいへんなことになりますよー」
「愛なんて、何が! それがなんであるかなんて、僕には、俺には!」
必要のないことだと叫ぶ声がある。
そんなものに意味は無いのだと。けれど、とルクスは思う。
大地を滑空するようにして飛ぶ『フォルティス・フォルトゥーナ』を駆るステラの瞳輝くユーベルコード。
それはきっと『メリサ』とおなじように誰かを助けたいと思うこととおなじであったはずだから。
『フルングニル』の周囲を高速機動マニューバーで旋回し、弾丸を叩き込み動きを止めるステラ。
「目を覚ましなさい! 貴方は!」
ステラの駆るキャバリアが大地を舐めるようにして滑空し、距離を放つ。
それは突撃の合図だった。
ルクスの放った音爆弾が炸裂し、『フルングニル』の動きが一瞬止まる。
「僕は!」
「『メリサ』でもあり」
閃光のように迫る『フォルティス・フォルトゥーナ』の嘴。
一瞬で距離を詰めた一撃が『フルングニル』を吹き飛ばす。
急加速の一撃は重たく機体をきしませ、雪原を跳ねるようにして何度も叩きつけられて転がりつづけた。
それを見下ろすようにステラは告げる。
「ひとりの戦士でもあるだけです!」
自分の『主人様』は、そうであったと誇らしげに――。
大成功
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菫宮・理緒
たしかに、あの『メリサ』さんは、
『集落』にいる『メリサ』さんたちとは違う感じだよね。
そして、そのことを利用されてる。
オブリビオンマシンは、なんにでもつけこむね。
大切な人を、場所を守りたいっていうのは、
とても普通で、とても大事な気持ち。
いままで平和だったからそう思う必要がなかっただけで、
こういうことになれば、誰かがそう思ったんじゃないかな。
それがあなただっただけだと思うよ。
それに戦うことになったからって、『此処』を捨てることはないんだよ。
大事なものを守るために戦うのはいけないことじゃない。
そのためにはあなたみたいな人が必要なんだよ。
だから、あなたを助けるよ。
『希』ちゃん、わたしは【lanius】で出るから、
【ネルトリンゲン】に『集落』のみんなを保護して!
いくら『メリサ』さんたちが飲み込みよくても、
いきなりオブリビオンマシン相手の実戦はちょっと厳しいからね。
わたしは【白の天蓋】を使って、相手をアンダークロック、
こちらはオーバークロックをかけて、【ThorHammer】でブレイクダウン狙うよ!
大地を跳ねるように転がる『フルングニル』が、軋むフレームを推して立ち上がる。
動きに軽快さはない。
けれど、その機体に宿る意思が、凄まじき重圧となって迫る猟兵――菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の肌を刺すようだった。
どれほど戦闘空母の艦橋にいるのだとしても、その身を貫くような感覚に理緒は頷く。
確かに、と。
「あの『メリサ』さんは、『此処』にいる『メリサ』さんたちとは違う感じだよね」
けれど、それを利用されているのだとわかる。
あのオブリビオンマシンに。
人の思想を歪め、戦乱の火種をばらまく存在。
「オブリビオンマシンは何にでもつけ込むね」
『メリサ』少年は、みんなから逸脱することを恐れていたが、それでもみんなを助けるために集落を飛び出した。
グリモア猟兵と出会えた事は幸運であったけれど、もう逸脱した者があの集落にいられるとは思えなかった。
みんなとおなじであること。
ひとつであること。
その心地よさを知っているからこそ、逸脱したものはきっと攻撃されるだろう。みんなと違うことを厭うことは、一つになることと同義だったからだ。
人間の愚かしさというものがあるのだとすれば、恐らくは、その一つだろ。
一つの正義の前に一つの不正義を叩きのめす快楽。
それを味わった人間は、きっと何度でも繰り返す。排他する喜びに、正義であるという言葉を掲げることによって暴力さえ肯定できてしまうのだから。
「でも、大切な人を、場所を守りたいっていうのは、とても普通で、とても大事な気持ち」
理緒は『ネルトリンゲン』からキャバリアで飛び出す。
空母の制御はサポートAIに任せた。そして、『此処』の守りもまた同様だった。
自分が今何をしなければならないのかを理緒はよく理解していた。
「みんなを争いから遠ざけるためには、力なんて、キャバリアなんてものがあってはダメなんだ……それが争いを呼び込む! 力を持つから、人は争い続ける! そんなのが嫌だっていうから!」
だから、と『メリサ』は『フルングニル』と同調するように咆哮する。
切り裂かれた腕を修復し、『フルングニル』のアイセンサーがユーベルコードに煌めく。その重圧を理緒はキャバリアの中にありながら感じる。
「みんなを助けたいって思う気持ちが! この気持が! 僕を!!」
違うものにしたのだと、『メリサ』が叫ぶ。
踏み込む『フルングニル』の速度は尋常ならざるものであった。
一瞬で距離を詰められ、理緒は驚愕する。
「クロック、アジャスト」
理緒のユーベルコードが煌めく。
周囲を覆うのは電脳世界から召喚した純白の壁。その壁に覆われた範囲は、電子解析によって『時の流れ』を自在に操る。
即ち、敵を減速させ、己を加速させる。
「今まで平和だったからそう思う必要がなかっただけで、こういうことになれば、誰かがそう思ったんじゃないかな。それがあなただっただけ、だと思うよー」
「違う! 僕がみんなと違うから! こんなふうに、思ってしまうんだ!」
減速してなお、迫る『フルングニル』の一撃。
それを加速した理緒は躱し、回り込む。
これだけ減速させてなお『フルングニル』を駆る『メリサ』は追いついてくる。
キャバリアに乗る為だけに生まれたかのような技量。
先天的な、後天的な、と論じるつもりはないが、しかし、これは驚異だと理緒は理解するだろう。
「戦うから、捨てなきゃいけないものばかりが、僕の腕の中にあるんだ! みんなも、僕の心も! 『戦いに際しては』!!」
告げる言葉を前に理緒の瞳が超克に輝く。
オーバーロード。
彼女の瞳がユーベルコードに煌めき続ける。
白の天蓋(シロノテンガイ)は今もなお、二機の天を覆っている。
「『此処』まで捨てることはないんだよ」
理緒は己のキャバリアと共に踏み込む。ライフルの一撃を叩き込み、旋回し、迫る一撃を躱す。
砕けたフレームが飛び散る様すら、今は減速されスローモーションのように理緒の視界に流れていく。
「大事なものを護るために戦うのはいけないことじゃない」
誰かがやらなければならなかったことなのだと。
『メリサ』が己が傷つくことも厭わずに集落の外に踏み出した一歩はかけがえのない一歩だったのだ。
いくつかの幸運が重なったし、いくつかの不運が重なった結果なのだとしても。
それでも理緒は告げなければならない。
突きつけたライフルが『フルングニル』の頭部を狙う。
「そのためにはあなたみたいな人が必要なんだよ」
戦乱が渦巻く世界だからこそ。
自らを省みることなく。傷を厭うことなく。
戦いに身を投じる者。
人はそれをなんと呼ぶだろうか。
「だから、あなたを助けるよ」
理緒の指がトリガーを引いた瞬間、『フルングニル』の頭部が弾けて砕ける。
鋼鉄の獣は動きを止め、頭部を失った五体が雪原に膝をつく。
それを理緒は見下ろす。
いつだって人の心は歪められる。
けれど、その歪められてなお、人は歩むことができるのだ。
『戦いに際しては』、と彼は言った。
ならば、ここで歩みを止めたのだとしても。
『此処』から『何処』かへと歩み事をやめられないだろう。そうして、きっと己の道を見つけるのだ。
理緒はコクピットから降り、手を差し伸べる。
その差し伸べられる手を取る所以を、少年はもう識っているだろうか――。
大成功
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